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特表2024-506536耐熱バルーンを備える内視鏡ガイドアブレーションカテーテル
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  • 特表-耐熱バルーンを備える内視鏡ガイドアブレーションカテーテル 図1
  • 特表-耐熱バルーンを備える内視鏡ガイドアブレーションカテーテル 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】耐熱バルーンを備える内視鏡ガイドアブレーションカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/24 20060101AFI20240206BHJP
   A61B 1/01 20060101ALI20240206BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20240206BHJP
【FI】
A61B18/24
A61B1/01 511
A61B1/01 513
A61B1/00 621
A61M25/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545881
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 US2022014864
(87)【国際公開番号】W WO2022169813
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/146,037
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516317447
【氏名又は名称】カーディオフォーカス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】メルスキー,ゲラルド
(72)【発明者】
【氏名】バクスター,リンカーン
(72)【発明者】
【氏名】コロン,オマー
【テーマコード(参考)】
4C026
4C161
4C267
【Fターム(参考)】
4C026AA02
4C026AA03
4C026AA04
4C026FF17
4C026FF22
4C026FF34
4C026FF39
4C026FF53
4C161CC06
4C161DD04
4C161GG24
4C161GG25
4C161HH56
4C161JJ01
4C161JJ03
4C267AA05
4C267AA09
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB06
4C267BB09
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB19
4C267BB20
4C267BB26
4C267BB29
4C267BB39
4C267BB40
4C267BB47
4C267BB48
4C267CC19
4C267GG02
4C267GG03
4C267GG05
4C267HH01
4C267HH08
4C267HH11
4C267HH17
(57)【要約】
遠位端部を有するシャフトと、シャフトに接続されたバルーンとを備えるアブレーションカテーテル。バルーンは、内面と、反対側の外面とを有する。内面は、近位バルーン端部を含む近位領域と、主要中央領域と、遠位バルーン端部を含む遠位領域とを有する。アブレーションカテーテルはまた、バルーンの内部に配置され、バルーンの内部を軸方向と回転方向の両方に移動するように構成されているエネルギーエミッタを備える。アブレーションカテーテルは、バルーンの内面の少なくとも主要中央領域内に、バルーンの内面に沿って配置された耐熱コーティングを備える。耐熱コーティングは、シリコーンゴム、ポリイソプレン、ポリウレタンからなる群から選択される材料で形成される。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトに接続されたバルーンと、
前記バルーンの内面に沿って配置され、前記内面に沿って内側コーティングを形成するシリコーンゴム材料と
を備えるアブレーションカテーテル。
【請求項2】
前記バルーンがポリウレタンバルーンを構成する、請求項1に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項3】
前記シリコーンゴム材料で形成された前記内側コーティングが、前記バルーンの前記内面全体を覆う、請求項1に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項4】
