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特表2024-506347GDC-9545およびイパタセルチブを含む併用療法を使用する乳がんの処置
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  • 特表-GDC-9545およびイパタセルチブを含む併用療法を使用する乳がんの処置 図1
  • 特表-GDC-9545およびイパタセルチブを含む併用療法を使用する乳がんの処置 図2
  • 特表-GDC-9545およびイパタセルチブを含む併用療法を使用する乳がんの処置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】GDC-9545およびイパタセルチブを含む併用療法を使用する乳がんの処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/437 20060101AFI20240205BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20240205BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240205BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240205BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240205BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
A61K31/437
A61K31/517
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P15/00
A61P35/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548591
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 US2022016254
(87)【国際公開番号】W WO2022177835
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/149,947
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】メトカーフ, シアラ
(72)【発明者】
【氏名】リン, クイ
(72)【発明者】
【氏名】ハーフナー, マルク アントワーヌ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086CB05
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
局所進行性乳がんまたは転移性乳がんを処置するための、GDC-9545とイパタセルチブとを含む併用療法が、本明細書において提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最初の28日サイクルの1~28日目にQD投与されるGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩と、前記最初の28日サイクルの1~21日目にQD投与されるイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む、併用療法。
【請求項2】
イパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩が、400mgの用量で投与される、請求項1に記載の併用療法。
【請求項3】
GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩が、約10mg~約100mgの量で投与される、請求項1または請求項2に記載の併用療法。
【請求項4】
GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩が、約10、30、50または100mgの量で投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項5】
GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩が、30mgの量で投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項6】
投薬レジメンが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、30、36、42、48、54、60、66または72サイクルを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項7】
投薬レジメンが、約2~72、2~66、2~60、2~54、2~48、2~42、2~36、2~30、2~24、2~18または2~12サイクルを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項8】
エストロゲン受容体陽性およびHER2陰性の局所進行性乳がん(laBC)または転移性乳がん(mBC)を有する患者においてエストロゲン受容体陽性およびHER2陰性のlaBCまたはmBCを処置する方法であって、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む併用療法を前記患者に投与することを含み、前記併用療法が28日サイクルにわたって投与される、方法。
【請求項9】
前記併用療法が、
(i)最初の28日サイクルの1~28日目にGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、
(ii)前記最初の28日サイクルの1~21日目にイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと
を含む投薬レジメンをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
イパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩が、400mgの用量で投与される、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩が、約10mg~約100mgの量で投与される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩が、約10、30、50または100mgの量で投与される、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩が、30mgの量で投与される、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記投薬レジメンが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、30、36、42、48、54、60、66または72サイクルを含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記投薬レジメンが、約2~72、2~66、2~60、2~54、2~48、2~42、2~36、2~30、2~24、2~18または2~12サイクルを含む、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が閉経前である、請求項8~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が男性である、請求項8~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記患者が、エストロゲン受容体、プロスタグランジン受容体またはKi67のうちの1または複数の変異の存在について試験される、請求項8~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が、ホスファターゼ・テンシンホモログ(PTEN)の喪失を含む腫瘍を有する、請求項8~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記患者が、ホスファターゼ・テンシンホモログ(PTEN)の変異を含む腫瘍を有する、請求項8~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記患者が、位置E17、L52またはQ79に対応するAKT1の変異を含む腫瘍を有する、請求項8~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が、対照と比較して低下した有害事象(AE)を有する、請求項8~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が、疲労、咳、疼痛、関節痛、好中球減少症、徐脈、下痢、便秘、めまい、吐き気、貧血、無力症、血小板減少症または掻痒からなる群から選択される1または複数のAEの、前記対照と比較して低下した重症度を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記患者が、前記併用療法の投与後に、前記対照と比較して同じレベルまたは低下したレベルの徐脈を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記患者が、対照と比較して増加した全生存期間(OS)を有する、請求項8~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記患者が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、24ヶ月またはそれを超える月数の、対照と比較して増加した全生存期間(OS)を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記併用療法に対する奏効期間が、対照と比較して増加する、請求項8~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記奏効期間が、少なくとも1~3、2~6、3~8、4~10、5~12、6~15、8~20または1~24ヶ月増加する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
患者が、対照と比較して増加した無増悪生存期間を有する、請求項8~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記増加が、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、36、42、48、50、54、60、66または72ヶ月である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記対照が、単独で投与されるGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩単独で投与されるイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩である、請求項22~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記患者が、前記併用療法の投与前に、従前の化学療法を受けていない、請求項8~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記患者が、タモキシフェンで以前に処置されたことがある、請求項8~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記患者が、前記併用療法の投与より前に、PI3K阻害剤またはmTOR阻害剤で以前に処置されたことがある、請求項8~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記患者が、アロマターゼ阻害剤もしくはCDK4/6阻害剤またはこれらの組み合わせで以前に処置されたことがない、請求項8~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
