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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】脊椎を増強する方法及び器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/70 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
A61B17/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548632
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 US2022016026
(87)【国際公開番号】W WO2022173983
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】17/172,306
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521264062
【氏名又は名称】シュワブ フランク ジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】シュワブ フランク ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL24
4C160LL63
4C160LL69
(57)【要約】
本発明は、患者の脊柱の多数の分節全体にわたる棘突起間運動を制限するための器具であって、棘突起、椎骨の後方アスペクトの近くに位置する軟組織、又は既存の脊椎固定器具又はシステムに取り付けられた少なくとも第1の靱帯線材を有する器具を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具であって、第1の端部及び第2の端部を備えた少なくとも第1の靱帯線材を有し、前記第1の端部のところ又は前記第1の端部の近くに位置する前記少なくとも前記第1の靱帯線材の第1の部分は、第1の椎骨の後方アスペクトの近くに位置する軟組織の第1の部分又は前記第1の椎骨と関連した第1の既存の脊椎固定器具又はシステムのうちの少なくとも一方に結合可能に構成され、前記第2の端部のところ又は前記第2の端部の近くに位置する前記少なくとも前記第1の靱帯線材の第2の部分は、第2の椎骨の後方アスペクトの近くに位置する軟組織の第2の部分又は第2の既存の脊椎固定器具又はシステムのうちの少なくとも一方に結合可能に構成され、前記第1の部分が前記第1の既存の脊椎固定器具又はシステムに結合されるか、前記第2の部分が前記第2の既存の脊椎固定器具又はシステムに結合されるかのいずれか一方だけが実施され、前記第1の部分と前記第2の部分との間の前記少なくとも前記第1の靱帯線材は、分節骨固定なしに患者の脊柱の複数の分節と交差するよう構成され、前記少なくとも前記第1の靱帯線材は、前記患者の前記脊柱の前記複数の分節全体にわたる棘突起間運動を制限するよう構成されている、器具。
【請求項2】
前記器具は、前記脊椎の各側に設けられるコネクタを2つ以上必要としないよう構成されている、請求項1記載の器具。
【請求項3】
前記器具は、棘突起に結合可能に構成されている、請求項1又は2記載の器具。
【請求項4】
前記棘突起は、第1の棘突起であり、前記器具の前記第1の端部は、前記第1の棘突起に結合可能に構成され、前記器具の前記第2の端部は、第2の棘突起に結合可能に構成されている、請求項3記載の器具。
【請求項5】
前記少なくとも前記第1の靱帯線材の前記第1の部分は、前記軟組織の前記第1の部分に結合可能に構成されている、請求項1~4のうちいずれか一に記載の器具。
【請求項6】
前記軟組織は、腱、靱帯、軟骨、又は筋から成る、請求項5記載の器具。
【請求項7】
前記少なくとも前記第1の靱帯線材の前記第1の部分又は前記少なくとも前記第1の靱帯線材の前記第2の部分は、縫合又は結紮により結合可能に構成されている、請求項1~6のうちいずれか一に記載の器具。
【請求項8】
前記コネクタは、椎骨の椎体に隣接して配置可能に構成されている、請求項2記載の器具。
【請求項9】
前記結合は、既存の脊髄ロッドによる結合である、請求項1~8のうちいずれか一に記載の器具。
【請求項10】
前記靱帯線材は、生体適合性である、請求項1~9のうちいずれか一に記載の器具。
【請求項11】
前記靱帯線材は、
靱帯自己移植片、靱帯同種移植片、又は合成材料、
合成材料、前記合成材料は、ポリマー、メンブレン又は繊維、又は
合成材料、前記合成材料は、GORE-TEX(登録商標)又はKEVLAR(登録商標)という商標で市販されている材料
のうちの少なくとも1つから成る、請求項10記載の器具。
【請求項12】
前記少なくとも前記第1の靱帯線材は、弾性である、請求項1~11のうちいずれか一に記載の器具。
【請求項13】
前記少なくとも前記第1の靱帯線材は、前記患者の前記脊柱の第1の側から前記患者の前記脊柱の第2の側に延伸可能、又は前記第1の端部から前記第2の端部に延伸可能に構成されている、請求項12記載の器具。
【請求項14】
前記少なくとも前記第1の靱帯線材は、前記第1の端部又は前記第2の端部のところの弾性が前記少なくとも前記第1の靱帯線材の中間部分のところの弾性よりも低い、請求項12記載の器具。
【請求項15】
前記少なくとも前記第1の靱帯線材は、織成又は編成されている、請求項11記載の器具。
【請求項16】
前記少なくとも前記第1の靱帯線材の前記弾性は、前記少なくとも前記第1の靱帯線材の織り方又は編み方に基づいている、請求項15記載の器具。
【請求項17】
前記少なくとも前記第1の靱帯線材は、扁平形、半円形、円形、卵形、三角形、正方形、もしくは長方形、又はこれらの任意の組み合わせである、請求項1~16のうちいずれか一に記載の器具。
【請求項18】
前記結合は、間接的である、請求項1~17のうちいずれか一に記載の器具。
【請求項19】
前記器具は、前記少なくとも前記第1の靱帯線材を包囲したケーシングをさらに有し、前記結合は、前記ケーシングによる結合である、請求項18記載の器具。
【請求項20】
前記ケーシングは、コンパウンドにより結合されている、請求項19記載の器具。
【請求項21】
前記コンパウンドは、グルー又はパテである、請求項20記載の器具。
