(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】ビス-フェニルフェノキシ金属-配位子錯体のためのヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサン共触媒
(51)【国際特許分類】
C08F 4/642 20060101AFI20240206BHJP
C08F 210/16 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C08F4/642
C08F210/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543208
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 US2022013664
(87)【国際公開番号】W WO2022159873
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ピアソン、デイビッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】ジン、イー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィジル、アルフレッド イー.ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ハーバースバーガー、ブライアン エム.
(72)【発明者】
【氏名】マデンジャン、リサ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ブーン、ハロルド ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA04Q
4J100CA04
4J100DA04
4J100DA13
4J100DA42
4J100DA43
4J100FA10
4J100FA19
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4J100FA30
4J128AA01
4J128AC01
4J128AC09
4J128AC19
4J128AC27
4J128AC38
4J128BA00A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC25B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB05
4J128EC02
4J128FA02
4J128FA07
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA07
4J128GA08
4J128GA26
(57)【要約】
オレフィンモノマーを重合するプロセス。触媒系の存在下でエチレン及び任意選択的に1つ以上のオレフィンモノマーを反応させることを含むプロセスであって、触媒系は、アルミニウムの総モルに基づいて、25モル%未満のトリヒドロカルビルアルミニウム化合物AlR
A1R
B1R
C1を有するヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンであって、式中、R
A1、R
B1、及びR
C1は、独立して、直鎖(C
1~C
40)アルキル、分枝鎖(C
1~C
40)アルキル、又は(C
6~C
40)アリールである、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンと、式(I)による1つ以上の金属-配位子錯体と、を含む。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンモノマーを重合するプロセスであって、前記プロセスは、触媒系の存在下で、エチレンと1-ブテンとを反応させることを含み、前記触媒系は、
ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンと、
式(I):
【化1】
(式中、
Mは、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムであり、
nは、1、2、又は3であり、
各Xは、独立して、不飽和(C
2~C
50)炭化水素、不飽和(C
2~C
50)ヘテロ炭化水素、飽和(C
2~C
50)ヘテロ炭化水素、(C
1~C
50)ヒドロカルビル、(C
6~C
50)アリール、(C
6~C
50)ヘテロアリール、シクロペンタジエニル、置換シクロペンタジエニル、(C
4~C
12)ジエン、ハロゲン、-N(R
N)
2、及び-NCOR
Cから選択される単座の配位子であり、
金属-配位子錯体が、全体的に電荷中性であり、
各Zは、独立して、-O-、-S-、-N(R
N)-、又は-P(R
P)-から選択され、
R
1及びR
16は、独立して、-H、(C
6~C
40)アリール、(C
5~C
40)ヘテロアリール、式(II)を有するラジカル、式(III)を有するラジカル、及び式(IV)を有するラジカル:
【化2】
(なお式中、R
31~35、R
41~48、及びR
51~59の各々は、独立して、-H、(C
1~C
40)ヒドロカルビル、(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R
C)
3、-Ge(R
C)
3、-P(R
P)
2、-N(R
N)
2、-OR
C、-SR
C、-NO
2、-CN、-CF
3、R
CS(O)-、R
CS(O)
2-、(R
C)
2C=N-、R
CC(O)O-、R
COC(O)-、R
CC(O)N(R
N)-、(R
C)
2NC(O)-、又はハロゲンから選択される)からなる群から選択され、
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、及びR
15は、独立して、-H、(C
1~C
40)ヒドロカルビル、(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R
C)
3、-Ge(R
C)
3、-P(R
P)
2、-N(R
N)
2-OR
C、-SR
C、-NO
2、-CN、-CF
3、R
CS(O)-、R
CS(O)
2-、(R
C)
2C=N-、R
CC(O)O-、R
COC(O)-、R
CC(O)N(R)-、(R
C)
2NC(O)-、及びハロゲンから選択され、
Lは、(C
1~C
40)ヒドロカルビレン又は(C
2~C
40)ヘテロヒドロカルビレンであり、
式(I)中の各R
C、R
P、及びR
Nは、独立して、(C
1~C
30)ヒドロカルビル、(C
1~C
30)ヘテロヒドロカルビル、又は-Hである)による1つ以上の金属-配位子錯体と、を含み、
前記触媒系は、ホウ素を含有する活性化剤を含有しない、重合プロセス。
【請求項2】
ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンは、アルミニウムの総モルに基づいて、50モル%未満のトリヒドロカルビルアルミニウム化合物AlR
A1R
B1R
C1(式中、R
A1、R
B1、及びR
C1は、独立して、直鎖(C
1~C
40)アルキル、分枝鎖(C
1~C
40)アルキル、又は(C
6~C
40)アリールである)を含む、請求項1に記載の重合プロセス。
【請求項3】
前記ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンは、アルミニウムの前記総モル数に基づいて、30モル%未満のトリヒドロカルビルアルミニウムを有する、請求項2に記載の重合プロセス。
【請求項4】
前記ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンは、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンの前記総モル数に基づいて、25モル%未満のトリヒドロカルビルアルミニウムを有する、請求項2に記載の重合プロセス。
【請求項5】
前記ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンは、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンの前記総モル数に基づいて、15モル%未満のトリヒドロカルビルアルミニウムを有する、請求項2に記載の重合プロセス。
【請求項6】
前記ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンが、修飾メチルアルミノキサンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項7】
R
5、R
6、R
7、及びR
8のうちの少なくとも1つが、ハロゲン原子であり、
R
9、R
10、R
11、及びR
12のうちの少なくとも1つが、ハロゲン原子である、請求項1~6のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項8】
R
8及びR
9は、独立して、(C
1~C
4)アルキルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項9】
R
3及びR
14は、(C
1~C
20)アルキルである、請求項1~8のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項10】
R
3及びR
14は、メチルであり、R
6及びR
11は、ハロゲンである、請求項1~9のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項11】
R
6及びR
11は、tert-ブチルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項12】
R
3及びR
14は、メチル、tert-オクチル又はn-オクチルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項13】
Mは、Zrである、請求項1~12のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項14】
Lは、-CH
2(CH
2)
mCH
2-(式中、mは、1~3である)、-CH
2Si(R
C)(R
D)CH
2-、-CH
2Ge(R
C)(R
D)CH
2-、-CH(CH
3)CH
2CH(CH
3)-、及びビス(メチレン)シクロヘキサン-1,2-ジイル;並びに-CH
2CH(R
C)CH
2-及び-CH
2C(R
C)
2CH
2-(これらの式中、Lにおける各R
Cは、(C
1~C
20)ヒドロカルビルであり、LにおけるR
