(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】統合冷却系を備えた電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
H02K9/19 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547780
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 US2021017229
(87)【国際公開番号】W WO2022173418
(87)【国際公開日】2022-08-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500107762
【氏名又は名称】ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】アラヒャリ,アッバス エー.
(72)【発明者】
【氏名】セーヴィアス,キンバリー レイ
(72)【発明者】
【氏名】タングドゥ,ジャガディーシュ クマール
(72)【発明者】
【氏名】スール,アリトラ
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP08
5H609PP09
5H609QQ05
5H609QQ23
(57)【要約】
電動機及びその固定子について説明する。電動機の固定子は、第一ヘッダと、第一ヘッダに流体連通された第二ヘッダと、第一ヘッダ及び第二ヘッダに流体連通され、1つまたは複数のフローチャネルに沿って第一ヘッダから第二ヘッダに通過する冷却流体を受け入れる複数の巻線と、第一ヘッダ、第二ヘッダ、1つまたは複数のフローチャネル、及び複数の巻線のうちの少なくとも1つと熱的にインタラクトするように配置された1つまたは複数の相変化材料要素とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ヘッダと、
前記第一ヘッダに流体連通された第二ヘッダと、
前記第一ヘッダ及び前記第二ヘッダに流体連通され、1つまたは複数のフローチャネルに沿って前記第一ヘッダから前記第二ヘッダに通過する冷却流体を受け入れる複数の巻線と、
前記第一ヘッダ、前記第二ヘッダ、前記1つまたは複数のフローチャネル、及び前記複数の巻線のうちの少なくとも1つと熱的にインタラクトするように配置される1つまたは複数の相変化材料要素と、
を含む、電動機の固定子。
【請求項2】
前記1つまたは複数の相変化材料要素は、前記複数の巻線のセクションの間に配置された相変化材料要素を含む、請求項1に記載の固定子。
【請求項3】
前記1つまたは複数の相変化材料要素は、前記複数の巻線のうちの1つの巻線内に配置された相変化材料要素を含む、請求項1に記載の固定子。
【請求項4】
前記1つまたは複数の相変化材料要素は、前記1つまたは複数のフローチャネルのうちの1つの中に配置された相変化材料要素を含む、請求項1に記載の固定子。
【請求項5】
前記1つまたは複数の相変化材料要素は、前記複数の巻線の半径方向内面に沿って配置された相変化材料要素を含む、請求項1に記載の固定子。
【請求項6】
前記1つまたは複数の相変化材料要素は、前記第一ヘッダ内に配置された相変化材料要素を含む、請求項1に記載の固定子。
【請求項7】
前記第一ヘッダは、前記固定子の出口ヘッダである、請求項6に記載の固定子。
【請求項8】
前記第一ヘッダ内に配置され、前記第一ヘッダ内の前記相変化材料要素と前記冷却流体との間の熱接触の増加した表面積を提供するように構成された1つまたは複数の伝熱促進特徴をさらに含む、請求項6に記載の固定子。
【請求項9】
前記第一ヘッダは入口ヘッダであり、前記第二ヘッダは出口ヘッダであり、前記冷却流体は、前記第一ヘッダを通って前記第二ヘッダに流れ、前記複数の巻線に冷却を提供するように構成される、請求項8に記載の固定子。
【請求項10】
前記1つまたは複数の相変化材料要素は、パラフィン系ワックス、塩水和物、アクリル系材料、及び金属系材料を含む、請求項1に記載の固定子。
【請求項11】
回転軸を中心に回転可能な回転子と、
前記回転子と固定子との間に半径方向エアギャップを有して前記回転子に対して配置された前記固定子であって、
第一ヘッダ、
前記第一ヘッダに流体連通された第二ヘッダ、
前記第一ヘッダ及び前記第二ヘッダに流体連通され、1つまたは複数のフローチャネルに沿って前記第一ヘッダから前記第二ヘッダに通過する冷却流体を受け入れる複数の巻線、ならびに
前記第一ヘッダ、前記第二ヘッダ、前記1つまたは複数のフローチャネル、及び前記複数の巻線のうちの少なくとも1つと熱的にインタラクトするように配置される1つまたは複数の相変化材料要素、
