(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】静電容量式センサ装置およびそのような静電容量式センサ装置を備えた磁気軸受アセンブリ
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
G01B7/00 101C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548861
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 NL2022050060
(87)【国際公開番号】W WO2022173290
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520147360
【氏名又は名称】ブイディーエル イネーブリング テクノロジーズ グループ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】アシェス、ロナルド ヤン
(72)【発明者】
【氏名】バーデ、リック
(72)【発明者】
【氏名】セーゲルス、ヒュバート マリー
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063BA03
2F063BC05
2F063CA08
2F063DA01
2F063DA05
2F063HA01
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、剛体ボディの他の剛体ボディに対する相対的な直線移動経路に沿って非接触直線移動を実現するシステムにおいて、前記剛体ボディと前記他の剛体ボディとの間の距離を決定する静電容量式センサ装置に関する。このセンサ装置は、剛体ボディに取り付けられた第1のセンサノードと、他の剛体ボディに取り付けられた第2のセンサノードと、を有する静電容量式センサ部品と、入力信号を受信する少なくとも1の入力ノードと、距離を表す出力信号を与える出力ノードと、を有する送信部品と、静電容量式センサ部品の第1のセンサノードに動作可能に接続された周波数依存入力信号発生器と、を備える。送信部品の第1の入力ノードは、静電容量式センサ部品の第2のセンサノードに動作可能に接続されている
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛体ボディの他の剛体ボディに対する相対的な直線移動経路に沿って非接触直線移動を実現するシステムにおいて、前記剛体ボディと前記他の剛体ボディとの間の距離を決定する静電容量式センサ装置であって、
前記剛体ボディに取り付けられた第1のセンサノードと、前記他の剛体ボディに取り付けられた第2のセンサノードと、を有する静電容量式センサ部品と、
入力信号を受信する少なくとも1の入力ノードと、距離を表す出力信号を与える出力ノードと、を有する送信部品と、
前記静電容量式センサ部品の第1のセンサノードに動作可能に接続された周波数依存入力信号発生器と、
を備え、
前記送信部品の第1の入力ノードは、前記静電容量式センサ部品の第2のセンサノードに動作可能に接続されていることを特徴とする静電容量式センサ装置。
【請求項2】
前記送信部品の出力ノードおよび第1の入力ノードに動作可能に接続された少なくとも1つのフィルタ素子をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の静電容量式センサ装置。
【請求項3】
前記送信部品は、前記入力信号の周波数依存的な変化に応答して前記出力信号を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の静電容量式センサ装置。
【請求項4】
前記送信部品は、接地電位に動作可能に接続された第2の入力ノードを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の静電容量式センサ装置。
【請求項5】
前記送信部品は、前記第1の入力ノードが反転入力ノードであり、前記第2の入力ノードが非反転入力ノードであるようなオペアンプとして構成されていることを特徴とする請求項4に記載の静電容量式センサ装置。
【請求項6】
剛体ボディの他の剛体ボディに対する相対的な直線移動経路に沿って非接触直線移動を実現するシステムにおける磁気軸受アセンブリであって、
前記剛体ボディに取り付けられた少なくとも1つの第1の静的背面鉄と、
前記他の剛体ボディに取り付けられた磁気軸受モジュールと、
を備え、
前記磁気軸受モジュールは、
-強磁性コアと、
-第1の静的背面鉄に対向する前記強磁性コアの第1側面に配置された第1の磁性体素子と、
