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特表2024-506633電位図をリアルタイム解析するコンピュータ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】電位図をリアルタイム解析するコンピュータ装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/367 20210101AFI20240206BHJP
   A61B 5/339 20210101ALI20240206BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240206BHJP
   G06N 3/0464 20230101ALI20240206BHJP
   G06N 3/045 20230101ALI20240206BHJP
   A61B 5/361 20210101ALI20240206BHJP
【FI】
A61B5/367
A61B5/339
G06N20/00
G06N3/0464
G06N3/045
A61B5/361
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548220
(86)(22)【出願日】2022-02-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2022053048
(87)【国際公開番号】W WO2022171638
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】2101234
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520195774
【氏名又は名称】サブストレート ホールディングス
【氏名又は名称原語表記】SUBSTRATE HD
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モール ドゥルデズ,テオフィル
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127GG07
4C127GG11
4C127HH11
4C127LL08
(57)【要約】
電位図をリアルタイムで解析するためのコンピュータ装置に関する。該装置は、複数の電極からそれぞれ発信されるリアルタイム電位図信号を受信するように配置されたメモリと、抽出器、および勾配ブースティングに基づく機械学習モジュールを含む第1の評価器と、を備える。抽出器は、電位図信号のセット内の各電位図信号から、少なくとも1つの時間的解析特徴および少なくとも1つの形態学的特徴を含む特徴のセットを抽出するように、および得られた特徴のセットを前記勾配ブースティングに基づく機械学習モジュールに供給するように配置される。機械学習モジュールは、関連する電位図信号が分散を示すかどうかを示す値でラベル付けされた特徴のセットを含むデータに基づいて訓練され、前記電位図信号のセットごとに出力を行うように配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電位図をリアルタイムで解析するためのコンピュータ装置であって、
複数の電極からそれぞれ発信される複数のリアルタイム電位図信号を受信するように配置されたメモリ(4)と、
抽出器(8)、および勾配ブースティングに基づく機械学習モジュール(10)を含む第1の評価器(6)であって、前記抽出器(8)は、前記電位図信号のセット内の各電位図信号から、少なくとも1つの時間的解析特徴および少なくとも1つの形態学的特徴を含む特徴のセットを抽出するように、および得られた前記特徴のセットを前記勾配ブースティングに基づく機械学習モジュール(10)に供給するように配置され、前記機械学習モジュール(10)は、関連する前記電位図信号が分散を示すかどうかを示す値でラベル付けされた特徴のセットを含むデータに基づいて訓練され、前記電位図信号のセットごとに、前記電位図信号のセットのそれぞれの電位図信号が分散を示すかどうかを示す第1の確率配列を出力するように配置される、第1の評価器(6)と、
畳み込みニューラルネットワークを含む第2の評価器(12)であって、前記畳み込みニューラルネットワークは、リアルタイム電位図信号のセットを受信し、入力されたリアルタイム電位図信号が分散を示す第2の確率配列を出力し、前記畳み込みニューラルネットワークは、それぞれの前記電位図信号が分散を示すかどうかを示す値でそれぞれラベル付けされた前記電位図信号のデータベースに基づいて訓練される、第2の評価器(12)と、
予測器(14)であって、前記電位図信号の所与のセットに対して決定された前記第1の確率配列および前記第2の確率配列に基づいて、前記第1の確率配列および前記第2の確率配列の値の加重平均に少なくとも部分的に基づく第3の確率配列を返す、予測器(14)と、
を備えるコンピュータ装置。
【請求項2】
