(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】細胞トランスフェクションのための規定サイズの保存安定性があるプラスミドDNA/ポリカチオン粒子の調製方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/88 20060101AFI20240205BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20240205BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240205BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
C12N15/88 Z
C12N15/86 Z
C12N7/01
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548912
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 US2022016583
(87)【国際公開番号】W WO2022177980
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501335771
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】ハイクアン マオ
(72)【発明者】
【氏名】イチョン フー
(72)【発明者】
【氏名】イニン チョウ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BA05
4B065CA44
(57)【要約】
接着培養液および懸濁培養液の両方におけるウイルス産生細胞の効率的なトランスフェクションのため、DNA/ポリカチオン粒子の最適な組成およびサイズが開示される。50nm~1000nmの粒子に対するDNA/ポリカチオン粒子媒介トランスフェクションのサイズ依存特性も開示される。50nm~1000nmの規定サイズを有する保存安定性がある粒子を調製するためのDNA/ポリカチオンナノ粒子集合の動態制御に基づく新規の拡張可能な方法も開示される。本開示のDNA/ポリカチオン粒子は、優れたかつ再現性のあるトランスフェクション活性および保存安定性を生み出し、オフザシェルフ製品として使用されうる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子を調製する方法であって、
(a)第1の可変流量で1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーを含む第1の流れと、第2の可変流量で1つまたは複数のポリアニオンポリマーを含む第2の流れとを第1のフラッシュナノ複合体形成(FNC)ミキサーに流し込み、第1の粒径を有する複数のナノ粒子を形成することと、
(b)第3の可変流量で前記第1の粒径を有する複数のナノ粒子を含む第3の流れと、第4の可変流量で集合バッファーを含む第4の流れとを第2のFNCミキサーに流し込み、複数の集合ナノ粒子を形成することと、
(c)前記ステップ(b)において形成された複数の集合ナノ粒子をしばらくの期間インキュベートし、第2の粒径を有する複数の集合ナノ粒子を形成することと、
(d)第5の可変流量で前記第2の粒径を有する複数の集合ナノ粒子を含む第5の流れと、第6の可変流量で安定化バッファーを含む第6の流れとを第3のFNCミキサーに流し込み、複数のポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子を形成することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、キトサン、PAMAMデンドリマー、プロタミン、ポリ(アルギニン)、ポリ(リジン)、ポリ(ベータ-アミノエステル)、カチオン性ペプチド、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーは、ポリエチレンイミンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の水溶性ポリアニオンポリマーは、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、負の電荷を持つブロック共重合体、ヘパリン硫酸、デキストラン硫酸、ヒアルロン酸、アルギン酸、トリポリリン酸(TPP)、オリゴ(グルタミン酸)、サイトカイン、タンパク質、ペプチド、成長因子、および1つまたは複数の核酸からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数の核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、cDNA、ゲノムDNA、ガイドRNA、プラスミドDNA、ベクターDNA、mRNA、miRNA、piRNA、shRNA、およびsiRNAからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の核酸は、プラスミドDNAまたは異なる種の1つもしくは複数のプラスミドDNAの混合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数の核酸は、mRNAまたは異なる種の1つもしくは複数のmRNAの混合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の可変流量、前記第2の可変流量、前記第3の可変流量、前記第4の可変流量、前記第5の可変流量、および前記第6の可変流量は、それぞれ独立して約5~400mL/分である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の粒径は、約40nm~約120nmの強度平均範囲を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の粒径を有する複数のナノ粒子は、約2.0~4.0のpHおよび約0.05~2.0mS cm
-1の伝導度の条件下で形成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(b)において形成された複数のナノ粒子は、おおよそ室温(22±4°C)で約0.2~約5時間にわたってインキュベートされる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の粒径を有する複数の集合ナノ粒子は、約6.0~8.0のpHおよび約2.0~25.0mS cm
-1の伝導度の条件下で形成される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記集合バッファーは、リン酸緩衝食塩水を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記リン酸緩衝食塩水は、NaCl、KCl、Na
2HPO
4、KH
2PO
4、およびそれらの組み合わせの1つまたは複数を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の粒径は、約300nm~約500nmの範囲を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップ(d)の複数のポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子は、約2.0~4.0のpHおよび約1.0~15.0mS cm
-1の伝導度の条件下で形成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記安定化バッファーは、少なくとも1つの糖を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記1つまたは複数の糖は、トレハロースを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記1つまたは複数の糖は、約10%~約30%w/wのトレハロースを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記安定化バッファーは、HClを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記粒子を、保存のため約-80°Cで凍結乾燥または凍結させることを更に含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
約67±5w/w%のDNA、9±5w/w%の結合ポリエチレンイミン(PEI)、および24±5w/w%の残留ポリエチレンイミン(PEI)を含む、複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子。
【請求項23】
平均ゼータ電位が約35±5mVである、請求項22に記載の複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子。
【請求項24】
約300nm~約500nmの粒径を有する、請求項22または23に記載の複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子。
【請求項25】
前記粒径は、約300nm、約400nm、および約500nmからなる群から選択される、請求項24に記載の複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子。
【請求項26】
300nmのz平均粒径に対して約0.15±0.05の多分散性指数、400nmのz平均粒径に対して約0.25±0.05の多分散性指数、および500nmのz平均粒径に対して約0.35±0.05の多分散性指数を有する、請求項22~25のいずれか一項に記載の複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子。
【請求項27】
ウイルスベクターを調製する方法であって、1つまたは複数の細胞を、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法により調製されたポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子または請求項22~26のいずれか一項に記載の複数のポリカチオン/核酸ナノ粒子に接触させることを含む、方法。
【請求項28】
前記複数のポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子を、前記1つもしくは複数の細胞の単層培養液または前記1つもしくは複数の細胞の懸濁培養液に投与することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記1つまたは複数の細胞は、HEK293細胞またはその誘導体を含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記1つまたは複数の細胞は、HEK293T細胞を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記1つまたは複数の細胞は、懸濁培養液に適したHEK293T細胞を含む、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【政府の利益についての声明】
【0001】
本発明は、米国国立衛生研究所により授与された助成金EB018358の下、政府支援により成された。政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療は、先天性症状および後天的な症状を治療するためのモダリティ、ならびに予防ワクチンおよび治療ワクチンとしてますます価値のあるものになっており、2020年には世界的にほぼ1,000件に達する治験が進んでおり、最近、幾つかの製品が承認されている。これらの治療の多くには、レンチウイルス(LVV)(MiloneおよびO’Doherty、2018)およびアデノ随伴ウイルス(AAV)(Wangら、2019)に基づくベクトル化ウイルスの使用が含まれている。LVVを生産する最も一般的な方法の1つは、ウイルスアクセサリータンパク質をコードするプラスミドDNA(pDNA)およびベクターバックボーンを含むトランスファープラスミドによる、HEK293パッケージング細胞株またはその誘導体の一過性トランスフェクションである(Mertenら、2016)。ベンチマークトランスフェクションビヒクルとしては、リン酸カルシウム(Pearら、1993)、リポフェクタミン(Dalbyら、2004)、およびポリ(エチレンイミン)(PEI)(Boussifら、1995)が挙げられる。PEIを使用する典型的なトランスフェクション手順(例えば、
図1A参照)においては、pDNA混合物およびPEIは、血清の少ない培地に別々に溶解される。手動混合に続いて、懸濁液は、典型的に、0~60分間インキュベートされて高分子電解質複合体(PEC)コアセルベーションを完了させ、その後、培養液に追加される。pDNA/PEI粒子は、pDNAの細胞移入(MislickおよびBaldeschwieler、1996;Rejmanら、2005)、エンドソーム脱出(Busら、2018)、および核輸送(Pollardら、1998)を促進し、結果的にウイルスRNAの転写、ならびにパッケージングタンパク質およびエンベロープタンパク質の発現を生じさせる。機能的なLVVを産生するためには、pDNAの全ての種のコトランスフェクションを成功させる必要がある。加えて、LVVの一貫した品質および安全で効果的な治療結果を保証するためには、拡張可能かつ再現性のある生産方法が不可欠である(van der Looら、2015)。そのような品質の生産は、トランスフェクション過程が完全に制御され、高い効率性および一貫性がもたらされるときにのみ可能になる。
【0003】
トランスフェクションの直前に手動でpDNA/PEI粒子を調製するために広く採用されている方法は、しかしながら、バッチ間の差異が大きく、ウイルスベクター生産の信頼性および効率に悪影響を与えている。
図1Aに示すように、不一致は、(1)異なる長さの複数のpDNAからなる粒子の集合に関わる複雑さ;(2)混合容器中で均一な混合を達成する難しさ(空間的不均一性);(3)一連の追加過程中、一貫したpDNA/PEI比を維持する難しさ(時間的不均一性);および(4)生産過程を通して形成された粒子のインキュベーション時間の変化を含む幾つかの要因により直ちに生じる。より重要なことには、そのような手動の調製過程は、操作者に依存して変化しやすく、スケールアップの難易度が高い。例えば、数百リットルの医薬品バッチサイズでのLVV生産には、pDNA溶液およびPEI溶液のリットルスケールの混合が必要であり、液体ハンドリングにおいて物質移動の課題が生じる。そのため、拡張可能性および一貫性が高い方法で保存安定性があるpDNA/PEI粒子を生産し、使いやすさと共に高いトランスフェクション効率を保証する工学的手法の開発が極めて重要である。
【0004】
