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特表2024-506465心房細動、不整脈、及びその他の身体状態の監視及び治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】心房細動、不整脈、及びその他の身体状態の監視及び治療
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240206BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20240206BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20240206BHJP
   A61B 5/332 20210101ALI20240206BHJP
   A61B 5/352 20210101ALI20240206BHJP
   A61B 5/361 20210101ALI20240206BHJP
   A61B 5/363 20210101ALI20240206BHJP
   A61B 5/349 20210101ALI20240206BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/04
A61B5/33 100
A61B5/332
A61B5/33 300
A61B5/352 100
A61B5/361
A61B5/363
A61B5/349
A61B5/02 310A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541014
(86)(22)【出願日】2022-01-18
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 IL2022050074
(87)【国際公開番号】W WO2022153321
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】63/138,561
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/210,570
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】523253899
【氏名又は名称】ジブ ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ジブ,アモス
(72)【発明者】
【氏名】ホランド,イツハク
【テーマコード(参考)】
4C017
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AA19
4C017AB02
4C017AC15
4C017AC26
4C017BC11
4C017BC16
4C017BC21
4C017DD07
4C017DD14
4C017EE01
4C017FF17
4C053BB23
4C053BB24
4C053JJ02
4C053JJ21
4C127AA02
4C127BB03
4C127BB05
4C127DD03
4C127GG01
4C127GG05
4C127GG13
(57)【要約】
【課題】 不整脈関連イベントを監視及び治療することである。
【解決手段】 システムは、制御モジュールと、制御モジュールによって動作可能に制御され、40~50Hzの周波数の電気刺激信号を生成するように構成された神経刺激ユニットと、被験者の手首の内面に同時皮膚接触して、被験者の正中神経の近くに位置決めされるように構成された少なくとも2つの電極と、を備える。少なくとも2つの電極の各々は、生成された電気刺激信号を神経刺激ユニットから被験者へ送出するため神経刺激ユニットに接続されている。電気刺激信号は、被験者における不整脈関連疾患の発生を減少させるため被験者に神経変調治療を適用するように構成されている。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御モジュールと、
前記制御モジュールによって動作可能に制御され、40~50Hzの周波数の電気刺激信号を生成するように構成された神経刺激ユニットと、
被験者の手首の内面に同時皮膚接触して、前記被験者の正中神経の近くに位置決めされるように構成された少なくとも2つの電極であって、前記少なくとも2つの電極の各々は、前記生成された電気刺激信号を前記神経刺激ユニットから前記被験者へ送出するため前記神経刺激ユニットに接続されている、少なくとも2つの電極と、
を備え、前記電気刺激信号は、前記被験者における不整脈関連疾患の発生を減少させるため前記被験者に神経変調治療を適用するように構成されている、システム。
【請求項2】
前記制御モジュールは、所定のスケジュールに従って前記電気刺激信号を生成するように前記神経刺激ユニットを動作させるよう構成され、前記生成された電気刺激信号は、前記神経刺激ユニットから前記少なくとも2つの電極を介して前記被験者へ送出される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御モジュールは、被験者の活動状況パラメータ、被験者の食事状況パラメータ、及び被験者の感情状態パラメータから成るパラメータ群から選択された少なくとも1つのパラメータを示すデータを入力として受信するように構成されている、請求項1又は2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御モジュールは、前記データに基づいて、前記被験者に関する前記不整脈関連疾患の現在の又はこれから起こる発生を予測するよう構成され、少なくとも部分的に前記予測に基づいて前記電気刺激信号を生成するように前記神経刺激ユニットを動作させるよう構成され、前記生成された電気刺激信号は前記神経刺激ユニットから前記少なくとも2つの電極を介して前記被験者へ送出される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
(i)被験者の活動状況パラメータは、被験者が、食事、横臥、睡眠、歩行、ランニング、運動、又は運転のうち少なくとも1つを実行中であることを示し、
(ii)被験者の食事状況パラメータは、被験者が、空腹である、現在食事中である、又は先ほど食事した、のうち少なくとも1つであることを示し、
(iii)被験者の感情状態パラメータは、被験者が、ストレスを感じている、リラックスしている、前向きな気分である、落ち込んでいる、不安を感じている、又はトラウマを抱えている、のうち少なくとも1つであることを示す、請求項3又は4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御モジュールは更に、疲労、胸の圧迫感、動悸、めまい、失神、頭痛、息切れ、胸の「空虚」感、頻拍又は不安定な心拍、心拍のスキップ、喉の圧迫感、冷え又は悪寒、脱水症、血圧関連パラメータ、貧血診断、消化器系の症状、不眠症、及びホルモン関連データから成る群から選択された、被験者に関する少なくとも1つの追加のパラメータを示すデータを、追加の入力として受信するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記予測は、前記被験者において、前記データを含む前記パラメータのうち少なくとも1つを前記不整脈関連疾患の発生と相互に関連付けることに少なくとも部分的に基づき、前記相互に関連付けることは、前記被験者における前記不整脈関連疾患の発生に関連した現在及び履歴の情報に基づく、請求項4から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御モジュールは更に、前記被験者の心臓活動信号を追加の入力として受信するように構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記制御モジュールは更に、前記心臓活動信号を処理して、心拍変動(HRV)、心拍数回復、予備心拍数、心房期外収縮(PAC)、心室期外収縮、心房頻拍、RR間隔、正常心拍間の平均間隔(AVNN)、NN間隔の標準偏差(SDNN)、連続して隣接する正常心拍間の差の2乗平均平方根(rMSSD)、pNN50、低周波数活動(LF)、及び高周波数活動(HF)から成る群から選択された1つ以上の心臓活動関連パラメータを導出するように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御モジュールは更に、前記心臓活動信号に基づいて前記被験者に関する前記不整脈関連疾患の現在の又はこれから起こる発生を検出するよう構成され、少なくとも部分的に前記検出に基づいて前記電気刺激信号を生成するように前記神経刺激ユニットを動作させるよう構成され、前記生成された電気刺激信号は前記神経刺激ユニットから前記少なくとも2つの電極を介して前記被験者へ送出される、請求項8又は9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御モジュールは更に、前記被験者の自律神経系が交感神経状態であること又は副交感神経状態であることを決定するように構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記被験者の前記自律神経系が交感神経状態である場合、前記制御モジュールは、1~5Hzの周波数の前記電気刺激信号を生成するように前記神経刺激ユニットを動作させるよう構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
心電図(ECG)センサ、光電容積脈波検査(PPG)センサ、及び加速度計のうち少なくとも1つを更に備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記システムは、前記被験者が装着するように構成されたウェアラブルデバイス内に少なくとも部分的に収容されている、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記ウェアラブルデバイスは、前記少なくとも2つの電極の各々が縦軸に沿って前記正中神経の長手方向軸の近くに、この長手方向軸と実質的に平行に位置決めされるように、被験者の手首に装着されるよう構成されたリストバンドを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記不整脈関連疾患は、心房細動(AF)、早期心房複合体(PAC)、早期心室複合体(PVC)、上室性頻拍(SVT)、心房頻拍(AT)、心房粗動、房室結節回帰性頻拍(AVNRT)、発作性上室性頻拍(PSVT)、房室回帰性頻拍、ウォルフパーキンソンホワイト症候群、心室頻拍(VT)、心室性不整脈(TdP)、QT延長症候群、心臓ブロック、及び洞不全症候群のうち1つ以上である、請求項1から15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記制御モジュールは更に、前記少なくとも2つの電極間の前記電気刺激信号に関連した電流を測定するよう構成され、前記測定された電流が所定の基準値よりも小さい場合、被験者の手首の前記内面に対する前記少なくとも2つの電極の位置決めが正しくないと決定するよう構成されている、請求項1から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記所定の基準値は、前記少なくとも2つの電極の各々が縦軸に沿って前記正中神経の長手方向軸の近くに、この長手方向と実質的に平行に位置決めされた場合に、前記少なくとも2つの電極間の前記電気刺激信号に関連した電流を測定することによって決定される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
制御モジュールと、
前記制御モジュールによって動作可能に制御され、40~50Hzの周波数の電気刺激信号を生成するように構成された神経刺激ユニットと、
被験者の手首の内面に同時皮膚接触して、被験者の正中神経の近くに位置決めされるように構成された少なくとも2つの電極であって、前記少なくとも2つの電極の各々は、前記生成された電気刺激信号を前記神経刺激ユニットから前記被験者へ送出するため前記神経刺激ユニットに接続されている、少なくとも2つの電極と、
を備えるシステムであって、前記電気刺激信号は前記被験者における不整脈関連疾患の発生を減少させるため前記被験者に神経変調治療を適用するように構成されている、システムを提供することと、
前記少なくとも2つの電極の各々が縦軸に沿って前記正中神経の長手方向軸の近くに、この長手方向軸と実質的に平行に位置決めされるように、前記被験者の手首の内面に同時皮膚接触して前記少なくとも2つの電極を配置することと、
を含む方法。
【請求項20】
所定のスケジュールに従って前記電気刺激信号を生成するように前記神経刺激ユニットを動作させることを更に含み、前記生成された電気刺激信号は、前記神経刺激ユニットから前記少なくとも2つの電極を介して前記被験者へ送出される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記制御モジュールは、被験者の活動状況パラメータ、被験者の食事状況パラメータ、及び被験者の感情状態パラメータから成るパラメータ群から選択された少なくとも1つのパラメータを示すデータを入力として受信するように構成されている、請求項19又は20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記データに基づいて、前記被験者に関する前記不整脈関連疾患の現在の又はこれから起こる発生を予測することと、少なくとも部分的に前記予測に基づいて前記電気刺激信号を生成するように前記神経刺激ユニットを動作させることと、を更に含み、前記生成された電気刺激信号は前記神経刺激ユニットから前記少なくとも2つの電極を介して前記被験者へ送出される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記制御モジュールは更に、疲労、胸の圧迫感、動悸、めまい、失神、頭痛、息切れ、胸の「空虚」感、頻拍又は不安定な心拍、心拍のスキップ、喉の圧迫感、冷え又は悪寒、脱水症、血圧関連パラメータ、貧血診断、消化器系の症状、不眠症、及びホルモン関連データから成る群から選択された、被験者に関する少なくとも1つの追加のパラメータを示すデータを、追加の入力として受信するように構成されている、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記予測は、前記被験者において、前記データを含む前記パラメータのうち少なくとも1つを前記不整脈関連疾患の発生と相互に関連付けることに少なくとも部分的に基づき、前記相互に関連付けることは、前記被験者における前記不整脈関連疾患の発生に関連した現在及び履歴の情報に基づく、請求項19から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記制御モジュールは更に、前記被験者の心臓活動信号を追加の入力として受信するように構成されている、請求項19から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記制御モジュールは更に、前記心臓活動信号を処理して、心拍変動(HRV)、心拍数回復、予備心拍数、心房期外収縮(PAC)、心室期外収縮、心房頻拍、RR間隔、正常心拍間の平均間隔(AVNN)、NN間隔の標準偏差(SDNN)、連続して隣接する正常心拍間の差の2乗平均平方根(rMSSD)、pNN50、低周波数活動(LF)、及び高周波数活動(HF)から成る群から選択された1つ以上の心臓活動関連パラメータを導出するように構成されている、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上の心臓活動信号に基づいて前記被験者に関する前記不整脈関連疾患の現在の又はこれから起こる発生を検出することと、少なくとも部分的に前記検出に基づいて前記電気刺激信号を生成するように前記神経刺激ユニットを動作させることと、を更に含み、前記生成された電気刺激信号は前記神経刺激ユニットから前記少なくとも2つの電極を介して前記被験者へ送出される、請求項25又は26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記制御モジュールは更に、前記被験者の自律神経系が交感神経状態であること又は副交感神経状態であることを決定するように構成されている、請求項19から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記被験者の前記自律神経系が交感神経状態である場合、前記制御モジュールは、1~5Hzの周波数の前記電気刺激信号を生成するように前記神経刺激ユニットを動作させるよう構成されている、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記システムは、心電図(ECG)センサ、光電容積脈波検査(PPG)センサ、及び加速度計のうち少なくとも1つを更に備える、請求項19から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記システムは、前記被験者が装着するように構成されたウェアラブルデバイス内に少なくとも部分的に収容され、前記ウェアラブルデバイスは、前記少なくとも2つの電極の各々が縦軸に沿って前記正中神経の長手方向軸の近くに、この長手方向軸と実質的に平行に位置決めされるように、被験者の手首に装着されるよう構成されたリストバンドを含む、請求項19から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記不整脈関連疾患は、心房細動(AF)、早期心房複合体(PAC)、早期心室複合体(PVC)、上室性頻拍(SVT)、心房頻拍(AT)、心房粗動、房室結節回帰性頻拍(AVNRT)、発作性上室性頻拍(PSVT)、房室回帰性頻拍、ウォルフパーキンソンホワイト症候群、心室頻拍(VT)、心室性不整脈(TdP)、QT延長症候群、心臓ブロック、及び洞不全症候群のうち1つ以上である、請求項19から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記制御モジュールは更に、前記少なくとも2つの電極間の前記電気刺激信号に関連した電流を測定するよう構成され、前記測定された電流が所定の基準値よりも小さい場合、被験者の手首の前記内面に対する前記少なくとも2つの電極の位置決めが正しくないと決定するよう構成されている、請求項19から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記所定の基準値は、前記少なくとも2つの電極の各々が縦軸に沿って前記正中神経の長手方向軸の近くに、この長手方向と実質的に平行に位置決めされた場合に、前記少なくとも2つの電極間の前記電気刺激信号に関連した電流を測定することによって決定される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
制御モジュールと、
前記制御モジュールによって動作可能に制御され、電気刺激信号を生成するように構成された神経刺激ユニットと、
被験者の手首の内面に同時皮膚接触して、前記被験者の正中神経の近くに位置決めされるように構成された少なくとも2つの電極であって、前記少なくとも2つの電極の各々は、前記生成された電気刺激信号を前記神経刺激ユニットから前記被験者へ送出するため前記神経刺激ユニットに接続されている、少なくとも2つの電極と、
を備えるシステムであって、前記制御モジュールは、
前記被験者の心臓活動信号を入力として受信し、
前記心臓活動信号に基づいて前記被験者に関する不整脈関連疾患の現在の又はこれから起こる発生を検出し、
40~50Hzの周波数の前記電気刺激信号を生成するように前記神経刺激ユニットを動作させるよう構成され、前記生成された電気刺激信号は、前記神経刺激ユニットから前記少なくとも2つの電極を介して前記被験者へ送出され、
前記電気刺激信号は、前記被験者における前記不整脈関連疾患の発生を減少させるため前記被験者に神経変調治療を適用するように構成されている、システム。
【請求項36】
前記制御モジュールは、前記心臓活動信号において早期心房複合体(PAC)及び早期心室複合体(PVC)のうち少なくとも1つを検出することに少なくとも部分的に基づいて、前記不整脈関連疾患の前記これから起こる発生を検出するように構成されている、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記検出することは、前記心臓活動信号において、前記被験者の基準測定値に対するPAC及びPVCのうち前記1つの増加率を測定することに基づく、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
心電図(ECG)センサ、光電容積脈波検査(PPG)センサ、及び加速度計のうち少なくとも1つを更に備える、請求項35から37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項39】
前記制御モジュールは更に、前記心臓活動信号を処理して、心拍変動(HRV)、心拍数回復、予備心拍数、心房期外収縮(PAC)、心室期外収縮、心房頻拍、RR間隔、正常心拍間の平均間隔(AVNN)、NN間隔の標準偏差(SDNN)、連続して隣接する正常心拍間の差の2乗平均平方根(rMSSD)、pNN50、低周波数活動(LF)、及び高周波数活動(HF)から成る群から選択された1つ以上の心臓活動関連パラメータを導出するように構成されている、請求項35から38のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項40】
前記検出することは、少なくとも部分的に前記1つ以上の心臓活動関連パラメータに基づく、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記制御モジュールは更に、被験者の活動状況、被験者の食事状況、及び被験者の感情状態から成る群から選択された少なくとも1つの追加のパラメータを示すデータを追加の入力として受信するように構成されている、請求項35から40のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項42】