Dは、(C
1~C
20)ヒドロカルビルである)から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項15】
R
1及びR
16のうちの少なくとも1つは、式(II)を有するラジカルである、請求項1~14のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項16】
R
32及びR
34は、(C
1~C
12)ヒドロカルビル又は-Si[(C
1~C
20)ヒドロカルビル]
3である、請求項15に記載の重合プロセス。
【請求項17】
R
1及びR
16のうちの少なくとも1つは、式(IV)を有するラジカルである、請求項1~14のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【請求項18】
R
52、R
53、R
55、R
57、及びR
58のうちの少なくとも2つは、(C
1~C
20)ヒドロカルビル又は-Si[(C
1~C
20)ヒドロカルビル]
3である、請求項17に記載の重合プロセス。
【請求項19】
前記重合プロセスは、溶液重合反応である、請求項1~18のいずれか一項に記載の重合プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年1月25日に出願された米国仮特許出願第63/141,157号の利益を主張し、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、概して、ビス-フェニルフェノキシ金属-配位子錯体を含む触媒系のためのヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサン活性化剤に関する。
【背景技術】
【0003】
Ziegler及びNattaによる不均一系オレフィン重合の発見以来、世界中のポリオレフィン生産は2015年に年間約1億5000万トンに達し、これは市場の需要の増加により上昇している。この成功は、共触媒技術における一連の重要な解明に部分的に基づく。発見された共触媒には、トリフェニルカルベニウム又はアンモニウムカチオンを含む、アルミノキサン、ボラン、及びホウ酸塩が含まれる。これらの共触媒は均一系単一サイトオレフィン重合プロ触媒を活性化し、ポリオレフィンは産業界でこれらの共触媒を使用して製造されている。
【0004】
α-オレフィン重合反応における触媒組成物の一部として、活性化剤は、α-オレフィンポリマーの生成及びα-オレフィンポリマーを含む最終ポリマー組成物にとって有益な特徴を有し得る。α-オレフィンポリマーの生成を増加させる活性化剤の特徴としては、プロ触媒の迅速な活性化、高い触媒効率、高温性能、一貫したポリマー組成、及び選択的な失活が挙げられるが、これらに限定されない。
【0005】
特に、ホウ酸塩系共触媒は、オレフィン重合機構の基本的な理解に著しく寄与しており、触媒の構造及びプロセスを意図的に調整することにより、ポリオレフィンの微細構造を正確に制御する能力を向上させた。これにより、機構研究への関心が高まり、ポリオレフィンの微細構造及び性能を正確に制御する新規の均一系オレフィン重合触媒系の開発へとつながっている。しかしながら、活性化剤又は共触媒のカチオンがプロ触媒を活性化すると、活性化剤の対イオンがポリマー組成物中に残留する場合がある。結果として、ホウ酸アニオンが、ポリマー組成に影響を与える場合がある。具体的には、ホウ酸アニオンのサイズ及びホウ酸アニオンの電荷、ホウ酸アニオンと周囲の媒体との相互作用、並びにホウ酸アニオンと利用可能な対イオンとの解離エネルギーが、溶媒、ゲル、又はポリマー材料などの周囲の媒体を通じてイオンが拡散する能力に影響を与えるであろう。
【0006】
修飾メチルアルミノキサン(modified methylaluminoxanes、MMAO)は、アルミノキサン構造とトリヒドロカルビルアルミニウム種との混合物として説明することができる。トリメチルアルミニウムのようなトリヒドロカルビルアルミニウム種は、オレフィン重合触媒の失活に寄与し得る重合プロセスにおける不純物を除去するためのスカベンジャーとして使用される。しかしながら、トリヒドロカルビルアルミニウム種は、いくつかの重合系において活性であり得ると考えられている。触媒抑制は、トリメチルアルミニウムが60℃でハフノセン触媒を用いたプロピレンホモ重合中に存在するときに見られる(Busico,V.et al.Macromolecules 2009,42,1789-1791)。しかしながら、これらの観察は、MAO活性化対ホウ酸塩活性化における差異を複雑にし、直接比較においてでさえ、せいぜい、いくらかのトリメチルアルミニウムがある場合と全くない場合との間の差異を捕捉する可能性があるだけである。更に、そのような観察が他の触媒系、エチレン重合、又はより高い温度で行われる重合にまで及ぶかは明らかではない。いずれにしても、可溶性MAOを優先するにはMMAOを使用する必要があり、その結果、トリヒドロカルビルアルミニウム種が存在することになる。
【0007】
修飾メチルアルミノキサン(MMAO)は、ホウ酸系活性化剤の代わりに、いくつかのポリエチレンプロセスにおいて活性化剤として使用される。しかしながら、MMAOは、いくつかのビス-フェニルフェノキシプロ触媒などのいくつかの触媒の性能に悪影響を及ぼすことがわかっており、ポリマー樹脂の生成に悪影響を及ぼしている。重合プロセスにおける悪影響には、触媒活性の低下、生成されるポリマーの組成分布の拡大、及びペレットの取り扱いへの悪影響が含まれる。
【発明の概要】
【0008】
触媒効率、反応性、及び良好な物理的特性、特に生成ポリマーの狭い組成分布を有するポリマーを生成する能力を維持しながらも、ホウ酸塩活性化剤を含まない触媒系を作り出す必要性が現在も存在する。
【0009】
本開示の諸実施形態は、オレフィンモノマーを重合するためのプロセスを含む。1つ以上の実施形態では、本プロセスは、触媒系の存在下で、エチレンと、任意選択的に1つ以上のオレフィンモノマーとを反応させることを含む。触媒系は、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンと、1つ以上の金属-配位子錯体と、を含む。金属-配位子錯体は、以下の式(I)による構造を有する:
【0010】
【0011】
式(I)において、Mは、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムから選択される金属である。金属は+1、+2、または+3の形式電荷を有する。(X)nの下付き文字nは、1、2、又は3である。各Xは、独立して、不飽和(C2~C50)炭化水素、不飽和(C2~C50)ヘテロ炭化水素、飽和(C2~C50)ヘテロ炭化水素、(C1~C50)ヒドロカルビル、(C6~C50)アリール、(C6~C50)ヘテロアリール、シクロペンタジエニル、置換シクロペンタジエニル、(C4~C12)ジエン、ハロゲン、-N(RN)2、及び-N(RN)CORCから選択される単座の配位子である。金属-配位子錯体は、全体的に電荷中性である。各Zは、独立して、-O-、-S-、-N(RN)-、又は-P(RP)-から選択される。Lは、(C1~C40)ヒドロカルビレン又は(C2~C40)ヘテロヒドロカルビレンである。
【0012】
式(I)中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、-H、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(R)-、(RC)2NC(O)-、及びハロゲンから選択される。
【0013】
式(I)において、R1及びR16は、独立して、-H、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、-N=C(RC)2、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(R)-、(RC)2NC(O)-、ハロゲン、式(II)を有するラジカル、式(III)を有するラジカル、及び式(IV)を有するラジカルからなる群から選択される:
【0014】
【0015】
式(II)、(III)、及び(IV)において、R31~35、R41~48、及びR51~59のそれぞれは、独立して、-H、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(RN)-、(RC)2NC(O)-、又はハロゲンから選択される。
【0016】
式(I)、(II)、(III)、及び式(IV)中、各RC、RP、及びRNは、独立して、(C1~C30)ヒドロカルビル、(C1~C30)ヘテロヒドロカルビル、又は-Hである。
【0017】
いくつかの実施形態では、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンは、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサン中のアルミニウムの総モルに基づいて、50モル%未満のトリヒドロカルビルアルミニウム化合物AlRARBRC(式中、RA、RB、及びRCは、独立して、(C1~C40)アルキルである)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】熱勾配相互作用クロマトグラフ(TGIC)であって、比較例(エントリ1及びエントリ2)のクロマトグラムオーバーレイを有するTGICである。
【
図2】熱勾配相互作用クロマトグラフ(TGIC)であって、本発明の実施例(エントリ3)及び比較例(エントリ4)のクロマトグラムオーバーレイを有するTGICである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、触媒系の特定の実施形態を説明する。本開示の触媒系は、異なる形態で具現化されてよく、本開示に記載される特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全であり、主題の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0020】
一般的な略語を以下に列挙する。
【0021】
