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特表2024-506512スルファミルフルオリド組成物及びスルファミルフルオリド組成物を作製するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】スルファミルフルオリド組成物及びスルファミルフルオリド組成物を作製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/086 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
C01B21/086
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544389
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 US2022070412
(87)【国際公開番号】W WO2022165515
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】63/143,102
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/582,562
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ポイントナー、バーナード イー.
(72)【発明者】
【氏名】ギヒーン、ジェームズ ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】レオーネ、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ハードライン、ジョン ティ.
(72)【発明者】
【氏名】ルリー、マシュー エイチ.
(57)【要約】
スルファミルフルオリド組成物を生成するためのプロセスは、フルオロスルホン酸、尿素、及び溶媒を含む溶液を提供することと、溶液を80℃~約170℃の反応温度で反応させて、スルファミルフルオリド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロ硫酸アンモニウム、及び溶媒を含む混合物を生成することと、混合物からフルオロ硫酸アンモニウムを分離することと、混合物をスルファミルフルオリド組成物とリサイクル組成物とに分離することであって、スルファミルフルオリド組成物が、リサイクル組成物よりも高い濃度のスルファミルフルオリド及びビス(フルオロスルホニル)イミドを含む、分離することと、を含む。溶液中のフルオロスルホン酸対尿素のモル比は、約1.80:1~約2.00:1である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルファミルフルオリド組成物を生成するためのプロセスであって、
フルオロスルホン酸、尿素、及び溶媒を含む溶液を提供することであって、前記フルオロスルホン酸対前記尿素のモル比が、約1.80:1~約2.00:1である、提供することと、
前記溶液を80℃~約170℃の反応温度で反応させて、スルファミルフルオリド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロ硫酸アンモニウム、及び前記溶媒を含む混合物を生成することと、
前記混合物から前記フルオロ硫酸アンモニウムを分離することと、
前記混合物を前記スルファミルフルオリド組成物とリサイクル組成物とに分離することであって、前記スルファミルフルオリド組成物が、前記リサイクル組成物よりも高い濃度のスルファミルフルオリド及びビス(フルオロスルホニル)イミドを含む、分離することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記リサイクル組成物を前記反応させるステップに再びリサイクルすることを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記プロセスが、連続プロセスである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記プロセスが、半バッチプロセスである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記溶媒が、ビス(フルオロスルホニル)イミド、スルホラン、及びジメチルホルムアミドから選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記スルファミルフルオリド組成物中の前記スルファミルフルオリドの濃度が、前記スルファミルフルオリドとビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの約1モルパーセント~約10モルパーセントである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記提供するステップにおいて、前記フルオロスルホン酸対前記尿素の前記モル比が、約1.80:1~約1.90:1であり、前記混合物を前記スルファミルフルオリド組成物と前記リサイクル組成物とに前記分離するステップにおいて、前記スルファミルフルオリド組成物中の前記スルファミルフルオリドの前記濃度が、前記スルファミルフルオリドとビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの約4モルパーセント~約8モルパーセントである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記混合物から前記フルオロ硫酸アンモニウムを分離することが、前記混合物を蒸発させて、前記スルファミルフルオリド組成物を形成することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記混合物をスルファミルフルオリド組成物とリサイクル組成物とに分離することが、前記混合物を蒸留することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記スルファミルフルオリド組成物から前記スルファミルフルオリドを分離して、濃縮スルファミルフルオリド組成物を形成することを更に含み、前記濃縮スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドの濃度が、前記濃縮スルファミルフルオリド組成物の約50重量パーセント~約99.9重量パーセントである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記スルファミルフルオリド組成物を追加のフルオロスルホン酸と混合することと、
80℃~約170℃の反応温度で、反応器中で前記スルファミルフルオリド組成物と前記追加のフルオロスルホン酸との前記混合物を反応させて、粗HFSI生成物組成物及び揮発性組成物を生成することであって、前記揮発性組成物が、フルオロスルホン酸及び水を含み、前記粗HFSI生成物組成物が、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロ硫酸アンモニウム、未反応フルオロスルホン酸、及び未反応スルファミルフルオリドを含み、前記粗HFSI生成物組成物中の未反応スルファミルフルオリドの濃度が、前記スルファミルフルオリドと前記ビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの0.5モルパーセント未満である、生成することと、
