(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】印刷可能なシリコーン組成物並びにその調製及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20240206BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240206BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20240206BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240206BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20240206BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/00
C09J7/38
C09D11/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544388
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 US2022011927
(87)【国際公開番号】W WO2022169556
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】ユク、ジュヨン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J004
4J039
【Fターム(参考)】
4J002CP03Y
4J002CP04X
4J002CP12W
4J002CP12Y
4J002CP13W
4J002DE016
4J002EC036
4J002ED006
4J002EH086
4J002EN006
4J002EQ026
4J002EU176
4J002EV026
4J002EW136
4J002FD206
4J002GJ00
4J004AA11
4J004AB01
4J004CB03
4J004CC03
4J004FA05
4J039AE11
4J039BE12
4J039GA24
(57)【要約】
硬化性シリコーン組成物は、25℃で、100mPa・s以下の粘度を有する。この組成物は、印刷法における使用に好適である。この組成物は、ヒドロシリル化反応により硬化して、(光)電子デバイスの製造の分野における使用に好適なシリコーン接着剤を形成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性シリコーン組成物であって、
(A)1分子当たり2つのアルケニル基を有し、分子量が1,000g/mol未満である、10質量部~90質量部の量の芳香族化合物であって、
式(A-I):R
1-R
2-R
1の有機化合物、
式(A-II):
【化1】
のシロキサンオリゴマー、並びに
(A-III)前記式(A-I)の有機化合物及び前記式(A-II)のシロキサンオリゴマーの両方の組み合わせ、からなる群から選択され、式中、各R
1は、独立して選択される2~12炭素原子のアルケニル基であり、各R
2は、6~20炭素原子のアリーレン部分であり、各R
3は、独立して、1~12炭素原子のアルキル基及び6~20炭素原子のアリール基からなる群から選択され、ただし、R
3の全ての場合の15モル%~50モル%がアリール基であり、R
3の全ての場合の50モル%~85モル%がアルキル基であることを条件とし、添字aは、2~3の値を有する整数である、芳香族化合物と、
(B)1分子当たり2つのケイ素結合水素原子を有し、分子量が1,000g/mol未満である、90質量部~10質量部の量の芳香族化合物であって、
出発物質(A)の量及び出発物質(B)の量の合計が100質量部であることを条件とする、芳香族化合物と、
(C)出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり10質量部~130質量部の量のアルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂と、
任意選択的に、(D)出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり0~52.5質量部の量のアルケニル官能性ポリジオルガノシロキサンと、
任意選択的に、(E)1分子当たり少なくとも1つの不飽和脂肪族基(aliphatically unsaturated group)を有する8~18炭素原子の炭化水素化合物を含む、出発物質(A)及び出発物質(B)の合計の0~25質量部の量の反応性希釈剤と、
任意選択的に、(F)出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり0~8質量部の量のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、
出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)が、0.5/1~2/1のケイ素結合水素原子/アルケニル基のモル比(SiH/Vi比)、246mmol/100g~450mmol/100gのアリール含有量を提供するのに十分な量で存在することを条件とする、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(G)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、及び(H)の合計量に基づいて、0.1質量ppm~5,000質量ppmの白金族金属を提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
任意選択的に、(H)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)及び(H)の合計量に基づいて、0~10,000質量ppmの量のヒドロシリル化反応抑制剤と、を含む、硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
式(A-I)及び式(A-II)において、各R
1が、独立して、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から選択され、各R
2が、独立して、
【化2】
からなる群から選択され、各R
3が、独立して、メチル基及びフェニル基からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(A-I)の化合物が、ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記式(A-II)の化合物が、1,5-ジビニル-3,3-ジフェニル-1,1,5,5-テトラメチルトリシロキサン、1,5-ジビニル-3-フェニルペンタメチルトリシロキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
出発物質(B)が、式(B-I):
【化3】
のシロキサンオリゴマー、式(B-II):
【化4】
のオルガノシリコンオリゴマー、並びに前記シロキサンオリゴマー及び前記オルガノシリコンオリゴマーの両方の組み合わせからなる群から選択され、式中、各R
2が、6~20炭素原子のアリーレン部分であり、各R
3が、独立して、1~12炭素原子のアルキル基及び6~20炭素原子のアリール基からなる群から選択され、ただし、R
3の全ての場合の15モル%~50モル%がアリール基であり、R
3の全ての場合の50モル%~85モル%がアルキル基であることを条件とし、各R
4が、独立して選択される1~12炭素原子のアルキル基であり、添字bが、1~3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
式(B-I)及び式(B-II)において、各R
2が、
【化5】
からなる群から選択され、各R
3が、メチル基又はフェニル基であり、各R
4が、メチル基である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
出発物質(B)が、
前記式(B-I)のシロキサンオリゴマーであって、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン、1,1,7,7-テトラメチル-3,3,5,5,-テトラフェニルテトラシロキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、シロキサンオリゴマー、又は
前記式(B-II)のオルガノシリコンオリゴマーであって、式(B-II)のシロキサン有機ハイブリッドオリゴマーが、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを含む、オルガノシリコンオリゴマー、
前記式(B-I)のシロキサンオリゴマー及び前記式(B-II)のシロキサン有機ハイブリッドオリゴマーの両方の組み合わせ、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂が、平均式(C-I):(R
4
3SiO
1/2)
c(R
1R
4
2SiO
1/2)
d(SiO
4/2)
e(HO
1/2)
fを有し、式中、各R
4は、独立して選択される1~12炭素原子のアルキル基であり、添字c、d、e、及びfは、モル分率を表し、c≧0、添字d>0、0.3≦(c+d)≦0.7、0.3≦e≦0.7、かつ0≦f≦0.05であり、ただし、量(c+d+e+f)=1であることを条件とし、前記アルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂が、平均式を有し、1,500g/mol~5,000g/molの数平均分子量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
出発物質(D)が存在し、単位式:(R
5
3SiO
1/2)
g(R
5
2SiO
2/2)
h(R
5SiO
3/2)
i(SiO
4/2)
jを有し、式中、各R
5は、独立して、1~12炭素原子のアルキル基、2~12炭素原子のアルケニル基、及び6~20炭素原子のアリール基からなる群から選択される一価炭化水素基であり、ただし、R
5の全ての場合の0.01mol%~1mol%がアルケニル基であることを条件とし、添字g、h、i、j、及びkは、0<g≦0.4、0.6≦h≦1、0≦i≦0.03、0≦k≦0.03、かつ量(g+h+i+j)=1であるような値を有するモル分率を表し、出発物質(D)が、25℃で、1mPa・s~100,000mPa・sの粘度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
出発物質(E)が、8~12炭素原子の1-アルケンを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
出発物質(F)が存在し、単位式:(R
4
3SiO
1/2)
t(HR
4
2SiO
1/2)
u(R
4
2SiO
2/2)
v(HR
4SiO
2/2)
w(R
4SiO
3/2)
x(HSiO
3/2)
y(SiO
4/2)
zを有し、式中、各R
4は、独立して選択される1~12炭素原子のアルキル基であり、添字t、u、v、w、x、y、及びzは、前記式における各単位の平均数を表し、t≧0、u≧0、v≧0、w≧0、x≧0、y≧0、z≧0、量(u+w+y)≧2であり、かつ量(t+u+v+w+x+y+z)がポリオルガノハイドロジェンシロキサンに25℃で2mPa・s~1,000mPa・sの粘度を与えるのに十分であるような値を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
出発物質(G)が、(G-I)放射線活性化ヒドロシリル化反応触媒、(G-II)照射以外の手段によって活性化可能なヒドロシリル化触媒、又は(G-III)これらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
出発物質(H)が存在し、アセチレン系アルコール、シリル化アセチレン系アルコール、エン-イン化合物、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、ヒドラジン、アミン、フマレート、マレエート、エーテル、一酸化炭素、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
インクジェット印刷プロセスにおけるインクとしての、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
方法であって、
任意選択的に、1)基材の表面を処理することと、
2)前記基材の前記表面上に、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物を適用することと、
3)前記組成物を硬化させて、前記表面上にシリコーン感圧接着剤を形成することと、を含む、方法。
【請求項15】
任意選択的に、4)被着体の表面を処理することと、
任意選択的に、5)前記被着体の前記表面と前記基材の反対側の前記シリコーン感圧接着剤とを接触させることと、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2021年2月2日に出願された米国特許仮出願第63/144504号の利益を主張するものである。米国特許仮出願第63/144504号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、粘度が100mPa・s以下の硬化性シリコーン組成物に関する。組成物は、(光)電子デバイス製造の分野での使用に好適な接着剤層を作製するためのインクジェット印刷方法において有用である。
【0003】
序論
