IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エムケーエス インスツルメンツ,インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-506562マイクロ波放射エネルギーを利用したALDプロセスのマイクロ波アシスト表面化学アニーリング用マイクロ波システム
<>
  • 特表-マイクロ波放射エネルギーを利用したALDプロセスのマイクロ波アシスト表面化学アニーリング用マイクロ波システム 図1
  • 特表-マイクロ波放射エネルギーを利用したALDプロセスのマイクロ波アシスト表面化学アニーリング用マイクロ波システム 図2
  • 特表-マイクロ波放射エネルギーを利用したALDプロセスのマイクロ波アシスト表面化学アニーリング用マイクロ波システム 図3
  • 特表-マイクロ波放射エネルギーを利用したALDプロセスのマイクロ波アシスト表面化学アニーリング用マイクロ波システム 図4
  • 特表-マイクロ波放射エネルギーを利用したALDプロセスのマイクロ波アシスト表面化学アニーリング用マイクロ波システム 図5
  • 特表-マイクロ波放射エネルギーを利用したALDプロセスのマイクロ波アシスト表面化学アニーリング用マイクロ波システム 図6
  • 特表-マイクロ波放射エネルギーを利用したALDプロセスのマイクロ波アシスト表面化学アニーリング用マイクロ波システム 図7
  • 特表-マイクロ波放射エネルギーを利用したALDプロセスのマイクロ波アシスト表面化学アニーリング用マイクロ波システム 図8
  • 特表-マイクロ波放射エネルギーを利用したALDプロセスのマイクロ波アシスト表面化学アニーリング用マイクロ波システム 図9
  • 特表-マイクロ波放射エネルギーを利用したALDプロセスのマイクロ波アシスト表面化学アニーリング用マイクロ波システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】マイクロ波放射エネルギーを利用したALDプロセスのマイクロ波アシスト表面化学アニーリング用マイクロ波システム
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20240206BHJP
   C23C 16/511 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/46 B
C23C16/511
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547068
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 US2022014816
(87)【国際公開番号】W WO2022169792
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】63/145,178
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507402565
【氏名又は名称】エムケーエス インスツルメンツ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INC.
【住所又は居所原語表記】2 Tech Drive,Suite 201,Andover,Massachusetts 01810 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】トレンホルム ケネス
(72)【発明者】
【氏名】ポキドヴ イリヤ
(72)【発明者】
【氏名】カマレヒ モハンマド
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084BB05
2G084CC05
2G084CC06
2G084CC08
2G084CC14
2G084CC33
2G084DD04
2G084DD13
2G084DD20
2G084DD25
2G084DD32
2G084DD42
2G084DD44
2G084DD51
2G084DD53
2G084EE01
2G084HH05
2G084HH20
2G084HH22
2G084HH23
2G084HH25
2G084HH43
2G084HH52
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA08
4K030FA01
4K030GA02
4K030HA01
4K030JA18
4K030KA23
4K030KA30
4K030LA15
(57)【要約】
マイクロ波アシスト熱原子層蒸着システム内で使用するためのマイクロ波システムが開示され、マイクロ波システムは、少なくとも1つのマイクロ波信号を出力するように構成された少なくとも1つのマイクロ波発生器と、少なくとも1つのマイクロ波発生器と通じ、マイクロ波信号を受け取るように構成された少なくとも1つの導波管組立体と、導波管組立体内に配置され、導波管組立体から少なくとも1つのマイクロ波発生器へのマイクロ波信号の後方散乱を低減又は除去するように構成された1又は2以上のアイソレータと、導波管組立体内に配置され、アイソレータからマイクロ波信号を受け取りし、マイクロ波信号を調整するように構成された少なくとも1つの調整装置と、導波管組立体と通じ、マイクロ波信号の少なくとも一部をマイクロ波アシスト熱原子層蒸着システムの少なくとも1つの処理チャンバに向けるように構成された少なくとも1つのマイクロ波送出装置と、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波アシスト熱原子層堆積システム内で使用するためのマイクロ波システムであって、
少なくとも1つのマイクロ波信号を出力するように構成された少なくとも1つのマイクロ波発生器と、
前記少なくとも1つのマイクロ波発生器と通じ、前記少なくとも1つのマイクロ波信号を受け取るように構成された少なくとも1つの導波管組立体と、
前記少なくとも1つの導波管組立体内に配置され、前記少なくとも1つの導波管組立体から前記少なくとも1つのマイクロ波発生器への前記少なくとも1つのマイクロ波信号の後方散乱を低減又は除去するように構成された少なくとも1つのアイソレータと、
前記少なくとも1つの導波管組立体内に配置された少なくとも1つの調整装置であって、前記少なくとも1つの調整装置は、前記少なくとも1つのアイソレータから前記少なくとも1つのマイクロ波信号を受け取り、前記少なくとも1つのマイクロ波信号を調整するように構成されている、少なくとも1つの調整装置と、
前記少なくとも1つの導波管組立体と通じ、前記少なくとも1つのマイクロ波信号の少なくとも一部を前記マイクロ波アシスト熱原子層堆積システムの少なくとも1つの処理チャンバに導くように構成された、少なくとも1つのマイクロ波送出装置と、
を備える、マイクロ波システム。
【請求項2】
