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特表2024-506629mini環状RNA治療薬及びワクチン、並びにそれらの使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】mini環状RNA治療薬及びワクチン、並びにそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/85 20060101AFI20240206BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 39/07 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240206BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
C12N15/85 Z ZNA
A61K9/127
A61K9/51
A61K9/16
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K48/00
A61K39/07
A61K39/00 H
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547918
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 US2022015604
(87)【国際公開番号】W WO2022173730
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】63/186,899
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/147,371
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】599170663
【氏名又は名称】バージニア コモンウェルス ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(74)【代理人】
【識別番号】100156443
【弁理士】
【氏名又は名称】松崎 隆
(72)【発明者】
【氏名】ジュー グイジ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ユー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA31
4C076AA65
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB25
4C076CC27
4C076FF31
4C084AA13
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA03
4C085AA38
4C085BB11
4C085BB23
4C085CC31
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG10
(57)【要約】
合成mini環状RNAワクチン構築物が、提供される。合成mini環状RNA構築物は、1つ又は複数の抗原をコードして、例えば、癌又は感染因子に対するワクチンとして、用いられる。幾つかの態様において、1つ又は複数の抗原は、mini環状RNAのローリングサークル型翻訳(RCT)によりコンカテマー型ペプチドとして翻訳される。
【選択図】図2A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
30から3300までのヌクレオチドを含むmini環状RNA(circRNA)ワクチンベクターであって、前記mini circRNAワクチンベクターを形成するように互いにライゲートした1から40までの合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列で構築されており、
内部リボソーム進入部位(IRES)及び/又はコザック配列を含むノンコーディング領域と、
少なくとも1つの免疫原をコードするヌクレオチド配列を含むコーディング領域と、
を含み、
場合により1つ又は複数のリンカー又はスペーサをコードするヌクレオチド配列を含む、
ことを特徴とする、mini circRNAワクチンベクター。
【請求項2】
少なくとも1つの免疫原が、免疫原特異的CD4T細胞及び免疫原特異的CD8キラーT細胞からなる群から選択される少なくとも1つの細胞型において細胞性免疫を誘導する、
請求項1記載のmini circRNAワクチンベクター。
【請求項3】
ライゲーションが、dsRNAを含む外来のRNA断片を導入しない、
請求項1記載のmini circRNAワクチンベクター。
【請求項4】
前記コーディング領域のオープンリーディングフレームの直後に終止コドンが存在しない、
請求項1記載のmini circRNAワクチンベクター。
【請求項5】
前記1から40までの合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列が、40から150ヌクレオチド長の範囲内である、
請求項1記載のmini circRNAワクチンベクター。
【請求項6】
前記ノンコーディング領域が、300以下のヌクレオチドを含む、
請求項1記載のmini circRNAワクチンベクター。
【請求項7】
前記ノンコーディング領域が、150以下のヌクレオチドを含む、
請求項1記載のmini circRNAワクチンベクター。
【請求項8】
前記1つ又は複数のリンカー又はスペーサをコードする前記ヌクレオチド配列がさらに、ペプチド切断部位又は構造的ペプチドリンカーをコードする、
請求項1記載のmini circRNAワクチンベクター。
【請求項9】
前記IRESが、LINE1、crTMV、Rbm3、及びヒトc-MYCからなる群から選択される、
請求項1記載のmini circRNAワクチンベクター。
【請求項10】
前記少なくとも1つの免疫原が、腫瘍関連抗原、腫瘍ネオ抗原、腫瘍ウイルス抗原、及び癌精巣抗原からなる群から選択される、
請求項1記載のmini circRNAワクチンベクター。
【請求項11】
前記コーディング領域が複数のペプチド免疫原をコードしており、前記複数のペプチド免疫原が、ペプチド切断部位を含むリンカー又は構造的ペプチドリンカーを介して分かれている、
請求項1記載のmini circRNAワクチンベクター。
【請求項12】
前記コーディング領域が、ペプチド切断部位又は構造的リンカーを有さず、連続で配置された複数のペプチド免疫原をコードするヌクレオチド配列を含み、複数の免疫原をペプチドコンカテマーとして翻訳することができる、
請求項1記載のmini circRNAワクチンベクター。
【請求項13】
前記mini circRNAが、リポソーム、エクソソーム、ナノ粒子、及び、脂質ナノ粒子からなる群から選択されるナノキャリア内に封入されている、
請求項1記載のmini circRNAワクチンベクター。
【請求項14】
癌の処置を必要とする対象において癌を処置する方法であって、
前記癌の細胞内で発現する癌抗原を同定するステップと;
コーディング領域が前記癌抗原の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列を含み、かつ、ノンコーディング領域が少なくとも1つの調節エレメントを含む、mini環状RNA(circRNA)ワクチンベクターを合成するステップと、
治療有効量の前記circRNAワクチンベクターを前記対象の筋肉内、静脈内、皮下、皮内、鼻腔内、又は気管内に投与するステップと、
を含み、
前記治療有効量が、前記対象において免疫反応を誘導するのに充分な量である、
ことを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記投与するステップを1週から8週までの間隔を入れて繰り返す、
請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記mini circRNAワクチンベクターを、PD-1阻害剤及びPD-L1阻害剤からなる群から選択される免疫療法薬と併用して投与する、
請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの免疫原が、前記対象のHLAと適合している、
請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記コーディング領域が、変異体KRAS抗原、黒色腫腫瘍特異的抗原、及び、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ腫瘍特異的抗原からなる群から選択される少なくとも1つの免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む、
請求項14記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの翻訳開始エレメントを有する80から2000までのヌクレオチドを含み、かつ、少なくとも1つの免疫原をコードする、それを必要とする対象のためのセルフアジュバントしたmini環状RNA(circRNA)を調製する方法であって、前記circRNAを、
1つ若しくは複数のDNAスキャフォールド又はスプリントを準備するステップと;
1つ又は複数の直鎖状一本鎖RNAオリゴヌクレオチドを合成するステップと;
前記1つ又は複数のDNAスキャフォールド又はスプリントと、前記1つ又は複数の直鎖状一本鎖RNAオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ、又は、前記1つ又は複数の直鎖状一本鎖RNAヌクレオチドの複数と、をハイブリダイズさせるステップであって、前記1つ又は複数の直鎖状一本鎖RNAオリゴヌクレオチドの少なくとも1つの5’及び3’末端、又は、1つ又は複数の直鎖状一本鎖RNAオリゴヌクレオチドの前記複数のうちの少なくとも2つの5’及び3’末端、を互いに接近させるステップと;
前記少なくとも1つの一本鎖RNAオリゴヌクレオチドの前記5’及び3’末端、又は、前記1つ又は複数の直鎖状一本鎖RNAオリゴヌクレオチドの前記複数のうちの前記2つの前記5’及び3’末端をライゲートして、前記mini circRNAワクチンを形成させるステップと;
前記1つ又は複数のDNAスキャフォールド又はスプリントを除去するステップと;
前記mini circRNAを精製するステップと;
前記mini circRNAを医薬的に許容できる担体中に製剤化するステップと、
により合成する、
ことを特徴とする、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月9日出願の米国特許仮出願第63/147,371号及び2021年5月11日出願の同第63/186,899号の利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、参照により本明細書に援用される、5キロバイトを含む2022年2月3日に作成された添付のテキストファイル「Sequence.txt」の全ての内容を配列表として含む。
【0003】
発明の背景
発明の分野
本発明は一般に、合成mini環状RNA構築物に関する。詳細には本発明は、例えば、ワクチンとして、用いられる合成mini環状RNA構築物を提供する。
【背景技術】
【0004】
ワクチン接種は、20種を超える致命的疾患を予防することにより世界全体の健康及び人の生活の質に絶大な影響を有してきた。免疫付与は現在、ジフテリア、破傷風、百日咳、インフルエンザ及び麻疹のような疾患による1年あたり200万~300万人の死亡を予防している。ワクチンは今日まで、予防的又は治療的であり得、広範囲に、弱毒生ワクチン(弱毒化された微生物)、不活化ワクチン(死滅した微生物)、サブユニットワクチン(精製抗原)、又はトキソイドワクチン(不活化細菌毒)として分類され得る。弱毒化又は不活化病原体を注射するという従来の概念に反して、近年のワクチンアプローチ、即ち抗原エピトープをカバーするサブユニットワクチンは、大規模製造の容易さと、コールドチェーンを用いない貯蔵及び輸送と、長期の貯蔵寿命と、良好な安定性とにおいてより魅力的である。しかし、サブユニット抗原は、多くの場合、より低い免疫原性を呈して、低い免疫原性は、送達システム及び/又は免疫増強化合物を、免疫原性を増幅するためのアジュバントとして用いることにより修正され得る。
【0005】
核酸ベースのワクチン、即ちDNA(プラスミドとして)ワクチン及びRNA(メッセンジャーRNA(mRNA)として)ワクチンは、特に細胞性免疫の刺激のために、生存生物体ベースのワクチンの接種を模倣した安全かつ有効な生物製剤のための道を切り開く。核酸ベースのワクチンのうち、新興のmRNAワクチンは、複数の注目すべき特徴を有する。1) mRNAは、対応するDNAワクチンの安全性の懸念であるゲノム統合のリスクを回避し、不活化ウイルスやウイルスベクターと比較して、異所性ウイルス感染のリスクが低い。2)ベクター導入が、ベクターベースのワクチンアプローチのような予め存在する免疫の可能性により制限されない。3)mRNAは、代謝により分解可能であり、長期安全性への懸念を回避する。4)mRNAワクチンは、関心のある任意の抗原をコードコードすることにより幅広い応用の可能性を有する。5)カスタマイズされた製剤を必要とする生理化学的に不均一なペプチドワクチンと対照的に、mRNA製剤は、概ね一貫性がある。これらの潜在的利点にもかかわらず、全ての応用においてmRNAへの転換の成功を阻んできた重要な難題がある。例えば、(i)mRNAは、非常に大きな分子であり、(ii)内因的に不安定でヌクレアーゼによる分解を受け易く、(iii)細胞内mRNAレベルとその結果である抗原翻訳物とが、mRNAの短い半減期及び生体安定性と、細胞分裂とにより制限されてきた。
【0006】
ヒト臨床試験への核酸ベースのワクチンの近年の進歩により、癌の処置のための効果的戦略として、腫瘍抗原を標的とするmRNAトランスフェクト樹状細胞(DC)を用いたワクチンの可能性が原理的に証明された。今日では、腫瘍抗原をコードする合成mRNAの直接投与の臨床試験が既に、安全性と、腫瘍特異的免疫反応の誘導と、患者の臨床利益の可能性とを実証している。さらに、mRNAの内因的なセルフアジュバント効果の重要性が、現在、このワクチン接種アプローチの実行を成功させる鍵として明確に認識されている。RNAは元々、パターン認識受容体を活性化することにより免疫刺激を誘導するが、その自然な役割は、ウイルスRNAを同定て、自然免疫反応の下流活性化を行うことである。免疫細胞では、エンドソーム区画に存在するToll様受容体TLR3とTLR7とTLR8とが、エンドサイトーシスされたRNAにより活性化されて、インターフェロンの分泌を誘導する。対照的に、非免疫細胞でのインターフェロン生成のほとんどは、2つの細胞質受容体:細胞質レチノイン酸誘導遺伝子Iタンパク質(RIG-I;DDX58としても知られる)と、黒色腫分化関連タンパク質5(MDA5;IFIH1としても知られる)と、の活性化により誘導される。
【0007】
ワクチンは、癌を越えて、感染性疾患の公的健康管理のための非常に大きな利点であったことは極めて明白であり、パンデミックのウイルス性重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)により引き起こされるCOVID-19を予防するための非常に効果的な近年のワクチン開発ほど良好な例はない。SARS-CoV-2のパンデミックな変異種が、主に下部呼吸器系を攻撃して、消化器系と、心臓と、腎臓と、肝臓と、中枢神経系とに感染して、多臓器不全に導く。ワクチンは、症候性感染と重度疾患とを低減することに多大な影響を及ぼして、致命的な大流行の期間、病院の負担を軽減してきた。パンデミックの間に実施された最も早期で最も効果的なワクチンとして、2種のmRNAワクチン候補があり、mRNAの多用途性をワクチン戦略として活用し、急速な開発を可能にしてきた。Moderna/NIAID(mRNA-1273)とBioNTech/Pfizer(BNT162b2)とにより開発されたCOVID-19に対するmRNAワクチンは、症候性COVID-19の予防における90%を超える有効性と、良好な安全性プロファイルとを実証して、このため何十億ものワクチンが、世界中で投与されてきた。このパンデミックからのものと同じmRNAワクチン技術が、少ない例ではあるが黒色腫、肺癌、及び大腸癌などの最も致命的かつ難治性の癌の幾つかを標的とするペプチド癌ワクチンでも用いられている。臨床試験からの早期徴候は、ペプチド癌ワクチンが良好に寛容されて、早期と後期との両方のステージの癌で癌処置の将来にとって重要なツールになり得ることを示唆している。
【0008】
パンデミックのワクチンと早期ステージ癌のワクチンとによるRNAワクチン技術の早期成功にかかわらず、科学者らは、科学的興味のある歴史の浅い領域で新発見を行い続けているため、mRNAワクチンでの最初のアプローチは最適化されておらず、世代交代が進む可能性が高い。従来のmRNAワクチンは、クローニングされたDNAテンプレートを用いて転写されなければならず、急速なカスタマイゼーションと大規模生産とにまつわる難題を招く可能性がある。合成の改良を行っても、mRNAワクチンは、分解を回避するために低温での貯蔵という厳格な要件を有し、さらにより重要なこととして、体内の抗原提示細胞内で短い半減期を有する。限定された生体安定性は、標的抗原の生成と抗原暴露とが急速に終了して、免疫活性化の可能性を限定することを意味する。mRNAの生来の不安定性はまた、mRNAベクターが単に構造をより安定にしてタンパク質合成のためのリボソーム誘導用にmRNAの配置をも支援する、大きなノンコーディング配列を含んで設計されることも必要とする。そのような大きな配列を必要とするmRNAの欠点は、ベクターのわずかな部分が標的抗原配列をコードすること、及びそれゆえより少ないコピー数の抗原コードRNAが、関心のある抗原に翻訳され、抗原提示細胞への送達のために各脂質ナノキャリアに収容され得ることを意味する。加えて、RNAとその脂質ナノキャリアとは、両者とも生来、自然免疫を活性化し得るが、自然免疫の過剰刺激は、抗原発現と免疫原性とを低減して寛容性不良をもたらす可能性がある。それゆえ、脂質ナノキャリアに収容し得るRNAベクターのサイズ及びベクターの量が、用量制限になる場合がある。
【0009】
持続的な抗原の発現及び提示のための有意に改善された生体安定性と、最大の効力及び寛容性を向上するより小さな相対的サイズと、を有するペプチド免疫原をコードするRNAワクチンでの治療有効性の可能性を最大にする重要な好機が依然として存在する。より小さな相対的サイズは、抗原提示細胞への送達のためにナノキャリアあたりにより多いコピー数の免疫原コードベクターの封入を可能にして、より少ないRNAと脂質とで抗原発現と提示とを最大にする。小さなベクターはまた、合成RNAオリゴヌクレオチドから生成するのに実用的であり、DNAテンプレートをクローニングする必要性を避ける。これらの必要性の全てにかなう市販のワクチンは存在せず、そのようなワクチンは、先行技術に基づくことができないと予想される。絶対的な最大治療応答を生じる可能性は、特に、余命数か月の間の生活の質改善と延命とにより成功が決定される、難治性癌患者には重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
mRNAベースのワクチンの成功にもかかわらず、慢性疾患で繰返し投与される可能性があり強力な自然免疫反応を誘導しない全長タンパク質治療薬を開発することを大半の目的として、生体安定性と医薬安定性とを改善してRNAベクターの有効性を改善する技術を同定することに、努力が注がれてきた。この目的で、環化RNA(circRNA)ベクター構築物が、改善された生体安定性及び医薬安定性と、キャップ非依存的手法で起こる長期持続性治療性タンパク質/ペプチド翻訳と、を有することが示されている。しかしながら、mRNAベクターのように一般に数百又は数千のヌクレオチド長であるDNAテンプレートからの化学的に定義された長鎖circRNA構築物の大量生産は、T7 RNAポリメラーゼの「ランオフ」特性と、その結果である長鎖mRNAのインビトロ転写の間における除去が困難な不均一副生物の発生のために難題である。従来のmRNAベクターと長鎖circRNAベクターとは、大きなベクターサイズと、有害な副作用を引き起こす長鎖二本鎖RNAを含む複雑な二次構造と、により同じ欠点を有して、後者は、本質的に用量制限を有する。ベクターサイズが、免疫原をコードするRNAの封入密度を制限して、相対的に長鎖二本鎖RNAを含む複雑な二次構造に加えて、ワクチンの反応原性を引き起こして、抗原発現と提示とを直接下方制御し得る自然免疫活性化も直接担う。これは、ワクチン技術にとって最適でない。対照的に、DNAテンプレートを用いずに化学合成されるミニオリゴヌクレオチドcircRNAワクチンベクターは、既存の自動化RNAオリゴヌクレオチド合成技術及び製造能力と、化学的に定義されたRNAオリゴ合成及びcircRNA生成と、circRNAを、構造的に最小限でコンパクトにして、ナノキャリアへの積載容量を増大するだけでなく、mini circRNA内において二本鎖RNAが潜在的に用量制限となるの可能性を最小限にするcircRNA内の最小限の機能的エレメントを活用する魅力的な代替法である。ノンコーディング領域内に唯一の短い内部リボソーム進入部位(IRES)配列を有する最小限のサイズのcircRNAベクターが効率的なペプチド翻訳を開始及び維持するだけでなく、抗原発現及び提示を有意に延長して、結果的に従来のmRNAワクチンに比較して免疫原性を増強することは、予測できず驚くべきことである。circRNAのこれまでの実施は、自然免疫を惹起しないことに重点を置いてきたが、mini circRNAベクターは、充分にセルフアジュバントされて、エンドソームと細胞質との免疫センサを内因的に活性化させ、強力な適応免疫反応に必要となる自然免疫を提供する。実際にmini circRNAベクターは、外来のRNAを内因的に導入する長鎖circRNAを合成するために現在用いられてきた従来の逆転イントロン-エクソン(permuted intron-exon)(PIE)法に比較して、T4リガーゼ酵素での1つ又は複数の短いオリゴヌクレオチドのライゲーションにより調製され、免疫活性化したdsRNAを含む外来のRNA断片を導入しない。mini circRNAのコンパクト構造は、逆説的に、なぜこれらの新規なベクターが現在の先端技術の修飾直鎖状mRNAに比較して炎症性ケモカイン活性化の数倍の低減を実証して、増強された抗原提示と免疫原性とにもかかわらず寛容性改善の能力を示すのか、を説明し得る。あまり複雑でない二次構造と、二本鎖RNAの領域などの外来のRNA断片を有さないことと、によるmini circRNAの小さなサイズが、候補ワクチンの有効性と安全性とを限定する有害な炎症反応の可能性を最小限にする抑えることができる。これは、従来のmRNAワクチンへの修飾ヌクレオチド(例えば、シュードウリジン)の取込みと類似しており、内因的免疫原性を低減して、それにより優れた翻訳能を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって本開示は、費用対効果のあるやり方で製造することができ、続くペプチドプロセシングのためにローリングサークル型翻訳(RCT)によりコンカテマー型ペプチドを効率的に生成し得る、合成された最小限の環状RNA(「mini-circRNA」又は「circRNA」)を提供する。ワクチンとして用いる場合、最小限のノンコーディング領域を有するmini-circRNAの小さなサイズと生体安定性とが、抗原提示細胞に対する高封入密度のベクターと、高コピー数の免疫原コードRNAと、の数倍高い免疫原性に加えて、mini circRNAの高い生体安定性による長期間にわたる効率的かつ持続的な抗原発現と、最適な抗原提示及びT細胞プライミングのための細胞プロテアーゼにより忠実にプロセシングされるコンカテマー型抗原エピトープと、を生成する(合成の長鎖ペプチド抗原と類似の効果)。mRNAを分解から防御するのに長鎖ノンコーディング配列を必要とするため、小さなコンパクトサイズのmini circRNAは、RNAワクチンを設計する科学者により過去に考慮されなかった。しかし、circRNAの永続性が、最終末端の欠如から得られ、直鎖状RNAに比較してエキソヌクレアーゼ分解を予防して、これらの分子の寿命を延長する。これは、意外にもワクチンの効力と相対的寛容性との両方を最大にするmini circRNAベクターを作出する能力を可能にする。このためmini circRNAは、例外的にワクチンとしての使用に良好に適して、RCTを介して抗原翻訳を指数関数的に増幅して、それにより例えば、癌の予防及び処置への応用のために抗原特異的免疫を誘発/増大する。特定の応用において、mini-circRNAはまた、感染性疾患のためのワクチンとしての利点を有してもよい。
【0012】
本発明の目的は、mini circRNAワクチンベクターを形成させるために互いにライゲートされた1から40までの合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列で構築された30から2200までのヌクレオチドを含むmini環状RNA(circRNA)ワクチンベクターを提供することである。circRNAは、ペプチド又はタンパク質に翻訳されるコーディング領域と、翻訳されない少なくとも1つのノンコーディング領域と、を含む。ノンコーディング領域は、最低でも内部リボソーム進入部位(IRES)を有するが、開始コドン、終止コドン、コザック配列、及び任意の他の調節エレメントなどの他の調節エレメントもまた、circRNAのヌクレオチド配列に含まれてよい。本発明の一実施形態において、コーディングオープンリーディングフレームの直後に終止コドンが存在しない。最小限の効果的ノンコーディング領域を有するmini circRNAベクターは、キャップ非依存型翻訳を開始及び維持するためにリボソームへの結合が驚くほど効果的かつ効率的である。ノンコーディング領域は、最小限のサイズに制限されるため、ベクター配列のほとんどが、免疫原(複数可)をコードする。小さなサイズが、その後に対象に投与されて抗原提示細胞に送達される各ナノキャリア内の免疫原コードRNAコピーの高い封入密度を可能にする。本発明の重要な利益は、投与される用量あたりに最小可能量のノンコーディングRNAと、最少の脂質ナノキャリアと、の利用に加えて、ベクターの構造的複雑さの低減、例えば、より少ないdsRNA領域であり、複雑さの低減が最大忍容用量を増加させて潜在的に悪影響となる自然免疫センサの過剰刺激を予防することができる。ベクターの特性の組合わせが、免疫原性と寛容性との両方を逆説的に向上させる特異的免疫T細胞活性化をもたらす突破口となる。