シリコーン感圧接着剤を形成するための従来の硬化性シリコーン組成物は、典型的には、直鎖シリコーンガム(例えば、1,000,000mPa・sより高い粘度を有する)と、トリオルガノシロキサン単位(式R3SiO1/2のもの、式中、Rは、一価炭化水素基を表す)及びシリケート(Q)単位(式SiO4/2のもの)から本質的になる固体粘着付与樹脂と、を含有する。上記の2つの成分に加えて、このようなシリコーン組成物は、硬化性シリコーン組成物を基材の表面にコーティングしてシリコーン感圧接着剤層を形成するときに粘度を低下させるために溶媒を含有してもよい。しかしながら、揮発性溶媒の使用にはいくつかの欠点がある。第1に、組成物を使用するときに溶媒乾燥プロセスが必要であり、これは望ましくない。また、溶媒乾燥は、インクジェット印刷された層又は他の特徴(例えば、不均一なドットサイズ及び/又は粗さを有する層)の不均一性、及び/又は溶媒蒸発中のドットサイズの収縮を引き起こす可能性がある。また、揮発性溶剤の使用は、環境上の観点から好ましくない。
【0004】
典型的なコーティング方法及び硬化方法によってシリコーン感圧層を形成するために使用することができる無溶媒シリコーン感圧接着剤組成物が開示されている。しかしながら、このような無溶媒シリコーン接着剤組成物の25℃における粘度は、典型的には数千mPa・s以上ほどである。例えば、Bhagwagarらの米国特許第7,687,591号及びAokiの米国特許第8,754,174号に開示されている組成物は、高い粘度を有しており、インクジェット印刷プロセスでの使用には好適ではない。
【0005】
(光)電子デバイス製造の分野では、デバイスにおける2つの異なる層又はディスプレイ部品を取り付けるために、様々な感圧接着剤が提案されている。この分野では、感圧接着シートを使用したドライラミネート法が広く適用されている。加えて、液体硬化性接着剤を使用することによって対象基材上に層を形成するディスペンス法も提案されている。しかしながら、これらの方法は、50μm以下の厚さを有する層を達成することが困難であるため、より薄い(光)電子デバイスを製造するには限界がある。
【発明の概要】
【0006】
硬化性シリコーン組成物であって、
(A)1分子当たり2つのアルケニル基を有し、分子量が1,000g/mol未満である、10質量部~90質量部の量の芳香族化合物と、
(B)1分子当たり2つのケイ素結合水素原子を有し、分子量が1,000g/mol未満である、90質量部~10質量部の量の芳香族化合物であって、
出発物質(A)の量及び出発物質(B)の量の合計が100質量部であることを条件とする、芳香族化合物と、
(C)出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり10質量部~130質量部の量のアルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂と、
任意選択的に、(D)出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり0~52.5質量部の量のアルケニル官能性ポリジオルガノシロキサンと、
任意選択的に、(E)1分子当たり少なくとも1つの不飽和脂肪族基(aliphatically unsaturated group)を有する8~18炭素原子の炭化水素化合物を含む、出発物質(A)及び出発物質(B)の合計の0~25質量部の量の反応性希釈剤と、
任意選択的に、(F)出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり0~8質量部の量のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、
出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)が、0.5/1~2/1のケイ素結合水素原子/アルケニル基のモル比(SiH/Vi比)及び246mmol/100g~450mmol/100gのアリール含有量を提供するのに十分な量で存在することを条件とする、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(G)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、及び(H)の合計量に基づいて、0.1質量ppm~5,000質量ppmの白金族金属を提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
任意選択的に、(H)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)及び(H)の合計量に基づいて、0~10,000質量ppmの量のヒドロシリル化反応抑制剤と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記の硬化性シリコーン組成物(組成物)は、25℃でCPA-40Zスピンドルを使用するBrookfield DV1粘度計を使用することによって測定される100mPa・sの最大粘度を有し得る。硬化性シリコーン組成物に使用される出発物質について、以下のように詳細に説明する。
【0009】
出発物質(A)
硬化性シリコーン組成物中の出発物質(A)は、1分子当たり2つのアルケニル基を有し、1,000g/mol未満、あるいは900g/mol未満、あるいは800g/mol未満、あるいは700g/mol未満、あるいは600g/mol未満、あるいは500g/mol未満、あるいは400g/mol未満の分子量を有する芳香族化合物である。同時に、出発物質(A)の分子量は、少なくとも130g/mol、あるいは少なくとも150g/mol、あるいは少なくとも200g/mol、あるいは少なくとも300g/molであり得る。あるいは、出発物質(A)は、130g/mol~1,000g/mol、あるいは130g/mol~900g/mol、あるいは154g/mol~900g/mol、あるいは130g/mol~400g/mol、あるいは130g/mol~320g/mol、あるいは、130g/mol~250g/molの分子量を有し得る。出発物質(A)は、
式(A-I):R1-R2-R1の有機化合物、
式(A-II):
【0010】
【化1】
のシロキサンオリゴマー、
並びに式(A-I)の有機化合物及び式(A-II)のシロキサンオリゴマーの両方の組み合わせからなる群から選択され得る。式(A-I)及び(A-II)において、各R
1は、独立して選択される2~12炭素原子のアルケニル基であり、各R
2は、6~20炭素原子のアリーレン基であり、各R
3は、独立して、1~12炭素原子のアルキル基及び6~20炭素原子のアリール基からなる群から選択され、ただし、R
3の全ての場合の15モル%~50モル%がアリール基であり、R
3の全ての場合の50モル%~85モル%がアルキル基であることを条件とし、添字aは、2~3の値を有する整数である。R
1に好適なアルケニル基は、ビニル、アリル、及びヘキセニル、あるいはビニル及びヘキセニル、あるいはビニルによって例示される。R
2に好適なアルキル基としては、フェニレン、ナフタレン、及びビフェニレン、あるいはフェニレンが挙げられる。あるいは、各R
2は、独立して、
【0011】
【化2】
からなる群から選択されるフェニレンであり得る。R
3に好適なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル(イソ-プロピル及びn-プロピルを含む)、ブチル(イソ-ブチル、n-ブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチルを含む)、ペンチル(シクロペンチル並びに5炭素原子を有する直鎖及び分岐アルキル基を含む)、ヘキシル(シクロヘキシル並びに6炭素原子を有する直鎖及び分岐アルキル基を含む)が挙げられる。あるいは、R
3のアルキル基は、メチル及びエチル、あるいはメチルからなる群から選択され得る。R
3に好適なアリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、及び2-フェニルエチルを挙げることができる。あるいは、R
3のアリール基は、フェニルであり得る。あるいは、各R
3は、メチル及びフェニルからなる群から選択され得る。
【0012】
式(A-I)の化合物は、当該技術分野において既知であり、市販されている。例えば、式
【0013】
【化3】
のジビニルベンゼン(A-I-1)(m-ジビニルベンゼン、o-ジビニルベンゼン、及びp-ジビニルベンゼン、並びにこれらの組み合わせを含む)、並びに式
【0014】
【化4】
のジアリルベンゼン(A-I-2)(m-ジアリルベンゼン、o-ジアリルベンゼン、及びp-ジアリルベンゼン、並びにこれらの組み合わせを含む)は、Gelest,Inc.(Morrisville,Pennsylvania,USA)及びSigma-Aldrich,Inc.(St.Louis,Missouri,USA)から市販されている。(A-II)の化合物はまた、当該技術分野において既知であり、市販されている。例えば、式
【0015】
【化5】
の1,5-ジビニル-3,3-ジフェニル-1,1,5,5-テトラメチルトリシロキサン(A-II-1)(384g/mol)、及び式
【0016】
【化6】
の1,5-ジビニル-3-フェニルペンタメチルトリシロキサン(A-II-2)(323g/mol)も、当該技術分野において既知であり、Gelest,Inc.及びSigma-Aldrich,Inc.などの様々な供給元から市販されている。
【0017】
出発物質(A)は、上記の化合物のうちの1つの化合物又は2つ以上の組み合わせであり得る。例えば、出発物質(A)は、ジビニルベンゼン(A-I-1)とジアリルベンゼン(A-I-2)との組み合わせであり得る。あるいは、出発物質(A)は、1,5-ジビニル-3,3-ジフェニル-1,1,5,5-テトラメチルトリシロキサン(A-II-1)と1,5-ジビニル-3-フェニルペンタメチルトリシロキサン(A-II-2)との組み合わせであり得る。あるいは、出発物質(A)は、ジビニルベンゼン(A-I-1)と1,5-ジビニル-3,3-ジフェニル-1,1,5,5-テトラメチルトリシロキサン(A-II-1)の組み合わせであり得る。あるいは、出発物質(A)は、ジビニルベンゼン(A-I-1)と1,5-ジビニル-3-フェニルペンタメチルトリシロキサン(A-II-2)との組み合わせであり得る。あるいは、出発物質(A)は、ジアリルベンゼンと(A-I-2)1,5-ジビニル-3,3-ジフェニル-1,1,5,5-テトラメチルトリシロキサン(A-II-1)との組み合わせであり得る。あるいは、出発物質(A)は、ジアリルベンゼン(A-I-2)と1,5-ジビニル-3-フェニルペンタメチルトリシロキサン(A-II-2)との組み合わせであり得る。
【0018】
出発物質(B)
硬化性シリコーン組成物中の出発物質(B)は、1分子当たり2つのケイ素結合水素原子を有し、1,000g/mol未満、あるいは900g/mol未満の分子量を有する芳香族化合物である。同時に、出発物質(B)の分子量は、少なくとも194g/molであり得る。あるいは、出発物質(B)は、194g/mol~<1,000g/mol、あるいは194g/mol~<900g/mol、あるいは194g/mol~800g/mol、あるいは194g/mol~700g/mol、あるいは194g/mol~600g/mol、あるいは194g/mol~550g/mol、あるいは、194g/mol~350g/molの分子量を有し得る。出発物質(B)は、式(B-I):
【0019】
【化7】
のシロキサンオリゴマー、式(B-II):
【0020】
【化8】
のオルガノシリコンオリゴマー、並びにシロキサンオリゴマー及びオルガノシリコンオリゴマーの両方の組み合わせからなる群から選択され得る。式(B-I)及び(B-II)において、R
2及びR
3は、出発物質(A)について上に記載したとおりである。各R
4は、独立して選択される1~12炭素原子のアルキル基であり、添字bは、1~3の値を有する整数である。R
4に好適なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル(イソ-プロピル及びn-プロピルを含む)、ブチル(イソ-ブチル、n-ブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチルを含む)、ペンチル(シクロペンチル並びに5炭素原子を有する直鎖及び分岐アルキル基を含む)、ヘキシル(シクロヘキシル並びに6炭素原子を有する直鎖及び分岐アルキル基を含む)が挙げられる。あるいは、R
4のアルキル基は、メチル及びエチル、あるいはメチルからなる群から選択され得る。
【0021】
式(B-I)の化合物は、当該技術分野において既知であり、市販されている。例えば、式(I)
【0022】
【化9】
の1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン(B-I-1)(332g/mol)、及び式
【0023】
【化10】
の1,1,7,7,-テトラメチル-3,3,5,5,-テトラフェニルテトラシロキサン(B-I-2)(530g/mol)は、Gelest,Inc.及びSigma-Aldrich,Inc.を含む様々な供給元から市販されている。式(B-II)の化合物もまた、当該技術分野において既知であり、市販されている。例えば、式
【0024】
【化11】
の1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン(B-II-1)(194g/mol)も、Gelest,Inc.及びSigma-Aldrich,Inc.を含む様々な供給元から市販されている。
【0025】
出発物質(B)は、上記の化合物のうちの1つ以上の組み合わせであり得る。例えば、出発物質(B)は、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン(B-I-1)と1,1,7,7,-テトラメチル-3,3,5,5,-テトラフェニルテトラシロキサン(B-I-2)との組み合わせであり得る。あるいは、出発物質(B)は、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン(B-I-1)と1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン(B-II-1)との組み合わせであり得る。あるいは、出発物質(B)は、1,1,7,7-テトラメチル-3,3,5,5-テトラフェニルテトラシロキサン(B-I-2)と1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン(B-II-1)との組み合わせであり得る。
