(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】アガロフラン化合物及びその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
C07D 307/00 20060101AFI20240206BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20240206BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240206BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C07D307/00 CSP
A61K31/343
A61P25/22
A61P25/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544442
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 CN2022080670
(87)【国際公開番号】W WO2022199412
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】202110305886.0
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523277356
【氏名又は名称】北京承頤医薬科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】程翔
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BA05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA12
(57)【要約】
本願の実施例は、アガロフラン化合物及びその製造方法と使用に関し、本願の実施例では、4-ブチル-α-アガロフラン(BAF)のアルキル側鎖などの主な代謝部位に対して構造を改変することにより、活性がより高く、治療効果がより優れる、薬物動態特性がより優れる新規なアガロフラン化合物を提供し、それを不安症などの精神疾患の治療に用いる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造一般式(I)に示されるアガロフラン化合物。
【化1】
(式中、A環内には二重結合が存在せず又はA環の2-3位に位置する二重結合が1つ存在し、
R
1は、フッ素原子によって一置換、二置換又は三置換されたメチル基であり、
R
2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC
2~C
9直鎖ヒドロカルビレン基、分枝鎖ヒドロカルビレン基若しくはシクロアルキレン基であり、前記直鎖ヒドロカルビレン基又は分枝鎖ヒドロカルビレン基は、アルキレン基、又は1~3個の二重結合を含有するアルケニレン基であり、
mは、A環の4位炭素に結合されたR
3基の数を示し、m=1又は2であり、m=1である時、R
3は水素原子、カルボニル基又はヒドロキシ基から選ばれるものであり、m=2である時、R
3は重水素原子であり、
R
4は、水素原子、重水素原子、カルボニル基又はヒドロキシ基から選ばれるものである。)
【請求項2】
R
2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC
2~C
5直鎖アルキレン基であり、任意に、R
2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC
3~C
4直鎖アルキレン基であり、さらに任意に、R
2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC
3直鎖アルキレン基であることを特徴とする請求項1に記載のアガロフラン化合物。
【請求項3】
下記の化合物から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のアガロフラン化合物。
【化2】
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のアガロフラン化合物又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグを含有し、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤のうちの少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
不安症を予防及び/又は治療する薬物の製造における、請求項1~3のいずれか1項に記載のアガロフラン化合物又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はそれを含む医薬組成物の用途。
【請求項6】
請求項1に記載のアガロフラン化合物の製造方法であって、前記製造方法としては、
一般式(I)に示されるアガロフラン化合物のA環内にはA環の2-3位に位置する二重結合が1つ存在し且つm=1であり、R
3、R
4が同時に水素原子である時、以下のステップを含み、
【化3】
式中、式(I-a)及び式(I-b)の化合物がアルカリ性条件下で、置換反応を行って式(I-c)の化合物を得て、R
1は、フッ素原子によって一置換、二置換又は三置換されたメチル基であり、R
2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC
2~C
9直鎖ヒドロカルビレン基、分枝鎖ヒドロカルビレン基若しくはシクロアルキレン基であり、前記直鎖ヒドロカルビレン基又は分枝鎖ヒドロカルビレン基は、アルキレン基、又は1~3個の二重結合を含有するアルケニレン基であり、Xは、ハロゲンであり、好ましくは臭素であり、
式(I-c)の化合物が還元剤の存在下、還元反応を行って式(I-d)の化合物を得て、
式(I-d)の化合物が酸性条件下で環化反応を行って、式(I-e)化合物を得る製造方法(1)、
一般式(I)に示されるアガロフラン化合物のA環内に二重結合が存在せず且つm=1であり、R
3、R
4が同時に水素である時、製造方法(1)における式(I-e)化合物を用いて接触水素化により式(I-f)の化合物を得るステップを含む製造方法(2)、
【化4】
一般式(I)に示されるアガロフラン化合物のA環内にはA環の2-3位に位置する二重結合が1つ存在し且つm=2であり、R
3、R
4が同時に重水素である時、以下のステップを含み、
【化5】
式中、式(I-a)及び式(I-b)の化合物がアルカリ性条件下で、置換反応を行って式(I-c)の化合物を得て、R
1は、フッ素原子によって一置換、二置換又は三置換されたメチル基であり、R
2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC
2~C
9直鎖ヒドロカルビレン基、分枝鎖ヒドロカルビレン基若しくはシクロアルキレン基であり、前記直鎖ヒドロカルビレン基又は分枝鎖ヒドロカルビレン基は、アルキレン基、又は1~3個の二重結合を含有するアルケニレン基であり、Xは、ハロゲンであり、好ましくは臭素であり、
式(I-c)の化合物がアルカリ性条件下で重水素化アルコールと重水素化反応を行って、式(I-j)の化合物を生成し、
式(I-j)の化合物が還元剤の存在下、還元反応を行って式(I-g)の化合物を得て、
式(I-g)の化合物が酸性条件下で環化反応を行って、式(I-h)化合物を得る製造方法(3)、
一般式(I)に示されるアガロフラン化合物のA環内に二重結合が存在せず且つm=2であり、R
3、R
4が同時に重水素である時、製造方法(3)における式(I-h)化合物を用いて接触水素化により式(I-i)化合物を得るステップを含む製造方法(4)、