請求項1に記載の併用療法と使用説明書とを含むキット。
【請求項37】
GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とが共製剤化されている、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
laBCまたはmBCの処置のための、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む併用療法の使用。
【請求項39】
laBCまたはmBCの処置のための医薬の製造のための、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む併用療法の使用。
【請求項40】
前記併用療法が、(i)最初の28日サイクルの1~28日目に30mgのGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)前記最初の28日サイクルの1~21日目にイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩を投与することとを含む投薬レジメンを含む、請求項38または39に記載の使用。
【請求項41】
前記併用療法が、laBCの処置のためのものである、請求項38~41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
前記併用療法が、mBCの処置のためのものである、請求項38~41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
laBCまたはmBCを有する患者における腫瘍増殖を阻害する方法であって、1または複数の28日サイクルで、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む併用療法を投与することを含む、方法。
【請求項44】
laBCまたはmBCを有する患者において腫瘍退縮を生じさせるかまたは改善する方法であって、1または複数の28日サイクルで、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む併用療法を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本非仮特許出願は、2021年2月16日に出願された米国仮特許出願第63/149,947号の恩典を主張し、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
乳がんを処置するための、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩)およびイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩を含む併用療法が本明細書で提供される。
【背景技術】
【0003】
背景
乳がんは、女性において診断される最も頻度の高いがんであり、2018年には210万の新規症例の推定世界的発生数が報告された(Bray et al.CA Canver J Clin 2018;68:394-424)。乳がんは、全てのがんによる死亡の約12%(約627,000症例)を占める。乳がん死亡率は地理的地域によって異なり、世界のより発達した地域ではより好ましい生存率が観察される(同上)。
【0004】
乳がんの初期処置は、多くの場合、乳がん細胞上に見出される分子マーカーの存在によって導かれる。これらのマーカーは、乳がんサブタイプを同定し、腫瘍ホルモン受容体含有量(エストロゲン受容体[ER]/プロゲステロン受容体[PR])の存在に基づく処置の開発を支援するために使用される。エストロゲン受容体-アルファ(ER-α)発現を伴うホルモン受容体陽性(HR+)乳がんは、全ての浸潤性乳がんの70%を構成する。腫瘍におけるPR発現は、ER-α-シグナル伝達の別のマーカーである。内分泌作用物質は、HR+乳がんのために、ERシグナル伝達を下方制御するために使用される標準治療である。
【0005】
ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)は、乳がんの20%において増幅または過剰発現される膜貫通受容体チロシンキナーゼである。HER2陽性乳がん処置レジメンには、HER2指向性療法(抗HER2抗体およびチロシンキナーゼ阻害剤)が含まれる。
【0006】
全てのHR+乳がんが、ETに対して最適に応答するわけではない。HR+乳がんにおいて一次および/または二次ホルモン抵抗性をもたらし得る機構には、ホルモン受容体発現の減少もしくは喪失、または上皮成長因子受容体もしくはHER2、MAPKもしくはPI3K/Akt/mTOR経路などの成長因子シグナル伝達経路の上方制御が含まれる。最近、エストロゲン受容体(ESR1)をコードする遺伝子中の変異が転移性ER陽性(ER+)腫瘍において同定され、抗エストロゲン療法に対する抵抗性に関連している。
【0007】
したがって、再発性または抵抗性のER陽性乳がんの処置のための臨床的に活性な作用物質に対する差し迫った要求が存在する。
【発明の概要】
【0008】
概要
上記問題および当技術分野における他の問題に対する解決策が、本明細書に提供される。
【0009】
本態様は、非限定的な態様を例示することが意図されている詳細な説明および実施例を参照することによって、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、様々なHR+細胞株にわたって、GDC-9545およびイパタセルチブの組み合わせによる利益をまとめて示す。体系的な増加した有効性が、試験された9つの株のうち4つにわたって示されている。
【0011】
図2図2は、様々なHR+細胞株にわたって、GDC-9545およびイパタセルチブの相乗的応答を、ブリス指数(Bliss index)を上回る過剰としてまとめて示す。体系的な増加した有効性が、試験された9つの株のうち4つにわたって示されている。
【0012】
図3図3は、-0.1未満のHAS過剰を有するGDC-9545およびGDC-0068の単一用量応答を示す。試験された9つの株のうち5つにおいて、組み合わせによる利益が示されている。GDC-0068=イパタセルチブ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。例えば、Singleton et al.DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY 2nd ed.,J.Wiley&Sons(New York,NY 1994);Sambrook et al.MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor,NY 1989)を参照されたい。本発明の実施においては、本明細書に記載されるものと類似したまたは同等の任意の方法、装置および材料を使用することができる。
【0014】
以下の定義は、本明細書で頻繁に用いられる特定の用語の理解を容易にするために提供されており、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。本明細書で言及されている全ての参照文献は、その全体が参照により組み入れられる。
【0015】
本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、「約」および「およそ」という用語は、組成物または剤形の成分の用量、量または重量パーセントを指す場合には、指定された用量、量または重量パーセントから得られるものと同等の薬理的効果を提供することが、当業者によって認識される用量、量または重量パーセントを意味する。同等の用量、量または重量パーセントは、指定された用量、量または重量パーセントの30%、20%、15%、10%、5%、1%、またはそれ未満以内であり得る。
【0016】
「GDC-9545」とは、構造:
を有し、
化学名3-((1R,3R)-1-(2,6-ジフルオロ-4-((1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)アミノ)フェニル)-3-メチル-1,3,4,9-テトラヒドロ-2H-ピリド[3,4-b]インドル-2-イル)-2,2-ジフルオロプロパン-1-オールを有する化合物を指し、その薬学的に許容され得る塩を含む。一態様において、GDC-9545は酒石酸塩である。本明細書で使用される「GDC-9545」は、遊離塩基およびその酒石酸塩を含むGDC-9545の薬学的に許容され得る塩を指す。GDC-9545は、ジレデストラントとしても知られている。
【0017】
「イパタセルチブ」は、構造:
を有し、
化学名(S)-2-(4-クロロフェニル)-1-(4-((5R,7R)-7-ヒドロキシ-5-メチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[d]ピリミジン-4-イル)ピペラジン-1-イル)-3-(イソプロピルアミノ)プロパン-1-オンを有する化合物を指し、その薬学的に許容され得る塩を含む。一態様において、イパタセルチブは、非晶質モノHCl塩である。本明細書で使用される「イパタセルチブ」は、遊離塩基およびそのモノHCl塩を含むイパタセルチブの薬学的に許容され得る塩を指す。
【0018】
「全生存期間」または「OS」とは、登録から何らかの原因での死亡までの時間を指す。
【0019】
「客観的奏効」は、RECIST v1.1に従って治験責任医師によって決定された完全奏効または部分奏効を指す。
【0020】
「客観的奏効率」または「ORR」とは、RECIST v1.1に従って治験責任医師によって決定される、≧4週間離れた2回の連続した機会において確定された完全奏効または部分奏効を有する患者の割合を指す。
【0021】
「腫瘍増殖停止期間」または「TTP」とは、ランダム化から客観的な腫瘍進行までの時間を指す。
【0022】
「奏効期間」または「DOR」とは、記録された客観的奏効の最初の発生から、RECIST v1.1に従って治験責任医師によって決定された疾患の進行、または何らかの原因による死亡のうち、いずれか早い方までの時間を指す。
【0023】
「無増悪生存期間」または「PFS」とは、登録から、RECIST v1.1を使用して治験責任医師によって決定された最初の記録された疾患進行の発生または何らかの原因による死亡のうち、いずれか早い方の日付までの時間を指す。
【0024】
「病勢コントロール率」または「DCR」は、少なくとも12週間にわたって安定した病勢またはRECIST v1.1を使用して治験責任医師によって決定されるCRもしくはPRを有する患者の割合を指す。
【0025】
「臨床的有用率」または「CBR」とは、少なくとも24週間にわたって安定した病勢またはRECIST v1.1に従って治験責任医師によって決定される確定された完全もしくは部分奏効を有する患者の割合を指す。
【0026】
「完全奏効」または「CR」は、全ての標的病変および非標的病変の消失ならびに(該当する場合)腫瘍マーカーレベルの正常化を指す。
【0027】
「部分奏効」または「非CR/非PD」は、1または複数の非標的病変の持続および/または(該当する場合)正常限界を上回る腫瘍マーカーレベルの維持を指す。PRは、CRの不存在下での標的病変の直径の合計の≧30%の減少、新たな病変、および非標的病変における明確な進行も指し得る。
【0028】
「進行性疾患」または「PD」は、標的病変の直径の合計の≧20%の増加、非標的病変における明確な進行および/または新たな病変の出現を指す。
【0029】
「安定した病勢」または「SD」とは、CRまたはPRと認定するのに十分な縮小も、PDと認定するのに十分な腫瘍の増殖の増加もないことを指す。
【0030】
