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特表2024-506498γ、δ-不飽和ケトンの形成における触媒としての有機第三級又は第四級アンモニウム塩
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  • 特表-γ、δ-不飽和ケトンの形成における触媒としての有機第三級又は第四級アンモニウム塩 図1-2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】γ、δ-不飽和ケトンの形成における触媒としての有機第三級又は第四級アンモニウム塩
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/45 20060101AFI20240206BHJP
   C07C 49/203 20060101ALI20240206BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20240206BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20240206BHJP
   C07C 45/51 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
C07C45/45
C07C49/203 A
C07B61/00 300
B01J31/02 102Z
C07C45/51
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544253
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2022052850
(87)【国際公開番号】W WO2022167643
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】21155687.3
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】アキノ, ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ワーナー
(72)【発明者】
【氏名】ペース, フランチェスコ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA32A
4G169BA36A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB10B
4G169BB14A
4G169BB14B
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169BE17A
4G169BE17B
4G169BE36A
4G169BE36B
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169CB25
4G169CB62
4G169DA02
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC21
4H006AC27
4H006AC44
4H006BA51
4H006BA53
4H006BC31
4H006BC34
4H039CA62
4H039CF10
4H039CJ90
(57)【要約】
本発明は、有機第三級又は第四級アンモニウム塩を触媒として使用する、第三級ビニルカルビノール及びビニルエーテル又はケタールからのγ、δ-不飽和ケトンの製造に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のγ、δ-不飽和ケトン
【化1】

を、式(II)の化合物と式(IIIa)又は(IIIb)の化合物
【化2】

とを、触媒としての有機第三級又は第四級アンモニウム塩の存在下で反応させることによって製造する方法であって、
式中、
は、メチル基又はエチル基を表し、
は、1~46個のC原子を有する、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖又は環状ヒドロカルビル基を表し、
は、メチル基又はエチル基を表し、
は、H又はメチル基又はエチル基を表し、
は、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表し、
5’及びR5’’は、
直鎖若しくは分岐鎖のいずれかのC1~10アルキル基、特に、メチル基若しくはエチル基を表すか、
又は、R5’及びR5’’は、直鎖若しくは分岐鎖のC1~10アルキレン基、特に、エチレン基若しくはプロピレン基を共に形成し、
並びに、
波線は、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表す、式(I)のγ、δ-不飽和ケトンを製造する方法。
【請求項2】
前記触媒が、有機第三級アンモニウム塩であり、式(IV)のカチオン
【化3】

を有し、
式中、R20、R21及びR22は、互いから独立して、直鎖又は分岐鎖のC1~18アルキル基又はシクロアルキル基を表すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
20=R21=R22であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
20=R21=R22=メチル又はエチルであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒が、有機第三級アンモニウム塩であり、式(V)のカチオン
【化4】

を有し、
式中、R30、R31、R32、R33及びR34は、互いから独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC1~12アルキル基若しくはC5~12シクロアルキル基のいずれかを表すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
30=R31=R32=R33であり、好ましくはR30=R31=R32=R33=Hであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
34が、メチル基又はH、好ましくはHを表すことを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が、有機第四級アンモニウム塩であり、式(VI)のカチオン
【化5】

を有し、
式中、R20、R21、R22及びR23は、互いから独立して、直鎖又は分岐鎖のC1~18アルキル基又はシクロアルキル基を表すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
20=R21=R22=R23であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
20=R21=R22=R23=メチル又はブチル、好ましくはブチルであることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機第三級又は第四級アンモニウム塩のアニオンが、好ましくはPO 3-、HPO 2-、HPO 、P 3-、HP 2-及びH からなる群から選択される、1つ以上の酸素原子に結合されたリン原子を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
が、メチル基を表すことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記式(II)の化合物:前記式(IIIa)又は(IIIb)の化合物のモル比が、1:15~1:1の範囲であり、
前記式(IIIa)の化合物を使用する場合は、
前記比が、1:5~1:2の範囲であることがより好ましく、更に好ましくは1:3.5~1:2の範囲、最も好ましくは1:3~1:2の範囲、特に1:2.5~1:2の範囲であり、
又は、前記式(IIIa)の化合物を使用する場合は、
前記比が、1:10~1:2の範囲であることがより好ましく、更に好ましくは1:8~1:3の範囲であり、最も好ましくは1:8~1:5の範囲であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記有機第三級又は第四級アンモニウム塩の量が、前記式(II)の化合物の量を基準として、0.01~0.3mol%の範囲であり、好ましくは0.02~0.1mol%の範囲であり、より好ましくは0.02~0.07mol%の範囲である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
が、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)及び(R2-IV)
【化6】

