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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】非侵襲的癌治療
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/40 20060101AFI20240205BHJP
   A61F 7/00 20060101ALI20240205BHJP
   A61N 7/02 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
A61N1/40
A61F7/00 322
A61N7/02
A61F7/00 320Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548838
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2022053424
(87)【国際公開番号】W WO2022171826
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】21382115.0
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523306058
【氏名又は名称】スキエンティア バイオテック エセ.エレ
(71)【出願人】
【識別番号】519098394
【氏名又は名称】ウニベルシタ デ バレンシア
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エストレラ アリギュエル ホセ マリア
(72)【発明者】
【氏名】エレーラ ガスパル ホセ フアン
(72)【発明者】
【氏名】シブリアン オルティス デ アンダ ロサ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ナバーロ カンバ エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】オブラドール プラ マリア エレナ
【テーマコード(参考)】
4C053
4C099
4C160
【Fターム(参考)】
4C053LL20
4C099AA01
4C099EA05
4C099JA01
4C099JA13
4C099TA01
4C160JJ33
(57)【要約】
癌性標的部位を治療するための装置1を提供する。装置は、電極と標的部位との間の電気的接触を防ぐ電気絶縁コーティングを有する1つ以上の電極を含む電磁エミッター10を備える。電磁エミッター10は、1つ以上の電極を介して標的部位30に腫瘍治療領域をもたらすように構成され、腫瘍治療領域は、10kHz~300kHzの周波数を有し、0.1pT~1mTの磁束密度を更に有する非電離交流電磁場である。装置は、標的部位に加熱をもたらし、標的部位にハイパーサーミアを引き起こすように構成された熱源20を更に備える。装置は、非電離交流電磁場及び加熱を独立して適用するように構成される。装置は、電磁エミッター及び熱源を電子的に制御するための電子制御装置を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌性標的部位治療用装置であって、
電極と前記標的部位との間の電気的接触を防ぐ電気絶縁コーティングを有する1つ以上の電極を含む電磁エミッターであって、該電磁エミッターは、前記1つ以上の電極を介して標的部位に腫瘍治療領域をもたらすように構成され、該腫瘍治療領域は、10kHz~300kHzの周波数を有し、0.1pT~1mTの磁束密度を更に有する非電離交流電磁場である、電磁エミッターと、
前記標的部位に加熱をもたらし、該標的部位にハイパーサーミアを引き起こすように構成された熱源と、
前記電磁エミッター及び前記熱源を電子的に制御するための電子制御装置と、
を備え、前記非電離交流電磁場及び前記加熱を独立して適用するように構成される、装置。
【請求項2】
第1の時間にわたって前記標的に前記非電離交流電磁場をもたらし、第2の時間にわたって前記標的部位に直接加熱をもたらすように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
1分間~24時間の第1の時間にわたって前記標的部位に前記非電離交流電磁場をもたらすように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置が1分間~360分間の第2の時間にわたって前記標的部位に加熱をもたらすように更に構成され、任意に該加熱が第3の時間にわたって前記非電離交流電磁場に同時に適用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記電磁エミッターが、0.1pT~100μTの磁束密度を有する交流電磁場を前記標的部位にもたらすように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記電磁エミッターが、0.5μT~1mTの磁束密度を有する交流電磁場を前記標的部位にもたらすように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記電磁エミッターが、8μT~1mTの磁束密度を有する交流電磁場を前記標的部位にもたらすように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記電磁エミッターが、100kHz~300kHzの周波数を有する交流電磁場をもたらすように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記熱源が前記標的部位を42℃超、好ましくは42℃~57℃の温度に加熱するように構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記熱源が、前記標的部位に超音波放射をもたらすように構成された超音波エミッターを備え、任意に該超音波放射が該標的部位に1つ以上の焦点領域を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記熱源が、前記標的部位に電磁放射をもたらすように構成された電磁エミッターを備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記熱源が、前記標的部位に流体を圧送するように構成された流体ポンプと、該標的部位に到達する前に該流体を加熱するヒーターとを備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記熱源が、熱伝導によって前記標的部位に熱を供給するように構成された伝導熱エミッターを備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、癌性標的部位を治療するための装置に関する。より具体的には、本開示は、標的部位に非電離交流電磁場及び局部加熱をもたらすように構成された装置に関する。本開示はまた、癌性部位を治療する関連の方法及び癌性標的部位の治療に使用される組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌を治療する非侵襲的方法は、特に外科手術によって除去することが困難な膠芽腫等の癌にとって重要な方法である。体内の標的部位から癌性細胞を効果的に低減又は排除する、癌を治療する新たな非侵襲的方法が望まれている。
【0003】
放射線療法は、電離放射線を用いて標的部位で悪性細胞を死滅させる癌療法の一種である。電離放射線は、標的部位に供給され、DNA及び他の細胞分子に対する放射線の直接又は間接的な作用によって損傷を引き起こす。直接作用では、放射線は、例えばDNA分子に直接当たり、その分子構造を破壊する。かかる構造変化は、細胞損傷又は更には細胞死を引き起こし、それにより悪性細胞を治療する機構が提供される。
【0004】
交流電場療法又は腫瘍治療領域(TT領域)として知られる別の形態の治療では、非電離電場が標的部位に適用される。TT領域を癌治療に有用なものとする機構は、放射線療法の機構とは異なる。特に、有糸分裂紡錘体の形成時に微小管集合体が変形する。腫瘍細胞の有糸分裂は、長時間にわたって分裂間期に留まる。有糸分裂中期ないし後期に分裂溝が形成されると、細胞内の全ての極性分子及び双極子がTT領域の作用下で誘電泳動を受け、分裂溝内に蓄積し、最終的に細胞膜を破裂させる。TT領域の適用によって誘発される有糸分裂の結果には、染色体分離の異常が含まれ、これが様々な形態の細胞死を引き起こす。
【0005】
ハイパーサーミアは、癌性部位を治療する既知の方法である。しかしながら、癌性部位を効果的に標的とすることは困難であり得る。一方では、治療を受ける領域の周辺の組織も、特に癌性部位が高温に加熱される場合にハイパーサーミアの影響を受ける可能性がある。他方では、癌性部位は、部位が十分に高い温度に加熱されない場合に効果的に破壊されない可能性がある。さらに、熱を癌性部位に適用すると癌性部位で細胞損傷、更には細胞死が引き起こされ得るが、熱が癌性部位に適切な量で適切かつ正確に適用されない場合に、癌性部位がかかる加熱に抵抗性を示す可能性がある。例えば、ハイパーサーミアにより癌性増殖に加えて健常な周辺組織が加熱される場合、血流が増強し、癌性増殖への栄養供給が高くなる可能性がある。このため、状況によっては、加熱の結果として血流が多くなると、栄養素の分散が助長され、栄養素が癌性部位に到達することで、意図したものとは逆の効果があるか、又は少なくとも効果のない治療がもたらされる可能性がある。さらに、癌性細胞の細胞周期における異なる段階は、加熱に対する抵抗性が異なることが観察されている。またさらに、細胞における温度上昇は、熱ショックタンパク質(HSP)群をコードする熱ショック遺伝子を一時的に上方調節する。熱ショック応答に関与する機構は、自己調節ループである。HSPは通常、関与する転写因子(HSF-1)を不活性な状態に維持するが、加熱するとHSPがアンフォールドタンパク質とより高い親和性で結合し、HSPからのHSF-1の放出が誘発され、HSP遺伝子転写が開始する。HSPによる熱ショック後にタンパク質の損傷/凝集が回復すると、無基質のHSP自体がHSF-1との再結合により応答の軽減に関与する可能性がある。結果として、HSPレベルは加熱後に一時的に上昇するが、ストレスのない期間が長期にわたると再び徐々に低下する。HSPの上方調節は、その後の2回目の熱ショックに対する細胞の一時的な抵抗性状態と密接に関連している。HSPレベルの上昇は、そのシャペロン活性により、更なる加熱によって誘導されるタンパク質損傷から細胞を保護すると考えられる。したがって、必要とされる適用熱量から逸脱した結果としての癌性細胞の加熱に対する抵抗性を回避するために、必要とされる加熱を癌性部位により正確かつ確実にもたらすハイパーサーミアを提供する必要がある。
【0006】
ハイパーサーミアの多くの方法では、メディエーター(ナノ粒子流体等)を部位に投与する必要がある。次いで、例えば電場によってメディエーターを加熱し、それにより標的部位を間接的に加熱する。メディエーターは、TT領域と同じか又は同様の周波数範囲を有する電場を用いて加熱することができる。これは、癌性部位がハイパーサーミア及びTT領域機構の両方によって攻撃されることから有利であるとみなされ得る。しかしながら、メディエーターは患者の身体に注入される流体であるため、電磁放射を施す際の加熱の位置を制御することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の治療方法に対してより効果的な癌治療方法を見出すことが所望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、癌性標的部位を治療するための装置であって、
標的部位に非電離交流電磁場をもたらすように構成された電磁エミッターと、
標的部位に加熱をもたらし、標的部位にハイパーサーミアを引き起こすように構成された熱源と、
を備え、非電離交流電磁場及び加熱を独立して適用するように構成される、装置を提供することによって、より効果的な癌治療方法を提供するという課題に取り組むものである。特に、熱源は標的部位に直接加熱をもたらすように構成される。
【0009】
本明細書において、熱源がメディエーターを使用せずに(例えば、メディエーターを介して間接的にではなく、直接的に)特定の標的部位を加熱する任意の熱源であり得ることに留意されたい。
【0010】
好ましい実施の形態において、装置は、第1の時間にわたって標的に非電離交流電磁場をもたらし、第2の時間にわたって標的部位に直接加熱をもたらすように構成される。第2の時間は、第1の時間と部分的又は完全に重なっていてもよい。例えば、第1の時間は、第2の時間と同時に開始してもよく、又は第1の時間が開始してから所定の時間後に開始してもよく、又は第1の時間が終了した際に開始してもよい。第1の時間と第2の時間とが完全に重なり、TT領域及び加熱が部位に同時に適用され、以下で更に詳細に論考されるように標的部位内の細胞に対する相乗効果がもたらされることが好ましい。
【0011】
第1の時間及び第2の時間のシーケンスを2回以上繰り返してもよいことに留意されたい。例えば、装置は、第1の時間にわたって非電離交流電磁場を適用し、第1の時間が開始してから所定の時間後に第2の時間にわたって加熱を適用するように構成されてもよい。続いて、装置は再び、第1の時間にわたって非電離交流電磁場を適用し、第1の時間が開始してから所定の時間後に第2の時間にわたって加熱を適用するように構成され得る。第1の時間及び第2の時間の長さ、並びに互いに対する開始時間は、ユーザーにより又は装置のメモリに保存された1つ以上のスケジュールに従って構成可能であり得る。
【0012】
装置は、1分間~24時間の第1の時間にわたって標的部位に非電離交流電磁場をもたらすように構成されるのが好ましい。
【0013】
別の好ましい実施の形態において、装置は、1分間~360分間の第2の時間にわたって標的部位に加熱をもたらすように更に構成される。第3の時間にわたって非電離交流電磁場に同時に加熱を適用することができる。第3の時間は、第2の時間の全部であっても又は一部であってもよい。
【0014】