前記制御モジュールは更に、前記被験者の自律神経系が交感神経状態であること又は副交感神経状態であることを決定するように構成されている、請求項35から41のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項43】
前記被験者の前記自律神経系が交感神経状態である場合、前記制御モジュールは、1~5Hzの周波数の前記電気刺激信号を生成するように前記神経刺激ユニットを動作させるよう構成されている、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記システムは、被験者が装着するように構成されたウェアラブルデバイス内に収容され、前記ウェアラブルデバイスは、前記少なくとも2つの電極の各々が縦軸に沿って前記正中神経の長手方向軸の近くに、この長手方向軸と実質的に平行に位置決めされるように、被験者の手首に装着されるよう構成されたリストバンドを含む、請求項35から43のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項45】
前記不整脈関連疾患は、心房細動(AF)、早期心房複合体(PAC)、早期心室複合体(PVC)、上室性頻拍(SVT)、心房頻拍(AT)、心房粗動、房室結節回帰性頻拍(AVNRT)、発作性上室性頻拍(PSVT)、房室回帰性頻拍、ウォルフパーキンソンホワイト症候群、心室頻拍(VT)、心室性不整脈(TdP)、QT延長症候群、心臓ブロック、及び洞不全症候群のうち1つ以上である、請求項35から44のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項46】
前記制御モジュールは更に、前記少なくとも2つの電極間の前記電気刺激信号に関連した電流を測定するように構成され、前記測定された電流が所定の基準値よりも小さい場合、被験者の手首の前記内面に対する前記少なくとも2つの電極の位置決めが正しくないと決定するように構成されている、請求項35から45のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項47】
前記所定の基準値は、前記少なくとも2つの電極の各々が縦軸に沿って前記正中神経の長手方向軸の近くに、この長手方向と実質的に平行に位置決めされた場合に、前記少なくとも2つの電極間の前記電気刺激信号に関連した電流を測定することによって決定される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
制御モジュールと、
前記制御モジュールによって動作可能に制御され、電気刺激信号を生成するように構成された神経刺激ユニットと、
被験者の手首の内面に同時皮膚接触して、被験者の正中神経の近くに位置決めされるように構成された少なくとも2つの電極であって、前記少なくとも2つの電極の各々は、前記生成された電気刺激信号を前記神経刺激ユニットから前記被験者へ送出するため前記神経刺激ユニットに接続されている、少なくとも2つの電極と、
を備えるシステムを提供することであって、前記制御モジュールは、
前記被験者の心臓活動信号を入力として受信し、
前記心臓活動信号に基づいて前記被験者に関する不整脈関連疾患の現在の又はこれから起こる発生を検出し、
40~50Hzの周波数の前記電気刺激信号を生成するように前記神経刺激ユニットを動作させるように構成され、前記生成された電気刺激信号は、前記神経刺激ユニットから前記少なくとも2つの電極を介して前記被験者へ送出され、
前記電気刺激信号は、前記被験者における前記不整脈関連疾患の発生を減少させるため前記被験者に神経変調治療を適用するように構成されている、システムを提供することと、
前記少なくとも2つの電極の各々が縦軸に沿って前記正中神経の長手方向軸の近くに、この長手方向軸と実質的に平行に位置決めされるように、前記被験者の手首の内面に同時皮膚接触して前記少なくとも2つの電極を配置することと、
を含む方法。
【請求項49】
前記制御モジュールは、前記心臓活動信号において早期心房複合体(PAC)及び早期心室複合体(PVC)のうち少なくとも1つを検出することに少なくとも部分的に基づいて、前記不整脈関連疾患の前記これから起こる発生を検出するように構成されている、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
心電図(ECG)センサ、光電容積脈波検査(PPG)センサ、及び加速度計のうち少なくとも1つを更に備える、請求項48から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記制御モジュールは更に、前記心臓活動信号を処理して、心拍変動(HRV)、心拍数回復、予備心拍数、心房期外収縮(PAC)、心室期外収縮、心房頻拍、RR間隔、正常心拍間の平均間隔(AVNN)、NN間隔の標準偏差(SDNN)、連続して隣接する正常心拍間の差の2乗平均平方根(rMSSD)、pNN50、低周波数活動(LF)、及び高周波数活動(HF)から成る群から選択された1つ以上の心臓活動関連パラメータを導出するように構成されている、請求項48から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記制御モジュールは更に、前記被験者の活動状況、前記被験者の食事状況、及び前記被験者の感情状態から成る群から選択された少なくとも1つの追加のパラメータを示すデータを追加の入力として受信するように構成されている、請求項48から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記制御モジュールは更に、前記被験者の自律神経系が交感神経状態であること又は副交感神経状態であることを決定するように構成され、前記被験者の前記自律神経系が交感神経状態である場合、前記制御モジュールは、1~5Hzの周波数の前記電気刺激信号を生成するように前記神経刺激ユニットを動作させるよう構成されている、請求項48から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記システムは、被験者が装着するように構成されたウェアラブルデバイス内に収容され、前記ウェアラブルデバイスは、前記少なくとも2つの電極の各々が縦軸に沿って前記正中神経の長手方向軸の近くに、この長手方向軸と実質的に平行に位置決めされるように、被験者の手首に装着されるよう構成されたリストバンドを含む、請求項48から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記不整脈関連疾患は、心房細動(AF)、早期心房複合体(PAC)、早期心室複合体(PVC)、上室性頻拍(SVT)、心房頻拍(AT)、心房粗動、房室結節回帰性頻拍(AVNRT)、発作性上室性頻拍(PSVT)、房室回帰性頻拍、ウォルフパーキンソンホワイト症候群、心室頻拍(VT)、心室性不整脈(TdP)、QT延長症候群、心臓ブロック、及び洞不全症候群のうち1つ以上である、請求項48から54のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
[0001] 本出願は、2021年1月18日に出願された「MONITORING AND TREATING ATRIAL FIBRILLATION, ARRYTHMIA, AND ADDITIONAL CONDITIONS」と題する米国仮特許出願第63/138,561号、及び、2021年6月15日に出願された「MONITORING AND TREATING ATRIAL FIBRILLATION, ARRYTHMIA, AND ADDITIONAL CONDITIONS」と題する米国仮特許出願第63/210,570号の優先権の利益を主張する。これら双方の内容は援用により全体が本願に含まれる。
【0002】
[0002] 本発明のいくつかの適用例は、一般に、不整脈関連イベントを監視及び治療するためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 神経変調(neuromodulation)は、うつ病のような精神疾患から慢性痛のような生理的状態まで、様々な身体状態を治療するために用いられる。特に、末梢神経の神経変調は、自律神経系を調節するために用いることができる。
【0004】
[0004] 様々な生理的状態を監視及び治療するための携帯型デバイスは、重大な危機に応じて、又は一般的な健康状態と気分の向上をもたらすため、リアルタイム治療を可能とする。近年、心拍数又は血圧のようなバイタルサインを追跡するように設計されたデバイスから、ウェアラブルフィットネストラッカのようなレクリエーション用ウェアラブルデバイスまで、生理的状態を監視するように設計された消費者向けウェアラブルデバイスが急激に増加している。
【0005】
[0005] 関連技術の前述の例及びそれらに関連する限定は、排他的であることでなく例示的であることを意図している。本明細書を読み、図面を見ることにより、当業者には関連技術の他の限定が明らかとなろう。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 以下の実施形態及びそれらの態様は、範囲の限定ではなく例示及び説明を目的とするシステム、ツール、及び方法と共に記載及び説明されている。
【0007】
[0007] 一実施形態において、システムが提供される。このシステムは、制御モジュールと、制御モジュールによって動作可能に制御され、40~50Hzの周波数の電気刺激信号を生成するように構成された神経刺激ユニットと、被験者の手首の内面に同時皮膚接触して、被験者の正中神経の近くに位置決めされるように構成された少なくとも2つの電極であって、少なくとも2つの電極の各々は、生成された電気刺激信号を神経刺激ユニットから被験者へ送出するため神経刺激ユニットに接続されている、少なくとも2つの電極と、を備える。電気刺激信号は、被験者における不整脈関連疾患の発生を減少させるため被験者に神経変調治療を適用するように構成されている。
【0008】
[0008] また、一実施形態において、方法が提供される。この方法は、制御モジュールと、制御モジュールによって動作可能に制御され、40~50Hzの周波数の電気刺激信号を生成するように構成された神経刺激ユニットと、被験者の手首の内面に同時皮膚接触して、被験者の正中神経の近くに位置決めされるように構成された少なくとも2つの電極であって、少なくとも2つの電極の各々は、生成された電気刺激信号を神経刺激ユニットから被験者へ送出するため神経刺激ユニットに接続されている、少なくとも2つの電極と、を備えるシステムであって、電気刺激信号は被験者における不整脈関連疾患の発生を減少させるため被験者に神経変調治療を適用するように構成されている、システムを提供することと、少なくとも2つの電極の各々が縦軸に沿って正中神経の長手方向軸の近くに、この長手方向軸と実質的に平行に位置決めされるように、被験者の手首の内面に同時皮膚接触して少なくとも2つの電極を配置することと、を含む。
【0009】
[0009] いくつかの実施形態において、制御モジュールは、所定のスケジュールに従って電気刺激信号を生成するように神経刺激ユニットを動作させるよう構成され、生成された電気刺激信号は、神経刺激ユニットから少なくとも2つの電極を介して被験者へ送出される。
【0010】
[0010] いくつかの実施形態において、制御モジュールは、被験者の活動状況パラメータ、被験者の食事状況パラメータ、及び被験者の感情状態パラメータから成るパラメータ群から選択された少なくとも1つのパラメータを示すデータを入力として受信するように構成されている。
【0011】
[0011] いくつかの実施形態において、制御モジュールは、データに基づいて、被験者に関する不整脈関連疾患の現在の又はこれから起こる発生を予測するよう構成され、少なくとも部分的にこの予測に基づいて電気刺激信号を生成するように神経刺激ユニットを動作させるよう構成されている。生成された電気刺激信号は、神経刺激ユニットから少なくとも2つの電極を介して被験者へ送出される。
【0012】
[0012] いくつかの実施形態において、被験者の活動状況パラメータは、被験者が、食事、横臥、睡眠、歩行、ランニング、運動、又は運転のうち少なくとも1つを実行中であることを示し、被験者の食事状況パラメータは、被験者が、空腹である、現在食事中である、又は先ほど食事した、のうち少なくとも1つであることを示し、被験者の感情状態パラメータは、被験者が、ストレスを感じている、リラックスしている、前向きな気分である、落ち込んでいる、不安を感じている、又はトラウマを抱えている、のうち少なくとも1つであることを示す。
【0013】
[0013] いくつかの実施形態において、制御モジュールは更に、疲労、胸の圧迫感、動悸、めまい、失神、頭痛、息切れ、胸の「空虚」感、頻拍又は不安定な心拍、心拍のスキップ、喉の圧迫感、冷え又は悪寒、脱水症、血圧関連パラメータ、貧血診断、消化器系の症状、不眠症、及びホルモン関連データから成る群から選択された、被験者に関する少なくとも1つの追加のパラメータを示すデータを、追加の入力として受信するように構成されている。
【0014】
[0014] いくつかの実施形態において、予測は、被験者において、前述のデータを含むパラメータのうち少なくとも1つを不整脈関連疾患の発生と相互に関連付けることに少なくとも部分的に基づき、相互に関連付けることは、被験者における不整脈関連疾患の発生に関連した現在及び履歴の情報に基づく。
【0015】
[0015] いくつかの実施形態において、制御モジュールは更に、被験者の心臓活動信号を追加の入力として受信するように構成されている。
【0016】
[0016] いくつかの実施形態において、制御モジュールは更に、心臓活動信号を処理して、心拍変動(HRV:heart rate variability)、心拍数回復、予備心拍数、心房期外収縮(PAC)、心室期外収縮、心房頻拍、RR間隔、正常心拍間の平均間隔(AVNN:average interval between normal heart beats)、NN間隔の標準偏差(SDNN:standard deviation of NN intervals)、連続して隣接する正常心拍間の差の2乗平均平方根(rMSSD:root mean square of successive differences between normal heartbeats)、pNN50、低周波数活動(LF:low frequency)、及び高周波数活動(HF:high frequency)から成る群から選択された1つ以上の心臓活動関連パラメータを導出するように構成されている。
【0017】
[0017] いくつかの実施形態において、制御モジュールは更に、心臓活動信号に基づいて被験者に関する不整脈関連疾患の現在の又はこれから起こる発生を検出するよう構成され、少なくとも部分的にこの検出に基づいて電気刺激信号を生成するように神経刺激ユニットを動作させるよう構成されている。生成された電気刺激信号は、神経刺激ユニットから少なくとも2つの電極を介して被験者へ送出される。
【0018】
[0018] いくつかの実施形態において、制御モジュールは更に、被験者の自律神経系が交感神経状態であること又は副交感神経状態であることを決定するように構成されている。
【0019】
[0019] いくつかの実施形態において、被験者の自律神経系が交感神経状態である場合、制御モジュールは、1~5Hzの周波数の電気刺激信号を生成するように神経刺激ユニットを動作させるよう構成されている。
【0020】
[0020] いくつかの実施形態において、システムは、心電図(ECG:electrocardiogram)センサ、光電容積脈波検査(PPG:photoplethysmogram)センサ、及び加速度計のうち少なくとも1つを更に備える。
【0021】
[0021] いくつかの実施形態において、システムは、被験者が装着するように構成されたウェアラブルデバイス内に少なくとも部分的に収容されている。
【0022】
[0022] いくつかの実施形態において、ウェアラブルデバイスは、少なくとも2つの電極の各々が縦軸に沿って正中神経の長手方向軸の近くに、この長手方向軸と実質的に平行に位置決めされるように、被験者の手首に装着されるよう構成されたリストバンドを含む。
【0023】
[0023] いくつかの実施形態において、不整脈関連疾患は、心房細動(AF:atrial fibrillation)、早期心房複合体(PAC:premature atrial complex)、早期心室複合体(PVC:premature ventricular complex)、上室性頻拍(SVT:supraventricular tachycardia)、心房頻拍(AT:atrial tachycardia)、心房粗動、房室結節回帰性頻拍(AVNRT:atrioventricular node re-entrant tachycardia)、発作性上室性頻拍(PSVT:paroxysmal supraventricular tachycardia)、房室回帰性頻拍、ウォルフパーキンソンホワイト症候群、心室頻拍(VT:ventricular tachycardia)、心室性不整脈(TdP:torsades de pointes)、QT延長症候群、心臓ブロック、及び洞不全症候群のうち1つ以上である。
【0024】
[0024] いくつかの実施形態において、制御モジュールは更に、少なくとも2つの電極間の電気刺激信号に関連した電流を測定するよう構成され、測定された電流が所定の基準値よりも小さい場合、被験者の手首の内面に対する少なくとも2つの電極の位置決めが正しくないと決定するよう構成されている。
【0025】
[0025] いくつかの実施形態において、所定の基準値は、少なくとも2つの電極の各々が縦軸に沿って正中神経の長手方向軸の近くに、この長手方向と実質的に平行に位置決めされた場合に、少なくとも2つの電極間の電気刺激信号に関連した電流を測定することによって決定される。
【0026】
[0026] 更に、一実施形態において、システムが提供される。このシステムは、制御モジュールと、制御モジュールによって動作可能に制御され、電気刺激信号を生成するように構成された神経刺激ユニットと、被験者の手首の内面に同時皮膚接触して、被験者の正中神経の近くに位置決めされるように構成された少なくとも2つの電極であって、少なくとも2つの電極の各々は、生成された電気刺激信号を神経刺激ユニットから被験者へ送出するため神経刺激ユニットに接続されている、少なくとも2つの電極と、を備える。制御モジュールは、被験者の心臓活動信号を入力として受信し、心臓活動信号に基づいて被験者に関する不整脈関連疾患の現在の発生又はこれから起こる発生を検出し、40~50Hzの周波数の電気刺激信号を生成するように神経刺激ユニットを動作させるように構成されている。生成された電気刺激信号は、神経刺激ユニットから少なくとも2つの電極を介して被験者へ送出される。電気刺激信号は、被験者における不整脈関連疾患の発生を減少させるため被験者に神経変調治療を適用するように構成されている。
【0027】
[0027] 更に、一実施形態において、方法が提供される。この方法は、制御モジュールと、制御モジュールによって動作可能に制御され、電気刺激信号を生成するように構成された神経刺激ユニットと、被験者の手首の内面に同時皮膚接触して、被験者の正中神経の近くに位置決めされるように構成された少なくとも2つの電極であって、少なくとも2つの電極の各々は、生成された電気刺激信号を神経刺激ユニットから被験者へ送出するため神経刺激ユニットに接続されている、少なくとも2つの電極と、を備えるシステムを提供することであって、制御モジュールは、被験者の心臓活動信号を入力として受信し、心臓活動信号に基づいて被験者に関する不整脈関連疾患の現在の発生又はこれから起こる発生を検出し、40~50Hzの周波数の電気刺激信号を生成するように神経刺激ユニットを動作させるように構成され、生成された電気刺激信号は、神経刺激ユニットから少なくとも2つの電極を介して被験者へ送出され、電気刺激信号は、被験者における不整脈関連疾患の発生を減少させるため被験者に神経変調治療を適用するように構成されている、システムを提供することと、少なくとも2つの電極の各々が縦軸に沿って正中神経の長手方向軸の近くに、この長手方向軸と実質的に平行に位置決めされるように、被験者の手首の内面に同時皮膚接触して少なくとも2つの電極を配置することと、を含む。
【0028】
[0028] いくつかの実施形態において、制御モジュールは、心臓活動信号において早期心房複合体(PAC)及び早期心室複合体(PVC)のうち少なくとも1つを検出することに少なくとも部分的に基づいて、不整脈関連疾患のこれから起こる発生を検出するように構成されている。
【0029】
[0029] いくつかの実施形態において、検出することは、心臓活動信号において、被験者の基準測定値に対するPAC及びPVCのうち1つの増加率を測定することに基づく。
【0030】
[0030] いくつかの実施形態において、システムは、心電図(ECG)センサ、光電容積脈波検査(PPG)センサ、及び加速度計のうち少なくとも1つを更に備える。
【0031】
[0031] いくつかの実施形態において、制御モジュールは更に、心臓活動信号を処理して、心拍変動(HRV)、心拍数回復、予備心拍数、心房期外収縮(PAC)、心室期外収縮、心房頻拍、RR間隔、正常心拍間の平均間隔(AVNN)、NN間隔の標準偏差(SDNN)、連続して隣接する正常心拍間の差の2乗平均平方根(rMSSD)、pNN50、低周波数活動(LF)、及び高周波数活動(HF)から成る群から選択された1つ以上の心臓活動関連パラメータを導出するように構成されている。
【0032】
[0032] いくつかの実施形態において、検出することは、少なくとも部分的に1つ以上の心臓活動関連パラメータに基づく。
【0033】
[0033] いくつかの実施形態において、制御モジュールは更に、被験者の活動状況、被験者の食事状況、及び被験者の感情状態から成る群から選択された少なくとも1つの追加のパラメータを示すデータを追加の入力として受信するように構成されている。
【0034】
[0034] いくつかの実施形態において、制御モジュールは更に、被験者の自律神経系が交感神経状態であること又は副交感神経状態であることを決定するように構成されている。
【0035】
