(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】無線アセンブリを備えた真空バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 37/00 20060101AFI20240205BHJP
F16K 51/02 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
F16K37/00 Z
F16K51/02 B
F16K37/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549590
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2022053809
(87)【国際公開番号】W WO2022175320
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】102021000787.5
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593030945
【氏名又は名称】バット ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ホーファー
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン エシェンモーザー
(72)【発明者】
【氏名】シュンシュオ チャン
(72)【発明者】
【氏名】フランティシェク バロン
【テーマコード(参考)】
3H065
3H066
【Fターム(参考)】
3H065AA03
3H065BA01
3H065BA07
3H065BB11
3H065CA01
3H065CA07
3H066AA03
3H066BA31
3H066BA38
(57)【要約】
体積流量または質量流量を閉ループ制御するための、かつ/またはバルブ開口部(2)を閉鎖および開放するための真空バルブ(1)であって、該真空バルブ(1)は、弁座と、バルブ閉鎖体(4)と、該バルブ閉鎖体(4)に結合された駆動ユニット(7)とを備え、該駆動ユニットは、バルブ閉鎖体(4)が開放位置(O)から閉鎖位置(S)へ、ならびにその逆に位置調整可能となるようにバルブ閉鎖体(4)に動きを与えるように構成されている。真空バルブ(1)は、少なくとも1つの結合素子とメモリ素子とを有する無線アセンブリを備え、メモリ素子を用いて、バルブ状態に関する情報を提供可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積流量または質量流量を閉ループ制御するための、かつ/またはバルブ開口部(2,22,32)を閉鎖および開放するための真空バルブ(1,20,30)であって、
前記真空バルブ(1,20,30)は、
開口部軸線(A)を定める前記バルブ開口部(2,22,32)および前記バルブ開口部(2,22,32)を取り囲む第1のシール面(3,23,33)を有する弁座と、
前記第1のシール面(3,23,33)に対応する第2のシール面(6,26,36)を有し、体積流量または質量流量を閉ループ制御するための、かつ/または前記バルブ開口部(2,22,32)を実質的にガス密に閉鎖するためのバルブ閉鎖体(4,24,34)、特に弁体と、
前記バルブ閉鎖体(4,24,34)に結合された駆動ユニット(7,27,37)とを備え、前記駆動ユニット(7,27,37)は、前記バルブ閉鎖体(4,24,34)により、前記バルブ閉鎖体(4,24,34)が前記バルブ開口部(2,22,32)を少なくとも部分的に解放する開放位置(O)から、前記第1のシール面(3,23,33)および前記第2のシール面(6,26,36)と介在的に存在するシール材(28)とを密に接触接続させることにより前記バルブ開口部(2,22,32)をガス密に閉鎖する閉鎖位置(S)へ、ならびにその逆に位置調整可能となるように、前記バルブ閉鎖体(4,24,34)に動きを与えるように構成されている、真空バルブ(1,20,30)において、
前記真空バルブ(1,20,30)は、少なくとも1つの結合素子(42)とメモリ素子(41)とを有する無線アセンブリ(10,10’)を備え、前記メモリ素子(41)を用いて、バルブ状態に関する情報を提供可能であることを特徴とする、真空バルブ(1,20,30)。
【請求項2】
前記無線アセンブリ(10,10’)は、RFIDトランスポンダまたはNFCトランスポンダとして構成されている、請求項1記載の真空バルブ(1,20,30)。
【請求項3】
前記無線アセンブリ(10,10’)は、前記バルブ閉鎖体(4,24,34)の上に配置されている、または前記バルブ閉鎖体(4,24,34)の中に統合されている、請求項1または2記載の真空バルブ(1,20,30)。
【請求項4】
前記バルブ閉鎖体(4,24,34)、前記弁座、バルブハウジング(39)、および/または前記駆動ユニット(7,27,37)は、伝送窓を有し、前記伝送窓は、前記無線アセンブリ(10,10’)の特に双方向の無線通信を提供するように構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の真空バルブ(1,20,30)。
【請求項5】
前記真空バルブ(1,20,30)は、前記無線アセンブリ(10,10’)の前記結合素子(42)との結合を形成するように構成された通信アセンブリ(11,11’)を有し、前記通信アセンブリ(11,11’)は、少なくとも前記開放位置および/または前記閉鎖位置において、前記通信アセンブリ(11,11’)と前記結合素子(42)との間で無線通信を提供可能に配置および構成されており、特に、前記通信アセンブリ(11,11’)は、少なくとも1つのアンテナ(43)を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の真空バルブ(1,20,30)。
【請求項6】
前記通信アセンブリ(11,11’)は、前記弁座、前記駆動ユニット(7,27,37)、または前記バルブハウジング(39)の上に配置され、あるいは前記弁座、前記駆動ユニット(7,27,37)、または前記バルブハウジング(39)の中に統合されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の真空バルブ(1,20,30)。
【請求項7】
前記真空バルブ(1,20,30)は、書き込み/読み取りアセンブリ(44)または書き込み/読み取りアセンブリ(44)と通信するインターフェースを有し、前記書き込み/読み取りアセンブリ(44)は、前記書き込み/読み取りアセンブリ(44)と前記メモリ素子(41)との間の通信を提供できるように構成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の真空バルブ(1,20,30)。
【請求項8】
前記通信は、前記バルブ状態に関する情報を前記メモリ素子(41)から読み出すことおよび/または前記バルブ状態に関する情報を前記メモリ素子(41)に記憶することを含む、請求項4から7までのいずれか1項記載の真空バルブ(1,20,30)。
【請求項9】
前記バルブ状態に関する情報は、
前記バルブ閉鎖体(4,24,34)の品質および/または状態、
前記シール材(28)の品質および/または状態、
前記真空バルブ(1,20,30)の動作持続時間、
前記バルブ閉鎖体(4,24,34)の使用持続時間、
実施された閉鎖および/または開放サイクルの数、
識別情報、特にバルブ閉鎖体タイプ、あるいは前記バルブ閉鎖体(4,24,34)の部品番号および/またはシリアル番号、
製造情報、特に製造日および/または製造場所、
較正パラメータ、
のうちの少なくとも1つの情報を含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の真空バルブ(1,20,30)。
【請求項10】
前記真空バルブ(1,20,30)は、開ループ制御機能と監視機能とを有する開ループ制御および処理ユニットを備え、
前記開ループ制御機能は、前記バルブ閉鎖体(4,24,34)の運動を開ループ制御するように構成され、
前記監視機能は、前記監視機能の実行の際に、前記バルブ状態に関する情報を捕捉し、目標値と比較し、前記比較に依存した出力を生成するように構成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の真空バルブ(1,20,30)。
【請求項11】
前記監視機能は、前記出力に依存して、前記開ループ制御機能を適合化できるように、特に、前記バルブ閉鎖体(4,24,34)の運動の開ループ制御を適合化できるように、または前記バルブ閉鎖体(4,24,34)の運動を適合化、制限、もしくは中断するように構成されている、請求項10記載の真空バルブ(1,20,30)。
【請求項12】
前記監視機能は、前記出力に依存して、前記真空バルブ(1,20,30)の開放または閉鎖状態に関する情報を提供できるように構成されている、請求項10または11記載の真空バルブ(1,20,30)。
