(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】加速度の測定又は検出に基づいて、医療又は外科遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステム及び関連するロボットシステムの拘束されないマスター装置の動作異常を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20240206BHJP
【FI】
A61B34/35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548840
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(85)【翻訳文提出日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 IB2022051293
(87)【国際公開番号】W WO2022175802
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】102021000003416
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518132307
【氏名又は名称】メディカル・マイクロインストゥルメンツ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL MICROINSTRUMENTS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100230640
【氏名又は名称】藤田 望
(72)【発明者】
【氏名】ルッファルディ,エマヌエーレ
(72)【発明者】
【氏名】シミ,マッシミリアーノ
【テーマコード(参考)】
4C130
【Fターム(参考)】
4C130AB02
4C130BA01
4C130CA01
4C130CA14
4C130CA16
(57)【要約】
医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムを制御するために使用される手持ち式の機械的に拘束されないマスター装置を使用する際に少なくとも1つの異常状態を特定する方法が記載される。そのような方法は、1つ以上のセンサによって、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の加速度ベクトルを検出及び/又は計算するステップと、次いで、前記検出された及び/又は計算された加速度ベクトルの少なくとも1つの成分又はモジュラスに基づいて少なくとも1つの検出可能な異常状態を特定するステップとを含む。前述の検出可能な異常は、以下、すなわち、マスター装置の不随意の落下及び/又はマスター装置の過度の加速度及び/又はマスター装置の突然の及び/又は不随意の開放のうちの少なくとも1つを含む。更に、検出可能な異常のそれぞれは、異常が検出される場合に実行されるべき少なくとも1つのシステム状態変化と関連付けられる。上記の方法を実行するために装備された医療又は外科遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステムも記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムを制御するために使用される、機械的に接地されず、術者により手で保持されるようになっている、手持ち式であるマスター装置(110;310;410,420;510)を使用する際の少なくとも1つの異常状態を特定及び認識及び/又は区別するための方法であって、
-1つ以上のセンサ(S1,S2;585,595)によって、前記マスター装置に属する又は前記マスター装置と一体の少なくとも1つの点、又は前記マスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられる仮想点の加速度ベクトルを検出及び/又は計算するステップと、
-検出及び/又は計算された加速度ベクトルの少なくとも1つの成分又はモジュラスに基づいて、少なくとも1つの検出可能な異常状態を特定及び認識及び/又は区別するステップと、
を含み、
前記検出可能な異常は、以下、すなわち、前記マスター装置の不随意の落下及び/又は前記マスター装置の過度の加速度及び/又は前記マスター装置の突然の及び/又は不随意の開放のうちの少なくとも1つを含み、
前記検出可能な異常のそれぞれは、前記異常が検出される場合に実行されるべき少なくとも1つのシステム状態変化と関連付けられる、方法。
【請求項2】
異常が検出される場合に実行される前記システム状態変化は、前記遠隔操作を終了することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ以上のセンサによって、前記マスター装置に属する又は前記マスター装置と一体である前記少なくとも1つの点の位置ベクトル、及び前記位置ベクトルの経時的変化を測定及び/又は検出する更なるステップを含み、
前記加速度ベクトルを検出及び/又は計算する前記ステップは、それぞれの測定及び/又は検出された位置ベクトルの経時的変化に基づいて前記加速度ベクトルを検出及び/又は計算するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記加速度ベクトルを検出及び計算する前記ステップは、
-前記位置ベクトルの経時的変化を表わすベクトルのN個のサンプルの可動窓によって、及び把持に関連する自由度に関しては二次多項式で、前記マスター装置の並進及び方向に関連する自由度に関しては三次多項式で補間することによって前記加速度ベクトルを計算するステップ、又は
-前記マスター装置の位置状態を推定して前記測定システムによって与えられる情報に基づいて推定を補正するようになっているランダム加速度ダイナミクスを伴う移動モデルを使用するカルマン型予測フィルタによって前記加速度ベクトルを計算するステップ、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記加速度ベクトルを検出及び/又は計算する前記ステップは、
-少なくとも2つのセンサによって前記マスター装置に属する又は前記マスター装置と一体である少なくとも2つの点のそれぞれの加速度ベクトルを検出及び/又は計算するステップと、
-前記センサが位置される点間の中間点に対応する、前記マスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の加速度ベクトルを計算するステップと、
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
医療又は外科遠隔操作のための前記ロボットシステムは、
-機械的に接地されず、外科手術中に外科医により手で保持されるようになっているとともに、外科医の手動コマンドを検出してそれぞれの第1の電気コマンド信号を生成するように構成される、前記マスター装置と、
-前記マスター装置によって制御される態様で、患者の解剖学的構造に作用するように構成される少なくとも1つのスレーブ外科用器具(460,470)を備える、少なくとも1つのスレーブロボットアセンブリ(440)と、
-前記少なくとも1つのスレーブ外科用器具を作動させるために、前記マスター装置から前記第1の電気コマンド信号を受信し、前記第1の電気コマンド信号に基づいて第2の電気コマンド信号を生成し、前記第2の電気コマンド信号を前記スレーブロボットアセンブリに供給するように構成される、コンピュータを備える制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、前記検出及び/又は測定された加速度ベクトル及び/又は関連する経時的変化を表わす少なくとも第3の電気信号を受信するために、前記1つ以上のセンサに動作可能に接続され、
少なくとも1つの検出可能な異常を計算及び特定する前記ステップは、前記制御ユニットによって実行される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記測定及び/又は検出するステップは、遠隔操作外科手術のための前記ロボットシステムと関連付けられ、所定の点に所定の軸及び原点を有する基準座標系に関して実行される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
医療又は外科遠隔操作のための前記ロボットシステムが操作コンソール(455)を備え、
前記基準座標系が前記ロボットシステムコンソールと一体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
医療又は外科遠隔操作のための前記ロボットシステムは、所定の追跡ボリューム内の前記マスター装置の入力位置及び方向を検出するのに適した追跡システムを備え、前記スレーブ外科用器具の作動は、前記マスター装置によって外科医により与えられる前記手動コマンド及び/又は前記マスター装置の位置及び方向に依存する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記マスター装置は、共通の軸に対して相対的に回転及び/又は並進するように拘束される2つの剛性部分(180,190;380,390;580,590)を備える、手持ちの接地されないマスター装置であり、
前記検出及び/又は計算するステップは、それぞれのセンサによって、前記マスター装置の前記剛性部分のうちの1つに属する又はそれと一体である第1の点と、前記装置の前記剛性部分のうちの他の1つに属する又はそれと一体である第2の点との少なくとも2つの検出可能点の、前記加速度ベクトル及び/又は前記加速度ベクトル経時的変化を検出及び/又は計算するステップを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
計算する前記ステップは、前記少なくとも2つの検出可能点の加速度ベクトル及び/又は速度ベクトルを計算するステップ、
又は、前記少なくとも2つの検出点のうちの1つの加速度ベクトル及び/又は速度ベクトルを計算し、以下の更なる点、すなわち、
前記2つの検出点間の中間点及び/又は前記マスター装置の重心、
及び/又は、前記マスター装置の回転関節、及び/又は前記マスター装置の角柱関節、
のうちの少なくとも1つの加速度ベクトル及び/又は速度ベクトル及び/又は位置ベクトルを更に計算するステップ、
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
検出されるべき前記異常が前記マスター装置の不随意の落下であり、前記方法は、
-前記少なくとも1つの検出点の、重力軸と平行な垂直加速度成分(ay)を検出及び/又は計算するステップと、
-検出又は計算された前記垂直加速度成分(ay)を垂直加速度閾値と比較するステップと、