これまでに、pDNA/PEIナノ粒子の拡張可能な生産のためのフラッシュナノ複合体形成(FNC)技術が報告されている(Santosら、2016)。in vivoの全身送達用途のため、凍結乾燥形態の100nm未満の離散ナノ粒子の生成が成功している(Huら、2019)。これらの小さなナノ粒子は、しかしながら、ウイルスベクター生産細胞株(すなわち、HEK293TまたはHEK293F細胞)におけるin vitroトランスフェクションにとっては準最適であり、標準的な手動混合方法により得られた粒子のトランスフェクション効率のピークのごく一部しか示していない。100nmを超えるサイズの粒子についてのサイズ依存のトランスフェクション効率は、しかしながら、これまでにほとんど報告されておらず(Ogrisら、1998;Zhangら、2019)、メカニズム的な理解はほとんどない。pDNA/PEI粒子のサイズ依存のトランスフェクション効率についての洞察の乏しさは、200nm~1000nmの範囲の粒子のサイズおよび安定性を制御する方法の不足を示している。集合動態を制御しない従来のピペット混合または液滴追加は、粒子のサイズの予測不可能性および高い不安定性をもたらす。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの態様においては、本開示の保護対象は、複数のポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子を調製する方法であって、
(a)第1の可変流量で1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーを含む第1の流れと、第2の可変流量で1つまたは複数のポリアニオンポリマーを含む第2の流れとを第1のフラッシュナノ複合体形成(FNC)ミキサーに流し込み、第1の粒径を有する複数のナノ粒子を形成することと、
(b)第3の可変流量で第1の粒径を有する複数のナノ粒子を含む第3の流れと、第4の可変流量で集合バッファーを含む第4の流れとを第2のFNCミキサーに流し込み、複数の集合ナノ粒子を形成することと、
(c)ステップ(b)において形成された複数の集合ナノ粒子をしばらくの期間インキュベートし、第2の粒径を有する複数の集合ナノ粒子を形成することと、
(d)第5の可変流量で第2の粒径を有する複数の集合ナノ粒子を含む第5の流れと、第6の可変流量で安定化バッファーを含む第6の流れとを第3のFNCミキサーに流し込み、複数のポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子を形成することと
を含む方法を提供する。
【0006】
いくつかの態様においては、1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、キトサン、PAMAMデンドリマー、プロタミン、ポリ(アルギニン)、ポリ(リジン)、ポリ(ベータ-アミノエステル)、カチオン性ペプチド、およびそれらの誘導体からなる群から選択される。態様によっては、1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーは、ポリエチレンイミンである。
【0007】
いくつかの態様においては、1つまたは複数の水溶性ポリアニオンポリマーは、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、負の電荷を持つブロック共重合体、ヘパリン硫酸、デキストラン硫酸、ヒアルロン酸、アルギン酸、トリポリリン酸(TPP)、オリゴ(グルタミン酸)、サイトカイン、タンパク質、ペプチド、成長因子、および1つまたは複数の核酸からなる群から選択される。
【0008】
いくつかの態様においては、1つまたは複数の核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、cDNA、ゲノムDNA、ガイドRNA、プラスミドDNA、ベクターDNA、mRNA、miRNA、piRNA、shRNA、およびsiRNAからなる群から選択される。態様によっては、1つまたは複数の核酸は、プラスミドDNA(pDNA)または異なる種のプラスミドDNAの混合物を含む。態様によっては、1つまたは複数の核酸は、mRNAを含む。
【0009】
特定の態様においては、1つまたは複数の核酸は、1つまたは複数のプラスミドDNAの混合物を含み、1つまたは複数のプラスミドDNAは、トランスファープラスミドならびにGagタンパク質、Polタンパク質、Revタンパク質、およびEnvタンパク質をコードするプラスミドDNAからなる群から選択される。
【0010】
いくつかの態様においては、トランスファープラスミドは、レンチウイルスベクターをコードする。
【0011】
態様によっては、レンチウイルスベクターは、異種プロモーターを含む修飾左(5’)レンチウイルスLTRと、Psiパッケージ配列(Ψ+)と、cPPT/FLAPと、RREと、治療導入遺伝子をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたプロモーターと、修飾SIN(3’)レンチウイルスLTRとを含む。
【0012】
他の態様においては、Envタンパク質は、VSV-gエンベロープ糖タンパク質を含む。
【0013】
いくつかの態様においては、第1の可変流量、第2の可変流量、第3の可変流量、第4の可変流量、第5の可変流量、および第6の可変流量は、それぞれ独立して約5~約400mL/分である。
【0014】
いくつかの態様においては、第1の粒径は、約40nm~約120nmの範囲を有する。態様によっては、第1の粒径を有する複数のナノ粒子は、約2.0~4.0のpHおよび約0.05~2.0mS cm-1の伝導度の条件下で形成される。
【0015】
態様によっては、ステップ(b)で形成された複数のナノ粒子は、しばらくの期間、おおよそ室温(22±4°C)でインキュベートされる。特定の態様においては、期間は、約0.2~約5時間である。
【0016】
いくつかの態様においては、第2の粒径を有する複数の集合ナノ粒子は、約6.0~8.0のpHおよび約2.0~25.0mS cm-1の伝導度の条件下で形成される。態様によっては、集合バッファーは、リン酸緩衝食塩水を含む。特定の態様においては、リン酸緩衝食塩水剤は、NaCl、KCl、Na2HPO4、KH2PO4、およびその組み合わせの1つまたは複数を含む。
【0017】
態様によっては、第2の粒径は、約300nm~約500nmの範囲を有する。
【0018】
いくつかの態様においては、ステップ(d)の複数のポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子は、約2.0~4.0のpHおよび約1.0~15.0mS cm-1の伝導度の条件下で形成される。態様によっては、安定化バッファーは、少なくとも1つの糖を含む。特定の態様においては、糖は、トレハロースを含む。更により特定の態様においては、1つまたは複数の糖は、約10%~約30%w/wのトレハロースを含む。いくつかの態様においては、安定化バッファーは、HClを含む。
【0019】
いくつかの態様においては、方法は、粒子を、保存のため約-80°Cで凍結乾燥または凍結させることを更に含む。
【0020】
他の態様においては、本開示の保護対象は、ウイルスベクターを調製する方法であって、1つまたは複数の細胞を、本開示の方法により調製されたポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子または本開示の複数のポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子に接触させることを含む方法を提供する。いくつかの態様においては、方法は、複数のポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子を、1つまたは複数の細胞の単層培養液または1つまたは複数の細胞の懸濁培養液に投与することを含む。特定の態様においては、1つまたは複数の細胞は、HEK293細胞を含む。特定の態様においては、1つまたは複数の細胞は、HEK293S細胞、HEK293T細胞、HEK293F細胞、HEK293FT細胞、HEK293FTM細胞、HEK293SG細胞、HEK293SGGD細胞、HEK293H細胞、HEK293E細胞、HEK293MSR細胞、またはHEK293A細胞を含む。特定の態様においては、1つまたは複数の細胞は、HEK293T細胞を含む。より特定の態様においては、1つまたは複数の細胞は、懸濁培養液に適したHEK293T細胞を含む。
【0021】
本開示の保護対象により全体または一部において取り上げられている、本開示の保護対象のいくつかの態様が上述されたが、他の態様は、記載が進むにつれ、以下に最適に記載された添付の実施例および図面に関連して取り上げられたとき、明らかになるであろう。
【0022】
特許または出願ファイルは、少なくとも1つのカラー付きの図面を含む。カラー図面を有する本特許または特許出願文書のコピーは、請求および必要な手数料の支払いに応じて米国特許商標庁より提供される。
【0023】
このように、本開示の保護対象を一般的な用語で記載してきたが、次に、添付の図面を参照する。図面は必ずしも縮尺どおりに記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】A、B、C、およびDは、pDNA/PEI粒子のサイズがトランスフェクション効率を支配することを示す。Aは、pDNA/PEI粒子の調製およびLVVの生産のトランスフェクション過程の模式図である。各感嘆符は、トランスフェクション結果におけるバッチ間の差異の潜在的原因を示し、これらは、pDNA/PEI粒子の特性および調製過程を操作することにより対処されうる。Bは、混合ステップにおけるpDNA濃度および投与前のインキュベーション時間(0~60分)に応じたHEK293T細胞の単層培養液におけるトランスフェクション効率(ルシフェラーゼレポーターの導入遺伝子発現レベルとして特徴付けられる)を示す。5、10、または20μg mL
-1のDNA濃度で混合された群に対して、粒子は、それぞれ、5、10、または20倍に希釈されて1μg mL
-1とされ、細胞に投与された。Cは、Opti-MEMにおけるpDNAおよびPEI溶液の混合後のpDNA/PEI粒子の平均サイズ(動的光散乱(DLS)により付与されたz平均直径)の変化を示す。成長動態は、pDNAの濃度に依存する。エラーバーは、3つの独立した実験に由来し、使用された実験条件下での再現性および予測性を示す。Dは、さまざまなpDNA濃度およびインキュベーション時間における、トランスフェクション効率と(BおよびCの)全ての実験のデータ点に基づくz平均粒径との直接的な相関関係を示す。
【
図2】A、B、C、D、E、F、およびGは、集合動態および表面電荷変調の制御を通した、60nm~1000nmの範囲のサイズ制御されたpDNA/PEI粒子の生産の過程を示す。Aは、段階的な動態成長および抑制の模式図である。Bは、異なる濃度のPBS下で誘発された断定可能なサイズ成長を示す。Cは、1倍のPBSにおける成長曲線に沿った異なる時点において、20mMのHClを含む19%(w/w)のトレハロース溶液による希釈により、粒径成長が抑制されたことを示す。Dは、異なるサイズの一連の安定化された粒子の、DLSにより測定されたz平均直径分布である。Eは、成長および安定化ステップと共に変化したゼータ電位、および(N/P比により測定された)結合PEI含有量を示す。偽対照の粒子は、予混合された1倍のPBSおよび20mMのHCl溶液により処理されたが、サイズは、処理後も変化しなかった(66nm)。F-1は、ビルディングブロックとしての元の66nmのナノ粒子の条件下で得られた粒子のTEM画像である。F-2は、120nmの平均サイズの安定化された粒子の条件下で得られた粒子のTEM画像である。F-3は、180nmの平均サイズの安定化された粒子の条件下で得られた粒子のTEM画像である。F-4は、180nmの平均サイズの安定化された粒子の条件下で得られた粒子のTEM画像である。F-5は、安定化された400nmの粒子の条件下で得られた粒子のTEM画像である。F-6は、安定化された400nmの粒子の1つの拡大図である。F-7は、負染色領域における塩析(白い斑点)が少ない、別の400nmの粒子の拡大図である。Gは、400nmの粒子のサイズ安定性、DNA保護、およびトランスフェクション効率に対する、抑制ステップにおいて使用されたHCl濃度の効果を示す。なお、パーセンテージ軸は、データ点を広げるために反転されており、高いHCl濃度がサイズの縮小およびDNAの損失をもたらしたことを示している。BおよびCにおいて、エラーバーは、3つの独立した実験により得られたもので、過程の予測性および再現性を示す。Gにおいて、エラーバーは、単一の実験内での3回の反復により得られた。
【
図3】A、B、およびCは、60nm~1000nmに制御されたサイズの安定的な粒子のトランスフェクション効率を示す。Aは、レポーターとしてのルシフェラーゼの導入遺伝子発現の効率を示す。Bは、GFP陽性細胞のパーセンテージに対する、GFPの導入遺伝子発現の効率を示す。Cは、GFP陽性細胞の集団における平均蛍光強度に対する、GFPの導入遺伝子発現の効率を示す。HEK293T細胞の単層培養液の場合、細胞は、トランスフェクション後24時間で収集かつ溶解され、エラーバーは、単一の実験における反復として4-プレートウェルの標準偏差を示す。HEK293F細胞の懸濁培養液の場合、細胞は、トランスフェクション後48時間で収集かつ溶解され、エラーバーは、3つまたは4つの独立した実験(それぞれ、12-ウェルプレートの単一のウェルにおいて実施された)の標準偏差を示す。
【
図4】A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、およびLは、異なるサイズの粒子による細胞取込およびエンドソーム脱出の定量的なセロミクスハイコンテント解析(HCA)を示す。Aは、組織培養プレートにおいて固定細胞を直接解析する画像解析モダリティを示す。Bは、異なるサイズの粒子によるインキュベーション後2時間後の代表的な画像を示す。Cは、異なるサイズの粒子によるインキュベーション後4時間後の代表的な画像を示す。Dは、粒子―細胞相互作用中のサイズ制御の成功を直接示唆する粒子スポットの特徴(面積および強度)に関する定量的結果を示す。Eは、より大きな粒子によるより大きなエンドソーム小胞の形成を示すGal8スポットの特徴(面積および強度)に関する定量的結果を示す。Fは、2時間後に細胞において検出された粒子およびGal8スポットの頻度に関する定量的結果を示す。Gは、総粒子取り込み量の代表的測定値としての全ての時点における細胞あたりの平均総粒子強度に関する定量的結果を示す。Hは、このアッセイを使用したこれまでの報告に従ったトランスフェクション効率の予測指標としての役割を果たす、エンドソーム脱出レベルの指標としての全ての時点における細胞あたりのGal8スポットの平均数に関する定量的結果を示す。Iは、異なる粒径について観察された異なるGal8スポットの特徴に起因する、全体的なエンドソーム脱出の程度、すなわち、細胞あたりの平均総Gal8スポット強度についての提案された定量的測定に関する定量的結果を示す。Jは、総細胞取込およびエンドソーム脱出レベルの傾向とよく相関する、異なる期間の異なるサイズの粒子によるインキュベーションの結果としてのトランスフェクション効率(ルシフェラーゼレポーター発現レベル)に関する定量的結果を示す。Kでは、粒径にかかわらず、全体的な細胞取込レベル(X軸)に対する全てのプレートウェル平均データ点の全体的なエンドソーム脱出レベル(Y軸)を適合させると、投与後2~4時間後に強い正の相関関係を示す。図において、1時間の適合ラインはn=21ウェルであり、2時間および4時間の適合ラインはn=42ウェルである。Lでは、同一の単一細胞における細胞取込レベル(X軸)に対して、200nm(n=5400の細胞)、400nm(n=4693の細胞)、および900nm(n=4336の細胞)の群の同一のウェルにおいて評価された全ての細胞のうちの単一細胞におけるエンドソーム脱出レベル(Y軸)を適合させると、強い正の相関関係を示す。プロットされた任意の相関曲線による細胞分布密度を示す、FlowJoで生成された疑似カラーヒートマップを重ね合わせることにより、図が生成された。A、B、およびCにおいて、全ての図は、Cy5パネルに示すような同一のスケールバー=50μmを共有する。
