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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】薄膜の赤外線熱支援乾燥
(51)【国際特許分類】
   B32B 38/00 20060101AFI20240205BHJP
   B32B 37/16 20060101ALI20240205BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
B32B38/00
B32B37/16
B32B27/00 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548922
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 US2022015946
(87)【国際公開番号】W WO2022173927
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】63/149,193
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523306623
【氏名又は名称】ピーピージー アドヴァンスト サーフェス テクノロジーズ、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストレンジ、アンドリュー シー.
(72)【発明者】
【氏名】マグワイア、ジュニア、ジェイムス、イー.
(72)【発明者】
【氏名】スコット、シェーン、マイケル
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK25B
4F100AK51A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CB00B
4F100CB05B
4F100EJ012
4F100EJ432
4F100GB32
4F100JD04A
4F100YY002
4F100YY00A
(57)【要約】
ペイントフィルムを基材に適用する方法は、基材の表面又はペイントフィルムの接着剤層を濡らして、その上に流体層を形成することを含み得る。ペイントフィルムは、ポリマーフィルム層を更に含み得る。方法は、流体層が接着剤層と表面との間に配置されるように、ペイントフィルムを基材に適用することを更に含み得る。適用されたペイントフィルムを赤外線熱で加熱して、流体層の除去を促進し、接着剤層を表面に接着させることができる。ペイントフィルムを基材に適用するためのシステム及びデバイスも開示される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペイントフィルムを基材に適用する方法であって、前記方法が、
基材の表面又はペイントフィルムの接着剤層を濡らして、その上に流体層を形成することであって、前記ペイントフィルムが、ポリマーフィルム層を更に含む、形成することと、
前記流体層が前記接着剤層と前記表面との間に配置されるように、前記ペイントフィルムを前記基材に適用することと、
前記適用されたペイントフィルムを赤外線熱で加熱して、前記流体層の除去を促進し、前記接着剤層を前記表面に接着させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記濡らすステップが、前記表面と前記接着剤層との両方を濡らすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
加熱する前に、スキージを使用して前記流体層の一部分を除去することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一部分が、前記流体層の少なくとも80%を構成する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーフィルム層が、少なくとも1g/m/24時間の水蒸気移動速度(MVTR)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマーフィルム層が、ポリウレタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記接着剤層が、感圧接着剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記接着剤層が、ポリアクリレートを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
適用された前記ペイントフィルムを前記赤外線熱で加熱することが、前記ペイントフィルムの水蒸気透過速度を少なくとも2倍増加させる、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記ペイントフィルムが、60分未満で前記基材の前記表面に接着される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ペイントフィルムの乾燥時間が、室温での乾燥と比較して、少なくとも75%低減される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
