(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】発作性疾患を治療するための組み合わせ療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/472 20060101AFI20240206BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240206BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240206BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240206BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20240206BHJP
A61K 31/4166 20060101ALI20240206BHJP
A61K 31/16 20060101ALI20240206BHJP
A61K 31/395 20060101ALI20240206BHJP
A61K 31/4015 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A61K31/472
A61P25/08
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K45/00
A61K31/19
A61K31/4166
A61K31/16
A61K31/395
A61K31/4015
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547335
(86)(22)【出願日】2022-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 US2022015851
(87)【国際公開番号】W WO2022173853
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】506030826
【氏名又は名称】ゼノン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】XENON PHARMACEUTICALS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン ジェイアール ジェームズ フィリップ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA52
4C084NA05
4C084ZA061
4C084ZA062
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC08
4C086BC30
4C086BC38
4C086BC62
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4C086MA05
4C086NA05
4C086ZA06
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA03
4C206GA01
4C206GA28
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA05
4C206NA05
4C206ZA06
4C206ZC75
(57)【要約】
特定の実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療するための方法及び使用であって、そのヒトに、N-[4-(6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-2,6-ジメチルフェニル]-3,3-ジメチルブタンアミド(化合物A)及び抗けいれん薬(ASM)を、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて投与することを含む方法及び使用に向けられる。本開示はさらに、療法及び化合物Aの投与の様々な改善された方法に向けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療することにおいて使用するための化合物Aであって、前記治療は、前記ヒトに、化合物A及び抗けいれん薬(ASM)を、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて投与することを含み、
化合物Aは、N-[4-(6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-2,6-ジメチルフェニル]-3,3-ジメチルブタンアミドである、使用するための化合物A。
【請求項2】
発作性疾患に罹患しているヒトにおける治療有効性に必要とされる抗けいれん薬(ASM)の量を低減することにおいて使用するための化合物Aであって、前記低減は、前記ヒトに、前記ASMと組み合わせて、前記ASMとともに投与されるときにそのような低減を達成するのに有効な量の化合物Aを投与することを含み、
化合物Aは、N-[4-(6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-2,6-ジメチルフェニル]-3,3-ジメチルブタンアミドである、使用するための化合物A。
【請求項3】
発作性疾患に罹患しているヒトにおける治療有効性に必要とされる化合物Aの量を低減することにおいて使用するための化合物Aであって、前記低減は、前記ヒトに、化合物Aと組み合わせて、化合物Aとともに投与されたときにそのような低減を達成するのに有効な量の抗けいれん薬(ASM)を投与することを含み、
化合物Aは、N-[4-(6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-2,6-ジメチルフェニル]-3,3-ジメチルブタンアミドである、使用するための化合物A。
【請求項4】
前記ヒトにおいてKv7カリウムチャネルの開口を増強することを含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項5】
ヒトにおいてKv7カリウムチャネルの開口を増強することにおいて使用するための化合物Aであって、前記増強は、前記ヒトに、化合物A及び抗けいれん薬(ASM)を、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて投与することを含み、
化合物Aは、N-[4-(6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-2,6-ジメチルフェニル]-3,3-ジメチルブタンアミドであり、
前記ヒトは発作性疾患を有する、使用するための化合物A。
【請求項6】
前記Kv7カリウムチャネルは、Kv7.2、Kv7.3、Kv7.4、又はKv7.5のうちの1つ以上である請求項4又は請求項5に記載の使用するための化合物A。
【請求項7】
Kv7.1よりもKv7.2、Kv7.3、Kv7.4、又はKv7.5のうちの1つ以上の開口を増強するために選択的である請求項6に記載の使用するための化合物A。
【請求項8】
Kv7.2/Kv7.3(KCNQ2/3)カリウムチャネルの開口を含む請求項4又は請求項5に記載の使用するための化合物A。
【請求項9】
前記ASMは、ベンゾジアゼピン、カルバマゼピン、セノバメート、フェルバメート、ガバペンチン、ラコサミド、ラモトリギン、レベチラセタム、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、プレガバリン、ルフィナミド、チアガビン、トピラマート、バルプロ酸、ビガバトリン、ゾニサミド、又はこれらの組み合わせである請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項10】
前記ASMは、バルプロ酸、レベチラセタム、フェニトイン、ラコサミド、又はセノバメートである請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項11】
前記ASMは、前記ヒトにおいてKv7カリウムチャネルの開口を増強しない請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項12】
前記ASMは、前記ヒトにおいて神経細胞の興奮を減少させる請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項13】
前記ASMは、前記ヒトにおいてナトリウムチャネルを遮断することによって神経細胞の興奮を減少させる請求項12に記載の使用するための化合物A。
【請求項14】
前記ASMは、前記ヒトにおいてカルシウムチャネルを遮断することによって神経細胞の興奮を減少させる請求項12に記載の使用するための化合物A。
【請求項15】
前記ASMは、前記ヒトにおいてシナプス小胞糖タンパク質2A(SV2A)に結合することによって神経細胞の興奮を減少させる請求項12に記載の使用するための化合物A。
【請求項16】
前記ASMは、前記ヒトにおいて神経細胞阻害を増加させる請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項17】
前記ASMはグルタミン酸作動薬である請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項18】
前記ASMはGABA作動薬である請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項19】
前記発作性疾患はKv7カリウムチャネル機能不全と関連する請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項20】
前記発作性疾患は焦点起始てんかんである請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項21】
化合物Aは前記ヒトに経口投与される請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項22】
前記ASMは前記ヒトに経口投与される請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項23】
化合物Aは、前記ヒトに1~200mgの用量で投与される請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項24】
化合物Aは、前記ヒトに2~100mgの用量で投与される請求項1から請求項23のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項25】
化合物Aは、前記ヒトに5~50mgの用量で投与される請求項1から請求項24のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項26】
化合物Aは、前記ヒトに5、10、15、20、又は25mgの用量で投与される請求項1から請求項25のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項27】
化合物Aは、前記ヒトに20mgの用量で投与される請求項1から請求項26のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項28】
化合物Aは、前記ヒトに少なくとも10mgの用量で投与される請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項29】
化合物Aは、前記ヒトに少なくとも20mgの用量で投与される請求項28に記載の使用するための化合物A。
【請求項30】
化合物Aは、前記ヒトに少なくとも50mgの用量で投与される請求項28に記載の使用するための化合物A。
【請求項31】
化合物Aは、前記ヒトに1日あたり5~1000mgの用量で投与される請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項32】
化合物Aは、前記ヒトに1日あたり5~500mgの用量で投与される請求項31に記載の使用するための化合物A。
【請求項33】
化合物Aは、前記ヒトに1日あたり5~250mgの用量で投与される請求項31に記載の使用するための化合物A。
【請求項34】
化合物Aは、前記ヒトに1日あたり20~150mgの用量で投与される請求項31に記載の使用するための化合物A。
【請求項35】
化合物Aは、前記ヒトに1日あたり100mgの用量で投与される請求項31に記載の使用するための化合物A。
【請求項36】
化合物Aは、前記ヒトに0.01~2.0mg/kgの用量で投与される請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項37】
化合物Aは、前記ヒトに0.03~1.0mg/kgの用量で投与される請求項36に記載の使用するための化合物A。
【請求項38】
化合物Aは、前記ヒトに0.05~0.5mg/kgの用量で投与される請求項36に記載の使用するための化合物A。
【請求項39】
化合物Aは、前記ヒトに食事摂取の約30分前から食事摂取の約2時間後の間に経口投与される請求項1から請求項38のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項40】
化合物Aは、前記ヒトに食事中又は食事摂取の後15分以内に経口投与される請求項39に記載の使用するための化合物A。
【請求項41】
前記ASMはバルプロ酸である請求項1から請求項40のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項42】
前記バルプロ酸は、前記ヒトに2~16mg/kgの用量で投与される請求項41に記載の使用するための化合物A。
【請求項43】
前記バルプロ酸は、前記ヒトに4~12mg/kgの用量で投与される請求項41に記載の使用するための化合物A。
【請求項44】
前記ASMはフェニトインである請求項1から請求項40のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項45】
前記フェニトインは、前記ヒトに0.05~5mg/kgの用量で投与される請求項44に記載の使用するための化合物A。
【請求項46】
前記フェニトインは、前記ヒトに0.1~1mg/kgの用量で投与される請求項44に記載の使用するための化合物A。
【請求項47】
前記ASMはラコサミドである請求項1から請求項40のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項48】
前記ラコサミドは、前記ヒトに0.1~5mg/kgの用量で投与される請求項47に記載の使用するための化合物A。
【請求項49】
前記ラコサミドは、前記ヒトに0.5~1mg/kgの用量で投与される請求項47に記載の使用するための化合物A。
【請求項50】
前記ASMはセノバメートである請求項1から請求項40のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項51】
前記セノバメートは、前記ヒトに0.05~5mg/kgの用量で投与される請求項50に記載の使用するための化合物A。
【請求項52】
前記セノバメートは、前記ヒトに0.1~1mg/kgの用量で投与される請求項50に記載の使用するための化合物A。
【請求項53】
化合物A及び前記ASMの組み合わせ投与は、単独の化合物A又は前記ASMの個々の投与と比較して、改善された有効性を提供する請求項1から請求項52のいずれか1項に記載の使用するための化合物A。
【請求項54】
化合物Aと、抗けいれん薬(ASM)と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物であって、
化合物Aは、N-[4-(6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-2,6-ジメチルフェニル]-3,3-ジメチルブタンアミドである、医薬組成物。
【請求項55】
前記ASMは、ベンゾジアゼピン、カルバマゼピン、セノバメート、フェルバメート、ガバペンチン、ラコサミド、ラモトリギン、レベチラセタム、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、プレガバリン、ルフィナミド、チアガビン、トピラマート、バルプロ酸、ビガバトリン、ゾニサミド、又はこれらの組み合わせである請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
前記ASMはバルプロ酸、フェニトイン、レベチラセタム、ラコサミド、又はセノバメートである請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記ASMはバルプロ酸である請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
前記ASMはフェニトインである請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項59】
前記ASMはレベチラセタムである請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項60】
前記ASMはラコサミドである請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項61】
前記ASMはセノバメートである請求項56に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特定の実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療するための方法及び使用であって、そのヒトに、N-[4-(6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-2,6-ジメチルフェニル]-3,3-ジメチルブタンアミド(化合物A)及び抗けいれん薬(ASM)を、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて投与することを含む方法及び使用に向けられる。本開示はさらに、療法及び化合物Aの投与の様々な改善された方法に向けられる。
【背景技術】
【0002】
てんかんは、全世界の推定罹患率が人口の0.7%(すなわち、約5,000万人)とされる一般的な神経障害である(Hirtz,D.ら、Neurology(2007)、68:326-337を参照)。てんかんは、発作につながる脳の異常な電気活性を特徴とする。疫学的な目的で、その定義は、あらゆるタイプの複数の非誘発性発作を必要とする。
【0003】
てんかんを抱える患者は、主にその疾患の病因に起因して、一般集団と比べて上昇した死亡リスクを有する。しかしながら、制御できないてんかんを抱える患者においては、最大の発作関連の死亡リスクは、てんかんにおける予期せぬ突然死(SUDEP)に起因する(Hitiris,N.ら、Epilepsy and Behavior(2007)、10:363-376を参照)。治験的な抗けいれん(抗発作、抗てんかん)薬(ASM)の臨床試験に参加する患者は、一般に10年を超えててんかんを抱えており、複数のASM療法において不首尾である。
【0004】
てんかんのほとんどの形態の病態生理学はあまりよく理解されていないままであるが、てんかん発作は、一群の神経細胞の過剰に同期した持続性の発火から生じるということが知られている。神経細胞の興奮性の持続的な増大は、すべてのてんかん症候群に共通する。てんかんを治療する上での治療戦略は、種々の機構経路を通して神経細胞の興奮性を低下させることを伴う。異なる作用機序を標的指向化することにより治療スペクトルを拡大するために、及びリスク/有益性プロファイルを向上させるために、過去20年にわたって、いくつかの新しいASMが開発され、販売された。現在利用可能なASMは、シナプス小胞糖タンパク質の阻害、阻害性のGABA作動性神経伝達の強化、グルタミン酸介在性の興奮性神経伝達の低下、又は電位依存性のナトリウムチャネル若しくはカルシウムチャネルの阻害によって作用すると考えられる。これにもかかわらず、30%以下の患者は、従来の治療で効果がないままであり、制御されない発作を抱え続けている(Brown,D.A.ら、Nature(1980)、283:673-676、及びElger,C.E.ら、Epilepsy Behav.(2008)、12:501-539を参照)。難治性の患者における生活の質は低く、患者は自動車の運転ができず、患者は独立して働くこと又は生活することが困難である。加えて、多くの患者は、自身の発作性疾患の続発症として行動障害、神経障害、及び/又は知的障害を抱える。カリウム依存性チャネルが神経細胞の興奮性の制御において主要な役割を有するという事実にもかかわらず、現在の薬剤は、神経細胞のカリウム依存性チャネルに対してほとんど効果がない。それゆえ、治療に抵抗性を示すてんかんを抱える患者における発作制御に対する重要なまだ満たされていない臨床ニーズに対処するために、新規な作用機序を有する医薬、又は既に販売されているASMを改良する医薬が必要である。
【0005】
電位依存性カリウムチャネルKv7.2及びKv7.3(Kv7.2/Kv7.3)は、神経細胞の興奮性の制御において重要である。Kv7.2/Kv7.3は、初期の特性解析に従って名付けられた神経細胞の「M電流」の基礎をなす。というのも、神経細胞電流は、ムスカリン/コリン作動薬に応答して減少するからである(Brown,D.A.ら、Nature(1980)、283:673-676参照)。M電流は、神経細胞の興奮性亢進に対するブレーキとして作用することが知られている不活性化しない、過分極性の電流である。結果として、例えば遺伝的な機能喪失を通してのKv7.2介在性M電流の減少は、神経細胞の脱分極並びに膜及び神経細胞の興奮性の上昇を引き起こす可能性があり、これは、てんかん発作として顕在化する活動電位バーストにつながる可能性がある。対照的に、Kv7.2介在性M電流の上昇は、細胞膜を過分極させ、これにより神経細胞の興奮性を低下させ、活動電位バーストの開始及び伝播、並びにその結果生じる発作を防止することができる。神経細胞においてKv7.2/Kv7.3チャネルの開いた状態を増強することは、過分極した安静状態に有利であり、これは急速な活動電位スパイク(すなわち、バースト発火)を低下させる。このような増強は、易興奮性の、特に過興奮性の、神経細胞に対する安定化効果を提供することができ、それゆえ所定の発作性疾患を治療することにおいて有用である可能性がある。この増強は、Kv7.2/Kv7.3開口薬として知られるレチガビン(エゾガビン)を用いたてんかんを抱える成人における部分初発発作等の発作性疾患の治療について、効果的であることが臨床的に証明されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hirtz,D.ら、Neurology(2007)、68:326-337
【非特許文献2】Hitiris,N.ら、Epilepsy and Behavior(2007)、10:363-376
【非特許文献3】Brown,D.A.ら、Nature(1980)、283:673-676
【非特許文献4】Elger,C.E.ら、Epilepsy Behav.(2008)、12:501-539
【非特許文献5】Kupferberg,H.、Epilepsia(1989)、30(Suppl.1):S51-S56
【非特許文献6】2014年12月5~9日の68th Annual Meeting of the American Epilepsy Society(AES)、シアトル、ワシントン州、米国で提示されたPrescott,J.S.及びEvans,C.A.、「Pigmentary abnormalities(discoloration) associated with ezogabine/retigabine treatment:nonclinical aspects」、ポスター2.324
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この分野で、特に以下に定義される化合物A及び発作性疾患を治療することにおけるその使用に関して著しい進展がなされているが、発作性疾患を治療するためのさらなる選択肢を患者に提供するという実質的なニーズが依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、小分子N-[4-(6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-2,6-ジメチルフェニル]-3,3-ジメチルブタンアミド(本明細書では「化合物A」と呼ぶ)の特定の方法及び使用を記載する。
【0009】
