(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】高溶融強度ポリプロピレンを含む発泡シート
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548854
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2022054065
(87)【国際公開番号】W WO2022175445
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】デゲンハルト,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ファン エス,マルティン アントニウス
(72)【発明者】
【氏名】チューニッセン,マルク レオ ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】レンデルス,マイケル
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA24
4F074AB00
4F074AB05
4F074BA38
4F074BC12
4F074CA22
4F074CC02Z
4F074DA02
4F074DA08
(57)【要約】
本発明は、高溶融強度ポリプロピレンを含むポリマー組成物を含む発泡シートに関し、前記ポリマー組成物は、長さ20mm、幅2mm、開始速度v09.8mm/s、加速度6mm/s2の円筒形毛細管を用いて、ISO 16790:2005に準拠して200℃で測定される溶融強度が45cN以上、好ましくは50cN以上、より好ましくは55cN以上、さらに好ましくは60cN以上、最も好ましくは65cN以上である高溶融強度ポリプロピレンを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ20mm、幅2mm、開始速度v
0 9.8mm/s、加速度6mm/s
2の円筒形毛細管を用いて、ISO 16790:2005に準拠して200℃で測定される溶融強度が、45cN以上、好ましくは50cN以上、より好ましくは55cN以上、さらに好ましくは60cN以上、最も好ましくは65cN以上である、高溶融強度ポリプロピレンを含むポリマー組成物を含む発泡シート。
【請求項2】
前記高溶融強度ポリプロピレンの溶融強度は、95cN以下、例えば90cN以下、例えば87cN以下である、請求項1に記載の発泡シート。
【請求項3】
前記高溶融強度ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマーと、プロピレン、並びにエチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンから選択される1種以上のコモノマーから誘導される部分を含むプロピレンコポリマーと、からなる群から選択される、請求項1または2に記載の発泡シート。
【請求項4】
前記前記高溶融強度ポリプロピレンは、ASTM D1238(2013)に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが0.5g/10min以上8.0g/10min以下、好ましくは、0.70g/10min以上5.0g/10min以下、最も好ましくは、1.0g/10min以上4.0g/10min以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡シート。
【請求項5】
前記高溶融強度ポリプロピレンは、
前記ポリプロピレン組成物を、少なくとも1種の非フェノール系安定化剤、好ましくはヒンダードアミンからなる群から選択される少なくとも1種の非フェノール系安定化剤とともに、長鎖分岐ポリプロピレンを得るに十分な時間だけ照射するステップであって、前記照射は、減酸素環境で2.0メガラード以上20メガラード以下の電子線を照射することにより行われ、前記活性酸素の量は、前記減酸素環境下の全体積に対して15体積%以下であるステップa)と、前記長鎖分岐ポリプロピレン中のフリージカルを不活性化して、高溶融強度ポリプロピレン組成物を形成するステップb)とによって製造される、請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡シート。
【請求項6】
前記高溶融強度ポリプロピレンは、前記ポリマー組成物に対して10重量%以上、好ましくは、10重量%以上、例えば99.5重量%以下存在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡シート。
【請求項7】
前記ポリマー組成物は追加ポリプロピレンをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の発泡シート。
【請求項8】
前記ポリマー組成物は、造核剤をさらに含み、好ましくは、前記造核剤は、前記組成物に対して0.01重量%以上5.0重量%以下存在し、および/または、前記造核剤は、タルク、重炭酸ナトリウム、クエン酸、アゾジカルボンアミドおよびこれらの混合物からなる群から選択される造核剤である、請求項1~7のいずれか1項に記載の発泡シート。
【請求項9】
前記ポリマー組成物は、さらに、前記ポリマー組成物に対して、添加剤を0.001重量%以上5.0重量%以下含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の発泡シート。
【請求項10】
前記ポリマー組成物は、前記発泡シート中に、前記発泡シートに対して95重量%以上存在する、請求項1~9のいずれか1項に記載の発泡シート。
【請求項11】
ISO 845(2006)に準拠して測定される密度が650kg/m
3以下20kg/m
3以上であり、および/またはASTM D6226-10に準拠して測定される連続気泡含有率が15.0%以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の発泡シート。
【請求項12】
発泡押出プロセスによって製造される、請求項1~11のいずれか1項に記載の発泡シート。
【請求項13】
前記ポリマー組成物は、前記発泡シート中に95重量%以上存在し、および/または、前記ポリマー組成物に対する高溶融強度ポリプロピレンの量は、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、好ましくは30重量%以上、好ましくは40重量%以上、好ましくは50重量%以上、好ましくは60重量%以上、好ましくは70重量%以上、好ましくは80重量%以上、好ましくは90重量%以上である、請求項1~12のいずれか1項に記載の発泡シート。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の発泡シートを含む物品。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の発泡シートの製造プロセスであって、
a)請求項1~9のいずれか1項に記載のポリマー組成物を提供するステップと、
b)前記ポリマー組成物に対して0.10重量%以上20重量%以下の発泡剤を前記ポリマー組成物に添加するステップと、
c)前記ポリマー組成物と前記発泡剤との混合物を発泡プロセス、好ましくは発泡押出プロセスに付して発泡シートを形成するステップと、
d)必要に応じて前記発泡シートを少なくとも一方向に延伸するステップと、を順次含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の発泡シートの製造プロセス。
【請求項16】
物品の製造における請求項1~13のいずれか1項に記載の発泡シートの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高溶融強度ポリプロピレンを含むポリマー組成物を含む発泡シート、発泡シートを含む物品、発泡シートの製造プロセス、および発泡シートの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー発泡体は、例えば建築や建設、自動車用途、食品包装や防護包装などの家庭用用途、消費者向け用途など、幅広い用途で使用されている。発泡体は、機械的剛性、絶縁特性、機械的衝撃に対する緩衝性に優れているため、特に人気がある。加えて、発泡体の使用は原材料の使用削減に大きく貢献している。さらに、発泡体を使用することで、軽量のソリューションが可能になり、コストの観点からだけでなく、より軽い材料を輸送するために必要なエネルギーが少なくて済むという輸送の観点からも有利になる。
【0003】
ポリプロピレン発泡体は、機械的特性、特に剛性(硬度)に優れ、リサイクルが容易であること(一方、ポリスチレンは、廃棄物の分離プロセスにさらなるステップが必要であることなど)、耐薬品性(耐油性、耐酸性)、耐熱性、非吸水性に優れていることなどから、他のポリマー発泡体と比較して優れている。
【0004】
特許文献1は、ポリプロピレン系コポリマーとポリオレフィンとを含む発泡性組成物を開示する。
【0005】
