(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】マイクロバイオームの機能に基づいて個別化された治療法および食事を設計するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/00 20180101AFI20240206BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20240206BHJP
【FI】
G16H50/00
C12Q1/6869 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547268
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 IN2022050094
(87)【国際公開番号】W WO2022168120
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】202121004712
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510337621
【氏名又は名称】タタ コンサルタンシー サービシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TATA Consultancy Services Limited
【住所又は居所原語表記】Nirmal Building,9th Floor,Nariman Point,Mumbai 400021,Maharashtra,India.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アナンド、スワダ
(72)【発明者】
【氏名】マンデ、シャルミラ シェカール
(72)【発明者】
【氏名】ボース、チャンドラニ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ラシュミ
(72)【発明者】
【氏名】カウル、ハリシャム
(72)【発明者】
【氏名】ブサン、クンタル クマール
(72)【発明者】
【氏名】ダス バクシー、クリシャヌ
【テーマコード(参考)】
4B063
5L099
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ05
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR58
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX02
5L099AA15
5L099AA21
(57)【要約】
これは、個人に合わせた治療介入をデザインするための方法とシステムである。腸内細菌叢の構成は個々人で異なり、プロバイオティクスや食事療法は、個々人によって有効性が異なる可能性がある。本開示は、マイクロバイオームの機能に基づいて個別化治療薬や食事療法を設計することにより、個人の腸内健康を改善するための個別化治療介入を推奨する。個別化治療介入は、知識ベースのセットを生成すること、腸サンプルをモニタリングすることによって個人の腸の健康の変化を特定すること、および個別化治療介入を推奨することを含むいくつかのステップに基づいて推奨される。個別化治療介入は、プレバイオティクス、プロバイオティクス、および最適化された食事のうちの少なくとも1つを含み、最適化された食事は、腸内食品スコアの最適化に基づいて推定され、腸内食品スコアは、個人の腸内健康の変化に基づいて計算される。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含む、マイクロバイオームの機能に基づいて個別化された治療法および食事療法を設計するための方法(200):
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、一組の入力データを受信するステップ(202)であって、一組の入力データは、以下と関連するデータを含む、
複数の代謝産物、複数の代謝経路、複数の分類群、栄養素に関する情報、プロバイオティクス、プレバイオティクス、複数の代謝産物の補充または分解のためのサプリメント、複数の食品成分、複数の食品アイテム、健康なコホートの微生物存在量マトリックス、複数の食事最適化前提条件パラメータ、
ここで、複数の代謝産物は、有益な代謝産物のセットと有害な代謝産物のセットとを含み、有益な代謝産物のセットは個体の腸の健康に有益であり、有害な代謝産物のセットは個体の腸の健康に有害である、
ここで、複数の代謝経路は、(a)有益経路と(b)有害経路のいずれかを含む、
ここで、有益経路は、複数の有益な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の分解のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数を含み、そして
ここで、有害経路は、複数の有益な代謝産物の分解のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数を含む;
ここで、複数の有益微生物は有益経路を保有し、複数の有害微生物は有害経路を保有する;
ここで、複数の分類群は、複数の微生物を含み、ここで、複数の微生物は、複数の有益な微生物、複数の有害な微生物を含み、ここで、複数の微生物は、分類学的階層に従って分類され、ここで、分類学的階層は、複数の細菌門のうちの1つまたは複数を含む、複数の細菌綱、複数の細菌目、複数の細菌科、複数の細菌属、複数の細菌種、および複数の細菌株を含み、ここで、複数の微生物は、別個のゲノム位置を有する複数の遺伝子、細菌株のヌクレオチド配列およびタンパク質配列のセットを含み、ならびに
ここで、複数の食事最適化前提条件パラメータは、食品のセットと、食品のセット中に見出される化合物の完全なセットと、食品成分マトリックスを含み、食品成分マトリックスは、セットの食品に属するすべての食品中のセットの化合物に属するすべての化合物の含有量、セットの食品に属する各食品の総炭水化物、タンパク質、脂肪およびカロリー含有量を集計する、食品成分マトリックスと、ヒトの腸内の細菌分類群のリストと、有益な細菌分類群と有害な細菌分類群を識別するための一連の関数と、分類群-化合物利用マトリックス、炭水化物、タンパク質、脂肪、カロリーに関連するユーザー定義の上限パラメーターと下限パラメーターのセット、およびユーザーが選択した食品を備える、
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、入力データ(204)のセットを使用して知識ベースのセットを生成するステップであって、知識ベースのセットは、属機能マップ(FGmap)、ゲノム代謝経路(GMP)マップ、分類群関連参照プロファイル(TAXA_NET)グラフ、TAXA-食品構成要素ネットワーク、食品構成要素ネットワーク、およびProbMapを含み、知識ベースのセットの生成は、以下を含む、ステップと
FGmapおよびGMPマップを生成し、ここで、FGmapは、複数の分類群の1つに属する複数の細菌属の関数と、複数の代謝経路を列とする行列である、ここで、予め定義された第1の指標は、(a)代謝経路の存在及び(b)代謝経路の非存在のうちの1つを示し、GMPは、行としての複数の細菌株及び列としての複数の代謝経路のマトリックスであり、予め定義された第2の指標は、(a)代謝経路の存在及び(b)代謝経路の非存在のうちの1つを示す(204A);
複数の分類群およびFGmapに基づいてTAXA_NETグラフを生成する工程(ここで、TAXA_NETグラフは無向グラフである)、ここで、TAXA_NETグラフの各ノードは、複数の分類群からの分類群に対応し、エッジは、複数のノードからの各分類群がFGmapからの複数の分類群の機能に関連付けられる、分類群の対の間の正の関係を示し、正の関係は、相互主義、共栄主義、通性主義、および協力のうちの1つを含む(204B);
TAXA_NETの各分類群に対する複数の食物構成要素に基づいてTAXA-食物構成要素ネットワークを生成し、ここでTAXA-食物構成要素ネットワークは、代謝または栄養源として分類群によって使用される食物構成要素と関連付けられた各分類群の無向ネットワークである(204C);
TAXA-食品構成要素ネットワークの各食品構成要素の複数の食品項目に基づいて、食品構成要素ネットワークを生成し、ここで、食品構成要素ネットワークは、食品項目に存在する各食品構成要素の無向ネットワークである(204D);および
GMPの転置を生成してProbMapを取得し、ProbMapは、複数の代謝産物および複数の代謝経路からの各代謝産物を含む行と、複数の細菌株、プロバイオティクス、プレバイオティクス、対応する複数の代謝産物の生合成および/または分解が可能な食餌成分を含む列とを有する行列である(204E);
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、2つのタイムスタンプで個人の複数の腸サンプルを受信し、2つのタイムスタンプが、2つのサンプルが収集されたタイムスタンプ1とタイムスタンプ2を含む(206)こと;
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記複数の腸サンプルの分類群存在量行列を生成し、前記分類群存在量行列は、分類群セット1および分類群セット2を含み、前記分類群セット1および前記分類群セット2は、前記タイムスタンプ1および前記タイムスタンプ2を使用して生成される(208)こと;
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、分類群存在量行列およびFGmapを使用して、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの各々について経路存在量を生成することであって、経路存在量は
サンプル処理技術を用いて生成され、各タイムスタンプについての経路存在量は、対応するタイムスタンプにおける個体の腸内マイクロバイオームにおけるGMPの複数の代謝経路の存在を示す、経路存在量を生成すること(210);
摂動経路を同定すること(212)であって、摂動経路は、個体の腸の健康状態の悪化を示し、摂動経路は、統計的手法を用いて、タイムスタンプ1とタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの経路存在量の比較に基づいて同定され、摂動経路は、以下のいずれかの場合に基づいて同定される:
(a)ケースA:有益経路のセットの経路存在量の減少、ここで、減少は有益な微生物のセットの減少を示す、または
(b)ケースB:有害経路の集合の経路存在量の増加であって、その増加が有害な微生物の集合の増加を示すもの、または
(c)ケースC:有益経路群の経路量が減少し、有害経路群の経路量が増加していることから、有害な微生物群の増加と有益な微生物群の減少が示唆される;
個別化された治療薬および食事療法の初期セットを決定する工程であって、個別化された治療薬および食事療法の初期セットが、以下の少なくとも1つを含み、ProbMapを使用する、個別化された治療法および個別化された食事療法であって、個別化された治療法および食事療法の初期セットは、同定された摂動経路に対応する行である、食事療法、ここで、個別化治療薬は、(a)摂動経路を有する複数の細菌株、または(b)確率の高い代謝産物の分解または/および生合成のための経路を有する複数の細菌株として決定され、確率の高い代謝産物は、ProbMap (214)の摂動経路に対応する代謝産物である;
タイムスタンプ 2 で取得された分類群存在量マトリックス内の分類群セットを識別することであって、ここで、分類群セットは TAXA_SET_P と TAXA_SET_A で構成され、ここで、TAXA_SET_Pは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有益経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第1の値を含み、TAXA_SET_Aは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有害経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第2の値を含む(216);
TAXA_NETグラフから、タイムスタンプ2におけるTAXA_SET_P内の各税素についての第1の近傍のセットを特定するステップであって、第1の近傍のセットは、TAXA_SET_FN_COM、TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_NEW_ (218)を含むTAXA_SET_Pの直接の近傍である、ステップと
1個以上のハードウェアプロセッサを介して、個人(220)の腸の健康を改善するための個別化された治療的介入を推奨することであって、治療的介入が、知識ベースのセットおよび個別化された治療薬および食事療法の推奨の初期セットを使用して、特定された第1の近隣に基づいて、(a)プレバイオティックカクテル、(b)プロバイオティックカクテル、(c)最適化された食事のうちの1つを推奨することを含み、個別化された治療的介入が、以下のうちの少なくとも1つ以上を含む、ことを特徴とする、個別化された治療的介入を推奨すること:
(a)ケースA(一群の有益微生物の経路存在量の減少)については、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事を推奨し、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の増殖を助ける、
(b)ケースB(有害な微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、最適化された食餌を推奨することであって、最適化された食餌は、複数の有益な微生物の増殖を促進し、有害な微生物の増殖を抑制する、ことと
(c)ケースC(有益微生物の集合の経路存在量の減少および有害微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食餌を推奨し、ここで、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食餌は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の増殖を助け、有害微生物の増殖を抑制する。
【請求項2】
複数の有益な代謝経路が、ピルビン酸経路を介したピルビン酸から酪酸への生成、アンモニア酸化経路、およびトリメチルアミンオキシド(TMA)分解のための経路のうちの1つ以上を含み、複数の有害な代謝経路が、アンモニア放出経路、生物起源アミン生成、およびトリメチルアミン生成のうちの1つ以上を含み得るが、これらに限定されない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
GMPおよびFGmapの生成(300)は、以下の構成を含む、請求項1に記載のプロセッサ実装方法:
複数の代謝物、複数の代謝経路、および複数の代謝経路の各々に関連する生物のリストに基づいて、マトリックス代謝物マップ(Mmap)を生成し、ここで、Mmapは、複数の代謝物の各々について生成される(302);
細菌ゲノムデータベース(BGD)を用いて細菌ゲノムマップ(BGM)を生成する工程であって、BGDは、複数の細菌株の網羅的なリストを含み、BGMは、複数の細菌株の複数の名称、複数の細菌株の複数の識別番号、複数の細菌株の複数の遺伝子位置、および複数の細菌株の複数のタンパク質ドメインを含む、複数の細菌株に関連する情報を含む、工程(304);
MmapおよびBGMに基づいて、複数の代謝産物から各代謝産物について代謝産物経路ドメインマップ(MPDM)を生成し、MPDMは、複数の代謝経路の各々に関連するタンパク質ドメインの網羅的リスト(306)を含む;
予め定義された第1の閾値基準 (308)に基づいて、MPDMおよびBGMを使用して、細菌株およびゲノムのリストにおける複数の代謝経路の存在を特定する;
BGM、MPDM、複数の代謝経路および複数の代謝物を用いてGMPを生成するステップであって、GMPは、細菌ゲノム(細菌株)の集合を複数の行として、各代謝物の形成に対応する複数の代謝経路のリストを複数の列として有する行列である、ステップ (310);および
GMPを使用してFGmapを生成し、ここでFGmapは、複数の細菌属を複数の行として、複数の代謝経路を列として行列である(312)。
【請求項4】
経路存在量行列を生成するための試料処理技術(400)が、以下の工程を含む、請求項1に記載のプロセッサ実装方法:
核酸抽出技術に基づいて、複数の腸サンプルから複数の核酸を抽出する工程;(402)
シーケンサーを使用して、抽出された複数の核酸から複数のヌクレオチド配列を生成する工程;(404)
前記複数のヌクレオチド配列を使用して、各分類階層レベルにおける細菌分類学的存在量行列のセットを得ることであって、前記細菌分類学的存在量行列は、分類アルゴリズムを使用して、予め定義された分類学的レベルに基づいて前記複数のヌクレオチド配列を分類することによって得られる工程;(406)、及び
細菌分類学的存在量行列、GMP、およびFGmapのセットを使用して、経路存在量を生成する工程(408)。
【請求項5】
最適化された食事を推奨する工程(500)が、下記を含む、請求項1に記載のプロセッサ実装方法:
タイムスタンプ1とタイムスタンプ2の間で、分類群セット1と分類群セット2の和集合内の分類群ごとに正規化された(d
k)を計算する(502);
正規化された変化、知識ベースのセットからの複数の有益な微生物、複数の有害な微生物を使用して、分類群セット1および分類群セット2の連合におけるすべての分類群の重要度スコア(b
k)を計算する(504);
分類群セット1および分類群セット2の組合わせに含まれるすべての分類群の重要度スコア(b
k)と、あらかじめ定義された分類群-化合物利用マトリックスとを用いて、個々人に個別化された腸内化合物スコア(gcs
j)を計算すること、ここで、個別化された腸内化合物スコアは、腸内の複数の有益な微生物を増加させる化合物の能力を定量化する(506);
腸内細菌スコア(gfs
j)を、腸内化合物スコアおよび食品成分マトリックスを使用して、食品アイテムのセット中のすべての食品アイテムについて計算し、ここで、腸内食品スコアは、複数の有益な微生物を増加させる食品アイテムの能力を定量化する(508);および
最適化された食事を得るために、最適化技術を使用して腸内食品スコアを最適化することであって、腸内食品スコアは、カロリーパラメータ、炭水化物パラメータ、タンパク質パラメータ、および脂肪パラメータを含む複数の制約パラメータ (510)を条件として最適化されること。
【請求項6】
特定の食品(食品
i)の腸内食品スコアが以下のように表される、請求項5に記載のプロセッサ実装方法:
ここで、
は食品成分マトリックスであり、ここでC
j,iは、食品
i単位あたりの化合物
j の含有量である。
p=リスト食品から食品中に得られた化合物の総数、および
m = 食品の総数、
ここで
Tは分類群-化合物利用行列である、
ここで
q = 細菌分類群の総数;
Iは指標関数である、すなわち、
PU:常在細菌の分類群、
AP:病原性細菌の分類群、
ここで
ここで、
A
2
kは、サンプル T2 におけるtaxa
kの存在量である、
A
1
kは、サンプル T1 におけるtaxa
kの存在量である、
σ
kは、複数の健康な腸内微生物叢サンプルの分類群のtaxa
kの標準偏差である。
【請求項7】
「摂動経路」という用語が、有害経路もしくは有害な代謝産物の生合成もしくは有益な代謝産物の分解の増加、または有益経路もしくは有益な代謝産物の減少もしくは有害な代謝産物の分解を意味し、摂動経路が、パラメトリック手法、ノンパラメトリック手法、機械学習に基づくアルゴリズムのうちの1つを含む統計的手法に基づいて特定される、請求項1 に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、個別化治療介入が、遺伝子工学的に操作された細菌を投与することをさらに含み、遺伝子工学的に操作された細菌が、(a)1つ以上の有益な代謝産物の産生のための複数の微生物経路、または/および(b)1つ以上の有害な代謝産物の分解/除去のための複数の微生物経路を、腸内微生物の遺伝子構成に遺伝子工学的に操作することを含み、遺伝子工学的に操作された細菌が、以下に共有される方法のうちの1つで投与される、方法:
(a)プロバイオティクスとして遺伝子工学的に操作されたもので、プレバイオティクス、メタバイオティクス、パラバイオティクスのいずれかと単独または組み合わせて使用される、
(b)代謝産物を産生するのに必要な経路の1つ以上を異種発現する遺伝子工学的に操作された生物であって、ここで、遺伝子工学的に操作された生物は、腸内常在菌の1つ以上であり得、ここで、腸内常在菌は、有益な微生物、市販のプロバイオティクス株、または腸内に常駐可能な通性嫌気性菌を含み得るが、これらに限定されない;ここで、遺伝子工学的に操作された生物は、改変細菌とも呼ばれ、ここで、改変細菌は、食品、食品サプリメント、または医薬組成物もしくはプロバイオティクス製剤として投与され得る。
【請求項9】
下記を含む、システム(100):
入出力インターフェース (106);
1つまたは複数のメモリ(102);および
1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(104)であって、該1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(104)に結合された1つまたは複数のメモリ(104)であって、該1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(104)は、該1つまたは複数のメモリ(102)に記憶されたプログラムされた命令を実行するように構成されている、1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(104):
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、一連の入力データを受信するステップであって、一連の入力データは、以下に関連するデータを含む、ステップと
複数の代謝物、複数の代謝経路、複数の分類群、
複数の代謝産物を補充または分解するための栄養素、プロバイオティクス、プレバイオティクス、サプリメントに関する情報、
複数の食品成分、複数の食品項目、健康なコホートの微生物存在量マトリックス、複数の食事最適化前提パラメータ、
ここで、複数の代謝産物は、有益な代謝産物のセットと有害な代謝産物のセットとを含み、有益な代謝産物のセットは個体の腸の健康に有益であり、有害な代謝産物のセットは個体の腸の健康に有害である、
ここで、複数の代謝経路は、(a)有益経路(b)有害経路のいずれかを含む、
ここで、有益経路は、複数の有益な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の分解のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数を含み、そして
ここで、有害経路は、複数の有益な代謝産物の分解のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数を含む;
ここで、複数の有益微生物は有益経路を保有し、複数の有害微生物は有害経路を保有する;
ここで、複数の分類群は、複数の微生物を含み、ここで、複数の微生物は、複数の有益な微生物、複数の有害な微生物を含み、ここで、複数の微生物は、分類学的階層に従って分類され、ここで、分類学的階層は、複数の細菌門のうちの1つまたは複数を含む、複数の細菌綱、複数の細菌目、複数の細菌科、複数の細菌属、複数の細菌種、および複数の細菌株を含み、ここで、複数の微生物は、別個のゲノム位置を有する複数の遺伝子、細菌株のヌクレオチド配列およびタンパク質配列のセット、ならびに
ここで、複数の食事最適化前提条件パラメータは、食品のセットと、食品のセット中に見出される化合物の完全なセットと、食品成分マトリックスを含み、食品成分マトリックスは、セットの食品に属するすべての食品中のセットの化合物に属するすべての化合物の含有量、セットの食品に属する各食品の総炭水化物、タンパク質、脂肪およびカロリー含有量を集計する、食品成分マトリックスと、ヒトの腸内の細菌分類群のリストと、有益な細菌分類群と有害な細菌分類群を識別するための一連の関数と、分類群-化合物利用マトリックス、炭水化物、タンパク質、脂肪、カロリーに関連するユーザー定義の上限パラメーターと下限パラメーターのセット、およびユーザーが選択した食品を備える、
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、入力データ(204)のセットを使用して知識ベースのセットを生成するステップであって、知識ベースのセットは、属機能マップ(FGmap)、ゲノム代謝経路(GMP)マップ、分類群関連参照プロファイル(TAXA_NET)グラフ、TAXA-食品構成要素ネットワーク、食品構成要素ネットワーク、およびProbMapを含み、知識ベースのセットの生成は、以下を含む、ステップと
FGmapおよびGMPマップを生成し、ここで、FGmapは、複数の分類群の1つに属する複数の細菌属の関数と、複数の代謝経路を列とする行列である、ここで、予め定義された第1の指標は、(a)代謝経路の存在及び(b)代謝経路の非存在のうちの1つを示し、GMPは、行としての複数の細菌株及び列としての複数の代謝経路のマトリックスであり、予め定義された第2の指標は、(a)代謝経路の存在及び(b)代謝経路の非存在のうちの1つを示す;
複数の分類群およびFGmapに基づいてTAXA_NETグラフを生成する工程(ここで、TAXA_NETグラフは無向グラフである)、ここで、TAXA_NETグラフの各ノードは、複数の分類群からの分類群に対応し、エッジは、複数のノードからの各分類群がFGmapからの複数の分類群の機能に関連付けられる、分類群の対の間の正の関係を示し、正の関係は、相互主義、共栄主義、通性主義、および協力のうちの1つを含む;
TAXA_NETの各分類群に対する複数の食物構成要素に基づいてTAXA-食物構成要素ネットワークを生成し、ここでTAXA-食物構成要素ネットワークは、代謝または栄養源として分類群によって使用される食物構成要素と関連付けられた各分類群の無向ネットワークである;
TAXA-食品構成要素ネットワークの各食品構成要素の複数の食品項目に基づいて、食品構成要素ネットワークを生成し、ここで、食品構成要素ネットワークは、食品項目に存在する各食品構成要素の無向ネットワークである(204D);および
GMPの転置を生成してProbMapを取得し、ProbMapは、複数の代謝産物および複数の代謝経路からの各代謝産物を含む行と、複数の細菌株、プロバイオティクス、プレバイオティクス、対応する複数の代謝産物の生合成および/または分解が可能な食餌成分を含む列とを有する行列である;
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、2つのタイムスタンプで個人の複数の腸サンプルを受信し、2つのタイムスタンプが、2つのサンプルが収集されたタイムスタンプ1とタイムスタンプ2を含むこと;
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記複数の腸サンプルの分類群存在量行列を生成し、前記分類群存在量行列は、分類群セット1および分類群セット2を含み、前記分類群セット1および前記分類群セット2は、前記タイムスタンプ1および前記タイムスタンプ2を使用して生成されること;
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、分類群存在量行列およびFGmapを使用して、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの各々について経路存在量を生成することであって、経路存在量はサンプル処理技術を用いて生成され、各タイムスタンプについての経路存在量は、対応するタイムスタンプにおける個体の腸内マイクロバイオームにおけるGMPの複数の代謝経路の存在を示す、経路存在量を生成すること;
摂動経路を同定することであって、摂動経路は、個体の腸の健康状態の悪化を示し、摂動経路は、統計的手法を用いて、タイムスタンプ1とタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの経路存在量の比較に基づいて同定され、摂動経路は、以下のいずれかの場合に基づいて同定される:
(a)ケースA:有益経路のセットの経路存在量の減少、ここで、減少は有益な微生物のセットの減少を示す、または
(b)ケースB:有害経路の集合の経路存在量の増加であって、その増加が有害な微生物の集合の増加を示すもの、または
(c)ケースC:有益経路群の経路量が減少し、有害経路群の経路量が増加していることから、有害な微生物群の増加と有益な微生物群の減少が示唆される;
個別化された治療薬および食事療法の初期セットを決定する工程であって、個別化された治療薬および食事療法の初期セットが、以下の少なくとも1つを含み、ProbMapを使用する、個別化された治療法および個別化された食事療法であって、個別化された治療法および食事療法の初期セットは、同定された摂動経路に対応する行である、食事療法、ここで、個別化治療薬は、(a)摂動経路を有する複数の細菌株、または(b)確率の高い代謝産物の分解または/および生合成のための経路を有する複数の細菌株として決定され、確率の高い代謝産物は、ProbMap の摂動経路に対応する代謝産物である;
タイムスタンプ 2 で取得された分類群存在量マトリックス内の分類群セットを識別することであって、ここで、分類群セットは TAXA_SET_P と TAXA_SET_A で構成され、ここで、TAXA_SET_Pは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有益経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第1の値を含み、TAXA_SET_Aは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有害経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第2の値を含む(216);
TAXA_NETグラフから、タイムスタンプ2におけるTAXA_SET_P内の各税素についての第1の近傍のセットを特定するステップであって、第1の近傍のセットは、TAXA_SET_FN_COM、TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_NEW_を含むTAXA_SET_Pの直接の近傍である、ステップと
1個以上のハードウェアプロセッサを介して、個人の腸の健康を改善するための個別化された治療的介入を推奨することであって、治療的介入が、知識ベースのセットおよび個別化された治療薬および食事療法の推奨の初期セットを使用して、特定された第1の近隣に基づいて、(a)プレバイオティックカクテル、(b)プロバイオティックカクテル、(c)最適化された食事のうちの1つを推奨することを含み、個別化された治療的介入が、以下のうちの少なくとも1つ以上を含む、ことを特徴とする、個別化された治療的介入を推奨すること:
(a)ケースA(一群の有益微生物の経路存在量の減少)については、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事を推奨し、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の増殖を助ける、
(b)ケースB(有害な微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、最適化された食餌を推奨することであって、最適化された食餌は、複数の有益な微生物の増殖を促進し、有害な微生物の増殖を抑制する、ことと
(c)ケースC(有益微生物の集合の経路存在量の減少および有害微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食餌を推奨し、ここで、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食餌は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の増殖を助け、有害微生物の増殖を抑制する。
【請求項10】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、前記命令によって、下記を含むGMPおよびFGmapの生成を実施するように構成される、請求項9に記載のシステム:
前記複数の代謝物、前記複数の代謝経路、および前記複数の代謝経路の各々に関連する生物のリストに基づいて、マトリックス代謝物マップ(Mmap)を生成するステップであって、前記Mmapは、前記複数の代謝物の各々について生成される、ステップと、
細菌ゲノムデータベース(BGD)を用いて細菌ゲノムマップ(BGM)を生成するステップであって、BGDは、複数の細菌株の網羅的なリストを含み、BGMは、複数の細菌株の複数の名称、複数の細菌株の複数の識別番号、複数の細菌株の複数の遺伝子位置、および複数の細菌株の複数のタンパク質ドメインを含む、複数の細菌株に関連する情報を含む、ステップと、
MmapおよびBGMに基づいて、複数の代謝産物から各代謝産物について代謝産物経路ドメインマップ(MPDM)を生成すること(MPDMは、複数の代謝経路の各々に関連するタンパク質ドメインの網羅的なリストから構成される);
予め定義された第1の閾値基準に基づいて、MPDMおよびBGMを使用して、細菌株およびゲノムのリストに含まれる複数の代謝経路の存在を特定すること;
BGM、MPDM、複数の代謝経路および複数の代謝物を用いてGMPを生成するステップであって、GMPは、細菌ゲノム(細菌株)のセットを複数の行として、各代謝物の形成に対応する複数の代謝経路のリストを複数の列として有する行列である、ステップと、
GMPを使用してFGmapを生成し、FGmapは、複数の細菌属を複数の行として、複数の代謝経路を列として行列であること。
【請求項11】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、下記を含む前記経路存在量行列を生成するためのサンプル処理技術(400)を実施するように前記命令によって構成される、請求項9に記載のシステム:
核酸抽出技術に基づいて、複数の腸サンプルから複数の核酸を抽出する工程;
シークエンサーを用いて、抽出された複数の核酸から複数のヌクレオチド配列を生成する工程;
前記複数のヌクレオチド配列を使用して、各分類階層レベルにおける細菌分類学的存在量行列のセットを取得するステップであって、前記細菌分類学的存在量行列は、分類アルゴリズムを使用して、予め定義された分類学的レベルに基づいて前記複数のヌクレオチド配列を分類することによって取得される、ステップと、
