(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】ポリマーコーティング方法およびタンパク質凝集の低減方法
(51)【国際特許分類】
C08J 7/04 20200101AFI20240206BHJP
A61J 1/05 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
C08J7/04 U CER
A61J1/05 353
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540892
(86)(22)【出願日】2021-01-04
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2021050029
(87)【国際公開番号】W WO2022144093
(87)【国際公開日】2022-07-07
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523252157
【氏名又は名称】グライコム バイオファーマ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLYCOME BIOPHARMA LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】オーエン スキャンラン
(72)【発明者】
【氏名】グラハム スミス
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィア フォリ
(72)【発明者】
【氏名】アンナ テストリン
(72)【発明者】
【氏名】ポーラ コラヴィータ
【テーマコード(参考)】
4C047
4F006
【Fターム(参考)】
4C047AA05
4C047AA27
4C047BB12
4C047BB35
4C047CC03
4F006AA11
4F006AB03
4F006BA11
4F006CA09
4F006EA01
(57)【要約】
ポリマー表面をコーティングする方法であって、表面を有するポリマーを準備することと、任意選択で、ポリマー表面の少なくとも一部を酸化剤で処理することと、ポリマー表面の少なくとも一部を、多糖類、オリゴ糖、ポリオール、またはそれらの混合物を含む組成物で処理することと、処理されたポリマーを組成物とともに所定の時間インキュベートすることとを含む、方法を提供する。また、そのようなコーティングを含むポリマー、そのようなコーティングされたポリマーを含む容器、およびそのようなポリマーを含む医療デバイスをも開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー表面をコーティングする方法であって、
(a)表面を有するポリマーを準備することと、
(b)任意選択で、前記ポリマー表面の少なくとも一部を酸化剤で処理することと、
(c)前記ポリマー表面の少なくとも一部を、多糖類、オリゴ糖、ポリオール、またはそれらの混合物を含む組成物で処理することと、
(d)前記処理されたポリマーを前記組成物とともに所定の時間インキュベートすることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ポリマーは、環状オレフィンポリマーおよび/またはコポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多糖類は、ヘキソース由来の多糖類またはオリゴ糖を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記多糖類は、C6位に20%以上の酸化ヘキソースを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記多糖類は、デキストリン、デキストランポリガラクツロン酸、ヒアルロン酸、またはこれらの多糖類の2つ以上の組み合わせから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化剤は、過酸化物を含み、任意選択で過酸化水素を含み、任意選択で30%w/w水溶液中の過酸化水素を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記所定の時間は、0.5分~240分の範囲内である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー表面の少なくとも一部の処理および/またはインキュベートは、10℃~90℃の範囲の温度で行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物は水を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物は酸化剤を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物中の酸化剤は、過酸化物、O
3、オゾン化水、H
2O
2、過ヨウ素酸塩、次亜塩素酸塩、および/または過マンガン酸塩を含み、任意選択で過酸化水素を含み、任意選択で30%w/w水溶液中の過酸化水素を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法に従ってポリマーの少なくとも1つの表面をコーティングすることによって得ることが可能である、コーティングされたポリマー。
【請求項13】
少なくとも1つの表面上にコーティングを有するポリマーであって、前記コーティングは、前記ポリマーの前記表面に直接接触する多糖類、オリゴ糖、ポリオール、またはそれらの混合物を含む、ポリマー。
【請求項14】
前記ポリマーは、環状オレフィンポリマーを含む、請求項12または13に記載のポリマー。
【請求項15】
