(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】低せん断粘度低減添加剤
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20240206BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240206BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/013
C08L83/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544390
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 US2022012262
(87)【国際公開番号】W WO2022164641
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【氏名又は名称】潮 太朗
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、ダン
(72)【発明者】
【氏名】マンゴールド、シェーン
(72)【発明者】
【氏名】クーパー、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】アン、ドンチャン
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド、カイル
(72)【発明者】
【氏名】スーツマン、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、ダレン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP03W
4J002CP04Y
4J002CP05X
4J002CP06W
4J002CP13W
4J002DA010
4J002DA020
4J002DA076
4J002DA080
4J002DA090
4J002DE070
4J002DE106
4J002DE146
4J002DF000
4J002DK000
4J002EX018
4J002EX037
4J002EZ009
4J002FA040
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD14Y
4J002FD159
4J002FD207
4J002FD208
4J002GJ00
4J002GQ00
(57)【要約】
組成物は、(a)第1のポリオルガノシロキサンと、(b)組成物の体積に基づいて、50~80体積パーセントの伝導性充填剤と、(c)組成物の重量に基づいて、第1のポリオルガノシロキサンとは異なる0.1~2.0重量パーセントの第2のポリオルガノシロキサンと、を含有し、第2のポリオルガノシロキサンは、1分子当たり平均0.5~1.5個の無水物基を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
a.第1のポリオルガノシロキサンと、
b.組成物の体積に基づいて、50~80体積パーセントの伝導性充填剤と、
c.組成物の重量に基づいて、前記第1のポリオルガノシロキサンとは異なる0.1~2.0重量パーセントの第2のポリオルガノシロキサンと、を含み、前記第2のポリオルガノシロキサンが、1分子当たり平均0.5~1.5個の無水物基を有する、組成物。
【請求項2】
前記第1のポリオルガノシロキサンが、無水物基を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1のポリオルガノシロキサンが、前記第2のポリオルガノシロキサンよりも低い動的粘度を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1のポリオルガノポリシロキサンが、平均化学構造(I)を有し:
【化1】
式中、各R及びR’が、各出現において独立して、C
1-C
8ヒドロカルビル基からなる群から選択され、「m」は、前記第1のポリオルガノシロキサンが、0.04~55パスカル*秒の範囲内の平均動的粘度を有するように選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
各R’が、独立してビニル基及びメチル基から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記伝導性充填剤が、アルミナ、酸化亜鉛、アルミナ三水和物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、銀フレーク、及び銀コーティングされた微粒子からなる群から選択される2つ以上のうちのいずれか1つ又は任意の組み合わせである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第2のポリオルガノシロキサンが、平均化学構造(II)を有し:
【化2】
式中、「n」が、40~200の範囲内にある平均値を有し、Rが、各出現において独立して、C
1-C
8ヒドロカルビル基からなる群から選択され、R”は、各出現において独立して、C
1-C
8ヒドロカルビル基、シリルヒドリド、及び無水物基からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記無水物基が、平均化学構造(III)を有し:
【化3】
式中、Xが、各出現において独立して、水素及びC
1-C
8ヒドロカルビル含有基から選択され、「a」が、各出現において独立して、1~6の範囲内にある値である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
Xが、各出現において独立して、水素及び芳香族基から選択され、「a」が2であるか、又はXが水素であり、「a」が3であるかのいずれかである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
Xが、各出現において独立して、芳香族基である、請求項8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低せん断粘度低減添加剤を含むポリオルガノシロキサンマトリックス中に分散された伝導性充填剤の伝導性組成物に関する。
【0002】
序論
