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特表2024-506346組換えヒト酸性アルファグルコシダーゼ及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】組換えヒト酸性アルファグルコシダーゼ及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/47 20060101AFI20240205BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240205BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240205BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240205BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240205BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240205BHJP
   C12N 9/24 20060101ALN20240205BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20240205BHJP
【FI】
A61K38/47
A61P3/00
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/14
A61K47/04
C12N9/24 ZNA
C12P21/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548587
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 US2022016124
(87)【国際公開番号】W WO2022174037
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】63/148,596
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/162,683
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507170099
【氏名又は名称】アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ, ハング
(72)【発明者】
【氏名】ゴッシャル, ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】チャー, ヒング
(72)【発明者】
【氏名】バース, ジェイ
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4C076BB01
4C076CC21
4C076DD26Z
4C076DD38
4C076DD43
4C076DD43Z
4C076DD46
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084CA18
4C084CA53
4C084CA56
4C084DC22
4C084NA14
4C084ZC21
(57)【要約】
本明細書には、ポンペ病を治療する方法であって、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ分子の集団又はその医薬組成物若しくは製剤と、薬理学的シャペロンとを投与することを含む方法が提供される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要としている対象のポンペ病を治療する方法であって、前記対象に、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA)分子の集団を薬理学的シャペロンと同時に又は逐次的に投与することを含む方法において;
前記rhGAA分子が7つの潜在的なN-グリコシル化部位を含み;
前記rhGAA分子上のN-グリカンの40%~60%が複合型N-グリカンであり;
前記rhGAA分子が、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)を用いて決定したとき、第1の潜在的なN-グリコシル化部位に1molのrhGAA当たり少なくとも0.5molのビス-マンノース-6-リン酸(ビス-M6P)を含み;及び
前記方法が、1)ベースライン、又は(2)アルグルコシダーゼアルファと前記薬理学的シャペロンのプラセボとを投与することを含む対照治療と比較して、前記対象の1つ以上の疾患アウトカムを改善する、方法。
【請求項2】
6分間歩行テストによって測定されるとおりの、前記対象の運動機能を改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
6分間歩行距離(6MWD)のベースラインからの変化が少なくとも20メートルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
6MWDのベースラインからの前記変化が52週間の治療後に少なくとも20メートルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記対象の6MWDが前記対照治療と比較すると少なくとも10増加する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記対照治療と比較すると、前記対象の6MWDが52週間の治療後に少なくとも13メートル改善する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が300メートル未満のベースライン6MWDを有する、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が300メートル以上のベースライン6MWDを有する、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
努力肺活量(FVC)テストによって測定されるとおりの、前記対象の肺機能を改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
治療後、前記対象のパーセント対予測値FVCが、ベースラインと比較すると増加するか、又はベースラインと比較すると3%未満の低下となるかのいずれかである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
治療後、前記対象のパーセント対予測値FVCが、ベースラインと比較すると1%未満の低下となる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記対象のパーセント対予測値FVCが、52週間の治療後にベースラインと比較すると1%未満の低下となる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記対照治療と比較すると、前記対象のパーセント対予測値FVCが治療後に有意に改善するか又は安定化する、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記対照治療と比較すると、前記対象のパーセント対予測値FVCが治療後に少なくとも3%改善する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記対照治療と比較すると、前記対象のパーセント対予測値FVCが52週間の治療後に少なくとも3%改善する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が55%未満のベースラインFVCを有する、請求項9~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が55%以上のベースラインFVCを有する、請求項9~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
歩行・階段・ガワーズ・椅子(GSGC)テストによって測定されるとおりの、前記対象の運動機能を改善する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
ベースラインと比較すると、前記対象のGSGCスコアが、治療後に少なくとも0.5点の低下によって指示されるとおり改善する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ベースラインと比較すると、前記対象のGSGCスコアが、52週間の治療後に少なくとも0.5点の低下によって指示されるとおり改善する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記対照治療と比較すると、前記対象のGSGCスコアが、治療後に有意に改善する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記対照治療と比較すると、前記対象のGSGCスコアが、治療後に少なくとも1点の低下によって指示されるとおり改善する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記対照治療と比較すると、前記対象のGSGCスコアが、52週間の治療後に少なくとも1点の低下によって指示されるとおり改善する、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの筋損傷マーカー及び/又は少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーのレベルを減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの筋損傷マーカーがクレアチンキナーゼ(CK)を含み、及び/又は前記少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーが尿中ヘキソース四糖(Hex4)を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ベースラインと比較すると、前記対象のCKレベルが治療後に少なくとも20%減少し、及び/又は前記対象の尿中Hex4レベルが治療後に少なくとも30%減少する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ベースラインと比較すると、前記対象のCKレベルが52週間の治療後に少なくとも20%減少し、及び/又は前記対象の尿中Hex4レベルが52週間の治療後に少なくとも30%減少する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記対照治療と比較すると、前記対象のCK及び/又は尿中Hex4レベルが治療後に有意に減少する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記対照治療と比較すると、前記対象のCKレベルが治療後に少なくとも30%減少し、及び/又は前記対象の尿中Hex4レベルが治療後に少なくとも40%減少する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記対照治療と比較すると、前記対象のCKレベルが52週間の治療後に少なくとも30%減少し、及び/又は前記対象の尿中Hex4レベルが52週間の治療後に少なくとも40%減少する、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記対象が、ERT歴のある患者である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記対象が、ERT未経験の患者である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
必要としている対象のポンペ病を治療する方法であって、前記対象に、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA)分子の集団を薬理学的シャペロンと同時に又は逐次的に投与することを含む方法において;
前記rhGAA分子が7つの潜在的なN-グリコシル化部位を含み;
前記rhGAA分子上のN-グリカンの40%~60%が複合型N-グリカンであり;
前記rhGAA分子が、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)を用いて決定したとき、第1の潜在的なN-グリコシル化部位に1molのrhGAA当たり少なくとも0.5molのビス-マンノース-6-リン酸(ビス-M6P)を含み;
前記方法が、1)ベースライン、又は(2)アルグルコシダーゼアルファと前記薬理学的シャペロンのプラセボとを投与することを含む対照治療と比較すると、前記対象の1つ以上の疾患症状を改善し、及び
前記対象が、ERT歴のある患者である、方法。
【請求項34】
6分間歩行テストによって測定されるとおりの、前記対象の運動機能を改善する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
ベースラインと比較すると、前記対象の6分間歩行距離(6MWD)が治療後に少なくとも15メートル又は少なくとも5%増加する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ベースラインと比較すると、前記対象の6分間歩行距離(6MWD)が52週間の治療後に少なくとも15メートル又は少なくとも4%増加する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記対照治療と比較すると、前記対象の6MWDが治療後に有意に改善する、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記対照治療と比較すると、前記対象の6MWDが治療後に少なくとも15メートル改善する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記対照治療と比較すると、前記対象の6MWDが52週間の治療後に少なくとも15メートル改善する、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記対象が300メートル未満のベースライン6MWDを有する、請求項34~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記対象が300メートル以上のベースライン6MWDを有する、請求項34~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
努力肺活量(FVC)テストによって測定されるとおりの、前記対象の肺機能を改善する、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
治療後、前記対象のパーセント対予測値FVCが、ベースラインと比較すると少なくとも0.1%増加する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記対象のパーセント対予測値FVCが、52週間の治療後にベースラインと比較すると少なくとも0.1%増加する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記対照治療と比較すると、前記対象のパーセント対予測値FVCが治療後に有意に改善する、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記対照治療と比較すると、前記対象のパーセント対予測値FVCが治療後に少なくとも4%改善する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記対照治療と比較すると、前記対象のパーセント対予測値FVCが52週間の治療後に少なくとも4%改善する、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が55%未満のベースラインFVCを有する、請求項42~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象が55%以上のベースラインFVCを有する、請求項42~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
歩行・階段・ガワーズ・椅子(GSGC)テストによって測定されるとおりの、前記対象の運動機能を改善する、請求項33に記載の方法。
【請求項51】
ベースラインと比較すると、前記対象のGSGCスコアが、治療後に少なくとも0.5点の低下によって指示されるとおり改善する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ベースラインと比較すると、前記対象のGSGCスコアが、52週間の治療後に少なくとも0.5点の低下によって指示されるとおり改善する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記対照治療と比較すると、前記対象のGSGCスコアが、治療後に有意に改善する、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記対照治療と比較すると、前記対象のGSGCスコアが、治療後に少なくとも1点の低下によって指示されるとおり改善する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記対照治療と比較すると、前記対象のGSGCスコアが、52週間の治療後に少なくとも1点の低下によって指示されるとおり改善する、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項56】
少なくとも1つの筋損傷マーカー及び/又は少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーのレベルを減少させる、請求項33に記載の方法。
【請求項57】
前記少なくとも1つの筋損傷マーカーがクレアチンキナーゼ(CK)を含み、及び/又は前記少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーが尿中ヘキソース四糖(Hex4)を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
ベースラインと比較すると、前記対象のCKレベルが治療後に少なくとも15%減少し、及び/又は前記対象の尿中Hex4レベルが治療後に少なくとも25%減少する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
ベースラインと比較すると、前記対象のCKレベルが治療後に少なくとも15%減少し、及び/又は前記対象の尿中Hex4レベルが52週間の治療後に少なくとも25%減少する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記対照治療と比較すると、前記対象のCK及び/又は尿中Hex4レベルが治療後に有意に減少する、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記対照治療と比較すると、前記対象のCKレベルが治療後に少なくとも30%減少し、及び/又は前記対象の尿中Hex4レベルが治療後に少なくとも40%減少する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記対照治療と比較すると、前記対象のCKレベルが治療後に少なくとも30%減少し、及び/又は前記対象の尿中Hex4レベルが52週間の治療後に少なくとも40%減少する、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記rhGAA分子集団が、5mg/kg~20mg/kg、任意選択で20mg/kgの用量で投与される、請求項1~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記rhGAA分子集団が隔週で投与される、請求項1~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記rhGAA分子集団が静脈内投与される、請求項1~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記薬理学的シャペロンがミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩であり、更に任意選択で前記ミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩が経口投与される、請求項1~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記ミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩が195mg又は260mgの用量で投与される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩が、前記rhGAA分子集団の投与前、任意選択で前記rhGAA分子集団の投与1時間前に投与される、請求項66又は67に記載の方法。
【請求項69】
前記対象が、ミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩の投与前の少なくとも2時間及び投与後の少なくとも2時間にわたって絶食する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記rhGAA分子が、配列番号4又は配列番号6と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記rhGAA分子が、配列番号4又は配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項1~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
LC-MS/MSを用いて決定したとき、前記rhGAA分子の少なくとも30%が、1個のマンノース-6-リン酸残基(モノ-M6P)又はビス-M6Pを担持するN-グリカン単位を1つ以上含む、請求項1~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
LC-MS/MSを用いて決定したとき、前記rhGAA分子が平均して1molのrhGAA当たり0.5mol~7.0molのモノ-M6P又はビス-M6Pを含む、請求項1~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
LC-MS/MSを用いて決定したとき、前記rhGAA分子が平均して1molのrhGAA当たり2.0~8.0molのシアル酸を含む、請求項1~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
LC-MS/MSを用いて決定したとき、前記rhGAA分子が平均して1molのrhGAA当たり少なくとも2.5molのM6P及び1molのrhGAA当たり少なくとも4molのシアル酸を含む、請求項1~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
1molのrhGAA当たり、前記rhGAA分子が平均して
(a)第2の潜在的なN-グリコシル化部位に0.4~0.6molのモノ-M6P;
(b)第4の潜在的なN-グリコシル化部位に0.4~0.6molのビス-M6P;又は
(c)第4の潜在的なN-グリコシル化部位に0.3~0.4molのモノ-M6P
を含み;
(a)~(c)がLC-MS/MSを用いて決定される、請求項1~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
1molのrhGAA当たり、前記rhGAA分子が4mol~7.3molのシアル酸を更に含み;及び
1molのrhGAA当たり、前記rhGAA分子が平均して
(a)第3の潜在的なN-グリコシル化部位に0.9~1.2molのシアル酸;
(b)第5の潜在的なN-グリコシル化部位に0.8~0.9molのシアル酸;又は
(c)第6の潜在的なN-グリコシル化部位に1.5~4.2molのシアル酸
を含み;
(a)~(c)がLC-MS/MSを用いて決定される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記rhGAA分子集団が医薬組成物に製剤化される、請求項1~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記医薬組成物が、クエン酸塩、リン酸塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝液と、マンニトール、ポリソルベート80、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤とを更に含み;前記医薬組成物が5.0~7.0のpHを有する、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記医薬組成物が5.0~6.0のpHを有する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記医薬組成物が、水、酸性化剤、アルカリ化剤、又はこれらの組み合わせを更に含む、請求項78又は79に記載の方法。
【請求項82】
前記医薬組成物中、前記rhGAA分子集団が5~50mg/mLの濃度で存在し、前記少なくとも1つの緩衝液が、10~100mMの濃度で存在するクエン酸ナトリウム緩衝液であり、前記少なくとも1つの賦形剤が、10~50mg/mLの濃度で存在するマンニトール及び0.1~1mg/mLの濃度で存在するポリソルベート80であり、及び前記医薬組成物が水を更に含み、及び任意選択で酸性化剤及び/又はアルカリ化剤を含み;前記医薬組成物が6.0のpHを有する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記医薬組成物中、前記rhGAA分子集団が15mg/mLの濃度で存在し、前記クエン酸ナトリウム緩衝液が25mMの濃度で存在し、前記マンニトールが20mg/mLの濃度で存在し、及び前記ポリソルベート80が0.5mg/mLの濃度で存在する、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記rhGAAがチャイニーズハムスター卵巣細胞から産生される、請求項1~83のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年3月18日に出願された米国仮特許出願第63/162,683号明細書、及び2021年2月11日に出願された米国仮特許出願第63/148,596号明細書の利益を主張するものであり、これらの各々の開示は本明細書によって全体として参照により援用される。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルに関する記載
本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は、全体として参照により本明細書に援用される:コンピュータ可読形式の複製物である配列表(ファイル名:AMCS_013_02WO_SeqList_ST25.txt、記録日:2022年2月11日、ファイルサイズ約45,560バイト)。
【0003】
本開示は、組換えヒトα-グルコシダーゼ(rhGAA)及びポンペ病の治療に関する。
【背景技術】
【0004】
ポンペ病は、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)活性の欠損によって生じる遺伝性のリソソーム蓄積症である。ポンペ病を有する人は、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)を欠いているか、又はそのレベルが低く、GAAとは、グリコーゲンを分解して、筋肉の主なエネルギー源であるグルコースに変える酵素である。この酵素欠損症は、通常はグリコーゲン及び他の細胞残屑又は老廃物を分解する酵素を持つ細胞内小器官であるリソソームに、過剰なグリコーゲン蓄積を引き起こす。ポンペ病を有する対象のある種の組織、特に筋肉にグリコーゲンが蓄積すると、細胞が正常に機能する能力が損なわれる。ポンペ病では、グリコーゲンが正しく代謝されず、特に骨格筋細胞、及びこの疾患の乳児発症型では心筋細胞のリソソームに徐々に蓄積する。グリコーゲンの蓄積は、筋肉及び神経細胞並びに他の罹患組織の細胞に損傷を与える。
【0005】
従来、ポンペ病は、臨床的には、発症年齢に応じて早期乳児型又は遅発型のいずれかとして認識されている。発症年齢は、ポンペ病を引き起こす遺伝子突然変異の重症度と平行する傾向がある。最も重症度の高い遺伝子突然変異は、GAA活性の完全な喪失を引き起こし、乳児期に早期発症型疾患として現れる。GAA活性を減少させるが、それを消失させることはない遺伝子突然変異は、発症及び進行の遅延を呈する型のポンペ病と関連付けられる。乳児発症のポンペ病は生後間もなく現れ、筋脱力、呼吸不全及び心不全を特徴とする。治療しなければ、通常は2年以内に死亡に至る。若年及び成人発症のポンペ病は人生のより遅い時期に現れ、通常、乳児発症疾患と比べると進行が緩徐である。この型の疾患もまた、それが概して心臓には発症しないとはいえ、骨格筋及び呼吸に関わる筋肉の衰弱が原因で死に至り得る。
【0006】
ポンペ病の現在の非姑息的治療には、LUMIZYME(登録商標)及びMYOZYME(登録商標)の商標で販売されている組換えアルグルコシダーゼアルファ製剤を使用した酵素補充療法(ERT)が関わる。この従来の酵素補充療法は、rhGAAを投与することによってリソソームに欠けているGAAを補充し、ひいては細胞がリソソームのグリコーゲンを分解する能力を修復することによってポンペ病を治療しようとするものである。LUMIZYME(登録商標)及びMYOZYME(登録商標)は、Genzymeによって生物製剤として生産又は販売されている、米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)の承認を受けている従来型のrhGAAであり、Physician’s Desk Reference(2014)(これは本明細書によって参照により援用される)に参照として記載されている。アルグルコシダーゼアルファは、化学名[199-アルギニン,223-ヒスチジン]プレプロ-α-グルコシダーゼ(ヒト);分子式、C475872621274136935;CAS番号420794-05-0として識別される。これらの製剤は、II型糖原病(GSD-II)又は酸性マルターゼ欠損症としても知られるポンペ病の対象に投与される。
【0007】
しかしながら、現在のERTは、良くても、筋機能、筋力及び呼吸機能の尺度の限られた改善を一定の期間に限りもたらすものでしかなく、その後これらのパラメータはゆっくりと悪化する(Toscano and Schoser 2013;Wyatt et al 2012)。
【0008】
2012年、遅発型ポンペ病(LOPD)の対象で実施された全ての試験の系統的レビューが、Toscano and Schoser 2013により実施された。このレビューには、既発表の試験からのLOPDの対象368例に関するデータが含まれ、その中には、それまで少なくとも2年間にわたってアルグルコシダーゼアルファの投与を受けていた27例の若年対象(年齢範囲:2~17歳)及び251例の成人対象が含まれた。結果が指し示すところは、30%を超える対象でアルグルコシダーゼアルファによる治療時に初期の改善が見られず、治療を行っても筋機能及び呼吸機能の増悪が起こり続けたというものであった。当初アルグルコシダーゼアルファ治療に反応した対象の群では、幾つかの追加的な長期試験により、改善が通常約2年ほどしか続かないことが明らかになった。その後、対象は概してプラトーに達してから、次第に悪化し始めた。
【0009】
2012年、英国国立健康研究所(National Institute for Health Research)の一部としての英国医療技術評価(United Kingdom Health Technology Assessment)プログラム(Wyatt et al 2012)は、現在承認されているERT標準治療、アルグルコシダーゼアルファを受けた81例のポンペ病患者(乳児発症型及び遅発型(小児及び成人)を含む)の時系列データのレビューから導き出された勧告を出した。ポンペ病進行の主要マーカー(努力肺活量、人工呼吸依存状態、運動性、6分間歩行テスト、筋力、及びボディ・マス・インデックス)が評価され、アルグルコシダーゼアルファ療法を受けている治療時間でモデル化された。この評価の結果が指し示すところは、LOPD患者のFVC、6分間歩行距離、及び筋力の改善が、アルグルコシダーゼアルファによるERTの開始後最初の2年間に起こり、この時間枠を超えると、治療継続の傍ら悪化が起こるというものであった。加えて、アルグルコシダーゼアルファの投与を受けているLOPDの対象38例における3年間の試験では、対象が治療初年度に運動機能の改善を実証し、それが2年目も概して安定したまま、3年目に悪化し始めたことが明らかになった(Regnery et al 2012)。
【0010】
更には、第3相LUMIZYME(登録商標)(Genzyme社)試験での10年間のフォローアップを提供する報告によれば、治療の最初の数年間に運動及び肺機能の何らかの改善が見られた後、治療が続く一方で対象はゆっくりと悪化し始めたことが明らかになった(van der Ploeg et al 2017)。この試験では、療法を受けて3年目から6年目までに、ベースライン6分間歩行距離パーセント対予測値の平均約10%の悪化があり、約80%の対象に悪化が見られた。
【0011】
アルグルコシダーゼアルファに関する忍容性の最も重大な問題は、注入関連反応(IAR)の発生であり、これには、一部の例では、生命を脅かすようなアナフィラキシー又は他の重症アレルギー反応が含まれ得る(MYOZYME(登録商標)Summary of Product Characteristics,December 2018)。これらの事象の管理には、用量の減量、注入速度及び長時間に及ぶ注入時間の低減、及び投与の中断又は中止が含まれる。抗ヒスタミン薬及びステロイド薬の(注入前の)前投薬もまた、アルグルコシダーゼアルファ注入に関係するIAR及び過敏反応の発生及び重症化を予防し及び低減するため定期的に用いられている。これらの対策にもかかわらず、ポンペ病患者にはなおもIARが起こる恐れがあり、中には現在承認されているERTの定期的な注入を忍容できない患者もいる。
【0012】
