(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】GDC-9545及びGDC-0077を含む併用療法を使用する乳がんの治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/437 20060101AFI20240205BHJP
A61K 31/553 20060101ALI20240205BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240205BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240205BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240205BHJP
A61K 31/4196 20060101ALI20240205BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240205BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
A61K31/437
A61K31/553
A61P15/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/4196
A61K31/519
A61P35/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548874
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(85)【翻訳文提出日】2023-10-05
(86)【国際出願番号】 US2022016270
(87)【国際公開番号】W WO2022177844
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】メトカーフ, シアラ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, シヤオチン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ, ウェイ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC60
4C086CB05
4C086CB09
4C086CB22
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
局所進行性乳がん又は転移性乳がんを治療するための、GDC-9545とGDC-0077とを含む併用療法が、本明細書において提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最初の28日サイクルの1~28日目にQD投与されるGDC-9545又はその薬学的に許容される塩と、最初の28日サイクルの1~28日目にQD投与されるGDC-0077とを含む併用療法。
【請求項2】
GDC-0077が9mgの用量で投与される、請求項1に記載の併用療法。
【請求項3】
GDC-9545又はその薬学的に許容される塩が、30mgの量で投与される、請求項1又は2に記載の併用療法。
【請求項4】
投薬レジメンが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、30、36、42、48、54、60、66、又は72サイクルを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項5】
投薬レジメンが、約2~72、2~66、2~60、2~54、2~48、2~42、2~36、2~30、2~24、2~18、又は2~12サイクルを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項6】
エストロゲン受容体陽性及びHER2陰性の局所進行性乳がん(laBC)又は転移性乳がん(mBC)を、エストロゲン受容体陽性及びHER2陰性のlaBC又はmBCを有する患者において治療する方法であって、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む併用療法を患者に投与することを含み、前記併用療法が1つ又は複数の28日サイクルにわたって投与される、方法。
【請求項7】
エストロゲン受容体陽性及びHER2陰性の局所進行性乳がん(laBC)又は転移性乳がん(mBC)を、受容体陽性及びHER2陰性のlaBC又はmBCを有する患者において治療する方法であって、
i.最初の28日サイクルの1~28日目にGDC-9545又はその薬学的に許容される塩をQD投与することと、
ii.最初の28日サイクルの1~28日目にGDC-0077をQD投与することと
を含む投薬レジメンを含む併用療法を患者に投与することを含む、方法。
【請求項8】
GDC-0077が9mgの用量で投与される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
GDC-9545又はその薬学的に許容される塩が、30mgの量で投与される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
投薬レジメンが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、30、36、42、48、54、60、66、又は72サイクルを含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
投薬レジメンが、約2~72、2~66、2~60、2~54、2~48、2~42、2~36、2~30、2~24、2~18、又は2~12サイクルを含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
患者が閉経前である、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
患者が、エストロゲン受容体、プロスタグランジン受容体、又はKi67のうちの1つ又は複数の変異の存在について試験される、請求項6~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
患者が、R88Q;G106、K111、G118、N345、C420、E453、E542、E545、Q546、M1043、H1047、若しくはG1049、又はそれらの組み合わせに対応する位置におけるPIK3CAの1つ又は複数の変異を含む腫瘍を有する、請求項6~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
PIK3CAの変異が、
R88Q;
G106A/D/R/S/V;
K111N/R/E;
G118D;
N345D/H/I/K/S/T/Y;
C420R;
E453A/D/G/K/Q/V;
E542A/D/G/K/Q/R/V;
E545A/D/G/K/L/Q/R/V;
Q546E/H/K/L/P/R;
M1043I/T/V;
H1047D/I/L/N/P/Q/R/T/Y;若しくは
G1049A/C/D/R/S;
又はそれらの組み合わせ
に対応する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
PIK3CAの変異が、E542K、E545K、Q546R、H1047L及びH1047Rからなる群より選択される1つの変異と、E453Q/K、E726K及びM1043L/Iからなる群より選択される第2の変異とを含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
PIK3CAの変異が、E542K+E453Q/K、E542K+E726K、E542K+M1043L/I;E545K+E453Q/K、E545K+E726K、E545K+M1043L/I;H1047R+E453Q/K、及びH1047R+E726Kからなる群より選択される二重変異から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
患者が、対照と比較して、減少した有害事象(AE)を有する、請求項6~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
患者が、対照と比較して、肝毒性、徐脈、高血糖、口内炎/口腔粘膜炎、発疹、下痢/大腸炎、若しくは肺炎、又はそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ又は複数のAEの減少した重症度を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
患者が、対照と比較して、併用療法の投与後に、同じレベル又は減少したレベルの徐脈又は高血糖を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
患者が、対照と比較して、増加した全生存期間(OS)を有する、請求項6~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
患者が、対照と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、24ヶ月、又はそれより長い月数の増加を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
併用療法に対する奏効期間が、対照と比較して増加する、請求項6~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
奏効期間が、少なくとも1ヶ月~3ヶ月、2ヶ月~6ヶ月、3ヶ月~8ヶ月、4ヶ月~10ヶ月、5ヶ月~12ヶ月、6ヶ月~15ヶ月、8ヶ月~20ヶ月、又は1ヶ月~24ヶ月増加する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
患者が、対照と比較して、増加した臨床的有用率を有する、請求項6~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
患者が、対照と比較して、増加した無増悪生存期間を有する、請求項6~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
増加が、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、36、42、48、50、54、60、66又は72ヶ月である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
対照が、GDC-9545を単独投与されるか又はレトロゾールと組み合わせたパルボシクリブを投与される、請求項18~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
患者が、併用療法の投与前に、従前の化学療法を受けたことがない、請求項6~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
患者が、PI3K、AKT、又はmTOR阻害剤で以前に治療されたことがない、請求項6~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
患者が、フルベストラントで以前に治療されたことがある、請求項6~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
laBC又はmBCの治療のための、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む併用療法の使用。
【請求項33】
laBC又はmBCの治療のための医薬の製造のための、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む併用療法の使用。
【請求項34】
併用療法が、(i)最初の28日サイクルの1~28日目に30mgのGDC-9545又はその薬学的に許容される塩をQD投与することと、(ii)最初の28日サイクルの1~28日目にmgのGDC-0077をQD投与することとを含む投薬レジメンを含む、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
併用療法が、laBCの治療のためのものである、請求項32~34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
併用療法が、mBCの治療のためのものである、請求項32~34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
laBC又はmBCを有する患者において腫瘍増殖を阻害する方法であって、1つ又は複数の28日サイクルで、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む併用療法を投与することを含む、方法。
【請求項38】
