(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】製造可能性が向上した、低弾性率のイオン交換可能なガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 3/087 20060101AFI20240206BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20240206BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C03C3/087
C03C21/00 101
G09F9/00 302
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546273
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 US2022014513
(87)【国際公開番号】W WO2022169701
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】ドン,ビンホイ
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シアオジュー
(72)【発明者】
【氏名】レッツィ,ピーター ジョゼフ
【テーマコード(参考)】
4G059
4G062
5G435
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AA08
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5G435AA07
5G435AA17
5G435BB05
5G435GG43
5G435HH05
5G435HH18
5G435HH20
5G435LL07
5G435LL08
5G435LL14
(57)【要約】
ガラス組成物に、少なくとも一部には、液相粘度および液相温度のために、低いヤング率およびスロットドロー技術との適合性が与えられる。イオン交換された場合、結果として得られたガラス物品は、13.0以上の、GPaで表されるヤング率値に対するMPaで表されるピーク圧縮応力値の比を示すことができる。そのガラス物品は、850MPaから1400MPaの範囲のピーク圧縮応力値を有することがある。そのガラス物品は、例えば、フレキシブルディスプレイ用のカバーガラスとしての使用中に、著しい曲げ応力を経験するカバーガラス用途を含む、様々な高強度用途に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスであって、
68.5モル%以上から69.5モル%以下のSiO
2、
10.0モル%以上から10.5モル%以下のAl
2O
3、
4.05モル%以上から5.25モル%以下のMgO、
0.04モル%以上から1.1モル%以下のCaO、
14.5モル%以上から15.8モル%以下のNa
2O、および
0.1モル%以上から0.2モル%以下のSnO
2、
を含む、ガラス。
【請求項2】
前記ガラスが、Li
2O、K
2O、ZnO、SrO、BaO、B
2O
3、P
2O
5、またはFe
2O
3の少なくとも1つを実質的に含まない、請求項1記載のガラス。
【請求項3】
前記ガラスが、
68.80モル%以上から69.23モル%以下のSiO
2、
10.01モル%以上から10.32モル%以下のAl
2O
3、
4.35モル%以上から5.17モル%以下のMgO、
0.04モル%以上から1.03モル%以下のCaO、
14.91モル%以上から15.56モル%以下のNa
2O、および
0.18モル%以上から0.19モル%以下のSnO
2、
を含む、請求項1または2記載のガラス。
【請求項4】
Al
2O
3+MgO+CaO≧15モル%
である、請求項1または2記載のガラス。
【請求項5】
前記ガラスが、
1200kP以上から4000kP以下の液相粘度、
800℃以上から1000℃以下の液相温度、または
70GPa以上から72GPa以下のヤング率、
の少なくとも1つを有する、請求項1または2記載のガラス。
【請求項6】
ガラス物品において、
前記ガラス物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層であって、MPaで測定されるピーク圧縮応力値を有する圧縮応力層、
を含み、
請求項1または2記載のガラスから作られたガラス基板をイオン交換することによって形成されるガラス物品。
【請求項7】
イオン交換前の前記ガラス基板のGPaで表されるヤング率値に対する前記ピーク圧縮応力値の比が、13.0以上から18.0以下である、請求項6記載のガラス物品。
【請求項8】
前記圧縮深さが、
5μm以上から40μm以下である、または
前記ガラス物品の厚さの5%から20%の範囲にある、
の少なくとも一方である、請求項6記載のガラス物品。
【請求項9】
前記ピーク圧縮応力値が、850MPa以上から1400MPa以下である、請求項6記載のガラス物品。
【請求項10】
前記ガラス物品が、15μm以上から200μm以下の厚さを有する、請求項6記載のガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2021年2月4日に出願された米国仮特許出願第63/145655号の優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、イオン交換可能なガラス組成物に関する。詳しくは、ここに記載された実施の形態は、様々な業界、例えば、家庭用電化製品、輸送、建築、防衛、医薬、および包装に使用するためのイオン交換可能なガラス組成物に関する。さらにより詳しくは、本開示は、カバーガラス用途、例えば、フレキシブルディスプレイ用のカバーガラスとしてのガラス組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの消費者向け製品、例えば、スマートフォン、タブレット、携帯型メディアプレーヤー、パーソナルコンピュータ、およびカメラには、ディスプレイカバーとして機能することがあり、タッチ機能性を備えることがあるカバーガラスが組み込まれている。しばしば、これらの機器は、ユーザによって硬い表面に落とされ、これにより、カバーガラスが損傷を受けることがあり、その機器の使用が悪影響を受けることがある、例えば、タッチ機能性が損なわれることがある。
【0004】
家庭用電化製品用の折り畳めるディスプレイまたはフレキシブルディスプレイは、薄く可撓性のイオン交換済みガラスの恩恵を受けるであろう。ガラスは、イオン交換過程によって屈曲劣化に一層耐性にすることができる。この過程には、ガラス表面に圧縮応力を導入することが含まれる。イオン交換過程を使用して導入された圧縮応力は、特に、ガラスの破損をもたらし得る傷を阻む働きをする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、フレキシブルおよび/または折り畳み式カバーガラス用途を含む、様々な用途に使用するのに望ましい機械的性質を有するイオン交換可能なガラス組成物が、引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、製造可能性を改善することのできる液相特性を有する、様々な用途、例えば、フレキシブルおよび/または折り畳み式ディスプレイのためのカバーガラス用途に適した強度と可撓性を有するイオン交換可能なガラス組成物に関する。
【0007】
態様(1)によれば、ガラスが提供される。そのガラスは、68.5モル%以上から69.5モル%以下のSiO2、10.0モル%以上から10.5モル%以下のAl2O3、4.05モル%以上から5.25モル%以下のMgO、0.04モル%以上から1.1モル%以下のCaO、14.5モル%以上から15.8モル%以下のNa2O、および0.1モル%以上から0.2モル%以下のSnO2を含む。
【0008】
態様(2)によれば、ガラスがLi2Oを実質的に含まない、態様(1)のガラスが提供される。
【0009】
態様(3)によれば、ガラスがK2Oを実質的に含まない、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0010】
態様(4)によれば、ガラスがZnOを実質的に含まない、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0011】
態様(5)によれば、ガラスがSrOを実質的に含まない、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0012】
態様(6)によれば、ガラスがBaOを実質的に含まない、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0013】
態様(7)によれば、ガラスがB2O3を実質的に含まない、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0014】
態様(8)によれば、ガラスがP2O5を実質的に含まない、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0015】
態様(9)によれば、ガラスがFe2O3を実質的に含まない、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0016】
態様(10)によれば、ガラスが、68.80モル%以上から69.23モル%以下のSiO2、10.01モル%以上から10.32モル%以下のAl2O3、4.35モル%以上から5.17モル%以下のMgO、0.04モル%以上から1.03モル%以下のCaO、14.91モル%以上から15.56モル%以下のNa2O、および0.18モル%以上から0.19モル%以下のSnO2を含む、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0017】
態様(11)によれば、Al2O3+MgO+CaO≧15モル%である、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0018】
態様(12)によれば、ガラスが1200kP以上の液相粘度を有する、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0019】
態様(13)によれば、ガラスが1200kP以上から4000kP以下の液相粘度を有する、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0020】
態様(14)によれば、ガラスが1000℃以下の液相温度を有する、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0021】
態様(15)によれば、ガラスが800℃以上から1000℃以下の液相温度を有する、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0022】
