(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】電位誘起劣化の少ない封止材シート
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20240206BHJP
C08L 23/20 20060101ALI20240206BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20240206BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H01L31/04 560
C08L23/20
C08K3/32
C08K5/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534892
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 CN2020137367
(87)【国際公開番号】W WO2022126548
(87)【国際公開日】2022-06-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ウェンシン
(72)【発明者】
【氏名】スン、ヤービン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ユンフォン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ユイェン
【テーマコード(参考)】
4J002
5F251
【Fターム(参考)】
4J002BB051
4J002DH046
4J002EK017
4J002EK037
4J002EK047
4J002EK057
4J002EK087
4J002EX018
4J002EX038
4J002EX068
4J002EX078
4J002FD147
4J002FD206
4J002GJ02
4J002GQ01
5F251AA02
5F251AA03
5F251AA05
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5F251AA10
5F251AA11
5F251JA03
5F251JA04
5F251JA05
(57)【要約】
封止材シートが、60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1016Ω・cm未満の樹脂体積抵抗率(VR)を有するエチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーと、0.01重量%~0.2重量%のイオン捕捉剤と、から形成された材料を含む。封止材シートは、91%を超える透過率を有する。光起電力モジュール(10)が、上述の材料からなる前面封止材シート(12a)及び背面封止材シート(12b)を含む。光起電力モジュール(10)の電位誘起劣化(PID)試験後の電力損失は、0.05%~5%未満である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止材シートであって、
60℃で1×10
14Ω・cm超~60℃で1×10
16Ω・cm未満の樹脂体積抵抗率(VR)を有するエチレン/C
4-C
8α-オレフィンコポリマーと、
0.01重量%~0.2重量%のイオン捕捉剤と、
から形成される材料を含み、
前記シートは、91%を超える透過率を有する、
封止材シート。
【請求項2】
前記エチレン/C
4-C
8α-オレフィンコポリマーは、23℃で1×10
14Ω・cm超~23℃で1×10
16Ω・cm未満のシートVRを有する、請求項1に記載の封止材シート。
【請求項3】
前記エチレン/C
4-C
8α-オレフィンコポリマーは、
(i)60℃で1×10
14Ω・cm超~60℃で1×10
16Ω・cm未満の樹脂VRと、
(ii)0.860g/cc~0.890g/ccの密度と、
(iii)10g/10分~20g/10分のメルトインデックス(I2)と、
(iv)50℃~90℃の融解温度Tmと、
(v)30℃~50℃のビカット軟化温度と、
を有するエチレン/オクテンコポリマーである、請求項2に記載の封止材シート。
【請求項4】
前記イオン捕捉剤はリン酸ジルコニウムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の封止材シート。
【請求項5】
前記材料は、過酸化物と、任意の硬化剤と、任意のシランカップリング剤と、を含む硬化パッケージを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の封止材シート。
【請求項6】
UV安定剤、酸化防止剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の封止材シート。
【請求項7】
光起電力モジュールであって、
(A)前面カバーシートと、
(B)前面封止材シートであって、
(i)60℃で1×10
14Ω・cm超~60℃で1×10
16Ω・cm未満の樹脂体積抵抗率(VR)を有するエチレン/C
4-C
8α-オレフィンコポリマーと、
(ii)0.01重量%~0.2重量%のイオン捕捉剤と、
からなる前面封止材シートと、
(C)光起電力セルと、
(D)背面封止材シートであって、
(i)60℃で1×10
14Ω・cm超~60℃で1×10
16Ω・cm未満の樹脂体積抵抗率(VR)を有するエチレン/C
4-C
8α-オレフィンコポリマーと、
(ii)0.01重量%~0.2重量%のイオン捕捉剤と、
からなる背面封止材シートと、
(E)背面カバーシートと、
を備え、
前記光起電力モジュールの電位誘起劣化(PID)試験後の電力損失が、0.05%~5%未満である、
光起電力モジュール。
【請求項8】
前記前面封止材シートの一部が前記光起電力セルに直接接触し、前記前面封止材シートの一部が前記背面封止材シートの一部に直接接触する、請求項7に記載の光起電力モジュール。
【請求項9】
前記背面封止材シートの一部が前記光起電力セルの一部に直接接触する、請求項8に記載の光起電力モジュール。
【請求項10】
前記前面封止材シート及び前記背面封止材シートはそれぞれ、23℃で1×10
14Ω・cm超~23℃で1×10
16Ω・cm未満のシートVRを有するエチレン/C
4-C
8α-オレフィンコポリマーからなる、請求項7~9のいずれか一項に記載の光起電力モジュール。
【請求項11】
前記前面封止材シート及び前記背面封止材シートはそれぞれ、架橋シートであり、
