(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】in celluloリードアウトとしての相分離を使用して、生体分子相互作用の阻害剤をスクリーニングする方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20240206BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240206BHJP
G01N 33/533 20060101ALI20240206BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240206BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240206BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240206BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240206BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
C12Q1/02
G01N33/53 Y ZNA
G01N33/533
A61K45/00
A61P25/00
A61P35/00
A61P29/00
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544335
(86)(22)【出願日】2022-01-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 US2022013213
(87)【国際公開番号】W WO2022159642
(87)【国際公開日】2022-07-28
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591003552
【氏名又は名称】ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ブラングウィン,クリフォード・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ジャンパー,シャネル
(72)【発明者】
【氏名】アッカーマン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ブラチャ,ダン
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA14
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ13
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4B063QQ79
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4B063QR14
4B063QR48
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4B063QX02
4C084AA17
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB261
4C084ZB262
(57)【要約】
in celluloリードアウトとしての相分離を使用して、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法が、本明細書で提供される。方法のためのキット、方法によりスクリーニングされる薬剤を含む医薬組成物、医薬組成物を調製する方法、および医薬組成物を投与することにより、疾患または状態を治療することを必要とする対象における、疾患または状態を治療する方法も、本明細書で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、
(i)細胞を前記薬剤と接触させるステップであって、前記細胞が、前記標的ペプチドを含む標的分子を含む、ステップ、
(ii)前記標的分子を含む非膜体を検出するステップであって、前記標的ペプチドが、前記生体分子に対する前記結合から解放され、前記標的ペプチドが前記生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている前記細胞の部分領域で相分離を受けると、前記標的分子が前記非膜体に組み込まれる、ステップ
を含み、
前記検出するステップが、前記非膜体の強度およびサイズの変化を測定するステップを含み、前記薬剤の非存在下での非膜体の強度およびサイズの変化に対する、前記非膜体の前記強度および前記サイズのより大きな変化が、前記薬剤が、前記生体分子に対する前記標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法。
【請求項2】
生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、
(i)第1の細胞を前記薬剤と接触させるステップであって、前記第1の細胞が、前記標的ペプチドを含む標的分子を含む、ステップ、
(ii)第2の細胞を前記薬剤と接触させるステップであって、前記第2の細胞が、対照ペプチドを含む対照分子を含み、前記対照ペプチドが非標的ペプチドである、ステップ、
(iii)前記標的分子を含む前記第1の細胞の第1の非膜体を検出するステップであって、前記標的ペプチドが、前記生体分子に対する前記結合から解放され、前記標的ペプチドが前記生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている前記細胞の部分領域で相分離を受けると、前記標的分子が前記第1の非膜体に組み込まれ、前記検出するステップが、前記第1の非膜体の強度およびサイズの変化を測定するステップ、ならびに前記対照分子を含む前記第2の細胞の第2の非膜体を検出するステップを含み、前記対照ペプチドが相分離を受けると、前記対照分子が前記第2の非膜体に組み込まれ、前記検出するステップが、前記第2の非膜体の強度およびサイズの変化を測定するステップを含む、ステップ、ならびに
(iv)前記第1の非膜体の前記強度および前記サイズの前記変化と、前記第2の非膜体の前記強度および前記サイズの前記変化との間の差を決定するステップ
を含み、
前記薬剤の非存在下での前記第1の非膜体と前記第2の非膜体との間の差に対する、前記第1の非膜体と前記第2の非膜体との間のより大きな差が、前記薬剤が、前記生体分子に対する前記標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法。
【請求項3】
前記標的ペプチドがフルオロフォアと融合している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的ペプチドが第1のフルオロフォアと融合しており、前記対照ペプチドが第2のフルオロフォアと融合している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記非膜体を検出するステップが、蛍光を測定するステップである、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記蛍光を測定するステップが、蛍光の強度を検出するステップ、前記非膜体の数を定量化するステップ、またはそれらの組合せを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記標的ペプチドが天然変性タンパク質(IDP)であるか、または前記標的ペプチドが天然変性領域(IDR)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非膜体、第1の非膜体、または第2の非膜体が、核小体、カハール体、ストレス顆粒、Pボディ、スプライソソーム、またはそれらの組合せである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記生体分子が、タンパク質、タンパク質ドメイン、DNA、RNA、またはタンパク質、DNA、RNAを含む複合体、またはそれらの組合せである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記薬剤が低分子化合物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記低分子化合物が有機化合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記低分子が無機化合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記薬剤が、核酸、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、抗体またはその機能性断片である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリヌクレオチドが、アプタマー、RNAベースの化合物、アンチセンス核酸、PNA、またはそれらの組合せである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記RNAベースの化合物が、低分子干渉RNA、マイクロRNA、低分子ヘアピンRNA、またはそれらの組合せである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチドがCRISPRガイドRNAである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記CRISPRガイドRNAがウイルスベクターによりコードされる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記CRISPRガイドRNAが、Cas9、または前記Cas9をコードするヌクレオチド配列を含むベクターと組み合わせて導入される、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記Cas9が酵素的に失活したCas9(dCas9)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記標的分子が、前記標的ペプチドと融合した全長または切断型低複雑性領域をさらに含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記対照分子が、前記対照ペプチドと融合した前記全長または切断型低複雑性領域をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記標的分子が標的タンパク質である、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記標的分子が、前記標的ペプチドと融合したさらなる全長または切断型IDRをさらに含み、前記さらなる全長または切断型IDRが、前記標的タンパク質とは異なる、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記対照分子が、前記対照ペプチドと融合した前記さらなる全長または切断型IDSをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記IDRが、FUSの少なくとも一部、Ddx4の少なくとも一部、hnRNPAlの少なくとも一部、BRD4の少なくとも一部、TAF15の少なくとも一部、SRSF2 IDRの少なくとも一部、SART1の少なくとも一部、HSF1の少なくとも一部、RNPS1の少なくとも一部、またはそれらの組合せである、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記FUSの一部がFUSのN末端IDR(FUSn)である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記フルオロフォアが、mCherryまたは緑色蛍光タンパク質(GFP)である、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、
(i)細胞を前記薬剤と接触させるステップであって、前記細胞が、フルオロフォアと融合した前記標的ペプチドを含む標的分子を含む、ステップ、
(ii)蛍光の強度を検出するステップ、前記非膜体の数を定量化するステップ、またはそれらの組合せにより、前記標的分子を含む非膜体の蛍光を測定するステップであって、前記標的ペプチドが、前記生体分子に対する前記結合から解放され、前記標的ペプチドが前記生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている前記細胞の部分領域で相分離を受けると、前記標的分子が前記非膜体に組み込まれる、ステップ
を含み、
前記フルオロフォアがmCherryであり、前記蛍光を測定するステップが、前記細胞を波長540~590nmの光に曝露するステップ、および前記細胞を波長550~650nmの光で画像化するステップにより実施されるか、または前記フルオロフォアがGFPであり、前記蛍光を測定するステップが、前記細胞を波長488nmの光に曝露するステップ、および前記細胞を波長510nmの光で画像化するステップにより実施され、
前記薬剤の非存在下での非膜体の蛍光のレベルに対する、前記非膜体のより高レベルの前記蛍光が、前記薬剤が、前記生体分子に対する前記標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法。
【請求項31】
生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、
(i)細胞を前記薬剤と接触させるステップであって、前記細胞が、前記標的ペプチド、ならびに光感受性受容体および化学物質感受性受容体から選択される少なくとも1種のペプチドを含む標的分子を含む、ステップ、
(ii)前記細胞を、少なくとも1種の所定の波長の光、前記化学物質感受性受容体が感受性である化学物質、またはそれらの組合せに曝露するステップ、ならびに
(iii)前記標的分子を含む非膜体を検出するステップであって、前記標的ペプチドが、前記生体分子に対する前記結合から解放され、前記標的ペプチドが前記生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている前記細胞の部分領域で相分離を受けると、前記標的分子が前記非膜体に組み込まれる、ステップ
を含み、
前記検出するステップが、前記非膜体の強度およびサイズの変化を測定するステップを含み、前記薬剤の非存在下での非膜体の強度およびサイズの変化に対する、前記非膜体の前記強度および前記サイズのより大きな変化が、前記薬剤が、前記生体分子に対する前記標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法。
【請求項32】
生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、
(i)細胞を前記薬剤と接触させるステップであって、前記細胞が、(a)前記標的ペプチド、ならびに光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドを含む標的分子、ならびに(b)全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合した前記ペプチドの同起源のパートナーを含む第2の分子を含む、ステップ、
(ii)前記細胞を、少なくとも1種の所定の波長の光、前記化学物質感受性受容体が感受性である化学物質、またはそれらの組合せに曝露するステップ、ならびに
(iii)前記標的分子を含む非膜体を検出するステップであって、前記標的ペプチドが、前記生体分子に対する前記結合から解放され、前記標的分子の前記ペプチドが、前記第2の分子の前記同起源のパートナーと相互作用し、前記標的分子および前記第2の分子が、前記標的ペプチドが前記生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている前記細胞の部分領域で相分離を受けると、前記標的分子および前記第2の分子が前記非膜体に組み込まれる、ステップ
を含み、
前記検出するステップが、前記非膜体の強度およびサイズの変化を測定するステップを含み、前記薬剤の非存在下での非膜体の強度およびサイズの変化に対する、前記非膜体の前記強度および前記サイズのより大きな変化が、前記薬剤が、前記生体分子に対する前記標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法。
【請求項33】
生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、
(i)細胞を前記薬剤と接触させるステップであって、前記細胞が、(a)前記標的ペプチド、ならびに光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドの同起源のパートナーを含む標的分子、ならびに(b)全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合した前記ペプチドを含む第2の分子を含む、ステップ、
(ii)前記細胞を、少なくとも1種の所定の波長の光、前記化学物質感受性受容体が感受性である化学物質、またはそれらの組合せに曝露するステップ、ならびに
(iii)前記標的分子を含む非膜体を検出するステップであって、前記標的ペプチドが、前記生体分子に対する前記結合から解放され、前記標的分子の前記同起源のパートナーが、前記第2の分子の前記ペプチドと相互作用し、前記標的分子および前記第2の分子が、前記標的ペプチドが前記生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている前記細胞の部分領域で相分離を受けると、前記標的分子および前記第2の分子が前記非膜体に組み込まれる、ステップ
を含み、
前記検出するステップが、前記非膜体の強度およびサイズの変化を測定するステップを含み、前記薬剤の非存在下での非膜体の強度およびサイズの変化に対する、前記非膜体の前記強度および前記サイズのより大きな変化が、前記薬剤が、前記生体分子に対する前記標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法。
【請求項34】
前記標的分子が、前記標的ペプチドと前記少なくとも1種のペプチドとの間で融合したフルオロフォアをさらに含む、請求項31から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記標的分子が、前記標的ペプチドと前記ペプチドとの間で融合したフルオロフォアをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記標的分子が、前記標的ペプチドと前記同起源のパートナーとの間で融合したフルオロフォアをさらに含む、請求項3333に記載の方法。
【請求項37】
前記非膜体を検出するステップが、蛍光を測定するステップである、請求項34から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記蛍光を測定するステップが、蛍光の強度を検出するステップ、前記非膜体の数を定量化するステップ、またはそれらの組合せを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記非膜体が、核小体、カハール体、ストレス顆粒、Pボディ、スプライソソーム、またはそれらの組合せである、請求項31から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記生体分子が、タンパク質、タンパク質ドメイン、DNA、RNA、またはタンパク質、DNA、RNAを含む複合体、またはそれらの組合せである、請求項31から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記薬剤が低分子化合物である、請求項30から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記低分子化合物が有機化合物である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記低分子化合物が無機化合物である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記薬剤が、核酸、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはそれらの組合せからなる群から選択される、請求項31から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリペプチドが、抗体またはその機能性断片である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記ポリヌクレオチドが、アプタマー、RNAベースの化合物、アンチセンス核酸、PNA、またはそれらの組合せである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記RNAベースの化合物が、低分子干渉RNA、マイクロRNA、低分子ヘアピンRNA、またはそれらの組合せである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ポリヌクレオチドがCRISPRガイドRNAである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記CRISPRガイドRNAがウイルスベクターによりコードされる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記CRISPRガイドRNAが、Cas9、または前記Cas9をコードするヌクレオチド配列を含むベクターと組み合わせて導入される、請求項48から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記Cas9が酵素的に失活したCas9(dCas9)である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記IDRが、FUSの少なくとも一部、Ddx4の少なくとも一部、hnRNPAlの少なくとも一部、BRD4の少なくとも一部、TAF15の少なくとも一部、SRSF2 IDRの少なくとも一部、SART1の少なくとも一部、HSF1の少なくとも一部、RNPS1の少なくとも一部、またはそれらの組合せである、請求項32から52、31から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記FUSの一部がFUSのN末端IDR(FUSn)である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記光感受性受容体が、クリプトクロム2(Cry2)、Cry2の光回復酵素相同領域、フィトクロムB(PhyB)、PIF、光酸素電圧感受性(LOV)ドメイン、ドロンパ、または改良光誘導性ダイマー(iLID)である、請求項31から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記光感受性受容体がssrAであり、前記同起源のパートナーがsspBである、請求項31から54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記フルオロフォアが、mCherryまたは緑色蛍光タンパク質(GFP)である、請求項31から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
対象における治療レジメンの有効性を決定する方法であって、
(i)生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する薬剤で対象を治療するステップ、
(ii)対象由来の細胞において非膜体を形成させるステップであって、細胞が、前記標的ペプチドを含む標的分子を含み、前記標的ペプチドが、前記生体分子から解放され、前記標的ペプチドが前記生体分子に結合する部分領域と離れている前記細胞の部分領域で相分離を受けると、前記標的分子が前記非膜体に組み込まれる、ステップ、および