約10Wから10kWの電力を有する少なくとも1つのマイクロ波信号を出力するように構成された少なくとも1つの固体マイクロ波発生器をさらに備える、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項3】
約500Wから2kWの電力を有する少なくとも1つのマイクロ波信号を出力するように構成された少なくとも1つの固体マイクロ波発生器をさらに備える、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項4】
1000MHzから4000MHzの範囲の少なくとも1つのマイクロ波信号周波数を出力するように構成された少なくとも1つの固体マイクロ波発生器をさらに備える、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項5】
5700MHzから5800MHzの範囲の少なくとも1つのマイクロ波信号周波数を出力するように構成された少なくとも1つの固体マイクロ波発生器をさらに備える、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項6】
2400MHzから2500MHzの範囲の少なくとも1つのマイクロ波信号周波数を出力するように構成された少なくとも1つの固体マイクロ波発生器をさらに備える、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの調整装置は、前記少なくとも1つのマイクロ波信号を自律的に調整するように構成された自動調整装置を含む、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの導波管組立体内に配置された少なくとも1つの検出装置をさらに備え、前記少なくとも1つの検出装置は、前記少なくとも1つの調整装置と通じる、請求項7に記載のマイクロ波システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの検出装置は、精密電力検出器(PPD)を含む、請求項8に記載のマイクロ波システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの調整装置は、前記少なくとも1つのマイクロ波信号の調整を可能にするように構成された手動調整装置を含む、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの調整装置と通じる少なくとも1つの方向性結合器をさらに備える、請求項10に記載のマイクロ波システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのマイクロ波送出装置は、少なくとも1つの直線偏波マイクロ波信号を放出するように構成されている、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つのマイクロ波送出装置は、少なくとも1つの円偏波マイクロ波信号を放出するように構成されている、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項14】
前記少なくとも1つのマイクロ波送出装置は、少なくとも1つの楕円偏波マイクロ波信号を放出するように構成されている、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのマイクロ波送出装置は、TE11モードを有する少なくとも1つのマイクロ波信号を放出するように構成されている、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項16】
前記少なくとも1つのマイクロ波送出装置は、TM01モードを有する少なくとも1つのマイクロ波信号を放出するように構成されている、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項17】
前記少なくとも1つのマイクロ波送出装置は、第1のマイクロ波信号を放出するように構成された第1のマイクロ波送出装置と、少なくとも第2のマイクロ波信号を送出するように構成された少なくとも第2のマイクロ波送出装置とを備える、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項18】
前記第1のマイクロ波送出装置から放出される前記第1のマイクロ波信号の偏波と、前記少なくとも第2のマイクロ波送出装置から放出される前記少なくとも第2のマイクロ波信号の偏波とは、同じ偏波である、請求項17に記載のマイクロ波システム。
【請求項19】
前記第1のマイクロ波送出装置から放出される前記第1のマイクロ波信号の偏波と、前記少なくとも第2のマイクロ波送出装置から放出される前記少なくとも第2のマイクロ波信号の偏波とは、異なる偏波である、請求項17に記載のマイクロ波システム。
【請求項20】
前記第1のマイクロ波送出装置から放出される前記第1のマイクロ波信号の波長と、前記少なくとも第2のマイクロ波送出装置から放出される前記少なくとも第2のマイクロ波信号の波長とは、同じ波長である、請求項17に記載のマイクロ波システム。
【請求項21】
前記第1のマイクロ波送出装置から放出される前記第1のマイクロ波信号の波長と、前記少なくとも第2のマイクロ波送出装置から放出される前記少なくとも第2のマイクロ波信号の波長とは、異なる波長である、請求項17に記載のマイクロ波システム。
【請求項22】
前記少なくとも1つのマイクロ波送出装置は、前記少なくとも1つの処理チャンバに結合され、前記少なくとも1つの処理チャンバと通じる少なくとも1つの導波管を備え、前記少なくとも1つの導波管は、前記少なくとも1つのマイクロ波発生器から前記少なくとも1つのマイクロ波信号を受け取り、前記少なくとも1つのマイクロ波信号を前記少なくとも1つの処理チャンバに導くように構成されている、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項23】
前記少なくとも1つのマイクロ波送出装置は、前記少なくとも1つの処理チャンバと通じる少なくとも1つの放射導管を有する少なくとも1つのアンテナを備え、前記少なくとも1つのアンテナは、前記少なくとも1つのマイクロ波発生器から前記少なくとも1つのマイクロ波信号を受け取り、前記少なくとも1つのマイクロ波信号を前記少なくとも1つの処理チャンバに導くように構成されている、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項24】
前記少なくとも1つのアンテナは、ヘリカルアンテナを含む、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項25】
前記少なくとも1つのアンテナは、円錐形アンテナ、放物形アンテナ、ホーン形アンテナ、漏洩波形アンテナ、及びアレイ形アンテナからなる群から選択される少なくとも1つのアンテナを含む、請求項1に記載のマイクロ波システム。
【請求項26】