「局所進行性乳がん」という用語は、乳房内におけるがんの開始場所から近くの組織またはリンパ節に拡がっているが、身体の他の部位には拡がっていないがんを指す。
【0031】
「転移性乳がん」という用語は、乳房から骨、肝臓、肺または脳などの身体の他の部位に拡がったがんを指す。転移性乳がんは、IV期乳がんとも呼ばれ得る。
【0032】
「処置」という用語は、臨床的病変の経過中に処置されている患者または細胞の自然の経過を変化させるように設計された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果としては、疾患進行速度の低減、疾患状態の回復または緩和および寛解または予後の改善が挙げられる。例えば、がん細胞の増殖の低減(または破壊)、疾患に起因する症候の軽減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の作用物質の用量の低減、および/または患者の生存期間の延長を含むが、これらに限定されない、本明細書に記載されている乳がんに関連する1または複数の症候が軽減または排除された場合に、患者の「処置」は成功する。
【0033】
疾患の「進行を遅延させる」という用語は、本明細書に記載の乳がんの発達を先に延ばす、妨げる、遅らせる、遅延させる、安定化する、および/または延期することを指す。この遅延は、がんの病歴および/または処置されている患者に応じて様々な長さの期間のものであり得る。当業者であれば明らかなように、十分な遅延または有意な遅延は、実質的に、患者ががんを発症しないという点において予防を包含することができる。
【0034】
「有効量」とは、本明細書に記載の乳がんの測定可能な改善または予防を行うために必要とされる少なくとも最小の量である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別および体重、ならびに患者において所望の応答を誘発する作用物質の能力などの要因に応じて異なり得る。有効量は、治療上有益な作用が処置の任意の毒性作用または有害作用を上回る量でもある。有益なまたは所望の結果には、リスクの排除もしくは低減、重症度の軽減、疾患(疾患の生化学的、組織学的および/または行動的症候、その合併症ならびに疾患の発症中に現れる中間的な病理学的表現型を含む)の発症の遅延、疾患に起因する1または複数の症候の減少、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患を処置するために必要な他の薬物の用量の減少、標的化などによる別の薬物の効果の増強、疾患の進行の遅延、および/または生存期間の延長などの結果が含まれる。いくつかの態様において、有効量の薬物は、がん細胞の数を低減させる;腫瘍サイズを縮小させる;末梢器官中へのがん細胞浸潤を阻害する(すなわち、遅らせまたは停止する);腫瘍転移を阻害する(すなわち、遅らせまたは停止する);腫瘍増殖を阻害する(すなわち、遅らせまたは停止する);および/または障害に関連する1または複数の症候を軽減する上で効果を有し得る。有効量は、1回またはそれより多くの投与で投与され得る。本明細書に記載の薬物、化合物、医薬組成物または併用療法の有効量は、直接的または間接的に治療的処置を達成するのに十分な量であり得る。臨床的に理解されるように、有効量の薬物、化合物または医薬組成物は、別の薬物、化合物、または医薬組成物または併用療法と組み合わせて達成されてもよく、または達成されなくてもよい。したがって、「有効量」は、1または複数の治療剤の投与との関連で考慮され得、1または複数の他の作用物質と併せて望ましい結果が達成され得るか、または達成されれば、単剤は有効量で与えられると考えられ得る。
【0035】
本明細書で用いられる「E2抑制スコア」とは、その抑制がエストロゲン受容体(ER)経路活性を反映している所定の遺伝子セットの総発現レベルを反映した数値を指す。
【0036】
本明細書で用いられる「E2誘導スコア」とは、その誘導がエストロゲン受容体(ER)経路活性を反映している所定の遺伝子セットの総発現レベルを反映した数値を指す。
【0037】
本明細書で用いられる場合、「ER経路活性スコア」とは、E2誘導スコアとE2抑制スコアとの間の数学的差異を反映する数値を指す。
【0038】
「投与期間」または「サイクル」とは、本明細書に記載される1または複数の作用物質(すなわち、GDC-9545もしくはその薬学的に許容され得る塩またはイパタセルチブもしくはその薬学的に許容され得る塩)の投与を含む期間、および本明細書に記載される1または複数の作用物質の投与を含まない任意の期間を指す。例えば、サイクルは、全長28日間とすることができ、21日間の1または複数の作用物質の投与、および7日間の休止期間を含む。「休止期間」とは、少なくとも1つの本明細書に記載される作用物質(例えば、GDC-9545もしくはその薬学的に許容され得る塩またはイパタセルチブもしくはその薬学的に許容され得る塩)が投与されない期間を指す。一態様では、休止期間とは、本明細書に記載される作用物質(例えば、GDC-9545もしくはその薬学的に許容され得る塩またはイパタセルチブもしくはその薬学的に許容され得る塩)のいずれもが投与されない期間を指す。本明細書で提供される休止期間は、いくつかの場合においては、GDC-9545もしくはその薬学的に許容され得る塩またはイパタセルチブもしくはその薬学的に許容され得る塩ではない別の作用物質の投与を含むことができる。このような場合には、休止期間中の別の作用物質の投与は、本明細書に記載の作用物質の投与の妨害になったり、不利益を与えたりすべきではない。
【0039】
「投薬レジメン」とは、1または複数のサイクルを含む、本明細書に記載の作用物質の投与期間を指し、各サイクルは、本明細書に記載の作用物質の投与を異なる回数または異なる量で含むことができる。
【0040】
「QD」とは、1日1回の化合物の投与を指す。
【0041】
「PO」は、本明細書に記載の作用物質の経口投与を指す。
【0042】
等級付けされた有害事象とは、NCI CTCAEによって確立された重症度の等級付け尺度を指す。一態様において、有害事象は、以下の表に従って等級付けされる。
【0043】
併用療法
GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩(例えば、GDC-9545酒石酸塩)およびイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩(例えば、イパタセルチブモノHCl)を含む併用療法が本明細書で提供される。一態様では、本明細書に記載の併用療法は、本明細書に記載の特定の種類の乳がんの処置に有用である。一局面において、最初の28日サイクルの1~28日目にQD投与されるGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩と、前記最初の28日サイクルの1~21日目にQD投与されるイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む、併用療法が本明細書において提供される。
【0044】
本明細書に記載の併用療法の一態様では、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩は、固定用量のQD投与として投与される。一態様では、投与は経口(PO)であり、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩は、錠剤またはカプセルとして製剤化される。一態様では、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩は、約1mg~100mg、1mg~50mg、1mg~30mg、10mg~100mg、10mg~50mg、または10mg~30mgの量でQD投与される。別の態様では、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩は、約1、5、10、15、20、25、30、50または100mgの量で投与される。さらに別の態様では、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩は、約10、30、50または100mgの量で投与される。さらに別の態様では、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩は、30mgの量で投与される。
【0045】
本明細書に記載される併用療法の一態様では、イパタセルチブは400mgの量で投与される。そのような投与は、単回用量(すなわち、単一または複数の丸剤)であり得る。一態様では、本明細書に記載される患者が有害事象を経験した場合、イパタセルチブの用量は300mgまたは200mgに低減される。イパタセルチブは、本明細書に記載のようにPO QD投与され得る。
【0046】
本明細書に記載される併用療法は、投与のための1または複数の作用物質を含むキットとして提供され得る。一態様では、キットは、本明細書に記載されるように、イパタセルチブと組み合わせて投与するためのGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩を含む。別の態様では、キットは、イパタセルチブと一緒に包装されたGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩を含み、該キットは、各作用物質の別々の処方された投薬量を含む。さらに別の態様では、キットは、イパタセルチブと共製剤化されたGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩を含む。
【0047】
1つの態様において、本明細書に記載される併用療法の作用物質は、投与準備ができた形態で、または、例えば、服用準備ができた経口錠剤/カプセルとしてキットで供給される。本明細書に記載のキットは、添付文書などの説明書を含むことができる。一態様では、説明書は添付文書であり、キット内の各作用物質に対して1つである。
【0048】
本明細書に記載される併用療法と、本明細書に記載される乳がんの処置における使用説明書とを含む、本明細書に詳述される方法を実施するためのキットがさらに提供される。
【0049】
一態様では、本明細書に記載される併用療法は、エストロゲン受容体陽性(ER+)、ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HER2-)の乳がんを処置するために使用することができる。別の態様では、本明細書に記載される併用療法は、ER+、HER2-局所進行性乳がん(laBC)、またはER+、HER2-転移性乳がん(mBC)を処置するために使用することができる。1つのこのような態様では、本明細書に記載される併用療法は、ER+、HER2-laBCを処置するために使用することができる。1つのこのような態様では、本明細書に記載される併用療法は、ER+、HER2-mBCを処置するために使用することができる。
【0050】
処置の方法
ER+、HER2-laBCまたはmBCを、このようながんを有する患者において処置する方法が、本明細書において提供される。一局面において、そのようながんを有する患者において本明細書に記載のlaBCまたはmBCを処置する方法(I1)であって、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブとを含む併用療法を前記患者に投与することを含む、方法が本明細書において提供される。本明細書で提供される方法(I1)の一態様では、本方法は、laBCを処置するために使用される。本明細書で提供される方法(I1)の別の態様では、本方法はmBCを処置するために使用される。
【0051】
そのようながんを有する患者において本明細書に記載のlaBCまたはmBCを処置する方法(I2)であって、(i)最初の28日サイクルの1~28日目にGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)前記最初の28日サイクルの1~21日目にイパタセルチブをQD投与することとを含む投薬レジメンを含む本明細書に記載される併用療法を前記患者に投与することを含む、方法が本明細書においてさらに提供される。本明細書で提供される方法(I2)の一態様では、本方法は、laBCを処置するために使用される。本明細書で提供される方法(I2)の別の態様では、本方法はmBCを処置するために使用される。
