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特表2024-506458直列接続セル、内部リレー及び内部バッテリ管理システムを備えたバッテリモジュール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】直列接続セル、内部リレー及び内部バッテリ管理システムを備えたバッテリモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240206BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20240206BHJP
   B60L 58/21 20190101ALI20240206BHJP
   B60L 58/20 20190101ALI20240206BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240206BHJP
   H01M 50/284 20210101ALN20240206BHJP
   H01M 50/213 20210101ALN20240206BHJP
【FI】
H01M10/48 P
B60L3/00 S
B60L58/21
B60L58/20
H02J7/02 H
H01M50/284
H01M50/213
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540666
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 US2021055047
(87)【国際公開番号】W WO2022146528
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】17/141,125
(32)【優先日】2021-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/182,072
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523161778
【氏名又は名称】パラトブ グループ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】パラトブ,デニス
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H040
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503GD04
5H030FF41
5H040AA03
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT01
5H040AY08
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC18
5H125CC01
5H125EE21
5H125FF05
(57)【要約】
任意の数の直列接続されたセルを備えるバッテリモジュールの低コスト製造を促すバッテリセル監視・調整回路が開示される。複数の直列接続されたセル監視・調整回路を利用したバッテリ管理システムが開示される。開示された回路を作動するための方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリセルと回路基板アセンブリとを備えるバッテリセルアセンブリであって、前記回路基板アセンブリは前記バッテリセルの正端子及び前記バッテリセルの負端子に結合され、前記回路基板アセンブリは、前記バッテリセルを監視するバッテリセル監視・調整回路をさらに備え、前記バッテリセル監視・調整回路はさらに、
コントローラと、
前記コントローラによるコマンドメッセージの受信及び応答メッセージの伝送のためのアップリンクポートと、
前記コントローラによるコマンドメッセージの伝送及び応答メッセージの受信のためのダウンリンクポートであって、前記アップリンクポートとは区別され別個のものである、ダウンリンクポートとを備え、
前記アップリンクポートは、前記正端子及び前記負端子の一方に通信可能に結合され、
前記ダウンリンクポートは、前記正端子及び前記負端子の他方に通信可能に結合される、
バッテリセルアセンブリ。
【請求項2】
前記アップリンクポートの前記バッテリセル正端子及び前記バッテリセル負端子の一方への前記通信可能な結合と、前記ダウンリンクポートの前記バッテリセル正端子及び前記バッテリセル負端子の他方への前記通信可能な結合とが、AC結合である、請求項1に記載のバッテリセルアセンブリ。
【請求項3】
バッテリモジュールであって、
筐体と、
モジュール正端子と、
モジュール負端子と、
前記筐体内に収容された複数の直列接続されたバッテリセルアセンブリと、
モジュールコントローラであって、前記複数の直列接続されたバッテリセルアセンブリに通信可能に結合されている、モジュールコントローラとを備え、
前記複数の直列接続されたバッテリセルアセンブリのそれぞれは、バッテリセルと、回路基板アセンブリとをさらに備え、前記複数の直列接続された回路基板アセンブリの少なくとも1つは、前記バッテリセルの正端子及び前記バッテリセルの負端子に結合され、前記複数の直列接続された回路基板アセンブリの前記少なくとも1つは、前記バッテリセルを監視するバッテリセル監視・調整回路をさらに備え、前記バッテリセル監視・調整回路はさらに、
コントローラと、
前記コントローラによるコマンドメッセージの受信及び応答メッセージの伝送のためのアップリンクポートであって、前記バッテリセルの前記正端子及び前記バッテリセルの前記負端子の一方に通信可能に結合されている、アップリンクポートと、
前記コントローラによるコマンドメッセージの伝送及び応答メッセージの受信のためのダウンリンクポートであって、前記アップリンクポートとは区別され別個のものであり、前記バッテリセルの前記正端子及び前記バッテリセルの前記負端子の他方に通信可能に結合されている、ダウンリンクポートとを備え、
前記コントローラは不揮発性メモリをさらに備え、
前記不揮発性メモリは第1の一意の識別子(ID)でプログラムされ、前記第1の一意のIDは前記アップリンクポートに関連付けられ、
前記不揮発性メモリは第2の一意のIDでさらにプログラムされ、前記第2の一意のIDは前記ダウンリンクポートに関連付けられる、
バッテリモジュール。
【請求項4】
前記モジュールコントローラが、交流(AC)結合によって、前記モジュール正端子及び前記モジュール負端子のうちの第1のモジュール端子にさらに通信可能に結合される、請求項3に記載のモジュール。
【請求項5】
前記モジュールコントローラが、交流結合によって、前記モジュール正端子及び前記モジュール負端子のうちの第2のモジュール端子にさらに通信可能に結合される、請求項4に記載のモジュール。
【請求項6】
電圧コンバータをさらに備え、前記コンバータは、前記モジュール正端子及び前記モジュール負端子から電力を引き出すように構成され、前記モジュールコントローラに電力を供給するようにさらに構成される、請求項3に記載のモジュール。
【請求項7】
低電圧バッテリをさらに備え、前記低電圧バッテリは、前記電圧コンバータから電気エネルギーを受け取るように構成され、前記低電圧バッテリは、前記モジュールコントローラに電気エネルギーを供給するようにさらに構成される、請求項6に記載のモジュール。
【請求項8】
バッテリセル監視・調整回路を作動する方法であって、前記回路は、コントローラと、アップリンクポートと、ダウンリンクポートとを備え、前記コントローラは不揮発性メモリをさらに備え、前記不揮発性メモリは、前記アップリンクポートに関連付けられる第1の一意のIDでプログラムされ、前記不揮発性メモリは、前記ダウンリンクポートに関連付けられる第2の一意のIDでさらにプログラムされ、前記方法は、
前記アップリンクポートを介したコマンドメッセージの受信を待機するステップと、
前記待機の後、前記アップリンクポートでコマンドメッセージを受信するステップと、
前記アップリンクポートに関連付けられた前記第1の一意のIDと一致しないメッセージIDを有する前記コマンドメッセージを受信したことに応答して、前記コマンドメッセージを破棄し、コマンドメッセージの受信を待機するステップを繰り返すステップと、
前記アップリンクポートに関連付けられた前記第1の一意のIDと一致するメッセージIDを有する前記コマンドメッセージを受信したことに応答して、前記ダウンリンクポートを介して新しいコマンドメッセージを伝送するステップであって、前記新しいコマンドメッセージは、前記ダウンリンクポートに関連付けられた第2の一意のIDであるメッセージIDを有する、伝送するステップと、
前記受信したコマンドメッセージで指定されたコマンドを実行するステップと、
応答メッセージを準備するステップであって、前記準備された応答メッセージは、前記アップリンクポートに関連付けられた第1の一意のIDであるメッセージIDを有する、準備するステップと、
所定の時間内に終了するように設定されたタイムアウト期間を開始するステップと、
前記タイムアウト期間中、前記ダウンリンクポートを介した応答メッセージの受信を待機するステップと、
前記タイムアウト期間中に新しい応答メッセージを受信するステップと、
前記新しい応答メッセージが前記第2の一意のIDに一致しないメッセージIDを有することに応答して、前記受信した新しい応答メッセージを破棄し、前記タイムアウト期間中、前記ダウンリンクポートを介した応答メッセージの受信を待機するステップを繰り返すステップと、
前記受信した新しい応答メッセージが前記第2の一意のIDに一致するメッセージIDを有することに応答して、前記受信した新しい応答メッセージを前記準備された応答メッセージに追加することにより、前記準備された応答メッセージを更新し、前記更新された準備された応答メッセージを前記アップリンクポートを介して伝送し、前記アップリンクポートを介したコマンドメッセージの受信を待機するステップを繰り返すステップと、
タイムアウト期間の満了に応答して、前記アップリンクポートを介して前記準備されたメッセージを伝送し、前記新しい応答メッセージを受信する前に、前記タイムアウト期間の満了に応答して、前記アップリンクポートを介したコマンドメッセージの受信を待機するステップを繰り返すステップと