[0035] いくつかの実施形態において、被験者の自律神経系が交感神経状態である場合、制御モジュールは、1~5Hzの周波数の電気刺激信号を生成するように神経刺激ユニットを動作させるよう構成されている。
【0036】
[0036] いくつかの実施形態において、システムは、被験者が装着するように構成されたウェアラブルデバイス内に収容され、ウェアラブルデバイスは、少なくとも2つの電極の各々が縦軸に沿って正中神経の長手方向軸の近くに、この長手方向軸と実質的に平行に位置決めされるように、被験者の手首に装着されるよう構成されたリストバンドを含む。
【0037】
[0037] いくつかの実施形態において、不整脈関連疾患は、心房細動(AF)、早期心房複合体(PAC)、早期心室複合体(PVC)、上室性頻拍(SVT)、心房頻拍(AT)、心房粗動、房室結節回帰性頻拍(AVNRT)、発作性上室性頻拍(PSVT)、房室回帰性頻拍、ウォルフパーキンソンホワイト症候群、心室頻拍(VT)、心室性不整脈(TdP)、QT延長症候群、心臓ブロック、及び洞不全症候群のうち1つ以上である。
【0038】
[0038] いくつかの実施形態において、制御モジュールは更に、少なくとも2つの電極間の電気刺激信号に関連した電流を測定するよう構成され、測定された電流が所定の基準値よりも小さい場合、被験者の手首の内面に対する少なくとも2つの電極の位置決めが正しくないと決定するよう構成されている。
【0039】
[0039] いくつかの実施形態において、所定の基準値は、少なくとも2つの電極の各々が縦軸に沿って正中神経の長手方向軸の近くに、この長手方向と実質的に平行に位置決めされた場合に、少なくとも2つの電極間の電気刺激信号に関連した電流を測定することによって決定される。
【0040】
[0040] 本発明のいくつかの適用例によれば、ウェアラブルデバイスは、既定の構成で被験者の手首上に置かれるように構成されている。電極のうち少なくとも一部は、被験者の手首の皮膚に接触して置かれるように構成された、手首に面する電極である。手首に面する電極は典型的に、手首ウェアラブルデバイスが既定の配置で被験者の手首上に置かれた場合、手首に面する電極が被験者の尺骨神経及び/又は正中神経の近くに置かれるように配置される。例えば、デバイスは、スクリーンを上に向けた状態でデバイスが被験者の手首上に置かれた場合、手首に面する電極が被験者の尺骨神経及び/又は正中神経の近くに配置されるように構成できる。
【0041】
[0041] 本明細書では、ウェアラブルデバイスを参照して、検知及び/又は神経変調技法及びそれらと共に使用されるアルゴリズムのいくつかが記載されているが、本発明の範囲は、ウェアラブルデバイスを用いずに検知及び/又は神経変調技法及びそれらと共に使用されるアルゴリズムのいずれか1つを実施することを含むことに留意するべきである。例えば、そのような技法及びアルゴリズムは、ウェアラブルデバイスなしで被験者の身体に接触して置かれた電極及び/又はセンサを用いて、及び/又は被験者の手首以外の被験者の身体部分に装着されたウェアラブルデバイスを用いて、実施され得る。いくつかの実施形態では、被験者の尺骨神経、正中神経、橈骨神経、脛骨神経、腓骨神経、肋下神経、脊椎内(intravertebral)神経、及び/又は別の神経のうち1つ以上が刺激される。
【0042】
[0042] いくつかの実施形態において、デバイスは、手首に面する電極のうち第1のものから手首に面する電極のうち他方のものへ電気信号を送出し、この電気信号が被験者の尺骨神経及び/又に正中神経を流れることによって、神経変調治療を実行するように構成されている。(いくつかの実施形態では、信号の方向性は電極間で交互に変わる。)典型的に、デバイスは、心房細動(AF)及び/又は不整脈疾患、例えば心房期外収縮、心室期外収縮、上室性心拍、及び/又は心房頻拍の発生を患う被験者に神経変調治療を実行するように構成されている。信号は典型的に、正弦波形、三角形、矩形、及び/又はのこぎり歯の波形のうちいずれか1つを有する。典型的に、所与の治療セッション中、信号は、5~30秒間にわたって印加された後に0~5秒間の期間にわたってオフに切り換えられるオンオフデューティサイクルで印加される。
【0043】
[0043] 信号は典型的に、40~50Hz(例えば、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50Hz)の周波数で送出される。本明細書で提示されるデータから明らかであるように、このような刺激パラメータは通常、AF及び/又は不整脈疾患の発生を減少させる(心血管障害の改善及び/又は心血管悪化の軽減を示す)ことが分かっている。更に、本発明者らによって、1~5Hz(例えば、1、2、3、4、又は5Hz)の周波数で特定の被験者を刺激すると、AF及び/又は不整脈疾患の発生を減少させる(心血管障害の改善及び/又は心血管悪化の軽減を示す)ことが分かっている。従って、いくつかの実施形態では、信号は1~5Hz(例えば、1、2、3、4、又は5Hz)の周波数で駆動される。いくつかの実施形態において、システムは、1つ以上の検出されたパラメータ及び/又は追加の入力に基づいて、所与の治療中にどの信号パラメータを被験者に適用するかを選択する。
【0044】
[0044] 従って、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、被験者が装着するように構成されたウェアラブルデバイスであって、1つ以上の電極を含み、被験者の心臓関連パラメータを検出するように構成されたウェアラブルデバイスと、このウェアラブルデバイスに関連付けられた少なくとも1つのコンピュータプロセッサと、を含む。コンピュータプロセッサは、検出された被験者の心臓関連パラメータを受信し、検出された心臓関連パラメータに基づいて被験者の心房期外収縮及び/又は心房頻拍の発生率の上昇を検出し、少なくとも部分的にそれに応じて、ウェアラブルデバイスの1つ以上の電極を駆動して、40Hz~50Hz及び1Hz~5Hzから成る群から選択された範囲内の周波数を有する電気刺激治療を被験者に適用するよう構成されている。
【0045】
[0045] いくつかの適用例において、ウェアラブルデバイスはリストバンドを含み、リストバンドが既定の配置で装着された場合、1つ以上の電極のうち少なくとも1つは被験者の正中神経及び/又は尺骨神経の近くに置かれるように構成されている。
【0046】
[0046] いくつかの適用例において、ウェアラブルデバイスはPPGセンサを含み、ウェアラブルデバイスは、PPGセンサを利用することによって被験者の心臓関連パラメータを検出するように構成されている。
【0047】
[0047] いくつかの適用例において、ウェアラブルデバイスは加速度計を含み、ウェアラブルデバイスは、加速度計を利用することによって被験者の心臓関連パラメータを検出するように構成されている。
【0048】
[0048] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは更に、被験者の活動状況、被験者の食事状況、被験者の感情状態、及び時刻から成る群から選択された少なくとも1つの追加のパラメータを示す入力を受信するように構成されている。コンピュータプロセッサは、検出された被験者の心房期外収縮及び/又は心房頻拍の発生率の上昇と組み合わせて、少なくとも1つの追加のパラメータに応じて、1つ以上の電極を駆動して電気刺激治療を被験者に適用するよう構成されている。
【0049】
[0049] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは更に、被験者が副交感神経状態であることを決定するように構成され、コンピュータプロセッサは、検出された被験者の心房期外収縮及び/又は心房頻拍の発生率の上昇と組み合わせて、被験者が副交感神経状態であると検出したことに応じて、ウェアラブルデバイスの1つ以上の電極を駆動して40Hz~50Hzの周波数を有する電気刺激治療を被験者に適用するよう構成されている。
【0050】
[0050] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは更に、被験者が交感神経状態であることを決定するよう構成され、検出された被験者の心房期外収縮及び/又は心房頻拍の発生率の上昇と組み合わせて、被験者が交感神経状態であると決定したことに応じて、コンピュータプロセッサは、ウェアラブルデバイスの1つ以上の電極を駆動して1Hz~5Hzの周波数を有する電気刺激治療を被験者に適用するよう構成されている。
【0051】
[0051] いくつかの適用例において、ウェアラブルデバイスは、電極を用いて被験者のECGを記録することによって心臓関連パラメータを検出するように構成されている。
【0052】
[0052] いくつかの適用例において、電極のうち少なくとも1つは二重機能電極であり、これは、二重機能電極が被験者のECGを記録するよう構成されている検知モードと、コンピュータプロセッサが二重機能電極を介して被験者に電気刺激治療を適用するよう構成されている刺激モードと、を有するように構成されている。
【0053】
[0053] また、本発明のいくつかの適用例によれば、方法が提供される。この方法は、1つ以上の電極を含むウェアラブルデバイスを用いて被験者の心臓関連パラメータを検出することと、少なくとも1つのコンピュータプロセッサを用いて、検出された心臓関連パラメータを受信することと、検出された心臓関連パラメータに基づいて被験者の心房期外収縮及び/又は心房頻拍の発生率の上昇を検出することと、少なくとも部分的にそれに応じて、ウェアラブルデバイスの1つ以上の電極を駆動して、40Hz~50Hz及び1Hz~5Hzから成る群から選択された範囲内の周波数を有する電気刺激治療を被験者に適用することと、を含む。
【0054】
[0054] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、被験者が装着するように、また、被験者に発生したエピソードを示す入力を受信するように構成されたウェアラブルデバイスと、このウェアラブルデバイスに関連付けられた少なくとも1つのコンピュータプロセッサと、を含む。コンピュータプロセッサは、発生したエピソードを示す入力に少なくとも部分的に応じて、これから起こるAFの発生を予測し、それに応じて出力を生成するように構成されている。
【0055】
[0055] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、被験者が装着するように構成されたウェアラブルデバイスであって、1つ以上の電極を含み、被験者の心臓関連パラメータを検出するように構成されたウェアラブルデバイスと、このウェアラブルデバイスに関連付けられた少なくとも1つのコンピュータプロセッサと、を含む。コンピュータプロセッサは、検出された心臓関連パラメータを受信し、検出された心臓関連パラメータに応じて被験者がAFを経験していることを検出し、このAFを所与のAFカテゴリに分類し、このAFカテゴリに基づいて被験者に適用する電気刺激治療を選択し、ウェアラブルデバイスの1つ以上の電極を駆動して、選択された電気刺激治療を被験者に適用するよう構成されている。
【0056】
[0056] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは、AFの前に発生した被験者の心房期外収縮及び/又は心房頻拍のエピソードを検出し、被験者の心房期外収縮及び/又は心房頻拍のエピソードを分析し、少なくとも部分的にこれに応じて、AFを所与のAFカテゴリに分類するよう構成されている。
【0057】
[0057] いくつかの適用例において、ウェアラブルデバイスはリストバンドを含み、リストバンドが既定の配置で装着された場合、1つ以上の電極のうち少なくとも1つは被験者の正中神経及び/又は尺骨神経の近くに置かれるように構成されている。
【0058】
[0058] いくつかの適用例において、ウェアラブルデバイスはPPGセンサを含み、ウェアラブルデバイスは、PPGセンサを利用することによって被験者の心臓関連パラメータを検出するように構成されている。
【0059】
[0059] いくつかの適用例において、ウェアラブルデバイスは加速度計を含み、ウェアラブルデバイスは、加速度計を利用することによって被験者の心臓関連パラメータを検出するように構成されている。
【0060】
[0060] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは更に、被験者の活動状況、被験者の食事状況、被験者の感情状態、及び時刻から成る群から選択された少なくとも1つの追加のパラメータを示す入力を受信するように構成されている。コンピュータプロセッサは、少なくとも1つの追加のパラメータに少なくとも部分的に基づいて、AFを所与のAFカテゴリに分類するよう構成されている。
【0061】
[0061] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは、被験者の副交感神経状態又は被験者の交感神経状態のいずれかと相互に関連付けられるものとしてAFを分類することにより、AFを所与のAFカテゴリに分類するよう構成されている。
【0062】
[0062] いくつかの適用例では、AFを被験者の副交感神経状態と相互に関連付けられるものとして分類したことに応じて、コンピュータプロセッサは、40Hz~50Hzの周波数を有する電気刺激治療を被験者に適用することを選択するよう構成されている。
【0063】
[0063] いくつかの適用例では、AFを被験者の交感神経状態と相互に関連付けられるものとして分類したことに応じて、コンピュータプロセッサは、1Hz~5Hzの周波数を有する電気刺激治療を被験者に適用することを選択するよう構成されている。
【0064】
[0064] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは、AFエピソード開始前の所与の時間期間内の被験者の心拍変動(HRV)を分析し、AFエピソード開始前の所与の時間期間内の被験者のHRVの分析に少なくとも部分的に基づいて、AFを被験者の副交感神経状態又は被験者の交感神経状態のいずれかと相互に関連付けられるものとして分類するように構成されている。
【0065】
[0065] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは、AFエピソード開始前の所与の時間期間内の被験者の心拍数を分析し、AFエピソード開始前の所与の時間期間内の被験者の心拍数の分析に少なくとも部分的に基づいて、AFを被験者の副交感神経状態又は被験者の交感神経状態のいずれかと相互に関連付けられるものとして分類するように構成されている。
【0066】
[0066] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは、AFエピソード開始前の所与の時間期間内の被験者の心拍数回復を分析し、AFエピソード開始前の所与の時間期間内の被験者の心拍数回復の分析に少なくとも部分的に基づいて、AFを被験者の副交感神経状態又は被験者の交感神経状態のいずれかと相互に関連付けられるものとして分類するように構成されている。
【0067】
[0067] いくつかの適用例において、少なくとも1つのコンピュータプロセッサは更に、被験者の活動状況、被験者の食事状況、被験者の感情状態、及び時刻から成る群から選択された少なくとも1つの追加のパラメータを示す入力を受信するように構成されている。コンピュータプロセッサは、少なくとも1つの追加のパラメータに少なくとも部分的に基づいて、AFを被験者の副交感神経状態又は被験者の交感神経状態のいずれかと相互に関連付けられるものとして分類するように構成されている。
【0068】
[0068] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは、電極を用いて被験者のECGを記録し、少なくとも部分的にECGの分析に基づいて、AFを被験者の副交感神経状態又は被験者の交感神経状態のいずれかと相互に関連付けられるものとして分類するように構成されている。
【0069】
[0069] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは、少なくとも部分的にECG信号の形状に基づいて、AFを被験者の副交感神経状態又は被験者の交感神経状態のいずれかと相互に関連付けられるものとして分類するように構成されている。
【0070】
[0070] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは、少なくとも部分的にECG信号の拍動の規則性に基づいて、AFを被験者の副交感神経状態又は被験者の交感神経状態のいずれかと相互に関連付けられるものとして分類するように構成されている。
【0071】
[0071] いくつかの適用例において、ウェアラブルデバイスは、電極を利用して被験者のECGを記録することによって心臓関連パラメータを検出するように構成されている。
【0072】
[0072] いくつかの適用例において、電極のうち少なくとも1つは二重機能電極であり、これは、電極が被験者のECGを記録するよう構成されている検知モードと、コンピュータプロセッサが電極を介して被験者に電気刺激治療を適用するよう構成されている刺激モードと、を有するように構成されている。
【0073】
[0073] また、本発明のいくつかの適用例によれば、方法が提供される。この方法は、1つ以上の電極を含むウェアラブルデバイスを用いて被験者の心臓関連パラメータを検出することと、ウェアラブルデバイスに関連付けられた少なくとも1つのコンピュータプロセッサを用いて、検出された心臓関連パラメータを受信することと、検出された心臓関連パラメータに応じて被験者がAFを経験していることを検出することと、このAFを所与のAFカテゴリに分類することと、このAFカテゴリに基づいて被験者に適用する電気刺激治療を選択することと、ウェアラブルデバイスの1つ以上の電極を駆動して、選択された電気刺激治療を被験者に適用することと、を含む。
【0074】
[0074] また、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、被験者が装着するように構成され、光電容積脈波検査(PPG:photoplethysmography)センサを含むウェアラブルデバイスと、1つ以上の電極と、ウェアラブルデバイスに関連付けられた少なくとも1つのコンピュータプロセッサと、を含む。コンピュータプロセッサは、PPGセンサからデータを受信し、それに応じて被験者の心拍数を検知し、検知した心拍数に基づいて、被験者が心拍数関連エピソードを経験したこと及び/又は経験していることを検出し、少なくとも部分的に心拍数関連エピソードの検出に応じて、心電図(ECG)を記録するよう被験者を促し、少なくとも部分的にECGに基づいて、被験者が心房細動エピソードを現在経験していること及び/又は心房細動エピソードを経験すると予測されることを決定し、1つ以上の電極を介して電気刺激を適用することによって現在の及び/又は予測された心房細動エピソードを治療するように構成されている。
【0075】
[0075] いくつかの適用例において、ウェアラブルデバイスはリストバンドを含み、リストバンドが既定の構成で装着された場合、1つ以上の電極のうち少なくとも1つは被験者の正中神経及び/又は尺骨神経の近くに置かれるように構成されている。
【0076】
[0076] いくつかの適用例において、ウェアラブルデバイスは更に加速度計を含み、コンピュータプロセッサは、加速度計が取得したデータに少なくとも部分的に基づいて、ECGを記録するように被験者を促すよう構成されている。
【0077】
[0077] いくつかの適用例において、ウェアラブルデバイスは更に加速度計を含み、コンピュータプロセッサは、加速度計が取得したデータに少なくとも部分的に基づいて、被験者が心房細動エピソードを現在経験していること及び/又は心房細動エピソードを経験すると予測されることを決定するように構成されている。
【0078】
[0078] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは、被験者の心房期外収縮及び/又は心房頻拍の発生率の上昇を検出することにより、被験者が心房細動エピソードを経験すると予測されることを決定するように構成されている。
【0079】
[0079] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは更に、被験者の活動状況、被験者の食事状況、被験者の感情状態、及び時刻から成る群から選択された少なくとも1つの追加のパラメータを示す入力を受信するように構成されている。コンピュータプロセッサは、ECGと組み合わせて、少なくとも1つの追加のパラメータに基づいて、被験者が心房細動エピソードを現在経験していること及び/又は心房細動エピソードを経験すると予測されることを決定するように構成されている。
【0080】
[0080] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは更に、被験者の活動状況、被験者の食事状況、被験者の感情状態、及び時刻から成る群から選択された少なくとも1つの追加のパラメータを示す入力を受信するように構成されている。コンピュータプロセッサは、少なくとも1つの追加のパラメータに基づいて、被験者が現在経験している及び/又は経験すると予測されるエピソードを所与のエピソードカテゴリに分類するように構成されている。
【0081】
[0081] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは更に、被験者が副交感神経状態であることを決定するように構成され、コンピュータプロセッサは、ウェアラブルデバイスの1つ以上の電極を駆動して40Hz~50Hzの周波数を有する電気刺激治療を被験者に適用することにより、現在の及び/又は予測された心房細動エピソードを治療するよう構成されている。
【0082】
[0082] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは更に、被験者が交感神経状態であることを決定するように構成され、コンピュータプロセッサは、ウェアラブルデバイスの1つ以上の電極を駆動して1Hz~5Hzの周波数を有する電気刺激治療を被験者に適用することにより、現在の及び/又は予測された心房細動エピソードを治療するよう構成されている。
