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特表2024-506361マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240205BHJP
【FI】
H01M10/0567
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548783
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 KR2022002195
(87)【国際公開番号】W WO2022177256
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0021389
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523304205
【氏名又は名称】ジャイアント ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GIANT CHEMICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】35,Sanmakgongdanbuk 8-gil Yangsan-si Gyeongsangnam-do 50567,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ドン ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】カン、ドン ギュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、デ ウク
(72)【発明者】
【氏名】カン、ジン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、スン ユン
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ07
5H029AK03
5H029AM01
5H029AM03
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ12
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ06
5H029HJ07
5H029HJ14
(57)【要約】
マグネシウムシリケート(magnesium silicate)を含む二次電池電解質用添加剤及びその製造方法に関し、より詳細には、電気化学的副反応を抑制することにより、充放電容量に影響を及ぼすことなく、二次電池電極におけるリチウムイオンの吸収及び放出を可逆的に改善し、固体電解質中間相(Solid Electrolyte Interphase、SEI)の形成を促進できる、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤及びその製造方法を提供する。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウムシリケートを含む
ことを特徴とする二次電池電解質用添加剤。
【請求項2】
前記マグネシウムシリケートは、50nm~800nmの粒子サイズを有する
請求項1に記載の二次電池電解質用添加剤。
【請求項3】
前記マグネシウムシリケートは、酸素(O)50~70wt%、マグネシウム(Mg)5~20wt%、及びケイ素(Si)15~35wt%の質量比を有する
請求項1に記載の二次電池電解質用添加剤。
【請求項4】
前記マグネシウムシリケートは、50~500m/gの比表面積(Surface area)を有する
請求項1に記載の二次電池電解質用添加剤。
【請求項5】
前記マグネシウムシリケートは、0.1~20nmの気孔サイズ(pore size)を有する
請求項1に記載の二次電池電解質用添加剤。
【請求項6】
(A1)シリケート前駆体を製造する段階と、
(A2)マグネシウム前駆体及びアンモニウム塩を混合して混合物を製造する段階と、
(A3)前記混合物に前記シリケート前駆体を添加して、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階と、を含む
ことを特徴とするマグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤の製造方法。
【請求項7】
前記(A1)段階は、
(A1a)アルコール、水及び水性アンモニア(NHO、ammonia-water)を混合して混合溶液を製造する段階と、
(A1b)前記混合溶液にテトラエチルオルトシリケート(Tetraethyl orthosilicate、TEOS)を添加して、ナノサイズの粒子を有するシリケート前駆体を製造する段階と、で構成される
請求項6に記載の二次電池電解質用添加剤の製造方法。
【請求項8】
前記(A3)段階は、
(A3a)前記混合物に前記シリケート前駆体を添加する段階と、
(A3b)前記シリケート前駆体が添加された混合物を100~200℃で加熱する段階と、
(A3c)前記加熱が完了した混合物をろ過して、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階と、で構成される
請求項6に記載の二次電池電解質用添加剤の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし5のいずれかに記載のマグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を含む
ことを特徴とする二次電池電解質。
【請求項10】
前記二次電池電解質は、前記二次電池電解質用添加剤を、前記二次電池電解質の総重量%に対して0.1~2.0重量%含む
請求項9に記載の二次電池電解質。
【請求項11】
請求項9または10に記載の二次電池電解質を含む
ことを特徴とする二次電池。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウムシリケート(magnesium silicate、ケイ酸マグネシウム)を含む二次電池電解質用添加剤及びその製造方法に関し、より詳細には、電気化学的副反応を抑制することにより、充放電容量に影響を及ぼすことなく、二次電池電極におけるリチウムイオンの吸収及び放出を可逆的に改善し、固体電解質中間相(Solid Electrolyte Interphase、SEI)の形成を促進できる、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広い比表面積と均一な気孔を有しているナノ多孔性物質は、吸着剤、触媒支持剤、分離及び精製工程、そしてイオン交換媒体として広く用いられている。特に、調節された多孔性を有する新しいナノ構造物質の合成は、新素材分野において持続的に研究されている。
【0003】
中でもマグネシウムシリケート(magnesium silicate)は、水溶性マグネシウム塩(water soluble aluminium salts)とナトリウムシリケート(sodium silicate、ケイ酸ナトリウム)との沈殿反応により合成される多孔性無機化学物質であり、強力な吸着性能を基礎として、工業用、食品精製用、化粧品原料などの分野に使用できる。
【0004】
これまでに報告されたシリカ及びシリケート関連文献の多くでは、テトラエチルオルソシリケート(Tetraethyl orthosilicate、TEOS)をシリカ前駆体として用いて合成された。TEOSの反応性が高いことから、pHによるシリカ合成が可能であり、不純物含量が少ないことから、高純度の無機化合物を合成できるということに大きな長所があるが、単価が高いことから、グローバル市場での価格競争力を確保するのに困難がある。
【0005】
シリケートベースの無機化合物は、ゾル-ゲル(sol-gel)合成法を用いて様々な変数(pH、界面活性剤、温度、濃度など)を調節することにより粒子の形状、粒度、表面特性などを調節することができるが、これについての正確なメカニズムを究明した研究はほとんどない。また、マグネシウムシリケートは、粒度及び広いpH範囲により条件を制御するのが困難であるため、ほとんどのマグネシウムシリケートの開発は多孔性を調節することに限定されている。
【0006】
一方、リチウム二次電池は、エネルギー密度を高めるために高電圧活性化を経て高電圧帯で使用されているが、高電圧では活物質と電解液が副反応を起こして電池の性能劣化が深化する問題があり、充放電時に活物質が電解液に溶出する問題が発生して、究極的には電池の劣化をもたらすという欠点がある。
【0007】
このような欠点を緩和するために、リチウム二次電池の充電時に他の電解質よりも先に酸化されて正極表面に保護被膜を形成する、正極保護用の電解質添加剤を使用しているが、既存の添加剤の場合、ほとんどが有機化合物で環境に優しくなく、電池性能の劣化現象を満足できるレベルで抑制できておらず、高性能(高出力)リチウム二次電池の開発を阻害する原因となっている。
【0008】
そこで、本発明者らは、上記問題を補完するために、高電圧サイクルにおける容量低下を改善し、寿命安定性を向上させたリチウム二次電池を開発するためのリチウム二次電池用電解質添加剤の開発が急務であることを認識し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、電気化学的副反応を抑制することにより、充放電容量に影響を与えることなく、二次電池電極におけるリチウムイオンの吸収及び放出を可逆的に改善し、固体電解質中間相(Solid Electrolyte Interphase、SEI)の形成を促進できる、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、電気化学的副反応を抑制することにより、充放電容量に影響を与えることなく、二次電池電極におけるリチウムイオンの吸収及び放出を可逆的に改善し、固体電解質中間相(Solid Electrolyte Interphase、SEI)の形成を促進できる、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤の製造方法を提供することである。
【0011】
本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は、本発明の記載から当該分野における通常の知識を有する者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤の製造方法を提供する。