【0013】
mini circRNAワクチンベクターのコーディング領域は、関心のある少なくとも1種の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、免疫原は、細胞性免疫を誘導する。本発明を実施する際、細胞性免疫は、免疫原特異的CD4T細胞及び免疫原特異的CD8キラーT細胞からなる群から選択される少なくとも1種の細胞型において誘導される。
【0014】
合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列の配列同一性は、関心のある免疫原又は複数の免疫原の全ヌクレオチド配列により決定されて、circRNAを形成させるために設計されて、合成されて、組み合わせられる。一実施形態において、合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列は、40から150までの範囲内のヌクレオチド長である。ノンコーディング配列に対するコーディング配列の比率は、本発明の重要な特徴であり、およそ0.3から40までの範囲内である。一実施形態において、ノンコーディング領域は、50から300までのヌクレオチドであり、ノンコーディング領域に対するコーディング領域のヌクレオチド配列長の比率は、単一免疫原をコードするmini circRNAワクチンベクターでは0.3及び2の範囲内である。別の実施形態において、その比率は、2から5までのペプチド免疫原をコードするmini circRNAワクチンベクターでは1.5及び10の範囲内である。別の実施形態において、その比率は、6及び10のペプチド免疫原をコードするmini circRNAワクチンベクターでは3から20までの範囲内である。さらに別の実施形態において、その比率は、11及び20のペプチド免疫原をコードするmini circRNAワクチンベクターでは6から40までの範囲内である。別の実施形態において、50から150までのヌクレオチドのノンコーディング領域が、コーディング領域と組み合わせられて、0.6から2まで、3から10まで、6から20まで、又は12から40までの範囲内の比率を有する。本発明の実施例から分かるとおり、その比率は、ベクターによりコードされた免疫原の数に依存するが、ノンコーディング配列に対するコーディング配列の高い比率を有することが、本発明の目的であり、この高い比率は、より大きな有効性を提供する。ノンコーディング領域は、典型的には300以下のヌクレオチド、150以下のヌクレオチド、100以下のヌクレオチド、又は50未満のヌクレオチドを含む。一実施形態において、ノンコーディング領域は、内部リボソーム進入部位(IRES)からなる。IRESは、LINE1、crTMV、Rbm3、又はヒトc mycをコードするmRNA内のIRESを挙げることができるが、これらに限定されない。用いられ得る他のIRESとしては、KMI2(98nt);Apaf-1_-58/-3(56nt);BiP_-93_-1(93nt);c-IAP1_-81/-1(81nt);n-myc_-293_-207(87nt);n-myc_delta1-248(79nt);Rbm3_22nt_module(22nt);L-myc(52nt);c-Myc(最小限のIRES)(48nt);LINE1-ORF2-138-86(53nt);crTMV_IRESmp75(73nt)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
コーディング領域は、少なくとも1種の免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む。免疫原は、関心のある細胞により発現された任意のタンパク質でもよい。典型的には免疫原は、腫瘍関連抗原である。同じく企図されるのは、腫瘍ネオ抗原と腫瘍ウイルス抗原と癌精巣抗原とのいずれかをコードするヌクレオチド配列である。一実施形態において、コーディング領域は、連続で配置された複数のペプチド免疫原をコードするヌクレオチド配列を含み、ペプチド免疫原の間にペプチド切断部位又は構造的リンカーを有さない。この実施形態において、複数の免疫原は、ペプチドコンカテマーに翻訳されて、その後、MHC結合と抗原提示とのための抗原エピトープにプロセシングされ得る。別の実施形態において、コーディング領域は、複数のペプチド免疫原をコードして、ペプチド免疫原は、リンカーにより分離される。これらのリンカーはさらに、ペプチド切断部位、構造的ペプチドリンカー及び/又は小胞体局在化シグナルペプチドをコードし得る。
【0016】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの内部リボソーム進入部位(IRES)を有する30から3300までのヌクレオチドを含み、少なくとも1つの免疫原をコードするmini circRNAワクチンであって、必要とする対象のためにセルフアジュバントされたmini circRNAワクチンを調製する方法である。circRNAは、
1つ又は複数のDNAスプリント(複数可)を準備するステップと;
直鎖状一本鎖RNAオリゴヌクレオチドを合成するステップと;
複数のオリゴヌクレオチドを互いに接近させるために、DNAスキャフォールド又はスプリント(複数可)を少なくとも2つの直鎖状一本鎖RNAオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせるステップと;
mini circRNAワクチンベクターを形成させるために、一本鎖RNAオリゴヌクレオチドをライゲートするステップと;
DNAスキャフォールド又はスプリント(複数可)を除去するステップと;
mini circRNAワクチンベクターを精製するステップと、
を用いて合成される。
【0017】
circRNAが、合成及び精製された後、mini circRNAワクチンベクターが、製剤化される。一実施形態において、circRNAは、生理食塩水、緩衝生理食塩水、又は他の生体適合性溶液などの医薬的に許容できる担体に溶解される。別の実施形態において、mini circRNAワクチンベクターは、リポソーム、エクソソーム、ポリマーナノ粒子、タンパク質ナノ粒子、及び脂質ナノ粒子からなる群から選択されるナノキャリア内に封入される。別の実施形態において、mini circRNAワクチンベクターは、標的化されたcircRNAワクチン送達を増強するために分子標的リガンドで修飾される。
【0018】
本発明の目的は、対象が罹患した癌の細胞内で発現する癌抗原を同定するステップと;コーディング領域が癌抗原の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列を含み、かつ、ノンコーディング領域が少なくとも1つの調節エレメントを含む、mini circRNAワクチンベクターを合成するステップと、を含む、必要とする対象において癌を処置する方法を提供することである。治療有効量のcircRNAワクチンベクターを対象において免疫反応を誘導するために対象に投与する。注射の経路は、典型的には静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮下、及び/又は腹腔内注射又は輸液による。本発明の目的は、最大の免疫反応を誘導することである。このため更なる目的は、各circRNA分子がノンコーディング領域に対してコーディング領域を高い比率で発現する、高コピー数のcircRNA分子を送達することである。投与するステップは、1週から8週まで、又はより長い間隔を入れて繰り返されてもよい。
【0019】
少なくとも1種の免疫原は、腫瘍特異的抗原の任意の一部又は全てでもよい。幾つかの実施形態において、免疫原は、変異体KRAS抗原、黒色腫腫瘍特異的抗原、及び/又はイソクエン酸デヒドロゲナーゼ腫瘍特異的抗原である。別の実施形態において、少なくとも1種の免疫原は、対象とHLAが適合する。
【0020】
一実施形態において、mini circRNAワクチンベクターは、化学療法などの他の癌療法と併用で投与されてもよい。幾つかの実施形態において、免疫反応は、PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤などの1種又は複数の免疫療法薬との併用により増強されてもよい。
【0021】
別の実施形態において、mini circRNAワクチンは、ウイルス及び細菌などの病原性微生物に由来する抗原を発現するように設計され得る。これらのcircRNAワクチンは、対応する感染性疾患の予防及び治療のために用いられてもよい。
【0022】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の本発明の説明に表されており、一部は、その説明から明白となるか、又は本発明の実施により学習されてもよい。本発明は、記載された本明細書の説明と、実施例と、特許請求の範囲と、の中で特に指摘された組成物及び方法により理解及び達成されよう。
【0023】
本特許又は出願ファイルは、着色された少なくとも1つの図面を含む。着色図面を有する本特許又は特許出願公開のコピーが、必要に応じて必要料金を支払いの上、特許庁により提供されよう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】mini circRNAの合成の略図を示す。(A)circRNA分子を作製するために、直鎖状RNAが環状形態のDNAスキャフォールドにおける相補性DNAにアニールして、その後、T4 RNAリガーゼ1によりライゲートした。DNAスキャフォールドは、DNase処置で除去された後、精製されて、circRNA配列のみを残留させる。(B)mini circRNAが、ローリングサークル型翻訳(RCT)を介してコンカテマー型ペプチドに翻訳された後、コンカテマー型ペプチドのタンパク質分解プロセシングを行い、長い抗原提示をもたらす。(C)抗原(Ag)特異的CD4+及び/又はCD8+T細胞応答を誘発するために、ナノキャリアが、circRNAをリンパ系組織(例えば、リンパ節)と抗原提示細胞とに送達する。
図2A】小分子circRNAの合成とペプチド翻訳とを示す。(図2A)アガロースゲル電気泳動によりcircRNA合成を検証した。
図2B】(図2B)変性PAGEを用いたウェスタンブロットが、ウサギ網赤血球溶解物(RRL)中のcircRNA-FLAGによるコンカテマー型FLAGの発現を示す(24時間)。複数の大きな生成物は、それらがローリングサークル型翻訳を介して翻訳される可能性が高いことを示す。
図3ABC】小分子circRNAとcircRNA LNPと、の優れた生体安定性と医薬的安定性とを示す。(図3A)-20、4及び23℃のPBS中で70日間貯蔵した後に残留したcircRNAとliRNAとベンチマークの修飾mRNA(対応のあるt検定)。データは、(図3B)に例示されたとおり、アガロースゲル電気泳動からImageJを用いて定量された。図3C~3Fは、DFHBI-1T結合蛍光発生RNAアプタマーBroccoliのレポーターを用いた生存DC2.4細胞でのcircRNA安定性試験を示す。(図3C)circBroccoliとBroccoliとの二次構造(RNAfold及びFornaにより予測)は、circBroccoliにおける無傷のBroccoli構造を示した。
図3DEF】(図3D)解析前のDFHBI-1Tを添加する前の1~168時間に直鎖状又は環状Broccoliで処置されたDC2.4細胞の共焦点顕微鏡像(上のパネル)(緑色:Broccoli-DFHBI-1T;青色:核)及びフローサイトメトリー(下のパネル)。(図3E)ブランクと、circRNAが積載されたSM-102LNPと、のサイズ分布を示したDLSグラフ。(図3F)回収されたcircBroccoli LNPでトランスフェクトされたDC2.4細胞(24時間)のフローサイトメトリーにより定量された、4又は-20℃の溶液(スクロース補充)中での70日間のcircBroccoli LNPの貯蔵後の残留するcircRNA。他に断りがない場合の全データの統計解析:平均±s.e.m.;ns:非有意性;p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001、ボンフェローニ事後検定を伴う一元配置分散分析。
図4AB】ナノ粒子キャリアがcircRNAワクチン送達を促進したことを示す。(図4A)リポソームcircRNA(lipo-circRNA)の動的光散乱サイズ分布及び電解放出形透過顕微鏡画像(インセット)。(図4B)効率的なlipo-circRNA送達を示した、遊離circRNA-Cy5又はlipo-circRNA-Cy5と共にインキュベートされたDC2.4細胞のMFI。インセット:DC2.4細胞へのlipo-circRNA送達を示した共焦点顕微鏡測定(100nM、6時間)。Lysotrackerと共局在化していないcircRNAは、エンドソーム脱出を示す(赤色:circRNA;緑色:エンドリソソーム;青色:核)。
図4C】(図4C)Balb/cマウスの流入領域膝窩リンパ節(丸で囲む)への効率的なcircRNA-IR800送達を示したIVIS画像(0.2nmole、足底へのs.c.)。AUC:曲線下面積。
図4DE】(図4D)Balb/cマウスの流入領域膝窩リンパ節(丸で囲む)への効率的なcircRNA-IR800送達を示したIVIS画像(0.2nmole、足底へのs.c.)。AUC:曲線下面積。(図4E)リポソームcircRNA-Cy5又は遊離circRNA-Cy5を取り出した節内細胞サブセット。Mig-DC:移動性DC。
図5AB】circRNAナノワクチン(NV)による自然免疫調整を示す。(図5A)circRNA NVは、DC2.4細胞において炎症促進性サイトカインとIFN-βとの分泌を促進した。(図5B)Tlr7又はRig-IのsiRNAサイレンシングは、circRNA NVで処置されたDC2.4細胞においてIFN-β応答を低減した(100nM、24時間)。
図6AB】小分子circRNA-SIINFEKLワクチンによるインビトロ免疫調整を示す。(図6A)circRNA-SIINFEKLで処置されたDC2.4細胞(100nM circRNA、1μM CpG、1μM OVA;24時間)による、(左)抗原提示のフローサイトメトリー平均蛍光強度(MFI)、及び(右)SIINFEKL特異的B3Z CD8T細胞ハイブリドーマのプライミング。(図6B)crTMVを基にしたcircRNA-SIINFEKLの二次構造(RNAfold及びFornaにより予測)。青色のボックス:IRESドメイン。
図6CD】(図6C)circRNA変異体とベンチマーク修飾mRNAOVAとで処置されたDC2.4細胞で提示されたSIINFEKLのMFI。(図6D)対照に比較して、circRNA-SIINFEKL処置されたDC2.4細胞は、B3Z T細胞ハイブリドーマを効率的かつ永続的にプライミングした(図6C~6D:10μg/ml RNAをLipofectamine 3kによりトランスフェクトした)。
図7A】低用量circRNA-SIINFEKL NVが若齢成体マウス(6週齢)(図7B~7D)と免疫老化した加齢マウス(1年齢)(図7E~7G)とにおいて強力で永続性のあるT細胞応答を誘発したことを示す。(図7A)マウスにおける試験計画(n=5)。
図7BC】(図7B図7C)四量体染色は、circRNA-SIINFEKL NVによる強力なCD8T細胞応答を示し、現行のベンチマーク5-メトキシウリジン修飾CleanCap(登録商標)mRNAOVAと、CpG+OVAとのNVより優れていた。
図7D】(図7D)circRNA NVは、抗原特異的T細胞メモリーを誘発した(70日目)。
図7EF】(図7E)カプラン・マイヤー法によるマウス生存率は、circRNA NV処置マウスがEG7.OVA細胞(3×10、s.c.、71日目)の接種に耐えることを示した。:circRNA NVへの比較。(図7F)加齢マウスにおいて、circRNA NVは、mRNAOVA又はCpG+OVAのNVよりも抗原特異的CD8T細胞を誘導した(n=5)(21日目)(t検定)。
図7GH】(図7G)免疫化されたままの加齢マウスからのCD8T細胞の細胞内IFN-γ/TNF-α(35日目)。(図7H)circRNA NVは、加齢マウスをEG7.OVA細胞接種から防御した(3×10、s.c.、71日目):circRNA NVへの比較。(リポソーム内のワクチン:尾基底部でのs.c.;5μg RNA、2nmol CpG、20μg OVA)。
図8】RNAワクチンによる最も強力なT細胞応答を可能にするSM-102 LNPをナノキャリアスクリーニングにより同定したことを示す。C57Bl/cマウス(n=5)が、circRNA-SIINFEKLと修飾mRNAOVAとの異なるNVで免疫付与された(5μg RNA、尾基底部へのs.c.注射;0日目、14日目)。SIINFEKL特異的PBMC CD8T細胞は、21日目に四量体染色により分析した。
図9AB】21日目の細胞内サイトカイン染色により、MHC-II制限circRNA-ISQ NVが、C57BL/6マウス(n=5)において、(図9A)抗腫瘍エフェクターCD4T細胞だけでなく、(図9B)MHC-I制限circRNA-SIINFEKL NVにより誘導されたCD8T細胞応答を促進するヘルパーT細胞も誘導することを示した。単一又は二重のcircRNAが、修飾mRNA-OVA NVに対する優れたT細胞応答を誘導した(s.c.注射;5μg RNA;0、14日目)。
図10】circRNA SM102-LNPが高い寛容性を有したことを示す。C57Bl/6マウスへのワクチン投与の12時間後の血清サイトカイン/ケモカイン濃度のLuminexの結果。
図11A】RNA分子の予測された二次構造の比較を示す。(図11A)従来のタンパク質OVAコードmRNAと、従来のSIINFEKLペプチドコードmRNAと、SIINFEKLペプチドコードmini circRNAと、の予測された二次構造。
図11B】(図11B)一連の濃度の示されたRNAワクチンで1~3日間処置したDC2.4細胞に提示されたSIINFEKL/MHC-1の蛍光強度中央値(MFI)。全ての実験条件で、SIINFEKLペプチドコードmini circRNAが、シュードウリジン(Ψ)又は5-メチルオキシウリジン(5moU)で修飾したOVAコードmRNA又はSIINFEKLコードmRNAより優れていた。
図12AB】併用腫瘍免疫療法のための低用量circRNA NVの結果を示す。(図12A図12B)C57BL/6マウスにおけるAdpgkT細胞分析(A:n=5)と、腫瘍免疫療法(B:n=8)との試験計画。
図12CD】(図12C~12D)対照と対比した、circRNA-SIINFEKL NVで処置したEG7.OVA腫瘍担持マウスの腫瘍成長及び体重。
図12E】(図12E)対照と対比した、circRNA-E7 NVで処置されたTC-1腫瘍担持マウスの腫瘍成長。
図12FG】(図12F)ネオ抗原circRNA-Adpgk NVは、C57BL/6マウスにおいて用量依存的なT細胞応答を誘導した。(図12G)対照と対比した、circRNA-Adpgk NV+αPD-1で処置された同系マウスにおける腫瘍成長。mRNAOVA:5-メトキシウリジンとCleanCap(登録商標)とで修飾された。ワクチン:リポソームにより送達。尾基底部でs.c.注射;5μg RNA、2nmol CpG、20μgタンパク質又はペプチド抗原;抗体:200μg、i.p.注射。circRNA NVに対する比較。
図13A】対照と対比した、circRNA-Adpgk NV+αPD-1で処置したMC38の腫瘍免疫環境分析を示す。(図13A)分析した全細胞に対する割合(%)としてのCD45+細胞の頻度を示す。
図13B】(図13B)分析した全細胞に対する割合(%)としてのAdpgk特異的CD8+T細胞及びCD8+/Treg比。mRNAOVA:5-メトキシウリジン及びCleanCap(登録商標)で修飾した。ワクチン:リポソームにより送達。尾基底部でs.c.注射;5μg RNA、2nmol CpG、20μgタンパク質又はペプチド抗原;抗体:200μg、i.p.注射。circRNA NVに対する比較。
図14】黒色腫のICB併用免疫療法のためのmini multi-circRNAナノワクチン(NV)の効果を示す。(A)mRNAワクチンの新規プラットフォームとして、セルフアジュバントされた小分子multi-circRNAは、1)多価抗原(Ag)コードRNAと、2)ペプチド翻訳開始IRES及びコザック配列と、で構成される。ローリングサークル型翻訳(RCT)を介して、circRNAは、酵素でプロセシングされてAPCに提示されるコンカテマー型抗原の翻訳を持続し、強力で永続性のある免疫を誘発した。(B)multi-circRNAナノワクチンは、リンパ節とAPCとに送達されて、強力で永続性のあるT細胞応答を誘発した。
図15AB】併用黒色腫免疫療法のための二価circRNAナノワクチンでの処置の結果を示す。(図15A)SM-102 LNPを基にしたcircRNA-Trp2/gp100ナノワクチンの構造。(図15B)circRNAナノワクチン又はペプチドナノワクチンで免疫付与された(0、14日目)C57Bl/6マウスからのCD8+T細胞(21日目)の細胞内IFN-γ/TNF-α染色(n=5)。
図15CD】(図15C)circRNAは、CD8+T細胞へのPD-1発現を上昇させ、それにより免疫チェックポイント阻害(ICB)のためにPD-1を感作させた。(図15D)対照と対比した、circRNAナノワクチン+αPD-1で処置されたC57BL/6マウスのB16F10黒色腫成長。ワクチン:LNPにより送達。尾基底部でのs.c.注射;5μg RNA、2nmol CpG、20μg抗原。αPD-1:200μg i.p.注射。
図16】circRNA-RBD440-459がマウスにおいてSARS-CoV-2スパイクタンパク質RBDエピトープ特異的CD8 T細胞応答を誘発したことを実証した四量体染色データのグラフを示す。ワクチン:SM102-LNPにより送達。尾基底部でのs.c.注射;5μg RNA、2nmol CpG、20μgペプチド抗原。
図17A】2種の免疫原への強力で永続性のある免疫反応を可能にするmini circRNAワクチンベクターの製造を示す。(図17A)mini circRNAを製造するワークフローの簡単な略図が、示される。一本鎖RNAオリゴヌクレオチド(オリゴ)が、合成される。RNAオリゴとDNAスプリント(複数可)との混合物が、自己集合して、ライゲートされる。生成物は、mini circRNAワクチンベクターとしての製剤化のために精製される。
図17B】(図17B)mini circRNAワクチンベクターの多くのコピーが、ナノキャリア内にパッケージングされ得て、対象に投与される。例えば、SM102-LNPごとにわずか14コピーのOVAコード修飾mRNA(1441ヌクレオチド)と対照的に、185コピーのSIINFEKLコードmini circRNA(111ヌクレオチド)が、そのようなLNPごとに積載される。ナノキャリアは、抗原提示細胞(APC)により取り出されて、mini circRNAが、多数のコピーによりCD4+及び/又はCD8+T細胞に関与する強固な免疫応答を刺激する。活性化されたCD4+及び/又はCD8+T細胞は順次、抗原特異的エフェクターT細胞とメモリーT細胞とを介して強力で永続性のある免疫応答を刺激する。
図18A】5つ以上の免疫原に対する強力で永続性のある免疫応答を可能にするmini circRNAワクチンベクターの製造を示す。(図18A)mini circRNAを製造するワークフローの簡単な略図を示す。一本鎖RNAオリゴが、合成される。図面は、少なくとも5つの免疫原が一連のオリゴ内にコードされることを示す。オリゴの混合物が、オリゴを架橋して所望の構造を形成させるDNAスキャフォールド又はDNAスプリントへのアニーリングにより自己集合する。オリゴが、スキャフォールド又はスプリントにアニールした後、オリゴの隣接する末端が、ライゲートされる。DNAはDNaseで除去し、スプリントを酵素で分解する。mini circRNA生成物は、mini circRNAワクチンベクターとしての製剤化のために精製される。
図18B】(図18B)mini circRNAワクチンベクターの多くのコピーが、ナノキャリア内にパッケージングされ、対象に投与される。ナノキャリアは、抗原提示細胞(APC)により取り出されて、mini circRNAが、多数のコピーによりCD4+及び/又はCD8+T細胞に関与する強固な免疫応答を刺激する。活性化されたCD4+及び/又はCD8+T細胞は順次、抗原特異的エフェクターT細胞とメモリーT細胞とを介して強力で永続性のある免疫応答を刺激する。
図19A】ノンコーディング領域に対する免疫原コード配列の相対的サイズは、mini circRNAの重要な要素であり、ワクチンが誘発する強力で永続性のある免疫応答に寄与する。領域のサイズは、RNAヌクレオチド(nts)の数をいう。(図19A)単一免疫原を有するmini circRNAベクターは、典型的には0.33と2との間の、ノンコーディングntsに対するコーディングntsの比率を有して、ほとんどの実施形態で0.67を超える。2~5つの免疫原を有するベクターは、典型的には1.67と10との間の、ノンコーディングntsに対するコーディングntsの比率を有して、ほとんどの実施形態で3.33を超える。6~10つの免疫原を有するベクターは、典型的には3.33と20との間の、ノンコーディングntsに対するコーディングntsの比率を有して、ほとんどの実施形態で6.67を超える。11~20つの免疫原を有するベクターは、典型的には6.67と40との間の、ノンコーディングntsに対するコーディングntsの比率を有して、ほとんどの実施形態で13.33を超える。
図19B】(図19B)及び(図19C)は、それぞれ従来の環状及び直鎖状RNAベクターを示す。ノンコーディング領域が、mini circRNAベクターのノンコーディング領域より有意に大きく、このため同じ免疫原ペイロードを輸送するベクターの比率は、従来のベクターでは有意に低い。(図19B)単一免疫原をコードする従来のcircRNAでは、コーディング領域に対するノンコーディング領域の比率が、0.3未満であり、ほとんどの例で0.15未満である。6~10つの免疫原でのコーディング領域に対するノンコーディング領域の比率は、3未満であり、通常は0.8未満である。
