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特表2024-506435化合物、組成物、および骨折を処置するための使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】化合物、組成物、および骨折を処置するための使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/22 20060101AFI20240206BHJP
   A61K 38/29 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240206BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240206BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 5/18 20060101ALI20240206BHJP
   C07K 14/635 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
A61K38/22
A61K38/29
A61K47/54
A61K47/64
A61P19/08
A61P19/10
A61P5/18
C07K14/635 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525002
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 US2021047824
(87)【国際公開番号】W WO2022093373
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/105,669
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/193,748
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523008417
【氏名又は名称】パーデュー リサーチ ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】Purdue Research Foundation
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,フィリップ,エス.
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,スチュワート
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン,ジェフリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC50
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084BA42
4C084CA53
4C084DB32
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZA971
4C084ZA972
4C084ZC061
4C084ZC062
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA20
4H045BA41
4H045BA50
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA30
4H045FA33
4H045GA45
(57)【要約】
【解決手段】
骨指向性リガンド骨同化剤化合物および関連する組成物、ならびに骨折を処置するための使用方法。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

の構造を有する化合物またはその薬学的に許容される塩であって、式中、
Xは、副甲状腺ホルモン(PTH)またはその誘導体もしくはフラグメント、PTH関連のタンパク質(PTHrP)またはその誘導体もしくはフラグメント、およびアバロパラチドまたはその誘導体もしくはフラグメントからなる群から選択される骨同化剤であり、
Yは、不在、放出型リンカー、または非放出型リンカーであり、
Zは骨指向性リガンドである、
化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
Xが、配列番号3を含むアバロパラチドまたはその誘導体もしくはフラグメントであり、xがメチルアラニンであり、「e」がDキラリティを示す、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
Zの前記骨指向性リガンドが、少なくとも11のアミノ酸残基を含む酸性オリゴペプチド(AOP)である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
前記AOPが11~100のアミノ酸残基を含む、請求項3に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
Xが、骨同化活性を有するPTHまたはその誘導体もしくはフラグメント、骨同化活性を有するPTHrPまたはその誘導体もしくはフラグメント、および骨同化活性を有するアバロパラチドまたはその誘導体もしくはフラグメントからなる群から選択される骨同化剤である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
前記骨同化剤が、骨同化活性を有するアバロパラチドまたはその誘導体もしくはフラグメントである、請求項1~5のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
Zがテトラサイクリン、ラネレート、カルシウムキレート剤、金属キレート剤、ビスホスホネート、またはAOPである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
Zが、モノビスホスホネート、トリビスホスホネート、およびポリビスホスホネートからなる群から選択されるビスホスホネートである、請求項1、2、5、または7のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
Zがアミノ酸残基の直鎖である、請求項1~5のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
Zがアミノ酸残基の分岐鎖である、請求項1~5のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
Zが、少なくとも4つのグルタミン酸アミノ酸残基または少なくとも4つのアスパラギン酸アミノ酸残基を含むAOPである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
Zが、同じキラリティを有する少なくとも4つのアミノ酸残基を含む、請求項1、2、5、および11のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
Zが少なくとも4つのアミノ酸残基を含み、かかるアミノ酸残基のうち少なくとも4つはDキラリティを有する、請求項1、2、5、および11のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
Zが、少なくとも4つのグルタミン酸アミノ酸残基、少なくとも4つのアスパラギン酸アミノ酸残基、または少なくとも4つのグルタミン酸アミノ酸残基と少なくとも4つのアスパラギン酸アミノ酸残基を含む、請求項1、2、5、および11のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
Zが、4~20のDグルタミン酸アミノ酸残基、4~20のDアスパラギン酸アミノ酸残基、または4~20のDグルタミン酸アミノ酸残基と4~20のDアスパラギン酸アミノ酸残基を含む、請求項1、2、5、および11のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
Zがグルタミン酸アミノ酸残基とアスパラギン酸アミノ酸残基との混合物を含む、請求項1~5および11のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
Zが、少なくとも15の反復Dグルタミン酸アミノ酸残基(DE15)、または少なくとも20の反復Dグルタミン酸アミノ酸残基(DE20)を含む、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
ZがDE10またはDE20である、請求項1、2、5、および11のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項19】
Zが4~75の酸性アミノ酸残基を含む、請求項1、2、5、および11のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項20】
Zが4~75のDグルタミン酸アミノ酸残基を含む、請求項1、2、5、および11のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項21】
Zが8~30の酸性アミノ酸残基を含む、請求項1、2、5、および11のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項22】
Zが8~30のDグルタミン酸アミノ酸残基を含む、請求項1、2、5、および11のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項23】
Xが、骨同化活性を有するアバロパラチドまたはその誘導体もしくはフラグメントであり、ZがDE20である、請求項1、3~5、11、および17のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項24】
Yが非放出型リンカーである、請求項1~5、11、および17のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項25】
Yが、少なくとも1つの炭素炭素結合および/または少なくとも1つのアミド結合を含む非放出型リンカーである、請求項1~5、11、および17のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項26】
Yが放出型リンカーである、請求項1~5、11、および17のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項27】
Yが、少なくとも1つのジスルフィド結合、少なくとも1つのエステル、および/または少なくとも1つのアミド結合を含む放出型リンカーである、請求項1~5、11、および17のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項28】
Xが、骨同化活性を有するアバロパラチドまたはその誘導体もしくはフラグメントであり、Yが非放出型オリゴペプチドリンカーであり、ZがDE20である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項29】
Xが、骨同化活性を有するアバロパラチドまたはその誘導体もしくはフラグメントであり、Yが、少なくとも1つのプロテアーゼ特異的アミド結合を含む放出型オリゴペプチドリンカーであり、ZがDE20である、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項30】
前記化合物が、配列番号3に対し少なくとも75%以上の配列同一性、少なくとも85%以上の配列同一性、少なくとも90%以上の配列同一性、または少なくとも95%以上の配列同一性を有する、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項31】
前記化合物が、配列番号14に対し少なくとも75%以上の配列同一性、少なくとも85%以上の配列同一性、少なくとも90%以上の配列同一性、または少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項32】
前記化合物が、配列番号4に対し少なくとも75%以上の配列同一性、少なくとも85%以上の配列同一性、少なくとも90%以上の配列同一性、または少なくとも95%以上の配列同一性有する、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか1つに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項34】
薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
骨折の処置を必要とする患者の骨折を処置する方法であって、該方法は、請求項1~32のいずれか1つに記載の化合物、または請求項33もしくは34に記載の医薬組成物を治療有効量で前記患者に投与する工程であって、それにより前記患者の骨折を処置する、工程を含む方法。
【請求項36】
前記患者が、骨折を起こしやすい、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記患者が、糖尿病、骨粗しょう症、顎顔面の損傷、顎顔面の欠損、および顎顔面の欠乏からなる群から選択される1つ以上の併発症を患う、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記顎顔面の損傷が顎顔面骨折である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
請求項1~38のいずれか1つに記載の化合物または医薬組成物を治療有効量で投与することが、注射、非経口的投与、または腸内投与によるものである、請求項35~37のいずれか1つに記載の方法。
【請求項40】
前記注射が皮下である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
骨折または1つ以上の併発症を処置するために、第2の治療を前記患者に施す工程をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記患者が少なくとも糖尿病を患っており、前記第2の治療を施すことが、インスリンを治療有効量で前記患者に投与することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第2の治療を施すことが、骨折部位へのハードウェアまたは1つ以上の治療化合物の植込みを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
治療有効量の前記化合物または医薬組成物が、前記患者の体重1kgにつき0.1mg、1kgにつき1mg、またはそれらの間の化合物濃度を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
前記患者に治療有効量の前記化合物または医薬組成物を投与することが、処置の過程の間に1~800回繰り返される、請求項35に記載の方法。
【請求項46】
投与することが、治療有効量の前記化合物または医薬組成物の投与後3週間以内に前記患者の疼痛の軽減をもたらす、請求項35に記載の方法。
【請求項47】
骨成長の促進を必要とする患者の骨成長を促進させる方法であって、該方法は、請求項1~32のいずれか1つに記載の化合物、または請求項33もしくは34に記載の医薬組成物を治療有効量で前記患者に投与する工程でであって、それにより前記患者の骨ミネラル密度を処置前よりも増加させる、工程を含む方法。
【請求項48】
前記患者が骨粗しょう症を患っている、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記骨の骨ミネラル密度の増加が骨折部位で生じる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記骨の骨ミネラル密度の増加が、前記投与する工程の前に骨に存在する1つ以上の吸収窩にて生じる、請求項48に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
優先権
本特許出願は、(a)2020年10月26日に出願された米国仮特許出願第63/105,669号、および(b)2021年5月27日に出願された米国の仮特許出願第63/193,748号に関連し、これらの優先権の利益を主張する。前述の優先出願の内容は、その全文が参照により本明細書に援用される。
【0002】
政府支援の声明
本発明は、国立衛生研究所によって与えられたDE028713の下、政府支援で行われた。政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、骨指向性リガンド(osteotropic ligands)、骨同化剤(bone anabolic agents)、両方を含むコンジュゲート(conjugate)、同じものを含む組成物、および骨折を処置するための使用方法に関連する。
【0004】
配列表の簡単な説明
本明細書に記載された配列表は、図の中で明記され、さらに、本明細書に提出されたコンピュータで読み取り可能な形式で提供され、および参照により本明細書に援用される。コンピュータで読取り可能な形式に記録された情報は、37C.F.R.§ 1.821(f)に準拠して本明細書に提供される配列表と同一である。
【技術背景】
【0005】
毎年、1,830万件を超える骨折が、アメリカ合衆国で発生している。骨折によっては、身体活動の障害、生産性の損失、および生活の質の低下を引き起こし得る一方、癒合しない骨折(nonunion fractures)は、回復までの時間を非常に長引かせることによって、これらの病的状態を増大させる場合がある。頭蓋顔面骨折は、食事と会話を困難にすることを伴うために、特に衰弱につながる場合がある。高齢者の股関節骨折の治癒が遅れると、多くの場合で、早死につながる恐れがある。まとめると、骨折の治療費、療養費、および理学療法にかかる経済的な影響は、458億ドルと推定され、これらの費用は、我々の人口の高齢化が進むにつれて増加すると予想される。
【0006】
本明細書におけるいくつかの実施形態では提供されるのは、骨折の治癒を(例えば、コンジュゲート)の併用によって)処置または改善するための組成物および方法(例えば、骨指向性リガンドおよび骨同化剤である。これと他の目的および利点は、進歩的特徴と同様に、本明細書で提供される記載から明白になるであろう。
【発明の概要】
【0007】
本明細書におけるいくつかの実施形態では、(例えば、処置を必要とする)個体の骨治癒に関する事象(例えば、骨折)を処置する方法が提供され、この方法は、本明細書に提供される(例えば、治療有効量の)化合物またはその薬学的に許容される塩、例えば、骨標的剤(例えば、骨指向性リガンド)および/または同化剤(例えば、骨同化剤)を含む化合物またはその薬学的に許容される塩など投与することを含む。
【0008】
本明細書におけるいくつかの実施形態では、式(I)、
【0009】
【数1】

の構造を有する化合物が提供される。
【0010】
いくつかの実施形態では、式(I)の構造を有する化合物は、その薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、Xは骨同化剤である。いくつかの実施形態では、Xは、副甲状腺ホルモン(PTH)(または、例えばその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する))、PTH関連タンパク質(PTHrP)(あるいは、例えばその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する))、およびアバロパラチド(例えば、骨同化活性を有する))、PTH関連タンパク質(PTHrP)(または、例えばその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する))からなる群から選択される骨同化剤である。いくつかの実施形態では、Yは存在しないか、またはリンカー(例えば、放出型リンカーまたは非放出型リンカー)である。いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカー、または非放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Zは骨指向性リガンド(例えば、酸性オリゴペプチド(AOP)(例えば、少なくとも4つのアミノ酸残基(例えば4~20のアミノ酸残基)を含む))である。
【0011】
いくつかの実施形態では、Xは、PTH(または、例えばその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する))、PTHrP(または、例えばその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する))、およびアバロパラチド(または、例えばその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する))からなる群から選択される骨同化剤である。
【0012】
いくつかの実施形態では、骨同化剤は、PTHあるいはPTHrP、または、それらの誘導体もしくはフラグメントである((例えば(配列番号1および/または骨同化活性を有する))。いくつかの実施形態では、骨同化剤は、副甲状腺ホルモン(PTH)(または、例えばその誘導体もしくはフラグメント)である。いくつかの実施形態では、骨同化剤は、PTHrPまたは誘導体もしくはフラグメントである。いくつかの実施形態では、骨同化剤は修正PTH、または誘導体もしくはフラグメントである。例えば、修正PTHまたは誘導体もしくはフラグメントは、合成的に修正される。いくつかの実施形態では、骨同化剤は修正PTHrP、または、例えば配列番号1などの誘導体もしくはフラグメントである。ある実施形態では、修正PTHrPまたは誘導体もしくはフラグメントは、合成的に修正される。いくつかの実施形態では、骨同化剤は、アバロパラチド(または、例えばその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する))である。いくつかの実施形態では、骨同化剤は、アバロパラチド(配列番号2)である。いくつかの実施形態では、骨同化剤は(例えば合成的)修正アバロパラチドである。
【0013】
いくつかの実施形態では、XはPTH、またはその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する)である。
【0014】
いくつかの実施形態では、XはPTHrP、またはその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する)である。
【0015】
いくつかの実施形態では、Xはアバロパラチド、またはその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する)である。
【0016】
いくつかの実施形態では、Xはダサチニブである。
【0017】
いくつかの実施形態では、Xはプロインスリン様成長因子II(pro-IGF-II)である。
【0018】
いくつかの実施形態では、Xは、環状ペプチド(例えば、任意に(101)で代用、または任意に(102)で代用される)である。いくつかの実施形態では、Xは任意に(101)で代用される。いくつかの実施形態では、Xは任意に(102)で代用される。いくつかの実施形態では、Xは(101)である。いくつかの実施形態では、Xは(102)である。
【0019】
いくつかの実施形態では、Xはインテグリンα5β1活性を調節する。いくつかの実施形態では、Xはインテグリンα5β1のリガンドである。いくつかの実施形態では、(101)および(102)は、インテグリンα5β1活性を調節する。
【0020】
いくつかの実施形態では、Zは、テトラサイクリン、ホスホン酸塩(例えば、モノビスホスホネート、トリビスホスホネート、またはポリビスホスホネート)、あるいはAOPである。いくつかの実施形態では、Zはテトラサイクリンである。いくつかの実施形態では、Zはモノビスホスフホネート、トリビスホスホネートあるいはポリビスホスホネートである。いくつかの実施形態では、Zはモノビスホスフホネートである。いくつかの実施形態では、Zはトリビスホスホネートである。いくつかの実施形態では、Zはポリビスホスホネートである。
【0021】
いくつかの実施形態では、Zはアミノ酸残基の直鎖である。いくつかの実施形態では、Zはアミノ酸残基の分岐鎖である。いくつかの実施形態では、Zは、AOP(例えば、少なくとも4のグルタミン酸アミノ酸残基、または4のアスパラギン酸アミノ酸残基を含む)である。
【0022】
いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4のアミノ酸残基(例えば4以上、10以上、20以上、30以上、50以上、75以上、または100以上)を含む。いくつかの実施形態では、Zは4~75の酸性アミノ酸残基(例えば、D-グルタミン酸アミノ酸残基)を含む。いくつかの実施形態では、Zは高々100のアミノ酸残基(例えば100以下、75以下、50以下、30以下、20以下、10以下、または4以下)を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4、および高々35のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4、および高々20のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも6、および高々30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも8、および高々30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも8、および高々20のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、Zはグルタミン酸アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、ZはD-グルタミン酸アミノ酸残基を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、Zは4~75のD-グルタミン酸アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、Zは8~30のD-グルタミン酸アミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、Zは8~20のD-グルタミン酸アミノ酸残基を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、AOPは、約4~約20のアミノ酸残基(4~約20、または約4~20など)、あるいは4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20などのより多くのアミノ酸残基を含む。様々な実施形態では、AOPは、20のアミノ酸残基などの約20のアミノ酸残基を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4つの(例えば、D-)グルタミン酸アミノ酸残基(例えば、4~20のD-グルタミン酸アミノ酸残基)、および/または少なくとも4つの(例えば、D-)アスパラギン酸アミノ酸残基(例えば、4~20のD-アスパラギン酸アミノ酸残基)を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、アミノ酸は、アスパラギン酸(文字Dによって表される)、グルタミン酸(文字Eによって表される)、またはその混合物である。アミノ酸残基は、Dキラリティ、Lキラリティ、またはその混合物を有し得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基は、Dキラリティを有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基はLキラリティを有する。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4つの(例えば、酸性)アミノ酸残基(例えば、同じキラリティ(例えばD-またはL-アミノ酸残基)がある)を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも4つの(例えば、酸性)アミノ酸残基の各々は、Dキラリティを有する。いくつかの実施形態では、アスパラギン酸はDアスパラギン酸またはL-アスパラギン酸である。いくつかの実施形態では、グルタミン酸は、D-グルタミン酸またはL-グルタミン酸である。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4および高々20のD-グルタミン酸残基またはL-グルタミン酸残基を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4および高々20のD-アスパラギン酸残基またはL-アスパラギン酸残基を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4の(例えば、D-)グルタミン酸アミノ酸残基(例えば、4~20のD-グルタミン酸アミノ酸残基)、および/または少なくとも4つの(例えば、D-)アスパラギン酸アミノ酸残基(例えば、4~20のD-アスパラギン酸アミノ酸残基)を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、Zは、(例えばD-)グルタミン酸アミノ酸残基と(例えばD-)アスパラギン酸アミノ酸残基との混合物を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4の反復(repeating)D-グルタミン酸アミノ酸残基(例えば、4の反復D-グルタミン酸アミノ酸残基(DE4)もしくはそれ以上、6の反復D-グルタミン酸アミノ酸残基(DE6)もしくはそれ以上、8の反復D-グルタミン酸アミノ酸残基(DE8)もしくはそれ以上、10の反復D-グルタミン酸アミノ酸残基(DE10)もしくはそれ以上、15の反復D-グルタミン酸アミノ酸残基(DE15)もしくはそれ以上、20の反復D-グルタミン酸アミノ酸残基(DE20)もしくはそれ以上、25の反復D-グルタミン酸アミノ酸残基(DE25)もしくはそれ以上、30の反復D-グルタミン酸アミノ酸残基(DE30)もしくはそれ以上、または35の反復D-グルタミン酸アミノ酸残基(DE35)もしくはそれ以上)を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくともDE10もしくはそれ以上、DE15もしくはそれ以上、またはDE20もしくはそれ以上を含む。いくつかの実施形態では、ZはDE10、またはDE20である。
【0030】
少なくともいくつかの実施形態では、Zは少なくともDE15または少なくともDE20を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、Xはアバロパラチド、またはその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する)である。
【0032】
いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Yは少なくとも1つの炭素-炭素結合を含有している非放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Yは少なくとも1つのアミド結合を含有している非放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Yは少なくとも1つの炭素-炭素結合、および1つのアミド結合を含有している非放出型リンカーである。
【0033】
いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、1以上のアミド結合を含む。いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、1~20のアミド結合を含む。いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、1~10のアミド結合を含む。いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、10~20のアミド結合を含む。いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、1~5のアミド結合を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、1以上のアミノ酸リンカー基を含む。いくつかの実施形態では、Yはポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは1~20のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは1~10のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは10~20のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは1~5のアミノ酸残基を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、1以上のエーテル結合(C-O)を含む。いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、1~20のエーテル結合(C-O)を含む。いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、1~10のエーテル結合(C-O)を含む。いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、10~20のエーテル結合(C-O)を含む。いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、1~5のエーテル結合(C-O)を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、1以上のポリエチレングリコール(PEG)リンカー基を含む。いくつかの実施形態では、YはPEGである。
【0037】
いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、1以上のチオエーテル結合(C-S)を含む。いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、10~20のチオエーテル結合(C-S)を含む。いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、1~10のチオエーテル結合(C-S)を含む。いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、10~20のチオエーテル結合(C-S)を含む。いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーであり、1~5のチオエーテル結合(C-S)を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Yは少なくとも1つのジスルフィド(S-S)を含有している放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Yは少なくとも1つのエステル(例えば、O(C=O))を含有している放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Yは少なくとも1つの(例えば、プロテアーゼに特有の)アミド結合を含有している放出型リンカーである。
【0039】
いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカーであり、1以上のアミド結合を含む。いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカーであり、1~20のアミド結合を含む。いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカーであり、1~10のアミド結合を含む。いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカーであり、10~20のアミド結合を含む。いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカーであり、1~5のアミド結合を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカーであり、1以上のアミノ酸リンカー基を含む。いくつかの実施形態では、Yはポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは1~20のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは1~10のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは10~20のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは1~5のアミノ酸残基を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカーであり、1以上のエーテル結合(C-O)を含む。いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカーであり、1~20のエーテル結合(C-O)を含む。いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカーであり、1~10のエーテル結合(C-O)を含む。いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカーであり、10~20のエーテル結合(C-O)を含む。いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカーであり、1~5のエーテル結合(C-O)を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカーであり、1以上のPEGリンカー基を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、Xはアバロパラチド(あるいは、例えばその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する))であり、Yは、少なくとも1つのプロテアーゼに特有のアミド結合を含む放出型オリゴペプチドリンカーであり、および、Zは20の反復DE20である。
【0044】
いくつかの実施形態では、Xはアバロパラチド(あるいは、例えばその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する))であり、Yは、非放出型オリゴペプチドリンカーであり、および、ZはDE10である。いくつかの実施形態では、化合物は配列番号3である。いくつかの実施形態では、化合物は配列番号14である。
【0045】
いくつかの実施形態では、Xはアバロパラチド、またはその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する)であり、Yは非放出型オリゴペプチドリンカーであり、およびZはDE20である。いくつかの実施形態では、化合物は配列番号4である。
【0046】
いくつかの実施形態では、Xはアバロパラチド、またはその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する)であり、Yは非放出型オリゴペプチドリンカーであり、およびZはDE20である。いくつかの実施形態では、化合物は配列番号11である。
【0047】
いくつかの実施形態では、Xは(ポリ)ペプチドである。いくつかの実施例では、式(I)の構造を有する化合物は、(ポリ)ペプチドである。
【0048】
本明細書における、いくつかの実施形態では、骨同化活性を有する(ポリ)ペプチド(例えば、アバロパラチド(配列番号2))が提供される。本明細書における、いくつかの実施形態では、骨同化活性を有する実質的に純粋な(ポリ)ペプチド(例えば、アバロパラチド)が提供され、この(ポリ)ペプチドは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、または配列番号14に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では配列番号3および/または配列番号14は、骨同化活性(および、例えば、骨標的活性)を有する。いくつかの実施形態では配列番号4は、骨同化活性(および、例えば、骨標的活性)を有する。他の実施形態では、(ポリ)ペプチドは、例えば、PTHもしくはPTHrP(配列番号1)、アバロパラチド(Abalo)(配列番号2))、または配列番号3に記載のアミノ酸配列と少なくとも75%の配列同一性(例えば、少なくとも75%の配列同一性もしくはそれ以上、少なくとも85%の配列同一性もしくはそれ以上、少なくとも90%の配列同一性もしくはそれ以上、または少なくとも95%の配列同一性もしくはそれ以上)を有するアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、(ポリ)ペプチドは、例えば、PTHもしくはPTHrP(配列番号1)、Abal(配列番号2))、または配列番号4に記載のアミノ酸配列少なくとも75%の配列同一性(例えば、少なくとも75%以上の配列同一性、少なくとも85%以上の配列同一性、少なくとも90%以上の配列同一性、または少なくとも95%以上の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、(ポリ)ペプチドは、図1Aに示されるアミノ酸配列と少なくとも75%以上の配列同一性、少なくとも85%以上の配列同一性、少なくとも90%以上の配列同一性、または少なくとも95%以上の配列同一性を有するアミノ配列である。
【0049】
別の実施形態では、(ポリ)ペプチドは図1Aに示されるアミノ酸配列である。別の実施形態では、(ポリ)ペプチドは、図1Bに示されるアミノ酸配列と少なくとも75%以上の配列同一性、少なくとも85%以上の配列同一性、少なくとも90%以上の配列同一性、または少なくとも95%以上の配列同一性を有するアミノ配列である。別の実施形態では、(ポリ)ペプチドは図1Bに示されるアミノ酸配列である。別の実施形態では、(ポリ)ペプチドは、(101)(例えば、図1Aに示される配列番号7を参照)と少なくとも75%以上の配列同一性、少なくとも85%以上の配列同一性、少なくとも90%以上の配列同一性、または少なくとも95%以上の配列同一性を有するアミノ配列である。いくつかの実施形態では、(ポリ)ペプチドは、(101)(例えば、図1Aに示される配列番号7を参照)である。別の実施形態では、(ポリ)ペプチドは、(108)(例えば、図1Bに示される配列番号8を参照)と少なくとも75%以上の配列同一性、少なくとも85%以上の配列同一性、少なくとも90%以上の配列同一性、または少なくとも95%以上の配列同一性を有するアミノ配列である。いくつかの実施形態では、(ポリ)ペプチドは、(102)(例えば、図1Bに示される配列番号8を参照)である。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される化合物は、ペイロードを含む。いくつかの実施形態では、ペイロードは、アバロ(Abalo)、またはその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する)(配列番号2)を含む。いくつかの実施形態では、ペイロードは、本明細書に」提供されるリンカー(例えば配列番号12)を含む。いくつかの実施形態では、ペイロードはアバロ、またはその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する)(配列番号2)、および本明細書に提供されるリンカー(例えば配列番号12)を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、リンカーは配列番号12であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、本質的に配列番号12からなるポリペチドであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号12の1以上のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号12の各アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは配列番号12である。
【0052】
いくつかの実施形態では、(ポリ)ペプチドは、本明細書に提供される任意の化合物の薬学的に許容される塩(例えば、式(I)である、配列番号3または配列番号4の構造を有する)である。
【0053】
本明細書におけるいくつかの実施形態では、本明細書に提供される任意の化合物を含む医薬組成物(例えば、式(I)である、配列番号3または配列番号4の構造を有する化合物)、またはその薬学的に許容される塩が提供される。ある実施形態では、医薬組成物は、本明細書に提供される任意の化合物、および少なくとも1つの薬学的に許容される担体もしくは賦形剤を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される化合物(例えば式(I)である、配列番号3または配列番号4)は、個体(例えば、処置を必要とする患者または個体)に(例えば、皮下に)投与される。
【0055】
本明細書におけるいくつかの実施形態において提供されるのは、式(X-Y-Z)のコンジュゲートである。
【0056】
いくつかの実施形態では、Xは、PTH、PTHrP(配列番号1)、アバロパラチド(配列番号2)、骨同化活性を有する上記の任意の誘導体、および骨同化活性を有する上記の任意のフラグメントからなる群から選択される骨同化剤である。
【0057】
いくつかの実施形態では、Yは、存在する場合、放出型または非放出型であり得るリンカーである。
【0058】
別の実施形態では、リンカーは、図1Aに示されるアミノ酸配列と少なくとも75%以上の配列同一性、少なくとも85%以上の配列同一性、少なくとも90%以上の配列同一性、少なくとも95%以上の配列同一性を有するアミノ配列である。別の実施形態では、リンカーは図1Aに示されるアミノ酸配列である。別の実施形態では、リンカーは、図1Bに示されるアミノ酸配列(例えば、配列番号12)と少なくとも75%以上の配列同一性、少なくとも85%以上の配列同一性、少なくとも90%以上の配列同一性、少なくとも95%以上の配列同一性を有するアミノ配列である。別の実施形態では、リンカーは、図1Bで示されるアミノ酸配列(例えば、配列番号12)である。
【0059】
いくつかの実施形態では、Zは、少なくとも11~100のアミノ酸残基を含むAOPである骨指向性リガンドである。
【0060】
アミノ酸残基には、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはその混合物があり得る。アミノ酸残基には、Dキラリティがあり得る。AOPは、アミノ酸残基の直鎖になり得る。Yが存在する場合、Yは、少なくとも1つの炭素ー炭素結合、および/または少なくとも1つのアミド結合を含有している非放出型リンカーになり得る。あるいは、Yが存在する場合、Yは、少なくとも1つのジスルフィド、エステル、および/またはプロテアーゼに特有のアミド結合を含有している放出型リンカーになり得る。
【0061】
本明細書における、いくつかの実施形態では、本明細書に提供される任意の化合物を含む医薬組成物(例えば、式(I)である、配列番号3または配列番号4の構造を有する化合物)、またはその薬学的に許容される塩(および、例えば、少なくとも1つの薬学的に許容される担体もしくは賦形剤)が提供される。
【0062】
さらに、本明細書におけるいくつかの実施形態では、上記コンジュゲートおよび薬学的に許容される担体の有効な量を含む医薬組成物が提供される。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される化合物(例えば式(I)である、配列番号3または配列番号4)は、個体(例えば、処置を必要とする患者または個体)に(例えば、皮下に)投与される。
【0064】
本明細書におけるいくつかの実施形態では、(例えば、個体(例えば処置を必要とする患者または個体)の)骨折を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に提供される任意の化合物(例えば、式(I)、配列番号3または配列番号4の構造を有する化合物)を治療有効量で個体(例えば、処置を必要とする患者または個体)に投与する(例えば、皮下に)工程を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される任意の化合物(例えば、式(I)、配列番号3または配列番号4の構造を有する化合物)を治療有効量で個体(例えば、処置を必要とする患者または個体)に(例えば、皮下に)投与することは、個体(例えば、処置を必要とする患者または個体)の骨折を処置し、またはその治癒を改善する。
【0065】
本明細書におけるいくつかの実施形態では、(例えば、処置を必要とする)患者の骨折を処置する方法、つまり、治療有効量の任意の化合物(例えば、式(I)、配列番号3または配列番号4の構造を有する化合物)、本明細書に提供される薬学的に許容される組成物を(例えば、処置を必要とする)患者に(例えば、皮下に)投与することで、(例えば、処置を必要とする)患者の骨折を処置する方法が提供される。
【0066】
いくつかの実施形態では、(例えば、処置を必要とする)患者は、骨折を起こしやすい。いくつかの実施形態では、(例えば、処置を必要とする)患者は、糖尿病を患っている。いくつかの実施形態では、(例えば、処置を必要とする)患者は、骨粗しょう症を患っている。いくつかの実施形態では、(例えば、処置を必要とする)患者は、顎顔面の欠乏、欠損または損傷(例えば、顎顔面骨折)を患っている。いくつかの実施形態では、顎顔面骨折には、マイクロプレートで安定した下顎骨切り術が行われる。いくつかの実施形態では、(例えば、処置を必要とする)患者は、糖尿病、骨粗しょう症、および/または顎顔面の欠乏、欠損もしくは損傷(例えば、顎顔面骨折)を患っている。いくつかの実施形態では、患者は、糖尿病、骨粗しょう症、顎顔面の損傷および顎顔面の欠乏からなる群から選択される1つ以上の併発症を患う。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される任意の(例えば、式(I)の構造を有する)化合物または医薬組成物を治療有効量で(例えば皮下に)投与することは、注射によるものである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される任意の(例えば、式(I)の構造を有する)化合物または医薬組成物を治療有効量で(例えば皮下に)投与することは、皮下注射によるものである。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される任意の化合物または医薬組成物は、治療有効量が非経口的投与あるいは腸内投与によって投与される。
【0068】
本明細書における、いくつかの実施形態では、(例えば、個体(例えば処置を必要とする患者または個体)の)骨折を処置する方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に提供される任意の化合物(例えば、式(I)、配列番号3または配列番号4の構造を有する化合物)を治療有効量で個体(例えば、処置を必要とする患者または個体)に(例えば、皮下に)投与することを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される任意の化合物(例えば、式(I)である、配列番号3または配列番号4の構造を有する化合物)を治療有効量で個体(例えば、処置を必要とする患者または個体)に(例えば、皮下に)投与することは、個体(例えば、処置を必要とする患者または個体)の骨折を処置し、またはその治癒を改善する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される、治療有効量の任意の化合物または医薬組成物は、非経口的投与あるいは腸内投与によって投与される。