加熱することが、前記ペイントフィルムを30℃~100℃に加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記基材が、モータ付き車両を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月12日出願の米国仮特許出願第63/149,193号の利益を主張し、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
参照による組み込み
本明細書で言及される全ての刊行物及び特許出願は、各個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示された場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、一般に、ペイントフィルム、それを適用及び使用する方法、並びにそれを含む物品に関する。
【背景技術】
【0004】
近年、ペイントフィルムは、多くの異なる種類の用途、特に自動車、飛行機、ボートなどのモータ付き車両における、従来の表面塗装方法の代替物として人気を博している。この人気は、少なくとも部分的には、ペイントフィルムが従来のペイントと比較してより耐久性があり、持続可能であることの結果である。
【0005】
1つの例示的なペイントフィルムは、車両の表面を変更するために使用される透明フィルムである、Aero Satinクリーン200フィルムである。これらのフィルム及び製造する方法は、米国公開第20190161646号に記載され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
典型的には、ペイントフィルムは、湿式設置プロセスによって適用される。しかしながら、特に販売後に設置者によって適応させた場合、湿式設置プロセスは、多くの場合不完全である。例えば、適用されたペイントフィルムの下に、厚い水泡が形成される場合がある。水泡が完全に乾燥しない限り、ペイントフィルムは表面(例えば、車両の表面)に適切に接着することができない。結果として、フィルムの接着は、典型的には、完全な接着を可能にするのに少なくとも24時間を必要とする。この乾燥時間は、特にOEM製品生産ラインでは負担となる。したがって、設置欠陥を最小限に抑えることもできる、より速いペイントフィルム乾燥方法を有することが有益であろう。
【発明の概要】
【0007】
本明細書に記載されるのは、赤外線(IR)熱支援乾燥を使用する、ペイントフィルムの改善された適用方法である。
【0008】
一般に、一実施形態では、ペイントフィルムを基材に適用する方法は、基材の表面、又はポリマーフィルム層を有するペイントフィルムの接着剤層を濡らして、その上に流体層を形成することと、流体層が接着剤層と表面との間に配置されるように、ペイントフィルムを基材に適用することと、適用されたペイントフィルムを赤外線熱で加熱して、流体層の除去を促進し、接着剤層を表面に接着させることと、を含む。
【0009】
この実施形態及び他の実施形態は、以下の特徴のうちの1つ以上を含み得る。濡らすステップは、表面と接着剤層との両方を濡らすことを含み得る。方法は、加熱する前に、スキージを使用して流体層の一部分を除去することを更に含み得る。一部分としては、流体層の少なくとも80%を挙げることができる。ポリマーフィルム層は、少なくとも1g/m/24時間の水蒸気移動速度(MVTR)を含み得る。ポリマーフィルム層は、ポリウレタンを含み得る。接着剤層は、感圧接着剤を含み得る。接着剤層は、ポリアクリレートを含み得る。適用されたペイントフィルムを赤外線熱で加熱することによって、ペイントフィルムの水蒸気透過速度を少なくとも2倍増加させることができる。ペイントフィルムは、60分未満で基材の表面に接着することができる。ペイントフィルムの乾燥時間は、室温での乾燥と比較して、少なくとも75%低減することができる。加熱することは、ペイントフィルムを30℃~100℃に加熱することを含む。基材としては、モータ付き車両を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の新規の特徴は、以下の特許請求の範囲に具体的に記載されている。本発明の原理が利用される例示的な実施形態について記載する以下の詳細な説明、及び付属の図面を参照することによって、本発明の特徴及び利点のより良好な理解が得られるであろう。
【0011】
図1】基材の表面上のペイントフィルムを示す。
【0012】
図2】赤外線熱支援乾燥を使用してペイントフィルムを基材に適用するための例示的なフロー図を示す。
【0013】
図3】ペイントフィルムと基材との間から流体を除去するためのスキージの使用を示す。
【0014】
図4】基材へのペイントフィルムの湿式設置プロセス中に残留し得る残留流体層を示す。
【0015】
図5】残留流体層を乾燥させるための熱の使用を示す。
【0016】
図6】車の表面上のペイントフィルムの赤外線熱支援乾燥のための例示的な設定を示す。
【0017】
図7】空気に曝露させた場合のペイントフィルムの基本的な乾燥プロセスを示す。
【0018】
図8】ペイントフィルムの乾燥プロセスに対する熱の効果を示す。
【0019】
図9】フィルムを室温で乾燥させた場合に対する、赤外線熱支援乾燥を使用してペイントフィルムを乾燥させた場合の経時的な剥離力を比較する実験結果のグラフである。
【0020】
図10A-10F】湿式設置プロセス後の乾燥中の欠陥の形成を示す。
【0021】