前記多糖類は、デキストリン、ポリガラクツロン酸、ヒアルロン酸、またはこれらの多糖類の2つ以上の組み合わせを含む、請求項12から14のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項16】
医薬タンパク質性組成物を保存し、それによって、前記医薬タンパク質性組成物の固有安定性および/または熱安定性を強化するための、請求項12から15のいずれか一項に記載のコーティングされたポリマーを含む容器の使用。
【請求項17】
ポリマー表面上でのタンパク質またはオリゴヌクレオチドの凝集および/または吸着を減少させる方法であって、
(a)請求項12から15のいずれか一項に記載のコーティングされたポリマーを準備することと、
(b)前記表面をタンパク質性組成物またはオリゴヌクレオチドを含む組成物と接触させることと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記タンパク質性組成物は、医薬タンパク質性組成物を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記医薬タンパク質性組成物は、モノクローナル抗体組成物を含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記医薬タンパク質性組成物は、ペプチドホルモンを含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記医薬タンパク質性組成物は、1つ以上のペプチドまたはその組み合わせ、任意選択でワクチン、エリスロポエチン、インターフェロン(α-、β-、および/またはγ-インターフェロン)、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、リツキシマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、インスリン、グルカゴン、および/または性腺刺激ホルモンを含む、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項12から15のいずれか一項に記載のポリマーを含む容器。
【請求項23】
前記容器は、マルチウェルプレート、ピペット、ボトル、フラスコ、バイアル、エッペンドルフチューブ、および/または培養プレートから選択される、請求項20に記載の容器。
【請求項24】
請求項12から15のいずれか一項に記載のポリマーを備える医療用デバイス。
【請求項25】
前記医療用デバイスは、分注チューブ、チャネルを備える装置、またはシリンジである、請求項24に記載の医療用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー表面をコーティングする方法、それによって得られるコーティングされたポリマー、およびポリマー表面上のタンパク質の凝集を低減する方法に関する。本発明はまた、コーティングされたポリマーを含む流体用の容器、医療用デバイスおよびシリンジにも関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスに含有されるタンパク質性組成物の製剤中でタンパク質の凝集および変性が発生し得、これが診断、分析、薬物送達に問題を引き起こす。タンパク質凝集体の形成および変性の制御には問題がある。
【0003】
非特異的なタンパク質の吸着は、複雑な現象である。このプロセスは、タンパク質の特性(例:構造、サイズ、ならびに電荷および極性の分布)、材料表面の特性(例:電荷、粗さ、および表面エネルギーの状態)、環境条件(例:pH、イオン強度および温度)および吸着プロセスの速度論によって決定される。
【0004】
タンパク質は、ピペットチップ、サンプルチューブ、ウェルプレート、バイアルなどのサンプル調製中に使用される材料の表面に非特異的に結合し得、その結果、実験の正確度が失われ得る。規制ガイドラインでは、生物分析方法が直線性、感度、正確度、精度、選択性、安定性の観点だけでなく、キャリーオーバーの観点からも検証されることを求めている。キャリーオーバーは、分析システムの一部への分析物の非特異的吸着によって生じるため、同定アッセイと定量アッセイとの両方に偏りが生じる。したがって、分析の直線性、感度、再現性が悪影響を受ける。
【0005】
使い捨てシステムは、液体および凍結形態での組換えタンパク質およびモノクローナル抗体の製造および処理中の大規模保管のために受け入れられるようになってきている。容器および薬液の間の相互作用は重要である。容器材料の物理化学的特性は、原薬の完全性および安定性の維持に貢献する。容器表面へのタンパク質の吸着は、濃度の変化、タンパク質の変性および/または分解によって、溶液内のタンパク質の効力の損失へとつながり得る。タンパク質の凝集および医薬組成物(抗体、タンパク質、その他のペプチド、例えば、エリスロポエチン、インターフェロンガンマ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなど、これらはすべてシリンジ内にあらかじめ充填された状態で送達され得る)の変性もまた、有害な免疫応答を引き起こし得、その結果、一部のバイオ医薬品が市場から撤退することとなった。
【0006】
組成物を送達するための医療用デバイスおよび容器を製造するために使用される材料の表面改質は、問題を軽減しようとする1つのアプローチである。製造保管に使用されるタンパク質接触材料、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーおよび低密度ポリエチレン(LDPE)、の表面修飾は、凝集体の形成およびタンパク質の吸着を軽減し得、それによって製品の品質および安全性が向上する。材料には、ガラスまたはポリマー(例えば、環状オレフィンポリマー、COP)が含まれ、これらは、組成物と接触する表面上に無機コーティングを適用することによって改質され得る。
【0007】