別の好ましい実施の形態において、電磁エミッターは、10kHz~500kHz、より好ましくは10kHz~300kHz、更に好ましくは100kHz~300kHzの周波数を有する交流電磁場をもたらすように構成される。周波数が300kHz未満である場合に腫瘍治療領域の治療効果が顕著に増大することが観察される。
【0015】
別の好ましい実施の形態において、電磁エミッターは、0.1pT~1mT若しくは0.1pT~100μT若しくは100μT~1mTの磁束密度及び/又は1V/cm~3V/cmの電場強度を有する交流電磁場を標的部位にもたらすように構成される。
【0016】
別の好ましい実施の形態において、電磁エミッターは、0.5μT~1mT、より好ましくは8μT~1mTの磁束密度を有する交流電磁場を標的部位にもたらすように構成される。
【0017】
別の好ましい実施の形態において、熱源は、標的部位を少なくとも42℃、好ましくは42℃~57℃の温度に加熱するように構成される。標的部位を少なくとも42℃の温度に加熱することで、極端な超高熱(hyperpyrexia)に相当する加熱効果を標的部位に誘導する。
【0018】
別の好ましい実施の形態において、熱源は、標的部位に超音波放射をもたらすように構成された超音波エミッターを備え、任意に超音波放射が標的部位に1つ以上の焦点領域を有する。1つ以上の焦点領域は、単一のトランスデューサー又は複数のトランスデューサーによってもたらされ得る。
【0019】
更なる好ましい実施の形態において、熱源は、
標的部位に電磁放射をもたらすように構成された電磁エミッター、
標的部位に流体を圧送するように構成された流体ポンプ及び標的部位に到達する前に流体を加熱するヒーター、及び/又は、
熱伝導によって標的部位に熱を供給するように構成された伝導熱エミッター、
の1つ以上を備える。
【0020】
更に好ましい実施の形態において、装置は、電磁エミッター及び熱源を電子的に制御するための電子制御装置を付加的に備える。
【0021】
本発明の更なる態様は、上述の実施の形態による装置を用いて癌性標的部位を治療する方法に関し、ここで、装置は、本明細書に開示される任意の構成をとることができ、方法は、好ましくは、エミッター10及び熱源20を患者上に適切に位置付けることによって実施される。例えば、電磁エミッター10のアプリケーターを患者の身体の所定の箇所に配置することができ、熱源20(例えば、図2に関連して説明するトランスデューサー204)も適切に位置付けることができる。ここで、方法は以下を含む。
【0022】
工程S1において、電磁エミッター10を用いて非電離交流電磁場をもたらし、標的部位に磁束密度を生じさせる。
【0023】
工程S2において、熱源20を用いて標的部位に熱(より詳細には直接熱)を供給する。これは標的部位30に電磁場をもたらすのと同時に、又は電磁場をもたらす前若しくは後の所定の時間内に供給することができる。幾つかの実施の形態において、第1の時間にわたって加熱を行うことなく、交流電磁場のみをもたらして標的部位に磁束密度を生じさせた後、両方を同時に標的部位にもたらしてもよい。
【0024】
任意に、工程S3において、抗腫瘍形成組成物を標的部位に供給する。抗腫瘍形成組成物は、経口又は静脈内等の任意の好適な手段によって投与することができる。抗腫瘍形成組成物が工程S1、工程S2及び工程S4の前若しくはそれと同時に、又は工程S1、工程S2若しくは工程S4の所定の時間後に供給され得ることに留意されたい。
【0025】
本発明を実施するために使用され得る抗腫瘍形成組成物の例を、本発明全体を通して詳細に説明する。
【0026】
また任意に、工程S4において、抗腫瘍形成化合物に加えてグルタチオン(GSH)枯渇組成物を標的部位に供給する。GSH枯渇組成物は、経口又は静脈内等の任意の好適な手段によって投与することができる。GSH枯渇組成物が工程S1、工程S2及び工程S3の前若しくはそれと同時に、又は工程S1、工程S2若しくは工程S3の所定の時間後、好ましくは工程S3の所定の時間後に供給され得ることに留意されたい。本発明を実施するために使用され得るGSH枯渇組成物の例を、本発明全体を通して詳細に説明する。
【0027】
工程S5において直接加熱を停止し、工程S6において非電離交流電場を停止する。工程S5及び工程S6を同時に行ってもよく、又は直接加熱を停止した後に所定の時間にわたって非電離交流電磁場のみが適用されるように、直接加熱を停止した後に非電離交流電磁場を停止してもよいことに留意されたい。
【0028】
本発明の更なる態様は、上述の実施の形態による装置を用いて癌性標的部位を治療する方法に使用される抗腫瘍形成組成物に関し、ここで、装置は、本明細書に開示される任意の構成をとることができ、方法は、好ましくは、エミッター10及び熱源20を患者上に適切に位置付けることによって実施される。例えば、電磁エミッター10のアプリケーターを患者の身体の所定の箇所に配置することができ、熱源20(例えばトランスデューサー204)も適切に位置付けることができる。ここで、方法は以下を含む。
【0029】
工程S1において、電磁エミッター10を用いて非電離交流電磁場をもたらし、標的部位に磁束密度を生じさせる。
【0030】
工程S2において、熱源20を用いて標的部位に熱(より詳細には直接熱)を供給する。これは標的部位30に電磁場をもたらすのと同時に、又は電磁場をもたらす前若しくは後の所定の時間内に供給することができる。幾つかの実施の形態において、第1の時間にわたって加熱を行うことなく、交流電磁場のみをもたらして標的部位に磁束密度を生じさせた後、両方を同時に標的部位にもたらしてもよい。
【0031】
工程S3において、抗腫瘍形成組成物を標的部位に供給する。抗腫瘍形成組成物は、経口又は静脈内等の任意の好適な手段によって投与することができる。抗腫瘍形成組成物が工程S1、工程S2及び工程S4の前若しくはそれと同時に、又は工程S1、工程S2若しくは工程S4の所定の時間後に供給され得ることに留意されたい。本発明を実施するために使用され得る抗腫瘍形成組成物の例を、本発明全体を通して詳細に説明する。
【0032】
任意に、工程S4において、抗腫瘍形成化合物に加えてグルタチオン(GSH)枯渇組成物を標的部位に供給する。GSH枯渇組成物は、経口又は静脈内等の任意の好適な手段によって投与することができる。GSH枯渇組成物が工程S1、工程S2及び工程S3の前若しくはそれと同時に、又は工程S1、工程S2若しくは工程S3の所定の時間後、好ましくは工程S3の所定の時間後に供給され得ることに留意されたい。本発明を実施するために使用され得るGSH枯渇組成物の例を、本発明全体を通して詳細に説明する。
【0033】
工程S5において直接加熱を停止し、工程S6において非電離交流電場を停止する。工程S5及び工程S6を同時に行ってもよく、又は直接加熱を停止した後に所定の時間にわたって非電離交流電磁場のみが適用されるように、直接加熱を停止した後に非電離交流電磁場を停止してもよいことに留意されたい。
【0034】
ここで、以下に説明する添付の図面を参照して、実施形態を非限定的な例としてのみ詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】1つ以上の実施形態による癌性標的部位を治療するための装置の概要図である。
図2】1つ以上の更なる実施形態による癌性標的部位を治療するための装置の概要図である。
図3】1つ以上の更なる実施形態による癌性標的部位を治療するための装置の概要図である。
図4】1つ以上の更なる実施形態による癌性標的部位を治療するための装置の概要図である。
図5】1つ以上の更なる実施形態による癌性標的部位を治療するための装置の概要図である。
図6】1つ以上の更なる実施形態による癌性標的部位を治療するための装置の概要図である。
図7】1つ以上の更なる実施形態による癌性標的部位を治療するための装置の概要図である。
図8】1つ以上の更なる実施形態による癌性標的部位を治療するための装置の概要図である。
図9】1つ以上の更なる実施形態による癌性標的部位を治療するための装置の概要図である。
図10】1つ以上の実施形態による癌性標的部位を治療するための装置の概要を示す図である。
図11】本開示による装置を用いて癌性標的部位を治療する方法の概要を示す図である。
図12】U87MG細胞に対するTT領域(「TTF」)、ハイパーサーミア(「HT」)、プテロスチルベン(「PT」)及びそれらの組合せのin vitro影響を示す実験データを示す図である。適用したTT領域は、8μTの平均磁束密度にて300kHzで240分間(0分から240分まで)であった。適用したハイパーサーミアは、42℃で10分間(120分から130分まで)であった。20μMのプテロスチルベンを120分間(120分から240分まで)適用した。データは、5回の実験についての生存細胞の平均数を示し、*と表示したものは対照に対し、+と表示したものはTTFに対し、#と表示したものはTTF+HTに対してスチューデントt検定を用いてP<0.01である。
図13】振動磁場に曝露した際のU87MG(ATCC)細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す図である。
図14】熱に曝露した際のU87MG細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す図である。
図15A-15F】異なる外的処理に曝露した後のin vitro U87MG細胞培養物の顕微鏡画像及び対照画像を示す図である。
図16】電磁場、熱及びテモゾロミド(TMZ)に曝露した際のU87MG細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す図である。
図17】電磁場、熱及びレスベラトロール又はその誘導体に曝露した際のU87MG細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す図である。
図18】振動磁場に曝露した際のAsPC1(膵臓腺癌、ATCC)細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す図である。
図19】熱に曝露した際のAsPC1細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す図である。
図20】AsPC1細胞に対するTT領域(「TTF」)、ハイパーサーミア(「HT」)、プテロスチルベン(「PT」)及びそれらの組合せのin vitro影響を示す実験データを示す図である。
図21A-21H】異なる外的処理に曝露した後のin vitro AsPC1細胞培養物の顕微鏡画像及び対照画像を示す図である。
図22】AsPC1細胞に対するTT領域(「TTF」)、ハイパーサーミア(「HT」)、ゲムシタビン(「GEM」)、プテロスチルベン(「PT」)及びそれらの組合せのin vitro影響を示す実験データを示す図である。
図23】振動磁場に曝露した際のA2058(黒色腫、ATCC)細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す図である。
図24】熱に曝露した際のA2058細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す図である。
図25】A2058細胞に対するTT領域(「TTF」)、ハイパーサーミア(「HT」)、プテロスチルベン(「PT」)及びそれらの組合せのin vitro影響を示す実験データを示す図である。
図26A-26H】異なる外的処理に曝露した後のin vitro A2058細胞培養物の顕微鏡画像及び対照画像を示す図である。
図27】A2058細胞に対するTT領域(「TTF」及び「TTF」は区別なく使用される)、ハイパーサーミア(「HT」)、パクリタキセル(「PAC」)及びそれらの組合せのin vitro影響を示す実験データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、非電離交流電磁場及びハイパーサーミアの両方を標的部位にもたらすように構成された装置に関し、電磁場及びハイパーサーミアを独立してもたらすことができる。電磁場は例えば、標的部位に磁束密度をもたらす磁気アプリケーターによって適用することができる。メディエーターを用いるハイパーサーミア治療においては、メディエーターによって吸収されることもある交流電磁場がもたらされる。しかしながら、メディエーターが電磁エネルギーを吸収するため、電磁場の腫瘍治療効果が低下する可能性がある。本発明は、ハイパーサーミアを独立してもたらすことにより、この問題を克服し、他方の有効性を低下させることなく、両方の治療を癌性部位にもたらすことができる。本発明において、腫瘍治療効果は、電磁場と直接ハイパーサーミアとの併用によるものである。電磁場は、磁場アプリケーターを用いて導入することができる。本開示の幾つかの更なる例において、治療は抗癌組成物の投与を更に含み得る。
【0037】
本明細書において使用される場合、「腫瘍治療領域」、「TT領域」又は「TTF」という用語は、標的部位に適用される振動電磁場を意味すると理解され得る。特に、電磁場は、標的部位とアプリケーターとの間に電流が流れないように、標的部位から電気的に絶縁されたアプリケーターによって生成する。
【0038】
図1は、癌性標的部位30を治療するための装置1の概要図を示す。装置は、電磁エミッター10及び熱源20を備える。電磁エミッター10は、標的部位30に非電離交流電磁場15をもたらすように構成される。熱源20は、標的部位30に直接加熱25をもたらし、標的部位30にハイパーサーミアを引き起こすように構成される。一構成において、装置1は、所定の時間内に標的部位30に非電離交流電磁場及び直接加熱をもたらすように構成される。標的部位30は、少なくとも癌性増殖を含んでいてもよく、癌性増殖の周辺の組織の一部を更に含んでいてもよい。幾つかの実施形態において、装置1は、非電離交流磁場15をもたらすように構成され得る。
【0039】
本明細書に開示されるように、ハイパーサーミアは、37.5℃を超える温度への上昇として定義され得る。したがって、本明細書に開示される装置は、37.5℃を超える温度まで標的部位を加熱するように構成することができる。ハイパーサーミアが、体温設定点の変化なしに生じる、37.5℃~38.3℃(使用する基準に応じる)を上回る温度として定義されることに留意されたい。対照的に、超高熱は、体温の極端な上昇であり、その由来に応じて、40.0℃又は41.0℃以上の中核体温と分類される。超高熱の範囲には、重篤(40℃以上)及び極度(42℃以上)と考えられる症例が含まれる。超高熱は、個体の温度調節系の体温設定点が通常より上に設定され、それを達成するために身体により熱が発生する点でハイパーサーミアとは異なる。対照的に、ハイパーサーミアは、外的要因により体温が設定点を超えて上昇することを伴う。
