(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】RNAトランススプライシング分子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20240206BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20240206BHJP
C12N 15/38 20060101ALI20240206BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240206BHJP
C12N 5/16 20060101ALI20240206BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240206BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240206BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240206BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240206BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240206BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/85 Z
C12N15/38
C12N7/01
C12N5/16
A61K35/76
A61K31/7088
A61K48/00
A61P35/00
A61K35/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548767
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2022053407
(87)【国際公開番号】W WO2022171813
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500341551
【氏名又は名称】ケンブリッジ エンタープライズ リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】インゲマースドッテル カリン
(72)【発明者】
【氏名】リーヴァー アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA92X
4B065AA94X
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA13
4C084ZB26
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、ヒト内在性レトロウイルス(HERV)pre-mRNAを標的とするRNAトランススプライシング分子(RTM)に関する。RTMは、(i)HERV pre-mRNAに特異的な結合領域、(ii)トランススプライシングスプライスドメイン、及び(iii)自殺タンパク質のコード配列を含む。RTMの結合領域が、細胞内のHERV pre-mRNAに結合し、コード配列が、HERV pre-mRNAとのトランススプライシングドメインを通じてトランススプライシングされ、結果として、細胞中に自殺タンパク質を発現させるキメラmRNAが得られる。本発明のRTMは、HERV遺伝子を発現する細胞、例えば、がん細胞を選択的に死滅させるのに有用であり得る。RTM、コード核酸、治療方法及び関連する方法ならびに使用が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNAトランススプライシング分子(RTM)であって、
(i)HERV pre-mRNAに特異的な結合領域と、
(ii)トランススプライシングドメインと、
(iii)自殺タンパク質のコード配列と、を含む、前記RNAトランススプライシング分子(RTM)。
【請求項2】
前記結合領域が、細胞内のHERV pre-mRNAに特異的に結合することにより、前記コード配列が、前記HERV mRNAとトランススプライシングされ、前記細胞中に前記自殺タンパク質が発現される、請求項1に記載のRTM。
【請求項3】
前記HERV pre-mRNAが、HERV-K pre-mRNAである、請求項1または請求項2に記載のRTM。
【請求項4】
前記HERV-K pre-mRNAが、HERV-K Np9またはHERV-K Rec pre-mRNAである、請求項3に記載のRTM。
【請求項5】
前記結合領域が、前記HERV-K Np9またはHERV-K Rec pre-mRNA内の配列番号2のヌクレオチド配列に特異的に結合する、請求項3に記載のRTM。
【請求項6】
前記結合領域が、配列番号4のヌクレオチド配列またはその変異体を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のRTM。
【請求項7】
前記結合領域が、配列番号4の4位、19位、20位、32位及び34位に対応する1つ以上の位置で配列番号4に対して改変された配列番号4の変異体であるヌクレオチド配列を含む、請求項6に記載のRTM。
【請求項8】
前記結合領域は、配列番号4の4位に対応する位置にCからUへの置換、19位に対応する位置にAからUへの置換、20位に対応する位置にAからUへの置換、32位に対応する位置にAからGへの置換、及び34位に対応する位置にAからGへの置換を有する配列番号4の変異体であるヌクレオチド配列を含む、請求項7に記載のRTM。
【請求項9】
前記結合領域が、配列番号5のヌクレオチド配列またはその変異体を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のRTM。
【請求項10】
前記自殺タンパク質が、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼである、先行請求項のいずれか1項に記載のRTM。
【請求項11】
前記HSVチミジンキナーゼが、配列番号6のアミノ酸配列またはその変異体を含む、請求項10に記載のRTM。
【請求項12】
前記HSVチミジンキナーゼは、配列番号6の46位及び60位に対応する位置、任意に配列番号6の1位、46位及び60位に対応する位置において、配列番号6に対して改変された配列番号6の変異体であるアミノ酸配列を含む、請求項10または11に記載のRTM。
【請求項13】
前記HSVチミジンキナーゼは、配列番号6の46位に対応する位置にMからLへの置換、60位に対応する位置にMからIへの置換、及び任意に1位に対応する位置にMの欠失を有する配列番号6の変異体であるアミノ酸配列を含む、請求項12に記載のRTM。
【請求項14】
前記HSVチミジンキナーゼが、配列番号8のアミノ酸配列またはその変異体を含む、請求項10~13のいずれかに記載のRTM。
【請求項15】
前記RTMにおける前記結合ドメインと前記トランススプライシングドメインとの間に配置されたスペーサーをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載のRTM。
【請求項16】
前記スペーサーが、配列番号10の配列またはその変異体を含む、請求項15に記載のRTM。
【請求項17】
前記結合領域、前記トランススプライシングドメイン及び前記コード配列を5’から3’方向に順に含む、先行請求項のいずれか1項に記載のRTM。
【請求項18】
前記トランススプライシングドメインが、アクセプター部位を含む、請求項17に記載のRTM。
【請求項19】
前記トランススプライシングドメインが、配列番号12のヌクレオチド配列またはその変異体を含む、請求項18に記載のRTM。
【請求項20】
2A自己切断ペプチドをコードする配列をさらに含み、前記配列が、前記RTMにおける前記トランススプライシングドメインと前記コード配列との間に位置する、請求項17~19のいずれか1項に記載のRTM。
【請求項21】
前記2A切断部位が、配列番号11の配列またはその変異体を含む、請求項20に記載のRTM。
【請求項22】
前記自殺タンパク質の前記コード配列が、開始コドンを欠く、請求項17~21のいずれか1項に記載のRTM。
【請求項23】
配列番号2配列番号13の核酸配列、配列番号13の変異体、配列番号15の核酸配列、または配列番号15の変異体を含む、請求項17~22のいずれか1項に記載のRTM。
【請求項24】
前記コード配列、前記トランススプライシングドメイン及び前記結合領域を5’から3’方向に順に含む、請求項1~16のいずれか1項に記載のRTM。
【請求項25】
前記トランススプライシングドメインが、スプライスドナー部位を含む、請求項23に記載のRTM。
【請求項26】
前記自殺タンパク質の前記コード配列が、開始コドンを含む、請求項24または25に記載のRTM。
【請求項27】
前記結合ドメインの下流(3’)に位置するリボザイム配列をさらに含み、前記リボザイム配列が、前記結合ドメインのRTM3’を切断して下流のヌクレオチド配列を除去する、請求項24~26のいずれか1項に記載のRTM。
【請求項28】
先行請求項のいずれか1項に記載のRTMをコードする、核酸。
【請求項29】
配列番号6の46位及び60位に対応する位置、任意に配列番号6の1位、46位及び60位に対応する位置において、配列番号6に対して改変された配列番号6の変異体であるアミノ酸配列を含むHSVチミジンキナーゼをコードする、核酸。
【請求項30】
前記HSVチミジンキナーゼは、配列番号6の46位に対応する位置にMからLへの置換、60位に対応する位置にMからIへの置換、及び任意に1位に対応する位置にMの欠失を有する配列番号6の変異体であるアミノ酸配列を含む、請求項29に記載の核酸。
【請求項31】
前記HSVチミジンキナーゼが、配列番号8のアミノ酸配列またはその変異体を含む、請求項29または30に記載の核酸。
【請求項32】
配列番号9のヌクレオチド配列またはその変異体を含む、請求項29~31のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項33】
前記核酸は、標的pre-mRNAに特異的な結合領域とトランススプライシングドメインをさらに含むRTMである、請求項29~32のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項34】
請求項28に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項35】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項34に記載の発現ベクター。
【請求項36】
請求項28に記載の核酸、または請求項34もしくは請求項35に記載の発現ベクターを含む、ウイルス粒子。
【請求項37】
請求項1~27のいずれか1項に記載のRTM、請求項28に記載の核酸、または請求項34もしくは請求項35に記載の発現ベクターを含む、単離細胞。
【請求項38】
請求項1~27のいずれか1項に記載のRTM、請求項28に記載の核酸、または請求項34もしくは請求項35に記載の発現ベクター、請求項36に記載のウイルス粒子または請求項37に記載の単離宿主細胞を含む、医薬組成物。
【請求項39】
がんを治療する方法であって、
請求項1~27のいずれか1項に記載のRTM、請求項28に記載の核酸、または請求項34もしくは請求項35に記載の発現ベクター、請求項36に記載のウイルス粒子、請求項37に記載の単離細胞、または請求項38に記載の医薬組成物を、それを必要とする個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項40】
がんの治療方法に使用するための、請求項1~27のいずれか1項に記載のRTM、請求項28に記載の核酸、または請求項34もしくは請求項35に記載の発現ベクター、請求項36に記載のウイルス粒子、請求項37に記載の単離宿主細胞、または請求項38に記載の医薬組成物を含む、組成物。
【請求項41】
がんの治療に使用する医薬の製造における、請求項1~27のいずれか1項に記載のRTM、請求項28に記載の核酸、または請求項34もしくは請求項35に記載の発現ベクター、請求項36に記載のウイルス粒子、請求項37に記載の単離宿主細胞、または請求項38に記載の医薬組成物の使用。
【請求項42】
前記RTM、前記核酸、前記発現ベクター、前記ウイルス粒子、前記単離細胞または前記医薬組成物を前記個体に投与した後に、さらに、
前記個体のがん細胞において細胞毒性化合物が活性化されるように、前記自殺タンパク質によって活性化される前記細胞毒性化合物の不活性プロ体を最初の処置として前記個体に投与することを含む、請求項39に記載の方法、請求項40に記載の使用のための組成物、または請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前記細胞毒性化合物が、前記最初の処置の後に前記個体において癌細胞となった、または癌細胞となりつつある細胞において活性化されるように、前記不活性プロ体を用いた1つ以上のさらなる処置を前記個体に投与することをさらに含む、請求項42に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
【請求項44】
前記1つ以上のさらなる処置が、前記最初の処置の少なくとも1週間後に行われる、請求項43に記載の方法、使用のための組成物、または使用。
【請求項45】
細胞療法を受ける個体におけるがんの発生または再発を防止する方法であって、請求項37に記載の細胞集団を、それを必要とする個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項46】
前記個体において癌化した、または癌化しつつある集団の細胞において細胞毒性化合物が活性化されるように、前記自殺タンパク質によって活性化される前記細胞毒性化合物の不活性プロ体を前記個体に投与することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞は、前記個体に由来する自己細胞である、請求項45または請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記細胞が造血細胞である、請求項45~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記がんがHERV遺伝子の発現によって特徴付けられる、請求項39または42~48のいずれか1項に記載の方法、請求項40または42~44のいずれか1項に記載の使用のための組成物、または請求項41~44のいずれか1項に記載の使用。
【請求項50】
前記がんが膵臓癌または肝癌である、請求項39または42~49のいずれか1項に記載の方法、請求項40、42~44または49のいずれか1項に記載の使用のための組成物、または請求項41~44または49のいずれか1項に記載の使用。
【請求項51】
in vitroで細胞を死滅させる方法であって、
細胞が前記自殺タンパク質を発現するように、前記細胞を、請求項1~27のいずれか1項に記載のRTM、請求項28に記載の核酸、請求項34もしくは請求項35に記載の発現ベクター、または請求項36に記載のウイルス粒子と接触させることと、
前記細胞を、前記自殺タンパク質によって活性化される細胞毒性化合物の不活性プロ体と接触させ、前記細胞毒性化合物が前記自殺タンパク質によって活性化され、それによって前記細胞を死滅させることと、を含む、前記方法。
【請求項52】
前記細胞は、HERV遺伝子を発現する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
集団におけるHERV遺伝子発現細胞を枯渇させる方法であって、
前記細胞集団中のHERV遺伝子発現細胞が前記自殺タンパク質を発現するように、前記細胞集団を、請求項1~27のいずれか1項に記載のRTM、請求項28に記載の核酸、請求項34または請求項35に記載の発現ベクター、請求項36に記載のウイルス粒子、及び/または請求項38に記載の医薬組成物と接触させることと、
前記集団を、前記自殺タンパク質によって活性化される細胞毒性化合物の不活性プロ体と接触させ、前記自殺タンパク質が、前記集団におけるHERV遺伝子発現細胞において前記細胞毒性化合物を活性化し、それによって前記集団におけるHERV遺伝子発現細胞を枯渇させることとを含む、前記方法。
【請求項54】
前記HERV遺伝子発現細胞が、癌細胞である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記細胞集団が、個体またはその子孫から得られた細胞のサンプルである、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
前記細胞が造血細胞である、請求項53~55のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNAトランススプライシング分子(RTM)、特に自殺遺伝子のトランススプライシングを媒介するRTM、及びがんの治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
RNAトランススプライシングは、2つの異なるRNA分子が一緒にスプライスされて核内にキメラmRNA分子が生成される、スプライセオソームを介したプロセスである。核外輸送後、キメラmRNA分子は細胞質内で翻訳されてキメラタンパク質が生成される。
【0003】
RNAトランススプライシングは、欠陥のあるRNA転写産物を、トランスで送達される補正されたmRNA分子と交換するために使用されている(Hong et al (2020)Br Med Bull.2020 Dec 15;136(1):4-20)。
【0004】
RNAトランススプライシングはまた、潜在的な癌治療として2段階の単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ-ガンシクロビル(HSV-tk/GCV)細胞死システムを送達するためにも使用されている(Kim et al(2016)。Theranostics 6 357-368;Kwon et al,(2005)。Mol.Ther 12,5 824-834;Jung et al (2006).Biochem.Biophys.Res.Commun,349,556-563;Song et al (2009).Cancer Gene Ther 16,113-125;Song et al (2006).FEBS Letters 580,5033-5043;Won et al (2007).J.Biotechnol.129,614~619;Won et al (2012).J.Biotechnol.158,44-49)。単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼは、リン酸化によりプロドラッグのガンシクロビルから活性化合物への変換を触媒し、DNA複製中の連鎖停止と細胞死を引き起こす(Duarte,S et al (2012).Cancer Letters 324,160-170)。
【0005】