(iii)前記薬剤の非存在下での非膜体の強度またはサイズと比較した、前記非膜体の強度またはサイズの変化を検出することにより、前記治療レジメンの有効性を決定するステップ
を含む、方法。
【請求項59】
対象の細胞における、標的ペプチドと生体分子との間の相互作用を調節する方法であって、細胞が、前記標的ペプチドを含む標的分子を含み、方法が、
(i)前記生体分子から前記標的ペプチドを解放させるように、前記生体分子に対する前記標的ペプチドの結合を妨害する薬剤と細胞を接触させるステップ、および
(ii)前記解放された標的分子を非膜体に組み込むステップであって、前記解放された標的分子が、前記標的ペプチドが前記生体分子に結合する部分領域と離れている前記細胞の部分領域で相分離を受け、
それにより標的ペプチドと生体分子との間の相互作用を調節する、ステップ
を含む、方法。
【請求項60】
対象の細胞における、標的分子の細胞内局在を調節する方法であって、
(i)前記生体分子から前記標的ペプチドを解放させるように、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する薬剤と細胞を接触させるステップ、および
(ii)前記解放された標的分子を非膜体に組み込むステップであって、前記解放された標的分子が、前記標的ペプチドが前記生体分子に結合する部分領域と離れている前記細胞の部分領域で相分離を受け、
それにより前記標的分子の細胞内局在を調節する、ステップ
を含む、方法。
【請求項61】
細胞内の前記非膜体を検出するステップをさらに含み、非膜体が前記標的分子を含む、請求項58から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記標的ペプチドがフルオロフォアと融合しており、検出するステップが蛍光を測定するステップを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
測定するステップが、蛍光の強度を検出するステップ、前記非膜体の数を定量化するステップ、またはそれらの組合せを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記標的ペプチドが天然変性タンパク質(IDP)であるか、または前記標的ペプチドが天然変性領域(IDR)を含む、請求項58から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記非膜体が、核小体、カハール体、ストレス顆粒、Pボディ、スプライソソーム、またはそれらの組合せである、請求項58から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記生体分子が、タンパク質、タンパク質ドメイン、DNA、RNA、またはタンパク質、DNA、RNAを含む複合体、またはそれらの組合せである、請求項58から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記薬剤が低分子化合物である、請求項58から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記低分子化合物が有機化合物である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記低分子化合物が無機化合物である、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記薬剤が、核酸、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、および任意のそれらの組合せからなる群から選択される、請求項58から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記ポリペプチドが、抗体またはその機能性断片である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記ポリヌクレオチドが、アプタマー、RNAベースの化合物、アンチセンス核酸、PNA、またはそれらの組合せである、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
前記RNAベースの化合物が、低分子干渉RNA、マイクロRNA、低分子ヘアピンRNA、またはそれらの組合せである、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記ポリヌクレオチドがCRISPRガイドRNAである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記CRISPRガイドRNAがウイルスベクターによりコードされる、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記CRISPRガイドRNAが、Cas9、または前記Cas9をコードするヌクレオチド配列を含むベクターと組み合わせて導入される、請求項74から76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記Cas9が酵素的に失活したCas9(dCas9)である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記標的分子が、前記標的ペプチドと融合した全長または切断型低複雑性領域をさらに含む、請求項58から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記標的分子が、前記標的ペプチドと融合したさらなる全長または切断型IDRをさらに含み、前記さらなる全長または切断型IDRが、前記標的タンパク質とは異なる、請求項58から79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記IDRが、FUSの少なくとも一部、Ddx4の少なくとも一部、hnRNPAlの少なくとも一部、BRD4の少なくとも一部、TAF15の少なくとも一部、SRSF2 IDRの少なくとも一部、SART1の少なくとも一部、HSF1の少なくとも一部、RNPS1の少なくとも一部、またはそれらの組合せである、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記FUSの一部がFUSのN末端IDR(FUSn)である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記フルオロフォアが、mCherryまたは緑色蛍光タンパク質(GFP)である、請求項62から82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記細胞がヒト細胞である、請求項1から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記細胞が非ヒト動物細胞である、請求項1から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記標的分子が、BRD4またはBRD4のブロモドメインである、請求項1から85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記生体分子がアセチル化ヒストンである、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記標的分子が標的タンパク質であり、標的タンパク質が、転写活性化因子または転写抑制因子である、請求項1から85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記生体分子がDNAである、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記生体分子がDNAのベーシックヘリックスループヘリックスドメインである、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記薬剤が治療薬剤である、請求項1から90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、
(i)細胞を前記薬剤と接触させるステップであって、前記細胞が、前記標的ペプチド、少なくとも1種の光感受性受容体、および前記標的ペプチドと前記少なくとも1種の光感受性受容体との間で融合したフルオロフォアを含む標的分子を含む、ステップ、
(ii)前記細胞を、少なくとも1種の所定の波長の光に曝露するステップ、ならびに
(iii)蛍光の強度を検出するステップ、前記非膜体の数を定量化するステップ、またはそれらの組合せにより、前記標的分子を含む非膜体の蛍光を測定するステップであって、前記標的ペプチドが、前記生体分子に対する前記結合から解放され、前記標的ペプチドが前記生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている前記細胞の部分領域で相分離を受けると、前記標的分子が前記非膜体に組み込まれる、ステップ
を含み、
前記少なくとも1種の波長の光が、400および800nmを含む400~800nmの可視波長の光であり、
前記フルオロフォアがmCherryであり、前記蛍光を測定するステップが、前記細胞を波長540~590nmの光に曝露するステップ、および前記細胞を波長550~650nmの光で画像化するステップにより実施されるか、または前記フルオロフォアがGFPであり、前記蛍光を測定するステップが、前記細胞を波長488nmの光に曝露するステップ、および前記細胞を波長510nmの光で画像化するステップにより実施され、
前記薬剤の非存在下での非膜体の蛍光のレベルに対する、前記非膜体のより高レベルの前記蛍光が、前記薬剤が、前記生体分子に対する前記標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法。
【請求項93】
生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、
(i)細胞を前記薬剤と接触させるステップであって、前記細胞が、(a)前記標的ペプチド、光感受性受容体、および前記標的ペプチドと前記光感受性受容体との間で融合したフルオロフォアを含む標的分子、ならびに(b)全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合した前記光感受性受容体の同起源のパートナーを含む第2の分子を含む、ステップ、
(ii)前記細胞を、少なくとも1種の所定の波長の光に曝露するステップ、ならびに
(iii)蛍光の強度を検出するステップ、前記非膜体の数を定量化するステップ、またはそれらの組合せにより、前記標的分子を含む非膜体の蛍光を測定するステップであって、前記標的ペプチドが、前記生体分子に対する前記結合から解放され、前記標的分子の前記ペプチドが、前記第2の分子の前記同起源のパートナーと相互作用し、前記標的分子および前記第2の分子が、前記標的ペプチドが前記生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている前記細胞の部分領域で相分離を受けると、前記標的分子および前記第2の分子が前記非膜体に組み込まれる、ステップ
を含み、
前記光感受性受容体がCry2もしくはiLIDであり、前記少なくとも1種の所定の波長の光が、波長488nmの光と併せた波長450nmの光もしくは波長440nmの光であるか、または前記光感受性受容体がPhyBもしくはPIFであり、前記少なくとも1種の所定の波長の光が、波長750nmの光と併せた波長650nmの光であり、
前記フルオロフォアがmCherryであり、前記蛍光を測定するステップが、前記細胞を波長540~590nmの光に曝露するステップ、および前記細胞を波長550~650nmの光で画像化するステップにより実施されるか、または前記フルオロフォアがGFPであり、前記蛍光を測定するステップが、前記細胞を波長488nmの光に曝露するステップ、および前記細胞を波長510nmの光で画像化するステップにより実施され、
前記薬剤の非存在下での非膜体の蛍光のレベルに対する、前記非膜体のより高レベルの前記蛍光が、前記薬剤が、前記生体分子に対する前記標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法。
【請求項94】
生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、
(i)細胞を前記薬剤と接触させるステップであって、前記細胞が、(a)前記標的ペプチド、光感受性受容体の同起源のパートナー、および前記標的ペプチドと前記同起源のパートナーとの間で融合したフルオロフォアを含む標的分子、ならびに(b)全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合した前記光感受性受容体を含む第2の分子を含む、ステップ、
(ii)前記細胞を、少なくとも1種の所定の波長の光に曝露するステップ、ならびに
(iii)蛍光の強度を検出するステップ、前記非膜体の数を定量化するステップ、またはそれらの組合せにより、前記標的分子を含む非膜体の蛍光を測定するステップであって、前記標的ペプチドが、前記生体分子に対する前記結合から解放され、前記標的分子の前記ペプチドが、前記第2の分子の前記同起源のパートナーと相互作用し、前記標的分子および前記第2の分子が、前記標的ペプチドが前記生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている前記細胞の部分領域で相分離を受けると、前記標的分子および前記第2の分子が前記非膜体に組み込まれる、ステップ
を含み、
前記光感受性受容体がCry2もしくはiLIDであり、前記少なくとも1種の所定の波長の光が、波長488nmの光と併せた波長450nmの光もしくは波長440nmの光であるか、または前記光感受性受容体がPhyBもしくはPIFであり、前記少なくとも1種の所定の波長の光が、波長750nmの光と併せた波長650nmの光であり、
前記フルオロフォアがmCherryであり、前記蛍光を測定するステップが、前記細胞を波長540~590nmの光に曝露するステップ、および前記細胞を波長550~650nmの光で画像化するステップにより実施されるか、または前記フルオロフォアがGFPであり、前記蛍光を測定するステップが、前記細胞を波長488nmの光に曝露するステップ、および前記細胞を波長510nmの光で画像化するステップにより実施され、
前記薬剤の非存在下での非膜体の蛍光のレベルに対する、前記非膜体のより高レベルの前記蛍光が、前記薬剤が、前記生体分子に対する前記標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法。
【請求項95】
請求項1から94のいずれか一項に記載の方法により特定される薬剤。
【請求項96】
請求項1から94のいずれか一項に記載の方法により特定される薬剤、および医薬的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体を含む医薬組成物。
【請求項97】
請求項9695に記載の前記医薬組成物を調製する方法。
【請求項98】
疾患または状態を治療することを必要とする対象における、疾患または状態を治療する方法であって、請求項95に記載の前記医薬組成物を投与するステップを含み、前記投与するステップが、前記疾患または状態に関連する徴候または症状を低減させ、それにより前記対象における前記疾患または状態を治療する、方法。
【請求項99】
疾患または状態が、がん、神経変性障害、または炎症性障害である、請求項9898に記載の方法。
【請求項100】
前記対象がヒトである、請求項98に記載の方法。
【請求項101】
請求項1から94のいずれか一項に記載の、前記細胞、もしくは前記第1の細胞および前記第2の細胞、または請求項1から94のいずれか一項に記載の、前記標的分子、前記標的分子および前記対照分子、もしくは前記標的分子および前記第2の分子
ならびに
請求項1から94のいずれか一項に記載の前記方法についての説明書き
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
[0001]本出願は、その全体にわたって参照により本明細書に組み込まれる、2021年1月22日申請の米国仮出願第US63/140,291号の利益を主張する。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
[0002]本明細書とともに電子的に申請された配列表も、その全体にわたって参照により本明細書に組み込まれる(ファイル名:Princeton-73476_SL.txt、作成日:2022年1月19日、ファイルサイズ:17,378バイト)。
【背景技術】
【0003】
[0003]疾患に関連する生体分子相互作用についての阻害剤の同定のためのアッセイは、ほとんどの場合in vitroで実施され、長期のアッセイ開発および検証を伴う成分の抽出および/または精製による。天然の環境における完全な生化学経路の存在下での相互作用を標的とするのに望ましいin celluloスクリーニングを実施するため、アッセイは通常何年にもわたる開発および検証を必要とする。ゆえに、その必要性を克服するための技法が大いに必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
[0004]ある特定の実施形態において、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、(i)細胞を薬剤と接触させるステップであって、細胞が、標的ペプチドを含む標的分子を含む、ステップ、(ii)標的分子を含む非膜体を検出するステップであって、標的ペプチドが、生体分子に対する結合から解放され、標的ペプチドが生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている細胞の部分領域で相分離を受けると、標的分子が非膜体に組み込まれる、ステップを含み、検出するステップが、非膜体の強度およびサイズの変化を測定するステップを含み、薬剤の非存在下での非膜体の強度およびサイズの変化に対する、非膜体の強度およびサイズのより大きな変化が、薬剤が、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法が本明細書で記載される。
【0005】
[0005]ある特定の実施形態において、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、(i)第1の細胞を薬剤と接触させるステップであって、第1の細胞が、標的ペプチドを含む標的分子を含む、ステップ、(ii)第2の細胞を薬剤と接触させるステップであって、第2の細胞が、対照ペプチドを含む対照分子を含み、対照ペプチドが非標的ペプチドである、ステップ、(iii)標的分子を含む第1の細胞の第1の非膜体を検出するステップであって、標的ペプチドが、生体分子に対する結合から解放され、標的ペプチドが生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている細胞の部分領域で相分離を受けると、標的分子が第1の非膜体に組み込まれ、検出するステップが、第1の非膜体の強度およびサイズの変化を測定するステップ、ならびに対照分子を含む第2の細胞の第2の非膜体を検出するステップを含み、対照ペプチドが相分離を受けると、対照分子が第2の非膜体に組み込まれ、検出するステップが、第2の非膜体の強度およびサイズの変化を測定するステップを含む、ステップ、ならびに(iv)第1の非膜体の強度およびサイズの変化と、第2の非膜体の強度およびサイズの変化との間の差を決定するステップを含み、薬剤の非存在下での第1の非膜体と第2の非膜体との間の差に対する、第1の非膜体と第2の非膜体との間のより大きな差が、薬剤が、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法が本明細書で記載される。
【0006】
[0006]一部の実施形態において、標的ペプチドはフルオロフォアと融合している。一部の実施形態において、標的ペプチドは第1のフルオロフォアと融合しており、対照ペプチドは第2のフルオロフォアと融合している。一部の実施形態において、非膜体を検出するステップは、蛍光を測定するステップである。一部の実施形態において、蛍光を測定するステップは、蛍光の強度を検出するステップ、非膜体の数を定量化するステップ、またはそれらの組合せを含む。
【0007】
[0007]一部の実施形態において、標的ペプチドは天然変性タンパク質(IDP)であるか、または標的ペプチドは天然変性領域(IDR)を含む。一部の実施形態において、非膜体、第1の非膜体、または第2の非膜体は、核小体、カハール体、ストレス顆粒、Pボディ、スプライソソーム、またはそれらの組合せである。
【0008】
[0008]一部の実施形態において、生体分子は、タンパク質、タンパク質ドメイン、DNA、RNA、またはタンパク質、DNA、RNAを含む複合体、またはそれらの組合せである。
【0009】
[0009]一部の実施形態において、薬剤は低分子化合物である。一部の実施形態において、低分子化合物は有機化合物である。一部の実施形態において、低分子化合物は無機化合物である。一部の実施形態において、薬剤は、核酸、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはそれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態において、ポリペプチドは抗体またはその機能性断片である。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、アプタマー、RNAベースの化合物、アンチセンス核酸、PNA、またはそれらの組合せである。一部の実施形態において、RNAベースの化合物は、低分子干渉RNA、マイクロRNA、低分子ヘアピンRNA、またはそれらの組合せである。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドはCRISPRガイドRNAである。一部の実施形態において、CRISPRガイドRNAはウイルスベクターによりコードされる。一部の実施形態において、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。一部の実施形態において、CRISPRガイドRNAは、Cas9、またはCas9をコードするヌクレオチド配列を含むベクターと組み合わせて導入される。一部の実施形態において、Cas9は酵素的に失活したCas9(dCas9)である。
【0010】
[0010]一部の実施形態において、標的分子は標的タンパク質である。
[0011]一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチドと融合した全長または切断型低複雑性領域をさらに含む。一部の実施形態において、対照分子は、対照ペプチドと融合した全長または切断型低複雑性領域をさらに含む。一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチドと融合したさらなる全長または切断型IDRをさらに含み、さらなる全長または切断型IDRは、標的分子とは異なる。一部の実施形態において、対照分子は、対照ペプチドと融合したさらなる全長または切断型IDRをさらに含む。一部の実施形態において、IDRは、FUSの少なくとも一部、Ddx4の少なくとも一部、hnRNPAlの少なくとも一部、BRD4の少なくとも一部、TAF15の少なくとも一部、SRSF2 IDRの少なくとも一部、SART1の少なくとも一部、HSF1の少なくとも一部、RNPS1の少なくとも一部、またはそれらの組合せである。一部の実施形態において、FUSの一部はFUSのN末端IDR(FUSn)である。
【0011】
[0012]一部の実施形態において、フルオロフォアは、mCherryまたは緑色蛍光タンパク質(GFP)である。
