(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】無線周波数トランシーバデバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/02 20060101AFI20240205BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20240205BHJP
H01Q 9/26 20060101ALI20240205BHJP
H01Q 1/12 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
G06K19/02 070
G06K19/077 280
G06K19/077 296
H01Q9/26
H01Q1/12 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548882
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 FR2022050216
(87)【国際公開番号】W WO2022171951
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519275571
【氏名又は名称】プリモ1ディー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエレ セッテ
【テーマコード(参考)】
5J047
【Fターム(参考)】
5J047AB07
5J047BG00
(57)【要約】
本発明は、チップと、チップに電気的に接続された第1のアンテナとを含む電子回路(2)と、非導電材料から形成されたテキスタイル芯糸(4)と、導電材料のテキスタイル要素(3)から形成され、テキスタイル芯糸(4)の周りに沿って非連続的な巻きで配置された第2のアンテナと、を含む無線周波数トランシーバデバイス(1)に関する。電子回路(2)は、第1及び第2のアンテナの電磁結合を可能にするように、第2のアンテナに対して配置される。本発明はまた、無線周波数トランシーバデバイス(1)を組み入れたタグ及びその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数トランシーバデバイス(1)であって、
-チップ(2a)と、前記チップ(2a)に電気的に接続された第1のアンテナ(2b)とを備える電子回路(2)と、
-非導電材料で形成されたテキスタイル芯糸(4)と、
-導電材料で作製されたテキスタイル要素(3)から形成され、前記テキスタイル芯糸(4)の周りに前記テキスタイル芯糸(4)に沿って非連続的な巻きで配置された第2のアンテナと、を備え、
前記電子回路(2)は、前記第1のアンテナ(2a)と前記第2のアンテナとの電磁結合を可能にするように前記第2のアンテナに対して配置されている、無線周波数トランシーバデバイス(1)。
【請求項2】
前記第1のアンテナ(2b)は第1の軸(a1)を有し、前記第2のアンテナは第2の軸(a2)を有し、前記第1の軸(a1)及び前記第2の軸(a2)は互いに平行である、請求項1に記載の無線周波数トランシーバデバイス(1)。
【請求項3】
前記電子回路(2)は、接着によって、及び/又は第1のテキスタイル被覆糸によって、又は前記テキスタイル芯糸(4)及び前記電子回路(2)上に交互に巻かれた前記導電性テキスタイル要素(3)によって、前記テキスタイル芯糸(4)に取り付けられ、保持される、請求項1又は2に記載の無線周波数トランシーバデバイス(1)。
【請求項4】
前記導電性テキスタイル要素(3)がテキスタイルシース(6)に組み込まれ、前記電子回路(2)及び前記テキスタイル芯糸(4)が前記テキスタイルシース(6)の内部に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の無線周波数トランシーバデバイス(1)。
【請求項5】
前記導電性テキスタイル要素(3)は、前記テキスタイル芯糸(4)上に直接巻き付けられ、前記電子回路(2)は、少なくとも1巻きの外面上に組み付けられる、請求項1又は2に記載の無線周波数トランシーバデバイス(1)。
【請求項6】
前記導電性テキスタイル要素(3)は、テープ又は糸である、請求項1~5のいずれか一項に記載の無線周波数トランシーバデバイス(1)。
【請求項7】
前記テキスタイル芯糸(4)、前記電子回路(2)、及び前記導電性テキスタイル要素(3)の周りに巻き付けられた第2の被覆糸を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の無線周波数トランシーバデバイス(1)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の無線周波数トランシーバデバイス(1)を備える電子タグ。
【請求項9】
無線周波数トランシーバデバイス(1)を製造するための方法であって、
-複数の電子回路(2)であって、それぞれ、チップ(2a)と、前記チップ(2a)に電気的に接続された第1のアンテナ(2b)とを備える、電子回路(2)を、テキスタイル芯糸に沿って互いに離間するように、前記テキスタイル芯糸上に組み付ける工程(S1)と、
-導電材料で作製され、前記テキスタイル芯糸(4)の周りに非連続的な巻きで配置されたテキスタイル要素(3)から形成された第2のアンテナを準備する工程(S2)と、を含む、製造するための方法。
【請求項10】
前記組み付け工程(S1)は、前記複数の電子回路(2)を前記テキスタイル芯糸(4)上に直接保持するために、接着剤を塗布することを含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記組み付け工程(S1)は、第1のテキスタイル被覆糸を前記テキスタイル芯糸(4)及び前記電子回路(2)に順に巻き付けることを含む、請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記組み付け工程(S1)及び前記準備工程(S2)は、前記導電性テキスタイル要素(3)を前記テキスタイル芯糸(4)及び前記電子回路(2)に直接巻き付けることによって同時に実行される、請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
前記準備工程(S2)は、前記導電性テキスタイル要素(3)を前記テキスタイル芯(4)のテキスタイルシース(6)内の非連続な巻きに組み込むことを含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記準備工程(S2)は、前記導電性テキスタイル要素(3)を前記テキスタイル芯糸(4)に直接巻き付けることを含み、前記準備工程(S2)の後に実行される前記組み付け工程(S1)は、前記電子回路(2)の各々を前記導電性テキスタイル要素(3)の少なくとも1つの巻きの外面に組み付けることを含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項15】
前記導電性テキスタイル要素(3)は、テープ又は糸である、請求項9~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
第2の被覆糸が前記テキスタイル芯糸(4)及び前記導電性テキスタイル要素(3)の周りに順に巻き付けられる重複工程を更に含む、請求項9~15のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグなどの無線周波数トランシーバデバイスに関する。より詳細には、本発明は、堅牢で弾性的に変形することができる可撓性無線周波数トランシーバデバイスに関する。このようなデバイスは、物体、特に、例えばテキスタイル分野の場合のように変形しやすい物体にタグ付けする分野に適用される。
【背景技術】
【0002】
引用文献1、引用文献2、引用文献3、引用文献4、引用文献5、引用文献6、又は引用文献7は、テキスタイルの性質の糸に半導体チップを組み込んだデバイスを開示しており、したがって、ワイヤフォームファクタをこのデバイスに付与することができる。引用文献8では、導電体で形成された2本のアンテナワイヤが、「E-Thread(商標)」技術の実施に従って無線周波数(RF)送受信チップのパッドにそれぞれはんだ付けされる。
【0003】
このはんだ付けは、チップの側面及び対向面に設けられた溝内で行われ得る。従来、アンテナワイヤは、導電材料の撚線(又は複数のそのような撚線)からなり、直径が典型的には50~200ミクロンである実質的に円形の断面を有し、それによりチップの一方の側に形成された溝に挿入することができ、このチップの高さは典型的には300~500ミクロンである。
【0004】
送受信チップのパッドとアンテナワイヤとの間の電気的接続がどのようになされるかにかかわらず、この接続は比較的脆弱なままである。これは、特に、送受信デバイスが物体に組み込まれるとき、又はこの物体への組み込み中に、アンテナワイヤに加えられ得る張力、ねじれ、又は剪断力に関して特に当てはまる。
【0005】
