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特表2024-506477SRセルフセンシングのための電力ベースのパルス注入制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】SRセルフセンシングのための電力ベースのパルス注入制御
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/089 20160101AFI20240206BHJP
【FI】
H02P25/089
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543003
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 US2021064474
(87)【国際公開番号】W WO2022159227
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】17/154,832
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガーデス、ジェシー レイ
(72)【発明者】
【氏名】ソーン、ジェームズ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】カリル、アフメド
(72)【発明者】
【氏名】ワイ、ジャクソン
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥル、サジャン
(72)【発明者】
【氏名】アシュファク、アマラ
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA20
5H501CC04
5H501DD09
5H501FF08
5H501HB07
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501JJ17
5H501LL14
5H501LL22
5H501LL23
5H501LL27
5H501LL35
(57)【要約】
【課題】SRセルフセンシングのための電力ベースのパルス注入制御
【解決手段】中高速および低トルクでのSRモータの回転子位置の電力ベースのセルフセンシングは、モータ電力と注入最大電力とを比較することにより、SRモータ制御システムで実現される。モータ電力が注入最大電力よりも小さいことに応答して、位置電流パルスが固定子極に注入される。位置電流パルスによって生成された実際固定子電流と推定固定子電流とを比較し、実際固定子電流が推定固定子電流と等しくない場合、メモリに記憶された推定回転子位置を新しい推定回転子位置に更新する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム(102)と、前記フレーム(102)を支持する牽引システム(104)と、前記フレーム(102)に取り付けられた動力源(106)とを有する作業機械(100)用の電気駆動システム(108)であって、
固定子(250)および回転子(252)を有するスイッチトリラクタンス(SR)モータ(206)と、
前記動力源(106)および前記SRモータ(206)に動作可能に接続され、前記動力源(106)から前記SRモータ(206)への電力伝達を制御するインバータ(208)と、
前記SRモータ(206)および前記インバータ(208)に動作可能に接続されたコントローラ(200)と、を含み、前記コントローラ(200)は、
前記SRモータ(206)によって出力されるモータ電力を計算し、
前記モータ電力を注入最大電力と比較し、
前記モータ電力が前記注入最大電力よりも小さいことに応答して、前記SRモータ(206)の固定子極(254)に注入される位置電流パルス(306)の位置電流に基づいて、前記SRモータ(206)の推定固定子電流を決定して、前記回転子位置を推定し、
前記モータ電力が前記注入最大電力よりも小さいことに応答して、前記インバータ(208)に、前記位置電流を有する位置電流パルス(306)を前記SRモータ(206)の固定子極(254)に注入させ、
前記位置電流パルス(306)によって生成された前記SRモータ(206)の実際固定子電流を決定し、
前記実際固定子電流を前記推定固定子電流と比較し、
前記実際固定子電流が所定の誤差量よりも大きい誤差量だけ推定固定子電流に等しくないと判定したことに応答して、前記メモリ(204)に記憶された推定回転子位置を新しい推定回転子位置と等しく設定するように構成される、電気駆動システム(108)。
【請求項2】
前記コントローラ(200)は、
前記SRモータ(206)の回転子(252)の推定回転子速度を決定し、
前記推定回転子速度を注入最大回転子速度と比較し、
前記推定回転子速度が前記注入最大回転子速度よりも大きいと判定したことに応答して、前記モータ電力を計算するように構成される、請求項1に記載の電気駆動システム(108)。
【請求項3】
前記コントローラ(200)は、前記推定回転子速度が前記注入最大回転子速度よりも小さいと判定したことに応答して、前記モータ電力を計算するステップを省略するように構成される、請求項2に記載の電気駆動システム(108)。
【請求項4】
前記コントローラ(200)は、
前記SRモータ(206)の前記回転子(252)の前記推定回転子速度を決定し、
前記SRモータ(206)のモータトルクを決定し、
前記推定回転子速度に前記モータトルクを乗じることにより前記モータ電力を計算するように構成される、請求項1に記載の電気駆動システム(108)。
【請求項5】
前記コントローラ(200)は、前記メモリ(204)に記憶された推定回転子速度を読み取ることによって前記推定回転子速度を決定するように構成される、請求項4に記載の電気駆動システム(108)。
【請求項6】
前記コントローラ(200)は、
前記モータ電力が前記注入最大電力よりも大きいことに応答して、前記SRモータ(206)の前記固定子極(254)に注入される指令電流パルス(304)の指令電流に基づいて、前記SRモータ(206)の推定固定子電流を決定して、前記回転子位置を推定し、
前記モータ電力が前記注入最大電力よりも大きいことに応答して、前記インバータ(208)に、前記指令電流を有する指令電流パルス(304)を前記SRモータ(206)の前記固定子極(254)に注入させ、