態様(16)によれば、ガラスが72GPa以下のヤング率を有する、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0023】
態様(17)によれば、ガラスが70GPa以上から72GPa以下のヤング率を有する、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスが提供される。
【0024】
態様(18)によれば、ガラス物品が提供される。そのガラス物品は、態様(1)から直前の態様のいずれかのガラスから作られ、ガラス物品は4mm以下の厚さを有する。
【0025】
態様(19)によれば、厚さが15μm以上から200μm以下である、態様(18)のガラス物品が提供される。
【0026】
態様(20)によれば、ガラス物品が提供される。そのガラス物品は、ガラス物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を含み、その圧縮応力層は、MPaで測定されるピーク圧縮応力値を有し、そのガラス物品は、態様(1)から態様(17)のいずれかのガラスから作られたガラス基板をイオン交換することによって、形成される。
【0027】
態様(21)によれば、イオン交換前のガラス基板のGPaで表されるヤング率値に対するピーク圧縮応力値の比が、13.0以上である、態様(20)のガラス物品が提供される。
【0028】
態様(22)によれば、ガラス物品が提供される。そのガラス物品は、ガラス物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層であって、MPaで測定されるピーク圧縮応力値を有する圧縮応力層を含み、68.5モル%以上から69.5モル%以下のSiO2、10.0モル%以上から10.5モル%以下のAl2O3、4.05モル%以上から5.25モル%以下のMgO、0.04モル%以上から1.1モル%以下のCaO、14.5モル%以上から15.8モル%以下のNa2O、および0.1モル%以上から0.2モル%以下のSnO2を含むガラス物品の中心での組成を有する。
【0029】
態様(23)によれば、GPaで測定されるヤング率値に対するピーク圧縮応力値の比が13.0以上であり、ヤング率値が、ガラス物品の中心と同じ組成を有するガラスのヤング率である、態様(22)のガラス物品が提供される。
【0030】
態様(24)によれば、ヤング率値に対するピーク圧縮応力値の比が18.0以下である、態様(21)または(23)のガラス物品が提供される。
【0031】
態様(25)によれば、圧縮深さが5μm以上である、態様(20)から直前の態様のいずれかのガラス物品が提供される。
【0032】
態様(26)によれば、圧縮深さが5μm以上から40μm以下である、態様(20)から直前の態様のいずれかのガラス物品が提供される。
【0033】
態様(27)によれば、圧縮深さが20μm以上である、態様(20)から直前の態様のいずれかのガラス物品が提供される。
【0034】
態様(28)によれば、圧縮深さが20μm以上から40μm以下である、態様(20)から直前の態様のいずれかのガラス物品が提供される。
【0035】
態様(29)によれば、圧縮深さが、ガラス物品の厚さの5%から20%の範囲にある、態様(20)から直前の態様のいずれかのガラス物品が提供される。
【0036】
態様(30)によれば、ピーク圧縮応力値が、850MPa以上から1400MPa以下である、態様(20)から直前の態様のいずれかのガラス物品が提供される。
【0037】
態様(31)によれば、ピーク圧縮応力値が900MPa以上である、態様(20)から直前の態様のいずれかのガラス物品が提供される。
【0038】
態様(32)によれば、ガラス物品が、4mm以下の厚さ有する、態様(20)から直前の態様のいずれかのガラス物品が提供される。
【0039】
態様(33)によれば、ガラス物品が、15μm以上から200μm以下の厚さを有する、態様(20)から直前の態様のいずれかのガラス物品が提供される。
【0040】
態様(34)によれば、方法が提供される。その方法は、ガラス基板をイオン交換媒体と接触させて、ガラス物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を含むガラス物品を形成する工程を含み、そのガラス基板は、態様(1)から態様(17)のいずれかのガラスから作られ、圧縮応力層は、MPaで測定されるピーク圧縮応力値を有する。
【0041】
態様(35)によれば、イオン交換前のガラス基板のGPaで測定されたヤング率値に対するピーク圧縮応力値の比が、13.0以上である、態様(34)の方法が提供される。
【0042】
態様(36)によれば、ヤング率値に対するピーク圧縮応力値の比が、18.0以下である、態様(35)の方法が提供される。
【0043】
態様(37)によれば、イオン交換媒体が、50質量%以上のカリウム塩を含む、態様(34)の方法が提供される。
【0044】
態様(38)によれば、イオン交換媒体がKNO3を含む、態様(34)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0045】
態様(39)によれば、接触させる工程が、1時間以上から24時間以下の期間に亘る、態様(34)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0046】
態様(40)によれば、接触させる工程が、1時間以上から8時間以下の期間に亘る、態様(34)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0047】
態様(41)によれば、イオン交換媒体が、350℃以上から480℃以下の温度である、態様(34)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0048】
態様(42)によれば、ガラス物品をエッチングする工程をさらに含む、態様(34)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0049】
態様(43)によれば、圧縮深さが5μm以上である、態様(34)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0050】
態様(44)によれば、圧縮深さが5μm以上から40μm以下である、態様(34)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0051】
態様(45)によれば、圧縮深さが20μm以上である、態様(34)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0052】
態様(46)によれば、圧縮深さが20μm以上から40μm以下である、態様(34)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0053】
態様(47)によれば、圧縮深さが、ガラス物品の厚さの5%から20%の範囲にある、態様(34)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0054】
態様(48)によれば、ピーク圧縮応力値が、850MPa以上から1400MPa以下である、態様(34)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0055】
態様(49)によれば、ピーク圧縮応力値が900MPa以上である、態様(34)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0056】
態様(50)によれば、ガラス物品が、4mm以下の厚さ有する、態様(34)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0057】
態様(51)によれば、ガラス物品が、15μm以上から200μm以下の厚さを有する、態様(34)から直前の態様のいずれかの方法が提供される。
【0058】
態様(52)によれば、電子機器が提供される。その電子機器は、電子ディスプレイ、およびその電子ディスプレイを覆って配置された、態様(18)から(33)のいずれかのガラス物品を備える。
【0059】
態様(53)によれば、前面、背面、および側面を有する筐体、およびその筐体内に少なくとも部分的に配置された電気部品であって、制御装置、メモリ、および電子ディスプレイを含む電気部品をさらに備え、その電子ディスプレイは、筐体の前面にまたはそれに隣接して配置され、ガラス物品は、筐体の少なくとも一部を形成する、態様(52)の電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
ここに組み入れられる添付図面は、明細書の一部を形成し、本開示の実施の形態を示す。図面は、説明と共に、開示された実施の形態の原理を説明し、当業者がその実施の形態を実施し、利用できるようにする働きをする。これらの図面は、限定ではなく、説明を意図したものである。本開示は、概して、これらの実施の形態に照らして記載されているが、本開示の範囲をこれらの特定の実施の形態に限定する意図はないことを理解すべきである。図面において、同様の参照番号は、同一のまたは機能的に類似の要素を示す。
【
図1】いくつかの実施の形態による圧縮応力領域を有するガラス物品の断面図
【
図2】ガラス物品を曲げた際のいくつかの実施の形態によるガラス物品の断面図
【
図3A】ここに開示されたガラス物品のいずれかによるガラス物品を組み込んだ例示の電子機器の上面図
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下の実施の形態と実施例は、本開示の説明のためのものであり、限定するものではない。当該技術分野で通常遭遇し、当業者に明白であろう、様々な条件およびパラメータの他の適切な変更と適用は、本開示の精神と範囲に含まれる。
【0062】
ここに記載されたガラスは、高いピーク圧縮応力を達成するためにイオン交換されることのある、イオン交換可能なアルカリアルミノケイ酸塩ガラスの一群である。ここに用いられているように、「イオン交換可能」とは、ガラス組成物、またはその組成物から作られたガラス物品が、基板の表面にまたはその近くに位置する第1の陽イオンを同じ価数の第2の陽イオンと交換できることを意味する。第1のイオンは、ナトリウムのイオンであることがある。第2のイオンは、第2のイオンが第1のイオンのイオン半径より大きいイオン半径を有するという条件で、カリウム、ルビジウム、およびセシウムの内の1つのイオンであることがある。第1のイオンは、その酸化物(例えば、Na2O)としてガラス系基板中に存在する。ここに用いられているように、「イオン交換済みガラス」または「化学強化済みガラス」は、ガラスが、ガラスの表面にまたはその近くに位置する陽イオンを同じ価数の陽イオンと交換するイオン交換過程に少なくとも1回、施されていることを意味する。
【0063】