【請求項22】
前記ケーシングは、前記靱帯線材を包囲したチューブ、スリーブ、部分筒体、もしくはトラフ、又はこれらの任意の組み合わせである、請求項19記載の器具。
【請求項23】
前記ケーシングは、円形、長円形、弧状、V字形、U字形、J字形、D字形、C字形、半円形、湾曲形、もしくは扁平形、又はこれらの任意の組み合わせである断面を有する、請求項19記載の器具。
【請求項24】
前記器具は、抗生物質、鎮痛薬、抗炎症薬、ステロイド、又は抗瘢痕化剤をさらに含む、請求項1~23のうちいずれか一に記載の器具。
【請求項25】
少なくとも第2の靱帯線材をさらに有する、請求項1~24のうちいずれか一に記載の器具。
【請求項26】
前記少なくとも前記第1の靱帯線材及び前記少なくとも前記第2の靱帯線材は、互いに異なる材料で構成されている、請求項25記載の器具。
【請求項27】
前記少なくとも前記第1の靱帯線材と前記少なくとも前記第2の靱帯線材は、並列配置され又は互いにオーバーラップしている、請求項25記載の器具。
【請求項28】
方法であって、
請求項1記載の前記器具を分節骨固定なしに患者の脊柱の複数の分節を横切って結合し、それにより前記患者の前記脊柱の前記複数の分節全体にわたる棘突起間運動を制限するステップを含む、方法。
【請求項29】
前記器具は、外科医、コンピュータ支援外科装置、ロボット外科装置、低侵襲手技、又は経皮配置法により前記患者の体内に挿入される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
器具であって、第1の端部及び第2の端部を備えた少なくとも第1の靱帯線材を有し、前記第1の端部のところ又は前記第1の端部の近くに位置する前記少なくとも前記第1の靱帯線材の第1の部分は、第1の椎骨の後方アスペクトの近くに位置する軟組織の少なくとも1つの第1の部分に直接結合可能に構成され、前記第2の端部のところ又は前記第2の端部の近くに位置する前記少なくとも前記第1の靱帯線材の第2の部分は、第2の椎骨の後方アスペクトの近くに位置する前記軟組織の少なくとも1つの第2の部分、又は既存の脊椎固定器具又はシステムのうちの少なくとも一方に直接結合可能に構成され、前記第1の部分と前記第2の部分との間の前記少なくとも前記第1の靱帯線材は、分節骨固定なしに患者の脊柱の複数の分節と交差するよう構成され、前記少なくとも第1の靱帯線材は、前記患者の前記脊柱の複数の分節全体にわたる棘突起間運動を制限するよう構成されている、器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示(本発明)は、脊椎を増強する方法及び器具に関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2021年2月10日に出願された米国特許非仮出願第17/172,306号の権益主張出願であり、この米国特許非仮出願を参照により引用し、全ての目的についてその記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
ヒトは、年を取るにつれて、背筋のたくましさを失うとともに靱帯を安定化する機能が弱くなる。現在、脊柱への定着を可能にする人工靱帯システムがあるが、かかる人工靱帯システムは、個々の椎骨分節を固定し又は安定化するためにロッドシステム又は骨スクリューに固定されるよう設計されている。よく見られる後方靱帯アプローチは、椎弓板又は横突起周りのルーピング、もしくは固定のための骨スクリュー、例えばペディクルスクリューを必要とする技術及び器具を含み、あるいは、骨スクリュー又は金属ロッドに固着するコネクターシステムを含む。骨スクリューを互いに結合するとともに、力を椎体相互間に及ぼすよう設計された前方靱帯システムが市場に出つつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医学的状態の治療のため、骨構造(例えば、椎弓板や棘突起)周りのルーピングによる骨への分節固定又は骨スクリューによる椎体への固定を必要としない後脊椎を増強する技術が要望されている。かかる現在におけるアプローチは、相当な軟組織の切除を必要とするとともに患者の相当な罹病率を必然的に伴うとともに、運動及び柔軟性の低下を必然的に伴う。生まれつきの靱帯及び腱を増強する侵襲性の低いアプローチが動的安定化を長いセグメントにわたって脊柱に提供するために求められている。しかしながら、この技術は、存在していない。したがって、本発明は、かかる技術を実施可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本発明は、後方から椎体及び筋構造に対して位置決めされるとともに生まれつきの軟組織、棘突起、又は既存の脊椎固定器具もしくはシステムの任意のコンポーネントに取り付けられる靱帯増強器具又はシステムを提供し、この場合、治療のやり方全体を通じて筋や靱帯を深く切除する必要はない。本システムは、増強済みのレベル全体を固定する意図をもって設計されているわけではなく、これは、本システムを靱帯システムの現行の使用から明確に区別している。本システムは、一般に、生まれつきの靱帯(自己移植片又は同種移植片)又は合成靱帯を含む靱帯線材(ライン)を用い、この靱帯線材を、本明細書では「靱帯システム又は器具」という。脊椎構造への取り付けは、脊柱上靱帯、棘突起、棘突起間靱帯、筋膜及び筋、ならびに椎骨、仙骨、又は骨盤骨の後方アスペクトの近くに位置する任意他の周囲軟組織、又は任意の既存の脊椎固定器具又はシステムへの固定を可能にするよう設計された縫合糸、ループ、ステープル、又は、他の固定器具を介して行うことができる。
【0006】
本発明は、患者の脊柱の複数の分節全体にわたる棘突起間運動を制限するための器具を提供し、本器具は、棘突起、椎骨の後方アスペクトの近くに位置する軟組織、又は既存の脊椎固定器具もしくはシステムに取り付けられた少なくとも第1の靱帯線材を有し、本器具は、分節骨固定なしで患者の脊柱の複数の分節と交差する。ある幾つかの実施形態では、本器具は、脊椎の各側に設けられる骨スクリューを2つ以上必要としない。幾つかの実施形態では、本器具は、棘突起に取り付けられる。他の実施形態では、器具の第1の端部又は第2の端部は、棘突起に固定される。別の実施形態では、本器具は、骨固定器具を介して棘突起に固定される。特定の実施形態では、骨固定器具は、骨スクリューである。