【請求項13】
前記監視機能は、前記出力に依存して、少なくとも1つのバルブ構成部品のメンテナンスに関する情報を提供できるように構成されている、請求項10から12までのいずれか1項記載の真空バルブ(1,20,30)。
【請求項14】
前記開ループ制御および処理ユニットは、それが実行されるときに、前記バルブ状態に関する情報が前記メモリ素子(41)に記憶または更新されるように構成されたメモリ機能を有する、請求項10から13までのいずれか1項記載の真空バルブ(1,20,30)。
【請求項15】
真空バルブ(1,20,30)用のバルブ閉鎖体(4,24,34)、特に弁体であって、前記バルブ閉鎖体(4,24,34)は、体積流量または質量流量を閉ループ制御するように、かつ/または前記真空バルブ(1,20,30)の弁座によって画定されるバルブ開口部(2,22,32)を、該バルブ開口部(2,22,32)との協働を用いてガス密に閉鎖および開放するように構成されており、前記バルブ閉鎖体(4,24,34)は、
前記バルブ開口部(2,22,32)を取り囲む前記弁座の第1のシール面(3,23,33)に対応する第2のシール面(6,26,36)と、
前記第2のシール面(6,26,36)の上に配置されたシール材(28)、特に加硫されたシール材と
を備えた、バルブ閉鎖体(4,24,34)において、
前記バルブ閉鎖体は、少なくとも1つの結合素子(42)とメモリ素子(41)とを有する無線アセンブリ(10,10’)、特にRFIDトランスポンダを備え、前記メモリ素子(41)は、前記バルブ状態に関する情報を提供することを特徴とする、バルブ閉鎖体(4,24,34)。
【請求項16】
前記メモリ素子(41)は、バルブ状態として前記バルブ閉鎖体(4,24,34)に関する情報、
前記バルブ閉鎖体(4,24,34)の品質および/または状態、
前記シール材(28)の品質および/または状態、
識別情報、特にバルブ閉鎖体タイプ、あるいは前記バルブ閉鎖体(4,24,34)の部品番号および/またはシリアル番号、
製造情報、特に製造日および/または製造場所、
較正パラメータ、
のうちの少なくとも1つの情報を提供する、請求項15記載のバルブ閉鎖体(4,24,34)。
【請求項17】
請求項1から14までのいずれか1項記載の真空バルブ(1,20,30)を開ループ制御するための方法であって、
無線アセンブリ(10,10’)のメモリ素子(41)からバルブ状態に関する情報を読み出すステップと、
前記バルブ状態に関する情報を、前記真空バルブ(1,20,30)のための目標状態と比較するステップと、
前記比較に基づいて出力を生成するステップと、
前記出力を処理するステップと、
バルブ閉鎖体(4,24,34)のための運動プロファイルを定義または更新するステップとを含む、方法。
【請求項18】
コンピュータプログラム製品であって、請求項17記載の方法のステップを実施または開ループ制御するために、機械可読担体、特に請求項1から14までのいずれか1項記載の真空バルブ(1,20,30)の開ループ制御および処理ユニットに記憶されたプログラムコード、または電磁波によって具現化されるコンピュータデータ信号を含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線アセンブリを備えた真空バルブに関しており、この無線アセンブリは、現下のバルブ状態に関する情報を提供または記憶することができる。
【0002】
一般に、バルブは、特に流体の通流を設定可能にするために設けられている。バルブを用いることにより、最大バルブ開口断面にわたる通流を許容したり、あるいは完全に遮断したりすることができる。さらに、特定のタイプのバルブは、単位時間当たりの流量を調整する可能性を呈する、つまり流体通流の制御性を提供している。
【0003】
特殊なバルブ類を真空バルブは形成する。これらのバルブは、体積流量または質量流量を閉ループ制御するために、かつ/またはバルブハウジングに形成された開口部を通って案内される流路を実質的にガス密に閉鎖するために、様々な実施形態で従来技術から公知であり、これらは特に、可及的に汚染粒子の存在しない保護された雰囲気で行われる必要があるIC、半導体、または基板の製造分野における真空チャンバシステムにおいて使用されている。
【0004】
この種の真空チャンバシステムは、特に、処理または製造すべき半導体素子または基板を収容するために設けられた真空排気可能な少なくとも1つの真空チャンバーであって、半導体素子または他の基板を真空チャンバーに導入可能でかつ真空チャンバーから導出可能である少なくとも1つの真空チャンバー開口部を有する真空チャンバーと、真空チャンバーを真空排気するための少なくとも1つの真空ポンプとを含む。例えば、半導体ウェハまたは液晶基板のための製造装置では、高感度な半導体素子または液晶素子は、複数のプロセス真空チャンバーを順次通過し、該プロセス真空チャンバー内に存在する部品は、それぞれの処理装置を用いて処理される。プロセス真空チャンバー内での処理プロセス中も、チャンバーからチャンバーへの移送中も、高感度な半導体素子または基板は、常に、保護された雰囲気内に、特に真空の環境内に存在しなければならない。
【0005】
この目的のために、一方では、ガス流入部またはガス排出部の開閉のための周辺バルブが使用され、他方では、部品の導入および導出用の真空チャンバーのトランスファ開口部の開閉のためのトランスファバルブが使用される。
【0006】
半導体部品が通過する真空バルブは、記述した適用分野とそれに伴う寸法とに基づいて真空トランスファバルブと称され、またその多くが矩形の開口断面であることに基づいて矩形バルブとも称され、さらにその通常の機能方式からゲートバルブ、矩形ゲート、またはトランスファゲートバルブとも称される。
【0007】
周辺バルブは、特に真空チャンバーと、真空ポンプもしくはさらなる真空チャンバーとの間のガス流を開ループ制御または閉ループ制御するために使用される。周辺バルブは、例えば、プロセス真空チャンバーもしくはトランスファチャンバーと、真空ポンプ、雰囲気もしくはさらなるプロセス真空チャンバーとの間の配管システム内に存在する。ポンプバルブとも称されるこの種のバルブの開口断面は、通常、真空トランスファバルブの場合よりも小さい。周辺バルブは、使用領域に依存して、開口部を完全に開閉するためだけでなく、開口断面を完全な開放位置とガス密な閉鎖位置との間で連続的に調整することによって通流を開ループ制御または閉ループ制御するためにも使用されるため、制御バルブとも称される。ガス流を開ループ制御または閉ループ制御するための考えられる周辺バルブは振り子バルブである。
【0008】
例えば米国特許第6,089,537号明細書(Olmsted)から公知のような典型的な振り子バルブでは、第1のステップにおいて、通常は円形の弁体が、同様に通常は円形の開口部にわたり、開口部を解放する位置から開口部を覆う中間位置まで、回転式に旋回する。例えば米国特許第6,416,037号明細書(Geiser)または米国特許第6,056,266号明細書(Blecha)に記載されているようなゲートバルブの場合、弁体は開口部と同様に大抵は矩形に形成され、この第1のステップにおいて開口部を解放する位置から開口部を覆う中間位置まで直線的にシフトされる。この中間位置では、振り子バルブまたはゲートバルブの弁体は、開口部を取り囲む弁座に対して離間した対向位置に存在する。第2のステップでは、弁体と弁座との間の距離が縮小され、それによって、弁体と弁座とが互いに均一に押し込まれ、開口部が実質的にガス密に閉鎖される。この第2の運動は、好適には、実質的に弁座に対して垂直方向に行われる。
【0009】
シーリングは、例えば、開口部を取り囲む弁座に押し付けられる弁体の閉鎖側に配置されたシールリングを介して、または弁体の閉鎖側が押し込まれる弁座のシールリングを介して行うことができる。2つのステップで行われる密閉過程により、弁体と弁座との間のシーリングにとって自身が損傷しかねないようなせん断力を受けることはほとんどない。なぜなら、弁体の運動は、2つのステップにおいて弁座に対し実質的に垂直方向で直線的に行われるからである。
【0010】
異なるシール装置は、従来技術から、例えば米国特許第6,629,682号明細書(Duelli)から公知である。真空バルブにおけるシールリングおよびシールに適した材料には、例えば、FKMとも称されるフッ素ゴム、特に「Viton」の商品名で公知のフルオロエラストマー、ならびにパーフルオロゴム、略してFFKMがある。
【0011】
従来技術からは、開口部を超えて平行な弁体の振り子バルブでの回転運動およびゲートバルブでの並進運動と、開口部に対して垂直な実質的並進運動との組み合わせを達成するための異なる駆動システムが公知であり、例えば、振り子バルブについては米国特許第6,089,537号明細書(Olmsted)から、ゲートバルブについては米国特許第6,416,037号明細書(Geiser)から公知である。