細菌の分類学的存在量マトリックス、GMP、およびFGmapのセットを使用して、経路の存在量を生成する。
【請求項12】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、下記を含む前記最適化された食事を推奨するプロセスを実施するように前記命令によって構成される、請求項9に記載のシステム:
タイムスタンプ1とタイムスタンプ2の間の、分類群セット1と分類群セット2の和に含まれるすべての分類群について正規化された変化(d
k)を計算する;
知識ベースの集合から、正規化された変化、複数の有益な微生物、複数の有害な微生物を使用して、分類群セット1と分類群セット2の結合におけるすべての分類群の重要度スコア(b
k)を計算する;
分類群セット1および分類群セット2の和に含まれるすべての分類群の重要度スコア(b
k)と、あらかじめ定義された分類群-化合物利用マトリックスとを用いて、個々人に個別化された腸内化合物スコア(gcs
j)を算出する、ここで、個別化された腸内化合物スコアは、腸内の複数の有益な微生物を増加させる化合物の能力を定量化する;
腸内化合物スコアおよび食品成分マトリックスを使用して、食品のセット内のすべての食品について腸内食品スコア(gfs
j)を計算する、ここで、腸内食品スコアは、複数の有益な微生物を増加させる食品アイテムの能力を定量化する;及び
最適化技術を使用して腸内食品スコアを最適化し、最適化された食餌を得るステップであって、腸内食品スコアは、カロリーパラメータ、炭水化物パラメータ、タンパク質パラメータおよび脂肪パラメータを含む複数の制約パラメータを条件として最適化される、ステップ。
【請求項13】
請求項12記載のシステムにおいて、前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、以下に示すように表される特定の食品(食品
i)の腸内食品スコアの計算を実施するように命令によって構成されることを特徴とするシステム:
ここで、
は食品成分マトリックスであり、ここでC
j,iは、食品
i単位あたりの化合物
j の含有量である、
p=リスト食品から食品中に得られた化合物の総数、および
m = 食品の総数、
ここで、
Tは分類群-化合物利用行列である、
ここで
q = 細菌分類群の総数;
Iは指標関数である、すなわち、
PU: 常在細菌分類群のセット、
AP:病原性細菌の分類群、
ここで
ここで、
A
2
kは、サンプル T2 におけるtaxa
kの存在量である、
A
1
kは、サンプル T1 におけるtaxa
kの存在量である、
σ
kは、複数の健康な腸内微生物叢サンプルの分類群のtaxa
kの標準偏差である。
【請求項14】
請求項9に記載のシステムであって、1つまたは複数のハードウェアプロセッサは、個人化された治療的介入を実施するための命令によって構成され、遺伝子工学的に操作された細菌を投与することをさらに含み、該遺伝子工学的に操作された細菌が、(a)1つ以上の有益な代謝産物の産生のための複数の微生物経路、または/および(b)1つ以上の有害な代謝産物の分解/除去のための複数の微生物経路を、腸内微生物の遺伝子構成に遺伝子工学的に操作することを含み、該遺伝子工学的に操作された細菌が、以下に共有される方法のうちの1つで投与される、個別化治療介入を実施するように命令によって構成される、システム:
(a)プロバイオティクスとして遺伝子工学的に操作されたもので、プレバイオティクス、メタバイオティクス、パラバイオティクスのいずれかと単独または組み合わせて使用される、
(b)代謝産物を産生するのに必要な経路の1つ以上を異種発現する遺伝子工学的に操作された生物であって、ここで、遺伝子工学的に操作された生物は、腸内常在菌の1つ以上であり得、ここで、腸内常在菌は、有益な微生物、市販のプロバイオティクス株、または腸内に常駐可能な通性嫌気性菌を含み得るが、これらに限定されない;ここで、遺伝子工学的に操作された生物は、改変細菌とも呼ばれ、ここで、改変細菌は、食品、食品サプリメント、または医薬組成物もしくはプロバイオティクス製剤として投与され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照と優先権
本出願は、2021年2月3日に出願されたインド仮特許出願第202121004712号からの優先権を主張するものである。上述の出願の全体の内容は、参照によって本願に組み込む。
【背景技術】
【0002】
技術分野
本開示は一般に、マイクロバイオームに基づく治療法の分野に関し、より詳細には、マイクロバイオームの機能に基づいて個別化された治療法および食事を設計するための方法およびシステムに関する。
【0003】
背景
ヒトをはじめとする脊椎動物には、「微生物叢」と呼ばれるさまざまな微生物が生息しており、微生物叢の遺伝物質を集めたものを「マイクロバイオーム」と呼ぶ。しかし、「マイクロバイオータ」と「マイクロバイオーム」という2つの用語は、同じ意味で広く使われている。消化管(GI管)または腸は、これらの微生物群を保有する最もコロニー化された身体部位である。微生物はいくつかの代謝活動を行うことが知られており、これはヒトマイクロバイオーム相互作用と呼ばれる個人のマイクロバイオームとその遺伝子との相互作用につながる可能性がある。微生物叢は、免疫系の調節、エネルギー収穫、様々なシグナル伝達メカニズムへの影響など、様々な方法で個体/宿主の健康に影響を与えることが知られている。したがって、個人の腸内の微生物群集を変化させることで、特定の疾患や障害のリスクや発現を緩和することができる。
【0004】
腸内細菌叢の組成は、地理、ライフスタイル、食事パターンなど、複数の要因によって個人ごとに異なる。さらに、マイクロバイオームの微生物組成は、同じような環境に住む個人間や、同一の遺伝構成を持つ双子間でさえも異なる可能性がある。したがって、異なる集団または異なる個体では、異なる分類群がディスバイオーシスに関与している可能性があり、これらの微生物群集の変化やディスバイオーシスは、無数の疾患/障害と関連している。このように、ディスバイオシス状態は、有用代謝産物の生合成のような有益な機能に寄与する微生物群の消失によって特徴づけられることもあれば、ヒトの健康のさまざまな側面にとって有害な代謝産物を産生する可能性のある微生物群の増加を伴うこともある。ディスバイオーシスはまた、ヒトの健康のさまざまな側面にとって有害な代謝産物を産生する可能性のある微生物の存在量の増加を伴うかもしれない。さらに複雑なことに、1つ以上の機能の低下や増強という形で、特定のディスバイオシス状態に関連する変動があるかもしれない。言い換えれば、個人によってマイクロバイオームの構成や遺伝的背景が異なるため、各個人に効果的なプロバイオティクスとプレバイオティクスの菌株の組み合わせは異なる可能性がある。このことは、個別化されたマイクロバイオーム治療薬の重要性を強調している。
【0005】
最近では、マイクロバイオームの塩基配列の決定や解析にかかる費用はごくわずかなものになってきている。微生物に特異的なDNAまたはRNAマーカー配列を同定することで、個人の腸内マイクロバイオーム組成を得ることが可能になった。腸内細菌叢プロファイリングのためのサンプルは、糞便の採取のような非侵襲的な方法で得ることができる。得られた分類学的情報は、多くの場合、特定の疾患/障害を患っている、あるいは疾患リスクを有すると予想される個体集団について得られた/知られている組成と比較される。腸の健康状態を評価する指標には、微生物の存在量や微生物が果たす機能の分析が含まれることが多い。
【0006】
個人の腸内の微生物群集を変化させることにより、特定の疾患/障害のリスクまたは発現を緩和できることは、当該技術分野において知られている。このような改変には、(a)抗生物質を用いて病原性株を標的とし、その存在量を減少させる、(b)プロバイオティクスのような生きた治療薬やプレバイオティクスのような食事成分を投与して、腸にとって有益な生物の存在量を増加させる、(c)糞便微生物移植が含まれる。
【0007】
プロバイオティクスは、腸内細菌叢における望ましい微生物の相対的な存在量を変化させるだけでなく、場合によっては代謝構造を変化させ、免疫系を調節するために使用されることが確立されている。にもかかわらず、プロバイオティクスの効能が限定的であったり、特定の個人では効能がないことを示す研究もある。その理由のひとつは、プロバイオティクスの多くが、同じ生物はすべての個体で存在量が少ないかもしれない、あるいはほとんどの個体で同じ機能が低下しているかもしれないと仮定して菌株を投与していることであろう。まとめると、個々人における腸内細菌叢の異常は、有益な機能の減少、有害な機能の増加、またはこれら両方のシナリオの組み合わせに起因している可能性がある。従って、あるプロバイオティクスや食事療法が、個人によって同じ効果を持つとは限らない。プロバイオティクス/栄養補助食品を投与する前に個人のマイクロバイオーム・プロファイルを利用し、また、特定の個人について、ディスバイオティクス状態で損なわれている、あるいは増強されている機能を分析することは、プロバイオティクスの有効性を向上させるのに役立つ可能性がある。したがって、マイクロバイオームの機能またはディスバイオシスと関連する分類学的変化に基づいて、個人用にカスタマイズされ、個別化されたプロバイオティクスは、当技術分野の必要性である。
【発明の概要】
【0008】
概要
本開示の実施形態は、従来のシステムにおいて本発明者らが認識した上述の技術的問題の1つ以上に対する解決策として、技術的改善を提示する。例えば、一実施形態では、マイクロバイオームの機能に基づいて個別化された治療法および食事を設計するための方法が提供される。本システムは、命令を記憶するメモリと、1つまたは複数の通信インターフェースと、1つまたは複数の通信インターフェースを介してメモリに結合された1つまたは複数のハードウェアプロセッサとを含み、1つまたは複数のハードウェアプロセッサは、命令によって、入力データのセットを受信するように構成され、入力データのセットは、複数の代謝物に関連するデータを含む、複数の代謝経路、複数の分類群、栄養素に関する情報、プロバイオティクス、プレバイオティクス、複数の代謝産物の補充または分解のためのサプリメント、複数の食品成分、複数の食品アイテム、健康なコホートの微生物存在量マトリックス、複数の食事最適化前提条件パラメータを含む。本システムは、入力データのセットを使用して知識ベースのセットを生成するようにさらに構成され、知識ベースのセットは、属機能マップ(FGmap)、ゲノム代謝物経路(GMP)マップ、分類群関連参照プロファイル(TAXA_NET)グラフ、TAXA-食品成分ネットワーク、食品成分ネットワーク、およびProbMapを含む。本システムはさらに、個人の複数の腸サンプルを2つのタイムスタンプで受け取るように構成され、2つのタイムスタンプは、2つのサンプルが収集されたタイムスタンプ1およびタイムスタンプ2を含む。本システムは、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、複数の腸サンプルの分類群存在量行列を生成するようにさらに構成され、分類群存在量行列は、分類群セット1および分類群セット2を含み、分類群セット1および分類群セット2は、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2を使用して生成される。システムはさらに、分類群存在度行列およびFGmapを用いて、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの各々について経路存在度を生成するように構成され、経路存在度はサンプル処理技術を用いて生成され、各タイムスタンプについての経路存在度は、対応するタイムスタンプにおける個体の腸内マイクロバイオームにおけるGMPの複数の代謝経路の存在を示す。本システムは、摂動経路を同定するようにさらに構成され、ここで、摂動経路は、個体の腸内健康の悪化を示し、摂動経路は、統計的手法を使用して、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2で得られた複数の腸内サンプルの経路存在量の比較に基づいて同定され、(a)ケースA:有益経路のセットの経路存在量の減少、ここで、減少は、有益な微生物のセットの減少を示す、または(b)ケースB.有害経路の集合の経路存在量の増加であって、その増加が有害微生物の集合の増加を示すもの、または(c)ケースC:有益経路の集合の経路存在量の減少および有害経路の集合の経路存在量の増加であって、有害微生物の集合の増加および有益微生物の集合の減少を示すもの。システムはさらに、個人化された治療薬および食事療法の推奨の初期セットを決定するように構成され、個人化された治療薬および食事療法の初期セットは、以下のうちの少なくとも1つを含む:ProbMapを使用する、個別化された治療法および個別化された食事療法であって、個別化された治療法および食事療法の初期セットは、同定された摂動経路に対応する行であり、個別化された治療法は、(a)摂動経路を有する複数の細菌株、または(b)可能性の高い代謝産物の分解または/および生合成のための経路を有する複数の細菌株として決定され、可能性の高い代謝産物は、ProbMapの摂動経路に対応する代謝産物である。本システムはさらに、タイムスタンプ2で得られた分類群存在量マトリックス中の分類群セットを同定するように構成され、分類群セットは、TAXA_SET_PおよびTAXA_SET_Aを含み、TAXA_SET_Pは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有益経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第1の値を含み、TAXA_SET_Aは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有害経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第2の値を含む。システムはさらに、TAXA_NETグラフから、タイムスタンプ2におけるTAXA_SET_Pの各分類群についての第1の近隣のセットを特定するように構成され、第1の近隣のセットは、TAXA_SET_FN、TAXA_SET_FN_COM、TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_NEWを含むTAXA_SET_Pの直接の近隣である。システムは、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、個人の腸の健康を改善するための個別化された治療的介入を推奨するようにさらに構成され、治療的介入は、知識ベースのセットおよび個別化された治療薬および食事の推奨の初期セットを使用して、特定された第1の近隣に基づいて、(a)プレバイオティックカクテル、(b)プロバイオティックカクテル(c)最適化された食事のうちの1つを推奨することを含み、個別化された治療的介入は、以下のうちの少なくとも1つまたは複数を含む:(a)ケースA(有益微生物の集合の経路存在量の減少)に対して、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテル、および最適化された食事を推奨し、ここで、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテル、および最適化された食事は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の成長を助ける、(b)ケースB(有害微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、最適化された食事を推奨する、ここで、最適化された食事は、複数の有益な微生物の増殖を促進し、有害な微生物の増殖を抑制する、および(c)ケースC(有益な微生物のセットの経路存在量の減少および有害な微生物のセットの経路存在量の増加)については、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食事を推奨し、ここで、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食事は、複数の有益な微生物を補充し、有益な微生物の増殖を助け、有害な微生物の増殖を抑制する。
【0009】
別の態様では、マイクロバイオームの機能に基づいて個別化治療薬および食事療法を設計するための方法が提供される。本方法は、一組の入力データを受け取ることを含み、一組の入力データは、複数の代謝産物、複数の代謝経路、複数の分類群、栄養素、プロバイオティクス、プレバイオティクス、複数の代謝産物の補充または分解のためのサプリメントに関する情報、複数の食品成分、複数の食品アイテム、健康なコホートの微生物存在量マトリックス、複数の食事最適化前提パラメータに関連するデータを含む。本方法は、入力データのセットを使用して知識ベースのセットを生成することをさらに含み、知識ベースのセットは、属関数マップ(FGmap)、ゲノム代謝物経路(GMP)マップ、分類群関連参照プロファイル(TAXA_NET)グラフ、TAXA-食品成分ネットワーク、食品成分ネットワーク、およびProbMapを含む。本方法はさらに、2つのタイムスタンプで個体の複数の腸サンプルを受け取ることを含み、2つのタイムスタンプは、2つのサンプルが収集されたタイムスタンプ1およびタイムスタンプ2を含む。本方法は、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、複数の腸サンプルの分類群存在量行列を生成することをさらに含み、分類群存在量行列は、分類群セット1および分類群セット2を含み、ここで、分類群セット1および分類群セット2は、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2を使用して生成される。本方法はさらに、分類群存在度行列およびFGmapを用いて、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの各々について経路存在度を生成することを含み、経路存在度はサンプル処理技術を用いて生成され、各タイムスタンプについての経路存在度は、対応するタイムスタンプにおける個体の腸内マイクロバイオームにおけるGMPの複数の代謝経路の存在を示す。本方法はさらに、摂動経路を同定することを含み、ここで摂動経路は、個体の腸内健康の悪化を示し、ここで摂動経路は、統計的手法を使用して、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2で得られた複数の腸内サンプルの経路存在量の比較に基づいて同定され、(a)ケースA:有益経路のセットの経路存在量の減少、ここで減少は有益な微生物のセットの減少を示す、または(b)ケースB.有害経路の集合の経路存在量の増加であって、その増加は有害な微生物の集合の増加を示す、または(c)ケースC:有益経路の集合の経路存在量の減少および有害経路の集合の経路存在量の増加は、有害な微生物の集合の増加および有益な微生物の集合の減少を示す。本方法はさらに、 、個別化された治療薬および食事療法の推奨の初期セットを決定することを含み、個別化された治療薬および食事療法の初期セットは、以下の少なくとも1つを含む:ProbMapを使用して、個別化された治療法および個別化された食事療法を決定することであって、個別化された治療法および食事療法の初期セットは、同定された摂動経路に対応する行であり、個別化された治療法は、(a)摂動経路を有する複数の細菌株、または(b)可能性の高い代謝産物の分解または/および生合成のための経路を有する複数の細菌株として決定され、可能性の高い代謝産物は、ProbMapの摂動経路に対応する代謝産物である、こと。本方法はさらに、タイムスタンプ2で得られた分類群存在量マトリックス中の分類群セットを同定することを含み、分類群セットはTAXA_SET_PおよびTAXA_SET_Aを含み、TAXA_SET_Pは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有益経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第1の値を含み、TAXA_SET_Aは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有害経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第2の値を含む。本方法はさらに、TAXA_NETグラフから、タイムスタンプ2におけるTAXA_SET_Pの各税素の第1の近傍のセットを特定することを含み、第1の近傍のセットは、TAXA_SET_FN、TAXA_SET_FN_COM、TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_NEWを含むTAXA_SET_Pの直接の近傍である。本方法は、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、個人の腸の健康を改善するための個別化された治療的介入を推奨することをさらに含み、治療的介入は、知識ベースのセット、個別化された治療薬および食事の推奨の初期セットを使用して、特定された第1の近隣に基づいて、(a)プレバイオティックカクテル、(b)プロバイオティックカクテル(c)最適化された食事のうちの1つを推奨することを含み、個別化された治療的介入は、以下のうちの少なくとも1つまたは複数を含む:(a)ケースA(有益微生物の集合の経路存在量の減少)に対して、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテル、および最適化された食事を推奨し、ここで、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテル、および最適化された食事は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の成長を助ける、(b)ケースB(有害微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、最適化された食事を推奨する、ここで、最適化された食事は、複数の有益な微生物の成長を促進し、有害な微生物の成長を抑制する、および(c)ケースC(有益な微生物のセットの経路存在量の減少および有害な微生物のセットの経路存在量の増加)については、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食事を推奨し、ここで、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食事は、複数の有益な微生物を補充し、有益な微生物の成長を助け、有害な微生物の成長を抑制する。
【0010】
さらに別の態様では、マイクロバイオームの機能に基づいて個別化された治療薬および食事療法を設計するための非一過性のコンピュータ可読媒体が提供される。このプログラムは、一組の入力データを受信することを含み、一組の入力データは、複数の代謝産物、複数の代謝経路、複数の分類群、栄養素、プロバイオティクス、プレバイオティクス、複数の代謝産物の補充または分解のためのサプリメントに関する情報、複数の食品成分、複数の食品アイテム、健康なコホートの微生物存在量マトリックス、複数の食事最適化前提パラメータに関連するデータを含む。プログラムはさらに、入力データのセットを使用して知識ベースのセットを生成することを含み、知識ベースのセットは、属機能マップ(FGmap)、ゲノム代謝物経路(GMP)マップ、分類群関連参照プロファイル(TAXA_NET)グラフ、TAXA-食品成分ネットワーク、食品成分ネットワーク、およびProbMapを含む。本方法はさらに、2つのタイムスタンプで個体の複数の腸サンプルを受け取ることを含み、2つのタイムスタンプは、2つのサンプルが収集されたタイムスタンプ1およびタイムスタンプ2を含む。本プログラムは、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、複数の腸サンプルの分類群存在量行列を生成することをさらに含み、分類群存在量行列は、分類群セット1および分類群セット2を含み、分類群セット1および分類群セット2は、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2を用いて生成される。本プログラムはさらに、分類群存在度行列およびFGmapを用いて、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの各々について経路存在度を生成することを含み、経路存在度はサンプル処理技術を用いて生成され、各タイムスタンプについての経路存在度は、対応するタイムスタンプにおける個体の腸内マイクロバイオームにおけるGMPの複数の代謝経路の存在を示す。本プログラムはさらに、摂動経路を同定することを含み、ここで摂動経路は、個体の腸の健康状態の悪化を示し、ここで摂動経路は、統計的手法を用いて、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの経路存在量の比較に基づいて同定され、(a)ケースA:有益経路のセットの経路存在量の減少、ここで減少は有益な微生物のセットの減少を示す、または(b)ケースB.有害経路の集合の経路存在量の増加であって、その増加が有害微生物の集合の増加を示すもの、または(c)ケースC:有益経路の集合の経路存在量の減少および有害経路の集合の経路存在量の増加であって、有害微生物の集合の増加および有益微生物の集合の減少を示すもの。プログラムはさらに、個人化された治療薬および食事療法の推奨の初期セットを決定することを含み、個人化された治療薬および食事療法の初期セットは、以下の少なくとも1つを含む:ProbMapを使用して、個別化された治療法および個別化された食事療法を決定することであって、個別化された治療法および食事療法の初期セットは、同定された摂動経路に対応する行であり、個別化された治療法は、(a)摂動経路を有する複数の細菌株、または(b)可能性の高い代謝産物の分解または/および生合成のための経路を有する複数の細菌株として決定され、可能性の高い代謝産物は、ProbMapの摂動経路に対応する代謝産物である、こと。本プログラムはさらに、タイムスタンプ2で得られた分類群存在量マトリックス中の分類群セットを同定することを含み、分類群セットはTAXA_SET_PおよびTAXA_SET_Aを含み、TAXA_SET_Pは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有益経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第1の値を含み、TAXA_SET_Aは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有害経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第2の値を含む。プログラムはさらに、TAXA_NETグラフから、タイムスタンプ2におけるTAXA_SET_P内の各分類群の第1の近傍のセットを特定することを含み、第1の近傍のセットは、TAXA_SET_FN、TAXA_SET_FN_COM、TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_NEWを含むTAXA_SET_Pの直接の近傍である。本プログラムは、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、個人の腸の健康を改善するための個別化された治療的介入を推奨することをさらに含み、治療的介入は、知識ベースのセットおよび個別化された治療薬および食事の推奨の初期セットを使用して、特定された第1の近隣に基づいて、(a)プレバイオティックカクテル、(b)プロバイオティックカクテル(c)最適化された食事のうちの1つを推奨することを含み、個別化された治療的介入は、以下のうちの少なくとも1つまたは複数を含む:(a)ケースA(有益微生物の集合の経路存在量の減少)に対して、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテル、および最適化された食事を推奨し、ここで、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテル、および最適化された食事は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の成長を助ける、(b)ケースB(有害微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、最適化された食事を推奨する、ここで、最適化された食事は、複数の有益な微生物の成長を促進し、有害な微生物の成長を抑制する、および(c)ケースC(有益な微生物のセットの経路存在量の減少および有害な微生物のセットの経路存在量の増加)については、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食事を推奨し、ここで、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食事は、複数の有益な微生物を補充し、有益な微生物の成長を助け、有害な微生物の成長を抑制する。
【0011】
前述の一般的な説明も以下の詳細な説明も、例示的かつ説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載された本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面の簡単な記述
本開示に組み込まれ、本開示の一部を構成する添付図面は、例示的な実施形態を示し、本明細書と共に、開示された原理を説明するのに役立つ:
【0013】
【
図1】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による、マイクロバイオームの機能に基づいて個別化された治療法および食事を設計するための例示的なシステムを示す。
【0014】
【0015】
【
図3A】
図3Aおよび
図3Bは、本開示のいくつかの実施形態によるゲノム代謝経路(GMP)マップの生成方法(300)を示すフロー図である。
【
図3B】
図3Aおよび
図3Bは、本開示のいくつかの実施形態によるゲノム代謝経路(GMP)マップの生成方法(300)を示すフロー図である。
【0016】
【
図4】
図4は、本開示のいくつかの実施形態に従って、サンプル処理技術を用いて経路存在量行列を生成するための方法(400)を示すフロー図である。
【0017】
【
図5】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による最適化手法に基づいて最適化された食事を推奨するための方法(500)を示す流れ図である。
【0018】
【
図6】
図6は、本開示のいくつかの実施形態による、マイクロバイオームの機能に基づいて個別化された治療法および食事療法を設計するための一組の隣人を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施形態の詳細な説明
例示的な実施形態を添付図面を参照して説明する。図において、参照番号の左端の桁(複数可)は、参照番号が最初に現れる図を識別する。便利な場合には、図面全体を通して、同じ参照番号は、同じまたは類似の部品を参照するために使用される。開示された原理の例および特徴が本明細書に記載されているが、開示された実施形態の範囲から逸脱することなく、修正、適合、および他の実施が可能である。
【0020】
用語集
本開示の文脈における「微生物叢」(「マイクロバイオータ」)という用語は、特定の生態学的ニッチ(例えば、皮膚、腸、口腔などの人体部位)または環境/地理的部位に生息する、細菌、古細菌、原生生物、真菌、ウイルスなどの微生物の集合体を指す。本開示の文脈における「腸内マイクロバイオーム」という用語は、ヒトまたは脊椎動物の宿主の腸/消化管/腸内に存在する微生物叢(または微生物群集)の複数の遺伝物質を指す。マイクロバイオームのバランスが崩れたり、乱れたりすることを「ディスバイオーシス」と呼ぶ。「マイクロバイオータ」と「マイクロバイオーム」という2つの用語は、互換性を持って広く使われている。
【0021】
本開示の文脈における「代謝産物」(「メタボライト」)という用語は、微生物内の代謝プロセスによって形成される化学的実体、生成物、または化合物を指す。栄養、免疫調節、臓器機能の維持、遺伝子機能の調節などの点で、ヒトにおいて有益な効果を有することが知られている代謝物を有益代謝物と呼ぶ。炎症反応の増加、腸の完全性の損傷、遺伝子制御の異常など、宿主に有害な影響を及ぼすことが知られている代謝産物は、有害代謝産物と呼ばれている。
【0022】
本開示の文脈における「機能」という用語は、候補代謝産物を特定の候補産物に変換するための経路を形成するタンパク質または酵素をコードする、微生物ゲノム上の遺伝子の存在を指す。
【0023】
本開示の文脈における「ホモログ」という用語は、共通の進化的起源または祖先に由来する2つのタンパク質を指す。また、この用語の用法は、同様の機能を果たすために収斂進化により生じた、60%を超えるタンパク質配列類似性を有するタンパク質にも拡張され得る。
【0024】
本開示の文脈における「経路」という用語は、1つの反応において、この変換のためのタンパク質/酵素をコードする遺伝子を用いて、出発基質が生成物に変換される一連の反応を指す。このようにして生合成された生成物は、タンパク質/酵素をコードする遺伝子によって、一連の反応の次の反応に取り込まれる。経路の「同族ホモログ」とは、ゲノム上にコードされているこのタンパク質/酵素のホモログすべてのうち、経路で実際に機能するタンパク質/酵素候補を指す。
【0025】
本開示の文脈における「オペロン」または「遺伝子クラスター」という用語は、ある経路に関与する遺伝子が微生物ゲノム上の隣接する位置に存在することを指す。
【0026】
本開示の文脈における「タンパク質ドメイン」または「ドメイン」という用語は、それ自体が独立して存在し、同様の機能を果たすことができるタンパク質の保存領域を指す。タンパク質を構成するタンパク質ドメインは、配列相同性、隠れマルコフモデルなどのような様々な方法を用いて同定することができ、タンパク質の機能を理解したり、注釈を付けたりすることができる。
【0027】
本開示の文脈における「ハッシュ」という用語は、連想配列または辞書と呼ぶこともできる、キーと値のペアおよびそれらの関連付けを指す。
【0028】
本開示の文脈における「分類学的存在量」という用語は、身体部位から採取できるマイクロバイオームサンプル内の分類学的グループの出現/存在量を指す。分類学的存在量は、分類群名を行、サンプルを列とする存在量を含むマトリックスの形式で、属、種、または株の分類学的レベルとして得ることができる。細菌の16S rRNAのような特定の遺伝子は、マイクロバイオームサンプルに存在する分類群の系統を理解するためのマーカー遺伝子として使用される。本開示では、分類群は分類学的階層に従って分類された微生物を含み、分類学的階層は複数の門、綱、目、科、属、種または株の1つまたは複数を含む。これらの分類群のいずれか1つへの言及は、すべての分類群に適用可能であるとみなすことができる。