前記指令電流パルス(304)によって生成された前記SRモータ(206)の実際固定子電流を決定するように構成される、請求項1に記載の電気駆動システム(108)。
【請求項7】
前記コントローラ(200)は、前記指令電流パルス(304)によって生成された前記SRモータ(206)の実際固定子電流を決定するように構成される、請求項6に記載の電気駆動システム(108)。
【請求項8】
作業機械(100)であって、
フレーム(102)と、
前記フレーム(102)を支持する牽引システム(104)と、
前記フレーム(102)に取り付けられた動力源(106)と、
請求項1に記載の電気駆動システム(108)と、を含む、作業機械(100)。
【請求項9】
スイッチングリラクタンス(SR)モータ(206)の回転子(252)の回転子位置をセルフセンシングするための方法であって、
前記SRモータ(206)によって出力されるモータ電力を計算するステップと、
前記モータ電力を注入最大電力と比較するステップと、
前記モータ電力が前記注入最大電力よりも小さいことに応答して、前記SRモータ(206)の前記固定子極(254)に注入される位置電流パルス(306)の位置電流に基づいて、前記SRモータ(206)の前記推定固定子電流を決定して、前記回転子位置を推定するステップと、
前記モータ電力が前記注入最大電力よりも小さいことに応答して、前記位置電流を有する位置電流パルス(306)を前記SRモータ(206)の前記固定子極(254)に注入するステップと、
前記位置電流パルス(306)によって生成された前記SRモータ(206)の実際固定子電流を決定するステップと、
前記実際固定子電流を前記推定固定子電流と比較するステップと、
前記実際固定子電流が所定の誤差量よりも大きい誤差量だけ前記推定固定子電流と等しくないと判定したことに応答して、前記記憶された推定回転子位置を新しい推定回転子位置と等しく設定するステップと、を含む、方法。
【請求項10】
前記SRモータ(206)の前記回転子(252)の推定回転子速度を決定するステップと、
前記推定回転子速度を注入最大回転子速度と比較するステップと、
前記推定回転子速度が前記注入最大回転子速度よりも大きいと判定したことに応答して、前記モータ電力を計算するステップを実行するステップと、を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記推定回転子速度が前記注入最大回転子速度よりも小さいと判定したことに応答して、前記モータ電力を計算するステップを省略するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記SRモータ(206)の前記回転子(252)の推定回転子速度を決定するステップと、
前記SRモータ(206)の前記モータトルクを決定するステップと、を含み、
前記モータ電力を計算するステップは、前記推定回転子速度に前記モータトルクを乗じることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記推定回転子速度を決定するステップは、前記メモリ(204)に記憶された推定回転子速度を読み取ることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記モータ電力が前記注入最大電力よりも大きいことに応答して、前記SRモータ(206)の前記固定子極(254)に注入される指令電流パルス(304)の指令電流に基づいて、前記SRモータ(206)の推定固定子電流を決定して、前記回転子位置を推定するステップと、
前記モータ電力が前記注入最大電力よりも大きいことに応答して、前記指令電流を有する指令電流パルス(304)を前記SRモータ(206)の前記固定子極(254)に注入するステップと、
前記指令電流パルス(304)によって生成された前記SRモータ(206)の実際固定子電流を決定するステップと、を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記指令電流パルス(304)によって生成された前記SRモータ(206)の実際固定子電流を決定するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して制御システムに関し、より具体的には、回転子位置セルフセンシングを有するスイッチトリラクタンスモータ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック式トラクタ、掘削機等のような多くの作業機械は、作業機械を位置間で再配置または移動させることを可能にする動力源に接続された変速機を含むことができる。省エネや化石燃料の使用回避への関心が高まる中、動力源としてモータを使うことが一般的になってきている。電気モータは、バッテリーなどのエネルギー源からの電気エネルギーを機械エネルギーに変換して作業機械を駆動する。
【0003】
スイッチトリラクタンス(SR)モータとして知られる電気モータの1種は、その頑丈で堅牢な構造により、上記作業機械などの様々な用途に広く使用されている。SRモータは、回転子と、巻線を有する複数の固定子極を有する固定子とを含む。通常のブラシ付きDCモータタイプとは異なり、電力は回転子ではなく、SRモータの固定子の巻線に伝送される。この構成では、電力を移動部品に伝送する必要がないので、機械設計を大幅に簡略化したが、さまざまな巻線に電力を伝送するために何らかのスイッチングシステムを使用する必要があるので、電気設計が複雑になる。SRモータの中には、直接角度位置センサを用いることなく、固定子に対する回転子の位置を推定するセルフセンシング動作を有する制御システムを有するものもある。必要最小限のパッケージサイズ、高信頼性、低コストの必要性から、セルフセンシング動作は多くの用途において重要である。すべての動作速度で回転子の角度位置を正確に決定することは、モータの性能と効率に不可欠である。
【0004】