[0013]ある特定の実施形態において、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、(i)細胞を薬剤と接触させるステップであって、細胞が、フルオロフォアと融合した標的ペプチドを含む標的分子を含む、ステップ、(ii)蛍光の強度を検出するステップ、非膜体の数を定量化するステップ、またはそれらの組合せにより、標的分子を含む非膜体の蛍光を測定するステップであって、標的ペプチドが、生体分子に対する結合から解放され、標的ペプチドが生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている細胞の部分領域で相分離を受けると、標的分子が非膜体に組み込まれる、ステップを含み、フルオロフォアがmCherryであり、蛍光を測定するステップが、細胞を波長540~590nmの光に曝露するステップ、および細胞を波長550~650nmの光で画像化するステップにより実施されるか、またはフルオロフォアがGFPであり、蛍光を測定するステップが、細胞を波長488nmの光に曝露するステップ、および細胞を波長510nmの光で画像化するステップにより実施され、薬剤の非存在下での非膜体の蛍光のレベルに対する、非膜体のより高レベルの蛍光が、薬剤が、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法が本明細書で記載される。
【0012】
[0014]ある特定の実施形態において、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、(i)細胞を薬剤と接触させるステップであって、細胞が、標的ペプチド、ならびに光感受性受容体および化学物質感受性受容体から選択される少なくとも1種のペプチドを含む標的分子を含む、ステップ、(ii)細胞を、少なくとも1種の所定の波長の光、化学物質感受性受容体が感受性である化学物質、またはそれらの組合せに曝露するステップ、ならびに(iii)標的分子を含む非膜体を検出するステップであって、標的ペプチドが、生体分子に対する結合から解放され、標的ペプチドが生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている細胞の部分領域で相分離を受けると、標的分子が非膜体に組み込まれる、ステップを含み、検出するステップが、非膜体の強度およびサイズの変化を測定するステップを含み、薬剤の非存在下での非膜体の強度およびサイズの変化に対する、非膜体の強度およびサイズのより大きな変化が、薬剤が、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法が本明細書で記載される。
【0013】
[0015]ある特定の実施形態において、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、(i)細胞を薬剤と接触させるステップであって、細胞が、(a)標的ペプチド、ならびに光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドを含む標的分子、ならびに(b)全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合したペプチドの同起源のパートナーを含む第2の分子を含む、ステップ、(ii)細胞を、少なくとも1種の所定の波長の光、化学物質感受性受容体が感受性である化学物質、またはそれらの組合せに曝露するステップ、ならびに(iii)標的分子を含む非膜体を検出するステップであって、標的ペプチドが、生体分子に対する結合から解放され、標的分子のペプチドが、第2の分子の同起源のパートナーと相互作用し、標的分子および第2の分子が、標的ペプチドが生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている細胞の部分領域で相分離を受けると、標的分子および第2の分子が非膜体に組み込まれる、ステップを含み、検出するステップが、非膜体の強度およびサイズの変化を測定するステップを含み、薬剤の非存在下での非膜体の強度およびサイズの変化に対する、非膜体の強度およびサイズのより大きな変化が、薬剤が、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法が本明細書で記載される。
【0014】
[0016]ある特定の実施形態において、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、(i)細胞を薬剤と接触させるステップであって、細胞が、(a)標的ペプチド、ならびに光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドの同起源のパートナーを含む標的分子、ならびに(b)全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合したペプチドを含む第2の分子を含む、ステップ、(ii)細胞を、少なくとも1種の所定の波長の光、化学物質感受性受容体が感受性である化学物質、またはそれらの組合せに曝露するステップ、ならびに(iii)標的分子を含む非膜体を検出するステップであって、標的ペプチドが、生体分子に対する結合から解放され、標的分子の同起源のパートナーが、第2の分子のペプチドと相互作用し、標的分子および第2の分子が、標的ペプチドが生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている細胞の部分領域で相分離を受けると、標的分子および第2の分子が非膜体に組み込まれる、ステップを含み、検出するステップが、非膜体の強度およびサイズの変化を測定するステップを含み、薬剤の非存在下での非膜体の強度およびサイズの変化に対する、非膜体の強度およびサイズのより大きな変化が、薬剤が、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法が本明細書で記載される。
【0015】
[0017]一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチドと、光感受性受容体および化学物質感受性受容体から選択される少なくとも1種のペプチドとの間で融合したフルオロフォアをさらに含む。一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチドと、光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドとの間で融合したフルオロフォアをさらに含む。一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチドと、光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドの同起源のパートナーとの間で融合したフルオロフォアをさらに含む。一部の実施形態において、非膜体を検出するステップは、蛍光を測定するステップである。一部の実施形態において、蛍光を測定するステップは、蛍光の強度を検出するステップ、非膜体の数を定量化するステップ、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態において、非膜体は、核小体、カハール体、ストレス顆粒、Pボディ、スプライソソーム、またはそれらの組合せである。
【0016】
[0018]一部の実施形態において、生体分子は、タンパク質、タンパク質ドメイン、DNA、RNA、またはタンパク質、DNA、RNAを含む複合体、またはそれらの組合せである。
【0017】
[0019]一部の実施形態において、薬剤は低分子化合物である。一部の実施形態において、低分子化合物は有機化合物または無機化合物である。一部の実施形態において、薬剤は、核酸、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはそれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態において、ポリペプチドは、抗体またはその機能性断片である。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、アプタマー、RNAベースの化合物、アンチセンス核酸、PNA、またはそれらの組合せである。一部の実施形態において、RNAベースの化合物は、低分子干渉RNA、マイクロRNA、低分子ヘアピンRNA、またはそれらの組合せである。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドはCRISPRガイドRNAである。一部の実施形態において、CRISPRガイドRNAはウイルスベクターによりコードされる。一部の実施形態において、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。一部の実施形態において、CRISPRガイドRNAは、Cas9、またはCas9をコードするヌクレオチド配列を含むベクターと組み合わせて導入される。一部の実施形態において、Cas9は酵素的に失活したCas9(dCas9)である。
【0018】
[0020]一部の実施形態において、IDRは、FUSの少なくとも一部、Ddx4の少なくとも一部、hnRNPAlの少なくとも一部、BRD4の少なくとも一部、TAF15の少なくとも一部、SRSF2 IDRの少なくとも一部、SART1の少なくとも一部、HSF1の少なくとも一部、RNPS1の少なくとも一部、またはそれらの組合せである。一部の実施形態において、FUSの一部はFUSのN末端IDR(FUSn)である。
【0019】
[0021]一部の実施形態において、光感受性受容体は、クリプトクロム2(Cry2)、Cry2の光回復酵素相同領域、フィトクロムB(PhyB)、PIF、光酸素電圧感受性(LOV)ドメイン、ドロンパ、または改良光誘導性ダイマー(iLID)である。一部の実施形態において、光感受性受容体はssrAであり、同起源のパートナーはsspBである。
【0020】
[0022]一部の実施形態において、フルオロフォアは、mCherryまたは緑色蛍光タンパク質(GFP)である。
[0023]一部の実施形態において、細胞はヒト細胞である。一部の実施形態において、細胞は非ヒト動物細胞である。
【0021】
[0024]一部の実施形態において、標的分子(例えば、標的タンパク質)は、BRD4またはBRD4のブロモドメインである。一部の実施形態において、生体分子はアセチル化ヒストンである。
【0022】
[0025]一部の実施形態において、標的分子(例えば、標的タンパク質)は、転写活性化因子または転写抑制因子である。一部の実施形態において、生体分子はDNAである。一部の実施形態において、生体分子はDNAのベーシックヘリックスループヘリックスドメインである。
【0023】
[0026]一部の実施形態において、薬剤は治療薬剤である。
[0027]ある特定の実施形態において、対象における治療レジメンの有効性を決定する方法であって、(i)生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する薬剤で対象を治療するステップ、(ii)対象由来の細胞において非膜体を形成させるステップであって、細胞が、標的ペプチドを含む標的分子を含み、標的ペプチドが、生体分子から解放され、標的ペプチドが生体分子に結合する部分領域と離れている細胞の部分領域で相分離を受けると、標的分子が非膜体に組み込まれる、ステップ、および(iii)薬剤の非存在下での非膜体の強度またはサイズと比較した、非膜体の強度またはサイズの変化を検出することにより、治療レジメンの有効性を決定するステップを含む、方法が本明細書で記載される。
【0024】
[0028]ある特定の実施形態において、対象の細胞における、標的ペプチドと生体分子との間の相互作用を調節する方法であって、細胞が、標的ペプチドを含む標的分子を含み、方法が、(i)生体分子から標的ペプチドを解放させるように、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する薬剤と細胞を接触させるステップ、(ii)標的ペプチドが生体分子から解放されると、標的分子を非膜体に組み込むステップであって、標的分子が、標的ペプチドが生体分子に結合する部分領域と離れている細胞の部分領域で相分離を受け、それにより標的ペプチドおよび生体分子を調節する、ステップを含む、方法が本明細書で記載される。
【0025】
[0029]ある特定の実施形態において、対象の細胞における、標的分子の細胞内局在を調節する方法であって、(i)生体分子から標的ペプチドを解放させるように、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する薬剤と細胞を接触させるステップ、(ii)標的ペプチドが生体分子から解放されると、標的分子を非膜体に組み込むステップであって、標的分子が、標的ペプチドが生体分子に結合する部分領域と離れている細胞の部分領域で相分離を受け、それにより標的ペプチドと生体分子との間の相互作用を調節する、ステップを含む、方法が本明細書で記載される。
【0026】
[0030]一部の実施形態において、方法は、細胞内の非膜体を検出するステップをさらに含み、非膜体は標的分子を含む。
[0031]一部の実施形態において、標的ペプチドはフルオロフォアと融合している。一部の実施形態において、非膜体を検出するステップは蛍光を測定するステップである。一部の実施形態において、蛍光を測定するステップは、蛍光の強度を検出するステップ、非膜体の数を定量化するステップ、またはそれらの組合せを含む。
【0027】
[0032]ある特定の実施形態において、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、(i)細胞を薬剤と接触させるステップであって、細胞が、標的ペプチド、少なくとも1種の光感受性受容体、および標的ペプチドと少なくとも1種の光感受性受容体との間で融合したフルオロフォアを含む標的分子を含む、ステップ、(ii)細胞を、少なくとも1種の所定の波長の光に曝露するステップ、ならびに(iii)蛍光の強度を検出するステップ、非膜体の数を定量化するステップ、またはそれらの組合せにより、標的分子を含む非膜体の蛍光を測定するステップであって、標的ペプチドが、生体分子に対する結合から解放され、標的ペプチドが生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている細胞の部分領域で相分離を受けると、標的分子が非膜体に組み込まれる、ステップを含み、少なくとも1種の波長の光が、400および800nmを含む400~800nmの可視波長の光であり、フルオロフォアがmCherryであり、蛍光を測定するステップが、細胞を波長540~590nmの光に曝露するステップ、および細胞を波長550~650nmの光で画像化するステップにより実施されるか、またはフルオロフォアがGFPであり、蛍光を測定するステップが、細胞を波長488nmの光に曝露するステップ、および細胞を波長510nmの光で画像化するステップにより実施され、薬剤の非存在下での非膜体の蛍光のレベルに対する、非膜体のより高レベルの蛍光が、薬剤が、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法が本明細書で記載される。
【0028】
[0033]ある特定の実施形態において、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、(i)細胞を薬剤と接触させるステップであって、細胞が、(a)標的ペプチド、光感受性受容体、および標的ペプチドと光感受性受容体との間で融合したフルオロフォアを含む標的分子、ならびに(b)全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合した光感受性受容体の同起源のパートナーを含む第2の分子を含む、ステップ、(ii)細胞を、少なくとも1種の所定の波長の光に曝露するステップ、ならびに(iii)蛍光の強度を検出するステップ、非膜体の数を定量化するステップ、またはそれらの組合せにより、標的分子を含む非膜体の蛍光を測定するステップであって、標的ペプチドが、生体分子に対する結合から解放され、標的分子のペプチドが、第2の分子の同起源のパートナーと相互作用し、標的分子および第2の分子が、標的ペプチドが生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている細胞の部分領域で相分離を受けると、標的分子および第2の分子が非膜体に組み込まれる、ステップを含み、光感受性受容体がCry2もしくはiLIDであり、少なくとも1種の所定の波長の光が、波長488nmの光と併せた波長450nmの光もしくは波長440nmの光であるか、または光感受性受容体がPhyBもしくはPIFであり、少なくとも1種の所定の波長の光が、波長750nmの光と併せた波長650nmの光であり、フルオロフォアがmCherryであり、蛍光を測定するステップが、細胞を波長540~590nmの光に曝露するステップ、および細胞を波長550~650nmの光で画像化するステップにより実施されるか、またはフルオロフォアがGFPであり、蛍光を測定するステップが、細胞を波長488nmの光に曝露するステップ、および細胞を波長510nmの光で画像化するステップにより実施され、薬剤の非存在下での非膜体の蛍光のレベルに対する、非膜体のより高レベルの蛍光が、薬剤が、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法が本明細書で記載される。
【0029】
[0034]ある特定の実施形態において、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法であって、(i)細胞を薬剤と接触させるステップであって、細胞が、(a)標的ペプチド、光感受性受容体の同起源のパートナー、および標的ペプチドと同起源のパートナーとの間で融合したフルオロフォアを含む標的分子、ならびに(b)全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合した光感受性受容体を含む第2の分子を含む、ステップ、(ii)細胞を、少なくとも1種の所定の波長の光に曝露するステップ、ならびに(iii)蛍光の強度を検出するステップ、非膜体の数を定量化するステップ、またはそれらの組合せにより、標的分子を含む非膜体の蛍光を測定するステップであって、標的ペプチドが、生体分子に対する結合から解放され、標的分子のペプチドが、第2の分子の同起源のパートナーと相互作用し、標的分子および第2の分子が、標的ペプチドが生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている細胞の部分領域で相分離を受けると、標的分子および第2の分子が非膜体に組み込まれる、ステップを含み、光感受性受容体がCry2もしくはiLIDであり、少なくとも1種の所定の波長の光が、波長488nmの光と併せた波長450nmの光もしくは波長440nmの光であるか、または光感受性受容体がPhyBもしくはPIFであり、少なくとも1種の所定の波長の光が、波長750nmの光と併せた波長650nmの光であり、フルオロフォアがmCherryであり、蛍光を測定するステップが、細胞を波長540~590nmの光に曝露するステップ、および細胞を波長550~650nmの光で画像化するステップにより実施されるか、またはフルオロフォアがGFPであり、蛍光を測定するステップが、細胞を波長488nmの光に曝露するステップ、および細胞を波長510nmの光で画像化するステップにより実施され、薬剤の非存在下での非膜体の蛍光のレベルに対する、非膜体のより高レベルの蛍光が、薬剤が、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害することを示す、方法が本明細書で記載される。ある特定の実施形態において、GFPはGFP11(配列番号1)である。
【0030】
[0035]ある特定の実施形態において、本明細書で記載される薬剤、および医薬的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体を含む医薬組成物が本明細書で記載される。
[0036]ある特定の実施形態において、本明細書で記載される医薬組成物を調製する方法が本明細書で記載される。
【0031】
[0037]ある特定の実施形態において、疾患または状態を治療することを必要とする対象における、疾患または状態を治療する方法であって、本明細書で記載される医薬組成物を投与するステップを含み、投与するステップが、疾患または状態に関連する徴候または症状を低減させ、それにより対象における疾患または状態を治療する、方法が本明細書で記載される。一部の実施形態において、疾患または状態は、がん、神経変性障害、または炎症性障害である。一部の実施形態において、対象はヒトである。
【0032】
[0038]ある特定の実施形態において、本明細書で記載される、細胞、もしくは第1の細胞および第2の細胞、または本明細書で記載される、標的分子、標的分子および対照分子、もしくは標的分子および第2の分子、ならびに本明細書で記載される方法についての説明書きを含むキットが本明細書で記載される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1-1】[0039]本明細書で記載される、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法に使用される標的分子の、例示的な実施形態を図示する図である。
図1Aは、フルオロフォアと融合した標的ペプチドを含む標的分子の例示的な実施形態を図示する。
図1Bは、フルオロフォアと融合した標的ペプチド、および標的ペプチドと融合した全長もしくは切断型低複雑性領域または全長もしくは切断型天然変性領域(IDR)を含む標的分子の例示的な実施形態を図示する。
図1Cは、標的ペプチド、少なくとも1種の光感受性受容体、および標的ペプチドと1種の光感受性受容体との間で融合したフルオロフォアを含む標的分子の例示的な実施形態を図示する。
図1Dは、標的ペプチド、光感受性受容体、および標的ペプチドと光感受性受容体との間で融合したフルオロフォアを含む標的分子、ならびに全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合した光感受性受容体の同起源のパートナーを含む第2の分子の、例示的な実施形態を図示する。
図1Eは、標的ペプチド、光感受性受容体の同起源のパートナー、および標的ペプチドと同起源のパートナーとの間で融合したフルオロフォアを含む標的分子、ならびに全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合した光感受性受容体を含む第2の分子の、例示的な実施形態を図示する。
【
図1-2】本明細書で記載される、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法に使用される標的分子の、例示的な実施形態を図示する図である。
図1Aは、フルオロフォアと融合した標的ペプチドを含む標的分子の例示的な実施形態を図示する。
図1Bは、フルオロフォアと融合した標的ペプチド、および標的ペプチドと融合した全長もしくは切断型低複雑性領域または全長もしくは切断型天然変性領域(IDR)を含む標的分子の例示的な実施形態を図示する。
図1Cは、標的ペプチド、少なくとも1種の光感受性受容体、および標的ペプチドと1種の光感受性受容体との間で融合したフルオロフォアを含む標的分子の例示的な実施形態を図示する。
図1Dは、標的ペプチド、光感受性受容体、および標的ペプチドと光感受性受容体との間で融合したフルオロフォアを含む標的分子、ならびに全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合した光感受性受容体の同起源のパートナーを含む第2の分子の、例示的な実施形態を図示する。
図1Eは、標的ペプチド、光感受性受容体の同起源のパートナー、および標的ペプチドと同起源のパートナーとの間で融合したフルオロフォアを含む標的分子、ならびに全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合した光感受性受容体を含む第2の分子の、例示的な実施形態を図示する。
【
図2】[0040]本明細書で記載される、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法の、例示的な実施形態を図示する図である。[0041]