【0040】
さらに、熱焼灼が熱、低温、マイクロ波及び電流を用いて、癌細胞及び腫瘍を50℃超に加熱することにより蒸発させる(切除する)処置の一種であることに留意されたい。
【0041】
好ましい実施形態において、装置は、標的部位を39℃~52℃(39℃超に加熱することでTT領域、化学療法及び放射線療法等の他の療法に対する癌性増殖の感受性を高めることができる)、好ましくは少なくとも41.1℃(これを超えると、有利には、細胞に対する不可逆的な損傷が引き起こされる)の温度に加熱するように構成される。熱源は、標的部位を少なくとも42℃、好ましくは42℃~57℃の温度に加熱するように構成されることが好ましい。標的部位を少なくとも42℃の温度に加熱することで、極端な超高熱に相当する加熱効果を標的部位に誘導する。
【0042】
熱源30は、標的部位30に直接加熱をもたらす任意の好適な熱源とすることができ、電磁加熱、例えば容量性高周波加熱、放射性高周波加熱、マイクロ波加熱、赤外線加熱及びレーザー加熱、超音波による加熱、加熱流体を介した加熱、伝導熱エミッターによる加熱、又は非電離交流電磁場15とは独立して標的部位30を加熱する任意の他の好適な方法を含み得る。熱源30は、メディエーターを使用せずに(例えば、メディエーターを介して間接的にではなく、直接的に)標的部位を加熱する任意の熱源とすることができる。
【0043】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、電磁エミッター10は、10kHz~500kHz、より好ましくは10kHz~300kHzの周波数を有する電磁場15をもたらすように構成され得る。電磁場は、0.1pT~1mT又は0.1pT~100μT又は100μT~1mTの磁束密度、及び/又は組織インピーダンスに応じて1V/cm~3V/cmの対応する電場を有し得る(すなわち、電磁エミッター10から標的部位30に移動する際に起こり得る電場の減衰を考慮し、これは、電磁エミッター10と標的部位30との間に存在する異なるタイプの組織によって生じるインピーダンスから決定することができる)。上述のように、電磁場15は非電離であり、癌性部位に対するその機構は、本開示の背景技術の項において論考したように、電離放射線とは異なる。さらに、電磁場15自体は、振動場の強度が比較的低いことから標的部位30に直接加熱をもたらさない。
【0044】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、電磁エミッター10及び熱源を任意の電源によって駆動することができ、同じ又は異なる電源によって駆動し得ることが理解されよう。同様に、電磁エミッター10及び熱源20の各々が、各エミッターの作動パラメーター(周波数、電界強度、振幅等)を選択するためのユーザーインターフェースを備えていてもよく、又はエミッター10及び熱源20は、ユーザーが選択可能な所定のプログラムに従って電磁放射及び熱を放出するための予めプログラムされたシーケンスを含んでいてもよい。
【0045】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいても、装置は、標的部位30の温度を測定するための温度測定素子を更に備えていてもよい。例えば、装置は、標的部位30の温度を指す温度を測定するために標的部位30の近位に埋め込まれるように構成された埋込み型温度測定プローブを備えていてもよい。プローブは、例えば熱電対、サーミスタ及び/又は光ファイバーセンサーを含み得る。他の実施形態において、赤外線センシング、CT温度測定又は磁気共鳴温度測定等の非侵襲的温度測定を用いることができる。
【0046】
図2は、1つ以上の実施形態による電磁エミッター10及び熱源200の概要図を示す。
【0047】
電磁エミッター10は、1つ以上のアプリケーター14に電気的に接続された1つ以上のソース12(1つ以上の電流源又は電圧源等)を備え得る。アプリケーター14は、患者の身体35の表面上又はその近位に配置されるように構成することができ、患者の身体から電気的に絶縁される(すなわち、ソース12と患者の身体との間に閉じた電気回路を形成しない)。幾つかの実施形態において、アプリケーター14は、電極と患者の表面、ひいては標的部位との間の電気的接触を防ぐ電気絶縁コーティングを有する1つ以上の電極を備えることができる。アプリケーターを患者の身体35の患者の表面上に配置する場合であっても、例えば電気絶縁コーティングの存在によって、アプリケーターが身体から電気的に絶縁されたままであることに留意されたい。ソース12は、アプリケーター14に交流電磁場をもたらすように構成することができ、交流電磁場が標的部位30に向かって磁束密度を生成し、標的部位30に非電離交流電磁場15をもたらす。標的部位のタイプに応じて任意の数のアプリケーター14を使用することができ、標的部位30に生じる磁束密度の強度を、各アプリケーター14によって放出される電磁場の重合せによる設定から容易に算出し得ることが理解されよう。幾つかの実施形態において、アプリケーター14は、正及び負の端子を有するコイルを備え得る。1つ以上のソースは、コイルを通して交流電流を供給し、コイルから磁場を発生させるように構成されてもよい。コイルは、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50又は100、500以上の任意の数のターンを含み得る。
【0048】
図2に示す熱源200は、超音波エミッターであってもよく、1つ以上のトランスデューサー204に超音波信号を発する超音波源202を備えていてもよい。トランスデューサー204は、集束超音波放射205を標的部位30に伝送するように構成される。1つ以上のトランスデューサー204は、例えば1つ以上の圧電トランスデューサーを含み得る。1つ以上のトランスデューサー204は、1つ以上のプラスチック及び/又はセラミックトランスデューサーを含み得る。トランスデューサー204から患者の身体30の内部への超音波の伝搬を改善する(すなわち、超音波の反射を低減する)ために、接触媒質(図示せず)をトランスデューサー204と患者の身体30との間の患者の身体35の上に施してもよい。接触媒質は、本明細書において、トランスデューサー204から患者の身体30の内部への超音波の伝搬を改善するための任意の好適な固体又は液体(又はそれらの組合せ)として定義される。トランスデューサー204の形状は、超音波の集束量を選択するために選択することができ、標的部位30内の1つ以上の焦点領域に超音波放射205を集束させるように選択することができる。例えば、1つ以上のトランスデューサー204は、標的部位30内の1つ以上の焦点領域に集束超音波放射を伝搬するように構成されたカスタム形状に3D印刷するか、又は別の方法で製造することができる。
【0049】
超音波エミッター200は、0.5MHz~10MHzの周波数で音響エネルギーを供給し、標的部位30に加熱をもたらすように構成され得る。
【0050】
幾つかの実施形態において、超音波エミッター200は、1つ以上のマルチトランスデューサーアレイ又はフェーズドアレイ、平面デバイス又はボウル型ソースを備えていてもよい。さらに、超音波エミッター200は、超音波放射を間欠的に(interstitially)放出するように構成されてもよい。すなわち、超音波エミッター200は、標的部位30の1つ以上の箇所に向かって超音波放射を放出し、必要とされる加熱をもたらすために、標的部位30又はその近くで身体35に挿入されるように構成された1つ以上のカテーテル装着型トランスデューサー又は他の放出部材を備えていてもよい。
【0051】
図2は超音波エミッターの特定の構成を示すが、任意の好適な超音波エミッターが使用され得ることに留意されたい。例えば、MRIガイド下集束超音波等の任意の高密度焦点式超音波(HIFU)装置を使用することができる。
【0052】
超音波エミッター200は、標的部位30に超音波放射205を放出し、標的部位に加熱を引き起こすように構成される。特に、超音波エミッター200は、標的部位を所定の温度、好ましくは42℃以下の温度に加熱し、電磁場が適用される間に温度を所定の温度に維持するように構成される。超音波エミッター200が、標的部位30に必要とされる加熱を引き起こす所定の周波数及び振幅を有する超音波放射をもたらすことにより、標的部位30を加熱するように構成され得ることが理解されよう。超音波放射は、連続波又はパルス波であり得る。所与の周波数、振幅及びタイプの超音波放射について、標的部位での加熱量は、日常実験によって決定することができる。
【0053】
図2の実施形態について、超音波源202の出力及び超音波放射の適用時間が、標的部位30で所定の加熱量に達するように選択され得ることが理解されよう。これは事前の経験的測定によって決定してもよく、又は装置が標的部位30の温度を測定するための温度計部材を付加的に備えていてもよく、標的部位30で標的温度を達成し、維持するために熱が装置によって適用される。
【0054】
図3は、1つ以上の実施形態による電磁エミッター10及び熱源300の概要図を示す。図2の場合と同様、電磁エミッター10は、1つ以上のアプリケーター14に電気的に接続された1つ以上の電磁波源12(1つ以上の電流源又は電圧源等)を備え得る。アプリケーター14は、患者の身体35の表面上に配置されるように構成することができる。電磁波源12は、アプリケーター14に交流電磁場をもたらすように構成することができ、交流電磁場が標的部位30に向かって磁束密度を生成し、標的部位30に非電離交流電磁場15をもたらす。標的部位のタイプに応じて任意の数のアプリケーター14を使用することができ、標的部位30に生じる磁束密度の強度を、各アプリケーター14によって放出される電磁場の重合せによる設定から容易に算出し得ることが理解されよう。
【0055】
熱源300は、標的部位30に直接加熱をもたらすために電磁場305をもたらすように構成された1つ以上のアンテナ又はアプリケーター304を備える。熱源300は、1つ以上のアンテナ又はアプリケーター304を駆動し、加熱電磁場305をもたらすための1つ以上の電磁波源302を備える。電磁場305は、標的部位の加熱を引き起こす電界強度及び周波数を有する。電磁場305の周波数は、電磁場305及び電磁場15が標的部位30と独立して相互作用するように(すなわち、場間の電磁干渉を無視し得るように)十分に異なる(例えば、少なくとも1桁の差)。電磁場305の周波数は例えば、分子双極子回転、分極及び/又は振動、又はオームの法則による標的部位30の誘電加熱を引き起こすためには、1MHz超であり得る。アンテナ又はアプリケーター304の数及び構成は、それらの位置、相対振幅及び位相を含めて、建設的及び/又は相殺的干渉を生じ、標的部位30を含む特定の体積にわたってのみ加熱を引き起こすように選択することができる。例えば、アンテナ又はアプリケーター304は、単一のアンテナ、一対のアンテナ、及びアンテナの2D若しくは3Dアレイ又はフェーズドアレイを含み得る。
【0056】
幾つかの実施形態において、電磁波源302は、8MHz~30MHz(例えば8MHz、13.56MHz又は27.12MHz)の周波数で作動し、容量性加熱を引き起こすように構成された高周波(RF)源である。1つ以上のアンテナ又はアプリケーター304は、一対の金属アプリケーターを含み、標的部位30がアプリケーター間に配置される。任意に、アプリケーターは、場を身体35に伝達するための水ボーラスバッグ又は他の媒体と接続される。RF場がアプリケーターに適用される場合、電力が標的部位30に伝達され、加熱が引き起こされる。この技法は、生じる電場を標的部位30に集中させるために異なる構成のアプリケーターを選択することによって、表在性腫瘍及び深部腫瘍の両方に用いることができる。代替的には、アプリケーターは、同一平面上にあるように設けてもよく、又は1つ以上のアプリケーターが、絶縁カテーテル内で身体35内に配置されるように構成されてもよい。外部接地面と接続される単一のアプリケーターを代わりに使用してもよい。これらの構成の全てにおいて、標的部位で生成するRF場は、直接加熱を引き起こす。
【0057】
幾つかの実施形態において、電磁波源302は、60MHz~150MHzの周波数で作動するように構成されたRF源である。1つ以上のアンテナ又はアプリケーター304は、身体の外部に配置される1つ以上のアンテナを含む。この周波数範囲で生成する電磁場は、身体の深部に浸透するため、深部標的部位30の加熱に適している。この場合も、1つ以上のアンテナは、標的部位30が間に配置される一対のアンテナを含み得る。アンテナは、電磁場を身体35に伝達するための水ボーラスバッグ又は他の媒体と接続されていてもよい。
【0058】
幾つかの実施形態において、電磁波源302は、400MHz~2.5GHz(例えば433MHz、915MHz又は2.45GHz)の周波数で作動するように構成されたマイクロ波(MW)源である。1つ以上のアンテナは、標的部位30が間に配置される一対のアンテナ又は1つ以上のアンテナアレイを含み得る。アンテナは、この場合も、電磁場を身体35に伝達するための水ボーラスバッグ又は他の媒体と接続されていてもよい。
【0059】
図3の実施形態について、電磁波源302の出力及び適用時間が、標的部位30で所定の加熱量に達するように選択され得ることが理解されよう。これは事前の経験的測定によって決定してもよく、又は装置が標的部位30の温度を測定するための温度計部材を付加的に備えていてもよく、標的部位30で標的温度を達成し、維持するために熱が適用される。
【0060】
図4は、1つ以上の実施形態による電磁エミッター10及び熱源400の概要図を示す。図2及び図3の場合と同様、電磁エミッター10は、1つ以上のアプリケーター14に電気的に接続された1つ以上の電磁波源12(1つ以上の電流源又は電圧源等)を備え得る。アプリケーター14は、患者の身体35の表面上に配置されるように構成することができる。電磁波源12は、アプリケーター14に交流電磁場をもたらすように構成することができ、交流電磁場が標的部位30に向かって磁束密度を生成し、標的部位30に非電離交流電磁場15をもたらす。標的部位のタイプに応じて任意の数のアプリケーター14を使用することができ、標的部位30に生じる磁束密度の強度を、各アプリケーター14によって放出される電磁場の重合せによる設定から容易に算出し得ることが理解されよう。