【
図5】A、B、C、およびDは、制御されたサイズのpDNA/PEI粒子のスケールアップ生産、およびバイオリアクターにおけるLVV生産についてのトランスフェクション効率の検証を示す。Aは、粒子成長培地のイオン強度(すなわち、PBS濃度、全イオン強度の0.3倍、0.4倍、0.45倍、および0.5倍)に応じた調節可能な粒径成長動態を示す。Bは、40mL min
-1より高い流量でCIJミキサーにおいて混合ステップを実施することにより可能になるスケールアップ生産過程の模式図である。Cは、環境温度における400nmの粒子の安定性を示す。Dは、-80°Cでの保存中の異なる時点での400nmの粒子の安定性を示す。粒子懸濁液サンプルは、試験の前に環境温度で解凍された。
【
図6】AおよびBは、pDNA/PEI粒子のサイズとpDNAペイロードの相関性を示す。Aは、30nm~100nmのサイズ範囲で、pDNAの長さが4kbp、7kbp、または10kbpであると想定したときの、pDNA/PEI粒子あたりの理論的なpDNAペイロード(pDNAコピー数)を示す。Bは、100nm~700nmのサイズ範囲で、pDNAの長さが4kbp、7kbp、または10kbpであると想定したときの、pDNA/PEI粒子あたりの理論的なpDNAペイロード(pDNAコピー数)を示す。
【
図7】A、B、C、およびDは、元のサイズまたは安定化されて成長したサイズの粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。Aは、フラッシュナノ複合体形成方法(Santos,J.L.ら、2016)により生産された60nmのナノ粒子のビルディングブロックである。Bでは、サイズ成長過程において、粒子は元のサイズの2倍(120nm)で安定化され、60nmのナノ粒子が接触した際の境界面における会合の成長メカニズムを示す。Cでは、サイズ成長過程において、粒子は元のサイズの3倍(180nm)で安定化され、60nmのナノ粒子が接触した際の境界面における会合の成長メカニズムを示す。Dは、TEM観察の異なるフィールド間での安定化された400nmの粒子の集団的特徴を示す。
【
図8】A、B、C、およびDは、成長動態および均一性に対する粒子成長培地のイオン強度およびpHの影響を示す。PBSの非緩衝塩成分を試験するため、60nmのナノ粒子は、pHは影響を受けずに、1倍のPBSと同等の濃度(150mM)または高濃度(200mM)のNaClにより検証された。Aは、この結果得られた、異なるサイズで20mMのHClを含む19%w/wのトレハロースにより安定化された粒子の、異なるサイズ成長率を示す。Bは、この結果得られた、異なるサイズで20mMのHClを含む19%w/wのトレハロースにより安定化された粒子の、異なる多分散性指数(動的光散乱により提供される均一性測定値)を示す。Cは、この結果得られた、異なるサイズで20mMのHClを含む19%w/wのトレハロースにより安定化された粒子の、異なるサイズ分布(動的光散乱により提供される直接的な均一性の図解)を示す。PBSの緩衝成分を試験するため、60nmのナノ粒子を異なる濃度のNaOHにより検証し、pHシフトを模倣した。Dは、混合の結果としての、溶液における異なる最終pHを示す。Eは、混合の結果としての、粒子により異なるサイジング挙動を示す。
【
図9】A、B、C、D、E、およびFは、トランスフェクション培地における限定された粒径変化を示す。細胞トランスフェクション実験のため、25μg mL
-1のpDNA濃度の安定化された粒子が、トランスフェクション培地(FreeStyle 293)との混合により1μg mL
-1まで希釈された。この希釈ステップ時の粒子のサイズ変化は、動的光散乱(DLS)によりモニタリングされた。Aは、20分以内の60nmまたは400nmの粒子についての、この希釈ステップ時の粒子のサイズ変化を示す。Bは、4時間以内の60nm、200nm、400nm、または800nmの粒子についての、この希釈ステップ時の粒子のサイズ変化を示す。酢酸ウラニルによる固定(Ohiら、2004)を、その後のTEM観察結果と共に使用し、トランスフェクション培地中で希釈された形態の粒子の変化をモニタリングした。Cは、希釈時から間もなく(20分)の60nmのナノ粒子の代表的な画像を示す。Dは、希釈時から3時間の60nmのナノ粒子の代表的な画像を示す。Eは、希釈時から間もなく(20分)の400nmの粒子の代表的な画像を示す。Fは、希釈時から3時間の400nmの粒子の代表的な画像を示す。
【
図10】Aは、Cy5-pDNA NPにより、1時間インキュベートされたB16F10-Gal8-GFP細胞の代表的なセロミクス画像を示す。Bは、Cy5-pDNA NPにより、2時間インキュベートされたB16F10-Gal8-GFP細胞の代表的なセロミクス画像を示す。Cは、Cy5-pDNA NPにより、4時間インキュベートされたB16F10-Gal8-GFP細胞の代表的なセロミクス画像を示す。Dは、Cy5-pDNA NPにより、8時間インキュベートされたB16F10-Gal8-GFP細胞の代表的なセロミクス画像を示す。同一の期間、負対照である、粒子なしのトランスフェクション培地(Opti-MEM)により処理された細胞については、粒子シグナルもエンドソーム脱出イベント(Gal8-GFP斑点)も検出されなかった。全ての図は、対照群に示す同一のスケールバー=100μmを共有する。これらの図では、セロミクス定量分析により見られる傾向が明確に示された。
【
図11】AおよびBは、Cy5-pDNA粒子により4時間インキュベートされたB16F10-Gal8-GFP細胞の共焦点レーザー走査顕微鏡画像である。Aは、細胞の高さ0.15μmごとにスキャンするzスタック実験からの3Dビューである。Bは、細胞の中間の高さ(上のパネル)において、または細胞の底部(200または400nmの群)/細胞の頂部(900nmの群)においてサンプリングされた代表的な層画像である。カラースキーム:ヘキスト33342(青);GFP-Gal8(緑);Cy5-DNA(紫);GFPおよびCy5の共局在(白)。
【
図12】A、B、C、D、E、およびFは、セロミクスにより評価された、粒子細胞取込の完全なデータセットを示す。Aは、平均粒子スポット面積である。Bは、平均粒子スポット強度である。Cは、細胞あたりで検出された粒子の平均数である。Dは、細胞あたりの平均総粒子強度(総取り込み量の指標)である。Eは、Cy5標識DNA粒子の投与後1、2、4、および8時間のセロミクスハイコンテント解析により評価された粒子スポット陽性細胞のパーセンテージである。
【
図13】Aは、粒子が異なるサイズで安定化され、同一の量のレポーター溶解バッファーおよびSOLVABLE溶液で処置されたとき、このトリチウム標識アッセイが、粒径にかかわらずpDNAの絶対量を正確に評価できたことを示した。Bは、セロミクスハイコンテント解析による、蛍光の半定量的な取り込み評価(細胞あたりの平均総粒子強度、
図4G)として、群間での同一の傾向および相対的な関係を示した。これにより、異なるサイズの粒子の取り込み挙動が検証された。
【
図14】A、B、C、D、およびEは、セロミクスにより評価された、粒子に誘発されたエンドソーム脱出の完全なデータセットを示す。Aは、平均Gal8スポット面積を示す。Bは、平均Gal8スポット強度を示す。Cは、細胞あたりで検出されたGal8スポットの平均数を示す。Dは、細胞あたりの平均総Gal8スポット強度(総エンドソーム脱出レベルの指標)を示す。Eは、Cy5標識DNA粒子の投与後1、2、4、および8時間のセロミクスハイコンテント解析により評価されたGal8スポット陽性細胞パーセンテージを示す。
【
図15】異なるサイズのNPによりインキュベートされた細胞の代謝活性を示す。
【
図16】A、B、およびCは、単一細胞レベルのエンドソーム脱出および細胞取込の正のスケーリングを示す。Aは、200nm、400nm、または900nmの粒子により2時間インキュベートされた細胞についての、単一細胞レベルの総Gal8スポット強度(エンドソーム脱出レベル)と総粒子スポット強度(細胞取込レベル)との関係を示す細胞密度ヒートマップを示す。Bは、200nm、400nm、または900nmの粒子により4時間インキュベートされた細胞についての、単一細胞レベルの総Gal8スポット強度(エンドソーム脱出レベル)と総粒子スポット強度(細胞取込レベル)との関係を示す細胞密度ヒートマップを示す。なお、Aの3つのプロットは、互いに重ね合わせることにより
図4Lを生成するために使用された。同様に、Bの3つのプロットは、Cを生成するために使用された。
【
図17】AおよびBは、HEK293F細胞の懸濁培養液における細胞取込を示す。Aは、投与後2時間のCy5-pDNA粒子の細胞取込の共焦点レーザー走査顕微鏡観察結果である。カラースキーム:ヘキスト33342(青);CellMask Green(緑)。なお、この染料により、細胞膜の代わりに細胞体全体が着色されたが、これは恐らく4%のパラホルムアルデヒドの固定液による細胞膜浸透によるものである。しかしながら、細胞取込を評価するため、細胞体は、Cy5-pDNA(紫)ではっきりとマークされた。全ての画像は、対照画像と同一のスケールバーを共有する。Bは、投与後1、2、4、および24時間で評価された
3H-pDNA粒子の細胞取込動態を示す。
【
図18】A、B、C、およびDは、200μg mL
-1のDNA濃度でのサイズ成長過程のスケーリングを示す。Aは、異なる濃度のPBSの下で誘発された断定可能なサイズ成長を示す。Bでは、0.75倍のPBSによる成長曲線に沿った異なる時点での20mMのHClを含む19%(w/w)のトレハロース溶液による希釈により、粒径成長が停止された。Cは、異なるサイズの一連の安定的な粒子のDLSにより測定されたz平均直径分布を示す。Dは、レポーターとしてのルシフェラーゼの導入遺伝子発現の効率を示す。これらの実験において、(小さなナノ粒子のFNC調製後の)開始時のDNA濃度は、200μg mL
-1であった。これらの小さなビルディングブロックは、プラスミド長さに応じて、80nm~100nmのより大きなサイズを保持した。溶液チャレンジの際、濃度は、100μg mL
-1まで減少し、最終的に、粒子安定化時には50μg mL
-1であった。
【
図19】A、B、C、D、E、およびFは、以下を示す:(A)規定サイズのプラスミドDNA/PEI粒子の製剤過程のスキーム、(B)閉じ込め衝突ジェット(CIJ)が接続された蠕動およびリザーバーベースのセットアップ、(C)動的散乱により評価された、500mL/分で生成されたナノ粒子のz平均直径および多分散性指数(PDI)、(D)動的散乱により評価された、1000mL/分で生成されたナノ粒子のz平均直径および多分散性指数(PDI)、(E)動的散乱により評価された、2000mL/分で生成されたナノ粒子のz平均直径および多分散性指数(PDI)、(F)動的光散乱により評価された、異なる流量により生成された成長粒子の粒径成長動態。
【
図20】A、B、C、D、およびEは、以下を示す:(A)動的光散乱により評価された、ステップ3後の安定化されたプラスミドDNA/PEI粒子のz平均粒子直径、(B)動的光散乱により評価された、ステップ3後の安定化されたプラスミドDNA/PEI粒子の多分散性指数、(C)ステップ3後の安定化されたプラスミドDNA/PEI粒子の懸濁液におけるDNA濃度、(D)ルシフェラーゼの導入遺伝子発現の相対発光量(RLU)の測定により評価された、標準的な実験室規模の調製と1000mL/分との間のトランスフェクション効率の比較、(E)動的光散乱により評価された、標準的な実験室規模の調製と1000mL/分との間の粒径分布の比較。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の保護対象について、本発明の全てではないが一部の実施形態が示されている添付の図面を参照して、より詳細に説明する。同一の数字は、全体を通して同一の要素を指す。本開示の保護対象は、多くの異なる形態で具体化されてよく、本明細書に記載の実施形態に限定して解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用される法的要件を満たすように提供される。実際、本明細書に記載の本開示の保護対象の多くの変更および他の実施形態は、前述の説明および関連図面に示された教示の利益を有する、本開示の保護対象が属する技術分野に精通している者であれば思い浮かぶであろう。そのため、本開示の保護対象は、開示された特定の実施形態に限定されず、変更および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されていることを理解されたい。
【0026】
ウイルスベクターを生産するため、細胞、例えば、HEK293細胞の効率的なトランスフェクションのために約200nm~約1000nmのサイズ範囲の、高濃度で、安定的な、オフザシェルフDNA/PEI粒子を生成する方法は、現在のところ当該技術分野で知られていない。本開示の保護対象は、そのような方法を提供し、トランスフェクション過程を簡略化かつ合理化して操作者非依存とし、ウイルスベクターのスケールアップ生産を促進する。本開示の保護対象は、一過性トランスフェクション過程によるウイルスベクターの生産における、低い再現性および一貫性のない収量を解決する。結果として、ウイルスベクターの生産品質および一貫性が改善されうる。本開示の方法および製剤は、さまざまなスケールのウイルスベクターの生産のためのプロセス工学において、潜在的に広範囲の用途を見出しうる。他の潜在的な使用としては、再生医療および免疫療法のための細胞のex vivoトランスフェクションが挙げられる。
【0027】