【0012】
弁座への弁体の押し付けは、特に、真空用途については、全圧力範囲内で必要なガス密性が確保されることも、過度な圧力応力によるシール媒体、特にシール材もしくはシールリング(例えばOリング)の損傷が回避されることもなされるように行う必要がある。このことを保証するために、公知のバルブでは、2つの弁体側面の間に生じる圧力差に依存して閉ループ制御される弁体の押し付け圧力閉ループ制御が想定されている。しかしながら、特に圧力変動が大きい場合、あるいは負圧から正圧への切り換えまたはその逆の場合に、シールリングの全周に沿った均等な力分布を必ずしも保証することはできない。ただし、一般的には、シールリングを、バルブに印加される圧力から生じる支持力から分離することが求められている。
【0013】
上述したバルブは、とりわけ、真空チャンバー内で高感度な半導体素子を製造する際に使用されるため、そのような真空チャンバーについても相応のシール効果を確実に保証する必要がある。この目的のために、特に、バルブ全体または特にシール材の状態、あるいは加圧時にシール材と接触接続するシール面の状態が重要である。真空バルブの耐用期間の経過において、シール材またはシール面の摩耗、ならびに環境の影響(温度、湿度、衝撃など)に基づくバルブ構成部品、例えば駆動ユニットもしくは弁棒の構造的な変化によるバルブ構成部品の典型的な変化が生じ得る。
【0014】
ここでは、万一の漏れの可能性を回避するために、あるいはシール品質を常に十分高いレベルに維持するために、バルブ閉鎖体は、典型的には所定の時間間隔で交換もしくは更新される。そのようなメンテナンス間隔は、この場合通常は、所定の期間内で推定すべき開閉サイクルの数で決定される、または発生する環境の影響の数や発現に基づいて決定される。メンテナンスは、典型的には、漏れの発生を可能な限り事前に取り除くことができるようにするために予防的に行われる。
【0015】
そのようなメンテナンスの必要性は、シール材または弁体のみに限定されるものではなく、特に、駆動ユニットまたは弁体に対応する真空バルブの一部を形成する弁座などの他のバルブ構成部品にも及ぶ。弁座側からのシール面の構造、例えば弁座に導入された溝の構造も、機械的応力の影響を受ける。それゆえ、バルブの動作に起因する溝または弁座の構造的な変化もまた、シールの障害を引き起こす可能性がある。この目的のためにも、通常は、相応のメンテナンス間隔が定められている。
【0016】
これまで主に真空バルブの例で説明してきた要件は、ほぼ同様にバルブ全般に転用することができる。
【0017】
しかしながら、定期的なバルブメンテナンスの欠点は、例えば弁体の交換によってバルブの動作についての精度損失が現れる可能性があることである。一方では、そのような交換の際には、適切な交換部品の組み込みが保証されなければならず、次いで他方では、この交換部品を想定したやり方でバルブに正確に取り付けなければならない。これらの過程はどちらも、メンテナンスを実施する人の能力に強く結びついているため、エラーが起きやすい。したがって、所望の精度の維持は、この人の能力次第であり、それに左右される。
【0018】
さらに、メンテナンスの際には、メンテナンスを想定した部品が既にどれくらいの頻度もしくはどれくらいの期間、動作されたのかが不明なままである。この情報は、通常、バルブ使用者のもとには存在するが、バルブメーカーやメンテナンス会社のもとには存在しない。したがって、メンテナンスの実際の必要性が生じているかどうかはいつも決まって不明なままである。
【0019】
したがって、本発明が基礎とする課題は、上述した欠点を軽減または回避する改善された真空バルブを提供することにある。
【0020】
本発明のさらなる課題は、メンテナンス要件に関する情報を提供する、または読み出し可能にさせる、改善された真空バルブを提供することにある。
【0021】
本発明のさらなる課題は、部品交換の後で動作完全性に関する検査を提供する、改善された真空バルブを提供することにもある。
【0022】
これらの課題は、独立請求項に示されている特徴を実現することによって解決される。本発明を代替的または好適なやり方で発展させる特徴は、従属請求項から得られる。
【0023】
本発明の基礎となる考察は、真空バルブを、少なくとも1つのメモリを有する無線アセンブリ、例えばRFIDタグと組み合わせ、真空バルブ側からの(またはバルブコントローラを用いた)メモリの読み出しまたは書き込みを可能にさせることである。これにより、バルブについての動作完全性の監視および/または動作情報の処理もしくは格納を提供することができる。
【0024】
真空バルブは、そのようなアセンブリにより、例えば「スマートバルブ」に発展させること、すなわち、真空バルブは、もはや単純な閉鎖および開放命令を実現するだけでなく、その上を行く機能および/または情報を提供することができるようになる。
【0025】
つまり、本発明は、体積流量または質量流量を閉ループ制御するための、かつ/またはバルブ開口部を閉鎖および開放するための真空バルブ、特に真空ゲートバルブ、振り子バルブ、または単一バルブに関する。この真空バルブは、開口部軸線を定めるバルブ開口部および該バルブ開口部を取り囲む第1のシール面も有する弁座を有している。
【0026】
この真空バルブは、さらに、体積流量または質量流量を閉ループ制御するための、かつ/またはバルブ開口部を実質的にガス密に閉鎖するためのバルブ閉鎖体、特に弁体を有する。このバルブ閉鎖体は、第1のシール面に対応する第2のシール面を有する。
【0027】
さらに、バルブ閉鎖体に結合された駆動ユニットが設けられており、この駆動ユニットは、バルブ閉鎖体により、バルブ閉鎖体がバルブ開口部を少なくとも部分的に解放する開放位置から、第1のシール面および第2のシール面と介在的に存在するシール材とを密に接触接続させることによりバルブ開口部をガス密に閉鎖する閉鎖位置へ、ならびにその逆に位置調整可能となるようにバルブ閉鎖体に動きを与えるように調整および/または構成されている。
【0028】
真空バルブは、さらに、少なくとも1つの結合素子とメモリ素子とを有する無線アセンブリを備えている。メモリ素子を用いることにより、バルブ状態に関する情報を提供可能である。
【0029】
特に、無線アセンブリは、RFIDトランスポンダ(RFID=radio-frequency identification(英語)もしくはIdentifizierung durch elektromagnetische Wellen(独語))として、あるいはNFCトランスポンダ(NFC=near field communication(英語)もしくはNahfeldkommunikation(独語))として構成されてもよい。
【0030】
RFIDとは、一般に、例えば電波を用いて物体および生物を自動的にかつ非接触で識別および位置特定するための送受信システムについての技術を表す。
【0031】
RFIDシステムは、例えば、RFIDトランスポンダ(俗に無線タグとも称される)を有することができ、このトランスポンダは、対象物もしくは生物の上または中に存在することができ、識別コードを含むことができ、ならびにこの識別を読み出すための通信アセンブリ(例えば読み取り機器)を有することができる。
【0032】
RFIDトランスポンダは、比較的小型に製造することができる(例えば、米粒大のサイズに)。その他に、RFIDトランスポンダは、安定した回路の特殊な印刷手法を用いてポリマーから製造することができる。これにより、僅かなサイズのトランスポンダを適度な製造コストのもとで提供することができる。
【0033】
本発明によって想定されるRFIDトランスポンダと、例えばアンテナおよび/または読み取り機器を有する通信アセンブリとの間の結合は、通信アセンブリによって生成される僅かな到達範囲の交番磁界によって、または高周波電波によって形成することができる。したがって、データを伝送できるだけでなく、トランスポンダにさらにエネルギーを供給することもできる。より広い到達範囲を達成するために、アクティブRFIDトランスポンダを使用することができる。この場合は、RFIDトランスポンダをエネルギー源に接続してもよい。
【0034】
通信アセンブリは、コンピュータプログラム(ソフトウェアまたはマイクロプログラム)を有することができ、この場合、このコンピュータプログラムは、読み取りまたは書き込みプロセスを開ループ制御するように構成されてもよい。通信アセンブリは、さらに、さらなるEDVシステムに接続するためのインターフェース(例えばRFIDミドルウェア)有することができる。
【0035】
RFIDトランスポンダは、その伝送周波数に関して特定されてもよい。
【0036】
RFIDトランスポンダは、少なくとも1つのアンテナと1つのメモリとを有する。さらに、受信および送信のためのアナログ回路ならびにデジタル回路が設けられていてもよい。デジタル回路はマイクロコントローラであってもよい。
【0037】