を含む方法。
【請求項9】
前記バッテリセル監視・調整回路がバッテリセルに結合され、前記バッテリセルは正端子と負端子を有し、前記アップリンクポートは前記正端子と前記負端子のうちの第1の端子に通信可能に結合され、前記ダウンリンクポートは前記正端子と前記負端子のうちの第2の端子に通信可能に結合される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アップリンクポートがAC結合によって前記バッテリセルの前記正端子及び前記バッテリセルの前記負端子のうちの前記第1の端子に通信可能に結合され、前記ダウンリンクポートがAC結合によって前記バッテリセルの前記正端子及び前記バッテリセルの前記負端子のうちの前記第2の端子に通信可能に結合される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、シリアル番号17141125を有し、2021年1月4日に提出された同時係属出願のBATTERY MODULE WITH SERIES CONNECTED CELLS, INTERNAL RELAYS AND INTERNAL BATTERY MANAGEMENT SYSTEMの一部継続出願である、シリアル番号17182972を有し、2021年2月22日に提出された同時係属出願のBATTERY MODULE WITH SERIES CONNECTED CELLS, INTERNAL RELAYS AND INTERNAL BATTERY MANAGEMENT SYSTEMに付与された優先権を主張し、その両方はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの乗り物を電気推進に変換する需要が急速に高まっている。最高の性能と効率を実現するために、そのような乗り物の電気ドライブトレインは、直流(DC)高電圧で動作する必要がある。公称400V DCで動作するシステムは現在一般的であり、800V DC以上を使用する高性能設計も実用化されつつある。
【0003】
このようなシステムに電力を供給するバッテリパックの容量も増加している。現在では70KWhを超えるパックが一般的で、2,000Aを超える電流を供給できるものもある。このようなレベルの電力は、電気自動車が衝突やその他の不都合な事象に巻き込まれたときの緊急要員による救助活動中だけでなく、通常の組み立て及び整備作業中の両方で、生命を脅かす多くの危険をもたらす可能性がある。
【0004】
結露、降水、又は偶発的な水没によって湿気にさらされると、パック内のショートを引き起こし、火災や爆発につながる可能性がある。
【0005】
大容量パックは通常、複数の個別の小型セルを必要とし、それらのグループが所望の電流能力を達成するために並列に接続され、次に複数のグループが所望の電圧を達成するために直列に接続される。一般的に多数のセルが必要とされ、かなりの重量と嵩が生じるため、乗り物用バッテリパックはモジュールで構成されることが多い。典型的な既知のバッテリモジュール設計は、パックの数分の一であり、取り扱いを容易にする大きさであり、多くの場合、人間の皮膚に接触しても無害と考えられる約50V未満のモジュール電圧を有するが、いくつかのより高電圧のモジュールも知られている。
【0006】
テスラなどに代表される自動車用バッテリ設計の新しい傾向は、モジュール構造から脱却し、直接セルで構成され、整備が不可能なモノリシックバッテリパックを作ることである。主流の自動車用途では実用的かもしれないが、通常運転の一部として過酷な使用を強いられる高性能車では、このアプローチは望ましくない。このような乗り物は、定期的に衝撃荷重を受け、しばしば衝突による損傷を受ける。このような乗り物は、通常の使用の一部として、頻繁な整備、修理、主要部品の交換を必要とする。モノリシックな整備不可能なバッテリパックは、このような要件に反している。
【0007】
当技術分野で知られているモジュール式パックでは、所望のパック電圧を達成するために、低電圧モジュールがパック内で直列に接続されるのが一般的である。パックは通常、筐体と、筐体内に収容されたリレー、ヒューズ、バッテリ管理システム、電流感知装置、絶縁監視装置等などの安全装置とを備えている。通常、安全装置はモジュールの外部にあり、コストと製造の複雑さを軽減するため、パック内のすべてのモジュールで共有される安全装置は1セットのみである。このような特徴により、整備のために開封されず、事故又は水の浸入などの他の不都合な状況によって完全性が損なわれない限り、パック全体の安全性が保たれる。
【0008】
当該技術分野で知られている個々のモジュールは、パック全体よりも低い電圧を有し得るが、それらは並列に接続されたセルグループを特徴としており、したがって大きな電流能力を有し、それは典型的にはパック全体の所望の電流能力に等しい。この特性により、各モジュールにリレーを追加することは、大電流リレーの費用と、複数のモジュールが直列に接続された場合に加算し得る増加した抵抗のために、非現実的である。その結果、当該技術分野で知られているモジュールは、モジュールを構成するセルに常に接続される外部端子を有している。大電流能力では、外部端子を横切ってショートすると、非常に大量のエネルギーが放出され、火災、深刻な怪我、及びモジュールの潜在的な損傷の危険性が高くなる。
【0009】
乗り物用バッテリパックでは一般的ではないが、高電圧モジュールを並列接続することは当該技術分野で知られている。Homらに付与された米国特許第10,333,328号において、Homは、複数のバッテリを並列に接続するマルチバッテリ充電ステーションを教示している。Homは、充電のための共通電源バスへの各バッテリの選択的接続を管理するために、各バッテリ内にダイオード又は電気スイッチを設けることを教示している。Homによって教示されるこの発明の目的は、異なる充電状態を有する複数のバッテリを共通電源バスに接続する方法を提供することである。Homは、個々のバッテリの安全な取り扱いについて考慮しておらず、したがって、バッテリ内のセルから両方の外部端子を隔離することを想定していない。Homは、安全性の観点から各バッテリの内部構造を考慮していない。しかしながら、並列接続されたバッテリの異なる充電状態を管理するHomによって教示される方法は、そのような状態を管理するための当該技術分野における既知の方法の一例である。
【0010】
並列接続されたセルグループを利用するモジュール又はパック構造のさらなる欠点は、そのようなグループ内の1つのセルが内部短絡を起こすという事実であり、これはデンドライト成長に起因する既知の故障モードである。グループ内の他のすべてのセルの全電流が、故障したセルを通して流れることになる。これは急速な過熱と、その結果としての爆発又は火災につながる可能性がある。このリスクを軽減するため、個々のセルは通常、可溶性リンクによって共通のバスバーに接続される。可溶性リンクは抵抗を有し、電流が増加すると熱を発生させる。リンクが溶けるのに十分な熱が発生すると、接続が切断され、故障したセルへの電流が永久に遮断される。このアプローチの主な欠点は、通常の使用において、可溶性リンクの固有の抵抗が、高電流レベルで動作する際に、パックの不要な発熱と全体的なエネルギー損失につながることである。
【0011】
モジュール内で並列に接続された複数のセルのもう1つの望ましくない効果は、セルの1つが既知の欠陥である過度の自己放電を起こすと、それと並列に接続された全てのセルが、時間とともに欠陥セルを通して放電することである。これはグループ全体の充電状態を、最大値に対する割合で低下させることになる。複数の並列グループが直列に接続されてパックを形成するのが一般的であるため、どの時点においてもパック全体の使用可能容量は、最大値に対する割合として、最も低いグループの充電状態によって制限される。これは、並列セルの直列接続されたグループすべてから同じ割合でエネルギーが除去されるという事実に起因する。
【0012】
最も低いグループの過放電は、そのグループ、ひいてはパック全体の永久的な損傷につながる。その結果、他のグループがまだ高い充電状態を保っていても、最も低いグループの許容最低充電状態に達したら放電を停止しなければならない。このように、現在当該技術分野で実施されている方法に従って構造化されたパックでは、単一の欠陥セルがパック全体の容量を実質的に低下させる結果となり得る。このようなパックの整備は危険であり、専門的な訓練と装置を必要とし、通常は実用的ではない。
【0013】
当該技術分野で一般的に行われているように、乗り物用パックの設計は、コスト、製造効率、及び安全性の工学的トレードオフである。コストと製造効率は最優先事項であるため、安全性は、乗り物に搭載され、通常使用される際のパックの状況で考慮されることがほとんどである。当該技術分野で知られている乗り物用バッテリパックは、整備のために開封されたり、衝突やその他の不都合な事象で破損したりすると、極めて危険である。このような状況では、パックの取り扱いは、潜在的に甚大な損傷、傷害、さらには死亡さえも防ぐために、高度な訓練を受けた人員と専門的な装置を必要とする。
【0014】
オフロード、レクリエーション、軽海洋、軽飛行機など、幅広い高性能な乗り物に電気推進を提供する需要がある。このような乗り物は、通常の運転において酷使され、頻繁な衝突を伴い、大規模な整備を必要とする。そのため、主流の自動車用バッテリパックの構造で採用されている設計及び優先事項は、このような用途では実用的ではない。
【0015】
乗り物用バッテリの分野で必要とされているのは、専門的な訓練や装置がなくても安全に扱うことができ、不測の事象によって損なわれる際に危険をもたらすことなく、高電圧、大電流のバッテリパックの経済的かつ実用的な構造を可能にし、組み立てられたパックの劣化を緩やかにし、専門的な訓練や装置がなくても容易かつ経済的なパックの整備を可能にし、運転中の火災やエネルギー損失のリスクを最小限に抑えることができる乗り物用バッテリモジュール設計である。
【0016】
このような乗り物用バッテリモジュールは、取り扱いが安全であることに加え、堅牢であり、一般に入手可能な材料と製造技術で容易に製造できることが必要である。
【発明の概要】
【0017】