本開示の保護対象は、いくつかの実施形態において、接着培養液および懸濁培養液の両方におけるウイルス産生細胞の効率的なトランスフェクションのため、DNA/ポリカチオン粒子の最適な組成およびサイズを開示する。50nm~1000nmの粒子に対するDNA/ポリカチオン粒子媒介トランスフェクションのサイズ依存特性も開示される。50nm~1000nmの規定サイズを有する保存安定性がある粒子を調製するためのDNA/ポリカチオンナノ粒子集合の動態制御に基づく新規の拡張可能な方法も開示される。特定の実施形態においては、本開示の保護対象は、約400nm~約500nmのサイズのオフザシェルフ粒子製剤を提供する。本開示のDNA/ポリカチオン粒子は、優れたかつ再現性のあるトランスフェクション活性および保存安定性を生み出し、オフザシェルフ製品として使用されうる。
【0028】
本明細書で上述したように、100nmよりも大きいサイズを有する粒子のサイズ依存のトランスフェクション活性は、これまでに時折報告されただけである(Ogrisら、1998;Zhangら、2019)。しかしながら、トランスフェクション過程の粒子サイズ依存は、体系的には理解されていない。本開示の保護対象を開発する際に実施された初めの調査では、粒径、特に100nmより大きい粒子は、特定の細胞株(例えば、HEK293TまたはHEK293F細胞)におけるトランスフェクション効率に影響を与える主要パラメーターであることが特定された。本開示の保護対象は、約60nm~約1000nmの平均粒径と、pDNA/PEI粒子のトランスフェクション効率の最初の直接的な相関関係を提供し、粒径が異なる条件下で調製された粒子のトランスフェクション活性の共通の決定要因であることを示す。いくつかの実施形態においては、細胞培養において使用される条件において、最適な粒径は約400nm~約500nmである。
【0029】
これまでに、約200nm~約1000nmの範囲のpDNA/PEI粒子のサイズおよび安定性を制御する方法は報告されていない。ピペット混合または液滴追加は、粒子のサイズの予測不可能性および高い不安定性をもたらす。その一方、本開示の保護対象は、成長動態および動態安定性を制御することにより約60nm~約1000nmの任意の所望のサイズのpDNA/PEI粒子を生産する拡張可能な方法を提供する。この粒子シリーズを使用して定量分析が実施され、細胞内輸送およびトランスフェクション活性を制御する細胞取込の主要な律速段階が明らかになった。トランスレーショナルポテンシャルを更に改善するため、400nmのpDNA/PEI粒子のオフザシェルフ製剤が開発された。これらの粒子は、物理的性質およびトランスフェクション活性を維持したまま、-80°Cで優れた保存安定性を示した。すぐに使える形態で供給されるため、この粒子製剤は、レンチウイルスベクターの複数のスケールの生産において有効であり、従来の手動の調製方法により新たに調製された、最適化された複合体に相当する一貫性のある収量を示した。
【0030】
A.ポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子を調製する方法
従って、いくつかの実施形態においては、本開示の保護対象は、複数のポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子を調製する方法であって、
(a)第1の可変流量で1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーを含む第1の流れと、第2の可変流量で1つまたは複数のポリアニオンポリマーを含む第2の流れとを第1のフラッシュナノ複合体形成(FNC)ミキサーに流し込み、第1の粒径を有する複数のナノ粒子を形成することと、
(b)第3の可変流量で第1の粒径を有する複数のナノ粒子を含む第3の流れと、第4の可変流量で集合バッファーを含む第4の流れとを第2のFNCミキサーに流し込み、複数の集合ナノ粒子を形成することと、
(c)ステップ(b)において形成された複数の集合ナノ粒子をしばらくの期間インキュベートし、第2の粒径を有する複数の集合ナノ粒子を形成することと、
(d)第5の可変流量で第2の粒径を有する複数の集合ナノ粒子を含む第5の流れと、第6の可変流量で安定化バッファーを含む第6の流れとを第3のFNCミキサーに流し込み、複数のポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子を形成することと
を含む方法を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、キトサン、PAMAMデンドリマー、プロタミン、ポリ(アルギニン)、ポリ(リジン)、ポリ(ベータ-アミノエステル)、カチオン性ペプチド、およびそれらの誘導体からなる群から選択される。実施形態によっては、1つまたは複数の水溶性ポリカチオンポリマーは、ポリエチレンイミンである。
【0032】
いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の水溶性ポリアニオンポリマーは、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(グルタミン酸)、負の電荷を持つブロック共重合体、ヘパリン硫酸、デキストラン硫酸、ヒアルロン酸、アルギン酸、トリポリリン酸(TPP)、オリゴ(グルタミン酸)、サイトカイン、タンパク質、ペプチド、成長因子、および1つまたは複数の核酸からなる群から選択される。
【0033】
いくつかの実施形態においては、1つまたは複数の核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、cDNA、ゲノムDNA、ガイドRNA、プラスミドDNA、ベクターDNA、mRNA、miRNA、piRNA、shRNA、およびsiRNAからなる群から選択される。実施形態によっては、1つまたは複数の核酸は、プラスミドDNA(pDNA)または異なる種のプラスミドDNAの混合物を含む。実施形態によっては、1つまたは複数の核酸は、mRNAを含む。
【0034】
特定の実施形態においては、pDNAの混合物は、ウイルスベクターを生産するのに必要かつ十分な、パッケージ可能なウイルスベクターと1つまたは複数のウイルス構造/アクセサリータンパク質とを含むトランスファープラスミドをコードする。
【0035】
いくつかの実施形態においては、第1の可変流量、第2の可変流量、第3の可変流量、第4の可変流量、第5の可変流量、および第6の可変流量は、それぞれ独立して約5~約400mL/分である。
【0036】
いくつかの実施形態においては、第1の粒径は、約40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、および120nmを含む、約40nm~約120nmの範囲を有する。実施形態によっては、第1の粒径を有する複数のナノ粒子は、約2.0~4.0のpHおよび約0.05~2.0mS cm-1の伝導度の条件下で形成される。
【0037】
実施形態によっては、ステップ(b)で形成された複数のナノ粒子は、しばらくの期間、おおよそ室温(22±4°C)でインキュベートされる。特定の実施形態においては、期間は、約0.2~約5時間である。
【0038】
いくつかの実施形態においては、第2の粒径を有する複数の集合ナノ粒子は、約6.0~8.0のpHおよび約2.0~25.0mS cm-1の伝導度の条件下で形成される。実施形態によっては、集合バッファーは、リン酸緩衝食塩水を含む。特定の実施形態においては、リン酸緩衝食塩水剤は、NaCl、KCl、Na2HPO4、KH2PO4、およびその組み合わせの1つまたは複数を含む。
【0039】
実施形態によっては、第2の粒径は、約300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、および500nmを含む、約300nm~約500nmの範囲を有する。
【0040】
いくつかの実施形態においては、ステップ(d)の複数のポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子は、約2.0~4.0のpHおよび約1.0~15.0mS cm-1の伝導度の条件下で形成される。実施形態によっては、安定化バッファーは、少なくとも1つの糖を含む。特定の実施形態においては、糖は、トレハロースを含む。更により特定の実施形態においては、1つまたは複数の糖は、約10%~約30%w/wのトレハロースを含む。いくつかの実施形態においては、安定化バッファーは、HClを含む。
【0041】
いくつかの実施形態においては、方法は、粒子を、保存のため約-80°Cで凍結乾燥または凍結させることを更に含む。
【0042】
B.ウイルスベクターを調製する方法
他の実施形態においては、本開示の保護対象は、ウイルスベクターを調製する方法であって、1つまたは複数の細胞を、本開示の方法により調製されたポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子または本開示の複数のポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子に接触させることを含む方法を提供する。いくつかの実施形態においては、方法は、複数のポリカチオン/ポリアニオン複合体ナノ粒子を、1つまたは複数の細胞の単層培養液または1つまたは複数の細胞の懸濁培養液に投与することを含む。
【0043】
特定の実施形態においては、1つまたは複数の細胞は、ウイルスベクターを生成するために本明細書において検討される、ポリカチオン/核酸ナノ粒子、例えば、pDNA/PEI複合体によりトランスフェクトされる。
【0044】
本明細書において検討されるナノ粒子によるトランスフェクションに適した細胞の実例としては、CHO細胞、BHK細胞、MDCK細胞、C3H 10T1/2細胞、FLY細胞、Psi-2細胞、BOSC 23細胞、PA317細胞、WEHI細胞、COS細胞、BSC 1細胞、BSC 40細胞、BMT 10細胞、VERO細胞、W138細胞、MRC5細胞、A549細胞、HT1080細胞、293細胞、B-50細胞、3T3細胞、NIH3T3細胞、HepG2細胞、Saos-2細胞、Huh7細胞、HeLa細胞、W163細胞、211細胞、211A細胞、またはそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
好適な実施形態においては、本明細書において検討されるナノ粒子によるトランスフェクションに適した細胞は、HEK293細胞またはそれらの誘導体を含む。本明細書において検討される、特定の実施形態での使用に適したHEK293細胞の誘導体としては、HEK293S細胞、HEK293T細胞、HEK293F細胞、HEK293FT細胞、HEK293FTM細胞、HEK293SG細胞、HEK293SGGD細胞、HEK293H細胞、HEK293E細胞、HEK293MSR細胞、およびHEK293A細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
他の特に好適な実施形態においては、1つまたは複数の細胞は、懸濁培養液に適したHEK293T細胞を含む。
【0047】
いくつかの実施形態においては、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターである。本明細書において検討される、特定の実施形態での使用に適したレトロウイルスベクターの実例としては、モロニーマウス白血病ウイルス(M-MuLV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スプーマウイルス、フレンドマウス白血病ウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)、ならびにレンチウイルスに由来するベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
好適な実施形態においては、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。本明細書において検討される、特定の実施形態での使用に適したレンチウイルスベクターの実例としては、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;1型HIVおよび2型HIVを含む)、ビスナマエディウイルス(VMV)、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)に由来するベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
より好適な実施形態においては、レンチウイルスベクターは、1型HIVまたは2型HIVに由来する。
【0050】
特定の実施形態においては、トランスファープラスミドは、左(5’)レンチウイルスLTRと、Psiパッケージ配列(Ψ+)と、セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)と、Rev応答配列(RRE)と、治療導入遺伝子をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたプロモーターと、右(3’)レンチウイルスLTRとを含むレンチウイルスベクターをコードする。レンチウイルスベクターは、ポリアデニル化配列、インシュレーター、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、B型肝炎ウイルス(HPRE)、等を含むがこれらに限定されるものではない転写後調節エレメントを任意に含んでよい。
【0051】
特定の実施形態においては、トランスファープラスミドは、異種プロモーターを含む修飾左(5’)レンチウイルスLTRと、Psiパッケージ配列(Ψ+)と、セントラルポリプリントラクト/DNAフラップ(cPPT/FLAP)と、Rev応答配列(RRE)と、治療導入遺伝子をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたプロモーターと、修飾(3’)レンチウイルスLTRとを含むレンチウイルスベクターをコードする。
【0052】
特定の実施形態においては、トランスファープラスミドは、修飾5’LTRを含むレンチウイルスベクターをコードし、ここで、5’LTRのU3領域は、異種プロモーターに置き換えられ、ウイルス粒子の生産中にウイルスゲノムの転写を推進する。使用されうる異種プロモーターの例としては、例えば、ウイルスサルウイルス40(SV40)(例えば、初期または後期)、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、前初期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、および単純ヘルペスウイルス(HSV)(チミジンキナーゼ)プロモーターが挙げられる。
【0053】
特定の実施形態においては、トランスファープラスミドは、ウイルスベクター複製を不完全にする修飾自己不活型(SIN)3’LTRを含むレンチウイルスベクターをコードする。SINベクターは、3’LTRのU3領域の1つまたは複数の修正を含み、1回目のウイルス複製より後のウイルス転写を防止する。これは、右(3’)LTR U3領域が、ウイルス複製中に左(5’)LTR U3領域のテンプレートとして使用されるため、ウイルス転写物がU3エンハンサー-プロモーターなしでは作成できないからである。特定の実施形態においては、3’LTRは、U3領域が削除され、Rおよび/またはU5領域が、例えば、異種または合成ポリ(A)配列、1つまたは複数のインシュレーターエレメント、および/または誘導性プロモーターにより置き換えられるように修飾される。