1つの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに化合物A及びASMを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて投与する工程を含む方法に向けられる。同様に、いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおける発作性疾患の治療における、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量の化合物A及びASMの使用に向けられる。
【0010】
別の実施形態では、本開示は、発作性疾患に罹患しているヒトにおける治療有効性に必要とされるASMの量を低減する方法であって、そのヒトに、ASMと組み合わせて、ASMとともに投与されるときにそのような低減を達成するのに有効な量の化合物Aを投与する工程を含む方法に向けられる。同様に、いくつかの実施形態では、本開示は、発作性疾患に罹患しているヒトにおける治療有効性に必要とされるASMの量を低減することにおける化合物Aの使用であって、例えば、この低減は、そのヒトに、ASMとともに投与されるときにそのような低減を達成するのに有効な量の化合物AをASMと組み合わせて投与することによる使用に向けられる。これらの実施形態の特定の例では、ASMは、バルプロ酸、レベチラセタム、フェニトイン、ラコサミド、セノバメート(cenobamate)、又はこれらの組み合わせ、特にバルプロ酸である。
【0011】
1つの実施形態では、本開示は、発作性疾患に罹患しているヒトにおける治療有効性に必要とされる化合物Aの量を低減する方法であって、そのヒトに、化合物Aと組み合わせて、化合物Aとともに投与されるときにそのような低減を達成するのに有効な量のASMを投与する工程を含む方法に向けられる。同様に、いくつかの実施形態では、本開示は、発作性疾患に罹患しているヒトにおける治療有効性に必要とされる化合物Aの量を低減することにおけるASMの使用であって、例えばこの低減は、そのヒトに、化合物Aとともに投与されるときにそのような低減を達成するのに有効な量のASMを化合物Aと組み合わせて投与することによる使用に向けられる。これらの実施形態の特定の例では、ASMは、バルプロ酸、レベチラセタム、フェニトイン、ラコサミド、セノバメート、又はこれらの組み合わせ、特にフェニトインである。
【0012】
いくつかの態様では、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する、治療有効性に必要とされるASMの量を低減する、治療有効性に必要とされる化合物Aの量を低減する、又は発作性疾患有効に治療しながらヒトにおいて投与された量の化合物Aの血漿若しくは脳への吸収を低減する、本明細書に記載される方法及び使用は、ヒトにおいてKv7カリウムチャネルの開口を増強することを含む。
【0013】
1つの実施形態では、本開示は、ヒトにおいてKv7カリウムチャネルの開口を増強する方法であって、そのヒトに化合物A及びASMを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて投与する工程を含み、例えば、上記ヒトは発作性疾患を有する方法に向けられる。同様に、いくつかの実施形態では、本開示は、ヒトにおいてKv7カリウムチャネルの開口を増強することにおける、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量の化合物A及びASMの使用であって、例えば、そのヒトは発作性疾患を有する使用に向けられる。
【0014】
いくつかの態様では、Kv7カリウムチャネルは、Kv7.2、Kv7.3、Kv7.4、又はKv7.5のうちの1つ以上である。特定の例では、Kv7.2、Kv7.3、Kv7.4、又はKv7.5カリウムチャネルのうちの1つ以上の開口又は開口の増強は、Kv7.1よりも選択的である。他の例では、当該方法は、Kv7.2/Kv7.3(KCNQ2/3)カリウムチャネルの開口又は開口の増強を含む。
【0015】
当該方法及び使用のいくつかの態様では、ASMは、ベンゾジアゼピン、カルバマゼピン、セノバメート、フェルバメート、ガバペンチン、ラコサミド、ラモトリギン、レベチラセタム、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、プレガバリン、ルフィナミド、チアガビン、トピラマート、バルプロ酸、ビガバトリン、ゾニサミド、又はこれらの組み合わせである。特定の態様では、抗けいれん薬は、バルプロ酸、レベチラセタム、フェニトイン、ラコサミド、セノバメート、又はこれらの組み合わせである。特定の例では、抗けいれん薬は、ヒトにおいてKv7カリウムチャネルの開口を増強しない。
【0016】
いくつかの実施形態では、ASMは、ヒトにおいてナトリウムチャネルを遮断することによって神経細胞の興奮を減少させるか、ヒトにおいてカルシウムチャネルを遮断することによって神経細胞の興奮を減少させるか、ヒトにおいてシナプス小胞糖タンパク質2A(SV2A)に結合することによって神経細胞の興奮を減少させるか、又はヒトにおいて神経細胞の阻害を増加させる。
【0017】
いくつかの態様では、ASMはグルタミン酸作動薬である。他の態様では、ASMはGABA作動薬である。
【0018】
いくつかの例では、当該方法によって治療されるか又は当該方法と関連する発作性疾患は、Kv7カリウムチャネル機能不全と関連する。他の例では、発作性疾患は、焦点起始てんかん(焦点性初発てんかん、focal onset epilepsy)である。
【0019】
当該方法及び使用のいくつかの実施形態では、化合物Aはヒトに経口投与される。当該方法及び使用の特定の実施形態では、ASMはヒトに経口投与される。当該方法及び使用のさらなる実施形態では、化合物A及びASMの両方がヒトに経口投与される。
【0020】
当該方法及び使用のいくつかの態様では、化合物Aは、ヒトに対して1~200mgの化合物Aの用量で、ヒトに対して2~100mgの化合物Aの用量で、ヒトに対して5~50mgの化合物Aの用量で、ヒトに対して5、10、15、20、若しくは25mgの化合物Aの用量で、又はヒトに対して20mgの化合物Aの用量で、ASMと組み合わせて、例えば経口で投与される。他の態様では、化合物Aは、ヒトに対して少なくとも10mgの化合物Aの用量で、ヒトに対して少なくとも20mgの化合物Aの用量で、又はヒトに対して少なくとも50mgの化合物Aの用量で、ASMと組み合わせて、例えば経口で投与される。他の態様では、化合物Aは、ヒトに対して1日あたり5~1000mgの化合物Aの用量で、ヒトに対して1日あたり5~500mgの化合物Aの用量で、ヒトに対して1日あたり5~250mgの化合物Aの用量で、ヒトに対して1日あたり20~150mgの化合物Aの用量で、又はヒトに対して1日あたり100mgの化合物Aの用量で、ASMと組み合わせて、例えば経口で投与される。他の例では、化合物Aは、ヒトに対して0.01~2.0mg/kgの化合物Aの用量で、ヒトに対して0.03~1.0mg/kgの化合物Aの用量で、又はヒトに対して0.05~0.5mg/kgの化合物Aの用量で、ASMと組み合わせて、例えば経口で投与される。
【0021】
当該方法及び使用のいくつかの実施形態では、化合物Aは、食事摂取の約30分前から食事摂取の約2時間後の間にヒトに経口投与され、例えば、化合物Aは、食事中又は食事摂取の後15分以内にヒトに経口投与されてもよい。
【0022】
当該方法及び使用の別の実施形態では、ASMはバルプロ酸である。いくつかの態様では、バルプロ酸は、ヒトに対して2~16mg/kgのバルプロ酸の用量で化合物Aと組み合わせて投与され、例えば、バルプロ酸は、ヒトに対して4~12mg/kgの用量で投与されてもよい。
【0023】
当該方法及び使用の別の実施形態では、ASMはフェニトインである。いくつかの態様では、フェニトインは、ヒトに対して0.05~5mg/kgのフェニトインの用量で化合物Aと組み合わせて投与され、例えば、フェニトインは、ヒトに対して0.1~1mg/kgの用量で投与されてもよい。
【0024】
当該方法及び使用の別の実施形態では、ASMはラコサミドである。いくつかの態様では、ラコサミドは、ヒトに対して0.1~5mg/kgのラコサミドの用量で化合物Aと組み合わせて投与され、例えば、ラコサミドは、ヒトに対して0.5~1mg/kgの用量で投与される。
【0025】
当該方法及び使用の別の実施形態では、ASMはセノバメートである。いくつかの態様では、セノバメートは、ヒトに対して0.05~5mg/kgの用量のセノバメートで化合物Aと組み合わせて投与され、例えば、セノバメートは、ヒトに対して0.1~1mg/kgの用量で投与される。
【0026】
当該方法及び使用の特定の実施形態では、化合物A及びASM(例えば、バルプロ酸、フェニトイン、レベチラセタム、ラコサミド、セノバメート、又はこれらの組み合わせ)の組み合わせ投与は、単独の化合物A又はASMの個々の投与と比較して、改善された有効性を提供する(例えば、ヒトにおける発作(てんかん)エピソードの数の減少又は発作エピソードの重症度の低減を増加させる)。特定のこのような実施形態では、この組み合わせ投与は相加効果を提供し、相加効果は、化合物A及びASMの投与の個々の効果の和(合計)を指す。いくつかの実施形態では、上記組み合わせ投与は相乗効果を提供し、相乗効果は、化合物A及びASMを投与することの個々の効果の和より大きい効果を指す。
【0027】
他の実施形態では、本開示は、化合物Aと、抗けいれん薬(ASM)と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物のいくつかの態様では、ASMは、ベンゾジアゼピン、カルバマゼピン、セノバメート、フェルバメート、ガバペンチン、ラコサミド、ラモトリギン、レベチラセタム、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、プレガバリン、ルフィナミド、チアガビン、トピラマート、バルプロ酸、ビガバトリン、ゾニサミド、又はこれらの組み合わせである。
【0028】
化合物Aは、発作性疾患の治療のために現在開発されている小分子であり、カリウムチャネルモジュレーターとしてのその使用は、米国特許第8,293,911号明細書及び米国特許第8,993,593号明細書並びに米国特許出願第16/409,684号及び米国特許出願第16/410,851号に開示されており、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
本開示のこれらの態様及び他の態様は、以下の詳細な説明を参照すると明らかとなる。この目的のために、特定の背景情報及び手順をより詳細に記載する種々の参考文献が本明細書中に示され、それらは、各々、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、CF-1マウス(一群あたりn=7)におけるアッセイの2時間前の1、2、4、8mg/kgの化合物A又はビヒクルのPO投与の結果を示す。上のグラフ:MES試験中に後肢強直性伸筋成分を示すマウスの割合。各バーは平均応答±S.E.M.を示す。下のグラフ:強直性発作から保護されたマウスの百分率。この図及び他のすべての図における単独のアスタリスクは0.01<p<0.05を示す。この図及び他のすべての図の中の列挙される「mpk」はmg/kgである。
【
図2】
図2は、CF-1マウス(用量群あたりn=7、ビヒクル単独についてはn=5)におけるアッセイの0.5時間前の1、2、4、8mg/kgの化合物A又はビヒクルのPO投与の結果を示す。上のグラフ:動物あたりの強直性発作中の後肢強直性伸筋成分の存在又は不存在。下のグラフ:保護されたマウスの百分率。
【
図3】
図3は、マウスMESアッセイにおける化合物Aの薬物動態(PK)及び薬力学(PD)特性を示す。水平エラーバーは、血漿濃度又は脳濃度のS.E.M.を示す。見えない場合は、平均値を示す記号よりもS.E.M.が小さいためである。投与の2時間(hr)後に収集されたデータの各セットを通る実線の曲線は、濃度反応曲線に対する最良のフィッティングである。脳濃度及び血漿濃度に基づくIC
50は、それぞれ275nM及び154nMであった。投与の0.5時間後に測定された有効性は、投与の2時間後に決定されたPK-PDの関係と一致した。
【
図4】
図4は、CF-1マウス(単独投与群:n=15 1mg/kgの化合物A、n=15 100mg/kgのバルプロ酸、n=7 30及び56mg/kgのバルプロ酸;併用投与群:n=15 化合物A+バルプロ酸100mg/kg、n=8 化合物A+バルプロ酸30及び56mg/kg;n=15 ビヒクル)における、アッセイの2時間前の1mg/kgの化合物AのPO投与及びアッセイの0.5時間前の30、56又は100mg/kgのバルプロ酸のIP投与の結果を示す。上のグラフ:動物あたりの強直性発作中の後肢強直性伸筋成分の存在又は不存在。下のグラフ:化合物A及びバルプロ酸の単独投与又は併用投与の比較。4つのアスタリスクは、p<0.0001を示す。
【
図5】
図5は、マウスMESアッセイにおける、1mg/kgの化合物Aを伴う及び伴わないバルプロ酸のPK/PDを示す。実線の曲線は、1mg/kgの化合物Aを伴う及び伴わないバルプロ酸の濃度反応曲線への最良のフィッティングを示す。この用量での化合物A単独の有効性を反映するために、バルプロ酸単独について100%発作及び1mg/kgの化合物Aありの73.3%の最大値で曲線をフィッティングした。化合物Aとの共投与の効果は、バルプロ酸のIC
50を1440μMから608μMに低下させることであった。
【
図6】
図6は、マウスにおけるアッセイの2時間前の1又は1.5mg/kgの化合物AのPO投与及びアッセイの2時間前の120又は150mg/kgのレベチラセタムのIP投与の結果を示す。上のグラフ:動物あたりの強直性発作中の後肢強直性伸筋成分の存在又は不存在。下のグラフ:化合物A及びレベチラセタムの単独投与又は併用投与の比較。
【
図7】
図7は、アッセイの2時間前の0.25、0.75、1、1.5又は2.5mg/kgの化合物AのPO投与及びアッセイの2時間前の2mg/kgのフェニトインのIP投与の結果を示す。単独投与:化合物A、用量あたりn=8、フェニトイン2mg/kg、n=24;併用投与:一群あたりn=8、n=24 ビヒクル。上のグラフ:動物あたりの強直性発作中の後肢強直性伸筋成分の存在又は不存在。下のグラフ:化合物A及びフェニトインの単独投与又は併用投与の比較。2つのアスタリスクは0.001<p<0.01を示す。
【
図8】
図8は、マウスMESアッセイにおける2mg/kgのフェニトインを伴う及び伴わない化合物AのPK/PDを示す。実線の曲線は、2mg/kgのフェニトインを伴う及び伴わない化合物Aの濃度反応曲線への最良のフィッティングを示す。2mg/kgでのフェニトイン単独の有効性を反映するために、化合物A単独について94.1%の発作及び2mg/kgのフェニトインありの75%の最大値で曲線をフィッティングした。これらの最大値は水平破線によって示されている。化合物Aと共投与するフェニトインの効果は、化合物AのIC
50を147nMから39.7nMに低下させることである。
【
図9】
図9は、化合物Aの種々の用量に対するマウスの発作の割合を示し、化合物AがマウスAC-MESアッセイにおいて用量依存的有効性を提供することを示す(A、B、及びC)。化合物Aは、CF-1マウス(群:n=8 1mg/kgの化合物A、n=8 3mg/kgの化合物A、n=16 5mg/kgの化合物A、n=7 7.5mg/kgの化合物A、n=17 10mg/kgの化合物A;n=24 ビヒクル)におけるアッセイの0.5時間前に1、3、5、7.5、及び10mg/kgでPO投与された。結果は、任意の所与の用量群における動物の発作の割合として表されている。化合物A処置群における動物の発作の割合は、3つの研究すべてにおいてビヒクル処置群と有意に異なった(それぞれのp値は
図9A~Cに示される)。ヒル・ラングミュア(Hill Langmuir)式に基づく化合物Aの血漿(D)及び脳組織(E)の濃度反応曲線は、有効性が濃度依存的であることを示す。化合物Aの濃度反応曲線分析は、血漿について0.30μMのEC
50及び脳組織について0.47μMのEC
50を示した。最終の血漿試料及び脳試料は、化合物Aの投与の0.5時間後に得られた。D及びEにおける各データ点は、各用量群についての平均濃度レベルでの動物の発作の割合を表す。
【
図10】
図10は、ラコサミドがマウスAC-MESアッセイにおいて用量依存的有効性を提供することを示す(A、B、C、及びD)。ラコサミドは、CF-1マウス(群:n=16 6mg/kgのラコサミド;n=8 8mg/kgのラコサミド;n=16 10mg/kgのラコサミド;n=8 20mg/kgのラコサミド;n=32 ビヒクル)におけるアッセイの2時間前に6、8、10、及び20mg/kgでPO投与された。結果は、任意の所与の用量群(n=8)における動物の発作の割合として表されている。研究2Dでは、20mg/kgのラコサミド処置群における動物の発作の割合は、ビヒクル処置群と有意に異なった(p値は
図10Aに示される)。ヒル・ラングミュア式に基づくラコサミドの血漿(E)及び脳組織(F)の濃度反応曲線は、有効性が濃度依存的であることを示す。ラコサミドの濃度反応曲線分析は、血漿について21.6μMのEC
50及び脳組織について22.2μMのEC
50を示した。最終の血漿試料及び脳試料は、ラコサミドの投与の2時間後に得られた。E及びFにおける各データ点は、各用量群(n=8)についての平均濃度レベルでの動物の発作の割合を表す。
【
図11】
図11は、マウスAC-MESアッセイにおける化合物A及びラコサミドの組み合わせからの結果を示す(A)。CF-1マウス(単独投与群:n=8 3mg/kgの化合物A、n=8 10mg/kgのラコサミド;併用投与群:n=8 3mg/kgの化合物A+10mg/kgのラコサミド;n=8 ビヒクル)において、化合物Aは、アッセイの0.5時間前に3mg/kgでPO投与され、ラコサミドは、アッセイの2時間前に10mg/kgでPO投与された。結果は、任意の所与の用量群(n=8)における動物の発作の割合として表されている。ラコサミド処置群と併用群との差は統計的に有意であった(p値は
図11Aに示される)。マウスAC-MESアッセイにおける10mg/kgのラコサミドを伴う及び伴わない化合物Aの薬物動態-薬力学的関係(PK/PD)並びに3mg/kgの化合物Aを伴う及び伴わないラコサミドのPK/PDをB及びCに示す。B及びCにおける各データ点は、単独の動物から得られた個々の濃度及び動物において強直性発作が観察されたかどうかを表す。最終の血漿試料及び脳試料は、化合物AのPO投与の0.5時間後及びラコサミドのPO投与の2時間後に得られた。
【
図12】
図12は、単回経口投与の1時間後のマウス6Hz精神運動アッセイにおける化合物Aの用量反応を示す。発作アッセイの1時間前の化合物AのPO投与は、用量依存的有効性を示し(A)、8mg/kgの用量で有意な効果に達した(
**p=0.0081対ビヒクル)。ラングミュア・ヒル式に基づく用量反応曲線(B)は、n=-3.09のヒル(Hill)係数で6.48mg/kgのED
50及び4.13mg/kgのED
20を予測する。
【
図13】
図13は、単回経口投与の1時間後のマウス6Hz精神運動アッセイにおける化合物Aの濃度反応を示す。化合物Aの単回PO投与の1時間後の個々の動物の血漿(A)及び脳(B)の曝露は、化合物A組織濃度と6Hz発作アッセイにおける有効性との明確な関係を実証する。振戦を経験し、触れると冷たい動物は、最も高い曝露を有し、円でマークされている。ヒル・ラングミュア式に基づく血漿(C)及び脳(D)の濃度反応曲線は、n=-1.95のヒル係数で0.35μMの血漿EC
50、及びn=-2.17のヒル係数で0.54μMの脳EC
50を予測する。
【
図14】
図14は、投与の1時間後の6Hz精神運動発作アッセイにおける化合物A及びレベチラセタムの単独及び組み合わせの有効性を示す。(A)化合物A(経口投与)及びレベチラセタム(腹腔内投与)単独は、2つの研究のそれぞれにおいて異なるレベルの有効性を示した(研究3Bにおける保護なし、及び研究3Cにおける最大25%の保護)。各研究において、化合物A及びレベチラセタムの組み合わせは、いずれの化合物の単独と比較して、及びビヒクルと比較して、発作からの有意に増加した保護をもたらした(
*p=0.034;
**p<0.01;
***p=0.0002)。(B)両方の研究を組み合わせると、いずれかの化合物単独で最大の有効性はレベチラセタムで達し、14/16の発作であったが、両方の化合物の組み合わせは5/15の動物の発作をもたらした。従って、化合物Aとレベチラセタムとの組み合わせは、66.7%の動物を発作から保護し、これは、ビヒクル(
****p<0.0001)及びいずれかの化合物単独(
***p<0.001)と有意に異なった。
【
図15】
図15は、CD-1マウスにおける投与の1時間後の化合物A及びレベチラセタムの単独及び組み合わせの薬物動態を示す。(A)すべての実験群にわたる化合物A(経口投与)及びレベチラセタム(腹腔内投与)の血漿濃度の比較は、研究3Bと比較して、化合物Aの12倍高い血漿濃度が、研究3Cにおいて投与の1時間後に到達されたことを明らかにする。レベチラセタムの血漿濃度は、2つの研究の間で同等であった。化合物A及びレベチラセタムの組み合わせ(Combo)の投与は、いずれの化合物の曝露も有意には変化させなかった。研究3Cの併用群の1匹の動物は、血漿中に測定可能な濃度のレベチラセタムを有さず、除外された(図示せず)。(B)すべての実験群にわたる化合物A(経口投与)及びレベチラセタム(腹腔内投与)の脳濃度の比較は、研究3Bと比較して、化合物Aの11倍高い脳濃度が、研究3Cにおいて投与の1時間後に到達されたことを明らかにする。レベチラセタムの脳濃度は、2つの研究の間で同等であった。化合物A及びレベチラセタムの組み合わせ(Combo)の投与は、いずれの化合物の曝露も有意には変化させなかった。研究3Cの併用群の1匹の動物は、脳内に測定可能な濃度のレベチラセタムを有さず、除外された(図示せず)。
【
図16】
図16は、併用投与後の化合物A及びレベチラセタムの有効性における薬物動態-薬力学的シフトを示す。LEV:レベチラセタム。化合物A(経口投与)がレベチラセタム(腹腔内投与;白丸)と組み合わせて投与されると、動物の発作の割合は単独で投与された化合物A(黒丸)と比較して減少するが、両群は血漿(A)及び脳(B)において同様の濃度の化合物Aを有する。同様に、併用投与群(白抜きの正方形)では、レベチラセタム単独の投与(黒塗りの正方形)と比較して動物の発作の割合が減少するが、両方の群は、血漿(C)及び脳(D)において同様の濃度のレベチラセタムを有する。
【
図17】
図17は、マウスAC-MESアッセイにおける単回経口投与後の化合物Aの用量及び濃度反応を示す。化合物A及びビヒクル群のデータは、表示された研究から示される。化合物Aは、マウスAC-MESアッセイにおいて用量依存的有効性を示す(A、B、C、及びD)。化合物Aは、CF-1マウス(群:n=8 1mg/kgの化合物A、n=8 2mg/kgの化合物A、n=8 3mg/kgの化合物A、n=16 5mg/kgの化合物A、n=7 7.5mg/kgの化合物A、n=17 10mg/kgの化合物A;n=24 ビヒクル)におけるアッセイの0.5時間前に1、2、3、5、7.5、及び10mg/kgでPO投与された。結果は、任意の所与の用量群における動物の発作の割合として表されている。化合物A処置群における動物の発作の割合は、4つの研究のうち3つにおいてビヒクル処置群とは有意に異なった(それぞれのp値が示されている)。ヒル・ラングミュア式に基づく化合物Aの血漿(E)及び脳組織(F)の濃度反応曲線は、有効性が濃度依存的であったことを示す。化合物Aの濃度反応曲線分析は、血漿について0.296μMのEC
50及び脳組織について0.471μMのEC
50を示した。最終の血漿試料及び脳試料は、化合物Aの投与の0.5時間後に得られた。E及びFにおける各データ点は、各用量群についての平均濃度レベルでの動物の発作の割合を表す。
【
図18】
図18は、マウスAC-MESアッセイにおける単回経口投与後のセノバメートの用量及び濃度反応を示す。セノバメート及びビヒクル群のデータは、表示された研究から示される。セノバメートは、マウスAC-MESアッセイにおいて用量依存的有効性を示す(A、B、及びC)。セノバメートは、CF-1マウス(群:n=15 3mg/kgのセノバメート;n=15 5mg/kgのセノバメート;n=8 7.5mg/kgのセノバメート;n=8 10mg/kgのセノバメート;n=8 30mg/kgのセノバメート;n=24 ビヒクル)におけるアッセイの2時間前に、3、5、7.5、10、及び30mg/kgでPO投与された。結果は、任意の所与の用量群における動物の発作の割合として表されている。セノバメート処置群における動物の発作の割合は、3つの研究のうち2つにおいてビヒクル処置群とは有意に異なった(p値が示されている)。ヒル・ラングミュア式に基づくセノバメートの血漿(D)及び脳組織(E)の濃度反応曲線は、有効性が濃度依存的であることを示す。セノバメートの濃度反応曲線分析は、血漿について70.5μMのEC