-ay>垂直加速度閾値の関係に従って、前記垂直加速度成分(ay)が前記垂直加速度閾値よりも大きい場合、前記マスター装置の不随意の落下に関連する異常を特定するステップと、
を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記マスター装置の前記少なくとも2つの検出点のそれぞれの加速度ベクトルは、冗長性及び/又は更なる検証を与えるために計算される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
検出されるべき前記異常は、特に前記ユーザによる移動で与えられる前記マスター装置の過度の加速度であり、前記方法は、
-前記少なくとも2つの検出点のうちの少なくとも1つの加速度ベクトルモジュラス(atot)を検出及び/又は計算するステップと、
-検出及び/又は計算された前記加速度ベクトルモジュラス(atot)を総加速度閾値と比較するステップと、
-atot>総加速度閾値の関係に従って、前記加速度ベクトルモジュラス(atot)が前記総加速度閾値よりも大きい場合、前記マスター装置の過度の加速度に関連する異常を特定するステップと、
を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記垂直加速度閾値が前記総加速度閾値未満である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記マスター装置の前記検出点の両方の加速度が計算され、
前記検出点のうちの少なくとも1つが閾値加速度を超える場合、
又は仮想中間点が前記閾値加速度を超える場合、
又は前記2点間の相対加速度が閾値を超える場合に、
前記警報トリガ条件が発せられる、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記総加速度閾値は、前記マスター装置と前記スレーブ装置との間の動きのスケールファクタの減少に伴って、及び/又はユーザによって選択されて遠隔操作されるマスター-スレーブ移動に適用されるスケールファクタの減少に伴って増大するように規定される、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記マスター装置は、弾性関節で相互に接続される2つの剛性部分(580,590)を備え、前記弾性関節は、ユーザによって手で強く押圧又は保持されないときに前記部分を少なくとも角度的に開く傾向があり、検出されるべき前記異常が前記マスター装置の不随意の開放であり、
前記方法は、
前記2つの検出可能点のそれぞれの加速度ベクトル及び/又はそれぞれの経時的変化を検出及び/又は計算するステップと、
検出及び/又は計算された加速度ベクトルに基づいて、前記マスター装置の前記2つの剛性部分の開放角加速度(ω)を計算するステップと、
計算された前記開放角加速度(ω)を、前記弾性関節の弾性剛性に依存するそれぞれの閾値角加速度と比較するステップと、
ω>閾値角加速度の関係に従って、計算された前記開放角加速度(ω)が前記閾値角加速度よりも大きい場合に、前記マスター装置の不随意の開放に関連する前記異常状態を特定するステップと、
を含む、請求項12から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記マスター装置が2つの剛性部分(380,390)を備え、該剛性部分は、前記マスター装置の前記部分の少なくとも一方の長手方向延在部と一致する長手方向軸に沿って並進するように弾性的に拘束され、前記方法は、
前記2つの検出可能点のそれぞれの加速度ベクトル及び/又はそれぞれの経時的変化を検出及び/又は計算するステップと、
検出及び/又は計算された加速度ベクトルに基づいて、前記マスター装置の前記2つの剛性部分の離間/接近直線加速度を計算するステップと、
計算された前記離間/接近直線加速度を、拘束(375)の弾性剛性に依存する閾値線速度と比較するステップと、
計算された前記離間/接近直線加速度が前記閾値直線加速度よりも大きい場合、前記マスター装置の不随意の開放に関連する前記異常状態を特定するステップと、
を含む、請求項12から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記マスター装置の不随意の落下、前記マスター装置の過度の加速度、並びに前記マスター装置の突然の及び/又は不随意の開放の前記異常が全て同時に検出される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記マスター装置の不随意の落下、前記マスター装置の過度の加速度、並びに前記マスター装置の突然の及び/又は不随意の開放の異常の検出は、前記拘束されないマスター装置が予め決定可能な作業ボリューム(415;415,425;515)内にあるという更なる拘束を受ける、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
外科又は医療遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステムのマスター装置で特定された異常を管理するための方法であって、
請求項1から21のいずれか一項に記載の少なくとも1つの異常状態を特定及び認識及び/又は区別するための方法を実行するステップと、
前記異常の少なくともいずれか1つが決定される場合に、前記遠隔操作及び前記スレーブ装置の前記外科用器具の移動を直ちに停止させるステップと、
を含む方法。
【請求項23】
医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステム(400)であって、
-機械的に接地されず、手術中に外科医(450)によって手で保持されるようになっているとともに、前記外科医の手動コマンドを検出してそれぞれの第1の電気コマンド信号を生成するように構成されるマスター装置(110;310;410,420;510)と、
-前記マスター装置によって制御される態様で、患者の解剖学的構造に作用するように構成される少なくとも1つのスレーブ外科用器具(460,470)を備える少なくとも1つのスレーブ装置(440)又はスレーブロボットアセンブリと、
-前記少なくとも1つのスレーブ外科用器具を作動させるために、前記マスター装置から前記第1の電気コマンド信号を受信し、前記第1の電気コマンド信号に基づいて第2の電気コマンド信号を生成し、前記第2の電気コマンド信号を前記スレーブロボットアセンブリに供給するように構成される、コンピュータを備える制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、以下の動作、すなわち、
-前記制御ユニットに動作可能に接続される前記ロボットシステムの1つ以上のセンサ(S1,S2;585,595)によって送信される情報に基づいて、前記マスター装置に属する又は前記マスター装置と一体の少なくとも1つの点、又は前記マスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の加速度ベクトルを検出及び/又は計算する動作と、
-検出及び/又は計算された加速度ベクトルの少なくとも1つの成分又はモジュラスに基づいて、少なくとも1つの検出可能な異常状態を特定及び認識及び/又は区別する動作と、
を実行することによって、少なくとも1つの異常状態を特定及び認識及び/又は区別するように構成され、
前記検出可能な異常は、以下、すなわち、前記マスター装置の不随意の落下及び/又は前記マスター装置の過度の加速度及び/又は前記マスター装置の突然の及び/又は不随意の開放のうちの少なくとも1つを含み、
前記検出可能な異常のそれぞれは、前記異常が検出される場合に実行されるべき少なくとも1つのシステム状態変化と関連付けられる、ロボットシステム(400)。
【請求項24】
異常が検出される場合に実行される前記システム状態変化は、前記遠隔操作を終了することを含む、請求項23に記載のロボットシステム。
【請求項25】
前記制御ユニットは、1つ以上のセンサによって送信される情報に基づいて、前記マスター装置に属する又は前記マスター装置と一体である前記少なくとも1つの点の位置ベクトル、及び前記位置ベクトルの経時的変化を測定及び/又は検出するように更に構成され、
前記制御ユニットは、前記それぞれの測定及び/又は検出された位置ベクトルの経時的変化に基づいて前記加速度ベクトルを検出及び/又は計算するように構成される、請求項23又は24に記載のロボットシステム。
【請求項26】
前記制御ユニットは、
-前記位置ベクトルの経時的変化を表わすベクトルのN個のサンプルの可動窓によって、及び把持に関連する自由度に関しては二次多項式で、前記マスター装置の並進及び方向に関連する自由度に関しては三次多項式で補間することによって前記加速度ベクトルを計算するステップ、又は
-前記マスター装置の位置状態を推定して測定システムによって与えられる情報に基づいて推定を補正するようになっているランダム加速度ダイナミクスを伴う移動モデルを使用するカルマン型予測フィルタによって前記加速度ベクトルを計算するステップ、
によって前記加速度ベクトルを検出して計算するように構成される、請求項25に記載のロボットシステム。
【請求項27】
前記制御ユニットは、
-少なくとも2つのセンサによって前記マスター装置に属する又は前記マスター装置と一体である少なくとも2つの点のそれぞれの加速度ベクトルを検出及び/又は計算するステップ、
-前記センサが位置される点間の中間点に対応する、前記マスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の加速度ベクトルを計算するステップ、
によって前記加速度ベクトルを検出して計算するように構成される、請求項23から26のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項28】
前記制御ユニットは、遠隔操作外科手術のための前記ロボットシステムと関連付けられ、所定の点に所定の軸及び原点を有する基準座標系に関して前記測定及び/又は検出ステップを実行するように構成される、請求項23から27のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項29】
操作コンソール(455)を備え、前記基準座標系が前記ロボットシステムコンソールと一体である、請求項28に記載のロボットシステム。
【請求項30】
所定の追跡ボリューム内の前記マスター装置の入力位置及び方向を検出するのに適した少なくとも1つの追跡システムを更に備え、前記スレーブ外科用器具の作動は、前記マスター装置によって前記外科医により与えられる前記手動コマンド及び/又は前記マスター装置の位置及び方向に依存する、請求項28又は29に記載のロボットシステム。
【請求項31】
前記マスター装置は、共通の軸に対して相対的に回転及び/又は並進するように拘束される2つの剛性部分(180,190;380,390;580,590)を備える、手持ちの拘束されないマスター装置であり、