を有する、前記固定子と、
を含む、電動機。
【請求項12】
前記1つまたは複数の相変化材料要素は、前記複数の巻線のセクションの間に配置された相変化材料要素を含む、請求項11に記載の電動機。
【請求項13】
前記1つまたは複数の相変化材料要素は、前記複数の巻線のうちの1つの巻線内に配置された相変化材料要素を含む、請求項11に記載の電動機。
【請求項14】
前記1つまたは複数の相変化材料要素は、前記1つまたは複数のフローチャネルのうちの1つの中に配置された相変化材料要素を含む、請求項11に記載の電動機。
【請求項15】
前記1つまたは複数の相変化材料要素は、前記複数の巻線の半径方向内面に沿って配置された相変化材料要素を含む、請求項11に記載の電動機。
【請求項16】
前記1つまたは複数の相変化材料要素は、前記第一ヘッダ内に配置された相変化材料要素を含む、請求項11に記載の電動機。
【請求項17】
前記1つまたは複数の相変化材料要素は、パラフィン系ワックス、塩水和物、アクリル系材料、及び金属系材料を含む、請求項11に記載の電動機。
【請求項18】
回転軸を中心に回転可能な回転子、及び前記回転子と固定子との間に半径方向エアギャップを有して前記回転子に対して配置された前記固定子を有する電動機を含む航空機電源系であって、
前記固定子は、
第一ヘッダと、
前記第一ヘッダに流体連通された第二ヘッダと、
前記第一ヘッダ及び前記第二ヘッダに流体連通され、1つまたは複数のフローチャネルに沿って前記第一ヘッダから前記第二ヘッダに通過する冷却流体を受け入れる複数の巻線と、
前記第一ヘッダ、前記第二ヘッダ、前記1つまたは複数のフローチャネル、及び前記複数の巻線のうちの少なくとも1つと熱的にインタラクトするように配置される1つまたは複数の相変化材料要素と、
を含む、航空機電源系。
【請求項19】
前記1つまたは複数の相変化材料要素は、前記複数の巻線のセクションの間に配置された相変化材料要素を含む、請求項18に記載の航空機電源系。
【請求項20】
前記1つまたは複数の相変化材料要素は、前記第一ヘッダ内に配置された相変化材料要素を含む、請求項18に記載の航空機電源系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動機に関し、さらに特に、統合冷却系を有する組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動機は、固定子及び回転子を含み得、固定子内に電動機巻線を備え、通電時、中心軸を中心に回転子の回転を駆動する。固定子のスロット内に位置している電動機巻線で熱が発生する。巻線は、固定子を構成する絶縁層及び積層鋼層によって電動機の外部から分離される。これらの内部熱抵抗の要因により、許容できる熱の発生が制限されるため、巻線で許容できる電流が制限される。電動機のエネルギー密度は、通常、固定子の電動機巻線からの熱放散によって制限される。満たすべき要件は、電動機巻線での最大ホットスポット温度を超えないようにすることである。従来の電動機の熱管理には、電動機ジャケットの外側にある大きいフィンからの自然対流、または電動機ジャケット内の液体冷却系が含まれる。これらの解決策は両方ともジャケットの追加により、望ましくないことに電動機の容積及び/または重量を増加させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示のいくつかの実施形態によれば、電動機の固定子が提供される。固定子は、第一ヘッダと、第一ヘッダに流体連通された第二ヘッダと、第一ヘッダ及び第二ヘッダに流体連通され、1つまたは複数のフローチャネルに沿って第一ヘッダから第二ヘッダに通過する冷却流体を受け入れる複数の巻線と、第一ヘッダ、第二ヘッダ、1つまたは複数のフローチャネル、及び複数の巻線のうちの少なくとも1つと熱的にインタラクトするように配置された1つまたは複数の相変化材料要素とを含む。
【0004】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、固定子のさらなる実施形態は、1つまたは複数の相変化材料要素が複数の巻線のセクションの間に配置された相変化材料要素を含むことを有し得る。
【0005】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、固定子のさらなる実施形態は、1つまたは複数の相変化材料要素が複数の巻線のうちの1つの巻線内に配置された相変化材料要素を含むことを有し得る。
【0006】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、固定子のさらなる実施形態は、1つまたは複数の相変化材料要素が1つまたは複数のフローチャネルのうちの1つの中に配置された相変化材料要素を含むことを有し得る。