【化6】
一般式(I)に示されるアガロフラン化合物のA環内に二重結合が存在し且つm=1であり、R
3がカルボニル基であり、R
4が水素である時、製造方法(1)の式(I-e)化合物を用いて酸化剤の存在下、酸化反応を行って式(I-k)の化合物を得るステップを含む製造方法(5)、
【化7】
一般式(I)に示されるアガロフラン化合物のA環内に二重結合が存在し且つm=1であり、R
3がヒドロキシ基であり、R
4が水素である時、製造方法(5)の式(I-k)の化合物を用いて還元剤の存在下、還元反応を行って式(I-m)の化合物を得るステップを含む製造方法(6)、
【化8】
のうちのいずれか1つから選ばれることを特徴とする製造方法。
【請求項7】
R
2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC
2~C
5直鎖アルキレン基であり、任意に、R
2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC
3~C
4直鎖アルキレン基であり、さらに任意に、R
2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC
3直鎖アルキレン基であることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
R
1、R
2としては、下記のいずれか1つから選ばれることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
1)R
1=-CF
3、R
2=-CH
2CH
2CH
2-
2)R
1=-CH
2F、R
2=-CH
2CH
2CH
2-
3)R
1=-CHF
2、R
2=-CH
2CH
2CH
2-
4)R
1=-CF
3、R
2=-CH
2CH
2CH
2CH
2-
【請求項9】
アルカリ性条件を提供する試薬は無機塩基を含み、前記無機塩基は、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシドのうちの1種又は複数種を含み、
及び/又は、還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化リチウムアルミニウムのうちの1種又は複数種を含み、
及び/又は、酸性環境を提供する試薬は、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸のうちの1種又は複数種を含み、
及び/又は、接触水素化を行わせる金属触媒は、パラジウム炭素、ロジウム炭素、二酸化白金、ラネーニッケルのうちの1種又は複数種を含み、
及び/又は、酸化剤は、酸素、過酸化水素、過酸化物、サレット試薬のうちの1種又は複数種を含むことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
製造方法(1)で使用される溶媒は、ステップ1:メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノールのうちの1種又は複数種、ステップ2:ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのうちの1種又は複数種、ステップ3:n-ヘキサン、石油エーテルのうちの1種又は複数種を含み、
及び/又は、製造方法(2)で使用される溶媒は、エタノール、メタノール、ジエチルエーテルのうちの1種又は複数種を含み、
及び/又は、製造方法(3)で使用される溶媒は、ステップ1:メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノールのうちの1種又は複数種、ステップ2:重水素化メタノール、重水素化エタノールのうちの1種又は複数種、ステップ3:ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのうちの1種又は複数種、ステップ4:n-ヘキサン、石油エーテルのうちの1種又は複数種を含み、
及び/又は、製造方法(4)で使用される溶媒は、エタノール、メタノール、ジエチルエーテルのうちの1種又は複数種を含み、
及び/又は、製造方法(5)で使用される溶媒は、ジクロロメタン、トルエン、ベンゼン、ピリジンのうちの1種又は複数種を含み、
及び/又は、製造方法(6)で使用される溶媒は、エタノール、メタノール、ジエチルエーテルのうちの1種又は複数種を含むことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202110305886.0で出願の名称が「アガロフラン化合物及びその製造方法と使用」である中国特許出願の優先権を主張し、当該出願の全体の内容が参照により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本願は、バイオ医薬品の技術分野に関し、具体的には、アガロフラン化合物及びその製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0003】
不安は人間の中枢神経系の疾患又は障害の1種であり、人間の社会生活、仕事のリズムがますます早くなりプレッシャーが増加するのに伴い、不安症の発生率は日に日に増加する傾向にある。
【0004】
精神疾患に関する多くの臨床疫学的調査の結果から、精神疾患の併存症は非常に普通であり、様々な種類の併存症の中で、最もよく見られるのはうつ病の併存症の不安症であるということを示した。多くの研究から、併存症である不安症はうつ病の程度を増し、回復率を低下させ、再入院率を高め、自殺するリスクを増加させ、社会的及び職業的機能性を低下させてしまうということが示された。他の精神疾患に不安症が併存している患者にも同様の傾向が見られる。そのため、不安症の治療は特に重要である。現在、世界では不安症に対する治療が不十分であり、充分な治療を受けているのは9.8%だけである。不安症患者のうち、治療の必要性を感じているのは41.3%だけであり、中国の場合、対応する割合が世界の平均値を下回っている。
【0005】
不安症の治療が特に重要でありながら、治療が不十分であるという現状は、標準化するかつ充分な不安症の治療を強化するのは長続きする大きな責任であるように思わせてくれる。現在、臨床上の不安症の特異的な治療薬の種類は抗うつ薬に対してはるかに下回っている。したがって、精神障害にとって、不安の治療こそが治療上のカギである。
【0006】
すでに開発された抗不安治療薬の中で、代表的な薬物はベンゾジアゼピン化合物であり、しかしながら臨床治療の時にベンゾジアゼピンには寛容性、依存性、休薬後の再発あるいは治療効果の遅延などの副作用があるということが判明した。したがって、治療効果がより優れており、副作用がより軽い抗不安薬を開発するのは非常に必要なことである。
【0007】
沈香は、伝統的な貴重な生薬であり、複数種のアガロフラン化合物を含有しており、アガロフラン薬である4-ブチル-α-アガロフラン(4-butyl-agarofuran、BAF)は既知の新規な抗不安薬であり、現在臨床ではII/III相への使用が承認されている。当該化合物は顕著な抗不安症活性を有しながら、その副作用が極めて軽く、有害事象がめったにない。しかしながら、当該薬物は薬物動態特性が悪く、具体的には、総曝露量の低さ、生物学的利用能の低さ、半減期の短さなどが見られ、治療効果にはある程度影響が及んでいる。
【化1】
【0008】