50及び脳組織について25.2μMのEC
50を示した。最終の血漿試料及び脳試料は、セノバメートの投与の2時間後に得られた。D及びEにおける各データ点は、各用量群についての平均濃度レベルでの動物の発作の割合を表す。
【
図19】
図19は、マウスAC-MESアッセイにおける組み合わせた化合物A及びセノバメートの抗けいれん効果を示す。マウスAC-MESアッセイにおける化合物A及びセノバメートの組み合わせ(A及びB)。化合物Aは、CF-1マウス(単独投与群:n=8 2mg/kgの化合物A、n=8 5mg/kgのセノバメート;併用投与群:n=8 2mg/kgの化合物A+5mg/kgのセノバメート;n=8 1mg/kgの化合物A+5mg/kgのセノバメート;n=8 0.5mg/kgの化合物A+5mg/kgのセノバメート;n=8 ビヒクル)におけるアッセイの0.5時間前に0.5、1、及び2mg/kgでPO投与され、セノバメートは、アッセイの2時間前に5mg/kgでPO投与された。結果は、任意の所与の用量群における動物の発作の割合として表されている。研究4Fでは、セノバメート処置群と併用群との差は統計的に有意であったが、化合物A処置群と併用群との差は統計的に有意ではなかった。研究4Gでは、ビヒクル群と併用群との差は統計的に有意であった。P値が示されている。血漿濃度及び脳濃度による、セノバメートを伴う及び伴わない化合物Aの薬物動態-薬力学的関係(PK/PD)がC及びDに示されている。C及びDにおける各データ点は、各用量群についての平均濃度レベルでの動物の発作の割合を表す。最終の血漿試料及び脳試料は、化合物AのPO投与の0.5時間後及びセノバメートのPO投与の2時間後に得られた。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示は、とりわけ、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療するための新規かつ改善された方法及び使用であって、経口投与によることを含む、ヒトへ化合物A及び抗けいれん薬(ASM)を組み合わせて投与する工程を含む方法及び使用に関する。
【0032】
以下の開示では、種々の実施形態の十分な理解を提供するために特定の具体的な詳細が示される。しかしながら、当業者は、本明細書に記載される方法及び使用がこれらの詳細なしに実施されてもよいということを理解するであろう。他の例では、実施形態の記載を不必要に曖昧にすることを回避するために、周知の構造は詳細には示されておらず記載もされていない。文脈と矛盾する場合を除いて、本明細書及び添付の特許請求の範囲の全体にわたって、語句「comprise(含む)」及びその派生語、例えば「comprises(含む)」及び「comprising(含む)」は、開放型の、包含的な意味で、つまり「…を含むが、これらに限定されない」として解釈されるべきである。さらに、本明細書に提示される小見出しは、便宜のためだけのものであり、請求項に係る発明の範囲又は意味を解釈しない。
【0033】
本明細書全体にわたって「1つの実施形態」又は「一実施形態」に言及することは、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体にわたって種々の場所で語句「1つの実施形態では」又は「一実施形態では」が現れることは、必ずしも、すべて同じ実施形態を指しているわけではない。さらには、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態においていずれの好適なやり方で組み合わされてもよい。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a(ある、1つの)、「an(ある、1つの)」及び「the(その、上記)」は、文脈と明らかに矛盾する場合を除いて、複数の指示対象を含む。用語「又は」、「若しくは」は、文脈と明らかに矛盾する場合を除いて、一般に、「及び/又は」を含む意味で用いられることにも留意するべきである。
【0034】
1. 定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、否定する特段の記載がない限り、以下の用語及び略語は示された意味を有する。
【0035】
「化合物A」は下記式を有し、N-[4-(6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-2,6-ジメチルフェニル]-3,3-ジメチルブタンアミドの化合物名を有する化合物を指す。
【化1】
化合物Aの調製及びKv7.2/Kv7.3(KCNQ2/3)開口薬としてのその使用は、米国特許第8,293,911号明細書及び米国特許第8,993,593号明細書、並びに米国特許出願第16/409,684号及び米国特許出願第16/410,851号に開示されている。化合物Aは電位依存性カリウムチャネルKv7.2及びKv7.3(Kv7.2/Kv7.3)の開口を強化又は増強する点で、化合物Aは、ほとんどの公知の抗けいれん薬とは異なり、この電位依存性カリウムチャネルKv7.2及びKv7.3(Kv7.2/Kv7.3)の開口の強化又は増強は、神経細胞の興奮性を制御する上で重要である。化合物Aは、本明細書に記載される方法及び使用において使用される。本開示において言及される化合物A又はASMのいずれかへのあらゆる言及は、その薬学的に許容できる塩をも含む(例えば、バルプロ酸は、バルプロ酸ナトリウム又はバルプロ酸半ナトリウム形態であってもよい)ことが理解されるであろう。
【0036】
「組み合わせて投与する」は、本明細書において、第1の投与された治療用化合物が体内で依然として有効である間に、第2の投与される化合物が投与される(例えば、2種の化合物は、患者において同時に有効であり、これは、2種の化合物の相加効果又は相乗効果を含んでもよい)ような、2つ以上の異なる治療用化合物の任意の投与形態を指す。例えば、本明細書に開示される化合物A及び抗けいれん薬は、同じ製剤又は別個の製剤のいずれかで、同時に又は連続的に投与することができる。特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物A及び抗けいれん薬は、互いの1時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、又は1週間以内に投与することができる。従って、そのような治療を受ける個体は、異なる治療用化合物の併用効果から利益を得ることができる。
【0037】
本明細書で使用される「神経細胞の興奮の低下」若しくは「低下した神経細胞の興奮」又は「神経細胞の興奮性の低下」若しくは「低下した神経細胞の興奮性」は、患者における発作性疾患の不存在下で観察される正常な生理学的状態に向かってある程度低下されている神経細胞活性のレベルを指す。神経細胞の興奮性を低下させる特定の薬剤としては、神経細胞上で発現されるチャネル及び受容体に作用して、神経細胞の興奮性のレベルを直接低下させる薬剤が挙げられる。逆に、薬剤は、下流効果として低下した神経細胞の興奮性をもたらす細胞事象のカスケードを開始することによって、神経細胞の興奮性のレベルを低下させるように間接的に作用してもよい。神経細胞の興奮性を低下させて、神経細胞の活性の生理学的レベルを回復させる特定の抗けいれん薬が本明細書に記載される。
【0038】
本明細書で使用される「神経細胞阻害の増加」又は「増加した神経細胞阻害」は、患者における発作性疾患の不存在下で観察される正常な生理学的状態に向かってある程度高められている神経細胞阻害のレベルを指す。神経阻害を増加させて神経細胞の活性の生理学的レベルを回復させる、GABA作動薬等の特定の抗けいれん薬が本明細書に記載される。
【0039】
「発作性疾患」は、部分初発(焦点性)発作、光過敏性てんかん(光過敏性発作)、自己誘発失神、難治性てんかん、アンジェルマン症候群、良性のローランドてんかん、CDKL5障害、小児欠神てんかん及び若年性欠神てんかん、ドラベ(Dravet)症候群、前頭葉てんかん、Glut1欠損症、視床下部過誤腫、点頭てんかん/ウエスト(West)症候群、若年性ミオクロニーてんかん、ランドウ・クレフナー(Landau-Kleffner)症候群、レノックス・ガストー(Lennox-Gastaut)症候群(LGS)、ミオクロニー欠神てんかん、大田原症候群、パナエトポラス(Panayiotopoulos)症候群、PCDH19てんかん、進行性ミオクローヌスてんかん、ラスムッセン(Rasmussen)症候群、環状20番染色体症候群、反射てんかん、側頭葉てんかん、ラフォラ(Lafora)進行性ミオクローヌスてんかん、神経皮膚症候群、結節性硬化症、早期乳児てんかん性脳症、早期発症型てんかん性脳症、全般てんかん熱性けいれんプラス、レット(Rett)症候群、多発性硬化症、アルツハイマー病、自閉症、運動失調症、筋緊張低下及び発作性ジスキネジア等の発作及び発作と関連する障害を指す。特定の実施形態では、用語「発作性疾患」は、部分初発(焦点性)てんかんとしても知られる焦点性初発てんかんを指す。
【0040】
本明細書で使用する場合の「治療有効量」は、ヒト対象において、記載された疾患、障害又は状態を治療するため、又はその疾患、障害若しくは状態若しくはその疾患、障害若しくは状態の根底にある1つ以上の機構に対する所望の記載された効果を得るために十分な化合物Aの量、ASMの量、又は化合物Aの量及びASMの量の両方を指す。特定の実施形態では、発作性疾患の治療のために化合物AがASMと組み合わせて投与される場合、治療有効量は、ヒトへの組み合わせ投与によって、そのヒトにおいて発作性疾患を治療若しくは改善するか、又は発作性疾患を抱えるそのヒトにおいて検出可能な治療効果若しくは予防効果をもたらす化合物Aの量及びASMの量の両方を指す。この効果は、例えば発作エピソードの数の減少又は発作エピソードの重症度の低減によって検出することができる。
【0041】
本明細書で使用する場合の「治療」は、ヒト対象において、示された疾患、障害若しくは状態若しくは根底にある機構のうちの1つ以上の進行を緩慢化すること又は停止することを含めてその示された疾患、障害若しくは状態若しくはその疾患、障害若しくは状態の1つ以上の根底にある機構を改善予防する、化合物AとASMとの組み合わせ投与に伴う治療的応用を指す。特定の実施形態では、発作性疾患の治療のために化合物A及びASMが組み合わせて投与される場合、治療は、発作性疾患の進行を緩慢化若しくは停止するための治療的応用、及び/又は発作性疾患の逆転を指す。発作性疾患の逆転は、逆転させる方法を用いると、発作性疾患の進行が停止するだけでなく、発作性疾患の不存在下で観察されるはずの正常な状態に向かっていくらかでも細胞挙動が動かされるという点で、発作性疾患を緩慢化又は停止する治療的応用とは異なる。いくつかの実施形態では、化合物AとASMとの組み合わせ投与を含む発作性疾患の治療は、1種以上のKv7カリウムチャネル(例えば、Kv7.2、Kv7.3、Kv7.4、及び/又はKv7.5、特にKv7.2及び/又はKv7.3、任意選択でKv7.1に優先する)の細胞活性が、発作性疾患の不存在下でなら観察されるはずの正常レベルへと変化することを伴う。
【0042】
「摂食条件下」は、有効量(例えば、上記治療上有効な用量範囲内)の化合物Aの経口投与の約4時間前から化合物Aの投与の約4時間後までの期間の間の食物を摂取した状態を指す。食物は、胃の中で迅速に溶解吸収されない程度に十分なかさ及び脂肪含量を有していれば、固形であってもよいし、液体であってもよいし、又は固形と液体の食物の混合物であってもよい。いくつかの例では、この食物は、朝食、昼食、夕食等の食事であるか、あるいは、ベビーフード(例えば、配合物又は母乳)である。治療上有効量の化合物Aは、例えば食事摂取の約30分前から食事摂取の約2時間後の間に対象に経口投与されてもよく、最も有利には、化合物Aの投薬単位は、食事中又は食事摂取の後15分以内に経口投与される。
【0043】
「絶食条件下」は、治療上有効量の化合物Aの経口投与の少なくとも4時間前から化合物Aの投与の約4時間後までの期間の間の食物を摂取していない状態を指す。
【0044】
2. 実施形態
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに化合物A及び抗けいれん薬(ASM)を、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。同様に、いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおける発作性疾患の治療における、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量の化合物A及びASMの使用に向けられる。組み合わせ投与は、化合物AをASMの投与と同時に、その前に、又はその後に投与することができるということを企図する。特定の例では、化合物A及びASMの組み合わせ投与を含む治療が施される発作性疾患は、焦点起始てんかんである。
【0045】
さらなる実施形態では、発作性疾患が本発明で治療される場合、発作性疾患は、焦点起始てんかん、光過敏性てんかん、自己誘発失神、難治性てんかん、アンジェルマン症候群、良性のローランドてんかん、CDKL5障害、小児欠神てんかん及び若年性欠神てんかん、ドラベ症候群、前頭葉てんかん、Glut1欠損症、視床下部過誤腫、点頭てんかん/ウエスト(West)症候群、若年性ミオクロニーてんかん、ランドウ・クレフナー症候群、レノックス・ガストー症候群(LGS)、ミオクロニー欠神てんかん、大田原症候群、パナエトポラス症候群、PCDH19てんかん、進行性ミオクローヌスてんかん、ラスムッセン症候群、環状20番染色体症候群、反射てんかん、側頭葉てんかん、ラフォラ進行性ミオクローヌスてんかん、神経皮膚症候群、結節性硬化症、早期乳児てんかん性脳症、早期発症型てんかん性脳症、全般てんかん熱性けいれんプラス、レット症候群、多発性硬化症、アルツハイマー病、自閉症、運動失調症、筋緊張低下及び発作性ジスキネジアから選択される。特定の実施形態では、発作性疾患は、部分初発(焦点性)てんかんとしても知られる焦点性初発てんかんである。
【0046】
いくつかの実施形態では、本開示は、発作性疾患に罹患しているヒトにおける治療有効性に必要とされるASMの量を低減する方法であって、そのヒトに、ASMとともに投与されるときにそのような低減を達成するのに有効な量の化合物AをASMと組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。同様に、いくつかの実施形態では、本開示は、発作性疾患に罹患しているヒトにおける治療有効性に必要とされるASMの量を低減することにおける化合物Aの使用であって、例えば、この低減は、そのヒトに、ASMとともに投与されるときにそのような低減を達成するのに有効な量の化合物AをASMと組み合わせて投与することによる使用に向けられる。例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、必要とする対象(例えば、ヒト)において発作性疾患を治療する方法であって、化合物A及びASMを組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含み、投与されるASMの量は、化合物Aを投与することがない場合に同じ又は同様の発作エピソードの数の減少又は発作エピソードの重症度の低減を達成するために必要になるASMの量よりも少ない方法を提供する。いくつかの実施形態では、ASMは、バルプロ酸、レベチラセタム、フェニトイン、ラコサミド、セノバメート又はこれらの組み合わせ、特にバルプロ酸である。
【0047】
いくつかの実施形態では、本開示は、発作性疾患に罹患しているヒトにおける治療有効性に必要とされる化合物Aの量を低減する方法であって、そのヒトに、化合物Aとともに投与されたときにそのような低減を達成するのに有効な量のASMを化合物Aと組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。同様に、いくつかの実施形態では、本開示は、発作性疾患に罹患しているヒトにおける治療有効性に必要とされる化合物Aの量を低減することにおけるASMの使用であって、例えばこの低減は、そのヒトに、化合物Aとともに投与されるときにそのような低減を達成するのに有効な量のASMを化合物Aと組み合わせて投与することによる使用に向けられる。例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、必要とする対象(例えば、ヒト)において発作性疾患を治療する方法であって、化合物A及びASMを組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含み、投与される化合物Aの量は、ASMを投与することがない場合に同じ又は同様の発作エピソードの数の減少又は発作エピソードの重症度の低減を達成するために必要になる化合物Aの量よりも少ない方法を提供する。いくつかの実施形態では、ASMは、バルプロ酸、レベチラセタム、フェニトイン、ラコサミド、セノバメート又はこれらの組み合わせ、特にフェニトインである。
【0048】
いくつかの実施形態では、必要とするヒトにおいて発作を治療する、治療有効性に必要なASMの量を低減する、又は治療有効性に必要な化合物Aの量を低減する本明細書に記載される方法及び使用は、ヒトにおいてKv7カリウムチャネルの開口を増強することを含む。
【0049】
特定の実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいてKv7カリウムチャネル、例えばKv7.2、Kv7.3、Kv7.4、及び/若しくはKv7.5カリウムチャネル、特にKv7.2/Kv7.3(KCNQ2/3)カリウムチャネルを開口するか又はそれらの開口を増強することを含む方法又は使用であって、有効量の化合物AをASMと組み合わせて投与することによる方法又は使用を提供する。いくつかのこのような実施形態では、ヒトは、本明細書に記載されるもの等の発作性疾患を有する。
【0050】
特定の例では、本明細書に記載される方法は、Kv7.1よりもKv7.2、Kv7.3、Kv7.4、若しくはKv7.5のうちの1つ以上等のKv7カリウムチャネルを選択的に開口するか又はそれらの開口を選択的に増強することを含む。いくつかの実施形態では、当該方法又は使用は、Kv7.1よりもKv7.2のために選択的である。他の実施形態では、当該方法又は使用は、Kv7.1よりもKv7.3のために選択的である。なお他の実施形態では、当該方法又は使用は、Kv7.1よりもKv7.4のために選択的である。なおさらなる他の実施形態では、当該方法又は使用は、Kv7.1よりもKv7.5のために選択的である。特定の実施形態では、当該方法又は使用は、Kv7.1よりもKv7.2及びKv7.3のために選択的である。特定の実施形態では、当該方法又は使用は、他のKv7カリウムチャネルよりもKv7.2及びKv7.3のために選択的である。特定の実施形態では、当該方法又は使用は、Kv7.4及びKv7.5よりもKv7.2及びKv7.3のために選択的である。
【0051】
1つの実施形態では、本明細書に記載される方法及び使用、例えば、必要とするヒトにおける発作性疾患の治療方法又は治療における使用は、ある量の化合物A、例えば、約0.01mg/kg~約2.0mg/kgの化合物AをASMと組み合わせて(例えば、経口で)投与することによって達成される。化合物Aのより具体的な代表的な量としては、0.05mg/kg、0.10mg/kg、0.20mg/kg、0.30mg/kg、0.40mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.80mg/kg、0.90mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg及び2.0mg/kg、又は上述の量のうちの2つを端点として使用することによって作り出される任意の範囲の量が挙げられる。いくつかの態様では、上記又は使用方法は、0.03~1.0mg/kgの化合物Aを、開示された量のASMと組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む。いくつかの態様では、当該方法は、0.05~0.5mg/kgの化合物Aを、開示された量のASMと組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法及び使用、例えば、必要とするヒトにおける発作性疾患の治療方法又は治療における使用は、ある量の化合物A、例えば2~200mgの化合物Aを単回用量又は分割用量で、ASMと組み合わせて(例えば、経口で)投与することによって達成される。例えば、当該方法は、単回用量若しくは分割用量で、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約21mg、約22mg、約23mg、約24mg、約25mg、約26mg、約27mg、約29mg、約30mg、約31mg、約32mg、約33mg、約34mg、約35mg、約36mg、約37mg、約38mg、約39mg、約40mg、約41mg、約42mg、約43mg、約44mg、約45mg、約46mg、約47mg、約48mg、約49mg、約50mg、約51mg、約52mg、約53mg、約54mg、約55mg、約56mg、約57mg、約58mg、約59mg、約60mg、約61mg、約62mg、約63mg、約64mg、約65mg、約66mg、約67mg、約68mg、約69mg、約70mg、約71mg、約72mg、約73mg、約74mg、約75mg、約76mg、約77mg、約78mg、約79mg、約80mg、約81mg、約82mg、約83mg、約84mg、約85mg、約86mg、約87mg、約88mg、約89mg、約90mg、約91mg、約92mg、約93mg、約94mg、約95mg、約96mg、約97mg、約98mg、約99mg、約100mg、約101mg、約102mg、約103mg、約104mg、約105mg、約106mg、約107mg、約108mg、約109mg、約110mg、約111mg、約112mg、約113mg、約114mg、約115mg、約116mg、約117mg、約118mg、約119mg、約120mg、約121mg、約122mg、約123mg、約124mg、約125mg、約126mg、約127mg、約129mg、約130mg、約131mg、約132mg、約133mg、約134mg、約135mg、約136mg、約137mg、約138mg、約139mg、約140mg、約141mg、約142mg、約143mg、約144mg、約145mg、約146mg、約147mg、約148mg、約149mg、約150mg、約151mg、約152mg、約153mg、約154mg、約155mg、約156mg、約157mg、約158mg、約159mg、約160mg、約161mg、約162mg、約163mg、約164mg、約165mg、約166mg、約167mg、約168mg、約169mg、約170mg、約171mg、約172mg、約173mg、約174mg、約175mg、約176mg、約177mg、約178mg、約179mg、約180mg、約181mg、約182mg、約183mg、約184mg、約185mg、約186mg、約187mg、約188mg、約189mg、約190mg、約191mg、約192mg、約193mg、約194mg、約195mg、約196mg、約197mg、約198mg、約199mg、若しくは約200mgの化合物Aを(例えば、経口で)投与すること、又は上述の量のうちの2つを端点として使用することによって作り出される任意の範囲の量を(例えば、経口で)投与することを含むことができる。いくつかの態様では、当該方法又は使用は、開示される量のASMと組み合わせた、単回用量又は分割用量での2~100又は5~50mgの化合物Aの経口投与を含む。いくつかの態様では、方法又は使用は、開示される量のASMと組み合わせた、単回用量又は分割用量での5、10、15、20、又は25mgの化合物Aの経口投与を含む。いくつかの態様では、当該方法又は使用は、開示される量のASMと組み合わせた単回用量又は分割用量での20mgの化合物Aの経口投与を含む。
【0053】
