(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】回転可能な挿入管を有する回転可能な内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20240206BHJP
A61B 1/002 20060101ALI20240206BHJP
A61B 1/06 20060101ALI20240206BHJP
A61B 1/12 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A61B1/00 714
A61B1/002
A61B1/00 683
A61B1/00 T
A61B1/06 530
A61B1/12 530
A61B1/00 553
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544719
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2022053745
(87)【国際公開番号】W WO2022179895
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523176059
【氏名又は名称】ジョシ・イノベーションズ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】JOSHI INNOVATIONS GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ,シリス
(72)【発明者】
【氏名】ケトゥカレ,サウラブ
(72)【発明者】
【氏名】カリム,ファイサル
(72)【発明者】
【氏名】マンダール,スバモイ
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161AA24
4C161CC03
4C161CC06
4C161DD01
4C161FF30
4C161FF38
4C161FF47
4C161GG27
4C161HH52
(57)【要約】
内視鏡(1)が提供される。前記内視鏡(1)は、固定されたカップリング部材(2)と、軸方向(d1)に延びるシャフト軸(C)を有するシャフト(4)を含む回転可能なシャフト部材(3)とを備え、前記シャフト(4)は、先端部(5)及び取付端部(6)を有し、前記シャフト(4)は、前記取付端部(6)から前記先端部(5)に光を伝達し、前記先端部(5)から前記取付端部(6)に画像情報を伝達するように構成される。前記カップリング部材(2)と前記シャフト部材(3)とは、前記シャフト部材(3)が前記カップリング部材(2)に対して、前記シャフト軸(C)を中心に360°以上無制限に回転可能となるように互いに連結される。さらに、前記シャフト部材(3)は、エネルギーを受信するように構成される受信部(7)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡(1)であって、
固定されたカップリング部材(2)と、
軸方向(d1)に延びるシャフト軸(C)を有するシャフト(4)を含み、前記シャフト(4)が、先端部(5)及び取付端部(6)を有し、前記シャフト(4)が、前記取付端部(6)から前記先端部(5)に光を伝達し、及び前記先端部(5)から前記取付端部(6)に画像情報を伝達するように構成される、回転可能なシャフト部材(3)と、を備え、
前記カップリング部材(2)及び前記シャフト部材(3)は、前記シャフト部材(3)が前記カップリング部材(2)に対して、前記シャフト軸(C)を中心として360°以上無制限に回転可能であるように互いに接続されており、及び
前記シャフト部材(3)は、エネルギーを受信するように構成される受信部(7)を有する、内視鏡(1)。
【請求項2】
前記カップリング部材(2)は、前記シャフト部材(3)からの前記画像情報を前記軸方向(d1)に伝達するように構成される画像情報伝達路(8)を有する、請求項1に記載の内視鏡(1)。
【請求項3】
前記カップリング部材(2)は、前記エネルギーを前記軸方向(d1)又は半径方向(d2)に前記受信部(7)に入力するように構成される送信部(9)を有する、請求項1又は2に記載の内視鏡(1)。
【請求項4】
前記カップリング部材(2)は、光源からの光を受光するための少なくとも1つのポート(10)を有し、前記カップリング部材(2)は、前記軸方向(d1)において、前記シャフト部材(3)の前記受信部(7)に光の形態のエネルギーを伝達するように構成される、前記請求項1~3のいずれか1項に記載の内視鏡(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポート(10)は、前記光を前記軸方向(d1)に対して垂直な半径方向(d2)にカップリング部材(2)に入力するようにカップリング部材(2)に接続され、前記カップリング部材(2)は、好ましくは、部分反射ミラーアレイ(20)又はマイクロミラーアレイ(21)によって、前記光を前記軸方向(d1)に前記受信部(7)に伝達するように、前記光を再配向するように構成される、請求項4に記載の内視鏡(1)。
【請求項6】
前記カップリング部材(2)は、送信部(9)を有し、前記カップリング部材(2)の前記送信部(9)と前記シャフト部材(3)の前記受信部(7)とは、それぞれ光伝達面として形成され、前記受信部(7)と前記送信部(9)とは、前記軸方向(d1)において互いに対向し、前記光を伝達するように構成され、前記受信部(7)及び前記送信部(9)は、好ましくは、円形形状を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の内視鏡(1)。
【請求項7】
前記受信部(7)及び前記送信部(9)は、前記シャフト軸(C)の延長線上に円周方向に配置され、前記受信部(7)及び前記送信部(9)に前記画像情報伝達路を通すための貫通孔を有する、請求項6に記載の内視鏡(1)。
【請求項8】
前記送信部(9)及び前記受信部(7)は、ガラス、透明プラスチック又はガラス繊維で作られている請求項6又は7に記載の内視鏡(1)。
【請求項9】
前記送信部(9)及び前記受信部(7)は、前記受信部(7)と前記送信部(9)との間に隙間(11)を形成するように、前記軸方向(d1)において互いに離間しており、前記隙間(11)内に透明な流体が設けられる、請求項6~8のいずれか1項に記載の内視鏡(1)。
【請求項10】
シャフト部材(3)は、前記受信部(7)によって受信された電気エネルギーによって作動する少なくとも1つの光源(12)、好ましくは、LEDを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の内視鏡(1)。
【請求項11】
前記エネルギーは、無線電源(13)によって、好ましくは、誘導結合、共振誘導結合、又は磁気力学的結合によって、前記シャフト部材(3)に入力される、請求項1~10のいずれか1項に記載の内視鏡(1)。
【請求項12】
前記カップリング部材(2)は、送信部(9)を有し、前記カップリング部材(2)の前記送信部(9)は、送信コイルとして形成され、前記シャフト部材(3)の前記受信部(7)は、受信コイルとして形成され、前記受信部(7)と前記送信部(9)とが前記軸方向(d1)で対向し、前記エネルギーを伝達するように構成される、請求項1~11のいずれか1項に記載の内視鏡(1)。
【請求項13】
前記エネルギーが、電気エネルギーの形態で、回転可能な前記シャフト部材(3)と固定された前記カップリング部材(2)との間のブラシ接点(14)を介して、前記シャフト部材(3)に入力される、請求項1~3又は10のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項14】
前記シャフト部材(3)は、それぞれが異なる波長を有する異なる光源(12)を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の内視鏡(1)。
【請求項15】
拭き取り及び/又は振動によって前記シャフト(4)の前記先端部(5)を洗浄するように構成される洗浄装置(19)をさらに備える、請求項1~14のいずれか1項に記載の内視鏡(1)。
【請求項16】
洗浄液及び/又は気体を前記シャフト(4)の前記先端部(5)に移送し、前記洗浄液及び/又は気体を前記シャフト(4)の前記先端部(5)に向けて噴出するように構成される洗浄液供給装置(27)をさらに備える、請求項1~15のいずれか1項に記載の内視鏡(1)。
【請求項17】
前記カップリング部材(2)は、前記内視鏡(1)の焦点を自動的に及び/又は手動で調整するための調整手段(28)を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の内視鏡(1)。
【請求項18】
飛行時間センサをさらに備える、請求項1~17のいずれか1項に記載の内視鏡(1)。
【請求項19】
前記カップリング部材(2)は、前記カップリング部材(2)に対して前記シャフト部材(3)を回転させるためのアクチュエータを備える、請求項1~18のいずれか1項に記載の内視鏡(1)。
【請求項20】
撮像システムを備える請求項1~19のいずれか1項に記載の内視鏡(1)であって、
前記撮像システムは、
光を伝達するように構成される光チャネルと、
第1の光路に沿って対象物を撮像することによって、第1の画像データを生成するように構成される第1のセンサと、
第2の光路に沿って前記対象物を撮像することによって、第2の画像データを生成するように構成される第2のセンサと、を備え、
前記第1のセンサと前記第2のセンサとは、焦点シフトされており、
前記第1の光路と前記第2の光路とは、少なくとも一部が前記光チャネルを通して案内される、内視鏡(1)。
【請求項21】
前記撮像システムは、前記第1の画像データ及び前記第2の画像データに基づいて、前記対象物の深度情報を生成するように構成される制御ユニットをさらに含む、請求項20に記載の内視鏡(1)。
【請求項22】
前記制御ユニットは、前記第1の画像データの少なくとも1つの第1のパッチのエントロピーと、前記第2の画像データの少なくとも1つの第2のパッチのエントロピーとを比較することによって、前記深度情報を生成するようにさらに構成されており、前記第1の画像データにおける前記少なくとも1つの第1のパッチの位置は、前記第2の画像データにおける前記少なくとも1つの第2のパッチの位置に対応する、請求項21に記載の内視鏡(1)。
【請求項23】
内視鏡システム(100)であって、
請求項1~22のいずれか1項に記載の内視鏡(1)と、
前記内視鏡がトロカール(23)に対して移動可能であるように、前記内視鏡を少なくとも部分的に受容するように構成されたカニューレ(24)を有するトロカール(23)であって、前記カニューレ(24)は、前記内視鏡(1)が少なくとも部分的に通過し得るように構成された遠位開口(26)を有する、前記トロカール(23)と、を備え、
カニューレ(24)は、前記遠位開口(26)に設けられ、前記先端部(5)が前記遠位開口(26)を通過するときに、前記シャフト(4)の少なくとも前記先端部(5)を洗浄するように構成された洗浄装置(19)を備える、内視鏡システム(100)。
【請求項24】
内視鏡を使用する方法であって、
請求項1~22のいずれか1項に記載の内視鏡(1)を提供することと、
前記シャフト部材(3)を前記カップリング部材(2)に対して一方向に360°以上回転させることと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、対象物の内部を可視化するための器具である。医療用途では、内視鏡は、内臓、解剖学的体腔及び関節を含む人体内部の診察や検査に使用される。一般的な内視鏡は、細長い可撓性又は剛性の挿入管(いわゆるシャフト)を含み、その中にレンズシステムが設けられる。内視鏡の先端部には、光学系が設けられる。光学系によって観察される対象物の視野内の画像は、ユーザーが見るために、又はカメラで受信するために、シャフトを通して送信される。一部の内視鏡には、外部光源から供給される光で視野を照明するための光ケーブルを備えるものもある。
【0003】
一部の内視鏡の中には、シャフトの軸に対して直線ではなく、例えば、30°のような角度で見るように設計されているものもある。シャフトの軸に対して視野が傾斜する角度は、シャフトの軸と、いわゆる視野方向(direction of view)との間に定義される。視野方向は、視野が向けられる主要な方向であってもよい。シャフトの軸を中心に視野方向を回転させることにより、観察範囲を大幅に拡大することができる。視野方向は、例えば、シャフトの軸に対して0°~120°まで、ユーザーによって変えることができる。観察方向を傾斜させることと、観察方向を回転させることとを組み合わせることにより、内視鏡のシャフトを大きく動かすことなく、広い範囲を観察することができる。シャフトの動きが大きくなると、内視鏡本体だけでなく、本体内の重要な構造物にも意図しない損傷を与える可能性があるため、このプロセスの安全性が高くなる。また、内視鏡は、同時に使用される可能性のある器具の邪魔になりやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存の剛性内視鏡技術は、一般的に、シャフトの先端部が内視鏡の反対側の端にある接眼レンズと同じ軸に沿ったインラインシステムで構成される。視野方向を変えるために、シャフトは、内視鏡を保持するための固定体に対して回転させることができる。しかし、この回転は、固定的に接続された光ケーブルによる光伝達システムによって制限される。すなわち、内視鏡の使用中に、ユーザーがシャフトを特定の方向に更に回転させる必要があるにもかかわらず、内部に接続された光ファイバに起因する制限停止によって妨げられる状況があり得る。また、光ファイバーが、回転可能なシャフトに外部接続されている場合、シャフトを360°回転させると、光ファイバーが、シャフトの周囲に巻き付くという問題がある。したがって、このような内視鏡の取り扱いが煩雑となる。
【0005】
国際公開第2006/052769号は、回転可能な挿入管を有する回転可能な内視鏡システムを開示する。回転可能な挿入管は、ユーザーが内視鏡全体を回転させることなく、視野を移動させることを可能とすることにより、従来の内視鏡システムに見られた人間工学的な欠陥を克服することを可能にする。
【0006】
しかしながら、シャフトの回転には、依然として限界がある。そこで、本発明の目的は、ユーザーが内視鏡を取り扱う際の操作性を向上させた内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、請求項1の特徴を有する内視鏡によって、この問題を解決する。特に、完全に回転可能な内視鏡と、傾斜可能な視野方向とを組み合わせることにより、内視鏡のシャフトの最小限の動きで対象物(例えば、内視鏡ツール)をシームレスに追従させることが可能となる。したがって、自動化システムを使用する際の潜在的な損傷を回避することができる。
【0008】
内視鏡は、カップリング部材を有してもよい。さらに、内視鏡は、軸方向に延びるシャフト軸を有するシャフトを含む回転可能なシャフト部材を有してもよく、シャフトは、先端部及び取付端部を有し、シャフトは、取付端部から先端部へ光を伝達し、先端部から取付端部へ画像情報を伝達するように構成される。カップリング部材とシャフト部材とは、シャフト部材がカップリング部材に対して、シャフト軸を中心に360°以上無制限に回転可能であるように、互いに連結されてもよい。さらに、シャフト部材は、エネルギーを受信するように構成された受信部を有してもよい。