図11】照射パワーに対する波長のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に記載されるのは、ペイントフィルムを基材に適用するための改善された方法である。具体的には、本明細書に記載されるのは、赤外線熱を使用してペイントフィルムをモータ付き車両に適用して、1時間未満など、効率的に、車両にフィルムを接着させる方法である。IR熱を用いる本開示のペイントフィルム適用方法は、室温でのペイントフィルムの乾燥と比較して、乾燥時間を少なくとも75%有利に低減することができる。加えて、本明細書に記載の方法は、適用されたペイントフィルムの欠陥を低減するのに役立ち得る。本明細書に記載の方法は、モータ付き車両への(例えば、OEM施設における自動車生産ラインのための)フィルム適用のサイクル時間を加速するのに特に有用であり得る。
【0023】
図1は、表面102(例えば、モータ付き車両の表面)上の例示的なペイントフィルム101を示す。ペイントフィルム101は、ポリマーフィルム層108及び接着剤層106を含む。ペイントフィルム101は、水分を透過する能力を有するポリマー積層体であり得る。例えば、ペイントフィルム101は、少なくとも1g/m/24時間の水蒸気移動速度(MVTR)を有し得る。一実施形態では、ポリマーフィルム層108は、ポリウレタン又はポリアクリレートであり得る。例えば、ポリマーフィルム層108は、ウレタン(カルバメートとしても知られる)結合、尿素結合、又はそれらの組み合わせ(すなわち、ポリ(ウレタン-尿素)の場合)を含有するポリマーであり得る。したがって、ポリマーフィルム層108は、少なくともウレタン結合、尿素結合、又はそれらの組み合わせを含有し得る。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルム層108は、重合プロセス中にその場で形成されたウレタン及び/又は尿素反復結合を少なくとも40%、少なくとも60%、又は少なくとも80%有する、ポリマー骨格を有し得る。接着剤層106は、感圧接着剤を含み得る。いくつかの実施形態では、感圧接着剤は、(メタ)アクリレート(すなわち、アクリレート及びメタクリレート)を含み得る。例えば、感圧接着剤は、従来のアルミニウム又はメラミン架橋剤で重合及び架橋された2-エチルヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、及びアクリル酸モノマーを含み得る。いくつかの実施形態では、接着剤層106は、合成ゴム及び天然ゴム、ポリブタジエン及びそのコポリマー、ポリイソプレン及びそのコポリマー、並びに/又はシリコーン(例えば、ポリジメチルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサン)を含み得る。いくつかの実施形態では、ペイントフィルム101は、顔料添加ベースコートを更に含み得る。例示的なペイントフィルムの更なる特徴は、「Paint Film Appliques with Reduced Defects,Articles and Methods,」と題された米国公開第20190161646号に記載され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
図2を参照すると、ペイントフィルム101を適用する方法(フロー図1100によって示される)は、ステップ1104で、流体(例えば、水)をペイントフィルム101の接着剤層106の露出面に適用(例えば、スプレー)することを含み得る。同様に、ステップ1105で、流体を基材の表面102に適用してもよい。次いで、ステップ1106で、濡らした接着剤層106が、基材の濡らした表面102に適用され得る。ステップ1108で、フィルム101と基材の表面102との間の流体の80%超など、90%超など、流体の95%超などの大部分が、(例えば、スキージを使用して、フィルムを基材の表面102に押し付け、したがって、流体が界面から押し出されることによって)物理的に除去され得る。一実施形態では、フィルム101と基材の表面102との間の流体の量は、当初200g/m超、300g/m超、又は400g/m超から、(例えば、スキージを使用する)流体の物理的除去後には、25g/m未満など、10g/m未満など、5g/m未満などの50g/m未満まで低減され得る。ステップ1110で、赤外線熱をペイントフィルム101に適用して、流体を更に除去することができる(例えば、2g/m未満、1g/m未満など、0.1g/m未満など、0.01g/m未満などの流体が残る)。40℃~90℃など、30℃~100℃の赤外線熱が適用され得る。赤外線熱は、有利には、ペイントフィルム101を貫通し、フィルム101内のポリマー及び水分子によって吸収され得る。有利には、赤外線熱を使用して、1時間未満など、45分未満など、30分未満などの2時間未満で、ペイントフィルム101の乾燥を可能にすることができる。
【0025】
図3は、湿式設置プロセス中(例えば、上記のステップ1108中)に、ペイントフィルム101と表面102との間の流体を除去する最初のステップを示す。図3に示されているのは、流体103(波線によって示される)及びペイントフィルム101(透明であり、可視化せず)を有する表面102である。また、流体分子308を除去するために矢印306、310、及び312によって示される方向に動かされている、スキージ302及び304が示されている。一部分301は、スキージが実施された後の表面102を示し、一部分303は、スキージがまだ実施されていない表面102を示す。いくつかの実施形態では、スキージストロークの圧力及び/又は重複を調整して、ペイントフィルム101と表面102との間から除去される流体の量が最大化され得る。