ここに記載されたガラス組成物は、高いピーク圧縮応力を達成するためにイオン交換することができる。いくつかの実施の形態において、ここに記載されたガラスは、約900MPa以上、かつ約1400MPaまでのピーク圧縮応力を達成するためにイオン交換されることがある。イオン交換過程中に与えられた高いピーク圧縮応力は、浅い傷サイズ分布を持つガラスに高い強度を与え、それによって、曲げ中の破損を防ぐことができる。この高いピーク圧縮応力により、ガラスは、正味圧縮を維持し、それゆえ、ガラスがきつい半径で曲げられたときに、表面傷を食い止めることができる。ここに記載された実施の形態によるガラスは、曲げ中により低い曲げ応力値を生じる、低いヤング率を有し、それゆえ、曲げ事象の最中の破損を防ぐことができる。
【0064】
それに加え、ここに記載されたガラス組成物は、イオン交換過程で作られた圧縮領域について広い圧縮深さ範囲に亘り、13.0以上のヤング率値に対するピーク圧縮応力値の比(ピーク圧縮応力値/ヤング率値、CS/E、ここで、CSはMPaで表され、EはGPaで表される)を有する。この比を増加させることは難しい。何故ならば、イオン交換過程中に与えられる表面圧縮応力は、より高いヤング率が、圧縮応力を改善するための一般的な方法であるという点で、ヤング率の影響を強く受け得るからである。すなわち、ヤング率は、網状構造の剛性の尺度である。例えば、Na+部位中にK+イオンを交換することにより、圧縮応力が生じるが、網状構造がより硬くなるにつれて(ヤング率を増加させることなどにより)、膨張応力が高くなる。したがって、より高いCSを達成するための1つの一般的な方法は、イオン交換が施されたガラスのヤング率を増加させることである。対照的に、ここに記載されたガラス組成物は、ヤング率を低く維持しつつ、高いCSを達成することができる。高いCS/E比により、そのガラス組成物から形成されたガラス物品が、イオン交換後でさえも、可撓性のままであることができる。ここに記載されたガラス組成物は、イオン交換前に低い十分なヤング率を有し、イオン交換過程中に与えられる圧縮応力の値は、広い圧縮深さ範囲に亘り高いCS/E比を達成するのに十分に高い。これにより、可撓性であり、高いピーク圧縮応力値を達成することもできるガラス組成物が得られる。そのガラス組成物は、少なくとも一部には、その組成物が、イオン交換過程中に生じ得る応力緩和に抵抗するので、大きい圧縮深さで、例えば、50μmほど大きい深さで、高い表面圧縮応力を得ることができる。高温と時間の経過でより著しくなり得る、応力緩和は、大きい圧縮深さを与えるように設計されたイオン交換過程中に生じる傾向にある。ここに記載されたガラス組成物のこれらの特徴のために、例えば、フレキシブルディスプレイや折り畳み式ディスプレイにおけるカバーガラスとして、使用中に著しい曲げ応力を経験する高強度カバーガラス用途を含む、様々な産業用途に適したものとなる。
【0065】
ここに用いられているように、「ピーク圧縮応力」は、圧縮応力領域内で測定された最高の圧縮応力(CS)値を称する。いくつかの実施の形態において、ピーク圧縮応力は、ガラスの表面に位置している。他の実施の形態において、ピーク圧縮応力は、表面下のある深さで生じることがあり、圧縮応力プロファイルに「埋もれたピーク」の外観が与えられる。特に明記のない限り、圧縮応力(表面CSを含む)は、市販の機器、例えば、有限会社折原製作所(日本国)により製造されているFSM-6000を使用して、表面応力計(FSM)により測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関係する、応力光学係数(SOC)の精密測定に依存する。SOCは、次いで、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題するASTM基準C770-16に記載された手順C(ガラスディスク法)にしたがって測定される。
【0066】
ここに用いられているように、「圧縮深さ」(DOC)は、ガラス物品内の応力が圧縮から引張に変化する深さを称する。DOCでは、応力は、圧縮応力から引張応力に交差し、それゆえ、ゼロの応力値を示す。圧縮深さと層の深さは、表面応力計、例えば、FSM-6000表面応力計で測定することができる。ここに用いられているように、「層の深さ」(DOL)は、金属酸化物のイオンがガラス物品中に拡散するガラス物品内の深さを称し、そのイオンの濃度はそこで最小値に到達する。ガラス物品中にカリウムだけがイオン交換されている実施の形態において、DOCはDOLと等しいであろう。特に明記のない限り、DOCとDOLは、同意義であると考えられる。
【0067】
ここに記載されたガラス組成物は、妥当な費用で製造することもできる。そのガラス組成物は、特定の製造技術、例えば、スロット成形法に適した液相温度と液相粘度を示す。これらの熱的性質は、その組成物から作られるガラス物品を製造する容易さを増すことができ、これにより、費用が低下し得る。本開示に記載されたガラス組成物は、特に、所望の液相粘度と液相温度を達成するのに役立つ酸化アルミニウム含有量と酸化マグネシウム含有量を有する。実施の形態において、そのガラス組成物は、1200kP(キロポアズ)以上の液相粘度を有し得る。
【0068】
ここに記載されたガラス組成物は、以下の利益の内の1つ以上を提供し得る。(1)その組成物は、リチウムを含まなくとも、小さい層の深さ(DOL)でイオン交換中に高い圧縮応力値を達成することができる。(2)その組成物は、低い弾性率を有し、これにより、より高いCS/E比が促進され、薄い折り畳み用途のための曲げ性が改善される。(3)これらのガラスを製造するための原材料は、安く、入手し易い。(4)その組成物は、高い改質剤当たり含有量(per-modifier content)を有し、これにより、溶融がより容易になる。ガラス組成物の「改質剤当たり」含有量は、(R2Oモル%+ROモル%-Al2O3モル%)の値が0モル%より大きいことを意味し、式中、R2Oモル%は、組成物中の全アルカリ金属酸化物の総モル%であり、ROモル%は、組成物中の全アルカリ土類金属酸化物の総モル%である。(5)その組成物は、スロット成形法に有益な液相温度と液相粘度を有する。
【0069】
ここに記載されたガラス組成物は、フレキシブルおよび/または折り畳み用途など、著しい曲げ応力に曝される化学強化用途に利用される既存のガラスに匹敵する性能を示すことができる一方で、スロットドロー技術を利用して成形することもできる。スロットドロー技術への適合性は、類似の用途に利用されるガラス組成物と比べた場合、約1200kP超の、ガラス組成物の少なくとも相対的に高い液相粘度の関数である。言い方を換えれば、ここに記載されたガラス組成物は、既存の折り畳める化学強化済みガラス物品の所望の性能を提供しつつ、改善された製造可能性を有する。ここに記載されたガラス組成物は、MgOの含有量が制限され、CaOを含有するアルカリアルミノケイ酸塩である。
【0070】
ここに用いられているように、「ガラス物品」という用語は、少なくとも部分的にガラスから作られた任意の材料を含むことを意味する。
【0071】
ここに記載されたガラス組成物について、構成成分(例えば、SiO2、Al2O3、Na2Oなど)の濃度は、特に明記のない限り、酸化物基準のモルパーセント(モル%)で与えられる。実施の形態によるガラス組成物の成分は、下記に個別に述べられている。ある成分について様々に列挙された範囲のいずれが、任意の他の成分について様々に列挙された範囲のいずれと個々に組み合わされてもよいことを理解すべきである。ここに用いられているように、数の後に付く0は、その数の有効桁を表すことを意図している。例えば、数「1.0」は、二桁の有効数字を含み、数「1.00」は、三桁の有効数字を含む。
【0072】
SiO2は、ガラス組成物における最大の構成成分であることがあり、それゆえ、そのガラス組成物から形成されるガラス網状構造の主成分である。純粋なSiO2は、比較的低い熱膨張係数(CTE-ここに用いられているように、この性質は、0℃から300℃の温度で測定される)を有し、アルカリを含まない。しかしながら、純粋なSiO2は、高い融点を有する。したがって、ガラス組成物中のSiO2の濃度が高すぎると、SiO2の濃度がより高くなるにつれて、ガラスを溶融する難しさが増し、次いで、ガラスの成形性が悪影響を受けるので、ガラス組成物の成形性が損なわれることがある。
【0073】
実施の形態において、そのガラス組成物は、68.5モル%以上から69.5モル%以下、例えば、68.6モル%以上から69.4モル%以下、68.7モル%以上から69.3モル%以下、68.8モル%以上から69.2モル%以下、68.9モル%以上から69.1モル%以下、69.0モル%以上から69.5モル%以下、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲の量でSiO2を含むことがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、68.80モル%以上から69.23モル%以下の量でSiO2を含むことがある。
【0074】
ここに記載されたガラス組成物は、Al2O3を含む。Al2O3は、添加されると、ガラス網状構造形成材の働きをすることができる。さらに、Al2O3の濃度が組成物中のSiO2の濃度とアルカリ酸化物の濃度に対して釣り合わされると、ガラス溶融物の液相温度が低下することがある。
【0075】
実施の形態において、そのガラス組成物は、10.0モル%以上から10.5モル%以下、例えば、10.1モル%以上から10.4モル%以下、10.2モル%以上から10.3モル%以下、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲の量でAl2O3を含むことがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、10.01モル%以上から10.32モル%以下の量でAl2O3を含むことがある。
【0076】
実施の形態において、ガラス組成物中のAl2O3、MgO、およびCaOの総量は、15モル%以上、例えば、15.0モル%以上、15.1モル%以上、15.2モル%以上、15.3モル%以上、15.4モル%以上、15.5モル%以上、15.6モル%以上、15.7モル%以上であることがある。実施の形態において、ガラス組成物中のAl2O3、MgO、およびCaOの総量は、15.0モル%以上から15.8モル%以下、例えば、15.1モル%以上から15.7モル%以下、15.2モル%以上から15.6モル%以下、15.3モル%以上から15.5モル%以下、15.0モル%以上から15.4モル%以下、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲であることがある。
【0077】
上述したAl2O3+MgO+CaO値は、ここに開示されたガラス組成物の利益になる。上述したようなAl2O3+MgO+CaO値は、広い圧縮深さの範囲に亘り高いピーク圧縮応力を達成するガラス組成物の能力に寄与する。
【0078】