いくつかの態様では、本明細書に記載される方法及び使用、例えば、必要とするヒトにおける発作性疾患の治療方法又は治療における使用は、少なくとも10mgの化合物A、例えば、少なくとも20、30、40、50、75、又は100mgの化合物Aを、開示される量のASMと組み合わせて(例えば、経口で)投与することによって達成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法及び使用、例えば、必要とするヒトにおける発作性疾患の治療方法又は治療における使用は、少なくとも50mgの化合物A、例えば少なくとも75、100、125、150、175、又は200mgの化合物Aを、開示される量のASMと組み合わせて(例えば、経口で)投与することによって達成される。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法及び使用、例えば、必要とするヒトにおける発作性疾患の治療方法又は治療における使用は、1日あたりある量の化合物A、例えば、1日あたり5~1000mgの化合物A、例えば、1日あたり5~500mg又は5~250mgの化合物AをASMと組み合わせて(例えば、経口で)投与することによって達成される。例えば、当該方法又は使用は、1日あたり約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、約125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg、約155mg、約160mg、約165mg、約170mg、約175mg、約180mg、約185mg、約190mg、約195mg、約200mg、約205mg、約210mg、約215mg、約220mg、約225mg、約230mg、約235mg、約240mg、約245mg、約250mg、約255mg、約260mg、約265mg、約270mg、約275mg、約280mg、約285mg、約290mg、約295mg、約300mg、約305mg、約310mg、約315mg、約320mg、約325mg、約330mg、約335mg、約340mg、約345mg、約350mg、約355mg、約360mg、約365mg、約370mg、約375mg、約380mg、約385mg、約390mg、約395mg、約400mg、約405mg、約410mg、約415mg、約420mg、約425mg、約430mg、約435mg、約440mg、約445mg、約450mg、約455mg、約460mg、約465mg、約470mg、約475mg、約480mg、約485mg、約490mg、約495mg、約500mg、若しくは約1000mgの化合物Aを(例えば、経口で)投与すること、又は1日あたり、上述の量のうちの2つを端点として使用することによって作り出される範囲の量を(例えば、経口で)投与することを含むことができる。いくつかの態様では、当該方法又は使用は、1日あたり5~250mgの化合物A、例えば1日あたり10、15、20、25、30、35、又は40mg~75、100、125、150、175、又は200mg、例えば1日あたり20~150mgの化合物Aを、開示される量のASMと組み合わせて経口投与することを含む。いくつかの態様では、この経口投与は、1日あたり50、75、100、又は125mg、例えば1日あたり100mgの化合物Aを、開示される量のASMと組み合わせて含む。
【0055】
特定の例では、上記の化合物Aの1日用量は、1日あたり複数回用量として、例えば1日あたり2回、3回、4回、又は5回の用量で(例えば、経口で)投与される。例えば、100mgの1日用量は、1日を通して5回の20mg、4回の25mg、3回の33.3mg、又は2回の50mgの用量で、開示される量のASMと組み合わせて投与されてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、上記の1日用量の化合物Aは、単回用量の化合物Aとして、又は単回用量のASMと組み合わせて単回用量の化合物Aとして(例えば、経口で)投与される。例えば、1日あたり約5、10、15、20、25、又は30mg~約50、65、75、100、125、又は150mgの化合物Aを単回用量として経口投与することができ、これは、単回用量として1日あたり10~25mg、10~30mg、及び10~40mg、例えば、単回用量として1日あたり10~25mgを含む。関連して、これまでの段落で論じた化合物Aの用量のいずれかが単位剤形に含められてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、上記の化合物Aの用量は、週あたり複数回の用量、例えば週あたり2回、3回、4回、5回、10回、15回、又は20回の用量として(例えば、経口で)投与される。例えば、100mgの週用量は、週を通して5回の20mg、4回の25mg、又は2回の50mgの用量で、開示される量のASMと組み合わせて投与されてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法及び使用は、本明細書に開示される毎日の投薬を使用する場合、6~9日以内、例えば約1週間以内に化合物Aの定常状態を達成する。
【0059】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法及び使用、例えば、必要とするヒトにおける発作性疾患の治療方法又は治療における使用は、ある量のASM、例えば約0.01mg/kg~約2.0mg/kgのASMを化合物Aと組み合わせて(例えば、経口で)投与することによって達成される。ASMのより具体的な代表的な量としては、0.05mg/kg、0.10mg/kg、0.20mg/kg、0.30mg/kg、0.40mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.80mg/kg、0.90mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg及び2.0mg/kg、又は上述の量のうちの2つを端点として使用することによって作り出される任意の範囲の量が挙げられる。いくつかの態様では、当該方法又は使用は、0.03~1.0mg/kgのASMを化合物Aと組み合わせて(例えば、経口で)投与することを含む。いくつかの態様では、当該方法は、0.05~0.5mg/kgのASMを化合物Aと組み合わせて(例えば、経口で)投与することを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法及び使用、例えば、必要とするヒトにおける発作性疾患の治療方法又は治療における使用は、ある量のASM、例えば2~200mgのASMを単回用量又は分割用量で、化合物Aと組み合わせて(例えば、経口で)投与することによって達成される。例えば、当該方法は、単回用量若しくは分割用量で、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、約9mg、約10mg、約11mg、約12mg、約13mg、約14mg、約15mg、約16mg、約17mg、約18mg、約19mg、約20mg、約21mg、約22mg、約23mg、約24mg、約25mg、約26mg、約27mg、約29mg、約30mg、約31mg、約32mg、約33mg、約34mg、約35mg、約36mg、約37mg、約38mg、約39mg、約40mg、約41mg、約42mg、約43mg、約44mg、約45mg、約46mg、約47mg、約48mg、約49mg、約50mg、約51mg、約52mg、約53mg、約54mg、約55mg、約56mg、約57mg、約58mg、約59mg、約60mg、約61mg、約62mg、約63mg、約64mg、約65mg、約66mg、約67mg、約68mg、約69mg、約70mg、約71mg、約72mg、約73mg、約74mg、約75mg、約76mg、約77mg、約78mg、約79mg、約80mg、約81mg、約82mg、約83mg、約84mg、約85mg、約86mg、約87mg、約88mg、約89mg、約90mg、約91mg、約92mg、約93mg、約94mg、約95mg、約96mg、約97mg、約98mg、約99mg、約100mg、約101mg、約102mg、約103mg、約104mg、約105mg、約106mg、約107mg、約108mg、約109mg、約110mg、約111mg、約112mg、約113mg、約114mg、約115mg、約116mg、約117mg、約118mg、約119mg、約120mg、約121mg、約122mg、約123mg、約124mg、約125mg、約126mg、約127mg、約129mg、約130mg、約131mg、約132mg、約133mg、約134mg、約135mg、約136mg、約137mg、約138mg、約139mg、約140mg、約141mg、約142mg、約143mg、約144mg、約145mg、約146mg、約147mg、約148mg、約149mg、約150mg、約151mg、約152mg、約153mg、約154mg、約155mg、約156mg、約157mg、約158mg、約159mg、約160mg、約161mg、約162mg、約163mg、約164mg、約165mg、約166mg、約167mg、約168mg、約169mg、約170mg、約171mg、約172mg、約173mg、約174mg、約175mg、約176mg、約177mg、約178mg、約179mg、約180mg、約181mg、約182mg、約183mg、約184mg、約185mg、約186mg、約187mg、約188mg、約189mg、約190mg、約191mg、約192mg、約193mg、約194mg、約195mg、約196mg、約197mg、約198mg、約199mg、若しくは約200mgのASMを(例えば、経口で)投与すること、又は上述の量のうちの2つを端点として使用することによって作り出される任意の範囲の量を(例えば、経口で)投与することを含むことができる。いくつかの態様では、当該方法又は使用は、化合物Aと組み合わせた化合物A、単回用量又は分割用量での2~100又は5~50mgのASMの経口投与を含む。いくつかの態様では、方法又は使用は、化合物Aと組み合わせた、単回用量又は分割用量での5、10、15、20、又は25mgのASMの経口投与を含む。いくつかの態様では、当該方法又は使用は、開示される量の化合物Aと組み合わせた単回用量又は分割用量での20mgのASMの経口投与を含む。
【0061】
いくつかの態様では、本明細書に記載される方法及び使用、例えば、必要とするヒトにおける発作性疾患の治療方法又は治療における使用は、少なくとも10mgのASM、例えば、少なくとも20、30、40、50、75、又は100mgのASMを化合物Aと組み合わせて(例えば、経口で)投与することによって達成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法及び使用、例えば、必要とするヒトにおける発作性疾患の治療方法又は治療における使用は、少なくとも50mgのASM、例えば少なくとも75、100、125、150、175、又は200mgのASMを化合物Aと組み合わせて(例えば、経口で)投与することによって達成される。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法及び使用、例えば、必要とするヒトにおける発作性疾患の治療方法又は治療における使用は、1日あたりある量のASM、例えば、1日あたり5~1000mgのASM、例えば、1日あたり5~500mg又は5~250mgのASMを化合物Aと組み合わせて(例えば、経口で)投与することによって達成される。例えば、当該方法又は使用は、1日あたり約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、約125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg、約155mg、約160mg、約165mg、約170mg、約175mg、約180mg、約185mg、約190mg、約195mg、約200mg、約205mg、約210mg、約215mg、約220mg、約225mg、約230mg、約235mg、約240mg、約245mg、約250mg、約255mg、約260mg、約265mg、約270mg、約275mg、約280mg、約285mg、約290mg、約295mg、約300mg、約305mg、約310mg、約315mg、約320mg、約325mg、約330mg、約335mg、約340mg、約345mg、約350mg、約355mg、約360mg、約365mg、約370mg、約375mg、約380mg、約385mg、約390mg、約395mg、約400mg、約405mg、約410mg、約415mg、約420mg、約425mg、約430mg、約435mg、約440mg、約445mg、約450mg、約455mg、約460mg、約465mg、約470mg、約475mg、約480mg、約485mg、約490mg、約495mg、約500mg、若しくは約1000mgのASMを(例えば、経口で)投与すること、又は1日あたり、上述の量のうちの2つを端点として使用することによって作り出される範囲の量を(例えば、経口で)投与することを含むことができる。いくつかの態様では、当該方法又は使用は、1日あたり5~250mgのASM、例えば1日あたり10、15、20、25、30、35、又は40mg~75、100、125、150、175、又は200mgのASM、例えば1日あたり20~150mgを、化合物Aと組み合わせて経口投与することを含む。いくつかの態様では、この経口投与は、1日あたり50、75、100、又は125mg、例えば1日あたり100mgのASMを、化合物Aと組み合わせて含む。
【0063】
特定の例では、上記のASMの1日用量は、1日あたり複数回用量として、例えば1日あたり2回、3回、4回、又は5回の用量で(例えば、経口で)投与される。例えば、100mgの1日用量は、1日を通して5回の20mg、4回の25mg、3回の33.3mg、又は2回の50mgの用量で、化合物Aと組み合わせて投与されてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、上記の1日用量のASMは、単回用量として、化合物Aと組み合わせて(例えば、経口で)投与される。例えば、1日あたり約5、10、15、20、25、又は30mg~約50、65、75、100、125、又は150mgのASMを単回用量として経口投与することができ、これは、単回用量として1日あたり10~25mg、10~30mg、及び10~40mg、例えば、単独投与として1日あたり10~25mgを化合物Aと組み合わせて含む。関連して、これまでの段落で論じたASMの用量のいずれかが単位剤形に含められてもよい。
【0065】
本明細書に記載される当該方法及び使用のいくつかの実施形態では、化合物Aと組み合わせて投与されるASMは、1種以上のベンゾジアゼピン類(例えば、クロラゼプ酸、クロバザム、クロナゼパム、ジアゼパム、ロラゼパム、ニトラゼパムなど)、カルバマゼピン、セノバメート、フェルバメート、ガバペンチン、ラコサミド、ラモトリギン、レベチラセタム、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、プレガバリン、ルフィナミド、チアガビン、トピラマート、バルプロ酸、ビガバトリン、又はゾニサミドである。いくつかの実施形態では、化合物Aと組み合わせて投与されるASMは、バルプロ酸、レベチラセタム、フェニトイン、ラコサミド、セノバメート又はこれらの組み合わせである。
【0066】
本明細書に記載される当該方法及び使用のいくつかの実施形態では、ASMは、ヒトにおいてKv7カリウムチャネルの開口を増強しないことによって、患者において発作性疾患を治療する(例えば、化合物Aとは異なる機構によって患者において発作性疾患を治療する)。いくつかの実施形態では、ASMは、ヒトにおいてナトリウムチャネルを遮断することによって神経細胞の興奮を減少させる。ナトリウムチャネル遮断薬であることが公知であるASMとしては、例えば、カルバマゼピン、ラコサミド、ラモトリギン、オクスカルバゼピン、フェニトイン、ルフィナミド、トピラマート、及びゾニサミドが挙げられる。いくつかの実施形態では、ナトリウムチャネル遮断薬は、不活性化を促進し、軸索起始部(AIS)及び軸索自体における電気的活性への寄与を低減することによって、神経細胞の活動電位発火及び伝達を阻害する。
【0067】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びカルバマゼピンを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0068】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びラコサミドを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0069】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びラモトリギンを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0070】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びオクスカルバゼピンを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0071】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、A及びフェニトインを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びルフィナミドを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0073】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びトピラマートを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0074】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びゾニサミドを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0075】
本明細書に記載される当該方法及び使用のいくつかの実施形態では、ASMは、ヒトにおいてカルシウムチャネルを遮断することによって神経細胞の興奮を減少させる。カルシウムチャネル遮断薬であることが公知であるASMとしては、例えば、ガバペンチン、フェノバルビタール、プレガバリン、及びゾニサミドが挙げられる。いくつかの実施形態では、カルシウムチャネル遮断薬は、カルシウム依存性プロセスであるシナプス前神経伝達物質放出を低減することによって興奮性伝達を低減する。
【0076】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びガバペンチンを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0077】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びフェノバルビタールを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0078】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びプレガバリンを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0079】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びガバペンチンを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0080】
本明細書に記載される当該方法及び使用のいくつかの実施形態では、ASMは、ヒトにおいてシナプス小胞糖タンパク質2A(SV2A)に結合することによって神経細胞の興奮を減少させる。SV2Aに結合することが公知であるASMとしては、例えば、レベチラセタムが挙げられる。いくつかの実施形態では、SV2A結合剤は、シナプス前神経伝達物質放出を低減することによって興奮性伝達を低減する。
【0081】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びレベチラセタムを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0082】
本明細書に記載される当該方法及び使用のいくつかの実施形態では、ASMは、ヒトにおいて神経細胞阻害を増加させる。神経細胞阻害を増加させることが公知であるASMとしては、例えば、ベンゾジアゼピン(例えば、クロラゼプ酸、クロバザム、クロナゼパム、ジアゼパム、ロラゼパム、ニトラゼパム等)、フェルバメート、フェノバルビタール、チアガビン、トピラマート、バルプロ酸、及びビガバトリンが挙げられる。いくつかの実施形態では、ASMはグルタミン酸作動薬である。いくつかの態様では、グルタミン酸作動薬は、シナプス後膜上のAMPA受容体又はNMDA受容体に対するこの神経伝達物質の効果を低減する。いくつかの実施形態では、グルタミン酸作動薬は、カルバマゼピン、フェルバメート、ラモトリギン、プレガバリン、フェニトイン、プレガバリン、チアガビン、又はトピラマートである。他の実施形態では、ASMはGABA作動薬である。いくつかの態様では、GABA作動薬は、ベンゾジアゼピン(例えば、クロラゼプ酸、クロバザム、クロナゼパム、ジアゼパム、ロラゼパム、ニトラゼパム等)、フェルバメート、フェノバルビタール、チアガビン、トピラマート、バルプロ酸、又はビガバトリンである。いくつかの例では、GABA作動薬は、GABA受容体活性の直接の正のアロステリック調節によってGABA受容体に影響を及ぼしてもよい(例えば、ベンゾジアゼピン)。他の例では、GABA作動薬は、GABAトランスアミナーゼ(例えば、ビガバトリン)又はGABAトランスポーター-1(GAT1、例えば、チアガビン)の阻害を介してGABAのレベルを間接的に増加させることによってGABA受容体に影響を及ぼしてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びベンゾジアゼピン(例えば、クロラゼプ酸、クロバザム、クロナゼパム、ジアゼパム、ロラゼパム、ニトラゼパム等)を、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0084】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びフェルバメートを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0085】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びフェノバルビタールを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0086】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びチアガビンを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0087】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びトピラマートを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0088】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びバルプロ酸を、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0089】
いくつかの実施形態では、本開示は、必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、そのヒトに、化合物A及びビガバトリンを、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて(例えば、経口で)投与する工程を含む方法に向けられる。
【0090】
当該方法及び使用のいくつかの実施形態では、化合物Aと組み合わせて投与されるASMはバルプロ酸である。いくつかの態様では、バルプロ酸は、上の段落で論じられたASMの用量のいずれかで、化合物Aと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、バルプロ酸は、ヒトに、2~16mg/kgの用量で化合物Aと組み合わせて投与され、例えば、バルプロ酸は、ヒトに、4~12mg/kgの用量で投与されてもよい。
【0091】
当該方法及び使用のいくつかの実施形態では、化合物Aと組み合わせて投与されるASMはフェニトインである。いくつかの態様では、フェニトインは、上の段落で論じられたASMの用量のいずれかで、化合物Aと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、フェニトインは、ヒトに、0.05~5mg/kgの用量で化合物Aと組み合わせて投与され、例えば、フェニトインは、ヒトに、0.1~1mg/kgの用量で(例えば、経口で)投与されてもよい。
【0092】
当該方法及び使用のいくつかの実施形態では、化合物Aと組み合わせて投与されるASMはラコサミドである。いくつかの態様では、ラコサミドは、上の段落で論じられたASMの用量のいずれかで、化合物Aと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、ラコサミドは、ヒトに、0.1~5mg/kgの用量で化合物Aと組み合わせて投与され、例えば、ラコサミドは、ヒトに、0.5~1mg/kgの用量で(例えば、経口で)投与される。