特許文献2は、有機化合物排出量が低い発泡体の製造プロセス、そのプロセスによって得られるポリプロピレン発泡製品、および自動車および食品包装に使用するための発泡体を含む有機化合物排出量の少ない物品の製造プロセスを開示している。
【0006】
特許文献3は、高溶融強度ポリプロピレンをベースとする少なくとも1つの発泡層と造核剤とを含む多層シートをベースとするカップを開示している。
【0007】
特許文献4は、少なくとも1つの外面を有するポリマー発泡体ベース層を含む発泡物品を開示しており、前記外面は、空隙からなる複数の一体発泡表面微細構造を少なくとも1つの領域にわたって含み、前記微細構造は、10ミクロンを超える少なくとも1つの寸法を有し、発泡体を形成する空隙は、微細構造の最小断面寸法よりも小さい平均断面寸法を有する。
【0008】
ポリプロピレンを発泡させるためには、長鎖分岐ポリプロピレンが一般的に用いられる。このような長鎖分岐ポリプロピレンの一例は、Borealisから市販されているDaployMWB140HMSである。
【0009】
しかし、長鎖分岐ポリプロピレンを改良することは継続的に望まれている。例えば、長鎖分岐ポリプロピレンを用いて製造された発泡体の加工性、リサイクル性および/または特性を向上させることが好ましい。さらに、ポリプロピレン発泡体のさらなる減量および/またはリサイクル可能性の向上によって、環境への影響を低減する圧力も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/276653号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/087478号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2018/0201752号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0258902号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、環境への影響を増大させずに(すなわち、必要な原材料の量を増大させずに)、より高い曲げ剛性を有する発泡シートの製造を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、長さ20mm、幅2mm、開始速度v0 9.8mm/s、加速度6mm/s2の円筒形毛細管を用いて、ISO 16790:2005に準拠して200℃で測定される溶融強度が45cN以上、好ましくは50cN以上、より好ましくは55cN以上、さらに好ましくは60cN以上、最も好ましくは65cN以上である高溶融強度ポリプロピレンを含むポリマー組成物を含む発泡シートによって達成される。
【0013】
本発明の発泡シートは、全体的な曲げ剛性が向上している。これは、本発明の発泡シート中の溶融強度45cN以上の高溶融強度ポリプロピレンにより、a)曲げ剛性が増加した発泡体(同じ厚さ)の製造、およびb)同じ曲げ剛性(より低い厚さおよび/またはより低い発泡体密度)を達成しながら、より少ない原料を使用して発泡体の製造が可能になることを意味する。り少ない原材料の使用(ダウンゲージ化)は、二酸化炭素排出量(材料が少なく、輸送コストとエネルギーが少ない)という環境の観点からも、また経済(コスト)の観点からも有利である。
【0014】
本明細書で定義されるシートは、長さが幅よりも大きく、幅が厚さよりも大きい形状である。このシートの厚さは、原則としては重要ではないが、例えば5μm以上100cm以下であってもよい。
【0015】
本発明の文脈において、「発泡」または「発泡体」とは、気体バブル(例えば、空気)の存在により、気泡が存在しない同一材料の密度に比べて、その形状が低い密度を有することを意味する。
【0016】
高溶融強度ポリプロピレン組成物
融強度が45cN以上である高溶融強度ポリプロピレン組成物は、例えばWO2009/003930A1に開示されるプロセスにより得ることができる。WO2009/003930A1は、少なくとも1つのポリオレフィン樹脂と少なくとも1つの非フェノール系安定化剤とを含む照射ポリマー組成物を開示し、この照射ポリマー組成物は、ポリオレフィン樹脂と非フェノール系安定化剤とを混合し、この混合物を減酸素環境下で照射することを含むプロセスによって製造される。加えて、溶融強度45cN以上の高溶融強度ポリプロピレンは、2021年2月18日現在、SABIC(登録商標) PP UMS 561PとしてSABICから入手可能である。
【0017】
好ましくは、ポリプロピレン組成物は、