laBC又はmBCを有する患者において腫瘍退縮を生じさせるか又は改善する方法であって、1つ又は複数の28日サイクルで、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む併用療法を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本非仮特許出願は、2021年2月16日に出願された米国仮特許出願第63/149,944号の利益を主張し、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
発明の分野
[0002]乳がんを治療するための、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077又はその薬学的に許容される塩とを含む併用療法が本明細書で提供される。
【背景技術】
【0003】
[0003]乳がんは女性が診断されるがんの中で最も頻繁に発生しており、2018年には世界全体で推定210万人の新たな発症率が報告されている(Bray et al. CA Canver J Clin 2018;68:394-424)。乳がんは全がん死亡の約12%(約627,000例)を占める。乳がんの死亡率は地域によって異なり、世界の先進地域ではより良好な生存率が観察される(同)。
【0004】
[0004]乳がんの初期治療は、乳がん細胞に見られる分子マーカーの存在によって導かれることが多い。これらのマーカーは、乳がんのサブタイプを同定するため及び腫瘍のホルモン受容体の含有量(エストロゲン受容体[ER]/プロゲステロン受容体[PR])の存在に基づく治療の開発を支援するために使用される。エストロゲン受容体-α(ER-α)を発現するホルモン受容体陽性(HR+)乳がんは、浸潤性乳がん全体の70%を占める。腫瘍におけるPR発現は、ER-αシグナル伝達のもう一つのマーカーである。内分泌系薬剤は、HR+乳がんのERシグナル伝達をダウンレギュレートするために用いられる標準治療である。
【0005】
[0005]ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)は、膜貫通型受容体チロシンキナーゼであり、乳がんの20%において増幅又は過剰発現している。HER2陽性乳がんの治療レジメンには、HER2指向性療法(抗HER2抗体及びチロシンキナーゼ阻害剤)が含まれる。
【0006】
[0006]すべてのHR+乳がんがETに最適に反応するわけではない。HR+乳がんにおける一次的及び/又は二次的なホルモン抵抗性につなり得るメカニズムには、ホルモン受容体発現の低減若しくは消失、又は上皮成長因子受容体若しくはHER2、MAPK、若しくはPI3K/Akt/mTOR経路などの成長因子シグナル伝達経路のアップレギュレーションが含まれる(Johnston et al. 2009; Musgrove and Sutherland 2009)。最近、エストロゲン受容体(ESR1)をコードする遺伝子の変異が転移性ER陽性(ER+)腫瘍で同定され、抗エストロゲン療法に対する抵抗性と関連している(Robinson et al. 2013;Toy et al. 2013;Jeselsohn et al. 2014)。
【0007】
[0007]したがって、再発性又は抵抗性のER陽性乳がんの治療のための臨床的に活性な薬剤に対する差し迫った必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
[0008]上記の問題及び当該技術分野における他の問題に対する解決策が、本明細書に提供される。
【0009】
[0009]本実施態様は、非限定的な態様を例示することが意図されている発明を実施するための形態及び実施例を参照することによって、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】[0010]野生型ESR1を含むMCF-7細胞における、単独又はPI3K若しくはCDK4/6阻害と組み合わせた、E2除去又はGDC-9545での治療による内分泌抑制の抗増殖効果を示す。細胞を図のように6から8日間処理し、相対生存率を評価した。* p<0.0001、パラメトリックt検定。
【
図2】[0011]変異(Y537S)ESR1を含むMCF-7細胞における、単独又はPI3K若しくはCDK4/6阻害と組み合わせた、E2除去又はGDC-9545での治療による内分泌抑制の抗増殖効果を示す。細胞を図のように6から8日間処理し、相対生存率を評価した。* p<0.0001、パラメトリックt検定。
【
図3】[0012]野生型ESR1を含むT-47D細胞における、単独又はPI3K若しくはCDK4/6阻害と組み合わせた、E2除去又はGDC-9545での治療による内分泌抑制の抗増殖効果を示す。細胞を図のように6から8日間処理し、相対生存率を評価した。* p<0.0001、パラメトリックt検定。
【
図4】[0013]変異(D538G)ESR1を含むT-47D細胞における、単独又はPI3K若しくはCDK4/6阻害と組み合わせた、E2除去又はGDC-9545での治療による内分泌抑制の抗増殖効果を示す。細胞を図のように6から8日間処理し、相対生存率を評価した。* p<0.0001、パラメトリックt検定。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0014]別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。例えば、Singleton et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 1994); Sambrook et al., MOLECULAR CLONING, A LABORATORY MANUAL, Cold Springs Harbor Press (Cold Springs Harbor, NY 1989)を参照のこと。本発明の実施においては、本明細書に記載されるものと類似した又は同等の任意の方法、装置及び材料を使用することができる。
【0012】
[0015]以下の定義は、本明細書で頻繁に用いられる特定の用語の理解を容易にするために提供されており、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。本明細書で言及されている全ての参照文献は、その全体が参照に援用される。
【0013】
[0016]本明細書で使用される場合、別途明記されていない限り、「約(about)」及び「およそ(approximately)」という用語は、組成物又は剤形の成分の用量、量又は重量パーセントを指す場合には、指定された用量、量又は重量パーセントから得られるものと同等の薬理的効果を提供することが当業者によって認識される、用量、量又は重量パーセントを意味する。同等の用量、量、又は重量パーセントは、指定された用量、量、又は重量パーセントの30%、20%、15%、10%、5%、1%、又はそれ未満以内であり得る。
【0014】
[0017]「GDC-9545」は、以下の構造:
化学名3-((1R,3R)-1-(2,6-ジフルオロ-4-((1-(3-フルオロプロピル)アゼチジン-3-イル)アミノ)フェニル)-3-メチル-1,3,4,9-テトラヒドロ-2H-ピリド[3,4-b]インドル-2-イル)-2,2-ジフルオロプロパン-1-オールを有する化合物を指し、その薬学的に許容される塩を含む。一実施態様において、GDC-9545は酒石酸塩である。本明細書で使用される「GDC-9545」は、遊離塩基及びGDC-9545の薬学的に許容される塩(その酒石酸塩を含む)を指す。GDC-9545は、ジレデストラントとしても知られている。
【0015】
[0018]「GDC-0077」は、以下の構造:
を有し、化学名(2S)-2-[[2-[(4S)-4-(ジフルオロメチル)-2-オキソ-3-オキサゾリジニル]-5,6-ジヒドロイミダゾ[1,2-d][1,4]ベンゾキサゼピン-9-イル]アミノ]プロパンアミドを有する化合物(その薬学的に許容される塩を含む)を指す。一実施態様では、GDC-0077は遊離塩基として投与される。本明細書で使用される「GDC-0077」は、遊離塩基及びGDC-0077の薬学的に許容される塩を指す。GDC-0077は、イナボリシブとしても知られている。
【0016】
[0019]「添付文書」という用語は、治療製品の商品パッケージに通例含まれる、そのような治療製品の効能、用法、用量、投与、禁忌及び/又は使用上の注意事項についての情報を含む説明書をいうのに使用される。
【0017】
[0020]「全生存期間」又は「OS」は、登録から何らかの原因での死亡までの時間を指す。
【0018】
[0021]「客観的奏効」は、RECIST v1.1に従って治験責任医師によって決定された完全奏効又は部分奏効を指す。
【0019】
[0022]「客観的奏効率」又は「ORR」は、RECIST v1.1に従って治験責任医師によって決定される、≧4週間離れた2回の連続した機会における確定された完全奏効又は部分奏効を有する患者の割合を指す。
【0020】
[0023]「無増悪期間」又は「TTP」は、ランダム化から客観的な腫瘍進行までの時間を指す。
【0021】
[0024]「奏効期間」又は「DOR」は、記録された客観的奏効の最初の発生から、RECIST v1.1に従って治験責任医師によって決定された疾患の進行、又は何らかの原因による死亡のうち、いずれか早い方までの時間を指す。
【0022】
[0025]「無増悪生存期間」又は「PFS」は、登録から、RECIST v1.1を使用して治験責任医師によって決定された最初の記録された疾患進行の発生又は何らかの原因による死亡のうち、いずれか早い方の日付までの時間を指す。
【0023】
[0026]「病勢コントロール率」又は「DCR」は、少なくとも12週間にわたって安定した病勢又はRECIST v1.1を使用して治験責任医師によって決定されるCR若しくはPRを有する患者の割合を指す。
【0024】
[0027]「臨床的有用率」又は「CBR」は、少なくとも24週間にわたって安定した病勢又はRECIST v1.1に従って治験責任医師によって決定される確定された完全奏効若しくは部分奏効を有する患者の割合を指す。
【0025】
[0028]「完全奏効」又は「CR」は、全ての標的病変及び非標的病変の消失並びに(該当する場合)腫瘍マーカーレベルの正常化を指す。
【0026】
[0029]「部分奏効」又は「非CR/非PD」は、1つ又は複数の非標的病変の持続及び/又は(該当する場合)正常限界を上回る腫瘍マーカーレベルの維持を指す。PRは、CRの不存在下での標的病変の直径の合計の≧30%の低減、新たな病変、及び非標的病変における明確な進行も指し得る。
【0027】
[0030]「進行性疾患」又は「PD」は、標的病変の直径の合計の≧20%の増加、非標的病変における明確な進行及び/又は新たな病変の出現を指す。]
【0028】
[0031]「安定した病勢」又は「SD」は、CR又はPRと認定するのに十分な縮小も、PDと認定するのに十分な腫瘍の増殖の増加もないことを指す。
【0029】
[0032]用語「局所進行性乳がん」という用語は、乳房の開始位置から近傍の組織又はリンパ節に広がったが、身体の他の部位には広がっていないがんを指す。
【0030】
[0033]「転移性乳がん」という用語は、乳房から身体の他の部位、例えば骨、肝臓、肺、又は脳へと広がったがんを指す。転移性乳がんは、IV期乳がんとも呼ばれ得る。
【0031】
[0034]「治療」という用語は、臨床病理の経過中に治療されている患者又は細胞の自然の経過を変化させるように設計された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果としては、疾患進行速度の低減、疾患状態の回復又は緩和、及び寛解又は予後の改善が挙げられる。例えば、がん細胞の増殖の減少(又は破壊)、疾患に起因する症候の低減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の低減、及び/又は患者の生存期間の延長を含むが、これらに限定されない、本明細書に記載されている乳がんに関連する1つ又は複数の症候が軽減又は排除された場合に、患者の「治療」は成功する。
【0032】
[0035]疾患の「進行を遅延させる」という用語は、本明細書に記載の乳がんの発症を先に延ばす、妨げる、遅らせる、遅延させる、安定化する、及び/又は延期することを指す。この遅延は、がんの病歴及び/又は治療されている患者に応じて様々な長さの期間のものであり得る。当業者であれば明らかなように、十分な遅延又は有意な遅延は、実質的に、患者ががんを発症しないという点において予防を包含することができる。
【0033】