-前記強磁性コアの周囲に巻かれたコイルと、
-請求項1から5のいずれかに記載の静電容量式センサ装置と、
を備えることを特徴とする磁気軸受アセンブリ。
【請求項7】
前記静電容量式センサ部品の第2のセンサノードは、前記強磁性コアの第1側面に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の磁気軸受アセンブリ。
【請求項8】
ハウジングをさらに備え、
前記ハウジングのハウジング部品は、前記の第1部品側面で前記静電容量式センサ部品の第2のセンサノードを支持し、
前記第1部品側面は、距離を隔てて前記強磁性コアの第1側面と対向していることを特徴とする請求項6または7に記載の磁気軸受アセンブリ。
【請求項9】
前記静電容量式センサ部品の第2のセンサノードを支持するハウジング部品は、誘電体材料、特にガラスで作られていることを特徴とする請求項8に記載の磁気軸受アセンブリ。
【請求項10】
前記静電容量式センサ部品の第2のセンサノードを支持しない部分は、接地電位に動作可能に接続されていることを特徴とする請求項8または9に記載の磁気軸受アセンブリ。
【請求項11】
前記静電容量式センサ部品の第2のセンサノードを支持する前記ハウジング部品のさらなる部品側面に取り付けられた遮蔽部品をさらに備え、
前記さらなる部品側面は、前記強磁性コアの第1側面に対向していることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の磁気軸受アセンブリ。
【請求項12】
前記静電容量式センサ部品の第2のセンサノードを支持する前記ハウジング部品は、櫛状の領域形状を有することを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の磁気軸受アセンブリ。
【請求項13】
直線移動経路を定義する直線案内路として形成された剛体ボディと、前記直線案内路に沿って移動可能な製品キャリアとして形成された1つ以上の剛体ボディと、によって構成される直線案内路アセンブリであって、
請求項6から12のいずれかに記載の磁気軸受アセンブリを備えることを特徴とする直線案内路アセンブリ。
【請求項14】
複数の入力ノードを有する中央制御装置をさらに備え、
前記複数の入力ノードの各々は、前記静電容量式センサ装置の出力ノードに電子的に接続されていることを特徴とする請求項13に記載の直線案内路アセンブリ。
【請求項15】
前記中央制御装置は、距離を表す振動出力信号であって、前記複数の入力ノードの1つに入力する振動出力信号の各々を直流測定信号に変換することを特徴とする請求項14に記載の直線案内路アセンブリ。
【請求項16】
前記中央制御装置は、前記直流測定信号を単一の多重化出力信号に多重化するマルチプレクサをさらに備えることを特徴とする請求項15に記載の直線案内路アセンブリ。
【請求項17】
前記中央制御装置は、前記単一の多重化出力信号をプリアンプするプリアンプ部品をさらに備えることを特徴とする請求項16に記載の直線案内路アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気浮上を用いた、剛体ボディの、別の剛体ボディに対する直線変位移動に沿った非接触直線移動の分野に関する。特に本開示は、磁気浮上を用いた、剛体ボディの、別の剛体ボディに対する直線移動経路に沿った非接触直線移動システムにおいて、剛体ボディと他の剛体ボディとの間の距離を決定する静電容量式センサ装置に関する。また本開示は、このような静電容量式センサ装置を備えた磁気軸受アセンブリ、およびこのような静電容量式センサ装置を備えた1つ以上の磁気軸受アセンブリを実装した直線案内路アセンブリにも関する。
【背景技術】
【0002】
磁気軸受アセンブリ、すなわち磁気軸受は、転動体または流体軸受を実装した従来の転動体軸受に代わる有利な選択肢となり得る。磁気軸受は非接触であるため、機械的摩擦がなく、微粒子の発生が非常に少ない。さらに、潤滑の必要がないため、分子汚染の大きな脱ガスを伴わない真空運転が可能である。こうした点から、汚染シールを省略することができる。ハイテク真空封止システムに磁気軸受を適用するときの主な課題は、コイルの熱放散の最小化、渦電流効果の最小化、安定した制御システムの実装、一般的な非線形特性の線形化にある。さらに、費用対効果の高いソリューションを維持することが求められる。
【0003】