前記抽出器(8)は、第1の周期長推定値、第2の周期長推定値、および最大振幅を有する前記電位図信号の高速フーリエ変換内の周波数からなるグループの中から少なくとも1つの時間的解析特徴を抽出するように配置される、請求項1に記載のコンピュータ装置。
【請求項3】
前記抽出器(8)は、前記電位図信号のユークリッドノルム、および前記電位図信号の積分された絶対導関数からなるグループの中から少なくとも1つの形態学的特徴を抽出するように配置される、請求項1または2に記載のコンピュータ装置。
【請求項4】
リアルタイム電位図信号を、選択された持続時間を有する一連の電位図信号に分割するように配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載のコンピュータ装置。
【請求項5】
同じ前記選択された持続時間を有する電位図信号のセットを提供するように配置される、請求項4に記載のコンピュータ装置。
【請求項6】
前記予測器(14)は、同じ前記電位図信号に対応する、前記第1の確率配列中の確率と前記第2の確率配列中の確率との差の絶対値がしきい値を超えたときに、前記第3の確率配列において前記第1の確率配列中の確率を使用するように配置される、請求項1~5のいずれか1項に記載のコンピュータ装置。
【請求項7】
前記コンピュータ装置は、前記第3の確率配列中の値に関連する色を決定するように配置され、
前記電極ごとに、前記第3の確率配列における対応する前記電位図信号について決定された確率に関連する色を出力するように配置されたディスプレイをさらに備える、
請求項1~6のいずれか1項に記載のコンピュータ装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の第1の評価器(6)、第2の評価器(12)、および予測器(14)を実現するための命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のコンピュータプログラムを記録するデータ記憶媒体。
【請求項10】
リアルタイム電位図信号を受信し、請求項1~7のいずれか1項に記載の第1の評価器(6)、第2の評価器(12)、および予測器(14)を実行し、第3の確率配列を返す、コンピュータで実現される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電位図をリアルタイム解析するコンピュータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動の分野は、この5年の間に急速に発展してきた。
【0003】
心房細動を促進する心臓部位の検出には、ToperaやCardiolnsightなどのソフトウェアを使用するオフラインのコンピューティング装置によるものと、CARTOなどのソフトウェアを使用するリアルタイムのコンピューティング装置によるものが含まれる。
【0004】
Toperaソフトウェアは、心臓の心房の電気的活性化を再構築することを目的としている。信号の取得は、「バスケットカテーテル」(心房全体上に展開されるカテーテル)を用いて行われる。解析は、取得開始から2分以上経過した遅延時間で行われる。このタイプのカテーテルは挿入が難しく、電極の接触が保証されないので、この解決策は不便である。解析時間が非常に長く、再構築では高精細なマップが得られず、複雑な電気的活性化(心房細動の70%を占める)の場合には単純すぎる再構築のために失敗することもある。
【0005】
Cardiolnsightソフトウェアは、患者の皮膚に装着する多電極心電図測定ベストを使用して、心臓の電気活動を再構築することを目的としている。患者は手術前にベストを着用し、データは手術中に解析され、且つアクセス可能である。解析は、取得開始後、遅延時間(15分以上)で行われる。この解決策には計算時間が非常に長いという欠点があり、延期時間を生じさせてセットアップが困難になり(手術前にデータを抽出できるように、患者は数日前に来てベストを着用する必要がある)、コストがかなりかかる。また、再構築では、測定のセットアップが離れすぎているため高精細なマップが得られず、複雑な電気的活性化の場合には単純すぎる再構築のために失敗する。
【0006】
Biosense&Webster社によるCARTOソフトウェアは、心臓不整脈を検出するアルゴリズムを実現することができる。
【0007】
CFAE(複雑性分裂心房電位)アルゴリズムは、信号中の偏位点の数(導関数の符号の変化)を計算し、リアルタイムでカラーマップを作製する。医師は、これらの複雑なマップを解釈して、対象となる部位を決定する。このアルゴリズムはあまり特殊ではなく、比較的単純である。
【0008】
Abbott Laboratories社によるEnsiteソフトウェアは、心臓不整脈を検出するアルゴリズムを実現することができる。
【0009】