熱伝導性及び電気伝導性(併せて「伝導性」)複合体は、概して、マトリックス材料を通る伝導性を高めるために伝導性充填剤粒子で充填されたポリオルガノシロキサンマトリックス材料である。伝導性複合体は、2つの成分間の界面材料として機能することによって、2つの成分間の伝導性を高めるのに有用である。いくつかの用途では、位置安定性を有するために、すなわち、適用時に伝導性複合体が特定の位置及び形状に留まる能力を高めるために、伝導性複合体が比較的高い低せん断粘度を有することが望ましい。しかしながら、セルフレベリング用途、及び組成物が成分間で特に薄い層にプレスされなければならない用途においてなど、他の用途では、伝導性組成物が低せん断で低粘度を有することが望ましい。伝導性組成物が、ある型又は基材上に注がれる用途もまた、伝導性組成物が、型若しくは基材上を流れるか、孔、空隙若しくは間隙を充填するか、及び/又はワイヤなどの物体の周りを流れることができるため低い低せん断粘度から恩恵を受ける。低せん断で低粘度を有するこれらの後者の伝導性組成物が、本発明の主題である。
【0003】
伝導性複合体における技術的課題は、用途の必要性を満たすのに十分に低い複合体粘度を達成しながら、充填剤装填量を増加させることによって伝導性を高めることにある。概して、伝導性充填剤の濃度を増加させると、複合体の伝導率が増加するが、また複合体の粘度も増加する。伝導性充填剤の量を最大にするために、伝導性充填剤の濃度を低減させることなく、伝導性複合体の低せん断粘度を低減させるための方法を見出すことが望ましい。添加剤が伝導性複合体のポリオルガノシロキサンマトリックスと最適に適合可能であるように、ポリシロキサン系添加剤であるかかる添加剤を特定することが更に望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、伝導性充填剤の濃度を低減させることなく、伝導性複合体の低せん断粘度を低下させるポリオルガノシロキサン系添加剤を提供する。本発明は、ポリオルガノシロキサン1分子当たり平均0.5~1.5個の無水物基を有するポリオルガノシロキサン添加剤を、伝導性複合体の重量に基づいて、0.1~2.0重量パーセントの濃度で伝導性複合体に添加することができ、充填剤装填量を低減させることなく、伝導性複合体の低せん断粘度を低減させることができることを発見した結果である。
【0005】
驚くべきことに、無水物官能性ポリオルガノシロキサン添加剤は、添加剤が添加される組成物の主要マトリックス材料として機能するポリマーよりも高い動的粘度を有することができ、更に、添加剤は、組成物粘度を低減させることができる。
【0006】
第1の態様では、本発明は、組成物であって、(a)第1のポリオルガノシロキサンと、(b)組成物の体積に基づいて、50~80体積パーセントの伝導性充填剤と、(c)組成物の重量に基づいて、第1のポリオルガノシロキサンとは異なる0.1~2.0重量パーセントの第2のポリオルガノシロキサンと、を含み、第2のポリオルガノシロキサンが、1分子当たり平均0.5~1.5個の無水物基を有する、組成物である。
【0007】
本発明は、伝導性複合体として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
試験方法は、日付が試験方法の番号とともに示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTMインターナショナル試験法(ASTM International method)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、ULは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratory)を指す。
【0009】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0010】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。
【0011】
「ヒドロカルビル」は、炭化水素から水素原子を除去することによって形成される一価の基を指し、アルキル基及びアリール基を含む。
【0012】
「アルキル」は、水素原子を除去することによってアルカンから誘導可能な炭化水素基を指す。アルキルは、線状又は分岐状であり得る。
【0013】
「アリール」は、芳香族炭化水素から水素原子を除去することにより形成可能な基を指す。
【0014】
組成物に関する「低せん断粘度」は、以下の振動せん断ひずみ振幅掃引(「ひずみ掃引」)法に従って判定される。直径25ミリメートル(mm)の円形平行鋸歯状プレート(TA Instruments(New Castle,DE,USA)から部品番号401978.901)を提供する。試料組成物を一方のプレートに配置し、プレートが互いに平行になり、プレート間のギャップ間隔が1.0mmになり、試料組成物が両方のプレートと熱接触し、プレート間のギャップ間隔が満たされるまで、もう一方のプレートを試料組成物に押し付ける。ARES-G2ひずみ制御レオメータ(TA Instruments、New Castle,DE,USA)を使用して、摂氏25度(℃)で、1秒当たり10ラジアンの角周波数を使用して、1桁当たり20個のサンプリング点を有する試料組成物で0.01パーセント(%)~300%のひずみ振幅の対数掃引を行う。パーセント振動ひずみ振幅の関数として、パスカル*秒(Pa*s)の複素粘度を記録する。「低せん断粘度」は、記録された振動トルク振幅が、0.1マイクロニュートン*メートルを上回る(又は同等に、記録された振動応力振幅が、0.0326パスカルを上回る)最低せん断振幅値で記録された複素粘度である。
【0015】
25ミリメートルのステンレス鋼コーンインプレート固定具を取り付けたAnton-Paar Physical MCR 301レオメータを使用して、25℃の動作温度でポリオルガノシロキサンの動的粘度を測定する。0.1~500秒-1の範囲のせん断速度で定常せん断測定を実施する。各測定の前に、材料を少なくとも5分間平衡化させる。動的粘度は、0.1~10秒-1のせん断速度にわたる平均粘度である。
【0016】
29Si、13C、及び1H核磁気共鳴スペクトル法を使用して、ポリシロキサン中の組成物及びシロキサン単位の平均数を測定する(例えば、The Analytical Chemistry of Silicones,Smith,A.Lee,ed.,John Wiley&Sons:New York,1991,p.347ffを参照されたい)。