2017年、欧州11ヵ国からのポンペ病分野の専門家のネットワークである欧州ポンペ病コンソーシアム(European Pompe Consortium)により、文献の系統的レビューが行われた(van der Ploeg et al 2017)。総計586例の個別の成人対象を網羅した、1件の臨床試験及び43件の観察研究から得られたデータに基づき、群レベルでのERTの効果のエビデンスがこのコンソーシアムにより評価された。現在の欧州ポンペ病コンソーシアム(European Pompe Consortium)の統一見解では、重篤なIARの発生又は疾患症状の臨床的悪化の進行、並びに高中和抗体(Ab)価の発生があれば、それらは既存のERT治療を事実上無効にするものであり、ERT療法を中止することとしている。欧州ポンペ病コンソーシアム(European Pompe Consortium)の勧告にはまた、ERTを止めた後に疾患の進行及び臨床的悪化が再び起こった場合には、ERT治療の再開を検討することも含まれる。
【0013】
このように、有害事象を低減したポンペ病の治療に有効な改良されたrhGAA療法を特定することが依然として求められている。
【0014】
rhGAA分子の細胞取込みは、筋細胞などの標的細胞上に存在するカチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体(CIMPR)に結合する特殊化した炭水化物、マンノース-6-リン酸(M6P)によって促進される。結合が起こると、rhGAA分子は標的細胞に取り込まれ、続いて細胞内のリソソームへと輸送される。しかしながら、従来のrhGAA製剤の多くは、モノ-M6P-及びビス-M6P担持N-グリカン類(即ち、それぞれ、1個のM6P残基を担持するN-グリカン類又は2個のM6P残基を担持するN-グリカン類)の高い総含量が不足しているため、CIMPRを介したその細胞取込み及びリソソーム送達が限られており、ひいては従来の酵素補充療法の有効性は不十分となっている。例えば、20mg/kg以上の用量の従来のrhGAA製剤は、実にポンペ病の幾つかの側面を好転させるものの、とりわけ、(i)根底にある細胞の機能不全の治療、(ii)筋肉構造の修復、又は(iii)骨格筋などの多くの標的組織における蓄積したグリコーゲンの低減という点で、疾患の進行を好転させるだけの適切な能力がない。更に、高用量では、rhGAAの静脈内投与に必要な注入時間が長くなるなど、対象並びに対象の治療を担う医療専門家に更なる負担がかかり得る。
【0015】
Canfield,et al.、米国特許第6,534,300号明細書によって記載されるホスホトランスフェラーゼ及び脱被覆酵素によってGAA又はrhGAAのグリコシル化をインビトロで酵素的に修飾すると、M6P基を作成することができる。しかしながら、酵素的グリコシル化は適切に制御することができず、望ましくない免疫学的及び薬理学的特性を有するrhGAAが作り出され得る。酵素的に修飾されたrhGAAは、高マンノース型オリゴ糖のみを含有し得ることになり、その全てが、インビトロでホスホトランスフェラーゼ又は脱被覆酵素によって酵素的にリン酸化される可能性があり得る。追加の末端マンノース残基、特にリン酸化されていない末端マンノース残基は、修飾されたrhGAAの薬物動態に悪影響を及ぼすため、インビトロでGAAの酵素処理によって作り出されるグリコシル化パターンには問題がある。かかる酵素的に修飾された製剤がインビボで投与されると、それらのマンノース基によってGAAの非生産的クリアランスが増加し、酵素的に修飾されたGAAの免疫細胞による取込みが増加し、及び骨格筋細胞などの標的とする組織に到達するGAAが少なくなるため、rhGAA治療有効性が低下する。例えば、末端非リン酸化マンノース残基は、肝臓及び脾臓におけるマンノース受容体の公知のリガンドであり、酵素的に修飾されたrhGAAの急速なクリアランス及び標的組織に標的化されるrhGAAの減少につながる。その上、末端非リン酸化マンノース残基を持つ高マンノース型N-グリカン類を有するという酵素的に修飾されたGAAのグリコシル化パターンは、酵母及びカビで産生される糖タンパク質にあるものと類似しており、酵素的に修飾されたrhGAAに対し、生命を脅かす重症アレルギー(アナフィラキシー)反応又は過敏性反応など、免疫反応又はアレルギー反応が惹起されるリスクが増加する。
【0016】
従来の組換えrhGAA製剤及びインビトロでリン酸化されたrhGAAと比較すると、本開示に係る二成分療法で使用されるrhGAAは、体内分布及びリソソーム取込みの増強に最適化されたN-グリカンプロファイルを有し、それによって投与後のrhGAAの非生産的クリアランスを最小限に抑える。本開示は、安定している又は悪化しつつあるポンペ病患者に、細胞レベルで疾患の進行を好転させる有効な療法を-リソソームグリコーゲンを現在の標準治療よりも効率的に除去することを含め、提供する。rhGAAと薬学的シャペロン(例えば、ミグルスタット)とを含む本開示の二成分療法で治療される患者は、臨床試験からの様々な有効性結果(例えば、実施例8及び9)に実証されるとおり、筋力、運動機能、及び/又は肺機能の改善を含め、及び/又は疾患の進行を好転させることを含め、有意な健康の改善を呈する。
【発明の概要】
【0017】
本明細書には、対象のポンペ病などの疾患又は障害を治療する方法であって、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA)分子の集団と薬理学的シャペロン(例えば、ミグルスタット)とを投与することを含む方法が提供される。
【0018】
本明細書に記載されるrhGAA分子は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に発現させてもよく、7つの潜在的なN-グリコシル化部位を含み得る。一部の実施形態において、本明細書に記載されるとおりのrhGAA分子集団のN-グリコシル化プロファイルは、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC-MS/MS)を用いて決定される。一部の実施形態において、rhGAA分子は、平均して1molのrhGAA当たり3~4molのマンノース-6-リン酸(M6P)残基を含む。一部の実施形態において、rhGAA分子は、第1の潜在的なN-グリコシル化部位に平均して1molのrhGAA当たり少なくとも約0.5molのビスリン酸化N-グリカン基(ビス-M6P)を含む。一部の実施形態において、rhGAAは、配列番号4又は配列番号6と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、rhGAAは、配列番号4又は配列番号6と同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、rhGAA分子のうち少なくとも30%の分子は、1個又は2個のM6P残基を担持するN-グリカン単位を1つ以上含む。一部の実施形態において、rhGAA分子は、平均して1molのrhGAA当たり約0.5mol~約7.0molの1個又は2個のM6P残基を担持するN-グリカン単位を含む。一部の実施形態において、rhGAA分子は、平均して1molのrhGAA当たり2.0~8.0molのシアル酸を含む。一部の実施形態において、rhGAA分子は、平均して1molのrhGAA当たり少なくとも2.5モルのM6P残基と1molのrhGAA当たり少なくとも4molのシアル酸残基とを含む。一部の実施形態において、1molのrhGAA当たり平均3~4molのM6P残基及び第1の潜在的なN-グリコシル化部位にrhGAA 1mol当たり少なくとも平均約0.5molのビス-M6Pを含むrhGAA分子は、平均で第2の潜在的なN-グリコシル化部位にrhGAA 1mol当たり約0.4~約0.6molのモノリン酸化N-グリカン類(モノ-M6P)、第4の潜在的なN-グリコシル化部位にrhGAA 1mol当たり約0.4~約0.6molのビス-M6P、及び第4の潜在的なN-グリコシル化部位にrhGAA 1mol当たり約0.3~約0.4molのモノ-M6Pを更に含む。一部の実施形態において、rhGAA分子は、第3の潜在的なN-グリコシル化部位におけるrhGAA 1mol当たり約0.9~約1.2molのシアル酸、第5の潜在的なN-グリコシル化部位におけるrhGAA 1mol当たり約0.8~約0.9molのシアル酸、及び第6の潜在的なN-グリコシル化部位におけるrhGAA 1mol当たり約1.5~約4.2molのシアル酸を含め、平均して1molのrhGAA当たり約4mol~約7.3molのシアル酸残基を更に含む。一部の実施形態において、rhGAA分子集団は、医薬組成物に製剤化される。一部の実施形態において、rhGAA分子集団を含む医薬組成物は、クエン酸塩、リン酸塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝液と、マンニトール、ポリソルベート80、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤とを更に含む。一部の実施形態において、医薬組成物のpHは、約5.0~約7.0、約5.0~約6.0、又は約6.0である。一部の実施形態において、医薬組成物は、水、酸性化剤、アルカリ化剤、又はこれらの組み合わせを更に含む。一部の実施形態において、医薬組成物は6.0のpHを有し、且つ約5~50mg/mLのrhGAA分子集団、約10~100mMのクエン酸ナトリウム緩衝液、約10~50mg/mLマンニトール、約0.1~1mg/mLポリソルベート80、及び水を含み、及び任意選択で酸性化剤及び/又はアルカリ化剤を含む。一部の実施形態において、医薬組成物は6.0のpHを有し、且つ約15mg/mLのrhGAA分子集団、約25mMのクエン酸ナトリウム緩衝液、約20mg/mLマンニトール、約0.5mg/mLポリソルベート80、及び水を含み、及び任意選択で酸性化剤及び/又はアルカリ化剤を含む。
【0019】
一部の実施形態において、rhGAA分子集団は、約1mg/kg~約100mg/kg又は約5mg/kg~約20mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態において、rhGAA分子集団は、約20mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態において、rhGAA分子集団は、隔月、毎月、隔週、毎週、週2回、又は毎日、例えば、隔週で投与される。一部の実施形態において、rhGAA分子集団は、静脈内投与される。
【0020】
一部の実施形態において、rhGAA分子集団は、ミグルスタット(別名AT2221)などの薬理学的シャペロン又はその薬学的に許容可能な塩と同時投与又は逐次投与される。一部の実施形態において、ミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩は、例えば、約50mg~約200mg又は約200mg~約600mg、及び任意選択で約130mg、約195mg、又は約260mgの用量で経口投与される。一部の実施形態において、rhGAA分子集団は、約5mg/kg~約20mg/kgの用量で静脈内投与され、及びミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩は、約233mg~約500mgの用量で経口投与される。一部の実施形態において、rhGAA分子集団は、約5mg/kg~約20mg/kgの用量で静脈内投与され、及びミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩は、約50mg~約200mgの用量で経口投与される。一実施形態において、rhGAA分子集団は、約20mg/kgの用量で静脈内投与され、及びミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩は、約260mgの用量で経口投与される。一実施形態において、rhGAA分子集団は、約20mg/kgの用量で静脈内投与され、及びミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩は、約195mgの用量で経口投与される。一部の実施形態において、ミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩は、rhGAA分子集団の投与より前に(例えば、それより約1時間前に)投与される。少なくとも1つの実施形態において、対象は、ミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩の投与前の少なくとも2時間及び投与後の少なくとも2時間にわたって絶食する。
【0021】
本開示の実施形態は、本明細書に記載される二成分療法がポンペ病の対象の疾患を治療し、及びその進行を好転させる有効性を実証する。一部の実施形態において、対象は、ERT歴のある患者である。一部の実施形態において、対象は、ERT未経験の患者である。
【0022】
一部の実施形態において、本開示に係る二成分療法は、(1)ベースライン、又は(2)アルグルコシダーゼアルファと薬理学的シャペロンのプラセボとを投与することを含む対照治療と比較してポンペ病の対象の1つ以上の疾患症状を改善する。かかる対照治療では、薬理学的シャペロンの代わりにプラセボを投与した。
【0023】
一部の実施形態において、本開示に係る二成分療法は、6分間歩行テスト(6MWT)によって測定されるとおりの、対象の運動機能を改善する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象の6分間歩行距離(6MWD)は、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、又は50メートル又は少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%増加する。一部の実施形態において、対象の6MWDは、52週間の治療後に少なくとも20メートル又は少なくとも5%増加する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の6MWDは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、30、40、又は50メートル改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の6MWDは、52週間の治療後に少なくとも13メートル改善する。一部の実施形態において、対象は、300メートル未満のベースライン6MWDを有する。一部の実施形態において、対象は、300メートル以上のベースライン6MWDを有する。
【0024】
一部の実施形態において、本開示に係る二成分療法は、努力肺活量(FVC)テストによって測定されるとおりの、対象の肺機能を安定化させる。一部の実施形態において、12、26、38、又は52週間の治療後に、対象のパーセント対予測値FVCは、ベースラインと比較すると増加するか、又はベースラインと比較すると0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%未満の低下となるかのいずれかである。一部の実施形態において、52週間の治療後に、対象のパーセント対予測値FVCは、ベースラインと比較すると1%未満の低下となる。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCは、治療後に有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、又は6%有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCは、52週間の治療後に少なくとも3%有意に改善する。一部の実施形態において、対象は、55%未満のベースラインFVCを有する。一部の実施形態において、対象は、55%以上のベースラインFVCを有する。
【0025】
一部の実施形態において、本開示に係る二成分療法は、歩行・階段・ガワーズ・椅子(GSGC)テストによって測定されるとおりの、対象の運動機能を改善する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のGSGCスコアは、12、26、38又は52週間の治療後に少なくとも0.1、0.3、0.5、0.7、1.0、1.5、又は2.5点の低下によって指示されるとおり改善する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のGSGCスコアは、52週間の治療後に少なくとも0.5点の低下によって指示されるとおり改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアは、治療後に有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも0.3、0.5、0.7、1.0、1.5、2.5、又は5点の低下によって指示されるとおり有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアは、52週間の治療後に少なくとも1.0点の低下によって指示されるとおり有意に改善する。
【0026】
一部の実施形態において、本開示に係る二成分療法は、治療後に少なくとも1つの筋損傷マーカーのレベルを減少させる。一部の実施形態において、少なくとも1つの筋損傷マーカーは、クレアチンキナーゼ(CK)を含む。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のCKレベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%減少する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のCKレベルは、52週間の治療後に少なくとも20%減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のCKレベルは、治療後に有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のCKレベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のCKレベルは、52週間の治療後に少なくとも30%有意に減少する。
【0027】
一部の実施形態において、本開示に係る二成分療法は、治療後に少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーのレベルを減少させる。一部の実施形態において、少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーは、尿中ヘキソース四糖(Hex4)を含む。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、又は60%減少する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、52週間の治療後に少なくとも30%減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、治療後に有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、又は60%有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、52週間の治療後に少なくとも40%有意に減少する。
【0028】
一部の実施形態において、本開示に係る二成分療法は、(1)ベースライン、又は(2)アルグルコシダーゼアルファと薬理学的シャペロンのプラセボとを投与することを含む対照治療と比較すると、ERT歴のあるポンペ病の患者対象の1つ以上の疾患症状を改善する。
【0029】
一部の実施形態において、ERT歴のあるポンペ病の対象に対する二成分療法は、6MWTによって測定されるとおりの、対象の運動機能を改善する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象の6MWDは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、又は50メートル又は少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%増加する。一部の実施形態において、対象の6MWDは、52週間の治療後に少なくとも15メートル又は少なくとも5%増加する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の6MWDは、治療後に有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の6MWDは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10、12、14、15、16、18、20、30、40、又は50メートル有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の6MWDは、52週間の治療後に少なくとも15メートル有意に改善する。一部の実施形態において、対象は、300メートル未満のベースライン6MWDを有する。一部の実施形態において、対象は、300メートル以上のベースライン6MWDを有する。
【0030】
一部の実施形態において、ERT歴のあるポンペ病の対象に対する二成分療法は、FVCテストによって測定されるとおりの、対象の肺機能を改善する。一部の実施形態において、12、26、38、又は52週間の治療後に、対象のパーセント対予測値FVCは、ベースラインと比較すると少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、1%、2%、3%、4%、又は5%増加する。一部の実施形態において、52週間の治療後に、対象のパーセント対予測値FVCは、ベースラインと比較すると少なくとも0.1%増加する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCは、治療後に有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、8%、又は10%有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCは、52週間の治療後に少なくとも4%有意に改善する。一部の実施形態において、対象は、55%未満のベースラインFVCを有する。一部の実施形態において、対象は、55%以上のベースラインFVCを有する。
【0031】
一部の実施形態において、ERT歴のあるポンペ病の対象に対する二成分療法は、GSGCテストによって測定されるとおりの、対象の運動機能を改善する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のGSGCスコアは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも0.1、0.3、0.5、0.7、1.0、1.5、又は2.5点の低下によって指示されるとおり改善する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のGSGCスコアは、52週間の治療後に少なくとも0.5点の低下によって指示されるとおり改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアは、治療後に有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも0.3、0.5、0.7、1.0、1.5、2.5、又は5点の低下によって指示されるとおり有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアは、52週間の治療後に少なくとも1.0点の低下によって指示されるとおり有意に改善する。
【0032】
一部の実施形態において、ERT歴のあるポンペ病の対象に対する二成分療法は、治療後に少なくとも1つの筋損傷マーカーのレベルを減少させる。一部の実施形態において、少なくとも1つの筋損傷マーカーは、CKを含む。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のCKレベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%減少する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のCKレベルは、52週間の治療後に少なくとも15%減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のCKレベルは、治療後に有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のCKレベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のCKレベルは、52週間の治療後に少なくとも30%有意に減少する。
【0033】
一部の実施形態において、ERT歴のあるポンペ病の対象に対する二成分療法は、治療後に少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーのレベルを減少させる。一部の実施形態において、少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーは、尿中Hex4を含む。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、又は60%減少する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、52週間の治療後に少なくとも25%減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、治療後に有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、又は60%有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、52週間の治療後に少なくとも40%有意に減少する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A】非リン酸化高マンノース型N-グリカン、モノ-M6P N-グリカン、及びビス-M6P N-グリカンを示す。各四角がN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を表し、各丸がマンノースを表し、及び各Pがリン酸を表す。
図1B】M6P基の化学構造を示す。
図2A】M6Pを担持するN-グリカン類によってrhGAAを標的組織(例えば、ポンペ病の対象の筋組織)に向ける生産的ターゲティングを説明する。
図2B】非標的組織(例えば、肝臓及び脾臓)への又は非M6P N-グリカン類が非標的組織に結合することによる非生産的薬物クリアランスを説明する。
図3】組換えリソソームタンパク質の例示的な製造、捕捉及び精製工程の概略図である。
図4】rhGAAをコードするDNAによるCHO細胞の形質転換用DNAコンストラクトを示す。
図5】陰イオン交換(AEX)カラムへの捕捉あり(実施形態2)及び捕捉なし(実施形態1)でのATB200 rhGAAのCIMPRアフィニティークロマトグラフィーの結果を示すグラフである。
図6A図6A図6Hは、2つの異なるLC-MS/MS分析技法を用いた、ATB200 rhGAAの部位特異的N-グリコシル化分析の結果を示す。図6Aは、ATB200についての7つの潜在的なN-グリコシル化部位の部位占有率を示す。
図6B】ATB200についての第1の潜在的なN-グリコシル化部位のN-グリコシル化プロファイルの2つの分析を示す。
図6C】ATB200についての第2の潜在的なN-グリコシル化部位のN-グリコシル化プロファイルの2つの分析を示す。
図6D】ATB200についての第3の潜在的なN-グリコシル化部位のN-グリコシル化プロファイルの2つの分析を示す。
図6E】ATB200についての第4の潜在的なN-グリコシル化部位のN-グリコシル化プロファイルの2つの分析を示す。
図6F】ATB200についての第5の潜在的なN-グリコシル化部位のN-グリコシル化プロファイルの2つの分析を示す。
図6G】ATB200についての第6の潜在的なN-グリコシル化部位のN-グリコシル化プロファイルの2つの分析を示す。
図6H】第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の潜在的なN-グリコシル化部位についてのモノリン酸化種及びビスリン酸化種の相対的パーセントを要約する。
図7】LUMIZYME(登録商標)(細い線、左に溶出)及びATB200(太い線、右に溶出)のPolywax溶出プロファイルを示すグラフである。
図8】LUMIZYME(登録商標)のN-グリカン構造を、BP-rhGAA、ATB200-1及びATB200-2として識別されるATB200 rhGAAの3つの異なる製剤と比較した要約を示す表である。
図9A】LUMIZYME(登録商標)のCIMPRアフィニティークロマトグラフィーの結果を示すグラフである。
図9B】MYOZYME(登録商標)のCIMPRアフィニティークロマトグラフィーの結果を示すグラフである。
図10A】CIMPR結合親和性についてATB200 rhGAA(左の線)をLUMIZYME(登録商標)(右の線)と比較するグラフである。
図10B】ビス-M6P含量についてLUMIZYME(登録商標)とATB200 rhGAAとを比較する表である。
図11A】様々なGAA濃度での正常な線維芽細胞内部におけるATB200 rhGAA活性(左の線)をLUMIZYME(登録商標)rhGAA活性(右の線)と比較するグラフである。
図11B】様々なGAA濃度でのポンペ病を有する対象からの線維芽細胞内部におけるATB200 rhGAA活性(左の線)をLUMIZYME(登録商標)rhGAA活性(右の線)と比較する表である。
図11C】正常な対象及びポンペ病の対象からの線維芽細胞のKuptakeを比較する表である。
図12】SYPROオレンジを使用した熱安定性アッセイにおいて、タンパク質が変性すると色素の蛍光が増加することに伴い判定した、酸性又は中性pH緩衝液中でのATB200の安定性を図示する。
図13】アミログルコシダーゼ消化を用いて決定した、WTマウス又は媒体、アルグルコシダーゼアルファ、若しくはATB200/AT2221で治療したGaa KOマウスの組織中グリコーゲン含量を示す。バーは、7匹のマウス/群の平均値±SEMを表す。p<0.05、一元配置ANOVA分析下でのダネットの方法を用いた多重比較におけるアルグルコシダーゼアルファとの比較。
図14】媒体、アルグルコシダーゼアルファ、若しくはATB200/AT2221で治療したGaa KOマウス又はWTマウスの筋繊維におけるLAMP1陽性小胞を図示する。画像は外側広筋から撮ったものであり、各群7匹のマウスの代表的な画像であった。倍率=200倍(挿入図は1,000倍)。
図15A】媒体、アルグルコシダーゼアルファ、若しくはATB200/AT2221で治療したGaa KOマウス又はWTマウスの筋繊維におけるLC3陽性凝集体を示す。画像は外側広筋から撮ったものであり、各群7匹のマウスの代表的な画像であった。倍率=400倍。
図15B】LC3 IIタンパク質のウエスタンブロット分析を示す。各レーンに合計30mgのタンパク質をロードした。
図16】媒体、アルグルコシダーゼアルファ、若しくはATB200/AT2221で治療したGaa KOマウス又はWTマウスの筋繊維におけるジスフェリン発現を示す。画像は外側広筋から撮ったものであり、各群7匹のマウスの代表的な画像であった。倍率=200倍。
図17】媒体、アルグルコシダーゼアルファ、又はATB200で治療したGaa KOマウスの白色腓腹筋から単離した単一の繊維におけるLAMP1(緑色)(例えば、「B」を参照)及びLC3(赤色)(例えば、「A」を参照)の共免疫蛍光染色を図示する。「C」は、オートファジー残屑が除去され、肥大したリソソームが存在しないことを図示する。各動物から最低でも30本の繊維を調べた。
図18】ATB200単独と比較したときの、それぞれ、17μMのAT2221、及び170μM AT2221によるATB200の安定化を図示する。
図19A図19A図19Hは、プロテアーゼ消化したATB200のLC-MS/MS分析を用いた、第7の潜在的なN-グリコシル化部位についてのN-グリコシル化プロファイルを含むATB200 rhGAAの部位特異的N-グリコシル化分析の結果を示す。図19A図19Hは、異なる規模で作製した10ロットのATB200の平均データを提供する。図19Aは、ATB200についての7つの潜在的なN-グリコシル化部位の平均部位占有率を示す。N-グリコシル化部位は、配列番号1に従い提供される。CV=変動係数。
図19B図19B図19Hは、ATB200についての7つ全ての潜在的なN-グリコシル化部位の部位特異的N-グリコシル化分析を示し、部位の番号は配列番号5に従い提供される。バーは、分析した10ロットのATB200について特定のN-グリカン基と同定されたN-グリカン種の割合の最大値及び最小値を表す。図19Bは、ATB200についての第1の潜在的なN-グリコシル化部位のN-グリコシル化プロファイルを示す。
図19C】ATB200についての第2の潜在的なN-グリコシル化部位のN-グリコシル化プロファイルを示す。
図19D】ATB200についての第3の潜在的なN-グリコシル化部位のN-グリコシル化プロファイルを示す。
図19E】ATB200についての第4の潜在的なN-グリコシル化部位のN-グリコシル化プロファイルを示す。
図19F】ATB200についての第5の潜在的なN-グリコシル化部位のN-グリコシル化プロファイルを示す。
図19G】ATB200についての第6の潜在的なN-グリコシル化部位のN-グリコシル化プロファイルを示す。
図19H】ATB200についての第7の潜在的なN-グリコシル化部位のN-グリコシル化プロファイルを示す。
図20A図20A図20Bは、図19A図19Hにもまた示されるとおりのATB200のN-グリコシル化プロファイルを更に特徴付け、要約する。図20Aは、ATB200の2-アントラニル酸(2-AA)グリカンマッピング及びLC/MS-MS分析を示し、ATB200に同定されたN-グリカン種を全蛍光に対するパーセンテージとして要約する。2-AAグリカンマッピング及びLC-MS/MS分析のデータは表5にも図示する。
図20B】ATB200の7つ全ての潜在的なN-グリコシル化部位についての、平均部位占有率並びに全リン酸化、モノリン酸化、ビスリン酸化、及びシアル化を含めた平均N-グリカンプロファイルを要約する。ND=検出せず。
図21】ATB200-03試験デザインの概略図を示す。
図22】ATB200-03試験に参加した122例の対象のベースライン6分間歩行距離(6MWD)及び座位努力肺活量(FVC)の特徴を示す。AT-GAA群:ATB200/AT2221治療を受けた対象;アルグルコシダーゼアルファ群:アルグルコシダーゼアルファ/プラセボ治療を受けた対象。
図23A】全集団(n=122)についての6MWD及びFVCデータを図示し、ベースライン、52週目におけるベースラインからの変化(「CFBL」)、差、及びP値を示す。AT-GAA群:ATB200/AT2221治療を受けた対象;アルグルコシダーゼアルファ群:アルグルコシダーゼアルファ/プラセボ治療を受けた対象。