【0052】
I1またはI2の方法の一態様では、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩は、固定用量のQD投与として投与される。一態様では、投与は経口(PO)であり、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩は、錠剤またはカプセルとして製剤化される。一態様では、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩は、約1mg~100mg、1mg~50mg、1mg~30mg、10mg~100mg、10mg~50mg、または10mg~30mgの量でQD投与される。別の態様では、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩は、約1、5、10、15、20、25、30、50または100mgの量で投与される。さらに別の態様では、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩は、約10、30、50または100mgの量で投与される。さらに別の態様では、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩は、約30mgの量で投与される。
【0053】
本明細書に記載される方法I1またはI2の一態様では、イパタセルチブは400mgの量で投与される。そのような投与は、単回用量(すなわち、単一または複数の丸剤)であり得る。一態様において、本明細書に記載される患者がイパタセルチブによる処置に関連する有害事象を経験する場合、または例えばイパタセルチブの用量が処置中に患者によってその他耐容されない場合には、イパタセルチブの用量は300mgまたは200mgに低減される。イパタセルチブは、本明細書に記載のようにPO QD投与され得る。
【0054】
laBCまたはmBCを、このようながんを有する患者において処置する方法(I3)であって、(i)最初の28日サイクルの1~28日目に30mgのGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)前記最初の28日サイクルの1~21日目に400mgのイパタセルチブをQD投与することとを含む投薬レジメンを含む本明細書に記載される併用療法を前記患者に投与することを含む、方法が本明細書においてさらに提供される。1つのこのような態様では、投薬レジメンは、本明細書に記載されるサイクルを2回以上含む。本明細書で提供される方法(I3)の一態様では、本方法は、laBCを処置するために使用される。本明細書で提供される方法(I3)の別の態様では、本方法はmBCを処置するために使用される。
【0055】
方法I1、I2およびI3の一態様では、がんは、手術不能な局所進行性(laBC)または転移性ER+乳がん(mBC)である。
【0056】
方法I1、I2およびI3の一態様では、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブの組み合わせは、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストとの同時投与(処置)を必要としない。
【0057】
方法I1、I2およびI3の一態様では、イパタセルチブの投与量を低下させることができる。1つのこのような態様では、イパタセルチブの用量を最大2回の総低下で100mg低下させる(すなわち、300mgQDまたは200mgQDへの低下)。方法I1、I2およびI3の一態様では、併用療法中の1つの作用物質(GDC-9454またはその薬学的に許容され得る塩もしくはイパタセルチブ)の投与を最大28日間中断することができる。方法I1、I2およびI3の一態様では、GDC-9545の用量は低下されない。
【0058】
本明細書に提供される乳がんを処置する方法I1、I2およびI3は、投薬レジメンの一部として、本明細書に記載される併用療法の投与を含むことができる。一態様では、投薬レジメンは、1または複数のサイクルを含む。別の態様では、投薬レジメンは、少なくとも2つのサイクルを含む。別の局面では、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、30、36、42、48、54、60、66または72サイクルを含む投薬レジメンが、本明細書において提供される。さらに別の態様では、投薬レジメンは、約2~72、2~66、2~60、2~54、2~48、2~42、2~36、2~30、2~24、2~18または2~12サイクルを含む。一態様では、投薬レジメンは、所望の応答(例えば、OR、PFS、OS、ORR、DOR、CBR)が所望の結果(例えば、本明細書に記載される対照と比較して、OR、PFS、OS、ORR、DOR、CBRが増加)に達するまで、任意の回数のサイクルでの本明細書に記載される併用療法の投与を含む。別の態様では、投薬レジメンは、毒性が発現するか、またはその他患者がさらなる投与を妨げる1または複数の有害事象(AE)を経験するまで、任意の回数のサイクルでの本明細書に記載される併用療法の投与を含む。さらに別の態様では、投薬レジメンは、疾患進行まで、任意の回数のサイクルでの本明細書に記載される併用療法の投与を含む。
【0059】
本明細書に記載される方法の一態様では、患者は閉経後の女性である。
【0060】
本明細書に記載される方法の別の態様では、患者は、閉経前または閉経期(すなわち、閉経後ではない)の女性である。1つのこのような態様では、患者は、本明細書に記載される併用療法と組み合わせてLHRHアゴニストで処置される。LHRHアゴニスト療法は、サイクル1の1日目の28日前に開始され得る。一態様では、LHRHアゴニストは、各サイクルの1日目に投与される。
【0061】
本明細書に記載される方法の別の態様では、患者は男性である。1つのこのような態様では、患者は、本明細書に記載される併用療法と組み合わせてLHRHアゴニストで処置される。
【0062】
本明細書に記載される方法の一態様では、本明細書に記載される患者は、エストロゲン受容体、プロスタグランジン受容体またはKi67の存在について試験されている。本明細書に記載される方法の一態様では、本明細書に記載される患者は、American Society of Clinical Oncology/College of American Pathologistsのガイドラインに従って、記録されたER陽性腫瘍を有する。1つのこのような態様では、本明細書に記載される患者は、記録されたHER2陰性腫瘍を有する。
【0063】
本明細書に記載される方法の一態様では、本明細書に記載される患者は処置未経験である。1つのこのような態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法の投与前に事前の化学療法を受けていない。本明細書に記載される方法の別の態様では、本明細書に記載される患者は、アロマターゼ阻害剤またはCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、アベマシクリブまたはリボシクリブ)またはこれらの組み合わせで以前に処置されたことがない。1つのこのような態様では、アロマターゼ阻害剤はアナストロゾール、エキセメスタンまたはレトロゾールである。一態様では、本明細書に記載される患者は、レトロゾールもしくはパルボシクリブのいずれかまたはこれらの組み合わせで以前に処置されたことがない。本明細書に記載される方法のさらに別の態様では、本明細書に記載される患者は、SERD(例えば、フルベストラント)またはタモキシフェンで以前に処置されたことがない。本明細書に記載される方法の別の態様では、患者はAKT阻害剤で以前に処置されたことがない。
【0064】
本明細書に記載される方法の一態様では、患者は、本明細書に記載される併用療法の投与前に、1または複数のがん療法で処置されたことがある。別の態様では、本明細書に記載される患者は、併用療法の投与前にPI3K阻害剤またはmTOR阻害剤で以前に処置されたことがある。別の態様では、本明細書に記載される患者は、フルベストラントで以前に処置されたことがある。
【0065】
本明細書に記載される方法の一態様では、患者は、1または複数のがん療法に抵抗性である本明細書に記載される乳がんを有する。本明細書に記載される方法の一態様では、がん治療に対する抵抗性は、がんまたは難治性がんの再発を含む。再発とは、処置後における元の部位または新たな部位でのがんの再発生を指し得る。本明細書に記載される方法の一態様では、がん療法への抵抗性は、抗がん療法での処置中のがんの進行を含む。本明細書に記載される方法のいくつかの態様において、がん療法に対する抵抗性には、処置に応答しないがんが含まれる。がんは、処置の開始時に抵抗性であり得、または処置中に抵抗性となり得る。本明細書に記載される方法のいくつかの態様では、がんは、初期段階にあるか、または後期段階にある。
【0066】
全身化学療法は、mBCを有する患者に対する標準治療(SOC)の1つと見なされているが、標準的なレジメンまたはシーケンスは存在しない。本明細書に記載される方法の一態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法の投与前に、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、エベロリムス、パルボシクリブおよびレトロゾール、フルベストラント、トラスツズマブおよびペルツズマブ、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される1または複数の療法で以前に処置されたことがある。
【0067】
本明細書に記載される方法の一態様では、本明細書に記載される患者は、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、エベロリムス、パルボシクリブおよびレトロゾール、フルベストラント、トラスツズマブおよびペルツズマブまたはこれらの組み合わせからなる群から選択される1または複数の単剤療法に抵抗性である本明細書に記載されるlaBCまたはmBCを有することができる。
【0068】
本明細書に記載される方法の一態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法の投与前に、例えば、乳房を温存する手術(すなわち、マージンを伴った原発腫瘍の除去に焦点を合わせた乳腺腫瘍摘出術)、またはより広範囲の手術(すなわち、全ての乳房組織の完全な除去を目的とする乳房切除術)などの外科的処置を受けたことがあり得る。本明細書に記載される方法の別の態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法による処置後に外科的処置を受け得る。
【0069】
放射線療法も、術後に残存している顕微レベルのがん細胞を殺滅する目的で、乳房/胸壁および/または所属リンパ節に術後に適用される。乳房温存手術の場合、放射線は残りの乳房組織に、時には所属リンパ節(腋窩リンパ節を含む)に照射される。乳房切除術の場合でも、局所再発のリスクがより高いことを予測する因子が存在すれば、なお放射線が照射され得る。本明細書で提供される方法のいくつかの態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法の投与前に放射線療法を受けたことがあり得る。本明細書で提供される方法の他の態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法の投与後に放射線療法を受け得る。
【0070】
本明細書に記載される方法のいくつかの態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法の投与前5年以内に他の悪性腫瘍の病歴を有しない。本明細書に記載される方法のいくつかの態様では、本明細書に記載される患者は、活動性炎症性腸疾患、慢性下痢、短腸症候群または胃切除術を含む大規模上部胃腸手術を有していない。本明細書に記載される方法のいくつかの態様では、本明細書に記載される患者は、心疾患または心機能不全を有さない。