このようなセルフセンシング制御システムは、米国特許第10,079,566号に記載されている。しかし、SRモータの負荷が小さい中速および高速では、セルフセンシング制御システムが回転子の位置を推定するために回転子を回転させるために必要な電力が低いため、固定子に十分な電流が流れない可能性があり、その結果、正しいタイミングで固定子極の巻線に指令電流が伝達されない危険性が生じ、SRモータの性能および効率に悪影響を及ぼす。したがって、中高速/低トルク動作中に正確なセルフセンシング動作を提供するSRモータの制御システムが依然として必要である。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様では、作業機械が開示される。作業機械は、動力源と、固定子および回転子を有するSRモータと、動力源およびSRモータに動作可能に接続され、動力源からSRモータへの電力伝達を制御するインバータと、SRモータおよびインバータに動作可能に接続されたコントローラとを含んでもよい。コントローラは、SRモータによって出力されるモータ電力を計算し、モータ電力を注入最大電力と比較し、SRモータの固定子極に注入される位置電流パルスの位置電流に基づいてSRモータの推定固定子電流を決定し、モータ電力が注入最大電力よりも小さいことに応答して回転子位置を推定するように構成されてもよい。コントローラはさらに、モータ電力が注入最大電力よりも小さいことに応答して、インバータに位置電流を有する位置電流パルスをSRモータの固定子極に注入させ、位置電流パルスによって生成されたSRモータの実際固定子電流を決定し、実際固定子電流を推定固定子電流と比較し、実際固定子電流が所定の誤差量よりも大きい誤差量だけ推定固定子電流に等しくないと判定したことに応答して、メモリに記憶された推定回転子位置を新しい推定回転子位置と等しく設定するように構成されてもよい。
【0006】
本開示の別の態様では、SRモータの回転子の回転子位置をセルフセンシングするための方法が開示される。この方法は、SRモータによって出力されるモータ電力を計算するステップと、モータ電力を注入最大電力と比較するステップと、SRモータの固定子極に注入される位置電流の位置電流に基づいてSRモータの推定固定子電流を決定するステップと、モータ電力が注入最大電力よりも小さいことに応答して回転子位置を推定するステップと、位置電流パルスをSRモータの固定子極に注入するステップと、位置電流パルスによって生成されるSRモータの実際固定子電流を決定するステップと、実際固定子電流を推定固定子電流と比較するステップと、実際固定子電流が所定の誤差量よりも大きい誤差量だけ推定固定子電流に等しくないと判定するステップと、記憶された推定回転子位置を新しい推定回転子位置として設定するステップとを含んでもよい。
【0007】
本開示の別の態様では、作業機械用の電気駆動システムが開示される。作業機械は、フレームと、フレームを支持する牽引システムと、フレームに取り付けられた動力源とを有してもよい。電気駆動システムは、固定子および回転子を有するSRモータと、動力源およびSRモータに動作可能に接続され、動力源からSRモータへの電力伝達を制御するインバータと、SRモータに動作可能に接続された電流センサと、SRモータ、インバータおよび電流センサに動作可能に接続されたコントローラとを含んでもよい。コントローラは、SRモータによって出力されるモータ電力を計算し、モータ電力を注入最大電力と比較し、モータ電力が注入最大電力よりも小さいことに応答して、SRモータの固定子極に注入される位置電流の位置電流に基づいてSRモータの推定固定子電流を決定して回転子位置を推定し、モータ電力が注入最大電力よりも小さいことに応答して、インバータに位置電流を有する位置電流パルスをSRモータの固定子極に注入させ、電流センサからの電流センサ信号に基づいて位置電流パルスによって生成されるSRモータの実際固定子電流を決定し、実際固定子電流を推定固定子電流と比較し、実際固定子電流が所定の誤差量よりも大きい誤差量だけ推定固定子電流に等しくないと判定したことに応じて、メモリに記憶された推定回転子位置を新しい推定回転子位置として設定するように構成されてもよい。
【0008】
追加の態様は、本特許の請求項により限定される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示によるSRモータのSRセルフセンシングのための電力ベースのパルス注入制御が実施され得る例示的な作業機械の側面図である。
図2図1の作業機械の例示的な電気駆動システムのブロック図である。
図3図1の作業機械のSRモータの固定子および回転子の模式図である。
図4】低速および高負荷状態における図3の回転子位置とSRモータに対する電流およびインダクタンスとをプロットしたグラフである。
図5】中高速および高負荷状態における図3の回転子位置とSRモータに対する電流およびインダクタンスとをプロットしたグラフである。
図5A】中高速および高負荷状態における図3の時間とのSRモータに対する電流およびインダクタンスとをプロットしたグラフである。
図6図3の回転子速度とSRモータのモータトルクとをプロットしたグラフである。
図7】本開示による電力ベースの注入セルフセンシング領域を含む図6のグラフである。
図8】低速および低負荷状態における図3の回転子位置とSRモータに対する電流およびインダクタンスとをプロットしたグラフである。
図9】中高速および低負荷状態における図3の回転子位置とSRモータに対する電流およびインダクタンスとをプロットしたグラフである。
図9A】中高速度および低負荷状態における図3の時間とSRモータに対する電流およびインダクタンスとをプロットしたグラフである。
図10図3のSRモータのための本開示による例示的なSR回転子位置セルフセンシングルーチンの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、SRモータ制御システムに関する。SRモータ制御システムは、このようなSRモータ制御システムを使用するあらゆる機械に対しても汎用性を有する。「機械」という用語は、鉱業、建設、農業、輸送またはその他の産業のような、産業に関連する操作を行う機械を意味することができる。いくつかの例として、機械は、車両、バックホーローダ、コールドプレーナ、ホイールローダ、コンパクタ、フェラーバンチャー、林業機械、フォワーダ、収穫機、掘削機、産業用ローダ、ナックルブームローダ、マテリアルハンドラ、モーターグレーダ、パイプ敷設機、道路回収機、スキッドステアローダ、スキダー、テレハンドラー、トラクタ、ブルドーザ、トラクタショベルなどであり得る。さらに、1つ以上のツールを機械に接続し、本明細書で説明するスイッチトリラクタンスモータ制御システムに関連する電気モータを使用して制御することができる。
【0011】