前記粗HFSI生成物組成物から前記フルオロ硫酸アンモニウムを分離して、HFSI生成物組成物を生成することと、
前記HFSI生成物組成物を濃縮HFSI生成物組成物と塔頂ストリーム組成物とに分離することであって、前記濃縮HFSI生成物組成物が、前記塔頂ストリーム組成物よりも高い濃度のビス(フルオロスルホニル)イミドを含む、分離することと、を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
組成物であって、
スルファミルフルオリドと、
ビス(フルオロスルホニル)イミドであって、前記スルファミルフルオリドの濃度が、前記スルファミルフルオリドと前記ビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの約1モルパーセント~約10モルパーセントである、ビス(フルオロスルホニル)イミドと、を含む、組成物。
【請求項13】
前記スルファミルフルオリドの前記濃度が、前記スルファミルフルオリドと前記ビス(フルオロスルホニル)イミドとの前記組み合わせの約2モルパーセント~約9モルパーセントである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記スルファミルフルオリドの前記濃度が、前記スルファミルフルオリドと前記ビス(フルオロスルホニル)イミドとの前記組み合わせの約3モルパーセント~約8モルパーセントである、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記スルファミルフルオリドの前記濃度が、前記スルファミルフルオリドと前記ビス(フルオロスルホニル)イミドとの前記組み合わせの約4モルパーセント~約8モルパーセントである、請求項12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月29日に出願された米国特許仮出願第63/143,102号に対する利益を主張する、2022年1月24日に出願された米国特許出願第17/582,562号に対する優先権を主張するものであり、これらは両方とも、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、スルファミルフルオリド組成物及びスルファミルフルオリド組成物を生成するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
スルファミルフルオリド(HNSOF)は、リチウムイオン電池において有用であり得るリチウムスルファミルフルオリドの生成における原料としてを含む、多くの用途において有用な強酸である。
【0004】
ビス(フルオロスルホニル)イミド(HFSI)は、リチウムイオン電池に使用されるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の生成において重要な原料である。HFSIは、いくつかの方法によって調製することができる。
【0005】
Hondaらの米国特許第8,337,797号は、HFSIが、式1に示される尿素とフルオロスルホン酸との反応によって調製され得ることを開示している。
式1 5HSOF+2CO(NH→HN(SOF)+2CO+3NHSOF。
【0006】
Hondaは、尿素及びフルオロスルホン酸からHFSIを生成するための2段階バッチプロセスを開示している。第1のステップでは、尿素とフルオロスルホン酸との間の式1の反応を防止するのに十分に低い温度で、尿素をフルオロスルホン酸に溶解する。第2のステップでは、尿素/フルオロスルホン酸溶液を、式1の反応が進むのに十分に加熱された反応媒体を含む別々の反応容器にゆっくりと加える。制御して加えることにより、式1の発熱反応によって発生する熱を制御することを可能にする。米国特許第8,337,797号は、加熱された反応媒体がフルオロスルホン酸又はHFSIになり得ることを開示しているが、フルオロスルホン酸とHFSIとの混合物を使用することが好ましく、HFSIは、特に開始時に、尿素/フルオロスルホン酸溶液が最初に加熱された反応媒体に添加されるときに、反応を更に制御するのに役立つ。しかしながら、米国特許第8,337,797号に開示されているバッチプロセスは、効率的な商業規模でHFSIを生成するのに十分ではない。
【0007】
Hondaらの国際公開第2011/111780号は、徹底的なオーバーフロー出口など、反応容器から反応液を連続的に除去し、スラリー状態(アンモニウム塩副生成物を含む)で反応液を連続的に排出するための回収プロセスを更に開示する。開示されたプロセスは、生成バッチで行われ、生成物HFSIは、次の生成バッチの反応の前に反応容器に再び加えられる。
【0008】
したがって、商業的な量のスルファミルフルオリドを生成するために規模を拡大することができる効率的なプロセス、及び商業的な量のHFSIを生成するために規模を拡大することができるより効率的なプロセスを開発する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、スルファミルフルオリド組成物、スルファミルフルオリド組成物を生成するためのプロセス、及びスルファミルフルオリド組成物からHFSIを生成するためのプロセスを提供する。
【0010】
一実施形態では、本発明は、スルファミルフルオリド組成物を生成するためのプロセスを提供する。本プロセスは、フルオロスルホン酸、尿素、及び溶媒を含む溶液を提供することであって、フルオロスルホン酸対尿素のモル比が、約1.80:1~約2.00:1である、提供することと、溶液を80℃~約170℃の反応温度で反応させて、スルファミルフルオリド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロ硫酸アンモニウム、及び溶媒を含む混合物を生成することと、混合物からフルオロ硫酸アンモニウムを分離することと、混合物をスルファミルフルオリド組成物とリサイクル組成物とに分離することであって、スルファミルフルオリド組成物が、リサイクル組成物よりも高い濃度のスルファミルフルオリド及びビス(フルオロスルホニル)イミドを含む、分離することと、を含む。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、スルファミルフルオリド及びビス(フルオロスルホニル)イミドを含む組成物を提供し、スルファミルフルオリドの濃度が、スルファミルフルオリドとビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの約1モルパーセント~約10モルパーセントである。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、スルファミルフルオリド及びビス(フルオロスルホニル)イミドを含む組成物を提供し、スルファミルフルオリドの濃度が、本組成物の約50重量パーセント~約99.9重量パーセントである。
【0013】
添付の図面を考慮して、実施形態についての以下の記載を参照することによって、本開示の上述及び他の特徴、並びにそれらを達成する様式がより明らかになり、より良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示のいくつかの実施形態による、スルファミルフルオリド組成物を連続的に製造するための統合されたプロセスを示すプロセスフロー図である。
図2】本開示のいくつかの実施形態による、スルファミルフルオリド組成物からビス(フルオロスルホニル)イミドを連続的に製造するための統合されたプロセスを示すプロセスフロー図である。