【0007】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、固定子のさらなる実施形態は、1つまたは複数の相変化材料要素が複数の巻線の半径方向内面に沿って配置された相変化材料要素を含むことを有し得る。
【0008】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、固定子のさらなる実施形態は、1つまたは複数の相変化材料要素が第一ヘッダ内に配置された相変化材料要素を含むことを有し得る。
【0009】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、固定子のさらなる実施形態は、第一ヘッダが固定子の出口ヘッダであることを含み得る。
【0010】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、固定子のさらなる実施形態は、第一ヘッダ内に配置され、第一ヘッダ内の相変化材料要素と冷却流体との間の熱接触の増大した表面積を提供するように構成された1つまたは複数の伝熱促進特徴を含み得る。
【0011】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、固定子のさらなる実施形態は、第一ヘッダが入口ヘッダであり、第二ヘッダが出口ヘッダであり、冷却流体が第一ヘッダを通って第二ヘッダに流れ、複数の巻線に冷却を提供するように構成されることを含み得る。
【0012】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、固定子のさらなる実施形態は、1つまたは複数の相変化材料要素がパラフィン系ワックス、塩水和物、アクリル系材料、及び金属系材料を含むことを有し得る。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、電動機が提供される。電動機は、回転軸を中心に回転可能な回転子、及び回転子と固定子との間に半径方向エアギャップを有して回転子に対して配置された固定子を含む。固定子は、第一ヘッダと、第一ヘッダに流体連通された第二ヘッダと、第一ヘッダ及び第二ヘッダに流体連通され、1つまたは複数のフローチャネルに沿って第一ヘッダから第二ヘッダに通過する冷却流体を受け入れる複数の巻線と、第一ヘッダ、第二ヘッダ、1つまたは複数のフローチャネル、及び複数の巻線のうちの少なくとも1つと熱的にインタラクトするように配置された1つまたは複数の相変化材料要素とを含む。
【0014】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、電動機のさらなる実施形態は、1つまたは複数の相変化材料要素が複数の巻線のセクションの間に配置された相変化材料要素を含むことを有し得る。
【0015】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、電動機のさらなる実施形態は、1つまたは複数の相変化材料要素が複数の巻線のうちの1つの巻線内に配置された相変化材料要素を含むことを有し得る。
【0016】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、電動機のさらなる実施形態は、1つまたは複数の相変化材料要素が1つまたは複数のフローチャネルのうちの1つの中に配置された相変化材料要素を含むことを有し得る。
【0017】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、電動機のさらなる実施形態は、1つまたは複数の相変化材料要素が複数の巻線の半径方向内面に沿って配置された相変化材料要素を含むことを有し得る。
【0018】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、電動機のさらなる実施形態は、1つまたは複数の相変化材料要素が第一ヘッダ内に配置された相変化材料要素を含むことを有し得る。
【0019】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、電動機のさらなる実施形態は、1つまたは複数の相変化材料要素がパラフィン系ワックス、塩水和物、アクリル系材料、及び金属系材料を含むことを有し得る。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、航空機電源系が提供される。航空機電源系は、回転軸を中心に回転可能な回転子と、回転子と固定子との間に半径方向エアギャップを有して回転子に対して配置された固定子とを有する電動機を含む。固定子は、第一ヘッダと、第一ヘッダに流体連通された第二ヘッダと、第一ヘッダ及び第二ヘッダに流体連通され、1つまたは複数のフローチャネルに沿って第一ヘッダから第二ヘッダに通過する冷却流体を受け入れる複数の巻線と、第一ヘッダ、第二ヘッダ、1つまたは複数のフローチャネル、及び複数の巻線のうちの少なくとも1つと熱的にインタラクトするように配置された1つまたは複数の相変化材料要素とを含む。