Me:メチル、Et:エチル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル、i-Pr:イソプロピル、t-Bu:tert-ブチル、t-Oct:tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)、Tf:トリフルオロメタンスルホナート、THF:テトラヒドロフラン、Et2O:ジエチルエーテル、CH2Cl2:ジクロロメタン、CV:カラム体積(カラムクロマトグラフィで使用される場合)、EtOAc:酢酸エチル、C6D6:重水素化ベンゼン又はベンゼン-d6、CDCl3:重水素化クロロホルム、Na2SO4:硫酸ナトリウム、MgSO4:硫酸マグネシウム、HCl:塩化水素、n-BuLi:n-ブチルリチウム、t-BuLi:tert-ブチルリチウム、MAO:メチルアルミノキサン、MMAO:修飾メチルアルミノキサン、GC:ガスクロマトグラフィ、LC:液体クロマトグラフィ、NMR:核磁気共鳴、MS:質量分析、mmol:ミリモル、mL:ミリリットル、M:モル濃度、min又はmins:分、h又はhrs:時間、d:日。
【0022】
「独立して・・・選択される」という用語は、R1、R2、R3、R4、及びR5などのR基が、同一であっても異なっていてもよいこと(例えば、R1、R2、R3、R4、及びR5は全て、置換アルキルであってもよく、又はR1及びR2は、置換アルキルであってもよく、R3は、アリールであってもよい、など)を示すために本明細書で使用される。R基に関連する化学名は、化学名の化学構造に対応するものとして当該技術分野で認識されている化学構造を伝えることを意図している。したがって、化学名は、当業者に既知の構造的定義を補足及び例示することを意図しており、排除することを意図するものではない。
【0023】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と組み合わせたときにオレフィン重合触媒活性を有する、遷移金属化合物を指す。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性な触媒に変換するようにプロ触媒と化学的に反応する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「共触媒」及び「活性化剤」という用語は、互換的な用語である。
【0024】
特定の炭素原子を含有する化学基を記載するために使用するとき、「(Cx~Cy)」の形態を有する括弧付きの表現は、化学基の非置換形態がx及びyを含めてx個の炭素原子からy個の炭素原子を有することを意味する。例えば、(C1~C50)アルキルは、その非置換形態で1~50個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態及び一般構造において、ある特定の化学基は、RSなどの1つ以上の置換基によって置換され得る。括弧付きの「(Cx~Cy)」を使用して定義されるRS置換化学基は、任意の基RSの同一性に従ってy個を超える炭素原子を含有することができる。例えば、「RSがフェニル(-C6H5)である厳密に1つの基RSで置換された(C1~C50)アルキル」は、7~56個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(Cx~Cy)」を使用して定義される化学基が1個以上の炭素原子を含有する置換基RSによって置換されるとき、化学基の炭素原子の最小及び最大合計数は、x及びyの両方に、全ての炭素原子を含有する置換基RS由来の炭素原子の合計数を加えることによって、決定される。
【0025】
「置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子に結合した少なくとも1個の水素原子(-H)が、置換基(例えば、RS)によって置換されることを意味する。「-H」という用語は、別の原子に共有結合している水素又は水素ラジカルを意味する。「水素」及び「-H」は交換可能であり、明記されていない限り、同一の意味を有する。
【0026】
「(C1~C50)アルキル」という用語は、1~50個の炭素原子を含有する飽和直鎖又は分枝鎖炭化水素ラジカルを意味し、「(C1~C30)アルキル」という用語は、1~30個の炭素原子の飽和直鎖又は分枝鎖炭化水素ラジカルを意味する。各(C1~C50)アルキル及び(C1~C30)アルキルは、非置換であり得るか、又は1つ以上のRSで置換され得る。いくつかの例では、炭化水素ラジカル中の各水素原子は、例えばトリフルオロメチルなどのRSで置換され得る。非置換(C1~C50)アルキルの例は、非置換(C1~C20)アルキル、非置換(C1~C10)アルキル、非置換(C1~C5)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、及び1-デシルである。置換(C1~C40)アルキルの例は、置換(C1~C20)アルキル、置換(C1~C10)アルキル、トリフルオロメチル、及び[C45]アルキルである。「[C45]アルキル」という用語は、置換基を含むラジカル中に最大45個の炭素原子が存在することを意味し、例えば、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、又は1,1-ジメチルエチルなどの(C1~C5)アルキルである、1つのRSによって置換されている(C27~C40)アルキルである。
【0027】
(C3~C50)アルケニルという用語は、3~50個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合を含有し、かつ非置換であるか又は1つ以上のRSで置換されている、分枝又は非分枝の環状又は非環状一価炭化水素ラジカルを意味する。非置換(C3~C50)アルケニルの例:n-プロペニル、イソプロペニル、n-ブテニル、イソブテニル、オクテニル、デセニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、及びシクロヘキサジエニル。置換(C3~C50)アルケニルの例:(2-トリフルオロメチル)ペンタ-1-エニル、(3-メチル)ヘキサ-1-エニル、(3-メチル)ヘキサ-1,4-ジエニル、及び(Z)-1-(6-メチルヘプタ-3-エン-1-イル)シクロヘキサ-1-エニル。
【0028】
「(C3~C50)シクロアルキル」という用語は、非置換であるか又は1つ以上のRSで置換されている、3~50個の炭素原子の飽和環状炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば(Cx~Cy)シクロアルキル)は、x~y個の炭素原子を有し、かつ非置換であるか、又は1つ以上のRSで置換されているものであるかのいずれかとして、同様の様式で定義される。非置換(C3~C40)シクロアルキルの例は、非置換(C3~C20)シクロアルキル、非置換(C3~C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルである。置換(C3~C40)シクロアルキルの例は、置換(C3~C20)シクロアルキル、置換(C3~C10)シクロアルキル、及び1-フルオロシクロヘキシルである。
【0029】
「ハロゲン原子」又は「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、又はヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハライド」という用語は、ハロゲン原子のアニオン形態、フルオリド(F-)、クロリド(Cl-)、ブロミド(Br-)、又はヨージド(I-)を意味する。
【0030】
「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、及び(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素二重結合、炭素-リン二重結合、及び炭素-ケイ素二重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基RSによって置換されている場合、1つ以上の二重結合又は三重結合は、任意選択的に置換基RS中に存在し得る。「不飽和」という用語は、1個以上の炭素-炭素二重結合若しくは炭素-炭素三重結合、又は(ヘテロ原子含有基において)1個以上の炭素-窒素二重結合、炭素-リン二重結合、又は炭素-ケイ素二重結合を含有し、置換基RS(存在する場合)、又は芳香環若しくはヘテロ芳香環(存在する場合)中に存在し得る二重結合を含まないことを意味する。
【0031】
「ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサン」という用語は、ある量のトリヒドロカルビルアルミニウムを含むメチルアルミノキサン(MAO)構造を指す。ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンは、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンマトリックスとトリヒドロカルビルアルミニウムとの組み合わせを含む。ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサン中のアルミニウムの総モル量は、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンマトリックスからのアルミニウムのモル数及びトリヒドロカルビルアルミニウムからのアルミニウムのモル数からのアルミニウム寄与からなる。ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンは、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサン中のアルミニウムの総モル数に基づいて2.5モル%超のトリヒドロカルビルアルミニウムを含む。これらの追加のヒドロカルビル置換基は、その後のアルミノキサン構造に影響を及ぼし得、アルミノキサンクラスターの分布及びサイズの違いをもたらし得る(Bryliakov,K.P et al.,Macromol.Chem.Phys.2006,207,327-335)。追加のヒドロカルビル置換基はまた、米国特許第5777143号に示すように、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、及びISOPAR E(商標)などであるがこれらに限定されない炭化水素溶媒中でのアルミノキサンの溶解度を増加させることができる。修飾メチルアルミノキサン組成物は、一般的に開示されており、米国特許第5066631号及び同第5728855号に記載されているように調製することができ、その両方が参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
本開示の諸実施形態は、オレフィンモノマーを重合するためのプロセスを含む。1つ以上の実施形態では、本プロセスは、触媒系の存在下でエチレンと任意選択的に1つ以上のオレフィンモノマーとを反応させることを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、オレフィンモノマーは、(C3~C20)α-オレフィンである。他の実施形態では、オレフィンモノマーは、(C3~C20)α-オレフィンではない。様々な実施形態では、オレフィンモノマーは、環状オレフィンである。
