(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】分子接着剤スクリーニングアッセイおよびその実施方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240206BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20240206BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240206BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240206BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALN20240206BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
C12N15/11 Z
C12Q1/6851 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546005
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 US2022013770
(87)【国際公開番号】W WO2022164830
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504058215
【氏名又は名称】ユーロフィンス ディスカヴァーエックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】クセニャ コーエン カットスネルソン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ケリー トレイバー
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA40
4B063QA01
4B063QQ79
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR54
4B063QS25
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、対象の標的タンパク質と、複合体を形成することが従来知られていない別のリガンドタンパク質とに結合する試験化合物をスクリーニングすることを含む化合物スクリーニング方法であって、(i)試験化合物の存在下および非存在下で、固定化されたリガンドタンパク質を、核酸タグを含む対象の標的タンパク質とインキュベートすることであって、対象の標的タンパク質と核酸タグとが互いに異なる、ことと;(ii)結合していない対象の標的タンパク質を除去することと;(iii)固定化されたリガンドタンパク質、試験化合物、および対象の標的タンパク質間の複合体の有無を検出することであって、試験化合物の非存在下と比較して、試験化合物の存在下で固定化されたリガンドタンパク質に結合した対象の標的タンパク質の量の増加は、試験化合物が固定化されたリガンドタンパク質と対象の標的タンパク質に結合し、固定化されたリガンドタンパク質および対象の標的タンパク質間のタンパク質-タンパク質複合体の形成を可能にすることを示す、こととを含む、化合物スクリーニング方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験化合物をスクリーニングする方法であって、
(i)試験化合物の存在下および非存在下で、固定化されたリガンドタンパク質を、タグを含む対象の標的タンパク質とインキュベートすることと、
(ii)結合していない対象の標的タンパク質を除去することと、
(iii)前記固定化されたリガンドタンパク質、試験化合物および対象の標的タンパク質間の複合体の有無を検出することであって、前記試験化合物の非存在下と比較して、前記試験化合物の存在下で前記固定化されたリガンドタンパク質に結合した対象の標的タンパク質の量の増加は、前記試験化合物が前記固定化されたリガンドタンパク質と対象の標的タンパク質に結合し、前記固定化されたリガンドタンパク質および対象の標的タンパク質間のタンパク質-タンパク質複合体の形成を可能にすることを示す、こととを含む方法。
【請求項2】
前記対象の標的タンパク質とリガンドタンパク質が結合パートナーであることが従来知られていない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タグが核酸タグである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸タグがDNA配列タグである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記リガンドタンパク質がリガーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記リガーゼタンパク質がE3ユビキチンリガーゼである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記対象のタンパク質と前記タグが同一でない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記試験化合物が分子接着剤化合物分解剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分子接着剤化合物分解剤が、対象の標的タンパク質およびリガンドタンパク質間の複合体を形成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分子接着剤化合物分解剤が、分解のために前記対象の標的タンパク質にタグ付けする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記リガンドタンパク質が固体支持ビーズに固定化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記対象の標的タンパク質が、哺乳動物細胞において個別に過剰発現し、前記試験化合物と固定化されたリガンドタンパク質の両方に同時にさらされる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記対象の標的タンパク質が個別にファージコート上にディスプレイされ、前記試験化合物と固定化されたリガンドタンパク質の両方に同時にさらされる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
従来知られていない、対象のタンパク質のための分子接着剤化合物分解剤を同定する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記タンパク質-タンパク質複合体が分解の標的とされる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記タンパク質-タンパク質複合体が定量的PCRによって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記試験化合物が低分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記試験化合物がタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
対象の標的タンパク質とリガンドタンパク質に結合する試験化合物をスクリーニングする方法であって、前記対象の標的タンパク質は、前記リガンドタンパク質に結合することが従来知られておらず、
(i)試験化合物の存在下および非存在下で、固定化されたリガンドタンパク質を、検出可能なタグを含む対象の標的タンパク質とインキュベートすることであって、前記対象のタンパク質と検出可能なタグは互いに異なる、ことと;
(ii)結合していない対象の標的タンパク質を除去することと;
(iii)前記固定化されたタンパク質、試験化合物および対象の標的タンパク質間の複合体の有無を検出することであって、試験化合物の非存在下と比較して、試験化合物の存在下で固定化されたタンパク質に結合した対象の標的タンパク質の量の増加は、前記試験化合物が、前記固定化されたタンパク質および対象の標的タンパク質間のタンパク質-タンパク質複合体の形成を可能にすることを示す、こととを含む、方法。
【請求項20】
