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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】ホーニング工具とホーニング砥石
(51)【国際特許分類】
   B24B 33/08 20060101AFI20240206BHJP
   B24D 7/18 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
B24B33/08
B24D7/18 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547428
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 EP2022050883
(87)【国際公開番号】W WO2022167204
(87)【国際公開日】2022-08-11
(31)【優先権主張番号】102021201071.7
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504455595
【氏名又は名称】カディア プロドゥクツィオン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン ブラントシュテッター
【テーマコード(参考)】
3C063
3C158
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063AB02
3C063BH02
3C063EE01
3C063EE19
3C063FF30
3C158AA02
3C158AA12
3C158AA14
3C158CA01
3C158CA02
3C158CB04
(57)【要約】
ホーニング工具(100)は工具本体(110)を備え、工具本体(110)は、少なくとも部分的に管状であり、工具本体の内部から外側へ連続し、ホーニング砥石(200)を収容するための、少なくとも1つのホーニング砥石収容開口部を備えた削り領域を有し、ホーニング砥石収容開口部とホーニング砥石(200)の寸法は、互いに対して相応し、ホーニング砥石(200)は、工具本体の径方向に移動可能であり、かつ周方向においてはホーニング砥石収容開口部の複数の制限面(140-1、140-2)の間に実質的に遊びなしに収容される。ホーニング工具は、ホーニング砥石保持システムを有し、同システムは、ホーニング砥石(200)がホーニング砥石保持システムによってホーニング砥石収容開口部内に保持されるように、構成されている。そのためにホーニング砥石(200)は、ホーニング砥石収容開口部と協働するために設けられたガイド部内に少なくとも1つの貫通孔(250-2)を有している。ホーニング砥石保持システムは、貫通孔内に配置され、少なくとも1つの弾性的に変形可能な保持要素を備えた、保持具(320-2)を有し、保持具(320-2)は、ホーニング砥石(200)が組み込まれた状態において、保持要素の圧縮によって発生される圧接力によってホーニング砥石収容開口部の2つの互いに対向する制限面(140-1、140-2)に係合して、ホーニング砥石(200)はホーニング砥石保持システムによってホーニング砥石収容開口部内に保持される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーニング工具(100)であって、
工具本体(110)であって、少なくとも部分的に管状であり、該工具本体の内部から外側へ連続し、ホーニング砥石(200)を収容するための、少なくとも1つのホーニング砥石収容開口部(140)を有する削り領域を含み、
前記ホーニング砥石収容開口部(140)と前記ホーニング砥石(200)の寸法は、互いに相応し、前記ホーニング砥石(200)は、前記工具本体の径方向に移動可能であり、周方向において、前記ホーニング砥石収容開口部(140)の複数の制限面(140-1、140-2)の間で実質的に遊びなしに収容される、工具本体(110)と、
ホーニング砥石保持システム(300)であって、少なくとも1つの弾性的に圧縮可能な保持要素を有し、かつ前記ホーニング砥石(200)が組み込まれた状態において、前記保持要素の圧縮によって発生される圧接力により、前記ホーニング砥石収容開口部(140)の制限面に、前記ホーニング砥石(200)が前記ホーニング砥石保持システム(300)によって前記ホーニング砥石収容開口部(140)内に保持されるように、係合する、ホーニング砥石保持システム(300)と、
を備えるホーニング工具(100)において、
前記ホーニング砥石(200)は、前記ホーニング砥石収容開口部(140)と協働するために設けられたガイド部(215)内に、少なくとも1つの貫通孔(250-1、250-2、250-3)を有し、前記ホーニング砥石保持システム(300)は、前記貫通孔内に配置され、少なくとも1つの弾性的に変形可能な保持要素を有する、保持具(320-1、320-2、320-3)を備え、