本発明の第1の目的は、運転、保管、輸送時の乱暴な取り扱いに耐えるために堅牢である、乗り物で使用するのに適した高電圧バッテリモジュールを提供することである。
【0018】
本発明の第2の目的は、一般に入手可能な材料と大量生産方法を利用して、容易かつコスト効率よく構築できるバッテリモジュール設計を提供することである。
【0019】
これらの目的を達成するために、本発明のバッテリモジュールは、複数の直列接続セルを含む筐体を備え、複数の直列接続セルは筐体から電気的に絶縁されている。直列接続されたセルは、1つの連続したストリングとして接続されてもよいし、同じ筐体内に含まれる複数の独立した直列接続されたストリングとして接続されてもよい。
【0020】
1つ又は複数のセル監視・調整回路を備える第1のプリント回路基板アセンブリ(PCBA)が提供される。いくつかの実施形態では、第1のPCBAはセル相互接続手段も備え得る。他の実施形態では、セルはワイヤによって相互接続され得る。第1のPCBAに電気的に接続された複数の抵抗器は、セルの平衡化を容易にし、また所望の場合にはセルの加熱を容易にするために提供される。いくつかの実施形態では、追加的なセル相互接続を備える第2のPCBAが利用され得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、複数の直列接続されたセル及び第1のPCBAを含む筐体の部分は、封止され得る。そのような実施形態では、使用される封止剤は、熱伝導性液体、固体に硬化される液体等を含む任意の既知のタイプのものであり得る。
【0022】
外部インターフェースPCBAが提供される。多くの実施形態では、外部インターフェースPCBAは、第1のPCBA及び/又は第2のPCBAとは別個であり得、電気接続及びデータ接続は、任意の既知のタイプのコネクタによって行われる。外部インターフェースPCBAが第1及び/又は第2のPCBAと物理的に一体化されている他の実施形態も可能である。
【0023】
外部インターフェースPCBAは、正と負の電気端子を備え、前記両端子は前記筐体から、また前記複数のセルから電気的に絶縁されている。第1の常開型電気リレーが、直列接続されたセルの正極側を前記正端子に電気的に接続するために設けられる。第2の常開型電気リレーが、直列接続されたセルの負極側を負端子に接続するために設けられる。電気機械式やソリッドステートを含む多くのタイプのリレーが当技術分野で知られている。
【0024】
複数の直列接続されたセルグループが同じ筐体内に収容されている実施形態では、直列接続されたセルの各グループを前記正端子及び前記負端子に個別に接続するために追加のリレーを設けることができる。このような実施形態では、個々のグループを直列に接続することによって、直列接続されたセルの別々のグループを直列接続されたセルの連続したグループに接続するために、追加のリレーがさらに設けられてもよい。
【0025】
外部インターフェースPCBAは、外部制御バスへの接続手段、バッテリ管理システム(BMS)回路、及び第1のPCBA上のBMS回路とセル調整回路との間の通信のためのデータ相互接続手段をさらに備える。
【0026】
多くの実施形態では、外部インターフェースPCBAは、封止されていない筐体の別の部分に含まれる整備可能な構成要素である。
【0027】
公知の大量生産プロセスを使用して本発明のモジュールを製造し、組み立てる方法が開示されている。
【0028】
費用効果の高いセル監視・調整回路が開示される。
【0029】
本発明は以下の図面を参照して本明細書に記載される。図面中の構成要素は、必ずしも互いに一定の縮尺で描かれていない。同様の参照数字は、複数の図全体を通して、対応する部品を指している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】円筒形セルを利用した本発明の代表的な実施形態の分解図である。
図2】複数のセル相互接続と複数のセル監視・調整回路を備える本発明の代表的な第1のPCBAの図である。
図3】本発明の代表的な第2のPCBAの図である。
図4】抵抗器保持手段を有する複数の機械的アライメント構造と、その中に保持された複数の抵抗器とを示す。
図5】PCBAに組み付けられた機械的アライメント構造と保持された抵抗器とを示す。
図6】プレス加工されたアルミニウムから作製された代表的な機械的アライメント構造の側面図である。
図7】フレキシブル回路として構成され、単一の円筒形セルに結合されたPCBAを示す。
図8】金属ワイヤから作製された相互接続によって直列に、かつPCBAに電気的に接続された円筒形セルの図である。
図9】プレス加工された銅から作製された代表的なセル相互接続の側面図である。
図10】プレス加工された銅から作製された代表的なセル相互接続の等角図である。
図11】本発明の組み立てられたモジュールの部分断面図である。
図12】第1のキャビティと第2のキャビティを有する代表的な筐体の図である。
図13】直列接続されたセルの2つの独立したグループを個別に並列接続又は一緒に直列接続するように構成された代表的な外部インターフェースPCBAを示す。
図14】直列接続されたセルの2つの独立したグループを個別に一緒に直列接続するように構成された代表的な外部インターフェースPCBAを示す。
図15】直列接続されたセル及び抵抗器に接続されたセル監視・調整回路を示す図である。
図16】直列接続されたセルに結合されたセル監視・調整回路間の通信のための低コストのアップリンク及びダウンリンク回路を示す。
図17】直列接続されたセルの2つのグループ、セル監視・調整回路、並びに外部インターフェースPCBA間の接続を示す図である。
図18】単一セル監視・調整回路におけるセル状態の報告方法のフロー図である。
図19】単一セル監視・調整回路によるセルの調整方法のフロー図である。
図20】単一セル監視・調整回路によってセルを加熱する方法のフロー図である。
図21】セル端子に通信可能に結合されたアップリンク及びダウンリンクポートを有するセル監視・調整回路を示す。
図22】バッテリセルと、監視・調整回路を備えるPCBAとを有するバッテリセルアセンブリを示す。
図23】セル端子に通信可能に結合されたアップリンク及びダウンリンクポートを有するバッテリセル監視・調整回路を動作させる方法のフロー図である。
図24】複数の直列接続されたセルと、AC結合通信リンクを有する対応する複数のセル監視・調整回路と、低電圧バッテリ、電圧コンバータ及びAC結合制御バスポートを有する外部インターフェースPCBAとの間の接続を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
円筒形セルを利用した本発明の一実施形態を図1に示す。示された実施形態は限定的なものではなく、角柱型又はパウチ型など、異なる形状のセルを利用する他の実施形態は、本明細書における開示に基づいて当業者に明らかになるものとする。
【0032】
バッテリモジュール10を製造するための開示されたシステム及び方法は、図と併せて以下の詳細な記載を検討することにより、より深く理解されるであろう。詳細な記載及び図は、本明細書に記載される様々な発明の例を提供する。当業者であれば、開示された例は、本明細書に記載された発明の範囲から逸脱することなく、変形、修正、及び変更が可能であることを理解するであろう。異なる用途及び設計上の考慮事項のために多くの変形例が企図されるが、簡潔さのために、企図される各変形例は、以下の詳細な記載では個々に記載されない。
【0033】
以下の詳細な記載を通じて、バッテリモジュール10のシステム及び方法に関する様々な例が提供される。それらの例における関連する特徴は、異なる例において同一、同様、又は非同様であり得る。簡潔にするために、関連する特徴について各例で重複して説明することはない。その代わりに、関連する特徴名の使用は、関連する特徴名を有する特徴が、先に説明された例における関連する特徴と同様である可能性があることを読者に知らせる手がかりとなる。所与の例に特有の特徴は、その特定の例において記載される。読者は、所与の特徴が、いずれかの所与の図又は例における関連する特徴の具体的な描写と同一又は同様である必要はないことを理解すべきである。
【0034】
本明細書中、特に断りのない限り、以下の定義が適用される。
【0035】
「実質的に」とは、その用語によって修飾される特定の寸法、範囲、形状、概念、又はその他の態様に多かれ少なかれ適合することを意味し、特徴又は構成要素が正確に適合する必要はない。例えば、「実質的に円筒形」の対象物とは、対象物が円筒に似ているが、真の円筒から1つ又は複数のずれを有していてもよいことを意味する。
【0036】
「備える」「含む」、及び「有する」(及びその活用形)は、必ずしもこれらに限定されないが含む、ということを意味するために交換可能に使用され、明示的に記載されていない追加的な要素又は方法ステップを除外することを意図しないオープンエンドな用語である。
【0037】
「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、グループの様々なメンバー等を区別又は識別するために使用され、連続的、時系列的、又は数値的な限定を示すことを意図していない。
【0038】
「結合された」とは、直接的であるか、介在する構成要素を介した間接的であるかにかかわらず、恒久的又は解放可能に接続されることを意味する。
【0039】
「電気的に結合された」、「電気的に接続された」とは、回路素子間の電流の伝導を可能にする方法で接続された回路素子を意味する。
【0040】
「コネクタ」、「電気コネクタ」とは、回路素子を解放可能な方法で電気的に結合する構造又は装置を意味する。
【0041】
「相互接続」、「電気的相互接続」とは、回路素子を解放不可能な方法で電気的に結合する構造又は装置を意味する。
【0042】
「通信可能に結合された」とは、電子装置が、電子メッセージの伝送を目的として、無線で、又はコネクタを使用して、直接的であるか通信ネットワークを介して間接的であるかを問わず、別の電子装置と通信下にあることをいう。
【0043】
「制御可能に結合された」とは、電子装置が別の電子装置の動作を制御することを意味する。
【0044】