【0013】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明は、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を提供する。
【0015】
本発明において、前記マグネシウムシリケートは、50nm~800nmの粒子サイズを有することを特徴とする。
【0016】
本発明において、前記マグネシウムシリケートは、酸素(O)50~70wt%、マグネシウム(Mg)5~20wt%、及びケイ素(Si)15~35wt%の質量比を有することを特徴とする。
【0017】
本発明において、前記マグネシウムシリケートは、50~500m/gの比表面積(Surface area)を有することを特徴とする。
【0018】
本発明において、前記マグネシウムシリケートは、0.1~20nmの気孔サイズ(pore size)を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、
(A1)シリケート前駆体を製造する段階と、
(A2)マグネシウム前駆体及びアンモニウム塩を混合して混合物を製造する段階と、
(A3)前記混合物に前記シリケート前駆体を添加して、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階と、
を含むことを特徴とする、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤の製造方法を提供する。
【0020】
本発明において、前記(A1)段階は、
(A1a)アルコール、水及び水性アンモニア(NHO、ammonia-water)を混合して混合溶液を製造する段階と、
(A1b)前記混合溶液にテトラエチルオルトシリケート(Tetraethyl orthosilicate、TEOS)を添加して、ナノサイズの粒子を有するシリケート前駆体を製造する段階と、で構成されることを特徴とする。
【0021】
本発明において、前記(A3)段階は、
(A3a)前記混合物に前記シリケート前駆体を添加する段階と、
(A3b)前記シリケート前駆体が添加された混合物を100~200℃で加熱する段階と、
(A3c)前記加熱が完了した混合物をろ過して、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階と、で構成されることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を含む二次電池電解質を提供する。
【0023】
本発明において、前記二次電池電解質は、前記二次電池電解質用添加剤を、前記二次電池電解質の総重量%に対して0.1~2.0重量%含むことを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、前記二次電池電解質を含むことを特徴とする二次電池を提供する。
【0025】
前記マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤、その製造方法、それを含む二次電池電解質、及び前記二次電池電解質を含む二次電池で言及された全ての事項は、矛盾しない限り、同様に適用される。
【発明の効果】
【0026】
本発明のマグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤及びその製造方法によれば、電気化学的副反応を抑制することにより、充放電容量に影響を与えることなく、二次電池電極におけるリチウムイオンの吸収及び放出を可逆的に改善し、固体電解質中間相(Solid Electrolyte Interphase、SEI)の形成を促進することができる。
【0027】
本発明の効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及されていない他の効果は、特許請求範囲の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの粒子サイズを確認した走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)の画像である。
図2】本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの平均粒子サイズを確認した動的光散乱(Dynamic Light Scattering、DLS)グラフである。
図3】本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの構成を確認したエネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、EDS)の画像である。
図4】本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの比表面積と、前記マグネシウムシリケートの表面上に存在する気孔の大きさとを確認したグラフである。
図5】本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の正極に影響を与えるかどうかを確認した定電流充放電サイクル(galvanostatic charge-discharge cycles)を示すグラフである。
図6】本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の正極に影響を与えるかどうかを確認した電気化学的インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy、EIS)のグラフである。
図7】本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の正極に影響を与えるかどうかを確認した充放電サイクルの進行に応じて変化する放電容量維持特性を示すグラフである。
図8】本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の負極に影響を与えるかどうかを確認した定電流充放電サイクル(galvanostatic charge-discharge cycles)を示すグラフである。
図9】本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の負極に影響を与えるかどうかを確認した電気化学的インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy、EIS)のグラフである。
図10】本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の負極に影響を与えるかどうかを確認した充放電サイクルの進行に応じて変化する放電容量維持特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書で使用されている用語は、本発明での機能を考慮しながら、可能な限り現在広く使用される一般的な用語を選択しているが、それは、当分野の当業者の意図、判例、または新たな技術の出現などによって異なりもする。また、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあり、その場合、当該発明の説明部分で、詳細にその意味を記載する。従って、本発明で使用される用語は、単純な用語の名称ではない、その用語が有する意味と、本発明の全般にわたる内容とを基に定義されなければならない。
【0030】
別段の定義がない限り、技術的または科学的な用語を含めてここで使用される全ての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有すると解析すべきであり、本出願で明白に定義しない限り、理想的であるか過度に形式的な意味として解析されない。
【0031】
数値の範囲は、前記範囲に定義された数値を含む。本明細書において与えられたすべての最大の数値制限は、低い数値制限が明確に述べられているように、すべてのさらに低い数値制限を含む。本明細書において与えられたすべての最小の数値制限は、さらに高い数値制限が明確に述べられているように、すべてのさらに高い数値制限を含む。本明細書において与えられたすべての数値制限は、さらに狭い数値制限が明確に述べられているように、さらに広い数値範囲内のさらに良いすべての数値範囲を含む。
【0032】
以下、本発明の実施形態を詳細に記述するが、下記の実施形態によって本発明が限定されないことは自明である。
【0033】
マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤及びその製造方法
本発明は、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を提供する。
【0034】
前記マグネシウムシリケートは、50nm~800nmの粒子サイズを有し得る。前記マグネシウムシリケートは、ナノサイズで存在してもよい。
【0035】
前記マグネシウムシリケートは、酸素(O)50~70wt%、マグネシウム(Mg)5~20wt%、及びケイ素(Si)15~35wt%の質量比で構成され、好ましくは酸素(O)55~65wt%、マグネシウム(Mg)10~15wt%、及びケイ素(Si)20~30wt%の質量比で構成されてもよい。
【0036】
前記マグネシウムシリケートは、50~500m/gの比表面積(Surface area)を有し得、好ましくは100~450m/gの比表面積を有し得、最も好ましくは120~420m/gの比表面積を有し得る。
【0037】
前記マグネシウムシリケートは、0.1~20nmの気孔サイズ(pore size)を有し得、好ましくは0.5~15nmの気孔サイズを有し得、最も好ましくは1.0~13nmの気孔サイズを有し得る。
【0038】
また、本発明は、
(A1)シリケート前駆体を製造する段階と、
(A2)マグネシウム前駆体およびアンモニウム塩を混合して混合物を製造する段階と、
(A3)前記混合物に前記シリケート前駆体を添加して、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階と、
を含む、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤の製造方法を提供する。
【0039】
前記(A1)段階は、シリケート前駆体を製造する段階であって、