前記保持具(320-1、320-2、320-3)は、前記ホーニング砥石(200)が組み込まれた状態において、前記保持要素の圧縮によって発生される圧接力により、前記ホーニング砥石収容開口部(140)の2つの互いに対向する制限面(140-1、140-2)で係合し、前記ホーニング砥石は、前記ホーニング砥石収容開口部(140)内に前記ホーニング砥石保持システム(300)によって保持される、ことを特徴とするホーニング工具(100)。
【請求項2】
前記ホーニング砥石(200)は、前記貫通孔(250-1、250-2、250-3)の領域内で幅(BH)を有し、前記保持具(320-1、320-2、320-3)は、外部の圧縮力が存在しない場合に、前記幅よりも大きい長さを有し、前記保持具(320-1、320-2、320-3)は、前記貫通孔内に、導入されかつ弛緩した状態において、前記貫通孔の2つの端部において前記ホーニング砥石の側面(212-1、212-2)を越えて突出するように、挿入可能である、ことを特徴とする請求項1に記載のホーニング工具(100)。
【請求項3】
前記保持具(320-1、320-2、320-3)は、少なくとも1つの弾性的に変形可能な保持要素を有し、該保持要素は弛緩した状態において、該保持要素は、前記貫通孔(250-1、250-2、250-3)の内径よりも大きい外径を有し、弾性的に変形して前記貫通孔内へ導入可能であり、かつ導入された状態において、摩擦係合によって自動的に前記貫通孔内に閉じ込められて保持される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のホーニング工具(100)。
【請求項4】
前記保持具(320-1、320-2、320-3)は、弾性的に変形可能な材料からなる球の形態の少なくとも1つの弾性的に変形可能な保持要素を有している、ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のホーニング工具(100)。
【請求項5】
前記保持具(320-1、320-2、320-3)は、弾性的に変形可能な材料からなる1つ又は複数の球のみによって構成されている、ことを特徴とする請求項4に記載のホーニング工具(100)。
【請求項6】
前記保持具は、弾性的に変形可能な材料からなる、正確に1つの球(320-1、320-2)を備え、好ましくは、前記球は、弛緩した状態において、前記貫通孔(250-1、250-2)の内径(DB1、DB2)よりも大きい直径を有している、ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載のホーニング工具(100)。
【請求項7】
前記ホーニング砥石(200)は、前記貫通孔の領域内で、前記球(320-1、320-2)の直径よりも小さい幅(BH)を有し、前記球(320-1、320-2)は、前記貫通孔(250-1、250-2)内へ、導入された状態において、前記貫通孔の両端部において、前記ホーニング砥石の側面(212-1、212-2)を越えて突出するように、挿入可能である、ことを特徴とする請求項6に記載のホーニング工具(100)。
【請求項8】
貫通孔(250-3)は、幅方向において、その内径よりも大きい長さを有し、前記保持具(320-3)は、弾性的に変形可能な材料からなる複数の球、特に正確に2つの、同一寸法の球を備え、前記複数の球は列をなして前記貫通孔内へ挿入され、好ましくは前記複数の球の直径は前記貫通孔(250-3)の内径よりも大きく、前記複数の球は前記貫通孔内に保持され、前記複数の球の直径の合計は幅方向に見て前記貫通孔の長さよりも大きく、前記列の外側に位置する球は各側において前記貫通孔から少し突出する、ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載のホーニング工具(100)。
【請求項9】
前記ホーニング砥石(200)は、複数の貫通孔(250-1、250-2、250-3)、特に前記ホーニング砥石の長さにわたって分配された2つ又は3つの、貫通孔を有し、
それぞれ保持具(320-1、320-2、320-3)は、複数の貫通孔内に、特にすべての貫通孔内に、配置されている、ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載のホーニング工具(100)。
【請求項10】
工具本体(110)を備えるホーニング工具(100)内で使用するためのホーニング砥石(200)であって、
前記工具本体(110)は、少なくとも部分的に管状であり、前記工具本体の内部から外側へ連続し、ホーニング砥石(200)を収容するための、少なくとも1つのホーニング砥石収容開口部(140)を有する削り領域を備え、
前記ホーニング砥石(200)の寸法と前記ホーニング砥石収容開口部(140)の寸法は、互いに対して相応し、前記ホーニング砥石(200)は前記工具本体の径方向に移動可能であり、かつ周方向においては前記ホーニング砥石収容開口部の複数の制限面(140-1、140-2)の間に実質的に遊びなしに収容可能である、
ホーニング砥石(200)において、