【0007】
本発明の追加の実施形態では、本器具は、椎骨の後方アスペクトの近くに位置する軟組織に取り付けられる。ある幾つかの実施形態では、本器具は、腱、靱帯、軟骨、又は筋に取り付けられる。特定の実施形態では、本器具は、縫合又は結紮により取り付けられる。幾つかの実施形態では、本器具は、既存の脊椎骨スクリュー(これには限定されない)を含む既存の脊椎固定器具又はシステムに取り付けられる。かかる実施形態では、既存の脊椎骨スクリューは、椎骨の椎体内に配置されるのがよい。他の実施形態では、本器具は、既存の脊椎ロッドに取り付けられる。
【0008】
ある幾つかの実施形態では、靱帯線材は、生体適合性である。別の実施形態では、靱帯線材は、靱帯自己移植片、靱帯同種移植片、又は合成材料を含む。特定の実施形態では、合成材料は、ポリマー、メンブレン又は繊維である。幾つかの実施形態では、合成材料は、GORE-TEX(登録商標)又はKEVLAR(登録商標)である。さらに他の実施形態では、靱帯線材は、弾性である。種々の実施形態では、靱帯線材は、第1の側から第2の側に、あるいは、第1の頂端部から第2の底端部に延伸する。ある幾つかの実施形態では、靱帯線材は、第1の側から第2の側に延伸し、又は第1の頂端部から第2の底端部に延伸する。ある幾つかの実施形態では、靱帯線材は、第1の頂端部又は第2の底端部のところの弾性が靱帯線材の中間部分のところの弾性よりも低い。幾つかの実施形態では、靱帯線材は、織成又は編成されている。特定の実施形態では、靱帯線材の弾性は、靱帯線材の織り方又は編み方に基づいている。追加の実施形態では、靱帯線材は、扁平形、半円形、円形、卵形、三角形、正方形、もしくは長方形、又はこれらの任意の組み合わせである。
【0009】
本発明の別の実施形態では、靱帯線材は、棘突起又は椎骨の後方アスペクトの近くに位置する軟組織に間接的に取り付けられる。幾つかの実施形態では、本器具は、少なくとも第1の靱帯線材を包囲したケーシングをさらに有し、ケーシングは、棘突起又は椎骨の後方アスペクトの近くに位置する軟組織に取り付けられる。ある幾つかの実施形態では、ケーシングは、棘突起又は椎骨の後方アスペクトの近くに位置する軟組織にコンパウンド、例えばグルー又はパテ(これらには限定されない)により取り付けられる。他の実施形態では、ケーシングは、靱帯線材を包囲したチューブ、スリーブ、部分筒体、もしくはトラフ、又はこれらの任意の組み合わせである。種々の実施形態では、ケーシングは、円形、長円形、弧状、V字形、U字形、J字形、D字形、C字形、半円形、湾曲形、もしくは扁平形、又はこれらの任意の組み合わせである断面を有する。
【0010】
本発明の追加的な実施形態では、本器具は、抗生物質、鎮痛薬、抗炎症薬、ステロイド、又は抗瘢痕化剤をさらに含む。幾つかの実施形態では、本器具は、少なくとも第2の靱帯線材をさらに有する。ある幾つかの実施形態では、少なくとも第1の靱帯線材及び少なくとも第2の靱帯線材は、互いに異なる材料で構成されている。他の実施形態では、少なくとも第1の靱帯線材と少なくとも第2の靱帯線材は、並列配置され又は互いにオーバーラップしている。
【0011】
本発明はまた、患者の脊柱の複数の分節全体にわたる棘突起間運動を制限する方法であって、棘突起、椎骨の後方アスペクトの近くに位置する軟組織、又は既存の脊椎固定器具もしくはシステムに取り付けられた少なくとも第1の靱帯線材を有する器具を取り付けるステップを含む方法を提供し、器具は、分節骨固定なしで患者の脊柱の複数の分節と交差する。ある幾つかの実施形態では、器具は、外科医、コンピュータ支援外科装置、ロボット外科装置、低侵襲手技、又は経皮配置法により患者の体内に挿入される。
【0012】
本発明の他の目的及び他の特徴は、部分的に明らかでありかつ部分的に以下において指摘される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】椎骨の後方/前方断面を示す図であり、椎骨の種々の特徴が指示されている図である。
図2】本発明の器具の一実施形態の図であり、この器具の一端部が本発明に従って、脊椎構造に取り付け可能に椎体内に配置された既存の椎骨アンカーに取り付けられた状態を示す図である。
図3】本発明の器具の一実施形態の図であり、器具の一端部が、本発明に従って脊椎構造に取り付け可能に椎体内に配置された椎骨アンカーに取り付けられた既存のロッドに取り付けられている状態を示す図である。
図4】本発明に従って、幾つかの棘突起の近位側に位置する軟組織に取り付けられた本発明の器具の一実施形態の図である。
図5】本発明に従って、椎骨に沿って延びる筋の近くに存在する生まれつきの軟組織の近位側に位置する棘突起に取り付けられた本発明の器具の一実施形態の図である。
図6】本発明に従って、筋膜に取り付けられるとともに生まれつきの靱帯の背側に位置するとともに椎骨に沿って延びる筋の近位側に位置する本発明の器具の一実施形態の図である。
図7】第1の端部が棘突起に取り付けられ、第2の端部が既存の脊椎固定器具のロッドに取り付けられた本発明の器具の一実施形態の図であり、この器具が本発明に従って、第1の端部と第2の端部との間の軟組織又は非骨組織、例えば、軟骨、靱帯もしくは筋膜に取り付けられている状態を示す図である。
図8】両端部が既存の骨アンカーに取り付けられるとともに器具の端部相互間の椎骨の上に位置し又はこれを覆う軟組織もしくは筋膜に取り付けられた本発明の器具の一実施形態の図であり、器具の一方の部分が脊柱の一方の側に配置され、器具の他方の部分が脊柱の反対側に配置されている状態を示す図である。