磁気軸受技術は、すでに産業用途で利用されている。回転磁気軸受は市販されており、例えば医療システム、ターボ分子真空ポンプ、極低温システム、工作機械などに応用されている。また、ロータが磁気浮上するベアリングレスモーターもある。磁気浮上は、一般にローレンツ力を利用した平面ステージの作動に広く利用されている。磁気軸受の別のタイプはリラクタンス力に基づくもので、同様のコンセプトがアクチュエータとしても使用できる。他の分野でも利用されているが、例えば高清浄度基板ハンドリングロボットのような商業規模での磁気軸受アプリケーションのさらなる開発においては、技術的および構造的な制約に悩まされている。
【0004】
一般に既知の磁気軸受アプリケーションは、設計サイズが限定されることで特徴付けられる。一方、1自由度以上の既知の磁気軸受アプリケーションは、設計複雑で高価格である。さらに、磁気軸受アプリケーションの大規模な実装には、相当な重量、サイズ、コストの磁気軸受を開発する必要がある。
【0005】
磁気軸受アプリケーションでは、直線案内路アセンブリのクローズドループ・フィードバック制御を可能にするために、2つの剛体ボディ間の磁気エアギャップを非接触で測定する移動センサが必要である。このような用途では、静電容量式センサ装置が使われることが多い。磁気軸受アプリケーションのエアギャップ測定に静電容量式センサ装置を使用する利点は以下の通りである。
-非接触測定
-高精度と高分解能(サブナノメートルまで)
-磁場の影響を受けない(磁気軸受アプリケーション用)
-センサプローブ内にアクティブな電気部品が存在しないため、センサプローブ内のエネルギー散逸が少なく、部品のアウトガスが少ない(真空中のアプリケーションに適する)。
【0006】
しかしながら市販のセンサにはいくつかの問題があり、特定の磁気軸受アプリケーションへの適切な実装に悪影響を及ぼしている。第1に、磁気軸受アプリケーションでは、比較的「ローエンド」の位置決め要件を持つ特定のアプリケーションでは、約0.5~1mmの測定範囲で要求されるエアギャップ測定精度は、約0.1μm程度である。その結果、より安価な技術的ソリューションが得られる。しかし市販の静電容量式センサのほとんどは、これよりもはるかに高精度である。このため、静電容量式センサおよび装置は、測定軸(自由度)ごとに比較的高価になる。この価格は、磁気軸受システム全体のハードウェアコストに大きく影響する。特にそのようなシステムが、監視および制御される複数の自由度を実装している場合は、その影響が大きくなる。
【0007】
次に、測定されるエアギャップは通常1~2mmのオーダーである。磁気軸受の力は、磁気軸受モジュールの中心で発生する。アッベ測定の原理に従うと、エアギャップはベアリングモジュールの中心にできるだけ近い位置で測定する必要がある。しかし市販の静電容量式センサ装置の仕様では、センサを磁気軸受モジュールの隣に取り付ける必要がある。このため、システム寸法が大きくなり、システム性能に悪影響を及ぼす。
【0008】
特に既知の市販の静電容量式センサ装置は、通常、センサプローブから処理ユニット(多くの場合、アプリケーション環境の外部に配置される)まで、比較的太い3軸ケーブルを必要とする。複数の磁気軸受モジュールを持つシステムの場合、各軸受モジュールに1本の3軸ケーブルと1つのセンサが必要である。本質的に比較的高い曲げ剛性を持つ複数の3軸ケーブルを使用することにより、システム設計および性能が影響を受ける可能性がある。従来提案されている磁気ベアリングモジュールは、複数の自由度を持つ、より大きく複雑な機構の一部であることが多い。
【0009】
さらに、このような静電容量式センサ装置を高清浄度システムや真空システムで使用するには、ケーブルを環境から遮蔽する必要がある。可動部品間のケーブル・フィードスルーは、直線運動にはケーブル・スラブを、回転運動には回転フィードスルーを使用することが多い。ケーブルの量、曲げ剛性、直径によって、フィードスルーの寸法と複雑さが増す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示の目的は、磁気浮上を用いた、剛体ボディの他の剛体ボディに対する相対的な直線移動経路に沿った非接触直線移動を目的としたシステムにおいて、剛体ボディと他の剛体ボディとの間のエアギャップ距離を決定するのに適した静電容量式センサ装置であって、より単純で安価な構成を有する静電容量式センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の実施の形態によれば、静電容量式センサ装置は、一方の剛体ボディに取り付けられた第1のセンサノードと他方の剛体ボディに取り付けられた第2のセンサノードとを有する静電容量式センサ部品と、入力信号を受信する少なくとも第1の入力ノードと、距離を表す出力信号を与える出力ノードとを有する送信部品と、静電容量式センサ部品の第1のセンサノードに動作可能に接続され、送信部品の第1の入力ノードが静電容量式センサ部品の第2のセンサノードに動作可能に接続された周波数依存入力信号発生器と、を備える。