【0009】
シャフト部材は、制限停止なしに、少なくとも360°、好ましくは無制限に、すなわち、何度でも回転可能であってもよい。すなわち、完全に回転可能な内視鏡が提供され得る。したがって、内視鏡は、ユーザーが、カップリング部材に対するシャフト部材の現在の位置とは無関係に、視野を画定する視野方向を容易に調整することができるので、操作性が向上する可能性がある。したがって、内視鏡は、ロボットシステムのような自動化システムにおいても容易に導入することができる。さらに、内視鏡は、回転する部品が少なくなり、内視鏡の取り扱いが容易になる可能性がある。さらに、外部ケーブルがシャフト部材(すなわち、回転可能な要素)の半径方向に接続されないので、シャフト部材がコンパクトなサイズを有することができる。したがって、内視鏡の取り扱いが更に改善され得る。好ましくは、シャフト部材が無制限に(すなわち、停止することなく)回転可能である場合、視覚化されるべき対象物は、中断されることなく、ユーザーによってより容易に追跡され得る。さらに、内視鏡は、全方位の視野を有するために移動させる必要がない。したがって、手術中に内視鏡が占有するスペースを小さくすることができる。すなわち、手術スペースが限られている中で、内視鏡システムのコンパクト化は非常に重要である。さらに、複数の器具が術野を乱雑にし、余分な可動ケーブルが手術の自由度を低下させ、これにより、手術結果が低下する可能性がある。特に、内視鏡は、シャフトの軸に対して角度をつけて見るように設計されている場合がある(例えば、角度は、シャフトに対して30°である場合がある)。シャフトの軸に対して視野が傾斜する角度は、シャフトの軸と視野方向との間に定義される。シャフトの軸の周りに視野方向を完全に回転させることができることにより、観察される領域が大幅に増加する可能性がある。さらに、視野方向は、シャフトの軸に対して、例えば、0°~120°の範囲で傾斜してもよい。
【0010】
一般的に、内視鏡は、アクセスすることが困難な検査対象の画像を提供することができる。したがって、内視鏡は、ユーザーが対象物(すなわち、対象物の画像)を見ることができるアイピース(例えば、接眼レンズ)を有することができる。代替的に又は追加的に、内視鏡は、光学センサ(例えば、イメージセンサ)を有してもよい。そして、対象物の画像が、表示装置に表示される。光学センサは、シャフトの先端部に設けられてもよいし(例えば、CCDセンサ)、カップリング部材に連結されたハウジングに設けられてもよい。センサがシャフトの先端部に設けられている場合、画像情報は、シャフトを介して伝達される電気信号となる。一方、センサがハウジング内に設けられている場合、画像情報は、シャフトを透過する光情報であってもよい。光センサは、内視鏡の回転可能な部分(例えば、シャフト部材)内に設けられてもよい。電力供給及び/又は信号出力は、静止部分(例えば、カップリング部材)から、及び/又は静止部分に送信されてもよい。例えば、電力供給は、受信部を介して(例えば、無線又はブラシ接点を介して)実現されてもよい。光センサからの信号伝達は、無線又はブラシ接点を介して実現されてもよい。
【0011】
以下の説明を通じて、以下の指示が参照される場合がある。
【0012】
軸方向は、シャフトの伸長方向に対応し(例えば、シャフト軸は、軸方向に伸長する)、且つ半径方向は、軸方向に垂直な方向であってもよい。
【0013】
カップリング部材は、シャフト部材をシャフト軸を中心に無制限に回転させる(例えば、シャフト軸を中心に一方向に2回転させる)ことができるように構成されてもよい。この場合の固定とは、固定されたカップリング部材が、シャフト部材に対して静止していることを意味する場合がある。換言すれば、カップリング部材は、ユーザー又は他の支持手段によって固定的に保持され、一方、シャフト部材は、シャフト軸を中心として無制限に回転することができる。カップリング部材(カップリングアタッチメントとも呼ばれる)は、シャフト部材と固定体(例えば、ハウジング)とを連結するカップリング機構であってもよい。固定体は、アイピース、及び/又は、内視鏡への外部カメラ又はビューアシステムの接続部を含んでもよい。さらに、固定体は、フォトセンサを含むことができる。したがって、固定本体は、画像情報を送信するように構成された画像情報伝達路を有してもよい。さらに、固定本体は、ユーザが内視鏡を人間工学的に取り扱うことができるように、その外面に把持部を有してもよい。
【0014】
カップリング部材は、内視鏡の焦点(すなわち、対象物の像の焦点)を調整するための調整手段を有することができる。好ましくは、調整手段は、フォーカスリングである。したがって、カップリング部材に対してフォーカスリングを回転させることにより、ユーザーは、画像のフォーカスポイントを調整することができる。したがって、内視鏡は、フォーカシングリングによって、眼鏡をかけている人であっても、画像(画像情報に基づいてもよい)を最適なシャープネスに調整する可能性を提供することができる。さらに、カップリング部材には、接眼レンズが配置されるか、又は配置可能であってもよい。さらに、カップリング部材にカップリング装置が接続されてもよい。カップリング装置は、シャフト部材に対して固定体(すなわち、静止体)であってもよい。画像センサは、カップリング装置内に設けられるか、又はシャフトによって送信される画像情報を受信するようにカップリング装置に取り付けられてもよい。カップリング部材とカップリング装置とは、一体的に形成されてもよい。
【0015】
一実施形態では、カップリング部材は、内視鏡の焦点を自動的に及び/又は手動で調整するための調整手段を有する。焦点を手動で調整することは、例えば、上記フォーカスリングを介して、ユーザーが焦点を調整することを意味する場合がある。焦点を自動的に調整することは、調整手段がユーザー又はアルゴリズムによって引き起こされた焦点を、自動的に調整することを意味する場合がある。ユーザーは、視野内の一点に焦点を合わせるように指定することができ、調整手段は、その点に焦点を合わせるように、それに応じて焦点を調整することができる。或いは、調整手段は、ユーザー又はアルゴリズムによって、視野の中心に焦点が合うように制御されてもよい。或いは、調整手段は、視野の中心に焦点が合うように制御されてもよい。さらに、調整手段は、視野内のツールに常に焦点が合うように制御されてもよい。いずれにしても、調整手段は、データを処理するように構成された制御ユニットによって、制御することができる。所望の合焦点は、制御ユニットへの入力データであってもよく、調整手段へのコマンドは、出力データであってもよい。したがって、アルゴリズムを制御ユニット上で実行し、入力データを出力データに処理してもよい。調整手段は、アクチュエータ(例えば、モータ)によって操作されてもよい。すなわち、コマンドは、調整手段を制御し得るアクチュエータを操作してもよい。或いは、調整手段は、電気的に調整可能な可変フォーカス液体レンズで構成されてもよい。このような可変フォーカス液体レンズは、液体に異なる電圧を印加することによって、焦点位置を調整することができる。この場合、調整手段は、焦点を合わせるべき視野内の所望の点に基づいて、レンズに特定の電圧を印加することによって、焦点を調整することができる。いずれにしても、自動焦点調整は、正確に焦点を合わせることができるので、動いている対象物にも、常に焦点が合ったままになる。
【0016】
シャフト部材は、シャフトと取付ベースとから構成されてもよく、シャフトは、シャフト軸を中心として取付ベースと共に回転するように、取付ベースに取り付けられてもよい。取付ベースは、シャフトの軸線と一致する取付ベースの軸線を有する円筒状に形成されてもよい。例えば、受信部を取付ベース内に収容することができる。シャフトと取付ベースは、一体的に形成されてもよい。さらに、シャフト部材は、シャフト軸に対して軸対称であってもよい。したがって、内視鏡の操作性が向上するように、重量配分が最適に均衡される。
【0017】
シャフトは、中空の棒状の要素として形成してもよい。例えば、シャフトは細長い円筒体であってもよい。さらに、シャフトは、可撓性であっても剛性であってもよく、或いは、その両方の組み合わせであってもよい。可撓性シャフトは、腹腔鏡検査、胃カメラ検査、大腸カメラ検査、気管支鏡検査及び関節鏡検査における内視鏡の有利な使用を可能にし得る。さらに、可撓性シャフトを有する内視鏡は、心臓カテーテルとして使用することもできる。すなわち、シャフトは、通路及び/又は通路が導く対象物を連続的に調査するように、歪んだ通路に沿うことができる。画像情報は、1本の光ファイバー又は複数本の光ファイバーを介して、シャフトを通して転送することができる。
【0018】
剛性のシャフトは、内視鏡を技術的なボアスコープとして、また医療分野では、例えば、関節鏡や膀胱鏡として使用することを可能にする。シャフトは、ロッドレンズシステムを含むことができる。剛性のシャフト内において、画像情報は、例えば、石英ガラス製のロッドレンズによってロッドレンズシステム内を案内され、ロッドレンズ間の空気レンズで屈折される。このような非常に光強度の高い設計(すなわち、ごくわずかな光しか吸収しない設計)により、レンズの直径を小さくすることができ、したがって、シャフトの直径を小さくすることができる。
【0019】
いずれにしても、シャフトは、イメージガイド又は導電体の形態の画像情報ガイドを含むことができる。イメージガイドは、内視鏡内に設けられたセンサ又は外部センサに光情報の形態で画像情報を伝達してもよい。導電体は、シャフトの先端部に設けられた画像センサによって生成されたデータとしてのデジタル画像情報を伝達してもよい。
【0020】
さらに、シャフトは、取付端部から先端部まで光を導くためのライトガイドを含むことができる。光は、取付ベースにおいてライトガイドに導入されてもよい。例えば、光は、取付ベース内に設けられた光源(例えば、LED)から受光してもよいし、他の光源から受光してもよい。光源が取付ベース内に設けられている場合、光源は、受信部によって受信されたエネルギーによって通電されてもよい。この場合、受信部は、外部のエネルギー源からエネルギーを無線で受信してもよい(詳細は後述する)。或いは、受信部は、外部の光源から光を無線で受信してもよい。この場合、光は、テザリング接続なしで受信部に送信されてもよい(詳細は後述)。したがって、シャフト部材の無限/無制限の回転が可能になる。
【0021】
シャフトの先端部から光を照射し、視野を明るくすることができる。したがって、暗い環境下でも診察及び/又は検査を行うことができる。
【0022】
すなわち、シャフトは、照明用の光をシャフトの軸に沿った一方向に伝達し、画像情報をシャフトの軸に沿った反対方向に伝達するように構成することができる。したがって、視野を照明すること、及び視野の画像情報を取得することの両方が、1本のシャフトによって実現され得る。換言すれば、シャフトは、双方向に光を伝達するように構成され得る。したがって、内視鏡のコンパクト化を図ることができる。
【0023】
先端部は、シャフトの遠位端とも呼ばれることがある。先端部は、光がシャフトの内部に出入りする開口を有する場合がある。開口は、シャフトの軸に対して90°以上又は90°未満傾斜した表面を画定する場合がある。すなわち、この表面は、シャフト軸に対して垂直でない場合がある。したがって、先端部は、少なくとも部分的に半径方向に向かってシャフトの側面に開口してもよい。
【0024】
開口には、撮像される対象物の画像情報を受信するための光学系(例えば、ミラー系及び/又はプリズム)が設けられてもよい。画像情報は、対象物によって反射された光線であってもよい。したがって、シャフトの先端部は、シャフトの軸に対して傾斜した特定の方向(すなわち、視野)からの画像情報を受信するように構成されてもよい。さらに、光学系は、対象物の画像情報を画像情報ガイドに、すなわち、シャフト軸の方向に沿って再配向するように構成されてもよい。その後、画像情報は、シャフト軸に沿ってシャフトを介して(すなわち、画像情報ガイドを介して)、取付端部に伝達されることがある。この結果、シャフト軸を中心にシャフトを回転させることにより、視野方向(ひいては視野)を回転させて、先端部を中心とした全周視野を提供することができる。さらに、光学系は、視野方向を変えるように、視野方向とシャフト軸との間の角度を調整するように構成されてもよい。これにより、シャフトを移動させることなく、視野方向を個別に調整することができ、先端部近傍に存在する対象物を全方位的に撮像することができる。これにより、内視鏡を横方向及び/又は縦方向に移動させることなく、内視鏡により撮像可能な領域を拡大することができる。
【0025】
さらに、シャフトの先端部は、取付端部から先端部へ伝達される光を放出するための少なくとも1つの照明開口を有することができる。好ましくは、照明開口は、視野を照明するように光学系に隣接して設けられる。すなわち、照明開口は、光学系と同じ領域に向けられることが好ましい。好ましくは、照明開口は、光学系の一部である。例えば、先端部は、視野に十分な照明を提供するように、4つの照明開口を有することができる。
【0026】
シャフトの取付端部は、シャフトの近位端とも呼ばれることがある。取付端部は、シャフトが取付ベースに取り付けられるシャフトの部分であってもよい。シャフトと取付ベースは一体であってもよい。これにより、内視鏡のメンテナンスが容易になる(例えば、シャフトと取付ベースとの締め直しが不要になる)。或いは、シャフトは、取付端部から取り外し可能であってもよい。したがって、異なるシャフトを同じ取付ベースと共に使用することができる。したがって、内視鏡は、異なるシャフト(例えば、異なる長さ又は異なる光学特性のシャフト)を提供することによって、異なる用途に適合させてもよい。例えば、シャフトは、ねじ止めによって取付ベースに連結してもよい。
【0027】
ライトガイドを介して、シャフトを通して光を伝達するために、ガラス繊維を使用することができる。しかし、伝達媒体としてゲルを使用して光を導くことができるライトガイドも提供され得る。ゲルライトガイド又は液体ライトガイドは、より強い光出力を提供し、特に、広い視野を照明するためやデジタル内視鏡検査に有利である。液体ライトガイドは、光ファイバーよりも紫外光や赤外光の透過に適している場合がある。ゲルライトガイドや液体ライトガイドは、光ファイバーライトガイドに比べて柔軟性に欠けるため、使い勝手がやや悪い場合がある。
【0028】
画像情報(例えば、診察対象物からの反射光線)は、例えば、直径7~10μmの複数本の(例えば、何千本もの)個々のガラス繊維で構成された画像情報ガイドを介して、シャフト内を案内されることがある。この場合、画像の解像度は、イメージガイドの直径に応じて、3,000~42,000又は75×45~240×180ピクセルとなる。すなわち、1画素分の輝度情報及び色情報が1本の光ファイバーに伝達される場合がある。好ましくは、画像情報ガイドは、シャフト軸を中心とすることができる。すなわち、画像情報ガイドの中心軸が、シャフト軸上に配置されてもよい。画像情報ガイドは、ライトガイドによって円周方向に囲まれてもよい。
【0029】
また、シャフトの先端部にイメージセンサを設ける場合には、導電体を介して画像情報を伝達してもよい。導電体は、金属製であってもよい。導電体は、デジタル画像情報をシャフトの取付端部又は取付ベースに伝達することができる。取付ベース内には、画像情報を処理システムに送信するように構成された画像送信部が設けられてもよい。好ましくは、画像送信部は、デジタル画像情報を無線で送信するように構成される。
