(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】磁気機械式発振器から信号を受信するシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/06 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
A61B5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544042
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2022051618
(87)【国際公開番号】W WO2022157384
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】グライヒ ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ラマー ユルゲン エルウィン
(72)【発明者】
【氏名】シュメール インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン ティム
(72)【発明者】
【氏名】モエセル リチャード
(57)【要約】
磁気機械式発振器から信号を受信するシステムは、磁気機械式発振器の応答信号を受信し、励起信号を磁気機械式発振器に送信する主コイルアレイと、磁気機械式発振器の信号を受信する追加コイルとを含む。ローカライザは、追加コイルの位置を特定するように構成されており、受信位置特定信号が生成されるように主コイルアレイおよび追加コイルを制御するコントローラと、感度情報を提供する感度プロバイダと、提供された感度情報および受信位置特定信号に基づいて追加コイルの位置および/または向きを決定するプロセッサとを含む。1つ以上の追加コイルを追加することと、パイロットトーン送信を使用して1つ以上の追加コイルの位置を特定するためのソフトウェアを提供することとによって、主コイルアレイを含むシステムをアップグレードするためのキットが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気機械式発振器から信号を受信するためのシステムであって、前記システムは、
前記磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信する少なくとも1つの主送信コイルを含む主コイルアレイと、
前記磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信する主受信コイルと、
少なくとも1つの追加コイルであって、前記追加コイルは、
(1)前記磁気機械式発振器の前記電磁応答信号を受信するか、または
(2)前記磁気機械式発振器を励起するための前記電磁励起信号を送信し、
前記主コイルアレイおよび前記追加コイルが前記磁気機械式発振器から信号を受信するための医療用コイルシステムを形成する、少なくとも1つの追加コイルと、
電磁位置特定信号を送信するように前記主送信コイルおよび前記追加コイルのうちの少なくとも1つを制御するコントローラであって、前記コントローラはさらに、前記主送信コイルが前記電磁位置特定信号を送信する場合、前記追加コイルが受信した前記電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように前記追加コイルを制御し、前記追加コイルが前記電磁位置特定信号を送信する場合、前記主受信コイルが受信した前記電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように前記主受信コイルを制御する、コントローラと、
前記受信位置特定信号および感度情報に基づいて、前記追加コイルの位置または向きのうちの少なくとも1つを決定するプロセッサと、を備え、
前記感度情報は、(1)前記主送信コイルが前記電磁位置特定信号を送信する場合、前記追加コイルおよび前記主送信コイルのそれぞれの感度プロファイルであり、または(2)前記追加コイルが前記電磁位置特定信号を送信する場合、前記追加コイルおよび前記主受信コイルのそれぞれの感度プロファイルである、これらのうちの少なくとも1つを示す、システム。
【請求項2】
前記追加コイルは、電磁信号を受信し、前記受信された電磁信号を示す電気信号を生成する受信回路を含み、前記受信回路は飽和閾値を有し、前記受信回路が前記主送信コイルによって送信された前記電磁励起信号を受信し、前記電磁励起信号を示す電気信号を生成するとき、前記受信回路の前記飽和閾値には到達しない、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記電磁位置特定信号の送信間に所定の期間を有して、前記電磁位置特定信号が繰り返し送信されるように、前記主送信コイルおよび前記追加コイルのうちの少なくとも1つを制御し、さらに、前記電磁位置特定信号の前記送信から受信された前記電磁位置特定信号に基づいて前記受信位置特定信号を生成するように、前記追加コイルおよび前記主受信コイルのうちの少なくとも1つを制御し、前記プロセッサは、前記電磁位置特定信号の前記送信から生成された前記受信位置特定信号に基づいて前記追加コイルの前記位置および前記向きのうちの少なくとも1つを決定する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記電磁位置特定信号は、信号のシーケンスを含み、可変パルスパターンを利用する、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記位置特定信号がフィルタリング処理される、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの主送信コイルおよび前記少なくとも1つの追加コイルのうちの少なくとも一方は、前記電磁位置特定信号としてパイロットトーン信号を生成および送信する、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの主送信コイルおよび前記少なくとも1つの追加コイルのうちの前記少なくとも一方は、前記パイロットトーン信号を生成するCMOS出力論理回路を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
(1)前記少なくとも1つの主送信コイルは、複数の主送信コイルを有する主送信コイルアレイを含み、前記コントローラは、前記主送信コイルアレイの前記複数の主送信コイルが順に電磁位置特定信号を送信するように前記主送信コイルアレイを制御し、さらに、順に受信される前記電磁位置特定信号の少なくとも一部について受信位置特定信号を生成するように前記追加コイルを制御するか、または(2)前記少なくとも1つの追加コイルは、複数の追加コイルを有する追加コイルアレイを含み、前記コントローラは、前記追加コイルアレイの前記複数の追加コイルが順に電磁位置特定信号を送信するように前記追加コイルアレイを制御し、さらに、順に受信される前記電磁位置特定信号の少なくとも一部について受信位置特定信号を生成するように前記主受信コイルを制御し、
前記プロセッサはさらに、生成された前記受信位置特定信号に基づいて前記追加コイルの位置および向きのうちの少なくとも1つを決定する、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサは運動モデルを受信し、前記運動モデルは、前記追加コイルが取り付けられる関心領域の動きを示し、前記プロセッサは、さらに前記運動モデルに基づいて、前記追加コイルの現在の位置および向きのうちの少なくとも1つを決定する、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記追加コイルは加速度計をさらに含み、前記加速度計は前記追加コイルの加速度を測定し、前記プロセッサは、前記追加コイルの測定された前記加速度にさらに基づいて、前記追加コイルの現在の位置および向きのうちの少なくとも1つを決定する、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記電磁位置特定信号は、前記追加コイルおよび前記受信コイルのうちの少なくとも1つの受信回路を飽和させない振幅を有し、前記受信回路は、電磁信号を受信し、前記受信位置特定信号を生成する、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記電磁位置特定信号は、前記磁気機械式発振器の前記励起に利用される信号特性範囲外の信号特性を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記電磁励起信号は、前記電磁位置特定信号を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記追加コイルはローカルエネルギー蓄積要素を含み、前記ローカルエネルギー蓄積要素は電磁充電信号によって充電され、前記コントローラは、前記電磁充電信号を前記追加コイルに送信するように前記主送信コイルを制御する、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムはLC回路を備え、前記LC回路は前記追加コイルを含み、前記LC回路の共振周波数は、前記電磁励起信号の周波数範囲内にある、請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
磁気機械式発振器から信号を受信するためのコイルシステムであって、前記コイルシステムは、
前記磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信する主受信コイルを含む主コイルアレイ、および前記磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信する主送信コイルと、
追加コイルと、を備え、前記追加コイルは、(1)前記磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するか、または前記磁気機械式発振器を励振するための電磁励振信号を送信する、コイルシステム。
【請求項17】
(1)磁気機械式発振器の電磁信号を受信する主受信コイルを含む主コイルアレイであって、前記主コイルアレイはさらに、前記磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信する主送信コイルを含む、主コイルアレイと、
(2)前記磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信する追加コイルと
ともに使用されるシステムであって、前記システムは、前記追加コイルの位置を特定し、
前記システムは、
電磁位置特定信号を送信するように前記主送信コイルおよび前記追加コイルのうちの少なくとも1つを制御するコントローラであって、前記コントローラはさらに、前記主送信コイルが前記電磁位置特定信号を送信する場合、前記追加コイルが受信した前記電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように前記追加コイルを制御し、前記追加コイルが前記電磁位置特定信号を送信する場合、前記主受信コイルが受信した前記電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように前記主受信コイルを制御する、コントローラと、
前記受信位置特定信号および感度情報に基づいて、前記追加コイルの位置および向きのうちの少なくとも1つを決定するプロセッサと、を備え、
前記感度情報は、(1)前記主送信コイルが前記電磁位置特定信号を送信する場合、前記追加コイルおよび前記主送信コイルのそれぞれの感度プロファイルであり、または(2)前記追加コイルが前記電磁位置特定信号を送信する場合、前記追加コイルおよび前記主受信コイルの感度プロファイルである、これらのうちの少なくとも1つを示す、システム。
【請求項18】
コンピュータによって実装される、システムの動作の方法であって、前記システムは(1)磁気機械式発振器の電磁信号を受信する主受信コイルを含む主コイルアレイであって、前記主コイルアレイはさらに、前記磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信する主送信コイルを含む、主コイルアレイと、(2)前記磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信する追加コイルと、を含み、前記システムは、前記追加コイルの位置を特定し、前記方法は、
電磁位置特定信号を送信するように前記主送信コイルおよび前記追加コイルのうちの少なくとも1つを制御するステップと、
前記主送信コイルが前記電磁位置特定信号を送信する場合、前記追加コイルが受信した前記電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように前記追加コイルを制御するステップと、
前記追加コイルが前記電磁位置特定信号を送信する場合、前記主受信コイルが受信した前記電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように前記主受信コイルを制御するステップと、
感度情報を提供するステップであって、前記感度情報は、(1)前記主送信コイルが前記電磁位置特定信号を送信する場合、前記追加コイルおよび前記主送信コイルのそれぞれの感度プロファイルであり、および(2)前記追加コイルが前記電磁位置特定信号を送信する場合、前記追加コイルおよび前記主受信コイルのそれぞれの感度プロファイルである、これらのうちの少なくとも1つを示す、提供するステップと、
提供された前記感度情報、および前記受信位置特定信号に基づいて、前記追加コイルの位置および向きのうちの少なくとも1つを決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項19】
コイルの位置を決定するためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、プロセッサに請求項18に記載の方法を実行させ、かつ/または請求項1から17に記載のデバイス上で動作するプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラム。
【請求項20】
主コイルアレイを含むシステムをとともに使用されるキットであって、前記主コイルアレイは、磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信する主受信コイルを含み、前記主コイルアレイはさらに、前記磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信する主送信コイルを含み、前記キットは、
前記磁気機械式発振器に関して関心領域に配置される少なくとも1つの可動追加コイルであって、前記可動追加コイルは、(1)前記磁気機械式発振器を励起するための追加電磁励起信号を送信するか、または(2)前記磁気機械式発振器の前記電磁応答信号を受信する、可動追加コイルと、
前記主送信コイルおよび前記少なくとも1つの可動追加コイルのうちの少なくとも1つに、電磁位置特定信号を送信させるように、および、前記少なくとも1つの可動追加コイルおよび前記主受信コイルのうちの少なくとも1つから受信位置特定信号を供給するように実行可能なコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品はさらに、プロセッサに、前記受信位置特定信号から、前記少なくとも1つの可動追加コイルの位置および向きのうちの少なくとも1つを特定させるために実行可能である、コンピュータプログラム製品と、を備える、キット。
【請求項21】
前記コンピュータプログラム製品はさらに、前記少なくとも1つの可動追加コイルの1つ以上の構造特性についての情報を保存し、前記1つ以上の構造特性は、前記少なくとも1つの可動追加コイルの直径と巻き数とのうちの少なくとも1つを含む、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記コンピュータプログラム製品はさらに、前記プロセッサに、前記少なくとも1つの可動追加コイルの前記1つ以上の構造特性に少なくとも部分的に基づいて、かつ、前記少なくとも1つの可動追加コイルの前記少なくとも1つの位置および向きに基づいて、前記電磁応答信号に対する前記少なくとも1つの追加コイルの感度情報を決定させる、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記電磁励起信号は繰り返し送信され、前記プログラムコードは、前記電磁励起信号の前記繰り返し送信の前に、前記電磁位置特定信号が繰り返し送信されるように実行可能である、請求項20から22のいずれか一項に記載のキット。