【0026】
図4に示されるように、スキージプロセスを最適化した後でさえ、ペイントフィルム101の背後及び下に、残留流体104が残る場合がある。いくつかの実施形態では、この段階での残留流体104は、10ミクロン未満の厚さ及び/又は10%未満の接着剤層106の厚さであり得る。この小さな残留層104は重要ではないように思われる場合があるが、流体は、接着剤層106と基材との完全な接触を妨害し得る(特に、接着剤層106が親水性である場合)。
【0027】
したがって、図5に示されるように(例えば、上記のステップ1110中に記載されるように)、赤外線熱をペイントフィルム101に適用して、残留流体層104を除去することができる。示されるように、IR熱源902をペイントフィルム101に向けて、残留流体層104を除去することができる。図11を参照すると、いくつかの実施形態では、赤外線熱は、「中波」IR波長でペイントフィルム101に適用され得、これは、ペイントフィルム101内又はその周りのポリマー分子及び水分子との相互作用、並びに/又はそれらの優先的な加熱をより良好に可能にすることができる。有利には、中波IR波長は、表面102上での、任意の下にあるペイントなどの基材の表面102との強い相互作用を防止することができる。中波IR波長はまた、ペイントフィルム101内の異なる色又は顔料と相互作用する場合、より少ない変動を有し得る。
【0028】
図6は、車1001の表面1002上のペイントフィルムの赤外線熱支援乾燥のための例示的な設定を示す。示されるように、ペイントフィルム101は、車1001の表面1002上に配置される。残留流体層104、接着剤フィルム層106、及びポリマーフィルム層108も見ることができる。示されるように、ポリマーフィルム層108は、IR熱源902に直接曝露される。いくつかの実施形態では、単一のIR熱源902が使用され得る。例えば、熱源は、車1001の周りに円周方向に熱を適用するように構成されたトンネルであり得る。他の実施形態では、一列の熱源が使用され得る。
【0029】
図7は、空気に曝露させた場合のペイントフィルム101の基本的な乾燥プロセスを示す。示されるように、個々の水分子が、ポリマーフィルム108内のポリマーネットワークを通って空気702中に拡散すると、乾燥のプロセスが生じる。水分子の拡散は、矢印704によって示されている。次に、図8は、(例えば、ステップ1110に関して記載されているように)ペイントフィルム101の乾燥プロセスに対する熱の効果を示す。当技術分野で周知であるように、水分子がポリマーフィルムのポリマーネットワークを通って拡散する速度は、ポリマーフィルムの水蒸気透過速度(MVTR)と呼ばれる。したがって、一般に、フィルムのMVTRによって、湿式設置されたフィルムがどれくらい速く乾燥するかを決定することができる。加えて、MVTRは、温度が1℃上昇するごとに、温度とともにおよそ5%増加する。したがって、図8に示されるように、ペイントフィルム101は、例えば、25℃よりも35℃でより速く乾燥し得る。フィルムのMVTRは温度とともに増加するので、IR加熱は、流体層内の水分子をより速く除去することによって、表面102へのペイントフィルム101の接着を改善することができ、したがって、接着剤層106が表面102に完全に接着するのにかかる時間が低減される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のIR熱の使用は、ペイントフィルム101のMVTRを2倍、5倍、又は10倍以上増加させることができる。加えて、いくつかの実施形態では、IR熱の使用は、室温での乾燥と比較して、少なくとも85%など、少なくとも95%など、少なくとも75%乾燥時間を減少させることができる。
【0030】
IR熱を使用してフィルムを乾燥させることはまた、追加的かつ予期しない利点を有し得る。具体的には、ペイントフィルム101の乾燥中のIR熱の使用は、表面102へのペイントフィルム101の非常に強いか又はより効果的な接着をもたらすことができる。接着値を使用して接着の程度を表した場合、IR加熱を使用する表面102へのペイントフィルム101の接着値が、室温で得られる最大値をさえ超えることが発見され、これは、改善された接着レベルが、水分子の除去に単純に起因し得ないことを示している。むしろ、接着剤層106が感圧接着剤(PSA)である場合、IR加熱は、PSAを表面102に従来的に結合するファンデルワールス力を改善し得る。この予期しない改善は、流体層104内の水分子の存在とIR熱の適用との間の相乗効果の結果であり得る。すなわち、溶媒型分子(例えば、水)が、ポリマー鎖の間で拡散し、ポリマーネットワークを破壊し、PSA内のポリマーの粘度の低下が生じると、可塑化が生じる。このより低い粘度によって、PSAが表面102の小さな空洞に流入することが可能になり、より強いファンデルワールス力、したがってより強い接着力を促進することができる。
【0031】
図9は、IR熱支援乾燥を伴って又は伴わずに、(本明細書に記載されるように)ペイントフィルムを表面に適用することによって達成される、実験結果のグラフ1200を示す。実験中、湿式設置プロセスを使用してペイントフィルム試料を適用して、パネルを塗装した。1組のパネルは、室温で維持した。他の組は、一揃いの赤外線ランプ下に配置した。指定された間隔で、各組からの1つのフィルム試料を試験して、各条件下で接着がどのくらい速く生じたかを決定した。最初の1時間後、赤外線光に曝露させた試料における接着は、室温で乾燥させた試料よりも顕著に高かった。実際、赤外線ランプに曝露させた試料は、72時間も後に室温試料において生じたものよりも高い接着を1時間後に生じることが発見された。