【0069】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される化合物または医薬組成物の治療有効量で投与してから3週間以内(例えば、2~3週間)は、患者の疼痛の軽減をもたらす。
【0070】
(例えば、処置を必要とする)患者の骨の成長を促進する方法も提供される。ある実施形態では、方法は、本明細書に提供される治療有効量の化合物または医薬組成物を患者に投与する工程を含み、それによって、前処置(例えば、本明細書に提供される化合物または医薬組成物の投与前の骨密度(bone density))と比較して、患者の骨ミネラル密度(bone mineral density))を上昇させる。
【0071】
いくつかの実施形態では、骨ミネラル密度の上昇は、骨折部位または(例えば、骨粗しょう症を経験している患者における)骨に存在する1つ以上の吸収窩において発生する。本明細書に提供される方法のいくつかの実施形態では、本明細書に提供される化合物は、(例えば、治療の必要のある個体に)皮下投与される。
【0072】
方法のいくつかの実施形態では、本明細書に提供される任意の化合物あるいは医薬組成物は、毎日、毎週、隔週、または毎月(例えば、1週、1か月、1年、またはそれよりも多くの期間)治療有効量で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される任意の化合物または医薬組成物は、1週間に1回または2回、治療有効量で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される任意の化合物または医薬組成物は、1~800回にわたり独立して、治療有効量で投与される。ある実施形態では、治療有効量の化合物または医薬組成物は、化合物の濃縮をしている、患者体重1kgにつき0.01mg、1mg、またはその間の濃度の化合物を有する。
【0073】
いくつかの実施形態では、骨同化剤はPTHあるいはPTHrP(配列番号1)、または、それらの誘導体もしくはフラグメントである(例えば、骨同化活性を有する))。
いくつかの実施形態では、骨同化剤はPTH、または、その誘導体もしくはフラグメントである。いくつかの実施形態では、骨同化剤はPTHrP(配列番号1)、または、その誘導体もしくはフラグメントである。いくつかの実施形態では、骨同化剤は(例えば合成的)修正PTH、または、その誘導体もしくはフラグメントである。いくつかの実施形態では、骨同化剤は(例えば合成的)修正PTHrP(配列番号1)、または、その誘導体もしくはフラグメントである。いくつかの実施形態では、骨同化剤はアバロパラチド、あるいはその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する)である。いくつかの実施形態では、骨同化剤は、アバロパラチド(配列番号2)である。いくつかの実施形態では、骨同化剤は(例えば合成的)修正アバロパラチドである。
【0074】
いくつかの実施形態では、Zはアミノ酸残基の直鎖である。いくつかの実施形態では、Zは、(例えば、少なくとも4つのグルタミン酸アミノ酸残基あるいは4つのアスパラギン酸アミノ酸残基を含む)AOPである。
【0075】
いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4(例えば4以上、10以上、20以上、30以上、50以上、75以上、または100以上)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、Zは高々100(例えば100以下、75以下、50以下、30以下、20以下、10以下、または4以下)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4、および高々35のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4、および高々20のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも6、および高々30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも8、および高々30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも8、および高々20のアミノ酸を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、AOPは、約4~約20(4~約20、または約4~20など)のアミノ酸残基、あるいは4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20などのより多くのアミノ酸残基を含む。様々な実施例では、AOPは、20のアミノ酸残基などの約20のアミノ酸残基を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、アミノ酸は、アスパラギン酸(文字Dによって表される)、グルタミン酸(文字Eによって表される)、またはその混合物である。アミノ酸残基には、Dキラリティ、Lキラリティ、またはその混合物があり得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基にはDキラリティがある。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基にはLキラリティがある。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4つの(例えば、酸性)アミノ酸残基(例えば、同じキラリティ(例えばD-またはL-アミノ酸残基)がある)を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも4つの(例えば、酸性)アミノ酸残基の各々にはDキラリティがある。いくつかの実施形態では、アスパラギン酸はD-アスパラギン酸またはL-アスパラギン酸である。いくつかの実施形態では、グルタミン酸はD-グルタミン酸またはL-グルタミン酸である。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4および高々20のD-グルタミン酸残基またはL-グルタミン酸残基を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4および高々20のD-アスパラギン酸残基またはL-アスパラギン酸残基を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4の(例えば、D-)グルタミン酸アミノ酸残基(例えば、4~20のD-グルタミン酸アミノ酸残基)、および/または少なくとも4つの(例えば、D-)アスパラギン酸アミノ酸残基(例えば、4~20のD-アスパラギン酸アミノ酸残基)を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、Zは、(例えばD-)グルタミン酸アミノ酸残基、および(例えばD-)アスパラギン酸アミノ酸残基の混合物を含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4つの反復D-グルタミン酸アミノ酸残基(例えば、DE4、それ以上、DE6、それ以上、DE8、それ以上、DE10、それ以上、DE15、それ以上、あるいはDE20、それ以上、DE25、それ以上、DE30、それ以上、あるいはDE35、それ以上)を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも10の反復D-グルタミン酸アミノ酸残基(例えば、DE4、それ以上、DE6、それ以上、DE8、それ以上、DE10、それ以上、DE15、それ以上、あるいはDE20、それ以上、DE25、それ以上、DE30、それ以上、あるいはDE35、それ以上)を含む。いくつかの実施形態では、Xはアバロパラチド、またはその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する)である。
【0081】
いくつかの実施形態では、Yは非放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Yは少なくとも1つの炭素ー炭素結合を含有している非放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Yは少なくとも1つのアミド結合を含有している非放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Yは少なくとも1つの炭素ー炭素結合および少なくとも1つのアミド結合を含有している非放出型リンカーである。
【0082】
いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Yは少なくとも1つのジスルフィド(S-S)を含有している放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Yは少なくとも1つのエステル(例えば、O(C=O))を含有している放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Yは少なくとも1つの(例えば、プロテアーゼに特有の)アミド結合を含有している放出型リンカーである。
【0083】
いくつかの実施形態では、Yは本明細書の他のところに(例えば、上記に)記載されたリンカーである。
【0084】
いくつかの実施形態では、Zは本明細書の他のところに(例えば、上記に)記載された骨指向性リガンドである。
【0085】
いくつかの実施形態では、Xはアバロパラチド、またはその誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する)であり、Yは非放出型オリゴペプチドリンカーであり、およびZはDE20である。いくつかの実施形態では、化合物は配列番号11である。
【0086】
いくつかの実施形態では、Xはアバロパラチドあるいは、その誘導体もしくはフラグメント(例えば、骨同化活性を有する)であり、Yは、少なくとも1つのプロテアーゼに特有のアミド結合を含む放出型オリゴペプチドリンカーであり、および、ZはDE20である。
【0087】
いくつかの実施形態では、化合物は、造影剤(例えば、色素)である。
【0088】
いくつかの実施形態では、化合物は、単一光子放射断層撮影(Single photon emission computed tomography)/コンピュータ断層撮影(SPEC/CT)造影剤である。
【0089】
いくつかの実施形態では、化合物は本明細書の他のところに(例えば、上記に)記載される。
【0090】
いくつかの実施形態では、化合物は配列番号3である。いくつかの実施形態では、化合物は配列番号4である。
【0091】
本明細書におけるいくつかの実施形態では、本明細書に提供される任意の化合物を含む医薬組成物(例えば、式(I)である、配列番号3または配列番号4の構造を有する化合物)、またはその薬学的に許容される塩(例えば、および少なくとも1つの薬学的に許容される担体もしくは賦形剤である)が提供される。
【0092】
本明細書におけるいくつかの実施形態では、骨折を処置する方法がさらに提供される。いくつかの実施形態では、方法は、有効な量の式X-Y-Zのコンジュゲート、または同じものを含む医薬組成物を骨折の患者に投与(例えば皮下に)する工程を含み、その上で、患者の骨折が処置される。患者は、糖尿病、骨粗しょう症、またはマイクロプレートで安定した下顎骨切り術などの顎顔面の骨折を患っている場合がある。有効な量のコンジュゲートまたは有効な量の医薬組成物は、皮下注射などの注射によって投与され得る。
【0093】
さらなる実施形態、および本開示の適用可能な全範囲は、詳細な説明から明白になるだろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は、単なる例示として与えられることは理解する必要がある。本開示の主旨および範囲内の様々な変更および修正は、当業者に明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1A】配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6(ダサチニブの標的コンジュゲートの構造)、および配列番号7を示す。
図1B】配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、および配列番号15を示す。
図2A】テトラサイクリン、モノビスホスホネート、ポリホスフェート、および放射性標識されたチロシルシステインにコンジュゲートした酸性のオリゴペプチドを示す。
図2B125Iチロシルシステインペイロードを送達する骨標的リガンドについて、コンジュゲート対骨折した大腿骨/健康な大腿骨比率のグラフを示す。
図3A】非標的/遊離配列番号1と比較した、標的配列番号1に関する、組織対注射量/gの割合のグラフを示す。
図3B】哺乳類の骨折した大腿骨における、標的配列番号1および遊離配列番号1の注射後24時間に関する、コンジュゲート対注射量/gの割合のグラフを示す。
図3C】非標的/遊離配列番号1と比較した、標的配列番号1に関する、コンジュゲート対骨折した大腿骨/健康な大腿骨比率のグラフを示す。
図4】(L)Asp10に結合した、6つの異なる放射ヨウ素標識されたペイロード(radio-iodinated payloads)の注射後24時間に関する、組織対注射量/gの割合のグラフを示す。
図5】非標的CK2.3に対して、10(L)アスパラギン酸に結合した、放射ヨウ素標識されたカゼインキナーゼ2.3ペプチド(CK2.3)に関する、組織対注射量/gの割合のグラフを示す。
図6】非標的CK2.3に対して、10(L)アスパラギン酸、10(L)グルタミン酸、または10(L)アミノアジピン酸に結合した、放射ヨウ素標識されたCK2.3に関する、組織対注射量/グラムの割合のグラフを示す。
図7】非標的CK2.3に対して、10または20(L)グルタミン酸に結合した、放射ヨウ素標識されたCK2.3に関する、組織対パーセント注射量/gのグラフを示す。
図8】非標的CK2.3に関する、20Lグルタミン酸またはD-グルタミン酸に結合した、放射ヨウ素標識されたCK2.3に関する、組織対パーセント注射量/gのグラフを示す。
図9】大腿骨中部骨折を負って10日後の哺乳類における、10LまたはD-アスパラギン酸と結合したS0456(近赤外線(IR)蛍光体)の注射後の異なる時点に関する、注射後の時間対μg色素/mg組織のグラフを示す。
図10】非標的CK2.3に対して、異なる酸性のオリゴペプチドに結合した、放射ヨウ素標識されたCK2.3に関する、標的リガンド対パーセント注射量/グラムのグラフを示す。
図11A】(D)Glu10酸に連結した99TcをキレートするTcキレート剤EC20の単一光子放射断層撮影/コンピュータ断層撮影(SPEC/CT)画像を示す。
図11B】(D)Glu20酸に連結された99TcをキレートするTcキレート剤EC20のSPEC/CT画像を示す。
図11C】異なる組織における、標識(D)Glu10および(D)Glu20化合物に関する、組織対パーセント注射量/gのグラフを示す。
図11D】99TcをキレートするEC20(D)Glu10の構造を示す。
図12】トリビスホスホネート標的リガンドの構造を示す。
図13】4週後の哺乳動物における、試験された薬剤対標的同化コンジュゲートの骨量(bone volume)(BV)のグラフを示す。
図14】4週後の哺乳動物における、試験された薬剤対標的同化コンジュゲートの骨量/全体積(total volume)(BV/TV)のグラフを示す。
図15】4週後の哺乳動物における、試験された薬剤対標的同化コンジュゲートの最大(MAX)ロード(N)のグラフを示す。
図16】4週後の哺乳動物における、試験された薬剤対標的同化コンジュゲートの骨折までの仕事量(work to fracture)(mJ)のグラフを示す。
図17】4週後の哺乳動物における、試験された薬剤対標的同化コンジュゲートの降伏後の変位(post yield displacement)(mm)のグラフを示す。
図18】本明細書に提供される化合物を使用した4週間の治療期間の間、I型糖尿病のげっ歯動物に関する、日数対血糖(mg/dl)のグラフを示す。
図19】I型糖尿病の骨折したハツカネズミの処置群について、日数対体重の平均変化率のグラフを示す。
図20A】4週後の哺乳動物における、試験された薬剤対標的同化コンジュゲートの骨量のグラフを示す。
図20B】4週後の哺乳動物における、試験された薬剤対標的同化コンジュゲートの骨量/全体積のグラフを示す。
図21A】4週後の哺乳動物における、インスリンを用いて試験された薬剤対標的同化コンジュゲートの骨梁幅(trabecular thickness)のグラフを示す。
図21B】4週後の哺乳動物における、インスリンを用いて試験された薬剤対標的同化コンジュゲートの骨梁中心距離(trabecular spacing)のグラフを示す。
図22A】4週後の哺乳動物における、インスリンを用いて試験された薬剤対標的同化コンジュゲートの最大力のグラフを示す。
図22B】4週後の哺乳動物における、インスリンを用いて試験された薬剤対標的同化コンジュゲートの骨折までの仕事量(mJ)のグラフを示す。
図22C】4週後の哺乳動物における、インスリンを用いて試験された薬剤対標的同化コンジュゲートのモジュラス(MPa)のグラフを示す。
図23A】4週後の哺乳動物における、試験された薬剤対標的同化コンジュゲートのBVのグラフを示す。
図23B】試験された薬剤対4週後の哺乳動物における、試験された薬剤対標的同化コンジュゲートの骨量/全体積(BV/TV)のグラフを示す。
図24A】4週後の哺乳動物における、試験された薬剤対標的同化コンジュゲートの最大負荷(N)のグラフを示す。
図24B】4週後の哺乳動物における、試験された薬剤対標的同化コンジュゲートの骨折への仕事量(mJ)のグラフを示す。
図24C】4週後の哺乳動物における、試験された薬剤対標的同化コンジュゲートの剛性(stiffness)(MPa)のグラフを示す。
図25】大腿骨中部骨折モデルの哺乳動物における、試験された薬剤対血清カルシウムの処置の血清カルシウム濃度(mg/dl)のグラフを示す。
図26】異なる処置群について、日数対自発運動用オープンフィールドボックスにおいて移動した距離(cm)のグラフを示す。
図27】異なる処置群について、日数対自発運動用オープンフィールドボックスにおいて運動に費やされた時間のグラフを示す。
図28】異なる処置群について、日数対自発運動用オープンフィールドボックスにおける平均速度(cm/s)のグラフを示す。
図29】欠損と移植、および頭蓋骨の欠損について、薬剤対非石灰化領域(mm)、スクリューについて、薬品対遊走した割合(%)、下顎骨切り術について、薬剤対ギャップ直径(mm)、および下顎骨切り術について、薬剤対最大負荷(N)のグラフを示す。
図30】時対本明細書に提供される化合物の血液における注射量の割合(cpm/g)のグラフを示す。
図31】時対骨折した大腿骨および反対側の大腿骨において、本明細書に提供される化合物の、骨における注射量の割合(cpm/g)のグラフを示す。
図32】本明細書に提供される化合物の処置対最大負荷(N)のグラフを示す。
図33】本明細書に提供される化合物の処置対骨折への仕事量(mJ)のグラフを示す。
図34】本明細書に提供される化合物の処置対最大負荷(N)のグラフを示す。
図35】非標的アバロパラチドを用いた処置が始まってから3週間後に撮影された骨のCT画像を示す。
【発明の詳細な説明】
【0095】
本開示は、骨折を処置する化合物と組成物の調製および使用に関する。いくつかの実施形態では、化合物、組成物、および方法は、治療薬を骨折または他の対象の骨の損傷に(例えば、選択的に)局在化させる戦略に重点を置いている。例えば、提供される化合物、組成物および方法は、骨指向性リガンドを含み得る。いくつかの実施形態では、化合物および組成物は、滞留時間(例えば、劣化に対する耐性が高まったことによるなど)が増加したことを表すように製剤されたため、標的部位(例えば、骨折部位)で治療有効濃度を維持するために化合物または組成物を再投与する頻度が減少した。これに関する化合物、組成物および方法は、骨折を処置するために用いられる従来の治療を上回る大きな利点を得ることを可能にする。例えば、標的治療は、骨形成タンパク質-2(BMP2)のような治療薬の局所応用に使用される従来のボーラス投与に比べて、治療薬濃度を長く維持する非侵襲的方法を可能にする。これにより、治癒のより堅調な刺激、およびより速い回復がもたらされる。非侵襲性が、医師は薬物を投与する時間および方法を制御することを可能にするため、医師は、骨折治癒の様々な段階に影響を与え、患者の治癒時間の変動に合わせて処置戦略を調整することができる。それは、全身暴露および副作用を軽減することができ、タンパク質同化剤の局所応用のように隣接組織への漏出も防ぐことができる。
【0096】
骨折は、骨粗しょう症の患者において現れることがある。骨粗しょう症は、個体が後世(例えば、>65歳)に患う併存疾患となり得、骨芽細胞と破骨細胞との間の不均衡の結果となることがある。女性では、不均衡は、閉経期のエストロゲンの低下によって引き起こされることがある。不均衡による骨密度の低下は、(若い時期に比べて)比較的抑制された力で骨折するように骨をもろくする場合がある。骨の基本単位における不均衡は、さらに骨折の治癒を遅くすることがある。
【0097】
50歳以上の女性3人のうち少なくとも1人および男性5人のうち少なくとも1人は、骨粗しょう症性骨折を患うことになる。骨粗しょう症の患者は、骨折する確率が少なくとも2倍(例えば、サルコペニアおよび弱まった骨による)あるから、骨粗しょう症性骨折は、リスク集団に対する課題になり得る。この集団は、骨折治癒を促進する非侵入的戦略から利益を得ることになる。
【0098】
同様に、糖尿病患者は、糖尿病でない患者に比べて6倍も骨折をすることが多い。糖尿病患者は、健康な患者に比べて2倍も非癒合骨折をすることが多い。いくつかの実例では、骨折の増加は、(例えば、骨の細胞外マトリックスにおいて)微細構造の変化から発生する。高血糖は、コラーゲン鎖の間の非酵素のクロスリンクを引き起こすことがある。さらに、I型糖尿病では、ランゲルハンス島中のβ細胞からのインスリン産生の低下は、(例えば、インスリンは骨芽細胞に対して同化作用があるため)骨ミネラル密度の減少を引き起こすことがある。さらに、骨折治癒は、貧弱な血管新生およびニューロパシーから害されることがある。例えば、患者は、固定された場合に、併発症になりやすくなり得るので、これらの患者の骨折治癒を加速することは、重要であり得る。糖尿病患者は、現在の骨折治癒処置オプションで処置するには、難しい整形外科の患者になることがある。
【0099】
長管骨骨折が一時的な固定化および短期のライフスタイルの変化を必要とする一方、顎顔面骨骨折は、一貫して生活の質を著しく悪化させることになる(例えば、損傷した骨がしっかりと修復されるまで、続くことがよくある)。この生活の質が低下することは、頭蓋顔面領域の神経末端が高密度であることと、これらのエリアにおける5つの主要な感覚すべてが集中すること、から発生する疼痛、および、例えば、コミュニケーションおよび咀嚼などの、このエリアの重大な機能の喪失により引き起こされ得る。
【0100】
米国における骨折の身体的および財政的負担は、しばしば嘆かれてきたが、これらの骨折を処置する方法は、驚くほど改善していない。ある実例には、処置方法は、ロッド、プレート、および/またはギプスを用いた安定に頼っている。
【0101】
多くの実例では、現在までに承認された骨形成の薬は、手術中に局所的に適用される。例えば、手術はほとんどの骨折には適応されないので、これらの薬理学的薬剤を採用する機会は困難になることがある。
【0102】
多くの実例では、承認された骨同化剤の代謝回転は比較的速いので、治療効果が持続するのが局所塗布後のわずかな期間に限定することがある。
【0103】
さらに、局所的に適用された同化薬が周辺組織に漏出すると、例えば、異所性骨の成長など望ましくない副作用を引き起こすことがある。いくつかの実例では、骨形成剤の全身投与は、例えば、神経、筋肉、血管系などの健康な組織の望まない同化プロセスを刺激する。いくつかの実例では、骨同化薬の全身投与について、高カルシウム血症、高血圧、免疫抑制、さらに癌は懸念材料である。
【0104】
考えられる解決方法は、骨標的である。今日まで、骨標的は、主に、骨粗しょう症、骨髄炎、および骨転移などの骨折に関連のない整形外科の病理にペイロードを送達することに重点を置いている。これらの処置のほとんどは、骨に化合物を選択的に送達するビスホスホネートである。しかしながら、骨折を処置する場合、薬剤をすべての骨に非特異的に投与した場合に起こりうる異所性骨化を避けるために、骨折部位に選択的に化合物を投与することが不可欠である。テトラサイクリンが、健康な骨よりも骨折した骨を適度に選択し得る一方、テトラサイクリンは骨、肝臓および腎臓に有毒である場合があるので、理想的な解決方法ではない。
【0105】
ビスホスホネートを骨折標的に使用することには、正常な骨のリモデリング、および、線維性骨から層板骨への骨折カルスの変化に不可欠な破骨細胞を阻害することを含む、いくつかの制約も存在する。ビスホスホネートを、標的リガンドとして使用することの別の問題は、その骨における半減期が最長20年であり、治療用カーゴ(therapeutics cargo)の安定性次第では、分子標的への刺激が不必要に長引く可能性があることである。
【0106】
同様の標的は、ラネレートで観察されることがある。これらの化合物は、標的分子として多くの骨疾患に使用し、骨の成長と治癒を促進するために同化剤に付着させることができる。しかしながら、ビスホスホネートのように、それらは、長い半減期を有する。
【0107】
ビスホスホネート、ラネレート、およびポリホスフェートには、合成の煩雑性および難溶性を含む問題があり、そのような欠点を呈しない骨指向性リガンドの必要性が残る。望ましくは、骨指向性リガンドは、付着したペプチド性の治療薬を骨折、特に骨折カルスに送達することができる。
【0108】
アバロパラチド(配列番号2)は、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)(配列番号1)の同化34-アミノ酸の合成類似体である。それは、骨の成長を促進し、かつ骨密度を保つことに役立つことができ、骨粗しょう症を処置するために使用することができる。アバロパラチド(配列番号2)は、PTHrP(配列番号1)と同じように作用し、副甲状腺ホルモン1(PTH1)受容体(PTH1R)を標的、結合、および活性化する。
【0109】