【0017】
本発明の組成物は、第1のポリオルガノシロキサン、第2のポリオルガノシロキサン及び伝導性充填剤を含む。第1及び第2のポリオルガノシロキサンは、伝導性充填剤が、ポリマーマトリックス全体に分散した粒子として存在するポリマーマトリックスを形成する。
【0018】
第1のポリオルガノシロキサンは、主要マトリックス材料成分であることが望ましい。第1のポリオルガノシロキサンは、無水物官能基を含まなくてもよく、望ましくは無水物官能基を含まない。
【0019】
第1のポリオルガノシロキサンは、望ましくは、線状ポリオルガノシロキサンである。線状ポリオルガノシロキサンは、主に、R
3SiO
1/2及びR
2SiO
2/2シロキサン単位を含み、及びこれらからなることができ、式中、各Rは、有機基、望ましくは、アルキル基及びアリール基を含むヒドロカルビル基からなる群から独立して選択される。第1のポリオルガノシロキサンは、化学構造(I)を有することができる:
【化1】
式中、各R及びR’は、各出現において独立して、C
1-C
8ヒドロカルビル基からなる群から選択され、「m」は、第1のポリオルガノシロキサンが0.04~55パスカル*秒(Pa*s)の範囲内の動的粘度を有するように選択される。
【0020】
例えば、R’基は、各出現において独立して、アルケニル基から選択することができ、一方、R基は、各出現において独立して、アリール基及びアルキル基から選択することができる。例えば、R’基は、ビニル基であり得、R基は、各出現において独立して、フェニル基及びメチル基から選択され得る。
【0021】
第1のポリオルガノシロキサンの動的粘度は、望ましくは、0.04パスカル*秒(Pa*s)以上、0.10Pa*s以上、0.5Pa*s以上、1.0Pa*s以上、5.0Pa*s以上、10Pa*s以上、15Pa*s以上、20Pa*s以上、25Pa*s以上、30Pa*s以上、35Pa*s以上、40Pa*s以上、45Pa*s以上、更には50Pa*s以上であり、同時に、典型的には、100Pa*s以下、75Pa*s以下、60Pa*s以下、55Pa*s以下、50Pa*s以下、45Pa*s以下、40Pa*s以下、35Pa*s以下、30Pa*s以下、25Pa*s以下、20Pa*s以下、15Pa*s以下、10Pa*s以下、5Pa*s以下、更には1.0Pa*s以下の動的粘度を有し、「m」の値は、R及びR’の選択に基づいて、その粘度を達成するように選択される。
【0022】
「m」の値は、例えば、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、120以上、140以上、160以上、180以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、更には500以上であり得るが、同時に、「m」の値は、典型的には、800以下、700以下、600以下、又は更には500以下である。
【0023】
第2のポリオルガノシロキサンは、第1のポリオルガノシロキサンとは異なり、無水物基官能性を有するポリオルガノシロキサンであるか、又はそれを含む。第2のポリオルガノシロキサンは、1分子当たり、0.5以上、好ましくは、0.56以上、及び、0.6以上、0.70以上、0.80以上、0.90以上、1.0以上、1.1以上、1.2以上、1.3以上、更には1.4以上であり得、同時に、2.0未満、好ましくは、1.75以下、1.5以下であり、及び1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、更には0.6以下であり得る、平均濃度の無水物基を有する。第2のポリオルガノシロキサンが、2つ以上のポリオルガノシロキサンのブレンドである場合、最大濃度で存在するポリオルガノシロキサンは、1分子当たり2個未満の無水物基を有する。
【0024】
第2のポリオルガノシロキサンは、第1のポリオルガノシロキサンよりも高い動的粘度を有することができる。更に驚くべきことに、第2のポリオルガノシロキサンの添加は、組成物の充填剤含有量を同じに維持しながら、ポリマーマトリックスとして第1のポリオルガノシロキサンを含む組成物の低せん断粘度の低減をもたらし得る。
【0025】
第2のポリオルガノシロキサンは、無水物官能基をポリオルガノシロキサン上に導入する官能化反応から得られる反応生成物の組み合わせを含む反応生成物であり得る。例えば、無水物は、ラジカルグラフト化又はヒドロシリル化のいずれかによってポリシロキサン上に導入することができ、各々固有の反応生成物を有する。
【0026】
無水物官能基は、ラジカルグラフト化によってポリシロキサン上に付加することができる。例えば、アルケニル官能性ポリシロキサン(例えば、ビニル官能性ポリオルガノシロキサン)は、ラジカル開始剤の存在下で不飽和無水物(例えば、無水マレイン酸)と組み合わせることができ、ポリシロキサンのアルケニル基と無水物の不飽和部分との間でフリーラジカルグラフト反応を生じさせて、無水物をポリオルガノシロキサンにグラフト化することができる。反応は、芳香族開始剤を用いて及び/又は芳香族溶媒中で行われることが多く、その結果、開始剤及び/又は溶媒のラジカルも無水物上にグラフト化される。一例として、ビニル官能性ポリオルガノシロキサンは、ジベンゾイルペルオキシドなどのラジカル開始剤とともに芳香族溶媒(キシレン又はトルエンなど)中で無水マレイン酸と組み合わされ、次いで加熱して、フリーラジカル反応を開始することができる:
【化2】
ここで、反応生成物は、反応物のモル比に応じて、以下の化合物のいずれかを有することができる:
(a)未反応ビニル官能性ポリオルガノシロキサン:ViR
2SiO-(R
2SiO)
m-SiR
2Vi、
(b)単官能化ポリオルガノシロキサン:ViR
2SiO-(R
2SiO)
m-SiR
2A
(c)二官能化ポリオルガノシロキサン:AR
2SiO-(R
2SiO)
m-SiR
2A、
式中、Rは、上記定義のとおりであり、Viは、ビニル基を指し、「A」は、以下のとおりであり:
【化3】
Xは、溶媒の残留物(例えば、トリル基又はキシリル基)若しくは開始剤の残留物(例えば、ベンゾイル基)である芳香族基、又はラジカルが無水物上にグラフト化しなかったか若しくはグラフト化したままではなかった場合は水素である。
【0027】