少なくとも1種の非フェノール系安定化剤、好ましくはヒンダードアミンからなる群から選択される少なくとも1種の非フェノール系安定化剤を用いて、前記ポリプロピレン組成物に対して、長鎖分岐ポリプロピレンを得るに十分な時間だけ照射するステップであって、前記照射は、還元酸素環境中で2.0メガラード以上20メガラード以下の電子線を照射することにより行われ、前記活性酸素の量は、前記還元酸素環境の全体積に対して15体積%以下であるステップa)と、
前記長鎖分岐ポリプロピレン中のフリージカルを不活性化して、前記高溶融強度ポリプロピレン組成物を形成するステップb)とによって製造される。
【0018】
フリージカルを不活性化する方法は、例えばWO2009003930A1に記載されているように加熱するなど、当技術分野において知られている。
【0019】
非フェノール系安定化剤の例は、当技術分野に知られており、例えば参照として導入されているWO2009/003930A1の37~60ページに開示されている。好ましくは、非フェノール系安定化剤はヒンダードアミンからなる群から選択される。
【0020】
より好ましくは、非フェノール系安定化剤は、Chimassorb(登録商標)944、Tinuvin(登録商標)622、Chimassorb(登録商標)2020、Chimassorb(登録商標)119、Tinuvin(登録商標)770、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のヒンダードアミン、および/または、N,N-ジ(水素添加牛脂)アミン(Irgastab(登録商標)FS-042)N,N-ジ(水素添加牛脂)アミン(Irgastab(登録商標)FS-042)の直接酸化によって生成されるN,N-ジ(アルキル)ヒドロキシルアミン、N-オクタデシル-α-ヘプタデシルニトロン、Genox(登録商標)EP、ジ(C16~C18)アルキルメチルアミンオキシド、3-(3,4-ジメチルフェニル)-5,7-ジ-tert-ブチル-ベンゾフラン-2-オン、Irganox(登録商標)HP-136(BFl)、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種のヒドロキシルアミン、ニトロン、アミンオキシド、またはベンゾフラノン、および/または、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos(登録商標)168)から選択される少なくとも1種の有機ホスファイトまたはホスホナイトを含む。さらに好ましくは、本主題の非フェノール系安定化剤は、米国特許第6,664,317号および第6,872,764号に記載されているものを含むことができ、これらの2つの特許は、引用によって本明細書に全体として組み込まれている。
【0021】
好ましくは、高溶融強度ポリプロピレンの溶融強度は、50cN以上、より好ましくは55cN以上、さらに好ましくは60cN以上、最も好ましくは65cN以上であり、および/または好ましくは、高溶融強度ポリプロピレンの溶融強度は、95cN以下、例えば90cN以下、例えば87cN以下である。
【0022】
高溶融強度ポリプロピレンの溶融強度は、長さ20mm、幅2mm、開始速度v0 9.8mm/s、加速度6mm/s2の円筒毛細管を用いて、ISO 16790:2005に準拠して200℃で測定される。
【0023】
本明細書で使用されるポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー、プロピレンとα-オレフィンとのコポリマー、異相プロピレンコポリマーである。
【0024】
好ましくは、高溶融強度ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマーと、プロピレン、並びにエチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される1種以上のコモノマーから誘導される部分を含むプロピレンコポリマーと、からなる群から選択されるポリプロピレンである。
【0025】
好ましくは、プロピレンコポリマーは、13C NMRを用いて測定されたとき、エチレンおよび炭素数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される1種以上のコモノマーから誘導される部分を、プロピレンコポリマーに対して10重量%以下、例えば1.0重量%以上7.0重量%以下含む。例えば、プロピレンコポリマーは、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセンおよび1-ドデセンからなる群から選択される1種以上のコモノマーから誘導される部分、好ましくはエチレンから誘導される部分を含む。