【0026】
出発物質(A)は、組成物中に10質量部~90質量部の量で使用される。組成物中の出発物質(B)は、組成物中に90質量部~10質量部の量で使用される。出発物質(A)の量及び出発物質(B)の量の合計が100質量部である。
【0027】
出発物質(C)
出発物質(C)は、アルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂である。アルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂は、平均単位式(C-I):(R4
3SiO1/2)c(R1R4
2SiO1/2)d(SiO4/2)e(HO1/2)fを有し得、式中、R1及びR4は、上記のとおりであり、添字c、d、e、及びfは、モル分率を表す。式(C-I)において、添字c≧0、添字d>0、0.3≦(c+d)≦0.7、0.3≦e≦0.7、かつ0≦f≦0.05であり、ただし、量(c+d+e+f)=1であることを条件とし、平均式(C-I)のアルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂は、GPCによって測定される1,500g/mol~5,000g/molの数平均分子量を有する。アルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂は、三官能性単位(例えば、式(R1SiO3/2)及び/又は(R4SiO3/2)の単位)を含まなくてもよい。
【0028】
あるいは、アルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂は、平均単位式(C-II):(R4
3SiO1/2)m(R1R4
2SiO1/2)n(R6SiO3/2)o(SiO4/2)p(HO1/2)qを有し得、式中、R1及びR4は、上記のとおりであり、R6は、6~20炭素原子のアリール基であり、添字m、n、o、p、及びqは、モル分率を表す。式(C-II)において、添字m≧0、添字n>0、0.3≦(m+n)≦0.7、0≦o≦0.3、0.3≦p≦0.7、かつ0≦q≦0.05であり、ただし、量(m+n+o+p+q)=1であることを条件とし、式(C-II)のアルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂が、GPCによって測定される1,500g/mol~5,000g/molの数平均分子量を有する。R6に好適なアリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、及び2-フェニルエチルを挙げることができる。あるいは、R6のアリール基は、フェニルであり得る。
【0029】
ポリオルガノシリケート樹脂は、Daudtらの米国特許第2,676,182号、Rivers-Farrellらの米国特許第4,611,042号、及びButlerらの米国特許第4,774,310号に開示されるものなどのシリカヒドロゾルキャッピングプロセスによって調製され得る。上記のDaudtらの方法は、酸性条件下でシリカヒドロゾルを、トリメチルクロロシランなどの加水分解性トリオルガノシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサン又はこれらの混合物と反応させることと、トリオルガノシロキシ(M)単位及びシリケート(Q)単位を有するコポリマーを回収することと、を伴う。得られるコポリマーは概して、2~5重量パーセントのヒドロキシル基を含有する。ポリオルガノシリケート樹脂中に存在するケイ素結合ヒドロキシル基の濃度は、ASTM標準E-168-16に従ってFTIR分光法を使用して判定され得る。
【0030】
調製されたとき、ポリオルガノシリケート樹脂は上記のM及びQ単位を含み、また、ポリオルガノシリケート樹脂は、シラノール(ケイ素結合ヒドロキシル)基を有する単位を更に含み、式Si(OSiRM
3)4のネオペンタマーを含み得、式中、RMは、一価ヒドロカルビル基である。米国特許第9,593,209号の欄32、参考例2に記載されているように、Si29核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)分光法は、M単位とQ単位とのモル比を測定するために使用され得、当該比は、{M(樹脂)+(M(ネオペンタマー)}/{Q(樹脂)+Q(ネオペンタマー)}として表され、ポリオルガノシリケート樹脂の樹脂部及びネオペンタマー部のトリオルガノシロキシ基(M単位)の総数と、樹脂部及びネオペンタマー部のシリケート基(Q単位)の総数とのモル比を表す。
【0031】
ポリオルガノシリケート樹脂の数平均分子量(Mn)は、存在するRMによって表されるヒドロカルビル基のタイプを含む様々な要因に依存する。ポリオルガノシリケート樹脂のMnとは、米国特許第9,593,209号第31欄の参照例1の手順に従ってゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)を使用して測定される数平均分子量を意味する。あるいは、ネオペンタマーを表すピークを測定から除外してもよい。あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、少なくとも1,500g/mol、あるいは少なくとも2,000g/molであり得るが、同時に、ポリオルガノシリケートのMnは、最大5,000g/mol、あるいは最大4,500g/molであり得る。あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、1,500g/mol~5,000g/mol、あるいは2,000g/mol~4,500g/mol、あるいは2,500g/mol~4,000g/molであり得る。
【0032】
ポリオルガノシリケート樹脂の調製中に形成されたケイ素結合ヒドロキシル基は、シリコーン樹脂を、適切な末端基を含有する末端封鎖剤(endblocking agent)、例えば、シラン、ジシロキサン、又はジシラザンと反応させることによって、トリヒドロカルビルシロキサン基に変換することができる。加水分解性基を含有するシランは、ポリオルガノシリケート樹脂におけるケイ素結合ヒドロキシル基と反応させるのに必要な量よりもモル過剰で添加されてもよい。上記のアルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂は、Daudtらの生成物を、例えば、3~30モルパーセントのアルケニル基を樹脂に提供するのに十分な量の、アルケニル基含有末端封鎖剤及び不飽和脂肪族を含まない末端封鎖剤と反応させることによって調製され得る。好適な末端封鎖剤は、当該技術分野において既知であり、米国特許第4,584,355号、同第4,591,622号、及び同第4,585,836号に例示されている。単一の末端封鎖剤又はそのような薬剤の混合物を使用して、そのようなアルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂を調製することができる。
【0033】
出発物質(C)は、上記の樹脂のうちの1つ以上の組み合わせであり得る。出発物質(C)は、組成物中に出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり10質量部~130質量部を提供するのに十分な量で使用される。あるいは、出発物質(C)の量は、出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり少なくとも10質量部、あるいは少なくとも30質量部、あるいは少なくとも40質量部、あるいは少なくとも50質量部、あるいは少なくとも60質量部であり得る。同時に、出発物質(C)の量は、出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり最大130質量部、あるいは最大120質量部、あるいは最大100質量部、あるいは最大90質量部、あるいは最大80質量部であり得る。あるいは、出発物質(C)の量は、同じ基準で出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり30~130質量部、あるいは40~120、あるいは50~100質量部、あるいは60~90質量部あり得る。
【0034】
出発物質(D)
出発物質(D)は、ケイ素結合不飽和脂肪族一価ヒドロカルビル基を有するポリオルガノシロキサンであり、これは、任意選択的に、例えば、組成物の流動性を改善する目的で、及び/又は硬化したシリコーン感圧接着剤の機械的強度を改善する目的で、本明細書に記載の組成物に添加され得る。出発物質(D)は、単位式(D-I):(R5
3SiO1/2)g(R5
2SiO2/2)h(R5SiO3/2)i(SiO4/2)jを含み得、式中、各R5は、独立して、1~12炭素原子のアルキル基、2~12炭素原子のアルケニル基、及び6~20炭素原子のアリール基からなる群から選択される一価ヒドロカルビル基であり、ただし、R5の全ての場合の0.01mol%~1mol%がアルケニル基であることを条件とし、添字g、h、i、及びjは、0<g≦0.4、0.6≦h≦1、0≦i≦0.03、0≦j≦0.03、かつ量(g+h+i+j)=1であるような値を有するモル分率を表す。出発物質(D)は、25℃で1mPa・s~100,000mPa・s、あるいは25℃で3mPa・s~50,000mPa・s、あるいは25℃で5mPa・s~1,000mPa・sの粘度を有し得る。R5に好適なアルキル基及びアリール基は、R3について上に記載したとおりであり、R5に好適なアルケニル基は、R1について上に記載したとおりである。あるいは、ポリオルガノシロキサンが直鎖状である場合、添字i及びjは、各々、0であり得る。出発物質(D)のポリオルガノシロキサンの例としては、以下のものが挙げられる:
i)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ii)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
iii)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
iv)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
v)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
vi)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
vii)α、ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
viii)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、
ix)α,ω-フェニル,メチル,ビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
x)α,ω-ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
xi)α,ω-ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xii)α,ω-ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン、
xiii)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xiv)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン、
xv)α,ω-ジメチルヘキセニル-シロキシ末端ポリ(メチルフェニルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xvi)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xvii)α,ω-ジメチルヘキセニル-シロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
xviii)ジメチルヘキセニル-シロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、
xix)1,3-ジヘキシル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、及び
xx)i)~xix)のうちの2つ以上の組み合わせ。
【0035】
出発物質(D)について上記のポリオルガノシロキサンを調製する方法、例えば、対応するオルガノハロシラン及びオリゴマーの加水分解及び縮合、又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化は、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第3,284,406号、同第4,772,515号、同第5,169,920号、同第5,317,072号、及び同第6,956,087号を参照されたく、これらは、アルケニル基を有する直鎖状ポリジオルガノシロキサンの調製について開示している。そのようなポリオルガノシロキサンの例は、例えば、商品名DMS-V00、DMS-V03、DMS-V05、DMS-V21、DMS-V22、DMS-V25、DMS-V-31、DMS-V33、DMS-V34、DMS-V35、DMS-V41、DMS-V42、DMS-V43、DMS-V46、DMS-V51、DMS-V52でGelest Inc.(Morrisville,Pennsylvania,USA)から市販されている。
【0036】
出発物質(D)は、1つのポリオルガノシロキサン又は上記のポリオルガノシロキサンのうちの2つ以上の組み合わせであり得る。例えば、出発物質(D)は、i)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、vii)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、並びにi)及びvii)の両方の組み合わせ、からなる群から選択され得る。