引用文献9は、タイヤ用の無線周波数通信モジュールを開示している。このモジュールは、ゴム混合物に埋め込まれ、コイルばねの形状を有するいわゆる「放射」アンテナを備え、このばねは、塑性変形された剛性鋼線からなる。ばねの長さは、その環境における無線周波数通信モジュールの送信信号の半波長に対応するように選択され、この文献の開示の場合にはゴム質量である。このモジュールはまた、電子回路を備え、この電子回路は、剛性の塊に封入され、PCB支持体上に配置され、マイクロコイルによって形成されたいわゆる「一次」アンテナに電気的に接続された半導体チップを備え、マイクロコイルのインピーダンスは、半導体チップのインピーダンスに適合される。このチップは、モジュールの無線周波数トランシーバ機能を実装し、特に、モジュールの一意の識別番号を記憶し通信することを可能にするRFID(無線周波数識別)チップであってもよい。電子回路は、放射アンテナと一次アンテナとの電磁結合を可能にするために、放射アンテナ内に又は放射アンテナに対して配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8471773号
【特許文献2】WO2016-038342号
【特許文献3】WO2011-161336号
【特許文献4】英国特許第2472025号
【特許文献5】英国特許第2472026号
【特許文献6】特開2013-189718号
【特許文献7】WO2008-080245号
【特許文献8】米国公開第2019-0391560号
【特許文献9】仏国特許第3059607号
【0007】
しかしながら、無線周波数通信モジュールは特に剛性であり、衣類などのテキスタイル製品に組み込むことができない。このことは、特に、塑性変形した鋼線から形成され、したがってこの用途にとって過剰に剛性であるという放射アンテナの性質に起因する。
【0008】
発明の目的
本発明の目的は、上述の問題に少なくとも部分的に対処することである。より詳細には、本発明の目的は、可撓性の無線周波数トランシーバデバイス、すなわち、衣類などのテキスタイル部品に組み込むことができるように、受ける可能性のある曲げ力又は剪断力の下で変形することが可能である無線周波数トランシーバデバイスを提案することである。本発明の別の目的は、上記で開示されたアンテナとチップとの間の電気的接続の脆弱性の問題を受けない堅牢な無線周波数トランシーバデバイスを提案することである。本発明の別の目的は、可撓性トランシーバデバイスの大量工業生産用の方法を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
この目的を達成するために、本発明の主題は、
-チップと、チップに電気的に接続された第1のアンテナとを備える電子回路と、
-非導電材料で形成されたテキスタイル芯糸と、
-導電材料で作製されたテキスタイル要素で形成され、テキスタイル芯糸の周りに、テキスタイル芯糸に沿って非連続的な巻きで配置された第2のアンテナと、を備える無線周波数トランシーバデバイスを提案する。
【0010】
本発明によれば、電子回路は、第1及び第2のアンテナの電磁結合を可能にするように、第2のアンテナに対して配置されている。
【0011】
無線周波数トランシーバデバイスの本質的にテキスタイルの性質は、変形可能な物体への組み込みを考慮することを可能にする可撓性を保証する。
【0012】
トランシーバデバイスは、この組み込みを容易にするために電子タグに組み入れることができる。
【0013】
本発明の他の有利な非限定的特徴によれば、単独で、又は技術的に実現可能な任意の組合せに従って、
-第1のアンテナは第1の軸を有し、第2のアンテナは第2の軸を有し、第1の軸及び第2の軸は互いに平行であり、
-電子回路は、テキスタイル芯糸に取り付けられており、
-無線周波数トランシーバデバイスは、電子回路とテキスタイル芯糸との間に接着剤の層を備え
-電子回路は、第1のテキスタイル被覆糸によって、又はテキスタイル芯糸及び電子回路上に順に巻き付けられた導電性テキスタイル要素によって、テキスタイル芯糸に組み付けられた状態で保持され、
-導電性テキスタイル要素がテキスタイルシースに組み込まれ、電子回路及びテキスタイル芯糸がテキスタイルシースの内側に配置され、
-テキスタイルシースは、織物、編物、又は編組であり、
-導電性テキスタイル要素は、テキスタイル芯糸上に直接巻き付けられ、電子回路は、少なくとも1巻きの外面に組み付けられ、
-テキスタイル要素は、テープ又は糸であり、
-導電性テキスタイル要素は、100ミクロン未満の直径又は厚さを有する。
-無線周波数トランシーバデバイスは、電子回路、テキスタイル芯糸、及びテキスタイル要素を封入するコーティング層を備える。
-無線周波数トランシーバデバイスは、テキスタイル芯糸、電子回路、及び導電性テキスタイル要素の周りに巻かれた第2の被覆糸を備える。
【0014】
別の態様によれば、本発明の目的は、トランシーバデバイスを製造する方法を提案することであり、本方法は、
-複数の電子回路であって、電子回路がそれぞれ、チップと、チップに電気的に接続された第1のアンテナとを備える、電子回路をテキスタイル芯糸に沿って離間させるようにテキスタイル芯糸上に組み付ける工程と、
-導電材料で作製されたテキスタイル要素から形成され、テキスタイル芯糸の周りに非連続的な巻きで配置された第2のアンテナを準備する工程と、を含む。
【0015】
本発明の他の有利な非限定的特徴によれば、単独で、又は技術的に実現可能な任意の組合せに従って、
-組み付け工程は、複数の電子回路をテキスタイル芯糸上に直接保持するために接着剤を塗布することを含み、
-組み付け工程は、第1のテキスタイル被覆糸をテキスタイル芯糸及び電子回路上に順に巻き付ける工程を含み、
-組み付け工程及び準備工程は、テキスタイル要素をテキスタイル芯糸及び電子回路に直接巻き付けることによって同時に実行され、
-準備工程は、テキスタイル要素をテキスタイル芯のテキスタイルシース内に非連続巻きで組み込むことを含み、
-テキスタイル要素は、基本テキスタイル糸からのテキスタイル芯糸の周りにテキスタイルシースを織ることによって、編むことによって、又は編組することによって組み込まれ、導電性テキスタイル要素は、基本糸のうちの1つを構成し、
-準備工程は、導電性テキスタイル要素をテキスタイル芯糸上に直接巻き付けることを含み、準備工程の後に実行される組み付け工程は、各電子回路を導電性テキスタイル要素の少なくとも1巻きの外面に組み付けることを含み、
-導電性テキスタイル要素は、テープ又は糸であり、
-製造方法は、第2の被覆糸が、テキスタイル芯糸及び導電性テキスタイル要素の周りに順に巻き付けられる被覆工程を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照した本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【
図1a】第1の実施形態によるトランシーバデバイスを示す。
【
図1b】第1の実施形態によるトランシーバデバイスを示す。
【
図2】第2の実施形態によるトランシーバデバイスを示す。
【
図3】本発明によるトランシーバデバイスの電子回路を示す。
【
図4】本発明による方法の一般的原理を概略的に示す。
【
図5】本発明によるトランシーバデバイスを組み込んだ電子タグを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
非常に概略的に、いくつかの実施形態を表す
図1a、
図1b、及び
図2を参照すると、本説明の主題である無線周波数トランシーバデバイス1は、トランシーバチップ2aと、このチップ2aに電気的に接続された第1のアンテナ2bとを備える電子回路2を備える。このデバイスは、識別子を保持し、遠隔質問機からの要求に応じてこの識別子を送信することができるRFID識別チップ2aを含んでもよい。優先的に、第1のアンテナは、近接場磁気アンテナである。このアンテナは、コイル、又はより一般的には、1つ以上の巻きからなる磁気ループから形成されてもよい。また、
図3に示されるような集積電子部品2bの形態をとってもよい。第1のアンテナは、第1のアンテナ軸a1、例えば、磁気ループによって生成又は誘導される磁場の方向に沿って配向された軸を有する。
【0018】
チップ2a及びアンテナ2bは、電気接続トラックPを有する基板2c上に配置することができ、したがって、特にアンテナ2bが集積電子部品の形態である場合、これらの2つの要素を電気的に(直流的に)接続することが可能になる。支持体2cは、可撓性であっても剛性であってもよい。これら2つの構成要素をワイヤボンディングによって接続することも可能である。チップ2a、アンテナ2b、及び存在する場合には支持体2cは、回路2を機械的に保護し電気的に絶縁するように、絶縁材料2d、例えば樹脂又はセラミック内に封入することができる。この絶縁材料の電磁特性(誘電率及び磁気誘電率)は、デバイスの性能を改善するように適合させることができる。
【0019】
トランシーバチップ2a及びアンテナ2bが電子回路2を形成するためにどのように相互接続されるかにかかわらず、非常に小さいサイズである。したがって、好ましくは、この回路は、高さが典型的には0.5mm~2mmであり、幅が0.5mm~2mmであり、長さが4mm~15mmであり、好ましくは10mm未満である平行六面体に内接される。