【0021】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、航空機電源系のさらなる実施形態は、1つまたは複数の相変化材料要素が複数の巻線のセクションの間に配置された相変化材料要素を含むことを有し得る。
【0022】
本明細書に記載される1つもしくは複数の特徴に加えて、または代替として、航空機電源系のさらなる実施形態は、1つまたは複数の相変化材料要素が第一ヘッダ内に配置された相変化材料要素を含むことを有し得る。
【0023】
前述の特徴及び要素は、別段に明記されない限り、非排他的に様々な組み合わせで実行されてもよく、または利用されてもよい。これらの特徴及び要素、ならびにそれらの動作は、下記の説明及び添付図面に照らして、より明らかになるであろう。しかし、下記の説明及び図面は、本質的に例示及び説明を意図したものであり、限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0024】
様々な特徴は、開示される非限定的な実施形態の次の詳細な説明を読めば、当業者には明らかになるであろう。詳細な説明に付随する図面は、次のように簡単に説明することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1B】
図1Aの電動機の固定子コアの一実施形態の断面図である。
【
図2A】本開示の一実施形態による、電動機の一部の概略図である。
【
図3A】本開示の一実施形態による、電動機のヘッダ構成の概略図である。
【
図3B】ヘッダ構成に取設された巻線を示す、
図3Aの電動機の概略図である。
【
図4】本開示の一実施形態による、電動機の構成の概略図である。
【
図5】本開示の実施形態を採用することができる航空機の電源系の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1A~1Bを参照すると、本開示の実施形態を組み込むことができる電動機100の概略図が示されている。
図1Aは電動機100の断面図を示し、
図1Bは電動機100の固定子コアの断面図を示す。電動機100は、回転軸104を中心に回転するように構成された回転子102を含む。固定子106は、回転軸104に対して回転子102の半径方向外側に位置しており、回転子102と固定子106との間に半径方向エアギャップ108が位置している。図示のように、当業者には理解されるように、回転子102は、回転子102に回転運動を与え得るシャフト110に設置されてもよく、または回転子102の回転によって駆動されてもよい。回転子102及びシャフト110は、回転子102及びシャフト110が一体として回転軸104を中心に回転するように互いに軸止され得る。
【0027】
固定子106は、複数の導電性固定子巻線114が配置される固定子コア112を含む。いくつかの実施形態では、
図1Aに示されるように、固定子コア112は、回転軸104に沿って積み重ねられている、軸方向に積み重ねられた複数の積層116から形成される。いくつかの実施形態では、積層116は鋼材料から形成されるが、当業者であれば、他の材料を利用できることを容易に理解するであろう。固定子巻線114は、示されるように、固定子コア112を通って延在するコア片118と、固定子コア112の各軸方向固定子端部122から延出して周方向に隣接するコア片118を連結するエンドターン片120とを含む。固定子巻線114がそこを通る電流によって通電されると、結果として生じる磁界は、回転軸104を中心に回転子102の回転を駆動する。
図1Aが固定子巻線114から半径方向内向きに配置された固定子コア112を示しているが、本開示の範囲から逸脱することなく、他の構成も可能であることが理解されよう。例えば、いくつかの実施形態では、固定子構造体は、回転する回転子構造体から半径方向内向きに配置され得る。
【0028】
図1Bは、固定子コア112の軸方向断面図である。固定子コア112の各積層116は、複数の固定子歯部126を備えた半径方向外側リム124を含み、これら複数の固定子歯部は、外側リム124から回転軸104に向かい半径方向内向きに延出する。固定子歯部126のそれぞれは、歯先端部128で終端し、この歯先端部は、回転子102の回転子外面130(