「PCBA」とは、非伝導性基板と、回路素子を電気的に結合するための1つ又は複数のエッチングされた導電性トレースと、集積回路、リレー、セル相互接続等であり得る1つ又は複数の電気回路素子とを備えるプリント回路基板アセンブリを意味する。
【0045】
「抵抗器」とは、電流に対して抵抗を与え、それによって電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、当該電気エネルギーを放散させる目的で、又は隣接する構成要素を加熱する目的で使用される電気回路要素を意味する。抵抗器は、ワイヤ、フィルム、基板上のコーティング、線形領域で動作するトランジスタ、トランジスタのアレイ、又はその他の既知の手段から構成することができる。線形領域におけるトランジスタの動作は、トランジスタを横切って流れる電流に対して制御された抵抗の効果を生じさせ、トランジスタ設計の技術分野ではよく知られている。いくつかの実施形態では、抵抗器をバッテリセルのハウジングに組み込むことができる。他の実施形態では、抵抗器を集積回路(IC)に組み込むことができる。
【0046】
本発明の文脈における「抵抗器スイッチ」とは、具体的には、抵抗器を単一のバッテリセルと並列に電気的に接続して、電流がバッテリから抵抗器を通って流れるようにし、それによってセルに蓄積された電気エネルギーの一部を熱エネルギーに変換するための、トランジスタであり得る電気スイッチを意味する。いくつかの実施形態では、抵抗器スイッチと抵抗器は、線形領域で動作するトランジスタとして実装される同一素子であり得る。
【0047】
「機械的アライメント構造(Mechanical alignment structure)」とは、セル、抵抗器、PCBA等などの構成要素を、製造中、組立中、及び使用中に、互いに対して機械的に保持し、アライメントするシステムである。機械的アライメント構造は、特定の実施形態におけるその機能に必要な任意の形状を有し得、金属プレス加工、プラスチック射出成形等など、任意の利用可能な材料から任意の利用可能な手段によって作製することができる。
【0048】
[セル」、「バッテリセル」とは、電圧及び電流を生成するために使用される電解質によって分離された単一の陽極及び陰極を指す。本発明のバッテリモジュールは、グループ内で直列に接続された1つ又は複数のセルのグループを備える。セルは、円筒形、角柱形、パウチ形、又は任意の他のタイプであり得る。セルは、リチウムイオン又は任意の他の化学種のものであり得る。
【0049】
「通信アップリンク」、「アップリンクポート」、「アップリンク」とは、コマンドメッセージが受信され、状態メッセージが送信されるデジタル通信ポートを意味する。
【0050】
「通信ダウンリンク」、「ダウンリンクポート」、「ダウンリンク」とは、コマンドメッセージが送信され、状態メッセージが受信されるデジタル通信ポートを意味する。
【0051】
「コマンドメッセージ」とは、第1の電子回路から第2の電子回路に送信され、前記第2の回路による動作又は状態変化を開始させる電子メッセージである。
【0052】
「状態メッセージ」とは、第2の電子回路から第1の電子回路に送信される電子メッセージであり、前記メッセージは、前記第2の回路、又は別の回路の状態又は動作状態に関連する情報を含む。
【0053】
「封止剤」とは、電気的には絶縁性であるが熱伝導性を有する流体のことである。多くの封止剤が知られている。封止剤は、ハウジングのキャビティに流し込まれ、注入され、又は引き込まれ、その中に含まれる構成要素間の空隙を埋める。本発明の文脈において、封止剤の主な機能は、封止された構成要素を互いに、及びハウジングの壁に熱的に結合することである。いくつかの封止剤は、ハウジングキャビティに導入された後、化学的に硬化して固体状態になるように配合されている。このような封止剤は、封止された構成要素に機械的支持を与えるという二次的な機能を果たす。変圧器オイルなどの他の封止剤は、液体状態を保つように配合されている。その二次的な機能は、封止されたキャビティへの水分や汚染物質の侵入を防ぐことである。
【0054】
図1に分解図として示されている代表的な実施形態は、96個の直列接続されたセルの2つのグループに配置された192個の円筒形セルを含むバッテリモジュールであり、各グループは正味公称電圧400Vを有する。示された実施形態は数値的に限定されるものではなく、任意の数の直列接続されたセルグループを利用することができ、各グループのセルの数が少なくとも2つであれば、各グループのセルの数は任意である。セルは、円筒形、角柱形、パウチ状、又は任意の他のタイプのものであり得る。
【0055】
モジュール10の示された実施形態複数のセル400、抵抗器420を同じく保持する機械的アライメント構造(MAS)160によって支持される。MAS160、セル400、及び抵抗器420は、一次PCBA115、及び二次PCBA117に結合される。組み立てられた素子は、一次ハウジング100の第1のキャビティに収容される。外部インターフェースPCBA925は、ハウジング100の第2のキャビティに収容され、PCBA115及びPCBA117に電気的及び通信的に結合されている。
【0056】
いくつかの実施形態では、セル400を含むハウジング100の第1のキャビティは、熱伝導性であり得、固体状態に硬化するように配合され得る封止剤(図示せず)で充填される。
【0057】
熱伝導性エンドプレート150はハウジング100に組み付けられ、セル400から電気的に絶縁された状態で、封止剤によってセル400に熱的に結合される。
【0058】
いくつかの実施形態では、外部インターフェースPCBA925を含むハウジング100の第2のキャビティは封止剤で充填され、この封止剤は熱伝導性であり得、封止された構成要素をハウジングに熱的に結合し、水分及び汚染物質の侵入を防止しながら、PCBA925の整備又は交換を容易にするために液体状態のままであるように硬化するように配合され得る。液体封止剤の損失を防止するために、任意の公知のタイプのシールを適宜採用することができる。
【0059】
一次PCBA115の代表的な非限定的実施形態が図2に示されている。これは、プリント回路基板(PCB)111と、複数のセル相互接続470と、複数のセル監視・調整回路950と、PCBAに結合される直列接続されたセルの関連グループごとに1つの通信コネクタ910とを備える。PCB111は、電気回路がエッチングされた非伝導性基板を備える。このようなPCB及び回路は、PCBに電気回路素子を組み付ける手段と同様に周知であり、したがって、その構造の詳細は簡潔にするために本明細書では記載又は図示しない。
【0060】
モジュール製造中にセル相互接続470をセル400に結合することを可能にするアパーチャ175が示されているが、限定するものではない。このような結合は溶接によって行われるのが最も一般的であるが、他の結合方法を用いてもよい。示された実施形態におけるアパーチャ175は、溶接のためのアクセスという目的を果たすだけであり、そのようなアクセスを必要としない組立技術を利用する実施形態では存在しない場合がある。アパーチャ175が存在する場合、それらは、意図された機能のための任意の適切な形状及びサイズであり得る。
【0061】
機械的アライメント構造(MAS)をPCBA115に機械的に結合するためのアパーチャ170が示されているが、限定するものではない。示されたアパーチャは楕円形のスロットの形態であるが、任意の形状及びタイプの機械的結合インターフェースが可能である。
【0062】
図3には、任意選択の二次PCBA117が示されている。示された実施形態におけるその主な目的は、複数のセル相互接続470を保持しアライメントし、セル相互接続と抵抗器420との間に電気的接続を提供し、セル400のグループを外部インターフェースPCBA925に接続するための電気コネクタ450を提供することである。いくつかの実施形態では、セル相互接続及び電気コネクタは、専用のPCBAを必要とせずに、セルに直接結合することができる。そのような実施形態では、二次PCBA117は省略することができる。
【0063】
図4は、アルミニウムのプレス加工から作製され得る複数の機械的アライメント構造(MAS)160の一実施形態を示す。本発明の実施形態内のMSA160の目的は、組立中及び使用中に、モジュール10の様々な要素を互いに機械的にアライメントし、結合することである。図示の実施形態は、形状、材料、及び特定の機能を限定しない。複数の円筒形抵抗器420が保持手段165によって保持された状態で示されている。セルに直接組み付けられるものを含め、異なる形状の抵抗器を利用する他の実施形態も可能である。そのような実施形態では、保持手段165は異なるものであってもよいし、完全に省略されてもよい。
【0064】
機械的保持タブ168が示されており、これは示されたPCBA115及び117のアライメントスロット170とインターフェースする。示された特徴は代表的なものに過ぎず、限定するものではない。
【0065】
図5は、PCBA115に機械的に結合された複数のMSA160及び抵抗器420を示す。
【0066】
代表的なMSA160は、図6にさらに示されている。
【0067】
セル400に直接取り付けられ、他の同様に構成されたアセンブリへの直列接続に適したフレキシブルPCBA115を有する実施形態を図7に示す。相互接続470及び通信リンク999は、フレキシブル基板111の一体部品として示されている。抵抗器420とバッテリセル監視・調整回路950は別個の素子として示されているが、いくつかの実施形態では、抵抗器420は回路950内に組み込まれていてもよく、トランジスタ又はトランジスタのアレイであってもよい。回路950は、アップリンクポート990及びダウンリンクポート995を有するように示されている。回路間の接続及びフレキシブル基板内の相互接続は、PCBAの製造技術において周知であり、明示的に示されていない。
【0068】
図8は、本発明の別の実施形態の部分的な描写であり、セル400は、ワイヤから形成されたコネクタ470によってPCBA115及び117に結合され、抵抗420はPCBA115及び117にはんだ付けされ、MSAは存在しない。
【0069】
図9及び10は、銅板から形成され、相互接続をPCBAに機械的及び電気的に結合するための結合特徴部475を備えるセル相互接続470の代表的な実施形態を示す。多くの種類と形状のセル相互接続、及びそれらをセルとPCBAに結合する手段は、本発明の範囲内で可能であり、当業者には容易に明らかであろう。