国際公開第2020/092373号は、熱可塑性壁、PECVD(プラズマ化学蒸着)薬剤接触コーティング、および管腔に含まれるポリペプチド組成物を有する薬剤容器を開示している。薬物接触コーティングは、容器の内面上または内面に隣接して、内腔内の流体と接触するように位置し、腐食を軽減するバリアである、SiOxCyHzから実質的になる。
【0008】
米国特許出願公開第2015/0126941号は、容器、容器上のバリアコーティングおよび保護コーティング、およびパッケージの保存寿命を延ばすために容器に含有される流体組成物を含む充填パッケージを開示している。バリアコーティングは、SiOx(xは、1.5~2.9)である。保護コーティングは、浸出を防ぐ糖類の層を含む。
【0009】
タンパク質の凝集および変性が起こりにくく、従来技術の問題に悩まされない材料の表面を提供する必要がある。
【0010】
本発明の目的は、この必要性に対処することである。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明は、第1の態様において、ポリマー表面をコーティングする方法であって、(a)表面を有するポリマーを準備することと、(b)任意選択で、ポリマー表面の少なくとも一部を酸化剤で処理することと、(c)ポリマー表面の少なくとも一部を、多糖類、オリゴ糖、ポリオール、またはそれらの混合物を含む組成物で処理することと、(d)処理されたポリマーを組成物とともに所定の時間インキュベートすることと、を含む、方法を提供する。
【0012】
驚くべきことに、多糖、オリゴ糖、ポリオール、またはそれらの混合物をコーティングとして使用すると、タンパク質の吸着および/または凝集が大幅に減少し、またオリゴヌクレオチドの吸着および/または凝集も減少し得る。
【0013】
組成物は、ポリマー表面上に既に堆積された1つ以上の他のコーティング層(シリカの層を除く)の上方に塗布され得る。好ましくは、ポリマー表面は、シリカコーティングを含まない。
【0014】
しかし、好ましくは、組成物は、ポリマー表面に直接塗布され、ポリマー表面上に既に堆積された無機層を必要としない。したがって、好ましくは、この方法は、ポリマー表面を直接処理することを含む。概して、任意の適切なポリマー(例えば、EVA、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、またはこれらの任意の組み合わせまたはコポリマー)を本方法で使用し得るが、好ましくは、ポリマーは、環状オレフィンポリマーまたはコポリマーを含み得る。ポリマー(例えば、環状オレフィンポリマー)は、少なくとも部分的に再生ポリマーを含み得る。
【0015】
環状オレフィンポリマーは、優れた光学特性、良好な耐薬品性および耐熱性、および優れた寸法安定性を備えた高温ポリマーとして有用である。COPは、ノルボルネン、シクロペンタジエン(CPD)、および/またはジシクロペンタジエン(DCPD)などの環状オレフィンモノマーから製造され得る。
【0016】
多くの多糖類、オリゴ糖、ポリオールまたはそれらの混合物がこの方法に有用であり得ると考えられるが、多糖類などはヘキソース由来多糖類を含み得る。多糖類は、ポリヒドロキシル化され得る。概して、多糖類は、好ましくはポリマー表面に塗布されると、比較的親水性の表面(例えば、水接触角が80度未満、70度未満、60度未満、50度未満、またはそれ以下)を提供し得る。
【0017】
好ましい多糖類は、デキストラン、セルロース、1つ以上のポリオール、デキストリン、ポリガラクツロン酸、ヒアルロン酸、またはこれらの多糖類の2つ以上の組み合わせから選択される。
【0018】
これらの多糖類、オリゴ糖、ポリオールまたはそれらの混合物の使用は、それらがCOP表面に塗布されときにタンパク質の凝集を顕著に減少させることを発明者らが確認したため、非常に有利である。
【0019】
酸化剤は、ポリマーの表面に影響を与えることが好ましいが、ポリマーのバルクには悪影響を及ぼさないことが好ましい。酸化剤は、過酸化物を含み得、任意選択で過酸化水素を含み得、任意選択で30%w/w水溶液中の過酸化水素を含み得る。概して、過酸化物および/または他の酸化剤、例えば、O3、オゾン水、分解触媒(例えば、Cuイオン、Feイオン、酸化マンガン)を含むまたは含まないH2O2、過ヨウ素酸塩、次亜塩素酸塩、および/または過マンガン酸塩もまた、適切であり得る。
【0020】
所定時間は、0.5分~240分の範囲であり得る。所定時間の他の任意の範囲は、1分~120分、1分~60分、1分~30分、1分~20分、または1分~10分であり得る。
【0021】
ポリマー表面の少なくとも一部の処理および/またはインキュベートは、10℃~90℃、任意選択で10℃~70℃の範囲の温度で行われ得る。
【0022】
ポリマー表面の少なくとも一部の処理および/またはインキュベート中の処理は、例えば、超音波処理、マイクロ波照射、および/またはイオン触媒作用による、プロセスの機械的、化学的または電磁的加速を含み得る。
【0023】
組成物は水溶液であり得る。したがって、組成物は水を含み得る。適切な場合には、1つ以上の共溶媒が存在し得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、組成物は、酸化剤を含み得る。組成物中の酸化剤は、過酸化物を含み得、任意選択で過酸化水素を含み得、任意選択で30%w/w水溶液中の過酸化水素を含み得る。
【0025】
本方法によって得られたポリマーは、タンパク質の凝集を大幅に減少させた。
【0026】
したがって、本発明は、第2の態様において、第1の態様の方法に従ってポリマーの少なくとも1つの表面をコーティングすることによって得られるコーティングされたポリマーを提供する。
【0027】
任意選択で、コーティングされたポリマーは、シリカコーティングを含まない。
【0028】
したがって、本発明は、第3の態様において、少なくとも1つの表面上にコーティングを有するポリマーを提供し、このコーティングは、ポリマーの表面に直接接触する多糖類を含む。