99.80重量%~99.98重量%のエチレン/C
4-C
8α-オレフィンコポリマーからなり、前記エチレン/C
4-C
8α-オレフィンコポリマーは、
(i)60℃で1×10
14Ω・cm超~60℃で1×10
16Ω・cm未満の樹脂VRと、
(ii)0.860g/cc~0.890g/ccの密度と、
(iii)10g/10分~20g/10分のメルトインデックス(I2)と、
(iv)50℃~90℃の融解温度Tmと、
(v)30℃~50℃のビカット軟化温度と、
を有する、エチレン/オクテンコポリマーであり、
前記光起電力モジュールの電位誘起劣化(PID)試験後の電力損失が、0.05%~1%未満である、
請求項7~10のいずれか一項に記載の光起電力モジュール。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
結晶性ケイ素太陽光起電力モジュール(photovoltaic module、PVモジュール)の長期の信頼性のある安定した動作の維持における課題は、電位誘起劣化(potential induced degradation)(又は「PID」)現象の低減である。PVモジュールによって生成された電界の存在下では、ガラスカバーシートからのナトリウムイオン(Na+)が封止材シート(高分子材料製)を通って移動し、封止材を劣化させ、PID現象の一因となる。PIDは、太陽光PVモジュールの出力電力を20%低下させる可能性があり、深刻な場合には、PIDは、太陽光PVモジュールの出力電力を50%超低下させる可能性がある。
【0002】
両面PVモジュール(高効率PERC両面PVモジュールなど)の需要は、近年劇的に増大している。両面PVモジュールは、従来のエチレン酢酸ビニルEVAを封止材シート用の材料として使用する場合、イオン移動がガラス前面カバーシート及び背面ガラスカバーシートの両方を介して起こるため、許容できないほど高いPIDを示す。従来のポリオレフィンエラストマーはまた、両面PVモジュールにおいて封止材シート材料として使用される場合にPIDに耐える能力を実証していない。
【0003】
当技術分野では、PVモジュールにおける封止材シート用のPIDに耐え得るポリマー材料、特に両面PVモジュールにおける耐PIDポリマー材料の必要性が認識されている。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、封止材シートに関する。一実施形態では、封止材シートは、60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1016Ω・cm未満の樹脂体積抵抗率(VR)を有するエチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーと、0.01重量%~0.2重量%のイオン捕捉剤と、から形成された材料を含む。封止材シートは、91%を超える透過率を有する。
【0005】
本開示はまた、光起電力モジュールに関する。一実施形態では、光起電力モジュールは、(A)前面カバーシート、(B)前面封止材シート、(C)光起電力セル、(D)背面封止材シート、及び(E)背面カバーシートを含む。前面封止材シート(B)は、(i)60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1016Ω・cm未満の樹脂体積抵抗率(VR)を有するエチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーと、(ii)0.01重量%~0.2重量%のイオン捕捉剤と、からなる。背面封止材シート(D)は、(i)60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1016Ω・cm未満の樹脂体積抵抗率(VR)を有するエチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーと、(ii)0.01重量%~0.2重量%のイオン捕捉剤と、からなる。光起電力モジュールの電位誘起劣化(PID)試験後の電力損失は、0.05%~5%未満である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】例示的な光起電力モジュールの分解斜視図である。
【0007】
定義
元素周期表への任意の参照は、CRC Press,Inc.,1990-1991によって出版されたものへの参照である。この表での元素群への参照は、群に番号を付けるための新しい表記法によるものである。
【0008】
米国特許実務の目的のために、任意の参照される特許、特許出願又は公開の内容は、特に定義の開示(具体的に本開示で提供されるいずれの定義とも矛盾しない範囲)及び当該技術分野での一般知識に関して、参照によりそれらの全体が組み込まれる(又はその同等の米国版がそのように参照により組み込まれる)。
【0009】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値及び上限値を含む、下限値から上限値までの全ての値を含む。明示的な値を含む範囲(例えば、1、又は2、又は3~5、又は6、又は7)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の下位範囲(例えば、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6、等の部分範囲が含まれる)。
【0010】
特に反対の記載がないか、文脈から暗示されるか、又は当該技術分野で慣習的でない限り、全ての部及びパーセントは、重量に基づき、全ての試験方法は、本開示の出願日時点で最新のものである。
【0011】
本明細書で使用される「アルファ-オレフィン」又は「α-オレフィン」は、一次(アルファ)位置にエチレン不飽和を有する炭化水素分子である。例えば、本明細書で使用される「(C3-C20)アルファ-オレフィン」は、(i)1つのみのエチレン不飽和であって、第1及び第2の炭素原子の間に位置する不飽和と、(ii)3~20個の炭素原子のうちの、少なくとも3個の炭素原子と、を含む炭化水素分子からなる炭化水素分子である。例えば、本明細書で使用される(C3-C20)アルファ-オレフィンは、H2C=C(H)-Rを指し、式中、Rは、直鎖(C1-C18)アルキル基である。(C1-C18)アルキル基は、1~18個の炭素原子を有する一価の非置換飽和炭化水素である。