図19C】単一免疫原をコードする(図19C)の従来の直鎖状mRNAの免疫原コード配列とノンコーディング領域配列との相対的サイズ、つまりコーディング領域に対するノンコーディング領域の比率は、0.3未満であり、ほとんどの例で0.1未満である。6~10つの免疫原を含む場合のコーディング領域に対するノンコーディング領域の比率は、3未満であり、ほとんどの例で0.4未満である。
図20A】同量のRNA(即ち、同数のRNAヌクレオチド)が、ナノキャリアにパッケージングされ、mini circRNAワクチンベクター、従来のmRNAワクチン、又は従来のcircRNAの形態でAPCに送達され得ることを示す。しかし、(図20A)本発明のmini circRNAは、関心のある特異的免疫原(複数可)のより多くのコピーをパッケージングしてAPCへ送達することが可能である。
図20B】類似のナノキャリアである(図20B)従来の直鎖状mRNA又は(図20C)従来のcircRNAは、より少ないコピー数を運搬することができるが、それは、これらが比較的より多くのノンコーディングヌクレオチドを含む必要があるためである。
図20C】類似のナノキャリアである(図20B)従来の直鎖状mRNA又は(図20C)従来のcircRNAは、より少ないコピー数を運搬することができるが、それは、これらが比較的より多くのノンコーディングヌクレオチドを含む必要があるためである。
図21A】ノンコーディング領域を含む、(図21A)典型的なエピトープコーディングmini circRNAと、(図21B)従来のエピトープコーディングmRNAとのサイズ比較を示す。赤色の追加的ノンコーディング調節エレメントは、従来のmRNA分子に比較してmini circRNA分子では最小限である。従来のmRNAのノンコーディング領域の嵩と立体障害とが、キャリア内で場所をとるが、そのキャリアはより多くのコピー数のmini circRNAにより充填され得る。加えて、従来のmRNA内の相対的に長鎖のノンコーディング配列が、RNA及びヌクレオチドによる免疫刺激と、長鎖二本鎖RNAによるプロテインキナーゼK活性化と、に関連するmRNAワクチンの有害な反応原性を増強した。
図21B】ノンコーディング領域を含む、(図21A)典型的なエピトープコーディングmini circRNAと、(図21B)従来のエピトープコーディングmRNAとのサイズ比較を示す。赤色の追加的ノンコーディング調節エレメントは、従来のmRNA分子に比較してmini circRNA分子では最小限である。従来のmRNAのノンコーディング領域の嵩と立体障害とが、キャリア内で場所をとるが、そのキャリアはより多くのコピー数のmini circRNAにより充填され得る。加えて、従来のmRNA内の相対的に長鎖のノンコーディング配列が、RNA及びヌクレオチドによる免疫刺激と、長鎖二本鎖RNAによるプロテインキナーゼK活性化と、に関連するmRNAワクチンの有害な反応原性を増強した。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、単一又は多価ペプチド抗原をワクチンとしてコードする合成オリゴヌクレオチドmini circRNAを提供する。適切な担体に製剤化されて対象に投与される場合、mini circRNAによりコードされた1つ又は複数のペプチド抗原は、ローリングサークル型翻訳(RCT)によりペプチドコンカテマーとして効率的に生成されて、抗原提示細胞内での提示のために全く異なるエピトープにプロセシングされて、それにより標的抗原への安定した免疫反応を誘発する。高い生体安定性(例えば、異化への耐性)と、そのコンパクトな構造へのリボソーム結合の高い効率と、高い封入密度と、低い直接的免疫原性と、により、mini circRNAの抗原翻訳能と提示とが、先端技術のmRNAペプチドワクチンに比較して実質的により強固で、かつ持続されて、有意に高いT細胞活性化をもたらす。逆説的に、mini circRNAベクターの小さな相対的サイズと、抑制された二次元構造の複雑さとが、強固な適応免疫反応を生じるのに充分にセルフアジュバントされていながら、炎症性サイトカイン活性化を有意に低減して、寛容性が改善される可能性がある。これは、従来のmRNAワクチンへの修飾ヌクレオチドシュードウリジンの取込みと異ならず、内因的免疫原性を低減して、生体安定性を改善して、翻訳能を増強する。
【0026】
本明細書で用いられる、本発明の環状RNAは、互換的に「mini circRNA」、「mini-circRNA」又は「小分子circRNA」と称される場合もある。環状RNAは、直鎖状RNAと異なり、共有結合で閉鎖された連続ループを形成する一本鎖RNAの型である。天然のcircRNAは、ノンコーディング又はコーディングRNAとしての様々な生物学的機能を有する真核生物中の前駆体mRNA(pre-mRNA)バックスプライシングの産物である。circRNAでは、正常にはRNA分子内に存在する3’及び5’末端が、互いに接合されている。circRNAは、5’又は3’末端を有さないため、circRNAは、エキソヌクレアーゼ介在性分解に耐えて、おそらく細胞内のほとんどの直鎖状RNAより安定している。circRNAの天然由来形態は、約250~4000のヌクレオチドの範囲内の広範囲のサイズを呈する。対照的に、本明細書に開示された合成mini circRNAは概ね、およそ30から1000までのヌクレオチド(nts)の範囲内のサイズを有する。幾つかの実施形態において、サイズ範囲は、およそ80から2000までのntsである。他の実施形態において、サイズ範囲は、およそ3300までのntsである。circRNAの天然由来形態とサイズに若干のオーバーラップがある場合、本発明のmini circRNAが、1つ又は複数の免疫原及び/又は同じ免疫原の1コピー又は複数のコピーをコードするコーディング領域を含むように合成される。このため本発明のmini circRNAは、天然由来circRNAに比較して最小限にされるノンコーディング領域を含む。
【0027】
本明細書で用いられる用語「DNAスプリント」は、2つのRNAオリゴヌクレオチドの間で一過性の架橋として用いられる短いDNAオリゴヌクレオチドをいう。DNAスプリントは、mini circRNAを形成するために接合されるRNAオリゴの末端のヌクレオチド配列に相補的であるように設計される。特異的RNAオリゴヌクレオチドが互いにライゲートされるRNAオリゴヌクレオチドのスプリントライゲーションが、T4 RNAリガーゼ又はT4 DNAリガーゼと、RNAに相補的な架橋DNAオリゴヌクレオチドと、を用いて実行され得る。T4 RNAリガーゼは、本発明の幾つかの実施形態において好ましいが、本発明の方法は、RNA分子がRNA:DNAハイブリッドの中にある場合に、RNA分子に接合するT4 DNAリガーゼの特性を活用する。このためDNAスプリントの5’部分は、最初のRNAオリゴの3’部分と、2番目のRNAオリゴの5’部分と、に相補的である。RNAオリゴが、DNAスプリントにアニールされる場合、T4リガーゼが、RNAオリゴの末端に酵素的に接合して、環状RNA分子を形成させる。DNaseでの次の処置は、DNAスプリントを除去して、環化されたRNA分子のみを残留させる。或いは環状DNA分子を合成して、一連の相補性RNAオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせるスキャフォールドとして用いられもよい。T4リガーゼとのインキュベーションが、RNAオリゴの末端を連結させて、環状RNA:DNAハイブリッドを形成させ、その後、DNAスキャフォールドを除去するためにDNaseで処置される。
【0028】
本明細書で用いられる「抗原」は、免疫系の成分(例えば、リンパ球及びリンパ球の受容体)に結合する物質をいう。「免疫原」は、体内において免疫反応を、特に抗体の産生又はT細胞の活性化を誘導する抗原のサブセットをいう。免疫原は多くの場合、タンパク質又はタンパク質サブユニットであるが、免疫反応は、脂質と核酸とに対して誘導され得る。抗原決定基とも呼ばれる「エピトープ」は、免疫反応を刺激するために免疫系の成分に結合することが可能な抗原又は免疫原の一部をいう。エピトープは、免疫系により、特に抗体、B細胞及び/又はT細胞により、認識される抗原又は免疫原の一部である。エピトープは、抗体が結合する、又はT細胞に提示される、抗原の特異的断片である。本明細書において「抗原」と「エピトープ」とは、互換的に用いられてもよく、「免疫原」により置き換えられてもよい。「抗原性領域」は一般に、少なくとも1つのエピトープ/抗原/免疫原を含むアミノ酸配列をいう。
【0029】
本明細書で用いられる用語「ノンコーディング領域」及び「非翻訳領域」は、ペプチド又はタンパク質に翻訳されないヌクレオチド配列の領域を記載するために用いられる。用語「ノンコーディング領域」と「非翻訳領域」と「ノンコーディングヌクレオチド」とは、互換的に用いられてもよい。さらに、ノンコーディング領域の配列長に対するコーディング領域の配列長の比率は、本発明の特徴である。より具体的には、ノンコーディング領域のヌクレオチド数に対するコーディング領域のヌクレオチド数は、従来のRNAワクチンに比較して非常に高い。ペプチドエピトープをコードするほとんどのRNAワクチンは、RNAの50から1000までのヌクレオチドのコーディング領域と、約500から2000までのヌクレオチドのノンコーディング領域と、を有して、このためノンコーディングに対するコーディングの比は、0.1未満から2までの範囲内である。本発明のcircRNAは一般に、50から2000までのヌクレオチド、より一般的には50から500までのヌクレオチドのコーディング領域と、50から300までのヌクレオチドのノンコーディング領域と、を有して、このため本発明のcircRNAでのコーディングに対するコーディングの比は、1から20までの範囲内である。幾つかの実施形態において、ノンコーディング領域は、100未満であり、このときの比率は、その範囲の最高値である。高い比率の、RNAに対するコーディングRNAは、各抗原提示細胞に送達される非常に高密度の免疫原を確保する。予期される比率は、コーディング配列内の免疫原の数に依存する。CD4エピトープは、典型的には約10から20までのアミノ酸(30から60までのヌクレオチド)を有して、CD8エピトープは、約6から10までのアミノ酸(18から30までのヌクレオチド)を有する。各免疫原のサイズは、標的となるエピトープより大きくてもよく、幾つかの免疫原は、個々の患者のHLA遺伝子に応じて複数の潜在的エピトープを包含することを意図としてもよい。しかしほとんどの例で、免疫原が30を超えるアミノ酸(90のヌクレオチド)であることは、予期されない。コーディング領域はまた、ペプチド切断部位及び/又はペプチドリンカーを含み得るが、しかしこれらの配列は、免疫原をコードせず、それゆえノンコーディングに対するコーディングの比を計算することに含まれない。
【0030】
本明細書で用いられる用語「調節エレメント」及び「制御エレメント」は、コーディング領域の翻訳を調節するノンコーディング領域内のヌクレオチド配列をいう。調節エレメントがヌクレオチド配列内でコードされるが、ヌクレオチド配列のペプチド又はタンパク質産物に翻訳されないことを留意することが、重要である。本発明で用いられる調節エレメントの例としては、IRES、コザック配列、翻訳開始部位、終止コドン、開始コドン、及び当該技術分野で公知の他の調節エレメントが挙げられる。
【0031】
用語「コザックコンセンサス配列」(コザックコンセンサス又はコザック配列と互換的に用いられる)は、ほとんどの真核生物mRNA転写産物中のタンパク質翻訳開始部位として機能する核酸モチーフをいう。コザック配列は最初、コザック(Kozak)により記載された(1987, Nucleic Acids Res., vol.15, pp.8125-8148)。mRNA分子上のコザック配列は、リボソームにより翻訳開始部位として認識される。幾つかの実施形態において、コザック配列は、(gcc)gccRccAUGG(ここでR=G又はA)である。
【0032】
用語「内部リボソーム進入部位(IRES)」は、タンパク質合成のより大きな工程の一部として、キャップ非依存的手法で翻訳開始を可能にするRNAエレメントをいう。IRES配列は、実験的に同定され得るに過ぎない。IRESを定義するコンセンサス配列又はRNA構造は存在しない。IRESは、バイオインフォマティクスにより予測され得ない。事実、短い非構造化配列と長い構造化5’非翻訳領域(UTR)との両方が、IRES活性を有することが実証されている。
【0033】
本明細書で用いられる用語「リンカー」及び「スペーサ」は、コーディング又はノンコーディングであり得るヌクレオチドの短い鎖をいうために互換的に用いられる。リンカー又はスペーサは、典型的には2、3ヌクレオチド長に過ぎず、通常、約12ヌクレオチド未満である。リンカー又はスペーサは、コーディング領域内の免疫原を分離するために用いられ得る。この場合、リンカー又はスペーサは、タンパク質産物への翻訳のために免疫原ヌクレオチド配列を「インフレーム」に維持するために3の倍数のntsを含む可能性が高い。リンカー若しくはスペーサは、免疫原の間の分離の度合いを小さくさせてもよく、又はリンカー若しくはスペーサは、免疫原産物の切断を可能にするプロテアーゼ切断部位若しくは複数のプロテアーゼ切断部位をコードしてもよい。
【0034】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの内部リボソーム進入部位(IRES)を有する30から3300までのヌクレオチドを含み、かつ、少なくとも1つの免疫原をコードすることを含み、それを必要とする対象のためにセルフアジュバントしているmini環状RNA(circRNA)ワクチンを調製する方法である。例示的なcircRNAは、
1つ又は複数のDNAスプリント(複数可)を合成して、その中でDNAスプリントの各半分が、circRNAの形態にライゲートされるように設計されたRNA末端の一方と相補性があり、それによりこれらのRNA末端を接近させるステップと;
直鎖状一本鎖RNAオリゴヌクレオチドを合成するステップと;
DNAスプリントを1つ又は複数の直鎖状一本鎖RNAオリゴヌクレオチドでアニールし、又は、ハイブリダイズするステップであって、同じ直鎖状一本鎖RNAオリゴヌクレオチドの5’及び3’末端、又は異なる直鎖状一本鎖RNAオリゴヌクレオチドの5’及び3’末端の設計した対を互いに接近させるステップと;
1つ又は複数の一本鎖RNAオリゴヌクレオチドの5’及び3’末端をライゲートして、mini circRNAを形成させるステップと;
DNAスプリントと、ライゲートされていない直鎖状一本鎖RNAオリゴヌクレオチドと、を除去するステップと;
mini circRNAを精製するステップと;
必要に応じて、mini circRNAを濃縮する、凍結乾燥させる、又は乾燥させるステップと、
を用いて合成される。
【0035】
circRNAが、合成及び精製された後、circRNAは、将来の使用のために貯蔵されてもよい、又は例えば、ワクチンとして、即ち、mini circRNAワクチンベクターとして、製剤化されて、貯蔵されても、又は対象に投与されてもよい。一実施形態において、circRNAは、生理食塩水、緩衝生理食塩水、又は他の生体適合性溶液などの医薬的に許容できる担体に溶解される。別の実施形態において、mini circRNAワクチンベクターは、リポソームと、エクソソームと、ナノ粒子と、脂質ナノ粒子と、からなる群から選択されるナノキャリア内に封入される。
【0036】
一実施形態において、本発明は、ワクチンを急速に設計及び生成するプラットフォームである。例えば、制御配列を維持しながら、circRNAから抗原コード配列を除去して、新しい抗原コード配列を挿入することができるように、mini circRNAは、有利にはモジュール手法で設計される。これは、それぞれの新しいcircRNAの全ての態様を再設計する必要性を排除して、効率的な生成を可能にする。或いは、例えば、ワクチンを異なる宿主レシピエントに(例えば、様々な種類の哺乳動物に、異なる年齢の宿主に、など)あつらえるために、1つ又は複数の制御配列が、除去されて、異なる制御配列に置き換えられてもよい。circRNA構造のモジュール性が、circRNA構造を、小分子mRNAワクチンと全てのタイプの治療薬との開発に広く適用可能にする。
【0037】
従来の直鎖状mRNAに比較して、mini-circRNAは、非限定的に、
1)CD8細胞障害性T細胞と、CD4エフェクターT細胞と、CD4ヘルパーT細胞と、により強力で長期持続するT細胞応答をもたらす強固な抗原特異的免疫原性を誘導することと;
2)過度に強い免疫毒性のある自然免疫反応を誘発することなく炎症促進性サイトカインを誘導するために、パターン認識受容体を活性化することによる内因的免疫アジュバントであり(mini-circRNAがセルフアジュバントされる)、さもなければ多くの直鎖状mRNAワクチンの寛容性を改善するために用いられるシュードウリジンなどの修飾ヌクレオチドの使用の必要がないことと;
3)半自動化生成法を利用したcircRNAの化学的に定義された製造と;
4)新興疾患への適用のために個人向け薬品と急速な適応とに特に不可欠である急速なカスタマイゼーションと修飾とを可能にするモジュール式circRNAシステムと、
をはじめとする複数の有利な特徴を有する。
【0038】
さらにcircRNAは、細胞内抗原プロセシングと提示とを受ける単一又は多価ペプチドコンカテマー(長鎖合成ペプチドと類似)を発現して、強力で永続性のある抗原特異的免疫反応をもたらすことができる。
【0039】
本発明の目的は、mini circRNAワクチンベクターを提供することである。一実施形態において、mini circRNAベクターは、mini circRNAベクターを形成させるために互いにライゲートされた1から40までの合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列から構築される30から3300までのヌクレオチドを含む。別の実施形態において、mini circRNAは、80から2000までのヌクレオチドから構築されて、必要とされる合成RNAオリゴの数は、2から40までの範囲内である。別の実施形態において、mini circRNAは、30から450までのヌクレオチドから構築されて、必要とされる合成RNAオリゴの数は、2から12まで、2~11まで、2~10まで、又は2~9までの範囲内である。別の実施形態において、mini circRNAは、30から200までのヌクレオチドであり、2から5まで、2から4まで、2から3まで、又は2という少数の合成RNAオリゴから構築される。
【0040】
circRNAは、1つ又は複数のペプチド又はタンパク質に翻訳されるコーディング領域を含む。ノンコーディング領域は、最低でも内部リボソーム進入部位(IRES)を有するが、開始コドン、終止コドン、コザック配列及び任意の他の調節エレメントなどの他の調節エレメントもまた、ノンコーディング領域のヌクレオチド配列に含まれてもよい。本発明の一実施形態において、コーディング領域のオープンリーディングフレームの3’末端に終止コドンが存在しない。ノンコーディング領域は、circRNAの単一領域に制限されてもよい、又はノンコーディング領域は、circRNA全体の2つ以上の領域に分割されてもよい。
【0041】
一実施形態において、mini環状RNAワクチンベクターは、単一ペプチド免疫原又は複数のペプチド免疫原をコードするヌクレオチド配列を有するコーディング領域と、以下に定義されるとおりペプチドを生成するために翻訳されないノンコーディング領域と、を含む、80から450までのヌクレオチドを有して、ノンコーディング領域に対するコーディング領域の相対的配列長又は比率は、0.3と2との間であり、別の実施形態において、ノンコーディング領域に対するコーディング領域の比率は、0.6と2との間である。
【0042】
別の実施形態において、mini環状RNAワクチンベクターは、2と5との間のペプチド免疫原をコードするヌクレオチド配列を有するコーディング領域を含む、120から1050までのヌクレオチドを有して、ノンコーディング領域に対するコーディング領域の相対的配列長又は比率は、1.5と10との間であり、別の実施形態において、ノンコーディング領域に対するコーディング領域の比率は、3と10との間である。
【0043】
別の実施形態において、mini環状RNAワクチンベクターは、6と10との間のペプチド免疫原をコードするヌクレオチド配列を有するコーディング領域を含む、250から1800までのヌクレオチドを有して、ノンコーディング領域に対するコーディング領域の相対的配列長は、3と20との間である。幾つかの実施形態において、ノンコーディング領域に対するコーディング領域の比率は、6と20との間である。
【0044】
さらに別の実施形態において、mini環状RNAワクチンベクターは、11と20との間のペプチド免疫原をコードするヌクレオチド配列を含むコーディング領域を含む、450から3300までのヌクレオチドを有して、ノンコーディング領域に対するコーディング領域の相対的配列長は、6と40との間である。幾つかの実施形態において、ノンコーディング領域に対するコーディング領域の比率は、12と40との間である。
【0045】
幾つかの実施形態において、mini環状RNAワクチンベクターは、1と20との間のペプチド免疫原をコードするヌクレオチド配列を含むコーディング領域と、50と150との間のヌクレオチドのノンコーディング領域と、を含む、85から3300までのヌクレオチドを有する。この比率は、コーディング配列の長さと、ノンコーディング配列の長さと、に依存する。ノンコーディング配列に対するコーディング配列の長さの比率は、ナノキャリア内のcircRNAの封入密度と、それにより細胞(例えば、抗原提示細胞)に送達されるナノキャリアあたりのコーディングRNAのコピー数と、を決定する。これはまた、小分子circRNAサイズと、1つのcircRNAによりコードされた高コピー数のペプチドと、により増加され得る。言い換えると、コーディング/ノンコーディングの比率を増加させることは、コーディング領域を拡大させることと同じこと(1つのcircRNAにおけるワクチン価を増加させる)を意味する。mini circRNAベクターのノンコーディング領域のコンパクトなサイズが、リボソーム翻訳を開始及び維持するのに充分であり、またさらに、それによりノンコーディング領域の小さな相対的サイズが、ナノキャリアへの封入とベクター送達とを増加させることにより有効性を上昇させ得る、というのは予想外であり、驚くべきことであった。本発明の実施例から分かるとおり、その比率は、ノンコーディング領域に対するコーディング領域のサイズに依存するが、本発明のゴールは、ノンコーディング配列に対するコーディング配列の高い比率を有することであり、この高い比率が、より大きな有効性を可能にする。ノンコーディング領域は、典型的には300以下のヌクレオチド、150以下のヌクレオチド、100以下のヌクレオチド、又は50未満のヌクレオチドを含む。このためmini circRNAコーディング領域が、単一のペプチド免疫原をコードする場合、ノンコーディング領域に対するコーディング領域の相対的配列長は、各領域の精密な長さに応じて、0.3から2まででよく、又はその比率は、0.6から2まででよい。別の例において、コーディング領域が、2と5との間のペプチド免疫原をコードする場合、ノンコーディング領域に対するコーディング領域の相対的配列長は、1.5から10まででよく、又はその比率は、3から10まででよい。コーディング領域が、6と10との間のペプチド免疫原をコードする場合、ノンコーディング領域に対するコーディング領域の相対的配列長は、3と20との間であり、又はその比率は、6と20との間に入り得る。コーディング領域が、11と20との間のペプチド免疫原をコードする場合、ノンコーディング領域に対するコーディング領域の相対的配列長は、6と40との間に入り、又はその比率は、12と40との間であり得る。当業者は、任意の特別な実施形態の精密な比率がこの手法で計算されることを、認識するであろう。
【0046】
mini circRNAワクチンベクターのコーディング領域は、関心のある少なくとも1つの免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む。一実施形態において、免疫原は、細胞性免疫を誘導する。本発明を実施する際、細胞性免疫は、免疫原特異的CD4T細胞及び免疫原特異的CD8キラーT細胞からなる群から選択される少なくとも1つの細胞型に誘導される。
【0047】
合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列の配列同一性は、関心のある免疫原又は複数の免疫原の全体的ヌクレオチド配列により決定されて、circRNAを形成させるために設計されて、合成されて、組み合わせられる。一実施形態において、合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列は、40から150までの範囲内のヌクレオチド長である。別の実施形態において、合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列は、40から80までの範囲内のヌクレオチド長である。小さなオリゴヌクレオチドほど、生成がより簡単で安価になり得るが、しかしより多数のオリゴヌクレオチドとライゲーションとが、所与のベクターを生成するために必要とされよう。一実施形態において、80から2000までのヌクレオチドを含むmini circRNAベクターは、mini circRNAワクチンベクターを形成させるために互いにライゲートされた2から40までの合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列で構築され、かつ、内部リボソーム進入部位(IRES)を含むノンコーディング領域と、少なくとも1つの免疫原をコードするヌクレオチド配列を含むコーディング領域と、場合により1つ又は複数のリンカー又はスペーサをコードするヌクレオチド配列と、を含む。別の実施形態において、80から1000までのヌクレオチドを含むmini circRNAベクターは、mini circRNAワクチンベクターを形成させるために互いにライゲートされた2から20までの合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列で構築される。別の実施形態において、80から500までのヌクレオチドを含むmini circRNAベクターは、mini circRNAワクチンベクターを形成させるために互いにライゲートされた2から10までの合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列で構築される。さらに別の実施形態において、ノンコーディング領域を表す単一の合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列は、1と20との間の免疫原及び/又は1つ若しくは複数の免疫原の複数のリピートをコードする1つ又は複数の合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列にライゲートされてもよい。さらに別の実施形態において、ノンコーディング領域のための同じ単一合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列が、異なる免疫原をコードするが同じ調節エレメントを有するmini circRNAワクチンベクターを生成するために、異なるコーディングオリゴヌクレオチドと組み合わせられてもよい。