【0026】
ポリプロピレンおよびポリプロピレンの合成プロセスが知られている。プロピレンホモポリマーは好適な重合条件でプロピレンを重合して得られる。プロピレンコポリマーは、好適な重合条件下で、プロピレンとエチレンなどの1種以上の他のコモノマーとを共重合することにより得られる。プロピレンホモポリマーおよびコポリマーの製造は、例えば、Moore,E.P.(1996)ポリプロピレンハンドブック、重合、特徴評価、特性、加工、応用、ハンサー出版社:ニューヨークに記載されている。
【0027】
プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマーおよび異相プロピレンコポリマーは、任意の既知の重合技術および任意の既知の重合触媒系によって製造することができる。技術に関しては、スラリー重合、溶液重合または気相重合を参照することができる。触媒系に関しては、チーグラー・ナッタ、メタロセン、またはシングルサイト触媒系が挙げられる。これらのすべては、それ自体当技術分野で知られている。
【0028】
VDA278(2011-10)に従って測定されたVOC値が250μg/g以下、好ましくは50μg/g以下、および/またはVDA278(2011-10)に従って測定されたFOG値が500μg/g以下、好ましくは100μg/g以下であることが好ましい。
【0029】
好ましくは、高溶融強度ポリプロピレンは、ASTM D1238(2013)に準拠して温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレートが0.50g/10min以上8.0g/10min以下、より好ましくは0.70g/10min以上5.0g/10min以下、最も好ましくは1.0g/10min以上4.0g/10min以下、最も好ましくは1.5g/10min以上4.0g/10min以下である。
【0030】
好ましくは、高溶融強度ポリプロピレンは、ポリマー組成物に対して10重量%以上、≧10重量%以上、より好ましくは99.5重量%以下存在する。例えば、高溶融強度ポリプロピレンは、ポリマー組成に対して15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、好ましくは30重量%以上、好ましくは40重量%以上、好ましくは50重量%以上、好ましくは60重量%以上、好ましくは70重量%以上、好ましくは80重量%以上、好ましくは90重量%以上および/または99.5重量%以下、99重量%以下、98.5重量%以下、98.0重量%以下、97.0重量%以下、96.0重量%以下、95.0重量%以下である。
【0031】
ポリマー組成物は、例えば難燃剤、顔料、潤滑剤、スリップ剤流動促進剤、帯電防止剤、加工安定化剤、長期安定化剤および/またはUV安定化剤などの添加剤をさらに含んでもよい。添加剤は、当業者が決定した任意の必要量で存在してもよいが、ポリマー組成物に対して、好ましくは0.001重量%以上5.0重量%以下、より好ましくは0.01重量%以上4.0重量%以下、さらに好ましくは0.01重量%以上3.0重量%以下、さらに好ましくは0.01重量%以上2.0重量%以下存在する。
【0032】
一実施形態において、前記ポリマー組成物は、さらに追加ポリプロピレンを含み、好ましくは、前記追加ポリプロピレンを発泡シートに対して10重量%以上40重量%以下含む。追加ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、例えば本明細書に記載のプロピレンとα-オレフィンとのコポリマー、または異相プロピレンコポリマー、例えば本明細書に記載の異相プロピレンコポリマーであってもよい。
【0033】
ポリマー組成物は、造核剤をさらに含んでもよい。気泡密度を増加させ、バブルの形成と成長のダイナミクスを変化させるには、造核剤が必要な場合がある(Gendron、熱可塑性発泡加工、2005、209ページ)。
【0034】
造核剤の量は、ポリマー組成物に対して、例えば0.010重量%以上5.0重量%以下、例えば0.030重量%以上4.0重量%以下、例えば0.050重量%以上3.0重量%以下、好ましくは0.10重量%以上2.5重量%以下、より好ましくは0.30重量%以上1.5重量%以下、最も好ましくは0.50重量%以上1.2重量%以下であってもよい。
【0035】