図23B】全集団についてのベースラインからの経時的変化を示す6MWD及びFVCデータを図示する(n=122)。シパグルコシダーゼアルファ/ミグルスタット群:ATB200/AT2221治療を受けた対象;アルグルコシダーゼアルファ/プラセボ:アルグルコシダーゼアルファ/プラセボ治療を受けた対象。
図24】ERT歴のある集団(n=95)についての6MWD及びFVCデータを図示し、ベースライン、52週目におけるCFBL、差、及びP値を示す。AT-GAA群:ATB200/AT2221治療を受けた対象;アルグルコシダーゼアルファ群:アルグルコシダーゼアルファ/プラセボ治療を受けた対象。
図25】ERT歴のある集団(n=95)についての12週目、26週目、及び38週目、及び52週目における6MWD及びFVCのベースラインに対する相対的変化を図示する。
図26A】ERT未経験集団(n=27)についての6MWD及びFVCデータを図示し、ベースライン、52週目におけるCFBL、差、及びP値を示す。AT-GAA群:ATB200/AT2221治療を受けた対象;アルグルコシダーゼアルファ群:アルグルコシダーゼアルファ/プラセボ治療を受けた対象。
図26B】ERT未経験集団(n=27)についての6MWD及びFVCデータを図示し、ベースラインからの経時的変化を示す。シパグルコシダーゼアルファ/ミグルスタット群:ATB200/AT2221治療を受けた対象;アルグルコシダーゼアルファ/プラセボ:アルグルコシダーゼアルファ/プラセボ治療を受けた対象。
図27】全集団及びERT歴のある集団についての鍵となる副次的評価項目及びバイオマーカーに関するベースライン特性を図示する。AT-GAA群:ATB200/AT2221治療を受けた対象;アルグルコシダーゼアルファ群:アルグルコシダーゼアルファ/プラセボ治療を受けた対象。
図28】全集団(左)及びERT歴のある集団(右)についての12週目、26週目、38週目、及び52週目における下肢徒手筋力テスト(MMT)のベースラインに対する相対的変化を図示する。
図29】全集団(左)及びERT歴のある集団(右)についての12週目、26週目、38週目、及び52週目における歩行・階段・ガワーズ・椅子(GSGC)のベースラインに対する相対的変化を図示する。シパグルコシダーゼアルファ/ミグルスタット群:ATB200/AT2221治療を受けた対象;アルグルコシダーゼアルファ/プラセボ:アルグルコシダーゼアルファ/プラセボ治療を受けた対象。
図30】全集団(左)及びERT歴のある集団(右)についての12週目、26週目、38週目、及び52週目における身体機能のベースラインに対する相対的変化に関する患者報告アウトカム測定情報システム(PROMIS)を図示する。
図31】全集団(左)及びERT歴のある集団(右)についての12週目、26週目、38週目、及び52週目における疲労のベースラインに対する相対的変化に関するPROMISを図示する。
図32】全集団(左)及びERT歴のある集団(右)についての12週目、26週目、38週目、及び52週目におけるクレアチンキナーゼ(CK)バイオマーカーのベースラインに対する相対的変化を図示する。
図33】全集団(左)及びERT歴のある集団(右)についての12週目、26週目、38週目、及び52週目における尿中ヘキソース四糖(Hex4)バイオマーカーのベースラインに対する相対的変化を図示する。
図34】全集団(左)及びERT歴のある集団(右)についての主要、副次的及びバイオマーカー評価項目ヒートマップを示す。AT-GAA群:ATB200/AT2221治療を受けた対象;アルグルコシダーゼアルファ群:アルグルコシダーゼアルファ/プラセボ治療を受けた対象。
図35】ATB200-03試験の安全性データを要約する。AT-GAA群:ATB200/AT2221治療を受けた対象;アルグルコシダーゼアルファ群:アルグルコシダーゼアルファ/プラセボ治療を受けた対象。TEAE:治療中に発生した有害事象;IAR:注入関連反応。
図36】ATB200-03試験の結果を要約する。
図37】ATB200-03試験の試験目的及び統計的方法を説明する。
図38】ATB200-03試験の主要評価項目及び副次的評価項目を説明する。
図39】ATB200-03試験の患者の配分を要約する。
図40】ATB200-03試験のベースライン人口統計学的特性を要約する。
図41A】ATB200-03試験における全集団(n=122)のベースライン状態別の6MWD及びFVCのベースラインからの変化に関するサブグループ分析を示す。
図41B】ATB200-03試験におけるERT歴のある患者(n=95)のベースライン状態別の6MWD及びFVCのベースラインからの変化に関するサブグループ分析を示す。
図42】ATB200-03試験の任意の群で10%以上の患者において治療中に発生した有害事象(TEAE)の一覧を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本開示の幾つかの例示的実施形態を説明する前に、本開示は以下の説明に示される構造又は方法ステップの詳細に限定されないことが理解されるべきである。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な方法での実践又は実行が可能である。
【0036】
本明細書には、ポンペ病の治療方法であって、個体に組換えヒトα-グルコシダーゼ(rhGAA)と薬理学的シャペロンとを投与することを含む方法が提供される。rhGAAは、従来のrhGAA製剤と比較してマンノース-6-リン酸担持N-グリカン類の総含量が高く、優れた筋細胞への取込み及び続くリソソームへの送達を呈し、及びそれをポンペ病を有する対象の酵素補充療法に特に有効なものにする他の薬物動態特性を備えている。それに応じて、本開示に係る二成分療法は、従来の療法と比較して、ポンペ病に罹患している対象の疾患を治療し、及びその進行を好転させるのに優れた有効性を呈する。
【0037】
I.定義
本明細書で使用される用語は、本開示の文脈の範囲内で、及び各用語が使用される具体的な文脈において、概して当該技術分野におけるその通常の意味を有する。ある種の用語については、本開示の組成物及び方法、並びにそれらをどのように作成し及び使用すればよいかを説明する中で実施者に追加的な手引きを提供するために、以下で、又は本明細書の他の部分で考察する。冠詞「ある(a)」及び「ある(an)」は、その冠詞の文法上の指示対象の1つ又は2つ以上(即ち、少なくとも1つ)を指す。用語「又は」は、文脈上特に明らかに指示されない限り、用語「及び/又は」を意味し、及びそれと同義的に使用される。本願において、特に具体的に明記されない限り、単数形の使用は複数形を含む。更には、用語「~を含む(including)」並びに他の形、例えば、「~を含む(includes)」及び「~に含まれる」などの使用は、限定するものではない。本明細書に記載される任意の範囲には、それらの端点及び端点の間にある全ての値が含まれることが理解されるであろう。本明細書では、明示的な文言又は必要な含意のために文脈上特に必要となる場合を除き、語句「~を含む(comprises)」、又は変化形、例えば「~を含んでいる(comprising)」などは包括的な意味で使用され、即ち、示される特徴の存在を指定するが、本開示の様々な実施形態における更なる特徴の存在又は追加を除外しない。
【0038】
用語「GAA」は、リソソームグリコーゲンのα-1,4-及びα-1,6-グリコシド結合の加水分解を触媒するヒト酸性α-グルコシダーゼ(GAA)酵素並びに酵素活性を発揮するGAAアミノ酸配列の挿入、関係(relational)、又は置換変異体及び長鎖GAA配列の断片を指す。ヒト酸性α-グルコシダーゼはGAA遺伝子(国立生物工学情報センター(National Centre for Biotechnology Information:NCBI)遺伝子ID 2548)によってコードされ、この遺伝子は、17番染色体の長腕(位置17q25.2~q25.3)にマッピングされているものである。GAAの例示的アミノ酸配列は、NP 000143.2である(これは参照により援用される)。本開示はまた、NP 000143.2のアミノ酸配列をコードするDNA配列も包含する。現在、ヒトGAA遺伝子には500個を超える突然変異が同定されており、その多くがポンペ病に関連している。酸性α-グルコシダーゼ酵素の誤った折り畳み又は誤ったプロセシングを生じさせる突然変異としては、T1064C(Leu355Pro)及びC2104T(Arg702Cys)が挙げられる。加えて、この酵素の成熟及びプロセシングに影響を及ぼすGAA突然変異として、Leu405Pro及びMet519Thrが挙げられる。酸性α-グルコシダーゼタンパク質の活性には、アミノ酸残基516~521にある保存されているヘキサペプチドWIDMNE(配列番号7)が必要である。本明細書で使用されるとき、略語「GAA」は、ヒト酸性α-グルコシダーゼ酵素を指すことが意図され、一方で斜体で書かれる略語「GAA」は、ヒト酸性α-グルコシダーゼ酵素をコードするヒト遺伝子を指すことが意図される。斜体で書かれる略語「Gaa」は、限定はされないが、ラット又はマウス遺伝子を含めた非ヒト酸性α-グルコシダーゼ酵素をコードする非ヒト遺伝子を指すことが意図され、略語「Gaa」は、非ヒト酸性α-グルコシダーゼ酵素を指すことが意図される。
【0039】
用語「rhGAA」は、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ酵素を指すことが意図され、内因性GAAを合成の又は組換え産生されるGAA(例えば、GAAをコードするDNAで形質転換されたCHO細胞又は他の宿主細胞から産生されるGAA)と区別するために使用される。用語「rhGAA」は、個別のrhGAA分子の集団を包含する。rhGAA分子集団の特性は、本明細書に提供される。用語「従来のrhGAA製剤」は、LUMIZYME(登録商標)又はMYOZYME(登録商標)など、アルグルコシダーゼアルファを含有する製剤を指すことが意図される。
【0040】
用語「遺伝子修飾された」又は「組換えの」は、遺伝子産物をコードするコード配列を、そのコード配列の発現を制御する調節エレメントと共に含む核酸の導入後に、rhGAAなど、特定の遺伝子産物を発現するCHO細胞などの細胞を指す。核酸の導入は、遺伝子ターゲティング及び相同組換えを含め、当該技術分野において公知の任意の方法により達成されてよい。本明細書で使用されるとき、この用語にはまた、内因性遺伝子又はかかる細胞が通常は発現しない遺伝子産物を発現し又は過剰発現するように、例えば、遺伝子活性化技術によって操作されている細胞も含まれる。
【0041】
本明細書で使用されるとき、用語「アルグルコシダーゼアルファ」は、[199-アルギニン,223-ヒスチジン]プレプロ-α-グルコシダーゼ(ヒト);ケミカルアブストラクツ登録番号420794-05-0として識別される組換えヒト酸性α-グルコシダーゼを指すことが意図される。アルグルコシダーゼアルファは、製剤LUMIZYME(登録商標)及びMYOZYME(登録商標)として、Genzymeによる米国での販売が承認されている。
【0042】
本明細書で使用されるとき、用語「ATB200」は、米国特許第10,961,522号明細書(この開示は本明細書において参照により援用される)に記載されている組換えヒト酸性α-グルコシダーゼを指すことが意図される。ATB200は、「シパグルコシダーゼアルファ」とも称される。
【0043】
本明細書で使用されるとき、用語「グリカン」は、タンパク質又はポリペプチド上のアミノ酸残基に共有結合的に結合したオリゴ糖を指すことが意図される。本明細書で使用されるとき、用語「N-グリカン」又は「N-結合型グリカン」は、タンパク質又はポリペプチド上のアスパラギン残基に、そのアスパラギン残基の窒素原子との共有結合性の結合を介して結び付いている多糖鎖を指すことが意図される。一部の実施形態において、rhGAAに結び付いているN-グリカン単位は、Thermo Scientific(商標)Orbitrap Velos Pro(商標)質量分析計、Thermo Scientific(商標)Orbitrap Fusion(商標)Lumos Tribid(商標)質量分析計、又はWaters Xevo(登録商標)G2-XS QTof質量分析計などの機器を利用する液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC-MS/MS)により決定される。
【0044】
本明細書で使用されるとき、努力肺活量、又は「FVC」は、対象が可能な限り深く息を吸い込んだ後に対象の肺から強制的に呼出させることのできる空気の量である。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「6分間歩行テスト」(6MWT)は、個体が硬い平坦な表面を合計6分間で歩くことのできる距離を測るテストである。このテストは、個体を6分間で可能な限り遠くまで歩かせることによって行われる。
【0046】
本明細書で使用されるとき、「10メートル歩行テスト」(10MWT)は、ウォーキングシューズを履いた個体が平坦な表面を10メートル歩くのにかかる時間を測るテストである。
【0047】
本明細書で使用されるとき、化合物ミグルスタット、別名N-ブチル-1-デオキシノジリマイシン又はNB-DNJ又は(2R,3R,4R,5S)-1-ブチル-2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4,5-トリオールは、以下の化学式を有する化合物である:
【化1】
【0048】
ミグルスタットの一つの製剤は、1型ゴーシェ病に対する単剤療法として商標名ZAVESCA(登録商標)で市販されている。一部の実施形態において、ミグルスタットは、AT2221と称される。
【0049】
以下で考察するとおり、本開示では、ミグルスタットの薬学的に許容可能な塩もまた使用することができる。ミグルスタットの塩が使用されるとき、塩の投薬量は、患者が受け取るミグルスタットの用量が、ミグルスタット遊離塩基を使用したならば受け取ったであろう量と等価になるように調整されることになる。
【0050】
本明細書で使用されるとき、化合物ドゥボグルスタット、別名1-デオキシノジリマイシン又はDNJ又は(2R,3R,4R,5S)-2-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-3,4,5-トリオールは、以下の化学式を有する化合物である:
【化2】
【0051】
本明細書で使用されるとき、用語「薬理学的シャペロン」又は時には単純に用語「シャペロン」は、酸性α-グルコシダーゼに特異的に結合する分子であって、以下の効果のうちの1つ以上を有する分子を指すことが意図される:
・タンパク質の安定した分子コンホメーションの形成を増強する;
・タンパク質の小胞体から別の細胞部位、好ましくは天然の細胞部位への適切な輸送を増強し、それによってタンパク質の小胞体関連分解を防止する;
・コンホメーションが不安定な又は誤って折り畳まれたタンパク質の凝集を防止する;
・タンパク質の少なくとも一部の野生型機能、安定性、及び/又は活性を回復させる、及び/又は増強する;及び/又は
・酸性α-グルコシダーゼを内包する細胞の表現型又は機能を改善する。
【0052】
このように、酸性α-グルコシダーゼの薬理学的シャペロンは、酸性α-グルコシダーゼに結合する結果、酸性α-グルコシダーゼの適切な折り畳み、輸送、非凝集、及び活性をもたらす分子である。少なくとも1つの実施形態において、薬理学的シャペロンは、ミグルスタットである。酸性α-グルコシダーゼの薬理学的シャペロンの別の非限定的な例は、ドゥボグルスタットである。
【0053】
本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容可能」は、生理的に忍容可能な、且つヒトへの投与時に典型的には有害な反応を生じない分子実体及び組成物を指すことが意図される。好ましくは、本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容可能」は、動物、より詳細にはヒトでの使用が連邦政府若しくは州政府の規制当局によって承認されていること、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方に収載されていることを意味する。本明細書で使用されるとき、用語「担体」は、化合物と共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又は媒体を指すことが意図される。好適な医薬担体は当該技術分野において公知であり、少なくとも1つの実施形態では、E.W.Martin,18th Edition又は他の版による「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0054】
用語「薬学的に許容可能な塩」は、本明細書で使用されるとき、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応などを伴わない、ヒト及び下等動物の組織と接触した使用に好適な、合理的なリスク対効果比に相応の、概して水溶性又は油溶性又は分散性の、且つその使用目的に有効な塩を意味することが意図される。この用語には、薬学的に許容可能な酸付加塩及び薬学的に許容可能な塩基付加塩が含まれる。好適な塩の一覧については、例えば、S.M.Berge et al.,J.Pharm.Sci.,1977,66,pp.1-19(本明細書において参照により援用される)が参照される。用語「薬学的に許容可能な酸付加塩」は、本明細書で使用されるとき、遊離塩基の生物学的有効性及び特性を保持している、且つ生物学的に又は他の点で望ましくないものでない、無機酸と形成される塩を意味することが意図される。用語「薬学的に許容可能な塩基付加塩」は、本明細書で使用されるとき、遊離酸の生物学的有効性及び特性を保持している、且つ生物学的に又は他の点で望ましくないものでない、無機塩基と形成される塩を意味することが意図される。
【0055】
本明細書で使用されるとき、用語「緩衝液」は、pHの変化を防ぐ助けとなる弱酸及びその共役塩基又は弱塩基及びその共役酸を含有する溶液を指す。
【0056】
本明細書で使用されるとき、用語「治療有効用量」及び「有効量」は、対象に治療反応を生じさせるのに十分な酸性α-グルコシダーゼの量及び/又はミグルスタットの量及び/又はこれらの二成分療法の量を指すことが意図される。
【0057】
治療反応にはまた、グリコーゲン蓄積、リソソーム増殖、及びオートファジー領域の形成など、分子反応も含まれてよい。治療反応は、本明細書に記載されるrhGAAによる治療の前及び治療後の筋生検の生理反応及び分子反応を比較することにより判定し得る。例えば、生検試料に存在するグリコーゲンの量を、治療反応を決定する際のマーカーとして使用することができる。別の例としては、LAMP-1、LC3、及びジスフェリンなどのバイオマーカーが挙げられ、これらはリソソーム貯蔵不全の指標として使用することができる。例えば、本明細書に記載されるrhGAAによる治療の前及び治療後に採取した筋生検を、これらのバイオマーカーのうちの1つを認識する抗体で染色しもよい。治療反応にはまた、疲労の低下又は他の患者報告アウトカム(例えば、日常生活動作、ウェルビーイング等)の改善も含まれ得る。
【0058】
本明細書で使用されるとき、用語「酵素補充療法」又は「ERT」は、非天然の精製した酵素の、かかる酵素が欠損している個体への導入を指すことが意図される。投与されるタンパク質は、天然の供給源から、又は組換え発現によって入手することができる。この用語はまた、他の場合には精製酵素の投与が必要な、又はそれから利益を受ける個体における精製酵素の導入も指す。少なくとも1つの実施形態において、かかる個体は酵素の不足を被っている。導入される酵素は、インビトロで作製される精製された組換え酵素であるか、又は、例えば、胎盤若しくは動物の乳汁など、単離された組織若しくは体液から、又は植物から精製されるタンパク質であってもよい。
【0059】
本明細書で使用されるとき、用語「二成分療法」は、2つ以上の個別の療法が同時に又は逐次的に投与される任意の療法を指すことが意図される。一部の実施形態において、二成分療法の結果は、各療法が個別に実施されたときのその効果と比較すると増強される。増強には、様々な療法の効果についての、単独で実施したときのそれらの療法によって実現する結果と比較して有利な結果をもたらし得る何らかの改善が含まれ得る。効果又は結果の増強には、増強された効果が、それ単独で実施したときの各療法の相加効果よりも大きくなる、相乗的増強;増強された効果が、それ単独で実施したときの各療法の相加効果と実質的に等しい、相加的増強;又は増強された効果が、それ単独で実施したときの各療法の相加効果より低いが、それ単独で実施したときの各療法の効果よりはなおも良好である、相加未満の効果が含まれ得る。増強された効果は、当該技術分野において治療有効性又はアウトカムを測定できることが公知の任意の手段により測定し得る。
【0060】
「ポンペ病」は、酸性アルファグルコシダーゼ(GAA)活性の欠損によりリソソームグリコーゲン代謝が損なわれることを特徴とする常染色体劣性LSDを指す。この酵素欠損はリソソームグリコーゲン蓄積につながり、進行性の骨格筋脱力、心機能低下、呼吸不全、及び/又は疾患末期にはCNS機能障害をもたらす。GAA遺伝子の遺伝子突然変異が、発現低下をもたらすか、又は安定性、及び/又は生物学的活性が変化している突然変異形態の酵素を生じさせるかのいずれかであり、最終的に疾患につながる(概要として、Hirschhorn R,1995,「II型糖原病:酸性a-グルコシダーゼ(酸性マルターゼ)欠損、遺伝性疾患の代謝及び分子基盤(Glycogen Storage Disease Type II:Acid a-Glucosidase(Acid Maltase)Deficiency,The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease)」,Scriver et al.,eds.,McGraw-Hill,New York,7th ed.,pages 2443-2464を参照のこと)。ポンペ病の3つの認識されている臨床型(乳児型、若年型、及び成人型)は、残留α-グルコシダーゼ活性のレベルと相関する(Reuser A J et al.,1995,「糖原病II型(酸性マルターゼ欠損症)(Glycogenosis Type II(Acid Maltase Deficiency))」,Muscle & Nerve Supplement 3,S61-S69)。乳児型ポンペ病(I型又はA型)は、最も多く見られ、且つ最も重篤であり、生後2年以内の発育障害、全身性筋緊張低下、心肥大、及び心肺不全を特徴とする。若年型ポンペ病(II型又はB型)は中間的な重症度であり、筋肉症状が優勢で、心肥大がないことを特徴とする。若年型ポンペ病の個体は、通常、20歳になる前に呼吸不全が原因で死亡する。成人型ポンペ病(III型又はC型)は、10代又は遅ければ60代で緩徐進行性ミオパチーとして見られることが多い(Felicia K J et al.,1995,「成人発症型酸性マルターゼ欠損症の臨床的ばらつき:罹患同胞の報告及び文献レビュー(Clinical Variability in Adult-Onset Acid Maltase Deficiency:Report of Affected Sibs and Review of the Literature)」,Medicine 74,131-135)。ポンペ病では、α-グルコシダーゼが、グリコシル化、リン酸化、及びタンパク質分解プロセシングによる広範な翻訳後修飾を受けることが示されている。最適なグリコーゲン触媒作用には、リソソームでのタンパク質分解による110キロダルトン(kDa)前駆体から76及び70KDa成熟形態への変換が必要となる。本明細書で使用されるとき、用語「ポンペ病」は、あらゆる種類のポンペ病を指す。本願に開示される製剤化及び投与レジメンは、例えば、I型、II型又はIII型ポンペ病の治療に使用し得る。
【0061】
本明細書で使用されるとき、「有意」は、統計的有意性を指す。この用語は、2つの治療群間に差があるという統計的証拠を指す。これは、帰無仮説が実際に真実であるときに帰無仮説を棄却するという判断を下す確率として定義することができる。この判断は、多くの場合に比較についての好適な統計分析から導き出されるp値<0.05を用いて行われる。例えば、実施例9を参照のこと。
【0062】
「対象」又は「患者」は、好ましくはヒトであるが、グリコーゲンの蓄積が関わる障害を有する他の哺乳類及び非ヒト動物もまた治療され得る。対象は、ポンペ病又は他のグリコーゲン貯蔵若しくは蓄積障害のある胎児、新生児、小児、若年、又は成人であり得る。治療を受ける個体の一例は、GSD-II(例えば、乳児型GSD-II、若年型GSD-II、又は成人発症型GSD-II)を有する個体(胎児、新生児、小児、若年、青年、又は成人ヒト)である。この個体は、残留GAA活性を有することもあり、又は測定可能な活性を有しないこともある。例えば、GSD-IIを有する個体は、正常GAA活性の約1%未満のGAA活性(乳児型GSD-II)、正常GAA活性の約1~10%のGAA活性(若年型GSD-II)、又は正常GAA活性の約10~40%のGAA活性(成人型GSD-II)を有し得る。一部の実施形態において、対象又は患者は、過去に酵素補充療法を受けたことのあるポンペ病患者を指す、「ERT歴のある」又は「ERT変更」患者である。一部の実施形態において、「ERT歴のある」又は「ERT変更」患者は、24ヵ月以上にわたるアルグルコシダーゼアルファの投与を受けたことがあるか、又は現在受けているポンペ病患者である。一部の実施形態において、対象又は患者は、過去に酵素補充療法を受けたことがないポンペ病患者を指す、「ERT未経験」患者である。特定の実施形態において、対象又は患者は、歩行可能(例えば、歩行可能なERT変更患者又は歩行可能なERT未経験患者)である。特定の実施形態において、対象又は患者は、歩行不能(例えば、歩行不能のERT変更患者)である。歩行可能又は歩行不能な状態は、6分間歩行テスト(6MWT)により決定されてもよい。一部の実施形態において、歩行可能な患者とは、6MWTで少なくとも200メートル歩くことが可能なポンペ病患者である。一部の実施形態において、歩行不能の患者とは、補助がないと歩くことができない又は車椅子に拘束されているポンペ病患者である。
【0063】
用語「治療する」及び「治療」は、本明細書で使用されるとき、疾患に関連する1つ以上の症状の向上、疾患の1つ以上の症状の発生の遅延、及び/又は疾患の1つ以上の症状の重症度又は頻度の軽減を指す。例えば、治療とは、心臓状態の改善(例えば、拡張終期及び/又は収縮終期容積の増加、又はGSD-IIに典型的に見られる進行性心筋症の低減若しくは向上)又は肺機能の改善(例えば、啼泣時肺活量のベースライン量と比べた増加、及び/又は啼泣時の酸素不飽和化の正常化);神経発達及び/又は運動技能の改善(例えば、AIMSスコアの増加);疾患に罹患している個体の組織中のグリコーゲンレベルの低減;又はこれらの効果の任意の組み合わせを指し得る。好ましい一実施形態において、治療には、心臓状態の改善、特にGSD-II関連心筋症の低減が含まれる。
【0064】
用語「改善する」、「増加する」、及び「減少する」は、本明細書で使用されるとき、ベースライン測定値又は対照治療からの対応する値、例えば、同じ個体における本明細書に記載される治療の開始前の測定値、本明細書に記載される治療がない対照個体(又は複数の対照個体)における測定値、又は対照治療後の測定値などに対する相対的な値を指示する。対照個体とは、治療下の個体と同じ型(乳児型、若年児型、又は成人発症型のいずれか)のGSD-IIに罹患していて、治療下の個体とほぼ同じ年齢の(治療されている個体と1例又は複数の対照個体との疾患のステージが比較可能であることを確実にするため)個体である。一部の実施形態において、対照治療は、アルグルコシダーゼアルファと薬理学的シャペロンのプラセボとを投与することを含む(実施例9を参照)。
【0065】
本明細書で使用されるとき、用語「約」及び「近似的に」は、測定の性質又は精度を所与とした測定される分量に関する許容できる誤差の程度を指すことが意図される。例えば、誤差の程度は、当該技術分野において理解されているとおり、その測定について提供される有効桁数によって指示されてもよく、限定はされないが、測定について報告される最も正確な有効桁で±1の変動が含まれる。典型的な例示的誤差の程度は、所与の値又は値の範囲から20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、及びより好ましくは5%以内である。本明細書の中で与えられる数量は、特に明記しない限り近似値であり、つまり、明記されないときにも用語「約」又は「近似的に」を推測し得ることを意味する。
【0066】
本明細書に引用される参考文献、論文、刊行物、特許、特許公報、及び特許出願は全て、あらゆる目的から全体として参照により援用される。しかしながら、本明細書に引用されるいずれの参考文献、論文、刊行物、特許、特許公報、及び特許出願への言及も、それらが有効な先行技術を成す又は世界のどの国においても技術常識の一部を形成するということの承認でなく、又はいかなる形態の示唆でもなく、及びそのように解釈されてはならない。
【0067】
本明細書で使用される節の見出しは、編成を目的としているに過ぎず、記載されている主題を限定するものと解釈されてはならない。
【0068】
II.組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA)
一部の実施形態において、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA)は、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、又は配列番号6に示されるとおりのアミノ酸配列を有する酵素である。一部の実施形態において、rhGAAは、配列番号2に示されるとおりのヌクレオチド配列によってコードされる。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
一部の実施形態において、rhGAAは、米国特許第8,592,362号明細書に記載されるとおりの、配列番号1に示されるとおりのGAAアミノ酸配列を有し、GenBankアクセッション番号AHE24104.1(GI:568760974)を有する。一部の実施形態において、rhGAAは、GenBankアクセッション番号Y00839.1を有するmRNA配列である配列番号2にコードされるとおりのGAAアミノ酸配列を有する。一部の実施形態において、rhGAAは、配列番号3に示されるとおりのGAAアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、rhGAAは、配列番号4に示されるとおりのGAAアミノ酸配列を有し、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information:NCBI)アクセッション番号NP_000143.2又はUniProtKBアクセッション番号P10253を有する。
【0073】
一部の実施形態において、rhGAAは、最初は配列番号1又は配列番号4に示されるとおりの野生型GAAの完全長952アミノ酸配列を有するものとして発現し、このrhGAAが細胞内プロセシングを受けると、アミノ酸の一部、例えば、最初の56アミノ酸が除去される。それに応じて、宿主細胞から分泌されるrhGAAは、細胞内で最初に発現するrhGAAよりも短いアミノ酸配列を有し得る。一部の実施形態において、このより短いタンパク質は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有し、これは、配列番号1と比べると、シグナルペプチド及び前駆体ペプチドを含む最初の56アミノ酸が除去されていて、ひいては896アミノ酸を有するタンパク質となっている点のみが異なる。一部の実施形態において、このより短いタンパク質は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有し、これは、配列番号4と比べると、シグナルペプチド及び前駆体ペプチドを含む最初の56アミノ酸が除去されていて、ひいては896アミノ酸を有するタンパク質となっている点のみが異なる。配列番号1、配列番号4、配列番号5、又は配列番号6に記載されるアミノ酸配列に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個、又はそれ以上の欠失、置換及び/又は挿入を有するなど、アミノ酸の数に関する他の変形例もまた可能である。一部の実施形態において、rhGAA産物には、異なるアミノ酸長を有する組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ分子の混合物が含まれる。
【0074】
一部の実施形態において、rhGAAは、配列番号4又は配列番号6と少なくとも90%、95%、98%又は99%同一のアミノ酸配列を含む。2つの配列間の同一性の計算には、FASTA、又はGCG配列解析パッケージ(ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)、Madison、Wis.)の一部として利用可能なBLASTを含め、様々なアラインメントアルゴリズム及び/又はプログラムを使用してもよく、これらは、例えば、デフォルト設定で使用することができる。例えば、本明細書に記載される、及び好ましくは実質的に同じ機能を呈する特定のポリペプチドと少なくとも90%、95%、98%又は99%の同一性を有するポリペプチド、並びにかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが企図される。特に指示されない限り、類似性スコアは、BLOSUM62の使用に基づくことになる。BLASTPが使用されるとき、類似性パーセントはBLASTP正値スコアに基づき、配列同一性パーセントは、BLASTP同一性スコアに基づく。BLASTP「同一性」は、高スコア配列対中の同一である総残基の数及び割合を示す;及びBLASTP「正値」は、アラインメントスコアが正の値を有する、且つ互いに類似している残基の数及び割合を示す。本明細書に開示されるアミノ酸配列とこうした度合いの同一性又は類似性の又は任意の中間的な度合いの同一性又は類似性を有するアミノ酸配列が企図され、本開示に包含される。類似のポリペプチドのポリヌクレオチド配列は、遺伝子コードを用いて推論され、従来の手段により、詳細には、遺伝子コードを用いてそのアミノ酸配列を逆翻訳することによって入手し得る。
【0075】
一部の実施形態において、rhGAAは、タンパク質中の1つ以上のアミノ酸残基に翻訳後修飾及び/又は化学修飾を受ける。例えば、メチオニン及びトリプトファン残基は、酸化を受けることができる。別の例として、配列番号6のN末端グルタミンは、更に修飾されて、ピログルタミン酸を形成することができる。別の例として、アスパラギン残基はアスパラギン酸へのアミド分解を受けることができる。更に別の例として、アスパラギン酸残基は、イソアスパラギン酸への異性化を受けることができる。更に別の例として、タンパク質中の対を成さないシステイン残基が、遊離グルタチオン及び/又はシステインとジスルフィド結合を形成することができる。それに応じて、一部の実施形態において、酵素は、最初は、配列番号1、配列番号3、配列番号4、又は配列番号5に示されるとおりのアミノ酸配列、又は配列番号2によってコードされるアミノ酸配列を有するものとして発現し、その酵素がこれらの翻訳後修飾及び/又は化学修飾の1つ以上を受ける。かかる修飾もまた、本開示の範囲内にある。