[0036]「有効量」とは、本明細書に記載の乳がんの測定可能な改善又は予防を行うために必要とされる少なくとも最小の量である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別及び体重、並びに患者において所望の応答を誘発する薬剤の能力などの要因に応じて異なり得る。有効量は、治療上有益な作用が治療の任意の毒性作用又は有害作用を上回る量でもある。有益な又は所望の結果には、リスクの排除若しくは減少、重症度の軽減、疾患(疾患の生化学的、組織学的及び/又は行動的症候、その合併症並びに疾患の発症中に現れる中間的な病理学的表現型を含む)の発症の遅延、疾患に起因する1つ又は複数の症候の低減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患を治療するために必要な他の薬物の用量の低減、標的化などによる別の薬物の効果の増強、疾患の進行の遅延、及び/又は生存期間の延長などの結果が含まれる。いくつかの態様において、有効量の薬物は、がん細胞の数を減少させる;腫瘍サイズを縮小させる;末梢器官中へのがん細胞浸潤を阻害する(すなわち、遅らせ又は停止する);腫瘍転移を阻害する(すなわち、遅らせ又は停止する);腫瘍増殖を阻害する(すなわち、遅らせ又は停止する);及び/又は障害に関連する1つ又は複数の症候を軽減する上で効果を有し得る。有効量は、1回又はそれより多くの投与で投与され得る。本明細書に記載の薬物、化合物、医薬組成物又は併用療法の有効量は、直接的又は間接的に治療的治療を達成するのに十分な量であり得る。臨床的に理解されるように、有効量の薬物、化合物又は医薬組成物は、別の薬物、化合物、又は医薬組成物又は併用療法と組み合わせて達成されてもよく、又は達成されなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ又は複数の治療剤の投与との関連で考慮され得、1つ又は複数の他の薬剤と併せて望ましい結果が達成され得るか、又は達成されれば、単剤は有効量で与えられると考えられ得る。
【0034】
[0037]本明細書で用いられる「E2抑制スコア」とは、その抑制がエストロゲン受容体(ER)経路活性を反映している所定の遺伝子セットの総発現レベルを反映した数値を指す。
【0035】
[0038]本明細書で用いられる「E2誘導スコア」とは、その誘導がエストロゲン受容体(ER)経路活性を反映している所定の遺伝子セットの総発現レベルを反映した数値を指す。
【0036】
[0039]本明細書で用いられる場合、「ER経路活性スコア」とは、E2誘導スコアとE2抑制スコアとの間の数学的差異を反映する数値を指す。
【0037】
[0040]「投与期間」又は「サイクル」とは、本明細書に記載される1つ又は複数の薬剤(すなわち、GDC-9545若しくはその薬学的に許容される塩又はGDC-0077若しくはその薬学的に許容される塩)の投与を含む期間、及び本明細書に記載される1つ又は複数の薬剤の投与を含まない任意の期間を指す。例えば、サイクルは、全長28日間とすることができ、21日間の1つ又は複数の薬剤の投与、及び7日間の休止期間を含む。「休止期間」とは、少なくとも1つの本明細書に記載される薬剤(例えば、GDC-9545若しくはその薬学的に許容される塩又はGDC-0077若しくはその薬学的に許容される塩)が投与されない期間を指す。一実施態様では、休止期間とは、本明細書に記載される薬剤(例えば、GDC-9545若しくはその薬学的に許容される塩又はGDC-0077若しくはその薬学的に許容される塩)のいずれもが投与されない期間を指す。本明細書で提供される休止期間は、場合によっては、GDC-9545若しくはその薬学的に許容される塩又はGDC-0077若しくはその薬学的に許容される塩ではない別の薬剤の投与を含んでいてもよい。このような場合には、休止期間中の別の薬剤の投与は、本明細書に記載の薬剤の投与の妨害になったり、不利益を与えたりすべきではない。
【0038】
[0041]「投薬レジメン」とは、1つ又は複数のサイクルを含む、本明細書に記載の薬剤の投与期間を指し、各サイクルは、本明細書に記載の薬剤の投与を異なる回数又は異なる量で含むことができる。
【0039】
[0042]「QD」は、化合物を1日1回投与することを指す。
【0040】
[0043]「PO」は、本明細書に記載の薬剤の経口投与を指す。
【0041】
[0044]等級付けされた有害事象とは、NCI CTCAEによって確立された重症度の等級付け尺度を指す。一実施態様において、有害事象は、以下の表に従って等級付けされる。
【0042】
併用療法
[0045]GDC-9545又はその薬学的に許容される塩(例えば、GDC-9545酒石酸塩)とそのGDC-0077又はその薬学的に許容される塩とを含む併用療法が、本明細書に提供される。一実施態様では、本明細書に記載の併用療法は、本明細書に記載の特定の種類の乳がんの治療に有用である。一実施態様では、最初の28日サイクルの1~28日目にQD投与されるGDC-9545又はその薬学的に許容される塩と、最初の28日サイクルの1~28日目にQD投与されるGDC-0077又はその薬学的に許容される塩とを含む併用療法が本明細書で提供される。
【0043】
[0046]本明細書に記載の併用療法の一実施態様では、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩は、固定用量のQD投与として投与される。一実施態様では、投与は経口(PO)であり、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩は、錠剤又はカプセルとして製剤化される。一実施態様では、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩は、約1mg~100mg、1mg~50mg、1mg~30mg、10mg~100mg、10mg~50mg、又は10mg~30mgの量でQD投与される。別の実施態様では、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩は、約1、5、10、15、20、25、30、50、又は100mgの量で投与される。さらに別の実施態様では、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩は、約10、30、50、又は100mgの量で投与される。さらに別の実施態様では、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩は、30mgの量で投与される。
【0044】
[0047]本明細書に記載される併用療法の一実施態様では、GDC-0077は、9mgの量で投与される。このような投与は、単回投与(すなわち、単数又は複数の錠剤)で行われ得る。一実施態様では、本明細書に記載の患者が有害事象を経験するとき、GDC-0077の用量は、6mg又は3mgに減少される。GDC-0077は、本明細書に記載されているように、PO QD投与され得る。いくつかの実施態様では、GDC-0077は、本明細書に記載されるように、1つ又は複数の経口錠剤で投与される。好ましい一実施態様では、GDC-0077は、9mgの量の経口錠剤で投与される。
【0045】
[0048]本明細書に記載される併用療法は、投与のための1つ又は複数の薬剤を含むキットとして提供され得る。一実施態様では、キットは、本明細書に記載されるGDC-0077と組み合わせて投与するためのGDC-9545又はその薬学的に許容される塩を含む。別の実施態様では、キットは、GDC-0077と一緒に包装されたGDC-9545又はその薬学的に許容される塩を含み、そのキットは、各薬剤の別々の処方された投薬量を含む。さらに別の態様では、キットは、GDC-0077と共製剤化されたGDC-9545又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0046】
[0049]一実施態様では、本明細書に記載される併用療法の薬剤は、投与準備ができた形態で、又は、例えば、服用準備ができた経口錠剤/カプセルとしてキットで供給される。本明細書に記載のキットは、添付文書などの説明書を含むことができる。一実施態様では、説明書は添付文書であり、キット内の各薬剤に対して1つである。
【0047】
[0050]本明細書に記載される併用療法と、本明細書に記載される乳がんの治療における使用説明書とを含む、本明細書に詳述される方法を実施するためのキットがさらに提供される。
【0048】
[0051]一実施態様では、本明細書に記載される併用療法は、エストロゲン受容体陽性(ER+)、ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HER2-)の乳がんを治療するために使用することができる。別の実施態様では、本明細書に記載される併用療法は、ER+、HER2-局所進行性乳がん(laBC)、又はER+、HER2-転移性乳がん(mBC)を治療するために使用することができる。そのような一実施態様では、本明細書に記載の併用療法は、ER+、HER2- laBCの治療に使用することができる。そのような一実施態様では、本明細書に記載される併用療法は、ER+、HER2- mBCの治療に使用することができる。
【0049】
治療の方法
[0052]ER+、HER2-laBC又はmBCを、このようながんを有する患者において治療する方法が、本明細書において提供される。一実施態様では、そのようながんを有する患者において本明細書に記載のlaBC又はmBCを治療する方法(G1)であって、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む併用療法を患者に投与することを含む、方法が本明細書において提供される。本明細書で提供される方法(G1)の一実施態様では、本方法はlaBCの治療に使用される。本明細書で提供される方法(G1)の別の実施態様では、本方法はmBCの治療に使用される。
【0050】
[0053]そのようながんを有する患者において本明細書に記載のlaBC又はmBCを治療する方法(G2)であって、(i)最初の28日サイクルの1~28日目にGDC-9545又はその薬学的に許容される塩をQD投与することと、(ii)最初の28日サイクルの1~28日目にGDC-0077をQD投与することとを含む投薬レジメンを含む本明細書に記載される併用療法を患者に投与することを含む、方法が本明細書においてさらに提供される。本明細書で提供される方法(G2)の一実施態様では、本方法はlaBCの治療に使用される。本明細書で提供される方法(G2)の別の実施態様では、本方法はmBCの治療に使用される。
【0051】
[0054]G1又はG2の方法の一実施態様では、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩は、固定用量のQD投与として投与される。一実施態様では、投与は経口(PO)であり、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩は、錠剤又はカプセルとして製剤化される。一実施態様では、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩は、約1mg~100mg、1mg~50mg、1mg~30mg、10mg~100mg、10mg~50mg、又は10mg~30mgの量でQD投与される。別の実施態様では、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩は、約1、5、10、15、20、25、30、50、又は100mgの量で投与される。さらに別の実施態様では、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩は、約10、30、50、又は100mgの量で投与される。さらに別の実施態様では、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩は、約30mgの量で投与される。
【0052】
[0055]本明細書に記載される方法G1又はG2の一実施態様では、GDC-0077は、9mgの量で投与される。このような投与は、単回投与(すなわち、単数又は複数の錠剤)で行われ得る。一実施態様では、本明細書に記載の患者が有害事象を経験するとき、GDC-0077の用量は、6mg又は3mgに減少される。GDC-0077は、本明細書に記載されているように、PO QD投与され得る。いくつかの実施態様では、GDC-0077は、本明細書に記載されるように、1つ又は複数の経口錠剤で投与される。好ましい一実施態様では、GDC-0077は、9mgの量の経口錠剤で投与される。
【0053】
[0056]そのようながんを有する患者においてlaBC又はmBCを治療する方法(G3)であって、(i)最初の28日サイクルの1~28日目に30 mgのGDC-9545又はその薬学的に許容される塩をQD投与することと、(ii)最初の28日サイクルの1~28日目に9mgのGDC-0077をQD投与することとを含む投薬レジメンを含む本明細書に記載される併用療法を患者に投与することを含む、方法が本明細書においてまたさらに提供される。1つのこのような態様では、投薬レジメンは、本明細書に記載されるサイクルを2回以上含む。本明細書で提供される方法(G3)の一実施態様では、本方法はlaBCの治療に使用される。本明細書で提供される方法(G3)の別の実施態様では、本方法はmBCの治療に使用される。
【0054】
[0057]方法G1、G2、及びG3の一実施態様では、がんは、手術不能な局所進行性乳がん(laBC)又は転移性ER+乳がん(mBC)である。
【0055】