図3】フルオロスルホン酸対尿素の比の関数としてのスルファミルフルオリド濃度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、フルオロスルホン酸と尿素との反応から商業的な量のスルファミルフルオリド組成物を生成するために規模を拡大することができる統合されたプロセスを提供する。驚くべきことに、フルオロスルホン酸対尿素の比を限定することによって、プロセス収率を劇的に改善し得ることが見出された。
【0016】
本開示は、スルファミルフルオリド組成物から商業的な量のビス(フルオロスルホニル)イミドを生成するために規模を拡大することができる統合されたプロセスを更に提供する。いくつかの実施形態では、本プロセスは、効率的かつ連続的な様式で未反応フルオロスルホン酸をリサイクルすることを含む。代替的に、又は追加的に、いくつかの実施形態では、本プロセスは、リサイクルされた未反応フルオロスルホン酸を貯蔵タンクに方向付けることを含む。
【0017】
本明細書に開示されるように、スルファミルフルオリドは、尿素、フルオロスルホン酸、及び溶媒を含む溶液から生成される。驚くべきことに、2.0:1のフルオロスルホン酸対尿素のモル比において、スルファミルフルオリドは、スルファミルフルオリドとビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの3モルパーセントを超える濃度でビス(フルオロスルホニル)イミドとともに生成され得ることが見出された。1.9:1のフルオロスルホン酸対尿素のモル比において、スルファミルフルオリドは、スルファミルフルオリドとビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの7モルパーセントを超える濃度でビス(フルオロスルホニル)イミドとともに生成され得る。対照的に、2.5:1のフルオロスルホン酸対尿素のモル比において、スルファミルフルオリドは、0.5モルパーセント未満の濃度で生成され、3.0:1以上のフルオロスルホン酸対尿素のモル比において、スルファミルフルオリドは、0.1モルパーセント未満である(以下の実施例を参照されたい)。
【0018】
しかしながら、フルオロスルホン酸中の尿素の溶解限度は、フルオロスルホン酸2.5モル毎に尿素約1モルであるか、又はフルオロスルホン酸対尿素のモル比が約2.5:1である。したがって、2.0:1以下のフルオロスルホン酸対尿素の所望のモル比において溶液中の尿素を維持するために、相溶性溶媒が必要とされる。相溶性溶媒としては、例えば、ビス(フルオロスルホニル)イミド、スルホラン、及びジメチルホルムアミドが挙げられ得る。
【0019】
尿素、フルオロスルホン酸、及び溶媒の溶液中のフルオロスルホン酸対尿素のモル比は、例えば、約1.80:1、約1.82:1、約1.84:1、約1.86:1、約1.88:1、若しくは約1.90:1のように低いか、又は約1.92:1、約1.94:1、約1.96:1、約1.98:1、若しくは約2.00:1のように高いか、又は前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内、例えば、約1.80:1~約2.00:1、約1.82:1~約1.98:1、約1.84:1~約1.96:1、約1.86:1~約1.94:1、約1.88:1~約1.92:1、約1.80:1~約1.98:1、約1.80:1~約1.96:1、約1.80:1~約1.94:1、約1.80~約1.88、若しくは約1.92:1~約1.98:1などであり得る。好ましくは、溶液中のフルオロスルホン酸対尿素のモル比は、約1.80~約1.98:1である。より好ましくは、溶液中のフルオロスルホン酸対尿素のモル比は、約1.82:1~約1.96:1である。最も好ましくは、溶液中のフルオロスルホン酸対尿素のモル比は、約1.84:1~約1.94:1である。
【0020】
いくつかの実施形態では、尿素及びフルオロスルホン酸の溶液は、尿素が溶解されるまで尿素及び溶媒を一緒に混合し、次いで尿素/溶媒溶液をフルオロスルホン酸に添加することによって形成され得る。尿素及びフルオロスルホン酸は、式2に従って反応すると考えられる。
式2 2HSOF+CO(NH→HNSOF+CO+NHSOF。
【0021】
式2の反応において、尿素(CO(NH)及びフルオロスルホン酸(HSOF)が反応して、副生成物である二酸化炭素(CO)及びフルオロ硫酸アンモニウム(NHSOF)とともにスルファミルフルオリド(HNSOF)を形成する。
【0022】
式2の反応のための反応温度は、例えば、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、若しくは約120℃のように低いか、又は約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、若しくは約170℃のように高いか、又は前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内、例えば、約80℃~約170℃、約90℃~約160℃、約100℃~約150℃、約110℃~約140℃、約120℃~約130℃、約130℃~約150℃、若しくは約110℃~約120℃であり得る。好ましくは、反応温度は、約110℃~約140℃である。より好ましくは、反応温度は、約120℃~約140℃である。最も好ましくは、反応温度は、約120℃~約130℃である。
【0023】
利用可能な尿素の量は、式2による化学量論量以上であり、以下に記載される副反応のためのフルオロスルホン酸の利用可能性が制限される。いくつかの実施形態では、未反応尿素は、フルオロ硫酸アンモニウムとともに沈殿する。いくつかの実施形態では、条件が酸性であり、温度が約130℃を超える場合、未反応尿素は、分解して、アンモニア及び二酸化炭素を生成する。アンモニアは、フルオロスルホン酸と反応して、フルオロ硫酸アンモニウムを生成し得る。
【0024】
所望のスルファミルフルオリドを消費する2つの副反応も起こり得る。スルファミルフルオリド消費反応のうちの1つにおいて、スルファミルフルオリドは、利用可能なフルオロスルホン酸と反応して、式3に従って、副生成物である二酸化炭素、フルオロ硫酸アンモニウム、及び水とともにビス(フルオロスルホニル)イミドを形成する。
式3 HSOF+HNSOF→HN(SOF)+HO。
【0025】
式2及び式3の反応スキームの証拠は、尿素及びフルオロスルホン酸の交互添加に応答してスルファミルフルオリドのレベルを監視することによって見出された。尿素の添加はスルファミルフルオリドの濃度を増加させ、フルオロスルホン酸の添加はスルファミルフルオリドの濃度を減少させることが見出された。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、利用可能なフルオロスルホン酸を制限することによって(フルオロスルホン酸対尿素の比を制限することによって)、より多くのフルオロスルホン酸が式2の反応において消費され、式3の反応において消費されるフルオロスルホン酸がより少なくなり、したがって、ビス(フルオロスルホニル)イミドを形成するために消費されるスルファミルフルオリドの量が低減すると考えられる。このようにして、得られた組成物中のスルファミルフルオリドの濃度を、更なる商業的使用、例えば、追加のビス(フルオロスルホニル)イミドの生成、又はスルファミルフルオリド組成物を生成するためのビス(フルオロスルホニル)イミドからの分離に好適なレベルまで増加させることができる。
【0026】
スルファミルフルオリド消費反応の別の1つにおいて、スルファミルフルオリドは、式3で生成された水と反応して、式4に従って追加のフルオロ硫酸アンモニウムを形成する。