図9】両端部が既存の骨アンカーに取り付けられた本発明の器具の一実施形態の図であり、本発明に従って、器具の一方の部分が脊柱の一方の側に配置され、器具の他方の部分が脊柱の反対側に配置された状態で軟組織に取り付けられている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一般に、本発明は、棘突起、椎骨の後方アスペクトの近くに位置する軟組織、又は既存の脊椎固定器具又はシステムのうちのいずれかに取り付けられた少なくとも第1の靱帯線材を有する脊椎の増強器具を開示する。本器具は、一般に、分節法の骨固定なしで患者の脊柱の多数の分節と交差し、この器具は、一般に、脊椎の各側に設けられた骨スクリューを2本以上備えることはない。本発明の特定の実施形態では、靱帯線材を保護部材又はケーシングによって包み又は覆うのがよく、この保護部材又はケーシングは、オプションとして、コンパウンドによって覆われるのがよい。ある幾つかのかかる実施形態では、靱帯線材は、棘突起、椎骨の後方アスペクトの近くに位置する軟組織、又は既存の脊椎固定器具又はシステムのうちのいずれかに間接的に取り付けられてもよい。かくして、本発明はまた、ユーザの医学的状態を診断し、モニタし、又は治療する方法を提供し、この方法は、脊椎の上方領域又は脊椎の下方領域への器具の取り付けに基づいて、靱帯線材を上方領域から下方領域に伸長させるステップを含むのがよい。現時点において開示されている治療方法は、一般に、ガイドを靱帯線材に沿って位置決めしてガイドが靱帯線材を案内し、それにより靱帯線材が妨げられることなく脊柱の上方領域と下方領域に対して多数の方向に自由に動くことができるようになっているステップを含むのがよい。靱帯線材をシースで包み込むことができ、かかるシースを通って又はこのシース内で、靱帯線材を1つ以上の次元又は方向に動かすことができる。コンパウンドを用いてシースを棘突起、椎骨の後方アスペクトの近くに位置する軟組織、又は既存の脊椎固定器具又はシステムに結合することができる。コンパウンドをトンネルとして形作るのがよく、靱帯線材は、このトンネルを通って延びる。幾つかの実施形態では、靱帯線材は、脊椎の所望の上方領域と下方領域との間を後方にまたいでいる。幾つかの実施形態では、靱帯線材を脊椎に対して後方に位置決めするのがよい。本発明は、多種多様な形態で具体化でき、そして本明細書において開示する種々の実施形態に必然的に限定されるものとして解されてはならないことに注目されたい。これとは異なり、これらの実施形態は、本発明が徹底的でありかつ完全であり、しかも本発明の種々の技術的思想を当業者に十分に伝えるよう提供されている。
【0015】
本発明のある幾つかの観点では、脊椎増強器具又は靱帯線材はまた、種々の薬剤もしくは他の物質、又は薬剤もしくは他の物質の組み合わせを、増強対象の脊椎の領域に送り出すために使用できる。例えば、脊椎増強器具又は靱帯線材は、抗生物質、鎮痛薬、抗炎症薬、ステロイド、又は抗瘢痕化剤、瘢痕化剤、ホルモン、骨形成剤、骨吸収抑制薬、血管新生因子、又は局所組織の治癒及び同化を改変する分子、又はこれらの組み合わせを送り出すために使用できる。ある幾つかの実施形態では、抗生物質、例えば、アモキシシリン、ペニシリン、サルファ剤、エリスロマイシン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、クラリスロマイシン、テルコナゾール、アジスロマイシン、バシトラシン、シプロフロキサシン、エボフロキサシン、エボフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、アミノグリコシド、トブラマイシン、ゲンタマイシン、又は例えば、ポリミキシンB/トリメトプリム、ポリミキシンB/バシトラシン、もしくは、ポリミキシンB/ネオマイシン/グラミシジン、もしくはこれらの組み合わせのポリミキシンB組み合わせ、鎮痛薬、例えば、サリシン、アセチルサリチル酸、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、もしくはブロメライン、又はこれらの組み合わせ、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、ピロキシカム、アスピリン、サルサレート、ジフルニサル、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン、ピロキシカム、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、エトドラク、ケトロラク、オキサプロジン、もしくはセレコキシブ、又はこれらの組み合わせ、ステロイド、例えば、グルココルチコイド、アプロゲスチン、アミネラロコルチコイド、コルチコステロイド、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾン、トリアムシノロン、フルオロメタロン、デキサメタゾン、メドリゾン、ベタメタゾン、ロテプレドノール、フルオシノロン、フルメタゾン、リメキソロン、モメタゾン、アンドロゲン、テストステロン、メチルテストステロン、もしくはダナゾール、又はこれらの組み合わせ、抗瘢痕化剤、例えば、マイトマイシン‐C、イミキモド、インターフェロン、ドキソルビシン、ベラパミル、レチノイン酸、タモキシフェン、コルチコステロイド、ブレオマイシン、シリコーンを主成分とする薬剤、もしくは5‐フルオロウラシル、又はこれらの組み合わせを本明細書において説明した靱帯線材及び脊椎増強器具によって送り出すことができる。ある幾つかの実施形態では、瘢痕化剤を用いると、周りの組織の付着及び/又は同化を促進することができる。ある幾つかの実施形態では、骨形成剤としては、酸性及び塩基性線維芽細胞成長因子(FGF‐1及びFGF‐2)及びFGF‐4を含む線維芽細胞成長因子ファミリーの要素、PDGF‐AB、PDGF‐BB及びPDGF‐AAを含む血小板由来成長因子(PDGF)ファミリーの要素、EGF、VEGF、IGF‐I及びIGF‐IIを含むインスリン様成長因子(IGF)ファミリーの要素、TGF‐β1、2及び3を含むTGF‐βスーパーファミリー、オステオイド誘導因子(OIF)、アンジオジェニン、エンドセリン、肝細胞増殖因子及び表皮細胞増殖因子、MP‐52を含む骨形態形成タンパク質(BMP)の要素、例えば、BMP‐1、BMP‐3、BMP‐2、OP‐1、BMP‐2A、BMP‐2B、BMP‐7及びBMP‐14、HBGF‐1及びHBGF‐2、増殖分化因子(GDF)、インドヘッジホッグ、ソニックヘッジホッグ、及びデザートヘッジホッグを含むヘッジホッグファミリーのタンパク質要素、ADMP‐1、インターロイキン(IL)ファミリーの骨形成要素、GDF‐5、及びCSF‐1、G‐CSF、及びGM‐CSFを含むコロニー刺激因子(CSF)ファミリーの要素、及びこれらの組み合わせ又はアイソフォームが挙げられる。