[式中、点線は、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)又は(R2-IV)の置換基が前記式(I)又は式(II)の化合物の残部に結合されることによる結合を表し、
点線
【化7】

による二重結合はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合のいずれかを表し、
波線はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表し、
nは、1、2、3又は4、特に1又は2を表す]からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記一般式(I)の化合物が、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、6-メチル-5-オクテン-2-オン、6,10-ジメチル-5,9-ウンデカジエン-2-オン、6,10-ジメチル-5-ウンデセン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-5,9-ジエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-5,13-ジエン-2-オン及び6,10,14-トリメチル-5,9,13-ペンタデカ-トリエン-2-オンからなる群から選択され、好ましくは6-メチル-5-へプテン-2-オン又は6,10-ジメチル-5,9-ウンデカジエン-2-オンである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
式(II)の化合物、
【化8】

式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、
【化9】

及び有機第三級又は第四級アンモニウム塩である触媒を含む反応物の混合物であって、
式中、
は、メチル基又はエチル基を表し、
は、1~46個のC原子を有する、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖又は環状ヒドロカルビル基を表し、
は、メチル基又はエチル基を表し、
は、H又はメチル基又はエチル基を表し、
は、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表し、
5’及びR5’’は、
直鎖若しくは分岐鎖のいずれかのC1~10アルキル基、特に、メチル基若しくはエチル基を表すか、
又は、R5’及びR5’’は、直鎖若しくは分岐鎖のC1~10アルキレン基、特に、エチレン基若しくはプロピレン基を共に形成する、反応物の混合物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、γ、δ-不飽和ケトンの製造に関する。
【0002】
[発明の背景]
式(I)のγ、δ-不飽和ケトンは、重要な部類の工業化学物質であり、且つビタミン類及び芳香成分の合成における中心的な生成物であり、特に重要なものである。実行可能な合成経路の1つには、出発生成物として第三級ビニルカルビノールが使用されている。
【0003】
G.Saucy et al.によるHelv.Chim.Acta 1967,50,2091-2095及びHelv.Chim.Acta 1967,50,2095-2100には、第三級ビニルカルビノールとイソプロペニルエーテルとの反応のための触媒として、リン酸又は硫酸又はp-トルエンスルホン酸を使用することができることが開示されている。
【0004】
C.Wang et al.によるGreen Chemistry 2009,11,6,843-847には、アンモニウムイオン液体の存在下の第三級プロパルギルアルコールと不飽和エーテルとのゾーシー・マーベット反応が開示されている。この反応によりアレンケトンがもたらされるが、これらはγ-、δ-不飽和ケトンではない。
【0005】
しかしながら、強酸を使用することは、この化学物質の取り扱いが危険であり、特別な保護方法を使用し、且つ製造工程で使用される設備に特別の材料及び耐食性の材料が必要とされるため、不利である。
【0006】
独国特許第19649564号明細書には、触媒として、多様な有機リン化合物が開示されている。
【0007】
国際公開第2010/046199A2号パンフレットでは、有力な触媒としての無機アンモニウム(NH4)塩が開示されている。しかしながら、無機アンモニウム塩は、概して不利な溶解性を有し、無機アンモニウム塩は、特に1mol%未満の濃度で使用される場合、収率及び選択率を低下させることが示されている。
【0008】
[発明の概要]
したがって、本発明によって解決される問題は、強酸及び腐食条件の非存在下で好適な溶解度を有する触媒を使用した、高収率且つ高選択率の方法を提供することである。
【0009】
驚くべきことに、請求項1に記載の方法及び請求項17に記載の反応物の混合物により、この問題を解決することができることが判明した。有機第三級及び第四級アンモニウム塩が、前記反応の触媒として特によく適していることが判明した。少なくとも1つの酸素原子に結合されたリン原子を含むアニオンを有する有機第三級及び有機第四級アンモニウム塩触媒が、特によく適していることが判明した。
【0010】
本発明の更なる態様は、更なる独立請求項の主題である。特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】2-メチル-3-ブテン-2-オール(「MBE」)を、対応する触媒の存在下で2.1当量のイソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)と混合し、表1に示されるような反応時間の間、150℃の温度で撹拌した。対応する生成物、すなわち6-メチル-5-へプテン-2-オンが、表1に示すような収率及び選択率で得られた。
図2】3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール(「LL」)を、表2に示されている量の対応する触媒の存在下で、表2に示される様々な当量のイソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)と混合し、150℃の温度で16時間撹拌した。対応する生成物、すなわち6,10-ジメチルウンデカ-5,9-ジエン-2-オンが、表2に示されるような収率及び選択率で得られた。
【0012】
[発明の詳細な説明]
第1の態様では、本発明は、式(I)のγ、δ-不飽和ケトン
【化1】