【0012】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」、及び同様の用語は、2つ以上のポリマーの組成物を意味する。このようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。このようなブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、並びにドメイン構成を測定及び/又は特定するために使用される任意の他の方法から決定されるような、1つ以上のドメイン構成を含んでも、含まなくてもよい。ブレンドは、積層体ではないが、積層体の1つ以上の層が、ブレンドを含有してもよい。
【0013】
「助剤」という用語は、架橋を促進する化合物、すなわち硬化助剤を意味する。
【0014】
本明細書で使用される「組成物」は、その組成物を含む材料の混合物、並びにその組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を含む。
【0015】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語は、あらゆる追加の成分、工程、又は手順の存在を、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求される全ての組成物は、相反する記載がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、あらゆる追加の添加剤、補助剤、又は化合物を含んでもよい。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる以降の記述の範囲からあらゆるその他の成分、工程、又は手順を除外する。「~からなる(consisting of)」という用語は、具体的に列挙されていない任意の構成成分、工程、又は手順を除外する。「又は」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーの個々、並びに任意の組み合わせで指す。
【0016】
「硬化」及び「架橋」という用語は、本明細書では互換的に使用され、架橋生成物(ネットワークポリマー)を形成することを意味する。
【0017】
「直接接触する」とは、第1の層が第2の層に直接隣接して位置しており、第1の層と第2の層との間に介在層も介在構造も存在しない層構成を指す。
【0018】
「エラストマー」などの用語は、その元の長さの少なくとも2倍まで延伸することができ、延伸させる力を解放させた場合に、ほぼその元の長さまで非常に急速に収縮する、ゴム様のポリマーを指す。エラストマーは、約10,000psi(68.95MPa)以下の弾性率、及びASTM D638-72の方法を使用した室温での非架橋状態で、通常200%超の伸長を有する。
【0019】
本明細書で使用する場合、「エチレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセントを超える重合エチレンモノマーを含有し、所望により、少なくとも1つのコモノマーを含有し得るポリマーである。
【0020】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」は、同じ種類又は異なる種類のモノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物を指す。よって、ポリマーという一般的な用語は、ホモポリマーという用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下に、唯一の種類のモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)、及び本明細書において定義されるインターポリマーという用語を包含する。例えば触媒残留物などの微量の不純物が、ポリマー中に及び/又はポリマー内に組み込まれ得る。
【0021】
試験方法
密度は、ASTM D792、方法Bに従って測定される。結果は、グラム/立方センチメートル(g/cc)で報告される。
【0022】
示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)
示差走査熱量測定(DSC)を使用して、広範囲にわたる温度のポリマーの溶融、結晶化、及びガラス転移挙動を測定し得る。例えば、RCS(冷蔵冷却システム、refrigerated cooling system)及びオートサンプラーを備えたTA Instruments Q2000DSCを使用して、本分析を実行する。試験中、使用する窒素パージガス流量は50mL/分である。各試料を約175℃で融解圧縮して薄膜にし、次に、融解した試料を室温(約25℃)まで空冷する。3~10mg、直径6mmの試験片を冷却したポリマーから抽出し、秤量し、軽量アルミニウムパン(約50mg)内に置き、圧着して閉じる。次に、その熱特性を決定するために分析を実行する。
【0023】
試料の熱挙動は、試料温度を昇降させて熱流対温度のプロファイルを創出することにより決定する。まず、その熱履歴を除去するために、試料を180℃まで急速に加熱し、3分間等温で保持する。次に、試料を10℃/分の冷却速度で-80℃まで冷却し、-80℃で3分間、等温で保持する。次に、試料を10℃/分の加熱速度で180℃まで加熱する(これが「第2の加熱」勾配である)。冷却曲線及び第2の加熱曲線を記録する。ベースラインエンドポイントを結晶化の開始から-20℃までに設定することによって、冷却曲線を分析する。ベースラインエンドポイントを-20℃から融解終了までに設定することによって、熱曲線を分析する。決定される値は、外挿融解開始点Tm及び外挿結晶化開始点Tcである。融解熱(Hf)(1グラム当たりのジュール)、並びに以下の式を使用して計算されたポリエチレン試料の結晶化度%である:結晶化度%=((Hf)/292J/g)×100。
【0024】
第2の加熱曲線から、融解熱(Hf)(融解エンタルピーとしても周知)及びピーク融解温度が報告される。
【0025】
融点Tmは、まず融解転移の開始と終了との間にベースラインを引くことにより、DSC加熱曲線から決定される。次に、融解ピークの低温側のデータに接線を引く。この線がベースラインと交差する箇所が、外挿融解開始点(Tm)である。これは、Bernhard Wunderlich,The Basis of Thermal Analysis,in Thermal Characterization of Polymeric Materials 92,277-278(Edith A.Turi ed.,2d ed.1997)に記載されている通りである。