ここに記載されたガラス組成物は、Na2Oを含む。Na2Oは、ガラス組成物のイオン交換可能性に役立ち、ガラス組成物の成形性を改善し、それによって、製造可能性を改善することがある。しかしながら、ガラス組成物に添加されるNa2Oが多すぎると、CTEが低くなりすぎることがあり、融点が高すぎることがある。
【0079】
実施の形態において、そのガラス組成物は、14.5モル%以上から15.8モル%以下、例えば、14.6モル%以上から15.7モル%以下、14.7モル%以上から15.6モル%以下、14.8モル%以上から15.5モル%以下、14.9モル%以上から15.4モル%以下、15.0モル%以上から15.3モル%以下、15.1モル%以上から15.2モル%以下、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲の量でNa2Oを含むことがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、15モル%以上、15.5モル%以上、16モル%以上、16.5モル%以上、17モル%以上、17.5モル%以上、または18モル%の量でNa2Oを含むことがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、14.91モル%以上から15.56モル%以下の量でNa2Oを含むことがある。
【0080】
ここに記載されたガラス組成物は、MgOを含む。MgOは、ガラスの粘度を低下させることがあり、これにより、ガラスの成形性と製造可能性が向上する。ガラス組成物にMgOを含ませると、ガラス組成物の歪み点とヤング率、並びにガラスのイオン交換可能性も改善されることがある。しかしながら、ガラス組成物に添加されるMgOが多すぎると、スロット成形技術に対する適合性にとって、液相粘度が低すぎることがある。ここに記載されたガラス組成物は、マグネシウムを含有する液相の苦土かんらん石を有し、その結果、組成物中のMgOの量を減少させると、液相温度が低下し、それによって、液相粘度が増加する。MgOを多く添加しすぎると、密度も増加することがあり、ガラス組成物のCTEが望ましくないレベルまで増加することがある。
【0081】
実施の形態において、そのガラス組成物は、4.05モル%以上から5.25モル%以下、例えば、4.10モル%以上から5.20モル%以下、4.15モル%以上から5.15モル%以下、4.20モル%以上から5.10モル%以下、4.25モル%以上から5.05モル%以下、4.30モル%以上から5.00モル%以下、4.35モル%以上から4.95モル%以下、4.40モル%以上から4.90モル%以下、4.45モル%以上から4.85モル%以下、4.50モル%以上から4.80モル%以下、4.55モル%以上から4.75モル%以下、4.60モル%以上から4.70モル%以下、4.65モル%以上から4.95モル%以下、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲の量でMgOを含むことがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、4.35モル%以上から5.17モル%以下の量でMgOを含む。
【0082】
ここに記載されたガラス組成物は、CaOを含む。CaOは、ガラスの粘度を低下させることがあり、これにより、成形性、歪み点およびヤング率が向上することがあり、ガラスのイオン交換可能性が改善されることがある。しかしながら、ガラス組成物に添加されるCaOが多すぎると、ガラス組成物の密度とCTEが、望ましくないレベルまで増加することがある。
【0083】
実施の形態において、そのガラス組成物は、0.04モル%以上から1.1モル%以下、例えば、0.05モル%以上から1.1モル%以下、0.1モル%以上から1.0モル%以下、0.2モル%以上から0.9モル%以下、0.3モル%以上から0.8モル%以下、0.4モル%以上から0.7モル%以下、0.5モル%以上から0.6モル%以下、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲の量でCaOを含むことがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、0.04モル%以上から1.03モル%以下の量でCaOを含む。
【0084】
そのガラス組成物は、1種類以上の清澄剤を含む。実施の形態において、清澄剤の例としては、SnO2が挙げられるであろう。実施の形態において、そのガラス組成物は、0.1モル%以上から0.2モル%以下、例えば、0.10モル%以上から0.20モル%以下、0.11モル%以上から0.19モル%以下、0.12モル%以上から0.18モル%以下、0.13モル%以上から0.17モル%以下、0.14モル%以上から0.16モル%以下、0.11モル%以上から0.15モル%以下、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲の量でSnO2を含む。実施の形態において、そのガラス組成物は、0.18モル%以上から0.19モル%以下の量でSnO2を含む。
【0085】
ここに記載されたガラス組成物は、ZnO、SrO、BaO、B2O3、P2O5、Li2O、K2O、およびFe2O3の1つ以上を含まないか、または実質的に含まないことがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、ZnO、SrO、BaO、B2O3、P2O5、Li2O、K2O、およびFe2O3の全てを含まないか、または実質的に含まないことがある。これらの酸化物のいくつかは、高価であることがある、および/または供給が限られることがある。アルカリ土類金属酸化物は、ヤング率を望ましからず増加させ得、イオン交換過程を遅くし得る。B2O3、P2O5、およびK2Oは、イオン交換過程中に与えられる圧縮応力の量を減少させる得る。ここに記載されたガラス物品は、これらの酸化物を必要とせずに、有益な性質を達成することができる。したがって、これらの酸化物は、前記組成物から排除されることがある。ここに用いられているように、「実質的に含まない」という用語は、その成分が、汚染物質として非常に少量で最終的なガラス中に存在するかもしれないが、その成分は、バッチ材料の成分として添加されていないことを意味する。本開示のガラス組成物を製造するために使用される原材料および/または設備の結果として、意図的に添加されていないある不純物または成分が、最終的なガラス組成物中に存在し得る。「混入物」と称される、そのような材料は、ガラス組成物中に微量で存在する。ある成分を「実質的に含まない」組成物は、その成分が、組成物に意図的に添加されなかったが、その組成物は、混入量または微量でその成分をまだ含むかもしれないことを意味する。ある酸化物を「実質的に含まない」組成物は、その酸化物が、0.1モル%以下、例えば、0モル%から0.1モル%の量で存在することを意味する。ここに用いられているように、ある成分を「含まない」ガラス組成物は、その成分(例えば、酸化物)が、混入量または微量でさえも、その組成物中に存在しないことを意味すると定義される。
【0086】
ここに記載されたガラス組成物、およびそのガラス組成物から製造されたガラス物品の物理的性質が、下記に述べられている。
【0087】
実施の形態において、ガラス組成物のヤング率(E)は、72GPa以下、例えば、72.0GPa以下、71.5GPa以下、71.0GPa以下、71GPa以下、70.5 GPa、またはそれより小さいことがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、70GPa以上から72GPa以下、例えば、70.0GPa以上から72.0GPa以下、70.5GPa以上から71.5GPa以下、70.5GPa以上から71.0GPa以下の範囲、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲のヤング率を有することがある。
【0088】
特に明記のない限り、本開示に開示されたヤング率値およびポアソン比値は、「Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts」と題する、ASTM E2001-13に述べられた一般型の共鳴超音波スペクトロスコピー技術によって測定された値を称する。また、特に明記のない限り、ガラス組成物または物品のヤング率およびポアソン比は、その組成物または物品にどのイオン交換過程またはどの他の強化過程も施される前に測定される。具体的に、ガラス組成物または物品のヤング率およびポアソン比は、その組成物または物品がイオン交換媒体に曝露される前、例えば、イオン交換浴中に浸漬される前に測定される。
【0089】
実施の形態において、そのガラス組成物の液相粘度は、1200kP以上、例えば、1300kP以上、1400kP以上、1500kP以上、1600kP以上、1700kP以上、1800kP以上、1900kP以上、2000kP以上、2100kP以上、2200kP以上、2300kP以上、2400kP以上、2500kP以上、2600kP以上、2700kP以上、2800kP以上、2900kP以上、3000kP以上、3100kP以上、3200kP以上、3300kP以上、3400kP以上、3500kP以上、3600kP以上、3700kP以上、3800kP以上、3900kP以上、またはそれより大きいことがある。実施の形態において、そのガラス組成物の液相粘度は、1200kP以上から4000kP以下、例えば、1300kP以上から3900kP以下、1400kP以上から3800kP以下、1500kP以上から3700kP以下、1600kP以上から3600kP以下、1700kP以上から3500kP以下、1800kP以上から3400kP以下、1900kP以上から3300kP以下、2000kP以上から3200kP以下、2100kP以上から3100kP以下、2000kP以上から3000kP以下、2100kP以上から2900kP以下、2200kP以上から2800kP以下、2300kP以上から2700kP以下、2400kP以上から2600kP以下、2500kP以上から4000kP以下の範囲、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲にあることがある。
【0090】
ここに用いられているように、「液相粘度」という用語は、液相温度での溶融ガラスの粘度を称し、ここで、液相温度は、溶融ガラスが溶融温度から冷めるときに、結晶が最初に現れる温度、または温度が室温から上昇するときに、一番最後の結晶が溶け去る温度を称する。特に明記のない限り、本出願に開示された液相粘度値は、以下の方法によって決定される。最初に、ガラスの液相温度が、「Standard Practice for Measurement of Liquidus Temperature of Glass by the Gradient Furnace Method」と題する、ASTM C829-81(2015)にしたがって測定される。次に、その液相温度でのガラスの粘度が、「Standard Practice for Measuring Viscosity of Glass Above the Softening Point」と題する、ASTM C965-96(2012)にしたがって測定される。特に明記のない限り、ガラス組成物または物品の液相粘度および液相温度は、その組成物または物品にどのイオン交換過程またはどの他の強化過程も施される前に測定される。具体的に、ガラス組成物または物品の液相粘度および液相温度は、その組成物または物品がイオン交換溶液に曝露される前、例えば、イオン交換溶液中に浸漬される前に測定される。