RNAトランススプライシングはまた、HIVを標的とするためにも使用されている(Ingemarsdotter,C.K.et al(2017)Mol.Ther.Nucleic acids,7,140-154)及びcancer-specific RNAs(Poddar et al(2018).Mol.Ther.Nucleic Acids,11,41-56;WO2017171654A1,US2015079678A1,WO2014068063A1)。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、ヒト内在性レトロウイルス(HERV)pre-mRNAを標的とするRNAトランススプライシング分子(RTM)を開発した。このRTMは、HERV遺伝子を発現する細胞、例えば、がん細胞を選択的に死滅させるのに有用であり得る。
【0007】
本発明の第1の態様は、
(i)HERV pre-mRNAに特異的な結合領域と、
(ii)トランススプライシングスプライスドメインと、
(iii)自殺タンパク質のコード配列と、を含むRNAトランススプライシング分子(RTM)を提供する。
【0008】
RTMの結合領域が、細胞内のHERV pre-mRNAに結合し、コード配列が、HERV pre-mRNAとのトランススプライシングドメインを通じてトランススプライシングされ、結果として、細胞中に自殺タンパク質を発現させるキメラmRNAが得られる。
【0009】
好ましいRTMは、配列番号13、配列番号15、またはこれらのいずれかの変異体の核酸配列を含み得る。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様のRTMをコードする核酸を提供する。好ましい核酸は、配列番号14、配列番号16、またはこれらのいずれかの変異体のヌクレオチド配列を含み得る。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様の核酸を含む発現ベクターを提供する。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1の態様のRTM、第2の態様の核酸、または第3の態様の発現ベクターを含むウイルス粒子を提供する。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1の態様のRTM、第2の態様の核酸、及び/または第3の態様の発現ベクターを含む単離細胞を提供する。
【0014】
本発明の第6の態様は、第1の態様のRTM、第2の態様の核酸、第3の態様の発現ベクター及び/または第4の態様のウイルス粒子を含む医薬組成物を提供する。
【0015】
本発明の第7の態様は、
第1の態様のRTM、第2の態様の核酸、第3の態様の発現ベクター、第4の態様のウイルス粒子及び/または第6の態様の医薬製剤を、それを必要とする個体に投与することを含む、がんの治療方法を提供する。
【0016】
第7の態様の方法は、自殺タンパク質によって活性化される細胞毒性化合物を個体に投与することをさらに含み得る。例えば、不活性なプロ体を個体に投与することができ、この場合、自殺タンパク質は、自殺タンパク質が発現されている細胞内で、不活性なプロ体を細胞毒性化合物の活性型に変換することができる。細胞毒性化合物は、最初の治療で個体に投与され、最初の治療後に1つ以上のさらなる治療を行うことができる。
【0017】
本発明の第8の態様は、がんの治療方法、例えば第7の態様の方法において使用するための、第1の態様のRTM、第2の態様の核酸、第3の態様の発現ベクター、第4の態様のウイルス粒子及び/または第6の態様の医薬製剤;及びがんの治療方法、例えば第7の態様の方法において使用するための医薬の製造における、第1の態様のRTM、第2の態様の核酸、第3の態様の発現ベクター、第4の態様のウイルス粒子及び/または第6の態様の医薬製剤の使用、を提供する。
【0018】
RTM、核酸、発現ベクター、ウイルス粒子、及び/または医薬製剤は、自殺タンパク質によって活性化される細胞毒性化合物と組み合わせて提供され得る。
【0019】
本発明の第9の態様は、細胞療法を受ける個体におけるがんの発生または再発を防止する方法であって、第5の態様による細胞の集団を、それを必要とする個体に投与することを含む、方法に関する。
【0020】
本方法はさらに、個体において癌化した、または癌化しつつある集団の細胞において細胞毒性化合物が活性化されるように、自殺タンパク質によって活性化される細胞毒性化合物の不活性プロ体を個体に投与することを含み得る。
【0021】
本発明の第10の態様は、インビトロで細胞を死滅させる方法であって、
細胞を、第1の態様のRTM、第2の態様の核酸、第3の態様の発現ベクター、第4の態様のウイルス粒子及び/または第6の態様の医薬製剤と接触させ、上記細胞が自殺タンパク質を発現させることと、
細胞を、自殺タンパク質によって活性化される細胞毒性化合物と接触させ、上記自殺タンパク質が細胞毒性化合物を活性化して細胞を死滅させることと、を含む、方法に関する。
【0022】
本発明の第11の態様は、集団におけるHERV遺伝子発現細胞を枯渇させる方法であって、
細胞集団を、第1の態様のRTM、第2の態様の核酸、第3の態様の発現ベクター、第4の態様のウイルス粒子及び/または第6の態様の医薬製剤と接触させ、上記細胞集団におけるHERV遺伝子発現細胞が自殺タンパク質を発現することと、
集団を、上記自殺タンパク質によって活性化される細胞毒性化合物と接触させ、その結果、上記自殺タンパク質は、上記集団におけるHERV遺伝子発現細胞において細胞毒性化合物を活性化し、それによって上記集団におけるHERV遺伝子発現細胞を枯渇させることと、を含む、方法に関する。
【0023】
第1~第11の態様の好ましい実施形態では、自殺タンパク質は、HSVチミジンキナーゼであってもよく、細胞傷害性化合物は、ガンシクロビルであってもよい。
【0024】
本発明の他の態様及び実施形態については、以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】gag、pro、pol、及びenvオープンリーディングフレーム(ORF)を示したHERV-KクラスI及びクラスIIのゲノム構成(上図)を示す。Pro及びPolは、-1リボソームフレームシフト事象を介して発現される。HERV-KクラスIでは、env遺伝子内に292塩基対の欠失があり、その結果、HERV-KクラスIでは代替スプライシング事象が生じ、Np9 RNA転写産物が生成されるのに対し、Recは、HERV-KクラスIIから生成される(中図)。HERV-K envは、env内のRec/Np9イントロンに相補的な結合ドメインを含むRTMでRNAトランススプライシングの標的となり得る(下図)。
【
図2】Np9 RNAトランススプライシング標的及び結合ドメインの配列とアラインメントを示す。2A.RNAトランススプライシング結合ドメインの標的配列。標的配列は、envオープンリーディングフレーム内のHERV-K HML-2-22q11.21、ジェンバンク配列番号JN675087.1のヌクレオチド6513~6556に対応する。2B.選択された標的配列とHERV-K HML-2-22q11.21、ジェンバンク配列番号JN675087.1とのヌクレオチドアラインメントを行い、ヌクレオチド位置6513-6556を確認する。2C.結合ドメイン設計の最適化のために選択された標的の逆相補性ヌクレオチド配列(上)。最適化された結合ドメインDNA配列(中)。最適化された結合ドメインRNA配列(下)。矢印のヌクレオチドは、RNA構造の改善のためのCからUへのウォブル塩基置換、AからUへのミスマッチ、AからGへのウォブル塩基置換を示す。2D.結合ドメイン配列と標的配列HERV-K HML-2-22q11.21、ジェンバンク配列番号JN675087.1とのヌクレオチドアラインメントは配列相補性を示す。
【
図3】結合ドメイン配列のRNA二次構造予測を示す。3A.RNA fold ウェブサーバーを用いた最小自由エネルギー(MFE)(左)及び重心(右)のRNA二次構造予測。3B.RNAトランススプライシングカセット内でフォールドされたNp9標的RNA結合ドメインのRNA二次構造予測。RNAセントロイドフォールド(左)及びMFEフォールド(右)。インサートは、RNA結合ドメイン領域を示す。
【
図4A】レンチウイルスRNAのトランススプライシング送達システムを示す。パッケージングプラスミド(Gag/Pol、VSV-G、及びRev)と、XbaI及びXhoI制限酵素部位の間に示されるRNAトランススプライシングカセットを含む遺伝子導入構築物とを含む、第3の世代のレンチウイルス遺伝子送達システムを示す図。RNAトランススプライシングカセットは、内部プロモーター、例えば、サイロキシン結合グロブリンプロモーター(TBG)またはサイトメガロウイルスプロモーター(CMV)または他の組織特異的もしくは非特異的もしくはシステム特異的(例えば、低酸素応答性)プロモーターによって駆動される。
【
図4B】レンチウイルスRNAのトランススプライシング送達システムを示す。Aに示したRNAトランススプライシングカセットの詳細図。TBGプロモーターに続いて、HERV-K Np9を標的とするRNA結合ドメイン配列がある。トランススプライシングドメインから結合ドメインを分離するために、結合ドメインの下流にスペーサーが含まれ、その後にP2A切断部位が続く。トランス遺伝子単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)は、第1のATG翻訳開始コドンを欠くが、第2及び第3のATG(ATG
46及びATG
60)はインタクトである。ミニイントロンは、さらに下流に配置されている。
【
図4C】レンチウイルスRNAのトランススプライシング送達システムを示す。最適化されたRNAトランススプライシングカセット。BbvCI制限酵素部位及び下流ヌクレオチドを突然変異させて、潜在的なRNAスプライスアクセプター部位を破壊し、シスにおいてRNAスプライシングを引き起こす可能性がある。
【化1】
(BbvCI制限酵素部位が強調されている)を
【化2】
に突然変異させた。AUG翻訳開始部位をコードする第2及び第3のATGを、それぞれATG
46及びATG
60について、ATGからCTG及びATCに突然変異させた。
【
図5A】Np9を標的とするRNAトランススプライシング構築物でトランスフェクションしたHEK293T細胞におけるHSV-tkタンパク質の発現を示す。HSV-tk pre-mRNAのNp9 pre-mRNA上へのRNAトランススプライシングを誘導するためのRNAトランススプライシング構築物、HSV-tk-ts及びHSV-tk-ts-optの概略図である。両方のコンストラクトはCMVプロモーターから誘導される。HSV-tk-ts及びその最適化されたバージョンHSV-tk-ts-optは、
図4Cに記載されている。
【
図5B】Np9を標的とするRNAトランススプライシング構築物でトランスフェクションしたHEK293T細胞におけるHSV-tkタンパク質の発現を示す。HSV-tk mRNAを示すグラフ。矢印及び緑色のブロックは、HSV-tk翻訳開始部位を示す。野生型HSV-tk mRNA転写産物からは、ATG1からのP1、ATG1とATG46との間に位置する非標準的ATG翻訳開始部位からのP2、ATG46からのP3、及びATG60からのP4の4つのアイソフォームが産生され得る。種々のHSV-tkアイソフォームの中でも、P1及びP3が触媒活性であり、P2が不活性であり、かつP4が非常に低い活性を有することが判明した(Ellison,A.R.& Bishop,J.O.(1996)Nucleic acids research 24 2073-2079)。
【
図5C】Np9を標的とするRNAトランススプライシング構築物でトランスフェクションしたHEK293T細胞におけるHSV-tkタンパク質の発現を示す。Np9を発現する細胞及びNp9を発現しない細胞の両方における、HSV-tk野生型転写産物、HSV-tk-ts、及びHSV-tk-ts-optのHSV-tkアイソフォームタンパク質発現に関する予測。野生型HSV-tk転写産物は、P1、P2、P3及びP4をある程度発現すると予想される。HSV-tk-ts及びHSV-tk-ts-optはともに、Np9発現細胞においてのみP1を発現すると予想される。しかしながら、HSVtk-ts-optトランスフェクト細胞では、P3及びP4の発現が抑制されると予想される。
【
図5D】Np9を標的とするRNAトランススプライシング構築物でトランスフェクションしたHEK293T細胞におけるHSV-tkタンパク質の発現を示す。RNAトランススプライシング構築物、HSV-tk-tsもしくはHSV-tk-ts opt、または対照、CMV-GFPもしくはCMV-HSV-tkのいずれかによってトランスフェクションしてから72時間後にウエスタンブロットで解析したHEK 293T細胞からのタンパク質溶解物。高被曝及び低被曝の両方で検出されたHSV-tk抗体染色。
【
図5E】Np9を標的とするRNAトランススプライシング構築物でトランスフェクションしたHEK293T細胞におけるHSV-tkタンパク質の発現を示す。HSV-tk-tsまたはHSV-tk-ts-optトランスフェクト細胞でのP1発現の定量化。P1タンパク質を各レーンのビンキュリンタンパク質に正規化した(n=3)。
【
図5F】Np9を標的とするRNAトランススプライシング構築物でトランスフェクションしたHEK293T細胞におけるHSV-tkタンパク質の発現を示す。HSV-tk-tsまたはHSV-tk-ts-optトランスフェクト細胞でのP3発現の定量化。P1タンパク質を各レーンのビンキュリンタンパク質に正規化した(n=3)。全てのグラフに関して、エラーバーはS.D.を示している;ns=有意でない;**P<0.01;対にされていないt検定である。
【
図6】Np9 pre mRNAを標的としたRNAトランススプライシングレンチウイルスベクターを形質導入した後の、肝細胞癌細胞株(HCC)Hep3B及びHuh7-mRFPにおける細胞生存率の低下を示している。A.Hep3B細胞(96ウェルプレート中の1×10^4細胞/ウェル)を、未処理(ctrl)であるか、または陰性対照ベクターpSico、トランススプライシングベクター、3’ER-HSVtk、3’ER-HSVtk、もしくはHSVtk(陽性対照)を用いてMOI(感染多重度)1で形質導入した。3’ER-HSVtk及び3’ER-HSVtk optは、TBGプロモーターから駆動されることを除いて、
図5Aに示されるHSV-tk-ts及びHSV-tk-ts-optとそれぞれ同一である。形質導入後1日に、細胞を300μΜのガンシクロビル(GCV)の用量で処理し、翌日に2回目の投与をした。GCV処理の4日後(導入5日後)の細胞生存率をMTTアッセイによって分析した(Pannecouque,C.et al(2008)Nature protocols,3,427-434).B.HuH7-mRFP細胞を形質転換し、A.に記載されるようにGCVで処理し、処理の4日後に細胞生存率を分析した。C.Hep3B細胞をA.と同様に形質導入し、形質導入後2日目及び3日目に10μMまたは100μMのGCVの2つの連続用量を用いてGCVで処理し、次いで、3日後にMTTアッセイにより細胞生存率分析を行った。エラーバーは標準偏差(S.D.)を示す。統計分析を、スチューデントのt検定(両側、不均等な分散を仮定する)で*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001で実行し、各サンプル+GCVをGCVなしの各サンプルと比較した。
【
図7A】RNAトランススプライシングレンチウイルスベクターが、HEK293T細胞及び膵臓癌細胞株Panc-1、Aspc-1及びMIA PaCa-2において細胞死を誘導することを示す。HEK293T細胞は、Lv-CMV-GFP、Lv-HSV-tk-ts、Lv-HSV-tk-ts-opt、またはLv-CMV-HSV-tkで、1のMOIで形質導入し、1000μMのGCVで処理した。CMVプロモーターを有するRNAトランススプライシングレンチウイルスベクターで処理した細胞では、細胞生存率が著しく低下することが、ほぼすべての細胞株で観察された。MTTアッセイを用いて細胞生存率を定量化した。(n=3);エラーバーは、S.D.;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001;二元配置ANOVAに続き、Tukeyの事後多重比較検定を行う。
【
図7B】RNAトランススプライシングレンチウイルスベクターが、HEK293T細胞及び膵臓癌細胞株Panc-1、Aspc-1及びMIA PaCa-2において細胞死を誘導することを示す。HEK293T細胞は、Lv-CMV-GFP、Lv-HSV-tk-ts、Lv-HSV-tk-ts-opt、またはLv-CMV-HSV-tkで、2のMOIで形質導入し、1000μMのGCVで処理した。CMVプロモーターを有するRNAトランススプライシングレンチウイルスベクターで処理した細胞では、細胞生存率が著しく低下することが、ほぼすべての細胞株で観察された。MTTアッセイを用いて細胞生存率を定量化した。(n=3);エラーバーは、S.D.;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001;二元配置ANOVAに続き、Tukeyの事後多重比較検定を行う。
【
図7C】RNAトランススプライシングレンチウイルスベクターが、HEK293T細胞及び膵臓癌細胞株Panc-1、Aspc-1及びMIA PaCa-2において細胞死を誘導することを示す。Panc-1細胞は、Lv-CMV-GFP、Lv-HSV-tk-ts、Lv-HSV-tk-ts-opt、またはLv-CMV-HSV-tkで、1のMOIで形質導入し、1000μMのGCVで処理した。CMVプロモーターを有するRNAトランススプライシングレンチウイルスベクターで処理した細胞では、細胞生存率が著しく低下することが、ほぼすべての細胞株で観察された。MTTアッセイを用いて細胞生存率を定量化した。(n=3);エラーバーは、S.D.;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001;二元配置ANOVAに続き、Tukeyの事後多重比較検定を行う。
【
図7D】RNAトランススプライシングレンチウイルスベクターが、HEK293T細胞及び膵臓癌細胞株Panc-1、Aspc-1及びMIA PaCa-2において細胞死を誘導することを示す。Panc-1細胞は、Lv-CMV-GFP、Lv-HSV-tk-ts、Lv-HSV-tk-ts-opt、またはLv-CMV-HSV-tkで、2のMOIで形質導入し、1000μMのGCVで処理した。CMVプロモーターを有するRNAトランススプライシングレンチウイルスベクターで処理した細胞では、細胞生存率が著しく低下することが、ほぼすべての細胞株で観察された。MTTアッセイを用いて細胞生存率を定量化した。(n=3);エラーバーは、S.D.;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001;二元配置ANOVAに続き、Tukeyの事後多重比較検定を行う。