【0029】
ポリマーは、好ましくは環状オレフィンポリマーを含む。
【0030】
多糖類は、好ましくは、デキストラン、セルロース、ポリオール(例えば、デンプンの水素化加水分解物)、デキストリン、ポリガラクツロン酸、ヒアルロン酸、またはこれらの多糖類の2つ以上の組み合わせを含む。
【0031】
本発明のコーティングされたポリマーは、コーティングされた表面と接触して保存された組成物の熱的安定性および固有の安定性を高めるという点でさらに大きな利点を有する(例えば、コーティングされていない表面または他の材料と比較した場合)。
【0032】
したがって、本発明は、第4の態様において、医薬組成物(任意選択でペプチド組成物)を保管するための、第3の態様によるコーティングされたポリマーを含む容器の使用を提供し、それによって、医薬組成物の固有の安定性および/または熱安定性が強化される。
【0033】
したがって、本発明は、第5の態様において、ポリマー表面上でのタンパク質またはオリゴヌクレオチドの凝集または吸着を減少させる方法を提供し、この方法は、(a)上記および第2の態様によるポリマーを提供すること、および(b)表面をタンパク質性組成物またはオリゴヌクレオチド組成物と接触させることを含む。上記のように、これは、これによって、例えば、以前よりも高温での保管および/または長期間の保管が可能になる、改善された保管条件を提供するため、有利である。
【0034】
タンパク質性組成物は、医薬タンパク質性組成物を含み得る。医薬タンパク質性組成物は、モノクローナル抗体組成物またはペプチドホルモンを含み得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、医薬タンパク質性組成物は、1つ以上のワクチン(例えば、ペプチドを含むワクチン)、エリスロポエチン、インターフェロン(α-、β-、および/またはγ-インターフェロン)、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、リツキシマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、インスリン、グルカゴン、および/または性腺刺激ホルモンを含み得る。
【0036】
医薬組成物は、注射可能な組成物を含み得る。
注射可能な組成物の例は、
アバレリクス-デポ剤(ホルモン剤)、
アボボツリヌストキシンA注射剤(Dysport)、
Acetadote(アセチルシステイン注射剤)、
Actemra(トシリズマブ注射剤)、
Acthrel(コルチコレリンオウバイントリフルタート注射用)、
Actimmune(インターフェロンガンマ-1b)、
Adacel(ワクチン)、
アダリムマブ(Humira)、
Adenoscan(アデノシン注射剤)、
Aldurazyme(ラロニダーゼ)、
アルグルセラーゼ注射剤(Ceredase)、
Alkeran注射剤(メルファラン塩酸塩注射剤)、
ALTU-238(ヒト成長ホルモン)、
Arzerra(オファツムマブ注射剤)、
Avastin(ベバシズマブ)、
Azactam注射剤(アズトレオナム注射剤)、
BayHepB(B型肝炎ヒト免疫グロブリン、抗体)、
BayTet(破傷風免疫グロブリン、抗体)、
Bexxar(トシツモマブ)(抗体)、
Blenoxane(ブレオマイシン硫酸塩注射剤、ペプチド抗生物質)、
Botox美容用(オナボツリヌムトキシンA注射用、タンパク質)、
BR3-FC(タンパク質)、
ブリオバセプト(抗体)、
BTT-1023(抗体)、
Byetta(エキセナチド、タンパク質)、
Campath(アレムツズマブ、抗体)、
カナキヌマブ注射剤(Ilaris、抗体)、
Carticel(軟骨細胞)、
Cathflo(アルテプラーゼ、タンパク質)、
Cerezyme(イミグルセラーゼ)(酵素)、
セルトリズマブペゴル(Cimzia、抗体)、
コリオゴナドトロピンアルファ組換え型(r-hCG)注射用(Ovidrel、ペプチドホルモン)、
コリオゴナドトロピン(hCG)注射用(Pregnyl、Follutein、Profasi、Novare、ペプチドホルモン)、
クロファラビン注射剤(Clolar、Evoltra、プリンヌクレオシド)、
コリスチンメタン注射剤(Coly-Mycin M)、(ポリペプチド)、
コリフォリトロピン アルファ(Elonva、ペプチドホルモン)、
Copaxone(グラチラマー酢酸塩、ペプチド混合物)、
Cubicin(ダプトマイシン注射剤、環状リポペプチド)、
ダセツズマブ(抗体)、
ダルベポエチンアルファ(抗体)、
DDAVP注射剤(デスモプレシン酢酸塩水和物注射剤ペプチドホルモン)、
デノスマブ注射剤(Prolia、抗体)、
DMOAD(変形性関節症に対する疾患修飾薬、一部がペプチドである化合物のクラス)、
エカランチド注射剤(Kalbitor、タンパク質)、
Engerix(ワクチン)、
Enbrel(エタネルセプト、タンパク質)、
エプラツズマブ(抗体)、
Erbitux(セツキシマブ、抗体)、
エリスロポエチン(ペプチドホルモン)、
必須アミノ酸注射剤(Nephramine)(アミノ酸混合物)、
Fabrazyme(アガルシダーゼベータ、酵素)、
Fluarix Quadrivalent(ワクチン)、
Fludara(フルダラビンリン酸エステル)(ヌクレオチド類似体誘導体)、
ホリトロピンアルファ注射剤(Gonal-f RFF、Cinnal-f、Fertilex、Ovaleap、Bemfola、ペプチドホルモン)、
ホリトロピンベータ注射剤(Follistim、Follistim AQカートリッジ、Puregon、ペプチドホルモン)、
ホリトロピンデルタ注射剤(Rekovelle、ペプチドホルモン)、
Forteo(テリパラチド(rDNA由来)注射剤ペプチドホルモン)、
ホスカルネットナトリウム注射剤(Foscavir)、
Fuzeon(エンフビルチド、ペプチド)、
GA101(オビヌツズマブ、抗体)、