【0030】
シャフト部材とカップリング部材とは、互いに回転可能に連結されている。好ましくは、カップリング部材に対するシャフト部材の回転を許容するように、ラジアル軸受が設けられる。すなわち、それ以外の自由の角度において、カップリング部材に対するシャフト部材の動きが阻止され得る。したがって、内視鏡は、ユーザーによって確実に取り扱われ得る。軸受は、シャフト部材の円滑且つ容易な回転を可能にするように、玉軸受、円筒ころ軸受、針状ころ軸受、又は円錐ころ軸受などの摩擦防止軸受であってもよい。
【0031】
この場合、360°以上無制限に(すなわち、連続的に)回転可能とは、シャフト部材が、カップリング部材に対してシャフト軸を中心に無限に回転可能であることを意味し得る。換言すれば、シャフト部材は、同一方向に連続して数回転することができる。すなわち、カップリング部材に対するシャフト部材の無制限又は連続的な回転を妨げる可能性のあるストッパーは設けられていない。さらに、シャフト部材とカップリング部材との間には、光ファイバーや電気配線による接続がない場合がある。したがって、内視鏡の取り扱いが著しく容易になる。さらに、内視鏡の取り扱いの自動化が容易に実施され得る。
【0032】
受信部は、エネルギー源に繋がれる(例えば、機械的に接続される)ことなくエネルギーを受信することができる装置であってもよい。したがって、ケーブル又は他のエネルギー伝達要素が、カップリング部材からシャフト部材に物理的に到達することはない。したがって、シャフト部材とカップリング部材は、互いに対して自由に回転可能であってもよい。
【0033】
受信部に伝達されるエネルギーは、光や低周波の電磁エネルギーなどの電磁エネルギーや波動の形態であってもよい。受信部へのエネルギーの伝達は、誘導結合、共振誘導結合、容量結合、磁気力学的結合、マイクロ波又は光波の伝達によって実現することができる。誘導結合の場合、受信部は、ワイヤーコイルとして形成することができる。共振誘導結合の場合、受信部は、同調ワイヤーコイル又は集中素子共振器として形成することができる。容量性結合の場合、受信部は、金属板電極として形成されることがある。磁気力学的結合の場合、受信部は、回転磁石として形成することができる。マイクロ波の伝達の場合、受信部は、パラボラアンテナ、フェーズドアレイ、又はレクテナ回転磁石からなるアンテナとして形成することができる。光波伝達の場合、受信部は、光電池として形成することができる。上記のいずれの場合においても、受信部は、シャフト部材内に設けられた回路によって電気エネルギーに変換されるエネルギーを受信することができる。電気エネルギーは、シャフト部材内の光源に供給され、光を発生させることができる。その後、光は、シャフト内に設けられたライトガイドに伝達される(詳細は後述する)。
【0034】
さらに、光波透過の場合、受信部は、レーザー受信部又は光透過面として形成することができる。したがって、受信部は、シャフト内のライトガイドに導かれる光を直接受信するように構成されてもよい。この場合、受信部は、シャフト内に設けられたライトガイドに光を伝達するように構成されてもよい。
【0035】
さらに、上記のいずれかの形態のエネルギーを受信部に送信するように構成された送信部が設けられてもよい。例えば、このような送信部は、カップリング部材内に設けられもよい。
【0036】
すなわち、回転可能なシャフト部材と静止したカップリング部材との間に、伝達インターフェースが形成されてもよい。伝達インターフェースを介して、少なくともエネルギーをカップリング部材からシャフト部材に伝達されてもよい。いくつかの実施形態では、エネルギーがカップリング部材からシャフト部材に伝達され、画像情報がシャフト部材からカップリング部材に伝達されてもよい。すなわち、伝達インターフェースは、エネルギーと画像情報とを双方向に伝達してもよい。いずれにしても、シャフト部材が、カップリング部材に対して自由に回転可能であるように、インターフェースには、機械的な接続がないことが好ましい。伝達インターフェースは、シャフト部材の受信部と、カップリング部材内に設けられた送信部とによって形成することができる。さらに、伝達インターフェースは、シャフト軸の延長線上に設けられてもよい。したがって、内視鏡は、コンパクトになる。
【0037】
一実施形態では、カップリング部材は、シャフト部材からの画像情報を軸方向に伝達するように構成された画像情報伝達路を有する。カップリング部材の画像情報伝達路は、画像情報がシャフトの回転位置とは無関係にシャフトからカップリング部材に伝達され得るように、シャフトに位置合わせされてもよい。すなわち、画像情報伝達路は、シャフトの画像情報ガイドに位置合わせされてもよい。例えば、画像情報伝達路は、シャフトの軸の延長線上に、当該軸に対して対称となるように配置されてもよい。したがって、画像情報は、カップリング部材に対するシャフト部材の位置に依存することなく、シャフト部材からカップリング部材に適切に伝達され得る。
【0038】
さらに、カップリング部材は、画像情報をアイピース及び/又は画像センサに更に伝達するように、レンズ系、好ましくは、ロッドレンズ系を含むことができる。したがって、画像情報は、光(すなわち、情報)を過度に吸収することなく伝達され得る。
【0039】
一実施形態では、カップリング部材は、軸方向又は半径方向にエネルギーを受信部に入力するように構成された送信部を有する。上述したように、送信部は、受信部に対応するように構成されてもよい。さらに、受信部と送信部とは、軸方向において互いに対向してもよい。すなわち、伝達インターフェースは、(シャフト部材における)回転可能な表面と(カップリング部材における)静止した表面とを画定してもよく、これらの表面は、軸方向に対して垂直となるように形成されてもよい。受信部及び送信部は、環状の形状を有してもよい。したがって、画像情報伝達路は、受信部及び送信部の中心を通過してもよい。換言すれば、受信部及び送信部は、画像情報伝達路を円周方向に取り囲んでいてもよい。したがって、シャフト部材とカップリング部材との相対位置に依存することなく、エネルギー(例えば、光、電磁界又は波動)が送信部から受信部に十分に伝達され得る。同時に、画像情報は、シャフト部材からカップリング部材に十分に伝達され得る。
【0040】
一実施形態では、カップリング部材は、光源から光を受光するための少なくとも1つのポートを有し、カップリング部材は、軸方向において、光の形態のエネルギーをシャフト部材の受信部に伝達するように構成される。光導波路は、光をカップリング部材に伝達するようにポートに取り付けられるか、又は取り付け可能である。すなわち、光ファイバーであってもよい導波路は、内視鏡の固定された静止部分(すなわち、カップリング部材)に接続することができる。したがって、シャフトを回転させる際に導波管をシャフトに巻き付けるような問題は生じない。カップリング部材内では、光はさらに受信部に伝達されることができる。より詳細には、送信部(静止部分)は、伝達インターフェースを介して受信部(可動部分)に光を送信することができる。
【0041】
光源は、外部光源であってもよい(すなわち、別個のハウジング内に設けられてもよい)。特に、キセノンランプを光源として使用することができる。外部光源は、約80ワットの電力を示すことができる。特に、イメージセンサがシャフトの先端部に設けられている場合、視野を十分に照明するために強力な光源が必要となることがある。しかし、キセノンランプは、動作中に膨大な量の熱を発生する可能性があり、そのほとんどは、光源スペクトルの赤外線成分によるものである。したがって、シャフトの過度の加熱を防ぐために、赤外成分がシャフトの先端部に到達するのを防ぐことができる。このため、光源は、光強度を調整可能であってもよく、及び/又は、ファンによって冷却されてもよい。さらに、ライトガイドの前(すなわち、光がシャフトのライトガイドに入射する前)に、ダイクロイック凹面鏡及び/又は熱保護フィルターによって、赤外線放射を光スペクトルから除去又は低減することができる。ダイクロイック凹面鏡及び/又は熱保護フィルターは、IR成分を低減するようにカップリング部材内に設けることができる。したがって、内視鏡は、内視鏡の過度の加熱を防止しつつ、診察対象物の改善された可視化を提供することができる。
【0042】
一実施形態では、少なくとも1つのポートは、光が軸方向に対して垂直な半径方向にカップリング部材に入力されるように、カップリング部材に接続され、カップリング部材は、好ましくは、部分反射ミラーアレイ又はマイクロミラーアレイによって、軸方向に受信部に伝達されるように、光を再配向するように構成される。
【0043】
すなわち、カップリング部材は、外部光源から供給されてカップリング部材に入力された光を、シャフト軸の延長線に沿って半径方向に再配向するように構成されてもよい。すなわち、内視鏡内で光を1回だけ再配向させることができる。したがって、光は、何度も再配向されることなく、直接ライトガイドに入力され得る。光の再配向は、反射ミラー(例えば、マイクロミラー)やプリズムアレイによって行うことができる。マイクロミラーは、光学基板(例えば、光ファイバ)の溝によって形成することができる。マイクロミラーの溝は、対称的なビーム伝達でコリメートされたビームを伝達するように、間隔を空けて配置されることがある。したがって、再配向された光は、光線が本質的に互いに平行になるように整列されることがある。好ましくは、光線は、軸方向と平行になるように、カップリング部材によって再配向される。
【0044】
光の再配向は、分配器によって実現される場合がある。分配器は、光透過性基板で形成することができる。分配器は、少なくとも1つのポートに接続された少なくとも1つの入口と、カップリング部材の送信部に接続された1つの出口とを有することができる。分配器の出口の形状は、送信部の形状に対応してもよい(例えば、シャフト軸の延長線周りの環状形状を有してもよい)。さらに、分配器は、分配器の出口で光を均等に分配して透過させるように、部分反射ミラー又はプリズムアレイを有することができる。部分反射ミラー又はプリズムアレイは、光透過性基板の全断面にわたって延びるように設けられてもよい。或いは、分配器の出口で光を均等に分配し透過させるように、分配器にマイクロミラーアレイを設けることもできる。マイクロミラーアレイは、光透過性基板の断面上に一部のみ延在してもよい。好ましくは、分配器は、光線を軸方向と実質的に平行になるように配置する。
【0045】
入射光線と透過光線の位置合わせにより、迷光反射が減少し、歪みが減少する可能性がある。この結果、光の透過効率が高まる可能性がある。ミラー(マイクロミラー)又はプリズムアレイの更なる詳細は、Miaomiao Xu及びHong Huaの論文「Methods of optimizing and evaluating geometrical lightguides with microstructure mirrors for augmented reality displays」Opt.Express 27, 5523-5543(2019)に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0046】
一実施形態において、カップリング部材は、送信部を有し、カップリング部材の送信部とシャフト部材の受信部とは、それぞれ光伝達面として形成され、受信部と送信部とは、軸方向において互いに対向し、光を伝達するように構成され、受信部及び送信部は、好ましくは、円形の形状を有する。
【0047】
別の実施形態では、受信部と送信部とが、シャフト軸の延長線上に円周方向に配置され、受信部と送信部とに画像情報伝達路を通すための貫通孔を形成されてもよい。換言すれば、受信部及び送信部は、シャフト部材とカップリング部材との相対回転を許容するように、合わせ面として形成されてもよい。したがって、受信部及び透過部は、環状の形状を有してもよい。
【0048】
有用な実施形態では、送信部及び受信部は、ガラス、透明プラスチック又はガラス繊維で作られている。
【0049】
さらに、送信部及び受信部は、アクリルガラスで作られてもよい。すなわち、受信部及び送信部は、屈折及び/又は反射を低減するように、光透過性の材料で作られてもよい。この結果、光の非接触伝達が可能となる。したがって、シャフト部材とカップリング部材との相対回転が制限なく容易に可能となる。
【0050】
一実施形態では、送信部及び受信部は、受信部と送信部との間に間隙を形成するように軸方向に互いに離間しており、この間隙内に透明な流体が設けられる。隙間は、0.5μm~500μmの間、好ましくは、3μm~20μmの間である。
【0051】
この隙間は、摩擦の過剰な発生により受信部、送信部のいずれか、又は両方を損傷する危険性なしに、シャフト部材とカップリング部材の相対的な移動(例えば、回転)を可能にすることができる。同時に、流体は、光線が固体媒体から気体媒体に伝達されることによって、過度に屈折することを防止することができる。すなわち、隙間内に設けられた流体は、光線の方向(例えば、軸方向と平行な方向)を本質的に維持することができる。好ましくは、流体は、送信部及び/又は受信部と同様の屈折率を有する。したがって、内視鏡は、改善された耐久性及び高い光伝達効率を示すことができる。流体は、気体であってもよいし、透過率の高い透明な液体媒体であってもよい。特に、後者の場合、空気と固体媒体との間の相変化で光が過度に屈折することなく、カップリング部材からシャフト部材に伝達され得る。したがって、光の伝達効率を更に高めることができる。或いは、隙間内に真空を設けてもよい。したがって、シャフト部材及びカップリング部材は、隙間内の真空を維持するようにシール要素から構成することができる。或いは、シャフト部材をカップリング部材に直接接触させてもよい。特に、受信部は、送信部と直接接触してもよい。この場合、シャフト部材とカップリング部材の間に隙間がないこともある。
【0052】
一実施形態では、シャフト部材は、受信部によって受信された電気エネルギーによって作動する少なくとも1つの光源、好ましくは、LEDを含む。光源は、シャフト軸の伸張部の周囲に円周方向に配置された複数のランプから構成されてもよい。ランプは、シャフト部材の取付ベース内に配置することができる。したがって、シャフト部材が回転すれば、ランプも回転する。したがって、非可動要素から可動要素への光の伝達は不要である。ランプは、例えば、光ファイバーによってシャフトのライトガイドに接続されてもよい。さらに、受信部によって受光されたエネルギーを電気エネルギーに変換するために、シャフト部材は、回路を含んでもよい。特に、シャフト部材は、整流回路を含んでもよい。
【0053】
シャフト部材内に設けられたランプは、約10ワットの電力を有することがある。内部ランプは、外部光源よりも電力が小さい可能性があることに留意されたい。しかしながら、内部光源によって生成された光は、可撓性ケーブルを介して内視鏡に伝達される必要がないため、外部光源からの光のように反射及び/又は屈折によって減衰することがない。したがって、内部ランプは、視野を照らすのに十分な光を供給しながらも、より少ない電力で済む可能性がある。したがって、光伝達中の損失を低減することにより、システム全体の効率を向上させることができる。
【0054】