図1Aに示す)と共に、半径方向エアギャップ108を画定することができる。周方向に隣接する固定子歯部126は、その間に軸方向に延在する歯部ギャップ132を画定する。さらに、いくつかの実施形態では、複数の固定子フィン134は、外側リム124から半径方向外向きに延出する。
【0029】
図1A~1Bに示されるような電動機は、高密度構成、様々な動作パラメータ、またはその他の理由により、冷却を必要とする場合がある。例えば、高出力密度の航空クラスの電動機及びドライブには、電動機/ドライブの適切な動作を確保するために高度な冷却技術が必要な場合がある。これらの機械は一般に高出力定格では熱制限があり、それらの性能を、熱制限を緩和することで向上させることができる。所望の温度を維持するために、そのシステムに熱管理系(TMS)を統合して、そのシステムの構成要素に冷却を提供する。航空機に搭載される場合、電力要件、つまり、熱管理系(TMS)の負荷は、離陸中に大幅に高くなる。離陸状態(つまり、最大負荷)に合わせてTMSのサイズを決定すると、それらのような負荷に対応するためにTMSの重量が重くなる。このため、それらのような負荷が発生しない巡航状態中に重量が重くなり出力密度が低下するため、高い冷却能力のTMSは必要ない。それらのような航空用途では、重量制約及び熱負荷容量のバランスを取ることが重要である。
【0030】
それらのような考慮事項から、本開示の実施形態は、システムの重量を最小にしながら、離陸中に受けるような過渡的な負荷に対応するために、電動機及び駆動冷却系の構成要素内に相変化材料(「PCM」)を戦略的に埋め込むことまたは組み込むことを対象とする。本開示のいくつかの実施形態によれば、材料は、TMSの冷却フローチャネルまたはヘッダに埋め込まれてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、駆動構成要素の場合、PCMをコールドプレートに埋め込むことができる。PCMは、構成要素の温度制限に基づいて選択されることができる。例えば、限定ではないが、本開示の実施形態による冷却に使用される材料には、高温用途向けのパラフィン系ワックス、塩水和物、アクリル系PCM、及び金属系PCMが含まれ得る。PCMの体積は、電動機系の容積または重量を大幅に増加させることなく、離陸飛行動作による過剰な負荷に対応するサイズに作られることができる。PCMは、システムに統合されている筐体内に含まれる場合がある。PCMを収容する筐体の形状、幾何学的形状、及び容積は、熱接触を最大にし、PCMへの、そしてPCMからの熱伝達を高めるために(例えば、内向きまたは外向きに)拡張された表面を有し得る。ハウジングのそれらのような表面特徴は、ヒートパイプ、フィン、ピンなどによってPCMを特定のホットスポット及び排熱面に熱連通することができる。いくつかの実施形態によれば、PCMのハウジング、ケーシング、または格納材料は、例えば、限定されないが、アルミニウム、銅、ポリマー、ポリマー複合材料、誘電材料などであってもよい。
【0031】
動作中に、追加の流体及び/または構造体を必要とせずに、PCM要素を使用して熱エネルギーを吸収するため、システムの負荷容量を増大させることができる。PCM要素は、通常の動作使用中には固体として配置され得、熱負荷が設定点を上回り増加すると、PCMは固体から液体または気体に相変化することができる。材料の変化は高温によって起こる。高温負荷が取り除かれた後、PCM要素は変化して通常の状態(例えば、固体)に戻り、保持された熱は通常の冷却チャネル(例えば、システムの従来の冷却流体を使用)を通じて緩徐に放散され得る。
【0032】
ここで
図2A~2Bを参照すると、航空機の電源系に使用される電動機の一部の概略図が示されている。
図2A~2Bは、例えば、上述のものと同様の巻線202を有する固定子200の一部を示す。固定子200の端部には、第一ヘッダ204及び第二ヘッダ206があってもよい。冷却流体は、第一ヘッダ204内に運搬され、巻線202を通過し、またはそれらに沿って通過し、第二ヘッダ206内に運搬されることができる。冷却流体は、第一及び第二ヘッダ204、206を含む流路を能動的に通過することができ、固定子200に冷却を提供することができる。第一及び第二ヘッダ204、206は、その中に冷却流体を収容して保持するための中空体構造であってもよい。いくつかの実施形態では、第一及び第二ヘッダ204、206は流体連通されてもよく、他の実施形態では、第一及び第二ヘッダ204、206は熱連通されてもよいが、流体連通されなくてもよい。
【0033】