マイクロ波アシスト熱原子層蒸着システム内で使用するためのマイクロ波システムであって、
少なくとも1つのマイクロ波信号を出力するように構成された少なくとも1つのマイクロ波発生器と、
前記少なくとも1つのマイクロ波発生装置と通じ、前記少なくとも1つのマイクロ波信号を受け取るように構成された少なくとも1つの導波管組立体と、
前記少なくとも1つの導波管組立体内に配置され、前記少なくとも1つの導波管組立体から少なくとも1つのマイクロ波発生器への少なくとも1つのマイクロ波信号の後方散乱を低減又は除去するように構成された少なくとも1つのアイソレータと、
前記少なくとも1つの導波管組立体内に配置された少なくとも1つの調整装置であって、前記少なくとも1つの調整装置は、前記少なくとも1つのアイソレータから前記少なくとも1つのマイクロ波信号を受け取り、前記少なくとも1つのマイクロ波信号を調整するように構成されている、少なくとも1つの調整装置と、
前記少なくとも1つの導波管組立体と通じている少なくとも1つの導波管であって、前記少なくとも1つの導波管は、少なくとも部分的に少なくとも1つの処理チャンバ内に配置され、前記少なくとも1つのマイクロ波信号の少なくとも一部を前記マイクロ波アシスト熱原子層蒸着システムの前記少なくとも1つの処理チャンバに導くように構成されている、少なくとも1つの導波管と、
を備える、マイクロ波システム。
【請求項27】
2400MHzから2500MHzの範囲の少なくとも1つのマイクロ波信号周波数を出力するように構成された少なくとも1つの固体マイクロ波発生器をさらに備える、請求項26に記載のマイクロ波システム。
【請求項28】
前記少なくとも1つの導波管組立体内に配置された少なくとも1つの検出装置をさらに備え、前記少なくとも1つの検出装置は、前記少なくとも1つの調整装置と通じ、前記少なくとも1つの調整装置は、前記少なくとも1つのマイクロ波信号を自律的に調整するように構成された自動調整装置を含む、請求項26に記載のマイクロ波システム。
【請求項29】
前記少なくとも1つの検出装置は、精密電力検出器(PPD)を備える、請求項28に記載のマイクロ波システム。
【請求項30】
前記少なくとも1つの調整装置と通じる少なくとも1つの方向性結合器をさらに備え、前記少なくとも1つの調整装置は、前記少なくとも1つのマイクロ波信号の調整を可能にするように構成された手動調整調装置を含む、請求項26に記載のマイクロ波システム。
【請求項31】
マイクロ波アシスト熱原子層蒸着システム内で使用するためのマイクロ波システムであって、
少なくとも1つのマイクロ波信号を出力するように構成された少なくとも1つのマイクロ波発生器と、
前記少なくとも1つのマイクロ波発生器と通じ、前記少なくとも1つのマイクロ波信号を受け取るように構成された少なくとも1つの導波管組立体と、
前記少なくとも1つの導波管組立体内に配置され、前記少なくとも1つの導波管組立体から前記少なくとも1つのマイクロ波発生器への前記少なくとも1つのマイクロ波信号の後方散乱を低減又は除去するように構成された少なくとも1つのアイソレータと、
前記少なくとも1つの導波管組立体内に配置された少なくとも1つの調整装置であって、前記少なくとも1つの調整装置は、前記少なくとも1つのアイソレータから前記少なくとも1つのマイクロ波信号を受け取り、前記少なくとも1つのマイクロ波信号を調整するように構成されている、少なくとも1つの調整装置と、
前記少なくとも1つの導波管組立体と通じる少なくとも1つのヘリカルアンテナ及び少なくとも第2の導波管アンテナであって、前記少なくとも1つの導波管アンテナは、前記少なくとも1つのマイクロ波信号の少なくとも一部を前記マイクロ波アシスト熱原子層蒸着システムの少なくとも1つの処理チャンバに導くように構成されている、少なくとも1つのヘリカルアンテナ及び少なくとも第2の導波管アンテナと、
を備える、マイクロ波システム。
【請求項32】
2400MHzから2500MHzの範囲の少なくとも1つのマイクロ波信号周波数を出力するように構成された少なくとも1つの固体マイクロ波発生器をさらに備える、請求項31に記載のマイクロ波システム。
【請求項33】
前記少なくとも1つの導波管組立体内に配置された少なくとも1つの検出装置をさらに備え、前記少なくとも1つの検出装置は、前記少なくとも1つの調整と通じ、前記少なくとも1つの調整装置は、前記少なくとも1つのマイクロ波信号を自律的に調整するように構成された自動調整装置を含む、請求項31に記載のマイクロ波システム。
【請求項34】
前記少なくとも1つの検出装置は、精密電力検出器(PPD)を備える、請求項32に記載のマイクロ波システム。
【請求項35】
前記少なくとも1つの調整装置と通じる少なくとも1つの方向性結合器をさらに備え、前記少なくとも1つの調整装置は、前記少なくとも1つのマイクロ波信号の調整を可能にするように構成された手動調整調装置を含む、請求項31に記載のマイクロ波システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2021年2月3日出願の米国仮特許出願番号63/145,178号「Apparatus and Methods for Microwave-Assisted Surface Chemistry Annealing of ALD Processes Utilizing Microwave Radiation Energy」の優先権を主張するものであり、その開示内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明の実施形態は、原子層堆積プロセス中のアニーリングを改善するためにマイクロ波放射エネルギーを利用するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体製造には、多種多様な処理技術が組み込まれている。原子層堆積(以下、ALD)は、そのような製造プロセスの1つである。ALDプロセスは、半導体装置の製造、ナノ材料の合成に一般的に使用され、誘電体膜を処理又は他の方法で調節して材料上に高密度の誘電体、低誘電率(low-k)膜をもたらすために頻繁に使用される。ALD薄膜堆積技術は、典型的には、気相化学プロセスを順次使用することに基づき、ここでは、複数の前駆体(「反応物」とも呼ばれる)を材料の表面と順次反応させて、材料の表面に多層薄膜をゆっくりと堆積させる。
【0004】