【0029】
本開示の文脈における「時点」という用語は、異なる時点のデータで同一個体から得られたサンプルを指す一方、「集団(複数可)」という用語は、健康状態、年齢、地理、治療の実施などのような(ただしこれらに限定されない)特定の分析特徴(複数可)に属する可能性のある、同一/類似/比較/一致した個体の集合に対応するデータを指す。
【0030】
本開示の文脈における「プロバイオティクス」という用語は、ヒトまたは任意の脊椎動物の宿主に投与された場合に健康上の利益を提供し得る生きた微生物を指す。プレバイオティック」または「栄養補助食品」という用語は、宿主の健康を維持するために細菌の増殖またはその活性を誘発し得る食品成分を指す。シンバイオティクス」という用語は、相乗的な有益効果を発揮するために投与されるプロバイオティクス(健康を促進する生きた微生物)とプレバイオティクス(有益な微生物の増殖を増強する栄養補助食品)の組み合わせまたは混合物を指す。メタバイオティクス」または/および「ポストバイオティクス」または/および「バイオジェニックス」という用語は、生きた微生物が単独で、またはその代謝物/生成物/副生成物とともに分泌する成分を指し、宿主の健康を調節/回復する特定の宿主の生理機能の増強/減少を助ける。パラプロバイオティクス」または「ゴースト・プロバイオティクス」という用語は、摂取することで腸内細菌叢の有益な機能を回復させる、プロバイオティクスの改変型、固定化型、不活性化型、非生存型である。
【0031】
本開示の文脈における「糞便微生物移植」または「FMT」という用語は、腸内細菌叢がディスバイオシスを示すレシピエント個体の腸管内に、ドナーからの糞便の成分を投与することを指す。一実施形態では、FMTはまた、「健康な」状態の間に個人の便をバンクし、その便の成分をdysbiotic状態の下で必要なときに使用する「a-FMT(自己FMT)」を指すことができる。FMTは、レシピエントの腸内細菌叢を変化させ、疾患や治療によってレシピエントに生じた腸内細菌叢異常を緩和するのに役立つ。
【0032】
「バイオエンジニアリング」または「遺伝子工学」という用語は、1つまたは複数の微生物の遺伝的構成を変更/修正するプロセスを指し、その結果、宿主/産業/環境に対する当該微生物の使用法や適用性が向上する。
【0033】
「摂動された機能」または「摂動経路」または「可能性のある経路」(probable pathway)という用語は、有害経路の増加、または有害な代謝産物の生合成、または有益な代謝産物の分解を指す。また、有益経路または有益な代謝産物の減少、あるいは有害な代謝産物の分解の減少を指す場合もある。2つ以上の腸内サンプル間で有意に増加または減少した代謝物を、probable代謝物またはperturbed代謝物と呼ぶ。
【0034】
提案された発明は、マイクロバイオームのバランスを回復するために増強または減弱させる必要のある微生物機能の同定を可能にする。さらに、本発明は、これらの特定された機能に基づいて、医療提供者が個人向けにプロバイオティクスを個別化することを可能にする。さらに、特定の個人にとって効率的であることが証明される可能性のある、適切な栄養補給や食事パターンを予測することができる。このような医薬品は、同様のマイクロバイオーム・プロファイルを有する個人または個人のグループに対して、個別化された予防治療薬を設計するのに有効であることが証明されるかもしれない。一実施形態において、このような個別化プロバイオティクスは、個人に対して単独で、または他の継続的治療レジメンと組み合わせて投与することができる。
【0035】
背景のセクションで述べたように、個々人における腸内細菌叢の異常は、有益な機能の減少、有害な機能の増加、あるいはこれら両方のシナリオの組み合わせに起因する可能性がある。従って、あるプロバイオティクスや食事療法が、個人によって同じ効果を持つとは限らない。プロバイオティクス/栄養補助食品を投与する前に個人のマイクロバイオーム・プロファイルを利用し、また、特定の個人について、生物多様性が損なわれている、あるいは増強されている機能を分析することは、プロバイオティクスの有効性を向上させるのに役立つ可能性がある。従って、マイクロバイオーム機能またはディスバイオーシスに関連する分類学的変化に基づいて、個人用にカスタマイズされ、個別化されたプロバイオティクスが必要とされている。
【0036】
開示される本発明は、本明細書に記載されるように、食餌療法、プロバイオティクス、プレバイオティクス、メタバイオティクス、シンバイオティクスを含む治療戦略のための組成物(複数可)を設計する当該技術分野で公知の方法とは異なる。一実施形態において、組成物は、プロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスおよび/または食餌暗示剤および/または栄養補助剤等から構成され得る。本明細書に記載されるマイクロバイオームの機能を変化させることができる他の任意の組成物は、本発明の範囲内である。 1.個体の腸内細菌叢に存在する代謝異常のうち、減少している有益な代謝経路とその構成代謝産物、増加している有害な代謝経路とその構成代謝産物を含む、障害された経路の組み合わせを特定する。
2.マイクロバイオーム・プロファイルとそこから得られる代謝経路情報を活用し、摂動経路を同定する。摂動された経路の情報、ひいてはマイクロバイオームの摂動された機能は、マイクロバイオームの機能に基づいた治療戦略の設計に応用することができる。摂動していると同定された代謝経路は、摂動した機能の指標として機能する。
3.前記乱れた代謝経路の影響を修正するために必要な、微生物カクテル、食事成分、栄養補助食品、プレバイオティクスの1つ以上を含む、個別化された治療レジメントの組成を導出するために知識ベースを利用し、それにより、ディスバイオシスに関連する代謝産物を導出すること。
【0037】
本発明の有用性
1.本開示は、個体のマイクロバイオーム異常状態における乱れた微生物機能を特定し、当該機能を利用して、個体の健康をマイクロバイオーム異常状態からバランス状態に改善するための個別化治療レジメンを決定する方法を提供する。
2.組成物は、損なわれた有益な代謝産物またはその代謝産物の生成に関与する分類群が腸内で補充されるように設計される。同様に、有害代謝物の存在、または有害代謝物の生合成を担う分類群の存在を抑制するように、組成物を設計することもできる。
【0038】
個別化治療介入は、損なわれた有益な代謝産物またはその代謝産物の生成に関与する分類群が腸内で補充されるように設計される。同様に、有害代謝物の存在、または有害代謝物の生合成を担う分類群の存在を抑制するように組成物を設計することもできる。
【0039】
マイクロバイオームの重要性とその影響を考慮すると、腸内細菌叢における望ましい微生物の相対的な存在量を変化させるだけでなく、場合によっては代謝の構成や免疫系の調節を変化させるプロバイオティクスの利用が確立されている。しかし、マイクロバイオームの構成や遺伝的背景は個人によって異なるため、個人にとって最大の利益をもたらすためには、その人の腸内細菌叢に応じて、効果的なプロバイオティクスとプレバイオティクスの菌株の組み合わせが異なる/個人化される/カスタマイズされることが理想的である。
【0040】
ここで図面、より詳細には
図1~
図6を参照すると、同様の参照文字は図全体を通して一貫して対応する特徴を示しており、好ましい実施形態が示されており、これらの実施形態は以下の例示的なシステムおよび/または方法の文脈で説明される。
【0041】
図1は、本開示のいくつかの実施形態に従った、マイクロバイオームの機能に基づいて個別化された治療法および食事を設計するためのシステム100の機能ブロック図である。
【0042】
一実施形態では、システム100は、プロセッサ(複数可)104、入出力(I/O)インタフェース(複数可)106と代替的に呼ばれる通信インタフェースデバイス(複数可)、およびプロセッサ(複数可)104に動作可能に結合された1つまたは複数のデータ記憶デバイスまたはメモリ102を含む。つまたは複数のハードウェアプロセッサを有するシステム100は、システム100の1つまたは複数の機能ブロックの機能を実行するように構成される。
【0043】
システム100の構成要素を参照すると、一実施形態では、プロセッサ(単数または複数)104は、1つまたは複数のハードウェアプロセッサ104であり得る。実施形態において、1つまたは複数のハードウェアプロセッサ104は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、中央処理装置、ステートマシン、論理回路、および/または動作命令に基づいて信号を操作する任意のデバイスとして実装され得る。他の能力の中でも、1つ以上のハードウェアプロセッサ104は、メモリ102に格納されたコンピュータ読み取り可能な命令をフェッチして実行するように構成される。一実施形態では、システム100は、ラップトップコンピュータ、ノートブック、携帯電話などのハンドヘルドデバイス、ワークステーション、メインフレームコンピュータ、サーバ、ネットワーククラウドなどを含む様々なコンピューティングシステムに実装することができる。
【0044】
I/Oインタフェース(複数可)106は、例えば、ウェブインタフェース、グラフィカルユーザインタフェース、タッチユーザインタフェース(TUI)などの様々なソフトウェアおよびハードウェアインタフェースを含むことができ、例えば、LAN、ケーブルなどの有線ネットワーク、およびWLAN、セルラー、または衛星などの無線ネットワークを含む、多種多様なネットワークN/Wおよびプロトコルタイプ内での複数の通信を容易にすることができる。一実施形態では、I/Oインターフェース(複数可)106は、システム100の多数のデバイス(ノード)を互いにまたは別のサーバに接続するための1つまたは複数のポートを含むことができる。
【0045】
メモリ102は、例えば、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)およびダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)などの揮発性メモリ、および/またはリードオンリーメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルROM、フラッシュメモリ、ハードディスク、光ディスク、および磁気テープなどの不揮発性メモリを含む、当該技術分野で公知の任意のコンピュータ読み取り可能媒体を含むことができる。
【0046】
さらに、メモリ102は、代謝産物の経路機能とともに、複数の有益な微生物および複数の有害な微生物を含む代謝産物に関する情報を含むように構成されたデータベース108を含んでもよい。メモリ102は、システム100および本開示の方法のプロセッサ(複数可)104によって実行される各ステップの入力(複数可)/出力(複数可)に関連する情報を含んでもよい。一実施形態では、データベース108は、システム100の外部(図示せず)にあり、I/Oインターフェース106を介してシステムに結合されてもよい。
【0047】
図2A-2H、
図3A-3B、
図4および
図5の フロー図に関連して、システム100の構成要素の機能を説明する。
【0048】
システム100は、BLUETOOTH(登録商標)、USB、ZigBee、その他の携帯電話サービスなど、さまざまな接続オプションをサポートしている。ネットワーク環境は、インターネット、WAN、MANなどを含む任意の通信リンクを使用して、システム100の様々なコンポーネントの接続を可能にする。例示的な実施形態では、システム100はスタンドアロン・デバイスとして動作するように実装される。別の実施形態では、システム100は、スマートコンピューティング環境への疎結合デバイスとして動作するように実装されてもよい。システム100の構成要素および機能性をさらに詳細に説明する。
【0049】
システム100の様々なモジュールは、マイクロバイオームの機能に基づいて個別化された治療法および食事を設計するように構成され、ソフトウェアプログラムの論理的に自己完結した部分、自己完結したハードウェアコンポーネント、および/または、実行されると本明細書に記載の上記方法を実行する、ハードウェアコンポーネントの各々に組み込まれたソフトウェアプログラムの論理的に自己完結した部分を有する自己完結したハードウェアコンポーネントの少なくとも1つとして実装される。
【0050】
【0051】
次に、本開示の方法のステップを、マイクロバイオームの機能に基づいて個別化された治療法および食事を設計するためのシステム(100)の構成要素について、
図2A、
図2B、
図2C、
図2D、
図2E、
図2F、
図2Gおよび
図2Hに描かれているフロー図を参照して説明する。プロセスステップ、方法ステップ、技術などは、連続的な順序で記載されることがあるが、そのようなプロセス、方法、技術は、代替的な順序で機能するように構成されることがある。換言すれば、記載され得るステップの任意の順序または順序は、必ずしもその順序で実行されるべきステップの要件を示すものではない。本明細書に記載されるプロセスのステップは、実用的な任意の順序で実行されてもよい。さらに、いくつかのステップは同時に実行されてもよい。
【0052】
方法(200)のステップ202で、一組の入力データが入出力インターフェース106で受信される。
【0053】
入力データのセットは、複数の代謝産物、複数の代謝経路、複数の分類群、栄養素、プロバイオティクス、プレバイオティクス、複数の代謝産物の補充または分解のためのサプリメントに関する情報、複数の食品成分、複数の食品アイテム、健康なコホートの微生物存在量マトリックス、複数の食事最適化前提条件パラメータに関連するデータから構成される。
【0054】
入力データのセットは、複数の代謝物に関連するデータから構成され、有益な代謝物のセットと有害な代謝物のセットから構成され、有益な代謝物のセットは、個人の腸の健康にとって有益であり、有害な代謝物のセットは、個人の腸の健康にとって有害である。
【0055】
入力データのセットはさらに、複数の代謝経路に関連するデータから構成され、(a)有益経路(b)有害経路のいずれかから構成される。
【0056】
入力データのセットは、さらに、有益経路が、複数の有益な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の分解のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数から構成される。
【0057】
入力データのセットは、さらに、有害経路が、複数の有益な代謝産物の分解のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数から構成される。
【0058】
入力データのセットは、有益経路を保有する複数の有益な微生物と、有害経路を保有する複数の有害な微生物とをさらに含む。
【0059】
前記入力データのセットは、さらに、前記複数の分類群は、複数の微生物を含み、ここで、前記複数の微生物は、複数の有益な微生物、複数の有害な微生物を含み、ここで、前記複数の微生物は、分類学的階層に従って分類され、ここで、前記分類学的階層は、複数の細菌門のうちの1つまたは複数を含む、複数の細菌綱、複数の細菌目、複数の細菌科、複数の細菌属、複数の細菌種、および複数の細菌株を含み、複数の微生物は、異なるゲノム位置を有する複数の遺伝子、細菌株のヌクレオチド配列およびタンパク質配列のセットを含む。
【0060】
入力データのセットはさらに、複数の食事最適化前提条件パラメータを含み、ここで、複数の食事最適化前提条件パラメータは、食品のセットと、食品のセット中に見出される化合物の完全なセットと、食品成分マトリックスを含み、食品成分マトリックスは、セットの食品に属するすべての食品中のセットの化合物に属するすべての化合物の含有量、セットの食品に属する各食品の総炭水化物、タンパク質、脂肪およびカロリー含有量を集計する、食品成分マトリックスと、ヒトの腸内の細菌分類群のリストと、有益な細菌分類群と有害な細菌分類群を識別するための一連の関数と、分類群-化合物利用マトリックス、炭水化物、タンパク質、脂肪、カロリーに関連するユーザー定義の上限パラメーターと下限パラメーターのセット、およびユーザーが選択した食品を備える。
【0061】
腸の健康維持に重要な代謝産物、または腸の健康に有害な代謝産物のリストMLを、文献マイニングの手法を用いて目録化する。本開示において、腸の健康とは、腸内細菌叢のバランス、ひいては個人の健康維持に役立つそれらの機能を指す。一実施形態では、PubmedやPubtatorのような文献エンジン、または特許検索エンジンで検索するための入力としてクエリー文字列が使用されるが、これらに限定されない。実施形態では、クエリー文字列は、「腸+健康+代謝物」または「代謝物名+腸」である可能性がある。文献で腸の健康に有益であると示された代謝物には、酪酸、プロピオン酸、酢酸などの短鎖脂肪酸が含まれる。ウレアーゼ酵素による尿素代謝、腸に到達した未消化タンパク質のアミノ酸代謝、プトレシン、スペルミン、カダベリンなどの生体アミンの代謝など、アンモニアの放出につながる経路は腸の健康に有害であることが判明した。同様に、トリメチルアミンオキシドやフェニルアセテートのような代謝産物の増加は、それぞれ心血管疾患や肝疾患に関与していることが判明している。リストMLには、ある代謝物が腸の健康にとって有害であるか有益であるかが文献で報告されているかどうかの情報も含まれている。
【0062】
MLを構成する各代謝物(MP)の生成/分解/代謝の経路( )は、最新の文献マイニング技術によって得られる。さらに、代謝経路(MP)を構成する遺伝子は、同じ細菌ゲノム内の他の様々な経路にホモログを持つ可能性がある。従って、MPに関与するホモログ(以降、同族ホモログとも呼ぶ)を、その他のホモログから区別することが重要である。一実施形態では、経路として機能し、化合物の分解または生成もしくは代謝に関与するタンパク質または酵素をコードする遺伝子は、しばしば細菌ゲノム上の並置された位置に存在し、これらの遺伝子はまとめてオペロンまたは遺伝子クラスターと呼ばれる。遺伝子クラスター中の代謝経路をコードする遺伝子の出現を利用して、ゲノム上の他のホモログから経路に属する同族ホモログを同定することができる。科学文献のリポジトリである文献検索エンジン(Pubmed/ PubtatorやKEGGのような経路リポジトリを含むが、これらに限定されない)に対して検索するための代謝物の入力として、クエリー文字列Qが使用される。
[NameString'] + [Gene cluster OR operon] + [Microbe]
ここで NameString = (Mi ) + [Degradation OR Biosynthesis OR Metabolism] または任意の特許文献検索エンジン。
【0063】
クエリー文字列の任意の組み合わせ、またはクエリー文字列の任意の部分文字列の使用も本発明の範囲内である。これらのデータベースの文献検索から得られた結果セットは、経路が実験的に特徴付けられた生物のリスト(ORG
out )と共に、各ジャーナル出版物に対応する抄録のリスト(A
out)を出力として提供する。経路情報を得るための他のデータベースの使用、および他のフォーマットでの文献マイニングの結果は、本発明の範囲内である。一実施形態では、文献マイニングの結果のフォーマットは、フル出版物、総説、オンライン情報、書籍記事から1つ以上とすることができる。さらに、代謝産物Miの分解/生合成の経路(細菌ゲノム上の遺伝子によってコードされる候補代謝産物の分解/生合成の一連のステップまたは化学反応である)およびそのプロセスに関与する遺伝子/酵素の手動検索は、前のステップで各入力クエリ文字列Qに対してA
out 。このプロセスの結果、各代謝物を行、その生合成/分解経路とその経路が特徴付けられた生物を列とするマトリックス Metabolite Map (Mmap) が作成される。Mmapのプロトタイプテーブルのシナリオ例を以下の表1に示す:
【表1】
【0064】
一実施形態では、有益な代謝産物を生合成する有益な微生物(常在細菌に見られる)に見られる代謝経路は、ピルビン酸を最初の副原料として酪酸産生に至る一連の反応である。さらに、常在細菌または有益な微生物は、有害な代謝産物を分解する経路も有している。一実施形態では、そのような経路の一つは、アンモニア酸化につながる一連の代謝反応を含む。健康に有益な代謝産物の生合成または健康に有害な代謝産物(TMAOなど)の分解を担うその他の経路は、本発明で「有益経路」と呼ぶ範囲内である。
【0065】
ピルビン酸経路を介した酪酸生成:基質であるピルビン酸は、チオラーゼ(Thl, EC 2.3.1.9)、ヒドロキシブチリルデヒドロゲナーゼ(Hbd, EC 1.1.1.157)、クロノターゼ/エノイル-CoAヒドラターゼ(Cro, EC 4.2.1.17)の3つの酵素によって触媒される3つの段階を経て、クロトニルCoAに変換される。クロトニルCoAは、ブチリルCoAデヒドロゲナーゼ(Bcd)によってブチリルCoAに変換される。ブチリルCoAは、(i)リン酸ブチリルトランスフェラーゼ(Ptb)と酪酸キナーゼ(Buk)という2つの酵素の助けを借りて、(ii)ブチリルCoA酢酸CoAトランスフェラーゼ(But)の助けを借りて、2つのルートのいずれかを介して酪酸に代謝される。ピルビン酸経路を介した酪酸産生は常在細菌に特異的に見られ、本明細書ではこの経路を「有益経路」と呼んでいる。
【0066】
アンモニアの酸化経路:アンモニアの酸化は、3段階のプロセスを経て硝酸塩を生成する。酵素アンモニアモノオキシゲナーゼ(Amo, EC 1.14,99.39)は、アンモニアのヒドロキシルアミンへの変換を触媒し、ヒドロキシルアミンデヒドロゲナーゼ(Hao, EC 1.7.2.6)によって亜硝酸塩に変換される。亜硝酸塩はさらに、硝酸還元酵素(EC 1.7.5.1)によって硝酸塩に代謝される。別の過程として、アンモニアの酸化はカルバモイルリン酸合成酵素(EC 6.3.4.16)によってカルバモイルリン酸を生成する。アンモニア酸化経路は、本明細書を通して「有益経路」と呼ばれている。
【0067】
一実施形態では、健康に有害または有害な代謝産物を生合成するか、または健康に有益な代謝産物を分解する病原体とみなされる微生物に見出される代謝経路をコードする遺伝子のセットは、「有害経路」とみなされる。一実施形態では、有害経路には、アンモニア放出経路、生物起源アミン生成経路、およびトリメチルアミンオキシド生成経路が含まれる。健康に有害な代謝産物の生合成または健康に有益な代謝産物の分解を担うその他の経路は、本発明で「有害経路」と呼ぶ範囲内である。
【0068】
アンモニアを放出する経路は以下のものを含む:
(a) 尿素の分解:尿素の加水分解は、酵素ウレアーゼ(EC 3.5.1.5)によって触媒され、尿素を分解してアンモニアと二酸化炭素を生成する。この経路はアンモニアを放出する経路であるため、本明細書では「有害経路」と呼んでいる。
(b)リジンの分解:リジンは、リジン2,3-アミノムターゼ(KamA)、リジン5,6-アミノムターゼ(Kam D,E)、3,5-ジアミノヘキサン酸デヒドロゲナーゼ(Kdd)、3-ケト-5-アミノヘキサン酸切断酵素(Kce)、3-アミノブチリル-CoAアンモニアリアーゼ(Kal)の5つの酵素が関与する5つの中間段階を経て、クロトニル-CoAに代謝される。第5工程では、アンモニアが副産物として放出される。このステップの生成物であるクロトニルCoAは、ブチリルCoAデヒドロゲナーゼ(Bcd, EC 4.3.1.14)によってさらにブチリルCoAに変換される。ブチリルCoAは以下の2つの経路のいずれかを経て酪酸に代謝される。(i)リン酸ブチリルトランスフェラーゼ(Ptb, EC 2.3.1.19)と酪酸キナーゼ(Buk, EC 2.7.2.7)の2つの酵素が関与する2つの反応を経て、(ii)ブチリルCoA酢酸CoAトランスフェラーゼ(But, EC 2.8.3.8)が関与する1つの反応を経て。リジン分解経路はアンモニア放出経路であるため、本明細書では「有害経路」と呼ばれている。
(c)グルタル酸分解:2-オキソグルタル酸は、2-ヒドロキシグルタル酸デヒドロゲナーゼ(L2Hgdh, EC 1.1.99.2)、グルタコン酸-CoA転移酵素(Gct、2.8.3.12)、2-ヒドロキシグルタリル-CoAデヒドロゲナーゼ(HgCoAd、EC 4.2.1.-)およびグルタコニル-CoA脱炭酸酵素(Gcd、EC 4.1.1.70)である。第1工程では、アンモニアが副生成物として放出される。クロトニルCoAはさらに、ブチリルCoAデヒドロゲナーゼ(Bcd, EC 4.3.1.14)によってブチリルCoAに変換される。ブチリルCoAは、(i)リン酸ブチリルトランスフェラーゼ(Ptb, EC 2.3.1.19)と酪酸キナーゼ(Buk, EC 2.7.2.7)の2つの酵素の助けを借りて、(ii)ブチリル-CoA酢酸CoAトランスフェラーゼ(But, EC 2.8.3.8)の助けを借りて、2つの経路のいずれかを経て酪酸に代謝される。グルタル酸分解経路はアンモニア放出経路であるため、本明細書では「有害経路」と呼んでいる。
(d)ヒスチジンの分解:ヒスチジンは4つの中間段階を経てグルタミン酸に変換される。第一段階では、ヒスチジンは酵素ヒスチジンアンモニアリアーゼ(Hal, EC 4.3.1.3)によってウロカナートに代謝され、この段階でアンモニアが副産物として放出される。ウロカナートはウロカナーゼ(UroC1, EC 4.2.1.49)によって4-イミダゾロン-5-プロパノエートに変換される。この生成物はさらに、イミダゾロンプロピオナーゼ(AmdhD1、EC 3.5.2.7)の助けを借りて、N-ホルミミノ-L-グルタミン酸に代謝される。この生成物は次に、グルタミン酸ホルムイミドイルトランスフェラーゼ(FtcD、EC 2.1.2.5)またはホルムイミドイルグルタマーゼ(HutG、EC 3.5.3.8)の2つの酵素のいずれかを介してグルタミン酸に変換される。ヒスチジン分解経路は、アンモニア放出経路であるため、本明細書中では「有害経路」と呼ばれている。
(e)テトラヒドロ葉酸(THF)の生成:ヒスチジンは4つの中間段階を経てグルタミン酸に変換される。第一段階では、ヒスチジンは酵素ヒスチジンアンモニアリアーゼ(Hal、EC 4.3.1.3)によってウロカネートに代謝され、この段階でアンモニアが副産物として放出される。ウロカナートはウロカナーゼ(UroC1, EC 4.2.1.49)によって4-イミダゾロン-5-プロパノエートに変換される。この生成物はさらにイミダゾロンプロピオナーゼ(AmdhD1、EC 3.5.2.7)の助けを借りてN-ホルミミノ-L-グルタミン酸に代謝される。N-ホルミミノ-L-グルタミン酸は、酵素グルタミン酸ホルムイミドイルトランスフェラーゼ(FtcD、EC 2.1.2.5)と補酵素テトラヒドロ葉酸によって、N-ホルミミノ-L-テトラヒドロ葉酸に変換される。この生成物は、酵素ホルムイミドイルテトラヒドロ葉酸シクロデアミナーゼ(FtcD、EC 4.3.1.4)の助けを借りて、5-10-メチル-テトラヒドロ葉酸に代謝される。テトラヒドロ葉酸生成経路はアンモニア放出経路であるため、本明細書では「有害経路」と呼んでいる。
(f)グルタミン酸(グルタメート)の分解:グルタミン酸(グルタメート)は4つの中間段階を経て酢酸とピルビン酸に代謝される。グルタミン酸はまず、酵素メチルアスペル酸ムターゼ(MutE、EC 5.4.99.1)が関与するL-スレオ-3-メチルアスペル酸に変換される。このステップからの生成物は、メチルアスペル酸アンモニア-リアーゼ(Mal、EC 4.3.1.2)によってメサコン酸に変換され、その後アンモニアが副産物として放出される。メサコン酸は、酵素メサコン酸ヒドラターゼ(EC 4.2.1.34)によってS-シトラマレートに代謝される。S-シトラマー酸は次にシトラマー酸リアーゼ(EC 4.1.3.22)によって酢酸とピルビン酸に変換される。グルタミン酸分解経路はアンモニアを放出する経路であるため、本明細書では「有害経路」と呼んでいる。トリメチルアミンTMA代謝:TMA代謝は、トリメチルアミンN-オキシド(TMAO)分解とTMAO生合成の2つのプロセスを含む。(a) TMAO生合成:TMAは、酵素トリメチルアミンモノオキシゲナーゼ(Tmm、EC 1.14.13.148)によって、有害な代謝物であるTMAOに1回の反応で変換される。TMAはまた、酵素トリメチルアミンデヒドロゲナーゼ(Tmd、EC 1.5.8.2)によってジメチルアミンに変換される。その後、ジメチルアミンはジメチルアミンモノオキシゲナーゼ(DmnABC、EC 1.14.13.238)によってメチルアミンに分解される。酵素メチルアミンデヒドロゲナーゼ(EC 1.4.9.1)はさらにメチルアミンを分解し、アンモニアとホルムアルデヒドを放出する。前述の経路におけるこれらの段階は、有害な代謝産物や副産物の形成につながるため、本明細書では「有害経路」と呼ぶ。
(b) TMAOの分解:TMAOはTMAOレダクターゼ(EC 1.7.2.3)が関与してTMAに変換される。さらに、酵素トリメチルアミンオキシドアルドラーゼ(EC 4.1.2.32)もTMAOをジメチルアミンとホルムアルデヒドに分解することができる。TMAOは有害な代謝産物であるため、本明細書ではその分解経路を「有益経路」と呼んでいる。
[0070]
生体アミンの生産経路は以下のものを含む:
(a)プトレシンの生産(i)アルギニンは酵素アルギナーゼ(EC 3.5.3.1)によってオルニチンに変換される。次に、オルニチンはオルニチン脱炭酸酵素(Odc1、EC 4.1.1.17)によってプトレシンに代謝される。(ii) アルギニンは、酵素アルギニン脱炭酸酵素(EC 4.1.1.19)によってアグマチンに変換される。次にアグマチンはアグマチナーゼ(EC 3.5.3.11)によってプトレシンに代謝される。(iii)アルギニンは、アグマチンに変換された後、アグマチナーゼ(EC 3.5.3.12)が関与するN-カルバモイルプトレシンに代謝される。N-カルバモイルプトレシンは、さらにN-カルバモイルプトレシンアミダーゼ(EC 3.5.1.53)によってプトレシンに変換される。プトレシンの生産経路は、本明細書を通して「有害経路」と呼ばれている。
(b)スペルミンの生成:プトレシンは、酵素スペルミジン合成酵素(SpeE、EC: 2.5.1.16)の助けを借りて、スペルミン(またはスペルミジン)に代謝される。本明細書では、スペルミン生成経路を「有害経路」と呼ぶ。
(c)カダベリンの生産カダベリンは、酵素リジン脱炭酸酵素(EC 4.1.1.18)によってリジンから生成される。カダベリン産生経路は、本明細書を通じて「有害経路」と呼ばれている。
【0069】
一実施形態では、前記有害経路を保有する微生物株は病原体または有害微生物と呼ばれ、前記有益経路を保有する微生物は有益微生物または常在菌と呼ばれる。
【0070】
方法(200)のステップ204において、知識ベースのセットが入力データのセットを使用して生成される。知識ベースのセットは、属機能マップ(FGmap)、ゲノム代謝経路(GMP)マップ、分類群関連参照プロファイル(TAXA_NET)グラフ、TAXA-食品成分ネットワーク、食品成分ネットワーク、およびProbMapを含み、知識ベースのセットの生成は、以下のステップ204A~204Eを用いて説明するいくつかのステップを含む:
【0071】
方法(200)のステップ204Aで、FGマップとGMPマップが生成される。
【0072】
FGmapは、複数の分類群の1つに属する複数の細菌属の関数と、複数の代謝経路を列として関連付けた行列である。予め定義された第1の指標は、以下のいずれかを示す:
(a) 代謝経路の存在と
(b)代謝経路の不在。
【0073】
一実施形態において、第1の予め定義された指標は、代謝経路の存在または代謝経路の非存在を示し、第1の予め定義された指標の値が1であれば、細菌属における代謝経路の存在を示し、0であれば、代謝経路の非存在を示す。
【0074】
GMPは、複数の細菌株を行とし、複数の代謝経路を列とする行列であり、予め定義された第2の指標は、(a)代謝経路の存在、及び(b)代謝経路の非存在のいずれかを示す。
【0075】
一実施形態において、第2の予め定義された指標は、代謝経路の存在または代謝経路の非存在を示し、第2の予め定義された指標の値が1である場合、細菌株における代謝経路の存在を示し、0である場合、代謝経路の非存在を示す。
【0076】
実施形態において、第1の予め定義された閾値基準は、予め定義されたウィンドウ内のタンパク質ドメインのリストの発生に基づいて定義される。第2の事前定義された閾値基準は、生合成/分解経路の閾値比に基づいて定義される。GMPおよび FGmapのプロトタイプのシナリオ例を、それぞれ以下の表2および表3に示す:
【表2】
【表3】
【0077】
GMPの生成プロセスについて、
図3Aおよび
図3Bのフロー図とともに説明する。
【0078】
方法(300)のステップ302において、マトリックス代謝物マップ(Mmap)が生成される。Mmapは、複数の代謝物、複数の代謝経路、および複数の代謝経路の各々に関連する生物のリストに基づいて生成され、ここで、Mmapは、複数の代謝物の各々について生成される。Mmapは、文献マイニングステップの後に得られた、これら複数の代謝物の各々の分解または生合成に関与する代謝経路の詳細と、前記代謝経路が実験的に特徴付けられた生物の詳細と、リストML内の複数の代謝物の各々について生成される。前記代謝経路の詳細には、経路の個々の反応に関与する遺伝子/酵素/タンパク質が含まれる。
【0079】
一実施形態では、代謝産物Miの分解/生合成経路(細菌ゲノム上の遺伝子によってコードされる候補代謝産物の分解/生合成の一連のステップまたは化学反応である)およびそのプロセスに関与する遺伝子/酵素の手動検索は、前のステップで各入力クエリー文字列Qに対して
を利用する。このプロセスの結果、各代謝物を行、その分解経路と経路が特徴付けられた生物を列とするマトリックス Metabolite Map (Mmap) が作成される。Mmapのプロトタイプテーブルのシナリオ例を以下の表4に示す:
【表4】
【0080】
方法(300)のステップ304において、細菌ゲノムマップ(BGM)が生成される。BGDは、複数の細菌株の網羅的リストを含み、BGMは、複数の細菌株の複数の名称、複数の細菌株の複数の識別番号、複数の細菌株の複数の遺伝子位置、および複数の細菌株の複数のタンパク質ドメインを含む、複数の細菌株に関連する情報を含む。
【0081】
BGDは、ゲノム上の位置と対応する機能性タンパク質配列の網羅的なリストで構成され、BGMは、構成する機能性タンパク質配列の形で遺伝子の機能アノテーションを行う。BGDは、ゲノム/ゲノム配列の解析に使用された細菌(菌株名)の網羅的なリストで構成される。Bacterial Genome Map (BGM)は、BGDに掲載されている各細菌ゲノムの遺伝子をゲノム上の位置から順番に並べたリストと、各遺伝子の機能アノテーションに関する情報を、各遺伝子で同定された構成タンパク質ドメインの形でまとめたものである。
【0082】
実施形態では、表5に示すサンプルBGMマップのシナリオ例を示す。