【0048】
一実施形態において、ノンコーディング領域は、IRESからなる。一般にIRESは、300未満のヌクレオチドである。IRESは、LINE1と、crTMVと、Rbm3と、ヒトc-myc、言い換えれば、ヒトc-myc mRNAのIRESと、Rbm3 mRNAのIRESなどからなる群から選択される。
【0049】
コーディング領域は、少なくとも1つの免疫原をコードするヌクレオチド配列を含む。免疫原は、ベクターの標的である関心のある細胞により発現されるペプチド又はタンパク質の任意の全体又は一部でもよい。主たる実施形態において、免疫原は、抗原提示細胞又は脾臓細胞内で発現される潜在的抗原を表すペプチド免疫原である。別の実施形態において、免疫原は、関心のある治療性タンパク質でもよい。癌を処置する実施形態では、免疫原は、一般に癌関連抗原、癌ネオ抗原、腫瘍ウイルス抗原、癌精巣抗原などである。同じく企図されるのは、腫瘍ネオ抗原、腫瘍ウイルス抗原、癌精巣抗原又はそれらの組合わせのいずれかをコードするヌクレオチド配列である。一実施形態において、コーディング領域は、連続で配置された複数のペプチド免疫原をコードするヌクレオチド配列を含み、ペプチド免疫原の間にペプチド切断部位又は構造的リンカーを有さない。この実施形態において、複数の免疫原が、ペプチドコンカテマーに翻訳される。ペプチドコンカテマーは、細胞内で抗原として提示されるペプチドエピトープにプロセシングされる必要があり得る。別の実施形態において、コーディング領域は、複数のペプチド免疫原をコードして、ペプチド免疫原は、リンカーにより分離される。これらのリンカーはさらに、ペプチド切断部位又は構造的ペプチドリンカーをコードしてもよい。ペプチド切断部位は、ペプチド切断部位を有するベクター内のペプチドコンカテマーをランダムプロセシングさせることと対照的に抗原プロセシングの部位を決定してもよい。
【0050】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの内部リボソーム進入部位(IRES)を有する80から2000までのヌクレオチドを含み、かつ、少なくとも1つの免疫原をコードする、それ必要とする対象のためのセルフアジュバントされたmini環状RNA(circRNA)ワクチンを調製する方法である。circRNAは、
1つ又は複数のDNAスプリント(複数可)を準備するステップと;
直鎖状一本鎖RNAオリゴヌクレオチドを合成するステップと;
DNAスプリントを少なくとも2つの直鎖状一本鎖RNAオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせて、複数のオリゴヌクレオチドを互いに接近させるステップと;
一本鎖RNAオリゴヌクレオチドをライゲートして、mini circRNAワクチンを形成させるステップと;
DNAスプリントを除去するステップと;
mini circRNAワクチンを精製するステップと、
を用いて合成される。
【0051】
circRNAが、合成及び精製された後、mini circRNAワクチンベクターが、製剤化される。一実施形態において、circRNAは、生理食塩水、緩衝生理食塩水、又は他の生体適合性溶液などの医薬的に許容できる担体に溶解される。別の実施形態において、mini circRNAワクチンベクターは、リポソーム、エクソソーム、ナノ粒子、及び脂質ナノ粒子からなる群から選択されるナノキャリア内に封入される。
【0052】
本発明の目的は、対象が罹患した癌の細胞内で発現された癌抗原を同定するステップと;コーディング領域が癌抗原の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列を含み、ノンコーディング領域が少なくとも1つの調節エレメントを含む、mini環状RNA(circRNA)ワクチンベクターを合成するステップと、を含む、処置を必要とする対象において癌を処置する方法を提供することである。治療有効量のcircRNAワクチンベクターが、対象において免疫反応を誘導するために対象に投与される。注射の経路は、典型的には静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮下、皮内、頭蓋内、及び/又は腹腔内注射又は輸液による。本発明の目的は、最大の免疫反応を誘導することである。このため更なる目的は、各circRNA分子がノンコーディング領域に対してコーディング領域を高い比率で発現する、高コピー数のcircRNA分子を送達することである。投与するステップは、1日から8日まで若しくは1週から8週まで、又はより長い間隔を入れて繰り返されてもよい。
【0053】
少なくとも1つの免疫原は、腫瘍特異的抗原の任意の一部又は全てでもよい。幾つかの実施形態において、免疫原は、変異体KRAS抗原、黒色腫腫瘍特異的抗原及び/又はイソクエン酸デヒドロゲナーゼ腫瘍特異的抗原である。別の実施形態において、少なくとも1つの免疫原は、対象とHLAが適合する。
【0054】
一実施形態において、mini circRNAワクチンベクターは、手術、化学療法、放射線療法、及び実施者が適切と思われ得る任意の他の免疫療法などの他の癌療法と併用で用いられてもよい。幾つかの実施形態において、免疫反応は、PD-1阻害剤及び/又はPD-L1阻害剤などの1つ又は複数の免疫療法薬との共投与により増強されてもよい。
【0055】
一実施形態において、mini circRNAワクチンベクターは、ウイルス抗原ペプチド又はタンパク質をコードしてもよい。これらのウイルス抗原の例としては、SARS-CoVとSARS-CoV-2とからのスパイクタンパク質又はそのサブユニットエピトープ、インフルエンザからのマトリックス2(M2e)又はヘマグルチニンの細胞外ドメイン、ヒト免疫欠損ウイルス(HIV)からのgp120、及びヒトパピローマウイルス(HPV)からのE7タンパク質が挙げられる。これらのcircRNAワクチンは、レシピエントが対応する病原体に感染するのを予防するために予防的に用いられ得て、予め存在する感染を処置するために単独で、又は他の治療薬と併用で治療的にも用いられ得る。
【0056】
mini circRNAのエレメント
本明細書に記載されたmini circRNAは、複数のエレメントを含む。これらのうち、2つは、1)タンパク質翻訳をキャップ非依存的手法で開始する少なくとも1つの(通常は唯一の)内部リボソーム進入部位(IRES)と;2)エピトープコーディング領域、即ち、少なくとも1つの免疫原の翻訳をコードするRNAntsと、が必要とされる。任意の選択肢である他のエレメントとしては、3)タンパク質翻訳を真核生物系において開始する少なくとも1つの(通常は唯一の)コザック配列;4)翻訳されたエピトープコードディング領域の末端をシグナル伝達するための1つ又は複数の終止コドン;及び複数のエピトープが、単一転写産物としてコードされる場合には、5)例えば、所定のエピトーププロセシングのための各エピトープ又は他のペプチドリンカーの間の、プロテアーゼ切断部位をコードする少なくとも1つの配列、が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、コザック配列は、IRESの代わりに用いられ得る。これらのエレメントのそれぞれは、次の節により完全に記載されよう。
【0057】
幾つかの態様において、本明細書に記載されたcircRNAは、3つの区分:1)タンパク質翻訳をキャップ非依存的手法で開始するIRESと;2)タンパク質翻訳を真核生物系において開始するコザック配列と;3)エピトープコーディング領域と、を含む。
【0058】
幾つかの態様において、本明細書に記載されたcircRNAは、4つの区分:1)タンパク質翻訳をキャップ非依存的手法で開始するIRESと;2)タンパク質翻訳を真核生物系において開始するコザック配列と;3)エピトープコーディング領域と;4)1つ又は複数の終止コドンと、を含む。
【0059】
他の態様において、circRNAは、最低でも5つの区分:1)タンパク質翻訳をキャップ非依存的手法で開始するIRESと;2)タンパク質翻訳を真核生物系において開始するコザック配列と;3)終止コドンで終結するエピトープコーディング領域と、4)終止コドンと;5)プロテアーゼ切断部位をコードする少なくとも1つの配列と、を含む。プロテアーゼ切断部位としては、AYYリンカー、GPGPGリンカー、2A自己切断ペプチド、小胞体ホーミングシグナルペプチド、アスパラギン酸プロテアーゼ切断部位、システインプロテイン切断部位、メタロプロテアーゼ切断部位、及びセリンプロテアーゼ切断部位が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
終止コドンは、典型的にはRNA分子内でUAG、UAA、又はUGAとしてコードされる。重要な注意点として、circRNAは多くの場合、ローリングサークル型翻訳のためにベクターを最適化するために終止コドン又はプロテアーゼ切断部位を意図的に含有せず、リボソームが複数のサイクルの間、環状ベクターに付着されたままであるか、又はコードペプチドをコンカテマーとして連続で翻訳するためにコンパクトなmini circRNAに急速に再結合して、その後、細胞内で所定の切断部位を用いずにエピトープに自然にプロセシングされる。
【0061】
mini circRNA設計への本発明のモジュール式又はカセット式アプローチは、有利にはエレメントを容易に取り換えさせる、又は置き換えさせる。このことは、合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNAで調製されたmini circRNAには特に当てはまる、というのは、調節エレメント及び/又は標的免疫原を修飾するために任意のカスタマイズされた合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNA配列を急速に生成するのに、自動化合成装置が用いられ得るためである。例えば、制御エレメントは、異なる宿主又は異なる免疫原の中で最適な翻訳のために交換され得る。調節エレメントを取り換えることに加えて、免疫原が、異なる免疫原を標的とする特異的ワクチンを生成するために容易に取り換えられ得る。特に、特有のエピトープコーディング領域を除去して、それを関心のある少なくとも1つの異なるエピトープをコードする領域に置き換えて、それにより宿主内で少なくとも1つの異なるエピトープを生成することができるのが、有利である。一実施形態において、単一の合成一本鎖オリゴヌクレオチドRNAは、1つ又は複数の特異的免疫原をコードする任意の数の合成RNAオリゴヌクレオチドと共に用いられ得るノンコーディング領域のために調製される。同じノンコーディングオリゴヌクレオチドRNAはその後、異なる免疫原又は異なる免疫原セットを標的とする異なる免疫原コードオリゴヌクレオチドRNAと組み合わせられ得る。
【0062】
抗原コーディング領域のドメインと、含まれるならコザック配列及び/又は終止コドンと、の中のヌクレオチドの数が、ローリングサークル型翻訳での第1ラウンドの翻訳の後のフレームシフトエラーを予防するために、合計で3の倍数になることに留意することが、重要である。
【0063】
コードされた免疫原/抗原/エピトープ(複数可)
本開示のmini circRNAは、抗原領域、即ち、少なくとも1つの潜在的エピトープを含むペプチド又はタンパク質(又は他の抗原分子)の領域又はセグメントをコードする少なくとも1つの(即ち、1つ又は複数の)リボヌクレオチド配列を含む。抗原領域が、mini circRNAが投与される対象の中で翻訳されると、少なくとも1つのエピトープが、対象の中で免疫反応を誘発する。
【0064】
幾つかの態様において、単一免疫原又はエピトープが、コードされてもよい。しかし一般にmini circRNAは、複数の抗原/エピトープをコードするヌクレオチド配列を含み、即ち、一般に該ヌクレオチド配列は、多価ペプチド抗原をコードする。免疫原は、エピトープを生じるために細胞内プロセシングを必要とするペプチド抗原でもよく、又は免疫原が、T細胞に提示されるためにプロセシングを必要としない個々のエピトープとしてコードされてもよい。一般に、個々のエピトープのみが、特異的ペプチド切断部位により分離される。
【0065】
幾つかの態様において、複数のペプチド免疫原が、タンデムにコードされて、免疫原の少なくとも2つ、又はことによると全て、通常は個々のエピトープが、プロテアーゼ切断配列であるペプチド配列より分離される。このためRNA配列は、宿主内でポリペプチドに翻訳されて、ポリペプチドは、所定の切断部位で内在性プロテアーゼによりインビボで個々の抗原/エピトープに切断される。他の態様において、タンデムにコードされた複数のペプチド免疫原又はエピトープは、ペプチド切断部位で分離されず、ポリペプチドは、インビボでは所定の切断部位を用いずに内在性プロテアーゼにより切断される。
【0066】
コードされた抗原/エピトープの型及び数は、大きく変動してもよい。例えば、その抗原/エピトープは、全てがウイルス、細菌などの単一の感染因子に基づいても、又はそれから発生してもよい。そのため個々のエピトープは、感染因子(例えば、SARS-CoV2のスパイクタンパク質)の単一タンパク質内の異なる配列からのもの、又は様々な異なるタンパク質の異なる配列からのものでもよい。或いはエピトープは、複数の異なる感染因子の組合わせからのもの(例えば、ジフテリア・百日咳・破傷風(DPT)ワクチンのような)、又は単一感染因子の異なる株からのものでもよい(例えば、インフルエンザワクチンのような)。さらに、これらの型のエピトープの組合わせが、1つの型のcircRNAに含まれてもよく、即ち、複数の感染因子からのエピトープが、含まれてもよく、感染因子それぞれからの複数の異なる抗原が、含まれてもよい。
【0067】
特にエピトープは、感染因子から発生する必要はない。癌抗原配列に加えて、癌関連抗原、癌ネオ抗原、腫瘍ウイルス抗原、癌精巣抗原、自己抗原、アレルゲン抗原なども、コードされてよい。
【0068】
一般に約1から約50までの個別の(別々の)エピトープが、各起源と無関係に単一circRNA内でコードされる。例えば、約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48又は50の個別のエピトープが、コードされてもよい。しかし一般に、約1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10のエピトープなどの10以下の個別のエピトープが、単一circRNA内でコードされる。複数のエピトープが、存在する場合、エピトープが、それぞれ異なってもよく(異なるアミノ酸配列を有してもよく)、及び/又は幾つか若しくは全てが、リピートされてもよい。各エピトープは一般に、約5から約50までのアミノ酸長、例えば、10と50との間の全ての整数を含む約5、6、7、8、9、10及び約50までのアミノ酸である。通常エピトープは、約8若しくは9のアミノ酸、又は約15~20のアミノ酸など、約8若しくは9、又は15~20 7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29若しくは30のアミノ酸などの約7から30までのアミノ酸を含む。
【0069】
翻訳開始配列
本開示のmini circRNAは、コザック配列及びIRES、又はその両方若しくは複数の組合わせなどの翻訳開始配列を含む。翻訳開始配列は、真核生物系においてタンパク質翻訳を開始するリボヌクレオチド配列である。翻訳開始配列は、AUG、CUG、GUG、UUG、ACG、AUC、AUU、AAG、AUA、又はAGGなどの任意の真核生物開始コドンを含んでもよい。幾つかの態様において、真核生物開始コドンは、AUGである。他の態様において、翻訳は、別の翻訳開始配列、例えば、選択的条件下、例えば、ストレス誘導条件下で、AUGコドン以外の翻訳開始配列で開始する。非限定的例として、circRNAの翻訳は、ACG、CTG/CUG又はGTG/GUGなどの他の翻訳開始配列で開始してもよい。さらに別の非限定的例として、circRNAは、リピートRNAの短い伸長を含む他の翻訳開始配列、例えば、CGG、GGGGCC、CAG、CTGなどのリピート関連非AUG(RAN)配列で翻訳を開始してもよい。
【0070】
特定の態様において、翻訳開始配列は、コザック配列又は機能的に同等の配列でもよく、又はそれを含んでもよい。コザック配列は、AUG開始コドンの直後に、高度に保存されたGヌクレオチド:AUGGを含む。特にコザック配列は、以下のとおり、(gcc)gccRccAUGG(配列番号:01)により同定されてもよい:(i)小文字は、塩基が変動し得る位置にあって最も共通する塩基を表し;(ii)大文字は、高度に保存された塩基を示し(例えば、AUGG);(iii)「R」は、プリン(アデニン又はグアニン)を示し;(iv)カッコ内の配列((gcc))は、意義不明であり;(v) 下線の付いたAUG塩基トリプレットは、開始コドンを表す。
【0071】
幾つかの態様において、コザック配列は、GCCACCAUGである。幾つかの態様において、表題のcircRNAに組み込まれるコザック配列内のヌクレオチド数は、例えば、終止コドンが存在しない場合、3の倍数である。それゆえ本明細書に記載された古典的かつ例示的なコザック配列は、例えば、配列される適当な機能が保持される限り、欠失又は付加又は適切なヌクレオチド総数を作製するための1つ若しくは複数のヌクレオチドにより、この要件を満たすように改変されてもよい。
【0072】
幾つかの実施形態において、翻訳開始配列は、調節エレメントとして機能し得る。
【0073】
IRESエレメント
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたcircRNAは、IRESエレメントを含む。含むのに適したIRESエレメントは、真核生物リボソームに結合することが可能なRNA配列を含む。幾つかの実施形態において、IRESエレメントは、少なくとも約5から500までのnts長、例えば、少なくとも約8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、200、250、350、400、450又は500のnts長である。IRESエレメントは、非限定的に、ウイルス、哺乳動物、及び昆虫(例えば、ショウジョウバエ)をはじめとする生物体のDNA又はRNAに由来してもよい。ウイルスDNAは、非限定的に、ピコルナウイルス相補性DNA(cDNA)、脳心筋炎ウイルス(EMCV)cDNA、及びポリオウイルスcDNAに由来してもよい。一実施形態において、IRESエレメントが由来するショウジョウバエDNAとしては、キイロショウジョウバエのアンテナペディア遺伝子が挙げられるが、これに限定されない。
【0074】
幾つかの実施形態において、IRESエレメントは、少なくとも一部がウイルスに由来して、例えば、IRESエレメントは、ABPV_IGRpred、AEV、ALPV_IGRpred、BQCV_IGRpred、BVDV1_1-385、BVDV1_29-391、CrPV_SNCR、CrPV_IGR、crTMV_IREScp、crTMV_IRESmp75、crTMV_IRESmp228、crTMV_IREScp、crTMV_IREScp、CSFV、CVB3、DCV IGR、EMCV-R、EoPV SNTR、ERAV_245-961、ERBV_162-920、EV71_1-748、FeLV-Notch2、FMDV_type_C、GBV-A、GBV-B、Gbv-C、gypsy_env、gypsyD5、gypsyD2、HAV_HM175、HCV_type_1a、HiPV_IGRpred、HIV-1、HoCV1_IGRpred、HRV-2、IAPV_IGRpred、idefix、KBV_IGRpred、LINE-1_ORF1_-101_to_-1、LINE-1_ORF1_-302_to_-202、LINE-1_ORF2_-138to_-86、LINE-1_ORF1_-44to_-1、PSIV_IGr、PV_type1_Mahoney、PV_type3_Leon、REV-A、RhPV_5NCR、RhPV_IGR、SINV1_IGRpred、SV40_661-830、TMEV、TMV_UI_IRESmp228、TRV_5NTR、TrV_IGR、又はTSV_IGRなどのウイルスIRESエレメントに由来し得る。幾つかの実施形態において、IRESエレメントは、少なくとも一部がAML1/RUNX1、Antp-D、Antp-DE、Antp-CDE、Apaf-1、Apaf-1、AQP4、AT1R_var1、AT1R_var2、AT1R_var3、AT1R_var4、BAG1_p36delta236nt、BAG1_p36、BCL2、BiP_-222_-3、c-IAP1_285-1399、c-IAP1_1313-1462、c-jun、c-myc、Cat-1224、CCND1、DAPS、eIF4G、eIF4GI-ext、eIF4GII、eIF4GII-long、ELG1、ELH、FGF1A、FMR1、Gtx-133-141、Gtx-1-166、Gtx-1-120、Gtx-1-196、hairless、HAP4、HIF1a、hSNM1、Hsp101、hsp70、hsp70、Hsp90、IGF2_leader2、Kv1.4_1.2、L-myc、LamB1_-335-1、MNT_75-267、MNT_36-160、MTG8a、MYB、MYT2_997-1152、n-MYC、NDST1、NDST2、NDST3、NDST4L、NDST4S、NRF_-653_-17、NtHSF1、ODC1、p27kip1、p53_128-269、PDGF2/c-sis、Pim-1、PITSLRE_p58、Rbm3、reaper、Scamper、TFIID、TIF4631、Ubx_1-966、Ubx_373-961、UNR、Ure2、UtrA、VEGF-A_-133_-1、XIAP_5-464、XIAP_305-466、又はYAP1などの細胞内IRESに由来する。幾つかの実施形態において、IRESエレメントは、合成IRES、例えば、(GAAA)16若しくはGAAAGAAAGAAAGAAAGAAAGAAAGAAAGAAA GAAAGAAAGAAAGAAAGAAAGAAAGAAAGAAA(配列番号:02)、(PPT19)4、KMI1、KMI1、KMI2、KMI2、KMIX、X1、又はX2を含む。
【0075】
幾つかの実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、少なくとも1つの(例えば、2、3、4、5又はより多くの)発現配列に隣接する少なくとも1つのIRESを含む。幾つかの実施形態において、IRESは、少なくとも1つの(例えば、2、3、4、5又はより多くの)発現配列の両側に隣接する。幾つかの実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、各発現配列の片側又は両側に1つ又は複数のIRES配列を含んで、得られたペプチド(複数可)及び/又はポリペプチド(複数可)の分離に導く。
【0076】
IRES配列の例としては、
crTMV: UUCGUUUGCUUUUUGUAGUAUAAUUAAAUAUUUGUCAUAUAAGAGAUUGGUUAGAGAUUUGUUCUUUGUUUGAUC[75nt](配列番号:03);
LINE1:CGCAUUAUCUCUCCACGAAUCCAGCCCUUCAAAGGAUAAUAACAGA AAAAA ACG[54nt](配列番号:04);
Rbm3:UUUAUAAUUUCUUCUUCCAGAAUC[24nt](配列番号:05);
Apaf-1:TAGGCGCAAAGGCTTG GCTCATGGTTGACAGCTCAGAGAGAG AAAGAT CTGAGGGA(56nt)(配列番号:06)又はUAGGCGCAAAGGCUUG GCUCAUGGUUGACAGCUCAGAGAGAGAAAGAUCUGAGGGA(配列番号:12);及び
c-Myc:GGGGACTTTGCACTGGAACTTACAACACCCGAGCAAGGACGCGACTCT(48nt)(配列番号:07)又はGGGGACUUUGCACUGGAACUUACAA CACCCGAGCAAGGACGCGACUCU(配列番号:13)
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
プロテアーゼ切断部位
幾つかの態様において、mini circRNAは、1つ又は複数のプロテアーゼ切断部位をコードする核酸配列を含む。複数のプロテアーゼ切断アミノ酸配列が、存在する場合、そのアミノ酸配列は、同一でも、又は異なってもよい。この態様は、典型的には所定の翻訳後抗原プロセシングを促進又は確保するために、circRNAが複数の抗原配列を含む領域を含む場合に、存在する。そのような態様において、プロテアーゼ切断部位をコードする核酸配列は、各分離した個別の抗原配列の間に配置されるか、或いは、例えば、複数の抗原配列を含む多価キメラペプチド若しくはポリペプチドの形態で、幾つかの抗原配列を単一の存在として免疫系を提示すること、又は、立体配座エピトープを提示すること、が望ましい場合に、抗原配列の群の間に配置される。どのような設計であろうと、コードされたペプチド/ポリペプチド配列の翻訳により、ペプチド/ポリペプチドは、内在性プロテアーゼにより切断されて、コードされたペプチド/ポリペプチドは、より小さなセグメントに分離される。切断配列は、非限定的に哺乳動物のアスパラギン酸、システイン、メタロセリン、及びトレオニンプロテアーゼをはじめとする任意の内在性プロテアーゼによる切断を受け易くてもよい。コードされ得る部位特異的プロテアーゼ切断部位のアミノ酸配列の例としては、AYY、2A自己切断ペプチド、小胞体ホーミングシグナルペプチドなどが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの態様において、部位特異的プロテアーゼ切断部位は、AYYペプチドである。理論に結びつけるわけではないが、ローリングコンカテマーとして発現されるペプチドは、抗原提示のために細胞により小さな断片にプロセシングされる。こうして、プロテアーゼ切断部位又は他のリンカーが、幾つかの実施形態において用いられてもよいが、多抗原ベクターをはじめとする他のものには必要とされない。
