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特表2024-506353マシニングプロセス中の欠陥を識別する方法及びマシニング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】マシニングプロセス中の欠陥を識別する方法及びマシニング装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/38 20140101AFI20240205BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240205BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K26/00 Q
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548700
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2022051898
(87)【国際公開番号】W WO2022189062
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】102021202350.9
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン エス・エー プルス コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Werkzeugmaschinen SE + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Str. 2, 71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンフリート マグ
(72)【発明者】
【氏名】ボリス レガート
(72)【発明者】
【氏名】ダーフィト シントヘルム
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ケスラー
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168CA06
4E168CA07
4E168CB03
4E168DA02
4E168FB03
4E168FB05
4E168KA15
4E168KB03
(57)【要約】
本発明は、マシニングプロセス中の、特に切削プロセス中の欠陥を識別する方法に関し、方法は、工作物を、マシニングツール、特にレーザマシニングヘッドと工作物を相互に関して移動させながら機械加工する、より詳しくは切削するステップと、工作物のモニタ対象領域の画像を記録するステップであって、前記モニタ対象領域はマシニングツールと工作物との相互作用領域(18)を含むようなステップと、モニタ対象領域の画像を、マシニングプロセスの少なくとも1つの欠陥を識別するために評価するステップと、を含む。欠陥を識別するために、画像の評価中、相互作用領域(18)内の強度プロファイル(I)の局所的強度低下(ΔI)の有無が、マシニングプロセスの進行方向(V)に検出される。本発明はまた、関連するマシニング装置にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マシニングプロセス中、より詳しくは切削工程中に少なくとも1つの欠陥を識別する方法において、
工作物(8)を、マシニングツール、特にレーザマシニングヘッド(4)と前記工作物(8)を相互に関して移動させながら機械加工する、より詳しくは切削するステップと、
前記工作物(8)のモニタ対象領域(28)の画像(B)を記録するステップであって、前記モニタ対象領域は前記マシニングツールと前記工作物(8)との相互作用領域(18)を含むようなステップと、
前記モニタ対象領域(28)の前記画像(B)を、前記マシニングプロセス中の前記少なくとも1つの欠陥を識別するために評価するステップと、
を含み、
前記欠陥を識別するために、前記画像(B)の評価中、前記相互作用領域(18)内の強度プロファイル(I)の局所的強度低下(ΔI)の有無が、前記マシニングプロセスの進行方向(V)に検出される方法。
【請求項2】
不完全切削動作は、前記相互作用領域(18)内で前記局所的強度低下(ΔI)がないことが検出された場合にのみ、前記工作物(8)の切削中の欠陥として識別される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記欠陥を識別するために、相互作用領域(18)の少なくとも1つの幾何学的特徴、特に前記進行方向(V)への前記相互作用領域(18)の長さ(L)が前記画像(B)の前記評価中に検出される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
切削中、前記進行方向(V)への前記相互作用領域(18)の前記長さ(L)に依存する特性が閾値(S)を超えたとき、且つ前記局所的強度低下(ΔI)がないことが前記相互作用領域(18)内で検出されたときに、不完全切削動作が識別される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
加工位置(BX,Y)における前記局所的強度低下(ΔI)の前記検出、特に反復的検出は、前記加工位置(BX,Y)における前記マシニングプロセスの位置依存欠陥、特に支持バー(7)の存在に関連付けられる、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記位置依存欠陥の程度、特に前記支持バー(7)の汚染の程度は、前記強度プロファイル(I(Y))に基づいて、特に前記強度プロファイル(I(Y))の勾配に基づいて特定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記マシニングプロセスの欠陥の種類は、前記相互作用領域(18)の時間的に連続する複数の画像(B)の前記評価に基づいて推定される、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
工作物(8)を機械加工する、より詳しくは切削するマシニングツール、特にレーザマシニングヘッド(4)と、