【請求項24】
前記電磁位置特定信号がパイロットトーン信号を含む、請求項20から23のいずれか一項に記載のキット。
【請求項25】
前記電磁励起信号は繰り返し送信され、前記コンピュータプログラム製品は、前記電磁励起信号の前記繰り返し送信の前に、前記パイロットトーン信号が繰り返し送信されるように実行可能である、請求項24に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気機械式発振器から信号を受信するシステムであって、コイルシステムと、システムの追加コイルの位置を特定するためのローカライザとを含むシステム、コイルシステム、およびローカライザに関する。さらに、本発明は、システムの追加コイルの位置を特定するための方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人体の内部での医療用途など、サイズに厳しい制約が生じる用途に有利に利用可能な非常に小さい機械装置が、例えばマイクロボットまたはマイクロデバイスの形態で開発されている。このようなマイクロデバイスは、位置特定またはセンサデバイスとして特に有用である。このようなマイクロデバイスの非常に有利な種類として、最近導入された磁気機械式発振器が挙げられる。
【0003】
このような磁気機械式発振器の位置特定または感知は、励起信号に応答して送信される磁気機械式発振器の応答信号の空間分解検出に依存する。磁気機械式発振器の位置に関する情報は、通常、既知の空間感度プロファイルを備えた受信コイルアレイを使用して取得される。これに関して、ほとんどの用途では、コイルアレイによって提供される空間分解能と、コイルアレイおよび検出システムに費やす技術的労力との間で妥協点を見つける必要がある。この妥協の結果、限られた数のかなり大きな検出コイルとなることが多い。しかし、短期間の間、例えば、患者に細い針を挿入しなければならない期間の間、分解能を向上させる必要がある可能性がある。特に、コイルアレイがワークスペースの近くに設けられる場合、よりきめ細かいコイルアレイはより高い分解能および感度を提供し、そのような用途に適している可能性がある。しかし、これらのより微細なコイルアレイに費やさなければならない技術的労力や、微細なコイルアレイがインターベンション処置のワークフローを妨げる可能性があることから、微細なコイルアレイを常に使用するのは不都合である。したがって、医療用途により柔軟に適用可能であり、様々な医療状況に容易に適合可能な磁気機械式発振器のための検出システムを提供することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の一部の実施形態の目的は、医療用途により柔軟に適用可能であり、様々な医療状況に適合可能な、磁気機械式発振器から信号を受信するシステムを提供することである。さらに、本願の一部の実施形態の目的は、そのようなシステムで利用可能なコイルシステム、ローカライザ、方法、およびコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、磁気機械式発振器から信号を受信するためのシステムが提供され、システムは医療用途で使用されるように構成されている。システムは、a)磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するように構成された主受信コイル、および磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信するように構成された主送信コイルを含む主コイルアレイと、b)磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するように、かつ/または磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信するように構成された追加コイルと、c)追加コイルの位置を特定するように構成されたローカライザとを備える。ローカライザは、i)コントローラであって、a)追加コイルが受信可能な電磁位置特定信号を送信するように主送信コイルを制御し、および追加コイルが受信した電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように追加コイルを制御するように構成されており、かつ/または、b)主受信コイルが受信可能な電磁位置特定信号を送信するように追加コイルを制御し、および主受信コイルが受信した電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように主受信コイルを制御するように構成された、コントローラと、ii)感度プロバイダであって、a)主送信コイルが電磁位置特定信号を送信するように制御される場合、追加コイルおよび主送信コイルのそれぞれの感度プロファイル、および/またはb)追加コイルが電磁位置特定信号を送信するように制御される場合、追加コイルおよび主受信コイルのそれぞれの感度プロファイルを示す感度情報を提供するように構成された、感度プロバイダと、iii)提供された感度情報、および受信位置特定信号に基づいて追加コイルの位置および/または向きを決定するように構成されたプロセッサと、を含む。
【0006】
このシステムは磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するための、および/または電磁励起信号を送信するための追加コイルを提供するため、コイルアレイの受信特性および設定を様々な状況に適合させることができる。さらに、システムは、提供された感度情報、および受信位置特定信号に基づいて追加コイルの位置を特定するように構成されたローカライザをさらに備えるため、磁気機械的発振器の位置特定のための既存の主コイルアレイへの追加コイルの統合が容易になり、短時間で実行できるため、医療環境でのシステムの適用がさらに柔軟になる。したがって、このシステムは柔軟に適用でき、様々な医療状況に適合できる。
【0007】
一般に、磁気機械式発振器は、空間的制限のある用途、特に人間の体内で利用できるミリデバイスまたはマイクロデバイスの形態または一部として提供される。例えば、そのような磁気機械式発振器は、人体に導入されるカテーテルまたは針の一部として使用することができ、磁気機械式発振器は、カテーテルまたは針の正確な位置特定を可能にする。さらに、磁気機械式発振器は、インプラントや他の医療インターベンション器具などの他のインターベンション器具とともに、またはその一部として適用することもできる。さらに、磁気機械式発振器は、位置特定のためだけでなく、磁気機械式発振器の環境内の物理パラメータを感知するためのセンサデバイスとしても適用することができる。
【0008】
一般に、磁気機械式発振器は、励起電磁場にさらされると回転または振動できる磁性物体を含む。回転または振動する磁性物体は、周期的に変化する電磁応答場の形態で信号を自ら生成し、これが、例えば磁気機械式発振器が埋め込まれている患者の体外で測定できる。一部の用途では、磁気機械式発振器の環境における物理パラメータの測定値または磁気機械式発振器の識別情報などの追加情報を応答信号内に符号化できる。
【0009】
主コイルアレイは、磁気機械式発振器の信号を受信するためのシステムの医療用途で利用されるコイルアレイを指す。主コイルアレイは、磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するように構成された主受信コイルと、磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信するように構成された送信コイルとを備える。好ましくは、主コイルアレイは、複数の主受信コイル、例えば、磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するための少なくとも3つの主受信コイルを含む主受信コイルアレイを備え、これにより、磁気機械式発振器の正確な位置特定を可能にする。さらに、主コイルアレイは、様々な方向から磁気機械式発振器に電磁励起信号を送信するための複数の主送信コイル、例えば主送信コイルアレイを備えることもできる。好ましくは、主受信コイルは、電磁励起信号を送信するための主送信コイルとしても利用できるように構成されており、主送信コイルは、磁気機械式発振器から電磁応答信号を受信するための主受信コイルとしても利用できるように構成されている。本願の一部の実施形態では、実施形態が主受信コイルおよび主送信コイルの両方に適用できる場合、主コイルアレイに属するコイル、すなわち、全ての主受信コイルおよび全ての主送信コイルはが「主コイル」と呼ばれる。この場合、「主コイル」に関して説明したそれぞれの実施形態または特徴は、主コイルのうちの少なくとも1つ、または有利には主コイルの全てに適用することができる。主コイルに言及する全ての実施形態が、主受信コイルおよび/または主送信コイルに適用可能である。
【0010】
一実施形態では、主コイルアレイは、主受信コイルおよび主送信コイルの両方として使用することができる主コイルを含み、主コイルは3×3または4×4のアレイ配置の形態で配置されている。3×3アレイ配置とは、3×3グリッド領域を有する長方形グリッドを指し、各グリッド領域において主コイルが配置されており、9つの主コイル全てが主コイルアレイ内に規則的なグリッドパターンで配置される。4×4アレイ配置は3×3配置と似ているが、9個ではなく16個のコイルが主コイルアレイ内に規則的なグリッドパターンで配置される。一部の実施形態では4×4の配置が好ましい。主コイルアレイの主コイルは他のパターンで配置することもでき、例えば六角形パターンで配置することもできる。また、主受信コイルと主送信コイルを独立したパターンで配置することも可能である。例えば、主送信コイルを六角形のパターンで配置し、主受信コイルを長方形のパターンで配置することができる。このような場合、2つの配置パターンが同じ平面内で重なり合ったり、並べて配置されたり、関心領域の異なる平面内に配置されたりし得る。例えば、主送信コイルまたは主送信コイルアレイを患者の上に配置し、主受信コイルまたは主受信コイルアレイを患者の下に配置することができる。一般に、主コイルアレイは、主コイルアレイの1つ以上の所定の配置を支持するために、主コイルまたは主コイルの少なくとも一部、例えば主受信コイルが配置される支持構造を含み得る。有利には、そのような支持構造は、患者または患者支持体の輪郭に適合させることができる。例えば、支持構造は可撓性であってもよいし、折り曲げ可能であってもよいし、または全体的に変形可能であってもよい。これにより、主コイルアレイを柔軟に適用することも可能となる。さらに、一実施形態では、主コイルアレイは、医療処置中に患者が支持される患者支持体に組み込まれる。
【0011】
一般に、主コイルアレイは医療用途で使用されるように構成されている。例えば、主受信コイルおよび主送信コイルは、主受信コイルおよび主送信コイルを患者の組織と直接接触して配置することを可能にする生体適合性ハウジングを有し得る。さらに、主コイルアレイは、医療施設の衛生要件を満たすように構成され得る。好ましくは、主コイルアレイの主コイル、例えば主受信コイルおよび主送信コイルは、10cm~20cmの直径を有する。一部の実施形態では、主コイルは異なる直径を有することができ、主送信コイルは主受信コイルとは異なる直径を有することができる。好ましくは、主コイルアレイの主コイルは、5mm未満、より有利には2mm未満、さらにより有利には1mm未満の磁軸方向の広がりを有する。一実施形態では、主コイルアレイの主コイルは、フラットコイル、すなわち、全ての巻線が同一平面上に設けられる平面コイルを指し得る。一部の実施形態では、主コイルは少なくとも2つの巻き線層を備える。これにより、最内層と接触する巻き線層が1つだけある平面コイルの問題を回避できる。さらに、主コイルアレイの主コイルが、重量制限が厳しい医療環境および状況にも適用できるように構成されること、および/または主コイルアレイの主コイルがX線に写らないことは有益である。有利には、主コイルアレイの主コイルは少なくとも部分的にアルミニウムで作られる。有利には、主コイルアレイの主コイルのインダクタンスは200μHより小さく、より有利には50μHより小さい。このような小さなインダクタンスにより、動作電圧を小さく保ちつつ、コイルの絶縁要件を小さく保つことができる。
【0012】
さらに、システムは、磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するように、および/または磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信するように構成された追加コイルを備える。追加コイルは別個のコイルであってもよく、すなわち、通常は主コイルアレイの一部ではなく、システムの全ての医療用途で使用されるわけではない。このコイルは必要に応じて追加でき、例えば、磁気機械式発振器の位置を特定するためのより高い空間分解能が必要な場合に追加され得る。一般に、追加コイルは医療用途で使用されるように構成され得る。例えば、追加コイルは、追加コイルを患者の組織と直接接触して配置することを可能にする生体適合性ハウジングを有し得る。さらに、追加コイルは、インターベンション領域または一般的なケア環境内の衛生要件を満たすように構成され得る。追加コイルは、上記の主コイルアレイで使用される主コイルと同じ特性を備えることができる。あるいは、追加コイルは主コイルと比較して異なる特性を備えることができる。さらに、システムの異なる医療用途ごとにシステムによって異なる追加コイルが提供されてもよい。
【0013】
主コイルアレイの一部の実施形態によれば、追加コイルも厳しい重量制限のある医療環境および状況に適用可能であるように構成されること、および/または追加コイルがX線に写らないことは有利である。同様に、追加コイルが少なくとも部分的にアルミニウムで作られていると有利である。追加コイルの直径は、主コイルアレイの主コイルの直径よりも小さいと有利である。追加コイルの直径は、その意図された用途に合わせられると有利である。特に、追加コイルが1つだけ設けられる場合、追加コイルの直径とは、実質的に、追加コイルが適用されている間の磁気機械式発振器と追加コイルとの間の予想される最大距離を指す。例えば、インターベンション処置において針が患者の皮膚の最大3cm下に提供され、追加コイルが患者の皮膚上に直接配置されることが予想される場合、一部の実施形態では追加コイルは直径3cmを有し得る。2つ以上の追加コイル、例えば追加コイルアレイが設けられる場合、追加コイルアレイの追加コイルの直径は、一般に、1つのみの追加コイルの直径よりも小さくすることができる。特に、追加コイルアレイの追加コイルの直径は、実質的に、追加コイルアレイが適用されている間の磁気機械式発振器と追加コイルアレイとの間の予想される最大距離の0.1~0.5倍を指し得る。上記の両実施形態において、追加コイルの直径は、好ましい直径からその2倍までの偏差を有し得る。発明者らは、そのような偏差がある場合でも、磁気機械式発振器の電磁応答信号が追加コイルによって適切な精度で検出できることに気づいた。
【0014】
追加コイルが磁気機械的発振器の電磁応答信号の受信のためだけに構成されている場合、追加コイルが主受信コイルのインダクタンスよりも高いインダクタンスを有すると有利であり、1mHよりも高いインダクタンスを有すると有利である。これにより、受信電磁応答信号を容易に増幅したり、かつ/または必要に応じて信号をさらに処理するために受信ユニットへの複雑さが低い接続ケーブルを利用したりすることが可能になる。追加コイルも電磁励起信号を送信するように構成されている一実施形態では、追加コイルが主送信コイルと同じインダクタンス、有利には200μH未満のインダクタンス、より有利には50μH未満のインダクタンスを有する。追加コイルは、主コイルアレイの主コイルにとっても有利であるように、平らで均一な平面コイルを指す可能性があるが、円筒形コイルを指す可能性もある。
【0015】
追加コイルは一般に、関心領域、すなわち磁気機械式発振器に近い領域に配置されるように構成されている。追加コイルは、生物の関心領域に取り付けられるように構成されている。例えば、追加コイルは、生物の関心領域へのそのような取り付けを可能にする取り付け手段を提供するように構成され得る。このような取り付け手段は、例えば、生物の皮膚に物体を取り付けるために利用できる皮膚接着剤、ストラップ、テープなどを指す可能性がある。
【0016】