(A1a)アルコール、水及び水性アンモニア(NHO、ammonia-water)を混合して混合溶液を製造する段階と、
(A1b)前記混合溶液にテトラエチルオルトシリケート(Tetraethyl orthosilicate、TEOS)を添加して、ナノサイズの粒子を有するシリケート前駆体を製造する段階と、で構成されてもよい。
【0040】
前記アルコールは、C1~C4の低価アルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールまたはn-ブタノールであってもよい。
【0041】
前記シリケート前駆体は、シリカ(SiO)、ナトリウムシリケート(sodium silicate)、テトラメチルオルトシリケート(tetramethyl orthosilicate)、テトラエチルオルトシリケート(tetraethyl orthosilicate)、テトラプロピルオルトシリケート(tetrapropyl orthosilicate)、トリエトキシエチルシラン(triethoxyethylsilane、TEES)及び1,2-ビストリエトキシシリルエタン(1,2-bis(triethoxysilyl)ethane、BTSE)からなる群から選択される1種以上であってよく、好ましくは、ナノ粒子サイズを有するシリカ、ナトリウムシリケート、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラプロピルオルトシリケート、トリエトキシエチルシラン及び1,2-ビストリエトキシシリルエタンからなる群から選択される1種以上である。
【0042】
前記(A1)段階によって製造されたシリケート前駆体は、ナノサイズの粒子を有するシリケート前駆体であってよい。
【0043】
前記(A2)段階は、マグネシウム前駆体及びアンモニウム塩を混合して混合物を製造する段階であってもよい。
【0044】
前記マグネシウム前駆体は、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム及び塩化マグネシウムからなる群から選択される1種以上であってもよく、前記マグネシウム前駆体は、単一前駆体であっても、または混合前駆体であってもよい。
【0045】
前記アンモニウム塩は、塩化アンモニウム(NHCl)、硝酸アンモニウム(NHNO)及び硫酸アンモニウム((NHSO)からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする。
【0046】
前記(A2)段階に添加されるアンモニウム塩は、マグネシウム前駆体の副反応を抑制し、マグネシウムイオンとシリケートイオンとの間の反応を誘導することにより、均一な球状のマグネシウムシリケートを製造するためのものである。
【0047】
前記(A2)段階の後、前記マグネシウム前駆体及びアンモニウム塩の混合物にアンモニア水(NHOH)をさらに添加してもよい。
【0048】
前記(A3)段階は、前記混合物に前記シリケート前駆体を添加して、本発明によるマグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階であって、
(A3a)前記混合物に前記シリケート前駆体を添加する段階と、
(A3b)前記シリケート前駆体が添加された混合物を100~200℃で加熱する段階と、
(A3c)前記加熱が完了した混合物をろ過して、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階と、で構成されてもよい。
【0049】
前記(A3a)段階は、前記混合物に前記シリケート前駆体を添加する段階であって、より具体的には、前記シリケート前駆体を水(HO)に分散させ、前記シリケート前駆体が分散した溶液を前記混合物に添加する段階であってもよい。
【0050】
前記(A3a)段階の完了後、前記混合物を均質になるまで撹拌しながら混合してもよい。
【0051】
前記(A3b)段階は、前記シリケート前駆体が添加された混合物を、100~200℃で加熱する段階であって、より具体的には、前記シリケート前駆体が添加された混合物をオートクレーブ(autoclave)に移送し、これを100~200℃で1~36時間反応する段階であってもよい。
【0052】
前記(A3c)段階は、前記加熱が完了した混合物をろ過して、本発明によるマグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階であってもよい。より具体的には、前記加熱が完了した混合物を常温または室温に冷却し、その後、前記反応により生成されたマグネシウムシリケートをろ過し、これを洗浄した後、50~150℃で乾燥させて、本発明によるマグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階であってもよい。
【0053】
マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を含む二次電池電解質及びこれを含む二次電池
本発明は、前記マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を含む二次電池電解質を提供する。
【0054】
前記二次電池電解質は、前記二次電池電解質用添加剤を、前記二次電池電解質の総重量%に対して0.1~2.0重量%で含んでいてもよい。
【0055】
また、本発明は、前記二次電池電解質を含む二次電池を提供する。
【0056】
前記二次電池は、前記二次電池電解質を最適の重量で含むことで、二次電池電極で発生する副反応、電解質分解などを抑制することにより、二次電池の寿命を延ばすことができ、その効率を向上させることができる。
【0057】
本発明の利点及び特徴並びにこれらを達成する方法は、詳細に後述する実施例を参照すれば明らかになるであろう。しかしながら、本発明は、後述する実施例に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に実現可能であり、単にこれらの実施例は本発明の開示を完全たるものにし、且つ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範囲により定義されるだけである。
【0058】
実施例1.二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの製造
1.1.シリケート前駆体の製造
ナノサイズの粒子を有するマグネシウムシリケートを製造するために、ナノサイズの粒子を有するシリケート前駆体にストーバー工程(Stober process)を実施することにより、球状のナノシリカ(SiO)をシリケート前駆体として製造した。
【0059】
より具体的には、エタノール、蒸留水および水性アンモニア(NHO、ammonia-water)を均質に混合し、前記混合物にテトラエチルオルトシリケート(Tetraethyl orthosilicate、TEOS)を注入し、その混合物を常温で2時間250rpmの速度で撹拌した。前記撹拌が完了した混合物を、高速遠心分離機を用いて固体層を分離し、これを蒸留水及びエタノールで洗浄した後、80℃で乾燥させることにより、ナノサイズの粒子を有するシリケート前駆体であるナノシリカ(SiO)を製造した。
【0060】
1.2.二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの製造
塩化マグネシウム(MgCl、0.75mmol)および塩化アンモニウム(NHCl、10mmol)を蒸留水(30mL)に溶解させた後、28%アンモニア水(NHOH、1mL)を添加し混合して混合物を製造した。次いで、前記製造されたナノサイズの粒子を有するナトリウムシリケート(0.1g)を蒸留水(20mL)に分散させ、前記分散液を前記混合物に添加して均質になるまで混合した。前記混合が完了した溶液をオートクレーブ(autoclave)に移し、140℃で12時間反応させて、シリケート前駆体である球状のシリカ(SiO)のSiイオンを放出させ、放出されたSiイオンとマグネシウムイオンとの間の相互作用のための反応を行った。その後、前記反応物を常温まで冷却し、この反応で生成されたマグネシウムシリケートをろ過し、蒸留水で洗浄した後、100℃の乾燥器内で乾燥させることで、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートを製造した。
【0061】
実施例2.マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質1
エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)及びジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)を1:1の重量比で混合し、これをLiPFと混合して液体電解質LiPF-EC/DECを製造した。前記液体電解質(LiPF-EC/DEC)1gに、前記実施例1で製造されたマグネシウムシリケート0.003g(液体電解質の総重量%の0.3wt%)を添加して、本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質1を製造した。
【0062】
実施例3.マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質2
前記実施例2で製造された液体電解質(LiPF-EC/DEC)1gに、前記実施例1で製造されたマグネシウムシリケート0.01g(液体電解質の総重量%の1.0wt%)を添加して、本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質2を製造した。
【0063】
比較例1.マグネシウムシリケートを添加剤として含まない比較二次電池用電解質1
エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)及びジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)を1:1の重量比で混合し、これをLiPFと混合して、液体電解質LiPF-EC/DECで構成された比較二次電池用電解質1を製造した。
【0064】
比較例2.マグネシウムシリケートを添加剤として含む比較二次電池用電解質2