[0058]方法G1、G2、及びG3の一実施態様では、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077の組み合わせは、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストとの同時投与(治療)を必要としない。
【0056】
[0059]方法G1、G2、及びG3の一実施態様では、GDC-0077の投与量は減少され得る。そのような実施態様の1つでは、GDC-0077の用量は、最大2回の総減少で3mg減少され得る(すなわち、6mg QD又は3mg QDへの減少)。方法G1、G2、及びG3の一実施態様では、併用療法中の1つの薬剤(GDC-9454又はその薬学的に許容される塩又はGDC-0077)の投与は、最大28日間中断され得る。方法G1、G2、及びG3の一実施態様では、GDC-9545の用量は減少されない。
【0057】
[0060]本明細書に提供される乳がんを治療する方法G1、G2、及びG3)は、投薬レジメンの一部として、本明細書に記載される併用療法の投与を含むことができる。一実施態様では、投薬レジメンは、1つ又は複数のサイクルを含む。別の態様では、投薬レジメンは、少なくとも2つのサイクルを含む。別の局面では、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、30、36、42、48、54、60、66又は72サイクルを含む投薬レジメンが、本明細書において提供される。さらに別の実施態様では、投薬レジメンは、約2~72、2~66、2~60、2~54、2~48、2~42、2~36、2~30、2~24、2~18又は2~12サイクルを含む。一実施態様では、投薬レジメンは、所望の応答(例えば、OR、PFS、OS、ORR、DOR、CBR)が所望の結果(例えば、本明細書に記載される対照と比較して、OR、PFS、OS、ORR、DOR、CBRが増加)に達するまで、任意の回数のサイクルでの本明細書に記載される併用療法の投与を含む。別の態様では、投薬レジメンは、毒性が発現するか、又はその他患者がさらなる投与を妨げる1つ又は複数の有害事象(AE)を経験するまで、任意の回数のサイクルでの本明細書に記載される併用療法の投与を含む。さらに別の態様では、投薬レジメンは、疾患進行まで、任意の回数のサイクルでの本明細書に記載される併用療法の投与を含む。
【0058】
[0061]本明細書に記載される方法の一実施態様では、患者は閉経後の女性である。このような一実施態様では、患者は、(i)60歳以上;(ii)60歳未満であり、経口避妊薬、ホルモン補充療法、又はゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト若しくはアンタゴニストが存在しない場合において、局所的な臨床検査評価により、12ヶ月以上の無月経に加えて閉経後の範囲内の卵胞刺激ホルモン(FSH)及び血漿エストラジオールレベルを有する;又は(iii)両側卵巣摘出術を受けた記録がある。
【0059】
[0062]本明細書に記載される方法の別の実施態様では、患者は、閉経前又は閉経期(すなわち、閉経後ではない)の女性である。1つのこのような実施態様では、患者は、本明細書に記載される併用療法と組み合わせてLHRHアゴニストで治療される。LHRHアゴニスト療法は、サイクル1の1日目の28日前に開始され得る。一実施態様では、LHRHアゴニストは、各サイクルの1日目に投与される。
【0060】
[0063]本明細書に記載される方法の別の実施態様では、患者は男性である。1つのこのような態様では、患者は、本明細書に記載される併用療法と組み合わせてLHRHアゴニストで治療される。
【0061】
[0064]本明細書に記載される方法の一実施態様では、本明細書に記載される患者は、エストロゲン受容体、プロスタグランジン受容体、又はKi67の存在について試験されている。本明細書に記載される方法の一実施態様では、本明細書に記載される患者は、American Society of Clinical Oncology/College of American Pathologistsのガイドラインに従って、記録されたER陽性腫瘍を有する。1つのこのような態様では、本明細書に記載される患者は、記録されたHER2陰性腫瘍を有する。
【0062】
[0065]本明細書に記載される方法の一実施態様では、本明細書に記載される患者は治療未経験である。1つのこのような実施態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法の投与前に、化学療法を受けていない。本明細書に記載される方法の別の実施態様では、本明細書に記載される患者は、アロマターゼ阻害剤、又はCDK4/6阻害剤(例えば、パルボシクリブ、アベマシクリブ、又はリボシクリブ)、又はこれらの組み合わせで以前に治療されたことがない。1つのこのような態様では、アロマターゼ阻害剤はアナストロゾール、エキセメスタン又はレトロゾールである。一実施態様では、本明細書に記載される患者は、レトロゾール、パルボシクリブ、又はそれらの組み合わせで以前に治療されたことがない。本明細書に記載される方法のさらに別の実施態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法の投与の少なくとも14日前に、外科手術、化学療法、又は放射線療法を受けていない。本明細書に記載される方法のさらに別の態様では、本明細書に記載される患者は、SERD(例えば、フルベストラント)又はタモキシフェンで以前に治療されたことがない。本明細書に記載される方法の別の実施態様では、患者は、以前にタモキシフェンによる治療を受けたことがあってもよいが、タモキシフェンによる治療の最初の24ヵ月以内に疾患の再発を示さなかったことを条件とする。
【0063】
[0066]本明細書に記載される方法の一実施態様では、患者は、本明細書に記載される併用療法の投与前に、1つ又は複数のがん療法で治療されたことがある。一実施態様では、本明細書に記載される患者は、以前にタモキシフェンによる治療を受けたことがある。別の実施態様では、本明細書に記載される患者は、併用療法の投与前に、PIK阻害剤又はmTOR阻害剤で以前に治療されたことがある。別の実施態様では、本明細書に記載される患者は、以前にフルベストラントによる治療を受けたことがある。
【0064】
[0067]本明細書に記載される方法の一実施態様では、患者は、1つ又は複数のがん療法に抵抗性である本明細書に記載される乳がんを有する。本明細書に記載される方法の一実施態様では、がん治療に対する抵抗性は、がん又は難治性がんの再発を含む。再発とは、治療後における元の部位又は新たな部位でのがんの再発生を指し得る。本明細書に記載される方法の一実施態様では、がん療法への抵抗性は、抗がん療法での治療中のがんの進行を含む。本明細書に記載される方法のいくつかの態様において、がん療法に対する抵抗性には、治療に応答しないがんが含まれる。がんは、治療の開始時に抵抗性であり得、又は治療中に抵抗性となり得る。
【0065】
[0068]全身化学療法は、mBCを有する患者に対する標準治療(SOC)の1つと見なされているが、標準的なレジメン又はシーケンスは存在しない。本明細書に記載される方法の一実施態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法の投与前に、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、エベロリムス、パルボシクリブ及びレトロゾール、フルベストラント、タモキシフェン、トレミフェン、酢酸メゲストロール、フルオキセメステロン、エチニルエストラジオール、ドキソルビシン、ペグ化リポソームドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、ドセタキセル、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU)、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)、カルボプラチン、シスプラチン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エリブリン、イキサベピロン、トラスツズマブ及びペルツズマブ、又はそれらの組み合わせからなる群より選択される療法のうちの1つ又は複数で以前に治療されたことがある。
【0066】
[0069]本明細書に記載される方法の一実施態様では、本明細書に記載される患者は、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、エベロリムス、パルボシクリブ及びレトロゾール、フルベストラント、タモキシフェン、トレミフェン、酢酸メゲストロール、フルオキセメステロン、エチニルエストラジオール、ドキソルビシン、ペグ化リポソームドキソルビシン、エピルビシン、シクロホスファミド、ドセタキセル、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU)、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)、カルボプラチン、シスプラチン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビノレルビン、エリブリン、イキサベピロン、トラスツズマブ及びペルツズマブ、又はそれらの組み合わせからなる群より選択される単剤療法のうちの1つ又は複数に対して耐性である、本明細書に記載されるlaBC又はmBCを有し得る。
【0067】
[0070]本明細書に記載される方法の一実施態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法の投与前に、例えば、乳房を温存する手術(すなわち、マージンを伴った原発腫瘍の除去に焦点を合わせた乳腺腫瘍摘出術)、又はより広範囲の手術(すなわち、全ての乳房組織の完全な除去を目的とする乳房切除術)などの外科的治療を受けていてもよい。本明細書に記載される方法の別の実施態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法による治療後に外科的治療を受けてもよい。
【0068】
[0071]放射線療法も、術後に残存している顕微レベルのがん細胞を殺滅する目的で、乳房/胸壁及び/又は所属リンパ節に術後に適用される。乳房温存手術の場合、放射線は残りの乳房組織に、時には所属リンパ節(腋窩リンパ節を含む)に照射される。乳房切除術の場合でも、局所再発のリスクが高いと予測される因子があれば、放射線がさらに照射されることがある。本明細書で提供される方法のいくつかの態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法の投与前に放射線療法を受けたことがあり得る。本明細書で提供される方法の他の態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法の投与後に放射線療法を受け得る。
【0069】
[0072]本明細書に記載される方法のいくつかの実施態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法の投与前5年以内に他の悪性腫瘍の病歴を有しない。本明細書に記載される方法のいくつかの実施態様では、本明細書に記載される患者は、活動性炎症性腸疾患、慢性下痢、短腸症候群又は胃切除術を含む大規模上部胃腸手術を有しない。本明細書に記載される方法のいくつかの実施態様では、本明細書に記載される患者は、心疾患又は心機能不全を有しない。
【0070】
[0073]本明細書に記載される方法の一実施態様では、本明細書に提供される方法による併用療法での治療は、対照(例えば、非治療、標準治療(SOC)、又は本明細書に記載される1つの薬剤(例えば、GDC-9545又はGDC-0077)単独による治療)と比較して、患者のOSを増加させる。本明細書に記載される方法の一実施態様では、本明細書に提供される方法による併用療法での治療は、対照(例えば、非治療、SOC、本明細書に記載される1つの薬剤(例えば、GDC-9545又はGDC-0077)単独による治療)と比較して、患者のOSを1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、24ヶ月又はそれより長い月数、増加させる。
【0071】
[0074]本明細書に記載される方法の一実施態様では、本明細書に提供される方法による併用療法での治療は、患者のORR量を増加させる。このような実施態様の1つでは、本明細書に提供される方法による併用療法での治療は、完全奏効(CR)又は部分奏効(PR)を有する患者を対照より多くもたらす。本明細書に記載される方法の別の態様では、本明細書に提供される方法による併用療法での治療後の患者において、TTPが増加する。本明細書に記載される方法のさらに別の実施態様では、併用療法に対する奏効期間が、対照(例えば、非治療、SOC、又は本明細書に記載される1つの薬剤(例えば、GDC-9545又はGDC-0077)単独による治療)と比較して増加する。このような態様の1つでは、奏効期間は、少なくとも1ヶ月~3ヶ月、2ヶ月~6ヶ月、3ヶ月~8ヶ月、4ヶ月~10ヶ月、5ヶ月~12ヶ月、6ヶ月~15ヶ月、8ヶ月~20ヶ月、又は1ヶ月~24ヶ月増加する。本明細書に記載される方法のさらに別の実施態様では、本明細書に記載される患者は、対照(例えば、非治療、SOC、GDC-9545単独による治療、又はGDC-0077単独による治療)と比較して増加した臨床的有用率を有する。本明細書に記載される方法のさらに別の実施態様では、患者は、対照(例えば、非治療、SOC、GDC-9545単独による治療、又はGDC-0077単独による治療)と比較して、増加した無増悪生存期間を有する。