【0026】
メルトインデックス
本明細書で使用するとき、「メルトインデックス」又は「MI」という用語は、溶融状態にあるときに熱可塑性ポリマーがどれだけ容易に流動するかの尺度を指す。メルトインデックス、又はI2は、ASTM D 1238、条件190℃/2.16kgに従って測定され、10分当たりの溶出グラム数(g/10分)で報告される。I10は、ASTM D 1238、条件190℃/10kgに従って測定され、10分当たりの溶出グラム数(g/10分)で報告される。
【0027】
PID試験
モジュールレベルでの電位誘起劣化(PID)試験を、IEC 62804-1に記載の手順に従って行った。(1)モジュール試料の初期出力を、IEC 60904に記載の手順でパルス太陽光シミュレータ(Burger PS8/PSS8)を使用して記録した。(2)85℃/85%RH条件の環境チャンバ内でPIDストレス処理を行った。モジュール試料を電源に接続して、1500Vの典型的な負バイアス電圧を発生させた。標準的な試験は96時間(h)かかる。(3)ストレス処理後、全てのモジュール試料を出力について再試験した。結果を、電力損失を更に計算するために初期測定値と比較する。96時間のPID試験後の電力損失に関するIEC規格は、PVモジュールの前面及び背面の両方について5%未満である。
【0028】
透過率
試料シートの平均透過率を、150mmの積分球を備えるLAMBDA 950 UV/Vis分光光度計(PerkinElmer)を使用して決定した。少なくとも3つの試料を試験し、380nm~1100nmの平均透過率を収集した。
【0029】
ビカット軟化点を、ASTM D1525に従って決定した。
【0030】
体積抵抗率(Volume Resistivity、VR)試験
体積抵抗率は、ASTM D257に基づく以下に従って試験する。測定は、Keithley 6517 B電位計とKeithley 8009試験装置とを組み合わせて行う。Keithleyモデル8009試験チャンバは、強制空気オーブン内にあり、高温で動作することができる(オーブンの最大温度は80℃である)。漏れ電流は、機器から直接読み取られ、以下の等式を使用して、体積抵抗率が計算される。
ρ=V×AI×tρ=V×AI×t
式中、ρは、体積抵抗率(オーム-cm)であり、Vは、印加電圧(ボルト)であり、Aは、電極接触面積(cm2)であり、Iは、漏れ電流(アンペア)であり、tは、試料の平均厚さである。試料の平均厚さを得るために、各試料の厚さを試験前に測定し、試料の5つの点を測定して、平均厚さを得た。体積抵抗率試験を、室温(23℃)及び60℃で1000ボルトで行った。2つの圧縮成形封止材シートを試験して、平均を得た。
【0031】
樹脂VR試験(又は「樹脂VR」)の場合は、樹脂を試料シート(~500nm)に圧縮成形し、試料シートに対して前述のVR試験を行った。シートVR試験(又は「シートVR」)の場合は、押出された試料シートを積層処理によって硬化(架橋)させた。積層処理は、PENERGY L036ラミネータ上で150℃で20分間行われ、4分間の真空処理及び16分間のプレスを含んだ。試料シートを、積層処理中に2枚のPTFEシートの間に配置した。積層後、PTFEシートを除去した。次いで、硬化した試料シートに対して前述のVR試験を行った。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、封止材シートを提供する。一実施形態では、封止材シートは、60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1016Ω・cm未満の樹脂体積抵抗率(VR)を有するエチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーから形成された材料を含む。封止材シートは、0.01重量%~0.2重量%のイオン捕捉剤を含む。封止材シートは、91%を超える透過率を有する。
【0033】
1. エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマー
封止材シートは、エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーを含む。エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーは、(i)エチレンの重合単位及び(ii)C4-C8α-オレフィンコモノマーの重合単位からなる。好適なエチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーの非限定的な例としては、エチレン/ブテンコポリマー、エチレン/ヘキセンコポリマー、及びエチレン/オクテンコポリマーが挙げられる。一実施形態では、エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーは、酢酸ビニルを欠くか、又は酢酸ビニルを含まない。
【0034】
エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーは、60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1016Ω・cm未満の樹脂体積抵抗率(VR)、又は60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1015Ω・cmのVRを有する。
【0035】
一実施形態では、エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマー樹脂は、以下の特性のうちの1つ、いくつか、又は全てを有するエチレン/オクテンコポリマーである。
(i)60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1016Ω・cm未満の樹脂VR、又は60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1015Ω・cmの樹脂VR、及び/又は
(ii)23℃で1×1014Ω・cm超~23℃で1×1016Ω・cm未満のシートVR、及び/又は
(iii)0.860g/cc~0.890g/cc、若しくは0.860g/cc~0.880g/cc、若しくは0.865g/cc~0.875g/ccの密度、及び/又は
(iv)10g/10分~20g/10分、若しくは10g/10分~15g/10分、若しくは11g/10分~14g/10分のメルトインデックス(I2)、及び/又は