【0076】
III.rhGAAのN-結合型グリコシル化
単一のrhGAA分子上には、潜在的なN-結合型グリコシル化部位が7つある。これらの潜在的なグリコシル化部位は、配列番号6の以下の位置にある:N84、N177、N334、N414、N596、N826、及びN869。同様に、配列番号4の完全長アミノ酸配列について、これらの潜在的なグリコシル化部位は、以下の位置にある:N140、N233、N390、N470、N652、N882、及びN925。rhGAAの他の変異体も、アスパラギン残基の位置に応じて同様のグリコシル化部位を有し得る。概して、タンパク質アミノ酸配列中のAsn-X-Ser又はAsn-X-Thrの配列が潜在的なグリコシル化部位を指示し、但し、XがHis又はProであることはできないものとする。
【0077】
本明細書に記載されるrhGAA分子は、平均してそのN-グリカン上に1、2、3、又は4個のマンノース-6-リン酸(M6P)基を有し得る。例えば、rhGAA分子上の1個のN-グリカンのみがM6Pを担持していてもよく(モノリン酸化型又はモノ-M6P)、単一のN-グリカンが2個のM6P基を担持していてもよく(ビスリン酸化型又はビス-M6P)、又は同じrhGAA分子上の2個の異なるN-グリカンが、各々、単一のM6P基を担持していてもよい。一部の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA分子は、平均してrhGAA 1mol当たりそのN-グリカン上に3~4molのM6P基を有する。組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ分子はまた、M6P基を担持しないN-グリカンも有し得る。別の実施形態において、平均してrhGAAは、rhGAA 1mol当たり2.5molを超えるM6Pと、rhGAA 1mol当たり4molを超えるシアル酸とを含む。一部の実施形態において、平均してrhGAAは、rhGAA 1mol当たり約3~3.5molのM6Pを含む。一部の実施形態において、平均してrhGAAは、rhGAA 1mol当たり約4~5.4molのシアル酸を含む。平均してrhGAA上の全N-グリカンの少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10%、又は20%がモノ-M6P N-グリカンの形態であってもよく、例えば、全N-グリカンの約6.25%が単一のM6P基を持っていてもよく、及び平均して、rhGAA上の全N-グリカンの少なくとも約0.5、1、1.5、2.0、2.5、3.0%が、ビス-M6P N-グリカンの形態であり、及び平均して全rhGAAの25%未満が、CIMPRに結合するリン酸化N-グリカンを含有しない。一部の実施形態において、平均してrhGAA上の全N-グリカンの約10%~約14%がモノリン酸化されている。一部の実施形態において、平均してrhGAA上の全N-グリカンの約7%~約25%がビスリン酸化されている。一部の実施形態において、平均してrhGAAは、rhGAA 1mol当たり約1.3molのビス-M6Pを含む。
【0078】
本明細書に記載されるrhGAAは、平均してrhGAA 1mol当たり0.5~7.0molのM6P、又はrhGAA 1mol当たり0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、又は7.0molのM6Pを含めた、その任意の中間値若しくは部分的範囲を有し得る。rhGAAは、分画して、特定の画分を選択することによるか、又は異なる画分を選択的に組み合わせることにより、種々の平均モノ-M6P担持N-グリカン数又はビス-M6P担持N-グリカン数のrhGAA調製物を提供することができ、ひいては、標的組織のリソソームへのrhGAAターゲティングの更なるカスタマイズが可能となる。
【0079】
一部の実施形態において、rhGAA上のN-グリカンの最大60%が完全にシアル化されていてもよく、例えば、N-グリカンの最大10%、20%、30%、40%、50%又は60%が完全にシアル化されていてもよい。一部の実施形態において、rhGAA上のN-グリカンの50%以下が完全にシアル化されている。一部の実施形態において、全N-グリカンの4%~20%が完全にシアル化されている。他の実施形態において、rhGAA上のN-グリカンの5%、10%、20%又は30%以下が、シアル酸及び末端ガラクトース残基(Gal)を持っている。この範囲には、あらゆる中間値及び部分的範囲が含まれ、例えば、rhGAA上の全N-グリカンの7%~30%が、シアル酸及び末端ガラクトースを持っていてもよい。更に他の実施形態において、rhGAA上のN-グリカンの5%、10%、15%、16%、17%、18%、19%、又は20%以下が末端ガラクトースのみを有し、シアル酸は含有しない。この範囲には、あらゆる中間値及び部分的範囲が含まれ、例えば、組成物中のrhGAA上の全N-グリカンの8%~19%が、末端ガラクトースのみを有し、シアル酸は含有しない。
【0080】
一部の実施形態において、rhGAA上の全N-グリカンの40%~60%、45%~60%、50%~60%、又は55%~60%が複合型N-グリカンであるか;又はrhGAA上の全N-グリカンの1%、2%、3%、4%、5%、6,%、又は7%以下がハイブリッド型N-グリカンである;rhGAA上の高マンノース型N-グリカンの5%、10%、15%、20%、又は25%以下が非リン酸化型である;rhGAA上の高マンノース型N-グリカンの少なくとも5%又は10%が、モノリン酸化されている
;及び/又はrhGAA上の高マンノース型N-グリカンの少なくとも1%又は2%が、ビスリン酸化されている。これらの値には、あらゆる中間値及び部分的範囲が含まれる。rhGAAは、上記に記載される含量範囲の1つ以上を満たし得る。
【0081】
一部の実施形態において、rhGAAは、平均して1モルのrhGAA当たり2.0~8.0モルのシアル酸残基を担持し得る。この範囲には、rhGAA 1mol当たり2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、及び8.0molのシアル酸残基を含め、そのあらゆる中間値及び部分的範囲が含まれる。理論によって拘束されるものではないが、シアル酸残基を担持するN-グリカン単位の存在が、アシアロ糖タンパク質受容体によるrhGAAの非生産的クリアランスを防止し得ると考えられる。
【0082】
1つ以上の実施形態において、rhGAAは、ある特定の潜在的なN-グリコシル化部位に、ある特定のN-グリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態において、rhGAAは、7つの潜在的なN-グリコシル化部位を有する。一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも20%は、第1の潜在的なN-グリコシル化部位(例えば、配列番号6についてN84及び配列番号4についてN140)においてリン酸化されている。例えば、rhGAAの少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%が、第1の潜在的なN-グリコシル化部位においてリン酸化されていてもよい。このリン酸化は、モノ-M6P及び/又はビス-M6P単位の結果であり得る。一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%は、第1の潜在的なN-グリコシル化部位にモノ-M6P単位を担持している。一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%は、第1の潜在的なN-グリコシル化部位にビス-M6P単位を担持している。一部の実施形態において、rhGAAは、第1の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり約1.4molのM6P(モノ-M6P及びビス-M6P)を含む。一部の実施形態において、rhGAAは、第1の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり少なくとも約0.5molのビス-M6Pを含む。一部の実施形態において、rhGAAは、第1の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり約0.25molのモノ-M6Pを含む。一部の実施形態において、rhGAAは、第1の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり約0.2mol~約0.3molのシアル酸を含む。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、図6Aに図示されるとおりの第1の潜在的なN-グリコシル化部位占有率及び図6Bに図示されるとおりのN-グリコシル化プロファイルを含む。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、図19Aに図示されるとおりの第1の潜在的なN-グリコシル化部位占有率及び図19B又は図20Bに図示されるとおりのN-グリコシル化プロファイルを含む。
【0083】
一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも20%は、第2の潜在的なN-グリコシル化部位(例えば、配列番号6についてN177及び配列番号4についてN223)においてリン酸化されている。例えば、rhGAAの少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%が、第2のN-グリコシル化部位においてリン酸化されていてもよい。このリン酸化は、モノ-M6P及び/又はビス-M6P単位の結果であり得る。一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%は、第2のN-グリコシル化部位にモノ-M6P単位を担持している。一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%は、第2のN-グリコシル化部位にビス-M6P単位を担持している。一部の実施形態において、rhGAAは、第2の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり約0.5molのM6P(モノ-M6P及びビス-M6P)を含む。一部の実施形態において、rhGAAは、第2の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり約0.4~約0.6molのモノ-M6Pを含む。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、図6Aに図示されるとおりの第2の潜在的なN-グリコシル化部位占有率及び図6Cに図示されるとおりのN-グリコシル化プロファイルを含む。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、図19Aに図示されるとおりの第2の潜在的なN-グリコシル化部位占有率及び図19C又は図20Bに図示されるとおりのN-グリコシル化プロファイルを含む。
【0084】
1つ以上の実施形態において、rhGAAの少なくとも5%は、第3の潜在的なN-グリコシル化部位(例えば、配列番号6についてN334及び配列番号4についてN390)においてリン酸化されている。他の実施形態において、rhGAAの5%、10%、15%、20%、又は25%未満が、第3の潜在的なN-グリコシル化部位においてリン酸化されている。例えば、第3の潜在的なN-グリコシル化部位は、非リン酸化高マンノース型N-グリカン類と、ジアンテナ型、トリアンテナ型、及びテトラアンテナ型複合型N-グリカン類と、主要種としてのハイブリッド型N-グリカン類との混合物を有することができる。一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも3%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%は、第3の潜在的なN-グリコシル化部位においてシアル化されている。一部の実施形態において、rhGAAは、第3の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり約0.9~約1.2molのシアル酸を含む。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、図6Aに図示されるとおりの第3の潜在的なN-グリコシル化部位占有率及び図6Dに図示されるとおりのN-グリコシル化プロファイルを含む。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、図19Aに図示されるとおりの第3の潜在的なN-グリコシル化部位占有率及び図19D又は図20Bに図示されるとおりのN-グリコシル化プロファイルを含む。
【0085】
一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも20%は、第4の潜在的なN-グリコシル化部位(例えば、配列番号6についてN414及び配列番号4についてN470)においてリン酸化されている。例えば、rhGAAの少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%が、第4の潜在的なN-グリコシル化部位においてリン酸化されていてもよい。このリン酸化は、モノ-M6P及び/又はビス-M6P単位の結果であり得る。一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%は、第4の潜在的なN-グリコシル化部位にモノ-M6P単位を担持している。一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%は、第4の潜在的なN-グリコシル化部位にビス-M6P単位を担持している。一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも3%、5%、8%、10%、15%、20%、又は25%は、第4の潜在的なN-グリコシル化部位においてシアル化されている。一部の実施形態において、rhGAAは、第4の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり約1.4molのM6P(モノ-M6P及びビス-M6P)を含む。一部の実施形態において、rhGAAは、第4の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり約0.4~約0.6molのビス-M6Pを含む。一部の実施形態において、rhGAAは、第4の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり約0.3~約0.4molのモノ-M6Pを含む。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、図6Aに図示されるとおりの第4の潜在的なN-グリコシル化部位占有率及び図6Eに図示されるとおりのN-グリコシル化プロファイルを含む。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、図19Aに図示されるとおりの第4の潜在的なN-グリコシル化部位占有率及び図19E又は図20Bに図示されるとおりのN-グリコシル化プロファイルを含む。
【0086】
一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも5%は、第5の潜在的なN-グリコシル化部位(例えば、配列番号6についてN596及び配列番号4についてN692)においてリン酸化されている。他の実施形態において、rhGAAの5%、10%、15%、20%、又は25%未満が、第5の潜在的なN-グリコシル化部位においてリン酸化されている。例えば、第5の潜在的なN-グリコシル化部位は、主要種としてのフコシル化したジアンテナ型複合型N-グリカン類を有することができる。一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも3%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%は、第5の潜在的なN-グリコシル化部位においてシアル化されている。一部の実施形態において、rhGAAは、第5の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり約0.8~約0.9molのシアル酸を含む。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、図6Aに図示されるとおりの第5の潜在的なN-グリコシル化部位占有率及び図6Fに図示されるとおりのN-グリコシル化プロファイルを含む。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、図19Aに図示されるとおりの第5の潜在的なN-グリコシル化部位占有率及び図19F又は図20Bに図示されるとおりのN-グリコシル化プロファイルを含む。
【0087】
一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも5%は、第6のN-グリコシル化部位(例えば、配列番号6についてN826及び配列番号4についてN882)においてリン酸化されている。他の実施形態において、rhGAAの5%、10%、15%、20%又は25%未満が、第6のN-グリコシル化部位においてリン酸化されている。例えば、第6のN-グリコシル化部位は、主要種としてのジアンテナ型、トリアンテナ型、及びテトラアンテナ型複合型N-グリカンの混合物を有することができる。一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも3%、5%、8%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%は、第6のN-グリコシル化部位においてシアル化されている。一部の実施形態において、rhGAAは、第6の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり約1.5~約4.2molのシアル酸を含む。一部の実施形態において、rhGAAは、第6の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり約0.9molのアセチル化シアル酸を含む。一部の実施形態において、rhGAAは、第6の潜在的なN-グリコシル化部位にrhGAA 1mol当たり少なくとも平均0.05molの、ポリ-N-アセチル-D-ラクトサミン(ポリ-LacNAc)残基を有するグリカン種を含む。一部の実施形態において、10%を超えるrhGAAが、第6の潜在的なN-グリコシル化部位にポリ-LacNAc残基を担持しているグリカンを含む。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、図6Aに図示されるとおりの第6の潜在的なN-グリコシル化部位占有率及び図6Gに図示されるとおりのN-グリコシル化プロファイルを含む。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、図19Aに図示されるとおりの第6の潜在的なN-グリコシル化部位占有率及び図19G又は図20Bに図示されるとおりのN-グリコシル化プロファイルを含む。
【0088】
一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも5%は、第7の潜在的なN-グリコシル化部位(例えば、配列番号6についてN869及び配列番号4についてN925)においてリン酸化されている。他の実施形態において、rhGAAの5%、10%、15%、20%、又は25%未満が、第7の潜在的なN-グリコシル化部位においてリン酸化されている。一部の実施形態において、rhGAAの40%、45%、50%、55%、60%、又は65%未満が、第7の潜在的なN-グリコシル化部位に何らかのN-グリカンを有する。一部の実施形態において、rhGAAの少なくとも30%、35%、又は40%は、第7の潜在的なN-グリコシル化部位にN-グリカンを有する。一部の実施形態において、rhGAAは、第7の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり少なくとも0.5molのシアル酸を含む。一部の実施形態において、rhGAAは、第7の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり少なくとも0.8molのシアル酸を含む。一部の実施形態において、rhGAAは、第7の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり約0.86molのシアル酸を含む。一部の実施形態において、rhGAAは、第7の潜在的なN-グリコシル化部位にrhGAA 1mol当たり少なくとも平均0.3molの、ポリ-LacNAc残基を担持しているグリカン種を含む。一部の実施形態において、rhGAAのほぼ半分が、第7の潜在的なN-グリコシル化部位にポリ-LacNAc残基を担持しているグリカンを含む。少なくとも1つの実施形態において、第7の潜在的なN-グリコシル化部位に同定される全てのN-グリカンが、複合型N-グリカンである。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、図6Aに図示されるとおりの、又は図19Aに図示されるとおりの第7の潜在的なN-グリコシル化部位占有率及び図19H又は図20Bに図示されるとおりのN-グリコシル化プロファイルを含む。
【0089】
一部の実施形態において、rhGAAは、平均してrhGAA 1mol当たり3~4molのM6P残基及びrhGAA 1mol当たり約4~約7.3molのシアル酸を含む。一部の実施形態において、rhGAAは、平均して、第1の潜在的なN-グリコシル化部位にrhGAA 1mol当たり少なくとも約0.5molのビス-M6P、第2の潜在的なN-グリコシル化部位にrhGAA 1mol当たり約0.4~約0.6molのモノ-M6P、第3の潜在的なN-グリコシル化部位にrhGAA 1mol当たり約0.9~約1.2molのシアル酸、第4の潜在的なN-グリコシル化部位にrhGAA 1mol当たり約0.4~約0.6molのビス-M6P、第4の潜在的なN-グリコシル化部位にrhGAA 1mol当たり約0.3~約0.4molのモノ-M6P、第5の潜在的なN-グリコシル化部位にrhGAA 1mol当たり約0.8~約0.9molのシアル酸、及び第6の潜在的なN-グリコシル化部位にrhGAA 1mol当たり約1.5~約4.2molのシアル酸を更に含む。一部の実施形態において、rhGAAは、第7の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり少なくとも0.5molのシアル酸を更に含む。一部の実施形態において、rhGAAは、第7の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり少なくとも0.8molのシアル酸を含む。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、第7の潜在的なN-グリコシル化部位に平均してrhGAA 1mol当たり約0.86molのシアル酸を更に含む。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、図6A図6Hに図示されるとおりの占有率及びN-グリコシル化プロファイルの7つの潜在的なN-グリコシル化部位を含む。少なくとも1つの実施形態において、rhGAAは、図19A図19H及び図20A図20Bに図示されるとおりの占有率及びN-グリコシル化プロファイルの7つの潜在的なN-グリコシル化部位を含む。
【0090】
rhGAAを作成する方法が、2014年9月30日に出願された米国仮特許出願第62/057,842号明細書(その内容全体は参照により本明細書に援用される)に開示されている。
【0091】
リソソーム内に入ると、rhGAAは、蓄積したグリコーゲンを酵素的に分解することができる。しかしながら、従来のrhGAA製剤はモノ-M6P及びビス-M6P担持N-グリカン類の総レベルが低く、ひいては、筋細胞の標的化が不十分であるため、リソソームへのrhGAAの送達が劣ることになる。こうした従来の製剤における大多数のrhGAA分子はリン酸化N-グリカン類を有しないため、CIMPRに対する親和性を欠いている。非リン酸化高マンノース型N-グリカン類はまた、マンノース受容体によって除去され得るため、ERTの非生産的クリアランスとなる(図2B)。対照的に、図2Aに示されるとおり、本明細書に記載されるrhGAAは、より多量のモノ-M6P及びビス-M6P担持N-グリカン類を含有し得るため、筋肉などの特異的組織へのrhGAAの生産的取込みにつながる。
【0092】
IV.N-結合型グリコシル化rhGAAの作製及び精製
米国特許第10,961,522号明細書(この全体が参照により本明細書に援用される)に記載されるとおり、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの細胞を使用して、本明細書に記載されるrhGAAを作製し得る。高M6P rhGAAをCHO細胞で発現させるというのは、rhGAAのグリカンプロファイルを翻訳後に修飾するのと比べると、少なくとも一部には、前者のみがグリカン分解によって変換されて、最適なグリコーゲン加水分解の形態のrhGAAになり、ひいては治療有効性が増強されることになり得るため、有利である。
【0093】
一部の実施形態において、rhGAAは、好ましくは、本明細書に記載されるrhGAAをコードするDNAコンストラクトで形質転換される1つ以上のCHO細胞株によって作製される。かかるCHO細胞株は、GAAをコードするポリヌクレオチドの、5、10、15、又は20コピー又はそれ以上など、遺伝子の複数のコピーを含有し得る。酸性α-グルコシダーゼのアレル変異体又は他の変異体酸性α-グルコシダーゼアミノ酸配列、例えば、配列番号4又は配列番号6と少なくとも90%、95%、98%、又は99%同一のものなどを発現するDNAコンストラクトを構築し、CHO細胞で発現させてもよい。当業者は、かかるDNAコンストラクトを作製するためのCHO細胞の形質転換に好適な代替的ベクターを選択し得る。
【0094】
かかるCHO細胞株を作成する方法は、米国特許第10,961,522号明細書(この全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。簡潔に言えば、これらの方法には、GAA又はGAA変異体をコードするDNAでCHO細胞を形質転換すること、GAAをコードするDNAをその1つ又は複数の染色体へと安定に組み込む、且つGAAを安定に発現するCHO細胞を選択すること、及びモノ-M6P又はビス-M6Pを担持しているN-グリカン類の含量が高いGAAを発現するCHO細胞を選択すること、及び、任意選択で、高シアル酸含量のN-グリカン類を有する、及び/又は低非リン酸化高マンノース含量のN-グリカン類を有するCHO細胞を選択することが関わる。選択されたCHO細胞株を使用してrhGAA及びrhGAA組成物を、CHO細胞株を培養すること、及びCHO細胞の培養物から前記組成物を回収することにより作製し得る。一部の実施形態において、選択されたCHO細胞株から作製されるrhGAAは、CIMPRを標的化するモノ-M6P又はビス-M6Pを担持しているN-グリカン類を高含量で含有する。一部の実施形態において、本明細書に記載されるとおり作製されるrhGAAは、末端ガラクトースのある複合型N-グリカン類のレベルが低い。一部の実施形態において、選択されたCHO細胞株は、GA-ATB200又はATB200-X5-14と称される。一部の実施形態において、選択されたCHO細胞株は、かかるCHO細胞培養物の継代培養物又は誘導体を包含する。一部の実施形態において、選択されたCHO細胞株から作製されるrhGAAは、ATB200と称される。
【0095】
本明細書に記載されるとおり作製されるrhGAAは、米国特許第10,227,577号明細書及び米国仮特許出願第62/506,569号明細書(これらは両方とも全体として参照により本明細書に援用される)に記載される方法に従うことによって精製されてもよい。CHO細胞株から作製されるrhGAAの作製、捕捉、及び精製についての例示的プロセスを図3に示す。
【0096】
簡潔に言えば、バイオリアクター601に、rhGAAを発現して周囲の液体培養培地へと分泌するCHO細胞などの細胞の培養物が入っている。バイオリアクター601は、灌流式、バッチ式又はフェドバッチ式バイオリアクターなど、細胞の培養に適切な任意のバイオリアクターであってよい。培養培地は、細胞がrhGAAを産生するのに十分な時間が経った後、バイオリアクターから取り出される。かかる培地の取り出しは、灌流式バイオリアクターでは連続的であってもよく、又はバッチ式若しくはフェドバッチ式リアクターではバッチ毎であってもよい。培地をろ過システム603によりろ過することにより、細胞を取り出し得る。ろ過システム603は、交互タンジェンシャルフローろ過(ATF)システム、タンジェンシャルフローろ過(TFF)システム、及び/又は遠心ろ過システムを含め、任意の好適なろ過システムであってよい。様々な実施形態において、ろ過システムは、約10ナノメートル~約2マイクロメートルの細孔径を有するフィルタを利用する。
【0097】
ろ過後、ろ液をタンパク質捕捉システム605にロードする。タンパク質捕捉システム605は、1つ以上のクロマトグラフィーカラムを備え得る。2つ以上のクロマトグラフィーカラムが使用される場合には、最初のカラムがロードされたところで次のカラムをロードし始めることができるように、カラムを直列に配置し得る。或いは、カラムを切り替えている間は培地取り出しプロセスを中止してもよい。
【0098】
様々な実施形態において、タンパク質捕捉システム605は、rhGAA、特に高M6P含量のrhGAAの直接的な産物捕捉のための1つ以上の陰イオン交換(AEX)カラムを備える。タンパク質捕捉システム605によって捕捉されたrhGAAは、カラムのpH及び/又は塩含量を変更することによって1つ又は複数のカラムから溶出させる。AEXカラムの例示的条件を表2に提供する。
【0099】
【表4】
【0100】
溶出したrhGAAは、更なる精製ステップ及び/又は品質保証ステップに供することができる。例えば、溶出したrhGAAをウイルス死滅化ステップ607に供してもよい。かかるウイルス死滅化607には、低pHによる死滅化、界面活性剤による死滅化、又は当該技術分野において公知の他の技法のうちの1つ以上が含まれ得る。ウイルス死滅化ステップ607からのrhGAAは、第2のクロマトグラフィーシステム609に導入して、rhGAA産物を更に精製してもよい。或いは、タンパク質捕捉システム605からの溶出したrhGAAを第2のクロマトグラフィーシステム609に直接送り込んでもよい。様々な実施形態において、第2のクロマトグラフィーシステム609には、不純物を更に除去するための1つ以上の固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)カラムが含まれる。IMACカラムの例示的条件を以下の表3に提供する。
【0101】
【表5】
【0102】
rhGAAを第2のクロマトグラフィーシステム609にロードした後、1つ又は複数のカラムから組換えタンパク質を溶出させる。溶出したrhGAAは、ウイルス死滅化ステップ611に供することができる。ウイルス死滅化607と同様に、ウイルス死滅化611にもまた、低pHによる死滅化、界面活性剤による死滅化、又は当該技術分野において公知の他の技法のうちの1つ以上が含まれ得る。一部の実施形態では、ウイルス死滅化607又は611の一方のみが用いられ、又はウイルス死滅化は、精製プロセスにおいて同じ段階で実施される。
【0103】
ウイルス死滅化ステップ611からのrhGAAは、第3のクロマトグラフィーシステム613に導入して、組換えタンパク質産物を更に精製してもよい。或いは、第2のクロマトグラフィーシステム609からの溶出した組換えタンパク質を第3のクロマトグラフィーシステム613に直接送り込んでもよい。様々な実施形態において、第3のクロマトグラフィーシステム613には、不純物を更に除去するための1つ以上の陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)カラム及び/又はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムが含まれる。次に第3のクロマトグラフィーシステム613からrhGAA産物を溶出させる。CEXカラムの例示的条件を以下の表4に提供する。
【0104】
【表6】
【0105】
rhGAA製剤はまた、更なる処理工程に供し得る。例えば、別のろ過システム615を使用してウイルスを除去してもよい。一部の実施形態において、かかるろ過は、5~50μmの細孔径のフィルタを利用することができる。他の産物処理工程には、産物調整ステップ617が含まれてもよく、ここでは組換えタンパク質産物の滅菌、ろ過、濃縮、保存、及び/又は最終産物製剤化のための追加的な成分の添加が行われ得る。
【0106】
本明細書で使用されるとき、用語「ATB200」は、モノ-M6P及びビス-M6Pを担持しているN-グリカン類の含量が高いrhGAAを指し、これは、本明細書に記載される方法を用いてGA-ATB200細胞株から作製され、精製される。
【0107】
V.医薬組成物
様々な実施形態において、単独、又は他の治療用薬剤との組み合わせのいずれかの本明細書に記載されるrhGAA、及び/又は薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物が提供される。
【0108】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、薬学的に許容可能な塩を含む。
【0109】