【表5】
【0083】
一実施形態では、各遺伝子の翻訳されたタンパク質配列に関連する各細菌ゲノムの情報と、細菌ゲノム上の位置を、リポジトリであるNational Centre of Biotechnology Information(NCBI)から取得する。ゲノムが解析に使用された細菌(菌株名)のデータベースは、細菌ゲノムデータベース(Bacterial Genome Database:BGD)と呼ばれる。タンパク質配列はFASTAフォーマットで利用され、遺伝子位置を確認するためにNCBIリポジトリのフィーチャーファイルが利用されるが、微生物ゲノムの遺伝子位置およびタンパク質配列の他のフォーマットまたはソースは本発明の範囲内である。これらの細菌ゲノムは、ゲノム上の各遺伝子内のタンパク質ドメインを同定するために、遺伝子相同性(BLASTなど)、隠れマルコフモデルに基づく同定(タンパク質ファミリーまたはPFAMデータベースなど)、位置特異的スコアリングマトリックス(PSSM)などを含むがこれらに限定されない複数の方法を用いて機能的にアノテーションされる。一実施形態では、すべてのタンパク質ドメインに対応するHMMを含むデータベースPfamDB(またはタンパク質ドメインファミリーデータベース)を、PFAMデータベースで教示されるように入手することができ、HMMERのような一般に入手可能なソフトウェアを使用してゲノムを検索することができる。他のタンパク質ドメイン同定法、機能的タンパク質アノテーション法、データベース、または構造に基づくタンパク質同定法の使用も、本開示の範囲内である。BGDに列挙された各細菌ゲノムの遺伝子のリストを、前記NCBI特徴ファイルに列挙されているようなゲノム位置の観点から(複製起点から始まる)順序通りに配列したものを細菌ゲノムマップ(BGM)と呼ぶ。また、BGMには、各遺伝子で同定された構成タンパク質ドメインの形で、これらの各遺伝子の機能アノテーションに関する情報も含まれている
【0084】
方法(300)のステップ306において、代謝物経路ドメインマップ(MPDM)が生成される。代謝物経路-ドメインマップ(MPDM)は、MmapおよびBGMに基づいて、複数の代謝物から各代謝物について生成され、MPDMは、複数の代謝経路の各々に関連するタンパク質ドメインの網羅的なリストから構成される。
【0085】
一実施形態では、MPDMは、MLの各代謝物Miに対応する各経路PiMと、これらの各経路に対応するタンパク質ドメインから構成される。MPDMのプロトタイプのシナリオ例を表6に示す:
【表6】
【0086】
一実施形態では、代謝物経路-ドメインマップ(MPDM)は、すべての代謝物(Mmapでは)分解および生合成経路と、これらの経路のそれぞれに対応するドメインから構成される。
【0087】
一実施形態では、各経路をハッシュMPDMで見つかったキーとみなし、キーに対応する値は、経路内の対応するドメインのリストである。微生物の経路に属する遺伝子は、対応するゲノム上で近接して存在することが多く、遺伝子クラスターと呼ばれる。機能的な遺伝子クラスターを形成するために、経路を形成するドメインのセットが横たわるべきフランキング遺伝子数の観点から見たゲノム上の距離は様々であり、多くの場合、手動および文献ベースのキュレーションを用いて定義される。この実施形態における前記距離は、遺伝子クラスターを示し、したがって経路の存在を示すためにドメインがその中にあるべきゲノム位置に基づく遺伝子の数(ウィンドウサイズと称される)で定義される。キーとして用いた各経路のハッシュMPDMの値に対応する各タンパク質ドメイン(pfams)をBGMで検索し、代謝物の生合成/分解経路を構成するタンパク質ドメインがBGMに登録された各ゲノム上に遺伝子クラスターとして存在するかどうかを調べる。
【0088】
方法(300)のステップ308において、複数の代謝経路の存在が、予め定義された第1の閾値基準に基づいて、MPDMおよびBGMを使用して、細菌株およびゲノムのリストにおいて同定される。
【0089】
一実施形態では、予め定義された第1の閾値基準は、予め定義されたウィンドウ内のタンパク質ドメインのリストの出現に基づいて定義される。どのようなドメインのセットも、ゲノム上の定義されたウィンドウサイズ内に位置する場合、遺伝子クラスターを形成するとみなされる。ウィンドウサイズとは、遺伝子クラスターを正確にアノテーションするために、経路の一部であることが知られているドメインの上流と下流にある遺伝子の数を意味する。一実施形態では、事前に定義されたウィンドウの第1の閾値基準は、ゲノム上のクエリタンパク質ドメイン(代謝経路内の任意の1つのタンパク質ドメインを指す)の上流および下流の20遺伝子のウィンドウサイズとして定義され、利用される。遺伝子名とpfamデータベースに基づくドメインの割り当ては、ウィンドウ(この場合は20)内の代謝経路に他のタンパク質ドメインが存在するかどうか記録される。ウィンドウサイズは経路候補や関与するドメインなど様々な要因によって変化する。さらに、この経路に寄与し、ウィンドウサイズ(例えば20遺伝子がウィンドウサイズの場合、クエリータンパク質ドメインの+20遺伝子と-20遺伝子)内に存在するゲノム中のドメインの数が、この経路に対応するMPDMに割り当てられたドメインの総数のうち、経路の存在を確認するために必要なドメインの最小数に相当する比率である閾値(経路ごとに変動し、文献マイニングとマニュアルキュレーションを用いて得られる)を超えた場合、経路は存在するとみなされる。
【0090】
方法(300)のステップ310では、BGM、MPDM、複数の代謝経路、および複数の代謝物を用いてGMPが生成される。GMPは、細菌ゲノム(細菌株)のセットを複数の行として、各代謝物の形成に対応する複数の代謝経路のリストを複数の列として有する行列である。
【0091】
一実施形態では、あらかじめ定義された第1の閾値基準に基づいて、BGMからゲノムのリストに対する生合成-分解経路のリストを同定した後、ゲノム名と各代謝物の経路情報を含む多次元マトリックスを作成する。これをゲノム-メタボライト-経路マップ(GMP)と呼ぶ。
【0092】
GMPマップは、各代謝物および経路について、あらかじめ定義された第1の基準に基づいて0または1のいずれかの値が与えられます。第1の事前定義基準は、細菌ゲノムの各経路に対するものである。MPDMの経路に対応するドメインの数がゲノム上に存在しないか、または定義されたウィンドウサイズ(この場合20)内で見つかった数が閾値を超えない細菌ゲノムの場合、そのゲノムおよびGMPの経路に対応する値として0が割り当てられる。一実施形態では、ウィンドウサイズは微生物ゲノム上に連続して存在する20個の遺伝子とすることができる。ゲノム上で見つかった経路タンパク質ドメインの数が閾値(文献マイニングおよびマニュアルキュレーションを用いて経路候補について定義)を上回り、微生物ゲノム上で定義されたウィンドウサイズ(この場合20遺伝子)内に存在する場合、対応するゲノムおよびマトリックスGMP内の経路に値1が割り当てられる。ウィンドウサイズは、システムおよび候補経路によって変えることができる。一実施形態では、GMP中の微生物ゲノムに代謝経路が存在することを、予め定義された値1によって示し、ゲノムに経路が存在しないことを、予め定義された値0によって示す。予め定義された値が1および0以外の値である別の実施形態も、本発明の範囲内である。
【0093】
方法(300)のステップ312で、GMPを用いてFGmapが生成される。FGmapは、複数の細菌属を複数の行、複数の代謝経路を列とする行列である。
【0094】
FGmap は GMP に基づいて生成される。FGmapは、属の集合を複数の行とし、各代謝物の生合成分解経路のリストを複数の列とする行列である。FGmapの生成工程は、予め定義された第2の閾値基準およびBGMに基づいて、属レベルでGMPを処理することを含む。FGmapは、属の集合を行として、各代謝物の生成のための生合成分解経路のリストを列として含む行列として表される。
【0095】
一実施形態では、入力分類学的存在量が属レベルで得られる場合、GMPをさらに処理して、属レベルでの経路組成を同定することができる。属に属する各菌株における経路の存在が分析される。BGD において、Ge 属に属する全配列株数のうち、経路を持つ Ge 属の株数の割合が、予め設定された第二の閾値基準を上回った場合に、Ge 属に経路が存在すると判断する。第2の予め定義された閾値基準値は、1つの属について配列決定された菌株の数が変動する可能性があり、それに応じて閾値を決定する必要があるため、手動介入を使用しても決定される。一実施形態では、第2の事前定義された閾値基準は0.7とすることができ、Ge属のリポジトリで配列が入手可能なGe属の株の70%が経路を含む場合、経路はGe属に存在するとみなすことができる。手作業による解析や文献マイニングによって異なる閾値を決定することも可能であり、本開示の範囲内である。このようにして得られた属-経路のバイナリ行列は、その属に属する株で経路が閾値以上見つからない場合は値0(これはあらかじめ定義された値である)を含み、経路が見つかった株の数が閾値以上である場合は値1(これはあらかじめ定義された値である)を含む。この行列をFgmapと呼ぶ。別の実施形態では、0と1以外の値である事前定義値も本発明の範囲内である。GMPおよびFGmapは一緒になって微生物知識ベースモジュール204を構成し、リストMLに記載されているように、代謝物が腸の健康に有益または有害であるとして文献で知られているかどうかに言及する別の列を備える。一実施形態では、属Ge内の株の総数は、細菌株のゲノム配列が寄託されているゲノムリポジトリによって得ることができる。一実施形態では、リポジトリは、NCBIまたはHMPゲノムリポジトリを含む可能性がある。
【0096】
図2Bを参照すると、方法(200)のステップ204Bにおいて、TAXA_NETグラフが生成される。TAXA_NETグラフは、複数の分類群およびFGmapに基づいており、TAXA_NETグラフは無向グラフである。TAXA_NETグラフの各ノードは、複数の分類群からの分類群に対応し、エッジは、複数のノードからの各分類群が、FGmapからの複数の分類群の機能に関連する、分類群の組の間の正の関係を示し、正の関係は、相互主義、共栄主義、通性主義、および協力のうちの1つから構成される。
【0097】
一実施形態では、健康なヒト腸内の複数のコホートから照合された実験的に報告された微生物存在量データを用いて、分類群関連参照プロファイルTAXA_NETが構築される。TAXA_NETは、機能情報およびエビデンスマイニングで富化されており、前記機能情報はGMPおよびFGmapから得ることができる。TAXA_NETの各分類群は、これらのマトリックスに記述されている属-機能またはゲノム機能マッピングに基づく機能と関連付けられている。さらに、自動化された文献マイニングや手作業によるキュレーションに基づいて、各分類群に機能情報が追加される。TAXA_NETは分類群名をノードとする無向ネットワークで、微生物分類群のペア間で正の関係(相互主義、共栄主義、共生主義、協力主義を含むがこれらに限定されない)が確認された場合にエッジで接続される。
【0098】
方法(200)のステップ204Cで、TAXA-食品成分ネットワークが生成される。TAXA-食物構成要素ネットワークは、TAXA_NETの各分類群の複数の食物構成要素に基づいて生成される。TAXA-食物構成要素ネットワークは、各分類群と、その分類群によって代謝源として使用される食物構成要素との無向ネットワークである。
【0099】
一実施形態では、微生物分類群によって代謝源(例えば、炭素源および窒素源)として使用される食品成分との分類群の関連性の無向性ネットワークが構築され、TAXA_CONSTITUENT_NETと命名される。
【0100】
方法(200)のステップ204Dで、食品構成要素ネットワークが生成される。食品構成要素ネットワークは、TAXA-食品構成要素ネットワークの各食品構成要素の複数の食品項目に基づいて生成される。食品構成要素ネットワークは、食品に含まれる各食品構成要素の無向ネットワークである。
【0101】
一実施形態では、食品構成要素(例えば、炭素源および窒素源)と食品の関連性の無向ネットワークを構築し、FOOD_CONSTITUENT_NETと命名する。
【0102】
方法(200)のステップ204Eにおいて、ProbMapが生成される。ProbMapは、GMPの転置行列を生成しており、ProbMapは、複数の代謝産物および複数の代謝経路からの各代謝産物を含む行と、複数の細菌株、プロバイオティクス、プレバイオティクス、対応する複数の代謝産物の生合成および/または分解が可能な食餌成分を含む列とを有する行列である。
【0103】
一実施形態では、Probmapは、代謝物の生合成/分解経路を行として、ゲノムを列として、それに加えて、文献で報告されているように代謝物Miを増強または減少させる栄養補助食品、食事情報、またはプレバイオティクスの詳細を提供する追加列を、代謝物の生合成/分解経路ごとにそれぞれ提供することに基づいて生成される。また、追加欄には、対応する経路が有益経路であればそれを補充し、有害経路であればそれを抑制することができる細菌株を含むプロバイオティクスの詳細を記載する。これらのプロバイオティクス菌株の詳細は、ProbMapの列に記載されている菌株のうち、対応する有益または有害経路の値が1である菌株によって得ることができる。
【0104】
方法(200)のステップ206で、個人の複数の腸サンプルを2つのタイムスタンプで取得する。つのタイムスタンプは、タイムスタンプ1とタイムスタンプ2を含む。
【0105】
一実施形態では、複数の腸サンプルは、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2において、個体の便、腸ぬぐい液、腸組織、腸液の少なくとも1つから得られる。
【0106】
方法(200)のステップ208で、複数の腸サンプルの分類群数行列が生成される。分類群数行列は、分類群セット1および分類群セット2を含み、分類群セット1および分類群セット2は、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2を使用して生成される。
【0107】
方法(200)のステップ210では、分類群存在度行列およびFGmapを用いて、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2で得られた複数の腸内サンプルのそれぞれについて経路存在度が生成される。経路存在量はサンプル処理技術を用いて生成され、各タイムスタンプの経路存在量は、対応するタイムスタンプにおける個体の腸内マイクロバイオームにおけるGMPの複数の代謝経路の存在を示す。
【0108】
サンプル処理技術のステップを、以下に説明する
図4のフロー図と併せて説明する:
【0109】
方法(400)のステップ402で、得られた腸サンプルから核酸を抽出する。得られた腸サンプルからの核酸の抽出は、核酸抽出技術に基づく。
【0110】
一実施形態において、核酸抽出技術は、最新の実験室で許容される方法を用いて、得られたサンプルから核酸含有物を抽出することを含む。一実施形態では、DNAの抽出のためにQiagenのような会社が提供するミニDNA抽出キットを利用することができる。
【0111】
方法(400)のステップ404において、ヌクレオチド配列生成ユニット212を介して、抽出された核酸から複数のヌクレオチド配列がシーケンサーにより生成される。これはシーケンサーを用いて実施される。
【0112】
実施形態において、シーケンサーは配列決定に使用され、配列決定ステップはハイスループットシーケンシング技術を用いて実行される。シーケンシングの結果、複数のヌクレオチド配列が生成される。核酸含有物は、いくつかの実験室で許容される方法を用いて、得られたサンプルから抽出される。一実施形態では、DNAの抽出のためにQiagenのような会社が提供するミニDNA抽出キットを利用することができる。Norgen、Purelink、OMNIgene/ Epicenterなどの他の抽出キットを利用することもできる。抽出された核酸は、得られたサンプルのマイクロバイオーム組成を得るために、属レベルでの遺伝子型アッセイにかけることができる。腸内サンプルのマイクロバイオーム組成は、核酸またはタンパク質分析によって得ることができる。核酸分析にはDNA、RNA、mRNA、rRNAが含まれる場合があり、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、qPCR、パイロシークエンシング、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)、制限断片長多型、マイクロアレイ、次世代シーケンスのようないくつかの方法を用いて実施することができる。核酸配列またはDNAハイブリダイゼーションを検出することができる他のいかなる方法も、本発明の範囲内である。タンパク質分析には、ゲル電気泳動、質量分析、AQUA、iTRAQなどが含まれる。特定の細菌の存在を示す指標として使用できるタンパク質の存在を決定するその他の方法は、本発明の範囲内である。核酸およびタンパク質分析のためのその他の実験室で許容される方法も、個人の腸内細菌叢の構成を明らかにするために利用することができる。
【0113】
方法(400)のステップ406において、1つまたは複数のハードウェアプロセッサ104に組み込まれた複数のプログラムおよびソフトウェアを介して細菌分類学的存在量行列を得る。
【0114】
一実施形態において、16S rRNAのような細菌系統学のマーカーとみなされる遺伝子は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはqPCRのような分類する方法を用いて増幅することができる。一実施形態では、配列決定された16S rRNAは、Ribosomal Data Projectに実装されているようなナイーブベイズ分類器を用いて、またはRibosomal Database ProjectまたはGreen genesデータベースに実装されているような異なる16S rRNAデータベースとの配列ベースのマッチングを用いて、分類群および属または種レベルに分類することができる。さらに別の実施形態では、配列決定された細菌ゲノムの菌株について、社内の分類学データベース(16S rRNAデータベースなど)を作成することができる。これらのデータベースを用いて、腸サンプルから得られた16S rRNA配列決定株を属または種レベルの分類群に分類することができる。マイクロバイオームサンプルの分類学的組成を同定する他のいかなる方法も、本開示の範囲内である。
【0115】
分類学データベースは、以下の1つ以上を含むがこれらに限定されない、複数の分類群に対するマーカーを保存する:遺伝配列(例えば、分類群に対して保存された配列;分類群に対してマーカーとなる配列;微生物群に対して不変の配列;マイクロバイオームの多様性のような特徴;代謝経路などを含むマイクロバイオーム機能レパートリー;代謝産物マーカー;天然産物または二次代謝産物マーカー;診断、予測、分子バイオマーカー;または微生物(例えば、分類群)に関連するその他の適切なマーカー)。
【0116】
分類学データベースが保存する遺伝子配列には、複数の分類群に対応するrRNAの遺伝子配列の1つ以上の可変領域または保存領域が含まれる。これらの遺伝子は以下のうちの1つ以上を含む:16S、18S、30S、40S、50S、60S、5S、23S、5.8S、28S、70S、80S、および/または他の任意の適切なrRNA。
【0117】
別の実施形態では、分類学的データベースは、異なる微生物の相対的存在量範囲の基準値を保存することができる。これらの範囲には、1つ以上の状態に対する健康な状態に関連する存在量と、不健康な状態に関連する存在量とが含まれる。前記存在量範囲の基準値は、個体集団からの腸生物学的サンプルから得られた値のセットに基づいて得ることができる。
【0118】
腸サンプル中の参照マーカーは、分類群ごとに異なる可変領域を有する様々な分類群に共有されるマーカーの特徴に基づいて選択されたこれらのマーカーに対応するプライマーセットの増幅に基づくことができる。プライマーの増幅は、本開示に記載されるようなシーケンサーを用いて配列決定され得るリードの形成につながる。一実施形態では、得られたリードを、配列類似性を用いてデータベース中の参照マーカーのセットと比較し、リードが属する分類群を同定することができる。
【0119】
さらに、属の存在量行列が作成され、これは行としての属と、各入力サンプルの対応する存在量から構成される。一実施形態では、入力サンプルは、個体からの単一または複数の時点から得ることができる。別の実施形態では、入力サンプルは、2つの異なるグループまたは集団に属する個体から得てもよい。一実施形態では、集団またはグループは、症例対照研究に参加する個人であってもよい。2つ以上の異なるカテゴリーに属する被験者を含む他のいかなる研究も本発明の範囲内である。同様に、16S rRNA配列が分類された分類学的レベルに応じて、種存在量マトリックスまたは菌株存在量マトリックスが作成される。行列は、1つの個体について2つの時点で得られたサンプル、または2つの異なる集団から得られたサンプルに対応して、M1およびM2と命名される。さらに、属と種は生物の生物学的分類の順位であり、種は分類学的分類階層において属の下に位置する。したがって、各分類レベルでの存在量表は、分類アルゴリズムを使用してデータセットで得られた分類学的分解能に応じて作成される。
【0120】
方法(400)のステップ408において、2つのタイムスタンプにおけるMLの経路存在量行列を取得する。マイクロバイオーム組成を取得すると、各サンプルM1およびM2の細菌分類学的存在量行列は、各サンプルの経路存在量行列に変換するためのソフトウェア命令を有するプロセッサに供給される。一実施形態では、2つのタイムスタンプの個体または集団について得られたサンプルについて、1つのマトリックスが2つの表現型的に異なる集団または被験者のグループを表す。一実施形態では、異なる集団またはグループは、一方が健常サブ集団を表し、他方が生物多様性異常サブ集団を表す。別の実施形態では、被験者の別個の集団またはグループは、地理、年齢、食事、ライフスタイルなどの点で集団間の特徴が一致した、治療中の疾患の2つの段階に属する。一実施形態において、集団または群は、症例対照研究に参加する個人であってもよい。2つ以上の異なるカテゴリーに属する被験者を含むその他の研究は、本発明の範囲内である。前記サンプルの属存在量行列M1およびM2は、分類学的存在量行列を得るために議論した方法を用いて得ることができる。つの段階の経路存在度行列は、以下のように計算することができる:
経路存在量行列 M1P = FGmap * M1
経路存在量行列 M2P = FGmap * M2.
【0121】
別の実施形態では、細菌の系統学のためのマーカー(例えば、細菌中の16S rRNA)として使用することができる遺伝子を、経路の存在量を決定するために利用することができる。一実施形態において、このマーカーは、細菌の16S rRNAおよびコードされた産物を含み得る。23S rRNA、rpoB、cpn60、gyrB、dnaK、dsrAB、amoA、amoB、mip、horA、hitAM、recA、ica、frc.oxcなどの他の任意の細菌マーカー遺伝子の利用、または/および真菌内部転写スペーサー1(ITS1)などの評価は、本発明の範囲内である。個人の腸内細菌叢に対応する16S rRNA配列は、DNA/RNA抽出および配列決定手順の後に増幅することができる。このようにして得られた配列は、SEQBとしてメモリに格納されているBGDの各菌株の16S rRNA配列のデータベースと照合することができる。この照合は、最も近い近傍遺伝子を特定するためのソフトウェア命令を持つプロセッサによって実行することができる。母集団の個体に対応する入力16S rRNAの配列は、BLAST、FASTAなどの配列アラインメントソフトウェアを使用してSEQBの配列と照合することができる。このようにして得られた最近傍の経路構成は、入力16S rRNA配列の経路として利用することができる。各マッチに対応する存在量マトリックスは、行が菌株名、列がサンプル名で構成され、各サンプルでその菌株に対応する16SrRNA配列が得られた回数が記録されるように得ることができる。同様の方法論は、本開示の範囲において、他の前記細菌マーカー遺伝子にも使用することができる。一実施形態では、2つのタイムスタンプで個体について得られたサンプルまたは1つのマトリックスを有する集団について、2つの表現型的に異なる集団または被験者のグループを表す。一実施形態において、異なる集団またはグループは、一方が健康なサブ集団を表し、他方が生物多様性異常のサブ集団を表す。別の実施形態では、被験者の別個の集団またはグループは、地理、年齢、食事、ライフスタイルなどの点で集団間の特徴が一致した、治療中の疾患の2つの段階に属する。一実施形態において、集団または群は、症例対照研究に参加する個人であってもよい。2つ以上の異なるカテゴリーに属する被験者を含むその他の研究は、本発明の範囲内である。サンプルの菌株存在量行列(マトリックス)M1SおよびM2Sは、リードが菌株分類学的レベルまで分類されている場合に得ることができる。
経路存在量マトリックス M1P= M1S * GMP
経路存在量マトリックス M2P= M2S * GMP
【0122】
別の実施形態では、世代(Gi)は、パラメトリック検定、ノンパラメトリック検定のような統計的検定、決定木を含む機械学習ベースのアルゴリズムのような方法を使用して、有意に増加または減少することを同定することができる。M1およびM2のニューラルネットワーク、ランダムフォレストなど。選択された属を行、サンプルを列として構成される、これらの異なる存在量の属Giに対応する存在量行列をM1およびM2から得ることができ、これらの行列をSM1およびSM2と呼ぶことができる。これらの属は、これらの属のそれぞれが生産することができる代謝物に関する情報を提供することができるソフトウェア命令を有するプロセッサを使用して、知識ベースFGmapに対してクエリすることができる。
SM1Gと呼ばれるSM1の経路存在量 = SM1 * FGmap
SM2Gと呼ばれるSM2の経路存在量 = SM2 * FGmap
【0123】
一実施形態では、各サンプルの経路存在量を取得した後、経路存在量(M1PとM2P)を比較する。これらの比較は、パラメトリック検定、ノンパラメトリック検定、決定木を含む機械学習ベースのアルゴリズムなどの統計的検定を実行するためのソフトウェア命令を使用して、プロセッサによって行うことができる。ニューラルネットワーク、ランダムフォレストなど。これらの変化を解析するためのソフトウェアプログラムは、2つの時点または集団間の各細菌内の倍数変化を評価することも含む可能性がある。別の実施形態では、個体から1つの試料のみを採取し、試料中の属の存在量を、健常集団における対応する属の所定の基準値または値の範囲と比較することができる。この値はまた、腸内細菌叢の異常における特定の属の存在量に関する基準値または値の範囲と比較することもできる。基準値と有意に異なる存在量の値を有する属は、さらなる分析に使用することができる。一実施形態では、プロセッサは、経路マトリックスの比較およびこれらの経路が対応する代謝物にマッピングされるMPDMの利用に基づいて、これらのサンプル(2つの時点における同一個体または集団の2つのデータセット)間で有意に増加または減少する可能性のある代謝物を解析および同定するように構成される。プロセッサはまた、これらの代謝物の変化が統計的に有意であるかどうかを、上述の統計技術を用いて解析するように構成される。このように、プロセッサはマイクロバイオームサンプルの分類学的構成を解析し、これらのサンプル間で有意に増減する可能性のある代謝物を同定するように構成される。一実施形態では、入力サンプルは、個体からの単一時点または複数時点から得ることができる。別の実施形態では、入力サンプルは、2つの異なるグループまたは集団に属する個体から得てもよい。一実施形態において、別個の集団またはグループは、一方が健常な部分集団を表し、他方が生物多様性異常の部分集団を表す。別の実施形態では、被験者の別個の集団またはグループは、地理、年齢、食事、ライフスタイルなどの点で集団間の特徴が一致した、治療中の疾患の2つの段階に属する。一実施形態において、集団または群は、症例対照研究に参加する個人であってもよい。2つ以上の異なるカテゴリーに属する被験者を含む他のいかなる研究も本発明の範囲内である。さらに、プロセッサ内のソフトウェアプログラムを使用したリストMLと同様に、知識ベースの解析は、代謝物がヒトの健康に有益であるか有害であるかを特定するのに役立つ。一実施形態では、酪酸を含む短鎖脂肪酸のような代謝物は、ヒトの健康に有益であることが文献的によく知られている。同様に、アンモニアやトリメチルアミンのような生体アミンのような代謝産物は、ヒトの様々な炎症状態や疾患状態に関連している。統計的手法を用いた経路の存在量マトリックスの比較により、2つの経路の存在量マトリックス間で有意差のある経路および代謝物が得られます。これらの経路と代謝物は、それぞれ「推定代謝物」と「推定経路」と呼ばれる。
【0124】
別の実施形態では、腸サンプル内の代謝物を同定することができる。代謝物を同定するための実験室で許容される方法は、本発明の範囲内である。一実施形態では、採取した腸サンプルを乾燥させて水に懸濁し、超高性能液体クロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーに続いて高分解能/タンデム質量分析MS/MSを含む、異なるクロマトグラフィーおよび質量分析技術によってさらに処理することができる。別の実施形態では、ナノセンサーやe-noseのようなデバイスに実装されたものを含むバイオセンサーを使用して、糞便中の代謝物を評価することができる。腸内サンプル中の代謝物を分析および定量するその他の方法は、本発明の範囲内である。代謝物の同定および定量方法の一部には、代謝物の比色アッセイ、化学アッセイ、酵素アッセイ等も含まれ得る。代謝物含量は、個体から採取した1つの試料、2つの時点で個体から採取した試料、表現型の異なる2つの集団から採取した試料について求めることができる。ある個体から採取した1つのサンプルの代謝物含有量を健常人の基準値と比較することで、個体内で濃度が上昇または低下した代謝物を同定することができる。また、同一個体の2つのポイントに対応するサンプルや、2種類の集団データに対応するサンプルの場合、サンプル内の代謝物を比較することができる。1つのサンプルと基準値、2つの時点または2つの集団間の代謝物の差の有意性を、プロセッサに実装されたソフトウェアを使用して、パラメトリック検定、ノンパラメトリック検定、決定木を含む機械学習ベースのアルゴリズムなどの統計的手法を用いて計算します。ニューラルネットワーク、ランダムフォレストなど。これらの変化を分析するためのソフトウェアプログラムは、2つの時点または集団間の各細菌内の倍数変化を評価することも含む。
【0125】
個別化された治療法は、1つまたは複数の生物学的状態の治療/管理(例えば、リスクの低減;状態の状態の改善;状態の症状および/または他の適切な側面の改善;使用者のマイクロバイオームプロファイルを、1つまたは複数の生物学的状態の治療法に対する感受性がより高い状態へと変化させる)のために、1つまたは複数の治療法を使用者(例えば、ヒト被験者;治療を提供するヘルスケア専門家;など)に提供する。疾患に対する治療法に対してより感受性が高い状態に向けてマイクロバイオームプロファイルを変化させる;など。これらには、プロバイオティクスサプリメントなどの経口投与医薬品(種類、投与量、治療時間を含む、含まれる微生物の種類と量など)、食品サプリメント、 抗生物質(種類、量、治療スケジュールなどを含む)、医療機器(薬ディスペンサー、抗生物質を投与する機器など)、ユーザー機器(バイオセンサーなど)、および/またはその他の適切なコンポーネントを含む。個別化治療には、マイクロバイオームの組成および/または機能を変更/修正し、それによって症状を軽減または健康状態を改善するものを含む応用が含まれる。特定の例では、治療法は、1つ以上の微生物および/またはそれらの代謝産物(例えば、本明細書に記載の微生物群など)から製剤化されるプロバイオティクスベースの治療法として提供することができる。
【0126】
図2Dを参照すると、方法(200)のステップ212において、摂動経路を特定する。摂動経路は、個体の腸の健康状態の悪化を示し、摂動経路は、統計的手法を使用して、タイムスタンプ1とタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの経路存在量の比較に基づいて特定され、摂動経路は、以下の場合のうちの1つに基づいて特定される:
(a)ケースA:有益経路のセットの経路存在量の減少であって、該減少は有益な微生物のセットの減少を示す、または
(b)ケースB:有害経路の集合の経路存在量の増加であって、その増加が有害な微生物の集合の増加を示す、または
(c)ケースC:有益経路の集合の経路存在量が減少し、有害経路の集合の経路存在量が増加しており、有害な微生物の集合が増加し、有益な微生物の集合が減少していることを示す。
【0127】
実施形態において、「摂動経路」とは、有害経路もしくは有害な代謝産物の生合成もしくは有益な代謝産物の分解の増加、または有益経路もしくは有益な代謝産物の減少もしくは有害な代謝産物の分解を指し、摂動経路は、パラメトリック手法、ノンパラメトリック手法、機械学習に基づくアルゴリズムのうちの1つを含む統計的手法に基づいて同定される。
【0128】
方法(200)のステップ214において、個人化された治療薬および食事療法の初期セットが決定される。個別化された治療薬および食事療法の初期セットは、ProbMapを使用する個別化された治療薬および個別化された食事療法の少なくとも一方を含み、個別化された治療薬および食事療法の推奨の初期セットは、同定された摂動経路に対応する行である。
【0129】
個別化された治療法は次のように決定される:
(a)摂動された経路を有する複数の細菌株、または
(b)確率の高い代謝産物の分解または/および生合成のための経路を有する複数の細菌株であって、確率の高い代謝産物が、ProbMapにおいて摂動された経路に対応する代謝産物である、複数の細菌株
【0130】
実施形態では、ProbMap を使用して、個別化された治療薬および食事の推奨の初期セットが決定される。実施形態において、代謝物または経路における有意な変化とは、同じ個人から2つの時点で得られたサンプルについて経路マトリックスの比較で観察された統計的に有意な変化を指す場合がある。別の実施形態では、有意な変化とは、ある個人から2つの時点で得られた腸内サンプル内の特定の代謝物のレベルの統計的に有意な変化を指す場合がある。統計的有意性とは、帰無仮説を仮定した場合、ある特徴が生じる可能性が極めて低いという、当該技術分野で周知の統計的仮説検定のルールを指す。有意な変化はまた、教師ありまたは教師なし、ニューラルネットワーク、回帰法などの機械学習法を用いて、2つの状態を識別するために重要であると同定された特徴として参照されることもあり、または異なるクラスに属する個体の集合から得られたサンプル間で異なる機能を解読するために重要な特徴を確認するために、当該技術分野で知られている他の任意の方法が使用される。