ある幾つかの実施形態では、骨吸収抑制薬は、インフリキシマブ、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)、ビスホスホネート、カルシトニン、オステオプロテグリン(OPG)、カテプシンB、カテプシンL、カテプシンK、スタチン、アレンドロネート、エチドロネート、もしくはリセドロネート、又はこれらの組み合わせから成る群から選択されたカテプシンを阻害する薬剤を含む特異性の高いサイトカイン拮抗剤であるのがよい。ある幾つかの実施形態では、局所組織の治癒及び同化を改変するための分子は、血管内皮増殖因子(VEGF)又は血管透過性因子(VPF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)及び塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含む線維芽細胞増殖因子ファミリーの要素、インターロイキン‐8(IL‐8)、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)又は血小板由来内皮細胞成長因子(PD‐ECGF)、トランスフォーミング成長因子アルファ及びβ(TGF‐α、TGF‐β)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)、肝細胞増殖因子(HGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM‐CSF)、インスリン増殖因子‐1(IGF‐1)、アンギオジェニン、アンギオトロピン、アンギオテンシン、フィブリンもしくはニコチン酸アミド、又はこれらの組み合わせ(これらには限定されない)を含む血管新生因子であるのがよい。
【0016】
本発明の種々の観点では、脊椎増強器具又は靱帯線材は、外科医、コンピュータ支援外科装置、ロボット外科装置、低侵襲手技、又は経皮配置法により定位置に配置されるのがよい。かかる配置器具及び技術の例としては、米国特許第10,893,910号明細書、同第10,864,057号明細書、同第10,828,116号明細書、同第10,548,620号明細書、同第10,463,404号明細書、同第10,349,986号明細書、同第10,292,778号明細書、同第10,265,128号明細書、同第10,201,391号明細書、同第10,004,562号明細書、同第9,788,966号明細書、同第9,320,604号明細書、及び同第9,283,048号明細書に記載された配置器具及び技術が挙げられるが、これらには限定されず、これら米国特許の各々を参照し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0017】
ある幾つかの実施形態では、脊椎増強器具又は靱帯線材は、経時的に吸収可能性であるのがよい。ポリ‐α‐ヒドロキシ脂肪族エステルは、植え込み製品(例えば、整形外科、薬物送達、足場及び縫合)として広く用いられている生体吸収性ポリマーである。ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、及びポリジオキサノン(PDO)は、ヒトに対する臨床的使用のために米国食品医薬品局(FDA)によって現在認可されている。理想的な条件下において、生体吸収性ポリマーは、体内でゆっくりとこの生体吸収性ポリマーを代謝させている間に治癒を促進することができ、かくして、金属合金が植え込まれたときに必要とされる場合のある2回目の手術の必要性がなくなる。高分子医薬送達器具は、薬剤劣化を防止し、そしてまた、添加する薬物とポリマーの比、ポリマーの分子量及び組成を変化させることによって薬剤放出の管理を提供することができる。本発明の種々の観点では、脊椎増強器具又は靱帯線材は、生体吸収性ポリマー、例えば、ポリ乳酸又はポリラクチド、ポリグリコール酸又はポリグリコリド、ポリ(p‐ジオキサノン)、種々のポリ(エーテルエステル)、ポリ(アミノ酸)、ラクチドのコポリマー及びターポリマー、グリコリド、p‐ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、ε‐カプロラクトン、ポリ(エチレンジグリコレート)、ポリ(エトキシエチレンジグリコレート)、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ無水物、ポリカプロラクトン、ポリ‐L‐乳酸、ポリ‐D‐L‐乳酸、もしくはポリホスフェートエステル、又はこれらの組み合わせから作られるのがよい。
【0018】
本明細書で用いる種々の用語は、直接的又は間接的、全体又は部分、一時的又は永続的、行為又は非行為を意味する場合があることに注目されたい。例えば、一要素がもう1つの要素に「取り付けられ」、「上に位置し」、「連結され」、又は「結合され」ると記載されている場合、この一要素は、もう1つの要素に直接取り付けられ、この上に位置し、これに連結され、又は結合される場合があり、あるいは、間接的又は直接的な手段を含む介在要素が存在してもよい。これとは対照的に、一要素がもう1つの要素に「直接取り付けられ」、「直接連結され」、又は「直接結合され」ると記載されている場合、介在する要素は存在しない。
【0019】
原文明細書で用いられている種々の単数形“a”、“an”、及び“the”は、別段の明示の指定がなければ、種々の複数形をも含むことが意図されている。
【0020】
原文明細書において種々の存在動詞“comprises”(訳文では、「~を有する」としている場合が多い)、“includes”(「~を含む」)、又は“comprising”、“including”が用いられているとき、指定した特徴、整数、ステップ、作用、要素、又はコンポーネントの存在を特定しているが、1つ以上の他の特徴、他の整数、他のステップ、他の作用、他の要素、他のコンポーネント、又はこれらのグループの存在又は追加を排除することはない。
【0021】
本明細書で用いられている用語「又は」は、排他的な「又は」ではなく、包括的な「又は」を意味することが意図されている。すなわち、別段の指定がなければ、又は文脈から明らかではない場合、「XはA又はBを採用する」という表現は、一組の自然な包括的並び替えのうちの任意のものを意味することを意図している。すなわち、XがAを採用し、XがBを採用し、又はXがAとBの両方を採用する、「XがA又はBを採用する」という表現は、上記の場合のいずれかを満たす。
【0022】