【0093】
当該方法及び使用の別の実施形態では、化合物Aと組み合わせて投与されるASMはセノバメートである。いくつかの態様では、セノバメートは、上の段落で論じられたASMの用量のいずれかで、化合物Aと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、セノバメートは、ヒトに、0.05~5mg/kgの用量で化合物Aと組み合わせて投与され、例えば、セノバメートは、ヒトに、0.1~1mg/kgの用量で(例えば、経口で)投与される。
【0094】
当該方法及び使用の特定の実施形態では、化合物A及びASM(例えば、バルプロ酸、フェニトイン、レベチラセタム、ラコサミド、又はセノバメート)の組み合わせ投与は、単独の化合物A又はASMの個々の投与と比較して、改善された有効性を提供する(例えば、ヒトにおける発作エピソードの数の減少又は発作エピソードの重症度の低減を増加させる)。特定のこのような実施形態では、この組み合わせ投与は相加効果を提供し、相加効果は、化合物Aを投与すること及び1種以上のASMを投与することの個々の効果の和を指す。いくつかの実施形態では、上記組み合わせ投与は相乗効果を提供し、相乗効果は、化合物Aを投与すること及び1種以上のASMを投与することの個々の効果の和よりも大きい効果を指す。
【0095】
追加の実施形態では、化合物Aを(例えば、経口で)投与することによって発作性疾患を治療する上記の方法及び使用は、摂食条件下でヒトに化合物Aを経口投与することを含む。いくつかの実施形態では、摂食条件下(すなわち、食物を伴うか又は食物の摂取に時間的に近接する)でのヒトへの化合物Aの経口投与は、絶食条件下(すなわち、食物を伴わないか又は食物の摂取に時間的に近接しない)でのヒトへの化合物Aの経口投与と比較して、化合物Aのバイオアベイラビリティ及び曝露を顕著に増強する。いくつかの実施形態では、摂食条件下でのヒトへの化合物Aの経口投与は、同じ量の化合物Aが絶食条件下でヒトに経口投与される場合と比較して、化合物Aの1つ以上の薬物動態パラメータ(例えば、Cmax、AUCinf、Tmax、t1/2λz等)を増加させる。
【0096】
特定の実施形態では、本明細書に記載される方法及び使用は、化合物A、ASM、又は化合物A及びASMの両方を、場合によって化合物A、ASM、又は化合物A及びASMの両方と、1種以上の薬学的に許容できる担体又は賦形剤とを含む薬学的に許容できる経口組成物の形態で投与する。これらの組成物に含まれる化合物A、ASM、又は化合物A及びASMの両方の量は、本明細書に記載される量のうちの1つ以上に対応してもよい。いくつかの実施形態では、この組成物は単位用量である。
【0097】
化合物A、ASM、又は化合物A及びASMの両方を含む薬学的に許容できる経口組成物の例としては、固体製剤(錠剤、カプセル剤、トローチ剤、糖衣錠、顆粒剤、散剤、粉剤(スプリンクル剤)、ウエハース、多粒子剤、及びフィルム剤等)、液体製剤(水溶液、エリキシル剤、チンキ剤、トニック剤(強壮剤)、スラリー、懸濁液、及び分散剤等)、並びにエアロゾル化製剤(ミスト及びスプレー等)が挙げられる。1つの実施形態では、化合物Aの薬学的に許容できる経口組成物は、小児用懸濁液又は顆粒を含む。化合物A、ASM、又は化合物A及びASMの両方のすべての上記の量が、そのような製剤に含まれてもよく、例えば、5、10、15、10、25、30、若しくは35mgの化合物Aを含むカプセル、5、10、15、10、25、30、35、40、45、50、55、60、65、75、85、90、95、若しくは100mgのASMを含むカプセル、又は5、10、15、10、25、30、若しくは35mgの化合物A及び5、10、15、10、25、30、35、40、45、50、55、60、65、75、85、90、95、若しくは100mgのASMを含むカプセルが挙げられる。
【0098】
本明細書に記載される方法及び使用に係る化合物A、ASM、又は化合物A及びASMの両方の投与に適した他の投与経路としては、舌下及び口腔内(例えば、舌下若しくは頬の内側の口内で溶解するフィルム又は他の組成物を用いる)、眼内(例えば、点眼剤)、耳内(例えば、点耳剤による)、経口吸入若しくは鼻吸入(例えば、吹送若しくは噴霧による)、皮膚若しくは局所(例えば、クリーム若しくはローションによる)、又は経皮(例えば、皮膚パッチによる)が挙げられる。経口投与以外に、他の経腸投与経路を、化合物A、ASM、又は化合物A及びASMの両方に使用することができ、これには膣内及び直腸内(例えば、軟膏剤、坐剤、浣腸による)が含まれる。
【0099】
化合物A、ASM、又は化合物A及びASMの両方の非経口投与に適した組成物の例としては、水性又は油性の調製物、特に水性調製物を含む、滅菌した注射用の溶液、懸濁液、又は分散液が挙げられる。いくつかの実施形態では、化合物A、ASM、又は化合物A及びASMの両方は、水、リンゲル液、等張性塩化ナトリウム溶液、緩衝水溶液、及び1,3-ブタンジオール等の混和性アルコールを含有する水溶液等の、非経口的に許容できる希釈剤又は溶媒を含む注射用の滅菌水性製剤において、本明細書に記載される方法又は使用に従って投与される。化合物A、ASM、又は化合物A及びASMの両方の非経口製剤のためのさらなる適切な賦形剤としては、モノグリセリド又はジグリセリド;脂肪酸、例えばオレイン酸及びそのグリセリド誘導体;天然の薬学的に許容できる油、例えば、オリーブ油又はヒマシ油(それらのポリオキシエチル化バージョンを含む);長鎖アルコール希釈剤又は分散剤、例えばカルボキシメチルセルロースを含むアルキルセルロース;並びに界面活性剤、例えばTween、Span及び他の乳化剤又はバイオアベイラビリティ増強剤が挙げられる。
【0100】
別の実施形態では、経口投与によるうつ病性障害の治療のための化合物AとASMとの組み合わせ経口投与のためのキットが提供される。このようなキットは、化合物A、ASM、又は化合物A及びASMの両方の複数の経口投与単位形態を、化合物A及びASMを組み合わせて経口投与するための説明書に加えて含む。
【0101】
本開示のさらなる実施形態及び例が本明細書に記載される。これらの実施形態及び例は例示的なものであり、請求項に係る発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0102】
3. 番号付けされた実施形態
実施形態1。必要とするヒトにおいて発作性疾患を治療する方法であって、上記ヒトに、化合物A及び抗けいれん薬(ASM)を、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて投与する工程を含み、化合物Aは、N-[4-(6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-2,6-ジメチルフェニル]-3,3-ジメチルブタンアミドである、方法。
【0103】
実施形態2。発作性疾患に罹患しているヒトにおける治療有効性に必要とされる抗けいれん薬(ASM)の量を低減する方法であって、上記ヒトに、上記ASMと組み合わせて、上記ASMとともに投与されるときにそのような低減を達成するのに有効な量の化合物Aを投与する工程を含み、化合物Aは、N-[4-(6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-2,6-ジメチルフェニル]-3,3-ジメチルブタンアミドである、方法。
【0104】
実施形態3。発作性疾患に罹患しているヒトにおける治療有効性に必要とされる化合物Aの量を低減する方法であって、上記ヒトに、化合物Aと組み合わせて、化合物Aとともに投与されたときにそのような低減を達成するのに有効な量の抗けいれん薬(ASM)を投与する工程を含み、化合物Aは、N-[4-(6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-2,6-ジメチルフェニル]-3,3-ジメチルブタンアミドである、方法。
【0105】
実施形態4。上記方法は、上記ヒトにおいてKv7カリウムチャネルの開口を増強することを含む実施形態1から実施形態3のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
実施形態5。ヒトにおいてKv7カリウムチャネルの開口を増強する方法であって、上記ヒトに、化合物A及び抗けいれん薬(ASM)を、組み合わせて投与されたときに治療上有効な量で組み合わせて投与する工程を含み、化合物Aは、N-[4-(6-フルオロ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-2,6-ジメチルフェニル]-3,3-ジメチルブタンアミドであり、上記ヒトは発作性疾患を有する、方法。
【0107】
実施形態6。上記Kv7カリウムチャネルは、Kv7.2、Kv7.3、Kv7.4、又はKv7.5のうちの1つ以上である実施形態4又は実施形態5に記載の方法。
【0108】
実施形態7。上記方法は、Kv7.1よりもKv7.2、Kv7.3、Kv7.4、又はKv7.5のうちの1つ以上の開口を増強するために選択的である実施形態6に記載の方法。
【0109】
実施形態8。上記方法は、Kv7.2/Kv7.3(KCNQ2/3)カリウムチャネルの開口を含む実施形態4又は実施形態5に記載の方法。
【0110】
実施形態9。上記ASMは、ベンゾジアゼピン、カルバマゼピン、セノバメート、フェルバメート、ガバペンチン、ラコサミド、ラモトリギン、レベチラセタム、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、プレガバリン、ルフィナミド、チアガビン、トピラマート、バルプロ酸、ビガバトリン、ゾニサミド、又はこれらの組み合わせである実施形態1から実施形態8のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
実施形態10。上記ASMは、バルプロ酸、レベチラセタム、フェニトイン、ラコサミド、又はセノバメートである実施形態1から実施形態9のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
実施形態11。上記ASMは、上記ヒトにおいてKv7カリウムチャネルの開口を増強しない実施形態1から実施形態10のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
実施形態12。上記ASMは、上記ヒトにおいて神経細胞の興奮を減少させる実施形態1から実施形態11のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
実施形態13。上記ASMは、上記ヒトにおいてナトリウムチャネルを遮断することによって神経細胞の興奮を減少させる実施形態12に記載の方法。
【0115】
実施形態14。上記ASMは、上記ヒトにおいてカルシウムチャネルを遮断することによって神経細胞の興奮を減少させる実施形態12に記載の方法。
【0116】
実施形態15。上記ASMは、上記ヒトにおいてシナプス小胞糖タンパク質2A(SV2A)に結合することによって神経細胞の興奮を減少させる実施形態12に記載の方法。
【0117】
実施形態16。上記ASMは、上記ヒトにおいて神経細胞阻害を増加させる実施形態1から実施形態11のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
実施形態17。上記ASMはグルタミン酸作動薬である実施形態1から実施形態11のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
実施形態18。上記ASMはGABA作動薬である実施形態1から実施形態11のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
実施形態19。上記発作性疾患は、Kv7カリウムチャネル機能不全に関連する実施形態1から実施形態18のいずれか1つに記載の方法。
【0121】
実施形態20。上記発作性疾患は焦点起始てんかんである実施形態1から実施形態19のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
実施形態21。化合物Aは上記ヒトに経口投与される実施形態1から実施形態20のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
実施形態22。上記ASMは上記ヒトに経口投与される実施形態1から実施形態21のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
実施形態23。化合物Aは、上記ヒトに1~200mgの用量で投与される実施形態1から実施形態22のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
実施形態24。化合物Aは、上記ヒトに2~100mgの用量で投与される実施形態1から実施形態23のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
実施形態25。化合物Aは、上記ヒトに5~50mgの用量で投与される実施形態1から実施形態24のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
実施形態26。化合物Aは、上記ヒトに5、10、15、20、又は25mgの用量で投与される実施形態1から実施形態25のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
実施形態27。化合物Aは、上記ヒトに20mgの用量で投与される実施形態1から実施形態26のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
実施形態28。化合物Aは、上記ヒトに少なくとも10mgの用量で投与される実施形態1から実施形態22のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
実施形態29。化合物Aは、上記ヒトに少なくとも20mgの用量で投与される実施形態28に記載の方法。
【0131】
実施形態30。化合物Aは、上記ヒトに少なくとも50mgの用量で投与される実施形態28に記載の方法。
【0132】
実施形態31。化合物Aは、上記ヒトに1日あたり5~1000mgの用量で投与される実施形態1から実施形態22のいずれか1つに記載の方法。
【0133】
実施形態32。化合物Aは、上記ヒトに1日あたり5~500mgの用量で投与される実施形態31に記載の方法。
【0134】
実施形態33。化合物Aは、上記ヒトに1日あたり5~250mgの用量で投与される実施形態31に記載の方法。
【0135】
実施形態34。化合物Aは、上記ヒトに1日あたり20~150mgの用量で投与される実施形態31に記載の方法。
【0136】
実施形態35。化合物Aは、上記ヒトに1日あたり100mgの用量で投与される実施形態31に記載の方法。
【0137】
実施形態36。化合物Aは、上記ヒトに0.01~2.0mg/kgの用量で投与される実施形態1から実施形態22のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
実施形態37。化合物Aは、上記ヒトに0.03~1.0mg/kgの用量で投与される実施形態36に記載の方法。
【0139】
実施形態38。化合物Aは、上記ヒトに0.05~0.5mg/kgの用量で投与される実施形態36に記載の方法。
【0140】
実施形態39。化合物Aは、上記ヒトに食事摂取の約30分前から食事摂取の約2時間後の間に経口投与される実施形態1から実施形態38のいずれか1つに記載の方法。
【0141】
実施形態40。化合物Aは、上記ヒトに食事中又は食事摂取の後15分以内に経口投与される実施形態39に記載の方法。
【0142】
実施形態41。上記ASMはバルプロ酸である実施形態1から実施形態40のいずれか1つに記載の方法。
【0143】
実施形態42。上記バルプロ酸は、上記ヒトに2~16mg/kgの用量で投与される実施形態41に記載の方法。
【0144】
実施形態43。上記バルプロ酸は、上記ヒトに4~12mg/kgの用量で投与される実施形態41に記載の方法。
【0145】
実施形態44。上記ASMはフェニトインである実施形態1から実施形態40のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
実施形態45。上記フェニトインは、上記ヒトに0.05~5mg/kgの用量で投与される実施形態44に記載の方法。
【0147】
実施形態46。上記フェニトインは、上記ヒトに0.1~1mg/kgの用量で投与される実施形態44に記載の方法。
【0148】
実施形態47。上記ASMはラコサミドである実施形態1から実施形態40のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
実施形態48。上記ラコサミドは、上記ヒトに0.1~5mg/kgの用量で投与される実施形態47に記載の方法。
【0150】
実施形態49。上記ラコサミドは、上記ヒトに0.5~1mg/kgの用量で投与される実施形態47に記載の方法。
【0151】
実施形態50。上記ASMはセノバメートである実施形態1から実施形態40のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
実施形態51。上記セノバメートは、上記ヒトに0.05~5mg/kgの用量で投与される実施形態50に記載の方法。
【0153】
実施形態52。上記セノバメートは、上記ヒトに0.1~1mg/kgの用量で投与される実施形態50に記載の方法。
【0154】
実施形態53。化合物A及び上記ASMの組み合わせ投与は、単独の化合物A又は上記ASMの個々の投与と比較して、改善された有効性を提供する実施形態1から実施形態52のいずれか1つに記載の方法。
【実施例】
【0155】
化合物Aと他のASMとの効果を判定するために研究を行った。
1. 実施例1。単独の化合物A、及び一般的なASMと組み合わせた化合物Aの抗けいれん効果
化合物Aと他のASMとの相互作用を、マウス最大電撃(MES)アッセイにおいて経口投与後に評価して、いくつかの組み合わせが好ましいか好ましくないかを判定した。角膜刺激後に強直性後肢発作を有する動物の割合を計算することによって有効性を定量化(数値化)した。
【0156】
1.1 化合物A
単独で投与した場合、化合物A(1、2、4、又は8mg/kg)は、経口投与の0.5時間後及び2時間後の両方でMESアッセイにおいて強直性発作の発生を減少させた。濃度反応関係を結合アイソサーム(等温線)にフィッティングし、154nMの血漿濃度のIC50及び275nMの脳濃度のIC50(用量あたり、時間点あたりn=7)を得た。
【0157】
化合物の調製:化合物Aを最初にDMSOに可溶化した。次いで、この溶液を0.5%メチルセルロース溶液に加え、より均一で凝集の少ない化合物懸濁液を作製した。最高濃度の化合物Aを含むチューブから連続希釈物を調製し、化合物懸濁液をさらにボルテックス処理した後、動物に投与した。DMSOの最終濃度は5%であり、MESアッセイにおいて明らかな毒性又は神経保護を有さない量であった。フェニトイン及びバルプロ酸は100%生理食塩水に可溶化した(0.9%)。レベチラセタムは、脱イオン水中の0.5%メチルセルロース及び0.2%Tween80に可溶化した。
【0158】
動物:Harlan(ハーラン)-Envigo(エンヴィーゴ)から購入した成体雄CF-1アルビノマウス(25~35g)を使用した。マウスを1ケージにつき4匹収容し、実験全体を通して濾過水及び飼料を自由に摂取させた。
【0159】
MESアッセイ:化合物は、特段の記載がない限り、試験前に胃管栄養法によって経口投与した。MES試験中、60Hzの交流電流(50mA)を0.2秒間、角膜電極を通してマウスに送達した。0.5%Alcaine(アルカイン)溶液の液滴を、電流送達の前に眼に置いた。その後、電極を動物の(両)眼の上に穏やかに配置し、足踏み式アクチベーターを通して引き金を引くことによって電撃を開始した。動物を手で拘束し、ショックが送達されて発作が始まると穏やかに解放した。動物を、この試験の終点として後肢の強直性伸展について監視した。
【0160】
統計分析:すべての統計値は、Prismバージョン7ソフトウェア(Graphpad Software(グラフパッド・ソフトウェア))を使用して計算した。各実験に使用した方法を結果の項に示す。濃度反応曲線を、下式に対する最良フィッティングとして計算した。
Y=最小値+(最大値-最小値)/(1+10^((LogIC50-X)×ヒル勾配))
上記式中、Xは血漿濃度の対数である。特段の記載がない限り、最小値は0であるように制約した。最大値は、ビヒクル対照測定によって実験的に決定された値であるように制約した。
【0161】
化合物Aの用量反応:1、2、4、又は8mg/kgの化合物Aの経口投与後の用量反応を、マウスMESアッセイにおいて2つの異なる時間点で評価した:経口投与の0.5及び2時間後(
図1及び
図2)。動物をビヒクル(2時間でn=7、0.5時間でn=5)又は異なる用量群(1用量、1時点あたりn=7)に無作為に割り当て、MESアッセイを、処置条件を盲検化した実験者によって行った。
【0162】
2時間の時点で、化合物Aは、後肢伸展によって評価される強直性発作の数の用量依存的減少を示した。8mg/kgの用量は、ビヒクル処置マウスと比較して有意な保護を提供した(強直性発作を有するマウスの数/試験した総数:1mg/kg:5/7(p=0.939)、2mg/kg:4/7(p=0.598)、4mg/kg:2/7(p=0.085)、8mg/kg:1/7(p=0.023)、ビヒクル:6/7(p値はダネット(Dunnett)の多重比較検定を使用する一元配置ANOVA(分散分析)によって計算した)。同じデータを使用して、後肢強直性伸展から保護されたマウスのパーセンテージを計算した(1mg/kg:28.6%(p>0.999)、2mg/kg:42.9%(p>0.999)、4mg/kg:71.4%(p=0.103)、8mg/kg:85.7%(p=0.029)、ビヒクル:14.3%;p値はフィッシャー(Fisher)の正確確率検定によって計算した)。有効性試験の直後にマウスから脳及び血漿試料を採取し、UHPLC-ESI-MS/MSを使用して分析した(表1)。
【0163】
【0164】
脳及び血漿中の総濃度、それぞれ、1mg/kg:0.19μM(70.2ng/g)及び0.1μM(35.8ng/mL)、2mg/kg:0.21μM(75.8ng/g)及び0.13μM(46.7ng/mL)、4mg/kg:0.36μM(131.3ng/g)及び0.23μM(83ng/mL)、8mg/kg:0.56μM(207.7ng/g)及び0.43μM(157.8ng/mL)。
【0165】
0.5時間の時点で、1、2及び4mg/kgの用量は、後肢の伸展を伴う強直性発作の数の用量依存的減少を示し、4mg/kgは、ビヒクル処置マウスと比較して有意な保護を提供した(1mg/kg:4/7(p=0.449)、2mg/kg:2/7(p=0.088)、4mg/kg:1/7(p=0.032)、8mg/kg:3/7(p=0.215)、ビヒクル:5/5;一元配置ANOVAはダネットの多重比較検定を使用して計算した)。8mg/kgで、1/7の動物は、刺激後に後肢伸展を伴う2回の強直性発作を有し、他の用量群又はビヒクル処置マウスでは見られなかった発生であった。同様の用量依存的有効性が、強直性発作の後肢強直性伸筋成分から保護されたマウスについて観察された(1mg/kg:42.9%(p>0.205)、2mg/kg:71.4%(p=0.028)、4mg/kg:85.7%(p=0.015)、8mg/kg:71.4%(p=0.028)、ビヒクル:0%;フィッシャーの正確確率検定を使用して計算した)。有効性試験の直後にマウスから脳及び血漿試料を採取し、UHPLC-ESI-MS/MSを使用して分析した(表2)。
【0166】
【0167】
各用量群の平均の脳及び血漿中の総濃度は以下の通りであった:それぞれ、1mg/kg:0.27μM(97.9ng/g)及び0.13μM(48.9ng/mL)、2mg/kg:0.36μM(132ng/g)及び0.22μM(80.7ng/mL)、4mg/kg:0.64μM(234.7ng/g)及び0.42μM(154.4ng/mL)、8mg/kg:1.09μM(402ng/g)及び0.71μM(261.3ng/mL)。
【0168】
図3は、MESアッセイにおける化合物AのPK-PDデータのすべてを要約する濃度-反応関係を示す。上のパネルは、血漿濃度の関数としての強直性発作の阻害を示し、下のパネルは、脳濃度の関数としての阻害を示す。2時間の前処置時間と比較して、より高い脳及び血漿曝露が0.5時間で観察されたが、各曝露レベルで観察された有効性は、投与後の時間にかかわらず、脳濃度又は血漿濃度を反映した(