前記マシニングツールと前記工作物(8)を相互に関して移動させる移動装置(12)と、
前記工作物(8)のモニタ対象領域(28)の画像(B)を記録する画像撮影装置(21)であって、前記モニタ対象領域は、前記マシニングツール、より詳しくはレーザマシニングヘッド(4)と前記工作物(8)との相互作用領域(18)を含むような画像撮影装置(21)と、
マシニングプロセスの少なくとも1つの欠陥を前記モニタ対象領域(28)の前記画像(B)の評価に基づいて識別するように構成された評価装置(30)と、
を含むマシニング装置(1)において、
前記欠陥を識別するために、前記評価装置(30)は、前記画像(B)の評価中に前記相互作用領域(18)内での強度プロファイル(I)の局所的な強度低下(ΔI)の有無を前記マシニングプロセスの進行方向(V)に検出するように構成されるマシニング装置(1)。
【請求項9】
前記評価装置(30)は、前記局所的な強度低下(ΔI)がないことが前記相互作用領域(18)内で検出された場合にのみ前記工作物(8)の切削中の欠陥として不完全切削動作を識別するように構成される、請求項8に記載のマシニング装置。
【請求項10】
前記欠陥を識別するために、前記評価装置(30)は、前記画像(B)の前記評価中に、相互作用領域(18)の少なくとも1つの幾何学的特徴、特に前記相互作用領域(18)の長さ(L)を前記進行方向(V)に検出するように構成される、請求項8又は9に記載のマシニング装置。
【請求項11】
前記評価装置(30)は、前記相互作用領域(18)の前記長さ(L)に依存する特性が閾値(S)を超えたとき、且つ前記局所的な強度低下(ΔI)がないことが前記相互作用領域(18)内で検出されたときに、切削中の不完全切削動作を識別するように構成される、請求項10に記載のマシニング装置。
【請求項12】
前記評価装置(30)は、加工位置(BX,Y)における前記局所的な強度低下(ΔI)の前記検出、特に反復的検出は、前記加工位置(BX,Y)における前記マシニングプロセスの位置依存欠陥、特に支持バー(7)の存在に関連付けられるように構成される、請求項8~11の何れか1項に記載のマシニング装置。
【請求項13】
前記評価装置(30)は、前記位置依存欠陥の程度、特に前記支持バー(7)の汚染の程度を、前記強度プロファイル(I(Y))に基づいて、特に前記強度プロファイル(I(Y))の勾配(dI/dY)に基づいて特定するように構成される、請求項12に記載のマシニング装置。
【請求項14】
前記評価装置(30)は、前記マシニングプロセスの欠陥の種類を、前記相互作用領域(18)の時間的に連続する複数の画像(B)の前記評価に基づいて推定するように構成される、請求項8~13の何れか1項に記載のマシニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作物を、マシニングロッド、特にレーザマシニングヘッドと工作物を相互に関して移動させながら機械加工する、より詳しくは切削するステップと、工作物のモニタ対象領域の画像を記録するステップであって、前記モニタ対象領域はマシニングツールと加工物との相互作用領域を含むようなステップと、モニタ対象領域の画像を、マシニングプロセスの少なくとも1つの欠陥を識別するために評価するステップと、を含む、マシニングプロセス中、より詳しくは切削プロセス中の少なくとも1つの欠陥を識別する方法に関する。本発明はまた、工作物を機械加工する、より詳しくは切削するためのマシニングツール、特にレーザマシニングヘッドと、マシニングツールと工作物を相互に関して移動させる移動装置と、工作物上のモニタ対象領域の画像を記録するための画像撮影装置であって、前記モニタ対象領域はマシニングツール、より詳しくはレーザマシニングヘッドと工作物との相互作用領域を含むようなステップと、モニタ対象領域の画像の評価に基づいてマシニングプロセスの少なくとも1つの欠陥を識別するように構成された評価装置と、を含むマシニング装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
不完全な切削動作の形態の欠陥は、マシニングビーム、例えば、2-Dレーザ切削装置の形態の広範囲を機械加工するマシニング装置の場合のプラズマ又はレーザビーム等を使用する切削プロセスの形態のマシニングプロセスの範囲内の欠陥として生じ得る。不完全切削動作の場合、マシニングビームは、光線エネルギが切削ギャップの体積全体を溶融させるのに不十分であるため、(金属)工作物全体を切断することができなくなる。
【0003】
(特許文献1)は、工作物の、高エネルギビームと工作物との間の相互作用領域を含むモニタ対象領域の画像を、前記高エネルギビーム、特にレーザビームで切削する際の不完全切削動作を識別するために記録することを提案している。画像は、相互作用領域の、切削面と反対の端でのスラグ小滴の検出のために評価され、スラグの小滴の発生に基づいて不完全切削動作が識別される。スラグ小滴は、相互作用領域の、切削面と反対の端における形状の変化に基づいて、及び/又は相互作用領域の、切削面とは反対の端の画像中の局所的強度最小値の発生に基づいて検出できる。
【0004】
(特許文献2)には、フォトダイオードの形態の検出器を使って短い不完全切削動作を検出できることが記載されており、前記フォトダイオードは追従型として、すなわち切削ギャップを後ろ向きで見るように設計され、その観察方向は加工用レーザビームの光軸に関して5°を超える極角に向けられる。前記公報にはまた、不完全切削動作が識別される際に擬欠陥が生じ得ることも記載されており、これは、他の影響、例えば切削速度の高速化やより広い切削ギャップが、同程度に、不完全切削動作に起因する影響に上塗りされ得るからである。
【0005】
(特許文献3)は、マシニングプロセスのプロセス品質に関する少なくとも1つの特性が工作物の、加工領域と工作物との間の相互作用領域を含み得るモニタ対象領域に基づいて特定される方法を開示している。この方法では、プロセス品質に関する少なくとも1つの位置依存特性が同じ加工位置におけるその少なくとも1つの特性の複数の測定値に基づいて特定され、及び/又はプロセス品質に関する少なくとも1つの方向依存特性が同じ加工方向へのその少なくとも1つの特性の複数の測定値に基づいて特定される。
【0006】