Ganirelix(ガニレリクス酢酸塩注射剤、ペプチド)、
Gardasil(ワクチン)、
GC1008(フレソリムマブ、抗体)、
ゲムツズマブオゾガマイシン注射用(Mylotarg)(抗体薬物複合体)、
ゴリムマブ注射用(Simponi注射用、抗体)、
GlucaGen(グルカゴン、ペプチドホルモン)、
Havrix(ワクチン)、
Herceptin(トラスツズマブ、抗体)、
hG-CSF(ヒト顆粒球コロニー刺激因子、タンパク質)、
Humalog(インスリンリスプロ、ペプチドホルモン)、
ヒト成長ホルモン、
Humegon(ヒトゴナドトロピン、ペプチドホルモン)、
Humulin(インスリンおよび類似体(修飾形態のインスリン?)、ペプチドホルモン)、
インコボツリヌストキシンA注射用(Xeomin、タンパク質)、
Increlex(メカセルミン[rDNA由来]注射剤(ヒト成長因子))、
Infanrix(ワクチン)、
インスリン(ペプチドホルモン)、
インスリンアスパルト[rDNA由来]注射剤(NovoLog)(ペプチドホルモン)、
インスリングラルギン[rDNA由来]注射剤(Lantus)(ペプチドホルモン)、
インスリングリルジン[rDNA由来]注射剤(Apidra)(ペプチドホルモン)、
インターフェロンアルファ-2b、組換え型注射用(Intron A)(タンパク質)、
インターフェロンベータ-1b、組換え型注射用(Betaferon、タンパク質)、
Iplex(メカセルミンリンファバート[rDNA由来]注射剤)(ヒト成長因子)、
Iprivask(デシルジン注射用、タンパク質)、
Istodax(ロミデプシン注射用)(ペプチド)、
Kepivance(パリフェルミン、ケラチノサイト成長因子)、
ケラチノサイト(表皮細胞)、
KFG(ケラチノサイト成長因子)、
Kineret(アナキンラ、タンパク質)、
Kinlytic(ウロキナーゼ注射剤、酵素)、
Kinrix(ワクチン)、
Lente(L)(インスリン亜鉛、ペプチドホルモン)、
レプチン(ペプチドホルモン)、
Levemir(インスリン類似体、ペプチドホルモン)、
Leukine(サルグラモスチム、タンパク質)、
リュープロレリン酢酸塩注射剤(Lupron、ペプチド)、
レボチロキシン(アミノ酸)、
Lexiscan(レガデノソン注射剤)(ヌクレオシド)、
リラグルチド注射剤(Victoza、ペプチド)、
Lucentis(ラニビズマブ注射剤)(抗体)、
Lumizyme(アルグルコシダーゼアルファ、酵素)、
ルトロピンアルファ(LH)注射用(Luveris、ペプチドホルモン)、
Menactra(ワクチン)、
メノトロピン注射用(Menopur、Repronex、Pergonal、ペプチドホルモン)、
MetMab(オナルツズマブ、抗体)、
Miacalcin(ポリペプチド)、
ミポメルセン(Kynamroオリゴヌクレオチド)、
Myozyme(アルグルコシダーゼアルファ)(酵素)、
NEO-GAA(アバルグルコシダーゼアルファ、酵素)、
Neupogen(フィルグラスチム、タンパク質)、
Novolin(Novolin R:インスリン、Novolin N:インスリンイソフェン、ペプチドホルモン)、
NeoRecormon(エポエチンベータ、タンパク質)、
NPH(N)(Humulin N、Novolin N、イソフェンインスリン、ペプチドホルモン)、
Novolin 70/30 Innolet(70% NPH、ヒトインスリンイソファン懸濁液およびレギュラー30%、ヒトインスリン注射剤)(ペプチドホルモン)、
Nplate(ロミプロスチム、タンパク質)、
オクトレオチド酢酸塩注射剤(Sandostatin LAR、ペプチド)、
オクレリズマブ(Ocrevus、抗体)、
Orencia(アバタセプト、抗体)、
オステオプロテゲリン(抗体)、
オキシトシン注射剤(Pitocin、ペプチドホルモン)、
パニツムマブ静脈用注射剤(Vectibix、抗体)、
副甲状腺ホルモン(ペプチドホルモン)、
Pediarix(ワクチン)、
ペグインターフェロン(ペグインターフェロンアルファ-2a:Pegasys、ペグインターフェロンアルファ-2b:PEGintron、Sylatron)、
ペグフィルグラスチム(Neulasta、Ristempa、タンパク質)、
ペグフィルグラスチム-cbqv(Udenyca、タンパク質)、
ペルツズマブ(2C4、Omnitarg、Perjeta、抗体)、
酢酸プラムリンタイド(Symlin、Symlinペン(管理用デバイス)、ペプチドホルモン)、
R-Gene 10(アルギニン塩酸塩注射剤)(アミノ酸)、
Raptiva(エファリズマブ、抗体)、
Recombivarix HB(ワクチン)、
Remicade(インフリキシマブ、抗体)、
Retrovir IV(ジドブジン注射剤)(ヌクレオシド)、
rhApo2L/TRAIL(Dulanermin、タンパク質)、
リツキシマブ(MabThera、Rituxan、Truxima、抗体)、
Roferon-A(インターフェロンアルファ-2a、タンパク質)、
ソマトロピン注射用(Accretropin、Genotropin、Humatrope、Saizen、Norditropin、Valtropin)、
ソマトロピン(rDNA由来) 注射用(Nutropin、Nutropinデポ剤、Nutropin AQ、Serostim LQ、Onmitrope、Tev-Tropin)、
Stelara注射剤(ウステキヌマブ、抗体)、
Stemgen(アンセスチム、抗体)、
テラバンシン注射用(Vibativ、リポグリコペプチド)、
テネクテプラーゼ(Metalyse、TNKase、タンパク質)、
Thymoglobulin(抗胸腺細胞グロブリン(ウサギ)、抗体)、
Thyrogen(チロトロピンアルファ注射用、ペプチドホルモン)、
トラスツズマブ-Dml(抗体薬物複合体)、
Travasol(アミノ酸(注射用))、