【0083】
[0083] いくつかの適用例において、電極のうち少なくとも1つは二重機能電極であり、これは、二重機能電極が被験者のECGを記録するよう構成されている検知モードと、コンピュータプロセッサが二重機能電極を介して被験者に電気刺激治療を適用するよう構成されている刺激モードと、を有するように構成されている。
【0084】
[0084] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、方法が提供される。この方法は、1つ以上の電極を含むウェアラブルデバイスを用いて被験者のPPG信号を検出することと、ウェアラブルデバイスに関連付けられた少なくとも1つのコンピュータプロセッサを用いて、PPGセンサからデータを受信することと、それに応じて被験者の心拍数を検知することと、検知した心拍数に基づいて、被験者が心拍数関連エピソードを経験したこと及び/又は経験していることを検出することと、少なくとも部分的に心拍数関連エピソードの検出に応じて、心電図(ECG)を記録するよう被験者を促すことと、少なくとも部分的にECGに基づいて、被験者が心房細動エピソードを現在経験していること及び/又は心房細動エピソードを経験すると予測されることを決定することと、1つ以上の電極を介して電気刺激を適用することによって現在の及び/又は予測された心房細動エピソードを治療することと、を含む。
【0085】
[0085] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、被験者が装着するように構成されたウェアラブルデバイスであって、1つ以上の電極を含み、被験者の心臓関連パラメータを検出するように構成されたウェアラブルデバイスと、このウェアラブルデバイスに関連付けられたコンピュータプロセッサと、を含む。コンピュータプロセッサは、検出された心臓関連パラメータを受信し、検出された心臓関連パラメータを分析することによりAFエピソードを識別し、AFエピソードを識別したことに応じて、AFエピソード開始前の所与の時間期間内の被験者の心拍変動(HRV)を分析し、AFエピソード開始前の所与の時間期間内の被験者のHRVの分析に少なくとも部分的に基づいて被験者に適用する電気刺激治療を選択し、ウェアラブルデバイスの1つ以上の電極を駆動して、選択された電気刺激治療を被験者に適用するように構成されている。
【0086】
[0086] いくつかの適用例において、ウェアラブルデバイスはリストバンドを含み、リストバンドが既定の構成で装着された場合、1つ以上の電極のうち少なくとも1つは被験者の正中神経及び/又は尺骨神経の近くに置かれるように構成されている。
【0087】
[0087] いくつかの適用例において、ウェアラブルデバイスはPPGセンサを含み、ウェアラブルデバイスは、PPGセンサを利用することによって被験者の心臓関連パラメータを検出するように構成されている。
【0088】
[0088] いくつかの適用例において、ウェアラブルデバイスは加速度計を含み、ウェアラブルデバイスは、加速度計を利用することによって被験者の心臓関連パラメータを検出するように構成されている。
【0089】
[0089] いくつかの適用例において、コンピュータプロセッサは更に、被験者の活動状況、被験者の食事状況、被験者の感情状態、及び時刻から成る群から選択された少なくとも1つの追加のパラメータを示す入力を受信するように構成されている。コンピュータプロセッサは、AFエピソード開始前の所与の時間期間内の被験者のHRVの分析と組み合わせて、少なくとも1つの追加のパラメータに基づいて、被験者に適用する電気刺激治療を選択するように構成されている。
【0090】
[0090] いくつかの適用例では、AFエピソード開始前の所与の時間期間内の被験者のHRVの分析に少なくとも部分的に基づいて、コンピュータプロセッサは、被験者の副交感神経状態又は被験者の交感神経状態のいずれかと相互に関連付けられるものとしてAFを分類するよう構成されている。
【0091】
[0091] いくつかの適用例では、AFを被験者の副交感神経状態と相互に関連付けられるものとして分類したことに応じて、コンピュータプロセッサは、40Hz~50Hzの周波数を有する電気刺激治療を被験者に適用することを選択するよう構成されている。
【0092】
[0092] いくつかの適用例では、AFを被験者の交感神経状態と相互に関連付けられるものとして分類したことに応じて、コンピュータプロセッサは、1Hz~5Hzの周波数を有する電気刺激治療を被験者に適用することを選択するよう構成されている。
【0093】
[0093] いくつかの適用例において、少なくとも1つのコンピュータプロセッサは更に、被験者の活動状況、被験者の食事状況、被験者の感情状態、及び時刻から成る群から選択された少なくとも1つの追加のパラメータを示す入力を受信するように構成されている。コンピュータプロセッサは、AFエピソード開始前の所与の時間期間内の被験者のHRVの分析と組み合わせて、少なくとも1つの追加のパラメータに基づいて、AFを被験者の副交感神経状態又は被験者の交感神経状態のいずれかと相互に関連付けられるものとして分類するよう構成されている。
【0094】
[0094] いくつかの適用例において、ウェアラブルデバイスは、電極を利用して被験者のECGを記録することによって心臓関連パラメータを検出するように構成されている。
【0095】
[0095] いくつかの適用例において、電極のうち少なくとも1つは二重機能電極であり、これは、電極が被験者のECGを記録するよう構成されている検知モードと、コンピュータプロセッサが電極を介して被験者に電気刺激治療を適用するよう構成されている刺激モードと、を有するように構成されている。
【0096】
[0096] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、方法が提供される。この方法は、1つ以上の電極を含むウェアラブルデバイスを用いて被験者の心臓関連パラメータを検出することと、ウェアラブルデバイスに関連付けられた少なくとも1つのコンピュータプロセッサを用いて、検出された心臓関連パラメータを受信することと、検出された心臓関連パラメータを分析することによりAFエピソードを識別することと、AFエピソードを識別したことに応じて、AFエピソード開始前の所与の時間期間内の被験者の心拍変動(HRV)を分析することと、AFエピソード開始前の所与の時間期間内の被験者のHRVの分析に少なくとも部分的に基づいて被験者に適用する電気刺激治療を選択することと、ウェアラブルデバイスの1つ以上の電極を駆動して、選択された電気刺激治療を被験者に適用することと、を含む。
【0097】
[0097] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、被験者が装着するように構成されたウェアラブルデバイスであって、1つ以上の電極を含み、被験者の心臓関連パラメータを検出するように構成されたウェアラブルデバイスと、このウェアラブルデバイスに関連付けられたコンピュータプロセッサと、を含む。コンピュータプロセッサは、検出された心臓関連パラメータを受信し、検出された心臓関連パラメータを分析することによりAFエピソードを識別し、AFエピソードを識別したことに応じて、AFエピソード開始前の所与の時間期間内の被験者の心拍数、HRV、及び心拍数回復から成る群から選択された少なくとも1つの生理学的パラメータを分析し、AFエピソード開始前の所与の時間期間内の少なくとも1つの生理学的パラメータの分析に少なくとも部分的に基づいて被験者に適用する電気刺激治療を選択し、ウェアラブルデバイスの1つ以上の電極を駆動して、選択された電気刺激治療を被験者に適用するように構成されている。
【0098】
[0098] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、既定の構成で被験者の手首上に置かれるように構成された、1つ以上の電極を含む手首ウェアラブルデバイスを含む。手首ウェアラブルデバイスが既定の配置で被験者の手首上に置かれた場合、電極は、尺骨神経及び正中神経から成る群から選択された神経の近くに置かれるように配置されている。装置は更に、電極を介して選択された神経内へ40Hz~50Hzの周波数の電気刺激電流を送出することによって心房細動関連疾患を治療するように構成されたコンピュータプロセッサを含む。
【0099】
[0099] いくつかの適用例において、1つ以上の電極は少なくとも2つの手首に面する電極を含み、手首ウェアラブルデバイスが既定の配置で被験者の手首上に置かれた場合、2つの電極の各々は選択された神経の各側に配置されるようになっている。
【0100】
[0100] いくつかの適用例において、手首に面する電極の各々は、長辺と短辺を有し、長辺の長さと短辺の長さとの比が少なくとも3:2であるような形状である。
【0101】
[0101] いくつかの適用例では、手首ウェアラブルデバイスが既定の配置で被験者の手首上に置かれた場合、手首に面する電極は、それらの長辺が、選択された神経の長さ方向と実質的に位置合わせされるように配置されている。
【0102】
[0102] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、方法が提供される。この方法は、心房細動関連疾患を患っている被験者を識別することと、これに応じて、被験者の手首上に既定の構成で手首ウェアラブルデバイスを配置することであって、手首ウェアラブルデバイスは1つ以上の電極を含み、手首ウェアラブルデバイスが既定の配置で被験者の手首上に置かれた場合、電極は尺骨神経及び正中神経から成る群から選択された神経の近くに置かれるように配置される、手首ウェアラブルデバイスを配置することと、電極を介して選択された神経内へ40Hz~50Hzの周波数の電気刺激電流を送出することによって心房細動関連疾患を治療することと、を含む。
【0103】
[0103] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、被験者が装着するように構成された、複数の電極を含むウェアラブルデバイスと、このウェアラブルデバイスに関連付けられたコンピュータプロセッサと、を含む。コンピュータプロセッサは、複数の電極を介して被験者の心電図(ECG)を記録し、被験者の神経内へ電気刺激電流を送出することによって被験者のAFの発症を減らし、電気刺激電流の送出前の所与の時間期間内にECGが記録されたことを被験者の神経内へ電気刺激電流を送出することの必要条件とする(condition)ように構成されている。
【0104】
[0104] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、方法が提供される。この方法は、1つ以上の電極を含むウェアラブルデバイスを用いて被験者の心電図(ECG)を記録することと、このウェアラブルデバイスに関連付けられた少なくとも1つのコンピュータプロセッサを用いて、被験者の心電図(ECG)を受信することと、被験者の神経内へ電気刺激電流を送出することによって被験者のAFの発症を減らすことと、電気刺激電流の送出前の所与の時間期間内にECGが記録されたことを被験者の神経内へ電気刺激電流を送出することの必要条件とすることと、を含む。
【0105】
[0105] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、複数の電極を含むモジュールと、このモジュールに関連付けられたコンピュータプロセッサと、を含む。コンピュータプロセッサは、AF及び/又は不整脈イベントの発生を減らすように構成された電気刺激治療を、電極を介して被験者の神経内へ送達し、電気刺激治療送達の前及び後に被験者の生理学的パラメータを検出し、それに応じて各治療の結果を決定し、各治療に関連付けられた、各治療の時刻及び各治療中の被験者の食事状況から成る群から選択されるイベントを検出し、各治療の結果を各治療に関連付けられたイベントと相互に関連付け、各治療の結果と各治療に関連付けられたイベントとの相互の関連付けに基づいて被験者の今後の治療を最適化するように構成されている。
【0106】
[0106] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、方法が提供される。この方法は、AF及び/又は不整脈イベントの発生を減らすように構成された電気刺激治療を被験者の神経内へ送達することと、電気刺激治療送達の前及び後に被験者の生理学的パラメータを検出することと、それに応じて各治療の結果を決定することと、各治療に関連付けられた、各治療の時刻及び各治療中の被験者の食事状況から成る群から選択されるイベントを検出することと、各治療の結果を各治療に関連付けられたイベントと相互に関連付けることと、各治療の結果と各治療に関連付けられたイベントとの相互の関連付けに基づいて被験者の今後の治療を最適化することと、を含む。
【0107】
[0107] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、尺骨神経及び正中神経から成る群から選択された神経の近くで被験者の手首の皮膚上に置くよう構成された1つ以上の電極と、コンピュータプロセッサと、を含む。コンピュータプロセッサは、AF及び/又は不整脈イベントの発生を減らすように構成された電気刺激信号を、電極を介して選択された神経内へ駆動し、電気刺激信号が電極の近くで感覚(sensation)を引き起こさないことを示す入力の受信に応じて電気刺激信号の強度を増大し、電気刺激信号が電極の近くで被験者身体の一部の不随意運動を引き起こすことを示す入力の受信に応じて電気刺激信号の強度を低減するように構成されている。
【0108】
[0108] いくつかの適用例において、装置は更にユーザインタフェースを含み、コンピュータプロセッサは、電気刺激信号が電極の近くで感覚を引き起こさないことを示す入力、及び/又は電気刺激信号が電極の近くで被験者身体の一部の不随意運動を引き起こすことを示す入力を、ユーザインタフェースを介して被験者から受信するように構成されている。
【0109】
[0109] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、尺骨神経及び正中神経から成る群から選択された神経の近くで被験者の手首の皮膚上に置くよう構成された1つ以上の電極と、コンピュータプロセッサと、を含む。コンピュータプロセッサは、AF及び/又は不整脈イベントの発生を減らすように構成された電気刺激信号を、電極を介して選択された神経内へ駆動し、電気刺激信号に対する電極の近くの被験者身体の反応を示す入力を被験者から受信し、電気刺激信号が電極の近くで感覚を引き起こすが電極の近くで被験者身体の一部の不随意運動を引き起こさないように電気刺激信号の強度を設定するよう構成されている。
【0110】
[0110] いくつかの適用例において、装置は更にユーザインタフェースを含み、コンピュータプロセッサは、ユーザインタフェースを介して被験者から入力を受信するように構成されている。
【0111】
[0111] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、尺骨神経及び正中神経から成る群から選択された神経の近くで被験者の手首の皮膚上に置くよう構成された1つ以上の電極と、コンピュータプロセッサと、を含む。コンピュータプロセッサは、所与の電圧の電気刺激信号を、電極を介して選択された神経内へ駆動し、電極が被験者の手首の皮膚と良好に接触している場合に電気刺激信号の電流を検出し、電流が閾値よりも小さいことに応じて、電極のうち少なくとも1つを移動させなければならないことを示す出力を生成するように構成されている。
【0112】
[0112] いくつかの適用例では、電流が閾値よりも小さいことに応じて、コンピュータプロセッサは、電極のうち少なくとも1つを選択された神経に近付けなければならないことを示す出力を生成するように構成されている。
【0113】
[0113] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、尺骨神経及び正中神経から成る群から選択された神経の近くで被験者の手首の皮膚上に置くよう構成された1つ以上の電極と、コンピュータプロセッサと、を含む。コンピュータプロセッサは、所与の電流の電気刺激信号を、電極を介して選択された神経内へ駆動し、電極が被験者の手首の皮膚と良好に接触している場合に電気刺激信号の電圧を検出し、電圧が閾値よりも大きいことに応じて、電極のうち少なくとも1つを移動させなければならないことを示す出力を生成するように構成されている。
【0114】
[0114] いくつかの適用例では、電圧が閾値よりも大きいことに応じて、コンピュータプロセッサは、電極のうち少なくとも1つを選択された神経に近付けなければならないことを示す出力を生成するように構成されている。
【0115】
[0115] 更に、本発明のいくつかの適用例によれば、装置が提供される。この装置は、被験者のECG信号を検出するように構成された1つ以上の電極と、コンピュータプロセッサと、を含む。コンピュータプロセッサは、検出されたECG信号を受信し、検出されたECG信号中の複数の心拍に対応する複数心拍部分を分析し、検出されたECG信号中の個々の心拍に対応するQRS部分(QRS-complex section)を分析し、検出されたECG信号の複数心拍部分と検出されたECG信号のQRS部分の分析の組み合わせに少なくとも部分的に基づいて、AF及び/又は不整脈イベントを識別及び/又は分類するように構成されている。
【0116】
[0116] 上述した例示的な態様及び実施形態に加えて、図面を参照して以下の詳細な説明を検討することにより、別の態様及び実施形態も明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0117】
[0117] 参照図面に例示的な実施形態が示されている。図面に示されているコンポーネント及び特徴部(features)の寸法は概して、提示の便宜上及び明確さのために選択され、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。以下に図面を列挙する。
【0118】
図1A】[0118] 本発明のいくつかの適用例に従った、ウェアラブルデバイス及び1つ以上の外部コンピューティングデバイスを含む例示的な被験者監視及び治療システムの概略図である。
図1B】[0118] 本発明のいくつかの適用例に従った、ウェアラブルデバイス及び1つ以上の外部コンピューティングデバイスを含む例示的な被験者監視及び治療システムの概略図である。
図2A】[0119] 本発明のいくつかの適用例に従った例示的なウェアラブルデバイスの代替的な図である。
図2B】[0119] 本発明のいくつかの適用例に従った例示的なウェアラブルデバイスの代替的な図である。
図2C】[0119] 本発明のいくつかの適用例に従った例示的なウェアラブルデバイスの代替的な図である。
図2D】[0120] 本発明のいくつかの適用例に従った、被験者に神経変調治療を適用するように及び/又は被験者を監視するように構成されたモジュールの概略図である。
図2E】[0120] 本発明のいくつかの適用例に従った、被験者に神経変調治療を適用するように及び/又は被験者を監視するように構成されたモジュールの概略図である。
図3A】[0121] 人の手首/前腕の概略断面図であり、手首/前腕の皮膚内面に対する正中神経及び尺骨神経の位置を示し、また、本発明のいくつかの適用例に従った、手首/前腕の皮膚内面に配置された2つの刺激電極を含む本開示のデバイスの概略的な例示のモジュールを示す。
図3B】[0122] 本発明のいくつかの適用例に従った、本開示のデバイスが巻かれて閉じられている人の手首/前腕の概略図である。
図3C】[0123] 本発明のいくつかの適用例に従った、正中神経に対して本開示の刺激電極を配置するための追加の代替案を示す。
図3D】[0123] 本発明のいくつかの適用例に従った、正中神経に対して本開示の刺激電極を配置するための追加の代替案を示す。
図4】[0124] 本発明のいくつかの適用例に従った、例えば図1Aから図1Bを参照して記載されている例示的なシステムを用いて被験者を監視及び治療するための方法における機能ステップの概略図である。
図5A】[0125] 本発明のいくつかの適用例に従った、心房細動被験者に対して実行された刺激治療の実験結果を示すグラフである。
図5B】[0125] 本発明のいくつかの適用例に従った、心房細動被験者に対して実行された刺激治療の実験結果を示すグラフである。
図5C】[0125] 本発明のいくつかの適用例に従った、心房細動被験者に対して実行された刺激治療の実験結果を示すグラフである。
図5D】[0125] 本発明のいくつかの適用例に従った、心房細動被験者に対して実行された刺激治療の実験結果を示すグラフである。
図6】[0126] 本発明のいくつかの適用例に従った、心房細動被験者に対して実行された刺激治療の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0119】
[0127] 本明細書に開示されるのは、指定された信号パラメータに従って生成した電気刺激信号の形態の電気エネルギを送出することにより、被験者に神経変調治療を実施して、心房細動(AF)、他の不整脈疾患、及び/又は他の心血管疾患を軽減及び/又は緩和するためのシステム及び方法である。
【0120】
[0128] 本明細書で用いられる場合、「治療」とは、1つ以上の生理学的状態、状態(state)、特性、特徴、機能、及び/又は活動に対する、任意の変化、変更、実施、変調、及び/又は取扱の動作を表すことができる。
【0121】
[0129] 本明細書で用いられる場合、「電気的神経変調」、「神経変調」、及び/又は「神経刺激」は、例えば低レベル電気神経刺激のような、神経構造又は神経の電気的、電磁的、又は電気機械的な神経変調を表すため、交換可能に用いることができる。いくつかの実施形態において、神経変調は、非侵襲的な又は非侵入的な手法で、すなわち神経構造に対する電気エネルギの経皮(transcutaneous)又は経皮(transdermal)送達によって、実行される。
【0122】