図2Aは、標的ペプチド(例えば、BRD4)、少なくとも1種の光感受性受容体(例えば、sspB)、および標的ペプチドと1種の光感受性受容体との間で融合したフルオロフォア(mCherry)を含む例示的な標的分子の模式図を示す。
図2Bは、1μM+JQ1処理から90分後、未処理細胞および活性化前の細胞と比較して、標的分子が解放され、相分離が誘導されたことを示す画像を図示する。
【
図3-1】[0042]本明細書で記載される、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法を使用しての、例示的なブラインドスクリーニングを示す図である。
図3Aは、マルチウェルプレートの配置および座標を示す。プレートの「試験ウェル」部分では、Xと表示されるウェル(ウェルID D04、D06、およびD09)は、90分間の1μM+JQ1処理を含有するウェルであり、一方、ブランクのウェルは未処理である。陰性対照ウェルは未処理である。勾配ウェルは、0~1μMの範囲の+JQ1濃度を含有する。
図3Bは、候補薬剤で処理された細胞が、相分離の増大を呈することを示す画像である。
図3Cは、集団(ウェル)における相分離した細胞の%により測定された、いくつかの候補薬剤(例えば、ウェルID D04、D06、およびD09のウェルでは、候補薬剤例えば+JQ1)により処理された細胞における、相分離した細胞の増大を示すグラフである。
図3Dは、本明細書で記載される方法を使用しての、例示的な薬剤、1μM+JQ1についてのIC50の測定である。
【
図3-2】本明細書で記載される、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法を使用しての、例示的なブラインドスクリーニングを示す図である。
図3Aは、マルチウェルプレートの配置および座標を示す。プレートの「試験ウェル」部分では、Xと表示されるウェル(ウェルID D04、D06、およびD09)は、90分間の1μM+JQ1処理を含有するウェルであり、一方、ブランクのウェルは未処理である。陰性対照ウェルは未処理である。勾配ウェルは、0~1μMの範囲の+JQ1濃度を含有する。
図3Bは、候補薬剤で処理された細胞が、相分離の増大を呈することを示す画像である。
図3Cは、集団(ウェル)における相分離した細胞の%により測定された、いくつかの候補薬剤(例えば、ウェルID D04、D06、およびD09のウェルでは、候補薬剤例えば+JQ1)により処理された細胞における、相分離した細胞の増大を示すグラフである。
図3Dは、本明細書で記載される方法を使用しての、例示的な薬剤、1μM+JQ1についてのIC50の測定である。
【
図4-1】[0043]本明細書で記載される方法を使用しての、例示的な薬剤、1μM+JQ1について完全に試料から得られたIC50の例を示す図である。
図4Aは、マルチウェルプレートの配置および座標を示す。
図4Bは+JQ1の段階希釈を示す。
図4Cは、活性画分(相分離した細胞の画分)対1μM+JQ1の濃度を示す、例示的な結果を示すグラフである。
【
図4-2】本明細書で記載される方法を使用しての、例示的な薬剤、1μM+JQ1について完全に試料から得られたIC50の例を示す図である。
図4Aは、マルチウェルプレートの配置および座標を示す。
図4Bは+JQ1の段階希釈を示す。
図4Cは、活性画分(相分離した細胞の画分)対1μM+JQ1の濃度を示す、例示的な結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
[0044]各種実施形態の完全な理解をもたらすため、本明細書の特定の具体的な詳細が示される。しかし当業者は、本開示がこれらの詳細なしに実施されうることを理解するものである。他の例において、実施形態の記載を不必要に曖昧にすることを回避するため、周知の構造は示されず詳細に記載もされない。文脈が別途求めない限り、明細書およびそれに続く請求項にわたって、語「含む(comprise)」ならびにその変形、例えば「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、オープンな、包括的な意味で、すなわち、「含むがこれらに限定されない」として解釈されるべきである。さらに、本明細書で提供される見出しは便宜上のものでしかなく、請求される開示の範囲または意義を説明するものではない。
【0035】
[0045]本明細書および添付の請求項において使用される場合、別途具体的に明記されない限り、単数形の使用は複数形を含む。本明細書において使用される場合、文脈が別途明確に規定しない限り、単数形「a」、「an」および「the」が複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0036】
[0046]内容が別途明確に規定しない限り、用語「または」が概して、「および/または」を含む意味で利用されることにも留意すべきである。
[0047]本出願において、「または」の使用は、別途明記されない限り「および/または」を意味する。さらに、用語「含む(including)」ならびに他の形態、例えば「含む(include)」、「含む(includes)」および「含まれる(included)」の使用は限定的でない。
【0037】
[0048]本明細書における「一部の実施形態」、「一実施形態(an embodiment)」、「一実施形態(one embodiment)」または「他の実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される具体的な特性、構造、または特徴が、本発明の少なくとも一部の実施形態に含まれるが、必ずしも全ての実施形態に含まれるわけではないことを意味する。
【0038】
[0049]本明細書および請求項において使用される場合、語「含む(comprising)」(ならびに含むの任意の形態、例えば「含む(comprise)」および「含む(comprises)」)、「有する(having)」(ならびに有するの任意の形態、例えば「有する(have)」および「有する(has)」)、「含む(including)」(ならびに含むの任意の形態、例えば「含む(includes)」および「含む(include)」)または「含有する(containing)」(ならびに含有するの任意の形態、例えば「含有する(contains)」および「含有する(contain)」)は、包括的またはオープンエンドであり、さらなる列挙されない要素または方法ステップを除外しない。本明細書において論じられる任意の実施形態が、本発明の任意の方法または組成物に関して実施されてよいと考えられ、逆もまた然りである。さらに、本発明の組成物が、本発明の方法を実現するのに使用されてよい。
【0039】
[0050]「対照」または「基準対照」は、試験試料、測定値、または値との比較のための、参照、通常は公知の参照として機能する試料、測定値、または値を指す。基準対照は、例えば試験される薬剤で処理されていない、同様の個体(例えば、基準対照細胞または対象)の集団から収集された平均測定値または値を表しうる。基準対照値は、同じ個体、例えば、処理の前に早期に得られた試料から得られてもよい。対照は、データの有意性を決定するのにも有益である。例えば、所与のパラメーターについての値が対照において広く変動する場合、試験試料における変動は有意とみなされない。当業者は、基準対照が、任意の数のパラメーター(例えば、RNAレベル、タンパク質レベル、特定の細胞型、特定の体液、特定の組織、脳組織など)の評価のためにデザインされてよいことを認識するものである。
【0040】
[0051]参照数値に関連する用語「約」およびその文法的同等物は、本明細書で使用される場合、その数値自体およびその数値からプラスまたはマイナス10%の値の範囲を含みうる。例えば、量「約10」は、10および9~11の任意の量を含む。例えば、参照数値に関連する用語「約」は、その値からプラスまたはマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%の値の範囲も含みうる。
【0041】
[0052]用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すため、本明細書ではその最も広い意味で互換可能に使用され、ポリマーは任意で、アミノ酸からならない部分にコンジュゲートしていてよい。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する、天然に存在するアミノ酸の人工の化学模倣物である、アミノ酸ポリマー、さらには天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。サブユニットは、ペプチド結合により結合していてよい。別の実施形態において、サブユニットは、他の結合、例えば、エステル、エーテルなどにより結合していてよい。
【0042】
[0053]用語「核酸」は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、およびそれらの、一本鎖、二本鎖もしくは多重鎖形態のいずれかのポリマー、またはそれらの相補鎖を指す。用語「ポリ核酸」、「ヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、ヌクレオチドの直鎖状配列を指す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはそれらの修飾型であってよい。本明細書で企図されるポリヌクレオチドの例は、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖RNA(siRNAを含む)、ならびに一本鎖および二本鎖DNAおよびRNAの混合物を有するハイブリッド分子を含む。核酸は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。例えば、核酸はヌクレオチドの直鎖であってよく、核酸は分枝状であってもよく、例えば、その結果、核酸はヌクレオチドの1つまたは複数のアームまたは分枝を含む。任意で、分枝状核酸は繰り返し分枝して、より高次の構造、例えばデンドリマーおよび同種のものを形成する。
【0043】
[0054]この用語は、合成の、天然に存在し、かつ天然に存在せず、参照核酸と類似の結合特性を有し、参照ヌクレオチドと類似の様式で代謝される、公知のヌクレオチドアナログまたは修飾主鎖残基または結合を含有する核酸も包含する。そのようなアナログの例は、以下に限定されることなく、例えば、ホスホロアミデート、ホスホロジアミデート、ホスホロチオエート(ホスホチオエートとしても知られる)、ホスホロジチオエート、ホスホノカルボン酸、ホスホノカルボキシレート、ホスホノ酢酸、ホスホノギ酸、ホスホン酸メチル、ホスホン酸ホウ素、またはO-メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein、Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach、Oxford University Pressを参照のこと)を含むホスホジエステル誘導体、ならびにペプチド核酸主鎖および結合を含む。他のアナログ核酸は、正の主鎖、非イオン性主鎖、修飾糖、および非リボース主鎖(例えば、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴまたはロックド核酸(LNA))を有する核酸を含む。1つまたは複数の炭素環式糖を含有する核酸も、核酸の一つの定義内に含まれる。リボース-リン酸主鎖の修飾は、各種理由で、例えば、生理的環境における、またはバイオチップでのプローブとしての、そのような分子の安定性および半減期を増大させるために、行われてよい。天然に存在する核酸およびアナログの混合物が作製されてよく、代わりに、様々な核酸アナログの混合物、ならびに天然に存在する核酸およびアナログの混合物が作製されてもよい。
【0044】
[0055]用語「発現」または「発現される」は、遺伝子に関して本明細書で使用される場合、その遺伝子の転写および/または翻訳産物を意味する。細胞におけるDNA分子の発現のレベルは、細胞内に存在する対応するmRNAの量、または細胞により生成されるDNAによりコードされるタンパク質の量のいずれかに基づき決定されてよい(Sambrookら、1989、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、18.1~18.88)。トランスフェクトされた遺伝子の発現は、細胞において一過性にまたは安定に起こりうる。「一過性発現」の間、トランスフェクトされた遺伝子は、細胞分裂中に娘細胞に移行しない。その発現はトランスフェクトされた細胞に限定されるため、遺伝子の発現は経時的に失われる。対照的に、トランスフェクトされた遺伝子の安定発現は、遺伝子が、トランスフェクトされた細胞に選択優位性を付与する別の遺伝子とともにコトランスフェクトされた場合に起こりうる。そのような選択優位性は、細胞に提示されるある特定の毒素に対する抵抗性でありうる。
【0045】
[0056]用語「トランスフェクション」、「形質導入」、「トランスフェクトすること」、または「形質導入すること」は、互換可能に使用可能であり、核酸分子および/またはタンパク質を細胞に導入する工程と定義される。核酸は、非ウイルスまたはウイルスベースの方法を使用して細胞に導入されてよい。核酸分子は、完全なタンパク質またはその機能性部分をコードする配列であってよい。通常、タンパク質発現に必要な配列(例えば、プロモーター、転写開始点など)を含む核酸ベクター。トランスフェクションの非ウイルス方法は、核酸分子を細胞に導入するための送達機構としてウイルスDNAまたはウイルス粒子を使用しない、任意の好適な方法を含む。例示的な非ウイルストランスフェクション方法は、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポソームトランスフェクション、ヌクレオフェクション(nucleofection)、ソノポレーション、熱ショックによるトランスフェクション、マグネティフェクション(magnetifection)およびエレクトロポレーションを含む。ウイルスベースの方法では、任意の有用なウイルスベクターが、本明細書で記載される方法において使用可能である。ウイルスベクターの例は、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルスベクターを含むが、これらに限定されない。一部の態様において、核酸分子は、当技術分野で周知の標準的な手順に従って、レトロウイルスベクターを使用して細胞に導入される。用語「トランスフェクション」または「形質導入」は、タンパク質を外部環境から細胞に導入することも指す。通常、タンパク質の形質導入またはトランスフェクションは、細胞膜を通過することが可能なペプチドまたはタンパク質の、目的のタンパク質への結合による。
【0046】
[0057]用語「外因性」は、所与の細胞または生物の外側由来の分子または物質(例えば、核酸またはタンパク質)を指す。反対に、用語「内因性」は、所与の細胞または生物に固有の、またはその内部で生じる分子または物質を指す。
【0047】
[0058]用語「融合した」、「融合」、「コンジュゲートした」、または「コンジュゲーション」は、本明細書で使用される場合、原子間での電子対の共有を伴う化学結合を指す。一部の実施形態において、標的ペプチドは、フルオロフォアに融合またはコンジュゲートしている。一部の実施形態において、フルオロフォアは、標的ペプチド、ならびに光感受性受容体および化学物質感受性受容体から選択される少なくとも1種のペプチドに融合またはコンジュゲートしている。一部の実施形態において、フルオロフォアは、標的ペプチド、ならびに光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドに融合またはコンジュゲートしている。一部の実施形態において、フルオロフォアは、標的ペプチド、ならびに光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドの同起源のパートナーに融合またはコンジュゲートしている。
【0048】
[0059]用語「結合」、「結合する」、「相互作用すること」、「相互作用する」、または「相互作用」は、本明細書で使用される場合、電子の共有を伴わない、分子間または分子内の、広範な種類の電磁相互作用を指す。例示的な結合または相互作用は、静電相互作用、例えばイオン相互作用、水素結合およびハロゲン結合、ファンデルワールス力、例えば双極子間相互作用、双極子-誘起双極子相互作用およびロンドン分散力、π-効果、例えばπ-π相互作用、カチオン-πおよびアニオン-π相互作用および極性-π相互作用、ならびに疎水効果を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態において、標的分子は生体分子に結合するかまたは生体分子と相互作用する。
【0049】
[0060]用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合する、タンパク質、または免疫グロブリン分子由来のポリペプチド配列を指す。抗体は、ポリクローナルもしくはモノクローナル起源の完全な免疫グロブリン、またはその断片であってよく、天然由来または組換え供給源由来であってよい。
【0050】
[0061]用語「抗体断片」または「抗体結合ドメイン」は、本明細書で使用される場合、標的、例えば抗原およびその所定のエピトープに対する抗体断片の認識および特異的結合を与えるのに十分な、抗原結合ドメイン、すなわち完全な抗体の抗原決定可変領域を含有する、抗体の少なくとも1つの部分、またはその組換えバリアントを指す。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片、単鎖(sc)Fv(「scFv」)抗体断片、直鎖状抗体、単一ドメイン抗体、例えばsdAb(VLまたはVHのいずれか)、ラクダVHHドメイン、二重特異性抗体、および抗体断片から形成される多特異的抗体を含むが、これらに限定されない。
【0051】
[0062]値の範囲が与えられる場合、文脈が別途明確に規定しない限り下限の単位の10分の1までの各介在値、およびその範囲の上限と下限との間の、その明記される範囲における、任意の他の明記される値または介在値が、本発明内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲に独立して含まれてよく、明記される範囲において特に除外される任意の上下限に従って、本発明内にも包含される。明記される範囲が上下限のうちの一方または両方を含む場合、それらの含まれる上下限のうちのいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0052】
[0063]別途定義されない限り、本明細書で使用される技術および科学用語は全て、本開示が属する技術分野における技術者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で記載されるものと類似または同等の方法および材料が、本開示の実施または試験において使用可能であるが、適切な方法および材料が以下で記載される。
【0053】
候補薬剤をスクリーニングする方法
[0064]一部の実施形態において、標的分子を含む非膜体を検出することによる、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法が、本明細書で記載される。一部の実施形態において、標的ペプチドが、薬剤の阻害活性によりその生体分子パートナーに対する結合から解放され、標的ペプチドが生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている細胞の部分領域で相分離を受けると、標的分子は非膜体に組み込まれる。一部の実施形態において、非膜体を検出することは、非膜体の強度およびサイズの変化を測定することを含む。一部の実施形態において、薬剤の非存在下での非膜体の強度の変化に対する非膜体の強度の変化は、薬剤が、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害することを示す。一部の実施形態において、薬剤の非存在下での非膜体のサイズの変化に対する非膜体のサイズの変化は、薬剤が、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害することを示す。一部の実施形態において、薬剤の非存在下での非膜体の強度およびサイズの変化に対する非膜体の強度およびサイズの変化は、薬剤が、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害することを示す。
【0054】
[0065]一部の実施形態において、薬剤存在下での非膜体の強度の変化は、薬剤の非存在下での非膜体の強度の変化と比較して、少なくとも1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、2000%、3000%、4000%、5000%、6000%、7000%、8000%、9000%、10000%、20000%、30000%、40000%、50000%、60000%、70000%、80000%、90000%、または100000%大きい。
【0055】
[0066]一部の実施形態において、薬剤存在下での非膜体のサイズの変化は、薬剤の非存在下での非膜体のサイズの変化と比較して、少なくとも1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、2000%、3000%、4000%、5000%、6000%、7000%、8000%、9000%、10000%、20000%、30000%、40000%、50000%、60000%、70000%、80000%、90000%、または100000%大きい。
【0056】
[0067]一部の実施形態において、薬剤存在下での非膜体の強度およびサイズの変化は、薬剤の非存在下での非膜体の強度およびサイズの変化と比較して、少なくとも1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、2000%、3000%、4000%、5000%、6000%、7000%、8000%、9000%、10000%、20000%、30000%、40000%、50000%、60000%、70000%、80000%、90000%、または100000%大きい。
【0057】
[0068]一部の実施形態において、標的分子はフルオロフォアを含み、非膜体を検出することは、蛍光を測定することである。一部の実施形態において、蛍光を測定することは、蛍光の強度を検出すること、非膜体の数を定量化すること、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態において、薬剤存在下での非膜体の蛍光の強度は、薬剤の非存在下での非膜体の蛍光の強度と比較して、少なくとも1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、2000%、3000%、4000%、5000%、6000%、7000%、8000%、9000%、10000%、20000%、30000%、40000%、50000%、60000%、70000%、80000%、90000%、または100000%大きい。
【0058】
[0069]一部の実施形態において、非膜体を検出することは、以下のステップを含む:(i)蛍光の強度および空間分布を検出すること、(ii)目的の領域を分割すること、(iii)光学的に分解された大きな構造体については強度、または分解能以下の構造体の場合については強度の大きな空間変動の、二峰性のヒストグラムが相分離を示す。一部の実施形態において、相分離の実在が、非膜体の存在についてのリードアウトとして使用される。
【0059】
液-液相分離および非膜体