前記検出可能なタグが核酸タグである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記核酸タグがDNA配列タグである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記リガンドタンパク質がリガーゼである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記リガーゼがE3ユビキチンリガーゼである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記試験化合物が分子接着剤化合物分解剤である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
他では知られていない、対象のタンパク質のための分子接着剤化合物分解物をスクリーニングする、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記リガンドタンパク質が固体支持ビーズ上に固定化されている、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記対象の標的タンパク質が、哺乳動物細胞において個別に過剰発現し、前記試験化合物と固定化されたリガンドタンパク質の両方に同時にさらされる、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記対象の標的タンパク質が個別にファージコート上にディスプレイされ、前記試験化合物と固定化されたリガンドタンパク質の両方に同時にさらされる、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記対象の標的タンパク質が核酸配列でタグ付けされる、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記タンパク質-タンパク質複合体が分解の標的とされる、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記タンパク質-タンパク質複合体の形成が定量的PCRによって検出される、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
前記試験化合物が低分子である、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
前記試験化合物がタンパク質である、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
試験化合物を分子接着剤として同定する方法であって、前記試験化合物は、通常は相互作用しない2つのタンパク質間の相互作用を安定化し、以下の:
(a)融合タンパク質を含む細胞または細胞溶解物を試験化合物と接触させるステップであって、前記融合タンパク質は対象の標的タンパク質と核酸オリゴマータグとを含む、ステップと;
(b)固定化されたリガンドタンパク質の存在下で前記融合タンパク質を前記試験化合物とインキュベートするステップであって、前記リガンドタンパク質は固体支持体上に固定化されている、ステップと;
(c)結合していない融合タンパク質を除去するステップと;
(d)前記融合タンパク質に結合した核酸オリゴマータグを検出することにより、前記固定化されたリガンドタンパク質に結合している融合タンパク質の量を検出するステップとを含み;
前記試験化合物の非存在下で検出された融合タンパク質の量に対する、前記試験化合物の存在下で検出されたステップ(d)の融合タンパク質の量の増加または減少は、前記試験化合物が前記対象の標的タンパク質とリガンドタンパク質間の相互作用を促進することを示す、方法。
【請求項35】
前記試験化合物の非存在下で検出された融合タンパク質の量に対する、前記試験化合物の存在下で検出されたステップ(d)の融合タンパク質の量の増加が、前記試験化合物はタンパク質-タンパク質の相互作用を促進することを示す、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記試験化合物の非存在下で検出された融合タンパク質の量に対する、前記試験化合物の存在下で検出されたステップ(d)のリガンドタンパク質に結合した融合タンパク質の量の減少が、前記試験化合物はタンパク質-タンパク質の相互作用を促進しないことを示す、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記リガンドタンパク質がリガーゼである、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記リガーゼがE3ユビキチンリガーゼである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記対象の標的タンパク質が哺乳動物細胞において個別に過剰発現し、前記試験化合物と固定化されたリガンドタンパク質の両方に同時にさらされる、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記対象の標的タンパク質が個別にファージコート上にディスプレイされ、前記試験化合物と固定化されたリガンドタンパク質の両方に同時にさらされる、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記タンパク質リガンドが固体支持ビーズ上に固定化されている、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記核酸オリゴマーがDNA配列である、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記試験化合物が低分子である、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
前記試験化合物がタンパク質である、請求項34に記載の方法。
【請求項45】
融合タンパク質を含む細胞であって、前記融合タンパク質は対象の標的タンパク質と検出可能なタグとを含む、細胞と;
前記試験化合物と複合体を形成する標的タンパク質と複合体を形成する、固体支持体上に固定化されたリガンドタンパク質と;
前記試験化合物の結合特性を評価することにより、分子接着剤化合物としての試験化合物をスクリーニングするための指示書とを含む、キット。
【請求項46】
対象の標的タンパク質を含む前記融合タンパク質をコードする発現ベクターをさらに含む、請求項45に記載のキット。
【請求項47】
前記対象の標的タンパク質とリガンドタンパク質が結合することが従来知られていない、請求項45に記載のキット。
【請求項48】
前記検出可能なタグが核酸タグである、請求項45に記載のキット。
【請求項49】
前記リガンドタンパク質がリガーゼである、請求項45に記載のキット。
【請求項50】
前記リガンドタンパク質が固体支持ビーズに固定化されている、請求項45に記載のキット。
【請求項51】
複合体の形成が定量的PCRによって検出される、請求項45に記載のキット。
【請求項52】
前記試験化合物が低分子である、請求項45に記載のキット。
【請求項53】
前記試験化合物がタンパク質である、請求項45に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【優先権主張および関連出願との相互参照】
【0001】
本出願は、2021年1月29日に出願された米国仮出願第63/143,255号および2022年1月25日に出願された米国出願第17/584,315号の利益および優先権を主張するものであり、これらの開示は、その中で引用されたすべての参考文献および付録を含め、あらゆる対象のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本明細書で提供される主題は、タンパク質-タンパク質複合体を形成する特性を有する化合物のスクリーニングに関する。より具体的には、本明細書で提供される主題は、場合によっては分解の標的となり得るタンパク質-タンパク質複合体を形成することができる化合物を同定するスクリーニングアッセイに関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質分解は、E3ユビキチンリガーゼのようなユビキチンでタグ付けされたタンパク質が、プロテアソームのような細胞分解機構による分解に導かれる、体内の自然なプロセスである。タンパク質分解のプロセスは、(生物学的理由による)不要なタンパク質を細胞系から除去し、そのようなタンパク質を細胞のゴミ圧縮機としても知られるプロテアソームに送るのに役立つ。
【0004】
標的タンパク質分解、つまりTPDは、小分子を用いて、E3ユビキチンリガーゼを対象のタンパク質(例えば、疾患状態で同定されたタンパク質)にリクルートして、ユビキチン依存性分解を誘導することにより、細胞分解機構をハイジャックする。TPDは、足場となるタンパク質および転写因子など、従来の低分子阻害剤では阻害できない、従来薬剤開発不可能と考えられていた標的(ヒトプロテオームの80%)に対処できるため、薬剤開発において興味深い。最初の分解剤分子の登場から20年たった。
【0005】