【0131】
ある実施形態では、クラスは健常者と疾患に罹患している個体で構成される。別の実施形態では、クラスは、異なる時点で治療レジメンの前後に採取された個体のサンプルを含むことができる。さらに、予め定義された値の倍数変化は、2つのサンプル時点間または表現型的に異なる集団から得られたサンプル間における特定の機能における有意な変化を示すこともできる。
【0132】
経路の存在量マトリックスを比較して有意な変化を示した代謝産物や経路に応じて、プロバイオティクスの介入や治療レジメンを適宜設計することができる。有益な代謝産物やその生合成経路の減少が観察された場合、プロバイオティクスはこの代謝産物を生合成し、腸内環境で生存できる細菌から構成されることが期待される。逆に、有害な代謝物やその生合成経路の増加が観察される場合、あるいはその分解経路の減少が観察される場合には、その代謝物を分解できる微生物がより効率的なプロバイオティクスを形成する可能性がある。特定の代謝物を生合成・分解できる菌株に関する情報は、すでにマトリックスGMPとマトリックスFGmapにカタログ化され、バックエンドデータベースとしてメモリに保存されている。さらに 、特定の代謝産物の生産や分解を増加させる可能性のある栄養補助食品、プレバイオティクス、食事成分などに関する情報がこれらのマトリックスに含まれ、マイニング文献から得られた情報を使用してProbMapが作成されている。例えば、食事中のレジスタントスターチを増やすことで、マイクロバイオーム内の常在菌である酪酸生産者を増やすことができる。同様に、動物性タンパク質食を減らすと、腸内の有害なアンモニアやカルニチンを減らすことができる。個体内で減少した有益な代謝産物を補充するため、また個体内に有意に多く存在する有害な代謝産物を減少させるために必要な食事摂取量または栄養補助食品に関する情報は、文献マイニングと手作業によるキュレーションを用いて取得した。FGmap の各代謝物に関するこの情報は、ProbMap の列として追加されている。したがって、 Probmap は、ゲノム-メタボライト-経路 GMP マトリックスに含まれる情報を転置した形で構成され、Mmap の代謝物 Mi のメタボライト生合成または分解経路が行を形成し、ゲノムは列として扱われます。これに加えて、文献で報告されている代謝物 Mi を増加または減少させる栄養素サプリメント、食事情報、またはプレバイオティクスの詳細を示す列を、それぞれ代謝物の生合成または分解に対応する各行に追加した。このように、1つ以上の時点または2つの集団で収集されたデータから、個人内で有意に増加/減少した代謝物またはその生合成/分解経路に基づいて、ProbMapデータベースを照会し、機能に基づいて個別化されたプロバイオティクスと食事療法を設計することができる。ProbMapデータベースのプロトタイプのシナリオ例を表7に示す:
【表7】
【0133】
プロセッサーは、前記サンプル内で分析および同定された代謝物/経路に応じて、有益な代謝物を増強し、有害な代謝物を分解することができるプロバイオティックカクテルを作成するために調合することができる細菌の菌株を同定するためのソフトウェア命令を有する。本開示で得られた可能性の高い経路または摂動された経路または可能性の高い代謝産物は、ProbMap知識ベースと照会することができる。一実施形態では、可能性の高い経路または摂動経路もしくは代謝物が有害な代謝物または有害経路を含む場合、ProbMapを照会して、前記可能性の高い代謝物の分解経路の行を見つけ、この経路の値が1である株を同定する。別の実施形態では、推定される経路または代謝産物が有益な代謝産物または有益経路の減少を含む場合、ProbMapを照会して、前記推定される代謝産物の生合成の経路の行を見つけ、この経路の値が1である菌株を特定する。同様に、前記可能性の高い経路と条件に対応する前記追加列の情報は、個別化された食事療法の設計にも利用できる。
【0134】
別の実施形態では、ある個体が有益な代謝産物を産生する微生物を欠いている場合、この代謝産物を産生する能力を有するマイクロバイオームを有する別の個体から得た糞便を、糞便微生物移植を用いて投与することができる。同様に、糞便微生物移植は、有害な代謝産物の生合成を引き起こす生物を置き換えるために使用できるように、個体に投与することができる。ここでいうドナー個体とは、このシナリオにおいて望ましい機能を果たすのに必要な組成を腸内細菌叢が示す個体のことである。レシピエントとは、腸内サンプルとマイクロバイオームを検査し、その結果、腸内細菌叢の異常が認められた個人を指す。このような場合、糞便がレシピエントに移植されるドナー個体のマイクロバイオームは、有害代謝産物を分解できる細菌、または有害代謝産物を生合成せず、レシピエント個体に既に存在する有害細菌を置換できる細菌のいずれかを有するべきである。一実施形態では、ドナー個体から得られた糞便試料を希釈剤で処理し、濾材を用いて濾過することができ、ここで、混合試料は、徐々に小さいサイズの篩を通して濾過することができる。このようにして得られた濾液は遠心分離し、凍結または凍結乾燥することができる。前記健康な個体の腸内細菌叢を用いて作成されたこの製剤は、レシピエントへの経口投与または経鼻胃管もしくは大腸内視鏡による投与に使用することができる。一実施形態では、抗生物質の投与のような方法を用いて、レシピエント個体の腸内マイクロバイオームを洗い流す/除去することができるが、これらに限定されない。これは、ドナーのマイクロバイオームがレシピエントの腸にコロニー形成するのを助ける。一実施形態では、プロバイオティクスと、有益な細菌の増殖を促進する栄養補助食品(プレバイオティクス)との組み合わせを、シンバイオティクスまたはメタバイオティクスまたはパラバイオティクスの形で投与して、有益な腸内細菌株を回復させることができる。
【0135】
このように、個人のマイクロバイオームを分析し、主に健康状態に影響を及ぼす可能性のある代謝物を特定することで、メモリに保存された事前に作成された知識ベースに基づいてプロセッサが実行するステップを使用して、プロバイオティクスの製剤やレジメンを個別化するために使用することができる。さらにプロセッサーは、患者の遺伝子データ、血液報告書、病歴に加え、地理、ライフスタイルなどの要因を分析し、前記代謝産物を生合成または分解する能力を持ち、患者内の様々な要因や既に存在するマイクロバイオームと適合する菌株をさらに選択するように構成されている。個体の様々な健康パラメータや生理学的マーカーも、治療や食事療法を用いて個体内で除去または補充できる代謝産物の指標となるかもしれない。
【0136】
プロバイオティクスのサプリメントは、患者の要求に応じて、食品、乳製品、錠剤など様々な形態で作成し、投与することができる。さらに、投与方法や投与量も、患者のニーズに応じて個別化することができる。
【0137】
プロバイオティクスの有効性を評価するために、追跡調査が必要な場合がある。腸内細菌叢とそれに対応する代謝産物を調べるための追加検査を実施し、それに応じて製剤を調整することができる。フォローアップ検査の結果を分析した後に作成された知識ベースと説明された方法を用いて、医療提供者によって全く新しい調合や食事パターンが処方されるかもしれない。知識ベースには、多数の細菌株に関する情報と、様々な代謝産物(有益または有害)を分解または生合成する代謝能力の関連付けが含まれている。この多種多様な菌株は、各個人に合わせてプロバイオティクスの製剤をカスタマイズしたり、同じ個人に対して複数のコンソーシアムを設計したりするのに役立つ。考慮に入れられる要因としては、生理学的および遺伝子型的要因、地理的要因、ライフスタイル、食事パターン、研究室での報告や所見などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0138】
本明細書で使用される「健康状態の基準値または値の範囲」とは、健康な個人または個人群または集団の一般に入手可能なマイクロバイオームプロファイルから得られる、健康状態が良好であると判定された集団内の微生物叢の組成の分析によって確立された、分類群の存在量の基準値または値の範囲を意味する。健康状態は、臨床パラメータ、検査室調査、認定臨床医または健康実践医による調査等を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で公知の方法によって診断することができる。基準範囲値は、マイクロバイオームプロファイルのライブラリを管理する政府機関、学術機関、民間団体、非営利団体、またはマイクロバイオームプロファイルの分析から得られた分類群や代謝産物に関する基準値に関する情報をカタログ化する団体によって設定されることもある。
【0139】
本明細書で使用する場合、「腸内細菌叢異常の基準値または基準値の範囲」とは、腸内細菌叢異常があると判定された集団またはマイクロバイオーム関連疾患状態に罹患していると判定された集団内の微生物叢の組成の分析によって確立された、分類群の存在量の基準値または基準値の範囲を意味する。病状は、臨床パラメータ、検査室調査、認定臨床医または健康開業医による調査等を含むがこれらに限定されない病状診断のための当該技術分野で公知の方法によって診断することができる。この情報はまた、腸内における既知のディスバイオーシスまたはマイクロバイオーム関連疾患/障害の発現を有する個人または集団の、一般に入手可能なマイクロバイオームプロファイルから得ることもできる。このようなマイクロバイオームプロファイルのライブラリを管理する、あるいはマイクロバイオームプロファイルの解析から得られた分類群または代謝産物に関するこれらの基準値に関する情報をカタログ化する政府機関、学術機関、民間団体または非営利団体によって、腸内環境の異常状態または疾患/障害の状態に関する基準範囲値が設定されることもある。
【0140】
したがって、健康な個体に対する基準値は、以下の少なくとも1つを示すことになる:良好な健康状態にある被験者の代表として認識されるマイクロバイオームプロファイルにおける分類群群の相対的存在量であって、疾患状態の生理学的症状がないこと、または疾患を示すものとして当該技術分野で知られている臨床/診断パラメータがないこと。同様に、疾患個体に対する基準値は、疾患/疾患リスクの代表として認識されるマイクロバイオームプロファイル中の分類群の相対的な存在量を指す。さらに、基準値より高いとは、採取したサンプル内の分類群の相対存在量が基準値より高く、疾患状態に関連しうる程度であることを意味すると理解される。基準値より低いという用語は、採取されたサンプル内の分類群 の相対的存在量が、疾患状態に関連しうる程度まで基準値より低いことを意味する。
【0141】
方法(200)のステップ216で、タイムスタンプ2で得られた分類群豊度行列で分類群セットが特定される。分類群セットは、TAXA_SET_PおよびTAXA_SET_Aを含む。
【0142】
TAXA_SET_Pは、FGmapおよびGMPのいずれかにおいて、有益経路の1つ以上について事前に定義された第1の値を有する分類群から構成される。実施形態では、有益経路の1つ以上について、事前に定義された第1の値は1である。
【0143】
TAXA_SET_Aは、FGmapおよびGMPのいずれかにおいて、有害経路の1つ以上について事前に定義された第2の値を有する分類群から構成される。実施形態では、有害経路の1つ以上について、事前に定義された第2の値は1である。
【0144】
一実施形態では、
図6は、分類群セットがTAXA_SET_PとTAXA_SET_Aから構成されることを示す。
【0145】
方法(200)のステップ218で、TAXA_NETグラフから、タイムスタンプ2におけるTAXA_SET_P内の各分類群について、第1の近傍のセットが特定される。第1の近傍のセットは、TAXA_SET_Pの直接の近傍である。直属の近傍は、TAXA_SET_FN、TAXA_SET_FN_COM、TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_NEWから構成される。
【0146】
一実施形態では、
図6は、TAXA_SET_PおよびTAXA_SET_Aを含む分類群における最初の近傍の集合を示す。第一の近傍のセットは、TAXA_SET_Pの直接の近傍である。直下隣接は、TAXA_SET_FN、TAXA_SET_FN_COM、TAXA_SET_INTERSECT、aa TAXA_SET_NEWを含む。
【0147】
第一隣接とは、TAXA_SET_Pに属するノード集合にエッジで直接接続されているTAXA_NETの分類群ノードの集合を指す。微生物アソシエーションネットワークにおけるクエリ微生物ノードの第一近傍は、本質的に、微生物コミュニティにおいて最も近い関係にあり、クエリノードに直接的な影響を与える他の微生物ノードのリストを示す。
【0148】
方法(200)のステップ220において、個人の腸の健康を改善するための個別化された治療的介入を推奨する。治療的介入は、以下のうちの1つを推奨することを含む:
(a) プレバイオティック・カクテル、
(b) プロバイオティクス・カクテル、
(c) 最適化された食事 .
【0149】
治療的介入は、知識ベースのセットと、個別化された治療薬および食事療法の推奨の初期セットとを使用して、特定された第1の近隣に基づいて推奨され、個別化された治療的介入は、以下の少なくとも1つ以上を含む:
(a)ケースA(一群の有益微生物の経路存在量の減少)については、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事を推奨し、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の増殖を助ける、
(b)ケースB(有害な微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、最適化された食餌を推奨することであって、最適化された食餌は、複数の有益な微生物の増殖を促進し、有害な微生物の増殖を抑制する、ことと
(c)ケースC(有益な微生物の集合の経路存在量が減少し、有害な微生物の集合の経路存在量が増加している)に対して、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食餌を推奨し、ここで、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食餌は、複数の有益な微生物を補充し、有益な微生物の増殖を助け、有害な微生物の増殖を抑制する。
【0150】
個別化された治療的介入の推奨は、以下に述べるように、重要分類群に基づいてプレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテル、および最適化された食事のうちの1つを推奨することを含む:
【0151】
複数の有益な微生物の経路存在量の減少に対して、個別化された治療的介入1 : を推奨すること:個別化された治療的推奨は、以下を含む:
(a)プレバイオティック・カクテル、(b)プロバイオティック・カクテル、および(c)最適化された食事
【0152】
T2 に属する試料で利用可能な微生物分類群の中から、主にピルビン酸利用に関与する分類 群を特定し、TAXA_SET_P に保存する。一実施形態では、ピルビン酸利用を担う分類群は、GMPまたはFGmapから取得することができ、これにより、T2の微生物分類群の存在量入力における各分類群をGMPおよびFGMapにマッピングし、ピルビン酸利用経路におけるこの分類群に対応する値が1であるかどうかを確認する。 TAXA_NETにおけるTAXA_SET_Pの最初の近傍を特定し、それらを新しいリストTAXA_SET_FNに保存する。第一隣接とは、TAXA_SET_Pに属するノード集合に直接接続されているTAXA_NET内のノード集合を指す。微生物アソシエーションネットワークにおけるクエリ微生物ノードの第一近傍は、本質的に、微生物群集において最も近い関係にあり、クエリノードに直接的な影響を与える他の微生物ノードのリストを示す。TAXA_SET_FN内の分類群の機能的可能性を予測し、一実施形態ではピルビン酸利用経路を用いた酪酸産生能力に基づく通性分類群を同定する。他の実施形態では、GMP、FGmapまたは文献に記載されている有益な代謝産物の生合成経路を使用することもできる。前記機能情報は、本発明に記載のGMPおよびFGmapから得ることができ、これによりTAXA_NETの各分類群を、これらのマトリックスに記載されている属-機能またはゲノム機能マッピングに基づく機能と関連付けることができる。自動化された文献マイニングに基づいて、または手作業によるキュレーションによって、各分類群にさらなる機能情報を追加することができる。TAXA_SET_FN からこれらの分類群のサブセットを TAXA_SET_FN_COM として保存します。TAXA_SET_FN_COM と T2 に存在するすべての分類群の間で共通する分類群のセットを特定する。このリストを TAXA_SET_INTERSECT として保存する。TAXA_SET_FN_COMに含まれる残りの分類群のうち、T2に存在しないものをTAXA_SET_NEWとして保存する。
【0153】
以下の選択肢の中から、可能性のある個別治療法を提案する。
(a) 推奨-1:TAXA_SET_INTERSECTとTAXA_SET_Pの成長を促進する1つ以上のプレバイオティクスの投与を提案する。
(b) 推奨-2:TAXA_SET_NEWに属する1つ以上の微生物株を、プロバイオティクス・カクテルの候補として提案する。微生物の集団合成能力が相互作用プロフィールを形成する責任があるという事実に基づき、予測される機能ポテンシャルから明らかなように、コミュニティにとって必要な代謝経路を完了する可能性が高い菌株を、カクテル微生物構成要素を最適化する尺度として使用することができる。候補としてTAXA_SET_NEWに属する微生物菌株のセットが与えられれば、集団合成能力を高めるのに役立つ同じ菌株のサブセットを得ることができる。この目的のために、Netcooperate(https://doi.org/10.1186/s12859-015-0588-y)のような方法を使用して、微生物のペアの代謝相補性を計算することができる。これは、TAXA_SET_NEW(ペアの最初の部分として)とTAXA_SET_INTERSECT(ペアの2番目の部分として)で同定された分類群間のすべての可能な固有のペアワイズ組み合わせに対して行うことができる。次のステップでは、TAXA_SET_NEWに一致するペアで同定された分類群を、最終的なプロバイオティクスカクテルTAXA_SET_NEW_OPTIMIZEDとして含める。TAXA_SET_NEW_OPTIMIZEDの識別は任意である。TAXA_SET_NEW_OPTIMIZEDが特定された場合、TAXA_SET_NEWはTAXA_SET_NEW_OPTIMIZEDに置き換えられ、TAXA_SET_NEWへのすべての参照はTAXA_SET_NEW_OPTIMIZEDと同じである。
(c)推奨-3:推奨2に加えて、TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_P、TAXA_SET_NEWの増殖を促進する1つ以上のプレバイオティクスの投与を提案する。
(d) 推奨-4:TAXA_SET_INTERSECTとTAXA_SET_Pの分類群のセットが使用する食品成分のリストを、TAXA_CONSTITUENT_NETを使用して取得し、CONSTITUENT_SETに保存する。FOOD_CONSTITUENT_NETを使用して、CONSTITUENT_SETで同定された成分を保持する食品の集合(FOOD_SET)を見つける。個人化された嗜好と食事要件に基づいて食品FOOD_SETを最適化し、OPTIMIZED_FOOD_SETとして保存する。OPTIMIZED_FOOD_SET を使用して、時点 T2 で腸の健康状態が悪化していることが確認された被験者に個別化された食事を推奨する。
(e) 推奨-5:推奨-2と推奨-4を組み合わせて、腸内微生物群集構造の安定性を維持するために必要な食品だけでなく、プロバイオティクスの投与も提案する。
(f)推奨-6:推奨-2に続いて、既存の群集を維持し、新たにプロバイオティクスを追加するための食 事を提案する。TAXA_CONSTITUENT_NET を使用して、TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_NEW および TAXA_SET_P の分類群によって使用される食品成分のリストを取得し、CONSTITUENT_SET に保存する。FOOD_CONSTITUENT_NETを使用して、CONSTITUENT_SETで特定された成分を保持する食品の集合(FOOD_SET)を見つける。個人化された嗜好と食事要件に基づいて食品FOOD_SETを最適化し、OPTIMIZED_FOOD_SETとして保存する。OPTIMIZED_FOOD_SET を使用して、時点 T2 で腸の健康状態が悪化していることが確認された被験者に個別化された食事を推奨する。
【0154】
個別化された治療介入2-複数の有害微生物の経路存在量の増加のために-を推奨する:個別化された治療法の推奨は、最適化された食事を含む。
【0155】
T2に属するサンプルで利用可能な微生物分類群の中から、主にアンモニア生成に関与するものを特定し、TAXA_SET_Aに保存する。T2に属するサンプル中の常在細菌のセットを特定し、リストT2_COMに保存する。
【0156】
以下の選択肢の中から、個人に合った治療法を提案することが可能である:
(a) 推奨-1:TAXA_CONSTITUENT_NETを使用して、TAXA_SET_Aの分類群 が使用する食物成分のリストを取得し、CONSTITUENT_SETに保存する。FOOD_CONSTITUENT_NETを使用して、CONSTITUENT_SETで特定された成分を保持する食品の集合(FOOD_SET)を見つける。時点T2において腸の健康状態が悪化していることが確認された被験者に、FOOD_SETで得られた食品の摂取を減らすか止めるよう提案する。
(b) 推奨-2:推奨-1 に加えて、TAXA_CONSTITUENT_NET を用いて T2_COM の分類群によって使用される食 物成分のリストを取得し、そのリストを CONSTITUENT_SET に保存する。FOOD_CONSTITUENT_NETを使用して、CONSTITUENT_SETで特定された成分を保持する食品の集合(FOOD_SET)を見つける。個人化された嗜好と食事要件に基づいて食品FOOD_SETを最適化し、OPTIMIZED_FOOD_SETとして保存する。OPTIMIZED_FOOD_SET を使用して、時点 T2 で腸の健康状態が悪化していることが確認された被験者に個別化された食事を推奨する。
【0157】
複数の有益な微生物の経路存在量が減少し、複数の有害な微生物の経路存在量が増加している場合。
【0158】
個別化された治療勧告には、最適化された食事療法が含まれる:
(a)プレバイオティック・カクテル、(b)プロバイオティック・カクテル、および(c)最適化された食事
【0159】
T2に属する試料で利用可能な微生物分類群の中から、主にピルビン酸利用を担うものを特定し、 TAXA_SET_Pに保存する。次のステップでは、T2に属するサンプルで利用可能な微生物分類群の中から、 主にアンモニア産生を担うものを特定し、TAXA_SET_Aに保存する。TAXA_NETでTAXA_SET_Pの最初の近傍を特定し、新しいリストTAXA_SET_FNに保存する。TAXA_SET_FN内の分類群の機能的可能性を予測し、一実施形態では酪酸産生能に基 づく通性分類群を特定する。TAXA_SET_FNからこれらの分類群のサブセットをTAXA_SET_FN_COMとして保存する。TAXA_SET_FN_COM と、T2 に存在するすべての分類群のセットの間で共通する分類群のセットを特定する。このリストを TAXA_SET_INTERSECT として保存する。TAXA_SET_FN_COMの残りの分類群のうち、T2に存在しないものをTAXA_SET_NEWとして保存する。T2に属するサンプル中の常在細菌のセットを同定し、それらをリストT2_COMに保存する。これは、一実施形態では、構成微生物のピルビン酸利用能を評価することによって行うことができる。
【0160】
以下の選択肢の中から、個人に合った治療法を提案することが可能である:
(a) 推奨-1:TAXA_SET_INTERSECTとTAXA_SET_Pの増殖を促進する1つ以上のプレバイオティクスの投与を提案する。
(b)推奨-2:TAXA_SET_NEWに属する1つ以上の微生物株を、プロバイオティクス・カクテルの候補として提案する。そして、最終的なプロバイオティック・カクテルは、個々の微生物や群集に必要な代謝経路を完成させる可能性が高い菌株を特定することによって決定することができる。このようなカクテルデザインは、複数の組み合わせが可能である。ヒトの腸内環境を模倣した実験室で、必要な栄養源を用いて微生物カクテルを共培養することで、最終的な組み合わせを決定することができる。
(c)推奨-3:推奨2に加えて、TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_P、TAXA_SET_NEWの増殖を促進する1つ以上のプレバイオティクスの投与を提案する。
(d) 推奨-4:TAXA_SET_INTERSECTとTAXA_SET_Pの分類群のセットが使用する食品成分のリストを、 TAXA_CONSTITUENT_NETを使用して取得し、CONSTITUENT_SETに保存する。FOOD_CONSTITUENT_NETを使用して、CONSTITUENT_SETで同定された成分を保持する食品の集合(FOOD_SET)を見つける。個人化された嗜好と食事要件に基づいて食品FOOD_SETを最適化し、OPTIMIZED_FOOD_SETとして保存する。OPTIMIZED_FOOD_SET を使用して、時点 T2 で腸の健康状態が悪化していることが確認された被験者に個別化された食事を推奨する。
(e) 推奨-5:推奨-2と推奨-4を組み合わせて、腸内微生物群集構造の安定性を維持するために必要な食品だけでなく、プロバイオティクスの投与も提案する。
(f)推奨-6:推奨-2に続いて、既存の群集を維持し、新たにプロバイオティクスを追加するための食 事を提案する。TAXA_CONSTITUENT_NET を使用して、TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_NEW および TAXA_SET_P の分類群によって使用される食品成分のリストを取得し、CONSTITUENT_SET に保存する。FOOD_CONSTITUENT_NETを使用して、CONSTITUENT_SETで特定された成分を保持する食品の集合(FOOD_SET)を見つける。個人化された嗜好と食事要件に基づいて食品FOOD_SETを最適化し、OPTIMIZED_FOOD_SETとして保存する。OPTIMIZED_FOOD_SET を使用して、時点 T2 で腸の健康状態が悪化していることが確認された被験者に個別化された食事を推奨する。
(g) 推奨-7:推奨-2に続いて、既存の群集を維持し、新たにプロバイオティクスを追加するための食 事を提案する。TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_NEW、および TAXA_SET_P の分類群によって使用される食品成分のリストを、TAXA_CONSTITUENT_NET を使用して取得し、CONSTITUENT_SET に保存する。FOOD_CONSTITUENT_NETを使用して、CONSTITUENT_SETで特定された成分を保持する食品の集合(FOOD_SET)を見つける。個人化された嗜好と食事要件に基づいて食品FOOD_SETを最適化し、OPTIMIZED_FOOD_SETとして保存する。同様に、TAXA_CONSTITUENT_NET を使用して、TAXA_SET_A の分類群によって使用される食品成分のリス トを取得し、そのリストを CONSTITUENT_SET に保存する。FOOD_CONSTITUENT_NETを使用して、CONSTITUENT_SETで特定された成分を保持する食品の集合(FOOD_SET_A)を見つける。時点T2において腸の健康状態が悪化していることが確認された被験者に、FOOD_SET_Aで得られた食品の摂取を減らすか止めるように提案する。
(h) 推奨-8:推奨-4に続いて、TAXA_CONSTITUENT_NET を用いて TAXA_SET_A の分類群 が使用する食物成分のリストを入手し、そのリストをCONSTITUENT_SET に保存する。FOOD_CONSTITUENT_NETを使用して、CONSTITUENT_SETで特定された成分を保持する食品の集合(FOOD_SET_A)を見つける。時点T2において腸の健康状態が悪化していることが確認された被験者に、FOOD_SET_Aで得られた食品の摂取を減らすか止めるよう提案する。
【0161】
最適化された食事は、最適化技術に基づいて推奨され、最適化技術は、最適化された食事を得るために腸フードスコアを最適化することを含み、最適化は、カロリーパラメータ、炭水化物パラメータ、タンパク質パラメータおよび脂肪パラメータを含む複数の制約パラメータに従う。一実施形態では、異なる食品項目の最適化は、腸内食品スコアが高い食品項目が推奨され、腸内食品スコアが低い項目が回避されるように行われる。腸内フードスコア(GFS)は、定量化された個別化スコアであり、2つのサンプル間のマイクロバイオーム組成の変化を考慮した場合、食品アイテムが常在細菌または有用細菌分類群の存在量を特異的に増加させ、個体における有害細菌分類群または病原性細菌分類群または潜在的病原性細菌分類群の存在量に有意な変化を引き起こさない。特定の食品のガットフードスコアは、その構成成分の特性を用いて算出される。
【0162】
食品中に含まれる化合物は細菌分類群によってエネルギー源として利用され、利用された細菌分類群が増殖し、その結果、その存在量が増加する。増加した分類群が常在性であれば腸内環境は改善し、増加した分類群が病原性であれば腸内環境は悪化する。したがって、常在細菌分類群によって特異的に利用される化合物を含む特定の食品を摂ることは、腸の健康に有益である。逆に、病原性細菌が利用する可能性のある食品を控えることも健康に有益である。従って、ある病原性細菌が増加した場合、その病原性細菌が利用する化合物を含む食品は特に避けるべきである。逆に、ある種の常在菌の存在量が減少している場合は、腸の健康を回復させるために、常在菌が利用できる化合物を含む食品を特に食べるべきである。常在菌と病原性細菌による構成化合物の利用プロファイル、および病原性分類群の増加と常在菌分類群の減少に基づいて食品を定量化またはスコア化するために、我々は腸内食品スコア(GFS)を計算する。GFSスコアは個別化されたものであり、健康な状態と病気の状態でのマイクロバイオーム・プロファイルの変化に基づいて、すべての人/患者が異なるスコアを持つことになる。GFSスコアが高い食品は摂取しなければならず、低い(-ve)食品は避けなければならない。
【0163】
開示されたステップの最初の要件は、さまざまな食品に含まれる化合物のリストである。このような化合物のリストを以下のように表すとする:
ここでpはそのような化合物の総数である。
【0164】
一実施形態において、前記化合物リストは、異なる公表された食品成分データベースまたは表から入手することができる。
【0165】
第二の条件は食品リストである:
ここで、mはそのような食品の総数である。
【0166】
このような食品リストは、公表されているさまざまな食品成分データベースや表から入手することができる。これらの食品の成分化合物およびその含有量は既知でなければならない。一実施形態では、食品に含まれるこれらの成分化合物は、公開されているデータベースから入手することができる。別の実施形態では、食品の成分化合物は、文献マイニング技術および手作業によるキュレーションによって得ることができる。
【0167】
第三の要件は、食品成分マトリックス(C)である、
,
ここで、
p=リスト食品から食品中に得られた化合物の総数、および
m = 食品の総数。
一実施形態では、食品成分マトリックス(FOOD_CONSTITUENT_NET のマトリックス形式と類似している)は、 文献から、または公表されている複数の食品成分データベースまたは表から作成される。
マトリックスCは、公表されている様々な食品成分データベースや文献から得ることができ、以下の表8に定義されている:
【表8】
【0168】
第4の要件は、公開されているデータベースや科学文献で利用可能なデータを使用した複数のベクターである:
は食品の炭水化物含量を含むベクトルである。
= の単位あたりの炭水化物含量である。
- これは既存の文献から得られたものである。
は食品のタンパク質含量を含むベクトルで、次のようになる。
= 単位
.これは既存の文献から得ることができる。
は食品の脂肪含量を含むベクトルで、次のようになる。
= 単位あたりの脂肪含量
.これは公表文献から得ることができる。
を含むベクトルである。
を含むベクトルである。
=
の単位当たりの含有量である。
.これは公表されている文献から得ることができる。
【0169】
第五の要件は、分類群のリストを持つことである。 その分類群のリストを次のようにする:
ここでqは分類群の総数である。
【0170】
一実施形態では、分類群のリストは、本開示で先に定義したように、有益または有害な代謝物経路のいずれかを有する分類群のみとすることができる。
【0171】
第5の要件は、異なる細菌分類群の遺伝的機能ポテンシャルを調べ、それらが通性(有益ともいう)か病原性(有害ともいう)かを判断できる2つの機能である。
[001]
一実施形態では、関数は、本開示に記載の有益経路に対応する機能的能力または遺伝子/酵素/タンパク質を有する分類群として常在菌を同定し、本開示に記載の有害経路に対応する機能的能力または遺伝子/酵素/タンパク質を有する分類群として病原性細菌を同定することができる。このような実施形態では、常在菌(x)は、分類群xに存在する遺伝子を本質的に検査し、遺伝子が本開示に記載の有益経路に対応するタンパク質をコードする場合に「真」を返す関数となる。一方、病原体(x)は、分類群xに存在する遺伝子を本質的に調べ、遺伝子が本開示に記載の有害経路に対応するタンパク質をコードしている場合に「真」を返す関数である。PUは、通性分類群リストに属する分類群を含む集合として定義される。
APは、病原性のある分類群リストに属する分類群を含む集合として定義される。
【0172】
一実施形態では、TAXA_NETにおいて集合PUの要素/細菌分類群と正の関連性を有する(直接エッジを有する)第一隣接細菌分類群をすべて、集合PUに追加することもできる。さらに、TAXA_NETにおいて集合APの要素と正の相関を有するすべての細菌分類群も、集合APに追加することができる。一実施形態において、PUは、先に開示したように、TAXA_SET_Pとすることができ、APは、TAXA_SET_Aとすることができる。
【0173】