Rippleアルゴリズム(Rippleマッピング)は、CARTOソフトウェアのモジュールであり、最初のカテーテル通過後の心房の電気活動を再現することができる。このモジュールにより、電気波の振幅と伝播の両方が可視化される。その結果、医師が理解するには非常に複雑なマップが作製される。これは単純なケースでは有効かもしれないが、複雑な電気的活性化の場合にはマップの解釈が難しすぎるため、解析は失敗する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願人は、改良されたシステムを発明し、心房細動を促進する心臓部位をリアルタイムで検出するために、連動する2つの方法を使用することを記載したフランス共和国特許出願第1852850号を提出した。より詳細には、この発明には、電位図データに2つの分類モデルを適用するように配置された分類器の使用が記載されている。一方のモデルは他方のモデルよりも適用が速く、精度が低いので、これは、心臓領域の潜在的な対象部位を医師に警告するために使用される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人のさらなる研究により、心房細動を促進する心臓部位をリアルタイムで検出するための改良されたコンピュータ装置を決定することが可能になった。この装置は、複数の電極からそれぞれ発信されるリアルタイム電位図信号を受信するように配置されたメモリと、抽出器、および勾配ブースティングに基づく機械学習モジュールを含む第1の評価器と、を備える。抽出器は、電位図信号のセット内の各電位図信号から、少なくとも1つの時間的解析特徴および少なくとも1つの形態学的特徴を含む特徴のセットを抽出するように、および得られた特徴のセットを勾配ブースティングに基づく機械学習モジュールに供給するように配置される。機械学習モジュールは、関連する電位図信号が分散を示すかどうかを示す値でラベル付けされた特徴のセットを含むデータに基づいて訓練され、電位図信号のセットごとに、電位図信号のセットのそれぞれの電位図信号が分散を示すかどうかを示す第1の確率配列を出力するように配置される。また、該装置は、第2の評価器を備える。第2の評価器は、畳み込みニューラルネットワークを含む。畳み込みニューラルネットワークは、リアルタイム電位図信号のセットを受信し、入力されたリアルタイム電位図信号が分散を示す第2の確率配列を出力する。畳み込みニューラルネットワークは、それぞれの電位図信号が分散を示すかどうかを示す値でそれぞれラベル付けされた電位図信号のデータベースに基づいて訓練される。また、該装置は、予測器を備える。予測器は、電位図信号の所与のセットに対して決定された第1の確率配列および第2の確率配列に基づいて、第1の確率配列および第2の確率配列の値の加重平均に少なくとも部分的に基づく第3の確率配列を返す。
【0012】
このコンピュータ装置が特に興味深いのは、本出願人がリアルタイムで患者の分散マップを構築し、患者らの心房細動の終結率が88%に達するようにこれらのマップを使用することができたからである。これは、分散マップを構築して心房細動を治療するために、リアルタイムで医師を支援するように本出願人の発明を確実に使用することができることを意味する。
【0013】
様々な実施形態において、コンピュータ装置は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含んでもよい。
・ 抽出器は、第1の周期長推定値、第2の周期長推定値、および最大振幅を有する電位図信号の高速フーリエ変換内の周波数からなるグループの中から少なくとも1つの時間的解析特徴を抽出するように配置され、
・ 抽出器は、電位図信号のユークリッドノルム、および電位図信号の積分された絶対導関数からなるグループの中から少なくとも1つの形態学的特徴を抽出するように配置され、
・ さらに、該装置は、リアルタイム電位図信号を、選択された持続時間を有する一連の電位図信号に分割するように配置され、
・ さらに、該装置は、同じ選択された持続時間を有する電位図信号のセットを提供するように配置され、
・ さらに、該装置は、リアルタイム電位図信号を、選択された持続時間を有する一連の電位図信号に分割するように配置され、
・ さらに、予測器は、同じ電位図信号に対応する、第1の確率配列中の確率と第2の確率配列中の確率との差の絶対値がしきい値を超えたときに、第3の確率配列において第1の確率配列中の確率を使用するように配置され、
・ さらに、該装置は、第3の配列中の値に関連する色を決定するように配置されており、電極ごとに、第3の確率配列における対応する電位図信号について決定された確率に関連する色を出力するように配置されたディスプレイをさらに備える。
【0014】
また、本発明は、第1の評価器、第2の評価器、および予測器を実現するための命令を含むコンピュータプログラムと、このコンピュータプログラムを記録したデータ記憶媒体と、リアルタイム電位図信号を受信し、本発明による第1の評価器、第2の評価器、および予測器を実行し、第3の確率配列を返す、コンピュータで実現される方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下、本発明の他の特徴および利点を、本発明による例示的な実施形態を示す添付の図面を参照して説明する。