有利な実施形態では、システムは、2つ以上の追加コイルを有し、有利には、少なくとも2つの追加コイルを有する追加コイルアレイを備える。一実施形態では、複数の追加コイルは、空間領域内に自由に設けられるように構成されており、すなわち、複数の追加コイルは、互いに固定された空間的関係を有さず、例えばユーザが各用途に合わせて手で適切な空間配置に設置可能である。しかし、別の有利な実施形態では、複数の追加コイルは、それらが互いに所定の空間関係を提供するように構成され得る。例えば、追加コイルは、追加コイルが所定の位置に配置されることを支持する取り付け支持体上に配置され得る。例えば、取り付け支持体は、追加コイルの互いに対する距離および位置が固定されるように構成され得る。しかし、取り付け支持体は、例えば、取り付け支持体の構造によって予め定められた複数の異なる空間配置で追加コイルを配置するための、ある程度の柔軟性も許容し得る。取り付け支持体はまた、追加コイルアレイの追加コイル間の空間的関係を測定することを可能にする測定手段を提供することもできる。例えば、取り付け支持体は折り畳み式の取り付け支持体を指し得、これは、折り畳み式取り付け支持体の異なる構造物間の角度を求めるためのセンサを有する。この取り付け支持体は関心領域内に配置されるために折り畳まれる。
【0017】
複数の追加コイルについて一般に既知の相互空間関係を与えることには、システムの適用において、追加コイルのうちの1つの位置のみを決定すればよいという利点がある。全ての追加コイル間の既知の空間的関係により、他の追加コイルの位置も直接的に知ることができる。これにより、タイミングが重要であり得る用途において、追加コイルを主コイルアレイに迅速に組み込むことができる。追加でまたは代わりに、プロセッサは、空間関係を直接的に考慮に入れることによって、感度情報および受信位置特定信号に基づいて、全ての追加コイルの位置および/または向きを決定するように構成され得る。例えば、空間関係を使用して、全ての追加コイルの開始位置および/または向きを決定することができ、プロセッサは、これらの開始位置に基づき、相互に依存する追加コイルの位置および/または向きを決定するための方程式を解くように構成され得る。これにより、全ての追加コイルの位置および/または向きをより正確に決定できるようになる。
【0018】
さらに、プロセッサは、追加コイルの全ての受信位置特定信号、感度情報、および追加コイル間の空間関係に基づいて、追加コイルアレイ近傍の電磁場に歪みを生じさせる物体が追加コイルアレイ近傍に存在する可能性があるかを判断するように構成され得る。このような物体、例えば磁性物体または磁化可能な物体は、追加コイルの位置および/または向きだけでなく磁気機械式発振器の位置および/または向きを決定する精度を低下させる可能性がある。特に、プロセッサは、追加コイルの互いに対する決定された相対位置および/または向きを、追加コイルの既知の相互空間関係、すなわち、互いに対する既知の相対位置および/または向きと比較するように構成され得る。比較の結果、既知の空間関係からの1つ以上の追加コイルの位置および/または向きの偏差が、常に存在するノイズに起因して予想より大きい場合、例えば所定の許容偏差範囲よりも大きい場合、プロセッサは、関心領域内に電磁場の歪みを引き起こす物体が存在すると判断するように構成され得る。この場合、プロセッサは、物体の位置が静止している、すなわち移動しておらず、線形磁化を有すると仮定するように構成され得る。これらの仮定に基づいて、プロセッサは、補正を適用するときに、追加コイルの決定された相対位置および/または向きが追加コイルの既知の空間関係に対応するように、物体の存在に対する補正を決定するように構成され得る。例えば、プロセッサは双極子モデルを利用して、関心領域内の磁性または磁化可能な物体の影響をモデル化し得る。この例では、主コイルと追加コイルの電磁場を記述するモデルに磁性物体の表現として双極子が追加され、追加された双極子は、磁性または磁化可能な物体内の渦電流について予想される磁気時間遅延を有する。そして、双極子モデルを考慮して求められた追加コイルの位置および/または向きが許容可能な精度をもたらすまで、すなわち、所定の閾値を下回る既知の空間関係からの偏差をもたらすまで、モデル内の追加双極子の位置、強度、および位相が調整され得る。しかし、プロセッサは、磁性物体または磁化可能物体の存在によって生じる歪みを補正するための他の方法を適用することもできる。また、上記仮定は、医療用途の環境では正確な結果をもたらすと同時に、歪みの補正の容易で計算コストの低い決定を可能にするが、他の仮定、特により複雑な仮定を使用して磁性または磁化可能物体の存在をモデル化することもできる。さらに、上記追加コイルアレイに関して説明したが、磁場の歪みは、1つの追加コイルのみに基づいて決定および補正することもできる。例えば、この場合、この追加コイルは、互いに既知の空間関係を有する関心領域内の複数の異なる位置および/または向きに連続して配置され得る。そして、上記原理を、追加コイルの連続した位置および/または向きの既知の空間関係と比較してのこれらの連続した位置および/または方向の決定に適用することができる。一般に、プロセッサは、そのような磁性または磁化可能な物体の存在をシステムのユーザに示し、可能であればその物体を取り除くようにユーザに促すように構成され得る。しかし、プロセッサは、例えば物体の除去が不可能な場合、求められた磁場の歪みに基づいて、磁気機械式発振器の位置特定中に磁場の歪みを補正するように構成されてもよい。特に、追加コイルまたは追加コイルアレイが関心領域内の異なる位置に配置され、追加コイルまたは追加コイルアレイの各位置に対して歪みの決定が繰り返される場合、そのような歪みおよび対応する補正を正確に決定することができる。このように追加コイルを利用可能にする容易かつ柔軟なシステムにより、磁気機械式発振器の電磁応答信号の受信に関連する可能性のある電磁場の歪みを正確かつ容易に検出でき、したがって、歪みを補正したり、磁気機械式発振器の位置などをより正確に求めたりすることができる。
【0019】
さらに、このシステムは、追加コイルの位置を特定するように構成されたローカライザを備える。ローカライザは有利には、コンピューティングデバイスのハードウェアおよび/またはソフトウェアの一部として形成され得る。コンピューティングデバイスは、任意の既知の汎用または専用のコンピューティングデバイス、例えば、パーソナルコンピュータや、スマートフォン、タブレット、ラップトップなどのハンドヘルドコンピュータ、クラウドコンピューティングデバイスなどを指す可能性がある。有利には、ローカライザは、磁気機械式発振器の位置を特定するために既に利用されているコンピューティングデバイスのハードウェアおよび/またはソフトウェアの一部である。しかし、ローカライザは専用のコンピューティングデバイスの一部であってもよい。
【0020】
ローカライザは、追加コイルによって受信可能な電磁位置特定信号を送信するように主送信コイルを制御し、追加コイルによって受信された電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように追加コイルを制御するように構成され得る。加えて、または代わりに、コントローラは、主受信コイルによって受信され得る電磁位置特定信号を送信するように追加コイルを制御するように、および、主受信コイルによって受信された電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように主受信コイル制御するように構成される。追加コイルの位置は、追加コイルが、主送信コイルによって送信された信号を受信することによって、または主受信コイルによって受信可能な信号を自分が送信することによって、特定することができる。両方の場合において、受信された位置特定信号は、それぞれ主受信コイルおよび/または追加コイルによって受信された電磁位置特定信号を示し、したがって、追加コイルが主コイルアレイに対して配置されている位置および/または向きを示す。電磁位置特定信号は、追加コイルの位置を特定するのに適した任意の信号、すなわち、追加コイルおよび/または主受信コイルによって受信できる任意の信号であり得る。例えば、電磁位置特定信号は、磁気機械式発振器を励起するために使用される電磁励起信号を指すことができる。しかし、電磁位置特定信号は、追加コイルの位置特定にのみ使用される信号を指すこともでき、電磁位置特定信号は、追加コイルの位置特定に特に適した信号特性を有し得る。好ましくは、電磁位置特定信号は電磁パルスシーケンスを指し、このパルスシーケンスは、例えば2つの連続パルス間の時間を変えることによって、異なるパルスパターンを有し得る。
【0021】
ローカライザはさらに、a)主送信コイルが電磁位置特定信号を送信するように制御される場合、追加コイルおよび主送信コイルのそれぞれの感度プロファイル、および/またはb)追加コイルが電磁位置特定信号を送信するように制御される場合、追加コイルおよび主受信コイルのそれぞれの感度プロファイルを示す感度情報を提供するように構成された感度プロバイダを含み得る。一般に、複数の追加コイルが提供される場合、感度プロバイダは、全ての追加コイルの感度プロファイルを示す感度情報を提供するように構成され得る。さらに、複数の主受信コイルおよび/または複数の主送信コイルが提供される場合、感度プロバイダは、すべての主受信コイルおよび/またはすべての主送信コイルのそれぞれの感度プロファイルを示す感度情報を提供するように構成され得る。特に、感度プロバイダは、追加コイルの位置および/または向きを特定するために必要な感度情報を提供するように構成されている。例えば、コントローラが電磁位置特定信号を提供するために主送信コイルを制御するように構成されている場合、感度プロバイダは追加コイルおよび主送信コイルの感度プロファイルを示す感度情報を提供するように構成されている。別の例では、コントローラが追加コイルを制御して電磁位置特定信号を送信するように構成されている場合、感度プロバイダは主受信コイルおよび追加コイルの感度プロファイルを示す感度情報を提供するように構成されている。したがって、感度プロバイダは、電磁位置特定信号を送信するコイルの感度プロファイルおよび電磁位置特定信号を受信するコイルの感度プロファイルを示す感度情報を提供するように適合される。
【0022】
感度プロファイルは、一般に、所定の電流が供給されているコイルによって生成される、関心領域、例えば、それぞれのコイルの周囲に所定の距離を有する3D領域内の磁場の磁束密度を指す。コイルの感度プロファイルは一般に周波数に依存する可能性があり、つまりコイルに供給される電流の周波数に依存する可能性がある。この場合、感度プロバイダが、電磁位置特定信号に使用されると予想される周波数における感度プロファイルを示すような感度情報を提供することが有益である。一般に、コイルが送信コイルとして使用されるか受信コイルとして使用されるかにかかわらず、感度プロファイルは同じある。関心領域内のそれぞれのコイルの感度プロファイルを示す感度情報を提供することにより、追加コイルのサイズ、例えば直径のみよりも高い精度で追加コイルの位置を決定することが可能になる。一実施形態では、感度情報は、それぞれの感度プロファイルを直接表すことができる。しかし、好ましい実施形態では、感度情報は、所定の電流が供給されたときの各コイルの磁場、すなわち磁束密度を提供する関心領域内の導電体の位置という形態で、感度プロファイルを有する。この場合、感度プロファイルはそれぞれの導電体の位置によって表され、したがって、位置が感度プロファイルを示す。あるいは、感度情報は、それぞれのコイルの感度プロファイルを表すことができる磁場を提供する関心領域内の双極子の位置に関する情報を指し得る。
【0023】
ローカライザはさらに、感度情報および受信位置特定信号に基づいて追加コイルの位置および/または向きを決定するように適合されたプロセッサを備える。特に、プロセッサは、主コイルアレイのコイルの位置および/または向きに関連して追加コイルの位置および/または向きを決定するように適合されている。主コイルアレイのコイルの位置および/または向きがグローバル座標系で既知である場合、追加コイルの位置および/または向きも、追加コイルと主コイルアレイのコイルとの間の空間関係に基づいてグローバル座標系で決定されることが有益である。一般に、コイルアレイを使用して、例えば電磁信号を提供するセンサの位置を特定する方法が知られている。特に、プロセッサは、磁気機械式発振器の位置を特定するために使用されるアルゴリズムと同様のアルゴリズムを利用するように構成され得る。例えば、プロセッサは、例えば、M.Baszynskiらによる記事“Electromagnetic navigation in medicine - basic issues, advantages and shortcomings, prospects of improvement”、Journal of Physics:Conference Series、volume 238、ページ1~11(2010)に記載されている方法に従ってビオ・サバールの法則を利用することによって、それぞれの感度プロファイルを示す感度情報および受信位置特定信号に基づいて追加コイルの位置および/または向きを決定するように構成され得る。しかし、追加コイルの位置および/または向きを決定するために他のアルゴリズムを利用することもできる。
【0024】
一実施形態では、追加コイルは、主送信コイルによって送信された電磁励起信号を受信し、受信した電磁信号を示す電気信号を生成するための受信回路を備え、受信回路は、主送信コイルによって送信された電磁励起信号を受信し、受信した電磁励起信号を示す電気信号を生成するとき、特定の範囲内で動作し、受信回路の飽和閾値に到達しないように構成されている。受信回路は、追加コイルによって受信された電磁信号を、受信された電磁信号を示す電気信号に変換するように構成されたソフトウェアおよび/またはハードウェアを有し得る。例えば、比例関係や二次関係などの、受信された電磁信号に対する関数関係を含む電気信号である。一般に、受信された電磁信号をコイルによって電気信号に変換するために使用されるソフトウェアおよび/またはハードウェアベースの回路は、受信された電磁信号の振幅について閾値を有することが知られており、この閾値以上の受信された電磁信号振幅については互いに区別することができない。換言すれば、閾値以上の受信された電磁信号振幅について生成された電気信号は、受信された電磁信号の異なる振幅を示さない。磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信する場合、磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号が、磁気機械式発振器から電磁応答信号を取得するために比較的高い振幅を提供する必要があることを考慮する必要がある。しかし同時に、磁気機械式発振器によって送信される電磁応答信号は、一般に電磁励起信号よりも振幅が数桁小さい。例えば、電磁励起信号の磁束密度は約1μT~1mTであるが、電磁応答信号の磁束密度は約1pT~100nTである。磁気機械式発振器から電磁応答信号を受信するために使用される追加コイルのようなコイルが、磁気機械式発振器によって送信される信号の比較的低い振幅を受信するように構成されることは有益である。したがって、受信回路は、磁気機械式発振器の比較的低い振幅で電磁応答信号を受信するように構成され得る。この場合、磁気機械式発振器は、例えば追加コイルの位置を特定するために使用される、より高い振幅の電磁励起信号にさらされると飽和することになる。しかし、受信回路は、送信コイルによって送信される電磁励起信号にさらされたときに飽和しないように構成され得る。例えば、追加コイルの受信回路は、受信信号を減衰するように、有利には、所定の信号振幅を超える受信信号のみを減衰するように構成された減衰素子を備え得る。これにより、受信回路の飽和閾値を低減し、送信コイルによって送信された電磁励起信号が飽和閾値に到達しないようにすることができる。非限定的な例として、減衰素子は、2つの直列している抵抗器と、その間の接点とを備える分圧器または調整可能な分圧器であり得る。別の例では、抵抗ベースの分圧器の代わりに、受信信号を減衰させるために誘導性または容量性分圧器を利用することができる。
【0025】
有利には、減衰素子は、100、より有利には1,000、さらに有利には1,000,000の減衰係数で受信信号の減衰することを可能にする。有利には、減衰素子は可変減衰素子タイプとすることができ、これは、減衰係数を異なる減衰係数の値間で調整できることを意味し、例えば1,000~100,000の範囲内で調整できることを意味する。減衰を行わない場合、受信回路で一般的に使用される素子は、約4~5桁の受信振幅範囲にわたって受信された電磁信号を示す電気信号を生成するように構成される。減衰素子を設けることによって、範囲を拡大させ、受信回路によって電磁励起信号および応答信号を処理することが可能にする。また、受信された電磁信号の振幅に基づいて自動的に選択できる複数の異なる受信経路が受信回路によって提供されてもよい。各受信経路は、受信された電磁信号の特定の振幅範囲に特に合わせられている。このため、位置特定測定を実行できる頻度を最大限に高めることができる。これは、相対位置特定の測定が任意の時点で実行できることに起因する。これは、追加時点測定によって手順を補足する必要がないため、個別の位置測定に追加の時間を要さないことを意味する可能性がある。例えば、追加コイルの位置特定は、コイルまたは装置の位置を特定するための励起パルスの送信と同時に実行することができる。相対的な位置特定は、どの時間間隔でも行うことができる。