[0070]液-液相分離(LLPS)は、生細胞の内容物を体系化するための本質的な機序である。LLPSは現在、細胞質構造、例えば生殖(P)顆粒、ストレス顆粒、miRISC集合体、およびシナプス足場を含む広範囲の非膜体(非膜生体分子凝縮物または非膜区画)の集合を推進するのに重要であると認識されている。LLPSは、核小体、およびおそらくは多くの他の構造体を含む核内構造体の生合成の根底をなすとも考えられる。関連する液固相転移も、病的タンパク質凝集の各種疾患、例えば、がん、リボソーム病および神経変性を含む核小体関連疾患、ならびに老化に関連付けられる。細胞内部の非膜液滴は、例えば遺伝子調節および疾患過程の宿主において動的な役割を果たす。核凝縮物はクロマチンと直接相互作用しなければならず、ゆえにその構築および遺伝子発現を制御する可能性があることから、核内での相転移は興味深い。このことと一致して、核凝縮物、例えばカハール体、核小体、およびスペックルの集合および動態は、クロマチン構造に影響を与えると考えられる。近年、相分離は、エンハンサーリッチな遺伝子群において集合したナノスケールの転写凝縮物による、遺伝子活性化の推進にも関連付けられる。
【0060】
[0071]細胞内相転移は、低複雑性配列およびプリオン様ドメインに密接に関連する天然変性タンパク質/領域(IDP/IDR)によりしばしば媒介される、弱い多価の相互作用から生じる。用語「天然変性タンパク質」、「天然変性領域」、および「天然変性タンパク質領域」は互換可能に使用される。用語「天然変性領域(IDR)」は、本明細書で使用される場合、大幅な立体構造不均一性を呈するタンパク質領域を指す。DDRの偏ったアミノ酸配列は、生理的条件下で、立体構造障害が本質的に優先されること、および十分に規定された特異な3D構造に折り畳みできないことをコードする。例えば、RNA結合タンパク質はしばしば、液体様タンパク質液滴への凝縮を推進するのに必要かつ十分と考えられる配列を含む、R、G、S、およびYを含むアミノ酸に偏った配列組成を有するIDRを含有する。IDR/LCSの役割は、液体様生理的集合体および病的タンパク質凝集物の両方において関連付けられてきた。
【0061】
[0072]一部の実施形態において、標的ペプチドは天然変性タンパク質(IDP)であるか、または標的ペプチドは少なくとも1つの天然変性領域(IDR)を含む(例えば、
図1Aおよび
図1C)。一部の実施形態において、標的分子は、相分離を増強させるため、フルオロフォアまたは標的ペプチドのいずれかと融合したさらなるIDRを含む。一部の実施形態において、さらなるIDRは、標的ペプチドのIDRと同じである。一部の実施形態において、さらなるIDRは、標的ペプチドのIDRとは異なる。一部の実施形態において、標的ペプチドはIDPではなく、標的ペプチドはIDRを含まない。
【0062】
[0073]一部の実施形態において、機能性領域は、他のタンパク質、例えば合成または天然核酸結合ドメインを利用する。多くのRNA結合タンパク質が、相分離を推進しうる自己会合性IDRまたはLCSを含有する。しかし、一部の実施形態において、さらなるRNA結合ドメインは、RNAとの多価の相互作用を介して相分離を増幅させることができる。例えば、FUSは、DNA修復、転写およびmRNA前駆体スプライシングを含む多様な核酸プロセシングに関与するALS関連RNA結合タンパク質である。FUSの自己会合性のN末端IDRが液-液相分離に必要かつ十分であることが示されている一方で、C末端RNA結合ドメインは相分離をさらに促進すると考えられる。一部の実施形態において、合成または天然核酸結合ドメインは、RNA認識モチーフ(RRM)、二本鎖RNA結合ドメイン(dsRBD)、S1、ジンクフィンガー結合ドメイン、YT521-B相同領域(YTH)、DNAおよびRNAヘリカーゼドメイン、プミリオ、またはS-アデノシルメチオニン(SAM)構造を利用する。
【0063】
[0074]例示的なIDPは、FUSの全長または切断型形態(配列番号3)、DDX4の全長または切断型形態(配列番号4)、hnRNPAlの全長または切断型形態(配列番号2または配列番号5)および他のIDR含有RNA結合ドメインを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態において、IDRは、FUSのアミノ酸残基1~214、DDX4の1~236、またはhnRNPAlの186~320を含む。一部の実施形態において、ALS関連RNA結合タンパク質hnNRNPAlのC末端IDR、またはDdx4のN末端IDR(optoDDX4)が、液-液相分離を推進するのに使用されてよい。一部の実施形態において、ヒトFUSのIDR(残基1~214)、ヒトhnRNPAlのIDR(残基186~320)、またはヒトDDX4のIDR(残基1~236)が、液-液相分離を推進するのに使用されてよい。一部の実施形態において、物理的特徴について著しい多様性を呈する、広範囲の様々なIDR含有タンパク質が使用されてよい。例えば、一部の実施形態において、比較的無電荷(例えば、TAF15N)から非常に塩基性(例えばSRSF2 IDR)および混合電荷(SART1)に及ぶIDR、比較的疎水性(例えばHSF1)から非常に親水性(例えばRNPS1)に及ぶIDRが使用される。
【0064】
[0075]一部の実施形態において、例示的な、LLPSにより推進される構造体または細胞内凝縮物は、核小体、カハール体、ストレス顆粒、Pボディおよびスプライソソームを含むが、これらに限定されない。
【0065】
[0076]用語「核小体(nucleolus)」または「核小体(nucleoli)」は、本明細書で使用される場合、真核細胞の最も主要な核内構造体を指す。核小体は、リボ核タンパク質粒子集合の場として、本質的に重要な生物学的役割を果たし、主にリボソーム生合成に寄与する。核小体は、核空間の残りから物理的に分離しているが、境界を定める膜の非存在ゆえに、動的な交換がしやすい。核小体は多層の生体分子凝縮物であり、LLPSによるその形成が、リボソーム生合成の最初のステップおよび他の機能を促進すると考えられる。
【0066】
[0077]用語「カハール体」または「コイル体」は、本明細書で使用される場合、コイリンおよび生存運動ニューロンタンパク質(SMN)を含有する核凝縮物を指す。カハール体は非膜小器官であり、大部分がタンパク質およびRNAからなる。カハール体はU snRNAに富み、一部のタンパク質成分、例えばフィブリラリンを核小体と共有する。カハール体は、RNA関連の代謝過程、例えばsnRNPの生合成、突然変異および再利用、ヒストンmRNAプロセシング、ならびにテロメア維持に関連付けられてきた。カハール体は、ヌクレオチドをテロメアの末端に付加するのにテロメラーゼにより使用されるRNAを集合させる。
【0067】
[0078]用語「ストレス顆粒」は、本明細書で使用される場合、ストレス(例えば、酸化ストレスおよび熱ストレス)に応答して形成される細胞質凝縮物を指す。ストレス顆粒は、タンパク質およびRNAから構成される高密度の凝集物である。ストレス顆粒は膜に囲まれておらず、小胞体に関連し、核ストレス顆粒も存在する。
【0068】
[0079]用語「Pボディ」は、本明細書で使用される場合、mRNA分解に関与する細胞質凝縮物を指す。Pボディは、mRNA代謝回転に関与する多くの酵素からなる、相分離により形成される特異なフォーカスである。Pボディは、一般的なmRNA分解、ナンセンス変異依存mRNA分解、アデニル酸-ウリジル酸リッチ配列媒介性のmRNA分解、およびmiRNA誘導性のmRNAサイレンシングにおいて本質的な役割を果たすと考えられる。
【0069】
[0080]用語「スプライソソーム」は、本明細書で使用される場合、真核細胞の核内に主にみられる、大きく複雑な分子RNAの種類を指す。各スプライソソームは、5つの核内低分子RNA(snRNA)および広範な関連タンパク質因子から構成される。これらの低分子RNAがタンパク質因子と組み合わされると、これらはsnRNP(核内低分子リボ核タンパク質)と呼ばれるRNA-タンパク質複合体を形成する。スプライソソームは、転写されたmRNA前駆体からイントロンを除去する(スプライシング)。
【0070】
スクリーニング方法のための成分
細胞
[0081]生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法は、標的分子、標的分子および第2の分子、または対照分子を含む細胞を使用する。
【0071】
[0082]用語「細胞」は、本明細書で使用される場合、そのゲノムDNAを保存または複製するのに十分な代謝または他の機能を実行する細胞を指す。細胞は、例えば、完全な膜の存在、特定の色素による染色、子孫を作り出す能力、または配偶子の場合、第2の配偶子と組み合わさって生存可能な子孫を作り出す能力を含む、当技術分野で周知の方法により同定可能である。細胞は、原核および真核細胞を含んでいてよい。原核細胞は、細菌を含むがこれに限定されない。真核細胞は、酵母細胞、ならびに植物および動物由来の細胞、例えば哺乳動物、昆虫(例えばスポドプテラ)およびヒト細胞を含むが、これらに限定されない。
【0072】
[0083]一部の実施形態において、適切な細胞の例は、細菌細胞;古細菌細胞;単細胞真核生物;植物細胞;藻類細胞;真菌細胞;動物細胞;無脊椎動物(例えば、昆虫、刺胞動物、棘皮動物、線形動物など)由来の細胞;真核生物寄生生物(例えば、マラリア寄生生物、例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum);蠕虫など);脊椎動物(例えば、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)由来の細胞;哺乳動物細胞、例えば、げっ歯類細胞、ヒト細胞、非ヒト霊長類細胞などを含むが、これらに限定されない。適切な宿主細胞は、天然に存在する細胞、遺伝子改変細胞(例えば、研究室で遺伝子改変された細胞)、および任意の方法でin vitroで操作された細胞を含む。一部の場合では、宿主細胞は単離または培養される。
【0073】
[0084]一部の実施形態において、細胞の例は、肺細胞、心臓細胞、脳細胞、ミクログリア、血液細胞、胃細胞、肝細胞、腸細胞、膵臓細胞、大腸細胞、腎細胞、尿管細胞、膀胱細胞、リンパ細胞、白血球、筋細胞、神経細胞、マクロファージ、アストロサイト、間質細胞、脊髄細胞、卵巣細胞、膣細胞、前立腺細胞、骨細胞、軟骨細胞、靭帯細胞、腱細胞、免疫細胞、造血細胞、線維芽細胞、マクロファージ、T細胞などを含むが、これらに限定されない。
【0074】
[0085]一部の実施形態において、細胞は哺乳動物細胞である。一部の実施形態において、細胞はがん細胞である。一部の実施形態において、細胞はがん細胞株である。一部の実施形態において、がん細胞は、胃がん、食道がん、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、および結腸直腸がん(HNPCCなど)由来である。一部の実施形態において、がん細胞は、乳がん細胞、大腸がん細胞、腎がん細胞、白血病細胞、肺がん細胞、黒色腫細胞、卵巣がん細胞、前立腺がん細胞、膵臓がん細胞、脳がん細胞、肝がん細胞、胃がん細胞または肉腫細胞を含むが、これらに限定されない。
【0075】
[0086]一部の実施形態において、細胞は樹立および/または不死化細胞株である。非限定的な例示的な細胞株は、3T3細胞、A549細胞、HeLa細胞、HEK293細胞、Jurkat細胞、OK細胞、Ptk2細胞、Vero細胞、U2OS細胞、NIH3T3細胞、およびHEK293T細胞を含む。一部の実施形態において、任意の種類の細胞が対象であってよい(例えば、幹細胞、例えば胚性幹(ES)細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、生殖細胞;体細胞、例えば線維芽細胞、造血細胞、ニューロン、筋細胞、骨細胞、肝細胞、膵臓細胞;任意の段階の胚のin vitroまたはin vivo胚細胞、例えば、1-細胞、2-細胞、4-細胞、8-細胞などの段階のゼブラフィッシュ胚など)。細胞は、樹立細胞株由来であってもよく、初代細胞であってもよく、その場合「初代細胞」、「初代細胞株」、および「初代培養物」が使用される。用語「初代細胞」、「初代細胞株」、および「初代培養物」は、本明細書では互換可能に、対象に由来し、限られた回数の培養物の継代、すなわち分割の間in vitroで増殖させた細胞および細胞培養物を指す。例えば、初代培養物は、0回、1回、2回、4回、5回、10回、または15回、しかし危機段階(crisis stage)を経るのには不十分な回数継代されていてよい培養物を含む。初代細胞株は、in vitroで10回未満の継代の間維持されうる。
【0076】
[0087]一部の実施形態において、潜在的な薬剤のライブラリをスクリーニングすることにより特定された外因性の薬剤の質を改善する、いくつかの因子が発現された細胞が適切である。一部の実施形態において、特定の標的または疾患状態に最も生理的に関連する細胞が適切である。一部の実施形態において、疾患のモデルであると承認された細胞が適切である。
【0077】
光感受性受容体
[0088]一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチド、ならびに光感受性受容体および化学物質感受性受容体から選択される少なくとも1種のペプチドを含む。一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチド、光感受性受容体および化学物質感受性受容体から選択される少なくとも1種のペプチド、ならびに標的ペプチドと少なくとも1種のペプチドとの間で融合したフルオロフォアを含む。
【0078】
[0089]一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチド、ならびに光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドを含み、第2の分子は、全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合した、光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドの同起源のパートナーを含む。一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチド、光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチド、ならびに標的ペプチドと、光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドとの間で融合したフルオロフォアを含む。
【0079】
[0090]一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチド、ならびに光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドの同起源のパートナーを含み、第2の分子は、全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合した、光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドを含む。一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチド、光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドの同起源のパートナー、ならびに標的ペプチドと、光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドの同起源のパートナーとの間で融合したフルオロフォアを含む。
【0080】
[0091]一部の実施形態において、細胞は、少なくとも1種の所定の波長の光、化学物質感受性受容体が感受性である化学物質、またはそれらの組合せに曝露される。一部の実施形態において、少なくとも1種の所定の波長の光、化学物質感受性感受性受容体が感受性である化学物質、またはそれらの組合せに曝露することは、光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドの立体構造を変化させ、それにより立体構造ストレスを誘導し、そのことが標的ペプチドの相分離を増強させる。
【0081】
[0092]一部の実施形態において、光感受性受容体は、クリプトクロム2(Cry2)、Cry2の光回復酵素相同領域、フィトクロムB(PhyB)、PIF、光酸素電圧感受性(LOV)ドメイン、ドロンパ、または改良光誘導性ダイマー(iLID)である。一部の実施形態において、光感受性受容体はssrAであり、同起源のパートナーはsspBである。一部の実施形態において、光感受性受容体はCry2またはiLIDであり、少なくとも1種の所定の波長の光は、波長488nmの光と併せた波長450nmの光または波長440nmの光である。一部の実施形態において、光感受性受容体はPhyBまたはPIFであり、少なくとも1種の所定の波長の光は、波長750nmの光と併せた波長650nmの光である。
【0082】
[0093]一部の実施形態において、少なくとも1種の波長の光に対して感受性のタンパク質は、可視光に対して感受性のタンパク質を含む。一部の実施形態において、少なくとも1種の波長の光に対して感受性のタンパク質は、Cry2、Cry2olig、PhyB、PIF、光酸素電圧感受性(LOV)ドメイン、またはドロンパである。少なくとも1種の波長の光に対して感受性のタンパク質を含む生細胞を、ある特定の波長の光に曝露することは、生細胞内のタンパク質をクラスター形成するように誘導する。
【0083】
[0094]一部の実施形態において、本明細書で記載される方法は、相分離による、非膜体への天然変性タンパク質の動員を制御するために、標的分子における光感受性受容体タンパク質と、第2の分子におけるその同起源のパートナーとの間の、またはその逆の、光活性化性または光不活性化性の相互作用を利用する。一部の実施形態において、標的ペプチドの各々は光感受性受容体タンパク質と融合しているため、標的分子における光感受性受容体タンパク質を含む構造の、第2の分子における光感受性受容体タンパク質の同起源のパートナーとの集合または場合により分解を引き起こすのに光が使用され、同起源のパートナーは、全長もしくは切断型低複雑性または天然変性タンパク質と融合している。一部の実施形態において、自己集合性単位(例えば、標的分子の一部)とIDR単位(例えば、第2の分子の一部)との間の光誘導性の可逆性ヘテロダイマー化は、例えば、改変された青色光感受性受容体タンパク質iLIDおよびその同起源のパートナー、sspBを利用する。一部の実施形態において、標的分子および第2の分子のうちの一方または両方は、有利には蛍光タンパク質マーカー(例えば、フルオロフォア)に結合していてよい。両分子を発現する生細胞をある特定の波長の光に曝露することは、生細胞内の分子を、クラスター形成するように、または液相、ゲル、もしくは例えば、アミロイド線維などの病的タンパク質凝集物を含む凝集物を核状にするように誘導する。一部の実施形態において、一旦形成されると、相分離したクラスターは、光の存在または非存在とは無関係に細胞内に留まる。
【0084】
[0095]一部の実施形態において、少なくとも1種の光感受性受容体タンパク質は、少なくとも1種の波長の光、例えば、約350nm~約800nmの、近UV、可視または赤外領域の波長の光に対して応答性の、1種または複数の類似のまたは異なるタンパク質を含む。一部の実施形態において、光感受性受容体タンパク質が応答する波長の光は、450nm~495nmである。一部の実施形態において、少なくとも1種の光感受性受容体タンパク質は、可視光に対して感受性である。光の波長は、構築物に利用される光感受性タンパク質が応答する特定の波長に基づき、予め決定される。
【0085】
[0096]一部の実施形態において、光感受性タンパク質は改変タンパク質iLIDであり、これは、そのC末端でssrAペプチドに融合した修飾LOV2ドメインからなる。一部の実施形態において、自己集合性タンパク質サブユニットは、2つ以上のLOV2-ssrAタンパク質と融合している。一部の実施形態において、他の光感受性タンパク質、例えば、ssrA以外のシグナル伝達ペプチドと融合したCry2、PhyBまたはLOV2ドメインが利用される。一部の実施形態において、第2の分子は、全長または切断型低複雑性配列(LCS)またはIDRと融合した、光感受性受容体タンパク質の少なくとも1種の同起源のパートナーを含む。一部の実施形態において、蛍光タグ(例えば、フルオロフォア)が、第2の分子中、例えば、同起源のパートナーと、LCSまたはIDPまたは必要に応じて任意の他の位置との間に含まれる。
【0086】
[0097]一部の実施形態において、光感受性受容体タンパク質の同起源のパートナーは、光感受性受容体タンパク質の任意の好適な同起源物である。例示的な同起源のパートナーは、LOV2-ssrA、LOV2、Cry2、およびPhyBそれぞれに対する同起源のパートナーとして、ssrB、Zdk、CIB、およびPIFを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態において、第2の分子はIDPを含む。
【0087】
[0098]一部の実施形態において、標的分子の光感受性受容体タンパク質はLOV2-ssrAドメインであり、第2の分子は、全長または切断型低複雑性または天然変性タンパク質と融合した、LOV2-ssrAドメインの同起源のパートナー、sspBを含む。活性状態(例えば、光活性化時)では、光感受性受容体タンパク質は、光感受性受容体タンパク質の同起源のパートナーに結合する。この例では、埋没したssrAペプチドが解放され、曝露されたssrAはその同起源のsspBパートナーと迅速に結合する。同起源のパートナーがLCS/IDRに結合するため、LCS/IDRのクラスター形成が非膜体の形成につながる。
【0088】
フルオロフォア
[0099]一部の実施形態において、標的ペプチドはフルオロフォアと融合している。一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチドと、光感受性受容体および化学物質感受性受容体から選択される少なくとも1種のペプチドとの間で融合したフルオロフォアを含む。一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチドと、光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドとの間で融合したフルオロフォアを含む。一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチドと、光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドの同起源のパートナーとの間で融合したフルオロフォアを含む。
【0089】
[0100]一部の実施形態において、全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合した、光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドの同起源のパートナーを含む第2の分子は、フルオロフォアをさらに含む。一部の実施形態において、フルオロフォアは、光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドの同起源のパートナーと、全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)との間で融合している。一部の実施形態において、全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)と融合した、光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドを含む第2の分子は、フルオロフォアをさらに含む。一部の実施形態において、フルオロフォアは、光感受性受容体、化学物質感受性受容体、光感受性オリゴマー化タンパク質、および非光感受性ダイマー化モジュールからなる群から選択されるペプチドと、全長もしくは切断型低複雑性タンパク質領域または全長もしくは切断型天然変性タンパク質領域(IDR)との間で融合している。一部の実施形態において、第2の分子は、標的分子が含むフルオロフォアとは異なるフルオロフォアを含む。
【0090】