【0070】
図11は、熱伝導性エンドプレート150を含む組み立てられたモジュール10の部分断面図である。複数のセル400がハウジング100の第1のキャビティ110に収容されているのが示されている。セルは、セル相互接続470によってPCBA115及び117に電気的及び機械的に結合されている。外部インターフェースPCBA925は、ハウジング100の第2のキャビティ120に収容され、コネクタ450によってPCBA117に電気的に結合され、コネクタ910によってPCBA115に通信可能に結合されている様子が示されている。PCBA115は、バッテリセル監視・調整回路950をさらに備えることが示されている。
【0071】
図12にさらに示されるハウジング100の仕切り壁125は、図示の実施形態においてキャビティ110と120を分離しているが、これはキャビティ110を第1のタイプの封止剤で封止するため、及びいくつかの実施形態ではキャビティ120を第2のタイプの封止剤で封止するためである。仕切り壁125は例示であり、限定するものではない。仕切り壁125が存在する場合、特定の実施形態に適切なように、コネクタ450及び910を通すためのアパーチャが壁に存在し得る。いくつかの実施形態では、仕切り壁125は、筐体を部分的に充填するように流し込まれ、その後硬化して固体状態になる封止剤の体積の表面として形成されてもよい。他の実施形態において、筐体100の1つ又は複数の外壁の一部又は全体は、固体状態に硬化された封止剤の体積の表面として形成されてもよい。
【0072】
また図11には、ハウジング100の負端子アパーチャ305を介してアクセス可能な負端子300が示されている。この断面図には、正端子200又は制御バスコネクタ700は示されていない。図はさらに、PCBA925に組み付けられたリレー600の代表的な位置を示している。
【0073】
代表的なハウジング100がさらに図12に示され、第1のキャビティ110、第2のキャビティ120、仕切り壁125、正端子アパーチャ205、制御バスコネクタアパーチャ705、及び負端子アパーチャ305を示している。示されたアパーチャの形状、位置及び機能は、限定するものではない。いくつかの実施形態では、このような機能をすべて単一のアパーチャにまとめることができる。他の実施形態では、アパーチャを筐体の異なる面に配置してもよく、機械的保持や他の機能と組み合わせてもよい。本発明の範囲から逸脱することなく、任意の公知のタイプのシール及び安全特徴部を採用することができる。
【0074】
外部インターフェースPCBA925の一実施形態が図13に示されており、正端子200、負端子300、バッテリ管理システム(BMS)回路900、制御バスコネクタ700、直列接続されたセル400のグループに電気的に結合するためのコネクタ450、及びPCBA115とその中に含まれたセル監視・調整回路950(図11も参照)とに通信可能に結合するための通信コネクタ910(図11も参照)を備えている。電流センサ905が正端子200に結合されているように示されているが、他の実施形態では電流センサを負端子300に結合してもよい。電圧測定回路907は、端子200及び300に接続されて示されている。いくつかの実施形態では、電圧測定回路907はBMS回路900に内蔵されていてもよい。リレー500、550、600、650、660も示されている。リレー500、550、600、650及び660は、PCBA115及び直列接続セル400の2つのグループと連動して機能することが、図17にさらに図解されている。
【0075】
いくつかの実施形態では、リレー500及び550は第1のタイプのものであり得、リレー600及び650は第2のタイプのものであり得る。例えば、第1のタイプのリレーが電気機械式である場合、開放時に完全なガルバニック絶縁を提供する。しかしながら、電気機械式リレーは応答が比較的遅い。第2のタイプのリレーがソリッドステートで、制御入力に非常に迅速に応答するものであれば、それらは電流センサ905が過電流を検出した場合に回路を開くのに使用することができる。ソリッドステートリレーの中には、完全なガルバニック絶縁を提供しないものもある。2つの異なるタイプのリレーを利用することにより、PCBA925は完全なガルバニック絶縁と過電流状態に対する高速応答の両方を提供することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、電流センサ905はホール効果型であり得る。
【0077】
PCBA925の別の実施形態が図14に示されており、ここではリレー550、650及び660が省略され、代わりにリレー660が相互接続665によって置き換えられて、直列接続されたセル400の2つのグループを互いに直列に接続し、それによって直列接続されたセルの単一のグループを形成する。
【0078】
いくつかの実施形態では、PCBA925の交換可能な構成が、所望に応じて並列又は直列に接続することによってモジュール内の直列接続セルのグループを構成するために提供され得る。この交換可能性により、モジュールが組み立てられ、セル400を含むキャビティ110が固体状態に硬化するように調合された封止剤で封止された後、モジュールを異なる電圧、例えば400Vと800Vで動作するように構成することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、PCBA925の機能は、本発明の範囲から逸脱することなく、単一のアセンブリにおいてPCBA115の機能と物理的に組み合わされてもよい。
【0080】
他の実施形態では、PCBA115は、電気的及び通信的に直列に結合された複数の実質的に同一のアセンブリで構成されてもよい。
【0081】
図15は、本発明のセル監視・調整回路950を備えたPCBA115、及び本発明のモジュールの他の要素へのそれらの接続を示す図解図である。図15に参照数字なしで示されている要素は、参照数字で識別される同様の要素と同じである。
【0082】
示された構成は、PCBトレースであり得る相互接続940によって、1つの回路950を直列接続されたセル400のグループのうちの2つに接続する。セルは、相互接続470によってモジュール内で電気的に直列に接続される。単一の抵抗器420は、対応する2つのセル400間で共有され、コントローラ955の制御の下、抵抗器スイッチ980によって2つのセルの一方と他方に交互に並列接続される。
【0083】
示された回路950は、接続されたセルごとの電圧測定回路960、温度測定回路965、アップリンクデジタルポート990及びダウンリンクデジタルポート995をさらに備える。各回路950のアップリンクポート990は、通信コネクタ910に結合されたデジタルリンク999によって、隣接する回路950のダウンリンクポート995に通信可能に接続されているが、当該チェーンの第1の回路950のアップリンクポートは、コネクタ910によってPCBA925上のBMS回路900に通信可能に接続され、チェーンの最後の回路950のダウンリンクポートは接続されていないという例外がある。
【0084】
本発明の回路950の正電源レール970は、接続されたセル400のうち最も正側の正端子に接続され、回路950の負電源レール975は、接続されたセル400のうち最も負側の負端子に接続される。
【0085】
本発明の回路950の重要な際立った特徴は、別個の区別されたアップリンクポート990とダウンリンクポート995である。メッセージ通信用のポートは当技術分野でよく知られている。しかしながら、一般的なアプローチは、このようなポートをCANバス、I2Cバス等などの通信バスに接続することである。複数の直列接続されたセルと、各セルに結合された管理回路とを有するバッテリモジュールにおいて、最も正のセルに接続された回路と最も負のセルに接続された回路との間に非常に大きな電位差が存在し得る。
【0086】
回路が共通のメッセージバスに接続されている場合、通信ポートは非常に大きな電圧差で他の回路からの信号を受け入れることができなければならないだろう。光絶縁などの大きな電圧差に対応するための解決策は当該技術分野に存在するが、それらはコストを著しく増加させるため、本発明の目的に反する。
【0087】
各回路950のアップリンクポート990とダウンリンクポート995が区別された別個のものであると規定することにより、通信リンク999は、したがって、バスではなく、ポイントツーポイントリンクとして実装される。このため、隣接する2つの回路950間の電圧差にのみ対応する必要があるが、この電圧差は小さく、安価な回路部品で容易に実装することができる。
【0088】
示された構成のいくつかの態様は有利であるが、限定するものではない。単一のセル及び対応する抵抗器、又は2つを超える直列接続されたセル及び対応する抵抗器の接続のみを有する回路950の構成は、当業者には容易に明らかであろう。示された構成は、各回路内の動作電圧を低く保ち、隣接する回路間の電圧ポテンシャルを低減し、PCBトレース配線を簡素化するという利点を提供する。
【0089】
特に、アップリンクポートとダウンリンクポートは、ローカル正電源レール970超、及びローカル負電源レール975未満の入力電圧に耐える必要があるため、動作電圧を低く保つことで、リンクを実装するために低コストの回路を使用することができる。
【0090】
図16は、2線式シリアルリンクとしての低コスト通信リンク999の一実施形態を示す。図15図16における同様の要素は、簡潔にするためにこれ以降記載されない。隣接回路950間のシグナリングは、アップリンクデジタルポート990にプルダウン抵抗器993を備えたn-FETスイッチ991を利用し、ダウンリンクデジタルポート995にプルアップ抵抗器994を備えたp-FETスイッチ992を利用することによって達成される。示された実施形態では、隣接する回路950間の電圧差に対応することができる。示された構成により、アップリンクデジタルポート990は、正電源レール970の電圧を上回る電圧を有する信号を受け入れることができ、ダウンリンクデジタルポート995は、負電源レール975の電圧を下回る電圧を有し得る信号を受け入れることができる。同様の機能を備える他の回路部品を利用した他の多くの実施形態が可能である。