一部の実施形態において、本明細書において使用される薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な酸付加塩である。薬学的に許容可能な酸付加塩としては、限定はされないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸、リン酸など、及び有機酸であって、限定はされないが、酢酸、トリフルオロ酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、酪酸、ショウノウ酸、カンファースルホン酸、桂皮酸、クエン酸、ジグルコン酸、エタンスルホン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリセロリン酸、ヘミ硫酸(hemisulfic acid)、ヘキサン酸、ギ酸、フマル酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸(イセチオン酸)、乳酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メシチレンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、2-ナフタレンスルホン酸、シュウ酸、パモ酸、ペクチン酸、フェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸、ピバル酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデカン酸を含めたものなどを挙げることができる。
【0110】
一部の実施形態において、本明細書において使用される薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な塩基付加塩である。薬学的に許容可能な塩基付加塩としては、限定はされないが、アンモニア又はアンモニウム若しくは金属カチオン、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどの水酸化物、炭酸塩、又は重炭酸塩を挙げることができる。薬学的に許容可能な有機非毒性塩基から誘導される塩としては、限定はされないが、第一級、第二級、及び第三級アミン、第四級アミン化合物、天然に存在する置換アミンを含めた置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン類、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、テトラメチルアンモニウム化合物、テトラエチルアンモニウム化合物、ピリジン、Ν,Ν-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、Ν,Ν-ジベンジルフェネチルアミン、1-エフェナミン、Ν,Ν’-ジベンジルエチレンジアミン、ポリアミン樹脂などの塩が挙げられる。
【0111】
一部の実施形態において、rhGAA又はその薬学的に許容可能な塩は、静脈内投与に適した医薬組成物として製剤化されてもよい。一部の実施形態において、医薬組成物は、滅菌等張緩衝水溶液中にある溶液である。必要ならば、組成物はまた、可溶化剤及び注射部位の疼痛を和らげるための局所麻酔薬も含み得る。医薬組成物の成分は、例えば、活性薬剤の分量が指示されているアンプル又はサシェなどのハーメチックに密封された容器内にある乾燥した凍結乾燥粉末又は水分のない濃縮物として、別個に供給されても、又は一緒に単位剤形に混合されても、いずれであってもよい。組成物が注入によって投与されることになる場合、それは、滅菌された医薬品グレードの水、生理食塩水又はデキストロース/水が入った注入ボトルで分注され得る。一部の実施形態において、注入は病院又は診療所で行われてもよい。一部の実施形態において、注入は病院又は診療所のセッティング外で、例えば、対象の自宅で行われてもよい。組成物が注射によって投与される場合、投与前に成分を混合し得るようにするため、滅菌注射用水又は生理食塩水のアンプルが提供されてもよい。
【0112】
一部の実施形態において、rhGAA又はその薬学的に許容可能な塩は、経口投与用に製剤化されてもよい。経口投与される組成物は、錠剤、カプセル、膣坐薬、エリキシル剤、溶液又は懸濁液、ゲル、シロップ、洗口液、又は使用前に水若しくは他の好適な媒体で再構成する乾燥粉末の形態で、任意選択で香味料及び着色剤と共に、即時放出、遅延放出、調節放出、持続放出、パルス放出、又は制御放出適用向けに製剤化されてもよい。錠剤、カプセル、ロゼンジ、トローチ、丸薬、巨丸剤、散剤、ペースト、顆粒、弾丸剤(bullet)、糖衣剤、又はプレミックス調合剤などの固体組成物もまた使用することができる。経口使用向けの固体及び液体組成物は、当該技術分野において周知の方法のとおりに調製し得る。かかる組成物はまた、固体又は液体剤形であってよい1つ以上の薬学的に許容可能な担体及び賦形剤も含有することができる。錠剤又はカプセルは、限定はされないが、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、又は湿潤剤を含め、薬学的に許容可能な賦形剤と共に従来の手段によって調製することができる。好適な薬学的に許容可能な賦形剤は当該技術分野において公知であり、限定はされないが、アルファ化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルエチルセルロース(HPEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン、アカシア、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、タルク、シリカ、コーン、ジャガイモ又はタピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、グリシン クロスカルメロースナトリウム、及び複合ケイ酸塩が挙げられる。錠剤は、当該技術分野において周知の方法によってコーティングすることができる。
【0113】
一部の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、米国特許第10,512,676号明細書及び米国仮特許出願第62/506,574号明細書(両方とも全体として参照により本明細書に援用される)のとおりに製剤化されてもよい。例えば、一部の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物のpHは、約5.0~約7.0又は約5.0~約6.0である。一部の実施形態において、pHは約5.5~約6.0の範囲である。一部の実施形態において、医薬組成物のpHは6.0である。一部の実施形態において、pHは、水酸化ナトリウム及び/又は塩酸など、pH調整剤(例えば、アルカリ化剤及び酸性化剤)を使用することによって目標pHに調整し得る。
【0114】
本明細書に記載される医薬組成物は、クエン酸塩システム、リン酸塩システム、及びこれらの組み合わせなどの緩衝システムを含み得る。クエン酸塩及び/又はリン酸塩は、クエン酸ナトリウム又はリン酸ナトリウムであってもよい。他の塩としては、カリウム塩及びアンモニウム塩が挙げられる。1つ以上の実施形態において、緩衝液は、クエン酸塩を含む。更なる実施形態において、緩衝液は、クエン酸ナトリウム(例えば、無水クエン酸ナトリウムとクエン酸一水和物との混合物)を含む。1つ以上の実施形態において、クエン酸塩を含む緩衝溶液は、クエン酸ナトリウムとクエン酸とを含み得る。一部の実施形態において、クエン酸塩及びリン酸塩緩衝液の両方が存在する。
【0115】
一部の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、少なくとも1つの賦形剤を含む。賦形剤は、等張化剤、増量剤、及び/又は安定剤として機能し得る。等張化剤は、製剤がヒト血液と同様の又は同じ浸透圧を有することを確実にする助けとなる成分である。増量剤は、製剤(例えば、凍結乾燥状)の嵩を増やす成分であり、ケーキに適切な構造を与える。安定剤は、疎水性の気液界面での凝集体形成を防止し、又は最小限に抑えることのできる化合物である。1つの賦形剤が、等張化剤及び増量剤として同時に機能し得る。例えば、マンニトールは等張化剤として機能するとともに、増量剤としても有益性をもたらし得る。
【0116】
等張化剤の例としては、塩化ナトリウム、マンニトール、スクロース、及びトレハロースが挙げられる。一部の実施形態において、等張化剤は、マンニトールを含む。一部の実施形態において、1つ又は複数の等張化剤の総量は、約10mg/mL~約50mg/mLの量の範囲である。更なる実施形態において、1つ又は複数の等張化剤の総量は、約10、11、12、13、14、又は15mg/mL~約16、20、25、30、35、40、45、又は50mg/mLの量の範囲である。
【0117】
一部の実施形態において、賦形剤は、安定剤を含む。一部の実施形態において、安定剤は、界面活性剤である。一部の実施形態において、安定剤は、ポリソルベート80である。1つ以上の実施形態において、安定剤の総量は、約0.1mg/mL~約1.0mg/mLの範囲である。更なる実施形態において、安定剤の総量は、約0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5mg/mL~約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1.0mg/mLの範囲である。更に別の実施形態において、安定剤の総量は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1.0mg/mLである。
【0118】
一部の実施形態において、医薬組成物は、(a)rhGAA(ATB200など)、(b)クエン酸塩、リン酸塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝液、及び(c)マンニトール、ポリソルベート80、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤を含み、(i)約5.0~約6.0、又は(ii)約5.0~約7.0のpHを有する。一部の実施形態において、組成物は、水を更に含む。一部の実施形態において、組成物は、酸性化剤及び/又はアルカリ化剤を更に含み得る。
【0119】
一部の実施形態において、医薬組成物は、(a)約5~50mg/mL、約5~30mg/mL、又は約15mg/mLの濃度のrhGAA(ATB200など)、(b)約10~100mM又は約25mMの濃度のクエン酸ナトリウム緩衝液、(c)約10~50mg/mL、又は約20mg/mLの濃度のマンニトール、(d)約0.1~1mg/mL、約0.2~0.5mg/mL、又は約0.5mg/mLの濃度で存在するポリソルベート80、及び(e)水を含み、約6.0のpHを有する。少なくとも1つの実施形態において、医薬組成物は、(a)15mg/mL rhGAA(ATB200など)(b)25mMクエン酸ナトリウム緩衝液、(c)20mg/mLマンニトール(d)0.5mg/mLポリソルベート80、及び(e)水を含み、約6.0のpHを有する。一部の実施形態において、組成物は、酸性化剤及び/又はアルカリ化剤を更に含み得る。
【0120】
一部の実施形態において、rhGAAを含む医薬組成物は、それを必要としている対象に投与する前に希釈される。
【0121】
一部の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、シャペロンを含む。一部の実施形態において、シャペロンは、ミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩である。別の実施形態において、シャペロンは、ドゥボグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0122】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAAは1つの医薬組成物に製剤化され、一方でミグルスタットなどのシャペロンは別の医薬組成物に製剤化される。一部の実施形態において、ミグルスタットを含む医薬組成物は、ZAVESCA(登録商標)(Actelion Pharmaceuticals)として市販されている製剤をベースとする。
【0123】
一部の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、凍結乾燥(フリーズドライ)処理を受けて、ケーキ又は粉末を提供し得る。それに応じて、一部の実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物は、凍結乾燥後のrhGAA組成物に関する。凍結乾燥混合物は、本明細書に記載されるrhGAA(例えば、ATB200)と、クエン酸塩、リン酸塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝液と、トレハロース、マンニトール、ポリソルベート80、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤とを含み得る。一部の実施形態において、この凍結乾燥混合物に、他の成分(例えば、他の賦形剤)が加えられてもよい。凍結乾燥製剤を含む医薬組成物はバイアルに提供されてもよく、次にはそれを保存し、輸送し、再構成し、及び/又は患者に投与することができる。
【0124】
VI.治療方法
A.疾患の治療
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物を投与することによるグリコーゲン貯蔵調節異常に関係する疾患又は障害の治療方法に関する。一部の実施形態において、疾患は、ポンペ病(別名、酸性マルターゼ欠損症(AMD)及びII型糖原病(GSD II))である。一部の実施形態において、rhGAAは、ATB200である。一部の実施形態において、医薬組成物は、ATB200を含む。また、本明細書には、ポンペ病を治療するためのrhGAA又はATB200の使用も提供される。
【0125】
一部の実施形態において、本明細書に開示される方法によって治療される対象は、ERT歴のある患者である。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法によって治療される対象は、ERT未経験の患者である。
【0126】
本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物は、適切な経路によって投与される。一実施形態において、rhGAA又は医薬組成物は、静脈内投与される。他の実施形態において、rhGAA又は医薬組成物は、心臓又は骨格筋(例えば、筋肉内)、又は神経系(例えば、脳;脳室内;髄腔内への直接の注射)など、標的組織への直接投与により投与される。一部の実施形態において、rhGAA又は医薬組成物は、経口投与される。必要であれば、2つ以上の経路を同時に用いることができる。
【0127】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物の治療効果は、以下の判定基準のうちの1つ以上に基づき評価されてもよい:(1)心臓状態(例えば、拡張終期容積及び/又は収縮終期容積の増加、又はGSD-IIに典型的に見られる進行性心筋症の低減、向上若しくは予防)、(2)肺機能(例えば、ベースライン量と比べた啼泣時肺活量の増加、及び/又は啼泣時の酸素不飽和化の正常化)、(3)神経発達及び/又は運動技能(例えば、AIMSスコアの増加)、及び(4)疾患に罹患している個体の組織中のグリコーゲンレベルの低減。
【0128】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物の1つ以上の投薬量の投与後に、対象の心臓状態は、媒体で治療した対象のもの又は治療前の対象のものと比較すると、10%、20%、30%、40%、又は50%(又は間にある任意のパーセンテージ)だけ改善する。対象の心臓状態は、拡張終期及び/又は収縮終期容積を測定することにより、及び/又は心筋症を臨床的に判定することにより評価し得る。一部の実施形態において、対象の肺機能は、ATB200又はATB200を含む医薬組成物の1つ以上の投薬量の投与後に、媒体で治療した対象のもの又は治療前の対象のものと比較すると、10%、20%、30%、40%、又は50%(又は間にある任意のパーセンテージ)だけ改善する。特定の実施形態において、改善は、投与から1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、又はそれ以上(又は間にある任意の期間)経った後に実現する。特定の実施形態において、ATB200又はATB200を含む医薬組成物は、投与から1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、又はそれ以上(又は間にある任意の期間)経った後に対象の肺機能を改善する。
【0129】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物の1つ以上の投薬量の投与後に、対象の肺機能は、媒体で治療した対象のもの又は治療前の対象のものと比較すると、10%、20%、30%、40%、又は50%(又は間にある任意のパーセンテージ)だけ改善する。対象の肺機能は、ベースライン量と比べた啼泣時肺活量、及び/又は啼泣時の酸素不飽和化の正常化により評価し得る。一部の実施形態において、ATB200又はATB200を含む医薬組成物の1つ以上の投薬量の投与後に、対象の肺機能は、媒体で治療した対象のもの又は治療前の対象のものと比較すると、10%、20%、30%、40%、又は50%(又は間にある任意のパーセンテージ)だけ改善する。特定の実施形態において、改善は、投与から1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、又はそれ以上(又は間にある任意の期間)経った後に実現する。特定の実施形態において、ATB200又はATB200を含む医薬組成物は、投与から1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、又はそれ以上(又は間にある任意の期間)経った後に対象の肺機能を改善する。
【0130】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物の1つ以上の投薬量の投与後に、対象の神経発達及び/又は運動技能は、媒体で治療した対象のもの又は治療前の対象のものと比較すると、10%、20%、30%、40%、又は50%(又は間にある任意のパーセンテージ)だけ改善する。対象の神経発達及び/又は運動技能は、AIMSスコアを決定することにより評価し得る。AIMSは、臨床医が施行して点数化する12項目のアンカー尺度である(Rush JA Jr.,Handbook of Psychiatric Measures,American Psychiatric Association,2000,166-168を参照のこと)。項目1~10は、5点のアンカー尺度で評点が付けられる。項目1~4は、口腔顔面の動きを評価する。項目5~7は、四肢及び体幹のジスキネジアを取り扱う。項目8~10は、試験者が判断するとおりの全般的な重症度、並びに動き及びそれに伴う苦痛の患者の意識を取り扱う。項目11~12は、歯及び/又は義歯の問題に関するはい/いいえ形式の質問である(かかる問題はジスキネジアの誤診につながり得る)。一部の実施形態において、ATB200又はATB200を含む医薬組成物の1つ以上の投薬量の投与後に、対象の神経発達及び/又は運動技能は、媒体で治療した対象のもの又は治療前の対象のものと比較すると、10%、20%、30%、40%、又は50%(又は間にある任意のパーセンテージ)だけ改善する。特定の実施形態において、改善は、投与から1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、又はそれ以上(又は間にある任意の期間)経った後に実現する。特定の実施形態において、ATB200又はATB200を含む医薬組成物は、投与から1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、又はそれ以上(又は間にある任意の期間)経った後に対象の神経発達及び/又は運動技能を改善する。
【0131】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物の1つ以上の投薬量の投与後に、対象の特定の組織のグリコーゲンレベルは、媒体で治療した対象のもの又は治療前の対象のものと比較すると、10%、20%、30%、40%、又は50%(又は間にある任意のパーセンテージ)だけ減少する。一部の実施形態において、組織は、四頭筋、三頭筋、及び腓腹筋などの筋肉である。組織のグリコーゲンレベルは、当該技術分野において公知の方法を用いて分析することができる。アミログルコシダーゼ消化に基づくグリコーゲンレベルの決定が周知であり、Amalfitano et al.(1999),「ヒト酸性アルファグルコシダーゼをコードする修飾アデノウイルスベクターの肝臓ターゲティング後における筋障害型II型糖原病の全身修正(Systemic correction of the muscle disorder glycogen storage disease type ii after hepatic targeting of a modified adenovirus vector encoding human acid-alphaglucosidase)」,Proc Natl Acad Sci USA,96:8861-8866などの刊行物に記載されている。一部の実施形態において、ATB200又はATB200を含む医薬組成物の1つ以上の投薬量の投与後に、対象の筋肉のグリコーゲンレベルは、媒体で治療した対象のもの又は治療前の対象のものと比較すると、10%、20%、30%、40%、又は50%(又は間にある任意のパーセンテージ)だけ減少する。特定の実施形態において、減少は、投与から1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、又はそれ以上(又は間にある任意の期間)経った後に実現する。特定の実施形態において、ATB200又はATB200を含む医薬組成物は、投与から1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、又はそれ以上(又は間にある任意の期間)経った後に対象の筋肉のグリコーゲンレベルを減少させる。
【0132】
B.バイオマーカー
ポンペ病の対象における酵素補充療法の治療効果の評価及び比較には、尿中ヘキソース四糖(Hex4)など、対象のグリコーゲン蓄積のバイオマーカーが使用されてもよい。一部の実施形態において、rhGAA又はrhGAAを含む医薬組成物がグリコーゲン蓄積に及ぼす治療効果は、対象の尿中Hex4レベルを測定することにより評価される。
【0133】
ポンペ病の対象における酵素補充療法の治療効果の評価及び比較には、クレアチンキナーゼ(CK)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)などの筋傷害又は筋損傷のバイオマーカーが使用されてもよい。一部の実施形態において、rhGAA又はrhGAAを含む医薬組成物が筋損傷に及ぼす治療効果は、対象のCK、ALT、及び/又はASTレベルを測定することにより評価される。少なくとも1つの実施形態において、rhGAA又はrhGAAを含む医薬組成物が筋損傷に及ぼす治療効果は、対象のCKレベルを測定することにより評価される。
【0134】
LAMP-1、LC3、及びジスフェリンなどのバイオマーカーもまた、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物の治療効果の評価及び比較に使用されてもよい。ポンペ病では、GAAがリソソームグリコーゲンを加水分解できないため、一部の組織でグリコーゲンが詰まった大型リソソームの異常蓄積につながる(Raben et al.,JBC 273:19086-19092,1998)。ポンペ病のマウスモデル研究では、骨格筋における肥大したリソソームによっては機械的性能の低下を適切に説明することができず、分解された筋原繊維が入った大型の封入体の存在(即ち、オートファジービルドアップ)が筋機能障害に寄与することが示されている(Raben et al.,Human Mol Genet 17:3897-3908,2008)。報告からはまた、オートファジーフラックスの障害が、ポンペ病患者における治療アウトカムの不良に関連することも示唆される(Nascimbeni et al.,Neuropathology and Applied Neurobiology doi:10.1111/nan.12214,2015;Fukuda et al.,Mol Ther 14:831-839,2006)。加えて、遅発型ポンペ病は、未分類の肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)によく見られ(Preisler et al.,Mol Genet Metab 110:287-289,2013)、LGMDは、様々な重症度の30を超える遺伝的に定義付けられた亜型のある遺伝的に異質の一群の神経筋疾患である。IHC検査により、Gaa KOマウスの骨格筋繊維にジスフェリンの筋形質存在量が実質的に上昇していることが明らかになった。
【0135】
様々な公知の方法を用いてかかるバイオマーカーの遺伝子発現レベル及び/又はタンパク質レベルを測定することができる。例えば、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物で治療した対象から、組織、詳細には筋肉の生検など、試料を入手することができる。一部の実施形態において、試料は、対象の筋肉の生検である。一部の実施形態において、筋肉は、四頭筋、三頭筋、及び腓腹筋から選択される。対象から入手した試料は、かかるバイオマーカーを検出する1つ以上の抗体又は他の検出剤で染色してもよく、又は質量分析法により同定及び定量化してもよい。試料はまた、又はそれに代えて、バイオマーカーをコードするmRNAなどの核酸の存在を、例えば、RT-qPCR法によって検出するために処理してもよい。
【0136】
一部の実施形態において、1つ以上のバイオマーカーの遺伝子発現レベル及び/又はタンパク質レベルが、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物による治療の前及び治療後に、個体から入手した筋生検において測定される。一部の実施形態において、1つ以上のバイオマーカーの遺伝子発現レベル及び/又はタンパク質レベルが、媒体で治療した個体から入手した筋生検において測定される。一部の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物の1つ以上の投薬量の投与後に、1つ以上のバイオマーカーの遺伝子発現レベル及び/又はタンパク質レベルは、媒体で治療した対象のもの又は治療前の対象のものと比較すると、10%、20%、30%、40%、又は50%(又は間にある任意のパーセンテージ)だけ減少する。一部の実施形態において、ATB200又はATB200を含む医薬組成物の1つ以上の投薬量の投与後に、1つ以上のバイオマーカーの遺伝子発現レベル及び/又はタンパク質レベルは、媒体で治療した対象のもの又は治療前の対象のものと比較すると、10%、20%、30%、40%、又は50%(又は間にある任意のパーセンテージ)だけ減少する。特定の実施形態において、減少は、投与から1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、又はそれ以上(又は間にある任意の期間)経った後に実現する。特定の実施形態において、ATB200又はATB200を含む医薬組成物は、投与から1週間、2週間、3週間、1ヵ月、2ヵ月、又はそれ以上(又は間にある任意の期間)経った後に1つ以上のバイオマーカーの遺伝子発現レベル及び/又はタンパク質レベルを減少させる。
【0137】
C.rhGAAの投薬量
医薬製剤又は再構成された組成物は、治療有効量(例えば、一定の間隔で投与したときに、疾患に付随する症状を改善すること、疾患の発生を遅延させること、及び/又は疾患の症状の重症度若しくは頻度を軽減することによるなどして疾患を治療するのに十分である投薬量)で投与される。疾患の治療において治療上有効な量は、疾患の効果の性質及び程度に依存してもよく、標準的な臨床技法により決定することができる。加えて、インビトロ又はインビボアッセイを任意選択で用いると、最適な投薬量範囲を同定する助けとなり得る。少なくとも1つの実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又はrhGAAを含む医薬組成物は、約1mg/kg~約100mg/kg、例えば約5mg/kg~約30mg/kgなど、典型的には約5mg/kg~約20mg/kgの用量で投与される。少なくとも1つの実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物は、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kg、又は約100mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態において、rhGAAは、5mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、50mg/kg、75mg/kg、又は100mg/kgの用量で投与される。少なくとも1つの実施形態において、rhGAA又は医薬組成物は、約20mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態において、rhGAA又は医薬組成物は、薬理学的シャペロンと同時投与又は逐次投与される。一部の実施形態において、薬理学的シャペロンは、ミグルスタットである。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、約260mgの経口用量として投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、約195mgの経口用量として投与される。特定の個体に対する有効用量は、時間の経過に伴い個体の必要性に応じて変わり得る(例えば、増加又は減少し得る)。例えば、身体的な病気又はストレスがあるときは、又は抗酸性α-グルコシダーゼ抗体が存在するようになるか、若しくはそれが増加した場合には、又は疾患症状が悪化した場合には、rhGAA及び/又はミグルスタットの量を調整することができる。
【0138】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物の治療有効用量は、従来のrhGAA製剤よりも低い。例えば、従来のrhGAA製剤の治療有効用量が20mg/kgである場合、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物が従来のrhGAA製剤と同じか又はそれより良好な治療効果を生み出すために必要な用量は、20mg/kgよりも低くてよい。治療効果は、上記で考察した1つ以上の判定基準(例えば、心臓状態、グリコーゲンレベル、又はバイオマーカー発現)に基づき評価されてもよい。一部の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物の治療有効用量は、従来のrhGAA製剤と比べて少なくとも約5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はそれ以上低い。
【0139】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物の治療効果は、運動機能の改善、筋力(上半身、下半身、又は全身)の改善、肺機能の改善、疲労の低下、筋傷害に関する少なくとも1つのバイオマーカーのレベルの減少、グリコーゲン蓄積に関する少なくとも1つのバイオマーカーのレベルの減少、又はこれらの組み合わせを含む。一部の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物の治療効果は、筋繊維のリソソーム病変の回復、筋繊維のグリコーゲン含量のより速い及び/又はより有効性の高い減少、6分間歩行テスト距離の増加、タイムアップアンドゴーテスト時間の減少、階段4段上りテスト時間の減少、10メートル歩行テスト時間の減少、歩行-階段-ガワーズ-椅子スコアの低下、上肢筋力の増加、肩の内転の改善、肩の外転の改善、肘の屈曲の改善、肘の伸展の改善、上半身強度の改善、下半身強度の改善、全身強度の改善、立位(座位)努力肺活量の改善、最大呼気圧の改善、最大吸気圧の改善、疲労重症度尺度スコアの低下、尿中ヘキソース四糖レベルの減少、クレアチンキナーゼレベルの減少、アラニンアミノトランスフェラーゼレベルの減少、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(asparate aminotransferase)レベルの減少、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0140】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物は、同じ用量で投与したとき、所望の治療効果を従来のrhGAA製剤よりも速く実現する。治療効果は、上記で考察した1つ以上の判定基準(例えば、心臓状態、グリコーゲンレベル、又はバイオマーカー発現)に基づき評価されてもよい。例えば、単一用量の従来のrhGAA製剤が治療した個体の組織中のグリコーゲンレベルを1週間で10%低下させる場合、同じ用量の本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物を投与すると、同じ程度の減少を1週間未満で実現し得る。一部の実施形態において、同じ用量で投与したとき、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物は、従来のrhGAA製剤と比べて少なくとも約1.25、1.5、1.75、2.0、3.0、又はそれ以上速く所望の治療効果を実現し得る。
【0141】
一部の実施形態において、治療有効量のrhGAA(又はrhGAAを含む組成物若しくは医薬)は、2回以上投与される。一部の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物は、疾患の効果の性質及び程度に応じて一定の間隔で、継続的に投与される。「一定の間隔」での投与とは、本明細書で使用されるとき、その治療有効量が定期的に(1回限りの用量と区別されるものとして)投与されることを指示している。間隔は、標準的な臨床技法により決定することができる。特定の実施形態において、rhGAAは、隔月、毎月、隔週、毎週、週2回、又は毎日投与される。一部の実施形態において、rhGAAは、週2回、毎週、又は隔週で静脈内投与される。単一の個体に対する投与間隔が固定的な間隔である必要はなく、時間の経過に伴い個体の必要性に応じて変えることができる。例えば、身体的な病気又はストレスがあるときは、抗rhGAA抗体が存在するようになるか、若しくはそれが増加した場合には、又は疾患症状が悪化した場合には、用量間の間隔は減らすことができる。
【0142】