PTH1Rは、骨芽細胞および骨間質細胞で発現されるGタンパク質コンジュゲート型受容体(GPCR)である。PTH1Rは、次に、環状アデノシン一リン酸(cAMP)シグナル経路および骨同化シグナル経路を活性化するので、骨の成長および骨ミネラル密度と体積の増加を引き起こす。骨量と骨の強度が増えることは、骨粗しょう症を防ぎ/処置し、および骨折のリスクを減らすことに役立つ。
【0110】
折れた骨を管理することは、骨同化剤を治癒プロセスの全過程にわたって連続的に適用することにより改善され得る。いくつかの実例では、ハイドロキシアパタイトは、折れた骨に曝露される。ハイドロキシアパタイトに対して高い親和性と特異性を有して結合する分子は、いくつかの実例では、骨同化剤を骨折に標的する処置を提供し得る(および、例えば、骨折治癒の連続的な刺激を提供する)。
【0111】
骨折をした患者は、例えば、骨折の疼痛および骨折の安定性の欠如により、機能の喪失を患うことがある。骨格の機能喪失に対する従来の治療法は、例えば、プレートおよびロッドを外科的に植込むことによる安定性の向上、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)およびオピオイドを用いた疼痛の緩和、ならびに、同化薬の局所的な適用を含む。ロッドやプレートの外科的移植は侵襲的であり、疼痛を伴うことがある。例えば、いくつかの実例では、患者が体の骨折した部分をあまりに早く使ってしまい、これにより治癒を遅らせてしまう。オピオイドは、いくつかの実例では、認知障害を誘発し、ならびに、例えば、1)最も多い薬物乱用クラス(例えば、若年層と高齢層の両方において、整形外科的外傷の後)であり、および2)いくつかの実例では、損傷の治癒後に、いくつかの疼痛症候群が継続する原因となる。さらに、いくつかの実例では、オピオイドはめまいや立ちくらみを誘発することがあり、これにより、例えば、転倒し、すでに患っている骨の損傷をさらに悪化させるか、または新たな骨の損傷を引き起こしてしまうことになる。いくつかの実例では、骨折の疼痛に対してNSAIDを使用することは、治癒プロセスを損なうことがあるので、推奨されない。例えば、疼痛を緩和するためにNSAIDを投与することは、骨密度の減少、骨折の初期骨折固定の間の軟骨形成の減少、最終的には骨の欠損が非癒合になり得る。このように治癒が損なわれるメカニズムは、例えば、幹細胞の分化の遅れおよびBMP2産生の低下を含み得る。いくつかの実例では、患者は、処置後も疼痛を感じ続け、そのため、より良いレントゲン結果にもかかわらず、機能の喪失をもたらす。BMP2は、骨折の治癒を高められるように骨折を処置するための承認された治療であるが、いくつかの実例では、手術後に疼痛を増加させ、これにより、骨折後に、機能を獲得することを遅らせ得ることが報告されている。
【0112】
化合物
本明細書におけるいくつかの実施形態で提供されるのは、酸性のオリゴペプチド(AOP)(例えば、酸性アミノ酸の10量体および20量体、アスパラギン酸かグルタミン酸のどちらかの10量体および20量体、あるいは上記の様々な組合せ)を含む化合物である。いくつかの実施形態では、AOPは効果的に脊椎固定を標的にする。いくつかの実施形態では、20量体は、10量体よりも効果的である。いくつかの実施形態では、AOPsは、ビスホスホネートとテトラサイクリンと比べて、高度に選択的である。いくつかの実施形態では、グルタミン酸ポリマーおよびアスパラギン酸ポリマーは、送達部位で同様の滞留時間を有する。いくつかの実施形態では、オリゴアスパラギン酸は腎臓における非特異的な滞留時間を減少しているが、オリゴグルタミン酸で観察された滞留時間のわずかな増加は一時的なものである。いくつかの実施形態では、アスパラギン酸オリゴペプチドおよびグルタミン酸オリゴペプチドの両方は、18時間後に(例えば、ほとんど定量的に)、腎臓から除かれる。いくつかの実施形態では、AOPは、すべての化学的分類(例えば、疎水性、中性、カチオン性、アニオン、短いオリゴペプチド、また長いポリペプチド)のペプチドを標的する。いくつかの実施形態では、この標的は、他の標的治療を発展するために、このプラットフォームの発展および幅広い使用を可能にするので、特に有益である(例えば、多くの骨同化剤はペプチド性であるが、それらの物理的性質は大幅に変わることがある)。
【0113】
本明細書におけるいくつかの実施形態で提供されるのは、AOPの非天然型のDエナンチオマーを含む化合物であって、いくつかの実例では、それぞれのLエナンチオマーと比べて、破断面での滞留時間の増加を表すことがある。このことは、例えば、他の化合物と比べると、劣化に対する耐性が高まったことによることがある。いくつかの実施形態では、滞留時間が増加したことは、手術の標的部位(例えば、骨折部位)で治療有効濃度を維持するために、治療薬の再投与を必要とする頻度に影響を与える。いくつかの実施形態では、滞留時間が増加したことは、標的反応(例えば、治療反応)を誘発するために再投与する必要がある治療薬の量に影響を与える。いくつかの実施形態では、例えば、干渉が減少、または存在しないことにより)直鎖状AOPは分岐状AOPよりも優れている。
【0114】
いくつかの実施形態では、同化剤の標的送達は、(例えば、遠位部での皮下注射のような注射を介して)治療薬の骨折へ局在化させることを供給する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される化合物は、(例えば、処置を必要とする)患者に繰り返し投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される化合物は、(例えば、処置を必要とする)患者に比較的少ない量が投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される化合物は、(例えば、処置を必要とする)患者に安全量が投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される化合物は、(例えば、処置を必要とする)患者に治療量が投与される。いくつかの実施形態では、標的送達は、同化剤のドリフト(例えば、他の組織および望まない石灰化への)を最小限にする(例え、取り除けないとしても)。いくつかの実施形態では、領域における骨の成長は、比較的長時間刺激される(例えば、比較的速い結果になる)(例えば、その結果、非標的送達方法と比べて、患者が手術後により早く移動できるようになる)。
【0115】
本明細書におけるいくつかの実施形態では、式(I)
【0116】
【数2】

の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩が本明細書に提供され、式中、
Xは骨同化剤であり、
Yは、存在する場合、放出型または非放出型でもよいリンカーであり、および、
Zは骨指向性リガンドである。
【0117】
Zは、任意の適切な骨指向性リガンドであってもよい。いくつかの実施形態では、骨指向性リガンドには、骨、例えば、ハイドロキシアパタイトへの類似性が存在する。いくつかの実施形態では、骨指向性リガンドは、化合物(または、その誘導体もしくはフラグメント)を骨(例えば、治癒する)に方向づけることに役立つ。いくつかの実施形態では、骨指向性リガンドには、骨折または他の骨の損傷に骨同化剤を標的にする可能性がある。いくつかの実施形態では、骨指向性リガンドは、ハイドロキシアパタイトへの類似性を有するリガンドである。いくつかの実施形態では、骨指向性リガンドは、ラネレート、ビスホスホネート(例えば、アレンドロネート)、テトラサイクリン、ポリホスフェート、酸性分子(2つ以上のカルボン酸を有する分子など)、カルシウムキレート剤、金属キレート剤あるいはAOPである。いくつかの実施形態では、骨指向性リガンドはAOPである。いくつかの実施形態では、骨指向性リガンドは、モノビスホスホネート、トリビスホスホネートおよびポリビスホスホネートからなる群から選択されるビスホスホネートである。
【0118】
いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4(例えば、4以上、10以上、20以上、30以上、50以上、75以上、または100以上)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、Zは高々100(例えば、100以下、75以下、50以下、30以下、20以下、10以下、または4以下)のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4、および高々30のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4、および高々20のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、AOPは、約4~約20(4~約20、または約4~20など)のアミノ酸残基、あるいは4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20などのより多くのアミノ酸残基を含む。様々な実施例では、AOPは、20のアミノ酸残基などの約20のアミノ酸残基を含む。他の実施形態では、AOPは、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、あるいは100ものアミノ酸残基のような20を超えるアミノ酸残基を含むことができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、アミノ酸は、アスパラギン酸(文字Dによって表される)、グルタミン酸(文字Eによって表される)、またはその混合物であり得る。アミノ酸残基には、Dキラリティ、Lキラリティ、またはその混合物があり得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基にはDキラリティがある。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基には、Lキラリティがある。いくつかの実施形態では、アスパラギン酸はDアスパラギン酸またはL-アスパラギン酸である。いくつかの実施形態では、グルタミン酸はD-グルタミン酸またはL-グルタミン酸である。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4および高々20のD-グルタミン酸残基またはL-グルタミン酸残基を含む。いくつかの実施形態では、Zは少なくとも4および高々20のD-グルタミン酸残基またはL-アスパラギン酸残基を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、AOPは、(例えば、AOPが骨指向性リガンドとして有効に機能することを条件として)1つ以上の中性または塩基性アミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、AOPは、1つ以上の合成アミノ酸(例えば、酸性、中性、または塩基性であり得る)を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、AOPは、リニア(直鎖)または分岐(分岐鎖)である。直鎖は、様々な実施例の中で使用される。いくつかの実施形態では、AOPは環化することができる。
【0122】
骨指向性リガンド(Z)は、単一ユニット、ポリマー、デンドリマーあるいは複合ユニットであり得る。いくつかの実施形態では、骨指向性リガンドはポリマーである。いくつかの実施形態では、同化剤は環状である。いくつかの実施形態では、同化剤は環状ペプチドである。いくつかの実例では、環状ペプチドは、鎖状に連結した2つ以上のアミノ酸からなる化合物(または、そのラジカル)であり、化合物の2つの部分が結合して複素環式(例えば、ペプチド)分子を形成する。環状ペプチドの例には、構造体(101)および(102)(例えば、図1Aおよび1Bを参照)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
いくつかの実施形態では、Xは任意の適切な骨同化剤である。いくつかの実施形態では、骨同化剤は中性、アニオン性、カチオン性、または疎水性である。いくつかの実施形態では、骨同化剤は、オリゴペプチド(例えば、10、9、8、7、6、5または4のアミノ酸残基などの約10未満(または10未満)のアミノ酸残基)である。いくつかの実施形態では、骨同化剤は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40アミノ酸残基などの約10以上(または10超)のアミノ酸残基を含む。
【0124】
同化剤の例は、アバロパラチド(配列番号2)、配列番号5(例えば、膵島のβ細胞によって分泌される34残基のペプチドホルモンは、プロインスリン様成長因子II(pro-IGF-II)のEペプチドのAsp69-Leu102に対応する)、配列番号7(例えば、10のグルタミン酸残基と結合したITGA(ITGA5))、配列番号6(10のグルタミン酸残基との複合体)、副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)(配列番号1)、または骨同化活性を有する前述のいずれかの誘導体(例えば、挿入、欠失、自然発生のアミノ酸または非自然発生のアミノ酸との置換など、1つ以上のアミノ酸変異)、または骨同化活性を有する前述のいずれかのフラグメントを含むが、これらに限定されない。
【0125】
いくつかの実施形態では、例えばD20などのD#という名称が後に続く骨同化剤は、骨同化剤が骨指向性リガンド(例えば、20のアスパラギン酸残基を有する骨指向性リガンドなど)に付着(または、N末端またはC末端などで結合または接続)されていることを示す。いくつかの実施形態では、骨同化剤の後に、例えばE20などのE#という名称が続く骨同化剤は、骨同化剤が骨指向性リガンド(例えば、20のグルタミン酸残基を有する骨指向性リガンドなど)に付着(またはN末端またはC末端などで結合または接続)されていることを示す。
【0126】
いくつかの実施形態では、配列番号1はAVSEHQLLHDKGKSIQDLRRRFFLHHLIAEIHTAEIRATSEVSPNSKPSPNTKNHPVRFGSDDEGRYLTQ ETNKVETYKE QPLKTPである。
【0127】
いくつかの実施形態では配列番号2はAVSEHQLLHDKGKSIQDLRRRELLEKLLxKLHTAであり、ここでxはα-アミノイソ酪酸(Aib)-である。
いくつかの実施形態では、配列番号2のC末端は、アミド化されている。いくつかの実施形態では、配列番号2は、AVSEHQLLHDKGKSIQDLRRRELLEKLLxKLHTAであり、ここでxはAibであり、C末端はアミド化されている。
【0128】
いくつかの実施形態では、配列番号15は、AVSEHQLLHDKGKSIQDLRELLEKLLxKLHTAEIRATSEVSPNSであり、ここでxはAibである。いくつかの実施形態では、配列番号3は、「e」がD-グルタミン酸(例えば、配列番号3)を意味する「eeeeeeeeee」をさらに含む。いくつかの実施形態では、「EEEEEEEEE」は、配列番号15の末尾に付加されて、配列番号14を得ることができ、ここで「E」は、L-グルタミン酸を示す。
【0129】
いくつかの実施形態では、配列番号4は、AVSEHQLLHDKGKSIQDLRRRELLEKLLxKLHTAEIRATSEVSPNSeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeであり、ここで、xはAibである。いくつかの実施形態では、「E」はD-グルタミン酸を示す(例えば、「e」はL-グルタミン酸を示し、一方、「e」はD-グルタミン酸を示す)。いくつかの実施形態では、配列番号4は、AVSEHQLLHDKGKSIQDLRRRELLEKLLxKLHTAEIRATSEVSPNSeeeeeeeeeeeeeであり、ここでxはAibであり、「e」はD-グルタミン酸を示す。
【0130】
いくつかの実施形態では、化合物は、配列番号3に対して少なくとも75%以上の配列同一性、少なくとも85%以上の配列同一性、少なくとも90%以上の配列同一性、または少なくとも95%以上の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、化合物は、配列番号4に対して少なくとも75%以上の配列同一性、少なくとも85%以上の配列同一性、少なくとも90%以上の配列同一性、または少なくとも95%以上の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、化合物は、配列番号14に対して少なくとも75%以上の配列同一性、少なくとも85%以上の配列同一性、少なくとも90%以上の配列同一性、または少なくとも95%以上の配列同一性を有する。
【0131】
式(I)のいくつかの実施形態では、Yは、非放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Yは、少なくとも1つの炭素-炭素結合および/または少なくとも1つのアミド結合を含む非放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Yは放出型リンカーである。いくつかの実施形態では、Yは、少なくとも1つのジスルフィド(S-S)、エステル(例えば、-O(C=O)-)、および/またはプロテアーゼ特異的アミド結合を含有する放出型リンカーである。
【0132】
いくつかの実施形態では、標的分子(すなわち、骨指向性リガンド)は、化合物がインビボで治療的に有効であるために、薬剤/同化剤から切断しない。このことは、骨折部位または他の標的部位への化合物の標的送達より前に、同化剤の無視できる量(もしあれば)だけが(例えば、全身に)放出されるため、骨指向性リガンドおよび同化剤を含む組成物の使用することを可能にするので、利点であり得る。いくつかの実施形態では、活性成分の放出特性を変えることは、有効な医薬組成物の調製において向困難な側面がある。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される非放出型リンカーを含む化合物は、(例えば、放出のタイミングを合わせる必要性を取り除くことによって)有効な医薬組成物の調製の困難さを回避する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物の同化剤は、結合(例えば、骨指向性リガンドに複合)したときに活性である。したがって、いくつかの実施形態では、非放出型リンカー(例えば、Y)と複合した標的分子(例えば、Z)を含む化合物は、それに連結した同化剤(X)の全身曝露および/または全身的副作用を低減できる。
【0133】
いくつかの実施形態では、非放出型リンカーを含むコンジュゲートは、コンジュゲートから遊離形態(例えば、本明細書に提供される化合物および/またはリガンドの遊離形態)で放出される成分の毒性を低減または除去する。
【0134】
放出型および非放出型リンカーは、PEG化および同類のものなどを通じて、当該技術分野で一般的に知られている方法論または以下に発展される方法論に従って、生体内分布、生体利用性、および(例えば、化合物の)PK/PDを最適化すること、ならびに/あるいは標的組織への取り込み(例えば、化合物の)を増加させるように設計することができる。リンカーはさらに、当技術分野で公知の概念に従って、分子標的(例えば、標的が細胞内であるか細胞外であるか)を考慮して設計することができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、細胞(例えば、骨細胞)による捕捉の前に、循環中の薬学的に活性な量の同化剤の著しい放出を回避するように構成される。
【0135】
いくつかの実施形態では、リンカーは、(例えば、特定の放出時間を促進するため、標的組織への取り込みの増加を促進するため、ならびに/あるいは化合物の生体内分布、生体利用性、および/またはPK/PDを最適化するための)1以上のスペーサーを含み得る。スペーサーは、アルキル鎖、ポリエチレングリコール(PEG)、ペプチド、糖、ペプチドグリカン、クリッカブルリンカー(例えば、トリアゾール)、ポリプロリンおよびポリピペリジンなどのリジッドリンカー、および同様のもののうちの1つ以上を含むことができる。
【0136】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物の1つ以上のリンカーは、PEG、PEG誘導体、または本明細書に説明される目的を達成できる当技術分野で既知の、もしくは以下で発展される他の任意のリンカーを含むことができる。いくつかの実施形態では、リンカーはn回繰り返され、ここで、nは正の整数である。
【0137】
コンジュゲートは、固相ペプチド合成など、当技術分野で既知であり、かつ本明細書で例示される方法に従って合成されることができる。
【0138】
医薬組成物
本明細書に記載の化合物は、単独で投与することができるか、または化合物もしくは化合物と1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物として製剤化することができる。本明細書で使用する場合、用語「組成物」は、一般に、本明細書に記載の化合物を含む、1つ以上の成分を含む任意の産物を指す。本明細書に記載の組成物は、単離された化合物から、または化合物の塩、溶液、水和物、溶媒和物、および他の形態から調製できることが理解されよう。ヒドロキシ基、アミノ基、および同様の基などの特定の官能基は、化合物の様々な物理的形態において、水および/または様々な溶媒と錯体を形成し得る。また、組成物は、化合物の様々な非晶質、晶質、部分結晶、結晶、および/または他の形態学的形態から調製することができ、ならびに、組成物は、化合物の様々な水和物および/または溶媒和物から調製することができることが理解されよう。したがって、化合物を記載するそのような医薬組成物は、化合物の様々な形態学的形態および/または溶媒和物もしくは水和物の形態のそれぞれか、その任意の組合せか、あるいは個々の形態を含む。
【0139】
一実施形態は、式(I)の化合物もしくはそのような式によってカバーされる任意の化合物、またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0140】
一実施形態は、治療(または予防)有効量の式(I)の化合物またはそのような式によってカバーされる任意の化合物、またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0141】
本明細書におけるいくつかの実施形態で提供されるのは、必要とする患者に治療有効量で投与(例えば、皮下投与)することができる、本明細書で提供される任意の化合物を含む医薬組成物である。様々な実施形態において、組成物は、皮下注射に適した組成物などの注射用組成物である。
【0142】
本明細書に記載の化合物および/または組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体、アジュバント、希釈剤、賦形剤、および/またはビヒクル、ならびにそれらの組合せを含む単位剤形および/または組成物で投与することができる。
【0143】
本明細書で使用される場合、用語「投与すること」は、一般に、経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、吸入、頬、眼、舌下、膣、直腸、および同様の投与経路によるものを含むがこれらに限定されない、本明細書に記載の化合物を宿主である対象者に導入する任意の全ての手段を指す。
【0144】
塩としての化合物の投与は適切であり得る。許容される塩の例は、限定されないが、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム、もしくはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えば、カルシウム)塩を含むが、一般的に無毒かつ処置される対象に投与される場合に有効である任意の塩が許容可能である。少なくとも1つの実施形態では、塩は、酢酸アンモニウム塩であり得る。同様に、「薬学的に許容される塩」は、薬剤に使用され得る対イオンを有するそれらの塩を指す。このような塩としては、限定されないが、(1)塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸、硫酸、過塩素酸、および同類のものなどの無機酸、または酢酸、シュウ酸、(D)もしくは(L)リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸、および同類のもの有機酸との親化合物の遊離塩基の反応により得ることができる酸付加塩類、あるいは(2)親化合物に存在する酸性プロトンが、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンなどの金属イオンで置換されるか、またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメタミン、N-メチルグルカミン、および同類のものなどの有機塩基で配位される(coordinate)場合に形成される塩を含み得る。薬学的に許容される塩は当業者によく周知であり、そのような任意の薬学的に許容される塩が企図される。
【0145】
許容される塩は、十分に酸性な化合物を適切な塩基と反応させ、生理学的に許容されるアニオンを与えることを含む(限定されない)、当技術分野で既知の標準的な手順を使用して得ることができる。適切な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成される。非限定的ではあるが、例示的な例は、アセテート、アスパルテート、ベンゾエート、ベシレート、バイカーボネート/カーボネート、ビスサルフェート/サルフェート、ボレート、カムシレート、シトレート、エディシレート、エシリレート、フォーメート、フマレート、グルセプテート、グルコネート、グルクロン酸、ヘキサフルオロホスファート、ヒベンゼート、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヒドロヨージド/ヨウ化物、イセチオネート、ラクテート、リンゴ酸、マレイン酸、メシレート、メチルサルフェート、ナフチレート、2-ナプシレート、ニコチネート、ナイトレート、オロテート、オキサレート、パルミテート、パモアート、リン酸/水素リン酸/二水素リン酸、サッカレート、ステアレート、コハク酸、タートレート、トシレートおよびトリフルオロ酢酸の塩を含む。本明細書に記載の化合物の好適な塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。非限定的ではあるが、例示的な例は、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミンおよび亜鉛の塩を含む。また、例えばヘミスルフェート塩やヘミカリウム塩などの、酸および塩基のヘミ塩が形成すれ得る。