前記ホーニング砥石(200)は、ホーニング砥石保持システム(300)を構成するために、前記ホーニング砥石収容開口部(140)と協働するために設けられたガイド部(215)内に、少なくとも1つの弾性的に変形可能な保持要素を有する保持具(320-1、320-2、320-3)を収容するための少なくとも1つの貫通孔(250-1、250-2、250-3)を有し、
前記保持具(320-1、320-2、320-3)は、前記ホーニング砥石(200)が組み込まれた状態において、前記保持要素の圧縮によって発生される圧接力によって前記ホーニング砥石収容開口部(140)の2つの互いに対向する制限面(140-14、140-2)に係合するように構成され、前記ホーニング砥石は、前記ホーニング砥石保持システム(300)によって前記ホーニング砥石収容開口部(140)内に保持される、ことを特徴とするホーニング砥石(200)。
【請求項11】
前記ホーニング砥石は、前記貫通孔(250-1、250-2、250-3)内へ保持具(320-1、320-2、320-3)が挿入されることによって、取り付けのために組み立てられる、ことを特徴とする請求項10に記載のホーニング砥石(200)。
【請求項12】
以下の特徴の一つ、すなわち、
(i)前記ホーニング砥石(200)は、前記貫通孔(250-1、250-2、250-3)の領域内で幅(BH)を有し、前記保持具(320-1、320-2、320-3)は、外部の圧縮力が存在しない場合に、前記幅よりも大きい長さを有し、前記保持具は、前記貫通孔内へ、導入され及び弛緩した状態において、前記貫通孔の2つの端部において、前記ホーニング砥石の側面(212-1、212-2)を越えて突出するように、挿入可能又は挿入され、
(ii)前記保持具(320-1、320-2、320-3)は、弾性的に変形可能な材料からなる球の形態の、少なくとも1つの弾性的に変形可能な保持要素を有備え、
(iii)前記保持具(320-1、320-2、320-3)は、弾性的に変形可能な材料からなる1つ又は複数の球のみから構成され、
(iv)前記保持具は、弾性的に変形可能な材料からなる、正確に1つの球(320-1、320-2)からなり、好ましくは、前記球は、弛緩した状態において、前記貫通孔(250-1、250-2I)の内径(DB1、DB2)よりも大きい直径を有し、
(v)前記ホーニング砥石(200)は、複数の貫通孔(250-1、250-2、250-3)、特に前記ホーニング砥石の長さにわたって分配された2つ又は3つの貫通孔を有する、
ことを特徴とする、請求項10又は11に記載のホーニング砥石(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載されたホーニング工具及び請求項10の前文に記載された、この種のホーニング工具を製造するために使用可能なホーニング砥石に関する。
【背景技術】
【0002】
ホーニングは、幾何学的に不定形の刃による削り方法であって、それにおいてホーニング工具は加工すべき孔の内部で、2つの要素運動からなる削り運動を実施し、かつ、ホーニング工具の1つ又は複数の切れ刃の削り材料要素と加工すべき孔内面との間に恒常的な面接触が存在する。拡幅可能なホーニング工具の運動学は、回転運動と、孔の軸方向に延びる、大体の場合において振動往復運動と、ホーニング工具の有効な直径の変化をもたらす適応運動の重畳によって特徴づけられる。孔内面には、十字に交差する加工跡を有する表面構造が生じる。ホーニングによって最終加工された表面は、寸法及び形状の許容誤差に関する高い要請を満足させるので、エンジン又はエンジン構成部品、例えばエンジンブロック内のシリンダ移動面又は噴射ポンプのハウジング内の孔内面内の高い負荷を受ける多数の滑り面がホーニングによって加工される。
【0003】
特に、例えば15mm以下の直径領域内の、比較的小さい直径を有する孔を加工する場合に、少なくとも部分的に管状の工具本体を有するホーニング工具が使用され、その工具本体は、工具本体の内部から外側へ続き、ホーニング砥石を収容するための、ホーニング砥石収容開口部を備えた削り領域を有する。工具本体は、1つ又は複数のホーニング砥石用の収容部として、そして同時に、ホーニング砥石を径方向に調整するために用いられる送りロッドのためのガイドとして、用いられる。ホーニング工具は、ホーニング機械のスピンドルにホーニング工具を取り外し可能に固定するための装置を有している。
【0004】
通常矩形のホーニング砥石収容開口部の寸法とそれに応じたホーニング砥石の横断面寸法は、次のように、すなわちホーニング砥石が工具本体の径方向に移動可能で、かつ周方向においては、ホーニング砥石収容開口部の複数の制限面の間に、実質的に遊びなしで収容されるように、互いに調整されている。大体において、ホーニング砥石収容開口部の複数の制限面とホーニング砥石の対応する側面とを正確に加工することによって、滑り嵌めを実現するので、ホーニング砥石は手でなんとかホーニング砥石収容開口部内へ挿入されて、そこでホーニング砥石の側面と隣接する、ホーニング砥石収容開口部複数の制限面との間に摩擦力によって保持される。
【0005】