その中に記載されている方法を利用すると、加工位置又は作業空間内の位置に依存するが、切削すべき輪郭の形状、マシニングプロセスの種類(例えば、ガス切断や溶断)、及びマシニングパラメータには実質的に依存しない欠陥位置領域を識別することが可能である。位置依存欠陥の具体例には、とりわけ、作業空間内に配置され、スラグにより汚染されるとマシニングプロセス及び、したがって切削結果を損ない得る支持バーが含まれる。ミスカット、不完全切削動作、スラグの付着、バリ及びスパッタの形成、切削エッジの焼損という形態の欠陥は、汚染された支持バーが切削プロセスに及ぼす障害の数例である。
【0007】
(特許文献4)は、支持スラットの横方向範囲の実際の状態が捕捉機器によって捕捉される方法を開示している。例えば、支持スラットの実際の状態は、光学的方法を適用することによって捕捉でき、これはいわば、光学的方法及び/又はイメージング方法からの方法である。前者の場合、支持スラットは捕捉機器の発光素子と光センサとの間に配置でき、支持スラットの横方向範囲を光ビームによって光センサ上に結像させることができる。後者の場合、支持スラットと捕捉機器のカメラが相互に対向して位置付けられ得て、支持スラットの横方向の範囲の画像がカメラによって記録される。
【0008】
支持スラットの輪郭の実際の値を光センサによって捕捉することにより、工作物の支持体の除去すべき付着物の存在をモニタする方法が、(特許文献5)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許第102013209526B4号明細書
【特許文献2】国際公開第2016/181359A1号パンフレット
【特許文献3】独国公開特許第102018217526A1号明細書
【特許文献4】独国公開特許第102017210182A1号明細書
【特許文献5】欧州特許第2082813A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、マシニングプロセス中の欠陥を確実に識別するための方法及びマシニング装置を提供する目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、この目的は、欠陥を識別するために、相互作用領域内の強度プロファイルの局所的な強度低下の有無が画像の評価中にマシニングプロセスの進行方向に検出されることを特徴とする、冒頭に記載された種類の方法により達成される。
【0012】
マシニングプロセス中、例えばレーザ切削中に、相互作用領域(プロセス発光ゾーン又はプロセス光)の画像がイメージングセンサシステム又は画像撮影装置によってリアルタイムで(例えば、400Hzより高い周波数で)撮影され、適当な画像処理アルゴリズムを利用してリアルタイムで評価されることにより、マシニングプロセス中の欠陥の識別を可能にする相互作用領域の特徴が抽出又は解析される。
【0013】
相互作用領域の画像の評価範囲内で抽出される特徴に基づく欠陥の識別中には、欠陥の存在又は欠陥の種類の、プロセスに依存できる識別(process-reliable identification)を可能にする妥当性チェックがきわめて重要である。不完全切削動作の形態のマシニングプロセスの欠陥を識別するにあたり、実際の不完全切削動作と擬似的な不完全切削動作を純粋に相互作用領域の幾何学的特徴に基づいて、例えば相互作用領域の長さに基づいて明確に区別することは不可能であることがわかっている。このような擬似的な不完全切削動作は、例えば工作物マウントの支持バー又は工作物の種類(例えば二重金属シート)に起因する、切削プロセス中に発生する不完全切削動作の場合と同様に相互作用領域の幾何学的特徴を変化させる他の欠陥が発生した場合に発生し得る。
【0014】
これらの場合、すなわち「欠陥のある」切削プロセスの場合、一般に、純粋に相互作用領域の幾何学的特徴に基づく不完全切削動作のプロセスに依存できる識別はあり得ず、すなわち、たとえ不完全切削動作が切削プロセス中に発生していなくても不完全切削動作が識別されることがあり得る。しかしながら、相互作用領域の進行又は切削方向、すなわち工作物とマシニングツールとの間の瞬間的な相対的移動方向への強度プロファイルを使って、不完全切削動作が存在するか否かの区別を行うことができる。しかしながら、以下に詳しく説明するように、不完全切削動作を識別するためには一般に、相互作用領域の別の幾何学的特徴が追加で必要となる。
【0015】
強度プロファイルの局所的な強度低下は通常、欠陥のない切削プロセスの場合、切削面又は相互作用領域の実際に予想される(名目上の)端の領域で発生する。しかしながら、不完全切削動作が存在すると、相互作用領域の進行方向への長さが伸び、その結果、局所的強度低下は相互作用領域の端でなく相互作用領域の中で発生し、すなわち、進行方向への強度は、強度低下又は局所的強度最小値の前後両方において局所的強度最小値に対して増大する。
【0016】
例えば、局所的強度低下の存在は、相互作用領域内の強度プロファイルが局所的最小値を有する場合に検出でき、その強度値は相互作用領域内の最大強度値の特定のパーセンテージ未満、例えば80%未満である。強度プロファイルの強度値は、進行方向に局所的強度最小値の上流及び下流で増大し、最終的に強度プロファイルは相互作用領域の前端と後端で急激に低下する。局所的強度低下が検出される最大強度値のパーセンテージは必ずしも事前に特定されず、任意選択的に現在の加工地点に基づいて規定され得る。
【0017】
局所的強度低下の有無の検出には、代替的又は追加的な別の基準も任意選択的に使用され得る。例えば、局所的強度低下の有無は、強度プロファイルの勾配に基づいて、いわば進行方向への強度プロファイルの偏差に基づいて検出され得る。強度プロファイルの勾配は、相互作用領域内の強度プロファイルの局所的最小値において、勾配が負の数値から正の数値へと増大するゼロクロシングを有する。勾配のゼロクロシングは、勾配の局所的最小値及び局所的最大値との間にある。同様に、局所的強度低下を勾配のプロファイルに基づいて、例えば局所的最小値又は局所的最大値の絶対値に基づいて検出することもでき、これは局所的強度低下の急峻度を表す。例えば、局所的最小値又は局所的最大値の位置における勾配の絶対値又は局所的最小値から局所的最大値への勾配の増大を使用し、そのための閾値と比較できる。
【0018】