【0091】
示された構成は、さらに、接続されたセルの1つが内部短絡を起こし、その結果、その端子間の電圧が低下又はゼロになった場合でも、回路に電力を供給し、機能し続けることを可能にする。
【0092】
これらの利点は、容易に利用可能な低コストの大量生産方法と材料を使用して、信頼性が高く安全なモジュールの製造を可能にするという主な目的に役立つ。
【0093】
別の実施形態が、単一セルに結合されるように構成されたセル監視・調整回路950を示す図17に示されている。図15図16、及び図17における同様の要素は、簡潔にするためにこれ以降記載されない。この実施形態では、抵抗器420は回路950とともにPCBA115に結合されている。示された実施形態では、分かりやすくするために抵抗器420を別個の要素として示しているが、他の実施形態では、抵抗器420は、トランジスタ又は線形領域で動作するトランジスタのアレイとして回路950の内部に組み込んでもよく、これは抵抗器スイッチとしても機能し得る。
【0094】
回路950と抵抗器420を備える個別の専用PCBA115は、モジュール10内の対応する各セルに機械的熱的及び電気的に結合されている。セルは相互接続470によってモジュール内で電気的に直列に接続され、個々のPCBA115は通信リンク999によって対応して直列に通信可能に接続される。このような実施形態では、PCBA115はフレキシブル回路として構成されてもよい。
【0095】
回路950は、好ましくは、コスト削減の目的で特定用途向け集積回路(ASIC)として実装される。完全に別々の市販の構成要素を利用する実施形態を容易に構築することができ、それは本明細書でなされる開示に基づいて電気回路設計の当業者に明らかになるものとする。
【0096】
本発明の回路950のユニークで際立った特性のいくつかは、任意の数の直列接続セルに対応するために、隣接する同一の回路をチェーン状に接続するためのアップリンクポート990及びダウンリンクポート995であり、単一のBMS回路900から回路950のチェーン全体を制御することを容易にする。このような回路を動作させるためのユニークな方法が、本明細書でさらに開示される。
【0097】
示された回路950の別のユニークな特徴は、2つのセル間で1つの抵抗器を共有する能力であり、これにより全体的な構成要素の数、複雑さ、及びコストが低減される。この機能は、2つのセル構成に限定されるものではなく、任意の偶数個の直列接続されたセルに接続するように構成された回路に容易に実装することができる。
【0098】
本発明の別のユニークな特徴は、周囲温度より高い温度にセルを維持 することが望まれる場合に、セルに蓄積された電気エネルギーの一部を抵抗器420に放散することによってセル400を加熱する能力である。
【0099】
本明細書で開示される回路の完全な電気的機能の概念的表現を図17に示す。この図は、分かりやすくするために、4つの直列接続されたセルの2つのグループを有する構成である。任意の数のグループ又は任意の数の直列接続されたセルを有する構成が、本明細書でなされる開示に基づいてどのように構築され得るかは、当業者には容易に明らかであろう。
【0100】
図17の図は、4つの直列接続されたセルの2つのグループのそれぞれに2つずつ、合計4つの回路950を備えるPCBA115を示している。相互接続940によって1つの回路950に結合される直列接続されたセルの各対の間で、1つの抵抗器420が共有される。相互接続940は、プリント回路トレース、ワイヤ、集積回路パッケージピン、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。セルはセル相互接続470によって直列に接続される。PCBA115とPCBA925の間の電気コネクタ450及び通信コネクタ910を図式的に表す。
【0101】
いくつかの実施形態では、コネクタ910は、光、誘導又は無線結合によるガルバニック絶縁を特徴とする。PCBA115及びPCBA925は、機能を明確にするために別個のものとして図示されているが、いくつかの実施形態では単一の物理的アセンブリに組み合わされてもよい。他の実施形態では、PCBA115は、複数の実質的に同一のアセンブリを備え得る。
【0102】
PCBA925の示された構成は、BMS回路900の制御下にあるリレーによって、直列接続されたセルの2つのグループを互いに並列に、又は互いに直列に接続することを容易にする。直列構成の場合、リレー500、600、660は閉じ、リレー550、650は開く。グループの並列接続を実現するには、リレー500、550、600、650を閉じ、リレー660を開く。非使用時の安全のため、すべてのリレーを開くことで、端子200と300の完全な絶縁が達成される。
【0103】
示されたBMS回路900は2つのダウンリンクポート995を備え、それぞれは通信リンク999と通信コネクタ910を介して回路950のチェーンに通信可能に接続され、各チェーンは直列接続されたセル400のグループに対応する。
【0104】
制御バスポート700は、パックコントローラ、乗り物コントローラ(VCU)、充電器等などの外部コントローラと通信するために設けられる。
【0105】
いくつかの実施形態では、端子200と300、及び制御バスポート700は、単一の物理的なコネクタに組み合わされてもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、BMS回路900及びリレー500、550、600、650及び660にセル400とは独立して電力を供給するために、追加の低電圧電力コネクタが提供されてもよい。
【0107】
本発明の回路950の動作方法が、図18図19及び図20に概念的に表されている。この方法は、回路950に結合された単一セルに関して記載されている。複数の直列接続されたセルが単一の回路950に結合されている構成では、方法は結合されたセルごとに繰り返される。このような繰り返しは当業者には容易に明らかであろうから、その詳細な記載は簡潔にするために省略する。
【0108】
モジュール全体の状態(セル電圧と温度を含み得る)を取得するために、BMS回路900は、通信リンク999と通信コネクタ910によって回路900に結合された第1の回路950にダウンリンク995を介して状態要求コマンドメッセージを発行する。
【0109】
図18に示されるように、ステップAでアップリンク990を介して状態要求コマンドメッセージを受信すると、各回路950は、ステップBで、直列に接続されたチェーンの次の回路950にダウンリンク995で同じ状態要求コマンドメッセージを再発行する。
【0110】
次に、回路950はステップCでその結合セルの状態を測定し、ステップDでそのアップリンクを介して結果を送信する。
【0111】
複数の直列接続セルが回路950に結合されている場合、ステップCとDはセルごとに繰り返される。この繰り返しは図18には明示されていない。
【0112】
ステップEとFで、回路950はチェーンの後続の回路950から状態メッセージを受信するのを待つ。受信されたそのようなメッセージごとに、ステップDは、ダウンリンク経由で受信された状態メッセージをアップリンク経由で伝送するように繰り返される。
【0113】
いくつかの実施形態では、所定の非活動期間が指定され得、その後回路950が低電力モードに入る。低電力モードにあるとき、回路950は、ステップAでなど、メッセージを受信すると目覚めるように構成され得る。
【0114】
すべての状態要求コマンドメッセージがダウンリンクを介してチェーン内のすべての回路950に伝送され、その結果生じる状態メッセージがアップリンクを介して回路900に戻るように伝送されると、回路900はモジュール内のすべてのセルの状態を受信したことになる。
【0115】
モジュール内のすべてのセルのバランスをとるために、BMS回路900は、まず、状態要求コマンドメッセージに応答して報告された全セルの電圧を比較し、報告された電圧の中で最低であり得る、又はアルゴリズムによって到達した別の値であり得る適切な目標電圧を選択する。
【0116】
次に、回路900は、ダウンリンク995を介して、通信リンク999と通信コネクタ910によって回路900に結合された第1の回路950に目標セル電圧コマンドメッセージを発行する。
【0117】
図19に示されているように、ステップHでアップリンク990を介して目標セル電圧コマンドメッセージを受信すると、各回路950はステップJで、直列に接続されたチェーンの次の回路950にダウンリンク995で同じ目標セル電圧コマンドメッセージを再発行する。
【0118】
各回路950は次にステップKで結合セルの電圧を測定する。測定されたセル電圧がステップLでなされた比較に基づいて命令された目標セル電圧を上回っている場合、回路950はステップMで所定の時間、抵抗器スイッチ980によって結合抵抗器420を結合セルと並列に接続する。所定の時間が終了すると、抵抗器はステップNでセルから切り離される。いくつかの実施形態では、抵抗器420と抵抗器スイッチ980は同じものであってもよく、線形領域で動作するトランジスタ又はトランジスタのアレイとして実装されてもよい。いくつかの実施形態では、この抵抗は、抵抗器における所望のエネルギー散逸速度を生成するために変化させることができる。
【0119】
複数の直列接続されたセルが回路950に結合されている場合、ステップK~Nはセルごとに繰り返される。この繰り返しは図19には明示されていない。
【0120】
モジュール内のすべてのセルを所定の温度に維持するために、BMS回路900は通信リンク999と通信コネクタ910によって回路900に結合された第1の回路950にダウンリンク995を介して目標セル温度コマンドメッセージを発行する。
【0121】
図20に示されているように、ステップQでアップリンク990を介して目標セル温度コマンドメッセージを受信すると、各回路950はステップRで直列接続されたチェーンの次の回路950にダウンリンク995で同じ目標セル温度コマンドメッセージを再発行する。
【0122】