図1は、本開示によるSRモータ制御システムを含むことができる例示的な作業機械100の図である。作業機械100はトラック式トラクタとして示されているが、作業機械100のスイッチトリラクタンスモータを制御可能なSRモータ制御システムを有する機械であってもよい。図示するように、作業機械100は、フレーム102と、フレーム102を支持する牽引システム104と、フレーム102に支持された動力源106と、動力源106から牽引システム104にエネルギーを伝達するように構成された電気駆動システム108と、を備える。作業具110、例えば、図示のブレードに限定されないが、フレーム102に接続することができ、電気駆動システム108によって電力を供給することができる。作業機械100は、動作室112をさらに含んでもよい。動力源106は、作業機械100に電力を供給するとともに、電力駆動システム108の推進のための作動電力を供給するように構成されている。動力源106は、直流(DC)動力源、オットサイクルまたはディーゼルサイクルエンジンなどであってもよい。動力源106は、動作室112内のオペレータコントロール(図示せず)から制御信号を受信するように動作可能に配置されている。また、動力源106は、作業機械100の他のシステムに電力を供給するように動作可能に構成されている。
【0012】
電気駆動システム108は、動作室112内のオペレータからの制御信号を介して作業機械100を選択的に推進するために、動力源106と共に動作可能に構成され得る。電気駆動システム108は、牽引システム104に動作可能に接続され、牽引システム120は、車軸、駆動軸、変速機、および/または他のコンポーネントを介して作業機械100に移動可能に接続され得る。いくつかの実装形態では、牽引システム104は、車輪駆動システムまたは地面に係合して作業機械100を推進するように構成された任意の他のタイプの駆動システムも可能であるが、図示のトラック駆動システムの形態で提供することができる。
【0013】
いくつかの実装形態では、電気駆動システム108は、追加的にまたは代替的に、作業機械100および電気駆動システム108に移動可能に接続され得る作業具110を選択的に動作させるように構成されてもよい。図示された作業具110はトラクタローダの形態で作業機械100に取り付けられたブレードであるが、もちろん、他の実施形態では、様々なタスク、例えば、ドージング、ブラッシング、圧縮、採掘、整地、持ち上げ、引き裂き、耕起などのための任意の他の適切な作業具を含むことができる。上記したように、図1は、本開示によるSRモータおよびSRモータ制御システムを利用することができる作業機械100の一例として提供される。他の例も可能であり、依然としてSRモータ制御システムを実装している理由は、図1に関連して説明したものとは異なる場合がある。
【0014】
図2は、本開示によるSRモータ制御システムを実装することができる電気駆動システム108のコンポーネントの例示的な構成図である。電気駆動システム108は、1つ以上のプロセッサ202およびメモリ204を有するコントローラ200と、モータ206と、インバータ208と、複数のセンサ210とを含んでもよい。モータ206は、例えば、図3に示すSRモータ206であり、以下でより詳細に説明する。プロセッサ202は、ハードウェア、ファームウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせで実装される。プロセッサ202は、中央処理装置(CPU)、グラフィックス処理装置(GPU)、加速処理装置(APU)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、または他のタイプの処理コンポーネントであってもよい。いくつかの実装形態では、プロセッサ202は、機能を実行するようにプログラムされ得る1つ以上のプロセッサを含む。メモリ204は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、および/または、プロセッサ202によって使用されるための情報および/または命令を格納する他のタイプの動的または静的記憶デバイス(例えば、フラッシュメモリ、磁気メモリ、および/または光学メモリ)を含んでもよい。
【0015】
いくつかの実装形態では、コントローラ200は、作業機械100および/またはSRモータ206の電子制御ユニット(ECU)、電子制御モジュール(ECM)、および/または類似のものであってもよい。プロセッサ202は、インバータ208、SRモータ206、および/または同様の動作を制御するなど、作業機械100の1つ以上のコンポーネントを制御するための1つ以上の命令および/または指令を実行することができる。メモリ204は、プロセッサ202による実行のためのプログラムコードを記憶することができ、および/または、本開示によるSRモータ制御システムのためのプログラムコードのような、プロセッサ202によるそのようなプログラムコードの実行に関連するデータを記憶することができる。
【0016】
コントローラ200は、作業機械100の種々のコンポーネントから1つ以上の入力信号を受信し、(例えば、入力信号をプログラムの入力として使用してプログラムを実行することによって)1つ以上の入力信号に対して動作して1つ以上の出力信号を生成し、1つ以上の出力信号を作業機械100の種々のコンポーネントに出力することができる。例えば、コントローラ200は、SRモータ206、インバータ208、1つ以上のセンサ210、および/または類似のものに電子的に(例えば、有線または無線で)接続されてもよい。コントローラ200は、センサ210、オペレータ、および/または作業機械100の他のシステムから入力を受信するように構成されている。コントローラ200は、これらの入力に基づいて、必要に応じてSRモータ206に電力を供給するようにインバータ208に指令する。これには、本明細書で説明されるように、起動時のプライミング指令、動作中のスイッチング指令、およびSRモータ制御システムに必要な他の指令が含まれる。
【0017】