【0091】
実施の形態において、そのガラス組成物の液相温度は、1000℃以下、例えば、975℃以下、950℃以下、925℃以下、900℃以下、875℃以下、850℃以下、825℃以下、またはそれより低いことがある。実施の形態において、そのガラス組成物の液相温度は、800℃以上から1000℃以下、例えば、825℃以上から975℃以下、850℃以上から950℃以下、875℃以上から925℃以下、800℃以上から900℃以下の範囲、および先の端点のいずれかから形成された任意と全ての範囲にあることがある。特に明記のない限り、ガラスの液相温度は、「Standard Practice for Measurement of Liquidus Temperature of Glass by the Gradient Furnace Method」と題する、ASTM C829-81(2015)にしたがって測定される。特に明記のない限り、ここでの液相温度は、内部液相温度を称する。
【0092】
上述した組成物から、どの適切な方法によって、例えば、スロット成形法、フロート成形法、圧延法などによって、実施の形態によるガラス物品を成形してもよい。そのガラス組成物およびそれから製造される物品は、それを成形できる方法により特徴付けることができる。例えば、そのガラス組成物は、フロート成形可能(すなわち、フロート法で成形される)、ダウンドロー可能、特に、スロットドロー可能と特徴付けることができる。
【0093】
ここに記載されたガラス物品の実施の形態は、ダウンドロー法で成形することができる。ダウンドロー法により、比較的無垢な表面を有する、厚さが均一なガラス物品が製造される。ガラス物品の平均曲げ強度は、表面傷の量とサイズで制御されるので、接触が最小の無垢な表面は、より高い初期強度を有する。それに加え、ダウンドロー法で成形されたガラス物品は、費用のかかる研削と研磨を行わずに、最終用途に使用できる非常に平らで滑らかな表面を有する。
【0094】
ここに記載されたガラス物品の実施の形態は、スロットドロー法で成形することができる。スロットドロー法において、原材料の溶融ガラスが延伸槽に供給される。延伸槽の底部には、ノズルを備えた開放スロットがあり、そのノズルはスロットの長さに亘り延在している。溶融ガラスは、スロットおよび/またはノズルを通って流れ、連続ガラス物品として徐冷領域へと下方に延伸される。
【0095】
ガラス物品、例えば、ガラスシートを形成するための延伸過程により、欠陥がわずかしかない、薄いガラス物品を形成できるので、その延伸過程が望ましい。ここに記載されたガラス組成物の液相粘度、例えば、1200kP以上の液相粘度は、延伸過程、特に、スロットドロー過程に適合している。ここに記載されたガラス組成物の液相温度は、スロットドロー法などの既存の成形法に対するガラス組成物の適合性も増す。それゆえ、ここに記載されたガラス組成物は、既存の成形法に適合しており、そのガラス組成物から成形されるガラス物品の製造可能性が増す。
【0096】
1つ以上の実施の形態において、ここに記載されたガラス物品は、非晶質微細構造を示すことがあり、結晶または晶子を実質的に含まないことがある。言い換えると、そのガラス物品では、いくつかの実施の形態において、ガラスセラミック材料が除外される。いくつかの実施の形態において、ここに記載されたガラス物品は、ガラスセラミック材料を含むことがある。
【0097】
上述したように、前記ガラス組成物、およびそのガラス組成物から作られた物品は、イオン交換過程で強化することができる。
図1を参照すると、ガラス物品100は、圧縮応力下にある領域を1つ以上有することがある。例えば、ガラス物品100は、ガラス物品100の外面(例えば、外面110、112)から圧縮深さ(DOC、d
1、d
2)まで延在する第1の圧縮応力領域120および/または第2の圧縮応力領域122、並びにDOCからガラス物品100の中央または内部領域まで延在する引張応力またはCT下にある第2の領域(例えば、中央領域130)を有することがある。イオン交換された圧縮応力領域120、122は、ガラス物品100の厚さ(t)を通じて2つ以上の地点で異なる金属酸化物の濃度を有する。両方の領域120および122の圧縮応力は、ガラス物品100の中央領域130中の蓄積張力により釣り合わされている。
【0098】
当該技術分野で通常使用される慣例によれば、圧縮または圧縮応力(CS)は、負の(<0)応力として表され、張力または引張応力は、正の(>0)応力として表される。しかしながら、本説明中ずっと、CSは、正の値または絶対値として表される-すなわち、ここに述べられたように、CS=|CS|である。CSは、ガラスの表面で最大値を有することがあり、CSは、関数にしたがって表面からの距離dにより変動することがある。再び
図1を参照すると、第1の圧縮応力領域120は第一面110から深さd
1まで延在し、第2の圧縮応力領域122は第二面112から深さd
2まで延在する。これらの圧縮応力領域120、122は、共に、ガラス物品100の圧縮領域またはCS領域を画成する。
【0099】
実施の形態において、前記ガラス物品の1つ以上の圧縮応力領域のピーク圧縮応力は、850MPa以上から1400MPa以下、例えば、900MPa以上から1350MPa以下、950MPa以上から1300MPa以下、1000MPa以上から1250MPa以下、1050MPa以上から1200MPa以下、1100MPa以上から1150MPa以下の範囲、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲にあることがある。実施の形態において、そのガラス物品の1つ以上の圧縮応力領域のピーク圧縮応力は、900MPa以上、例えば、950MPa以上、1000MPa以上、1050MPa以上、1100MPa以上、1150MPa以上、1200MPa以上、1250MPa以上、1300MPa以上、1350MPa以上、またはそれより大きいことがある。
【0100】
実施の形態において、ここに記載されたガラス組成物から作られたガラス物品は、13.0以上、例えば、13.1以上、13.2以上、13.3以上、13.4以上、13.5以上、13.6以上、13.7以上、13.8以上、13.9以上、14.0以上、14.1以上、またはそれより大きい、ヤング率値に対するピーク圧縮応力値の比(ピーク圧縮応力値/ヤング率値、CS/E、ここで、ヤング率はGPaで表され、CSはMPaで表される)を有することがある。実施の形態において、そのガラス物品は、13.0以上から18.0以下、例えば、13.1以上から17.5以下、13.2以上から17.0以下、13.3以上から16.5以下、13.4以上から16.0以下、13.5以上から15.5以下、13.6以上から15.0以下、13.7以上から14.5以下、13.8以上から14.1以下、13.9以上から14.0以下の範囲、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲にある、ここに記載されたタイプのCS/E比を有することがある。ここに記載されたCS/E比の計算のために、ヤング率(E)は、ガラス物品を形成するために利用されるガラス基板のヤング率、あるいはガラス物品の中心と同じ組成を有するガラスのヤング率のヤング率である。
【0101】
これらのCS/E比、およびCS/E比の範囲は、ここに記載されたピーク圧縮応力および/または圧縮深さで達成されることがある。例えば、実施の形態において、ガラス物品は、850MPa以上から1400MPa以下の範囲のピーク圧縮応力で、上述したようなCS/E比、またはCS/E比の範囲を有することがある。実施の形態において、ガラス物品は、5マイクロメートルから40マイクロメートルの範囲の圧縮深さで、上述したようなCS/E比、またはCS/E比の範囲を有することがある。実施の形態において、そのガラス物品は、5μm以上から40μm以下の範囲の圧縮深さで、上述したようなCS/E比、またはCS/E比の範囲を有することがある。実施の形態において、そのガラス物品は、ガラス物品の厚さの5%以上から20%以下の範囲の圧縮深さで、上述したようなCS/E比、またはCS/E比の範囲を有することがある。実施の形態において、そのガラス物品は、850MPa以上から1400MPa以下の範囲のピーク圧縮応力と、5μm以上から40μm以下の範囲の圧縮深さで、上述したようなCS/E比、またはCS/E比の範囲を有することがある。
【0102】
イオン交換で達成されることのある高いピーク圧縮応力は、ガラスを、所定のガラス厚さでよりきつい(すなわち、より小さい)曲げ半径に曲げる能力を提供する。この高いピーク圧縮応力は、ガラスが正味の圧縮を維持し、それゆえ、ガラスがきつい半径で曲げられたときに、表面傷を食い止めるのを可能にする。表面近くの傷は、この正味の圧縮下で食い止められている場合、または有効表面圧縮層内にある場合、破損するようには延長できない。
【0103】
図2は、曲げ力202を使用した2枚のプレート200の間のガラス物品100の2点曲げを示す。曲げ力202は、2点曲げ試験装置を使用して印加され、その2枚のプレート200は、一定の力である曲げ力202で、曲げ試験中にガラス物品100に押し付けられる。必要であれば、試験装置に関連する固定具で、曲げ力202がプレート200を介してガラス物品100に印加されているときに、ガラス物品100が折れ線210に対して対称に曲げられることを確実にする。プレート200は、特定のプレート間距離Dが達成されるまで、同調して互いに動かすことができる。ここに用いられているように、曲げ力下での「破損(failure)」という用語は、切断、破壊、剥離、亀裂伝播、永久変形、または物品を本来の目的に適さなくする他の機構を称する。
【0104】
図2において、ガラス物品100の外面110は、曲げによる引張応力に曝されており、これにより、外面からの有効DOCが、物品が曲げられていないときの外面110からのDOCより減少し、一方で、外面112は、曲げによる追加の圧縮応力に曝されている。外面110からの有効DOCは、プレート間距離を増加させると増加し、プレート間距離を減少させる(物品100の外面112が、
図2に示されるように、それ自体に向けて曲げられている場合)と減少する。言い換えると、有効DOCは、曲げられていない状態のDOCから、曲げにより誘発された引張応力からの有効深さを引いたものである。
【0105】