【0071】
本明細書に記載される方法の一態様では、本明細書に提供される方法による併用療法での処置は、対照(例えば、非処置、標準治療(SOC)処置、または本明細書に記載される1つの作用物質(例えば、GDC-9545またはイパタセルチブ)単独による処置)と比較して(comparable to)、患者のOSを増加させる。本明細書に記載される方法の一態様では、本明細書に提供される方法による併用療法での処置は、対照(例えば、非処置、標準治療(SOC)処置、本明細書に記載される1つの作用物質(例えば、GDC-9545またはイパタセルチブ)単独による処置)と比較して(comparable to)患者のOSを1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、24ヶ月またはそれを超える月数、対照と比較して増加させる。
【0072】
本明細書に記載される方法の一態様では、本明細書に提供される方法による併用療法での処置は、患者のORR量を増加させる。1つのこのような態様では、本明細書に提供される方法による併用療法での処置は、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を有する患者を対照より多くもたらす。本明細書に記載される方法の別の態様では、本明細書に提供される方法による併用療法での処置後の患者において、TTPが増加する。本明細書に記載される方法のさらに別の態様において、併用療法に対する奏効期間が、対照(例えば、非処置、標準治療(SOC)処置、本明細書に記載される1つの作用物質(例えば、GDC-9545またはイパタセルチブ)単独での処置)と比較して増加する。1つのこのような態様では、奏効期間は、少なくとも1ヶ月~3ヶ月、2ヶ月~6ヶ月、3ヶ月~8ヶ月、4ヶ月~10ヶ月、5ヶ月~12ヶ月、6ヶ月~15ヶ月、8ヶ月~20ヶ月または1ヶ月~24ヶ月増加する。本明細書に記載される方法のさらに別の態様では、本明細書に記載される患者は、対照(例えば、非処置、標準治療(SOC)処置、GDC-9545単独での処置またはイパタセルチブ単独での処置)と比較して増加した臨床的有用率を有する。本明細書に記載される方法のさらに別の態様では、患者は、対照(例えば、非処置、標準治療(SOC)処置、GDC-9545単独での処置またはイパタセルチブ単独での処置)と比較して、増加した無増悪生存期間を有する。
【0073】
本明細書に提供される本発明の一態様では、患者は、本明細書に提供される方法による併用療法での処置後に、CRを有すると診断される。本明細書に提供される本発明の一態様では、患者は、本明細書に提供される方法による併用療法での処置後に、PRを有すると診断される。本明細書に提供される本発明の一態様では、患者は、本明細書に提供される方法による併用療法での処置後に、SDを有すると診断される。
【0074】
本明細書に記載されるlaBCまたはmBCの処置のための、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む本明細書に記載される併用療法の使用(U1)が本明細書においてさらに提供される。一態様では、本明細書に記載されるlaBCまたはmBCの処置のための、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む本明細書に記載される併用療法の使用(U2)である。一態様では、本明細書に記載されるlaBCまたはmBCの処置のための、本明細書におけるGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む本明細書に記載される併用療法の使用(U3)である。
【0075】
本明細書に記載されるmBCの処置のための、本明細書に記載されるGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブとを含む本明細書に記載される併用療法の使用(IU1)が本明細書でさらに提供される。本明細書に記載されるlaBCの処置のための、本明細書に記載されるGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブとを含む本明細書に記載される併用療法の使用(IU2)が本明細書でさらに提供される。
【0076】
(i)最初の28日サイクルの1~28日目にGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)前記最初の28日サイクルの1~21日目にイパタセルチブをQD投与することとを含む投薬レジメンを含む、本明細書に記載されるlaBCまたはmBCの処置のための、本明細書に記載されるGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブとを含む本明細書に記載される併用療法の使用(IU3)が本明細書においてさらに提供される。本明細書で提供される使用(IU3)の一態様では、併用療法は、laBCの処置のためのものである。本明細書で提供される使用(IU3)の別の態様では、併用療法はmBCの処置のためのものである。
【0077】
(i)最初の28日サイクルの1~28日目に30mgのGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)前記最初の28日サイクルの1~21日目に400mgのイパタセルチブをQD投与することとを含む投薬レジメンを含む、本明細書に記載されるlaBCまたはmBCの処置のための、本明細書に記載されるGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブとを含む本明細書に記載される併用療法の使用(IU4)が本明細書においてさらに提供される。1つのこのような態様では、投薬レジメンは、本明細書に記載されるサイクルを2回以上含む。本明細書で提供される使用(IU4)の一態様では、併用療法は、laBCの処置のためのものである。本明細書で提供される使用(IU4)の別の態様では、併用療法はmBCの処置のためのものである。
【0078】
本明細書に記載されるlaBCまたはmBCの処置のための医薬品を製造するための、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブとを含む本明細書に記載される併用療法の使用(IM1)が本明細書でさらに提供される。本明細書に記載されるmBCの処置のための医薬品を製造するための、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブとを含む本明細書に記載される併用療法の使用(IM2)が本明細書でさらに提供される。本明細書に記載されるlaBCの処置のための医薬品を製造するための、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブとを含む本明細書に記載される併用療法の使用(IM3)が本明細書でさらに提供される。
【0079】
(i)最初の28日サイクルの1~28日目にGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)前記最初の28日サイクルの1~21日目にイパタセルチブをQD投与することとを含む投薬レジメンを含む、本明細書に記載されるlaBCまたはmBCの処置のための医薬品を製造するための、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブとを含む本明細書に記載される併用療法の使用(IM4)が本明細書においてさらに提供される。本明細書で提供される使用(IM4)の一態様では、併用療法は、laBCの処置のためのものである。本明細書で提供される使用(IM4)の別の態様では、併用療法はmBCの処置のためのものである。
【0080】
(i)最初の28日サイクルの1~28日目に30mgのGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)前記最初の28日サイクルの1~21日目に400mgのイパタセルチブを投与することとを含む投薬レジメンを含む、本明細書に記載されるlaBCまたはmBCの処置のための医薬品を製造するための、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブとを含む本明細書に記載される併用療法の使用(IM5)が本明細書においてさらに提供される。1つのこのような態様では、投薬レジメンは、本明細書に記載されるサイクルを2回以上含む。本明細書で提供される使用(IM5)の一態様では、併用療法は、laBCの処置のためのものである。本明細書で提供される使用(IM5)の別の態様では、併用療法はmBCの処置のためのものである。
【0081】
本明細書に記載される併用療法を投与することによって、本明細書に記載される患者において腫瘍増殖を阻害する方法または腫瘍退縮を生じる方法もまた、本明細書で提供される。一態様では、本明細書に記載される1または複数の28日サイクルで、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブとを投与することを含む併用療法を投与することによって、本明細書に記載されるlaBCを有する患者において腫瘍増殖を阻害する方法が、本明細書において提供される。一態様では、本明細書に記載される1または複数の28日サイクルで、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブとを投与することを含む併用療法を投与することによって、本明細書に記載されるmBCを有する患者において腫瘍増殖を阻害する方法が、本明細書において提供される。
【0082】
一態様では、本明細書に記載される1または複数の28日サイクルで、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブとを投与することを含む併用療法を投与することによって、本明細書に記載されるmBCを有する患者において腫瘍退縮を生成または改善する方法が、本明細書において提供される。一態様では、本明細書に記載される1または複数の28日サイクルで、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブとを投与することを含む併用療法を投与することによって、本明細書に記載されるlaBCを有する患者において腫瘍退縮を生成または改善する方法が、本明細書において提供される。
【0083】
併用処置の開発は、例えば、許容され得る毒性を維持しつつ有効性の改善につながり得る併用療法のための作用物質の選択を含めて、課題を有している。1つの特定の課題は、併用の漸増的な毒性を識別する必要性である。本明細書に記載される方法の一態様では、本明細書に記載される併用療法(例えば、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩およびイパタセルチブ)は、時差投薬スケジュールを含む投薬レジメンで投与される。1つのこのような態様では、患者は、対照(例えば、SOC療法、本明細書に記載される1つの作用物質(例えば、GDC-9545またはイパタセルチブ)単独での処置)と比較して(comparable to)有害事象(AE)の数またはグレードの低下を有する。
【0084】
本明細書に記載される方法の一態様では、投薬レジメンは、GDC-9545またはイパタセルチブ単独のいずれかの投与と比較して(comparable to)グレード2またはグレード3またはそれより高いグレードの有害事象の数または頻度を低下させる。1つのこのような態様では、投薬レジメンは、グレード3またはそれより高いAEの数または頻度を除去する。一態様では、投薬レジメンは徐脈またはQT延長のグレードを低下させる。
【0085】
本明細書に記載される方法の別の態様では、投薬は、いずれかの作用物質単独の投与と比較して(comparable to)グレード2またはグレード3またはそれより高いグレードの有害事象の数または頻度を低下させる。