インバータ208は、動力源106およびSRモータ206に電気的に接続可能であり、コントローラ200の指令に従ってSRモータ206に電流を供給する。いくつかの実装形態では、インバータ208は、動力源106から直流電流を受け取ることができ、コントローラ200からのスイッチング指令に基づいて、スイッチングされた直流電流をSRモータ206に供給するために直流電流の位相を制御することができる。付加的にまたは代替的に、インバータ208は、回転位置センサを使用せずにSRモータ206の角度位置を決定することを可能にするために、SRモータ206へのプライミング電圧および電流、または位置センシング電圧および電流の供給に関連する指令を受信することができる。いくつかの実装形態では、電流の各相は、独立して並列に制御されてもよい。当業者であれば、本明細書に示され、説明される制御機能は、コントローラ200において集中されてもよく、コントローラ200と他の「インテリジェント」デバイスとの間に分散されてもよいことを理解する。例えば、代替実施形態では、インバータ208は、コントローラ200からの指令に応答してインバータ208の動作を制御するコントローラ(例えば、電流コントローラ、位相コントローラ等)を含んでもよい。このような変形例は発明者らによって想定されている。
【0018】
センサ210は、作業機械100の状態に関する情報を提供するセンサデバイスのセットを含んでもよい。例えば、センサ210は、SRモータ206における電流を監視し、SRモータ206のいくつかの相のそれぞれにおける電流に関する情報をコントローラ200に通信する電流センサ212を含んでもよい。コントローラ200によって実行されるSRモータ制御システムは、電流センサ212からの相電流の値に基づいて、位置センサを用いることなくSRモータ206の角度位置の推定値を決定し、角度位置の推定値に基づいてスイッチング指令を決定し、スイッチング指令を用いてSRモータ206の動作を制御することができる。センサ210は、他のセンサに加えて、次にSRモータ206の相電流を推定するために使用される磁束を推定するために使用される相電圧を検知するDCリンク電圧センサ214と、作業機械100の動作に必要な任意の他のセンサ210とを含んでもよい。
【0019】
図3は、例示的なSRモータ206の動作コンポーネントを概略的に示す。SRモータ206は、外側固定子250と内側回転子252とを含む。固定子250は、SRモータ206のハウジング(図示せず)に対して静止したままであり、回転子252はその中で回転可能である。固定子250は、内面256の周りに周方向に間隔をおいて配置された複数の固定子極254A、254B、254Cを有する。図示するように、固定子極254A、254B、254Cは、径方向において互いに対向するように対をなして配置されている。ブラシ付きDCモータとは異なり、電力は回転子252ではなく固定子250に伝送されるため、機械的設計は単純化されるが、インバータ208が固定子極254A、254B、254Cに順次電力を伝送するためにスイッチングシステムを必要とするため、電気的設計は複雑化される。固定子極254A、254B、254Cの各対は、回転子252を回転させるための磁界を生成するために、インバータ208から同相電流を受け取る対応する巻線(図示せず)を有する。図示の例では、固定子極254Bへの電流は固定子極254Aへの電流と60°位相が異なり、固定子極254Cへの電流は固定子極254Aへの電流と120°位相が異なるがある。
【0020】
図示された実施形態における回転子252は、強磁性金属、合金、または他の材料で製造することができ、回転子軸258を中心に回転可能である。回転子252は、周囲および回転子軸258の周りに周方向に間隔をおいて配置された複数の回転子歯260A、260Bを有する。回転子歯260A、260Bは対をなして配置され、固定子極254A、254B、254Cで電流により生成する磁界と相互作用して、回転子歯260A、260Bが固定子極254A、254B、254Cに引き寄せられたり反発したりするとき、回転子軸258を中心とした回転子252の回転速度および回転方向を制御する。固定子250および回転子252の構成は例示的であり、当業者であれば、SRモータ206は、回転子252の回転を制御するために固定子極254および回転子歯260の代替的な組み合わせを有してもよいことを理解する。本発明者らは、これらの代替的な組み合わせが、本開示による電力ベースのパルス注入制御とともに使用されることを期待することを理解する。
【0021】
SRモータ206は、固定子250に対してインダクタンスが最大となる位置に回転子252が移動する傾向で動作する。一対の回転子歯260A、260Bと一対の通電された固定子極254A、254B、254Cとの位置合わせにおいて、最大インダクタンスの位置が現れる。この磁気吸引は、回転子252を回転させ、最大インダクタンス位置に向かって移動させるトルクを発生する。固定子極254A、254B、254Cの各対に電力が伝送され、回転子252がそれに合わせて移動すると、次の固定子極254A、254B、254Cは、回転子252の移動を継続し、角運動量を維持するように順に通電される。このように、どの固定子極254A、254B、254Cに通電しているか、通電していないか、どの相かを切り替えるこのパターンは、このようなモータの動作を複雑にする。SRモータ206の適切な動作は、各固定子極254A、254B、254Cへの通電の適切なタイミングに依存する。このタイミングは、固定子250に対する回転子252の角度位置によって駆動される。
【0022】
図4は、特定の間隔で固定子極254A、254B、254Cに電流を供給して、回転子252を図に示すように反時計回りに回転させることによってSRモータ206を制御することをグラフで示している。グラフ300は、SRモータ206が全負荷で低速動作している状態で、固定子極254Aの巻線に伝導される電流Iに対する回転子252の角度位置θの関係を示している。固定子250および回転子252は、グラフ300の下に、回転子252が45°ずつ回転する系列で示されている。0°の位置では、回転子歯260Aは固定子極254Aに位置合わせられている。この位置では、回転子歯260Aが固定子極254Aと位置合わせられているので、固定子極254Aと回転子252との間の機械インダクタンスLは、インダクタンス曲線302上で最大インダクタンスL最大となる。回転子歯260Aが固定子極254Aから等距離にある場合、回転子歯260Aが固定子極254Aと位置合わせされていないように回転するので、インダクタンスLは45°回転後に最小インダクタンスL最小に達するまで減少する。SRモータ206は、回転子252が最小インダクタンスL最小と最大インダクタンスL最大との間で回転している間、固定子極254Aへの電流が回転子252に回転方向の駆動トルクを発生させる駆動トルク領域MTZにある。逆に、回転子252が最大インダクタンスL最大と最小インダクタンスL最小との間で回転している間、SRモータ206は、固定子極254Aへの電流が回転子252に回転方向とは逆方向の制動トルクを発生させる制動トルク領域RTZにある。当業者であれば、駆動トルク領域MTZおよび制動トルク領域RTZは方向依存性であり、SRモータ206が逆方向に動作すると逆方向になることが理解される。回転子252は、回転子歯260Aが固定子極254Aに位置合わせられているときまたは位置合わせされていないときに、最大インダクタンスH最大と最小インダクタンスH最小との間のサイクルを継続する。