前記実施例2で製造された液体電解質(LiPF-EC/DEC)1gに、前記実施例1で製造されたマグネシウムシリケート0.03g(液体電解質の総重量%の3.0wt%)を添加して、マグネシウムシリケートを添加剤として含む比較二次電池用電解質2を製造した。
【0065】
実験例1。二次電池添加剤用マグネシウムシリケート素材の分析
1.1.マグネシウムシリケートの粒子サイズ分析
本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの粒子がナノサイズを有するかどうかを確認するために、前記実施例1で製造されたシリケート前駆体である球状のシリカ(SiO)および二次電池添加剤用マグネシウムシリケートに対して、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)および動的光散乱(Dynamic Light Scattering、DLS)測定を行い、その結果を下記表1、図1及び図2に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
前記表1、図1及び図2を参照すると、本発明による実施例1で製造された、(a)シリケート前駆体である球状のシリカおよび(b)二次電池添加剤用マグネシウムシリケートは、200nm~500nmの粒子サイズ範囲を有することが確認できる。
【0068】
1.2.マグネシウムシリケートの構成分析
本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの構成を確認するために、前記実施例1で製造された二次電池添加剤用マグネシウムシリケートに対して、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、EDS)測定を行い、その結果を下記表2及び図3に示した。
【0069】
【表2】
【0070】
前記表2及び図3を参照すると、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケート(実施例1)は、酸素、マグネシウム及びケイ素から構成されたマグネシウムシリケートであることが確認できる。
【0071】
1.3.マグネシウムシリケートの比表面積および気孔サイズの分析
本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの比表面積と、前記マグネシウムシリケートの表面上に存在する気孔の大きさとを確認するために、前記実施例1で製造された二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの比表面積および気孔の大きさを、BET比表面積測定装置を用いて測定し、その結果を図4に示した。
【0072】
図4を参照すると、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケート(実施例1)は、399.10m/gの比表面積(Surface area)を有し、前記マグネシウムシリケートの表面上には7.00nmの気孔が形成されていることが確認できる。
【0073】
以上の結果から、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートが、二次電池の使用により生じ得る不純物を吸着することにより、電解質の分解を抑制し、二次電池の容量維持率を向上させることに貢献できると言える。
【0074】
実験例2.マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質の効果の分析-正極の適用
2.1.添加剤による定電流充放電サイクル(galvanostatic charge-discharge cycles)の確認
本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の効率に影響を与えるかどうかを確認するために、前記実施例2及び3で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質と、比較例1及び比較例2で製造された比較二次電池用電解質をそれぞれ含むリチウム二次電池の正極ハーフセル(NCM622 Cathode Half Cell)とに対して、定電流充放電サイクル(galvanostatic charge-discharge cycles)測定を行い、その結果を下記表3及び図5に示した。
【0075】
【表3】
【0076】
前記表3及び図5を参照すると、本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質(実施例2及び3)を含むリチウム二次電池は、電解質としてマグネシウムシリケートを適用したにもかかわらず、充放電容量及び初期充放電効率(Initial Columbic Efficiency、I.C.E)に影響を及ぼさないことが確認できる。
【0077】
以上の結果から、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートが二次電池の添加剤として使用できることが確認できる。
【0078】
2.2.添加剤による電気化学的インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy、EIS)の確認
本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池に影響を与えるかどうかを確認するために、前記実施例2及び3で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の正極ハーフセル(NCM622 Cathode Half Cell)に対して、電気化学的インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy、EIS)を行い、その結果を比較するために、前記比較例1及び比較例2で製造された二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の正極ハーフセルに対して、同様に電気化学的インピーダンス分光法を行い、その結果を下記表4及び図6に示した。
【0079】
【表4】
【0080】
図6を参照すると、マグネシウムシリケートを添加剤として添加する場合、バルク抵抗が確実に小さく、RSEI抵抗が小さいことが確認できる。一方、マグネシウムシリケートを添加剤として3wt%添加すると、RSEI抵抗が非常に高くなって、高い界面抵抗が引き起こされることが確認できる。
【0081】
以上の結果から、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートを特定容量で含む場合、RSEI抵抗を低減して、リチウムイオン伝達が容易な固体電解質中間相(Solid Electrolyte Interphase、SEI)を形成できることが確認できる。
【0082】
2.3.添加剤による充放電サイクルの確認
本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池に影響を与えるかどうかを確認するために、前記実施例2及び3で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の正極ハーフセル(NCM622 Cathode Half Cell)に対して、充放電サイクルの進行に応じて放電容量維持特性が変化することを確認し、これを比較するために、前記比較例1及び比較例2で製造された二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の正極ハーフセルに対して、同様に充放電サイクルの進行に応じて放電容量維持特性が変化することを確認し、その結果を図7に示した。
【0083】
図7を参照すると、前記実施例2(レッドライン)及び実施例3(ブルーライン)で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の正極ハーフセルは、マグネシウムシリケートを添加剤として含まない比較例1(ブラックライン)と比較して、高い容量維持率を示すことが確認できる。特に、過剰量3wt%のマグネシウムシリケート添加剤を含む比較例2(pink line)の場合、サイクル特性が著しく低下していることが確認できる。
【0084】
以上の結果から、本発明によるマグネシウムシリケート添加剤は、最適な重量比でのみ添加されるべきであることが確認できる。
【0085】
実験例3.マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質の効果の分析-負極の適用
3.1.添加剤による定電流充放電サイクル(galvanostatic charge-discharge cycles)の確認
【0086】
本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の効率に影響を与えるかどうかを確認するために、前記実施例2及び3で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質と、比較例1及び比較例2で製造された比較二次電池用電解質をそれぞれ含むリチウム二次電池の負極ハーフセル(Natural graphite Anode Half Cell)に対して、定電流充放電サイクル(galvanostatic charge-discharge cycles)測定を行い、その結果を下記表5及び図8に示した。
【0087】
【表5】
【0088】
前記表5及び図8を参照すると、本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質(実施例2及び3)を含むリチウム二次電池は、電解質としてマグネシウムシリケートを適用したにもかかわらず、充放電容量及び初期充放電効率(Initial Columbic Efficiency、I.C.E)に影響を及ぼさないことが確認できる。しかし、過剰量3wt%のマグネシウムシリケート添加剤を含む比較例2(green dot line)の場合、セルが急激に劣化し、測定されなかったことを確認できる。
【0089】
以上の結果から、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートが、二次電池の添加剤を最適な重量比で適用してこそ使用できることが確認できる。
【0090】
3.2.添加剤による電気化学的インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy、EIS)の確認