【0026】
一実施形態では、受信回路は、受信信号を減衰させるための減衰係数を調整するように構成された調整可能な減衰素子を備える。この場合、減衰係数の調整により受信回路内のインピーダンス変化が所定の閾値を下回るように受信回路が構成されることが有益である。特に、所定の閾値は、閾値を下回る受信回路のインピーダンス変化が追加コイルの位置および/または向きを決定する際に依然として許容可能な精度をもたらすように決定される。受信回路におけるこのようなインピーダンスの変化は、受信回路に接続された追加コイル内の電磁位置特定信号によって引き起こされる受信電流の変化をもたらし、ひいては電磁位置特定信号の不正確な受信をもたらす。結果として、追加コイルの位置特定が不正確になる可能性がある。さらに、または代わりに、プロセッサは、受信回路内の調整可能な減衰素子によって引き起こされるインピーダンス変化を補正するように構成され得る。例えば、調整可能な減衰素子によって提供される減衰係数ごとに追加コイルの感度情報を決定および提供することができ、プロセッサは、追加コイルの位置および/または向きを決定する際、現在の減衰係数に関する感度情報を考慮するように構成され得る。さらに、減衰素子は、関与するインダクタンスの特性によって受信信号の減衰をもたらすインダクタンス結合として実現することもできる。
【0027】
一実施形態では、追加のコイルは、提供された電気信号から、電磁信号の送信を可能にする電流をコイル内に生成するように構成された送信回路を備え、送信回路は、2つの送信経路が提供されるように構成され、第一の送信経路は、提供された電気信号から、電磁位置特定信号の送信を可能にする電流をコイル内に生成するように構成され、第2の送信経路は、提供された電気信号から、電磁励起信号の送信を可能にする電流をコイル内に生成するように構成される。送信回路は、例えばコンピュータインターフェースから受信した電気信号を、送信信号を生成するために追加コイルに印加される電流に変換するように適合されたソフトウェアおよび/またはハードウェアを備えることができる。好ましくは、送信回路および受信回路は、追加コイルの送信/受信回路に結合される。さらに、上述の受信回路および/または送信回路は、主コイルアレイのコイル、すなわち主受信コイルおよび主送信コイルにも設けられ得る。
【0028】
一実施形態では、コントローラは、電磁位置特定信号が各電磁位置特定信号間に所定の時間間隔を有して繰り返し送信されるように、主送信コイルおよび/または追加コイルを制御し、受信された各電磁位置特定信号に基づいて受信位置特定信号を生成するように、追加コイルおよび/または主受信コイルを制御するように構成される。したがって、コントローラは、a)電磁的位置特定信号が各電磁的位置特定信号間に所定の時間間隔を有して繰り返し送信されるように送信コイルを制御し、各受信された電磁的位置特定信号に基づいて受信位置特定信号を生成するように追加コイルを制御するように構成され、かつ/または、b)各電磁位置特定信号間に所定の時間間隔を有して電磁位置特定信号が繰り返し送信されるように追加コイルを制御し、各受信電磁位置特定信号に基づいて受信位置特定信号を生成するように主受信コイルを制御するように構成されている。プロセッサは、生成された受信位置特定信号に基づいて追加コイルの位置および/または向きを決定するように構成されている。電磁位置特定信号を所定の繰り返し頻度で、すなわち各電磁位置特定信号間に所定の時間間隔を有するように繰り返し送信することには、追加コイルの位置および/または向きを、例えばインターベンション処置の最初に一度だけではなく、追加コイルが適用されている期間にわたって繰り返し決定できるという利点がある。特に、追加コイルの少なくともある程度の動きが予想される用途では、所定の期間後に追加コイルの位置および/または向きを繰り返し決定することにより、追加コイルの位置および/または向きをより正確に決定することができ、したがって磁気機械式発振器の位置をより正確に決定することができる。特に、繰り返し送信される電磁位置特定信号間の所定の機関、すなわち位置特定信号が繰り返される周波数は、コントローラによって追加コイルのそれぞれの用途に有利に合わせることができる。例えば、コントローラは、複数の所定の期間から、それぞれの用途に予想される時間スケールに収まる期間を選択するように構成され得る。特に、ユーザは追加コイルがどの用途に利用されるかを示すことができ、コントローラはユーザの入力に基づいて所定の期間を選択するように構成され得る。例えば、追加コイルが配置される領域で少なくとも数分の時間スケールでのゆっくりした動きのみが予想される場合、コントローラは、約1分を指す所定の期間を選択することで、追加コイルの現在の位置および/または向きが正確に決定されることを保証することができる。しかし、より短い時間スケールが予想される用途の場合、例えば、呼吸運動が予想されるように追加コイルが患者の胸部に配置される場合、コントローラは、追加コイルの位置および/または向きを正確にトラッキングするために、数秒に収まる所定の期間を選択するように構成され得る。
【0029】
一実施形態では、コントローラは、電磁位置特定信号を連続的に送信し、受信した電磁位置特定信号に基づいて受信位置特定信号を連続的に生成するように送信コイルおよび/または追加コイルを制御するように構成される。有利には、プロセッサも、連続的に受信された位置特定信号に基づいて追加コイルの位置および/または向きを実質的に連続的に決定するように構成され得る。これにより、追加コイルの位置および/または向きを正確にトラッキングすることができる。これは、例えば患者の心臓近くのインターベンション処置における患者の循環血液系など、激しく変化または変動する環境において正確な位置特定が必要とされる用途において特に望ましい。
【0030】
一実施形態では、主送信コイルは、複数の主送信コイルを備える主送信コイルアレイを指し、コントローラは、主送信コイルアレイを制御するように適合されている。これは、主送信コイルアレイの各コイルが電磁位置特定信号を順次送信し、追加コイルを使用して、順次受信される電磁位置特定信号のそれぞれに対する受信位置特定信号を生成するという方法で行うことができる。追加でまたは代わりに、追加コイルは、複数の追加コイルを含む追加コイルアレイを指し、コントローラは、追加コイルアレイの追加コイルのそれぞれが電磁位置特定信号を順次送信するように追加コイルアレイを制御するように構成されている。主受信コイルは、順次受信される電磁位置特定信号のそれぞれに対して受信位置特定信号を生成する。この場合、プロセッサはさらに、生成された各受信位置特定信号に基づいて追加コイルの位置および/または向きを決定するよう構成されている。したがって、システム内に複数のコイル(複数の送信コイルまたは複数の追加コイルのいずれでも)が設けられている場合(少なくとも1つの送信コイルおよび少なくとも1つの追加コイルがある場合)、コントローラは、電磁位置特定信号を順次送信するようにそれぞれのコイルを制御するように適合される。換言すれば、コントローラは、第1の電磁位置特定信号を送信するために第1のコイルを制御し、次に第2の電磁位置特定信号を送信するために第2のコイルを制御し、次に第3の電磁位置特定信号を送信する第3のコイルを制御等するように適合されている。生成された受信位置特定信号のそれぞれに基づいて位置を決定することにより、追加コイルの位置および/または向きのより正確な特定が可能になる。有利なことに、この実施形態では、送信される電磁位置特定信号は互いに類似しており、例えば、信号周波数、振幅、長さなどの同じ信号特性を有する。しかし、他の実施形態では、電磁位置特定信号はコイルごとに異なるものであってもよい。例えば、各コイルは、別のコイルから送信される電磁位置特定信号とは異なる電磁位置特定信号を送信するように制御され得る。さらに、上述の両方の実施形態において、位置特定信号を受信するコイルがコイルアレイを意図する可能性があることに留意されたい。例えば、主送信コイルが主送信コイルアレイを意図する場合、追加コイルも追加コイルアレイを指し、追加コイルアレイの各追加コイルが順次送信される電磁位置特定信号を受信することができる。位置決定ユニットは、生成された受信位置特定信号のそれぞれに基づいて、追加コイルアレイ、すなわち全ての追加コイルの位置および/または向きを決定するように適合される。電磁位置特定信号を順次送信する代わりに、コントローラは、電磁位置特定信号を同時に送信するように主送信コイルアレイまたは追加コイルアレイをそれぞれ制御するように構成されてもよい。それぞれの受信コイル、すなわち主受信コイルまたは追加コイルの受信回路の飽和を回避するために、この実施形態では、異なるコイルによって送信される電磁位置特定信号が異なる周波数を有することが有利である。一実施形態では、電磁位置特定信号は電磁パルスシーケンスを有し、このパルスシーケンスは、例えば2つの連続パルス間の時間を変えることによって、異なるパルスパターンを有し得る。したがって、コントローラが、コイルごとに異なるパルスパターンを有する電磁位置特定信号を送信するように各コイル、すなわち主送信コイルまたは追加コイルをそれぞれ制御するように構成されることが有利である。したがって、電磁位置特定信号を同時に送信する際に、電磁位置特定信号に属する全てのパルスが同時に送信されるわけではないため、各コイルが全てを同時に受信するわけではなく、飽和が回避される。さらに、異なる周波数または異なるパルスパターンを利用することにより、それぞれの電磁位置特定信号を送信したコイルの識別情報を符号化することもでき、したがって、コントローラが受信した位置特定信号をその発信源に関して区別できるようになる。これにより、追加コイルの位置および/または向きをはるかに容易かつ正確に決定することができる。
【0031】
一実施形態では、ローカライザはさらに運動モデルプロバイダを有し、運動モデルプロバイダは、追加コイルが取り付けられる関心領域の動きを示す運動モデルを提供し、プロセッサは、さらに運動モデルに基づいて、追加コイルの現在の位置および/または向きを決定する。運動モデルプロバイダは、1つ以上の運動モデルを保存するための保存ユニットを意図する可能性があり、運動モデルプロバイダは、保存された1つ以上の動作モデルを提供することができる。運動モデルプロバイダはまた、1つ以上の運動モデルを保存する保存ユニット、または動作モデルを生成するデバイスと通信することが可能であってもよい。その場合、動作モデルプロバイダは、動作モデルを提供するために1つ以上の動作モデルを受信することができる。保存ユニットは、任意の種類のメモリデバイス、コンピュータドライブ(例えば、フラッシュドライブなどのソリッドステートドライブ)、光ディスクなどであり得る。提供される運動モデルは、追加コイルが取り付けられる関心領域の動きを示す。例えば、追加コイルがインターベンション処置で使用される場合、追加コイルは人間の胸部に取り付けられ、この場合、運動モデルは人間の胸部領域の動きを示すことができる。しかし、追加コイルを他の関心領域に取り付けることもでき、その場合、この関心領域のそれぞれの動きを示す運動モデルを提供することができる。運動モデルプロバイダは、例えば、追加コイルが取り付けられる関心領域の知識に基づいて、それぞれが異なる関心領域を参照する複数の運動モデルからある運動モデルを選択するように構成され得る。例えば、ユーザは、追加コイルが取り付けられる関心領域を示す入力を提供することができ、その後、運動モデルプロバイダは、この関心領域に関連付けられた運動モデルを選択して提供するように構成され得る。
【0032】
運動モデルは、例えば、関心領域の動きの測定、または関心領域の動きのシミュレーションに基づいて、例えば関心領域の1D、2D、または3Dの動きを示すことができる。例えば、運動モデルは、関心領域を監視するカメラからのビデオストリームとして、胸部領域の動きを示す呼吸信号として、心臓の動きを示すEEG信号として、関心領域の様々な運動フェーズのスプラインモデルとして提供され得る。一般に、運動モデルは、時間に対して関心領域が空間内のどこに位置するかを示す。プロセッサは、追加コイルの現在の位置および/または向きを決定するためにこの情報を利用することができる。特に、プロセッサは、感度情報および受信位置特定信号に基づいて現在の位置および/または向きを決定するためのアルゴリズムの出発点として、追加コイルが現在どこに配置されかつ/または方向付けられているかを示す運動モデルからの推測を使用するように構成され得る。これにより、追加コイルの位置および/または向きをより迅速かつ正確に決定することができる。しかし、プロセッサはまた、運動モデルから導出された追加コイルの予想位置および/または向きを利用して、感度情報及び受信された位置特定信号に基づいて決定された位置および/または向きを検証するように構成されてもよい。これにより、例えば、感度情報および位置特定信号に基づいて追加コイルの位置および/または向きを決定するアルゴリズムによって2つ以上の解が提供される場合に、追加コイルの位置および/または向きの正しい解を容易に選択することができる。さらに、プロセッサは、例えば感度情報、受信位置特定信号、および任意選択で動作モデルに基づいて、追加コイルの現在の位置および/または向きを一度決定した後、その動作モデルを利用して、例えば、電磁位置特定信号が連続的に送信されない場合、電磁位置特定信号が送信されない期間について追加コイルの位置および/または向きを外挿することができる。これにより、連続的な電磁位置特定信号が存在しない実施形態においても、追加コイルの位置および/または向きの正確な追跡が可能になる。
【0033】
一実施形態では、追加コイルは加速度計をさらに含み、加速度計は追加コイルの加速度を測定し、プロセッサは、追加コイルの測定された加速度にさらに基づいて、追加コイルの現在の位置および/または向きを決定する。加速度計は、1つ以上の方向の加速度の測定を提供する任意の既知の加速度計であり得る。例えば、加速度計は、追加コイルの加速度の大きさと方向の両方を測定するように適合された単軸または多軸の加速度計を意図する。さらに、加速度計は、回転加速度を測定するための、ジャイロスコープのような角加速度計および/または角速度センサを含むか、またはそれを意味する。有利な実施形態では、加速度計は微小電磁システム加速度計を意味する。運動モデルの提供に関して上述したように、加速度測定によっても追加コイルの動きを示す情報が提供され、したがって追加コイルの位置および/または向きをより正確に決定することができる。例えば、プロセッサは、例えば感知情報および受信位置特定信号に基づいて追加コイルの第1の位置が決定された後、例えば連続的な電磁位置特定信号が存在しない場合、測定された加速度を使用して追加コイルの現在の位置および/または向きを決定するように適合され得る。また、測定された加速度は、追加コイルの予想位置および/または向きを決定することも可能にし、プロセッサは、この予想位置および/または向きを、感度情報および受信位置特定信号に基づいて追加コイルの位置および/または向きを決定するためのアルゴリズムの出発点として使用するように構成され得る。また、プロセッサは、加速度測定値を運動モデルと見なすように構成されてもよいし、または、追加コイルの動きを示す運動モデルを生成するために加速度測定値を利用するように構成されてもよい。その後、プロセッサは上述したように運動モデルを利用することができる。一般に、この実施形態においても、追加の加速度計を設けることにより、追加コイルの現在の位置および/または向きをより正確に決定することができ、したがって、磁気機械式発振器の位置をより正確に決定することができる。
【0034】
プロセッサはさらに、測定された加速度が所定の加速度閾値を上回るかどうかを判定するように適合されてもよく、測定された加速度が所定の加速度閾値を上回る場合、コントローラは、電磁位置特定信号を再度送信するようにコイル、すなわち主送信コイルおよび/または追加コイルを制御するように適合され得る。特に、測定された加速度が所定の加速度閾値を超える場合、測定された加速度に基づいて単純に決定することが困難な方法で追加コイルの位置および/または向きが変化したことが予想され得るので、正確な加速度を得るために、電磁位置特定信号に基づく追加コイルの位置特定を再度実行することで位置および/または向きの決定することが有利である。所定の加速度閾値は、追加コイルの用途に応じて、例えば、システムのユーザの経験に基づいて事前に決定することができ、または一般に、ユーザによって提供され得る安全マージンから外れた位置変化を示すことが知られている加速度値を意図する可能性もある。さらに、一実施形態では、プロセッサは、加速度信号を1回積分して速度信号を生成する、および/または加速度信号を2回積分して位置信号を生成するように構成され得る。これらの積分結果に基づいて、例えば、電磁位置特定信号に基づいて追加コイルの位置特定を再度実行することによって、位置および/または向きを新たな決定することが必要かどうかを決定するための閾値を上記のように決定することもできる。