図3)。化合物Aの2時間前処置による明確な用量反応に起因して、この時間点をさらなる研究のために選択した。投与の2時間後に収集したデータを濃度反応曲線にフィッティングし、IC
50及びヒル係数のみを最適フィッティングのために変動させた。水平破線は、ビヒクルにおける強直性発作の発生率を示す:94.1±0.03%(平均±S.E.M.、n=85)。この値を曲線の最大値とし、最小値を0(完全阻害)に制約した。脳濃度及び血漿濃度に基づくIC
50推定値は、それぞれ275nM及び154nMであった。
【0169】
1.2 化合物Aとバルプロ酸との組み合わせ
化合物Aについて2時間の前処置を伴う1mg/kgのPO及びバルプロ酸について0.5時間の前処置を伴う100mg/kgのIPの用量を、最初の併用研究のために選択した。化合物A(1mg/kg PO)によってもたらされるさらなる有効性の程度を定量化するために、第2の実験を実施して、第1の研究の知見を繰り返し、バルプロ酸のさらなる用量(30及び56mg/kg IP)を試験した。これらの2つの実験を組み合わせた結果を以下で論じる。
【0170】
動物を無作為に割り当て、有効性試験の2時間前に化合物A又はビヒクルを経口投与し、続いて有効性試験の0.5時間前にバルプロ酸又はビヒクルをIP投与した。この実験計画に基づいて、単独投与対照群又はビヒクル対照群の動物も、それぞれ2回の用量を受けた:(化合物A+ビヒクル、ビヒクル+バルプロ酸、化合物A+バルプロ酸、又はビヒクル+ビヒクル)。
【0171】
化合物A及び100mg/kgのバルプロ酸の共投与は、化合物Aの単独投与で処置したマウスと比較して、後肢の伸展を伴う強直性発作を伴わないマウスの数の有意な増加をもたらした(化合物A+100mg/kgのバルプロ酸:10/15対1mg/kgの化合物A+ビヒクル:4/15(p=0.021)、及びビヒクル+100mg/kgのバルプロ酸:5/15(p=0.059);p値は、二元配置ANOVAとそれに続くダネット多重比較検定によって計算した)。化合物Aと56mg/kgのバルプロ酸との併用投与では、強直性発作に対する保護の増加の傾向が認められたが、化合物Aと30mg/kgのバルプロ酸:化合物A+56mg/kgのバルプロ酸:4/8対1mg/kgの化合物A+ビヒクル:4/15(p=0.396)及び対ビヒクル+56mg/kgのバルプロ酸:1/7(p=0.226);化合物A+30mg/kgのバルプロ酸:2/8対1mg/kgの化合物A+ビヒクル:4/15(p=0.995)及び対ビヒクル+56mg/kgのバルプロ酸:0/8(p=0.463)との併用では差異は認められなかった(
図4)。
【0172】
化合物A(1mg/kg)+56及び100mg/kgのバルプロ酸の両併用投与群は、ビヒクル処置動物と比較して有意な保護をもたらした:化合物A+100mg/kgのバルプロ酸:10/15(p=0.0001)及び化合物A+56mg/kgのバルプロ酸:4/8(p=0.0381)対ビヒクル+ビヒクル:0/15;p値は、一元配置ANOVAとそれに続くダネット多重比較検定によって計算した。
【0173】
有効性試験の直後にマウスから血漿試料及び脳試料を採取し、UHPLC-ESI-MS/MSを使用して分析した(表3)。
【0174】
【0175】
単独で投与した場合又はバルプロ酸と共投与した場合、化合物Aの血漿濃度又は脳濃度に有意差はなかった。単独で投与した場合の1mg/kgでの化合物Aの平均総血漿及び脳濃度:0.066μM(24ng/mL)及び0.16μM(59ng/g)、バルプロ酸(30mg/kg)と投与した場合:0.038μM(14ng/mL)及び0.075μM(28ng/g)、バルプロ酸(56mg/kg)と投与した場合:0.050μM(18ng/mL)及び0.117μM(43ng/g)、並びにバルプロ酸(100mg/kg)と投与した場合:0.042μM(15ng/mL)及び0.097μM(36ng/g)。同様に、化合物Aと組み合わせた場合、試験した3つの用量でバルプロ酸の血漿濃度又は脳濃度に有意な変化はなかった。
【0176】
化合物AとVAとの共投与実験も、VAによる強直性発作の阻害についてのIC
50に対する効果を定量化するために、VAの濃度-反応関係に対する化合物Aの効果として分析した(
図5)。
【0177】
1.3 化合物Aとレベチラセタムとの組み合わせ
レベチラセタムはMESアッセイでは不活性である(ED50>500mg/kg)が、6Hz、32mAmpアッセイではED50=19.4mg/kgで活性であることが報告されている(Bartonら、Epilepsy Res. 2001、47:217-227)。生物学的活性を有することが公知である高用量のレベチラセタムを選択した。
【0178】
レベチラセタムを、120及び150mg/kgのIP投与によってMESアッセイにおいて評価した。これらの用量は、それぞれ1001μM(170.3μg/mL)及び1154μM(196.4μg/mL)の血漿濃度並びに583μM(99.2μg/g)及び540μM(91.9μg/g)の脳濃度をもたらした(表4)。
【0179】
【0180】
いずれの用量も、ビヒクル処置マウスと比較して、強直性発作のないマウスの割合に有意な増加をもたらさなかった:120mg/kg:0/6(p=0.98)、150mg/kg 2/8(p=0.93)、ビヒクル:2/18;p値は、ダネット多重比較検定による一元配置ANOVAによって計算した(
図6)。
【0181】
1又は1.5mg/kgの化合物Aとの共投与は、レベチラセタムの血漿又は脳のレベルに影響を及ぼさなかった:957μM(163μg/mL)血漿及び554μM(943μg/g)脳(LEV 120mg/kg+1mg/kgの化合物A);1235μM(210μg/mL)血漿及び531μM(90.4μg/g)脳(LEV 150mg/kg+1.5mg/kgの化合物A)。1mg/kg単独の化合物A又は120mg/kgのレベチラセタムと共投与した化合物Aの曝露値は、それぞれ、血漿中0.03μM(11.1ng/mL)及び0.03μM(11.1ng/mL)、並びに脳中0.06μM(20.9ng/g)及び0.05μM(20.0ng/g)であった。1.5mg/kg単独の化合物A又は150mg/kgのレベチラセタムと共投与した化合物Aの曝露値は、それぞれ、血漿中0.04μM(15ng/mL)及び0.07μM(25ng/mL)、並びに脳中0.08μM(31ng/g)及び0.14μM(52ng/g)であった。
【0182】
いずれの用量の組み合わせにおいても、強直性発作のないマウスの割合の増加は、化合物A単独の効果よりも有意に大きくはなかった:1mg/kgの化合物A:2/11対化合物A(1mg/kg)+LEV(120mg/kg):2/5、p=0.578;及び1.5mg/kgの化合物A:3/8対化合物A(1.5mg/kg)+LEV(150mg/kg):4/8、p=0.805;p値は、ダネット多重比較検定による二元配置ANOVAによって計算した(
図6)。
【0183】
1.4 化合物Aとフェニトインとの組み合わせ
KV7チャネルは、軸索起始部においてNaV1.6及びNaV1.2チャネルと共局在する。化合物AはKV7チャネルを活性化し、フェニトインは電位依存性ナトリウムチャネルを阻害するので、好ましい相互作用が予想されたが、その大きさは不明であった。
【0184】
2時間の前処置時間でPO投与した化合物A(0.25、0.75、1、1.5、及び2.5mg/kg)の用量反応を、MESアッセイにおいて、所定の一定用量のフェニトイン(2mg/kg、IP、2時間の前処置)の存在下又は不存在下で試験した。
【0185】
ビヒクル処置動物と比較して、化合物Aの単独投与は、強直性発作のない動物の割合の用量依存的増加をもたらした:0.25mg/kgの化合物A:0/8(p=0.999)、0.75mg/kg:2/8(p=0.948)、1mg/kg:2/8(p=0.948)、1.5mg/kg:2/8(p=0.948)、2.5mg/kg:4/8(p=0.12);2mg/kgのフェニトイン:6/24(p=0.72);ビヒクル 2/24。フェニトインと共投与した場合、0.75、1、1.5及び2.5mg/kgの用量の化合物Aは、ビヒクル処置動物と比較して、強直性発作のない動物の割合の有意な増加をもたらした:化合物A0.25mg/kg+フェニトイン2mg/kg:3/8(p=0.48)、化合物A0.75mg/kg+フェニトイン2mg/kg:5/8(p=0.018)、化合物A1mg/kg+フェニトイン2mg/kg:6/8(p=0.002)、化合物A1.5mg/kg+フェニトイン2mg/kg:6/8(p=0.002)、化合物A2.5mg/kg+フェニトイン2mg/kg:7/8(p=0.0001);p値は、一元配置ANOVA及びダネット多重比較検定によって計算した(
図7)。
【0186】
単独投与の化合物Aを投与した動物と、化合物A及びフェニトインの両方を共投与した群との比較により、1及び1.5mg/kgの用量での共投与群において、強直性発作のない動物の割合の有意な増加が示された。フェニトインの単独投与を共投与群と比較した場合、同様の傾向が観察され、化合物Aの1、1.5及び2.5mg/kgで有意な発作からの解放が認められた:化合物A0.25+フェニトイン2mg/kg併用:3/8対単独投与化合物A(0.25mg/kg):0/8(p=0.165)及び6/24 フェニトイン(2mg/kg;p=0.715)、化合物A0.75+フェニトイン2mg/kg併用:5/8対単独投与化合物A(0.75mg/kg):2/8(p=0.165)及び6/24 フェニトイン(2mg/kg;p=0.074)、化合物A1+フェニトイン2mg/kgの併用:6/8対単独投与化合物A(1mg/kg):2/8(p=0.048)及び6/24 フェニトイン(2mg/kg;p=0.012)、化合物A1.5+フェニトイン2mg/kg併用:6/8対単独投与化合物A(1.5mg/kg):2/8(p=0.048)及び6/24(2mg/kgのフェニトイン;p=0.012)、化合物A2.5+フェニトイン2mg/kg併用:7/8対単独投与化合物A(2.5mg/kg):4/8(p=0.165)及び6/24フェニトイン(2mg/kg; p=0.001);p値は、二元配置ANOVAとそれに続くダネット多重比較検定によって計算した(
図7)。
【0187】
血漿濃度又は脳濃度の有意な変化は、化合物Aを伴って投与した場合でも伴わずに投与した場合でも、フェニトインについて認められなかった(表4)。
【0188】
【0189】
血漿及び脳曝露はそれぞれ、フェニトイン2mg/kgの単独投与4.1μM(1019ng/mL)及び4.2μM(1052ng/g):0.25mg/kgの化合物Aと併用した場合4.0μM(1014ng/mL)及び4.2μM(1055ng/g):0.75mg/kgの化合物Aと併用した場合4.1μM(1025ng/mL)及び2.9μM(1070ng/g):1mg/kgの化合物Aと併用した場合3.9μM(989ng/mL)及び5.0μM(1263ng/g):1.5mg/kgの化合物Aと併用した場合4.8μM(1210ng/mL)及び4.8μM(1196ng/g)、並びに2.5mg/kgの化合物Aと併用した場合3.9μM(971ng/mL)及び2.9μM(1051ng/g)。
【0190】
同様に、単独で投与した場合でもフェニトインと組み合わせて投与した場合でも、化合物Aの血漿濃度及び脳濃度に有意な変化はない(表5)。
【0191】
【0192】
血漿及び脳は、それぞれ、0.25mg/kgの化合物Aの単独投与対フェニトイン(2mg/kg)との併用:0.01μM(4.3ng/mL)及び0.04μM(14.8ng/g)対0.02μM(5.6ng/mL)及び0.05μM(18.4ng/g)、0.75mg/kg単独投与対併用:0.03μM(11.7ng/mL)及び0.12μM(43.8ng/g)対0.04μM(16.0ng/mL)及び0.15μM(56.7ng/g)、1mg/kg単独投与対併用:0.05μM(17.0ng/mL)及び0.10μM(35.0ng/g)対0.05μM(19.0ng/mL)及び0.10μM(37.0ng/g)、1.5mg/kg単独投与対併用:0.05μM(19.5ng/mL)及び0.08μM(30.8ng/g)対0.06μM(23.4ng/mL)及び0.11μM(42ng/g)、2.5mg/kg単独投与対併用:0.12μM(45.1ng/mL)及び0.39μM(144.1ng/g)対0.16μM(58.4ng/mL)及び0.51μM(186.5ng/g)。
【0193】
化合物Aによる強直性発作の阻害についてのIC
50に対する効果を定量化するために、化合物Aの濃度-反応関係に対するフェニトインの効果として、化合物A及びフェニトインによる共投与実験も分析した(
図8)。
【0194】
1.5 結び
化合物Aは、マウスMESアッセイにおいて、血漿及び脳曝露値とよく相関する用量依存的有効性を示した。化合物A及び100mg/kgのバルプロ酸又は2mg/kgのフェニトインの組み合わせは、MESアッセイにおいて、いずれかの化合物単独で観察されるよりも高い有効性が観察されることをもたらした。化合物Aとレベチラセタムとの共投与は、化合物A単独と比較した場合、MESアッセイにおいて有効性の有意な改善を提供しなかった。
【0195】
バルプロ酸(30、56又は100mg/kgのIP、MESの0.5時間前に投与):化合物A(1mg/kg PO、MESの2時間前)を100mg/kgで投与したバルプロ酸(VA)と組み合わせると、化合物Aを単独で投与した場合よりも大きい阻害が生じた(1mg/kgの化合物A+100mg/kgのバルプロ酸:10/15対1mg/kgの化合物A+ビヒクル:4/15(p=0.021))(単独投与群:n=15 1mg/kgの化合物A、n=15 100mg/kgのバルプロ酸、n=7 30及び56mg/kgのバルプロ酸;併用投与群:n=15 化合物A1mg/kg+バルプロ酸100mg/kg、n=8 化合物A+バルプロ酸30及び56mg/kg;n=15 ビヒクル)。1mg/kgで投与された化合物Aは、MESアッセイにおいて強直性発作に対する保護に必要なバルプロ酸の血漿レベルを減少させた。バルプロ酸単独のIC50は1440μMであった。1mg/kgの化合物Aと組み合わせた場合、バルプロ酸のIC50は608μMであり、2.37倍の減少であった。単独で投与した場合の1mg/kgの化合物Aの平均総血漿濃度:0.07μM(24.2ng/mL)及びバルプロ酸(30mg/kg)とともに投与した場合:0.04μM(14.0ng/mL)、バルプロ酸(56mg/kg)とともに投与した場合:0.03μM(12.0ng/mL)、及びバルプロ酸(100mg/kg)とともに投与した場合:0.04μM(15.0ng/mL)。
【0196】
レベチラセタム(120及び150mg/kg IP、MESの2時間前に投与):1mg/kgの用量の化合物Aは、66±14nM(平均±SEM、n=15)の血漿濃度を生じ、強直性発作を有する割合を26.7%減少させた。化合物Aとレベチラセタム(LEV)との共投与は、化合物A単独と比較した場合、強直性発作に対する保護の改善を提供しなかった:1mg/kgの化合物A:2/11対化合物A(1mg/kg)+LEV(120mg/kg):2/5、p=0.578;1.5mg/kgの化合物A:3/8対化合物A(1.5mg/kg)+LEV(150mg/kg):4/8、p=0.805。1mg/kgの化合物A単独又は120mg/kgのLEVと共投与した化合物Aの血漿濃度は、0.03μM(11.1ng/mL)及び0.03μM(11.1ng/mL)であり、1.5mg/kg化合物A単独又は150mg/kgのLEVと共投与した化合物Aでは、それぞれ0.041μM(15ng/mL)及び0.068μM(25ng/mL)であった。
【0197】
フェニトイン(2mg/kg IP、MESの2時間前に投与):化合物Aを2mg/kgで投与したフェニトインと組み合わせると、化合物Aを単独で投与した場合よりも大きい阻害が生じた。MESの2時間前にフェニトインと共投与した場合、0.75、1、1.5及び2.5mg/kgの経口用量の化合物Aは、ビヒクル処置動物と比較して、強直性発作のないマウスの割合の有意な増加をもたらした:化合物A0.25mg/kg+フェニトイン2mg/kg:3/8(p=0.48)、化合物A0.75mg/kg+フェニトイン2mg/kg:5/8(p=0.013)、化合物A1mg/kg+フェニトイン2mg/kg:6/8(p=0.002)、化合物A1.5mg/kg+フェニトイン2mg/kg:6/8(p=0.002)、化合物A2.5mg/kg+フェニトイン2mg/kg:7/8(p=0.0001)。化合物A単独のIC50は147nMであった。2mg/kgのフェニトインと組み合わせた場合、化合物AのIC50は39.7nMであった。単独で投与した場合でもフェニトインと組み合わせて投与した場合でも、化合物Aの血漿濃度に有意な変化はなかった:化合物Aの0.25mg/kgの単独投与対フェニトイン(2mg/kg)との併用:0.01μM(4.3ng/mL)対0.02μM(5.6ng/mL)、0.75mg/kg単独投与対併用:0.03μM(11.7ng/mL)対0.04μM(16ng/mL)、1mg/kg単独投与対併用:0.05μM(17ng/mL)対0.05μM(19ng/mL)、1.5mg/kg単独投与対併用:0.05μM(19.5ng/mL)対0.06μM(23.4ng/mL)、2.5mg/kg単独投与対併用:0.12μM(45.1ng/mL)対0.16μM(58.4ng/mL)。
【0198】
2. 実施例2。単独の化合物A及びラコサミドと組み合わせた化合物Aの抗けいれん効果
化合物Aの有効性及びそのラコサミドとの薬理学的相互作用を、マウス最大電撃けいれん(AC-MES)アッセイにおいて経口投与後に評価した。
【0199】
これらの研究の目的は、化合物Aの単回経口投与後のマウスにおけるAC-MESアッセイにおける化合物Aの用量依存性抗けいれん活性及びラコサミドとのその薬理学的相互作用を特徴付けることであった。AC-MESアッセイは、典型的には、非選択的ナトリウムチャネル遮断薬及びカリウムチャネル開口薬に応答し、部分てんかん発作(部分発作起始)の翻訳動物モデルとして使用されている。MESアッセイは、新規な抗発作化合物のスクリーニング及び特徴付けのために広く使用されている(Loescherら、Epilepsy Res. 1991、8(2):79-94;Pireddaら、J Pharmacol Exp Ther. 1985、232(3):741-745;及びWhiteら、Ital J Neurol Sci. 1995、16(1-2):73-77)。充分に高い電流での電撃刺激後、マウス及びラットは強直性伸展を示し、その後、後肢のクローヌスが続く。試験化合物が強直性伸展を妨げることができれば、その試験化合物を保護的であるとみなした。
【0200】
化合物A及びラコサミドの抗けいれん効力、並びに化合物Aをラコサミドと組み合わせることの効果を、単回PO投与後の雄CF-1マウスにおけるAC-MESアッセイにおいて試験した。薬物濃度と有効性との関係を理解するために、血漿試料及び脳試料を得た。
【0201】
2.1 材料及び方法
試験化合物 - 化合物A
【表7】
【0202】
【0203】
ビヒクルF1:脱イオン(DI)水中の0.5%メチルセルロース及び0.2%Tween-80。0.8LのDI水を70℃~80℃に加熱した。5グラムのメチルセルロースを秤量し、加熱したDI水に少量ずつゆっくりと添加した。この混合物を、均質な乳状懸濁液を形成するまで撹拌した。懸濁液を冷室に移し、終夜撹拌して透明な溶液を得た。2mLのTween-80をこの透明な溶液に加え、DI水で1Lまで希釈した。このビヒクル溶液を2℃~8℃で保存した。
【0204】
ビヒクルF2:5%ジメチルスルホキシド(DMSO)及びF1。5%DMSOをF1ビヒクルに加えた。
【0205】
投与製剤:化合物A及びラコサミドを別々のバイアルに秤量した。化合物AをF2ビヒクル中で製剤化し、ラコサミドをF1ビヒクル中で製剤化した。適切な量のビヒクルを化合物A及びラコサミド粉末に添加し、次いでIKA T-18 Ultra-Turraxホモジナイザーで混合して、所望の濃度の均一な懸濁液を作製した。次いで、バイアルをアルミホイルで包んで光から保護し、投与時まで撹拌プレート上に置いた。
【0206】
【0207】
実験設計:動物を、表6、表7、表8、及び表9に示すように処置群に割り当てた。
【0208】
化合物Aを用いて3つの研究を行い、ラコサミドを用いて4つの研究を行った。それぞれの研究日を表6~表9に示す。
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
盲検化及び無作為化:化合物を投与する実験者は、各動物を無作為に処置群に割り当てた。処置群の割り当てを知らない異なる実験者が試験を実施した。加えて、化合物投与及びMES試験を異なる部屋で行って、試験を行う実験者が処置に対して完全に盲検であることを確実にした。所与の実験で試験したすべての動物は、いずれの処置群に割り当てられる可能性も同等であった。
【0214】
臨床観察:すべての動物を、化合物A及びラコサミドの投与後10分間、動物に投与した実験者によって、及び再び刺激時に10分間、動物を試験した実験者によって、異常行動について観察した。正常行動からの定性的変化があればそれを記録した。
【0215】
AC-MESアッセイ:MES試験は、抗けいれん物質の探索に広く使用されている(Pireddaら、Loescherら、及びWhiteら)。MES試験は、全般強直間代(GTC)発作のモデルと考えられ、化合物が発作拡散を予防する能力の指標を提供する。AC-MESモデルでは、交流電流(60Hz、40mA)の電撃を、角膜電極(HSE-HA Rodent Shocker、Harvard Apparatus(ハーバード・アパレイタス)、モデル番号:73-0105)によって0.2秒間送達した。CF-1マウスに、電撃アッセイの0.5時間前にビヒクル又は化合物AをPO投与した(標準操作手順Standard Operating Procedure(SOP)TECH-006による)。電撃刺激の直前に、動物の眼を0.5%Alcaine溶液(塩酸プロパラカイン、1滴/眼)の局所適用で麻酔した。次いで、マウスを拘束し、角膜電極を取り付け、ショックを投与した。ナイーブ動物では、発作は、後肢強直性伸筋成分による初期の全般強直性発作を特徴とする。動物は、発作の後肢強直性伸筋成分の消失時にMES誘発性発作から保護されたとみなされ、その場合は「0」とスコア付けされる。マウスが強直性後肢伸展を示す場合、スコアは「1」である。血漿及び脳の採取のために、電撃後の初期発作スコア評価の直後にマウスを安楽死させた。
【0216】
試料の収集及び調製:マウスが麻酔の手術面に到達するまで、マウスをイソフルラン吸入によって麻酔した(SOP TECH-018による)。次いで、シリンジ(22ゲージ針付き1mLシリンジ)を胸骨下から心臓に挿入した(SOP TECH-031による)。約0.5mLの血液を回収し、K2EDTAチューブに入れ、氷上で保存した。次いで、頸部脱臼によって動物を安楽死させた。脳を取り出し、予め秤量したバイアルに入れ、ドライアイス上で急速凍結した。試料収集の終わりに、血液を4℃で10分間4000rpmで遠心分離し、血漿をピペットで標識チューブに移した。すべての試料を、生物分析の時点まで-80℃の冷凍庫に保存した。
【0217】
血漿試料:血漿試料の抽出は、アセトニトリルを用いたタンパク質沈殿によって行った。希釈した血漿試料(50μL)を、1:1 アセトニトリル:水(v:v)中の50μLの内部標準(IS)溶液と混合し、続いて200μLのアセトニトリルを添加した。試料を30秒間ボルテックス混合し、13,000rpmで20分間遠心分離し、96ウェルプレートにデカントし、さらに4000rpmで20分間遠心分離した。以下の生物分析手順に記載するように、超高速液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析(UHPLC-ESI-MS/MS)によって試料を分析した。
【0218】
脳試料:抽出前に、予め秤量した全脳を、IKA T18 Ultra-Turraxホモジナイザーを用いて4の設定で約1分間、1:1 アセトニトリル:水(v:v)(マウス脳あたり2mL)中でホモジナイズした。ホモジネートを13,000rpmで20分間遠心分離し、50μLの上清を血漿試料について上記に記載したのとまったく同じように処理した。
【0219】
生物分析手順:血漿及び脳ホモジネート抽出物(K2EDTAマウス血漿中で調製した較正標準及び品質管理(QC)試料を含む)を含むすべての試料をタンパク質沈殿によって抽出した。試料の各50μLアリコートに、50μLのIS溶液(水:アセトニトリル(1:1)中の2500ng/mLのラコサミド)及び50μLの6%(v:v)リン酸水溶液を添加し、次いで200μLのアセトニトリルを添加した。1.7mLチューブ中の試料をボルテックス混合し、次いで13,000rpmで20分間遠心分離した。15マイクロリットルの上清を96ウェルプレート中で150μLの水:アセトニトリル(1:1)と混合し、混合後4000rpmで20分間遠心分離した。次いで、試料をUHPLC-MS/MS分析に供した。