しかしながら、分解剤の発見と最適化は、ゆっくりとした経験的プロセスのままである。E3リガーゼ、分解のためにタグ付けされる標的タンパク質および分解剤分子間のタンパク質-タンパク質複合体の形成を定量的にモニターするために、いくつかのアッセイフォーマットが開発されてきた。しかし、利用可能なアッセイにはいずれも一定の限界がある。例えば、いくつかのアッセイはシグナルを生成するために人工蛍光タグを持つ組換えタンパク質を必要とし、高いタンパク質濃度を必要とし、これは細胞内の真の内因性タンパク質レベルを反映せず、真の熱力学的結合親和性も測定していない。さらに、多くのアッセイはハイスループットではない。
【0006】
米国特許第7,897,381号は「Uncoupling of DNA insert propagation and expression of protein for phage display」と題され、本譲受人が所有しているが、改変されたT7ファージゲノムを含むベクターを提供している。
【0007】
米国特許第7,112,435号は「Uncoupling of DNA insert propagation and expression of protein for phage display」と題され、本譲受人が所有しているが、改変されたT7ファージゲノムを含む発現系を提供している。
【0008】
米国特許第7,833,741号は「Uncoupling of DNA insert propagation and expression of protein for phage display」と題され、本譲受人が所有しているが、改変されたT7ファージゲノムを含む異種ポリペプチドの調製を提供している。
【発明の概要】
【0009】
以下は、本発明のいくつかの態様について基本的な理解を提供するための本発明の要約である。この要約は、本発明の重要な/重大な要素を特定することも、本発明の範囲を明確にすることも意図していない。その唯一の目的は、後に提示されるより詳細な説明の前段階として、簡略化された形で本発明のいくつかの概念を提示することである。
【0010】
種々の実施形態において、本明細書で提供されるのは、対象の標的タンパク質および別のリガンドタンパク質と結合する試験化合物をスクリーニングする方法であって、(i)試験化合物の存在下および非存在下で、固定化されたリガンドタンパク質を、核酸タグまたは検出可能なタグを含む対象の標的タンパク質とインキュベートすることであって、前記対象のタンパク質と核酸タグは同一でない、ことと、(ii)結合していない対象のタンパク質を除去することと、(iii)前記固定化されたリガンドタンパク質、試験化合物および対象の標的タンパク質間の複合体の有無を検出することであって、試験化合物の非存在下と比較して、試験化合物の存在下で前記固定化されたリガンドタンパク質に結合した対象の標的タンパク質の量の増加は、前記試験化合物が前記固定化されたリガンドタンパク質と対象の標的タンパク質に結合し、前記固定化されたリガンドタンパク質および対象の標的タンパク質間のタンパク質-タンパク質複合体の形成を促進することを示す、こととを含む方法である。他の種々の実施形態において、対象の標的タンパク質は固定化されたリガンドタンパク質と直接結合しないが、試験化合物とタンパク質-タンパク質複合体を形成し、試験化合物は固定化されたリガンドタンパク質と結合する。
【0011】
多くの実施形態において、本明細書で提供されるのは、対象の標的タンパク質およびリガンドタンパク質と結合する試験化合物をスクリーニングする方法であって、前記対象の標的タンパク質は、前記リガンドタンパク質と結合することが従来知られておらず、(i)試験化合物の存在下および非存在下で、固定化タンパク質を、検出可能なタグを含め、対象の標的タンパク質とインキュベートすることであって、前記対象のタンパク質および検出可能なタグは互いに異なる、ことと、(ii)結合していない対象の標的タンパク質を除去することと、(iii)前記固定化タンパク質、試験化合物および対象の標的タンパク質間の複合体の形成の有無を検出することであって、試験化合物の非存在下と比較して、試験化合物の存在下で前記固定化タンパク質に結合した対象の標的タンパク質の量の増加は、前記試験化合物が前記固定化タンパク質および対象の標的タンパク質間のタンパク質-タンパク質複合体の形成を促進することを示す、こととを含む方法である。
【0012】
種々の実施形態において、本明細書で提供されるのは、試験化合物を分子接着剤として同定する方法であって、前記試験化合物は、通常は相互作用せず、複合体を形成することも従来知られていない2つのタンパク質間の相互作用を安定化し、以下の:(a)融合タンパク質を含む細胞または細胞溶解物を試験化合物と接触させるステップであって、前記融合タンパク質は対象の標的タンパク質と核酸オリゴマータグとを含む、ステップと;(b)固定化されたリガンドタンパク質の存在下で前記融合タンパク質を前記試験化合物とインキュベートするステップであって、前記リガンドタンパク質は固体支持体上に固定化されている、ステップと;(c)結合していない融合タンパク質を除去するステップと;(d)前記融合タンパク質に結合した核酸オリゴマータグを検出することにより、前記固定化されたリガンドタンパク質に結合している融合タンパク質の量を検出するステップとを含み;前記試験化合物の非存在下で検出された融合タンパク質の量に対する、前記試験化合物の存在下で検出されたステップ(d)の融合タンパク質の量の増加または減少は、前記試験化合物が、通常は相互作用しない2つのタンパク質間の相互作用を調節することを示す、方法である。
【0013】
種々の実施形態において、前記試験化合物の非存在下で検出された融合タンパク質の量に対する、前記試験化合物の存在下で検出されたステップ(d)の融合タンパク質の量の増加は、試験化合物がタンパク質-タンパク質の相互作用および複合体の形成を促進することを示す。種々の他の実施形態において、前記試験化合物の非存在下で検出された融合タンパク質の量に対する前記試験化合物の存在下で検出されたステップ(d)のリガンドタンパク質に結合した融合タンパク質の量の減少は、試験化合物がタンパク質-タンパク質の相互作用を促進しないことを示す。
【0014】
多くの実施形態において、固定化されたタンパク質は、リガーゼのようなリガンドタンパク質であり得る。他の多くの実施形態において、固定化されたリガンドタンパク質は、E3ユビキチンリガーゼであり得る。
【0015】
種々の実施形態において、試験化合物は、分子接着剤化合物分解剤であってもよい。種々の他の実施形態において、試験化合物は、標的タンパク質分解キメラ化合物分解剤である。
【0016】
多くの実施形態において、対象の標的タンパク質は、哺乳動物細胞において個々に過剰発現し、試験化合物と固定化されたリガンドタンパク質の両方にさらされる。対象の標的タンパク質は、個別にファージコート上にディスプレイされ、試験化合物と固定化されたリガンドタンパク質の両方にさらされる。
【0017】
種々の実施形態において、本明細書で提供されるのは、試験化合物を分子接着剤として同定する方法であって、前記分子接着剤は、従来結合することが知られていない対象の標的タンパク質およびリガンドタンパク質間のタンパク質-タンパク質複合体を可能にし、(i)核酸配列または核酸タグに融合した対象の標的タンパク質を、試験化合物の存在下および非存在下で、固定化タンパク質リガンドとインキュベートすることと、(ii)結合していない標的タンパク質を除去することと、(iii)定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはqPCRによって、前記固定化されたリガンドタンパク質への対象の標的タンパク質の結合を検出または定量することであって、前記試験化合物の非存在下と比較して、前記試験化合物の存在下で固定化されたリガンドタンパク質に結合した対象の標的タンパク質の量の増加は、前記試験化合物が、前記標的タンパク質およびリガンドタンパク質間のタンパク質-タンパク質複合体の形成を可能にすることを示す、こととを含む、方法である。多くの実施形態において、対象の標的タンパク質は固定化されたリガンドタンパク質に直接結合せず、試験化合物と共にタンパク質-タンパク質複合体を形成し、試験化合物は固定化されたリガンドタンパク質に結合する。
【0018】