【0035】
一実施形態では、システムは2つ以上の追加コイルを備え、プロセッサは、追加コイルの既に決定された位置および/または向きを利用することによって、追加コイルの位置および/または向きを連続的に決定するように適合される。この実施形態では、システムは有利には、少なくとも2つの追加のコイルを備えた追加コイルアレイを備える。既に決定された追加コイルの位置および/または向きを利用することによって追加コイルの位置および/または向きを順次決定することにより、全ての追加コイルの位置および/または方向をより正確に決定することができる。有利な例では、プロセッサは、主コイル、すなわち主受信コイルおよび主送信コイルによって送受信される信号、および追加コイルによってさらに送受信される信号をモデル化できるようにする計算モデルを使用するように適合される。この計算モデルを使用して、プロセッサは、計算モデルによってモデル化された仮想受信位置特定信号が実際に測定された受信定位信号に関して最適化されるまで、第1の追加コイルの取得された位置および/または向きを修正するように適合され得る。そして、第1の追加コイルの対応する位置および/または方向が、主コイルの位置および/または向きに対して計算モデル内で固定される。この更新された計算モデルを使用して、次の追加コイルが同様の方法で処理され、次に3番目というように処理され、全ての追加コイルが処理されるまで繰り返される。このプロセス中に決定された位置および/または向きに基づいて、計算モデルを再度、第1のコイルおよび後続するコイルに適用することができる。これは、計算された受信位置特定信号と実際に測定された受信位置特定信号との間の差が所定の閾値を下回るまで、例えば最小化されるまで繰り返され、全ての追加コイルの位置および/または向きの反復決定となる。
【0036】
一実施形態では、電磁位置特定信号は、それぞれ追加コイルおよび/または主受信コイルの受信回路を飽和させない振幅を有し、受信回路は、受信された電磁位置特定信号に基づいて受信位置特定信号を生成するように構成されている。一般に、いかなる受信回路も、その飽和閾値を上回る場合、生成された受信位置特定信号が受信された電磁位置特定信号の振幅を示していないとする飽和閾値を備えることが知られている。したがって、追加コイルおよび/または主受信コイルの受信回路の飽和をそれぞれ回避することが有益である。したがって、コントローラは、主送信コイルおよび/または追加コイルを制御して、追加コイルおよび/または主受信コイルの受信回路を飽和させないことが知られている振幅を有する電磁位置特定信号を送信するように構成され得る。しかし、上述したように、受信回路の飽和は、受信回路を適切に調整させることによっても回避することができる。
【0037】
一実施形態では、電磁位置特定信号は、磁気機械式発振器の励起に利用される信号特性範囲外の信号特性を有する信号を意味する。したがって、電磁位置特定信号は、磁気機械式発振器を励起するために利用される電磁励起信号を意図しない。信号特性は、信号の任意の特性、例えば、周波数、振幅、パルスシーケンスなどを意味する。有利には、電磁位置特定信号は、電磁励起信号の周波数とは異なる周波数を含む。電磁位置特定信号は、主コイルアレイおよび追加コイルの計算モデルに基づいて、受信位置特定信号の計算モデル化を可能にするように提供される。この場合、電磁位置特定信号が、位置特定信号に対する患者の影響をもたらさない周波数または周波数範囲を含むことが有益である。電磁位置特定信号の周波数または周波数範囲は、10MHz未満、より好ましくは1MHz未満、さらにより好ましくは100kHz未満である。プロセッサは、追加コイルの位置および/または向きを決定するために、計算された受信位置特定信号をモデル化し、この信号と、測定および受信された位置特定信号とを、例えば任意選択でそれぞれスケーリングされた計算された受信位置特定信号を、実際に測定された受信位置特定信号から減算することによって、比較するように有利に適合される。この実施形態では、また他の実施形態でも、プロセッサは、例えば、追加コイルの位置および/または向きを決定する際に、磁性または磁化可能な物体に関して上述したのと同様に、電磁位置特定信号に対する患者の影響を考慮するように構成され得る。
【0038】
一実施形態では、電磁位置特定信号は電磁励起信号も意味し得る。特に、これにより、磁気機械式発振器も励起される期間、したがって磁気機械式発振器の位置特定が決定される期間の全てについて、追加コイルの位置および/または向きを正確に決定することができる。したがって、追加コイルの位置および/または向きは、必要な場合にのみ決定される。
【0039】
一実施形態では、追加コイルはローカルエネルギー蓄積要素またはデバイス、例えばバッテリを備える。この実施形態は、例えばインターベンション処置中に関心領域において不都合である可能性がある電源への有線接続を追加コイルに設ける必要がないという利点を有する。一実施形態では、追加コイルは、電磁充電信号によって充電されるように構成されたローカルエネルギー蓄積要素を備え、コントローラは、追加コイルのローカルエネルギー蓄積要素を充電するように構成された追加コイルに電磁充電信号を送信するように送信コイルを制御するように構成される。この実施形態では、追加コイルのサイズまたは重量を増加させる可能性がある強力なバッテリを回避することができる。ローカルエネルギー蓄積要素は、例えば数分の短いバッテリ寿命しか持たないバッテリを含み得る。この時間の経過後、コントローラは、バッテリを再び充電するために電磁充電信号を送信するように主送信コイルを制御するように構成される。電磁充電信号は、位置特定プロセス中にローカルエネルギー蓄積要素も充電できるようにする電磁位置特定信号を意味する。一般に、有線接続を利用せずに、すなわち電磁信号を利用してエネルギー蓄積要素を充電する方法が当技術分野で知られている。しかし、別の実施形態では、追加コイルは、追加の電磁信号によって充電されない、バッテリのようなローカルエネルギー蓄積要素を備えることもできる。
【0040】
追加コイルがローカルエネルギー蓄積要素を備え、したがって電源への有線接続がない場合、受信信号、すなわち受信電磁信号を示す電気信号も、無線接続を利用してローカライザに提供されることが有益である可能性がある。例えば、Bluetooth、WiFi、または他の既知の無線通信を利用することができる。さらに、電磁信号を送信するために、追加コイルをローカライザに無線接続したり、または追加コイルのために信号の送信を制御するように構成された他の任意のコントローラに無線接続したりすることもできる。
【0041】
また、追加コイルがバッテリのようなローカルエネルギー蓄積要素を含む場合、追加コイルが通常モードよりも少ないエネルギーを消費する、好ましくは実質的にエネルギーを消費しないスリープモードを提供するように適合されることが有益である。コントローラは、適用中に追加コイルが現在使用されていない場合、すなわち、追加コイルによって受信される電磁信号が現在供給されていない場合、追加コイルを制御してスリープモードに入るように構成され得る。コントローラは、追加コイルをウェイクアップする、つまりスリープモードを終了して通常の動作モードに変更するように構成され得る。しかし、追加コイルが、スリープモードと通常モードとの間で変化するように追加コイルを制御するように適合されたスリープモード回路を備えてもよい。例えば、スリープモード回路は、所定の信号の受信に基づいて反応して、通常動作モードからスリープモードに変更する、またはスリープモードから通常動作モードに変更するように構成され得る。次に、コントローラは、主送信コイルを制御して、それぞれの所定の信号を追加コイルに送信するように構成され得る。しかし、スリープモード関連回路は、例えば、所定の期間、電磁位置特定信号または応答信号が追加コイルによって受信されなかった場合、通常動作モードからスリープモードに自動的に変更するように構成されてもよい。
【0042】
一実施形態では、追加コイルはLC回路を備え、LC回路の共振周波数は磁気機械式発振器の電磁励起信号の周波数範囲内にある。一般に、LC回路は相互に接続されたインダクタとコンデンサとからなる。したがって、そのようなLC回路は、所定の共振周波数を有する電気共振器として機能することができる。LC回路が磁気機械式発振器の近くの追加コイルの一部として配置されている場合、LC回路は磁気機械式発振器の近くで電磁励起信号を増幅し、これは磁気機械式発振器の励起の増加につながる。磁気機械式発振器の励起のそのような増加は、磁気機械式発振器によって提供されるより強力な信号にもつながり、磁気機械式発振器の位置特定がはるかに容易になる。さらに、磁気機械式発振器の励起によって提供されるこの信号は、LC回路によって再度増幅され、さらに強力な信号が提供される。システムはさらに、LC回路の位置を提供するように適合されたLC回路位置プロバイダを備えることができる。例えば、LC回路の位置は、追加コイルの位置および/または向きに関連して、または追加コイルの既知の位置および/または既知の向きに基づいてLC回路の位置を提供できるように、追加コイルに対して固定され得る。しかし、このシステムは、例えば、追加のコイルの位置に関して上述したのと同じ手法を使用して、LC回路の位置を決定するように構成されてもよい。この場合、磁気機械式発振器の位置特定は、LC回路の既知の位置にさらに基づいて実行され得る。好ましくは、追加コイルはLC回路のインダクタを指し、追加コイルに接続したコンデンサを設けることによって、コンデンサが追加コイルとともにLC回路を形成する。任意選択で、追加のインダクタをLC回路に設けることができ、有利には、軟磁性コアを備え得る。これにより、LC回路の品質係数が向上する。有利には、LC回路は、ローカルエネルギー蓄積要素に伝達されるエネルギーを最大化するために、ローカルエネルギー蓄積素子と一緒に使用されてもよい。しかし、上述したように、LC回路の存在は、追加コイルによって送受信される電磁信号に影響を与える可能性があるため、LC回路がエネルギー伝達中にのみ利用され、望ましくは、追加コイルおよび/または磁気機械式発振器の位置特定中は利用されないように、追加コイルを制御するようにコントローラが構成されると有益である。
【0043】
本発明のさらなる態様では、磁気機械式発振器から信号を受信するための医療用コイルシステムが提供され、医療用コイルシステムは医療用途で使用され、医療用コイルシステムは、a)磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信する主受信コイルを含む主コイルアレイ、および磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信する主送信コイルと、b)追加コイルと、を備え、追加コイルは、磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信し、かつ/または磁気機械式発振器を励振するための電磁励振信号を送信する。特に、この医療用コイルシステムは、上述したように、ローカライザとともに制御および使用されるように適合されている。さらに、医療用コイルシステムのコイル、すなわち主コイルおよび追加コイルは、上述のように、磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するシステムに関して構成され得る。したがって、医療用コイルシステムは上記システムの一部とみなすことができる。
【0044】
本発明のさらなる態様ではローカライザが提供され、ローカライザは、磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するように構成された主受信コイル、および磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信するように構成された主送信コイルを含む主コイルアレイと、磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するように構成された追加コイルとともに使用されるように構成されている。ローカライザは追加コイルを位置特定するように構成されており、ローカライザは、i)コントローラであって、a)追加コイルが受信可能な電磁位置特定信号を送信するように主送信コイルを制御し、および追加コイルが受信した電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように追加コイルを制御するように構成されており、かつ/または、b)主受信コイルが受信可能な電磁位置特定信号を送信するように追加コイルを制御し、および主受信コイルが受信した電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように主受信コイルを制御するように構成された、コントローラと、ii)感度プロバイダであって、a)主送信コイルが電磁位置特定信号を送信するように制御される場合、追加コイルおよび主送信コイルのそれぞれの感度プロファイル、および/またはb)追加コイルが電磁位置特定信号を送信するように制御される場合、追加コイルおよび主受信コイルのそれぞれの感度プロファイルを示す感度情報を提供するように構成された、感度プロバイダと、iii)提供された感度情報、および受信位置特定信号に基づいて追加コイルの位置および/または向きを決定するように構成されたプロセッサと、を含む。
【0045】
本発明のさらなる態様では、磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するように構成された主受信コイル、および磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信するように構成された主送信コイルを含む主コイルアレイと、磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するように構成された追加コイルとともに使用される方法が提供される。ローカライザは追加コイルを位置特定するように構成されており、方法は、i)a)追加コイルが受信可能な電磁位置特定信号を送信するように主送信コイルを制御するステップ、および追加コイルが受信した電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように追加コイルを制御するステップ、および/または、b)主受信コイルが受信可能な電磁位置特定信号を送信するように追加コイルを制御し、および主受信コイルが受信した電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように主受信コイルを制御するステップと、ii)a)主送信コイルが電磁位置特定信号を送信するように制御される場合、追加コイルおよび主送信コイルのそれぞれの感度プロファイル、および/またはb)追加コイルが電磁位置特定信号を送信するように制御される場合、追加コイルおよび主受信コイルのそれぞれの感度プロファイルを示す感度情報を提供するステップと、iii)提供された感度情報、および受信位置特定信号に基づいて追加コイルの位置および/または向きを決定するステップと、を含む。
【0046】
本発明のさらなる態様では、コイルの位置を決定するためのコンピュータプログラム製品が開示され、このコンピュータプログラム製品は、本実施形態によるローカライザのプロセッサに、本明細書に記載される1つ以上の方法を実行させるための専用プログラムコードを有する。コンピュータプログラム製品は、有形の媒体として、またはサーバからダウンロード可能なファイルとして実現され得る。一部の実施形態では、コンピュータプログラム製品はプロセッサ上で直接実行される。
【0047】