(v)50℃~90℃、若しくは50℃~80℃、若しくは55℃~75℃、若しくは60℃~70℃の融解温度Tm、及び/又は
(vi)30℃~50℃、若しくは35℃~39℃のビカット軟化温度。
【0036】
封止材シートは、イオン捕捉剤を含む。イオン捕捉剤は、絶縁性や耐PID性を低下させる導電性物質(イオン、ラジカル、Na+イオン等)を捕捉する。イオン捕捉剤は、封止材シートの耐PID性に寄与する。封止材シートは、0.01重量%~0.2重量%、又は0.02重量%~0.2重量%、又は0.02重量%~0.1重量%、又は0.03重量%~0.1重量%未満のイオン捕捉剤を含む。重量パーセントは、封止材シートの総重量に基づく。好適なイオン捕捉剤の非限定的な例としては、リン酸ジルコニウム、リン酸ビスマス、リン酸チタン、リン酸スズ、リン酸タンタル、及びこれらの組み合わせなどの金属リン酸塩が挙げられる。
【0037】
一実施形態では、イオン捕捉剤はリン酸ジルコニウムである。更なる実施形態では、イオン捕捉剤は、Zr1-XHfXHa(PO4)b・mH2Oであり、式中
0≦x≦0.2であり、
2<b≦2.1であり、
aは3であり、
b-a=4であり、
0≦m≦2である。
【0038】
一実施形態では、封止材シートを形成するための材料は、硬化パッケージを含む。硬化パッケージは、有機過酸化物と、任意の硬化剤と、任意のシランカップリング剤とを含む。硬化パッケージが存在する場合、材料は、架橋封止材シートを形成するための硬化性組成物である。
【0039】
カップリングパッケージが存在する場合、封止材シートを形成するための材料は、材料の総重量に基づいて、0.1重量%~3重量%、又は0.1重量%~2.5重量%、又は0.1重量%~2重量%、又は0.5重量%~1.5重量%、又は1重量%~1.5重量%の量で有機過酸化物を含む。重量パーセントは、封止材シートを形成するための材料の総重量に基づく。有機過酸化物は、炭素原子、水素原子、及び2つ以上の酸素原子を含有し、少なくとも1つの-O-O-基を有し、ただし、2つ以上の-O-O-基が存在する場合、各-O-O-基は、1つ以上の炭素原子を介して別の-O-O-基に間接的に結合する、分子、又はそのような分子の集合体である。有機過酸化物の非限定的な例としては、ペルオキシカーボネート、ジアシルペルオキシド、ペルオキシケタール、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシエステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
一実施形態では、有機過酸化物は、式RO-O-O-ROのジアルキルペルオキシド、モノペルオキシドであり、式中、各ROは、独立して、(C1-C20)アルキル基又は(C6-C20)アリール基である。各(C1~C20)アルキル基は独立して、非置換であるか、又は1つ若しくは2つの(C6~C12)アリール基で置換されている。各(C6~C20)アリール基は、非置換であるか、又は1~4つの(C1~C10)アルキル基で置換されている。あるいは、有機過酸化物は、式RO-O-O-R-O-O-ROのジペルオキシドであってもよく、式中、Rは、(C2-C10)アルキレン、(C3-C10)シクロアルキレン、又はフェニレンなどの二価炭化水素基であり、各ROは、上記で定義された通りである。
【0041】
好適な有機過酸化物の非限定的な例としては、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC)、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TAEC)、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナン、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートジクミルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルパーベンゾエート、ジ(tert-ブチル)ペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド;2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチル-ペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、イソプロピルパーカーボネート、α,α’-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシル-モノカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジヒドロキシペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、ビス(1,1-ジメチルエチル)ペルオキシド、ビス(1,1-ジメチルプロピル)ペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)ヘキシン、4,4-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)吉草酸、ブチルエステル、1,1-ビス(1,1-ジメチルエチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド(「DTAP」)、ビス(アルファ-t-ブチル-ペルオキシイソプロピル)ベンゼン(「BIPB」)、イソプロピルクミルt-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-ブチルペルオキシド、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキシン-3,1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルクミルクミルペルオキシド、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ジ(イソプロピルクミル)ペルオキシド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
助剤が硬化パッケージ中に存在する場合、封止材シートを形成するための材料は、封止材シートを形成するために使用される材料の総重量に基づいて、0.1重量%~2.5重量%、又は0.1重量%~2重量%、又は0.5重量%~1.5重量%、又は0.5重量%~1.0重量%の量の助剤を含む。好適な助剤の非限定的な例は、トリアリルイソシアヌレートである。