【0086】
有害事象が発生した場合、次の4つの選択肢が存在すると一般的に理解されている:(1)任意に付随療法を用いてそのまま処置を継続する;(2)投薬レジメンにおける1または複数の作用物質の用量を調整する;(3)投薬レジメンにおける1または複数の作用物質の投与を一時中断する;または(4)投薬レジメンにおける1または複数の作用物質の投与を中止する。一態様では、GDC-9545は調整されない。
【0087】
本明細書に記載される方法の一態様では、本明細書に記載される患者は、発疹、徐脈、高血糖、下痢、悪心または掻痒を含む1または複数の有害事象を経験する。1つのこのような態様では、本明細書に記載される患者は、1または複数のこのようなAEと同じレベルまたは低下したレベル/重症度を有する。別の態様では、本明細書に記載される患者は、1または複数のこのようなAEの低下した重症度を有する。一態様では、本明細書に記載される患者は、対照と比較して、低下した、高血糖、下痢または徐脈の重症度を有する。1つのこのような態様では、対照は、(i)作用物質単独または(ii)SOC療法のいずれかである。
【0088】
一態様では、本明細書に記載される患者は、併用療法の投与後に、対照と比較して同じレベルまたは低下したレベルの高血糖を有する。1つのこのような態様では、対照はイパタセルチブ単独である。さらに別の態様では、本明細書に記載される患者は、GDC-9545単独と比較して、併用療法の投与後に、同じレベルまたは低下したレベルの徐脈を有する。
【0089】
一態様では、本明細書に記載される併用療法での処置を受けている本明細書に記載される患者が経験する(1つまたは複数の)有害事象は、本明細書に記載されるように、比較的低下される。
【0090】
本明細書に記載される方法の一態様では、本明細書に記載される患者は、下痢を含む有害事象を経験する。本明細書に記載される方法の一態様では、本明細書に記載される患者は、高血糖を含む有害事象を経験する。本明細書に記載される方法の一態様では、本明細書に記載される患者は、徐脈を含む有害事象を経験する。患者が本明細書に記載される併用療法での処置に由来する高血糖、下痢および徐脈からなる群から選択される1または複数のAEを経験するいくつかの態様では、重症度はグレード2以下である。一態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法での処置に由来する高血糖、下痢および徐脈からなる群から選択される1または複数のAEを経験せず、AEの重症度はグレード2より高い。
【0091】
バイオマーカー
乳がんは、分子シグネチャおよび多様な多くの変異プロファイルによって定義される多くの異なるサブタイプを有する不均一な疾患である。本明細書に記載される患者は、診断方法を使用して、または本明細書に記載される併用療法に対する患者の応答の処置もしくは予測を知らせるためのキットを使用して、ER+HER2-laBCまたはmBCについて試験され得る。一態様では、患者は、米国特許出願公開第2020/0082944号に記載されるものなど、ER経路活性スコアを決定することによって試験され得る。いくつかの態様では、ER経路活性スコアを決定するために、患者試料を採取し、試験する。スコアは、E2誘導スコア(AGR3、AMZ1、AREG、C5AR2、CELSR2、CT62、FKBP4、FMN1、GREB1、IGFBP4、NOS1AP、NXPH3、OLFM1、PGR、PPM1J、RAPGEFL1、RBM24、RERG、RET、SGK3、SLC9A3R1、TFF1およびZNF703に記載されている遺伝子の平均zスコア化発現から決定される)からE2抑制スコア(BAMBI、BCAS1、CCNG2、DDIT4、EGLN3、FAM171B、GRM4、IL1R1、LIPH、NBEA、PNPLA7、PSCA、SEMA3E、SSPO、STON1、TGFB3、TP53INP1およびTP53INP2を含む遺伝子の平均zスコア化発現から決定される)を差し引くことによって、41遺伝子のシグネチャを使用して計算することができる。
【0092】
一態様では、ER経路活性スコアを決定するために用いられる患者由来の試料は、腫瘍組織試料(例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)した、新鮮凍結(FF)した、保存した、新鮮な、または凍結した腫瘍組織試料)である。
【0093】
いくつかの例では、本明細書に記載される患者は、測定されたER経路活性スコアが、約-1.0~約-0.2(例えば約-0.9~約-0.2、例えば約-0.8~約-0.2、例えば約-0.7~約-0.2、例えば約-0.6~約-0.2、例えば約-0.5~約-0.2、例えば約-0.4~約-0.2、または例えば約-0.3~約-0.2)である場合に、本明細書に記載される併用療法を投与される。いくつかの例では、試料のER活性スコアは、-1.0未満であり得る。
【0094】
いくつかの態様では、試験処置の安全性および有効性と相関している可能性のある要因を特定するために、本明細書に記載される患者の試料を、追加のバイオマーカーについて評価することができる。
【0095】
本明細書に記載される方法の一態様では、NGS、全ゲノム配列決定(WGS)、他の方法、またはこれらの組合せが、本明細書に記載される患者に由来する血液試料および腫瘍組織から得られたDNAに対して使用される。このような試料は、治験薬への反応を予測する、より重篤な疾患状態への進行に関連する、治験薬に対する獲得耐性に関連する、または疾患生物学の知識および理解を高めることができる、生殖系列および体細胞の変化を特定するために分析され得る。
【0096】
一態様では、患者は、PIK3CA/AKT1/PTEN-変化状態について試験され得る。一態様では、本明細書に記載される患者は、ホスファターゼ・テンシンホモログ(PTEN)変異、PTEN喪失(またはPTEN機能の喪失)、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸3-キナーゼ触媒サブユニットα(PIK3CA)変異、プロテインキナーゼBα(AKT1)変異、またはこれらの組み合わせの1または複数について試験され得る。1つのこのような態様では、本明細書に記載される患者は、H1047D/I/L/N/P/Q/R/T/Y、E545A/D/G/K/L/Q/R/V、E542A/D/G/K/Q/R/V、Q546E/H/K/L/P/R、N345D/H/I/K/S/T/Y、C420R、M1043I/T/V、G1049A/C/D/R/S、E453A/D/G/K/Q/V、K111N/R/E、G106A/D/R/S/V、G118D、およびR88Qからなる群から選択されるPIK3CA変異を含む乳がんを有する。一態様では、患者は、E542K、E545K、Q546R、H1047LおよびH1047Rからなる群から選択される位置に対応する変異を含むPIK3CA変異体を発現する乳がんを有する。一態様では、患者は、E542K、E545K、Q546R、H1047LおよびH1047Rからなる群から選択される1つの変異、ならびにE453Q/K、E726KおよびM1043L/Iからなる群から選択される第2の変異を含む位置に対応する変異を含む変異PIK3CAを有する。一態様では、患者は、E542K+E453Q/K、E542K+E726K、E542K+M1043L/IE545K+E453Q/K、E545K+E726K、E545K+M1043L/I;H1047R+E453Q/KおよびH1047R+E726Kからなる群から選択される位置に対応する変異を含むPIK3CA変異体を発現する乳がんを有する。一態様では、PIK3CA変異の腫瘍状態は、血液の中央試験または血液もしくは腫瘍組織の局所試験のいずれかによって評価される。
【0097】
別のこのような態様では、試験処置の安全性および有効性と相関している可能性のある要因を特定するために、本明細書に記載される患者の試料を、追加のバイオマーカーについて評価することができる。1つの態様では、本明細書に記載される患者は、例えば、IHCまたはNGS試験によって特徴づけられるようなPTENの喪失を含む腫瘍を有する。別の態様では、本明細書に記載される患者は、PTENの1または複数のアミノ酸変異を含む腫瘍を有する。なおも別の態様では、本明細書に記載される患者は、位置E17、L52またはQ79に対応するAKTの1または複数のアミノ酸変異を含む腫瘍を有する。
【0098】
循環腫瘍DNA(ctDNA)は、上皮がんを有するがん患者の血液中に検出され得、診断的および治療的意義を有し得る。例えば、腫瘍細胞の変異の状態は、ctDNAの単離によって取得され得(Maheswaran S,et al.N Engl J Med 2008;359:366-77)、ctDNAは、メラノーマにおける処置の有効性をモニターするために使用されている(Shinozaki M,et al.Clin Cancer Res 2007;13:2068-74)。本明細書に記載される患者からの血液試料は、スクリーニング時、最初の腫瘍評価時、および/または試験完了/早期終了診察時に収集され得る。
【0099】
一態様において、患者は、構造:
を有し、イパタセルチブの代謝産物である化学名(S)-3-アミノ-2-(4-クロロフェニル)-1-(4-((5R,7R)-7-ヒドロキシ-5-メチル-6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[d]ピリミジン-4-イル)ピペラジン-1-イル)プロパン-1-オンを有する化合物の存在、レベルまたは量に関して試験される。
【0100】
態様:
以下に、本発明の例示的な態様を提供する。
【0101】
態様1.最初の28日サイクルの1~28日目にQD投与されるGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩と、前記最初の28日サイクルの1~21日目にQD投与されるイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む、併用療法。
【0102】
態様2.イパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩が、400mgの用量で投与される、態様1に記載の併用療法。
【0103】
態様3.GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩が、約10mg~約100mgの量で投与される、態様1または態様2に記載の併用療法。
【0104】
態様4.GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩が、約10、30、50または100mgの量で投与される、態様1~3のいずれか1つに記載の併用療法。
【0105】
態様5.GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩が、30mgの量で投与される、態様1~4のいずれか1つに記載の併用療法。
【0106】
態様6.投薬レジメンが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、30、36、42、48、54、60、66または72サイクルを含む、態様1~5のいずれか1つに記載の併用療法。
【0107】
態様7.投薬レジメンが、約2~72、2~66、2~60、2~54、2~48、2~42、2~36、2~30、2~24、2~18または2~12サイクルを含む、態様1~5のいずれか1つに記載の併用療法。
【0108】
態様8.エストロゲン受容体陽性およびHER2陰性の局所進行性乳がん(laBC)または転移性乳がん(mBC)を有する患者においてエストロゲン受容体陽性およびHER2陰性のlaBCまたはmBCを処置する方法であって、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む併用療法を前記患者に投与することを含み、前記併用療法が28日サイクルにわたって投与される、方法。
【0109】
態様9.前記併用療法が、
(i)最初の28日サイクルの1~28日目にGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、