図1】本発明によるコンピュータ装置の一実施形態に関する全体図である。
図2図1の実施形態で使用される畳み込みニューラルネットワークの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面および以下の説明には、主に、本発明の有効且つ良好に定義された特徴が含まれる。したがって、これらは、本発明をよりよく理解するのに役立つだけでなく、その定義に適宜貢献ためにも使用され得る。
【0017】
持続性心房細動は、依然として治療上の課題を有する。カテーテルアブレーションの適応となる患者の数はますます増加しているが、持続性心房細動に対する最適なアブレーション戦略はいまだ不明である。STAR-AF2(Verma A,Jiang C-y,Betts TRら、「Approaches to catheter ablation for persistent atrial fibrillation」、New England Journal of Medicine、2015;372:1812-1822)は、肺静脈隔離術(PVI)を超えるアブレーション病変の追加処置は、長期予後の改善にはつながらないと結論付けている。
【0018】
その一方で、いくつかの観察研究(Jadidi AS,Lehrmann H,Keyl Cら、「Ablation of persistent atrial fibrillation targeting low-voltage areas with selective activation characteristics」、Circulation:Arrhythmia and Electrophysiology、2016;9:e002962、およびSeitz J,Bars C,Theodore Gら、「AF ablation guided by spatiotemporal electrogram dispersion without pulmonary vein isolation:a wholly patient-tailored approach」、Journal of the American College of Cardiology、2017;69:303-321参照)は、電位図異常を有する領域を標的とする非PVI病変が持続性心房細動患者にとって有益であることを示唆している。
【0019】
特に、後者の研究では、多極性電位図の分散を示す心房領域への高周波エネルギーの適用を支持する結果が示された。他の研究(Narayan SM,Krummen DE,Shivkumar K,Clopton P,Rappel W-J,Miller JM、「Treatment of atrial fibrillation by the ablation of localized sources:CONFIRM(Conventional Ablation for Atrial Fibrillation With or Without Focal Impulse and Rotor Modulation)trial」、Journal of the American College of Cardiology 2012;60:628-636)では、その代わりに高度な信号解析が行われ、心房細動のドライバーを誘導するためのメカニズムに基づいた表示が行われた。
【0020】
電位図の異常や解析にかかわらず、同様の電位図に基づくマッピングアプローチを実現しようとする施設間では、経験や学習曲線の段階に大きな差がある。
【0021】
図1は、本発明によるコンピュータ装置の一実施形態に関する全体図である。
【0022】
コンピュータ装置2は、メモリ4と、抽出器8および勾配ブースティングに基づく機械学習モジュール10を含む第1の評価器6と、第2の評価器12と、予測器14と、を備える。
【0023】
使用上の観点から、操作者は、患者の心臓に挿入された電極を使用する。電極は、参照符号16によって示され、コンピュータ装置2のディスプレイ上に表示される。図1に示すように、16個の様々なタイプの電極が設けられてもよい。
【0024】
電極による感知結果は、メモリ4に供給されるリアルタイム電位図信号18のセットである。これらの電位図信号が解析され、予測器14が電極の修正図20を返す。これにより、医師は、どの電極が分散に関連する可能性のある領域を感知したかを特定することができる。その見返りとして、医師は、患者の心臓上の対応する位置に印をつける(または関連する位置を自動的に返す)ことができる。これにより、ドットで示されている心房細動の観点から治療すべき領域を有する心臓のマップ22が得られる。
【0025】
メモリ4は、リアルタイム電位図信号(例えば、すべての電位図信号が同じ長さ、例えば3秒を有するように、一定時間間隔でデジタル化および分割された後)と、それらが分散を示すかどうか、すなわち、心房細動に関連するかどうかを示す値でラベル付けされた275000以上の電位図信号のデータベースとを格納する。同一の持続時間を有する電位図信号は、連続していてもよいし、互いに重なっていてもよい。また、メモリ4は、本発明を実行する過程で生成され得る任意の一時的データを格納してもよい。また、メモリ4は、予測器14の動作の結果として得られたマップを、場合によっては医師が作成した注釈およびカテーテル形状と組み合わせて格納してもよい。