熱ALDは、光放射熱処理に基づく従来の高速熱アニールを用いて達成される。従来の高速熱ALD処理は、過去において有用であることが分かっているが、多くの欠点が確認されている。例えば、処理されるウェハの温度は、高速熱ALD中にアニール温度まで上昇する。その結果、処理中に基板が加熱及び冷却されるため、処理時間が所望の時間よりも長くなる傾向がある。さらに、より高密度の誘電体、Low-k層を得ることは困難であることが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のことから、従来の高速熱ALDシステム及びプロセスと比較して、高い処理スループットを提供できるマイクロ波アシストALDアニーリングシステム及び方法に対する継続的なニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願では、マイクロ波アシスト熱ALD処理システムの様々な実施形態が開示される。1つの実施形態では、本明細書に開示されるマイクロ波アシスト熱ALD処理システムは、堆積プロセス中にマイクロ波放射エネルギーを利用し、それにより、基板の処理前、処理中、及び処理後に基板を加熱及び冷却することに関連する処理時間を短縮又は排除し、それにより処理スループットを改善する。さらに、本明細書に開示されるシステム及び方法は、現在利用可能なものよりも、基板に適用されるより高密度の膜又は層を達成するように構成することができる。加えて、本明細書に開示されるマイクロ波アシスト熱ALD処理システムの実施形態は、基板上に、より高密度の誘電体、low-k材料の層を形成することを可能にする。
【0007】
1つの実施形態において、本出願は、マイクロ波アシスト熱原子層堆積システムと共に使用するためのマイクロ波システムを開示する。より具体的には、マイクロ波システムは、少なくとも1つのマイクロ波信号を出力するように構成された少なくとも1つのマイクロ波発生器を含むことができる。少なくとも1つのマイクロ波発生器と通じる少なくとも1つの導波管組立体は、マイクロ波信号を受け取るように構成することができる。導波管組立体内に配置された1又は2以上のアイソレータは、導波管組立体からマイクロ波発生器へのマイクロ波信号の後方散乱を低減又は除去し、それによりマイクロ波発生器が損傷する可能性を低減するように構成することができる。導波管組立体内に配置された少なくとも1つの調整装置は、アイソレータからマイクロ波信号を受け取り、マイクロ波信号を調整するように構成することができる。調整システムは、自動調整システムを含むことができ、別の方法として、手動調整システムを含むことができる。最後に、導波管組立体と通じる少なくとも1つのマイクロ波送出装置は、マイクロ波信号の少なくとも一部をマイクロ波アシスト熱原子層堆積システムの少なくとも1つの処理チャンバに導くように構成することができる。
【0008】
別の実施形態では、本出願は、マイクロ波アシスト熱原子層蒸着システムと共に使用するための導波管ベースのマイクロ波システムを対象とする。詳細には、マイクロ波システムは、少なくとも1つのマイクロ波信号を出力するように構成された少なくとも1つのマイクロ波発生器を含むことができる。少なくとも1つのマイクロ波発生器と通じる少なくとも1つの導波管組立体は、マイクロ波信号を受け取るように構成することができる。導波管組立体内に配置された1又は2以上のアイソレータは、導波管組立体からマイクロ波発生器へのマイクロ波信号の後方散乱を低減又は除去し、それによりマイクロ波発生器が損傷する可能性を低減するように構成することができる。導波管組立体内に配置された少なくとも1つの調整装置は、アイソレータからマイクロ波信号を受け取り、マイクロ波信号を調整するように構成することができる。調整システムは、自動調整システムを含むことができ、別の方法として、手動調整システムを含むことができる。最後に、少なくとも1つの導波管組立体と通じる少なくとも1つの導波管は、マイクロ波信号の少なくとも一部をマイクロ波アシスト熱原子層蒸着システムの処理チャンバに導くように構成することができる。
【0009】
さらに別の実施形態では、本出願は、マイクロ波アシスト熱原子層堆積システムと共に使用するためのヘリカルアンテナベースのマイクロ波システムを対象とする。より具体的には、マイクロ波システムは、少なくとも1つのマイクロ波信号を出力するように構成された少なくとも1つのマイクロ波発生器を含むことができる。少なくとも1つのマイクロ波発生器と通じる少なくとも1つの導波管組立体は、マイクロ波信号を受け取るように構成することができる。導波管組立体内に配置された1又は2以上のアイソレータは、導波管組立体からマイクロ波発生器へのマイクロ波信号の後方散乱を低減又は除去し、それによりマイクロ波発生器が損傷する可能性を低減するように構成することができる。導波管組立体内に配置された少なくとも1つの調整装置は、アイソレータからマイクロ波信号を受け取り、マイクロ波信号を調整するように構成することができる。調整システムは、自動調整システムを含むことができ、別の方法として、手動調整システムを含むことができる。最後に、少なくとも1つの導波管組立体と通じる少なくとも1つのヘリカルアンテナは、マイクロ波信号の少なくとも一部をマイクロ波アシスト熱原子層堆積システムの処理チャンバに導くように構成することができる。
【0010】
マイクロ波アシスト熱装置内で使用するためのマイクロ波システム及び使用方法の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を考慮することでより明らかになるであろう。
【0011】
マイクロ波アシスト熱装置内で使用するためのマイクロ波システム及び使用方法の新規な態様は、以下の図面を考慮することでより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来の熱ALD処理システムの一実施形態の平面断面図を示す。
図2図1に示す熱ALD処理システムで使用されるプラテン容器に結合された容器の立面斜視図を示す。
図3】処理容器上に配置された少なくとも1つのマイクロ波導波管を有するマイクロ波アシスト熱ALD処理システムの一実施形態の平面断面図を示す。
図4図3に示すマイクロ波アシスト熱ALD処理システムの処理容器上に配置されたマイクロ波導波管の一実施形態の側面斜視図を示す。
図5】その上に配置された2つのマイクロ波導波管を有する、図3に示すマイクロ波アシスト熱ALD処理システムの処理容器の別の実施形態の上面図を示す。
図6】処理容器上に配置された少なくとも1つのマイクロ波アンテナを有するマイクロ波アシスト熱ALD処理システムの一実施形態の平面断面図を示す。
図7図6に示すマイクロ波アシスト熱ALD処理システムと共に使用するためのヘリカルマイクロ波アンテナの一実施形態の立面斜視図を示す。
図8図6に示すマイクロ波アシスト熱ALD処理システムのチャンバ内に配置された図7に示すマイクロ波アンテナの一実施形態の側面平面断面図を示す。
図9】プラテンチャンバ内に配置された基板の均一なマイクロ波放射エネルギーを提供するために2つのマイクロ波アンテナを利用するマイクロ波アシスト熱ALD処理システムの代替的な実施形態の立面断面図を示す。