【0012】
周波数依存入力信号発生器によって生成された周波数依存入力信号を、対象剛体ボディを接地電位にする代わりに、対象剛体ボディ(第1のセンサノード)に印加することにより、他方の剛体ボディに取り付けられた静電容量式センサの測定面を仮想接地電位に保つことができる。周波数に依存する入力信号により、周波数依存入力信号の振幅と、対象剛体ボディと測定面との間の静電容量式センサ部品のインピーダンス(したがって、エアギャップ/センサノード間の相対距離に比例する)に応じて、対象剛体ボディから仮想接地へ電流が流れる。
【0013】
この構成により、他方の剛体ボディ(第2のセンサノード)に取り付けられた静電容量式センサ部品の測定面は実質的に接地電位となるため、能動遮蔽を省略することができる。能動遮蔽を使用しないことで、複雑な信号ケーブルを、直径が小さく曲げ剛性の低い同軸ケーブルに置き換えられるなど、いくつかの利点が得られる。後者は、回転式ケーブル・フィードスルーにおいて有益である。同軸ケーブルの中心導体は測定信号に使用され、外部導体は接地電位に保たれて遮蔽に使用される。さらに、センサプローブが必要とする活性表面と絶縁層が少ないことで、磁気軸受エアギャップ領域内の統合により適したものとなる。
【0014】
さらなる実施の形態では、少なくとも1つのフィルタ素子が、送信部品の出力ノードおよび第1の入力ノードに動作可能に接続されている。このフィルタ素子は基準コンデンサとして機能する。送信部品は、基準コンデンサを流れる電流が対象から仮想グランドに流れる電流と等しくなるように、出力ノードにその出力信号を印加する。従って出力信号は、対象剛体ボディと他方の剛体ボディ上の静電容量式センサ装置の測定面との間のエアギャップの測定値となる。
【0015】
従って送信部品は、入力信号の周波数依存的な変化に応答して出力信号を出力するように構成されてもよい。
【0016】
さらに送信部品は、接地電位に動作可能に接続された第2の入力ノードを有してもよい。
【0017】
好ましくは送信部品は、第1の入力ノードが反転入力ノードであり、第2の入力ノードが非反転入力ノードであるオペアンプとして構成される。
【0018】
本開示による磁気軸受アセンブリは、本開示による静電容量式センサ装置を実装する。この磁気軸受アセンブリは、剛体ボディ(第1のセンサノード)に取り付けられる少なくとも1つの第1の静的背鉄と、他方の剛体ボディに取り付けられる少なくとも1つの磁気軸受モジュールをさらに備える。さらにこの磁気軸受アセンブリは、少なくとも、強磁性コアと、第1の静的背鉄に対向する強磁性コアの第1側面に配置された第1の磁性体素子と、強磁性コアに巻かれたコイルと、から構成される。
【0019】
この磁気軸受アセンブリの一例では、静電容量式センサ装置の第2のセンサノードは、強磁性コアの第1側面に配置されている。
【0020】
さらに、磁気軸受アセンブリ/静電容量式センサ装置は、ハウジングを備えてもよい。ハウジングの一部(ハウジング部品)は、静電容量式センサの第2のセンサノードをその第1部品側面で支持するように構成される。第1部品側面は、距離を隔てて強磁性コアの第1側面と対向している。静電容量式センサの第2のセンサノードを支持するハウジング部品は、誘電体材料、特にガラスで作られていてもよい。
【0021】
静電容量式センサ部品の第2のセンサノードを支持しない部分は、接地電位に動作可能に接続されていてもよい。
【0022】
磁気軸受アセンブリと同様に、静電容量式センサ装置は、静電容量式センサ部品の第2のセンサノードを支持するハウジング部品のさらなる部品側面に取り付けられた遮蔽部品をさらに備えてもよい。そのさらなる部分側面は強磁性コアの第1側面に対向している。この受動遮蔽は、金属部品が寄生容量として作用して測定品質を歪めるのを防ぐために、測定領域の背後に配置される。
【0023】
特に、静電容量式センサの第2センサノードを支持するハウジング部品は、櫛状の領域形状を有していてもよい。これにより、静電容量式センサの第2センサノードを支持するハウジングの部分の表面が磁気軸受モジュールの磁界の内側に位置するため、誘導渦電流が最小限に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【
図1】磁気軸受アセンブリの実施の形態の概略例を示す図である。
【
図2】本開示による静電容量式センサ装置の実施の形態の概略例を示す図である。
【
図3】本開示による容量式センサ装置を組み込んだ磁気軸受アセンブリの実施の形態の概略例を示す図である。
【