【0072】
[0075]本明細書に提供される本発明の一実施態様では、患者は、本明細書に提供される方法による併用療法での治療後に、CRを有すると診断される。本明細書に提供される本発明の一実施態様では、患者は、本明細書に提供される方法による併用療法での治療後に、PRを有すると診断される。本明細書に提供される本発明の一実施態様では、患者は、本明細書に提供される方法による併用療法での治療後に、SDを有すると診断される。
【0073】
[0076]本明細書に記載されるlaBC又はmBCの治療のための、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077又はその薬学的に許容される塩とを含む本明細書に記載される併用療法の使用(U1)が本明細書においてさらに提供される。一実施態様は、本明細書に記載されるlaBC又はmBCの治療のための、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077又はその薬学的に許容される塩とを含む本明細書に記載される併用療法の使用(U2)である。一実施態様は、本明細書に記載されるlaBC又はmBCの治療のための、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077又はその薬学的に許容される塩とを含む本明細書に記載される併用療法の使用(U3)である。
【0074】
[0077]本明細書に記載されるmBCの治療のための、本明細書に記載されるGDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む本明細書に記載される併用療法の使用(GU1)が本明細書でさらに提供される。本明細書に記載されるlaBCの治療のための、本明細書に記載されるGDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む本明細書に記載される併用療法の使用(GU2)が本明細書でさらに提供される。
【0075】
[0078]本明細書に記載のlaBC又はmBCの治療のための、本明細書に記載されるGDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む併用療法の使用(GU3)であって、(i)最初の28日サイクルの1~28日目にGDC-9545又はその薬学的に許容される塩をQD投与することと、(ii)最初の28日サイクルの1~28日目にGDC-0077をQD投与することとを含む投薬レジメンを含む、本明細書に記載される併用療法の使用(GU3)が、本明細書においてさらに提供される。本明細書で提供される使用(GU3)の一実施態様では、併用療法はlaBCの治療のためのものである。本明細書で提供される使用(GU3)の別の実施態様では、併用療法はmBCの治療のためのものである。
【0076】
[0079]本明細書に記載のlaBC又はmBCの治療のための、本明細書に記載されるGDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む併用療法の使用(GU4)であって、(i)最初の28日サイクルの1~28日目に30mgのGDC-9545又はその薬学的に許容される塩をQD投与することと、(ii)最初の28日サイクルの1~28日目に9 mgのGDC-0077をQD投与することとを含む投薬レジメンを含む、本明細書に記載される併用療法の使用(GU4)が、本明細書においてさらに提供される。1つのこのような態様では、投薬レジメンは、本明細書に記載されるサイクルを2回以上含む。本明細書で提供される使用(GU4)の一実施態様では、併用療法はlaBCの治療のためのものである。本明細書で提供される使用(GU4)の別の実施態様では、併用療法はmBCの治療のためのものである。
【0077】
[0080]本明細書に記載されるlaBC又はmBCの治療のための医薬を製造するための、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む本明細書に記載される併用療法の使用(GM1)が本明細書でさらに提供される。本明細書に記載されるmBCの治療のための医薬を製造するための、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む本明細書に記載される併用療法の使用(GM2)が本明細書でさらに提供される。本明細書に記載されるlaBCの治療のための医薬を製造するための、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む本明細書に記載される併用療法の使用(GM3)が本明細書でさらに提供される。
【0078】
[0081]本明細書に記載のlaBC又はmBCの治療のための医薬の製造のための、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む併用療法の使用(GM4)であって、(i)最初の28日サイクルの1~28日目にGDC-9545又はその薬学的に許容される塩をQD投与することと、(ii)最初の28日サイクルの1~28日目にGDC-0077をQD投与することとを含む投薬レジメンを含む、本明細書に記載される併用療法の使用(GM4)が、本明細書においてさらに提供される。本明細書で提供される使用(IM4)の一実施態様では、併用療法はlaBCの治療のためのものである。本明細書で提供される使用(IM4)の別の実施態様では、併用療法はmBCの治療のためのものである。
【0079】
[0082]本明細書に記載のlaBC又はmBCの治療のための医薬の製造のための、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む併用療法の使用(GM5)であって、(i)最初の28日サイクルの1~28日目に30mgのGDC-9545又はその薬学的に許容される塩をQD投与することと、(ii)最初の28日サイクルの1~28日目に9mgのGDC-0077を投与することとを含む投薬レジメンを含む、本明細書に記載される併用療法の使用(GM5)が、本明細書においてさらに提供される。1つのこのような態様では、投薬レジメンは、本明細書に記載されるサイクルを2回以上含む。本明細書で提供される使用(GM5)の一実施態様では、併用療法はlaBCの治療のためのものである。本明細書で提供される使用(GM5)の別の実施態様では、併用療法はmBCの治療のためのものである。
【0080】
[0083]本明細書に記載される併用療法を投与することによって、本明細書に記載される患者における腫瘍増殖を阻害する方法又は腫瘍退縮を生じる方法もまた、本明細書で提供される。一実施態様では、本明細書に記載される1つ又は複数の28日サイクルで、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを投与することを含む併用療法を投与することによって、本明細書に記載されるlaBCを有する患者における腫瘍増殖を阻害する方法が、本明細書において提供される。一実施態様では、本明細書に記載される1つ又は複数の28日サイクルで、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを投与することを含む併用療法を投与することによって、本明細書に記載されるmBCを有する患者における腫瘍増殖を阻害する方法が、本明細書において提供される。
【0081】
[0084]一実施態様では、本明細書に記載される1つ又は複数の28日サイクルで、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを投与することを含む併用療法を投与することによって、本明細書に記載されるmBCを有する患者における腫瘍退縮を生成又は改善する方法が、本明細書において提供される。一実施態様では、本明細書に記載される1つ又は複数の28日サイクルで、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを投与することを含む併用療法を投与することによって、本明細書に記載されるlaBCを有する患者における腫瘍退縮を生成又は改善する方法が、本明細書において提供される。
【0082】
[0085]併用治療の開発は、例えば、許容される毒性を維持しつつ有効性の改善につながり得る併用療法のための薬剤の選択を含めて、課題を有している。1つの特定の課題は、併用の漸増的な毒性を識別する必要性である。本明細書に記載される方法の一実施態様では、本明細書に記載される併用療法(例えば、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩と、GDC-0077)は、時差投薬スケジュールを含む投薬レジメンで投与される。このような実施態様の1つでは、患者は、対照(例えば、SOC療法、本明細書に記載される1つの薬剤(例えば、GDC-954又はGDC-0077)単独での治療)と比較して、減少した有害事象(AE)の数又はグレードを有する。
【0083】
[0086]本明細書に記載される方法の一実施態様では、投薬レジメンは、GDC-9545又はGDC-0077のいずれかの単独の投与と比較して、グレード2又はグレード3又はそれより高いグレードの有害事象の数又は頻度を減少させる。このような態様の1つでは、投薬レジメンは、グレード3又はそれより高いAEの数又は頻度を除去する。一実施態様では、投薬レジメンは、徐脈のグレードを減少させる。別の実施態様では、投薬レジメンは、高血糖のグレードを減少させる。別の実施態様では、投薬レジメンは、水晶体繊維の膨潤、水晶体繊維の分離、及び/又は被膜下タンパク様物質の蓄積のような眼毒性を減少させるか又は排除する。
【0084】
[0087]本明細書に記載される方法の別の実施態様では、投薬は、いずれかの薬剤単独の投与と比較して、グレード2又はグレード3又はそれより高いグレードの有害事象の数又は頻度を減少させる。
【0085】
[0088]有害事象が発生した場合、次の4つの選択肢が存在すると一般的に理解されている:(1)任意に付随療法を用いてそのまま治療を継続する;(2)投薬レジメンにおける1つ又は複数の薬剤の用量を調整する;(3)投薬レジメンにおける1つ又は複数の薬剤の投与を一時中断する;又は(4)投薬レジメンにおける1つ又は複数の薬剤の投与を中止する。一実施態様では、GDC-9545は調整されない。
【0086】
[0089]一実施態様では、本明細書に記載される併用療法での治療を受けている本明細書に記載される患者によって経験される(1つ又は複数の)有害事象は、本明細書に記載されるように、比較的減少される。
【0087】
[0090]患者が本明細書に記載される併用療法での治療に由来する、高血糖、眼毒性(例えば、本明細書に記載されるようなもの)、及び徐脈からなる群より選択される1つ又は複数のAEを経験するいくつかの実施態様では、重症度はグレード2以下である。一実施態様では、本明細書に記載される患者は、本明細書に記載される併用療法での治療に由来する、高血糖、眼毒性(例えば、本明細書に記載されるようなもの)、及び徐脈からなる群より選択される1つ又は複数のAEを経験せず、AEの重症度はグレード2より高い。
【0088】
バイオマーカー
[0091]乳がんは、分子シグネチャ及び多様な多くの変異プロファイルによって定義される多くの異なるサブタイプを有する不均一な疾患である。本明細書に記載される患者は、診断方法を使用して、又は本明細書に記載される併用療法に対する患者の応答の治療若しくは予測を知らせるためのキットを使用して、ER+ HER2-laBC又はmBCについて試験され得る。一実施態様では、患者は、米国特許出願公開第2020/0082944号に記載されるものなど、ER経路活性スコアを決定することによって試験され得る。いくつかの態様では、ER経路活性スコアを決定するために、患者試料を採取し、試験する。スコアは、E2誘導スコア(AGR3、AMZ1、AREG、C5AR2、CELSR2、CT62、FKBP4、FMN1、GREB1、IGFBP4、NOS1AP、NXPH3、OLFM1、PGR、PPM1J、RAPGEFL1、RBM24、RERG、RET、SGK3、SLC9A3R1、TFF1及びZNF703に記載されている遺伝子の平均zスコア化発現から決定される)からE2抑制スコア(BAMBI、BCAS1、CCNG2、DDIT4、EGLN3、FAM171B、GRM4、IL1R1、LIPH、NBEA、PNPLA7、PSCA、SEMA3E、SSPO、STON1、TGFB3、TP53INP1及びTP53INP2を含む遺伝子の平均zスコア化発現から決定される)を差し引くことによって、41遺伝子のシグネチャを使用して計算することができる。