を、式(II)の化合物と式(IIIa)又は(IIIb)の化合物
【化2】

とを、触媒としての有機第三級又は第四級アンモニウム塩の存在下で反応させることによって製造するための方法であって、
式中、
は、メチル基又はエチル基を表し、
は、1~46個のC原子を有する、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖又は環状ヒドロカルビル基を表し、
は、メチル基又はエチル基を表し、
は、H又はメチル基又はエチル基を表し、
は、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキル基、特に、メチル基又はエチル基を表し、
5’及びR5’’は、
直鎖若しくは分岐鎖のいずれかのC1~10アルキル基、特に、メチル基若しくはエチル基を表すか、
又は、R5’及びR5’’は、直鎖若しくは分岐鎖のC1~10アルキレン基、特に、エチレン基若しくはプロピレン基を共に形成し、
並びに、
波線は、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表す方法に関する。
【0013】
明確にするために、本明細書で使用されている幾つかの用語を以下のように定義する。
【0014】
本明細書において、「Cx~yアルキル」基とは、x~y個の炭素原子を含むアルキル基であり、すなわち、例えば、C1~3アルキル基は、1~3個の炭素原子を含むアルキル基である。アルキル基は直鎖であってもよく、又は分岐鎖であってもよい。例えば、-CH(CH)-CH-CHは、Cアルキル基とみなされる。
【0015】
本明細書において、複数の式の中で記号又は基に対して同じ表示が存在する場合、特定の式に関連してなされた前述の基又は記号の定義は、同じ前述の表示を含む他の式にも適用される。
【0016】
本明細書において、置換基、部分、又は基の文脈における「互いから独立して」という用語は、同様に指定された置換基、部分、又は基が、同じ分子中に異なる意味を有しながら同時に存在することができることを意味する。
【0017】
本明細書における「有機第三級又は第四級アンモニウム塩」という用語における「有機」という用語は、アンモニウムカチオンに関するものである。したがって、本明細書における「有機第三級又は第四級アンモニウム塩」は、有機第三級又は第四級アンモニウム構成要素を含む任意の塩を意味する。これとは対照的に、NH4を含む任意のアンモニウム塩は、無機アンモニウム塩とみなされる。ゆえに、例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド又はトリエチルアンモニウムブロミド又はテトラブチルアンモニウムアセテートは、有機第三級又は第四級アンモニウム塩とみなされるが、例えば、硫酸アンモニウム((NHSO)又は酢酸アンモニウム(CHCOONH)は、有機第三級又は第四級アンモニウム塩とはみなされない。
【0018】
本明細書において、式中の点線はいずれも、置換基が分子の残部に結合されることによる結合を表す。
【0019】
本明細書において、波線はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表す。
【0020】
式(II)の化合物は、有機第三級又は第四級アンモニウム塩である触媒(=「Cat」)の存在下で、式(IIIa)又は式(IIIb)の化合物
【化3】