(ii)前記最初の28日サイクルの1~21日目にイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと
を含む投薬レジメンをさらに含む、態様8に記載の方法。
【0110】
態様10.イパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩が、400mgの用量で投与される、態様8または態様9に記載の方法。
【0111】
態様11.GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩が、約10mg~約100mgの量で投与される、態様8~10のいずれか1つに記載の方法
【0112】
態様12.GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩が、約10、30、50または100mgの量で投与される、態様8~11のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
態様13.GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩が、30mgの量で投与される、態様8~11のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
態様14.前記投薬レジメンが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、30、36、42、48、54、60、66または72サイクルを含む、態様8~13のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
態様15.前記投薬レジメンが、約2~72、2~66、2~60、2~54、2~48、2~42、2~36、2~30、2~24、2~18または2~12サイクルを含む、態様8~13のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
態様16.前記患者が閉経前である、態様8~15のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
態様17.前記患者が男性である、態様8~16のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
態様18.前記患者が、エストロゲン受容体、プロスタグランジン受容体またはKi67のうちの1または複数の変異の存在について試験される、態様8~17のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
態様19.前記患者が、ホスファターゼ・テンシンホモログ(PTEN)の喪失を含む腫瘍を有する、態様8~18のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
態様20.前記患者が、ホスファターゼ・テンシンホモログ(PTEN)の変異を含む腫瘍を有する、態様8~18のいずれか1つに記載の方法。
【0121】
態様21.前記患者が、位置E17、L52またはQ79に対応するAKT1の変異を含む腫瘍を有する、態様8~19のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
態様22.前記患者が、対照と比較して(comparable to)低下した有害事象(AE)を有する、態様8~21のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
態様23.前記患者が、高血糖、徐脈、下痢、吐き気または掻痒からなる群から選択される1または複数のAEの、前記対照と比較して低下した重症度を有する、態様22に記載の方法。
【0124】
態様24.前記患者が、前記併用療法の投与後に、前記対照と比較して同じレベルまたは低下したレベルの徐脈を有する、態様22に記載の方法。
【0125】
態様25.前記患者が、対照と比較して(comparable to)増加した全生存期間(OS)を有する、態様8~24のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
態様26.前記患者が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、24ヶ月またはそれを超える月数の、対照と比較して(comparable to)増加した全生存期間(OS)を有する、態様25に記載の方法。
【0127】
態様27.前記併用療法に対する奏効期間が、対照と比較して増加する、態様8~26のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
態様28.前記奏効期間が、少なくとも1~3、2~6、3~8、4~10、5~12、6~15、8~20または1~24ヶ月増加する、態様27に記載の方法。
【0129】
態様29.患者が、対照と比較して増加した無増悪生存期間を有する、態様8~28のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
態様30.前記増加が、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、36、42、48、50、54、60、66または72ヶ月である、態様29に記載の方法。
【0131】
態様31.前記対照が、単独で投与されるGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩単独で投与されるイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩である、態様22~30のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
態様32.前記患者が、前記併用療法の投与前に、従前の化学療法を受けていない、態様8~31のいずれか1つに記載の方法。
【0133】
態様33.前記患者が、タモキシフェンで以前に処置されたことがある、態様8~31のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
態様34.前記患者が、前記併用療法の投与より前に、PI3K阻害剤またはmTOR阻害剤で以前に処置されたことがある、態様8~31のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
態様35.前記患者が、アロマターゼ阻害剤もしくはCDK4/6阻害剤またはこれらの組み合わせで以前に処置されたことがない、態様8~31のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
態様36.態様1に記載の併用療法と使用説明書とを含むキット。
【0137】
態様37.GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とが共製剤化されている、態様36に記載のキット。
【0138】
態様38.laBCまたはmBCの処置のための、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む併用療法の使用。
【0139】
態様39.laBCまたはmBCの処置のための医薬の製造のための、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む併用療法の使用。
【0140】
態様40.前記併用療法が、(i)最初の28日サイクルの1~28日目に30mgのGDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)前記最初の28日サイクルの1~21日目にイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩を投与することとを含む投薬レジメンを含む、態様38または39に記載の使用。
【0141】
態様41.前記併用療法が、laBCの処置のためのものである、態様38~40のいずれか1つに記載の使用。
【0142】
態様42.前記併用療法が、mBCの処置のためのものである、態様38~40のいずれか1つに記載の使用。
【0143】
態様43.laBCまたはmBCを有する患者における腫瘍増殖を阻害する方法であって、1または複数の28日サイクルで、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む併用療法を投与することを含む、方法。
【0144】
態様44.laBCまたはmBCを有する患者において腫瘍退縮を生じさせるかまたは改善する方法であって、1または複数の28日サイクルで、GDC-9545またはその薬学的に許容され得る塩とイパタセルチブまたはその薬学的に許容され得る塩とを含む併用療法を投与することを含む、方法。
【0145】
以下の実施例は、限定ではなく、例示として提示されている。
【実施例
【0146】
乳がんの病因および疾患進行におけるエストロゲンの役割は十分に確立されている(Colditz et al.N Engl J Med 1995;332:1589-93)。エストロゲン活性および/または合成の調節は、ER+乳がん患者における1つの治療アプローチである。
【0147】
内分泌療法(ET)および内分泌療法と標的療法の組み合わせを含む、ER+、局所進行性または転移性疾患を有する患者に対する利用可能な治療法の有効性にもかかわらず、多くの患者は最終的に再発するかまたはこれらの因子に対する抵抗性を生じ、したがって最適な疾患制御のためにさらなる処置を必要とする。しかしながら、大部分の腫瘍の増殖および生存は、AIまたはタモキシフェンに対して抵抗性になるにもかかわらず、なおERシグナル伝達に依存し続けると考えられている。ER+乳がんを有する患者は、以前の治療時の進行後に、なお二次または三次ETに応答することができる(Di Leo et al.J Clin Oncol.2010;28:4594-600;Baselga et al.N Engl J Med.2012;366:520-9)。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、内分泌抵抗性状態では、ERはリガンド非依存的にシグナル伝達することができるという証拠が存在する(Miller et al.J Clin Invest 2010;120:2406-13;Van Tine et al.Cancer Discov 2011;1:287-8)。リガンド依存性およびリガンド非依存性のERシグナル伝達の両方を標的とすることができる作用物質(または作用物質の組み合わせ)は、ER+乳がんを有する患者における処置転帰を改善する可能性を有する。
【0148】
ESR1変異は、AIに対する獲得抵抗性の主要な機構であるようであり、より不良な転帰に関連する(Schiavon et al.Sci Transl Med 2015;7:313ra182;Chandarlapaty et al.JAMA Oncol 2016;2:1310-15;Fribbens et al.J Clin Oncol 2016;34:2961-8)。ESR1変異の存在率は、AI曝露後に約25%~40%の範囲であるが、ET未経験の患者の2%~3%にすぎないようである(Chandarlapaty et al.2016)。これは、ESR1がAI選択圧力下で1つの重要な発癌誘発要因になることを示している。研究により、ER-αのリガンド結合ドメイン「LBD」に影響を及ぼす、ER-αをコードするESR1中の変異(主にY537SおよびD538G)が同定された(Segal and Dowsett Clin Cancer Res 2014;20:1724-6)。臨床試料および非臨床モデルを使用する研究は、ERアンタゴニストがリガンド非依存性の構成的に活性なER変異受容体に対して有効であるように見受けられ、AIに対して抵抗性であった患者に対して治療上の利益を有し得ることを記載している(Li et al.Cell Rep.2013;4:1116-30;Merenbakh-Lamin et al.Cancer Res 2013;73:6856-64;Robinson et al.Nat Genet 2013;45:1466-51;Toy et al.Nat Genet 2013;45:1439-45;Alluri et al.Breast Cancer Res 2014;16:494;Segal and Dowsett Clin Cancer Res 2014;20:1724-6;Jeselsohn et al.Nat Rev Clin Oncol 2015;12:573-83;Niu et al.Onco Targets Ther.2015;8:3323-8;Schiavon et al.Sci Transl Med 2015;7:313ra182;Chu et al.Clin Cancer Res 2016;22:993-9)。