【0089】
[0092]一実施態様では、ER経路活性スコアを決定するために用いられる患者由来のサンプルは、腫瘍組織サンプル(例えば、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)した、新鮮凍結(FF)した、保存した、新鮮な、又は凍結した腫瘍組織サンプル)である。
【0090】
[0093]いくつかの例では、本明細書に記載される患者は、測定されたER経路活性スコアが、約-1.0から約-0.2の間(例えば約-0.9から約-0.2の間、例えば約-0.8から約-0.2の間、例えば約-0.7から約-0.2の間、例えば約-0.6から約-0.2の間、例えば約-0.5から約-0.2の間、例えば約-0.4から約-0.2の間、又は例えば約-0.3から約-0.2の間)である場合に、本明細書に記載される併用療法を投与される。いくつかの例では、試料のER活性スコアは、-1.0未満であり得る。
【0091】
[0094]いくつかの実施態様では、試験治療の安全性及び有効性と相関し得る要因を同定するために、本明細書に記載される患者のサンプルを、追加のバイオマーカーについて評価することができる。
【0092】
[0095]本明細書に記載される方法の一実施態様では、NGS、全ゲノム配列決定(WGS)、他の方法、又はそれらの組み合わせは、本明細書に記載される患者に由来する血液サンプル及び腫瘍組織から得られたDNAに使用され得る。このようなサンプルを分析して、治験薬への反応を予測する、より重篤な疾患状態への進行に関連する、治験薬に対する獲得耐性に関連する、又は疾患生物学の知識及び理解を高め得る、生殖系列)及び体細胞の変化を同定し得る。一実施態様では、患者サンプルは、上記のような1つ又は複数の技術を用いて、Ki67の発現レベルについて評価される。
【0093】
[0096]一実施態様では、患者サンプルは、88位、106位、111位、118位、345位、420位、453位、542位、545位、546位、1043位、1047位及び1049位に対応する1つ又は複数のPIK3CA変異について評価又は試験される。一実施態様では、患者サンプルは、H1047位、E545位、E542位、Q546位、N345位、C420位、M1043位、G1049位、E453位、K111位、G106位、G118位、及びR88位のうちの1つ又は複数に対応する1つ又は複数のPIK3CA変異について評価又は試験される。一実施態様では、患者サンプルは、H1047D/I/L/N/P/Q/R/T/Y、E545A/D/G/K/L/Q/R/V、E542A/D/G/K/Q/R/V、Q546E/H/K/L/P/R、N345D/H/I/K/S/T/Y、C420R、M1043I/T/V、G1049A/C/D/R/S、E453A/D/G/K/Q/V、K111N/R/E、G106A/D/R/S/V、G118D、及びR88Qからなる群より選択される1つ又は複数の位置に対応する1つ又は複数のPIK3CA変異について評価又は試験される。一実施態様では、患者サンプルは、E542K、E545K、Q546R、H1047L及びH1047Rからなる群より選択される1つ又は複数の位置に対応する1つ又は複数のPIK3CA変異について評価又は試験される。一実施態様では、患者サンプルは、E542K、E545K、Q546R、H1047L及びH1047Rからなる群より選択される1つの変異と、E453Q/K、E726K及びM1043L/Iからなる群より選択される第2の変異とに対応する1つ又は複数のPIK3CA変異について評価又は試験される。一実施態様では、患者サンプルは、E542K+E453Q/K、E542K+E726K、E542K+M1043L/I;E545K+E453Q/K、E545K+E726K、E545K+M1043L/I;H1047R+E453Q/K、及びH1047R+E726Kからなる群より選択される位置に対応する1つ又は複数のPIK3CA変異について評価又は試験される。
【0094】
[0097]一実施態様では、患者は、H1047D/I/L/N/P/Q/R/T/Y、E545A/D/G/K/L/Q/R/V、E542A/D/G/K/Q/R/V、Q546E/H/K/L/P/R、N345D/H/I/K/S/T/Y、C420R、M1043I/T/V、G1049A/C/D/R/S、E453A/D/G/K/Q/V、K111N/R/E、G106A/D/R/S/V、G118D、及びR88Qからなる群より選択される位置に対応する変異を含むPIK3CA変異体を発現する乳がんを有する。一実施態様では、患者は、E542K、E545K、Q546R、H1047L及びH1047Rからなる群より選択される位置に対応する変異を含むPIK3CA変異体を発現する乳がんを有する。一実施態様では、患者は、E542K、E545K、Q546R、H1047L及びH1047Rからなる群より選択される1つの変異と、E453Q/K、E726K及びM1043L/Iからなる群より選択される第2の変異とを含有する位置に対応する変異を含む変異体PIK3CAを有する。一実施態様では、患者は、E542K+E453Q/K、E542K+E726K、E542K+M1043L/I;E545K+E453Q/K、E545K+E726K、E545K+M1043L/I;H1047R+E453Q/K、及びH1047R+E726Kからなる群より選択される位置に対応する変異を含むPIK3CA変異体を発現する乳がんを有する。一実施態様では、PIK3CA変異体腫瘍の状態は、血液の中央検査、又は血液若しくは腫瘍組織の局所検査のいずれかによって評価される。一実施態様では、適格なPIK3CA変異を同定するための中央検査は、Foundation Medicine社で実施されるFoundationOne Liquid Clinical Trial Assayである。一実施態様では、血液又は腫瘍組織の局所検査は、CLIA認定又は同等の研究所でPCR又はNGSベースのアッセイを用いて実施される。
【0095】
態様:
[0098]以下に、本発明の例示的な実施態様を示す。
【0096】
[0099]実施態様1.最初の28日サイクルの1~28日目にQD投与されるGDC-9545又はその薬学的に許容される塩と、最初の28日サイクルの1~28日目にQD投与されるGDC-0077とを含む併用療法。
【0097】
[0100]実施態様2.GDC-0077が9mgの用量で投与される、実施態様1に記載の併用療法。
【0098】
[0101]実施態様3.GDC-9545又はその薬学的に許容される塩が、30mgの量で投与される、実施態様1又は2に記載の併用療法。
【0099】
[0102]実施態様4.投薬レジメンが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、30、36、42、48、54、60、66、又は72サイクルを含む、実施態様1~3のいずれか1つに記載の併用療法。
【0100】
[0103]実施態様5.投薬レジメンが、約2~72、2~66、2~60、2~54、2~48、2~42、2~36、2~30、2~24、2~18、又は2~12サイクルを含む、実施態様1~4のいずれか1つに記載の併用療法。
【0101】
[0104]実施態様6.エストロゲン受容体陽性及びHER2陰性の局所進行性乳がん(laBC)又は転移性乳がん(mBC)を、エストロゲン受容体陽性及びHER2陰性のlaBC又はmBCを有する患者において治療する方法であって、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む併用療法を患者に投与することを含み、併用療法が1つ又は複数の28日サイクルにわたって投与される、方法。
【0102】
[0105]実施態様7.エストロゲン受容体陽性及びHER2陰性の局所進行性乳がん(laBC)又は転移性乳がん(mBC)を、受容体陽性及びHER2陰性のlaBC又はmBCを有する患者において治療する方法であって、
i.最初の28日サイクルの1~28日目にGDC-9545又はその薬学的に許容される塩をQD投与することと、
ii.最初の28日サイクルの1~28日目にGDC-0077をQD投与することと
を含む投薬レジメンを含む併用療法を患者に投与することを含む、方法。
【0103】
[0106]実施態様8.GDC-0077が9mgの用量で投与される、実施態様6又は7に記載の方法。
【0104】
[0107]実施態様9.GDC-9545又はその薬学的に許容される塩が、30mgの量で投与される、実施態様6~8のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
[0108]実施態様10.投薬レジメンが、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、30、36、42、48、54、60、66、又は72サイクルを含む、実施態様7~9のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
[0109]実施態様11.投薬レジメンが、約2~72、2~66、2~60、2~54、2~48、2~42、2~36、2~30、2~24、2~18、又は2~12サイクルを含む、実施態様7~9のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
[0110]実施態様12.患者が閉経前である、実施態様6~11のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
[0111]実施態様13.患者が、エストロゲン受容体、プロスタグランジン受容体、又はKi67のうちの1つ又は複数の変異の存在について試験される、実施態様6~12のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
[0112]実施態様14.患者が、R88Q;G106、K111、G118、N345、C420、E453、E542、E545、Q546、M1043、H1047、若しくはG1049、又はそれらの組み合わせに対応する位置におけるPIK3CAの1つ又は複数の変異を含む腫瘍を有する、実施態様6~13のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
[0113]実施態様15.PIK3CAの変異が、
R88Q;
G106A/D/R/S/V;
K111N/R/E;
G118D;
N345D/H/I/K/S/T/Y;
C420R;
E453A/D/G/K/Q/V;
E542A/D/G/K/Q/R/V;
E545A/D/G/K/L/Q/R/V;
Q546E/H/K/L/P/R;
M1043I/T/V;
H1047D/I/L/N/P/Q/R/T/Y;若しくは
G1049A/C/D/R/S;
又はそれらの組み合わせ
に対応する、実施態様14に記載の方法。
【0111】
[0114]実施態様16.PIK3CAの変異が、E542K、E545K、Q546R、H1047L及びH1047Rからなる群より選択される1つの変異と、E453Q/K、E726K及びM1043L/Iからなる群より選択される第2の変異とを含む、実施態様14又は15に記載の方法。
【0112】
[0115]実施態様17.PIK3CAの変異が、E542K+E453Q/K、E542K+E726K、E542K+M1043L/I;E545K+E453Q/K、E545K+E726K、E545K+M1043L/I;H1047R+E453Q/K、及びH1047R+E726Kからなる群より選択される二重変異から選択される、実施態様16に記載の方法。
【0113】
[0116]実施態様18.患者が、対照と比較して、減少した有害事象(AE)を有する、実施態様6~17のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
[0117]実施態様19.患者が、対照と比較して、肝毒性、徐脈、高血糖、口内炎/口腔粘膜炎、発疹、下痢/大腸炎、若しくは肺炎、又はそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ又は複数のAEの減少した重症度を有する、実施態様18に記載の方法。
【0115】
[0118]実施態様20.患者が、対照と比較して、併用療法の投与後に、同じレベル又は減少したレベルの徐脈又は高血糖を有する、実施態様18に記載の方法。
【0116】
[0119]実施態様21.患者が、対照と比較して増加した全生存期間(OS)を有する、実施態様6~20のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
[0120]実施態様22.患者が、対照と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、24ヶ月、又はそれより長い月数の増加を有する、実施態様21に記載の方法。
【0118】
[0121]実施態様23.併用療法に対する奏効期間が、対照と比較して増加する、実施態様6~22のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