当該背景技術の部分で開示されている情報は、本願の全体的な背景への理解を深めるためのもので、当該情報が既に、当業者に周知される従来技術を構成しているということを認め又は何らかの形でそれを示唆するものと見なすべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願の目的は、4-ブチル-α-アガロフラン(BAF)のアルキル側鎖などの主な代謝部位に対して構造を改変することにより、活性がより高く、治療効果がより優れる、薬物動態特性がより優れる新規なアガロフラン化合物を提供し、それを不安症などの精神疾患の治療に用いることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の実施例は、本願の目的を達成するために、以下の技術的解決手段を提供する。
本願の一態様は、構造一般式(I)に示されるアガロフラン化合物を提供する。
【化2】
式中、A環内には二重結合が存在せず又はA環の2-3位に位置する二重結合が1つ存在し、
R
1は、フッ素原子によって一置換、二置換又は三置換されたメチル基であり、
R
2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC
2~C
9直鎖ヒドロカルビレン基、分枝鎖ヒドロカルビレン基若しくはシクロアルキレン基であり、前記直鎖ヒドロカルビレン基又は分枝鎖ヒドロカルビレン基は、アルキレン基、又は1~3個の二重結合を含有するアルケニレン基であり、
mは、A環の4位炭素に結合されたR
3基の数を示し、m=1又は2であり、m=1である時、R
3は水素原子、カルボニル基又はヒドロキシ基から選ばれ、m=2である時、R
3は重水素原子であり、
R
4は、水素原子、重水素原子、カルボニル基又はヒドロキシ基から選ばれる。
【0011】
上述したように、A環は全体としてオキサ三環を表し、式中、R2がA環の2位に結合され、R3がA環の4位に結合され、R4がA環の12位に結合され、mは、同じ基の中の繰り返し単位の数ではなく、R3基の数を示す。
【0012】
前記一般式(I)に示されるアガロフラン化合物の可能な一実施形態では、R2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC2~C5直鎖アルキレン基である。
【0013】
前記一般式(I)に示されるアガロフラン化合物の可能な一実施形態では、R2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC3~C4直鎖アルキレン基である。
【0014】
前記一般式(I)に示されるアガロフラン化合物の可能な一実施形態では、R2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC3直鎖アルキレン基である。
【0015】
前記一般式(I)に示されるアガロフラン化合物の可能な一実施形態では、下記の化合物から選ばれる。
【化3】
【0016】
本願の別の態様は、一般式(I)に示されるアガロフラン化合物又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグを含有し、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤のうちの少なくとも1種をさらに含有する医薬組成物に関する。
【0017】
本願の別の態様は、不安症を予防及び/又は治療する薬物の製造における、一般式(I)に示されるアガロフラン化合物又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はそれを含む医薬組成物の用途に関する。
【0018】
本願の別の態様は、不安症の治療を必要とする対象に治療有効量の一般式(I)に示されるアガロフラン化合物又は薬学的に許容されるその塩、又はそのプロドラッグ、又はそれを含む医薬組成物を投与することを含む、不安症の治療方法に関する。
【0019】
本願の一般式(I)のアガロフラン化合物又はそれを含有する医薬組成物は単位用量の形態で投与されてもよく、投与経路は、腸管又は非腸管であってもよく、例えば、経口、筋肉内、皮下、鼻内、経口腔粘膜、経皮、腹腔内又は経直腸などである。投与剤形は、例えば、錠剤、カプセル、滴丸、エアゾール剤、丸剤、散剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、坐剤、凍結乾燥粉末注射剤などであり、一般製剤、徐放性製剤、放出制御型製剤及び様々な微粒子投与システムであってもよい。
【0020】
薬物の投与量は、使用される特定の化合物の活性、治療する疾患の性質と重症度、患者の性別、年齢、体重、健康状態、行動、食事、投与時間、投与方式、排泄速度、薬物の組み合わせなどを含み、ただしそれらに限定されない多くの要因から決められる。また、最適な治療方式として、例えば、治療の形式、一般式(I)の化合物の1日用量は従来の治療計画に基づいて検証できる。
【0021】
本願の別の態様は、一般式(I)に示されるアガロフラン化合物の製造方法に関し、『(+)ジヒドロカルボンを原料とする抗不安薬候補AF-5の立体選択的合成』(尹大力ら,『中国薬物化学雑誌』,2003年,第13卷,第4号,187-193ページ)の製造方法を参照できる。前記製造方法としては下記の製造方法(1)~(5)のうちのいずれか1つから選ばれる。
【0022】
(1)一般式(I)に示されるアガロフラン化合物のA環内にはA環の2-3位に位置する二重結合が1つ存在し且つm=1であり、R
3、R
4が同時に水素原子である時、製造方法は以下のステップを含む。
【化4】
式中、式(I-a)及び式(I-b)の化合物がアルカリ性条件下で、置換反応を行って式(I-c)の化合物を得て、R
1は、フッ素原子によって一置換、二置換又は三置換されたメチル基であり、R
2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC
2~C
9直鎖ヒドロカルビレン基、分枝鎖ヒドロカルビレン基若しくはシクロアルキレン基であり、前記直鎖ヒドロカルビレン基又は分枝鎖ヒドロカルビレン基は、アルキレン基、又は1~3個の二重結合を含有するアルケニレン基であり、Xは、ハロゲンであり、好ましくは臭素であり、
式(I-c)の化合物が還元剤の存在下、還元反応を行って式(I-d)の化合物を得て、
式(I-d)の化合物が酸性条件下で環化反応を行って、式(I-e)化合物を得る。
【0023】
(2)一般式(I)に示されるアガロフラン化合物のA環内に二重結合が存在せず且つm=1であり、R
3、R
4が同時に水素である時、製造方法は、製造方法(1)の式(I-e)化合物を用いて接触水素化により式(I-f)の化合物を得るステップを含む。
【化5】
【0024】
(3)一般式(I)に示されるアガロフラン化合物のA環内にはA環の2-3位に位置する二重結合が1つ存在し且つm=2であり、R
3、R
4が同時に重水素である時、製造方法は以下のステップを含む。
【化6】
式中、式(I-a)及び式(I-b)の化合物がアルカリ性条件下で、置換反応を行って式(I-c)の化合物を得て、R
1は、フッ素原子によって一置換、二置換又は三置換されたメチル基であり、R
2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC
2~C
9直鎖ヒドロカルビレン基、分枝鎖ヒドロカルビレン基若しくはシクロアルキレン基であり、前記直鎖ヒドロカルビレン基又は分枝鎖ヒドロカルビレン基は、アルキレン基、又は1~3個の二重結合を含有するアルケニレン基であり、Xは、ハロゲンであり、好ましくは臭素であり、
式(I-c)の化合物がアルカリ性条件下で重水素化アルコールと重水素化反応を行って、式(I-j)の化合物を生成し、
式(I-j)の化合物が還元剤の存在下、還元反応を行って式(I-g)の化合物を得て、
式(I-g)の化合物が酸性条件下で環化反応を行って、式(I-h)化合物を得る。
【0025】
(4)一般式(I)に示されるアガロフラン化合物のA環内に二重結合が存在せず且つm=2であり、R
3、R
4が同時に重水素である時、製造方法は、製造方法(3)の式(I-h)化合物を用いて接触水素化により式(I-i)化合物を得るステップを含む。