【0061】
熱源400は、電磁波源402と、身体35に貫入し、エミッターの遠位部を標的部位30内に位置付けることができるように構成された1つ以上の電磁エミッター404とを備える。1つ以上のエミッター404は、電流が1つ以上のエミッター404に適用されるように電磁波源402に電気的に接続される。1つ以上のエミッター404は、1つ以上の単極子、双極子、スロット又はヘリカルコイルマイクロ波アンテナ、抵抗結合高周波、局所電流場電極又は容量結合型高周波カテーテルベースの電極を備えていてもよい。容量結合型電極は、ナイロン又はテフロン(登録商標)カテーテル等の低損失カテーテルに収容されるように構成され得る。
【0062】
幾つかの実施形態において、電磁波源402は、1つ以上のエミッター404に350kHz~30MHzの周波数範囲の交流電流を供給するように構成され、これにより針(複数の場合もある)の近くの組織の領域に電流が誘導され、結果として組織が加熱される。他の実施形態において、電磁波源402は、1つ以上のエミッター404に900MHz~2.5GHz(例えば915MHz又は2.45GHz)の周波数範囲の交流電流を供給するように構成され、これにより針(複数の場合もある)の周辺の組織の誘電加熱が引き起こされる。
【0063】
他の実施形態において、エミッター404は、標的部位30の周囲に埋め込まれるように構成された複数の電極を備え、電磁波源402は、一連の非常に短い(例えば約100μsの)直流電気パルスを電極間に供給するように構成される。パルスの電圧及び電極の配置は、高い電界強度(例えば約100V/cm~3000V/cm)をもたらすように構成される。かかるパルスが標的部位30に加熱をもたらすことが観察された。
【0064】
図4の実施形態について、電磁波源402の出力及び適用時間が、標的部位30で所定の加熱量に達するように選択され得ることがさらに理解されよう。これは事前の経験的測定によって決定してもよく、又は装置が標的部位30の温度を測定するための温度計部材を付加的に備えていてもよく、標的部位30で標的温度を達成し、維持するために熱が適用される。
【0065】
図5は、1つ以上の実施形態による電磁エミッター10及び熱源500の概要図を示す。図2図4の場合と同様、電磁エミッター10は、1つ以上のアプリケーター14に電気的に接続された1つ以上の電磁波源12(1つ以上の電流源又は電圧源等)を備え得る。アプリケーター14は、患者の身体35の表面上に配置されるように構成することができる。電磁波源12は、アプリケーター14に交流電磁場をもたらすように構成することができ、交流電磁場が標的部位30に向かって磁束密度を生成し、標的部位30に非電離交流電磁場15をもたらす。標的部位のタイプに応じて任意の数のアプリケーター14を使用することができ、標的部位30に生じる磁束密度の強度を、各アプリケーター14によって放出される電磁場の重合せによる設定から容易に算出し得ることが理解されよう。
【0066】
熱源500は、赤外線放射505を標的部位30にもたらすように構成された1つ以上の赤外光源504と、1つ以上の赤外線ランプを駆動するための電源502とを備える。赤外光源504は、任意の周波数、特に300GHzを超える周波数の赤外光を放出し得る。赤外線放射の侵入深さは通例、1cm以下であるため、この装置は、身体35の表面上に位置する標的部位30に適している可能性がある。
【0067】
さらに、電源502の出力及び放射の適用時間は、標的部位30で所定の加熱量に達するように選択することができる。これは事前の経験的測定によって決定してもよく、又は装置が標的部位30の温度を測定するための温度計部材を付加的に備えていてもよく、標的部位30で標的温度を達成し、維持するために熱が適用される。
【0068】
図6は、1つ以上の実施形態による電磁エミッター10及び熱源600の概要図を示す。図2図5の場合と同様、電磁エミッター10は、1つ以上のアプリケーター14に電気的に接続された1つ以上の電磁波源12(1つ以上の電流源又は電圧源等)を備え得る。アプリケーター14は、患者の身体35の表面上に配置されるように構成することができる。電磁波源12は、アプリケーター14に交流電磁場をもたらすように構成することができ、交流電磁場が標的部位30に向かって磁束密度を生成し、標的部位30に非電離交流電磁場15をもたらす。標的部位のタイプに応じて任意の数のアプリケーター14を使用することができ、標的部位30に生じる磁束密度の強度を、各アプリケーター14によって放出される電磁場の重合せによる設定から容易に算出し得ることが理解されよう。
【0069】
熱源は、レーザー光源604と、レーザー光源を駆動するように構成された電源602とを備える。レーザー光源604は、レーザー放射を標的部位30に放出し、標的部位に加熱を引き起こすように構成されてもよい。レーザー放射は、光ファイバーによって標的部位に直接、光学的に誘導され、標的部位30の局所切除を引き起こすことができる。レーザー光源604は、標的部位30に必要とされる加熱を引き起こすのに適した任意の強度で900nm~1100nmの波長を有するレーザー放射を放出するように構成されてもよい。レーザー光源604は、0.5W~15Wの電力(例えば15Wで980nm又は12Wで1064nm)で作動するように構成され得る。レーザー光源604は、1つ以上の標的部位30の複数の領域を標的とするために回転的及び直線的に移動させることができる。
【0070】
さらに、電源602の出力及びレーザー放射の適用時間は、標的部位30で所定の加熱量に達するように選択することができる。これは事前の経験的測定によって決定してもよく、又は装置が標的部位30の温度を測定するための温度計部材を付加的に備えていてもよく、標的部位30で標的温度を達成し、維持するために熱が適用される。例えば、装置は、磁気共鳴温度測定を行い、加熱プロセス中の標的部位30の温度をモニタリングするためのMRI装置を含み得る。
【0071】
図7は、1つ以上の実施形態による電磁エミッター10及び標的部位30を加熱する熱源700の概要図を示す。図2図6の場合と同様、電磁エミッター10は、1つ以上のアプリケーター14に電気的に接続された1つ以上の電磁波源12(1つ以上の電流源又は電圧源等)を備え得る。アプリケーター14は、患者の身体35の表面上に配置されるように構成することができる。電磁波源12は、アプリケーター14に交流電磁場をもたらすように構成することができ、交流電磁場が標的部位30に向かって磁束密度を生成し、標的部位30に非電離交流電磁場15を形成する。標的部位のタイプに応じて任意の数のアプリケーター14を使用することができ、標的部位30に生じる磁束密度の強度を、各アプリケーター14によって放出される電磁場の重合せによる設定から容易に算出し得ることが理解されよう。
【0072】
熱源700はヒーター702と、ポンプ704と、流体出口706と、流体入口708とを備える。流体出口706は、標的部位30の上流の身体35の一部に流体的に接続するように構成され、流体入口708は、標的部位30の下流の身体35の一部に流体的に接続するように構成される。接続することで、標的部位30からポンプ704に向かい、再び標的部位30に戻る流体ループが形成される。流体ループは、身体35の任意の流体系(例えば血管、腎臓等)に形成されるように構成されてもよい。ヒーター702は、流体が熱源700を通過する際に流体を所望の温度に加熱するように構成され、流体は続いて流体出口706を介して標的部位30に送達される。したがって、流体ループは、標的部位30への加熱流体の連続源をもたらす。流体が患者の血液であってもよく、又は付加的に、熱源700が、加熱され、流体ループに添加されるように構成された流体のリザーバ(図示せず)を備えていてもよいことに留意されたい。例えば、流体は化学療法組成物、抗癌薬等を含んでいてもよく、又は生理食塩水等の生体適合性溶液を含んでいてもよい。
【0073】
ヒーター702は、例えばマイクロ波放射の放出によって流体を加熱するように構成される抵抗ヒーター又は電磁ヒーター等の任意の好適なヒーターであり得る。ヒーター702は、身体35の外部に位置していても、又は身体35に埋め込まれるように構成されてもよい。
【0074】
熱源700によって供給される熱の量及び熱源700の適用時間は、標的部位30で所定の加熱量に達するように選択することができる。これは事前の経験的測定によって決定してもよく、又は装置が標的部位30の温度を測定するための温度計部材を付加的に備えていてもよく、標的部位30で標的温度を達成し、維持するために熱が適用される。
【0075】
図8は、1つ以上の実施形態による電磁エミッター10及び標的部位30を加熱する熱源800の概要図を示す。図2図7の場合と同様、電磁エミッター10は、1つ以上のアプリケーター14に電気的に接続された1つ以上の電磁波源12(1つ以上の電流源又は電圧源等)を備え得る。アプリケーター14は、患者の身体35の表面上に配置されるように構成することができる。電磁波源12は、アプリケーター14に交流電磁場をもたらすように構成することができ、交流電磁場が標的部位30に向かって磁束密度を生成し、標的部位30に非電離交流電磁場15をもたらす。標的部位のタイプに応じて任意の数のアプリケーター14を使用することができ、標的部位30に生じる磁束密度の強度を、各アプリケーター14によって放出される電磁場の重合せによる設定から容易に算出し得ることが理解されよう。
【0076】
熱源800はヒーター802と、リザーバ805と、ポンプ804と、流体出口806とを備える。流体出口806は、標的部位30に流体的に接続するように構成される。使用時に、ポンプ804は、流体出口806を介してリザーバ805内の流体を標的部位30に圧送するように構成される。ヒーター802は、リザーバ805内の流体を、流体が標的部位30に圧送される前に所望の温度に加熱するように構成される。流体は化学療法組成物、抗癌薬等を含んでいてもよく、又は生理食塩水等の生体適合性溶液を含んでいてもよい。
【0077】
熱源800によって供給される熱の量、リザーバ805から供給される流体の量及び熱源800の適用時間は、標的部位30で所定の加熱量に達するように選択することができる。これは事前の経験的測定によって決定してもよく、又は装置が標的部位30の温度を測定するための温度計部材を付加的に備えていてもよく、標的部位30で標的温度を達成し、維持するために熱が適用される。
【0078】
図9は、1つ以上の実施形態による電磁エミッター10及び標的部位30を加熱する熱源900の概要図を示す。図2図8の場合と同様、電磁エミッター10は、1つ以上のアプリケーター14に電気的に接続された1つ以上の電磁波源12(1つ以上の電流源又は電圧源等)を備え得る。アプリケーター14は、患者の身体35の表面上に配置されるように構成することができる。電磁波源12は、アプリケーター14に交流電磁場をもたらすように構成することができ、交流電磁場が標的部位30に向かって磁束密度を生成し、標的部位30に非電離交流電磁場15をもたらす。標的部位のタイプに応じて任意の数のアプリケーター14を使用することができ、標的部位30に生じる磁束密度の強度を、各アプリケーター14によって放出される電磁場の重合せによる設定から容易に算出し得ることが理解されよう。
【0079】
熱源900は、標的部位30に伝導加熱をもたらすように構成された熱エミッター904を備える。熱源が熱エミッター904を駆動するための電源902(電力源等)を備えていてもよく、又は熱エミッター904を予熱若しくは化学的に自己加熱(例えば発熱化学反応による)してもよい。熱エミッター904は、身体35の表面上に設けても、又は体内に埋め込まれ、標的部位の近位の位置で標的部位30に熱を供給するように構成されてもよい。例えば、熱エミッター904は、電力源902によって駆動されるように構成された埋込み型抵抗ヒーターであり得る。熱エミッター904は、身体35の局所領域を加熱するように構成されてもよく、又は身体35全体を加熱するように構成されてもよい。
【0080】
熱源900によって供給される熱の量及び熱源900の適用時間は、標的部位30で所定の加熱量に達するように選択することができる。これは事前の経験的測定によって決定してもよく、又は装置が標的部位30の温度を測定するための温度計部材を付加的に備えていてもよく、標的部位30で標的温度を達成し、維持するために熱が適用される。
【0081】
図10は、1つ以上の実施形態による癌性標的部位を治療するための装置1の概要を示す。図1の場合と同様、装置は、電磁エミッター10及び熱源20を備える。電磁エミッター10は、標的部位に磁束密度をもたらすように構成される。熱源20は、本明細書に開示される上記の機構のいずれかによって、標的部位に直接加熱をもたらし、標的部位にハイパーサーミアを引き起こすように構成される。一構成において、装置1は、標的部位に非電離交流電磁場及び直接加熱を同時にもたらすように構成される。電磁エミッター10及び熱源20は、任意の好適な構成をとることができ、図2図9に示す構成をとることができる。
【0082】
図10に示す装置1は、エミッター10及び熱源20を制御するための制御器40を更に備える。制御器は、電磁エミッター10の動作を制御するための第1の制御インターフェース41と、熱源20の動作を制御するための第2の制御インターフェース42とを備える。制御器40は、制御インターフェース41を介してエミッター10に、また制御インターフェース42を介して熱源20に制御信号を供給するように構成される。エミッター10及び熱源20は、光、光ファイバー、イーサネット等の有線若しくは無線のいずれかの任意の好適な通信形態、又は任意の好適な無線通信によって制御信号を受信することができる。さらに、制御器40は、エミッター10及び熱源20の1つ以上を駆動するように構成されていてもよく、又はエミッター10及び熱源20の1つ以上が制御器40とは独立して駆動されてもよい。
【0083】