本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池に影響を与えるかどうかを確認するために、前記実施例2及び3で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の負極ハーフセル(Natural graphite Anode Half Cell)に対して、電気化学的インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy、EIS)を行い、これを比較するために、前記比較例1及び比較例2で製造された比較二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の負極ハーフセルに対して、同様に電気化学的インピーダンス分光法を行い、その結果を下記表6及び図9に示した。
【0091】
【表6】
【0092】
前記表6及び図9を参照すると、マグネシウムシリケートを添加剤として添加する場合、バルク(bulk)抵抗が確実に小さく、RSEI抵抗が小さいことが確認できる。一方、マグネシウムシリケートを添加剤として3wt%添加すると、RSEI抵抗が非常に高くなることが確認できる。
【0093】
以上の結果から、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートを特定重量比で含む場合、RSEI抵抗を低減して、リチウムイオン伝達が容易な固体電解質中間相(Solid Electrolyte Interphase、SEI)を形成したことが確認できる。
【0094】
3.3.添加剤による充放電サイクルの確認
本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池に影響を与えるかどうかを確認するために、前記実施例2で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の負極ハーフセル(Natural graphite Anode Half Cell)に対して、充放電サイクルの進行に応じて放電容量維持特性が変化することを確認し、これを比較するために、前記比較例1で製造された二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の正極ハーフセルに対して、同様に充放電サイクルの進行に応じて放電容量維持特性が変化することを確認し、その結果を図10に示した。
【0095】
図10を参照すると、前記実施例2(レッドライン)で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の正極ハーフセルは、マグネシウムシリケートを添加剤として含まない比較例1(ブラックライン)と比較して、高い容量維持率を示すことが確認できる。
【0096】
以上の説明から、本発明に属する技術分野の当業者であれば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、本発明を他の具体的な形態で実施できることを理解できる。これに関して、以上で記述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではない。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウムシリケート(magnesium silicate、ケイ酸マグネシウム)を含む二次電池電解質用添加剤及びその製造方法に関し、より詳細には、電気化学的副反応を抑制することにより、充放電容量に影響を及ぼすことなく、二次電池電極におけるリチウムイオンの吸収及び放出を可逆的に改善し、固体電解質中間相(Solid Electrolyte Interphase、SEI)の形成を促進できる、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
広い比表面積と均一な気孔を有しているナノ多孔性物質は、吸着剤、触媒支持剤、分離及び精製工程、そしてイオン交換媒体として広く用いられている。特に、調節された多孔性を有する新しいナノ構造物質の合成は、新素材分野において持続的に研究されている。
【0003】
中でもマグネシウムシリケート(magnesium silicate)は、水溶性マグネシウム塩(water soluble aluminium salts)とナトリウムシリケート(sodium silicate、ケイ酸ナトリウム)との沈殿反応により合成される多孔性無機化学物質であり、強力な吸着性能を基礎として、工業用、食品精製用、化粧品原料などの分野に使用できる。
【0004】
これまでに報告されたシリカ及びシリケート関連文献の多くでは、テトラエチルオルソシリケート(Tetraethyl orthosilicate、TEOS)をシリカ前駆体として用いて合成された。TEOSの反応性が高いことから、pHによるシリカ合成が可能であり、不純物含量が少ないことから、高純度の無機化合物を合成できるということに大きな長所があるが、単価が高いことから、グローバル市場での価格競争力を確保するのに困難がある。
【0005】
シリケートベースの無機化合物は、ゾル-ゲル(sol-gel)合成法を用いて様々な変数(pH、界面活性剤、温度、濃度など)を調節することにより粒子の形状、粒度、表面特性などを調節することができるが、これについての正確なメカニズムを究明した研究はほとんどない。また、マグネシウムシリケートは、粒度及び広いpH範囲により条件を制御するのが困難であるため、ほとんどのマグネシウムシリケートの開発は多孔性を調節することに限定されている。
【0006】
一方、リチウム二次電池は、エネルギー密度を高めるために高電圧活性化を経て高電圧帯で使用されているが、高電圧では活物質と電解液が副反応を起こして電池の性能劣化が深化する問題があり、充放電時に活物質が電解液に溶出する問題が発生して、究極的には電池の劣化をもたらすという欠点がある。
【0007】
このような欠点を緩和するために、リチウム二次電池の充電時に他の電解質よりも先に酸化されて正極表面に保護被膜を形成する、正極保護用の電解質添加剤を使用しているが、既存の添加剤の場合、ほとんどが有機化合物で環境に優しくなく、電池性能の劣化現象を満足できるレベルで抑制できておらず、高性能(高出力)リチウム二次電池の開発を阻害する原因となっている。
【0008】
そこで、本発明者らは、上記問題を補完するために、高電圧サイクルにおける容量低下を改善し、寿命安定性を向上させたリチウム二次電池を開発するためのリチウム二次電池用電解質添加剤の開発が急務であることを認識し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、電気化学的副反応を抑制することにより、充放電容量に影響を与えることなく、二次電池電極におけるリチウムイオンの吸収及び放出を可逆的に改善し、固体電解質中間相(Solid Electrolyte Interphase、SEI)の形成を促進できる、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、電気化学的副反応を抑制することにより、充放電容量に影響を与えることなく、二次電池電極におけるリチウムイオンの吸収及び放出を可逆的に改善し、固体電解質中間相(Solid Electrolyte Interphase、SEI)の形成を促進できる、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤の製造方法を提供することである。
【0011】
本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は、本発明の記載から当該分野における通常の知識を有する者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤の製造方法を提供する。
【0013】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明は、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を提供する。
【0015】
本発明において、前記マグネシウムシリケートは、50nm~800nmの粒子サイズを有することを特徴とする。
【0016】
本発明において、前記マグネシウムシリケートは、酸素(O)50~70wt%、マグネシウム(Mg)5~20wt%、及びケイ素(Si)15~35wt%の質量比を有することを特徴とする。
【0017】
本発明において、前記マグネシウムシリケートは、50~500m/gの比表面積(Surface area)を有することを特徴とする。
【0018】
本発明において、前記マグネシウムシリケートは、0.1~20nmの気孔サイズ(pore size)を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、
(A1)シリケート前駆体を製造する段階と、
(A2)マグネシウム前駆体及びアンモニウム塩を混合して混合物を製造する段階と、
(A3)前記混合物に前記シリケート前駆体を添加して、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階と、
を含むことを特徴とする、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤の製造方法を提供する。
【0020】
本発明において、前記(A1)段階は、
(A1a)アルコール、水及び水性アンモニア(NHO、ammonia-water)を混合して混合溶液を製造する段階と、
(A1b)前記混合溶液にテトラエチルオルトシリケート(Tetraethyl orthosilicate、TEOS)を添加して、ナノサイズの粒子を有するシリケート前駆体を製造する段階と、で構成されることを特徴とする。
【0021】
本発明において、前記(A3)段階は、
(A3a)前記混合物に前記シリケート前駆体を添加する段階と、
(A3b)前記シリケート前駆体が添加された混合物を100~200℃で加熱する段階と、
(A3c)前記加熱が完了した混合物をろ過して、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階と、で構成されることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、前記マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を含む二次電池電解質を提供する。