【0078】
これらの態様において、複数の抗原配列は、それぞれ同じでもよく、又はそれぞれが、複数の他の抗原配列全てと異なってもよく、又は幾つかの抗原配列が、コーディング領域内で2回以上リピートされてもよい。さらに、抗原コード配列は、任意の順序でも、又はグループ分けされてもよい。例えば、6つの異なる抗原配列:A、B、C、D及びFをコードするcircRNAでは、順序は、ABCDEF;BCDEFA;CDEFABなど、及びその全ての可能な順列でもよい。さらに、幾つかの(又は全ての)抗原領域が、リピートされる場合、リピートもまた、任意の順序でよく、幾つかの抗原配列は、他より多いコピー数で、例えば、BBCCDDEEFFAA;CCCCDDEEFFAABBBB;CDCDEFEFABAB;ABCDEFABCDEFなど、及びその全ての他の可能な配置で存在してもよい。
【0079】
終止コドン
分子生物学(具体的にはタンパク質生合成)において、終止コドン(又は終結コドン)は、本発明のタンパク質の翻訳工程の終結をシグナル伝達するコドン(メッセンジャーRNA内のヌクレオチドトリプレット)である。本発明のcircRNA内で用いられる例示的な終止コドンとしては、UAG、UAA、及びUGAに加えて、AGA、AGG、UCA及びUUAなどの脊椎動物、セネデスムス・オブリクス、及びスラウストキトリウムのミトコンドリアゲノムで見出される別のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
幾つかの態様において、終止コドンは、circRNAに含まれない。非終止RCTの場合、前提条件は、第1ラウンドの翻訳に続いて「フレームシフト」を含まない正しいペプチド配列の合成を確保するために、circRNA内のヌクレオチド数が3の倍数である、ということである。
【0081】
環状RNAの他の特徴は、例えば、全ての内容が全体として参照により本明細書に援用される、発行された米国特許第11,160,822号に記載される。
【0082】
医薬組成物
本明細書に記載された化合物は一般に、医薬組成物又は治療組成物として送達(投与)される。本明細書で用いられる「医薬組成物」は、ヒトをはじめとする対象動物への投与に適した組成物をいう。本発明の関連では、医薬組成物は、薬理学的有効量の少なくとも1つの型のmini circRNA分子と、医薬的に許容できる担体、溶媒又は賦形剤と、を含む。したがって本発明の医薬組成物は、本発明による少なくとも1つのmini circRNAと、医薬的に許容できる担体と、を混和することにより作製された任意の組成物を包含する。
【0083】
本明細書で用いられる「ワクチン」組成物(又は「免疫反応を誘発する組成物」)は、本明細書に記載された少なくとも1つのmini circRNA分子と、医薬的に許容できる担体、溶媒、賦形剤及び/又はアジュバントと、を含む組成物をいう。
【0084】
そのような医薬組成物及びワクチン組成物は一般に、少なくとも1つの型の開示されたmini circRNAを複数含み、即ち、1つ又は1つより多くの(複数の)異なるmini circRNA(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10つ又はより多くなどの2つ以上)が、単一製剤に含まれてもよい。異なる型のそれぞれが、異なる抗原又は抗原群をコードする。したがって本発明は、そのような製剤/組成物を包含する。該組成物は一般に、本明細書に記載された1つ又は複数の実質的に精製されたmini circRNAと、薬理学的に適した(生理学的に適合性のある)担体と、を含む。幾つかの態様において、そのような組成物は、溶液若しくは懸濁液として、又は錠剤、丸薬、粉末及び同様のものなどの固体形態として、調製される。投与前に液体の溶液又は液体の懸濁液に適した固体形態もまた、乳化された調製物と同様に、企図される(例えば、化合物の凍結乾燥形態)。幾つかの態様において、液体製剤は、水性又は油性懸濁液又は溶液である。幾つかの態様において、有効成分は、医薬的に許容できて有効成分と適合性がある賦形剤、例えば、医薬的に許容できる塩と混合される。適切な賦形剤としては、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、及び同様のものが挙げられる。加えて組成物が、湿潤剤及び/又は乳化剤、pH緩衝剤、防腐剤、及び同様のものなどの微量の補助的物質を含有してもよい。幾つかの態様において、経口形態の組成物を投与することが望ましく、そのため様々な増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤又は結合剤、及び同様のものが、添加される。本発明の組成物は、投与に適した形態の組成物を提供するために、任意のそのような追加的原材料を含有してもよい。製剤中の化合物の最終量は、変動するが、一般に約1~99%である。本発明での使用のためのさらに別の適切な製剤は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 22nd ed.(2012; eds. Allen, Adejarem Desselle and Felton)に見出される。
【0085】
「医薬的に許容できる担体」は、臨床的に有用な溶媒、分散媒、コーティング、等張及び吸収遅延剤、臨床緩衝生理食塩水(PBS)、デキストロース又はマンニトールの水溶液などの緩衝剤及び賦形剤、水中油又は油中水エマルジョンなどのエマルジョン、並びに様々な型の湿潤剤、免疫刺激剤及び/又はアジュバントをいう。該組成物に有用な医薬担体は、活性剤の意図される投与様式に依存する。医薬的に許容できる担体として役立ち得る材料の幾つかの例としては、イオン交換物質、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(ヒト血清アルブミンなど)、緩衝物質(Tween(登録商標)80、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、又はソルビン酸カリウムなど)、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、又は電解質(硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム又は亜鉛塩など)、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックポリマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、羊毛脂;ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖;コーンスターチ及びジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油などの油;紅花油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油及び大豆油;プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水:リンゲル液;エチルアルコール、及びリン酸緩衝溶液が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性適合性滑沢剤に加えて、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び調香剤、防腐剤、並びに抗酸化剤もまた、製剤者の判断に従って該組成物に存在してよい。
【0086】
「医薬的に許容できる塩」は、本発明の化合物の相対的に非毒性の無機及び有機酸付加塩と、塩基付加塩と、をいう。これらの塩は、該化合物の最終的単離及び精製の際にその場で調製され得る。特に酸付加塩は、遊離塩基形態の精製化合物を適切な有機又は無機酸と別個に反応させること、及びこうして形成された塩を単離すること、により調製され得る。例示的な酸付加塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクチオビオン酸塩、スルファミン酸塩、マロン酸塩、サリチル酸塩、プロピオン酸塩、メチレン-ビス-ベータ-ヒドロキシナフトエ酸塩、ゲンチジン酸塩、イセチオン酸塩、ジ-p-トルオイル酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、及びラウリルスルホン酸塩及び同様のものが挙げられる。例えば、参照により本明細書に援用される、S. M. Berge, et al., ”Pharmaceutical Salts,” J. Pharm. Sci., 66, 1-19(1977)を参照されたい。塩基付加塩もまた、酸形態の精製化合物を適切な有機又は無機塩基と別個に反応させること、及びこうして形成した塩を単離すること、により調製され得る。塩基付加塩としては、医薬的に許容できる金属塩及びアミン塩が挙げられる。適切な金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩が挙げられる。ナトリウム塩及びカリウム塩が、一般に好ましい。適切な無機塩基付加塩は、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛塩及び同様のものをはじめとする金属塩基から調製される。適切なアミン塩基付加塩は、安定塩を形成するのに充分な塩基性を有するアミンから調製されて、好ましくは低毒性と医療用途への許容性とにより医療化学で用いられることの多いそれらのアミンを包含して、その例としては、アンモニア、エチレンジアミン、N-メチル-グルカミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、エフェナミン、デヒドロアビエチルアミン、N-エチルピペリジン、ベンジルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、塩基性アミノ酸、例えば、リジン及びアルギニン、並びにジシクロヘキシルアミン及び同様のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
一本鎖RNAは、哺乳動物細胞内で「異物」として同定されるため、開示されたmini circRNAは、炎症性及びセルフアジュバントである。しかし、医薬組成物中の追加的アジュバントの任意選択的使用は、妨げられない。アジュバントは、抗原への身体の免疫反応を増強する物質である。非限定的に、ミョウバン(リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム)、架橋ポリアクリル酸ポリマー、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)、ラクトフェリン、IFN-ガンマ誘導体、非イオン性洗剤、植物油、界面活性物質(リソレシチン、プルロニック(登録商標)ポリオール、ポリアニオンなど)、様々なペプチド、油性又は炭化水素エマルジョン(例えば、水中油エマルジョン)、キーホールリンペットヘモシアニン、スクアレン系アジュバント(MF59など)、モンタニド、RIMアジュバント、完全フロイントアジュバント及び不完全フロイントアジュバント、MPL、ムラミールジペプチド、TLRリガンド系アジュバント、CpGオリゴヌクレオチド、非CpGオリゴヌクレオチド、QS-1、ISCOM、ISCOMATRIXなどのサポニン、ビタミン及びサイトカインなどの免疫調整剤、並びに同様のものをはじめとする多くが、当該技術分野で知られており、本発明のワクチン組成物中で使用され得る。同じく含まれるのが、公開された米国特許出願公開第20210228709号明細書に記載のサポニンアジュバント;公開された米国特許出願公開第20210222179号明細書に記載のrBCG;公開された米国特許出願公開第20210205445号明細書に記載のDectin-2リガンドワクチンアジュバント;及び公開された米国特許出願公開第20210187104号明細書に記載のワクチンアジュバントである。本明細書に列挙された全ての公開された米国特許出願の全内容が、全体として参照委より本明細書に援用される。
【0088】
特別な投与様式に適した製剤、例えば、注射用液;経口投与用の丸薬、カプセル、液体など;経粘膜投与用のクリーム、軟膏及び坐剤などもまた、包含される。癌の処置用などの幾つかの態様において、該化合物が、癌細胞への免疫反応を全身又は腫瘍部位付近で誘発するために、インプラント(例えば、生体分解性インプラント)に組み込まれる。
【0089】
好ましい態様において、脂質ナノ粒子(LNP)は、インビボでcircRNAをリンパ節及び抗原提示細胞(APC)に送達するために用いられる。circRNAは、炎症促進性免疫反応を刺激して、適応免疫調整のための抗原を発現する。脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質に加えて、他の脂質及びコレステロールで作製された球状小胞である。イオン化可能な脂質は、低pH(RNA複合体形成を可能にする)では正に帯電されて、生理的pH(リポソームなどの正電荷脂質に比較して潜在的毒性効果を低減する)では中性である。サイズ及び特性のおかげで、脂質ナノ粒子は、エンドサイトーシスを介して細胞により取り込まれ、低pHでの脂質のイオン化可能性が、おそらくエンドソーム脱出を可能にして、カーゴを細胞質に放出させる。加えて、脂質ナノ粒子は通常、細胞結合を促進するヘルパー脂質と、脂質間のギャップを埋めるコレステロールと、血清タンパク質及び細網内皮クリアランスによりオプソニン化を低減するポリエチレングリコール(PEG)と、を含有する。
【0090】
幾つかの実施形態において、そのような脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質と、中性脂質、帯電脂質、ステロイド及びポリマーコンジュゲート化脂質(例えば、ペグ化脂質)から選択される1つ又は複数の賦形剤と、を含む。幾つかの実施形態において、mini circRNAは、脂質ナノ粒子の脂質部分に封入されるか、又は脂質ナノ粒子の脂質部分の一部若しくは全てにより覆われた水性空間の中に封入されて、それによりmini circRNAを、宿主生物体又は細胞のメカニズムにより誘導される酵素分解又は他の望ましくない効果、例えば、有害な免疫反応から防御する。
【0091】
様々な実施形態において、脂質ナノ粒子は、約30nmから約150nmまで、約40nmから約150nmまで、約50nmから約150nmまで、約60nmから約130nmまで、約70nmから約110nmまで、約70nmから約100nmまで、約80nmから約100nmまで、約90nmから約100nmまで、約70nmから約90nmまで、約80nmから約90nmまで、約70nmから約80nmまで、又は約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、若しくは150nmの平均径を有して、実質的に非毒性である。
【0092】
LNPは、1つ又は複数のmini circRNAが付着された粒子、又は1つ又は複数のmini circRNAが封入された粒子を形成することが可能な任意の脂質を含んでもよい。用語「脂質」は、脂肪酸の誘導体(例えば、エステル)である有機化合物の群をいい、一般に水に不溶性であるが多くの有機溶媒に可溶性であることを特徴とする。脂質は通常、少なくとも3つの分類に分別される:(1)脂肪及び油に加えワックスをはじめとする「単純脂質」;(2)リン脂質及び糖脂質をはじめとする「複合脂質」;並びに(3)ステロイドなどの「誘導された脂質」。
【0093】
一実施形態において、LNPは、1つ又は複数のカチオン性脂質と、1つ又は複数の安定化脂質と、を含む。安定化脂質としては、中性脂質及びペグ化脂質が挙げられる。
【0094】
一実施形態において、LNPは、カチオン性脂質を含む。本明細書で用いられる用語「カチオン性脂質」という用語は、pHが脂質のイオン化可能な基のpKより低くなるとカチオン性またはカチオン化(プロトン化)するが、pHが高くなると徐々に中性になる脂質を指す。pK未満のpH値では、脂質はその後、負電荷の核酸と会合され得る。特定の実施形態において、カチオン性脂質は、pHが低下すると正電荷になると推定される双性イオン性脂質を含む。
【0095】
特定の実施形態において、カチオン性脂質は、生理的pHなどの選択的pHで正味の正電荷を担う複数の脂質種のいずれかを含む。そのような脂質としては、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Choi)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレオイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、及びN-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)が挙げられるが、これらに限定されない。追加として、本発明で用いられ得るカチオン性脂質の複数の市販の調製物が、入手可能である。これらには、例えば、LIPOFECTIN(商標)(DOTMAと1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)とを含む市販のカチオン性リポソーム、NY州グランドアイランドのGIBCO/BRL製);LIPOFECTAMINE(商標)(N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-(2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチル-アンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)と(DOPE)と、を含む市販のカチオン性リポソーム、GIBCO/BRL製);及びTRANSFECTAM(商標)(エタノール中のジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)を含む市販のカチオン性脂質、ウィスコンシン州マディソンのPromega Corp.製)が挙げられる。以下の脂質は、カチオン性であり、生理的pH未満で正電荷を有する:DODAP、DODMA、DMDMA、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)。
【0096】
一実施形態において、カチオン性脂質は、アミノ脂質である。本発明において有用である適切なアミノ脂質は、全体として参照により本明細書に援用される国際公開第2012/016184号パンフレットに記載されたものを包含する。代表的なアミノ脂質としては、SM-102、ALC-315、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.C1)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、及び2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
特定の実施形態において、カチオン性脂質は、約30モルパーセントから約95モルパーセントまでの量でLNP中に存在する。一実施形態において、カチオン性脂質は、約30モルパーセントから約70モルパーセントまでの量でLNP中に存在する。一実施形態において、カチオン性脂質は、約40モルパーセントから約60モルパーセントまでの量でLNP中に存在する。一実施形態において、カチオン性脂質は、約50モルパーセントまでの量でLNP中に存在する。一実施形態において、LNPは、唯一のカチオン性脂質を含む。特定の実施形態において、LNPは、LNPの形成の際に粒子の形成を安定化させる1つ又は複数の追加的脂質を含む。適切な安定化脂質としては、中性脂質及びアニオン性脂質が挙げられる。
【0098】
用語「中性脂質」は、生理的pHで非電荷形態又は中性双性イオン性形態のどちらかで存在する複数の脂質種の任意の1つをいう。代表的な中性脂質としては、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、及びセレブロシドが挙げられる。例示的な中性脂質としては、例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン 4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、及び1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(transDOPE)が挙げられる。幾つかの実施形態において、LNPは、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPE及びSMから選択される中性脂質を含む。
【0099】
様々な実施形態において、中性脂質に対するカチオン性脂質のモル比は、約2:1から約8:1までの範囲内である。
【0100】
様々な実施形態において、LNPはさらに、ステロイド又はステロイド類似体を含む。
【0101】
特定の実施形態において、ステロイド又はステロイド類似体は、コレステロールである。これらの実施形態の幾つかにおいて、コレステロールに対するカチオン性脂質のモル比は、約2:1から1:1までの範囲内である。
【0102】
用語「アニオン性脂質」は、生理的pHで負に帯電された任意の脂質をいう。これらの脂質としては、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレイオルホスファチジルグリセロール(POPG)、及び中性脂質に接合された他のアニオン性修飾基が挙げられる。
【0103】
特定の実施形態において、LNPは、糖脂質(例えば、モノシアロガングリオシドGMi)を含む。特定の実施形態において、LNPは、コレステロールなどのステロールを含む。
【0104】
幾つかの実施形態において、LNPは、ポリマーコンジュゲート化脂質を含む。用語「ポリマーコンジュゲート化脂質」は、脂質部分とポリマー部分との両方を含む分子をいう。ポリマーコンジュゲート化脂質の例は、ペグ化脂質である。用語「ペグ化脂質」は、脂質部分とポリエチレングリコール部分との両方を含む分子をいう。ペグ化脂質は、当該技術分野で知られており、1-(モノメトキシポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-s-DMG)及び同様のものが挙げられる。
【0105】
特定の実施形態において、LNPは、ポリエチレングリコール-脂質(ペグ化脂質)である追加の安定化脂質を含む。適切なポリエチレングリコール-脂質としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド(例えば、PEG-CerC14又はPEG-CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロールが挙げられる。
【0106】
代表的なポリエチレングリコール-脂質としては、PEG-c-DOMG、PEG-c-DMA、及びPEG-s-DMGが挙げられる。一実施形態において、ポリエチレングリコール-脂質は、N-[(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバミル]-1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-アミン(PEG-c-DMA)である。一実施形態において、ポリエチレングリコール-脂質は、PEG-c-DOMGである。他の実施形態において、LNPは、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)などのペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、4-0-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-0-(co-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG)などのPEGスクシネートジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、ペグ化セラミド(PEG-cer)、又はQ-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル)カルバメート若しくは2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル-N-(co-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバメートなどのPEGジアルコキシプロピカルバメートを含む。様々な実施形態において、ペグ化脂質に対するカチオン性脂質のモル比は、約100:1から約25:1までの範囲内である。
【0107】
特定の実施形態において、追加的脂質が、約1モルパーセントから約10モルパーセントまでの量でLNP中に存在する。一実施形態において、追加的脂質が、約1モルパーセントから約5モルパーセントまでの量でLNP中に存在する。一実施形態において、追加的脂質が、約1モルパーセント又は約1.5モルパーセントの量でLNP中に存在する。
【0108】
特定の実施形態において、LNPは、LNPを細胞又は細胞集団に標的化させることが可能な1つ又は複数の標的化分子を含む。例えば、一実施形態において、標的化部分は、細胞表面に見出される受容体にLNPを向かわせるリガンドである。
【0109】
特定の実施形態において、LNPは、1つ又は複数の内在化ドメインを含む。例えば、一実施形態において、LNPは、LNPの内在化を誘導するために細胞に結合する1つ又は複数のドメインを含む。例えば、一実施形態において、1つ又は複数の内在化ドメインは、LNPの受容体介在性取込みを誘導するために細胞表面に見出される受容体に結合する。特定の実施形態において、LNPは、インビボで生体分子に結合することが可能であり、LNP結合生体分子はその後、内在化を誘導するために細胞表面受容体により認識され得る。例えば、一実施形態において、LNPは、全身のApoEに結合して、ApoEがLNPと関連のカーゴとの取込みに導く。