図10】マイクロ波アシスト熱ALD処理システムで使用するためのマイクロ波システムの一実施形態のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本出願は、様々なマイクロ波発生装置及びプロセスを組み込むことによって、改善された熱ALD処理のための様々なマイクロ波システム及び方法を対象としている。1つの実施形態では、本出願は、各連続層が基板上に堆積された後に材料の堆積層にマイクロ波放射エネルギーを適用し、それにより、堆積膜の温度を選択的に上昇させ、一方で、膜が適用される基板を加熱することに関連する熱ランピングに関する時間を短縮又は排除する、マイクロ波アシスト熱ALD処理のためのシステム及び方法を開示する。その結果、本出願人らは、より高品質の膜、より高密度の誘電体を有する膜及び低誘電率膜を作り出しており、膜は熱ALD用途スペクトル全体にわたってより広範な使用を提供する。1つの実施形態では、本明細書に開示したマイクロ波アシストALD熱アニーリングシステム及び方法は、様々な基板のプラズマ処理と組み合わせて使用することができる。別の実施形態では、本明細書に開示したマイクロ波アシストALD熱アニーリングシステム及び方法は、プラズマ処理と組み合わせて使用する必要はない。むしろ、ALD後の何らかの様々なアニーリングは、本システム及び方法と共に使用することができる。
【0014】
図1及び2は、基板上への材料の原子層堆積に使用するための従来の熱ALD処理チャンバの実施形態を構築するのに使用される要素の様々な図を示す。図示のように、ALDシステム1は、プラズマ源5と流体連通するチャンバ3を含む。さらに、チャンバ3内にはチャンバ受入領域9を形成することができる。加えて、チャンバ3は、その上に形成された1又は2以上のポート11を有することができる。チャンバ受入領域9は、その中に容器13を受け入れる大きさとすることができる。1つの実施形態では、容器13は、第1の容器本体15及び第2の容器本体19から形成される円錐容器で構成される。図示のように、第1の容器本体15は、その中に第1の容器通路17を画定する。同様に、第2の容器本体19は、第1の容器通路17と流体連通する第2の容器通路21を画定する。
【0015】
再び図1及び2に戻ると、少なくとも1つのプラテン容器7は、容器13に結合して容器13と流体連通することができる。プラテン容器7は、その中に又はその上に1又は2以上の基板、クーポン、又は同様の試料を受け入れるように構成されたプラテン固定具25を有するプラテン容器チャンバ23を画定する。使用中、処理される基板は、プラテン容器チャンバ23内に位置するプラテン固定具25上に配置される。チャンバ内に真空が生成され、基板の温度が所望の温度まで加熱される。その後、複数の反応物がプラテン容器チャンバ23内に順次導入される。その結果、基板上に複数の原子層が形成される。その後、基板上に所望の数及び/又は厚さの層が形成されると、プラズマ源5の中で生成されたプラズマが、容器13上に形成された入口29を介して容器13内に導かれ、容器13を横切る。次に、プラズマは、プラテン容器チャンバ23内に配置されたプラテン固定具25上に配置された基板上に入射することができる。処理が完了すると、被覆された基板をチャンバから取り出す前に、基板は、ハンドリング温度までゆっくり時間をかけて冷却する必要があり、それにより処理システムのスループットが大幅に低下する。
【0016】
図3-5は、新規なマイクロ波アシスト熱ALD処理システムの実施形態を示す。図示のように、マイクロ波アシスト熱ALDシステム40は、それに結合されるか、そうでなければそれと流体連通する少なくとも1つのプラズマ源44を有するチャンバ42を含む。上述した従来の熱ALDシステムと同様に、図3-5に示すALDシステム40のチャンバ42は、その中に1又は2以上の処理容器52を受け入れるように構成された少なくとも1つのチャンバ受入領域48を画定する。さらに、チャンバ42及び/又は容器52の少なくとも1つは、少なくとも1つのプラテン容器46に結合し、少なくとも1つの基板、プラテン、又は基板をその中に受け入れ、支持するように構成することができる。図示の実施形態では、容器52は円錐容器で構成される。随意的に、容器52は、何らかの様々な形状、構成、横断寸法などで形成することができる。さらに、容器52は、限定されるものではないが、ステンレス鋼、様々な合金、様々な不活性材料、セラミック、複合材料、ガラス、鉱物などを含む、何らかの様々な材料から製造することができる。1つの実施形態では、チャンバ42、容器52、及び/又はプラテンチャンバのうちの少なくとも1つは、その中に1又は2以上の100mm以下のウェハ基板を受け入れるような大きさとすることができる。随意的に、チャンバ42、容器52、及び/又はプラテンチャンバの少なくとも1つは、その中に1又は2以上の100mm以上のウェハ基板を受け入れる大きさとすることができる。
【0017】
図示の実施形態では、容器52は、第1の容器本体54及び少なくとも第2の容器本体58を含む。容器52を形成するために、任意の数の容器本体を使用することができる。随意的に、容器52は、一体構成で形成することができる。少なくとも1つの容器通路60は、容器52内に形成することができる。上述の従来の熱ALDシステムとは異なり、図3-5に記載のマイクロ波アシスト熱ALDシステムは、容器52内に形成された容器通路60と通じる基板にマイクロ波発生器(図示せず)からのマイクロ波放射エネルギーを導くように構成された少なくとも1つのマイクロ波導波管装置56を含む。例えば、図3及び4に示す実施形態では、単一のマイクロ波導波管装置56が、第1の容器本体54上に又はそれに通じるように配置されている。代替的に、図5は、容器52上に配置された2つのマイクロ波導波管装置56、56’を有する容器52の代替実施形態の立面断面図の概略図を示す。図示の実施形態では、マイクロ波導波管装置56、56’は、互いに直交して配置されているが、当業者であれば、マイクロ波導波管装置56、56’は、互いに何らかの関係で配置できることを理解するであろう。このように、図示のように、第1のマイクロ波導波管装置56は、処理される基板に第1のマイクロ波放射エネルギー場63を加えるように構成することができる。同様に、マイクロ波導波管装置56’は、マイクロ波アシスト熱ALDシステム40によって処理される基板に少なくとも第2のマイクロ波放射エネルギー場63’を加えるように構成することができる。例えば、第1の放射場63のモードは、所望の平面(例えば、r&φ平面)でのTE11モードとすることができるが、第2の放射場63’のモードは、異なる平面(例えば、r&φ平面のベクトル)でのTE11モードで構成することができる。随意的に、第1及び第2のマイクロ波放射エネルギー場63、63’のうちの少なくとも一方は、直線偏波、円偏波、及び/又は楕円偏波とすることができる。さらに、1つの実施形態では、第1及び第2のマイクロ波放射エネルギー場63、63’は、同じ偏波を共有する。別の実施形態では、第1及び第2のマイクロ波放射エネルギー場63、63’は、異なる偏波を有する。当業者であれば、第1及び第2の放射エネルギー場63、63’のモードは、同じとすること又は異なる場合があることを理解するであろう。例えば、例示的なモードには、TE11、TM01などが含まれる。さらに、マイクロ波導波管装置56及び/又は56’(存在する場合)は、何らかの様々な周波数でマイクロ波放射エネルギーを提供するように構成することができる。例示的な周波数は、約200メガヘルツ(200MHz)から約10,000メガヘルツ(10,000MHz)又はそれ以上の範囲とすることができる。別の実施形態では、周波数は、約5700メガヘルツ(5700MHz)から約5800メガヘルツ(5800MHz)の範囲とすることができる。随意的に、周波数は、約1000メガヘルツ(1000MHz)から約4000メガヘルツ(4000MHz)以上の範囲とすることができる。随意的に、周波数は約2400メガヘルツ(2400MHz)から約2500メガヘルツ(2500MHz)の範囲とすることができる。さらに、当業者であれば、第1及び第2の放射エネルギー場63、63’の周波数は、同じとすること又は異なる場合があることを理解するであろう。