【0037】
出発物質(D)は、任意選択的である。しかしながら、存在する場合、その量は、出発物質(A)のタイプ及び量、並びに出発物質(E)が存在するかどうかを含む様々な要因に依存する。出発物質(D)の量は、組成物の粘度が100mPa・sを超えないように選択され得る。存在する場合には出発物質(D)は、組成物中に出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり>0質量部、あるいは少なくとも0.1質量部、あるいは少なくとも10質量部の量で使用され得る。同時に、出発物質(D)の量は、出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり最大52.5質量部、あるいは最大50質量部、あるいは最大40質量部、あるいは最大39質量部であり得る。あるいは、出発物質(D)は、組成物中に出発物質(A)及び(B)の合計100質量部当たり0~52.5質量部、あるいは0~50質量部、あるいは0~45質量部、あるいは0~40質量部、あるいは1~39質量部、あるいは2~38質量部、あるいは1~15質量部の量で存在し得る。
【0038】
出発物質(E)
出発物質(E)は、組成物に任意選択的に添加され得る、反応性希釈剤である。反応性希釈剤は、1分子当たり8~18炭素原子及び少なくとも1つの不飽和脂肪族を含む炭化水素化合物を含む。反応性希釈剤は、直鎖又は分岐鎖であってもよく、不飽和脂肪族は、側鎖(pendant)又は末端であってもよい。反応性希釈剤の例としては、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、オクタデセン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、反応性希釈剤は、末端二重結合を有する8~18炭素原子を含むアルケンを含み得る。あるいは、反応性希釈剤は、12~14炭素原子及び末端二重結合を含む少なくとも1つのアルケンを含む。あるいは、反応性希釈剤は、テトラデセンである。反応性希釈剤は、当該技術分野において、例えば、Bhagwagarらの米国特許第7,687,591号(第5欄、16~26行目)Hinoの欧州特許第3757186(A1)号(段落[0025])、及びCaoらのPCT公開第WO2020/000389号(段落[0027])において既知である。
【0039】
出発物質(E)は、任意選択的である。しかしながら、存在する場合、その量は、出発物質(A)のタイプ及び量、並びに出発物質(D)が存在するかどうかを含む様々な要因に依存する。出発物質(E)の量は、組成物の粘度が100mPa・sを超えないように選択され得る。出発物質(E)は、存在する場合、組成物中に出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり>0質量部、あるいは少なくとも0.1質量部、あるいは少なくとも10質量部の量で使用され得る。同時に、出発物質(D)の量は、出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり最大25質量部、あるいは最大20質量部、あるいは最大15質量部であり得る。あるいは、出発物質(D)は、組成物中に出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり0~25質量部、あるいは3~23質量部、あるいは3~10質量部、あるいは10~23質量部の量で存在し得る。
【0040】
出発物質(F)
出発物質(F)は、架橋を改善するために組成物に添加することができる任意選択的なポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。出発物質(F)は、単位式(F-I):(R4
3SiO1/2)t(HR4
2SiO1/2)u(R4
2SiO2/2)v(HR4SiO2/2)w(R4SiO3/2)x(HSiO3/2)y(SiO4/2)zを有し得、式中、R4は、上記のとおりであり、添字t、u、v、w、x、y、及びzは、式における各単位の平均数を表し、t≧0、u≧0、v≧0、w≧0、x≧0、y≧0、z≧0、量(u+w+y)≧2であるような値を有し、量(t+u+v+w+x+y+z)は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンに25℃で2mPa・s~1,000mPa・s、あるいは25℃で5mPa・s~500mPa・sの粘度を与えるのに十分である。あるいは、添字yは、0であり得、添字zは、0であり得る。
【0041】
本明細書で使用するのに好適なポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、以下のものによって例示される:
(i)α,ω-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、
(ii)α,ω-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
(iii)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、
(iv)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、及び
(v)α-ジメチルハイドロジェンシロキシ,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、
(vi)α-ジメチルハイドロジェンシロキシ,ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
(vii)これらの2つ以上の組み合わせ。あるいは、出発物質(F)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、(iii)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、(iv)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、並びに(iii)及び(iv)の両方の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0042】
本明細書で使用するのに好適なポリオルガノハイドロジェンシロキサンを調製する方法、例えば、オルガノハロシランの加水分解及び縮合は、Speierらの米国特許第2,823,218号、Jeramらの米国特許第3,957,713号、及びHardmanらの米国特許第4,329,273号に例示されているように、当該技術分野において周知である。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンも市販されている(例えば、Gelest,Inc.(Morrisville,Pennsylvania,USA)から入手可能なもの、例えば、HMS-H271、HMS-071、HMS-993 HMS-301 and HMS-301 R、HMS-031、HMS-991、HMS-992、HMS-993、HMS-082、HMS-151、HMS-013、HMS-053、HPM-502、及びHMS-HM271)。出発物質(F)の量は、出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり0~8質量部であり得る。あるいは、出発物質(F)は、出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり>0~8質量部、あるいは>0~2質量部、あるいは1~2質量部の量で存在し得る。
【0043】
出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)は、少なくとも0.5/1、あるいは少なくとも0.6/1のケイ素結合水素原子対アルケニル基のモル比(SiH/Vi比)を提供するのに十分な量で、組成物中で使用される。同時に、出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)の量は、最大2.0/1、あるいは最大1.5/1、あるいは最大1.0/1のケイ素結合水素原子対アルケニル基のモル比を提供するのに十分な量である。このモル比は、出発物質(B)及び存在する場合には出発物質(F)のケイ素結合水素含有量を合計し、出発物質(A)及び(C)並びに存在する場合には出発物質(D)及び(E)中のアルケニル基の合計量で割ることによって計算される。
【0044】
出発物質(G)
組成物中の出発物質(G)は、ヒドロシリル化反応触媒である。この触媒は、出発物質(A)及び(C)並びに存在する場合には出発物質(D)及び(E)中のアルケニル基と、出発物質(B)及び存在する場合には出発物質(F)中のケイ素結合水素原子との間の反応を促進する。当該触媒は、白金族金属を含む。白金族金属は、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウムからなる群から選択され得る。あるいは、白金族金属は、白金であり得る。ヒドロシリル化反応触媒は、放射線活性化触媒(G-I)(radiation activatable catalyst)(すなわち、照射(化学線(actinic radiation)への曝露、例えば、可視光又はUV光への曝露)後にヒドロシリル化反応を触媒することができる触媒)、照射以外の手段によって活性化可能なヒドロシリル化触媒(G-II)(例えば、加熱によって、照射なしでヒドロシリル化反応を触媒することができる)、又は(G-I)及び(G-II)の両方の組み合わせ(G-III)であり得る。
【0045】
出発物質(G-I)として使用するのに好適な放射線活性化触媒は、200nm~500nmの波長を有する放射線への曝露によって活性化され得る。好適な放射線活性化ヒドロシリル化反応触媒としては、シクロペンタジエニル白金錯体(例えば、η5-シクロペンタジエニル)トリ(α-アルキル)白金(IV))、シクロペンタジエニルトリメチル白金及びトリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)、シクロオクタジエニル白金錯体(例えば、η4-1,5-シクロオクタジエンジアリール白金錯体)、並びにPt(II)-βジケトネート錯体(例えば、ビス(アセチルアセトナト)白金(II))が挙げられる。シクロペンタジエニル白金錯体の例は、当該技術分野において既知であり、例えば、Drahnakの米国特許第4,510,094号、Drahnakの米国特許第4,600,484号、Boardmanらの米国特許第4,916,169号、Buttsの米国特許第6,127,446号、Buttsの米国特許第6,451,869号、Oxmanらの米国特許第6,376,569号、Koellnbergerの米国特許第8,088,878号、及び中国特許第101925608(B)号に開示されている。シクロオクタジエニル白金錯体は、例えば、Boardmanらの米国特許第6,046,250号に開示されている。白金(II)β-ジケトネート触媒は、例えば、Oxmanらの欧州特許第0398701(B1)号、Ikenoの米国特許第8,642,674号、及び中国特許第10403160(2A)号に開示されている。Walkerらの米国特許出願公開第2005/0154079号、Thompsonらの米国特許出願公開第2011/0171400(A1)号、及びIkenoの出願公開第03865638(B2)号は、各々、同様に、様々な放射線活性化ヒドロシリル化反応触媒を開示している。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、出願公開第03865638(B2)号に記載されているものであり得る。
【0046】
あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、照射以外の手段によって活性化可能なヒドロシリル化触媒(G-II)であり得る。例えば、(G-II)は、上記の白金族金属(G-II-1)、そのような金属の化合物(G-II-2)、例えば、クロリドトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)(Wilkinson触媒)、ロジウムジホスフィンキレート(例えば、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム若しくは[1,2-ビス(ジエチルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム)、塩化白金酸(Speier触媒)、塩化白金酸六水和物、二塩化白金、及び化合物(G-II-2)のアルケニル官能性オルガノポリシロキサンとの錯体(G-II-3)、又はマトリックス若しくはコアシェル型構造にマイクロカプセル化された白金族金属化合物(G-II-4)であり得る。白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体としては、1,3-ジエチル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンと白金との錯体(Karstedt触媒)、及びテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン中のPt(0)錯体(Ashby錯体)が挙げられる。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化された上記のような化合物又は錯体(G-II-5)であり得る。(G-II)に好適な白金含有触媒の具体例としては、六水和物の形態若しくは無水物の形態のいずれかの塩化白金酸、又は、塩化白金酸をジビニルテトラメチルジシロキサンなどの脂肪族不飽和オルガノシリコン化合物と反応させることを含む方法により得られる白金含有触媒、又はRoyの米国特許第6,605,734号に記載されているアルケン-白金-シリル錯体が挙げられる。アルケン-白金-シリル錯体は、例えば、0.015モルの(COD)PtCl2を、0.045モルのCOD及び0.0612モルのHMeSiCl2と混合することによって調製される(式中、CODは、シクロオクタジエニルを表し、Meは、メチルを表す)。他の例示的なヒドロシリル化反応触媒は、Speierの米国特許第2,823,218号、Ashbyの同第3,159,601号、Lamoreauxの同第3,220,972号、Chalkらの同第3,296,291号、Willingの同第3,419,593号、Modicの同第3,516,946号、Karstedtの同第3,814,730号、Chandraの同第3,928,629号、Leeらの同第3,989,668号、Leeらの同第4,766,176号、Leeらの同第4,784,879号、Togashiの同第5,017,654号、Chungらの同第5,036,117号、及びBrownの同第5,175,325号、並びにTogashiの欧州特許第0347895(A)号、Chevalierらの米国特許出願公開第2019/0367744号(放射線活性化触媒(G-I)及び放射線以外の手段によって活性化可能な触媒(G-II)(例えば、熱活性化触媒)の両方を開示)に記載されている。出発物質(F-II)に好適なヒドロシリル化反応触媒は市販されており、例えば、SYL-OFF(商標)4000触媒及びSYL-OFF(商標)2700が、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から入手可能である。