【0110】
他の例示的LNP及びそれらの製造は、当該技術分野において、例えば、それぞれの内容が全体として参照により本明細書に援用される、国際公開第2016176330号パンフレット、米国特許出願公開第20120276209号明細書、Semple et al., 2010,Nat Biotechnol.,28(2): 172-176;Akinc et al., 2010, Mol Ther., 18(7): 1357-1364;Basha et al., 2011, Mol Ther, 19(12): 2186-2200;Leung et al., 2012, J Phys Chem C Nanomater Interfaces, 116(34): 18440-18450;Lee et al., 2012, Int J Cancer., 131(5): E781-90;Belliveau et al., 2012, Mol Ther nucleic Acids, 1: e37;Jayaraman et al., 2012, Angew Chem Int Ed Engl., 51(34): 8529-8533;Mui et al., 2013, Mol Ther Nucleic Acids. 2, e139;Maier et al., 2013, Mol Ther., 21(8): 1570-1578;及びTarn et al., 2013, Nanomedicine, 9(5): 665-74に記載される。LNPの追加的例は、それぞれの全ての内容が全体として参照により本明細書に援用される、発行された米国特許第11,168,051号;同第11,026,894号;同第10,940,207号;同第10,342,760号;及び同第10,307,490号各明細書に記載される。
【0111】
当業者は、LNPが本明細書に記載された製剤及び方法のいずれかにより送達され得ること、例えば、経口投与の際に溶解するカプセルに封入され得ること、例えば、懸濁液中に、注射用に調製され得ること、を認識するであろう。さらに、そのような製剤は、1つ又は複数の凍結防止剤を含んでもよい。幾つかの実施形態において、凍結防止剤は、凍結乾燥及び貯蔵の前にLNP溶液に添加される。幾つかの実施形態において、凍結防止剤は、1つ又は複数の凍結防止剤を含み、1つ又は複数の凍結防止剤のそれぞれは、独立して、ポリオール(例えば、ポリエチレングリコール(即ち、1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、グリセロール、(+/-)-2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、エチレングリコール、又はジエチレングリコールなどのジオール又はトリオール)、非界面活性型スルホベタイン(例えば、NDSB-201(3-(1-ピリジノ)-1-プロパンスルホネート)、オスモライト(例えば、L-プロリン又はトリメチルアミンN-オキシド二水和物)、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール200(PEG200)、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG3350、PEG4000、PEG8000、PEG10000、PEG20000、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル550(mPEG550)、mPEG600、mPEG2000、mPEG3350、mPEG4000、mPEG5000、ポリビニルピロリドン(例えば、ポリビニルピロリドンK15)、ペンタエリトリトールプロポキシレート又はポリプロピレングリコールP400)、有機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はエタノール)、糖(例えば、D-(+)-スクロース、D-ソルビトール、トレハロース、D-(+)-マルトース一水和物、メソエリトリトール、キシリトール、ミオイノシトール、D-(+)-ラフィノース五水和物、D-(+)-トレハロース二水和物、又はD-(+)-グルコース一水和物)、若しくは塩(例えば、酢酸リチウム、塩化リチウム、ギ酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸マグネシウム、塩化ナトリウム、ギ酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、又はそれらの任意の水和物)、又はそれらの任意の組合わせである。幾つかの実施形態において、凍結防止剤は、スクロースを含む。
【0112】
用途
本明細書に記載されたワクチン組成物は、予防的及び/又は治療的に用いられる。「予防的処置」は、感染又は疾患の確率を低減すること、感染又は疾患から病気に発展するリスクを低減すること、感染又は疾患の重症度を低下させること、もし起きたなら感染又は疾患の持続期間を減少させること、などを目的として、感染又は疾患の徴候を呈さない対象に施される処置である。「治療的処置」は、感染又は疾患の1つ又は複数の徴候又は症状を既に呈している対象に施される処置である。しかし幾つかの例では、例えば、乳癌又は結腸癌などの癌を処置するために、疾患が、サイレント(無症候)でもよく、マンモグラム、結腸内視鏡検査などのスクリーニング技術により、及び/又は生検により発見及び診断されてもよい。mini circRNAの投与は、一般に感染若しくは疾患の重症度を低減すること、及び/又は感染若しくは疾患の持続期間を短縮すること、及び/又は感染若しくは疾患の1つ若しくは複数の徴候若しくは症状を低減若しくは排除すること、及び/又はレシピエントの寿命を延長すること、及び/又はレシピエントの生活の質を向上させること、などを目的とする。当業者は、処置の転帰が疾患を完全に治癒又は根絶することであり得ることを、認識するであろう。しかし、「治癒」が実現されないとしても、例えば、疾患の少なくとも1つの症状を低減する、若しくは好転させること、患者の寿命を延長すること、又は生活の質を向上させること、により、多大な利益が発生し得る。一態様において、癌の治療性ワクチンは、腫瘍の量を低減するために、手術の前に投与されてもよい(ネオアジュバント)。別の態様において、癌の治療性ワクチンは、残留する疾患を低減するため、及び/又は再発の機会を低減するために、手術の後に投与されてもよい。
【0113】
投与
本明細書に開示された治療製剤は、非限定的に、接種又は注射(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内、耳内(intra-aural)、関節内、乳房内及び同様のもの);経口;外用塗布(例えば、経皮的);上皮又は皮膚粘膜内層を通した吸収により(例えば、鼻内、経口、膣、直腸、消化管粘膜を介してなど);眼窩内;埋込により;吸入により(例えば、ミスト又はスプレーとして);髄腔内;脳室内などをはじめとする任意の適切な経路によりインビボで投与される。典型的な投与様式としては、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、又は腫瘍内注射をはじめとする非経口投与;1つ又は複数のリンパ節への投与;経皮及び経粘膜投与;吸入又は鼻腔スプレーなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい態様において、投与は、接種又は注射又は吸入又は鼻腔スプレーによる。幾つかの実施形態において、投与は、静脈内輸液を介する。幾つかの態様において、投与は、例えば、注射により直接、1つ又は複数のリンパ節内になされる。
【0114】
対象に投与されるmini circRNAの量は、一般に治療有効用量、例えば、疾患又は障害の少なくとも1つの症状を予防する、又は好転させるのに充分な用量である。「有効量」は、特有の障害の測定可能な改善又は予防を実行するのに必要となる少なくとも最小限の量である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別及び体重などの因子と、個体において所望の応答を誘発するmini circRNAの能力と、により変動してもよい。有効量は、処置の任意の毒性又は有害作用より治療的に有益な効果が上回る量でもある。予防的使用では、有益又は所望の結果は、疾患の生化学的、組織学的及び/又は行動的症状、疾患の発達の際に呈するその合併症及び中間的病理学的表現型をはじめとする、疾患のリスクを排除若しくは低減すること、重症度を低下させること、又は発病を遅延させることなどの結果を包含する。治療的使用では、有益な結果又は所望の結果は、疾患から生じた1つ若しくは複数の症状を減少させること、疾患に罹患した人の生活の質を向上させること、疾患を処置するのに必要となる他の薬物の用量を減少させること、標的化を介するなどの別の薬物の効果を増強すること、疾患の進行を遅延させること、及び/又は生存を延長すること、などの臨床結果を包含する。癌又は腫瘍の場合、薬物の有効量は、癌細胞の数を低減すること;腫瘍サイズを低減すること;周辺臓器への癌細胞浸潤を阻害すること(即ち、ある程度緩徐化すること、又は所望なら停止させること);腫瘍転移を阻害すること(即ち、ある程度緩徐化して、所望なら停止させること);腫瘍の成長をある程度阻害すること;及び/又は障害に関連する症状の1つ若しくは複数をある程度緩和すること、において効果を有してもよい。有効量は、1回又は複数回の投与で投与され得る。本発明の目的では、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効量は、予防的又は治療的処置を直接的又は間接的のどちらかで成し遂げるのに充分な量である。臨床の文脈で理解されるとおり、薬物、化合物、又は医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物、又は医薬組成物と協調的に実現されても、又は実現されなくてもよい。このため、1つ又は複数の他の薬剤と協調して、所望の結果が実現され得れば、又は実現されれば、「有効量」が、1つ又は複数の治療薬を投与する状況で判断されてもよく、単一の薬剤が有効量で与えられると判断されてもよい。
【0115】
mini circRNAの「用量」の厳密な量は、各対象に約0.01、0.1、1.0、10、20、34、40、50、60、70、80、90若しくは100μg、又は約100、200、300、400、500、600、700、800、900若しくは1,000μg、又は約1000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7000、8,000、9,000若しくは10,000など、各対象に約0.01μgから約10,000μgまでの範囲内で変動し得る。量は、一般に、臨床試験結果及び/又はFDAの推奨を考慮して、熟練の実施担当者、例えば、医師により決定される。
【0116】
同様に、投与の頻度又はプロトコルは、変動してもよい。例えば、予防ワクチンとして、mini circRNAは、1回、又は例えば、初回投与の1~8週後及び/若しくは初回投与の1~8か月後に、そしてその後6か月又は年1回間隔で与えられるブースターショットを施すことにより複数回、投与されてもよい。1年に合計で、例えば、2~3回又はより多くの投薬、例えば、月に1回の投与が薦められている場合には、約3、4、5、若しくは6回まで、又はより多くの投薬が、施されてもよい。
【0117】
癌の処置では、投薬は、同様でもよく、又はより頻回、例えば、一定期間に1日1回、及び/又は一定期間に週1回及び/又は月1回及び/又は6~10週ごとなどでもよい。さらに投薬は、例えば、化学療法、放射線療法、手術、チェックポイント阻害療法、抗体療法などの代わりに、又はそれと同時に、個体の処置計画に組み込まれてもよい。例示的な癌処置プロトコルは、例えば、全ての内容が全体として参照により本明細書に援用される、公開された米国特許出願公開第20210346485号明細書に記載される。
【0118】
本明細書で用いられる「対象」又は「患者」は、ヒト、家畜及び畜産動物、及びイヌ、ウマ、ネコ、ウシなどの動物園の動物、競技動物又は愛玩動物をはじめとする哺乳動物として分類される任意の動物をいう。しかし、獣医学的使用もまた、包含される。ワクチンが投与される対象は、ヒトなどの哺乳動物でもよい。しかし、コンパニオンペット(例えば、イヌ、ネコ、フェレットなど);及び/又は使役動物(ウシ、ウマ、ラクダ、ロバなど);及び/又は保護施設、実験室又は動物園の動物;並びに家禽、ペットの鳥、両生類、爬虫類、魚などの非哺乳動物が、mini circRNAを用いて免疫付与又は処置され得るため、この技術の獣医学的適用もまた、企図される。
【0119】
該組成物は、非限定的に、免疫系を増幅する物質、様々な化学療法薬、抗生物質薬、疼痛薬、及び同様のものなどの他の処置モダリティと協調的に投与されてもよい。
【0120】
さらなる実施形態において、例えば、障害が癌である場合、追加的治療は、放射線療法、手術(例えば、腫瘍摘出術及び乳房切除術)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、又は前述の組合わせでもよい。追加的治療は、アジュバント又はネオアジュバント両方の形態でもよい。幾つかの実施形態において、追加的治療は、小分子酵素阻害剤又は転移抑制剤の投与である。幾つかの実施形態において、追加的治療は、副作用抑制剤(例えば、制吐薬などの処置の副作用の出現及び/又は重症度を低下させることを意図された薬剤)の投与である。幾つかの実施形態において、追加的治療は、放射線療法である。幾つかの実施形態において、追加的治療は、手術である。幾つかの実施形態において、追加的治療は、放射線療法と手術との併用である。幾つかの実施形態において、追加的治療は、ガンマ線照射である。
【0121】
mini circRNAが、多価配列をコードする場合(即ち、複数の免疫原又は免疫原の複数のリピートをコードする場合)、本明細書に開示されたmini circRNAの投与は、ローリングサークル型翻訳(RCT)を介したコンカテマー型ペプチドとしてのコード免疫原配列の翻訳をもたらす、又は該翻訳を引き起こす。個々のペプチドが、各免疫原の間に存在するプロテアーゼ切断部位のプロテアーゼ切断により分離されてもよい。
【0122】
mini circRNAによりコードされたアミノ酸配列は、長期間にわたりインビボで翻訳される。例えば、幾つかの態様において、そのアミノ酸配列は、少なくとも1~7日間(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6日間又は1週間)翻訳される。他の態様において、そのアミノ酸配列は、約1、2、3又は4週間などの1~4週間(例えば、1か月間)翻訳される。そのような長期間の翻訳は、有利には、ワクチンレシピエントの免疫系が活性化されるようになり、抗体及び他の免疫因子を生成するのに充分な機会を提供する。
【0123】
処置される疾患及び障害
増殖性障害
幾つかの態様において、予防又は処置される疾患又は障害は「細胞増殖性障害」(増殖性障害)であり、コードされる抗原は、癌抗原/エピトープである。本発明によれば、用語「腫瘍抗原」、「腫瘍発現抗原」、「癌抗原」及び「癌発現抗原」は、同等であり、本明細書で互換的に用いられる。「細胞増殖性障害」は、異常な細胞増殖にある程度関連する障害をいう。一実施形態において、細胞増殖性障害は、癌である。一実施形態において、細胞増殖性障害は、腫瘍である。
【0124】
本明細書で用いられる「腫瘍」は、悪性又は良性にかかわらず全ての新生物細胞成長及び増殖と、全ての前癌性及び癌性細胞及び組織と、をいう。用語「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」及び「腫瘍」は、本明細書で参照されるとおり互いに排他的でない。予防又は処置される癌の例としては、黒色腫、非小細胞肺癌、膀胱癌、大腸癌、トリプルネガティブ乳癌、腎臓癌、及び頭頸部癌が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、癌は、局所的に進行又は転移した黒色腫、非小細胞肺癌、膀胱癌、大腸癌、トリプルネガティブ乳癌、腎臓癌、又は頭頸部癌である。幾つかの実施形態において、癌は、非小細胞肺癌、膀胱癌、大腸癌、トリプルネガティブ乳癌、腎臓癌、及び頭頸部癌からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、癌は、局所に進行又は転移した非小細胞肺癌、膀胱癌、大腸癌、トリプルネガティブ乳癌、腎臓癌、又は頭頸部癌である。
【0125】
幾つかの実施形態において、癌は、黒色腫である。幾つかの実施形態において、黒色腫は、皮膚又は粘膜部の黒色腫である。幾つかの実施形態において、黒色腫は、皮膚、粘膜部、又は末端黒子型の黒色腫である。幾つかの実施形態において、黒色腫は、眼内又は末端黒子型黒色腫ではない。幾つかの実施形態において、黒色腫は、転移性、又は切除不能の局所的に進行した黒色腫である。幾つかの実施形態において、黒色腫は、ステージIV黒色腫である。幾つかの実施形態において、黒色腫は、ステージIIIC又はステージIIID黒色腫である。幾つかの実施形態において、黒色腫は、切除不能又は転移性の黒色腫である。幾つかの実施形態において、該方法は、黒色腫のアジュバント処置を提供する。幾つかの実施形態において、癌(例えば、黒色腫)は、過去に未処置である。幾つかの実施形態において、癌は、過去に未処置の進行した黒色腫である。幾つかの実施形態において、黒色腫抗原は、gp75及び/又は高分子量の黒色腫抗原及び/又は黒色腫関連抗原p97である。
【0126】
幾つかの態様において、予防又は処置される疾患は、トリプルネガティブ乳癌などの乳癌であり、特別な抗原領域又はエピトープは、例えば、CXorf61、CAGE1及びPRAMEのうちの1つ又は複数を含む腫瘍抗原のセットを含む。
【0127】
幾つかの態様において、予防又は処置される疾患は、前立腺癌であり、抗原としては、前立腺性酸性ホスファターゼ、前立腺特異的抗原及び/若しくは前立腺特異的膜抗原が挙げられ、並びに/又は特別な抗原領域若しくはエピトープとしては、例えば、内容全体が、全体として参照により本明細書に援用される、公開された米国特許出願公開第20200222478号明細書に記載されるものが挙げられる。
【0128】
幾つかの態様において、予防又は処置される疾患は、癌幹細胞の脱出により引き起こされる癌の再発及び/又は転移であり、抗原は、全体として参照により本明細書に援用される、公開された米国特許出願公開第20110262358号明細書に記載されるとおり、Or7c1、Dnajb8、Sox2、Smcp、Ints1、Kox12、Mdf1、FLJ13464、667J232、Surf6、Pcdh19、Dchs2、Pcdh21、Gal3st1、Rasl11b、Hes6、Znf415、Nkx2-5、Pamci、Pnmt若しくはScgb3a1、又はその一部によりコードされたアミノ酸配列の1つ又は複数を含む。
【0129】
幾つかの態様において、予防又は処置される疾患は、卵巣癌であり、抗原は、卵巣癌抗原(CA125)である。
【0130】
幾つかの態様において、抗原は、KS 1/4汎癌抗原である。
【0131】
感染性疾患
他の態様において、予防又は処置される疾患又は障害は、感染性疾患である。感染性疾患は、本明細書に開示されたmini circRNAによりコードされ得る抗原と、エピトープと、抗原領域などを有する種々の微生物及び/又は寄生虫のいずれかにより引き起こされ得る。そのような微生物の例は、当該技術分野で周知である。
【0132】
幾つかの態様において、感染因子は、コロナウイルスである。コロナウイルスは、4つの属:アルファコロナウイルス及びベータコロナウイルス(哺乳動物に感染)又は主として鳥に感染するガンマコロナウイルス及びデルタコロナウイルスのいずれかでもよい。アルファコロナウイルス属は、アルファコロナウイルス1(TGEV、ネココロナウイルス、イヌコロナウイルス)、ヒトコロナウイルス229E、ヒトコロナウイルスNL63、ユビナガコウモリコロナウイルス1、ユビナガコウモリコロナウイルスHKU8、ブタ流行性下痢ウイルス、キクガシラコウモリコロナウイルスHKU2及びキイロコウモリコロナウイルス512の種を含む。ベータコロナウイルス属は、ベータコロナウイルス(ウシコロナウイルス、ヒトコロナウイルスOC43)、ハリネズミコロナウイルス1、ヒトコロナウイルスHKU1、中東呼吸器症候群関連コロナウイルス、ネズミコロナウイルス、アブラコウモリコロナウイルスHKU5、ルーセットオオコウモリコロナウイルスHKU9、重度急性呼吸器症候群関連コロナウイルス(SARS-CoV、SARS-CoV-2及びそれらの多様体)及びタケコウモリコロナウイルスHKU4の種を含む。ガンマコロナウイルス属は、トリコロナウイルス及びシロイルカコロナウイルスSW1の種を含む。デルタコロナウイルス属としては、ヒヨドリコロナウイルスHKU11及びブタコロナウイルスHKU15の種を含む。
【0133】
幾つかの態様において、感染因子は、主に下部呼吸器系を攻撃するSARS-CoV-2である。SARS-CoV-2はまた、消化器系、心臓、腎臓、肝臓、及び中枢神経系に感染して、多臓器不全につながる可能性がある。
【0134】
製品又はキット
さらに本明細書に提供されるものは、本明細書に記載されたとおりの少なくとも1つの型のmini circRNA及び/又は医薬調製物を含む製品又はキットである。幾つかの実施形態において、製品又はキットはさらに、本明細書に記載された疾患又は障害の発生又は進行を予防又は処置するために、例えば、該疾患又は障害を受け易い個体の免疫機能を増強するために、mini circRNA及び/又は医薬調製物を用いるための使用説明書を含む添付文書を含む。
【0135】
mini circRNA及び/又は医薬調製物は一般に、容器に充填されて提供される。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル、袋及びシリンジが挙げられる。容器は、ガラス、プラスチック(ポリ塩化ビニル又はポリオレフィンなど)、又は金属合金(ステンレス鋼又はハステロイなど)などの種々の材料から形成されてもよい。幾つかの実施形態において、容器は、製剤を収容して、容器表面の、又は容器に付属のラベルが、使用法を示してもよい。製品又はキットはさらに、緩衝液、希釈液、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書を伴う添付文書をはじめとする商業的立場及びユーザの立場から望ましい他の材料を含んでもよい。幾つかの実施形態において、製品はさらに、別の薬剤、例えば、化学療法薬、抗新生物薬などの1つ又は複数を含む。
【0136】
本発明はもちろん様々な形態としてあり得るため、記載された特別な実施形態に限定されないことが、理解されなければならない。同じく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみにより限定されるため、本明細書で用いられる用語法が、特別な実施形態を記載することのみを目的として、限定する意図がないことが、理解されなければならない。
【0137】
値の範囲が提供されている場合、文脈上明らかにそうでないと指示されない限り、その範囲の上限と下限の間に、下限の単位の10分の1までの各介在する値、およびその記載された範囲内の他の記載された値または介在する値は、本発明に包含されると理解される。これらのより小さな範囲の上限及び下限が、述べられた範囲内の任意の具体的に除外された限界の制約の下で、独立してより小さな範囲に含まれてもよく、それも本発明に包含される。述べられた範囲が、限界の一方又は両方を含む場合、限界を含んだそれらのどちらか又は両方を除外した範囲も、本発明に含まれる。
【0138】
他に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者により共通して理解されるものと同じ意味を有する。代表的な例示的方法及び材料が、本明細書に記載され;本明細書に記載されたものと類似又は同等の方法及び材料もまた、本発明の実施又はテストにおいて用いられ得る。
【0139】
本明細書で引用された全ての刊行物及び特許は、各刊行物又は特許が具体的かつ個別に参照により取り込まれることを示されたかのように、参照により本明細書に援用されて、引用された刊行物が関連する方法及び/又は材料を開示及び記載するために参照により本明細書に援用される。任意の刊行物の引用は、出願日前の開示に対するものであり、本発明が先行発明により当該刊行物に先行する権利を有しないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供された発行の日付は、公開の実際の日付と異なる場合があり、独立して確認することが必要な場合がある。
【0140】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられるとおり、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が他に明確に示さない限り、複数の対象を含むことに留意する。さらに、特許請求の範囲がいずれかの任意選択による要素を除外するために起草され得ることに留意する。そのため本記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連して「単一」、「唯一」及び同様のもののような除外用語を特許請求の範囲に記載すること、又は「[特別な特徴又は要素]がない」、若しくは「[特別な特徴又は要素]を除いて」、若しくは「特別な特徴又は要素」が存在しない(含まれないなど)」などの「負の」限定の使用のための、裏づけとなることを意図する。
【0141】
本開示を読む際に当業者に理解されるとおり、本明細書に記載及び例示された個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲又は主旨を逸脱することなく他の複数の実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得る、又は該特徴と組み合わせられ得る、全く別の成分及び特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序で、又は論理的に可能な任意の他の順序で実行され得る。
【0142】
本発明はさらに、本発明をさらに例示した以下の非限定的実施例により記載されるが、実施例は本発明の範囲を限定するものではない、又は限定するものと解釈されてはならない。
【実施例
【0143】
実施例1