式4 HO+HNSOF→NHSOF。
【0027】
式4の反応に利用可能な水を制限することは、上述されるように、式3の反応を制限することによって達成され得る。追加的に、又は代替的に、式4の反応に利用可能な水は、混合物から水を除去することによって制限され得る。例えば、いくつかの実施形態では、乾燥不活性ガス、例えば、窒素又は二酸化炭素の流れが、混合物を通して泡立てられ得、混合物から水を運び去る。
【0028】
反応式2の反応によって生成される混合物は、スルファミルフルオリド、フルオロ硫酸アンモニウム、及び溶媒を含む。式3の反応が完全に抑制されるわけではなく、かつ式2の反応によって生成されたスルファミルフルオリドの一部が、式2の反応によってまだ消費されていないフルオロスルホン酸の一部と反応し得るため、混合物は、ビス(フルオロスルホニル)イミドも含み得る。生成されたフルオロ硫酸アンモニウムを溶解するのに溶媒が十分でない場合、混合物は、スラリーの形態であり得る。代替的に、混合物は、溶液の形態であり得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、溶媒対尿素及びフルオロスルホン酸の重量比は、スラリーを処理する必要性を防止するために、混合物中のフルオロ硫酸アンモニウムを含む反応副生成物を完全に溶解するのに十分に高い。しかしながら、溶媒の量を増加させると、溶媒からスルファミル組成物を分離するためにより大きなシステム及び増加したエネルギー使用量を必要とする程度まで、プロセスの効率を低減させる。したがって、いくつかの実施形態では、溶媒対尿素及びフルオロスルホン酸のより低い重量比を使用し、未溶解のフルオロ硫酸アンモニウムを含むスラリーの形成をもたらすことが望ましい。
【0030】
生成された二酸化炭素ガスは、他の使用のために通気又は捕捉され得る。生成された水は、残留酸を含有するため、分離し、中和することができる。
【0031】
フルオロ硫酸アンモニウムは、混合物から分離される。フルオロ硫酸アンモニウムは、例えば、蒸発、噴霧乾燥、濾過、又はそれらの任意の組み合わせによって分離され得る。
【0032】
フルオロ硫酸アンモニウムが混合物から分離された後、混合物は、スルファミルフルオリド組成物とリサイクル組成物とに分離される。スルファミルフルオリド組成物は、リサイクル組成物よりも高い濃度のスルファミルフルオリドを含む。いくつかの実施形態では、リサイクル組成物は、反応に再びリサイクルされる。いくつかの実施形態では、リサイクル組成物は、代替的に、又は追加的に、後で使用するために貯蔵タンクに方向付けられ得る。分離は、例えば、蒸留によるものであり得る。
【0033】
スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドの濃度が、例えば、約1モルパーセント(mol%)、約2mol%、約3mol%、約4mol%、若しくは約5mol%のように低いか、又は約6mol%、約7mol%、約8mol%、約9mol%、若しくは約10mol%のように高いか、又は前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内、例えば、約1mol%~約10mol%、約2mol%~約9mol%、約3mol%~約8mol%、約4mol%~約7mol%、約5mol%~約6mol%、約5mol%~約8mol%、約2mol%~約5mol%、若しくは約6mol%~約10mol%であり得ることが見出された。好ましくは、スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドの濃度は、約2mol%~約9mol%である。より好ましくは、スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドの濃度は、約3mol%~約8mol%である。最も好ましくは、スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドの濃度は、約4mol%~約8mol%である。スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドの濃度は、スルファミルフルオリドとビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせのmol%である。
【0034】
いくつかの実施形態では、スルファミルフルオリドは、スルファミルフルオリド組成物から分離されて、濃縮スルファミルフルオリド組成物が形成され得る。分離は、例えば、蒸留によるものであり得る。濃縮スルファミルフルオリド組成物は、例えば、リチウム電池用の電解質を生成するために使用され得る。
【0035】
濃縮スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドの濃度は、例えば、約50重量%(weight %)(重量%(wt.%))、約60重量%、約70重量%、約80重量%、若しくは約90重量%のように低いか、又は約95重量%、約97重量%、約98重量%、約99重量%、約99.5重量%、若しくは約99.9重量%のように高いか、又は前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内、例えば、約50重量%~約99.9重量%、約60重量%~約99.5重量%、約70重量%~約99重量%、約80重量%~約98重量%、約90重量%~約97重量%、約50重量%~約70重量%、約98重量%~約99.9重量%、若しくは約99.5重量%~約99.9重量%であり得る。好ましくは、スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドの濃度は、約90重量%~約99.9重量%である。より好ましくは、スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドの濃度は、約95重量%~約99.9重量%である。最も好ましくは、スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドの濃度は、約99.5重量%~約99.9重量%である。濃縮スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドの濃度は、濃縮スルファミルフルオリド組成物の重量%である。
【0036】
スルファミルフルオリド組成物及び/又は濃縮スルファミルフルオリド組成物は、一次反応として式3の反応を用いることによってビス(フルオロスルホニル)イミド(HFSI)を生成するために使用され得る。スルファミルフルオリド組成物及び/又は濃縮スルファミルフルオリド組成物は、反応器中で追加のフルオロスルホン酸と混合されて反応し、粗HFSI生成物組成物及び揮発性組成物を形成することができる。揮発性組成物は、真空下で反応器(真空反応器)を操作することによって、及び/又は窒素若しくはアルゴンなどのキャリアガスを反応器に流すことによって除去され得る。揮発性組成物は、未反応フルオロスルホン酸及び水を含む。粗HFSI生成物組成物は、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロ硫酸アンモニウム、未反応フルオロスルホン酸、及び未反応スルファミルフルオリドを含む。
【0037】
スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドをフルオロスルホン酸と反応させるための反応温度は、例えば、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃、若しくは約120℃のように低いか、又は約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、若しくは約170℃のように高いか、又は前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内、例えば、約80℃~約170℃、約90℃~約160℃、約100℃~約150℃、約110℃~約140℃、約120℃~約130℃、約130℃~約150℃、若しくは約110℃~約120℃であり得る。好ましくは、反応温度は、約110℃~約140℃である。より好ましくは、反応温度は、約120℃~約140℃である。最も好ましくは、反応温度は、約120℃~約130℃である。
【0038】
スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドをフルオロスルホン酸と反応させるための反応圧力は、水を含む揮発性組成物を取り除くために1バール絶対圧未満である。上記の式4に示されるように、水がスルファミルフルオリドの一部と反応し、ビス(フルオロスルホニル)イミドの代わりにフルオロ硫酸アンモニウムを生成し得るため、水を取り除くことによってビス(フルオロスルホニル)イミドの収率を増加し得る。水を取り除くことによって、このスルファミルフルオリドの消費が低減され、スルファミルフルオリドからのビス(フルオロスルホニル)イミドの収率を高める。
【0039】
したがって、ビス(フルオロスルホニル)イミドの生成を2つのステップ、すなわち、スルファミルフルオリド組成物及び/又は濃縮スルファミルフルオリド組成物を作製する第1のステップ、並びにスルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドをフルオロスルホン酸と反応させ、水を取り除く第2のステップに分けることによって、全体にわたって生成されるフルオロ硫酸アンモニウムの量を低減させることができ、プロセスの全体的な収率及び効率性が改善される。
【0040】
粗HFSI生成物組成物は、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロ硫酸アンモニウム、未反応フルオロスルホン酸の一部、及び未反応スルファミルフルオリドの一部を含む。フルオロスルホン酸が化学量論的に過剰であるため、反応が大部分完了するまで進行するにつれて、粗HFSI生成物組成物中にはスルファミルフルオリドはほとんど残らない。
【0041】
粗HFSI生成物組成物中のスルファミルフルオリドの濃度は、約0.5mol%未満、約0.4mol%未満、約0.3mol%未満、約0.2mol%未満、若しくは約0.1mol%未満、又は前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内であり得る。
【0042】
フルオロ硫酸アンモニウムは、粗HFSI生成物組成物から分離されて、HFSI生成物組成物が形成される。フルオロ硫酸アンモニウムは、例えば、蒸発、噴霧乾燥、濾過、又はそれらの任意の組み合わせによって分離され得る。
【0043】
フルオロ硫酸アンモニウムを粗HFSI生成物組成物から分離した後、得られたHFSI生成物組成物は、濃縮HFSI生成物組成物と塔頂ストリーム組成物とに分離される。濃縮HFSI生成物組成物は、塔頂ストリーム組成物よりも高い濃度のビス(フルオロスルホニル)イミドを含む。塔頂ストリーム組成物は、水及び未反応フルオロスルホン酸を含む。分離は、例えば、蒸留によるものであり得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、塔頂ストリームは、水性組成物とFSAリッチ組成物とに分離される。FSAリッチ組成物は、水性組成物よりも高い濃度のフルオロスルホン酸を含む。いくつかの実施形態では、FSAリッチ組成物は、反応器に再びリサイクルされる。いくつかの実施形態では、FSAリッチ組成物は、代替的に、又は追加的に、後で使用するために貯蔵タンクに方向付けられ得る。分離は、例えば、蒸留によるものであり得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、揮発性組成物は、凝縮ストリームと未凝縮ストリームとに分離される。凝縮ストリームは、揮発性組成物中の未反応フルオロスルホン酸の大部分を含む。凝縮ストリームは、反応器に再びリサイクルされ得る。未凝縮ストリームは、水と、揮発性組成物中の未反応フルオロスルホン酸の残部とを含む。未凝縮ストリームは、水性組成物とFSAリッチ組成物とに分離され得る。FSAリッチ組成物は、水性組成物よりも高い濃度のフルオロスルホン酸を含む。いくつかの実施形態では、FSAリッチ組成物は、反応器に再びリサイクルされる。いくつかの実施形態では、FSAリッチ組成物は、代替的に、又は追加的に、後で使用するために貯蔵タンクに方向付けられ得る。分離は、例えば、蒸留によるものであり得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、未凝縮ストリームの水性組成物とFSAリッチ組成物とへの分離は、塔頂ストリームの水性組成物とFSAリッチ組成物とへの分離と同じ分離システムで行われ得る。他の実施形態では、これらの分離ステップは、それら自体の分離システムにおいて行われる。
【0047】
いくつかの実施形態では、上記のプロセスは連続プロセスである。いくつかの他の実施形態では、上記のプロセスは半バッチである。半バッチとは、プロセスの有意な部分が連続的であるが、プロセス全体が連続的ではないことを意味する。例えば、いくつかの半バッチの実施形態では、スルファミルフルオリド組成物が生成され、ある期間にわたって連続的に貯蔵されることができ、次いでその後、貯蔵されたスルファミルフルオリド組成物を使用して、連続的にビス(フルオロスルホニル)イミドを生成することができる。
【0048】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による、スルファミルフルオリド組成物を連続的に製造するための統合されたプロセスを示すプロセスフロー図である。図1は、尿素投入口14及び溶媒投入口16に接続するように構成された容器12を含むシステム10を示す。溶媒投入口16中の溶媒は、液体形態であり、容器12に連続的にポンプ注入され得る。代替的に、溶媒投入口16中の溶媒は、バッチとして添加され得る。尿素投入口14内の尿素は、固体形態であり、例えば、固体搬送システム(図示せず)によって容器12に連続的に提供され得る。代替的に、尿素投入口14内の尿素は、バッチとして容器12に添加され得る。
【0049】
容器12は、例えば、撹拌器などの混合デバイス18と、例えば、熱伝達コイルなどの任意の加熱及び冷却機構(図示せず)とを備える。容器12において、尿素投入ストリーム14からの尿素及び溶媒投入ストリーム16からの溶媒は、混合デバイス18によって混合される。
【0050】
反応器20は、尿素及び溶媒を含む尿素溶液22を容器12から受け取るために容器12に流体連結される。反応器20は、フルオロスルホン酸を反応器20に提供するための第1のフルオロスルホン酸投入口24を含む。フルオロスルホン酸及び尿素溶液は、反応器内でフルオロスルホン酸、尿素、及び溶媒を含む溶液を形成する。フルオロスルホン酸対尿素のモル比は、上記の通りである。反応器20はまた、乾燥不活性ガスを提供して、溶液を通して泡立たせるための不活性ガス投入口25を含み得る。反応器20は、上記のように反応温度まで加熱され、反応物は、式2に従って反応して、スルファミルフルオリド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロ硫酸アンモニウム、及び溶媒を含む混合物26を生成する。反応器によって生成された二酸化炭素は、反応器通気口28を介して反応器20から通気され得る。乾燥不活性ガスは、溶液を通して泡立たせ、上記の式3の副反応によって生成された水を吸収する。吸収された水を有する不活性ガスはまた、反応器通気口28を通して反応器から通気され得る。反応器20は、例えば、熱交換器若しくはジャケット付き反応器(図示せず)を通って流れる流体によって、又は電気加熱コイル(図示せず)によって、反応温度を維持するように構成されている。