【0047】
出発物質(G)は、1つのヒドロシリル化反応触媒又は上記のヒドロシリル化反応触媒のうちの2つ以上の組み合わせであり得る。例えば、組成物を硬化させるために放射線への曝露及び加熱の両方が使用される場合、出発物質(G)は、(G-I)及び(G-II)の組み合わせであり得る。あるいは、出発物質(G)は、シクロペンタジエニル白金錯体とPt(II)-βジケトネート錯体との組み合わせなどの、2つ以上の放射線活性化触媒の組み合わせであり得る。当業者は、特定の触媒種が、本明細書に記載されるように、照射又は加熱のいずれかによって活性化され得ること、及び2つ以上の触媒の組み合わせが使用される場合、選択される触媒種が互いに異なることを認識するであろう。
【0048】
組成物中のヒドロシリル化反応触媒(G)の量は、出発物質(A)、(B)、及び(C)、並びに存在する場合には(D)、(E)、及び(F)の選択を含む様々な要因に依存する。アルケニル基及びケイ素結合水素原子のそれぞれの含有量、並びに組成物中に存在するヒドロシリル化反応抑制剤(H)の量を含む様々な要因に依存するが、触媒の量は、SiHとアルケニル基とのヒドロシリル化反応を触媒するのに十分な量であり、あるいは触媒の量は、組成物中の出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)及び(H)の合計量に基づいて、少なくとも質量0.01ppm、あるいは少なくとも質量0.05ppm、あるいは少なくとも質量0.1ppm、あるいは少なくとも質量0.5ppm、あるいは少なくとも質量1ppmの白金族金属を提供するのに十分である。同時に、触媒の量は、組成物中の出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、及び(H)の合計量に基づいて、最大5,000質量ppm、あるいは最大800質量ppm、あるいは最大500質量ppm、あるいは最大100質量ppmの白金族金属を提供するのに十分である。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒の量は、組成物中の出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、及び(H)の合計量に基づいて、0.01質量ppm~5,000質量ppm、あるいは0.1質量ppm~800質量ppm、あるいは0.5質量ppm~500質量ppm、あるいは1質量ppm~100質量ppmの白金族金属を提供するのに十分であり得る。
【0049】
出発物質(H)
出発物質(H)は、任意選択的なヒドロシリル化反応触媒抑制剤である。ヒドロシリル化反応抑制剤は、例えば、組成物を一液型組成物として調製する場合、又は組成物のポットライフ(pot life)を延長するために添加することができる。出発物質(H)は、例えば、アセチレン系アルコール(H-1)、シリル化アセチレン系アルコール(H-II)、エン-イン化合物(H-III)、トリアゾール(H-IV)、ホスフィン(H-V)、メルカプタン(H-VI)、ヒドラジン(H-VII)、アミン(H-VIII)、フマレート(H-IX)、マレエート(H-X)、エーテル(H-XI)、一酸化炭素(H-XII)、アルケニル官能性オルガノシロキサンオリゴマー(H-XIII)(出発物質A-IIとは異なる)、又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせ(H-XIV)であり得る。あるいは、ヒドロシリル化反応抑制剤は、アセチレン系アルコール(例えば、ETCH)、フマレート(例えば、フマル酸ジエチル)、マレエート(例えば、マレイン酸ビス-(メトキシメチル)エチル)、又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせであり得る。
【0050】
アセチレン系アルコールは、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及びETCH、並びにこれらの組み合わせによって例示される。あるいは、阻害剤は、シリル化アセチレン系化合物であってもよい。理論に束縛されるものではないが、シリル化アセチレン系化合物を添加すると、シリル化アセチレン系化合物を含有していない、又は上記したものなどの有機アセチレン系アルコール抑制剤を含有する出発物質のヒドロシリル化による反応生成物と比較して、ヒドロシリル化反応から調製される反応生成物の黄変が低減すると考えられる。シリル化アセチレン系化合物は、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリメチルシラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シランメチルビニルシラン、ビス((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)ジメチルシラン、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、メチル(トリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ))シラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリエチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)メチルトリフルオロプロピルシラン、(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)トリメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルビニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルビニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)トリメチルシラン、及びそれらの組み合わせによって例示される。本明細書における抑制剤として有用なシリル化アセチレン系化合物は、当該技術分野において既知の方法によって調製することができ、例えば、Bilgrienらの米国特許第6,677,407号は、酸受容体の存在下でクロロシランと反応させることによって上記のアセチレン系アルコールをシリル化することを開示している。
【0051】
エン-イン化合物は、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、及びこれらの組み合わせによって例示される。トリアゾールは、ベンゾトリアゾールによって例示される。アミンは、テトラメチルエチレンジアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロピン、n-メチルプロパルギルアミン、プロパルギルアミン、及び1-エチニルシクロヘキシルアミンによって例示される。フマル酸塩としては、フマル酸ジエチルなどのフマル酸ジアルキル、フマル酸ジアリルなどのフマル酸ジアルケニル、フマル酸ビス-(メトキシメチル)エチルなどのフマル酸ジアルコキシアルキルが挙げられる。マレイン酸塩としては、マレイン酸ジエチルなどのマレイン酸ジアルキル、マレイン酸ジアリルなどのマレイン酸ジアルケニル、及びマレイン酸ビス-(メトキシメチル)エチルなどのマレイン酸ジアルコキシアルキルが挙げられる。抑制剤として使用するのに好適なアルケニル官能性オルガノシロキサンオリゴマーは、式
【0052】
【化12】
の1,3-ジビニル-1,3-ジフェニル-1,3-ジメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニル-シクロテトラシロキサン、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせによって例示される。上記の抑制剤として有用な化合物は、例えば、Sigma-Aldrich Inc.又はGelest,Inc.から市販されている。
【0053】
出発物質(H)は、1つのヒドロシリル化反応抑制剤又は上記のヒドロシリル化反応抑制剤のうちの2つ以上の組み合わせであり得る。組成物中に使用される抑制剤の量は、所望の反応速度、使用される特定の抑制剤、並びに出発物質(A)~(G)の各々の選択及び量を含む様々な要因に依存するであろう。しかしながら、存在する場合、抑制剤の量は、組成物中の出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、及び(H)の合計量に基づいて、>0質量部、あるいは少なくとも1質量ppmであり得る。同時に、抑制剤の量は、組成物中の出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、及び(H)の合計量に基づいて、最大10,000質量ppm、あるいは最大1,000質量ppm、あるいは最大500質量ppmであり得る。あるいは、抑制剤の量は、組成物中の出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、及び(H)の合計量に基づいて、0~10,000質量ppm、あるいは>0~1,000質量ppm、あるいは1~500質量ppmであり得る。
【0054】
他の任意選択的な出発物質
組成物は、任意選択的に、シリコーン粘着付与剤、ヒュームドシリカ、レベリング剤、界面活性剤(ヒドロキシアルキル又はヒドロシロキシ基含有シリコーンポリマー若しくは樹脂など)、湿潤剤(保湿剤)、増粘剤、レオロジ調整剤、可塑剤などの非反応性希釈剤(組成物の硬化中及び/若しくは硬化後に意図的に除去されない)、シリコーン油、炭化水素油(イソパラフィンなど)、又はこれらのうちの2つ以上の組み合わせなどの追加の出発物質を含み得る。出発物質は任意選択的であり、追加の出発物質のタイプ及び量は、組成物及びその硬化生成物の最終用途を含む様々な考慮事項に応じて当業者によって選択され得る。
【0055】
硬化性シリコーン組成物を作製する方法
組成物は、室温又は高温で出発物質を混合することを含む方法によって調製することができる。あるいは、特定の出発物質は、混合を容易にするために溶媒中に溶解され得、例えば、市販されている出発物質(C)アルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂及び/又は出発物質(F)が、溶媒中に提供され得る。溶媒は、存在する場合、組成物の1つ以上の他の出発物質と合わせる前に、出発物質から除去され、(E)反応性希釈剤で置き換えられ得る。溶媒除去は、任意選択的に減圧下で、任意選択的に窒素などのパージガスを用いて加熱するなど、任意の便利な手段によって行うことができる。ストリッピング及び/又は蒸留を使用して溶媒を除去してもよい。
【0056】
出発物質は、任意の順序で添加してもよいが、ヒドロシリル化反応抑制剤は、ヒドロシリル化反応触媒の前、例えば組成物を高温で調製する際、及び/又は組成物を一部型組成物として調製する際に、添加することができる。
【0057】
あるいは、組成物は、例えば組成物を使用前に長期間、例えば、組成物を基材上にコーティングする前に最大6時間保管する場合、多液型組成物として調製してもよい。多液型組成物において、ヒドロシリル化反応触媒は、ケイ素結合水素原子を有する任意の出発物質、例えば、1分子当たり2つのケイ素結合水素原子を有する芳香族化合物(B)及び/又は存在する場合にはポリオルガノハイドロジェンシロキサン(F)を有する出発物質とは別の部分に保管され、これらの部分は、組成物の使用直前に混合される。
【0058】
例えば、多液型組成物は、1分子当たり2つのアルケニル基を有する芳香族化合物(A)の少なくとも一部と、使用される場合、アルケニル官能性ポリオルガノシロキサン(D)及び/又は反応性希釈剤(E)と、1分子当たり2つのケイ素結合水素原子を有する芳香族化合物(B)と、使用される場合、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(F)と、任意選択的に、ベース部分を形成するための上記の1つ以上の他の追加の出発物質と、を含む出発物質を、混合などの任意の便利な手段により組み合わせることによって調製することができる。硬化剤は、1分子当たり2つのアルケニル基を有する芳香族化合物(A)の少なくとも一部と、使用される場合、アルケニル官能性ポリジオルガノシロキサン(D)及び/又は反応性希釈剤(E)と、ヒドロシリル化反応触媒(G)と、任意選択的に、上記の1つ以上の他の追加の出発物質と、を含む出発物質を、混合などの任意の便利な手段により組み合わせることによって調製することができる。出発物質は、周囲温度又は高温で混合され得る。出発物質(H)ヒドロシリル化反応抑制剤は、ベース部分、硬化剤部分、又は別個の追加部分のうちの1つ以上に含まれてもよい。出発物質(C)アルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂は、ベース部分、硬化剤部分、又は別個の追加の部分に添加されてもよい。2部型組成物が使用される場合、基部の量の、硬化剤部に対する重量比は、1:1~10:1の範囲とすることができる。組成物は、ヒドロシリル化反応により硬化してシリコーン感圧接着剤を形成するであろう。