【化7】
【0026】
(5)一般式(I)に示されるアガロフラン化合物のA環内に二重結合が存在し且つm=1であり、R
3がカルボニル基であり、R
4が水素である時、製造方法は、製造方法(1)の式(I-e)化合物を用いて酸化剤の存在下、酸化反応を行って式(I-k)の化合物を得るステップを含む。
【化8】
【0027】
(6)一般式(I)に示されるアガロフラン化合物のA環内に二重結合が存在し且つm=1であり、R
3がヒドロキシ基であり、R
4が水素である時、製造方法は、製造方法(5)の式(I-k)の化合物を用いて還元剤の存在下、還元反応を行って式(I-m)の化合物を得るステップを含む。
【化9】
【0028】
前記製造方法の可能な一実施形態では、R2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC2~C5直鎖アルキレン基であり、任意に、R2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC3~C4直鎖アルキレン基であり、さらに任意に、R2は、非置換であるか、又はヒドロキシ基によって置換された若しくはカルボニル基によって置換されたC3直鎖アルキレン基である。
【0029】
前記製造方法の可能な一実施形態では、R1、R2としては、下記のいずれか1つから選ばれる。
1.R1=-CF3、R2=-CH2CH2CH2-
2.R1=-CHF2、R2=-CH2CH2CH2-
3.R1=-CH2F、R2=-CH2CH2CH2-
4.R1=-CF3、R2=-CH2CH2CH2CH2-
【0030】
前記製造方法の可能な一実施形態では、アルカリ性条件を提供する試薬は、主に無機塩基であり、前記無機塩基は、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシドのうちの1種又は複数種を含む。
【0031】
前記製造方法の可能な一実施形態では、還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化リチウムアルミニウムのうちの1種又は複数種を含む。
【0032】
前記製造方法の可能な一実施形態では、酸性環境を提供する試薬は、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸のうちの1種又は複数種を含む。
【0033】
前記製造方法の可能な一実施形態では、接触水素化を行わせる金属触媒は、パラジウム炭素、ロジウム炭素、二酸化白金、ラネー(Raney)ニッケルのうちの1種又は複数種を含む。
【0034】
前記製造方法の可能な一実施形態では、酸化反応を行わせる酸化剤は、酸素、過酸化水素、過酸化物、サレット(Sarrett)試薬のうちの1種又は複数種を含む。
【0035】
前記製造方法の可能な一実施形態では、製造方法(1)で使用される溶媒は、ステップ1:メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノールのうちの1種又は複数種、ステップ2:ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのうちの1種又は複数種、ステップ3:n-ヘキサン、石油エーテルのうちの1種又は複数種を含む。
【0036】
前記製造方法の可能な一実施形態では、製造方法(2)で使用される溶媒は、エタノール、メタノール、ジエチルエーテルのうちの1種又は複数種を含む。
【0037】
前記製造方法の可能な一実施形態では、製造方法(3)で使用される溶媒は、ステップ1:メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノールのうちの1種又は複数種、ステップ2:重水素化メタノール、重水素化エタノールのうちの1種又は複数種、ステップ3:ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのうちの1種又は複数種、ステップ4:n-ヘキサン、石油エーテルのうちの1種又は複数種を含む。
【0038】
前記製造方法の可能な一実施形態では、製造方法(4)で使用される溶媒は、エタノール、メタノール、ジエチルエーテルのうちの1種又は複数種を含む。
【0039】
前記製造方法の可能な一実施形態では、製造方法(5)で使用される溶媒は、ジクロロメタン、トルエン、ベンゼン、ピリジンのうちの1種又は複数種を含む。
【0040】
前記製造方法の可能な一実施形態では、製造方法(6)で使用される溶媒は、エタノール、メタノール、ジエチルエーテルのうちの1種又は複数種を含む。
【発明の効果】
【0041】
本願の実施例の当該一般式(I)のアガロフランは優れた抗不安活性を示しており、既知の抗不安薬であるベンゾジアゼピン化合物(例えば、ジアゼパム)と比べて、それはすぐに効果が現れ、安全係数が高いという特徴を有し、4-ブチル-α-アガロフランと比べて、薬物動態特性がより優れており、例えば、半減期がより好適であり、曝露量、生物学的利用能がより高いなどの利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】高架式迷路におけるマウスのオープンアーム及びクローズアームでの滞在時間に対する実施例8の薬物の腹腔内注射の影響である(平均値±標準誤差、n=13)。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001は添加物である賦形剤との比較であり、
#P<0.05はBAF(2mg/kg)群との比較である。
【
図2】高架式迷路におけるマウスのオープンアーム及びクローズアームへの進入回数に対する実施例8の薬物の腹腔内注射の影響である(平均値±標準誤差、n=13)。*P<0.05、**P<0.01は添加物である賦形剤との比較である。
【
図3】高架式迷路におけるマウスのオープンアームとクローズアームへの進入回数比及び時間比に対する実施例8の腹腔内注射投与の影響である(平均値±標準誤差、n=13)。*P<0.05、**P<0.01は添加物である賦形剤との比較である。
【
図4】実施例8のマウスへのBAFの腹腔内注射(10mg/kg)後のプロトタイプの血漿中経時的変化の曲線である。
【
図5】実施例8のマウスへの化合物2の腹腔内注射(10mg/kg)後のプロトタイプの血漿中経時的変化の曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本願の実施例の目的、技術的解決手段及び利点がより明瞭になるよう、本願の実施例の技術的解決手段を明瞭かつ完全に説明する。言うまでもないが、説明される実施例は本願の全ての実施例ではなく、実施例の一部である。当業者が本願の実施例に基づいて、創造的労働をせずに得られる他の実施例の全てが、本願の請求範囲に属する。
【0044】
また、本願を一層説明するために、下記の特定の実施形態では多くの詳細を示している。当業者は、一部の詳細がなくても、本願は実施できるということを理解すべきである。一部の実施例では、本願の趣旨を引き立てるために、当業者によく知られる原料、要素、方法、手段などについては詳細に説明していない。
【0045】
特に他に明確な断りがない限り、明細書全体及び特許請求の範囲では、用語「含む」又はその変形、例えば「備える」又は「含有する」などは、記載されている要素又は構成要素を含むが、他の要素又は他の構成要素は排除されていないように理解される。
【0046】
特に断りがない限り、明細書及び請求項で使用される用語は次の意味を有する。
【0047】
用語「アルキレン基」には、2~9個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖アルキレン基が含まれており、例えば、プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、sec-ペンチレン基などであり、前記アルキレン基は、非置換であるか、又はヒドロキシ基、カルボニル基によって置換される。