本明細書で用いる「又はその他」、「組み合わせ」、「結合」、又は「これらの組み合わせ」は、当該用語の前に位置する列挙されたアイテムの全ての並び替え及び組み合せを意味している。例えば、「A、B、C、又はこれらの組み合わせ」という表現は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABCのうちの少なくとも1つを含み、そして順序が特定の文脈において重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABをも含むことが意図されている。この例に続き、1つ以上のアイテム又は用語の繰り返し、例えば、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBその他を含む組み合わせが明示的に含まれる。当業者であれば理解されるように、代表的には、文脈から明らかな場合を除き、任意の組み合わせにおけるアイテム又は用語の数に制限はない。
【0023】
本明細書において用いる全ての用語(技術的用語及び科学的用語を含む)は、別段の指定がなければ、本発明と関連した当業者によって通常理解されるのと同一の意味を有する。種々の用語、例えば一般的に用いられている辞書類で定義されている用語は、関連技術分野の文脈における意味と一致した意味を有するものとして解されるべきであり、また、本明細書において明示の指定がなければ、理想化され又は過剰に形式的な意味で解されるべきではない。
【0024】
本明細書において用いる相対的用語、例えば、「~の下に」、「下方」、「~の上に」、及び「上方」は、一組の添付の例示の図面に示すように1つの要素のもう1つの要素に対する関係を説明するために本明細書において使用されている場合がある。かかる相対的な用語は、一組の添付の例示の図面に記載された向きに加えて、例示の技法の種々の向きを含むものである。例えば、一組の添付の例示の図面の器具を逆さまにした場合、種々の要素は、他の要素の「下方」の側上に位置するものと説明されている場合、これは、他の要素の「上方」の側上に差し向けられることになる。同様に、例示の図のうちの1つの器具を逆さまにした場合、種々の要素が他の要素の「下に」又は「~の下方に」位置するものと説明されている場合、かかる要素は、他の要素の「上」に差し向けられることになる。したがって、種々の要素の「下」及び「下方」は、「上」及び「下」の向きの両方を含むことができる。
【0025】
本明細書で用いる「約」又は「実質的に」という用語は、公称の値/用語からの±10%のばらつきを意味している。かかるばらつきは、かかるばらつきを具体的に言及するにせよそうでないにせよいずれにせよ、本明細書において与えられる任意所与の値/用語に常時含まれる。
【0026】
図1は、椎骨の後方/前方断面の図である。特に、図1に示すように、ユーザ(例えば、哺乳類、動物、ヒト)の椎骨100は、後方部分101、前方部分102、棘突起103、横突起104、椎弓板105、椎弓根106椎体107、肋頭面108、上関節突起面109、及び脊髄112を収容した椎孔110を有する。本発明の器具を脊椎の任意の椎骨100に利用できるということに注目されたい。
【0027】
図2は、本発明の1つ以上の実施形態としての器具200(ある幾つかの観点においては、靱帯システムともいう)を示している。器具200は、椎体204a内に配置された既存の椎骨アンカー203に取り付けられている。図示していないが、器具200は、変形例として、椎骨(例えば、横突起、棘突起、椎弓板、又は関節間部)に結合された(例えば、締結された、結合された、相互係止された、くっつけられた、ステープル留めされた、又は結束された)任意の既存の骨固定器具(例えば、フック、ロッド、スクリュー、ワイヤ、アンカー、ダーツ、又はループ)に取り付けられてもよい。図2に示すように、器具200は、椎体204b,204c,204d,204e,204f、及び棘突起205a,205b,205c,205d,205e,205fをまたいでいる。図2に示すように、器具200は、棘突起205aの骨に固定(201a)され、棘突起205bの骨に固定(201b)され、棘突起205cの骨に固定(201c)され、棘突起205dの骨に固定(201d)されている。器具200はまた、棘突起205aの近位側で軟組織202aに固定され、棘突起205bの近位側で軟組織202bに固定され、棘突起205cの近位側で軟組織202cに固定され、棘突起205dの近位側で軟組織202dに固定され、そして棘突起205eの近位側で軟組織202eに固定された状態で示されている。しかしながら、器具200は、椎骨の近くに位置する(例えば、約1インチ(2.54cm)以下のところ)組織(例えば、硬組織又は軟組織)又はインプラント(挿入されており又は既存のもの)に固定できることに注目されたい。器具は、医学的状態を診断し、モニタし、又は治療するために使用できる。例えば、医学的状態としては、脊椎の加齢性変形、側弯症、後弯症、平背、扁平脊椎症、神経変性変形、外傷に伴う不安定性又は変形、筋肉変性、代謝性筋肉又は骨に関連する病理学的病態、先天性又は特発性病態、医原性病理学的病態、感染性又は感染後の病理学的病態が挙げられる。
【0028】
図2には示されていないが、保護部材(例えば、チューブ、スリーブ、部分筒体、トラフ)が器具及び靱帯線材の全部又は一部分を包み込むのがよい。保護部材は、合成材料、有機材料、金属、プラスチック、ゴム、布、又はシリコーンを含むのがよい。保護部材は、軟組織、棘突起、又は既存のアンカーに結合される(例えば、締結される、結合される、相互係止される、くっつけられる、ステープル留めされる、又は結束される)のがよい。種々の実施形態では、保護部材は、開放形状、閉鎖形状、対称形状、又は非対称形状(例えば、円形、長円形、三角形、五角形、八角形、弧状、V字形、U字形、J字形、D字形、C字形、半円形、湾曲形、扁平形)である断面を有することができる。ある特定の実施形態では、保護部材は、固形、半固形、透過性、又は半透過性であってよい。追加の実施形態では、保護部材は、剛性、半剛性、可撓性、弾力性、又は弾性であってよい。
【0029】