ホーニング砥石の、工具本体の内部へ突出する内側は、通常、斜面を有し、その斜面が送りロッドの端部に設けられた対応する斜面と楔駆動の形式で次のように、すなわち送りロッドが工具本体のスピンドルから遠い端部へ軸方向に滑り移動することが、外側へ向かうホーニング砥石の径方向の滑り移動をもたらすように、協働する。
【0006】
特に、ホーニング工具の利用期間が比較的長くなった後に、ホーニング工具が加工された孔から引き出されるときに、ホーニング砥石がホーニング砥石収容開口部から脱落することがあり得る。脱落後もスピンドルがまだ比較的高速で回転している場合に、場合によっては、ホーニング砥石は遠心力によってホーニング砥石収容開口部から飛散することもあり得る。ホーニング砥石の脱落又は飛散を阻止するために、様々なホーニング砥石保持システムが開発されている。
【0007】
多くの場合において、いわゆる砥石捕捉ブッシュが使用される。それは、実質的にスリーブ形状の構成部品であって、それが工具本体において削り領域の上方で滑り移動可能に案内され、かつ、ホーニング工具が孔から引き出される場合に、その自重に基づいて、削り領域にわたってホーニング砥石と共に滑り移動する。
【0008】
ホーニング砥石保持システムとして作用することができる、解決のための他の例が、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5に記述されている。
【0009】
特許文献6には、ホーニング砥石保持システムを有するホーニング工具が記述されており、そのシステムは弾性的に圧縮可能な保持要素を有し、その保持要素がホーニング砥石に固定されており、かつそれと一緒に組み込むことができる。実施例において、保持要素としてシリコーンチューブからなる細長い片が使用され、その片がホーニング砥石の側面にフライス加工された細長い溝内へ挿入され、かつホーニング砥石が組み込まれた状態において、一方でホーニング砥石の溝を有する側面に、そして他方ではその側面と対向する、ホーニング砥石収容開口部の制限面に、圧接力によって支持される。圧接力は、保持要素の圧縮によって発生される。ホーニング砥石は、ホーニング砥石収容開口部内に摩擦結合によって保持される。この解決は、機能的に信頼でき、構造的かつ取り扱いに関しては、比較的単純であり、かつ特にこれらの利点に基づいて今のところ市場で定着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国実用新案第29616300号明細書
【特許文献2】米国特許第2952952号明細書
【特許文献3】米国特許第3037333号明細書
【特許文献4】米国特許第3810333号明細書
【特許文献5】米国特許第4471576号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第2364813号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、確実に機能するホーニング砥石保持システムを有し、そのシステムが比較的簡単な構造的手段によって形成することができ、かつ製造かつ利用する場合に簡単な取り扱いを特徴とする、当該タイプのホーニング工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために、本発明は、請求項1の特徴を有するホーニング工具及び請求項10の特徴を有するホーニング砥石を提供する。好ましい展開が、従属請求項に記載されている。すべての請求項の文言は、参照によって明細書の内容とされる。
【0013】
請求項に係る発明のホーニング工具は、少なくとも部分的に管状の工具本体を有し、その工具本体が、少なくとも1つのホーニング砥石収容開口部を備えた削り領域を有し、そのホーニング砥石収容開口部が工具本体の内部から外側へ続き、かつ個々のホーニング砥石を収容するために用いられる。ホーニング砥石収容開口部とホーニング砥石の寸法は、周方向において、かつ好ましくは軸方向において、次のように、すなわちホーニング砥石が工具本体の径方向に移動可能に、かつ周方向においては、ホーニング砥石収容開口部の複数の制限面の間に実質的に遊びなしに収容されるように、互いに調整されている。径方向に移動できることによって、調整要素が軸方向に滑り移動した場合に、ホーニング砥石は、工具本体の内部で軸方向に摺動可能に案内される調整要素によって、協働する斜面を介して径方向に調整可能である。ホーニング工具は、ホーニング砥石保持システムを有しており、同システムは少なくとも1つの弾性的に圧縮可能な保持要素を有し、かつホーニング砥石が組み込まれた状態において、保持要素の圧縮によって生じる圧接力によりホーニング砥石収容開口部の制限面に、次のように、すなわちホーニング砥石がホーニング砥石保持システムによってホーニング砥石収容開口部内に保持されるように、作用する。
【0014】