変形型として、不完全切削動作は、相互作用領域内で局所的強度低下がないことが検出された場合にのみ、工作物の切削中の欠陥として識別される。ここで利用されるのは、切削方向への強度プロファイルに局所的強度低下(「不連続性」)がなく、また局所的強度最小値もないか、又は実際の不完全切削動作の場合の最大強度値と僅差の局所的強度最小値しかないことであり、これは典型的には支持バーの形態の欠陥の場合又は二重金属シートが存在する場合に当てはまり、それは材料フローにおけるこのような「欠陥」により、相互作用領域のそれぞれの地点において生成されるプロセス発光はより低くなるからである。したがって、実際の不完全切削動作と擬似的な不完全切削動作を相互作用領域内の強度プロファイルに基づいて区別することができる。
【0019】
欠陥を識別するために、ある変形型において、相互作用領域の少なくとも1つの幾何学的特徴、特に進行方向への相互作用領域の長さが画像評価中に画像解析により検出又は特定される。前述のように、相互作用領域の幾何学的特徴は、マシニングプロセス中の欠陥、特に不完全切削動作の形態の欠陥を識別するために使用できる。この場合、それぞれの欠陥を識別するために、幾何学的特徴は相互作用領域の他の特徴と、例えば相互作用領域内又は関心対象のプロセス光領域(以下参照)内の強度若しくは強度プロファイルと組み合わせられてよい。
【0020】
この変形型の発展形において、不完全切削動作は切削中、相互作用領域の長さに依存する特性が閾値を超えた場合、且つ相互作用領域内で局所的強度低下がないことが検出された場合に識別される。
【0021】
相互作用領域の長さに依存する特性は、相互作用領域の長さに依存する関数である。最も単純なケースでは、この特性は相互作用領域の長さそのものである。また、その特性を相互作用領域の長さに比例する変数とすることもでき、すなわち相互作用領域の長さに重み係数が乗じられる。しかしながら、特性と相互作用領域の長さとの間により複雑な関係もあり得る。相互作用領域の長さに加えて、記録された画像のその他のパラメータも特性に含めることができ、例えばこれは記録された画像の、又は記録された画像の部分的領域の(平均)強度、相互作用領域の幅、その他である。
【0022】
閾値は絶対値とすることができるが、閾値はまた特性の現在の/指定された加工地点のパーセンテージの変化でもあり得る。この場合、画像に基づいて特定された特性は現在明示された特性に関する。このために、例えば画像に基づいて特定された特性の、加工地点での特性に対する比率を形成することができる。この場合、その比率が閾値と比較される。
【0023】
この場合、不完全切削動作を識別するために2つの基準が満たされなければならない。すなわち、第一に、特性は指定された閾値(不完全切削動作閾値)を超えなければならず、第二に、強度プロファイルの局所的強度低下が相互作用領域内で発生しないという基準が満たさなければならない。不完全切削動作が存在するのは、相互作用領域のそれぞれの記録画像の中の、例えば約10mm程度のある(短い)経路長にわたって両方の基準が満たされた場合である。この場合、マシニングプロセスには障害が生じ得て、例えば前進の停止がトリガされ得るか、又は情報項目/警告/エラーメッセージが発せられ、出力され得る。
【0024】
特性を計算するために、相互作用領域、すなわちプロセス光のプロセスゾーンの長さの正確な特徴が特定される。続いて、関心対象のプロセス光領域の大きさが、プロセスゾーン又はモニタ対象領域からのデータを利用して規定される。典型的に、関心対象のプロセス光領域の特徴は、画像がマシニングノズルを通じて記録される場合、進行方向にノズルエッジまでの範囲であり、進行方向を横切る相互作用領域の幅全体にわたって延びる。例えば、相互作用領域の長さは、強度を強度閾値と比較することによって、又は強度勾配を評価することによって特定される。例えば、長さ測定中の強度閾値は関心対象のプロセス光領域の平均強度の比率(上記参照)と重み係数の形態で計算できる。
【0025】
一般に、例えばカメラの形態の画像撮影機器から見える切削面又は相互作用領域(プロセス発光)の特徴は、工作物の下面まで検出可能である。相互作用領域の変化(伸長)は、切削プロセスの欠陥、例えば前進、焦点位置、ガス圧、光学系の汚染、支持バー、二重金属シートの形態の工作物等により引き起こされる。実際の切削作業中、切削面又は相互作用領域の、特に進行方向へのその長さの実質的な変化の原因となるのは主として支持バー及び、それより頻度は少ないが、二重金属シートである。
【0026】
上述のように、これらの欠陥が発生した場合の特性の変化は、実際の不完全切削動作の場合の変化と同程度である。したがって、特性のみを使って実際の不完全切削動作と擬似的な不完全切削動作を区別することはできない。局所的強度低下が強度プロファイル内で発生するか否かを検証することに基づく妥当性確認及び時間又は経路長に依存する観察によってのみ、不完全切削動作を確実に識別することが可能となる。不完全切削動作は典型的に、両方の基準がある経路長にわたって満たされた場合のみ識別される。
【0027】
別の変形型において、加工位置における局所的強度低下の検出、特に反復的検出は、その加工位置におけるマシニングプロセスの位置依存欠陥、特に支持バーの存在に関連付けられる。前述のように、特に汚染された支持バーは、マシニングプロセス、特に切削プロセスに障害を与える位置依存欠陥となり得る。支持バーの、特に他の位置依存欠陥の加工位置がわかっていれば、これらはマシニングプロセスのために、特に切削すべき部品又は輪郭について相応に考慮され得る。
【0028】
例えば支持バーによる位置依存欠陥が発生する加工位置を見つけるために、相互作用領域の強度プロファイルの局所的強度低下の形態の欠陥の発生が、装置座標(X/Y/Z)における現在の加工位置に関連付けられる。これらの座標に基づいて、マシニング装置の加工空間内の位置依存欠陥、例えば支持バー又は支持バーの個々の位置でのホットスポットを正確に特定し、任意選択的に分類することができ、これについて後述する。
【0029】