【0048】
本願では、用語「1~3個の二重結合を含有するアルケニレン基」とは、1~3個の二重結合を有する直鎖又は分枝鎖アルケニレン基を指し、例えば、エテニレン基、プロペニレン基、3-ブテレン基、2-ブテレン基、2-ペンテニレン基、3-ペンテニレン基などであり、前記アルケニレン基は、非置換であるか、又はヒドロキシ基、カルボニル基によって置換される。
【0049】
本願の実施例では、化合物の構造はいずれも核磁気共鳴装置(NMR)又は/及び質量分析(MS)によって決定される。NMRの測定ではVarian Mercury-400又はBruker-600核磁気分析装置が用いられ、測定溶媒は、重水素化メタノール(CD3OD)、重水素化クロロホルム(CDCl3)であり、内部標準物質はテトラメチルシラン(TMS)である。
【0050】
MSの測定ではESI質量分析計(メーカー:Thermo、型番:Exactive Plus)が用いられる。
【0051】
HPLCの測定ではAgilent 1200高速液体クロマトグラフ(C8 150×4.6mmクロマトグラフィーカラム)が用いられる。
薄層クロマトグラフィー用シリカゲルプレートとして青島GF254シリカゲルプレートが用いられ、仕様は0.15~0.2mmである。
【0052】
カラムクロマトグラフィーでは煙台黄海シリカゲルによる300~400メッシュのシリカゲルが担体として用いられる。
【0053】
本願の既知の出発原料は当分野の既知の方法を用いて又はそれに従って合成してもよいし、又はITC、Alfa、畢得(Bidepharm)、伊諾凱(Innochem)などの試薬会社から購入してもよい。実施例で特に説明がない限り、反応はアルゴン又は窒素下で行われてもよい。
【0054】
実施例での反応の進行監視には薄層クロマトグラフィー(TLC)が用いられ、反応で使用される展開系は主に石油エーテル及び酢酸エチルであり、溶媒の体積比は化合物の極性の違いによって調整する。
【0055】
化合物の精製で用いられるカラムクロマトグラフィーの溶離系は主に石油エーテル及び酢酸エチルであり、溶媒の体積比は化合物の極性の違いによって調整する。
【0056】
実施例1:
ステップ1
(6R,9R)6-メチル-9-(1-ヒドロキシイソプロピル)-2-(4,4,4-トリフルオロブチル)ビシクロ[4.4.0]デカ-1-エン-3オン(1)の製造
【化10】
アルゴン保護下、式(I-a)化合物(1000mg、4.50mmol)、KOH(343mg、6.117mmol)をtert-ブタノールに溶解し、加熱して還流させ、4-ブロモ-1,1,1-トリフルオロブタン(1051mg、5.53mmol)の溶液10mLに1滴ずつ加え、全部滴下したら引き続き1時間反応させた。冷却して、10mLの蒸留水を加え、1N塩酸で中和してpH=7とし、溶媒を蒸発させ、残留物をジエチルエーテルに溶解し、ジエチルエーテル層を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して、溶媒を蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、石油エーテル/酢酸エチル(10:1)混合溶媒で溶離して、必要な化合物1を得た(745mg、収率64%)。[α]
D
20=-66.6°(c 0.89,CHCl
3),
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ 1.21(s,3H),1.72(s,3H),1.75(s,3H),1.42-1.48(m,2H),1.50-1.56(m,2H),1.78-1.83(m,5H),1.91-1.98(m,2H),2.05-2.13(m,2H),2.33-2.37(m,1H),2.41-2.51(m,3H),2.58-2.64(m,1H),2.67-2.71(m,1H)。
13C NMR(150MHz,CDCl
3)δ 198.1,166.5,133.2,73.4,44.0,36.9,36.4,35.9,34.1,33.7,33.5,29.0,27.1,27.0,25.0,24.4,21.5,21.4,21.2。HR-MS m/z(ESI)333.2030[M+H]
+,C
18H
28O
2F
3 計算値333.2036。
【0057】
ステップ2
(1R,6S,9R)6,10,10-トリメチル-2-(4,4,4-トリフルオロブチル)-11-オキサトリシクロ[7.2.1.0
1,6]ドデカ-2-エン(2)の製造
【化11】
化合物1(530mg、1.58mmol)を8mLのメタノールに溶解して水素化ホウ素ナトリウムを加えて還元反応を行い、室温で3時間撹拌し、5mLの水を加えて、濃塩酸でpHを3~4に調整し、10mLのn-ヘキサンを加えて、室温で一晩撹拌して環化反応を行い、n-ヘキサン層を分離して、水洗して中性とし、乾燥濃縮し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=50:1)で精製して化合物2を得た(300mg、収率60.1%)。[α]
D
20=29.3°(c 1.32,CHCl
3),
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ 0.90(s,3H),1.04-1.09(m,1H),1.21-1.25(m,5H),1.36(s,3H),1.62-1.76(m,7H),1.94-2.18(m,7H),5.60-5.61(m,1H)。
13C NMR(150MHz,CDCl
3)δ 135.1,127.2,85.1,81.0,44.10,37.0,34.4,33.8,33.6,32.9,32.6,30.4,30.1,24.4,22.9,22.5,21.9,21.3,21.2。HR-MS m/z(ESI)299.1990[M+H-H
2O]
+,C
18H
26F
3 計算値299.1981。
【0058】
実施例2:
ステップ1
(6R,9R)6-メチル-9-(1-ヒドロキシイソプロピル)-2-(4-フルオロブチル)ビシクロ[4.4.0]デカ-1-エン-3オン(3)の製造
【化12】
アルゴン保護下、式(I-a)化合物(500mg、2.25mmol)、KOH(171mg、3.0mmol)をtert-ブタノールに溶解し、加熱して還流させ、4-ブロモ-1-フルオロブタン(426mg、2.75mmol)の溶液5mLに1滴ずつ加え、全部滴下したら引き続き1時間反応させた。冷却して、10mLの蒸留水を加え、1N塩酸で中和してpH=7とし、溶媒を蒸発させ、残留物をジエチルエーテルに溶解し、ジエチルエーテル層を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して、溶媒を蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、石油エーテル/酢酸エチル(10:1)混合溶媒で溶離して、必要な化合物3を得た(421mg、収率63%)。[α]
D
20=-28.7°(c 0.195,CH
3OH),
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 1.17(s,3H),1.21(s,3H),1.23(s,3H),1.32-1.50(m,4H),1.63-1.69(m,3H),1.71-1.79(m,2H),1.85-1.93(m,2H),2.23-2.30(m,1H),2.35-2.46(m,3H),2.52-2.61(m,1H),2.63-2.69(m,1H),4.34-4.38(m,1H),4.46-4.50(m,1H)。
13C NMR(100MHz,CDCl