実施の形態において、ガラス物品100では、60℃および93%の相対湿度で、240時間に亘り10mm以下のプレート間距離(D)で2枚のプレート200の間に保持された場合の静止2点曲げ試験中に破損が回避される。例えば、実施の形態において、ガラス物品100では、60℃および93%の相対湿度で、240時間に亘り10mmから1mmのプレート間距離(D)に、2枚のプレートの間に保持された場合の静止2点曲げ試験中に破損が回避される。プレート間距離(D)は、例えば、10mm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、1mm、またはこれらの値のいずれかから形成された範囲に入る任意の距離であることがある。
【0106】
DOCは、イオン交換処理および測定されている物品の厚さに応じて、表面応力計または散乱光偏光器(SCALP)により測定されることがある。基板中の応力が、カリウムイオンを基板中に交換することによって、生じている場合、表面応力計、例えば、SFM-6000(有限会社折原製作所、日本国)を使用して、圧縮深さを測定する。応力が、ナトリウムイオンを基板中に交換することによって、生じており、測定されている物品が約400マイクロメートルより厚い場合、SCALPを使用して、圧縮深さと最大中央張力(CT)を測定する。基板中の応力が、カリウムイオンとナトリウムイオンの両方を基板中に交換することによって、生じており、測定されている物品が約400マイクロメートルより厚い場合、圧縮深さとCTは、SCALPで測定される。理論で束縛する意図はないが、ナトリウムイオンの交換深さは圧縮深さを表すことがあり、一方で、カリウムイオンの交換深さは圧縮応力の大きさの変化(必ずしも、圧縮から引張への応力の変化ではない)を表すことがある。ここに用いられているように、「層の深さ」は、イオン(例えば、ナトリウム、カリウム)が基板中に交換された深さを意味する。本開示を通じて、最大中央張力がSCALPによって直接測定できない場合(測定されている物品が約400マイクロメートルより薄い場合など)、最大中央張力は、基板の厚さと圧縮深さの2倍との間の差で除算された最大圧縮応力と圧縮深さの積で近似することができ、ここで、圧縮応力と圧縮深さはFSMで測定される。
【0107】
基板厚さが約400マイクロメートルより厚い場合、屈折近視野(RNF)法を使用して、応力プロファイルのグラフ表示を導いてもよい。応力プロファイルのグラフ表示を導くために、RNF法が利用される場合、SCALPによって与えられる最大CT値がRNF法に利用される。詳しくは、RNFで測定された応力プロファイルは、SCALP測定により与えられる最大CT値に対して力平衡され、較正される。このRNF法は、ここに全てが引用される、「Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample」と題する米国特許第8854623号明細書に記載されている。詳しくは、このRNF法は、基準ブロックに隣接してガラス物品を配置する工程、1Hzから50Hzの速度で直交偏光の間で切り換えられる偏光切替光線を生成する工程、その偏光切替光線の出力量を測定する工程、および偏光切替基準信号を生成する工程を含み、直交偏光の各々の出力の測定量は互いの50%以内にある。この方法は、偏光切替光線を、ガラス試料中の異なる深さについて、ガラス試料および基準ブロックに透過させ、次いで、リレー光学系を使用して、透過した偏光切替光線を信号光検出器に中継する工程をさらに含み、その信号光検出器は偏光切替検出器信号を生成する。この方法は、検出器信号を基準信号で割って、正規化検出器信号を形成する工程、およびその正規化検出器信号からガラス試料の特徴を示すプロファイルを決定する工程も含む。
【0108】
SCALP測定が行われる場合、その測定は、エストニア国、タリン所在のGlassStress Ltd.から入手できるSCALP偏光器(例えば、SCALP-04またはSCALP-05)を使用して行われる。少なくとも1つの応力関連の特徴を特徴付けるために試料を測定するときに、偏光器の測定雑音を減少させるための正確な試料速度SSおよび曝露時間tEは、数多くの要因に依存する。これらの要因としては、イメージセンシング装置の特徴(例えば、利得、画像取得速度(フレーム/秒)、画素サイズ、内部画素平均技術など)、並びに無応力関連(NSR)散乱特徴の性質、入射光線の強度、使用する偏光状態の数などが挙げられる。他の要因としては、レーザ光源からの光線の測定波長、および散乱光線の強度が挙げられる。例示の測定波長としては、640ナノメートル(nm)、518nm、および405nmが挙げられる。例示の曝露時間は、0.05ミリ秒から100ミリ秒に及び得る。例示のフレームレートは、10から200フレーム/秒に及び得る。光学的遅れの例示の計算は、0.1秒から10秒の測定時間tMに亘り2から200フレームを利用することができる。
【0109】
実施の形態において、そのガラス物品は、20MPa以上から400MPa以下、例えば、50MPa以上から350MPa以下、75MPa以上から300MPa以下、100MPa以上から250MPa以下、150MPa以上から200MPa以下の範囲、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲の最大CTを有することがある。
【0110】
実施の形態において、領域120および領域122のDOCは同等であることがあり、よって、ガラス物品の応力プロファイルは対称である。他の実施の形態において、領域120および領域122のDOCは異なることがある。実施の形態において、そのガラス物品のDOCは、5μm以上から40μm以下、例えば、10μm以上から35μm以下、15μm以上から30μm以下、20μm以上から25μm以下、20μm以上から40μm以下の範囲、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲にあることがある。実施の形態において、そのガラス物品のDOCは、5μm以上、例えば、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、またはそれより大きいことがある。
【0111】
DOCは、ガラス物品100の厚さ(t)の一部としても報告されることがある。実施の形態において、そのガラス物品は、ガラス物品の厚さの5%(0.05t)以上からガラス物品の厚さの20%(0.20t)以下、例えば、ガラス物品の厚さの10%(0.10t)以上からガラス物品の厚さの15%(0.15t)以下の範囲、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲の圧縮深さ(DOC)を有することがある。
【0112】
ガラス物品100の厚さ(t)は、外面110と外面112との間で測定される。実施の形態において、ガラス物品100の厚さは、4mm以下、例えば、3.5mm以下、3mm以下、2.5mm以下、2mm以下、1.5mm以下、1mm以下、1000μm以下、975μm以下、950μm以下、925μm以下、900μm以下、875μm以下、850μm以下、825μm以下、800μm以下、775μm以下、750μm以下、725μm以下、700μm以下、675μm以下、650μm以下、625μm以下、600μm以下、575μm以下、550μm以下、525μm以下、500μm以下、475μm以下、450μm以下、425μm以下、400μm以下、375μm以下、350μm以下、325μm以下、300μm以下、275μm以下、250μm以下、225μm以下、200μm以下、175μm以下、150μm以下、125μm以下、100μm以下、75μm以下、50μm以下、25μm以下、またはそれより小さいことがある。実施の形態において、ガラス物品100の厚さは、15μm以上から4mm以下、例えば、25μm以上から3.5mm以下、50μm以上から3mm以下、75μm以上から2.5mm以下、100μm以上から2mm以下、125μm以上から2.5mm以下、150μm以上から2mm以下、175μm以上から1.5mm以下、200μm以上から1mm以下、225μm以上から1000μm以下、250μm以上から975μm以下、275μm以上から950μm以下、300μm以上から925μm以下、325μm以上から900μm以下、350μm以上から875μm以下、375μm以上から850μm以下、400μm以上から825μm以下、425μm以上から800μm以下、450μm以上から775μm以下、475μm以上から750μm以下、500μm以上から725μm以下、525μm以上から700μm以下、550μm以上から675μm以下、575μm以上から650μm以下、600μm以上から625μm以下、15μm以上から200μm以下の範囲、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲にあることがある。実施の形態において、そのガラス物品を形成するのに利用されるガラス基板は、そのガラス物品に望ましい厚さと同じ厚さを有することがある。
【0113】
ガラス物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層は、ガラス基板をイオン交換媒体に曝露することによって、ガラス物品に形成されることがある。実施の形態において、そのイオン交換媒体は、溶融カリウム塩を含む溶融塩浴などの溶融塩浴であることがある。実施の形態において、イオン交換媒体は、50質量%以上、例えば、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、または100質量%の量のカリウム塩を含むことがある。実施の形態において、イオン交換媒体は、50質量%以上から100質量%以下、例えば、60質量%以上から95質量%以下、70質量%以上から90質量%以下、80質量%以上から100質量%以下の範囲、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲でカリウム塩を含む。実施の形態において、カリウム塩はKNO3であることがある。実施の形態において、イオン交換媒体中の残りの質量パーセントの全てまたは一部は、NaNO3などの溶融硝酸塩であることがある。
【0114】
ガラス基板は、そのガラス基板をイオン交換媒体の浴中に浸漬すること、ガラス基板上にイオン交換媒体を噴霧すること、またはガラス基板にイオン交換媒体を他のやり方で物理的に施すことによって、イオン交換媒体に曝露されることがある。そのガラス基板は、ここに記載されたガラス組成物のいずれから形成されてもよい。イオン交換過程が行われた後、ガラス物品の表面の組成は、形成されたままのガラス基板(例えば、イオン交換過程を経る前のガラス基板)の組成と異なることがあることを理解すべきである。これは、形成されたままのガラス中のアルカリ金属イオンの一種、例えば、Na+が、より大きいアルカリ金属イオン、例えば、K+で置換されることによりもたらされる。しかしながら、ガラス物品の中心のガラス組成は、いくつかの実施の形態において、形成されたままのガラス基板と同じまたは実質的に同じ組成であることがある。特に明記のない限り、本出願に開示されたガラス組成物は、組成がイオン交換過程の影響を受けない(または影響が最小である)、すなわち、形成されたままのガラス基板の組成である、ガラス物品の中心でのガラス物品の組成物である。この理由のために、ガラス物品の中心での組成と同じ組成を有するガラスは、ガラス基板と同じ性質を有すると予測される。ここに用いられているように、ガラス物品の中心は、ガラス物品の厚さがtで表される、その全表面から少なくとも0.5tの距離にあるガラス物品内の任意の位置を称する。