第6の要件は、Taxa-Compound Utilizationマトリックス(これはTAXA_CONSTITUENT_NETのマトリックス形式と本質的に同一である)であり、これは異なる細菌分類群によってエネルギー源として利用され得る化合物を含むマトリックスである。
ここで、
p = 化合物の総数
q = 分類群の総数。
【0174】
一実施形態では、このようなマトリックスは、細菌分類群に存在するさまざまな遺伝子に基づく機能ポテンシャル推定を用いて得ることができ、機能ポテンシャルとは、一組の食品成分の利用に役立つ、分類群内にコードされた代謝経路の一組を指す。別の実施形態では、この表はVirtual Metabolic Humanのような一般に利用可能なリポジトリから得ることもできる。
【0175】
最適化された食事を推奨するプロセスについて、
図5のフロー図とともに以下に説明する:
【0176】
方法(500)のステップ 502 では、タイムスタンプ 1(または時点 1)とタイムスタンプ2(または時点 2)の間で、分類群セット 1 と分類群セット 2 の結合内のすべての分類群について正規化された変化が計算される。
【0177】
実施形態において、腸内環境の悪化とは、腸内細菌叢における有益な代謝経路およびその構成代謝産物の組み合わせの減少、または有害な代謝経路およびその構成代謝産物の増加のいずれかを指す。これは、タイムスタンプT1とT2のサンプル間における個人の生物学的状態異常を指すと考えられる。第1の時点(T1)は摂動前の状態であり、第2の時点(T2)は摂動後の状態であり、摂動によって腸内微生物群集構造のディスバイオシスが生じた状態である。時点T2において、T1に対して腸内環境が悪化している被験者を特定する。T1に対するT2に対応する被験者のマイクロバイオームの入力微生物分類群存在量ファイルから、機能ポテンシャルに関するディスバイオージスの理由を特定する。
【0178】
一実施形態では、ベクトル d として表される正規化された変化が、taxa で示されるすべての分類群(taxa)について計算される。
(qは関連のある分類群の総数)は、
で示されるすべての分類群(taxa)について、
が、下記に示すように、腸内細菌叢のサンプルにおけるT2とT1
の間の
の存在量の変化をとらえるように計算される:
ここで、
は、サンプルT2での
の存在量である。
は、サンプルT1での
の存在量である。
は、健康な人体の異なる腸内微生物叢サンプル中の
の存在量の標準偏差である。
【0179】
一実施形態では、ヒトの腸内マイクロバイオームサンプルは、複数の健康なヒトの微生物量を含む異なる一般公開データセットから得ることができる。
【0180】
方法(500)のステップ504において、分類群セット1と分類群セット2の組合における全ての分類群について、分類群重要度スコアが計算される。分類群重要度スコアは、正規化された変化、知識ベースのセットからの複数の有益微生物、複数の有害微生物を用いて計算される。
【0181】
分類群重要度ベクトル
で示されるすべての分類群(taxa
i)について、:
ここで、
b
i は分類群(taxa
i)の重要度スコアである。
d
i は分類群(taxa
i)の正規化された変化スコアである。
Iは指標関数である、すなわち、
すなわち、任意の集合Zと、集合Zの中にあってもなくてもよい任意の変数yについてである、
PU : 常在細菌分類群のセット
AP:病原性細菌分類群の集合
【0182】
ベクトルbの定義により、病原性細菌分類群がT2において(健康な状態の存在量と標準偏差と比較して)大きく増加した場合は高得点となり、(健康な状態の存在量と標準偏差と比較して)増加が少なかった場合は低得点となる。一方、常在菌の分類群がT2において(健常時の存在量と標準偏差と比較して)大きく減少した場合、重要度は高くなり、そうでなければ1となる。もしその分類群が常在菌と病原性菌の両方に属するか、どちらにも属さない場合、そのスコアは1となる。
【0183】
方法(500)のステップ506で、分類群セット1と分類群セット2の組合わせに含まれるすべての分類群の重要度スコアと、あらかじめ定義された分類群-化合物利用行列(T)を用いて、個人用に個別化された腸内化合物スコアが計算される。個別化ド腸内化合物スコアは、腸内の複数の有益な微生物を増加させる化合物の能力を定量化する。
【0184】
実施形態では、以下に示すように、リスト化合物中に存在するすべてのp個の化合物についてGCSスコアが計算される:
は異なる化合物の腸管化合物スコアを含むベクトルである。
腸の複合スコアは次のように定義される。
ここで、
Iは指標関数である。
【0185】
特定の化合物の腸内化合物スコアは、最適化プロセスにおける様々な化合物の重要性を示す。式の最初の要素は、常在腸内微生物分類群を増加させる化合物の能力を定量化したものである。もしその化合物が、T2で著しく減少した常在菌分類群に利用されれば、方程式の第一成分でより高いスコアが得られる。その化合物がT2であまり減少しなかった他の常在菌に利用された場合、その化合物のスコアは1を下限とする低スコアとなる。
【0186】
逆に、式の第二成分では、病原性細菌分類群を減少させる化合物の能力を定量化する。その化合物が、T2において大量に増加する病原性細菌分類群に利用される場合、方程式の第二成分において高得点が得られる。もしその化合物が他の病原性細菌に利用された場合、その化合物のスコアは低くなり、下限は1となる。もしその化合物が病原性細菌に利用されなかった場合、その化合物のスコアは0となる。
【0187】
以上の2点をまとめると、特定の化合物の腸内化合物スコアは、その化合物が常在細菌分類群によってエネルギー源として利用され(T2で減少した常在細菌分類群によって利用される場合はスコアが高くなる)、病原性細菌分類群によって利用されない(T2で増加した病原性細菌分類群によって利用される場合はスコアが低くなる)ことを数値化したものである。言い換えれば、GCSが高い(正の)化合物は、常在菌の存在量を選択的に増加させるが、病原性細菌は増加させない。逆に、GCSスコアが低い(マイナス)化合物は、病原性細菌を選択的に増加させ、常在菌は増加させない。GCSは、リスト化合物中のすべての化合物のGut Compound Scoreを含むベクトルである。
【0188】
方法(500)のステップ508では、腸内複合スコアと食品成分マトリックスを用いて、食品アイテムのセット内のすべての食品アイテムについて腸内食品スコア(GFS)が計算される。GFSは、複数の有益微生物を増加させる食品項目の能力を定量化する。
【0189】
一実施形態では、特定の食品のGFSは、その食品の構成化合物の腸内 化合物スコアの加重和を、その濃度、すなわちその食品の単位あたりの化合物 量で加重平均したものである。gfsはリスト食品中のすべての食品の腸内食品スコアを含むベクトルである。
は、m品目の腸管食品スコアを含むベクトルである。
【0190】
特定の食品のGFSを計算するには、各構成化合物のGCSスコアに食品中の含有量を掛け合わせ、その結果を合計する。GFSの解釈:GFSが高い食品は、常在細菌分類群によって利用され、その結果、常在細菌分類群が増殖し、スコアが高いほど、疾患状態で減少した常在細菌によって利用される可能性があり、腸内健康を改善できる可能性があることを示す。この個別化されたGut Food Scoreは、最適な食事を見つけるのに役立つ。
【0191】
方法(500)のステップ510では、最適化されたすべての食品項目のガットフードスコアが最大になるように、食事が最適化される。この最適化は、カロリー・パラメータ、炭水化物・パラメータ、タンパク質・パラメータ、および脂肪・パラメータを含む複数の制約パラメータに従う。
【0192】
一実施形態では、1日のカロリーおよび多量栄養素の必要量を満たすだけでなく、病原性属ではなく、常在性属によって特異的に利用されるように最適化された食餌は、腸内食物スコアに基づく最適化問題以下に基づき計算される:
以下の制約に従う。
ここで、
ユーザーはm個の食品リストから選ぶオプションを有する。
はすべての'm'食品のリストである、
は食品の炭水化物含量を含むベクトルである。
= の単位あたりの炭水化物含量である。
- これは既存の文献から得られたものである。
は食品のタンパク質含量を含むベクトルで、次のようになる。
= 単位
.これは既存の文献から得ることができる。
は食品の脂肪含量を含むベクトルで、次のようになる。
= 単位あたりの脂肪含量
.これは公表文献から得ることができる。
を含むベクトルである。
を含むベクトルである。
=
の単位当たりの含有量である。
.これは公表されている文献から得ることができる。
は次のようなベクトルである
そして
【0193】
利用者は、嗜好に基づいてリスト食品からいくつかの食品を選択することができる。一実施形態では、これらの嗜好は、食事の嗜好(味覚、特定の食品に対するアレルギー、宗教的嗜好などを含む)、地理的な場所における食品の入手可能性などに基づくことができる。これは、特定の食品に対する嗜好に影響を及ぼす可能性のある他の要因を必ずしも排除するものではない。このユーザーの食品選択は、例えばウェブサイト、モバイルアプリケーションなどの計算システムによって支援することができる。
は食品の量を含むベクトルであり、x
iは
の量である。
は、制約付き最適化問題を解くことによって最適化された食品の生産量を含むベクトルである。
は、m個の食品に与えられた個別化された腸内フードスコアを含むベクトルである。
は、特定の人の腸管フード・スコア
を定量化する。
は、ユーザーの炭水化物、タンパク質、脂肪、および総カロリー摂取量の最小値と最大値で、ユーザーが提供するか(良い食事を構成するものについての公正な考えを持っていると仮定して)、または年齢、身長、体重を含むがこれに限定されないエンドユーザーの特性に基づいて、いくつかのプリセット標準値から選択することができる。これらの値の選択は、エンドユーザーのために専門家が経験に基づいて行うこともできる。この選択は、部分的または全体的に、例えばウェブサイト、モバイルアプリケーションなどの計算システムによって補助することもできる。
【0194】
一実施形態では、制約付き最適化問題は、線形計画法を含むがこれに限定されない任意の最適化技法を使用して、手動または計算ツールを使用して解くことができる。
推奨食品量
ここで、
は、ベクトル間の要素毎の積を表す。
【0195】
ベクトルrは最終的な食品の推奨量であり、ri が食品i の推奨量となる。ユーザーによって選択されなかったすべての食品については量0を持ち、ユーザーによって選択された食品については、最適化ステップの結果に応じて0または+veの値を持つ。
【0196】
別の実施形態では、1つ以上の有益な代謝産物の産生経路、または/および1つ以上の有害な代謝産物の分解/除去経路を、腸内微生物の遺伝子構成に遺伝子操作またはバイオエンジニアリングすることができる。これらの遺伝子操作された微生物は、プロバイオティクスとして、単独で、またはプレバイオティクス/メタバイオティクス/パラプロバイオティクスと組み合わせて、腸疾患を有する個体に投与することができる。
【0197】
一実施形態において、本開示は、改変または遺伝子操作された微生物を提供し、ここで、生物は、代謝産物を産生するのに必要な経路の1つ以上を異種発現する。改変された」微生物とは、代謝経路を異種発現するように遺伝子操作されるなど、天然に存在する形態が変更された、常在菌または共生生物として腸内で生存可能な微生物を指す。異種」タンパク質または経路とは、微生物のゲノムに通常コードされていない、経路を形成する遺伝子または遺伝子セットを指す。従って、経路を形成するタンパク質の異種生産は、特定の経路に対応する遺伝子/遺伝子セットをコードするDNA配列を、微生物中で作動可能なプロモーターおよびターミネーター配列とともに微生物に導入することを含む。経路を形成するタンパク質は、微生物に導入された適切な発現ベクターまたは他の構築物を用いて発現させることができる。実施形態では、異種経路はプラスミドまたは細菌染色体に導入されるDNAセグメントによってコードされた改変生物に導入される。
【0198】
実施形態において、本開示は、当該技術分野で公知の常在菌または共生菌の1つ以上を含む改変細菌を含む。一実施形態において、改変された細菌は、腸内に存在可能なラクトバチルス属およびビフィドバクテリウム属のような属の種を含む可能性がある。これらの属の多くのメンバーは、ヨーグルト、牛乳、牛乳ベースのクリーム、アイスクリーム製品、チーズなどの乳製品、またはこれらの組み合わせを含む、ヒトおよび動物の消費を意図した食品において活性である。特定の実施形態において、改変された細菌は、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus casei、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus salivarius、またはL. Reuteri、ならびにB. longumなどのビフィドバクテリウムのプロバイオティック株の1つまたは複数であり得る。別の実施形態では、改変された生物は、腸内に常駐可能な通性嫌気性菌を含み得る。一実施形態では、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)およびストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)を含む市販のプロバイオティクス株もまた、改変生物として使用することができる。腸内の他の常在菌/共生生物も、所望の経路を発現するように操作できる範囲内である。
【0199】
別の態様において、本開示は、異種経路を発現する改変細菌を含む食品を合成することができる。別の態様において、食品は、個体の腸の健康の改善に必要な経路を有する、本発明で同定された個別化プロバイオティック菌株から構成され得る。実施形態において、食品は乳製品であり、ヨーグルト、牛乳、牛乳ベースのクリーム、およびチーズまたはチョコレートが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。ヨーグルトなどの微生物の生きた培養物を含む食品の製造は、当該技術分野において周知である。これらは、現在提供されている改変微生物または本発明で同定された微生物コンソーシアムを含むように適合させることができる。食品の包装は、食品中の修飾菌株または他の菌株の存在を識別する情報を消費者に提供することができる。
【0200】
別の態様において、本開示は、本開示に記載されるように改変されたまたは天然に存在する生きた細菌の1つ以上を含むプロバイオティクス製剤または機能性食品を含むがこれらに限定されない、栄養補助食品、栄養補助食品、食品成分などのサプリメント製品を含む。サプリメント製品は、液体、カプセル、錠剤、ソフトジェル、粉末などとして入手可能である。
【0201】
別の態様において、本開示は、前記改変微生物または本開示で特定されるプロバイオティクス製剤組成物を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、製剤中に存在する微生物と共に使用することを意図した、任意の適切な希釈剤、担体、賦形剤、緩衝剤などを含み得る。医薬製剤の投与は、非経口、腹腔内、肺内、経口、腹腔内などを含むがこれらに限定されない、1つまたは複数の適切な経路を用いて行うことができる。非経口注入には、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、および皮下投与の1つまたは複数が含まれ得る。
【0202】
個別化治療介入は、遺伝子工学的に操作された細菌を投与することをさらに含み、遺伝子工学的に操作された細菌は、(a)1つ以上の有益な代謝産物の産生のための複数の微生物経路、または/および(b)1つ以上の有害な代謝産物の分解/除去のための複数の微生物経路を、腸内微生物の遺伝子構成に遺伝子工学的に操作することを含み、遺伝子工学的に操作された細菌は、以下に共有される方法の1つで投与される:
(a)プロバイオティクスとして遺伝子工学的に操作されたもので、プレバイオティクス、メタバイオティクス、パラバイオティクスのいずれかと単独または組み合わせて使用される、
(b)代謝産物を産生するのに必要な経路の1つ以上を異種発現する遺伝子工学的に操作された生物であって、ここで、遺伝子工学的に操作された生物は、腸内常在菌の1つ以上であり得、ここで、腸内常在菌は、有益な微生物、市販のプロバイオティクス株、または腸内に常駐可能な通性嫌気性菌を含み得るが、これらに限定されない;ここで、遺伝子工学的に操作された生物は、改変細菌とも呼ばれ、ここで、改変細菌は、食品、食品サプリメント、または医薬組成物もしくはプロバイオティクス製剤として投与され得る。
【0203】
本明細書では、当業者であれば誰でも実施形態を製造および使用できるように、主題を説明する。主題の実施形態の範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に生じる他の改変を含み得る。そのような他の改変は、特許請求の範囲の文言と異ならない類似の要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない同等の要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【0204】
本明細書における本開示の実施形態は、マイクロバイオームの機能に基づいて個人のための個別化治療介入を設計するという問題に対処するための解決策を提供する。各個人は、腸内のマイクロバイオームのユニークな組成を有し、1つのプロバイオティクスまたは食事療法は、異なる個人において同じ有効性を有するとは限らない。本開示は、マイクロバイオームの機能に基づいて個別化治療薬および食事療法を設計することにより、個人の腸の健康を改善するための個別化治療介入を推奨する。個別化治療介入は、知識ベースのセットを生成すること、腸サンプルをモニタリングすることによって個人の腸の健康の変化を特定すること、および個別化治療介入を推奨することを含むいくつかのステップに基づいて推奨される。個別化治療介入は、プレバイオティクス、プロバイオティクス、および最適化された食事のうちの少なくとも1つを含み、最適化された食事は、腸内食品スコアの最適化に基づいて推定され、腸内食品スコアは、個人の腸内健康の変化に基づいて計算される。
【0205】
保護範囲は、このようなプログラムに加え、その中にメッセージを有するコンピュータ読み取り可能な手段にも拡大されることを理解されたい。このようなコンピュータ読み取り可能な記憶手段には、プログラムがサーバーやモバイルデバイス、または任意の適切なプログラム可能なデバイス上で実行される場合、方法の1つまたは複数のステップを実施するためのプログラムコード手段が含まれる。ハードウェアデバイスは、例えば、サーバやパーソナルコンピュータなどの任意の種類のコンピュータ、またはそれらの任意の組み合わせを含む、プログラム可能な任意の種類のデバイスであり得る。デバイスはまた、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のようなハードウェア手段、またはハードウェア手段とソフトウェア手段の組み合わせ、例えばASICとFPGA、またはその中に配置されたソフトウェア処理コンポーネントを有する少なくとも1つのマイクロプロセッサと少なくとも1つのメモリのような手段を含み得る。したがって、手段は、ハードウェア手段とソフトウェア手段の両方を含み得る。本明細書に記載の方法実施形態は、ハードウェアおよびソフトウェアで実施され得る。装置はまた、ソフトウェア手段を含み得る。あるいは、実施形態は、異なるハードウェア装置、例えば複数のCPUを使用して実装され得る。
【0206】
本明細書の実施形態は、ハードウェア要素およびソフトウェア要素から構成することができる。ソフトウェアで実装される実施形態には、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で説明する様々な構成要素によって実行される機能は、他の構成要素または他の構成要素の組み合わせで実装することができる。本明細書において、コンピュータ使用可能媒体またはコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置、またはデバイスによって、または命令実行システム、装置、またはデバイスに関連して使用するためのプログラムを構成、記憶、通信、伝播、または輸送することができる任意の装置であり得る。
【0207】
図示されたステップは、図示された例示的な実施形態を説明するために設定されたものであり、継続的な技術開発により、特定の機能が実行される方法が変更されることが予測されるべきである。これらの例は、説明の目的で本明細書に提示されたものであり、限定するものではない。さらに、機能ビルディングブロックの境界は、本明細書では、説明の便宜のために任意に定義されている。指定された機能およびその関係が適切に実行される限り、代替の境界を定義することができる。代替案(本明細書に記載されたものの等価物、拡張、変形、逸脱などを含む)は、本明細書に含まれる教示に基づき、関連技術分野の当業者には明らかであろう。そのような代替案は、開示された実施形態の範囲内にある。また、「comprising」、「having」、「containing」、および「including」、ならびに他の類似の形態の語は、これらの語のいずれか1つに続く項目またはアイテムが、そのような項目またはアイテムの網羅的なリストであることを意味せず、またはリストされた項目またはアイテムのみに限定されることを意味しないという点で、意味において同等であり、かつオープンエンドであることが意図される。また、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、複数形の参照を含むことに留意しなければならない。
【0208】
さらに、本開示と一致する実施形態を実施する際に、1つ以上のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を利用することができる。コンピュータ可読記憶媒体は、プロセッサによって読み取り可能な情報またはデータが記憶され得る任意のタイプの物理的メモリを指す。したがって、コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、プロセッサ(複数可)に本明細書に記載の実施形態と一致するステップまたは段階を実行させるための命令を含む、1つまたは複数のプロセッサによる実行のための命令を記憶することができる。コンピュータ読み取り可能媒体」という用語は、有形物を含み、搬送波および過渡信号を除外する、すなわち、非一過性であると理解されるべきである。例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ハードドライブ、CD ROM、DVD、フラッシュドライブ、ディスク、および他の任意の既知の物理的記憶媒体が含まれる。
【0209】
本開示および実施例は例示としてのみ考慮されることが意図されており、開示される実施形態の真の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含む、マイクロバイオームの機能に基づいて個別化された治療法および食事療法を設計するための
プロセッサ実装方法(200):
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、一組の入力データを受信するステップ(202)であって、一組の入力データは、以下と関連するデータを含む、
複数の代謝産物、複数の代謝経路、複数の分類群、栄養素に関する情報、プロバイオティクス、プレバイオティクス、複数の代謝産物の補充または分解のためのサプリメント、複数の食品成分、複数の食品アイテム、健康なコホートの微生物存在量マトリックス、複数の食事最適化前提条件パラメータ、
ここで、複数の代謝産物は、有益な代謝産物のセットと有害な代謝産物のセットとを含み、有益な代謝産物のセットは個体の腸の健康に有益であり、有害な代謝産物のセットは個体の腸の健康に有害である、
ここで、複数の代謝経路は、(a)有益経路と(b)有害経路のいずれかを含む、
ここで、有益経路は、複数の有益な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の分解のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数を含み、そして
ここで、有害経路は、複数の有益な代謝産物の分解のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数を含む;
ここで、複数の有益微生物は有益経路を保有し、複数の有害微生物は有害経路を保有する;
ここで、複数の分類群は、複数の微生物を含み、ここで、複数の微生物は、複数の有益な微生物、複数の有害な微生物を含み、ここで、複数の微生物は、分類学的階層に従って分類され、ここで、分類学的階層は、複数の細菌門のうちの1つまたは複数を含む、複数の細菌綱、複数の細菌目、複数の細菌科、複数の細菌属、複数の細菌種、および複数の細菌株を含み、ここで、複数の微生物は、別個のゲノム位置を有する複数の遺伝子、細菌株のヌクレオチド配列およびタンパク質配列のセットを含み、ならびに
ここで、複数の食事最適化前提条件パラメータは、食品のセットと、食品のセット中に見出される化合物の完全なセットと、食品成分マトリックスを含み、食品成分マトリックスは、セットの食品に属するすべての食品中のセットの化合物に属するすべての化合物の含有量、セットの食品に属する各食品の総炭水化物、タンパク質、脂肪およびカロリー含有量を集計する、食品成分マトリックスと、ヒトの腸内の細菌分類群のリストと、有益な細菌分類群と有害な細菌分類群を識別するための一連の関数と、分類群-化合物利用マトリックス、炭水化物、タンパク質、脂肪、カロリーに関連するユーザー定義の上限パラメーターと下限パラメーターのセット、およびユーザーが選択した食品を備える、
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、入力データ(204)のセットを使用して知識ベースのセットを生成するステップであって、知識ベースのセットは、属機能マップ(FGmap)、ゲノム代謝経路(GMP)マップ、分類群関連参照プロファイル(TAXA_NET)グラフ、TAXA-食品構成要素ネットワーク、食品構成要素ネットワーク、およびProbMapを含み、知識ベースのセットの生成は、以下を含む、ステップと
FGmapおよびGMPマップを生成し、ここで、FGmapは、複数の分類群の1つに属する複数の細菌属の関数と、複数の代謝経路を列とする行列である、ここで、予め定義された第1の指標は、(a)代謝経路の存在及び(b)代謝経路の非存在のうちの1つを示し、GMPは、行としての複数の細菌株及び列としての複数の代謝経路のマトリックスであり、予め定義された第2の指標は、(a)代謝経路の存在及び(b)代謝経路の非存在のうちの1つを示す(204A);
複数の分類群およびFGmapに基づいてTAXA_NETグラフを生成する工程(ここで、TAXA_NETグラフは無向グラフである)、ここで、TAXA_NETグラフの各ノードは、複数の分類群からの分類群に対応し、エッジは、複数のノードからの各分類群がFGmapからの複数の分類群の機能に関連付けられる、分類群の対の間の正の関係を示し、正の関係は、相互主義、共栄主義、通性主義、および協力のうちの1つを含む(204B);
TAXA_NETの各分類群に対する複数の食物構成要素に基づいてTAXA-食物構成要素ネットワークを生成し、ここでTAXA-食物構成要素ネットワークは、代謝または栄養源として分類群によって使用される食物構成要素と関連付けられた各分類群の無向ネットワークである(204C);
TAXA-食品構成要素ネットワークの各食品構成要素の複数の食品項目に基づいて、食品構成要素ネットワークを生成し、ここで、食品構成要素ネットワークは、食品項目に存在する各食品構成要素の無向ネットワークである(204D);および
GMPの転置を生成してProbMapを取得し、ProbMapは、複数の代謝産物および複数の代謝経路からの各代謝産物を含む行と、複数の細菌株、プロバイオティクス、プレバイオティクス、対応する複数の代謝産物の生合成および/または分解が可能な食餌成分を含む列とを有する行列である(204E);
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、2つのタイムスタンプで個人の複数の腸サンプルを受信し、2つのタイムスタンプが、2つのサンプルが収集されたタイムスタンプ1とタイムスタンプ2を含む(206)こと;
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記複数の腸サンプルの分類群存在量行列を生成し、前記分類群存在量行列は、分類群セット1および分類群セット2を含み、前記分類群セット1および前記分類群セット2は、前記タイムスタンプ1および前記タイムスタンプ2を使用して生成される(208)こと;
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、分類群存在量行列およびFGmapを使用して、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの各々について経路存在量を生成することであって、経路存在量は
サンプル処理技術を用いて生成され、各タイムスタンプについての経路存在量は、対応するタイムスタンプにおける個体の腸内マイクロバイオームにおけるGMPの複数の代謝経路の存在を示す、経路存在量を生成すること(210);
摂動経路を同定すること(212)であって、摂動経路は、個体の腸の健康状態の悪化を示し、摂動経路は、統計的手法を用いて、タイムスタンプ1とタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの経路存在量の比較に基づいて同定され、摂動経路は、以下のいずれかの場合に基づいて同定される:
(a)ケースA:有益経路のセットの経路存在量の減少、ここで、減少は有益な微生物のセットの減少を示す、または
(b)ケースB:有害経路の集合の経路存在量の増加であって、その増加が有害な微生物の集合の増加を示すもの、または
(c)ケースC:有益経路群の経路量が減少し、有害経路群の経路量が増加していることから、有害な微生物群の増加と有益な微生物群の減少が示唆される;
個別化された治療薬および食事療法の初期セットを決定する工程であって、個別化された治療薬および食事療法の初期セットが、以下の少なくとも1つを含み、ProbMapを使用する、個別化された治療法および個別化された食事療法であって、個別化された治療法および食事療法の初期セットは、同定された摂動経路に対応する行である、食事療法、ここで、個別化治療薬は、(a)摂動経路を有する複数の細菌株、または(b)確率の高い代謝産物の分解または/および生合成のための経路を有する複数の細菌株として決定され、確率の高い代謝産物は、ProbMap (214)の摂動経路に対応する代謝産物である;
タイムスタンプ 2 で取得された分類群存在量マトリックス内の分類群セットを識別することであって、ここで、分類群セットは TAXA_SET_P と TAXA_SET_A で構成され、ここで、TAXA_SET_Pは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有益経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第1の値を含み、TAXA_SET_Aは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有害経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第2の値を含む(216);
TAXA_NETグラフから、タイムスタンプ2におけるTAXA_SET_P内の各税素についての第1の近傍のセットを特定するステップであって、第1の近傍のセットは、TAXA_SET_FN_COM、TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_NEW_ (218)を含むTAXA_SET_Pの直接の近傍である、ステップと
1個以上のハードウェアプロセッサを介して、個人(220)の腸の健康を改善するための個別化された治療的介入を推奨することであって、治療的介入が、知識ベースのセットおよび個別化された治療薬および食事療法の推奨の初期セットを使用して、特定された第1の近隣に基づいて、(a)プレバイオティックカクテル、(b)プロバイオティックカクテル、(c)最適化された食事のうちの1つを推奨することを含み、個別化された治療的介入が、以下のうちの少なくとも1つ以上を含む、ことを特徴とする、個別化された治療的介入を推奨すること:
(a)ケースA(一群の有益微生物の経路存在量の減少)については、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事を推奨し、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の増殖を助ける、
(b)ケースB(有害な微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、最適化された食餌を推奨することであって、最適化された食餌は、複数の有益な微生物の増殖を促進し、有害な微生物の増殖を抑制する、ことと
(c)ケースC(有益微生物の集合の経路存在量の減少および有害微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食餌を推奨し、ここで、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食餌は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の増殖を助け、有害微生物の増殖を抑制する。
【請求項2】
複数の有益な代謝経路が、ピルビン酸経路を介したピルビン酸から酪酸への生成、アンモニア酸化経路、およびトリメチルアミンオキシド(TMA)分解のための経路のうちの1つ以上を含み、複数の有害な代謝経路が、アンモニア放出経路、生物起源アミン生成、およびトリメチルアミン生成のうちの1つ以上を含み得るが、これらに限定されない、請求項1に記載の
プロセッサ実装方法。
【請求項3】
GMPおよびFGmapの生成(300)は、以下の構成を含む、請求項1に記載のプロセッサ実装方法:
複数の代謝物、複数の代謝経路、および複数の代謝経路の各々に関連する生物のリストに基づいて、マトリックス代謝物マップ(Mmap)を生成し、ここで、Mmapは、複数の代謝物の各々について生成される(302);
細菌ゲノムデータベース(BGD)を用いて細菌ゲノムマップ(BGM)を生成する工程であって、BGDは、複数の細菌株の網羅的なリストを含み、BGMは、複数の細菌株の複数の名称、複数の細菌株の複数の識別番号、複数の細菌株の複数の遺伝子位置、および複数の細菌株の複数のタンパク質ドメインを含む、複数の細菌株に関連する情報を含む、工程 (304);
MmapおよびBGMに基づいて、複数の代謝産物から各代謝産物について代謝産物経路ドメインマップ(MPDM)を生成し、MPDMは、複数の代謝経路の各々に関連するタンパク質ドメインの網羅的リスト (306)を含む;