【0034】
1つ以上の実施形態では、触媒系は、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンと、金属-配位子錯体と、を含む。ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンは、自らの中のアルミニウムの総モルに基づいて、50モル%未満のトリヒドロカルビルアルミニウムを有する。トリヒドロカルビルアルミニウムは、AlRA1RB1RC1(式中、RA1、RB1、及びRC1は、独立して、(C1~C40)アルキルである)の式を有する。
【0035】
複数の実施形態では、重合プロセスにおけるヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンは、自らの中のアルミニウムの総モルに基づいて、30モル%未満及び5モル%超のトリヒドロカルビルアルミニウムを有する。いくつかの実施形態では、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンは、自らの中のアルミニウムの総モルに基づいて、25モル%未満のトリヒドロカルビルアルミニウムを有する。1つ以上の実施形態では、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンは、自らの中のアルミニウムの総モルに基づいて、15モル%未満又は10モル%未満のトリヒドロカルビルアルミニウムを有する。様々な実施形態では、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンは、修飾メチルアルミノキサンである。
【0036】
いくつかの実施形態では、トリヒドロカルビルアルミニウムは、AlRA1RB1RC1の式(式中、RA1、RB1、及びRC1は、独立して、(C1~C10)アルキルである)を有する。1つ以上の実施形態では、RA1、RB1、及びRC1は、独立して、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、ブチル、tert-ブチル、又はオクチルである。いくつかの実施形態では、RA1、RB1、及びRC1は、同じである。他の実施形態では、RA1、RB1、及びRC1のうちの少なくとも1つは、他のRA1、RB1、及びRC1と異なる。
【0037】
複数の実施形態では、触媒系は、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンと、金属-配位子錯体と、を含む。いくつかの実施形態では、触媒系は、式(I)による1つ以上の金属-配位子錯体を含む:
【0038】
【0039】
式(I)中、Mは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、スカンジウム、イットリウム、又は周期表のランタニド系列の元素である。いくつかの実施形態では、Mは、Zr又はScである。
【0040】
(X)nの下付き文字nは、1、2、又は3である。各Xは、独立して、不飽和(C2~C50)炭化水素、不飽和(C2~C50)ヘテロ炭化水素、飽和(C2~C50)ヘテロ炭化水素、(C1~C50)ヒドロカルビル、(C6~C50)アリール、(C6~C50)ヘテロアリール、シクロペンタジエニル、置換シクロペンタジエニル、(C4~C12)ジエン、ハロゲン、-N(RN)2、及び-N(RN)CORCから選択される単座の配位子である。金属-配位子錯体は、全体的に電荷中性である。各Zは、独立して、-O-、-S-、-N(RN)-、又は-P(RP)-から選択される。Lは、(C1~C40)ヒドロカルビレン又は(C2~C40)ヘテロヒドロカルビレンである。
【0041】
式(I)中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、-H、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(R)-、(RC)2NC(O)-、及びハロゲンから選択される。
【0042】
式(I)において、R1及びR16は、独立して、-H、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、-N=C(RC)2、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(R)-、(RC)2NC(O)-、ハロゲン、式(II)を有するラジカル、式(III)を有するラジカル、及び式(IV)を有するラジカルからなる群から選択される。
【0043】
【0044】
式(II)、(III)、及び(IV)において、R31~35、R41~48、及びR51~59のそれぞれは、独立して、-H、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(RN)-、(RC)2NC(O)-、又はハロゲンから選択される。
【0045】
いくつかの実施形態では、R1及びR16のうちの少なくとも1つは、式(II)を有するラジカルであり、R32及びR34は、tert-ブチルである。1つ以上の実施形態では、R32及びR34は、(C1~C12)ヒドロカルビル又は-Si[(C1~C10)アルキル]3である。
【0046】
いくつかの実施形態では、R1又はR16のうちの少なくとも1つが、式(III)を有するラジカルであるとき、R43及びR46のうちの一方又は両方は、tert-ブチルであり、R41~42、R44~45、及びR47~48は、-Hである。他の実施形態では、R42及びR47のうちの一方又は両方は、tert-ブチルであり、R41、R43~46、及びR48は、-Hである。いくつかの実施形態では、R42及びR47の両方は、-Hである。様々な実施形態では、R42及びR47は、(C1~C20)ヒドロカルビル又は-Si[(C1~C10)アルキル]3である。他の実施形態では、R43及びR46は、(C1~C20)ヒドロカルビル又は-Si[(C1~C10)アルキル]3である。
【0047】
複数の実施形態では、R1又はR16のうちの少なくとも1つが、式(IV)を有するラジカルであるとき、各R52、R53、R55、R57、及びR58は、-H、(C1~C20)ヒドロカルビル、-Si[(C1~C20)ヒドロカルビル]3、又は-Ge[(C1~C20)ヒドロカルビル]3である。いくつかの実施形態では、R52、R53、R55、R57、及びR58のうちの少なくとも1つは、(C3~C10)アルキル、-Si[(C3~C10)アルキル]3、又は-Ge[(C3~C10)アルキル]3である。1つ以上の実施形態では、R52、R53、R55、R57、及びR58のうちの少なくとも2つは、(C3~C10)アルキル、-Si[(C3~C10)アルキル]3、又は-Ge[(C3~C10)アルキル]3である。様々な実施形態では、R52、R53、R55、R57、及びR58のうちの少なくとも3つは、(C3~C10)アルキル、-Si[(C3~C10)アルキル]3、又は-Ge[(C3~C10)アルキル]3である。
【0048】
いくつかの実施形態では、R1又はR16のうちの少なくとも1つが、式(IV)を有するラジカルであるとき、R52、R53、R55、R57、及びR58のうちの少なくとも2つは、(C1~C20)ヒドロカルビル又は-C(H)2Si[(C1~C20)ヒドロカルビル]3である。
【0049】
(C3~C10)アルキルの例としては、プロピル、2-プロピル(イソプロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチルとも呼ばれる)、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ブチル、ペンチル、3-メチルブチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イルとも呼ばれる)、ノニル、及びデシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
1つ以上の実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体は、プロ触媒である。
【0051】
(C3~C10)アルキルの例としては、1-プロピル、2-プロピル(イソプロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチルとも呼ばれる)、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ブチル、ペンチル、3-メチルブチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イルとも呼ばれる)、ノニル、及びデシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
式(I)中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、-H、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(R)-、(RC)2NC(O)-、及びハロゲンから選択される。
【0053】
1つ以上の実施形態では、R2、R4、R5、R12、R13、及びR15は、水素であり、各Zは、酸素である。
【0054】
様々な実施形態では、R5、R6、R7、及びR8のうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子であり、R9、R10、R11、及びR12のうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子である。いくつかの実施形態では、R8及びR9は、独立して、(C1~C4)アルキルである。
【0055】
いくつかの実施形態では、R3及びR14は、(C1~C20)アルキルである。1つ以上の実施形態では、R3及びR14は、メチルであり、R6及びR11は、ハロゲンである。複数の実施形態では、R6及びR11は、tert-ブチルである。他の実施形態では、R3及びR14は、tert-オクチル又はn-オクチルである。
【0056】