【0054】
特定の実施形態においては、1つまたは複数のpDNAは、パッケージ可能なウイルスベクターゲノムと、gag、pol、env、tat、rev、vif、vpr、vpu、vpx、およびnefからなる群から選択されるウイルス構造/アクセサリータンパク質の1つまたは複数とを含むトランスファープラスミドをコードする。好適な実施形態においては、ウイルス構造/アクセサリータンパク質は、gag、pol、env、tat、およびrevからなる群から選択される。より好適な実施形態においては、ウイルス構造/アクセサリータンパク質は、gag、pol、env、およびrev、またはgag、pol、およびenvからなる群から選択される。
【0055】
ウイルスエンベロープタンパク質(env)は、最終的に細胞株から生成された組換えレトロウイルスに感染して形質転換されうる宿主細胞の範囲を判定する。1型HIV、2型HIV、SIV、FIV、およびEIVなどのレンチウイルスの場合、Envタンパク質は、gp41およびgp120を含む。
【0056】
本発明において用いられうるEnv遺伝子の実例としては、MLVエンベロープ、10A1エンベロープ、BAEV、FeLV-B、RD114、SSAV、Ebola、Sendai、FPV(家禽ペストウイルス)、およびインフルエンザウイルスエンベロープが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、RNAウイルス(例えば、ピコルナウイルス科、カリシウイルス科(Calciviridae)、アストロウイルス科、トガウイルス科、フラビウイルス科、コロナウイルス科、パラミクソウイルス科、ラブドウイルス科、フィロウイルス科、オルトミクソウイルス科、ブニヤウイルス科、アレナウイルス科、レオウイルス科、ビルナウイルス科、レトロウイルス科のRNAウイルスファミリー)のエンベロープ、およびDNAウイルス(ヘパドナウイルス科、サーコウイルス科、パルボウイルス科、パポバウイルス科、アデノウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポックスウイルス科(Poxyiridae)、およびイリドウイルス科のファミリー)のエンベロープをコードする遺伝子が利用されてよい。代表的な例としては、FeLV、VEE、HFVW、WDSV、SFV、狂犬病、ALV、BIV、BLV、EBV、CAEV、SNV、ChTLV、STLV、MPMV、SMRV、RAV、FuSV、MH2、AEV、AMV、CT10、およびEIAVが挙げられる。
【0057】
他の実施形態においては、特定の実施形態での使用に適したEnvタンパク質としては、以下のウイルスのいずれか:A型インフルエンザ、例えば、H1N1、H1N2、H3N2、およびH5N1(鳥インフルエンザ)、B型インフルエンザ、C型インフルエンザウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ロタウイルス、ノーウォークウイルス群のいずれかのウイルス、腸管アデノウイルス、パルボウイルス、デング熱ウイルス、サル痘、モノネガウイルス目、リッサウイルス、例えば、狂犬病ウイルス、ラゴスコウモリウイルス、モコラウイルス、デュベンヘイジウイルス、ヨーロッパコウモリウイルス1&2、およびオーストラリアコウモリウイルス、エフェメロウイルス、ベジクロウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ヘルペスウイルス、例えば、1型および2型単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹、サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス(EBV)、ヒトヘルペスウイルス(HHV)、6型および8型ヒトヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、パピローマウイルス、マウスガンマヘルペスウイルス、アレナウイルス、例えば、アルゼンチン出血熱ウイルス、ボリビア出血熱ウイルス、サビア関連出血熱ウイルス、ベネズエラ出血熱ウイルス、ラッサ熱ウイルス、マチュポウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridiae)、例えば、クリミアコンゴ出血熱ウイルス、ハンタウイルス、腎症候性出血熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、エボラ出血熱およびマールブルグ出血熱を含むフィロウイルス科(フィロウイルス)、キャサヌル森林病ウイルス、オムスク出血熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルスを含むフラビウイルス科、およびパラミクソウイルス科、例えば、ヘンドラウイルスおよびニパウイルス、大痘瘡および小痘瘡(天然痘)、アルファウイルス、例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、SARS関連コロナウイルス(SARS-CoV)、ウエストナイルウイルス、いずれかの脳炎(encephaliltis)ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
好適な実施形態においては、Env遺伝子は、VSV-Gエンベロープ糖タンパク質をコードする。
【0059】
いくつかの好適な実施形態においては、本明細書において検討されるpDNA/PEI複合体は、異種プロモーターを含む修飾左(5’)レンチウイルスLTRと、Psiパッケージ配列(Ψ+)と、cPPT/FLAPと、RREと、治療導入遺伝子をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結されたプロモーターと、修飾SIN(3’)レンチウイルスLTRとを含むレンチウイルスベクターをコードするトランスファープラスミド;レンチウイルスgag/polをコードするプラスミド、revをコードするプラスミド、およびEnv遺伝子をコードするプラスミド、好ましくはVSV-Gエンベロープ糖タンパク質を含む。
【0060】
長年の特許法の慣例に従い、「a」、「an」、および「the」という用語は、特許請求の範囲を含めて、本願において使用されるとき、「1つまたは複数」を指す。従って、例えば、「対象(a subject)」への言及は、文脈が明らかに反対の場合(例えば、複数の対象(a plurality of subjects))等を除き、複数の対象を含む。
【0061】
多くの実施形態において本開示の方法によって処置される「対象」は、望ましくはヒト対象であるが、本明細書に記載の方法は、「対象」という用語に含まれることが意図されている全ての脊椎動物種に関して有効であることを理解されたい。従って、「対象」には、既存の病態もしくは疾患の治療、または病態もしくは疾患の発症を予防するための予防的治療など、医療目的のヒト対象、または医療目的、獣医学目的、もしくは開発目的の動物対象を含みうる。好適な動物対象としては、霊長類、例えば、ヒト、サル、類人猿、等;ウシ(bovine)、例えば、ウシ(cattle)、雄ウシ(oxen)、等;ヒツジ(ovine)、例えば、ヒツジ(sheep)等;ヤギ(caprine)、例えば、ヤギ(goat)等;ブタ(porcine)、例えば、ブタ(pig)、雄ブタ(hog)、等;ウマ(equine)、例えば、ウマ(horse)、ロバ、シマウマ、等;野生のネコ(cat)および飼いネコ(cat)を含むネコ(feline);イヌ(dog)を含むイヌ(canine);ウサギ(rabbit)、ノウサギ(hare)、等を含むウサギ類(lagomorph);およびマウス、ラット、等を含むげっ歯類を含むがこれらに限定されるものではない哺乳類が挙げられる。動物は、遺伝子導入動物であってよい。いくつかの実施形態においては、対象は、胎児、新生児、乳児、若年、および成人対象を含むがこれらに限定されるものではないヒトである。さらに、「対象」には、病態もしくは疾患に罹患している、または罹患している疑いのある患者を含みうる。したがって、本明細書では、「対象」および「患者」という用語は互換的に使用される。「対象」という用語は、対象の生物、組織、細胞、または細胞の集合体も指す。
【0062】
概して、活性薬剤または薬物送達デバイスの「有効な量」とは、所望の生物学的反応を誘発するのに必要な量を指す。当業者には理解されるように、薬剤またはデバイスの有効な量は、所望の生物学的エンドポイント、送達される薬剤、医薬組成物の構成、標的組織などの因子に応じて変化しうる。
【0063】
本明細書および特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含む(comprising)」という用語は、文脈上別段の意味を有する場合を除き、非排他的な意味で使用される。同様に、「含む(include)」という用語およびその文法的変形は、非限定的であることを意図しており、リスト内の項目の列記は、リスト化された項目に置換または追加されうる他の同様の項目を排除するものではない。
【0064】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される量、サイズ、寸法、比率、形状、公式化、パラメーター、パーセンテージ、数量、特性、および他の数値を表す全ての数は、「約」という用語が値、量、または範囲とともに明示的に表示されなくても、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものと理解される。従って、反対の指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメーターは、正確ではなく、正確である必要はないが、本開示の保護対象により得ようとする所望の特性に応じて、公差、換算係数、四捨五入、測定誤差など、および当業者に公知の他の要因を反映して、近似値とするおよび/または所望により大きくまたは小さくすることができる。例えば、値について言及するとき、「約」という用語は、開示される方法を実施するため、または開示される組成を使用するために適切であるような、いくつかの実施形態においては±100%、いくつかの実施形態においては±50%、いくつかの実施形態においては±20%、いくつかの実施形態においては±10%、いくつかの実施形態においては±5%、いくつかの実施形態においては±1%、いくつかの実施形態においては±0.5%、およびいくつかの実施形態においては±0.1%の規定量からの変動を包含することを意味しうる。
【0065】
さらに、1つまたは複数の数または数値範囲に関連して使用されるとき、用語「約」は、範囲内の全ての数を含む、そのような全ての数値を指すと理解されるべきであり、記載された数値の上下に境界を拡張することによってその範囲を修正する。端点による数値範囲の記載には、その範囲に組み込まれる全ての数、例えば、その分数を含む全整数(例えば、1~5という記載には、1、2、3、4、および5、ならびにその分数、例えば、1.5、2.25、3.75、4.1、等が含まれる)、およびその範囲内の任意の範囲が含まれる。
【実施例】
【0066】
以下の実施例は、本開示の保護対象の代表的な実施形態を実施するための指針を当業者に提供するために含まれる。本開示および当該技術分野における一般的な技術水準に照らして、当業者であれば、以下の実施例は例示的なものであることのみを意図しており、本開示の保護対象の範囲から逸脱することなく、多数の変更、修正、および改変が採用されうることが理解できる。以下の総合的な説明および具体例は、例示を目的としたものであり、他の方法によって本開示の化合物を製造することを任意の方法で限定するものと解釈されるものではない。
【0067】
(実施例1)
細胞トランスフェクションのための規定サイズの保存安定性があるプラスミドDNA/ポリカチオン粒子の調製方法
1.1 概要
プラスミドDNA(pDNA)およびポリ(エチレンイミン)(PEI)からなる高分子電解質複合体(PEC)粒子は、遺伝子治療のためのレンチウイルスベクター(LVV)を生産するために広く使用されている。pDNA/PEI粒子の現在のバッチ方式の調製は、特に大規模製造過程における再現性および安定性が制限されており、トランスフェクション結果およびLVV収量の制御が困難になっている。本開示の保護対象は、pDNA/PEI粒子のサイズが高いトランスフェクション効率のための主要な決定要因であり、細胞取込制限メカニズムに起因して、最適なサイズは400nm~500nmであると特定した。ビルディングブロックとして60nmのナノ粒子を使用して、サイズ制御され(400nm)、保存安定性がある粒子を集めるため、動態ベースのアプローチが開発された。このボトムアップの工学過程の生産スケーラビリティも示されている。コロイド安定性およびトランスフェクション効率の維持は、業界標準プロトコルを使用して生成された不安定な粒子に対して検証された。この粒子製造方法は、ウイルス製造過程を効果的に合理化し、生産品質および一貫性を向上させる。
【0068】
そのため、本開示の保護対象は、60nm~1000nmの広いサイズ範囲のpDNA/PEI粒子のトランスフェクション効率の最初の直接的な相関関係を提供し、接着培養液および懸濁培養液の両方において400nm~500nmの最適なサイズを観察する。より詳細には、本開示の保護対象は、成長動態およびコロイド安定性の制御による60nmのナノ粒子のボトムアップ集合により、60nm~1000nmの任意のサイズでpDNA/PEI粒子を生産する拡張可能な方法を提供する。この粒子シリーズを使用して定量分析が実施され、主要な律速段階は、細胞内送達過程におけるサイズ依存の細胞取込であることが明らかになった。トランスレーショナルポテンシャルを更に改善するため、最適化された400nmのpDNA/PEI粒子のオフザシェルフ製剤が設計され、物理的性質およびトランスフェクション活性を維持したまま、-80°Cで優れた保存安定性を示した。すぐに使える形態のこれらの粒子は、治療に関連する複数のスケールで生産可能であった。工業生産システムにおいて検証したとき、これらの粒子により、標準的な手動の粒子調製方法により得られるものよりも優れた治療用LVVが生成されたことが重要である。
【0069】
1.2 結果および考察
1.2.1 粒径はトランスフェクション効率を支配する
異なるウイルス成分をコードする複数の種のpDNAが使用される、LVV生産の典型的なトランスフェクション過程を示すため、10%(4.4kb、ノンコーディング)、45%(6.8kb、gWiz-Lucルシフェラーゼレポーター)、および45%(9.6kb、ノンコーディング)の比率の3つのpDNAが、Opti-MEM培地に溶解された。
図1Aに示すスキームに続いて、5.5の窒素/リン酸塩(N/P)比で100μLのPEI溶液(Opti-MEM中)を100μLのpDNA溶液(5、10、または20μg mL