【0018】
図3及び4は、容器52上に配置されるか又は他の方法で容器52に結合されるマイクロ波導波管装置56の実施形態の様々な図を示す。図示のように、マイクロ波導波管装置56は、容器52に結合された第1のマイクロ波導波管本体74及び第2のマイクロ波導波管本体76を含むことができる。1つの実施形態では、マイクロ波導波管装置56は、矩形形状を形成することができる。随意的に、導波管装置56は円筒形状を形成することができる。当業者であれば、導波管装置56は、何らかの様々な形状、サイズ、横断寸法などで形成することができることを理解するであろう。1又は2以上のマイクロ波導波管コネクタ78は、第1のマイクロ波導波管本体74及び/又は第2のマイクロ波導波管本体76のうちの少なくとも一方の上の位置に結合することができる。1つの実施形態では、コネクタ78は、マイクロ波導波管装置56を少なくとも1つのマイクロ波エネルギー源(図示せず)に結合するように構成することができる。例えば、コネクタは、少なくとも1つのマイクロ波発生器162(図10参照)と通じる1又は2以上の導管186に結合することができる。このように、チャンバ42に形成されたポート50は、1又は2以上の導管、ケーブル、又は同様の装置がそこを横切るように構成することができる。例えば、1つの実施形態では、ポート50は、少なくとも1つの密封コネクタ類似装置(図示せず)を含む。図示の実施形態では、マイクロ波導波管装置56は、容器52に形成された容器入口70に近接して配置されている。当業者であれば、本システムに含まれる1又は2以上のマイクロ波導波管装置56は、容器52上の又はこれに近接した何らかの場所に配置することができることを理解するであろう。図3及び4に示すように、容器入口70とマイクロ波導波管装置56との間に、少なくとも1つの放射チョーク又は同様のフィルタリング装置80を配置することができる。1つの実施形態では、放射チョーク80は、マイクロ波導波管装置56内で発生した放射又は信号の不要な流れがプラズマ源44に流入するのを防止するように構成することができる。
【0019】
再び図3を参照すると、少なくとも1つのプラテン容器46は、チャンバ42内に配置された容器52に結合されるか又は他の方法で容器52と通じることができる。図示の実施形態では、プラテン容器46は、チャンバ42の外部で容器52に結合されている。随意的に、プラテン容器46は、チャンバ42の中で容器52に結合することができる。1つの実施形態では、プラテン容器46は、その中に少なくとも1つのプラテン容器チャンバ62を画定し、プラテン容器チャンバ62は、その上に又はその中で処理される1又は2以上の基板又は試料を支持することができる1又は2以上のプラテン固定具64を収容するように構成されている。1又は2以上の出口66は、プラテン容器46上に形成することができる。
【0020】
処理手順の間、1又は2以上の基板又は試料(図示せず)は、プラテン容器46のプラテン容器チャンバ62内のプラテン固定具64上に配置すること及び/又はそこに固定することができる。その後、プラテン容器46は、容器52と密封関係で係合するように構成される。例えば、プラテン容器46は、容器52と気密関係で係合するが、当業者であれば、プラテン容器46は、何らかの様々な方法で容器52に結合することができることを理解するであろう。チャンバ42、容器チャンバ62、及び/又はプラテン容器46の少なくとも1つには真空を適用することができる。その後、反応物の1又は2以上の層は、基板上に選択的に堆積することができる。1つの実施形態では、材料の各層が基板上に順次堆積された後に、マイクロ波導波管装置56及び/又は56’から放出されるマイクロ波エネルギーが活性化され、それによって、基板上に形成された新たに堆積された層を選択的かつ制御可能に加熱することができる。1つの実施形態では、マイクロ波放射エネルギーは、新たに堆積された層に均一に適用される。別の実施形態では、マイクロ波放射エネルギーは、新たに堆積された層に不均一に適用される。図示の実施形態では、プラズマ源44によって発生されたプラズマは、容器通路60から、プラテン固定具64上に配置された基板に導くことができる。当業者であれば、何らかの様々な代替のALD後のアニールプロセスは、基板に対して行い得ることを理解するであろう。このように、本明細書に開示されたシステム及び方法は、プラズマベースの処理システムに限定されると解釈されるべきではない。
【0021】
図6-9は、マイクロ波アシスト熱ALD処理システムの別の実施形態の様々な図を示す。図示のように、上記の実施形態と同様に、処理システム100は、少なくとも1つのプラズマ源104と少なくとも1つのプラテン容器106との間に又はそれに隣接して配置された少なくとも1つのチャンバ102を含む。チャンバ102は、その中に少なくとも1つの容器112を受け入れる大きさの少なくとも1つのチャンバ受入領域108を画定する。図示のように、容器112は、第1の容器本体114及び少なくとも第2の容器本体116から形成された円錐容器で構成することができる。随意的に、容器112は単一体で構成することができる。上記の実施形態と同様に、処理容器112は、何らかの様々な形状及び構成で形成することができる。少なくとも1つの容器通路118は、容器112内に形成することができ、容器通路118は、プラズマ源104に結合された又はそれに近接した入口122、及びプラテンチャンバ106に流体連通している。上記の実施形態と同様に、チャンバ102、プラテン固定具106、及び/又は容器112を含むマイクロ波アシスト熱ALD処理システム100の様々な要素は、何らかの様々な材料から製造することができる。例えば、容器112は、ステンレス鋼から製造することができる。同様に、チャンバ102はステンレス鋼から製造することができる。
【0022】