【0115】
イオン交換媒体は、ガラス基板に曝露された際に、実施の形態によれば、350℃以上から480℃以下、例えば、360℃以上から470℃以下、370℃以上から460℃以下、380℃以上から450℃以下、390℃以上から440℃以下、400℃以上から430℃以下、410℃以上から420℃以下、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲の温度であることがある。
【0116】
実施の形態において、そのガラス基板は、1時間以上から24時間以下、例えば、2時間以上から20時間以下、4時間以上から16時間以下、6時間以上から12時間以下、8時間以上から12時間以下、1時間以上から8時間以下、および先の値のいずれかから形成された任意と全ての範囲の期間に亘りイオン交換媒体に曝露されることがある。
【0117】
そのガラス物品に追加の加工を行ってもよい。実施の形態において、そのガラス物品は、イオン交換した後に、エッチングされることがある。そのエッチングは、ガラス物品の厚さを減少させるために、および/または所望の形状を達成するために、利用されることがある。実施の形態において、そのガラス物品は、そのガラス物品を形成するのに利用されるガラス基板と同じまたは実質的に同じ厚さを有することがある。
【0118】
ここに記載されたガラス物品は、別の物品、例えば、ディスプレイを備えた物品(またはディスプレイ物品)(例えば、携帯電話、腕時計、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステムなどを含む消費者向け電子機器)、建築物品、輸送物品(例えば、自動車、列車、航空機、船舶など)、電化製品、またはある程度の透明性、耐引掻性、耐摩耗性またはその組合せの恩恵を受けるであろう任意の物品に組み込まれることがある。ここに開示されたガラス物品のいずれかを組み込んだ例示の物品が、
図3Aおよび3Bに示されている。詳しくは、
図3Aおよび3Bは、前面304、背面306、および側面308を有する筐体302を備えた消費者向け電気製品300を示している。その筐体の少なくとも部分的に中にある、または完全に筐体内にある電気部品としては、少なくとも制御装置320、メモリ322、および筐体302の前面304にある、またはそれに隣接しているディスプレイ310が挙げられるであろう。ディスプレイ310は、例えば、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、または有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであることがある。
【0119】
カバー基板312が、ディスプレイ310を覆って配置されるように、筐体302の前面304に、またはそれを覆って配置されることがある。カバー基板312は、ここに開示されたガラス物品のいずれを含んでもよく、「カバーガラス」と称されることもある。カバー基板312は、ディスプレイ310および消費者向け電気製品300の他の部品(例えば、制御装置320およびメモリ322)を損傷から保護する働きをすることができる。いくつかの実施の形態において、カバー基板312は、接着剤でディスプレイ310に結合されることがある。いくつかの実施の形態において、カバー基板312は、筐体302の前面304の全てまたは一部を画成することがある。いくつかの実施の形態において、カバー基板312は、筐体302の前面304および筐体302の側面308の全てまたは一部を画成することがある。いくつかの実施の形態において、消費者向け電気製品300は、筐体302の背面306の全てまたは一部を画成するカバー基板を備えることがある。
【実施例】
【0120】
以下の実施例によって、実施の形態がさらに解明されるであろう。これらの実施例は、上述した実施の形態に限定されないことを理解すべきである。
【0121】
従来のガラス形成方法によって、ガラス組成物を調製した。分析された組成が、下記の表1に列挙されている。表1の組成物1~13は、本出願の実施の形態によるガラス組成物である。表1の組成物Aは、類似の酸化物で作られた比較の組成物である。表1において、全ての成分はモル%で表され、報告されていない成分は、検出されなかった。一般に、表1における0.01モル%以下の量は、混入量と考えられ、これらの成分は、その組成物に意図的に添加されなかった。
【0122】
表2には、表1の組成物の材料特性が列挙されている。表2に報告されたヤング率(E)値は、本明細書に開示された方法にしたがって測定した。剛性率値は、「Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts」と題する、ASTM E2001-13に述べられた一般型の共鳴超音波スペクトロスコピー技術によって測定した。
【0123】
表2に列挙された追加の材料特性に、密度(密度値は、ASTM C693-93(2013)の浮力法を使用して決定した);ファイバ延伸技術を使用して、百万分率(ppm)毎セ氏度(ppm/℃)で測定されたCTE(0℃から300℃の範囲における);歪み点、徐冷点、および軟化点(歪み点と軟化点は、ASTM C336-71(2015)のファイバ延伸法を使用して決定し、軟化点は、ASTM C338-93(2013)のファイバ延伸法を使用して決定した);ここに述べられたように決定された液相温度、ここに述べられたように決定された液相粘度;およびガラスの複屈折に関連する、応力光学係数(SOC)がある。特に明記のない限り、SOCは、その内容がここに全て引用される、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題するASTM基準C770-16に記載された手順C(ガラスディスク法)にしたがって測定される。特に明記のない限り、表2に列挙された特性は、組成物または物品に、イオン交換過程、または他の強化過程を施す前に測定した。膨脹計をASTM E228(「Standard Test Method for Linear Thermal Expansion of Solid Materials With a Push-Rod Dilatometer」)にしたがって設定した。ファイバ延伸試験について、膨脹計に取り付けられた特定の組成物のファイバ試料を0℃の氷浴中に入れ、次いで、300℃の恒温炉に入れて、その温度範囲に亘る平均線熱膨張係数を決定した。ファイバ試料は、火炎加工により調製した。表2において、液相温度は、組成物5については達成されず、それゆえ、950℃未満と報告されており、液相粘度は、3823kP超と報告されている。液相温度が達成されなかった表2の組成物の全てでは、液相は苦土かんらん石であった。
【0124】
表3には、表1の組成物1~13および組成物Aのイオン交換の期間と特性が含まれている。表3に報告されたイオン交換過程について、各組成物の試料を、410℃の温度で100質量%のKNO3からなる溶融塩浴中に浸漬した。各試料の厚さは、0.8mmであった。圧縮応力と層の深さは、FSMで測定した。
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
上記の表に報告された結果により示されるように、本出願の組成物は、化学強化されたときに、曲げられる用途に利用される既存の組成物と類似の性能を達成することができつつ、スロットドロー技術などの延伸技術に適合する、増加した液相粘度とより低い液相温度を示す。それに加え、表3の結果は、ここに記載されたガラス組成物は、20μm以上のDOLとの組合せで、13.0以上のCS/E比を達成できること、およびその組成物の少なくともいくつかが、40μm以上のDOLとの組合せで13.0のCS/E比を達成できることを示している。
【0139】
様々な実施の形態をここに記載してきたが、それらは、例示のために提示されたものであって、限定するものではない。ここに提示された教示と指針に基づいて、開示された実施の形態の等価物の意味と範囲に適用と変更が入ることが意図されているのが明白なはずである。したがって、本開示の精神と範囲から逸脱せずに、ここに開示された実施の形態に、形態と詳細の様々な変更を行えることが、当業者に明白となるであろう。ここに提示された実施の形態の要素は、必ずしも互いに排他的ではなく、当業者が認識するであろうように、様々な状況に対処するように置き換えられてもよい。
【0140】
本開示の実施の形態は、同一または機能的に類似の要素を示すために同様の参照数字が使用されている、添付図面に示されるように、その実施の形態を参照してここに詳しく記載されている。「1つの実施の形態」、「ある実施の形態」、「いくつかの実施の形態」、「特定の実施の形態において」などへの言及は、記載された実施の形態が、特定の特徴、構造、または特性を含み得ることを示すが、全ての実施の形態が必ずしもその特定の特徴、構造、または特性を含むとは限らないことを示す。さらに、このような句は、必ずしも同じ実施の形態を指すものではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が、ある実施の形態に関連して記載されている場合、明示的に記載されているか否かにかかわらず、他の実施の形態に関連してそのような特徴、構造、または特性に影響を与えることは当業者の知識の範囲内であると考えられる。
【0141】
実施例は、本開示を例示するものであるが、限定するものではない。当該技術分野で通常遭遇する様々な条件およびパラメータの、当業者には明らかであろう他の適切な変更および適応は、本開示の精神および範囲内にある。
【0142】
要素または成分を記述する不定冠詞「a」および「an」は、これらの要素または成分の1つまたは複数が存在することを意味する。これらの冠詞は、修飾された名詞が単数名詞であることを意味するために慣例的に使用されるが、本明細書で使用される場合、冠詞「a」および「an」は、特定の例で特に明記されない限り、複数形も含む。同様に、本明細書で使用される定冠詞「the」も、特定の例で特に断りのない限り、修飾名詞が単数形または複数形であることを意味する。
【0143】
ここに用いられているように、方向を示す用語-例えば、上、下、右、左、前、後、上部、底部、内側、外側-は、描かれた図面に関してのみ使用され、絶対的な向きを暗示する意図はない。
【0144】