【0146】
化合物は、選択された投与の経路に適合した様々な形態で、医薬組成物として製剤化され、ヒト患者などの哺乳類宿主に投与することができる。例えば、医薬組成物は、骨内、静脈内、動脈内、腹腔内、頭蓋内、筋肉内、局所、吸入および/または皮下経路のために処方され、かつこれらを介して投与され得る。少なくとも1つの実施形態では、化合物および/または組成物は、損なわれた骨組織の空洞欠陥に、および/または骨折部位に直接(注射、配置、またはその他の方法を介して)投与され得る。少なくとも1つの実施形態では、化合物は、不活性希釈剤または吸収可能な食用担体のような薬学的に許容されるビヒクルとの組合せで全身投与することができる。経口治療投与の場合、活性化合物は、1つ以上の賦形剤と組合せて、摂取可能な錠剤、頬錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース、および同類のものなどの形態で使用することができる。組成物および調製物の割合は様々であり、活性成分(複数可)と結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、および/または甘味剤(当技術分野で知られるように)の約1~約99重量%の間であってもよい。このような、治療に役立つ組成物における活性化合物の量は、有効な投与量が得られるような量である。
【0147】
無菌条件下での非経口用化合物/組成物の調製は、例えば凍結乾燥によって、当業者に周知の標準的な薬学的技術を使用して容易に達成することができる。少なくとも1つの実施形態では、非経口用組成物の調製に使用される化合物の溶解度は、溶解度促進剤の組み込みなどの適切な製剤技術の使用によって高めることができる。
【0148】
前述のとおり、化合物/組成物はまた、注入または注射(例えば、針(マイクロニードルを含む)注射器および/または無針注射器を使用して)を介して投与することができる。活性組成物の溶液は、水性であり、任意選択で非毒性界面活性剤と混合され、ならびに/あるいは塩、炭水化物および緩衝剤などの担体または賦形剤を含むことができるが(好ましくは、3~9のpHで)、いくつかの用途では、滅菌非水性溶液として、または滅菌、パイロゲンフリー水またはリン酸緩衝食塩水のような適したビークルと組合せて使用する乾燥形態として、より適切に処方することができる。例えば、分散液は、グリセロール、液体PEG、トリアセチン、およびそれらの混合物中、および油中で調製することができる。通常の保管および使用条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための保存剤をさらに含むことができる。
【0149】
注射又は注入に適した医薬剤形は、無菌の注射用もしくは注入用の溶液または分散液の即席の調製に適合された活性成分を含む無菌の水性溶液もしくは分散液または無菌粉末を任意選択でリポソームにカプセル化された状態で、含み得る。すべての場合において、最終的な剤形は、無菌であり、流動性があり、および製造もしくは保存の条件下で安定である必要がある。液体担体またはビヒクルは、例えば、限定するものではないが、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体PEG(s)等)、植物油、非毒性グリセリルエステル、および/またはそれらの適切な混合物を含む溶媒もしくは液体分散媒体であり得る。少なくとも1つの実施形態では、適切な流動性は、リポソームの形成によって、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持によって、または界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の活動は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、および同様のものなどの様々な抗菌剤および抗真菌剤の添加によって防止することができる。ある場合には、糖類、緩衝剤、塩化ナトリウムなどの1つ以上の等張剤を含むことが望ましい。注射可能な組成物の長時間の吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような、吸収を遅延させるように配合された薬剤の組み込みによって引き起こされ得る。
【0150】
無菌の注射可能または注入可能な溶液は、活性化合物および/または組成物を必要な量の適切な溶媒に、必要に応じて上記の他の成分の1つ以上を組み入れ、次いでフィルター滅菌を行うことによって調製することができる。無菌注射液の調製に用いる無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥と凍結乾燥であり、これにより、有効成分の粉末と、事前に無菌ろ過した溶液中に存在する追加の所望の成分が得られる。
【0151】
局所投与のために、化合物を、固体、液体、またはゲルマトリックスであり得る許容される担体と組合せた組成物または製剤として骨に投与することが望ましいことがある。例えば、特定の実施形態では、有用な液体担体は、水、アルコールもしくはグリコール、または水-アルコール/グリコールブレンドを含むことができ、その中で化合物は、任意選択で、非毒性の界面活性剤と共に、有効なレベルで溶解または分散することができる。追加として、または代替として、抗菌剤などのアジュバントは、所定の用途に応じて最適な特性を最適化するために、追加することができる。結果として得た液体組成物は、吸収パッドから塗布したり、絆創膏および/または他の包帯に含浸させるために使用したり、ポンプ型またはエアロゾルスプレーヤーを使用して標的領域に噴霧したり、あるいは被験者の所望の領域(例えば、骨折部位)に単に直接塗布したりすることができる。
【0152】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、変性セルロースまたは変性鉱物質などの増粘剤も、被験者の皮膚に直接適用するために、広げやすいペースト、ゲル、軟膏、石鹸、および同類のものを形成する液体担体と共に採用することができる。
【0153】
本明細書で使用する時、用語「治療有効量」とは、(特に別段の記載がない限り)1回または治療サイクルの過程で投与した場合に、被験者の健康、幸福または死亡率に影響を与える(例えば、限定はしないが、骨折の治癒もしくは骨の成長を支持または促進させる)化合物の量を意味する。
【0154】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される任意の化合物または医薬組成物の治療有効量は、当技術分野で既知の方法(例えば、動物モデル、ヒトデータ、および同様の薬理活性を示す化合物のヒトデータ)に従い決定される。化合物の有用な投与量は、それらのインビトロ活性と動物モデルにおけるインビボ活性を比較することによって決定することができる。マウスおよび他の動物における有効な投与量をヒトに外挿する方法は、当技術分野で既知である。実際に、化合物の投与量は、宿主被験者の状態、処置される骨折、化合物の投与経路と、組織分布、ならびに他の治療法の共用(例えば、成長因子、幹細胞、天然移植片、生物学ベース、および合成ベースの組織工学的足場のようなものなど、骨の成長を促進する他の注射組成物の投与、ハードウェア移植、および/または超音波治療などとの併用で、ならびに/あるいは、例えば、インスリンのような他の治療薬の投与との併用で)の可能性に依存して相当に変化する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される任意の化合物または医薬組成物の治療有効量は、例えば、式(I)のXの効能(例えば、採用する同化剤のタイプ)、体重、投与の様式(例えば、皮下に)、処置される疾患または状態、疾患または状態その重症度、あるいは、それらの任意の組合せを考慮することによって決定する。治療における使用に必要な組成物の量(例えば、治療有効量または用量)は、特定の用途だけでなく、選択された塩(該当する場合)および被験者の特性(例えば、年齢、状態、性別、被験者の体表面積および/または質量、薬剤に対する耐性など)により異なり、最終的に、主治医、臨床医またはその他の裁量によるであろう。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される任意の化合物または医薬組成物の治療有効量は、約0.01mg/kg/日から約1,000mg/kg/日までである。例えば、治療有効量または用量は、患者体重1kgにつき約0.05mgから患者体重1kgにつき約30.0mg、または患者体重1kgにつき約0.01mgから患者体重1kgにつき約5.0mgにまで及び、これらは、患者体重1kgにつき0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、3.0mg、4.5mg、および5.0mgを含むが、これらに限定されない。静脈内投与量は、数桁低くなり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される任意の化合物または医薬組成物の治療有効量は、毎日、毎週、隔週、毎月、または隔月に投与される(例えば、皮下に)。
【0156】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される任意の化合物または医薬組成物は、治療有効量が、1~800回の投薬で投与される。特定の実施形態では、治療有効量の化合物または医薬組成物は、患者体重1kgにつき0.01mgから患者体重1kgにつき1mg、またはその間の化合物の濃度を有する。
【0157】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される任意の化合物または医薬組成物(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4など)の(例えば、個体に投与される)治療有効量は、約0.01mg/kg/日から約1,000mg/kg/日までである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される任意の化合物または医薬組成物(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4など)の治療有効量(例えば、個体に投与)は、約1μg/投与から約10mg/投与である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される任意の化合物または医薬組成物(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4など)の治療有効量(例えば、個体に投与)は、約50μg/投与~約5mg/投与である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される任意の化合物または医薬組成物(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4など)の(例えば、個体に投与)治療有効量は、約0.01nmol/kg/投与~約10ng/kg/投与である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される任意の化合物または医薬組成物(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4など)の治療的有効量(例えば、個体に投与)は、約0.1nmol/kg/投与~約5ng/kg/投与である。
【0158】
化合物の治療有効な総量は、単回投与または分割投与で投与することができ、医師の裁量で、本明細書に与えられる一般的な範囲から外れてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される任意の化合物または医薬組成物は、週に1回または2回治療有効量で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される任意の化合物または薬学的組成物は、週に1回治療有効量で投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される任意の化合物または医薬組成物は、週に2回治療有効量で投与される。
【0159】
有効量のコンジュゲートを含む医薬組成物などの、有効量のX-Y-Zコンジュゲートは、任意の適切な経路によって投与することができる。適切な経路の例は、皮下注射などの注射によるものである。適切な経路の他の例は、非経口および経腸である。
【0160】
処置の方法
本明細書におけるいくつかの実施形態では提供されるのは、提供される化合物および/または組成物を使用して(例えば、それを必要とする個体における)骨折を処置する方法である。化合物、組成物および方法は、化合物または組成物内に存在する同化剤の標的外効果を防止するために、骨折部位を(例えば、選択的に)標的とする戦略を活用し得る。
【0161】
いくつかの実施形態では、患者(例えば、それを必要とする)の骨折を処置する方法は、治療有効量の化合物(例えば、式(I)の構造を有する)または本明細書に提供される医薬組成物を患者に投与する(例えば、皮下)ことを含み、それにより患者の骨折を処置する。いくつかの実施形態では、治療有効量の本明細書で提供される化合物または医薬組成物の投与は、投与後2~3週間以内に、患者の疼痛の軽減をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物または医薬組成物は、治療有効量で投与されてから3週間以内に患者の疼痛の軽減をもたらす。いくつかの実施形態では、患者(例えば、それを必要としている)は、骨折を起こしやすい。例えば、患者は、糖尿病、骨粗しょう症、顎顔面損傷(例えば、顎顔面骨折)、顎顔面欠乏、および顎顔面欠損からなる群から選択される1つ以上の併存症を有し得る。
【0162】
患者(例えば、それを必要としている)における骨の成長を促進するための方法も提供される。いくつかの実施形態では、そのような方法は、本明細書で提供される治療有効量の化合物(例えば、式(I)の構造を有する)または医薬組成物を患者に投与する(例えば、皮下に)ことを含み、それによって、治療前と比較して患者の骨の骨ミネラル密度が増加する。いくつかの実施形態では、骨における骨ミネラル密度の増加は骨折部位で生じる。いくつかの実施形態では、骨における骨ミネラル密度の増加は、投与ステップの前に骨に存在する1つ以上の吸収窩(例えば、患者が骨粗しょう症を患っている場所)で起こる。
【0163】
いくつかの実施形態では、患者は、糖尿病を患っている。いくつかの実施形態では、患者は糖尿病を患い、Xは、アバロパラチド(配列番号2)、配列番号7、配列番号8(グルタミン酸残基10のコンジュゲート)、骨同化活性を有するその誘導体(例えば、自然発生のアミノ酸または非自然発生のアミノ酸との挿入、欠失、置換などの1つ以上のアミノ酸変異)、または骨同化活性を有するそのフラグメントである。
【0164】
いくつかの実施形態では、患者は骨粗しょう症である。いくつかの実施形態では、患者は骨粗しょう症を患い、式(I)のXは、副甲状腺ホルモン、骨同化活性を有するその誘導体(例えば、天然由来のアミノ酸または非天然由来のアミノ酸との挿入、欠失、置換などの1以上のアミノ酸変異)、または骨同化活性を有するそのフラグメントである。
【0165】
いくつかの実施形態では、患者は、例えば、マイクロプレートで安定される下顎骨骨切りなどの顎顔面損傷(すなわち、顎顔面骨折)を患う。患者は、骨移植片(例えば、オッセオインテグレーション)、補綴インプラント(例えば、プレート、ネジ、および/またはオッセオインテグレーション)、または医師により誘発される骨の欠損(例えば、下顎骨骨切り、頭蓋欠損、または移植片の欠損)が含まれる欠損を患うことがある。いくつかの実施形態では、患者は、顎顔面欠損を患う。
【0166】
いくつかの実施形態では、方法は、骨の骨折(例えば、疼痛止め、骨移植片、インプラント(例えば、メッシュ)、成長ホルモン、および同様のもの)、または患者の1つ以上の併存疾患を処置するための第2の治療を患者に施すことをさらに含み得る。患者が少なくとも糖尿病を患ういくつかの実施形態では、第2の治療を施すことは、インスリンを治療有効量で患者に投与することを含み得る。患者が少なくとも骨の骨折を患っているいくつかの実施形態では、第2の治療を施すことは、骨の骨折部位にハードウェア(例えば、メッシュまたはピン)、または1つ以上の治療化合物を移植することを含み得る。
【0167】
図2Aに示すように、いくつかの実施形態では、投与される場合、本明細書で提供される特定の化合物の標的リガンド(例えば、式(I)のZがヒドロキシアパタイトの標的リガンドを含む)は、大腿骨骨折部位において異なる特異性で蓄積され得る(図2Bを参照)。いくつかの実施形態では、テトラサイクリン、モノビスホスホネート、ポリホスフェート、および125I-チロシンで標識され、かつ骨折持ちマウスに静脈内注射された(L)Asp8(8個のL-アスパラギン酸からなる酸性オリゴペプチド)は、大腿骨骨折部位に異なる特異性で蓄積する(図2B)。いくつかの実施形態では、骨折した大腿骨の、健常な大腿骨に対する125I-標識テトラサイクリンの選択比率は2.6であり、このことは、骨格全体の代わりに、主に骨折部位で同化作用を引き出す薬剤の開発を支持するので重要である。
【0168】
いくつかの実例では、骨折対健常の比率は、テトラサイクリンリガンド(式(I)のZ)がアレンドロネート、ポリホスフェート、および/または酸性オクタ-アスパラギン酸に交換されるに従って、連続的に増加する。いくつかの実施態様では、オクタ-アスパラギン酸は、健康な骨よりも骨折した骨に対して、最高の特異性(例えば、試験したリガンドにおける)を有し、選択比率は11.2である。いくつかの実施態様では、テトラサイクリンは、健康な骨よりも骨折した骨に対して、選択比率が最も高い特異性(例えば、式(I)のZについて試験したリガンドにおいて)を有する。
【0169】
いくつかの実例では、モノ-ビスホスホネートおよびポリホスフェートは、骨折した骨に対する特異性の低下を示す。いくつかの実施態様では、モノビスホスホネートおよびポリホスフェートペプチド標的能力は、より特異的な骨指向性リガンドと比較される。いくつかの実施態様では、PTHrP(配列番号1)のN末端34アミノ酸を125Iで標識し、モノビスホスホネート(例えば、アレンドロネート)、トリビスホスホネート(例えば、中央ハブに結合した3つのアレンドロネートから構成される(図12))、ポリホスフェート(例えば、無水物結合によって接続された45個のリン酸からなる)、またはデカアスパラギン酸(例えば、本明細書に記載のオクタアスパラギン酸と同様である)にテザーされる。例えば、標的配列番号1の生体内分布は、組織対パーセント注射量/gのグラフである図3Aに示される。
【0170】
いくつかの実例では、標的リガンド(例えば、式(I)のZ)としてのモノビスホスホネート(例えば、アレンドロネート)は、ある量の(例えば、中程度の)125I-配列番号1(1-34)を骨折部位に送達することを可能にする。いくつかの実施態様では、標的リガンド(例えば、式(I)のZ)としてのモノビスホスホネート(例えば、アレンドロネート)は、健康な骨よりも骨折した骨に対して約2:1の特異性を有する(図3C)。本明細書のいくつかの実例では、例えば図3C(例えば、コンジュゲート対骨折した/健康な大腿骨比のグラフ)のように、本明細書に記載の化合物又は組成物(例えば、配列番号1)で標的化された骨折カルスと反対側の健康大腿骨との選択性の比が挙げられる。
【0171】
本明細書におけるいくつかの実例では、1つ以上のアレンドロネート(例えば、少なくとも1つのアレンドロネート、少なくとも2つのアレンドロネート、少なくとも3つのアレンドロネート、またはそれ以上)を含む化合物(例えば、リガンド)が提供される。いくつかの実例では、本明細書で提供される化合物(例えば、3つのアレンドロネートを含む)は、骨折への標的化を減衰させる。いくつかの実施態様では、本明細書で提供される化合物(例えば、ポリホスフェート)は、125I-配列番号1(1~34)の骨折表面への送達が最小限である(例えば、注入された薬物の1.55%のみが24時間後に骨折表面に存在する)。いくつかの実施態様では、本明細書で提供される化合物(例えば、AOP(例えば、10個のアスパラギン酸から構成される))は、骨折した骨への(例えば、高い)特異的送達(例えば、モノビスホスホネートよりも骨折に対する特異性および骨折における蓄積性が3.5倍高い(図3B))を有する。本明細書におけるいくつかの実施態様では、例えば図3B(例えば、コンジュゲート対パーセント注射量/gのグラフ)など、骨折における、標的化合物(例えば、配列番号1)および遊離化合物(例えば、配列番号1)の骨折の蓄積(例えば、注入後24時間のマウスの大腿骨)が提供される。
【0172】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のAOPは、本明細書に記載の付属する同化ペプチド(例えば、式(I)のX)を骨折表面に送達する。いくつかの実施態様では、(1)ペイロードの化学的特性、(2)AOP側鎖構造、(3)AOP長、(4)AOP分岐、および/または(5)AOP安定性が、付属する同化ペプチドを骨折表面に送達するAOPの能力に影響を与える。
【0173】
いくつかの実施態様では、本明細書に記載の治療用ペイロードの特性(例えば、サイズ、電荷、および疎水性)は、骨折部位に(例えば、活性薬剤;例えば、式(I)のX)を濃縮するために付属するAOPに影響を与えることがある。いくつかの実例では、CK2.3(例えば、正味電荷が+5のカチオン性ペプチド)、オステオポンチン由来ペプチド(ODP)(例えば、正味電荷が-3のアニオン性ペプチド)、または化学伝達隠蔽ペプチド(CTC)(例えば、正味電荷が0の中性ペプチド)は、治療用ペイロードである。いくつかの実施態様では、P4(例えば、疎水性指標(GRAVY)が0.49である疎水性ペプチド)は、治療用ペイロードである。いくつかの実施態様では、F109(例えば、9アミノ酸の鎖長を有する)またはカゼインキナーゼ2.3ペプチド(CK2.3)(例えば、39および30アミノ酸の鎖長を有する)である。いくつかの実施態様では、治療用ペイロードは、表1に提供される。いくつかの実例では、骨同化ペプチドは、L-Asp10に結合し、ヨードゲン125Iで放射性標識される(例えば、大腿骨の骨折したマウスに注射し、組織生体内分布の評価の前に18時間循環させられる)。
【0174】
【表1】
【0175】
本明細書に提供されるのは、骨折後10日の大腿骨中節骨折(midshaft femur fractures)を有するND-4 Swiss-Websterマウス(n=6)への(L)Asp10に結合した6種類の異なる放射性ヨウ素化ペイロードの注入24時間後の生体分布を示す組織対注射量パーセント/gのグラフである(例えば、図4)。いくつかの実例では、ペプチドの化学的特性は、L-Asp10の、骨折表面にペプチドを標的にする能力にほとんど影響を及ぼさなかった(図4参照)。いくつかの実例では、39アミノ酸のPACAPは、骨折の標的性において他の同化ペプチドとは多少異なっていた。いくつかの実例では、ペイロードサイズも他の主要な化学的/物理的変数も、AOPを介した骨ターゲティングに対して整合性がある影響を及ぼさなかった(例えば、同様の長さのペプチド(CK2.3)は、骨折蓄積の減少を示さなかったため)。いくつかの実例では、他の同化作用のあるカーゴも同様にターゲティングするようである(例えば、付属するAOPがペプチドカーゴの生体内分布で優位になり得ることを示唆している)。
【0176】
ペプチド分岐がペイロード標的に及ぼす影響を調べるために、それぞれ5個のアスパラギン酸の2個の鎖または10個のアスパラギン酸の単一の直鎖で構成される酸性オリゴアスパラギン酸の骨折表面にCK2.3ペイロードを送達する能力が、比較された。本明細書に提供されるのは、収集した組織対パーセント注射量/gのグラフであり(例えば、非標的CK2.3に対する、10(L)アスパラギン酸の分岐鎖または直鎖に結合した放射性ヨウ素化CK2.3の生体内分布を示す)(例えば、図5)。生体内分布は、骨折後10日目の大腿骨中節骨折を負ったND-4 Swiss-Websterマウス(n=5)に注入後18時間して決定した。図5に示すように、いくつかの実例では、直鎖状ペプチドは分岐状ペプチドに比べて骨折表面への濃縮が2.7倍良好であった。さらに、非標的CK2.3は骨折部位にほとんど取り込まれなかったことから、非特異的な外傷に媒介されるCK2.3の沈着が骨折部位での酸性オリゴペプチド結合体の蓄積に大きく寄与するものから除外してもよい。
【0177】
いくつかの実例では、本明細書に記載のAOPの骨折表面との相互作用は、露出したカルシウムとの相互作用によって媒介される。例えば、カルシウムは、隣接するアニオン電荷が8.6Aの距離だけ離れているときにキレートすることができる。AOPのアニオン性側鎖の長さが、負電荷間のこの分離距離を決定し得ることを認識し、側鎖カルボキシルがそれぞれ1、2および3個の炭素だけペプチド骨格から延び、オリゴペプチド側鎖のアニオン電荷間の分離が増加することを可能にしたアスパラギン酸、グルタミン酸およびアミノジピン酸の標的能力を、比較した。
【0178】
いくつかの実例では、図6は、組織対パーセント注射量/グラムのグラフを示す(例えば、非標的CK2.3に対する、10(L)アスパラギン酸、10(L)グルタミン酸、または10(L)アミノアジピン酸の直鎖に結合した放射性ヨウ素化CK2.3の生体内分布を示すものである)。生体内分布は、骨折後10日の大腿骨中節骨折を負ったND-4Swiss Websterマウス(n=5)に注射後18時間で決定した。いくつかの実例では、デカグルタミン酸およびデカアスパラギン酸は、骨折部位で最大の取り込みを表した(例えば、非標的Ck2.3よりも6倍多い蓄積を示し、非標的Ck2.3と有意な差はないが、アミノアジピン酸が骨折保持を促進する)(図6)。いくつかの実例では、グルタミン酸またはアスパラギン酸からなるAOPは、カルシウム結合に最適な電荷分離を有するペプチドを構成する(例えば、分岐ペプチドが結合を減少させることを説明する)。自然は、骨石灰化におけるカルシウム結合の機能のためにグルタミン酸を主に選択してきたいう事実と、グルタミン酸オリゴマーの合成は、アスパルタミドの不要な形成によりアスパラギン酸オリゴマーよりも、はるかに効率的であり得るという観測が繰り返されたこととにより、骨折を標的としたグルタミン酸オリゴマーの最適化に焦点を当てることを促進した。