一実施形態では、エネルギーは、無線電源によって、好ましくは、誘導結合、共振誘導結合によって、又は磁気力学的結合によってシャフト部材に入力される。電源又はエネルギー供給は、受信部にエネルギーを送信する外部送信部であってもよい。外部送信部は、コイルがアンペールの法則によって振動磁界を生成するように交流電流を流すコイルであってもよい。受信部は、ファラデーの誘導の法則により交流起電力(電圧)を誘導するように磁場が通過するコイルであってもよく、これにより受信部に交流電流が生じる。したがって、内視鏡は、内視鏡内に送信部が設けられていないため、軽量である。したがって、内視鏡の操作性を向上させることができる。また、外部電源は、内視鏡への十分な電力供給を確保するために、内視鏡を操作するところの近傍に設けられる場合がある。したがって、電源は、診察される患者が位置する患者ベッドに設けられてもよい。
【0055】
一実施形態では、カップリング部材は、送信部を有し、カップリング部材の送信部は、送信コイルとして形成され、シャフト部材の受信部は、受信コイルとして形成され、受信部と送信部とは、軸方向に互いに対向し、エネルギーを伝達するように構成される。すなわち、本発明の他の実施形態の光伝達面の配置と同様に、本実施形態においても、受信コイルと送信コイルとを、軸方向に対向するように配置することができる。すなわち、コイルは、シャフト軸の延長線上の円周方向に配置することができる。したがって、画像情報伝達路は、コイルの中心を通過することができる。さらに、十分なエネルギー伝達を確保するために、受信コイルと送信コイルとを近接して配置してもよい。
【0056】
別の実施形態では、エネルギーは、電気エネルギーの形で、回転可能なシャフト部材と、固定されたカップリング部材との間のブラシ接点を介して、シャフト部材に入力される。この実施形態では、シャフト部材は、円筒状の接点部を有してもよい。接点部は、取付ベースに配置されてもよく、軸方向に延びてもよい。接点部は、シャフトに対して取付ベースにおける反対側に配置されてもよい。接点部は、受信部としての電気接点を有してもよい。電気接点は、半径方向を向く接点部の周面に設けられてもよい。接点は、接点部において円周方向に配置されてもよい。カップリング部材は、接点部を受け入れるための受け部を有してもよい。受け部は、接点部の接点に対応する接点を有してもよい。受け部の接点は、受け部の接点と接点部の接点との間の接触が確実になるように、ばねによって付勢されてもよい。さらに、受け部は、接点部を介してシャフト部材を回転可能に支持するための軸受を有してもよい。
【0057】
一実施形態では、シャフト部材は、それぞれが異なる波長を有する異なる光源を有する。したがって、異なる波長を組み合わせることにより、視野の照度を向上させることができる。例えば、UV波長又はIR波長を有する光を使用して、物質間の差異を可視化することができる。したがって、内視鏡は、手術中の精度を向上させることができる。
【0058】
一実施形態では、内視鏡は、拭き取り及び/又は振動によって、シャフトの先端側を洗浄するように構成された洗浄装置を備える。先端部は、画像情報が通過するレンズを含んでいてもよい。レンズは、シャフトの先端部においてシャフトの開口を覆ってもよい。換言すれば、先端部(例えば、レンズ)は、診察処置中に人体内に存在する可能性がある。したがって、先端部は、水、血液又は他の異物で汚染される可能性がある。洗浄装置は、画像情報がシャフト内に円滑に導入されるように、このような汚れを除去するように構成されることがある。この結果、内視鏡は、内視鏡を人体から取り出して洗浄する必要なく、最適な画質を提供することができる。また、洗浄装置は、先端部を拭き取りによって洗浄するように構成されてもよい。すなわち、洗浄装置は、シャフトの先端部(例えば、先端部に設けられたレンズ)から水や血液等の異物を拭き取るように構成されたワイパーから構成されてもよい。この場合、ワイパーは、簡単に構成することができる。また、ワイパーが、回転運動や前後運動(双方向運動)を行うようにしてもよい。この場合、小さな先端部であっても、望ましくない物質から洗浄することができる。ワイパーは、可撓性要素であってもよい。したがって、シャフトの先端部に設けられたレンズや他の要素に傷を付けることが回避され得る。さらに、シャフトの先端部にプリズムを設けてもよい。特に、プリズムは、視野方向を画定するように構成されてもよい。したがって、プリズムを動かして視野方向を調整することができる。可撓性要素は、プリズムに対して固定されてもよいし、プリズムを動かすように構成された機構に対して固定されてもよい。プリズムが動かされるとき、可撓性要素は、シャフトの先端部において拭き取り又はブラシ運動を行うことができる。可撓性要素は、プリズムに対して固定されてもよいし、可動であってもよい。プリズムを移動させる動作は、内視鏡全体を移動させてもよいし、プリズムのみを移動させてもよい。洗浄に使用される可撓性要素は、内視鏡に取り付けられてもよいし、内視鏡を手術部位に誘導するために使用されるチューブ又はトロカールに取り付けられてもよい(詳細は後述する)。したがって、内視鏡の視野方向が調整されると、可撓性エレメントが自動的に作動し、シャフトの先端部を洗浄することができる。このようにして、異物に邪魔されることなく、画像情報をシャフトに導入することができる。
【0059】
さらに、洗浄装置は、振動させることによってシャフトの先端部を洗浄することができる。すなわち、洗浄装置は、不要な物質がシャフトの先端部から振り落とされるように、先端部の振動を引き起こすように構成されてもよい。この場合、洗浄装置は、振動を発生するように構成されたピエゾ素子を含むことができる。振動は、シャフトの先端部に伝達されることがある。特に、プリズムを振動させることによって、振動を発生させることができる。換言すれば、洗浄装置は、プリズムを振動させるように構成されてもよい。そして、プリズムは、異物を除去するように、振動をシャフトの先端部に伝達することができる。プリズムを振動させることで、より多くの物質を振動させることができ、この結果、先端部をより強く振動させることができる。この結果、シャフトの外側に可動部を設ける必要がない。したがって、内視鏡のコンパクト化が図れる。洗浄装置は、毎分15,000~35,000振動、好ましくは、毎分25,000~32,000振動で振動することができる。前者の範囲では、粘着物も先端から除去できる振動を引き起こすことができる。後者の範囲では、周波数約250~270Hzの音波を発することができる。この範囲では、内視鏡の取り扱いに悪影響がなく(シャフトの先端部が振動するため)、不要物も除去できることが判明した。
【0060】
さらに、洗浄装置は、ワイパーとバイブレータの組合せを有することができ、拭き取り及び振動の両方によって、先端部から不要物を除去することができる。したがって、先端部に付着した不要物を効率よく除去することができる。
【0061】
一実施形態では、内視鏡は、洗浄液及び/又は気体をシャフトの先端部に送り、洗浄液及び/又は気体をシャフトの先端部に向けて噴出するように構成された洗浄液供給装置を備える。
【0062】
洗浄液供給装置は、水のような液体をシャフトの先端部に送るように構成されたホースやチューブであってもよい。洗浄液供給装置は、シャフトの内部又はシャフトの外部に配置することができる。さらに、洗浄液供給装置は、先端部に向かって液体を射出するように構成された射出先端を有することができる。射出先端は、ノズルとして形成されてもよい。したがって、液体は、先端部から(例えば、先端部に設けられたレンズから)不要物を除去するために、先端部に向かって正確に射出され得る。洗浄液供給装置は、洗浄装置に付加的に設けられてもよい。この場合、不要物を先端部から十分に除去することができる。さらに、洗浄液供給装置は、シャフト内又はシャフト内に設けられたプリズムを洗浄するように構成されてもよい。洗浄液供給装置は、シャフトと共に回転しないようにシャフトに設けられてもよい。換言すれば、洗浄液供給装置は、カップリング部材に固定されてもよい。したがって、シャフトは、洗浄液供給装置に対して自由に回転可能であってもよい。したがって、洗浄液供給装置に接続されたホース、ポート、その他の手段がシャフトの回転を妨げることはない。プリズムは、洗浄液を噴射するために最適なアライメントを達成するように移動させることができる。換言すれば、プリズムは、洗浄液供給装置の方(例えば、射出先端の方)を向くように移動可能であってもよい。さらに、洗浄液供給装置は、内視鏡の先端部に気体を送るように構成されてもよい。気体は、その後、余分な洗浄液を除去又は拭き取るために使用されることがある。気体は、内視鏡の先端部に向かって噴射されることがある。洗浄液供給装置は、洗浄装置(例えば、可撓性ワイパー)に洗浄液を吹き付けて、洗浄装置から蓄積された汚れや洗浄液を除去するように設計されてもよい。このようにして、洗浄装置の寿命と有効性を確保することができる。洗浄液は、液体、気体又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0063】
一実施形態では、内視鏡は、飛行時間(Time-of-Flight)センサを備えている。飛行時間センサ(ToFセンサ)を使用して、画像内の異なる対象物の深度(奥行き)を推定することができる。ToFセンサは、より高解像度で対象物を撮像するためにビームスプリッターと共に使用されることもある。内視鏡は、観察対象領域を複数の位置から観察して深度マップを作成するように操作することができる。例えば、内視鏡は、連続的又は断続的に、例えば、数センチメートル単位で内外に移動することができる。また、内視鏡の移動時には、操作者がこの移動によって邪魔されないように、調整手段によってカウンタズーミングを行うようにしてもよい。このようにして、2次元画像情報に加えて、深度(すなわち、z座標)が取得され得る。
【0064】
一実施形態では、カップリング部材は、シャフト部材をカップリング部材に対して相対的に回転させるためのアクチュエータを備える。すなわち、アクチュエータによってシャフト部材を回転させるための歯車を設けてもよい。パワートレインは、シャフト軸の延長線上に延びてもよい。すなわち、画像情報伝達路は、パワートレインを円周方向に取り囲んでいてもよい。或いは、パワートレインは、画像情報伝達路から半径方向外側に配置されてもよく、シャフト部材において対応する歯車と噛み合うねじ付きロッドから構成されてもよい。したがって、内視鏡は、ロボット又は遠隔操作によって自動的に操作されることができる。また、内視鏡を高精度に操作することができる。アクチュエータは、自動化又は半自動化された外科手術を行うように構成されたロボットシステムの一部であってもよい。換言すれば、内視鏡は、ロボットによって有利に操作され得る。特に、カップリング要素に対するシャフトの無制限の回転可能性は、内視鏡を自動ロボットシステムと組み合わせて使用することを容易にする。
【0065】
有用な実施形態では、カップリング部材は、カップリング部材に対するシャフト部材の位置を検出するためのセンサを備える。
【0066】
センサは、シャフト部材とカップリング部材との相対位置を決定することができる。好ましくは、相対位置は、非接触センサシステムを使用して決定されてもよい。例えば、シャフト部材に設けられたマグネットホイールと、カップリング部材に設けられたホールセンサとによって位置を決定することができる。位置データは、内視鏡を正確に制御するために、自動操作システムに伝達されることがある。したがって、内視鏡によって関心領域に正確に到達し可視化することができる。さらに、カップリング部材に対するシャフト部材の相対位置の情報は、内視鏡の自動操作及び内視鏡の遠隔操作において有用である。
【0067】
本発明の更なる態様によれば、光を伝達するように構成された光チャネルと、第1の光路に沿って対象物を撮像することによって第1の画像データを生成するように構成された第1のセンサと、第2の光路に沿って対象物を撮像することによって第2の画像データを生成するように構成された第2のセンサと、を備える撮像システムであって、第1のセンサ及び第2のセンサは、焦点シフトされており、第1の光路及び第2の光路は、少なくとも一部が光チャネルを介して案内される、撮像システムが提供される。撮像システムは、上記の内視鏡のいずれか内(例えば、カップリング部材内)に設けられてもよい。光チャネルは、シャフト内においてシャフトのシャフト軸に沿って延びてもよい。撮像システムは、画像情報を収集し、好ましくは、画像情報を評価し、及び/又は画像情報を処理する役割を担う内視鏡の部分であってもよい。
【0068】
撮像システムは、光学撮像システムであってもよく、第1のセンサ及び第2のセンサを用いて、対象物の画像データを作成するために使用されてもよい。すなわち、第1の画像データ及び第2の画像データは、同じ視野角から対象物の同じ部分を撮像してもよい。これは、第1及び第2の画像データを連続して又は同時に生成することができる、デュアルセンサ撮像システムを提供することによって達成される。撮像データは、好ましくは、一連の画像、例えば、ビデオストリームからなる。さらに、第1の光路と第2の光路とは、同じ光路を通って導かれるので、第1のセンサ及び第2のセンサの対象物が撮像される方向(すなわち、視野角)は、同じである。この結果、第1の画像データ及び第2の画像データは、追加の位置合わせやレジストレーションプロセスを実行する必要なく、互いに完全に重なり合うように自動的にレジストレーションされる。第1のセンサと第2のセンサとは焦点シフトされているため、第1の画像データは、第2の画像データと比較して、異なるフォーカスポイント(すなわち、画像データによって対象物がシャープに描写されるポイント)を有する。すなわち、第1のセンサは、光チャネルの遠位端から第1の距離d1を有する点に合焦され、第2のセンサは、光チャネルの遠位端から第2の距離d2を有する更なる点に合焦され得る。第1の距離d1と第2の距離d2との差は、2つのセンサの焦点シフトであってもよい。焦点シフトは、撮像システムのハードウェアによって決定されてもよい。より詳細には、焦点シフトは、撮像システム内のセンサの配置によって、及び/又は、撮像システム内の光学系によって提供されてもよい。したがって、焦点距離及び/又は光路は、センサの特定の配置によって、又は光学システムによって、短縮又は延長されてもよい(以下でより詳細に説明する)。
【0069】