モデル抗原SIINFEKL(配列番号:08)に対するmini circRNAの設計、合成、および、特性評価
【0144】
circRNAの設計
circRNAは、3部からなる:1)タンパク質翻訳をキャップ非依存的手法で開始する内部リボソーム進入部位(IRES)、2)タンパク質翻訳を真核生物系において開始するコザック配列(GCCACCAUG);及び3)SIINFEKLコーディング領域(GAGAGUAUAAUCAACUUUGAAAAACUG、配列番号:09)。オボアルブミン(OVA)由来ペプチド抗原SIINFEKL(配列番号:08)をモデルとして使用したが、それは、この抗原が強力なCD8T細胞応答を誘発して、他のペプチド抗原と容易に交換され得るためである。効率的なIRESを選択するために、本発明者らは、ネズミ(5’-3’)翻訳のための以下の3つのIRESを用いて3つのcircRNAを設計した:LINE1:CGC AUU AUC UCU CCA CGA AUC CAG CCC UUC AAA GGA UAA UAA CAG AAA AAA ACG(配列番号:04);Rbm3:UUU AUA AUU UCU UCU UCC AGA AUC (配列番号:05)及びcrTMV:UUC GUU UGC UUU UUG UAG UAU AAU UAA AUA UUU GUC AUA UAA GAG AUU GGU UAG AGA UUU GUU CUU UGU UUG AUC(配列番号:03)。これらの直鎖状RNAを、商業的に合成した。自動化RNA合成を活用して、非必須RNAによる不要な免疫反応を最小限にするために、本発明者らは、短いIRESと、コザック配列(GCCACCAUGG、配列番号:10)と、ペプチド抗原コードRNAと、を有する最小限のcircRNAを設計した(図1A~1C)。
【0145】
T4 RNAリガーゼ1を用いた直鎖状RNAの環化
CD8T細胞応答を誘発するMHC-I制限オボアルブミン(OVA)(SIINFEKL、配列番号:08)を利用して、本発明者らは、RNAエキソヌクレアーゼTによる直鎖状/ラリアットRNA除去と、DNase IによるDNA除去と、HPLC精製と、ゲル電気泳動による検証と、の前に、RNAのライゲーションを容易にするT4 RNAリガーゼIとDNAスプリントとを用いて、5’-ホスフェート-RNAを環化することによりcircRNAを合成した(図2A)。ペプチド翻訳をcircRNAにより試験するために、本発明者らは、FLAGタグ(DYKDDDDK、配列番号:11)をコードするcircRNAを設計した。無細胞ウサギ網赤血球溶解物中のインビトロ翻訳により示されたとおり、circRNAは、ウェスタンブロットにおいてFLAGの10倍を超える大きさの一連の生成物により示されたとおり、おそらくローリングサークル型翻訳を介して、FLAGコンカテマーを生成した(図2B)。
【0146】
具体的には相補性DNAスプリントをライゲーションテンプレートとして用いて、T4 RNAリガーゼI(New England Biolabs)を用いて5’末端ホスフェート修飾直鎖状RNAを環化することによりcircRNAを合成した(図2A)。DNAスプリントは、直鎖状RNAの末端に部分的に相補的である短い直鎖状DNAデオキシオリゴヌクレオチドである。1つのDNAスプリントが、少なくとも2つのRNA末端とハイブリダイズして、これらのRNA末端を接近させて、ライゲーションの工程で以下のこれら2つのRNA末端のコンジュゲーションを可能にする。実際に、全ての直鎖状RNAとDNAスプリントとを互いに混合した後、直鎖状RNAの一部によるDNAスプリントのハイブリダイゼーションを可能にするためにアニールして、DNAスプリントが接近したRNAニッキング部位がまだ共有結合されていない環状RNAを作製した。DNAスプリント(3~5μM)でのアニーリングの後、1μM直鎖状RNAを、50mM Tris-HCl(pH 7.5)と、10mM MgClと、1mM DTTと、0.5μl RNase阻害剤(40μ/μl)と、10%PEG8000と、50μM ATPと、の混合物中で1μl(10単位)T4 RNAリガーゼ1と共に25℃で2時間インキュベートした。
【0147】
DNase I及びRNAエキソヌクレアーゼTを用いたRNAの環状性の照合
RNA(1μM)を、DNase I反応緩衝液中でDNase I(2単位/μL;New England Biolabs)と共に37℃で10分間インキュベートした。反応混合物(5μL)を6%変性PAGEにより分析した。その後、溶液を3’→5’RNAエキソヌクレアーゼT(5単位/μL;New England Biolabs)と共に25℃で30分間インキュベートして、その後、65℃で20分間インキュベートした。circRNAを、アガロースゲル電気泳動により検証した(図2B)。このアッセイはまた、DNAスキャフォールドと、共有結合で環化されていない任意のRNAと、を除去する。
【0148】
リポソームcircRNA合成及び特性評価
DOTAP/DSPE-PEG/DOPE/Cholを1:0.05:1:0.5のモル比で含む脂質成分を、クロロホルムに溶解した。ロータリーエバポレータを用いた真空下での溶媒の蒸発後に、薄い脂質膜がフラスコの底に形成され、次にその脂質膜を、懸濁液が均質化されるまで30分間音波処理して10分ごとに力強く撹拌することにより、circRNAを含有する(カチオン性脂質と核酸との電荷モル比10で)RNase不含水で水和した。水和されたリポソーム懸濁液を、ミニエクストルーダー(Mini-Extruder、Avanti Polar Lipids社)において200nmポリカーボネート膜を通して11回押し出した。その後、一晩の凍結乾燥の前に、リポソーム調製物を液体窒素に浸漬した。形態学のための透過電子顕微鏡(TEM)と、サイズ分布及び表面ゼータ電位のための動的光散乱(DLS)と、を利用したナノ粒子特性の評価の前に、リポソーム/circRNA複合体の凍結乾燥粉末をDI水で再構成した。
【0149】
circRNAの優れた医薬的安定性及び生体安定性
mRNAは、細胞と、体液と、環境と、の中で、貯蔵寿命と抗原翻訳のインビボ半減期とを制限する遍在性RNaseにより容易に分解される。現在のmRNAワクチンは、大規模な修飾にもかかわらず、不充分な安定性を有する。末端の欠如により、無修飾のcircRNAは、RNA分解のための主たるRNaseであるエキソヌクレアーゼに耐えた。驚くべきことに、circRNAは、-20℃、4℃、又は23℃の貯蔵溶液中で70日まで、小分子liRNAよりも、及び5’/3’非翻訳領域と、A120と、CleanCap(登録商標)(TriLink)と、により安定化された現在の先端技術のmRNA-OVAよりも、優れた安定性を示した(図3A~3B)。生存細胞においてcircRNA安定性を試験するために、本発明者らは、circRNA内の抗原コードRNAを、DFHBI-1Tに結合すると蛍光を発する蛍光発生性RNAアプタマーBroccoliと交換した(図3C)。環状Broccoli(circBroccoli)の直鎖化は、Broccoliを急速に分解する、DC2.4細胞として知られる樹状細胞(DC)株へのトランスフェクションの後(7日)、circBroccoliが、細胞分裂によるシグナル希薄化にもかかわらず蛍光を持続したが、直鎖状Broccoliの蛍光は、数時間内に消失した(図3D)。本発明者らはその後、LNP(SM-102、コレステロール、DSPC、PEG2k-DMGのモル比:50:38.5:10:1.5)中に積載したcircBroccoli(N/P比:3)の医薬的安定性を試験した(図3E)。4又は-20℃(凍結防止剤スクロースを補充)での溶液中での貯蔵の70日後に、LNPをDC2.4細胞にトランスフェクトとした(24時間)。circBroccoliは、DC内で強い蛍光強度を保持して、circRNA-LNPの優れた医薬的安定性を示した(図3F)。circRNAの素晴らしい安定性が、ストリンジェントな貯蔵又は輸送条件を軽減して、現在のmRNAワクチンに比較して貯蔵寿命を延長する。
【0150】
マウスにおける抗原発現及び免疫調整のためのcircRNAのインビボ送達及びスクリーニング:DC及びマクロファージにおけるリンパ節送達及び細胞内送達のためのmini circRNA LNP
mRNAワクチンは、リンパ系組織(例えば、リンパ節)とAPC(例えば、DC)とに送達される必要があり、それでもそのような送達は、乏しい薬物動態と、不充分な細胞取込みと、RNAの乏しいエンドソーム脱出と、により困難である。核酸治療薬は、組織及び細胞に加えて、エンドリソソームレベルで複数の送達障害に直面する。LNPをはじめとする非ウイルス性ナノキャリアは、核酸によるこれらの障害を通過する送達のために開発された。siRNA LNPをはじめとする複数のLNP核酸治療薬が、FDAにより認可されている。ワクチンは、二次性リンパ系臓器(例えば、リンパ節)に送達されなければならず、そこで抗原は、免疫細胞と相互作用して免疫反応を調整することができる。LNPを、インビボでcircRNAをリンパ節及びAPCに送達するために用いる。LNPを、それぞれ50:10:38.5:1.5のモル比のD-Lin-MC3-DMA: DSPC:コレステロール:PEG脂質と、1:1、5:1、10:1、及び20:1のN:P比(正電荷アミン(N)と負電荷リン酸塩(P)の比)と、で合成する。LNPの径を100nm前後に制御して、circRNA積載容量と積載効率とを、アガロースゲル電気泳動により決定する。DC及びマクロファージにおける最大の積載効率と最小の毒性との電荷比を、さらなる実験に用いる。
【0151】
細胞取込み
circRNAの蛍光モニタリングのために、circRNAを、部分的相補性Cy5標識DNA(IDT)とのハイブリダイジングを介してフルオロフォアCy5で標識した。ネズミDCをリポソームcircRNA-Cy5と共に、そして対照として対応する遊離circRNA-Cy5と共に一連のタイムポイントの間、インキュベートした。得られた細胞の蛍光強度をその後、フローサイトメトリーにより測定した。Hoechst33342とLysoTracker-Greenで染色した処理した生細胞の細胞内蛍光強度と分布を共焦点顕微鏡で観察した。細胞により取り込まれ、その後、エンドソームを脱出して細胞質基質に達するcircRNAの能力は、circRNAコーディング領域が細胞質基質において翻訳されることに不可欠である。Cy5蛍光強度比を、50の無作為に選択された細胞の中で測定した(エンドリソソームの内部/外部、I/O)。
【0152】
本発明者らは、LNP及びリポソーム[直径:約120nm](図4A)がcircRNAをリンパ節とAPCとに効率的に送達することを示した。例えば、リポソームcircRNA(lipo-circRNA)は、約95%のcircRNA封入効率を有した[N/P比:3]。DC2.4細胞をCy5-cDNAで標識したリポソームcircRNA、又は、遊離circRNAでインキュベートしたところ、リポソームはcircRNAの細胞への取り込みを促進し、circRNAがペプチドを産生できるエンドソームから細胞質への脱出を促進した(図4B)。驚くべきことに、皮下(s.c.)注射されたlipo-circRNA-IR800(IR800:近赤外線色素)は、効率的なリポソーム送達と、高いcircRNA生体安定性と、によりBalb/cマウスにおいて流入領域リンパ節に少なくとも8日間保持された(図4C~4D)。注射の24時間後に、リポソームは、節内APCにおいて、特に抗原交差提示に極めて重要なCD8+の従来のDC(cDC)において、circRNA滞留を促進した(図4E)。リンパ節と、APCと、細胞質基質と、への効率的なcircRNA送達が、抗原発現と免疫調整と、にとって重要である。
【0153】
ssRNAとdsRNAとヌクレオチドとは、Toll様受容体(TLR)などのパターン認識受容体(PRR)を活性化するため、RNAは本来、免疫刺激性である。得られた自然免疫反応は、サイトカイン及び共刺激、又はナイーブT細胞を活性化するのに不可欠なシグナル2を提供する。DC2.4細胞において、circRNA-SIINFEKLナノワクチンは、炎症促進因子(IL-6、IL-12)とI型インターフェロン(例えば、IFN-β)との分泌を有意に誘導し(図5A)、circRNAワクチンが「危険」信号を埋め込まれていて、セルフアジュバントされることが示唆された。circRNAの免疫センサを同定するステップとして、circRNA処置DC2.4細胞内のTlr7又はRig-IのsiRNAサイレンシングは、IFN-βレベルを有意に低減するように思われ、小分子circRNAを感知することへの潜在的関与が示唆された(図5B)。
【0154】
抗原提示解析
circRNA-SIINFEKLによる最適な抗原翻訳のためのIRESを選択するために、本発明者らは、3つの短いIRES:73量体crTMVと、53量体LINE1と、22量体Rbm3と、をテストした。DC2.4細胞をcircRNA、直鎖状RNA(liRNA)、又はCpG+OVAでLipo3k-トランスフェクトした。24時間後に、DCのMHC-I/SIINFEKL染色は、crTMVが最も効率的な抗原提示を駆動することを示した(図6A~6B)。
【0155】
B3Z細胞活性化アッセイ
B3Z細胞は、CD8T細胞ハイブリドーマである。H-2K/SIINFEKL複合体の認識の際に、B3Z細胞を、基質を赤色生成物に加水分解し得るβ-ガラクトシダーゼを生成するために活性化する。このためCD8T細胞の活性化レベルは、溶液の色により反映される。このアッセイを実施するために、DC2.4細胞を、リポソームcircRNAを含有する培地で一連のタイムポイントの間、培養する。続いて、細胞をB3Z細胞と共に24時間共培養する。その後、細胞を溶解緩衝液(100mM 2-メルカプトエタノールと、9mM MgClと、0.2%Triton X-100と、0.15mMクロロフェノールレッド-β-D-ガラクトプラノシドと、を含むPBS)により37℃で4時間溶解する。停止緩衝液(1M炭酸ナトリウム)を添加することにより、反応を停止させる。635nmを参照波長として用いて吸収を570nmで測定することにより、CD8T細胞活性化を定量する。B3Z細胞活性化を、対照群に比較した正規化最適密度(OD)として示す。それと一致して、crTMV-circRNA処置DCは、SIINFEKL特異的B3Z CD8T細胞ハイブリドーマを最も効率的にプライミングした(図6A)。さらに、抗原エンコーダの3’末端に終止コドンを挿入すること、又はIRES若しくはコザックのノックアウトが、circRNAによる抗原提示を阻害した(図6C)。このためcrTMVを、さらなる試験のために選択した。驚くべきことにcircRNAは、抗原提示とT細胞プライミングについて、5-メトキシウリジンと、A120と、5’-/3’-非翻訳領域と、CleanCap(登録商標)(TriLink)と、で修飾された現在の先端技術のmRNA-OVAより優れていた(図6C~6D)。
【0156】
マウスにおけるcircRNAワクチンへのT細胞応答:低用量circRNAナノワクチンは、若齢成体マウスと加齢マウスとにおいて強力で永続性のあるT細胞免疫を誘導した
T細胞応答は、腫瘍免疫療法にとって極めて重要である。最初、本発明者らは、C57BL/6マウスにおいて低用量モデルのcircRNA-SIINFEKLナノワクチンによるT細胞応答を試験した(リポソーム中に5μg、0日目、14日目、尾基底部への皮下)(図7A)。この用量は、T細胞 mRNAワクチンの典型的用量より6~10倍低い。抗原特異的CD8T細胞の割合を測定するために、マウス末梢CD8T細胞を抗原特異的四量体で染色した。PEコンジュゲート化H-2Kb-SIINFEKL四量体(NIH Tetramer Core Facilityで製造)を、OVAワクチン付与マウスの四量体染色のために用いた。手短に述べると、マウスをリポソームcircRNAで0日目と14日目とに処置した。21日目に、血液を処置マウスから採取した。血液細胞を遠心分離により濃縮した。赤血球細胞を、ACK溶解緩衝液を用いて室温で10分間溶解した。フィルターを用いて血塊を除去した。細胞をPBSで2回洗浄して、細胞を、Zombie Aqua(商標)Fixable Viability Kit(Biolegent)を用いて室温で10分間染色した。染色をクエンチして、細胞をFCS緩衝液(0.1%FBSを含むPBS緩衝液)で洗浄した。その後、細胞を抗CD16/CD32で10分間ブロッキングした後、色素標識抗体カクテル(抗CD62L-FITC、抗CD44-Alexa647、抗CD8-APC-Cy7、四量体PE、抗PD-1-BV421)を添加して、室温で30分間染色した。抗CD62L-FITCと抗CD44-Alexa647とを、T細胞メモリー表現型を染色するために用いた。抗PD-1-BV421を、免疫チェックポイントPD-1を染色するために用いた。その後、細胞を洗浄して、100μL Cytofix(商標)を、細胞を再懸濁するために各ウェルに添加して、細胞を4℃で20分間固定した。その後、細胞をPerm/Wash緩衝液で洗浄して、フローサイトメトリー分析のために再懸濁した。
【0157】
プライミング免疫付与後2か月より後に、マウスをEG7.OVA細胞で接種した後、腫瘍成長とマウス生存とをモニタリングした。四量体染色は、circRNAナノワクチンが、現在の先端技術の5-メトキシウリジン CleanCap(登録商標)mRNAOVAナノワクチン(TriLink)による15%と、CpG+OVAナノワクチンによる7%とは対照的に、抗原特異的CD8T細胞を大きく増加させることを示した(24%、21日目)。2回目のブースター(28日目)がさらに、SIINFEKLCD8T細胞を35%まで増殖させ(35日目)、この頻度は、70日間、20%を超えたままであった(図7B、C)。circRNAナノワクチンは、CD8CD62LlowCD44エフェクターメモリーT細胞(TEM)とCD62LhighCD44セントラルメモリーT細胞(TCM)とを、特に再発予防を支援し得る永続性のある抗腫瘍免疫に重要なSIINFEKLメモリーT細胞を誘導して(図7D)、EG7.OVA腫瘍での接種(71日目)の際、circRNAナノワクチンは、mRNAOVA又はCpG+OVAのナノワクチンより優れていた(図7E)。要約すると、これらの結果は、circRNAワクチンが修飾OVAコードmRNAと、CpGでアジュバントされたタンパク質OVAワクチンと、よりもプライミング免疫付与後2か月を超えて優れた抗原T細胞を誘導して、circRNAワクチンが抗原特異的CD8+T細胞メモリーをはじめとするCD8+T細胞メモリーを誘導して、その結果、circRNAワクチン処置マウスがEG7.OVA細胞の成長を効率的に遅延させて、免疫付与マウスの生存を延長することを示した。
【0158】
加齢の間の免疫老化により、高齢者は、多くの型の癌に対して脆弱で、抗腫瘍免疫を誘発する能力が不足している。111 ワクチンは、高齢者の抗腫瘍免疫を促進するために望ましい。加齢C57BL/6マウス(1年齢)において、circRNA-SIINFEKLナノワクチン(5μg;0、14日目)は、mRNAOVAナノワクチンによる3.62%と、CpG+OVAナノワクチンによる2.75%とは対照的に、PBMCにおいて6.66%のSIINFEKL+CD8T細胞を誘導した(21日目)(図7F)。細胞内IFN-γ/TNF-α染色が、ワクチン接種マウスからのCD8T細胞の強力な機能性を示した(35日目)(図7G)。circRNAナノワクチンはまた、大きなCD8T細胞メモリーを誘発して、EG7.OVA細胞接種に耐えた(図7H)。
【0159】
効率的なT細胞応答のためのナノキャリアのスクリーニング
mRNAワクチンの免疫調整の有効性は、mRNAワクチンのインビボ送達効率により左右される。様々なイオン化可能なLNPが、長鎖mRNA送達又は全身siRNA送達に用いられてきた。それでも小分子circRNAは、これらのRNAと生理化学的に全く別である。circRNA送達について、本発明者らは、リポソームに加えて、RNA治療薬とワクチンとを送達するために広く用いられるイオン化可能な脂質SM-102と、Dlin-MC3-DMAと、Dlin-KC2-DMAと、を基にしたLNPをスクリーニングした。6のN/P比で、本発明者らは、これらのナノキャリアにcircRNA-SIINFEKLとmRNAOVAとを積載した(マイクロ流体学での急速混合によるLNP合成)(d:80~120nm)。推定により、14のmRNAコピー(1437ヌクレオチド)に対比して185のcircRNA-SIINFEKLコピー(113ヌクレオチド)が、LNPごとに積載された。本発明者らは、四量体染色(21日目)によりT細胞応答を誘導するために、これらのナノワクチン(5μg RNA;皮下;0、14日目)をテストした。SM-102 LNPは、C57BL/6マウスにおいてcircRNAと修飾mRNAとの両方で最大のSIINFEKLCD8T細胞応答を示した(図8)。このためSM-102 LNPが、さらなる試験のために選択された。
【0160】
circRNAは、CD8+およびCD4+ T細胞応答を誘導するために、それぞれMHC-IおよびMHC-II制限抗原をコードすることができる
CD8+及びCD4+T細胞応答を誘発するcircRNAの能力をテストするために、本発明者らは、モデルMHC-I制限SIINFEKLおよびMHC-II制限OVA323-339(ISQ)のエピトープをコードするcircRNAを合成した。LNPが送達したcircRNA-ISQは、マウスにおいてISQ特異的CD4+T細胞応答を誘導した。さらに、MHC-I circRNA-SIINFEKLとMHC-II circRNA-ISQとをひとまとめにされたワクチンは、CD4エフェクター/ヘルパーT細胞とCD8エフェクターT細胞との両方に結合して、それによりT細胞応答を拡大及び強化した(図9A~9B)。
【0161】
circRNAが積載されたリポソームとSM102-LNPとが高い寛容性を示した
mRNAナノワクチンの反応原性それに関連する寛容性とは、主要な用量制限因子の1つである。これをcircRNAナノワクチンについて試験するために、本発明者らは、RNAナノワクチンの反応原性に関連する一団のケモカインを測定した。具体的にはC57BL/6マウスに、circRNA-SIINFEKL積載リポソーム若しくはSM102-LNP、又は従来のmRNA-OVA積載SM102-LNPを投与した。血液を投与の12時間後に採取した。血清サイトカイン/ケモカイン濃度のLuminex結果は、リポソームcircRNAとSM102-LNP circRNAとがmRNA-OVA SM102-LNPより有意に低い反応原性を示すことを示し(図10)、リポソームcircRNAワクチンとSM102-LNP circRNAワクチンとの高い寛容性を示唆した。
【0162】
circRNAと現在の最先端mRNAワクチンの比較
ワクチンで1~3日間処置されたDC2.4細胞において、本発明者らは、1)5’/3’UTRとポリAとCleanCap(登録商標)とに加えて、5moUとシュードウリジン(Ψ)(それぞれ(Trilink))とで修飾された現在の先端技術のmRNAワクチンに対比した、circRNAワクチンと、2)SIINFEKL又はOVAをコードした修飾mRNAと対比した、SIINFEKLをコードしたcircRNAと、による抗原提示能力を測定し(フローサイトメトリーにより)、比較した。注目すべきは、修飾の差異に加えて、図11Aに示されたとおり、これらのRNAはまた、RNAのサイズと、二次構造の複雑さと、プロテインキナーゼKの活性化などの有害な副作用を引き起こし得る二本鎖RNAの長さと、に大幅な差異を有した。その結果、本発明者らのcircRNAは、DCにより提示された最高レベルのMHC-I/SIINFEKL複合体に証明されるとおり、抗原提示において最も効率的であった(図11B)。総括すると、これらの新しい知見はさらに、新規な黒色腫免疫療法を開発するためのナノcircRNA技術を用いることの本発明者らの全体的仮説と概念とを裏づける。
【0163】
実施例2
抗腫瘍免疫療法のための腫瘍抗原と腫瘍ウイルス抗原とをコードする低用量mini circRNA
circRNAは、腫瘍ネオ抗原及び腫瘍ウイルス抗原をはじめとするカスタマイズされた抗原エピトープを発現するために容易に設計及び合成され得る。前述のとおり、本発明者らは、これらのcircRNAにより誘導されたT細胞応答を測定し(図12A)、本発明者らはまた、標的となる腫瘍担持同系マウスにおいてそれらの腫瘍免疫療法の有効性を評価した(図12B)。原発腫瘍モデルでは、雌C57BL/6マウス(6~8週;ジャクソン研究所(The Jackson Laboratory);n=6~8)に3×10のEG7.OVA細胞、MC38細胞、又はTC-1細胞を肩より皮下接種した。腫瘍が、腫瘍接種後6日目に定着したのち(平均腫瘍体積40~60mm)、マウスは、Lipo-(CpG+ペプチド)(5μg CpG及び10μg OVA、Adpgk、又はE743-62ペプチド)と、Lipo-mRNA(5μg OVA-mRNA)と、Lipo-circRNA(5μg circRNA)と、の皮下注射により指定されたレジメンでの処置を開始した。マウスに、3日ごとに3回処置した。腫瘍微小環境における免疫環境条件を分析するために、腫瘍組織を採取した。腫瘍体積とマウス体重とを、3日ごとにモニタリングした。腫瘍の任意の寸法が2cmに近づいたら、又はマウス体重が20%より大きく減少したら、マウスを安楽死させた。腫瘍体積を、以下の式を利用して計算した。
体積=(長さ×幅)/2
【0164】
リンパ球の減少では、雌C57BL/6マウス(6~8週)に、EG7.OVA又はMC38細胞(3×10)を右肩で皮下接種した。6日目に、腫瘍が定着したら、マウスを、同等の腫瘍体積を有する5つの群に分別した(n=5)。腫瘍接種後6、12及び18日目に、5群のマウスにそれぞれ、群(1)ではPBSを、及び群(2~5)ではLipo-circRNA(5μg circRNA)を、PBS 50μl中で尾基底部への皮下注射によりワクチン接種した。その間、腫瘍接種後6、9、12、15及び18日目に、群(2~5)のマウスもまた、群(2)ではPBSを、群(3)では抗CD4を、群(4)では抗CD8を、及び群(5)では抗NK1.1を、腹腔内注射した(抗体用量:マウスあたり200μg)。腫瘍サイズとマウス体重とを、3日ごとにモニタリングした。任意の腫瘍寸法が2cmに近似していたら、又は既に2cmを超えていたら、マウスを屠殺した。腫瘍体積を、前述のとおり計算及び分析した。結果を、図12Cに示す。結果は、EG7.OVA腫瘍モデルにおいて、単独又は抗PD-1と併用でのcircRNA-SIINFEKLワクチンが、治療環境で定着した腫瘍の進行を有意に阻害して、それがCpGでアジュバントされたペプチド/タンパク質ワクチン及び直鎖状RNAワクチンに加えて、修飾タンパク質(OVA)コードmRNAより優れていることを示した。さらに、CD4+T細胞及びNK細胞ではなくCD8+T細胞をさらに枯渇させると、circRNAワクチンの治療有効性はほぼ完全に消失し、MHC-I制限circRNA-SIINFEKLにおけるCD8T細胞の中心的役割が確認された。注目すべきこととして、低用量circRNA(3×5μg)ナノワクチンが、EG7.OVA腫瘍成長をベンチマークの5-メトキシウリジン修飾CleanCap(登録商標)mRNAOVA(Trilink)と、CpG+OVAのワクチンと、のナノワクチンより効果的に阻害した(比較については図13C参照)。CD4T細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞ではなくCD8T細胞での抗体枯渇が、治療有効性を排除した(図12C)。最後にcircRNAワクチンは、マウス体重の有意な損失を引き起こさず、良好な安全性を示唆した(図12D)。これらのデータは、ICB併用癌免疫療法へのcircRNAナノワクチンの使用を強く支持している。