[0130] いくつかの実施形態において、本開示は、被験者における現在の及び/又はこれから起こるAF又は別の不整脈関連疾患を検出することを可能とする。これらの疾患は例えば、心房頻拍(AT)、心房早期複合体(APC:atrial premature complex)/早期心房複合体(PAC)の負担の急激な増大、又は早期心室複合体(PVC)/心室早期複合体(VPC:ventricular premature complex)の急激な増大である。いくつかの実施形態において、これから起こるAF又は別の不整脈関連疾患は、例えば、被験者におけるPAC、例えば心房すなわち心臓の2つの上室(upper chambers)で生じる早期心拍の増大のような、特定の前兆が検出されたことに少なくとも部分的に基づいて検出できる。
【0123】
[0131] 本明細書で用いられる場合、「不整脈関連疾患」又は「不整脈関連イベント」は、AF、早期心房複合体(APC/PAC)、急性早期心房複合体、早期心室複合体(VPC/PVC)、上室性頻拍(SVT)、心房頻拍(AT)、心房粗動、房室結節回帰性頻拍(AVNRT)、発作性上室性頻拍(PSVT)、房室回帰性頻拍、ウォルフパーキンソンホワイト症候群、心室頻拍(VT)、心室性不整脈(TdP)、QT延長症候群、心臓ブロック、及び/又は洞不全症候群のうちいずれか1つ以上を広義に表すことができる。
【0124】
いくつかの実施形態において、不整脈関連イベント発生の検出は、例えば被験者の心拍及び心周期の監視のような、被験者の心臓活動の連続的、定期的、又は断続的な監視及び分析に少なくとも部分的に基づくことができる。本明細書で用いられる場合、「心臓活動(cardiac activity)」、「心臓機能」、「心臓活動(heart activity)」は、心拍及び心拍変動を評価、推定、及び/又は定量化するために使用される様々なパラメータを示すため、交換可能に用いることができる。いくつかの実施形態において、心臓活動は、例えば、携帯型の心電図(ECG)センサとすることができるECG、例えばホルターモニタ、光電容積脈波検査(PPG)センサ、又は他のもの等、任意の適切な1つ以上の心臓活動センサを用いて監視できる。
【0125】
[0132] いくつかの実施形態において、現在の及び/又はこれから起こる不整脈関連疾患がこのように検出されると、本開示は、例えば被験者の正中神経、尺骨神経、及び/又は橈骨神経のうち1つ以上のような被験者の末梢神経に対して、指定された神経変調治療過程を実施する。いくつかの実施形態において、本開示は、被験者の正中神経に対して神経変調治療過程を実施することができる。
【0126】
[0133] 背景事情として、正中神経及び/又は尺骨神経の神経変調は、自律神経系の交感神経と副交感神経の双方の活動において重要な役割を果たす。このため、正中神経及び/又は尺骨神経の刺激は、迷走神経の副交感神経活動を増大させると共に心臓神経の交感神経活動を抑制させ、これにより、心拍の低下、心拍リズムの調節、及び心不整脈の治療と予防を可能とする。また、正中神経及び尺骨神経の神経変調は、神経ホルモンの反応、すなわちエンドルフィンの分泌、ストレス関連ホルモンの減少を誘発し、これによってストレスの軽減と睡眠の改善をもたらすことができる。
【0127】
[0134] 電気神経刺激に関する「刺激信号」という用語は、1対の電極(ターゲット身体部分の少なくとも1つの神経を電気的に神経刺激するように、ターゲット身体部分に取り付けられる)に印加される電圧/電流信号を表す。
【0128】
[0135] いくつかの実施形態において、本開示の刺激信号は、被験者の前腕の正中神経及び/又は尺骨神経に印加される。いくつかの実施形態では、被験者の指定された身体部位に取り付けて信号を正中神経及び/又は尺骨神経に送出するように構成された1対以上の電極を介して、刺激信号を印加することができる。
【0129】
[0136] いくつかの実施形態において、例えば正中神経のような末梢神経の刺激は、指定された信号パラメータに従って生成された電気刺激信号の形態の電気エネルギの経皮(transcutaneous)又は経皮(transdermal)送達によって、非侵襲的な手法で実行される。
【0130】
[0137] いくつかの実施形態において、治療過程及び指定された信号パラメータの詳細は、被験者における1つ以上の心臓活動関連パラメータの分析に基づいて決定することができる。この分析されるパラメータは例えば、心拍変動(HRV)、心拍数回復、予備心拍数、心房期外収縮、心室期外収縮、HRV関連パラメータ、例えばRR間隔、正常心拍間の平均間隔(AVNN)、NN間隔の標準偏差(SDNN)、連続して隣接する正常心拍間の差の2乗平均平方根(rMSSD)、pNN50、低周波数活動(LF)、及び高周波数活動(HF)のうち1つ以上である。
【0131】
[0138] いくつかの実施形態において、治療過程及び指定された信号パラメータの詳細は更に、被験者の活動状況、被験者の食事状況、及び被験者の感情状態等、被験者状態関連パラメータに基づいて決定することができる。これらのデータのうち少なくとも一部は、被験者の監視から取得するか、又は被験者によって自己報告することができる。
【0132】
[0139] いくつかの実施形態において、本開示は更に、心臓活動関連パラメータ及び/又はデータ及び/又は被験者関連パラメータを用いて、例えば交感神経系(SNS:sympathetic nervous system)及び/又は副交感神経系(PNS:parasympathetic nervous system)のような被験者の自律神経系の特定の構成要素の活性化状態を検出することができる。いくつかの実施形態において、本開示は更に、不整脈関連疾患を被験者の交感神経又は副交感神経の状態と相互に関連付けるように構成できる。この相関関係に基づいて、治療過程及び指定された信号パラメータの詳細を更に決定することができる。
【0133】
[0140] いくつかの実施形態において、治療過程の詳細は、限定ではないが、1又は複数の治療セッションのタイミング、1又は複数の治療セッションの回数と全期間、及び/又は、1又は複数の治療セッションのオン/オフのサイクルの回数と期間を含み得る。いくつかの実施形態において、指定された信号パラメータは、少なくとも部分的に、に基づいて決定され得る。
【0134】
[0141] いくつかの実施形態において、刺激信号の指定されたパラメータすなわち「刺激信号パラメータ」は、広義には、電極対に印加される電気刺激信号を特徴付ける任意のパラメータを含み得る。このパラメータは、限定ではないが、全信号期間、信号波形(例えば正弦波形、三角形、矩形、及び/又はのこぎり歯の波形)、信号振幅(例えば最大、最小、平均(mean)、及び/又平均(average)振幅)、信号強度(例えば最大、最小、平均、及び/又は平均強度)、信号周波数、刺激信号が一連のパルスを含む場合の信号パルスパラメータ(例えばパルス持続時間及び/又はパルス間の時間間隔)、及び/又は、刺激信号と1つ以上の他の信号及び/又は基準活動(例えば被験者の心臓活動)との同期を特徴付けるパラメータを含む。
【0135】
[0142] 従って、いくつかの実施形態では、被験者において現在の及び/又はこれから起こる不整脈関連疾患が検出されると、本開示は、検出された心臓活動関連パラメータ及び/又は被験者状態関連パラメータに少なくとも部分的に基づいて、治療過程及び/又は指定された信号パラメータの詳細を決定するように構成できる。いくつかの実施形態において、本開示は、決定された治療過程に従って刺激信号を送出することにより、被験者に治療過程を実施するように構成されている。刺激信号は、少なくとも被験者の正中神経へ非侵襲的に送出される。刺激信号は、40~50Hz(例えば、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50Hz)の周波数を有する。
【0136】
[0143] いくつかの実施形態では、不整脈関連疾患が被験者の副交感神経状態と相互に関連付けられた場合、刺激信号は、40~50Hz(例えば、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50Hz)の周波数で送出されるように構成されている。本明細書で提示されるデータから明らかであるように、このような刺激信号周波数は、追加の刺激信号パラメータと併用されて、典型的に、副交感神経状態の被験者で不整脈関連疾患の発生を減少させることにより、心血管障害の改善及び/又は心血管悪化の軽減を示すことが分かっている。
【0137】
[0144] いくつかの実施形態では、不整脈関連疾患が被験者の交感神経状態と相互に関連付けられた場合、刺激信号は典型的に、1~5Hz(例えば、1、2、3、4、又は5Hz)の周波数で送出される。本明細書で提示されるデータから明らかであるように、このような刺激信号周波数は、追加の刺激信号パラメータと併用されて、交感神経状態の被験者で不整脈関連疾患の発生を減少させることにより、心血管障害の改善及び/又は心血管悪化の軽減を示すことが分かっている。
【0138】
[0145] 背景事情として、交感神経系(SNS)は一般に、精神的又は身体的なストレスに応答して活性化され、血圧の上昇、筋肉及び肺への血流の増加、消化器系及び生殖器系への血流の減少、並びに、素早いエネルギを提供するためのストレスホルモン及びブドウ糖の分泌に関連付けることができる。これに対して、副交感神経系(PNS)は通常、安静時又は睡眠中や食後のような回復状態で活性化され、心拍数と呼吸数の減少、血圧の低下、腸活動の増加及び消化管への血流の増加、並びに、ストレスホルモンの減少及び筋肉収縮を調節するアセチルコリンのような神経伝達物質の分泌に関連付けられる。
【0139】
[0146] 従って、いくつかの実施形態では、被験者のSNSの活性化検出により、不整脈関連疾患が被験者の「交感神経状態」と相互に関連付けられると決定することができる。被験者のPNSの活性化検出により、不整脈関連疾患が被験者の「副交感神経状態」と相互に関連付けられると決定することができる。
【0140】
[0147] 図1Aから図1Bは、本発明のいくつかの適用例に従った、ウェアラブルデバイス10及び1つ以上の外部コンピューティングデバイス28を含む例示的な被験者監視及び治療システムの概略図である。また、本発明のいくつかの適用例に従った例示的なウェアラブルデバイス10の代替的な図である図2Aから図2Cも参照する。
【0141】
[0148] いくつかの実施形態において、ウェアラブルデバイス10は、被験者の手首に装着するように構成されている。ウェアラブルデバイスは例えば、(図示されているような)リストバンド、ブレスレット、バンド、カフス、指輪、ベルト、襟、又は鎖として構成される。デバイス又はその一部(例えば以下で詳述するモジュール15)は、衣料品(例えばシャツの袖)内、又は手袋もしくは靴下内に埋め込むか、あるいは被験者の身体の所望の身体部位で着脱可能に取り付けてもよい。いくつかの実施形態において、デバイス又はその一部(例えばモジュール15)は、着脱可能なあて布、ステッカ、又は接着可能な包帯を用いて、独立して保持してもよい。本明細書で用いられる場合、ある物体が身体部分に対して配置されるか又は取り付けられた後にユーザがその部分に対して何もしなくても所定位置に保たれる場合、その物体は身体部分に対して「独立して保持されている」と表すことができる。この代わりに又はこれに加えて、ウェアラブルデバイスは被験者の身体の別の部分に装着されるように構成される。
【0142】
[0149] いくつかの実施形態において、デバイス10は、監視モードと治療モードとの間で切り換わる/交代することによって被験者監視と被験者治療(すなわち刺激)機能を実行するように構成されている。例えば、(予め設定された)刺激期間の後、デバイスは自動的に切り換わって監視モードに戻り、監視データの更新値及び刺激の結果を取得することができる。これに応じて(すなわち、更新値を考慮に入れて)刺激パラメータが調整される。次いでデバイスは、切り換わって刺激モードに戻ること、刺激の適用を再び開始すること等を実行できる。
【0143】
[0150] 典型的に、ウェアラブルデバイスは、被験者に神経変調治療を行うように構成されている1つ以上の電極12a、12bを含む。いくつかの実施形態において、電極のうち少なくとも1つは、1つ以上の検知機能も実行するように構成され得る。例えば、少なくとも1つの電極は被験者の心電図(ECG)を記録するように構成され得る。いくつかの実施形態において、電極のうち少なくとも1つは二重機能電極であり、第1のモードで神経変調機能を実行すると共に第2のモードで検知又は監視機能を実行するように構成されている。典型的に、ウェアラブルデバイスは、光学センサ(例えば光電容積脈波検査(PPG)センサ11)、加速度計13、及び/又はECGセンサ16等、1つ以上の追加のセンサを含む。
【0144】
[0151] 典型的に、ウェアラブルデバイスは、任意選択的にタッチスクリーンであるディスプレイスクリーンを含み得るユーザインタフェース14を含む。ユーザインタフェース14は、ユーザに出力を提供するため及び/又はユーザからの入力を受信するために用いられる。いくつかの実施形態において、ウェアラブルデバイスは、制御モジュール18(例えば1つ以上のハードウェアプロセッサを備える)を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも電極12a、12bと、PPGセンサ11、加速度計13、ECGセンサ16、及び制御モジュール18のうち1つ以上とは、デバイス10の取り外し可能モジュール15に収容されている。これについては以下で更に説明する。
【0145】
[0152] 制御モジュール18は、1つ以上のハードウェアプロセッサ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、ストレージデバイス18aのような1つ以上の非一時的コンピュータ可読ストレージデバイスを含み得る。制御モジュール18のコンポーネントは、同一の場所に配置するか又は分散させることができる。あるいは、制御モジュール18は、当技術分野において既知のように、1つ以上のクラウドコンピューティング「インスタンス」、「コンテナ」、「仮想マシン」、又は他のタイプのカプセル化ソフトウェアアプリケーションとして実行するように構成され得る。
【0146】
[0153] ストレージデバイス18aは、制御モジュール18を動作させるように構成されたプログラム命令及び/又はコンポーネントを記憶することができる。プログラム命令は1つ以上のソフトウェアモジュールを含むことができ、これは、一般的なシステムタスクを制御及び管理する(例えばメモリ管理、ストレージデバイス制御、電力管理等)と共に様々なハードウェア及びソフトウェアコンポーネント間の通信を容易にするための様々なソフトウェアコンポーネント及び/又はドライバを有するオペレーティングシステムを含み得る。制御モジュール18は、様々なソフトウェアモジュールの命令をRAMにロードし、制御モジュール18を構成する1又は複数のハードウェアプロセッサによってこれらが実行されることによって動作し得る。
【0147】
[0154] 本明細書に記載されている制御モジュール18は、単に本発明の例示的な実施形態であり、実際には、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又はハードウェアとソフトウェアの双方の組み合わせで実施され得る。制御モジュール18は、ここに示されるよりも多数の又は少数のコンポーネント及びモジュールを有すること、コンポーネントのうち2つ以上を組み合わせること、又はコンポーネントの異なる構成もしくは配置を有することも可能である。制御モジュール18は、マザーボード、データバス、電力供給、ネットワークインタフェースカード、ディスプレイ、入力デバイス(例えばユーザインタフェース14)等、動作可能コンピュータシステムとしての機能を可能とする任意の追加コンポーネントを含み得る。更に、制御モジュール18のコンポーネントは、同一の場所に配置するか又は分散させることができる。あるいは、システムは、当技術分野において既知のように、1つ以上のクラウドコンピューティング「インスタンス」、「コンテナ」、「仮想マシン」、又は他のタイプのカプセル化ソフトウェアアプリケーションとして実行するように構成され得る。
【0148】
[0155] 典型的に、ウェアラブルデバイス又はそのいずれかのモジュール(例えばモジュール15)は、1つ以上の外部コンピューティングデバイス28(図1Aから図1Bに示されている)と通信するように構成されている。外部コンピューティングデバイス28は、スマートフォン30、タブレットデバイス32、及び/又はパーソナルコンピュータ34等のローカルコンピューティングデバイスのコンピュータプロセッサ、及び/又はリモートコンピューティングデバイスもしくはリモートサーバ、例えばクラウドベースのリモートサーバ36を含み得る。例えば、外部コンピューティングデバイスは、ウェアラブルデバイスの制御モジュール18からデータを受信し、次いで、例えば本明細書に記載されている技法を用いてそのデータを処理することができる。この代わりに又はこれに加えて、外部コンピューティングデバイスは、ウェアラブルデバイスの制御モジュール18にデータ及び/又は命令を送信することができる。本明細書及び特許請求の範囲は、コンピューティングデバイスによって実行される特定の機能性に対する言及を含む。典型的に、そのような機能性は、制御モジュール18、外部コンピューティングデバイス28、及び/又はそれらの組み合わせによって実行される。
【0149】
[0156] いくつかの実施形態において、デバイス10は、電力源(図示せず)を含む刺激信号発生器17を含み得る。刺激信号発生器17は、デバイス10によって決定された信号パラメータに基づいて、刺激電極12a、12b間に電気信号(例えば電圧信号又は電流信号)を発生するように構成されている。刺激パラメータは、発生した電気信号の時間依存性を指定することができる。特に、いくつかの実施形態において刺激信号発生器17は、所望の信号パラメータを達成するように、刺激電極12a、12bに印加される電圧及び周波数を自動的に調整するよう構成されている。刺激信号発生器17は、例えばAC電流源又は電気信号発生器を含むことができ、刺激信号発生器17によって発生される電圧/電流の強度、周波数、及び波形(連続的な電圧/電流パルス、断続的な電圧/電流パルス、及びバーストモードを含む、電圧/電流を特徴付けるパラメータを含む)を、刺激パラメータに従って制御可能に変動させることで、本明細書に記載されているようにターゲット身体部分において少なくとも1つの神経の神経変調を実施し得るようになっている。
【0150】
[0157] 通信ユニット19は、スマートフォン、スマートウォッチ、スマートバンド、タブレット、パーソナルコンピュータ、及び/又はリモートサーバ等の外部エージェントに情報を送信する及び/又は外部エージェントから情報を受信するように構成されている。情報(例えば監視された心臓パラメータ、決定された刺激パラメータ)の送信及び受信は、無線及び/又は有線で実施され得る。通信ユニット19は、セルラーネットワーク及び/又はWi-Fiによって、長距離通信向けに構成することができる(例えば、ユーザのクラウドストレージ、ユーザのパーソナルコンピュータ、ユーザの医療提供者のコンピュータシステム、及び/又はユーザの医師/介護者のパーソナルコンピュータへの通信)。この代わりに又はこれに加えて、通信ユニット19は、Bluetooth、NFC(近距離無線通信)技術、及び/又はWi-Fiによって、短距離通信向けに構成することができる(例えば、ユーザのスマートフォン又はタブレットへの通信)。特に、いくつかの実施形態では、通信ユニット19を用いて、デバイス10からユーザのスマートフォン/スマートウォッチへ情報を中継すると共にユーザのスマートフォン/スマートウォッチからデバイス10へコマンドを中継し、これによってスマートフォン/スマートウォッチによる制御及び動作を容易にすることができる。
【0151】
[0158] いくつかの実施形態において、デバイス10は、無線通信又は(例えばUSBケーブルによる)有線通信によって、制御モジュール18及び/又は外部エージェント(又は外部デバイス)、例えばユーザのスマートフォン、スマートウォッチ、ホームハブ等へ情報を送信すると共にそれらから情報を受信するように構成されている。測定データを、制御モジュール18及び/又は外部コンピューティングデバイス28へ、例えばスマートフォン30、タブレット32、コンピュータ34、又はリモートクラウドサーバ36等へ送信することができ、そこで測定データが処理される。いくつかの実施形態では、取得された監視データ値を用いて、制御モジュール18及び/又は外部エージェントによって刺激パラメータの決定を実行することも可能である。取得された監視データ値及び刺激パラメータは、今後の参考のために外部エージェントのメモリに記憶することができる。また、取得データとは無関係に、例えば所望の生理学的効果を達成するための特定の刺激レジメン(regiment)/プロトコルの予め設定されたパラメータ等の刺激パラメータを、外部エージェントからデバイス10へ直接送信してもよい。
【0152】
[0159] いくつかの実施形態において、ウェアラブルデバイス及び/又は外部コンピューティングデバイスは、1つ以上の外部センサ23(図1Bに示されている)及び/又はウェアラブルデバイスに内蔵された1つ以上の追加センサからデータを受信するように構成されている。追加センサは例えば、音響センサ、光学センサ、圧力センサ(例えば血圧を測定するように構成されている)、及び/又は視覚センサである。
【0153】
[0160] 典型的に、ウェアラブルデバイス10は、既定の構成で被験者の手首上に置かれるように構成されている。ウェアラブルデバイスの手首に面する側(すなわち、被験者の手首に面するように構成されたウェアラブルデバイスの側)の概略図である図2Cを参照すると、電極12a、12bは、被験者の手首の皮膚に接触して置かれるように構成された手首に面する電極であることに留意するべきである。手首に面する電極は典型的に、手首ウェアラブルデバイスが既定の配置で被験者の手首上に置かれた場合、手首に面する電極が被験者の正中神経又は別の上肢末梢神経の近くに置かれるように配置されている。例えば、図1Aから図1Bに示されているデバイスの構成では、デバイスは、スクリーンを上に向けた状態でデバイスが被験者の手首上に置かれた場合、手首に面する電極12a、12bが被験者の正中神経又は別の上肢末梢神経の近くに配置されるように構成されている。