ここに用いられているような「実質的な」、「実質的に」という用語、およびその変形は、記述された特徴が、ある値または記述と等しいかまたはほぼ等しいことを示すことを意図している。例えば、「実質的に平ら」な表面は、平らなまたはほぼ平らな表面を示すことを意図している。さらに、「実質的に」は、2つの値が等しいか、ほぼ等しいことを示すことを意図している。いくつかの実施の形態において、「実質的に」は、互いの約10%以内、例えば、互いの約5%以内、または互いの約2%以内の値を示すことがある。
【0145】
本明細書で使用される言い回しまたは用語は、説明のためのものであり、限定するためのものではないことを理解されたい。本開示の広さおよび範囲は、上述の例示の実施の形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその等価物に従って定義されるべきである。
【0146】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0147】
実施形態1
ガラスであって、
68.5モル%以上から69.5モル%以下のSiO2、
10.0モル%以上から10.5モル%以下のAl2O3、
4.05モル%以上から5.25モル%以下のMgO、
0.04モル%以上から1.1モル%以下のCaO、
14.5モル%以上から15.8モル%以下のNa2O、および
0.1モル%以上から0.2モル%以下のSnO2、
を含む、ガラス。
【0148】
実施形態2
前記ガラスがLi2Oを実質的に含まない、実施形態1に記載のガラス。
【0149】
実施形態3
前記ガラスがK2Oを実質的に含まない、実施形態1または2に記載のガラス。
【0150】
実施形態4
前記ガラスがZnOを実質的に含まない、実施形態1から3のいずれかに記載のガラス。
【0151】
実施形態5
前記ガラスがSrOを実質的に含まない、実施形態1から4のいずれかに記載のガラス。
【0152】
実施形態6
前記ガラスがBaOを実質的に含まない、実施形態1から5のいずれかに記載のガラス。
【0153】
実施形態7
前記ガラスがB2O3を実質的に含まない、実施形態1から6のいずれかに記載のガラス。
【0154】
実施形態8
前記ガラスがP2O5を実質的に含まない、実施形態1から7のいずれかに記載のガラス。
【0155】
実施形態9
前記ガラスがFe2O3を実質的に含まない、実施形態1から8のいずれかに記載のガラス。
【0156】
実施形態10
前記ガラスが、
68.80モル%以上から69.23モル%以下のSiO2、
10.01モル%以上から10.32モル%以下のAl2O3、
4.35モル%以上から5.17モル%以下のMgO、
0.04モル%以上から1.03モル%以下のCaO、
14.91モル%以上から15.56モル%以下のNa2O、および
0.18モル%以上から0.19モル%以下のSnO2、
を含む、実施形態1から9のいずれかに記載のガラス。
【0157】
実施形態11
Al2O3+MgO+CaO≧15モル%
である、実施形態1から10のいずれかに記載のガラス。
【0158】
実施形態12
前記ガラスが1200kP以上の液相粘度を有する、実施形態1から11のいずれかに記載のガラス。
【0159】
実施形態13
前記ガラスが1200kP以上から4000kP以下の液相粘度を有する、実施形態1から12のいずれかに記載のガラス。
【0160】
実施形態14
前記ガラスが1000℃以下の液相温度を有する、実施形態1から13のいずれかに記載のガラス。
【0161】
実施形態15
前記ガラスが800℃以上から1000℃以下の液相温度を有する、実施形態1から14のいずれかに記載のガラス。
【0162】
実施形態16
前記ガラスが72GPa以下のヤング率を有する、実施形態1から15のいずれかに記載のガラス。
【0163】
実施形態17
前記ガラスが70GPa以上から72GPa以下のヤング率を有する、実施形態1から16のいずれかに記載のガラス。
【0164】
実施形態18
実施形態1から17のいずれかに記載のガラスから作られたガラス物品であって、4mm以下の厚さを有するガラス物品。
【0165】
実施形態19
前記厚さが15μm以上から200μm以下である、実施形態18に記載のガラス物品。
【0166】
実施形態20
ガラス物品において、
前記ガラス物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層であって、MPaで測定されるピーク圧縮応力値を有する圧縮応力層、
を含み、
実施形態1から17のいずれかに記載のガラスから作られたガラス基板をイオン交換することによって形成されるガラス物品。
【0167】
実施形態21
イオン交換前の前記ガラス基板のGPaで表されるヤング率値に対する前記ピーク圧縮応力値の比が、13.0以上である、実施形態20に記載のガラス物品。
【0168】
実施形態22
ガラス物品において、
前記ガラス物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層であって、MPaで測定されるピーク圧縮応力値を有する圧縮応力層、
を含み、
68.5モル%以上から69.5モル%以下のSiO2、
10.0モル%以上から10.5モル%以下のAl2O3、
4.05モル%以上から5.25モル%以下のMgO、
0.04モル%以上から1.1モル%以下のCaO、
14.5モル%以上から15.8モル%以下のNa2O、および
0.1モル%以上から0.2モル%以下のSnO2、
を含む前記ガラス物品の中心での組成、
を有するガラス物品。
【0169】
実施形態23
GPaで測定されるヤング率値に対する前記ピーク圧縮応力値の比が13.0以上であり、該ヤング率値が、前記ガラス物品の中心と同じ組成を有するガラスのヤング率である、実施形態22に記載のガラス物品。
【0170】
実施形態24
前記ヤング率値に対するピーク圧縮応力値の比が18.0以下である、実施形態21または23に記載のガラス物品。
【0171】
実施形態25
前記圧縮深さが5μm以上である、実施形態20から24のいずれかに記載のガラス物品。
【0172】
実施形態26
前記圧縮深さが5μm以上から40μm以下である、実施形態20から25のいずれかに記載のガラス物品。
【0173】
実施形態27
前記圧縮深さが20μm以上である、実施形態20から26のいずれかに記載のガラス物品。
【0174】
実施形態28
前記圧縮深さが20μm以上から40μm以下である、実施形態20から27のいずれかに記載のガラス物品。
【0175】
実施形態29
前記圧縮深さが、前記ガラス物品の厚さの5%から20%の範囲にある、実施形態20から28のいずれかに記載のガラス物品。
【0176】
実施形態30
前記ピーク圧縮応力値が、850MPa以上から1400MPa以下である、実施形態20から29のいずれかに記載のガラス物品。
【0177】
実施形態31
前記ピーク圧縮応力値が900MPa以上である、実施形態20から30のいずれかに記載のガラス物品。
【0178】
実施形態32
前記ガラス物品が、4mm以下の厚さ有する、実施形態20から31のいずれかに記載のガラス物品。
【0179】
実施形態33
前記ガラス物品が、15μm以上から200μm以下の厚さを有する、実施形態20から32のいずれかに記載のガラス物品。
【0180】
実施形態34
方法において、
ガラス基板をイオン交換媒体と接触させて、ガラス物品の表面から圧縮深さまで延在する圧縮応力層を含むガラス物品を形成する工程、
を含み、
前記ガラス基板は、実施形態1から17のいずれかに記載のガラスから作られ、前記圧縮応力層は、MPaで測定されるピーク圧縮応力値を有する、方法。
【0181】
実施形態35
イオン交換前の前記ガラス基板のGPaで測定されたヤング率値に対するピーク圧縮応力値の比が、13.0以上である、実施形態34に記載の方法。
【0182】
実施形態36
前記ヤング率値に対するピーク圧縮応力値の比が、18.0以下である、実施形態35に記載の方法。
【0183】
実施形態37
前記イオン交換媒体が、50質量%以上のカリウム塩を含む、実施形態34から36のいずれかに記載の方法。
【0184】
実施形態38
前記イオン交換媒体がKNO3を含む、実施形態34から37のいずれかに記載の方法。
【0185】
実施形態39
前記接触させる工程が、1時間以上から24時間以下の期間に亘る、実施形態34から38のいずれかに記載の方法。
【0186】
実施形態40
前記接触させる工程が、1時間以上から8時間以下の期間に亘る、実施形態34から39のいずれかに記載の方法。
【0187】
実施形態41
前記イオン交換媒体が、350℃以上から480℃以下の温度である、実施形態34から40のいずれかに記載の方法。
【0188】
実施形態42
前記ガラス物品をエッチングする工程をさらに含む、実施形態34から41のいずれかに記載の方法。
【0189】
実施形態43
前記圧縮深さが5μm以上である、実施形態34から42のいずれかに記載の方法。
【0190】
実施形態44
前記圧縮深さが5μm以上から40μm以下である、実施形態34から43のいずれかに記載の方法。
【0191】
実施形態45
前記圧縮深さが20μm以上である、実施形態34から44のいずれかに記載の方法。
【0192】
実施形態46
前記圧縮深さが20μm以上から40μm以下である、実施形態34から45のいずれかに記載の方法。
【0193】
実施形態47
前記圧縮深さが、前記ガラス物品の厚さの5%から20%の範囲にある、実施形態34から46のいずれかに記載の方法。
【0194】
実施形態48
前記ピーク圧縮応力値が、850MPa以上から1400MPa以下である、実施形態34から47のいずれかに記載の方法。
【0195】
実施形態49
前記ピーク圧縮応力値が900MPa以上である、実施形態34から48のいずれかに記載の方法。
【0196】
実施形態50
前記ガラス物品が、4mm以下の厚さ有する、実施形態34から49のいずれかに記載の方法。
【0197】
実施形態51
前記ガラス物品が、15μm以上から200μm以下の厚さを有する、実施形態34から50のいずれかに記載の方法。
【0198】
実施形態52
電子機器において、
電子ディスプレイ、および
前記電子ディスプレイを覆って配置された、実施形態18から33のいずれかに記載のガラス物品、
を備える電子機器。
【0199】
実施形態53
前面、背面、および側面を有する筐体、および
前記筐体内に少なくとも部分的に配置された電気部品であって、制御装置、メモリ、および前記電子ディスプレイを含む電気部品、
をさらに備え、
前記電子ディスプレイは、前記筐体の前面にまたはそれに隣接して配置され、前記ガラス物品は、前記筐体の少なくとも一部を形成する、実施形態52に記載の電子機器。
【符号の説明】
【0200】
100 ガラス物品
110 外面、第一面
112 外面、第二面
120 第1の圧縮応力領域
122 第2の圧縮応力領域
130 中央領域
200 プレート
202 曲げ力
210 折れ線
300 消費者向け電気製品
304 前面
306 背面
308 側面
310 ディスプレイ
320 制御装置
322 メモリ
【国際調査報告】