RFIDトランスポンダのメモリ素子は、少なくとも1回は書き込み可能なメモリであってもよい。これにより、トランスポンダの不変のアイデンティティを提供すること、すなわちメモリ上に存在するデータを保持し続けることができる。
【0038】
代替的または付加的に、多重に書き込み可能なメモリが設けられてもよい。このメモリは、付加的な情報の書き込み、更新、または消去が可能である。
【0039】
RFIDトランスポンダは、パッシブ、アクティブ、またはセミアクティブRFIDトランスポンダとして構成されてもよい。
【0040】
パッシブRFIDトランスポンダは、通信アセンブリの無線信号を用いてエネルギーを供給することができる。この目的のために、コイルを受信アンテナとして設けてもよい。これは誘導によって充電されるため、それによって応答を送信することができる。その際、応答信号の受信は、他の物体からの問い合わせ信号の反射に阻害されることなく提供することができる。到達範囲は、典型的には、応答信号の僅かな電力に基づき制限される。
【0041】
固有のエネルギー供給部を有するRFIDトランスポンダは、より広い到達範囲を提供できるが、より広い機能規模(例えば温度測定)も提供できる。
【0042】
エネルギー源に接続されたRFIDトランスポンダは、休止状態におくことができ、特に、特別な起動信号によって起動(トリガー)されない限りは情報を送信しない。これにより、エネルギー源の耐用年数を大幅に延ばすことができる。
【0043】
エネルギー源に接続されたRFIDトランスポンダは、アクティブRFIDトランスポンダとして構成されてもよい。この場合、エネルギー源は、トランスポンダ自身のマイクロチップの供給のためにも、変調されたフィードバック信号の生成のためにも使用することができる。到達範囲は、特にキロメートルであり得る。
【0044】
エネルギー源に接続されたRFIDトランスポンダは、セミアクティブRFIDトランスポンダまたはセミパッシブRFIDトランスポンダとして構成されてもよい。これは、典型的には、統合された送信機を持たず、後方散乱係数のみを変調する。そのため、到達範囲は、送信機の電力とアンテナ利得とに依存して約100mに限定される場合がある。
【0045】
RFIDトランスポンダは、特定の周波数で通信するように構成されてもよい。この場合、長波(例えば30~500kHz)、短波(例えば3~30MHz)、超高周波(例えば433~950MHz)、またはマイクロ波周波数(例えば>2.4GHz)を使用することができる。
【0046】
本発明によって想定されるRFIDトランスポンダと通信アセンブリとの間の結合は、誘導結合または近距離磁場結合(NFC)のための磁場を用いて実現されてもよい。代替的に、結合は、遠距離磁場結合のための電磁的双極子磁場を用いて実現してもよい。
【0047】
本発明の一実施形態では、無線アセンブリ、つまり例えばRFIDまたはNFCトランスポンダは、バルブ閉鎖体(弁体)の上に配置されている、またはバルブ閉鎖体の中に統合されていてもよい。
【0048】
したがって、つまり無線アセンブリは、バルブの可動で比較的メンテナンスの限局的な部品に取り付けてもよい。したがって、無線アセンブリは、バルブ閉鎖体に対応して割り当てるべき情報を提供することができる。これについては、例えば、バルブ閉鎖体の部品番号またはシリアル番号または閉鎖位置の提供などを挙げることができる。バルブ閉鎖体またはバルブ状態に関する情報のさらなる例は、以下で説明する。
【0049】
一実施形態では、バルブ閉鎖体、弁座、および/または駆動ユニットは、伝送窓を有することができ、該伝送窓は、無線アセンブリの特に双方向の無線通信を提供するように構成されている。
【0050】
例えば、バルブ閉鎖体は、主にアルミニウムまたは他の金属から製造されてもよい。このような材料選択は、通信に必要な電波の伝搬または伝送を(強く)損なわせる、制限する、または不可能にする可能性がある。それゆえ、特に、無線アセンブリがバルブ閉鎖体に統合されるべき(つまりバルブ閉鎖体によって少なくとも部分的に取り囲まれている)場合については、無線アセンブリの近傍またはその周囲に、改善された伝送特性を有する領域を形成することが有利な場合がある。この伝送窓は、この目的のために、特に非金属、例えばポリマーベースで形成してもよい。
【0051】
無線アセンブリは、特に、バルブ閉鎖体にこの目的のために設けられた凹部に鋳造してもよい。次いで、ここでは、凹部および/または使用される鋳造材料に応じて伝送窓を形成することができる。
【0052】
一実施形態では、バルブは、無線アセンブリの結合素子との結合を形成するように構成された通信アセンブリを有することができる。この通信アセンブリは、少なくとも開放位置および/または閉鎖位置において、通信アセンブリと結合素子との間で無線通信を提供可能に配置および構成されてもよい。通信アセンブリは、特に、少なくとも1つのアンテナを有する。
【0053】
特に、通信アセンブリは、弁座、駆動ユニット、またはバルブハウジングの上に配置され、あるいは弁座、駆動ユニット、またはバルブハウジングの中に統合されてもよい。
【0054】
したがって、バルブは、無線アセンブリと協働する構成部品(通信アセンブリ)を有することができる。この通信アセンブリは、例えば、バルブの非可動部分に取り付けてもよいし、無線アセンブリと無線接続を形成し、この接続を介してデータまたは情報伝送を行えるように位置決めしてもよい。伝送は双方向で行うことができ、すなわちデータおよび/または情報を、無線アセンブリに伝送したり、あるいは無線アセンブリから受信したりすることができる。
【0055】
通信アセンブリの位置決めおよび設計は、通信が到達範囲に基づいて、特定のバルブ位置、例えば開放位置でのみ可能となるように選択することができる。
【0056】
本発明の一実施形態では、真空バルブは、書き込み/読み取りアセンブリを有するか、または書き込み/読み取りアセンブリと通信するためのインターフェースを有することができる。この書き込み/読み取りアセンブリは、ここでは、書き込み/読み取りアセンブリとメモリ素子との間の通信を提供できるように構成されてもよい。書き込み/読み取りアセンブリは、例えば、通信アセンブリの一部であってもよいし、RFIDタグのメモリ素子へのデータ(バルブ状態に関する情報)の書き込みおよび/またはRFIDタグのメモリ素子からのデータの読み取りが実施できるようにプログラミングおよび構成されてもよい。
【0057】
代替的に、書き込み/読み取りアセンブリは、例えば携帯型読み取り機器としてバルブとは別個に設計されてもよく、バルブのインターフェースを介してメモリ素子との通信接続を形成することができる。この書き込み/読み取りアセンブリは、例えばタブレットPC、スマートフォン、または他の携帯型データ処理機器によって具現化され、対応するソフトウェア(例えばアプリ)を備えていてもよい。
【0058】
無線アセンブリと、通信アセンブリもしくは書き込み/読み取りアセンブリとの間の通信は、少なくとも、バルブ状態に関する情報をメモリ素子から読み出すこと、および/またはバルブ状態に関する情報をメモリ素子に記憶することを含むことができる。
【0059】
本発明の一実施形態では、バルブ状態に関する情報は、以下の情報:
・バルブ閉鎖体の品質および/または状態、
・シール材の品質および/または状態、
・バルブの動作持続時間、
・バルブ閉鎖体の使用持続時間、
・実施された閉鎖および/または開放サイクルの数、
・識別情報、特にバルブ閉鎖体タイプ、あるいはバルブ閉鎖体の部品番号および/またはシリアル番号、
・製造情報、特に製造日および/または製造場所、ならびに/あるいは
・較正パラメータ
のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0060】
バルブ状態に関するこの情報を提供すること、更新すること、または読み出すことにより、例えば、バルブ状態を記録または監視することができる。さらに、バルブの動作を、この情報に依存して適合化または開ループ制御することができる。
【0061】
真空バルブは、一実施形態では、開ループ制御機能と監視機能とを有する開ループ制御および処理ユニットを備えることができる。開ループ制御機能は、バルブ閉鎖体の運動を開ループ制御するように構成されてもよく、監視機能は、当該監視機能が実行された場合に、バルブ状態に関する情報を捕捉し、目標値と比較し、該比較に依存した出力を生成するように構成されてもよい。
【0062】
出力は、例えば、音響的に、視覚的に、または信号として提供され得る。例えば、出力は、ユーザーにとっていつでも利用できるようにすることができ、それによって、バルブのユーザーに動作のための決定支援を与えることができる。そのような決定は、例えば、真空バルブを現下の状態で(継続)動作させるべきかどうかについて下すことができる。この場合、出力は、例えば警告信号の形態で行うことができる。
【0063】
監視機能は、この場合、少なくとも、バルブ状態に関する情報を監視すること、連続的に監視すること、検査すること、検証すること、および/または比較することを含むことができる。
【0064】