【
図7E】RNAトランススプライシングレンチウイルスベクターが、HEK293T細胞及び膵臓癌細胞株Panc-1、Aspc-1及びMIA PaCa-2において細胞死を誘導することを示す。Aspc-1細胞は、Lv-CMV-GFP、Lv-HSV-tk-ts、Lv-HSV-tk-ts-opt、またはLv-CMV-HSV-tkで、1のMOIで形質導入し、1000μMのGCVで処理した。CMVプロモーターを有するRNAトランススプライシングレンチウイルスベクターで処理した細胞では、細胞生存率が著しく低下することが、ほぼすべての細胞株で観察された。MTTアッセイを用いて細胞生存率を定量化した。(n=3);エラーバーは、S.D.;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001;二元配置ANOVAに続き、Tukeyの事後多重比較検定を行う。
【
図7F】RNAトランススプライシングレンチウイルスベクターが、HEK293T細胞及び膵臓癌細胞株Panc-1、Aspc-1及びMIA PaCa-2において細胞死を誘導することを示す。Aspc-1細胞は、Lv-CMV-GFP、Lv-HSV-tk-ts、Lv-HSV-tk-ts-opt、またはLv-CMV-HSV-tkで、2のMOIで形質導入し、1000μMのGCVで処理した。CMVプロモーターを有するRNAトランススプライシングレンチウイルスベクターで処理した細胞では、細胞生存率が著しく低下することが、ほぼすべての細胞株で観察された。MTTアッセイを用いて細胞生存率を定量化した。(n=3);エラーバーは、S.D.;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001;二元配置ANOVAに続き、Tukeyの事後多重比較検定を行う。
【
図7G】RNAトランススプライシングレンチウイルスベクターが、HEK293T細胞及び膵臓癌細胞株Panc-1、Aspc-1及びMIA PaCa-2において細胞死を誘導することを示す。MIA PaCa-2細胞は、Lv-CMV-GFP、Lv-HSV-tk-ts、Lv-HSV-tk-ts-opt、またはLv-CMV-HSV-tkで、1のMOIで形質導入し、1000μMのGCVで処理した。CMVプロモーターを有するRNAトランススプライシングレンチウイルスベクターで処理した細胞では、細胞生存率が著しく低下することが、ほぼすべての細胞株で観察された。MTTアッセイを用いて細胞生存率を定量化した。(n=3);エラーバーは、S.D.;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001;二元配置ANOVAに続き、Tukeyの事後多重比較検定を行う。
【
図7H】RNAトランススプライシングレンチウイルスベクターが、HEK293T細胞及び膵臓癌細胞株Panc-1、Aspc-1及びMIA PaCa-2において細胞死を誘導することを示す。MIA PaCa-2細胞は、Lv-CMV-GFP、Lv-HSV-tk-ts、Lv-HSV-tk-ts-opt、またはLv-CMV-HSV-tkで、2のMOIで形質導入し、1000μMのGCVで処理した。CMVプロモーターを有するRNAトランススプライシングレンチウイルスベクターで処理した細胞では、細胞生存率が著しく低下することが、ほぼすべての細胞株で観察された。MTTアッセイを用いて細胞生存率を定量化した。(n=3);エラーバーは、S.D.;*P<0.05;**P<0.01;***P<0.001;****P<0.0001;二元配置ANOVAに続き、Tukeyの事後多重比較検定を行う。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、(i)HERV pre-mRNAに特異的な結合領域、(ii)トランススプライシングドメイン、及び(iii)自殺タンパク質をコードする配列を含む、リボ核酸(RNA)トランススプライシング分子(RTM)に関する。RTMは、HERV pre-mRNAのトランススプライシングを、自殺タンパク質をコードする配列、例えば3’エクソン置換(3’ER)または5’エクソン置換(5’ER)によって媒介する。これにより、HERV pre-mRNAを発現する細胞において自殺タンパク質が発現される。その後、この自殺タンパク質によって活性化される細胞毒性化合物への曝露によって、自殺タンパク質を発現する細胞を選択的に死滅させることができる。
【0027】
リボ核酸(RNA)トランススプライシング分子(RTM)は、内因性標的pre-mRNAとRTMとの間にトランススプライシング事象を誘導することができ、標的pre-RNA及びRTMの両方からのヌクレオチド配列を含むキメラmRNAを生成することができる異種RNA分子である。RTMは、典型的には、標的pre-mRNAへの特異性を規定する結合領域と、トランススプライシングを仲介するスプライシング要素と、標的pre-mRNAの一部に置き換わるコード配列とを含む。遺伝子治療で使用するためのRTMの設計及び使用が報告されている(例えば、Wally et al.J Invest Dermatol 2012;132: 1959-1966.Pttaraju et al Nat.Biotechnol.1999;17: 246-252を参照)。本明細書に記載のRTMは、HERV pre-mRNAを標的とする。RTMのコード配列がHERV pre-mRNAとトランススプライシングされる条件下で、RTMをHERV pre-mRNAと接触させて、キメラmRNA分子を形成することができる。このキメラmRNA分子は、さらに処理されて細胞内で発現され得る。
【0028】
RTMの特徴(i)~(iii)は、例えば3’エクソン置換の場合、(i)、(ii)(iii)の順序で、または例えば5’エクソン交換の場合、(iii)、(ii)、(i)の順序で、5’から3’への方向で順次配置され得る(例えば、Poddar et al(2018)Molecular therapy.Nucleic Acids 11,41-56を参照)。
【0029】
本明細書に記載のRTMは、HERV前駆体mRNA(pre-mRNA)を用いたトランススプライシングを媒介する。pre-mRNAは、mRNAにまだ処理されていない細胞の核内の遺伝子から転写されたRNAである。したがって、pre-mRNAは、mRNAには存在しないイントロン及び他の特徴を含む。pre-mRNAは、一次転写物、または異種核RNA(hnRNA)とも呼ばれ得る。
【0030】
HERV pre-mRNAは、HERVプロウイルスに由来する遺伝子(HERV遺伝子)の非連結または部分的スプライシングされた転写産物を含み得る。適切なHERV pre-mRNAにはHERV-K pre-mRNAが含まれる。
【0031】
ヒト内因性レトロウイルス(HERV)は、ヒトゲノムに存在する内因性ウイルス要素またはプロウイルスである。HERVは、外因性レトロウイルスと類似したゲノム構成を示し、かつ生殖系列内で連続世代を通して垂直的に伝播する。HERVプロウイルスからの遺伝子の発現は、正常細胞では厳しく調節されているが、HERV-K遺伝子は、癌では調節異常で過剰発現している可能性がある(例えば、Hohn et al Frontiers in Oncology,3,246;Kassiotis,G.(2014)J.Immunol.192,1343-1349;Attig,J.,et al Genome Res,29,1578-1590を参照)
【0032】
HERVは、完全なまたは不完全なゲノムを有する任意のクラスまたは群であり得る。例えば、HERVは、第1群~第6群のいずれか1種のクラスI HERV、第1群~第10群のいずれか1種のクラスII HERVまたはクラスIII HERVであってよい。いくつかの好ましい実施形態では、HERVは、クラスII HERV、例えばHERV-Kであってよい。HERV-Kは、ヒトゲノム内のヒト内在性レトロウイルス(HERV)のクラスである(例えば、Bannert et al(2018)Front Microbiol 9,178を参照)。HERV-2は、HERV-K HML-2プロウイルス、例えば、第1群及び第2群のHERV-K HML-2プロウイルスを含み得る。
適切なHERV pre-mRNAは、HERVプロウイルス遺伝子、例えばgag、pro、polまたはenv遺伝子、例えばHERV-K HML-2 gag、pro、polまたはenv遺伝子から転写され得る。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態では、HERVプロウイルス遺伝子は、env遺伝子であり得る。例えば、適切なHERV pre-mRNAは、HERV env遺伝子、例えばHERV-K env遺伝子から転写され得る。適切なHERV pre-mRNAは、HERV-K HML-2 env遺伝子から転写される。HERV-K HML-2プロウイルスは、2つの群(群1及び群2)に分類され得る。HERV-K HML-2の第1群のプロウイルスのenv遺伝子は、HERV-K HML-2の第2群のプロウイルスのenv遺伝子に対して291塩基対の欠失を有する。この欠失により、第1群及び第2群のプロウイルスでは選択的スプライシングを引き起こし、第1群のプロウイルスではNp9タンパク質が、第2群のプロウイルスではRecタンパク質が生成される。
【0034】
本明細書に記載のRTMでは、両方の種類のHERV-K HML-2 env遺伝子転写産物を標的とすることができる。例えば、HERV-K pre-mRNAは、(i)Np9をコードするHERV-K pre-mRNA及び/または(ii)RecをコードするHERV-K pre-mRNAであってよい。例えば、本明細書に記載のRTMでは、HERV-K HML-2の第1群のプロウイルスによって発現されるNp9 pre-mRNAと、HERV-K HML-2の第2群のプロウイルスによって発現されるRec pre-mRNAとの両方を標的とすることができる。
【0035】
RTMの結合領域は、HERV pre-mRNAに特異的に結合する。例えば、上記結合領域は、env遺伝子から転写されるHERV pre-mRNAに特異的に結合することができる。結合領域の結合は、HERV pre-mRNAにRTMを標的とし、自殺タンパク質をコードするコード配列をHERV pre-mRNAとトランスススプライシングすることを可能にする。いくつかの好ましい実施形態では、結合領域は、env遺伝子から転写されるHERV-K pre-mRNA、例えば、HERV-K Np9またはHERV-K Rec pre-mRNAに特異的に結合し得る。結合領域の結合は、HERV-K pre-mRNAにRTMを標的とし、自殺タンパク質をコードするコード配列をHERV-K pre-mRNAとトランスススプライシングすることを可能にする。
【0036】
本明細書に記載のRTMは、1つ以上の結合領域を含み得る、すなわち、HERV pre-mRNAにハイブリダイズする1つの連続した配列または複数の連続した領域を含む。複数の結合領域は、例えば細胞死を増強するのに有用であり得る(例えば、Poddar et al(2018)supra)。好ましくは、本明細書に記載されるRTMは、単一の結合領域を含み、すなわち、HERV pre-mRNAにハイブリダイズする1つの連続した配列のみを含む。
【0037】
結合領域は開放構造を有し得る。例えば、自己相補配列を欠くことがあり、RTM内の他のヌクレオチドと対にされていない、または結合されていない一連の非構造化ヌクレオチドを含み得る。結合領域は、例えば25個未満の連続した非構造化ヌクレオチド、例えば12~25個の連続した非構造化ヌクレオチドを含み得る。
【0038】
好ましくは、RTMの結合領域は、HERV pre-mRNA、例えば、HERV-K pre-mRNAのイントロン配列に特異的に結合する。この結合領域は、HERV pre-mRNAにおけるスプライス部位に近いイントロン配列に特異的に結合し得る。適切なスプライス部位は、標準的な配列分析ツールを使用して同定することができる(例えば、Neural Network Server within the Berkeley Drosophila Genome Project;CrypSkip software,Bioinformatics HUSAR server,German Cancer Research Centre)。3’エクソン置換の場合、結合領域は、HERV pre-mRNA内のスプライス部位の下流(3’)にあるイントロン配列に特異的に結合し得る。5’エクソン置換の場合、結合領域は、HERV pre-mRNA内のスプライス部位の上流(5’)にあるイントロン配列に特異的に結合し得る。
【0039】
結合領域は、pre-mRNA中の他のイントロン配列と比較して、最小自由エネルギーが高く、非構造化ヌクレオチドの割合が高いと同定された領域に結合することができる。適切な領域は、標準的な配列分析ツールを使用して同定され得る(例えば、Foldanalyse,Bioinformics HUSAR server,German Cancer Research Center)。例えば、HERV-K Env遺伝子を標的とするRTMの結合領域は、配列番号1に対応するHERV-K Np9またはHERV-K Rec pre-mRNAの領域内に結合し得る(nucleotides 6513-6556 of HERV-K HML-2-22q11.21;Genbank ID: JN675087.1)。
【0040】
適切な結合領域は、HERV pre-mRNA内の配列またはその変異体の逆相補配列を含み得る。例えば、HERV-K遺伝子を標的とする適切な結合領域は、HERV-K pre-mRNA内の配列またはその変異体の逆相補配列を含み得る。この結合領域は、配列番号3(配列番号1の逆相補配列)または配列番号4(配列番号2の逆相補配列)のヌクレオチド配列を含んでいてもよく、またはその変異体であってもよい。適切な結合領域は、200ヌクレオチド未満の長さ、好ましくは100ヌクレオチド未満の長さであってよい。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態では、結合領域のヌクレオチド配列を改変して、潜在的なスプライス部位を除去し、RNA編集を阻害し、かつ/またはトランススプライシング効率を高めることができる。例えば、HERV-K env pre-mRNAを標的とする結合領域は、配列番号3のヌクレオチド配列またはその変異体を含んでもよく、そのヌクレオチド配列は、4位、19位、20位、32位及び34位の1つ以上、好ましくは全ての位置で配列番号3に対して改変を有する。例えば、ヌクレオチド配列は、4位、19位及び20位にUを有し、32位及び34位にGを有し得る。適切な結合領域は、配列番号3に対応する、4位にCからUへの置換;19位にAからUへの置換;20位にAからUへの置換;32位にAからGへの置換;及び34位にAからGへの置換を有するヌクレオチド配列を含み得る。例えば、結合領域は、配列番号5のヌクレオチド配列またはその変異体を含み得る。
【0042】
本明細書に記載される参照アミノ酸配列または参照ヌクレオチド配列の変異体は、参照配列に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を含み得る。特定のアミノ酸配列変異体は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、もしくは10個または10個以上のアミノ酸の挿入、付加、置換または欠失により参照配列と異なり得る。特定のヌクレオチド配列変異体は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個または10個以上のヌクレオチドの挿入、付加、置換または欠失により参照配列と異なり得る。
【0043】
配列の類似性及び同一性は、一般に、アルゴリズムGAP(Wisconsin Package,Accelerys,San Diego USA)を参照して定義されている。GAPは、Needleman and Wunschアルゴリズムを用いて、2つの完全な配列を、マッチの数を最大にし、ギャップの数を最小にするようにアラインメントする。一般的に、デフォルトパラメータが使用され、ギャップ作成ペナルティ=12及びギャップ延長ペナルティ=4。GAPの使用が好ましい場合があるが、他のアルゴリズム、例えばBLAST(Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:405-410の方法を使用する)、FASTA(Pearson及びLipman(1988)PNAS USA 85: 2444-2448の方法を使用する)、またはSmith-Watermanアルゴリズム(Smith及びWaterman(1981)J.Mol Biol.147: 195-197)、またはAltschul et al.(1990)前掲のTBLASTNプログラムを使用してもよく、一般にデフォルトパラメータを採用する。特に、psi-Blastアルゴリズム(Nucl.Acids Res.(1997)25 3389-3402)を使用することができる。これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(GAP,BESTFIT,PASTA,and FASTA in the Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)が利用可能であり、公的に利用可能なコンピュータソフトウェアは、例えば、ClustalOmega(Soding,J.2005,Bioinformatics 21,951-960)、T-coffee(Notredame et al.2000,J.Mol.Biol.(2000)302,205-217)、Kalign(Lassmann and Sonnhammer 2005,BMC Bioinformatics,6(298))、Genomequest(商標) software(Gene-IT,Worcester MA USA)及びMAFFT(Katoh and Standley 2013,Molecular Biology and Evolution,30(4)772-780 software)が使用され得る。このようなソフトウェアを使用する場合、例えば、ギャップペナルティや延長ペナルティなどのデフォルトパラメータを使用することが望ましい。配列同一性パーセント及び配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの好ましい例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これは、Altschul et al.,Nuc.Acids Res.25:3389-3402(1977)及びAltschul et al.,J.Mol.Biol.215:403-410(1990)にそれぞれ記載されている。配列比較は、本明細書に記載されている関連する配列の全長にわたって行うことができる。
【0044】