前記制御ユニットは、それぞれのセンサによって、前記マスター装置の前記剛性部分のうちの1つに属する又はそれと一体である第1の点と、前記装置の前記剛性部分のうちの他の1つに属する又はそれと一体である第2の点との少なくとも2つの検出可能点の、加速度ベクトル及び/又は加速度ベクトル経時的変化を検出及び/又は計算するように構成される、請求項23から30のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項32】
前記制御ユニットは、前記少なくとも2つの検出可能点の加速度ベクトル及び/又は速度ベクトルを計算する、
又は、前記少なくとも2つの検出点のうちの1つの加速度ベクトル及び/又は速度ベクトルを計算し、以下の更なる点、すなわち、
前記2つの検出点間の中間点及び/又は前記マスター装置の重心、
及び/又は、前記マスター装置の回転関節、及び/又は前記マスター装置の角柱関節、
のうちの少なくとも1つの加速度ベクトル及び/又は速度ベクトル及び/又は位置ベクトルを更に計算する、ように構成される、請求項31に記載のロボットシステム。
【請求項33】
検出されるべき異常が前記マスター装置の不随意の落下であり、前記制御ユニットは、
-前記少なくとも1つの検出点の、重力軸と平行な垂直加速度成分(ay)を検出及び/又は計算し、
-検出又は計算された前記垂直加速度成分(ay)を垂直加速度閾値と比較し、
-ay>垂直加速度閾値の関係に従って、前記垂直加速度成分(ay)が前記垂直加速度閾値よりも大きい場合、前記マスター装置の不随意の落下に関連する前記異常を特定する、ように構成される、請求項23から32のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項34】
前記制御ユニットは、前記マスター装置の前記少なくとも2つの検出点のそれぞれの加速度ベクトルを計算して、冗長性及び/又は更なる検証を与えるように構成される、請求項33に記載のロボットシステム。
【請求項35】
前記マスター装置は、弾性関節で相互に接続される2つの剛性部分(580,590)を備え、前記弾性関節は、前記ユーザによって手で強く押圧又は保持されないときに前記部分を少なくとも角度的に開く傾向があり、検出されるべき前記異常が前記マスター装置の落下であり、
前記制御ユニットは、前記マスター装置の前記2つの剛性部分とそれぞれ関連付けられる2つのセンサの加速度間の関係に基づいて前記マスター装置の落下を検出するように構成される、請求項23から34のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項36】
検出されるべき前記異常は、特に前記ユーザによる移動で与えられる前記マスター装置の過度の加速度であり、前記制御ユニットは、
-前記少なくとも2つの検出点のうちの少なくとも1つの加速度ベクトルモジュラス(atot)を検出及び/又は計算し、
-検出及び/又は計算された前記加速度ベクトルモジュラス(atot)を総加速度閾値と比較し、
-atot>総加速度閾値の関係に従って、前記加速度ベクトルモジュラス(atot)が前記総加速度閾値よりも大きい場合、前記マスター装置の過度の加速度に関連する前記異常を特定する、
ように構成される、請求項23から35のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項37】
前記垂直加速度閾値が前記総加速度閾値未満である、請求項33から36のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項38】
前記マスター装置の前記検出点の両方の加速度が計算され、
前記検出点のうちの少なくとも1つが閾値加速度を超える場合、
又は仮想中間点が閾値加速度を超える場合、
又は前記2点間の相対加速度が閾値を超える場合に、
前記警報トリガ条件が発せられる、請求項33から37のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項39】
前記総加速度閾値は、前記マスター装置と前記スレーブ装置との間の動きのスケールファクタの減少に伴って、及び/又は前記ユーザによって選択されて遠隔操作されるマスター-スレーブ移動に適用されるスケールファクタの減少に伴って増大するように規定される、請求項36から38のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項40】
前記マスター装置は、弾性関節で相互に接続される2つの剛性部分(580,590)を備え、前記弾性関節は、前記ユーザによって手で強く押圧又は保持されないときに前記部分を少なくとも角度的に開く傾向があり、検出されるべき前記異常が前記マスター装置の不随意の開放であり、
前記制御ユニットは、
前記2つの検出可能点のそれぞれの加速度ベクトル及び/又はそれぞれの経時的変化を検出及び/又は計算し、
検出及び/又は計算された加速度ベクトルに基づいて、前記マスター装置の前記2つの剛性部分の開放角加速度(ω)を計算し、
計算された前記開放角加速度(ω)を、前記弾性関節の弾性剛性に依存するそれぞれの閾値角加速度と比較し、
ω>閾値角加速度の関係に従って、計算された前記開放角加速度(ω)が前記閾値角加速度よりも大きい場合に、前記マスター装置の不随意の開放に関連する前記異常状態を特定する、
ように構成される、請求項23から39のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項41】
前記マスター装置が2つの剛性部分(380,390)を備え、該剛性部分は、前記マスター装置の前記部分の少なくとも一方の長手方向延在部と一致する長手方向軸に沿って並進するように弾性的に拘束され、前記制御ユニットは、
前記2つの検出可能点のそれぞれの加速度ベクトル及び/又はそれぞれの経時的変化を検出及び/又は計算し、
検出及び/又は計算された加速度ベクトルに基づいて、前記マスター装置の前記2つの剛性部分の離間/接近直線加速度を計算し、
計算された前記離間/接近直線加速度を、拘束(375)の弾性剛性に依存する閾値線速度と比較し、
計算された前記離間/接近直線加速度が前記閾値直線加速度よりも大きい場合、前記マスター装置の不随意の開放に関連する前記異常状態を特定する、
ように構成される、請求項23から39のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項42】
前記マスター装置の不随意の落下、前記マスター装置の過度の加速度、並びに前記マスター装置の突然の及び/又は不随意の開放の前記異常が全て同時に検出される、請求項23から41のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項43】
前記マスター装置の不随意の落下、前記マスター装置の過度の加速度、並びに前記マスター装置の突然の及び/又は不随意の開放の異常の検出は、前記拘束されないマスター装置が予め決定可能な作業ボリューム(415;415,425;515)内にあるという更なる拘束を受ける、請求項23から42のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項44】
前記制御ユニットは、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法を実行することによって少なくとも1つの異常状態を特定及び認識及び/又は区別し、及び/又は請求項22に記載の方法を実行することによって特定された異常を管理するように構成される、請求項23から43のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療又は外科遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステムの拘束されないマスター装置の動作異常を検出するための方法、及び前述の方法を実行するように装備された医療又は外科遠隔操作のための対応するマスター-スレーブロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット遠隔操作外科手術との関連で、医療又は外科遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステムの存在下で、スレーブに動きを与えるマスター装置が良好に機能して効果的な動作及び患者の安全性を確保するようになっている期待される状態で動作しているかどうかをリアルタイムで評価することが非常に重要であり、また、マスター装置が異常な状態又は状況で動作していないことをリアルタイムで検証することも重要である。
【0003】
この必要性は、拘束されない磁気的又は光学的に検出されたインタフェースを有するマスター装置との関連でも、機械的に拘束されたインタフェースを有するマスター装置との関連でも感じられる。
【0004】
機械的に拘束されない又は「接地されない」マスター装置(例えば、同じ出願人の文献国際公開第2019-220407号、国際公開第2019-220408号及び国際公開第2019-220409号に示されるように、効果的で有利な解決策として最近現れた)との関連では、前述の要件は、複雑な技術的課題を提起する。
【0005】
特に、マスターが機械的に拘束されない又はモータ駆動されないマスター-スレーブロボットシステムでは、マスター装置の制御されない動作状況から生じる、外科手術(又は超微細手術)装置への意図しないコマンドの送信は、患者のリスクを回避するために防止されなければならない。拘束されないマスターを有するそのような解決策の例は、マスターが外科医によって着用される米国特許出願公開第2011-118748号明細書、及びマスター本体が実質的に楕円形を有する国際公開第2020-0092170号によって示される。
【0006】
機械的に拘束されない(又は「接地されない」又は「地面に置かれない(groundless)」)マスター装置を伴う医療又は外科遠隔操作のための既知のロボットマスタースレーブシステムは、特にマスター装置の動作又は状態の任意の異常が、患者に作用するようになっているスレーブ装置及びそれに関連する外科用器具の動作の結果として生じる異常を特定することができ、患者に重大な結果をもたらす可能性さえある、という事実から導き出される非常に厳しい安全要件を考慮して、前述の必要性に対して十分に満足のいく解決策を提供しない。
【0007】
したがって、これに関連して、そのような用途によって要求される厳しい安全要件を満たすべく、効率的で信頼性があるように、医療又は外科遠隔操作のためのロボット制御システムによって自動的に実行されるマスター装置の任意の異常動作状態をリアルタイムで検証するための手順を適用する必要性が強く感じられる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、医療又は外科遠隔操作のためのロボットマスタースレーブシステムのマスター装置の動作異常を検出するための方法であって、従来技術に関連して前述した欠点を少なくとも部分的に克服し、考慮される技術分野において特に感じられる前述の必要性に応答することを可能にする方法を提供することである。そのような目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0009】