-1)にピペットで移した後、混合方法として10秒のボルテックスが使用された。その後、HEK293T細胞におけるトランスフェクション試験の前に、室温で0~60分間インキュベーションが実施された。pDNAの投与量が一定のとき、すなわち、1μg mL
-1で10
4個の細胞あたり0.1μgであるとき、ルシフェラーゼ発現により特徴付けられたトランスフェクション効率は、インキュベーション時間と鐘形の関係を示し、粒子調製においてDNA濃度が異なる場合、ピークは異なるインキュベーション時間で生じた(
図1B)。DNA濃度が増加するにつれ、最も高いトランスフェクション効率を達成するのに必要な時間は減少した。次に、動的光散乱(DLS)によりpDNAおよびPEI溶液の混合時のインキュベーション時間に応じて、粒径がモニタリングされ、インキュベーション中、断定可能な方法でサイズが増加したことが分かった(
図1C)。変数の数を減らすためのブリッジとしてインキュベーション時間を使用したとき、トランスフェクション効率が、DLSから得られたz平均粒子直径に対して、
図1Dにプロットされた。粒子調製における異なるpDNA濃度下で収集された全てのデータ点に適合する曲線により、強い相関性が現れた。これにより、pDNA/PEI粒子のサイズに対するトランスフェクション効率の支配的な依存、および最も高い導入遺伝子発現レベルをもたらす400nm~500nmの最適なサイズ範囲が示された。
【0070】
1.2.2 60~1000nmの範囲に制御されたサイズの安定的なpDNA/PEI粒子の生産
粒径がトランスフェクション効率を支配するという知見は、我々に400nm~500nmの制御されたサイズの保存安定性があるpDNA/PEI粒子を生産する方法を開発する動機を与えた。これまでに、このサイズ範囲程度のpDNA/PEI粒子を使用して細胞をトランスフェクトする実験が報告されている(Ogrisら、1998;Zhangら、2019)。しかしながら、安定性を維持しながら、この範囲で粒径および均一性を制御する具体的な取り組みは、これまでに報告されていない。
【0071】
この範囲でpDNAの粒径を制御することは、特に難易度が高い。静的光散乱を使用した(Huら、2019)および分析超遠心を使用した(Tockaryら、2019)これまでの特徴付け作業では、単一のpDNA分子からなる1つのpDNA/ポリカチオンナノ粒子のサイズは20nm~50nmのみであることが示され、これは、400~500nmの粒子を構成するには、ほぼ数千コピーのpDNAが必要となることを示している(
図6)。
【0072】
粒子集合過程の間、負の電荷を持つpDNAは、正の電荷を持つPEIと電荷中和すると、凝集状態に崩壊する(Osadaら、2010)。集合動態は極めて速く、数百ミリ秒の時間スケールである一方、pDNAおよび複合体の拡散速度はずっと緩やかである。よって、集合過程で極めて高いDNA濃度を使用しなければ、単一のステップで400~500nmのサイズを達成することはできない。要求される濃度は1mg mL-1をはるかに超えると推定されるが、高粘度であるため、取り扱いおよびスケールアップが非常に難しくなる(Huら、2019)。
【0073】
これまでに(Huら、2019)、pDNA/PEI粒子の集合の動態に関して、粒子の重量平均モル質量は、混合条件にかかわらず、z平均粒子直径の3乗に直線的に比例していることが示唆されている。異なるN/P比にわたる結果も同様である。
【数1】
【0074】
概算では、二重鎖pDNAの場合、1bpあたり650Da、N/P=2.7~3.0に相当する一定の結合PEI分率(Huら、2019;Yue,Y.ら、2011)、および43Daの線形PEIの一反復単位の分子量を採用した。そのため、単一のpDNAとそれに関連した全てのPEIとの総モル質量は、1bpあたり880Da程度と判定されうる。pDNA/PEI粒子あたりの理論的なpDNAペイロードと粒径との相関性は、続いて、上記の式から導き出すことができる。機能発現カスケードを持つ一般的なpDNAが4kbp~10kbpの範囲の長さを有することを考慮すると、4kbp、7kbp、または10kbpの長さのpDNAの3つの例は、
図6Aおよび
図6Bに示されるように、ペイロード-サイズ相関性を示す。注目すべきは、400~500nmの粒子は、4kbpのpDNAの場合、およそ1000~2500のpDNAを含み、10kbpのpDNAの場合、500~1000のpDNAを含むが、これらは、短い粒子集合時間内に単一のステップで集めるには多すぎるということである。
【0075】
この課題を回避するため、pDNA/PEI粒子の動態成長の特徴に基づくボトムアップの集合ストラテジーが開発された(
図2A)。まず、均一で小さなナノ粒子が低塩(伝導度:おおよそ0.4mS cm
-1)、低pH(おおよそ3のpH)の条件で調製され、これらのナノ粒子は、二次集合のためのビルディングブロックとして使用された。PEIの緩衝能力(Curtisら、2016)により、80%を超える二次窒素群がpH3でプロトン化される(すなわち、正の電荷を持つ)。この条件下で調製された個々のナノ粒子は、粒子表面に存在しているPEI分子の正味の正電荷による凝集に対して十分安定的である。
【0076】
培地がpH7に切り替えられると、ナノ粒子表面は十分に脱プロトン化する(ゼータ電位はおおよそ+40mVから+20mVに低下する)。食塩誘発性の電荷スクリーニングの残留表面電荷と関連するデバイ長の短縮と結び付いて、培地条件の変更は、ナノ粒子の粒子会合およびサイズ成長のトリガーとなる。なお、イオン強度がpDNA/PEI PECの解離(Bertschingerら、2006)を誘発せず、ナノ粒子会合を引き起こすだけのレベルで制御される必要があることが重要である。粒子成長は、培地の粒子濃度およびイオン強度により判定される速度で、主にファンデルワールス力により駆動される。粒子成長は、(粒子表面を再プロトン化するため)pHを3に反転させることにより、かつイオン強度を減少させるための希釈により、効果的に抑制され、それにより長期のデバイ・スクリーニングが再構築される。
【0077】
ビルディングブロックのpDNA/PEIナノ粒子は、高流量誘導の乱流混合下、閉じ込め衝突ジェット(CIJ)ミキサー(JohnsonおよびPrud’homme、2003;Haoら、2020)で、FNC技術(Santosら、2016;Huら、2019)を使用して調製された。そのような混合条件により、pDNAおよびPEI溶液の特徴的な混合時間が、特徴的なナノ粒子集合時間よりも短くなり、均一な集合動態および制御されたナノ粒子サイズおよび組成が達成される(Huら、2019)。100μg/mLの入力pDNA濃度により、pDNA/PEIナノ粒子は、DLSおよび透過型電子顕微鏡(TEM)により測定された66.0±1.0nmの平均サイズを保持した(
図2Bおよび
図7A)。
【0078】
提案されたストラテジーは、まず、粒子集合方法としてピペット操作を使用した小さなバッチスケールで試験された。ナノ粒子懸濁液は、同量のPBSと混合されることにより検証され、これにより、ゆっくりとしたサイズ成長が引き起こされた。成長率は、PBS濃度に依存した(
図2B)。PBSの緩衝成分がpH変化をもたらし、粒子の均一性を維持するために重要であった一方、塩成分は主に成長動態を決定したことも明らかになった(
図8)。
【0079】
1倍のPBSのチャレンジを進め、成長曲線に沿った異なる時点で、同量の、20mMのHClを含む19%w/wのトレハロース(抗凍結剤)と混合することで成長を抑制することにより、高い均一性で(
図2D)、200、300、400、500、700、および900nm(
図2C)に、平均粒径を上手く安定化させた。これらのサイズは、原理の証明として意図的に選択されたが、任意の他の所望のサイズも、異なる時点で成長を停止するにより容易に達成されうる。500nm未満の平均サイズの全ての粒子は、調製培地において、環境温度で少なくとも4時間安定的であった(
図2C)。より大きな粒子は、これらの条件下でずっとゆっくりとした速度であっても、4時間で約100nm成長し続けた。
【0080】
PBSの組成は、2つのサブセット:pH緩衝成分(すなわちNa
2HPO
4およびKH
2PO
4)および非緩衝塩成分(すなわちNaClおよびKCl)に分類できた。60nmのナノ粒子の成長を誘発するため、同一のイオン強度で1倍のPBSの非緩衝塩成分のみを使用したとき、1倍のPBSと比較して非常にゆっくりとした成長率が示された(
図8A)。200mMの高いNaCl濃度を使用すると、成長率は同程度まで上昇した。NaCl単独では、しかしながら、均一な粒子を生成できなかった。同量の、20mMのHClを含む19%w/wのトレハロースと混合することにより粒子が安定化すると、多分散性指数(PDI(
図8B)、高い均一性は低いPDI値と相関関係を持つ)およびサイズ分布(
図8C)は、両方のNaCl濃度によるチャレンジから、粒子の不均一な性質を示した。これは、非常に低いPDI(
図8B)およびはっきりと異なるサイズピーク(
図2D)が得られる1倍のPBSによる誘発により調製された粒子と著しい対照を成した。サイズ成長メカニズムに関して、PEIの不十分な脱プロトン化は、粒子会合に対する追加的な障壁を生じさせた。これにより、システムは、拡散、活性化、およびもしかすると粒径の関数である立体効果により同時に制御されうる。
【0081】
60nmのナノ粒子を(100μg mL
-1のDNA濃度で)同量の1倍のPBSと混合すると、懸濁液のpHはおおよそ3から7に増加した。非緩衝塩を含まないNaOH溶液と直接混合することによりpHが5~8に変更されたとき(
図8D)、サイズ成長は観察されなかった(
図8E)。粒子のサイズは上方にシフトしたが、この観察結果は、低塩環境におけるPEIのゆっくりとした脱プロトン化と関連する形状変換の結果かもしれない(Santos,J.L.ら、2016)。pHが9を超えてシフトしたときのみ、遅延性の制御できないほど速いサイズ成長が誘発された。PEIのプロトン化分率が、なお7~8のpH範囲の40%よりわずかに高いことを考慮すると、このデータセットにより、部分的な脱プロトン化は粒子会合を誘発するには十分ではなく、粒子表面上に残っている電荷のスクリーニングは不可欠であることが示された。よって、PBS中の非緩衝塩は、成長動態の主要な決定要因として機能した。
【0082】
提案されたサイズ制御メカニズムは、成長粒子および安定化された粒子の位相解析光散乱(PALS)およびPEI組成評価(Bertschingerら、2004)によるゼータ電位測定により検証された(
図2F)。1倍のPBSによるチャレンジの際、ゼータ電位は、+37mVから+20mVに低下し、HCl溶液により一旦安定化されると、元のレベルに戻った。変化の2つのステップは、pDNAによる電荷中和(結合PEIの増加)に関わるPEI分子を増加させるPEIの脱プロトン化、および効果を反転させるPEIの再プロトン化と関連していた。制御された成長ステップ中、適切なイオン強度の存在下でポテンシャルエネルギー障壁を乗り越えるには、+20mVのゼータ電位で十分であった。透過型電子顕微鏡(TEM)分析により、境界面で結合した元の個々のナノ粒子の会合の形態および性質を示すDLS測定結果が確認された(
図2F-2、
図2F-3、
図2F-4、および
図7B、
図7C)。安定化された400nmの粒子は、高レベルの均一性を有する均一に分布した凝集体構築物として存在した(
図2C-5、
図2C-6、
図2C-7、および
図7D)。成長を抑制するのに適切なHCl濃度は、成長期中に追加された緩衝塩を完全にプロトン化するのに必要なHCl濃度に近い。より低いまたはより高い濃度では、安定化に効果がなかった、または、それぞれ、粒子の縮小およびDNA分解をもたらした(
図2G)。これらの安定性測定基準も、これらの粒子のトランスフェクション効率により確認された。
【0083】
1.2.3 制御されたサイズの安定的なpDNA/PEI粒子のトランスフェクション効率
安定化された粒子は、HEK293T細胞の単層培養液またはHEK293F細胞の懸濁培養液に投与され、レポーターとしてのルシフェラーゼまたはGFPのいずれかをコードするpDNAを使用して、それらの粒子のトランスフェクション効率が試験された。トランスフェクション実験のため、粒子懸濁液は、1μg pDNA mL
-1の濃度に希釈され、これにより、pHが中性かつ高塩濃度の培地におけるトランスフェクション条件下での更なるサイズ成長が効果的に制限された(
図9)。
【0084】
なお、粒子を、細胞と相互作用しているときにトランスフェクション培地(生理食塩条件、中性pH)に追加すると、粒子はより大きなサイズに成長できたことは重要である。成長動態は、希釈(25μg pDNA mL
-1から1μg pDNA mL
-1に25倍)により課された拡散限界のためゆっくりであり、サイズ成長は、初めのサイズが小さいほど顕著であった(
図9A、
図9B)。しかしながら、60nmまたは200nmの粒子を例にすると、細胞とのインキュベーションの時間スケール(単層トランスフェクションの場合は4時間、懸濁トランスフェクションの場合は全培養期間、すなわち、48時間)内での顕著なサイズ成長でも、粒子をより効果的にすることはなかった(
図3)。この観察結果により、トランスフェクション培地中の希釈された形態でのサイズ成長が、制御可能な方法によるサイズ成長と異なるかどうかを検討することになった(
図2)。TEM画像により、以下のことが確認された:(1)60nmのナノ粒子では確かにサイズ成長が見られた。培地が希釈されると間もなく、広範囲のサイズの粒子が観察できた。緑の矢印は100nm未満のナノ粒子を指し、黄色の矢印は100nm~250nmの粒子を指し、赤の矢印は250nmを超える粒子を指す(
図9C)。同一の時点において、DLSは、250nmのz平均サイズ測定値を示した。3時間後、粒子は、400nmのサイズ範囲の安定化された粒子(
図2F、および
図7D)と比較して形態に有意差なく、不均一により大きく成長した(
図9D);(2)400nmの粒子は、トランスフェクション培地において希釈して20分または3時間後にサンプリングされたとき、元の形態を明確に維持していた(
図8E、
図8F)。インキュベーション中にサイズ成長も見られた。
【0085】
TEM観察結果は、トランスフェクション培地においてゆっくりとしたサイズ成長が生じたというDLSモニタリング結果を裏付けた。しかしながら、培地におけるサイズ成長の能力があるにも関わらず、トランスフェクション培地に投与する前にサイズが300nm未満の粒子には効果がない理由は、理解できないままである。これについては、将来的な調査が必要であり、安定した方法でトランスフェクションの投与前に粒径を制御する重要性が強調されている。
【0086】
pDNA/PEI粒子の観察は、酢酸ウラニルを使用したネガティブ染色により可能になった。正の電荷を持つPEI表面を有する安定化された粒子は、正の電荷を持つ染料と混じり合わず、優れた3D構造を示す画像において著しい対照を成す(
図2F、
図7)。トランスフェクション培地において、主に表面電荷がスクリーニングされる。染料浸透およびそのpDNAとの相互作用は著しく、粒子コアに染料が集中し、暗すぎて観察ができなくなった。このような場合には、