のいずれかと反応させる。
【0021】
[式(II)の化合物]
式(II)の化合物は、当業者に公知の物質である。
【0022】
は、メチル基又はエチル基、好ましくはメチル基を表す。
【0023】
は、1~46個のC原子を有する、飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖又は環状ヒドロカルビル基、好ましくはメチル基を表す。
【0024】
好ましい実施形態では、Rは、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)及び(R2-IV)からなる群から選択される基を表す。
【化4】
【0025】
点線は、式(R2-I)、(R2-II)、(R2-III)又は(R2-IV)の置換基が式(I)又は式(II)の化合物の残部に結合されることによる結合を表す。点線
【化5】

による二重結合はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合のいずれかを表す。波線はいずれも、互いから独立して、炭素-炭素二重結合に連結している場合、Z配置又はE配置のいずれかである炭素-炭素結合を表す。
【0026】
上記の式中、nは1、2、3又は4、特に1又は2を表す。
【0027】
好ましい実施形態の1つでは、Rは、式(R2-I)の基又は式(R2-II)の基のいずれかを表す。
【0028】
別の好ましい実施形態では、Rは、式(R2-III)の基又は式(R2-IV)の基のいずれかを表す。
【0029】
式(II)の化合物は、2-メチル-3-ブテン-2-オール(「MBE」)、3-メチル-4-ペンテン-3-オール(「EBE」)、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール(=リナロール、「LL」)、3,7-ジメチル-1-オクテン-3-オール(「DMOE」)及び3,7,11-トリメチル-1,6-ドデカジエン-3-オール(ネロリドール、「NL」)、特に(6E)-3,7,11-トリメチル-1,6-ドデカジエン-3-オール(=E-ネロリドール、「E-NL」)からなる群から選択されることが特に好ましい。
【0030】
式(II)の化合物は、2-メチル-3-ブテン-2-オール(「MBE」)又は3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール(=リナロール、「LL」)であることがより一層好ましい。
【0031】
[式(IIIa)の化合物]
式(IIIa)の化合物は、当業者に公知の物質である。
【0032】
式(IIIa)において、Rは、メチル基又はエチル基を表し、Rは、H又はメチル基又はエチル基を表し、Rは、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキル基、特にメチル基又はエチル基を表す。
【0033】
好ましくは、R基はメチル基を表す。
【0034】
好ましくは、R基はHを表す。
【0035】
好ましくは、R基はメチル基を表す。
【0036】
式(IIIa)の化合物は、最も好ましくは、イソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)又はイソプロペニルエチルエーテル(「IPE」)のいずれかであり、特にイソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)である。
【0037】
式(IIIa)の化合物の合成により、式(IIIa)の化合物の混合物もまた、式(II)の化合物との反応に使用されることが非常に多い。例えば、ブテニルメチルエーテルの場合、メタノール及びメチルエチルケトンから調製された、2-メトキシブタ-1-エンと(E)-2-メトキシブタ-2-エンと(Z)-2-メトキシブタ-2-エンとの混合物が使用されることが多い。
【0038】
[式(IIIb)の化合物]
式(IIIb)の化合物は、当業者に公知の物質である。
【0039】
式(IIIb)において、Rは、メチル基又はエチル基を表し、Rは、H又はメチル基又はエチル基を表す。
【0040】
5’及びR5’’は、一実施形態では、それぞれ直鎖又は分岐鎖のいずれかのC1~10アルキル基、特にメチル基又はエチル基を表す。別の実施形態では、R5’及びR5’’は、直鎖又は分岐鎖のC1~10アルキレン基、特にエチレン基又はプロピレン基を共に形成する。
【0041】
好ましくは、R基はメチル基を表す。
【0042】
好ましくは、R基はHを表す。
【0043】
好ましい一実施形態では、R5’=R5’’であり、特にR5’=R5’’=メチル又はエチルであり、より好ましくはR5’=R5’’=CHである。
【0044】
別の好ましい実施形態では、R5’及びR5’’は、エチレン(CHCH)基又はプロピレン(CHCHCH若しくはCH(CH)CH)基を共に形成する。
【0045】
式(IIIb)の化合物は、最も好ましくは、2,2-ジメトキシプロパン、又は2,2-ジエトキシプロパン、又は2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン、又は2,2,4-トリメチル-1,3-ジオキソラン、又は2,2-ジメチル-1,3-ジオキサンのいずれかである。
【0046】
式(IIIb)の化合物は、最も好ましくは、2,2-ジメトキシプロパン又は2,2-ジエトキシプロパンのいずれか、特に2,2-ジメトキシプロパンである。
【0047】
式(IIIb)の化合物よりも、式(IIIa)の化合物を使用することが好ましい。
【0048】
[触媒としての有機第三級又は第四級アンモニウム塩]
式(II)の化合物と式(IIIa)又は(IIIb)の化合物との反応は、触媒としての有機第三級又は第四級アンモニウム塩の存在下で行われる。
【0049】
好ましい実施形態の1つでは、触媒は有機第三級アンモニウム塩であり、式(IV)のカチオン
【化6】