[0101]用語「フルオロフォア」または「蛍光色素」は、本明細書で使用される場合、光励起されると光を再放射することが可能な蛍光化合物を指す。フルオロフォアは通常、いくつかの組み合わされた芳香族基、またはいくつかのπ結合を有する平面もしくは環状分子を含有する。例示的なフルオロフォアは、表1に列挙されるフルオロフォアを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態において、本明細書で記載される標的分子は、表1に列挙されるフルオロフォアのうちのいずれか1つを含む。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
医薬組成物
[0102]本明細書で記載される治療方法における使用のための、薬剤、例えば、本明細書で記載される方法によりスクリーニングされる、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する薬剤を含む医薬組成物または製剤が、医薬品業界で周知の、かつ出版された文献に記載される従来の技法に従って調製可能である。実施形態において、対象を治療するための医薬組成物または製剤は、有効量の本明細書で記載される薬剤を含む。本明細書で記載される薬剤を含む医薬製剤は、医薬的に許容される賦形剤、希釈剤または担体をさらに含んでいてよい。
【0096】
[0103]本発明の医薬組成物または製剤は、必要に応じて、当業者に周知の、または出版された文献に記載される、1種または複数の浸透増幅剤、担体、賦形剤または他の活性もしくは不活性成分を含んでいてよい。一部の実施形態において、リポソームは、立体的に安定化されたリポソーム、例えば、1種または複数の専門化された脂質を含むリポソームも含む。これらの専門化された脂質は、増幅した循環寿命を有するリポソームをもたらす。一部の実施形態において、立体的に安定化されたリポソームは、1種もしくは複数の糖脂質を含むか、または1種もしくは複数の親水性ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)部分により誘導体化されている。一部の実施形態において、界面活性剤が医薬製剤または組成物に含まれる。薬物製品、製剤および乳剤における界面活性剤の使用は、当技術分野で周知である。一部の実施形態において、本発明は、薬剤の効果的な送達をもたらすため、例えば、細胞膜を通っての拡散を助けるため、かつ/または親油性薬物の透過性を増幅させるため、浸透増幅剤を利用する。一部の実施形態において、浸透増幅剤は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、または非キレート化非界面活性剤である。
【0097】
[0104]用語「調製」は、担体としてのカプセル化物質を有する組成物の製剤化を含むことを意図され、他の担体を有するまたは有しない活性な組成物が担体により囲まれ、ゆえに担体と関連したカプセル剤をもたらす。
【0098】
[0105]本明細書で記載される組成物の投与は、エアゾール吸入、注射、摂取、注入、埋め込みまたは移植を含む任意の簡便な方式で実行可能である。投与経路の例は、非経口、例えば、静脈内または動脈内、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜、鼻、肺、眼、胃腸、および直腸投与を含む。代替の投与経路は、腹腔内、関節内、心臓内、大槽内、皮内、病巣内、眼内、胸膜内、くも膜下腔内、子宮内、脳室内、および同種のものを含む。
【0099】
[0106]経口投与については、組成物は、液体または固体剤形として、かつ即時または制御/持続性放出製剤として製剤化可能である。対象による経口摂取に適切な剤形は、散剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、ドラジェ、硬殻および軟殻カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤、乳剤ならびに同種のものを含む。経口組成物は概して、不活性な希釈剤または食用の担体を含む。これらは、ゼラチンカプセル剤に封入されてもよく、錠剤に圧縮されてもよい。経口治療投与の目的では、活性な薬剤は、賦形剤とともに組み込まれてよく、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で使用されてよい。経口組成物は、洗口剤としての使用のために流動性担体を使用して調製されてもよく、流動性担体中の薬剤は、経口的に投与され、口内に含まれ吐き出されるか、または飲み込まれる。医薬的に適合する結合剤、および/またはアジュバント物質が、組成物の一部として含まれていてよい。錠剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤および同種のものは、以下の成分のうちのいずれか、または類似の性質の化合物を含有していてよい:結合剤、例えば結晶セルロース、トラガントガムまたはゼラチン;賦形剤、例えばデンプンまたはラクトース;崩壊遅延剤;粘着防止剤(anti-adherants);カチオン交換樹脂;湿潤剤;抗酸化剤;保存料;崩壊剤、例えばアルギン酸、プリモゲル(Primogel)、またはトウモロコシデンプン;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはステロート(Sterotes);流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;保存料;着色剤;甘味剤、例えば糖、例えばデキストロース、スクロースまたはサッカリン;または香味剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ香味料、これらの各々は合成および/または天然である。
【0100】
[0107]一実施形態において、組成物、例えば、埋め込み剤およびマイクロカプセル化送達機構を含む制御放出製剤は、体からの迅速な排出に対して組成物の成分を保護する担体とともに調製される。生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸が使用されてよい。そのような製剤の調製のための方法は、当業者には明らかである。物質は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁剤(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染した細胞を標的とするリポソームを含む)も、医薬的に許容される担体として使用されてよい。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載される、当業者に公知の方法に従って調製されてよい。
【0101】
[0108]吸入による投与については、組成物は、適切な噴射剤、例えば、二酸化炭素などの気体を含有する圧力容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからのエアゾール噴霧の形態で送達される。全身投与は、経粘膜または経皮手段によるものであってもよい。経粘膜または経皮投与については、透過される障壁にとって好適な浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は概して当技術分野で公知であり、例えば、経粘膜投与については、洗浄剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、経鼻噴霧または坐剤の使用により達成可能である。経皮投与については、活性な薬剤は、概して当技術分野で公知の、軟膏剤、膏薬、ゲル剤、またはクリーム剤、乳剤、液剤、懸濁剤、またはフォーム剤に製剤化される。皮膚および下部組織への薬物の浸透は、例えば、浸透増幅剤を使用して調節可能である。水、有機溶媒、ワックス、油、合成および天然ポリマー、界面活性剤、乳化剤を含む、親油性、親水性、ならびに両親媒性賦形剤;pH調節剤;錯化剤および他の技法、例えばイオン導入の使用、の好適な選択および組合せが、活性成分の皮膚浸透を調節するのに使用されてよい。
【0102】
[0109]組成物は、直腸組成物、例えば坐剤(例えば、従来の坐剤基剤、例えばココアバターおよび他のグリセリルを有する)または停留浣腸として製剤化されてもよい。
[0110]注射使用に適切な医薬組成物は、無菌の注射用溶液または分散体の即時の調製のため、無菌の水溶液(水溶性の場合)または分散体および無菌の散剤を含む。非経口、皮内、または皮下投与に使用される液剤または懸濁剤は、以下の成分を含んでいてよい:無菌の希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝液、例えば酢酸、クエン酸またはリン酸、および浸透圧調節用の薬剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。例えば、注射部位次第で、媒体は、水、合成もしくは植物油、および/または有機共溶媒を含有していてよい。ある特定の例、例えば凍結乾燥製品または濃縮物を用いる例において、非経口製剤は、投与前に再構成または希釈される。pHは、酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムにより調節可能である。組成物の制御または持続性放出をもたらすデポ製剤は、ナノ/マイクロ粒子またはナノ/マイクロもしくは非微粉化結晶の注射用懸濁剤を含んでいてよい。
【0103】
[0111]静脈内投与については、適切な担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。全ての場合において、組成物は無菌でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流動性であるべきである。これは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、微生物、例えば細菌および真菌の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリ(オール)(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレン(polyetheylene)グリコール、および同種のもの)、およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であってよい。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散体の場合は必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用により維持されてよい。
【0104】
[0112]無菌の注射用溶液は、必要に応じて、先に列挙された成分のうちの1種または組合せを有する好適な溶媒に、必要量の組成物を組み込み、その後濾過滅菌することにより調製されてよい。微生物の作用の防止は、各種抗細菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール、および同種のものにより実現可能である。
【0105】
[0113]概して、分散体は、基本的な分散媒および先に列挙された成分からの必要な他の成分を含有する無菌の媒体に、活性な組成物を組み込むことにより調製される。無菌の注射用溶液の調製のための無菌の散剤の場合、好ましい調製方法は、活性成分および任意のさらなる所望の成分の散剤を、それらの予め無菌濾過された液剤から生成する、真空乾燥および凍結乾燥である。多くの場合において、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えばマンニトール(manitol)、ソルビトール、および塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。注射用組成物の吸収の延長は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを、組成物に含めることにより引き起こされうる。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製の、アンプル、使い捨てシリンジまたは複数回用量バイアルに封入されてよい。
【0106】
[0114]医薬的にまたは生理的に許容される担体、希釈剤または賦形剤の例は、消泡剤、抗酸化剤、結合剤、担体または担体物質、分散剤、粘度調節剤、希釈剤、充填剤、滑沢剤、流動促進剤、可塑剤、可溶化剤、安定剤、懸濁化剤、界面活性剤、粘度増幅剤、および湿潤剤を含むが、これらに限定されない。補助的な活性薬剤が組成物に組み込まれてもよい。担体分子は、担体自体が毒性効果を誘導せず、医薬組成物を投与される個体にとって有害な抗体の生成も引き起こさないという条件で、遺伝子、ポリペプチド、抗体、リポソームまたは実際には任意の他の薬剤であってよい。公知の担体のさらなる例は、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸および不活性なウイルス粒子を含む。
【0107】
[0115]担体は、医薬的に許容される塩、例えば鉱酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩)または有機酸の塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩)も含んでいてよい。医薬的に許容される担体は、液体、例えば水、生理食塩水、グリセロール、エタノールまたは補助物質、例えば湿潤または乳化剤、pH緩衝物質および同種のものをさらに含有していてよい。担体は、患者による摂取を助けるため、医薬または栄養補助組成物が、錠剤、丸剤、ドラジェ、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤に製剤化されることを可能にしうる。
【0108】
[0116]「医薬的に適合性の担体物質」は、アラビアゴム、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マルトデキストリン、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、コレステロール、コレステロールエステル、カゼインナトリウム、ダイズレシチン、タウロコール酸、ホスファチジルコリン(phosphotidylcholine)、塩化ナトリウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カリウム、セルロースおよびセルロースコンジュゲート、糖、ステアロイル乳酸ナトリウム、カラギーナン、モノグリセリル、ジグリセリル、アルファー化デンプン、および同種のものを含んでいてよいが、これらに限定されない。各種製剤および薬物送達機構が当技術分野で利用可能であり、医薬的に許容される担体の徹底的な議論が当技術分野で利用可能である。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第19版(Easton,Pa.: Mack Publishing Company、1995); Hoover, John E.、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、Pennsylvania 1975; Liberman, H.A.およびLachman, L.、Eds.、Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker、New York、N.Y.、1980;ならびにPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第17版(Lippincott Williams & Wilkins 1999)を参照のこと。
【0109】
[0117]また、本明細書で記載される医薬組成物の別個の成分は、予め混和されていてもよく、各成分が、成分が最終的に互いに均質な混合物となる限り、治療成分の所望の濃度レベルを実現する目的で、予め決定された投薬量に従って同じ環境に別個に添加されてもよい。さらに、本明細書で記載される医薬組成物は、連続的にまたは断続的に投与または送達されてよい。
【0110】
[0118]哺乳動物に投与される投薬量および頻度(単回または複数回用量)は、各種因子、例えば、哺乳動物が別の疾患に罹っているか否か、およびその投与経路;レシピエントのサイズ、年齢、性別、健康状態、体重、肥満度指数、および食事;治療される疾患の症状の性質および程度、併用治療の種類、治療される疾患由来の合併症または他の健康関連問題次第で変動しうる。確立された投薬量(例えば、頻度および期間)の調節および操作は、十分に当業者の能力の範囲内である。本明細書で開示される治療などの治療は、毎日、1日2回、2週間に1回、1ヶ月に1回または治療上有効な任意の投与で対象に投与されてよい。実施形態において、治療は必要時のみ、例えば、疾患または障害の徴候または症状の出現時である。
【0111】
[0119]本明細書で記載される任意の組成物について、治療有効量は、細胞培養アッセイから最初に決定されてよい。標的濃度は、本明細書で記載されるかまたは当技術分野で公知の方法を使用して測定される、本明細書で記載される方法を実現することが可能な組成物の活性成分の濃度である。当技術分野で周知のように、ヒトにおける使用のための有効量は、動物モデルからも決定可能である。例えば、ヒト用の用量は、動物において有効であると判明した濃度を実現するように製剤化されてよい。ヒトにおける投薬量は、先に記載されるように、有効性をモニタリングすること、および投薬量を上方または下方に調節することにより調節可能である。先に記載される方法および他の方法に基づき、ヒトにおける最大の有効性を実現するように用量を調節することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0112】
[0120]本明細書で記載される医薬組成物の毒性および治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準的な製剤手順により決定可能である。毒性効果と治療効果との間の用量比(LD50/ED50比)は治療指標である。高い治療指標を呈する薬剤が好ましい。薬剤の投薬量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性を有しないED50を含む循環濃度の範囲に入る。毒性副作用を呈する薬剤も使用されてよいが、未感染の細胞に対する潜在的な損傷を最小限にし、それにより副作用を低減させるため、罹患した組織の部位にそのような薬剤を標的にさせる送達機構をデザインするように注意すべきである。
【0113】
[0121]組成物中の化合物の量は、治療有効量でもあるべきである。本明細書で使用される句「治療有効量」は、標的の疾患または状態を治療、改善、または予防するのに必要とされる薬剤の量を指す。「治療有効量」を決定するのに有効な最初の方法は、細胞培養アッセイ(例えば神経細胞を使用する)を実行すること、または動物モデル(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌまたはブタ)を使用することによるものであってよい。用量は、動物モデルにおいて、細胞培養物において決定されるIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分を実現する組成物の濃度)を含む濃度範囲を実現するように定められてよい。そのような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用可能である。組成物にとって治療上有効となる好適な濃度範囲を決定することに加えて、動物モデルは、他の関連情報、例えば最大の有効性を与える好ましい投与経路ももたらしうる。そのような情報は、患者への投与に対する論拠として有用でありうる。「患者」は、本明細書で使用される場合、目的の化合物の投与による治療を受ける対象を指す。
【0114】
[0122]当業者は、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の健康状態、性別、体重および/または年齢を含む対象の全般的な特徴、ならびに存在する他の疾患を含むがこれらに限定されないある特定の因子が、対象を有効に治療するのに必要な投薬量および投与頻度に影響を及ぼしうることを理解するものである。さらに、治療有効量の組成物による対象の治療は、単回治療を含んでいてよく、または好ましくは、一連の治療を含んでいてよい。治療に使用される、本明細書で記載される医薬組成物の有効な投薬量が、特定の治療の過程を経て増加または減少しうることも理解されるものである。投薬量の変化は、本明細書で記載される診断アッセイの結果から生じてよく、かつ明らかとなってよい。治療上有効な投薬量は概して、投与時点での患者の状態によって決まる。正確な量は、慣例的な実験法により決定可能であるが、最終的には、例えば、疾患の徴候について患者をモニタリングすること、およびそれに従って治療を調節することにより、臨床医の判断に委ねられてよい。
【0115】
[0123]実施形態を含む、本明細書で記載される方法および医薬組成物は、1つまたは複数のさらなる治療レジメンまたは薬剤または治療とともに投与されてよく、これらは哺乳動物に共投与されてよい。「共投与すること」により、1つまたは複数のさらなる治療レジメンまたは薬剤または治療、および本明細書で記載される医薬組成物を、1つまたは複数のさらなる治療薬剤の効果を増幅させるため、またはその逆のため、十分に近い時間で投与することが意図される。これに関して、本明細書で記載される医薬組成物は、1つまたは複数のさらなる治療レジメンまたは薬剤または治療と同時に、異なる時点で、または完全に異なる治療スケジュールで(例えば、第1の治療は毎日であってよく、一方でさらなる治療は週に1回)投与されてよい。例えば、実施形態において、第2の治療レジメンまたは薬剤または治療は、本明細書で記載される医薬組成物と同時に、その前に、またはそれに続いて投与される。
【0116】
[0124]投与の容易さおよび投薬量の均一性のため、投薬単位形態として経口または非経口組成物を製剤化することが特に有利である。投薬単位形態は、本明細書で使用される場合、治療される対象にとって単位投薬量として適した、物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果を生じるように算出された、活性な化合物の予め決定された分量を含有する。本明細書で記載される医薬組成物の投薬単位形態の仕様は、組成物の独自の特徴、および実現されるべき特定の治療効果、および対象の治療のためのそのような薬剤を調合する技術分野に固有の制限により規定され、これによって直接決まる。
【0117】
対象の治療
[0125]本明細書で提供される組成物のうちの任意のものが、個体に投与されてよい。「個体」は、「対象」または「患者」と互換可能に使用されてよい。個体は、哺乳動物、例えばヒト、または非ヒト霊長類、げっ歯類、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ロバ、ヤギ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、もしくはヒツジなどの動物であってよい。一部の実施形態において、個体はヒトである。一部の実施形態において、個体は、胎児、胚、または子供である。他の実施形態において、個体は、別の真核生物、例えば植物であってよい。一部の実施形態において、本明細書で提供される組成物は、ex vivoで細胞に投与される。
【0118】
[0126]本明細書で提供される組成物のうちの任意のものが、個体に投与されてよい。「個体」は、「対象」または「患者」と互換可能に使用されてよい。個体は、哺乳動物、例えばヒト、または非ヒト霊長類、げっ歯類、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ロバ、ヤギ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、もしくはヒツジなどの動物であってよい。一部の実施形態において、個体はヒトである。一部の実施形態において、個体は、胎児、胚、または子供である。他の実施形態において、個体は、別の真核生物、例えば植物であってよい。一部の実施形態において、本明細書で提供される組成物は、ex vivoで細胞に投与される。