【0149】
選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)は、内分泌依存性および内分泌非依存性のERシグナル伝達を遮断することができ、ER+転移性乳がんに対する治療アプローチを提供することが認識されている。第1世代のSERDであるフルベストラントはERを結合し、遮断し、分解し、ERを介したエストロゲンシグナル伝達の阻害をもたらす。フルベストラントはまた、ある研究(NCT01602380)で実証されているように、第一線の患者においてアナストロゾールよりも有益であることを示している。しかしながら、フルベストラントの生物学的利用能および送達は、その有効性管理を妨げる。
【0150】
GDC-9545とフルベストラントの薬物曝露およびインビトロ効力を比較する非臨床試験は、30mg1日1回(QD)でのGDC-9545のヒト定常状態総薬物曝露が、毎月フルベストラント500mg筋肉内(IM)の定常状態曝露よりも約10倍高いことを実証した。さらに、血漿タンパク質によるGDC-9545のより低い結合は、フルベストラントより高いGDC-9545の遊離濃度をもたらす。インビトロ細胞および生化学アッセイでは、GDC-9545は、野生型およびESR1変異体の両状況において、フルベストラントよりも最大10倍高い効力を示した。フルベストラントは、臨床的に適切な投薬スキームに従って投与された場合、評価された異種移植片モデルにおいてGDC-9545よりも有効性が低かった。
【0151】
Aktは、PI3K/Akt/哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)シグナル伝達軸の中心点であり、受容体チロシンキナーゼの主要な下流エフェクターに相当する。いかなる特定の理論にも拘束されないが、PI3K/Akt経路の活性化は、ヒトがんの根底に存在する特性である細胞の生存、成長および増殖を含む必須の細胞機能をもたらす。PI3K/Akt経路は、例えば、腫瘍抑制因子PTENの喪失を通じて(Li et al.Science 1997;275:1943-7)、PIK3CA中の変異および/もしくは増幅の活性化を通じて(Bachman et al.Cancer Biol Ther 2004;3:772-5)、またはAKT1中の変異の活性化を通じて活性化され得(Carpten et al.Nature 2007;448:439-44)、これらの事象は全て、HR+乳がんにおいて頻繁に観察される。
【0152】
乳がんの最大70%が、何らかの形態のPI3K/Akt/mTOR経路の分子異常を有し得る(Cancer Genome Atlas Network 2012)。乳がんサブタイプの中で、HR+乳がんは、PI3K経路を活性化する変異の最も高い存在率と関連しており、全HR+乳がんの約50%を占めている(Curtis et al.Nature 2012;486:346-52;Cancer Genome Atlas Network 2012;Wilson et al.NPJ Breast Cancer 2016;2:16022)。これらの異常には、PTEN変化ならびにAKT1および/またはPIK3CA変異が含まれる。
【0153】
PI3K/Akt/mTOR経路は、MAPK、NF-kB/IKKおよびERなどの他の分裂促進経路と同様に、サイクリンDとCDK4/6の間の相互作用を提供することができる(Miller et al.J Clin Invest 2010;120:2406-13)。Herrera-Abreuらは、CDK4/6i療法による長期阻害が増加したAKTリン酸化を伴い、増加したAKTリン酸化はサイクリンE2またはCDK2の持続的発現と相関し、Rbリン酸化の阻害を妨げることを報告した(Herrera-Abreu et al.Cancer Res 2016;76:2301-13)。さらに、患者からの連続的生検を使用した研究は、CDK4/6i療法の獲得抵抗性の機序としてPTEN喪失を明らかにした(Costa et al.Cancer Discov 2020;10:72-8)。加えて、CDK4/6i抵抗性乳がん細胞株を使用した研究は、これらの細胞が細胞増殖分析においてアルペリシブおよびエベロリムスなどのPI3K/Akt/mTOR経路阻害剤に対する応答性を保っていることを示し、PI3K/Akt/mTOR経路阻害剤が、CDK4/6i療法での処置後にがんが進行した患者にとって最適な処置選択肢として機能し得ることを示唆した(Iida et al.Breast Cancer 2020;10.1007/s12282-020-01090-3)。
【0154】
GDC-9545は、低ナノモル濃度の効力でERへの結合についてエストロゲンと競合する強力な経口的に生物学的に利用可能なERαアンタゴニストおよびERα分解の誘導物質であり、ER+進行または転移性乳がんを有する患者の処置のために開発されている。GDC-9545は、ESR1野生型およびESR1変異保有疾患のER+乳がんモデルにおいて堅固な非臨床活性を実証した。さらに、承認されたSERD分子であるフルベストラントは、臨床的に適切な投薬スキームに従って投与された場合、評価された異種移植片モデルにおいてGDC-9545よりも有効性が低かった。
【0155】
GDC-9545およびイパタセルチブは相乗的活性を示す可能性があり、それぞれは予備有効性データおよび管理可能な安全性プロファイルを有する。GDC-9545+イパタセルチブでの処置は、患者ER+およびHER2陰性進行乳がんに対して有望な治療可能性を有する。
【0156】
患者は、各28日サイクル中に30mgの用量でPO QDでGDC-9545を与えられ、各28日サイクルの1~21日目に400mgの用量でPO QDでイパタセルチブを与えられる。
【0157】
GDC-9545を投与される患者は、サイクル1の1日目から開始して、その後の各28日サイクルの1日目に、毎日ほぼ同じ時間にPO投与されるべきである。予定された投薬後6時間以内に用量が服用されなければ、服用されなかったと考えられる。用量が服用されなかったまたは吐き出された場合、患者は次の予定された用量で投薬を再開すべきであり、服用されなかったまたは吐き出された用量は埋め合わされない。イパタセルチブは、毎日ほぼ同じ時刻に服用されるべきであり、予定時刻後4時間より後に服用されるべきでない。
【0158】
GDC-9545およびイパタセルチブを投与される患者は、患者がサイクル1の1日目の前に用量が安定していたことを条件として、以下の併用治療を使用することを許可される:a)対症療法的制吐薬、止痢療法、および疾患関連症候に対する他の緩和的および支持的ケア;b)標準的な臨床診療に従って投与される鎮痛薬;ならびに/またはc)骨粗鬆症/骨減少症の処置のためのもしくは骨転移の緩和のための骨量減少抑制剤(例えば、ビスホスホナート、デノスマブ)。
【0159】
GDC-9545およびイパタセルチブを投与された患者は、以下の併用療法を使用することを許可されない:
a.(治験実施計画書で定められた試験処置以外の)調査的治療が、GDC9545およびイパタセルチブの最初の用量の前28日以内である。
b.化学療法、免疫療法、生物学的療法、放射線療法または薬草療法を含むがこれらに限定されない、がんの処置を目的とした任意の併用療法は禁止される。
c.ホルモン補充療法、局所エストロゲン(任意の膣内製剤を含む)、酢酸メゲストロールおよび選択的ER調節薬(例えば、ラロキシフェン)。
d.造血成長因子(例えば、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)の一次予防的使用。
e.以下のような全身応答の状況における新たな脳転移を除いて、明確な進行性疾患のための放射線療法:
全身性疾患の制御(臨床的利益[すなわち、≧24週間にわたるPR、CRまたはSD]を受けたと定義される)を実証したが、放射線で処置可能な孤立性脳転移を発症した患者。
ET(すなわち、GDC-9545)は、放射線療法と同時に投与され得る。
f.キニジンまたは他の抗不整脈薬
【0160】
GDC-9545は、試験処置に関連すると考えられる毒性を経験している患者において一時的に中断され得る。イパタセルチブは、試験処置に関連すると考えられる毒性を経験している患者において一時的に中断され得る。GDC-9545またはイパタセルチブのいずれかを中止する場合、治験責任医師による決定のとおりに、患者が臨床的利益を得る可能性があれば他方の薬物を継続することができる。
【0161】
本明細書および特許請求の範囲全体を通じて、「含む(comprise、comprises、およびcomprising)」という語句は、文脈上別段の必要がある場合を除き、非排他的な意味で用いられる。本明細書に記載の態様は、「からなる」および/または「から本質的になる」態様を含むことが理解される。
【0162】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別のことを指示しない限り、範囲の上限および下限と、その記載された範囲内の任意の他の記載された値または介在する値との間の、下限の単位の10分の1までの各介在値が、本明細書に包含されるものと理解されたい。より小さい範囲(rangers)に独立して含めることができるこれらの小さい範囲の上限および下限もまた、記載された範囲における具体的に除かれる限界値を条件として、本明細書に包含される。記載された範囲に限界値の一方または両方が含まれる場合、それらの含まれる限界値のいずれかまたは両方を除く範囲もまた、本明細書に含まれる。
【0163】
前述の説明および関連する図面に提示された教示を受けた当業者は、本明細書に記載された発明の多くの修正および他の態様に想到するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の態様に限定されるべきではないこと、ならびに修正および他の態様が添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。本明細書では特定の用語が使用されているが、これらは、一般的で説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的とするものではない。
【0164】
生物学アッセイ
【0165】
HR+細胞株ZR-75-1、CAMA-1、EFM-19、T47D、MCF-7、YMB-1-E、MDA-MB-134-VI、YMB-1およびMDA-MB-175-VIIを、GDC-9545(0~10uM)およびGDC-0068(イパタセルチブ、0~5uM)と接触させた。図1および図2に示した細胞株を、PIK3CA変異(E545KおよびH1047x)の発現およびPTENの機能喪失に関してさらに特徴づけた。2つの細胞株(MDA-MB-134-VIおよびMDA-MB-175-VII)は、これらの変異を欠き、野生型(WT)と考えられる。
【0166】
Hafnerら(Nature Methods volume 13,pages521-527(2016))およびHafnerら(Nature Biotechnology volume 35,pages 500-502(2017))に記載の方法に従って、組み合わせの利益および相乗効果を計算した。
図1
図2
図3
【国際調査報告】