本発明のさらなる態様は、主コイルアレイを含む既存のシステムとともに使用されるキットを提供し、主コイルアレイは、磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信する主受信コイルを含み、主コイルアレイはさらに、磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信する主送信コイルを含む。キットは、磁気機械式発振器に関して関心領域に配置されるように構成された少なくとも1つの可動追加コイルを含み、可動追加コイルはさらに、磁気機械式発振器を励起するための追加電磁励起信号を送信するように、および/または磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するように構成されている。キットはさらに、プロセッサの回路上で実行されるように構成されたコンピュータプログラムコードを備え、コンピュータプログラムコードは、主送信コイルおよび少なくとも1つの可動追加コイルのうちの少なくとも1つに、電磁位置特定信号を送信させるように、および、少なくとも1つの可動追加コイルおよび主受信コイルのうちの少なくとも1つから受信位置特定信号を供給するように構成されており、さらに、プロセッサに、受信位置特定信号から、少なくとも1つの可動追加コイルの位置および向きのうちの少なくとも1つを特定させるように構成されている。
【0048】
一部の実施形態では、電磁位置特定信号はパイロットトーン信号である。
【0049】
一部の実施形態では、プログラムコードはさらに、プロセッサに、少なくとも1つの可動追加コイルの1つ以上の構造特性に少なくとも部分的に基づいて、かつ、少なくとも1つの可動追加コイルの少なくとも1つの位置および向きに基づいて、電磁応答信号に対する少なくとも1つの追加コイルの感度情報を決定させるように構成され得る。
【0050】
一部の実施形態では、電磁励起信号は繰り返し送信され、プログラムコードは、電磁励起信号の繰り返し送信の前に、電磁位置特定信号を繰り返し送信するように実行可能である。
【0051】
上記システム、上記コイルシステム、上記ローカライザ、上記方法、上記コンピュータプログラム製品、および上記キットは、特に従属請求項に記載されているような類似するおよび/または同一の好ましい実施形態を有し得ることを理解されたい。
【0052】
本願は多数の技術的利点を有する。本願の一部の実施形態は、位置特定信号をより高い精度で決定できるという利点を有する。
【0053】
一部の実施形態では、位置特定信号および現在の構造を使用することによって、感度情報が増加し、電気機械デバイスをより高い感度および精度で対象者または物体の様々な部分に配置および決定することができる。
【0054】
一部の実施形態では、システムは磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するための、および/または電磁励起信号を送信するための追加コイルを提供するため、コイルアレイの受信特性および設定を様々な状況に適合させることができる。したがって、本発明は容易に適合可能である。これは、本願の一部の実施形態のさらなる技術的利点である。
【0055】
一部の実施形態では、さらなる利点は、磁気機械式発振器の電磁応答信号の偏差を、ノイズなどの望ましくない影響を軽減する適切な精度で主コイルまたは追加コイルによって検出できることである。
【0056】
一部の実施形態では、位置特定測定の実行可能頻度を最大化することができ、これは、一部の実施形態に係る本願のさらなる技術的利点である。
【0057】
一部の実施形態では、電磁位置特定信号を所定の繰り返し頻度で、すなわち各電磁位置特定信号間に所定の時間間隔を有するように繰り返し送信することには、追加コイルの位置および/または向きを一度だけではなく、追加コイルが適用されている期間にわたって繰り返し決定できるという利点がある。これは、一部の実施形態に係る本願のさらなる技術的利点である。
【0058】
上記利点は限定的ではなく、さらなる技術的利点が想定され得る。
【0059】
本発明の実施形態は、従属請求項、または上記実施形態の特徴と、独立請求項との任意の組み合わせによっても生成できることを理解されたい。
【0060】
本発明の上記および他の態様は、以下に記載される実施形態を参照しながら説明され、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】
図1は、磁気機械式発振器の位置を特定するためのシステムの一実施形態を概略的かつ例示的に示している。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るシステムの追加コイルの位置を決定する方法のフローチャートを概略的かつ例示的に示している。
【
図3】
図3は、追加コイルの送信/受信回路の実施形態を概略的かつ例示的に示している。
【
図4】
図4は、パイロットトーン生成回路の一実施形態を概略的かつ例示的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、磁気機械式発振器から信号を受信するためのシステム100の一実施形態を概略的かつ例示的に示している。
図1に示される例では、システム100は、例えばカテーテルまたは針のようなインターベンションデバイスの位置を特定するために(
図1には示されていない)磁気機械式発振器が患者140の体内で使用されるインターベンション処置に適用される。システム100は、この例では主受信コイル111、112、113を含む主受信コイルアレイと、主送信コイル110とを備える主コイルアレイを備える。主送信コイル110は、患者140の体内に提供された磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信するように構成されている。主受信コイルアレイの主受信コイル111、112、113は、励起された磁気機械式発振器が供給する電磁応答信号を受信するように構成されている。主受信コイル111、112、113によって受信された磁気機械式発振器の信号に基づいて、患者140の体内の磁気機械式発振器の位置を特定することができる。さらに、磁気機械式発振器の電磁応答信号には、追加情報、例えば、磁気機械式発振器の識別情報、または磁気機械式発振器の環境において感知された物理パラメータを示す感知情報がさらに符号化され得る。このさらなる情報も、主受信コイル111、112、113によって受信された磁気機械式発振器の電磁応答信号を使用して特定することができる。
【0063】
主コイルアレイの主コイル110、111、112、113は、例えば、直径10cm~20cmのアルミニウム製の平面コイルを指し得る。主コイル110、111、112、113は、200μH未満のインダクタンスを有し得る。このような小さなインダクタンスにより、動作電圧を小さく保つことができ、コイルの絶縁要件も小さく保つことができる。しかし、主コイルアレイの意図された用途に基づいて、主コイル110、111、112、113の他の実現も適切であり得る。
【0064】
インターベンション処置中に磁気機械式発振器からの信号をより正確に受信できるようにするために、追加(可動)コイルアレイ120をシステム100の一部として患者140の関心領域内に提供することができる。この例では、追加(可動)コイルアレイ120は、追加コイル121、122、123を備える。これらは可動コイルアレイの一部として可動コイルであると考えることもでき、患者140の胸部に配置され得る。また、追加(可動)コイルアレイ120の追加コイル121、122、123は、磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するように構成されており、かつ/または、患者140の体内に提供された磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信するように構成されている。
図1に示す例では、追加コイル121、122、123は、追加(可動)コイルアレイ120を患者140の関心領域に取り付けるために使用できる取り付け支持体124上に配置されている。特に、取り付け支持体124は、追加コイル121、122、123を互いに既知の空間関係、例えば、取り付け支持体124の構造によって決定される空間関係で配置することを可能にする。しかし、他の実施形態では、取り付け支持体124は省略可能であり、追加コイル121、122、123は、例えばインターベンション処置を行う医師によって、患者140の関心領域内に自由に配置できる個別の可動コイルであってもよい。
【0065】
追加コイルアレイ120の追加コイル121、122、123は、例えば、アルミニウム製の平面コイルを指し得る。追加コイル121、122、123の直径は、主コイル110、111、112、113の直径よりも小さいと有利であり、追加コイル121、122、123はまた、200μH未満のインダクタンスを有し得る。しかし、追加コイルアレイの意図された用途に基づいて、追加コイル122、123、113の他の実現も適切であり得る。特に、システム100は、医療用途ごとに異なる追加コイルを有し得る。特に、それぞれの医療用途について予想される、それぞれの追加コイルと磁気機械式発振器との間の最大距離に合わせた直径を有する異なる追加コイルが提供され得る。
【0066】
さらに、システム100は、追加コイルアレイ120の追加コイル121、122、123の位置を特定するように構成されたローカライザ130を備える。ローカライザは、任意の既知のコンピューティングデバイスのハードウェアおよび/またはソフトウェアの一部として実装され得る。例えば、ローカライザ130は、スタンドアロンデバイスとして、または、他の機能も提供するコンピューティングデバイスのハードウェアおよび/もしくはソフトウェアの一部として提供され得る。有利には、ローカライザ130は、主コイルアレイおよび追加コイルアレイ120によって受信された、励起された磁気機械式発振器の電磁応答信号に基づいて磁気機械式発振器の位置を特定するために既に使用されているコンピューティングデバイスのハードウェアおよび/またはソフトウェアの一部として提供され得る。ローカライザ130は、接続線114および125によって示されるように、主コイルアレイおよび追加コイルアレイ120に有線または無線で接続することができる。ローカライザ130は、感度プロバイダ131、コントローラ132、任意選択で運動モデルプロバイダ133、およびプロセッサ134を備える。
【0067】
感度プロバイダ131は、追加コイル121、122、123および/または主受信コイル111、112、113および/または主送信コイル110の感度プロファイルを示す感度情報を提供するように構成されている。特に、感度プロバイダ131は、追加コイル121、122、123の位置および/または向きを特定するために必要な感度情報を提供するように構成されている。一般に、電磁位置特定信号の送受信に関与する全てのコイルの感度プロファイルを示す感度情報が考慮されるため、感度プロバイダ131が、関与する各コイルの感度プロファイルを示すように感度情報を提供するように構成されることが好ましい。例えば、主送信コイル110が電磁位置特定信号を送信するように制御され、追加コイル121、122、123が電磁位置特定信号を受信するように制御される場合、感度プロバイダ131は、主送信コイル110および追加コイル121、122、123の感度プロファイルを示す感度情報を提供するように構成される。一般に、コイル110、111、112、113、121、122、123のそれぞれの感度情報が既知であって、例えば、任意のタイプのメモリデバイス、コンピュータドライブ(例えば、フラッシュドライブなどのソリッドステートドライブ)、光ディスク、リモートサーバなどの記憶ユニットに記憶されていると有益である。その場合、感度プロバイダ131は、記憶ユニットからそれぞれの感度情報を選択するように構成され得る。これらのコイル110、111、112、113、121、122、123の感度情報は、例えば、インターベンション処置前のシステム100の校正処置中に決定されるか、または例えば、システム100の製造者によって提供され得る。例えば、各コイルの感度プロファイルは、仮想シミュレーションモデルを、任意選択でコイルの磁場の実際の測定値と組み合わせて、利用することによって決定することができる。シミュレーションモデルは、シミュレーションモデルにおいて各コイルの導体を仮想的に設け、ビオ・サバールの法則を利用して仮想コイル導体の磁場をシミュレーションすることにより提供できる。シミュレーションされた磁場を校正および/または検証するために、任意選択で、実際のコイルの周囲のいくつかの地点で磁場の測定、具体的には磁場の磁束密度の測定を実行してもよい。これらの測定値は、シミュレーションされた磁場がそれぞれの地点で実際に測定された磁場に対応するように、コイルのシミュレーションモデルを校正するために利用できる。これにより、シミュレーションモデルの精度が向上し、例えば、製造の精度の低さに起因し得る、仕様からの実際のコイルの偏差を考慮できるようになる。しかし、コイルの感度プロファイルを決定するための他の既知の方法も感度情報を提供するために利用することができる。感度情報は、それぞれの感度プロファイル自体を指したり、感度プロファイルの他の尺度を指したりする可能性がある。例えば、感度情報はコイルのシミュレーションモデル、例えば、シミュレーションモデル内の仮想導体の位置および向きを意図する可能性がある。なぜなら、既知の物理法則を使用して、これらから感度プロファイルを直接導き出すことができるからである。
【0068】
その場合、コントローラ132は、追加コイル121、122、123によって受信可能な電磁位置特定信号を送信するように主送信コイル110を制御し、さらに、追加コイル121、122、123によって受信された電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように追加コイル121、122、123を制御するように構成され得る。加えて、または代わりに、コントローラは、主受信コイル111、112、113によって受信され得る電磁位置特定信号を送信するように追加コイル121、122、123を制御するように、および、主受信コイル111、112、113によって受信された電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように主受信コイル111、112、113を制御するように構成されてもよい。一般に、受信位置特定信号は、各追加コイル121、122、123の一部として、または主受信コイル111、112、113の一部としてそれぞれ設けられた受信回路によって生成される電気信号を指し得る。有利には、追加コイル121、122、123は、追加コイル121、122、123が主送信コイル110によって送信された電磁励起信号を受信したときに受信回路の飽和閾値に達しないように構成された受信回路を有する。このような受信回路は、例えば、受信回路において受信信号の減衰を可能にする素子、例えば減衰素子を含むそれぞれの減衰機構を設けることによって実現することができる。これにより、主送信コイル110によって送信された電磁励起信号についても、各追加コイル121、122、123は、受信電磁位置特定信号の振幅を示す受信位置特定信号を生成することができる。このような受信回路のより詳細な例については、後に
図3を参照して説明する。
【0069】
受信された位置特定信号が追加コイル121、122、123によって生成される場合、プロセッサ134は、提供された追加コイル121、122、123および主送信コイル110の感度情報と、受信された位置特定信号とに基づいて、追加コイルアレイ120の追加コイル121、122、123の位置および/または向きを決定するように構成される。受信された位置特定信号が主受信コイル111、112、113によって生成される場合、プロセッサは、主受信コイル111、112、113および追加コイル121、122、123の感度情報に基づいて、追加コイル121、122、123の位置および/または向きを決定するように構成される。一般に、追加コイル121、122、123の位置および/または向きの決定は、既知のコイル位置特定アルゴリズム、および/または磁気機械式発振器の位置特定に使用されるアルゴリズムと同様のアルゴリズムに基づくことができる。例えば、有利な実施形態では、追加コイル121、122、123の位置および/または向きを決定するために計算モデルが提供される。有利には、プロセッサ134は、例えば、既知の電流が供給されたときに各コイルによって生成されるコイルの磁場を表すことができる全ての導体の位置および/または向きという形態で提供される感度情報を含む計算モデルを適用するように構成されている。しかし、感度情報を各コイルの感度プロファイルとして計算モデルに直接組み込むことも可能である。コイルの計算モデルに組み込まれた感度情報と既知の物理法則とに基づいて、仮想的に受信される位置特定信号を、位置特定プロセスに関与するコイルの相対位置および/または向きに応じてシミュレーションすることができる。任意選択で、計算モデルの精度を高めるために、さらなる影響を考慮することができる。例えば、それぞれのコイルの送信および/または受信回路を計算モデルに組み込むこともでき、仮想受信位置特定信号に対するその影響をシミュレートすることができる。シミュレートされた受信位置特定信号は、その後、実際に測定された受信位置特定信号と比較され得る。関与するコイルの相対位置および/または向きを変化させることによって、計算モデルにおいて、仮想の受信位置特定信号と測定された受信位置特定信号との間の差を最小化するそれぞれのコイルの相対位置および/または相対向きを、それぞれのコイルの実際の位置および/または向きとして決定することができる。したがって、それぞれのコイルの位置および/または向きの決定は最適化問題とみなすことができ、既知の最適化アルゴリズム、例えば反復法ソルバーまたは直接法ソルバーを使用して解決することができる。それぞれのコイル、例えば主コイルおよび/または追加コイルの位置および/または向きに関する情報が予め利用可能な場合、この位置情報を、例えば最適化プロセスの出発点として、計算モデルにおいてさらに考慮に入れることができる。計算モデルと最適化プロセスの精度をさらに高めるために、受信位置特定信号に対するさらなる影響、特に、予想される受信位置特定信号からの偏差をもたらす影響を考慮することができる。受信位置特定信号の精度への影響が誤差関数として考慮されると有利である。例えば、一般的に使用されている一部の増幅器では、実際の増幅は特定の誤差範囲内にあるため、正確に予測することができない。したがって、そのような増幅器によって引き起こされる可能性のある誤差を考慮する必要がある。受信位置特定信号の予想誤差に対する識別された全ての影響が、誤差関数の形態で、誤差関数の各項の影響に重みを付けるために使用できるそれぞれの重みとともに提供される。そして、誤差関数は、既知の方法およびアルゴリズムを使用して最適化プロセスに組み込むことができる。最適化の結果は、プロセッサ134によって追加コイルの位置および/または向き(また、任意選択で、既知でない場合には、主コイルの位置および/または向きも)として提供される。一般に、プロセッサ134が電磁信号源の位置および/または向きを決定することを可能にする他の既知のアルゴリズムも使用できる。