【0026】
本明細書に記載の実施例において、メモリ4は、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フラッシュメモリ、プロセッサに組み込まれたメモリ、またはクラウドでアクセス可能な遠隔ストレージなど、適切な方法で実現されてもよい。
【0027】
本明細書に記載の実施例において、抽出器8および勾配ブースティングに基づく機械学習モジュール10を含む第1の評価器6、第2の評価器12、ならびに予測器14は、1つまたは複数のプロセッサで実行されるコンピュータプログラムである。このようなプロセッサは、CPU、GPU、CPUおよび/またはGPUグリッド、遠隔計算グリッド、特別に構成されたFPGA、特別に構成されたASIC、SOCまたはNOCなどの専用チップ、またはAI専用チップなど、自動計算を実行するために知られている任意の手段を含む。
【0028】
本明細書に記載の実施例において、第1の評価器6は、機械学習モジュールである。機械学習モジュールは、電位図信号から特徴を抽出し、分散確率を決定するために勾配ブースティング手法にそれらを通すように配置される。
【0029】
抽出器8は、リアルタイム電位図信号のそれぞれの特徴のセットを決定するように配置される。これは、機械学習手法を適用した場合に優れた分散検出を達成することができることを本出願人が特定した。これらの特徴は、2つの主要な特徴カテゴリに分類されてもよい。
【0030】
第1のカテゴリは、電位図信号の時間的解析、すなわち、電位図信号の時間領域または周波数領域の解析に本質的に関連する特徴に関する。本明細書に記載の実施例において、抽出器8は、第1の周期長推定値、第2の周期長推定値、および/または最も高い振幅を有する電位図信号の高速フーリエ変換内の周波数を抽出してもよい。後者の場合、振幅も特徴として保持されてもよい。
【0031】
第1の周期長推定値および第2の周期長推定値は、以下のように決定されてもよい。
【0032】
リアルタイム電位図信号データは、ベクトルに格納され、その各要素は、そのサンプルに対応する。次に、自己相関パラメータTを使用して、最初のT個のベクトルサンプルを含む第1のベクトル、および最後のT個のベクトルサンプルを含む第2のベクトルを含む、サイズTを有する2つのベクトルを画定する。
【0033】
本明細書に記載の実施例において、第1の推定値は、第1のベクトルと第2のベクトルのスカラー積を、第1のベクトルと第2のベクトルのユークリッドノルムの積で割って正規化自己相関を測定することによって算出される。Tを変化させることにより、第1の推定値の最大値と最小値が決定され、このT値で計算された第1の推定値が、第1の推定値の最大値から、第1の推定値の最大値と最小値の差の0.3倍を引いた値よりも大きくなる第1の局所極値をT値が提供する値として、第1の推定値に選択される値が選択される。
【0034】
代替的に、例えば0.3の係数を変更することによって、あるいは経験的、網羅的、あるいはその他の方法で推定値を最適化するT値を探すことによって、第1の推定値を決定することもできる。
【0035】
本明細書に記載の実施例において、第2の推定値は、各T値について、第1のベクトルと第2のベクトルとの差のユークリッドノルムの2乗を、第1のベクトルの絶対値が最大となるサンプルと第2のベクトルの絶対値が最大となるサンプルとの積で割った値を計算することによって算出される。第1の推定値と同様に、第2の推定値の最大値と最小値が決定され、このT値で計算された第2の推定値が、第2の推定値の最小値に第2の推定値の最大値と最小値の差の0.2倍を加算した値よりも小さくなる第1の局所極値をT値が提供する値として、第2の推定値に選択される値が選択される。代替的に、例えば0.2の係数を変更することによって、あるいは経験的、網羅的、あるいはその他の方法で推定値を最適化するT値を探すことによって、第1の推定値を決定することもできる。
【0036】
第2のカテゴリは、信号の形態学的解析、すなわち、数学的形態学に基づく、またはそれに関連する解析に関する。本明細書に記載の実施例において、抽出器8は、電位図信号のユークリッドノルムおよび電位図信号の積分された絶対導関数を抽出してもよい。
【0037】
上述したすべての特徴を使用することで、勾配ブースティングに基づく機械学習モジュール10は、リアルタイム電位図信号ごとに、最大6つの異なる特徴を使用することができる。言うまでもなく、他の実施形態において、抽出器8は、より多くの特徴を抽出してもよい。これらの特徴は、同一のタイムコードを共有することによって、異なる電極に関連する電位図信号の組み合わせまたは比較に関連することができる。一部の態様において、本出願人は、勾配ブースティングに基づく機械学習モジュール10で最大70個の特徴を利用した。