【0020】
トランシーバデバイス1はまた、導電材料で作製されたテキスタイル要素3から形成され、テキスタイル芯糸4の周りに、テキスタイル芯糸4に沿って非連続的な巻きで配置された第2のアンテナを備える。アンテナを形成するテキスタイル要素3の導電材料は、銅又は銅合金(黄銅、青銅、白銅、CuAgなど)、鋼、ステンレス鋼、銅めっき鋼、ニッケル、金属化繊維(銀めっきナイロン)から作製され得る。導電材料は、表皮効果によって周縁部における導電性を改善するために、又は金対銀などの化学的腐食に対する保護を提供するために、RFID-UHF用途の場合、典型的には2μm未満の薄い厚さの導電材料でコーティングされ得る。テキスタイル要素3の導電材料は、化学的及び機械的に保護するために、エナメルなどの絶縁層でコーティングすることができる。テキスタイル要素3は、本発明の様々な実施形態で説明されるように、円形又は多角形の単一撚線又はマルチ撚線断面を有する導電性糸、撚線、又はテープの形態であってもよい。有利には、100ミクロン未満の直径(糸の場合)又は厚さ(テープの場合)を有する。
【0021】
テキスタイル芯糸4は、非導電材料で作製されており、デバイス1の他の要素、特に第2のアンテナのための支持構造を形成する。テキスタイル芯糸4は、第2のアンテナがそれに沿って巻き付けられることによって配置され、デバイス1と遠隔質問機との間の送信周波数の半波長に実質的に等しい長さを有する。したがって、通常の送信周波数では、芯糸の長さは5~20cm程度である。
【0022】
有利には、テキスタイル芯糸4は、電気絶縁性及び伸縮性を有するように選択され、すなわち、この場合、糸は、静止時の長さの5%、20%、50%、又は更には100%であり得る弾性伸長能力を有する。しかしながら、この特徴は必須ではなく、本発明は、例えば5%未満の弾性伸びを有する非伸長性のテキスタイル糸と完全に適合する。
【0023】
例として、テキスタイル芯糸4は、アラミド繊維から作製され得、したがって、メタアラミドマルチフィラメント糸(例えば、Nomex(商標)の商品名で知られている)や、ポリアミドイミドなどの短い又は長いメタアラミド繊維から作られた糸(例えば、Kermel(商標)の商品名で知られている)を形成し得る。あるいは、Zylon(商標)の商品名で知られているPBO糸(ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)であってもよい。芯糸はまた、芳香族ポリエステル(例えば、商品名Vectran(商標)で知られている)から形成されてもよい。芯糸はまた、PEAK(ポリアリールエーテルケトン)、天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、又はPPS繊維(ポリフェニレンスルフィド)などのポリマーから形成された糸であってもよい。
【0024】
テキスタイル芯糸4は、ホットメルト材料から形成することができてもよいし、接着剤であってもよい。
【0025】
テキスタイル芯糸4は、有利には円形の断面を有し、その直径は10ミクロン~500ミクロンである。
【0026】
第2のアンテナは、好ましくは電気的性質を有し、典型的にはダイポールアンテナからなる。「ダイポールアンテナ」は、遠隔質問機デバイスに、誘導磁界のみを介してではなく、これら2つの要素間を伝搬する電磁界の電気成分によって結合することができる任意のアンテナを意味する。この第2のアンテナは、芯糸4の周りの導電性テキスタイル要素3の巻き方向にほぼ沿って延びる第2の軸a2を有する。アンテナのこの第2の軸a2は、テキスタイル要素の巻回軸に対応する。この第2のアンテナは、第1のアンテナよりもサイズがはるかに大きいことに留意されたい。
【0027】
トランシーバデバイス1において、第1のアンテナを有する電子回路2は、第2のアンテナとの電磁結合を可能にするために、第2のアンテナに対して配置される。導電性テキスタイル要素3の巻きの不連続性は、この巻線のインダクタンス値を改善し、したがって、この結合を促進することを可能にする。典型的には、第1の軸a1及び第2の軸a2が互いに平行であるように、(第2のアンテナを担持する)テキスタイル芯糸4に対して(第1のアンテナを担持する)電子回路2を配置することを含む。好ましくは、結合品質を向上させるために、これら2つの軸を重ね合わせるか、又はそれらを分離する距離を制限することが求められる。
【0028】
この電磁結合の結果として、第1のアンテナに対してサイズが比較的大きい第2のアンテナは、従来技術のいくつかの解決策の場合のようにトランシーバチップ2aと電気的に(直流的に)接続されない。したがって、比較的大きなアンテナとチップとの間の溶接又は他の機械的接続が回避され、このアンテナは、これらの接続においてデバイスに加えられる外力を伝達することができる。
【0029】
加えて、電子回路2の非常に小さなサイズは、トランシーバデバイスの他の要素のテキスタイルの性質と組み合わされて、このデバイスの可撓性を保証し、それを衣服のようなテキスタイル部品に組み込むことを可能にする。
【0030】
これらの原理は、以下の説明の主題を形成するいくつかの実施形態に従って実施することができる。
【0031】
第1の実施形態
図1a及び
図1bの主題であるこの第1の実施形態では、電子回路2は、テキスタイル芯糸に取り付けられており、すなわち、このテキスタイル芯糸4に直接保持されている。導電性テキスタイル要素3、好ましくは導電材料で作製されたテキスタイル糸が、テキスタイル芯4及び電子回路2の周りに巻き付けられる。このテキスタイル糸は、単一撚線又はマルチ撚線であってもよい。しかしながら、変形例では、導電性テキスタイル要素3は、テープの形態をとることができる。この実施形態は、導電性テキスタイル要素3の巻線によって生成される体積内に電子デバイス2を配置することを可能にし、その結果、アンテナの第1の軸a1及び第2の軸a2が互いに最も接近して配置されるという点で有利である。
【0032】
したがって、例えば回路2と芯糸4との間に接着剤の層を配置することによって、接着剤で回路2を芯糸4に組み付けることが可能である。いくつかの変形例では、この接着剤を分配する必要はなく、芯糸4自体が接着材料から形成されてもよく、又は特定の処理によって接着特性を発現させてもよい。これは、特に、加熱された後に電子回路2を接着することができるホットメルト材料からなる芯糸の場合である。接着によるこの組み付けの代わりに、又はそれに加えて、電子回路2が、第1のテキスタイル被覆糸5によって、又はテキスタイル要素3自体によって、テキスタイル芯糸4に組み付けられた状態で保持されるようにすることができる。そのようなアプローチによれば、第1のテキスタイル被覆糸5又は導電性テキスタイル要素3は、テキスタイル芯糸上及び電子回路上に巻き付けられて、それを芯糸4に対して押圧して巻きに捕捉された状態に保持する。
【0033】
第2のアンテナを形成する導電性テキスタイル要素3は、必ずしもテキスタイル芯糸の周りに巻き付ける必要はない。この導電性テキスタイル要素3は、テキスタイルシース6の基本テキスタイル糸のうちの1つ、例えば、これらの基本テキスタイル糸から織られ、編組され、又は編まれたシースを形成することができる。換言すれば、第1の実施形態のこの代替実施形態では、電子回路2を担持する芯糸4は、第2のアンテナを形成する導電性テキスタイル要素3が組み込まれたテキスタイルシース6で覆われている。この実施形態では、複数の導電性テキスタイル要素をシース6に組み込むことも可能であり、これらの要素の各々は、テキスタイル芯糸の周りに非連続的な巻きで巻き付けられる。
【0034】
しかしながら、全ての場合において、導電性糸要素3が取る形状にかかわらず、テキスタイルシースに組み込まれていてもいなくても、導電性糸要素3は、テキスタイル芯糸4の周りに沿って非連続的な巻きで配置されている。
【0035】
この第1の実施形態によるトランシーバデバイスの製造は、複数のデバイス1の集合生産方法によって、高速で実行することができる。したがって、本方法は、糸に沿って互いに離間させるように、複数の電子回路2を大型テキスタイル芯糸上に組み付ける工程S1を含む。機能的トランシーバデバイス1を大型テキスタイル芯糸から取り外すことができるように、アンテナの長さに少なくとも等しい間隔が選択される。この組み付けの間、第1のアンテナの第1の軸a1を(第2のアンテナの軸a2を実質的に画定する)芯糸に実質的に平行に配置するために、電子回路2を配向するように注意が払われる。
【0036】
示されたように、組み付け工程S1は、電子回路を大型テキスタイル芯糸上に接合することに対応し得る。この糸は、張力を受けたまま、連続的なシーケンスによってスプールから巻き出すことができる。各シーケンスの間、糸は、電子回路2を組み付けるために、挿入装置(専門用語による「ピックアンドプレース」)の前で固定され、電子回路2の一方の表面は予め接着剤でコーティングされている。あるいは、挿入装置を使用して回路2をその中に配置する前に、場合によっては、分配ノズルを使用して大型芯糸に接着剤の層を設けてもよい。電子回路2が設けられた大型糸は、受信コイルから回収され、方法の次の工程を待つことができる。
【0037】