参照アミノ酸配列中のアミノ酸残基は、挿入、欠失または置換、好ましくは異なるアミノ酸残基への置換により変更または突然変異されて、参照アミノ酸配列の変異体を産生し得る。参照ヌクレオチド配列中のヌクレオチドは、挿入、欠失または置換、好ましくは異なるヌクレオチドの置換により変更または突然変異されて、参照ヌクレオチド配列の変異体を産生し得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されたRTMの結合ドメインとトランススプライシングドメインとの間にスペーサーが配置され得る。スペーサーは、結合ドメインとトランススプライシングドメインまたはコード化配列との間の相互作用を低減または防止することができる。スペーサーは、結合ドメイン領域に対して相補的ではなく、結合領域、トランススプライシングドメインまたはコード配列とハイブリダイズしないか、または他の点で相互作用しない任意のヌクレオチド配列を含み得る。いくつかの実施形態では、スペーサーは、任意の非接合RTMの翻訳を遮断するための終結コドンをさらに含み得る。適切なスペーサーは、配列番号10のヌクレオチド配列を含んでいてもよいし、それらの変異体であってもよい。
【0046】
他の実施形態では、本明細書に記載されるRTMでは、RTMの結合ドメインとトランス-スプライシングドメインとの間にスペーサーが欠ける場合がある。
【0047】
結合領域を介してHERV-K pre-mRNAに結合した後、RTM内のトランススプライシングドメインは、HERV pre-mRNAを用いてスプライセオソーム媒介トランススプライシングされる。トランススプライシングは、自殺タンパク質をコードするヌクレオチド配列を連結して、HERV pre-mRNAをトランスする。3’エクソン置換では、コード配列は、トランススプライシングドメインの下流(3’)に位置し、HERV pre-mRNA中のドナースプライス部位の上流(5’)のヌクレオチド配列とスプライシングされる。5’エクソン置換では、コード配列は、RTMのトランススプライシングドメインの上流(5’)に位置し、HERV pre-mRNA中のアクセプタースプライス部位の下流(3’)のヌクレオチド配列とスプライシングされる。3’及び5’エクソン置換によるトランススプライシングの技術が、当該技術分野で確立されている(例えば、前掲のPoddar et al(2018)を参照)。
【0048】
RTMとHERV pre-mRNAとのトランススプライシングは、トランススプライシングドメインによって媒介される。トランススプライシングドメインは、スプライセオソームを補充し、かつ内因性pre-mRNAを用いてトランススプライシングを媒介するのに必要なモチーフを含むヌクレオチド配列である。例えば、トランススプライシングドメインは、RTMがトランススプライシングによりHERV pre-mRNAに結合されるスプライス部位を含み得る。
【0049】
3’エクソン置換での使用に適したRTMのトランススプライシングドメインは、スプライス受容部位を含み得る。スプライスアクセプター部位はA-Gジヌクレオチド配列を含み得る。例えば、スプライスアクセプター部位は、配列C-A-G-G(例えば、AG)を含み得る。適切なスプライスアクセプター部位は、当該技術分野で周知である。
【0050】
3’エクソン置換に使用するのに適したRTMのトランススプライシングドメインは、さらにポリピリミジントラクト(PPT)を含み得る。ポリピリミジントラクトは、スプライス部位の上流、例えば3’エクソン置換RTMにおけるスプライスアクセプター部位の5~40ヌクレオチド上流に位置してもよい。ポリピリミジントラクトは、ピリミジン(C及びU)に富む15~20のヌクレオチドの配列を含み得る。適切なPPTは、5’-UUUUUUUCCCUUUUUUUCC-3’及びその変異体を含む。他の適切なPPTは、当該技術分野で知られている(例えば、Wagner et al 2001 Mol Cell Biol21(10):3281-3288;WO2017171654A1を参照)。
【0051】
3’エクソン置換に使用するのに適したRTMのトランススプライシングドメインは、分岐点配列をさらに含み得る。分岐点シーケンスはPPTの上流に位置することができ、例えばスプライスアクセプター部位の上流で20~50ヌクレオチドとすることができる。分岐点配列は、配列YURACまたはYNURACを含んでもよく、ここで、R=プリン、Y=ピリミジン、及びN=任意のヌクレオチドである。適切な分岐点配列は、5’-UACUAACA-3’を含み、当該技術分野で知られている。(例えば、Gao et al Nucl Acid Res 2008 36(7)2257-2267;US20060094675を参照)
【0052】
3’エクソン置換に使用するのに適したRTMのトランススプライシングドメインは、イントロニックスプライスエンハンサー(ISE)をさらに含み得る。ISEは、分岐点配列の上流に配置することができる。適切なISEは、
【化3】
を含み、当該技術分野で知られている(例えば、Wang et al Nat Struct.Mol.Biol.(2012)19(10)1044-1052;McCarthy et al(1998)Hum Mol Genet 7 1491-1496;Yeo et al(2004)PNAS USA 101 15700-15705を参照)。
【0053】
3’エクソン置換に使用するのに適したトランススプライシングドメインは、当該技術分野において周知である(例えば前掲のPoddar et al 2018を参照)。例えば、適切なトランススプライシングドメインは、配列番号12のヌクレオチド配列を含んでいてもよく、またはそれらの変異体であってもよい。
【0054】
5’エクソン置換での使用に適したRTMのトランススプライシングドメインは、スプライスドナー部位を含み得る。スプライスドナー部位は、GUジヌクレオチド配列を含み得る。例えば、スプライスドナー部位は、配列5’-CAG/GUAAGTAT-3’を含み得る。他の適切なスプライスドナーアクセプター部位は、当該技術分野で周知である。
【0055】
5’エクソン置換に使用するのに適したRTMのトランススプライシングドメインは、イントロニックスプライスエンハンサー(ISE)をさらに含み得る。ISEはスプライスドナー配列の下流に配置され得る。適切なISEは当技術分野において周知である(例えば、Wang et al Nat Struct.Mol.Biol.(2012)19(10)1044-1052;McCarthy et al(1998)Hum Mol Genet 7 1491-1496;Yeo et al(2004)PNAS USA 101 15700-15705を参照)。
【0056】
5’エクソン置換に使用するのに適したトランススプライシングドメインは、当該技術分野において周知である(例えば前掲のPoddar et al 2018を参照)。
【0057】
好ましくは、本明細書に記載されるRTMは、例えばシススプライシングの仲介によるトランススプライシングドメインのトランススプライシングに干渉するスプライス部位を含まない。例えば、3’エクソン置換RTMは、トランススプライシングドメインの上流にスプライス部位を欠いているが可能性があり、すなわち、トランススプライシングドメインは、3’ER RTMの5’スプライス部位の下流(3')にない。5'エクソン置換RTMは、トランススプライシングドメインの下流にスプライス部位を欠いている可能性があり、すなわち、トランススプライシングドメインは、5'ER RTMの3'スプライス部位の上流(5')にない。
【0058】
本明細書に記載されるRTMは、キメラmRNA中のHERV配列によってコードされたアミノ酸を含まない自殺タンパク質の産生を可能にする分離要素をさらに含み得る。適切な分離要素は、当該技術分野でよく知られており(前掲のPoddar et al 2018)、終結コドン及び2Aペプチドなどの自己切断ペプチドをコードする配列を含む。自殺タンパク質のコード領域には、SV40ポリAなどのポリAテールが続く場合がある(Poddar et al 2018)。
【0059】
例えば、本明細書に記載される5’ER RTMは、自殺タンパク質をコードする配列の3’末端に、UAG、UAAまたはUGAなどの終結コドンをさらに含み得る。トランススプライシング後のキメラmRNAの翻訳は、終結コドンで終了し、キメラmRNA中のHERV配列によってコードされる追加のアミノ酸なしで自殺タンパク質を生成する。
【0060】
本明細書に記載される3’ER RTMは、2Aペプチドコード配列などの自己切断ペプチドコード配列をさらに含み得る。自己切断ペプチドコード配列は、トランス-スプライシングドメインと自殺タンパク質のコード配列との間に、例えばコード配列の5’末端に位置し得る。自己切断ペプチドは、翻訳時に新生ペプチド鎖を切断させ、HERVアミノ酸配列から自殺タンパク質を分離する。適切な2Aペプチドは、T2A、P2A、E2A及びF2Aペプチド(前掲のPoddar et al(2018);Kim et al(2011)PLoS ONE 6,e18556)を含み得、かつ配列番号11のアミノ酸配列またはその変異体を含み得る。自己切断ペプチドコード配列は、配列番号17のヌクレオチド配列またはその変異体を含み得る。
【0061】
本明細書に記載される5’ER RTMは、触媒的に活性もしくは不活性のいずれかであるハンマーヘッドリボザイムなどのリボザイム、または安定化RNA要素をさらに含み得る。リボザイムは結合ドメインの下流に位置してもよい。リボザイムまたは安定化RNA要素には、スペーサー及びポリAテールが続く場合がある。リボザイムは、ポリAテールなどの結合ドメインの下流(3’)のヌクレオチド配列をRTMから除去し得る。適切なリボザイム配列及び安定化RNA要素は、当該技術分野で利用可能である(前掲のPoddar et al(2018))。
【0062】
本明細書に記載されるRTMは、自殺タンパク質のコード配列をさらに含む。癌細胞などのHERV遺伝子発現細胞において、コード配列がRTMのトランス-スプライシングドメインを介してHERV pre-mRNAにトランススプライシングされ、HERV遺伝子発現細胞に自殺タンパク質が発現される。
【0063】
自殺タンパク質は、細胞内で発現されるタンパク質で、少なくとも1つの他の分子と相互作用して細胞の誘発または細胞死を引き起こす。自殺タンパク質をコードするコード配列は、自殺遺伝子と呼ぶことができる。このコード配列は、自殺タンパク質についての完全コード配列を含み得る。3’ER RTMでは、コード配列は、5’翻訳開始コドン(開始コドン:AUG)に欠ける場合がある。これにより、トランススプライシングの非存在下でコード配列の発現が防止される。5’ER RTMでは、コード配列は、5’翻訳開始コドン(開始コドン:AUG)を含み得る。
【0064】
好ましくは、自殺タンパク質は、細胞毒性化合物の不活性なプロ体を活性体に変換するプロドラッグ活性化酵素である。自殺タンパク質は不活性型プロ体から活性型細胞毒性化合物を生成するので、自殺蛋白質を発現している細胞は、プロ体への曝露に対して敏感である。本明細書に記載の使用に適した自殺タンパク質は、当該技術分野で入手可能であり(例えば、Malekshah et al(2016)Curr Pharmacol Reps 2 299-308を参照)、5-フルオロシトシン(5-FC)を活性化するシトシンデアミナーゼ;イホスファミド(IFO)またはシクロホスファミドを活性化するシトクロムP450;5-[アジリジン-1-イル]-2,4-ジニトロベンズアミドを活性化するニトロレダクターゼ;フルダラビンを活性化するプリンヌクレオシドホスホリラーゼを含む(ePNP;Secrist et al Nucleos.Nucleot.1999,18,745-757;Krohne et al Hepatology(2001)34(3):511-8)and thymidine kinase,which activates ganciclovir(GCV)。
【0065】
いくつかの好ましい実施形態では、自殺タンパク質は、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(tk)である。HSV-tkはガンシクロビルをリン酸化し、細胞毒性ガンシクロビル三リン酸を産生する。HSVチミジンキナーゼは、配列番号6(データベース登録番号AF057310.1)で示される配列を含むか、またはそれからなる、またはその変異体であり得る。HSVチミジンキナーゼをコードする適切なコード配列は、配列番号7のヌクレオチド配列またはその変異体を含み得る。
【0066】
3’エクソン置換に適したRTMでは、HSVチミジンキナーゼは、配列番号6の1位に対応する位置でN末端M残基を欠いている場合がある。これによって、トランススプライシング事象が存在しない場合の自殺タンパク質の発現を阻止することができる。コード配列は、5’翻訳開始部位(AUG)を欠いている場合がある。5’エクソン置換に適したRTMでは、HSVチミジンキナーゼは、配列番号6の1位に対応する位置にN末端M残基を含み得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、HSVチミジンキナーゼのコード配列は、エキソニックスプライスエンハンサー(ESE)を含み得る。好都合には、別の変性コドンが使用されてもよく、そのため、コードされたアミノ酸配列は、ESEの存在により変更されない。いくつかの実施形態では、コード配列は、βグロビンミニイントロンなどのイントロンをさらに含み得る。適切な配列は、当技術分野で知られている(前掲のPoddar et al 2018)。
【0068】
好ましくは、HSVチミジンキナーゼをコードするコード配列は、チミジンキナーゼの異常アイソフォームの発現を減少するように改変されてもよい。これは、HERV-K pre-mRNAとトランススプライシングされていない配列からの活性HSVチミジンキナーゼの産生を減少させるのに有用であり得る。例えば、HSVチミジンキナーゼは、翻訳開始コドンによってコードされるM残基を欠失または置換するように改変されてもよい。配列番号6のHSVチミジンキナーゼ配列の適切な変異体は、翻訳開始コドンによりコードされる1つ以上のM残基を欠いている場合がある。例えば、配列番号6の1位及び46位に対応する位置、好ましくは配列番号6の1位、46位及び60位にあるHSVチミジンキナーゼのM残基は、欠失されてもよいし、他の残基により置換されてもよい。例えば、配列番号6の1位に対応する位置にあるHSVチミジンキナーゼのM残基は、欠失されてもよい。配列番号6の46位に対応する位置にあるHSVチミジンキナーゼのM残基は、異なる残基、好ましくはL残基で置換されてもよい。配列番号6の60位に対応する位置にあるHSVチミジンキナーゼのM残基は、異なる残基、好ましくはI残基で置換されてもよい。好ましくは、HSVチミジンキナーゼには、機能的翻訳開始部位を欠く。コード配列によりコードされた好ましいHSVチミジンキナーゼは、配列番号8のアミノ酸配列またはその変異体を含み得る。
【0069】
改変されたHSVチミジンキナーゼのコード配列は、翻訳改変を開始する1種以上のコドンを含む配列番号7の変異体であるアミノ酸配列を含み得る。例えば、配列番号7の136位―138位に対応する位置での翻訳開始コドン(ATG/AUG)の1つ以上のヌクレオチドは、コドンATG/AUGが破壊されるかまたは廃止されるように、他のヌクレオチドで置換され得る。いくつかの実施形態では、136位のAは、異なるヌクレオチドで置換され得る。例えば、ヌクレオチド配列は、136位でA>C置換を含み得る。適切なヌクレオチド配列は、136位―138位の翻訳開始コドンを欠き、これらの位置からの翻訳開始を支持しないことがある。配列番号7の178位―180位に対応する位置での翻訳開始コドン(ATG/AUG)の1つ以上のヌクレオチドは、翻訳開始コドン(ATG/AUG)が破壊されるかまたは廃止されるように、他のヌクレオチドで置換され得る。いくつかの実施形態では、180位のGは、異なるヌクレオチドで置換され得る。例えば、ヌクレオチド配列は、180位でG>C置換を含み得る。適切なヌクレオチド配列は、178位―180位の翻訳開始コドンを欠き、これらの位置からの翻訳開始を支持しないことがある。
【0070】
いくつかの好ましい実施形態では、ヌクレオチド配列は、136位―138位及び178位―180位において翻訳開始コドンを欠いてもよい。例えば、ヌクレオチド配列は、136位でA>C置換、180位でG>C置換を含み得る。
【0071】
HSVチミジンキナーゼの好ましいコード配列は、配列番号9のヌクレオチド配列またはその変異体を含み得る。
【0072】
上記のような改変されたHSVチミジンキナーゼをコードする核酸配列は、一般にRNAトランススプライシングの自殺遺伝子として有用であり得、本発明の一態様において提供される。上記のように、改変されたHSVチミジンキナーゼは、残基M1及びM46、好ましくはM1、M46及びM60の欠失または置換を含み得る。例えば、修飾HSVチミジンキナーゼは、上述のように、M46L変異、好ましくはM46L及びM60I変異を含み得る。改変されたHSVチミジンキナーゼは、配列番号8の配列またはその変異体を含み得る。核酸配列は、配列番号9の配列またはその変異体を含み得る。核酸配列を含むRTM及び発現ベクター等の核酸構築物、及びRTMまたは発現ベクターなどの核酸構築物の製造におけるそのような核酸の使用も、本発明の態様として提供される。構築物及び核酸は、3’エクソン置換型トランススプライシング及びリボザイム媒介型トランススプライシングを含む、一連のトランススプライシング適用に有用であり得る。
【0073】
本明細書に記載される好ましいRTMは、配列番号13のヌクレオチド配列もしくはその変異体、または配列番号15のヌクレオチド配列もしくはその変異体を含み得る。
【0074】
上記のRTMは、DNA分子などの核酸によってコードされ得る。核酸分子は単離することができる。核酸は、部分的にまたは全体的に合成であってもよい。
【0075】
本明細書に記載される好ましいRTMは、配列番号14のヌクレオチド配列もしくはその変異体、または配列番号16のヌクレオチド配列もしくはその変異体を含む核酸によってコードされ得る。
【0076】
RTMをコードする核酸は、RTMの発現を指示できる1つ以上の制御要素または調節配列に作動可能に連結され得る。哺乳類の細胞、好ましくはヒトの細胞における異種核酸コード配列の発現を促進するのに適した制御要素または調節配列は、当該技術分野でよく知られており、構成的プロモーター、例えばCMVまたはSV40などのウイルスプロモーター;及び組織特異的プロモーター、例えばヒトサイロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーターなどのプロモーター、または低酸素応答性プロモーターなどの系特異的プロモーターを含む。
【0077】
組織特異的プロモーターとしては、癌特異的プロモーター(すなわち、癌細胞に特異的な活性を有するプロモーター)、または個体において癌が発生した組織に特異的なプロモーターが挙げられる。適切なプロモーターには、例えば、膵臓癌に対するCox-2またはMuc-1プロモーターが含まれ得る。
【0078】