【0070】
図1の実施形態に示されるように複数の追加コイルが設けられる実施形態では、各追加コイル121、122、123の位置および/または向きが、プロセッサ134によって、追加コイル121、122、123のうちの少なくとも1つの既知の位置および/または向きにそれぞれ基づいて決定されると有利である。さらに、
図1に示される実施形態では、取り付け支持体124によって提供される追加コイル121、122、123間の既知の空間的関係が、追加コイル121、122、123の位置および/または向きを決定するためにプロセッサ134によって有利に利用され得る。例えば、プロセッサ134は、感度情報および受信位置特定信号に基づいて、追加コイルのうちの1つだけ、例えば追加コイル121の位置および/または向きを最初に決定するように、および、追加コイル121の位置および/または向きに対する追加コイル122、123の既知の空間的関係に基づいて、これらの追加コイルの位置および/または向きを決定するように構成され得る。しかし、プロセッサ134は、取り付け支持体124によって提供される空間情報を他の方法で利用するように構成されてもよく、例えば、感度プロファイルおよび受信位置特定信号に基づく位置および/または向きの決定の結果を検証するために、または、上記したように、最適化アルゴリズムの出発点として利用することができる。
【0071】
ローカライザ130はさらに、運動モデルプロバイダ133を備える。運動モデルプロバイダ133は、追加コイルアレイ120が取り付けられる関心領域の運動モデルを提供するように構成され得る。
図1に示される例では、追加コイルアレイ120は患者140の胸部に取り付けられる。したがって、この場合、運動モデルプロバイダ133は、人間の胸部の運動モデルを提供するように構成され得る。一般に、運動モデルプロバイダ133によって提供される運動モデルは、関心領域の汎用的な運動モデルであり得る。例えば、
図1に示す例では、これは、様々な人々から測定された胸部の動きを平均することによって取得された、人間の胸部の動きの汎用モデルであり得る。しかし、提供される運動モデルは、特定の運動モデル、特に患者140に特有の運動モデルであってもよい。例えば、
図1に示される実施形態では、運動モデルは、患者140に特有の運動モデルを意味することができ、患者140の過去または現在の胸部運動の測定に基づいて決定され得る。有利な実施形態では、モーションセンサが患者140の関心領域、
図1では患者140の胸部に取り付けられ、モーションセンサによって提供される測定信号が運動モデルとして直接利用され、運動モデルプロバイダ133によって提供される。
【0072】
運動モデルが運動モデルプロバイダ133によって提供される場合、プロセッサ134は、さらに運動モデルに基づいて追加コイル121、122、123の位置および/または向きを決定するように構成され得る。特に、プロセッサ134は、運動モデルに基づいて追加コイル121、122、123の現在の位置および/または向きを推定し、この推定された位置および/または向きを、追加コイル121、122、123の現在の位置および/または向きを決定するためのアルゴリズムの出発点として、例えば上記のように、計算モデルの出発点として利用するように構成され得る。しかし、プロセッサ134は、追加コイル121、122、123の位置を特定するための電磁位置特定信号が提供されない期間中に、運動モデルを利用して追加コイル121、122、123の位置及び/又は向きを推定するように構成されてもよい。したがって、連続的な電磁位置特定信号が提供できない場合でも、運動モデルに基づいて、追加コイル121、122、123の現在位置を正確に追跡することができる。
【0073】
追加コイル121、122、123の位置および/または向きが決定された後、決定された位置および/または向きは、例えばインターベンション処置中の磁気機械式発振器の位置を決定するためのアルゴリズムで利用され得る。さらに、プロセッサ134は、例えば表示装置を介して、システム100のユーザ、例えば医師に、決定された位置および/または向きを提供するように構成され得る。これにより、結果の検証が可能になる。さらに、決定された位置および/または向きは医療処置の枠組みに組み込まれてもよく、例えば、追加コイル121、122、123が患者140上のマーカーとしても利用できるように、患者140の解剖学的画像に関連してディスプレイ上に表示され得る。例えば、患者140の関心領域の動きは、追加コイル121、122、123の位置および/または向きの変化からも導出され得る。
【0074】
図2は、
図1に示されるシステム100のようなシステムにおいて追加コイルの位置を特定するための方法を概略的かつ例示的に示す。特に、方法200は、上記のように、追加コイル121、122、123および/または主受信コイル111、112、113および/または主送信コイル110の感度情報を提供する第1の動作210を含む。さらなる動作220では、方法200は、追加コイル121、122、123によって受信可能な電磁位置特定信号を送信するように主送信コイル110を制御することと、追加コイル121、122、123によって受信された電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように追加コイル121、122、123を制御することとを含み得る。加えてまたは代わりに、動作220において、方法200はまた、主受信コイル111、112、113によって受信され得る電磁位置特定信号を送信するように追加コイル121、122、123を制御することと、主受信コイル111、112、113によって受信された電磁位置特定信号を示す受信位置特定信号を生成するように主受信コイル111、112、113を制御することとを含み得る。一般に、動作210および220は任意の順序で実行され得、同時に実行することもできる。さらに、方法200は、受信位置特定信号が追加コイル121、122、123によって生成される場合、追加コイル121、122、123および主送信コイル110の感度情報と、受信位置特定信号とに基づいて、追加コイル121、122、123の位置および/または向きを決定する動作230を含む。加えてまたは代わりに、動作230は、受信位置特定信号が主受信コイル111、112、113によって生成される場合、主受信コイル111、112、113および追加コイル121、122、123の感度情報と、受信位置特定信号とに基づいて追加コイル121、122、123の位置および/または向きを決定することを含み得る。一般に、追加コイル121、122、123の位置および/または向きは、
図1に関して上述した原理のいずれかに従っても決定することができる。
【0075】
図3は、追加コイル310の送信/受信回路300の実施形態を概略的かつ例示的に示している。送信/受信回路300とは、電磁信号を受信し、受信した電磁信号を示す電気信号を生成する受信回路と、供給された電気信号から、追加コイル310に供給された際に電磁信号の送信をもたらす電流を生成する送信回路との組み合わせを意味する。
図3に示される例示的な送信/受信回路300は、送信/受信回路および/または追加コイル310を制御するための、または追加コイル310によって受信された電磁信号を示す電気信号を受信してさらに処理するための、例えば
図1のコントローラ134からの電気信号を供給できるコンピュータインターフェース320を備える。送信/受信回路300の2つの構成要素間の各接続線は、異なる構成要素間で電気信号、すなわち電流を伝送するための1つ以上のデータ線とみなすことができる。第1の電気信号は、コンピュータインターフェース320から、Hブリッジ、すなわちフルブリッジとして実現され得る増幅器321に供給される。次に、増幅器321の出力信号は変圧器330に供給され、変圧器330から追加コイル310に供給されて、例えば電磁励起信号であり得るベース信号を供給する。変圧器330は、追加コイル310と、受信または供給された電気信号を修正するために使用される送信/受信回路のさらなる部分との間のインターフェースとみなすことができる。これにより、追加コイル310を電磁位置特定信号を受信/送信するために使用したり、磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するために使用したり、および/または電磁励起信号を送信するために使用することができる。
【0076】
一部の実施形態では、追加コイル310から送受信される電気信号は、変圧器330の第1のインダクタンス331を通過し、したがって、変圧器330の他のインダクタンス332、333に結合される。したがって、この例の変圧器330は、追加コイル310と送信/受信回路300の他の部分との間の誘導結合を可能にする。しかし、他の実施形態では、他の電気結合、例えば、容量結合または抵抗結合も利用することができる。
【0077】
送信/受信回路300のさらなる部分は、電磁位置特定信号を送信するための送信回路とみなすことができる。回路のこの部分では、電磁位置特定信号をもたらす電気信号が、コンピュータインターフェース320によって、論理ANDゲート341と3つの抵抗器R1、R2、R3とを備える回路要素340に供給される。抵抗器R1、R2、R3は、回路要素340によって受信された電気信号に基づいて、変圧器330の第2のインダクタンス332にどの電流が供給されるかを制御し、したがって、追加コイル310によって送信される電磁位置特定信号をもたらすためにベース信号をどのように修正すべきかを制御する。一般に、第1のインダクタンス331との比較的弱い結合が実現されるように、所望の周波数での第2のインダクタンス332のインピーダンスと比較して抵抗器R1、R2、R3がより高いインピーダンスを有すると有利である。
【0078】
送信/受信回路300の第3の部分は、受信回路の飽和閾値を超えることなく電磁位置特定信号の受信を可能にする受信回路とみなすことができる。この部分では、変圧器330の第3のインダクタンス333が、第1のインダクタンス331との誘導結合を介して追加コイル310によって受信された電磁信号を示す電気信号を受信することを可能にする。第3のインダクタンス333によって追加コイル310から分離された電気信号は、回路要素350の一部である低雑音増幅器(LNA)351に直接供給され得る。代わりにまたは追加で、分離された電気信号は、ここでは回路要素350の一部であるポテンショメータとして実現される減衰素子352に最初に供給されてから、LNA351に供給され、その後にアナログ/デジタル変換器322を介してコンピュータインターフェース320に供給されてもよい。分離された、すなわち受信された信号のために2つの経路のうちどちらを使用するかは、減衰素子352の一部として示されるスイッチを制御することによって決定することができる。したがって、これら2つの経路により、受信された信号の2つの異なる減衰係数、すなわち2つの異なる増幅が実現できる。一般に、3つ以上の減衰係数を可能にし、したがって追加コイル310のさらに高い精度および柔軟性を可能にする、調整可能な減衰素子を設けることもできる。ここで、LNAは、JFET(junction-gate field-effect transistor)(ソース接地増幅器)入力段と、さらなる増幅のための低ノイズオペアンプとを備え得る。しかし、様々な実施形態において、他の増幅器(例えば、シリコンバイポーラ入力段を有するもの)が使用され得る。
【0079】
一般に、この例示的な送信/受信回路300に示されるスイッチは、良く知られているコンピュータ制御可能なスイッチを意味する。例えば、機械式または半導体リレーとして実現することができる。任意選択で、LNA351は、インダクタンス331を短絡できるさらなるスイッチ353を制御するように構成され得る。これは、電磁信号の送信中にLNA351を保護する必要がある場合に有利であり得る。さらに、消費中の小さな電流のために、インダクタンス331に起因した追加コイル310の電流の緩やかな上昇を防ぐことができる。一般に、第1のインダクタンス331が、第2および第3のインダクタンス332、333の誘導率よりもはるかに高い、より有利には少なくとも10倍高い誘導率を有すると有利である。これは、任意選択のスイッチ353を使用せずにLNA351を適度に保護することも可能にする。
【0080】
一般に、磁気機械式発振器のトラッキングは、例えば一連の励起パルスに対する磁気機械式発振器の応答の空間分解検出に依存する。空間情報は通常、既知の空間感度プロファイルを有する主受信コイルのアレイを使用して取得される。汎用アプリケーションの場合、空間分解能と、主コイルアレイおよび検出システムの技術的労力との間の妥協の結果、限られた数のかなり大きな主コイルとなることがあるが、アプリケーションによっては、短い期間にかけて(例えば、患者に針を挿入する際)より高い分解能が必要になる場合がある。よりきめ細かいコイルアレイはより高い分解能および感度をもたらし、特にコイルアレイがワークスペースに近い場合はなおさらである。しかし、これらを常にワークスペースに配置すると、処置のワークフローが妨げられる可能性があるため不都合である。
【0081】
磁気機械式発振器の信号を受信するためのより柔軟なシステムを提供するために、例えば、追加コイルのセットを設けることが提案される。追加コイルは、主コイルまたは主コイルアレイのうちの1つ以上に物理的に接続され得る。有利には、各追加コイルは、少なくとも、主送信コイルによって送信される最も弱い励起信号中に飽和しないように構成された信号受信手段、すなわち受信回路を備える。感度の符号化により、主コイルアレイを使用して送信された電磁位置特定信号から検出された信号、すなわち受信位置特定信号から、追加コイルの位置と向きを推定することができる。追加コイルの決定された位置および/または向きは、その後、磁気機械式発振器の位置を特定するために使用される再構成アルゴリズムの位置および特性再構成計算モデルに組み込むことができる。さらに、必要に応じて、位置および向きの決定を改善するために、低電力送信モードを利用するように主送信コイルを制御することができる。この場合、低電力送信モードは、追加コイルの受信回路を飽和させないほど十分に低い振幅を有する電磁位置特定信号としてパイロットトーン信号を送信することを含む。一般に、追加コイルは無線コイルとして提供されてもよく、有線接続インターフェースを有するものとして提供されてもよい。後者の場合、追加コイルにも、例えば励起信号または電磁位置特定信号を送信するための送信機能、すなわち送信回路が設けられると有利である。追加コイルは患者の関心領域に設けられ得、したがって磁気機械式発振器の位置のトラッキング中に移動し得るので、位置および/または向き情報が十分に高い頻度で好適にアップグレードされる。完全なコイル位置特定問題を頻繁に解決する必要性を減らすために、予想される動きを示す運動モデルを使用することができる。
【0082】