器具200は、アンカー203から延びる(例えば、1つ以上の椎骨をまたぐ)靱帯線材(例えば、移植靱帯、又は合成材料、例えばテザー、ケーブル、チェーン、ワイヤ、ロープ、ベルト、バンド、編組体、チューブ、又は筒体)を有する。靱帯線材は、保護された椎骨に沿って動くことができ又は変位可能であるのがよい(例えば、長手方向に、側方に、摺動可能に、懸垂状態で)。「動く」、「動くことができる(可動)」、及び「運動」という用語は、かかる用語の通常の意味、ならびに変位する、曲がる、撓む、回転する、ずれる、変位可能であり、可撓性であり、回転可能であり、シフト可能であり、変位、屈曲、回転、ずれを含み、そしてまた、任意の又は全ての方向及び寸法を含む。靱帯線材は、金属、プラスチック、ゴム、布、もしくはシリコーン、又は自己移植片又は同種移植片を含むことができる。靱帯線材は、扁平であり、円筒形であり、合成であり、弾性であり、剛性であり、織成され、又は編組されることが可能である。ある幾つかの実施形態では、靱帯線材は、保護部材内を延びる。変形実施形態では、コンパウンド(例えば、接着剤、パテ、グルー、骨セメント)が保護部材及び椎骨表面(例えば、弧状トンネル、U字形トンネル、C字形トンネル、D字形トンネル、O字形トンネルとして)を覆って配置されるのがよく、その結果、保護部材は、棘突起又は棘突起の近くに位置する軟組織に結合される(例えば、くっつき、ボンディングされる)。
【0030】
靱帯線材及び存在している場合には保護部材は、垂直面に沿って(例えば矢状面に沿って)延びるのがよく、そして1つ以上の椎骨を横切って1つ以上の固定箇所からまたぐように延びる。このやり方では、靱帯線材又は保護部材は、ユーザの矢状面と交差しない。変形例として、靱帯線材又は保護部材は、対角面に沿って延びてもよく、そして1つ以上の椎骨を横切って1つ以上の固定箇所からまたぐように延びてもよい。このやり方では、靱帯線材又は保護部材は、ユーザの矢状面と交差する。他の実施形態では、靱帯線材又は保護部材は、垂直面に沿って(例えば、矢状面に沿って)延びてもよく、そして1つ以上の椎骨を横切って1つ以上の固定箇所からまたぐように延びてもよい。このやり方では、靱帯線材又は保護部材は、ユーザの矢状面と交差しない。靱帯線材又は保護部材は、椎骨と接触することができ、これとの接触を回避することもできる。靱帯線材又は保護部材は、椎骨に結合することができ(例えば、締結することができ、結合することができ、相互係止することができ、くっつくことができ、ステープル留めすることができ、又は結束することができ)、又は椎骨への結合を回避することができる。加うるに、靱帯線材又は保護部材は、水平面に沿って(例えば、ユーザの横断面に沿って)延びてもよく、そして椎骨を横切って1つ以上の固定箇所からまたぐように延びてもよい。このやり方では、靱帯線材又は保護部材は、共通の椎骨上に位置決めされ、靱帯線材又は保護部材は、ユーザの矢状面と交差する。
【0031】
図3は、本発明の1つ以上の実施形態としての器具300(ある幾つかの観点では、靱帯システムともいう)を示している。器具300は、コネクタ303により既存のロッド304に取り付けられており、この既存のロッドは、椎体306a内に配置された既存の椎骨アンカー306に取り付けられている。図示していないが、器具300は、変形例として、椎骨(例えば、横突起、棘突起、椎弓板、又は関節間部)に結合された(例えば、締結された、結合された、相互係止された、くっつけられた、ステープル留めされた、又は結束された)任意の既存の骨固定器具(例えば、フック、ロッド、スクリュー、ワイヤ、アンカー、ダーツ、又はループ)に取り付けられてもよい。図3に示すように、器具300は、椎体306b,306c,306d,306e,306f、及び棘突起307a,307b,307c,307d,307e,307fをまたいでいる。図3に示すように、器具300は、棘突起307aの骨に固定(302a)され、棘突起307bの骨に固定(302b)され、棘突起307cの骨に固定(302c)され、棘突起307dの骨に固定(302d)され、棘突起307eの骨に固定(302e)されている。器具300はまた、棘突起307aの近位側で軟組織301a,301bに固定され、棘突起307bの近位側で軟組織301c,301dに固定され、棘突起307cの近位側で軟組織301e,301fに固定され、棘突起307dの近位側で軟組織301g,301hに固定され、そして棘突起307eの近位側で軟組織301i,301jに固定された状態で示されている。
【0032】
図4は、本発明の一実施形態としての器具400(ある幾つかの観点では、靱帯システムともいう)を示している。器具400は、棘突起402a,402b,402c,402d及び椎体403a,403b,403c,403dをまたいだ状態で延びている。図4に示すように、器具400は、棘突起402a,402b,402c,402dの近位側に位置する箇所のところで軟組織に固定(401a,401b,401c,401d,401e,401f,401g,401h)されている。
【0033】
図5は、本発明に従って靱帯線材を有する器具500(ある幾つかの観点では、靱帯システムともいう)の一実施形態が設けられた椎骨の断面図である。図5は、器具500が生まれつきの軟組織502及び筋503の近位側で棘突起に固定(501)された状態を示している。
【0034】
図6は、本発明に従って靱帯線材を有する器具600(ある幾つかの観点では、靱帯システムともいう)の一実施形態が設けられた椎骨の断面図である。図6は、器具600が筋602及び棘突起604の近位側で筋膜又は生まれつきの靱帯601に固定された状態を示している。また、図6には、椎体603が示されている。
【0035】
図7は、本発明に従って靱帯線材を有する器具700(ある幾つかの観点では、靱帯システムともいう)の一実施形態が設けられた5つの椎骨の断面図である。図7は、器具700がコネクタ704により椎骨701eの近位側で既存のロッド705に固定された状態を示している。図7に示すように、器具700は、椎骨701a,701b,701c,701d,701eをまたいだ状態で延びている。図7に示すように、器具700は、椎骨701aの棘突起の骨に固定(702a)されるとともに、椎骨701bの棘突起の骨に固定(702b)されている。器具700はまた、椎骨701a,701bの棘突起の近位側で軟組織に固定(703a)された状態で示されている。
【0036】