【0051】
第1の分離器30は、スルファミルフルオリド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロ硫酸アンモニウム、未反応フルオロスルホン酸、及び溶媒を含む混合物26を受け取るために反応器20に流体接続される。第1の分離器30は、フルオロ硫酸アンモニウムを混合物26から分離して、混合物32を生成するように構成されている。フルオロ硫酸アンモニウムは、パージ34によって除去される。第1の分離器30は、例えば、蒸発器、噴霧乾燥機、フィルタ、遠心分離器、又はそれらの任意の組み合わせであることができる。
【0052】
第2の分離器36は、スルファミルフルオリド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、未反応フルオロスルホン酸、及び溶媒を含む混合物32を受け取るために第1の分離器30に流体接続される。第2の分離器36は、スルファミルフルオリド組成物38及びリサイクル組成物40を生成するように構成されている。第2の分離器36は、例えば、蒸留カラムであり得る。スルファミルフルオリド組成物38は、リサイクル組成物40中のスルファミルフルオリドの濃度よりも高い濃度のスルファミルフルオリドを含む。スルファミルフルオリド組成物38中のスルファミルフルオリドの濃度は、上記の通りである。
【0053】
反応器20は、リサイクル組成物40を受け取るために第2の分離器36に流体接続される。代替的に、又は追加的に、第2の分離器36は、リサイクル貯蔵タンク(図示せず)に流体連結される。したがって、リサイクル組成物40は、連続動作のために反応器20に、又は半バッチ動作のためにリサイクル貯蔵タンクに方向付けられ得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、スルファミルフルオリド組成物38は、後のプロセスのために生成物貯蔵タンク(図示せず)に方向付けられ得る。他の実施形態では、スルファミルフルオリド組成物38を蒸留カラム(図示せず)に方向付けて、上記のように濃縮スルファミルフルオリド組成物を生成することができる。濃縮スルファミルフルオリド組成物は、リチウムイオン電池用の電解質のための塩の前駆体として使用され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、スルファミルフルオリド組成物38(又は濃縮スルファミルフルオリド組成物)は、図2に示されるように、ビス(フルオロスルホニル)イミドを生成するために使用され得る。図2は、本開示のいくつかの実施形態による、スルファミルフルオリド組成物及び/又は濃縮スルファミルフルオリド組成物からビス(フルオロスルホニル)イミドを連続的に製造するための統合されたプロセスを示すプロセスフロー図である。図2は、スルファミルフルオリド組成物38の供給源及び追加のフルオロスルホン酸46の供給源に接続するように構成された反応器44を含むシステム42を示す。スルファミルフルオリド組成物38及び追加のフルオロスルホン酸46は、反応器44内で混合物を形成する。反応器44は、上記のように反応温度に加熱される。反応物は式3に従って反応して、粗HFSI生成物組成物48及び揮発性組成物50を生成する。
【0056】
反応器44は、例えば、熱交換器若しくは反応器ジャケット(図示せず)を通って流れる流体によって、又は電気加熱コイル(図示せず)によって、反応温度を維持するように構成されている。いくつかの実施形態では、反応器は、反応器44から揮発性組成物50を除去するために真空を使用する真空反応器である。いくつかの実施形態では、反応器44から揮発性組成物50を除去するために、窒素又はアルゴンなどのキャリアガスが反応器に供給される。
【0057】
粗HFSI生成物組成物48は、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロ硫酸アンモニウム、未反応フルオロスルホン酸、及び未反応スルファミルフルオリドを含む。粗HFSI生成物組成物48中の未反応スルファミルフルオリドの濃度は、上記の通りである。揮発性組成物50は、水及び未反応フルオロスルホン酸を含む。
【0058】
凝縮器52は、揮発性組成物50を未凝縮ストリーム54と凝縮ストリーム56とに分離するために反応器44に流体接続される。凝縮ストリーム56は、揮発性組成物50中の未反応フルオロスルホン酸の大部分を含む。凝縮ストリーム56は、反応器44に流体接続されて、未反応フルオロスルホン酸を反応器44に戻す。未凝縮ストリーム54は、水及び残りの未反応フルオロスルホン酸を含む。
【0059】
第3の分離器58は、反応器44に流体接続されて、粗HFSI生成物組成物48を受け取る。第3の分離器58は、粗HFSI生成物組成物48からフルオロ硫酸アンモニウムを分離して、HFSI生成物組成物60を生成するように構成されている。フルオロ硫酸アンモニウムは、パージ62によって除去される。第3の分離器58は、例えば、蒸発器、噴霧乾燥機、フィルタ、遠心分離器、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0060】
第4の分離器64は、第3の分離器56に流体接続されて、ビス(フルオロスルホニル)イミド、未反応フルオロスルホン酸、及び未反応スルファミルフルオリドを含むHFSI生成物組成物60を受け取る。第4の分離器64はまた、凝縮器52に流体接続されて、水及び未反応フルオロスルホン酸の一部を含む未凝縮ストリーム54を受け取る。第4の分離器64は、HFSI生成物組成物60を濃縮HFSI生成物組成物66と塔頂ストリーム68とに分離するように構成されている。第4の分離器64は、例えば、蒸留カラムであり得る。濃縮生成物組成物66は、上記のような濃度のビス(フルオロスルホニル)イミドを含む。濃縮生成物組成物66は、後のプロセス、精製、又はリチウムイオン電池用の電解質としての使用のために、生成物貯蔵タンク(図示せず)に方向付けられ得る。塔頂ストリーム68は、水及び未反応フルオロスルホン酸を含む。
【0061】
第5の分離器70は、第4の分離器64に流体接続されて、HFSI生成物組成物60及び未凝縮ストリーム54から、水及び未反応フルオロスルホン酸を含む塔頂ストリーム68を受け取る。第5の分離器70は、塔頂ストリーム68を水性組成物72とFSAリッチ組成物74とに分離するように構成されている。第5の分離器70は、例えば、蒸留カラムであり得る。水性組成物72は、式3に示されるように生成された水及び他の副反応で生成された酸を含み得る。水性組成物72は、処理のために苛性スクラバー(図示せず)に送られ得る。FSAリッチ組成物74は、未反応フルオロスルホン酸を含み得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、凝縮器52は、代替的に、又は追加的に、第5の分離器70に直接流体接続されて、水及び未反応フルオロスルホン酸の一部を含む未凝縮ストリーム54を受け取る。第5の分離器70は、未凝縮ストリーム54を塔頂ストリーム68とともに、水性組成物72とFSAリッチ組成物74とに分離するように構成されている。