図4】本開示による静電容量式センサ装置の実施の形態のさらなる詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の適切な理解のために、以下の詳細な説明では、本発明の対応する要素または部品には図面において同一の符号を付す。
【0026】
図1に、本開示による静電容量式センサ装置を実施するのに適した可変リラクタンス磁気軸受アセンブリの概略例を示す。
図1の磁気軸受アセンブリは、符号10で示される。磁気軸受アセンブリ10は、剛体ボディの別の剛体ボディに対する直線移動経路に沿った非接触直線移動(または単一の並進自由度)を可能にする。
図1では、一方の剛体ボディを符号20で示し、他方の剛体ボディを符号30で示す。
【0027】
分かりやすくするために、一例として、直線案内路アセンブリは、直線移動経路を定義する直線案内路として形成された剛体ボディ30で構成される。前記直線案内路に沿って、製品キャリアとして形成された1つまたは複数の剛体ボディ20が磁気浮上を利用して移動可能である。
【0028】
磁気軸受アセンブリ10は、剛体ボディ30の1つに取り付けられ、少なくとも強磁性コア31からなる少なくとも1つの軸受モジュール30’(31-35)からなる。本開示の理解のために、任意の強磁性コアを設計できることに留意すべきである。しかし、
図1の例では、強磁性コア31は、基部31a、中央脚部33、および2つの外側脚部32a-32bを有するEコアである。強磁性コア31の第1の側(破線31aで示す)には第1の磁性素子34が配置される。この例では、強磁性コア31の第1の端部は、中央脚部33の自由端面33aに位置している。またこの例では、コイル35がEコアの中央脚33に巻かれている。
【0029】
しかしながら、磁気軸受アセンブリ10は、強磁性コア31の第1の側面31aに配置されたコア要素および任意選択で磁気要素の周りに巻かれたコイルを有する強磁性コアの任意の設計により実現できることに留意されたい。
【0030】
さらに磁気軸受アセンブリ10は、少なくとも第1の静的背面鉄または背面軸受20を有する。第1の静的背面鉄または背面軸受20は、剛体ボディ20の他方(移動可能な製品キャリア)に取り付けられ(またはその一部を構成し)、使用中、軸受モジュール31-34の側面から一定のギャップ距離40(
図1においてg1で示される)を隔てて配置される。
【0031】
好ましくは(必須ではないが)、Eコア31として設計される強磁性コアは積層Eコアからなり、第1の磁気要素34は永久磁石と考えてよい。
【0032】
使用中または動作中、第1の静的背面軸受けまたは背面鉄は、Eコアアセンブリ31-34-35からギャップ距離40(g1)を隔てて配置される。この構成は低リラクタンス経路を定義する。その結果、ギャップ距離40によって定義されるエアギャップg1内の磁束密度は、Eコアアセンブリ31-34-35(およびそのような一方の剛体ボディ30)と、他方の剛体ボディ(第1の静的背面軸受(背面鉄)20として概略的に描かれている)との間に、ギャップに依存する吸引力をもたらす。
【0033】
Eコア31の中央の脚または歯35に巻かれたコイル35は、コイル35を流れる電流の方向と大きさに基づいて、エアギャップg1(40)内の磁束密度を増大または減少させる。磁気軸受アセンブリ10(実際には、少なくとも1つの軸受モジュール31-34-51)は、Eコア31と第1の静的背面軸受(背面鉄)20との間に、吸引力のみ発生させ、反発力は発生させないことに留意されたい。
【0034】
磁気軸受アプリケーションでは、直線案内路アセンブリのクローズドループフィードバック制御を可能にするために、2つの剛体ボディ20、30間の磁気エアギャップg1(40)を非接触で測定する移動センサが必要である。こうした用途には、静電容量式センサ装置がよく適用される。
【0035】
図2および
図3に、本発明による剛体ボディの他の剛体ボディに対する直線移動経路に沿って非接触直線移動を行うシステムにおいて、剛体ボディと他の剛体ボディとの間の距離を決定する静電容量式センサ装置の一例を示す。
【0036】
静電容量式センサ装置は、符号100で示され、静電容量式センサ部品110から構成される。静電容量式センサ部品110は、剛体ボディ20(移動可能な製品キャリア)に結合または取り付けられる第1のセンサノード110aを備える。同様に、静電容量式センサ部品110は、他方の剛体ボディ30(直線案内路)に結合されたまたは取り付けられた第2のセンサノード110bを備える。第1および第2のセンサノード110a-110bの両方は、互いに近接して取り付けられ、静電容量Cxを形成する。従って、2つの剛体ボディ20および30間のエアギャップg1(40)の距離を非接触に感知することができる。
【0037】