【0165】
本発明者らがcircRNAを用いてテストした抗原の1つの型が、ヒトパピローマウイルス(HPV)由来のE7などの腫瘍ウイルス抗原である。そのような腫瘍ウイルス抗原に対して免疫反応を誘発するワクチンの能力は、レシピエントが対応するウイルスに感染するのを予防的に防御するだけでなく、予め存在する感染も処置して、対応するウイルス感染により病理学的に誘導される癌も処置する可能性を有する。本発明者らは、E743~62のためのcircRNAを設計及び合成した。E7陽性TC-1腫瘍細胞を接種されたC57Bl/6マウスでは、circRNA-E7が、特に抗PD-1免疫チェックポイント阻害抗体と併用された場合に、腫瘍成長を効果的に阻害した(図12E)。
【0166】
抗原の別の型は、腫瘍特異的ネオ抗原である。本発明者らは、MC38腫瘍由来のMHC-I制限ネオ抗原であるADP依存性グルコキナーゼ(Adpgk)と呼ばれるネオ抗原をコードするcircRNAを合成した。circRNA-Adpgkは、強力かつ用量依存的なAdpgkCD8T細胞応答を誘導した(図12F)。Adpgk陽性MC38腫瘍細胞を接種したC57Bl/6マウスでは、circRNA-Adpgkは、特に抗PD-1免疫チェックポイント阻害抗体と併用された場合に、腫瘍成長を効果的に阻害した(図12G)。
【0167】
MC38腫瘍免疫微小環境のフローサイトメトリー分析
原発腫瘍モデルでは、雌C57BL/6マウス(6~8週;ジャクソン研究所(The Jackson Laboratory);n=6~8)に3×10のMC38細胞を肩より皮下接種した。腫瘍が、腫瘍接種後6日目に定着したら(平均腫瘍体積 約40~60mm)、マウスは、Lipo-(CpG+Adpgk)(5μg CpG及び10μg Adpgkペプチド)と、Lipo-直鎖状RNA(5μg 直鎖状RNA)と、Lipo-circRNA(5μg circRNA)と、Lipo-circRNA(5μg circRNA)+200μg 抗PD-1と、の皮下注射により指定されたレジメンでの処置を開始した。マウスに、3日ごとに2回処置した。移植後12日目に、腫瘍を周囲の筋膜から切除して、計量して、機械的に切り刻み、コラゲナーゼP(2mg/ml、Sigma社)とDNase I(50μg/ml、Sigma社)とにより37℃で10分間処置した。塊を除去するために細胞を70マイクロメートルフィルタに通して、培地で希釈して、フローサイトメトリーのために直接、少量を分取した。細胞内染色のための細胞の固定及び浸透の前に(Intracellular Fixation & Permeabilization Buffer Set、eBiosciences)、細胞表面染色を示された抗体で実施した。全ての解析を、FlowJo software v10.4.2(FlowJo)を用いて行った。結果を図13A~13Bに示す。結果は、対照と比較して、単独又は抗PD-1との併用のcircRNAが、CD8+T細胞(抗原Adpgk特異的CD8+T細胞を含む)とCD4+T細胞との腫瘍浸潤を有意に増加させ、同時にTreg及びMDSCなどの免疫抑制細胞の密度を低減し;さらに腫瘍免疫療法の応答を予測するCD8+/CD4+T細胞の比を、単独又は抗PD-1との併用のcircRNAにより増強することを示した。
【0168】
実施例3
黒色腫免疫療法のための二価小分子mini circRNAワクチンのナノ粒子送達
【0169】
黒色腫は、皮膚癌の最も重篤な型である。免疫チェックポイント阻害(ICB)免疫療法は、多くの黒色腫患者に利益を与えてきたが、ほとんどの患者がICBに応答しないため、依然としてアンメットニーズがある。癌治療ワクチンは、腫瘍反応性T細胞を発生又は増幅することにより、ICB治療有効性を促進し得る。従来の癌ワクチンは、低い安定性及び生物学的利用度、予め存在する抗ウイルスベクター免疫、弱い抗原性、又はゲノム統合若しくは毒性復帰の懸念、などの制約に関連する。mRNAワクチンは、一部がナノキャリアによる効率的な送達を理由に、癌免疫療法の大いなる可能性を保持する。それでも現在のmRNAワクチンは、1)大規模な修飾に反する不充分な生体安定性、及び生じた不充分な貯蔵寿命及び中等度の抗原翻訳効率と、2)複雑で誤りが起こり易い酵素的生成と、3)ナノキャリア内の不充分な積載容量と、に関連する長い直鎖状mRNAに依存している。
【0170】
これらの制限に取り組むために、本発明者らは、ICBを基にした黒色腫免疫療法(図14B)を改善するために宿主免疫系に指向されるナノ粒子内に効率的に積載され得る新規な型のmRNAワクチン(図14A)として、安定性の高い多価抗原コードmini circRNAを開発した。小分子のmini circRNAは、ペプチド抗原を翻訳するための最小限のRNAエレメントで構成される。この実施例で示された結果は、1)化学的に定義されたmini circRNAが、環化の前に自動化RNA合成により合成に成功したこと;2)mini circRNAがナノキャリア内で高い積載容量を有して、マウスのリンパ節と抗原提示細胞との中に効率的に蓄積されること;3)遊離又はナノ粒子への積載、のどちらかの末端のないcircRNAが、現在の先端技術の修飾mRNAワクチンに比較して、貯蔵溶液中(-20℃、4℃、23℃)及び生存細胞内でエキソヌクレアーゼ分解に耐えて、高い安定性を有すること;4)circRNAワクチンが、細胞内パターン認識受容体の内因的なRNA活性化によりセルフアジュバントされること;5)circRNAナノワクチンが、T細胞応答を促進する自然免疫刺激と同調して抗原翻訳を延長したこと;6)circRNAが、最小限の抗原に比較して最適な抗腫瘍T細胞応答のためのタンパク質分解プロセシングを受けるコンカテマー型ペプチド抗原を生成すること;並びに7)驚くべきことに、現在の先端技術のmRNAワクチンに比較して、低用量の小分子circRNAナノワクチンが、若齢成体マウスと免疫老化した加齢マウスとの両方で改善された抗腫瘍有効性のための優れたT細胞免疫を発生すること、を示す。本発明者らの試験はさらに、二価黒色腫ナノワクチンが二重特異的T細胞応答を誘発して、黒色腫成長を有意に阻害することを示した。
【0171】
黒色腫抗原不均一性は、治療性ワクチン接種のための大きなハードルを提示する。本発明者らなどは、不均一な黒色腫抗原プロファイル及び二価黒色腫関連抗原Trp2/gp100ワクチンが、一価のものより黒色腫治療有効性を促進することを示した。本発明者らは、MHC-I制限ネズミTrp2180-190及びヒトgp10023-33のためのコドン最適化circRNAを合成した(図15A)。ヒトgp10023-33は、非常に免疫原性であり、ヒトとネズミとの両方のgp100を認識するためにT細胞をプライミングする。免疫付与マウスからのCD8T細胞の細胞内サイトカイン染色により示されたとおり、SM-102 LNPを担体として用いると、circRNA-Trp2/gp100ナノワクチンが二重特異的CD8T細胞応答を誘導して(図15B)、腫瘍不均一性と免疫逃避とを克服して、それにより黒色腫治療有効性を改善することができた。興味深いこととして、circRNAナノワクチンは、CD8T細胞で免疫チェックポイントPD-1を上方制御して(図15C)、最適な抗腫瘍有効性を実現するためにICBをcircRNAナノワクチンと組み合わせる根拠を示した。事実、免疫原性の乏しいB16F10黒色腫を有するマウスにおいて、circRNA-Trp2/gp100ナノワクチンは、腫瘍成長を有意に遅延させたが、circRNAナノワクチンとαPD-1との組合わせはさらに治療を増強した(図15D)。
【0172】
実施例4
腫瘍抗原とウイスル抗原に対するmini circRNAの合成および特性評価
COVID-19に対する以下のmini circRNAワクチンにより例示されたとおりカスタマイズされた抗原エピトープを発現するように、mini circRNAを容易に設計及び合成することができる。
【0173】
COVID-19 circRNAワクチン
Sタンパク質は、宿主細胞へのウイルス進入を媒介するウイルス表面タンパク質であり、ワクチン開発のための最も名高いターゲットである。T細胞応答をはじめとする細胞免疫もまた、SARS-CoV-2に対する免疫反応に不可欠である。事実、CD4及びCD8T細胞は、それぞれ回復期COVID患者の100%及び70%で検出されている。スパイクエピトープの受容体結合ドメイン(RBD)440-459をコードするように、circRNAを設計及び合成した。前述のとおり、本発明者らは、これらのcircRNAにより誘導されたT細胞応答を測定した(図12A参照)。C57Bl/6マウスを前述のとおり免疫化して、末梢T細胞応答を、前述のとおり四量体染色により測定した(図16)。
【0174】
実施例5
mini circRNAワクチンベクターの迅速製造
この実施例は、ワクチンベクターの迅速な設計と製造とを可能にする、本発明により提供されたプラットフォーム技術の使用を実証する。関心のある免疫原(複数可)を、モジュール式構造とヌクレオチド同一性の構築とにより別の免疫原(複数可)に迅速に取り換えてもよい。最初のオリゴは、ノンコーディングIRESとコザック配列とを組み込む。追加的オリゴを、関心のある免疫原(複数可)をコードするように設計する。オリゴの数は、免疫原のサイズと数とに依存するが、典型的にはペプチド抗原あたりに18から75までのntsを含む。circRNAを形成させるために、複数の合成一本鎖RNAオリゴヌクレオチドを化学的にライゲートすることにより、ワクチンベクターを形成させる。本発明の方法は、ワクチンの迅速生成を可能にするだけでなく、より効果的なワクチン、特に癌細胞に対するワクチンも生成する。
【0175】
典型的には40から150までのntsを有する、合成一本鎖RNAオリゴヌクレオチド(オリゴ)を、DNAテンプレートから転写することができるが、この実施例では、オリゴを自動化合成装置で製造する。図17Aは、所望のオリゴの混合物を生成して、その後、3つのエピトープを含むmini circRNAを形成させるために化学的にライゲートする、オリゴ合成の工程のフローチャートを示す。図17Bは、ナノキャリアにパッケージングされて対象に投与される3エピトープのmini circRNAの効果を示す。ナノキャリアは、抗原提示細胞(APC)に取り込まれ、そこで免疫原(抗原)が、ローリングコンカテマー転写により発現されて、ナイーブCD4+又はCD8+T細胞への提示のためにプロセシングされる。抗原特異的エフェクターT細胞及びメモリーT細胞をはじめとする免疫系の細胞は、所望の免疫反応を開始して、それにより効果的ワクチンを提供する。
【0176】
オリゴを大量生産して、貯蔵してもよいため、最初のオリゴを別の免疫原コードオリゴでのライゲーションのために再使用してもよい。図18Aは、5つの免疫原を含む5エピトープのベクターを形成させるための構築工程を示す。コザック配列とIRES配列とを有する最初のオリゴは、3つのエピトープを含むmini circRNAを形成させるために用いられたものと同一である。図18Bは、ナノキャリア内に封入されて対象に投与される5エピトープmini circRNAの効果的な免疫反応を示す。
【0177】
ノンコーディング領域に対するコーディング領域の比率は、従来のRNAワクチンベクターで実現され得るレベルより劇的に高いレベルで抗原(複数可)の送達と発現とを可能にする重要な特徴である。最小限のノンコーディング領域が意外にも、キャップ非依存的翻訳を開始及び維持するためにリボソーム結合するのに非常に効果的かつ効率的である。図19Aは、図17A及び18Aに示された工程のステップを利用して合成され得るmini circRNAの追加的実施例を示す。単一のコード免疫原を有するcircRNAでは、ノンコーディングに対するコーディングの比率は通常、0.33と2との間であり、ほとんどの実施形態で0.67より高い。2から5までのコード免疫原を有するcircRNAは、1.67と10との間の比率を有して、ほとんどの実施形態で3.33より高い。6から10までのコード免疫原を有するcircRNAは、3.33と20との間の比率を有して、ほとんどの実施形態で6.67より高い。11から20までのコード免疫原を有するcircRNAは、6.67と40との間の比率を有して、ほとんどの実施形態で13.33より高い。対照的に図19Bは、同じコーディング領域を用いた場合に、ノンコーディングに対するコーディングの比率が有意により低いことを示している。例示された実施例では、その比率は常に3未満であり、多くの場合、1未満である。図19Cは、図19Bに示されたcircRNA比率と同じように、同じ免疫原を有する直鎖状mRNA構築物の比率を示す。
【0178】
図20Aは、mini circRNAワクチンの効果と、図20B及び20Cに示された「従来の」RNAワクチンの2形態の効果と、の対比を示す。従来、重要な二次構造を含むIRESを有する長い非翻訳領域は、最適なだけでなく、効率的な翻訳と免疫原性とのために必要でもあると考えられた。従来のmRNAベクターは、5’キャップ及び非翻訳領域と、3’非翻訳領域と、ポリAテールと、を含む最大の非翻訳配列を有する。従来のmRNAはまた、環状RNAほど生体安定性でなく、APS内ほど長く生存せず、その結果、かなり低い免疫原性である。しかし、従来のRNAワクチンのこのサイズ要件は、コーディングRNAの少なくとも10倍少ないコピーがAPCに送達され、このためmini circRNAよりも安定性の低い免疫原性反応が生じることを意味する。本発明のmini circRNAは、キャップ非依存的翻訳のためにノンコーディング領域のサイズを制限する。これは、有利には総RNAと、脂質と、への暴露量を最小限にしながら、ナノキャリア内のコーディングRNA密度を最大にして、APCへの送達を可能にする。RNAと脂質とは、両者とも自然免疫センサ(TLRなど)の活性化因子であるため、従来の直鎖状mRNAと従来のcircRNAとは、免疫系の過剰活性化の危険を冒して、順次、トランスフェクションと発現とを低減する。図19B及び19Cは、mini環状RNAベクターと従来のmRNAベクターと従来の環状RNAベクターとの、ノンコーディング領域に対するコーディング領域の比率を示す。本発明のmini circRNAベクターは、300nts未満のノンコーディング領域を有して、ほとんどの実施形態でその範囲は、50から100までのntsである。対照的に従来のmRNAベクターは、1000ntsを超えるノンコーディング領域を有して、従来のcircRNAベクターは、典型的には300ntsを超えるノンコーディング領域を有して、より一般的にはこれらは、500から1500までのntsの範囲内である。mini circRNAは、高度にセルフアジュバントしたままであり、APCにおける抗原発現と提示とを実質的に増加させる。これは、感染症に対するワクチンと比較して、免疫応答が非常に高く持続的でなければならないため、特に癌に対するワクチンには有利である。
【0179】
最後に、図21A及び21Bは、本発明のmini circRNAと、従来のmRNAと、の3D構造とサイズ差との予測的例示であり、各RNAが同じエピトープをコードするヌクレオチドを含む。mini circRNAは、主に赤色で示された小さなヘアピン構造を形成する唯一の最小限のノンコーディング領域を含む。より小さなサイズが、担体にパッケージングされてワクチンのレシピエントである対象の細胞に送達されるmini circRNAのコピー数を、より多くすることができる。従来のmRNAは、主に赤色で示される、広範囲にわたるヘアピンとループとの構造を形成するノンコーディング領域の中に調節エレメントを含む。これらの追加的3D構造は、担体にパッケージングされて細胞に送達され得るコピー数を制限して、適当に特異的な免疫反応が開始し得る前に、自然免疫系の過剰刺激とmRNAの急速な分解との機会を増加させる。これらの構造はまた、従来のmRNA分子を、宿主細胞におけるサーベイランスとヌクレアーゼタンパク質とに対してより脆弱にし、これにより従来のmRNAワクチンの短い半減期を制限する一因となる。
【0180】
実施例6
mini circRNAワクチンベクターの迅速製造
この実施例は、ワクチンベクターの迅速な設計と製造とを可能にする、本発明により提供されたプラットフォーム技術の使用を実証する。関心のある免疫原(複数可)を、モジュール式構造とヌクレオチド同一性の構築とにより別の免疫原(複数可)に迅速に取り換えてもよい。最初のオリゴは、ノンコーディングIRES配列とコザック配列とを組み込む。追加的オリゴを、関心のある免疫原(複数可)をコードするように設計する。オリゴの数は、免疫原のサイズと数とに依存するが、典型的にはペプチド抗原あたりに18から75までのntsを含む。circRNAを形成させるために、複数の合成一本鎖RNAオリゴヌクレオチドを化学的にライゲートすることにより、ワクチンベクターを形成させる。本発明の方法は、ワクチンの迅速生成を可能にするだけでなく、より効果的なワクチン、特に癌細胞に対するワクチンも生成する。
【0181】
典型的には40から150までのntsを有する、合成一本鎖RNAオリゴヌクレオチド(オリゴ)を、DNAテンプレートから転写することができるが、この実施例では、オリゴを自動化合成装置で製造する。図18Aは、所望のオリゴの混合物を生成して、その後、3つのエピトープを含むmini circRNAを形成させるために化学的にライゲートする、オリゴ合成の工程のフローチャートを示す。図18Bは、ナノキャリアにパッケージングされて対象に投与される3つのエピトープのmini circRNAの効果を示す。ナノキャリアは、抗原提示細胞(APC)に取り込まれ、そこで免疫原(抗原)が、ローリングコンカテマー転写により発現されて、ナイーブCD4+又はCD8+T細胞への提示のためにプロセシングされる。抗原特異的エフェクターT細胞及びメモリーT細胞をはじめとする免疫系の細胞は、所望の免疫反応を開始して、それにより効果的ワクチンを提供する。
【0182】
オリゴを大量生産して、貯蔵してもよいため、最初のオリゴを別の免疫原コードオリゴでのライゲーションのために再使用してもよい。図19Aは、5つの免疫原を含む5エピトープのベクターを形成させる構築工程を示す。コザック配列とIRES配列とを有する最初のオリゴは、3つのエピトープを含むmini circRNAを形成させるために用いられたものと同一である。図19Bは、ナノキャリア内に封入されて対象に投与される5エピトープmini circRNAの効果的な免疫反応を示す。
【0183】
ノンコーディング領域に対するコーディング領域の比率は、従来のRNAワクチンベクターで実現され得るレベルより劇的に高いレベルで抗原(複数可)の送達と発現とを可能にする重要な特徴である。最小限のノンコーディング領域が、意外にも非常に効果的であり、キャップ非依存的翻訳を開始及び維持するためにリボソームに結合する際に非常に効果的かつ効率的である。図20Aは、図17A及び18Aに示された工程のステップを利用して合成され得るmini circRNAの追加的実施例を示す。単一のコード免疫原を有するcircRNAでは、ノンコーディングに対するコーディングの比率は通常、0.33と2との間であり、ほとんどの実施形態で0.67より高い。2から5までのコード免疫原を有するmini circRNAは、1.67と10との間の比率を有して、ほとんどの実施形態で3.33より高い。6から10までのコード免疫原を有するmini circRNAは、3.33と20との間の比率を有して、ほとんどの実施形態で6.67より高い。11から20までのコード免疫原を有するmini circRNAは、6.67と40との間の比率を有して、ほとんどの実施形態で13.33より高い。従来の環状RNAのための図19Bと、単一免疫原をコードする従来の直鎖状mRNAを示した図19Cと、の免疫原コード配列とノンコーディング領域配列との相対的サイズであり、コーディング領域に対するノンコーディング領域の比率は、0.3未満であり、ほとんどの例で0.1未満である。6から10までの免疫原を含む場合のコーディング領域に対するノンコーディング領域の比率は、3未満であり、ほとんどの例で0.4未満である。任意の例で、mini circRNAの比率は、コーディング領域内に免疫原性配列の同じペイロードを担う従来型の形態より低い。
【0184】
図20A~20Cは、ナノ粒子キャリア内に製剤化され得るコピー数の比較を示す。mini circRNAの小さなサイズにより、任意の所与の免疫原のコピー数は、従来の直鎖状mRNA又はcircRNAで実現され得る数より多く、このため場合によっては、少なくとも1桁多いコピーを提供する。この特徴により、本発明のミニcircRNAワクチンベクターは、多くの治療方法に必要とされる強固で持続的な免疫応答を誘導することができ、これは特に癌の治療に適用可能である。
【0185】
より重要なこととして、図20A~20Cはまた、mini circRNAワクチンを投与する効果と、2形態の「従来の」RNAワクチンを投与する効果と、の対比を示す。図20Bは、ワクチン又は治療薬のための送達ベクターとして用いられ得るような従来の環状RNAを示す。天然由来の環状RNAが、典型的には図20Bの単一のコード免疫原に示されるような大量のノンコーディング配列を含むことが、留意されなければならない。図20Cは、従来のmRNA分子及び/又はワクチンベクターの典型的組成物を示す。従来、重要な二次構造を含むIRESを有する長い非翻訳領域は、最適なだけでなく、効率的な翻訳と免疫原性とのために必要でもあると考えられていた。従来のmRNAベクターは、5’キャップ及び非翻訳領域と、3’非翻訳領域と、ポリAテールと、を含む最大の非翻訳配列を有する。従来のmRNAはまた、環状RNAほど生体安定性でなく、APS内ほど長く生存せず、その結果、かなり低い免疫原性になる。しかし、従来のRNAワクチンのこのサイズ要件は、コーディングRNAの少なくとも10倍少ないコピーをAPCに送達し、このため図20Aで示されたmini circRNAよりも安定性の低い免疫原性反応を示すことを意味する。本発明のmini circRNAは、キャップ非依存的翻訳のためにノンコーディング領域のサイズを制限する。これは、有利には総RNAと、脂質と、への暴露量を最小限にしながら、ナノキャリア内のコーディングRNA密度を最大にしてAPCへの送達を可能にする。RNAと脂質とは、両者とも自然免疫センサ(TLRなど)の活性化因子であるため、従来の直鎖状mRNAと従来のcircRNAとは、免疫系を過剰活性化する危険があり、その結果、トランスフェクションと発現とが低下する。
【0186】
図21A~21Cは、mini環状RNAベクターと従来のmRNAベクターと従来の環状RNAベクターとの、ノンコーディング領域に対するコーディング領域の比率のさらなる例示を提供する。本発明のmini circRNAベクターは、300nts未満のノンコーディング領域を有することができ、ほとんどの実施形態でその領域は、50から100までのntsである。対照的に従来のmRNAベクターは、1000ntsを超えるノンコーディング領域を有して、従来のcircRNAベクターは、典型的には300ntsを超えるノンコーディング領域を有して、より一般的にはこれらは、500から1500までのntsの範囲内である。mini circRNAは、高度にセルフアジュバントしたままであり、APCにおける抗原発現と提示とを実質的に増加させる。これは、感染症に対するワクチンと比較して、免疫応答が非常に高く持続的でなければならないため、癌に対するワクチンには特に有利である。
【0187】
最後に、図22A及び22Bは、本発明のmini circRNAと、従来のmRNAと、の3D構造とサイズ差との予測的例示であり、各RNAが同じエピトープをコードするヌクレオチドを含む。mini circRNAは、主に赤色で示された小さなヘアピン構造を形成する唯一の最小限のノンコーディング領域を含む。より小さなサイズが、担体にパッケージングされてワクチンのレシピエントである対象の細胞に送達されるmini circRNAのコピー数を、より多くすることができる。従来のmRNAは、主に赤色で示される、広範囲にわたるヘアピンとループとの構造を形成するノンコーディング領域の中に調節エレメントを含む。これらの追加的3D構造は、担体にパッケージングされて細胞に送達され得るコピー数を制限して、適当に特異的な免疫反応が開始し得る前に、自然免疫系の過剰刺激とmRNAの急速な分解との機会を増加させる。これらの構造はまた、従来のmRNA分子を、宿主細胞におけるサーベイランスとヌクレアーゼタンパク質とに対してより脆弱にし、これにより従来のmRNAワクチンの短い半減期を制限する一因となる。
【0188】
本発明をそのいくつかの例示的な実施形態の観点から説明してきたが、当業者であれば、本発明は添付の特許請求の範囲の主旨および範囲内で変更を加えて実施することができることを認識するであろう。従って、本発明は、上述のような実施形態に限定されるべきではなく、本明細書で提供される説明の主旨および範囲内で、そのすべての変更および均等物をさらに含むべきである。

図1
図2A
図2B
図3ABC
図3DEF
図4AB
図4C
図4DE
図5AB
図6AB
図6CD
図7A
図7BC
図7D
図7EF
図7GH
図8
図9AB
図10
図11A
図11B
図12AB
図12CD
図12E
図12FG
図13A
図13B
図14
図15AB
図15CD
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図20C
図21A
図21B
【配列表】
2024506629000001.app
【国際調査報告】