前記シリコーンゴム材料で形成された前記内側コーティングが、前記バルーンの前記内面全体よりも少ない領域を覆うコーティングを構成する、請求項1に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項5】
前記内側コーティングが、前記バルーンの対向する2つの端部部分に存在しない、請求項4に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項6】
前記内側コーティングが、エネルギーエミッタから放出されたエネルギーを受ける前記内面の領域に沿って位置する、請求項4に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項7】
前記エネルギーがレーザーエネルギーを構成し、前記エネルギーエミッタが前記バルーン内を軸方向及び回転方向に移動可能である、請求項6に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項8】
前記内側コーティングが、.0005”(インチ)~.004”(インチ)の間の厚さを有する、請求項1に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項9】
前記内側コーティングが、.001”(インチ)~.002”(インチ)の間の厚さを有する、請求項1に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項10】
前記内側コーティングが、25ショアA~80ショアAの間のコーティング材料硬度を有する、請求項1に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項11】
前記内側コーティングが、50ショアAのコーティング材料硬度を有する、請求項1に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項12】
遠位端部を有するシャフトと、
前記シャフトに接続されたバルーンであって、内面と、反対側の外面とを有し、前記内面が、近位バルーン端部を含む近位領域と、主要中央領域と、遠位バルーン端部を含む遠位領域とを含む、前記バルーンと、
前記バルーンの内部に配置され、前記バルーンの前記内部を軸方向と回転方向の両方に移動するように構成されているエネルギーエミッタと、
前記バルーンの前記内面の少なくとも前記主要中央領域内に、前記バルーンの前記内面に沿って配置された耐熱コーティングであって、シリコーンゴム、ポリイソプレン、ポリウレタンからなる群から選択される材料で形成されている、前記耐熱コーティングと
を備えるアブレーションカテーテル。
【請求項13】
前記バルーン内に配置された内視鏡をさらに備え、前記エネルギーエミッタが前記内視鏡の前方(遠位)に位置する、請求項12に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項14】
前記主要中央領域が前記内視鏡の完全に前方に位置し、前記耐熱コーティングが前記内視鏡の完全に前方(遠位)に位置する、請求項13に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項15】
前記耐熱コーティングが、前記内面の表面積の少なくとも75%を覆う、請求項12に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項16】
前記耐熱コーティングが、前記内面の表面積の75%~90%を覆う、請求項12に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項17】
前記耐熱コーティングが、.0005”(インチ)~.004”(インチ)の間の厚さを有する、請求項12に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項18】
前記耐熱コーティングが、.001”(インチ)~.002”(インチ)の間の厚さを有する、請求項12に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項19】
前記耐熱コーティングが、25ショアA~80ショアAの間のコーティング材料硬度を有する、請求項12に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項20】
前記耐熱コーティングが、50ショアAのコーティング材料硬度を有する、請求項12に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項21】
前記耐熱コーティングが、前記内面に沿って円周方向に延びる連続的なバンドを構成する、請求項12に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項22】