接着剤によるこの組み付けの代わりに、又はそれに加えて、少なくとも第1のテキスタイル被覆糸5を、例えばラッピング技術によって、大型テキスタイル芯糸及び電子回路上に巻き付けることによって、電子回路2を大型テキスタイル芯糸上に保持するようにしてもよい。念のため述べておくと、この技術によれば、大型芯糸は、被覆糸を担持する中空の回転スプールを通って引き出される。大型糸は、中空スプールを上下に引っ張ることにより、中空スプールを垂直方向に通過する。被覆糸は、中空スプールから巻き出されて、芯の周りに螺旋状に巻き付けられて巻きを形成する。例えば、2つの中空スプールを上下に配置し、同じ方向又は反対方向に回転駆動されるスプールの各々を通じて芯を循環させることによって、芯の周りに複数の被覆糸を巻き付けることが一般的である。ラッピングボールにおいてトラフを介して電子回路を形成することによって、テキスタイル芯糸と被覆糸との間に電子回路を配置することが可能である。
【0038】
当然のことながら、両方のアプローチを組み合わせることが可能であり、電子回路2の大型テキスタイル芯糸への接合と、少なくとも第1の被覆糸5によるラッピングとの両方を提供することが可能である。
【0039】
トランシーバデバイスの製造方法の説明を再開すると、トランシーバデバイスは、導電材料で作製されたテキスタイル要素から第2のアンテナを準備する工程S2を含む。この準備工程は、ラッピング工程を実施することができ、すなわち、導電性テキスタイル要素を、大型テキスタイル芯糸上及び電子回路2上(及び、第1の糸が設けられている場合には、第1の被覆糸5上)に(この場合は連続しない)巻きに巻き付ける工程を実施することができる。
【0040】
その単純さのために特に有利である本方法の1アプローチによれば、組み付け工程S1及び準備工程S2は、導電性テキスタイル要素を組み付けて芯糸上に保持するために、導電性テキスタイル要素を大型テキスタイル芯糸及び電子回路2上に直接巻き付けることによって同時に実行される。
【0041】
第2のアンテナの準備工程S2は、組み付け工程S1の後に実行されようと、組み付け工程S1と同時に実行されようと、必ずしもラッピング工程を実施しない。したがって、特定の手法によれば、導電性テキスタイル要素3は、芯糸4のテキスタイルシース6内の非連続的な巻きに組み込まれる。
【0042】
導電性テキスタイル要素の組み込みは、基本テキスタイル糸から電子回路2を担持する大型テキスタイル芯糸の周りにテキスタイルシース6を織ることによって、編むことによって、又は編組することによって行うことができ、導電性テキスタイル要素は、これらの基本糸のうちの少なくとも1つを形成する。
【0043】
したがって、組み付け及び準備工程S1及びS2の終わりには、保管スプール内に収集することができる長いテキスタイル糸又はテープが存在し、このテキスタイル糸又はテープは、互いに接続された複数のトランシーバデバイス1から構成される。これらのデバイス1は、テキスタイル糸又はテープの連続した部分を除去することによって個別化することができる。有利なことに、長いテキスタイル又はテキスタイルテープの切断点は、電子回路2を、個別化されたデバイス1のテキスタイル芯糸4の間の実質的に中間に位置決めするように選択される。
【0044】
第2の実施形態
この第2の実施形態では、その一例が
図2に示されており、電子回路1は、導電性テキスタイル要素3に取り付けられており、すなわち、導電性テキスタイル要素3がテキスタイル芯糸4上に直接巻き付けられる一方、電子回路2は、少なくとも1巻きの外面に組み付けられている。したがって、電子回路2は、導電性テキスタイル要素3の巻線によって生成される体積の外側に配置される。
【0045】
電子回路2は、導電性テキスタイル要素3の少なくとも1つの巻きに接合することによって組み付けることができ、又は任意の他の手段によって保持することができる。電子回路は、第1のアンテナと第2のアンテナとの間の結合を促進するために、導電性テキスタイル要素3の複数の巻きにわたって延在し得る。
【0046】
この実施形態の導電性テキスタイル要素3は、テープ又は糸の形態をとることができる。「テープ」は、細長い可撓性の平坦なフィルムを意味する。このテープは、例えば、圧延金属ワイヤから構成されてもよい。このテープは、テキスタイル糸4に対して巻き付けられ、この糸4に対して軽く押し付けられる。テキスタイル芯糸4とテープとの間に接着材料を設ける必要はない。
【0047】
テープは、金属又は複数の金属(例えば、銅、真鍮、青銅、白銅、96質量%超の銅を含む銅合金、ニッケル)であってもよい導電材料から形成される。このテープは、圧延金属ワイヤであってもよい。この場合、有利には、この圧延は冷間で行われる。好ましくは、その後に熱アニーリングは行われない。この方法は、テープを構成する材料の硬化を促進し、したがって疲労抵抗を向上させる。
【0048】
このテープは、第1の材料の主層からなり、この主層は、その面の少なくとも1つにおいて、導電性又は絶縁性コーティングで覆われている。したがって、主層は、以下の材料:銀、金、銅、スズ、ニッケル、黄銅、亜鉛、及びスズ合金からなる群から選択される材料で作製されたコーティングでコーティングされた鋼で作成され得る。
【0049】
あるいは、主層は、以下の材料:ステンレス鋼、ニッケル単独が合金の質量の少なくとも45%を占めるニッケル合金、チタン単独が合金の質量の少なくとも70%を占めるチタン合金、ニッケルからなる群から選択される材料から作製され得る。
【0050】
有利には、コーティングは、主層を形成する材料の電気抵抗率よりも低い電気抵抗率を有する。コーティングは、耐腐食性に関して選択されてもよく、例えば銀で作られてもよい。コーティングは、前の段落で提示したように、圧延工程の前又は後に、主層上に堆積することによって形成することができる。コーティングは、テープを機械的及び/又は化学的に保護するために、電気絶縁体、例えばエナメルであってもよい。
【0051】
テープの選択された性質がどのようなものであっても、テープは、50ミクロン未満、典型的には5~20ミクロン、有利には5ミクロン~10ミクロンの小さな厚さを有し、それにより、テキスタイル芯糸4上に巻き付けられるのに十分な可撓性を有する。テープは、弾性的又は可塑的に変形することができる。典型的には、テープは、テキスタイル芯糸4の直径よりも10~20分の1、又は更には30分の1以上小さい厚さを有する。テープは、40ミクロン~200ミクロンの幅を有してもよいが、この特徴は決して限定するものではない。
【0052】
この第2の実施形態によるトランシーバデバイス1の製造は、比較的単純であり、第1の実施形態によるデバイス1の製造について説明したものと同じ集合製造工程S1、S2に基づく。
【0053】
したがって、そのような方法は、まず第1に、導電材料で作られたテキスタイル要素3から第2のアンテナを準備する工程S2を含む。この準備工程S2は、テキスタイル要素を大きな芯糸上にラッピングする工程、又はこの芯糸上に直接テキスタイルシースを製造する工程を実施することができ、このシースの製造(例えば、編組、編成、又は製織による)は、導電性テキスタイル要素を大きな芯糸の周りの非連続的な巻きに組み入れる。
【0054】
次に、製造方法は、複数の電子回路2を、糸に沿って互いに離間させるように、テキスタイル要素3の少なくとも1巻きの外面上に組み付ける工程S1を含む。機能的伝送デバイス1を取り外すことができるように、少なくともアンテナ長に等しい間隔が選択される。この組み付けの間、第1の実施形態と全く同様に、第1のアンテナの第1の軸a1が(第2のアンテナの軸a2を画定する)芯糸に実質的に平行に配置されるように電子回路を配向するように注意が払われる。
【0055】
この組み付けは、第1の実施形態と同様に、少なくとも1本の被覆糸を巻き付けることによって接合することによって行うことができる。
【0056】
したがって、これらの工程の終わりに、保管スプールに収集することができる長いテキスタイル糸が利用可能であり、このテキスタイル糸は、互いに接続された複数のトランシーバデバイス1から形成される。これらのデバイスは、第1の実施形態によるトランシーバデバイスを製造する方法の説明に関連して説明したように、テキスタイル糸の連続部分を除去することによって個別化することができる。
【0057】
当然ながら、本発明は、説明された実施形態に限定されず、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、変形実施形態をそれに追加することができる。
【0058】
したがって、トランシーバデバイスにコーティング層を設け、電子回路、テキスタイル芯糸、及びテキスタイル要素を封入することによってトランシーバデバイスを保護することができる。特に、ポリウレタン又はシリコーンであってもよい。コーティング層は、トランシーバデバイス上に押出成形によって形成することができる。
【0059】
更に、本明細書の主題であるトランシーバデバイスは、製品、例えば衣類などのテキスタイル製品に直接組み入れることができる。しかしながら、このデバイスは、テキスタイル以外の応用分野を見出すことができ、任意のタイプの製品、特にある程度の可撓性を有する製品の電子タグ付けに有利であり得る。
【0060】