図8は、本発明に従って靱帯線材を有する器具800(ある幾つかの観点では、靱帯システムともいう)の一実施形態が設けられた露出状態の3つの椎骨(2つが部分的に露出されている(801a,801b)そして1つが露出されている(802))の断面図である。図8は、器具800が椎骨802内に設けられた既存の椎骨アンカー803a,803bに固定された状態を示している。図8に示すように、器具800は、部分的に露出された椎骨801b,801a、ならびに多数の非露出椎骨(図8では見えない)をまたいだ状態で延びている。図8に示すように、器具800は、非露出状態の椎骨(図8では見えない)の近位側で軟組織に固定(804a,804b,804c,804d,804e,804f,804g,804h,804i,804j,804k,804l)されている。
【0037】
図9は、本発明に従って靱帯線材を有する器具900(ある幾つかの観点では、靱帯システムともいう)の一実施形態が設けられた7つの椎骨の断面図である。図9は、器具900が椎骨901g内に設けられた既存の椎骨アンカー904a,904bに固定された状態を示している。図9に示すように、器具900は、椎骨901a,901b,901c,901d,901e,901fをまたいだ状態で延びている。図9に示すように、器具900は、椎骨901dの棘突起の骨902に固定(902)されるとともに、椎骨901fの棘突起の近位側で軟組織903に固定されている。
【0038】
本明細書において開示するようにかかる固定形式の全てを任意の並びの組み合わせ方式で混成するとともに合わせることができることに注目されたい。例えば、靱帯線材又は保護部材をかかる方法のうちの1つ、かかる方法のうちの少なくとも2つ、かかる方法のうちの少なくとも3つ、又は人体内のかかる箇所のうちの任意の1つ以上により又はこれらなしで取り付けることができる。ある幾つかの実施形態に関して説明した特徴を任意の並びの又は組み合わせの方式で種々の幾つかの実施形態内に組み合わせ、又はこれらと組み合わせることができる。例示の実施形態の互いに異なる観点又は要素を本明細書において開示したように、同様の仕方で組み合わせることができる。
【0039】
用語「第1」、「第2」が種々の要素、コンポーネント、領域、層、又は区分を説明するために本明細書において用いられている場合があるが、これら要素、コンポーネント、領域、層、又は区分は、必ずしもかかる用語によって限定されるべきではない。これら用語は、1つの要素、コンポーネント、領域、層、又は区分をもう1つの要素、コンポーネント、領域、層、又は区分から区別するために用いられている。かくして、以下に説明する第1の要素、第1のコンポーネント、第1の領域、第1の層、又は第1の区分は、本発明の種々の教示から逸脱することなく、第2の要素、第2のコンポーネント、第2の領域、第2の層、又は第2の区分と称することができる。
【0040】
ある幾つかの例示の実施形態に関して説明した特徴を種々の他の例示の実施形態内に又はこれらのコンビネーション又はサブコンビネーションの状態で利用することができる。また、本明細書において開示しているような例示の実施形態の互いに異なる観点又は要素を同様な仕方で、コンビネーション又はサブコンビネーションの状態で利用することができる。さらに、幾つかの例示の実施形態は、個々にであれ又はまとめてであれいずれにせよ、より大きなシステムのコンポーネントであってよく、他の手技は、これらの用途に対して優先することができ、又は違ったやり方でこれらの用途を改造することができる。加うるに、多くのステップが本明細書において開示したような例示の実施形態の実施前に、実施後に、又はこの実施と同時に必要となる場合がある。少なくとも本明細書において開示しているような、方法又はプロセスのうちの任意のもの又は全てを任意の仕方で少なくとも1つの実態により少なくとも部分的に実施することができることに注目されたい。
【0041】
本発明の例示の実施形態は、本発明の理想化された実施形態(及び中間構造)の例示を参照して本明細書において説明されている。したがって、例えば製造技術又は製造公差の結果として種々の図示の形状からの変形が予測されるべきである。かくして、本発明の種々の例示の実施形態は、必ずしも、本明細書に記載した領域の種々の特定の形状には限定されるものと解されてはならず、例えば、製造の結果として生じる形状のばらつきを含むものである。
【0042】
本明細書において開示したような、任意又は全ての要素は、同一の構造的に連続した部品から形成でき、例えば、一体であってもよく、あるいは、別々に製造され又は連結されてもよく、例えば、組立体又はモジュールであってもよい。本明細書において開示したような任意の要素又は全ての要素は、アディティブマニュファクチャリング方式、サブトラクティブマニュファクチャリング、又は任意他の製造方式であり、いずれにせよ、任意の製造プロセスにより製造できる。例えば、幾つかの製造プロセスは、三次元(3D)プリンティング、レーザー切断、コンピュータ数値制御ルーティング、ミル加工、プレス加工、スタンピング、真空成形、ハイドロフォーミング法、射出成形法、リソグラフィ及びその他を含む。
【0043】
以下の種々の請求項に記載された全てのミーンズ又はステッププラスファンクション要素の種々の対応の構造、材料、行為、及び均等例は、具体的にクレーム請求された他のクレーム請求された要素と組み合わせて機能を実行するための任意の構造、材料、又は行為を含むことが意図されている。種々の実施形態を選択して説明したが、その目的は、本発明の種々の原理及びその種々の実用分野を最もよく説明するためであり、しかも、他の当業者が意図した特定の使用に合うような種々の改造例で種々の実施形態についての本発明を理解することができるようにすることにある。
【0044】
この詳細な説明は、例示及び説明の種々の目的のために提供されたが、完全に網羅的であり、又は本発明を開示した種々の形態に限定するものではない。技術及び構造の多くの改造及び変形は、以下の種々の請求項に記載されている本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。したがって、かかる改造例及び変形例は、本発明の一部であると想定される。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって定められ、特許請求の範囲の請求項は、既知の均等例及び本発明の出願時点においては予測できない均等例を含む。
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【国際調査報告】