[0122]実施態様24.奏効期間が、少なくとも1ヶ月~3ヶ月、2ヶ月~6ヶ月、3ヶ月~8ヶ月、4ヶ月~10ヶ月、5ヶ月~12ヶ月、6ヶ月~15ヶ月、8ヶ月~20ヶ月、又は1ヶ月~24ヶ月増加する、実施態様23に記載の方法。
【0120】
[0123]実施態様25.患者が、対照と比較して、増加した臨床的有用率を有する、実施態様6~24のいずれか1つに記載の方法。
【0121】
[0124]実施態様26.患者が、対照と比較して増加した無増悪生存期間を有する、実施態様6~25のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
[0125]実施態様27.増加が、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、36、42、48、50、54、60、66又は72ヶ月である、実施態様26に記載の方法。
【0123】
[0126]実施態様28.対照が、GDC-9545を単独投与されるか又はレトロゾールと組み合わせたパルボシクリブを投与される、実施態様18~27のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
[0127]実施態様29.患者が、併用療法の投与前に、従前の化学療法を受けたことがない、実施態様6~28のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
[0128]実施態様30.患者が、PI3K、AKT、又はmTOR阻害剤で以前に治療されたことがない、実施態様6~28のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
[0129]実施態様31.患者が、フルベストラントで以前に治療されたことがある、実施態様6~28のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
[0130]実施態様32.laBC又はmBCの治療のための、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む併用療法の使用。
【0128】
[0131]実施態様33.laBC又はmBCの治療のための医薬の製造のための、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む併用療法の使用。
【0129】
[0132]実施態様34.併用療法が、(i)最初の28日サイクルの1~28日目に30mgのGDC-9545又はその薬学的に許容される塩をQD投与することと、(ii)最初の28日サイクルの1~28日目にmgのGDC-0077をQD投与することとを含む投薬レジメンを含む、実施態様33に記載の使用。
【0130】
[0133]実施態様35.併用療法が、laBCの治療のためのものである、実施態様32~34のいずれか1つに記載の使用。
【0131】
[0134]実施態様36.併用療法が、mBCの治療のためのものである、実施態様32~34のいずれか1つに記載の使用。
【0132】
[0135]実施態様37.laBC又はmBCを有する患者において腫瘍増殖を阻害する方法であって、1つ又は複数の28日サイクルで、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む併用療法を投与することを含む、方法。
【0133】
[0136]実施態様38.laBC又はmBCを有する患者における腫瘍退縮を生じさせるか又は改善する方法であって、1つ又は複数の28日サイクルで、GDC-9545又はその薬学的に許容される塩とGDC-0077とを含む併用療法を投与することを含む、方法。
【0134】
[0137]以下の実施例は、限定ではなく、例示として提示されている。
【実施例】
【0135】
[0138]実施例1
[0139]乳がんの病因及び疾患進行におけるエストロゲンの役割は十分に確立されている(Colditz et al.N Engl J Med 1995;332:1589-93)。エストロゲン活性及び/又は合成の調節は、ER+乳がん患者における1つの治療アプローチである。
【0136】
[0140]内分泌療法(ET)及び内分泌療法と標的療法の組み合わせを含む、ER+の、局所進行性又はは転移性疾患を有する患者に対する利用可能な治療法の有効性にもかかわらず、多くの患者は最終的に再発するか又はこれらの因子に対する抵抗性を生じ、したがって最適な疾患制御のためにさらなる治療を必要とする。しかしながら、大部分の腫瘍の増殖及び生存は、AI又はタモキシフェンに対して抵抗性になるにもかかわらず、なおERシグナル伝達に依存し続けると考えられている。ER+乳がんを有する患者は、先行する治療の進行後も以前として二次/三次ホルモン治療に応答し得る(Di Leo et al. J Clin Oncol. 2010;28:4594-600; Baselga et al. N Engl J Med. 2012;366:520-9)。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、内分泌抵抗性状態では、ERはリガンド非依存的にシグナル伝達することができるという証拠が存在する(Miller et al.J Clin Invest 2010;120:2406-13;Van Tine et al.Cancer Discov 2011;1:287-8)。リガンド依存性及びリガンド非依存性のERシグナル伝達の両方を標的とすることができる薬剤(又は薬剤の組み合わせ)は、ER+乳がんを有する患者における治療転帰を改善する可能性を有する。
【0137】
[0141]ESR1変異は、AIに対する獲得抵抗性の主要な機構であるようであり、より不良な転帰に関連する(Schiavon et al. Sci Transl Med 2015;7:313ra182; Chandarlapaty et al. JAMA Oncol 2016;2:1310-15; Fribbens et al. J Clin Oncol 2016;34:2961-8)。ESR1変異の存在率は、AI曝露後に約25%~40%の範囲であるが、ET未経験の患者の2%~3%にすぎないようである(Chandarlapaty et al.2016)。これは、ESR1がAI選択圧力下で1つの重要な発癌誘発要因になることを示している。研究により、ER-αのリガンド結合ドメイン「LBD」に影響を及ぼす、ER-αをコードするESR1の変異(主にY537S及びD538G)が同定された(Segal and Dowsett Clin Cancer Res 2014;20:1724-6)。臨床サンプルと非臨床モデルとを使用した研究では、ERアンタゴニストがリガンド非依存性で構成的に活性なER変異受容体に対して有効であるようであり、AIに耐性のあった患者に対して治療効果を有し得ることが記載されている(Li et al. Cell Rep. 2013;4:1116-30; Merenbakh-Lamin et al. Cancer Res 2013;73:6856-64; Robinson et al. Nat Genet 2013;45:1466-51; Toy et al. Nat Genet 2013;45:1439-45; Alluri et al. Breast Cancer Res 2014;16:494; Segal and Dowsett Clin Cancer Res 2014;20:1724-6; Jeselsohn et al. Nat Rev Clin Oncol 2015; 12:573-83; Niu et al. Onco Targets Ther. 2015;8:3323-8; Schiavon et al. Sci Transl Med 2015;7:313ra182; Chu et al. Clin Cancer Res 2016; 22:993-9)。
【0138】
[0142]選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)は、内分泌依存性及び内分泌非依存性のERシグナル伝達を遮断することができ、ER+転移性乳がんに対する治療アプローチを提供することが認識されている。第1世代のSERDであるフルベストラントはERを結合し、遮断し、分解し、ERを介したエストロゲンシグナル伝達の阻害をもたらす。フルベストラントはまた、ある研究(NCT01602380)で実証されているように、第一線の患者においてアナストロゾールよりも有益であることを示している。しかしながら、フルベストラントの生物学的利用能及び送達は、その有効性管理を妨げる。
【0139】
[0143]GDC-9545とフルベストラントの薬物曝露及びin vitro効力を比較する非臨床試験は、30mg1日1回(QD)でのGDC-9545のヒト定常状態総薬物曝露が、毎月フルベストラント500mg筋肉内(IM)の定常状態曝露よりも約10倍高いことを実証した。さらに、血漿タンパク質によるGDC-9545のより低い結合は、フルベストラントより高いGDC-9545の遊離濃度をもたらす。in vitro細胞及び生化学アッセイでは、GDC-9545は、野生型及びESR1変異体の両状況において、フルベストラントよりも最大10倍高い効力を示した。フルベストラントは、臨床的に適切な投薬スキームに従って投与された場合、評価された異種移植片モデルにおいてGDC-9545よりも有効性が低かった。
【0140】
[0144]PI3K、Akt、及び哺乳動物ラパマイシン標的(mTOR)は、PI3K/Akt/mTOR細胞内シグナル伝達経路の主要なノードであり、細胞周期の調節、細胞増殖、代謝、運動性、及び生存に重要である(Cantrell, J Cell Sci 2001; 114:1439-45; Hanahan and Weinberg, Cell, 2011;144:646-74; Vanhaesebroeck et al. Nat Rev Mol Cell Biol 2012;13:195-203)。PI3K/Akt/mTOR経路は概して、リガンド-受容体チロシンキナーゼ相互作用後に活性化される。生理的条件下では、PI3Kの主な役割は、細胞内シグナル伝達のためのイノシトールリン脂質の代謝を促進することである。
【0141】
[0145]PI3Kには3つのクラスがあり、クラスIは外部刺激に最も反応すると考えられている。クラスI PI3Kは、p110触媒サブユニットと調節アダプターサブユニットp85の2つのサブユニットから構成されている。PI3Kのp110触媒サブユニットには4つのアイソフォーム:α、β、ガンマ、及びδがある。これら4つのアイソフォームは、遺伝子PIK3CA、PIK3CB、PIK3CG、及びPIK3CDのそれぞれの産物である。PIK3CA及びPIK3CBはすべての細胞で発現しているが、PIK3CDは主に白血球で発現しており、PIK3CGは、膵臓、骨格筋、肝臓、及び心臓を含む複数の組織で発現している。
【0142】
[0146]PI3K/Akt/mTORシグナル伝達経路の調節異常は、例えば、膠芽腫、結腸直腸がん、胃がん、肺がん、子宮内膜がん、卵巣がん、前立腺がん、及び乳がんを含む複数の固形悪性腫瘍において記載されている(Gustin et al. Curr Cancer Drug Targets 2008;8:733-40)。経路の活性化は、腫瘍抑制因子ホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)の欠失、PIK3CAの増幅若しくは体細胞変異、AKTの変異、調節サブユニットp85の変異、上流受容体チロシンキナーゼの変異及び/若しくは増幅、RASの変異、肝臓キナーゼ B1(LKB1)の欠失、II型イノシトール ポリホスフェート-4-ホスファターゼ(INPP4B)、又は結節性硬化症などの複数のメカニズムを通じて生じ得る(Staal Proc Natl Acad Sci USA 1987;84:5034-7; Cheng et al. Proc Natl Acad Sci USA 1992;89:9267-71; Bellacosa et al. Int J Cancer 1995;64:280-5; Li et al. Science 1997;275:1943-7; Steck et al. Nat Genet 1997;15:356-62; Aoki et al. Proc Natl Acad Sci USA 1998;95:14950-5)。PIK3CA遺伝子の活性化変異は、最も一般的なゲノム変化であり、主に、PI3K-αタンパク質のヘリカルドメイン及びキナーゼドメインをコードするエクソン9及び20に生じる(Bachman et al. Cancer Biol Ther 2004;3:772-5; Samuels et al. Science 2004;304:554)。
【0143】