種々の実施形態において、本明細書において提供されるのは、分子接着剤化合物分解剤としての試験化合物を同定する方法であって、前記分子接着剤化合物分解剤は、結合することが従来知られていない対象の標的タンパク質およびリガーゼ間のタンパク質-タンパク質複合体を促進し、(i)核酸オリゴマーに融合した対象の標的タンパク質を、前記試験化合物の存在下および非存在下で、固定化リガーゼとインキュベートすることと、(ii)結合していない対象の標的タンパク質を除去することと、(iii)前記対象の標的タンパク質と固定化リガーゼの結合を、定量ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)つまりqPCRによって検出または定量することであって、前記試験化合物の非存在下と比較して、前記試験化合物の存在下で前記固定化リガーゼに結合した対象の標的タンパク質の量の増加は、前記試験化合物が、前記対象の標的タンパク質およびリガーゼ間のタンパク質-タンパク質複合体の形成を可能にし、リガーゼ依存性分解を誘導することを示す、こととを含む、方法である。多くの実施形態において、対象の標的タンパク質は固定化リガーゼと直接結合せず、試験化合物とタンパク質-タンパク質複合体を形成し、試験化合物は固定化リガーゼに結合する。
【0019】
種々の実施形態において、検出可能なタグは、核酸オリゴマーであってよく、オリゴマーは、検出可能なタンパク質に結合しており、オリゴマーは、放射標識、蛍光標識、またはビオチン化されていてよい。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、対象の標的タンパク質に結合した核酸オリゴマーをqPCR増幅することを含む。
【0020】
多くの実施形態において、対象の標的タンパク質上の核酸タグは、化合物のライブラリーから試験化合物を潜在的な分子接着剤として同定するためのスクリーニングアッセイにおいて採用され、ここで、試験化合物は、固定化されたリガンドタンパク質および対象の標的タンパク質間のタンパク質-タンパク質複合体の形成を促進する。従って、開示された方法を用いて、化合物の大規模なライブラリーを固定化されたリガンドタンパク質と対象の標的タンパク質に対してスクリーニングし、固定化されたリガンドタンパク質および結合することが従来知られていない対象の標的タンパク質間のタンパク質-タンパク質複合体を形成することができる化合物をスクリーニングすることができるハイスループットアッセイによって化合物または候補化合物をスクリーニングすることができる。
【0021】
多くの実施形態において、固定化されたリガンドタンパク質はE3リガーゼのようなリガーゼであってもよい。E3リガーゼまたはE3ユビキチンリガーゼは、分解対象の標的タンパク質または対象のタンパク質にタグを付ける。開示されたスクリーニングアッセイは、分子接着剤化合物分解剤として使用され得る試験化合物を同定し、E3リガーゼによってユビキチン化され分解に導かれる、E3リガーゼまたはE3ユビキチンリガーゼおよび標的タンパク質間のタンパク質-タンパク質複合体の形成を可能にする。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明は、タンパク質-タンパク質複合体に対する結合親和性について試験化合物をスクリーニングする方法を開示する。本方法は、試験化合物を1つまたは複数の対象のタンパク質およびリガンドタンパク質とインキュベートすることを含み、リガンドタンパク質は固体表面に固定化され、固定化されたリガンドタンパク質、対象のタンパク質および試験化合物の間の結合特性を評価する。
【0023】
特定の実施形態において、本開示は、複数の対象のタンパク質に対して化合物のライブラリーをスクリーニングする方法を提供する。この方法によって、スクリーニングアッセイは、試験化合物を用いて対象のタンパク質群をスクリーニングする際の助けとなり、一旦試験化合物が対象のタンパク質および固定化されたリガンドタンパク質間のタンパク質-タンパク質複合体を形成したら、対象のタンパク質と試験化合物はさらに個別に評価され得る。
【0024】
多くの実施形態では、対象の標的タンパク質は、哺乳動物細胞において個別に過剰発現しているか、またはファージコート上にディスプレイされ、試験化合物と固定化されたリガンドタンパク質の両方にさらされる。
【0025】
本明細書に提供される方法の種々の実施形態では、固定化されたリガンドタンパク質は固体支持体上に固定化されている。他の種々の実施形態では、リガンドタンパク質はマルチウェルプレート上に固定化されているか、または固定化されたリガンドタンパク質は固体支持体ビーズに付着している。固定化されたリガンドタンパク質は、任意に、DNAタグ、蛍光タグまたは分光タグなどのタグで標識することができるが、これらに限定されない。
【0026】
本アッセイは、従来知られていなかった対象のタンパク質の分子接着剤化合物分解剤を同定するために用いることができる。対象のタンパク質は選択的にプロテアソームによる分解の標的となり得る。したがって、このスクリーニングアッセイは、分解対象となる対象の疾患タンパク質を標的とすることができる薬剤候補の同定に役立つ。
【0027】
さらなる実施形態では、選択したE3リガーゼは固相支持ビーズに固定化され、選択したE3リガーゼはそのN末端にAviタグを付けてクローニングされた後、精製され、デスチオ-ビオチンで標識され、次いで標識されたリガーゼは磁性ストレプトアビジンビーズに固定化される。
【0028】
多くの実施形態では、タンパク質などのリガンドは固相支持ビーズに固定化され、タンパク質はそのN末端にAviタグを付けてクローニングされた後、精製され、デスチオ-ビオチンで標識され、標識されたタンパク質は磁性ストレプトアビジンビーズに固定化される。
【0029】
他の多くの実施形態では、対象の標的タンパク質はDNA配列でタグ付けされ、標的タンパク質はNFkBゲートウェイベクターなどの哺乳動物またはT7ファージゲートウェイベクター内でクローニングされ、T7ファージディスプレイを用いて哺乳動物細胞において発現する。
【0030】
多くの実施形態では、対象の標的タンパク質はDNA配列でタグ付けされて融合標的タンパク質を形成し、該融合標的タンパク質は哺乳動物細胞においてまたはT7ファージディスプレイシステム内で発現する。
【0031】
多くの実施形態において、本開示は、固体支持ビーズ上に選択したリガンドタンパク質を固定化することと、核酸タグを対象の標的タンパク質にタグ付けして融合タンパク質を形成することと、融合標的タンパク質を、試験化合物の存在下および非存在下で固定化されたリガンドタンパク質とインキュベートすることと、結合していない融合タンパク質および試験化合物を洗浄することと、超高感度qPCR読み出しによってDNAタグを検出して、試験化合物の存在下または非存在下で、固体支持ビーズ上のリガンドタンパク質によって捕捉された標的タンパク質の量を測定することとを含む、分子接着剤スクリーニング方法に関する。多くの実施形態において、超高感度qPCR読み出しは、融合タンパク質上のDNAタグの読み出しである。
【0032】
さらなる実施形態において、開示されたアッセイは、標的タンパク質分解キメラの化合物および分子接着剤化合物としての両方の特性について化合物をスクリーニングすることができる。
【0033】
本発明は、また、E3リガーゼなどの固定化されたリガンドタンパク質と試験分子の相互作用を定量化する方法も提供する。また、本明細書に記載の技術を用いて評価された試験分子の医薬開発のための事業方法も含まれる。他の態様には、試験分子、医薬製剤ならびに治療的および/または予防的用途が含まれる。
【0034】
本明細書に記載のアッセイを実施するためのキットも提供される。キットは、典型的には、固定化されたリガンタンパク質と、対象の標的タンパク質および検出可能なタグを含む融合タンパク質と、本明細書に記載の方法を実施するための説明書とを含む。
【0035】
本アッセイおよび方法のこれらおよび他の特徴、態様および利点は、以下の図および説明を参照して、よりよく理解されるであろう。この要約は概念の紹介である。本発明のさらなる態様および利点は、添付の図面を参照しながら進む以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0036】
同種の参照数字が別個の図を通して同一または機能的に類似の要素を指す添付の図面は、以下の詳細な説明と共に、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、特許請求される開示内容を含む概念のさらなる実施形態を例示し、それらの実施形態の種々の利点を説明するのに役立つ。
【0037】
本明細書において開示される方法および系は、必要に応じて図面中の慣習的な記号によって表されるが、図面は、本明細書に説明の利益を享受する当業者には容易に明らかとなる詳細を有する本開示を不明瞭にしないよう、本開示の実施形態を理解するのに関連する特定の詳細を示すのみである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】標的タンパク質分解キメラ技術と開示された分子接着剤アッセイの比較を示す図である。
【
図2】開示されたスクリーニングアッセイの原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示のアッセイおよび方法は、多くの異なる形態で実施可能であるが、本開示は、本開示のアッセイおよび方法の原理の例示として考えられるべきであり、本開示のアッセイおよび方法を図示の実施形態に限定することを意図するものではないことを理解した上で、図面に示され、本明細書においていくつかの具体的な実施形態が詳細に説明される。