制御器40は、ユーザーインターフェース43、メモリ44及びプロセッサ45の1つ以上を更に備える。ユーザーインターフェース43は、例えばエミッター10及び熱源20の作動パラメーターを制御し、それらの動作のオン又はオフを切り替えることによって、ユーザーがエミッター10及び熱源20の動作を手動で制御することを可能にする。ユーザーインターフェース43は、一定期間にわたってユーザーがエミッター10及び熱源20の動作のシーケンスを選択することを可能にし得る。メモリ44は、プロセッサ45を用いて実行されることで、本明細書に開示される動作のシーケンスを含む任意の好適なシーケンスに従ってエミッター10及び熱源20を動作させる命令を含み得る。
【0084】
メモリ44は、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、リードオンリーメモリ、強誘電RAM、ハードディスクドライブ、フロッピーディスク、磁気テープ、光ディスク等の1つ以上の揮発性又は不揮発性メモリデバイスを含み得る。同様に、プロセッサ45は、マイクロプロセッサ、GPU、CPU、マルチコアプロセッサ等の1つ以上の処理装置を含み得る。さらに、制御器40は、本明細書に開示される動作のシーケンスを実行するために、ソフトウェア、ハードウェア又は任意の組合せで実装され得る。
【0085】
図11は、本開示による装置を用いて癌性標的部位を治療する方法の概要を示す。装置は、本明細書に開示される任意の構成をとることができる。図11の方法を実施する前に、エミッター10及び熱源20を患者上に適切に位置付けることができる。例えば、電磁エミッター10のアプリケーターを患者の身体の所定の箇所に配置することができ、熱源20(例えばトランスデューサー24)も適切に位置付けることができる。
【0086】
工程S1において、電磁エミッター10を用いて非電離交流電磁場をもたらし、標的部位に磁束密度を生じさせる。
【0087】
工程S2において、熱源20を用いて標的部位に熱(より詳細には直接熱)を供給する。これは標的部位30に電磁場をもたらすのと同時に、又は電磁場をもたらす前若しくは後の所定の時間内に供給することができる。幾つかの実施形態において、第1の時間にわたって加熱を行うことなく、交流電磁場のみをもたらして標的部位に磁束密度を生じさせた後、両方を同時に標的部位にもたらしてもよい。
【0088】
任意に、工程S3において、抗腫瘍形成組成物を標的部位に供給する。抗腫瘍形成組成物は、経口又は静脈内等の任意の好適な手段によって投与することができる。抗腫瘍形成組成物が工程S1、工程S2及び工程S4の前若しくはそれと同時に、又は工程S1、工程S2若しくは工程S4の所定の時間後に供給され得ることに留意されたい。
【0089】
「抗腫瘍形成組成物」という用語は、本明細書において使用される場合、癌に関連する症状の全部又は一部を阻害することを含め、癌の発生又は進行を少なくとも部分的に阻害する作用物質を含む組成物を指す。「癌」という用語は、本明細書において使用される場合、無制御の細胞分裂(又は生存若しくはアポトーシス抵抗性の増大)及び上記細胞が他の隣接組織に侵入し(浸潤)、リンパ管及び血管を通って細胞が通常見られない身体の他の領域に広がり(転移)、血流中を循環した後、身体の他の部分の正常組織に侵入する能力によって特徴付けられる疾患を指す。腫瘍は、浸潤及び転移によって広がることができるか否かに応じて、良性又は悪性のいずれかに分類される。良性腫瘍は、浸潤又は転移によって広がることができない腫瘍であり、すなわち、局所的にのみ増殖し、悪性腫瘍は、浸潤及び転移によって広がることが可能な腫瘍である。抗腫瘍形成組成物は、図12図27に関して開示されたものの1つ以上を含む、1つ以上の抗腫瘍形成組成物を含み得る。
【0090】
本明細書において使用される場合、癌という用語は、好ましくは固形腫瘍及び/又は浸潤性腫瘍を指す。
【0091】
本明細書において使用される場合、「固形腫瘍」は、通常は嚢胞又は液体領域を含まない異常な組織塊と理解される。様々なタイプの固形腫瘍が、それらを形成する細胞のタイプから命名される。固形腫瘍の例は肉腫、癌腫及びリンパ腫である。白血病(血液の癌)は、一般に固形腫瘍を形成しない。
【0092】
本明細書において使用される場合、「浸潤性腫瘍」は、明らかな成長結節及び浸潤性増殖を同時に示す異常な腫瘍構造を有する腫瘍と理解される。
【0093】
好ましくは、本発明は、以下のタイプを含むが、これらに限定されない癌を対象とする:乳癌;胆道癌;膀胱癌;膠芽腫、特に多形性膠芽腫及び髄芽腫を含む脳癌;子宮頸癌;頭頸部癌;絨毛癌;結腸癌、大腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;ボーエン病及びパジェット病を含む上皮内新生物;肝癌、肝細胞癌;肺癌、胸膜中皮腫;扁平上皮癌を含む口腔癌;耳下腺癌;上皮細胞、間質細胞、胚細胞及び間葉細胞から生じるものを含む卵巣癌;膵癌;前立腺癌;腎臓癌(kidney cancer)、副腎癌;直腸癌;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫及び骨肉腫を含む肉腫;黒色腫、メルケル細胞癌、カポジ肉腫、基底細胞癌及び扁平上皮癌を含む皮膚癌;頸癌、子宮内膜癌;セミノーマ、非セミノーマ(奇形腫、絨毛癌)、間質腫瘍及び胚細胞腫瘍等の生殖細胞腫瘍を含む精巣癌;甲状腺腺癌及び髄様癌を含む甲状腺癌;並びに腺癌及びウィルムス腫瘍を含む腎癌(renal cancer)。
【0094】
特定の実施形態において、癌は黒色腫である。「黒色腫」という用語は、本明細書において使用される場合、メラノサイトの悪性皮膚腫瘍を指し、黒色腫、転移性黒色腫、メラノサイト又はメラノサイト関連母斑細胞のいずれかに由来する黒色腫、悪性黒色腫、黒色上皮腫、黒色肉腫、上皮内黒色腫、表在拡大型黒色腫、結節型黒色腫、悪性黒子黒色腫、末端性黒子性黒色腫、浸潤性黒色腫及び家族性異型母斑黒色腫(FAM-M)症候群を含むが、これらに限定されない。さらに、「黒色腫」という用語は、原発性黒色腫だけでなく、「黒色腫転移」も指し、これは本明細書において使用される場合、所属リンパ節及び/又は遠隔臓器への黒色腫細胞の広がりを指す。黒色腫が多様な増殖速度、核型、細胞表面特性、抗原性、免疫原性、浸潤、転移、及び細胞毒性薬又は生物学的薬剤に対する感受性を特徴とする複数の細胞集団を含むことを考えると、この事象は頻繁に起こる。黒色腫は脳、肺、リンパ節及び皮膚への頻繁な転移を示す。他の癌も当業者に既知であろう。
【0095】
図12は、U87MG細胞に対するTT領域(「TTF」)、ハイパーサーミア(「HT」)、プテロスチルベン(「PT」)及びそれらの組合せのin vitro影響を示す実験データを示す。適用したTT領域は、8μTの平均磁束密度にて300kHzで240分間(0分から240分まで)であった。適用したハイパーサーミアは、42℃で10分間(120分から130分まで)であった。20μMのプテロスチルベンを120分間(120分から240分まで)適用した。データは、5回の実験についての生存細胞の平均数を示し、*と表示したものは対照に対し、+と表示したものはTTFに対し、#と表示したものはTTF+HTに対してスチューデントt検定を用いてP<0.01である。磁場は、ソレノイドの中心軸でおよそ100μTの磁束密度を有するソレノイドを用いて適用した。ソレノイドは、細胞が付着した培養フラスコの表面上の平均電界強度が8μTとなるように、細胞培養物から少し離して配置した。
【0096】
先に既に示したように、また図12に見ることができるように、ハイパーサーミアが非電離交流電磁場(TT領域)の抗癌効果を増強することが見出されたことに留意されたい。特に、この組合せは、細胞生存性を低下させた上で、ハイパーサーミアのはるかに低い温度(42℃以下)を可能にする。これはまた、より大きな体積の組織をハイパーサーミアによって加熱し、標的とし得ることを意味する。したがって、本明細書に開示される装置は、癌性部位のTT領域及び直接加熱(すなわちメディエーターを介しない)を適用することによって癌性部位を治療する効果的な方法を提供する。さらに、図12に示されるように、TT領域、ハイパーサーミア及びプテロスチルベンの組合せは、in vitroで全ての細胞を効果的に排除する。この併用療法は、プテロスチルベンの使用量がin vivoで忍容性良好であることから、in vivoでいかなる実質的な副作用も有しないことが予想される。
【0097】
図13は、様々な振動磁場に曝露した際のU87MG(ATCC)細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す。種々の細胞培養物を以下の磁場の1つに曝露した:100kHzの周波数で24μT、200kHzの周波数で12μT、300kHzの周波数で8μT又は400kHzの周波数で6μT。各周波数についての細胞生存性を1時間、2時間、3時間、4時間及び5時間後に測定した。5回の独立した実験を各周波数及び時点について行った。各周波数のデータは、5回の対応する実験について経時的(左から右へ1時間~5時間)に平均細胞生存性及び標準偏差を示す。2元配置分散分析(ANOVA)を用いて異なる群間の比較を行った。全ての周波数で細胞生存性が低下し、その影響が300kHz以下の周波数で更に増大することが分かる。「a」~「f」の文字は、データに適用された統計的検定に基づいてデータに割り当てたものである。同じ文字が付されたデータは、統計的に類似しているとみなされ、異なる文字を割り当てたデータは、0.01未満のPで有意に異なるとみなされる。
【0098】
図14は、熱に曝露した際のU87MG細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す。種々の細胞培養物を37℃、38℃、39℃、40℃、41℃又は42℃の温度に加熱した。5回の独立した実験を各温度及び時点について行った。各温度のデータは、その温度への5分間及び10分間の曝露後の5回の対応する実験の平均細胞生存性及び標準偏差を示す。非常に高い熱(41℃以上)に相当するハイパーサーミアは、U87MG細胞の生存性を有意に低下させた。*と表示したデータは、対応する時間での37℃のデータと比較して0.01未満のP値(スチューデントt検定)を示し、+と表示したデータは、同じ温度で5分間のデータと比較して10分間のデータで0.01未満のP値を示す。
【0099】
図15B図15Fは、異なる外的処理に曝露した後のin vitro U87MG細胞培養物の顕微鏡画像を示す。図15Aは、いかなる外的処理にも曝露せず、37℃の生理的内部温度に維持した対照vitro U87MG細胞培養物の顕微鏡画像を示す。図15Bは、0分から240分まで300kHzで約8μTの磁束密度を有する電磁場に曝露した後の細胞培養物を示す。図15Cは、120分から130分までの10分間にわたって42℃への加熱に曝露した後の細胞培養物を示す。図15Dは、120分から240分まで20μMプテロスチルベンに曝露した後の細胞培養物を示す。図15Eは、0分から240分まで300kHzで約8μTの磁束密度を有する電磁場に曝露し、120分から240分まで20μMプテロスチルベンに曝露した後の細胞培養物を示す。図15Fは、0分から240分まで300kHzで約8μTの磁束密度を有する電磁場に曝露し、120分から130分までの10分間にわたって42℃への加熱に曝露し、120分から240分まで20μMプテロスチルベン(PT)に曝露した後の細胞培養物を示す。TTF+HT+PTの組合せが全てのU87MG増殖細胞を完全に排除することに留意されたい。この療法は、C6及びGL261等の他の膠芽腫株で同じ有効性を示す。
【0100】
図16は、約240分間にわたって300kHzで約8μTの磁束密度を有する電磁場(「TTF」と表示したデータ)、約10分間にわたって42℃の温度(HTと表示したデータ)、50μMテモゾロミド(「TMZ」と表示したデータ)及びそれらの組合せに曝露した際のU87MG細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す。データは、5回の独立した実験の平均値を示す。*と表示したデータは、対照と比較して0.01未満のP値(スチューデントt検定)を示す。+と表示したデータは、TTFのみのデータと比較して0.01未満のP値(スチューデントt検定)を示す。#と表示したデータは、TTF+HTデータと比較して0.01未満のP値(スチューデントt検定)を示す。
【0101】
図17は、約240分間にわたって300kHzで約8μTの磁束密度を有する電磁場(「TTF」と表示したデータ)、120分から130分の約10分間にわたって42℃の温度(HTと表示したデータ)、210分から240分に20μMレスベラトロール(「R」と表示したデータ)、210分から240分に20μMレスベラトロール三リン酸(「R-triP」と表示したデータ)、210分から240分に20μM 4’-ブチレート-3,5-ジヒドロキシスチルベン(「B-diOH-s」と表示したデータ)、210分から240分に20μM 3-グルコシド-5,4’-ジヒドロキシスチルベン(「G-diOH-s」と表示したデータ)、210分から240分に20μM 3-アミド-5,4’-ジヒドロキシスチルベン(「A-diOH-s」と表示したデータ)及びそれらの組合せに曝露した際のU87MG細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す。データは、4回の独立した実験についての平均+標準偏差である。*と表示したデータは、対照と比較して0.01未満のP値(スチューデントt検定)を示す。+と表示したデータは、TTFのみのデータと比較して0.01未満のP値(スチューデントt検定)を示す。#と表示したデータは、TTF+HTデータと比較して0.01未満のP値(スチューデントt検定)を示す。TTF+HT+G-diOH-sについて細胞生存性の有意な低下が起こることが観察されるが、レスベラトロール及びその誘導体がin vitroで増殖している全てのU87MG細胞を排除するわけではないことが観察される。
【0102】
腫瘍治療領域及びPTへの曝露と組み合わせた加熱による療法の有効性は、A2058(黒色腫)、AsPC-1(膵癌)、A549(肺癌)、MCF-7(乳腺癌)、HT-29(大腸癌)、PC-3(前立腺癌)、SK-OV-3(卵巣癌)及びHepG2(肝細胞癌)等の他の細胞株においてもin vitroで観察される。
【0103】