様々な実施形態では、R3及びR14は、(C1~C24)アルキルである。1つ以上の実施形態では、R3及びR14は、(C4~C24)アルキルである。いくつかの実施形態では、R3及びR14は、1-プロピル、2-プロピル(イソプロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチルとも呼ばれる)、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ブチル、ペンチル、3-メチル-1-ブチル、ヘキシル、4-メチル-1-ペンチル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イルとも呼ばれる)、ノニル、及びデシルである。複数の実施形態では、R3及びR14は、-ORCであり、RCは、(C1~C20)炭化水素であり、いくつかの実施形態では、RCは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソプロピルとも呼ばれる)、又は1,1-ジメチルエチルである。
【0057】
1つ以上の実施形態では、R8及びR9のうちの1つは、-Hではない。様々な実施形態では、R8及びR9のうちの少なくとも1つは、(C1~C24)アルキルである。いくつかの実施形態では、R8及びR9の両方は、(C1~C24)アルキルである。いくつかの実施形態では、R8及びR9は、メチルである。他の実施形態では、R8及びR9は、ハロゲンである。
【0058】
いくつかの実施形態では、R3及びR14は、メチルである。1つ以上の実施形態では、R3及びR14は、(C4~C24)アルキルである。いくつかの実施形態では、R3及びR14は、1-プロピル、2-プロピル(イソプロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチルとも呼ばれる)、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ブチル、ペンチル、3-メチル-1-ブチル、ヘキシル、4-メチル-1-ペンチル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イルとも呼ばれる)、ノニル、及びデシルである。
【0059】
様々な実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体では、R6及びR11は、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、R6及びR11は、(C1~C24)アルキルである。様々な実施形態では、R6及びR11は、独立して、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソプロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル(tert-ブチルとも呼ばれる)、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-ブチル、n-ペンチル、3-メチルブチル、n-ヘキシル、4-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イルとも呼ばれる)、ノニル、及びデシルから選択される。いくつかの実施形態では、R6及びR11は、tert-ブチルである。複数の実施形態では、R6及びR11は、-ORCであり、RCは、(C1~C20)ヒドロカルビルであり、いくつかの実施形態では、RCは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソプロピルとも呼ばれる)、又は1,1-ジメチルエチルである。他の実施形態では、R6及びR11は、-SiRC
3であり、各RCは、独立して、(C1~C20)ヒドロカルビルであり、いくつかの実施形態では、RCは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソプロピルとも呼ばれる)、又は1,1-ジメチルエチルである。
【0060】
いくつかの実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基(例えば、X及びR1-59)のうちのいずれか又は全ては、非置換であり得る。他の実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基X及びR1~59のうちのいずれも1つ以上のRSで置換されていない場合も、それらのうちのいずれか又は全てが、1つ以上のRSで置換されている場合もある。2つ以上のRSが式(I)の金属-配位子錯体の同じ化学基に結合している場合、化学基の個々のRSは、同じ炭素原子若しくはヘテロ原子に、又は異なる炭素原子若しくはヘテロ原子に結合し得る。いくつかの実施形態では、化学基X及びR1~59のうちのいずれもRSで過置換されていない場合も、それらのうちのいずれか又は全てが、RSで過置換されている場合もある。RSで過置換されている化学基では、個々のRSは、全て同じであり得るか、又は独立して選択され得る。1つ以上の実施形態では、RSは、(C1~C20)ヒドロカルビル、(C1~C20)アルキル、(C1~C20)ヘテロヒドロカルビル、又は(C1~C20)ヘテロアルキルから選択される。
【0061】
式(I)中、Lは、(C1~C40)ヒドロカルビレン又は(C1~C40)ヘテロヒドロカルビレンであり、各Zは、独立して、-O-、-S-、-N(RN)-、又は-P(RP)-から選択される。1つ以上の実施形態では、Lは、1~10個の原子を含む。
【0062】
式(I)、(II)、(III)、及び式(IV)中、各RC、RP、及びRNは、独立して、(C1~C30)ヒドロカルビル、(C1~C30)ヘテロヒドロカルビル、又は-Hである。
【0063】
式(I)のいくつかの実施形態では、Lは、例えば、-CH2CH2CH2-、-CH(CH3)CH2C*H(CH3)、-CH(CH3)CH(CH3)C*H(CH3)、-CH2C(CH3)2CH2-、シクロペンタン-1,3-ジイル、又はシクロヘキサン-1,3-ジイルなどの、(C3~C7)アルキル1,3-ジラジカルから選択され得る。いくつかの実施形態では、Lは、例えば、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2C(CH3)2C(CH3)2CH2-、シクロヘキサン-1,2-ジイルジメチル、及びビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジイルジメチルなどの(C4~C10)アルキル1,4-ジラジカルから選択され得る。いくつかの実施形態では、Lは、(C5~C12)アルキル1,5-ジラジカル、例えば、-CH2CH2CH2CH2CH2-、及び1,3-ビス(メチレン)シクロヘキサンから選択され得る。いくつかの実施形態では、Lは、例えば、(C6~C14)アルキル1,6-ジラジカル、例えば、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-、又は1,2-ビス(エチレン)シクロヘキサンから選択され得る。
【0064】
1つ以上の実施形態では、Lは、(C2~C40)ヘテロヒドロカルビレンである。いくつかの実施形態では、Lは、-CH2Ge(RC)2CH2-であり、式中、各RCは、(C1~C30)ヒドロカルビルである。いくつかの実施形態では、Lは、-CH2Ge(CH3)2CH2-、-CH2Ge(エチル)2CH2-、-CH2Ge(2-プロピル)2CH2-、-CH2Ge(t-ブチル)2CH2-、-CH2Ge(シクロペンチル)2CH2-、又は-CH2Ge(シクロヘキシル)2CH2-である。
【0065】
1つ以上の実施形態では、Lは、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2(CH2)mCH2-、CH2(C(H)RC)mCH2-、及び-CH2(CRC)mCH2-(ここまでの式中、下付き文字mは、1~3である);-CH2Si(RC)2CH2-;-CH2Ge(RC)2CH2-;-CH(CH3)CH2CH*(CH3);並びに-CH2(フェン-1,2-ジ-イル)CH2-から選択され、L中の各RCは、(C1~C20)ヒドロカルビルである。
【0066】
かかる(C1~C12)アルキルの例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソプロピルとも呼ばれる)、1,1-ジメチルエチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシル、ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペント-2-イル)、ノニル、デシル、ウンデシル、及びドデシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
いくつかの実施形態では、式(I)による金属-配位子錯体では、R8及びR9の両方が、メチルである。他の実施形態では、R8及びR9のうちの一方は、メチルであり、R8及びR9の他方は、-Hである。
【0068】
式(I)による金属-配位子錯体において、Xは、共有結合、又はイオン結合を通してMと結合する。いくつかの実施形態では、Xは、-1の正味の形式酸化数を有するモノアニオン性配位子であり得る。各モノアニオン性配位子は、独立して、ヒドリド、(C1~C40)ヒドロカルビルカルバニオン、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルカルバニオン、ハロゲン化物、ニトレート、カーボネート、ホスフェート、スルフェート、HC(O)O-、HC(O)N(H)-、(C1~C40)ヒドロカルビルC(O)O-、(C1~C40)ヒドロカルビルC(O)N((C1~C20)ヒドロカルビル)-、(C1~C40)ヒドロカルビルC(O)N(H)-、RKRLB-、RKRLN-、RKO-、RKS-、RKRLP-、又はRMRKRLSi-であり得るが、式中、各RK、RL、及びRMは、独立して、水素、(C1~C40)ヒドロカルビル、若しくは(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルであるか、又はRK及びRLは一緒になって、(C2~C40)ヒドロカルビレン若しくは(C1~C20)ヘテロヒドロカルビレンを形成し、RMは、上で定義されているとおりである。
【0069】
いくつかの実施形態では、Xは、ハロゲン、非置換(C1~C20)ヒドロカルビル、非置換(C1~C20)ヒドロカルビルC(O)O-、又はRKRLN-であり、式中、RK及びRLの各々は、独立して、非置換(C1~C20)ヒドロカルビルである。いくつかの実施形態では、各単座配位子Xは、塩素原子、(C1~C10)ヒドロカルビル(例えば、(C1~C6)アルキル若しくはベンジル)、非置換(C1~C10)ヒドロカルビルC(O)O-、又はRKRLN-であり、式中、RK及びRLの各々は、独立して、非置換(C1~C10)ヒドロカルビルである。