発展形において、位置依存欠陥の程度、特に支持バーの(局所的)汚染の程度は、強度プロファイルに基づいて、特に強度プロファイルの勾配に基づいて特定される。位置依存欠陥の特徴、すなわち大きさは、局所的強度低下の領域内の強度プロファイルの勾配に基づいて推測できる。例えば、支持バーの汚染の程度は、局所的強度低下の領域内の強度プロファイルの勾配の局所的最小値又は局所的最大値の絶対値に基づいて特定できる。原則として、勾配の局所的最小値又は局所的最大値のより小さい絶対値は支持バーの汚染のより大きい程度に関連付けることができ、その逆でもある、ということが当てはまる。代替的に、又はそれに加えて、位置依存欠陥の程度はまた、記録された画像の強度プロファイルにおける局所的な強度低下の大きさに基づいて特定することもできる。原則として、強度低下のより大きい絶対値は、加工位置における支持バーの汚染のより小さい(局所的)程度に関連付けられ、その逆でもあり得る、ということが当てはまる。
【0030】
支持バーの汚染の程度は、マシニングプロセスの欠陥の程度に影響を与える。特定の加工位置におけるスラグや汚染がわずかなしかない「新品の」支持バーは切削プロセスに小さい影響しか与えないが、「古い」、汚れの激しい支持バーは特定の加工位置におけるマシニングプロセスに重大な影響を与え得る。
【0031】
位置依存欠陥の大きさ又は程度は、マシニングプロセス、例えば切削プロセス、より正確には切削プロセスの切削プログラムを調整して、位置依存欠陥の変動若しくは欠陥の程度を考慮に入れるため、又はマシニングプロセスの範囲内の手順の変更若しくは制御の変更を実行するために使用できる。例えば、位置依存欠陥の程度に応じて、工作物上の切削すべき工作物部品の(再)ネスティング、アプリケーションプラニング、汚れのひどい支持バーの任意選択的な交換等を実行することができる。欠陥の程度又は汚染の程度に関する情報は適切に公式化され、及び/又は使用者に表示され得る。
【0032】
欠陥の種類はまた、相互作用ゾーンの別の特徴に基づいて、例えばその幅及び/又は長さに基づいて分類することもできる。欠陥の特徴、すなわち大きさ又は程度もまた特定できる。このために、欠陥の局所的特徴及びプロファイルは、切削プロセス中及び/又はその経過において、例えば1つの同じ加工位置上で、又はそこを横切って何度も切削することによって捕捉できる。位置依存欠陥に加えて、又はその代替として、加工方向に依存する欠陥もまた、相互作用領域の画像又は画像の時間シーケンスを評価することによって識別でき、前記欠陥の特徴又は種類は、例えば冒頭で引用した(特許文献1)に記載されているように特定でき、その全体を参照によって本願に援用する。
【0033】
別の変形型において、マシニングプロセスの欠陥の種類は、相互作用領域の時間的に連続する複数の画像の評価に基づいて推定される。前述のように、マシニング中の加工空間に関する軌道及びひいては現在の加工位置はわかる。このことにより、記録された画像を加工位置又は加工空間に関連付けることが可能となる。
【0034】
支持バーは典型的に加工空間内の第一の方向(例えば、X方向)の特定の座標に配置され、第二の方向(Y方向)に延びる。その結果、X方向における特定の位置でY方向に繰り返される欠陥又は、バーに極端な量のスラグが付着している場合は、任意選択的に継続する欠陥がある。それに対して、欠陥は一般的にX方向に、正確に言えばX方向への支持バーの範囲に局所的に限定される。複数の連続画像を評価することにより、支持バーの形態のマシニングプロセスの位置依存欠陥を推定できる。
【0035】
二重金属シートの特定の加工空間における位置依存及び方向依存の欠陥もまた、軌道に沿った移動中にそれぞれの加工位置及び加工方向に関連付けられる相互作用領域の複数の画像に基づいて特定できる。例えば、二重金属シートの形態の欠陥をこのようにして推定できる。
【0036】
本発明の別の態様は、冒頭に記した種類のマシニング装置に関し、その中では、欠陥を識別するために、評価装置は、画像の評価中に相互作用領域内での強度プロファイルの局所的な強度低下の有無をマシニングプロセスの進行方向に検出するように構成される。マシニングプロセス中に支持バー又は二重金属シートが瞬間的に横切ると、相互作用領域の中で本来は実質的に一定である強度プロファイルの局所的強度低下が起こる。
【0037】
例えば、局所的強度低下は、相互作用領域内の強度プロファイルに局所的最小値がある場合に検出でき、その強度値は相互作用領域内の最大強度値の特定のパーセンテージ未満、例えば80%未満である。強度プロファイルの強度値は、進行方向に局所的強度最小値の上流及び下流で増大し、最終的に相互作用領域の前端及び後端において急激に低下する。
【0038】
代替的に、又はそれに加えて、局所的強度低下の有無はまた、強度プロファイルの勾配に基づいても検出できる。前述のように、例えば、相互作用領域内の局所的最小値若しくは局所的最大値の位置の勾配の絶対値又は局所的最小値から局所的最大値への勾配の増大を使って、このための閾値と比較できる。
【0039】
ある実施形態において、評価装置は、局所的強度低下が相互作用領域内にないことが検出された場合にのみ、工作物の切削中に不完全切削動作を欠陥として特定するように構成される。局所的強度低下が存在しなければ、これは典型的に、支持バーを横切っていない場合、又は二重金属シートがない場合に当てはまり、すなわち切削プロセスはこれらの欠陥の変形によって影響を受けない。この場合、不完全切削動作は、純粋に相互作用領域の幾何学的基準に基づいて、又は相互作用領域の幾何学的特徴に基づいて推定できる。
【0040】
欠陥を識別するために、別の実施形態の評価ユニットは、画像の評価中に、相互作用領域の少なくとも1つの幾何学的特徴、特に進行方向への相互作用領域の長さを検出するように構成される。前述のように、欠陥の種類はとりわけ、相互作用領域の幾何学的特徴に基づいて識別でき、すなわち欠陥を分類できる。例えば、進行方向への相互作用領域の長さを使って、ある不完全切削動作基準が満たされない場合に不完全切削動作がないことを識別することができる。
【0041】
発展形において、評価ユニットは、相互作用領域の長さに依存する特性が閾値を超えたとき、且つ相互作用領域内で局所的強度低下が検出されないときに、切削中の不完全切削動作を識別するように構成される。不完全切削動作のプロセスに依存できる識別のためには両方の基準が満たされる必要があり、すなわち、第一にその特性がある閾値を超えなければならないこと、及び第二に相互作用領域内で局所的強度低下が検出されないことである。
【0042】