画像処理システムは、人体や動物の体内器官に関する診断や治療のために、必然的な情報を提供するために使用される腹腔鏡内に設けられてもよい。さらに、腹腔鏡は、大型機械のメンテナンス、例えば、アクセスが困難な歯車を、機械全体を取り外すことなく、交換する必要があるか否かをチェックするために使用することができる。撮像システムのセンサは、腹腔鏡のカメラヘッド内に収容することができ、各センサが独自の焦点を有するデュアルセンサを有するカメラヘッドを提供することができる。換言すれば、センサは、シャフト内にセンサが存在しないように、カメラヘッド内にのみ収容されてもよい。したがって、シャフトを細くすることができ、例えば、狭いキャビティでも問題なく動作させることができる。したがって、センサは、動作中に検査されるキャビティの外側にある可能性がある。とりわけ、このことは、内視鏡の重量配分が、シャフトがカメラヘッドと比較して相対的に低い重量となるように有利に変更され得るという事実につながる。内視鏡は、ユーザー又はロボットによって、カメラヘッドの位置又はその近傍に保持されるために、内視鏡の操作は更に簡略化され得る。すなわち、各センサは、センサが互いに対して焦点シフトされるような、独自のフォーカスポイントを有することができる。例えば、各センサは、独自の焦点距離を有してもよい。すなわち、センサの焦点距離は、異なってもよい。さらに、腹腔鏡は、カメラヘッドから突出したシャフトを有してもよく、このシャフトは、撮像される対象物の近傍にもたらされることがある。すなわち、シャフトは、例えば、少なくとも一部が人体内又は狭い空洞内に挿入されてもよく、シャフトが光チャネルを構成してもよい。シャフトは、その近位端でカメラヘッドに接続されてもよい。カメラヘッドは、シャフトから取り外すことができる。換言すれば、センサは、シャフトから分離されてもよい。したがって、シャフト自体を分解することなく、センサを容易に交換、変更、修理、メンテナンス等をすることができる。つまり、シャフトは、引き続き使用することができ、カメラヘッドのみを交換することができる。シャフトの遠位端は、撮像の対象物に向いてもよい。シャフトだけでなく光学チャネルも、少なくとも部分的に可撓性を有するように構成することができる。さらに、シャフトは、制御可能に移動可能(例えば、シャフトの遠位端を再配向するように制御可能に屈曲可能)であってもよい。この結果、腹腔鏡は、これが使用されるべきあらゆる環境に適合し、他の対象物の背後に位置する領域に到達し得る。シャフト内には、シャフトの屈曲とは無関係に、第1の光路及び第2の光路をシャフトの近位端から遠位端まで誘導するように構成された光路が(例えば、導波路の形態で)設けられてもよい。さらに、シャフトの遠位端部及び/又は近位端部には、第1の光路及び第2の光路を導波路内及び導波路外に適切に案内するために、光学装置(例えば、レンズ又はレンズのアレイ)がそれぞれ設けられてもよい。
【0070】
第1のセンサと第2のセンサとの焦点のシフト(例えば、各センサの異なる焦点距離)は、各センサの光路の少なくとも1つに、少なくとも1つの追加レンズを設けることで実現することができる。しかしながら、少なくとも1つの光路に、1つの追加レンズのみを設けてもよい。さらに、対象物からの光をセンサに適切に導くために、更なるレンズ又は光学系が設けられてもよい。本発明の一実施形態による撮像システムを使用することにより、互いに完全に重なり合い、追加のレジストレーションプロセスを必要とすることなく直接に更に処理することができる第1及び第2の画像データが提供される。例えば、それぞれが異なる焦点(例えば、フォーカスポイント)を有する完全に重なり合った画像は、対象物の深度情報を決定するために使用されてもよい(更なる詳細は後述する)。
【0071】
光チャネルは、細長いボディであってもよい。さらに、光チャネルは、中空であってもよいし、透明材料で作られてもよい。光チャネルは、第1のセンサ及び第2のセンサに面する近位端と、撮像される対象物に面する遠位端とを有してもよい。遠位端は、撮像システムから突出してもよく、第1の光路及び第2の光路の出口ポートであってもよい。したがって、第1の光路と第2の光路は、第1のセンサの視野角と第2のセンサの視野角が同じになるように、遠位端において互いに位置合わせされる。光チャネルは、遠位端で光チャネルを出る光路が発散して延びるように構成されてもよく、好ましくは30°~90°、より好ましくは、50°~70°の延在角度を有する(すなわち、光路は、より大きなシーンをキャプチャーするように、光チャネルを出ると円錐形状になり得る)。例えば、光路は光ファイバーで作られてもよい。さらに、光チャネルは、光チャネルが曲線を描く場合であっても光を導くことができるように、少なくとも一部が可撓性であってもよい。好ましくは、光チャネルは、それが設けられる腹腔鏡のシャフトに応じて可撓性を有する。したがって、障害物の背後に位置する対象物は、障害物の周囲にシャフトを経路選択することによって容易に撮像され得る。撮像システムは、1つの光チャネルのみを有することができる。したがって、撮像システムは、撮像システムを操作するために必要なスペースが少なくて済むようなコンパクトなものとすることができる。一方、立体撮像システムは、固有のシステム要件により、2つ以上の光学チャネルを有する場合があり、したがって、操作のためにより多くのスペースを必要とする場合がある。
【0072】
第1及び第2のセンサは、イメージセンサ又はセンサチップとも呼ばれるフォトセンサであってもよく、好ましくは、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサであり、相補対称金属酸化膜半導体(COS-MOS)センサとしても知られている。さらに、第1のセンサ及び第2のセンサは、電荷結合素子(CCD)センサであってもよい。第1のセンサと第2のセンサとは、同じ種類のセンサであってもよい。或いは、第1のセンサは、第2のセンサと比較して異なるセンサであってもよい。異なる種類のセンサを設けることにより、異なる画質及び/又は異なる画像情報を取得することができる。例えば、低解像度の画像データは、対象物の大まかな情報を提供するために使用され、一方、高解像度の画像は、更なる処理及び詳細な情報のために使用され得る。好ましくは、少なくとも1つのセンサの最小解像度は、1080×1920ピクセルである。好ましくは、各センサは同じ解像度を有する。以下では、第1のセンサ及び第2のセンサと称するが、撮像システムは2つ以上のセンサを備えてもよく、各センサは、独自の光路を有する。すなわち、3つのセンサが設けられている場合には、光路もまた3つ設けられる。例えば、撮像システムは、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のセンサを有することができる。この場合、各センサの各光路は、少なくとも部分的に同じ光路を通って導かれる。より多くのセンサの使用は、撮像される対象物が大きな空間的広がりを有する場合、又は撮像される対象物の非常に詳細な情報を取得する場合に、特に有用である。さらに、各センサは、センサ上に印加される光の量を制御するように構成された独自のシャッタを有することができる。この結果、シャッタースピードを調整することで、センサを異なる光条件に適応させることができる。或いは、センサは、画像データの連続ビデオストリームを取得することもできる。
【0073】
CMOSセンサが使用される場合、画像データは、センサによって出力される電圧信号であってもよい。好ましくは、センサの各画素は、特定の電圧信号を有してもよい。すなわち、CMOSセンサは、デジタル信号を出力することができる。CCDセンサを使用する場合、画像データは、電荷信号であってもよい。電圧信号は、電磁界による劣化が少ないため、撮像装置のセンサとしては、CMOSセンサが好ましく用いられる。
【0074】
画像データは、センサの出力であってもよい。さらに、画像データは、1つ以上の色チャネルの輝度情報を含むことができる。色チャネルは、特定の光スペクトルを表す場合がある。例えば、画像データは、緑色チャネル、RGB色チャネル及び/又はNIR(近赤外)色チャネルの情報を含んでいてもよい。RGB色チャネルは、緑色チャネル、赤色チャネル及び青色チャネルを含むと考えられる。さらに、各センサは、異なる色チャネルの情報を含む画像データを提供することができる。すなわち、第1のセンサは、緑色チャネルの情報を含む第1の画像データを提供し、第2のセンサは、NIRチャネルの情報を含む第2の画像データを提供してもよい。さらに、NIR-NIR、RGB-RGB、緑-緑、NIR-RGB、緑-NIR、緑-RGBなど、各センサの異なる色チャネルの更なる組み合わせも可能である。ここで、各色チャネルは、異なる波長帯域によって定義されることがある。画像データの更なる処理のために、撮像システムは、処理ユニット(例えば、コンピュータ)に接続されるか、又は接続可能であってもよく、又は制御ユニットを有してもよい。制御ユニットは、画像データを更に処理するように構成されてもよい。例えば、制御ユニットは、画像データ内に含まれる情報、例えば、輝度分布を示すヒストグラムを決定してもよい。さらに、制御ユニットは、合焦手段(上記を参照)を制御するように構成された同じ制御ユニットであってもよい。また、画像データは、被写体を撮影した画像や写真であってもよい。悪い光条件に対処するために、撮像システムは、撮像される対象物を照明するように構成された光源(例えば、ランプ)を有してもよい。より詳細には、光源は、光チャネルの内側、又は光チャネルと平行に、光源の光を撮像される対象物に導くように構成された付加的な導波路と結合されてもよい。
【0075】
光路とは、光線が対象物からセンサに至る経路のことである。すなわち、光は、撮像される対象物によって反射され、光チャネルに導入され、光チャネルを通って導かれ、光チャネルによって出力され、第1及び第2のセンサによってキャプチャーされる。光路は、それぞれのセンサによって受光される光線によって画定されてもよい。換言すれば、光路の長さは、センサから撮像される対象物までの長さを測定することができる。さらに、各光路内には、対象物からの光線を各センサに適切に導くように構成されたレンズ又はレンズのアレイが設けられてよい。さらに、撮像システムは、第1の光路及び/又は第2の光路を分割するように構成された、少なくとも1つのプリズムを含むことができる。好ましくは、プリズムは、ビームスプリッタプリズムとして構成される。プリズムは、特定の波長をフィルタリングするように、すなわち、光の特定の波長のみを伝達するように構成されてもよい。したがって、センサに伝達される波長は、予め決定されてもよい。例えば、緑チャネルに対応する波長のみが、プリズムによって透過されるようにしてもよい。さらに、プリズムは、光路の一方の長さを、他方の光路に対して長くすることもできる。したがって、プリズムが複数のタスクを有することにより、撮像システムは、最小限のコンポーネントで実現され得る。さらに、撮像システムは、撮像システムの開口を制御するように構成された光路又は光チャネルに、少なくとも1つの開口を含むことができる。すなわち、絞りが広く開けば開くほど、画像の被写界深度は浅くなり、逆もまた同様である。一般に、絞りが大きく開いている場合、画像データはより良い品質を有し、より多くの情報を含む。したがって、絞りは、最大開度になるように調整することが好ましい。この結果、被写界深度は、比較的狭くなる。さらに、撮像システムは、各光路に対して1つの絞りを有することができる。
【0076】
第1のセンサ及び第2のセンサのシフトされた焦点は、各センサに異なる焦点距離を提供することによって提供されてもよい。第1のセンサ及び第2のセンサの焦点距離は、撮像システム内に設けられた光学レンズの主軸からそれぞれの光路に沿った焦点までの距離であってもよい。光学レンズは、センサに画像を投影するように構成されてもよい。各センサは、別々のレンズに割り当てられてもよい。すなわち、センサが2つの場合、撮像システムは2つの光学レンズを有してもよい。さらに、焦点距離は、撮像システムが光を収束又は発散させる強さの尺度であってもよい。正の焦点距離は、システムが光を収束させることを示し、負の焦点距離は、システムが光を発散させることを示す。焦点距離が短いシステムは、光線をより鋭く曲げ、より短い距離で焦点を結ぶか、より早く発散させる。例えば、第1のセンサと第2のセンサとの焦点距離の比は、0.1~1の範囲、好ましくは、0.3~0.7の範囲とすることができる。この範囲では、対象物の最良の撮像がアーカイブされ得る。換言すれば、上記の比率を有することにより、第1のセンサのフォーカスポイントと第2のセンサのフォーカスポイントとの間の距離は、最適な範囲にある。より詳細には、第1の画像データと第2の画像データとが互いに合成又は比較される場合、上記の比率は、完全に焦点が合っていないために対象物の情報が失われないことを保証する。換言すれば、この比率により、焦点が合っている対象物の部分間の距離が過度に大きくならないことが保証される。
【0077】
本発明によれば、少なくとも2つの画像データが、追加的なレジストレーションプロセスなしに、互いに完全にレジストレーションされた状態で、受信又は生成される場合がある。すなわち、少なくとも2つのセンサによって生成された対象物の画像データは、同じサイズ、同じ位置を有し、同じ視点から撮像される場合がある。したがって、対象物のある部分は第1の画像データ上で焦点が合ってもよく、対象物の他のある部分は第2の画像データ上で焦点が合ってもよい。さらに、被写体の一部が第1の画像データ上で焦点が合っており、一部が第2の画像データ上で焦点が合っている場合もある。この結果、両画像データを互いに組み合わせ又は比較することにより、対象物の単一画像又は対象物の立体画像と比較して、対象物のより多くの情報(例えば、より多くの詳細情報、深度情報など)を含む全体画像又は全体データを生成することができる。両方の画像データが完全に重なるように互いにレジストレーションされるため、画像データの前述の組み合わせ又は比較が容易になる。すなわち、画像データが更に処理される前に、画像データを互いにレジストレーションする必要はない。換言すれば、第1の画像データ及び第2の画像データは、対象物の全く同じ部分(すなわち、シーン)を含むことができる。この結果、本発明は、完全に重なり合う画像データを生成する非常に効率的な方法を提供し、この結果、容易に処理することができる。好ましくは、センサの焦点シフトは、撮像システムによって前もって(すなわち、対象物の撮像の前に)決定される。すなわち、焦点シフトは、撮像システムのハードウェアによって設定されてもよい。
【0078】
好ましくは、第1の光路と第2の光路は、異なる長さを有する。したがって、第1のセンサのフォーカスポイントは、第2のセンサのフォーカスポイントと比較して、異なる位置に配置される。好ましくは、少なくとも1つのセンサと光路の近位端との間の距離、及び/又はセンサ間の距離は、調整可能であってもよい。この結果、各センサの焦点距離は異なってもよく、すなわち、それぞれのセンサから、それぞれの画像データによって鮮明に描写される対象物の点までの距離が異なってもよい。光路の異なる長さを提供することは、第1のセンサ及び第2のセンサの異なる焦点距離(すなわち、第1のセンサ及び第2のセンサの焦点シフト)を実現するための単純且つ安定した方法である。例えば、センサは、光路の近位端からの距離が異なってもよい。すなわち、第1のセンサは、第2のセンサと比較して、光チャネルの近位端から遠くに位置するように、撮像システム内に配置されてもよい。この結果、同じセンサ及び同じ画像設定(例えば、絞り、シャッター速度等)が使用され得る一方で、異なるフォーカスポイント(すなわち、第1のセンサ及び第2のセンサの焦点シフト)は、撮像システム内のセンサの異なる位置によって確保される。この結果、第1の画像データ及び第2の画像データを取得するために、同じ構成要素を使用することができる。したがって、撮像システムが簡素化され、製造コストが低減され得る。
【0079】
好ましくは、第1のセンサ及び第2のセンサは、対象物を同時に撮像するように更に構成される。すなわち、第1の画像データ及び第2の画像データは、同時に生成又は取得され得る。この結果、第1の画像データが取得されたときと、第2の画像データが取得されたときとの間に、対象物が移動したり形状が変化したりする可能性がないため、第1の画像データと第2の画像データとの両方が互いに完全にレジストレーションされる。すなわち、第1の画像データと第2の画像データとは、その個々のフォーカスポイント(すなわち、合焦/暈け)のみが互いに異なる可能性がある。したがって、撮像システムは、撮像システム内に設けられた両方のセンサに使用される1つのシャッタのみを含むことができる。したがって、第1の画像データと第2の画像データとの完全な重なり合いが保証されると同時に、システムは、更に簡素化され得る。