【0043】
シランカップリング剤が硬化パッケージ中に存在する場合、封止材シートを形成するための材料は、封止材シートを形成するために使用される材料の総重量に基づいて、0.01重量%~2重量%、又は0.05重量%~1.5重量%、又は0.1重量%~1重量%、0.15重量%~0.5重量%、0.2重量%~0.4重量%、又は0.25重量%~0.3重量%のシランカップリング剤を含む。適切なシランカップリング剤の非限定的な例には、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス-(β-メトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エトキシ-シクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0044】
一実施形態では、シランカップリング剤は、ビニルトリメトキシシラン、又は3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、又はアリルトリメトキシシランから選択される。
【0045】
封止材シートを形成するための材料は、1つ以上の任意の添加剤を含んでもよい。任意の添加剤が存在する場合、添加剤は、材料の総重量に基づいて、ゼロ超、又は0.01重量%、又は0.1重量%~1重量%、又は2重量%、又は3重量%、又は5重量%の量で存在する。適切な添加剤の非限定的な例には、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、安定剤、着色剤、紫外線(UV)吸収剤又は安定剤、難燃剤、相溶化剤、充填剤、ヒンダードアミン安定剤、ツリー遅延剤、メチルラジカル捕捉剤、スコーチ遅延剤、核剤、処理助剤、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0046】
一実施形態では、封止材シートを形成する材料は、(i)60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1016Ω・cm未満の樹脂体積抵抗率(VR)を有するエチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマー、(ii)0.01重量%~0.2重量%のイオン捕捉剤、並びに(iii)有機過酸化物、(iv)助剤、(v)シランカップリング剤、及び(vi)UV安定剤を含有する硬化パッケージを含む。イオン捕捉剤は、エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーペレットに配合される。配合されたエチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーペレットは、次いで、過酸化物、助剤、並びにシランカップリング剤(及び任意の添加剤)の硬化パッケージと混合される。エチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマー(イオン捕捉剤を含む)のペレットを、有機過酸化物、助剤及びシランカップリング剤からなる硬化パッケージに浸漬し、次いで、浸漬したペレットを更に処理(例えば、配合、押出、成形など)して、架橋エチレン/C4~C8α-オレフィンコポリマー、イオン捕捉剤及び任意の添加剤からなる封止材シートを形成する。
【0047】
架橋封止材シートは、架橋封止材シートを製造するために硬化される材料と比較して、構造的及び物理的に異なる。一実施形態では、封止材シートは架橋シートであり、99.8重量%~99.98重量%のエチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーと、0.02重量%~0.2重量%のリン酸ジルコニウムであるイオン捕捉剤とからなる。封止材シートは、23℃で1×1014Ω・cm超~23℃で1×1016Ω・cm未満のVR(シートVR)、又は23℃で1×1014Ω・cm超~23℃で7.0×1015Ω・cm未満のシートVRを有する。エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーは、以下の特性の1つ、いくつか、又は全てを有するエチレン/オクテンコポリマーである。
(i)60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1016Ω・cm未満の樹脂VR、又は60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1015Ω・cmの樹脂VR、及び/又は
(ii)23℃で1×1014Ω・cm超~23℃で1×1016Ω・cm未満のVR(シートVR)、又は23℃で1×1014Ω・cm超~23℃で7.0×1015Ω・cm未満のシートVR、及び/又は
(iii)0.860g/cc~0.890g/cc、若しくは0.860g/cc~0.880g/cc、若しくは0.865g/cc~0.875g/ccの密度、及び/又は
(iv)10g/10分~20g/10分、若しくは10g/10分~15g/10分、若しくは11g/10分~14g/10分のメルトインデックス(I2)、及び/又は
(v)50℃~90℃、若しくは50℃~80℃、若しくは55℃~75℃、若しくは60℃~70℃の融解温度Tm、及び/又は
(vi)30℃~50℃、若しくは35℃~39℃のビカット軟化温度(以下、シート1)。重量パーセントは、封止材シートの総重量に基づく。
【0048】
2. PVモジュール
本発明は、光起電力(PV)モジュールを提供する。「光起電力セル」、「PVセル」、及び同様の用語は、いくつかの無機又は有機タイプのいずれかの1つ以上の光起電力効果材料を含有する構造を意味する。光起電力効果材料の非限定的な例には、結晶性ケイ素、多結晶性ケイ素、非晶質ケイ素、(ジ)セレン化銅インジウムガリウム(CIGS)、セレン化銅インジウム(CIS)、テルル化カドミウム、ヒ化ガリウム、色素増感材料、及び有機太陽セル材料を含む既知の光起電力効果材料が含まれる。
図1に示すように、PVモジュールは、典型的には、積層体構造に用いられ、典型的には屋外用途において入射光を電流に変換する少なくとも1つの光反応性表面を有する。PVセルは、本質的に可撓性であっても剛性であってもよく、光起電力効果材料及びそれらの生産に適用される任意の保護コーティング表面材料、並びに適切な配線及び電子駆動回路を含み得る。