【0070】
更なる実施形態では、Xは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2,2,-ジメチルプロピル、トリメチルシリルメチル、フェニル、ベンジル、又はクロロから選択される。Xは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2,2,-ジメチルプロピル、トリメチルシリルメチル、フェニル、ベンジル、及びクロロである。一実施形態では、nは、2であり、少なくとも2つのXは、独立して、モノアニオン性単座配位子である。特定の実施形態では、nは、2であり、2つのX基は一緒になって、二座配位子を形成する。更なる実施形態では、二座配位子は、2,2-ジメチル-2-シラプロパン-1,3-ジイル又は1,3-ブタジエンである。
【0071】
1つ以上の実施形態では、各Xは、独立して、-(CH2)SiRX
3であり、式中、各RXは独立して、(C1~C30)アルキル又は(C1~C30)ヘテロアルキルであり、少なくとも1つのRXは、(C1~C30)アルキルである。いくつかの実施形態では、RXのうちの1つが(C1~C30)ヘテロアルキルである場合、ヘテロ原子は、シリカ又は酸素原子である。いくつかの実施形態では、RXは、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、ブチル、1,1-ジメチルエチル(又は、tert-ブチル)、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル、又はノニルである。
【0072】
1つ以上の実施形態では、Xは、-(CH2)Si(CH3)3、-(CH2)Si(CH3)2(CH2CH3);-(CH2)Si(CH3)(CH2CH3)2、-(CH2)Si(CH2CH3)3、-(CH2)Si(CH3)2(n-ブチル)、-(CH2)Si(CH3)2(n-ヘキシル)、-(CH2)Si(CH3)(n-Oct)RX、-(CH2)Si(n-Oct)RX
2、-(CH2)Si(CH3)2(2-エチルヘキシル)、-(CH2)Si(CH3)2(ドデシル)、-CH2Si(CH3)2CH2Si(CH3)3(本明細書では、-CH2Si(CH3)2CH2TMSと称される)である。任意選択的に、いくつかの実施形態では、式(I)による金属-配位子錯体は、正確に2つのRXが共有結合しているか、又は正確に3つのRXが共有結合している。
【0073】
いくつかの実施形態では、Xは、-CH2Si(RC)3-Q(ORC)Q、-Si(RC)3-Q(ORC)Q、-OSi(RC)3-Q(ORC)Qであり、以上の式中、下付き文字Qは0、1、2、又は3であり、各RCは、独立して、置換若しくは非置換(C1~C30)ヒドロカルビル、又は置換若しくは非置換(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルである。
【0074】
共触媒成分
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系は、オレフィン重合反応の金属系触媒を活性化するための当該技術分野で既知の任意の技術によって触媒的に活性化され得る。例えば、式(I)の金属-配位子錯体によるプロ触媒は、錯体を活性化共触媒と接触させるか、又は錯体を活性化共触媒と組み合わせることによって、触媒的に活性化され得る。更に、式(I)による金属-配位子錯体としては、中性のプロ触媒型と、メチル、ベンジル又はフェニルなどのモノアニオン性配位子の損失に起因して正に帯電し得る触媒型との両方が挙げられる。本明細書で使用するのに好適な活性化共触媒としては、オリゴマーアルモキサン又はヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンが挙げられる。
【0075】
複数の実施形態では、触媒系は、ホウ酸塩活性化剤を含有しない。1つ以上の実施形態では、ホウ酸塩活性化剤は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸(1-)アニオン及び対カチオンである。いくつかの実施形態では、ホウ酸塩活性化剤は、ビス(水素化牛脂アルキル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸である。
【0076】
ポリオレフィン
先行する段落に記載された触媒系は、オレフィン、主にエチレン及びプロピレンの重合に利用され、エチレン系ポリマー又はプロピレン系ポリマーを形成する。いくつかの実施形態では、重合スキーム中に単一タイプのオレフィン又はα-オレフィンのみが存在し、ホモポリマーを生成する。しかしながら、追加のα-オレフィンを重合手順に組み込んでもよい。追加のα-オレフィンコモノマーは、典型的には、20個以下の炭素原子を有する。例えば、α-オレフィンコモノマーは、3~10個の炭素原子、又は3~8個の炭素原子を有し得る。例示的なα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、及び4-メチル-1-ペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、1つ以上のα-オレフィンコモノマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンからなる群から、又は代替として、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群から選択され得る。
【0077】
エチレン系ポリマー、例えば、エチレンのホモポリマー及び/又は、エチレンと任意選択的にα-オレフィンなどの1つ以上のコモノマーとのインターポリマー(コポリマーを含む)は、エチレンに由来するモノマー単位を少なくとも50モル%(モル%)含み得る。「少なくとも50モル%」に包含される全ての個々の値及び部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示され、例えば、エチレン系ポリマー、エチレンのホモポリマー及び/又は、エチレンと任意選択的にα-オレフィンなどの1つ以上のコモノマーとのインターポリマー(コポリマーを含む)は、エチレンに由来する少なくとも60モル%のモノマー単位、エチレンに由来する少なくとも70モル%のモノマー単位、エチレンに由来する少なくとも80モル%のモノマー単位、又はエチレンに由来する50~100モル%のモノマー単位、又はエチレンに由来する80~100モル%のモノマー単位を含み得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンに由来する少なくとも90モル%の単位を含み得る。少なくとも90モル%からの全ての個々の値及び部分範囲は本明細書に含まれ、別個の実施形態として本明細書に開示される。例えば、エチレン系ポリマーは、エチレンに由来する少なくとも93モル%の単位、少なくとも96モル%の単位、エチレンに由来する少なくとも97モル%の単位、又は代替として、エチレンに由来する90~100モル%の単位、エチレンに由来する90~99.5モル%の単位、若しくはエチレンに由来する97~99.5モル%の単位を含み得る。
【0079】
エチレン系ポリマーのいくつかの実施形態では、追加のα-オレフィンの量は50モル%未満であり、他の実施形態は、少なくとも1モルパーセント(モル%)~25モル%を含み、更なる実施形態では、追加のα-オレフィンの量は、少なくとも5モル%~100モル%を含む。
【0080】
任意の従来の重合プロセスを使用してエチレン系ポリマーを生成してもよい。そのような従来の重合プロセスとしては、例えば、ループ反応器、等温反応器、撹拌槽型反応器、バッチ反応器などの1つ以上の従来の反応器を、並列、直列、又はこれらの任意の組み合わせで使用する、溶液重合プロセス、スラリー相重合プロセス、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば、二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、エチレン及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンは、本明細書に記載の触媒系及び任意選択的に1つ以上の共触媒の存在下で重合される。別の一実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば、二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、エチレン及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンは、本開示及び本明細書に記載の触媒系並びに任意選択的に1つ以上の他の触媒の存在下で重合される。本明細書に記載の触媒系は、任意選択的に1つ以上の他の触媒と組み合わせて、第1の反応器又は第2の反応器において使用することができる。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば、二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、エチレン及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンは、本明細書に記載の触媒系の存在下で両方の反応器において重合される。
【0082】
別の一実施形態では、エチレン系ポリマーは、単一反応器系、例えば、単一ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、エチレン及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンは、本開示内に記載される触媒系、及び前の段落に記載される任意選択的に1つ以上の共触媒の存在下で重合される。
【0083】