図示のように、少なくとも1つのアンテナは、チャンバ受入領域108の中に配置することができる。例えば、図6-8に示すマイクロ波アシスト熱ALD処理システム100の実施形態では、単一のアンテナ120は、プラテン容器106内の基板(図示せず)にマイクロ波放射エネルギーを投射するために使用される。図9は、チャンバ受入領域108内に配置された第1のアンテナ120及び少なくとも第2のアンテナ120’を含むマイクロ波アシスト熱ALD処理システム100の代替実施形態を示す。当業者であれば、本システムには、任意の数及び種類のアンテナを使用できることを理解するであろう。随意的に、容器112は、少なくとも1つの窓又は類似の開口部を含むことができ、それによりアンテナ120からの放射は、容器112を横切ることができる。例えば、図6及び7は、その上に又はその中に形成された窓117を有する容器112の実施形態を示す。代替案として、図9は、その中に形成される窓なしで形成された容器112の実施形態を示す。別の実施形態では、容器112は第1の容器本体114を含む必要はなく、それによりアンテナ120からのマイクロ波放射エネルギーは、チャンバ受入領域108を横切り第2の容器本体116を通って容器112に入ることができる。
【0023】
図7及び8は、チャンバ受入領域108に1又は2以上のアンテナを位置決めするのに有用なアンテナ120及び結合システムの実施形態のより詳細な図を示す。図7に示すように、1つの実施形態では、アンテナ120は少なくとも1つの放射導管140を含む。1つの実施形態では、放射導管140は、実質的にらせん形状で構成される。例えば、図示の実施形態では、放射導管140は、5巻きのらせん巻線で構成される。随意的に、放射導管140は、3巻きのらせん巻線、4巻きのらせん巻線、5巻きのらせん巻線、6巻きのらせん巻線、又は7巻き以上のらせん巻線で構成することができる。放射導管140の線径は、約0.005インチから約1.0インチの範囲とすることができる。1つの特定の実施形態では、放射導管140の線径は、約0.125インチから約0.250インチの範囲であるが、当業者であれば、様々な線径を使用できることを理解するであろう。随意的に、らせん巻線を形成するために何らかの巻き数を採用することができる。1つの実施形態では、巻き直径Dは、約0.5インチから約4.0インチの範囲とすることができる。随意的に、巻き直径Dは、約1.54インチとすることができる。随意的に、放射導管140は、様々なコイル間隔で製造することができる。1つの実施形態では、コイル間隔Sは、約0.50インチから約2.5インチの範囲である。別の実施形態では、コイル間隔Sは、約1インチから約1.5インチの範囲である。随意的に、コイル間隔Sの範囲は、約1.20インチである。同様に、放射コイル140は、何らかの所望のコイルピッチ角で製造することができる。例えば、1つの実施形態では、コイルピッチ角は約14度であるが、何らかのコイルピッチ角を使用することができる。随意的に、アンテナ120は、左円偏波又は右円偏波を有することができる。当業者であれば、アンテナは、何らかの様々な代替構成及び/又は形状で形成することができることを理解するであろう。例示的な構成としては、限定されるものではないが、らせん状、円錐状、放物面状、ホーン状、漏洩波状、アレイ状アンテナなどが挙げられる。1つの実施形態では、アンテナは、基板の温度を効率的かつ選択的に調節するように選択された少なくとも1つの方向のマイクロ波放射エネルギーパターンを生成するように構成される。
【0024】
再び図7を参照すると、放射導管140は、少なくとも1つの導電性接地板142に結合されるか又は他の方法でそれと通じることができる。例えば、導電性接地板142は、約0.05インチから約3.0インチの範囲の厚さで、約1.0インチから5インチまでの横寸法を有することができる。例えば、1つの実施形態では、導電性接地板142は、約0.125インチインチの厚さの約3.5インチ×3.5インチの横寸法の実質的に正方形の形状を有するが、当業者であれば、導電性接地板142は何らかの様々なサイズ、形状、及び構成で製造することができることを理解するであろう。さらに、放射導管140及び接地板142の少なくとも一方は、アンテナが少なくとも1つの外部電源、マイクロ波源、及び/又は類似のものに結合されることを可能にする少なくとも1つのコネクタ144に結合されるか又はこれと通じることができる。図示の実施形態では、放射導管140は、少なくとも1つの封入装置148によって形成された少なくとも1つの包囲体146内に配置することができる。1つの実施形態では、封入装置148は、チャンバ102内に存在する場合がある反応物及びプラズマから様々な要素(例えば、放射導管140)を保護するように構成することができる。1つの実施形態では、包囲体146は石英から製造される。別の実施形態では、包囲体は、ホウケイ酸塩、セラミック及びサファイア材料、又はマイクロ波放射エネルギーに対して透過的である何らかの他の誘電材料から製造される。
【0025】
図8に示すように、少なくとも1つのアンテナ120は、チャンバ102に結合された1又は2以上のアンテナマウント136によってチャンバ受入領域108内に支持することができる。図示の実施形態では、アンテナマウント136はチャンバ筐体134に結合されているが、当業者であれば、何らかの様々なアンテナマウントを使用できることを理解するであろう。さらに、少なくとも1つの導管及び/又はケーブル130は、アンテナ120に形成されたコネクタ144に結合することができる(図7参照)。ケーブル130は、チャンバ受入領域108を横切り、チャンバ102上に形成された少なくとも1つのポート110上に配置された少なくとも1つのポートコネクタ132を介してチャンバ102から出ることができる。
【0026】
再び図6-9を参照すると、プラテン容器106は、少なくとも1つのプラテン容器チャンバ124を画定することができる。上記の実施形態と同様に、少なくとも1つのプラテン固定具126は、プラテン容器チャンバ124内の所望の位置で少なくとも1つの基板(図示せず)を受け取り、支持するように構成されている。例えば、1つの実施形態では、プラテン固定具126は、チャンバ102内に含まれる1又は2以上のアンテナ120から放出される放射エネルギーの少なくとも一部が提供されるように位置決めされる。1つの実施形態では、チャンバ102、容器112、及び/又はプラテンチャンバ124のうちの少なくとも1つは、1又は2以上の100mm以下のウェハ基板をその中に受け入れる大きさとすることができる。随意的に、チャンバ102、容器112、及び/又はプラテンチャンバ124のうちの少なくとも1つは、その中に1又は2以上の100mm以上のウェハ基板を受け入れる大きさとすることができる。使用中、少なくとも1つの基板(図示せず)は、プラテン固定具126上に配置すること又は他の方法でそこに固定することができる。その後、プラテン容器106は、チャンバ受入領域108内に配置された容器112に結合される。1つの実施形態では、プラテン容器106は、容器112に気密関係で結合されるが、当業者であれば、プラテン容器106は、様々な結合装置又は固定具を用いて、様々な方法で容器112に結合することができることを理解するであろう。チャンバ102が密封されると、チャンバ受入領域108及び/又は容器通路118の少なくとも一方に真空が適用される。