【0049】
「光起電力モジュール」、「PVモジュール」、及び同様の用語は、PVセルを含む構造を指す。PVモジュールは、前面カバーシート、前面封止材シート、背面封止材シート、バックシート、又は背面封止材シートも含み得、PVセルは前面封止材シートと背面封止材シートとの間に挟まれている。
【0050】
PVモジュールは、(A)前面カバーシート、(B)前面封止材シート、(C)光起電力セル、(D)背面封止材シート、及び(E)背面カバーシートを含む。
図1は、例示的なPVモジュールを示す。剛性PVモジュール10は、前面封止材シート12a及び背面封止材シート12bによって包囲又は封止された光起電力セル11(PVセル11)を含む。前面カバーシート13は、PVセル11上に配置された前面封止材シート12aの部分の前面を覆う。背面カバーシート14は、PVセル11の背面上に配置された背面封止材シート12bの部分の背面を支持する。前面カバーシート13及び背面カバーシート14は、それぞれ、ガラス、アクリル樹脂又はポリカーボネートからなる。一実施形態では、前面カバーシート13及び背面カバーシート14は、それぞれガラスからなる。
【0051】
図1に示すように、前面封止材シート12aの一部はPVセル11に直接接触し、前面封止材シートの別の部分は背面封止材シート12bに直接接触する。背面封止材シート12bの一部も、PVセル11の背面に直接接触する。このようにして、前面封止材シート12a及び背面封止材シート12bは、PVセル11を完全に封止する。
図1に示すように、前面封止材シート12aは前面カバーシート13に直接接触し、背面封止材シート12bは背面カバーシート14に直接接触する。PVセル11は、前面封止材シート12a及び背面封止材シート12bの両方がPVセル11と直接接触するように、前面封止材シート12aと背面封止材シート12bとの間に挟まれる。前面封止材シート12a及び背面封止材シート12bは、PVセル11が存在しない位置では互いにも直接接触する。
【0052】
本開示の封止材シートは、前面封止材シート、背面封止材シート、又は前面封止材シート及び背面封止材シートの両方であり得る。一実施形態では、本開示の封止材シートは、前面封止材シートである。別の実施形態では、本開示の封止材シートは、前面封止材シート及び背面封止材シートの両方である。
【0053】
一実施形態では、PVモジュールは、シート1である前面封止材シート12aと、シート1である背面封止材シート12bとを含む。
【0054】
一実施形態では、本開示の封止材シートは、1つ以上の積層技法によって電子デバイスに貼付される。積層により、カバーシートは封止材シートの第1の表面と直接接触し、電子デバイスは封止材シートの第2の表面と直接接触する。前面カバーシートは前面封止材シートの第1の表面と直接接触し、背面カバーシートは背面封止材シートの第2の表面と直接接触し、電子デバイスは、前面封止材シートの第2の表面と背面封止材シートの第1の表面との間に固定され、それらと直接接触する。
【0055】
一実施形態では、積層温度は、有機過酸化物を活性化し、材料、すなわち、エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマー、イオン捕捉剤、有機過酸化物、シランカップリング剤、及び助剤(及び任意の添加剤)からなる硬化性材料を架橋するのに十分である。架橋中に、エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーの分子鎖は、炭素-炭素結合によって結合する。シランカップリング剤はまた、カバーシートの表面と相互作用して、各封止材シートとそのそれぞれのカバーシートとの間の接着力を増加させる。積層後、材料は、エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマー、イオン捕捉剤、有機過酸化物、シランカップリング剤、及び助剤の反応生成物である。架橋封止材シートは、架橋可能なこれらの材料とは構造的及び物理的に異なる。
【0056】
一実施形態では、光起電力モジュールは、
(A)前面カバーシートと、
(B)前面封止材シートであって、
(i)60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1016Ω・cm未満の樹脂体積抵抗率(VR)を有するエチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーと、
(ii)0.01重量%~0.2重量%のイオン捕捉剤と、
からなる前面封止材シートと、
(C)光起電力セルと、
(D)背面封止材シートであって、
(i)60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1016Ω・cm未満の樹脂体積抵抗率(VR)、又は60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1015Ω・cm未満の樹脂VRを有するエチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーと、
(ii)0.01重量%~0.2重量%のイオン捕捉剤と、
からなる背面封止材シートと、
(E)背面カバーシートと、を含み、光起電力モジュールの電位誘起劣化(PID)試験後の電力損失は、0.05%~5.0%未満、又は0.05%~2%未満である。更なる実施形態では、前面封止材シート及び背面封止材シートはそれぞれ、23℃で1×1014Ω・cm超~23℃で1×1016Ω・cm未満のシートVR、又は23℃で1×1014Ω・cm超~23℃で7.0×1015Ω・cm未満のシートVRを有する。
【0057】
一実施形態では、光起電力モジュールは、(A)前面カバーシート、(B)前面封止材シート、(C)光起電力セル、(D)背面封止材シート、及び(E)背面カバーシートを含む。前面封止材シート及び背面封止材シートはそれぞれ、架橋シートであり、
99.8重量%~99.98重量%のエチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーからなり、エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーは、
(i)60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1016Ω・cm未満の樹脂VR、又は60℃で1×1014Ω・cm超~60℃で1×1015Ω・cm未満の樹脂VR、及び/又は