回路950は次にステップSにおいて結合セルの温度を測定する。いくつかの実施形態では、回路950は複数のセルに熱的に結合されてもよいし、いずれか1つのセルの温度を直接測定するのではなく、1つ又は複数のセルの近傍の局所的な温度を測定するように構成されてもよい。本記載及びそれに基づく特許請求の範囲の目的のために、このような測定値はすべてセル温度の測定値とみなされる。
【0123】
測定されたセル温度又は局所温度が、ステップTで行われた比較に基いて命令された目標セル温度を下回る場合、回路950は、ステップUで所定の時間の間、抵抗器スイッチ980によって結合抵抗器420を結合セルと並列に接続する。所定の時間が終了すると、抵抗器はステップVにおいてセルから切り離される。いくつかの実施形態では、抵抗器420及び抵抗器スイッチ980は同じものであってもよく、線形領域で動作するトランジスタ又はトランジスタのアレイとして実装される。いくつかの実施形態では、この抵抗は、抵抗器における所望のエネルギー散逸速度を生成するために変化させることができる。
【0124】
一部継続開示
いくつかの実施形態では、コストを低減し信頼性を高めるために、モジュール内の区別された電気的接続の数を最小限にすることが望ましい場合がある。図7は、一体型相互接続470と、アップリンクポート990及びダウンリンクポート995に対応する通信リンク999用の区別された接続とを有する、単一セル400に結合されるPCBA115のアセンブリを示す。いくつかの実施形態では、通信信号を電力伝導相互接続470に注入することによって、区別された通信リンク接続を排除することが望ましい。
【0125】
デジタル通信の技術分野では、高周波キャリア信号の横モード波伝搬を使用して単一の電力導体上に通信信号を注入する技術が知られている。情報を搬送するために、高周波キャリア信号は、振幅変調、周波数変調、位相シフトキーイング、パルス位置変調等を含むいくつかの既知の技術のうちの1つ又は複数によって変調される。パルス位置変調は、代替手段と比較して実装コストが低いため、本発明の回路に特に適している。
【0126】
電力導体に通信信号を注入することにより、相互接続470がセル間のリンク999の信号を搬送し、図7に示された区別された接続を排除することが可能になる。しかしながら、このような技術は、少なくとも20メガヘルツ(MHz)超、好ましくは数百又は数千MHzの非常に高い信号周波数を必要とする。このような高周波数では、多くのセルタイプは信号に対して実質的に高いインピーダンスを示す。したがって、直列に接続されたセルのグループでは、通常、グループの最初のセルから最後のセルまで高周波信号を確実に伝導することはできないだろう。
【0127】
区別された別個のアップリンクとダウンリンクを有する本発明の回路950のユニークな構成は、リンク999の通信信号が隣接セル間の単一の相互接続470を横断することを単に要求することによって、この問題を解決する。これはさらに、非常に低い信号電力を使用することを可能にし、意図しない放射電磁エネルギーを大幅に低減し、全体的なエネルギー損失を低減する。
【0128】
このような構成は図21に代表的に示されており、これはコンデンサ985を利用して各セル400の正端子401と負端子402に結合されたPCBA115を示す。各PCBA115と対応するセル400は一緒になってセルアセンブリ405を形成し得る(図22)。複数のセルアセンブリ405は相互接続470によって直列に接続されてもよい。各アセンブリ405内で、アップリンクポート及びダウンリンクポートは、交流(AC)結合によって対応するセルの正端子及び負端子に通信可能に結合され、それによって各対応する通信リンク999の半分が形成される。
【0129】
相互接続470によって2つのセルアセンブリ405間を直列接続すると、リンク999の信号の対応する相互接続470への交流(AC)結合によって、2つの対応する回路950の通信結合が達成され、それによって各アセンブリ405内に形成されたリンクの2つの半分が通信可能に接続される。本明細書で開示されるバッテリセルアセンブリ内のバッテリセル端子への信号の新規な通信結合は、追加の配線又はコネクタを必要とすることなく、アセンブリ間の直列電気接続を行うだけで、本発明のセルアセンブリ間に通信リンクを形成することを可能にする。バッテリモジュールの正端子と負端子への信号の同様の通信結合が、本明細書でさらに開示される(図24)。
【0130】
簡略化のため、図21には2つのアセンブリ405のみが示されている。図21の図は、数値的に限定されるものではない。
【0131】
多くの実施形態は、より多くの直列接続されたセルを利用し得、それはいくつかの実施形態では約800Vの全体電圧をもたらす192個のセルであり得る。AC結合は、通信回路の技術分野、特に電力線通信(PLC)の技術分野で知られており、ここでは詳細に記載しない。AC信号が回路950の正電源レール970と負電源レール975に到達しないようにするために、任意選択のフィルタリングインダクタ984が示されている。
【0132】
抵抗器420が回路950の外部にあるように示されている。しかしながら、本明細書で先に開示したように、抵抗器は、抵抗器スイッチ980を線形領域で動作させることによって、回路950の内部に実装することができる。
【0133】
図21は、アップリンク990がセル400の正端子401に結合され、ダウンリンク995がセルの負端子402に結合されている様子を示している。この構成は例示であり、限定するものではない。本発明の範囲から逸脱することなく、アップリンク990がセル400の負端子402に結合され、ダウンリンク995がセルの正端子401に結合される逆の構成も可能である。
【0134】
各回路950はさらに、コントローラ955を有するものとして示されており、各前記コントローラは、モジュール10(図1)内に含まれるすべての回路950の間で一意である回路識別子(cID)を含むデータ958でプログラムされる不揮発性メモリ956を有する。示された実施形態では、各不揮発性メモリ956は、対応するアップリンクポート990に結合される回路950の一意のcID(アップリンクcID、又はUcIDによって識別される)を含むデータ957と、対応するダウンリンクポート995に結合される回路950の一意のcID(ダウンリンクcID、又はDcIDによって識別される)を含むデータ959とでさらにプログラムされる。このようなプログラミングは、任意の既知の方法によって、バッテリモジュール10の製造中に達成することができる。不揮発性メモリ956は、消去不可能(OTP:one time programmable)タイプのものであり得る。区別されたcIDは、モジュールコントローラ900(図17)に割り当てられてもよく、モジュールコントローラ900(図17)に通信可能に結合されるアップリンクポート990を有するように構成される回路950のメモリ956にプログラムされるUcIDデータに含まれてもよい。ダウンリンクポート995に結合された他の回路を持たない回路950は、そのDcIDデータにプログラムされた所定の値を有し得、この値は、接続なし(NULL)を表すゼロ又は別の所定の値であり得る。
【0135】
図21はさらに、対応する回路950のダウンリンクポート995に直列に接続されたセルの総数を代表するデータ954(ダウンストリーム回路の数、すなわちnDcによって識別される)を示す。このデータは任意であり、通信のタイミングを最適化するためにいくつかの方法で使用されてもよい。いくつかの実施形態では、データ954を省略することができる。
【0136】
示された実施形態において、cID、UcID及びDcIDの使用は例示であり、限定するものではないことに留意されたい。示された識別子の目的は、メッセージを交換する目的で、直列接続された回路950の各有効なペアを一意に識別し、他の有効なペアの回路間で交換され得る意図せずに受信されたメッセージを拒絶することである。いくつかの実施形態では、各通信リンク999には、一意のリンク回路識別子(LcID)が割り当てられてもよく、この一意のリンク回路識別子は、リンクによって通信可能に結合される2つのコントローラ955のそれぞれのDcID及びUcIDデータにプログラムされてもよい。このような実施形態では、リンク999を介して送信されるメッセージは、一意のリンク回路識別子を含み得る。
【0137】
図21に示されたユニークな構成は、セル400と回路950を有するPCBA115とを備えるセルアセンブリの構築を容易にする。このようなアセンブリ405は、円筒形セルを利用した図22に示されている。この図は代表的なものであり、限定するものではない。角柱型、パウチ型、又は他の任意のタイプのセルを利用する実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者に明らかになるものとする。複数のこのようなアセンブリを相互接続470(図21)によって直列に接続し、同じ物理的接続によってセルアセンブリを電気的にも通信的にも結合することができる。これにより、このようなアセンブリを利用するバッテリモジュール10を構成する際の配線や組立の手間を最小限に抑えることができる。
【0138】
各セル400はリンク999の高周波通信信号に対して実質的に高いインピーダンスを示すが、実質的に高いインピーダンスは信号を完全に遮断しない可能性がある。したがって、非限定的な好ましい実施形態では、非隣接回路950間の通信干渉を防止又は緩和するためのステップを講じることができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、コマンドメッセージは、第1の周波数の信号を使用して伝送されてもよく、状態メッセージは、区別された第2の周波数の信号を使用して伝送されてもよく、このような周波数は、対応する信号が互いに干渉しないように選択される。他の実施形態では、すべての信号が同じ周波数を使用し得る。
【0140】
干渉を防止する方法の1つの種類は、時分割多重(TDM)を利用する。TDM技術は、デジタル通信の技術分野において周知であり、本発明の回路の構成に特有の態様を除き、本明細書では詳述しない。特に、TDM技法は、多重化スキームのフレームのタイミングの開始のための基準として使用される同期パルスを必要とする。単一の信号が、直列接続された回路950間のすべてに確実に到達しない可能性があるため、従来の同期パルスは、多くの実施形態において不可能である可能性がある。本明細書では、回路間の同期を容易にするために、各回路950の一意のcID958を利用する新規なTDM方法が開示される。