を有し、
式中、R20、R21及びR22は、互いから独立して、直鎖又は分岐鎖のC1~18アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
【0050】
20、R21及び/又はR22は、直鎖C1~18アルキル基を示すことが好ましい。
【0051】
20、R21及び/又はR22は、メチル基又はエチル基のいずれかを表すことがより好ましい。
【0052】
20=R21=R22であることが更に好ましい。
【0053】
20=R21=R22=メチル又はエチルであることが特に好ましい。
【0054】
他の好ましい実施形態の1つでは、触媒は有機第三級アンモニウム塩であり、式(V)のカチオン
【化7】

を有し、
式中、R30、R31、R32、R33及びR34は、互いから独立して、H又は直鎖若しくは分岐鎖のC1~12アルキル基若しくはC5~12シクロアルキル基のいずれかを表す。
【0055】
30=R31=R32=R33であることが好ましく、好ましくはR30=R31=R32=R33=Hである。
【0056】
30、R31、R32、R33及びR34の基のうちの1つがメチル基であることが更に好ましい。
【0057】
34がメチル基又はHを表し、好ましくはHを表すこともまた好ましい。
【0058】
式(V)の第三級アンモニウム化合物として最も好ましいのは、ピリジニウム又はα-ピコリニウム若しくはβ-ピコリニウム若しくはγ-ピコリニウムであり、好ましくはピリジニウムである。
【0059】
他の好ましい実施形態の1つでは、触媒は有機第四級アンモニウム塩であり、式(VI)のカチオン
【化8】