【0220】
下記の条件を使用して、研究グレードのUHPLC-MS/MS法により、化合物Aについて試料を分析した。
【0221】
【0222】
下記の条件を使用して、研究グレードのUHPLC-MS/MS法により、ラコサミドについて試料を分析した。
【0223】
【0224】
試料濃度は、標準試料中の分析物対ISピーク面積比のそれらのそれぞれの濃度への回帰によって生成された、線形又は二次の較正関数(1/xで重み付け)のいずれかの最良フィッティングモデルを使用して決定した。分析実行の許容基準は、許容基準が±25%である最低標準又は定量下限(LLOQ)を除いて、標準及びQC試料の逆算値がそれらの公称値の±20%以内に入ることを必要とした。12の標準点のうちの少なくとも6つは、許容できる較正のための公称濃度の±20%以内の逆算値を示す必要があった。各濃度で1つである少なくとも3つのQC試料は、試料バッチ全体が有効であるために、公称濃度の±20%以内の逆算値を示す必要があった。
【0225】
データ処理及び分析:すべての統計値は、GraphPad Prismバージョン8ソフトウェアを使用して計算した。濃度反応曲線は、ヒル・ラングミュア(Hill Langmuir)式を使用して作成した。
式1
Y=B+(T-B)×xn/(IC50
n+xn)
上記式1中、
・B=最低値であり、0と設定し、
・T=最大値であり、1と設定し、
・n=ヒル係数であり、ゼロ未満に制約し、
・IC50=インビトロでの50%阻害に必要な化合物の濃度
である。
【0226】
すべての群データを平均として表す。クラスカル・ウォリス(Kruskal-Wallis)、続いてダン(Dunn)の多重比較検定を用いて群間の差異を分析した。統計的有意性は、p<0.05の値で達成された。
【0227】
生物分析:すべてのシステム適合性試験(SST)、QC、マトリクス、及び溶媒ブランクは、SOP MTD-066に記載される許容基準を満たした。化合物A及びラコサミドのLLOQは、研究2Cでは2.34ng/mLであり、研究2D及び2Aでは両方の化合物について4.69ng/mLであり、研究2Bではラコサミド及び化合物Aについてそれぞれ2.34ng/mL及び4.69ng/mLであった。定量上限(ULOQ)は、すべての研究において両方の化合物について4800ng/mLであった。
【0228】
AC-MESアッセイにおける有効性:マウスにおけるAC-MES誘導発作研究の結果を表10、表11、表12、及び表13、並びに
図9、
図10、及び
図11に示す。
【0229】
化合物Aの用量及び濃度反応:化合物Aの用量及び濃度反応を
図9に示す。3つの有効性研究(2A、2B、及び2C)すべてにおいて、ビヒクル処置CF-1マウスの100%が、後肢の伸展を伴う強直性発作を示した。研究2Aでは、化合物Aを投与した動物のうちAC-MES刺激に対する強直性発作応答を示したものの割合は、1mg/kgで8/8から、5mg/kgで7/8に、10mg/kgで3/8に減少し、有効性の用量依存的増加を示唆した。研究2Bでは、5mg/kg及び10mg/kgの用量は、それぞれ0/8及び1/9の動物の発作を示して、研究2Aにおいてよりも大きい有効性を示し、これは、研究2A(平均血漿濃度:5mg/kgで0.276μM及び10mg/kgで0.366μM)よりも研究2B(平均血漿濃度:5mg/kgで0.470μM及び10mg/kgで0.553μM)において達成されたより高い血漿濃度から生じた可能性がある。加えて、研究2A及び2Bは、互いから1週間隔てて実施され、これも、有効性における差を説明してもよい。研究2Cでは、3mg/kg用量の化合物Aは、2/8の動物の発作を示し、平均血漿濃度は0.284μMであった。3つの研究(2A、2B及び2C)すべてにおいて、化合物A処置群とビヒクル投与群との差は統計的有意性に達した(p値は
図9に示されている)。
【0230】
研究2Aにおける10mg/kg群からの1匹のマウス並びに研究2Bにおける3匹のマウス(10mg/kg群からの2匹のマウス及び7.5mg/kg群からの1匹のマウス)は、行動徴候(振戦、活動の低下及び後肢の広がり)を示した(血漿濃度:2A:0.391μM;2B:10mg/kg:0.608及び0.516μM、7.5mg/kg:0.746μM)。脳組織及び血漿において到達した化合物Aの濃度は、用量に対して線形であった(
図9)。
【0231】
3つの研究からの化合物Aの統合濃度反応曲線は、血漿について0.300μMのEC
50及び脳組織について0.471μMのEC
50を示した(
図9)。
【0232】
2.2 結果
AC-MESモデルにおいて化合物Aをラコサミドと組み合わせて試験する前に、ラコサミドを別々の試験(2D)において異なる用量で試験し、上記の化合物Aについて要約した研究内のマウスの別々の群に試験して、完全な用量反応を確立した。これらの4つの研究からのラコサミドの統合の反応用量及び濃度反応を
図10に示す。ラコサミドは、AC-MES誘発性強直性発作に対して用量依存的及び濃度依存的効果を示し、20mg/kgで最大効果を示し、3/8動物しか発作を起こさなかった(平均血漿濃度23.9μM)。20mg/kgのラコサミド処置群における動物の発作の割合は、ビヒクル処置群と有意に異なった(p値=0.0052)。ラコサミドの濃度反応曲線分析は、血漿について21.6μMのEC
50及び脳組織について22.2μMのEC
50を示した。化合物A+ラコサミドの併用研究である研究2Cについては、10mg/kgのラコサミド及び3mg/kgの化合物Aの用量を選択したが、これらは両方とも、AC-MESモデルにおいて単独で投与した場合に最小限の有効性しか示さなかった。
【0233】
化合物A(3mg/kgをAC-MESの0.5時間前にPO投与した)をラコサミド(10mg/kgをAC-MESの2時間前にPO投与した)と組み合わせると、強直性発作が消失した(表12)。ラコサミド処置群(10mg/kgのラコサミド単独、6/8(8匹中6匹)の動物の発作)と併用群(化合物A+ラコサミド、0/8の動物の発作)との差は統計的に有意であったが(p値=0.0189)、化合物A処置群(3mg/kgの化合物A単独、2/8の動物の発作)と併用群との差は統計的に有意ではなかった。化合物A(3mg/kgで投与)及びラコサミド(10mg/kgで投与)の血漿濃度は、単独で投与しても組み合わせて投与しても同様であり、これは、併用群で観察されたより大きい有効性は、いずれかの化合物のより高い曝露の結果ではないことを示唆した。達成された平均血漿濃度は以下の通りであった:3mg/kgで単独で投与した場合の化合物Aについて0.284μM;ラコサミドと組み合わせて3mg/kgで投与した場合の化合物Aについて0.279μM;10mg/kgで単独で投与した場合のラコサミドについて17.1μM;化合物Aと組み合わせて10mg/kgで投与した場合のラコサミドについて15.5μM。
【0234】
【表16】
B/P:脳対血漿比;n/a:適用なし。
【0235】
【表17】
B/P:脳対血漿比;n/a:適用なし。
【0236】
【表18】
B/P:脳対血漿比;n/a:適用なし。
【0237】
【表19】
B/P:脳対血漿比;n/a:適用なし。
【0238】
2.1 結び
化合物A及びラコサミドは、CF-1マウスAC-MESアッセイにおいて濃度依存的な有効性を示した。濃度反応曲線分析から予測される血漿及び脳の化合物AのEC50値は、それぞれ0.30μM及び0.47μMであった。3mg/kgの化合物A及び10mg/kgのラコサミドの組み合わせは、マウスAC-MESアッセイにおいて化合物A又はラコサミドを単独で投与した場合の部分的抑制と比較して、強直性発作の完全な抑制をもたらした。
【0239】
化合物Aの5つの経口(PO)用量を、AC-MESモデルにおいてそれぞれ試験した。1mg/kg(n=8)、3mg/kg(n=8)、5mg/kg(n=16)、7.5mg/kg(n=7)、及び10mg/kg(n=17)の化合物Aを経口強制投与により雄CF-1マウス(体重28.2~43.8g)に投与した30分後、これらのマウスに60Hzの角膜電気刺激(0.2秒の継続時間、40mA)を与えた。この刺激は、すべてのビヒクル投与動物において強直性後肢伸展を誘発した。電気刺激に応答した後肢伸展を示さなかったいずれの動物も、保護されたとみなした。また、観察神経学的評価(定性試験)も、認容性スクリーニングとして試験時に行った。化合物A濃度のレベルを取得し、有効性と薬物濃度との関係を理解するために、最終の血漿試料及び脳試料をすべての動物から収集した。
【0240】
単回経口投与後、化合物Aは、AC-MES誘発性強直性発作に対して濃度依存性効果を示し、0/8動物の発作という最大効果は、0.47μMの血漿濃度で得られた(5mg/kgの研究2Bから)。研究2A(1mg/kg、n=8;5mg/kg、n=8;及び10mg/kg、n=8;研究日2019年3月28日)では、化合物Aによる30分の前処置後にAC-MES刺激に対して強直性発作応答を示した動物の割合は、8/8(0.0815μMの平均血漿濃度;1mg/kg)、7/8(0.28μMの平均血漿濃度;5mg/kg)、及び3/8(0.37μMの平均血漿濃度;10mg/kg)に減少した。研究2B(5mg/kg、n=8;7.5mg/kg、n=7及び10mg/kg、n=9;研究日2019年6月5日)では、5mg/kg(0.47μMの平均血漿濃度)及び10mg/kg(0.55μMの平均血漿濃度)用量の化合物Aが強い有効性を示した(それぞれ0/8及び1/9の動物の発作)。研究2C(3mg/kg、n=8;研究日2019年6月11日)では、3mg/kg用量の化合物Aは、2/8の動物の発作を示し、血漿濃度は0.28μMであった。3つの有効性研究(2A、2B、及び2C)すべてにおいて、化合物A処置群とビヒクル投与群との差は、統計的有意性に達した。3つの研究すべてからのデータを、単独で投与した場合の化合物Aの濃度反応曲線分析のために組み合わせた。化合物Aの濃度反応曲線は、血漿について0.30μMの半値影響濃度(half-maximum effective concentration)(EC50)及び脳組織について0.47μMのEC50を示した。
【0241】
研究2Aにおける10mg/kg群から1匹のマウス並びに研究2Bにおける3匹のマウス(10mg/kg群からの2匹のマウス及び7.5mg/kg群からの1匹のマウス)は、行動徴候(振戦、活動の低下及び後肢の広がり)を示した(血漿濃度:2A:0.39μM;2B:10mg/kg:0.61及び0.52μM、7.5mg/kg:0.75μM)。
【0242】
AC-MESモデルにおいて化合物Aをラコサミドと組み合わせて試験する(研究2C)前に、ラコサミドを単独で異なる用量で試験し、完全な用量反応を確立した。ラコサミドの4つのPO用量をそれぞれ、AC-MESモデルにおいて別々に(研究2D:6mg/kg及び20mg/kg、一群あたりn=8、研究日2019年3月14日;研究2A:6mg/kg及び8mg/kg、一群あたりn=8、研究日2019年5月28日;研究2B:10mg/kg、n=8、研究日2019年6月5日;並びに研究2C:10mg/kg、n=8、研究日2019年6月11日)、かつ研究の一部として試験した。6mg/kg(n=16)、8mg/kg(n=8)、10mg/kg(n=16)、及び20mg/kg(n=8)のラコサミドを強制経口投与により雄CF-1マウス(体重28.2~43.8g)に投与した2時間後、これらのマウスにAC-MES刺激を与えた。ラコサミドは、AC-MES誘発性強直性発作に対して用量依存的及び濃度依存的効果を示し、20mg/kgで3/8の動物の発作(23.9μMの平均血漿濃度)という最大効果を示し、6、8、及び10mg/kgのより低い用量で最小効果を示した。4つの研究(2A、2B、2C、及び2D)すべてからのデータを、単独で投与した場合のラコサミドの濃度反応曲線分析のために組み合わせた。ラコサミドの濃度反応曲線は、血漿について21.6μMのEC50及び脳組織について22.2μMのEC50を示した。用量反応研究に基づいて、単独で投与した場合に最小限の有効性しか示さなかった10mg/kgのラコサミド及び3mg/kgの化合物Aの用量を、AC-MESモデルにおける併用試験のために選択した。
【0243】
雄CF-1マウスにおいて化合物A(3mg/kg PO、AC-MESの0.5時間前)をラコサミド(10mg/kg PO、AC-MESの2時間前)と組み合わせると、化合物A又はラコサミドを単独で投与した場合の部分的抑制と比較して、強直性発作が完全に抑制された(3mg/kgの化合物A単独:2/8動物の発作;10mg/kgのラコサミド単独:6/8動物の発作;化合物A+ラコサミド:0/8動物の発作;ビヒクル:8/8動物の発作)。化合物A(3mg/kg)及びラコサミド(10mg/kg)の血漿濃度は、単独で投与しても組み合わせて投与しても同様であり、これは、併用群において観察された最大有効性は、いずれかの化合物のより高い曝露の結果ではないことを示唆した。達成された平均総血漿濃度は以下の通りであった:3mg/kgで単独で投与した場合の化合物A:0.283μM;3mg/kgで組み合わせて投与した場合の化合物A:0.279μM;10mg/kgで単独で投与した場合のラコサミド:17.1μM;10mg/kgで組み合わせて投与した場合のラコサミド:15.5μM。
【0244】
3. 実施例3。6Hz精神運動発作アッセイにおける単独の化合物A及びレベチラセタムと組み合わせた化合物A
この研究の目的は、各化合物に感受性の発作のマウスモデル、6Hz精神運動発作アッセイ(Bartonら、Epilepsy Res. 2001;47(3):217-227)、における化合物Aとレベチラセタムとの相互作用を評価することであった。化合物A及びレベチラセタムを単独で又は組み合わせて、それぞれ単独で最大未満の有効性をもたらす用量で投与することによって、両方の化合物の組み合わせが有効性に好ましいか又は好ましくないかを評価した。化合物A及びレベチラセタムはそれぞれ、6Hzアッセイにおいて単独で最大未満の有効性をもたらす用量で投与し、これらの化合物を組み合わせたときのいずれの方向の有効性の変化の検出も可能にした。化合物A及びレベチラセタムの組み合わせが薬物動態及び薬力学にどのように影響を及ぼし得るかについて理解するために、血漿試料及び脳試料を分析した。
【0245】
3.1 材料及び方法
試験化合物 - 化合物A
【表20】
【0246】
【0247】
ビヒクル:化合物A製剤F2:脱イオン(DI)水中の5%ジメチルスルホキシド(DMSO)、0.5%メチルセルロース。レベチラセタム製剤F1:DI水中0.5%w:wメチルセルロース、0.2%v:v Tween80。
【0248】
投与製剤:適切な量の化合物A(純度の補正なし)を秤量し、意図した最終濃度の20倍でDMSOに溶解した。化合物Aのこの20×DMSOストック溶液をDI水中の0.5%メチルセルロースで20倍希釈して、最終の所望濃度を達成した。得られた化合物A懸濁液を撹拌又はボルテックス混合して均質な懸濁液を得た。製剤を室温に保ち、各用量投与の前に連続的に撹拌するか、又はボルテックス混合した。
【0249】
レベチラセタムについては、DI水(0.8L)を70℃~80℃まで加熱した。5グラムのメチルセルロースを秤量し、加熱したDI水に少量ずつゆっくりと添加した。この混合物を、均質な乳状懸濁液を形成するまで撹拌した。懸濁液を冷室に移し、終夜撹拌して透明な溶液を得た。2mLのTween80をこの透明な溶液に加え、DI水で1Lまで希釈した。このビヒクル溶液を2℃~8℃で保存した。
【0250】
レベチラセタム粉末を秤量してバイアルに入れた。適切な量のビヒクルをこの粉末に加え、次いでIKA-T18 ULTRA TURRAXホモジナイザーで混合して、所望の濃度の均一な懸濁液を作製した。次いで、バイアルをアルミホイルで包んで光から保護し、投与時まで撹拌プレート上に置いた。
【0251】
【0252】
実験設計:動物を、表14に示すように処置群に割り当てた。すべてのマウスに、発作誘導の1時間前に、PO胃管栄養法(標準操作手順Standard Operating Procedure(SOP)TECH-006)を介してビヒクル又は化合物Aのいずれか、及びIP注射(TECH-004)によってビヒクル又はレベチラセタムのいずれかを投与した。化合物AのED20(4mg/kg)を併用実験のために選択した(用量反応実験、研究3Aに基づく)。300mg/kgのレベチラセタムの用量を、この用量で平均35%の有効性をもたらした以前の実験に基づいて選択した。
【0253】
【表23】
Admin:投与;Conc.:濃度;Cpmd.:化合物;IP:腹腔内;Lev:レベチラセタム;n/a:適用なし;PO:per os、経口。
【0254】
無作為化及び盲検化:化合物を投与する実験者は、各動物を無作為に処置群に割り当てた。処置群の割り当てを知らない異なる実験者が試験を実施した。所与の実験で試験したすべての動物は、いずれの処置群に割り当てられる可能性も同等であった。
【0255】
臨床徴候の観察:化合物を投与したすべての動物を、投与後10分間、動物に投与した実験者によって、及び再び刺激時に10分間、動物を試験した実験者によって、異常行動について観察した。正常行動からの定性的変化があればそれを記録した。
【0256】
6Hz精神運動発作アッセイ:すべての動物を、電気刺激の少なくとも1時間前に実験室に入れた。アッセイの直前に、Alcaine(塩酸プロパラカイン、0.5%)の液滴をマウスの眼の各々に与えた。次いで、動物をしっかりと拘束し、一対の電極を眼に装着した(Electro Convulsive Therapy Unit 57800、Ugo Basile(ウーゴ・バジーレ))。フットペダルを用いて34ミリアンペア、6Hz、及び0.2ミリ秒のパルス幅で3秒の刺激を誘発した。刺激の完了直後に、動物をPlexiglas(プレキシガラス)シリンダーに入れ、発作行動(顎クローヌス、前肢クローヌス、及びストラウブ挙尾)を記録した(TECH 036による)。対照動物においてこの刺激プロトコルによって誘導された3つの典型的な精神運動発作行動(顎クローヌス、前肢クローヌス、ストラウブ挙尾)のいずれも示さなかった場合、動物を発作から保護したとみなした。
【0257】
試料の収集及び調製:マウスが麻酔の手術面に到達するまで、マウスをイソフルラン吸入によって麻酔した(TECH-018)。次いで、シリンジ(22ゲージ針付き1mLシリンジ)を胸骨下から心臓に挿入した(TECH-031)。約0.5mLの血液を回収し、K2EDTAチューブに入れ、氷上で保存した。次いで、頸部脱臼によって動物を安楽死させた(TECH-018)。脳を取り出し、予め秤量したバイアルに入れ、ドライアイス上で急速凍結した。試料収集の終わりに、血液を4℃で10分間4000rpmで遠心分離し、血漿をピペットで標識チューブに移した。すべての試料を、生物分析(研究3A及び3Bについては試料収集の8日後;研究3Cについては試料収集の20日後)まで-80℃の冷凍庫に保存した。
【0258】
血漿試料及び組織試料の分析:秤量した脳組織を含むビーズミルポリプロピレンチューブを室温で解凍し、3mLの均質化溶媒(水:アセトニトリル(1:1、v:v))を添加した。チューブをビーズミルホモジナイザー(Bead Ruptor Elite Model、Omni International(オムニ・インターナショナル))に入れ、3.70m/sの速度で30秒間続く1回のサイクルで振盪した。ホモジナイズしたチューブを4000rpmで20分間遠心分離し、上清を1.5mLのエッペンドルフ(Eppendorf)チューブに移し、分析まで-80℃で凍結保存した。血漿及び脳ホモジネート抽出物を含むすべての試料(K2EDTAラット血漿中で調製した較正及び品質管理(QC)試料を含む)をタンパク質沈殿によって抽出した。試料の各50μLアリコートに、50μLの内部標準溶液(水/アセトニトリル(1:1)中の、化合物A及びレベチラセタムに対する、それぞれ、2500ng/mLの(S)-5-クロロ-4-((1-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)エチル)アミノ)-2-フルオロ-N-(ピラジン-2-イル)ベンゼンスルホンアミド及び4-((2-((7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-イル)メチル)-6-フルオロベンジル)アミノ)-2,6-ジフルオロ-N-(イソチアゾール-3-イル)ベンゼンスルホンアミド)、50μLの6%(v/v)リン酸水溶液、次いで200μLのアセトニトリルを添加した。1.5mLチューブ中の試料をボルテックス混合し、次いで13,000rpmで20分間遠心分離した。15マイクロリットルの上清を96ウェルプレート中で150μLの水/アセトニトリル(1:1)と混合し、混合後4000rpmで20分間遠心分離し、次いで液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)による分析の準備を整えた。
【0259】
試料は、以下のように研究グレードのLC-MS/MS法により分析した。
【表24(1)】
【表24(2)】
【0260】
データ処理及び分析:統計データ分析は、GraphPad Prism(バージョン8.2.1)を使用して行った。クラスカル・ウォリス検定、続いてダンの多重比較を用いて用量反応データを分析した。p値<0.05を有意とみなした。ヒル・ラングミュア式を使用して用量反応曲線及び濃度反応曲線を作成した。
式1
Y=B+(T-B)×xn/(IC50
n+xn)
上記式1中、
・B=最低値であり、0と設定し、
・T=最大値であり、1と設定し、
・n=ヒル係数であり、ゼロ未満に制約し、
・IC50=インビトロでの50%阻害に必要な化合物の濃度
である。
【0261】
特段の記載がない限り、すべてのデータは3つの有効数字で報告し、すべての群データを平均±SDとして報告する。
【0262】
3.2 結果
生物分析:すべてのシステム適合性試験、QC試料、マトリクス、及び溶媒ブランクは、許容基準を満たした。分析パラメータを表15にまとめる。各濃度のQC試料を三重に分析した。
【0263】
【表25】
Lev:レベチラセタム;LLOQ:定量下限;n/a:適用なし;ULOQ:定量上限。
【0264】
臨床観察:8mg/kgの化合物Aを投与した1匹の動物(血漿:1.16μM;脳:1.65μM)は振戦を示し、試験時に触れると冷たかった。
【0265】
6Hz精神運動発作アッセイ(研究3A)における化合物Aの用量反応:角膜刺激の1時間前にPO投与した化合物Aは用量依存性の有効性を示し、1mg/kg及び3mg/kgで8/8動物の発作、5mg/kgで5/8動物の発作、8mg/kgで3/8動物の発作となった。発作保護は、8mg/kgの化合物Aでビヒクルとは有意に異なっていた(p=0.0081;
図12A)。用量反応曲線は、n=-3.09のヒル係数で6.48mg/kgのED
50及び4.13mg/kgのED
20を予測する(
図12B)。
【0266】
個々の動物の血漿及び脳の薬物動態-薬力学的関係を、それぞれ
図12A及び
図12Bに示す。群による結果及び曝露を表16にまとめる。化合物Aの有効性は濃度依存的であり、血漿EC
50は0.35μMであり、脳EC
50は0.54μMであり、ヒル係数はそれぞれn=-1.95及びn=-2.17であった(
図12C及び
図12D)。
【0267】
【0268】
6Hz精神運動発作アッセイにおける化合物A及びレベチラセタムの組み合わせ(研究3B及び3C):化合物Aとレベチラセタムとの組み合わせが6Hz精神運動発作アッセイにおける有効性にとって好ましいか又は好ましくないかを評価するために、各化合物について最大未満の用量を選択した。化合物AのED20は、上記の用量反応実験において4mg/kgであると決定された。以前の研究では、300mg/kgのレベチラセタムで平均35%の有効性が達成され、研究間でかなりのばらつきがあった。2つの同じように設計した実験(研究3B及び3C、上記及び表14を参照)において、4mg/kgの化合物A及び300mg/kgのレベチラセタムの組み合わせは、6Hz精神運動発作アッセイにおいて、いずれかの化合物単独よりも有意に有効であった(表16)。
【0269】
研究3B:研究3Bでは、単独で投与した化合物A又はレベチラセタムは、発作からの保護をもたらさなかった(化合物Aの血漿濃度及び脳濃度は、予想よりもはるかに低かった)が、両方の化合物を組み合わせると、3/8の動物が発作から保護された(
図14A、表12)。併用投与の利益は、ビヒクルと比較して、及び単独で投与されたいずれの化合物と比較して有意であった(p=0.034)。血漿(化合物A:0.014±0.009μM;レベチラセタム:1500±320μM)及び脳(化合物A:0.03±0.02μM;レベチラセタム:861±120μM)において到達した化合物A及びレベチラセタムの濃度は、単独投与群と併用投与群との間で同等であった(
図14、表17)。従って、化合物A及びレベチラセタムの組み合わせの有益な効果は、いずれかの化合物の曝露の増加によっては説明できない(