特に、出力に依存して、開ループ制御機能を適合化でき、特に、バルブ閉鎖体の運動の開ループ制御を適合化でき、またはバルブ閉鎖体の運動を適合化、制限、もしくは中断できる。そのような開ループ制御機能の適合化は、特に自動化して行うことができる。この目的のために、例えば、監視機能が開ループ制御可能かつ/または実行可能であり、開ループ制御機能が適合化可能かつ/または実行可能である、対応するアルゴリズムが設けられてもよい。監視機能は、特に、開ループ制御機能の任意選択的な適合化のために構成されてもよい。
【0065】
目標値は、例えば、許容される部品識別情報、特にバルブ閉鎖体の部品番号を有するか、またはそれを具体化することができる。目標値は、その他に、動作サイクルにおける最大許容数またはバルブ閉鎖体もしくはそのシールの最大許容経年数を示すことができる。
【0066】
開ループ制御機能の適合化は、特に、駆動ユニットのスイッチオフまたは起動を含むことができる。この場合は、例えば、駆動ユニットの駆動制御または操作を、監視機能のさらなる実行によって駆動ユニットの新たな解放が行われるまで阻止することができ、すなわち、駆動ユニットは、例えば、特定の解放信号が生成されるまで動作を中断し、保持することができる。そのような解放は、例えば、監視もしくは検査の枠内で特定の目標値が満たされることによって行うことができる。
【0067】
一実施形態では、出力に依存して、バルブの開放または閉鎖状態に関する情報を提供することができる。そのため、監視機能を用いることにより、例えば、バルブ閉鎖体が所定の位置に達したかどうか、あるいはバルブ閉鎖体が計画された運動の際にいつ所定の位置に達するかを確定することができる。
【0068】
この目的のために必要な位置情報は、例えば無線アセンブリによって直接生成することができる。代替的に、位置情報は、さらなるセンサーユニット、例えばエンコーダーもしくはリミットスイッチを用いて生成され、無線アセンブリに基づいて後続処理および/または伝送することができる。
【0069】
一実施形態によれば、出力に依存して、少なくとも1つのバルブ構成部品のメンテナンスに関する情報を提供することができる。そのため、例えば、バルブ部品の現下の耐用年数は、無線アセンブリを用いて、かつ/または無線アセンブリ上に記録することができ、したがって連続的に監視することができる。これにより、該当するバルブ部品、例えば弁体が、その想定された耐用年数(操作サイクル)に達したかどうか、あるいは間もなく達するかどうかを(連続的に)検査することが可能になる。さらに、当該部品についていつ最大動作時間に到達するかを推定することができる。この入手可能な情報を用いることにより、バルブのメンテナンスを計画するか、あるいは実現することができる。例えば、弁体の交換のための時期を(事前に)決定し、それに応じて交換部品の調達を開始するか、あるいは計画することもできる。
【0070】
監視機能は、特に、出力に依存して情報を任意選択的に提供するように構成されてもよい。
【0071】
本発明の一実施形態では、開ループ制御および処理ユニットは、それが実行されるときに、バルブ状態に関する情報がメモリ素子に記憶または更新されるように構成されたメモリ機能を有することができる。これにより、無線アセンブリが、それぞれ現下のバルブ情報の担体になることができ、例えば、取り付けられた弁体によって現下で実施されているそれぞれの閉鎖過程の数を無線アセンブリ上で連続的に更新することができる。この目的のために、無線アセンブリと協働する対向要素を弁座に配置してもよく、例えば通信アセンブリ内に設けてもよく、この場合、各シール過程において無線アセンブリと対向要素との協働により信号が生成され、それによって、閉鎖過程の数はそれぞれ1つだけ増加する。
【0072】
一実施形態では、バルブは、プロセス雰囲気領域を外部雰囲気領域から分離するための分離装置を有することができる。特に、これは、真空バルブとしてのバルブの実施形態に関する。
【0073】
プロセス雰囲気領域とは、特に、プロセスチャンバーによって画定されてもよい領域として理解され得る。この領域では、基板を処理するためのプロセス雰囲気、特に真空を形成することができる。この領域のために設けられる構成部品は、例えば、材料耐性や増加する要件に関して満たす必要がある。外部雰囲気領域は、それに対応して、特に通常の雰囲気条件の例えば室内空気が存在する領域として理解され得る。
【0074】
駆動ユニットは、ここでは少なくとも部分的に、とりわけ完全に、外部雰囲気領域に割り当てられてもよく、バルブ閉鎖体は、特にプロセス雰囲気領域に割り当てられてもよい。
【0075】
バルブの分離装置は、例えばベローズによって形成されてもよい。このベローズは、例えばバルブハウジングまたは駆動ユニットの内部に設けられてもよい。
【0076】
従来技術から公知の例えば米国特許第6,772,989号明細書に記載されているバルブは、2つのポートを有するバルブ本体と、流室内の2つのポートを接続する流路に配置された弁座と、該弁座に対向する開口部とを備えている。開口部を閉鎖するバルブカバーには、空気圧シリンダシステムのピストンが配置され、このピストンが弁棒を介して弁座を開閉する弁体を駆動する。バルブカバーは、ベローズプレートによってガス密に開口部に取り付けられている。弁棒を取り囲むベローズの両端は、ベローズプレートの内側縁部面と弁体とにガス密に固定されている。この弁体は、弁座に対向する面に環状の保持溝を有し、その中にシールリングが配置されている。
【0077】
バルブハウジングは、例えばアルミニウムまたはステンレス鋼から製造されるか、あるいはアルミニウムもしくは他の適切な材料で内部がコーティングされており、それに対して、弁体およびベローズは、大抵は鋼からなっている。その長手方向軸線に沿って弁体の調整距離の範囲内で伸縮可能なベローズは、流室を弁棒および駆動部から気密にシールしている。使用されているのは、とりわけ2つのタイプのベローズである。一方はダイヤフラムベローズ、他方はシャフトベローズで、後者は、溶接継ぎ目を持たず、容易に洗浄できる点でダイヤフラムベローズよりも優れているが、ただし最大ストロークは小さくなる。
【0078】
本発明は、その他に、真空バルブ用のバルブ閉鎖体、特に弁体、とりわけ真空バルブ体に関するものであり、ここで、バルブ閉鎖体は、体積流量または質量流量を閉ループ制御するように、かつ/またはバルブ開口部との協働を用いて、バルブの弁座によって画定されるバルブ開口部をガス密に閉鎖および開放するように構成されている。バルブ閉鎖体は、バルブ開口部を取り囲む弁座の第1のシール面に対応する第2のシール面を備え、さらに第2のシール面の上に配置されたシール材、特に加硫されたシール材を備える。
【0079】
バルブ閉鎖体は、少なくとも1つの結合素子とメモリ素子とを有する無線アセンブリ、特にRFIDトランスポンダを備え、ここで、メモリ素子は、バルブ状態に関する情報を提供し、かつ/またはそのようなバルブ特有の情報をメモリ素子に記憶することができるように構成されている。
【0080】
バルブ閉鎖体の上またはバルブ閉鎖体の中における無線アセンブリのそのような配置構成の利点は、現下のバルブ状態を捕捉し、この捕捉されたバルブ状態に基づいて、バルブのさらなる動作のための決定を下す、例えば、閉鎖運動(速度、押し付け圧力など)の適合化を実施する、あるいはバルブ閉鎖体の交換を計画することに関連する可能性である。
【0081】
本発明の一実施形態では、無線アセンブリのメモリ素子は、バルブ状態としてバルブ閉鎖体に関する情報、特に以下の情報:
・バルブ閉鎖体の品質および/または状態、
・シール材の品質および/または状態、
・識別情報、特にバルブ閉鎖体タイプ、あるいはバルブ閉鎖体の部品番号および/またはシリアル番号、
・製造情報、特に製造日および/または製造場所、
・較正パラメータ、ならびに/あるいは
・ソフトウェアアップデート、
のうちの少なくとも1つを提供することができる。
【0082】
本発明はさらに、上述のバルブを開ループ制御するための方法に関する。この方法は、少なくとも以下のステップ:
・無線アセンブリのメモリ素子からバルブ状態に関する情報を読み出すステップと、
・バルブ状態に関する情報を、バルブのための目標状態と比較するステップと、
・比較に基づいて出力を生成するステップと、
・出力を処理するステップと、
・バルブ閉鎖体のための運動プロファイルを定義または更新するステップとを含む。
【0083】
本発明は、その他に、上記の方法のステップを実施または開ループ制御するために、機械可読担体、特に上述したバルブの開ループ制御および処理ユニットに記憶されたプログラムコード、または電磁波によって具現化されるコンピュータデータ信号を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【0084】