図18は、様々な振動磁場に曝露した際のAsPC1(膵臓腺癌、ATCC)細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す。種々の細胞培養物を以下の磁場の1つに曝露した:100kHzで2μT、200kHzで1.5μT、300kHzで0.7μT又は400kHzで0.5μT。各周波数についての細胞生存性を1時間、2時間、3時間、4時間及び5時間後に各細胞培養物について測定した。5回の独立した実験を各周波数及び時点について行った。各周波数についてのデータは、5回の対応する実験について経時的(左から右へ1時間~5時間)に平均細胞生存性及び標準偏差を示す。2元配置分散分析(ANOVA)を用いて異なる群間の比較を行った。200kHz以下の周波数で細胞生存性が低下することが分かる。「a」及び「b」の文字は、データに適用された統計的検定に基づいてデータに割り当てたものである。同じ文字が付されたデータは、統計的に類似しているとみなされ、異なる文字を割り当てたデータは、0.01未満のPで有意に異なるとみなされる。
【0104】
図19は、熱に曝露した際のAsPC1細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す。種々の細胞培養物を37℃、42℃、47℃又は52℃の温度に加熱した。5回の独立した実験を各温度及び時点について行った。各温度のデータは、その温度への5分間、10分間及び20分間の曝露後の5回の対応する実験の平均細胞生存性及び標準偏差を示す。47℃以上に加熱すると、AsPC1細胞の生存性が有意に低下した。*と表示したデータは、対応する時間での37℃のデータと比較して0.01未満のP値(スチューデントt検定)を示し、+と表示したデータは、同じ温度で5分間のデータと比較して10分間及び20分間のデータで0.01未満のP値を示す。
【0105】
図20は、AsPC1細胞に対するTT領域(「TTF」)、ハイパーサーミア(「HT」)、プテロスチルベン(「PT」)及びそれらの組合せのin vitro影響を示す実験データを示す。TTFデータについては、適用したTT領域は、1.5μTの電界強度にて200kHzで240分間(0分から240分まで)であった。HTデータについては、適用したハイパーサーミアは、52℃で20分間(120分から140分まで)であった。PTデータについては、20μMのプテロスチルベンを0分から240分まで適用した。データは、5回の実験についての生存細胞の平均数を示し、*と表示したものは対照に対し、+と表示したものはTTFに対し、#と表示したものはTTF+HTに対してスチューデントt検定を用いてP<0.01である。
【0106】
図21B図21Hは、異なる外的処理に曝露した後のin vitro AsPC1細胞培養物の顕微鏡画像を示す。図21Aは、いかなる外的処理にも曝露せず、AsPC1に最適な温度に維持した対照vitro AsPC1細胞培養物の顕微鏡画像を示す。図21Bは、0分から240分まで200kHzで約1.5μTの磁束密度を有する電磁場に曝露した後の細胞培養物を示す。図21Cは、120分から140分までの20分間にわたって52℃への加熱に曝露した後の細胞培養物を示す。図21Dは、0分から240分まで20μMプテロスチルベンに曝露した後の細胞培養物を示す。図21Eは、0分から240分まで200kHzで約1.5μTの磁束密度を有する電磁場に曝露し、120分から140分までの20分間にわたって52℃への加熱に曝露した後の細胞培養物を示す。図21Fは、0分から240分まで200kHzで約1.5μTの磁束密度を有する電磁場に曝露し、0分から240分まで20μMプテロスチルベン(PT)に曝露した後の細胞培養物を示す。図21Gは、0分から240分まで200kHzで約1.5μTの磁束密度を有する電磁場に曝露し、120分から140分までの20分間にわたって52℃への加熱に曝露し、0分から240分まで20μMプテロスチルベン(PT)に曝露した後の細胞培養物を示す。図21Hは、24時間(その間は培養細胞をいかなる処理もなしに37℃に維持した)後の図21Gの細胞培養物を示す。増殖細胞は、図21Gの併用処理の24時間後に回復していないようである。
【0107】
図22は、AsPC1細胞に対するTT領域(「TTF」)、ハイパーサーミア(「HT」)、ゲムシタビン(「GEM」)、プテロスチルベン(「PT」)及びそれらの組合せのin vitro影響を示す実験データを示す。TTFデータについては、適用したTT領域は、1.5μTの電界強度にて200kHzで240分間(0分から240分まで)であった。HTデータについては、適用したハイパーサーミアは、52℃で20分間(120分から140分まで)であった。GEMデータについては、25μMのゲムシタビンを0分から240分まで適用した。PTデータについては、20μMのプテロスチルベンを0分から240分まで適用した。データは、1実験条件当たり5回の実験についての生存細胞の平均数を示し、*と表示したものは対照に対し、+と表示したものはTTFに対し、#と表示したものはTTF+HTに対してスチューデントt検定を用いてP<0.01である。4つ全ての処理を組み合わせて適用すると、AsPC1細胞が排除された。
【0108】
図23は、異なる振動磁場に曝露した際のA2058(黒色腫、ATCC)細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す。種々の細胞培養物を以下の磁場の1つに曝露した:100kHzの周波数で2μT、200kHzの周波数で1.5μT、300kHzの周波数で0.7μT又は400kHzの周波数で0.5μT。各周波数についての細胞生存性を1時間、2時間、3時間、4時間及び5時間後に各細胞培養物について測定した。5回の独立した実験を各周波数及び時点について行った。各周波数についてのデータは、5回の対応する実験について経時的(左から右へ1時間~5時間)に平均細胞生存性及び標準偏差を示す。2元配置分散分析(ANOVA)を用いて異なる群間の比較を行った。300kHz未満の全ての周波数で細胞生存性が低下することが分かる。「a」及び「b」の文字は、データに適用された統計的検定に基づいてデータに割り当てたものである。同じ文字が付されたデータは、統計的に類似しているとみなされ、異なる文字を割り当てたデータは、0.01未満のPで有意に異なるとみなされる。
【0109】
図24は、熱に曝露した際のA2058細胞の細胞生存性に対する影響についてのin vitro実験データを示す。種々の細胞培養物を37℃、42℃、47℃又は52℃の温度に加熱した。5回の独立した実験を各温度及び時点について行った。各温度のデータは、その温度への5分間、10分間及び20分間の曝露後の5回の対応する実験の平均細胞生存性及び標準偏差を示す。52℃に加熱すると、A2058細胞の生存性が有意に低下した。*と表示したデータは、対応する時間での37℃のデータと比較して0.01未満のP値(スチューデントt検定)を示し、+と表示したデータは、同じ温度で5分間のデータと比較して10分間及び20分間のデータで0.01未満のP値を示す。
【0110】
図25は、A2058細胞に対するTT領域(「TTF」)、ハイパーサーミア(「HT」)、プテロスチルベン(「PT」)及びそれらの組合せのin vitro影響を示す実験データを示す。TTFデータについては、適用したTT領域は、1.5μTの電界強度にて200kHzで240分間(0分から240分まで)であった。HTデータについては、適用したハイパーサーミアは、52℃で20分間(120分から140分まで)であった。PTデータについては、20μMのプテロスチルベンを0分から240分まで適用した。データは、1実験条件当たり5回の実験についての生存細胞の平均数を示し、*と表示したものは対照に対し、+と表示したものはTTFに対し、#と表示したものはTTF+HTに対してスチューデントt検定を用いてP<0.01である。4つ全ての処理の適用が、細胞の生存性をTTF+HTと比較して有意に低下させた。
【0111】
図12図20及び図25のデータを比較すると、より高い磁束密度(約8μT以上)を用いることで、処理の有効性を維持しながら又は更には改善した上で、より低い温度に組織を加熱することが可能となることがデータから示される。42℃超の温度への加熱及びプテロスチルベンの投与と組み合わせた、このようなより高い磁束密度の組合せは、腫瘍を排除するのに十分であり得る。このことは、限られた加熱しか適用することができない身体の領域(例えば脳)にとって特に重要である。例えば図22のデータから、より低い磁場を用いる場合であっても、腫瘍治療領域及び加熱をプテロスチルベン及び別の抗癌薬の1つ以上と組み合わせて用いれば、癌細胞を低減するか又は更には排除し得ることが示される。
【0112】
図26B図26Hは、異なる外的処理に曝露した後のin vitro A2058細胞培養物の顕微鏡画像を示す。図26Aは、いかなる外的処理にも曝露せず、37℃の生理的内部温度に維持した対照in vitro AsPC1細胞培養物の顕微鏡画像を示す。図26Bは、0分から240分まで200kHzで約1.5μTの磁束密度を有する電磁場に曝露した後の細胞培養物を示す。図26Cは、120分から140分までの20分間にわたって52℃への加熱に曝露した後の細胞培養物を示す。図26Dは、0分から240分まで20μMプテロスチルベンに曝露した後の細胞培養物を示す。図26Eは、0分から240分まで200kHzで約1.5μTの磁束密度を有する電磁場に曝露し、0分から240分まで20μMプテロスチルベンに曝露した後の細胞培養物を示す。図26Fは、0分から240分まで200kHzで約1.5μTの磁束密度を有する電磁場に曝露し、120分から140分までの20分間にわたって52℃への加熱に曝露した後の細胞培養物を示す。図26Gは、0分から240分まで200kHzで約1.5μTの磁束密度を有する電磁場に曝露し、120分から140分までの20分間にわたって52℃への加熱に曝露し、0分から240分まで20μMプテロスチルベン(PT)に曝露した後の細胞培養物を示す。図26Hは、24時間(その間は培養細胞をいかなる処理もなしに37℃に維持した)後の図26Gの細胞培養物を示す。増殖細胞は、図26Gの併用処理の24時間後に回復していないようである。
【0113】
図27は、A2058細胞に対するTT領域(「TTF」)、ハイパーサーミア(「HT」)、パクリタキセル(「PAC」)及びそれらの組合せのin vitro影響を示す実験データを示す。TTFデータについては、適用したTT領域は、1.5μTの電界強度にて200kHzで240分間(0分から240分まで)であった。HTデータについては、適用したハイパーサーミアは、52℃で20分間(120分から140分まで)であった。PACデータについては、10μMのパクリタキセルを0分から240分まで適用した。データは、1実験条件当たり5回の実験についての生存細胞の平均数を示し、*と表示したものは対照に対し、+と表示したものはTTFに対し、#と表示したものはTTF+HTに対してスチューデントt検定を用いてP<0.01である。3つ全ての処理の適用により細胞が排除された。
【0114】
表1は、in vitroでのU87MG、AsPC1及びA2058細胞の細胞生存性に対するGSH枯渇の影響を試験したデータを示す。「TTF」を含む行については、TT領域を1.5μTの電界強度にて200kHzで240分間(0分から240分まで)適用した。「HT」を含む行については、適用したハイパーサーミアは、U87MGでは42℃、AsPC1及びA2058では52℃で20分間(120分から140分まで)であった。「BSO」を含む行については、GSH合成の特異的阻害剤である1mMのブチオニンスルホキシミンを、培養物の細胞を播種した時点で細胞培養培地に添加した。HT及びTTFをBSOと組み合わせて適用する場合、HT及びTTFは、播種の24時間後に適用した。データは、5回の独立した実験についての平均及び標準偏差を示す。*と表示したデータは、対照データと比較して0.01未満のP値(スチューデントt検定)を有する。+と表示したデータは、TTF+HTデータと比較して0.01未満のP値(スチューデントt検定)を有する。そのデータは、GSH枯渇が電磁放射及び熱の抗癌効果を増強することを示す。
【0115】
【表1】
【0116】
したがって、プテロスチルベンの適用と組み合わせた本明細書に開示される装置の使用は、癌性部位を治療する非常に効果的な方法を提供し、癌性細胞全体を完全に排除することさえできる。したがって、一態様において、上記抗腫瘍形成組成物は、(i)プテロスチルベン、プテロスチルベンホスフェート又はその薬学的に許容可能な塩を含む。代替的には、抗癌組成物は共結晶、水溶性プロドラッグ、ナノ粒子、ナノドット、ナノロブ(nanorob)、ナノスパイク、ナノロッド、ナノクラスター、ナノセラミック、リポソーム若しくはエキソソーム配合物で提供されてもよく、又は身体に埋め込まれた場合に抗癌組成物を放出するように構成された埋込み型デバイスで提供されてもよい。上記抗腫瘍形成組成物が任意の抗酸化組成物を含み得ることに留意されたい。この意味で、抗腫瘍形成組成物は、プテロスチルベンとは別に、抗腫瘍形成剤として適した任意のスチルベノイド、例えばレスベラトロールを含み得る。
【0117】
(i)プテロスチルベン及びプテロスチルベンホスフェート
「プテロスチルベン」又は「Pter」又は「trans-3,5-ジメトキシ-4’-ヒドロキシスチルベン」という用語は、本明細書において使用される場合、式:
【化1】
の化合物を指す。
【0118】
「プテロスチルベンホスフェート」という用語は、式:
【化2】
の化合物を指す。