エチレン系ポリマーは、1つ以上の添加剤を更に含み得る。そのような添加剤としては、帯電防止剤、色増強剤、染料、潤滑剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。エチレン系ポリマーは、任意の量の添加剤を含み得る。エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマー及び1つ以上の添加剤の重量に基づいて、そのような添加剤を合計重量の約0~約10%で含み得る。エチレン系ポリマーは充填剤を更に含んでもよく、その充填剤としては、有機又は無機充填剤を挙げることができるが、これらに限定されない。エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマーと全ての添加剤又は充填剤の合計重量に基づいて、例えば、炭酸カルシウム、タルク又はMg(OH)2などの約0~約20重量%の充填剤を含み得る。エチレン系ポリマーは、1つ以上のポリマーと更に配合されてブレンドを形成し得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーを生成するための重合プロセスは、エチレン及び少なくとも1つの追加のα-オレフィンを、本開示による触媒系の存在下で重合することを含み得る。式(I)の金属-配位子錯体を組み込むそのような触媒系から得られたポリマーは、ASTM D792(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に従って、例えば、0.850g/cm3~0.970g/cm3、0.880g/cm3~0.920g/cm3、0.880g/cm3~0.910g/cm3、又は0.880g/cm3~0.900g/cm3、0.950g/cm3~0.965g/cm3の密度を有し得る。
【0085】
別の一実施形態では、本開示による触媒系から得られるポリマーは、5~15のメルトフロー比(I10/I2)を有し、メルトインデックスI2は、ASTM D1238(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に従って、190℃及び2.16kgの負荷で測定され、メルトインデックスI10は、ASTM D1238に従って、190℃及び10kgの負荷で測定される。他の実施形態では、メルトフロー比(I10/I2)は5~10であり、また他の実施形態では、メルトフロー比は5~9である。
【0086】
いくつかの実施形態では、本開示による触媒系から得られるポリマーは、1~25の分子量分布(MWD)を有し、MWDは、Mw/Mnとして定義され、Mwは、重量平均分子量であり、Mnは、数平均分子量である。他の実施形態では、触媒系から得られるポリマーは、1~6のMWDを有する。別の一実施形態は、1~3のMWDを有し、他の実施形態は、1.5~2.5のMWDを有する。
【0087】
本開示に記載される触媒系の実施形態は、ヒドロカルビル修飾メチルアルミノキサンを欠く触媒系と比較して高い効率を有する触媒系をもたらす。
【0088】
本開示の1つ以上の特徴は、以下の実施例を考慮して例示される。
【実施例】
【0089】
連続プロセス反応器重合の手順:原料(エチレン、1-オクテン、又は1-ブテン)及びプロセス溶媒(ExxonMobil CorporationからISOPAR Eという商標で市販されている狭い沸点範囲の高純度イソパラフィン溶媒)を、反応環境に導入する前にモレキュラーシーブで精製した。水素を、高純度グレードとして加圧シリンダー内に供給し、それ以上精製しない。反応器モノマー供給流(エチレン)を、反応圧力を超えるまで加圧する。溶媒及びコモノマー供給を、反応圧力を超えるまで加圧する。個々の触媒成分(金属配位子錯体及び共触媒)を、精製された溶媒を用いて指定の成分濃度に手動でバッチ希釈し、反応圧力を超えるまで加圧する。全ての反応供給流は、質量流量計を用いて測定され、それぞれ独立してコンピュータにより自動化された弁制御系によって制御される。
【0090】
連続溶液重合は、連続撹拌槽反応器(continuously stirred-tank reactor、CSTR)で実行する。溶媒、モノマー、コモノマー、及び水素を組み合わせた反応器への供給物は、5℃~50℃の間に温度制御され、典型的には15~25℃である。全ての成分を、溶媒供給物と共に重合反応器に供給する。触媒は、エチレンの特定の変換率に達するように反応器に供給される。共触媒成分を、計算された指定のモル比又はppm比に基づいて別々に供給する。重合反応器からの流出物(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、及びポリマーを含有する)が反応器を出て、水と接触する。加えて、酸化防止剤などの様々な添加剤を、この時点で添加することができる。次いで、流れをスタティックミキサに通し、混合物を均一に分散させる。
【0091】
添加剤の添加に続いて、流出物(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、及び溶融ポリマーを含む)は、他の低沸点成分からのポリマーの分離に備えて熱交換器を通過して流れの温度を上げる。次いで、全体にわたって圧力が大幅に低減された反応器圧力制御バルブに、流れを通す。そこから、流出物は、揮発分除去機器(devolatizer)及び真空押出機からなる2段階の分離システムに入り、そこで溶媒、並びに未反応の水素、モノマー、コモノマー、及び水をポリマーから除去する。押出機の出口では、形成された溶融ポリマーのストランドは、冷水浴を通過し、そこで固化する。次いで、ストランドチョッパを通してストランドを供給し、空気乾燥後、ポリマーをペレットに切断する。
【0092】
試験方法
本明細書に特に指示のない限り、本開示の態様の記載において以下の分析方法を使用する。
【0093】
メルトインデックス
ポリマーサンプルのメルトインデックスI2(又はI2)及びI10(又はI10)を、それぞれ、190℃、かつ2.16kg及び10kgの荷重で、ASTM D-1238(方法B)に従って測定した。それらの値を、g/10分で報告する。
【0094】
密度
密度測定用の試料を、ASTM D4703に従って調製した。サンプル加圧の1時間以内に、ASTM D792で、方法Bに従って測定を行った。
【0095】
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)
クロマトグラフィシステムは、内部IR5赤外線検出器(IR5)を装備するPolymerChar社(スペイン、Valencia)製GPC-IRの高温GPCクロマトグラフから構成された。オートサンプラオーブンコンパートメントを160℃に設定し、カラムコンパートメントを150℃に設定した。使用されたカラムは、4本のAgilent社製「Mixed A」30cm 20ミクロン線形混床式カラム及び20μmのプレカラムであった。使用されたクロマトグラフィ溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)を含有していた。溶媒源を、窒素スパージした。採用した注入体積は、200μLであり、流量は、1.0mL/分であった。
【0096】
GPCカラムセットの較正を、580~8,400,000の範囲の分子量を有する21個の狭い分子量分布のポリスチレン標準物質を用いて行い、個々の分子量の間に少なくとも10倍の間隔を有する6つの「カクテル」混合物中に配置した。標準物質を、Agilent Technologies社から購入した。1,000,000以上の分子量については、50mLの溶媒中の0.025gで、1,000,000未満の分子量については、50mLの溶媒中の0.05gで、ポリスチレン標準物質を調製した。ポリスチレン標準物質を、穏やかに撹拌しながら80℃で30分間溶解させた。ポリスチレン標準物質のピーク分子量を、式1を使用してポリエチレン分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載のとおり):
【0097】
【数1】
式中、Mは、分子量であり、Aは、0.4315の値を有し、Bは、1.0に等しい。
【0098】
五次多項式を使用して、それぞれのポリエチレン等価較正点に当てはめた。Aに対してわずかな調整(約0.375~0.445)を行い、カラム分解能及びバンド拡張効果を、直鎖状ホモポリマーポリエチレン標準物質が120,000Mwで得られるように補正した。
【0099】
GPCカラムセットの合計プレートカウントは、デカン(50mLのTCB中0.04gで調製され、穏やかに撹拌しながら20分間溶解した)を用いて実行した。プレートカウント(式2)及び対称性(式3)を、200μL注入で以下の式に従って測定した。
【0100】
【数2】
式中、RVは、mL単位での保持体積であり、ピーク幅は、mL単位であり、ピーク最大値は、ピークの最大高さであり、1/2高さは、ピーク最大値の1/2の高さである。
【0101】
【数3】
式中、RVは保持体積(mL単位)であり、ピーク幅はmL単位であり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10高さはピーク最大値の1/10の高さであり、後方ピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、前方ピークはピーク最大値よりも早い保持体積でのピークフロントを指す。クロマトグラフィシステムのプレートカウントは、18,000超になるべきであり、対称性は、0.98~1.22となるべきである。
【0102】
サンプルを、PolymerChar社製「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動様式で調製し、2mg/mLをサンプルの目標重量とし、PolymerChar社製高温オートサンプラを介して、予め窒素スパージされたセプタム付きのキャップが付いたバイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。試料を、「低速」振盪下で、160℃で2時間溶解した。
【0103】
Mn(GPC)、Mw(GPC)、及びMz(GPC)の計算は、PolymerChar社製GPCOne(商標)ソフトウェア、各等間隔のデータ回収点(i)におけるベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、及び式1の点(i)についての狭い標準物質較正曲線から得られるポリエチレン等価分子量を使用して、式4~6に従って、PolymerChar社製GPC-IRクロマトグラフの内部IR5検出器(測定チャンネル)を使用した、GPC結果に基づいた。
【0104】
【0105】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar社製GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して、各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(flowrate marker、FM)を用いて、試料中のそれぞれのデカンピーク(RV(FM試料))と、狭い標準物質較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークのそれとを、RV整合させることによって、各試料のポンプ流量(流量(見かけ))を直線的に補正した。次いで、デカンマーカーピークの時間のいかなる変化も、実行の全体にわたって流量(流量(有効))における線形シフトに関連すると推測される。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に当てはめる最小二乗適合ルーチンが使用される。次いで、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を解く。流量マーカーのピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に対する)有効流量を、式7のとおり計算する。流量マーカーピークの処理を、PolymerChar社製GPCOne(商標)ソフトウェアを介して行った。許容可能な流量補正は、有効流量が見かけの流量の±0.5%以内になるはずであるようなものである。