【0032】
更に図9を参照すると、曲線1202は、室温の組の乾燥からの実験データを示し、ペイントフィルム101のIR熱支援乾燥からの実験データを示す曲線1204。曲線1204から見ることができるように、IR熱曝露フィルムは、約18時間後に60オンス/インチ(およそ63オンス/インチ)を超える剥離力に耐えることができる一方で、室温フィルムは、約18時間後に40オンス/インチ(およそ45オンス/インチ)未満の剥離力に耐えることができる。更に、72時間以内に、室温フィルムは、35オンス/インチ~40オンス/インチの範囲の剥離力にしか耐えることができない一方で、IR熱曝露フィルムは、43オンス/インチ~63オンス/インチの範囲の剥離力に耐えることができる。より高い剥離力に耐える能力は、接着性の指標となるので、IR熱曝露が室温乾燥よりも速くペイントフィルムを接着することが実験結果から解釈され得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、IR加熱はまた、薄膜の湿式設置のための欠陥補正プロセスを改善し得る。すなわち、図10A~10Fを参照すると、(空気又はIR熱のいずれかの)乾燥中、残留流体層104からの流体は、横方向に移動する場合があり、経時的に、より厚い流体のポケットへと合体する場合がある。流体の横方向の移動はまた、捕捉された小さな気泡が経時的に合体することを可能にし得、これは、大きな目視可能な気泡の形成を生じ得る。水及び/又は空気の合体は、フィルムの欠陥602を生じ得る。図9A図9Fは、気泡又は水泡の結果として生じ得るフィルム101内の欠陥602の形成を示す。有利には、IRの使用は、乾燥時間を減少させることによって、形成される欠陥の数を低減することができ、したがって、水及び/又は空気が欠陥へと集束するのに利用可能な時間の量を低減することができる。
【0034】
本発明の様々な修正及び変更は、付随の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者には明らかになるであろう。以下の任意の方法の特許請求の範囲に列挙されるステップは、必ずしもそれらが列挙される順序で実施される必要はないことが留意されるべきである。当業者は、ステップの実施において、列挙される順序からの変形を認識するであろう。
【0035】
本明細書に記載のいずれの理論も、更なる試験及び分析まで、変更が施される。したがって、本発明者らは、例えば、どのような要因が、ペイントフィルム装飾及びその中の個々の層と併せて記載される物理的特性に寄与するのかについて、本明細書に提示される任意の理論によって拘束されることを意図しない。
【0036】
1つの実施形態に関する本明細書に記載の任意の特徴は、別の実施形態に関する記載の任意の特徴に加えて又は代わりに、使用され得ることが理解されるべきである。
【0037】
特徴又は要素が別の特徴又は要素の「上に」存在すると本明細書で言及される場合、他の特徴若しくは要素の上に直接存在し得るか、又は介在する特徴及び/若しくは要素も存在し得る。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「上に直接」存在すると言及される場合、介在する特徴又は要素は存在しない。特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続されている」、「取り付けられている」、又は「結合されている」と言及される場合、他の特徴若しくは要素に直接接続され得るか、取り付けられ得るか、若しくは結合され得るか、又は介在する特徴若しくは要素が存在し得ることも理解されるであろう。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「直接接続されている」、「直接取り付けられている」、又は「直接結合されている」と言及される場合、介在する特徴又は要素は存在しない。一実施形態に関して記載されているか又は示されているが、そのように記載されているか又は示されている特徴及び要素は、他の実施形態に適用され得る。別の特徴に「隣接して」配置されている構造又は特徴への言及は、隣接する特徴と重複するか、又はその下に一部分を有し得ることもまた、当業者によって理解されるであろう。
【0038】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態について記載することのみを目的とし、本発明を限定することを意図しない。例えば、本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈が明らかに示さない限り、複数形も同様に含むことが意図される。本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」及び/又は「含むこと(comprising)」という用語は、記載の特徴、ステップ、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、ステップ、操作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しないことが更に理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、関連付けて列挙された品目のうちの1つ以上の任意の及び全ての組み合わせを含み、「/」として略され得る。