[0147]乳がんの最大70%は、PI3K/Akt/mTOR経路の何らかの分子異常を有している可能性があるCancer Genome Atlas Network Nature 2012;490:61-70)。PI3K/Akt/mTORシグナル伝達経路の亢進は、ER+乳がん細胞株及び異種移植モデルにおいて、ホルモン療法に対するデノボ抵抗性及び獲得抵抗性の両方を促進することが証明された(Sabnis et al. Clin Cancer Res 2007;13:2751-7)。さらに、エベロリムスでPI3K/Akt/mTOR経路を、レトロゾールでER経路を同時に遮断すると、どちらか一方の薬剤単独よりも抗腫瘍活性が高くなる(Boulay et al. Clin Cancer Res 2005;11:5319-28)。さらに、ベースラインのPI3K活性化の証拠は、アジュバントET後の予後不良を予測することが判明した(Miller et al.J Clin Invest 2010;120:2406-13)。
【0144】
[0148]これらのデータは、PI3K/Akt/mTOR経路のシグナル伝達を遮断することで、ER+、HER2陰性の乳がんを有する患者において治療効果を有し得るという仮説を支持するものである。
【0145】
[0149]GDC-0077は、p100α触媒サブユニット(PI3KCA遺伝子によってコードされる)を含有するホスファチジルイノシトール3-キナーゼのクラスIαアイソフォーム(PI3K-α)の強力かつ選択的な阻害剤である。)GDC-0077は、β、δ、γアイソフォームを含む他のクラスI PI3Kに対して、>300倍低い生化学的阻害作用を示し、変異体p110αを有する腫瘍細胞では、野生型p110αを有する細胞よりも高い効力を示す。特定の理論に束縛されることなく、GDC-0077はp110αのアデノシン5’-トリホスフェート結合部位に結合することによってその活性を発揮し、それによって膜結合型ホスファチジルイノシトール4,5-ビスホスフェート(PIP2)のホスファチジルイノシトール3,4,5-トリホスフェート(PIP3)へのリン酸化を阻害するとみられる。この阻害は、Akt及びS6RPを含む経路エフェクターの下流の活性化を低減し、その結果、細胞増殖、代謝、及び血管新生を低減する。GDC-0077は、PIK3CA変異体乳がん細胞株において変異p110αを特異的に分解し、増殖を阻害し、アポトーシスを誘導することと、PIK3CA変異を有するヒト乳がん異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害することと、pAkt、スレオニン246でリン酸化されたPRAS40(pPRAS40)、及びセリン235/236でリン酸化されたS6RP(pS6RP)を含む下流のPI3K経路マーカーを減少させることが、非臨床試験で実証された。
【0146】
[0150]GDC-0077の単剤投与を用いた1つの試験では、測定可能な疾患を有する患者20人を6mg、9mg、又は12mgのQD開始用量でGDC-0077単剤で治療したところ、5人(25%)がPRを達成し、9人(45%)が臨床的有用性(固形がんの治療効果判定のための新ガイドライン第1.1版(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors, Version 1.1)[RECIST v1.1]で定義されたCR、PR、及び/又はSD[ベースライン時に測定不能な疾患を有する患者については、非完全奏効/非進行性疾患]を≧24週間達成した患者の割合として定義される)。さらに、20人の患者のうちの14人は、6mg又は9mgのQDの開始用量で登録され、3人はCDK4/6iによる前治療を受けたことがあった。
【0147】
[0151]GDC-9545は、強力で経口的に生物学的に利用可能なER-αアンタゴニスト及びER-α分解誘導薬であり、低ナノモル力でのERへの結合をエストロゲンと競合している。GDC-9545は、ER+の進行性又は転移性乳がんを有する患者の治療のために開発されている。GDC-9545は、ESR1野生型及びESR1変異を有する疾患の乳がんモデルにおいて、非臨床試験で確実な活性を実証した。さらに、承認されたSERD分子であるフルベストラントは、臨床的に適切な投薬スキームに従って投与された場合、評価された異種移植片モデルにおいてGDC-9545よりも有効性が低かった)。
【0148】
[0152]患者は、各28日サイクル中に、即放性カプセルとしてGDC-9545を30mgの用量でQDでPOし、各28日サイクルの1~28日目に、即放性錠剤としてGDC-0077を9mgの用量でQDでPOすることになる。
【0149】
[0153]GDC-9545を投与される患者は、サイクル1の1日目から開始して、その後の各28日サイクルの1日目に、毎日ほぼ同じ時間にPOで服用する必要がある。予定された投薬後6時間以内に用量が服用されなければ、服用されなかったと考えられる。用量が服用されなかった又は吐き出された場合、患者は次の予定された用量で投薬を再開すべきであり、服用されなかった又は吐き出された用量は埋め合わされない。GDC-0077は毎日ほぼ同じ時刻に服用し、予定時刻から9時間後までに服用する必要がある。
【0150】
[0154]GDC-9545及びGDC-0077を投与された患者は、以下の併用療法を使用することを許可されていない:
a.対症療法的な制吐剤、下痢止め療法、並びにその他の疾患関連症状に対する緩和的及び支持的療法。
b.標準的な臨床診療に従って投与される鎮痛薬。
c.骨粗鬆症/骨減少症の治療、又は骨転移の緩和のための、骨温存剤(例えば、ビスホスホネート、デノスマブ)。
【0151】
[0155]GDC-9545及びGDC-0077を投与された患者は、以下の併用療法を使用することを許可されていない:
a.(治験実施計画書で定められた試験治療以外の)調査的治療が、GDC9545及びGDC-0077の最初の投与の前28日以内である。
b.化学療法、免疫療法、生物学的療法、放射線療法又は薬草療法を含むがこれらに限定されない、がんの治療を目的とした任意の併用療法は禁止される。
c.ホルモン補充療法、局所エストロゲン(任意の膣内製剤を含む)、酢酸メゲストロール及び選択的ER調節薬(例えば、ラロキシフェン)。
d.造血成長因子(例えば、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)の一次予防的使用。
e.以下のような全身応答の状況における新たな脳転移を除いて、明確な進行性疾患のための放射線療法:
全身性疾患の制御(臨床的有用性[すなわち、≧24週間にわたるPR、CR又はSD]を受けたと定義される)を実証したが、放射線で治療可能な孤立性脳転移を発症した患者。
ET(すなわち、GDC-9545)は、放射線療法と同時に投与され得る。
f.キニジン又は他の抗不整脈薬。
【0152】
[0156]GDC-9545は、試験治療に関連すると考えられる毒性を経験している患者において一時的に中断され得る。GDC-0077は、試験処置に関連すると考えられる毒性を経験している患者において一時的に中断され得る。GDC-9545又はGDC-0077のいずれかの薬物が中止される場合、患者が臨床的有用性を得る可能性があれば、治験責任医師によって決定されるように、他方の薬物を継続することができる。
【0153】
[0157]実施例2
[0158]GDC-9545及びGDC-007の組み合わせが検討され、各単剤療法の有効性及びAI+パルボシクリブ対照と比較された。ESR1野生型MCF-7(PIK3CA.E545K)細胞及びT-47D(PIK3CA.H1047R)細胞、並びに操作されたESR1変異細胞[MCF-7.ER.Y537S、T-47D.ER.D538G]を、10%ウシ胎児血清を含むRPMI培地中で、標準的な細胞培養条件下で増殖させた。薬剤を添加する1日前、細胞からホルモンを除去するために、細胞を、10%活性炭除去ウシ胎児血清を含む、フェノールレッドを含まないRPMI中の384ウェルプレートに播種した。単剤の300nMのGDC-9545、80nMのGDC-0077、125nMのパルボシクリブ、又はそれらの組み合わせについて、6日間又は8日間の培養期間中、0.1nmol/Lのエストラジオール(E2)存在下で4重反復試験を行った。培地中にE2を含まない(-E2)ことは、アロマターゼ阻害剤(AI)による治療を模倣する。転移性乳がんに対する現在の標準治療を反映したものである、E2除去+パルボシクリブの併用療法も含めた。GDC-0077及びパルボシクリブの薬物濃度は、ヒトでの曝露量に基づいて、臨床的に意義のあるように選択した。300nMのGDC-9545は、ヒトの用量に相当する30mgよりも低い飽和濃度である。6/8日時点の生存細胞の相対数は、CyQUANT(ThermoFisher、C7026)により測定した。
【0154】
[0159]野生型ESR1を発現するMCF-7細胞において、E2除去では、培養期間にわたって細胞増殖が緩やかに減少した。これはパルボシクリブの添加によってはるかに増強される(
図1)。GDC-9545による直接的なER拮抗作用は、エストロゲンがない場合と比べて細胞生存率に大きな影響を与えた。PI3K(p110α選択的)阻害剤であるGDC-0077をGDC-9545と併用すると、GDC-9545の抗増殖効果はさらに増強された。GDC-9545とGDC-0077の組み合わせで治療した細胞は、エストロゲン除去+CDK4/6阻害、及び各薬剤単独投与の細胞と比べて、生存率の有意な減少を示した(
図1)。
【0155】
[0160]ESR1変異(ER.Y537S)を発現するように操作されたMCF-7細胞では、E2除去のみでは細胞増殖を阻害できず、このER変異体について以前に確立されたエストロゲン非依存性ER活性と一致した(
図2)。パルボシクリブとE2除去を組み合わせることも同様に、抗増殖効果はほとんどなかった。対照的に、GDC-9545による直接的なER拮抗作用は、対照条件に比べて細胞数を減少させた。GDC-0077と併用すると、どちらか一方の薬剤単独及びE2除去+CDK/4/6阻害よりも有意に高い抗増殖効果を示した(
図2)。
【0156】
[0161]ESR1の野生型であるT-47D細胞において、E2除去又はGDC-9545治療のいずれかによるER活性の抑制は、対照治療細胞と比べて細胞増殖の減少をもたらした(
図3)。E2除去にCDK4/6阻害を加えると、E2除去単独よりも細胞生存率に大きな影響を与えたが、GDC-9545とGDC-0077の併用と同じ抗増殖活性は得られなかった(
図3)。同様に、GDC-0077単独又はGDC-9545単独の添加では、両剤の併用と同じ抗増殖活性は得られなかった。
【0157】
[0162]ESR1変異(ER.D538G)を発現するように操作されたT-47D細胞は、E2除去によってわずかな影響しか受けない。パルボシクリブとの共治療は抗増殖効果を改善した(
図4)。この細胞株では、GDC-9545単剤がE2除去よりもかなり影響が大きく、GDC-9545+GDC-0077の抗増殖効果は、パルボシクリブとE2除去の併用よりも大きかった(
図1D)。同様に、GDC-9545とGDC-0077の併用は、各薬剤単独に匹敵するかなりの抗増殖効果を示した。
【0158】
[0163]変異型ESR1又は野生型ESR1のいずれかを有するPIK3CA変異体細胞株におけるGDC-9545とGDC-0077の併用による抗増殖効果は、GDC-9545単独、GDC-0077単独よりも大きく、また、パルボシクリブとE2除去の併用よりも大きい。これらの前臨床データは、GDC-9545とGDC-0077の併用が、他のすべての試験された薬剤よりも抗増殖効果が高いことを実証している。
【0159】
[0164]本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、「含む(comprise、comprises、及びcomprising)」という語句は、文脈上別段の必要がある場合を除き、非排他的な意味で用いられる。本明細書に記載の実施態様は、「からなる」及び/又は「から本質的になる」実施態様を含むことが理解される。
【0160】
[0165]値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別途指示しない限り、範囲の上限及び下限と、その記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在する値との間の、下限の単位の10分の1までの各介在値が、本明細書に包含されるものと理解されたい。より小さい範囲(rangers)に独立して含めることができるこれらの小さい範囲の上限及び下限もまた、記載された範囲における具体的に除かれる限界値を条件として、本明細書に包含される。記載された範囲に限界値の一方又は両方が含まれる場合、それらの含まれる限界値のいずれか又は両方を除く範囲もまた、本明細書に含まれる。
【0161】
[0166]前述の説明及び関連する図面に提示された教示を受けた当業者は、本明細書に記載された発明の多くの修正及び他の実施態様に想到するであろう。したがって、本発明は、開示された特定の態様に限定されるべきではないこと、並びに修正及び他の実施態様が添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。本明細書には特定の用語が用いられているが、それらは包括的及び説明的意味でのみ使用されているのであって、限定を目的としない。
【国際調査報告】