前記バルーンが、80ショアAデュロメータのポリウレタンバルーンを構成し、前記耐熱コーティングが、100%ひずみにおける応力が65psi以下のシリコーンゴムの層を構成する、請求項12に記載のアブレーションカテーテル。
【請求項23】
アブレーションカテーテルのバルーンの内面を処理して、前記バルーンの熱抵抗率を高める方法であって、
前記バルーン自体が型として機能するように前記バルーンを位置付けるステップと、
プレポリマーと、架橋触媒と、任意選択で揮発性溶剤との混合物であって、前記揮発性溶剤が前記混合物の粘度を調整するために使用される、前記混合物を調製するステップと、
前記混合物を前記バルーンの内部に導入するステップと、
前記バルーンを、2つ以上の軸を中心として同時に回転または振動させて、前記混合物を前記バルーンの前記内部に分布させるステップと、
前記混合物を硬化させて、前記バルーンの前記内面の少なくとも一部分を覆う固体ポリマーコーティングであって、前記バルーンを形成する材料と比較して高温に対する耐性がより高い、前記固体ポリマーコーティングにするステップと
を含む、前記方法。
【請求項24】
前記バルーンに、外側から、または加熱空気流を前記バルーンの内部に導入することによって熱を加えて、前記混合物の前記固体ポリマーコーティングへの硬化を促進するステップ
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記バルーンの前記内面をプライマーでコーティングするステップ
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記バルーンの材料が熱可塑性ポリウレタン材料を含み、前記固体ポリマーコーティングがシリコーンゴム材料を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記硬化前の前記混合物の粘度が、1センチポアズ~40センチポアズの間である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記硬化前の前記混合物の前記粘度が、10~20センチポアズの間である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも一部分が、前記バルーンの主要中央領域を含み、前記バルーンの隣接する近位領域が前記固体ポリマーコーティングを含まず、前記バルーンの隣接する遠位領域が前記固体ポリマーコーティングを含まない、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記主要中央領域が、放出されたエネルギーが通過する前記バルーンの領域を含む、請求項29に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月5日出願の米国仮特許出願第63/146,037号に対する優先権及び利益を主張し、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、薄膜を介したエネルギーの送達を伴う処置を実施する目的で人体に導入されるカテーテルに関する。より具体的には、本開示は、心房細動と呼ばれる医学的状態を処置する目的で、内視鏡による直接的な可視化の下で左心房の領域にレーザーエネルギーを送達する、心臓の左心房に導入されるバルーンカテーテルに関する。さらに別の態様では、本開示は、バルーンの内面に沿って形成された耐熱コーティングによって定義された耐熱バルーンを備える内視鏡ガイドアブレーションカテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
最も一般的には、処置領域は、肺静脈が左心房に接続する付近の領域である。そのような手技は肺静脈隔離と呼ばれる。効果的な肺静脈隔離を達成するためには、レーザーエネルギーを各肺静脈の入口周辺の組織の全周に印加する必要がある。レーザーエネルギー印加の目的は、筋細胞を死滅させ、肺静脈と心房部との間の電気信号の伝導を遮断する瘢痕組織を生成することである。
【0004】
肺静脈隔離のための内視鏡ガイドレーザーバルーンアブレーションに利用可能な現行の装置は、遠位端部にバルーン、及び近位端部にハンドルを備えたマルチルーメンカテーテルからなる。1つのルーメンにおける光ファイバは、カテーテルを介してバルーンにレーザーエネルギーを送達し、次いで、バルーンにおいて、レーザーエネルギーは、バルーン表面に向かって放射状に放射される。レーザーファイバに加えて、カテーテルの第2のルーメンを介して挿入される光ファイバ内視鏡が存在する。内視鏡は、カテーテルの操作者がバルーン表面を可視化し、それによって、レーザーエネルギーで処置することが所望されている心房組織と接触するバルーン表面の部分にレーザーエネルギーを向けることを可能にする。そのようなシステムは、図1に示されており、また、両方ともその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれるMelsky et alの米国特許第9421066B2号及びMelsky et alの米国特許第9033961B2号に記載されている。