【0040】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0041】
「分子接着剤」とは、通常は相互作用しない2つのタンパク質間の相互作用を安定化させる低分子または低分子化合物または分子を指す。
【0042】
「化合物」または「試験化合物」または「試験分子」とは、タンパク質、有機もしくは無機化学分子、合成核酸、天然核酸、合成ポリペプチド、天然ポリペプチド、ペプチド断片、タンパク質、炭水化物、または、天然産物であるかもしくは合成的に調製された他の化合物、医薬品、医薬品候補などの1つまたは複数の化学的実体を指すが、これらに限定されない。非限定的な例としては、ポリケチド、ステロイド、米国薬局方に見られる化合物およびコンビナトリアル化学合成の生成物が挙げられる。医薬品候補には、機能は知られていないが、1つまたは複数の機能が知られている既知の化合物と構造的に類似している分子が含まれる。本明細書で使用される「化合物」または「試験化合物」という用語には、実験的低分子、FDAが承認した低分子治療薬、抗体指向性治療のために開発された抗体および他の治療薬も含まれる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「標的タンパク質」という用語は、分解の標的となり得る任意の対象のタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は細胞プロセスに関与し、酵素活性または触媒活性を有する。
【0044】
よく知られているように、標的タンパク質分解キメラ(PROTAC(登録商標)など)は、タンパク質分解剤としても知られているが、対象のタンパク質と結合するドメインとE3ユビキチンリガーゼと結合するドメインなどの2つのリガンドドメインからなる小分子であり、この2つのリガンドドメインはリンカーを介して連結されて、E3リガーゼと対象のタンパク質を近接させることができる低分子化合物となり、対象のタンパク質を分解するためのタグ付けと、細胞内のプロテアソーム分解系を通してそれを除去することを可能にする。しかしながら、このアプローチには、PROTAC分子の大きさ、リンカーの好ましくない柔軟性およびPROTACが特定の対象のタンパク質の分解を可能にできないという欠点および課題がある。
【0045】
開示されたアッセイと方法は、試験化合物が対象のタンパク質とE3リガーゼの間の接着剤または分子接着剤として作用するようにスクリーニングされる分子接着剤スクリーニングアッセイなどのスクリーニングアッセイを提供することによって、その課題を克服する。さらに、このような分子接着剤スクリーニングアッセイは、同じ原理を用いて、標的タンパク質分解キメラ分子をスクリーニングするために利用することができる。
【0046】
開示されたアッセイは、標的タンパク質分解キメラおよび分子接着剤化合物の両方について化合物をスクリーニングすることができる。多くの実施形態において、天然化合物または非合成化合物を含む化合物ライブラリーを用いると、アッセイは分子接着剤化合物のスクリーニングに役立つ可能性があり、一方、合成化合物ライブラリーを用いると、標的タンパク質分解キメラ分子のスクリーニングに役立つだろう。
【0047】
図1に示すように、現在利用可能な技術では、2つのリガンド結合部位を持つ分子としてPROTAC(103)を使用している。PROTAC(103)は、一方の端で標的タンパク質(102)と結合し、もう一方の端でE3リガーゼ(101)と結合する。E3リガーゼ(101)は、対象のタンパク質(102)を分解(105)の標的とし、タンパク質をプロテオソームへと導く。しかし、この技術にはさまざまな欠点がある。PROTAC分子のサイズが比較的大きいことが、その結合特性に大きな影響を与える可能性がある。さらに、この技術は、対象のタンパク質およびE3リガーゼ間の複合体の形成がないため、すべてのタンパク質に結合することができず、低分子のPROTACでさえ化学合成が非常に困難である。
【0048】
開示されたスクリーニングアッセイは、標的タンパク質とE3リガーゼタンパク質の間で分子接着剤または標的タンパク質分解キメラとして機能し得、E3リガーゼがタンパク質分解のために対象の標的タンパク質をタグ付けできるような化合物のスクリーニングを支援する。標的タンパク質は分解されてもされなくてもよいが;試験化合物を用いて、標的タンパク質およびE3リガーゼなどの選択したタンパク質リガンド間の複合体を形成させ、分解のために対象のタンパク質のタグ付けを支援することができる。
【0049】
図1にさらに示すように、分子接着剤(104)化合物は、標的タンパク質(102)およびE3リガーゼ(101)間の複合体を形成する結合剤として作用することができる。E3リガーゼ(101)と標的タンパク質は複合体を形成し、ここでは、標的タンパク質とE3リガーゼの両方が試験化合物または分子接着剤(104)に結合する。E3リガーゼと標的タンパク質の結合は、分解(105)のためにタンパク質をタグ付けし、タンパク質を分解に導く。
【0050】
開示されたアッセイと方法の多くの利点の中でも、リンカーを使用しないことと、分子接着剤として機能する化合物のサイズが小さいことにより、TPDにおける分解剤により優れた治療標的が提供される。
【0051】
分子接着剤は、標的分子の表面を変化させることにより、分子レベルで構造体を結合させ、別のタンパク質への付着を可能にする。したがって、本開示は、分子接着剤としての機能について試験化合物をスクリーニングし、従来互いに結合することが知られていなかった2つのタンパク質間のタンパク質-タンパク質複合体の形成を促進するためのアッセイを提供する。
【0052】
融合タンパク質は、対象のタンパク質と、DNAタグまたは核酸オリゴマーなどの核酸タグとを含む。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、対象のタンパク質に結合している核酸オリゴマーをqPCR増幅することを含む。いくつかの実施形態において、核酸オリゴマーは、放射性標識、蛍光標識またはビオチン化されている。
【0053】
多くの実施形態において、固定化されたリガンドタンパク質および対象の標的タンパク質間の複合体を形成することができる多数の試験化合物から同定するスクリーニングアッセイにおいて、核酸タグが利用される。こうして、開示された方法を用いて、化合物の大規模なライブラリーを、対象のタンパク質および選択した固定化されたリガンドタンパク質に対してスクリーニングすることができる高スループットアッセイを介して候補化合物をスクリーニングすることができる。
【0054】
図2は、開示されたスクリーニングアッセイの原理を示しており、E3リガーゼは磁性ストレプトアビジンビーズ表面などのビーズ表面(202)に固定化され(ステップ1、201)、標的タンパク質はqPCRまたは他のそのような技術を介した定量化のためにDNA配列(203)でタグ付けされる。固定化されたE3リガーゼとDNAでタグ付けされた標的タンパク質は、さらに試験化合物とインキュベートされ、試験化合物が固定化されたE3リガーゼおよび標的タンパク質と結合して複合体を形成し(ステップ2、204)、試験化合物が対象の標的と固定化されたE3リガーゼの間の分子接着剤として機能する場合、より高いシグナルが生成される(ステップ3、206)。さらに、試験化合物が標的タンパク質および固定化E3リガーゼ間の複合体を形成し始めない場合(205)、qPCRの段階で低いシグナルが検出され、試験化合物が標的タンパク質と固定化E3リガーゼとの間の分子接着剤として機能していないことが示される。E3リガーゼは、分子接着剤として機能する試験物質に結合できる特定のドメインに限定されない。
【0055】
DNA配列タグは定量可能なPCRまたはqPCRを用いて定量され、超高感度読み出し情報がスクリーンに表示される(206)。
【0056】
本明細書に開示される方法を実施するために、多種多様なベクターを使用することができる。このようなベクターとしては、細菌プラスミド由来のベクター、バクテリオファージ由来のベクター、酵母エピソーム由来のベクター、酵母染色体エレメント由来のベクター、哺乳動物ウイルス由来のベクター、哺乳動物染色体由来のベクター、およびこれらの組み合わせ由来のベクターが挙げられるが、これらに限定されない。一般に、細胞内でポリヌクレオチドを維持、増殖または発現させるのに適した任意のベクターを使用することができる。自己増殖およびタンパク質ディスプレイが可能なバクテリオファージベクターの例としては、例えばNovagen社の10-3 T7株および1-1 T7株が挙げられる。
【0057】