そのような方法の更なる実施形態は、請求項2~21によって規定される。
【0010】
本発明の他の目的は、マスター装置の異常を検出するための前述の方法を実行することを含むマスター装置で検出された異常を管理するための方法を提供することである。この方法は、請求項22によって規定される。
【0011】
また、本発明の目的は、前述の異常検出方法を実行するように装備された医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムを提供することである。
【0012】
そのような目的は、請求項23に記載のシステムによって達成される。
【0013】
そのような方法の更なる実施形態は、請求項24~44によって規定される。
【0014】
本発明に係るシステム及び方法の更なる特徴及び利点は、添付図面に関連して例示的で非限定的な例として与えられる好ましい実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】「グリッパ」構造を有するマスター装置の一実施形態に適用される、本発明の方法で使用される幾何学的パラメータ及び基準座標系を示す。
【
図2】「グリッパ」構造を有するマスター装置の一実施形態に適用される、本発明の方法で使用される幾何学的パラメータ及び基準座標系を示す。
【
図3】「ペン」構造を有するマスター装置の一実施形態に適用される、本発明の方法で使用される幾何学的パラメータ及び基準座標系を示す。
【
図4】幾つかの実施形態に係る、遠隔操作外科手術システムを概略的に示す。
【
図4bis】幾つかの実施形態に係る、遠隔操作外科手術システムを概略的に示す。
【
図4ter】一実施形態に係る、遠隔操作外科手術システムの一部を概略的に示す。
【
図5】方法の幾つかの実施形態によって検出可能な幾つかの異常を概略的に示す。
【
図6】方法の幾つかの実施形態によって検出可能な幾つかの異常を概略的に示す。
【
図7】方法の幾つかの実施形態によって検出可能な幾つかの異常を概略的に示す。
【
図8】方法の幾つかの実施形態によって検出可能な幾つかの異常を概略的に示す。
【
図9】マスター装置の不随意の落下の検出を概略的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~
図9を参照すると、術者が手で保持するようになっており、機械的に接地されないとともに、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムを制御するために使用される手持ち式マスター装置の使用において少なくとも1つの異常/障害状態を特定及び認識及び/又は区別するための方法が記載される。
【0017】
そのような方法は、1つ以上のセンサによって、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の加速度ベクトルを検出及び/又は計算するステップと、次いで、前記検出及び/又は計算された加速度ベクトルの少なくとも1つの成分又はモジュラスに基づいて、少なくとも1つの検出可能な異常/障害状態を特定及び認識及び/又は区別するステップとを含む。
【0018】
前述の検出可能な異常/障害は、以下、すなわち、マスター装置の不随意の落下及び/又はマスター装置の過度の加速度及び/又はマスター装置の突然の及び/又は不随意の開放のうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
更に、検出可能な異常/障害のそれぞれは、異常/障害が検出される場合に実行されるべき少なくとも1つのシステム状態変化と関連付けられる。
【0020】
本方法の実装オプションによれば、異常が検出される場合に実行されるべき前述のシステム状態変化は、遠隔操作を終了することを含む。
【0021】
一実装オプションによれば、特定するステップは、前述の検出及び/又は計算された加速度ベクトルの少なくとも1つの成分に基づいて少なくとも1つの検出可能な異常状態を特定するステップを含む。
【0022】
一実装オプションによれば、特定するステップは、前述の検出された及び/又は計算された加速度ベクトルのモジュラスに基づいて少なくとも1つの検出可能な異常状態を特定するステップを含む。
【0023】
一実施形態によれば、本方法は、1つ以上のセンサによって、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の前記少なくとも1つの点の位置ベクトル、及びそのような位置ベクトルの経時的変化を測定及び/又は検出する更なるステップを含む。
【0024】
そのような場合、前記加速度ベクトルを検出及び/又は計算するステップは、それぞれの測定及び/又は検出された位置ベクトルの経時的変化に基づいて加速度ベクトルを検出及び/又は計算するステップを含む。
【0025】
そのような実施形態の実装オプションによれば、加速度ベクトルを検出及び計算する前述のステップは、位置ベクトルの経時的変化を表わすベクトルのN個のサンプルの可動窓によって、及び把持に関連する自由度に関しては二次多項式で、マスター装置の並進及び方向に関連する自由度に関しては三次多項式で補間することによって加速度ベクトルを計算するステップを含む。
【0026】
そのような実施形態の別の実装オプションによれば、加速度ベクトルを検出及び計算する前述のステップは、マスター装置の位置状態を推定し、測定システムによって与えられる情報に基づいて推定を補正するようになっているランダム加速度ダイナミクスを伴う移動モデルを使用するカルマン型予測フィルタによって加速度ベクトルを計算するステップを含む。そのようなモデルは、好ましくは、そのプロセスノイズに関して、及び測定のノイズに関してパラメータ化される。
【0027】
予測手法を遅延平滑化のものと組み合わせるそのような実施形態の更なる実装オプションによれば、方法は、N個のサンプルの窓を考慮し、窓の最後まで順方向に予測し、次いで、過去の予測を窓の中心の点に補正する。
【0028】
多項式フィッティングオプションに関して、カルマンのフィルタベースの解決策は、異なる観測ノイズ値に適合する可能性があるが、入力値に対するフィルタの適合時間に左右され得る。
【0029】
実装オプションによれば、加速度は、速度ベクトルの検出及び速度ベクトルの経時的変化に基づいて計算される。
【0030】
実装オプションによれば、加速度は1つ以上のセンサによって直接検出され、そのような1つ以上のセンサは加速度計である。
【0031】
本方法の様々な想定し得る実施形態によれば、異常を検出するための基礎として、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の前述の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点のそれぞれに関して、直線加速度及び/又は角加速度及び/又は直線速度及び/又は角速度及び/又はデカルト座標の位置及び/又は極座標もしくは角度座標の位置が計算又は検出される。
【0032】
方法の実施形態によれば、加速度ベクトルを検出及び/又は計算する前述のステップは、少なくとも2つのセンサによって、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも2つの点のそれぞれの加速度ベクトルを検出及び/又は計算するステップと、次いで、センサが位置される点間の中間点に対応する、マスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の加速度ベクトルを計算するステップとを含む。
【0033】
例えば、「グリッパ」マスター装置では、そのような中間点は、「グリッパ」マスター装置の1つ以上のセンサによって記述される開放外周円弧上に位置され得る。
【0034】
制御点が1つしかない場合、6自由度、すなわち、位置の3自由度及び方向の3自由度を検出することができる。
【0035】
2つの制御点が設けられる場合、マスター装置本体の開閉角度を表わす把持に関連する第7の自由度を検出することも可能である。
【0036】
一実施形態によれば、本方法は、前述のマスター装置及びスレーブ装置を備えるとともに制御ユニットを更に備える、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムとの関連で実行される。
【0037】
マスター装置は、機械的に接地されず、外科手術中に外科医によって手で保持されるようになっているとともに、外科医の手動コマンドを検出してそれぞれの第1の電気コマンド信号を生成するように構成される。
【0038】
少なくとも1つのスレーブロボットアセンブリは、マスター装置によって制御される態様で、患者の解剖学的構造に作用するように構成される少なくとも1つのスレーブ外科用器具を備える。
【0039】
コンピュータを備えた制御ユニットは、マスター装置から前述の第1の電気コマンド信号を受信し、第1の電気コマンド信号に基づいて第2の電気コマンド信号を生成し、第2の電気コマンド信号をスレーブロボットアセンブリに供給して、少なくとも1つのスレーブ外科用器具を作動させるように構成される。
【0040】
更に、制御ユニットは、検出及び/又は測定された加速度ベクトル及び/又は関連する経時的変化に表わす少なくとも第3の電気信号を受信するために、前述の1つ以上のセンサに動作可能に接続されるとともに、少なくとも1つの検出可能な異常を計算及び検出する前述のステップを実行するように構成される。
【0041】
実装オプションによれば、前記第3の電気信号は前記第1の電気信号に対応する。
【0042】
方法の実施形態によれば、測定及び/又は検出する前述のステップは、遠隔操作のためのロボットシステムと関連付けられ、所定の点に所定の軸及び原点を有する基準座標系に関して実行される。
【0043】
例えば、予め設定された点に原点Oを有する。3つのデカルト座標x、y、zの所定のセットが規定される。
【0044】
特に、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムが操作コンソールを備える方法の実施形態によれば、前述の基準座標系はロボットシステムコンソールと一体である。
【0045】
そのような操作コンソールが外科医が手術中に座るための少なくとも1つの座面を備える少なくとも1つの手術用椅子を備える、方法の実施形態では、前述の基準座標系が、前述の少なくとも1つの手術用椅子、例えば手術用椅子の座部と一体である。基準座標系は、手術用椅子の座部のための支持体と一体であってもよく、座部は、座部のための支持体に対して回転可能である。
【0046】