別の実施形態において、評価装置は、加工位置における局所的強度低下の検出、特に繰り返される検出を、その加工位置におけるマシニングプロセスの位置依存欠陥、特に支持バーの存在に関連付けるように構成される。局所的強度低下が、異なる工作物が機械加工される場合に、1つの同じ加工位置において少なくとも2回又は3回以上発生すれば、支持バーがこの加工位置に存在する可能性が非常に高く、すなわち二重金属シートの形態の欠陥を事実上排除できる。このようにして、汚れの激しい支持バーの形態の欠陥は、二重金属シートの形態の欠陥からプロセスに依存して区別できる。
【0043】
別の実施形態において、評価装置は、位置依存欠陥の程度、特に支持バーの汚染の程度を、強度プロファイルに基づいて、特に強度プロファイルの勾配に基づいて特定するように構成される。前述のように、位置依存欠陥の領域内の勾配の局所的最小値又は局所的最大値の絶対値が比較的小さい場合、汚れの激しい支持バー又は二重金属シートが存在する。勾配の局所的最小値又は局所的最大値の絶対値が比較的大きければ、これは、事実上汚染されていない支持バーの存在を示し、それは切削プロセスにほとんど影響を与えない。強度プロファイルの勾配を他の方法で評価して、位置依存欠陥の程度を推定することもできる。強度プロファイル自体もまたこの目的のために、例えば局所的強度低下の絶対値によって評価でき、すなわち相互作用領域内の最大強度値と局所的強度最小値の強度値の差が特定される。
【0044】
別の実施形態において、評価装置はマシニングプロセスの欠陥の種類を、相互作用領域の時間的に連続する複数の画像の評価に基づいて推定するように構成される。前述のように、例えば支持バー又は二重金属シートの存在は、欠陥の種類として識別され、又は相互に区別され得る。
【0045】
本発明のさらなる利点は、説明文と図面から明らかである。同様に、前述の特徴及び以下で提示される特徴はその都度単独でも、あらゆる所望の組合せにより複数でも使用できる。図示され、説明されている実施形態は網羅的リストではなく、本発明を概説するための例示的な性質のものであると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】レーザ切削プロセスを実行するためのレーザマシニング装置の概略図を示す。
図2】工作物のモニタ対象領域であって、相互作用領域を含む領域の画像を記録することにより、レーザ切削プロセスをモニタするための機器の概略図を示す。
図3図3a~図3cは、欠陥のない切削プロセス、不完全切削動作、及び支持バーの横切りの場合の、相互作用領域の、及び相互作用領域に沿った強度プロファイルの画像の概略図を示す。
図4図4a及び図4bは、それぞれ、汚染の激しい支持バー及びほとんど新品の支持バーが横切るときの、図3a~図3cと同様の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下の図面の説明の中で、同じ参照符号は同じ又は機能的に同じコンポーネントについて使用されている。
【0048】
図1は、レーザ源2、レーザマシニングヘッド4、及び工作物支持体5を有するレーザマシニング装置1の形態のマシニング装置を示す。レーザ源2により生成されたレーザビーム6は、ビームガイド3によって、偏向ミラー(図示せず)を利用してレーザマシニングヘッド4へと案内され、そこに収束され、また同様に図示されていないミラーを利用して、工作物8の表面8aに垂直に位置合わせされ、すなわちレーザビーム6のピーク軸(光軸)は工作物8に垂直である。図の例では、レーザ源2はCOレーザ源である。代替的に、レーザビーム6は例えばソリッドステートレーザによって生成できる。
【0049】
工作物8をレーザにより切削するために、第一のレーザビーム6はピアシングに使用され、すなわち工作物8は点の形態の位置において溶融又は酸化され、それによって生成された溶融物は吹き飛ばされる。その後、レーザビーム6は工作物8の上方を移動されて、連続的な切り溝が形成され、それに沿ってレーザビーム6は工作物8を切断する。
【0050】
ピアシングとレーザ切削はどちらも、ガスの追加により支援できる。酸素、窒素、圧縮空気、及び/又は特定用途のガスが切削ガス10として使用され得る。発生した粒子やガスは、工作物支持体5の下方に配置された吸引チャンバ(ここでは図示せず)から、吸引装置11を利用して吸引され得る。
【0051】
レーザマシニング装置1はまた、レーザマシニングヘッド4と工作物8を相互に関して移動させるための移動装置12も含む。図の例では、マシニング中に工作物8は工作物支持体5の上に載せられ、レーザマシニングヘッド4はマシニング中、XYZ座標系のうちの2つの軸X、Yに沿って移動される。このために、移動装置12はガントリ13を含み、これは両方向矢印により示されるドライブを利用してX方向に移動可能である。レーザマシニングヘッド4は、移動装置12の両方向矢印により示される別のドライブを利用してX方向に移動させて、レーザマシニングヘッド4の移動可能性により、又は工作物8により指定される加工野のX方向及びY方向における何れの所望の加工位置BX,Yにも移動させることができる。それぞれの加工位置BX,Yで、レーザビーム6は(瞬間的)進行方向Vを有し、これはレーザマシニングヘッド4と工作物8との間の(瞬間的)相対速度に対応する。
【0052】
図2は、図1のレーザマシニング装置1による工作物8に対するレーザ切削プロセスのプロセスモニタ及びプロセス制御を行うための機器14の例示的な構造を示しており、そのうちセレン化亜鉛で製作された、レーザマシニング装置1のレーザビーム6を収束させるための収束レンズ15を備えるレーザマシニングヘッド4、切削ガスノズル16、及び偏向ミラー17のみがごく概略的に示されている。このケースでは、偏向ミラー17は部分的に透過性を有する設計を有し、プロセスモニタ機器14のための入口側コンポーネントを形成する。
【0053】
偏向ミラー17は、入射レーザビーム6(波長約10μm)を反射し、工作物8によって反射され、レーザビーム6の工作物8との相互作用領域18により発せられた、この例では約550nm~2000nmの範囲の波長を有するプロセスモニタ関連放射19を透過させる。部分的透過性を有する偏向ミラー17の代わりに、スクレーパミラー又はホールミラーもプロセス放射19を機器14に供給するために使用できる。
【0054】