請求項に係る発明によるホーニング工具は、ホーニング砥石が、ホーニング砥石収容開口部と協働するために設けられたガイド部内に、ガイド部の1つの側面から他の側面へつながる貫通孔を有し、かつホーニング砥石保持システムが、貫通孔内に配置される保持具を有し、その保持具が少なくとも1つの弾性的に変形可能な保持要素を有することを、特徴としている。保持具は、ホーニング砥石が組み込まれた状態において、保持要素の圧縮によって発生される圧接力によりホーニング砥石収容開口部の2つの互いに対向する制限面に、次のように、すなわちホーニング砥石がホーニング砥石保持システムによってホーニング砥石収容開口部内に保持されている、又は保持されるように、係合する。
【0015】
この構成によって、貫通孔内に配置された保持具は、ホーニング砥石の両側において、それぞれ付勢されてホーニング砥石収容開口部の対向する制限面に添接するので、保持具とホーニング砥石収容開口部との間に摩擦結合(力嵌合結合)が生じることになる。同時に、貫通孔内に保持具を配置することによって、保持具とホーニング砥石との間に形状嵌合結合が形成され、それが、貫通孔の軸方向に対して垂直に作用する。ホーニング砥石と保持具の間の形状結合により、かつ同時に保持具と工具本体が摩擦結合されている場合に、ホーニング砥石はホーニング砥石収容開口部から脱落しないように確保され、かつ、保持具とホーニング砥石収容開口部との間の摩擦結合を克服することができる力がホーニング砥石に作用しない限り、失われない。
【0016】
これらの利点は、比較的簡単に実施できる設計上の構造的措置によって達成することができる。貫通孔は、例えばガイド部を通り抜ける、好ましくは連続する円筒状の貫通孔によって実現することができ、その貫通孔は、製造技術的に、例えば、従来技術の欧州特許出願公開第2364813(A2)号明細書で提供されている、フライス形成された収容溝よりもずっと簡単に実現される。更に、保持具の多数の可能性が提供される。
【0017】
好ましくは、ホーニング砥石は貫通孔の領域内で(側面の間で測定された)幅を有し、かつ保持具は圧縮する外的な力が存在しない場合に、この幅よりも大きい長さを有するため、保持具は貫通孔内に次のように、すなわち導入されて弛緩した状態において貫通孔の両端部においてホーニング砥石の側面を越えて突出することができるように、挿入可能である。ホーニング砥石がホーニング砥石収容開口部内へ挿入されると、貫通孔の長手方向に測定された、保持具の長さが減少し、かつ圧接力が保持具を両側においてホーニング砥石収容開口部の制限面へ押しつける。
【0018】
展開によれば、保持具は少なくとも1つの弾性的に変形可能な保持要素を有しており、その保持要素が弛緩した、又は力のかからない状態において、貫通孔の内径よりも大きい外径を有し、それによって保持要素は弾性的変形とそれに伴うその直径の減少を受けて貫通孔内へ導入することができ、かつ導入された状態において摩擦結合によって自動的に貫通孔内に失われないように保持される。「失われない」というのは、特に、保持要素が何もしないのに、例えば重力の作用を受けて、貫通孔から脱落しないことを、意味している。工具を用いないで済む、この簡単な固定可能性によって、このように構成されたホーニング砥石の組み立てと取り扱いは、移送の際、工具本体内へ組み込む場合、又は取り外す場合に容易になる。
【0019】
形状変化で貫通孔内へ挿入することができ、かつそこに自動的に留まる、弾性的に変形可能な保持要素は、例えばエラストマー材料又はゴム材料からなることができる。ここでエラストマーと称されるのは、例えばシール要素のために使用されるような、形状のしっかしりした、しかし弾性的に変形可能なプラスチックである。この種の保持要素は、多くの寸法と形状において商業的に提供可能であるので、それらは場合によっては変更なしで保持要素として利用することができる。多くの適切なエラストマー材料は、ホーニング加工において存在するすべての冷却及び潤滑剤に対して、通常の作業条件のもとでは永続的に耐えるので、かなり長く使用した後でも、ホーニング砥石保持システムの機能は、確実に存在する。
【0020】
特に好ましい実施形態において、保持具は、弾性的に変形可能な材料からなる球の形態の少なくとも1つの保持要素を有している。負荷を受けない(圧縮されない)状態において、貫通孔の直径よりも少し大きい外径を有する球は、軽く変形し、比較的簡単に貫通孔内へ圧入されて、そこに自動的に留まり、貫通孔の長手方向にわずかに伸張する。球は、組み込むために優先方向づけを必要としないので、取り扱いも簡単である。
【0021】
多くの実施形態において、保持具は、弾性的に変形可能な材料からなる正確に1つの球を有している。この球は、弛緩した状態において好ましくは、貫通孔の内径よりも少し大きい直径を有しているので、球は軽く圧縮して貫通孔内へ導入することができ、かつそこに自動的に留まる。
【0022】
保持具として弾性的に変形可能な材料からなる唯一の球を使用することは、特に、ホーニング砥石が貫通孔の領域内で、球の直径よりも小さい幅を有するような場合に、効果的であって、それによって球は導入された状態において貫通孔の両端部においてホーニング砥石の側面を越えて突出することができるように、貫通孔内へ挿入可能である。ホーニング砥石が挿入された状態において、球はホーニング砥石収容開口部の互いに対向する制限面と直接摩擦結合で接触する。したがって、特に、ホーニング砥石収容開口部に対する特に確実な摩擦結合接触が形成される。というのは、平面的な接触が生じ、かつエラストマー材料と工具本体の金属材料との間の摩擦係数は、大体において比較的大きいからである。