1分子当たり2未満の無水物濃度を確実とするために、モル過剰のビニル官能性ポリオルガノシロキサンを用いて第2のポリオルガノシロキサンを調製する。本発明では、主要なグラフト反応生成物(最も高い濃度で存在するもの)が単官能化ポリオルガノシロキサン(b)であることが望ましい。(a)、(b)及び(c)を含むことができる反応生成物混合物は、第1のポリオルガノシロキサンとしてともに使用することができる。
【0028】
第2のポリオルガノシロキサンは、ヒドロシリル化反応を使用して調製することができる。例えば、シリルヒドリド(silylhydride、SiH)末端ポリオルガノシロキサンは、触媒の存在下でアルケニル官能性無水物(アリルコハク酸無水物など)と反応させることができる。反応物のモル比を選択して、反応生成物の平均無水物濃度を提供する。反応は、望ましくは、反応生成物上の平均無水物濃度が2未満であるように、モル過剰のSiH末端ポリオルガノシロキサンを用いて行われる。
【0029】
シリルヒドリド反応合成の一例として、線状SiH末端ポリオルガノシロキサンは、ヒドロシリル化触媒(白金触媒など)の存在下で、アリルコハク酸無水物と反応させることができる:
【化4】
ここで、反応生成物は、反応物のモル比に応じて、以下の化合物のいずれかを有することができる:
(a)未反応ビニル官能性ポリオルガノシロキサン:HSiR
2SiO-(R
2SiO)
m-SiR
2SiH、
(b)単官能化ポリオルガノシロキサン:HSiR
2SiO-(R
2SiO)
m-SiR
2A’
(c)二官能化ポリオルガノシロキサン:AR
2SiO-(R
2SiO)
m-SiR
2A’、
【化5】
式中、「A’」は、以下のとおりであり:
Xは、水素(H)である。反応生成物は、典型的には、主に(b)単官能化ポリオルガノシロキサンを含有する。反応生成物は、ポリオルガノシロキサン1分子当たりの平均無水物官能価が必要な範囲内にあることを条件として、更に精製することなく第2のポリオルガノシロキサンとして使用することができる。
【0030】
第2のポリオルガノシロキサンは、平均化学構造(II)を有することができる:
【化6】
式中、「n」は、40~200の範囲内にある平均値を有し、Rは、各出現において独立して、C
1-C
8ヒドロカルビル基からなる群から選択され、R”は、各出現において独立して、C
1-C
8ヒドロカルビル基、シリルヒドリド、及び無水物基からなる群から選択される。無水物基は、化学構造(III)のコハク酸無水物であり得:
【化7】
式中、Xは、各出現において独立して、水素及びC
1-C
8ヒドロカルビル含有基から選択され、「a」は、各出現において独立して、1以上、2以上、3以上、4以上、更には5以上、同時に、6以下、5以下、4以下、3以下、又は更には2以下の値を有する。C
1-C
8ヒドロカルビル含有基は、ベンゾイルなどの芳香族ラジカル開始剤からの残留物、又はキシリル若しくはトリルなどの芳香族溶媒からの残留物などの任意の1つ又は2つ以上の芳香族基であり得る。
【0031】
第2のポリオルガノシロキサンは、平均化学構造(II)を有することができ、式中、「a」が2であるとき、Xは、各出現において独立して、芳香族基又は水素から選択され、「a」が3であるとき、Xは、水素である。
【0032】
第2のポリオルガノシロキサン上の無水物官能基の平均濃度は、無水物で官能化し、次いで、第2のポリオルガノシロキサン中の反応性部位の数に対する無水物基の比を測定する前に、ポリオルガノシロキサン中の反応性部位(例えば、アルケニル及びシリルヒドリド基)の数に基づいて、測定することができる。反応性部位及び無水物基の数を、1H核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)分光法、又は代替的にフーリエ変換赤外(Fourier Transform Infrared、FTIR)分光法を使用して測定する。反応部位及び無水物基の数を、内部標準として1,4-ジオキサンを使用する1H NMR分光法を使用して測定する。シリルヒドリド、アルケニル及び無水物などの官能基の濃度は、以下の計算を使用して計算することができる:
Cx=(Ix/Iis)(Nis/Nx)(Cis)
式中、Ixは、対象となる官能基の積分面積(アルケニルについては6.3~5.6ppm、シリルヒドリドについては4.8~4.5ppm、無水物については3.5~2.0ppm)であり、Iisは、内部標準(3.68ppm)の積分面積であり、Nisは、内部標準の核の数(この場合Nis=8)であり、Nxは、対象となる官能基についての核の数(シリルヒドリドについて1、アルケニルについて6、及び無水物について5)であり、Cxは、対象となる官能基の濃度であり、Cisは、内部標準の濃度である。
【0033】
本発明の組成物は、伝導性充填剤を含む。充填剤は、電気伝導性充填剤及び熱伝導性充填剤からなる群から選択される2つ以上の充填剤のタイプのうちのいずれか1つ又は任意の組み合わせである充填剤粒子である。熱伝導性充填剤としては、アルミニウム、銀及び銅の粒子などの金属粒子、アルミニウム、銀及び銅などの金属でコーティングされた任意のタイプの粒子を含む金属コーティングされた粒子、窒化ホウ素、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、及びアルミニウム三水和物などの無機粒子、並びにカーボンナノチューブ、グラフェン、及び炭素繊維などの炭素質材料が挙げられる。熱伝導性充填剤としては、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅及びこれらの合金の粒子などの金属粒子、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅及びこれらの合金などの金属でコーティングされた任意の種類の粒子、並びに、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、及びグラフェンが挙げられる。望ましくは、伝導性充填剤は、アルミナ、酸化亜鉛、アルミナ三水和物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、銀フレーク、及び銀コーティングされた微粒子からなる群から選択される2つ以上の充填剤のうちのいずれか1つ又は任意の組み合わせである。
【0034】
伝導性充填剤は、組成物の体積に基づいて、50体積パーセント(体積%)以上、55体積%以上、60体積%以上、65体積%以上、70体積%以上、更に75体積%以上の濃度で組成物中に存在し、同時に、典型的には、80体積%以下、75体積%以下、70体積%以下、65体積%以下、60体積%以下、更に55体積%以下の濃度で存在する。