【0119】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、レシピエントへの投与後に本明細書に記載される化合物を(直接又は間接的に)提供することが可能なプテロスチルベン又はプテロスチルベンホスフェートの任意の塩を指す。好ましくは、本明細書において使用される場合、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、連邦政府若しくは州政府の規制機関によって承認されるか、又は動物、より詳細にはヒトへの使用について米国薬局方若しくは他の一般に認められる薬局方に掲載されていることを意味する。塩の調製は、当該技術分野で既知の方法によって行うことができる。薬学的に許容可能な塩の例示的な非限定的な例としては、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、過クエン酸塩(acid citrate)、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グロクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。プテロスチルベン又はプテロスチルベンホスフェートの薬学的に許容可能な塩は、酸性官能基を有するポリフェノール化合物及び許容可能な無機又は有機塩基から調製するのが好ましい。好適な塩基としては、ナトリウム、カリウム及びリチウム等のアルカリ金属の水酸化物;カルシウム及びマグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウム及び亜鉛等の他の金属の水酸化物;アンモニア及び有機アミン、例えば非置換又はヒドロキシ置換モノ-、ジ-又はトリ-アルキルアミン、ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N-メチルアミン、N-エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ-、ビス-又はトリス-(2-ヒドロキシ置換低級アルキルアミン)、例えばモノ-、ビス-又はトリス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、2-ヒドロキシ-tert-ブチルアミン又はトリス-(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N,N-ジ-低級アルキル-N-(ヒドロキシ低級アルキル)-アミン、例えばN,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミン又はトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミン;N-メチル-0-グルカミン;並びにアルギニン、リジン等のアミノ酸等が挙げられるが、これらに限定されない。「薬学的に許容可能な塩」という用語は、ポリフェノール化合物の水和物も含む。特定の実施形態において、薬学的に許容可能な塩は二ナトリウム塩である。
【0120】
本発明に従うことができる癌化学療法剤の更なる例示的な非限定的な例としては、アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード/オキサザホスホリン(例えばシクロフォスファミド、イホスファミド)、ニトロソウレア(例えばカルムスチン)、トリアゼン(例えばテモゾラミド(temozolamide))及びスルホン酸アルキル(例えばブスルファン);代謝拮抗薬(例えば5-フルオロウラシル、カペシタビン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラビン、フルダラビン又はペメトレキセド);ドキソルビシン及びダウノルビシン等のアントラサイクリン抗生物質、Taxol(商標)及びドセタキセル等のタキサン、ビンクリスチン及びビンブラスチン等のビンカアルカロイド、5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン、イリノテカン、イダルビシン、マイトマイシンC、オキサリプラチン、ラルチトレキセド、ペメトレキセド、タモキシフェン、シスプラチン、カルボプラチン、メトトレキサート、アクチノマイシンD、ミトキサントロン、blenoxane、ミトラマイシン、パクリタキセル、2-メトキシエストラジオール、プリノマスタット、バチマスタット、BAY 12-9566、カルボキシアミドトリアゾール、CC-1088、デキストロメトルファン酢酸、ジメチルキサンテノン酢酸、エンドスタチン、IM-862、マリマスタット、ペニシラミン、PTK787/ZK 222584、RPI.4610、乳酸スクアラミン、SU5416、サリドマイド、コンブレタスタチン、COL-3、neovastat、BMS-275291、SU6668、抗VEGF抗体、Medi-522(Vitaxin II)、CAI、インターロイキン12、IM862、アミロライド、アンギオスタチン、アンギオスタチンK1-3、アンギオスタチンK1-5、カプトプリル、DL-α-ジフルオロメチルオルニチン、DL-α-ジフルオロメチルオルニチンHCl、エンドスタチン、フマギリン、ハービマイシンA、4-ヒドロキシフェニルレチナミド、ジュグロン、ラミニン、ラミニンヘキサペプチド、ラミニンペンタペプチド、ラベンダスチンA、メドロキシプロゲステロン、ミノサイクリン、胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤、スラミン、トロンボスポンジン、血管新生促進因子を標的とした抗体(例えばベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブ);トポイソメラーゼ阻害剤;微小管阻害薬;血管新生促進成長因子の低分子量チロシンキナーゼ阻害剤(例えばエルロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、ゲフィチニブ);GTPアーゼ阻害剤;ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤;AKTキナーゼ又はATPアーゼ阻害剤;Wntシグナル伝達阻害剤;E2F転写因子の阻害剤;mTOR阻害剤(例えばテムシロリムス);α、β及びγインターフェロン、IL-12、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(例えばCOL3、マリマスタット、バチマスタット);ZD6474、SU11248、vitaxin;PDGFR阻害剤(例えばイマチニブ);NM3及び2-ME2;シレンギチド等の環状ペプチドが挙げられる。好適な他の化学療法剤は、The Merck Index in CD-ROM, 13rd Editionに詳細に記載されている。本発明の好ましい実施形態において、化学療法剤はドセタキセル(Taxotere(商標))、シスプラチン、ペメトレキセド、ゲムシタビン及びイリノテカンからなる群から選択される。
【0121】
特定の実施形態において、癌化学療法剤は、好ましくはパクリタキセルを含むか又はそれからなるタキサンである。「パクリタキセル」という用語は、本明細書において使用される場合、化学名(2α,4α,5β,7β,10β,13α)-4,10-ビス(アセチルオキシ)-13-{[(2R,3S)-3(ベンゾイルアミノ)-2-ヒドロキシ-3-フェニルプロパノイル]オキシ}-1,7-ジヒドロキシ-9-オキソ-5,20-エポキシタキサ-11-エン-2-イルベンゾエートを有し、化学式:
【化3】
を有する化合物を指す。
【0122】
より特定の実施形態において、パクリタキセルは、タンパク質結合パクリタキセルである。「タンパク質結合パクリタキセル」又は「nab-パクリタキセル」又は「ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル」という用語は、本明細書において使用される場合、パクリタキセルが送達ビヒクルとしてのアルブミンに結合した配合物を指す。
【0123】
癌化学療法剤は、本発明の組合せによって治療される癌のタイプに応じて異なる。当業者は、どの癌化学療法剤が特定のタイプの癌の治療により好適であるかを容易に決定することができる。
【0124】
また任意に、工程S4において、抗腫瘍形成化合物に加えてグルタチオン(GSH)枯渇剤を標的部位に供給する。GSH枯渇剤は、経口又は静脈内等の任意の好適な手段によって投与することができる。GSH枯渇剤が工程S1、工程S2及び工程S3の前若しくはそれと同時に、又は工程S1、工程S2若しくは工程S3の所定の時間後、好ましくは工程S3の所定の時間後に供給され得ることに留意されたい。供給されるGSH枯渇剤は、図12図27又は表1との関連を含めて本明細書に開示される任意のGSH枯渇剤であり得る。
【0125】
「グルタチオン枯渇剤」という用語は、本明細書において使用される場合、物質と接触した細胞からグルタチオンを低減又は排除する物質を指す。当業者は、特定の分子がグルタチオン枯渇剤であるかを、例えば特定の分子の効果をγ-グルタミル-システイニルリガーゼの特異的阻害剤であるブチオニンスルホキシミン(BSO)の効果と比較することによって、Terradez P et al, Biochem J 1993, 292 (Pt 2): 477-83によりin vitro及びin vivo条件について記載された方法を用いて決定することが可能である。特定の実施形態において、特定の分子は、該分子がブチオニンスルホキシミンのグルタチオン枯渇効果の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、100%又はそれ以上を有する場合、グルタチオン枯渇剤である。グルタチオン枯渇剤の例示的な非限定的な例は以下の通りである。
【0126】
a)Ortega, et al., Cancers (Basel) 2011, 3, 1285-1310に記載されているようなBcl-2アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、すなわち、Bcl-2遺伝子のRNA配列に相補的なオリゴデオキシヌクレオチド。Bcl-2アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドの非限定的な例は、米国特許第5734033号、国際公開第2003040182号、米国特許第5831066号に記載されている。特定の化合物がBcl-2アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドであるかを決定するアッセイは、例えばMena et al., Clinical Cancer Research 2007, 13 (9): 2658-66に記載されているようにBcl-2のmRNAレベル又はBcl-2タンパク質レベルに対する化合物の効果に基づくものである。
【0127】
b)Ortega, et al.(上掲)に記載されているような多剤耐性タンパク質1(MRP1)の阻害剤。「MRP1阻害剤」という用語は、本明細書において使用される場合、MRP1の活性を阻害する化合物を指す。阻害剤という用語には、限定されるものではないが、MRP1のアンタゴニスト、MRP1に対する抗体、MRP1の発現を妨げる化合物、及びMRP1のmRNA又はタンパク質レベルの低下をもたらす化合物が含まれる。MRP1の阻害剤の非限定的な例は、ベラパミル及びMK-571である。特定の化合物がMRP1阻害剤であるかを決定するアッセイは、例えばOlson D.P. et al., Cytometry 2001, 46 (2): 105-13に記載されている方法である。
【0128】
c)Silber et al., Anal Biochem 1986, 158 (1): 68-71に記載されているようなγ-グルタミントランスペプチターゼ又はγ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGTP又はGGT)の阻害剤。「GGTP阻害剤」という用語は、本明細書において使用される場合、グルタチオンのγ-グルタミル部分のアクセプターへの転移を触媒する酵素であるGGTPの活性を阻害する化合物を指す。阻害剤という用語には、限定されるものではないが、GGTPのアンタゴニスト、GGTPに対する抗体、GGTPの発現を妨げる化合物、及びGGTPのmRNA又はタンパク質レベルの低下をもたらす化合物が含まれる。GGTP阻害剤には、選択的阻害剤及び非選択的阻害剤(アスパラギン合成酵素にも影響を及ぼす)の両方が含まれる。GGTPの阻害剤の非限定的な例は、アシビシン及び2-アミノ-4-{[3-(カルボキシメチル)フェニル](メチル)ホスホノ}酪酸(GGsTop(商標))である。特定の化合物がGGTP阻害剤であるかを決定するアッセイは、例えばSilver et al., Anal Biochem 1986, 158 (1): 68-71に記載されているものである。
【0129】
d)Obrador, et al., Hepatology 2002, 35, 74-81に記載されているようなシスチン取込みの阻害剤。「シスチン取込みの阻害剤」という用語は、ナトリウム非依存性X系及びナトリウム依存性XAG系を含む、細胞外シスチンを細胞内に輸送する系のいずれかを阻害する化合物を指す(McBean G.J. and Flynn J., Biochem Soc Trans. 2001, 29 (Pt6): 712-22)。阻害剤という用語には、競合的阻害剤及び非競合的阻害剤の両方が含まれる。シスチン取込みの阻害剤の非限定的な例は、アシビシン、L-グルタメート、L-セリン-o-スルフェート、L-システインスルフィネート、L-システイン、L-trans-ピロリジン-2,4-ジカルボキシレート及びカイナイトである。特定の化合物がシステイン取込みの阻害剤であるかを決定するアッセイは、例えば35S標識システインの取込みの決定に基づくアッセイである。
【0130】
e)Gumireddy et al., J Carcinog Mutagen 2013 (2013)に記載されているような式:
【化4】
を有する化合物であるグルタチオンジスルフィド(NOV-002)又はその二ナトリウム塩であるグルタチオンジスルフィド二ナトリウム。
【0131】
f)Trachootham, et al., Cancer Cell 2006, 10: 241-252に記載されているような式:
【化5】
を有する化合物であるフェネチルイソチオシアネート。
【0132】