【0119】
[0127]用語「予防する」、「予防すること」、および「予防」は、本明細書で使用される場合、対象における、本明細書で記載される疾患または障害の病態の発生の減少を指す。予防は完全、例えば、対象における疾患または障害の病態の完全な非存在であってよい。予防は部分的であってもよく、その結果、対象における疾患または障害の病態の発生が、本明細書で記載される治療方法なしで発生するものよりも少ない。
【0120】
[0128]用語「治療する」、「治療すること」および「治療」および同種のものは、概して、所望の薬理的および/または生理的効果を得ることを意味するために本明細書で使用される。効果は、その疾患、症状もしくは状態を予防することもしくは部分的に予防することに関して予防的であってよく、かつ/または疾患、状態、症状もしくは疾患に起因する有害作用の部分的もしくは完全な治癒に関して治療的であってもよい。用語「治療」は、本明細書で使用される場合、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療を包含し、(a)疾患が、疾患に罹りやすいがこれを有するとはまだ診断されていない対象において発生するのを予防すること、(b)疾患を阻害すること、すなわちその進行を停止させること、または(c)疾患を緩和すること、すなわち疾患および/またはその症状または状態を軽減させることまたは改善することを含む。用語「予防法」は、疾患または状態の予防または部分的な予防のために取られる1つまたは複数の手段を指すために本明細書で使用される。
【0121】
[0129]「疾患または障害を治療することまたは予防すること」により、障害に関連する状態または徴候または症状のうちのいずれかを、それが発生する前または後に改善することが意図される。同等の未治療の対照と比較して、予防のそのような低減または度合は、任意の標準的な技法により測定して、少なくとも3%、5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、または100%である。疾患または障害のために治療されている患者は、医師がそのような状態を有すると診断した患者である。診断は任意の適切な手段によってよい。診断およびモニタリングは、例えば、生物試料における病的細胞の存在を検出すること(例えば、組織生検、血液検査、または尿検査)、生物試料における障害の代替マーカーのレベルを検出すること、または障害に関連する症状を検出することを伴っていてよい。障害の進行が予防されている患者は、そのような診断を受けている可能性も、受けていない可能性もある。当業者は、これらの患者が、先に記載されたものと同じ標準的な検査を受けたことがある可能性があり、または、検査なしに、1つもしくは複数のリスク因子の存在(例えば、家族歴または遺伝的素因)によりリスクが高いと同定されている可能性もあることを理解するものである。
【0122】
[0130]一部の実施形態において、阻害活性が本明細書で記載されるように同定される、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する薬剤、または本明細書で記載される薬剤を含む医薬組成物により治療される、対象における例示的な疾患または障害は、がん、炎症性疾患、または神経疾患を含むが、これらに限定されない。
【0123】
[0131]例えば、がんの例は、悪性の、前悪性のまたは良性のがんを含むが、これらに限定されない。治療されるがんは、例えば、固形腫瘍、リンパ腫または白血病を含む。一実施形態において、がんは、例えば、脳腫瘍(例えば、例えば膠芽腫、星細胞種、髄膜種、髄芽腫または末梢性神経外胚葉性腫瘍などの、悪性の、前悪性のまたは良性の脳腫瘍)、癌(例えば、胆嚢癌、気管支癌、基底細胞癌、腺癌、扁平細胞癌、小細胞癌、大細胞未分化癌、腺腫、嚢胞腺腫、など)、基底細胞腫、奇形腫、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、セミノーマ、肉腫(例えば、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、頭蓋喉頭腫(craniopharyngeoma)、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫(leimyosarcoma)、アスキン腫瘍、リンパ肉腫、神経肉腫、カポジ肉腫、皮膚線維肉腫、血管肉腫、など)、形質細胞腫、頭頸部腫瘍(例えば、口腔、喉頭、上咽頭、食道、など)、肝腫瘍、腎腫瘍、腎細胞腫瘍、扁平細胞癌、子宮腫瘍、骨腫瘍、前立腺腫瘍、Her2-および/またはER-および/またはPR-である乳房腫瘍を含むがこれらに限定されない乳房腫瘍、膀胱腫瘍、膵臓腫瘍、子宮内膜腫瘍、扁平細胞癌、胃腫瘍、神経膠腫、結腸直腸腫瘍、精巣腫瘍、大腸腫瘍、直腸腫瘍、卵巣腫瘍、頸部腫瘍、眼腫瘍、中枢神経系腫瘍(例えば、原発CNSリンパ腫、脊髄軸腫瘍(spinal axis tumor)、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、など)、甲状腺腫瘍、肺腫瘍(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)または小細胞肺がん)、白血病またはリンパ腫(例えば、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚末梢性T細胞リンパ腫、ヒトT細胞リンパ球向性(lymphotrophic)ウイルス(HTLV)に関連するリンパ腫、例えば成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、B細胞リンパ腫、急性非リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、成人T細胞白血病リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、または肝細胞癌、など)、多発性骨髄腫、皮膚腫瘍(例えば、基底細胞癌、扁平細胞癌、黒色腫、例えば悪性の黒色腫、皮膚黒色腫または眼内黒色腫、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞癌またはカポジ肉腫)、婦人科腫瘍(例えば、子宮肉腫、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰部癌、など)、ホジキン病、小腸がん、内分泌系がん(例えば、甲状腺、副甲状腺または副腎のがんなど)、中皮腫、尿道がん、陰茎がん、ゴーリン症候群に関連する腫瘍(例えば、髄芽腫、髄膜種、など)、起源不明の腫瘍、または任意の箇所への転移であってよい。一部の実施形態において、がんは、肺腫瘍、乳房腫瘍、大腸腫瘍、結腸直腸腫瘍、頭頸部腫瘍、肝腫瘍、前立腺腫瘍、神経膠腫、多形膠芽腫、卵巣腫瘍または甲状腺腫瘍、または任意の箇所への転移である。一部の他の実施形態において、がんは、子宮内膜腫瘍、膀胱腫瘍、多発性骨髄腫、黒色腫、腎臓腫瘍、肉腫、頸部腫瘍、白血病、および神経芽腫である。
【0124】
[0132]一部の実施形態において、炎症性障害は、肥満、メタボリックシンドローム、免疫障害、新生物、感染障害、化学薬剤、炎症性腸障害、再灌流傷害、壊死、またはそれらの組合せから部分的にまたは完全に生じる。一部の実施形態において、炎症性障害は、自己免疫障害、アレルギー、白血球異常、移植片対宿主病、組織移植拒絶反応、またはそれらの組合せである。一部の実施形態において、炎症性障害は、細菌感染、原虫感染、原虫感染、ウイルス感染、真菌感染、またはそれらの組合せである。一部の実施形態において、炎症性障害は、急性散在性脳脊髄炎;アジソン病;強直性脊椎炎;抗リン脂質抗体症候群;自己免疫性溶血性貧血;自己免疫性肝炎;自己免疫性内耳疾患;類天疱瘡;シャーガス病;慢性閉塞性肺疾患;セリアック病;皮膚筋炎;1型糖尿病;2型糖尿病;子宮内膜症;グッドパスチャー症候群;グレーブス病;ギラン・バレー症候群;橋本病;特発性血小板減少性紫斑病;間質性膀胱炎;全身性エリテマトーデス(SLE);メタボリックシンドローム、多発性硬化症;重症筋無力症;心筋炎、ナルコレプシー;肥満;尋常性天疱瘡;悪性貧血;多発性筋炎;原発性胆汁性肝硬変;関節リウマチ;統合失調症;強皮症;シェーグレン症候群;血管炎;白斑;ウェゲナー肉芽腫症;アレルギー性鼻炎;前立腺がん;非小細胞肺癌;卵巣がん;乳がん;黒色腫;胃がん;結腸直腸がん;脳がん;転移性骨障害;膵臓がん;リンパ腫;鼻茸;胃腸がん;潰瘍性大腸炎;クローン障害;コラーゲン性大腸炎;リンパ球性大腸炎;虚血性大腸炎;空置性大腸炎;ベーチェット症候群;感染性大腸炎;不確定の大腸炎;炎症性肝障害、エンドトキシンショック、リウマチ性脊椎炎、強直性脊椎炎、痛風性関節炎、リウマチ性多発筋痛症、アルツハイマー障害、パーキンソン障害、てんかん、AIDS認知症、喘息、成人呼吸窮迫症候群、気管支炎、嚢胞性線維症、急性白血球媒介性肺傷害、遠位直腸炎、ウェゲナー肉芽腫症、線維筋痛症、気管支炎、嚢胞性線維症、ぶどう膜炎、結膜炎、乾癬、湿疹、皮膚炎、平滑筋増殖障害、髄膜炎、帯状疱疹、脳炎、腎炎、結核、網膜炎、アトピー性皮膚炎、膵炎、歯周歯肉炎(Periodontal gingivitis)、凝固壊死、液化壊死、フィブリノイド壊死、超急性移植拒絶反応、急性移植拒絶反応、慢性移植拒絶反応、急性移植片対宿主病、慢性移植片対宿主病、腹部大動脈瘤(AAA);またはそれらの組合せである。
【0125】
[0133]一部の実施形態において、神経疾患の例は、アースコグ症候群、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ルー・ゲーリック病)、失語症、ベル麻痺、クロイツフェルト・ヤコブ病、脳血管疾患、コルネリア・デ・ランゲ症候群、てんかんおよび他の重症の発作障害、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、脆弱X症候群、イトウの無色性色素失調症、ジュベール症候群、ケネディ病、マシャド・ジョセフ病、片頭痛、メビウス症候群、筋強直性ジストロフィー、神経筋傷害、ギラン・バレー、筋ジストロフィー、神経-腫瘍障害、神経線維腫症、神経免疫障害、多発性硬化症、疼痛、小児神経学、自閉症、ディスレクシア、神経耳科学障害、メニエール病、パーキンソン病および運動障害、フェニルケトン尿症、ルビンシュタイン・テイビ症候群、睡眠障害、脊髄小脳失調症1型、スミス・レムリ・オピッツ症候群、ソトス症候群、球脊髄性萎縮症(spinal bulbar atrophy)、優性小脳失調1型、トゥレット症候群、結節性硬化症ならびにウィリアム症候群を含むが、これらに限定されない。
【0126】
[0134]一部の実施形態において、細胞の部分領域での相分離により推進される非膜体の形成を低減させるかまたは阻害する薬剤をスクリーニングする方法が企図される。一部の実施形態において、細胞の部分領域での相分離により推進される非膜体の数を低減させるかまたは阻害する薬剤をスクリーニングする方法も企図される。一部の実施形態において、薬剤は外因性の薬剤である。一部の実施形態において、非膜体は、核小体、カハール体、ストレス顆粒、Pボディ、スプライソソーム、またはそれらの組合せである。一部の実施形態において、薬剤は低分子化合物である。一部の実施形態において、低分子化合物は有機化合物または無機化合物である。一部の実施形態において、薬剤は、核酸、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはそれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態において、ポリペプチドは抗体またはその機能性断片である。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、アプタマー、RNAベースの化合物、アンチセンス核酸、PNA、またはそれらの組合せである。一部の実施形態において、RNAベースの化合物は、低分子干渉RNA、マイクロRNA、低分子ヘアピンRNA、またはそれらの組合せである。一部の実施形態において、薬剤は治療薬剤である。一部の実施形態において、薬剤、および医薬的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体を含む医薬組成物も企図される。一部の実施形態において、医薬組成物を調製する方法も企図される。一部の実施形態において、疾患または状態を治療することを必要とする対象における、疾患または状態を治療する方法であって、医薬組成物を投与するステップを含み、投与するステップが、疾患または状態に関連する徴候または症状を低減させ、それにより対象における疾患または状態を治療する、方法が本明細書で記載される。一部の実施形態において、疾患または状態は、がん、神経変性障害、または炎症性障害である。一部の実施形態において、対象はヒトであり、病状にみられるタンパク質相互作用を調節することが可能な低分子を発見するためにLLPSを使用する。
【0127】
細胞相互作用の調節
[0135]一部の実施形態において、対象の細胞における標的ペプチドと生体分子との間の相互作用を調節する方法が本明細書で記載され、細胞は標的分子を含む。一部の実施形態において、標的分子は標的ペプチドを含む。一部の実施形態において、方法は、生体分子から標的ペプチドを解放するように、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する薬剤と細胞を接触させることを含む。一部の実施形態において、方法は、解放された標的分子を細胞内の非膜体に組み込むことを含む。一部の実施形態において、解放された標的分子は、細胞の部分領域で相分離を受ける。一部の実施形態において、細胞の部分領域は、標的ペプチドが生体分子に結合する細胞の部分領域と離れている。一部の実施形態において、標的ペプチドと生体分子との間の相互作用は、標的分子を含む非膜体を検出することにより調節される。一部の実施形態において、非膜体は標的分子を含む。
【0128】
[0136]一部の実施形態において、対象の細胞における標的分子の細胞内局在を調節する方法が本明細書で記載される。一部の実施形態において、標的分子は標的ペプチドを含む。一部の実施形態において、方法は、生体分子から標的ペプチドを解放するように、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する薬剤と細胞を接触させることを含む。一部の実施形態において、方法は、解放された標的分子を非膜体に組み込むことを含む。一部の実施形態において、解放された標的分子は、細胞の部分領域で相分離を受ける。一部の実施形態において、細胞の部分領域は、標的ペプチドが生体分子に結合する部分領域と離れておりそれと異なっている。一部の実施形態において、標的ペプチドと生体分子との間の相互作用は、標的分子を含む非膜体を検出することにより調節される。一部の実施形態において、非膜体は標的分子を含む。
【0129】
[0137]一部の実施形態において、対象における治療レジメンの有効性を決定する方法が本明細書で記載される。一部の実施形態において、方法は、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する薬剤により対象を治療することを含む。一部の実施形態において、方法は、対象由来の細胞において非膜体を形成させることを含む。一部の実施形態において、細胞は標的分子を含む。一部の実施形態において、標的分子は標的ペプチドを含む。一部の実施形態において、標的ペプチドが生体分子から解放され、標的ペプチドが生体分子に結合する部分領域と離れている細胞の部分領域で相分離を受けると、標的分子は非膜体に組み込まれる。一部の実施形態において、方法は、薬剤の非存在下での非膜体の強度またはサイズと比較した、非膜体の強度またはサイズの変化を検出することにより、治療レジメンの有効性を決定することを含む。
【0130】
[0138]一部の実施形態において、標的ペプチドはフルオロフォアを含み、非膜体を検出することは、蛍光を使用して測定される。一部の実施形態において、標的ペプチドはフルオロフォアと融合している。一部の実施形態において、フルオロフォアはmCherryである。一部の実施形態において、フルオロフォアは緑色蛍光タンパク質(GFP)である。一部の実施形態において、蛍光を測定することは、蛍光の強度を検出すること、非膜体の数を定量化すること、またはそれらの組合せを含む。一部の実施形態において、薬剤存在下での非膜体の蛍光の強度は、薬剤の非存在下での非膜体の蛍光の強度と比較して、少なくとも1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、2000%、3000%、4000%、5000%、6000%、7000%、8000%、9000%、10000%、20000%、30000%、40000%、50000%、60000%、70000%、80000%、90000%、または100000%大きい。
【0131】
[0139]一部の実施形態において、標的ペプチドは天然変性タンパク質(IDP)であるか、または標的ペプチドは少なくとも1種の天然変性領域(IDR)を含む(例えば、
図1Aおよび
図1C)。一部の実施形態において、標的分子は、相分離を増強させるため、フルオロフォアまたは標的ペプチドのいずれかと融合したさらなるIDRを含む。一部の実施形態において、さらなるIDRは、標的ペプチドのIDRと同じである。一部の実施形態において、さらなるIDRは、標的ペプチドのIDRとは異なる。一部の実施形態において、標的ペプチドはIDPではなく、標的ペプチドはIDRも含まない。
【0132】
[0140]一部の実施形態において、非膜体は、核小体、カハール体、ストレス顆粒、Pボディ、スプライソソーム、またはそれらの組合せであってよい。
[0141]一部の実施形態において、生体分子は、タンパク質、タンパク質ドメイン、DNA、RNA、タンパク質を含む複合体、またはそれらの組合せである。一部の実施形態において、薬剤は低分子である。一部の実施形態において、低分子は有機分子であってよい。一部の実施形態において、低分子は無機分子であってよい。一部の実施形態において、薬剤は、核酸、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはそれらの任意の組合せであってよい。一部の実施形態において、ポリペプチドは、抗体またはその機能性断片であってよい。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、アプタマー、RNAベースの化合物、アンチセンス核酸、PNA、またはそれらの組合せであってよい。一部の実施形態において、RNAベースの化合物は、低分子干渉RNA、マイクロRNA、低分子ヘアピンRNA、またはそれらの組合せである。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドはCRISPRガイドRNAである。一部の実施形態において、CRISPRガイドRNAはウイルスベクターによりコードされる。一部の実施形態において、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターであってよい。
【0133】
[0142]一部の実施形態において、CRISPRガイドRNAは、Cas9、またはCas9をコードするヌクレオチド配列を含むベクターと組み合わせて導入されてよい。一部の実施形態において、Cas9は酵素的に失活したCas9(例えば、dCas9)である。
【0134】
[0143]一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチドと融合した全長複雑性領域をさらに含んでいてよい。一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチドと融合した切断型低複雑性領域をさらに含んでいてよい。一部の実施形態において、標的分子は、標的ペプチドと融合したさらなる全長または切断型IDRをさらに含んでいてよい。一部の実施形態において、さらなる全長または切断型IDRは、標的タンパク質とは異なる。一部の実施形態において、さらなる全長または切断型IDRは、標的タンパク質と同じである。一部の実施形態において、IDRは、FUSの少なくとも一部、Ddx4の少なくとも一部、hnRNPAlの少なくとも一部、BRD4の少なくとも一部、TAF15の少なくとも一部、SRSF2 IDRの少なくとも一部、SART1の少なくとも一部、HSF1の少なくとも一部、RNPS1の少なくとも一部、またはそれらの組合せである。一部の実施形態において、FUSの一部はFUSのN末端IDR(例えば、FUSn)である。
【0135】
[0144]一部の実施形態において、標的分子は、本明細書での方法において、他の箇所で記載されるように相分離を受けてよい。
[0145]一部の実施形態において、部分領域または細胞内領域は、細胞内の小器官、例えば、核、ミトコンドリア、ゴルジ装置、リボソーム、リソソーム、小胞体、微小管、またはそれらの組合せであってよい。一部の実施形態において、部分領域または細胞内領域は、細胞膜の一部、核の一部、ミトコンドリアの一部、ゴルジ装置の一部、リボソームの一部、リソソームの一部、小胞体の一部、微小管の一部、またはそれらの組合せであってよい。
【0136】
[0146]一部の実施形態において、対象は、哺乳動物、例えばヒト、または非ヒト霊長類、げっ歯類、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ロバ、ヤギ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、またはヒツジなどの動物であってよい。一部の実施形態において、対象はヒトである。他の実施形態において、対象は別の真核生物、例えば植物であってよい。
【0137】
[0147]用語「解放する」、または「解放される」は、本明細書で使用される場合、生体分子と標的ペプチドとの間の結合または相互作用の切断を指す。一部の実施形態において、生体分子は、分子間または分子内の、広範な種類の電磁相互作用を介して標的ペプチドに結合するかまたはこれと相互作用し、電磁相互作用は、静電相互作用、例えばイオン相互作用、水素結合およびハロゲン結合、ファンデルワールス力、例えば双極子間相互作用、双極子-誘起双極子相互作用およびロンドン分散力、π-効果、例えばπ-π相互作用、カチオン-πおよびアニオン-π相互作用および極性-π相互作用、ならびに疎水効果を含むが、これらに限定されない。用語「解放する」、または「解放される」は、生体分子と標的ペプチドとの間の前述の相互作用のうちの任意の1つまたは複数を弱めるかまたは切断することを指す。
【0138】
キット
[0148]本開示の一態様は、本明細書で記載される、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法に使用されるキットに関する。キットは、本明細書で記載される、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する外因性の薬剤の阻害活性を同定する方法に使用される1種または複数のさらなる薬剤をさらに含んでいてよい。
【0139】
[0149]ある特定の実施形態において、本明細書で記載される1つまたは複数の方法とともに使用するためのキットおよび製品も本明細書で開示される。そのようなキットは、1つまたは複数の容器、例えばバイアル、管、および同種のものを収容するために区画された支持体、包装、または容器を含み、容器の各々は、本明細書で記載される方法において使用される別個の要素のうちの1つを含む。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管を含む。一実施形態において、容器は各種物質、例えばガラスまたはプラスチックから形成される。
【0140】
[0150]本明細書で提供される製品は、包装材を含有する。医薬包装材の例は、選択される製剤ならびに所期の投与および治療様式にとって適切な、ブリスターパック、ボトル、管、袋、容器、ボトル、および任意の包装材を含むが、これらに限定されない。そのようなキットは、本明細書で記載される方法におけるその使用に関連する特定的な記載またはラベルまたは説明書きを任意で含む。
【0141】