以下では、本発明によるバルブを、図面に概略的に示された実施例に基づいて純粋に例示的により詳細に説明する。図中、同じ要素には同じ参照符号が付されている。説明された実施形態は、通常、必ずしも縮尺通りに示されておらず、それらは限定として理解されるものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1a】RFIDトランスポンダを備えた本発明によるバルブの第1の実施形態を示した図である。
【
図1b】RFIDトランスポンダを備えた本発明によるバルブの第1の実施形態を示した図である。
【
図1c】RFIDトランスポンダを備えた本発明によるバルブの第1の実施形態を示した図である。
【
図2a】振り子バルブとしての本発明によるバルブのさらなる実施形態を示した図である。
【
図2b】振り子バルブとしての本発明によるバルブのさらなる実施形態を示した図である。
【
図3a】単一バルブとしての本発明によるバルブのさらなる実施形態を示した図である。
【
図3b】単一バルブとしての本発明によるバルブのさらなる実施形態を示した図である。
【
図4】本発明によるバルブのRFIDアセンブリの一実施形態を示した図である。
【
図5】本発明によるバルブのRFIDアセンブリのさらなる実施形態を示した図である。
【0086】
図1a~
図1cは、真空トランスファバルブ1として形成された、本発明によるバルブ1の一実施形態を、異なる閉鎖位置で示している。
【0087】
真空バルブ1は、矩形の板状のバルブ閉鎖体4(弁体)を有し、このバルブ閉鎖体4は、開口部2をガス密に閉鎖するためのシール面6(第2のシール面)を有する。開口部2は、バルブ閉鎖体4に対応する断面を有し、壁部12に形成されている。この壁部12は、例えば、真空プロセスチャンバーの壁部であってもよい。開口部2は、弁座によって取り囲まれており、この弁座自身の側からもバルブ閉鎖体4のシール面6に対応するシール面3(第1のシール面)を提供する。バルブ閉鎖体4のシール面6は、バルブ閉鎖体4を取り巻き、シール材(シール)を有する。閉鎖位置S(
図1c)では、このシールは、シール面6と3との間で加圧される。
【0088】
開口部2は、壁部12の左方に存在する第1のガス領域Lと、壁部12の右方に存在する第2のガス領域Rとを連通させる。壁部12は、例えば真空チャンバーのチャンバー壁部によって形成される。次いで、真空バルブ1は、チャンバー壁部12とバルブ閉鎖体4との協働によって形成される。
【0089】
弁座は、第1のシール面3とともに、代替的にバルブ1と構造的に固定接続されたバルブ構成部品として構成されてもよく、例えばチャンバー開口部に、例えばネジ止めされるなどして配置することができるものと理解される。
【0090】
バルブ閉鎖体4は、ここで示されるように調整アーム5に配置されてもよく、この調整アーム5は、ここでは例えば棒状であり、幾何学的調整軸線Vに沿って延在している。調整アーム5は、駆動ユニット7に機械的に結合されており、この駆動ユニット7を用いることにより、閉鎖部材4は、壁部12の左方の第1のガス領域Lにおいて、駆動ユニット7を用いて調整アーム5を調整することにより、開放位置O(
図1a)と中間位置Z(
図1b)を介した閉鎖位置S(
図1c)との間で位置調整可能である。
【0091】
開放位置Oでは、バルブ閉鎖体4は、
図1aに示されるように、開口部2の投影領域の外側に存在しており、開口部2を完全に解放している。
【0092】
調整軸線Vに対して平行または同軸で壁部12に対して平行な平面内でバルブ閉鎖体4を軸線方向に直線的に調整することにより、バルブ閉鎖体4を駆動ユニット7を用いて開放位置Oから中間位置Zまで調整することができる。
【0093】
この中間位置Z(
図1b)では、バルブ閉鎖体4のシール面6は、開口部2を取り囲む弁座のシール面3に対して離間した対向位置に存在する。
【0094】
開口部2によって画定される開口部軸線Aの方向(ここでは、調整軸線Vに対して横方向)に、つまり例えば壁部12および弁座に対して垂直に調整することによって、バルブ閉鎖体4を中間位置Zから閉鎖位置Sに調整することができる(
図1c)。
【0095】
この閉鎖位置Sでは、弁体4は、開口部2をガス密に閉鎖し、第1のガス領域Lを第2のガス領域Rからガス密に分離する。
【0096】
真空バルブの開放および閉鎖は、駆動ユニット7を用いて、ここでは、バルブ閉鎖体4の2つの例えば互いに垂直な方向HおよびAへのL字型の運動によって行われる。それゆえ、図示のバルブは、L字型バルブとも称される。
【0097】
図示のようなトランスファバルブ1は、典型的には、プロセス容積部(真空チャンバ)をシーリングし、容積の充填および排出のために設けられる。そのような使用では、開放位置Oと閉鎖位置Sとの間の頻繁な入れ替えが通常である。これにより、シール面6および3、それらの間にあるシール、および機械的に動かされる構成部品の摩耗出現の頻発につながる可能性がある。
【0098】
真空バルブ1は、さらに結合素子、例えばアンテナ、およびメモリ素子を有する無線アセンブリ10を備えている。この無線アセンブリ10は、バルブ閉鎖体4の上に配置されている。メモリ素子には、例えば、バルブ閉鎖体4の実施形態(タイプ)の識別を可能にし、かつ/または位置決定を可能にする情報が格納されていてもよい。
【0099】
無線アセンブリ10は、特にRFIDトランスポンダ(RFIDタグ)として構成されてもよい。
【0100】
その他に、バルブ1は、無線アセンブリ10と協働する、ここではアンテナ11の形態の通信アセンブリを備える。アンテナ11は、この場合、駆動ユニット7の上に配置されている。アンテナ11は、さらに読み取り/書き込みユニットにも結合されている。この読み取り/書き込みユニットも同様にバルブ1の側に配置されてもよいし、あるいは代替的にそこから分離されて、特に制御機器の一部として実行されてもよい。特に、アンテナ11は、読み取り/書き込みユニットとともに1つのユニットを形成することができる。アンテナ11と読み取り/書き込みユニットとの結合は、例えば、有線接続、または誘導的に実現されてもよい。
【0101】
無線アセンブリ10およびアンテナ11は、少なくとも開放位置0において、無線アセンブリ10とアンテナ11との間で情報伝送もしくは通信が実行可能であるように配置され設計される。開放位置0では、構造に起因して、無線アセンブリ10とアンテナ11との間の距離が最小となり、これによって、この位置で最良の通信が可能となる。
【0102】
特に、無線アセンブリ10およびアンテナ11(もしくは下流側の読み取り/書き込みユニット)は、これらの構成部品の送受信到達範囲に基づいて、開放位置Oにおいてのみ動作可能となるように設計されてもよい。この実施形態では、この目的のために使用される通信ビームとの相互作用を回避できることが有利である。
【0103】
一実施形態では、読み取り/書き込みユニットは、自身が開放位置Oまたは開放位置Oの近傍に達した場合のみトランスポンダ10との接続を形成するように駆動制御することができる。読み取り/書き込みユニットを起動させるための対応する信号は例えば駆動ユニット7により、例えば、開放位置0に達したときにリミットスイッチを作動させることによってトリガすることができる。
【0104】
無線アセンブリ10と読み取り/書き込みユニットとの間の通信により、例えば、開放位置Oに達したことに関する確認を行うことができる。さらに、タイプ識別を読み出すことにより、バルブ1に適合するバルブ閉鎖体が取り付けられているかどうかを検証することができる。例えば、弁体4が適正な開放位置に達したこと、あるいは適合する弁体4が取り付けられていることが確認できない場合には、対応する信号を生成して出力することができる。この信号に基づき、ユーザーに警告することができ、あるいは制御部(開ループ制御および処理ユニット)にその機能を適合化させるようにすることができる。特に、制御部は、対応する警告信号の場合に、継続動作時にバルブ1において生じる潜在的な損傷の可能性を避けるために、駆動ユニットのさらなる動作を阻止することができる。
【0105】
一実施形態では、無線アセンブリ10のメモリは、同種のバルブ1においてバルブ閉鎖体4の事前較正の枠内で正確にこのバルブ閉鎖体4のために求められた較正データ、すなわち例えば特定の目標位置決めに関するデータおよび/または所望のシーリングを提供するための特定の押し付け圧力に関するデータを含むことができる。これらのデータは、例えば弁体4の交換後に読み出され、バルブ1の駆動部7を開ループ制御する開ループ制御および処理ユニットに引き継がれ、かつ/または後続処理することができる。そのため、例えば、それぞれ組み込まれたバルブ閉鎖体4のための閉鎖運動を個別に適合化させることができ、ひいては最適化することができる。
【0106】
代替的または付加的に、情報は、読み取り/書き込みユニットによって無線アセンブリ10に記憶させることができる。そのため、例えば、取り付けられた弁体4で既に実行された閉鎖過程の現下の数を各動作サイクルの際にメモリ上で連続的に更新することができる。したがって、弁体4の計画的なメンテナンスの場合、弁体4のための実際の動作持続時間を読み出すことができ、メンテナンス作業をこの動作持続時間に適合化させることができる。例えば、これに依存して、弁体4の全交換が必要かどうか、あるいはシール(シール面6)の交換で十分かどうかを決定することができる。