【0023】
本発明において、前記二次電池電解質は、前記二次電池電解質用添加剤を、前記二次電池電解質の総重量%に対して0.1~2.0重量%含むことを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、前記二次電池電解質を含むことを特徴とする二次電池を提供する。
【0025】
前記マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤、その製造方法、それを含む二次電池電解質、及び前記二次電池電解質を含む二次電池で言及された全ての事項は、矛盾しない限り、同様に適用される。
【発明の効果】
【0026】
本発明のマグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤及びその製造方法によれば、電気化学的副反応を抑制することにより、充放電容量に影響を与えることなく、二次電池電極におけるリチウムイオンの吸収及び放出を可逆的に改善し、固体電解質中間相(Solid Electrolyte Interphase、SEI)の形成を促進することができる。
【0027】
本発明の効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及されていない他の効果は、特許請求範囲の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの粒子サイズを確認した走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)の画像である。
図2】本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの平均粒子サイズを確認した動的光散乱(Dynamic Light Scattering、DLS)グラフである。
図3】本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの構成を確認したエネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、EDS)の画像である。
図4】本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの比表面積と、前記マグネシウムシリケートの表面上に存在する気孔の大きさとを確認したグラフである。
図5】本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の正極に影響を与えるかどうかを確認した定電流充放電サイクル(galvanostatic charge-discharge cycles)を示すグラフである。
図6】本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の正極に影響を与えるかどうかを確認した電気化学的インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy、EIS)のグラフである。
図7】本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の正極に影響を与えるかどうかを確認した充放電サイクルの進行に応じて変化する放電容量維持特性を示すグラフである。
図8】本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の負極に影響を与えるかどうかを確認した定電流充放電サイクル(galvanostatic charge-discharge cycles)を示すグラフである。
図9】本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の負極に影響を与えるかどうかを確認した電気化学的インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy、EIS)のグラフである。
図10】本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の負極に影響を与えるかどうかを確認した充放電サイクルの進行に応じて変化する放電容量維持特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書で使用されている用語は、本発明での機能を考慮しながら、可能な限り現在広く使用される一般的な用語を選択しているが、それは、当分野の当業者の意図、判例、または新たな技術の出現などによって異なりもする。また、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあり、その場合、当該発明の説明部分で、詳細にその意味を記載する。従って、本発明で使用される用語は、単純な用語の名称ではない、その用語が有する意味と、本発明の全般にわたる内容とを基に定義されなければならない。
【0030】
別段の定義がない限り、技術的または科学的な用語を含めてここで使用される全ての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有すると解析すべきであり、本出願で明白に定義しない限り、理想的であるか過度に形式的な意味として解析されない。
【0031】
数値の範囲は、前記範囲に定義された数値を含む。本明細書において与えられたすべての最大の数値制限は、低い数値制限が明確に述べられているように、すべてのさらに低い数値制限を含む。本明細書において与えられたすべての最小の数値制限は、さらに高い数値制限が明確に述べられているように、すべてのさらに高い数値制限を含む。本明細書において与えられたすべての数値制限は、さらに狭い数値制限が明確に述べられているように、さらに広い数値範囲内のさらに良いすべての数値範囲を含む。
【0032】
以下、本発明の実施形態を詳細に記述するが、下記の実施形態によって本発明が限定されないことは自明である。
【0033】
マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤及びその製造方法
本発明は、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を提供する。
【0034】
前記マグネシウムシリケートは、50nm~800nmの粒子サイズを有し得る。前記マグネシウムシリケートは、ナノサイズで存在してもよい。
【0035】
前記マグネシウムシリケートは、酸素(O)50~70wt%、マグネシウム(Mg)5~20wt%、及びケイ素(Si)15~35wt%の質量比で構成され、好ましくは酸素(O)55~65wt%、マグネシウム(Mg)10~15wt%、及びケイ素(Si)20~30wt%の質量比で構成されてもよい。
【0036】
前記マグネシウムシリケートは、50~500m/gの比表面積(Surface area)を有し得、好ましくは100~450m/gの比表面積を有し得、最も好ましくは120~420m/gの比表面積を有し得る。
【0037】
前記マグネシウムシリケートは、0.1~20nmの気孔サイズ(pore size)を有し得、好ましくは0.5~15nmの気孔サイズを有し得、最も好ましくは1.0~13nmの気孔サイズを有し得る。
【0038】
また、本発明は、
(A1)シリケート前駆体を製造する段階と、
(A2)マグネシウム前駆体およびアンモニウム塩を混合して混合物を製造する段階と、
(A3)前記混合物に前記シリケート前駆体を添加して、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階と、
を含む、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤の製造方法を提供する。
【0039】
前記(A1)段階は、シリケート前駆体を製造する段階であって、
(A1a)アルコール、水及び水性アンモニア(NHO、ammonia-water)を混合して混合溶液を製造する段階と、
(A1b)前記混合溶液にテトラエチルオルトシリケート(Tetraethyl orthosilicate、TEOS)を添加して、ナノサイズの粒子を有するシリケート前駆体を製造する段階と、で構成されてもよい。
【0040】
前記アルコールは、C1~C4の低価アルコールであり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールまたはn-ブタノールであってもよい。
【0041】
前記シリケート前駆体は、シリカ(SiO)、ナトリウムシリケート(sodium silicate)、テトラメチルオルトシリケート(tetramethyl orthosilicate)、テトラエチルオルトシリケート(tetraethyl orthosilicate)、テトラプロピルオルトシリケート(tetrapropyl orthosilicate)、トリエトキシエチルシラン(triethoxyethylsilane、TEES)及び1,2-ビストリエトキシシリルエタン(1,2-bis(triethoxysilyl)ethane、BTSE)からなる群から選択される1種以上であってよく、好ましくは、ナノ粒子サイズを有するシリカ、ナトリウムシリケート、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラプロピルオルトシリケート、トリエトキシエチルシラン及び1,2-ビストリエトキシシリルエタンからなる群から選択される1種以上である。
【0042】
前記(A1)段階によって製造されたシリケート前駆体は、ナノサイズの粒子を有するシリケート前駆体であってよい。
【0043】
前記(A2)段階は、マグネシウム前駆体及びアンモニウム塩を混合して混合物を製造する段階であってもよい。
【0044】
前記マグネシウム前駆体は、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム及び塩化マグネシウムからなる群から選択される1種以上であってもよく、前記マグネシウム前駆体は、単一前駆体であっても、または混合前駆体であってもよい。
【0045】
前記アンモニウム塩は、塩化アンモニウム(NHCl)、硝酸アンモニウム(NHNO)及び硫酸アンモニウム((NHSO)からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする。
【0046】