さらに、本明細書に記載のRTMまたは本明細書に記載のRTMをコードする核酸を含む、プラスミド、ベクター(例えば、発現ベクター)、転写もしくは発現カセット、または他の送達システムの形態の構築物が提供される。例えば、RTMをコードする核酸が、発現ベクターに含まれ得る。適切な発現ベクターは、プロモーター配列、ターミネーター断片、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、及び必要に応じて他の配列を含む、適切な調節配列を含んで、選択または構築することができる。ベクターは、複製の起点、プロモーター領域及び選択可能なマーカーなどの配列を含んでもよく、これらは、E.coliなどの細菌宿主におけるその選択、発現及び複製を可能にする。
【0079】
好ましいベクターは、トランススプライシングが必要な細胞型に向いたものであってもよく、該細胞型内の特異的発現を増強するために、適切な制御要素及び調節要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、スプライシングに対する内因性の有害なシス作用効果を回避するために、ベクターを非腫瘍溶解性とすることができる。
【0080】
ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウイルス例えばファージ、またはファージミドであり得る。さらなる詳細については、例えば、Molecular Cloning: a Laboratory Manual: 3rd edition,Russell et al.,2001,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照。核酸の操作、例えば核酸構築物の調製、突然変異誘発、配列決定、細胞へのDNAの導入、及び遺伝子発現に関する多くの既知の技術及びプロトコールは、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.eds.John Wiley & Sons,1992に詳細に記載されている。
【0081】
いくつかの好ましい実施形態では、発現ベクターは、レンチウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどのウイルスベクターであり得る。
【0082】
ウイルス発現ベクターは、標的細胞内で発現されるRTMをコードする異種核酸及びウイルス配列を含む、組換え核酸である。ウイルス発現ベクターは、ウイルス粒子にパッケージングされ得る。ウイルス粒子は、ウイルスキャプシドにカプセル化されたウイルス発現ベクターを含み得る。ウイルスベクターをウイルス粒子にパッケージングするための適切な方法は、当該技術分野で十分に確立されている。
【0083】
ウイルス粒子の形成及び機能に必要な全てのウイルス成分をコードする単一のウイルス発現ベクターを用いることが可能である。しかしながら、最も多くは、ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞などの宿主細胞に安定に組み込まれた複数のプラスミド発現ベクターまたは個々の発現カセットを利用して、ウイルスベクター粒子を生成する様々な遺伝成分を分離する。
【0084】
1つ以上のウイルスのパッケージング及びエンベロープタンパク質をコードする発現カセットは、哺乳動物細胞に安定に組み込まれている。これらの細胞を、本明細書に記載されるウイルス発現ベクターで形質導入すれば、さらなる発現ベクターを添加することなくウイルス粒子を産生させるのに十分である。
【0085】
あるいは、複数の発現ベクターを使用してもよい。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、ウイルスのパッケージング及び、粒子形成に必要なエンベロープタンパク質をコードするウイルスのパッケージング及びエンベロープタンパク質をコードする1つ以上の発現ベクターで形質導入され得る。例えば、組換えAAVベクターは、2つのAAV逆末端反復(ITR)領域に隣接する異種核酸を含むプラスミドと、AAVエンカプシターゼ遺伝子(rep及びcap遺伝子)を保持するプラスミドとを、ヒトヘルパウイルス(例えばアデノウイルス)に感染した細胞株またはその単離必須遺伝子を発現する細胞株に同時トランスフェクションすることにより調製され得る。組換えレンチウイルスベクターは、HEK293などのパッケージング細胞株を、トランスファーベクタープラスミド及び2つ以上のヘルパープラスミドでトランスフェクションすることによって調製され得る。トランスファープラスミドは、RTMをコードする異種核酸を含み、それは、長末端繰り返し(LTR)配列に隣接しており、これによって、トランスファープラスミド配列の宿主細胞への組み込みが容易になる。2つ以上のヘルパープラスミドは、Gag、Pol、Tat及びRevなどのビリオンタンパク質をコードする1つ以上のパッケージングプラスミドと、VSV-Gなどのエンベロープタンパク質をコードするエンベローププラスミドとを含み得る。いくつかの実施形態では、Gag及びPolをコードする第1のパッケージングプラスミドと、Revをコードする第2のパッケージングプラスミドの2つのパッケージングプラスミドが採用され得る。トランスファープラスミド及びヘルパープラスミドでのトランスフェクション後、パッケージング細胞株は、RTMをコードする核酸を含む感染性レンチウイルス粒子を産生する。いくつかの実施形態では、VSV-G-偽型レンチウイルスベクターは、偽型レンチウイルス粒子を産生するために、水疱性口内炎ウイルス(VSV)のウイルスエンベロープ糖タンパク質Gと組み合わせて産生され得る。
【0086】
本明細書に記載のRTMをコードする核酸、または本明細書に記載のRTMをコードする核酸を含むウイルス発現ベクターを含む組換え細胞、例えば組換え哺乳動物細胞が提供される。これらは、例えば本明細書に記載するようなウイルス粒子を生成する際に有用であり得る。
【0087】
ウイルス粒子は、細胞上清から採取され、本明細書に記載されるように使用するために保存及び/または濃縮され得る。例えば、核酸構築物の調製、細胞へのDNAの導入、及び遺伝子発現における、核酸の操作及び形質転換のための多くの公知の技法及びプロトコールが、Protocols in Molecular Biology,Second Edition,Ausubel et al.eds.John Wiley&Sons,1992に詳細に記載されている。ウイルスベクターを生成するための試薬は、商業的供給元(例えばダルマコン)から入手可能である。ウイルスベクターを調製するための適切な技術は、当技術分野で知られている(例えば、Dunol,T.,et al(1998).J.Virol.72,8463-8471;Merten et al(2016)Mol Ther Methods Clin Dev.2016;3: 16017を参照)。
【0088】
本明細書に記載のRTM、核酸、発現ベクターまたはウイルス粒子を単独で使用(例えば、投与)することも可能であるが、RTM、核酸、発現ベクターまたはウイルス粒子に加えて少なくとも1つの成分を含み得る、医薬組成物の形態で提供することがしばしば好ましい。したがって、医薬組成物は、RTM、核酸、発現ベクターまたはウイルス粒子に加えて、医薬として許容され得る賦形剤、担体、緩衝液、安定化剤または当業者に周知の他の材料を含み得る。
【0089】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、安全な医学的判断の範囲内にあり、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症のない、対象となる対象(例えば、ヒト)の組織と接触させて使用するのに好適な、合理的な利益/リスク比に見合った、化合物、成分、材料、組成物、剤形などに関する。各担体、希釈剤、賦形剤等もまた、製剤の他の成分と適合するという意味で「許容され」なければならない。適切な担体、賦形剤などは、標準的な薬剤テキスト、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy,23rd edition,Academic Press.に記載されている。
【0090】
医薬組成物及び製剤は、好都合にも単位剤形で提供することができ、薬学の分野で公知の任意の方法によって調製することができる。このような方法には、RTM、核酸、発現ベクターまたはウイルス粒子を、1種以上の副成分を構成する担体と結合させるステップを含む。一般に、組成物は、活性化合物を液体担体と均一かつ密接に会合させることにより調製される。
【0091】
RTM、核酸、発現ベクターまたはウイルス粒子を含む医薬組成物は、単独で、または他の治療と組み合わせて、治療される症状に応じて同時または順次に投与され得る。例えば、RTM、核酸、発現ベクターまたはウイルス粒子を含む医薬組成物は、RTMのコード配列によりコードされた自殺タンパク質によって活性化される細胞毒性薬剤と組み合わせて投与され得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、自殺タンパク質によって活性化される細胞毒性剤をさらに含み得る。例えば、組成物は、自殺タンパク質によって活性細胞毒性剤に変換される細胞毒性剤のプロ体を含み得る。
【0093】
本明細書に記載のRTMであって、HERV遺伝子を発現する細胞を選択的に死滅させることにより、治療、例えばがんの治療に有用である。本明細書に記載のRTM、核酸、発現ベクター、ウイルス粒子または医薬組成物を、ヒトまたは動物の体の治療方法に使用することができる。治療方法は、RTM、核酸、発現ベクター、ウイルス粒子または医薬組成物を、それを必要とする個体に投与することを含み得る。RTMの治療用途は、当技術分野で確立されている(Hong et al(2020)Br Med Bull 136 4-20を参照)。好ましくは、本方法は、がんの治療方法である。本明細書に記載のがんの治療方法は、本明細書に記載のRTM、核酸、ベクター、ウイルス粒子または医薬組成物を、それを必要とする個体に投与することを含み得る。
【0094】
本方法は、RTMのコード配列によりコードされた自殺タンパク質によって活性化される細胞傷害剤を個体に投与することをさらに含み得る。例えば、自殺タンパク質によって活性細胞傷害剤に変換される細胞傷害剤のプロ体を個体に投与してもよい。
【0095】
別の態様は、がんの治療方法に使用するための、本明細書に記載されたRTM、核酸、ベクター、ウイルス粒子または医薬組成物、及びがんの治療方法に使用するための薬剤の製造における、本明細書に記載されたRTM、核酸、ベクター、ウイルス粒子または医薬組成物の使用を提供する。
【0096】
本明細書に記載される治療に適したがんは、HERV遺伝子を発現する1つ以上の癌細胞の存在を特徴とし得る。いくつかの好ましい実施形態では、1つ以上の癌細胞は、HERV-K HML-2 env遺伝子などのHERV-K遺伝子を発現し得る。例えば、癌細胞は、HERV-K HML-2グループ1 Np9遺伝子及び/またはHERV-K HML-2グループ1 Rec遺伝子を発現し得る。
【0097】
適切ながんは、家族性または散発性であり得る。適切ながんは、転移性または非転移性であってもよい。
【0098】
例えば、がんは、固形癌または非固形癌、または悪性リンパ腫の任意の種類であり得る。がんは、皮膚癌(特に 黒色腫)、頭頸部癌、腎臓癌、肉腫、生殖細胞癌(例えば奇形癌)、肝臓癌(例えば肝細胞癌)、リンパ腫(例えばホジキンまたは非ホジキンリンパ腫)、急性骨髄性または骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CML)、慢性骨髄性または骨髄性白血病(CML)、有毛細胞性白血病(HCL)、T細胞性前リンパ球性白血病(P-TLL)、大顆粒リンパ性白血病、成人T細胞白血病などの白血病、皮膚癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、食道癌、膵臓癌(膵管腺癌など)、胃癌、脳癌、好ましくは卵巣癌、大腸癌、乳癌、黒色腫、白血病、精巣癌、及び前立腺癌からなる群から選択され得る。
【0099】
いくつかの好ましい実施形態では、がんは、肝細胞癌などの肝癌、または膵管腺癌などの膵癌であり得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療用のがんは、HERV遺伝子を発現しているか、または閾値を超えるHERV遺伝子を発現しているものとして事前に同定されていてもよい。別の実施形態では、方法は、癌を、HERV遺伝子を発現しているかまたは閾値を超えるHERV遺伝子を発現しているものとして同定し、本明細書に記載されるように癌を治療することを含み得る。本明細書に記載のRTMによる治療に応答する可能性が高い癌を有する個体を選択する方法は、
上記個体から得られたサンプルにおけるHERV遺伝子の発現を決定することを含み得、
上記HERV遺伝子の発現は、個体が治療に応答している可能性を示している。
【0101】
サンプルは、癌細胞のサンプルであってもよいし、個体における、癌細胞に由来する無細胞核酸を含む血液または他の生物学的流体のサンプルであってもよい。
【0102】
HERV遺伝子の発現を決定するのに適した技術は、当該技術分野において周知である。
【0103】
上記の治療に適した個体は、齧歯類(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)、ネズミ(例えば、マウス)、イヌ科(例えば、イヌ)、ネコ科(例えば、ネコ)、ウマ科(例えば、ウマ)、霊長類、類人猿(サルや類人猿など)、サル(マーモセット、ヒヒなど)、類人猿(ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザルなど)、またはヒトなどの哺乳類であってよい。
【0104】
いくつかの好ましい実施形態では、個体は、ヒトである。他の好ましい実施形態では、非ヒト哺乳動物、特に、ヒトにおける治療有効性を実証するためのモデルとして従来使用されている哺乳動物(例えばマウス、霊長類、ブタ、イヌ、またはウサギ動物)を用いることができる。
【0105】
投与は、通常、「治療上有効な量」または「予防上有効な量」であり、これは患者に利益を示すのに十分である。そのような利点は、少なくとも1つの症状の少なくとも改善であり得る。実際の投与量、投与速度及び投与時間経過は、治療対象の性質と重症度、治療されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、組成物の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、及び医師に既知である他の要因に依存する。
【0106】
本明細書に記載されるRTM、核酸、発現ベクター、ウイルス粒子または医薬組成物は、単独で、または他の治療と組み合わせて、治療される個体の状況に応じて同時または順次に投与することができる。
【0107】
治療の処方、例えば、投与量の決定などは、担当医及び他の医師の責任の範囲内であり、症状の重症度及び/または治療中の疾患の進行度によって左右される場合がある。治療用ポリペプチドの適切な用量は、当該技術分野でよく知られている(Ledermann J.A.et al.(1991)Int.J.Cancer 47: 659-664;Bagshawe K.D.et al.(1991)Antibody,Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals 4: 915-922)。具体的な投与量は、本明細書またはPhysician’s Desk Reference(2003)に記載されており、投与する医薬品の種類に応じて適切な量を使用することができる。本明細書に記載されるRTM、核酸、発現ベクター、ウイルス粒子または医薬組成物の治療上有効な量または適切な用量は、動物モデルにおけるそのin vitro活性及びin vivo活性を比較することにより決定され得る。マウス及び他の試験動物における有効投与量をヒトに外挿する方法が知られている。正確な用量は、本明細書に記載されるRTM、核酸、発現ベクター、ウイルス粒子または医薬組成物が、予防または治療のためのものであるか否か、治療される領域のサイズ及び位置、ならびにRTMの正確な性質を含む、多くの要因に依存する。
【0108】
治療は、医師の判断により、毎日、週2回、週1回、または月1回の間隔で繰り返すことができる。個人に対する治療スケジュールは、RTM、核酸、発現ベクター、ウイルス粒子または医薬組成物の免疫学的、薬物動態学的及び薬力学的特性、投与経路、及び治療される症状の性質に依存し得る。
【0109】
RTM、核酸、発現ベクター、ウイルス粒子または医薬組成物による処置の後、活性化可能な細胞傷害性薬剤による処置は周期的であってもよく、投与間隔は約1週間以上、例えば約2週間以上、約3週間以上、約4週間以上、約1ヶ月に1回以上、約5週間以上、または約6週間以上であってもよい。例えば、治療は、2~4週間または4~8週間おきに行われてもよい。これは、例えば、初期治療後にがん化した細胞を選択的に死滅させ、再発のリスクを防止または低減するのに有用であり得る。
【0110】
RTM、核酸、発現ベクター、ウイルス粒子もしくは医薬組成物及び/または細胞毒性薬剤のプロ体による治療は、手術の前及び/または後に行うことができ、かつ/または外傷、外科的治療または侵襲的処置の解剖学的部位に直接投与または適用することができる。適切な製剤及び投与経路は上記に記載されている。
【0111】
RTM、核酸、発現ベクター、ウイルス粒子または医薬組成物は、RTMのコード配列によりコードされた自殺タンパク質によって活性化される細胞毒性剤と組み合わせて投与され得る。自殺タンパク質によって活性剤に変換され得る細胞毒性剤のプロ体は、標準的な医療アプローチを用いて患者に容易に投与され得る。この分野で公知の方法を用いて、プロ体の投与に最も適切な用量及び経路を決定することもできる。例えば、ガンシクロビルは、体重1kg当たり約1~20mg/日の用量で全身(例えば、経口または非経口)投与することができ、アシクロビルは、体重1kg当たり約1~100mg/日の用量で投与することができ、フィアウは、体重1kg当たり約1~50mg/日の用量で投与することができる。
【0112】
本明細書で使用される場合、「がん」、「新生物」、及び「腫瘍」という用語は同義に使用され、単数形でも複数形でも、宿主生物にとって病的なものとなる悪性形質転換を起こした細胞を指す。
【0113】
原発がん細胞は、十分に確立された技法、特に組織学的検査により、非がん性細胞から容易に区別することができる。本明細書で使用されるがん細胞の定義には、原発がん細胞だけでなく、がん細胞の祖先に由来するあらゆる細胞が含まれる。これには、転移したがん細胞、ならびにがん細胞に由来するin vitro培養物及び細胞株が含まれる。通常は固形腫瘍として現れるがんの種類について言及する場合、「臨床的に検出可能」な腫瘍は、腫瘍塊に基づいて、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、X線、超音波、もしくは身体検査での触診などの手順によって検出可能であるものである。
【0114】
HERV遺伝子を発現し、本明細書に記載のRTMによって選択的に標的される癌細胞は、自殺タンパク質によるプロ体の変換から生じる活性な細胞毒性剤にさらされるため、細胞毒性剤による治療に対して他の細胞よりも感受性が高く、敏感である。さらに、活性化された細胞毒性剤は、隣接する癌細胞に受動的に拡散し、癌細胞死をさらに増強することができる。この「バイスタンダー効果」は、治療の有効性を高める。