【0035】
伝導性充填剤は、典型的には、0.01マイクロメートル(μm)以上、0.05μm以上、0.1μm以上、0.2μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上、2.0μm以上、3.0μm以上、5.0μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、及び60μm以上であり得、70μm以上、80μm以上、90μm以上、更には100μm以上の平均粒径を有し、同時に、典型的には、250μm以下、200μm以下、150以下、100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下、5.0μm以下、更には3.0μm以下、1.0μm以下の平均粒径を有する。Malvern Instruments製のMastersizer(商標)3000レーザー回折粒径分析器を用いて、ポリオルガノシロキサンの粒径分布の体積加重中央値(Dv50)として平均粒径を測定する。
【0036】
伝導性充填剤は、2つ以上の平均粒径を有する粒子の組み合わせであり得る。例えば、伝導性充填剤は、上で説明されたように各々が平均粒径を有するが、群内の他のタイプの伝導性充填剤とは異なる平均粒径を有する、2つのタイプ、3つのタイプ、更には4つ以上のタイプの伝導性充填剤を含む伝導性充填剤の群であり得る。
【0037】
本発明の組成物は、本明細書において既に考察されたもの以外の追加の成分のうちのいずれか1つ又はその組み合わせを更に含むことができるか、又は含まなくてもよい。例えば、組成物は、マトリックス材料の一部として充填剤処理剤を更に含むことができる(又は含まなくてもよい)。充填剤処理剤は、典型的には、充填剤凝集及び充填剤-充填剤相互作用を低減させることによって、マトリックス材料への充填剤の分散を改善するために望ましい。充填剤処理剤はまた、マトリックス材料による充填剤表面のウェットアウトを改善し、組成物の粘度を低減させ、充填剤表面上の反応性基をキャップして、組成物の貯蔵寿命を低減させ得る充填剤との反応を防止することができる。望ましくは、処理剤は、アルキルトリアルコキシシラン及びモノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンの一方又は両方を含むか、又はこれらからなる。
【0038】
適なアルキルトリアルコキシシランの例は、一般式:(R1)(R2O)3Siを有し、式中、R1は、望ましくは1分子当たり平均で、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、更には16個以上の炭素原子を有するアルキルであり、かつ同時に典型的には18個以下の炭素原子を有し、17個以下、16個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、又は更には10個以下の炭素原子を有してもよく、R2は、望ましくは、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、更には6個以上の炭素原子を有するアルキルであり、かつ同時に典型的には10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、更には2個以下の炭素原子を有する。望ましくは、アルキルトリアルコキシシランは、上記のアルキル基を有するアルキルトリメトキシシランである。望ましいアルキルトリアルコキシシランの一例は、n-デシルトリメトキシシランである。組成物中のアルキルトリアルコキシシランの濃度は、組成物の重量に基づいて、概ね0重量%以上、0.05重量%以上、0.10重量%以上、0.20重量%以上、0.22重量%以上、0.24重量%以上であり、かつ同時に、概ね0.30重量%以下、好ましくは、0.28重量%以下、0.26重量%以下、0.24重量%以下、及び0.22重量%以下であり得る。
【0039】
好適なモノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンの例は、概して、以下の化学構造(IV)を有し:
【化8】
式中、R及びR
2は各々、各出現において独立して、上記で定義されたとおりであり、下付き文字hは、1分子当たりの(R
2SiO)単位の平均数であり、典型的には10以上、15以上、20以上、25以上、更には30以上の値を有し、かつ同時に、概ね150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、45以下、40以下、35以下、又は更には30以下であり、下付き文字eは、各出現において独立して、0以上、1以上、更には2以上の値を有し、かつ同時に通常、4以下、3以下、又は更には2以下であり、下付き文字fは、典型的には0以上、1以上、2以上、3以上の値を有し、同時に概ね、6以下、5以下、4以下、3以下、又は更には2以下であり、下付き文字gは、典型的には0以上、1以上、2以上、3以上、更には4以上の値を有し、同時に概ね、6以下、更には5以下、4以下、又は3以下の値を有する。
【0040】
望ましくは、モノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンは、一般分子構造(V)を有する:
【化9】
1つの特に望ましいトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンは、R
2がメチルに等しく、下付き文字tが、130以下、好ましくは、120以下、好ましくは、110以下、より好ましくは、110以下100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、又は30以下、同時に20以上、好ましくは、30以上の平均値を有する式(V)の組成物を有することで、末端トリメトキシ官能化ケイ素原子を形成する。
【0041】
モノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノシロキサンの濃度は、組成物の重量に基づいて典型的には0重量%以上、0.10重量%以上、0.20重量%以上、0.30重量%以上、0.40重量%以上、0.50重量%以上、0.75重量%以上、更には1.0重量%以上又は2.0重量%以上であり、かつ同時に、概ね3.0重量%以下、2.0重量%以下、1.20重量%以下、1.15重量%以下、又は更には1.10重量%以下である。