3)δ 198.3,166.6,134.2,85.0,83.3,73.6,44.1,37.0,36.6,35.8,34.3,30.6,30.3,29.0,27.2,27.0,26.0,25.0,24.9,24.8,21.3。HR-MS m/z(ESI)297.2232[M+H]
+,C
18H
30O
2F 計算値297.2224。
【0059】
ステップ2
(1R,6S,9R)6,10,10-トリメチル-2-(4-フルオロブチル)-11-オキサトリシクロ[7.2.1.0
1,6]ドデカ-2-エン(4)の製造
【化13】
化合物3(400mg、1.35mmol)を5mLのメタノールに溶解して水素化ホウ素ナトリウム(205mg、5.4mmol)を加えて還元反応を行い、室温で3時間撹拌し、2mLの水を加えて、濃塩酸でpHを3~4に調整し、7mLのn-ヘキサンを加えて、室温で一晩撹拌して環化反応を行い、n-ヘキサン層を分離して、水洗して中性とし、乾燥濃縮し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=50:1)で精製して、化合物4を得た(227mg、収率60.0%)。[α]
D
20=20.0°(c 0.5,CHCl
3),
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ 0.89(s,3H),1.02-1.07(m,1H),1.16-1.19(m,1H),1.22(s,3H),1.36(s,3H),1.41-1.68(m,2H)1.61-1.77(m,7H),1.93-2.03(m,5H),2.16-2.20(m,1H),4.36-4.39(m,1H),4.48-4.60(m,1H),5.60-5.61(m,1H)。
13C NMR(150MHz,CDCl
3)δ 136.0,126.7,85.3,85.0,83.4,80.9,44.2,37.0,34.6,32.9,32.7,30.8,30.7,30.5,24.7,24.5,23.0,22.7,22.0。HR-MS m/z(ESI)263.2167[M+H-H
2O]
+,C
18H
28F 計算値263.2170。
【0060】
実施例3:
ステップ1
(6R,9R)6-メチル-9-(1-ヒドロキシイソプロピル)-2-(5,5,5-トリフルオロペンチル)ビシクロ[4.4.0]デカ-1-エン-3オン(5)の製造
【化14】
アルゴン保護下、式(I-a)化合物(1000mg、4.5mmol)、カリウムtert-ブトキシド(758mg、6.75mmol)を10mLのtert-ブタノールに溶解し、加熱して還流させ、5-ブロモ-1,1,1-トリフルオロペンタン(1.108g、5.40mmol)のtert-ブタノール溶液10mLに1滴ずつ加え、全部滴下したら引き続き1時間反応させた。冷却して、10mLの蒸留水を加え、1N塩酸で中和してpH=7とし、溶媒を蒸発させ、残留物をジエチルエーテルに溶解し、ジエチルエーテル層を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して、溶媒を蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、石油エーテル/酢酸エチル(10:1)混合溶媒で溶離して、生成物5を得た(950mg、収率61%)。[α]
D
20=-63.3°(c 2.4,CHCl
3),
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ 1.16(s,3H),1.21(s,3H),1.23(s,3H),1.24-1.28(m,1H),1.30-1.45(m,4H),1.48-1.66(m,6H),1.72-1.77(m,1H),1.85-1.93(m,2H),1.99-2.09(m,2H),2.20-2.27(m,1H),2.35-2.44(m,3H),2.52-2.67(m,2H)。
13C NMR(150MHz,CDCl
3)δ 198.2,165.7,133.8,73.4,44.0,36.9,36.5,35.8,34.2,29.0,28.2,27.1,26.9,25.0,24.9,21.9,21.8,21.2。HR-MS m/z(ESI)347.2189[M+H]
+,C
19H
30O
2F
3 計算値347.2192。
【0061】
ステップ2
(1R,6S,9R)6,10,10-トリメチル-2-(5,5,5-トリフルオロペンチル)-11-オキサトリシクロ[7.2.1.0
1,6]ドデカ-2-エン(6)の製造
【化15】
生成物5(461mg、1.61mmol)を6mLのメタノールに溶解して水素化ホウ素ナトリウムを加えて還元反応を行い、室温で3時間撹拌し、5mLの水を加えて、濃塩酸でpHを3~4に調整し、10mLのn-ヘキサンを加えて、室温で一晩撹拌して環化反応を行い、n-ヘキサン層を分離して、水洗して中性とし、乾燥濃縮し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=50:1)で精製して最終生成物6を得た(258mg、収率55.6%)。[α]
D
20=17.0°(c 2.1,CHCl
3),
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ 0.91(s,3H),1.05-1.09(m,1H),1.24-1.34(m,7H),1.37(s,3H),1.58-1.73(m,8H),1.95-2.21(m,6H),5.60(brs,1H)。
13C NMR(150MHz,CDCl
3)δ 135.6,126.5,85.2,80.9,44.1,37.0,34.5,33.8,33.6,32.9,32.6,30.7,30.4,28.1,24.4,22.9,22.5,22.1,21.9。HR-MS m/z(ESI)313.2134[M+H-H
2O]
+,C
19H
28F
3 計算値313.2138。
【0062】
実施例4:
ステップ1
(6R,9R)6-メチル-9-(1-ヒドロキシイソプロピル)-2-(4,4,4-トリフルオロブチル)-4,4,10,10-テトラ重水素化ビシクロ[4.4.0]デカ-1-エン-3オン(7)の製造
【化16】
化合物1(298mg、0.90mmol)を3mLの重水素化メタノールに溶解し、ナトリウムメトキシド(49mg、0.90mmol)を加え、アルゴン保護下、室温で一晩撹拌し、1N塩酸で調整してpH=7とし、メタノールを完全に蒸発させ、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、そして飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して、溶媒を蒸発させた。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=20:1)で精製して黄色い油性物7を得た(290mg、収率97%)。[α]
D
20=-66.6°(c 0.89,CHCl
3),
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ 1.21(s,3H),1.25(s,3H),1.28(s,3H),1.43-1.48(m,1H),1.50-1.68(m,8H),1.78-1.83(m,1H),1.92-1.96(m,2H),2.06-2.12(m,2H),2.32-2.37(m,1H),2.46-2.51(m,1H)。
13C NMR(150MHz,CDCl
3)δ 198.2,166.4,133.3,126.3,73.4,43.9,36.9,36.2,35.8,33.7,33.5,29.0,27.0,25.0,24.4,21.5,21.2。HR-MS m/z(ESI)337.2260[M+H]
+,C
18H
24D
4O
2F