位置および/または向きを決定するための再構成は、電磁信号の発生源の位置を特定するために知られている一般的なモデルベースの再構成アルゴリズムによって実行される。このアルゴリズムは各追加コイルの感度情報に基づいており、感度情報は有利には校正動作中に事前に記録および/または取得されている。校正動作は各測定パルスと併せて実行されてもよい。単純な実施形態では、全ての主送信コイルが、主コイルの通常の動作帯域外、すなわち、通常使用される電磁励起信号の帯域外の一定の信号を意味する電磁位置特定信号として「パイロットトーン」を送信することができる。このパイロットトーンは、全ての主送信コイルによって順に送信されて、少なくとも追加コイルによって記録され得、各測定パルスの前に送信され得る(したがって、「校正」は各測定の前に実行される)。これにより、校正と測定との間の時間遅延が最小限に抑えられるため、位置精度を最大化できる(動きに起因した誤差が減少する)。これは、磁気機械式発振器の信号受信中であっても常に行うことができる。この情報を使用して、例えばプロセッサによって利用される一般的な再構成アルゴリズムは、追加コイルを配置および方向付けることができ、信号対雑音比が高いため正確な結果が得られる。パイロットトーンは、固定アレイ内の1つ以上の可動コイルによって送信され得る。処置の一例は次の通りである。
【0083】
パイロットトーン/校正磁気信号を送信する(固定アレイ内の1つ以上の可動コイルによって実行され得る)。
【0084】
測定信号を送信する(可動コイルを含む任意のコイルの組み合わせ)。
【0085】
パイロットトーン/校正信号を受信し(任意のコイル組み合わせ)、対応する電気校正信号を生成する。
【0086】
センサ応答を受信し(可動コイルを含む任意のコイルの組み合わせ)、対応する電気センサ信号を生成する。
【0087】
校正信号を処理して校正情報(すなわち、感度プロバイダによる感度プロファイル)を取得する。
【0088】
電気センサ信号の処理において校正信号を使用してセンサ位置を決定する。
【0089】
一部の実施形態では、既存のシステムとともに使用するためのアップグレードキットが設けられてもよい。これは上記のように、主コイルアレイを備えるシステムであって、主コイルアレイは、電気機械式発振器の電磁応答信号を受信するように構成された主受信コイルを備え、主コイルアレイはさらに、磁気機械式発振器を励起するための電磁励起信号を送信するように構成された主送信コイルを備える、システムとの使用を含む。このようなキットは、磁気機械式発振器に関して関心領域に配置されるように構成された少なくとも1つの可動追加コイルを含み得る。可動追加コイルはさらに、磁気機械式発振器を励起するための追加電磁励起信号を送信するように、および/または磁気機械式発振器の電磁応答信号を受信するように構成されている。アップグレードキットは、主送信コイルおよび少なくとも1つの可動追加コイルのうちの少なくとも1つに、電磁位置特定信号を送信させるように、および、少なくとも1つの可動追加コイルおよび主受信コイルのうちの少なくとも1つから受信位置特定信号を供給するように実行可能なプログラムコードが保存された少なくとも1つの非一時的有形媒体をさらに備え得る。プログラムコードはさらに、プロセッサに、受信位置特定信号から、少なくとも1つの可動追加コイルの位置および向きのうちの少なくとも1つを特定させるために実行可能である。
【0090】
一部の実施形態では、プログラムコードは、磁気機械式発振器から信号を受信するシステム(例えば、システム100)内に含まれ得るプロセッサによって実行され得る。一部の実施形態では、プロセッサはコンピューティングデバイスの一部として形成され得る。コンピューティングデバイスは、任意の既知の汎用または専用のコンピューティングデバイスを意図する可能性がある。例えば、パーソナルコンピュータ;スマートフォン、タブレット、ラップトップなどのハンドヘルドコンピューティングデバイス;クラウドコンピューティングデバイスなどであってもよい。コンピューティングデバイスは、磁気機械式発振器の位置を特定するために既に利用されているものであってもよいし、別個のコンピューティングデバイスであってもよい。ここで、電磁位置特定信号は、上記したようにパイロットトーン信号であってもよい。一部の実施形態では、上記少なくとも1つの非一時的有形媒体はさらに、少なくとも1つの可動追加コイルの1つ以上の構造特性についての情報を保存し得、1つ以上の構造特性は、少なくとも1つの可動追加コイルの直径と巻き数とのうちの少なくとも1つを含む。一部の実施形態では、プログラムコードはさらに、プロセッサに、少なくとも1つの可動追加コイルの1つ以上の構造特性に少なくとも部分的に基づいて、かつ、少なくとも1つの可動追加コイルの少なくとも1つの位置および向きに基づいて、電磁応答信号に対する少なくとも1つの追加コイルの感度情報を決定させるように構成され得る。一部の実施形態では、電磁励起信号は繰り返し送信され、プログラムコードは、電磁励起信号の繰り返し送信の前に、電磁位置特定信号を繰り返し送信するように実行可能である。
【0091】
さらに、位置および/または向きの決定の一部として、周囲環境における金属による影響を軽減する追加のアルゴリズムがプロセッサによって適用されてもよい。さらに、プロセッサは、計算モデルベースの再構成アルゴリズムにおいて第1の追加コイルの既知の位置および/または向きを使用して、第2の追加コイルの位置および/または向きをさらに再構築するように構成され得る。この手法の利点は、システムの視野を徐々に拡張できることである。
【0092】
さらに、各追加コイルに加速度計を組み込むことによってシステムの視野を拡張することは有益である。さらに、上記のようにパイロットトーンを使用する代わりに、他の実施形態では、追加コイルの位置を特定するために励起信号を使用することもできる。この実施形態では、主送信コイルが低い送信振幅を提供するように構成されることが望ましい。代わりまたは追加で、追加コイルは有利には、追加コイルの受信回路の受信経路の一部として切り替え可能な減衰器を有する。追加コイルの受信回路の飽和を回避するために、調整可能な電力レベルを有するパイロットトーンを電磁位置特定信号として使用することができる。追加コイルを送信コイルとして構成できる場合、システムの柔軟性は最高になる。これは、追加コイルを電源に有線接続することで簡単に実現できる。あるいは、追加コイルに電力貯蔵装置としてバッテリを設けることもできる。バッテリ駆動の追加コイルは、受信信号を送信するための高周波手段を組み込むのに非常に好都合である。また、主送信コイルは、追加コイルに電力を送信して、追加コイルのローカルエネルギー貯蔵装置、例えばバッテリまたは二重層キャパシタを充電するために使用することもできる。また、追加コイルにLC共振回路を設けることもできる。共振回路は、磁気機械式発振器の送信周波数にほぼ同調するようにされ得、送信および受信フィールドをローカルで強化できる。
【0093】
本明細書に開示されるパイロットトーンを使用するデバイスは、多くの利益および利点を提供することができ、用途は本明細書に記載されているものに限定されない。例えば、パイロットトーンは、受信コイルのドリフトの補償や、増幅器のドリフトの補償といった目的に使用され得る。場合によっては、ドリフトはゲインドリフトであってもよく、増幅器321および/または低雑音増幅器(LNA)351が利用され得る。一般に、LNAドリフトは適切なフィードバックによってLNA内で補償されること、および、受信信号をノイズフロアを超える十分なレベルまでブーストすることで、増幅器を追加処理に使用できるようにするために使用できることが知られている。しかし、これは本質的に、この種のシステムでは望ましくないノイズや電力消費(電力ペナルティ)を引き起こす。パイロットトーン構造を使用することにより、これらの悪影響を最小限に抑えるか、または完全に回避することができる。さらに、構造およびパイロットトーンは、コイル付近の妨害物、例えば主コイルもしくは追加コイル、またはその2つの組み合わせの存在(例えば、環境内の金属の存在によって引き起こされる可能性のある妨害物)の検出を可能にする。これにより、(例えば、心臓手術での)患者に対するリスクを軽減または最小限に抑える、信号の信頼性を高める、ノイズを減らすなどが可能になる。さらに、領域内に金属が存在すると、コイル内のゲインが変化するだけでなく、コイルのスペクトル応答も変化する。パイロットトーン構造を利用することにより、ノイズ信号などの一般的に望ましくない信号と、応答信号などの望ましい信号とを分離することができる。例えば、上記例では、コイル付近の金属から生成された信号は、低雑音増幅器(LNA)351のゲイン変化から区別できる。
【0094】
さらに、発明者らは、驚くべきことに、アレイコイルなどの他のコイルによって使用および検出できるほどに十分に高い強度のパルスを生成できることを確認した。これは、自己受信信号などの受信信号が飽和しないように行われ得る。一部の有利な実施形態では、これにより、コイルを互いに対して永続的に位置特定することが可能になり、ここで、コイルは主コイル、追加コイル、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。一部の有利な実施形態では、コイルへの結合を実行する前にパルスをフィルタリングすることがさらに望ましい。好ましくは、パルスは、当技術分野で知られているようにローパスフィルタ処理される。これにより、自身の受信動作を飽和させることなく、他のコイルによって測定するのに十分な強度のパルスを生成することができる。一部の実施形態では、他のコイルは追加コイルである。他の実施形態では、それらはアレイ内の主コイルである。
【0095】
一部の実施形態では、パイロットトーンの生成にCMOS(complementary metal-oxide-semiconductor)デバイスを使用することができ、RF CMOSデバイスなど、様々な種類のCMOSデバイスが使用され得る。一部の実施形態では、パイロットトーン生成にCMOS出力論理ゲートを利用することができる。例えば、CMOSゲートは、出力を安定したグランドに接続し得る。これにより、所定の抵抗器における電源(例えば、Vcc)での電圧電位が電圧降下を起こすことを防ぐことができる。有利なことに、この構成はシステムに安定性をもたらすことができる。場合によっては、システム全体を安定させるために、Vccを安定したレベルに安定させるだけでよい。一般に、これは、シンプルな設計でコスト効率の高い電圧レギュレータを利用して実現され得る。したがって、これにより、コスト効率が高いという追加の利点がもたらされる可能性がある。一部の実施形態では、さらに電圧レギュレータを利用することができ、レギュレータは、低温度ドリフトを示すレギュレータであってもよい。
【0096】
図4は、上述のように電磁位置特定信号として使用され得るパイロットトーン信号を生成するように構成されたパイロットトーン生成回路400の一実施形態を概略的かつ例示的に示す。パイロットトーン生成回路400は、電圧レギュレータ410、CMOS出力段デバイス420、任意選択のローパスフィルタ(LPF)430、抵抗器R440、および結合変圧器450を備える。電圧レギュレータは入力部405を有する。入力部405は電源電圧を受け取り、それに応答して調整された供給電圧Vccを生成する。電圧レギュレータ410は高精度電圧レギュレータであってもよい。電圧レギュレータ410の出力部におけるコンデンサCは、ノイズを低減し、調整された供給電圧Vccを安定化することができる。CMOS出力段デバイス420は、パイロットトーン入力信号を受信する入力部415を有する。パイロットトーン入力信号は、例えば、パイロットトーン信号を送信する各コイルに固有のパルスシーケンスを含むデジタル信号であってもよい。有利には、CMOS出力段デバイス420のトランジスタは、抵抗R440の抵抗よりもはるかに(例えば、1桁以上)小さいオン抵抗を有する。結合変圧器450は、パイロットトーン出力信号を送受信コイルシステムに結合する。
【0097】
パイロットトーンには異なる用途があるため、一部の実施形態では、回路400は、選択可能な異なる電流レベルを実装するように変更されてもよい。一部の実施形態では、実際のパイロットトーン信号および制御信号が使用され、異なる電流レベルの選択が可能になる。その場合、回路は異なる出力抵抗器を備えた異なる出力部を含み、それらは並列に結合される。デジタル制御信号(例えば、2ビットワード)が適切な出力段を選択する。
【0098】
上記実施形態では、システムは3つの追加コイルを含む追加コイルアレイを備えているが、他の実施形態では、システムは任意の数の追加コイル、例えば1つだけの追加コイル、または複数の追加コイルを備えることができる。さらに、上記実施形態では、システムは主送信コイルを1つだけ備えているが、他の実施形態では、システムは2つ以上の主送信コイル、特に複数の主送信コイルを備えることができ、この場合にも、上記で詳述したのと同じ原理が適用できる。さらに、上記実施形態では、システムは、3つの主受信コイルを備える主受信コイルアレイを備えるが、他の実施形態では、システムは、任意の数の主受信コイル、例えば、1つの主受信コイル、または複数の主受信コイルを備えることができる。特に、上記実施形態では、システムは、電磁信号を送信するためだけに使用される主送信コイルと、電磁信号を受信するためだけに使用される主受信コイルとを備えるが、他の実施形態では、システムの各主コイルは、主送信コイルおよび主受信コイルの両方として利用されるように適合可能であってもよい。
【0099】
上記実施形態では、送信/受信回路が追加コイルの一部として説明されていたが、他の実施形態では、同じまたは類似の送信/受信回路が主コイルまたは主コイルアレイの一部として提供されてもよい。さらに、上記実施形態では、受信回路と送信回路との組み合わせを送受信回路として説明したが、他の実施形態では、追加コイルおよび/または主コイルに送受信回路の一部のみを設けることもでき、例えば、受信回路のみが設けられ得る。
【0100】
図面、開示、および添付の特許請求の範囲から、開示の実施形態の他の変形例が、クレームされる発明を実施する当業者によって理解および実現され得る。特許請求の範囲において、「備える」や「含む」という用語は他の要素またはステップを排除するものではなく、単数形の要素は複数を除外しない。
【0101】
単一のユニットまたはデバイスが、請求項に記載される複数のアイテムの機能を果たし得る。複数の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているからといって、これらの手段の組み合わせを好適に使用することができないとは限らない。
【0102】
1つ以上のユニットまたはデバイスによって実行される、感度情報の提供、運動モデルの提供、コイルの制御、追加コイルの位置および/または向きの決定などの手順は、他の任意の数のユニットまたはデバイスによって実行することもできる。これらのプロセスは、メモリに保存されてプロセッサによって実行されてもよく、かつ/または専用ハードウェアとして保存されてもよいコンピュータプログラムのプログラムコードを介して実装することができる。
【0103】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともにまたは他のハードウェアの一部として供給される光学記憶媒体またはソリッドステート媒体などの適切な媒体上で保存および/または配布されてもよいし、インターネット、他の有線もしくは無線テレコミュニケーションシステム、またはクラウドシステムを介してなどの他の形態で配布されてもよい。
【0104】
特許請求の範囲内のいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本発明は、図面および上記において詳細に図示および記載されているが、かかる図示および記載は説明的または例示的であり、非限定的であると考えられるべきである。本発明は、開示の実施形態に限定されない。図面、開示、および添付の特許請求の範囲から、開示の実施形態の他の変形例が、クレームされる発明を実施する当業者によって理解および実現され得る。
【0105】
本明細書では、磁気機械式発振器から信号を受信するシステムが開示されている。システムは、磁気機械式発振器の応答信号を受信し、磁気機械式発振器に励起信号を送るように構成された主コイルアレイと、磁気機械式発振器の信号を受信する追加コイルとを備える。ローカライザは、追加コイルの位置を特定するように構成されており、受信位置特定信号が生成されるように主コイルアレイおよび追加コイルを制御するコントローラと、感度情報を提供する感度プロバイダと、提供された感度情報および受信位置特定信号に基づいて追加コイルの位置および/または向きを決定するプロセッサとを含む。このシステムは柔軟に適用可能であり、様々な医療状況に容易に適合できる。
【国際調査報告】