好適な造核剤は、タルク、シリカ、重炭酸ナトリウムおよびクエン酸の混合物を含むが、これらに限定されない。他の適切な造核剤は、アゾジカルボキサミド、飽和または不飽和脂肪族(C10~C34)カルボン酸のアミンおよび/またはエステルなどのアミドを含む。好適なアミドの例としては、脂肪酸(ビス)アミド、例えばステアリン酸アミド、カプロアミド、カプリルアミド、ウンデシルアミド、ラウラミド、ミリスタミド、パルミタミド、ベヘナミドおよびアラキダミド、ヒドロキシステアリン酸アミドおよびアルキレンジイル-ビス-アルカンアミド、好ましくは(C2~C32)アルキレンジイル-ビス-(C2~C32)アルカンアミド、例えばエチレンビスステアリン酸アミド(EBS)、ブチレンビスステアラミド、ヘキサメチレンビスステアラミド、エチレンビスベヘナミドおよびそれらの混合物が含まれる。好適なアミンとしては、例えば、エチレンビスヘキサミドおよびヘキサメチレンビスヘキサミドのような(C2~C18)アルキレンジアミンが含まれる。飽和または不飽和脂肪族(C10~C34)カルボン酸のエステルが脂肪族(C16~C24)カルボン酸のエステルであることが好ましい。好ましくは、造核剤はタルク、重炭酸ナトリウム、クエン酸、アゾジカルボンアミドおよびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、造核剤はタルクである。
【0036】
発泡体を製造するためには、気泡安定化剤を使用する必要がある場合がある。気泡安定化剤は、例えばイソブチレンのような炭化水素の拡散を遅らせて、寸法的に安定化された発泡体を生成する浸透性改質剤である。好ましい気泡安定化剤は、モノステアリン酸グリセリル(GMS)、モノパルミチン酸グリセリル(GMP)、パルミチン酸エステルおよび/またはアミドを含むが、これらに限定されない(Gendronら,熱可塑性発泡加工,2005,31および149ページ)。好適なアミドは、例えばステアロイルステアラミド、パルミチドおよび/またはステアラミドである。好適な混合物としては、例えば、GMSおよびGMPを含む混合物、またはステアラミドおよびパルミトアミドを含む混合物が挙げられる。好ましくは、気泡安定化剤を用いる場合には、モノステアリン酸グリセリルまたはステアラミドである。
【0037】
添加される気泡安定化剤の量は、所望の気泡寸法および発泡シートの製造に使用されるポリマー組成物に依存する。一般に、気泡安定化剤の添加量は、発泡体に対して0.10重量%以上3.0重量%以下であってもよい。
【0038】
好ましくは、ポリマー組成物は、発泡シート中に、発泡シートに対して95重量%以上存在する。例えば、ポリマー組成物は、発泡シート中に、発泡シートに対して、96重量%以上、97重量%以上、98重量%以上、99重量%以上、99.5重量%以上存在する。発泡シートは、ポリマー組成物から構成されていてもよい。
【0039】
好ましくは、発泡シートの密度は、ISO 845(2006)に準拠して測定される密度で、650kg/m3以上20kg/m3以下、500kg/m3以上30kg/m3以下であることが好ましい。
【0040】
好ましくは、発泡シートは、ASTM D6226-10に準拠して測定されたる続気泡含有率が15.0%以下、好ましくは12.0%以下、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下である。
【0041】
ポリプロピレン発泡体および発泡シートの製造プロセスは、当業者の知識範囲に属する。このプロセスでは、気体状または液体状の発泡剤と混合された高溶融強度ポリプロピレン組成物の溶融物が圧力降下により急激に膨張する。連続発泡プロセスに加えて、不連続プロセスも適用可能である。連続発泡プロセスにおいて、ポリプロピレン組成物は、圧力降下により発泡体が形成されるダイを押し出す前に、押出機内で通常20バールを超える圧力下で溶融され、ガスが充填される。例えば、この発泡押出プロセスでポリプロピレンが発泡するメカニズムがH.E.Naguib,C.B.Park,N.Reichelt著,『押出ポリプロピレン発泡体の体積膨張を制御する基本的な発泡メカニズム』,JournalofAppliedPolymerScience,91,2661-2668(2004)に説明されている。発泡プロセスはS.T.Lee著,『泡押出』,技術出版社(2000)に概説している。不連続発泡プロセスでは、ポリプロピレン組成物(ミクロ)粒子に発泡剤を加圧充填し、オートクレーブ内の圧力が急激に緩和される前に溶融温度以下に加熱する。溶解した発泡剤はバブルを形成し、発泡構造体を生成する。
【0042】
好ましくは、本発明の発泡シートは、発泡押出プロセスによって製造される。
【0043】