ファージベースのベクターを含む、核酸の増殖または導入のための適切なベクターの選択は、当該技術分野において周知である。ベクターの構築、宿主へのベクターの導入および宿主での増殖または発現に必要な技術は、当業者には日常的なものである。
【0058】
ファージゲノムに由来するベクターの代替として、商業的にも利用可能な以下のベクターを非限定的な例として提供する。細菌で使用するためのベクターのうち、Qiagen社から入手可能なpQE70、pQE60、およびpQE-9;Stratagene社から入手可能なPhagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A;およびPharmacia社から入手可能なptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5。これらのベクターは、本発明に従って使用するため、当業者に利用可能である多くの商業的に入手可能な周知のベクターの例示のためにのみ列挙されている。例えば、宿主における本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの導入、維持、増殖、および/または発現に適した任意の他のプラスミドまたはベクターが、本発明のこの態様で使用され得ることが理解されるであろう。
【0059】
開示されたスクリーニングアッセイでは、選択したパートナー標的タンパク質はDNA配列でタグ付けされ、標的タンパク質はNFkBゲートウェイベクターなどの哺乳動物またはT7ファージゲートウェイベクター内でクローニングされ、哺乳動物細胞において、またはT7ファージディスプレイを用いて発現する。
【0060】
様々な異なるファージ由来の構築物が、開示された方法の実施において使用され得る。開示された方法の好ましい実施形態において、構築物は、本明細書で議論されるように、対象のタンパク質との融合タンパク質として異種ポリペプチドを条件付きで発現できるように改変されたファージゲノムである。改変されたファージゲノムは、好ましくは、その中に見出される制御配列およびコード配列を保持する。本発明の実施に好ましいファージゲノムは、T7、T4、T3およびラムダファージに限定されない溶菌ファージ、ならびに糸状ファージのものである。
【0061】
他の実施形態において、核酸オリゴマーを有する対象の標的タンパク質を含む融合タンパク質を発現させる能力は、調節プロモーターまたは別の調節領域(例えば、誘導がない場合に、それらによって制御される発現が低いかまたは検出されないような誘導性プロモーター)の使用によって部分的に調節される。誘導性プロモーターの非限定的な例としては、lacプロモーター、lac UV5プロモーター、アラビノースプロモーターおよびtetプロモーターが挙げられる。
【0062】
「改変されたT7ファージゲノム」とは、野生型ゲノム(GenBank Accession No.:V01146.1)に対してヌクレオチド配列の変化または欠失を含むT7ゲノムを指す。改変されたT7ファージゲノムは、T7非必須遺伝子の1つもしくは複数または全てをコードするヌクレオチド配列の完全なまたは部分的な欠失を含む。完全なまたは部分的な欠失は、好ましくは所与の遺伝子の不活性化をもたらす。非必須遺伝子とは、ファージの生存率に影響を与えることなく、ファージゲノムから完全または部分的に欠失させることができる遺伝子のことである。非必須遺伝子とは、T7ファージのライフサイクルに必須でない遺伝子のことである。
【0063】
開示された方法においてさらに提供されるように、リガンドタンパク質は好ましくは固体支持体上に固定化される。固体支持体上へのリガンドタンパク質の固定化は、様々な手段によることができるか、または分子を固体支持体に共有結合的または非共有結合的に結合させる標準的な手段が、当該技術分野において周知である。非限定的な例としては、リンカー分子、接着剤タルアルデヒドのような架橋剤、ビオチン/アビジン相互作用の使用が挙げられる。後者の例は、分子に共有結合したビオチンと固体支持体に結合したアビジンの使用を伴う。固体支持体自体は、典型的には培養皿もしくはプレートもしくはボトル、マルチウェル培養皿もしくはプレートのウェル、ビーズ、分子が固定化された粒子を含むカラム、または固定化された分子を含む平面など、任意の便利な形態をとることができる。固体支持体の他の非限定的な例としては、アガロース、ポリスチレンまたは他のポリビニル化合物、および磁気ビーズが挙げられる。
【0064】
開示された方法で提供されるように、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用を用いて、磁気ビーズ上にリガンドタンパク質を固定化する。リガンドタンパク質は(直接またはリンカーを介して)ビオチンと共有結合しており、このビオチンはストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズに結合している。ポリペプチドの接着剤プまたはファミリーのメンバーおよび試験分子と接触させた後、ビーズを分離し、リガンドタンパク質を溶出する。様々な溶出条件を用いることができる。非限定的な例としては、ビオチンを欠くリガンドタンパク質の可溶性バージョンでの溶出;SDSを含むような、リガンドタンパク質との結合を破壊するためにポリペプチドを変性させる洗剤溶液での溶出;ファージからリガンドタンパク質を切断するためのプロテアーゼ含有溶液での溶出が挙げられる。最初の溶出例は、試験分子と対象のタンパク質への結合に基づいて、結合したリガンドタンパク質を溶出するためには好ましい。本発明の代替的な実施形態では、ビオチンに対する親和性が低いモノマーアビジンなどの他のバージョンのストレプトアビジンが使用され、遊離ビオチンでの溶出が使用され得る。溶出されたタンパク質は、プラーク形成アッセイなどの標準的なファージ滴定法または定量的PCR(qPCR)を含むがこれらに限定されない、任意の適切な手段によって定量することができる。
【0065】
上記の議論では、特にマイルドな溶出条件を詳述したが、いくつかの条件下では有利な場合もあるが、本発明の必要な特徴ではない。リガンドタンパク質を固体支持体に共有結合させることも実用的であり、この系に適した方法で溶出に影響を与えることができる。
【0066】
この方法の態様には、改変されたT7ファージゲノムを含むベクターの使用が含まれ、これは、2011年3月1日に発行された前述の参考文献である米国特許第7,897,381号に広範に記載されており、その方法のセクションは、参照により、その全体が本明細書に記載されているかのように具体的に組み込まれるものとする。
【0067】
この方法の態様には、改変されたT7ファージゲノムを含む発現系の使用が含まれ、これは、2006年9月26日に発行された前述の参考文献である米国特許第7,112,435号に広範に記載されており、その方法のセクションは、参照により、その全体が本明細書に記載されているかのように具体的に組み込まれるものとする。
【0068】
この方法の態様には、改変されたT7ファージゲノムを含む異種ポリペプチドの調製が含まれ、これは、2006年9月26日に発行された前述の参考文献である米国特許第7,833,741号に広範に記載されており、その方法のセクションは、参照により、あたかもその全体が本明細書に記載されているかのように具体的に組み込まれるものとする。
【0069】
本明細書に記載された方法はいずれも、シン接着剤プレックス形式またはマルチプレックス形式のいずれかで実施することができる。一つの例示的なマルチプレックス形式では、試験化合物は、複数の対象のタンパク質に対する結合特性について、そのようなタンパク質のパネルから同時にスクリーニングされ、試験される。複数のタンパク質が同時または連続的にアッセイされる場合、対象のタンパク質に固有の核酸オリゴマーまたは検出タグを使用して、各対象のタンパク質の活性を区別することができる。
【0070】
多くの実施形態において、開示されたスクリーニングアッセイは、2つのタンパク質が分子接着剤化合物の存在下で複合体を形成するタンパク質-タンパク質複合体の形成アッセイを提供する。さらに、このアッセイは、対象のタンパク質に対するパートナータンパク質の同定に役立ち得る。また、このスクリーニングアッセイは、タンパク質-タンパク質複合体の形成にも役立ち、タンパク質がE3リガーゼと複合体を形成することで、タンパク質が分解される場合とされない場合があるものの、リガーゼが分解のために対象のタンパク質にタグを付けることができる。
【0071】
リガンドタンパク質は、固体支持ビーズに共有結合していてもよいし、結合した対照の標的タンパク質とリガンドタンパク質を含む複合体全体の放出を可能にする系によって非共有結合していてもよい。
【0072】