【0115】
がんを有する個体は、当技術分野で公知の臨床基準に従ってがんの診断を下すのに十分である、少なくとも1つの識別可能な徴候、症状、または検査所見を示し得る。このような臨床基準の例は、Harrison’s Principles of Internal Medicine,15th Ed.,Fauci AS et al.,eds.,McGraw-Hill,New York,2001などの医学教本に見出すことができる。場合によっては、個体におけるがんの診断は、個体から取得された体液または組織のサンプル中の特定の細胞型(例えば、がん細胞)の同定を含み得る。
【0116】
処置は、ヒトのものか動物のものか(例えば獣医学的用途)を問わず、いくらかの所望の治療効果、例えば、病態の進行の阻害または遅延が達成される、あらゆる処置及び療法であり得、進行速度の低下、進行速度の停止、病態の改善、病態の治癒または寛解(部分的か完全かを問わない)、病態の1つ以上の症状及び/または徴候の防止、遅延、軽減または抑止、あるいは処置の非存在下で予想されるものを超えた対象または患者の生存期間の延長を含む。
【0117】
特に、処置には、がんの完全寛解を含むがんの成長の阻害、及び/またはがんの転移の阻害が含まれ得る。がんの成長とは、概して、より発達した形態へのがんにおける変化を示す複数の指標のうちのいずれか1つを指す。したがって、がんの成長の阻害を測定するための指標には、がん細胞の生存率の減少、腫瘍体積または形態における(例えば、コンピュータ断層撮影(CT)、超音波検査、または他の画像法を使用して決定される)減少、腫瘍成長の遅延、または腫瘍血管構造の破壊が含まれる。本明細書に記載されるRTM、核酸、ベクター、ウイルス粒子または医薬組成物の投与は、がんの成長、特に対象に既に存在するがんの成長に抵抗する個体の能力を向上させ、及び/または個体におけるがんの成長の傾向を減少させ得る。
【0118】
本明細書に記載のRTMは、HERV遺伝子を発現する細胞を選択的に死滅させ、細胞療法を受けている個体、すなわち、癌などの病状の治療のために自己細胞または同種異系細胞を投与されている個体におけるがんの発生または再発を予防するのにも有用であり得る。個体の細胞は、がん化するか、がん化する過程にある場合は、HERV遺伝子を発現している可能性がある。これらの細胞は、個体に癌状態が発生する前に、本明細書に記載されるように死滅させることができる。例えば、細胞の集団が投与された個体における癌の発生または再発を予防する方法であって、それを必要とする個体に上記細胞の集団を投与することを含み、ここで、上記細胞は、本明細書に記載されたRTM、核酸、発現ベクターまたはウイルス粒子を含む。自殺タンパク質によって活性化される細胞毒性化合物は、後に個体に投与され、個体において癌化した、あるいは癌化しつつある集団の細胞において細胞毒性化合物の活性化が起こる。
【0119】
細胞療法に使用するのに適した細胞は、当該技術分野でよく知られており、例えば、T細胞、造血幹細胞及び骨髄細胞などの造血細胞を含み得る。
【0120】
本明細書に記載されたRTM、核酸、ベクター、ウイルス粒子または医薬組成物は、in vitroまたはex vivoで自殺タンパク質をコードする核酸を送達する際に、例えば、HERV遺伝子発現細胞を死滅させる際に使用するために、有用であり得る。in vitroで細胞に自殺タンパク質をコードする核酸を送達する方法は、
細胞内でのHERV遺伝子の発現が自殺タンパク質の発現を引き起こすように、本明細書に記載されるRTM、核酸、ベクターまたはウイルス粒子を細胞に導入することを含み得る。
【0121】
細胞は、HERV遺伝子を発現してもよいし、HERV遺伝子の発現を引き起こす形質転換事象を受けることもある。HERV遺伝子発現細胞におけるRTMを、HERV pre-mRNAにトランススプライシングすることで、自殺タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むキメラmRNA分子を形成することができる。キメラmRNAは、自殺タンパク質が細胞内で発現されるように、さらに処理及び翻訳される可能性がある。細胞は、自殺タンパク質によって活性化される細胞毒性剤と接触されることがあり、その結果、細胞毒性剤は、自殺タンパク質によって活性化され、細胞を死滅させる。
【0122】
本明細書に記載の方法は、in vitroまたはex vivoで細胞を死滅させるのに有用であり得る。in vitroまたはex vivoで細胞を死滅させる方法は、
本明細書に記載のRTM、核酸、ベクターまたはウイルス粒子を細胞に導入して、
細胞内でのHERV遺伝子の発現が自殺タンパク質の発現を引き起こすことと、
自殺タンパク質によって活性化される細胞毒性剤と細胞を接触させて、
細胞でのHERV遺伝子の発現後、自殺タンパク質によって細胞傷害剤を活性化することと、を含み得る。
【0123】
本明細書に記載の方法は、細胞集団におけるHERV遺伝子発現細胞を枯渇させるのに有用であり得る。例えば、集団におけるHERV遺伝子発現細胞を枯渇させる方法は、
本明細書に記載のRTM、核酸、ベクターまたはウイルス粒子を細胞集団に導入して、上記自殺タンパク質が上記細胞集団中のHERV遺伝子発現細胞内で発現されることと、
上記集団を、上記自殺タンパク質によって活性化される細胞毒性化合物と接触させ、その結果、上記集団中のHERV遺伝子発現細胞において細胞毒性化合物を活性化し、それによって上記集団中のHERV遺伝子発現細胞を枯渇させることと、を含む。
【0124】
HERV遺伝子発現細胞には、癌細胞または前癌細胞が含まれ得る。本明細書に記載の方法は、細胞集団から癌細胞または前癌細胞を枯渇させ、または除去するのに有用であり得る。
【0125】
細胞の集団は、個体に由来する、あるいは個体から得られた細胞のサンプル、あるいはそこから派生した培養細胞であり得る。適切な細胞には、哺乳動物、好ましくはヒト細胞が含まれる。例えば、適切な細胞には、細胞療法で使用するための細胞、例えば、T細胞、造血幹細胞や骨髄細胞などの造血細胞が含まれ得る。
【0126】
RTM、核酸、ベクターまたはウイルス粒子は、トランスフェクション、リポフェクション、形質導入、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクションまたは形質転換などの任意の簡便な技術によって、in vitroまたはex vivoで細胞に導入され得る。
【0127】
本発明の他の態様及び実施形態は、上述の態様及び実施形態の「含む(comprising)」という用語を「からなる(consisting of)」という用語に置き換えたもの、ならびに上述の態様及び実施形態の「含む(comprising)」という用語を「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語に置き換えたものを提供する。
【0128】
本明細書で使用される「下流」という用語は、本明細書に記載の核酸における5’から3’への方向を指し、本明細書で使用される「上流」という用語は、本明細書に記載の核酸における3’から5’への方向を指す。
【0129】
本明細書に記載のヌクレオチド配列への参照は、文脈上別段必要とされない限り、特定の配列を有するDNA分子を包含し、UがTに置換されている特定の配列を有するRNA分子を包含する。
【0130】
文脈上別段の解釈を必要としない限り、本願は、上記の態様及び上述の実施形態のいずれかの相互のあらゆる組み合わせを開示するものであることを理解されたい。同様に、本願は、文脈上別段の解釈を必要としない限り、単独で、または他の態様のいずれかと合わせて、好ましい及び/または任意選択の特徴のあらゆる組み合わせを開示する。
【0131】
上記の実施形態の改変形態、さらなる実施形態、及びそれらの改変形態は、本開示を読めば当業者には明らかとなり、したがって、これらは本発明の範囲内にある。
【0132】
本明細書で言及されるすべての文書及び配列データベースエントリーは、あらゆる目的のために、それらの全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0133】
本明細書で使用される「及び/または」は、指定された2つの特徴または構成要素の各々の具体的開示であり、他方の有無にかかわらないものとして解釈されるべきである。例えば、「A及び/またはB」は、あたかも各々が本明細書で個別に明記されているかのように、(i)A、(ii)B、ならびに(iii)A及びBの各々の具体的開示として解釈されるべきである。
【実施例】
【0134】
記載されたRNAトランススプライシングの発明は、ユニバーサル結合ドメイン配列を使用して、envイントロンを標的とすることにより、クラスIプロウイルスをコードする多数のNp9、またはクラスIIプロウイルスからのRecを標的とする。RNAトランススプライシング反応の結果として、異常なHSV-tkアイソフォーム産生と、その結果として生じる望ましくないオフターゲット効果を排除するために最適化されたHSV-tk遺伝子が発現される。
【0135】
材料及び方法
RNAトランススプライシング結合ドメインの生成
Np9標的RNAトランススプライシング結合ドメインは、以下の内因性レトロウイルス配列、ホモ・サピエンス分離株HML-2_22q11.21内在性ウイルスHERV-K、完全な配列(GenBank:JN675087.1)から、前述の方法に基づいて生成された(Ingemarsdotter,C.K.et al(2017)Mol.Ther.Nucleic acids,7,140-154)。簡単に説明すると、Bioinformics HUSAR server(ドイツ癌研究センター)内のFoldanalyzeソフトウェアを使用して、50ヌクレオチドのウィンドウサイズ及び1のステップサイズで、標的配列の逆相補の最小自由エネルギー(MFE)計算を実行した。HML-2_22q11.21配列(GenBank:JN675087.1)は、Berkeley Drosophila Genome Project内のNeural Network ServerとBioinformatics HUSARサーバー内のCrypSkipソフトウェアとを使用して、スプライス部位の予測を行った。高い最小自由エネルギーと、Np9スプライスドナー部位の近傍及び下流にある不対ヌクレオチドに基づいて、さらなるRNA二次構造予測のために、潜在的結合ドメイン配列をFoldanalyzeで選択した(Armbruester,V.et al(2002).Clin.Cancer.Res.8,1800-1807)。
【0136】
選択された潜在的結合ドメイン領域のRNA二次構造は、ウェブサーバーMfold(Zuker,M.,(2003)Nucleic acids research,31,3406-3415及びRNA foldを用いて予測された。選択された結合ドメイン領域は、結合ドメインの長距離相互作用を除外するために、RNAトランススプライシングカセットバックボーン内でリフォールディングされた。結合ドメイン構造は、二重形成を減少させるために、ウォッブル塩基対(C~UまたはA~Gの修飾)を導入することによって最適化された。長い二本鎖RNAによって引き起こされる影響を防ぐために、2つのミスマッチヌクレオチドを先に記載したように導入した(Chalupnikova,K.et al(2013).Methods Mol.Biol.942,291-314)。
【0137】
加えて、Bbv CI制限酵素部位及びRNAトランススプライシングカセット中の結合ドメインに隣接する隣接ヌクレオチドを、
【化4】
から
【化5】
に変更して、Berkeley Drosophila Genome Project内のNeural Network Serverを使用したスプライス部位予測によって同定された、潜在的なスプライスアクセプター部位を破壊した。有望な結合ドメイン構造を選択し、結合ドメイン構造を最適化した後、RNAトランススプライシング結合ドメイン及びRNAトランススプライシング結合カセット配列中のフランキング領域(NheI~MluI制限酵素部位の間)は、Berkeley Drosophila Genome Project内のNeural Network Serverを用いたスプライス部位予測によって、潜在的なスプライスドナー部位とスプライスアクセプター部位を分析した。任意の突然変異が導入された後、潜在的なスプライスドナー部位及びスプライスアクセプター部位を回避するために、結合ドメイン及びフランキング領域(NheI~MluI)は、Berkeley Drosophila Genome Project内のNeural Network Serverによるスプライス部位予測によって再分析し、導入された突然変異が新規のスプライスドナー及びスプライスアクセプター部位を導入しなかったことを確認した。
【0138】
HSV-tk翻訳開始変異体の生成
Np9標的結合ドメイン及びフランキング配列は、隣接するNheI及びMluI制限酵素部位を有するGeneArt合成によって合成された(Life Technologies)。このインサートを、NheI及びMluI制限酵素(Thermo Scientific)消化及びライゲーションを用いて、CMVプロモーターから駆動されるBD100-HSVtk及びBD100-HSVtk opt2 pVAX-1バックボーンにクローニングし、HIV標的結合ドメインBD100領域を置換した(Ingemarsdotter et al(2017)Mol.Ther.Nucleic acids,7,140-154)。BD100及びBD72結合ドメイン領域は、Ingemarsdetterらにより記載されているように、それぞれ、結合ドメイン領域BD1―D4及びBD2― D4に対応する。HIV標的化RNAトランススプライシング構築物CkRhsp-BD72-pVAX-1では、テンプレートとして10ngのプラスミドCkRhsp-BD72-pVAX-1、及び部位特異的変異誘発プライマーを用いて、QuickChange II XL部位特異的変異誘発キット(Agilent Technologies)を用いて、製造元の指示に従って部位特異的変異誘発により、HSV-tk ATG46及びATG60におけるHSV-tk翻訳開始変異体を生成した。
順方向:5’-GAAACTGCCCACGCTACTGCGGGTTTATATAGACGGTCCCCACGGGATCGGG-3’
逆方向:5’-CCCGATCCCGTGGGGACCGTCTATATAAACCCGCAGTAGCGTGGGCAGTTTC-3’.
【0139】
第2のATG、ATG46の変異誘発は、シーケンシングによって確認され、得られたプラスミドDNAの10ngを2回目の変異誘発PCRにおいてテンプレートとして使用し、変異誘発プライマーtktr 3 mutにより第3のHSV-tk ATG、ATG60を突然変異した。
順方向;5’-ACGGTCCCCACGGGATCGGGAAAACCAC-3’、及びtktr 3 mut
逆方向;5’-GTGGTGGTTTTCCCGATCCCGTGGGGACCGT-3’
【0140】
Phusion HF DNAポリメラーゼと5倍のPhusion HF反応緩衝液(New England Biolabs)、125ngの順方向及び逆方向変異誘発プライマー、1μlのdNTPmix(Agilent Technologies)、3μlのQuicksolution(Agilent Technologies)を使用。変異誘発PCR条件:-95℃で1分間、続いて95℃で50秒間、60℃で50秒間、68℃で4分間を18サイクル繰り返した後、68℃で7分間。PCR産物をDpn1で37℃で1時間消化し、XL10 - Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies)に形質転換した。結果として得られたHSV-tk optドメインは、ChkRhsp-BD100 opt1-pVAX-1バックボーンにPstI及びMluI制限消化、ライゲーション及びサブクローニングを用いてサブクローニングし、ChkRhsp-BD100 opt2-pVAX-1を生成した。ChkRhspプロモーターを、SpeI及びNheI制限酵素の消化、ライゲーション及びサブクローニングを用いて、ChkRhsp-BD100 HSV-tk opt2-pVAX-1及びBD100-HSV-tk-pVAX-1バックボーンにおけるCMVプロモーターに置換した。
【0141】
Np9標的結合ドメイン及びフランキング配列は、隣接するNheI及びMluI制限酵素部位を有するGeneArt合成によって合成された(Life Technologies)。このインサートを、NheI及びMluI制限酵素(Thermo Scientific)消化及びライゲーションを用いて、CMV-BD100-HSVtk及びCMV-BD100-HSVtk opt2 pVAX-1バックボーンにクローニングし、Np9標的化結合ドメインでIngemarsdotter et al(2017)に記載されているHIV標的結合ドメインBD100領域を置換した。
【0142】
RNAトランススプライシングpVAX-1シャトルプラスミドの生成
pVAX-1から第三世代レンチウイルス遺伝子導入プラスミドpSico(Addgene、ref:11578)へのRNAトランススプライシングカセットのサブクローニングを容易にするために、XbaI及びXhoIの制限酵素部位をHIV標的化RNAトランススプライシングカセットに隣接して導入し、CkRhsp-BD100-opt2 pVAX-1バックボーン内のRNAトランススプライシングカセット内のポリAテールの上流の5’端にXbaI、3’端にXhoIを導入し(Ingemarsdotter et al(2017))、製造元の指示に従い、テンプレートとして10ngのプラスミドCkRhsp-BD100-opt2-pVAX-1を用いて、QuickChange XL部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies)を使用した。
【0143】
第1の変異誘発PCRでは、以下の変異誘発プライマーを使用して、XbaI制限酵素部位を、RNAトランススプライシングカセットの5’末端に導入した;
5’XbaI 順方向;5’-GACATTGATTATTGTCTAGAACTAGTTGAGCCCCACG-3’.
5’XbaI 逆方向;5’-CGTGGGGCTCAACTAGTTCTAGACAATAATCAATGTC-3’.
【0144】
PCR産物を37℃で1時間DpnIで消化し、XL-10Goldウルトラコンピテントセル(Agilent Technologies)に形質転換した。陽性クローンをシーケンシングにより確認し、かつ2回目の変異誘発PCRのテンプレートとして使用して、ポリAテールの上流にあるRNAトランススプライシングカセット内の3’末端にXhoI部位を導入した。2回目の変異誘発PCRに使用されたプライマーは以下の通りであった;
3’XhoI順方向;5’-GGGAGGCGAACTGACTCGAGAACTTGTTTATTGC-3’及び
3’XhoI逆方向;5’-GCAATAAACAAGTTCTCGAGTCAGTTCGCCTCCC-3’.