【0154】
[0161] いくつかの実施形態において、ウェアラブルデバイス10は、被験者のターゲット身体部分に対して配置もしくは保持されるか、又はターゲット身体部分上に配置されて、刺激電極12a、12bの双方がターゲット身体部分と皮膚(skin)又は皮膚(dermal)接触するように構成されている。本明細書で用いられる場合、伝導性物体と身体部分との「皮膚接触(skin contact)」又は「皮膚接触(dermal contact)」は、身体部分の皮膚と伝導性物体との直接的な接触、及び身体部分の皮膚と伝導性物体との間接的な接触(例えば、物体と身体部分との間のゲル層や生理食塩水等を介する、又は、そのような液体を担持するもしくはそのような液体に浸された媒質を介する)を表すことができ、これによって伝導性物体を身体部分と電気的に関連付けることを可能とする。
【0155】
[0162] 本明細書では、ウェアラブルデバイス10を参照して、検知及び/又は神経変調技法及びそれらと共に使用されるアルゴリズムのいくつかが記載されているが、本発明の範囲は、ウェアラブルデバイス10を用いずに検知及び/又は神経変調技法及びそれらと共に使用されるアルゴリズムのいずれか1つを実施することを含むことに留意するべきである。例えば、そのような技法及びアルゴリズムは、ウェアラブルデバイスなしで被験者の身体に接触して置かれた電極及び/又はセンサを用いて、及び/又は被験者の手首以外の被験者の身体部分に装着されたウェアラブルデバイスを用いて、実施され得る。いくつかの実施形態では、被験者の正中神経、尺骨橈骨神経、脛骨神経、腓骨神経、肋下神経、脊椎内神経、及び/又は別の神経のうち1つ以上が刺激される。
【0156】
[0163] 典型的に、ウェアラブルデバイス10は1対の手首に面する電極12a、12bを含む。いくつかの実施形態において、デバイス10は、手首に面する電極12a、12bのうち第1のものから手首に面する電極12a、12bのうち他方のものへ電気信号を送出し、この電気信号が皮膚接触を介して被験者の正中神経及び/又は正中神経等の他の末梢神経へ送出されることによって、神経変調治療を実行するように構成されている。以下で記載されるように、いくつかの実施形態において信号は二相であり、この場合、電極間で信号が駆動される方向は交互になる。再び図2Cを参照すると、いくつかの実施形態において、手首に面する電極12a、12bは、矩形、楕円形、半円形、又は電極の長軸と短軸を規定するレーストラック形状の外形を有するような形状である。縦軸の長さと横軸の長さとの比は典型的に、少なくとも3:2である(例えば少なくとも2:1)。典型的に、手首に面する電極12a、12bは、手首ウェアラブルデバイスが既定の配置で被験者の手首上に置かれた場合、各電極12a、12bの縦軸が被験者の正中神経又は別の上肢末梢神経の長手方向軸に対して実質的に平行に配置されるような向きである。このように、ウェアラブルデバイスは、例えば、第1の手首に面する電極から正中神経又は別の上肢末梢神経を介して第2の手首に面する電極へ電気信号を駆動するが、電極の近くの他の組織及び/又は神経への信号の漏れは実質的に存在しないように構成されている。
【0157】
[0164] 典型的に、ウェアラブルデバイス10は、AF、急性PAC、PVC、上室性心拍、及び/又は心房頻拍の発生のような不整脈関連疾患を患う被験者に神経変調治療を実行するように構成されている。典型的に、この治療は、デバイス10が手首に面する電極12a、12bのうち第1のものから手首に面する電極の他方のものへ電気信号を送出し、この電気信号が上述のように被験者の正中神経又は別の上肢末梢神経を流れることによって実行される。以下で記載されるように、いくつかの実施形態において信号は二相であり、この場合、電極間で信号が駆動される方向は交互になる。信号は典型的に、正弦波形、三角形、矩形、及び/又はのこぎり歯の波形のうちいずれか1つを有する。典型的に、所与の治療セッション中、信号は、5~30秒間にわたって印加された後に0~5秒間の期間にわたってオフに切り換えられるオンオフデューティサイクルで印加される。
【0158】
[0165] 信号は典型的に、40~50Hzの周波数(例えば、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50Hz、又はそれらの間の任意の周波数)で駆動される。本明細書で提示されるデータから明らかであるように(また、図5Aから図5Dを参照して以下で記載されるように)、このような刺激パラメータは通常、AF及び/又は不整脈疾患の発生を減少させる(心血管障害の改善及び/又は心血管悪化の軽減を示す)ことが分かっている。更に、本発明者らによって、1~5Hzの周波数(例えば、1、2、3、4、又は5Hz、又はそれらの間の任意の分数周波数)で特定の被験者を刺激すると、AF及び/又は不整脈疾患の発生を減少させる(心血管障害の改善及び/又は心血管悪化の軽減を示す)ことが分かっている。従って、いくつかの実施形態では、信号は1~5Hz(例えば、1、2、3、4、又は5Hz)の周波数で駆動される。いくつかの実施形態において、システムは、以下で更に詳述されるように、1つ以上の検出されたパラメータ及び/又は追加の入力に基づいて、所与の治療中にどの信号パラメータを被験者に適用するかを選択する。
【0159】
[0166] 本明細書で詳述されるように、多くの被験者で、40~50Hzの刺激がAF及び/又は不整脈疾患の発生を減少させることが分かった。また、注記されるように、一部の被験者では、1~5Hzの刺激がAF及び/又は不整脈疾患の発生を減少させることが分かった。40~50Hzの刺激は、副交感神経状態又は迷走神経緊張と相互に関連付けられるAF及び/又は不整脈疾患の発生を減少させること(特発性AF及び/又は不整脈疾患を患う被験者に当てはまる可能性がある)、及び、そのような周波数の刺激がそのような被験者の自律神経バランスを回復することが示されている。更に、1~5Hzの刺激は、過剰な交感神経緊張と相互に関連付けられるAF及び/又は不整脈疾患の発生を減少させること(非特発性AF及び/又は不整脈疾患を患う被験者、例えば、心臓に瘢痕のある被験者及び/又はCHFの被験者又は永続性AFの患者に当てはまる可能性がある)、及び、そのような周波数の刺激がそのような被験者の自律神経バランスを回復することが示されている。
【0160】
[0167] 上述のことを考慮して、いくつかの実施形態では、現在、被験者の自律神経系のバランスが悪いと検出されたことに応えて、被験者の自律神経バランスを回復するように刺激を送出する。これは、被験者がAF及び/又は不整脈エピソードを経験しているか否かとは無関係であり、被験者が他の臨床エピソードを経験するリスクを軽減することが目的である。例えば、被験者の副交感神経緊張が大きすぎる及び/又は交感神経緊張が小さすぎる場合、これは徐脈不整脈及び/又は低血圧を発生させる可能性がある。いくつかの実施形態において、システムは、例えば被験者のHRVが大きすぎると検出することによって、及び/又は被験者の心拍数もしくは心拍数回復に基づいて、被験者の副交感神経緊張が大きすぎること及び/又は交感神経緊張が小さすぎることを検出する。これに当てはまると検出されると、副交感神経緊張を低減させる及び/又は交感神経緊張を増大させることによって自律神経バランスを回復するため、40~50Hzの周波数(例えば、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50Hz、又はそれらの間の任意の分数周波数)を有する信号によって被験者を刺激する。これとは逆に、被験者の交感神経緊張が大きすぎる及び/又は副交感神経緊張が小さすぎる場合、これは、頻脈性不整脈、高血圧、心不全の憎悪、睡眠時無呼吸、及び/又は心筋梗塞からの回復障害(impaired recovery)を発生させる可能性がある。いくつかの実施形態において、システムは、例えば被験者のHRVが小さすぎると検出することによって、及び/又は被験者の心拍数もしくは心拍数回復に基づいて、被験者の交感神経緊張が大きすぎること及び/又は副交感神経緊張が小さすぎることを検出する。これに当てはまると検出されると、交感神経緊張を低減させる及び/又は副交感神経緊張を増大させることによって自律神経バランスを回復するため、1~5Hzの周波数(例えば、1、2、3、4、又は5Hz、又はそれらの間の任意の分数周波数)を有する信号によって被験者を刺激する。
【0161】
[0168] 上述したように、いくつかの実施形態において、電極12a、12bのうち少なくとも1つは検知機能を実行するように構成されている。例えば、電極のうち少なくとも1つは被験者のECGを記録するように構成され得る。図2Bを参照すると、いくつかの実施形態において、ウェアラブルデバイスは、1つ以上の外側を向いた電極を含む(すなわち、デバイスが被験者の手首上に装着された場合、電極は被験者の手首とは反対側を向くように構成されている)。いくつかの実施形態において、ウェアラブルデバイスは、外側を向いた電極を第1のECG電極として使用し、手首に面する電極12a、12bのうち1つを第2のECG電極として使用して、ECGセンサ16を展開することによって被験者のECGを記録するように構成されている。従って、外側を向いた電極21上にユーザが親指又は他の指を置くことにより、ウェアラブルデバイスは、被験者の親指又は他の指と被験者の手首との間でECG信号を検出するように構成されている。
【0162】
[0169] いくつかの実施形態において、ウェアラブルデバイス10は、以下で更に詳述するように、検知及び/又は追加の入力に基づいて神経変調治療を適用する及び/又は神経変調治療のパラメータを構成するように構成されている。この代わりに又はこれに加えて、ウェアラブルデバイスは、エピソード又は潜在的なエピソードの検知に応じて治療を適用するのではなく、ユーザがデバイスを用いて一定の間隔で治療を適用するように構成されている。例えば、あくまで一例であるが、ユーザは、1日に1度から1か月に1度までの頻度で、5分間から1時間までの時間にわたって継続する治療セッションに、デバイスを使用することができる。いくつかの実施形態において、制御モジュール18及び/又は外部コンピューティングデバイス28は、適用される治療に対して所与の時間期間内(例えば1時間、30分、10分、又は5分内)にユーザがECGを記録することを治療適用の必要条件とするように構成されている。いくつかの実施形態において、現在の治療は、現在の治療前の所与の時間期間内にECGが記録されたことを必要条件とする。いくつかの実施形態において、現在の治療は、以前の治療後の所与の時間期間内にECGが記録されたことを必要条件とする。典型的に、そのようなECG記録を治療適用の必要条件とすることにより、システムは、被験者のECGに対する治療効果の監視(そのような監視は医療専門家によって実行される及び/又はシステムによって自動的に実行される)を可能とすることで、治療の有効性の監視を容易にする。
【0163】
[0170] 次に、本発明のいくつかの適用例に従った、被験者に神経変調治療を適用するように及び/又は被験者を監視するように構成されたモジュール15の概略図である図2Dから図2Eを参照する。典型的に、モジュール15は、ウェアラブルデバイス10を参照して上述したモジュール15と概ね同様である。いくつかの実施形態において、電極12a、12b、PPGセンサ11、加速度計13、ECGセンサ16、及び/又は制御モジュール18は、モジュール15内に収容されており、これらのコンポーネントは典型的に、上述したものと概ね同様の機能性を有する。いくつかの実施形態において、電極12a、12bは、モジュール15の手首に面する側15aに配置され、PPGセンサ11、加速度計13、ECGセンサ16は、モジュール15の反対側に、例えばモジュール15の外側を向いた側15bに配置することができる。他の実施形態では、PPGセンサ11、加速度計13、ECGセンサ16のうち1つ以上を、モジュール15の手首に面する側15aに配置してもよい。
【0164】
[0171] 上記のように、本明細書では、ウェアラブルデバイス10を参照して、検知及び/又は神経変調技法及びそれと共に使用されるアルゴリズムのいくつかが記載されているが、本発明の範囲は、ウェアラブルデバイス10及びモジュール15のうち1つ、それら双方、及び/又はそれらの任意の適切な組み合わせを用いて、検知及び/又は神経変調技法及びアルゴリズムのうちいずれか1つを実施することを含む。例えば、そのような技法及びアルゴリズムは、ウェアラブルデバイスなしで被験者の身体に接触して置かれた電極及び/又はセンサを用いて、及び/又は被験者の手首以外の被験者の身体部分に装着されたウェアラブルデバイスを用いて、実施され得る。いくつかの実施形態では、被験者の正中神経、尺骨神経、橈骨神経、脛骨神経、腓骨神経、肋下神経、脊椎内神経、及び/又は別の神経のうち1つ以上が刺激される。いくつかの実施形態において、モジュール15は被験者の身体の別の部分に配置され、例えば、被験者の胸部に置かれる(典型的に、電極12a、12bは被験者の皮膚に接触し、電極21は被験者の皮膚とは反対側を向いている)。
【0165】
[0172] 図3Aから図3Bを参照する。図3Aは、人の手首/前腕37の概略断面図であり、手首/前腕37の皮膚内面に対する正中神経及び尺骨神経の位置を示す。また、図3Aは、本開示のデバイス10の概略的な例示のモジュール15を示し、これは、モジュール15の手首に面する側15aに配置された2つの刺激電極12a、12bと、モジュール15の外側を向いた側15bに配置されたECG電極16とを含む。
【0166】
[0173] 図3Bは、本開示のデバイス10が巻かれて閉じられている人の手首/前腕37の概略図である。デバイス10は、手首/前腕37の内面に面するように位置決めされたモジュール15を含む。モジュール15は2つの刺激電極12a、12bを含む(各電極は手首/前腕37の内面のみで露出するので、破線の細長い形状によって概略的に図示されている)。
【0167】
[0174] 図3Aから図3Bで見られるように、モジュール15は手首/前腕37の周りに配置され、刺激電極12a、12bが正中神経42をまたいで、例えば正中神経42各側に位置決めされて、同時皮膚接触を行うと共に刺激信号を正中神経42に送出するようになっている。図3Cから図3Dは、正中神経42に対して電極12a、12bを配置するための他の代替案を示す。例えば、電極12a、12bの各々は、正中神経42に対して横方向で(図3C)又は縦方向で(図3D)交差するように位置決めされる。
【0168】
[0175] 背景事情として、正中神経をターゲットにすると、以下の理由から、不整脈関連イベントの減少を目的とする電気刺激信号の送出のために有利な経路が得られる。
-正中神経は、尺骨神経及び橈骨神経のような他の上肢神経よりも手首における断面積が著しく大きい。
-正中神経は皮膚に比較的近く、電気刺激信号の神経への電気伝導が増大する。
【0169】
[0176] 従って、いくつかの実施形態で本開示は、正中神経42に対する刺激信号の送出を最大化するように、正中神経42に対するモジュール15及び刺激電極12a、12bの最適な位置決めを保証するよう構成されたモジュール15の設計を提供する。
【0170】
[0177] いくつかの実施形態では、ECGセンサ16を併用することで、正中神経42の前述の特性により、正中神経42に対するモジュール15及び刺激電極12a、12bの位置決めに基づいて、被験者に関するECG信号を測定するための有利な経路が得られる。従って、いくつかの実施形態におけるモジュール15は、被験者が外側を向いたECGセンサ16に親指又は他の指を置いて、被験者の親指又は他の指と被験者の手首との間のECG信号を記録することにより、ECGセンサ16及び電極12a、12bのうち1つを用いて被験者のECGを記録するように構成されている。
【0171】
[0178] いくつかの実施形態において、モジュール15は、実質的に図3Aから図3Bの矢印A-Aで示されている手首/前腕遠位37の長さにわたって延出するように寸法設定された実質的に平面状の剛体を規定することができる。いくつかの実施形態において、刺激電極12a、12bは、長さ方向の寸法に沿ってモジュール15の手首に面する側15aに配置して、正中神経42の進路をまたぐ正中神経42に対する指定位置に位置決めすることができる。いくつかの実施形態において、電極12a、12bは、モジュール15に対して、各電極の縦軸X(図3Bに示されている)が正中神経42の各側で被験者の正中神経42の長手方向軸の近くに、この長手方向軸と実質的に平行に配置されるような向きに置くことができる。
【0172】
[0179] 従って、いくつかの実施形態では、刺激電極12a、12bと正中神経42の近くの皮膚領域又は正中神経42の一部を含む皮膚領域との間の電気伝導経路を閉じることによって、正中神経42を電気的に刺激することができる。
【0173】
[0180] いくつかの実施形態において、電極12a、12bはそれぞれ、幅寸法は1~15mm、例えば7mmとすることができ、長さ寸法は2~35mm、例えば15mmとすることができる。いくつかの実施形態において、電極12a、12b間の距離Y(図3Bで示されている)は、1~10mmの範囲内、例えば4mmとすることができる。
【0174】
[0181] いくつかの実施形態では、モジュール15及び刺激電極12a、12bの最適な配置を保証すると共に、正中神経に対する信号送出を最大化するため、モジュール15は、様々なユーザの手首/前腕の解剖学的構造及び寸法に合うように適合された範囲内のサイズ及び寸法で生成されるように構成されている。いくつかの実施形態において、電極12a、12bは、上記の範囲と同様の範囲内に収まるサイズ及び表面積を有する方形、楕円形、又は他の任意の普通の形(ordinary shape)もしくは特殊な形(unordinary shape)とすることができる。
【0175】
[0182] 引き続き図3Aから図3Bを参照すると、いくつかの実施形態において、本開示は更に、正中神経に対する最大の信号送出を保証するため、手首の内面に対するモジュール15の(従って刺激電極12a、12bの)最適な位置決めを保証するための技法を提供する。いくつかの実施形態において、本技法は、(i)デバイス10がユーザによって使用され、ユーザの手首に巻かれた場合、刺激電極12a、12b間の電気伝導経路に対する電流を測定すること、及び(ii)測定された電流を、被験者に対する電極12a、12bの最適な位置決めを表す所定の基準電流と比較すること、に基づく。いくつかの実施形態において、測定された電流が基準値よりも小さい場合、本開示のデバイス10は、測定された電流が基準値に近付くか又は基準値と等しくなるまでデバイスの位置決めを調整するようにユーザ及び/又は医療従事者に指示を出すことができる。
【0176】
[0183] 本発明者らは、正中神経の固有の特性(すなわち、断面が大きく、皮膚表面に比較的近い)のために、刺激電極12a、12bと正中神経42の近くの皮膚領域又は正中神経42の一部を含む皮膚領域との間の電気伝導経路に関する最大電流値を測定できることを見出した。従って、特定のユーザに関して、正中神経42に対する電極12a、12bの最適な位置決めは、手首の内面に対する電極12a、12bの他の全ての可能な位置決めに比べ、高い測定電流値を表す。下記の表1は、3人の被験者に対して本発明者らが行った実験の結果を示す。これらの結果から分かるように、各被験者で、電極12a、12bが最適な配置である場合に最大電流測定結果が達成され(「正中神経」のM)、これは、準最適な位置(「橈骨神経」のR、及び/又は「尺骨神経」のU、又は「尺骨遠位」のU-Dist)よりも大きい。これらの値はミリアンペアの単位(ma)で与えられている。平均電流測定値は少なくとも33の異なる測定値を表す。
【0177】
【表1】
【0178】
[0184] 従って、引き続き図3Aから図3Bを参照し、再び図1Bも参照すると、いくつかの実施形態において本開示は、正中神経の経路に対する手首皮膚内部エリアでの電極12a、12bの最適な位置決めを表す被験者の最大基準電流値を測定することを可能とする。いくつかの実施形態では、本開示のデバイス10が被験者によって用いられている場合、配置モジュール22(図1Bに示されている)は、刺激電極12a、12b間の電気伝導経路に関する電流を測定し、測定された電流を所定の基準電流と比較するように構成できる。いくつかの実施形態において、測定された電流が基準値よりも小さい場合、配置モジュール22は、デバイス10の位置決めを調整するためユーザ及び/又は医療従事者に適切な通知を出すように構成することができる。いくつかの実施形態において、配置モジュール22は、ユーザ要求に応じて、計画されたスケジュールに基づいて、又は定期的に電流測定を実行することにより、デバイス配置を監視するように構成できる。
【0179】
[0185] ここで図4を参照すると、本発明のいくつかの適用例に従って、例えば図1Aから図1Bを参照して記載されている例示的なシステム及び/又は図2Aから図2D及び図3Aから図3Bを参照して記載されている例示的なデバイスを用いて、被験者を監視及び治療するための方法における機能ステップの概略図が示されている。いくつかの実施形態において、ウェアラブルデバイス10は、電極12a、12b(これらは被験者のECGを記録するように構成されている)に加えて、PPGセンサ11及び/又は加速度計13のような1つ以上のセンサを含む。
【0180】
[0186] いくつかの実施形態において、制御モジュール18及び/又は外部コンピューティングデバイス28は、被験者に関して連続的、断続的、及び/又は定期的な監視、測定、及びデータ取得を実行するようにウェアラブルデバイスを駆動するよう構成されている(ステップ58)。例えば、制御モジュール18及び/又は外部コンピューティングデバイス28は、デバイス10内の内部センサからデータを取得するように構成されている(ステップ50)。このデータは例えば、PPGセンサ11からのPPG測定値、加速度計13からのデータ、及び/又はECGセンサ16からのECG信号である。いくつかの実施形態において、ステップ58は、24時間休みなしの監視及び治療を含み得る。監視は連続的とするか、又はスケジュールに従ったものとすることができ、例えば、医療提供者のアドバイスに応じて所定分数又は所定時間数に1度とすればよい。いくつかの実施形態において、監視は、PPG/ECGセンサ及び加速度計で決定される被験者の活動状態に基づくことができ、例えば、加速度計データによって被験者が静止していることが示された場合に監視を開始すればよい。