図9の全ての画像に、2~4のべき乗のガンマ補正が適用され、暗いエリアを明るくした。これにより、取得された画像の解像度および品質は犠牲になったが、全般的な考察および結論には影響がなかった。
【0087】
ルシフェラーゼ活性の読み出し(
図3A)により、
図1Dで観察された単層培養液における400nmという最適なサイズが検証され、懸濁培養液における500nmという最適なサイズが示された。GFPの読み出し(
図3B、
図3C)により、単層培養液においては、200nm~300nmで質的な効率ジャンプが生じ、400nmで定常に達する一方、懸濁培養液においては、300nm~400nmで質的な効率ジャンプが生じ、500nmで定常に達することが示唆された。ルシフェラーゼおよびGFPレポーターの傾向は、60nm~500nmの粒径ではよく一致していたが、500nmを超える粒子では異なっていた。これは恐らく、2つのレポーターの発現動態、タンパク質安定性、および評価方法が異なることに起因する。明らかに、200nm未満のサイズの小さい粒子は、最終的にトランスフェクション培地で成長して大きくなったとしても、トランスフェクションにおいては効果がなかった(
図8)。懸濁培養液において、粒子は、トランスフェクション培地から除去されず、48時間の全培養期間にわたって細胞にアクセスしていた。そのため、結果には、細胞に投与する前に粒径を制御する重要性が示された。
【0088】
1.2.4 サイズ依存のトランスフェクション効率のための細胞内輸送メカニズム
トランスフェクションにとっての2つの主要な細胞内障壁(LacheltおよびWagner、2015)である、異なるサイズのpDNA/PEI粒子の細胞取込およびエンドソーム脱出を評価するため、pDNAは、Cy5で標識され、評価ツールとして、GFPと融合したガレクチン-8(Gal8)を発現する遺伝子組換えB16F10細胞株が使用された。サイトゾル中に分布したGal8タンパク質は、エンドソーム小胞の損傷時に露出した細胞膜グリカンに結合し、その後、凝集して、GFP斑点を形成する(
図4A)(Thurstonら、2012)。これまでの報告により、カチオン性ポリマーによるsiRNA(Kilchristら、2019)、またはCRISPR-Cas9リボ核タンパク質(Ruiら、2019)の送達効率が、細胞あたりで検出されたGal8スポットの平均数、すなわち、成功したエンドソーム脱出イベントと正に相関することが示唆されている。
【0089】
粒子取り込み(Cy5スポット)およびエンドソーム脱出(GFPスポット)の両方が、1、2、4、または8時間の粒子の処理の際に、固定細胞に対するセロミクスハイコンテント解析(HCA)により定量的に分析された(全データパネルは
図12、
図14にある)。認識された粒子は、粒径が増加するにつれ、面積および強度において明確な増加傾向を示した(
図4B~
図4Dおよび
図10および
図11)。なお、
図14Aおよび
図14Bの2時間のデータ点は
図4Eにも示され、
図14Cの全てのデータ点は
図4Hに示され、
図14Dの全てのデータ点は
図4Iに示され、
図14Eの2時間のデータ点は
図4Fに示される。
【0090】
図11の共焦点レーザー走査顕微鏡による観察により、以下のハイスループットセロミクス測定の主要な知見が裏付けられた:(1)粒径差は、異なる群間で、細胞内で明確に区別され、大きな粒子ほど、大きなGal8-GFP斑点により示唆される大きな細胞内小胞を誘発した;(2)エンドソーム脱出のレベルは、全体の取り込みレベルに対応し、サイズが大きいほど、エンドソーム脱出が強くなる。
【0091】
以下のことも注目すべきである:(1)白の矢印は、粒子シグナルと、エンドソーム脱出指標のGal8-GFP斑点との重なりを示す。これにより、いくつかの粒子は、エンドソームの破裂を誘発するが、損傷した小胞膜となお結合していることが示唆されている;(2)900nmの群における黄色の矢印は、エンドソームから脱出したばかりの巨大な粒子から解離したと思われるサテライト状に分布した小さな粒子を示す。巨大な粒子の本体は、損傷した小胞膜となお結合している;(3)より小さな粒子、特に200nmの群の粒子の場合、
図11Bの200nmおよび400nmの群の下のパネルに示すように、粒子は、細胞が表面に付着する基底外側の近くに集中した。そのような特徴は、900nmの群では観察されなかった。(2)および(3)の意味するところは、なおはっきりしないものであるが、本研究の焦点ではない。
【0092】
なお、
図10に示す画像は、セロミクスにより取得された画像のプールからランダムに選択されている(各サイズ群90枚中の1枚)。粒子-細胞相互作用をより詳細に示すため、画像の元の面積の1/4のフレームが代表的な領域を含んで作られ、続いて4倍に拡大されることで
図4Bの各画像が生成された。
【0093】
【0094】
図12Aおよび
図12Bは、トリチウムで標識されたpDNAによる粒子の細胞取込の検証を示す。
図12Aは、異なるサイズの粒子の対象サンプル(0.5μgのpDNAを有する安定化された粒子の100μLの懸濁液)で検出された1分あたりの壊変イベント(DPM)であり、シンチレーションアッセイに粒径は影響しないことを示している。
図12Bは、10
4個の細胞あたり0.1μgのpDNAの総投与量に対する、2または4時間の粒子インキュベーション後の、異なるサイズの粒子の絶対的な取り込み測定値を示す。
【0095】
pDNAの3H標識および絶対的な細胞pDNA取り込みの評価の方法は、これまでの報告に十分に記載されている(Huら、2019;Willifordら、2016)。この放射性基質トリチウムの使用は、ジョンズ・ホプキンス大学の放射線安全管理室により承認された。簡潔に言えば、pDNAは、SAM[3H](アデノシル-L-メチオニン、S-[メチル-3H])(PerkinElmer、USA)を基質としてメチルトランスフェラーゼ(New England BioLabs、USA)により仲介されたメチル化反応を通して3Hにより標識された。pDNAは、続いて、標準的なQIAprep Spin Miniprep pDNA精製キット(Qiagen、USA)を使用したカラム洗浄を受けた。標識されたpDNAは、本文に記載されているように、粒子の製剤および細胞への投与前に、非標識pDNAと混合された。投与後1または2時間で、粒子を含むトランスフェクション培地が排出され、続いて、ヘパリン含有PBS(100IU mL-1、表面に結合した粒子を除去するため)および新しいPBSでの強い洗浄が行われた。細胞は、同量のSOLVABLE溶液(PerkinElmer、USA)と混合されたライセートにより、レポーター溶解バッファー中、2回の凍結解凍サイクルにより溶解された。SOLVABLE溶液は、続いて追加されたUltima Goldシンチレーション液(PerkinElmer、USA)にアクセスした3H標識ヌクレオチドを可溶化した。放射活性(壊変毎分、DPM、絶対的な3H量の定量的測定)は、Tri-Carb 2200CA液シンチレーションアナライザー(Packard Instrument Company、USA)により評価された。
【0096】
粒子が大きくなるほど、平均面積および強度が大きいGal8スポットを誘発した(
図4E)が、これは、Gal8結合の表面積が大きくなるほど、脱出イベントに先立って大きな細胞内小胞が形成されることを示している。これらのpDNA/PEI粒子のサイズ範囲(900nmまで)がクラスリン依存または非依存のエンドサイトーシス経路(Rejmanら、2004;MayorおよびPagano、2007)に許容できる典型的なサイズを超えていることを考慮すると、これらの粒子の取り込みは、貪食様経路を通る可能性が高い(Kopatzら、2004)。粒子あたりのpDNAペイロードの増加の結果としての粒子の個数濃度の減少を考慮すると、サイズが増加するにつれて細胞あたりの粒子数が低下した(
図4F)ことは予測通りであった。それにもかかわらず、より大きな粒子が少ないほど、エンドソーム脱出の効率はずっと高く、Gal8スポット陽性細胞のパーセンテージが高いことが示された(
図4F)。Gal8スポット陽性のパーセンテージは、導入遺伝子発現陽性のパーセンテージと概して一致する(
図3B)ことも注目すべきである。総取り込み量(細胞あたりの平均総粒子強度、および
図13に記載された別の定量的な
3H標識DNAアッセイより測定)は、60nm~500nmのサイズ範囲の全ての時点において急激な増加を示し、粒径が500nmから900nmに増加するにつれ、わずかに増加した(
図4G)。各群の細胞あたりの平均Gal8スポット数が測定され、トランスフェクション効率と強く相関していると報告された全体のエンドソーム脱出レベルが評価された(
図4H)(Kilchristら、2019;Ruiら、2019)。Gal8スポット面積および強度において観察された差異(
図4E)を考慮すると、細胞あたりの平均総Gal8スポット強度により、全体のエンドソーム脱出レベルのより良い評価がもたらされる(
図4I)。加えて、取り込みおよびエンドソーム脱出の動態は、異なる長さの粒子インキュベーションの後、ルシフェラーゼ発現の動態と一致した(
図4J)。400nm(HEK293T)または500nm(HEK293F)より大きなサイズの粒子により仲介されたトランスフェクション効率が、粒子の取り込みおよびエンドソーム脱出の程度が高いにも関わらず、低下した理由は、将来的な研究で解明される予定であるが、細胞の代謝活性の変化に起因するものではなかった(
図15)。
【0097】
図15のデータについて、HEK293T細胞が単層培養液中で4時間pDNA/PEI粒子とインキュベートされた後、アラマーブルー試薬(Thermo Fisher Scientific、USA)がHEK293T細胞に追加された、またはアラマーブルー試薬(Thermo Fisher Scientific、USA)がpDNA/PEI粒子と共にHEK293F細胞に追加された。アッセイ試薬は、単層培養液の場合は20時間、懸濁培養液の場合は48時間、培地内に残っていた。100%の基準レベルは、無粒子のトランスフェクション培地で処理された対照細胞に由来した。570nmおよび600nmの波長における吸光度ベースのアッセイは、製造業者のプロトコルに従って100μLの最終培地で実施された。
【0098】
結果を以下に示す:(1)粒子のサイズが大きくなるにつれて取り込みが増加したが、それに伴う細胞の代謝活性の低下は見られなかった。これにより、400/500nm~900nmで見られるトランスフェクション効率の低下は、粒子およびPEIの高い取り込みレベルに起因する潜在的な細胞毒性により説明できないことが示唆された;(2)最も高いトランスフェクション効率を誘発する粒径、つまり単層培養液の場合は400および500nm、懸濁培養液の場合は400nm、500nm、および700nmで、代謝活性のわずかな減少が見られた。この観察結果が示唆するところは、今のところ不明である。
【0099】
pDNA/PEI粒子媒介トランスフェクションについて、プレートウェル平均(
図4K)または単一細胞レベル(
図4L)における細胞取込とエンドソーム脱出との関係が分析された。エンドソーム脱出イベントは、主に、粒子との1時間のインキュベーション後に生じた。単一の直線回帰は、粒径にかかわらず、投与後2時間および4時間後のプレートウェル平均測定値(
図4K)の全てのデータ点により共有された。単一の細胞レベルにおける異なる粒径にわたるヒートマップにおいて、最も高い細胞密度の全てのエリアにわたり、正の相関関係が見られた(
図4Lおよび
図16、セロミクスによりエクスポートされ、FlowJoにより処理されたFACSファイルを使用してプロット)。これらの分析により、エンドソーム脱出の程度は、pDNA/PEI粒子の細胞取込の程度に対応することが示され、観察されたトランスフェクション効率は、細胞取込により制限されたサイズ依存のメカニズムにより制御された。
【0100】
HEK293F細胞の懸濁培養液において、異なるサイズの粒子の細胞取込は、
3H-DNAアッセイにより定量化され、共焦点レーザー走査顕微鏡により直接観察されたように、HEK293TまたはB16F10-GFP-Gal8細胞の単層培養液における知見と一致していることが分かった(
図17)。この知見により、異なるサイズの粒子のトランスフェクション活性に見られた類似性が部分的に説明された(
図3)。
【0101】
HEK293F細胞の懸濁培養液が、単層培養液とよく似た結果を示した(
図10、
図11)ことは注目に値する:(1)細胞体内の粒子は、それらの比較的制御されたサイズの通りに、はっきりと異なるサイズを示した(
図17A)が、これにより、トランスフェクション培地中に希釈された性質が、動力学的に粒子の成長を制限し、それらのサイズを維持した(
図9)こと、かつ、投与前にサイズを制御することが重要であることが再度証明された;(2)画像により定性的に示され、
3H標識アッセイ(方法は、
図13の関連注記に記載)により定量的に証明されたように、取り込みは、粒径と正に相関した。このアッセイにより、細胞内pDNA量は、投与後1時間以内にピークに達し、培養が続くにつれ減少することが更に明らかになり、単層培養液との取り込み動態の極端な差異が示された。これは、投与後間もなくの急速な細胞-粒子接触を可能にした懸濁培養液における厳しい混合条件の結果であるかもしれない。そのような条件下でも、大きな粒子ほど、高い取り込み率を示した。これらの知見により、粒径の制御は、レンチウイルスベクターの生産のための一過性トランスフェクション過程の最適化のカギであるという見解が強化された。
【0102】
1.2.5 濃縮された400nmの粒子のスケールアップ製造およびLVV生産のための製品検証
粒子集合過程は、CIJデバイスにおいて比較的高い流量(例えば、40mL min
-1)で2つの混合ステップ(粒子成長および安定化)を実施することによりスケールアップできた。大きなバイオリアクターで要求される大量の粒子を生成するには、なおかなりの時間がかかるため、
図2Cに示す速い成長動態は、実際的でなかった。このことに対処するため、pDNA濃度を2倍として必要量を減らし、粒子のサイズ制御、安定性、およびトランスフェクション効率を検証した(
図18)。培地のイオン強度は、操作のしやすさのため粒子成長率を1~3時間以内に制御する粒子成長ステップのために最適化された(
図5A)。
図5Bに合理化されたように、粒子成長時間の延長を考慮すると、成長粒子をCIJミキサー#2から流し出し、CIJミキサー#3に溶液を充填するのに必要な時間はわずかであった。これにより、全過程が操作者非依存で、再現性が高くなり、インキュベーションの正確なタイミングに影響を受けにくくなる。粒子成長培地のイオン強度の低下、およびその結果としての、安定化ステップにおいてpHを戻すために必要な酸の量の低下は、粒子のコロイド安定性の維持および保存中のトランスフェクション活性の維持に追加的な利益をもたらした。粒子は、環境温度での懸濁液形態においては2日間(
図5C)、-80°Cで保存されたときには4カ月より長く(
図5D)、安定的であった。保存期間中、異なる時点でサンプルから解凍すると、pDNA/PEI粒子は、物理的性質およびトランスフェクション効率においてわずかな変化を示した。
【0103】
1.3 実験セクション
1.3.1 細胞培養およびトランスフェクションの研究