【0106】
【0107】
高温熱勾配相互作用クロマトグラフィ(HT-TGIC又はTGIC)
市販の結晶化溶出分別装置(Crystallization Elution Fractionation instrument、CEF)(Polymer Char社(スペイン)製)を使用して、高温熱勾配相互作用クロマトグラフィ(high temperature thermal gradient interaction chromatography、HT-TGIC又はTGIC)測定を行った(Cong,et al.,Macromolecules,2011,44(8),3062-3072)。CEF機器には、IR-5検出器が装備される。グラファイトは、HT TGICカラムの固定相として使用されている(Freddy,A.Van Dammeら、米国特許第8,476,076号、Winnifordら、同第8,318,896号)。分離には単一のグラファイトカラム(250×4.6mm)を使用した。グラファイトは、乾式充填技法に続いてスラリー充填技法を使用してカラムに充填する(Congら、欧州特許第2714226(B1)号及び引用文献)。実験パラメータは次のとおりであった:トップオーブン/移送ライン/針温度150℃、溶解温度150℃、溶解撹拌設定2、ポンプ安定化時間15秒、カラム洗浄のためのポンプ流量0.500mL/分、カラム充填のポンプ流量0.300mL/分、安定化温度150℃、安定化時間(前、カラムへの充填前)2.0分、安定化時間(後、カラム充填後)1.0分、SF(可溶性画分)時間5.0分、150℃から30℃への冷却速度3.00℃/分、冷却プロセスの間の流量0.04mL/分、30℃から160℃への加熱速度2.00℃/分、等温時間160℃で10分間、溶出流量0.500mL/分、及び注入ループサイズ200μL。
【0108】
冷却プロセスの間の流量は、全てのポリマー画分が冷却サイクルの終わりにカラム上に必ず残留するように、グラファイトカラムの長さに従って調節する。
【0109】
試料は、PolymerChar社製オートサンプラにより150℃で120分間、ODCB(以下に定義)中4.0mg/mLの濃度で調製した。シリカゲル40(粒径0.2~0.5mm、カタログ番号10181-3、EMD)を使用前に約2時間、160℃の真空オーブン中で乾燥させた。N2パージ能力を有するオートサンプラを備えたCEF装置の場合、シリカゲル40を、3本の300×7.5mmのGPCサイズのステンレス鋼カラムに充填し、シリカゲル40カラムをCEF装置のポンプの入口に取り付けて、ODCBを精製する。BHTは移動相に全く添加しない。シリカゲル40で乾燥させたODCBを、ここで「ODCB」と称する。TGICデータは、PolymerChar社(スペイン)製の「GPC One」ソフトウェアプラットフォームで処理した。温度較正は、約4~6mgのエイコサンと、14.0mgのイソタクチックホモポリマーポリプロピレン(isotactic homopolymer polypropylene)iPP(3.6~4.0の多分散性、150,000~190,000のポリエチレン当量として報告された分子量Mw、及び3.6~4.0の多分散性(Mw/Mn)、iPPのDSC溶融温度は158~159℃と測定された(本明細書中、以下で説明したDSC法による)と、14.0mgのホモポリマーポリエチレンHDPE(コモノマー含有量ゼロ、ポリエチレン当量として報告された重量平均分子量(Mw)115,000~125,000、及び多分散性2.5~2.8)とを入れた、7.0mLのODCBを充填した10mLバイアル中で行った。溶解時間は、160℃で2時間であった。
【0110】
HT-TGICのポリマー試料についてのデータ処理
溶媒ブランク(純粋溶媒注入)をポリマー試料と同じ実験条件で実行した。ポリマー試料のデータ処理には、較正の加熱速度から計算された、各検出器チャンネルの溶媒ブランクの減算、較正プロセスで説明されている温度外挿、較正プロセスで測定された遅延量による温度の補正、及び溶出温度軸の30℃~160℃の範囲への調整が含まれる。
【0111】
クロマトグラム(IR-5検出器の測定チャンネル)を、PolymerChar社製「GPC One」ソフトウェアと統合した。ピークが、高溶出温度で平らなベースライン(ブランク減算クロマトグラムではおおよそゼロの値)に、及び可溶性画分(soluble fraction、SF)の高温側の検出器シグナルの最小又は平らな領域に落ちるとき、可視的差異から直線のベースラインを引いた。
【0112】
TGICプロファイルのブロードネス指数(B指数)
TGICクロマトグラムは、コモノマー含量及びその分布に関連する。それは、触媒活性部位の数に関連し得る。TGICプロファイルは、クロマトグラフィに関連する実験因子によってある程度影響を受け得る(Stregel,et al.,「Modern size-exclusion liquid chromatography,Wiley,2nd edition,Chapter 3)。TGICブロードネス指数(B指数)は、異なる組成及び分布を有する試料のTGICクロマトグラムの幅広さを定量的に比較するために使用することができる。B指数は、最大プロファイル高さの任意の割合で計算することができる。例えば、「N」B指数は、プロファイルの最大高さの1/Nでのプロファイル幅を測定し、以下の式を利用することによって得ることができる。
【0113】
【0114】
式8中Tpは、プロファイルにおいて最大高さが観察される温度であり、Nは、整数2、3、4、5、6又は7である。TGICクロマトグラムが類似のピーク高さを有する複数のピークを有する場合、最高溶出温度でのピークは、プロファイル温度(Tp)として定義される。
【0115】
TGICプロファイルのU指数(U指数)
TGICを使用してポリマーの組成分布を測定した。組成分布の均一性を評価するために、得られたクロマトグラムを以下の式に従ってガウス分布にフィッティングさせた。
【0116】
【0117】
上記関数を使用して最小二乗法を使用することによってフィッティングさせた。データと関数f(xi,β)との間の残差を二乗し、続いて合計した。式中、xiは、35℃超の溶出温度であり、i=0であり、nは、TGICプロファイルの最終溶出温度である。
【0118】
【0119】
フィッティング関数は、合計の最小値を提供するように調整された。最小二乗法に加えて、フィッティング方程式を更に重み付け関数と組み合わせて、ピーク形状の過大評価を防止した。
【0120】
【0121】
式中、wiは、(yi-f(xi,β))の全ての正の場合について1に等しく、(yi-f(xi,β))の全ての負の値について11に等しい。この方法を使用して、フィッティング関数は、ピーク形状の過大評価を防止し、シングルサイト触媒によってカバーされる面積のより良好な近似値を提供する。曲線をフィッティングさせると、フィッティングによってカバーされる分布の総面積を、TGIC実験の冷却工程の終わりに30℃で残っている画分を除いた試料クロマトグラムの総面積と比較することができる。この値に100を掛けると、均一性指数(U指数)が得られる。
【0122】
【0123】
前の段落で述べたように、低密度ポリマーは一般に、溶出温度に起因して、高密度ポリマーよりも幅広い分子量分布(MWD)を有する。TGICプロファイルは、ポリマーMWDによって影響され得る(Abdulaal,et al.,Macromolecular Chem Phy,2017,218,1600332)。したがって、TGICを用いてMWD曲線の幅広さを分析するとき、曲線の幅は、ポリマー化学組成の正確な指標ではない。
【0124】
実施例1
金属錯体は、遷移金属源及び中性多官能配位子源を含む標準的なメタレーション並びに配位子交換手順によって都合よく調製される。更に、錯体はまた、対応する遷移金属テトラアミド及びトリメチルアルミニウムなどのヒドロカルビル化剤から出発する、アミド除去及びヒドロカルビル化プロセスによって調製され得る。使用される技術は、米国特許第6,320,005号、同第6,103,657号、国際公開第02/38628号、同第03/40195号、米国特許出願公開第2004/0220050A号に開示されているものと類似しているものと同じである。
【0125】
【0126】
ホウ酸塩又はMMAOのいずれかを活性化剤として使用して、連続ループ反応器中でプロ触媒Aを重合させた。これらの実施例において活性化に使用されるMMAOは、n-オクチル修飾アルミノキサンである。メチル基の置換基対オクチル基の置換基は、約6対1の比で存在し、試料はAlR3として約15%の活性アルミニウムを含有していた。
【0127】
【0128】
比較例であるエントリ1及びエントリ2の熱勾配相互作用クロマトグラフ(TGIC)を
図1に示す。また、エントリ3のTGICは、エントリ4のTGICよりも狭かった。エントリ1~4のTGIC曲線の形状は、重合反応において生成されたポリマーの組成分布を提供する。活性化剤としてホウ酸塩を重合反応に添加した場合、生成したポリマーの組成分布は、一般に、活性化剤として修飾メチルアルミノキサンを添加した場合に生成するポリマーの組成分布よりも狭い。しかしながら、エントリ3のTGICの曲線は、エントリ1の狭さに匹敵する。
【0129】
比較例であるエントリ1及びエントリ2の熱勾配相互作用クロマトグラフ(TGIC)を
図1に示し、エントリ3(本発明)及びエントリ4(比較例)のものを
図2に示す。エントリ1~4のTGIC曲線の形状は、重合反応において生成されたポリマーの組成分布を提供する。エントリ1及びエントリ2(両方とも1-オクテンと共重合されたものである)を比較すると、
図1は、ホウ酸塩活性化重合がMMAO-B活性化重合よりも狭い組成分布を生じることを示す。しかしながら、共に1-ブテンと共重合されたエントリ3とエントリ4とを比較すると、
図2は、驚くべきことに、MMAO-B活性化重合が、ホウ酸塩活性化重合よりも狭く、より望ましい組成分布をもたらすことを示している。
【国際調査報告】