【0080】
好ましくは、システムは、第1の光路及び/又は第2の光路に配置され、第1のセンサ及び/又は第2のセンサの焦点を変化させるように構成されたフォーカスシステムを更に備える。したがって、少なくとも1つのセンサの焦点(例えば、フォーカスポイント又は焦点距離)を調整することができる。換言すれば、第1のセンサのフォーカスポイント及び/又は第2のセンサのフォーカスポイント間の距離が変更されてもよい。この結果、撮像システムは、異なる空間拡張を有する異なる対象物に適合され得る。さらに、撮像システムは、異なる用途に適合させることができる。例えば、撮像システムが腹腔鏡検査に使用される場合(すなわち、腹腔鏡と組み合わせて使用される場合)、第1のセンサは、シャフトの遠位端から測定された6cmの距離に焦点が合わされ、第2のセンサは、シャフトの遠位端から測定された9cmの距離に焦点が合わされる。したがって、センサの焦点シフトは3cmである。焦点シフトは、特定の用途に応じて、正又は負にすることができる。したがって、撮像システムは、複数の用途に使用することができ、撮像システムを使用して、複数の対象物を撮像することができる。例えば、フォーカスシステムは、第1のセンサのフォーカスポイントと第2のセンサのフォーカスポイントとの間の上記の定義された比率が得られるように、センサの少なくとも1つのフォーカスポイントを調整するように構成されてもよい。
【0081】
好ましくは、システムは、第1のセンサ及び/又は第2のセンサの焦点(例えば、焦点距離)が調整され得るように、フォーカスシステムを制御するように構成された合焦手段を更に備える。合焦手段は、使用者の手で把持されるように構成されたフォーカスリングであってもよい。したがって、合焦手段は、ユーザーによって把持可能であるように、撮像システムの外側(及び腹腔鏡の外側)に露出してもよい。フォーカスリングの位置(すなわち、回転)は、センサからの撮像される対象物の距離に依存する。対象物までの距離が大きいほど、センサ上の対象物の少なくとも一部をシャープに描写するために、フォーカスリングを回転させる必要があり、その逆も同様である。合焦手段は、使用者の手の他の指が撮像システム(すなわち、腹腔鏡)を保持する間に、使用者の数本の指(例えば、2本の指)だけがそれに接触するような大きさにすることができる。この結果、撮像システムは、片手で操作可能である。すなわち、ユーザーは、焦点を調整したり、撮像システムを保持したりするために、撮像システムを両手で操作する必要がない。この結果、撮像装置の操作性が向上する。さらに、合焦手段は、制御ユニットによって自動的に操作されてもよい。より詳細には、合焦手段は、画像データの取得の前に、特定の用途に応じて各センサの焦点を調節するように、制御ユニットによって制御されてもよい。代替的に又は追加的に、合焦手段は、各センサの焦点距離を所定のステップ(すなわち、増分)で調節するように、制御ユニットによって制御されてもよい。各ステップにおいて、画像データは、第1のセンサ及び第2のセンサによって取得され得る。ステップサイズは、0.1mm~5mmの範囲、好ましくは0.5mm~2mmの範囲であってもよい。合焦手段は、内視鏡のカメラヘッドに設けられてもよい。したがって、シャフトには、合焦手段が設けられていない場合がある。これにより、シャフトの重量を低く抑えることができる。この結果、内視鏡全体の操作性を向上させることができる。さらに、内視鏡の操作中、合焦手段は、検査対象のキャビティ(例えば、人体)の外側に配置される。したがって、合焦手段は、ユーザー又はロボットにとって容易にアクセス可能である。
【0082】
好ましくは、第1の画像データと第2の画像データとは、同一のシーン、例えば、対象物の全く同じ部分を表す。センサの焦点(例えば焦点距離)に応じて、及び/又は使用されるセンサの種類に応じて、第1の画像データの視野は第2の画像データの視野よりも小さく、又はその逆であってもよい。第1の画像データ及び第2の画像データ内で対象物の同一の視野を提供するために、より大きな視野をカバーする画像データは、対象物の同一の視野を正確に含むように(例えば、画像データの一部、例えば外縁を切り取ることによって)調整されることがある。この結果、両方の画像データを簡単な方法で比較したり、組み合わせたりすることができる。例えば、両方の画像データにおいて、画像データのエッジを基準点として使用することができる。換言すれば、第1の画像データによって表される対象物の一部と第2の画像データとが正確に重なる。したがって、画像データの更なる処理は、さらに改善され、簡略化され得る。
【0083】
好ましくは、撮像システムは、第1の画像データ及び第2の画像データに基づいて、対象物の深度情報を生成するように構成された制御ユニットを更に含む。換言すれば、撮像システムは、画像データを更に処理するための制御ユニットを含んでもよい。制御ユニットは、コンピュータに類似した装置であってもよく、入力データを受信し、入力データを処理し、処理されたデータを出力するように構成されてもよい。特に、対象物の2次元座標を含む画像データ(例えば、複数の画像データ)を入力データとし、対象物の第3の座標(すなわち、深度情報又は3次元形状情報)を出力データとしてもよい。深度情報の生成は、複数の画像データが利用される一例である。すなわち、制御ユニットは、対象物の深度マップ(例えば、3次元画像データ)を出力してもよい。具体的には、深度マップは、対象物の各点の空間的な位置又は座標を記述する3つの座標をそれぞれ有する点の散布図であってもよい。すなわち、制御ユニットは、第1の画像データと第2の画像データとに基づいて、深度マップを決定するように構成されてもよい。
【0084】
さらに、制御ユニットは、画像データを、パッチと呼ばれる1つ又はいくつかの(例えば、>9)ピクセルのセグメントに分割するように構成されてもよい。さらに、制御ユニットは、第1の画像データのパッチと、第2の画像データのパッチとを比較するように構成されてもよい。パッチは、長方形パッチであってもよいし、四角形パッチであってもよい。特に、制御ユニットは、各パッチにおいて、対象物がどの程度シャープに描写されているかを判定する(すなわち、各パッチのシャープネスを判定する)ように構成されてもよい。パッチは、複数のサイズを有してもよい。すなわち、それぞれの画像データにおいて提供されるパッチのサイズは、画像データによって描写される対象物に応じて、及び/又は、特定の用途(例えば、手術の種類)に応じて変化し得る。すなわち、多くのテクスチャが存在する領域では、パッチサイズはより小さく(例えば、5×5ピクセル)、一方、ピクセル強度がより均一である、すなわち、テクスチャがほとんど存在しない画像データの領域では、ピクセルサイズはより大きく(例えば、50×50又は最大1000ピクセル)することができる。例えば、画像データのエッジが多く描写されている領域に、テクスチャが多く含まれている場合がある。したがって、テクスチャの多い領域では、パッチサイズを小さく(すなわち、解像度を高く)して、この領域の精度の高い情報を得る一方、テクスチャの少ない領域では、パッチサイズを大きくして、制御ユニットによる処理を高速化することができるので、撮像システムを高効率に動作させることができる。
【0085】
好ましくは、第1の画像データにおける少なくとも1つの又は各第1のパッチの位置は、第2の画像データにおける少なくとも1つの又は各第2のパッチの位置に対応する。好ましくは、少なくとも1つの第1のパッチは、好ましくは、少なくとも1つの第2のパッチと同じサイズ、好ましくは、20×20ピクセルのサイズを有する。すなわち、第1のパッチは、第1の画像データ内において、第2の画像データ内の第2のパッチと同じ位置を有する。より詳細には、第1の画像データと第2の画像データとが、互いにレジストレーションされる場合、第1のパッチと第2のパッチとは、互いに重なり合う。したがって、各パッチについて、制御ユニットによって深度値(すなわち、z座標)が決定されてもよい(すなわち、各パッチについて、3次元空間におけるx、y、z座標が決定される)。パッチの大きさは、1ピクセルでも数ピクセルでもよい。しかし、必要とされるコンピューティングリソースは、画像データ内に含まれるパッチの数に依存する。したがって、好ましくは、各パッチは、20×20ピクセルのサイズを有することができる。このようなサイズを有することにより、システムの効率が確保されるとともに、深度マップの高い精度が確保される。
【0086】
さらに、制御ユニットは、第1の画像データの各パッチ及び第2の画像データの各パッチのシャープネスを決定するように構成されてもよい。複数のパッチが同じシャープネスを有する場合があることに留意されたい。各パッチのシャープネスは、それぞれのパッチのエントロピーに比例する。換言すれば、シャープネスは、エントロピーと同義である。第1の画像データのパッチを第1のパッチとし、第2の画像データのパッチを第2のパッチとしてもよい。第1のパッチと第2のパッチとは、互いに完全に重なり合ってもよい(すなわち、対象物の同じシーン/部分を描写してもよい)。換言すれば、第1のパッチと第2のパッチ(一対のパッチともいう)は、第1の画像データ内及び第2の画像データ内の同じ位置に配置されてもよい。上記で説明したように、第1のセンサの焦点距離、及び第2のセンサの焦点距離は、予め設定されてもよい。したがって、第1のセンサの焦点距離と第2のセンサの焦点距離は、既知である。下記の式を用いて、制御ユニットは、第1のパッチ及び第2のパッチによって描写される対象物の部分の深度(すなわち、z座標)を決定してもよい。
【数1】
ここでdは、第1のパッチと第2のパッチとに描写された対象物の一部分の未知の距離(すなわち、深度又はz座標)であり、d1は、第1センサの焦点距離であり、I1は、第1のパッチのシャープネスであり、d2は、第2センサの焦点距離であり、I2は、第2パッチのシャープネスである。
【0087】
第1のセンサ及び第2のセンサの焦点距離及びパッチサイズは、上記の式を用いて有用な深度情報を得るように慎重に選択されなければならない。好ましくは、焦点距離は、実行される特定のアプリケーション(例えば、実行される特定の手術又は腹腔鏡検査)に依存する。例えば、第1のセンサの焦点距離は、シャフトの遠位端から測定して6cmであってもよく、第2のセンサの焦点距離は、シャフトの遠位端から測定して9cmであってもよい。第1のセンサの焦点距離は、手術の種類から決定される経験的な値であってもよい(例えば、腹腔鏡検査の場合、腹腔鏡の先端(すなわち、シャフトの遠位端)から測定して6cmであってもよい)。
【0088】
画像のシャープネスは、特定のパッチの画像の情報密度(例えば、エントロピー)によって表すことができる。制御ユニットは、第1の画像データ及び第2の画像データの各パッチの組(すなわち、各第1のパッチ及び対応する各第2のパッチ)に対して、上記の式を適用するように構成されてもよい。この結果、制御ユニットによって、画像データの各パッチの組に対する深度値が決定されてもよい。深度情報を有することにより、制御ユニットは、深度情報と、パッチのそれぞれの組のx座標及びy座標とを用いて深度マップを作成するように構成されてもよい。換言すれば、制御ユニットは、パッチのそれぞれの組のx、y及びz座標に基づいて、3Dモデルを作成するように構成されてもよい。
【0089】
代替的又は追加的に、制御ユニットは、フォーカススタッキングの方法を使用して3Dモデルを作成するように構成することができる。深度マップを作成するために使用され得る更なる方法は、いわゆるフォーカス/デフォーカスからの深度である。さらに、制御ユニットは、少なくとも2つの2次元画像データ(すなわち、第1の画像データ及び第2の画像データ)に基づいて、深度情報(すなわち、3次元画像データ)を作成するために、上記の方法のうちの1つ以上を実行するように構成されてもよい。具体的には、制御ユニットは、深度マップを作成するための少なくとも2つの方法を組み合わせるように構成されてもよい。特に、上記の式は、画像データの他のパッチと比較して、相対的に高いテクスチャを有する画像データのパッチに適用されてもよい。さらに、画像データの他の領域と比較して、相対的にテクスチャが乏しい画像データの他の領域に、光源からの形状を適用してもよい。この結果、画像データの異なる部分に異なる方法を適用することによって、深度マップ生成の性能が、大幅に改善される可能性がある。したがって、本発明の少なくとも1つの実施形態は、2つのセンサによって得られた画像データの焦点の相対的な差を3次元形状情報に変換することができる。換言すれば、画像データ内の全てのパッチの3D座標は、各センサによって生成されたそれぞれのパッチ(すなわち、1つの画素又は画素のアレイ)の合焦/暈けを比較することによって計算/決定することができる。オプションとして、制御ユニットは、得られた深度マップをフィルタリングすることによって、深度マップを更に処理するように構成されてもよい。より詳細には、誤った深度情報を削除するために、制御ユニットは、互いに隣接する深度マップの深度情報を比較するように構成されてもよい。ある深度情報が、隣接する深度情報と比較して過度に高い、又は低い(すなわち、前終端閾値を超える)場合、制御ユニットは、この深度情報が誤りである可能性が高いため、そのような深度情報を削除するように構成されてもよい。この結果、制御ユニットによって出力される深度マップの精度が向上する可能性がある。
【0090】
好ましくは、制御ユニットは、第1の画像データの少なくとも1つの第1のパッチのエントロピーと、第2の画像データの少なくとも1つの第2のパッチのエントロピーとを比較することによって、深度情報を生成するように更に構成される。画像のシャープネスは、エントロピーと同義である。エントロピーは、画像データ内に含まれる情報(すなわち、画像データのパッチのシャープネスの尺度)の一例である。すなわち、第1の画像データと第2の画像データとは、そのエントロピーに基づいて比較され得る。したがって、制御ユニットは、第1の画像データ及び第2の画像データのエントロピーを決定するように構成されてもよい。具体的には、エントロピーが高いほど、それぞれの画像データに焦点が合っている。したがって、エントロピーが低いほど、それぞれの画像データは焦点が合っていない(すなわち、暈けている)。エントロピーは、下記の式により求めることができる。
【数2】
ここで、kは、1つのチャネル又はバンド(例えば、観察対象のグレーチャネル又は緑チャネル)のレベル数であり、pkは、グレーレベルkに関連する確率である。さらに、バンドとして、RGBチャネル及び/又はNIRチャネルを使用してもよい。また、対象物の特定部分の深度を判定するための上記の式で用いたシャープネスI1、I2は、それぞれエントロピーで代用してもよい。すなわち、上記の式を用いて、エントロピーH1が第1のパッチについて決定され、エントロピーH2が第2のパッチについて決定される(さらに、各パッチの組について決定される)。そして、第1のパッチ及び第2のパッチに描写された対象物の特定部分の深度を決定するための式において、I1、I2の代わりにH1、H2が使用される。つまり、エントロピーはシャープネスと同義である。
【0091】
以下、深度推定精度を向上させるための3つのオプション機能について概説する。
【0092】