デバイスは、例えば織る、刺繍する、又は縫い付けることによってテキスタイル片に直接組み込むことができる。しかしながら、仏国特許第2002785号に記載されているように、タグの組み込みを容易にするために、デバイスを予めタグに組み込むことができる。
【0061】
デバイスはまた、本明細書で提供されるもの以外の形状をとるタグ、例えば、パイピング、織られたバイアス若しくはラットテール、又は縫製される任意の他のタイプのテキスタイル部品に組み込まれ得る。
【0062】
縫製されるこれらのタイプのテキスタイル部品は、一般に、テキスタイル糸の束又はフィラーを形成するコード上でチューブ内に折り畳まれたテープによって形成されることが想起されるであろう。本発明の場合、例えば、テープが個別化される前に大型テキスタイル糸の形態である場合、テープをトランシーバデバイス上に折り畳むことができ、この大型テキスタイル糸はチューブの充填に寄与する。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数トランシーバデバイス(1)であって、
-チップ(2a)と、前記チップ(2a)に電気的に接続された第1のアンテナ(2b)とを備える電子回路(2)と、
-非導電材料で形成されたテキスタイル芯糸(4)と、
-導電材料で作製された
導電性テキスタイル要素(3)から形成され、前記テキスタイル芯糸(4)の周りに前記テキスタイル芯糸(4)に沿って非連続的な巻きで配置された第2のアンテナと、を備え、
前記電子回路(2)は、前記第1のアンテナ(2
b)と前記第2のアンテナとの電磁結合を可能にするように前記第2のアンテナに対して配置されている、無線周波数トランシーバデバイス(1)。
【請求項2】
前記第1のアンテナ(2b)は第1の軸(a1)を有し、前記第2のアンテナは第2の軸(a2)を有し、前記第1の軸(a1)及び前記第2の軸(a2)は互いに平行である、請求項1に記載の無線周波数トランシーバデバイス(1)。
【請求項3】
前記電子回路(2)は、接着によって、及び/又は第1のテキスタイル被覆糸によって、又は前記テキスタイル芯糸(4)及び前記電子回路(2)上に交互に巻かれた前記導電性テキスタイル要素(3)によって、前記テキスタイル芯糸(4)に取り付けられ、保持される、請求項1又は2に記載の無線周波数トランシーバデバイス(1)。
【請求項4】
前記導電性テキスタイル要素(3)がテキスタイルシース(6)に組み込まれ、前記電子回路(2)及び前記テキスタイル芯糸(4)が前記テキスタイルシース(6)の内部に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の無線周波数トランシーバデバイス(1)。
【請求項5】
前記導電性テキスタイル要素(3)は、前記テキスタイル芯糸(4)上に直接巻き付けられ、前記電子回路(2)は、少なくとも1巻きの外面上に組み付けられる、請求項1又は2に記載の無線周波数トランシーバデバイス(1)。
【請求項6】
前記導電性テキスタイル要素(3)は、テープ又は糸である、請求項1~5のいずれか一項に記載の無線周波数トランシーバデバイス(1)。
【請求項7】
前記テキスタイル芯糸(4)、前記電子回路(2)、及び前記導電性テキスタイル要素(3)の周りに巻き付けられた第2の被覆糸を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の無線周波数トランシーバデバイス(1)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の無線周波数トランシーバデバイス(1)を備える電子タグ。
【請求項9】
無線周波数トランシーバデバイス(1)を製造するための方法であって、
-複数の電子回路(2)であって、それぞれ、チップ(2a)と、前記チップ(2a)に電気的に接続された第1のアンテナ(2b)とを備える、電子回路(2)を、テキスタイル芯糸に沿って互いに離間するように、前記テキスタイル芯糸上に組み付ける工程(S1)と、
-導電材料で作製され、前記テキスタイル芯糸(4)の周りに非連続的な巻きで配置された
導電性テキスタイル要素(3)から形成された第2のアンテナを準備する工程(S2)と、を含む、製造するための方法。
【請求項10】
前記組み付け工程(S1)は、前記複数の電子回路(2)を前記テキスタイル芯糸(4)上に直接保持するために、接着剤を塗布することを含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記組み付け工程(S1)は、第1のテキスタイル被覆糸を前記テキスタイル芯糸(4)及び前記電子回路(2)に順に巻き付けることを含む、請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記組み付け工程(S1)及び前記準備工程(S2)は、前記導電性テキスタイル要素(3)を前記テキスタイル芯糸(4)及び前記電子回路(2)に直接巻き付けることによって同時に実行される、請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
前記準備工程(S2)は、前記導電性テキスタイル要素(3)を前記テキスタイル芯
糸(4)のテキスタイルシース(6)内の非連続な巻きに組み込むことを含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記準備工程(S2)は、前記導電性テキスタイル要素(3)を前記テキスタイル芯糸(4)に直接巻き付けることを含み、前記準備工程(S2)の後に実行される前記組み付け工程(S1)は、前記電子回路(2)の各々を前記導電性テキスタイル要素(3)の少なくとも1つの巻きの外面に組み付けることを含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項15】
前記導電性テキスタイル要素(3)は、テープ又は糸である、請求項9~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
第2の被覆糸が前記テキスタイル芯糸(4)及び前記導電性テキスタイル要素(3)の周りに順に巻き付けられる重複工程を更に含む、請求項9~15のいずれか一項に記載の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグなどの無線周波数トランシーバデバイスに関する。より詳細には、本発明は、堅牢で弾性的に変形することができる可撓性無線周波数トランシーバデバイスに関する。このようなデバイスは、物体、特に、例えばテキスタイル分野の場合のように変形しやすい物体にタグ付けする分野に適用される。
【背景技術】
【0002】
引用文献1、引用文献2、引用文献3、引用文献4、引用文献5、引用文献6、又は引用文献7は、テキスタイルの性質の糸に半導体チップを組み込んだデバイスを開示しており、したがって、ワイヤフォームファクタをこのデバイスに付与することができる。引用文献8では、導電体で形成された2本のアンテナワイヤが、「E-Thread(商標)」技術の実施に従って無線周波数(RF)送受信チップのパッドにそれぞれはんだ付けされる。
【0003】
このはんだ付けは、チップの側面及び対向面に設けられた溝内で行われ得る。従来、アンテナワイヤは、導電材料の撚線(又は複数のそのような撚線)からなり、直径が典型的には50~200ミクロンである実質的に円形の断面を有し、それによりチップの一方の側に形成された溝に挿入することができ、このチップの高さは典型的には300~500ミクロンである。
【0004】
送受信チップのパッドとアンテナワイヤとの間の電気的接続がどのようになされるかにかかわらず、この接続は比較的脆弱なままである。これは、特に、送受信デバイスが物体に組み込まれるとき、又はこの物体への組み込み中に、アンテナワイヤに加えられ得る張力、ねじれ、又は剪断力に関して特に当てはまる。
【0005】
引用文献9は、タイヤ用の無線周波数通信モジュールを開示している。このモジュールは、ゴム混合物に埋め込まれ、コイルばねの形状を有するいわゆる「放射」アンテナを備え、このばねは、塑性変形された剛性鋼線からなる。ばねの長さは、その環境における無線周波数通信モジュールの送信信号の半波長に対応するように選択され、この文献の開示の場合にはゴム質量である。このモジュールはまた、電子回路を備え、この電子回路は、剛性の塊に封入され、PCB支持体上に配置され、マイクロコイルによって形成されたいわゆる「一次」アンテナに電気的に接続された半導体チップを備え、マイクロコイルのインピーダンスは、半導体チップのインピーダンスに適合される。このチップは、モジュールの無線周波数トランシーバ機能を実装し、特に、モジュールの一意の識別番号を記憶し通信することを可能にするRFID(無線周波数識別)チップであってもよい。電子回路は、放射アンテナと一次アンテナとの電磁結合を可能にするために、放射アンテナ内に又は放射アンテナに対して配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8471773号
【特許文献2】WO2016-038342号
【特許文献3】WO2011-161336号
【特許文献4】英国特許第2472025号
【特許文献5】英国特許第2472026号