一部の実施形態において、同じ用量で使用されるとき、本明細書に記載されるとおりのrhGAA又は医薬組成物は、従来のrhGAA製剤よりも低い頻度で投与してもよく、それでも従来のrhGAA製剤と同じか又はそれより良好な治療効果を生み出す能力がある。例えば、従来のrhGAA製剤が毎週20mg/kgで投与される場合、本明細書に記載されるとおりのrhGAA又は医薬組成物は、20mg/kgで投与したとき、rhGAA又は医薬組成物がより低い頻度で、例えば、隔週又は毎月投与されたとしても、従来のrhGAA製剤と同じか又はそれより良好な治療効果を生み出し得る。治療効果は、上記で考察した1つ以上の判定基準(例えば、心臓状態、グリコーゲンレベル、又はバイオマーカー発現)に基づき評価されてもよい。一部の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物の2用量間の間隔は、従来のrhGAA製剤よりも長い。一部の実施形態において、rhGAA又は医薬組成物の2用量間の間隔は、従来のrhGAA製剤と比べて少なくとも約1.25、1.5、1.75、2.0、3.0、又はそれ以上長い。
【0143】
一部の実施形態において、同じ治療条件下で(例えば、同じ間隔で投与される同じ用量)、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物は、従来のrhGAA製剤によって提供されるものよりも優れた程度の治療効果を提供する。治療効果は、上記で考察した1つ以上の判定基準(例えば、心臓状態、グリコーゲンレベル、又はバイオマーカー発現)に基づき評価されてもよい。例えば、毎週20mg/kgで投与される従来のrhGAA製剤と比較したとき、毎週20mg/kgで投与されるrhGAA又は医薬組成物によれば、治療した個体の組織中のグリコーゲンレベルはより高度に減少し得る。一部の実施形態において、同じ治療条件下で投与されるとき、本明細書に記載されるrhGAA又は医薬組成物は、従来のrhGAA製剤よりも少なくとも約1.25、1.5、1.75、2.0、3.0、又はそれ以上大きい治療効果を提供する。
【0144】
D.二成分療法
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載されるrhGAA又はrhGAAを含む医薬組成物は、薬理学的シャペロンと同時投与又は逐次投与される。一部の実施形態において、rhGAA又は医薬組成物は、薬理学的シャペロンと比較したとき異なる経路で投与される。例えば、薬理学的シャペロンを経口投与してもよく、一方、rhGAA又は医薬組成物は静脈内投与される。
【0145】
様々な実施形態において、薬理学的シャペロンは、ミグルスタットである。いかなる理論による拘束も望むものではないが、共投与したとき、ミグルスタットはATB200を体循環中での変性から安定化させるため、それによってリソソームへの活性成分ATB200の送達が増強されると考えられる。
【0146】
一部の実施形態において、ミグルスタットは、約50mg~約600mgの経口用量で投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、約200mg~約600mgの経口用量、又は約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、又は約600mgの経口用量で投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、約233mg~約500mgの経口用量で投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、約250~約270mgの経口用量、又は約250mg、約255mg、約260mg、約265mg又は約270mgの経口用量で投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、約260mgの経口用量として投与される。
【0147】
当業者は、成人患者には、その体重に応じて、約200mg~600mgの範囲又はこれらによる任意のより小さい範囲のミグルスタットの経口用量が好適であり得ることを理解するであろう。例えば、限定はされないが、乳児、小児、又は低体重の成人を含め、約70kgよりも大幅に軽い体重の患者については、医師によってより低い用量が好適と見なされ得る。従って、少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、約50mg~約200mgの経口用量として、又は約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約130mg、約150mg、約175mg、約195mg、約200mg、又は約260mgの経口用量として投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、約65mg~約195mgの経口用量として、又は約65mg、約130mg、又は約195mgの経口用量として投与される。
【0148】
一部の実施形態において、rhGAAは、約5mg/kg~約20mg/kgの用量で静脈内投与され、及びミグルスタットは、約50mg~約600mgの用量で経口投与される。一部の実施形態において、rhGAAは、約5mg/kg~約20mg/kgの用量で静脈内投与され、及びミグルスタットは、約50mg~約200mgの用量で経口投与される。一部の実施形態において、rhGAAは、約5mg/kg~約20mg/kgの用量で静脈内投与され、及びミグルスタットは、約200mg~約600mgの用量で経口投与される。一部の実施形態において、rhGAAは、約5mg/kg~約20mg/kgの用量で静脈内投与され、及びミグルスタットは、約200mg~約500mgの用量で経口投与される。一実施形態において、rhGAAは、約20mg/kgの用量で静脈内投与され、及びミグルスタットは、約260mgの用量で経口投与される。一部の実施形態において、rhGAAは、約5mg/kg~約20mg/kgの用量で静脈内投与され、及びミグルスタットは、約130mg~約200mgの用量で経口投与される。一実施形態において、rhGAAは、約20mg/kgの用量で静脈内投与され、及びミグルスタットは、約195mgの用量で経口投与される。
【0149】
一部の実施形態において、ミグルスタット及びrhGAAは、同時投与される。例えば、ミグルスタットは、rhGAAの投与前又は投与後10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1分以内に投与されてもよい。一部の実施形態において、ミグルスタットは、rhGAAの投与前又は投与後5、4、3、2、又は1分以内に投与される。
【0150】
一部の実施形態において、ミグルスタット及びrhGAAは、逐次投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、rhGAAの投与前に投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、rhGAAの投与まで3時間未満に投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、rhGAAの投与の約2時間前に投与される。例えば、ミグルスタットは、rhGAAの投与の約1.5時間前、約1時間前、約50分前、約30分前、又は約20分前に投与し得る。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、rhGAAの投与の約1時間前に投与される。
【0151】
一部の実施形態において、ミグルスタットは、rhGAAの投与後に投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、rhGAAの投与後3時間以内に投与される。少なくとも1つの実施形態において、ミグルスタットは、rhGAAの投与後2時間以内に投与される。例えば、ミグルスタットは、rhGAAの投与後約1.5時間、約1時間、約50分、約30分、又は約20分以内に投与し得る。
【0152】
一部の実施形態において、対象は、ミグルスタットの投与前の少なくとも2時間及び投与後の少なくとも2時間絶食する。
【0153】
一部の実施形態において、本開示に係る二成分療法は、(1)ベースライン、又は(2)アルグルコシダーゼアルファと薬理学的シャペロンのプラセボとを投与することを含む対照治療と比較してポンペ病の対象の1つ以上の疾患症状を改善する。かかる対照治療では、薬理学的シャペロンの代わりにプラセボを投与した。一部の実施形態において、二成分療法で治療される対象は、ERT歴のある患者である。一部の実施形態において、二成分療法で治療される対象は、ERT未経験の患者である。
【0154】
一部の実施形態において、本開示に係る二成分療法は、6分間歩行テスト(6MWT)によって測定されるとおりの、対象の運動機能を改善する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象の6分間歩行距離(6MWD)は、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、又は50メートル又は少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%増加する。一部の実施形態において、対象の6MWDは、52週間の治療後に少なくとも20メートル又は少なくとも5%増加する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の6MWDは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、30、40、又は50メートル改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の6MWDは、52週間の治療後に少なくとも13メートル改善する。一部の実施形態において、対象は、300メートル未満のベースライン6MWDを有する。一部の実施形態において、対象は、300メートル以上のベースライン6MWDを有する。
【0155】
一部の実施形態において、本開示に係る二成分療法は、努力肺活量(FVC)テストによって測定されるとおりの、対象の肺機能を安定化させる。一部の実施形態において、12、26、38、又は52週間の治療後に、対象のパーセント対予測値FVCは、ベースラインと比較すると増加するか、又はベースラインと比較すると0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%未満の低下となるかのいずれかである。一部の実施形態において、52週間の治療後に、対象のパーセント対予測値FVCは、ベースラインと比較すると1%未満の低下となる。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCは、治療後に有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、又は6%有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCは、52週間の治療後に少なくとも3%有意に改善する。一部の実施形態において、対象は、55%未満のベースラインFVCを有する。一部の実施形態において、対象は、55%以上のベースラインFVCを有する。
【0156】
一部の実施形態において、本開示に係る二成分療法は、歩行・階段・ガワーズ・椅子(GSGC)テストによって測定されるとおりの、対象の運動機能を改善する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のGSGCスコアは、12、26、38又は52週間の治療後に少なくとも0.1、0.3、0.5、0.7、1.0、1.5、又は2.5点の低下によって指示されるとおり改善する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のGSGCスコアは、52週間の治療後に少なくとも0.5点の低下によって指示されるとおり改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアは、治療後に有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも0.3、0.5、0.7、1.0、1.5、2.5、又は5点の低下によって指示されるとおり有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアは、52週間の治療後に少なくとも1.0点の低下によって指示されるとおり有意に改善する。
【0157】
一部の実施形態において、本開示に係る二成分療法は、治療後に少なくとも1つの筋損傷マーカーのレベルを減少させる。一部の実施形態において、少なくとも1つの筋損傷マーカーは、クレアチンキナーゼ(CK)を含む。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のCKレベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%減少する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のCKレベルは、52週間の治療後に少なくとも20%減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のCKレベルは、治療後に有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のCKレベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のCKレベルは、52週間の治療後に少なくとも30%有意に減少する。
【0158】
一部の実施形態において、本開示に係る二成分療法は、治療後に少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーのレベルを減少させる。一部の実施形態において、少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーは、尿中ヘキソース四糖(Hex4)を含む。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、又は60%減少する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、52週間の治療後に少なくとも30%減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、治療後に有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、又は60%有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、52週間の治療後に少なくとも40%有意に減少する。
【0159】
一部の実施形態において、本開示に係る二成分療法は、(1)ベースライン、又は(2)アルグルコシダーゼアルファと薬理学的シャペロンのプラセボとを投与することを含む対照治療と比較すると、ERT歴のあるポンペ病の患者対象の1つ以上の疾患症状を改善する。
【0160】
一部の実施形態において、ERT歴のあるポンペ病の対象に対する二成分療法は、6MWTによって測定されるとおりの、対象の運動機能を改善する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象の6MWDは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、又は50メートル又は少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、又は10%増加する。一部の実施形態において、対象の6MWDは、52週間の治療後に少なくとも15メートル又は少なくとも5%増加する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の6MWDは、治療後に有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の6MWDは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10、12、14、15、16、18、20、30、40、又は50メートル有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の6MWDは、52週間の治療後に少なくとも15メートル有意に改善する。一部の実施形態において、対象は、300メートル未満のベースライン6MWDを有する。一部の実施形態において、対象は、300メートル以上のベースライン6MWDを有する。
【0161】
一部の実施形態において、ERT歴のあるポンペ病の対象に対する二成分療法は、FVCテストによって測定されるとおりの、対象の肺機能を改善する。一部の実施形態において、12、26、38、又は52週間の治療後に、対象のパーセント対予測値FVCは、ベースラインと比較すると少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、1%、2%、3%、4%、又は5%増加する。一部の実施形態において、52週間の治療後に、対象のパーセント対予測値FVCは、ベースラインと比較すると少なくとも0.1%増加する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCは、治療後に有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、8%、又は10%有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCは、52週間の治療後に少なくとも4%有意に改善する。一部の実施形態において、対象は、55%未満のベースラインFVCを有する。一部の実施形態において、対象は、55%以上のベースラインFVCを有する。
【0162】
一部の実施形態において、ERT歴のあるポンペ病の対象に対する二成分療法は、GSGCテストによって測定されるとおりの、対象の運動機能を改善する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のGSGCスコアは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも0.1、0.3、0.5、0.7、1.0、1.5、又は2.5点の低下によって指示されるとおり改善する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のGSGCスコアは、52週間の治療後に少なくとも0.5点の低下によって指示されるとおり改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアは、治療後に有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも0.3、0.5、0.7、1.0、1.5、2.5、又は5点の低下によって指示されるとおり有意に改善する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアは、52週間の治療後に少なくとも1.0点の低下によって指示されるとおり有意に改善する。
【0163】
一部の実施形態において、ERT歴のあるポンペ病の対象に対する二成分療法は、治療後に少なくとも1つの筋損傷マーカーのレベルを減少させる。一部の実施形態において、少なくとも1つの筋損傷マーカーは、CKを含む。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のCKレベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%減少する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象のCKレベルは、52週間の治療後に少なくとも15%減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のCKレベルは、治療後に有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のCKレベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、又は50%有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象のCKレベルは、52週間の治療後に少なくとも30%有意に減少する。
【0164】
一部の実施形態において、ERT歴のあるポンペ病の対象に対する二成分療法は、治療後に少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーのレベルを減少させる。一部の実施形態において、少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーは、尿中Hex4を含む。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、又は60%減少する。一部の実施形態において、ベースラインと比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、52週間の治療後に少なくとも25%減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、治療後に有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、12、26、38、又は52週間の治療後に少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、又は60%有意に減少する。一部の実施形態において、対照治療と比較すると、対象の尿中Hex4レベルは、52週間の治療後に少なくとも40%有意に減少する。
【0165】
E.キット
本開示の別の態様は、本明細書に記載されるrhGAA療法の実施に好適なキットに関する。1つ以上の実施形態において、このキットは、rhGAA又は医薬組成物(凍結乾燥前又は凍結乾燥後のいずれか)を含む容器(例えば、バイアル、チューブ、バッグ等)と、再構成、希釈及び投与に関する説明書とを含む。1つ以上の実施形態において、このキットは、薬理学的シャペロン(例えば、ミグルスタット)及びrhGAAを含む医薬組成物(凍結乾燥前又は凍結乾燥後のいずれか)を含む容器(例えば、バイアル、チューブ、バッグ等)と、rhGAAを薬理学的シャペロンと共にした再構成、希釈、及び投与に関する説明書とを含む。
【実施例
【0166】
実施例1:高いモノ-又はビス-M6P担持N-グリカン含量を有するrhGAAを産生するCHO細胞の調製。
DG44 CHO(DHFR-)細胞に、rhGAAを発現するDNAコンストラクトをトランスフェクトした。このDNAコンストラクトは図4に示す。トランスフェクション後、安定に組み込まれたGAA遺伝子を持つCHO細胞をヒポキサンチン/チミジン不含(-HT)培地で選択した)。これらの細胞のGAA発現をメトトレキサート処理(MTX、500nM)によって誘導した。
【0167】
GAAの発現量が高い細胞プールをGAA酵素活性アッセイにより同定し、rhGAAを産生する個別のクローンの樹立に使用した。個別のクローンは半固体培地プレート上で作成し、ClonePixシステムによってピッキングして、24ディープウェルプレートに移し替えた。これらの個別のクローンをGAA酵素活性に関してアッセイし、GAAを高度に発現するクローンを同定した。GAA活性を決定するための馴化培地は、4-MU-α-グルコシダーゼ基質を使用した。GAA酵素アッセイにより測定したときGAAを高度に産生するクローンについて、生存率、成長能力、GAA産生力、N-グリカン構造及び安定したタンパク質発現を更に判定した。モノ-M6P又はビス-M6P N-グリカンが増強されたrhGAAを発現するCHO細胞株は、CHO細胞株GA-ATB200を含め、この手順を用いて単離した。
【0168】
実施例2:rhGAAの精製
本開示に係るrhGAAの複数のバッチをCHO細胞株GA-ATB200を使用して振盪フラスコ及び灌流バイオリアクターに作製した。この産物は「ATB200」と称される。弱陰イオン交換(「WAX」)液体クロマトグラフィーを用いてATB200 rhGAAを末端リン酸塩及びシアル酸に基づき分画した。ERTを漸増量の塩で溶出させることにより、溶出プロファイルを作成した。これらのプロファイルをUV(A280nm)によりモニタした。異なる産生バッチからの精製ATB200 rhGAAについて、同様のCIMPR受容体結合(少なくとも約70%)プロファイルが観察され(図5)、ATB200 rhGAAを一貫して作製できることが示された。
【0169】
実施例3:ATB200 rhGAAのオリゴ糖の特徴付け
ATB200 rhGAAを部位特異的N-グリカンプロファイルに関して異なるLC-MS/MS分析技法を用いて分析した。最初の2つのLC-MS/MS方法の結果は、図6A図6Hに示す。2-AAグリカンマッピングによる第3のLC-MS/MS方法の結果は、図19A図19H図20A図20B、及び表5に示す。
【0170】
最初のLC-MS/MS分析では、タンパク質を変性させて、還元し、アルキル化し、及び消化した後、LC-MS/MS分析にかけた。タンパク質の変性及び還元時、200μgのタンパク質試料、5μLの1mol/Lトリス-HCl(最終濃度50mM)、75μLの8mol/LグアニジンHCl(最終濃度6M)、1μLの0.5mol/L EDTA(最終濃度5mM)、2μLの1mol/L DTT(最終濃度20mM)、及びMilli-Q(登録商標)水を1.5mLチューブに加え、100μLの総容積を提供した。この試料を混合し、乾式浴にて56℃で30分間インキュベートした。アルキル化時、変性させて還元したタンパク質試料を5μLの1mol/L ヨードアセトアミド(IAM、最終濃度50mM)と混合し、次に暗所下10~30℃で30分間インキュベートした。アルキル化後、試料に400μLの予冷したアセトンを加え、この混合物を-80℃の冷凍下に4時間凍結した。次に試料を4℃にて13000rpmで5分間遠心し、上清を除去した。ペレットに400μLの予冷したアセトンを加え、それを4℃にて13000rpmで5分間遠心し、上清を除去した。次に試料を暗所下に氷上で風乾してアセトン残留分を除去した。試料に40マイクロリットルの8M尿素及び160μLの100mM NHHCOを加えてタンパク質を溶解させた。トリプシン消化時、次に50μgのタンパク質をトリプシン消化緩衝液と共に加えて最終容積を100μLにし、及び5μLの0.5mg/mLトリプシン(タンパク質対酵素比20/1w/w)を加えた。この溶液を十分に混合し、37℃で一晩(16±2時間)インキュベートした。2.5マイクロリットルの20%TFA(最終濃度0.5%)を加えて反応をクエンチした。次にThermo Scientific(商標)Orbitrap Velos Pro(商標)質量分析計を使用して試料を分析した。
【0171】
第2のLC-MS/MS分析では、同様の変性、還元、アルキル化、及び消化手順によりATB200試料を調製し、但し、アルキル化試薬としてIAMの代わりにヨード酢酸(IAA)を使用し、次にThermo Scientific(商標)Orbitrap Fusion(商標)Lumos Tribid(商標)質量分析計を使用して分析した。
【0172】
第1及び第2の分析の結果を図6A図6Hに示す。図6A図6Hでは、第1の分析の結果を左のバー(濃い灰色)で表し、及び第2の分析の結果を右のバー(薄い灰色)で表す。グリカン表現の記号命名法は、Varki,A.,Cummings,R.D.,Esko J.D.,et al.,Essentials of Glycobiology,2nd edition(2009)に従う。
【0173】
図6A図6Hを見ると分かるとおり、これらの2つの分析は同様の結果を提供し、しかし結果の間で幾らかのばらつきはあった。このばらつきは、使用した機器及びN-グリカン分析の完全さを含め、幾つもの要因に起因し得る。例えば、リン酸化N-グリカン類の一部の種が同定及び/又は定量化されなかった場合には、そのときリン酸化N-グリカン類の総数は実際よりも少なく評価されることになり得るとともに、その部位におけるリン酸化N-グリカン類を担持するrhGAAの割合は実際よりも少なく評価されることになり得る。別の例として、非リン酸化N-グリカン類の一部の種が同定及び/又は定量化されなかった場合には、そのとき非リン酸化N-グリカン類の総数は実際よりも少なく評価されることになり得るとともに、その部位にあるリン酸化N-グリカン類を担持するrhGAAの割合が実際よりも多く評価されることになり得る。
【0174】
図6Aは、ATB200のN-グリコシル化部位占有率を示す。図6Aを見ると分かるとおり、第1、第2、第3、第4、第5、及び第6のN-グリコシル化部位は、ほぼ占有されており、両分析とも、90%前後又はそれを超える、最大約100%に至るまでのATB200酵素が、潜在的なN-グリコシル化部位の各々に検出されたN-グリカンを有することを検出した。しかしながら、第7の潜在的なN-グリコシル化部位については、N-グリコシル化されているのは約2分の1であった。
【0175】
図6Bは、第1の潜在的なN-グリコシル化部位、N84のN-グリコシル化プロファイルを示す。図6Bを見ると分かるとおり、主要なN-グリカン種は、ビス-M6P N-グリカンである。第1及び第2の分析とも、75%を超えるATB200が第1の部位にビス-M6Pを有することを検出し、これは、第1の部位におけるATB200 1mol当たり平均約0.8molのビス-M6Pに対応した。
【0176】
図6Cは、第2の潜在的なN-グリコシル化部位、N177のN-グリコシル化プロファイルを示す。図6Cを見ると分かるとおり、主要なN-グリカン種は、モノ-M6P N-グリカン及び非リン酸化高マンノース型N-グリカンである。第1及び第2の分析とも、40%を超えるATB200が第2の部位にモノ-M6Pを有することを検出し、これは、第2の部位におけるATB200 1mol当たり平均約0.4~約0.6molのモノ-M6Pに対応した。
【0177】
図6Dは、第3の潜在的なN-グリコシル化部位、N334のN-グリコシル化プロファイルを示す。図6Dを見ると分かるとおり、主要なN-グリカン種は、非リン酸化高マンノース型N-グリカン、ジアンテナ型、トリアンテナ型、及びテトラアンテナ型複合型N-グリカン、並びにハイブリッド型N-グリカンである。第1及び第2の分析とも、20%を超えるATB200が第3の部位にシアル酸残基を有することを検出し、これは、第3の部位におけるATB200 1mol当たり平均約0.9~約1.2molのシアル酸に対応した。
【0178】
図6Eは、第4の潜在的なN-グリコシル化部位、N414のN-グリコシル化プロファイルを示す。図6Eを見ると分かるとおり、主要なN-グリカン種は、ビス-M6P及びモノ-M6P N-グリカンである。第1及び第2の分析とも、40%を超えるATB200が第4の部位にビス-M6Pを有することを検出し、これは、第4の部位におけるATB200 1mol当たり平均約0.4~約0.6molのビス-M6Pに対応した。第1及び第2の分析とも、25%を超えるATB200が第4の部位にモノ-M6Pを有することもまた検出し、これは、第4の部位におけるATB200 1mol当たり平均約0.3~約0.4molのモノ-M6Pに対応した。
【0179】
図6Fは、第5の潜在的なN-グリコシル化部位、N596のN-グリコシル化プロファイルを示す。図6Fを見ると分かるとおり、主要なN-グリカン種は、フコシル化したジアンテナ型複合型N-グリカンである。第1及び第2の分析とも、70%を超えるATB200が第5の部位にシアル酸残基を有することを検出し、これは、第5の部位におけるATB200 1mol当たり平均約0.8~約0.9molのシアル酸に対応した。
【0180】
図6Gは、第6の潜在的なN-グリコシル化部位、N826のN-グリコシル化プロファイルを示す。図6Gを見ると分かるとおり、主要なN-グリカン種は、ジアンテナ型、トリアンテナ型、及びテトラアンテナ型複合型N-グリカンである。第1及び第2の分析とも、80%を超えるATB200が第6の部位にシアル酸残基を有することを検出し、これは、第6の部位におけるATB200 1mol当たり平均約1.5~約1.8molのシアル酸に対応した。
【0181】
第7の部位、N869におけるN-グリコシル化の分析では、約40%のN-グリコシル化が明らかとなり、最も多く見られるN-グリカンは、A4S3S3GF(12%)、A5S3G2F(10%)、A4S2G2F(8%)及びA6S3G3F(8%)であった。
【0182】
図6Hは、7つの潜在的なN-グリコシル化部位の各々におけるリン酸化の要約を示す。図6Hを見ると分かるとおり、第1及び第2の分析の両方とも、第1、第2、及び第4の潜在的なN-グリコシル化部位に高いリン酸化レベルを検出した。両方の分析とも、80%を超えるATB200が第1の部位でモノ又はビスリン酸化されていること、40%を超えるATB200が第2の部位でモノリン酸化しされていること、及び80%を超えるATB200が第4の部位でモノ又はビスリン酸化されていることを検出した。
【0183】
ATB200の別のN-グリコシル化分析を、以下に記載するとおりのLC-MS/MS方法により実施した。この分析から、10ロットにわたるATB200の平均N-グリコシル化プロファイルが作られた(図19A図19H図20A図20B)。
【0184】
ATB200からのN-結合型グリカンをPNGase-Fで酵素的に放出させて、2-アントラニル酸(2-AA)で標識した。2-AA標識したN-グリカンを固相抽出(SPE)により更に処理して、過剰な塩及び他の夾雑物を除去した。精製した2-AA N-グリカンをアセトニトリル/水(20/80;v/v)に溶解させ、10マイクログラムをアミノポリマー分析カラム(apHera(商標)、Supelco)にロードして、高速液体クロマトグラフィーと蛍光検出(HPLC-FLD)及び高分解能マススペクトロメトリー(HRMS)分析にかけた。
【0185】
液体クロマトグラフ(LC)分離を順相条件下において移動相A(アセトニトリル中2%酢酸)及び移動相B(5%酢酸;水酸化アンモニウムでpH4.3に調整した水中20ミリモル酢酸アンモニウム)のグラジエント溶離モードで実施した。開始時移動相の組成は、70%A/30%Bであった。蛍光検出について、検出器(RF-20Axs、Shimadzu)のパラメータは、励起(Ex):320nm;発光(Em):420nmであった。HRMS分析は、独立データ収集(IDA)モードで動作する四重極飛行時間型質量分析計(Sciex X500B QTOF)を使用して行った。取得されたデータファイルをProteoWizardのMSConvertを使用してmzMLファイルに変換し、次にGRITSツールボックス1.2 Morning Blendソフトウェア(UGA)を利用してグリカンデータベース検索にかけ、続いて同定されたN-グリカンにアノテーションを付けた。N-グリカンは、プレカーサーモノアイソトピック質量(m/z)及びプロダクトイオンm/zの両方を用いて同定した。実験的プロダクトイオン及びフラグメンテーションパターンをGlycoWorkbench 2アプリケーションを使用してインシリコで確認した。
【0186】