図2A~2Bに示される固定子200は、固定子200の周囲の特定の位置での冷却を促進して改善するために全体に配置された相変化材料(PCM)を含む。PCMは、最大動作中(例えば、航空機の離陸中)の高負荷位置である特定の位置に配置され得る。例えば、
図2A~2Bに示されるように、第一PCM要素208は、固定子200の巻線202の間に配置され得る。第一PCM要素208は、第一ヘッダ204と第二ヘッダ206との間に延在してもよく、それらに熱的に接触してもよい。第二PCM要素210は、巻線202の内側半径または内径上に(例えば、巻線202の半径方向内面に沿って)配置され得、また、第一ヘッダ204と第二ヘッダ206との間に延在し得るが、そのような構成は必須ではない。いくつかの実施形態では、同様のPCM要素は、巻線202の外側半径または外径上に(例えば、巻線202の半径方向内面に沿って)配置され得る。いくつかの実施形態では、巻線に対するPCM要素の内側及び外側の両方の配置が使用されてもよく、またはどちらか一方のみが使用されてもよい。
【0034】
第三PCM要素212は、固定子200のヘッダ内に配置され得る。例えば、
図2Bに示されるように、第三PCM要素212は、第一ヘッダ204内に配置される。第一ヘッダ204は、通常の冷却動作のために冷却流体を受け入れるための一次キャビティ214を含む。しかしながら、これは、冷却流体の熱容量負荷を増大させることができる第三PCM要素212によって補われる。一次キャビティ214内の冷却流体と第三PCM要素212との間の熱接触及び熱交換を増加させるために、1つまたは複数の伝熱促進特徴216を一次キャビティ214と第三PCM要素212との間に配置することができる。伝熱促進特徴216は、例えば、ピン、フィン、ヒートパイプなどを含むことができる。
【0035】
図2Bに示されるように、第一及び第二PCM要素208、210は別個の要素であってもよい。他の実施形態では、第一及び第二PCM要素208、210は単一構造として形成され得、巻線202が結合されたPCM要素構造の構造内に配置されてもよい。さらに、第二ヘッダ206がいかなる内部構造も示されていないが、当業者であれば、第二ヘッダ206が第一ヘッダ204に関して示されたものと同様の内部構造及びPCM要素を含むことができることを理解するであろう。
【0036】
ここで
図3A~3Cを参照すると、本開示の一実施形態による電動機300の一部の概略図が示されている。
図3Aはヘッダ構成302を示し、
図3Bはそこに巻線304が連結されたヘッダ構成302を示し、
図3Cは電動機300の一部の拡大図を示す。ヘッダ構成300は、入口308を有する入口ヘッダ306と、出口312を有する出口ヘッダ310とを含む。冷却流体は、入口308を通って入口ヘッダ306に流入し、流路314を通って出口ヘッダ310に流れ、出口312を通って出ることができる。
【0037】
過渡的な熱負荷の増加に対応するために、1つまたは複数のPCM要素316a、316b、316c、316dを電動機300内に配置することができる。例えば、
図3Aに示されるように、第一PCM要素316aは、入口ヘッダ306と出口ヘッダ310との間に配置され得る。
図3B~3Cに示されるように、第二PCM要素316bは、巻線304の隣接するセクションの間に配置され得る。第三PCM要素316cは、電動機300内の巻線304の内部に沿って並ぶように配置され得る。第四PCM要素316dは、ヘッダ306、310の一方または両方の内に配置されることができ、
図3Cでは出口ヘッダ310内に示されている。
図3Cに示されるように、出口ヘッダ310は、出口ヘッダ310内の冷却流体と第四PCM要素316dとの間の熱伝達を増大させるように配置された1つまたは複数の伝熱促進特徴318を含む。伝熱促進特徴318は、例えば、ピン、フィン、ヒートパイプなどを含むことができる。
【0038】
高負荷中には、PCM要素316a~dは熱負荷の一部を吸収することができることにより、システムの熱効率が向上することができる。PCM要素316a~dのそれぞれは、内部に相変化材料を含むハウジングから形成され得る。PCM要素316a~dの外側対向面は、1つまたは複数の伝熱促進特徴を含むことができ、これら1つまたは複数の伝熱促進特徴は、熱連通されるそれぞれの構成要素内に延在することができる。
【0039】