Trelstar(トリプトレリンパモエート注射用懸濁液、ペプチド)、
Twinrix(ワクチン)、
Typhoid Vi-多糖ワクチン(Thyphim Vi、ワクチン)、
ウロフォリトロピン注射用(Bravelle、Fertinex、Fertinorm、Metrodin、ペプチドホルモン)、
ウルトラレンテ(U)(拡張インスリン亜鉛、ペプチドホルモン)、
バンコマイシン塩酸塩(バンコマイシン塩酸塩注射剤、グリコペプチド)、
VAQTA(ワクチン)、
Xolair(オマリズマブ、抗体)、
Zenapax(ダクリズマブ、抗体)、および/または、
Zevalin(イブリツモマブチウキセタン、抗体)、
を含み得る。
【0037】
本発明は、第6の態様において、上記および第2の態様に記載したポリマーを含む流体用の容器を提供する。
【0038】
容器は、マルチウェルプレート、ピペット、ボトル、フラスコ、バイアル、エッペンドルフチューブ、および/または培養プレートから選択され得る。
【0039】
本発明は、医療用デバイスに特に有用である。したがって、本発明は、第7の態様において、上記および第2の態様で論じたポリマーを含む医療用デバイスを提供する。
【0040】
医療用デバイスは、分注チューブ、チャネルおよび/またはシリンジ、例えば使い捨てシリンジであり得る。
【0041】
本明細書において、文脈によって別段の示唆がされない限り、本明細書で言及される環状オレフィンポリマー(COP)には、環状オレフィンコポリマー(COC)が含まれる。本明細書で言及されるタンパク質性組成物には、組成物中にペプチド、オリゴペプチド、および/またはポリペプチドが含まれ、賦形剤(例えば、ラクトース、デキストリン、グルコース、スクロース、および/またはソルビトールなどの糖化合物)、塩、溶媒(および/または共溶媒)および他の非タンパク質性活性医薬成分、ならびにそれらの製剤などの、追加の成分を含み得る。多糖類には、オリゴ糖、ポリオール、またはそれらの混合物が含まれる。
【0042】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】(a)硬質層(黒色のバー)および軟質層(灰色のバー)の形態で保持された未処理のTOPAS(商標)(TW)およびZEONOR(商標)(ZW)表面での吸着BSA-FITCの定量測定を示す図である。(b)硬質層(HL)および軟質層(SL)に対するアッセイ感度を調整するために開発されたすすぎプロトコルを示す図である。
【
図2】COP表面での2mgmL
-1のBSA-FITCインキュベート実験から得られた、未処理の表面および処理された表面で測定されたタンパク質表面被覆率の概要を示す図である。
【
図3】顕微鏡検査によって得られた、COP表面での2mgmL
-1のBSA-FITCインキュベート実験から得られた発光データ(ΔMFI)の比較を示す図である。未処理の表面は、基準100%発光として使用される。
【
図4】顕微鏡検査によって得られた、COP表面での2mgmL
-1のBSA-FITCインキュベート実験から得られた発光データ(ΔMFI)の比較を示す図である。未処理の表面は、基準100%発光として使用される。
【
図5】2mgmL
-1のBSA-FITCインキュベート実験から得られた未処理のおよびPGA処理シリンジで測定されたタンパク質表面被覆率の概要を示す図である。
【
図6】2mgmL
-1のインスリン-FITCインキュベート実験から得られた未処理のおよびPGA処理シリンジで測定されたタンパク質表面被覆率の概要を示す図である。
【
図7】(a)水ですすいだ後(ZW)およびH
2O
2中で50℃で30分間処理した後(ZP50)のZeonor(商標)(登録商標)クーポン表面のGATR-FTIRスペクトル、(b)水のみですすいだ後(ZW)およびH
2O
2中で50℃で30分間処理した後(ZP50)の1mmのZeonor(商標)(登録商標)クーポンのUV-Vis吸光度スペクトルを示す図である。
【
図8】(a)水ですすいだ後(ZW)ならびにUV/オゾンランプに5分(ZU5)および10分(ZU10)照射することを介して酸化処理した後のZeonor(商標)(登録商標)クーポン表面のGATR-FTIRスペクトル、(b)水のみですすいだ後(ZW)ならびにUV/オゾンランプに5分(ZU5)およびその後10分(ZU10)照射することを介して酸化処理した後の1mmのZeonor(商標)(登録商標)クーポンのUV-Vis吸光度スペクトルを示す図である。
【
図9】水でのすすぎならびにPGA有りおよび無しのさまざまな処理条件を受けた後のCOPクーポン表面で得られた水接触角の測定を示す図である。
【
図10】FTIRで分析したTOPASのクーポンとシリンジタイプS1との表面組成の比較を示す図である。
【
図11】FTIRで分析したZeonorのクーポンとシリンジタイプS3との表面組成の比較を示す図である。
【
図12】FTIRで分析したZeonexのクーポンとシリンジタイプS3との表面組成の比較を示す図である。
【
図13】FTIRで分析したTOPASのクーポンとシリンジタイプS2との表面組成の比較を示す図である。
【
図14】FTIRで分析したZeonorのクーポンとシリンジタイプS2との表面組成の比較を示す図である。
【
図15】FTIRで分析したZeonexのクーポンとシリンジタイプS2との表面組成の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本研究では、蛍光標識された球状タンパク質、BSA-FITCを使用して、シクロオレフィンポリマー(COP)材料でのタンパク質表面吸着の程度をモニタリングする。BSAは、通常、非特異的なタンパク質の吸着に抵抗する表面の能力の指標として使用される。第2の(蛍光標識された)タンパク質である、インスリン-FITCは、効果の一般性と治療用タンパク質へのその適用可能性を確認するために使用されている。
【0045】
【0046】