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態によれば、アブレーションカテーテルが提供され、アブレーションカテーテルは、遠位端部を有するシャフトと、シャフトに接続されたバルーンとを備える。バルーンは、内面と、反対側の外面とを有する。内面は、近位バルーン端部を含む近位領域と、主要中央領域と、遠位バルーン端部を含む遠位領域とを有する。アブレーションカテーテルはまた、バルーンの内部に配置され、バルーンの内部を軸方向と回転方向の両方に移動するように構成されているエネルギーエミッタを備える。アブレーションカテーテルは、バルーンの内面の少なくとも主要中央領域内に、バルーンの内面に沿って配置された耐熱コーティングを備える。耐熱コーティングは、シリコーンゴム、ポリイソプレン、ポリウレタンからなる群から選択され得る材料で形成される。
【0006】
内側コーティングを追加する利点は、内側コーティング(例えば、シリコーンゴム)が、現時点でバルーン自体に好ましい材料である熱可塑性ポリウレタンよりも高温に対する耐性がはるかに高い材料であるという点である。結果として、バルーンの機構(機能)部分は、放出されたアブレーションエネルギーによって発生した熱から保護される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】従来技術によるアブレーションカテーテルの側面図である。
図2】バルーンの内面の少なくとも一部分を覆う耐熱コーティングを備えるアブレーションカテーテルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、Melsky et alの米国特許第9421066B2号及びMelsky et alの米国特許第9033961B2号に記載されているバルーンに対する重要な改良を記載する。
【0009】
本明細書に開示される改良は、シリコーンゴムコーティングまたは別の好適な耐熱材料のコーティングを、Melsky et alの米国特許第9421066B2号及びMelsky et alの米国特許第9033961B2号に記載されているバルーンまたは他の類似の装置の内部に追加することである。換言すれば、本明細書に記載されるコーティングは、他のタイプのアブレーションバルーンに含めてもよく、Melskyに記載されているバルーンに限定されない。
【0010】
図1は、上で同定したMelsky特許、及びその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる米国特許第10,926,067号に記載されているものと類似または同一の、一例としてのアブレーションカテーテル(アブレーションシステム)100を示す。
【0011】
概して、アブレーションカテーテル100は、組織標的部位にアブレーションの形成を引き起こすのに十分なアブレーションエネルギーを放出するタイプのものである。
【0012】
アブレーションカテーテル100は、好ましくは、照準光源(図示せず)と照明光源(図示せず)とをさらに備える。アブレーションカテーテル100はまた、接続された機器、すなわちディスプレイ(図示せず)及びコントローラ(図示せず)から入力及び出力データを受け取り、そのデータを視覚情報に処理するように設計されているプロセッサを備える。アブレーションカテーテル100は、閉じた遠位端部112を有する細長いシャフト110を備える。中空シャフト110内には、典型的には、流体輸送を提供する複数のルーメンが存在する。膨張可能なバルーン120(例えば、コンプライアントバルーン)は、シャフト110の遠位端部112に近い部分を取り囲み、バルーン120の膨張及び収縮のために膨張流体の送達及びバルーン120からの除去を可能にする膨張ルーメンと流体連通している。
【0013】
アブレーションカテーテル100はまた、ライブ画像と記録用静止画像の両方を取り込む機能を有する内視鏡130を備える。照明光は、手術用の光を処置部位に提供するために使用することができる。照明光は、ユーザが手術部位に存在する種々の組織を識別することを可能にする周波数である。照準光源は、エネルギーがアブレーションカテーテル100によって組織に送達される位置を可視化するために使用される。照準光は、画像取り込み装置により記録可能かつディスプレイで可視となる波長であることが企図される。
【0014】