【0059】
使用方法
上記のように調製された組成物を使用して、接着剤物品を形成することができ、この接着剤物品は、基材の表面上のシリコーン感圧接着剤層を含む。接着剤物品を形成するための方法は、
任意選択的に、1)基材の表面を処理することと、
2)上記の組成物を基材の表面に適用して、表面上にフィルムを形成することと、
任意選択的に、3)フィルムを加熱することと、
4)フィルムを照射して、基材の表面上にシリコーン感圧接着剤層を形成することと、
任意選択的に、5)シリコーン感圧接着剤層を加熱することと、を含む。
【0060】
基材は、組成物を硬化させて基材上にシリコーン感圧接着剤を形成するために使用される条件(後述)に耐えることができる任意の材料であり得る。例えば、120℃以上、あるいは150℃の温度での熱処理に耐えることができる任意の基材が好適である。このような基材に適切な材料の例としては、ガラス、又はポリイミド(polyimide、PI)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate、PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド(polyamideimide、PAI)、ポリエーテルスルフィド(polyether sulfide、PES)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)などのプラスチックフィルムが挙げられる。基材の厚さは重要ではないが、厚さは、5マイクロメートル~300マイクロメートル、あるいは25マイクロメートル~300マイクロメートルであってもよい。基材は透明であってもよく、あるいは、PSAをUV照射に曝露するのを可能にする限り、透明ではない基材を使用してもよい。あるいは、基材は、ガラス、偏光子フィルム、薄膜トランジスタ(thin film transistor、TFT)、又は支持体(例えば、TFTが取り付けられる鋼支持体)などの(光)電子デバイスの構成要素又は層であり得る。
【0061】
工程1)
基材へのシリコーン感圧接着剤層の結合を改善するために、接着剤物品を形成するための方法は、任意選択的に、基材の表面を処理した後、組成物を適用することを含んでもよい。基材の処理は、組成物をそのように処理された表面に適用する前に、プライマーを適用すること、又は基材をコロナ放電処理、エッチング、若しくはプラズマ処理に供することなどの任意の便利な手段によって実施され得る。
【0062】
工程2)
組成物を基材に適用することは、任意の簡便な手段によって実施することができる。例えば、組成物は、グラビアコーター、オフセットコーター、オフセット・グラビアコーター、ローラコーター、及びリバースローラコーターによって基材上に適用され得る。あるいは、基材の表面への組成物の適用は、スクリーン印刷、ピン転写、ステンシル印刷、又はインクジェット印刷などの印刷プロセスによって実施され得る。例えば、インクジェット印刷プロセスにおけるインクとしての上述の組成物の使用が本明細書において企図される。本明細書に記載の任意の手段によって工程2)において基材の表面上に適用されるフィルムは、連続していてもよく(すなわち、基材の全部又は一部を均一に覆う)、これが硬化して基材の表面上に連続層を形成する。あるいは、フィルムは不連続であってもよく、例えば、基材の表面上に不連続層で組成物を適用するために、インクジェット印刷などの印刷プロセスが使用される。不連続フィルムは、例えば、基材の表面上にパターンを形成することが望ましい場合に適用することができる。好適なインクジェット印刷装置は、当該技術分野において既知であり、市販されている(例えば、Lintonらの米国特許出願公開第2019/0292394号(段落[0052]~[0055])に記載されている装置を参照されたい)。
【0063】
表面基材に適用される組成物の量は、連続又は不連続シリコーン感圧接着剤層が表面上に所望されるかどうか、形成されるシリコーン感圧接着剤層の所望の厚さ、及び接着剤物品の特定の最終用途を含む様々な要因に依存するが、その量は、ヒドロシリル化反応による硬化後、シリコーン感圧接着剤の厚さが0超~最大100マイクロメートル、あるいは最大50マイクロメートルであり得るように十分であり得る。例えば、より厚いシリコーン感圧接着剤が所望される場合、追加の組成物を堆積させるために、任意選択的に、工程2)~5)を繰り返すことができる。
【0064】
工程4)
工程4)においてフィルムを照射することは、市販の紫外線照射装置(例えば、フェイス型又はコンベアベルト型の紫外線照射装置)を使用して、任意の便利な手段によって実施することができ、放射線源として、ランプ(例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ、紫外発光ダイオードなど)が使用される。紫外線照射線量は、0.1W/cm2~10W/cm2を0.1秒間~120秒間(=0.1~1200J/cm2)である。
【0065】
任意選択的な工程3)及び5)
工程3)及び5)は、上記の方法において任意選択的であるが、工程3)及び工程5)の一方又は両方がない場合、組成物の硬化速度は、いくつかの最終用途では、所望される硬化速度よりも遅くなる可能性がある。したがって、硬化速度を増加させるために、任意選択的な工程3)及び/又は任意選択的な工程5)が含まれてもよい。工程3)及び工程5)では、少なくとも30℃、あるいは少なくとも40℃、あるいは少なくとも50℃の温度で加熱が行われる。同時に、温度は最大200℃、あるいは最大150℃、あるいは最大100℃であり得る。あるいは、加熱は、30℃~200℃、あるいは40℃~150℃、あるいは50℃~100℃で行われ得る。加熱は、フィルム又は層に熱を伝導するのに十分な時間行われ、正確な時間は、選択された温度、層の厚さ、及びヒドロシリル化反応抑制剤が使用されるかどうかなどの様々な要因に依存するであろう。ボックスオーブン、リフロー、(近)赤外線ランプ、又は(近)赤外発光ダイオード(NIR-LED)などの従来の加熱装置を使用することができる。
【0066】
工程4)の後、又は工程5)が存在する場合、組成物を硬化させることによって、シリコーン感圧接着剤層が形成されている。本方法は、被着体の表面と基材の反対側の硬化シリコーン感圧接着剤とを接触させて、結合を形成させることを更に含み得る。被着体の表面は、任意選択的に、工程1)について上に記載した処理方法を使用して、接触前に処理することができる。
【実施例】
【0067】
これらの実施例は、当業者に本発明を例示することを目的とするものであり、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。これらの実施例で使用した出発物質を、表1に要約する。
【0068】
【0069】
参考例1-硬化性シリコーン組成物の調製
この参考例1では、表1の出発物質を表2~4に示される量で含有する硬化性シリコーン組成物の試料を以下のように調製した:出発物質(C)は、粘度が高いため、トルエン、キシレンなどの溶媒に溶解してもよい。無溶媒組成物を調製するために、溶媒中で送達される任意の出発物質について、溶媒を蒸発させ、混合を容易にするために反応性希釈剤で置き換えてもよい。例えば、Inv.1を調製するには、まず、21.51gの出発物質(A-1)及び78.49gの出発物質(B-1)を、キシレン(75重量%)に溶解させた77.42gの出発物質(C-1)を含有する103.22gの溶液に添加した。次いで、窒素バブリングしながら、80℃で5時間減圧下で溶媒を除去し、残留溶媒が10ppm未満になるように制御した。室温まで冷却した後、上記の混合物に39.06gの出発物質(D-1)を添加し、室温で10分間撹拌機によって混合した。加えて、0.04gの出発物質(F-1)を添加し、室温で10分間撹拌機によって混合した。Comp.7~12及びInv.2~18は、表中の出発物質及び量を使用して、同様に調製した。Comp.1~6は、(C-1)及び(C-2)などの中間体を含有するいかなる溶媒も使用しなかったので、溶媒蒸発プロセスを除いて、同様に調製した。
【0070】
参照例2-粘度
この参考例2では、参考例1に従って調製した硬化性シリコーン組成物の各試料の粘度を、以下のように測定した:粘度は、25℃で、CPA-40Zスピンドルを使用して、Brookfield DV1粘度計によって測定した。粘度を2分間測定し、トルクを20~80%の範囲で制御した。測定終了後に最新のデータを収集した。結果を以下の表2~4に示す。
【0071】
参考例3-接着力
この参考例3では、上記のように調製した硬化性シリコーン組成物の試料を硬化させ、得られた感圧接着剤層の接着力を以下のように評価した:上記のように調製した各試料を、ガラス板上にフィルムとして適用した。接着剤層は、UV照射し、続いて80℃で30分間加熱することによって生成し、それによって、厚さが40μmの層が形成された。UV照射の条件は、フィルムの上面から365nmのLEDランプ(FireJet(商標)FJ100)を用いて、UV照度10J/cm2で紫外線を照射した。
【0072】
コロナ処理されたポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)フィルムのストリップを、得られた層の上に置き、重量2kgのゴム張り加圧ローラをストリップ上で2回前後に動かすことによって、それに結合させた。得られた積層体を、室温で1日間エージングした。PETフィルムの層を2.54cm(1インチ)幅のテープストリップに切断し、次いで、2400mm/分の速度及び180度の角度で引っ張ることによってガラス板からテープを剥離するのに必要な接着力(g/インチ)を測定した。データは、マルチスピード剥離試験機(CKTS-770,CKSI Co.,Ltd)によって収集された。結果を以下の表2~4に示す。
【0073】
参照例4-弾性率
この参考例4では、上記のように調製した硬化性シリコーン組成物の試料を硬化させ、得られた感圧接着剤層の接着力を以下のように評価した:上記のように調製した各試料を、(厚さ=1mm)鋳型に流し込み、離型性フィルムの間に挟んだ。組み立てた試料を、参考例3において上に記載したのと同様に硬化させた。離型性フィルムを除去した後、試料をレオメータ(AtonParr(商標)MCR-502)の平行板形状(25mm)上に取り付けた。次いで、動的貯蔵弾性率(G’)を、25℃で、1.0%の歪み及び0Nの垂直抗力を用いて、1Hzの固定周波数で収集した。
【0074】
参考例5-透過率
上記のように調製した各試料を、鋳型(厚さ=50μm)に流し込み、マイクロスライドガラス(Matsunami Glass Co.,Ltd,製品番号9213)の間に挟んだ。組み立てた試料を、参考例3において上に記載したのと同様に硬化させた。500nmでの透過率及びCIE(L、a、b)は、ASTM D 1003(紫外可視分光光度計,Konica Minolta CM-3600A,参照=Matsunami Glass Co.,Ltd,製品#9213)に規定された方法によって測定した。結果を以下の表2~4に示す。
【0075】
参考例6-インクジェット性能
参考例1に従って調製した硬化性シリコーン組成物の試料を、インクジェットヘッド(KM1024i 30pl、KONICA MINOLTA,INCによって供給)に注入した。インクジェットプロセス操作は、Unijetによって供給されたOmniJetシリーズによって行った。インクジェットヘッドの動作温度は25℃であり、インクジェットヘッドと基材との間の距離は400umであった。基材は、Corning(商標)Eagleから供給された100mm×100mmガラスであった。
図1は、INV1による硬化性シリコーン組成物の液滴の画像を示す。これは、液滴がインクジェットヘッドから吐出されたときに、尾を引くことなく適切に形成されることを実証する。滴下速度及び体積は、それぞれ2.56m/秒及び24plである。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
比較例1~6は、アルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂(C)を省くと、試験した条件下では不十分な接着力をもたらすことを示している。しかしながら、比較例12は、樹脂(C)の量が多すぎる場合、組成物の粘度もインクジェット印刷用途に望ましいものよりも高かったことを示す。比較例7及び8は、出発物質(A)が省略され、出発物質(D)の量が多すぎる場合、総フェニル含有量が低すぎ、試験した条件下では接着力が望ましいものよりも低かったことを示す。比較例9~11は、組成物中のフェニル含有量が低すぎる(≦245mmol/100g)場合、得られたフィルムは、試験した条件下では望ましくない低い接着力を有したことを示す。理論に束縛されることを望むものではないが、組成物中のフェニル含有量を高めるために、出発物質(D)の量は、出発物質(A)及び出発物質(B)との合計100質量部当たり0質量部~52.5質量部である必要があると考えられる。理論に束縛されることを望むものではないが、アリール(フェニル)含有量は、出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)の合計量に基づいて、>245~430mmol/100gである必要があると考えられる。したがって、実施例1~22(INV1~INV22)は、より高い接着力(少なくとも100gf/in超)を有するために、フェニル含有量及び出発物質(C)の量の適切な範囲を実証し、これは、芳香族化合物(出発物質(A)及び(B))とアルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂(出発物質(C))との両方の組み合わせ効果が、組成物を低粘度に維持しながらより高い接着力を達成するために重要であることを示す。
【0081】
産業上の利用可能性
実施例は、25℃で<100mPa・sの粘度を有する硬化性シリコーン組成物が、本明細書に記載されるように調製され得ることを示す。更に、基材上にコーティング基材上にコーティングされ、硬化して、乾式接合法によってシリコーン感圧接着剤層を形成した場合、シリコーン感圧接着剤は、25℃で10