別の偏向ミラー20は機器14の中で部分的に透過性を有するミラー17の下流に配置され、プロセス放射19を画像撮影ユニットとしての幾何学的に高分解能のカメラ21へと偏向させる。カメラ21はハイスピードカメラとすることができ、これはレーザビーム軸22又はレーザビーム軸の延長部22aと同軸に配置され、したがって方向に関係なく配置される。原則として、VIS波長範囲の、任意選択的にNIR波長範囲でも、この波長範囲を発出する追加の照明源が提供されていれば可能な、反射光方式を利用するカメラ21で画像を記録することも可能であり、代替的に、UV及びNIR/IRの波長範囲のプロセス自己発光を記録することも可能である。
【0055】
イメージングのために、図2ではレンズとして示されているイメージング収束光学系23が、この例では部分的透過性を有するミラー17とカメラ21の間に提供され、前記光学系はプロセスモニタに関係する放射19をカメラ21に収束させる。図2に示される例では、別の放射又は波長成分がカメラ21により捕捉されるのを防止すべきである場合、カメラ21の前方のフィルタ24が有利である。フィルタ24は例えば狭帯域バンドパスフィルタの形態とすることができる。
【0056】
この例では、カメラ21は反射光方式を使って操作され、すなわち、追加の照明源25が工作物8の上方に提供され、入力は、別の部分的透過性を有するミラー26によって照明放射27をレーザビーム軸22と同軸のビーム経路に結合する。レーザダイオード又はダイオードレーザを追加の照明源25として提供でき、図2に示されるようにレーザビーム軸22に関して同軸に、又は軸外に配置できる。例えば、追加の照明源25はまた、レーザマシニングヘッド4の外(特にその隣)にも配置され得て、工作物8に向けられ得るが、代替的に、照明源25はレーザマシニングヘッド4の中に、ただしレーザビーム6と同軸で工作物8に向けられないように配置され得る。機器14はまた、追加の照明源25を用いずにも操作され得ると理解されたい。
【0057】
レーザガス切断プロセス中、カメラ21は工作物8の、図2に示される例では相互作用領域18を含むモニタ対象領域28の画像Bを記録する。切削プロセス中、レーザマシニングヘッド4が前進速度Vとして示される相対速度でプラスのY方向に(矢印参照)移動されることによって、工作物8とレーザ破壊加工ヘッド4との間の相対移動が起こされる。切削プロセス中、切削面29は相互作用領域18の先導領域に形成され、切溝9により追尾領域と(マイナスのY方向)つながる。
【0058】
カメラの形態の画像撮影装置21は、評価装置30に信号で接続される。評価装置30は、マシニングプロセスの少なくとも1つの欠陥、例えば不完全切削動作を、モニタ対象領域28の記録画像B又は時間的に連続する画像Bの評価に基づいて識別するように構成又はプログラムされる。
【0059】
このために、評価装置30は、相互作用領域18の画像B又は連続する記録画像Bのシーケンスを評価して、相互作用領域18の、切削プロセスの欠陥を示す特徴を抽出又は識別する。
【0060】
図3aは、良好な切削の場合の、すなわち欠陥のない切削プロセスの場合の相互作用領域18の画像Bの例を示す。図3aから明らかであるように、相互作用領域18は、進行方向Vに比較的短い長さLを有し、図の例では、進行方向Vに対して横方向の相互作用領域18の幅の約2倍に対応する。相互作用領域18の進行方向Vへの長さLは、評価装置30により、画像B内の空間依存強度Iを強度閾値と比較することによって特定される。例えば、長さ測定中の強度閾値は、プロセス光関心対象領域(ROI)BROIの平均強度と重み係数の商の形態で計算できる。図の例では、プロセス光関心対象領域BROIは工作物8のモニタ対象領域28の画像Bの長方形の一部領域である。プロセス光関心対象領域BROIの特徴は、画像がマシニングノズル16を通じて記録されるときに、進行方向Vに切削面29からマシニングノズル16のノズル開口16bのノズルエッジ16aに到達する。進行方向Vを横切る方向に、プロセス光関心対象領域は相互作用領域18の幅全体にわたって延びる。
【0061】
特性は、進行方向Vへの相互作用領域18の長さLから形成でき、この特性は不完全切削動作閾値を規定する閾値Sと比較される。単純にするために、以下においては、相互作用領域18の長さL自体が特性を形成すると仮定する。特性、すなわち図の例では相互作用領域18の長さLが図3aのように閾値Sより小さい場合、評価装置30は不完全切削動作を識別しない。不完全切削動作が通常はまだ存在しない場合の閾値Sは、切削プロセスの前に経験的に特定され得る。また、閾値Sは、絶対値ではなく、その特性の現在の/規定された加工地点における変化のパーセンテージとすることもできる。この場合、画像に基づいて特定される特性は現在明示される特性に関する。このために、例えば画像に基づいて特定される特性(この場合、L)と加工地点における特性の商を形成することが可能である。すると、商は閾値と比較される。
【0062】
相互作用領域18の特性、すなわち長さLが閾値Sより大きいことは、評価ユニット30が不完全切削動作を識別するのに不十分であり、それは、この場合に不完全切削動作は存在し得るが、閾値Sを超えることはまた、切削プロセスの他の欠陥に起因することもあり得るからであり、それについて図3b及び3cに基づいて以下に説明する。
【0063】
図3bは、不完全切削動作があるときの相互作用領域18の画像、図の例ではY方向に対応する進行方向Vに沿った強度プロファイルI(Y)、及び強度プロファイルI(Y)の勾配dI/dYを示す。図3bから明らかであるように、相互作用領域18は、図3aに示される良好な切削の場合よりその長さLは顕著に長く、すなわち、相互作用領域18の長さLの閾値Sを超える。しかしながら、相互作用領域18の長さLの閾値Sはまた、支持バー7が切削プロセス中に横切った場合にも超えられ、これは図3cにおいて相互作用領域18の対応する画像Bに基づいて示されている。したがって、相互作用領域18の長さLの形態の特性そのものでは、図3bに示される実際の不完全切削動作と図3cに示される擬似的な不完全切削動作の区別はできない。
【0064】