一実施形態によれば、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムは、所定の追跡ボリューム内のマスター装置の入力位置及び方向を検出するのに適した追跡システムを備え、それにより、スレーブ外科用器具の作動は、マスター装置によって外科医により与えられる手動コマンド及び/又は追跡ボリューム内のマスター装置の位置及び方向に依存する。
【0047】
方法の実施形態では、前記操作コンソールは、スレーブ作業空間を表示する少なくとも1つのディスプレイを備える。
【0048】
操作コンソールは、スレーブ装置から離れたコンソールであってもよく、スレーブ装置と共に手術室に配置されたコンソールであってもよい。
【0049】
方法の実施形態によれば、測定及び/又は検出する前記ステップは、1つ以上の磁気センサによって実行される。
【0050】
磁気センサのそれぞれは、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも1つの点のそれぞれに配置され、遠隔操作外科手術のためのロボットシステムの一部に拘束された磁場発生器によって生成された磁場の局所値を検出するように構成される。
【0051】
そのような場合、基準座標系は、前述の磁気エミッタに由来し、3つの直交軸x、y、zを有する。
【0052】
実装オプションによれば、前記磁場発生器は、サイス(sais)追跡システムに属する。
【0053】
他の方法実施形態によれば、測定及び/又は検出する前述のステップは、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムと関連付けられた及び/又はロボットシステムに拘束された少なくとも1つの光学センサ又はカメラによって実行される。複数のカメラを立体構成に含めることができる。
【0054】
そのような場合、前述の基準座標系は、光学センサ又はカメラの内部基準座標系である。
【0055】
上記で開示された実施形態の異なる可能な実装オプションによれば、前述の少なくとも1つの光学センサ又はカメラは、手術用椅子に拘束され、及び/又は一体化され、及び/又は外科医と一体になるように、外科医によって着用可能な支持体に取り付けられる。
【0056】
マスター装置が、共通の軸に対して相対的に回転又は並進するように拘束された2つの剛性部分を備える手持ち式の拘束されないマスター装置である方法の実施形態によれば、検出及び/又は計算する前述のステップは、それぞれのセンサによって、マスター装置の前述の剛性部分のうちの1つに属する又はそれと一体である第1の点と、装置の前述の剛性部分のうちの他の1つに属する又はそれと一体である第2の点との少なくとも2つの検出可能点の加速度ベクトル及び/又は加速度ベクトルの経時的変化を検出及び/又は計算するステップを含む。
【0057】
実際、本方法は、例えば、マスター装置の前述の剛性部分のうちの少なくとも1つ(又は両方)の長手方向延在部に直交する共通の横軸に対して回転するように弾性的に拘束された2つの剛性部分を有する「グリッパ」構造を有するマスター装置(例えば、
図1及び
図2に示す)に適用することができる。
【0058】
本方法は、例えば、2つの剛性部分を有する「ペン」構造を有するマスター装置であって、2つの剛性部分がマスター装置の前述の部分の少なくとも1つ(又は両方)の長手方向延在部と一致する長手方向軸に沿って並進するように弾性的に拘束されたマスター装置に適用することもできる。
【0059】
本方法の様々な想定し得る実施形態によれば、前記計算するステップは、前記少なくとも2つの検出可能点の加速度ベクトル及び/又は速度ベクトルを計算するステップ、又は前記少なくとも2つの検出点のうちの1つの加速度ベクトル及び/又は速度ベクトルを計算するステップを含む。
【0060】
更なる実装オプションによれば、前記計算するステップは、以下の更なる点、すなわち、前記2つの検出点間の中間点及び/又は前記マスター装置の重心、及び/又はマスター装置回転関節、及び/又はマスター装置角柱関節の少なくとも1つの加速度ベクトル及び/又は速度ベクトル及び/又は位置ベクトルを計算するステップを更に含む。
【0061】
マスター装置本体が2つのチップ又は自由端を備え、第1のチップ又は自由端がマスター装置の剛性部分の一方に属する又はそれと一体であり、第2のチップ又は自由端が装置の剛性部分の他方に属する又はそれと一体である方法実施形態によれば、前述の2つの検出可能点は、マスター装置の前述の2つのチップ又は自由端のそれぞれに対応する、及び/又はそれらと関連付けられる。
【0062】
検出可能な異常/障害がマスター装置の不随意の落下である方法実施形態によれば、本方法は、以下のステップ、すなわち、
-2つの検出点のうちの少なくとも1つの、重力軸と平行な垂直加速度成分ayを検出及び/又は計算するステップと、
-検出又は計算された垂直加速度成分ayを垂直加速度閾値ay_thrと比較するステップと、
-ay>ay_thrの関係に従って、前述の垂直加速度成分ayが前述の垂直加速度閾値(ay_thr)よりも大きい場合、前記マスター装置の不随意の落下に関連する異常/障害を特定するステップと、
を含む。
【0063】
実装オプションによれば、垂直加速度閾値ay_thrは、重力加速度gに等しい、又はg付近の値である(例えば、gの80%)。
【0064】
一実装オプションによれば、マスター装置の前述の少なくとも2つの検出点のそれぞれの加速度ベクトルは、冗長性及び/又は更なる検証を与えるために計算される。
【0065】
実際、前述の少なくとも2つの点の計算された加速度測定値の一貫性は、異常決定の推定を改善することを可能にし、推定プロセスに必要な時間窓を更に削減する。
【0066】
2つの点の加速度の計算された測定値の不一致は、マスター装置の回転による落下、又は2つのセンサ間の剛性拘束の破損と関連付けられ得る。
【0067】
マスター装置の同じ機械的部分に2つのセンサを装着する特定のケースでは、測定の挙動が純粋な冗長性である。
【0068】
前述したものを参照すると、実装オプションによれば、外科医の手からのマスター装置の落下を検出するために、下方に向くマスター装置の加速度及び/又は速度の成分の情報に依存することが可能である。
【0069】
前述したものを参照すると、一実装オプションによれば、マスター装置は、共通の軸を中心に回転するように互いに拘束された2つの剛性部分を有し、前記剛性部分は、相対的に離れるように弾性的に付勢され、外科医の手からのマスター装置の落下を検出するために、マスター装置の不随意の開放を検出すること、すなわち、弾性付勢動作によって決定された2つの剛性部分間の相対的な離間移動を検出することに依存することが可能である。不随意の開放の検出は、角速度、及び/又は角加速度、及び/又は線速度、及び/又は線加速度に関する情報によって得ることができる。
【0070】
実装オプションによれば、マスター装置の落下は、2つのセンサの加速度間の関係に関する情報を使用して検出され、前記2つのセンサは、マスター装置の2つの剛性部分とそれぞれ関連付けられる。例えば、2つのセンサの加速度間の相関関数は、加速度間の相対方向を比較することができる。実装オプションによれば、相関関数は、マスター装置の落下の表示を与えるために、それぞれのセンサの2つの加速度ベクトル間のスカラー積を処理し、そのような実装オプションでは、2つのセンサ間のスカラー積の位置又は位置の経時的変化の多項式推定器を用いることが可能であり、前記多項式推定器は、マスター装置の落下事象でピークを有する。
【0071】
図9に概略的に示されているような実装オプションによれば、マスター装置は、共通の軸を中心に回転するように拘束された2つの剛性部分を有し、前記剛性部分は、2つの現象、すなわち、(i)マスター装置の不随意の開放、及び(ii)マスター装置の慣性回転が起こるマスター装置の落下中に相対的に離れるように弾性的に付勢される。
したがって、それぞれの(検出及び/又は計算された)センサの加速度ベクトルは、下方の第1の成分と、マスター装置の慣性回転に起因し得る第2の成分との、制限された持続時間の少なくとも1つの過渡を有する(場合によっては落下の全持続時間にわたっても)。
【0072】
そのような実装オプションでは、2つの加速度ベクトル間の検出された角度は、落下で非常に小さく、例えば最小であり、各センサの加速度ベクトル間の差によって与えられる残留振動の評価は非常に高い(例えば、最大)。換言すれば、非常に低い(例えば、最小)ときの2つのセンサの加速度ベクトル間の角度は、両方が下向きであるときの特定の場合において加速度間で高度の一貫性を示し、2つの加速度ベクトル間の比較(差)の高い度合いの変動は、落下事象を示す。
【0073】
一実装形態のオプションによれば、マスター装置は、共通の軸を中心に回転するように拘束された2つの剛性部分を有し、前記剛性部分は、2つの現象、すなわち、(i)マスター装置の不随意の開放、及び(ii)マスター装置の慣性回転が起こるマスター装置の落下中に、相対的に移動するように弾性的に付勢され、したがって、それぞれの(検出及び/又は計算された)センサの速度ベクトルは、下向き第1の成分と、マスター装置の慣性回転に起因し得る第2の成分との、制限された持続時間の少なくとも1つの過渡を有する(場合によっては落下の全持続時間にわたっても)。
【0074】
そのような実装オプションでは、2つの速度ベクトル間の検出された角度は、落下において非常に小さく、例えば最小であり、それぞれのセンサの速度ベクトル間の差によって与えられる残留振動の評価は非常に高い(例えば、最大)。換言すれば、非常に低い(例えば、最小)ときの2つのセンサの速度ベクトル間の角度は、両方が下向きであるときの特定の場合において速度間で高度の一貫性を示し、2つの速度ベクトル間の比較(差)の高い度合いの変動は、落下事象を示す。
【0075】
検出可能な異常/障害がマスター装置の過度の加速度(例えば、ユーザによる取り扱いにおいて付与される)である方法実施形態によれば、本方法は、以下のステップ、すなわち、
-前述の少なくとも2つの検出点のうちの少なくとも1つの加速度ベクトルモジュラスatotを検出及び/又は計算するステップと、
-検出及び/又は計算された加速度ベクトルモジュラスatotを総加速度閾値atotjhrと比較するステップと、
-atot>atotjhrの関係に従って、前述の加速度ベクトルモジュラスatotが前述の総加速度閾値atotjhrよりも大きい場合には、マスター装置の過度の加速度に関連する異常/障害を検出するステップと、
を含む。
【0076】
一実装オプションによれば、前記垂直加速度閾値ayjhrは、前記総加速度閾値atotjhrよりも低い。
【0077】
例えば、「atot=3・ay」という関係を用いることができる。
【0078】
一実装オプションによれば、総加速度閾値atotjhr(モジュラス)は、2g~5gの範囲に属する。
【0079】
一実施形態によれば、マスター装置の両方の検出点の加速度が計算される。
【0080】