一実施形態では、アブレーションカテーテル100は、中央ルーメンチューブを有する細長い本体を備え、コンプライアントバルーン120は、中央チューブにおける1つまたは複数のポートを介して膨張可能である。中央チューブはまた、上で同定した特許に詳細に記載されているように、細長本体に形成されたルーメン内において軸方向移動と回転の両方が可能なエネルギーエミッタ140を収容することができる。図示のように、エネルギーエミッタ140は、典型的には、放出されたエネルギー(例えば、レーザーエネルギー)が中央チューブ(及びバルーン120)の側面から外側に放射状に放出されるという点で、側方発射エネルギーエミッタである。図示されるように、放出されたエネルギーは、バルーン120を通過して標的組織に達する。図面では、放出されたエネルギーを141で示す。
【0015】
内視鏡130は、エネルギーエミッタ140の近位に位置し、バルーン及び放出されたエネルギーの位置の画像ならびに照準ビーム照明などを取り込むために前向きである。
【0016】
バルーン内の内側コーティング
全体が200で示される内側コーティングがバルーン120の内面に追加されている例示的な一実施形態を図2に概略的に示す。本明細書に記載されるように、一実施形態では、内側コーティング200はシリコーンゴムで形成される。内側コーティング200を追加する利点は、内側コーティング(例えば、シリコーンゴム)が、現時点でバルーン120に好ましい材料である熱可塑性ポリウレタンよりも高温に対する耐性がはるかに高い材料であるという点である。Melsky et alの米国特許第9421066B2号及びMelsky et alの米国特許第9033961B2号に記載されている装置を使用する場合、心房組織は、レーザーエネルギーによって、筋細胞を死滅させ、心房組織を最終的に非導電性瘢痕組織として治癒させるほど十分に高い温度まで加熱される。これを達成するための閾値温度は、一般に50℃であると考えられている。しかしながら、状況によっては、バルーン材料は、バルーンに使用される好ましい熱可塑性ポリウレタン材料のビカット軟化点(82℃)に近いかまたはそれを超える温度まで局所的に加熱されてもよい。そのような状況の1つは、組織と接触している血流停滞領域にレーザーエネルギーが送達される場合である。血液は、組織アブレーションに使用される980nmのレーザー光を非常に容易に吸収し、100℃以上の局部温度に達し得る。この温度は、バルーンの膨張の結果としてバルーンにかかる機械的応力と組み合わせた場合、バルーン材料の機械的破損を引き起こすほど十分に高いが、そのような温度上昇はバルーン120の非常に狭い領域でのみ起こる。したがって、バルーン材料のいかなる機械的破損も、単にバルーン材料における微細なピンホールの生成として現れる。そのようなピンホールの形成は、バルーンを満たす液体の非常に少量の漏出をもたらすが、概してわずかな影響に過ぎない。しかしながら、心房内でバルーンの位置を変えるためにバルーンを収縮させる必要がある場合は、収縮中にバルーンの内部に生じる陰圧により、時折、バルーン内に血液が引き込まれることがある。そのような場合には、カテーテルを交換する必要がある。これは明らかに望ましくなく、かつコストがかかる。
【0017】
図2に示すように、内側コーティング200は、バルーン120の少なくとも標的内面(機構領域)を覆う。例えば、内側コーティング200は、一実施形態では、バルーン120の内面全体を覆うことはない。例えば、バルーン200は、近位領域210と、主要中央領域220と、遠位領域230とを含むと考えることができる。主要中央領域220は、近位領域210と遠位領域230との間に位置する。この主要中央領域220は、エネルギーエミッタ140からのエネルギーが放射されてバルーン120を通過する領域を画定する。バルーンの保護は、エネルギーが活発に伝達される領域にのみ必要とされるため、内側コーティング200は、この領域220にのみ存在する必要がある。したがって、近位領域210及び遠位領域230にはエネルギーが放出されないため、内側コーティング200は、これらの両方の領域には存在しなくてもよい。
【0018】
しかしながら、別の実施形態では、内側コーティング200は、バルーン120の内面の実質的に全体(すなわち、バルーンの内表面積の少なくとも90%)に塗布される。
【0019】
一実施形態では、バルーン120の内面の表面積の50%~90%がコーティング200でコーティングされる。別の実施形態では、バルーン120の内面の表面積の75%~90%がコーティング200でコーティングされる。
【0020】
バルーンが使用される熱環境に関する上記の記載から、より熱に強い材料が望ましいことは明らかである。しかしながら、耐熱性は、バルーン材料の唯一の要件ではない。バルーン材料は、さらに、980nmのレーザー光及び可視光に対して透過性である必要がある。可視光に対する透過性は、Melsky et alの米国特許第9421066B2号及びMelsky et alの米国特許第9033961B2号に記載されているように、内視鏡ガイド下でバルーンを位置付けるために必要である。また、バルーンは、左心房の解剖学的構造、特に心房細動を処置するためにアブレーションが通例実施される領域である肺静脈入口の解剖学的構造に適合するように、コンプライアントバルーンである必要がある。バルーンはまた、潤滑性のものであるか、または、その全体が参照により本明細書に組み込まれるBaxter et alの米国特許第8267932B2号に記載されているものなどのガイドカテーテルもしくは偏向可能シースを利用して、左心房に容易に導入すること及び左心房から容易に除去することができるほど、少なくとも十分に潤滑性である必要がある。