別の態様では、本発明は、本発明の発泡シートの製造プロセスに関する。特に、本発明は、本発明の発泡シートの製造プロセスであって、
a)請求項1~9のいずれか1項に記載のポリマー組成物を提供するステップと、
b)ポリマー組成物に、ポリマー組成物に対して0.10重量%以上20重量%以下発泡剤を添加するステップと、
c)ポリマー組成物と発泡剤との混合物に発泡プロセス、好ましくは発泡押出プロセスを施して発泡シートを形成するステップと、を順次含む、製造プロセスにも関する。
【0044】
例えば、発泡剤の量は、所望の密度および使用するポリマー組成物に依存する。発泡剤の使用量は、例えば、ポリマー組成物に対して0.10重量%以上20重量%以下であってもよい。
【0045】
適切な物理発泡剤の例としては、イソブタン、CO2、ペンタン、ブタン、窒素および/またはフルオロ炭化水素が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、物理発泡剤は、イソブタンおよび/またはCO2であり、最も好ましくはイソブタンである。
【0046】
適切な化学発泡剤の例としては、クエン酸またはクエン酸をベースとする材料(例えば、クエン酸と炭酸水素ナトリウムとの混合物)およびアゾジカルボンアミドが含まれるが、これらに限定されない。このような化学発泡剤は、例えば、Clariant社から、Hydrocerol(登録商標) CF-40E(登録商標)またはHydrocerol(登録商標) CF-05E(登録商標)として市販することができる。
【0047】
このようにして製造された発泡シートは、それ自体が公知の方法を用いて一軸または二軸に延伸することができる。
【0048】
したがって、本発明は、
a)本発明のポリマー組成物を提供するステップと、
b)ポリマー組成物に、例えば、発泡剤をポリマー組成物に対して0.10重量%以上20重量%以下添加するステップと、
c)ポリマー組成物と発泡剤との混合物を発泡プロセス、好ましくは発泡押出プロセスに付して発泡シートを形成するステップと、
d)発泡シートを少なくとも一方向に延伸するステップと、を含む、本発明の発泡シートを製造するためのプロセスにも関する。
【0049】
本発明はまた、1軸(例えば縦方向)に延伸された本発明の発泡シート、または2軸(例えば縦方向(MD)および横方向(MD)に延伸された本発明の発泡シートのように、少なくとも1方向に延伸された本発明の発泡シートに関する。当業者に知られているように、MDおよびTDにおける延伸は、同時に、または連続したステップで行われてもよい。
【0050】
例えば、MDにおける延伸倍率は1.1以上7.0以下、例えば1.1以上3.0以下であってもよい。横方向の延伸倍率は、例えば1.1以上7.0以下、例えば1.1以上3.0以下であってもよい。
【0051】
本発明のシートは、建築および建設、自動車用途、食品包装および保護包装のような家庭用用途、消費者向け用途などに好適に使用することができる。例えば、シートは、カップ、トレー、容器、ボトル、シール、再利用可能なカートリッジを製造するために使用され得る。本発明のシートの他の用途としては、サンドイッチパネル、配管用断熱材、コンクリート用目地材、住宅用断熱材、水槽用断熱材、床用断熱材(床下張り)などが挙げられる。
【0052】
本発明の発泡体の非常に良好な緩衝特性は、使用者に安全性と快適性を提供する。この発泡体は、履物、保護ガード、スポーツ用フロアマット、発泡体ローラーなど、滑り止め性能を必要とする様々な用途に適している。
【0053】
したがって、別の態様では、本発明は、本発明の発泡シートを含む物品に関する。さらに別の態様では、本発明は、建築および建設、自動車用途、食品包装および保護包装のような家庭用用途、消費者向け用途などにおける本発明の発泡シートの使用に関する。
【0054】
本発明はまた、本発明の発泡シートの物品の製造における使用に関し、例えば、物品は、カップ、トレー、容器、ボトル、シール、再利用可能な箱、サンドイッチパネル、配管断熱材、コンクリート目地材、住宅用断熱材、水槽用断熱材または床用断熱材(床下張り)、履物、保護ガード、スポーツ用フロアマットまたは発泡体ローラーである。
【0055】
シートは、使い捨て食品容器のようなポリスチレン発泡体を典型的に使用する用途の代替として使用することができる。
【0056】
なお、本発明は、独立特許請求の範囲に定義された主題、または本明細書に記載された特徴の任意の可能な組み合わせ、特に好ましくは、特許請求の範囲に存在する特徴の組み合わせと組み合わせた主題に関する。したがって、本発明による組成物に関連する特徴のすべての組み合わせが可能であることが理解される。本発明によるプロセスに関する特徴のすべての組み合わせ、および本発明による組成物に関する特徴と本発明によるプロセスに関する特徴のすべての組み合わせが本明細書に記載されている。