ATB200からのN-結合型グリカンの相対的定量化を決定するため、HPLC-FLD-QTOF MS/MS実験から取得されたデータを以下のとおり処理した。FLDクロマトグラムの全てのN-グリカンピークを積分し、各ピークに、FLDクロマトグラムの全てのピークの総面積に対するパーセンテージを割り当てた。ピーク面積として表した蛍光シグナルが、試料中の各N-グリカンの量の定量的尺度である。しかしながら、ほとんどの場合に、複数のN-グリカン種が同じFLDピークに含まれた。従って、各N-グリカン種の相対的定量を入手するには、質量分析データもまた必要であった(表5)。データから各N-グリカンのイオン強度シグナルを「抽出」して、抽出イオンクロマトグラム(XIC)と呼ばれるクロマトグラフィーピークを作り出した。FLDクロマトグラフィーピークと整列したXICは、1つのN-グリカン種に対してのみ特異的であった。次に、イオン強度シグナルから作り出されたXICピークを積分した。このピーク面積が、存在するグリカンの量の相対的定量尺度である。FLDピーク面積及び質量分析計XICピーク面積の両方を用いることにより、本明細書に報告されるATB200の全てのN-結合型グリカン種の相対的定量化が可能となった。
【0187】
このLC-MS/MS分析の結果は、以下の表5に提供する。グリカン表現の記号命名法は、Wopereis W,et al.2006.「シアル酸尿症患者における超シアル化O-グリカン類による異常なグリコシル化(Abnormal glycosylation with hypersialylated O-glycans in patients with Sialuria)」.Biochimica et Biophysica Acta.1762:598-607;Gornik O,et al.2007.「敗血症及び急性膵炎における血清グリカンの変化(Changes of serum glycans during sepsis and acute pancreatitis)」.Glycobiology.17:1321-1332;Kattla JJ,et al.2011.「生物学的タンパク質グリコシル化(Biologic protein glycosylation)」.In:Murray Moo-Young(ed.),Comprehensive Biotechnology,Second Edition,3:467-486;Tharmalingam-Jaikaran T,et al.「鍵となる主席卵胞発育段階におけるウシ卵胞液のN-グリカンプロファイリング(N-glycan profiling of bovine follicular fluid at key dominant follicle developmental stages)」.2014.Reproduction.148:569-580;Clerc F,et al.「ヒト血漿タンパク質N-グリコシル化(Human plasma protein N-glycosylation)」.2015.Glycoconj J.DOI 10.1007/s10719-015-9626-2;及びBlackler RJ,et al.2016.「単鎖抗体断片M6P-1は、分岐特異的方法でN-グリカンリン酸化を区別するマンノース6-リン酸単糖特異的結合ポケットを持つ(Single-chain antibody-fragment M6P-1 possesses a mannose 6-phosphate monosaccharide-specific binding pocket that distinguishes N-glycan phosphorylation in a branch-specific manner)」.Glycobiology.26-2:181-192に従う。
【0188】
【表7】
【0189】
この2-AA及びLC-MS/MS分析に基づけば、及び更に要約するとおり、試験したATB200は、1molのATB200当たり3~5molの平均M6P含量(モノ-M6P及びビス-M6Pの両方が占める)及び1molのATB200当たり4~7molのシアル酸含量を有する。
【0190】
図19A図19Hに示され、及び図20Bに要約されるとおり、ATB200の第1の潜在的なN-グリコシル化部位は、約0.25molのモノ-M6P/mol ATB200の平均モノ-M6P含量及び約0.56molのビス-M6P/mol ATB200の平均ビス-M6P含量が占める約1.4molのM6P/mol ATB200の平均M6P含量を有し;ATB200の第2の潜在的なN-グリコシル化部位は、約0.5molのM6P/mol ATB200の平均M6P含量を有し、ここで主要なリン酸化N-グリカン種はモノ-M6P N-グリカンであり;ATB200の第3の潜在的なN-グリコシル化部位は約1molのシアル酸/mol ATB200の平均シアル酸含量を有し;ATB200の第4の潜在的なN-グリコシル化部位は、約0.35molのモノ-M6P/mol ATB200の平均モノ-M6P含量及び約0.52molのビス-M6P/mol ATB200の平均ビス-M6P含量が占める約1.4molのM6P/mol ATB200の平均M6P含量を有し;ATB200の第5の潜在的なN-グリコシル化部位は約0.86molのシアル酸/mol ATB200の平均シアル酸含量を有し;ATB200の第6の潜在的なN-グリコシル化部位は約4.2molのシアル酸/mol ATB200の平均シアル酸含量を有し;及びATB200の第7の潜在的なN-グリコシル化部位は約0.86molのシアル酸/mol ATB200の平均シアル酸含量を有する。
【0191】
また、この2-AA及びLC-MS/MS分析的技法によれば、ATB200の第1の潜在的なN-グリコシル化部位におけるN-グリカンの平均約65%が高マンノース型N-グリカンであり、ATB200の第2の潜在的なN-グリコシル化部位におけるN-グリカンの約89%が高マンノース型N-グリカンであり、ATB200の第3の潜在的なN-グリコシル化部位における半分を超えるN-グリカンがシアル化されており(20%近くが完全にシアル化されている)、及びATB200の第3の潜在的なN-グリコシル化部位におけるN-グリカンの約85%が複合型N-グリカンであり、ATB200の第4の潜在的なN-グリコシル化部位におけるN-グリカンの約84%が高マンノース型N-グリカンであり、ATB200の第5の潜在的なN-グリコシル化部位におけるN-グリカンの約70%がシアル化されており(約26%が完全にシアル化されている)、及びATB200の第5の潜在的なN-グリコシル化部位におけるN-グリカンの約100%が複合型N-グリカンであり、ATB200の第6の潜在的なN-グリコシル化部位におけるN-グリカン類の約85%がシアル化されており(27%近くが完全にシアル化されている)、及びATB200の第6の潜在的なN-グリコシル化部位におけるN-グリカンの約98%が複合型N-グリカン類であり、及びATB200の第7の潜在的なN-グリコシル化部位におけるN-グリカンの約87%がシアル化されており(8%近くが完全にシアル化されている)、及びATB200の第7の潜在的なN-グリコシル化部位におけるN-グリカンの約100%が複合型N-グリカンである。
【0192】
実施例4:ATB200及びMYOZYME(登録商標)/LUMIZYME(登録商標)の分析的比較
精製したATB200及びLUMIZYME(登録商標)N-グリカンをMALDI-TOFにより判定して、各ERTに見られる個別のN-グリカン構造を決定した。LUMIZYME(登録商標)を商業的供給元から入手した。図7に示されるとおり、ATB200は、LUMIZYME(登録商標)の右側に溶出した4つの顕著なピークを呈した。この判定はCIMPR親和性よりむしろ、末端電荷によるものであるため、これにより、ATB200がLUMIZYME(登録商標)よりも高度にリン酸化していたことが確認される。図8に要約されるとおり、ATB200試料は、LUMIZYME(登録商標)よりも非リン酸化高マンノース型N-グリカンの含有量が低いことが分かった。
【0193】
MYOZYME(登録商標)及びLUMIZYME(登録商標)における従来のrhGAAがCIMPRと相互作用する能力を判定するため、2つの従来のrhGAA製剤をCIMPRアフィニティーカラム(これは、M6P基を有するrhGAAを結合する)に注入し、フロースルーを回収した。結合した材料を遊離M6グラジエントで溶出させた。96ウェルプレートに画分を回収し、4MU-α-グルコシダーゼ基質によってGAA活性をアッセイした。未結合のrhGAA(フロースルー)と結合したrhGAA(溶出したM6P)との相対量をGAA活性に基づき決定し、全酵素に対する割合として報告した。図9A及び図9Bは、MYOZYME(登録商標)及びLUMIZYME(登録商標)におけるrhGAAの結合プロファイルを示す:MYOZYME(登録商標)におけるrhGAAの73%(図9B)及びLUMIZYME(登録商標)におけるrhGAAの78%(図9A)が、CIMPRに結合しなかった。実際、MYOZYME(登録商標)におけるrhGAAの僅か27%及びLUMIZYME(登録商標)におけるrhGAAの22%のみが、それを筋細胞上のCIMPRへと標的化するのに生産的であり得るM6Pを含有した。対照的に、図5に示されるとおり、同じ条件下で、ATB200の70%を超えるrhGAAがCIMPRに結合することが分かった。
【0194】
CIMPRに結合することのできるrhGAAの割合が大きいことに加えて、その相互作用の質を理解することが重要である。LUMIZYME(登録商標)及びATB200受容体結合をCIMPRプレート結合アッセイを用いて決定した。簡潔に言えば、CIMPRでコートしたプレートを使用してGAAを捕捉した。固定化した受容体に様々な濃度のrhGAAを適用し、未結合のrhGAAを洗い流した。残留しているrhGAAの量をGAA活性により決定した。図10Aに示されるとおり、ATB200はLUMIZYME(登録商標)よりも有意に良好にCIMPRに結合した。図10Bは、LUMIZYME(登録商標)(従来のrhGAA製剤)及び本発明に係るATB200におけるビス-M6P N-グリカンの相対含量を示す。LUMIZYME(登録商標)については、平均して僅か10%の分子がビスリン酸化N-グリカンを有する。対照的に、ATB200では、平均してあらゆるrhGAA分子が少なくとも1つのビスリン酸化N-グリカンを有する。
【0195】
全体的に見て、ATB200におけるM6P N-グリカンの含量がLUMIZYME(登録商標)よりも高いことは、ATB200ではより高い割合のrhGAA分子が筋細胞を標的化できることを指し示している。上記に示すとおり、MALDIにより決定された高い割合のモノリン酸化及びビスリン酸化構造は、ATB200がCIMPR受容体に有意に大きく結合することを説明するCIMPRプロファイルと一致している。MALDI-TOF質量分析法によるN-グリカン分析により、平均して各ATB200分子が少なくとも1つの天然のビス-M6P N-グリカン構造を持っていることが確認された。このATB200でのより高いビス-M6P N-グリカン含量は、M6P受容体プレート結合アッセイにおけるCIMPRに対する高い親和性結合(K約2~4nM)と直接相関している。
【0196】
ATB200及びLUMIZYME(登録商標)rhGAAの相対的細胞取込みを正常な及びポンペ病の線維芽細胞株を使用して比較した。比較には、5~100nMの本開示に係るATB200と10~500nMの従来のrhGAA製剤LUMIZYME(登録商標)が関わった。16時間のインキュベーション後、外部にあるrhGAAをトリス塩基で不活性化し、細胞をPBSで3回洗浄した後、回収した。インターナライズされたGAAを4MU-α-グルコシド加水分解により測定し、全細胞タンパク質に対してグラフ化した。結果は図11A図11Cに見られる。
【0197】
ATB200はまた、細胞に効率的にインターナライズされたことを示した。図11A図11Bに図示されるとおり、ATB200は、正常及びポンペ病の両方の線維芽細胞にインターナライズされ、インターナライズされる程度は従来のrhGAA製剤LUMIZYME(登録商標)よりも大きい。ATB200は約20nMで細胞受容体を飽和させる一方、細胞受容体を飽和させるには約250nMのLUMIZYME(登録商標)(登録商標)が必要である。これらの結果から推定される取込み効率定数(Kuptake)は、図11Cに示されるとおり、ATB200について2~3nm及びLUMIZYME(登録商標)について56nMである。これらの結果は、ATB200が、ポンペ病に対する良好に標的化された治療であることを示唆している。
【0198】
実施例5:ATB200及び薬理学的シャペロン
酸性又は中性pH緩衝液中でのATB200の安定性を、SYPROオレンジを使用した熱安定性アッセイにおいて、タンパク質が変性すると色素の蛍光が増加することに伴い判定した。図12に示されるとおり、AT2221を加えると、ATB200はpH7.4で濃度依存的に安定化し、これは、リソソームの酸性環境を模倣する条件であるpH5.2におけるATB200の安定性と同等であった。表6に要約されるとおり、AT2221を加えると、ATB200の融解温度(T)がほぼ10℃上昇した。
【0199】
【表8】
【0200】
実施例6:Gaa KOマウスにおけるATB200及びAT2221の共投与
Gaa KOマウスにおいてATB200及びAT2221の治療効果を判定し、アルグルコシダーゼアルファと比較した。この試験には、雄Gaa KO(3~4ヵ月齢)及び年齢対応野生型(WT)マウスを使用した。アルグルコシダーゼアルファをボーラス尾静脈静脈内(IV)注射により投与した。共投与レジメンでは、ATB200の静脈内注射の30分前にAT2221を強制経口投与(PO)により投与した。治療は隔週で与えた。最終回投与から14日後に、治療したマウスを犠牲死させ、更なる分析用に様々な組織を採取した。表7は、試験デザインを要約する。
【0201】
【表9】
【0202】
組織試料の組織中グリコーゲン含量を、上記で考察したとおり、アミログルコシダーゼ消化を用いて決定した。図13に示されるとおり、20mg/kg ATB200と10mg/kg AT2221との組み合わせでは、4つの異なる組織(四頭筋、三頭筋、腓腹筋、及び心臓)において、同じ投薬量のアルグルコシダーゼアルファと比較したときグリコーゲン含量が有意に低下した。
【0203】
組織試料をまた、Khanna R,et al.(2012),「薬理学的シャペロンAT2220はポンペ病マウスモデルにおいて組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ取込み及びグリコーゲン低下を増加させる(The pharmacological chaperone AT2220 increases recombinant human acid α-glucosidase uptake and glycogen reduction in a mouse model of Pompe disease)」,Plos One 7(7):e40776;及びKhanna,R et al.(2014),「薬理学的シャペロンAT2220はポンペ病トランスジェニックマウスモデルにおいて突然変異体酸性α-グルコシダーゼの特異的活性及びリソソーム送達を増加させ、グリコーゲン低下を促進する(The Pharmacological Chaperone AT2220 Increases the Specific Activity and Lysosomal Delivery of Mutant Acid α-Glucosidase,and Promotes Glycogen Reduction in a Transgenic Mouse Model of Pompe Disease)」,PLoS ONE 9(7):e102092に考察される方法に従い、バイオマーカーの変化に関しても分析した。図14に示されるとおり、WTと比較して、Gaa KO動物の筋繊維には、リソソーム増殖を指示するものであるLAMP1陽性小胞の著明な増加及びその肥大が見られた。ATB200/AT2221の共投与により、正常化したLAMP1レベルの繊維が多くなることにつながった一方、残りのLAMP1陽性小胞もまたサイズが減少した(挿入図)。
【0204】
同様に、未治療Gaa KOマウスの筋繊維における著しいLC3陽性凝集体は、オートファジー領域及びオートファジービルドアップの存在の表れである。LC3陽性凝集体(赤色)は、アルグルコシダーゼアルファで治療したマウスと比較したとき、ATB200/AT2221共投与で治療したマウスで優先的に減少した(図15A)。LC3の発現をウエスタンブロットを用いて評価したときにも、同様の観察が得られた。図15Bに示されるとおり、ATB200/AT2221で治療した動物の大多数が、オートファゴソームに関連する脂質化した形態であるLC3 IIのレベルの有意な低下を示したことから、オートファジーフラックスの改善が示唆される。比較すると、アルグルコシダーゼアルファがオートファジーに及ぼす効果はそれほど大きくなかった。
【0205】
膜修復に関与するタンパク質であって、その欠損/誤った輸送が幾つもの筋ジストロフィーに関連するジスフェリンについてもまた評価した。図16に示されるとおり、ジスフェリン(茶色)は、Gaa KOマウスの筋形質に重度に蓄積した。アルグルコシダーゼアルファと比較して、ATB200/AT2221は、より多数の筋繊維の筋鞘にジスフェリンを回復させることができた。
【0206】
これらのデータは、ATB200及びミグルスタットで治療したヒトポンペ病患者において実証された細胞レベルでの改善(例えば、これらの患者はグリコーゲン蓄積及び筋傷害のバイオマーカーレベルの減少を呈する)と一致しており、ポンペ病の有効な治療というだけでなく、疾患の進行を好転させることにもつながる。ヒトポンペ病患者における臨床データは、以下の実施例8及び9に要約する。
【0207】
実施例7:単一繊維分析
図17に示されるとおり、媒体治療のマウスの大多数は、著しく肥大したリソソーム(緑色)(例えば「B」を参照)及び塊状のオートファジービルドアップの存在(赤色)(例えば「A」を参照)を示した。MYOZYME(登録商標)治療のマウスは、媒体治療マウスと比較したとき、いかなる有意差も示さなかった。対照的に、ATB200で治療したマウスから単離したほとんどの繊維が、リソソームサイズの劇的な減少を示した(例えば、「C」を参照)。更には、オートファジービルドアップの範囲についてもまた、様々な程度の減少があった(例えば、「C」を参照)。結果として、ATB200治療マウスからの分析した筋繊維の大きな割合(36~60%)が、正常又はほぼ正常であるように見えた。以下の表8は、図17に示す単一繊維分析を要約する。
【0208】
【表10】
【0209】
全体的に見て、このデータは、そのM6P含量が高いATB200が、単独でも、血液の中性pHで薬理学的シャペロンAT2221によって更に安定化させたものも両方とも、図18に図示されるとおりのAT2221によるATB200の安定化と一致して、アルグルコシダーゼアルファと比較して、Gaa KOマウスに投与したときの組織標的化及びリソソーム輸送の効率が高いことを指し示している。結果として、ATB200の投与及びATB200/AT2221の共投与は、グリコーゲン蓄積、リソソーム増殖、及びオートファジー領域の形成など、疾患関連病変の一部を修正することにおける有効性がアルグルコシダーゼアルファよりも高かった。これらの正の治療効果に起因して、ATB200の投与及びATB200/AT2221共投与は、最適なGAA活性を欠くことが原因で細胞に蓄積したグリコーゲンを除去することにより、筋繊維を損傷から回復させて、更には損傷を好転させる可能性があることが示される。実施例6と同様に、これらのデータはまた、ATB200及びミグルスタットの投与後にポンペ病の有効な治療及び疾患進行の好転の両方につながるヒトポンペ病患者で実証された細胞レベルでの改善とも一致している。ヒトポンペ病患者の臨床データは、以下の実施例8及び9に要約する。
【0210】
実施例8:ATB200-02治験
ポンペ病を有する成人対象におけるATB200とAT2221の静脈内注入について安全性、忍容性、薬物動態、薬力学、及び暫定的な有効性を評価する第1/2相(ATB200-02、NCT-02675465)非盲検、固定順序、用量漸増臨床試験を行った。このデータは国際公開第2020/163480号パンフレット(この開示は本明細書において参照により援用される)に報告された。
【0211】
実施例9:ATB200-03治験:ポンペ病患者におけるATB200/AT2221の第3相イン・ヒューマン試験
ATB200-03治験は、アルグルコシダーゼアルファ/プラセボと比較した、アルグルコシダーゼアルファによる酵素補充療法を受けたことがある(即ち、ERT歴あり)又はERTを一度も受けたことがない(即ち、ERT未経験)遅発型ポンペ病(LOPD)の成人対象におけるATB200/AT2221の第3相二重盲検、無作為化、多施設、国際試験であった。
【0212】
研究デザイン
図21に示されるとおり、この治験は、最長30日間のスクリーニング期間、12ヵ月間の治療期間、及び30日間の安全性フォローアップ期間からなった。適格な対象をATB200/AT2221又はアルグルコシダーゼアルファ/プラセボの投与を受けるように2:1の比で無作為に割り付け、ERT状態別(ERT歴あり、ERT未経験)及びベースライン6分間歩行距離(6MWD)別(75メートル以上150メートル未満、150メートル以上400メートル未満、400メートル以上)に層別化した。
【0213】
有効性評価(即ち、機能評価)には、歩行機能の判定(6MWT)、運動機能テスト(歩行・階段・ガワーズ・椅子動き(GSGC)テスト及びタイムアップアンドゴー(TUG)テスト)、筋力(徒手筋力テスト及び定量的筋力テスト)、及び肺機能検査(FVC、SVC、MIP、MEP、及びSNIP)が含まれた。患者報告アウトカム(Rasch-built Pompe-specific Activity(R Pact)尺度、EuroQol 5 Dimensions 5レベルインスツルメント(EQ-5D-5L)、身体機能、疲労、呼吸困難、及び上肢についての患者報告アウトカム測定情報システム(PROMIS(登録商標))インスツルメント、及び対象による変化の全般的印象(Subject’s Global Impression of Change)を記録した。医師による変化の全般的印象(Physician’s Global Impression of Change)もまた実施した。
【0214】
薬力学的評価には、筋傷害についてのバイオマーカー(クレアチンキナーゼ(CK)及び疾患基質(尿中ヘキソース四糖(Hex4))の測定が含まれた。血漿中の総GAAタンパク質レベル及びAT2221濃度を決定するため、ERT歴のある対象における母集団PK分析用の低密度血液試料を採取した。ERT未経験対象では、総GAAタンパク質及びAT2221のPKプロファイルを特徴付けるため時系列血液試料採取を行った。
【0215】
安全性評価には、注入関連反応(IAR)を含めた有害事象(AE)のモニタリング、臨床検査(化学、血液学、及び検尿)、バイタルサイン、体重を含む理学的検査、心電図(ECG)、及び免疫原性が含まれた。併用薬及び非薬物療法もまた記録した。
【0216】
対象の選択
試験に参加した対象は、以下の組入れ基準を全て満たし、且ついかなる除外基準も満たさなかった。全体では、122例の対象がこのATB200-03治験に参加した。そのうち、85例の対象(ERT歴あり:65例;ERT未経験:20例)がATB200/AT2221治療を受け、37例の対象(ERT歴あり:30例;ERT未経験:7例)がアルグルコシダーゼアルファ/プラセボ治療を受けた。図22に示されるとおり、ベースライン6MWD及びFVCデータは集団の代表であり、2つの治療群で概して同様であった。
【0217】
組入れ基準:
1.任意の試験関連手順を実施する前に、対象は署名したインフォームドコンセントを提出した。
2.男性及び女性対象はスクリーニング時に18歳以上及び体重40kg以上であった。
3.妊娠の可能性がある女性対象及び男性対象は、本試験中及び最終回の試験薬投与後90日間は医学上認められている避妊方法を用いることに同意した。
4.対象は、以下のうちの1つの文書記録に基づくLOPDの診断を有した:
a.GAA酵素の欠損
b.GAA遺伝子タイピング
5.対象は、ERT状態に関して以下のうちの1つに分類された:
a.ERT歴あり、標準治療ERT(アルグルコシダーゼアルファ)を推奨される用量及びレジメン(即ち、2週間毎に20mg/kg用量)で24ヵ月以上にわたって受けたことがあるとして定義される
オーストラリアについては特別に、ERT歴あり、標準治療ERT(アルグルコシダーゼアルファ)を2週間毎に除脂肪体重又は理想体重を基準とする20mg/kgの用量で、推奨される用量及びレジメンで受けたことがあるとして定義される
b.ERT未経験、治験薬又は市販薬のERTを一度も受けたことがないとして定義される
6.対象はスクリーニング時に座位FVCが健康成人についての予測値(全国健康栄養調査III(National Health and Nutrition Examination Survey III))の30%以上であった。
7.対象はスクリーニング時に2回の6MWTを実施し、それらは臨床判定者が決定するとき有効であったとともに、以下の判定基準を全て満たした:
a.6MWDの両方のスクリーニング値とも、75メートル以上であった
b.6MWDの両方のスクリーニング値とも、健康成人についての予測値の90%以下であった
c.6MWDの低い方の値が6MWDの高い方の値から20%以内であった
【0218】
除外基準:
1.対象は、1日目に先立つ30日間又はその療法若しくは治療の5半減期のいずれか長い方のうちに、ポンペ病に対する何らかの治験中の療法又はアルグルコシダーゼアルファ以外の薬理学的治療を受けたことがあったか、又は試験中にそれを受ける見込みがあった。
2.対象はポンペ病に対する遺伝子療法を受けたことがあった。
3.対象は、1日目に先立つ30日間のうちに以下の禁止薬物のいずれかを服用中であった:
・ミグリトール
・ミグルスタット
・アカルボース
・ボグリボース
4.対象は、覚醒時に1日6時間を超える侵襲的又は非侵襲的換気補助の使用が必要であった。
5.対象は、ATB200、アルグルコシダーゼアルファ、又はAT2221中の賦形剤のいずれかに対する過敏症を有した。
6.対象は、治験責任医師又はメディカルモニターの意見によれば、対象に過度の安全性リスクを及ぼす、又は対象がプロトコル要件を順守する能力を損なうか若しくはそれに悪影響を与えるような医学的状態又は任意の他の酌量すべき状況を有した。これには、(精神科医又は他のメンタルヘルスの専門家が診断したとき)制御されない又は制御不良の症状を伴う臨床的うつ病が含まれた。
7.対象は、女性の場合に、スクリーニング時に妊娠中又は授乳中であった。
8.対象は、男女問わず、試験中に妊娠する計画を有した。
9.対象は遺伝子検査を受けることを拒否した。
【0219】
治験薬、投薬量、及び投与方法
ATB200/AT2221又はアルグルコシダーゼアルファ/プラセボのいずれかの投与を受けるように対象を少なくとも2:1の無作為化比で無作為化した。以下の表9は、登録した対象の治療を要約する。
【0220】
【表11】
【0221】
データ判定及び統計的考察
主要有効性評価項目は、ベースラインから52週目までの6MWDの変化であった。主要評価項目は、反復測定混合効果モデル(MMRM)及び正規性が破れた場合には事前指定された非パラメトリック検定を用いて、アルグルコシダーゼアルファ/プラセボに対するATB200/AT2221の優位性に関して検定した。
【0222】
鍵となる副次的有効性評価項目は、事前指定された階層的重要性の順に、以下のとおりであった。これらの副次的評価項目は、共分散分析(ANCOVA)モデルと、直近の観測値を代入する欠測値補完法を用いて分析した(ITT LOCF)。
・座位FVC(%対予測値)のベースラインから52週目までの変化
・下肢徒手筋力テストスコアのベースラインから52週目までの変化
・PROMIS-身体機能の総スコアのベースラインから52週目までの変化
・PROMIS-疲労の総スコアのベースラインから52週目までの変化
・GSGC総スコアのベースラインから52週目までの変化
【0223】
他の副次的有効性評価項目は、以下のとおりであった:
・運動機能に関する以下の変数のベースラインから52週目までの変化:
- GSGCテストの10メートル歩行を完了するのにかかる時間(即ち、歩行の評価)
- GSGCテストの4段の階段上りを完了するのにかかる時間
- GSGCテストのガワーズの動きを完了するのにかかる時間
- GSGCテストの一部としての椅子から立ち上がるのにかかる時間
- TUGテストを完了するのにかかる時間
・筋力に関する以下の変数のベースラインから52週目までの変化:
- 上肢徒手筋力テストスコア
- 徒手筋力テスト総スコア
- 上肢定量的筋力テスト値(kg)
- 下肢定量的筋力テスト値(kg)
- 定量的筋力テスト合計値(kg)
・患者報告アウトカム尺度からの以下の変数のベースラインから52週目までの変化:
- PROMIS-呼吸困難の総スコア
- PROMIS-上肢の総スコア
- R-PAct尺度総スコア
- EQ-5D-5L健康状態
・対象による変化の全般的印象(Subject’s Global Impression of Change)によって測定されるとおりの、52週目の以下の生活領域における試験薬の効果に関する対象の機能状態(改善、安定、又は悪化)の実測値
- 全般的な身体的健康
- 呼吸努力
- 筋力
- 筋機能
- 動き回る能力
- 日常生活活動
- 活力の程度
- 筋肉痛の程度
・医師による変化の全般的印象(Physician’s Global Impression of Change)によって測定されるとおりの、52週目における対象の機能状態(改善、安定、又は悪化)の実測値
・以下のとおりの、以下の肺機能尺度のベースラインから52週目までの変化:
- 座位FVC(%対予測値)
- MIP(cmHO)
- MIP(%対予測値)
- MEP(cmHO)
- MEP(%対予測値)
- SNIP(cmHO)
【0224】
薬力学的評価項目は以下のとおりであった:
・血清CKレベルのベースラインから52週目までの変化
・尿中Hex4レベルのベースラインから52週目までの変化
【0225】
ERT歴のある対象については、総GAAタンパク質レベル及びAT2221濃度の母集団PK分析からの薬物動態評価項目を収集した。ERT未経験対象については、血漿総GAAタンパク質濃度及びAT2221のPKパラメータを計算した。
【0226】
ATB200/AT2221の安全性プロファイルは、治療中に発生した有害事象(TEAE)、重篤有害事象(SAE)、及び試験薬の中止につながるAEの発生率、即時及び遅発IARの頻度及び重症度、並びに他の安全性評価で認められた任意の異常を用いて特徴付けた。ATB200及びアルグルコシダーゼアルファに対する免疫原性が安全性及び有効性に及ぼす影響もまた評価した。
【0227】
統計的方法には、標本無作為化、標本サイズ計算、有効性分析、及び安全性分析に関して以下の考慮を含めた。
【0228】
無作為化。以下の2つの因子をデザイン層別化変数として同定した:1.ベースライン6MWD(75以上150メートル未満、150以上400メートル未満、400メートル以上);及び2.ERT状態(ERT歴あり、ERT未経験)。これらの2つの因子が、6つの因子の組み合わせ(即ち、レベル、層)を形成した。中央施設でのブロック無作為化手順を用いて上記のリスク因子の均衡をとることにより、1)バイアスを低減して統計的推定の精度を増加させ、及び2)様々な計画された及び計画外のサブセット分析を可能にした。ブロック無作為化スキームは、6層の各々について実施した。無作為化比は、固定した、2:1のATB200/AT2221対アルグルコシダーゼアルファ/プラセボである。
【0229】
標本サイズの計算。0.05の両側有意水準及び2:1無作為化スキーム(99例の対象の合計標本サイズについて、ATB200/AT2221群に66例の対象及びアルグルコシダーゼアルファ/プラセボ群に33例の対象)による2標本t検定では、優位性検定においてこれらの2標本間に0.7の標準化効果量を検出するのに約90%の検出力を有すると決定された。この計算は、Nquery 8(著作権)(登録商標)を使用して実施した。10%の脱落率を仮定すると、標本サイズは約110例の対象となった。
【0230】
有効性分析。パラメトリック共分散分析(ANCOVA)モデルを用いて主要有効性評価項目(即ち、6MWDのベースラインから52週目までの変化)を分析し、新規治療と対照とを比較した。このモデルは、典型的にはベースライン6MWD(連続共変量としての)を調整し、2つの因子を使用して無作為化を層別化することになった:ERT状態(ERT未経験対ERT歴あり)及びベースライン6MWD(75以上150メートル未満、150以上400メートル未満、400メートル以上)。しかしながら、ベースライン6MWDをモデルで2回(連続変数及びカテゴリー変数の両方として)使用することは、それらの間に高い点双列相関が予想されたためできなかった。従って、6MWD連続変数をモデルに残し、しかしカテゴリー6MWDは除去した。ひいてはANCOVAモデルは、治療、ベースライン6MWD(連続)、及びERT状態(カテゴリー)の頂を有した。
【0231】
加えて、治療×共変量相互作用の可能性(即ち、治療×ERT状態及び治療×ベースライン6MWD連続)を調べた。相互作用項が統計的に有意であり(例えば、p<0.10、両側)、且つ論理的な生物学的解釈があった場合、ひいてはその相互作用項を最終的なANCOVAモデルに加えることができ、それが主要評価項目分析に使用されることになる可能性があった。ひいてはデータはANCOVAモデルに基づき分析し、全ての関連性のある推定(例えば、各治療群のLS平均、差のLS平均、LS平均差についての95%信頼区間(CI)、及び2つの治療群間の比較に関するp値)を提供した。
【0232】
臨床的有益性の解釈を裏付けるため、治療アウトカムデータの総計に基づき複合対象レベル反応を定義した。対象を、治療アウトカムに基づき有意な改善、中程度の改善、又は僅かな改善/改善全く無しからなる順序反応変数によって分類した。
【0233】
鍵となる副次的評価項目は、段階的閉検定手順を用いて第1種の過誤率を制御して、階層的順序に従い分析した。鍵となる副次的及び他の副次的評価項目は、主要評価項目分析に使用したのと同様の方法で別個に分析した。
【0234】
安全性分析。安全性データは、カテゴリーデータについてはカウント及びパーセンテージ並びに連続データについては記述統計量(平均値、標準偏差、中央値、最小値、最大値)を使用して要約した。
【0235】
ATB200-03治験の有効性結果
全集団では、ATB200/AT2221治療は、52週目に(図23A)及び時間の経過に伴い(図23B)、ベースラインと比べて6MWDの改善及びパーセント対予測値FVCの安定化を示した。アルグルコシダーゼアルファ/プラセボと比較して、ATB200/AT2221治療は、52週目に全集団における6MWDのより大きい改善を示した(図23A)。更には、図23Aに示されるとおり、ATB200/AT2221治療は、アルグルコシダーゼアルファ/プラセボと比較して、52週目に全集団におけるパーセント対予測値FVCの臨床的に有意な改善を示した。
【0236】