スキーム1.COP材料の一般的構造および重合方法の例
構造のバリエーションは、R置換基の選択によって実現され得る。Topas(商標)は、連鎖重合(上のルート)で得られるが、Zeonor(商標)は開環メタセシス(下のルート)で得られる1、2。
1:Shin J.Y.ら、Pure and Applied Chemistry,(2005)77:801-814.2
2:Nunesら、Microfluid Nanofluid(2010)9:145-161)
【0047】
3種類のCOP材料を調査した。これらは、TOPAS(登録商標)(T)(Topas(商標)Advanced Polymer)、ZEONOR(登録商標)(Z)、およびZEONEX(登録商標)(Zeon Corporation)で、厚さ1mmのクーポンの形で商業供給業者から調達した。これらの材料は、バイオ医薬品産業用のバイオデバイス製造業者によって使用される。スキーム1は、さまざまな種類のCOP材料の一般的な構造を示す。構造の変化は、調整可能な特性を提供する置換基の変化を介して実現され得る。
【0048】
クーポンの結果がバイオ医療用デバイスに一般化可能であることを検証するために、3つの異なる製造元(製造業者#1~#3)から供給される事前充填バイオ薬剤用に販売されている選択されたシリンジバイオデバイスを使用して研究を実施した。すべてのシリンジは、COP材料で作られており、一方で、製造業者#1によって製造されたシリンジは、内面(バレル)がシリコン処理されている。
【0049】
タンパク質の表面への吸着は複雑なプロセスである。タンパク質は通常、表面に吸着されたときに完全および/または部分的な変性を受け、タンパク質の接着に関与する相互作用の強度および性質が変化する。
【0050】
図3aは、未処理のTopas(商標)およびZeonor(商標)のクーポンに吸着されたBSA-FITCの量の定量的測定を示す。
【0051】
これら2つのCOP材料のクーポン(1.25cm
2)を、2mgmL
-1の濃度でpH7のリン酸緩衝食塩水(PBS)中のBSA-FITC溶液に浸漬し、暗所で1時間インキュベートしてCOP表面にBSA接着層を形成した。次いで、クーポンを(方法1)PBSで、または(方法2)
図3bに概略的に示すように、PBSおよび溶出緩衝液1(EB1=PBS+1%Triton X)中で、すすいだ。方法1では、BSAの軟質吸着層と硬質吸着層との両方からなる、吸着されたタンパク質が最も多く残ることが予想される。方法2では、軟質層の大部分が除去されると予想される。方法1および2を介してすすいだ後、付着したBSA-FITCを、蛍光法を介する定量のために、1mL体積に抽出した。抽出プロトコルは、タンパク質を断片化し、FITCラベルを溶液中に定量的に放出するために、タンパク質分解剤として1%メルカプトエタノールを添加したEB1中で17時間インキュベートすることから構成された。495nm励起での抽出溶液からの発光強度を使用して、BSA-FITC標準によるキャリブレーションを介してタンパク質を定量した。
【0052】
本研究は、タンパク質の吸着に対処する上で大きな期待を示す多糖類を使用した表面修飾の効果を示す。
【0053】
他の研究では、COP材料上、タンパク質の拒絶反応がバイオ薬剤に使用されるシリンジの内面上でも観察されることが示されている。タンパク質拒絶反応は、一般的なプローブ球状タンパク質およびより小さいサイズの治療用タンパク質で観察されるため、一般的であると考えられる。
【実施例】
【0054】
表面改質プロトコル。表面改質プロトコルでは、TOPAS(商標)(T)、ZEONOR(商標)(Z)、およびZEONEX(ZX)の1.25cm2クーポンを使用した。これらを、糖類による修飾の前に2つの異なるタイプの前処理に供した(サンプル命名法ではid1#)。
(1)ミリポア水を用いたすすぎ(TW、ZW、ZXW)。
(2)50℃で30%の過酸化水素を使用した穏やかな表面酸化(TP50、ZP50またはZXP50)。
【0055】
続いて、前処理クーポンをさまざまな糖の1mg mL-1溶液中でインキュベートして、表面の修飾を実行した。スキーム2は、実験でテストした多糖類の構造(サンプル命名法ではid2#)、すなわち、デキストラン(D)、ポリガラクツロン酸(PGA)、ヒアルロン酸(H)、または糖類なし(NS)を示す。下記のインキュベート条件をテストした(サンプル命名法ではid3#)。
(1)糖類1mgmL-1を室温の脱イオン水中に2時間(W)。
(2)糖類1mgmL-1を50℃の脱イオン水中で、4回連続の30分間のインキュベート(合計2時間)(W50X4)。
(3)糖類1mgmL-1を50℃の30% H2O2中で、4回連続の30分間のインキュベート(合計2時間)(P50X4)。
【0056】
インキュベート期間の後、すべてのサンプルを脱イオン水ですすぎ、タンパク質吸着量のスクリーニングに使用した。試験した各表面で受けた処理を特定するために、
図4に示すように、使用した前処理(id1#)、糖類(id#2)、および修飾処理(id3#)の組み合わせによってサンプルを参照する。
【0057】
【0058】
スキーム2.識別子として使用される糖類および略語
タンパク質吸着試験プロトコル。BSA-FITCの溶液は、pH7のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で2mgmL-1の濃度で調製した。COP材料のクーポンをBSA-FITC溶液に浸し、暗所で1時間インキュベートした。次に、材料を(方法1)PBSですすぎ、以下の定量的または定性的測定に使用した。
【0059】
a.溶液からの放出による定量。すすぎの後、蛍光法を介した定量のために、付着したBSA-FITCを1mLに抽出した。抽出プロトコルは、タンパク質を断片化し、FITCラベルを溶液中に定量的に放出するために、タンパク質分解剤として1%メルカプトエタノールを添加したEB1中で17時間インキュベートすることから構成された。470nm励起での抽出溶液からの発光強度を使用して、BSA-FITC標準によるキャリブレーションを介してタンパク質を定量した。タンパク質の表面被覆率を、抽出されたタンパク質の総量をインキュベート中に露出したCOP面積で正規化することによって計算した。すべてのグラフのエラーバーは95%C.Iに対応する。