しかしながら、図3b及び図3cの一番下に示される相互作用領域18内の進行方向Vへの強度プロファイルI(Y)に基づけば、又は進行方向Vへの強度プロファイルI(Y)の勾配dI/dYに基づけば、このような区別をつけることができる。図3bに示される強度プロファイルI(Y)の場合は相互作用領域18内に局所的強度低下ΔI又は不連続部分はなく、すなわち図3cの場合のような局所的強度最小値IMINがない。図3cから明らかであるように、局所的強度最小値IMIN又は強度低下ΔIは進行方向Vのある地点で発生し、そこは、図3aに示される欠陥のない切削プロセスの場合の相互作用領域18の場合に相互作用領域18のほぼ端であると予想される。このことにより、強度プロファイルI(Y)の強度低下ΔI又は不連続部分の発生を適当な画像評価アリゴリズムによってリアルタイムで識別することが容易となる。
【0065】
図の例では、局所的強度低下ΔIの存在は、勾配dI/dYの局所的最小値(dI/dY)MINと強度プロファイルI(Y)の勾配dI/dYの局所的最大値(dI/dY)MAXの両方が図3b、cで破線を使って示されている(絶対)閾値(dI/dY)sを超える場合に、評価装置30によって検出される。閾値(dI/dY)sは、経験的に特定又は現在の加工地点に基づいて規定できる。勾配dI/dYの評価による局所的強度低下ΔIの有無の検出は有利であることが分かった。
【0066】
代替的に、強度低下ΔIの発生は、強度最小値IMINが相互作用領域30内の強度プロファイルI(Y)の最大強度IMAXの指定されたパーセンテージ未満、例えば80%未満であるとき、すなわち局所的強度低下ΔIが最大強度IMAXの少なくとも20%であるときに、評価装置30によって検出され得る。また、上述の勾配dI/dYに基づく強度低下ΔIの存在のための基準とここに記載の基準を組み合わせることも可能である。例えば、ここに記載の基準は前述の基準の妥当性を確認する役割を果たすことができる。
【0067】
相互作用領域18内の局所的強度低下ΔIがないことが、例えば約10mmのオーダのある(短い)経路長にわたって、例えばコンピュータ又は適当なハードウェア及び/若しくはソフトウェア、例えばASIC、FPGA等であり得る評価装置30によって検出された場合、且つ相互作用領域18の特性、すなわち長さLの閾値Sを超えた場合、評価装置30は不完全切削動作を識別する。
【0068】
図2から明らかであるように、評価装置30は、レーザ切削プロセスを制御する開ループ又は閉ループ制御装置31に信号で接続される。評価装置30により識別された不完全切削動作がある場合、開ループ/閉ループ制御装置31は、レーザ切削プロセスの切削パラメータを適当に調整してレーザ切削プロセスのその後の実行中に不完全切削動作が継続しないようにすることができる。しかしながら、代替的に、開ループ又は閉ループ制御装置31が、不完全切削動作が識別されたときに切削プロセスを停止するか、又は任意選択的に切削プロセスを再開して、影響を受けた地点を再び機械加工して、不完全切削動作により影響を受けた工作物8の領域を完全に切削することも可能であり、また、開ループ/閉ループ制御装置31が不完全切削動作に関する情報を使用者に向けて出力することも可能である。
【0069】
不完全切削動作等のプロセス関連の欠陥に加えて、切削プロセスの位置依存欠陥37及び/又は角度依存欠陥38(図1参照)を相互作用領域18の特徴に基づいて識別することも可能である。例えば、工作物支持体5の1つの(又は1つの同じ)加工位置BX,Yでの局所的強度低下ΔIが検出された場合(特に、複数回検出された場合)、支持バー7の形態のマシニングプロセスの位置依存欠陥37又は、任意選択により支持バー7の局所的汚染(ホットスポット)をこの加工位置BX,Yに関連付けることができる。それぞれの加工位置BX,Yは、画像Bの記録中に移動装置12の関連付けられた機械座標X、Y、Zに基づいてそれぞれの記録画像Bに関連付けることができる。
【0070】
図4a、bに基づいて明らかであるように、位置依存欠陥の強さの程度は、強度プロファイルI(Y)に沿った局所的強度低下ΔIの絶対値若しくは大きさに基づいて、及び/又は強度プロファイルI(Y)の勾配dI/dYに基づいて特定でき、すなわち、図4aに示される例の場合、局所的強度低下ΔIは強度プロファイルI(Y)の最大強度値IMAXの約65%であり、局所的強度低下ΔIは図4bに示される例の場合、最大強度値IMAXの約95%より大きい。(任意選択的に局所的にのみ)汚染のひどい支持バー7は図4aに示される例において存在し、実際に汚染されていない支持バー7は図4bに示される例において存在する。その結果、支持バー7の汚染の程度は評価ユニット30により強度低下ΔIの大きさに基づいて推定できる。
【0071】
位置依存欠陥の強さを特定するためには、図3b、cに関して説明したように強度プロファイルI(Y)の勾配dI/dY(図4a、bでは図示せず)を評価することもできる。この場合、欠陥の程度又は強さは、例えば強度プロファイルI(Y)の勾配dI/dYの局所的最小値(dI/dY)MINの絶対値又は勾配dI/dYの局所的最大値(dI/dY)MAXの絶対値に基づいて特定できる。
【0072】
原則として、図4aに示される強度プロファイルI(Y)は異なる種類の欠陥にも、例えば二重金属シートにも起因し得る。しかしながら、強度低下ΔIが1つの同じ加工位置BX,Yで複数回検出される場合、支持バー7がこの加工位置BX,Yにあると仮定することができる。
【0073】
したがって、マシニングプロセスの欠陥の種類、例えば支持バー又は二重シートメタルの存在は、例えば図4a、bに示されるように、相互作用領域18の時間的に連続する複数の画像Bの評価に基づいて推定できる。
【0074】
マシニングプロセス中の欠陥を識別するための上述の方法は、切削プロセスに限定されず、他のマシニングプロセスにおいても、例えば溶接プロセスにおいても使用され得る。追加的に、異なる種類のマシニングビーム、例えばプラズマビームをレーザビーム6の代わりに使用することができる。この場合、マシニングツール4としてプラズマヘッドがレーザマシニングヘッドの代わりに使用される。
【符号の説明】
【0075】
4 レーザマシニングヘッド
7 支持バー
8 工作物
12 移動装置
18 相互作用領域
21 カメラ
28 モニタ対象領域
30 評価装置
B 画像
X,Y 加工位置
I(Y) 強度プロファイル
ΔI 局所的強度低下
L 相互作用領域の長さ
S 閾値
V 加工の進行方向
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
【国際調査報告】