そのような実施形態の異なる想定し得る実装オプションによれば、前述の検出点のうちの少なくとも1つが閾値加速度を超える場合、又は仮想中間点が閾値加速度を超える場合、又は前述の2点間の相対加速度が閾値を超える場合、警報トリガ条件が発せられる。
【0081】
実装オプションによれば、前述の総加速度閾値atotjhrは、マスター装置とスレーブ装置との間の動きのスケールファクタの減少に伴って、及び/又はユーザによって選択されて遠隔操作されたマスター-スレーブ移動に適用されるスケールファクタの減少に伴って増大するように規定される。
【0082】
適用例によれば、ロボット超微細手術の分野では、スケールファクタは、5倍~20倍の範囲内で規定され得る。明らかに、そのようなスケールファクタ(例えば、スレーブ移動は20倍にスケーリングされる)が大きいほど、加速移動を可能にするためにトリガ閾値が大きくなる。
【0083】
例えば、atot_thr1は、スケールファクタS1に関して選択された閾値であり、Tは加速度を認識し、したがって遠隔操作を中断するのにシステムが要する時間である。そのような場合、D=1/2S1 atot_thr1 T2に等しいスレーブの最大無制御移動が許容される。次に、スケールファクタS2について、同じ移動距離D及び時間Tを設定すると、atot_thr2=atot_thr1S1/S2である。
【0084】
典型的な実装オプションでは、スケールファクタは、特定の状況に応じてユーザによって設定することができ、スレーブの移動中であってもユーザによって変更、リセットすることができることに留意すべきである。
【0085】
マスター装置がユーザの手でしっかりと押圧又は保持されないときに少なくとも角度的にそのような部分を開く傾向がある弾性関節で互いに接続された2つの剛性部分から成る方法の実施形態によれば、検出可能な異常/障害は、マスター装置の不随意の開放である。このような状況は、特に、例えばマスター装置が手から離れてしまったために外科医が制御を失った場合に起こる可能性があり、落下するマスター装置は、関節のばねに起因してスナップ留めによって開く。
【0086】
そのような場合、本方法は、以下のステップ、すなわち、
-(前述のように)前記2つの検出可能点のそれぞれの加速度ベクトル及び/又はそれぞれの経時的変化を検出及び/又は計算するステップと、
-前述の検出及び/又は計算された加速度ベクトルに基づいて、マスター装置の2つの剛性部分の開放角加速度ωを計算するステップと、
-計算された開放角加速度ωを、弾性関節の弾性剛性に依存する閾値角速度ω_thrと比較するステップと、
-関係ω>ω_thrに従って、前述の計算された開放角加速度ωが前述の閾値角加速度(ω_thr)よりも大きい場合に、マスター装置の不随意の開放に関連する異常/障害状態を特定するステップと、
を含む。
【0087】
実装オプションによれば、閾値角加速度値ω_thrは、弾性関節に関連付けられたばねの弾性剛性に依存し、剛性部分間の開放度の増大に伴って減少する。
【0088】
他の実装オプションによれば、計算、比較、及び特定の前述のステップは、角加速度ではなく、角速度又は線速度に関して実行される。
【0089】
例えば、別の実装オプションによれば、マスター装置がユーザの手でしっかりと押圧又は保持されないときに少なくとも角度的にそのような部分を開く傾向がある弾性関節内で互いに接続された2つの剛性部分から成り、検出可能な異常/障害がマスター装置の不随意の開放である場合に再び注意を向けると、方法は、以下のステップ、すなわち、
-2つの検出可能点のそれぞれの位置ベクトル及びそれぞれの経時的変化を検出するステップと、
-検出された位置ベクトルの経時的変化に基づいて、前述の2つの検出可能点間の距離の経時的変化を計算するステップと、
-前述の距離の経時的変化に基づいて、マスター装置の直線開放速度vを計算するステップと、
-計算された開放直線速度vを閾値直線速度vthrと比較するステップと、
-v>vthrである場合に前記異常状態を特定するステップと、
を含む。
【0090】
マスター装置が2つの剛性部分を有し、2つの剛性部分がマスター装置の前述の部分の少なくとも1つの長手方向延在部と一致する長手方向軸に沿って並進するように弾性的に拘束される方法の実施形態によれば、本方法は、以下のステップ、すなわち、
-2つの検出可能点のそれぞれの加速度ベクトル及び/又はそれぞれの経時的変化を検出及び/又は計算するステップと、
-前記検出及び/又は計算された加速度ベクトルに基づいて、マスター装置の2つの剛性部分の離間/接近直線加速度を計算するステップと、
前記計算された離間/接近直線加速度を、前記拘束の弾性剛性に依存する閾値直線加速度と比較するステップと、
-計算された離間/接近直線加速度が閾値直線加速度よりも大きい場合、マスター装置の不随意の開放に関連する異常/障害状態を特定するステップと、
を含む。
【0091】
方法の実施形態によれば、マスター装置の不随意の落下、マスター装置の過度の加速度、並びにマスター装置の突然の及び/又は不随意の開放の前述の異常が全て同時に検出される。
【0092】
そのような実施形態は、最大限の想定し得る安全性を目的として、広範囲の制御を得ることを可能にする。
【0093】
好ましい実装オプションによれば、マスター装置の不随意の落下、マスター装置の過度の加速度、及びマスター装置の突然の及び/又は不随意の開放の前述の異常の検出は、マスター装置がマスター装置に割り当てられた所定の作業ボリューム内にあるという更なる拘束を受ける。そのような作業ボリュームは、遠隔操作中に外科医によって取られた位置の周りに配置されるように画定することができる。
【0094】
一実施形態によれば、本方法は、マスター装置に属する又はマスター装置と一体である少なくとも1つの点の位置を検出する更なるステップを含む。そのような場合、許容限界外に位置するマスター装置の検出に関連する更なる異常/障害は、絶対基準座標系X、Y、Zにおける、限界面に対するマスター装置に属する又はそれと一体の少なくとも1つの点の検出された位置の比較を通じて検出することができる。
【0095】
そのような限界面は、幾つかの想定し得る実装オプションでは、ボール又はボックス(平行六面体)、又は一般に、ポリトープ又は半空間の凸状交差部である。
【0096】
外科手術又は医療遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステムのマスター装置で特定された異常/障害を管理するための方法も本発明に含まれる。
【0097】
そのような方法は、前述の実施形態のいずれかに係る少なくとも1つの異常/障害状態を特定及び認識及び/又は区別するための方法を実行するステップを含む。
【0098】
そのような方法は、前述の異常/障害の少なくともいずれかが決定される場合、患者の安全を保護するために、遠隔操作及びスレーブ装置の外科用器具(又は「エンドエフェクタ」の動きを直ちに中断するステップを更に含む。
【0099】
少なくとも1つのマスター装置と、少なくとも1つのスレーブ装置と、制御ユニットとを備える医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムが、本発明に更に含まれる。
【0100】
少なくとも1つのマスター装置は、機械的に接地されず、外科手術中に外科医によって手で保持されるようになっているとともに、外科医の手動コマンドを検出してそれぞれの第1の電気コマンド信号を生成するように構成される。
【0101】
少なくとも1つのスレーブ装置又はスレーブロボットアセンブリは、それぞれの少なくとも1つのマスター装置によって制御される態様で、患者の解剖学的構造に作用するように構成された少なくとも1つのスレーブ外科用器具を備える。
【0102】
コンピュータを備えた制御ユニットは、マスター装置から前述の第1の電気コマンド信号を受信し、第1の電気コマンド信号に基づいて第2の電気コマンド信号を生成し、第2の電気コマンド信号をスレーブロボットアセンブリに供給して、少なくとも1つのスレーブ外科用器具を作動させるように構成される。
【0103】
制御ユニットは、既に開示された実施形態のいずれかに係る少なくとも1つの異常/障害状態を特定及び認識及び/又は区別するための方法を実行するように更に構成される。
【0104】
実装オプションによれば、制御ユニットは、異常/障害を管理するための方法の前述の実施形態のいずれか1つに従って、特定された異常/障害を管理するための方法を実行するように更に構成される。
【0105】
システムの実装オプションでは、マスター装置本体は、それぞれの所定の位置に1つ以上のセンサを受け入れるための座部を備える。
【0106】
システム実施形態によれば、マスター装置本体は使い捨てであり、したがって一般にはプラスチックで作られる。
【0107】
別のシステム実施形態によれば、マスター装置本体は、金属(例えば、チタン)で作られ、滅菌可能である。
【0108】
以下、
図1~
図8を参照して、既により一般的な用語で規定された方法の幾つかの実施形態を、非限定的な例として更に詳述する。
【0109】
マスター装置の異常チェックは、実際の動きに対して最小の待ち時間で介入するために、遠隔操作のためのロボットシステムに導入される。
【0110】
一実施形態において、実行される一連の動作は、例えば加速に関して、マスター装置の全ての移動自由度に関する情報の取得、次いで、取得された信号のフィルタリング、マスターの1つ以上の異常チェックの評価、実行されるチェックに基づくマスター装置の任意の障害又は異常の検出、ロボットシステムの機械状態の制御ユニットと、ユーザインタフェースUlと、スレーブ装置の端点との通信を含む。
【0111】
本方法の幾つかの実施形態(既に前述した)で実行される異常チェックの更なる詳細は、非限定的な例として以下に提供される。
【0112】
マスター装置の落下(「マスター落下」)
このチェックの目的は、外科医の手からのマスター装置の不随意の落下を特定することである。そのようなチェックは、(感圧面などの他の量を検出するための更なるセンサを必要とせずに)マスター装置の加速度(又は位置)の検出に基づく。
【0113】
この原理は、加速度を検出すること、又は位置情報から加速度を(ノイズの影響さえも)導出すること、及び重力ベクトルの(下向きの)方向に沿った加速度の瞬時値を計算することにある。
【0114】
そのような加速度が重力加速度に匹敵する閾値に達すると、このチェックに関して異常警告が発せられる。
【0115】
以下では、グローバル基準系において、重力場が-Y軸に沿って方向されると仮定する。
【0116】
例えば、加速度推定は、Y軸の多項式フィッティングの使用、次いでその係数を操作することによる多項式の二重導出に基づく。
【0117】
使用することができる異なるフィッティング技術の中でも、例えば、Solezky-Golayフィルタに基づく解決策を挙げることができ、これは、2W+1サンプルの窓を取得し、それに定数行列を乗算することから動作可能に成るFIR(有限インパルス応答)フィルタのように導出された多項式を表わすことを特徴とする。そのような行列は、2つのパラメータ、すなわち窓のサイズ(半値幅Wを有する)及び多項式の次数に依存する。