【0042】
組成物は、複数の追加成分のうちのいずれか1つ若しくは任意の組み合わせを更に含んでもよい(又は含まなくてもよい)。そのような追加成分の例としては、硬化阻害剤、酸化防止安定剤、顔料、粘度調整剤、シリカ充填剤、及びスペーサー添加剤が挙げられる。誤解を避けるため、組成物は、このような追加成分のいずれか1つ又は任意の組み合わせ又は複数のものを含まなくてもよい。例えば、組成物は、シリカ充填剤を含まなくてもよい。「シリカ充填剤」とは、天然シリカ(結晶石英、粉砕石英、及び珪藻土シリカなど)、並びに合成シリカ(ヒュームドシリカ、溶融シリカ、シリカゲル、及び沈降シリカ)を含む、シリカを含む固体微粒子を指す。上記に加え、又は上記に代えて、本発明の組成物は、ポリエーテル及び/又はシラノール官能性ポリジメチルシロキサンを含まなくてもよい。
【0043】
硬化阻害剤の一例としては、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シランがある。存在する場合、阻害剤は、典型的には組成物の重量に基づいて0.0001重量%以上又は0.001重量%以上の濃度で存在し、同時に、概ね5重量%以下、又は更には1重量%以下、更には0.5重量%以下の濃度で存在する。
【0044】
酸化防止剤は、存在する場合、典型的には組成物の重量の0.001~1重量%の濃度で含まれてもよい。酸化防止剤は、単独で、又は安定剤と組み合わせて存在してもよい。酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤が挙げられ、安定剤としては有機リン誘導体が挙げられる。
【0045】
顔料の例としては、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、及び銅フタロシアニンが挙げられる。存在する場合、顔料は、組成物の重量に基づいて0.0001~1重量%の濃度で存在しやすい。
【0046】
スペーサー添加剤は非熱伝導性充填剤であり、50~250マイクロメートルの範囲の平均粒径を有する。スペーサーの例としては、ガラス及びポリマービーズが挙げられる。
【0047】
組成物は、ヒドロキシル官能性ポリシロキサン及びヒドロキシル官能性炭化水素を含まなくてもよい。
【0048】
本発明の組成物は、硬化性組成物であり得る。例えば、組成物は、アルケニル(例えば、ビニル)基含有ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノシロキサン含有シリルヒドリド基、及びシリル化触媒の両方を含有することができる。かかる組成物は、ヒドロシリル化架橋を受けることができる。
【0049】
本発明の組成物は、2つ以上の成分を伝導的に結合するための伝導性界面材料として使用することができる。例えば、本発明の熱伝導性組成物は、組成物を熱源と熱放散構成要素との間に位置決めして、熱的に接触させることによって、熱源を熱放散構成要素に熱的に結合するために使用することができる。本発明の電気伝導性組成物は、組成物を構成要素と電気的に接触させて位置決めすることによって、2つ以上の構成要素を電気的に結合するために使用することができる。電気伝導性組成物はまた、電磁干渉(electromagnetic interference、EMI)遮蔽のために使用することもできる。組成物は、組成物が伝導的に結合されている構成要素若しくは他の構成要素の特徴部の中に、特徴部を通って、及び/又は特徴部の周りに流入するように、構成要素の中に又は構成要素上に注ぐなど、自己平滑化又は低せん断流動性が所望されるか又は必要とされる場所に適用するのに特に有用である。
【実施例】
【0050】
材料及び組成物の特徴付け
低せん断粘度。本明細書において上で説明したように組成物に関する低せん断粘度を測定する。
【0051】
1H NMR分析。Varian Unity INOVA 400(400MHz)分光計を使用して1H NMRスペクトルを収集する。1,4-ジオキサン(3.68ppm)を内部標準として使用する。64のスキャン及び15秒の緩和遅延を使用する。
【0052】
29Si NMR分析。Varian Unity INOVA 400(400MHz)分光計を使用して29Si NMRスペクトルを収集する。0.2Mのクロム(III)アセチルアセトネートを含有する溶媒として重水素化クロロホルムを使用する。256のスキャン及び13秒の緩和遅延を使用する。
【0053】
材料
表1及び表2は、本明細書において説明された試料を調製する際に使用するための材料を特定する。「Me」は、メチル基を指し、「Hex」は、ヘキシル基を指し、及び「Vi」は、ビニル基を指す。
【表1】
【表2】
【0054】
阻害剤溶液1の調製
まず2.00gの阻害剤1、続いて18.00gのポリマー4を添加することによって、歯科用カップ中で阻害剤溶液1を調製する。FlackTek DAC150スピードミキサを使用して、2000RPMで30秒間、成分を一緒に混合する。
【0055】
触媒溶液1の調製
まず0.43gの白金触媒1を10gのトルエン(Sigma)に添加することによって、20mLのガラスバイアル中で触媒溶液1を調製する。撹拌棒を加え、内容物を300RPMで15分間撹拌する。
【0056】
触媒溶液2の調製
まず2.00gの白金触媒2、続いて18.00gのポリマー4を添加することによって、歯科用カップ中で触媒溶液2を調製する。次いで、FlackTek DAC150スピードミキサを使用して、2000RPMで30秒間、添加された成分を混合する。
【0057】
添加剤1の合成
80℃のオーブンで焼成した清浄で乾燥した500ミリリットル(mL)丸底4つ口バッフル付きフラスコに、150グラム(g)の乾燥メタ-キシレン(Aldrich)及び100gの添加剤6を添加する。フラスコに水冷還流冷却器を取り付け、ヘッドスペースを通して乾燥窒素を流し、窒素のわずかな陽圧を作製する。ポリテトラフルオロエチレンブレードを用いて1分当たり120回転(revolutions per minute、RPM)で混合物を撹拌し、500mLサイズの加熱マントルで加熱する。反応混合物中に浸漬した二重独立K型熱電対でフラスコの内容物の温度を監視する。混合物を60℃に加熱し、次いで1.53gの無水マレイン酸(Aldrich、無水物対ビニルモル比1:1)を添加し、これを撹拌下で完全に溶解させた。次いで、6.45gのジベンゾイルペルオキシド(Aldrich)を添加する。フラスコネック上の試薬残留物をすすぎ、反応溶液との混合物に漏斗で落とす。温度を120℃に上げ、撹拌速度を160RPMに増加させる。混合物を2時間反応させ、次いで加熱マントルをコルクリングに置き換え、窒素掃引及び撹拌を維持しながらフラスコ内容物を25℃に冷却させる。得られた透明で、淡黄色の材料を1リットルのロータリーエバポレータフラスコに移し、ロータリーエバポレータを使用して真空下で溶媒を除去する。無水物濃度を、本明細書において上で説明されるように1H NMR分光法によって測定する。