【0107】
さらなる変形形態では、弁体4のRFIDタグ10は、バルブ側の開ループ制御および処理ユニットのプログラミングを具現化するプログラミングデータを含むことができる。換言すれば、タグ10は、バルブを動作させるように構成されたファームウェア、またはファームウェアの更新を提供することができる。この提供されたプログラミングは、アンテナ11を介して読み出され、それによって、プログラミングが現下の開ループ制御として記憶され(インストールされ)、バルブの動作のためにバルブ側の開ループ制御および処理ユニットに提供され、かつ/またはそこで実行されるように後続処理され得る。
【0108】
図2aおよび
図2bは、振り子バルブ20の形態の本発明による真空バルブの可能なさらなる実施形態を概略的に示す。このバルブ20は、特に質量流量を閉ループ制御するように構成され、開口部22を有するバルブハウジングを備えている。開口部22は、ここでは、例えば円形の断面を有している。開口部22は、弁座によって取り囲まれている。この弁座は、弁体24(バルブ閉鎖体)の軸線方向に配向され、開口部軸線Aに対して横方向に延びる円形リングの形状を有し、バルブハウジング内に形成されている(第1の)シール面23によって形成される。弁体24は、回転軸線Rを中心として旋回可能であり、開口部軸線Aに対して実質的に平行に位置調整可能である。弁体24(バルブ閉鎖体)の閉鎖位置S(
図2b)では、開口部22は、シール材を有する第2のシール面26を備えた弁体24を用いてガス密に閉鎖されている。弁体24の開放位置は
図2aに示されている。
【0109】
弁体24は、弁体の側方に配置され、開口部軸線Aに対して垂直に延在する調整要素25(アーム)を介して駆動ユニット27に接続されている。このアーム25は、弁体24の閉鎖位置では、開口部軸線Aに沿って幾何学的に投影される開口部22の開口断面の外側に存在する。
【0110】
駆動部27は、モーターおよび対応する伝動装置の使用により、弁体24が、-振り子バルブにおいて通常のように-駆動部27の横方向運動xを用いた開放位置と中間位置との間の旋回軸線Rを中心とする旋回運動の形態で、開口部軸線Aに対して横方向にかつ開口部22の断面を超えて実質的に平行にかつ開口部軸線Aに対して垂直に旋回可能で、かつ開口部軸線Aに対して平行に行われる駆動部27の長手方向運動を用いて直線的にシフト可能であるように構成されている。開放位置では、弁体24は、開口部22の側方に隣接して配置されている滞留区分に位置決めされるため、開口部22および流路が解放される。中間位置では、弁体24は、開口部22の上方に離間されて位置決めされ、開口部22の開口断面を覆う。閉鎖位置Sでは、開口部22は、ガス密に閉鎖され、バルブ閉鎖体24(弁体)のシール面26と弁座のシール面23との間のシール材を用いたガス密な接触接続が生じることによって流路が遮断される。
【0111】
バルブ20の自動化され、閉ループ制御された開放および閉鎖を可能にするために、バルブ20には、例えば電子的閉ループ制御および開ループ制御ユニット(開ループ制御および処理ユニット)(図示せず)が設けられ、このユニットは、弁体24がプロセス容積部を閉鎖するために、またはこの容積部の内圧を閉ループ制御するために相応に位置調整可能となるように構成され、駆動部27と接続される。
【0112】
本発明の実施例では、駆動部27は、電気モーターとして構成されており、この場合、伝動装置は、駆動部27の駆動により、横方向運動xまたは長手方向運動のいずれかを引き起こすように切り替え可能である。伝動装置とともに駆動部は、閉ループ制御によって電子的に駆動制御される。この種の伝動装置、特にゲートチェンジ回路を有する伝動装置は、従来技術から公知である。さらに、回転運動と直線運動とを引き起こすために複数の駆動部を使用することも可能であり、その場合、制御部は、駆動部の駆動制御を引き継ぐ。
【0113】
記載された振り子バルブ20による流量の正確な閉ループ制御もしくは設定は、横方向運動を用いた開放位置Oと中間位置との間の弁体24の旋回調整によってだけでなく、とりわけ長手方向運動を用いた中間位置と閉鎖位置Sとの間の開口部軸線AもしくはRに沿った弁体24の直線的な調整によっても可能である。この記載された振り子バルブは、精密な閉ループ制御タスクに使用することができる。
【0114】
弁体24も弁座もそれぞれ1つのシール面、詳細には第1のシール面23と第2のシール面26とを有する。弁体24の第2のシール面26は、さらにシール28も有している。このシール28は、例えば、ポリマーとして加硫剤を用いて弁体24に加硫してもよい。代替的に、シール28は、例えば、Oリングとして弁座の溝に実施してもよい。また、シール材を弁体24または弁座に接着し、それによってシール28を具現化してもよい。代替的な実施形態では、シール28を弁座の側に、特に第1のシール面23に配置してもよい。これらの実施形態の組み合わせも考えられる。このようなシール28は、もちろん、実施例で説明したバルブ20に限定されるものではなく、説明したさらなるバルブの実施形態にも適用可能である。
【0115】
弁体24は、例えば、閉ループ制御変数と出力される開ループ制御信号とに基づいて可変に設定される。入力信号として、例えば、バルブ20に接続されたプロセス容積部内の現下の圧力状態に関する情報が得られる。さらに、制御器にはさらなる入力変数、例えば、容積部への流入質量流量が提供され得る。次いで、これらの変数に基づき、また容積部について設定もしくは達成されるべき予め設定された目標圧力に基づき、バルブ20の閉ループ制御された設定が閉ループ制御サイクルの時間にわたって行われ、それにより、容積部からの流出質量流量がバルブ20を用いて時間にわたって閉ループ制御できる。この目的のために、バルブ20の下流側に、真空ポンプを設けてもよく、すなわちバルブ20が、プロセスチャンバーとポンプとの間に配置される。それにより、所望の圧力経過を閉ループ制御することができる。
【0116】
バルブ閉鎖体24の設定により、バルブ開口部22についてのそれぞれの開口断面が設定され、したがって、単位時間当たりにプロセス容積部から排気することができる可能なガス量が設定される。バルブ閉鎖体24は、この目的のために、特に、可及的に層流化された媒体流を達成するために、円形から外れた形状を有することができる。
【0117】
バルブ20は、さらに2つのRFIDトランスポンダ10および10’を備え、それぞれの無線アセンブリを形成する。その第1のRFIDトランスポンダ10は、第2のシール面26の領域で弁体24上に配置されている。その第2のRFIDトランスポンダ10’は、調整アーム25に配置されている。第2のシール面26の領域で弁体24上に配置されている図示の実施形態では、RFIDトランスポンダ10および10’は、それぞれの部品に統合されている。
【0118】
それに応じて、バルブ20は、2つの通信アセンブリ11および11’を備える。その第1の通信アセンブリ11は、第1のシール面23の領域で弁座上に配置されている。その第2の通信アセンブリ11’は、バルブハウジング上に配置されている。図示の実施形態では、通信アセンブリ11および11’は、それぞれの部品に統合されている。通信アセンブリ11および11’は、それぞれ、アンテナ、書き込み/読み取りユニット、および任意選択的に統合されたエネルギー源またはエネルギー供給部への接続を有する。
【0119】
RFIDトランスポンダ10および通信アセンブリ11は、中間位置および/または閉位置Sにおいて対応する通信を可能にするように構成および配置されている。一方、開放位置Oでは情報交換が不可能である。したがって、構成部品は僅かな到達範囲で互いに構成される。このRFIDトランスポンダ10と通信アセンブリ11との組み合わせを用いることにより、例えば、弁体24が閉鎖位置Sにあるかどうかを確定し、対応するフィードバックを生成することができる。
【0120】
RFIDトランスポンダ10’および通信アセンブリ11’は、これらの構成部品の対向位置が開放位置Oにおいてのみ存在し、対応する通信が開放位置Oにおいてのみ可能であるように構成され、配置されている。通信アセンブリ11’は、
図2aではアーム25によって覆われるように配置されている。この組み合わせを用いることによっても、所定の位置(開放位置O)に達したことを確定することが可能になる。さらに、ここでは、バルブ20の閉鎖および開放サイクルがカウントされ、対応する数がRFIDトランスポンダ10’(RFIDタグ)に直接連続的に記憶される。
【0121】
そのようなアセンブリを用いることにより、例えば、回転軸線Rを中心とする弁体24の旋回に関するそれぞれの端部位置の到達を確定することができる。次いで、それに応じて生成可能な信号は、駆動部27の制御部と接続して後続処理され、したがって、例えば、駆動部27の連続的な較正を行うことができる。
【0122】