【0023】
回転子252の反時計回り方向の回転は、駆動トルク領域MTZにおいて固定子極254Aに指令電流I指令が伝達されることにより維持される。SRモータ206を動作させるために必要な指令トルクT指令および指令電流I指令は、オペレータの入力および作業機械100における現在の動作状態に基づいて、コントローラ200のSRモータ制御システムによって決定され得る。回転子252が45°位置を通過すると、回転子歯260Aは固定子極254Aからさらに離れるように回転し、回転子歯260Bは固定子極254Aに向かって回転する。コントローラ200は、回転子252が指令電流オン位置θオンに達すると、指令電流オフ位置θオフまでインバータ208に固定子極254Aの巻線に指令電流パルス304を伝導させ、回転子歯260Bを固定子極254Aに引き寄せる磁界を発生させる。コントローラ200は、指令電流I指令の値と、位置θオンとθオフとの間の滞留期間とを必要に応じて制御することにより、回転子252の角速度ωを増加させるか、減少させるか、または一定に保つかを制御する。SRモータ206の速度と負荷を一定に保つと、ほぼ90°間隔で同様の指令電流パルス304が現れる。固定子極254B、254Cは、固定子極254Aへの指令電流パルス304とそれぞれ60°および120°位相が異なる指令電流パルス304によって同様に制御される。当業者であれば、コントローラ200は、指令電流パルス304のタイミング、持続時間、および極性を変化させて、回転子252の回転を加速、減速または反転させ、SRモータ206の動作を制御することが理解される。
【0024】
SRモータ206の効率的な動作は、回転子252の回転中に正しい指令電流オン位置θオンで指令電流パルス304A、304B、304Cが開始されるように、回転子252の位置を知ることに依存する。従来技術のSRモータ206の中には、固定子250に対する回転子252の位置を検出するために位置センサを使用するものがあるが、セルフセンシング動作は、SRモータ206の最小パッケージサイズ、高信頼性、および低コストの必要性から、様々な用途に重要である。SRモータ206の信頼性が高く正確な位置センシングは、低コストで高性能なSR作業機械駆動を開発するための重要なステップである。回転子252の角度位置ωをセルフセンシングするための1つの戦略は、位置電流I位置を有する位置電流パルス306を、指令電流パルス304が固定子極254A、254B、254Cによって生成されない注入ウィンドウIWの間に固定子極254A、254B、254Cに注入することを含む。位置電流パルス306のタイミングは、メモリ204に記憶された推定回転子位置θ推定および推定回転子速度ω推定に基づいている。次に、位置電流パルス306の時点での推定回転子位置θ推定に対して、対応するステータ極254A、254B、254Cを流れる推定固定子電流I推定が、オブザーバベースの推定アプローチを使用して決定される。位置電流パルス306の位置電流I位置は、電流センサ212によって測定された電流の測定可能な変化を引き起こすのに十分な大きさを有することができるが、セルフセンシング回転子位置θの利点を超える、SRモータ206の性能に影響を及ぼすのに十分なほど著しい、回転子252上の寄生制動トルクを生じさせない。コントローラ200は、推定固定子電流I推定を電流センサ212から受信した実際固定子電流I実際と比較して誤差信号を生成する。誤差信号は、後続の指令電流パルス304のタイミングをとるためにメモリ204に記憶され得る回転子252の更新された推定回転子位置θ推定および更新された推定回転子速度ω推定を計算するために使用される。
【0025】
推定回転子位置θ推定を決定する戦略は、低速では良好に動作するが、高い動作速度では困難になる可能性がある。SRモータ206のより高い動作速度での固定子極254Aのグラフ300を示す図5に示すように、指令電流オン回転子位置θオンは、指令電流パルス304が適切な回転子位置θでの指令電流I指令に到達して、対応する回転子歯260A、260Bを固定子極254Aに引き寄せることができるように、制動トルク領域RTZ内に現れる。指令電流オン回転子位置θオンの場所およびタイミングにより、位置電流パルス306の注入ウィンドウIWの機会が大幅に減少または排除される。図5Aは、図4の回転子速度ωよりも約5倍大きい回転子速度ωを表すために回転子位置軸が時間軸に変更されたグラフ300を示す。この図は、位置電流パルス306を注入する時間を、位置電流パルス306を注入する回転子位置θの範囲とともに大幅に短縮することができることを示している。
【0026】
図6は、既知の位置セルフセンシング戦略のグラフ320である。グラフ320は、例示的なSRモータ206のモータ速度ωとモータトルクTとの関係を表す。電力曲線322は、モータトルクTと回転子速度ωとの組み合わせについて、SRモータ206の最大動作電力P最大を表す。SRモータ206は、最大出力トルクT最大を有する低速域322と、モータトルクTにモータ速度ωを乗じたものに等しい一定の最大出力を有する中速または中間速域322と、電流が完全にゼロになることがなく、中速域322とは異なる機械電力曲線形状をもたらす高速域322または連続伝導領域と、を有する。例示的なSRモータ206では、速度ベースの注入セルフセンシング領域324において、上記の位置セルフセンシングを低速域322から注入最大回転子速度ω注入最大まで実行することができる。注入最大回転子速度ω注入最大を超えると、モータ位置のセルフセンシングは、主指令電流パルス304A、304B、304Cに基づいて、測定されたインダクタンスHまたは磁束流量を評価するのと同様の戦略を用いて、主電流ベースのセルフセンシング領域326で実行され得る。
【0027】