【0039】
「下の(under)」、「下の(below)」、「下の(lower)」、「上の(over)」、「上の(upper)」などの空間に関する用語は、本明細書では、記載を容易にして、図に示されている別の要素又は特徴に対する1つの要素又は特徴の関係について記載するために使用される。空間に関する用語は、図に示される方向に加えて、使用又は操作におけるデバイスの異なる方向を包含することが意図されていることが理解されるであろう。例えば、図においてデバイスが反転している場合、他の要素又は特徴の「下に(under)」又は「下に(beneath)」として記載されている要素は、他の要素又は特徴の「上に」向けられているであろう。したがって、例示的な「下に(under)」という用語は、上に(over)及び下に(under)の両方の方向を包含し得る。デバイスは、異なる方向に向けられ得(90度又は他の方向に回転され得)、それに応じて、本明細書で使用される空間に関する記載が解釈される。同様に、「上向きに」、「下向きに」、「垂直に」、「水平に」などの用語は、別途具体的に示されない限り、本明細書では説明の目的でのみ使用される。
【0040】
「第1」及び「第2」という用語は、様々な特徴/要素(ステップを含む)について説明するために本明細書で使用され得るが、別途文脈が示さない限り、これらの特徴/要素は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの特徴/要素を別の特徴/要素から区別するために使用され得る。したがって、以下に論じられる第1の特徴/要素は、第2の特徴/要素と称され得、同様に、以下に論じられる第2の特徴/要素は、本発明の教示から逸脱することなく、第1の特徴/要素と称され得る。
【0041】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲を通して、別途文脈が必要としない限り、「含む(comprise)」という単語、並びに「含む(comprise s)」及び「含むこと(comprising)」などの変形は、様々な構成要素を方法及び物品(例えば、デバイス及び方法を含む組成物及び装置)において同時に共に用いられ得ることを意味する。例えば、「含むこと」という用語は、任意の記載の要素又はステップを含むことを意味するが、任意の他の要素又はステップを除外することを意味するものではないと理解されるであろう。
【0042】
実施例で使用される場合を含む、本明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用される場合、別途明らかに指定されない限り、全ての数字は、用語が明らかに表されない場合でさえ、「約」又は「およそ」という単語が先行するかのように閲読され得る。「約」又は「およそ」という語句は、記載の値及び/又は位置を示すための大きさ及び/又は位置についての記載が、妥当な予想される値及び/又は位置の範囲内にある場合に使用され得る。例えば、数値は、記載の値(又は値の範囲)の+/-0.1%、記載の値(又は値の範囲)の+/-1%、記載の値(又は値の範囲)の+/-2%、記載の値(又は値の範囲)の+/-5%、記載の値(又は値の範囲)の+/-10%などである、値を有し得る。本明細書に列挙される任意の数値範囲は、その中に含まれる全ての部分範囲を含むことが意図される。
【0043】
様々な例示的な実施形態が上に記載されているが、特許請求の範囲によって記載される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態に多数の変更のうちのいずれかが行われ得る。例えば、様々な記載の方法ステップが実施される順序は、多くの場合、代替的な実施形態では変更され得、他の代替的な実施形態では、1つ以上の方法ステップが一緒に省略され得る。様々なデバイス及びシステムの実施形態の任意選択的な特徴は、いくつかの実施形態では含まれ得、他の実施形態では含まれない場合がある。したがって、前述の記載は、主に例示目的で提供されており、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0044】
本明細書に含まれる例及び例示は、限定ではなく例示として、主題が実践され得る特定の実施形態を示す。述べられているように、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的及び論理的な置換及び変更が行われ得るように、他の実施形態は、そこから利用及び導出され得る。本発明の主題のそのような実施形態は、単に利便性のために、かつ2つ以上が実際に開示されている場合、本出願の範囲を任意の単一の発明又は発明の概念に自発的に限定することを意図することなく、本明細書では、「本発明」という用語によって個々に又は集合的に言及され得る。したがって、特定の実施形態を本明細書に示し、記載してきたが、同じ目的を達成するために計算された任意の調整は、示されている特定の実施形態のために置換され得る。本開示は、様々な実施形態の任意の及び全ての改変又は変形を網羅することが意図される。上の実施形態、及び本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態の組み合わせは、上の記載を考察する際に、当業者に明らかになるであろう。
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【国際調査報告】