トランスポンダ10は、代替的または付加的に識別情報を含むことができる。ここでは、例えば、弁体24のディスクタイプ、部品番号および/またはシリアル番号が格納されてもよい。さらに、同じことは、トランスポンダ10’についての情報に関する調整アーム25にも当てはまる。
【0123】
特に、トランスポンダ10は、さらにバルブ閉鎖体24もしくは本発明によるシール材28の品質および/または状態に関する情報を提供することができる。ここでは、例えば、弁体24の大きさ、例えば弁体24の厚さを記述する幾何学的データが格納されてもよく、ならびに使用されるシール材が表されてもよい。この情報が読み出された後、バルブ20の制御部は、この情報に基づいてバルブ20の閉鎖時に所望の押し付け圧力が生成されるように、適合化させることができる。
【0124】
代替的または付加的に、RFIDトランスポンダ10および10’の少なくとも一方は、製造情報、特に製造日および/または製造場所を提供することができる。これにより、動作障害が生じた場合に、問題の部品がどこで、どのような条件のもとで製造されたかを迅速に、確実かつ効果的に決定することができる。これにより、製造プロセスにおけるトラブルシューティングが大幅に簡素化される。
【0125】
図3aおよび
図3bは、本発明による真空バルブ30のさらなる実施形態を概略的に示している。この例では、バルブ30はいわゆる単一バルブとして実施されており、ここでは開放位置O(
図3a)および閉鎖位置S(
図3b)での状態が断面図で示されている。
【0126】
直線運動を用いて流路をガス密に閉鎖するためのバルブ30は、流路用の開口部32を有するバルブハウジング39を備え、この場合、開口部32は、流路に沿った幾何学的な開口部軸線Aを有する。この開口部32は、図面ではバルブ30もしくは分離壁部(図示せず)の左方に存在する第1のガス領域Lと、その右方に存在する第2のガス領域Rとを連通させる。そのような分離壁部は、例えば真空チャンバーのチャンバー壁によって形成される。
【0127】
閉鎖要素34(弁体)は、可動な調整要素35(この例では調整アーム)を有する駆動ユニット37を用いて、閉鎖要素平面内で開口部軸線Hに対して横方向に延びる幾何学的調整軸線Vに沿って、開口部32を解放する開放位置Oから、開口部32上で閉鎖方向に直線的にシフトした閉鎖位置Sに直線的にシフト可能であり、またこれとは逆に開放方向に戻るようにもシフト可能である。
【0128】
例えば、(湾曲した)第1のシール面33は、第1の平面38a内の第1の区分33aに沿って、および第2の平面38b内の第2の区分33bに沿って、バルブハウジング39の開口部32を取り囲む。第1の平面38aおよび第2の平面38bは、相互に離間されて、相互に平行にかつ閉鎖要素平面に対して平行に延びている。したがって、第1の区分33aおよび対向する第2の区分33bは、調整軸線Vに対して横方向でかつ開口部軸線Aの方向に相互に幾何学的なオフセットを有する。2つの対向する区分33aと33bとの間で調整軸線Vに沿って延在する領域に開口部32は存在している。
【0129】
閉鎖要素34は、第1のシール面33に対応する第2のシール面36を有し、この第2のシール面36は、第1および第2の区分33a,33bに対応する区分に沿って延びている。
【0130】
図示の例では、シールを形成するシール材が、弁座の第1シール面33に設けられている。代替的または付加的に、シールは、弁閉鎖体の第2シール面36に配置されてもよい。
【0131】
シールは、例えば、ポリマーとして加硫剤を用いて弁座に加硫することができる。代替的に、シールは、例えばOリングとして弁座の溝に実施してもよい。また、シール材を弁座に接着し、それによってシールを具現化してもよい。そのようなシールは、もちろんこの例で説明したバルブ1に限定されるものではなく、説明したさらなるバルブの実施形態にも適用可能である。
【0132】
例えば、単一バルブ、すなわち唯一の直線運動を用いて閉鎖可能な真空バルブは、例えば2つの運動を用いて閉鎖可能で比較的複雑に構築された駆動部を必要とするトランスファバルブと比較して、比較的単純な閉鎖機構の利点を有する。さらに閉鎖要素は、一体的に構成されてもよいため、高い加速力にさらすことができ、したがって、このバルブは、迅速かつ緊急の閉鎖にも使用することができる。閉鎖および密閉は、単一の直線運動を用いて行うことができるため、バルブ30の非常に迅速な閉鎖および開放が可能である。
【0133】
特に、単一バルブの利点は、例えば、シールが、閉鎖の際のその経過に基づき、シールの長手延在方向に対して横方向の負荷にさらされないことにある。他方では、シールは、開口部軸線Aに対するその横延在方向に基づき、開口部軸線Hに沿って閉鎖要素34に出現する力を吸収する状況にはほとんどなく、この力は、特に差圧が大きい場合に閉鎖要素34に作用する可能性があり、このことは、閉鎖要素34、その駆動部、およびその軸受の堅牢な構造を必要とする。
【0134】
真空バルブ30はさらにベローズ31を備えている。このベローズ31は、一方ではバルブ閉鎖要素34に接続され、他方ではバルブハウジング39に接続されている。これにより、駆動ユニット37ならびに調整アーム35を、プロセス容積部から大気的に分離することが提供できる。開放されたバルブ状態(
図3a)では、ベローズは圧縮されて存在し、閉鎖されたバルブ30(
図3b)ではベローズは伸長されて存在する。
【0135】
図3aおよび
図3bに示されている真空バルブ30は、本発明によれば、無線アセンブリ10ならびに該無線アセンブリ10と協働する通信アセンブリ11を含む。これらの2つのアセンブリは、ここでは、駆動ユニット37に基づいて、直接軸線に沿って互いに接近および離間することができる。
【0136】
この位置関係により、無線アセンブリ10と通信アセンブリ11との間の距離決定を利用しやすくすることができる。距離決定は、例えば、信号強度の測定に基づいて、または通信アセンブリ11の通常の無線信号と付加的な位置特定信号との重畳を用いて行うことができる。
【0137】
後者の場合、位置特定信号は、これが周期的に繰り返されるように構成されてもよい。その際、この信号は、RFIDトランスポンダには識別されないことが維持できる程度に弱く選択される。それにより、本来の無線信号に対するタグの応答は影響を受けずに維持され、つまり読み出されたデータは通常のように伝送される。それにもかかわらず、RFIDタグは、位置特定信号の一部を反射して戻す。時間的に繰り返される信号を特別に加算することにより、反射された応答を読み取り機器においてランダムノイズから確実に区別することができ、これによって、信号の伝搬時間、ひいては距離も計算することができる。
【0138】
また距離決定によっても、開ループ制御および処理ユニットに、バルブ閉鎖体34についての位置情報、ひいては対応する制御フィードバックを提供することができる。
【0139】
さらに、無線アセンブリ10は、弁体34についての識別情報を有していてもよく、通信アセンブリ11は、この情報を読み出すように構成されていてもよい。
【0140】
図4は、本発明によるバルブの無線アセンブリ10および通信アセンブリ11を示す。
【0141】
無線アセンブリ10は、RFIDトランスポンダ(RFIDタグ)として構成されており、結合素子42とメモリ素子41とを有している。結合素子42は、例えばアンテナとして実施されてもよい。通信アセンブリ11も同様にここではアンテナ43の形態の結合素子を有し、ならびに書き込み/読み取りアセンブリ44を有する。図示されていない他の実施形態によれば、通信アセンブリ11は、アンテナ43のみを有する、またはアンテナとして構成されてもよい。
【0142】
RFIDタグ10は、特に、メモリ素子41のためのデータ管理を提供するマイクロチップも有する。
【0143】
RFIDタグ10の結合素子42と通信アセンブリ11のアンテナ43とは、図示のように結合された通信状態、すなわち、2つの構成部品が結合され、情報交換が行われる状態にある。この結合は、(電)磁界を用いて実現される。結合は、特に、2つの結合素子間の所定の最小距離を下回った場合に形成することができる。そのような最小距離は、例えば、生成可能な信号強度および/または使用される伝送周波数に依存する。
【0144】
図5は、本発明による真空バルブの無線アセンブリ10および通信アセンブリ11のさらなる実施形態を示す。
図4による実施形態とは対照的に、通信アセンブリ11は、ここではアンテナ43の他に、アンテナ43と内部結合するように構成された回路44’ならびに読み取りチップ45を有している。これにより、回路44’および読み取りチップ45は、タグ10の読み出しのための読み取りユニットを形成する。さらに、読み取りユニットを用いた開ループ制御とデータ処理のためにマイクロプロセッサ46が設けられている。
【0145】
これらの図示された図面は、可能な実施例を概略的に示したものにすぎないことを理解されたい。同様に、様々な取り組みを相互に組み合わせたり、従来技術の装置や方法と組み合わせたりすることも可能である。
【国際調査報告】