主電流ベースの位置セルフセンシングのための方法は、SRモータ206への最小電流を必要とする。非常に低いトルク負荷および中高速の回転子速度では、負荷を駆動するために必要な電力は比較的低く、回転子速度ωは低い指令電流I指令で維持することができる。回転子252を回転させるのに必要な指令電流I指令は、注入、測定、および比較のプロセスのために適切に動作するには低すぎる可能性があり、コントローラ200が回転子252の位置を決定することができない不感帯を生じさせる。SRモータ206を最適に動作させるためには、低トルク/中高速の状態下での低電力要件であっても、回転子位置θに関する最新の情報を保持することが望ましい。
【0028】
本開示によるSRモータ206のためのSRモータ制御システムは、コントローラ200によって実装することができ、SRモータ206が中高速かつ低トルクで動作しているときに推定回転子位置θ推定を決定するように構成される。図7に示すように、グラフ320の位置セルフセンシング戦略は、SRモータ206が低トルク負荷を駆動する注入最大回転子速度ω注入最大よりも大きい推定回転子速度ω推定で主電流ベースのセルフセンシング領域326から切り取った電力ベースの注入セルフセンシング領域328を含むように変更される。電力ベースの注入セルフセンシング領域328は、以下でさらに議論されるように、コントローラ200が位置電流パルス306を注入することができる注入最大電力P注入最大を示すセルフセンシング電力曲線330によって定義される。SRモータ206が動作しているときに、SRモータ206を制御するための指令トルクT指令とメモリ204に記憶された推定回転子速度ω推定との積としてモータ電力Pモータを計算することができる。推定回転子速度ω推定が注入最大回転子速度ω注入最大よりも大きく、モータ電力Pモータが注入最大モータ電力P注入最大よりも小さい場合、推定モータ位置θ推定は、固定子極254A、254B、254Cにおける位置電流パルス306を用いて決定することができる。
【0029】
図8は、SRモータ206が低い回転子速度ωおよび低いトルクTで動作することができる固定子極254Aのグラフ340を示す。モータ速度ωモータが注入最大回転子速度ω注入最大よりも小さい場合、またはモータ電力Pモータが注入最大モータ電力P注入最大よりも小さい場合、位置電流パルス306を用いて位置セルフセンシングを行うことができる。現在のモータ動作状態が注入セルフセンシング領域324、328のいずれかにある場合、上記したように、位置電流パルス306は注入ウィンドウIWの間に注入される。位置電流パルス306は、同様にして固定子極254B、254Cに注入される。
【0030】
固定子極254Aのグラフ340は、SRモータ206のトルクが低い中高回転子速度ωについて図9に示されている。指令電流I指令が高トルクの場合よりも低いので、指令電流パルス304の指令電流オン回転子位置θオンは、制動トルク領域RTZの後半で現れる可能性がある。指令電流パルス304の後の注入は、位置電流パルス306を注入するのに十分な大きさの注入ウィンドウIWの機会をもたらす。この機会は、図9Aに示されるグラフ340の時間領域バージョンにおいても明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
図10は、本開示によるSRモータ制御システムの一部として実装され得る例示的なSR回転子位置セルフセンシングルーチン400を示す。ルーチン400は、図7のグラフ320に示すように、低回転子速度および低電力動作状態でのセルフセンシング注入ベースの回転子位置センシングを可能にすることができる。ルーチン400は、ブロック402で開始することができ、ブロック402では、コントローラ200は、SRモータ206の回転子252の推定回転子速度ω推定を決定してもよい。上記したいくつかの実施形態では、推定回転子位置θ推定が最後に更新されてメモリ204に記憶されると、推定回転子速度ω推定が予め計算されてもよい。これらの実装形態では、記憶された推定回転子速度ω推定は、ルーチン400のためにメモリ204から取得されてもよい。他の実装形態では、推定回転子速度ω推定は、電流センサ212からの信号のデータ、または回転速度センサ(図示せず)などの他のセンサ210から提供されるデータなどの利用可能なデータからリアルタイムで決定されてもよい。
【0032】
ブロック402において推定回転子速度ω推定が取得または計算された後、制御はブロック404に進み、推定回転子速度ω推定と注入最大回転子速度ω注入最大とを比較することにより、速度ベースの注入セルフセンシング領域324においてSRモータ206が作動しているか否かを判定してもよい。推定回転子速度ω推定が注入最大回転子速度ω注入最大よりも小さい場合、SRモータ206は速度ベースの注入セルフセンシング領域324で動作し、位置電流パルス306を注入して、現在の推定回転子速度ω推定が正確であるか否かを判定してもよい。この場合、ルーチンは、SRモータ206が電力ベースの注入セルフセンシング領域328内で動作しているか否かを判定するステップをバイパスして、注入ベースの回転子位置セルフセンシングのステップに進んでもよい。
【0033】
推定回転子速度ω推定が注入最大回転子速度ω注入最大よりも大きい場合、SRモータ206は中高回転子速度ωを有し、速度ベースの注入セルフセンシング領域324では動作しない。逆に、SRモータ206は、主電流ベースのセルフセンシング領域326または電力ベースの注入セルフセンシング領域328で動作する。中高回転子速度ωでは、制御はブロック406に進み、ブロック406では、SRモータ206の現在のモータ電力Pモータは、ブロック402において以前に決定された推定回転子速度ω推定に指令トルクT指令を乗じることによって決定される。
【0034】