図3Cに示されるように、巻線冷却流体の流路314は、入口ヘッダ306から巻線304に入り、それら巻線を通り、出口ヘッダ310に入り、冷却系を通して循環する。冷却流体が入口ヘッダ306、巻線304、及び出口ヘッダ310のそれぞれを通って流れると、PCM要素316a~dは冷却流体から熱を奪うことができる。この熱エネルギーは、負荷が低減されるまで、または取り除かれるまで、PCM要素316a~d内に蓄えられる。PCM要素316a~dが熱を吸収すると、相変化材料の相が変化する(例えば、固体から液体、固体から気体、または液体から気体)。負荷が取り除かれ、全体の温度が低下すると、PCM要素316a~d内に保持された熱が冷却流体に吸収され、PCM要素316a~dの相が元に戻る。したがって、流路314内でその流路に沿って、及び/または電動機300内に配置されたPCM要素316a~dまたは他のPCM要素を含むことにより、受動的に過渡的な負荷容量が増加する。
【0040】
ここで
図4を参照すると、本開示の一実施形態による電動機400の一部の概略図が示されている。電動機400は、固定子404の周囲または内部に配置され得る回転子(例えば、回転磁石)を含むことができる。固定子404は、輪状または環状の形状に分配されたまたは配置された巻線406を含む。巻線406は動作中に熱を発生するため、冷却系408を使用してアクティブ冷却が提供される。冷却系408は、入口ヘッダ410及び出口ヘッダ412を含む。フローチャネル414は、入口ヘッダ410から巻線406を通って出口ヘッダ412まで延在する。冷却流体は、ヘッダ410、412及びフローチャネル414を介してポンピングされる、または通過する。冷却流体は、巻線406から熱を吸収して除去するように構成される。したがって、冷却流体は、入口ヘッダ410からフローチャネル414を通過して出口ヘッダ412に出るにつれて温度が上昇する。この構成が通常の動作には適しているが、過渡的な負荷の高い動作(例えば、航空機の離陸)中には、それらのような負荷の増加に対応するために、システムにより高い容量が必要になる場合がある。上述のように、1つの解決策は、冷却系408のサイズ/容量を増大させることである。それらのような冷却能力の増加には、容積及び重量に関連する欠点を伴い、さらに複雑になる可能性がある。
【0041】
しかしながら、
図4に示されるように、電動機400の様々な位置にPCM要素416を含むことにより、例えば高負荷の動作中に、電動機400に補うべき追加の冷却を与えることができる。示されるように、PCM要素416は、電動機400の様々な構成要素上またはその内部に配置される。この例示的な実施形態では、PCM要素416は、入口ヘッダ410及び出口ヘッダ412上に、フローチャネル414に沿ってまたはそれらの内に、そして巻線406に沿ってまたはその内に配置される。
【0042】
図5を参照すると、航空機502の電源系500が示されている。電源系500は、1つまたは複数の機関504、1つまたは複数の電動機506、様々な電源504、506を電気接続する電源バス、及び機関504及び/または電動機506によって電力を供給され得る複数の電気装置510を含む。電源系500は、電力線またはケーブル516を介して電力514を分配する配電系512を含む。電動機506は、上記に示され説明されるような冷却技術を含んでもよい。
【0043】
「約」という用語は、出願時に利用可能である器具による特定の量の測定に関連付けられた誤差の程度を含むことが意図されている。例えば、「約」は、所与の値の±8%または5%または2%の範囲を含むことができる。
【0044】
本明細書に使用される専門用語は、特定の実施形態を説明する目的のみであり、本開示を限定するようには意図されていない。本明細書で使用されるように、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈が別段に明確に示さない限り、複数形も含むことが意図されている。用語「含む(comprise)」及び/または「含む(comprising)」は、本明細書で使用されるとき、述べられる特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素及び/またはそれらのグループの存在または追加を排除する訳ではないことがさらに理解されよう。
【0045】
本開示は1つ以上の例示的な実施形態を参照して説明されているが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更が加えられてもよく、本開示の要素は均等物で置き換えられてもよいことが、当業者には理解されよう。加えて、本開示の必須の範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本開示の教示に適合させるために多くの修正が行われる場合もある。したがって、本開示は、本開示を実施するために企図された最適な態様として開示される特定の実施形態に限定されるのではなく、本開示は、添付の特許請求の範囲内に収まる全ての実施形態を含むことが意図されている。
【国際調査報告】