【0058】
添加剤2の合成
80℃のオーブンで焼成した清浄で、乾燥した3リットル丸底4つ口バッフル付きフラスコに、850グラム(g)の乾燥メタ-キシレン(Aldrich)及び600gの添加剤6を添加する。フラスコに水冷還流冷却器を取り付け、ヘッドスペースを通して乾燥窒素を流し、窒素のわずかな陽圧を作製する。ポリテトラフルオロエチレンブレードを用いて1分当たり155回転(RPM)で混合物を撹拌し、3リットルサイズの加熱マントルで加熱する。反応混合物中に浸漬した二重独立K型熱電対でフラスコの内容物の温度を監視する。混合物を60℃に加熱し、次いで18.3gの無水マレイン酸(Aldrich、無水物対ビニルモル比2:1)を添加し、これを撹拌下で完全に溶解させた。次いで、39gのジベンゾイルペルオキシド(Aldrich)を添加する。追加の25gのメタ-キシレンを添加して、ジャーをすすぎ、丸底フラスコに移す。フラスコネック上の試薬残留物をすすぎ、反応溶液との混合物に漏斗で落とす。温度を120℃に上げ、撹拌速度を190RPMに増加させる。混合物を3時間反応させ、次いで加熱マントルをコルクリングに置き換え、窒素掃引及び撹拌を維持しながらフラスコ内容物を25℃に冷却させる。得られた透明で淡黄色の材料を1リットルのナルゲンボトルに移す。真空下でロータリーエバポレータを使用して溶媒を除去する。無水物濃度を、本明細書において上で説明されるように1H NMR分光法によって測定する。
【0059】
添加剤3の合成
80℃のオーブンで焼成した清浄で乾燥した500ミリリットル(mL)丸底4つ口バッフル付きフラスコに、150グラム(g)の乾燥メタ-キシレン(Aldrich)及び150gのポリマー5を添加する。フラスコに水冷還流冷却器を取り付け、ヘッドスペースを通して乾燥窒素を流し、窒素のわずかな陽圧を作製する。ポリテトラフルオロエチレンブレードを用いて1分当たり100回転(RPM)で混合物を撹拌し、500mLサイズの加熱マントルで加熱する。反応混合物中に浸漬した二重独立K型熱電対でフラスコの内容物の温度を監視する。混合物を60℃に加熱し、次いで7.34gの無水マレイン酸(Aldrich、無水物対ビニルモル比1:1)を添加し、これを撹拌下で完全に溶解させた。次いで、7.8gのジベンゾイルペルオキシド(Aldrich)を添加する。フラスコネック上の試薬残留物をすすぎ、反応溶液との混合物に漏斗で落とす。温度を120℃に上げ、撹拌速度を190RPMに増加させる。混合物を2時間反応させ、次いで加熱マントルをコルクリングに置き換え、窒素掃引及び撹拌を維持しながらフラスコ内容物を25℃に冷却させる。得られた透明で淡黄色の物質を1リットルのロータリーエバポレータフラスコに移し、溶媒を除去する。無水物濃度を、本明細書において上で説明されるように1H NMR分光法によって測定する。
【0060】
添加剤4の合成
80℃のオーブンで焼成した清浄で乾燥した500ミリリットル(mL)丸底4つ口バッフル付きフラスコに、150グラム(g)の乾燥メタ-キシレン(Aldrich)及び150gのポリマー5を添加する。フラスコに水冷還流冷却器を取り付け、ヘッドスペースを通して乾燥窒素を流し、窒素のわずかな陽圧を作製する。ポリテトラフルオロエチレンブレードを用いて1分当たり100回転(RPM)で混合物を撹拌し、500mLサイズの加熱マントルで加熱する。反応混合物中に浸漬した二重独立K型熱電対でフラスコの内容物の温度を監視する。混合物を60℃に加熱し、次いで7.34gの無水マレイン酸(Aldrich、無水物対ビニルモル比1:1)を添加し、これを撹拌下で完全に溶解させた。次いで、7.8gのジベンゾイルペルオキシド(Aldrich)を添加する。フラスコネック上の試薬残留物をすすぎ、反応溶液との混合物に漏斗で落とす。温度を120℃に上げ、撹拌速度を190RPMに増加させる。混合物を2時間反応させ、次いで加熱マントルをコルクリングに置き換え、窒素掃引及び撹拌を維持しながらフラスコ内容物を25℃に冷却させる。得られた透明で淡黄色の材料を1リットルのロータリーエバポレータフラスコに移し、溶媒を除去する。無水物濃度を、本明細書において上で説明されるように、1H NMR分光法によって測定する。
【0061】
添加剤5の合成
まず、SiH末端シロキサン1を以下の様式で調製する:還流冷却器、撹拌棒、温度プローブ及び窒素パージを装備した、オーブン乾燥させた1リットルの3つ口フラスコに、494.03グラム(g)のデカメチルシクロペンタシロキサン(The Dow Chemical CompanyからDOWSIL(商標)245 Fluidとして入手可能)及び6.03gのテトラメチルジシロキサン(The Dow Chemical CompanyからDOWSIL(商標)3-7010 Fluidとして入手可能)を添加する。トリフルオロメタンスルホン酸(Sigma Aldrich製0.25ミリリットル)を添加し、175RPMで撹拌する。フラスコの内容物を70℃に加熱し、8時間撹拌させる。フラスコの内容物を40℃に冷却し、6.47gの重炭酸ナトリウム(Sigma Aldrich)を添加して、混合物を形成する。全ての混合物を2時間混合し続け、次いで混合物を25℃に冷却させる。ナイロンメッシュ(0.45マイクロメートル、Whatmanから入手可能)を通して混合物を濾過する。濾液を真空下(1.3パスカル、10ミリトール)で4時間150℃に加熱して、揮発性物質を除去し、SiH末端シロキサン1を取得する。
【0062】
次いで、以下の様式で添加剤5を調製する:磁気撹拌棒、水冷冷却器、ガラス熱電対及び追加の漏斗を装備した、オーブン乾燥した100mLの3つ口丸底フラスコに、48.84gのSiH末端シロキサン1を添加する。フラスコの内容物を60℃に加熱し、5滴のアリルコハク酸無水物(Wako)を添加し、600RPMで5分間撹拌させる。33マイクロリットルの触媒溶液1を添加し、60℃で10分間撹拌する。0.35gのアリルコハク酸無水物を20分かけて滴下供給する。反応物を1時間混合し続ける。混合物を25℃に冷却し、1H NMR分光法29Si NMR分光法によって反応生成物(添加剤5)を分析して、構造を測定する。