【0145】
Np9標的トランススプライシングドメインを、SpeI及びPvuI制限酵素による消化及びライゲーションを用いて、pVAX-1シャトル5’XbaI-BD100-opt1及び5’XbaI-BD100-opt2プラスミドにクローニングした。得られたプラスミド、HSVtk-ts-pVAXシャトル及びHSVtk-ts-opt-pVAXシャトルを、XbaI、XhoI及びNsbIで消化し、XbaI及びXhoI制限酵素部位でpSicoレンチウイルスバックボーンにライゲーションして、XbaI及びXhoI間のNp9標的RNAトランススプライシングカセットを単離した。
【0146】
サイロキシン結合グロブリンプロモーターの増幅
サイロキシン結合グロブリンプロモーター(TBG)は、プラスミドpAAV.TBG.PI.Null.bGH(Addgeneプラスミド:105536)から、隣接するBcuI制限酵素部位を有する以下の順方向プライマーを用いてPCRにより増幅した。
TG BcuI順方向、
【化6】
及び隣接するNheI制限酵素部位を有する逆方向プライマー
TG NheI逆方向、
【化7】
【0147】
20ngのプラスミドpAAV.TBG.PI.Null.bGH(Addgeneプラスミド:105536)をテンプレートとして、1xGoTaq反応緩衝液(Promega)、500nMの順方向プライマー及び500nMの逆方向プライマー、200μMのPCRヌクレオチドミックス(Promega)、GoTaq G2 DNAポリメラーゼ1.25Uを含むPCR反応において、最終反応容積50μlで使用した。PCRサイクル条件として、95℃で2分間、続いて95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間を35サイクル繰り返した後、72℃で5分間及び4℃で保持するステップ。TBGプロモーターを、-HSVtk-ts-pVAXシャトル及びHSVtk-ts-opt-pVAXシャトルプラスミドにクローニングして、BcuI及びNheIの二重消化及びクローニングを使用してCMVプロモーターを置換した。得られたTBG-HSVtk-ts-pVAXシャトル及びTBG-HSVtk-ts-opt-pVAXシャトルを、XbaI、XhoI及びNsbIで消化し、pSicoレンチウイルスバックボーンにライゲーションして、XbaI及びXhoI間のNp9標的RNAトランススプライシングカセットを単離した。
【0148】
細胞培養
Hep3B(ATCC)、mRFP(HuH-7-mRFP)を発現するように操作されたHuH-7(JCRB Cell Bank)、HEK 293T、MIA PaCa-2(PHE(ECACC)及びPanc-1細胞(PHE(ECACC)は、10%のウシ胎児血清(FBS;Gibco)及び1%のペニシリンストレプトマイシン(Gibco)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Sigma)で培養された。Aspc-1細胞(ATCC)は、10%のFBS及び1%のペニシリン-ストレプトマイシンを補充したRPMI培地(Sigma)中で培養された。すべてのセルを、加湿された5%CO2雰囲気中で37℃に維持した。
【0149】
ウエスタンブロット
HEK 293T細胞を、1mL/ウェルの補充DMEM中の1×105個の細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに播種した。24時間後、細胞を0.5μgのプラスミド(pSico[CMV-GFP],pS-HSV-tk-ts,pS-HSV-tk-ts-opt,pS-CMV-HSV-tk)でトランスフェクションした。トランスフェクションの3日後、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS;Sigma)で洗浄し、1x細胞培養溶解試薬(Promega)を用いて細胞を回収し、室温で15分間インキュベートした。次いで溶解物を12000rpmで2分間スピンした。上清を回収し、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Halt)で処理した。タンパク質濃度を、ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma Aldrich)標準及びブラッドフォード色素試薬(Bio-Rad)を用いて定量した。その後、β-メルカプトエタノール含有負荷染料を5μgのタンパク質に加え、95℃で5分間沸騰させた。調製したサンプルを、10% SDS-PAGEゲル上で電気泳動させ、移送バッファー(25mMトリス塩基、150mMグリシン、10%エタノール)を使用してニトロセルロース紙に100Vで1時間転写した。ブロッキングバッファー(BSA 4%、PBS中のTween 0.05%)を用いて膜を室温で1時間ブロッキングし、ヤギ抗HSV-1チミジンキナーゼ抗体vN-20(1:5000;Santa Cruz Biotechnology sc28037)と一緒に染色溶液(BSA 1.5%、PBS中のTween 0.05%)中で、4℃で一晩インキュベートした。次に、膜をPBS-0.05%Tweenで3回洗浄し、ウサギ抗ヤギHRP結合抗体(1:2000 Dako P0160)と一緒に染色溶液中で室温にて1時間インキュベートし、最後にPBS-0.05%Tweenでさらに3回洗浄した。染色された膜を、ECLウエスタンブロット基質(Promega)を用いて現像し、高コントラストの青色感受性X線膜で可視化した。続いて、ブロッツをPBSで2回洗浄し、ストリッピングバッファー(Thermo Scientific)中で15分間インキュベートし、PBSでさらに3回洗浄した。ウサギ抗ビンキュリン抗体(1:5000;Invitrogen 700062)及びヤギ抗ウサギHRP標識二次抗体(1:5000;Invitrogen 656120)を用いてゲルを再染色し、ECLウエスタンブロット基質を用いて可視化した。ウエスタンブロット定量化を、Fijiソフトウェア(https://imagej.net/Fiji)を使用して完了した。
【0150】
MTT細胞生存率アッセイ
細胞生存率を、以前に確立した方法に基づいて評価した(Pannecoque et al.(2008).Nature protocols,3,427-434)。簡単に説明すると、1日目に、Hep3B、HuH7-mRFP、HEK 293T、MIA PaCa-2、Panc-1、及びAspc-1細胞を、96ウェルプレートに2×104個/ウェルの密度で100μlの培地/ウェルに播種した。2日目に、HEK 293T、MIA PaCa-2、Panc-1、及びAspc-1細胞を、1または2のMOIでレンチウイルス(Lv-CMV-GFP、Lv-HSV-tk-ts、Lv-HSV-tk-ts-opt、Lv-CMV-HSV-tk)に形質導入した。4日目に、細胞を1000μΜのGCV(Sigma)で処理した。Hep3BまたはHuH7-mRFP細胞を、レンチウイルスベクター;pSico(陰性対照)、トランススプライシングベクター、3’ER-HSVtk、3’ER-HSVtk opt、またはHSVtk(陽性対照)を用いて1のMOIで形質導入した。Hep3B及びHuH7-mRFP細胞を、3日目及び4日目に様々な濃度でGCVで処理した。最後に、8日目に、テトラゾリウム色素MTT(3-[4,5 - ジメチル-2 - チアゾール-2 - イル]-2,5-ジフェニル-テトラゾリウム臭化物)(Sigma)を、10%(0.5mg/ml)の最終濃度となるようにウェル中の培地に添加し、37℃で2~2.5時間インキュベートした。次に、培地を取り出し、酸性イソプロパノールのトリトンX-100溶液(0.04NのHCl、6%のトリトンX-100)で交換し、室温で15分間インキュベートした。吸光度は、iMark Microplate Absorption Reader(Bio-Rad)で595nm及び655nmの両方で測定した。655nmで読み取られたバックグランド蛍光測定値は、595nmでの測定値から差し引いた。細胞生存率は、各プレート上の全ての未処理ウェルの平均蛍光を100%に設定することにより計算した。
【0151】
レンチウイルスベクターの産生
レンチウイルスベクターは、プラスミドのキャリーオーバーを除去するためにベンゾナーゼ処理を追加して、前述の(Dull et al(1998)Journal of Virology,72,8463-8471)のように生産した。簡単に言えば、HEK 293T細胞を、5×106個の細胞/プレートの密度で10cmの皿に播種した。24時間後、細胞は、10μgのトランスファープラスミド(pSico、pS-HSV-tk-ts、pS-HSV-tk-ts-opt、pS-CMV-HSV-tk)または(3’ER-HSVtk、3’ER-HSVtk opt、またはpSicoプラスミドバックボーン内のTBGプロモーターによって駆動されるTBG-HSVtk(陽性対照))、6.5μgのpMDLg/pRRE(Gag及びPol発現パッケージングプラスミド)、2.5μgのpRSV-REV(Rev発現パッケージングプラスミド)、及び3.5μgのVSV-Gエンベロープ発現プラスミド)を、以前の方法(前掲のDull et al(1998))に基づき、TransIT-LT1トランスフェクション試薬(Mirus)を用いてトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後に、培地を取り出し、新たなDMEMと交換した。トランスフェクションの48時間後に、培地を収集し、3000rpmで10分間遠心分離して、細胞破片を除去した。上清を収集し、50U/mLのベンゾナーゼ(Sigma)で処理し、37℃で30分間インキュベートした。残った破片を除去するために、続いて上清を0.45μmの界面活性剤を含まない酢酸セルロースシリンジフィルター(Sartorius Minisart)に通して適切な超遠心管に入れ、秤量し、20,000xgで4℃で90分間遠心分離した。上清をチューブから除去し、レンチウイルスペレットを500μlのPBSに再懸濁させた。
【0152】
qPCRを用いた感染力価の計算
簡単に説明すると、HEK 293T細胞を、2mLのDMEM中の2×105個/ウェルで12ウェルプレートに播種した。細胞は、24時間後、各レンチウイルスベクター(Lv-CMV-GFP、Lv-HSV-tk-ts、Lv-HSV-tk-ts-opt、Lv-CMV-HSV-tk)の1μL、5μL、10μLで、重複ウェル内に形質導入した。形質導入の3日後に、DNeasy Blood & Tissue Kit(Qiagen)を使用して、製造元の指示に従い、インキュベーション時間を56℃で30分に延長し、各形質導入から1ウェルずつのDNAを採取した。残りの細胞は、前述のように形質転換の6日後に収穫した。20nMのfwd/revプライマーとSYBR Green PCRマスターミックス(Applied Biosystems)を用い、pSicoプラスミドDNAの連続希釈液に基づく標準曲線と並行して、psi qPCR定量中に100ngのゲノムDNAを増幅し、psiコピー数を決定した。100nMのfwd/revプライマーとSYBR Green PCRマスターミックス(Applied Biosystems)を用いて、アルブミンqPCR定量時に100ngのゲノムDNAを増幅し、HEK 293TゲノムDNAに基づく標準曲線と並行してアルブミンコピー数を測定し、細胞数の推定に用いた。
【0153】
両方とも以下のqPCRサイクリングプロトコールを使用した:50℃で2分間及び95℃で20秒間の初期昇温、95℃で3秒間及び60℃で30秒間の40サイクル、最後に95℃と60℃の間の温度サイクルでの融解曲線(95℃で15秒間、60℃で1分間、95℃で15秒間及び60℃で15秒間)。感染性の力価は、先に記載した方法に基づいて決定した(Kutner,R.H.et al(2009)Nature Protocols 4 495-505).Psi and albumin primers previously designed by Charrier et al.(2007)Gene Therapy 14 415-428.
Psi-Fwd5’-CAGGACTCGGCTTGCTGAAG-3’,
Psi-Rev5’-TCCCCCGCTTAATACTGACG-3’
アルブミン-Fwd5’-GCTGTCATCTCTTGGGCTGT-3,
アルブミン-Rev5’-ACTCATGGGAGCTGCTGGTTC-3’.
【0154】
レンチウイルスベクターpSico(陰性対照)、3’ER-HSVtk、3’ER-HSVtk opt、またはTBGプロモーターで駆動されるHSVtk(陽性対照)をHEK293T細胞で滴定し、感染力価を測定した。ゲノムDNAを、3連ウェル中のレンチウイルスベクター/ウェル5μlまたは10ulで形質導入した3日後に上記のように単離し、20ngゲノムDNAをテンプレートとして、20nMのWPRE-Fwd及び20nMのWPRE-Revプライマーを使用し、2x TaqMan Fast Advanced Master Mix(Thermo Fisher Scientific)を含むqPCR反応を行った。
【0155】
(WPRE-Fwd 5’-GGCACTGACAATTCCGTGT-3’、WPRE-Rev 5’-AGGGACGTAGCAGAAGGACG-3’)及び100nM WPREプローブ5’6FAM-ACGTCCTTTCCATGCTGCTCGC-TAM3’。WPRE primer and probe sequences previously designed by Charrier et al.(2007)Gene Therapy 14 415-428.
WPREコピー数は、pSicoプラスミドDNAの連続希釈の標準曲線を使用して決定した。qPCRサイクル条件は、50℃で2分間、95℃で20秒間、95℃で3秒間及び60℃で30秒間を40サイクル繰り返す。アルブミンプライマーは、HEK 293T細胞から単離した連続希釈ゲノムDNAの標準曲線と比較して細胞数を推定するために、100ngのゲノムDNAをテンプレートとして使用するqPCR反応に使用した。
【0156】
統計分析
図5及び
図7の統計分析は、Prism 7(Graphpadソフトウェア)を使用して行った。HSV-tk P1、P3タンパク質の発現レベルは、パラメトリック分布を仮定して、両側対応のないt検定を使用して比較した。
図7では、すべてのMTT細胞生存率データを、二元配置分散分析(ANOVA)とTukeyの事後多重比較検定を用いて比較した。
図6では、不等分散を仮定し、スチューデントのt検定(Excel)を使用して統計分析を行った。p値はすべて0.05未満を有意とした。統計分析で使用される全ての複製は、生物学的複製ウェルである。
【0157】
結果
HCCまたはPDACを標的とするために、不完全な単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子を含むHERV-K env pre-mRNAに向けられた新規な結合ドメインを有するRNAトランストランススプライシング構築物を生成した(
図1)。好ましい構造を生成し、潜在的なRNA編集を回避するために、結合ドメイン配列に4つのぐらつき塩基(C~U及びA~G)、または2つのミスマッチ(2xA~U)が含まれた(Chalupnikova et al(2013)Methods in Molecular Biology,942,291-314)。配列アラインメントは、HERV-K標的配列(ジェンバンク配列番号JN675087.1)に対して89%の相補性を示した(
図2D)。
【0158】
単離された結合ドメインのRNA二次構造予測は、RNA foldによって分析した場合、最小自由エネルギー(MFE)またはセントロイドRNA二次構造予測のいずれにおいても、結合していないヌクレオチドが多い類似した構造を示した(
図3A)。結合ドメインがRNAトランススプライシングカセットバックボーン内に非構造化領域を含むことを確認するために、RNA結合ドメインは、RNAトランススプライシングカセットの文脈でフォールドされた。MFE及びセントロイドフォールドにより、RNAトランススプライシングカセット内でフォールドされた場合、最大18個の非結合ヌクレオチドのストレッチが確認された(
図3B)。
【0159】
RNAトランススプライシングアプローチをさらに改善するために、Np9標的化をRTM内の突然変異と組み合わせて、シスにおける潜在的なオフターゲットスプライシング(
図4Bの上側)と、2番目(ATG46)と3番目(ATG60)の正規のHSV-tk翻訳開始コドンからの異常なHSV-tkペプチド産生を減少させた。(
図4Bの下側)。
【0160】
HSV-tk翻訳開始変異体がHSV-tkアイソフォーム産生に及ぼす影響を調べるために、HEK293T細胞におけるトランスフェクション試験では、Np9標的RNAトランススプライシング構築物HSV-tk-ts optを、HSV-tkの最初のATG開始コドンを欠く野生型ATG46及びATG60を保有するHSV-tk-tsと比較してテストし(
図5A)、これに加え、野生型HSV-tkのすべての正規の翻訳開始部位を含むHSV-tkを陽性対照として、CMVプロモーターからGFPを発現する陰性対照構築物と並べた。異なるHSV-tk翻訳開始部位から生成された翻訳産物を、
図5Bに示し、異なる構築物から生成された予測HSV-tkアイソフォームを、
図5Cに示す。ウエスタンブロット解析により、HSV-tk-tsとHSV-tk-ts-optとを比較した場合に、同様のレベルのP1産生が確認され(
図5D)、これは、トランススプライシングが成功し、その後Np9翻訳開始コドンからHSV-tk P1が産生されることを示唆している。ビンキュリンのレベルに正規化されたバンドの定量(荷重制御)により、この観察が確認された(P<0.2877)(
図5E)。対照的に、P3の発現レベルは、HSV-tk-ts-optをトランスフェクションした後、野生型HSV-tkよりもP3アイソフォーム発現が過剰発現されるHSV-tk-tsと比較して有意に低下した(
図5D)。定量したところ、HSV-tk-ts-optをトランスフェクトした細胞では、HSV-tk-tsと比較してP3発現が18倍減少していた(P=0.0047)ことから、最適化したRNAトランススプライシング構築物HSV-tk-ts-optを用いることで、HSV-tkペプチドの異常産生が減少することが確認された。
【0161】
トランススプライシングレンチウイルスベクターは、肝臓及び膵臓癌細胞株において細胞死を誘導する
Np9標的RNAトランススプライシングレンチウイルスベクターの細胞生存率への影響を調べるため、MTTアッセイで効果を評価し、ベクター導入細胞をベクタータイプごとにGCV処理前後で比較した。肝細胞癌細胞株Hep3Bでは、トランススプライシングベクター3’ER-HSV-tkを用いて形質導入した後、細胞生存率の有意な低下が観察され、濃度300μMのGCVを2回投与した後の生存細胞は25.54±0.48%(P<0.001)であり、GCV投与後に生存した細胞は21.67±2.21%(P<0.01)であったHSV-tk陽性対照ベクターと同等であった。tkに最適化したトランススプライシングベクター、3’ER-HSV-tk-optでは、生存率は46.01±4.39%(P<0.05)に有意に低下した(
図6A)。
【0162】
同様の傾向はHuH7-mRFP細胞でも見られ、ここで、トランススプライシングベクター3’ER-HSV-tkまたは3’ER-HSV-tk-optを用いて形質導入した細胞では、GCV処理後の細胞生存率はそれぞれ41.33±6.11%(P<0.01)または64.96±1.77%(P<0.001)に低下した。HSV-tk陽性対照ベクターを用いて形質導入したHuH7-mRFP細胞では、24.67±4.73%(P<0.001)の細胞がGCV添加後も生存していた(
図6B)。
【0163】
Hep3B細胞では、GCV濃度を10uMまたは100uMの2用量に低下させると細胞生存率の有意な低下が観察され、3’ER-HSV-tkでは生存細胞残存率は20.50±5.5%(P<0.05)、10μMのGCV処理と併用した3’ER-HSV-tk-optでは39.58±2.07%(P<0.01)であった。さらに、100μMのGCVを2回投与すると、3’ER-HSV-tkでは7.15±3.3%(P<0.01)、3’ER-HSV-tk-optでは14.62±3.38%(P<0.05)の細胞生存率に低下した。これらのGCV濃度では、19.55±2.90%(P<0.05)及び5.24±1.71%(P<0.05)の細胞が、それぞれ10μΜまたは100μΜと組み合わせたHSV-tk陽性対照ベクターでの形質導入に耐えた(