本明細書で提供されるように、対象の標的タンパク質は、キナーゼ、転移酵素、酸化還元酵素、ヒドロラーゼ、リガーゼ、異性化酵素またはリアーゼの基質であり得る。さらに、対象の標的タンパク質は、ヒトポリペプチドまたはタンパク質であってもよい。対象の標的タンパク質は、切断によって、官能基の付加もしくは除去によって、または異性化を受けることによって修飾され得る。特定の実施形態において、対象の標的タンパク質は、アシルトランスフェラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、アミドトランスフェラーゼまたは硫酸転移酵素などの転移酵素活性を有する転移酵素の基質であり得る。さらに、対象の標的タンパク質は、G共役タンパク質受容体、イオンチャネルタンパク質、核内受容体タンパク質、転写因子、キナーゼ、サイトカイン、成長因子、ホルモン、酵素、キナーゼ、プロテインキナーゼの基質、脂質キナーゼの基質、チロシンキナーゼの基質、受容体、セリン/スレオニンキナーゼの基質、ヒト非受容体チロシンキナーゼの基質、ヒト受容体チロシンキナーゼの基質、抗体または低分子鎖可変フラグメント(scFv)、ヒドロラーゼ、ペプチダーゼ、プロテアーゼもしくはホスファターゼの基質、または自己リン酸化によって修飾された酵素もしくはキナーゼであってもよい。
【0073】
特定の実施形態において、対象の標的タンパク質をコードする核酸は、プラスミド発現ベクターにクローニングされ、細胞株に一過性にトランスフェクトされ、対象の標的タンパク質の一過性の発現をもたらす。特定の実施形態において、対象の標的タンパク質をコードする核酸は、プラスミド発現ベクターにクローニングされ、細胞株に安定的にトランスフェクトされ、対象の標的タンパク質の安定した発現をもたらす。特定の実施形態において、対象の標的タンパク質をコードする核酸は、構成的プラスミド発現ベクターにクローニングされ、細胞株にトランスフェクトされ、対象の標的タンパク質の構成的発現をもたらす。特定の実施形態において、構成的発現は、CMVプロモーターの制御下にある。特定の実施形態において、対象の標的タンパク質をコードする核酸は、誘導性プラスミド発現ベクターにクローニングされ、細胞株にトランスフェクトされ、対象の標的タンパク質の誘導性発現をもたらす。特定の実施形態において、誘導性発現は、オペレーター部位を含むCMVプロモーターの制御下にある。より具体的な実施形態では、オペレーター部位は、テトラサイクリンオペレーター2部位である。さらに別の実施形態では、誘導性プラスミド発現ベクターは、テトラサイクリン制御発現ベクターである。
【0074】
発現ベクターの構築および発現ベクターを含む細胞における遺伝子の発現のための技術は、当技術分野で周知である。例えば、Sambrook et al., 2001, Molecular Cloning-A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., and Ausubel et al., eds., Current Edition, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, NYを参照のこと。
【0075】
開示された方法においてさらに提供されるように、核酸タグの核酸配列は、DNA結合タンパク質(例えば、NFκB、croリプレッサー、GAL4、GCN4、LexA、Opaque-2およびTGA1a)によって特異的に認識可能な標的DNA配列に連結したアンプリコンを含み、DNA結合成分を有する対象のタンパク質に結合または他の方法で連結することが可能である。次いで、核酸タグは、例えば、定量的PCR(qPCR)を用いて検出および/もしくは定量され得るか、または核酸タグは、PCR増幅され、質量分析によって検出され得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、PCR増幅ステップ中に第2のレポーター機能が利用される。具体的な一実施形態では、PCR増幅ステップの間に、核酸タグはプライマー伸長ステップを受け、このとき蛍光タグのような第2のレポーター機能が核酸タグに付着する。
【0077】
核酸タグは、qPCRによって検出および/または定量することができる。qPCRによる核酸タグの検出は、信頼性の高い定量検出法であるだけでなく、高感度かつ高選択的な検出法であるという利点を有する。qPCR検出法の高感度な性質のため、この方法ではごく少量の標的タンパク質を検出することができ、組換えタンパク質のような希少で高価なアッセイ成分の必要性を減らすことができる。qPCR検出法は特異性が高いため、複雑な異種混合物中の特定のDNA配列の検出も可能であり、タンパク質の検出を改善または強化するためにタンパク質サンプルに対して通常行われる精製ステップの必要性を排除することができる。
【0078】
増幅可能な配列は、配列特異的な様式でPCRプライマーにハイブリダイズするか、またはハイブリダイズすることが可能である。特定の実施形態において、核酸タグは、複数のアンプリコン、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれ以上のアンプリコンを含む。いくつかの実施形態において、複数のアンプリコンは、単一のアンプリコンのタンデム反復である。特定の実施形態において、アンプリコンは、定量的PCRによって増幅可能であり、これは、このような核酸オリゴマーによってタグ化されたタンパク質の定量を可能にする。特定の増幅方法において、PCR配列の増幅は、PCR増幅鋳型、PCRプライマーおよびqPCRプローブを含む核酸を、標準PCR反応混合物(一般に、10mMのTris-HCl(25℃でpH8.3)、1-4mMのMgCl2、0.1-1mMのdNTPの最終濃度を有する混合物)中で結合させることと、サンプルを最初にホットスタート条件下で処理(例えば、95℃に5分間加熱)して、非特異的アニーリングまたはミスプライミングを最小限に抑えることとを含み、次に変性ステップ(例えば、95℃で45秒間)と、アニーリングステップ(55℃で1分間)と、伸長ステップ(72℃で1分間)を行い、変性、アニーリング、伸長の連続ステップを最大40ラウンド行って、qPCRシグナルの増幅を完了する。
【0079】
一実施形態では、核酸タグの長さは、約50~約100、約50~約200、約50~約300、約50~約400、約50~約500、約100~約200、約100~約300、約100~約400、約100~約500、約200~約300、約200~約400、約200~約500、約300~約400、約300~約500、または約400~約500ヌクレオチド長である。
【0080】
核酸タグのレポーター機能は、核酸タグの放射性標識、蛍光標識またはビオチン化に由来することもある。核酸タグは、一本鎖もしくは二本鎖DNA、一本鎖もしくは二本鎖RNA、DNA-RNAハイブリッド、RNA-RNAハイブリッド、またはそれらの天然もしくは合成の誘導体、類似体および断片であってもよい。いくつかの実施形態では、核酸タグはDNAであり、レポーター機能標識は、例えば、ニック翻訳のような任意の標準的な酵素反応によって、または、32P、125Iもしくはビオチン標識デオキシヌクレオチド三リン酸塩(dNTP)による末端標識によって、DNAに導入することができ、または、標識を挿入剤として導入することができる。核酸タグを標識するために使用可能な、商業的に利用可能な多くの蛍光または発光基がある。核酸タグを標識するのに使用できる蛍光標識のいくつかの例は、フルオレセイン、ローダミンおよびクマリン、ならびにTexas Red(登録商標)やAlexa Fluor(登録商標)などの、市販のそれらの誘導体である。発光性基の例は、ランタニド錯体および発光性ナノ粒子である。一実施形態では、核酸タグは当初レポーター機能を持たないが、核酸検出ステップの前にレポーター機能が付加される。
【0081】
開示されたアッセイは、任意の細胞型および由来のプライマリー細胞、セカンダリー細胞または不死化細胞であってもよい細胞において実施することができる。いくつかの実施形態では、細胞はヒトを含む哺乳動物起源である。いくつかの実施形態では、細胞は異なる細胞型である。他の実施形態では、細胞は実質的に均質な細胞集団に由来する。本発明の方法は、例えば42ウェル、96ウェル、384ウェルまたは1536ウェルアッセイプレートに含まれる多数の細胞サンプルの分析を可能にする。
【0082】