3 計算値337.2287。
【0063】
ステップ2
(1R,6R,9R)6,10,10-トリメチル-2-(4,4,4-トリフルオロブチル)-4,4,10-トリ重水素-11-オキサトリシクロ[7.2.1.0
1,6]ドデカ-2-エン(8)の製造
【化17】
水素化リチウムアルミニウム(32mg、0.83mmol)を3mLの無水テトラヒドロフランに懸濁させ、氷浴下、黄色い油性物7(280mg、0.83mmol)のテトラヒドロフラン溶液に1滴ずつ加え、滴下が完了したら、室温まで昇温して3時間撹拌して還元反応を行い、3mLの水を加え、濃塩酸でpHを3~4に調整し、3mLのn-ヘキサンを加え、室温で一晩撹拌して環化反応を行い、n-ヘキサン層を分離して、水洗して中性とし、乾燥濃縮し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=50:1)で精製して最終生成物8を得た(200mg、収率76%)。[α]
D
20=29.3°(c 1.32,CHCl
3),
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ 0.93(s,3H),1.08-1.10(m,1H),1.22-1.25(m,4H),1.39(s,3H),1.67-1.75(m,6H),1.96-1.98(m,1H),2.05-2.19(m,4H),5.63(s,1H)。
13C NMR(150MHz,CDCl
3)δ 135.2,127.0,85.0,81.0,44.0,36.9,34.4,33.8,33.6,32.6,30.4,30.1,24.3,22.9,21.9,21.2,21.2。HR-MS m/z(ESI)302.2161[M+H-H
2O]
+,C
18H
23D
3F
3 計算値302.2169。
【0064】
実施例5:
(1R,2R/S,6S,9R)6,10,10-トリメチル-2-(4,4,4-トリフルオロブチル)-11-オキサトリシクロ[7.2.1.0
1,6]ドデカンの製造(9)
【化18】
化合物2(50mg、0.16mmol)を5mLのジエチルエーテルに溶解し、30mgの10%パラジウム炭素を加え、室温常圧で7時間水素化反応させ、パラジウム炭素を濾過除去して、溶媒を蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=50:1)で精製して最終生成物9を得た(15mg、収率30%)。[α]
D
20=11.2°(c 0.68,CHCl
3),
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ 0.86(s,3H),1.10-1.14(m,4H),1.20(m,3H),1.27-1.77(m,14H),1.81-2.14(m,4H),2.31-2.66(m,1H)。HR-MS m/z(ESI)301.2132[M+H-H
2O]
+,C
18H
28F
3 計算値301.2138。
【0065】
実施例6:
(1R,6R,9R)6,10,10-トリメチル-2-(4,4,4-トリフルオロブチル)-11-オキサトリシクロ[7.2.1.0
1,6]ドデカ-2-エン-4-オンの製造(10)
【化19】
化合物2(100mg、0.32mmol)を5mLのジクロロメタンに溶解し、100mgのクロロクロム酸ピリジニウム(PCC)を加え、室温で一晩撹拌し、シリカゲルパッドで濾過して、溶媒を蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=50:1)で精製して最終生成物10を得た(80mg、収率76%)。[α]
D
20=28.6°(c 1.01,CHCl
3),
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ 0.90(s,3H),1.04-1.09(m,1H),1.21-1.25(m,5H),1.36(s,3H),1.62-1.76(m,6H),1.94-2.18(m,3H),2.38-2.45(m,3H),5.60-5.61(m,1H)。MS m/z(ESI)313.2[M+H-H
2O]
+。
【0066】
実施例7:
(1R,4R/S,6R,9R)6,10,10-トリメチル-2-(4,4,4-トリフルオロブチル)-4-ヒドロキシ-11-オキサトリシクロ[7.2.1.0
1,6]ドデカ-2-エンの製造(11)
【化20】
最終生成物10(50mg、0.15mmol)を2mLのメタノールに溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(20mg、0.53mmol)を加え、室温で2時間撹拌し、3mLの蒸留水を加え、2M塩酸でpHを3~4に調整し、ジクロロメタンを加えて抽出し、水、そして飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過して、溶媒を蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=20:1)で精製して最終生成物11を得た(30mg、収率60%)。[α]
D
20=20.7°(c 1.03,CHCl
3),
1H NMR(600MHz,CDCl
3)δ 0.90(s,3H),1.04-1.09(m,1H),1.21-1.25(m,5H),1.36(s,3H),1.51-1.80(m,7H),1.94-2.18(m,2H),2.38-2.45(m,3H),4.05-4.08(m,1H),5.60-5.61(m,1H)。MS m/z(ESI)298.2[M+2H-2H
2O]
+。
【0067】
実施例8:生物学的評価
一.有効性試験
本願の式(I)に示される新規なアガロフラン誘導体化合物は、動物抗不安モデル、例えば、ラット高架式十字迷路試験において優れた効果を示していた。以下の薬理試験で使用される有効成分である本願の式(I)の化合物は本願の実施例1の最終生成物であり、即ち、(1R,6S,9R)6,10,10-トリメチル-2-(4,4,4-トリフルオロブチル)-11-オキサトリシクロ[7.2.1.01,6]ドデカ-2-エンであった(以下、化合物2と略す)。化合物2と賦形剤PVP(ポビドンK30)を質量比1:15の比率でエタノール溶液において混合し、回転乾燥して、化合物2の製剤形態を調製した(以下、化合物2はいずれも化合物2の当該製剤を指す)。有効成分が4-ブチル-α-アガロフラン(BAFと略す)である製剤形態を陽性薬とし、当該製剤の製造方法は化合物2の製剤と同じであり、以下、BAFはいずれもBAFの当該製剤を指す。PVPをブランク対照とした。投与量はいずれも原料薬で計算した。
【0068】
マウス高架式十字迷路試験(elevated plus maze、EPM)
当該モデルは抗不安薬研究で最もよく用いられる動物モデルの1つである。高架式十字迷路は十字状に交叉しているオープンアーム(30×5×0.5cm)及びクローズアーム(30×8×15cm)によって構成され、装置は床面から50cmの高さに置かれる。オープンアームが狭く、空中にあり、明るいから、オープンアームでは内面的「恐怖」又は矛盾が生じ、これに対してクローズアームではネズミの習性に合っている。投与から5分後に、マウスを迷路の中央に置き、頭部をオープンアームに向けた。試験期間(一般に5分間)中にマウスがオープンアーム及びクローズアームに進入した回数及び2本のアームでの滞在時間をそれぞれ記録した。マウスがオープンアームへ進入した回数及びオープンアームでの滞在時間の総回数(オープンアーム及びクローズアームに進入した回数の和)及び総時間(オープンアーム及びクローズアームでの滞在時間の和)のそれぞれに占めるパーセンテージを計算し、これを不安を評価する指標とした。一般には、薬物はオープンアーム及びクローズアームを通り過ぎた回数を減らさずにオープンアームでの累計滞在時間を増やしていれば抗不安効果があると見なされる。