【0063】
反応器44は、第5の分離器70に流体接続されて、FSAリッチ組成物74を受け取る。代替的に、又は追加的に、第5の分離器64は、リサイクル貯蔵タンク(図示せず)に流体連結される。したがって、FSAリッチ組成物74は、連続動作のために反応器44に、又は半バッチ動作のためにリサイクル貯蔵タンクに方向付けられ得る。
【0064】
本明細書で使用する場合、「前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内」という句は、それらの値が列挙のより低い部分にあるか又は列挙のより高い部分にあるかにかかわらず、任意の範囲がそのような句の前に列挙された値のうちのいずれか2つから選択され得ることを意味する。例えば、一対の値は、2つのより低い値、2つのより高い値、又はより低い値及びより高い値から選択され得る。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでない旨を明確に指示しない限り、複数形を含む。
【0065】
不正確の用語に関して、用語「約」及び「およそ」が互換的に使用されてもよく、記述された測定値を含む測定を指し、また、記載された測定値に適度に近い任意の測定値も含む。記述された測定値に合理的に近い測定値は、当業者によって理解され、容易に確認されるように、合理的に小さい量だけ記述された測定値から逸脱する。そのような偏差は、例えば、性能を最適化するために行われる測定誤差又は微調整に起因し得る。当業者がそのような合理的に小さな差異の値を容易に確認できないと判定された場合、「約」及び「およそ」という用語は、記述された値のプラスマイナス10%を意味すると理解され得る。
【0066】
前述の説明は、本開示の単なる例示に過ぎないことが理解されるべきである。本開示から逸脱することなく、当業者によって様々な代替形態及び修正形態を考案することができる。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲内に含まれる全てのかかる代替形態、修正形態、及び変動を包含することを意図する。
【実施例
【0067】
スルファミルフルオリドの生成におけるフルオロスルホン酸対尿素の比の効果
この実施例では、スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドの生成収率におけるフルオロスルホン酸対尿素の比の効果を実証する。8つの実験を行い、各々がフルオロスルホン酸対尿素の異なる比を用いた。各実験について、フルオロスルホン酸及び尿素の一部を一緒に混合し、次いで80℃~140℃に予熱したフルオロスルホン酸の残部を含有する反応器に添加した。添加は、典型的には、約1~2時間かけて起こった。添加が完了したら、反応混合物を80℃~140℃で更に2~3時間維持して、反応の完了を確実にした。次いで、反応器の内容物を約160℃に加熱し、0~10Torrの減圧下で蒸留して、生成されたHFSI及び未反応フルオロスルホン酸を生成されたフルオロ硫酸アンモニウムから分離した。回収された蒸留物を19F NMRによって分析して、HFSI、フルオロスルホン酸、及びスルファミルフルオリドのモル百分率を決定した。結果を図3に示す。
【0068】
図3は、フルオロスルホン酸対尿素(FSA:尿素)のモル比の関数としての各実験についてのスルファミルフルオリド濃度のグラフである。図3に示すように、スルファミルフルオリド濃度は、3:1以上のFSA:尿素比で0.1mol%未満である。FSA:尿素比が2.5:1のように低い場合であっても、スルファミルフルオリド濃度は、0.5mol%未満である。FSA:尿素比が2.0:1に達してから、スルファミルフルオリド濃度は、約3.5mol%で有意になる。スルファミルフルオリド濃度は、2.0:1未満のFSA:尿素比で劇的に増加し、1.9:1のFSA: 尿素比で7.2mol%のスルファミルフルオリド濃度をもたらす。この驚くべき結果は、本プロセスが2.0:1以下のFSA:尿素比で有意なスルファミルフルオリド収率を生み出し得ることを実証する。
【0069】
態様
態様1は、スルファミルフルオリド組成物を生成するためのプロセスであり、本プロセスは、フルオロスルホン酸、尿素、及び溶媒を含む溶液を提供することであって、フルオロスルホン酸対尿素のモル比が、約1.80:1~約2.00:1である、提供することと、溶液を80℃~約170℃の反応温度で反応させて、スルファミルフルオリド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロ硫酸アンモニウム、及び溶媒を含む混合物を生成することと、混合物からフルオロ硫酸アンモニウムを分離することと、混合物をスルファミルフルオリド組成物とリサイクル組成物とに分離することであって、スルファミルフルオリド組成物が、リサイクル組成物よりも高い濃度のスルファミルフルオリド及びビス(フルオロスルホニル)イミドを含む、分離することと、を含む。
【0070】
態様2は、リサイクル組成物を反応させるステップに再びリサイクルすることを更に含む、態様1に記載のプロセスである。
【0071】
態様3は、本プロセスが連続プロセスである、態様1又は態様2に記載のプロセスである。
【0072】
態様4は、本プロセスが半バッチプロセスである、態様1又は態様2に記載のプロセスである。
【0073】
態様5は、溶媒がビス(フルオロスルホニル)イミド、スルホラン、及びジメチルホルムアミドから選択される少なくとも1つを含む、態様1~4のいずれかに記載のプロセスである。
【0074】
態様6は、スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドの濃度がスルファミルフルオリドとビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの約1モルパーセント~約10モルパーセントである、プロセス及び態様1~5のプロセスである。
【0075】
態様7は、提供するステップにおいて、フルオロスルホン酸対尿素のモル比が、約1.80:1~約1.90:1であり、混合物をスルファミルフルオリド組成物とリサイクル組成物とに分離するステップにおいて、スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドの濃度が、スルファミルフルオリドとビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの約4モルパーセント~約8モルパーセントである、態様1~6のいずれかに記載のプロセスである。
【0076】
態様8は、混合物からフルオロ硫酸アンモニウムを分離することが、混合物を蒸発させて、スルファミルフルオリド組成物を形成することを含む、態様1~7のいずれかに記載のプロセスである。
【0077】
態様9は、混合物をスルファミルフルオリド組成物とリサイクル組成物とに分離することが、混合物を蒸留することを含む、態様1~10のいずれかに記載のプロセスである。
【0078】
態様10は、スルファミルフルオリド組成物からスルファミルフルオリドを分離して、濃縮スルファミルフルオリド組成物を形成することを更に含み、濃縮スルファミルフルオリド組成物中のスルファミルフルオリドの濃度が、濃縮スルファミルフルオリド組成物の約50重量パーセント~約99.9重量パーセントである、態様1~9のいずれかに記載のプロセスである。
【0079】