を有し、
式中、R20、R21、R22及びR23は、互いから独立して、直鎖又は分岐鎖のC1~18アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
【0060】
20、R21、R22及び/又はR23は、直鎖C1~18アルキル基であることが好ましい。
【0061】
20、R21及び/又はR22は、メチル基又はエチル基のいずれかを表すことがより好ましい。
【0062】
20=R21=R22=R23であることが更に好ましい。
【0063】
20=R21=R22=R23=メチル又はブチルであり、好ましくはブチルであることが特に好ましい。
【0064】
有機第三級又は第四級アンモニウム塩は、アルキル化によりそれぞれプロトン化することによって、それらの対応する第三級アミンから容易に形成することができる。
【0065】
触媒である有機第三級又は第四級アンモニウム塩は、有機第三級又は第四級アンモニウム塩のアニオンが、好ましくはPO 3-、HPO 2-、HPO 、P 3-、HP 2-及びH からなる群から選択される、少なくとも1つの酸素原子に結合されたリン原子を含む場合に、式(I)の所望の生成物において特に高収率且つ高選択性を示すことが判明した。
【0066】
反応は、式(II)の化合物と式(IIIa)又は(IIIb)の化合物のモル比が1:15~1:1の範囲である場合に行われるのが好ましいことが判明した。
【0067】
式(IIIa)の化合物を使用する場合、前記比は、1:5~1:2の範囲であることがより好ましく、更に好ましくは1:3.5~1:2の範囲であり、最も好ましくは1:3~1:2の範囲であり、特に1:2.5~1:2の範囲である。
【0068】
式(IIIb)の化合物を使用する場合、前記比は、1:10~1:2の範囲であることがより好ましく、更に好ましくは1:8~1:3の範囲であり、最も好ましくは1:8~1:5の範囲である。
【0069】
更に、有機第三級又は第四級アンモニウム塩の量は、式(II)の化合物の量を基準として、0.01~0.3mol%の範囲であり、好ましくは0.02~0.1mol%の範囲であり、より好ましくは0.02~0.07mol%の範囲であることが好ましい。
【0070】
驚くべきことに、有機第三級又は第四級アンモニウム塩触媒を1mol%未満、特に0.7mol%未満で使用する場合であっても、式(II)の化合物と式(IIIa)又は(IIIb)の化合物との比率が、式(I)の化合物における選択率及び/又は収率を大幅に低下させる1:3~1:2、特に1:2.5~1:2の間でもなお使用することができることが判明した。
【0071】
反応は、好ましくは、100~170℃の範囲の温度で、より好ましくは110~160℃の範囲の温度で、最も好ましくは120~150℃の範囲の温度で実行される。
【0072】
反応は、好ましくは5~15barの範囲の圧力で、より好ましくは8~12barの範囲の圧力で実行される。
【0073】
反応は、溶媒なしで、又は有機溶媒の存在下で実行することができる。好ましくは、反応は溶媒なしで実行される。
【0074】
反応が有機溶媒の非存在下で実行される場合であっても、出発材料である式(II)の化合物及び(IIIa)又は(IIIb)の化合物、並びに前記有機第三級又は第四級アンモニウム塩は、なお有機溶媒中で提供されてもよい。したがって、反応物の混合物の総重量を基準として、最大で10重量%の量の有機溶媒、好ましくは最大で5重量%の量の有機溶媒、より好ましくは最大で3重量%の量の有機溶媒が存在してもよい。
【0075】
反応を有機溶媒中で実行する場合、極性非プロトン性有機溶媒、例えば、脂肪族ケトン、例えばアセトンが好ましい。
【0076】
上記の反応は、高転化率、高収率及び高選択率で式(I)の化合物をもたらすことが判明した。
【0077】
特に、式(I)の化合物が、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン、6-メチル-5-オクテン-2-オン、6,10-ジメチル-5,9-ウンデカジエン-2-オン、6,10-ジメチル-5-ウンデセン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-5,9-ジエン-2-オン、6,10,14-トリメチルペンタデカ-5,13-ジエン-2-オン及び6,10,14-トリメチル-5,9,13-ペンタデカ-トリエン-2-オンからなる群から選択され、好ましくは6-メチル-5-ヘプテン-2-オン又は6,10-ジメチル-5,9-ウンデカジエン-2-オンを、好ましくは生成できることが判明した。
【0078】
有機溶媒の有無にかかわらず、反応物の混合物それ自体も本発明の目的である。
【0079】
したがって、本発明は、更なる態様において、式(II)の化合物、
【化9】

式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、
【化10】

及び有機第三級又は第四級アンモニウム塩である触媒を含む反応物の混合物に関する。
【0080】
式(II)の化合物及び式(IIIa)又は(IIIb)の化合物、並びに有機第三級又は第四級アンモニウム塩である触媒は、既に上記で十分に説明されている。
【0081】
[実施例]
本発明を以下の非限定的な実験によって更に説明する。
【0082】
[実験系列1]
2-メチル-3-ブテン-2-オール(「MBE」)を、対応する触媒の存在下で2.1当量のイソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)と混合し、表1に示されるような反応時間の間、150℃の温度で撹拌した。対応する生成物、すなわち6-メチル-5-へプテン-2-オンが、表1に示すような収率及び選択率で得られた(図1を参照されたい)。
【0083】
【表1】
【0084】
[実験系列2]
3,7-ジメチルオクタ-1,6-ジエン-3-オール(「LL」)を、表2に示されている量の対応する触媒の存在下で、表2に示される様々な当量のイソプロペニルメチルエーテル(「IPM」)と混合し、150℃の温度で16時間撹拌した。対応する生成物、すなわち6,10-ジメチルウンデカ-5,9-ジエン-2-オンが、表2に示されるような収率及び選択率で得られた(図2を参照されたい)。
【0085】
【表2】
図1-2】
【国際調査報告】