【0118】
窓のサイズは、サンプリング時間、計算における所望の待ち時間、及び信号雑音に依存する。
【0119】
多項式の次数は、位置信号の性質に依存する。
【0120】
フィルタは、例えば、文献で知られている関係に従って表現することができるカットオフ周波数を有するローパスフィルタである。
Cutoff(Hz)=Dt(Order+1)/(3.2Window-4.6)
【0121】
実装オプションによれば、マスター装置は2つの検出位置(すなわち、2つのセンサ)を有する。このような場合、いずれか1つでも閾値を超えると、異常警告が発せられる。
【0122】
前述のアルゴリズムでは、推定に使用される窓が広いほど、推定自体が良好になることに留意すべきである。一方、窓が狭いほど、反応時間は速くなる。
【0123】
前述のニーズ間の適切な妥協点を選択するための基準は、マスター装置の直感的でない望ましくない移動(例えば、マスターの落下動作)中に制御対象スレーブ装置が移動する空間の量である。非直感的な移動中に制御されたスレーブ装置によって経路に許容される最大距離をDと規定し、この状況でのマスターの最大速度をMと規定すると、最大窓幅Wは以下の関係によって表される。
W=2D/M/T+1
ここで、Tはサンプリング時間である。
【0124】
最大加速度の超過
別のタイプの異常チェックは、任意の方向に沿ったマスター装置の過剰な加速度である、非直感的な動きに関連する。この事象は、「マスター落下」の場合について前述したのと同じ技術を使用して、成分ごとの加速度成分の検出又は推定に基づいて特定することができる。
【0125】
この場合、3つの成分のベクトルモジュラスを閾値と比較して、異常警告を発する。
【0126】
マスター装置の突然の開放
把持に関する自由度を有するマスター装置の場合、不随意の開放、すなわち、例えば、術者がマスター装置の制御を失う異常な状況、又はマスター装置の把持の自由度が開閉時に弾性的に付勢されるマスター装置の把持を示すと考えられる、マスター装置の把持の起こり得る突然の開放(すなわち、術者が自発的に制御する通常の条件で期待できるものに対して過度に速い)に対して更なるチェックを実行することができる。
【0127】
開放速度の推定は、例えば、「マスター落下」の場合について前述したのと同じ多項式フィッティングを使用して行われるが、この特定の条件に関連する異なるパラメータを用いて行われる。
【0128】
フィッティングから得られた開角(又は「把持角度」の推定速度は、この異常の評価に使用される。
【0129】
ある場合では、開放加速度が推定され、開放加速度の推定は、例えば、「マスター落下」の場合について前述したのと同じ多項式フィッティングを使用して行われるが、この特定の条件に関連する異なるパラメータを用いて行われる。開放加速度は、予圧弾性(例えば、回転するように拘束された2つの剛性部分の間にばねを含めることができる)に依存する。フィッティングから得られた開角(又は「把持角度」の推定加速度が、この異常の評価に使用される。
【0130】
空間限界外にあるマスター装置
別の異常チェックは、術者の動きに対して規定された空間限界に関連する。これらの限界は、特定の手術標的の有用性の考慮事項、及びマスター装置の位置を計算するために使用されるセンサシステムの制限に基づいて規定される。
【0131】
そのような限界に関連して、2つの主要なシナリオを特定することができる。すなわち、作業空間の中心に中心付けられる球、又は平行六面体の表面、又は点がその中にあるか否かを計算することが計算上効率的である幾何学的形状である。
【0132】
そのようなボリュームの限界にマスター装置が達すると、異常通知がユーザに提供される。
【0133】
拘束された機械的インタフェースを有するマスター装置との関連で、これらの限界は、機械的インタフェースの限界に依存する。
【0134】
拘束されない(接地されていない)機械的インタフェースを有するマスター装置との関連で、光学的検出が考慮される場合、作業空間は、追跡される特徴を特定するのに必要な最小分解能を考慮に入れて構築された、各カメラの円錐体の交点である。磁気追跡システムを考慮すると、作業空間には磁場の減衰に依存する限界がある。
【0135】
したがって、要約すると、方法実施形態によれば、ベクトル加速度、すなわちマスター装置のモジュラス及び方向、直線加速度又は角加速度を測定又は計算することによって、少なくとも以下の情報が取得される。
-マスター装置落下:加速度がg又はg付近(例えば、gの80%)であって下方に向けられている場合、スレーブも下方に、したがっておそらく患者に向かって進むのを防ぐために、ロボットシステムは直ちに停止する;
-マスター装置は、任意の方向に過度の加速度(例えば、3g以上)を有し、この場合も、ロボットシステムは直ちに停止する;
-マスター装置の意図しない開放:マスター装置の2点の相対加速度が前述の2点間の弾性戻り加速度よりも大きい場合(その間に、関節と、関節を開くようになっているばねとがある)。
【0136】
マスター装置のベクトル加速度は、1つ以上の加速度計によって直接検出されるか、又は位置ベクトルの変化の監視から導出され、次に検出される。
【0137】
前述したように、本方法は、位置及び方向の測定によって特徴付けられる、外科遠隔操作のロボットシステムのためのマスター装置インタフェースの広範なクラスに関する。
【0138】
特に、例えば、ヒンジ又はヒンジ関節で閉じることができる2つの部分又はチップを有するマスター装置が考えられる。各部分は、直接測定又は差し引かれる位置測定値に関連付けられる。
【0139】
そのような場合、マスター装置の2つの部分に対して実行された測定は、検出された最大12自由度、すなわち、第1のマスター装置部分に関する3つの位置座標及び3つの方向値、第2のマスター装置部分に関する3つの位置座標及び3つの方向値を与えることができる。
【0140】
そのような検出は、マスター装置の機械的構造の7自由度を常に検出することを可能にする(また、冗長性も有する)。
【0141】
図1、
図2、
図7、及び
図8に示す例は、「グリッパ」タイプのマスター装置を参照し、これは、ヒンジ関節とグリッパの2つのアーム(数回言及したマスター装置の「2つの部分」に対応する)のチップとの間の中央付近で把持ハンドの指の力の印加を伴う。このタイプのマスター装置は、3つの方向自由度、3つの位置自由度、及びグリッパアーム間の開放の合計7つの自由度を特徴とする。すでに説明したように、グリッパアームの位置を検出するために光学技術又は磁気技術を使用することができる。
【0142】
図1及び
図2は、グリッパアームのチップT1、T2の近くに配置された2つのセンサS1、S2を有するマスター装置を示す。
【0143】
図1では、ヒンジ関節OJは、左側にあり、2つの剛性アーム又は部分180、190の2つの軸z1及びz2に平行な軸を有するアームの回転を可能にする。軸x1及びx2はアームの方向であり、関節から離れる方向である。
【0144】
2つのセンサのそれぞれの位置及び回転測定値は、位置の3次元ベクトル(したがって、p1及びp2として示す2つの位置ベクトルを得る)及び各アームの回転行列(したがって、R1及びR2として示す2つの回転行列を得る)によって表すことができる。次いで、各センサは、それぞれの位置及び回転情報、(p1、R1)及び(p2、R2)に関連付けられる。
【0145】
回転は3次元直交サブグループSO(3)に関連付けることができ、したがって自由度の数は常に3であることに留意すべきである(表現のタイプにかかわらず、本明細書に例示されるように9つの数を有する回転行列に基づくか、3つのオイラー角(3)に基づくか、四元数に基づくかにかかわらず)。
【0146】
アームの基準点(又はチップ)の配置(すなわち、姿勢、すなわち、位置及び回転)は、例えば、2つの位置p1及びp2の平均pMとして計算された位置と、回転の平均としての回転(すなわち、R1及びR2のそれぞれの要素の平均を要素として有する行列RMである)とを用いて、マスター装置全体の配置(すなわち、姿勢、すなわち、位置及び回転)を計算することを可能にする。グリッパの開角aは、チップとマスター装置アームの既知の長さとの間の距離、すなわち、関節OJとセンサS1、S2が設けられた基準点のそれぞれとの間の既知の距離を使用して計算することができる(センサが関節OJから等距離の点に配置されると仮定すると、前述の2つの距離は等しく、本明細書ではDと呼ばれる)。
【0147】
例えば
図3に示す実装オプションによれば、前記マスター装置310が2つの剛性部分380,390を有し、2つの剛性部分380,390は、マスター装置310の前述の部分380,390の少なくとも一方又は両方の長手方向延在部と一致する長手方向軸に沿って並進するように、部分375、例えば角柱関節で弾性的に拘束されて、好ましくは互いに同一直線上にある。例えば、部分375を径方向に押すことにより、2つの部分380,390の相対的な距離が決定される。
【0148】
そのような場合、既に観察されたように、本方法は、前記2つの検出可能点のそれぞれの加速度ベクトル及び/又はそれぞれの経時的変化を検出及び/又は計算するステップと、前記検出及び/又は計算された加速度ベクトルに基づいて、弾性的に並進するように拘束されたマスター装置の2つの剛性部分の並進の相対直線加速度を計算するステップと、前記計算された並進の相対直線加速度を、拘束の弾性剛性に依存する閾値直線加速度と比較するステップと、計算された並進の相対直線加速度が閾値直線加速度よりも大きい場合、最終的に異常状態を特定するステップとを含む。
【0149】
閾値直線加速度は、2つの剛性部分間の接近加速度閾値及び/又は離間加速度閾値とすることができる。例えば、動作状態にあるとき、マスター装置本体に対する径方向の圧力作用は、2つの剛性部分を遠ざけ、外科用スレーブ器具に把持作用(開閉)を与える。
【0150】
好ましくは、並進運動において互いに拘束されたマスター装置の2つの剛性部分の並進移動の相対直線加速度を計算することを提供するこの実装オプションは、2つの剛性部分の間に回転関節を有するマスター装置の不随意の開放に関して前述した実装のように、マスター装置の制御されていない挙動の指標となる異常状態を特定することを可能にする。
【0151】
図4に示す実施形態によれば、ロボット遠隔操作外科手術システム400は、割り当てられた作業空間415,425を有する少なくとも1つの拘束されないマスター装置410,420(図示の例では、2つの概略的に示された拘束されないマスター装置410,420が、外科医450によって手に保持されて概略的に示される)と、作業空間415,425と一体のコンソール455と、制御ユニット430と、スレーブ装置440(図示の例では、2つのスレーブ外科用器具460,470が示される)とを備える。
【0152】