予め定義された第1の閾値基準 (308)に基づいて、MPDMおよびBGMを使用して、細菌株およびゲノムのリストにおける複数の代謝経路の存在を特定する;
BGM、MPDM、複数の代謝経路および複数の代謝物を用いてGMPを生成するステップであって、GMPは、細菌ゲノム(細菌株)の集合を複数の行として、各代謝物の形成に対応する複数の代謝経路のリストを複数の列として有する行列である、ステップ (310);および
GMPを使用してFGmapを生成し、ここでFGmapは、複数の細菌属を複数の行として、複数の代謝経路を列として行列である(312)。
【請求項4】
経路存在量行列を生成するための試料処理技術(400)が、以下の工程を含む、請求項1に記載のプロセッサ実装方法:
核酸抽出技術に基づいて、複数の腸サンプルから複数の核酸を抽出する工程;(402)
シーケンサーを使用して、抽出された複数の核酸から複数のヌクレオチド配列を生成する工程;(404)
前記複数のヌクレオチド配列を使用して、各分類階層レベルにおける細菌分類学的存在量行列のセットを得ることであって、前記細菌分類学的存在量行列は、分類アルゴリズムを使用して、予め定義された分類学的レベルに基づいて前記複数のヌクレオチド配列を分類することによって得られる工程;(406)、及び
細菌分類学的存在量行列、GMP、およびFGmapのセットを使用して、経路存在量を生成する工程(408)。
【請求項5】
最適化された食事を推奨する工程(500)が、下記を含む、請求項1に記載のプロセッサ実装方法:
タイムスタンプ1とタイムスタンプ2の間で、分類群セット1と分類群セット2の和集合内の分類群ごとに正規化された(d
k)を計算する(502);
正規化された変化、知識ベースのセットからの複数の有益な微生物、複数の有害な微生物を使用して、分類群セット1および分類群セット2の連合におけるすべての分類群の重要度スコア(b
k)を計算する(504);
分類群セット1および分類群セット2の組合わせに含まれるすべての分類群の重要度スコア(b
k)と、あらかじめ定義された分類群-化合物利用マトリックスとを用いて、個々人に個別化された腸内化合物スコア(gcs
j)を計算すること、ここで、個別化された腸内化合物スコアは、腸内の複数の有益な微生物を増加させる化合物の能力を定量化する(506);
腸内細菌スコア(gfs
j)を、腸内化合物スコアおよび食品成分マトリックスを使用して、食品アイテムのセット中のすべての食品アイテムについて計算し、ここで、腸内食品スコアは、複数の有益な微生物を増加させる食品アイテムの能力を定量化する(508);および
最適化された食事を得るために、最適化技術を使用して腸内食品スコアを最適化することであって、腸内食品スコアは、カロリーパラメータ、炭水化物パラメータ、タンパク質パラメータ、および脂肪パラメータを含む複数の制約パラメータ (510)を条件として最適化されること。
【請求項6】
特定の食品(食品
i)の腸内食品スコアが以下のように表される、請求項5に記載のプロセッサ実装方法:
ここで、
は食品成分マトリックスであり、ここでC
j,iは、食品
i単位あたりの化合物
j の含有量である。
p=リスト食品から食品中に得られた化合物の総数、および
m = 食品の総数、
ここで
Tは分類群-化合物利用行列である、
ここで
q = 細菌分類群の総数;
Iは指標関数である、すなわち、
PU:常在細菌の分類群、
AP:病原性細菌の分類群、
ここで
ここで、
A
2
kは、サンプル T2 におけるtaxa
kの存在量である、
A
1
kは、サンプル T1 におけるtaxa
kの存在量である、
σ
kは、複数の健康な腸内微生物叢サンプルの分類群のtaxa
kの標準偏差である。
【請求項7】
「摂動経路」という用語が、有害経路もしくは有害な代謝産物の生合成もしくは有益な代謝産物の分解の増加、または有益経路もしくは有益な代謝産物の減少もしくは有害な代謝産物の分解を意味し、摂動経路が、パラメトリック手法、ノンパラメトリック手法、機械学習に基づくアルゴリズムのうちの1つを含む統計的手法に基づいて特定される、請求項1 に記載の
プロセッサ実装方法。
【請求項8】
請求項1に記載の
プロセッサ実装方法であって、個別化治療介入が、遺伝子工学的に操作された細菌を投与することをさらに含み、遺伝子工学的に操作された細菌が、(a)1つ以上の有益な代謝産物の産生のための複数の微生物経路、または/および(b)1つ以上の有害な代謝産物の分解/除去のための複数の微生物経路を、腸内微生物の遺伝子構成に遺伝子工学的に操作することを含み、遺伝子工学的に操作された細菌が、以下に共有される方法のうちの1つで投与される、方法:
(a)プロバイオティクスとして遺伝子工学的に操作されたもので、プレバイオティクス、メタバイオティクス、パラバイオティクスのいずれかと単独または組み合わせて使用される、
(b)代謝産物を産生するのに必要な経路の1つ以上を異種発現する遺伝子工学的に操作された生物であって、ここで、遺伝子工学的に操作された生物は、腸内常在菌の1つ以上であり得、ここで、腸内常在菌は、有益な微生物、市販のプロバイオティクス株、または腸内に常駐可能な通性嫌気性菌を含み得るが、これらに限定されない;ここで、遺伝子工学的に操作された生物は、改変細菌とも呼ばれ、ここで、改変細菌は、食品、食品サプリメント、または医薬組成物もしくはプロバイオティクス製剤として投与され得る。
【請求項9】
下記を含む、システム(100):
入出力インターフェース (106);
1つまたは複数のメモリ(102);および
1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(104)であって、該1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(104)に結合された1つまたは複数のメモリ(104)であって、該1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(104)は、該1つまたは複数のメモリ(102)に記憶されたプログラムされた命令を実行するように構成されている、1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(104):
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、一連の入力データを受信するステップであって、一連の入力データは、以下に関連するデータを含む、ステップと
複数の代謝物、複数の代謝経路、複数の分類群、
複数の代謝産物を補充または分解するための栄養素、プロバイオティクス、プレバイオティクス、サプリメントに関する情報、
複数の食品成分、複数の食品項目、健康なコホートの微生物存在量マトリックス、複数の食事最適化前提パラメータ、
ここで、複数の代謝産物は、有益な代謝産物のセットと有害な代謝産物のセットとを含み、有益な代謝産物のセットは個体の腸の健康に有益であり、有害な代謝産物のセットは個体の腸の健康に有害である、
ここで、複数の代謝経路は、(a)有益経路(b)有害経路のいずれかを含む、
ここで、有益経路は、複数の有益な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の分解のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数を含み、そして
ここで、有害経路は、複数の有益な代謝産物の分解のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数を含む;
ここで、複数の有益微生物は有益経路を保有し、複数の有害微生物は有害経路を保有する;
ここで、複数の分類群は、複数の微生物を含み、ここで、複数の微生物は、複数の有益な微生物、複数の有害な微生物を含み、ここで、複数の微生物は、分類学的階層に従って分類され、ここで、分類学的階層は、複数の細菌門のうちの1つまたは複数を含む、複数の細菌綱、複数の細菌目、複数の細菌科、複数の細菌属、複数の細菌種、および複数の細菌株を含み、ここで、複数の微生物は、別個のゲノム位置を有する複数の遺伝子、細菌株のヌクレオチド配列およびタンパク質配列のセット、ならびに
ここで、複数の食事最適化前提条件パラメータは、食品のセットと、食品のセット中に見出される化合物の完全なセットと、食品成分マトリックスを含み、食品成分マトリックスは、セットの食品に属するすべての食品中のセットの化合物に属するすべての化合物の含有量、セットの食品に属する各食品の総炭水化物、タンパク質、脂肪およびカロリー含有量を集計する、食品成分マトリックスと、ヒトの腸内の細菌分類群のリストと、有益な細菌分類群と有害な細菌分類群を識別するための一連の関数と、分類群-化合物利用マトリックス、炭水化物、タンパク質、脂肪、カロリーに関連するユーザー定義の上限パラメーターと下限パラメーターのセット、およびユーザーが選択した食品を備える、
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、入力データ(204)のセットを使用して知識ベースのセットを生成するステップであって、知識ベースのセットは、属機能マップ(FGmap)、ゲノム代謝経路(GMP)マップ、分類群関連参照プロファイル(TAXA_NET)グラフ、TAXA-食品構成要素ネットワーク、食品構成要素ネットワーク、およびProbMapを含み、知識ベースのセットの生成は、以下を含む、ステップと
FGmapおよびGMPマップを生成し、ここで、FGmapは、複数の分類群の1つに属する複数の細菌属の関数と、複数の代謝経路を列とする行列である、ここで、予め定義された第1の指標は、(a)代謝経路の存在及び(b)代謝経路の非存在のうちの1つを示し、GMPは、行としての複数の細菌株及び列としての複数の代謝経路のマトリックスであり、予め定義された第2の指標は、(a)代謝経路の存在及び(b)代謝経路の非存在のうちの1つを示す;
複数の分類群およびFGmapに基づいてTAXA_NETグラフを生成する工程(ここで、TAXA_NETグラフは無向グラフである)、ここで、TAXA_NETグラフの各ノードは、複数の分類群からの分類群に対応し、エッジは、複数のノードからの各分類群がFGmapからの複数の分類群の機能に関連付けられる、分類群の対の間の正の関係を示し、正の関係は、相互主義、共栄主義、通性主義、および協力のうちの1つを含む;
TAXA_NETの各分類群に対する複数の食物構成要素に基づいてTAXA-食物構成要素ネットワークを生成し、ここでTAXA-食物構成要素ネットワークは、代謝または栄養源として分類群によって使用される食物構成要素と関連付けられた各分類群の無向ネットワークである;
TAXA-食品構成要素ネットワークの各食品構成要素の複数の食品項目に基づいて、食品構成要素ネットワークを生成し、ここで、食品構成要素ネットワークは、食品項目に存在する各食品構成要素の無向ネットワークである(204D);および
GMPの転置を生成してProbMapを取得し、ProbMapは、複数の代謝産物および複数の代謝経路からの各代謝産物を含む行と、複数の細菌株、プロバイオティクス、プレバイオティクス、対応する複数の代謝産物の生合成および/または分解が可能な食餌成分を含む列とを有する行列である;
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、2つのタイムスタンプで個人の複数の腸サンプルを受信し、2つのタイムスタンプが、2つのサンプルが収集されたタイムスタンプ1とタイムスタンプ2を含むこと;
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記複数の腸サンプルの分類群存在量行列を生成し、前記分類群存在量行列は、分類群セット1および分類群セット2を含み、前記分類群セット1および前記分類群セット2は、前記タイムスタンプ1および前記タイムスタンプ2を使用して生成されること;
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、分類群存在量行列およびFGmapを使用して、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの各々について経路存在量を生成することであって、経路存在量はサンプル処理技術を用いて生成され、各タイムスタンプについての経路存在量は、対応するタイムスタンプにおける個体の腸内マイクロバイオームにおけるGMPの複数の代謝経路の存在を示す、経路存在量を生成すること;
摂動経路を同定することであって、摂動経路は、個体の腸の健康状態の悪化を示し、摂動経路は、統計的手法を用いて、タイムスタンプ1とタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの経路存在量の比較に基づいて同定され、摂動経路は、以下のいずれかの場合に基づいて同定される:
(a)ケースA:有益経路のセットの経路存在量の減少、ここで、減少は有益な微生物のセットの減少を示す、または
(b)ケースB:有害経路の集合の経路存在量の増加であって、その増加が有害な微生物の集合の増加を示すもの、または
(c)ケースC:有益経路群の経路量が減少し、有害経路群の経路量が増加していることから、有害な微生物群の増加と有益な微生物群の減少が示唆される;
個別化された治療薬および食事療法の初期セットを決定する工程であって、個別化された治療薬および食事療法の初期セットが、以下の少なくとも1つを含み、ProbMapを使用する、個別化された治療法および個別化された食事療法であって、個別化された治療法および食事療法の初期セットは、同定された摂動経路に対応する行である、食事療法、ここで、個別化治療薬は、(a)摂動経路を有する複数の細菌株、または(b)確率の高い代謝産物の分解または/および生合成のための経路を有する複数の細菌株として決定され、確率の高い代謝産物は、ProbMap の摂動経路に対応する代謝産物である;
タイムスタンプ 2 で取得された分類群存在量マトリックス内の分類群セットを識別することであって、ここで、分類群セットは TAXA_SET_P と TAXA_SET_A で構成され、ここで、TAXA_SET_Pは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有益経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第1の値を含み、TAXA_SET_Aは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有害経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第2の値を含む(216);
TAXA_NETグラフから、タイムスタンプ2におけるTAXA_SET_P内の各税素についての第1の近傍のセットを特定するステップであって、第1の近傍のセットは、TAXA_SET_FN_COM、TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_NEW_を含むTAXA_SET_Pの直接の近傍である、ステップと
1個以上のハードウェアプロセッサを介して、個人の腸の健康を改善するための個別化された治療的介入を推奨することであって、治療的介入が、知識ベースのセットおよび個別化された治療薬および食事療法の推奨の初期セットを使用して、特定された第1の近隣に基づいて、(a)プレバイオティックカクテル、(b)プロバイオティックカクテル、(c)最適化された食事のうちの1つを推奨することを含み、個別化された治療的介入が、以下のうちの少なくとも1つ以上を含む、ことを特徴とする、個別化された治療的介入を推奨すること:
(a)ケースA(一群の有益微生物の経路存在量の減少)については、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事を推奨し、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の増殖を助ける、
(b)ケースB(有害な微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、最適化された食餌を推奨することであって、最適化された食餌は、複数の有益な微生物の増殖を促進し、有害な微生物の増殖を抑制する、ことと
(c)ケースC(有益微生物の集合の経路存在量の減少および有害微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食餌を推奨し、ここで、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食餌は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の増殖を助け、有害微生物の増殖を抑制する。
【請求項10】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、前記命令によって、下記を含むGMPおよびFGmapの生成を実施するように構成される、請求項9に記載のシステム:
前記複数の代謝物、前記複数の代謝経路、および前記複数の代謝経路の各々に関連する生物のリストに基づいて、マトリックス代謝物マップ(Mmap)を生成するステップであって、前記Mmapは、前記複数の代謝物の各々について生成される、ステップと、
細菌ゲノムデータベース(BGD)を用いて細菌ゲノムマップ(BGM)を生成するステップであって、BGDは、複数の細菌株の網羅的なリストを含み、BGMは、複数の細菌株の複数の名称、複数の細菌株の複数の識別番号、複数の細菌株の複数の遺伝子位置、および複数の細菌株の複数のタンパク質ドメインを含む、複数の細菌株に関連する情報を含む、ステップと、
MmapおよびBGMに基づいて、複数の代謝産物から各代謝産物について代謝産物経路ドメインマップ(MPDM)を生成すること(MPDMは、複数の代謝経路の各々に関連するタンパク質ドメインの網羅的なリストから構成される);
予め定義された第1の閾値基準に基づいて、MPDMおよびBGMを使用して、細菌株およびゲノムのリストに含まれる複数の代謝経路の存在を特定すること;
BGM、MPDM、複数の代謝経路および複数の代謝物を用いてGMPを生成するステップであって、GMPは、細菌ゲノム(細菌株)のセットを複数の行として、各代謝物の形成に対応する複数の代謝経路のリストを複数の列として有する行列である、ステップと、
GMPを使用してFGmapを生成し、FGmapは、複数の細菌属を複数の行として、複数の代謝経路を列として行列であること。
【請求項11】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、下記を含む前記経路存在量行列を生成するためのサンプル処理技術(400)を実施するように前記命令によって構成される、請求項9に記載のシステム:
核酸抽出技術に基づいて、複数の腸サンプルから複数の核酸を抽出する工程;
シークエンサーを用いて、抽出された複数の核酸から複数のヌクレオチド配列を生成する工程;
前記複数のヌクレオチド配列を使用して、各分類階層レベルにおける細菌分類学的存在量行列のセットを取得するステップであって、前記細菌分類学的存在量行列は、分類アルゴリズムを使用して、予め定義された分類学的レベルに基づいて前記複数のヌクレオチド配列を分類することによって取得される、ステップと、
細菌の分類学的存在量マトリックス、GMP、およびFGmapのセットを使用して、経路の存在量を生成する。
【請求項12】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、下記を含む前記最適化された食事を推奨するプロセスを実施するように前記命令によって構成される、請求項9に記載のシステム:
タイムスタンプ1とタイムスタンプ2の間の、分類群セット1と分類群セット2の和に含まれるすべての分類群について正規化された変化(d
k)を計算する;
知識ベースの集合から、正規化された変化、複数の有益な微生物、複数の有害な微生物を使用して、分類群セット1と分類群セット2の結合におけるすべての分類群の重要度スコア(b
k)を計算する;
分類群セット1および分類群セット2の和に含まれるすべての分類群の重要度スコア(b
k)と、あらかじめ定義された分類群-化合物利用マトリックスとを用いて、個々人に個別化された腸内化合物スコア(gcs
j)を算出する、ここで、個別化された腸内化合物スコアは、腸内の複数の有益な微生物を増加させる化合物の能力を定量化する;
腸内化合物スコアおよび食品成分マトリックスを使用して、食品のセット内のすべての食品について腸内食品スコア(gfs
j)を計算する、ここで、腸内食品スコアは、複数の有益な微生物を増加させる食品アイテムの能力を定量化する;及び
最適化技術を使用して腸内食品スコアを最適化し、最適化された食餌を得るステップであって、腸内食品スコアは、カロリーパラメータ、炭水化物パラメータ、タンパク質パラメータおよび脂肪パラメータを含む複数の制約パラメータを条件として最適化される、ステップ。
【請求項13】
請求項12記載のシステムにおいて、前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、以下に示すように表される特定の食品(食品
i)の腸内食品スコアの計算を実施するように命令によって構成されることを特徴とするシステム:
ここで、
は食品成分マトリックスであり、ここでC
j,iは、食品
i単位あたりの化合物
j の含有量である、
p=リスト食品から食品中に得られた化合物の総数、および
m = 食品の総数、
ここで、
Tは分類群-化合物利用行列である、
ここで
q = 細菌分類群の総数;
Iは指標関数である、すなわち、
PU: 常在細菌分類群のセット、
AP:病原性細菌の分類群、
ここで
ここで、
A
2
kは、サンプル T2 におけるtaxa
kの存在量である、
A
1
kは、サンプル T1 におけるtaxa
kの存在量である、
σ
kは、複数の健康な腸内微生物叢サンプルの分類群のtaxa
kの標準偏差である。
【請求項14】
請求項9に記載のシステムであって、1つまたは複数のハードウェアプロセッサは、個人化された治療的介入を実施するための命令によって構成され、遺伝子工学的に操作された細菌を投与することをさらに含み、該遺伝子工学的に操作された細菌が、(a)1つ以上の有益な代謝産物の産生のための複数の微生物経路、または/および(b)1つ以上の有害な代謝産物の分解/除去のための複数の微生物経路を、腸内微生物の遺伝子構成に遺伝子工学的に操作することを含み、該遺伝子工学的に操作された細菌が、以下に共有される方法のうちの1つで投与される、個別化治療介入を実施するように命令によって構成される、システム:
(a)プロバイオティクスとして遺伝子工学的に操作されたもので、プレバイオティクス、メタバイオティクス、パラバイオティクスのいずれかと単独または組み合わせて使用される、
(b)代謝産物を産生するのに必要な経路の1つ以上を異種発現する遺伝子工学的に操作された生物であって、ここで、遺伝子工学的に操作された生物は、腸内常在菌の1つ以上であり得、ここで、腸内常在菌は、有益な微生物、市販のプロバイオティクス株、または腸内に常駐可能な通性嫌気性菌を含み得るが、これらに限定されない;ここで、遺伝子工学的に操作された生物は、改変細菌とも呼ばれ、ここで、改変細菌は、食品、食品サプリメント、または医薬組成物もしくはプロバイオティクス製剤として投与され得る。
【請求項15】
1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって実行されると、以下のことを引き起こす1つまたは複数の命令を含む、1つまたは複数の非一過性の機械可読情報記憶媒体:
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、一連の入力データを受信するステップであって、一連の入力データは、以下に関連するデータを含む、ステップと、
複数の代謝物、複数の代謝経路、複数の分類群、
複数の代謝産物を補充または分解するための栄養素、プロバイオティクス、プレバイオティクス、サプリメントに関する情報、
複数の食品成分、複数の食品項目、健康なコホートの微生物存在量マトリックス、複数の食事最適化前提パラメータ、
ここで、複数の代謝産物は、有益な代謝産物のセットと有害な代謝産物のセットとを含み、有益な代謝産物のセットは個体の腸の健康に有益であり、有害な代謝産物のセットは個体の腸の健康に有害である、
ここで、複数の代謝経路は、(a)有益経路(b)有害経路のいずれかを含む、
ここで、有益経路は、複数の有益な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の分解のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数を含み、そして
ここで、有害経路は、複数の有益な代謝産物の分解のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数を含む;
ここで、複数の有益微生物は有益経路を保有し、複数の有害微生物は有害経路を保有する;
ここで、複数の分類群は、複数の微生物を含み、ここで、複数の微生物は、複数の有益な微生物、複数の有害な微生物を含み、ここで、複数の微生物は、分類学的階層に従って分類され、ここで、分類学的階層は、複数の細菌門のうちの1つまたは複数を含む、複数の細菌綱、複数の細菌目、複数の細菌科、複数の細菌属、複数の細菌種、および複数の細菌株を含み、ここで、複数の微生物は、別個のゲノム位置を有する複数の遺伝子、細菌株のヌクレオチド配列およびタンパク質配列のセット、ならびに
ここで、複数の食事最適化前提条件パラメータは、食品のセットと、食品のセット中に見出される化合物の完全なセットと、食品成分マトリックスを含み、食品成分マトリックスは、セットの食品に属するすべての食品中のセットの化合物に属するすべての化合物の含有量、セットの食品に属する各食品の総炭水化物、タンパク質、脂肪およびカロリー含有量を集計する、食品成分マトリックスと、ヒトの腸内の細菌分類群のリストと、有益な細菌分類群と有害な細菌分類群を識別するための一連の関数と、分類群-化合物利用マトリックス、炭水化物、タンパク質、脂肪、カロリーに関連するユーザー定義の上限パラメーターと下限パラメーターのセット、およびユーザーが選択した食品を備える、
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、入力データ(204)のセットを使用して知識ベースのセットを生成するステップであって、知識ベースのセットは、属機能マップ(FGmap)、ゲノム代謝経路(GMP)マップ、分類群関連参照プロファイル(TAXA_NET)グラフ、TAXA-食品構成要素ネットワーク、食品構成要素ネットワーク、およびProbMapを含み、知識ベースのセットの生成は、以下を含む、ステップと
FGmapおよびGMPマップを生成し、ここで、FGmapは、複数の分類群の1つに属する複数の細菌属の関数と、複数の代謝経路を列とする行列である、ここで、予め定義された第1の指標は、(a)代謝経路の存在及び(b)代謝経路の非存在のうちの1つを示し、GMPは、行としての複数の細菌株及び列としての複数の代謝経路のマトリックスであり、予め定義された第2の指標は、(a)代謝経路の存在及び(b)代謝経路の非存在のうちの1つを示す;
複数の分類群およびFGmapに基づいてTAXA_NETグラフを生成する工程(ここで、TAXA_NETグラフは無向グラフである)、ここで、TAXA_NETグラフの各ノードは、複数の分類群からの分類群に対応し、エッジは、複数のノードからの各分類群がFGmapからの複数の分類群の機能に関連付けられる、分類群の対の間の正の関係を示し、正の関係は、相互主義、共栄主義、通性主義、および協力のうちの1つを含む;
TAXA_NETの各分類群に対する複数の食物構成要素に基づいてTAXA-食物構成要素ネットワークを生成し、ここでTAXA-食物構成要素ネットワークは、代謝または栄養源として分類群によって使用される食物構成要素と関連付けられた各分類群の無向ネットワークである;
TAXA-食品構成要素ネットワークの各食品構成要素の複数の食品項目に基づいて、食品構成要素ネットワークを生成し、ここで、食品構成要素ネットワークは、食品項目に存在する各食品構成要素の無向ネットワークである;および
GMPの転置を生成してProbMapを取得し、ProbMapは、複数の代謝産物および複数の代謝経路からの各代謝産物を含む行と、複数の細菌株、プロバイオティクス、プレバイオティクス、対応する複数の代謝産物の生合成および/または分解が可能な食餌成分を含む列とを有する行列である;
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、2つのタイムスタンプで個人の複数の腸サンプルを受信し、2つのタイムスタンプが、2つのサンプルが収集されたタイムスタンプ1とタイムスタンプ2を含むこと;
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記複数の腸サンプルの分類群存在量行列を生成し、前記分類群存在量行列は、分類群セット1および分類群セット2を含み、前記分類群セット1および前記分類群セット2は、前記タイムスタンプ1および前記タイムスタンプ2を使用して生成されること;
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、分類群存在量行列およびFGmapを使用して、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの各々について経路存在量を生成することであって、経路存在量はサンプル処理技術を用いて生成され、各タイムスタンプについての経路存在量は、対応するタイムスタンプにおける個体の腸内マイクロバイオームにおけるGMPの複数の代謝経路の存在を示す、経路存在量を生成すること;
摂動経路を同定することであって、摂動経路は、個体の腸の健康状態の悪化を示し、摂動経路は、統計的手法を用いて、タイムスタンプ1とタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの経路存在量の比較に基づいて同定され、摂動経路は、以下のいずれかの場合に基づいて同定される:
(a)ケースA:有益経路のセットの経路存在量の減少、ここで、減少は有益な微生物のセットの減少を示す、または
(b)ケースB:有害経路の集合の経路存在量の増加であって、その増加が有害な微生物の集合の増加を示すもの、または
(c)ケースC:有益経路群の経路量が減少し、有害経路群の経路量が増加していることから、有害な微生物群の増加と有益な微生物群の減少が示唆される;
個別化された治療薬および食事療法の初期セットを決定する工程であって、個別化された治療薬および食事療法の初期セットが、以下の少なくとも1つを含み、ProbMapを使用する、個別化された治療法および個別化された食事療法であって、個別化された治療法および食事療法の初期セットは、同定された摂動経路に対応する行である、食事療法、ここで、個別化治療薬は、(a)摂動経路を有する複数の細菌株、または(b)確率の高い代謝産物の分解または/および生合成のための経路を有する複数の細菌株として決定され、確率の高い代謝産物は、ProbMap の摂動経路に対応する代謝産物である;
タイムスタンプ 2 で取得された分類群存在量マトリックス内の分類群セットを識別することであって、ここで、分類群セットは TAXA_SET_P と TAXA_SET_A で構成され、ここで、TAXA_SET_Pは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有益経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第1の値を含み、TAXA_SET_Aは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有害経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第2の値を含む(216);
TAXA_NETグラフから、タイムスタンプ2におけるTAXA_SET_P内の各税素についての第1の近傍のセットを特定するステップであって、第1の近傍のセットは、TAXA_SET_FN_COM、TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_NEW_を含むTAXA_SET_Pの直接の近傍である、ステップと
1個以上のハードウェアプロセッサを介して、個人の腸の健康を改善するための個別化された治療的介入を推奨することであって、治療的介入が、知識ベースのセットおよび個別化された治療薬および食事療法の推奨の初期セットを使用して、特定された第1の近隣に基づいて、(a)プレバイオティックカクテル、(b)プロバイオティックカクテル、(c)最適化された食事のうちの1つを推奨することを含み、個別化された治療的介入が、以下のうちの少なくとも1つ以上を含む、ことを特徴とする、個別化された治療的介入を推奨すること:
(a)ケースA(一群の有益微生物の経路存在量の減少)については、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事を推奨し、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の増殖を助ける、
(b)ケースB(有害な微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、最適化された食餌を推奨することであって、最適化された食餌は、複数の有益な微生物の増殖を促進し、有害な微生物の増殖を抑制する、ことと
(c)ケースC(有益微生物の集合の経路存在量の減少および有害微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食餌を推奨し、ここで、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食餌は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の増殖を助け、有害微生物の増殖を抑制する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
関連出願との相互参照と優先権
本出願は、2022年2月3日に出願された国際出願第PCT/IN2022/050094号からの優先権を主張するものであり、当該出願は、2021年2月3日に出願されたインド出願第202121004712号からの優先権を主張するものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0209
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0209】
本開示および実施例は例示としてのみ考慮されることが意図されており、開示される実施形態の真の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示される。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