前記(A2)段階に添加されるアンモニウム塩は、マグネシウム前駆体の副反応を抑制し、マグネシウムイオンとシリケートイオンとの間の反応を誘導することにより、均一な球状のマグネシウムシリケートを製造するためのものである。
【0047】
前記(A2)段階の後、前記マグネシウム前駆体及びアンモニウム塩の混合物にアンモニア水(NHOH)をさらに添加してもよい。
【0048】
前記(A3)段階は、前記混合物に前記シリケート前駆体を添加して、本発明によるマグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階であって、
(A3a)前記混合物に前記シリケート前駆体を添加する段階と、
(A3b)前記シリケート前駆体が添加された混合物を100~200℃で加熱する段階と、
(A3c)前記加熱が完了した混合物をろ過して、マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階と、で構成されてもよい。
【0049】
前記(A3a)段階は、前記混合物に前記シリケート前駆体を添加する段階であって、より具体的には、前記シリケート前駆体を水(HO)に分散させ、前記シリケート前駆体が分散した溶液を前記混合物に添加する段階であってもよい。
【0050】
前記(A3a)段階の完了後、前記混合物を均質になるまで撹拌しながら混合してもよい。
【0051】
前記(A3b)段階は、前記シリケート前駆体が添加された混合物を、100~200℃で加熱する段階であって、より具体的には、前記シリケート前駆体が添加された混合物をオートクレーブ(autoclave)に移送し、これを100~200℃で1~36時間反応する段階であってもよい。
【0052】
前記(A3c)段階は、前記加熱が完了した混合物をろ過して、本発明によるマグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階であってもよい。より具体的には、前記加熱が完了した混合物を常温または室温に冷却し、その後、前記反応により生成されたマグネシウムシリケートをろ過し、これを洗浄した後、50~150℃で乾燥させて、本発明によるマグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を製造する段階であってもよい。
【0053】
マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を含む二次電池電解質及びこれを含む二次電池
本発明は、前記マグネシウムシリケートを含む二次電池電解質用添加剤を含む二次電池電解質を提供する。
【0054】
前記二次電池電解質は、前記二次電池電解質用添加剤を、前記二次電池電解質の総重量%に対して0.1~2.0重量%で含んでいてもよい。
【0055】
また、本発明は、前記二次電池電解質を含む二次電池を提供する。
【0056】
前記二次電池は、前記二次電池電解質を最適の重量で含むことで、二次電池電極で発生する副反応、電解質分解などを抑制することにより、二次電池の寿命を延ばすことができ、その効率を向上させることができる。
【0057】
本発明の利点及び特徴並びにこれらを達成する方法は、詳細に後述する実施例を参照すれば明らかになるであろう。しかしながら、本発明は、後述する実施例に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に実現可能であり、単にこれらの実施例は本発明の開示を完全たるものにし、且つ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範囲により定義されるだけである。
【0058】
実施例1.二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの製造
1.1.シリケート前駆体の製造
ナノサイズの粒子を有するマグネシウムシリケートを製造するために、ナノサイズの粒子を有するシリケート前駆体にストーバー工程(Stober process)を実施することにより、球状のナノシリカ(SiO)をシリケート前駆体として製造した。
【0059】
より具体的には、エタノール、蒸留水および水性アンモニア(NHO、ammonia-water)を均質に混合し、前記混合物にテトラエチルオルトシリケート(Tetraethyl orthosilicate、TEOS)を注入し、その混合物を常温で2時間250rpmの速度で撹拌した。前記撹拌が完了した混合物を、高速遠心分離機を用いて固体層を分離し、これを蒸留水及びエタノールで洗浄した後、80℃で乾燥させることにより、ナノサイズの粒子を有するシリケート前駆体であるナノシリカ(SiO)を製造した。
【0060】
1.2.二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの製造
塩化マグネシウム(MgCl、0.75mmol)および塩化アンモニウム(NHCl、10mmol)を蒸留水(30mL)に溶解させた後、28%アンモニア水(NHOH、1mL)を添加し混合して混合物を製造した。次いで、前記製造されたナノサイズの粒子を有するナトリウムシリケート(0.1g)を蒸留水(20mL)に分散させ、前記分散液を前記混合物に添加して均質になるまで混合した。前記混合が完了した溶液をオートクレーブ(autoclave)に移し、140℃で12時間反応させて、シリケート前駆体である球状のシリカ(SiO)のSiイオンを放出させ、放出されたSiイオンとマグネシウムイオンとの間の相互作用のための反応を行った。その後、前記反応物を常温まで冷却し、この反応で生成されたマグネシウムシリケートをろ過し、蒸留水で洗浄した後、100℃の乾燥器内で乾燥させることで、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートを製造した。
【0061】
実施例2.マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質1
エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)及びジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)を1:1の重量比で混合し、これをLiPFと混合して液体電解質LiPF-EC/DECを製造した。前記液体電解質(LiPF-EC/DEC)1gに、前記実施例1で製造されたマグネシウムシリケート0.003g(液体電解質の総重量%の0.3wt%)を添加して、本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質1を製造した。
【0062】
実施例3.マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質2
前記実施例2で製造された液体電解質(LiPF-EC/DEC)1gに、前記実施例1で製造されたマグネシウムシリケート0.01g(液体電解質の総重量%の1.0wt%)を添加して、本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質2を製造した。
【0063】
比較例1.マグネシウムシリケートを添加剤として含まない比較二次電池用電解質1
エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)及びジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)を1:1の重量比で混合し、これをLiPFと混合して、液体電解質LiPF-EC/DECで構成された比較二次電池用電解質1を製造した。
【0064】
比較例2.マグネシウムシリケートを添加剤として含む比較二次電池用電解質2
前記実施例2で製造された液体電解質(LiPF-EC/DEC)1gに、前記実施例1で製造されたマグネシウムシリケート0.03g(液体電解質の総重量%の3.0wt%)を添加して、マグネシウムシリケートを添加剤として含む比較二次電池用電解質2を製造した。
【0065】
実験例1。二次電池添加剤用マグネシウムシリケート素材の分析
1.1.マグネシウムシリケートの粒子サイズ分析
本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの粒子がナノサイズを有するかどうかを確認するために、前記実施例1で製造されたシリケート前駆体である球状のシリカ(SiO)および二次電池添加剤用マグネシウムシリケートに対して、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)および動的光散乱(Dynamic Light Scattering、DLS)測定を行い、その結果を下記表1、図1及び図2に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
前記表1、図1及び図2を参照すると、本発明による実施例1で製造された、(a)シリケート前駆体である球状のシリカおよび(b)二次電池添加剤用マグネシウムシリケートは、200nm~500nmの粒子サイズ範囲を有することが確認できる。
【0068】
1.2.マグネシウムシリケートの構成分析
本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの構成を確認するために、前記実施例1で製造された二次電池添加剤用マグネシウムシリケートに対して、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、EDS)測定を行い、その結果を下記表2及び図3に示した。
【0069】
【表2】
【0070】
前記表2及び図3を参照すると、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケート(実施例1)は、酸素、マグネシウム及びケイ素から構成されたマグネシウムシリケートであることが確認できる。
【0071】
1.3.マグネシウムシリケートの比表面積および気孔サイズの分析
本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの比表面積と、前記マグネシウムシリケートの表面上に存在する気孔の大きさとを確認するために、前記実施例1で製造された二次電池添加剤用マグネシウムシリケートの比表面積および気孔の大きさを、BET比表面積測定装置を用いて測定し、その結果を図4に示した。
【0072】