静電容量式センサ部品110は、符号120で示される伝送部品も含んでいる。この実施形態では、伝送部品120は、他方の剛体ボディ30に取り付けられている。伝送部品120は、少なくとも第1の入力ノード120aを有する。この入力ノード120aは、静電容量式センサ部品110の第2のセンサノード110bに動作可能に接続されている。従って、動作中、伝送部品120は、静電容量式センサ部品110から入力信号を受信する。この入力信号は、第2のセンサノード110bによって出力され、伝送部品120の第1の入力ノード120aに入力する。
【0038】
送信部品120はまた、出力信号Voutを与える出力ノード120bを備える。出力信号Voutは、2つの剛体ボディ20、30間の距離g1(40)を表し、静電容量式センサ部品110のセンサノード110a-110bによって検出される
【0039】
静電容量式センサ装置100はさらに、周波数依存入力信号発生器130を備える。周波数依存入力信号発生器130は、大地または接地電位1000と、静電容量式センサ部品110の第1のセンサノード110aとの両方に動作可能に接続され、第1のセンサノード110aに発振電圧信号Voscを印加することができる。
【0040】
また
図2には、少なくとも1つのフィルタ素子140(C
ref)が描かれている。このフィルタ素子140は、送信部品120の第1の入力ノード120aと同様に、出力ノード120bにも動作可能に接続されている。送信部品120はまた、第2の入力ノード120cを構成し、この例では接地電位1000に動作可能に接続されている。
【0041】
本発明による静電容量式センサ装置の適切な動作のために(従って剛体ボディ20および30間のエアギャップg1(40)の正確な測定のために)、送信部品120は、第1のセンサノード110aに印加される発振電圧信号Voscと、第1および第2のセンサノード110a-110bの両方の間の実際のエアギャップ距離g1(40)とに基づいて、静電容量式センサ部品110で生成される入力信号の周波数に依存する変化に応答して、出力ノード120bを介して出力信号Vrefを出力するように構成される。
【0042】
図2に示すように、この具体例では、送信部品120は、第1の入力ノード120aが反転(-)入力ノードであり、第2の入力ノード120cが非反転(+)入力ノードであるようなオペアンプとして構成される。
【0043】
図2に組み合わせて
図1に戻ると、
図1の磁気軸受アセンブリ10は、
図2に示されるような容量式センサ装置100を備えており、センサ部品110の各第2のセンサノード110bは、強磁性コアの第1側面33aに配置されている。
【0044】
図3は、本発明による静電容量式センサ装置100を備える磁気軸受アセンブリの一例をより詳細に示している。
【0045】
静電容量式センサ部品110の第1のセンサノード110aは、剛体ボディ20に取り付けられている。単芯ケーブル130aは、周波数依存入力信号発生器130に電力を供給し、第1のセンサノード110aに発振電圧信号Voscを印加する役割を果たす。静電容量式センサ部品110の第2のセンサノード110bは、磁気軸受アセンブリ30として形成され、他方の剛体ボディ30に取り付けられる。
【0046】
磁気軸受アセンブリ30は、ハウジング300を備える。符号310で示されるハウジング300の一部は、静電容量式センサ100の第2のセンサノード110bをその第1部品側面310aで支持する構造となっている。ハウジング部品310の第1部品側面310aは、距離を隔てて強磁性コア31の第1の側面31aと対向している。
【0047】
好ましくは、静電容量式センサ部品110の第2のセンサノード110bを支持するハウジング部品310は、誘電体材料、特にガラスで形成される。ガラス板で形成されるハウジング部品310は、0.15mmの厚さを有していてもよい。
【0048】
静電容量式センサ部品110の第2のセンサノード110bをそのさらなる側面310bで支持するように構成されたハウジングのハウジング部品310には、遮蔽部品320が取り付けられている。さらなる側面310bは、強磁性コアの第1の側面31aに面している。遮蔽部品320は、受動的なガード領域として機能する。
【0049】
第2のセンサノード110bによって形成される測定領域、および、受動的ガード領域または遮蔽部品320は、ハウジング部品310(ガラス板)の両側面310aおよび310b上にそれぞれ物理蒸着技術を用いて塗布される1-5μmの銀(Ag)の薄層として形成することができる。しかし、より大量生産に適した他の層堆積技術を利用してもよいことは言うまでもない。
【0050】