(ii)0.860g/cc~0.880g/ccの密度、及び/又は
(iii)10g/10分~15g/10分のメルトインデックス(I2)、及び/又は
(iv)50℃~80℃の融解温度Tm、及び/又は
(v)30℃~50℃%のビカット軟化温度を有するエチレン/オクテンコポリマーであり、光起電力モジュールの電位誘起劣化(PID)試験後の電力損失は、0.05%~1%未満である。更なる実施形態では、前面封止材シート及び背面封止材シートはそれぞれ、23℃で1×1014Ω・cm超~23℃で1×1016Ω・cm未満のシートVR、又は23℃で1×1014Ω・cm超~23℃で7.0×1015Ω・cm未満のシートVRを有する。
【0058】
限定するものではなく例として、これから、本開示のいくつかの実施形態を、以下の実施例において詳述する。
【実施例】
【0059】
本発明の実施例(IE)及び比較試料(CS)で使用した材料を、以下の表1に示す。
【表1】
【0060】
1. 封止材シートの作製
イオン捕捉剤粉末(IXE-100及びIXEPLAS)並びに樹脂の配合。樹脂を設定温度(130℃)及びロータ速度10rpmでBrabenderミキサーに供給した。次いで、イオン捕捉剤粉末を秤量し、Brabenderミキサーに徐々に添加した。混合は、設定温度(130℃)及びロータ速度80rpmで5分間行った。完成した化合物を回収し、小片に切断した。これらの片をBrabender一軸スクリュー押出機のホッパーに供給し、スクリュー速度25rpm、110℃で溶融ストランドに押出した。溶融ストランドをBrabenderペレタイザーに供給して、イオン捕捉剤粉末マスターバッチペレットを製造した。次いで、イオン捕捉剤マスターバッチ試料を、所望の用量でミキサーを用いてポリマーペレットとドライブレンドした。
【0061】
各組成物について、ポリマーペレット(98.18重量%)を硬化パッケージ(1.00重量%の過酸化物、0.50重量%の架橋助剤、0.25重量%のシランカップリング剤、及び0.07重量%のUV安定剤)と混合した。
【0062】
各組成物について、40℃で4時間浸漬した後、ペレットを、過酸化物分解を回避するために110℃の押出機温度でLabtechキャスティングラインに供給した。厚さ約470nm、幅250mmの膜を作製した。
【0063】
これらのフィルム(前面/背面封止材シートをシミュレートする)を、以下のモジュール作製及び性能試験に使用した。
【0064】
単一セルモジュール積層。この研究で使用したガラス/ガラス両面モジュールは、以下の手順で調製した。
【0065】
4×6平方インチのガラスカバーシートを水を用いて洗浄し、次いで使用前に乾燥させた。封止材シートをガラスのサイズに合わせて小片に切断した。前面ガラスカバーシート、前面封止材シート、光起電力セル、背面封止材フィルム、及び背面ガラスカバーシートを前述の順序で一緒に積層した。積層処理は、PENERGY L036ラミネータ上で150℃で20分間行われ、4分間の真空処理及び16分間のプレスを含んだ。積層試料をPIDストレス試験に使用した。3つの同一の単一セルPVモジュール試料をPID試験用に調製して、平均値を得た。
【0066】
前面封止材シート/背面封止材シートの特性を以下の表2に示す。
【表2】
CS=比較試料;IE=発明実施例
【0067】
結果
(A)XUS 38679(CS-2)エチレン/オクテンコポリマーは、60℃で2.74×1014Ω・cmの樹脂VRを有し、CS-2を有するPVモジュールのPID試験後の電力損失は、-3.57%/-9.25%(前面/背面)である。CS-2前面/背面封止材フィルムを有するPVモジュールは、5%を超える電位誘起劣化(PID)試験後の電力損失を有し、従って、両面PVモジュール用の封止材シートとして適していない。XUS 38679エチレン/オクテンコポリマー及び0.0625重量%のPOEM(CS-2-1)からなる封止材シートは、-3.38%/-5.79%(前面/背面)のPID試験後の電力損失を示した。電力損失が5%を超えるCS-2-1は、両面PVモジュール用の封止材シートとして適していない。XUS 38679エチレン/オクテンコポリマー及び(i)0.25重量%のPOEM(IE-2-2)、(ii)0.5重量%のPOEM(0.04重量%のIXE-100)(IE-2-3)、(iii)1重量%のPOEM(IE-2-5)及び(iv)2.5重量%のPOEM(IE-2-6)からなる封止材シートはそれぞれ、2%未満のPID試験後の電力損失を示し、これは許容可能であり、またCS-1、ENGAGE PV 8669についての-2.86%のPID試験後の電力損失よりも低い。
【0068】
(C)ENGAGE 8411(CS-4)のPID試験後の電力損失は、-3.41%/-13.31%(前面/背面)であり、R04(CS-5)のPID試験後の電力損失は、-6.22%/-23.58%(前面/背面)である。従って、ENGAGE 8411及びR04は、両面PVモジュールには適していない。ENGAGE 8411(CS-4-1)に0.5重量%のPOEMを添加しても、又はENGAGE 8411(CS-4-2)に1.0重量%のPOEMを添加しても、電力損失の改善は見られない。性能改善傾向がなく、またより多くの用量は経済性及びフィルム透明性に影響を与えるので、用量を更に増加させなかった。
【0069】
特定の理論に束縛されるものではないが、VRは、エチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマー樹脂内のイオン移動度及び濃度を表すと考えられる。R04(CS-5)及びENGAGE 8411(CS-4)などの、60℃で1×1014Ω・cm未満の樹脂VRを有するエチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーにおけるイオン移動度及び濃度は高く、従って、イオン捕捉剤は、全てのイオンを効果的に中和することができない。その結果、イオン捕捉剤は、60℃で1×1014Ω・cm未満の樹脂VRを有するエチレン/C4-C8α-オレフィンコポリマーにおける電力損失を効果的に防止することができない。
【0070】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態及び例示に限定されず、実施形態の一部、及び異なる実施形態の要素の組み合わせを含むそれらの実施形態の変更された形態を、以下の特許請求の範囲に該当する範囲で含むことが特に意図されている。
【国際調査報告】