【0063】
添加剤7の合成
還流冷却器、撹拌棒、温度プローブ、及び窒素パージを装備した1リットルの三つ口フラスコに、192.42gのポリマー6、7.58gのアリルコハク酸無水物(Wako)、及び22.20gのイソドデカン(Fischer Scientific)を添加する。フラスコの内容物を撹拌しながら75℃に加熱する。0.76グラムの触媒溶液1を添加する。溶液を80℃で2時間撹拌する。フラスコの内容物を真空下(1.3パスカル、10ミリトール)で2時間、135℃に加熱して、揮発性物質を除去し、添加剤7を取得する。1H NMR分光法29Si NMR分光法によって添加剤7を特徴付けて、構造を測定する。
【0064】
添加剤9の合成
0.35gのアリルコハク酸無水物の代わりに、1.16gのアリルコハク酸無水物を20分かけて供給することを除いて、添加剤5と同様の様式で添加剤9を調製する。
【0065】
添加剤10の合成
還流冷却器、撹拌棒、温度プローブ、及び窒素パージを装備した1リットルの三つ口フラスコに、412.18gのポリマー7、61.96gのアリルコハク酸無水物(Wako)、及び55.56gのイソドデカン(Fischer Scientific)を添加する。フラスコの内容物を撹拌しながら76℃に加熱し、次いで0.53グラムの触媒溶液1を添加し、80℃で2時間撹拌する。60℃に減熱し、次いで45グラムの1-ヘキセン(Sigma)及び0.25グラムの触媒溶液1を添加する。60℃で2時間撹拌する。フラスコの内容物を真空下(1.3パスカル、10ミリトール)で2時間、135℃に加熱して、揮発性物質を除去する。1H NMR分光法29Si NMR分光法によって添加剤10を特徴付けて、構造を測定する。
【0066】
組成物
パートI:様々な添加剤を有する熱伝導性組成物
試料の調製。まずポリマー1成分を添加することによって、歯科用カップ中で試料を調製する。組成物が添加剤を含有する場合、添加剤成分を添加し、FlackTek DAC150スピードミキサを使用して2000RPMで20秒間混合し、そうでなければ、充填剤1の添加を続ける。充填剤1成分を添加し、2000RPMで20秒間混合し、続いて手動で混合する。充填剤2成分を添加し、2000RPMで20秒間混合し、続いて手動で混合する。充填剤3成分を添加し、2500RPMで20秒間混合し、続いて手動で混合する。2回目の混合を、2500RPMで20秒間行う。得られた混合物を3.066キロパスカル(23ミリメートル水銀柱)圧の真空オーブン中で150℃に1時間加熱して、最終試料を取得する。
【0067】
表3は、各成分のグラム(g)を示すパートIの試料配合物及びそれらの試料の特徴を列挙する。
【0068】
表3のデータからのいくつかの観察は、以下を含む:
(a)82体積%の充填剤の使用は、添加剤による低せん断粘度低減を達成するには高すぎる。
【0069】
(b)添加剤1分子当たりの無水物基の平均数は、低せん断粘度低減を引き起こすために2未満でなければならない。例えば、試料Tを試料9、11、15及び22と比較されたい。
【0070】
(c)添加剤1分子当たりの無水物基の平均数は、低せん断粘度低減を引き起こすために0より大きくなければならない。例えば、試料Qを試料9及び11と、並びに試料Pを試料8及び10と比較されたい。
【表3】
1低せん断粘度変化は、同じ体積%の充填剤を有する試料参照A~Fに対するものである
2組成物は、粘度を測定するには濃すぎる。
【0071】
パートII:ビニルシロキサン熱伝導性組成物中の添加剤1
手順においてポリマー1の代わりにポリマー2を使用することを除いて、パートIと同様の様式で試料参照Y及び24を調製する。参照Yについては、2.864gのポリマー2、1.714gの充填剤1、5.141gの充填剤2、及び10.282gの充填剤3を使用する。試料24では、0.305の添加剤1、2.558gのポリマー2、1.714gの充填剤1、5.142gの充填剤2、及び10.285gの充填剤3を使用する。表4は、これらの2つの試料に関する特徴を提示する。試料24に関する「低せん断粘度%低減」は、参照Yに対するものである。
【表4】
【0072】
パートIII:酸化亜鉛及びアルミニウム三水和物添加剤を有する熱伝導性組成物
充填剤1、2及び3の代わりに充填剤4、5及び6を使用することを除いて、パートIと同様の様式で試料参照Z及び25を調製する。参照Zについては、3.461gのポリマー1、3.530gの充填剤4、4.762gの充填剤5、及び8.245gの充填剤6を使用する。試料25については、0.305の添加剤1、3.155gのポリマー1、3.529gの充填剤4、4.766gの充填剤5、及び8.250gの充填剤6を使用する。表5は、これらの2つの試料の特徴を提示する。試料25についての「低せん断粘度%低減」は、参照Zに対するものである。
【表5】
【0073】
パートIV:添加剤1を有する硬化性電気伝導性組成物
表6は、参照試料AA並びに試料BB、CC及び26~29に関する配合物(グラムで列挙された成分量)を提示する。表7は、配合物の特徴を提示する。「低せん断粘度%低減」は、参照AAに対するものである。
【0074】
指定された量のポリマー3、ポリマー4、任意の指定された添加剤、シラン1、シラン2、及び充填剤7を添加することによって、歯科用カップ中で試料配合物を調製する。成分を一緒に穏やかに手動で混合し、次いでFlackTekスピードミキサを用いて1600RPMで30秒間混合する。充填剤8を添加し、穏やかに手動で混合し、次いでFlackTekスピードミキサを用いて1600RPMで30秒間混合する。充填剤9を添加し、次いでFlackTekスピードミキサを用いて1600RPMで30秒間混合する。特定量の阻害剤溶液1及び架橋剤1を添加する。穏やかに手動で混合し、次いで、FlackTekスピードミキサを用いて1600RPMで30秒間混合する。特定量の触媒溶液2を添加する。穏やかに手動で混合し、次いで、FlackTekスピードミキサを用いて1600RPMで30秒間混合する。
【表6】
【表7】
*添加剤6は、この配合物中のマトリックスポリマーよりも低い粘度を有するので、おそらく粘度低減をもたらす。
【国際調査報告】