【0021】
内側がシリコーンゴム(コーティング200)でコーティングされたポリウレタンバルーンは、上記の要件をすべて満たす。シリコーンゴムは光学透過性であり、980nmのレーザー光に対しても透過性である。シリコーンゴムは耐熱性である。シリコーンゴムは表面摩擦が高いため、外側がシリコーンゴムでコーティングされたバルーンは、バルーンは潤滑性のものであるか、またはガイドカテーテルもしくは偏向可能シースを利用して、左心房に容易に導入すること及び左心房から容易に除去することができるほど少なくとも十分に潤滑性である、という要件を満たすことができないおそれがある。しかしながら、バルーンの内側をシリコーンゴムまたは好適な材料でコーティングすると、バルーン材料のポリウレタン外部はガイドカテーテルまたはシースのルーメンと接触し、高摩擦のシリコーンゴムでコーティングされた内部とは接触しないため、潤滑性要件が満たされる。
【0022】
ある程度のコンプライアンス性は望ましいが、非常に高度のコンプライアンス性は不都合である。あまりにも高いコンプライアンス性が不都合となる理由は2つある。第1は、コンプライアンス性があまりにも高い材料から作製されたバルーンは、常に球形に膨張する傾向があるというものである。バルーンアブレーションカテーテルの最適な位置決めは、Baxter and Melskyの米国意匠特許第851245S1号に示されているようにバルーンが全体的にテーパー形状である場合に最も容易に達成されることが判明している。あまりにも高いコンプライアンス性が不都合となる第2の理由は、コンプライアンス性が非常に高いバルーンは、バルーンが取り付けられているカテーテルのシャフトに加えられる力によってあまりにも容易に変形し得るというものである。内視鏡ガイドアブレーションカテーテルは、バルーンの中心軸を通過するカテーテルのシャフトがバルーン内で相対的に中心に留まっている場合に最良に機能する。シャフトが中心にある場合、バルーンと静脈との接触の最適な内視鏡視野が得られる。シャフトが中心から大きく外れる場合、中心シャフトに取り付けられている内視鏡は、最終的に、静脈とバルーンとの接触の一部のみが可視化される位置になる可能性がある。極端な場合では、シャフト内視鏡が押されて肺静脈壁と接触し、内視鏡からの視野を完全に覆い隠すことがある。
【0023】
内視鏡ガイドバルーンアブレーションカテーテルが最適に機能するには特定の程度のコンプライアンス性が重要であるため、熱ピンホールに対するバルーンの耐性を高める目的でのバルーンに対するいかなる改変も、許容される機械的特性を実証しているバルーンの機械的特性を変化させないことが望ましい。本発明の場合、80ショアAデュロメータのポリウレタンは、許容される機械的特性を実証している。80ショアAデュロメータのポリウレタンバルーンの内面を、100%ひずみにおける応力が65PSI以下のシリコーンゴムの層でコーティングすることは、シリコーンコーティングを有しないポリウレタンバルーンと本質的に異ならない機械的特性を有する最終バルーン形状をもたらし得る。これは、一定の応力対ひずみ特性を有するシリコーンがウレタンよりも有意に弾性であるためである。したがって、シリコーンコーティングは、ピンホールに対するバルーンの耐性を改善する一方で、コーティングされたウレタンバルーンのコンプライアンス性を、コーティングされていないバルーンのコンプライアンス性と著しく異なるものにすることはない。
【実施例
【0024】
一実施形態では、コーティングは、シリコーンゴム、ポリイソプレン、ポリウレタンからなる群から選択される材料で形成される。特に、好ましい材料群の1つは、熱硬化性材料、または摂氏150度を超えるビカット軟化点を有する材料のいずれかである。シリコーンゴムは、その透明性、高温耐性、及び既知の生体適合性のために、特に関心が高い。
【0025】
一実施形態では、コーティングは、.0005”(インチ)~.004”(インチ)の間の厚さを有する。例えば、コーティングは、.001”(インチ)~.002”(インチ)の間の厚さを有し得る。
【0026】
一実施形態では、コーティングは、25ショアA~80ショアAの間のコーティング材料硬度を有する。例えば、コーティングは、50ショアAのコーティング材料硬度を有し得る。
【0027】
一実施形態では、硬化前のコーティング材料の粘度は、1センチポアズ~40センチポアズの間であり、より具体的には10~20センチポアズの間であり得る。
【0028】