【特許文献6】特開2013-189718号
【特許文献7】WO2008-080245号
【特許文献8】米国公開第2019-0391560号
【特許文献9】仏国特許第3059607号
【0007】
しかしながら、無線周波数通信モジュールは特に剛性であり、衣類などのテキスタイル製品に組み込むことができない。このことは、特に、塑性変形した鋼線から形成され、したがってこの用途にとって過剰に剛性であるという放射アンテナの性質に起因する。
【0008】
発明の目的
本発明の目的は、上述の問題に少なくとも部分的に対処することである。より詳細には、本発明の目的は、可撓性の無線周波数トランシーバデバイス、すなわち、衣類などのテキスタイル部品に組み込むことができるように、受ける可能性のある曲げ力又は剪断力の下で変形することが可能である無線周波数トランシーバデバイスを提案することである。本発明の別の目的は、上記で開示されたアンテナとチップとの間の電気的接続の脆弱性の問題を受けない堅牢な無線周波数トランシーバデバイスを提案することである。本発明の別の目的は、可撓性トランシーバデバイスの大量工業生産用の方法を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
この目的を達成するために、本発明の主題は、
-チップと、チップに電気的に接続された第1のアンテナとを備える電子回路と、
-非導電材料で形成されたテキスタイル芯糸と、
-導電材料で作製されたテキスタイル要素で形成され、テキスタイル芯糸の周りに、テキスタイル芯糸に沿って非連続的な巻きで配置された第2のアンテナと、を備える無線周波数トランシーバデバイスを提案する。
【0010】
本発明によれば、電子回路は、第1及び第2のアンテナの電磁結合を可能にするように、第2のアンテナに対して配置されている。
【0011】
無線周波数トランシーバデバイスの本質的にテキスタイルの性質は、変形可能な物体への組み込みを考慮することを可能にする可撓性を保証する。
【0012】
トランシーバデバイスは、この組み込みを容易にするために電子タグに組み入れることができる。
【0013】
本発明の他の有利な非限定的特徴によれば、単独で、又は技術的に実現可能な任意の組合せに従って、
-第1のアンテナは第1の軸を有し、第2のアンテナは第2の軸を有し、第1の軸及び第2の軸は互いに平行であり、
-電子回路は、テキスタイル芯糸に取り付けられており、
-無線周波数トランシーバデバイスは、電子回路とテキスタイル芯糸との間に接着剤の層を備え
-電子回路は、第1のテキスタイル被覆糸によって、又はテキスタイル芯糸及び電子回路上に順に巻き付けられた導電性テキスタイル要素によって、テキスタイル芯糸に組み付けられた状態で保持され、
-導電性テキスタイル要素がテキスタイルシースに組み込まれ、電子回路及びテキスタイル芯糸がテキスタイルシースの内側に配置され、
-テキスタイルシースは、織物、編物、又は編組であり、
-導電性テキスタイル要素は、テキスタイル芯糸上に直接巻き付けられ、電子回路は、少なくとも1巻きの外面に組み付けられ、
-テキスタイル要素は、テープ又は糸であり、
-導電性テキスタイル要素は、100ミクロン未満の直径又は厚さを有する。
-無線周波数トランシーバデバイスは、電子回路、テキスタイル芯糸、及びテキスタイル要素を封入するコーティング層を備える。
-無線周波数トランシーバデバイスは、テキスタイル芯糸、電子回路、及び導電性テキスタイル要素の周りに巻かれた第2の被覆糸を備える。
【0014】
別の態様によれば、本発明の目的は、トランシーバデバイスを製造する方法を提案することであり、本方法は、
-複数の電子回路であって、電子回路がそれぞれ、チップと、チップに電気的に接続された第1のアンテナとを備える、電子回路をテキスタイル芯糸に沿って離間させるようにテキスタイル芯糸上に組み付ける工程と、
-導電材料で作製されたテキスタイル要素から形成され、テキスタイル芯糸の周りに非連続的な巻きで配置された第2のアンテナを準備する工程と、を含む。
【0015】
本発明の他の有利な非限定的特徴によれば、単独で、又は技術的に実現可能な任意の組合せに従って、
-組み付け工程は、複数の電子回路をテキスタイル芯糸上に直接保持するために接着剤を塗布することを含み、
-組み付け工程は、第1のテキスタイル被覆糸をテキスタイル芯糸及び電子回路上に順に巻き付ける工程を含み、
-組み付け工程及び準備工程は、テキスタイル要素をテキスタイル芯糸及び電子回路に直接巻き付けることによって同時に実行され、
-準備工程は、テキスタイル要素をテキスタイル芯のテキスタイルシース内に非連続巻きで組み込むことを含み、
-テキスタイル要素は、基本テキスタイル糸からのテキスタイル芯糸の周りにテキスタイルシースを織ることによって、編むことによって、又は編組することによって組み込まれ、導電性テキスタイル要素は、基本糸のうちの1つを構成し、
-準備工程は、導電性テキスタイル要素をテキスタイル芯糸上に直接巻き付けることを含み、準備工程の後に実行される組み付け工程は、各電子回路を導電性テキスタイル要素の少なくとも1巻きの外面に組み付けることを含み、
-導電性テキスタイル要素は、テープ又は糸であり、
-製造方法は、第2の被覆糸が、テキスタイル芯糸及び導電性テキスタイル要素の周りに順に巻き付けられる被覆工程を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照した本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【
図1a】第1の実施形態によるトランシーバデバイスを示す。
【
図1b】第1の実施形態によるトランシーバデバイスを示す。
【
図2】第2の実施形態によるトランシーバデバイスを示す。
【
図3】本発明によるトランシーバデバイスの電子回路を示す。
【
図4】本発明による方法の一般的原理を概略的に示す。
【
図5】本発明によるトランシーバデバイスを組み込んだ電子タグを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
非常に概略的に、いくつかの実施形態を表す
図1a、
図1b、及び
図2を参照すると、本説明の主題である無線周波数トランシーバデバイス1は
、チップ2aと、このチップ2aに電気的に接続された第1のアンテナ2bとを備える電子回路2を備える。このデバイスは、識別子を保持し、遠隔質問機からの要求に応じてこの識別子を送信することができるRFID識別チッ
プを含んでもよい。優先的に、第1のアンテナ
2bは、近接場磁気アンテナである。このアンテナは、コイル、又はより一般的には、1つ以上の巻きからなる磁気ループから形成されてもよい。また、
図3に示されるような集積電子部
品の形態をとってもよい。第1のアンテナ
2bは、第1のアンテナ軸a1、例えば、磁気ループによって生成又は誘導される磁場の方向に沿って配向された軸を有する。
【0018】
チップ2a及び第1のアンテナ2bは、電気接続トラックPを有する支持体2c上に配置することができ、したがって、特に第1のアンテナ2bが集積電子部品の形態である場合、これらの2つの要素を電気的に(直流的に)接続することが可能になる。支持体2cは、可撓性であっても剛性であってもよい。これら2つの構成要素をワイヤボンディングによって接続することも可能である。チップ2a、第1のアンテナ2b、及び存在する場合には支持体2cは、電子回路2を機械的に保護し電気的に絶縁するように、絶縁材料2d、例えば樹脂又はセラミック内に封入することができる。この絶縁材料の電磁特性(誘電率及び磁気誘電率)は、デバイスの性能を改善するように適合させることができる。
【0019】
チップ2a及び第1のアンテナ2bが電子回路2を形成するためにどのように相互接続されるかにかかわらず、非常に小さいサイズである。したがって、好ましくは、この回路は、高さが典型的には0.5mm~2mmであり、幅が0.5mm~2mmであり、長さが4mm~15mmであり、好ましくは10mm未満である平行六面体に内接される。
【0020】
トランシーバデバイス1はまた、導電材料で作製された導電性テキスタイル要素3から形成され、テキスタイル芯糸4の周りに、テキスタイル芯糸4に沿って非連続的な巻きで配置された第2のアンテナを備える。アンテナを形成する導電性テキスタイル要素3の導電材料は、銅又は銅合金(黄銅、青銅、白銅、CuAgなど)、鋼、ステンレス鋼、銅めっき鋼、ニッケル、金属化繊維(銀めっきナイロン)から作製され得る。導電材料は、表皮効果によって周縁部における導電性を改善するために、又は金対銀などの化学的腐食に対する保護を提供するために、RFID-UHF用途の場合、典型的には2μm未満の薄い厚さの導電材料でコーティングされ得る。導電性テキスタイル要素3の導電材料は、化学的及び機械的に保護するために、エナメルなどの絶縁層でコーティングすることができる。導電性テキスタイル要素3は、本発明の様々な実施形態で説明されるように、円形又は多角形の単一撚線又はマルチ撚線断面を有する導電性糸、撚線、又はテープの形態であってもよい。有利には、100ミクロン未満の直径(糸の場合)又は厚さ(テープの場合)を有する。
【0021】