好ましくは、制御ユニットは、少なくとも1つのセンサの焦点の調整を監視するように構成されてもよい。例えば、制御ユニットは、合焦手段の操作を検出してもよい。焦点は、人間のユーザーによって、及び/又は、撮像システムを操作するロボットによって調整されてもよい。すなわち、センサの少なくとも1つの焦点が調整される場合、制御ユニットは、調整量を監視してもよい。換言すれば、制御ユニットは、各センサの焦点のシフト(すなわち、距離)を検出してもよい。また、制御ユニットは、画像データに基づいて、画像データのどの部分がシャープに描写されているかを検出してもよい(例えば、エッジ検出を用いる)。さらに、制御ユニットは、例えば、対象物のシャープに描写された部分が、内視鏡の先端からどの程度の距離にあるかを知ることができる。画像データ内の焦点位置の知識と、画像データのどの部分がシャープに描写されているかという知識とを組み合わせることによって、制御ユニットは、深度推定を改善することができる。換言すれば、制御ユニットは、画像データのどの部分が現在シャープに描写されており、各センサの焦点位置がどこにあるかという情報を得ることができる。この結果、制御ユニットは、画像データのシャープに描写された部分の深度を決定してもよい。監視は、リアルタイムで行われてもよい。したがって、深度推定の継続的な改善が可能である。焦点調整の監視は、光学的エンコーダ、電気的測定値及び/又は他の機械的センサを設けることによって実現することができる。上記の手段の少なくとも1つを使用することにより、焦点調整を効率的に測定することができる。また、これらの測定手段を組み合わせて使用することにより、測定精度を向上させることができる。
【0093】
好ましくは、制御ユニットは、撮像システムの動きを監視するように構成されてもよい。すなわち、撮像システムの空間的位置が、制御ユニットによって監視されてもよい。例えば、撮像システムが内視鏡に設けられている場合、制御ユニットは、内視鏡の空間的位置を検出してもよい。好ましくは、位置は、リアルタイムで検出される。この情報は、深度推定精度を向上させるために使用される。空間的位置は、光学トラッカー、電磁トラッカー及び/又は監視アクチュエータによって検出することができる。アクチュエータは、ロボットによる撮像システムの操作に使用することができる。すなわち、ロボットが撮像システムを操作している間に撮像システムを動かす場合、制御ユニットは、そのような動きを検出してもよく、この結果、撮像システムの現在の空間的位置を決定してもよい。さらに、撮像システムは、加速度センサ及び/又は回転センサを含むことができる。したがって、撮像システムの動きを正確に監視することができる。撮像システムの既知の空間的位置と、画像データのどの部分が鮮明に描写されているかの情報(上記の概略を参照)とに基づいて、深度の推定精度を更に向上させることができる。
【0094】
好ましくは、制御ユニットは、画像データ内の既知の対象物の大きさを用いて、深度情報を推論するように構成されてもよい。すなわち、制御ユニットは、既知の対象物(例えば、内視鏡の先端から)の寸法を知ることにより、既知の対象物までの距離を決定するように構成されてもよい。対象物は、検査中のキャビティ内に存在するマーキングであってもよい。さらに、マーキングは、診断中(例えば、手術中)に追加的に使用される器具に設けられることもある。さらに、対象物は、器具そのものであってもよいし、診断中のキャビティ内に存在する他の対象物であってもよい。したがって、深度推定精度を向上させるために、光学的較正を実行することができる。
【0095】
深度推定の精度を向上させることは、深度推定の誤った結果を低減するために有用である。深度推定は、第1の画像データと第2の画像データとのコントラストに基づいて行われることがあるため、誤った結果が生じることがある(上記の概略を参照)。先に定義された3つの特徴は、例えば、深度推定が正しいか否かをチェックするために使用され得る。後者の特徴は、光学的較正を実行するために必要な追加の構造的手段がないため、有利であり得る。換言すれば、光学的較正は、追加のセンサ等を必要とすることなく、制御ユニットによって実施され得る。但し、深度推定精度を向上させるために、上記の特徴の2つ又は3つ全てを実行してもよい。さらに、上記のように得られた情報は、撮像システム(例えば、撮像システムを構成する内視鏡)の歪みを補正するためにも使用することができる。上記の特徴のうちの少なくとも1つは、コンピュータビジョンの技術を用いて実施され得る。コンピュータビジョンは、コンピュータがデジタル画像又は動画からどのように高レベルの理解を得ることができるか、を扱う学際的な科学分野であると考えられる。工学の観点からは、人間の視覚システムが行うことができるタスクを理解し、自動化することを追求することができる。コンピュータビジョンのタスクには、デジタル画像の取得、処理、分析、理解、数値、又は、例えば、意思決定などのシンボル情報を生成するための実世界からの高次元データの抽出方法が含まれる。この文脈での理解とは、視覚画像(画像データ)を、思考プロセスに意味を持たせ、適切な行動を引き出すことができる世界の記述に変換することを意味する。この画像理解とは、幾何学、物理学、統計学、学習理論の助けを借りて構築されたモデルを用いて、画像データからシンボル情報を分離することである。
【0096】
好ましくは、光学チャネルは、第1のセンサ及び第2のセンサの視野が可変するように回転可能である。特に、光チャネルの遠位端のみが回転するように構成されてもよい。すなわち、光チャネルは、一部のみ回転可能であってもよい。センサは、光チャネルの回転に対して固定されてもよい。或いは、光チャネルの遠位端に設けられた光学装置(例えば、レンズ又はレンズのアレイ)は、回転されることによって視野を変化させるように構成されてもよい。したがって、光チャネルの近位端は、撮像システム内に固定的に保持され、遠位端は、撮像される対象物に向けられるように回転され得る。光チャネルの回転可能な部分は、撮像システムから突出してもよい。光チャネルは、光チャネルが湾曲することなく真っ直ぐに延びる初期位置を有してもよい。さらに、光チャネルは、初期位置において、光チャネルの軸を中心に回転してもよい。具体的には、光チャネルは、初期位置における光チャネルの軸に対して、光路が約20°~40°、好ましくは、約30°傾斜するように構成されてもよい。さらに、光路は、光路が光チャネルを出た後、円錐形状を有してもよい。前述の円錐は、光チャネルの少なくとも一部を中心軸の周りで回転させることにより傾斜させることができる。具体的には、回転されることにより、光路は、光チャネルの中心軸に対して30°偏位することができる。さらに、光チャネルの少なくとも遠位端は、センサに対して移動可能であってもよい。この結果、撮像システムは、狭い空間やキャビティであっても、複数の用途に使用することができる。すなわち、第1及び第2の画像データを取得するために、光チャネルの一部のみを撮像される対象物に向けることができる。したがって、アクセスが困難な対象物であっても、撮像システムによって撮像することができる。さらに、光チャネルの軸を中心に視野を回転させることができ、光チャネルの軸に対して視野を傾斜させることができることにより、検査対象のキャビティの全周視野を提供することができる。例えば、キャビティの全体的な印象を得るために、撮像システムを構成する内視鏡をキャビティ内で移動させる必要はない。
【0097】
好ましくは、第1のセンサと第2のセンサとは、互いに対して傾斜するように配置される。すなわち、少なくとも2つのセンサは、互いに対して傾斜する。例えば、センサの感光面が互いに傾斜する場合、センサは、互いに対して傾斜する。傾斜は、センサが互いに同一平面上にある構成と比較して、撮像システムがよりコンパクトになり得るという効果を提供する。好ましくは、センサは、検査対象のキャビティに挿入されるように構成されたシャフト要素とは別個のカメラヘッドに収容される。したがって、カメラヘッドは、センサを傾斜して配置することにより、コンパクトな寸法を有することができる。すなわち、コンパクトなカメラヘッドを確保するために、シャフトの方向に沿ったカメラヘッドの延長を制限することができる。特に、センサは、互いに対して実質的に90°傾斜してもよい。実質的に90°とは、センサどうしが90°プラスマイナス10°の角度をなす配置を意味する場合がある。したがって、許容可能なレベルの公差を考慮して、撮像システムを効率的に製造することができる。
【0098】
好ましくは、第1のセンサ及び第2のセンサは、第1の画像データ及び第2の画像データを生成するために、RGB光スペクトル、緑光スペクトル及び/又はNIR光スペクトルを使用するように構成される。したがって、特定の用途に応じて、所定の条件下で多くの情報を含む光スペクトルを使用することができる。具体的には、緑光スペクトルは、比較的に悪い光条件下で多くの情報を有する。一方、近赤外光スペクトルは、ほとんど暗い光条件下で多くの情報を提供する。この結果、異なる光条件下での画像データによって、形状や情報を容易に認識又は判断することができる。さらに、第1のセンサと第2のセンサとは、異なる光スペクトル/チャネルを使用することができる。例えば、第1のセンサは、緑スペクトルを使用し、第2のセンサは、近赤外スペクトルを使用することができる。この結果、様々な光条件下であっても、深度情報を決定することができる。
【0099】
本発明の更なる態様によれば、上記の撮像システムを含む腹腔鏡が提供される。すなわち、腹腔鏡は、上記の撮像システムを構成するカメラヘッドを含む内視鏡であってもよい。撮像システムを収容するカメラヘッドは、カメラアダプタを介して、腹腔鏡に接続されてもよい。フォーカスリングは、カメラヘッドと腹腔鏡のテレスコープとを橋渡しするように、腹腔鏡のカメラアダプタに配置されてもよい。テレスコープは、腹腔鏡のシャフトであってもよい。光チャネルは、シャフト内に配置される。さらに、シャフトは、光学チャネルが腹腔鏡(例えば、テレスコープ)の遠位端で回転できるように可撓性であってもよいし、腹腔鏡の遠位端から突出してもよい。さらに、腹腔鏡は、光源を含んでいてもよい。光源は、光チャネルの遠位端が向けられる領域を照らすように調整可能であってもよい。したがって、第1及び第2の画像データは、光条件が悪い場合であっても適切に生成され得る。光源は、好ましくは、LED光源であってもよい。この結果、1つのカメラヘッドを用いて、少なくとも2つの焦点シフトされた画像データを取得することができる腹腔鏡が提供され得る。この結果、腹腔鏡は、高度に統合された設計を有し、広い応用分野で使用され得る。腹腔鏡は、ロボットによって操作されるように構成されてもよい。すなわち、腹腔鏡は、ロボットから操作コマンドを受信し、ロボットに情報(例えば、画像データ)を送信するように構成されたインターフェースを有することができる。したがって、腹腔鏡は、少なくとも部分的に自動化された手術環境で使用することができる。
【0100】
本発明の更なる態様によれば、対象物を撮像する方法が提供され、この方法は、第1のセンサを用いて第1の光路に沿って対象物を撮像することにより、対象物の第1の画像データを生成することと、第2のセンサを用いて第2の光路に沿って対象物を撮像することにより、対象物の第2の画像データを生成することと、を含み、第1のセンサと第2のセンサは、焦点シフトされており、第1の光路と第2の光路とは、少なくとも一部が同じ光チャネルを介して導かれる。
【0101】
好ましくは、本方法は、第1の画像データ及び第2の画像データをパッチに分割すること、をさらに含み、第1の画像データのパッチと第2の画像データのパッチとは、互いに対応する。換言すれば、第1の画像データのパッチは、第2の画像データの対応するパッチと全く同じ領域をカバーする。第1の画像データの対応するパッチと、第2の画像データの対応するパッチとは、一対のパッチと見なすことができる。
【0102】
好ましくは、本方法は、深度情報を生成するように、第1の画像データと第2の画像データとを互いに比較すること、をさらに含む。
【0103】
好ましくは、画像は、少なくとも1組のパッチを比較することにより、互いに比較される。
【0104】
好ましくは、第1の画像データと第2の画像データとは、同時に生成される。
【0105】
さらに、本発明は、上記の内視鏡を使用する方法にも向けられる。この方法は、上記の内視鏡を提供し、シャフト部材を一方向に360°以上回転させること、を含む。
【0106】
したがって、360°の視野により、関心領域を全体的に観察することができる。さらに、ユーザーは、回転動作の停止や制限を考慮することなく、シャフト部材を回転させることができるため、内視鏡の操作性を向上させることができる。
【0107】
さらに、本発明は、非医療分野における到達困難な対象物の目視検査のためのボアスコープとしての上記の内視鏡の1つの使用にも向けられる。すなわち、ボアスコープは、対象領域が他の手段でアクセスできない場合、又はアクセスに破壊的な、時間のかかる、及び/又は高価な取り外し作業が必要となる可能性がある場合の目視検査作業に使用することができる。ボアスコープは、欠陥や不完全性を認識するための非破壊検査技術に使用することができる。さらに、ボアスコープは、航空機エンジン、航空派生産業用ガスタービン、蒸気タービン、ディーゼルエンジン、自動車及びトラックエンジンの目視検査にも使用される。ガスタービン及び蒸気タービンは、安全性とメンテナンスが要求されるため、特に注意が必要である。エンジンのボアスコープ検査は、不必要なメンテナンスを防ぐために使用されます。また、機械加工部品や鋳造部品の製造では、重要な内面にバリがないか、表面仕上げはどうか、貫通穴はないかなどを検査するために使用されます。さらに、ボアスコープは、法執行機関や建物検査における法医学的用途や、銃器の内径を検査するための銃鍛造に使用されることもある。或いは、上記の内視鏡の1つを医療分野で使用することもできる。内視鏡は、目視による検査や診断、或いは、関節鏡のような手術の補助に使用することができる。特に、内視鏡は、最小侵襲手術(例えば、腹腔鏡として)に使用することができる。例えば、内視鏡は、咽頭や食道などの内臓を検査するために使用することができる。特に、内視鏡は、膀胱、腎臓、気管支のような人又は動物の臓器を検査するため、或いは、関節、結腸、腹部、骨盤を検査するために使用することができる。
【0108】
本発明の更なる態様によれば、上記のいずれかの内視鏡と、内視鏡に光を伝達するための外部光源と、内視鏡によって伝達された画像情報を表示するための表示装置と、を備える内視鏡システムが提供され得る。
【0109】
本発明の更なる態様によれば、上記の構成のいずれか1つによる内視鏡と、内視鏡がトロカールに対して移動可能であるように、内視鏡を少なくとも部分的に受容するように構成されたカニューレを有するトロカールと、を含み、カニューレは、内視鏡が少なくとも部分的に通過し得るように構成された遠位開口を有し、カニューレは、遠位開口に設けられ、シャフトの先端部が遠位開口を通過するときに、シャフトの少なくとも先端部を洗浄するように構成された洗浄装置を備える、内視鏡システムが提供され得る。
【0110】
トロカール又はトロッカーは、アウル(金属製又はプラスチック製の鋭利又は非鋭利な先端部であってもよい)、カニューレ(本質的に中空の管)、及びシールからなる医療用又は獣医用器具であってもよい。トロカールは、腹腔鏡手術の際、人又は動物の腹部から挿入される。トロカールは、把持器、鋏、ステープラー、内視鏡などの他の器具をその後に配置するための入口として機能する。トロカールはまた、体内の臓器からガスや液体を逃がすこともできる。
【0111】