3<G<10
6であるような値の弾性率(G)及び100gf/in超の平均接着力を有する。更に、表3の実施例1~8は、異なる種の出発物質(A)及び(B)が、試験した条件下で有効であることを示した。加えて、実施例23~26は、高い光透過率及び高温エージング条件での光安定性を示した。
図1は、適切なインクジェット性能を示した。
【0082】
解決されるべき課題
ポリマー材料のインクジェット印刷は、OLEDの製造において有機薄膜層を直接堆積させるために使用されてきた。トルエン又はキシレンなどの従来の溶媒は、この堆積にはうまく機能しない。インクジェット印刷プロセスは、平面又は曲面のいずれかに層又は微細パターンを形成するために使用することができる。特に、インクジェット印刷は、印刷層の厚さを50μm未満に減少させることができ、印刷層又はパターンの不均一性を防止することができるという点で有利である。しかしながら、米国特許第7,687,591号及び同第8,754,174号に開示されているような既知の無溶媒シリコーン感圧接着剤組成物は、組成物が硬化したときに非常に薄い接着剤層(例えば、50μm以下)を形成するためにインクジェット印刷プロセスで使用するには高すぎる粘度を有する。
【0083】
溶液
本シリコーン感圧接着剤組成物は、25℃で、CPA-40Zスピンドルを使用して、Brookfield DV1粘度計によって測定して、100mPa・s未満、あるいは50mPa・s未満、あるいは30mPa・s未満の粘度を有する。この低粘度は、本発明のシリコーン感圧接着剤組成物をインクジェット印刷プロセスでの使用に好適なものにする。このシリコーン感圧接着剤組成物は、基材上に印刷し、硬化させて、50μm以下の厚さを有するシリコーン感圧接着剤(層又はパターン)を形成することができる。このシリコーン感圧接着剤組成物は、100mPa・s未満の低粘度を必要とする射出接合法などの任意の光学接合用途に使用することができる。
【0084】
用語の定義及び使用
全ての量、比率、及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。「発明の概要」及び「要約書」は、参照により本明細書に組み込まれる。「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing)of)」という観念を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば(such as,)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用される略語は、表6における定義を有する。
【0085】
【0086】
試験方法
本明細書では、以下の試験方法を使用した。
【0087】
粘度は、25℃で、CPA-40Zスピンドルを使用して、Brookfield DV1粘度計によって測定した。粘度を2分間測定し、トルクを20~80%の範囲に制御した。測定終了後に最新のデータを収集した。
【0088】
以下の方法に従って、ゲル浸透クロマトグラフィによって分子量を測定した。0.5%w/vの濃度のトルエン中で試料を調製し、0.45μmのPTFEシリンジフィルタで濾過し、ポリスチレン標準に対して分析した。分子量を求めるために使用した相対検量線(三次フィット)は、580~2,610,000ダルトンの分子量範囲の16種のポリスチレン標準に基づくものであった。クロマトグラフィ機器は、真空デガッサを備えるWaters 2695セパレーションモジュールと、Waters 2414示差屈折計と、styragelガードカラム(4.6×30mm)が前に設置された2本(7.8mm×300mm)のstyragel HRカラム(100~4,000,000の分子量分離範囲)とからなっていた。1.0mL/分で流れるようにプログラムしたトルエンを使用して分離を行い、注入体積は100μLにセットし、カラム及び検出器は45℃まで加熱した。データ収集を60分間行い、Empowerソフトウェアを使用して処理を実施した。樹脂について本明細書中で使用される場合、Mw(Weight Average Molecular Weight、重量平均分子量)及びMn(Number Average Molecular Weight、数平均分子量)は、ネオペンタマーを表すピークが測定から除外される場合の分子量を表す。
【0089】
各出発物質中の全一価炭化水素基中の不飽和脂肪族炭化水素基の量及びケイ素結合水素の量は、核磁気共鳴(NMR)によって例示される分析方法によって測定した。出発物質の平均分子式は、29Si-NMR及び13C-NMR分析によって決定した。NMR装置:10mm Siフリープローブ/5mm BBFOプローブを備えるフーリエ変換核磁気共鳴分光計Bruker 500MHz AVANCE 3 NMR。
【0090】
SiH/Vi比は、以下の式から計算した。
【0091】
【0092】
出発物質中のフェニル含有量は、以下の式から計算した。総フェニル含有量(mmol/g100g)は、出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)の総重量(100g)当たりの出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)のフェニル部分のフェニル含有量に基づいて計算した。
【0093】
【0094】
本発明は例示的な様式で記載されており、使用されている用語は、限定というよりむしろ説明語の性質であるように意図されることを理解されたい。本明細書で個々の特徴又は態様の記述が依拠している任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な及び/又は不測の結果が、全ての他のマーカッシュ群の要素から独立して、それぞれのマーカッシュ群の各要素から得られる場合がある。マーカッシュ群の各要素は、添付の特許請求の範囲の範囲内で、特定の実施形態に、個々に及び又は組み合わされて依拠され得、十分なサポートを提供する。
【0095】
更に、本発明を説明する際に依拠される任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び包括的に、添付の特許請求の範囲の範囲内に入り、本明細書にその中の全部及び/又は部分の値が明記されていなくても、その中の全部及び/又は部分の値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、このような範囲及び部分範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、範囲「1~18」は、下位3分の1(すなわち、1~6)、中位3分の1(すなわち、7~12)、及び上位3分の1(すなわち、13~18)と更に区切ることができ、これらは個別的及び集合的に添付の特許請求の範囲の範囲内であり、添付の特許請求の範囲の範囲内の特定の実施形態に個別的及び/又は集合的に依拠する場合があり、それらに適切な根拠を提供し得る。加えて、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」、「未満」、「以下」などに関して、このような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。
【0096】
本発明の実施形態
第1の実施形態では、硬化性シリコーン組成物は、
(A)1分子当たり2つのアルケニル基を有し、分子量が1,000g/mol未満である、10質量部~90質量部の量の芳香族化合物であって、
式(A-I):R1-R2-R1の有機化合物、
式(A-II):
【0097】
【化13】
のシロキサンオリゴマー、並びに
(A-III)式(A-I)の有機化合物及び式(A-II)のシロキサンオリゴマーの両方の組み合わせ、からなる群から選択され、式中、各R
1は、独立して選択される2~12炭素原子のアルケニル基であり、各R
2は、6~20炭素原子のアリーレン部分であり、各R
3は、独立して、1~12炭素原子のアルキル基及び6~20炭素原子のアリール基からなる群から選択され、ただし、R
3の全ての場合の15モル%~50モル%がアリール基であり、R
3の全ての場合の50モル%~85モル%がアルキル基であることを条件とし、添字aは、2~3の値を有する整数である、芳香族化合物と、
(B)1分子当たり2つのケイ素結合水素原子を有し、分子量が1,000g/mol未満である、90質量部~10質量部の量の芳香族化合物であって、
出発物質(A)の量及び出発物質(B)の量の合計が100質量部であることを条件とする、芳香族化合物と、
(C)出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり10質量部~130質量部の量のアルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂と、
任意選択的に、(D)出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり0~52.5質量部の量のアルケニル官能性ポリジオルガノシロキサンと、
任意選択的に、(E)1分子当たり少なくとも1つの不飽和脂肪族基(aliphatically unsaturated group)を有する8~18炭素原子の炭化水素化合物を含む、出発物質(A)及び出発物質(B)の合計の0~25質量部の量の反応性希釈剤と、
任意選択的に、(F)出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり0~8質量部の量のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、
出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)が、0.5/1~2/1のケイ素結合水素原子/アルケニル基のモル比(SiH/Vi比)及び246mmol/100g~450mmol/100gのアリール含有量を提供するのに十分な量で存在することを条件とする、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(G)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、及び(H)の合計量に基づいて、0.1質量ppm~5,000質量ppmの白金族金属を提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
任意選択的に、(H)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)及び(H)の合計量に基づいて、0~10,000質量ppmの量のヒドロシリル化反応抑制剤と、を含む。
【0098】
第2の実施形態では、第1の実施形態に記載の組成物において、式(A-I)の化合物が、ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0099】
第3の実施形態では、第1の実施形態に記載の組成物において、式(A-II)の化合物が、1,5-ジビニル-3,3-ジフェニル-1,1,5,5-テトラメチルトリシロキサン、1,5-ジビニル-3-フェニルペンタメチルトリシロキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0100】
第4の実施形態では、第1~第3の実施形態のいずれか1つに記載の組成物において、出発物質(B)は、式(B-I)を有する。
【0101】
第5の実施形態では、第4の実施形態に記載の組成物において、式(B-I)のシロキサンオリゴマーは、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン、1,1,7,7,-テトラメチル-3,3,5,5-テトラフェニルテトラシロキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0102】
第6の実施形態では、第1~第3の実施形態のいずれか1つに記載の組成物において、オルガノシリコンオリゴマーは、式(B-II)を有する。
【0103】
第7の実施形態では、第6の実施形態に記載の組成物において、式(B-II)のシロキサン有機ハイブリッドオリゴマーは、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを含む。
【0104】
第8の実施形態では、第1~第7の実施形態のいずれか1つに記載の組成物において、アルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂は、平均式(C-I):(R4
3SiO1/2)c(R1R4
2SiO1/2)d(SiO4/2)e(HO1/2)fを有し、式中、各R1は、独立して選択される2~12炭素原子のアルケニル基であり、各R4は、独立して選択される1~12炭素原子のアルキル基であり、添字c、d、e、及びfは、モル分率を表し、c≧0、添字d>0、0.3≦(c+d)≦0.7、0.3≦e≦0.7、かつ0≦f≦0.05であり、ただし、量(c+d+e+f)=1であることを条件とし、アルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂が、平均式を有し、GPCによって測定される1,500g/mol~5,000g/molの数平均分子量を有する。
【0105】
第9の実施形態では、第1~第7の実施形態のいずれか1つに記載の組成物において、アルケニル官能性有機ケイ酸塩樹脂は、平均式(C-II):(R4
3SiO1/2)m(R1R4
2SiO1/2)n(R6SiO3/2)o(SiO4/2)p(HO1/2)qを有し、式中、各R1は、独立して選択される2~12炭素原子のアルケニル基であり、各R4は、独立して選択される1~12炭素原子のアルキル基であり、R6は、6~20炭素原子のアリール基であり、添字m、n、o、p、及びqは、m≧0、n>0、0.3≦(m+n)≦0.7、0≦o≦0.3、0.3≦p≦0.7、かつ0≦q≦0.05、ただし、量(m+n+o+p+q)=1であることを条件とするような値を有するモル分率を表し、アルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂が、GPCによって測定される1,500g/mol~5,000g/molの数平均分子量を有する。