図4を参照すると、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケート(実施例1)は、399.10m/gの比表面積(Surface area)を有し、前記マグネシウムシリケートの表面上には7.00nmの気孔が形成されていることが確認できる。
【0073】
以上の結果から、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートが、二次電池の使用により生じ得る不純物を吸着することにより、電解質の分解を抑制し、二次電池の容量維持率を向上させることに貢献できると言える。
【0074】
実験例2.マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質の効果の分析-正極の適用
2.1.添加剤による定電流充放電サイクル(galvanostatic charge-discharge cycles)の確認
本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の効率に影響を与えるかどうかを確認するために、前記実施例2及び3で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質と、比較例1及び比較例2で製造された比較二次電池用電解質をそれぞれ含むリチウム二次電池の正極ハーフセル(NCM622)とに対して、定電流充放電サイクル(galvanostatic charge-discharge cycles)測定を行い、その結果を下記表3及び図5に示した。
【0075】
【表3】
【0076】
前記表3及び図5を参照すると、本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質(実施例2及び3)を含むリチウム二次電池は、電解質としてマグネシウムシリケートを適用したにもかかわらず、充放電容量及び初期充放電効率(Initial Columbic Efficiency、I.C.E)に影響を及ぼさないことが確認できる。
【0077】
以上の結果から、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートが二次電池の添加剤として使用できることが確認できる。
【0078】
2.2.添加剤による電気化学的インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy、EIS)の確認
本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池に影響を与えるかどうかを確認するために、前記実施例2及び3で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の正極ハーフセル(NCM622)に対して、電気化学的インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy、EIS)を行い、その結果を比較するために、前記比較例1及び比較例2で製造された二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の正極ハーフセルに対して、同様に電気化学的インピーダンス分光法を行い、その結果を下記表4及び図6に示した。
【0079】
【表4】
【0080】
表4及び図6を参照すると、マグネシウムシリケートを添加剤として添加する場合、バルク抵抗が確実に小さく、RSEI抵抗が小さいことが確認できる。一方、マグネシウムシリケートを添加剤として3wt%添加すると、RSEI抵抗が非常に高くなって、高い界面抵抗が引き起こされることが確認できる。
【0081】
以上の結果から、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートを特定容量で含む場合、RSEI抵抗を低減して、リチウムイオン伝達が容易な固体電解質中間相(Solid Electrolyte Interphase、SEI)を形成できることが確認できる。
【0082】
2.3.添加剤による充放電サイクルの確認
本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池に影響を与えるかどうかを確認するために、前記実施例2及び3で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の正極ハーフセル(NCM622)に対して、充放電サイクルの進行に応じて放電容量維持特性が変化することを確認し、これを比較するために、前記比較例1及び比較例2で製造された二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の正極ハーフセルに対して、同様に充放電サイクルの進行に応じて放電容量維持特性が変化することを確認し、その結果を図7に示した。
【0083】
図7を参照すると、前記実施例2(レッドライン)及び実施例3(ブルーライン)で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の正極ハーフセルは、マグネシウムシリケートを添加剤として含まない比較例1(ブラックライン)と比較して、高い容量維持率を示すことが確認できる。特に、過剰量3wt%のマグネシウムシリケート添加剤を含む比較例2(pink line)の場合、サイクル特性が著しく低下していることが確認できる。
【0084】
以上の結果から、本発明によるマグネシウムシリケート添加剤は、最適な重量比でのみ添加されるべきであることが確認できる。
【0085】
実験例3.マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質の効果の分析-負極の適用
3.1.添加剤による定電流充放電サイクル(galvanostatic charge-discharge cycles)の確認
【0086】
本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池の効率に影響を与えるかどうかを確認するために、前記実施例2及び3で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質と、比較例1及び比較例2で製造された比較二次電池用電解質をそれぞれ含むリチウム二次電池の負極ハーフセルに対して、定電流充放電サイクル(galvanostatic charge-discharge cycles)測定を行い、その結果を下記表5及び図8に示した。
【0087】
【表5】
【0088】
前記表5及び図8を参照すると、本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質(実施例2及び3)を含むリチウム二次電池は、電解質としてマグネシウムシリケートを適用したにもかかわらず、充放電容量及び初期充放電効率(Initial Columbic Efficiency、I.C.E)に影響を及ぼさないことが確認できる。しかし、過剰量3wt%のマグネシウムシリケート添加剤を含む比較例2(green dot line)の場合、セルが急激に劣化し、測定されなかったことを確認できる。
【0089】
以上の結果から、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートが、二次電池の添加剤を最適な重量比で適用してこそ使用できることが確認できる。
【0090】
3.2.添加剤による電気化学的インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy、EIS)の確認
本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池に影響を与えるかどうかを確認するために、前記実施例2及び3で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の負極ハーフセルに対して、電気化学的インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy、EIS)を行い、これを比較するために、前記比較例1及び比較例2で製造された比較二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の負極ハーフセルに対して、同様に電気化学的インピーダンス分光法を行い、その結果を下記表6及び図9に示した。
【0091】
【表6】
【0092】
前記表6及び図9を参照すると、マグネシウムシリケートを添加剤として添加する場合、バルク(bulk)抵抗が確実に小さく、RSEI抵抗が小さいことが確認できる。一方、マグネシウムシリケートを添加剤として3wt%添加すると、RSEI抵抗が非常に高くなることが確認できる。
【0093】
以上の結果から、本発明による二次電池添加剤用マグネシウムシリケートを特定重量比で含む場合、RSEI抵抗を低減して、リチウムイオン伝達が容易な固体電解質中間相(Solid Electrolyte Interphase、SEI)を形成したことが確認できる。
【0094】
3.3.添加剤による充放電サイクルの確認
本発明によるマグネシウムシリケートを添加剤として適用する場合、二次電池に影響を与えるかどうかを確認するために、前記実施例2で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の負極ハーフセルに対して、充放電サイクルの進行に応じて放電容量維持特性が変化することを確認し、これを比較するために、前記比較例1で製造された二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の極ハーフセルに対して、同様に充放電サイクルの進行に応じて放電容量維持特性が変化することを確認し、その結果を図10に示した。
【0095】
図10を参照すると、前記実施例2(レッドライン)で製造された、マグネシウムシリケートを添加剤として含む二次電池用電解質を含むリチウム二次電池の極ハーフセルは、マグネシウムシリケートを添加剤として含まない比較例1(ブラックライン)と比較して、高い容量維持率を示すことが確認できる。
【0096】
以上の説明から、本発明に属する技術分野の当業者であれば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、本発明を他の具体的な形態で実施できることを理解できる。これに関して、以上で記述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではない。
【国際調査報告】