内視鏡は、トロカールのカニューレに挿入される。特に、内視鏡のシャフトが、カニューレに挿入されることがある。この状態において、カニューレと内視鏡のシャフトとは、同軸であってもよい。また、カニューレは、軸方向に延びてもよい。さらに、内視鏡が軸方向に往復動され、カニューレが固定的に保持されてもよい。すなわち、内視鏡の先端部とカニューレの先端開口とが互いに一致するように、内視鏡とカニューレとが相対的に位置決めされてもよい。すなわち、内視鏡の先端とカニューレの先端開口とは、軸方向において実質的に同じ位置に配置されてもよい。例えば、この相対位置において、洗浄装置は、内視鏡の先端部を洗浄することができる。洗浄装置は、上述した洗浄装置と同様の構成であってもよい。さらに、トロカールは、上述した洗浄液供給装置を備えてもよい。したがって、内視鏡は、内視鏡の先端部の洗浄がトロカールによって依然として可能であるコンパクトなサイズ(即ち、洗浄装置及び/又は洗浄液供給装置を有しないサイズ)に構成され得る。
【0112】
上記で定義した実施形態の個々の特徴は、新たな実施形態を形成するように、他の特徴と再配置したり、交換したりすることができる。前述した特徴の全ての利点及び変更は、新たな実施形態にも同様に適用される。
【0113】
以下、本発明の実施形態を、添付された図面を参照して詳細に説明する。しかしながら、実施形態の詳細な説明は、より良い理解のために提供されるものであり、本発明の範囲を、以下に説明される実施形態に限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る内視鏡を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る内視鏡を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る内視鏡を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る内視鏡を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態によるライトガイドの概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る内視鏡を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る内視鏡システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0115】
以下、本発明の実施形態を、添付された図面を参照して説明する。各実施形態に存在する同様の特徴は一度だけ説明し、同様の特徴の説明は、各実施形態に適用する。
【0116】
図1は、本発明の一実施形態に係る内視鏡1を示す概略図である。より詳細には、
図1において、軸方向に沿った概略断面図が描画されている。内視鏡1は、回転可能なシャフト部材3と、固定されたカップリング部材2とを含む。シャフト部材3は、シャフト4と取付ベース15とを含む。シャフト4は、軸方向d1に沿って延びる軸線Cを有する。さらに、シャフト4は、ライトガイド16及びイメージガイド17を含む中空部材である。特に、イメージガイド17は、シャフト軸Cを中心とし、ライトガイド16によって円周方向に取り囲まれている。ライトガイド16は、シャフト部材3の取付端部6からシャフト部材3の先端部5に、光を伝達するように構成される(図中の矢印を参照)。さらに、イメージガイド17は、先端部5から取付端部6に、画像情報を伝達するように構成される(図中の矢印を参照)。取付端部6において、シャフト4は、取付ベース15に取り付けられる。
【0117】
シャフト部材3は、カップリング部材2に対して、360°以上無制限に回転可能に連結される。すなわち、シャフト部材3がカップリング部材2に対して一方向に無限に回転することを制限するようなストッパーは、設けられていない。画像情報は、シャフト部材3から軸方向d1に沿って、カップリング部材2に伝達される。特に、画像情報は、シャフト部材3内に設けられたイメージガイド17と、カップリング部材2内に設けられた画像情報伝達路8とによって伝達される。いくつかの実施形態では、イメージガイド17と画像情報伝達路8は、同様に構成されてもよい。さらに、光は、軸方向d1においても、カップリング部材2からシャフト部材3に伝達されるが、画像情報と比較して反対方向に伝達される。光は、カップリング部材2の送信部9からシャフト部材3の受信部7に送信される。本実施形態では、受信部7及び送信部9は、隙間11を挟んで対向配置された光伝達面となっている。すなわち、受信部7と透過部9とは、軸方向d1において対向する。隙間11は、シャフト部材3をカップリング部材2に対して回転させたときに、受信部7と透過部9との間の摩擦を低減し、且つ屈折による損失を低減して十分な光透過率を確保するために、透過率の高い透明な液体で満たされる。受信部7及び送信部9を形成する光伝達面は、軸Cの延長線上の周囲に環状をなし、さらに、軸Cの延長線が、それらの中心となる。したがって、画像情報伝達路8は、送信部9を通過する。同様に、イメージガイド17は、受信部7を通過する。この結果、シャフト部材3とカップリング部材2との互いの回転位置に依存することなく、カップリング部材2からシャフト部材3への光伝達と、シャフト部材からカップリング部材2への画像情報伝達とが確保される。換言すれば、カップリング部材2からシャフト部材3への光の伝達、又はシャフト部材3からカップリング部材2への画像情報の伝達のいずれについても、シャフト部材3とカップリング部材2との間に、機械的な接続は存在しない。いくつかの実施形態では、画像情報も受信部7及び送信部9を介して伝達される。
【0118】
さらに、カップリング部材2は、外部光源18(
図1には描画されてない)と接続されるためのポート10を有する。したがって、光をカップリング部材2に入力することができる。光は、送信部9に伝達されるように分配される。詳細については、
図5を参照して後述する。
【0119】
さらに、
図1の右側には、カップリング装置が描画されている。カップリング装置は、画像情報が送信され得る画像センサを構成する。さらに、カップリング装置は、更なる処理装置及び/又はアイピースを接続するためのポートを含む。
図1の左側には、撮像対象が概略的に描画されている。
【0120】
図面には描画されていない更なる実施形態では、カップリング部材2は、1つ以上の光源を有してもよい。すなわち、光は、固定部分(すなわち、カップリング部材2)において生成され、送信部9及び受信部7を介して、シャフト部材3に伝達されることができる。さらに、カップリング部材2は、光源から発生する熱を除去するように、冷却配置を有してもよい。
【0121】
更なる実施形態では、内視鏡1は、画像データを収集し、処理するように構成された撮像システム(図面には別個に描画されていない)を備えることができる。すなわち、カップリング部材2及びシャフト部材3は、内視鏡の機械的な取り扱い部分を提供し、一方、撮像システムは、画像データを収集又は受信する方法と、その処理及び評価とを提供する。
【0122】
図2は、本発明の他の実施形態に係る内視鏡1を示す概略図である。
図2に描画された内視鏡は、回転部分(例えば、シャフト部材3)と固定部分(例えば、カップリング部材2)との間に光の伝達がない点で、上記の実施形態と異なる。特に、シャフト部材3は、外部電源又はエネルギー供給装置13から受信部7が受信する電気エネルギーによって通電されるランプ(光源)12を備える。本実施形態では、外部エネルギー供給部13は、シャフト部材3の受信部7が誘導エネルギー送信部によって送信されたエネルギーを受信できるように、内視鏡1の近くに配置される誘導エネルギー送信部である。シャフト部材3内には、ランプ12を作動させるためにエネルギーを変換する回路が設けられる。ランプ12は、シャフト4のライトガイド16に接続される。画像情報は、シャフト部材3からカップリング部材2に非接触で伝達される。したがって、シャフト部材3は、カップリング部材2に対して連続的に容易に回転可能である。
【0123】
図3は、本発明の他の実施形態による内視鏡1の概略図である。本実施形態が
図2に描画された実施形態と異なる点は、受信部7と送信部9とがコイルとして形成されている点である。すなわち、受信部7は受電コイルであり、送信部は送電コイルである。両コイルは、軸方向d1において、互いに対向するように配置されている。特に、受電コイル及び送電コイルは、軸線Cの延長線上に円周方向に配置されており、コイルの中心部では、画像情報伝達路8及びイメージガイド17がそれぞれのコイルを通過する。したがって、シャフト部材3とカップリング部材2との互いの相対位置のそれぞれにおいて、シャフト部材3にはエネルギーが伝達され、カップリング部材2には画像情報が伝達され得る。上記の実施形態と同様に、シャフト部材3は、エネルギーを変換し、ランプ12を動作させるように、回路、特に、整流回路を含む。さらに、カップリング部材2には、伝達コイルに電気エネルギーを供給するための電源接続部を含む。
【0124】
図4は、本発明の他の実施形態に係る内視鏡1の概略構成図である。本実施形態は、前述した実施形態と同様の基本構造を有する。しかし、本実施形態は、エネルギー伝達がブラシ接点14によって実現される点で、
図3に描画された実施形態と異なる。すなわち、シャフト部材3は、円筒状部材として形成された接点部を有してもよい。接点部は、その外周面に円周方向の接点を有する。円周方向の接点は、シャフト軸Cの延長線上で円周方向に設けられる。カップリング部材2は、シャフト部材3の接点部の形状に対応する受け部を有する。受け部は、接点部が受け部内に収容されるような大きさである。受け部は、接点部の円周方向の接点に押し付けられるように、ばねによって付勢された接点を有する。したがって、電気エネルギーは、カップリング部材2に対するシャフト部材3の無制限の回転を妨げることなく、カップリング部材2からシャフト部材3に伝達され得る。更なる実施形態では、接点部は、ベアリングを介して、カップリング部材2に支持されてもよい。
【0125】
図5は、本発明の実施形態によるライトガイド16の概略図である。特に、
図5では、外部光源18から内視鏡1に入力された光を再配向するように構成されたライトガイド16の一部又は分配器が描画されている。外部光源18からの光は、ポート10を介して、内視鏡に入力される。したがって、光は、半径方向d2に入射する。したがって、光は、軸方向d1に向くように再配向される必要がある。このため、ライトガイド16又は分配器は、半径方向d2からの光を軸方向d1に再配向し、送信部9によって均等に送信できるように、光を均等に分配するように構成することができる。この場合、光分配器は、カップリング配置2内に配置することができる。以下では、光の再配向を実現する方法について、2つの可能性を説明する。
図5に描画されたそれぞれの場合において、再配向される光は、左側から来ており、
図5の下側に向かって再配向されるべきである。
【0126】
図5の左側では、部分反射ミラーアレイ20を用いて、光の再配向が実現される。すなわち、部分反射ミラーは、ライトガイドの断面に設けられる。したがって、光の一部は、所望の方向(例えば、軸方向d1)に反射される。光の他の一部は、ミラーを透過し、ミラーアレイの次のミラーで反射される。したがって、再配向された光は、互いに実質的に平行な光線を有し、この結果、光強度が均一に分散される。
【0127】
図5の右側では、マイクロミラーアレイ21を用いて、光の再配向が実現される。すなわち、ミラーは、ライトガイドの断面に部分的に張り出すように設けられる。したがって、マイクロミラーの1つに衝突した光のみが反射される。上記と同様に、再配向された光は、互いに実質的に平行な光線と、均等に分散された光強度とを有する。
【0128】
また、上記の両方を組み合わせて、光の方向を変えるようにしてもよい。さらに、上述した光の再配向は、分配器を用いて、外部光源18からカップリング部材2に入力される光を再配向するために実施されてもよい。さらに、上述の光の再配向は、内視鏡1の他の位置における光の再配向のために実施されてもよい。例えば、シャフト4の先端部5において、撮像される対象物に向けて光を照射するように、上述した光の再配向を実施してもよい。
【0129】
図6は、本発明の別の実施形態による内視鏡1の概略図である。本実施形態は、基本的に
図1に描画された実施形態に対応しているが、本実施形態では、内視鏡が洗浄装置19と洗浄液供給装置27とを含む点で異なる。洗浄装置19は、シャフト4の先端部5を拭き取るように構成された弾性要素22を備える。したがって、シャフト4内への画像情報の乱れのない進入を保証するように、シャフトの先端から不要物を除去することができる。弾性要素22は、振動によって駆動されることができる。振動は、シャフト4の先端部5に設けられたプリズムに誘導される。一実施形態では、洗浄装置19は、(例えば、プリズムを介して)弾性要素19に振動を加えるように構成された、ピエゾ電気素子を含む。洗浄装置19の洗浄作用を支援又は強制するために、先端部5に液体を供給するように構成された、液体供給装置27が設けられる。液体供給装置27は、液体をシャフトの先端部5に向けて噴出するように構成される。液体供給装置27は、その下流端にノズルを備え、液体を先端部5に正確に導く。
【0130】
さらに、本実施形態では、内視鏡1の焦点を調整する調整手段28を備えている。調整手段28は、フォーカスリングを介して、ユーザーが手動で操作してもよく、コマンドを介して、コンピュータが自動的に操作してもよい。コマンドは、制御ユニット(図面には描画されていない)によって発出され、内視鏡によって撮像された画像内の予め選択された点又は被写体に焦点を合わせるように構成される。
【0131】
本実施形態の特徴のいずれかは、
図1に示す実施形態のみで実施されてもよい。
【0132】
図7は、本発明の他の実施形態による内視鏡システム100を示す概略図である。内視鏡システム100は、先のいずれかの実施形態による内視鏡1と、トロカール23とを含む。トロカールは、カニューレ24を有する。カニューレ24は、遠位開口26を有する。内視鏡1は、そのシャフト4を介して、トロカール23に挿入されてもよい。このとき、シャフト4とカニューレ24とは、同軸上に位置する。内視鏡1とトロカール23とは、軸方向d1に互いに対して移動することができる。トロカール23は、カニューレ24の先端開口26に設けられた洗浄装置19を有する。シャフト4の先端部5が、トロカールの遠位開口26を通過する場合には、洗浄装置19を操作して、シャフト4の先端部5を洗浄することができる。さらに、トロカールは、トロカール23の遠位開口26に液体を供給するように構成された、洗浄液供給装置27を備える。洗浄液は、先端部5が遠位開口26を通過するたびに、シャフトの先端部5に噴出することができる。洗浄装置19及び/又は洗浄液供給装置27は、上記の実施形態と同様であってよい。
【符号の説明】
【0133】
1 内視鏡
2 カップリング部材
3 シャフト部材
4 シャフト
5 先端部
6 取付端部
7 受信部
8 画像情報伝達路
9 送信部
10 ポート
11 隙間
12 光源
13 電源
14 ブラシ接点
15 取付ベース
16 ライトガイド
17 イメージガイド
18 外部光源
19 洗浄装置
20 反射ミラーアレイ
21 マイクロミラーアレイ
22 弾性要素
23 トロカール
24 カニューレ
26 遠位開口
27 洗浄液供給装置
28 調整手段
100 内視鏡システム
C シャフト軸
d1 軸方向
d2 半径方向
【国際調査報告】