【0141】
示された実施形態のバッテリモジュール10は、製造時に、複数のセル400と、それに対応して各前記セルに結合された回路950とを直列に接続するように構成される。実質的にそのような接続が行われる時点で又はその前に、各回路950には一意のcID958が割り当てられ、その対応するコントローラ955の不揮発性メモリ956は、cID958を含むデータでプログラムされ、また、UcID957及びDcID959は、前記接続によって隣接させられ、対応するリンク999によって通信可能に結合される対応する回路950のcIDを含むデータでプログラムされる。いくつかの実施形態では、リンク999に一意の識別子が割り当てられてもよく、対応するデータUcID及びDcIDはリンク識別子でプログラムされてもよい。
【0142】
示されたモジュール10の複数の他の回路950と通信するために回路950を動作させる方法が、図23のフローチャートに示されている。示された方法はTDMを実施し、さらに本発明の回路950の一意のcID958と、各回路950の不揮発性メモリ956にプログラムされたデータUcID957及びDcID959とを利用する。
【0143】
本方法のステップを図23のフローチャート801に示す。いくつかの代替実施態様では、ブロックに記された機能は、図23に記された順序から外れて発生してもよく、追加の機能を含んでもよく、及び/又はいくつかの機能を省略してもよいことに留意されたい。例えば、図23に連続して示された2つのブロックは、実際には実質的に同時に実行される場合があり、ブロックは、時には逆の順序で実行される場合があり、又は、ブロックのいくつかは、本明細書で以下にさらに明らかにされるように、関係する機能性に応じて、すべてのインスタンスにおいて実行されない場合がある。このようなすべての修正及び変形は、本開示の範囲内で本明細書に含まれることが意図される。
【0144】
ブロック802では、コマンドメッセージが、アップリンクポート990を介してコントローラ955によって受信される。メッセージに埋め込まれたcIDは、ブロック803で、不揮発性メモリ956に格納されたUcID957の値と比較される。値が一致しない場合(NO条件)、コマンドメッセージは無視され、コントローラは、別のメッセージを受信するまでブロック802に戻る。
【0145】
メッセージcIDがUcID957と一致する場合(YES条件)、コマンドは有効であるとみなされ、コントローラはブロック804に進む。ブロック804で、有効なコマンドメッセージが、メッセージに埋め込まれた送信者IDとして、回路自身のcID958を使用して、ダウンリンクポート995を介して再伝送される。いくつかの実施形態では、一意のリンク識別子がメッセージcIDとして使用されてもよい。
【0146】
ブロック805で、受信したコマンドメッセージで指定されたコマンドが、コントローラ955によって実行される。コマンドの実行は、結合セル400の電圧の測定、温度の測定、抵抗器スイッチ980の制御等を含み得る。
【0147】
応答メッセージは、ブロック806でコントローラによって準備される。この応答メッセージは、ブロック805におけるコマンドの実行中に取得された測定値のデータ、抵抗器スイッチ980の状態等を含み得る。
【0148】
本明細書に示される方法によれば、有効なコマンドメッセージの受信及び処理は、受信コントローラ955のTDMフレームの同期パルスとして機能する。TDMフレームに関連するタイムアウトクロックは、ブロック807で開始される。不揮発性メモリ956に格納されたDcID959がNULLであり、他の回路950がダウンリンクポート995に結合されていないことを示す場合、タイムアウト期間はゼロに設定される。いくつかの実施形態では、任意選択のデータnDc954は、最適なタイムアウト値を計算するために使用されてもよい。他の実施形態では、タイムアウト値は予め決められていてもよい。コントローラ955のTDMフレームの終了は、さらに後述するように、送信者cIDがDcIDと一致する応答メッセージをダウンリンクポートを介して受信するか、又はタイムアウト期間が満了することによってトリガされる。
【0149】
ブロック808で、コントローラ955は、ダウンリンクポートを介してメッセージが受信されたかどうかをチェックする。メッセージが受信された場合(YES条件)、ブロック809で、メッセージに埋め込まれたcIDが、格納されたDcID959と比較される。値が一致する場合、ブロック810(YES条件)で、受信されたメッセージがブロック806で準備された応答メッセージに追加され、その結果得られる結合メッセージが、メッセージに埋め込まれた送信者cIDとしてcID958を使用して、アップリンクポート990を介してブロック812で伝送される。いくつかの実施形態では、一意のリンク識別子をメッセージcIDとして使用することができる。ブロック809での値が一致しない場合(NO条件)、コントローラはブロック811に進む。
【0150】
ブロック808で、メッセージが受信されていない場合(NO条件)、ブロック811で、タイムアウトクロックがゼロ値であるかチェックされる。タイムアウトに達しておらず、タイムアウトクロックがゼロでない場合(NO条件)、コントローラはブロック808に戻り、新しい受信メッセージをチェックする。タイムアウトクロック値がゼロの場合(YES条件)、ブロック812で、コントローラは、ブロック806で準備されたメッセージを、メッセージに埋め込まれたcIDとしてcID958を使用して伝送する。本明細書におけるタイムアウトクロックのゼロ値の使用は、ブロック807で設定された値からクロックがゼロにカウントダウンされる状態で、ブロック807でタイムアウトクロックが開始されてから少なくとも所定の時間が経過したことを示す目的で例示されるものであり、限定するものではない。本発明の範囲から逸脱することなく、少なくとも所定の時間が経過したことを示すために、任意の他の値又は任意の他の保時方法を使用してもよい。
【0151】
本発明のモジュールのいくつかの実施形態では、制御バスポート700を、AC結合によって端子200及び300の一方又は両方にさらに結合することが望ましい場合がある。このユニークな構成は、配線及び接続の要件をさらに低減し得、コストを低減し、モジュールの信頼性及び安全性を向上する働きをする。このような実施形態を図24に示す。
【0152】
モジュールコントローラ900に電力を供給するために、端子に存在する可能性のある高電圧電力をコントローラ900による使用に適した低電圧電力に変換する電圧コンバータ901が示されている。このようなコンバータは、電源設計の技術分野で知られている。端子に高電圧電力が存在しないときに回路900に電力を供給するための低電圧バッテリ902がさらに示されている。バッテリ902は、充電可能なタイプのものであり得る。
【0153】
制御バスポート700は、結合コンデンサ985によって両端子200及び300に結合されるように示されている。いくつかの実施形態では、縦モード信号伝送が採用され、AC回路の両端子を利用することができる。他の実施形態では、横モード信号伝送を利用することができ、信号用に端子の一方のみを必要とする。このような実施形態では、制御バスポート700は、端子の一方のみに結合され得る。さらに他の実施形態では、制御バスポート700は、2つの別個の区別されたチャネルを備えてもよく、例えば一方はメッセージ受信用、他方はメッセージ送信用である。このような実施形態では、区別されたチャネルの一方を端末200に結合し、他方を端末300に結合することができる。縦方向及び横方向の信号伝送モード、ならびに信号を電力導体にAC結合する手段は、電力線通信(PLC)の技術分野で知られており、本明細書では詳述しない。
【0154】
本明細書に開示される実施形態は例示であり、限定するものではない。他の実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書における開示に基づいて当業者に容易に明らかになるものとする。
【0155】
上述したバッテリモジュール10の実施形態は、本発明の実施態様の可能な例に過ぎないことを強調しておく。上述した実施形態に対して、多くの変形及び修正を行うことができる。そのようなすべての修正及び変形は、本開示の範囲内で本明細書に含まれ、以下の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【0156】
さらに、上記の開示は、独立した有用性を有する複数の区別された発明を包含する。これらの発明のそれぞれは特定の形態で開示されているが、上記に開示され示された特定の実施形態は、多数の変形が可能であるため、限定的な意味で考慮されるべきではない。本発明の主題は、上記に開示され、そのような発明に係る当業者に固有の様々な要素、特徴、機能及び/又は特性の新規かつ非自明な組合せ及び下位組合せをすべて含む。本開示又はその後に提出された特許請求の範囲が「a」要素、「第1の(a first)」要素、又はいずれかのそのような同等の用語を記載している場合、本開示又は特許請求の範囲は、1つ又は複数のそのような要素を組み込んだものと理解されるべきであり、2つ以上のそのような要素を必須とするものでも排除するものでもない。
【0157】
出願人は、新規かつ非自明であると考えられる開示された発明の組合せ及び下位組合せに向けられた請求項を提出する権利を留保する。特徴、機能、要素及び/又は特性の他の組み合わせ及び下位組合わせにおいて具現化される発明は、本出願又は関連出願において、それらの請求項の補正又は新たな請求項の提示を通じて請求することができる。このような補正された請求項又は新たな請求項は、同一の発明又は異なる発明に向けられたものであるかどうかにかかわらず、また、元の請求項に対して範囲が異なる、より広い、より狭い、又は等しいかどうかにかかわらず、本明細書に記載された発明の主題の範囲内で考慮される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図12
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【国際調査報告】