【0179】
式(I)のZとして採用される分子の骨折標的能力に対するオリゴペプチドの鎖長さの影響を調べるために、10または20アミノ酸長のオリゴグルタミン酸の、骨折した大腿骨表面に同じCK2.3カーゴを送達する能力が比較された。図7は、組織対注射量パーセント/gのグラフであり、非標的CK2.3に対する、10または20(L)のグルタミン酸の直鎖に結合した放射性ヨウ素化CK2.3の生体内分布を示すものである。生体内分布は、注射後18時間(例えば、骨折後10日の大腿骨中節骨折を負ったND-4 Swiss-Websterマウス(n=5)へ)で決定された。いくつかの実例では、長い方のオリゴグルタミン酸に繋留されたCK2.3は、短い方のオリゴグルタミン酸よりも骨折部位に多く(例えば、3.3倍)蓄積される。非コンジュゲート酸性オリゴペプチドの親和性は、わずか8アミノ酸の鎖長で最大になるようであるが(例えば、Sekidoら、“Novel drug delivery system to bone using acidic oligopeptide: pharmacokinetic characteristics and pharmacological potential,” doi.org/10.3109/10611860108997922 (2001)を参照)、20量体の親和性が10量体の親和性よりも増加したことが観察されたが、その理由は、骨折表面でCK2.3のサイズのペイロードを滞留するためには、ハイドロキシアパタイトとの結合がより広範囲に必要だからである。また、20量体によるCK2.3ペイロードの局在性の向上は、標的リガンドにおけるペイロードによる立体障害が相対的に減少したことが一因であり得る。
【0180】
他のグループによる研究は、酸性オリゴペプチドが容易に経口生物学的利用できないことを実証している(例えば、Shajiら、“Oral protein and peptide drug delivery”Indian J.Pharmaceutical Sci.70:189-200(2005)を参照)が、いくつかの実例では、頻繁に注射することは患者のコンプライアンスを妨げ、それゆえに、問題となることがある。本明細書のいくつかの実例では提供されるのは、長期持続型(例えば、注射可能な)製剤である。いくつかの実例では、D-およびL-アミノ酸から構成される酸性オリゴペプチドのヒドロキシアパタイトに対する親和性は同様である(Sekidoら(2001)、前掲書)。いくつかの実例では、(例えば、代謝の悪い)D-グルタミン酸で構成される直鎖オリゴグルタミン酸鎖(例えば、L-グルタミン酸で構成される容易に消化できる鎖よりも)は、骨折表面でのより長い薬剤の滞留をもたらした。いくつかの実施例では、骨折部位に蓄積し持続するグルタミン酸20量体のDおよびLエナンチオマーの能力が本明細書で比較された。
【0181】
例えば、図8は、20のL-またはD-グルタミン酸の直鎖に結合した放射性ヨウ素化CK2.3の非標的CK2.3に対する生体内分布を表す組織対注射量パーセント/gのグラフである。いくつかの実例では、生物内分布は、(例えば、骨折後10日の大腿骨中節骨折を有するND-4 Swiss-Websterマウス(n=5)へ)注射後18時間に決定される。例えば、図8に示すように、Glu20のDエナンチオマーは、骨折した大腿骨においてLエナンチオマーよりも4.7倍、非標的CK2.3よりも91.9倍多く蓄積した。
【0182】
いくつかの実例では、蛍光色素SO456は、Asp10ペプチドのDとLの両方のエナンチオマーに付着した(図9参照)。骨折した大腿骨と健康な対側大腿骨の両方において、異なる標識されたエナンチオマー鎖の蓄積を定量化した。
【0183】
図9は、注入後の時間対μg色素/mg組織のグラフであり、これは、骨折後10日の中大腿骨中節骨折を負ったND-4 Swiss-Websterマウスにおける、10個のL-またはD-アスパラギン酸の直鎖と結合したS0456(近赤外蛍光体)の注入後の異なる時点における蓄積を示す。いくつかの実例では、健常体(例えば、損傷していない反対側の大腿骨)および骨折した大腿骨における標識化合物の蓄積を、死後に溶解した大腿骨から抽出された標識色素の量として定量化した。例えば、図9に示すように、Asp10の保持半減期は~35時間であるのに対し、(D)Asp10のそれは100時間以上であると予測された。いくつかの実例では、この差は、放射性標識ペプチドペイロードで検出されたものよりわずかに小さく、このことは、蛍光ペイロードに比べてペプチドペイロードの半減期が短いことに起因し得る。いくつかの実例では、安定性が強化されたことが、例えば、腎臓を介したクリアランスの延長をもたらし、これは、ゆっくりと分解されるD-異性体がL-異性体よりも骨および他の組織からゆっくりと放出されたためであり得る。
【0184】
いくつかの実施態様では、DE20は、本明細書で提供される他の標的リガンド(例えば、どの標的リガンド)よりも有意に多くのカーゴを骨折部位に送達した(図10参照)。例えば、図10は、標的リガンド対パーセント注射量/グラムのグラフであり、非標的CK2.3に対する、異なる酸性オリゴペプチドに結合した放射性ヨウ素化CK2.3の骨折大腿骨における蓄積を示す。生体内分布は、(例えば、骨折後10日の大腿骨中節骨折を有するND-4 Swiss-Websterマウス(n=5)へ)注射後18時間に決定した。いくつかの実例では、骨折した大腿骨における標識化合物の蓄積は、組織1グラムあたりのパーセント注射量として報告される。
【0185】
いくつかの実例では、例えば、標的リガンドの延長の影響が予想以上に大きかったなどの理由で、DE10およびDE20オリゴペプチドの生体内分布を視覚的に比較するために、両方のオリゴペプチドのSPECT/CT造影を実施し、それらの生体内分布を視覚的に検討する。例えば、図11Aは、DE10酸に結合した99TcをキレートするTcキレーターEC20の単一光子放射断層撮影/コンピュータ断層撮影(SPEC/CT)画像(99TcをキレートするEC20(D)Glu10の構造は、図11Dに示される)であり、図11BはDE20酸に結合した99TcをキレートするTcキレーターのSPEC/CT画像である。図11Aおよび図11Bに示されるように、両酸性オリゴペプチドは、標的放射線造影剤がほとんど骨折部位に結集された高分解能の画像をもたらした。体積に対する信号の比は、成長板など他の吸着部位に比べて、骨折部では10倍を超えて高かった。それでも、いくつかの実例では、成長板への吸着は、患者を大人に限定し得る。
【0186】
第2の生体分布分析も実施された。組織対注入用量パーセント/gのグラフである図11Cは、異なる組織における標識DE10およびDE20化合物の蓄積の定量化を、グラムあたりの注入用量のパーセントとして示す(n=10)。信号の大部分は、大腿骨の骨折カルスにおいて観察され、骨の代謝回転が高い部位では微量の薬剤濃度が観察された。いくつかの実例では、DE10とDE20は同様の特異性を有していたが、DE20の方が骨における滞留時間が長かった。図11Cに示す結果は、図10の結果と非常に類似している(すなわち、DE20は、DE10よりも骨折部位で~5倍効率的に蓄積する)。したがって、本明細書に記載の試験において、DE20は、本明細書で試験されたすべてのリガンドの中で最大の骨折標的能力を示し、DE20オリゴペプチドは、骨折部位に対する最大の選択性を示した(例えば、本明細書で試験された標的リガンドのすべての中で)。
【0187】
また、本明細書の標的同化化合物の骨折を治癒する効力も、I型糖尿病を経験するマウス対象においてインビボで試験された。図13は、試験した薬剤(生理食塩水およびインスリン(対照)と比較して、配列番号3、5、6、または7を含む化合物)対骨量(BV)のグラフである。これらの結果は、4週間後における、標的同化コンジュゲートの、雄性IGS-1骨折保有マウス(n=10)に対するインビボでのI型糖尿病骨折治癒効力が、対照よりも高い(すなわち、より治療的に有効である)ことを指示する。
【0188】
図14は、試験した薬剤(生理食塩水およびインスリン(対照)と比較した配列番号3、5、6、または7を含む化合物)対骨量/全体積(BV/TV)のグラフを表す。これらの結果は4週間後の、雄性IGS-1骨折担架マウス(n=10)に対する、標的同化コンジュゲートのインビボでのI型糖尿病骨折治癒効果を表す。
【0189】
図15は、試験した薬剤(生理食塩水およびインスリン(対照)と比較した配列番号3、5、6、または7を含む化合物)対最大荷重(N)のグラフであり、これは、4週間後の雄性IGS-1骨折を負っているマウス(n=10)に対する標的同化コンジュゲートの、インビボのI型糖尿病骨折治癒効力を示している。いくつかの実例では、最大荷重は、死後の4点曲げ解析において再度骨折する前に、治癒した大腿骨が耐えた最大力を表す。いくつかの実例では、最大荷重は、骨折修復部位において骨がどのくらい強いのかを表す尺度である。
【0190】
図16は、試験した薬剤(生理食塩水及びインスリン(対照)と比較した配列番号3、5、6、または7を含む化合物)対骨折までの仕事量(mJ)のグラフで、4週間後のオスIGS-1骨折保有マウス(n=10)に対する標的同化コンジュゲートのインビボのI型糖尿病骨折治癒の有効性を示す。いくつかの実例では、骨折までの仕事量は、死後の4点曲げ解析において再骨折する前に、治癒した大腿骨が吸収したエネルギーの総量を表す。いくつかの実例では、骨折までの仕事量は、骨折修復部位において骨がどのくらい強いのかを表す尺度である。
【0191】
図17は、試験した薬剤(生理食塩水およびインスリン(対照)と比較した配列番号3、5、6、または7を含む化合物)対降伏後の変位(mm)のグラフであり、4週間後の雄性IGS-1骨折保有マウス(n=10)に対する標的同化コンジュゲートでのインビボのI型糖尿病骨折治癒効力を示す。ここで、降伏後の変位は、骨がどの程度脆いかの尺度である(例えば、糖尿病は、一般的に、骨をより脆くする)。いくつかの実例では、本明細書で提供される化合物は、骨の脆さを軽減させた(例えば、図17)。
【0192】
図18は、日数対血糖値(mg/dl)のグラフであり、これは、配列番号3、5、6、または7を含む化合物(ならびにインスリンおよび生理食塩水の対照)の4週間の処置期間中のI型糖尿病マウスの平均血糖値を示す。いくつかの実例では、異なる処置群の血糖の長期にわたる追跡は、例えば、本明細書で提供される化合物の効果が血糖代謝を介さないことを示唆するように、インスリンだけが高血糖に大きな影響を与えたことを示した。いくつかの実例では、標的リガンドの、配列番号5のC末端への付着は、配列番号5のグルコース調節効果を妨げる。いくつかの実例では、カルスのマイクロCTスキャンは、配列番号7を除くすべての処置が軟骨内骨化に有利であることを例示した。
【0193】
図19は、日数対体重の平均変化率のグラフであり、これは、処置の期間中の、I型糖尿病骨折マウス治療群の平均体重変化を示す。いくつかの実例では、生理食塩水マウスは、例えば、高用量でいくらかの毒性を示した配列番号6を含む薬剤(ダサチニブの標的コンジュゲート(例えば、D10-エステル-ダサチニブ))で処理したマウスと同様に、(糖尿病を患っているように)体重が減った。いくつかの実例では、配列番号6は、カルスの石灰化を改善することなく強度を改善した(例えば、これはその老化細胞除去効果によるものであり得る)。
【0194】
したがって、いくつかの実例では、本明細書で提供される化合物は、(例えば、総重量の変化に関して)非毒性である。さらに、本明細書で提供される化合物の投与は、石灰化および強度を改善することができる(例えば、高血糖状態がインスリン治療群を除くいずれの群においても制御されなかったにしても)。いくつかの実例では、高血糖は幹細胞に対して毒性である。
【0195】
特定の実施形態では、インスリンは、本明細書に提供される化合物及び組成物と共に投与される。図20A~22Cに示すデータによって支持されるように、本明細書の化合物は、インスリンのみで処置した群と比較して、治癒を有意に改善することができる。
【0196】
図20Aは、生理食塩水およびインスリン(対照)と比較して試験した本明細書の薬剤(配列番号4、8、または9を含む)対骨量のグラフであり、これは、4週間後の雄性IGS-1骨折保有マウス(n=10)に対する標的同化コンジュゲートの、インビボI型糖尿病骨折治癒の効力を示している。図20Aに示されるように、骨量は、骨折カルスの最も厚いマイクロCTスライド100枚の骨量を示し、骨折修復部位で骨がどれだけ石灰化したかを指標である。図20Bは、試験した薬剤(対照として生理食塩水およびインスリンと比較して)対骨量/全体積(BV/TV)のグラフであり、これは4週間後の雄性IGS-1骨折保有マウス(n=10)に対する標的同化コンジュゲートのインビボI型糖尿病骨折治癒の有効性を示す。ここで、BV/TVは、骨折カルスの最も厚いマイクロCTスライド100枚の総体積で割った骨量を表し、骨の折修復部位で、骨がどのくらいの密度であるのかを表す指標である。
【0197】
いくつかの実例では、図20Aおよび20Bに示すように、本明細書で提供される化合物は、(例えば、インスリン単独での処置と比較して)カルスを石灰化することを改善した。いくつかの実例では、そのような化合物は、(例えば、インスリン単独よりもより多く)骨折カルス密度を増加させた。
【0198】
図21Aは、インスリン投与と組合せて試験した薬剤(例えば、配列番号4、8、または9)対骨梁の厚さのグラフであり、これは、4週間後の雄性IGS-1骨折保有マウス(n=10)に対する標的同化コンジュゲートのインビボのI型糖尿病骨折治癒の有効性を示す。図21Bは、インスリン投与と組合せて試験した薬剤(例えば、配列番号4、8、または9)(生理食塩水およびインスリン単独と比較して)対骨梁隔のグラフであり、これは、4週間後の雄性IGS-1骨折保有マウス(n=10)に対する標的同化コンジュゲートのインビボのI型糖尿病骨折治癒の有効性を示す。
【0199】
図22Aは、インスリンと共に試験した薬剤(例えば、配列番号4、8、または9)対最大力(N)のグラフであり、4週間後の雄性IGS-1骨折保有マウス(n=10)に対する標的同化コンジュゲートのインビボ骨折治癒の有効性を示す。ここで、最大力は、治癒した大腿骨が再骨折する前に耐えた最大力を表す。図22Bは、インスリン投与と組合せて試験した薬剤(例えば、配列番号4、8、または9)(生理食塩水およびインスリン単独と比較して)対骨折までの仕事量(mJ)のグラフを表示し、これは、4週間後の雄性IGS-1骨折保有マウス(n=10)に対する標的同化コンジュゲートのインビボ骨折治癒の有効性を表示する。骨折までの仕事量は、治癒した大腿骨が再骨折するまでに吸収したエネルギーの総量を表し、骨折修復部位で骨がどのくらい強いのかを表す指標となることがある。図22Cは、インスリン投与と組合せて試験した薬剤(例えば、配列番号4、8、または9)(生理食塩水およびインスリン単独と比較)対モジュラス(MPa)のグラフであり、4週間後の雄性IGS-1骨折保有マウス(n=10)に対する標的同化コンジュゲートのインビボ骨折治癒の有効性を示す。剛性は、死後の4点曲げ解析における治癒した大腿骨のヤング率の尺度であり、骨が変形に対してどのくらい抵抗するかを指標となることがある。いくつかの実例では、本明細書で提供される化合物(例えば、アバロパラチド(配列番号3内にある配列番号2)および配列番号8を含む)は、インスリン対照と比較して(例えば、著しく)強度を向上させる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物(例えば、アバロパラチド(配列番号2)および配列番号8)は、インスリン単独よりも強度および石灰化を改善する。
【0200】
いくつかの実例では、本明細書で提供される化合物は、(例えば、生理食塩水と比較して(例えば、エストロゲン置換よりも))骨折カルスの石灰化および密度を改善する(図23A~23B)。
【0201】
図23Aは、(例えば、配列番号3、6、7、または10を含む)試験した薬剤対骨量のグラフであり、これは、4週間後の雌性卵巣摘出Swiss Webster骨折保有マウス(n=9)に対する標的同化コンジュゲートの、インビボの閉経後骨粗しょう症骨折治癒の有効性を示す。図23Aで言及したように、骨量は骨折カルスの最も厚い100枚のマイクロCTスライスの骨量を表し、骨折修復部位において骨がどのくらい石灰化したのかを表す尺度である。図23Bは、試験した薬剤対骨量/全体積(BV/TV)のグラフであり、これは、4週間後の雌性卵巣摘出Swiss Webster骨折保有マウス(n=9)に対する標的同化コンジュゲートの、インビボでの閉経後骨粗しょう症骨折治癒の有効性を示す。図23Bにおいて、BV/TVは、骨折カルスの最も厚い100枚のマイクロCTスライスの全体積で割った骨量を表し、骨折修復部位の骨がどのくらいの密度かを表す指標である。
【0202】
いくつかの実例では、本明細書に提供される化合物は、大腿骨の強度を改善する(例えば、図24A~24Cを参照)。
【0203】
図24Aは、(例えば、配列番号3、6、7または10を含む)試験した薬剤対最大荷重(N)のグラフであり、4週間後のOVX Swiss Webster骨折保有 雌性マウス(n=9)に対する標的同化コンジュゲートのインビボ閉経後骨粗しょう症骨折治癒の有効性を示す。図24Aにおいて、最大荷重は、治癒した大腿骨が再骨折するまでに耐えた最大力を表す。
【0204】
図24Bは、(例えば、配列番号3、6、7または10を含む)(対照として生理食塩水またはエストロゲンと比較して)試験した薬剤対骨折までの仕事量(mJ)のグラフであり、4週間後の雌性OVX Swiss Webster骨折保有マウス(n=9)に対する標的同化コンジュゲートの、インビボでの閉経後骨粗しょう症骨折治癒の有効性を示す。図24Bにおいて、骨折までの仕事量は、骨折修復部位の骨がどのくらい強いのかを表す指標である。
【0205】
図24Cは、(例えば、配列番号3、6、7または10を含む)(対照として生理食塩水またはエストロゲンと比較して)試験した薬剤対剛性(MPa)のグラフであり、これは、4週間後の雌性OVX Swiss Webster骨折保有 雌性マウス(n=9)に対する標的同化コンジュゲートの、インビボでの閉経後骨粗しょう症骨折治癒の有効性を示す。図24Cにおいて、剛性は、死後の4点曲げ解析において、治癒した大腿骨のヤング率の指標であり、骨の変形に対してどのくらい抵抗があるかを表す指標として使用することができる。
【0206】
いくつかの実例では、本明細書で提供される化合物は、骨折大腿骨の治癒を(例えば、有意に)改善する(例えば、本明細書に記載の低エストロゲン状態において)(例えば、エストロゲンの補充でエストロゲンの喪失を制御するよりはるかに良好である)。いくつかの実例では、本明細書で提供される化合物は、骨折を患う骨粗しょう症患者に投与される。
【0207】
図25は、(例えば、配列番号3、6、7または10を含む)(対照として生理食塩水またはエストロゲンと比較して)試験した薬剤対血清カルシウム濃度(mg/dl)のグラフであり、これは、大腿骨中節骨折モデルのSwiss Websterマウスにおける血清カルシウムに対する21日間の処理の効果を示す。いくつかの実例では、(例えば、遊離同化剤とは対照的に)本明細書に記載の標的同化剤を使用することは、例えば、副甲状腺ホルモンに応じて腎臓で起こるカルシウム代謝調節への影響を制限できるため、骨折を治療するのに有益である。
【0208】
いくつかの実例では、骨折部位における配列番号4の上昇した蓄積は、骨折治癒を改善する(例えば、図26図30)。いくつかの実例では、骨粗しょう症のアバロパラチド(配列番号2)治療に処方されるヒト用量のアロメトリックスケーリングによって計算される開始用量の投与後の大腿骨骨折治癒時間を比較する。いくつかの実例では、CT画像は、非標的アバロパラチドによる治療開始の3週間後に撮像された骨沈着が骨折の周辺部に集中しており、対向するカルスを橋渡しする(つなげる)密度が最小であることを示している(例えば、図35参照)。
【0209】
いくつかの実例では、例えば、標的アバロパラチド(配列番号4)による3週間の治療後、本明細書に提供される化合物の投与に続いて、骨折部全体に骨密度が(例えば、より)均一に分布する(例えば、カルス全体のサイズもアバロパラチド処置マウスにおけるそれを上回る)。骨の形態分析では、配列番号4で処理したマウスにおいて、全骨量(全体積;TV)に対する石灰化量(骨量;BV)の比が1.5倍増加することが確認された。さらに詳細な形態分析により、この骨密度の増加は、配列番号4で処理した大腿骨における海綿体の厚さの増加よりも、骨梁幅の減少に主に起因することがさらに判明した。
【0210】
いくつかの実例では、例えば、観察された骨堆積の増加が機械的特性の改善につながるかどうかを立証するなどのために、治癒した大腿骨を再骨折するまで曲げるために必要な力が測定された。いくつかの実例では、配列番号4で処理した骨折(例えば、大腿骨中節骨折を有するマウスの)は、遊離アバロパラチド処理した大腿骨よりも2.5倍大きい最大荷重を維持することが観察された(図32)。
【0211】
いくつかの実例では、配列番号4で処理したマウスにおいて、骨折するのに必要な力は、同じまたは類似のマウスにおける対側の健康な大腿骨、または生理食塩水で処理したマウスにおける未修復大腿骨を骨折するのに必要な力を上回った。このことは、この時点での修復された大腿骨が、元の折れていない大腿骨よりも30%強くなっていることを示唆する。いくつかの実例では、(例えば、同様の機械的研究において)骨折するまでの仕事量は、大腿骨中節骨折を有するマウスのアバロパラチド処理した大腿骨(図33)よりも配列番号4で処理した大腿骨の方が平均して3.5倍高かった。
【0212】
まとめると、これらのデータは、D-Glu20を介したアバロパラチドの骨折表面への累積が治癒プロセスを大幅に促進し、このことが、骨折した大腿骨を、生理食塩水またはアバロパラチド処理したマウスにおける大腿骨よりも迅速に完全な機械的強度に戻すことを実証している。
【0213】
いくつかの実例では、配列番号4は、(例えば、骨治癒を改善するときに)配列番号3よりも効果的である。
【0214】
配列番号3が、いくつかの実例では、アバロパラチドよりも優れている一方、患者が必要とする投与回数が少ない場合に、その臨床的妥当性は劇的に改善され得る。標的オリゴペプチドの鎖長を増すことで、骨折部位での同化ペイロードの保持が延長され、必要な投薬の頻度がより少なくなるように、折れた骨に対する薬物の親和性が十分に増加するかどうかを決定した。マウスは、毎日ではなく、3日ごとに1回投与された。CTスキャンの目視検査により、標的アバロパラチドを投与したマウスは、非標的アバロパラチドを投与したマウスに対して、骨折後3週間でより多くの骨が沈着していることを明らかになった。アバラード10対アバラード20で骨折前に達成される最大荷重を比較すると、傾向として20~30%高い強度が示された。各薬剤を生理食塩水と比較した場合、配列番号4は有意に高い一方、配列番号3は3日ごとに投与した場合に有意性を欠いた。結果は、図34に示されており、これは、大腿骨中節骨折を有するマウスの処置(生理食塩水、配列番号3(0.1 nmol/mg(0.1x)、1 nmol/mg(1x)、および10 nmol/mg(10x))対最大負荷(N))のグラフである。
【0215】
本明細書で述べられるすべての特許、特許出願公開、雑誌論文、教科書、および他の出版物は、本開示が関係する当業者のレベルを示している。そのような出版物はすべて、個々の出版物が参照により本明細書に援用されることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度に、参照により本明細書に援用される。
【0216】
本開示の特定の実施形態が本明細書に示され、かつ記載されてきた一方、そのような実施形態が例示としてのみ提供されることは、当業者にとって明らかであろう。特許請求の範囲に係る発明が、本明細書内で提供される特定の例によって限定されることは意図されていない。
【0217】
本明細書における実施形態の記載および例示は、限定的な意味で解釈されることを意図しない。多数の変形、変更、および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者にもたらされるであろう。さらに、本発明のすべての態様は、本明細書に記述された特定の描写、構成または相対的な割合に限定されるものではなく、多様な条件および変数次第であることが理解されよう。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替案が、本発明を実行することにおいて採用され得ることを理解されたい。したがって、本発明は、そのような任意の代替物、修正物、変形物、または同等物なども網羅することが企図される。以下の請求項が本発明の範囲を規定し、これらの請求項の範囲内の方法および構造ならびにそれらの等価物がそれによって網羅されることが意図される。
【0218】
特定の定義
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a]、「and」、および「the」は、文脈から明らかでない限り、複数のものを含める。したがって、例えば、「化合物」への言及は、そのような化合物の複数のものを含む。本明細書において、分子量などの物理的特性、または化学式などの化学的特性について範囲が使用される場合、範囲のすべての組合せおよび部分的な組合せ、ならびにその中の特定の実施形態が含まれることを意図している。用語「約」は、数値または数値範囲に言及する場合、言及される数値または数値範囲が、実験変動範囲内(または、統計的実験誤差内)の近似であることを意味し、したがって、数値または数値範囲は、所定の数値または数値範囲の1%と15%の間で変化し得る。用語「含んでいる(comprising)」(および、「含む(comprises)」もしくは「含む(comprises)」または「有する(having)」もしくは「(including)」などの関連用語)は、記載された特徴「からなる」または「から本質的になる」ことがありえるいかなる化合物、組成物、方法、プロセスなどの実施形態も除外することを意図していない。本明細書に例示的に記載された本発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素(複数可)または制限(複数可)がない場合にも、好適に実施し得る。
【0219】