[0151]キットは通常、内容物および/または使用についての説明書きを列挙するラベル、ならびに使用についての説明書きを有する添付文書を含む。一連の説明書きも通常含まれる。
【0142】
[0152]実施形態において、ラベルは容器に付属しているかまたは関連付けられている。一実施形態において、ラベルを形成する文字、数字または他の字が容器自体に取り付けられているか、成形されているかまたは彫り込まれていれば、ラベルは容器に付属している。ラベルが、例えば添付文書として、容器を保持する入れ物または支持体内に存在すれば、ラベルは容器に関連付けられている。一実施形態において、ラベルは、内容物が特定の用途に使用されるべきであることを示すために使用される。ラベルは、本明細書で記載される方法などにおける、内容物の使用についての指示も示す。
【0143】
[0153]本発明は、以下の実施例によってより具体的に例示される。しかし、本発明がこれらの実施例によって決して制限されないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0144】
実施例1:
[0154]現在、疾患に関連する生体分子相互作用についての阻害剤の同定のためのアッセイは、ほとんどの場合in vitroで実施され、長期のアッセイ開発および検証を伴う成分の抽出および/または精製による。天然の環境における完全な生化学経路の存在下での相互作用を標的とするのに望ましいin celluloスクリーニングを実施するため、アッセイは通常何年にもわたる開発および検証を必要とする。何年にもわたる開発および検証の必要性を克服する技法の例示的な実施形態が、以下に記載される。
【0145】
[0155]標的タンパク質の結合状態の変化についての陽性のリードアウトとして相分離を使用することは、視覚的に確認可能であり顕微鏡法によりさらに定量化されうる即時のシグナルをもたらす。この技法は、疾患標的生体分子相互作用の阻害剤の存在をin celluloで決定することを促進し、標的相互作用は、修飾ヒストンに、直接DNAに、または他の生体分子/複合体に結合したタンパク質ドメインを含んでいてよい。所望の標的相互作用の有効な阻害剤の存在は、共焦点顕微鏡において測定可能な可視のリードアウトにより示される。リードアウトは、低分子ライブラリからヒットを同定するための、高いz値(例えば、0.5超)を有する強力なハイスループットスクリーニング、または場合により遺伝子(CRISPR)スクリーニングまたは生物学を伴うスクリーニングを使用することに適している。
【0146】
[0156]開示されるアッセイは、細胞内で天然に相分離するタンパク質標的に、または相分離する「タグ」を標的に付加することにより、適用可能である。相分離する「タグ」は、系を相分離させることが予期される任意の配列であってよい(例えば天然変性領域(IDR))。概念実証には、各潜在的な標的について単一の実験が必要であり、実証が確立されると、相分離シグナルの性質から、アッセイには、高いz値を有する強力なスクリーニングプラットフォームへの移行のための最適化がほとんど必要ない。このアッセイは、相分離の増大の程度に応じて、阻害の程度に対して感受性である。
【0147】
[0157]開示される技法の実施形態は、阻害される結合部位を呈する「標的」分子の特徴に基づく。標的タンパク質は、好ましくは、細胞ゲノムへのウイルス組み込みによるか、または以下の筋書きにおけるCRISPR細胞株により、組織培養物において発現される。
【0148】
[0158]標的タンパク質が「天然に」相分離する傾向にある場合、標的タンパク質は、好適なレベルのmChなどのフルオロフォアとの融合タンパク質として、細胞において発現されうる。相分離の陽性のリードアウトは、潜在的な阻害剤化合物の存在下で、顕微鏡法により観察されうる。相分離の程度は、各種濃度のタンパク質を発現する細胞の集団を解析し、集団全体に対する相分離細胞の比を決定することにより定量化されうる。
【0149】
[0159]上記の筋書きにおける相分離は、optoDroplet、Corelet、またはCasDrop系(例えば、US15/618,345;US15/618,361;およびWO2019/147611A2を参照のこと、これらの全てがそれらの全体にわたって参照により本明細書に組み込まれる)により増大されうる。例えば、OptoDroplet系は、青色光依存性高次オリゴマー化タンパク質Cry2をDDX4のIDRに融合させることにより、細胞内相分離を制御するために開発された。一部の実施形態において、OptoDroplet系を使用して、標的タンパク質が、フルオロフォア、光感受性タンパク質(例えばCry2)、および低複雑性配列(LCS)と融合される(例えば、
図1Cを参照のこと)。別の実施例では、バイオミメティクスCorelet系が24merフェリチンコアからなり、各フェリチンサブユニットは光遺伝学的ヘテロダイマー化ドメインと融合しており、これが光により粒子の有効な結合価を調整するのに使用可能である。
【0150】
[0160]このことが、結合した標的タンパク質と、遊離して相分離に寄与する標的タンパク質との間の対比に対する、非常に感受性が高く増幅されたシグナルを可能にする。オリゴマー化は、光感受性タンパク質にとって好適な波長の光により開始され、光は一定期間(例えば5分)点灯され、相分離がリード阻害剤化合物の存在下で増幅される。上記のように、相分離について陽性の細胞は、顕微鏡法により同定される。
【0151】
[0161]「天然に」相分離する能力を有しない標的タンパク質では、例えばIDRタグを有するタンパク質標的をクローニングし、次いで任意でこれらを上記のoptoDroplet、Corelet、またはCasDrop系により増大させることにより、タンパク質融合物が発現可能となった。
【0152】
[0162]この技法は、タンパク質ドメインとクロマチンとの間の相互作用(例えば修飾ヒストンに結合するタンパク質ドメイン、例えばヒストンのアセチル化リジンに結合するBRD4ブロモドメイン)、またはDNAに直接結合するタンパク質ドメイン、例えば遺伝子リプレッサーにおけるベーシックヘリックスループヘリックスドメインなど、および/または小胞体、ゴルジ装置などの表面もしくはその内部における、タンパク質ドメインと他の生体分子/複合体との間の相互作用、例えば、細胞表面受容体タンパク質、または他のタンパク質またはRNAと相互作用するタンパク質ドメインを妨害する薬物を同定するのに使用可能である。
【0153】
[0163]これらの特定の相互作用を妨害する薬物(例えば、低分子のライブラリ由来)の存在下で、タンパク質は、その相互作用パートナーの位置で隔離から遊離される。遊離されると、タンパク質が、optoDroplet、Corelet、またはCasDrop系を使用することにより増大可能な、相分離する傾向を有する場合、この相分離は、相互作用を妨害するための薬物の有効性についての強力なリードアウトとなる。
【0154】
実施例2:
[0164]この技法の例が以下のように記載される。標的タンパク質は、2つのブロモドメインを介してアセチル化ヒストンマークに結合するBRD4と同定された。化合物+JQ1は、IC50 77/33nM BRD4(l/2)で、2つのブロモドメインに結合することによりこの相互作用を阻害することが公知である。
【0155】
[0165]BRD4は「天然に」分離する傾向があるタンパク質のカテゴリーに入るが、この実施例では、光遺伝学的成分により増大される手法を利用した。アッセイ成分:sspB-mCh-NLS-BRD4およびiLID-GFP-sspB(Corelet系)を(一過性に)発現するU2OS(およびHEK293)細胞を調製した。ポリクローナル細胞集団を、96ウェルプレートのウェルに移した。薬物投与された細胞集団を調製するため、+JQ1を1μM濃度で添加し、37℃で90分間インキュベートした。561nmでmChフルオロフォアを励起することによって、共焦点顕微鏡法によりBRD4シグナルを測定した。薬物投与されたおよび薬物投与されていない細胞集団を、Nikon Al共焦点顕微鏡において、488nmの連続的なレーザー光でcorelet系を活性化することにより比較した。活性化されると、薬物投与された集団は肉眼での相分離を呈し、ヒストンマークでの隔離からのBRD4の遊離を示した。薬物投与されていない集団は、隔離されたままであった。+JQ1によるBRD4阻害の程度についての陽性のリードアウトとして相分離の程度を使用して、IC50曲線を構築し、文献値とほぼ一致してIC50 78nMを測定した。
【0156】
[0166]ブロモドメイン含有タンパク質4、CAP、HUNK1、HUNKI、MCAP、およびブロモドメイン含有4としても知られる「BRD4」は、本明細書で呼ばれる場合、BRD4タンパク質の組換えもしくは天然に存在する形態、またはそれらの、BRD4(例えば、BRD4と比較して少なくとも40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%以内の活性)を維持するバリアントもしくはホモログのうちのいずれかを含む。一部の態様において、バリアントまたはホモログは、天然に存在するBRD4タンパク質と比較して、配列全体または配列の一部(例えば、50、100、150または200個の連続的なアミノ酸部分)にわたって、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。一部の実施形態において、BRD4タンパク質は、UniProt参照番号O60885により同定されるタンパク質、またはそれと実質的な同一性を有するバリアントもしくはホモログと実質的に同一である。一部の実施形態において、BRD4はヒトBRD4タンパク質である。
【0157】
実施例3:
[0167]標的分子、または標的分子および第2の分子を含む細胞の生成
[0168]DNA構築物:標的分子および/または第2の分子をコードするDNA断片が、レンチウイルス主鎖に挿入される。生じた構築物は、例えば配列決定により確認される。これらの構築物が生細胞に導入される。
【0158】
[0169]細胞培養物:数種の細胞、例えば、NIH3T3、HEK293、HEK293T、およびU2OS細胞が、ダルベッコ変法イーグル培地、10%ウシ胎児血清、および10U/mLペニシリン-ストレプトマイシンからなる増殖培地において培養され、加湿インキュベーター内で37℃および5%CO2でインキュベートされる。
【0159】
[0170]レンチウイルス形質導入:標的分子、または標的分子および第2の分子を発現する安定な細胞を生成するため、例えば、FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega)を使用して、製造業者のプロトコルに従って、移行プラスミド、pCMV-dR8.91、およびpMD2.G(9:8:1、質量比)を、マルチウェル、例えば6ウェル、プレートにおいておよそ70%培養密度まで増殖させたHEK293T細胞にコトランスフェクトすることによって、レンチウイルスが生成される。合計、例えばプラスミド3ngおよび、例えばトランスフェクション試薬9μLが各ウェルに送達される。代わりに、例えば、FuGENE(Promega)を使用して、製造業者の推奨するプロトコルに従って、トランスフェクションの1日前にマルチウェル、例えば6ウェル、ディッシュに播種された293T細胞に、レンチウイルス構築物がトランスフェクトされる。2日後、ウイルス粒子を含有する上清が採取され、細胞片を除去するために0.45μmフィルターで濾過される。採取された上清は、速やかに形質導入に使用されるか、Lenti-X濃縮試薬(Takara)を使用して10倍に濃縮されるか、または一定分量で-80℃で保存される。レンチウイルスNIH3T3またはHEK293Tについては、細胞がマルチウェル、例えば12ウェル、プレートにおいて10~20%培養密度まで増殖され、濾過されたウイルス上清100~1000pLが細胞に添加される。ウイルスを含有する培地は、感染から24時間後に新しい増殖培地に交換される。代わりに、マルチウェル、例えば6ウェル、ディッシュにおよそ70%培養密度で播種されたNIH 3T3細胞が、濾過されたウイルス上清0.4~1mlを細胞培地に直接添加することにより感染される。ウイルス培地は、感染から24時間後に通常の増殖培地に交換される。感染した細胞は通常、感染から72時間以上後に画像化される。
【0160】
[0171]細胞株発生:標的分子、または標的分子および第2の分子を発現する細胞株を樹立するため、連続レンチウイルス形質導入が、必要であれば蛍光励起細胞分取(FACS)とともに実施される。野生型NIH3T3またはHEK293T細胞は、プロモーターに作動可能に結合した、標的分子をコードする配列を含有するレンチウイルス、それぞれプロモーターに作動可能に結合した、標的分子をコードする配列、および第2の分子をコードする配列を含有するレンチウイルス、またはプロモーターに作動可能に結合した、第2の分子をコードする配列を含有する第2のレンチウイルスとともに、プロモーターに作動可能に結合した、標的分子をコードする配列を含有するレンチウイルスにより形質導入される。次いで、この形質導入されたNIH3T3またはHEK293T細胞株が、他の分子を発現するためのレンチウイルス形質導入により、他の細胞株を発生させるのに使用される。形質導入されたHEK293T細胞株において、標的分子、または標的分子および第2の分子を発現する細胞集団を豊富にするため、広範な蛍光を発現する細胞についてのゲーティングにより、FACSAria Fusionフローサイトメーターで、細胞が分取される。ポリクローナル細胞プールが増殖培地において回収され、播種される。
【0161】
[0172]一過性トランスフェクション:細胞、例えば、HEK293、HEK293T、およびU2OS細胞が、マルチウェル、例えば12ウェル、プレートにおいておよそ70%培養密度まで増殖され、その後例えば、リポフェクタミン3000を使用して、製造業者のプロトコルに従って、プラスミドDNAによりトランスフェクトされる。トランスフェクション試薬およびDNAプラスミドは、OPTI-MEM(Gibco)で希釈される。各ウェルは、合計1ngのDNAを含有するトランスフェクション混合物100μLを投与される。トランスフェクション混合物は、トランスフェクションから6~24時間後に除去される。一過性にトランスフェクトされた細胞は通常、トランスフェクション後24~48時間の間に画像化される。
【0162】
[0173]生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する薬剤のスクリーニング
[0174]アッセイ成分、すなわち、標的分子、または標的分子および第2の分子を発現する細胞、例えば、U2OS細胞またはHEK293細胞が調製される。対照分子(非標的分子)を発現する対照細胞も調製される。細胞はマルチウェル、例えば96ウェル、プレートのウェルに移される。生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する阻害活性についてスクリーニングされる薬剤のライブラリが、細胞を含有するマルチウェルプレートの各ウェルに添加される。細胞は一定期間、例えば90分間、37℃でインキュベートされる。標的分子および第2の分子を発現する細胞については、細胞は、相分離を推進するために所定の波長の光、例えば青色光に曝露される。対応する波長の光を使用してフルオロフォアを励起することによって、共焦点顕微鏡法により蛍光が測定される。標的分子、または標的分子および第2の分子を発現する、薬剤で処理された細胞、標的分子、または標的分子および第2の分子を発現する、未処理の細胞、対照分子を発現する、薬剤で処理された細胞、対照分子を発現する、未処理の細胞が、Nikon Al共焦点顕微鏡において、対応する波長の連続的なレーザー光でフルオロフォアを活性化することにより比較される。活性化されると、標的分子、または標的分子および第2の分子を発現する、生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する阻害活性を有する薬剤で処理された細胞は、肉眼での相分離、すなわち、標的分子のクラスター集合を呈することが予期される。比較すれば、標的分子、または標的分子および第2の分子を発現する、未処理の細胞、対照分子を発現する、薬剤で処理された細胞、対照分子を発現する、未処理の細胞は、活性化されても肉眼での相分離を呈しないことが予期される。生体分子に対する標的ペプチドの結合を妨害する選択された薬剤の阻害活性についての陽性のリードアウトとして相分離の程度を使用して、IC50IC50が測定される。
【0163】
[0175]免疫細胞化学:標的分子、または標的分子および第2の分子を発現するHEK293細胞が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中3.5%パラホルムアルデヒド(PFA)を使用して15分間固定される。細胞はPBSで2回洗浄され、PBS中0.25% Triton-Xで20分間透過処理される。非特異的エピトープが、ブロッキング緩衝液(PBS、0.1% Triton-X、10%正常ヤギ血清)を使用して1時間ブロッキングされる。一次免疫染色が、ブロッキング緩衝液中で、特定のタンパク質に対する一次抗体により4℃で一晩実施される。次いで細胞が、PBS中0.1%Triton-Xで3回洗浄される。二次免疫染色が、ブロッキング緩衝液中で、二次抗体、例えば、AlexaFluor546ヤギ抗ウサギまたはAlexaFluor546ヤギ抗マウスにより室温で90分間実施される。細胞が、PBS中0.1%Triton-Xで3回洗浄される。DNAが2pg/mLヘキスト色素で可視化され、PBS中で15分間染色される。最後に、画像化の前にヘキストが除去され、PBSに交換される。一次染色の特異性を確実にするために、一次抗体不含の対照が実施される。
【0164】
[0176]顕微鏡法:画像は全て、Nikon Alレーザー走査型共焦点顕微鏡において、60倍水浸対物レンズ(NA1.2)を使用して撮影される。画像化チャンバーは、37℃および5%CO2に維持される。生細胞の画像化については、細胞が、フィブロネクチンコーティングされた35mmガラス底ディッシュに播種され、通常一晩増殖される。全体的な活性化については、細胞は通常、488nmレーザーにより画像化されるが、光遺伝学的タンパク質(例えば、iLIDおよびCry2)の高い感受性により、青色光強度が低減される必要がある場合、440nmレーザーが、488nmレーザー用のダイクロイックフィルターと併せて使用される。このことが、検体の面での青色レーザー強度を0.1pW未満に減衰させる。局所活性化については、目的の領域(ROI)が、青色レーザーにより走査される領域を導くために規定される。同様にROIを使用して、光退色後蛍光回復法(FRAP)が実施される。
【0165】
[0177]画像解析:画像に対するデータ解析は全て、特注のMATLAB(登録商標)スクリプトを使用して実施される。簡単に言えば、テロメア追跡では、原画像がまず、ノイズを低減させるためにガウシアンフィルタされ、次いでテロメアに対応するピークがそれらのピーク強度に基づき検出される。近似に基づき、一連の検出された座標から軌跡が生じる。液滴またはヘテロクロマチンのいずれかの境界を同定および追跡するため、MATLABにおけるエッジ検出ルーチンを使用して、分割された二値画像が得られる。解析された結果は、妥当性を確認するために手動で検査される。
【0166】
配列
[0178]配列番号1-GFP11
RDHMVLHEYVNAAGIT
[0179]配列番号2-hnRNPAl
MSKSASPKEPEQLRKLFIGGLSFETTDESLRSHFEQWGTLTDCVVMRDPNTKRSRGFGFVTYATVEEVDAAMNTTPHKVDGRVVEPKRAVSREDSQRPGAHLTVKKIFVGGIKEDTEEHHLRDYFEQYGKIEVIEIMTDRGSGKKRGFAFVTFDDHDSVDKIVIQKYHTVKGHNCEVRKALPKQEMASASSSQRGRRGSGNFGGGRGDGFGGNDNFGRGGNFSGRGGFGGSCGGGGYGGSGDGYNGFGNDGSNFGGGGSYNDFGNYNNQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPQNQGGYGVSSSSSSYGSGRRF
[0180]配列番号3-FUS
MASNDYTQQATQSYGAYPTQPGQGYSQQSSQPYGQQSYSGYSQSTDTSGYGQSSYSSYGQSQNTGYGTQSTPQGYGSTGGYGSSQSSQSSYGQQSSYPGYGQQPAPSSTSGSYGSSSQSSSYGQPQSGSYSQQPSYGGQQQSYGQQQSYNPPQGYGQQNQYNSSSGGGGGGGGGGNYGQDQSSMSSGGGSGGGYGNQDQSGGGGSGGYGQQDRGGRGRGGSGGGGGGGGGGYNRSSGGYEPRGRGGGRGGRGGMGGSDRGGFNKFGGPRDQGSRHDSEQDNSDNNTIFVQGLGENVTIESVADYFKQIGIIKTNKKTGQPMINLYTDRETGKLKGEATVSFDDPPSAKAAIDWFDGKEFSGNPIKVSFATRRADFNRGGGNGRGGRGRGGPMGRGGYGGGGSGGGGRGGFPSGGGGGGGQQRAGDWKCPNPTCENMNFSWRNECNQCKAPKPDGPGGGPGGSHMGGNYGDDRRGGRGGYDRGGYRGRGGDRGGFRGGRGGGDRGGFGPGKMDSRGEHRQDRRERPY
[0181]配列番号4-Ddx4
MGDEDWEAEINPHMSSYVPIFEKDRYSGENGDNFNRTPASSSEMDDGPSRRDHFMKSGFASGRNFGNRDAGECNKRDNTSTMGGFGVGKSFGNRGFSNSRFEDGDSSGFWRESSNDCEDNPTRNRGFSKRGGYRDGNNSEASGPYRRGGRGSFRGCRGGFGLGSPNNDLDPDECMQRTGGLFGSRRPVLSGTGNGDTSQSRSGSGSERGGYKGLNEEVITGSGKNSWKSEAEGGESSDTQGPKVTYIPPPPPEDEDSIFAHYQTGINFDKYDTILVEVSGHDAPPAILTFEEANLCQTLNNNIAKAGYTKLTPVQKYSIPIILAGRDLMACAQTGSGKTAAFLLPILAHMMHDGITASRFKELQEPECIIVAPTRELVNQIYLEARKFSFGTCVRAVVIYGGTQLGHSIRQIVQGCNILCATPGRLMDIIGKEKIGLKQIKYLVLDEADRMLDMGFGPEMKKLISCPGMPSKEQRQTLMFSATFPEEIQRLAAEFLKSNYLFVAVGQVGGACRDVQQTVLQVGQFSKREKLVEILRNIGDERTMVFVETKKKADFIATFLCQEKISTTSIHGDREQREREQALGDFRFGKCPVLVATSVAARGLDIENVQHVINFDLPSTIDEYVHRIGRTGRCGNTGRAISFFDLESDNHLAQPLVKVLTDAQQDVPAWLEEIAFSTYIPGFSGSTRGNVFASVDTRKGKSTLNTAGFSSSQAPNPVDDESWD
[0182]配列番号5-hnRNPAl(アイソフォームb)
MSKSESPKEPEQLRKLFIGGLSFETTDESLRSHFEQWGTLTDCVVMRDPNTKRSRGFGFVTYATVEEVDAAMNARPHKVDGRVVEPKRAVSREDSQRPGAHLTVKKIFVGGIKEDTEEHHLRDYFEQYGKIEVIEIMTDRGSGKKRGFAFVTFDDHDSVDKIVIQKYHTVNGHNCEVRKALSKQEMASASSSQRGRSGSGNFGGGRGGGFGGNDNFGRGGNFSGRGGFGGSRGGGGYGGSGDGYNGFGNDGGYGGGGPGYSGGSRGYGSGGQGYGNQGSGYGGSGSYDSYNNGGGGGFGGGSGSNFGGGGSYNDFGNYNNQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGYGGSSSSSSYGSGRRF
【手続補正書】
【提出日】2023-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】