【0069】
試験では雄のICRマウスが用いられ(北京維通利華実験動物技術有限公司より購入)、体重は18~20gであり、体重によってランダムに7群に分け、1群あたり13匹であった。試験が始まる前にマウスに握力適応性訓練を行った。試験前に、マウスを12時間絶食させた。腹腔内注射で投与した。4-ブチル-α-アガロフラン(BAFと略す)を陽性薬とし、PVPをブランク対照とした。具体的な群分け及び処置方式は以下のとおりであった。
【表1】
【0070】
試験時は、BAF/化合物2を腹腔内注射した後、すぐに各マウスをオープンフィールドボックスに入れて5分間自由に活動させ、次に高架式十字迷路の中央のプラットフォームに置き、マウスの頭部を固定されたオープンアームに向けた。試験を始め、5分間カウントし、supermazeソフトウェアを用いてカメラで記録した。試験が全て終了したらsupermazeソフトウェアを用いてマウスのオープンアーム、クローズアームでの滞在時間(秒)、オープンアーム及びクローズアームへの進入回数、オープンアームとクローズアームへの進入の時間比及び回数比を記録した。潜伏期間が0である場合はアームへの進入回数に1を足した。試験結果を表2及び
図1~
図3に示す。
【表2】
*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001は添加物である賦形剤群との比較。
#P<0.05はBAF(2mg/kg)群との比較。
【0071】
試験結果は、BAFと比べて、被験化合物2の腹腔内注射は2.4、4.8、9.6mg/kg(BAFの2、4、8mg/kgとの等モル用量)でいずれも明らかな抗不安効果があることを示した。化合物2は低用量及び中用量では、いずれも有効性がBAFより優れており、特に低用量である場合、有効性の結果に統計学的有意差があった。
【0072】
さらに、当方は前記計画に従って、化合物6及び化合物8の抗不安活性をそれぞれ評価した。表3及び表4に示されるとおり、BAFと比べて、オープンアームでの滞在時間及び回数はいずれも増加しており、低用量ある場合、同様に統計学的有意差があった。
【表3】
*P<0.05、**P<0.01は添加物である賦形剤群との比較。
#P<0.05はBAF(2mg/kg)群との比較。
【表4】
*P<0.05、**P<0.01は添加物である賦形剤群との比較。
#P<0.05はBAF(2mg/kg)群との比較。
【0073】
二.薬物動態試験
化合物2のマウスへの腹腔内注射投与後の血漿薬物動態研究
1.試験材料
陽性対照薬である4-ブチル-α-アガロフラン(BAF)の製剤及び化合物2の製剤を腹腔内注射で投与し、用量はいずれも10mg/kg/10mLであり(原料薬で計算)、再蒸留水に入れて超音波をかけて研磨して、懸濁液を調製した。
【0074】
雄のICRマウスは、体重が21~24gであり、斯貝福(北京)生物技術有限公司より購入された。
【0075】
2.試験方法
1)サンプルの採取
12匹のマウスをランダムに4群に分け、各群では3つの並行サンプルに対して交差採血し(第1群、第3群では5箇所採血、第2群、第4群では6箇所採血)、体重に基づいて投与し、投与後の、5分間、10分間、15分間、30分間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間の各時点で眼窩静脈叢から血液を採取した。各時点の血液を、ヘパリンで抗凝固処理したEPチューブに収集し、氷上に置き、8000回転/分で5分間遠心分離した後、血漿を分離しておいた。
【0076】
2)標準曲線の作成
20μLのマウスのブランク血漿に、内部標準物質溶液(200ng/mLであり、BAF原料薬と化合物2である原料薬は互いに内部標準物質であり、即ち、BAFは化合物2の内部標準物質であり、化合物2はBAFの内部標準物質である。以下同じ)を含むアセトニトリル55μLを加え、それぞれ、異なる濃度の化合物BAF又は化合物2のメタノール作業溶液5μLを加えて均一に混合し、その最終血中濃度をそれぞれ0.2、0.5、2、5、10、25、50、100、200、500、750、1000ng/mLとし、2回の13000回転/分で5分間高速遠心分離し、上清から5μLを取り出してUPLC-MS/MS分析を行った。
【0077】
3)サンプルの処理
10μLの血漿に、内部標準物質溶液(100ng/mL)を含むアセトニトリル30μLを加えてタンパク質を沈殿させ、2回の13000回転/分で5分間高速遠心分離した後、上清から5μLを取り出してUPLC-MS/MS分析を行った。
【0078】
4)UPLC-MS/MS測定
クロマトカラム:Symmetry C8(2.1mm×50mm、3.5μm)、カラム温度:25℃、移動相:アセトニトリル(0.1%ギ酸):水(0.1%ギ酸)=70:30のグラジエント溶離、流速:0.2mL/分、PRM検出、BAF:m/z 263.2→245.2、化合物2:m/z 317.2→299.2。
【0079】
試験結果を表5~表8、
図4、
図5に示し、マウスにBAF又は化合物2(10mg/kg)を腹腔内注射した後、早く吸収され、5~15分間でピークに達しており、化合物2のC
max及びAUC
(0~t)はBAFの150%と142%であり、曝露量が増加し、MRT
(0~t)は1.05時間から1.32時間に増加し、T
1/2は1.29から1.61時間に増加した。したがって、当方は化合物2がBAFよりも優れた薬物動態特性を有すると考えている。
【0080】
さらに、当方は前記方法に従って化合物6及び化合物8の薬物動態特性を評価した。化合物6のC
maxは342ng/mLであり、AUC
(0~t)は142h・ng/mLであり、T
1/2は1.39時間であった。化合物8のC
maxは350ng/mLであり、AUC
(0~t)は148h・ng/mLであり、T
1/2は1.41時間であり、これは化合物6及び8の薬物動態特性がBAFより優れていることを示す。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0081】
結論:本願の化合物2、化合物6及び化合物8はいずれも抗不安活性を有しており、BAFと比べて、その体内曝露量及び半減期がいずれも大幅に増加していることから、それはより良好な薬物動態特性を有することが示された。また、低用量では、いずれもより優れた有効性を示しているのは、その有効用量はより低いことを示し、臨床用量の低減につながると推定できる。
【0082】
また、構造一般式(I)に示される化合物では、R2、R3及びR4が当該化合物の代謝部位であり、それが体内で代謝される時、R2位置のC2~C9直鎖ヒドロカルビレン基、分枝鎖ヒドロカルビレン基又はシクロアルキレン基はカルボニル基又はヒドロキシ基によって置換されやすく、R3及びR4の方も代謝されてカルボニル基又はヒドロキシ基になりやすい。R2位置のC2~C9直鎖ヒドロカルビレン基、分枝鎖ヒドロカルビレン基又はシクロアルキレン基がカルボニル基又はヒドロキシ基によって置換されず且つR3及びR4が水素原子又は重水素原子であるプロトタイプは体内で活性を有し又は活性が良くなると証明された場合、当業者は体内でカルボニル基又はヒドロキシ基によって置換されたその代謝形態も活性を有し又は活性が良くなると推定できる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本願は、アガロフラン化合物及びその製造方法と使用を提供し、ただし、前記アガロフラン化合物は、4-ブチル-α-アガロフラン(BAF)のアルキル側鎖などの主な代謝部位に対して構造を改変することにより、活性がより高く、治療効果がより優れる、薬物動態特性がより優れる新規なアガロフラン化合物として提供され、それを不安症などの精神疾患の治療に用いる。
【国際調査報告】