コーティングされたバルーンを製造する方法
コーティングされたバルーンの製造方法は当業者にはよく知られている。薄いポリマー(シリコーン)コーティングは、浸漬、スプレー、刷毛塗り、または回転成形によって塗布することができる。
【0029】
バルーンの内側表面をコーティングすることが好ましいため、回転成形タイプの塗布方法が好ましい方法である。通常の回転成形では、材料を液体状態のまま金型キャビティに導入し、金型を、2つ以上の回転軸を中心として同時に回転させて、液体状態の材料を金型の表面全体に均一に分布させ、材料が固化する間、材料の均一な分布を維持する。固化したら、回転を停止し、金型をパーティングラインに沿って分離して、金型の形状を模倣している材料のシェルとして存在する成形材料を取り出す。
【0030】
内側がシリコーンゴムでコーティングされたポリウレタンバルーンを製造するために、コーティングを形成する例示的な方法の1つでは、ポリウレタンバルーン自体が型として機能する。プレポリマーと、架橋触媒と、任意選択で、混合物の粘度を調整するために使用される揮発性溶剤との混合物をバルーンに導入する。次いで、バルーンを、2つ以上の軸を中心として同時に回転または代替的に振動させて、混合物を分布させる。回転及び/または振動は、混合物が硬化して固体のシリコーンゴム状態になるまで継続する。あるいは、バルーンに、外側から、または加熱空気流をバルーン内部に導入することによって熱を加えて、材料のシリコーンゴムへの硬化を促進してもよい。混合物が完全に硬化したら、コーティングされたバルーンが完成する。
【0031】
一実施形態では、硬化ステップ前のコーティング材料の粘度は、1センチポアズ~40センチポアズの間である。例えば、硬化前のコーティング材料の粘度は、10~20センチポアズの間である。
【0032】
バルーンの内面をプライマーでコーティングすることによって、シリコーンゴムのポリウレタンバルーンへの接着を増強することが望ましい場合がある。そのような接着増強プライマーは、シリコーンゴムコーティングの技術分野の当業者に周知である。プライマーは、シリコーンゴムプレポリマー混合物の最終塗布と同様の方法で塗布することができる。プライマーの場合、硬化は行われないが、揮発性溶剤を蒸発させて、ウレタンバルーンの内面にプライマーを残す必要がある。一部のプライマーの化学作用では、プライマーが最初に加水分解される場合に、プライマーは最も効果的となる。溶剤の蒸発は、シリコーンゴムの硬化を増強するために使用されるものと同様の加熱空気流によって促進される。加水分解は、加熱空気流と湿潤空気流の両方をバルーンに導入することによって促進される。
【0033】
図2に示すように、コーティングは、バルーンの内部に位置する可動エネルギーエミッタ(例えば、光ファイバ)によって放出されたエネルギーを受けるバルーンの内面(機構領域)に塗布される。コーティングは、バルーンの内面の全体または実質的に全体を覆っても、前述したように、バルーンの端部付近には存在しないなど、より少ない領域を覆ってもよい。
【0034】
上述のように、本明細書に記載した特許及び米国特許出願公開のそれぞれは、その全体が参照により明示的に組み込まれる。
【0035】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図していない。本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明らかに示さない限り、複数形も含むことを意図する。用語「含む(comprises)」及び/または「含んでいる(comprising)」は、本明細書で使用する場合、記載される特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/またはこれらの群の存在または追加を排除しないことがさらに理解されよう。
【0036】
また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明を目的としており、限定的なものとみなされるべきではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」または「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」及びこれらの変形の使用は、その後に列挙される項目及びそれらの均等物ならびに追加の項目を包含することを意味する。
【0037】
上記の主題は、例示としてのみ提供されており、限定的なものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載されている主題に対する様々な改変及び変更は、例示及び記載されている実施形態及び適用の例に従うことなく、また以下の特許請求の範囲に記載される本発明の真の趣旨及び範囲を逸脱することなく、行うことができる。

図1
図2
【国際調査報告】