テキスタイル芯糸4は、非導電材料で作製されており、トランシーバデバイス1の他の要素、特に第2のアンテナのための支持構造を形成する。テキスタイル芯糸4は、第2のアンテナがそれに沿って巻き付けられることによって配置され、トランシーバデバイス1と遠隔質問機との間の送信周波数の半波長に実質的に等しい長さを有する。したがって、通常の送信周波数では、芯糸の長さは5~20cm程度である。
【0022】
有利には、テキスタイル芯糸4は、電気絶縁性及び伸縮性を有するように選択され、すなわち、この場合、糸は、静止時の長さの5%、20%、50%、又は更には100%であり得る弾性伸長能力を有する。しかしながら、この特徴は必須ではなく、本発明は、例えば5%未満の弾性伸びを有する非伸長性のテキスタイル糸と完全に適合する。
【0023】
例として、テキスタイル芯糸4は、アラミド繊維から作製され得、したがって、メタアラミドマルチフィラメント糸(例えば、Nomex(商標)の商品名で知られている)や、ポリアミドイミドなどの短い又は長いメタアラミド繊維から作られた糸(例えば、Kermel(商標)の商品名で知られている)を形成し得る。あるいは、Zylon(商標)の商品名で知られているPBO糸(ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)であってもよい。芯糸はまた、芳香族ポリエステル(例えば、商品名Vectran(商標)で知られている)から形成されてもよい。芯糸はまた、PEAK(ポリアリールエーテルケトン)、天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、又はPPS繊維(ポリフェニレンスルフィド)などのポリマーから形成された糸であってもよい。
【0024】
テキスタイル芯糸4は、ホットメルト材料から形成することができてもよいし、接着剤であってもよい。
【0025】
テキスタイル芯糸4は、有利には円形の断面を有し、その直径は10ミクロン~500ミクロンである。
【0026】
第2のアンテナは、好ましくは電気的性質を有し、典型的にはダイポールアンテナからなる。「ダイポールアンテナ」は、遠隔質問機デバイスに、誘導磁界のみを介してではなく、これら2つの要素間を伝搬する電磁界の電気成分によって結合することができる任意のアンテナを意味する。この第2のアンテナは、テキスタイル芯糸4の周りの導電性テキスタイル要素3の巻き方向にほぼ沿って延びる第2の軸a2を有する。アンテナのこの第2の軸a2は、テキスタイル要素の巻回軸に対応する。この第2のアンテナは、第1のアンテナよりもサイズがはるかに大きいことに留意されたい。
【0027】
トランシーバデバイス1において、第1のアンテナを有する電子回路2は、第2のアンテナとの電磁結合を可能にするために、第2のアンテナに対して配置される。導電性テキスタイル要素3の巻きの不連続性は、この巻線のインダクタンス値を改善し、したがって、この結合を促進することを可能にする。典型的には、第1の軸a1及び第2の軸a2が互いに平行であるように、(第2のアンテナを担持する)テキスタイル芯糸4に対して(第1のアンテナを担持する)電子回路2を配置することを含む。好ましくは、結合品質を向上させるために、これら2つの軸を重ね合わせるか、又はそれらを分離する距離を制限することが求められる。
【0028】
この電磁結合の結果として、第1のアンテナに対してサイズが比較的大きい第2のアンテナは、従来技術のいくつかの解決策の場合のようにチップ2aと電気的に(直流的に)接続されない。したがって、比較的大きなアンテナとチップとの間の溶接又は他の機械的接続が回避され、このアンテナは、これらの接続においてデバイスに加えられる外力を伝達することができる。
【0029】
加えて、電子回路2の非常に小さなサイズは、トランシーバデバイスの他の要素のテキスタイルの性質と組み合わされて、このデバイスの可撓性を保証し、それを衣服のようなテキスタイル部品に組み込むことを可能にする。
【0030】
これらの原理は、以下の説明の主題を形成するいくつかの実施形態に従って実施することができる。
【0031】
第1の実施形態
図1a及び
図1bの主題であるこの第1の実施形態では、電子回路2は、テキスタイル芯糸に取り付けられており、すなわち、このテキスタイル芯糸4に直接保持されている。導電性テキスタイル要素3、好ましくは導電材料で作製されたテキスタイル糸が、テキスタイル芯4及び電子回路2の周りに巻き付けられる。このテキスタイル糸は、単一撚線又はマルチ撚線であってもよい。しかしながら、変形例では、導電性テキスタイル要素3は、テープの形態をとることができる。この実施形態は、導電性テキスタイル要素3の巻線によって生成される体積内に電子デバイス2を配置することを可能にし、その結果、アンテナの第1の軸a1及び第2の軸a2が互いに最も接近して配置されるという点で有利である。
【0032】
したがって、例えば電子回路2とテキスタイル芯糸4との間に接着剤の層を配置することによって、接着剤で電子回路2をテキスタイル芯糸4に組み付けることが可能である。いくつかの変形例では、この接着剤を分配する必要はなく、テキスタイル芯糸4自体が接着材料から形成されてもよく、又は特定の処理によって接着特性を発現させてもよい。これは、特に、加熱された後に電子回路2を接着することができるホットメルト材料からなる芯糸の場合である。接着によるこの組み付けの代わりに、又はそれに加えて、電子回路2が、第1のテキスタイル被覆糸5によって、又は導電性テキスタイル要素3自体によって、テキスタイル芯糸4に組み付けられた状態で保持されるようにすることができる。そのようなアプローチによれば、第1のテキスタイル被覆糸5又は導電性テキスタイル要素3は、テキスタイル芯糸4上及び電子回路2上に巻き付けられて、それをテキスタイル芯糸4に対して押圧して巻きに捕捉された状態に保持する。
【0033】
第2のアンテナを形成する導電性テキスタイル要素3は、必ずしもテキスタイル芯糸4の周りに巻き付ける必要はない。この導電性テキスタイル要素3は、テキスタイルシース6の基本テキスタイル糸のうちの1つ、例えば、これらの基本テキスタイル糸から織られ、編組され、又は編まれたシースを形成することができる。換言すれば、第1の実施形態のこの代替実施形態では、電子回路2を担持するテキスタイル芯糸4は、第2のアンテナを形成する導電性テキスタイル要素3が組み込まれたテキスタイルシース6で覆われている。この実施形態では、複数の導電性テキスタイル要素をテキスタイルシース6に組み込むことも可能であり、これらの要素の各々は、テキスタイル芯糸4の周りに非連続的な巻きで巻き付けられる。
【0034】
しかしながら、全ての場合において、導電性テキスタイル要素3が取る形状にかかわらず、テキスタイルシースに組み込まれていてもいなくても、導電性糸要素3は、テキスタイル芯糸4の周りに沿って非連続的な巻きで配置されている。
【0035】
この第1の実施形態によるトランシーバデバイスの製造は、複数のトランシーバデバイス1の集合生産方法によって、高速で実行することができる。したがって、本方法は、糸に沿って互いに離間させるように、複数の電子回路2を大型テキスタイル芯糸上に組み付ける工程S1を含む。機能的トランシーバデバイス1を大型テキスタイル芯糸から取り外すことができるように、アンテナの長さに少なくとも等しい間隔が選択される。この組み付けの間、第1のアンテナの第1の軸a1を(第2のアンテナの軸a2を実質的に画定する)芯糸に実質的に平行に配置するために、電子回路2を配向するように注意が払われる。
【0036】
示されたように、組み付け工程S1は、電子回路を大型テキスタイル芯糸上に接合することに対応し得る。この糸は、張力を受けたまま、連続的なシーケンスによってスプールから巻き出すことができる。各シーケンスの間、糸は、電子回路2を組み付けるために、挿入装置(専門用語による「ピックアンドプレース」)の前で固定され、電子回路2の一方の表面は予め接着剤でコーティングされている。あるいは、挿入装置を使用して電子回路2をその中に配置する前に、場合によっては、分配ノズルを使用して大型芯糸に接着剤の層を設けてもよい。電子回路2が設けられた大型糸は、受信コイルから回収され、方法の次の工程を待つことができる。
【0037】
接着剤によるこの組み付けの代わりに、又はそれに加えて、少なくとも第1のテキスタイル被覆糸5を、例えばラッピング技術によって、大型テキスタイル芯糸及び電子回路上に巻き付けることによって、電子回路2を大型テキスタイル芯糸上に保持するようにしてもよい。念のため述べておくと、この技術によれば、大型芯糸は、被覆糸を担持する中空の回転スプールを通って引き出される。大型糸は、中空スプールを上下に引っ張ることにより、中空スプールを垂直方向に通過する。被覆糸は、中空スプールから巻き出されて、芯の周りに螺旋状に巻き付けられて巻きを形成する。例えば、2つの中空スプールを上下に配置し、同じ方向又は反対方向に回転駆動されるスプールの各々を通じて芯を循環させることによって、芯の周りに複数の被覆糸を巻き付けることが一般的である。ラッピングボールにおいてトラフを介して電子回路を形成することによって、テキスタイル芯糸と被覆糸との間に電子回路を配置することが可能である。
【0038】