配列に対する参照に関する「パーセント(%)配列同一性」とは、配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入して最大パーセント配列同一性を達成した後、配列同一性の一部として保存的置換を考慮しない、参照配列中の残基と同一である候補配列中のアミノ酸または核酸残基のそれぞれのパーセントとして定義する。配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当業者の技術の範囲内にある様々な方法で達成することができる。例えば、配列間のパーセント同一性または類似性の決定は、例えば、GAPプログラム(Genetics Computer Groupのソフトウェア;現在はAccelrysを介してhttp://www.accelrys.comで入手可能)を使用して行うことができ、アラインメントは、例えば、ClustalWアルゴリズム(VNTIソフトウェア、InforMax Inc.、Gaithersburg、MD)を使用して行うことができる。さらに、配列データベースは、関心のある核酸またはアミノ酸の配列を使用して、検索することができる。データベース検索のアルゴリズムは、典型的にはBLASTソフトウェア(Altschulら、1990)に基づくが、当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントするための適切なパラメータを決定することができる。いくつかの実施形態では、パーセント同一性は、核酸またはアミノ酸配列の全長に沿って決定することができる。
【0220】
本明細書に記載されるように、本開示の特定の化合物は、「任意選択で置換された」部位を含有することができる。一般に、用語「置換された」は、用語「任意選択で」が先行するか否かにかかわらず、指定された部分の1つ以上の水素が適切な置換基で置換されていることを意味する。別段の指示がない限り、「任意で置換された」基は、その基の置換可能な各位置に適切な置換基を有することができ、任意の所定の構造における2つ以上の位置が、特定の基から選択される2つ以上の置換基で置換され得る場合、置換基は各位置で同じか異なるかのいずれかであり得る。想定される置換基の組合せは、好ましくは、安定なまたは化学的に実現可能な化合物の形成をもたらす。
【0221】
本明細書で使用される場合、用語「患者」、「対象」、および「個体」は、互換的に使用される。いずれの用語も、医療従事者の監督を必要としない。例えば、個体に投与することは、治療薬を自分自身に投与する個体、および治療薬を個体に投与する医療関係者を含む。
【0222】
本明細書で使用する用語「ラジカル」は、分子のフラグメントを指し、そのフラグメントは、結合形成のための付着点である開放原子価を有するものである。一価のラジカルは、別の化学基と1つの結合を形成することができるような1つの開放原子価を有する。いくつかの実施形態では、本明細書で使用されるような分子のラジカル(例えば、葉酸受容体結合剤のラジカル)は、その分子から1つの水素原子を除去して、水素原子が除去された場所に1つの開放原子価を有する1価のラジカルを生成することによって作成される。適切な場合、ラジカルは、2価、3価などであり得、ここで、2、3またはそれ以上の水素原子が除去されて、2、3またはそれ以上の化学基と結合することができるラジカルが作成されている。適切な場合、ラジカルを形成する分子中の全原子のうち、除去された原子が小さな画分(原子数の約20%以下)である限り、水素原子以外の原子(例えば、ハロゲン原子)の除去、または2以上の原子(例えば、ヒドロキシル基)の除去により、ラジカル開放原子価を作成することができる。
【0223】
用語「処置する」、「処置している」、または「処置」は、慢性または急性の治療シナリオのいずれかにおいて、骨折、糖尿病、骨粗しょう症に関連する症状を低減、緩和、軽減、改善、和らげる、または弱めることを含む。
【0224】
採用されている用語及び表現は、説明用語として使用されており、限定するものではない。このことに関して、特定の用語が「特定の定義」の下で定義され、それ以外が「発明の詳細な説明」で定義、記載、または論じられる場合、すべてのそのような定義、説明、および議論は、そのような用語に起因することが意図される。また、このような用語や表現の使用には、示され、かつ記載された特徴の等価物、またはその一部を排除する意図もない。さらに、例えば「特定の定義」などの小見出しが「発明の詳細な説明」において使用されているが、このような使用は単に参照を容易にするためであり、1つの段落で行われる開示をその段落のみに限定することを意図せず、むしろ、1つの小見出しで行われる開示は、他のすべての小見出しでの開示を構成すると意図されている。
【実施例
【0225】
以下の実施例は、本開示を説明するのに役立つ。実施例は、請求項に係る本発明の範囲をいかなる形でも限定することを意図していない。
【0226】
すべての統計分析を、GraphPad Prism(バージョン8.0;GraphPad Software,CA)を用いて実行した。データを、平均値±標準偏差で表示する。図において、統計的有意性のレベルを、以下の定義に従ってアスタリスクで示す:p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001.統計解析を、一元配置分散分析(ANOVA)およびDunnettのポストホック分析を用いて実行し、p値0.05で報告される有意性を調整した。図4~8について、ボンフェローニのポストホック分析を、Dunnettのポストホック分析の代わりに実行した。図9を、Dunnettのポストホック解析を用いた二元配置のANOVAで分析した。
【0227】
実施例1:ペプチドペイロードの合成
すべてのペイロード(例えば、図1A)を、アルゴンの流れの下、固相ペプチド合成バイアルで合成した。Wang樹脂(0.6mmol/g)を、触媒量の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を用いて、9:1v/v CHl2/ジメチルホルムアミド(DMF)において4時間、3倍過量の第1アミノ酸(システイン)、HOBt-ClおよびDICで負荷した。次いで、樹脂を2当量の酢酸無水物及びピリジンで30分間キャップして、樹脂上の任意の未反応ヒドロキシル基をブロック(block)した。これらの工程の後、塩化メチレン(DCM)およびDMFで連続して3回洗浄した。
【0228】
各カップリング反応後、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基を、DMFにおいて20%(v/v)ピペリジンで10分間培養を2回することにより除去した。次いで、樹脂を、次のアミノ酸を添加する前に、DMFで2回洗浄した。各アミノ酸を、3倍過量の2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)/N-メチルモルホリン(NMM)において30分間反応させ、続いて、3倍過量のベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジンホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)/N-メチルモルホリン(NMM)を用いて30分間のダブルカップリングを行った。すべてのアミノ酸を、上記の条件に従って添加した。特に断りのない限り、酸感受性側鎖保護基を有する標準的なFmoc保護アミノ酸を使用した。次いで、チロシンまたは表1に示すペプチド配列を、自動ペプチド合成機(Focus XC,AAPPTec)を使用し、かつ上に列挙した固相手順を使用してペプチドに添加した。合成が完了すると、末端のFmocは、樹脂がDMFで3回、DCMで3回、メタノールで2回洗浄され、次いでアルゴンガスで乾燥された後、前述の条件を用いて除去した。
【0229】
ペプチドを含む乾燥樹脂を、95:2.5:2.5トリフルオロ酢酸/水/トリイソプロピルシランと過剰のTCEPを用いて、2時間切断した。次いで、ペプチドを、10倍量の冷ジエチルエーテルを用いて、切断溶液から沈殿させた。溶液を、2,000相対遠心力(RCF)で5分間回転し、次いでデカントした。次いで、ペレットを、乾燥させ、合成を確認するために、分析用液体クロマトグラフィー質量分析(1220 LC; 6130 MS, Agilent)に提出した。粗ペプチドを、DMFと水の混合物に溶解させ、分取逆相高速液体クロマトグラフィー(1290、アジレント、サンタクララ、カリフォルニア州)を介して精製した。40分間0~50%酢酸アンモニウム:アセトニトリル移動相を有するC-18カラムを使用して、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(TMP)を精製した。分析用液体クロマトグラフィー質量分析(1220 LC;6130 MS、Agilent、Santa Clara、CA)により評価された純粋なペイロードのみを含む画分を凍結乾燥し(FreeZone、LABCONCO、Kansas City、MO)、標的リガンドと結合するまで凍結乾燥粉末として-20℃で保存した。
【0230】
以下の置換、Glu22、Glu25、Leu23、Leu28、Leu31、Lys26、Lys30、およびAib29を、当技術分野で既知の方法に従って、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)(配列番号1)の残基1~46に導入した。これらの置換は、ペプチドの安定性を高め、骨粗しょう症患者の骨密度を増加させ、毒性を増加させることなく最大同化活性のウィンドウ(window)を拡大する。露出したヒドロキシアパタイトへの吸着後に同化ペプチドのシグナル伝達を最大化するために、このPTHrPフラグメントのC末端を、標準的な固相ペプチド化学を用いて、20個のD-グルタミン酸(E)残基(D-Glu20またはDE20)の直鎖状ペプチドにコンジュゲートし、これにより、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)および質量分析法によって証明されるように,最終融合タンパク質(配列番号4)を19%の全体収率と94%の最終純度にて得た。
【0231】
実施例2:(直鎖状)骨指向性ペプチドの合成
すべての標的リガンドペプチドを、上記の固相合成法に従って、その名称が示すように、適切な長さ、アミノ酸組成物、およびエナンチオマー立体化学を達成するように合成した。樹脂上にある間、N末端アミンを、上記のように脱保護し、DMF中で、3倍マレイミドプロピオン酸、3倍過量のベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PYBOP)、HOBt-Clおよび5倍過量のN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)により4時間反応した。次いで、10倍過量のトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)においてマレイミド化学を用いて、ペプチドをシステイン含有ペプチドに室温で24時間カップリングした。その後、標的ペイロードコンジュゲートを、切断し、脱保護し、および上記のように精製した。
【0232】
実施例3:(分岐鎖)骨指向性ペプチドの合成
手短に言えば、アルゴンの流れの下で固相ペプチド合成を用いて、分岐した標的リガンドを合成した。2-クロロトリチル樹脂(0.6mmol/g)を、DCMおよびDIPEA中で60分間、Nα,Nε-di-Fmoc-L-リジンで負荷した。次いで、樹脂を、MeOHで4回洗浄、次いでDCMおよびDMFで3回、連続して洗浄し、キャッピングした。次いで、分岐鎖を上記のように合成した。N末端のFmocは残り、ペプチドを、酢酸/テトラフルオロエチレン(TFE)/DCMの1:1:8混合液で30分間ソフトに切断した。切断液を、減圧下で蒸発させ、および末端カルボン酸を、DCM中で3倍過量のN-(2-アミノエチル)マレイミド、3倍過量のPYBOPおよびHOBt-Clならびに5倍過量のDIPEAと4時間コンジュゲートした。次いで、酸感受性の保護基を、95:2.5:2.5トリフルオロ酢酸/水/トリイソプロピルシラン中で2時間培養することにより、脱保護した。次いで、ペプチドを、10容量の冷ジエチルエーテルで沈殿され、DMFにおける20%(v/v)ピペリジンで15分間の培養、それに続く冷ジエチルエーテルでの沈殿により末端Fmocを脱保護した。結果として得た粗生成物を、上記のように分取逆相高速液体クロマトグラフィー(1290、Agilent)を介して精製した。最後に、精製された標的リガンドを、同じく上記のようにマレイミドカップリングを介して異なるペイロードとコンジュゲートした。
【0233】
実施例4:モノビスホスホネート標的リガンドの合成
アレンドロン酸を、水酸化ナトリウムに溶解し、次いで、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液で希釈し、HClでpHを5まで低下させた。3当量の3-マレイミドプロピオン酸を、4当量の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カボジイミド(EDC)で予め活性化した(pre-activated)。反応物を、40℃で一晩撹拌し、粗生成物は、0~25%酢酸アンモニウム/アセトニトリル移動相を用いたC-18カラム上の分取逆相高速液体クロマトグラフィー(1290、Agilent、Santa Clara、CA)によって40分かけて精製した。
【0234】
分析液体クロマトグラフィー質量分析(1220 LC;6130 MS、Agilent)によって分析された純粋なマレイミド生成物のみを含む画分を、凍結乾燥され、上述のようにマレイミドカップリングを介してペイロードと結合するために必要となるまで-20℃で保存した。
【0235】
実施例5:トリビスホスホネート標的リガンドの合成
ジ-tert-ブチル-2,2’-((3-アミノ-2-(2-(tert-ブトキシ)-2-オキソエトキシ)エチル)ペンタン-1,5-ジイル)ビス(オキシ))ジアセテートを、DCM中45℃で24時間、1.5当量の3-マレイミドプロピオン酸、4当量のN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)および3当量のDIPEAと反応させた。ジシクロヘキシル尿素(DCU)の沈殿物を濾過し、用量を減圧下で減少させた。生成物を、フラッシュクロマトグラフィーで精製し、カルボン酸を、50:50 TFA/ DCMで30分間脱保護した。溶媒を、減圧下で除去し、結果として得た2,2’-((2-(3-(カルボキシメトキシ)-1-(3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)プロパンアミド)プロピル)ブタン-1,4-ジイル)ビス(オキシ))二酢酸を、pH4.5のMESバッファーにおいて45℃で、24時間、アレンドロン酸+12当量のEDCを反応した。結果として得た粗生成物を、分取逆相高速液体クロマトグラフィー(1290、Agilent、Santa Clara、CA)を介して精製し、および精製した標的リガンドを、上記のようにマレイミドカップリングを介して異なるペイロードとコンジュゲートした。トリビスホスホネートの構造を、図12に示す。Rは、任意のペプチドまたは低分子を表すことがある。
【0236】
実施例6:ポリホスフェート標的リガンドの合成
45個のホスフェートのホスフェートガラスポリマーを、10mMの濃度で100mMのMESに溶解した。次いで、十分なEDCを、100mMの濃度になるように添加し、次いで3当量のDIPEA、続いて5当量のN-(2-アミノエチル)-マレイミドを添加された。精製した標的リガンドを、上記のようにマレイミドカップリングを介して異なるペイロードとコンジュゲートした。
【0237】
実施例7:99mTcキレーター分子の合成
D-Glu20(DE20)およびD-Glu10(DE10)に連結した99mTcキレーターを、先に述べたように標準的なFmoc固相ペプチド合成を介して合成した。Fmocシステイン(TRT)が負荷されたWang樹脂を、Fmocアスパラギン酸(OtBu)に結合させ、次いでNα-Boc-Nβ-Fmoc-L-2,3-ジアミノプロピオン酸に結合させ、99mTcキレーターを作成した(例えば、Leamonら、「EC20:A new folate-derived,99mTc-based radiopharmaceutical,bioconjug.Chem.13:1200-1210(2002))。このキレーターを、標準的なアミド化学で8-(Fmoc-アミノ)-3,6-ジオキサオクタン酸に結合し、これを、標準的なアミド結合を介して10または20個のD-グルタミン酸の直鎖オリゴペプチドにコンジュゲートした。次いで、オリゴペプチドを前記のように切断かつ精製した。
【0238】
実施例8:近赤外(NIR)色素コンジュゲートの合成
近赤外(NIR)蛍光色素S0456のマレイミド誘導体を、上記の骨破壊標的リガンドの標識に使用するために調製した。これは、スキームI(下記)に示されるように合成した。この目的のために、S0456、N-Boc-チラミンおよび水酸化カリウム(KOH)を、固体を溶解するために、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含むフラスコ中で混合し、および溶液を、アルゴン下で60℃で1.2時間撹拌した。結果として得た溶液を、冷酢酸エチルで沈殿させ、激しく攪拌した後、3,000rpmで3分間遠心分離した。濃緑色の固形物を、真空デシケーターで一晩乾燥させ、40%トリフルオロ酢酸(TFA)/DCMで30分間脱保護した後真空中で濃縮して、すべてのTFAとDCMを除去した。次に、粗固形物を、水に溶解させ、分取逆相高速液体クロマトグラフィー(1290、Agilent、Santa Clara、CA)精製に供した。純粋なフラクションを、真空中で濃縮して凍結乾燥させた。マレイミドで誘導体化するために、固形物を、N-スクシンイミジル3-マレイミドプロピオネートおよびDIPEAとともにDMSOに溶解し、上記のように分取逆相高速液体クロマトグラフィー(1290、Agilent、サンタクララ、カリフォルニア)を通じて精製される前に、アルゴン空気下で1時間撹拌した。N末端システインを有するデカアスパラギン酸(LおよびD)標的リガンドを、前記のように調製および精製した。デカアスパラギン酸システインのS0456-マレイミドへのコンジュゲートのために、S0456-マレイミドを、アルゴンで脱気したフラスコ中のDMSOに溶解し、続いて、Asp10-Cysを撹拌により溶液に添加した。混合物を、分取逆相高速液体クロマトグラフィー(1290,Agilent,Santa Clara,CA)で精製する前に、室温で2.5時間撹拌した。精製し凍結乾燥した生成物は、緑色のふわふわした固形物として現れた。(D)Asp10-S0456コンジュゲートの合成は、(D)Asp10の合成にD-アスパラギン酸を使用した以外は、(L)Asp10-S0456について述べた同じ手順を踏んだ。
【0239】
【化1】
【0240】
実施例9:大腿骨中腹部骨折モデル
無菌外科技術を使用し、骨折する前の骨に内固定するために、麻酔をかけた12週齢の雌性ND-4 Swiss-Webster年齢適合マウスの大腿骨に、髄内釘として23ゲージの針を挿入した。C57/BL6マウスおよびSwiss-Webster ND-4マウスなどの近交系間で標的能力の差は見られなかった。手短に言えば、後肢の右膝を囲むマウス毛を除去し、この動物を麻酔気化器(VetEqip, Livermore,CA)を用いて3%イソフルラン麻酔した。次いで、皮膚を、ベタジンのスクラブで洗浄し、続いて70%エタノールのスクラブで洗浄した。次いで、膝蓋骨の上を切開し、膝蓋腱を露出させ、腱を切断し、大腿骨の遠位顆を露出させた。滅菌した23ゲージの針を、顆の間の大腿骨遠位部の膝蓋骨表面中央の皮質殻を貫通して穿孔した。ピンを、大腿骨近位骨端の骨内表面に達するまで、髄腔の中心から挿入した。次いで、針を、ワイヤーカッターで切断して大腿骨の遠位端と同一平面にし、皮膚を、4-0非吸収性ナイロン縫合糸で閉じた。次いで、RISystem社の落錘式骨折装置を用いて、安定化された大腿骨において骨折を誘発し、X線キャビネット(Carestream,Kodak, Rochester, NY)を用いてX線で確認した。疼痛を軽減するために、骨折後3日間、マウスにブプレノルフィン(0.03mg/日)を投与した。すべての動物実験を、Purdue UniversityのInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)が承認したプロトコルに沿って実行した。
【0241】
実施例10:半減期および生体内分布
骨折部位における標的蛍光コンジュゲートの半減期を解析するため、L-Asp10-S0456またはD-Asp10-S0456を、PBSに溶解し、滅菌ろ過し、および骨折の10日後に、250 nmol/マウスの最終用量を達成するために皮下注入した。次いで、マウスを、注射後2、24、48、72、および96時間で安楽死させ、中性緩衝エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の12%溶液で骨折カルスを切除・溶解することにより、骨折部位での蛍光を定量化した。手短に言えば、骨折させた大腿骨を採取し、PBSで洗浄した後、真空デシケーターで一晩徹底して乾燥させ、小片に砕き、前述のEDTA溶液に浸漬する前に、秤量した。サンプルを、骨を脱灰するために、シェーカー上で8時間撹拌し、次いで、上清を回収するために、8,000rpmで5分間遠心分離した。定量化用色素の既知の濃度標準曲線を用いて、上清みにおけるL-Asp10-S0456またはDAsp10-S0456の濃度を、そのOD780から判断した。
【0242】
実施例11:ペプチドの放射性標識
10(10)μgのPierce Iodination(ヨードゲン;Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)試薬を、200μLのクロロホルムに溶解させ、次いで、6X50mmのガラス試験管に加え、およびアルゴンの安定した流れの下で蒸発させた。次いで、40μLのPBSに溶解した50nmolのペプチドコンジュゲートを、10μL(1mCi)のNa125I(ARC)と共に添加した。ガラス試験管を密封し、シェーカーに30分間置き、次いで、水:アセトニトリル中の0.1%TFAの0~100%グラジエントを用いた放射性分取逆相高速液体クロマトグラフィー(1260HPLC;Agilent Flow-RAM radiodectector, Lablogic Systems Ltd, Sheffield, UK)により精製した。正しい滞留時間と放射性シグナルを有するフラクションを単離させ、かつ凍結乾燥させた。ペイロードペプチドを、内因性チロシン、トリプトファン、またはヒスチジン残基において放射性ヨウ素化させ、最も長いヨウ素化実験(27時間)の間安定し続けていた(Savoieら、「Studies on mono- and diiodohistidine. I. The identification of iodohistidines from thyroidal iodoproteins and their peripheral metabolism in the normal man and rat」J. Clin. Invest. 52: 106-115 (1973)を参照)。
【0243】
99mTc標識のために、窒素が散布された水中のEDTA二ナトリウム二水和物(10mg/ml)に溶解された溶液0.6mgを、窒素が散布された水中のグルコン酸ナトリウム溶液(100mg/ml)50mgに添加した。その混合液に、窒素攪拌した0.2N塩酸に溶解された塩化第一スズ二水和物(10mg/ml)溶液0.2mgを添加した。次いで、4μmolの99mTcキレート含有ペプチドを、その溶液に添加し、pHを、NaOHを用いて6.8に調整した(Leamonら(2002)、前掲)。この溶液を、液体窒素中で瞬間凍結させ、かつ一晩凍結乾燥させた。次いで、この化合物を、15mCiのm99Tc(Cardinal Health)と混合させ、15分間撹拌した後、定量キレートを、分析用放射性逆相高速液体クロマトグラフィー(1260HPLC;Agilent Flow-RAM radiodectector、Lablogic)により確認した。
【0244】
実施例12:生体内分布の解析
生きた動物研究のために、99mTc-または125I-放射性標識ペプチドをPBSに溶解させ、血流がその領域に戻ったことを確実にするために、大腿骨中腹骨折の誘発の10日後にマウスに皮下注射した。各マウスに、0.25 mCi(0.1 mLのビヒクルにおける12.5 nmolのペプチド)の放射性ヨウ素化ペプチド、または3 mCi(0.1 ml)用量の99mTc標識ペプチドの両方を皮下に投与した。18時間後、血液を、心臓穿刺により除去し、マウスをCO窒息により犠牲にした。臓器および組織(心臓、肺、筋肉、皮膚、肝臓、脾臓、腎臓、大腿骨骨折、健康な大腿骨)を切除し、重さを測り、およびガンマ計測器(Cobra Auto-Gamma,Packard;GMI Corporation,Franklin,IN)を用いて放射能を計測した。パーセント注射量は、以下の方法で計算された。
【0245】
【数3】

骨折/健康比率は、以下の方法で計算した。
【0246】
【数4】
【0247】
実施例13:SPECT/CT
99mTc標識D-Glu10-キレーターおよびD-Glu20-キレーターを、7mCi/100μlに製剤し、および大腿骨骨折の2週間後に尾静脈から注入した。18時間後、マウスを、CO窒息で安楽死させ、単光子放出コンピュータ断層撮影/コンピュータ断層撮影(SPEC/CT)スキャナー(U-SPECT-II/CT、MiLabs、Houten、The Netherlands)を用いて撮影した。CT画像を、高解像度の全身12分スキャンで収集し、続いて0.6mmコリメータを用いて1時間SPECTスキャンを行った。エネルギーウィンドウを140keV、再構成パラメータを16サブセット、ポストフィルターなしで4イテレーションを選択したMiLabsソフトウェアを用いて、SPEC/CT画像を再構成した。3D再構成を、ImageJソフトウェアを用いて実行した。
【0248】
実施例14:骨折修復モデル-糖尿病