態様11は、スルファミルフルオリド組成物を追加のフルオロスルホン酸と混合することと、80℃~約170℃の反応温度で、反応器中でスルファミルフルオリド組成物と追加のフルオロスルホン酸との混合物を反応させて、粗HFSI生成物組成物及び揮発性組成物を生成することであって、揮発性組成物が、フルオロスルホン酸及び水を含み、粗HFSI生成物組成物が、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロ硫酸アンモニウム、未反応フルオロスルホン酸、及び未反応スルファミルフルオリドを含み、粗HFSI生成物組成物中の未反応スルファミルフルオリドの濃度が、スルファミルフルオリドとビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの0.5モルパーセント未満である、生成することと、粗HFSI生成物組成物からフルオロ硫酸アンモニウムを分離して、HFSI生成物組成物を生成することと、HFSI生成物組成物を濃縮HFSI生成物組成物と塔頂ストリーム組成物とに分離することであって、濃縮HFSI生成物組成物が、塔頂ストリーム組成物よりも高い濃度のビス(フルオロスルホニル)イミドを含む、分離することと、を更に含む、態様1~11のいずれかに記載のプロセスである。
【0080】
態様12は、塔頂ストリーム組成物を水性組成物とFSAリッチ組成物とに分離することを更に含み、FSAリッチ組成物が、水性組成物よりも高い濃度のフルオロスルホン酸を含む、態様11に記載のプロセスである。
【0081】
態様13は、FSAリッチ組成物を、追加のフルオロスルホン酸とスルファミルフルオリド組成物とを混合するステップ、又はフルオロスルホン酸、尿素、及び溶媒を含む溶液を提供するステップに再びリサイクルすることを更に含む、態様12に記載のプロセスである。
【0082】
態様14は、本プロセスが連続プロセスである、態様11~13のいずれかに記載のプロセスである。
【0083】
態様15は、本プロセスが半バッチプロセスである、態様11~13のいずれかに記載のプロセスである。
【0084】
態様16は、揮発性組成物を水性組成物とFSAリッチ組成物とに分離することを更に含み、FSAリッチ組成物が、水性組成物よりも高い濃度のフルオロスルホン酸を含む、態様11~15のいずれかに記載のプロセスである。
【0085】
態様17は、FSAリッチ組成物を、追加のフルオロスルホン酸とスルファミルフルオリド組成物とを混合するステップ、又はフルオロスルホン酸、尿素、及び溶媒を含む溶液を提供するステップに再びリサイクルすることを更に含む、態様16に記載のプロセスである。
【0086】
態様18は、本プロセスが連続プロセスである、態様17に記載のプロセスである。
【0087】
態様19は、本プロセスが半バッチプロセスである、態様17に記載のプロセスである。
【0088】
態様20は、スルファミルフルオリド及びビス(フルオロスルホニル)イミドを含む組成物であり、スルファミルフルオリドの濃度が、スルファミルフルオリドとビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの約1モルパーセント~約10モルパーセントである。
【0089】
態様21は、スルファミルフルオリドの濃度が、スルファミルフルオリドとビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの約2モルパーセント~約9モルパーセントである、態様20に記載の組成物である。
【0090】
態様22は、スルファミルフルオリドの濃度が、スルファミルフルオリドとビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの約3モルパーセント~約8モルパーセントである、態様20に記載の組成物である。
【0091】
態様23は、スルファミルフルオリドの濃度が、スルファミルフルオリドとビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの約4モルパーセント~約8モルパーセントである、態様20に記載の組成物である。
【0092】
態様24は、スルファミルフルオリド及びビス(フルオロスルホニル)イミドを含む組成物であり、スルファミルフルオリドの濃度が、本組成物の約50重量パーセント~約99.9重量パーセントである。
【0093】
態様25は、スルファミルフルオリドの濃度が、本組成物の約90重量パーセント~約99.9重量パーセントである、態様24に記載の組成物である。
【0094】
態様26は、スルファミルフルオリドの濃度が、本組成物の約95重量パーセント~約99.9重量パーセントである、態様24に記載の組成物である。
【0095】
態様27は、スルファミルフルオリドの濃度が、本組成物の約99.5重量パーセント~約99.9重量パーセントである、態様25に記載の組成物である。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルファミルフルオリド組成物を生成するためのプロセスであって、
フルオロスルホン酸、尿素、及び溶媒を含む溶液を提供することであって、前記フルオロスルホン酸対前記尿素のモル比が、約1.80:1~約2.00:1である、提供することと、
前記溶液を80℃~約170℃の反応温度で反応させて、スルファミルフルオリド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロ硫酸アンモニウム、及び前記溶媒を含む混合物を生成することと、
前記混合物から前記フルオロ硫酸アンモニウムを分離することと、
前記混合物を前記スルファミルフルオリド組成物とリサイクル組成物とに分離することであって、前記スルファミルフルオリド組成物が、前記リサイクル組成物よりも高い濃度のスルファミルフルオリド及びビス(フルオロスルホニル)イミドを含む、分離することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記スルファミルフルオリド組成物を追加のフルオロスルホン酸と混合することと、
80℃~約170℃の反応温度で、反応器中で前記スルファミルフルオリド組成物と前記追加のフルオロスルホン酸との前記混合物を反応させて、粗HFSI生成物組成物及び揮発性組成物を生成することであって、前記揮発性組成物が、フルオロスルホン酸及び水を含み、前記粗HFSI生成物組成物が、ビス(フルオロスルホニル)イミド、フルオロ硫酸アンモニウム、未反応フルオロスルホン酸、及び未反応スルファミルフルオリドを含み、前記粗HFSI生成物組成物中の未反応スルファミルフルオリドの濃度が、前記スルファミルフルオリドと前記ビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの0.5モルパーセント未満である、生成することと、
前記粗HFSI生成物組成物から前記フルオロ硫酸アンモニウムを分離して、HFSI生成物組成物を生成することと、
前記HFSI生成物組成物を濃縮HFSI生成物組成物と塔頂ストリーム組成物とに分離することであって、前記濃縮HFSI生成物組成物が、前記塔頂ストリーム組成物よりも高い濃度のビス(フルオロスルホニル)イミドを含む、分離することと、を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
組成物であって、
スルファミルフルオリドと、
ビス(フルオロスルホニル)イミドであって、前記スルファミルフルオリドの濃度が、前記スルファミルフルオリドと前記ビス(フルオロスルホニル)イミドとの組み合わせの約1モルパーセント~約10モルパーセントである、ビス(フルオロスルホニル)イミドと、を含む、組成物。
【国際調査報告】