当然のことながら、両方のアプローチを組み合わせることが可能であり、電子回路2の大型テキスタイル芯糸への接合と、少なくとも第1のテキスタイル被覆糸5によるラッピングとの両方を提供することが可能である。
【0039】
トランシーバデバイスの製造方法の説明を再開すると、トランシーバデバイスは、導電材料で作製されたテキスタイル要素から第2のアンテナを準備する工程S2を含む。この準備工程は、ラッピング工程を実施することができ、すなわち、導電性テキスタイル要素を、大型テキスタイル芯糸上及び電子回路2上(及び、第1の糸が設けられている場合には、第1のテキスタイル被覆糸5上)に(この場合は連続しない)巻きに巻き付ける工程を実施することができる。
【0040】
その単純さのために特に有利である本方法の1アプローチによれば、組み付け工程S1及び準備工程S2は、導電性テキスタイル要素を組み付けて芯糸上に保持するために、導電性テキスタイル要素を大型テキスタイル芯糸及び電子回路2上に直接巻き付けることによって同時に実行される。
【0041】
第2のアンテナの準備工程S2は、組み付け工程S1の後に実行されようと、組み付け工程S1と同時に実行されようと、必ずしもラッピング工程を実施しない。したがって、特定の手法によれば、導電性テキスタイル要素3は、テキスタイル芯糸4のテキスタイルシース6内の非連続的な巻きに組み込まれる。
【0042】
導電性テキスタイル要素の組み込みは、基本テキスタイル糸から電子回路2を担持する大型テキスタイル芯糸の周りにテキスタイルシース6を織ることによって、編むことによって、又は編組することによって行うことができ、導電性テキスタイル要素は、これらの基本糸のうちの少なくとも1つを形成する。
【0043】
したがって、組み付け及び準備工程S1及びS2の終わりには、保管スプール内に収集することができる長いテキスタイル糸又はテープが存在し、このテキスタイル糸又はテープは、互いに接続された複数のトランシーバデバイス1から構成される。これらのトランシーバデバイス1は、テキスタイル糸又はテープの連続した部分を除去することによって個別化することができる。有利なことに、長いテキスタイル又はテキスタイルテープの切断点は、電子回路2を、個別化されたトランシーバデバイス1のテキスタイル芯糸4の間の実質的に中間に位置決めするように選択される。
【0044】
第2の実施形態
この第2の実施形態では、その一例が
図2に示されており、電子回路
2は、導電性テキスタイル要素3に取り付けられており、すなわち、導電性テキスタイル要素3がテキスタイル芯糸4上に直接巻き付けられる一方、電子回路2は、少なくとも1巻きの外面に組み付けられている。したがって、電子回路2は、導電性テキスタイル要素3の巻線によって生成される体積の外側に配置される。
【0045】
電子回路2は、導電性テキスタイル要素3の少なくとも1つの巻きに接合することによって組み付けることができ、又は任意の他の手段によって保持することができる。電子回路は、第1のアンテナと第2のアンテナとの間の結合を促進するために、導電性テキスタイル要素3の複数の巻きにわたって延在し得る。
【0046】
この実施形態の導電性テキスタイル要素3は、テープ又は糸の形態をとることができる。「テープ」は、細長い可撓性の平坦なフィルムを意味する。このテープは、例えば、圧延金属ワイヤから構成されてもよい。このテープは、テキスタイル糸4に対して巻き付けられ、この糸4に対して軽く押し付けられる。テキスタイル芯糸4とテープとの間に接着材料を設ける必要はない。
【0047】
テープは、金属又は複数の金属(例えば、銅、真鍮、青銅、白銅、96質量%超の銅を含む銅合金、ニッケル)であってもよい導電材料から形成される。このテープは、圧延金属ワイヤであってもよい。この場合、有利には、この圧延は冷間で行われる。好ましくは、その後に熱アニーリングは行われない。この方法は、テープを構成する材料の硬化を促進し、したがって疲労抵抗を向上させる。
【0048】
このテープは、第1の材料の主層からなり、この主層は、その面の少なくとも1つにおいて、導電性又は絶縁性コーティングで覆われている。したがって、主層は、以下の材料:銀、金、銅、スズ、ニッケル、黄銅、亜鉛、及びスズ合金からなる群から選択される材料で作製されたコーティングでコーティングされた鋼で作成され得る。
【0049】
あるいは、主層は、以下の材料:ステンレス鋼、ニッケル単独が合金の質量の少なくとも45%を占めるニッケル合金、チタン単独が合金の質量の少なくとも70%を占めるチタン合金、ニッケルからなる群から選択される材料から作製され得る。
【0050】
有利には、コーティングは、主層を形成する材料の電気抵抗率よりも低い電気抵抗率を有する。コーティングは、耐腐食性に関して選択されてもよく、例えば銀で作られてもよい。コーティングは、前の段落で提示したように、圧延工程の前又は後に、主層上に堆積することによって形成することができる。コーティングは、テープを機械的及び/又は化学的に保護するために、電気絶縁体、例えばエナメルであってもよい。
【0051】
テープの選択された性質がどのようなものであっても、テープは、50ミクロン未満、典型的には5~20ミクロン、有利には5ミクロン~10ミクロンの小さな厚さを有し、それにより、テキスタイル芯糸4上に巻き付けられるのに十分な可撓性を有する。テープは、弾性的又は可塑的に変形することができる。典型的には、テープは、テキスタイル芯糸4の直径よりも10~20分の1、又は更には30分の1以上小さい厚さを有する。テープは、40ミクロン~200ミクロンの幅を有してもよいが、この特徴は決して限定するものではない。
【0052】
この第2の実施形態によるトランシーバデバイス1の製造は、比較的単純であり、第1の実施形態によるトランシーバデバイス1の製造について説明したものと同じ集合製造工程S1、S2に基づく。
【0053】
したがって、そのような方法は、まず第1に、導電材料で作られた導電性テキスタイル要素3から第2のアンテナを準備する工程S2を含む。この準備工程S2は、テキスタイル要素を大きな芯糸上にラッピングする工程、又はこの芯糸上に直接テキスタイルシースを製造する工程を実施することができ、このシースの製造(例えば、編組、編成、又は製織による)は、導電性テキスタイル要素を大きな芯糸の周りの非連続的な巻きに組み入れる。
【0054】
次に、製造方法は、複数の電子回路2を、糸に沿って互いに離間させるように、導電性テキスタイル要素3の少なくとも1巻きの外面上に組み付ける工程S1を含む。機能的トランシーバデバイス1を取り外すことができるように、少なくともアンテナ長に等しい間隔が選択される。この組み付けの間、第1の実施形態と全く同様に、第1のアンテナの第1の軸a1が(第2のアンテナの軸a2を画定する)芯糸に実質的に平行に配置されるように電子回路を配向するように注意が払われる。
【0055】
この組み付けは、第1の実施形態と同様に、少なくとも1本の被覆糸を巻き付けることによって接合することによって行うことができる。
【0056】
したがって、これらの工程の終わりに、保管スプールに収集することができる長いテキスタイル糸が利用可能であり、このテキスタイル糸は、互いに接続された複数のトランシーバデバイス1から形成される。これらのデバイスは、第1の実施形態によるトランシーバデバイスを製造する方法の説明に関連して説明したように、テキスタイル糸の連続部分を除去することによって個別化することができる。
【0057】
当然ながら、本発明は、説明された実施形態に限定されず、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、変形実施形態をそれに追加することができる。
【0058】
したがって、トランシーバデバイスにコーティング層を設け、電子回路、テキスタイル芯糸、及びテキスタイル要素を封入することによってトランシーバデバイスを保護することができる。特に、ポリウレタン又はシリコーンであってもよい。コーティング層は、トランシーバデバイス上に押出成形によって形成することができる。
【0059】
更に、本明細書の主題であるトランシーバデバイスは、製品、例えば衣類などのテキスタイル製品に直接組み入れることができる。しかしながら、このデバイスは、テキスタイル以外の応用分野を見出すことができ、任意のタイプの製品、特にある程度の可撓性を有する製品の電子タグ付けに有利であり得る。
【0060】
デバイスは、例えば織る、刺繍する、又は縫い付けることによってテキスタイル片に直接組み込むことができる。しかしながら、仏国特許第2002785号に記載されているように、タグの組み込みを容易にするために、デバイスを予めタグに組み込むことができる。
【0061】
デバイスはまた、本明細書で提供されるもの以外の形状をとるタグ、例えば、パイピング、織られたバイアス若しくはラットテール、又は縫製される任意の他のタイプのテキスタイル部品に組み込まれ得る。
【0062】
縫製されるこれらのタイプのテキスタイル部品は、一般に、テキスタイル糸の束又はフィラーを形成するコード上でチューブ内に折り畳まれたテープによって形成されることが想起されるであろう。本発明の場合、例えば、テープが個別化される前に大型テキスタイル糸の形態である場合、テープをトランシーバデバイス上に折り畳むことができ、この大型テキスタイル糸はチューブの充填に寄与する。
【国際調査報告】