【0060】
b.蛍光顕微鏡による定性的比較。すすぎ後、470 nm励起の正立顕微鏡とFITC exc/emフィルターキューブを使用してクーポンを画像化し、市販のソフトウェアを介してCOP表面での積分強度を測定した。方法1では、軟質吸着層と硬質吸着層との両方について感度がよくなる(
図2)。発光フィルターを通した平均蛍光強度(MFI)を複数の画像から測定し、対応する未使用のCOP材料のバックグラウンド発光(ΔMFI)によって補正した。すべてのグラフのエラーバーは95%C.Iに対応する。
【0061】
(COPクーポンに対するBSA-FITCの吸着結果)
図5は、Topas(商標)、Zeonor(商標)、およびZeonex表面でのBSA-FITC吸着の定量的測定の結果を示す。##-NS-Wサンプルは、例えば前処理または修飾を行わないシリンジバレルにおいて、予想される吸着を模倣するため、対照を提供する。PGA多糖類による修飾によって、タンパク質吸着質の密度が最大限に低減されることは明らかである。最良の削減は52%であり、TP50-PGA-P50X4で観察された。表1は、未処理のクーポン表面に対する吸着率として計算されたタンパク質除去結果の概要を示す。
【0062】
図6に示すように、タンパク質吸着の変化は、定性蛍光顕微鏡法によっても確認された。顕微鏡によって検出されたクーポン表面からの放出は、PGA処理によって、テストしたすべての種類のCOPクーポンで吸着されたBSA-FITCからの放出が低下することを示す。
【0063】
【0064】
図7は、クーポンをPGA単独、過酸化水素単独、またはPGAと過酸化水素処理の組み合わせで処理した後にテストした3つのポリマー材料上の吸着BSA-FITCからの総発光を示す。PGA単独では、表面を過酸化物でも処理したときほど大幅な減少が生じないことは明らかである。一方、過酸化物は、PGAを処理溶液に添加しない限り、タンパク質の拒絶反応に大きく悪影響を及ぼす。
【0065】
(COPシリンジでのタンパク質吸着結果)
図8は、製造業者#1、#2、および#3のCOPシリンジでのBSA-FITC吸着の定量測定の結果を示す。##-NS-Wシリンジは、前処理または修飾を行わない清浄なシリンジバレルで予想される吸着を報告するために、対照を提供する。未使用のシリンジはクーポンサンプルで測定されたものと同等の吸着質の表面被覆率を示すが、PGA修飾によって#1(79%)および#2(54%)シリンジのBSA-FITC吸着が大幅に減少することは明らかである。#1シリンジでは大幅な減少は見られない。しかしながら、これは、これらのデバイスの内面がシリコン処理されていることと一致しており、したがって、COP表面は、シリカコーティングなしで表面に直接多糖類処理の影響を最も受けていることを示している。
【0066】
#2および#3のシリンジでの修飾プロトコルの成功を考慮して、定量的測定を別の種類のタンパク質であるインスリンFITCに拡張した。インスリン-FITCは、非標識の形で治療用途に使用されるタンパク質である。
図6は、インスリン-FITCによる定量測定の結果を示す。このタンパク質でも、PGA修飾によって#2(83%)および#3(52%)のシリンジが減少することは明らかである。
【0067】
図10~15は、COP材料(クーポンとして)とここで説明するシリンジ材料(それぞれ製造業者#1、#2、および#3のタイプS1、S2、S3)とのFT-IRスペクトルの比較を示す。
【0068】
(COP材料の表面処理の効果)
溶液処理と反応条件との影響を、Ge減衰全内部反射赤外分光法(GATR-FTIR)、水接触角(WCA)、および透過率UV-Vis分光法を使用して調査した。
図10aは、H
2O
2に50℃で曝露する前後のCOPクーポンのGATR-FTIRスペクトルを示す。スペクトルは、カルボニル官能基の診断となる1709cm
-1での明確な吸光度ピークの出現を示す。これは、反応条件で過酸化物にさらされるとCOPが酸化的に活性化されることを示す。ただし、
図10bの対照UV-Vis吸光度スペクトルに示されているように、この酸化は穏やかで材料の表面に限定されており、バルク光学特性に変化がないことが示される。
【0069】
これは、UV/オゾンランプへの曝露などの他の表面酸化方法とは対照的である。これは
図11aおよび11bに示され、UV/オゾンランプ照射(10分)による酸化後の同じタイプのCOPクーポンのGATRおよびUV-Vis吸光度が示される。酸化後のGATR-FTIRスペクトルではカルボニルピークの出現が明らかであるが、UV-Vis吸光度スペクトルでは吸光度が大幅に増加しており、これはCOPポリマーのバルク構造の変化を示す。したがって、H
2O
2による酸化は比較的穏やかで、バルク材料は大きく変化しない。
【0070】
WCA測定は、表面処理による親水性の変化を監視するために使用された。
図9は、異なる条件下でPGAを使用した場合と使用しない場合とで処理した3つのポリマーのCOP表面で得られたWCA値を示す。結果は、H
2O
2に単独で曝露した後では、親水性の特性にわずかな変化しか観察されないことを示す。しかしながら、PGAにさらされると、親水性が大幅に増加する。
【0071】
(結論)
COP材料の場合、表面酸化プロセスと多糖類の固定化とを組み合わせることによって、タンパク質吸着物がさらに減少する。
【0072】
タンパク質拒絶反応は、一般的なプローブ球状タンパク質およびより小さいサイズの治療用タンパク質で観察されるため、一般的であると考えられる。
【0073】
本明細書で参照される公開文書の開示は、その全体が参照によって組み込まれる。
【国際調査報告】