【0023】
弾性的に変形可能な材料からなる少なくとも1つの球と、少なくとも1つの他の構成要素を使用して多部品保持具を構成することも、可能である。例えば、弾性的に変形可能な球を例えば金属から形成された硬い支持要素と組み合わせることができるので、球がホーニング砥石の片側において、そして支持要素がホーニング砥石の他の側において、ホーニング砥石収容開口部の複数の制限面に支持される。
【0024】
しかし、保持具の好ましい実施形態は、1つ又は複数の球のみによって構成される。すなわち、例えば、貫通孔をその幅方向(ガイド部の側面の間)の長さがその直径よりもずっと大きいように設計すると、効果的であり得る。寸法は、保持具が弾性的に変形可能な材料からなる複数の球、特に正確に2つの球を有し、それらが1列に貫通孔内へ挿入されるように、互いに調整することができる。球の直径は、貫通孔の内径よりも少し大きくすることができるので、球は貫通孔内に容易に留まる。球の直径の合計は、幅方向における貫通孔の長さよりも少し大きくされるので、最後の球又は外側に位置する球は、各側において貫通孔から少し突出することができる。多くの実施形態において、保持具は、弾性的に変形可能な材料からなる、正確に2つの同一寸法の球からなる。
【0025】
代替的に、保持具は、保持要素として用いられる、例えばばね鋼から形成されたコイル圧縮ばねを有することができ、そのコイル圧縮ばねはその長手方向(ばね軸線の方向)に圧縮可能であり、その長手方向をもって貫通孔の長手軸線に対してほぼ平行に貫通孔内へ挿入することができ、かつ好ましくは一方の端部又は両方の端部に、例えばエラストマー材料又は他のプラスチックからなる支持要素を有し、それらは組み込まれた状態においてホーニング砥石収容開口部の複数の制限面に支持される。
【0026】
ホーニング砥石が、適切に組み込まれた保持具を備えた唯一の貫通孔を有すれば、充分な場合もある。多くの実施形態において、複数の貫通孔、例えば2つ、3つ、4つ又は5つの、ホーニング砥石の長さにわたって分配された貫通孔が設けられている。これらの貫通孔は、同一の直径又は異なる直径を有することができる。多くの貫通孔内に、それぞれ保持具を配置することができる。各貫通孔内に保持具を配置する必要はないが、貫通孔の各々の中にそれぞれ保持具が配置されることが多い。貫通孔及び内蔵される保持具の数と設計に関しては、保持力とその空間的分配を要請に合わせて最適に調整することができる。
【0027】
発明の他の利点と視点が、請求項から、かつ本発明の実施例についての以下の説明から明らかにされ、それらの実施例について、以下で図を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は実施形態に基づくホーニング工具の縦断面を示している。
図2図2図1に示すホーニングの斜視図を示している。
図3図3図1に示すホーニング工具のホーニング砥石を斜視図で示している。
図4A図4Aは、1つの貫通孔の領域内で、ホーニング工具を工具軸線に対して垂直に向けられた断面で示している。
図4B図4Bは、他の1つの貫通孔の領域内で、ホーニング工具を工具軸線に対して垂直に向けられた断面で示している。
図4C図4Cは、さらに他の1つの貫通孔の領域内で、ホーニング工具を工具軸線に対して垂直に向けられた断面で示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、ホーニング工具100の実施形態が、ホーニング工具の工具軸線(回転軸線)102に対して平行な縦断面で示されている。図2は、図1に示すホーニング工具の斜視図を示している。図3は、図1に示すホーニング工具のホーニング砥石を斜視図で示している。
【0030】
ホーニング工具は、一つの砥石タイプのホーニング工具として構成されており、したがってその削り領域内に径方向に調節可能な唯一のホーニング砥石200を有している。ホーニング工具は、工具本体110を有しており、その工具本体は大体において、比較的大きい壁厚を有する両側が開放した管の形状を有しており、管の外径は、軸方向に部分的に変化している。
【0031】
工具本体の、図1の右に示す終端部は、ホーニング工具100を工作機械の、特にホーニング機械のスピンドルに結合するために用いられる。工具本体の、反対側の自由な終端部内に、ホーニング工具の削り領域があって、その削り領域はホーニング加工するために、加工すべき孔の内部へ導入される。工具本体は、削り領域内に、工具本体の内部から外側へ通じる矩形のホーニング砥石収容開口部140を有しており、ホーニング工具が組み込まれた場合にそのホーニング砥石収容開口部内にホーニング砥石200が正確な嵌め合いで収容される。ホーニング砥石収容開口部の軸方向の長さは、周方向に測定した幅の多数倍である。
【0032】