【0181】
[0187] いくつかの実施形態において、制御モジュール18及び/又は外部コンピューティングデバイス28は、例えばPPG測定値、ECG信号、及び/又は加速度計から受信したデータのような取得データを分析し(ステップ60)、更に、(i)被験者が現在、例えばAF、PAC、ATのような不整脈関連イベントを経験している可能性があること、及び(ii)(例えば、HRV、心拍数回復、及び/又は心拍数の変化を検出したことに応じて)被験者が不整脈関連イベントを経験すると予想されること、を決定するように構成されている。典型的に、制御モジュール18及び/又は外部コンピューティングデバイス28は、例えばPPGセンサ11及び/又はECGセンサ16のような内部センサから取得したデータ(ステップ50)を分析して(ステップ60)、例えば、原因不明の心拍数の変化、不安定な心拍数、HRVの測定量、及び/又は心拍数回復の変化のような心拍数関連エピソードを検出し、それに応じた予測を生成するように構成されており、その後、予防の目的で刺激治療を行う。
【0182】
[0188] いくつかの実施形態において、制御モジュール18及び/又は外部コンピューティングデバイス28は更に、限定ではないが以下を含む追加データ及び/又は他のデータを取得するように構成されている。
-例えば音響センサ、光学センサ、圧力センサ(例えば血圧を測定するように構成されている)、及び/又は視覚センサのような、1つ以上の外部センサ23からのデータ(ステップ52)、
-例えばECGセンサ16及び/又は外部ECGセンサを用いた、被験者に関するECG信号(ステップ54)、
-以下を含む、1つ以上の被験者に関連する活動状況、感情状況、又は生理学的データ(ステップ56)。
○被験者の現在及び/又は最近の活動状況(例えば食事、横臥、睡眠、歩行、ランニング、運動、運転等)、
○被験者の食事状況(例えば空腹、現在食事中、先ほど食事した等)、
○被験者の感情状態(例えばストレスを感じている、リラックスしている、前向きな気分である、落ち込んでいる、不安を感じている、トラウマを抱えている等)、及び/又は、
○追加の身体症状(例えば疲労、胸の圧迫感、動悸、めまい、失神、頭痛、息切れ、胸の「空虚」感、頻拍又は不安定な心拍、心拍のスキップ、喉の圧迫感、冷え又は悪寒、脱水症)、及び/又は、
○追加の生理学的パラメータ(例えば血圧関連パラメータ、貧血、消化器系の症状、不眠症、ホルモン関連データ)。
【0183】
[0189] いくつかの実施形態では、ステップ50及び54におけるPPGセンサ11及び/又はECGセンサ16及び/又は他の心拍測定から、以下のデータセットを取得することができる。
-HRV:心拍変動
-RR間隔:2つの連続するR波の間で経過する時間
-AVNN:正常心拍間の平均間隔
-SDNN:NN間隔の標準偏差
-rMSSD:連続する正常心拍間の差の2乗平均平方根
-pNN50:連続する正常洞(NN)間隔の変化が50msを超える1時間当たりの平均回数
-LF及びHF:低周波数及び高周波数の活動。
【0184】
[0190] いくつかの実施形態において、被験者関連パラメータは、例えばユーザインタフェース14を介して被験者が自己報告することができる。例えば、被験者の活動状況、食事状況、感情状態、及び/又は身体症状に関する情報を入力するように被験者を促すことができる。いくつかの実施形態において、被験者は、例えばユーザインタフェース14を介してライフスタイル及び/又は活動に関する情報を入力するように促される。例えば、直前に詳述したように、被験者の感情状態、身体症状、及び/又は食事状況に関する情報を入力するように被験者を促すことができる。
【0185】
[0191] いくつかの実施形態において、制御モジュール18及び/又は外部コンピューティングデバイス28は、これらのデータのうち1つ以上を入力するように及び/又は例えばセンサ16で取得されるECGを記録するように構成されているか、又はそうするように被験者に促す。この代わりに又はこれに加えて、コンピューティングデバイスは追加の測定を行うように被験者を促す。更に、この代わりに又はこれに加えて、制御モジュール18は、被験者の追加の生理学的パラメータを自動的に検出するように1つ以上のセンサを駆動する。いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、音響センサ、圧力センサ、光学センサ、及び/又は視覚センサのような他のセンサから、追加のデータを受信するように構成されている。これらのセンサは、ウェアラブルデバイスの内部に配置してもよく、又はウェアラブルデバイスの外部に配置してもよい。
【0186】
[0192] いくつかの実施形態において、制御モジュール18及び/又は外部コンピュータプロセッサ28は、活動及び/又は感情データのうち1つ以上を自動的に導出するよう構成されている(ステップ56)。例えば制御モジュール18は、加速度計及び/又はPPGセンサから受信したデータに基づいて、被験者の現在の活動状況(例えば食事、横臥、睡眠、歩行、ランニング、運動等)及び/又は最近の活動状況を導出することができる。この代わりに又はこれに加えて、制御モジュール18は、PPGセンサ11、加速度計13、及び/又はECGセンサ16から受信したデータに基づいて、被験者の現在の感情状態(例えば、ストレスを感じている、リラックスしている等)及び/又は最近の感情状態を導出できる。
【0187】
[0193] いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、時刻を受信し、これを本段落及び上の段落で記載した測定値及び/又は他のデータと相互に関連付けるように構成されている。いくつかの実施形態では、このようにして制御モジュール18は、被験者の活動、感情状態、食事状況、及び/又は生理学的パラメータが、1日の間に通常どのように変動するかを示すデータベースを構築するよう構成されている。いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、被験者のホルモン状態、症状(胸の不快感等)、血液関連パラメータ(例えば貧血、B12レベル、葉酸レベル等の指示)を示す入力を測定及び/又は受信するように構成されている。従って、いくつかの実施形態において制御モジュール18は、例えばメモリストレージデバイス18a内に、例えば1時間、1日、1週間、1か月、1年にわたる経時的な被験者の活動状況、感情状態、食事状況、及び/又は生理学的パラメータを記憶するデータベースを構築するように構成されている(ステップ64)。いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、被験者のホルモン状態、症状(上述したような、胸の不快感、動悸、心拍のスキップ等)、血液関連パラメータ(例えば貧血、鉄欠乏、フェリチン欠乏、B12レベル、葉酸レベル等の指示)を示す入力を測定及び/又は受信するように構成されている。
【0188】
[0194] いくつかの実施形態では、ステップ60において、制御モジュール18は受信データを処理し、例えば被験者のECG信号及び/又は追加データに基づいて、被験者が例えばAFのような不整脈関連イベントを現在経験していることを決定及び/又は予測する。この代わりに又はこれに加えて、制御モジュール18は、これから起こる不整脈関連イベントを予測するように構成されている。例えば制御モジュール18は、被験者が近いうちにAFを経験する可能性がある前兆として解釈される心房期外収縮(PAC)の増加率を検出することができる。この代わりに又はこれに加えて、制御モジュール18は、被験者の現在の活動状況、感情状態、及び/又は食事状況に関連するデータに基づき、これらを追加の生理学的データと組み合わせて、これから起こる不整脈関連イベントを予測することができる。いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、被験者が不整脈エピソード(心房期外収縮、心室期外収縮、上室性頻拍、及び/又は心房頻拍の発生等)を現在経験していることを検出する。いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、被験者における不整脈関連イベントの既知の再発の履歴(例えば、1日のうち特定の時刻又はほぼその時刻)に基づいて、これから起こる不整脈関連イベントを決定するように構成できる。
【0189】
[0195] いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、AF、早期心房複合体(APC/PAC)、早期心室複合体(VPC/PVC)、上室性頻拍(SVT)、心房頻拍(AT)、心房粗動、房室結節回帰性頻拍(AVNRT)、発作性上室性頻拍(PSVT)、房室回帰性頻拍、ウォルフパーキンソンホワイト症候群、心室頻拍(VT)、心室性不整脈(TdP)、QT延長症候群、心臓ブロック、及び/又は洞不全症候群のうち1つ以上として、不整脈関連イベントを検出するように構成されている。
【0190】
[0196] いくつかの実施形態において、ステップ62では、検出ステップ60の結果に基づき、制御モジュール18は、治療セッションパラメータ及び刺激信号パラメータを含む1つ以上の治療パラメータを決定するように構成されている。いくつかの実施形態において、治療パラメータは、限定ではないが以下を含み得る。
-治療でターゲットとなる身体部位又は特定の神経、
-治療セッションの数、
-全治療セッション期間、
-治療セッションタイミング、
-治療セッションサイクルのオン/オフの回数と期間、
-全信号期間、
-信号波形(例えば正弦波形、三角形、矩形、及び/又はのこぎり歯の波形)、
-信号振幅(例えば最大、最小、平均(mean)、及び/又平均(average)振幅)、
-信号強度(例えば最大、最小、平均、及び/又は平均強度)、
-信号周波数、
-刺激信号が一連のパルスを含む場合の信号パルスパラメータ(例えばパルス持続時間及び/又はパルス間の時間間隔)、及び/又は、
-信号と1つ以上の他の信号及び/又は基準活動(例えば被験者の心臓活動)との同期。
【0191】
[0197] いくつかの実施形態において、ステップ62は、断続的な刺激信号(すなわち電圧/電流信号)、すなわち一連の電気パルス(各電気パルスは本質的に短い持続時間の刺激信号である)を印加することを含み得る。いくつかの実施形態において、連続する電気パルス間の時間間隔と各パルスの形状(すなわち変調又は波形)は、制御可能に変動させることができる。いくつかの実施形態において、刺激パルスは二相とすることができる。すなわち、パルスの正電圧部分の実質的に直後にパルスの負電圧部分が続く。いくつかの実施形態において、正電圧(伝導された電荷を示す)部分がカバーするエリアは負部分がカバーするエリアと実質的に等しく、これによって、パルス幅が充分に狭い(例えば1ミリ秒より小さい)場合に、電気分解の発生(これは、流体を含む(ターゲット身体部分内の)身体組織を電流が流れることにより発生し得る)を防止する/最小限に抑える。
【0192】
[0198] いくつかの実施形態において、ステップ62では、治療パラメータを決定した後、制御モジュール18は、決定した治療を被験者に送達して適用するようにウェアラブルデバイス10を駆動するよう構成されている。上述した通り、典型的に治療は、手首に面する電極12a、12bを介して被験者の正中神経及び/又は尺骨神経内へ電気信号を送出することを含む。
【0193】
[0199] いくつかの実施形態において、制御モジュール18は更に、現在の又は予測された不整脈関連イベント又はエピソードを、被験者の副交感神経又は交感神経の状態と相互に関連するものとして分類する及び/又は相互に関連付けるように構成できる。いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、様々なセンサから受信され、ステップ58で監視及び収集したデータに基づいてこの分類を実行する。この代わりに又はこれに加えて、制御モジュール18は、被験者ライフスタイル関連データ及び/又は被験者活動関連データに基づいて分類及び相互の関連付けを実行する。例えば制御モジュール18は、被験者の現在の及び/又は最近の感情状態、活動状況、及び/又は食事状況に基づいて、被験者の副交感神経緊張が大きいか否か及び/又は交感神経緊張が小さいか否か(又はその逆)を導出するように構成できる。
【0194】
[0200] いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、人の自律神経状態を示すことが知られている被験者のHRVに基づいて、被験者の副交感神経緊張が大きいか否か及び/又は交感神経緊張が小さいか否か(又はその逆)を導出するように構成されている。とはいえ、被験者が不整脈関連イベントエピソードを経験している間に被験者のHRVを信頼性の高い手法で測定することは通常は不可能である。従っていくつかの実施形態では、エピソードを分類するため、制御モジュール18は、エピソード開始前の所与の時間期間内(例えば30分以内から1分以内)の被験者のHRVを分析するように構成されている。いくつかの実施形態では、同様の技法が実行されるが、被験者のHRVの代わりに又はHRVに加えて、被験者の心拍数及び/又は心拍数回復が使用される。
【0195】
[0201] いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、被験者のECG信号に基づいて、例えばECG信号の形状及び/又はECG信号の拍動の規則性に基づいて、被験者の副交感神経緊張が大きいか否か及び/又は交感神経緊張が小さいか否か(又はその逆)を導出するように構成されている。
【0196】
[0202] いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、被験者が現在経験している及び/又は最近経験した心房期外収縮及び/又は心房頻拍エピソードに関連するパラメータに基づいて、被験者の副交感神経緊張が大きいか否か及び/又は交感神経緊張が小さいか否か(又はその逆)を導出するように構成されている。例えば制御モジュール18は、心房期外収縮及び/又は心房頻拍エピソードが、運動中に発生した(過剰な交感神経緊張と相互に関連付けられる)か、又は安静時に発生した(過剰な交感神経緊張と相互に関連付けられる)か否かを判定することができる。
【0197】
[0203] 下記の表2は、典型的に交感神経又は副交感神経の状態と関連付けられる様々な被験者関連データポイント及びパラメータをまとめている。
【0198】
【表2】
【0199】
[0204] いくつかの実施形態において、検出された不整脈関連イベントが被験者の副交感神経状態と相互に関連付けられると判定された場合、制御モジュール18は、少なくとも刺激信号周波数を40~50Hz(例えば、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50Hz)の周波数に設定することを決定するように構成されている。
【0200】
[0205] いくつかの実施形態において、検出された不整脈関連イベントが交感神経状態(すなわち、過剰な交感神経緊張及び/又は副交感神経もしくは迷走神経の緊張の低減)と相互に関連付けられると判定された場合、制御モジュール18は、少なくとも刺激信号周波数を1~5Hz(例えば、1、2、3、4、又は5Hz)の周波数に設定することを決定するように構成されている。
【0201】
[0206] 下記の表3は、検出された様々なこれから起こる又は現在の不整脈関連イベント、それらの前兆、適用可能な信号パラメータ、及び適用可能な治療レジメンをまとめている。
【0202】
【表3】
【0203】
[0207] いくつかの実施形態において、ステップ64では、治療を適用した後、制御モジュール18は更に、被験者に関する治療後データを監視及び収集するように構成されている。いくつかの実施形態において、治療後データは、ステップ58で監視及び収集したデータ項目の一部又は全てを含み得る。
【0204】
[0208] いくつかの実施形態では、ステップ64において、制御モジュール18は、治療適用後の所与の時間期間内にECGを記録するよう被験者を促すように構成されている。この代わりに又はこれに加えて、制御モジュール18は、追加の測定を行うように被験者を促す。更に、この代わりに又はこれに加えて、制御モジュール18は、1つ以上のセンサを駆動して被験者の追加の生理学的パラメータを自動的に検出する。いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、ウェアラブルデバイスの内部に又はウェアラブルデバイスの外部に配置され得る音響センサ、圧力センサ、光学センサ、及び/又は視覚センサのような他のセンサから、追加のデータを受信するように構成されている。いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、加速度計及び/又はPPGセンサから受信したデータに基づいて、被験者の治療後活動状態(例えば食事、横臥、睡眠、歩行、ランニング、運動等)を導出するように構成されている。この代わりに又はこれに加えて、制御モジュール18は、加速度計及び/又はPPGセンサから受信したデータに基づいて、被験者の現在の治療後感情状態(例えばストレスを感じている、リラックスしている等)を導出することができる。いくつかの実施形態において、被験者は、例えばユーザインタフェース14を介して治療後のライフスタイル及び/又は活動に関する情報を入力するように促される。例えば、感情状態(例えばストレスを感じている、リラックスしている、前向きな気分である、機嫌が悪い等)、症状(例えば疲労、胸の圧迫感、動悸)、及び/又は食事状況(例えば空腹、現在食事中、先ほど食事した等)に関する情報を入力するように被験者を促すことができる。いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、時刻を受信し、これを本段落及び上の段落で記載した測定値及び/又は他のデータと相互に関連付けるように構成されている。
【0205】
[0209] いくつかの実施形態では、ステップ66において、制御モジュール18は、各治療に対する被験者の自己報告データ(例えば被験者のECG)を記憶し、これらを被験者の特徴、時刻、被験者活動状況、被験者感情状態、被験者食事状況、被験者HRV等と相互に関連付けるよう構成されている。データベースは、被験者に固有のデータ及び導出された相関性を含み、更に、このようなシステムを用いて治療された1組の被験者及び/又は全ての被験者に関するデータ及び導出された相関性も含み得る。いくつかの実施形態において、データは、治療適用前の被験者の状態に関するデータ(例えば不整脈イベントの発生頻度)を含む。
【0206】
[0210] いくつかの実施形態において、このようなデータは、限定ではないが以下を含み得る。
-AF再発までの時間
-心房期外収縮再発までの時間
-全体的な心房/心室活動
-規定の測定期間内の洞律動に対するAFの全時間/割合、又は所定の時間期間内のAFエピソードの数として測定される心房細動負担
-AFイベントの平均時間長
-最長のAFイベント
-被験者による症状及び活動、感情及び食事状況の自己報告
-治療に使用された以前の治療パラメータ
-治療の時間(日中)
-治療期間
-電気信号パラメータ
-被験者個人パラメータ(例えば年齢、性別、身長、体重、平均心臓負担)
【0207】
[0211] いくつかの実施形態では、心臓負担の変化、AF再発までの時間、心房期外収縮再発までの時間、及び/又は被験者による症状及び活動、感情及び食事状況の自己報告に基づいて、臨床転帰(clinical outcome)が分析される。いくつかの実施形態では、被験者の状態及び/又は臨床転帰を決定するため、制御モジュール18は被験者の心臓負担を決定するように構成されている。被験者の心臓負担は通常、(a)規定の時間期間内のエピソード数、(b)規定の時間期間内の各エピソードの長さ、(c)規定の時間期間内でのAFの時間の割合、及び/又は(d)報告された症状の重症度、に基づいて決定される。
【0208】
[0212] 典型的に、ステップ64で実行される分析の結果は次いで、ステップ60、62、及び/又は64における入力として用いられる。すなわち、被験者が臨床エピソードを経験しているか又はエピソードを経験することが予想される場合、ステップ60では、現在のデータ又は最近取得された被験者関連データの分析に加えて、以前の治療に対するこの被験者及び/又は他の被験者の反応が考慮される。同様に、ステップ64では、被験者に対してどの治療パラメータを適用するかを決定するため、現在のデータ又は最近取得された被験者関連データの分析に加えて、例えば人工知能及び/又は機械学習アルゴリズムを用いて、以前の治療に対するこの被験者及び/又は他の被験者の反応が考慮される。
【0209】
[0213] いくつかの実施形態では、図4に示されているフローチャートのステップを実行する際、システムは以下のデータタイプの組み合わせを利用する。
-客観的な被験者生理学的パラメータ。これは通常、心拍数、予備心拍数、心拍数回復、HRV、心房期外収縮、心室期外収縮、AF、心房頻拍、移動、睡眠、活動を含む。
-主観的な被験者パラメータ。これは通常、被験者症状、食事状況、運動、ホルモン状態、ストレスレベル、水分補給レベルを含む。
-外部で測定された生理学的パラメータ。これは通常、血液検査(例えばTNF、IL-6、CRP)、血圧を含む。
-電気刺激パラメータ。パルス波プロファイル、パルス周波数、パルス強度、パルス間欠性、治療期間、治療レジメン。
-治療結果。これは通常、客観的データ(ECG、HRV、心拍数回復、心拍数、PPG等)並びに主観的データ(症状及び状態の被験者報告)を含む。
【0210】
[0214] いくつかの実施形態において、システムは、データ分析に追加データを組み込んでいる。この追加データは例えば、システムを用いて治療された被験者に関する履歴情報(被験者の治療及び治療結果を含む)、動物実験、DRG、迷走神経、及び/又は星状神経(stellate)の記録、科学文献、及び/又は臨床的ノウハウ等のデータベースである。
【0211】