さらなる実施形態では、第2のセンサノード110bによって形成される測定層領域は、第2のセンサノード110bが磁気軸受モジュール30の磁界内に位置するため、渦電流を最小化するために櫛のような形状を有していてもよい。
【0051】
あるいは、ガラス板310は、厚さ0.5mmのウォータージェット切断されたガラスフレームを受動ガード/遮蔽部品320の上のさらなる側面310bに接着することによって補強することができる。
【0052】
好ましくは、静電容量式センサ部品110の第2のセンサノード110bを支持していないハウジング300の他の部分は、接地電位1000に動作可能に接続される。
【0053】
ほとんどの市販の容量式センサ装置は、単一プレート容量式センサ設計を使用する。既知の測定原理によれば、
図1の磁気軸受モジュールに実装される場合、(移動される製品キャリアである)剛体ボディ20は、接地電位になければならない。従って、振動電圧信号V
oscは、基準コンデンサを介して、測定面(第2のセンサノード110b)上の他方の剛体ボディ30(磁気軸受モジュールを備えた直線案内路)に供給される必要がある。電圧信号は、第2のセンサノード110bのセンサ出力として測定される。
【0054】
既知の測定原理によれば、剛体ボディ20は接地電位にあり、第2のセンサノード110b(測定面)を有する磁気軸受モジュール30は可変電位にある必要がある。この測定構成には、測定面/第2のセンサノード110bに物理的に近接して配置された全ての構成要素が寄生容量として作用するという欠点がある。これらの寄生容量の影響を最小化し、電界線のフリンジのようなエッジ効果を最小化するために、能動遮蔽部品として機能する2次アクティブガード面を、測定面/第2のセンサノード110bの後方および周囲に実装する必要がある。
【0055】
この能動遮蔽部品は、測定面/第2のセンサノード110bと同じ電位にアクティブに保たれる必要がある。従って、能動遮蔽部品は、測定面/第2のセンサノード110bおよびセンサハウジング300の両方から電気的に絶縁される必要がある。結果的にこのような既知のセンサデザインは、より複雑な機械的構造を有し、構造寸法が大きくなる。
【0056】
さらに、既知の静電容量式センサ装置を処理電子機器に接続する信号ケーブルは、通常、3軸ケーブルである。その中心コアは測定信号に使用され、中間導体は能動遮蔽部品に向かうアクティブガード信号に使用され、外側遮蔽は遮蔽目的のために接地電位に保たれる。このような設計では、アクティブガード信号線は接地電位に保たれた外部遮蔽の近くに位置する。このタイプのケーブル構成では、接地電位に対する静電容量が比較的小さくなり、能動遮蔽部品のアクティブガード信号を生成するユニティゲイン増幅器に対する要求が高くなる。
【0057】
その結果、既知の静電容量式センサ装置から処理電子機器までかなりの長さの信号ケーブルを使用するアプリケーションでは、能動遮蔽部品を正確に同じ電位に保つのがより難しくなる可能性がある。
【0058】
図2および
図3に示されるように、本発明による静電容量式センサ装置100は、周波数依存入力信号発生器130を取り付けることにより、剛体ボディ20を接地電位1000にする代わりに、剛体ボディ20(移動可能な製品キャリア)に振動電圧信号V
oscを印加する点で既知のセンサ設計と異なる。これにより、センサ装置の測定面を仮想接地電位1000に保つことができる。発振励起信号V
oscは、発振電圧の振幅、および、剛体ボディ20(移動可能な製品キャリア)と磁気軸受モジュール30との間における両センサノード110a-110b間のキャパシタンスのインピーダンスC
xに応じて、剛体ボディ20(移動可能な製品キャリア)から仮想接地への電流を引き起こす。
【0059】
フィルタ素子または基準コンデンサ140(Cref)は、出力ノード120bと第1の入力ノード120aとの間のオペアンプ120の帰還経路上に配置される。送信部品120(演算増幅器)は、フィルタ素子または基準コンデンサ140を流れる電流が剛体ボディ20/静電容量式センサ部品110から仮想接地へ流れる電流と等しくなるように、出力ノード120bに電圧Voutを印加する。従って、出力電圧Voutは、剛体ボディ20(製品キャリア)と他の剛体ボディ30(直線案内路)との間のギャップg1(40)の測定値となる。
【0060】
静電容量式センサ装置100の測定部分(ここでは、第2のセンサノード110b、および静電容量式センサ部品110)は、実質的に接地電位1000にあるため、能動的な遮蔽部品を省略することができる。このとき、金属部品が寄生容量として作用するのを防ぐために、受動遮蔽部品320が第2のセンサノード110bの背後に配置される。能動的な遮蔽部品を含まないことには、以下の利点がある。