ホーニング砥石収容開口部140は、対をなして互いに対して平行な平坦な4つの制限面によって画成される。軸方向に対して平行に、周方向に作用する2つの平坦な制限面、すなわち第1の制限面140-1とそれに対して平行な第2の制限面140-2が設けられている。ホーニング工具が回転方向DRに回転する場合(図4Aを参照)に、第1の制限面140-1が先行し、かつ前方の制限面と称される。前方と後方の制限面は、それぞれ平坦であり、かつ、工具軸線102と側方の制限面140-1、140-2の間の中央に延びる径方向とによって形成される平面に対して平行に延びる。軸方向においては、ホーニング砥石収容開口部は、上方の制限面と下方の制限面とによって画成され、それらはそれぞれ工具軸線102に対する法線平面内に位置する。
【0033】
ホーニング砥石収容開口部140と対向する側において、工具には、互いに対して周方向に約90°変位した、硬質金属、焼結金属あるいは他の硬い、例えばセラミックの、材料からなるガイド要素180-1、180-2が取り付けられている。これらは、それらの滑らかに研磨された、湾曲した外側面をもって、ホーニング加工すべき孔の内壁に支持される。これらのガイド要素は、例えばダイヤモンドからなる層を支持することができ、その層が摩耗に強い外側面を形成する。
【0034】
ホーニング砥石200は、全体としてプレート形状であって、鋼からなるプレート形状の支持体要素210を有し、支持体要素210はしばしば支持ストリップとも称される。支持体要素の径方向外側には、削り層220が含まれており、その削り層は結合削り材料粒子を含んでいる。削り層220は、実施例において、支持体要素の平坦な外側に直接焼結形成されているが、他の実施形態においては、接着し、半田づけし、リベット又はねじによって支持体要素に備えることもできる。削り層と支持体要素の間に、削り層を支持するフラットな底が設けられることも、可能である。
【0035】
支持体要素210の径方向内側に、平坦な斜面212が形成されており、その斜面が、工具本体内で案内される送りロッド130の下方の端部に設けられた、対応する平坦な斜面と楔駆動の形式で次のように、すなわち送りロッド130がホーニング機械内に収容された送達ドライブによってホーニング工具の削り領域の方向へ押圧された場合に、ホーニング砥石200がホーニング砥石収容開口部140の内部で径方向外側へ押圧されるように、協働する。
【0036】
ホーニング砥石の部分は、組み込まれた状態において、ホーニング砥石収容開口部140の側方の制限面140-1、140-2の間に位置し、削り領域に亘って制限面と接触し、かつ径方向に移動する場合にはこれらの制限面によって滑り案内され、ガイド部215と称される。ガイド部215は、支持体要素210の一部と、それによって支持される削り層の比較的小さい部分を含み、したがってそれが所定の深さまでホーニング砥石収容開口部140内へ突出する。
【0037】
ホーニング砥石200とホーニング砥石収容開口部140の寸法は、次のように、すなわちホーニング砥石が工具本体の径方向に移動可能であるが、周方向においては側方の制限面140-1、140-2の間に実質的に遊びなしに収容されるように、互いに調整されている。軸方向において、すなわち上方と下方の制限面の間には、わずかな遊びが存在することができるが、ここでもできる限り遊びのない嵌め合いが設けられている。
【0038】
ホーニング砥石及び工具本体を形成する場合に、ホーニング砥石収容開口部の前方と後方の制限面140-1、140-2の間の内側間隔が、ホーニング砥石又は支持体要素の前方の側面212-1と後方の側面212-2の間で測定された、ホーニング砥石の幅BHよりもわずかしか大きくならないように、留意される。もっとも好ましい場合においては、比較的堅固な滑り嵌めが生じるので、ホーニング砥石は組み立てる場合に外側からは手動でホーニング砥石収容開口部内へ圧入されるが、ひとりでにホーニング砥石収容開口部から脱落することはできない。しかしホーニング砥石は、下方へ押圧される送りロッド130の作用を受けて、径方向外側へ滑り移動する。
【0039】
ホーニング工具は、ホーニング砥石保持システム300を搭載しており、同システムは、挿入されたホーニング砥石がホーニング砥石収容開口部から意図せずに脱落しないように、付加的な固定を形成する。ホーニング砥石保持システムのすべての構成部品、ホーニング砥石に形成されており、又はそれに固定されている。例えば、ホーニング砥石保持システム300に3つの貫通孔250-1、250-2、250-3が属しており、それらは支持体要素210内のホーニング砥石のガイド部215の領域内で削り層のすぐ近傍に形成されている。これらの貫通孔は、側面212-1から反対側の側面212-2へ(組み込まれた状態において)接線状に延びる方向(幅方向)に支持体要素210を通り抜けている。
【0040】
図4A~4Cは、図1の切断ラインA、B、Cに沿って3つの貫通孔の領域内で、工具軸線102に対して垂直に向けられた断面でホーニング工具100を示している。スピンドルから遠い2つの貫通孔250-1と250-2は、それぞれ同一の直径DB1とDB2を有しており、支持体要素の比較的狭い領域内の第3の貫通孔250-3は、比較的小さい、約半分の大きさの直径DB3を有している。
【0041】