[0215] 本明細書に記載されている治療に関して、場合によっては、これらの治療が従来の療法(例えばアブレーション)に対する補助療法として使用されることに留意するべきである。更に、通常、所与の被験者に対する治療の期間及び/又は頻度は時間と共に低減されることに留意するべきである。その理由は、システムが被験者の神経系を自己変調するように訓練すること、及び/又は被験者の状態の変化、又は追加パラメータのためである。
【0212】
実験結果
[0216] 次に、本発明のいくつかの適用例に従った、AF被験者に対して実行された刺激治療の実験結果を示すグラフである図5Aから図5Dを参照する。
【0213】
[0217] 図5Aを参照すると、このグラフは、本明細書に記載されている治療(40~50Hzの周波数を有する信号を使用する)を用いて治療された14人のAF被験者のコホートのAF再発を示す。本明細書に記載されている治療を用いて治療された被験者のAF再発率は、破線で示されている。比較のため、電気的除細動の後に標準的医療を受けた被験者の再発率が実線で示されている。実線で示されているデータは以下のソースから導出された。
-孤立性AFの被験者における不整脈再発の予測因子。Europace (2008) 10, 9-14
-電気的除細動の後のAFの早期再発。JACC Vol. 31, No. 1. January 1998: 167-73
-最近発症したAFにおける早期電気的除細動又は遅延電気的除細動。N Engl J Med. 2019 Jul 25; 381(4): 386-387
-電気的除細動の後のAFの予防:PAFAC試験の結果。European Heart Journal (2004) 25, 1385-1394
【0214】
[0218] 図5Aに示されている破線のデータは、イスラエルの中心部にある2つの個人クリニックで2018年6月から2020年9月まで収集され、レトロスペクティブ非盲検症例登録として分析された。コホートに含まれる14人は18歳以上の男女であり、症候性及びECG記録される最近発症したAF(AF)が、48時間未満継続していた。本明細書に記載されているウェアラブルデバイスによって、神経変調治療を週に1回、10週間にわたって実行した。各セッションは20分間行われた。10週間の後、治療頻度を2週間に1回のセッションに下げ、次いでフォローアップ期間の残り部分では1か月に1回に下げた。被験者は最大で2年間にわたって追跡調査された。フォローアップ期間中、3人の被験者が症候性及びECG記録されるAF再発を経験した。これは、3人の別個の被験者で第8週、第28週、及び第42週に発生した。全再発率は、フォローアップの6か月で7.1%(14人のうち1人)、1年で21.4%(14人のうち3人)であった。AFEQT(AF Effect on Quality of life:クオリティオブライフに対するAF効果)質問者によって査定される生活の質が、13人の参加者によって提出された。これにより、AF関連症状(26.1%)、日常活動(14.7%)、精神的不安(37%)、及び全体的スコア(23.4%)で、著しい改善スコアが示された。これを下記の表4に示す。
【0215】
【表4】
【0216】
[0219] 図5Dは、AFを患う65歳の男性の、本明細書に記載されている治療を適用する前のECG信号(パネルA)と、本明細書に記載されているように25分の治療を適用した後のECG信号(パネルB)を示す。治療前、被験者は複数の心室期外収縮を経験していることが観察できる(ECG信号の丸で囲んだ部分で示されている)。治療後、被験者は心室期外収縮を経験しなくなる。
【0217】
[0220] 本発明者らは、上述のように、本開示の態様に従って、合計136回の神経変調治療を受けた48人の患者のコホートから成る実験を行った。
【0218】
[0221] 患者は、<36msの小さいSDNN(NN間隔の標準偏差)を示した。これは、AFを発症するリスクが高いことを示している(例えばCardiac Autonomic Dysfunction and Incidence of Atrial Fibrillation: Results From 20 Years Follow-Up. J Am Coll Cardiol. 2017 Jan 24;69(3):291-299を参照のこと)。小さいSDNNは治療を行う前に検出され、被験者の自律神経系が交感神経状態であることを示すと判定された。従って、治療は、1~5Hzの周波数の刺激信号を被験者に送出することを含んだ。下記の表5に実験結果がまとめられている。図6は実験結果を示すグラフである。これを見て分かるように、治療後、全ての患者の平均SDNN値は22%上昇した。
【0219】
【表5】
【0220】
[0222] 上述したように、通常、電極12a、12bは、被験者の尺骨神経及び/又は被験者の正中神経の近くで被験者の手首の皮膚上に置かれるように構成されている。典型的に、電極を介して神経内へ電気刺激信号が駆動され、電気刺激信号はAF及び/又は不整脈イベントの発生を低減するように構成されている。いくつかの実施形態において、電気刺激信号は上述したようなパラメータを有する。本出願の発明者らは、電極が神経に対して適正に位置決めされ、かつ、刺激パラメータが所望の臨床転帰を生成するように設定されている場合、被験者は通常、電極の近くで開始し神経路に沿って(例えば被験者の手首、手、及び/又は指に)放射状に広がる感覚を感じることを見出した。具体的には、電気刺激信号の強度が所望の臨床転帰を生成するのに充分なほど大きい場合、被験者は通常、電極の近くで開始し神経路に沿って放射状に広がる感覚を感じる。しかしながら、通常、電気刺激信号の強度が大きすぎる場合に発生し得る運動反応が電気刺激振動によって引き起こされることは望ましくない。例えば、場合によっては、電気刺激信号が電極の近くで被験者身体の一部の不随意運動を発生させることがある(例えば被験者の手首、手、及び/又は指で)。上記のことを考慮して、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている制御モジュール及び/又はコンピューティングデバイス28のうち異なるものは、電気刺激信号に対する電極の近くの被験者身体の反応を示す入力を被験者から受信するように構成されている。例えば、制御モジュール18は被験者から、ユーザインタフェース14を介して、及び/又はスマートフォン30、タブレットデバイス32、及び/又はパーソナルコンピュータ34を介して(図1Aに示されている)、入力を受信することができる。典型的に、制御モジュール18は、電気刺激信号が電極の近くで感覚(例えば上述のように、電極の近くで開始し神経路に沿って放射状に広がる感覚)を発生させるが、電極の近くで被験者身体の一部の不随意運動を引き起こさないように、電気刺激信号の強度を設定する。例えば、電気刺激信号が電極の近くで何の感覚も発生させないことを示す入力の受信に応えて、制御モジュール18は電気刺激信号の強度を増大させることができる。また、電気刺激信号が電極の近くで被験者身体の一部の不随意運動を発生させることを示す入力の受信に応えて、制御モジュール18は電気刺激信号の強度を低減させることができる。
【0221】
[0223] 本発明者らが見出した別の現象は、電気刺激信号が所与の電圧で印加された場合、電極が尺骨神経及び/又は正中神経に対して適正に配置されている際に信号の電流が大きくなる傾向があるということである。これは、電極が被験者の皮膚と良好に接触している場合であっても当てはまることに留意するべきである。すなわち、電極が皮膚と良好に接触している場合であっても、電流は変動することが観察され、電極が尺骨神経及び/又は正中神経に対して適正に配置されている場合に信号の電流が高くなる傾向がある。これは、この現象が、電極と皮膚との不適切な接触に起因して生じるインピーダンスとは無関係であることを示している。
【0222】
[0224] AF及び/又は不整脈疾患を治療するため、電気刺激信号は、皮膚の表面に近い尺骨神経及び/又は正中神経に沿って放射状に広がることが望ましい。本発明者らは、電極が神経に対して適正に配置された場合は電気刺激信号が神経に沿って放射状に広がるので電流が大きくなり、電極が神経に対して不適切に配置された場合は電流が小さくなることを示している。刺激信号が所与の電流で印加された場合にも同様の現象が見られることに留意するべきである。すなわち、電気刺激信号が所与の電流で印加された場合、電極が尺骨神経及び/又は正中神経に対して適正に配置されている際は、電極が被験者の皮膚と良好に接触している場合であっても、信号の電圧が小さくなる傾向がある。
【0223】
[0225] 上述のことを考慮して、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている制御モジュール18及び/又はコンピューティングデバイス28のうち異なるものは、所与の電圧で電極を介して尺骨神経及び/又は正中神経内に電気刺激信号を駆動するように構成されている。電極が被験者の手首の皮膚と良好に接触している場合、制御モジュール18は電気刺激信号の電流を検出し、電流が閾値未満であることに応えて、制御モジュール18は、電極のうち少なくとも1つを移動させなければならないことを示す(例えば、電極のうち少なくとも1つを選択した神経に近付けなければならないことを示す)出力を生成する。例えば制御モジュール18は、ユーザインタフェースを介して、及び/又はスマートフォン30、タブレットデバイス32、及び/又はパーソナルコンピュータ34を介して、被験者に対してそのような出力を生成できる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている制御モジュール18及び/又はコンピューティングデバイスのうち異なるものは、所与の電流で電極を介して尺骨神経及び/又は正中神経内に電気刺激信号を駆動するように構成されている。電極が被験者の手首の皮膚と良好に接触している場合、制御モジュール18は電気刺激信号の電圧を検出し、電圧が閾値よりも大きいことに応えて、制御モジュール18は、電極のうち少なくとも1つを移動させなければならないことを示す(例えば、電極のうち少なくとも1つを選択した神経に近付けなければならないことを示す)出力を生成する。例えば制御モジュール18は、ユーザインタフェース14を介して、及び/又はスマートフォン30、タブレットデバイス32、及び/又はパーソナルコンピュータ34を介して、被験者に対してそのような出力を生成できる。
【0224】
[0226] 上述したように、いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている制御モジュール18及び/又はコンピューティングデバイスのうち異なるものは、被験者のECG信号の分析に基づいて、被験者が現在AFを経験していること、被験者が現在不整脈エピソードを経験していること、被験者がAFを経験すると予想されること、及び/又は被験者が不整脈エピソードを経験すると予想されることを示すように構成されている。いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、AF及び/又は不整脈イベントを、早期心房複合体(APC/PAC)、早期心室複合体(VPC/PVC)、上室性頻拍(SVT)、心房頻拍(AT)、心房粗動、房室結節回帰性頻拍(AVNRT)、発作性上室性頻拍(PSVT)、房室回帰性頻拍、ウォルフパーキンソンホワイト症候群、心室頻拍(VT)、心室性不整脈、QT延長症候群、心臓ブロック、及び/又は洞不全症候群のうち1つ以上として分類するように構成されている。いくつかの実施形態において、制御モジュール18は、被験者のECG信号に基づいて、被験者の副交感神経緊張が大きいか否か及び/又は交感神経緊張が小さいか否か(又はその逆)を導出するように構成されている。
【0225】
[0227] 本発明は、システム、方法、及び/又はコンピュータプログラム製品とすることができる。コンピュータプログラム製品は、本発明の態様をプロセッサに実行させるためのコンピュータ可読プログラム命令を有する1又は複数のコンピュータ可読ストレージ媒体を含み得る。
【0226】
[0228] コンピュータ可読ストレージ媒体は、命令実行デバイスによって用いられる命令を保持及び記憶できる有形デバイスとすることができる。コンピュータ可読ストレージ媒体は例えば、限定ではないが、電子ストレージデバイス、磁気ストレージデバイス、光学ストレージデバイス、電磁ストレージデバイス、半導体ストレージデバイス、又は前述したものの任意の適切な組み合わせとすればよい。コンピュータ可読ストレージ媒体の更に具体的な例の非網羅的なリストは、携帯型コンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、携帯型コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、メモリスティック、フロッピーディスク、命令が記録されている機械的に符号化されたデバイス、及び前述したものの任意の適切な組み合わせを含む。本明細書で用いられる場合、コンピュータ可読ストレージ媒体は、本質的に、電波もしくは他の自由伝搬電磁波、導波路もしくは他の伝送媒体を介して伝搬する電磁波(例えば光ファイバケーブルを進行する光パルス)、又はワイヤを介して伝送される電気信号等、一時的な信号であると解釈されない。むしろ、コンピュータ可読ストレージ媒体は非一時的(すなわち不揮発性)媒体である。
【0227】
[0229] 本明細書に記載されているコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ可読ストレージ媒体から各コンピューティング/処理デバイスにダウンロードするか、又は、例えばインターネット、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、及び/又は無線ネットワーク等のネットワークを介して外部コンピュータもしくは外部ストレージデバイスにダウンロードすることができる。ネットワークは、銅伝送ケーブル、光伝送ファイバ、無線伝送、ルータ、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイコンピュータ、及び/又はエッジサーバを含み得る。各コンピューティング/処理デバイスのネットワークアダプタカード又はネットワークインタフェースは、ネットワークからコンピュータ可読プログラム命令を受信し、コンピュータ可読プログラム命令を各コンピューティング/処理デバイス内のコンピュータ可読ストレージ媒体に記憶するため転送する。
【0228】
[0230] 本発明の動作を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA:instruction-set-architecture)命令、機械命令、機械依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、又は、1つ以上のプログラム言語のいずれかの組み合わせで書かれたソースコードもしくはオブジェクトコードのいずれかとすることができる。これらのプログラム言語は、Java、Smalltalk、C++等のオブジェクト指向プログラミング言語、及び、「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語等の従来の手続き型プログラミング言語を含む。コンピュータ可読プログラム命令は、全体的にユーザのコンピュータ上で、部分的にユーザのコンピュータ上で、スタンドアロンのソフトウェアパッケージとして、部分的にユーザのコンピュータ上で、かつ部分的にリモートコンピュータ上で、又は全体的にリモートコンピュータもしくはサーバ上で、実行され得る。後者の状況において、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介してユーザのコンピュータに接続され得る。あるいは、外部コンピュータに対して(例えばインターネットサービスプロバイダを用いてインターネットを介して)接続してもよい。いくつかの実施形態では、本発明の態様を実行するため、例えばプログラマブル論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field-programmable gate array)、又はプログラマブル論理アレイ(PLA:programmable logic array)を含む電子回路が、コンピュータ可読プログラム命令の状態情報を利用して電子回路を個人向けにすることによって、コンピュータ可読プログラム命令を実行できる。いくつかの実施形態では、例えば特定用途向け集積回路(ASIC:application-specific integrated circuit)を含む電子回路が、製造時にすでにコンピュータ可読プログラム命令を組み込むことにより、ASICがプログラミングなしでこれらの命令を実行するように構成することができる。
【0229】
[0231] 本明細書では、本発明の実施形態に従った方法、装置(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/又はブロック図を参照して、本発明の態様が記載されている。フローチャート図及び/又はブロック図の各ブロック、及びフローチャート図及び/又はブロック図のブロックの組み合わせを、コンピュータ可読プログラム命令によって実施できることは理解されよう。
【0230】
[0232] これらのコンピュータ可読プログラム命令は、汎用コンピュータ、特殊目的コンピュータ、又はマシンを生成する他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサに提供されて、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサを介して実行される命令が、フローチャート及び/又はブロック図の1又は複数のブロックに規定された機能/行為を実施するための手段を生成できるようになっている。また、これらのコンピュータ可読プログラム命令はコンピュータ可読ストレージ媒体に記憶することができ、コンピュータ、プログラマブルデータ処理装置、及び/又は他のデバイスに特定の手法で機能するよう指示することで、命令を記憶しているコンピュータ可読ストレージ媒体が、フローチャート及び/又はブロック図の1又は複数のブロックに規定された機能/行為の態様を実施する命令を含む製造品(article of manufacture)を構成できるようになっている。
【0231】
[0233] また、コンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、又は他のデバイスにロードされて、そのコンピュータ、他のプログラマブル装置、又は他のデバイス上で一連の動作ステップを実行させてコンピュータ実施プロセスを生成することで、そのコンピュータ、他のプログラマブル装置、又は他のデバイス上で実行される命令が、フローチャート又はブロック図の1又は複数のブロックに規定された機能/行為を実施できるようになっている。
【0232】
[0234] 図面におけるフローチャート及びブロック図は、本発明の様々な実施形態に従ったシステム、方法、及びコンピュータプログラム製品の可能な実施例のアーキテクチャ、機能性、及び動作を示している。この点で、フローチャート又はブロック図における各ブロックは、1又は複数の規定された論理機能を実施するための1つ以上の実行可能命令を含む命令のモジュール、セグメント、又は部分を表すことができる。また、ブロック図もしくはフローチャート図の各ブロック、及び/又はブロック図もしくはフローチャート図におけるブロックの組み合わせは、規定された機能もしくは行為を実行するか又は特殊目的ハードウェアとコンピュータ命令の組み合わせを実行する特殊目的ハードウェアベースシステムによって実施できることに留意するべきである。
【0233】
[0235] 記載及び特許請求の範囲において、「実質的に」、「本質的に」という用語、及びそれらの形式(forms)の各々は、数値を記述する場合、その値から20%までの逸脱(すなわち±20%)を意味する。同様に、そのような用語が数値範囲を記述する場合、これは最大で20%拡大した範囲、すなわち、明示された範囲よりも10%大きく10%小さいものを意味する。
【0234】
[0236] 本記載において、所与の数値範囲は、その範囲内の全ての可能な部分範囲(subrange)と個々の数値とを具体的に開示したものと見なさなければならず、そのような部分範囲と個々の数値の各々は本発明の実施形態を構成する。これは、範囲の大きさに関わらず適用される。例えば、1から6までの整数範囲の記述は、例えば1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6等の部分範囲と、例えば1、4、及び6のようなその範囲内の個々の数値とを具体的に開示したものと見なさなければならない。同様に、例えば0.6から1.1までの小数範囲の記述は、例えば0.6から0.9、0.7から1.1、0.9から1、0.8から0.9、0.6から1.1、1から1.1等の部分範囲と、例えば0.7、1、及び1.1のようなその範囲内の個々の数値とを具体的に開示したものと見なさなければならない。
【0235】
[0237] 本発明の様々な実施形態の記述を説明のために提示したが、これは網羅的であることも明示的な記載に限定されることも意図していない。記載された実施形態の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者には多くの変更及び変形が明らかとなろう。本明細書で用いられている専門用語は、実施形態の原理、実用化、もしくは市場で見られる技術に対する技術的改良を最良に説明するために、又は、本明細書に開示されている実施形態を当業者が理解できるように選択した。
【0236】
[0238] 本出願の記載及び特許請求の範囲において、「備える(comprise)」、「含む(include)」、及び「有する(have)」という言葉、並びにその形式の各々は、その言葉を関連付けることができるリスト内の要素(member)に必ずしも限定されない。
【0237】
[0239] 本記載と、援用により本願に含まれるか又は他の方法で参照される文書との間に矛盾がある場合、本記載が制御する(control)ことが意図される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
【国際調査報告】