【0106】
第10の実施形態では、第8又は第9の実施形態に記載の組成物において、各R1が、ビニルであり、各R4が、メチルであり、R6が、フェニルである。
【0107】
第11の実施形態では、第1~第10の実施形態のいずれか1つに記載の組成物において、出発物質(D)が、>0~40質量部の量で存在する。
【0108】
第12の実施形態では、第1~第11の実施形態のいずれか1つに記載の組成物において、出発物質(D)が存在し、出発物質(D)は、α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、並びにα,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン及びα,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)の両方の組み合わせからなる群から選択される。
【0109】
第12の実施形態では、第1~第11の実施形態のいずれか1つに記載の組成物において、出発物質(E)が存在し、1-テトラデセンを含む。
【0110】
第13の実施形態では、第1~第12の実施形態のいずれか1つにおいて、出発物質(F)は、>0~2質量部の量で存在する。
【0111】
第14の実施形態では、第1~第13の実施形態のいずれか1つに記載の組成物において、出発物質(F)が存在し、出発物質(F)は、α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、並びにα,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)及びα,ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサンの両方の組み合わせからなる群から選択される。
【0112】
第15の実施形態では、第1~第14の実施形態のいずれか1つに記載の組成物において、出発物質(G)は、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)、白金、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体、並びにトリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)及び白金、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の両方の組み合わせからなる群から選択される。
【0113】
第16の実施形態では、第1~第15の実施形態のいずれか1つに記載の組成物において、出発物質(H)が存在し、出発物質(H)は、フマル酸ジエチル、マレイン酸ビス-(メトキシメチル)エチル、1,3-ジビニル-1,3-ジフェニル-1,3-ジメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニル-シクロテトラシロキサン、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0114】
第17の実施形態では、第1~第16の実施形態のいずれか1つに記載の組成物は、シリコーン感圧接着剤を形成するためにインクジェット印刷プロセスにおいて使用される。
【0115】
第18の実施形態では、第17の実施形態に記載のインクジェット印刷プロセスによって調製されたシリコーン感圧接着剤は、薄膜トランジスタを支持体に接着するために使用される。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性シリコーン組成物であって、
(A)1分子当たり2つのアルケニル基を有し、分子量が1,000g/mol未満である、10質量部~90質量部の量の芳香族化合物であって、
式(A-I):R
1-R
2-R
1の有機化合物、
式(A-II):
【化1】
のシロキサンオリゴマー、並びに
(A-III)前記式(A-I)の有機化合物及び前記式(A-II)のシロキサンオリゴマーの両方の組み合わせ、からなる群から選択され、式中、各R
1は、独立して選択される2~12炭素原子のアルケニル基であり、各R
2は、6~20炭素原子のアリーレン部分であり、各R
3は、独立して、1~12炭素原子のアルキル基及び6~20炭素原子のアリール基からなる群から選択され、ただし、R
3の全ての場合の15モル%~50モル%がアリール基であり、R
3の全ての場合の50モル%~85モル%がアルキル基であることを条件とし、添字aは、2~3の値を有する整数である、芳香族化合物と、
(B)1分子当たり2つのケイ素結合水素原子を有し、分子量が1,000g/mol未満である、90質量部~10質量部の量の芳香族化合物であって、
出発物質(A)の量及び出発物質(B)の量の合計が100質量部であることを条件とする、芳香族化合物と、
(C)出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり10質量部~130質量部の量のアルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂と、
任意選択的に、(D)出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり0~52.5質量部の量のアルケニル官能性ポリジオルガノシロキサンと、
任意選択的に、(E)1分子当たり少なくとも1つの不飽和脂肪族基(aliphatically unsaturated group)を有する8~18炭素原子の炭化水素化合物を含む、出発物質(A)及び出発物質(B)の合計の0~25質量部の量の反応性希釈剤と、
任意選択的に、(F)出発物質(A)及び出発物質(B)の合計100質量部当たり0~8質量部の量のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、
出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、及び(F)が、0.5/1~2/1のケイ素結合水素原子/アルケニル基のモル比(SiH/Vi比)、246mmol/100g~450mmol/100gのアリール含有量を提供するのに十分な量で存在することを条件とする、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(G)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、及び(H)の合計量に基づいて、0.1質量ppm~5,000質量ppmの白金族金属を提供するのに十分な量のヒドロシリル化反応触媒と、
任意選択的に、(H)出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)及び(H)の合計量に基づいて、0~10,000質量ppmの量のヒドロシリル化反応抑制剤と、を含む、硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
式(A-I)及び式(A-II)において、各R
1が、独立して、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から選択され、各R
2が、独立して、
【化2】
からなる群から選択され、各R
3が、独立して、メチル基及びフェニル基からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(A-I)の化合物が、ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記式(A-II)の化合物が、1,5-ジビニル-3,3-ジフェニル-1,1,5,5-テトラメチルトリシロキサン、1,5-ジビニル-3-フェニルペンタメチルトリシロキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
出発物質(B)が、式(B-I):
【化3】
のシロキサンオリゴマー、式(B-II):
【化4】
のオルガノシリコンオリゴマー、並びに前記シロキサンオリゴマー及び前記オルガノシリコンオリゴマーの両方の組み合わせからなる群から選択され、式中、各R
2が、6~20炭素原子のアリーレン部分であり、各R
3が、独立して、1~12炭素原子のアルキル基及び6~20炭素原子のアリール基からなる群から選択され、ただし、R
3の全ての場合の15モル%~50モル%がアリール基であり、R
3の全ての場合の50モル%~85モル%がアルキル基であることを条件とし、各R
4が、独立して選択される1~12炭素原子のアルキル基であり、添字bが、1~3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
式(B-I)及び式(B-II)において、各R
2が、
【化5】
からなる群から選択され、各R
3が、メチル基又はフェニル基であり、各R
4が、メチル基である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
出発物質(B)が、
前記式(B-I)のシロキサンオリゴマーであって、1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン、1,1,7,7-テトラメチル-3,3,5,5,-テトラフェニルテトラシロキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、シロキサンオリゴマー、又は
前記式(B-II)のオルガノシリコンオリゴマーであって、式(B-II)のシロキサン有機ハイブリッドオリゴマーが、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを含む、オルガノシリコンオリゴマー、
前記式(B-I)のシロキサンオリゴマー及び前記式(B-II)のシロキサン有機ハイブリッドオリゴマーの両方の組み合わせ、を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂が、平均式(C-I):(R
4
3SiO
1/2)
c(R
1R
4
2SiO
1/2)
d(SiO
4/2)
e(HO
1/2)
fを有し、式中、各R
4は、独立して選択される1~12炭素原子のアルキル基であり、添字c、d、e、及びfは、モル分率を表し、c≧0、添字d>0、0.3≦(c+d)≦0.7、0.3≦e≦0.7、かつ0≦f≦0.05であり、ただし、量(c+d+e+f)=1であることを条件とし、前記アルケニル官能性ポリオルガノシリケート樹脂が、平均式を有し、1,500g/mol~5,000g/molの数平均分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
出発物質(D)が存在し、単位式:(R
5
3SiO
1/2)
g(R
5
2SiO
2/2)
h(R
5SiO
3/2)
i(SiO
4/2)
jを有し、式中、各R
5は、独立して、1~12炭素原子のアルキル基、2~12炭素原子のアルケニル基、及び6~20炭素原子のアリール基からなる群から選択される一価炭化水素基であり、ただし、R
5の全ての場合の0.01mol%~1mol%がアルケニル基であることを条件とし、添字g、h、i、j、及びkは、0<g≦0.4、0.6≦h≦1、0≦i≦0.03、0≦k≦0.03、かつ量(g+h+i+j)=1であるような値を有するモル分率を表し、出発物質(D)が、25℃で、1mPa・s~100,000mPa・sの粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
出発物質(E)が、8~12炭素原子の1-アルケンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
出発物質(F)が存在し、単位式:(R
4
3SiO
1/2)
t(HR
4
2SiO
1/2)
u(R
4
2SiO
2/2)
v(HR
4SiO
2/2)
w(R
4SiO
3/2)
x(HSiO
3/2)
y(SiO
4/2)
zを有し、式中、各R
4は、独立して選択される1~12炭素原子のアルキル基であり、添字t、u、v、w、x、y、及びzは、前記式における各単位の平均数を表し、t≧0、u≧0、v≧0、w≧0、x≧0、y≧0、z≧0、量(u+w+y)≧2であり、かつ量(t+u+v+w+x+y+z)がポリオルガノハイドロジェンシロキサンに25℃で2mPa・s~1,000mPa・sの粘度を与えるのに十分であるような値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
出発物質(G)が、(G-I)放射線活性化ヒドロシリル化反応触媒、(G-II)照射以外の手段によって活性化可能なヒドロシリル化触媒、又は(G-III)これらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
出発物質(H)が存在し、アセチレン系アルコール、シリル化アセチレン系アルコール、エン-イン化合物、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、ヒドラジン、アミン、フマレート、マレエート、エーテル、一酸化炭素、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
インクジェット印刷プロセスにおけるインクとしての、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
方法であって、
任意選択的に、1)基材の表面を処理することと、
2)前記基材の前記表面上に、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物を適用することと、
3)前記組成物を硬化させて、前記表面上にシリコーン感圧接着剤を形成することと、を含む、方法。
【請求項15】
任意選択的に、4)被着体の表面を処理することと、
任意選択的に、5)前記被着体の前記表面と前記基材の反対側の前記シリコーン感圧接着剤とを接触させることと、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【国際調査報告】