本明細書で提供される方法は、標準的な組織培養用プラスチック器具で培養可能な任意の細胞型を用いて実施することができる。このような細胞型には、例えば、哺乳動物、植物、細菌、ウイルスまたは真菌などの任意の認識される供給源に由来するすべての正常細胞および形質転換細胞が含まれる。特定の実施形態では、細胞は哺乳動物(ヒトまたは齧歯類もしくは類人猿などの動物)起源である。いくつかの実施形態において、細胞はヒト起源である。いくつかの実施形態において、細胞はげっ歯類起源である。いくつかの実施形態において、細胞はネズミ起源である。いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞は、任意の器官または組織起源(例えば、脳、肝臓、肺、心臓、腎臓、皮膚、筋肉、骨、骨髄または血液)であってもよく、任意の細胞型であってもよい。本明細書で提供される方法において使用するのに適した細胞型としては、線維芽細胞、基底細胞、上皮細胞、内皮細胞、血小板、リンパ球、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、網状赤血球、顆粒球、単球、マスト細胞、神経細胞、細胞芽細胞、巨細胞、樹状細胞、マクロファージ、卵割球、内皮細胞、腫瘍細胞、間質細胞、クッパー細胞、ランゲルハンス細胞、沿岸細胞、筋肉細胞および脂肪細胞などの組織細胞、ならびに徐核細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、細胞は、対象の標的タンパク質と核酸オリゴマーまたは核酸タグとを含む融合タンパク質を発現するように遺伝子操作され得る。発現ベクターは、限定されることなく、当業者に既知の任意の方法によって発現のために宿主細胞に導入され得る。このような方法としては、例えば、溶液からの細胞による分子の直接取り込み;または、例えば、リポソームもしくは免疫リポソームを用いたリポフェクションによる促進された取り込み;粒子媒介トランスフェクション;などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第5,272,065号;Goeddel et al., eds, 1990, Methods in Enzymology, vol. 185, Academic Press, Inc., CA; Krieger, 1990, Gene Transfer and Expression-A Laboratory Manual, Stockton Press, NY; Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, NY; and Ausubel et al., eds., Current Edition, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley Interscience, NYを参照のこと。発現ベクターにおける使用のための有用なプロモーターとしては、メタロチオネインプロモーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタゾン誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP pol IIIプロモーター、構成的MPSVプロモーター、RSVプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(ヒト最初期CMVプロモーターなど)、および構成的CMVプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。発現ベクターは、融合タンパク質を発現させる細胞に適合した発現シグナルおよび複製シグナルを含むべきである。本明細書に記載の対象の標的タンパク質または融合タンパク質を発現するのに有用な発現ベクターとしては、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ関連ウイルスなどのウイルスベクター、プラスミドベクターならびにコスミドなどが挙げられる。
【0084】
組換えポリペプチドの発現に有用であることが当業者に知られている任意の哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、A375細胞、HEK293細胞またはLnCap細胞が、対象の標的タンパク質と核酸タグなどの検出タグを含む融合タンパク質を発現させるために使用することができる。標的タンパク質が適切な宿主細胞で発現すると、ネイティブタンパク質に存在する翻訳後修飾を示すことができ、したがってネイティブタンパク質の構造と機能を有することが期待される。
【0085】
別の態様において、本発明は、1つまたは複数のポリペプチドに対して化合物のライブラリーをスクリーニングする方法を提供する。典型的には、試験分子群を対象のポリペプチドで試験し、対象の結合相互作用が確認されたら、試験分子を個々にさらに評価することができる。
【0086】
本発明の別の態様では、化合物のライブラリーを、個々のポリペプチドまたはポリペプチドのセットに対する結合特性についてスクリーニングする。一度に複数の化合物を試験してもよい。通常、複数の化合物が試験される場合、ポジティブな相互作用の後、化合物は個々に結合特性について評価される。
【0087】
また、本明細書では、分子接着剤としての候補分子または試験化合物をスクリーニングするためのキットであって、前記試験化合物は、従来互いに結合することが知られていない対象の標的タンパク質およびリガンドタンパク質間のタンパク質-タンパク質複合体を可能にする、キットも提供される。このようなキットは、対象の標的タンパク質と、細胞アッセイにおいて検出可能な基質として機能する検出可能なタグとを含む融合タンパク質をトランスフェクトした細胞株を含んでいてもよい。このようなキットは、試験化合物と複合体を形成する標的タンパク質と複合体を形成するリガンドタンパク質をさらに含んでいてもよい。リガンドタンパク質は、固体支持体またはマルチウェルプレートのウェルのような容器に固定化される。いくつかの実施形態において、キットは、検出可能な核酸タグと;核酸タグによって「タグ付け」され得る標的タンパク質とをさらに含む。核酸タグがqPCRによって検出可能である場合、キットは、核酸タグ中のPCR開始配列を認識することができるPCRプライマーをさらに含み得る。このようなキットは、上述したように、互いに結合することが知られていない2つのタンパク質間でタンパク質-タンパク質複合体を形成することができる試験化合物を同定する方法を実施するために使用することができる。
【0088】
開示されたアッセイと方法は、対象の疾患タンパク質を標的とする低分子薬の使用と比較して、さらに利点を提供する。多くの利点の中でも、分子接着剤は、薬剤化不可能な標的、転写因子、翻訳因子、足場タンパク質、酵素タンパク質、および非酵素タンパク質を標的にするか、またはこれらに結合することができる。分子接着剤化合物は、活性部位だけでなく、標的タンパク質およびE3リガーゼの非機能性ドメインにも結合することができる。また、開示されたアッセイは、低分子阻害剤を用いなければ達成することが困難な、組織選択性と準化学量論的な効力を有する分子接着剤分解薬を開発する能力を提供する。
【0089】
本明細書では、限定ではなく説明の目的で、本技術の完全な理解を提供するために、特定の実施形態、系、方法などの具体的な詳細を記載する。しかしながら、本技術は、これらの特定の詳細から逸脱する他の実施形態でも実施され得ることは、当業者には明らかであろう。
【0090】
本明細書において引用されるすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれるものとする。前述の発明は、理解を明瞭にする目的で、例示および実施例によってある程度詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなければ特定の変更および修正がなされ得ることは、本発明の教示に照らして当業者には容易に明らかであろう。
【0091】
本方法の具体的な実施形態および例は、例示を目的として上述されているが、関連技術の当業者であれば認識するように、本系の範囲内で様々な等価な変更が可能である。例えば、プロセスまたはステップが所定の順序で示されているが、代替の実施形態は、異なる順序でステップを有するルーチンを実行してもよく、いくつかのプロセスまたはステップは、代替またはサブコンビネーションを提供するために、削除、移動、追加、細分化、結合、および/または変更されてもよい。これらのプロセスまたはステップの各々は、様々な異なる方法で実施することができる。また、工程またはステップが直列に実行されるように示されている場合があるが、これらの工程またはステップは、代わりに並列に実行されてもよいし、異なる時間に実行されてもよい。
【0092】
以上、様々な実施形態について説明したが、これらは例示として提示したものであり、限定するものではないことを理解されたい。説明は、本技術の範囲を本明細書に記載された特定の形態に限定することを意図するものではない。それどころか、本明細書は、当業者に理解されるように、本技術の趣旨および範囲内に含まれ得るような代替物、修正物、および等価物をカバーすることを意図している。したがって、好ましい実施形態の幅および範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではない。
【国際調査報告】