下記を含む、マイクロバイオームの機能に基づいて個別化された治療法および食事療法を設計するための方法(200):
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、一組の入力データを受信するステップ(202)であって、一組の入力データは、以下と関連するデータを含む、
複数の代謝産物、複数の代謝経路、複数の分類群、栄養素に関する情報、プロバイオティクス、プレバイオティクス、複数の代謝産物の補充または分解のためのサプリメント、複数の食品成分、複数の食品アイテム、健康なコホートの微生物存在量マトリックス、複数の食事最適化前提条件パラメータ、
ここで、複数の代謝産物は、有益な代謝産物のセットと有害な代謝産物のセットとを含み、有益な代謝産物のセットは個体の腸の健康に有益であり、有害な代謝産物のセットは個体の腸の健康に有害である、
ここで、複数の代謝経路は、(a)有益経路と(b)有害経路のいずれかを含む、
ここで、有益経路は、複数の有益な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の分解のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数を含み、そして
ここで、有害経路は、複数の有益な代謝産物の分解のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数を含む;
ここで、複数の有益微生物は有益経路を保有し、複数の有害微生物は有害経路を保有する;
ここで、複数の分類群は、複数の微生物を含み、ここで、複数の微生物は、複数の有益な微生物、複数の有害な微生物を含み、ここで、複数の微生物は、分類学的階層に従って分類され、ここで、分類学的階層は、複数の細菌門のうちの1つまたは複数を含む、複数の細菌綱、複数の細菌目、複数の細菌科、複数の細菌属、複数の細菌種、および複数の細菌株を含み、ここで、複数の微生物は、別個のゲノム位置を有する複数の遺伝子、細菌株のヌクレオチド配列およびタンパク質配列のセットを含み、ならびに
ここで、複数の食事最適化前提条件パラメータは、食品のセットと、食品のセット中に見出される化合物の完全なセットと、食品成分マトリックスを含み、食品成分マトリックスは、セットの食品に属するすべての食品中のセットの化合物に属するすべての化合物の含有量、セットの食品に属する各食品の総炭水化物、タンパク質、脂肪およびカロリー含有量を集計する、食品成分マトリックスと、ヒトの腸内の細菌分類群のリストと、有益な細菌分類群と有害な細菌分類群を識別するための一連の関数と、分類群-化合物利用マトリックス、炭水化物、タンパク質、脂肪、カロリーに関連するユーザー定義の上限パラメーターと下限パラメーターのセット、およびユーザーが選択した食品を備える、
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、入力データ(204)のセットを使用して知識ベースのセットを生成するステップであって、知識ベースのセットは、属機能マップ(FGmap)、ゲノム代謝経路(GMP)マップ、分類群関連参照プロファイル(TAXA_NET)グラフ、TAXA-食品構成要素ネットワーク、食品構成要素ネットワーク、およびProbMapを含み、知識ベースのセットの生成は、以下を含む、ステップと
FGmapおよびGMPマップを生成し、ここで、FGmapは、複数の分類群の1つに属する複数の細菌属の関数と、複数の代謝経路を列とする行列である、ここで、予め定義された第1の指標は、(a)代謝経路の存在及び(b)代謝経路の非存在のうちの1つを示し、GMPは、行としての複数の細菌株及び列としての複数の代謝経路のマトリックスであり、予め定義された第2の指標は、(a)代謝経路の存在及び(b)代謝経路の非存在のうちの1つを示す(204A);
複数の分類群およびFGmapに基づいてTAXA_NETグラフを生成する工程(ここで、TAXA_NETグラフは無向グラフである)、ここで、TAXA_NETグラフの各ノードは、複数の分類群からの分類群に対応し、エッジは、複数のノードからの各分類群がFGmapからの複数の分類群の機能に関連付けられる、分類群の対の間の正の関係を示し、正の関係は、相互主義、共栄主義、通性主義、および協力のうちの1つを含む(204B);
TAXA_NETの各分類群に対する複数の食物構成要素に基づいてTAXA-食物構成要素ネットワークを生成し、ここでTAXA-食物構成要素ネットワークは、代謝または栄養源として分類群によって使用される食物構成要素と関連付けられた各分類群の無向ネットワークである(204C);
TAXA-食品構成要素ネットワークの各食品構成要素の複数の食品項目に基づいて、食品構成要素ネットワークを生成し、ここで、食品構成要素ネットワークは、食品項目に存在する各食品構成要素の無向ネットワークである(204D);および
GMPの転置を生成してProbMapを取得し、ProbMapは、複数の代謝産物および複数の代謝経路からの各代謝産物を含む行と、複数の細菌株、プロバイオティクス、プレバイオティクス、対応する複数の代謝産物の生合成および/または分解が可能な食餌成分を含む列とを有する行列である(204E);
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、2つのタイムスタンプで個人の複数の腸サンプルを受信し、2つのタイムスタンプが、2つのサンプルが収集されたタイムスタンプ1とタイムスタンプ2を含む(206)こと;
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記複数の腸サンプルの分類群存在量行列を生成し、前記分類群存在量行列は、分類群セット1および分類群セット2を含み、前記分類群セット1および前記分類群セット2は、前記タイムスタンプ1および前記タイムスタンプ2を使用して生成される(208)こと;
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、分類群存在量行列およびFGmapを使用して、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの各々について経路存在量を生成することであって、経路存在量はサンプル処理技術を用いて生成され、各タイムスタンプについての経路存在量は、対応するタイムスタンプにおける個体の腸内マイクロバイオームにおけるGMPの複数の代謝経路の存在を示す、経路存在量を生成すること(210);
摂動経路を同定すること(212)であって、摂動経路は、個体の腸の健康状態の悪化を示し、摂動経路は、統計的手法を用いて、タイムスタンプ1とタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの経路存在量の比較に基づいて同定され、摂動経路は、以下のいずれかの場合に基づいて同定される:
(a)ケースA:有益経路のセットの経路存在量の減少、ここで、減少は有益な微生物のセットの減少を示す、または
(b)ケースB:有害経路の集合の経路存在量の増加であって、その増加が有害な微生物の集合の増加を示すもの、または
(c)ケースC:有益経路群の経路量が減少し、有害経路群の経路量が増加していることから、有害な微生物群の増加と有益な微生物群の減少が示唆される;
個別化された治療薬および食事療法の初期セットを決定する工程であって、個別化された治療薬および食事療法の初期セットが、以下の少なくとも1つを含み、ProbMapを使用する、個別化された治療法および個別化された食事療法であって、個別化された治療法および食事療法の初期セットは、同定された摂動経路に対応する行である、食事療法、ここで、個別化治療薬は、(a)摂動経路を有する複数の細菌株、または(b)確率の高い代謝産物の分解または/および生合成のための経路を有する複数の細菌株として決定され、確率の高い代謝産物は、ProbMap (214)の摂動経路に対応する代謝産物である;
タイムスタンプ 2 で取得された分類群存在量マトリックス内の分類群セットを識別することであって、ここで、分類群セットは TAXA_SET_P と TAXA_SET_A で構成され、ここで、TAXA_SET_Pは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有益経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第1の値を含み、TAXA_SET_Aは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有害経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第2の値を含む(216);
TAXA_NETグラフから、タイムスタンプ2におけるTAXA_SET_P内の各税素についての第1の近傍のセットを特定するステップであって、第1の近傍のセットは、TAXA_SET_FN_COM、TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_NEW_ (218)を含むTAXA_SET_Pの直接の近傍である、ステップと
1個以上のハードウェアプロセッサを介して、個人(220)の腸の健康を改善するための個別化された治療的介入を推奨することであって、治療的介入が、知識ベースのセットおよび個別化された治療薬および食事療法の推奨の初期セットを使用して、特定された第1の近隣に基づいて、(a)プレバイオティックカクテル、(b)プロバイオティックカクテル、(c)最適化された食事のうちの1つを推奨することを含み、個別化された治療的介入が、以下のうちの少なくとも1つ以上を含む、ことを特徴とする、個別化された治療的介入を推奨すること:
(a)ケースA(一群の有益微生物の経路存在量の減少)については、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事を推奨し、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の増殖を助ける、
(b)ケースB(有害な微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、最適化された食餌を推奨することであって、最適化された食餌は、複数の有益な微生物の増殖を促進し、有害な微生物の増殖を抑制する、ことと
(c)ケースC(有益微生物の集合の経路存在量の減少および有害微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食餌を推奨し、ここで、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食餌は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の増殖を助け、有害微生物の増殖を抑制する。
[2]
複数の有益な代謝経路が、ピルビン酸経路を介したピルビン酸から酪酸への生成、アンモニア酸化経路、およびトリメチルアミンオキシド(TMA)分解のための経路のうちの1つ以上を含み、複数の有害な代謝経路が、アンモニア放出経路、生物起源アミン生成、およびトリメチルアミン生成のうちの1つ以上を含み得るが、これらに限定されない、[1]に記載の方法。
[3]
GMPおよびFGmapの生成(300)は、以下の構成を含む、[1]に記載のプロセッサ実装方法:
複数の代謝物、複数の代謝経路、および複数の代謝経路の各々に関連する生物のリストに基づいて、マトリックス代謝物マップ(Mmap)を生成し、ここで、Mmapは、複数の代謝物の各々について生成される(302);
細菌ゲノムデータベース(BGD)を用いて細菌ゲノムマップ(BGM)を生成する工程であって、BGDは、複数の細菌株の網羅的なリストを含み、BGMは、複数の細菌株の複数の名称、複数の細菌株の複数の識別番号、複数の細菌株の複数の遺伝子位置、および複数の細菌株の複数のタンパク質ドメインを含む、複数の細菌株に関連する情報を含む、工程(304);
MmapおよびBGMに基づいて、複数の代謝産物から各代謝産物について代謝産物経路ドメインマップ(MPDM)を生成し、MPDMは、複数の代謝経路の各々に関連するタンパク質ドメインの網羅的リスト (306)を含む;
予め定義された第1の閾値基準 (308)に基づいて、MPDMおよびBGMを使用して、細菌株およびゲノムのリストにおける複数の代謝経路の存在を特定する;
BGM、MPDM、複数の代謝経路および複数の代謝物を用いてGMPを生成するステップであって、GMPは、細菌ゲノム(細菌株)の集合を複数の行として、各代謝物の形成に対応する複数の代謝経路のリストを複数の列として有する行列である、ステップ (310);および
GMPを使用してFGmapを生成し、ここでFGmapは、複数の細菌属を複数の行として、複数の代謝経路を列として行列である(312)。
[4]
経路存在量行列を生成するための試料処理技術(400)が、以下の工程を含む、[1]に記載のプロセッサ実装方法:
核酸抽出技術に基づいて、複数の腸サンプルから複数の核酸を抽出する工程;(402)
シーケンサーを使用して、抽出された複数の核酸から複数のヌクレオチド配列を生成する工程;(404)
前記複数のヌクレオチド配列を使用して、各分類階層レベルにおける細菌分類学的存在量行列のセットを得ることであって、前記細菌分類学的存在量行列は、分類アルゴリズムを使用して、予め定義された分類学的レベルに基づいて前記複数のヌクレオチド配列を分類することによって得られる工程;(406)、及び
細菌分類学的存在量行列、GMP、およびFGmapのセットを使用して、経路存在量を生成する工程(408)。
[5]
最適化された食事を推奨する工程(500)が、下記を含む、[1]に記載のプロセッサ実装方法:
タイムスタンプ1とタイムスタンプ2の間で、分類群セット1と分類群セット2の和集合内の分類群ごとに正規化された(d
k
)を計算する(502);
正規化された変化、知識ベースのセットからの複数の有益な微生物、複数の有害な微生物を使用して、分類群セット1および分類群セット2の連合におけるすべての分類群の重要度スコア(b
k
)を計算する(504);
分類群セット1および分類群セット2の組合わせに含まれるすべての分類群の重要度スコア(b
k
)と、あらかじめ定義された分類群-化合物利用マトリックスとを用いて、個々人に個別化された腸内化合物スコア(gcs
j
)を計算すること、ここで、個別化された腸内化合物スコアは、腸内の複数の有益な微生物を増加させる化合物の能力を定量化する(506);
腸内細菌スコア(gfs
j
)を、腸内化合物スコアおよび食品成分マトリックスを使用して、食品アイテムのセット中のすべての食品アイテムについて計算し、ここで、腸内食品スコアは、複数の有益な微生物を増加させる食品アイテムの能力を定量化する(508);および
最適化された食事を得るために、最適化技術を使用して腸内食品スコアを最適化することであって、腸内食品スコアは、カロリーパラメータ、炭水化物パラメータ、タンパク質パラメータ、および脂肪パラメータを含む複数の制約パラメータ (510)を条件として最適化されること。
[6]
特定の食品(食品
i
)の腸内食品スコアが以下のように表される、[5]に記載のプロセッサ実装方法:
ここで、
は食品成分マトリックスであり、ここでC
j,i
は、食品
i
単位あたりの化合物
j
の含有量である。
p=リスト食品から食品中に得られた化合物の総数、および
m = 食品の総数、
ここで
Tは分類群-化合物利用行列である、
ここで
q = 細菌分類群の総数;
Iは指標関数である、すなわち、
PU:常在細菌の分類群、
AP:病原性細菌の分類群、
ここで
ここで、
A
2
k
は、サンプル T2 におけるtaxa
k
の存在量である、
A
1
k
は、サンプル T1 におけるtaxa
k
の存在量である、
σ
k
は、複数の健康な腸内微生物叢サンプルの分類群のtaxa
k
の標準偏差である。
[7]
「摂動経路」という用語が、有害経路もしくは有害な代謝産物の生合成もしくは有益な代謝産物の分解の増加、または有益経路もしくは有益な代謝産物の減少もしくは有害な代謝産物の分解を意味し、摂動経路が、パラメトリック手法、ノンパラメトリック手法、機械学習に基づくアルゴリズムのうちの1つを含む統計的手法に基づいて特定される、[1 ]に記載の方法。
[8]
[1]に記載の方法であって、個別化治療介入が、遺伝子工学的に操作された細菌を投与することをさらに含み、遺伝子工学的に操作された細菌が、(a)1つ以上の有益な代謝産物の産生のための複数の微生物経路、または/および(b)1つ以上の有害な代謝産物の分解/除去のための複数の微生物経路を、腸内微生物の遺伝子構成に遺伝子工学的に操作することを含み、遺伝子工学的に操作された細菌が、以下に共有される方法のうちの1つで投与される、方法:
(a)プロバイオティクスとして遺伝子工学的に操作されたもので、プレバイオティクス、メタバイオティクス、パラバイオティクスのいずれかと単独または組み合わせて使用される、
(b)代謝産物を産生するのに必要な経路の1つ以上を異種発現する遺伝子工学的に操作された生物であって、ここで、遺伝子工学的に操作された生物は、腸内常在菌の1つ以上であり得、ここで、腸内常在菌は、有益な微生物、市販のプロバイオティクス株、または腸内に常駐可能な通性嫌気性菌を含み得るが、これらに限定されない;ここで、遺伝子工学的に操作された生物は、改変細菌とも呼ばれ、ここで、改変細菌は、食品、食品サプリメント、または医薬組成物もしくはプロバイオティクス製剤として投与され得る。
[9]
下記を含む、システム(100):
入出力インターフェース (106);
1つまたは複数のメモリ(102);および
1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(104)であって、該1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(104)に結合された1つまたは複数のメモリ(104)であって、該1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(104)は、該1つまたは複数のメモリ(102)に記憶されたプログラムされた命令を実行するように構成されている、1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(104):
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、一連の入力データを受信するステップであって、一連の入力データは、以下に関連するデータを含む、ステップと
複数の代謝物、複数の代謝経路、複数の分類群、
複数の代謝産物を補充または分解するための栄養素、プロバイオティクス、プレバイオティクス、サプリメントに関する情報、
複数の食品成分、複数の食品項目、健康なコホートの微生物存在量マトリックス、複数の食事最適化前提パラメータ、
ここで、複数の代謝産物は、有益な代謝産物のセットと有害な代謝産物のセットとを含み、有益な代謝産物のセットは個体の腸の健康に有益であり、有害な代謝産物のセットは個体の腸の健康に有害である、
ここで、複数の代謝経路は、(a)有益経路(b)有害経路のいずれかを含む、
ここで、有益経路は、複数の有益な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の分解のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数を含み、そして
ここで、有害経路は、複数の有益な代謝産物の分解のための代謝経路のセットおよび複数の有害な代謝産物の生合成のための代謝経路のセットのうちの1つまたは複数を含む;
ここで、複数の有益微生物は有益経路を保有し、複数の有害微生物は有害経路を保有する;
ここで、複数の分類群は、複数の微生物を含み、ここで、複数の微生物は、複数の有益な微生物、複数の有害な微生物を含み、ここで、複数の微生物は、分類学的階層に従って分類され、ここで、分類学的階層は、複数の細菌門のうちの1つまたは複数を含む、複数の細菌綱、複数の細菌目、複数の細菌科、複数の細菌属、複数の細菌種、および複数の細菌株を含み、ここで、複数の微生物は、別個のゲノム位置を有する複数の遺伝子、細菌株のヌクレオチド配列およびタンパク質配列のセット、ならびに
ここで、複数の食事最適化前提条件パラメータは、食品のセットと、食品のセット中に見出される化合物の完全なセットと、食品成分マトリックスを含み、食品成分マトリックスは、セットの食品に属するすべての食品中のセットの化合物に属するすべての化合物の含有量、セットの食品に属する各食品の総炭水化物、タンパク質、脂肪およびカロリー含有量を集計する、食品成分マトリックスと、ヒトの腸内の細菌分類群のリストと、有益な細菌分類群と有害な細菌分類群を識別するための一連の関数と、分類群-化合物利用マトリックス、炭水化物、タンパク質、脂肪、カロリーに関連するユーザー定義の上限パラメーターと下限パラメーターのセット、およびユーザーが選択した食品を備える、
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、入力データ(204)のセットを使用して知識ベースのセットを生成するステップであって、知識ベースのセットは、属機能マップ(FGmap)、ゲノム代謝経路(GMP)マップ、分類群関連参照プロファイル(TAXA_NET)グラフ、TAXA-食品構成要素ネットワーク、食品構成要素ネットワーク、およびProbMapを含み、知識ベースのセットの生成は、以下を含む、ステップと
FGmapおよびGMPマップを生成し、ここで、FGmapは、複数の分類群の1つに属する複数の細菌属の関数と、複数の代謝経路を列とする行列である、ここで、予め定義された第1の指標は、(a)代謝経路の存在及び(b)代謝経路の非存在のうちの1つを示し、GMPは、行としての複数の細菌株及び列としての複数の代謝経路のマトリックスであり、予め定義された第2の指標は、(a)代謝経路の存在及び(b)代謝経路の非存在のうちの1つを示す;
複数の分類群およびFGmapに基づいてTAXA_NETグラフを生成する工程(ここで、TAXA_NETグラフは無向グラフである)、ここで、TAXA_NETグラフの各ノードは、複数の分類群からの分類群に対応し、エッジは、複数のノードからの各分類群がFGmapからの複数の分類群の機能に関連付けられる、分類群の対の間の正の関係を示し、正の関係は、相互主義、共栄主義、通性主義、および協力のうちの1つを含む;
TAXA_NETの各分類群に対する複数の食物構成要素に基づいてTAXA-食物構成要素ネットワークを生成し、ここでTAXA-食物構成要素ネットワークは、代謝または栄養源として分類群によって使用される食物構成要素と関連付けられた各分類群の無向ネットワークである;
TAXA-食品構成要素ネットワークの各食品構成要素の複数の食品項目に基づいて、食品構成要素ネットワークを生成し、ここで、食品構成要素ネットワークは、食品項目に存在する各食品構成要素の無向ネットワークである(204D);および
GMPの転置を生成してProbMapを取得し、ProbMapは、複数の代謝産物および複数の代謝経路からの各代謝産物を含む行と、複数の細菌株、プロバイオティクス、プレバイオティクス、対応する複数の代謝産物の生合成および/または分解が可能な食餌成分を含む列とを有する行列である;
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、2つのタイムスタンプで個人の複数の腸サンプルを受信し、2つのタイムスタンプが、2つのサンプルが収集されたタイムスタンプ1とタイムスタンプ2を含むこと;
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記複数の腸サンプルの分類群存在量行列を生成し、前記分類群存在量行列は、分類群セット1および分類群セット2を含み、前記分類群セット1および前記分類群セット2は、前記タイムスタンプ1および前記タイムスタンプ2を使用して生成されること;
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、分類群存在量行列およびFGmapを使用して、タイムスタンプ1およびタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの各々について経路存在量を生成することであって、経路存在量はサンプル処理技術を用いて生成され、各タイムスタンプについての経路存在量は、対応するタイムスタンプにおける個体の腸内マイクロバイオームにおけるGMPの複数の代謝経路の存在を示す、経路存在量を生成すること;
摂動経路を同定することであって、摂動経路は、個体の腸の健康状態の悪化を示し、摂動経路は、統計的手法を用いて、タイムスタンプ1とタイムスタンプ2で得られた複数の腸サンプルの経路存在量の比較に基づいて同定され、摂動経路は、以下のいずれかの場合に基づいて同定される:
(a)ケースA:有益経路のセットの経路存在量の減少、ここで、減少は有益な微生物のセットの減少を示す、または
(b)ケースB:有害経路の集合の経路存在量の増加であって、その増加が有害な微生物の集合の増加を示すもの、または
(c)ケースC:有益経路群の経路量が減少し、有害経路群の経路量が増加していることから、有害な微生物群の増加と有益な微生物群の減少が示唆される;
個別化された治療薬および食事療法の初期セットを決定する工程であって、個別化された治療薬および食事療法の初期セットが、以下の少なくとも1つを含み、ProbMapを使用する、個別化された治療法および個別化された食事療法であって、個別化された治療法および食事療法の初期セットは、同定された摂動経路に対応する行である、食事療法、ここで、個別化治療薬は、(a)摂動経路を有する複数の細菌株、または(b)確率の高い代謝産物の分解または/および生合成のための経路を有する複数の細菌株として決定され、確率の高い代謝産物は、ProbMap の摂動経路に対応する代謝産物である;
タイムスタンプ 2 で取得された分類群存在量マトリックス内の分類群セットを識別することであって、ここで、分類群セットは TAXA_SET_P と TAXA_SET_A で構成され、ここで、TAXA_SET_Pは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有益経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第1の値を含み、TAXA_SET_Aは、FGmapおよびGMPのうちの1つにおける有害経路のうちの1つまたは複数についての予め定義された第2の値を含む(216);
TAXA_NETグラフから、タイムスタンプ2におけるTAXA_SET_P内の各税素についての第1の近傍のセットを特定するステップであって、第1の近傍のセットは、TAXA_SET_FN_COM、TAXA_SET_INTERSECT、TAXA_SET_NEW_を含むTAXA_SET_Pの直接の近傍である、ステップと
1個以上のハードウェアプロセッサを介して、個人の腸の健康を改善するための個別化された治療的介入を推奨することであって、治療的介入が、知識ベースのセットおよび個別化された治療薬および食事療法の推奨の初期セットを使用して、特定された第1の近隣に基づいて、(a)プレバイオティックカクテル、(b)プロバイオティックカクテル、(c)最適化された食事のうちの1つを推奨することを含み、個別化された治療的介入が、以下のうちの少なくとも1つ以上を含む、ことを特徴とする、個別化された治療的介入を推奨すること:
(a)ケースA(一群の有益微生物の経路存在量の減少)については、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事を推奨し、プレバイオティック・カクテル、プロバイオティック・カクテル、および最適化された食事は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の増殖を助ける、
(b)ケースB(有害な微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、最適化された食餌を推奨することであって、最適化された食餌は、複数の有益な微生物の増殖を促進し、有害な微生物の増殖を抑制する、ことと
(c)ケースC(有益微生物の集合の経路存在量の減少および有害微生物の集合の経路存在量の増加)に対して、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食餌を推奨し、ここで、プレバイオティックカクテル、プロバイオティックカクテルおよび最適化された食餌は、複数の有益微生物を補充し、有益微生物の増殖を助け、有害微生物の増殖を抑制する。
[10]
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、前記命令によって、下記を含むGMPおよびFGmapの生成を実施するように構成される、[9]に記載のシステム:
前記複数の代謝物、前記複数の代謝経路、および前記複数の代謝経路の各々に関連する生物のリストに基づいて、マトリックス代謝物マップ(Mmap)を生成するステップであって、前記Mmapは、前記複数の代謝物の各々について生成される、ステップと、
細菌ゲノムデータベース(BGD)を用いて細菌ゲノムマップ(BGM)を生成するステップであって、BGDは、複数の細菌株の網羅的なリストを含み、BGMは、複数の細菌株の複数の名称、複数の細菌株の複数の識別番号、複数の細菌株の複数の遺伝子位置、および複数の細菌株の複数のタンパク質ドメインを含む、複数の細菌株に関連する情報を含む、ステップと、
MmapおよびBGMに基づいて、複数の代謝産物から各代謝産物について代謝産物経路ドメインマップ(MPDM)を生成すること(MPDMは、複数の代謝経路の各々に関連するタンパク質ドメインの網羅的なリストから構成される);
予め定義された第1の閾値基準に基づいて、MPDMおよびBGMを使用して、細菌株およびゲノムのリストに含まれる複数の代謝経路の存在を特定すること;
BGM、MPDM、複数の代謝経路および複数の代謝物を用いてGMPを生成するステップであって、GMPは、細菌ゲノム(細菌株)のセットを複数の行として、各代謝物の形成に対応する複数の代謝経路のリストを複数の列として有する行列である、ステップと、
GMPを使用してFGmapを生成し、FGmapは、複数の細菌属を複数の行として、複数の代謝経路を列として行列であること。
[11]
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、下記を含む前記経路存在量行列を生成するためのサンプル処理技術(400)を実施するように前記命令によって構成される、[9]に記載のシステム:
核酸抽出技術に基づいて、複数の腸サンプルから複数の核酸を抽出する工程;
シークエンサーを用いて、抽出された複数の核酸から複数のヌクレオチド配列を生成する工程;
前記複数のヌクレオチド配列を使用して、各分類階層レベルにおける細菌分類学的存在量行列のセットを取得するステップであって、前記細菌分類学的存在量行列は、分類アルゴリズムを使用して、予め定義された分類学的レベルに基づいて前記複数のヌクレオチド配列を分類することによって取得される、ステップと、
細菌の分類学的存在量マトリックス、GMP、およびFGmapのセットを使用して、経路の存在量を生成する。
[12]
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、下記を含む前記最適化された食事を推奨するプロセスを実施するように前記命令によって構成される、[9]に記載のシステム:
タイムスタンプ1とタイムスタンプ2の間の、分類群セット1と分類群セット2の和に含まれるすべての分類群について正規化された変化(d
k
)を計算する;
知識ベースの集合から、正規化された変化、複数の有益な微生物、複数の有害な微生物を使用して、分類群セット1と分類群セット2の結合におけるすべての分類群の重要度スコア(b
k
)を計算する;
分類群セット1および分類群セット2の和に含まれるすべての分類群の重要度スコア(b
k
)と、あらかじめ定義された分類群-化合物利用マトリックスとを用いて、個々人に個別化された腸内化合物スコア(gcs
j
)を算出する、ここで、個別化された腸内化合物スコアは、腸内の複数の有益な微生物を増加させる化合物の能力を定量化する;
腸内化合物スコアおよび食品成分マトリックスを使用して、食品のセット内のすべての食品について腸内食品スコア(gfs
j
)を計算する、ここで、腸内食品スコアは、複数の有益な微生物を増加させる食品アイテムの能力を定量化する;及び
最適化技術を使用して腸内食品スコアを最適化し、最適化された食餌を得るステップであって、腸内食品スコアは、カロリーパラメータ、炭水化物パラメータ、タンパク質パラメータおよび脂肪パラメータを含む複数の制約パラメータを条件として最適化される、ステップ。
[13]
[12記載のシステムにおいて、前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、以下に示すように表される特定の食品(食品
i
)の腸内食品スコアの計算を実施するように命令によって構成されることを特徴とするシステム:
ここで、
は食品成分マトリックスであり、ここでC
j,i
は、食品
i
単位あたりの化合物
j
の含有量である、
p=リスト食品から食品中に得られた化合物の総数、および
m = 食品の総数、
ここで、
Tは分類群-化合物利用行列である、
ここで
q = 細菌分類群の総数;
Iは指標関数である、すなわち、
PU: 常在細菌分類群のセット、
AP:病原性細菌の分類群、
ここで
ここで、
A
2
k
は、サンプル T2 におけるtaxa
k
の存在量である、
A
1
k
は、サンプル T1 におけるtaxa
k
の存在量である、
σ
k
は、複数の健康な腸内微生物叢サンプルの分類群のtaxa
k
の標準偏差である。
[14]
[9]に記載のシステムであって、1つまたは複数のハードウェアプロセッサは、個人化された治療的介入を実施するための命令によって構成され、遺伝子工学的に操作された細菌を投与することをさらに含み、該遺伝子工学的に操作された細菌が、(a)1つ以上の有益な代謝産物の産生のための複数の微生物経路、または/および(b)1つ以上の有害な代謝産物の分解/除去のための複数の微生物経路を、腸内微生物の遺伝子構成に遺伝子工学的に操作することを含み、該遺伝子工学的に操作された細菌が、以下に共有される方法のうちの1つで投与される、個別化治療介入を実施するように命令によって構成される、システム:
(a)プロバイオティクスとして遺伝子工学的に操作されたもので、プレバイオティクス、メタバイオティクス、パラバイオティクスのいずれかと単独または組み合わせて使用される、
(b)代謝産物を産生するのに必要な経路の1つ以上を異種発現する遺伝子工学的に操作された生物であって、ここで、遺伝子工学的に操作された生物は、腸内常在菌の1つ以上であり得、ここで、腸内常在菌は、有益な微生物、市販のプロバイオティクス株、または腸内に常駐可能な通性嫌気性菌を含み得るが、これらに限定されない;ここで、遺伝子工学的に操作された生物は、改変細菌とも呼ばれ、ここで、改変細菌は、食品、食品サプリメント、または医薬組成物もしくはプロバイオティクス製剤として投与され得る。
【国際調査報告】