単層培養液の研究では、トランスフェクションの1日前に、HEK293T細胞(American Type Culture Collection、USA;DMEM+10%のFBSおよび2mMのL-グルタミン中で維持、37°C、5%のCO2、および飽和湿度)が、25,000細胞 ウェル-1の細胞密度で24-ウェルプレートに散布された。粒子は、5mlの微小遠心管内でFreeStyle 293培地にピペットで移され、続いて速やかに10秒間ボルテックスされ、1μg pDNA mL-1の最終粒子濃度に達した。例えば、25μg pDNA mL-1の100μLの粒子懸濁液が、2.4mLの無血清のFreeStyle 293培地にピペットで移された。ウェル内の元の培地は、続いて排出され、500μLの粒子含有培地により置き換えられた。投与後4時間で、培地は、新しい満タンの培地により置き換えられた。その後の20時間のインキュベーションにより、導入遺伝子発現が可能になった。懸濁培養液の研究では、トランスフェクションの1日前に、HEK293F細胞(Thermo Fisher Scientific、USA;FreeStyle 293培地中で維持、37°C、8%のCO2、および飽和湿度)が、0.5×106細胞 mL-1の細胞密度で、SpinΩTM Bioreactorsプレートスピナ(3Dnamics、USA)を備える12-ウェルプレートに散布された。スピナは、実験の期間中、1分あたり150回転の速度でモーター駆動された。粒子は、ウェルにピペットで一度に移され、続いてプレートは短時間シェイクされ、1μg pDNA mL-1の最終粒子濃度がもたらされた。例えば、25μg pDNA mL-1の80μLの粒子懸濁液が、単一のウェル内で2mLの細胞懸濁液にピペットで移された。全プレートで終了すると、スピナが再接続された。その後の48時間のインキュベーションにより、導入遺伝子発現がピークに達した。レポーターとしてルシフェラーゼを特徴付けるとき、細胞は、標準化されたルシフェラーゼサンプル(Promega、USA)により生成されたラダーに対してルシフェリンアッセイ溶液(Promega、USA)を追加する際、ルミノメーターにより特徴付けられたライセートを有して、2つの凍結解凍サイクルを使用して、レポーター溶解バッファー(Promega、USA)により溶解された。レポーターとしてGFPを特徴付けるとき、細胞は、1%のFBSおよび0.5mMのEDTAが補充されたPBS中で、トリプシン-EDTAにより懸濁され、FACSCantoフローサイトメーター(BD Life Sciences、USA)により分析された。
【0104】
1.3.2 異なるサイズの安定的な粒子の集合
ビルディングブロックとしてのpDNA/PEIナノ粒子が、これまでの報告(Santosら、2016;Huら、2019)に基づいてまず合成された。簡潔に言えば、pDNA(レポーターとして、Aldevron、USAのgWiz-LucまたはgWiz-GFPを有する複数の種)およびPEIpro(登録商標)(Polyplus、フランス)が、別々に超純水中に溶解され、続いて20mL min
-1の流量で閉じ込め衝突ジェット(CIJ)ミキサーにポンプで注入された(JohnsonおよびPrud’homme、2003;Haoら、2020)。濃度は、100μg pDNA mL
-1(
図2、60~70nmのナノ粒子を生成)または200μg pDNA mL
-1(
図5、80~100nmのナノ粒子を生成)のいずれかであり、N/P比は5.5であった。小さなバッチ調製(
図2~
図4)の場合、100μLのPBS溶液(0.2倍~2倍)が、100μLの60nmのナノ粒子懸濁液にピペットで移され、続いて速やかに3秒間ボルテックスされた。異なる時点で(
図2Bに示す)、200μLの、20mMのHClを含む19%(w/w)のトレハロース溶液が、成長粒子にピペットで移され、続いて速やかに3秒間ボルテックスされた。粒子は安定化され、使用および特徴付けの準備が整った。
【0105】
pDNA/PEI粒子の大量生産(
図5)の場合、80~100nmのナノ粒子およびPBS(0.4倍または0.45倍)が、シリンジに別々に充填され、20mL min
-1の流量でCIJデバイスにポンプで注入された。溶出液は、撹拌せずに、室温下で収集され、インキュベートされた。動的光散乱(Zetasizer ZS90、Malvern、USA)が定期的に実施され、サイズがモニタリングされた。粒子が標的サイズに達すると、粒子懸濁液、および2.5mMのHClを含む19%(w/w)のトレハロースの溶液が、シリンジに別々に充填され、20mL min
-1の流量でCIJデバイスにポンプで注入された。粒子は、使える状態とするか、長期保存のため-80°Cまで凍結された。トランスフェクション実験の場合、凍結された粒子は、環境温度で解凍することにより回収され、続いて短時間ボルテックスされた。粒子は、その後、使える状態とするか、トランスフェクション活性を損なわずに環境温度で1~2日間、一時的に保存された。
【0106】
1.3.3 セロミクスによる定量的な細胞取込およびエンドソーム脱出評価
pDNAは、NHS-ソラレン(Thermo Fisher Scientific、USA)のUV誘発架橋を介して、pDNAへの共有結合Cy5-アミン(Lumiprobe、USA)により標識された(Wilsonら、2017)。Cy5標識pDNAは、粒子製剤に先立って、pDNA混合物に5%で混合された。GFP結合ガレクチン-8(GFP-Gal8)を発現するB16F10細胞株は、Super PiggyBac Transposase(System Biosciences、USA)およびPiggybac-トランスポゾン-GFP-Gal8(Addgeneプラスミド#127191)およびポリ(ベータ-アミノエステル)(PBAE)キャリア(Karlssonら、2020)をコードするプラスミドを使用するトランスフェクションにより取得され、続いてSH800セルソーター(Sony、日本)により2回分類された。細胞は、ウェルあたり100,000個の細胞で、10%のFBSが補充されたDMEMで培養された。粒子は、この細胞株における最適な結果のため、トランスフェクション培地がOpti-MEMに切り替えられたことを除いては、上述したように、24時間後に投与された。所定の時間のインキュベーション後、細胞は、PBSにより3回洗浄され、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)溶液により固定され、ヘキスト33342により着色され、続いてPBSにより3回洗浄された。
【0107】
プレートは、CellInsight CX7ハイコンテント解析(HCA)プラットフォーム(Thermo Fisher Scientific、USA)により分析された。分析過程の簡単な例を
図4Aに挙げる。画像化は、501.2×501.2μm
2の面積と相関関係を持つ、フィールドあたり1104×1104ピクセル
2の解像度により、20倍の倍率で実施された。合計30フィールドがプレートの各ウェル内で分析され、ウェル平均結果は、全てのフィールドにおける全ての細胞の平均値を求めることにより生成された。露出時間を固定し、チャンネル1:386/440nm、チャンネル2:485/521nm、およびチャンネル3:650/694nmのレーザー/フィルターセットにより、製造業者により提供された<SpotDetector.V4>プログラムが使用された。分析において、細胞核、GFP-Gal8スポット、およびCy5-pDNAスポットの識別は、サンプル画像において正しい認識が得られるように、目視で検証された適切な平滑化および閾値化設定により実施された。閾値化において、<Isodata>(各ピクセルをその周囲と比較)は、その高いバックグラウンド(サイトゾルGal8)のため、GFP-Gal8に使用された。一方、<Fixed>(所定のレベルを設定)は、そのクリーンなバックグラウンド、潜在的に不規則な形状、および大きな面積のため、Cy5-pDNAに使用された。細胞体(サイトゾルエリア)の識別および分割は、識別された各核から外側に30ピクセル(13.6μm)ずつ、隣接した細胞間で重なることなく、エリアを拡大することにより近似された(
図4A)。
【0108】
1.4 概要
本研究により、LVV生産細胞株におけるトランスフェクション効率は、pDNA/PEI粒子のサイズに決定的に依存するという重要な洞察が明らかになり、トランスフェクションに最適なサイズ範囲は400nm~500nmであると特定された。段階的な過程は、表面電荷の反転およびイオン強度の条件付けに基づいて設計され、60nm~1000nmの平均サイズのpDNA/PEI粒子が、高いサイズ制御により調製された。調製された粒子は、標準的な操作の場合は環境温度で、長期保存の場合は-80°Cで、懸濁液中で優れた安定性を示した。この粒径操作方法により、高い均一性がもたらされ、一連のステップにより、集合動態の高い同調性が可能になる。スケールアップ生産方法は、混合手順を提供するのに合わせた集合動態により、継続的な流動混合過程-FNCプラットフォーム-に基づいて開発された。400nmのpDNA/PEI粒子製剤の最適なトランスフェクション活性および安定性は、予め調製され、凍結保存され、輸送され、そして解凍された粒子を使用したLVVの生産において有効であり、実際のバイオリアクター設定において業界標準を使用して生産された粒子と一致する性能が示された。この新たな拡張可能な製造方法は、生産性および量の制御の改善により、広範囲の遺伝子治療ベクターの生産まで容易に拡張可能な、高いトランスレーショナルポテンシャルを有する。
【0109】
(実施例2)
比較例-規定サイズのプラスミドDNA/ポリカチオン粒子のスケールアップ生産
2.1 実験セットアップ
プラスミドDNA(4.4kb)が、400μg/mLの濃度で超純水中に溶解され、ポリカチオン、すなわち、ポリ(エチレンイミン)(Polyplus、Inc.のin vivo-jetPEI)が、6の窒素/リン酸塩比に相当する、317.6μg/mLの濃度で超純水に溶解された。規定サイズの粒子を取得する典型的な製剤過程は、
図19Aに示され、3つのステップ:ステップ1、複合体形成;ステップ2、サイズ成長;およびステップ3、安定化を含む。500mL/分、1000mL/分、または2000mL/分の操作流量の3つの実験群について、拡大閉じ込め衝突ジェット(CIJ)ミキサーが使用され、各インレットは、蠕動ポンプにより駆動されたリザーバーから溶液を引き出した(
図19B)。ステップ1では、プラスミドDNAおよびPEI溶液が、CIJミキサーにポンプで注入され、充填され、安定的なナノ粒子が生成された。ナノ粒子は、総流量の一部として、直接アリコートとされ、複合体形成の安定性が評価された(
図1C、
図1D、
図1E)。ステップ2では、ナノ粒子懸濁液および0.44倍のリン酸緩衝食塩水(PBS)の溶液が、CIJミキサーにポンプで注入され、充填され、成長粒子が生成された。ステップ3では、成長粒子のサイズが400nmの標的に達すると、成長粒子懸濁液および2.5mMのHClと19%(w/w)のトレハロース溶液との溶液が、CIJミキサーにポンプで注入され、充填され、400nmの規定サイズの安定化された粒子が生成された。
【0110】
トランスフェクション試験では、HEK293T細胞は、粒子投与の1日前に、100,000細胞/ウェルで、24-ウェルプレートに散布された。安定化された粒子(ステップ3後、50μg/mLのDNA濃度で、5%のルシフェラーゼプラスミドを含む)は、Opti-MEM培地により1μg/mLのDNA濃度まで希釈された。細胞は、粒子含有培地中で4時間インキュベートされ、続いて満タンの培地で20時間培養された。
【0111】
2.2 説明
ステップ1では、標準的な実験室規模の設定により、56nmのz平均直径および0.133の多分散性指数(PDI)のナノ粒子が生成された。蠕動ポンプおよびリザーバーベースのセットアップを使用すると、流れが安定しているとき、500mL/分の流量で、同一のサイズおよび同様のPDIが得られた(
図1C)。流量が1000mL/分まで増加すると、同一のサイズだが高いPDI(0.3~0.4)のナノ粒子が取得された(
図19D)。流量が2000mL/分まで更に増加すると、ナノ粒子は、ほぼ2倍のサイズ(150nm程度)および高いPDI(0.4程度)を有したが、ナノ粒子の質は、全流動過程中、安定しているようであった(
図1E)。しかしながら、ナノ粒子のサイズおよび/またはPDIの増加は、全ての流量が、標準的な実験室規模の操作と比較したときと同様の成長プロファイルを有したように、ステップ2の成長動態に重大な影響を及ぼさなかった(
図1F)。
【0112】
【0113】
ステップ3で、異なる流量での全ての調製により、400nmの標的規定サイズ(
図20A)および同様のPDI(
図20B)の粒子が生成された。懸濁液中での(50μg/mLの標的による)DNA濃度のナノ液滴評価により、500mL/分および1000mL/分では、製剤過程中に損失が生じなかった一方、2000mL/分では、わずかな損失(5μg/mL程度、
図20C)が生じたことが明らかになった。これらの特徴は、凍結(摂氏マイナス80度まで)および解凍のサイクルの際に維持された(
図20A~20C)。5%のルシフェラーゼプラスミドが、標準的な実験室規模の40mL/分の流量または1000mL/分のスケールアップ流量により調製された製剤に追加されると、HEK293T細胞に対するin vitroトランスフェクションアッセイは、同様のトランスフェクション効率を示した(
図20D)。これらの2つの製剤は、動的光散乱により評価されたように、同様の粒径分布も有した(
図20E)。これらのデータは、トータルで、規定サイズのプラスミドDNA/PEI粒子を生成する
図19Aに示すような製剤方法が拡張可能であることを示している。
[参照]
【0114】
本明細書に記載の全ての出版物、特許出願、特許、および他の参照文献は、本開示の保護対象が属する技術分野に精通している者のレベルを示すものである。全ての出版物、特許出願、特許、および他の参照文献は、個々の出版物、特許出願、特許、および他の参照文献が具体的にかつ個々に参照により組み込まれる場合と同一の程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。多数の特許出願、特許、および他の参照文献が本明細書で参照されているが、このような参照は、これらの文書のいずれかが当技術分野における一般的な知識の一部を形成していることを認めるものではないことが理解されよう。本明細書と組み込まれた参考文献との間に矛盾がある場合は、本明細書(組み込まれた参考文献に基づく場合がある、その修正を含む)が優先するものとする。本明細書では、特に断りのない限り、標準的な技術上認められた用語の意味を使用する。本明細書では、さまざまな用語の標準的な略語を使用する。
【0115】
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【0116】
前述の保護対象は、理解を明瞭にする目的で、図示および例示によってある程度詳細に説明されたが、当業者には、添付の特許請求の範囲内で特定の変更および修正を実施できることが理解されよう。
【国際調査報告】