ブロック406でモータ電力Pモータが決定された後、制御はブロック408に進み、ブロック408では、計算されたモータ電力Pモータを注入最大電力P注入最大と比較し、SRモータ206がセルフセンシング領域326、328のうちのどの領域で動作しているかを決定する。モータ電力Pモータが注入最大電力P注入最大よりも大きい場合、SRモータ206はセルフセンシング電力曲線330上で、かつ主電流ベースのセルフセンシング領域326で動作する。この場合、制御は、ブロック408からブロック410に進み、ブロック410では、コントローラ200は、回転子252を駆動するために固定子極254A、254B、254Cによって出力される指令電流パルス304の指令電流I指令に基づいて推定固定子電流I推定を決定する。推定固定子電流I推定は、上記したオブザーバベースの推定方法、または指令電流パルス304の間にSRモータ206を流れる電流を決定するための他の任意の適切な方法を使用して、コントローラ200によって決定してもよい。ブロック410が推定固定子電流I推定を決定した場合、制御はブロック412に進んでもよく、ブロック412では、コントローラ200は、指令電流オン回転子位置θオンでインバータ208に指令電流パルス304を対応する固定子極254A、254B、254Cに注入させ、指令電流オフ回転子位置θオフで指令電流I指令をカットオフさせる。
【0035】
ブロック410でモータ電力Pモータが注入最大電力P注入最大よりも小さい場合、SRモータ206はセルフセンシング電力曲線330の下で、かつ電力ベースの注入セルフセンシング領域328で動作する。これらの状態では、制御はブロック410からブロック414に進み、ブロック414では、コントローラ200は、推定回転子位置ω推定を決定するために、固定子極254A、254B、254Cによって出力される位置電流パルス306の位置電流I指令に基づいて推定固定子電流I推定を決定する。推定固定子電流I推定は、上記したオブザーバベースの推定方法、または位置電流パルス306の間にSRモータ206に流れる電流を決定するための他の任意の適切な方法を使用して、コントローラ200によって決定してもよい。ブロック414が、推定固定子電流I推定を決定した場合、制御は、ブロック416に進んでもよく、ブロック416では、コントローラ200は、インバータ208に、注入ウィンドウIW内で位置電流パルス306を対応する固定子極254A、254B、254Cに注入させる。
【0036】
ブロック412において指令電流パルス304が注入された後であっても、ブロック416において位置電流パルス306が注入された後であっても、制御はブロック418に進んでもよく、ブロック418では、コントローラ200は、電流パルス304、306の間にSRモータ206を流れる実際固定子電流I実際を決定する。実際固定子電流I実際は、上記したように、電流センサ212によって検出されてコントローラ200に伝導される電流であってもよい。代替の実施形態では、実際電流I実際は、他の既知の方法によって決定されてもよい。ブロック418で実際電流I実際が決定された後、制御はブロック420に進んでもよく、ブロック420では、コントローラ200は、実際電流I実際を推定電流I推定と比較してもよい。上記したように、電流比較は誤差信号を生成することができる。生成された誤差信号が、ブロック420において、電流I実際、I推定が等しいか、または許容誤差範囲内であることを示す場合、制御は、メモリ204に記憶された推定回転子位置θ推定を更新することなくブロック402に戻り、ルーチン400における回転子位置セルフセンシングの次のサイクルを開始してもよい。生成された誤差信号が、電流I実際、I推定が等しくなく、かつ、その差がブロック420における許容誤差範囲よりも大きいことを示す場合、制御はブロック422に進んでもよく、ブロック422では、メモリ204に記憶された推定回転子位置θ推定を、実際固定子電流I実際によって示される新しい推定回転子位置θ推定に更新する。誤差信号は、回転子252の新しい推定回転子位置θ推定および新しい推定回転子速度ω推定を計算するために使用され、これら2つの値は、後続の指令電流パルス304のタイミングをとるためにメモリ204に記憶されてもよい。推定回転子位置θ推定がメモリ204に記憶された後、制御はブロック402に戻って、ルーチン400における回転子位置セルフセンシングの次のサイクルを開始してもよい。
【0037】
本開示によるSRモータ制御システムは、土工設備、建設、農業、鉱業などを含むがこれらに限定されない多くの異なる産業に適用することができる。より具体的には、本明細書で開示される電力ベースの注入回転子位置セルフセンシング戦略は、SRモータ駆動作業機械の最小パッケージサイズ、高信頼性および低コストの必要性から、回転子位置セルフセンシングが望ましい様々な用途において重要である。SRモータの信頼性が高く正確な回転子位置センシングは、低コストで高性能なSR作業機械駆動を開発するための重要なステップである。本明細書で示され説明されているSRモータ制御システムは、非常に低いトルク負荷および中高回転子速度を有する低電力動作状態に信頼性および精度を拡張し、このような低電力動作状態では、SRモータ206を運転するために必要な指令電流I指令が推定回転子位置θ推定を決定するには低すぎる可能性があり、以前に知られている制御戦略において不感帯を生じさせていた。本開示のSRモータ制御システムは、SRモータ206を動作条件の範囲全体にわたって確実に動作させるためのより完全な制御範囲を提供する。
【0038】
前述では、多くの異なる実装形態の詳細な説明が述べられているが、法的保護範囲は、本特許の末尾に記載された特許請求の範囲によって定義されることを理解すべきである。詳細な説明は例示としてのみ解釈されるべきであり、考えられるすべての実装形態を説明することは不可能ではないにしても非現実的であるため、考えられるすべての実装形態を説明するものではない。現在の技術またはこの特許の出願日以降に開発された技術を使用して、多くの代替実装形態を実施することができ、それらは依然として保護範囲を定義する特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0039】
また、用語が本明細書で明示的に定義されていない限り、用語の意味は、明示的であるか暗示的であるかを問わず、その単純な意味または一般的な意味に限定されることは意図されておらず、そのような用語は(特許請求の範囲の文言を除いて)本特許の何れかの部分においてなされた記述に基づく限定的な範囲であると解釈されるべきではないことを理解されるべきである。ある程度、本特許の末尾にある特許請求の範囲に記載されたいずれの用語も、本明細書において単一の意味と一致する方法で言及されている限りにおいて、読者を混乱させないように明確にするためにのみ行われており、そのような請求項の用語は、暗黙的またはその他の理由により、その単一の意味に限定されることを意図していない。
図1
図2
図3
図4
図5
図5A
図6
図7
図8
図9
図9A
図10
【国際調査報告】