g)Min, et al., J Mol Med (Berl) 2012, 90: 309-319に記載されているようなグルココルチコイド受容体アンタゴニスト。「グルココルチコイド受容体アンタゴニスト」という用語は、グルココルチコイド受容体に結合し、受容体自体を活性化する実質的な能力を欠く化合物を指す。「グルココルチコイド受容体アンタゴニスト」という用語には、ニュートラルアンタゴニスト及びインバースアンタゴニストの両方が含まれる。「ニュートラルアンタゴニスト」は、アゴニストの作用を阻害するが、内因性又は自発性の受容体活性には影響を及ぼさない化合物である。「インバースアンタゴニスト」は、受容体でのアゴニストの作用を阻害するとともに、受容体の構成的活性を弱めることが可能である。「アンタゴニスト」という用語には、天然リガンドと同じ部位に結合する薬物である競合的アンタゴニスト、天然リガンドとは異なる受容体上の部位に結合する非競合的アンタゴニスト、受容体-リガンド動態によって決まる速度で受容体に結合し、結合を解除する可逆的アンタゴニスト、及び活性部位との共有結合を形成するか、又は単に解離速度が実質上ゼロになるように強固に結合することによって受容体に永続的に結合する不可逆的アンタゴニストも含まれる。グルココルチコイド受容体アンタゴニストの非限定的な例は、RU-486(ミフェプリストン)、RU-43044、オクタヒドロフェナントレン、スピロ環ジヒドロピリジン、トリフェニルメタン及びジアリールエーテル、クロメン、ジベンジルアニリン、ジヒドロイソキノリン、ピリミジンジオン、アザデカリン、アリールピラゾロアザデカリン、11-モノアリールステロイド、フェナントレン、ジベンゾール[2.2.2]シクロオクタン及び誘導体、ジベンゾシクロヘプタン及びそれらの誘導体、ジベンジルアニリンスルホンアミド及びそれらの誘導体、ジヘテロ(アリール)ペンタノール、クロメン誘導体、アザデカリン、アリールキノロン、11,21-ビスアリールステロイド及び11-アリールステロイド及び16-ヒドロキシステロイド、並びに二重アンタゴニスト-アゴニストであるベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、フルニソリド、フルチカゾン、モメタゾン及びトリアムシノロンである。特定の化合物がグルココルチコイド受容体アンタゴニストであるかは、例えばグルココルチコイド受容体経路レポーターキット(BPS BIOSCIENCE,SAN DIEGO,CA,USA)のような市販のキットによって決定することができる。
【0133】
h)Obrador et al. J Biol Chem 2011, 286: 15716-15727に記載されているような抗IL-6剤。「抗IL-6剤」という用語は、IL-6のレベルを低下させるか、その受容体への結合を完全若しくは部分的に遮断するか、又はその受容体活性を完全若しくは部分的に阻害することによってIL-6の活性を低下させることが可能な化合物を指す。「抗IL-6剤」という用語には、IL-6に対する阻害抗体、すなわちIL-6がその受容体に結合するのを妨げる、IL-6に結合する抗体、例えばエルシリモマブ及びシルツキシマブ、並びにトシリズマブのようなIL-6受容体の阻害剤が含まれる。特定の化合物が抗IL6剤であるかを決定するアッセイは、例えばLife Technologies(Carlsbad,CA,USA)のキットのようなIL6レベルを決定するためのELISA、又はQuiagen(Valencia,CA,USA)のIL6/STAT3 Signaling Pathway Plus PCR ArrayのようなIL6のその受容体への結合に由来する細胞内シグナル伝達を決定するためのアッセイである。
【0134】
i)式:
【化6】
を有する化合物であるブチオニンスルホキシミン(BSO)。BSOのグルタチオン枯渇効果は、Terradez P. et al., Biochem J. 1993, 292: 477-483に記載されている。
【0135】
j)式:
【化7】
を有する化合物であるマレイン酸ジエチル又はDEM。DEMのグルタチオン枯渇効果は、Estrela J. M. et al., Nat Med 1995, 1(1): 84-88に記載されている。
【0136】
k)式:
【化8】
を有する化合物であるNPD926。NPD926のグルタチオン枯渇効果は、Kawamura T et al., Biochem J 2014, 463: 53-63に記載されている。
【0137】
l)式:
【化9】
を有する化合物であるパルテノリド。パルテノリドのグルタチオン枯渇効果は、Pei S. et al., J Biol Chem 2013, 288 (47): 33542-58に記載されている。
【0138】
m)式:
【化10】
(式中、AはC(O)又はS(O)であり、n=0、1、2又は3であり、フェニル環のオルト炭素は非置換であるか、又はハロゲンで置換され、Rは水素、ハロゲン、C≡C-アルキル、C≡C-シクロアルキル、C≡C-シクロアルキルハロゲン化物、C≡C-アリール、C≡C-アリールハロゲン化物及びアリール基からなる群から選択され、Rは水素、アルキル、アルケニル及びアリール基からなる群から選択され、Rは水素、アルキル、アルケニル及びアリール基からなる群から選択され、R、R及びRは各々独立して水素、臭素、塩素、フッ素、ケト、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルコキシ、メトキシ、アミノアルキル、アミノアルケニル及びアミノアルコキシ基からなる群から選択される)を有する化合物。特に、式:
【化11】
を有する化合物であるピペルロングミン。ピペルロングミンのグルタチオン枯渇効果は、Pei S. et al.(上掲)に記載されている。
【0139】
n)Shao Q. et al., Cancer Research 2014, 74 (23):7090-102に記載されているようなブロモドメイン及び外部末端ドメインファミリーのタンパク質の阻害剤。「ブロモドメイン及び外部末端(BET)ドメインファミリーのタンパク質の阻害剤」又は「BET阻害剤」という用語は、ブロモドメイン及び外部末端(BET)タンパク質BRD2、BRD3、BRD4及びBRDTのブロモドメインに結合し、BETタンパク質とアセチル化ヒストン及び転写因子との間のタンパク質間相互作用を妨げる化合物を指す。「BET阻害剤」という用語には、BRD2、BRD3、BRD4及びBRDTのいずれかを標的とする阻害剤が含まれる。BET阻害剤の非限定的な例はJQ1、GSK525762A及びOTX-015である。特定の化合物がBET阻害剤であるかを決定するアッセイは、例えばBRD4の阻害剤をスクリーニングするためのBioTek(Winooski,VT,USA)のHomogeneous Proximity Assayである。
【0140】
特定の実施形態において、本発明の組合せのグルタチオン枯渇剤は、a)Bcl-2アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、b)多剤耐性タンパク質1の阻害剤、c)γ-グルタミントランスペプチターゼの阻害剤、d)シスチン取込みの阻害剤、e)グルタチオンジスルフィド二ナトリウム、f)フェネチルイソチオシアネート、g)グルココルチコイド受容体アンタゴニスト、h)抗IL-6剤、i)ブチオニンスルホキシミン、j)マレイン酸ジエチル、k)NPD926、l)パルテノリド、m)ピペルロングミン及びn)ブロモドメイン及び外部末端ドメインファミリーのタンパク質の阻害剤、特にGSK525762A又はI-BET762からなる群から選択される。
【0141】
より特定の実施形態において、多剤耐性タンパク質1の阻害剤は、式:
【化12】
を有する化合物であるベラパミルである。
【0142】
より特定の実施形態において、γ-グルタミントランスペプチターゼの阻害剤は、式:
【化13】
を有する化合物であるアシビシンである。
【0143】
より特定の実施形態において、シスチン取込みの阻害剤は、式:
【化14】
を有する化合物であるスルファサラジンである。
【0144】
より特定の実施形態において、グルココルチコイド受容体アンタゴニストは、式:
【化15】
を有する化合物であるRU-486又はミフェプリストンである。
【0145】
より特定の実施形態において、抗IL-6剤は、IL-6に対する阻害抗体又はIL-6受容体の阻害剤である。更に特定の実施形態において、抗IL-6剤は、トシリズマブ、エルシリモマブ及びシルツキシマブからなる群から選択される。「トシリズマブ」という用語は、IL-6受容体に対するヒト化モノクローナル抗体を指す。「エルシリモマブ」という用語は、IL-6に対するマウスモノクローナル抗体を指す。「シルツキシマブ」又は「CNTO 328」という用語は、IL-6に対するキメラモノクローナル抗体を指す。
【0146】
より特定の実施形態において、ブロモドメイン及び外部末端ドメインファミリーのタンパク質の阻害剤は、JQ1、GSK525762A及びOTX-015からなる群から選択される。「JQ1」という用語は、式:
【化16】
の化合物を指す。
【0147】
「GSK525762A」という用語は、式:
【化17】
の化合物を指す。
【0148】
「OTX-015」という用語は、式:
【化18】
の化合物を指す。
【0149】
「CPI-0610」という用語は、MedKoo Biosciencies Incによって販売される参照カタログ番号:206117の化合物を指す。
【0150】
特定の実施形態において、グルタチオン枯渇剤は、マレイン酸ジエチル、GSK525762A(I-BET762)又はピペルロングミンである。
【0151】
工程S5において直接加熱を停止し、工程S6において非電離交流電場を停止する。工程S5及び工程S6を同時に行ってもよく、又は直接加熱を停止した後に所定の時間にわたって非電離交流電磁場のみが適用されるように、直接加熱を停止した後に非電離交流電磁場を停止してもよいことに留意されたい。
【0152】
工程が図11に示される順序が工程S1~工程S5に関していかなる時系列も必要としないことに留意されたい。例えば、工程S3及び/又は工程S4(方法において一方又は両方が実施されるかによって異なる)は、工程S1の開始と同時に、若しくは工程S1の開始後であるが、工程S2の開始前の所定の時点で実施してもよく、又は工程S2の開始と同時に、若しくは工程S2の開始から所定の時間後に実施してもよい。さらに、S3及びS4の両方を実施する例においては、それらを同じ時点又は異なる時点で実施することができる。例えば、工程S4がいつ実施されるか(又は実施されるか)とは無関係に、工程S3を工程S1の開始と同時に、若しくは工程S1の開始後であるが、工程S2の開始前の所定の時間に実施してもよく、又は工程S2の開始と同時に、若しくは工程S2の開始後の所定の時点で実施してもよい。一方、工程S3がいつ実施されるか(又は実施されるか)とは無関係に、工程S4を工程S1の開始と同時に、若しくは工程S1の開始後であるが、工程S2の開始前の所定の時点で実施してもよく、又は工程S2の開始と同時に、若しくは工程S2の開始後の所定の時点で実施してもよい。さらに、工程S1を第1の時間にわたって適用することができ、工程S2を第2の時間にわたって適用することができ、第2の時間が第1の時間と部分的若しくは完全に重なっていてもよく、又は第2の時間は、第1の時間が終了した際に開始してもよい。
【0153】
例えば、非電離交流電磁場(例えば300kHz)は、抗癌組成物及びGSH枯渇剤(例えばプテロスチルベン及びゲムシタビン)と同時にもたらすことができる。交流電磁場を2時間にわたって適用し、この2時間の間に加熱を適用する(例えば、標的部位を52℃の温度に10分間加熱する)。別の例では、非電離交流電磁場を最初に(例えば300kHzで)第1の時間(例えば2時間)にわたってもたらし、第1の時間が終了してから抗癌組成物及び/又はGSH枯渇剤と組み合わせて加熱を適用する(例えばプテロスチルベンと47℃への2時間の加熱)。
【0154】
上記方法において、非電離交流電磁場は、10kHz~500kHzの周波数を有することができ、0.1pT~1mT若しくは0.1pT~100μT若しくは100μT~1mTの磁束密度、及び/又は組織インピーダンスに応じて1V/cm~3V/cmの対応する電場強度振幅をもたらし、1分間~24時間の時間にわたって適用され得る。
【0155】
直接加熱では、標的部位を少なくとも42℃、好ましくは42℃~57℃の温度に加熱するのが好ましい。
【0156】
腫瘍治療領域による標的部位の加熱
腫瘍治療領域の振動磁場が組織の加熱を引き起こし得る機構は、組織内にフーコー電流(又は「渦電流」)を誘導することによるものである。これらの電流は、組織内の磁力線を中心に回転し、ジュール効果によって腫瘍細胞を加熱し得る。これは生組織の伝導率σによるものである。腫瘍組織の伝導率は、振動磁場の周波数の増加とともに増大し、300kHzでおよそ0.15シーメンス/メートルである。この伝導率は、円形路で流れる微視的渦電流の経路をもたらす。これらの細胞を加熱する単位質量当たりの電力Pは、以下の式によって与えられる:
P=π/(6・ρ・D)
【0157】
ここで、Bは磁束密度であり、dは磁場がもたらされる組織の深さであり、fはフィールド周波数であり、ρは組織の抵抗率(電気伝導率の逆数)であり、Dは組織の質量密度である。
【0158】
腫瘍組織の伝導率は、健常組織の伝導率の5倍まで高くなることがあり、100kHz~300kHzで0.15シーメンス/メートルの近似値を有する。生体組織のDは可変であるが(900kg/m~1050kg/m)、水のDである1000kg/mに近似することができる。腫瘍治療領域の最高磁束密度は1mTである。最高周波数は300kHzである。in vitro実験においては、培養フラスコの厚さは、およそ1mmであり、これがdの値である。これにより20pW/kgのPの値が得られる。これは極めて低い値である。したがって、TT領域の機構は、加熱によるものではない。細胞死は、ミトコンドリアにおける電荷破壊の結果である可能性がある。この効果は、腫瘍組織では伝導率がより高いためにより強く、健常細胞の伝導率よりもおよそ5倍高い。ハイパーサーミアとの相乗効果は、荷電分子の移動度の増加に伴う伝導率の増大に起因し得る。
【0159】
上記の全ては、本開示の範囲に完全に含まれ、上記に開示された特定の組合せに限定されることなく、上記の特徴の1つ以上の組合せが適用される代替的な実施形態の基礎をなすと考えられる。
【0160】
この点を踏まえると、本開示の教示を実施する多くの代替形態が存在するであろう。当業者であれば、当該技術分野における共通一般知識に照らして、開示された又は上記から導き出せる本開示の一部又は全ての技術的効果を保持した上で、上記の開示を修正及び適合させ、本開示の範囲内で自身の状況及び要件に合わせることができることが期待される。かかる均等物、修正又は適合は全て、本開示の範囲に含まれる。
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【国際調査報告】