【0038】
勾配ブースティングに基づく機械学習モジュール10の訓練は、分散を示すかどうかを示す値でラベル付けされた275000個の電位図信号を用いて行われる。まず、これらの電位図信号ごとに特徴が抽出され、次に、勾配ブースティングに基づく機械学習モジュール10が、本明細書に記載の実施例では対数損失を用いて訓練される。訓練後、電位図信号のセットから抽出された特徴のセットを入力として受信するため、および電位図信号のセットのうちの対応する1つの電位図信号が分散を示す確率をそれぞれ示す値の配列を返すために、勾配ブースティングに基づく機械学習モジュール10が使用され得る。任意選択で、訓練データは、カテーテル形状情報および/またはそれに関連する3D情報を含んでもよい。
【0039】
本明細書に記載の実施例において、第2の評価器12は、畳み込みニューラルネットワークである。畳み込みニューラルネットワークは、電位図信号のセットを受信し、電位図信号のセットのうちの対応する1つの電位図信号が分散を示す確率をそれぞれ示す値の配列を出力する。
【0040】
図2は、第2の評価器12の畳み込みニューラルネットワークのための例示的な構造を示す。
【0041】
本明細書に記載の実施例において、ニューラルネットワークは、5つの畳み込み層を有する畳み込みニューラルネットワークである。したがって、電位図信号のセット100(例えば16個の電位図信号を含む)は、200個の特徴を抽出する第1の畳み込み層110によって処理され、次に、層110から3000個の特徴を抽出する第2の畳み込み層120、層120から20000個の特徴を抽出する第3の畳み込み層130、層130の最大プーリングから8000個の特徴を抽出する第4の畳み込み層140、および層140から1000個の特徴を抽出する第5の畳み込み層150によって処理される。
【0042】
第5の畳み込み層150は、ニューラルネットワークの完全接続層160にリンクされている。完全接続層160は、それぞれ50ニューロンおよび10ニューロンを含む2層のニューロンの連鎖を含む。完全接続層160は、出力層に確率配列170を返す。
【0043】
この畳み込みニューラルネットワークの訓練は、分散を示すかどうかを示す値でラベル付けされた275000個の電位図信号を用いて行われる。電位図信号は、16個ずつのグループごとに使用される。各電位図信号は、分散の有無を示す0または1の対応する値を有する。本明細書に記載の実施例において、訓練は、アダムオプティマイザとバイナリクロスエントロピー損失を用いて行われる。他のオプティマイザと損失を使用してもよく、オプティマイザをバイパスしてもよい。
【0044】
予測器14は、第1の評価器6の予測値と第2の評価器12の予測値を整合させるために使用される。より詳細には、多くの場合、第2の評価器12は、第1の評価器6よりも過学習に対してより堅牢であり、その結果、第1の評価器6は、通常よりも正確である。そのため、予測器14は、第1の評価器6および第2の評価器12によってそれぞれ出力された確率配列の値の加重平均を実行することができる。一実施形態において、重みは、第1の評価器6に対して0.7、第2の評価器12に対して0.3とすることができる。畳み込みニューラルネットワークが勾配ブースティングに基づく機械学習手法よりもドリフトしやすいので、第1の評価器6と第2の評価器12による予測値の差が大きすぎる場合、予測器14は、任意選択で、第1の評価器6の値のみを保持するように構成されてもよい。したがって、予測器14の出力は、所与のリアルタイム電位図信号が分散を示す別の確率配列である。
【0045】
さらに、コンピュータ14は、予測配列に基づいて色を決定してもよい。より詳細には、この決定は、連続するタイムコードに関連する予測配列に基づいて行われ得る。患者の心房細動が遅いと判定された場合、連続するタイムコードに対応する2つの予測配列を平均化することができる。この配列の値は、次のように関連付けることができる:値が0.35未満の場合は青色、値が0.35以上、0.65以下の場合はオレンジ色、それ以外の場合は赤色。患者の心房細動が速いと判定された場合、連続するタイムコードに対応する4つの予測配列を平均化することができる。この配列の値は、次のように関連付けることができる:値が0.5未満の場合は青色、値が0.5以上、0.8以下の場合はオレンジ色、それ以外の場合は赤色。心房細動が速いか遅いかの判断は医師が行い、医師が装置に入力する。これにより、(図1の参照符号20で示すように)ディスプレイ上に視覚的な反応を提供することができる。これは、図1の参照符号22のドットで示す分散領域をもたらす心臓領域を自動的に、手動で、または半手動でタグ付けするために医師が使用することができる。
【0046】
以上、2つの評価器を使用する場合について説明したが、本発明による第1の評価器および第2の評価器を含む2つ以上の評価器を使用する装置または方法も、添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。
図1
図2
【国際調査報告】