ERT歴のある集団では、ATB200/AT2221治療は、ベースラインと比べて52週目に6MWDの改善及びパーセント対予測値FVCの安定化を示した(図24)。アルグルコシダーゼアルファ/プラセボと比較して、ATB200/AT2221治療は、ERT歴のある集団において6MWDの時間の経過に伴う改善及びパーセント対予測値FVCの時間の経過に伴う安定化を示した(図25)。更には、図24に示されるとおり、ATB200/AT2221治療は、アルグルコシダーゼアルファ/プラセボと比較して、ERT歴のある集団において52週目に6MWD及びパーセント対予測値FVCの両方の臨床的に有意な改善を示した。
【0237】
図26A及び図26Bに示されるとおり、より小さいERT未経験の集団では(n=27)、ATB200/AT2221治療は、ベースラインと比べて52週目に(図26A)及び時間の経過に伴い(図26B)6MWDの改善及びパーセント対予測値FVCの安定化を示した。2つの治療群間のばらつきがより大きく、6MWD又はパーセント対予測値FVCの臨床的に有意な改善は認められなかった(図26A)。
【0238】
図28に示されるとおり、全集団、ERT歴のある集団では、下肢MMTは、アルグルコシダーゼアルファ/プラセボと比較して、ATB200/AT2221治療の方が良好な数値であった。
【0239】
図29に示されるとおり、全集団及びERT歴のある集団では、ATB200/AT2221治療は、アルグルコシダーゼアルファ/プラセボと比較して、52週目にGSGCの臨床的に有意な改善を示した。
【0240】
図30に示されるとおり、全集団及びERT歴のある集団では、PROMIS身体機能は、アルグルコシダーゼアルファ/プラセボと比較して、ATB200/AT2221治療の方が良好な数値であった。
【0241】
図31に示されるとおり、全集団及びERT歴のある集団では、PROMIS疲労は2つの治療群間で同程度に改善された。
【0242】
ATB200-03治験のバイオマーカー結果
全集団及びERT歴のある集団では、ATB200/AT2221治療により、時間の経過に伴う筋損傷(CK)及び疾患基質(Hex4)のバイオマーカーの改善が示された(図32及び図33)。更には、図32及び図33に示されるとおり、全集団及びERT歴のある集団では、CK及び尿中Hex4の減少が、アルグルコシダーゼアルファ/プラセボと比較して、ATB200/AT2221治療で52週目に有意に大きかった。
【0243】
図34に要約されるとおり、全集団及びERT歴のある集団では、運動機能、肺機能、筋力、患者報告アウトカム(PRO)及びバイオマーカーで見た評価項目について、アルグルコシダーゼアルファ/プラセボよりもATB200/AT2221治療の方が一貫して良好であった。更には、評価した17個の有効性及びバイオマーカー評価項目のうち、16個について、アルグルコシダーゼアルファ/プラセボよりもATB200/AT2221治療の方が良好であった。
【0244】
ATB200-03治験の安全性結果
図35に示されるとおり、ATB200/AT2221治療群の全体的な安全性プロファイルは、アルグルコシダーゼアルファ/プラセボ群と同様であった。
【0245】
図36図40は、ATB200-03治験の追加的な側面を記載する。
【0246】
実施例10:PROPEL第3相臨床治験の結果
AT-GAAは、ピボタル第3相PROPEL試験において、標準治療と比較して遅発型ポンペ病の筋骨格及び呼吸器の両方の尺度の臨床的に有意味且つ有意な改善を示した。PROPELは「ATB200-03」とも称される。実施例9を参照のこと。
【0247】
承認されている標準治療ERT(アルグルコシダーゼアルファ)からAT-GAAに変更した患者は、平均して更に17メートル多く歩いた(p=0.046)。
【0248】
AT-GAAに変更した患者はまた、アルグルコシダーゼアルファで治療した患者の悪化と比較して、ポンペ病における呼吸機能の最も重要な尺度であるパーセント対予測値努力肺活量(FVC)の改善も示した(FVC差4.1%;p=0.006)。
【0249】
AT-GAAは、アルグルコシダーゼアルファで治療した患者と比較して、FVCの第1の鍵となる副次的評価項目の優位性に関して名目上統計的に有意且つ臨床的に有意味な差を示した(FVC差3.0%;p=0.023)。
【0250】
ERT変更患者とERT未経験患者との組み合わせ試験対象集団では、主要評価項目上はAT-GAAがアルグルコシダーゼアルファよりも14メートル優れた成績であり(21mに対して7m)、優位性に関しては統計的に有意ではなかった(p=0.072)。
【0251】
組み合わせ試験対象集団についてポンペ病の2つの重要なバイオマーカー(Hex-4及びCK)の改善は、アルグルコシダーゼアルファと比較してAT-GAAの方が有意に良好であった(p<0.001)。
【0252】
PROPELは、AT-GAAの有効性、安全性及び忍容性を、現在の標準治療、酵素補充療法(ERT)であるアルグルコシダーゼアルファと比較して評価するように設計された52週二重盲検無作為化国際試験であった。この試験には、まだ歩行能力及び機械的換気なしに呼吸する能力のある123例の成人ポンペ病患者が登録し、5大陸の24ヵ国における62ヵ所の臨床施設で行われた。これは、これまでリソソーム障害で行われた中で最も大規模な対照臨床試験であった。
【0253】
PROPELに登録した患者は2:1で無作為化し、従ってAT-GAAでの治療に無作為化される患者2例につき、アルグルコシダーゼアルファでの治療に1例が無作為化された。PROPELに登録したポンペ病患者のうち、77%が登録直前にアルグルコシダーゼアルファによる治療を受けている者であり(n=95)、23%がいかなるERTによる治療も一度も受けたことがない者であった(n=28)。117例の患者がPROPEL試験を完了し、全117例が自らの意志で長期延長試験に登録し、現在、そのポンペ病の治療がAT-GAAによってのみ行われているところである。
【0254】
ERT変更及びERT未経験の組み合わせ試験対象集団における6分間歩行距離(6MWD)及びパーセント対予測値努力肺活量(FVC)の事前指定分析:
この試験の主要評価項目は、ERT変更及びERT未経験組み合わせ患者集団での52週間時点におけるベースライン測定値と比較したときの6分間歩行距離の平均変化であった。この組み合わせ集団では、AT-GAAを服用した患者(n=85)は、アルグルコシダーゼアルファで治療した患者(n=37)の7メートルと比較して、52週間時点で平均して更に21メートル歩いた(表10)。組み合わせ集団におけるこの主要評価項目を優位性に関して評価し、数値的には大きいものの、アルグルコシダーゼアルファアームと比較したとき、AT-GAAアームについて、この組み合わせ集団での優位性に関する統計的有意性は実現しなかった(p=0.072)。
【0255】
統計解析計画書の階層によれば、この試験の第1の鍵となる副次的評価項目は、組み合わせ集団での52週間時点におけるパーセント対予測値FVCの変化平均であった。この組み合わせ集団では、AT-GAAを服用した患者は、アルグルコシダーゼアルファで治療した患者に対する優位性に関して名目上統計的に有意且つ臨床的に有意味な差を実証した。AT-GAAは、52週間後に患者の呼吸器悪化速度を有意に遅らせた。AT-GAAで治療した患者は、パーセント対予測値FVCについて、アルグルコシダーゼアルファアームの4.0%の絶対的悪化と比較して0.9%の絶対的悪化を示した(p=0.023)(表11)。パーセント対予測値FVCは、ポンペ病における呼吸筋機能の最も重要な尺度であり、アルグルコシダーゼアルファの承認の基礎となった。
【0256】
【表12】
【0257】
【表13】
【0258】
ERT変更試験対象集団(n=95)における6分間歩行距離(6MWD)及びパーセント対予測値努力肺活量(FVC)の事前指定分析:
最低でも2年間にわたってアルグルコシダーゼアルファで治療されていたPROPEL変更患者が試験に参加した。3分の2を超える(67%+)これらの患者が、PROPEL試験への参加前に5年間を超えてERT治療中であった(平均7.4年)。
【0259】
アルグルコシダーゼアルファから変更した患者の6分間歩行距離に関する事前指定分析が示したところによれば、AT-GAA治療患者(n=65)は、変更から52週間後に、アルグルコシダーゼアルファのまま留まるように無作為化された患者(n=30)の0.0メートルと比較して、そのベースラインよりも更に16.9メートル多く歩いた(p=0.046)(表12)。
【0260】
アルグルコシダーゼアルファから変更した患者のパーセント対予測値FVCに関する事前指定分析が示したところによれば、AT-GAA治療患者は、この重要な尺度に関してその呼吸機能が安定化し、僅かに改善した一方、アルグルコシダーゼアルファのまま留まった患者は呼吸筋機能が有意に悪化し続けた。AT-GAA患者は、1年間でパーセント対予測値FVCの0.1%の絶対的増加を示した一方、アルグルコシダーゼアルファ患者は4.0%の絶対的悪化を示した(p=0.006)(表13)。
【0261】
【表14】
【0262】
【表15】
【0263】
ERT治療未経験集団(n=28)における6分間歩行距離(6MWD)及びパーセント対予測値努力肺活量(FVC)の事前指定分析:
過去にいかなるERTによっても一度も治療されたことがない患者の6分間歩行距離に関する事前指定分析が示したところによれば、52週間後にAT-GAA治療患者(n=20)はそのベースラインよりも更に33メートル多く歩いた。アルグルコシダーゼアルファ治療患者(n=7)は、そのベースラインよりも更に38メートル多く歩いた。この2群間の差は、統計的に有意でなかった(p=0.60)(表14)。
【0264】
過去にいかなるERTによっても一度も治療されたことがない患者の事前指定分析が示したところによれば、パーセント対予測値努力肺活量(FVC)は52週間時点でAT-GAA治療患者について-4.1%及びアルグルコシダーゼアルファ治療患者について-3.6%と、同様の悪化であった(表15)。この2群間の差は、統計的に有意でなかった(p=0.57)。
【0265】
【表16】
【0266】
【表17】
【0267】
ERT変更及びERT未経験の全試験対象集団における他の鍵となる副次的及バイオマーカー評価項目の事前指定分析:
筋骨格及び他の鍵となる副次的評価項目:
GSGC(歩行・階段・ガワーズ・椅子):GSGCは、ポンペ病において重要な、広く使用されている、筋力、協調及び運動性を捕捉する評価項目である。AT-GAA治療患者は、この重要な評価において、全集団でアルグルコシダーゼアルファ治療患者が悪化したのと比較して、統計的に有意なスコアの改善を実証した(p<0.05)。
【0268】
下肢MMT(徒手筋力テスト)、PROMIS身体機能:筋力及び患者報告アウトカムに関するこれらのバリデートされた尺度の両方に関して、AT-GAA治療患者は数値的にアルグルコシダーゼアルファ治療患者よりも大きく改善したが、それらの結果は統計的に有意でなかった。
【0269】
PROMIS疲労:この尺度によって測定されるとおりの疲労については、アルグルコシダーゼアルファ治療患者よりもAT-GAA治療患者の方が僅かに良好であった。
【0270】
疾患に対する治療効果のバイオマーカー:
尿中Hex-4:ERT変更患者及びERT未経験患者の両方の組み合わせ試験対象集団について、AT-GAAの投与を受けている患者は、このバイオマーカーに関して実質的な改善を示し、52週間後のHex-4の減少の平均は、アルグルコシダーゼアルファ治療患者におけるHex-4の+11.0%の増加(即ち、悪化)と比較して-31.5%であった(p=<0.001)。尿中Hex-4は、ポンペ病においてよく使用されるバイオマーカーであり、ERTの投与を受けているポンペ病患者における骨格グリコーゲンクリアランスの程度についての間接的な尺度として使用される。グリコーゲンは、ポンペ病患者の筋肉のリソソームに蓄積する基質である。
【0271】
CK(クレアチンキナーゼ):52週間後、AT-GAA治療患者は、このバイオマーカーに関しても同様に実質的な改善を示し、CKの減少の平均は、アルグルコシダーゼアルファ治療患者における+15.6%の増加(即ち、悪化)と比較して-22.4%であった(p<0.001)。CKは、損傷した筋細胞から漏れ出す酵素であり、ポンペ病患者で上昇する。
【0272】
AT-GAAは、アルグルコシダーゼアルファと同様の安全性プロファイルを実証した。AT-GAAの投与を受けている2例の患者(2.4%)が、有害事象が原因で治療を中止し、比較してアルグルコシダーゼアルファについては、治療とは無関係な1例(2.6%)であった。AT-GAA参加者の25%及びアルグルコシダーゼアルファ患者の26%に注射関連反応(IAR)が報告された。
【0273】
事後サブグループ分析:
ベースライン6MWD及びFVCカテゴリー:ERT未経験集団(n=27):3例の患者が300m未満のベースライン6MWDを有し、3例が55%未満のベースラインFVCを有した;これらのサブグループでは、患者数が少なかったため、CFBLの分析は実施しなかった。300m以上のベースライン6MWD:シパグルコシダーゼアルファ/ミグルスタット(AT-GAA)群(n=18)及びアルグルコシダーゼアルファ/プラセボ群(n=6)の両方とも、時間の経過に伴い同様の改善を示した(52週目までのCFBL平均値[SE]:それぞれ、+34.4[12.1]m及び+30.8[9.6]m)。55%以上のベースラインFVC:シパグルコシダーゼアルファ/ミグルスタット群(n=19)及びアルグルコシダーゼアルファ/プラセボ群(n=5)の両方とも、時間の経過に伴い悪化した(52週目までのCFBL平均値[SE]:それぞれ、-3.7[1.5]%及び-3.3[2.6]%)。図41A及び図41Bに示されるとおり、全集団及びERT歴のある集団では、ベースライン6MWDが300m未満及び300m以上、及びFVCが55%未満及び55%以上の患者において、アウトカムはシパグルコシダーゼアルファ/ミグルスタットの方が一貫して良好であった。
【0274】
ERT未経験患者及びERT歴のある患者を含む全試験対象集団では、シパグルコシダーゼアルファ/ミグルスタットは、運動及び呼吸機能に関して、ベースライン6MWD及び%FVC評価とは無関係に、並びに事前指定分析及び事後サブグループ分析の両方で、承認されているERTと比較してポジティブな傾向又は臨床的に有意味な改善を示した。
【0275】
シパグルコシダーゼアルファ/ミグルスタットは、アルグルコシダーゼアルファ/プラセボと同様の安全性プロファイルを実証した(図42)。
【0276】
AT-GAAについて
AT-GAAは、細胞への取込みが増強されるように最適化された炭水化物構造体、特にビスリン酸化マンノース-6リン酸(ビス-M6P)グリカンを有するユニークな組換えヒト酸性アルファグルコシダーゼ(rhGAA)酵素であるシパグルコシダーゼアルファ(ATB200)からなる、シパグルコシダーゼアルファの安定剤であるミグルスタット(AT2221)と併せて投与される治験中の二成分療法である。前臨床試験では、AT-GAには、成熟リソソーム形態のGAAレベルの増加及び筋肉中のグリコーゲンレベルの減少、オートファジー欠陥の軽減及び筋力の改善が付随した。
【0277】
ポンペ病について
ポンペ病は、酵素酸性アルファグルコシダーゼ(GAA)の欠損によって引き起こされる遺伝性のリソソーム障害である。GAAレベルのレベル低下又は欠如が、細胞におけるグリコーゲンの蓄積につながり、それがポンペ病の臨床症状をもたらすと考えられている。この疾患は消耗性であることもあり、時間の経過に伴い増悪する重度の筋脱力を特徴とする。ポンペ病は、心臓機能への重大な影響を伴う速やかに死に至る乳児型から、主に骨格筋に発症するより緩徐な進行の遅発型にまで及ぶ。世界で約5,000~10,000人がポンペ病に罹患していると推定される。
【0278】
番号付きの実施形態
添付の特許請求の範囲にもかかわらず、本開示は以下の番号付きの実施形態を示す。
【0279】
1.必要としている対象のポンペ病を治療する方法であって、対象に、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA)分子の集団を薬理学的シャペロンと同時に又は逐次的に投与することを含む方法において;
rhGAA分子が7つの潜在的なN-グリコシル化部位を含み;
rhGAA分子上のN-グリカンの40%~60%が複合型N-グリカンであり;
rhGAA分子が、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)を用いて決定したとき、第1の潜在的なN-グリコシル化部位に1molのrhGAA当たり少なくとも0.5molのビス-マンノース-6-リン酸(ビス-M6P)を含み;及び
方法が、1)ベースライン、又は(2)アルグルコシダーゼアルファと薬理学的シャペロンのプラセボとを投与することを含む対照治療と比較して、対象の1つ以上の疾患アウトカムを改善する、方法。
【0280】
2.6分間歩行テストによって測定されるとおりの、対象の運動機能を改善する、実施形態1に記載の方法。
【0281】
3.6分間歩行距離(6MWD)のベースラインからの変化が少なくとも20メートルである、実施形態2に記載の方法。
【0282】
4.6MWDのベースラインからの変化が52週間の治療後に少なくとも20メートルである、実施形態3に記載の方法。
【0283】
5.対象の6MWDが対照治療と比較すると少なくとも10増加する、実施形態2に記載の方法。
【0284】
6.対照治療と比較すると、対象の6MWDが52週間の治療後に少なくとも13メートル改善する、実施形態5に記載の方法。
【0285】
7.対象が300メートル未満のベースライン6MWDを有する、実施形態2~6のいずれか1つに記載の方法。
【0286】
8.対象が300メートル以上のベースライン6MWDを有する、実施形態2~6のいずれか1つに記載の方法。
【0287】
9.努力肺活量(FVC)テストによって測定されるとおりの、対象の肺機能を改善する、実施形態1に記載の方法。
【0288】
10.治療後、対象のパーセント対予測値FVCが、ベースラインと比較すると増加するか、又はベースラインと比較すると3%未満の低下となるかのいずれかである、実施形態9に記載の方法。
【0289】
11.治療後、対象のパーセント対予測値FVCが、ベースラインと比較すると1%未満の低下となる、実施形態10に記載の方法。
【0290】
12.対象のパーセント対予測値FVCが、52週間の治療後にベースラインと比較すると1%未満の低下となる、実施形態10又は11に記載の方法。
【0291】
13.対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCが治療後に有意に改善するか又は安定化する、実施形態9に記載の方法。
【0292】
14.対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCが治療後に少なくとも3%改善する、実施形態13に記載の方法。
【0293】
15.対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCが52週間の治療後に少なくとも3%改善する、実施形態12又は13に記載の方法。
【0294】
16.対象が55%未満のベースラインFVCを有する、実施形態9~15のいずれか1つに記載の方法。
【0295】
17.対象が55%以上のベースラインFVCを有する、実施形態9~15のいずれか1つに記載の方法。
【0296】
18.歩行・階段・ガワーズ・椅子(GSGC)テストによって測定されるとおりの、対象の運動機能を改善する、実施形態1に記載の方法。
【0297】
19.ベースラインと比較すると、対象のGSGCスコアが、治療後に少なくとも0.5点の低下によって指示されるとおり改善する、実施形態18に記載の方法。
【0298】
20.ベースラインと比較すると、対象のGSGCスコアが、52週間の治療後に少なくとも0.5点の低下によって指示されるとおり改善する、実施形態19に記載の方法。
【0299】
21.対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアが、治療後に有意に改善する、実施形態18に記載の方法。
【0300】
22.対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアが、治療後に少なくとも1点の低下によって指示されるとおり改善する、実施形態21に記載の方法。
【0301】
23.対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアが、52週間の治療後に少なくとも1点の低下によって指示されるとおり改善する、実施形態21又は22に記載の方法。
【0302】
24.少なくとも1つの筋損傷マーカー及び/又は少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーのレベルを減少させる、実施形態1に記載の方法。
【0303】
25.少なくとも1つの筋損傷マーカーがクレアチンキナーゼ(CK)を含み、及び/又は少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーが尿中ヘキソース四糖(Hex4)を含む、実施形態24に記載の方法。
【0304】
26.ベースラインと比較すると、対象のCKレベルが治療後に少なくとも20%減少し、及び/又は対象の尿中Hex4レベルが治療後に少なくとも30%減少する、実施形態25に記載の方法。
【0305】
27.ベースラインと比較すると、対象のCKレベルが52週間の治療後に少なくとも20%減少し、及び/又は対象の尿中Hex4レベルが52週間の治療後に少なくとも30%減少する、実施形態26に記載の方法。
【0306】
28.対照治療と比較すると、対象のCK及び/又は尿中Hex4レベルが治療後に有意に減少する、実施形態25に記載の方法。
【0307】
29.対照治療と比較すると、対象のCKレベルが治療後に少なくとも30%減少し、及び/又は対象の尿中Hex4レベルが治療後に少なくとも40%減少する、実施形態28に記載の方法。
【0308】
30.対照治療と比較すると、対象のCKレベルが52週間の治療後に少なくとも30%減少し、及び/又は対象の尿中Hex4レベルが52週間の治療後に少なくとも40%減少する、実施形態28又は29に記載の方法。
【0309】
31.対象が、ERT歴のある患者である、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0310】
32.対象が、ERT未経験の患者である、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0311】
33.必要としている対象のポンペ病を治療する方法であって、対象に、組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA)分子の集団を薬理学的シャペロンと同時に又は逐次的に投与することを含む方法において;
rhGAA分子が7つの潜在的なN-グリコシル化部位を含み;
rhGAA分子上のN-グリカンの40%~60%が複合型N-グリカンであり;
rhGAA分子が、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)を用いて決定したとき、第1の潜在的なN-グリコシル化部位に1molのrhGAA当たり少なくとも0.5molのビス-マンノース-6-リン酸(ビス-M6P)を含み;
方法が、1)ベースライン、又は(2)アルグルコシダーゼアルファと薬理学的シャペロンのプラセボとを投与することを含む対照治療と比較すると、対象の1つ以上の疾患症状を改善し、及び
対象が、ERT歴のある患者である、方法。
【0312】
34.6分間歩行テストによって測定されるとおりの、対象の運動機能を改善する、実施形態33に記載の方法。
【0313】
35.ベースラインと比較すると、対象の6分間歩行距離(6MWD)が治療後に少なくとも15メートル又は少なくとも5%増加する、実施形態34に記載の方法。
【0314】
36.ベースラインと比較すると、対象の6分間歩行距離(6MWD)が52週間の治療後に少なくとも15メートル又は少なくとも4%増加する、実施形態35に記載の方法。
【0315】
37.対照治療と比較すると、対象の6MWDが治療後に有意に改善する、実施形態33に記載の方法。
【0316】
38.対照治療と比較すると、対象の6MWDが治療後に少なくとも15メートル改善する、実施形態37に記載の方法。
【0317】
39.対照治療と比較すると、対象の6MWDが52週間の治療後に少なくとも15メートル改善する、実施形態37又は38に記載の方法。
【0318】
40.対象が、300メートル未満のベースライン6MWDを有する、実施形態34~39のいずれか1つに記載の方法。
【0319】
41.対象が、300メートル以上のベースライン6MWDを有する、実施形態34~39のいずれか1つに記載の方法。
【0320】
42.努力肺活量(FVC)テストによって測定されるとおりの、対象の肺機能を改善する、実施形態33に記載の方法。
【0321】
43.治療後、対象のパーセント対予測値FVCが、ベースラインと比較すると少なくとも0.1%増加する、実施形態42に記載の方法。
【0322】
44.対象のパーセント対予測値FVCが、52週間の治療後にベースラインと比較すると少なくとも0.1%増加する、実施形態43に記載の方法。
【0323】
45.対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCが治療後に有意に改善する、実施形態42に記載の方法。
【0324】
46.対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCが治療後に少なくとも4%改善する、実施形態45に記載の方法。
【0325】
47.対照治療と比較すると、対象のパーセント対予測値FVCが52週間の治療後に少なくとも4%改善する、実施形態45又は46に記載の方法。
【0326】
48.対象が55%未満のベースラインFVCを有する、実施形態42~47のいずれか1つに記載の方法。
【0327】
49.対象が55%以上のベースラインFVCを有する、実施形態42~47のいずれか1つに記載の方法。
【0328】
50.歩行・階段・ガワーズ・椅子(GSGC)テストによって測定されるとおりの、対象の運動機能を改善する、実施形態33に記載の方法。
【0329】
51.ベースラインと比較すると、対象のGSGCスコアが、治療後に少なくとも0.5点の低下によって指示されるとおり改善する、実施形態50に記載の方法。
【0330】
52.ベースラインと比較すると、対象のGSGCスコアが、52週間の治療後に少なくとも0.5点の低下によって指示されるとおり改善する、実施形態51に記載の方法。
【0331】
53.対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアが、治療後に有意に改善する、実施形態50に記載の方法。
【0332】
54.対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアが、治療後に少なくとも1点の低下によって指示されるとおり改善する、実施形態53に記載の方法。
【0333】
55.対照治療と比較すると、対象のGSGCスコアが、52週間の治療後に少なくとも1点の低下によって指示されるとおり改善する、実施形態53又は54に記載の方法。
【0334】
56.少なくとも1つの筋損傷マーカー及び/又は少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーのレベルを減少させる、実施形態33に記載の方法。
【0335】
57.少なくとも1つの筋損傷マーカーがクレアチンキナーゼ(CK)を含み、及び/又は少なくとも1つのグリコーゲン蓄積マーカーが尿中ヘキソース四糖(Hex4)を含む、実施形態56に記載の方法。
【0336】
58.ベースラインと比較すると、対象のCKレベルが治療後に少なくとも15%減少し、及び/又は対象の尿中Hex4レベルが治療後に少なくとも25%減少する、実施形態57に記載の方法。
【0337】
59.ベースラインと比較すると、対象のCKレベルが治療後に少なくとも15%減少し、及び/又は対象の尿中Hex4レベルが52週間の治療後に少なくとも25%減少する、実施形態58に記載の方法。
【0338】
60.対照治療と比較すると、対象のCK及び/又は尿中Hex4レベルが治療後に有意に減少する、実施形態57に記載の方法。
【0339】
61.対照治療と比較すると、対象のCKレベルが治療後に少なくとも30%減少し、及び/又は対象の尿中Hex4レベルが治療後に少なくとも40%減少する、実施形態60に記載の方法。
【0340】
62.対照治療と比較すると、対象のCKレベルが治療後に少なくとも30%減少し、及び/又は対象の尿中Hex4レベルが52週間の治療後に少なくとも40%減少する、実施形態60又は61に記載の方法。
【0341】
63.rhGAA分子集団が、5mg/kg~20mg/kg、任意選択で20mg/kgの用量で投与される、実施形態1~62のいずれか1つに記載の方法。
【0342】
64.rhGAA分子集団が隔週で投与される、実施形態1~63のいずれか1つに記載の方法。
【0343】
65.rhGAA分子集団が静脈内投与される、実施形態1~64のいずれか1つに記載の方法。
【0344】
66.薬理学的シャペロンがミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩であり、更に任意選択でミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩が経口投与される、実施形態1~65のいずれか1つに記載の方法。
【0345】
67.ミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩が195mg又は260mgの用量で投与される、実施形態66に記載の方法。
【0346】
68.ミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩が、rhGAA分子集団の投与前、任意選択でrhGAA分子集団の投与1時間前に投与される、実施形態66又は67に記載の方法。
【0347】
69.対象が、ミグルスタット又はその薬学的に許容可能な塩の投与前の少なくとも2時間及び投与後の少なくとも2時間にわたって絶食する、実施形態68に記載の方法。
【0348】
70.rhGAA分子が、配列番号4又は配列番号6と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、実施形態1~69のいずれか1つに記載の方法。
【0349】
71.rhGAA分子が、配列番号4又は配列番号6のアミノ酸配列を含む、実施形態1~70のいずれか1つに記載の方法。
【0350】
72.LC-MS/MSを用いて決定したとき、rhGAA分子の少なくとも30%が、1個のマンノース-6-リン酸残基(モノ-M6P)又はビス-M6Pを担持するN-グリカン単位を1つ以上含む、実施形態1~71のいずれか1つに記載の方法。
【0351】
73.LC-MS/MSを用いて決定したとき、rhGAA分子が平均して1molのrhGAA当たり0.5mol~7.0molのモノ-M6P又はビス-M6Pを含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
【0352】
74.LC-MS/MSを用いて決定したとき、rhGAA分子が平均して1molのrhGAA当たり2.0~8.0molのシアル酸を含む、実施形態1~73のいずれか1つに記載の方法。
【0353】
75.LC-MS/MSを用いて決定したとき、rhGAA分子が平均して1molのrhGAA当たり少なくとも2.5molのM6P及び1molのrhGAA当たり少なくとも4molのシアル酸を含む、実施形態1~73のいずれか1つに記載の方法。
【0354】
76.1molのrhGAA当たり、rhGAA分子が平均して
(a)第2の潜在的なN-グリコシル化部位に0.4~0.6molのモノ-M6P;
(b)第4の潜在的なN-グリコシル化部位に0.4~0.6molのビス-M6P;又は
(c)第4の潜在的なN-グリコシル化部位に0.3~0.4molのモノ-M6P
を含み;
(a)~(c)がLC-MS/MSを用いて決定される、実施形態1~75のいずれか1つに記載の方法。
【0355】
77.1molのrhGAA当たり、rhGAA分子が4mol~7.3molのシアル酸を更に含み;及び
1molのrhGAA当たり、rhGAA分子が平均して
(a)第3の潜在的なN-グリコシル化部位に0.9~1.2molのシアル酸;
(b)第5の潜在的なN-グリコシル化部位に0.8~0.9molのシアル酸;又は
(c)第6の潜在的なN-グリコシル化部位に1.5~4.2molのシアル酸
を含み;
(a)~(c)がLC-MS/MSを用いて決定される、実施形態76に記載の方法。
【0356】
78.rhGAA分子集団が医薬組成物に製剤化される、実施形態1~77のいずれか1つに記載の方法。
【0357】
79.医薬組成物が、クエン酸塩、リン酸塩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの緩衝液と、マンニトール、ポリソルベート80、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの賦形剤とを更に含み;医薬組成物が5.0~7.0のpHを有する、実施形態78に記載の方法。
【0358】
80.医薬組成物が5.0~6.0のpHを有する、実施形態79に記載の方法。
【0359】
81.医薬組成物が、水、酸性化剤、アルカリ化剤、又はこれらの組み合わせを更に含む、実施形態78又は79に記載の方法。
【0360】
82.医薬組成物中、rhGAA分子集団が5~50mg/mLの濃度で存在し、少なくとも1つの緩衝液が、10~100mMの濃度で存在するクエン酸ナトリウム緩衝液であり、少なくとも1つの賦形剤が、10~50mg/mLの濃度で存在するマンニトール及び0.1~1mg/mLの濃度で存在するポリソルベート80であり、及び医薬組成物が水を更に含み、及び任意選択で酸性化剤及び/又はアルカリ化剤を含み;医薬組成物が6.0のpHを有する、実施形態81に記載の方法。
【0361】
83.医薬組成物中、rhGAA分子集団が15mg/mLの濃度で存在し、クエン酸ナトリウム緩衝液が25mMの濃度で存在し、マンニトールが20mg/mLの濃度で存在し、及びポリソルベート80が0.5mg/mLの濃度で存在する、実施形態82に記載の方法。
【0362】
84.rhGAAがチャイニーズハムスター卵巣細胞から産生される、実施形態1~83のいずれか1つに記載の方法。
図1A
図1B
図2A-2B】
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F
図19G
図19H
図20A
図20B
図21
図22
図23A
図23B
図24
図25
図26A
図26B
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
【配列表】
2024506346000001.app
【国際調査報告】