その後、基板には、2又は3以上の反応物を順次適用することができ、その結果、基板の表面に少なくとも1つの原子層が形成される。アンテナ120からのマイクロ波放射エネルギーは、堆積プロセス中に基板上に堆積された層の温度を維持及び/又は調節するために使用することができる。例えば、アンテナ120からのマイクロ波放射エネルギーは、新たに基板上に堆積された薄膜に選択的に適用することができる。その後、任意数の膜堆積プロセスに続いて、任意数のマイクロ波放射サイクルを選択的に基板に適用することができる。1つの実施形態では、マイクロ波放射エネルギーは、基板に均一に適用される。別の実施形態では、マイクロ波放射エネルギーは、基板に不均一に適用される。随意的に、所望の層厚さ及び/又は密度が堆積されると、反応物の導入が停止され、プラズマ源104から放出された少なくとも1つのプラズマは、容器通路118を通ってプラテンチャンバ106内の基板に導くことができる。しかしながら、当業者であれば、何らかの様々な代替のALD後のアニールプロセスは、基板に対して行い得ることを理解するであろう。このように、本明細書に開示されたシステム及び方法は、プラズマベースの処理システムに限定されると解釈されるべきではない。
【0027】
図10は、ALDプロセスのマイクロ波アシスト表面化学アニーリングに使用するためのマイクロ波システムの一実施形態の概略図を示す。図示のように、マイクロ波システム160は、少なくとも1つのマイクロ波発生器162を含む。1つの実施形態では、マイクロ波発生器162は、固体マイクロ波発生器を含むが、当業者であれば、何らかの様々なマイクロ波発生器が、本システムと共に使用できることを理解するであろう。1つの実施形態では、マイクロ波発生器162は、約10ワット(10W)から約10,000ワット(10kW)の範囲の電力を有するマイクロ波エネルギー又はマイクロ波信号を出力するように構成されている。別の実施形態では、電力は約500ワット(500W)から約2000ワット(2kW)の範囲である。別の実施形態では、電力は約1000ワット(1kW)である。このように、図10に示すように、マイクロ波発生器162は、冷却すること又は他の方法で熱的に管理することができる。例えば、マイクロ波発生器162は、マイクロ波発生器162の温度を制御するために1又は2以上の流体を使用することを可能にする少なくとも1つの流体ポート又は導管164を含むことができる。
【0028】
再び図10を参照すると、少なくとも1つの導管166は、マイクロ波発生器162に結合されるか又は他の方法でこれと通じ、マイクロ波発生器162からのマイクロ波エネルギーを移送するように構成される。例えば、導管166は、少なくとも1つの同軸ケーブルを含むことができるが、非限定的に導波管などを含む様々な導管を使用することができる。導管166は、少なくとも1つの移行部材170を介して1又は2以上の導波管組立体168に結合することができる。1つの実施形態では、移行部材170は、導管166(例えば、同軸ケーブル)からマイクロ波エネルギーを受け取り、到来エネルギーを導波管組立体170に結合するように構成することができる。随意的に、移行部材170は、1又は2以上のフィルタ、偏波板、波長板を含むことができ、その中に1又は2以上の1/4波長(1/4λ)デバイスを含むことができる。少なくとも1つのアイソレータ172は、導波路組立体168に結合するか又はこれと通じることができる。アイソレータ172は、導波管組立体168からマイクロ波発生器162に戻るマイクロ波エネルギーの後方散乱又は反射を防止するように構成することができる。
【0029】
図10に示すように、導波管組立体168は、アイソレータ172と通じる1又は2以上の調整システム又は装置174を含むことができ、それによってマイクロ波エネルギーの周波数の選択可能な変動が可能になる。1つの実施形態では、調整システム174は、少なくとも1つのプロセッサ(図示せず)が、例えば、周波数、インピーダンス(impendance)などを含む、マイクロ波発生器162からのマイクロ波エネルギーの少なくとも1つの特性を変化させることを可能にする、自動調整システムを含む。例えば、調整システム174は、MKSインスツルメンツ社製のSmartMatch Intelligent Microwave Matching Unitを含むことができるが、当業者であれば、マイクロ波信号を自律的に監視及び調整することができる何らかの様々なシステムを使用することができることを理解するであろう。
【0030】
別の実施形態では、調整システム176は、ユーザがマイクロ波エネルギーの少なくとも1つの特性を手動で変えることを可能にする手動調整システムを含む。随意的に、調整システム176は、マイクロ波発生器162と協調して動作するように構成することができる。別の実施形態では、調整システム176は、マイクロ波発生器162から独立して動作するように構成することができる。さらに、導波管組立体168は、その中に1又は2以上の検出器又はセンサ又は方向性結合器174を含むことができる。例示的な検出器は、非限定的に、精密電力検出器、RF電力検出器などを含む。
【0031】
再び図10を参照すると、1又は2以上の随意的な装置又はサブシステム178は、マイクロ波システム160内に含めることができる。例えば、図示の実施形態では、随意的なシステム又は装置178は、導波管組立体168内に又はそれに近接して配置される。例示的な随意的なシステム178には、非限定的に、ノイズフィルタ、信号チョッパ、センサ、減衰器、パワー結合器、メータ、偏波板、プロセッサ、制御システム、熱管理システムなどが含まれる。随意的に、導波管組立体の外部で使用することができる随意的なシステム178は、プロセッサ、コントローラ、フィルタ、熱管理システム、冷却剤供給源などを含む。加えて、少なくとも1つの導波管から同軸への移行装置184は、導波管組立体168からのマイクロ波エネルギーを、マイクロ波アシスト熱ALDシステム内に配置されたマイクロ波送出装置188の様々な実施形態に結合された少なくとも1つの同軸導管186に結合するために使用することができる。例示的なマイクロ波送出装置188は、非限定的に、導波管装置56、56’(図3-5参照)又はアンテナ120(図6-9参照)を含む。
【0032】
本明細書に開示した実施形態は、本発明の原理を例示するものである。本発明の範囲内である他の変更例を用いることができる。従って、本出願に開示された装置は、本明細書に示されかつ説明されたように厳密に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0033】
160 マイクロ波システム
162 マイクロ波発生器
164 導管
166 導管
170 移行部材
172 アイソレータ
174 方向性結合器
176 調整システム又は装置
178 サブシステム
184 移行装置
186 導管
188 マイクロ波送出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】