-上記のような既知のセンサ装置の構成における複雑な3軸信号ケーブルは、直径が小さく曲げ剛性が低い同軸ケーブル100aに置き代えることができる。後者は、回転ケーブルフィードスルーにおいて有益である。同軸ケーブル110aの中心導体は測定信号Voutに使用され、外部導体は接地電位1000に保たれ、遮蔽に使用される。
-本発明による静電容量式センサ装置100は、必要なアクティブ測定面や絶縁層が少ない。このため、磁気軸受モジュール内部、剛体ボディ/製品キャリア20と磁気軸受モジュール/直線案内路30との間のエアギャップ40の近くまたはエアギャップ40内部に組み込むのに適している。複雑な電気部品が少ないこの設計は、コスト、測定精度、最小限のケーブル、最小限のエネルギー散逸のバランスを最適化する。
【0061】
好ましくは、好適な用途では、複数の磁気軸受モジュール30が、本発明による複数の静電容量式センサ装置100を必要とする直線案内路アセンブリに使用される。これらの静電容量式センサ装置100は、移動する製品キャリア(第1の剛体ボディ20)および直線案内路30のいずれかに配置される。センサプローブから処理電子機器に向かう信号ケーブルの量をさらに最小限にするために、複数の静電容量式センサ装置100は、中央コントローラまたは中央電子回路基板(PCB)に電子的に接続される。
【0062】
図4に、このような中央制御装置または中央電子回路基板(PCB)400の一例が示されており、複数の機能を実装している。これには、
図2を参照して説明したように、基準コンデンサC
ref/フィルタ素子140を使用した電流測定が含まれる。中央コントローラ/中央電子回路基板(PCB)400は、使用されるn個の容量式センサ装置100-1/100-nの数に適合する複数の入力ノード400-1/400-nを有する。
【0063】
フィルタと組み合わせた同期整流器または同期検波器は、様々なn個の振動測定信号Voutを、各測定チャネルに対応するn個の直流(DC)測定(電圧)信号に変換するために使われる。同期検波は、外乱信号の影響を最小限に抑える。対応するn個の直流(DC)測定(電圧)信号の合計5個の測定信号は、1本の配線400-2を介して出力される1個の多重化出力信号に多重化され、信号はプリアンプされる。このPCB設計は、信号ケーブルの量を最小化するように設計されているため、電力損失を最小化することができる。
【0064】
合計2本の同軸ケーブル400-2a/2bが、6つの異なる信号を伝送するように、前処理PCB400から後処理PCB500まで通っている。1本の同軸ケーブル400-2aは、同期検出に必要な発振信号を伝送する。振幅±12Vのこの発振信号は、-15Vだけオフセットされる。同軸ケーブル400-2aの被覆は+15Vであり、デマルチプレクサ用の同期パルスを含む。第2の同軸ケーブル400-2bは多重化された測定信号を伝送し、被覆は信号グラウンドを伝送する。
【0065】
この設計により、信号対ノイズ比(S/R)が改善され、測定信号Voutを容量式センサ装置100の近くで増幅することにより、外部ノイズ源の影響が最小限に抑えられる。アナログからデジタルへの変換(A/D)は、PCB400でのエネルギー散逸を最小限に抑えるため、前処理PCB400ではなく、後処理PCB500で行われる。この構成により、熱安定性が重要視される真空環境内での応用が可能になる。
【符号の説明】
【0066】
10・・磁気ベアリングアセンブリ、
20・・剛体ボディ、
30・・他の剛体ボディ、
30’・・磁気軸受モジュール、
31・・強磁性コア、
31a・・強磁性コアの第1側面、
32a-32b・・強磁性コアの外側脚部、
33・・強磁性コアの中央脚、
33a・・中央脚の自由端面、
34・・第1の磁性体素子、
35・・コイル、
40/g1・・エアギャップ、
100・・静電容量式センサ装置、
100a・・静電容量式センサ装置の同軸信号ケーブル、
110・・静電容量式センサ部品、
110a・・第1のセンサノード、
110b・・第2のセンサノード、
120・・送信部品、
120a・・送信部品の第1の入力ノード、
120b・・伝送部品の出力ノード、
120c・・伝送部品の第1の入力ノード、
130・・周波数依存入力信号発生器、
130a・・周波数依存入力信号発生器の単芯信号ケーブル、
140・・フィルタ素子、
300・・磁気軸受モジュール/容量式センサ装置のハウジング、
310・・ハウジング部品、
310a・・ハウジング部品310の第1部品側面、
310b・・ハウジング部品310のさらなる側面または第2部品側面、
320・・遮蔽部品、
400・・前処理回路基板PCB、
500・・後処理回路基板PCB、
1000・・グランド電位。
【国際調査報告】