貫通孔250-xの各々内には、ホーニング砥石保持システムの保持具が配置されている。直径の大きい孔の領域内で、保持具320-1、320-2は、弾性的に圧縮可能なエラストマー材料からなる唯一の球からなり、そのエラストマー材料はホーニング加工の冷却潤滑剤に対して永続的に耐性がある。第3の孔の領域内で、保持具320-3は、より小さい直径を有する、2つの同一の弾性的に圧縮可能な球からなる。
【0042】
これら球の直径は、各場合において球が圧縮されない状態において、内径DB1、DB2及びDB3よりも少し大きいように寸法決めされているので、それらは圧入された状態において自動的に貫通孔250-x内に保持される。さらに、2つの大きい貫通孔において、孔とその中に保持される球の直径は、挿入すべき球の直径がホーニング砥石の幅BHよりも数パーセント大きくなるように、設計されているので、球は、2つの側面の領域内で中央に挿入された状態において、孔長さの数パーセント、例えば5%~10%の間だけ、側面を越えて外側へ突出する(図4Aを参照)。
【0043】
それによって、球を挿入されたホーニング砥石200がホーニング砥石収容開口部140内へ導入される場合に、球は、ホーニング砥石収容開口部内へ導入することができるように、貫通孔の幅方向に少し圧縮される。それによって、図4Bにおいてよくわかるように、比較的大面積の押圧面が生じ、その押圧面内で球の圧縮されたエラストマー材料がホーニング砥石収容開口部140の前方と後方の制限面と直接接触する。それによって、球によって形成される保持具とホーニング砥石収容開口部又は工具本体との間に確実な摩擦結合が保証される。同時に、ホーニング砥石200は、挟持された球によって径方向に形状結合で保持されて、脱落しないように確保される。したがって保持要素として作用する球は、ホーニング砥石収容開口部の2つの対向する面に支持され、かつ形状結合で遊びなしに、かつ付勢を受けてホーニング砥石200内に捕捉されている。
【0044】
第3の貫通孔250-3においては、その直径DB3は幅方向における長さよりもずっと小さい(図4Cを参照)。ここでは寸法は、次のように、すなわち保持具250-3が同じ大きさの2つの球によって定められ、その外径が弛緩した状態において貫通孔の内径DB3よりも少し大きいように、互いに適合されている。さらに直径の合計は、貫通孔の領域内のホーニング砥石の幅よりも少し大きいので、球は弛緩した状態において側面を越えて少し張り出し、かつホーニング砥石収容開口部内へ滑らせて入れる場合に少し内側へ押圧されるので、球は弾性的に変形され、かつ復帰力が球をホーニング砥石収容機構部の両側において制限面へ圧接する。
【0045】
したがってここで例として説明する解決案においては、1つ又は複数の弾性的に圧縮可能な球又は類似のものが、ホーニング砥石内の1つ又は複数の貫通孔内に失われないように挿入される。保持具として作用する球(1つ又は複数)が、ホーニング砥石収容開口部の2つの対向する制限面に支持され、かつ形状結合で遊びなしに、かつ付勢を受けてホーニング砥石内にある。
【0046】
1つ又は複数の球の取り付けは、ホーニング砥石を顧客に発送する前にすでに、メーカー工場内で行うことができる。球は、ホーニング砥石内に付勢によって失われないように捕捉されているからである。それによって保持具の要素の顧客側の取り付けは、省くことができる。組み立てが終わったホーニング砥石を腐食しないように保存することは、組み込まれた球を含めて行うことができる。というのは、球の材料は、多くの化学薬品に対して膨潤や分解したりすることに対して耐性があるからである。
【0047】
大きな技術的手間なしで、従来の構造の既存のホーニング砥石を本発明に係るホーニング砥石へ改造することが可能である。というのは、単に支持体に貫通孔(1つ又は複数)を形成し、かつ適切な球をその貫通孔内へ圧入すれば済むからである。保持力は、有効な球の数の増大又は減少によって調整される。工具内のホーニング砥石溝(ホーニング砥石収容開口部)の接線部に球があるため、工具なしで組み立てることができ、最終顧客は間違いなくホーニング砥石を組み立てることができる。挿入される球は、正確に研磨することができる。したがって百分の数ミリメートルまでの許容誤差で正確に所望の直径が得られる。多くの場合において、例えば空気式の逆止め弁においても利用されるような、市場で一般的なエラストマー球を使用することができる。球は、例えば古典的なシール材料から、例えばニトリル-ブタジエン-ゴム(NBR、Perbunanの商標でも販売)から、あるいは例えばVitonの商標で販売されるような、適切なフッ素エラストマーから、形成することができる。これらの材料は、発明者の経験によれば、ホーニング領域内で使用される冷却潤滑剤に対して永続的に耐性がある。
【0048】
正しい付勢の変更ないし調節は、例えば球の材料の選択によって(例えば様々な硬さの球の選択によって)、球の収容開口部の直径の許容誤差範囲の選択によって、及び/又は球の数の選択によって、可能である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
【国際調査報告】