図15)。
【0270】
研究3C:研究3Cでは、研究3Bの設計を繰り返した。今回は、同じ用量の4mg/kgの化合物Aは、研究3Bにおけるよりも血漿(0.17±0.09μM対0.01±0.01μM)及び脳(0.41±0.23μM対0.03±0.02μM)において10倍超高い濃度の化合物Aをもたらした(
図15、表17)。レベチラセタムの濃度も、研究3Bよりもわずかに高かった(脳:1130±130μM対861±120μM、血漿:1770±287μM対1500±320μM;
図15、表17)。曝露の増加は、研究3Bと比較して、単独で投与したいずれの化合物の有効性の増加につながった:4mg/kgの化合物Aは、1/7の動物を保護し、300mg/kgのレベチラセタムは、2/8の動物を発作から保護した(
図14A、表17)。化合物A及びレベチラセタムの組み合わせは、この研究で試験したすべての動物を保護した(
図14A、表17;n=7;1匹の動物は、血漿又は脳において測定可能なレベルのレベチラセタムを有しなかったので除外した)。化合物A及びレベチラセタムの併用投与後に完全な有効性に達したので、有効性に対する効果は、ビヒクル(p=0.0002)だけでなく、単独で投与したいずれの化合物(p<0.01)とも有意に異なっていた。研究3Bと同様に、血漿及び脳において到達した化合物A及びレベチラセタムの濃度は、単独投与群と併用投与群との間で同等であった(
図15、表17)。従って、化合物A及びレベチラセタムの組み合わせの有益な効果は、いずれかの化合物の曝露の増加によっては説明できない(
図16)。
【0271】
研究3B及び3Cの組み合わせ:両方の実験の用量反応を組み合わせると、化合物A又はレベチラセタムを単独で投与した場合の最大有効性は、14/16の発作でレベチラセタムで達成されたが、両方の化合物の組み合わせは、5/15の動物の発作をもたらした。従って、化合物Aとレベチラセタムとの組み合わせは、66.7%の動物を発作から保護し、これは、ビヒクル(p<0.0001)及びいずれの化合物単独(p<0.001、
図14B、表17)と有意に異なった。
【0272】
【0273】
3.3 結び
化合物Aは、マウス6Hz精神運動アッセイにおいて用量依存的有効性を示し、ED50は6.48mg/kgであった。有効性は、0.35μMの血漿EC50及び0.54μMの脳EC50を有する化合物Aの血漿濃度及び脳濃度とよく相関した。
【0274】
4mg/kgの化合物Aと300mg/kgのレベチラセタムとの組み合わせは、このアッセイにおいて、2つの別々の同じように設計した実験においていずれかの化合物単独で観察されたものよりも有意に高い有効性をもたらした(研究3B:p=0.034;研究3C:p<0.01)。併用投与は、いずれの化合物の血漿又は脳の曝露にも有意な影響を及ぼさなかった。同等の脳濃度のレベチラセタム(1130±130μM対1100±265μM;研究3C)において、レベチラセタムへの化合物Aの添加は、有効性を25%(レベチラセタム単独)から100%(化合物A+レベチラセタム)に増加させた。
【0275】
まず、6Hz精神運動アッセイにおいて化合物Aについて用量反応研究(3A)を実施して、20%の動物が発作から保護される用量(ED20)を決定した。化合物Aを強制経口投与により雄CF-1マウス(体重:32.7~46.0g)に、1、3、5、8mg/kgで、一群あたり8匹の動物に投与し、その1時間後に、34ミリアンペア(6Hz、0.2ミリ秒のパルス幅)で3秒の角膜刺激を介して精神運動性発作を誘導した。このアッセイにおける有効性は、8匹の各群における、6Hz刺激後に発作行動(顎クローヌス、前肢クローヌス、又はストラウブ挙尾)から保護された動物の割合を計算することによって定量化した。血漿試料及び脳試料を分析して、濃度-反応関係を評価した。
【0276】
1mg/kg及び3mg/kgの化合物Aは発作からの保護をもたらさなかったが、動物の発作の割合は、5mg/kgを投与された動物では5/8に減少し、8mg/kg群では3/8に減少した。8mg/kg(血漿:0.47±0.29μM;脳:0.70±0.41μM;平均±SD)で、化合物Aは、ビヒクル群(8/8の発作)と比較して有意な保護を示した(p=0.0081)。化合物Aの用量及び濃度反応曲線は、動物の50%が発作から保護される用量(ED50)が6.48mg/kg、動物の50%が発作から保護される血漿濃度(EC50)が0.35μM、及び脳EC50が0.54μMであることを予測する。このアッセイにおける化合物AのED20は、4.13mg/kgであると計算された。
【0277】
8mg/kgの化合物Aを投与した1匹の動物は振戦を示し、触れると冷たかった。1.16μMの血漿濃度及び1.65μMの脳濃度で、この動物は、この実験におけるすべての動物の中で化合物Aの最高曝露を有していた。
【0278】
最大未満の有効性をもたらす用量での化合物Aとレベチラセタムとの組み合わせを、2つの別々の、同じように設計した実験(研究3B及び3C)において評価した。以前の実験は、刺激の1時間前の300mg/kgのレベチラセタムの腹腔内(IP)注射が、34ミリアンペアの6Hz刺激で35%の有効性をもたらすことを確立した。化合物Aを用いた用量反応実験(研究3A)は、刺激の1時間前に化合物Aを経口(PO)投与した場合、4mg/kgのED20を予測した。次いで、以下の実験群(n=8)を、2つの同じように設計した実験の各々において評価した:1. ビヒクル対照(PO及びIP);2. 4mg/kg POの化合物A及びビヒクルIP;3. 300mg/kg IPのレベチラセタム及びビヒクルPO;4. 4mg/kg POの化合物A及び300mg/kg IPのレベチラセタム。34ミリアンペア(6Hz、0.2ミリ秒パルス幅)での3秒角膜刺激を、化合物投与の1時間後に投与した。発作行動(顎クローヌス、前肢クローヌス、又はストラウブ挙尾)から保護された動物の割合に基づいて有効性を評価した。
【0279】
研究3Bにおいて、雄CF-1マウス(体重:29.0~37.3g)に単独で投与した化合物はいずれも発作からの保護をもたらさなかったが、両方の化合物の組み合わせは3/8動物を発作から保護した(p=0.034)。血漿(化合物A:0.014±0.009μM;レベチラセタム:1500±320μM)及び脳(化合物A:0.03±0.02μM;レベチラセタム:861±120μM)において到達した化合物A及びレベチラセタムの濃度は、単独投与群と併用投与群との間で同等であったが、全体的には、4mg/kg用量について予想されるよりもはるかに低かった。
【0280】
雄CF-1マウス(体重:31.0~40.0g)で行った研究3Cでは、4mg/kgの化合物Aは、研究3Bよりも血漿(0.167±0.0897μM対0.014±0.009μM)及び脳(0.41±0.23μM対0.03±0.02μM)において10倍超高い濃度の化合物Aをもたらした。レベチラセタムの濃度も3Bよりもわずかに高かった(脳:1130±130μM対861±120μM;血漿:1770±287μM対1500±320μM)。曝露の増加は、単独で投与されたいずれの化合物の増加した有効性につながった:4mg/kgの化合物Aは、1/7の動物を保護し、300mg/kgのレベチラセタムは、2/8の動物を発作から保護した。化合物A及びレベチラセタムの組み合わせは、いずれの化合物単独と比較して、この群において試験したすべての動物を保護した(7/7保護;p<0.01)。同等の脳濃度のレベチラセタム(1130±130μM対1100±265μM、研究3C)において、レベチラセタムへの化合物Aの添加は、有効性を25%(レベチラセタム単独)から100%(化合物A+レベチラセタム)に増加させた。
【0281】
4. 実施例4。CF-1マウスにおけるAC-MESアッセイにおける単独の化合物A及びセノバメートと組み合わせた化合物Aの抗けいれん効果
化合物Aの有効性及びそのセノバメートとの薬理学的相互作用を、マウス交流最大電撃けいれん(AC-MES)アッセイ(実施例2参照)において経口投与後に評価した。
【0282】
この研究の目的は、化合物の単回経口投与後のマウスにおけるAC-MESアッセイにおける化合物Aの用量依存的抗けいれん活性及びそのセノバメートとの薬理学的相互作用を特徴付けることであった。化合物A及びセノバメートの抗けいれん効力、並びに化合物Aをセノバメートと組み合わせる効果を、単回PO投与後の雄CF-1マウスにおけるAC-MESアッセイにおいて試験した。薬物濃度と有効性との関係を理解するために、血漿試料及び脳試料を得た。
【0283】
4.1 材料及び方法
実施例4で使用した化合物A、ビヒクル、投与製剤、及び試験系は、ラコサミドをセノバメートで置き換えて実施例2で使用したものと同じであった。
【0284】
【0285】
実験設計:動物を、表18~表19に示すように処置群に割り当てた。4つの研究を、それぞれ化合物A及びセノバメートを用いて行った。それぞれの研究日を表18~表19に示す。
【0286】
【0287】
【0288】
【0289】
【0290】
【0291】
【0292】
【0293】
実施例4における盲検化及び無作為化、臨床観察、AC-MESアッセイ、試料の収集及び調製、血漿試料及び脳試料の分析、並びに生物分析手順は、実施例2で使用したものと同じであった。
【0294】
下記の条件を使用して、研究グレードのUHPLC-MS/MS法により、化合物Aについて試料を分析した。
【表36】
【0295】
下記の条件を使用して、研究グレードのUHPLC-MS/MS法により、セノバメートについて試料を分析した。
【表37】
【0296】
実施例4における試料濃度の決定並びにデータ処理及び分析は、実施例2と同じであった。
【0297】
4.2 結果
生物分析:すべてのシステム適合性試験(SST)、QC、マトリクス、及び溶媒ブランクは、SOP MTD-066に記載される許容基準を満たした。化合物A及びセノバメートについての定量下限(LLOQ)及び定量上限(ULOQ)を表25に示す。
【0298】
【表38】
LLOQ:定量下限。ULOQ:定量上限
【0299】
AC-MESアッセイにおける有効性:マウスにおけるAC-MES誘導発作研究の結果を表26~表32並びに
図17、
図18及び
図19に示す。
【0300】
化合物A単独:化合物Aの用量及び濃度反応からのデータを、
図17、表26、表27及び表28に要約する。3つの有効性研究(4A、4B、4C、及び4F)すべてにおいて、ビヒクル処置CF-1マウスの100%が、後肢の伸展を伴う強直性発作を示した。研究4A(1mg/kg、n=8;5mg/kg、n=8;及び10mg/kg、n=8)では、化合物Aによる30分の前処置後にAC-MES刺激に対して強直性発作応答を示した動物の割合は、8/8(0.08μMの平均血漿濃度;1mg/kg)から、7/8(0.28μMの平均血漿濃度;5mg/kg)、及び3/8(0.37μMの平均血漿濃度;10mg/kg)に減少した。研究4B(5mg/kg、n=8;7.5mg/kg、n=7及び10mg/kg、n=9)では、5mg/kg(0.47μMの平均血漿濃度)及び10mg/kg(0.55μMの平均血漿濃度)用量の化合物Aが強い有効性を示した(それぞれ0/8及び1/9の動物の発作)。研究4C(3mg/kg、n=8)では、3mg/kg用量の化合物Aは2/8の動物の発作を示し、血漿濃度は0.28μMであった。研究4F(2mg/kg、n=8)では、2mg/kgの用量は、5/8の動物の発作を示し、血漿濃度は0.11μMであった。4Fを除くすべての有効性研究において、化合物A処置群とビヒクル投与群との差は統計的有意性に達した(p値を
図17に示す)。
【0301】
研究4Aにおける10mg/kg群から1匹のマウス並びに研究4Bにおける3匹のマウス(10mg/kg群から2匹のマウス及び7.5mg/kg群から1匹のマウス)は、行動徴候(振戦、活動の低下及び後肢の広がり)を示した(血漿濃度:4A:0.39μM;4B:10mg/kg:0.61及び0.52μM、7.5mg/kg:0.75μM)。
【0302】
3つの研究からの化合物Aの統合濃度反応曲線は、血漿について0.30μMのEC
50及び脳組織について0.47μMのEC
50を示した(
図17)。脳組織及び血漿において到達した化合物Aの濃度は、用量に対して線形であった(
図17)。
【0303】
セノバメート単独:AC-MESモデルにおいて化合物Aをセノバメートと組み合わせて試験する(研究4F及び4G)前に、本発明者らは、異なる用量でセノバメートのみを試験し、完全な用量反応を確立した。セノバメートの用量及び濃度反応からのデータを、
図18、表29、及び表30に要約する。セノバメートの7つのPO用量をそれぞれ、AC-MESモデルにおいて別々に(研究4D:3mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kg、一群あたりn=8;研究4E:3mg/kg、5mg/kg、及び7.5mg/kg、n=8;並びに研究4F:5mg/kg、n=8)並びに本研究の一部として試験した。3mg/kg(n=15)、5mg/kg(n=7)、7.5mg/kg(n=7)、10mg/kg(n=8)、及び30mg/kg(n=8)のセノバメートを経口強制投与により雄CF-1マウスに投与した2時間後、これらのマウスにAC-MES刺激を与えた。セノバメートは、AC-MES誘発性強直性発作に対して用量依存的及び濃度依存的効果を示し、7.5mg/kgでは3/7の動物の発作(78.1μMの平均血漿濃度)、10mg/kgでは1/8の動物の発作(87μMの平均血漿濃度)、30mg/kgでは0/8の動物の発作(24μMの平均血漿濃度)を示し、3及び5mg/kgのより低い用量で最小限の効果を示した。3つの研究(4D、4E、及び4F)すべてからのデータを、単独で投与した場合のセノバメートの濃度反応曲線分析のために組み合わせた(
図18)。セノバメートの濃度反応曲線は、血漿について70.5μMのEC
50及び脳組織について25.2μMのEC
50を示した。
【0304】
化合物Aとセノバメートとの組み合わせ:用量反応研究に基づいて、単独で投与した場合に最小限の有効性しか示さなかった、5mg/kgのセノバメートの用量、並びに0.5、1、及び2mg/kgの化合物Aの用量を、AC-MESモデルにおける併用研究のために選択した。
【0305】
併用研究からのデータを、
図19、表31、及び表32に要約する。本発明者らは、4F(2mg/kgの化合物Aを5mg/kgのセノバメートと組み合わせた)及び4G(0.5及び1mg/kgの化合物Aを5mg/kgのセノバメートと組み合わせた)の2つの併用研究を実施した。雄CF-1マウスにおいて化合物A(0.5、1、及び2mg/kg PO、AC-MESの0.5時間前)をセノバメート(5mg/kg PO、AC-MESの2時間前)と組み合わせることは、化合物A(化合物Aを2mg/kgで単独で投与した場合、5/8の動物の発作)又はセノバメート(セノバメートを5mg/kgで単独で投与した場合、8/8の動物の発作)を単独で投与した場合の部分的効果又は無効果と比較して、0.5mg/kgの化合物Aで2/8の動物の発作、1mg/kgの化合物Aで1/8の動物の発作、2mg/kgの化合物Aで0/8の動物の発作を示した。研究4Fでは、化合物Aの血漿濃度(2mg/kgにおける平均血漿濃度:単独で投与した場合は0.11μM、組み合わせて投与した場合は0.29μM)及びセノバメートの血漿濃度(5mg/kgにおける平均血漿濃度:単独で投与した場合は31.3μM、組み合わせて投与した場合は38.9μM)は、単独で投与した場合と比較して、組み合わせて投与した場合にわずかに高かった。研究4Gでは、達成された平均総血漿濃度は以下の通りであった:0.5mg/kgで組み合わせて投与した化合物A:0.03μM;1mg/kgで組み合わせて投与した化合物A:0.11μM;5mg/kgで組み合わせて(+0.5mg/kgの化合物A)投与したセノバメート:41.1μM;5mg/kgで組み合わせて(+1mg/kgの化合物A)投与したセノバメート:39.7μM。組み合わせて投与した化合物A及びセノバメートの濃度反応曲線は、化合物Aにつき、血漿について0.01μM及び脳組織について0.03μMの外挿EC
50を示した。
【0306】
【表39】
B/P:脳対血漿比;n/a:適用なし。
【0307】
【表40】
B/P:脳対血漿比;n/a:適用なし。
【0308】
【表41】
B/P:脳対血漿比;n/a:適用なし。
【0309】
【表42】
B/P:脳対血漿比;n/a:適用なし。
【0310】
【表43】
B/P:脳対血漿比;n/a:適用なし。
【0311】
【表44】
B/P:脳対血漿比;n/a:適用なし。
【0312】
【0313】
4.3 結び
化合物A及びセノバメートは、CF-1マウスAC-MESアッセイにおいて濃度依存的有効性を示した。濃度反応曲線分析から予測される血漿及び脳の化合物AのEC50値は、それぞれ0.30μM及び0.47μMであった。組み合わせて投与された化合物A及びセノバメートの統合濃度反応曲線は、化合物Aにつき、血漿について0.01μMのEC50及び脳組織について0.03μMのEC50を予測した。これらの結果は、セノバメートと組み合わせて投与した場合、血漿及び脳組織についてそれぞれ33.3倍及び14.2倍の化合物Aの効力の増加を予測する。
【0314】
化合物Aの6つの経口(PO)用量を、AC-MESアッセイにおいてそれぞれ試験した。1mg/kg(n=8)、2mg/kg(n=8)、3mg/kg(n=8)、5mg/kg(n=16)、7.5mg/kg(n=7)、及び10mg/kg(n=17)の化合物Aを経口強制投与により雄CF-1マウスに投与した30分後、これらのマウスに60Hzの角膜電気刺激(0.2秒の継続時間、40mA)を与えた。この刺激は、すべてのビヒクル投与動物において強直性後肢伸展を誘発した。電気刺激に応答した後肢伸展を示さなかったいずれの動物も、保護されたとみなした。また、観察神経学的評価(定性試験)も、認容性スクリーニングとして試験時に行った。化合物A及びセノバメートの濃度のレベルを取得し、有効性と薬物濃度との関係を理解するために、最終の血漿試料及び脳試料をすべての動物から収集した。
【0315】
単回経口投与後、化合物Aは、AC-MES誘発性強直性発作に対して濃度依存性効果を示し、0/8動物の発作という最大効果は、0.470μMの血漿濃度で得られた(5mg/kgの研究4Bから)。研究4A(1mg/kg、n=8;5mg/kg、n=8;及び10mg/kg、n=8)では、化合物Aによる30分の前処置後にAC-MES刺激に対して強直性発作応答を示した動物の割合は、8/8(0.08μMの平均血漿濃度;1mg/kg)から、7/8(0.28μMの平均血漿濃度;5mg/kg)、及び3/8(0.37μMの平均血漿濃度;10mg/kg)に減少した。研究4B(5mg/kg、n=8;7.5mg/kg、n=7及び10mg/kg、n=9)では、5mg/kg(0.47μMの平均血漿濃度)及び10mg/kg(0.55μMの平均血漿濃度)用量の化合物Aが強い有効性を示した(それぞれ0/8及び1/9の動物の発作)。研究4C(3mg/kg、n=8)では、3mg/kg用量の化合物Aは、2/8の動物の発作を示し、血漿濃度は0.28μMであった。研究4F(2mg/kg、n=8)では、2mg/kgの用量は、5/8の動物の発作を示し、血漿濃度は0.11μMであった。4Fを除くすべての有効性研究において、化合物A処置群とビヒクル投与群との差は、統計的有意性に達した(p値を
図17に示す)。4つの研究すべてからのデータを、単独で投与した場合の化合物Aの濃度反応曲線分析のために組み合わせた。化合物Aの濃度反応曲線は、血漿について0.30μMの半値影響濃度(EC
50)及び脳組織について0.47μMのEC
50を示した。
【0316】
研究4Aにおける10mg/kg群から1匹のマウス並びに研究4Bにおける3匹のマウス(10mg/kg群からの2匹のマウス及び7.5mg/kg群からの1匹のマウス)は、行動徴候(振戦、活動の低下及び後肢の広がり)を示した(血漿濃度:4A:0.39μM;4B:10mg/kg:0.61及び0.52μM、7.5mg/kg:0.75μM)。
【0317】
AC-MESモデルにおいて化合物Aをセノバメートと組み合わせて試験する前に、セノバメートを単独で異なる用量で試験し、完全な用量反応を確立した。セノバメートの7つのPO用量をそれぞれ、AC-MESモデルにおいて別々に(研究4D:3mg/kg、10mg/kg、及び30mg/kg、一群あたりn=8;研究4E:3mg/kg、5mg/kg、及び7.5mg/kg、n=8;並びに研究4F:5mg/kg、n=8)、かつ研究の一部として試験した。3mg/kg(n=15)、5mg/kg(n=7)、7.5mg/kg(n=7)、10mg/kg(n=8)、及び30mg/kg(n=8)のセノバメートを経口強制投与により雄CF-1マウスに投与した2時間後、これらのマウスにAC-MES刺激を与えた。セノバメートは、AC-MES誘発性強直性発作に対して用量依存的及び濃度依存的有効性を示し、7.5mg/kgで3/7の動物の発作(78.1μMの平均血漿濃度)、10mg/kgで1/8の動物の発作(87μMの平均血漿濃度)、30mg/kgで0/8の動物の発作(237μMの平均血漿濃度)を示した。3及び5mg/kgのより低い用量は最小限の効果を有し、7/8の動物の発作を示した。セノバメート処置群における動物の発作の割合は、ビヒクル処置群とは3つの研究のうち2つで有意に異なった(p値を
図18に示す)。3つの研究(4D、4E、及び4F)すべてからのデータを、単独で投与した場合のセノバメートの濃度反応曲線分析のために組み合わせた。セノバメートの濃度反応曲線は、血漿について70.5μMのEC
50及び脳組織について25.2μMのEC
50を示した。
【0318】
用量反応研究に基づいて、単独で投与した場合に最小限の有効性しか示さなかった、5mg/kgのセノバメート並びに0.5、1、及び2mg/kgの化合物Aの用量をAC-MESモデルにおける併用試験のために選択した。
【0319】
4F(2mg/kgの化合物Aを5mg/kgのセノバメートと組み合わせた)及び4G(0.5及び1mg/kgの化合物Aを5mg/kgのセノバメートと組み合わせた)の2つの併用研究を実施した。雄CF-1マウスにおいて化合物A(0.5、1、及び2mg/kg PO、AC-MESの0.5時間前)をセノバメート(5mg/kg PO、AC-MESの2時間前)と組み合わせることは、化合物Aを2mg/kgで単独で投与した場合、5/8の動物の発作、セノバメートを5mg/kgで単独で投与した場合の8/8の動物の発作と比較して、0.5mg/kgの化合物Aで2/8の動物の発作、1mg/kgの化合物Aで1/8の動物の発作、2mg/kgの化合物Aで0/8の動物の発作を示した。研究4Fでは、セノバメート処置群と併用群との差は統計的に有意であったが、化合物A処置群と併用群との差は統計的に有意ではなかった。研究4Gでは、ビヒクル群と併用群との差は統計的に有意であった(注:ビヒクル対照群及び化合物A及びセノバメートの単独投与対照群はこの研究に使用しなかった;p値を
図19に示す)。研究4Fでは、化合物Aの血漿濃度(2mg/kgにおける平均血漿濃度:単独で投与した場合は0.11μM、組み合わせて投与した場合は0.29μM)及びセノバメートの血漿濃度(5mg/kgにおける平均血漿濃度:単独で投与した場合は31.3μM、組み合わせて投与した場合は38.9μM)は、単独で投与した場合と比較して、組み合わせて投与した場合にわずかに高かった。研究4Gでは、達成された平均総血漿濃度は以下の通りであった:0.5mg/kgで組み合わせて投与した場合の化合物A:0.03μM;1mg/kgで組み合わせて投与した場合の化合物A:0.11μM;5mg/kgで組み合わせて(0.5mg/kgの化合物A)投与した場合のセノバメート:41.1μM;5mg/kgで組み合わせて(1mg/kgの化合物A)投与した場合のセノバメート:39.7μM。
【0320】
組み合わせて投与した化合物A及びセノバメートの統合濃度反応曲線は、化合物Aにつき、血漿について0.01μM及び脳組織について0.03μMの外挿EC50を示した。これらの結果は、セノバメートと組み合わせて投与した場合、血漿及び脳組織についてそれぞれ33.3倍及び14.2倍の化合物Aの効力の増加を示す。
【0321】
2021年2月9日出願の米国仮出願第63/147,736号を含めて本明細書で言及される米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許刊行物はすべて、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0322】
上述の組成物、方法、及び使用は、理解を容易にするためにある程度詳細に記載されているが、添付の特許請求の範囲の射程内で特定の変更及び改変が実施されてもよいことは明らかであろう。従って、説明された実施形態は、限定的ではなく例示的であると見なされるべきであり、請求項に係る発明は、本明細書に与えられる詳細に限定されず、添付の特許請求の範囲の射程内及び均等物内で改変されてもよい。
【国際調査報告】