図6C)。
【0164】
次に、Np9標的RNAトランススプライシングレンチウイルスベクターをHEK 293T細胞で試験し、HEK 293T細胞は1と2のMOIで形質導入され、1000μMのGCVで処理され、その後MTTアッセイで細胞生存率を分析した。GCVで処理した後、トランススプライシングレンチウイルスベクターであるLv HSV-tk-ts及びLv HSV-tk-ts-optを1のMOIで投与すると、細胞生存率がそれぞれ81.31±3.25%(P<0.0001)及び68.80±5.54%(P<0.0001)に有意に低下し、GCV及び陽性対照CMV-HSV-tkで処理したサンプルにおける細胞生存率の損失89.73±3.83%(P<0.0001)に相当した(
図7A)。2のMOIでは、トランススプライシング構築物は、Lv HSV-tk-ts及びLv HSV-tk-ts-opt処理サンプルにおいて、わずか6.19±1.27%及び2.96±2.08%の細胞しか残存せず、細胞生存率がほぼ完全に喪失された(
図7B)。
【0165】
さらに、トランススプライシングレンチウイルスベクターの有効性を膵癌細胞株において評価した。MIA Paca-2、Panc-1及びAspc-1細胞を、Lv CMV-GFP、Lv HSV-tk-ts、Lv HSV-tk-ts-opt、Lv CMV-HSV-tkのいずれかを用いて1または2のMOIで形質導入し、2日後に1000μΜ GCVで処置した。両方のトランススプライシングベクターとも、GCV存在下、両MOIで試験したすべての細胞種で細胞生存率が有意に低下したが、Panc-1細胞では1のMOIでLv HSV-tk-ts-optの場合、有意な影響は認められなかった(
図7C、7D、7E、7F、7G、7H)。
【0166】
Panc-1細胞では、Lv HSV-tk-ts及びLv HSV-tk-ts-optは、1のMOIではHSV-tk/GCV誘導細胞毒性を示し、それぞれ44.37±5.80%(P<0.0001)及び80.20±5.16%(P=0.8408)の細胞生存率を示したが、2のMOIではそれぞれわずか16.94±2.13%(P<0.0001)及び52.38±4.95%(P=0.0011)の細胞生存率を示し、非常に有意な細胞毒性を示した(
図7C、7D)。トランススプライシングレンチウイルスベクター(Lv HSV-tk-ts及びLv HSV-tk-ts-opt)は、Aspc-1細胞においても、Panc-1細胞よりもさらに高い程度に有効であり、1のMOIで処理した場合の生存率はわずか45.16±11.99%(P=0.0005)及び59.69±5.21%(P=0.0244)であるが、2のMOIで処理した場合はわずか35.67±1.21%(P=0.0002)及び43.95±8.47%(P<0.0001)であった(
図7E、7F)。最後に、MIA PaCa-2細胞では、HEK 293T細胞の場合と同様に、トランススプライシングレンチウイルスベクター及び1000μΜ GCVで治療した後、細胞生存率がほぼ完全に失われた。1のMOIでは、Lv HSV-tk-ts及びLv HSV-tk-ts-optで処理した後、それぞれ14.07±2.82%(P<0.0001)及び8.03±2.19%(P<0.0001)の細胞のみが残存した(
図7G)。2のMOIでは、Lv HSV-tk-ts及びLv HSV-tk-ts-optでそれぞれ処理した後、細胞の4.11±4.54%(P<0.0001)及び1.22±0.31%(P=0.0002)しか生存していないことから、この効果はさらに顕著であり、陽性対照であるLv CMV-HSV-tkで処理したサンプルで観察されたものに相当し、処理後の細胞生存率はわずか2.09±0.53%(P<0.0001)であった(
図7H)。
【0167】
まとめると、これは、肝臓及び膵臓癌細胞を死滅させるためにRNAトランススプライシングによってHERV-K Envを標的とする有効性が確認された。
【0168】
参照配列
TGGATAATCCTATAGAAGTATATGTTAATGATAGCGAATGGGTA
配列番号1-HERV-K標的配列の結合領域(DNA)
UGGAUAAUCCUAUAGAAGUAUAUGUUAAUGAUAGCGAAUGGGUA
配列番号2-HERV-K標的配列の結合領域(RNA)
TACCCATTCGCTATCATTAACATATACTTCTATAGGATTATCCA
配列番号3-HERV-K標的配列の逆相補体(DNA)
UACCCAUUCGCUAUCAUUAACAUAUACUUCUAUAGGAUUAUCCA
配列番号4-HERV-K標的配列の逆相補体(RNA)
UACUCAUUCGCUAUCAUUUUCAUAUACUUCUGUGGGAUUAUCCA
配列番号5-HERV-K標的配列の改変逆相補体(RNA)
001 masypchqha safdqaarsr ghsnrrtalr prrqqeatev rpeqkmptll rvyidgphgm
061 gkttttqllv algsrddivy vpepmtywrv lgasetiani yttqhrldqg eisagdaavv
121 mtsaqitmgm pyavtdavla phiggeagss happpaltli fdrhpiaall cypaarylmg
181 smtpqavlaf valipptlpg tnivlgalpe drhidrlakr qrpgerldla mlaairrvyg
241 llantvrylq gggswredwg qlsgtavppq gaepqsnagp rphigdtlft lfrapellap
301 ngdlynvfaw aldvlakrlr pmhvfildyd qspagcrdal lqltsgmvqt hvttpgsipt
361 icdlartfar emgean
配列番号6-HSVチミジンキナーゼ(HSV-tk)アミノ酸配列(AAC16235.1)
306 atggc ttcgtacccc tgccatcaac acgcgtctgc gttcgaccag gctgcgcgtt
361 ctcgcggcca tagcaaccga cgtacggcgt tgcgccctcg ccggcagcaa gaagccacgg
421 aagtccgccc ggagcagaaa atgcccacgc tactgcgggt ttatatagac ggtccccacg
481 ggatggggaa aaccaccacc acgcaactgc tggtggccct gggttcgcgc gacgatatcg
541 tctacgtacc cgagccgatg acttactggc gggtgctggg ggcttccgag acaatcgcga
601 acatctacac cacacaacac cgcctcgacc agggtgagat atcggccggg gacgcggcgg
661 tggtaatgac aagcgcccag ataacaatgg gcatgcctta tgccgtgacc gacgccgttc
721 tggctcctca tatcgggggg gaggctggga gctcacatgc cccgcccccg gccctcaccc
781 tcatcttcga ccgccatccc atcgccgccc tcctgtgcta cccggccgcg cgatacctta
841 tgggcagcat gaccccccag gccgtgctgg cgttcgtggc cctcatcccg ccgaccttgc
901 ccggcacaaa catcgtgttg ggggcccttc cggaggacag acacatcgac cgcctggcca
961 aacgccagcg ccccggcgag cggcttgacc tggctatgct ggccgcgatt cgccgcgttt
1021 acgggctgct tgccaatacg gtgcggtatc tgcagggcgg cgggtcgtgg cgggaggatt
1081 ggggacagct ttcggggacg gccgtgccgc cccagggtgc cgagccccag agcaacgcgg
1141 gcccacgacc ccatatcggg gacacgttat ttaccctgtt tcgggcccccc gagttgctgg
1201 cccccaacgg cgacctgtat aacgtgtttg cctgggcctt ggacgtcttg gccaaacgcc
1261 tccgtcccat gcacgtcttt atcctggatt acgaccaatc gcccgccggc tgccgggacg
1321 ccctgctgca acttacctcc gggatggtcc agacccacgt caccacccca ggctccatac
1381 cgacgatctg cgacctggcg cgcacgtttg cccgggagat gggggaggct aactga
配列番号7-HSVチミジンキナーゼ(HSV-tk)コード配列(AF057310.1)
ASYPCHQHASAFDQAARSRGHSNRRTALRPRRQQEATEVRPEQKLPTLLRVYIDGPHGI
GKTTTTQLLVALGSRDDIVYVPEPMTYWRVLGASETIANIYTTQHRLDQGEISAGDAAVV
MTSAQITMGMPYAVTDAVLAPHIGGEAGSSHAPPALTLIFDRHPIAALLCYPAARYLMG
SMTPQAVLAFVALIPPTLPGTNIVLGALPEDRHIDRLAKRQRPGERLDLAMLAAIRRVYG
LLANTVRYLQGGGSWREDWGQLSGTAVPPQGAEPQSNAGPRPHIGDTLFTLFRAPELLAP
NGDLYNVFAWALDVLAKRLRPMHVFILDYDQSPAGCRDALLQLTSGMVQTHVTTPGSIPT
ICDLARTFAREMGEAN
配列番号8-改変されたHSVチミジンキナーゼ(HSV-tk)アミノ酸配列
【化8】
配列番号9-改変されたHSVチミジンキナーゼ(HSV-tk)コード配列
GGTGACGAAAA CGTGCTATCA GTTCGCTCCC CCACTCCC
配列番号10-スペーサー配列
GSGATNFSLL KQAGDVEENP GP
配列番号11-P2A切断配列
GGGCCTGGGC CTGGGTACTA ACACGATCGT TTTTTTCCCT TTTTTTCCAG G
配列番号12-トランススプライシングドメイン配列
GCUAGCUACU CAUUCGCUAU CAUUUUCAUA UACUUCUGUG GGAUUAUCCA CCUCGCGGUG 60
ACGAAAACGU GCUAUCAGUU CGCUCCCCCA CUCCCGCUUU CAUUUUUGUC UUGUCUUUUU 120
UUAACCUGGG CCUGGGCCUG GGUACUAACA CGAUCGUUUU UUUCCCUUUU UUUCCAGGGG 180
AAGCGGAGCU ACUAACUUCA GCCUGCUGAA GCAGGCUGGA GACGUGGAGG AGAACCCUGG 240
GCCUGCUUCG UACCCCUGCC AUCAACACGC GUCUGCGUUC GACCAGGCGG CGCGAUCACG 300
GGGACACAGC AACCGACGGA CGGCGUUGCG CCCUCGCCGG CAGCAAGAAG CCACGGAAGU 360
CGCCCGGAG CAGAAAAUGC CCACGCUACU GCGGGUUUAU AUAGACGGUC CCCACGGGAU 420
GGGGAAAACC ACCACCACGC AACUGCUGGU GGCCCUGGGU UCGCGCGACG AAUUCGUCUA 480
CGUACCCGAG CCGAUGACUU ACUGGCGGGU GCUGGGGGCU UCCGAGACAA UCGCGAACAU 540
CUACACCACA CAACACCGCC UCGACCAGGU AAGUAUCAAG GUUACAAGAC AGGUUUAAGG 600
AGACCAAUAG AAACUGGGCU UGUCGAGACA GAGACGACUC UUGCGUUUCU GAUAGGCACC 660
UAUUGGUCUU ACUGACAUCC ACUUUGCCUU UCUCUCCACA GGGUGAGAUA UCGGCCGGGG 720
ACGCGGCGGU GGUAAUGACA AGCGCCCAGA UAACAAUGGG CAUGCCUUAU GCCGUGACCG 780
ACGCCGUUCU GGCUCCUCAU AUCGGGGGGG AGGCUGGGAG CUCACAUGCC CCUCCUCCGG 840
CCCUCACCCU CAUCUUCGAC CGCCAUCCCA UCGCCGCCCU CCUGUGCUAC CCGGCCGCGC 900
GAUACCUUAU GGGCAGCAUG ACCCCCCAGG CCGUGCUGGC GUUCGUGGCC CUCAUCCCGC 960
CGACCUUGCC CGGCACAAAC AUCGUGUUGG GGGCCCUUCC GGAGGACAGA CACAUCGACC 1020
GCCUGGCCAA ACGCCAGCGC CCCGGCGAGC GGCUUGACCU GGCUAUGCUG GCCGCGAUUC 1080
GCCGCGUUUA CGGGCUGCUU GCCAAUACGG UGCGGUAUCU GCAGGGCGGC GGGUCGUGGC 1140
GGGAGGAUUG GGGACAGCUU UCGGGGACGG CCGUGCCGCC UCAGGGUGCC GAGCCUCAGA 1200
GCAACGCGGG CCCACGACCC CAUAUCGGGG ACACGUUAUU UACCCUGUUU CGGGCCCCCG 1260
AGUUGCUGGC CCCCAACGGC GACCUGUAUA ACGUGUUUGC CUGGGCCUUG GACGUCUUGG 1320
CCAAACGCCU CCGUCCCAUG CACGUCUUUA UCCUGGAUUA CGACCAAUCG CCCGCCGGCU 1380
GCCGGGACGC CCUGCUGCAA CUUACCUCCG GGAUGGUCCA GACCCACGUC ACCACCCCAG 1440
GCUCCAUACC GACGAUCUGC GACCUGGCGC GCACGUUUGC GCGGGAGAUG GGGGAGGCGA 1500
ACUGACUCGA G 1511
配列番号13-RTM配列
【化9】
塩基1~6 Nhe1部位
塩基7~50 結合ドメイン 実線下線
塩基51~56 改変されたBbvC1 部位
塩基57~95 スペーサー 点線下線
塩基128~142 ISE 二重下線
塩基143~150 分岐点 破線下線
塩基150~156 Pvu1部位
塩基157~175 ポリピリミジントラクト 点線+破線下線
塩基176~178 スプライス部位 実線下線
塩基179~244 P2A配列 点線下線
塩基245~1505 HSVtk配列 波線下線
塩基569~711 イントロン 斜体
塩基1506~1511 Xho1部位
配列番号14-RTMのコードDNA配列(配列番号13)
GCUAGCUACU CAUUCGCUAU CAUUUUCAUA UACUUCUGUG GGAUUAUCCA CCUCGCGGUG 60
ACGAAAACGU GCUAUCAGUU CGCUCCCCCA CUCCCGCUUU CAUUUUUGUC UUGUCUUUUU 120
UUAACCUGGG CCUGGGCCUG GGUACUAACA CGAUCGUUUU UUUCCCUUUU UUUCCAGGGG 180
AAGCGGAGCU ACUAACUUCA GCCUGCUGAA GCAGGCUGGA GACGUGGAGG AGAACCCUGG 240
GCCUGCUUCG UACCCCUGCC AUCAACACGC GUCUGCGUUC GACCAGGCGG CGCGAUCACG 300
GGGACACAGC AACCGACGGA CGGCGUUGCG CCCUCGCCGG CAGCAAGAAG CCACGGAAGU 360
CCGCCCGGAG CAGAAACUGC CCACGCUACU GCGGGUUUAU AUAGACGGUC CCCACGGGAU 420
CGGGAAAACC ACCACCACGC AACUGCUGGU GGCCCUGGGU UCGCGCGACG AUAUCGUCUA 480
CGUACCCGAG CCGAUGACUU ACUGGCGGGU GCUGGGGGCU UCCGAGACAA UCGCGAACAU 540
CUACACCACA CAACACCGCC UCGACCAGGU AAGUAUCAAG GUUACAAGAC AGGUUUAAGG 600
AGACCAAUAG AAACUGGGCU UGUCGAGACA GAGACGACUC UUGCGUUUCU GAUAGGCACC 660
UAUUGGUCUU ACUGACAUCC ACUUUGCCUU UCUCUCCACA GGGUGAGAUA UCGGCCGGGG 720
ACGCGGCGGU GGUAAUGACA AGCGCCCAGA UAACAAUGGG CAUGCCUUAU GCCGUGACCG 780
ACGCCGUUCU GGCUCCUCAU AUCGGGGGGG AGGCUGGGAG CUCACAUGCC CCUCCUCCGG 840
CCCUCACCCU CAUCUUCGAC CGCCAUCCCA UCGCCGCCCU CCUGUGCUAC CCGGCCGCGC 900
GAUACCUUAU GGGCAGCAUG ACCCCCCAGG CCGUGCUGGC GUUCGUGGCC CUCAUCCCGC 960
CGACCUUGCC CGGCACAAAC AUCGUGUUGG GGGCCCUUCC GGAGGACAGA CACAUCGACC 1020
GCCUGGCCAA ACGCCAGCGC CCCGGCGAGC GGCUUGACCU GGCUAUGCUG GCCGCGAUUC 1080
GCCGCGUUUA CGGGCUGCUU GCCAAUACGG UGCGGUAUCU GCAGGGCGGC GGGUCGUGGC 1140
GGGAGGAUUG GGGACAGCUU UCGGGGACGG CCGUGCCGCC UCAGGGUGCC GAGCCUCAGA 1200
GCAACGCGGG CCCACGACCC CAUAUCGGGG ACACGUUAUU UACCCUGUUU CGGGCCCCCG 1260
AGUUGCUGGC CCCCAACGGC GACCUGUAUA ACGUGUUUGC CUGGGCCUUG GACGUCUUGG 1320
CCAAACGCCU CCGUCCCAUG CACGUCUUUA UCCUGGAUUA CGACCAAUCG CCCGCCGGCU 1380
GCCGGGACGC CCUGCUGCAA CUUACCUCCG GGAUGGUCCA GACCCACGUC ACCACCCCAG 1440
GCUCCAUACC GACGAUCUGC GACCUGGCGC GCACGUUUGC GCGGGAGAUG GGGGAGGCGA 1500
ACUGACUCGA G 1511
配列番号15-改変されたHSV-tkコード配列を有するRTM配列
【化10】
塩基1~6 Nhe1部位
塩基7~50 結合ドメイン 実線下線
塩基51~56 改変されたBbvC1 部位
塩基57~95 スペーサー 点線下線
塩基128~142 ISE 二重下線
塩基143~150 分岐点 破線下線
塩基150~156 Pvu1部位
塩基157~175 ポリピリミジントラクト 点線+破線下線
塩基176~178 スプライス部位 実線下線
塩基179~244 P2A配列 点線下線
塩基245~1505 HSVtk配列 波線下線
塩基377~380 突然変異したATG 太字
塩基419~421 突然変異したATG 太字
塩基569~711 イントロン 斜体
塩基1506~1511 Xho1部位
配列番号16-改変されたHSV-tkコード配列を有するRTMのコードDNA配列(配列番号15)
GGAAGCGGAGCT ACTAACTTCA GCCTGCTGAA GCAGGCTGGA GACGTGGAGG AGAACCCTGG GCCT
配列番号17-P2Aペプチドをコードするヌクレオチド配列。
【図】
【配列表】
【国際調査報告】