配列番号5、アバロパラチド(配列番号2)、配列番号6、および配列番号9(10個のアスパラギン酸残基を有するコンジュゲート)の標的コンジュゲートを、Fmoc固相ペプチド合成を使用して合成した。配列番号5からアミノ酸1~34を使用し、アバロパラチド(配列番号2)は、配列番号1のアミノ酸1~36を安定化したものである。8週齢の雄性CD-1マウス40匹において、血糖値が250mg/dLを超えるまで、ストレプトゾトシン(STZ)を7回皮下注射することにより、糖尿病を誘発した。マウスを、この糖尿病が確認された状態で2ヶ月間放置し、糖尿病が骨に作用できるようにした。次いで、骨折をRISystem社の落錘式骨折装置で誘発しかつX線により確認する前に、無菌手術技術を使用して、麻酔をかけたマウスの大腿骨に髄内釘として23ゲージの針を内固定のために置いた。マウスに、骨折後3日間、ブプレノルフィンを投与した。それらに、インスリンの陽性対照、ビヒクルの陰性対照、配列番号5、またはアバロパラチド(配列番号2)を4週間にわたって毎日皮下に投与した。骨折の治癒を、マイクロCT(Scanco Medical Ag)を用いて定性的に評価した。骨折した大腿骨を、4点曲げ破壊における強度について、ElectroForce TestBench(TA Instruments,New Castle,DE)を用いて試験した。最大荷重、剛性、降伏後の変位、および骨折までの作業データを作成した。統計解析は、一元配置分散分析(ANOVA)を使用して実行し、p値が0.05()および0.01(**)未満であると報告される場合に有意性があるとした。すべての動物実験を、Purdue UniversityのIACUCによって承認されたプロトコルに従って実施した。
【0249】
4つの化合物を試験した。アバロパラチド(D)_e10、配列番号6、および配列番号7(図1Aおよび図1B)は、いずれも健康な大腿骨骨折の治癒を繰り返し促進していた。アバロパラチド(配列番号2)は、副甲状腺関連タンパク質ホルモンの安定化されたバージョンである。ダサチニブは、骨芽細胞と破骨細胞の両方に対して標的外効果を有するSRCキナーゼであり、全体的な骨密度を改善する。また、ダサチニブは、老化細胞除去剤であることが証明されている。ITGAは、膜内骨折治癒を促進するフィブロネクチン模倣剤である。配列番号5は、プレプチン(Preptin)1~16が中程度の骨同化活性を有していたので、この研究に含んだ。また、全長化合物(図1Aおよび図1B参照)は、グルコース感受性も改善することを示した。したがって、完全長配列番号5のグルコース調節特性が、2つのメカニズムを介して治癒を改善し得るデュアルアクション化合物として、I型糖尿病性骨折の治癒に有益であり得るとの仮説を立てた。化合物を、陽性対照としてインスリン、陰性対照として生理食塩水と比較した。
【0250】
配列番号6を除くすべての標的化合物は、生理食塩水に比べて石灰化および骨密度を改善し、配列番号5はカルスの石灰化に最も影響を与え、アバロパラチドは密度に最も影響を与えた。その結果は、図13および図14に示される。BVは、骨折カルスの最も厚い100枚のマイクロCTスライスの骨量を表し、骨が骨折修復部位でどれくらい石灰化したかの指標である。BV/TVは、骨折カルスの最も厚いマイクロCTスライド100枚のBVをTVで割った値を表し、骨が骨折修復部位でどのくらいの密度であるかの指標である。インスリンを、2IU/日として投薬した。0.1x、50x、および10xの用量は、それぞれ、皮下注射によって毎日送達されるコンジュゲートの0.1nmol、50nmol、および10nmolである。配列番号6は、1日おきに10μmol/kgで投薬した。
【0251】
すべての標的化合物は、単なるインスリン処置単独よりも骨折の強度を改善した。インスリンが石灰化を改善したにもかかわらず、高血糖で傷ついた骨の質を回復させることはできなかったので、骨はまだ弱かった。骨の脆さが、糖尿病患者の骨折の多さにつながるものである。脆さの指標は、4点曲げ試験における降伏後の変位である。その結果は、図15図16に示される。
【0252】
インスリンを、2IU/日で投薬した。0.1x、50x、および10xの用量は、それぞれ、皮下注射によって毎日送達されるコンジュゲートの0.1nmol、50nmol、および10nmolである。配列番号6を、1日おきに10μmol/kgで投薬した。
【0253】
配列番号6を除くすべての化合物は、骨の脆さを減少させた(図17)。インスリンは、血糖値を改善する唯一の化合物であった(図18)。骨折を処置することにより、動物は、糖尿病により失われていた体重を取り戻すことができた(図19)。
【0254】
しかしながら、非糖尿病患者は、本明細書で提供される化合物を摂取するためにインスリンを摂取することを止めないので、インスリンと一緒に投薬される化合物で実験を繰り返した(図20~22)。
【0255】
図20Aおよび20Bについて、インスリンを2IU/日で投薬し、0.1x、10x、および100xの用量は、それぞれ皮下注射によって毎日送達されるコンジュゲートの0.1nmol、10nmol、および100nmolである。図は、配列番号8がインスリンよりもカルスの石灰化を改善し、すべての実験治療薬が、インスリン単独よりも骨折カルス密度の増加を導いたことを示す。
【0256】
図21Aおよび21Bについて、インスリンを2IU/日で投薬して、0.1倍、10倍、および100倍の用量は、それぞれ、皮下注射によって毎日送達されるコンジュゲートの、0.1nmol、10nmol、および100nmolの用量である。図は、海綿骨に有意な変化は観察されなかったことを示す。
【0257】
図22A~22Cについて、インスリンを、生理食塩水を除くすべての群において2IU/日で投薬した。0.1x、10x、および100xの用量は、それぞれ、皮下注射によって毎日送達されるコンジュゲートの0.1nmol、10nmol、および100nmolである。図は、アバロパラチド(配列番号2)および配列番号8が、インスリン対照と比較して、強度を有意に改善したことを示す。すべての有意水準を、生理食塩水対照群ではなく、インスリン処置群に対して計算した。全体として、配列番号9は、糖尿病患者における骨折治癒を有意に改善しなかった。しかし、アバロパラチド(配列番号2)および配列番号8は、インスリン単独よりも強度と石灰化を改善し、潜在的な治療薬として有望であることを示す。
【0258】
実施例15:骨折修復モデル-閉経後の骨粗しょう症
骨粗しょう症の間に骨格全体に存在する増加した吸収窩は、骨粗しょう症の存在だけでは中度の局在化部位として機能する。しかしながら、局在化は、骨粗しょう症の間、骨格の他の場所でも依然として起こる。その大部分は骨折部位に依然として局在している。このため、ある種の骨標的療法を禁忌とする必要がある集団をもたらすことがある。しかしながら、骨折をした骨粗しょう症患者にとって、吸収窩を治癒するための標的外骨格への影響は、実際にはプラスの副作用となり、問題を呈し得ない。将来の骨折を予防するために、骨折を治癒し、かつ骨粗しょう症も処置するという二重の効果が期待できるであろう。
【0259】
8週齢の雌性Swiss Websterマウス(n=10)に、両側卵巣摘出を介して閉経後骨粗しょう症を外科的に誘発させた。骨粗しょう症を、マイクロCTによって測定される骨ミネラル密度の全体的な喪失を介して確認した。
【0260】
マウスを、2~3%イソフルランを使用して麻酔した。ブプレノルフィン(0.03mg/kg)を、術後疼痛緩和のために皮下投与した。腸骨稜から背側に3cm×2.5cmの面積を削った。その面積を、ベタジン、続いて70%エタノールで洗浄し、次いでドレーピングした。2cmの正中切開を行い、皮膚を、下の筋膜から切開した。筋膜を通して正中線の1cmの側切開を行い、腹腔に到達した。腹腔内の卵巣を囲む脂肪組織を引き戻し、静かに引き抜いた。
【0261】
卵巣を分離し、この構造から0.5cm近位にある子宮角と血管を結紮した。卵巣を摘出し、このプロセスを対側で繰り返した。モノフィラメント縫合を用いて、腹腔を閉じ、続いて皮膚も閉じた。マウスを、清潔な回復ケージに入れ、麻酔から覚醒することを可能にした。マウスに、ブプレノルフィンを12時間ごとに3~5日間投薬した。骨粗しょう症が4~6週間以内に発症すると予想し、その時点でマウスに、上記のように大腿骨骨折の安定化を受けさせた。
【0262】
骨ミネラル密度(BMD)を、骨粗しょう症の発症を確認するため、卵巣摘出前および卵巣摘出8週間後に測定した。8週間、低エストロゲンレベルに長期間曝露した後、マウスの大腿骨に髄間釘を留置し、次いでアインホルン骨折モデルを、落錘を介して誘発し、X線によって確認した。マウスに4週間毎日投与した。構造変化を、マイクロCTを介して定量化し、機械的特性を、4点曲げ破壊試験で評価した。
【0263】
S0456、boc-tyramine、およびKOHを、脱気された50mLのRBフラスコに投入した。DMSO(5mL)を加えて固体をすべて溶解し、次いで混合物をアルゴン雰囲気下、60℃で1.2時間撹拌した。結果として得た混合物を、室温まで冷却し、および冷酢酸エチル(50mL)に滴下添加し。結果として得た混合物を、激しく撹拌し、次いで3,000rpmで3分間遠心分離した。遠心分離後、濃緑色の固体を、コニカルチューブの底に見ることができた。上澄液(ごくわずかに緑がかった透明な溶液)を、新しい冷酢酸エチルのバッチが固体に添加される前に、捨てた。混合物を激しく撹拌し、前と同じ遠心分離工程にかけた。結果として得た暗緑色の固体を、40%TFA/DCM溶液(5mL)が添加される前に、真空デシケーターで一晩乾燥させた。混合物を、すべてのTFAおよびDCMを除去するために、真空中で濃縮する前に室温で30分間撹拌した。濃縮された粗製物を、3mLの水に溶解し、および分取HPLC精製にかけた。S0456-tyramineの純粋な画分を収集し、真空中で濃縮し、凍結し、および凍結乾燥させ、ふわふわの暗緑色の固体として純粋な生成物をもたらした。この固体(120mg)を、N-スクシンイミジル 3-マレイミドプロピオネート(30mg)およびDIPEA(40μL)とともにDMSO(3mL)に溶解し、それにより、分取HPLCでの精製の前にアルゴン雰囲気下で1時間撹拌した。S0456-マレイミドの純粋な画分を収集し、真空中で濃縮し、凍結し、および凍結乾燥させ、それにより、暗緑色のふわふわした固体(125mg)として純生成物をもたらした。
【0264】
10-Cysは、以下のように合成した。SPPS樹脂の初期負荷のために、2-クロロトリチル塩化樹脂(0.4g、1.4mmol/g)を、DCM(10mL/g樹脂)で膨潤させ、続いてDCM(14mL)に溶解したFmoc-L-Asp(OtBu)-OH(1.15g、2.8mmol)およびDIPEA(1.66mL、9.5mmol)を添加した。混合物を、1時間アルゴンをバブリングすることによって撹拌し、その後、溶液を、20mLのキャッピングカクテル(DCM:MeOH:DIPEA=17:2:1)が添加される前に、排出し、および溶液を、再び20分間バブリングした。次いで、樹脂を、各カップリング反応後にDMF(3回)、DCM(3回)、およびIPA(3回)で洗浄、ならびに各脱保護後にDMF(3回)で洗浄することからなる標準的な洗浄手順にかけた。最初の負荷の後、すべての後に続くカップリング反応を、DMF(14mL)中のFmoc-L-Asp(OtBu)-OH(1.15g,2.8mmol)、もしくはFmoc-S-トリチル-L-システイン(1.64g,2.8mmol),PyBOP(1.42g,2.75mmol)およびDIPEA(1.66mL,9.5mmol)の溶液で実行した。1時間の標準カップリング時間を、すべてのアスパラギン酸およびシステイン残基のために使用した。Fmoc-脱保護を、各5分と10分の2セッションにおいて、DMF中の20%ピペリジン溶液を用いて行った。11量体のペプチド生成物を、90%TFA、3.3%TIPS、3.3%水、3.3%EDTからなる切断カクテルを用いて、樹脂から切断した。切断の後、粗生成物を、大部分のTFA、水、TIPS、およびEDTを除去するために減圧下で濃縮し、次いで、EtOで3回洗浄し、ならびに白色粉末としてD10-Cys 1を生成するために、減圧下で24時間乾燥させた(680mg、全収率81.3%、平均カップリング効率98.1%)。
【0265】
10-S0456複合体を、以下のように合成した。S0456-マレイミド(100mg)を、アルゴンで脱気されたフラスコ中で2mLのDMSOに溶解し、続いてD10-Cysを溶液に添加し、撹拌を伴った。混合物を、分取HPLCで精製する前に、室温で2.5時間攪拌した。精製し、かつ凍結乾燥した生成物は、緑色のふわふわした固体(57mg)として現れた。
【0266】
前述のように大腿骨中節骨折および両側卵巣摘出術を受けた雌性12週齢のSwiss Websterに、10nmolのS0456コンジュゲートを襟首付近に皮下注射した。24時間後に、それらを犠牲にし、剖検を実行した。組織を、Spectral Ami Optical Imaging Systemで、745nmで5%の励起力で1秒間励起して撮影した。蛍光発光を810nmで収集した。
【0267】
カルシウムイオン(Ca2+)の定量的な測定およびカルシウム代謝に対する薬物効果の評価について、BioAssay Systems社(Hayward,CA)のQuantiChrom Calcium Assay Kitを使用した。キットに含まれるフェノールスルホンフタレイン色素は、遊離カルシウムと非常に安定した青色の複合体を特異的に形成する。612nmで測定される色の強度は、サンプル中のカルシウム濃度に正比例する。最適化された製剤は、マグネシウム、脂質、タンパク質、およびビリルビンなどの物質による任意の干渉を最小限に抑える。投薬21日後の治療試験終了時にマウスから1mLの血液を、3%イソフルランで誘導した麻酔下で心臓穿刺により、採血した。細胞をペレット化するために、血液を、500Gで5分間回転した。血清を細胞ペレットから除去し、かつカルシウム濃度定量になるまで-80℃で保存した。125μLの20mg/dL標準と125μLのdHOを混合することで、標準を10mg/dL Ca2に希釈した。全血サンプル(5μL)を、ウェルに移した。次に、200μLの作業試薬を添加し、プレートを、混合するために軽く叩いた。その後、サンプルを室温で3分間培養し、および570~650nmの光学濃度(612nmの吸光度ピーク)がODSAMPLEを得るために読み取られた。その後、10mg/dL標準(5μL)は、サンプルウェルに移した。プレートを混合するために叩き、および光学密度を、ODSTANDARDを得るために同じ波長で測定した。次に、20mM EDTA 5μLを、先程と同じウェルに添加し、およびプレートを、混合するために叩いた。同じ波長で光学密度を読み取り、ODBLANKを得た。全血サンプル濃度を、以下のように計算した。
[Ca2+]=(ODSAMPLE-ODBLANK)/(ODSTANDARD-ODSAMPLE)x10xn(mg/dL)
式中、ODSAMPLE、ODBLANK、およびODSTANDARDはそれぞれSample、Sample Blank、および、Sample plus StandardのOD測定値であり、10は標準の濃度(mg/dL)、nはサンプル希釈倍数である。計算されたカルシウム濃度が10mg/dLより大きい場合、サンプルをdHOで希釈し、アッセイを繰り返した。次いで、その結果に希釈倍数nを掛けた。
【0268】
当初、4つの化合物を試験した。配列番号3、配列番号6、および配列番号7は、いずれも健康な大腿骨骨折の治癒を繰り返し促進しており、アバロパラチド(配列番号2)は副甲状腺関連タンパク質ホルモンの安定化バージョンであった。ダサチニブは、骨芽細胞と破骨細胞の両方に対して標的外効果を有するSRCキナーゼであり、全体の骨密度を向上させる。また、老化細胞除去剤であることも示される。ITGAは、膜内骨折治癒を促進するフィブロネクチン模倣薬である。
【0269】
配列番号10(20個のグルタミン酸残基を有するコンジュゲート)を除くすべての標的化合物は、生理食塩水と比較して骨折カルスの石灰化および密度を改善し、エストロゲン補充よりもかなり改善した(図23A~B)。
【0270】
図23Aおよび23Bについては、安息香酸エストロゲンを、30μg/kgで毎週投薬した。0.1x、1x、および10xの用量は、それぞれ皮下注射によって毎日送達されるコンジュゲートの0.1nmol、1nmol、および10nmolである。配列番号6を、1日おきに10μmol/kgで投薬した。
【0271】
同じ3つの化合物は、大腿骨の強度を改善するのに有効であることが証明された(図24A~C)。
【0272】
図24A~Cに関して、安息香酸エストロゲンを、30μg/kgで毎週投薬した。0.1x、1x、および10xの用量は、それぞれ、皮下注射によって毎日送達されるコンジュゲートの0.1nmol、1nmol、および10nmolである。配列番号6を、1日おきに10μmol/kgで投薬した。
【0273】
化合物の多くは、エストロゲン補充でエストロゲンの喪失を制御するよりも、この低エストロゲン状態における骨折大腿骨の治癒をはるかに良好に有意に改善した。このことは、標的化合物を、骨折した骨粗しょう症患者をより早く治癒することに役立てるために魅力的となり得る。著しく障害を患った患者集団を表している糖尿病マウスで見出されたように、対照マウスのカルス治癒のすべての測定基準は、標準的な健康マウスのものよりも有意に低かった。
【0274】
骨粗しょう症のマウスを、遊離同化物(配列番号1)または標的同化物(abaloparatide_D10(配列番号1の標的安定化バージョン))のいずれかで4週間処置する効果が調べられた。高齢のマウスは自然に骨密度の低下を発症するので、加齢による骨粗しょう症を発症した20ヶ月齢のSwiss Webster 雌性マウスを検査した。骨粗しょう症によって最も影響を受ける領域である大腿骨、骨盤、および腰椎に存在する平均骨ミネラル密度は、骨格の影響を受ける部分の骨ミネラル密度を定量化するために、標準ファントムを使用してPerkinElmer micro-CTを介して定量化した。マウスを、4週間処置した。
【0275】
標的治療および遊離型治療は、処置されたマウスのBMDを改善した。骨粗しょう症の処置における標的薬剤の利点を判断するために、他の測定基準を評価する必要がある。両方が改善することに有効であれば、副作用を減らすという観点で、標的薬剤は依然として望ましいことがある。遊離型の骨粗しょう症治療薬は、全身的な副作用によって制限がある。特に副甲状腺科は、血中カルシウムに対する効果によって制限される。しかし、図25で明らかなように、Forteo(登録商標)の標的型(配列番号13)は、遊離型と比較して血中カルシウムを有意に増加させなかった。
【0276】
0.1nmolの遊離型PTH(Forteo(登録商標)の標的型)を、生理食塩水を対照として使用し、標的型PTH(配列番号13)と比較した。つまり、骨粗しょう症は全身疾患であるが、標的同化剤は、副甲状腺ホルモンの腎臓で起こるカルシウム代謝の調節への影響を制限することができるので、遊離型同化剤とは反対に標的同化剤を使用する利点がある。
【0277】
実施例16:骨折修復モデル-顎顔面
化合物の適用結果を、以下の5つのラットモデル(i)重要でないサイズの下顎欠損を使用してモデル化された顎骨骨折(図29、パネル1)、(ii)骨移植材で満たされた重要なサイズの欠損を導入することでモデル化された主要顎顔面外科手術(図29、パネル2)、(iii)移植された金属のオッセオインテグレーション(図29、パネル3)、(iv)重大なサイズの頭蓋欠損(図29、パネル4)、および(v)マイクロプレートで安定化させた下顎骨切り術(図29,パネル5および6)において、検討した。ある程度の治癒が、下顎欠損を除くすべての手術で、観察された。マイクロプレートで安定化させた下顎骨切り術は、将来的に最も成功する可能性を明示する。術後3週間までに、劇的な改善が、骨切りの隙間の減少において観察され、処置群の隙間の直径は、生理食塩水対照群の直径の13%だった(p<0.01)。マイクロアーキテクチャーも改善された。処置群では、骨の構造がほぼ正常な骨にリモデリングされた一方、生理食塩水群では明らかな隙間が残っていた。最後に、処置した顎が壊れる前に耐えられる最大負荷は生理食塩水の2.7倍であり(p<0.5)、および処置した顎の強度を対側の顎の強度と比較すると、骨折していない骨の強度に戻っていることが判明した。結果は図29にまとめられ、欠損と移植、および頭蓋欠損について薬剤対非石灰化面積(mm)、スクリューについて薬剤対移動率(%)、下顎骨切り術について薬剤対隙間直径(mm)、ならびに下顎骨切り術の薬剤対最大負荷(N)のグラフを示す。
【0278】
実施例17:疼痛/機能の結果
マウスの疼痛/機能の結果を、行動試験に目を向けることによって入手した。アロディニアを、Von Freyプローブを用いて評価する一方、DigiGaitを用いて利得を評価し、ランニングホイールを用いて機能性を評価し、自発運動オープンフィールド試験を用いて機能性と関連する不安を評価した。自発運動オープンフィールド試験は、最も一貫した測定をもたらした。
【0279】
マウスを、自発運動活性の試験前に30~60分間、行動観察室に順化させた。動物を、実験開始前に、一度、自発運動器ボックスに10分間順価させた。次いで、それらを、赤外線追跡ビームを有する自発運動ボックスに10分間個別に入れ、その後取り出し、ホームケージに戻した。マウスを、3点指向性テストを使用し、EthoVisionを介して追跡した。マウスを、実験前に2週間測定した。次いで、それらに、大腿骨中節骨折モデルを受けさせ、およびそれらを、1)アバロパラチドDE20を週2回投与、2)リン酸緩衝生理食塩水を週2回投与、3)その水の中にイブプロフェン(0.6g/L)の3つの治療群のいずれかに割り当てた。マウスを、骨折後5週間処置し、かつ1週間に1回測定した。
【0280】
ベースライン状態では、すべてのマウスが、ボックスの中の至る所を走り回り、これは元気であることを示すものである。しかしながら、骨折後、生理食塩水とイブプロフェンで処置したマウスは、端や隅にいることを好み、そのことはそれらが体調不良や不安を感じていることを示した。アバロパラチドで処置したマウスは、以前のような良好な状態に戻り、至る所を走り回った。興味深いのは、イブプロフェンを投与したマウスは、疼痛/機能の結果が改善されなかったことである。イブプロフェンは骨折の修復を阻害することが知られているので、受けた鎮痛は、動物の治癒が低下することにより克服され得る。しかしながら、配列番号4のマウスによる骨折の治癒を促進することは、より多くの機能性およびより良い健康につながったのである。マウスは、より良い健康を有することを示す領域に局在化しただけでなく、図26~28に示すように、この試験の自発運動部分において、それらの機能性の判定基準を定量的に改善した。
【0281】
図26は、日数対移動距離(cm)のグラフであり、これは、異なる処置群(n=7)について、自発運動オープンフィールドボックスにおいて10分間の期間に移動した平均総距離を示すものである。図27は、日数対移動時間のグラフであり、これは、異なる処置群(n=7)について、自発運動オープンフィールドボックスで10分間の間に移動に費やされた平均時間を示すものである。図28は、日数対平均速度(cm/s)のグラフであり、これは、異なる処置群(n=7)について、自発運動オープンフィールドボックスにおける10分間の時間における平均速度を示すものである。
【0282】
図26~28について、0日目は骨折前のベースラインデータを表す。生理食塩水および配列番号4(1nmol)を2回/週注射した。イブプロフェンを、マウスの水中に0.6g/Lの濃度で絶えず投与した。
【0283】
図26は、アバロパラチドで処置したマウスがより遠くまで走り始めたことを示し、一方、図27は、より長い時間走り始めたことを示し、および図28は、アバロパラチドで処置したマウスがより速く走り始めたことを示す。これらの測定基準はすべて、機能性の向上とパフォーマンスの改善を示しており、このことは、マイクロCTやバイオメカニカルテストを介して定量化された構造的かつ機械的治癒の増加が、機能性の向上と疼痛の軽減にも対応していることを示している。これらの結果は、BMP処置で見られたと報告されてきたものの、すなわち、BMPは、骨折修復のために承認されているにもかかわらず、疼痛または機能性を改善しないということを上回るものである。そこで、骨折後2~3週間の間に、骨を以前の折れていない強度に戻す標的骨同化剤である配列番号4を動物に投薬することで、疼痛の軽減は、それまでに実現することができる。
【0284】
実施例18:PK特性
配列番号4を、骨折を伴うマウスに皮下注射した。125I標識アバロパラチドおよび配列番号4に関する、循環半減期(4.2時間対3.7時間)または累積全身性曝露(AUC、それぞれ24.4時間および20時間)のいずれにおいても有意差が観察されず、そのことは、いかなる標的外曝露または結果として生じる全身性毒性が標的薬剤と非標的薬剤の間で同様であろうことを示している。結果は、図30に示されており、これは、大腿骨中節骨折を起こしたマウスの時間対血中注射用量パーセント(cpm/g)のグラフである。対照的に、骨折部位における2つのアバロパラチドの滞留時間には大きな差が観察され、そこでは、配列番号4の半減期が67時間であることが判明したのに対し、非標的アバロパラチド(配列番号2)は8.8時間であった。半減期の差は、アバロパラチド(配列番号2)に対して配列番号4の累積滞留時間(AUC)が11倍大きくなる(すなわち、8時間に対して96時間)こともたらした。対側の大腿骨における配列番号4の滞留時間は、骨折した大腿骨における滞留時間よりも8倍低く、このことは、健康な骨の成長を刺激することに関する懸念が、最小限であろうことが示された。この結果は、図31に示され、これは、大腿骨中節骨折のマウスの時間対骨内注射量パーセント(cpm/g)のグラフである。こうして、D-Glu20標的アバロパラチドおよびD-Glu20非標的アバロパラチドの全身曝露は同様であるが、骨折表面における配列番号4の濃度が著しく高まることは、関連する骨折の修復率を改善することが予想される。
【0285】
請求される発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。こうして、本発明は、好ましい実施形態および任意選択の特徴に関して、具体的に開示されているが、当業者は、本明細書に開示される概念の修正および変形に頼り得ることを理解されたい。そのような修正および変形は、本明細書で請求される本発明の範囲内であると考えられる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図22C
図23A
図23B
図24A
図24B
図24C
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
【配列表】
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【国際調査報告】