図4bisに示される実施形態によれば、ロボット遠隔操作外科手術作システム400は、少なくとも1つの拘束されないマスター装置(図示の例では、作業空間415内で外科医450によって手で保持された概略的に示される2つの拘束されないマスター装置が示される)と、コンソール455と、スレーブ装置440(図示の例では、2つのスレーブ外科用器具460,470が示される)とを備え、コンソール455は、作業空間415と一体の一般基準座標系MFOを規定し、各マスター装置は、局所基準座標系MFM1及びMFM2を規定する。
【0153】
図に示される方法で使用される座標系に関して、MFOとして示される基準座標系は、マスター装置の一般的な基準座標系(例えば、マスター装置の作業空間に関連付けられる)であり、MF#1及びM2(
図1)として示される基準座標系は、マスター装置の2つの部分と一体である局所基準座標系であり、基準座標系MFM(
図1)、MFM1及びMFM2(
図4及び
図4bis)は、マスター装置と一体化された局所基準座標系(例えば、マスター装置と一体化されている2つのセンサが配置されている点間の仮想中間点に関連付けられる)であり、基準座標系SFOは、スレーブ装置のための一般的な基準座標系(例えば、スレーブ装置の作業空間に関連付けられている)であることに留意すべきである。
【0154】
図4terに示す実施形態によれば、ロボット遠隔操作外科手術システム用のマスターコンソール455は、スクリーン457と、作業ボリューム415と一体の追跡源456とを備え、2つの拘束されないマスター装置410,420が作業ボリューム415内に示されており、各拘束されないマスター装置410,420は、データリンク411,421を介してコンソール455に配線されている。
【0155】
図5、
図6、
図7、及び
図8は、拘束されないマスター装置の少なくとも1つの点の加速度情報に基づいて特定することができる幾つかの異常を示している。
【0156】
特に、
図5は、作業空間又は作業ボリューム515内で割り当てられ、2つのセンサ585,595又はマーカ585,595を備えた拘束されない(接地されていない)マスター装置510を示しており、マスター装置510は、閾値を超える垂直加速度ayを受けて示されている。
【0157】
図6は、作業空間又は作業ボリューム515内で割り当てられ、それぞれの部分580,590上に2つのセンサ585,595又はマーカ585,595が設けられた拘束されない(接地されていない)マスター装置510を示し、マスター装置510は閾値を超える加速度atotを受けて示されている。
【0158】
図7は、作業空間又は作業ボリューム515内で割り当てられた拘束されない(接地されていない)マスター装置510を示し、マスター装置510の本体は、共通の軸を中心に相対的に回転するように弾性関節575が拘束された2つの剛性部分580,590によって形成され、前記2つの剛性部分580,590のそれぞれにはセンサ585,595又はマーカ585,595が設けられ、マスター装置510は不随意の開放を受けて示されている(図示のこの実施形態では、弾性関節575は、弾性関節575の弾性に依存する角加速度ωで、剛性部分580,590の自由端を遠ざけるように付勢する)。角加速度ωの検出に代えて(又は加えて)、直線加速度を検出することができる。
【0159】
図8は、作業空間又は作業ボリューム515内で割り当てられ、それぞれの部分580,590上に2つのセンサ585,595又はマーカ585,595が設けられた拘束されない(接地されていない)マスター装置510を示し、マスター装置510は、一般基準座標系MFOの各軸上の角加速度ωを受けて示されている。
【0160】
マスター装置と、少なくとも1つのスレーブ装置と、制御ユニットとを備える、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステム400について以下に説明する。
【0161】
マスター装置(110;310;410,420;510)は、機械的に接地されず、外科手術中に外科医450によって手で保持されるようになっているとともに、外科医の手動コマンドを検出してそれぞれの第1の電気コマンド信号を生成するように構成される。
【0162】
少なくとも1つのスレーブ装置440、又はスレーブロボットアセンブリは、マスター装置によって制御される態様で、患者の解剖学的構造に作用するように構成された少なくとも1つのスレーブ外科用器具460、470を備える。
【0163】
コンピュータを備えた制御ユニットは、マスター装置から前述の第1の電気コマンド信号を受信し、第1の電気コマンド信号に基づいて第2の電気コマンド信号を生成し、第2の電気コマンド信号をスレーブロボットアセンブリに供給して、少なくとも1つのスレーブ外科用器具を作動させるように構成される。
【0164】
制御ユニットは、以下、すなわち、マスター装置の不随意の落下及び/又はマスター装置の過度の加速度及び/又はマスター装置の突然の及び/又は不随意の開放、のうちの少なくとも1つを含む検出可能な異常/障害のセットの中から、少なくとも1つの異常/障害状態を特定及び認識及び/又は区別するように構成される。
【0165】
そのような検出可能な異常/障害のそれぞれは、異常が検出された場合に実行される少なくとも1つのシステム状態変化に関連付けられる。
【0166】
少なくとも1つの異常/障害状態を特定及び認識及び/又は区別するために、制御ユニットは、以下の動作、すなわち、
-制御ユニットに動作可能に接続されたロボットシステムの1つ以上のセンサ(S1,S2)によって送信された情報(585,595)に基づいて、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の加速度ベクトルを検出及び/又は計算する動作と、
-前記検出及び/又は計算された加速度ベクトルの少なくとも1つの成分又はモジュラスに基づいて、少なくとも1つの検出可能な異常/障害状態を特定及び認識及び/又は区別する動作と、
を実行するように構成される。
【0167】
ロボットシステムの一実施形態によれば、前述のマスター装置は、弾性関節で相互に接続された2つの剛性部分580,590から成り、弾性関節は、ユーザが手でしっかりと押圧又は保持されていないときにそのような部分を少なくとも角度的に開く傾向がある。
【0168】
検出されるべき異常は、マスター装置の不随意の開放であり、制御ユニットは、2つの検出可能点のそれぞれの加速度ベクトル及び/又はそれぞれの経時的変化を検出及び/又は計算し、前記検出及び/又は計算された加速度ベクトルに基づいて、マスター装置の2つの剛性部分の開放角加速度を計算し、計算された開放角加速度ωを、弾性関節の弾性剛性に依存するそれぞれの閾値角加速度と比較し、ω>閾値角加速度の関係に従って、前記計算された開放角加速度ωが前記閾値角加速度よりも大きい場合に、マスター装置の不随意の開放に関連する異常状態を特定するように構成される。
【0169】
ロボットシステムの一実施形態によれば、前述のマスター装置が2つの剛性部分380,390を備え、2つの剛性部分380,390は、マスター装置の前述の部分のうちの少なくとも1つの長手方向延在部と一致する長手方向軸に沿って並進するように弾性的に拘束される。
【0170】
制御ユニットは、前記2つの検出可能点のそれぞれの加速度ベクトル及び/又はそれぞれの経時的変化を検出及び/又は計算し、前記検出及び/又は計算された加速度ベクトルに基づいて、マスター装置の2つの剛性部分の離間/接近直線加速度を計算し、計算された離間/接近直線加速度を、拘束375の弾性剛性に依存する閾値直線速度と比較し、前述の計算された離間/接近直線加速度が前述の閾値直線加速度よりも大きい場合、マスター装置の不随意の開放に関連する異常/障害状態を特定するように構成される。
【0171】
ロボットシステムの一実施形態によれば、前述のマスター装置は、弾性関節で互いに接続された2つの剛性部分580,590を備え、弾性関節は、ユーザの手でしっかりと押圧又は保持されないときに少なくとも角度的に前記部分を開く傾向がある。
【0172】
検出されるべき異常はマスター装置の落下であり、制御ユニットは、マスター装置の前述の2つの剛性部分にそれぞれ関連付けられた2つのセンサの加速度間の関係に基づいてマスター装置の落下を検出するように構成される。
【0173】
ロボットシステムの異なる実施形態によれば、制御ユニットは、本明細書に開示されているそのような方法の実施形態のいずれかによる方法を実行することによって、少なくとも1つの異常状態を特定及び認識及び/又は区別するように構成される。
【0174】
ロボットシステムの一実施形態によれば、制御ユニットは、本明細書で開示されるそのような方法の実施形態のいずれかによる方法を実行することによって見出される異常を管理するように構成される。
【0175】
図から分かるように、先に示した本発明の目的は、詳細に上記に開示した特徴により、上記の方法によって完全に達成される。
【0176】
実際、記載された方法及びシステムは、マスター装置の幾つかの可能性のある動作異常/障害、又はマスター装置の可能性のある異常状況を検出し、異常のタイプを認識する効果的且つリアルタイムの検証を可能にする。
【0177】
したがって、そのような用途によって要求される厳しい安全要件を満たすために、効率的で信頼性があるなどのために、医療又は外科遠隔操作のためにロボット制御システムによって自動的に実行されるマスター装置の任意の異常動作状態をリアルタイムで検証するための手順を適用する必要性が満たされる。
【0178】
これは、好ましくは拘束されない又は「飛行」マスター装置が特定の作業ボリューム内にあるときに、マスターに関連付けることができる少なくとも1つの点の直線加速度及び/又は角加速度を測定又は計算し、1つ以上の検出された量を1つ以上のそれぞれの所定の閾値と比較することによって達成される。
【0179】
マスター装置は、遠隔操作中に外科医によって機械的に手で保持されるようになっているので、マスター装置がマスターに割り当てられた作業空間内にあるときのマスター装置の許容限界外の加速度の検出は、異常の表示である。
【0180】
マスター装置の構造的又は機能的異常が特定されると、遠隔操作を直ちに迅速に中断することができ、したがって、そのような異常が、患者に作用するようになっているスレーブ装置及びそれに関連する外科用器具の動作の結果として生じる異常に反映され、患者自体に重大な結果をもたらす可能性を伴うことを回避できる。
【0181】
それにより、患者の安全性を改善するという目的が達成され、考慮される動作環境において順守されなければならない非常に厳しい安全要件を満たす。
【0182】
偶発的なニーズを満たすために、当業者は、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、前述の方法の実施形態に変更及び適合を行うことができ、又は機能的に等価な他の要素と要素を置き換えることができる。可能な実施形態に属するものとして前述された全ての特徴は、説明された他の実施形態に関係なく実装されてもよい。
【国際調査報告】