【0057】
また、なお、「含む」という用語は、他の要素の存在を排除するものではない。しかしながら、特定の成分を含む製品/組成物に関する記載は、これらの成分からなる製品/組成物も開示していることも理解されるべきである。これらの成分からなる製品/組成物は、製品/組成物を製造するためのより単純で経済的なプロセスを提供するので、有利である可能性がある。同様に、特定のステップを含むプロセスの説明は、これらのステップからなるプロセスも開示していることを理解されるべきである。これらのステップからなるプロセスは、より単純で経済的なプロセスを提供するので、有利である可能性がある。
【0058】
本発明は、本発明を以下の実施例によって説明するが、これらに限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0059】
実施例
使用される方法
メルトフローレート
ポリマーのメルトフローレートは、ASTM D1238(2013)に準拠して温度230℃(MFR230)、荷重2.16kgで測定される。
【0060】
溶融強度
溶融強度はISO基準16790:2005に準拠して測定される。溶融強度は、破断前に例えばレオテンス測定中に溶融糸が伸張することができる最大(引き下げ)力(単位はcN)として定義される。測定は、ISO基準16790:2005の
図1に示すようなセットアップを使用して、200℃でGoettfert Rheograph 6000上で行われた。レオメータは直径12mmのオーブンを備えている。長さ20mm、幅2mmの毛細管を用いた。毛細管の入口角は180°(平坦)であった。レオメータのピストンは、9.8mm/sの出口速度v0を得るために0.272mm/sの速度で移動した。レオメータに充填した後、温度を安定させ、ポリマーを完全に溶融させるために、溶融物をレオメータ内で5分間保持した。毛細管から離れたストランドを、Goettfert社のRheotens IIを用いて6mm/s
2の加速度で破断するまで引き抜いた。毛細管の出口とRheotens IIの取り込みホイール間の距離(=伸長長さ)は100mmとした。
【0061】
溶融ポリマーを毛細管に押し込むのに必要な圧力、最大延伸力(=溶融強度)、破断時の最大延伸倍率を記録した。
【0062】
曲げ弾性率
発泡シートのサンプルの曲げ弾性率は、試験速度20mm/minを用いてISO1209-2に準拠した三点曲げ試験である硬質気泡プラスチック-曲げ特性の測定により測定した。発泡シートからスパン60mm、幅20mmのサンプルを切り出した。発泡シートの厚さが維持されるように、縦方向(MD、押出方向)と横方向(TD、押出方向と直交する方向、厚さ方向と直交する方向)でサンプルを切断した(表2)。本明細書で用いるように、厚さ方向は、最小寸法を有する発泡シートの寸法である。曲げ弾性率平均値は、曲げ弾性率MDと曲げ弾性率TDとの平均値である。
【0063】
発泡体密度
発泡体密度(kg/m3)はISO 845:2006に準拠して測定される見かけの総密度である。
【0064】
厚さおよび幅
発泡シートに圧力を加えることなく、発泡シートの厚さおよび幅を測定する。
【0065】
連続気泡含有率
連続気泡含有率は、Quantachrome Pentapyc 5200eガス比重計を用い、ASTM D6226-10に基づく方法を用いて測定される。サンプルを水に浸漬し、アルキメデスの原理を用いてサンプルの外形から体積を求めた。サンプルの水への吸収は無視できると仮定した。サンプルから付着水を乾燥した後、比重計によってさまざまな圧力下でASTM D6226-10(V規格)に準拠してサンプル体積を測定した。
【0066】
発泡体の圧縮を最小限に抑えるために、適用される圧力はすべて0.1bar未満である。
【数1】
ここで、
V
規格=体積サンプル
V
チャンバー=体積サンプルチャンバー
V
膨張=膨張体積。
【0067】
印加圧力(0.090bar;0.075bar、0.060bar、0.045bar、0.035bar、0.020bar、0.010bar)で発泡体のサンプル体積をプロットした。線形回帰を使用して、測定点を通る線分を当てはめた。p=0barでのY軸との線形回帰直線の切片が、以下の式で使用される体積(V規格0)である。
【0068】
連続気泡含有率V
連続(%)は、次の式を使用して計算される。
【数2】
ここで、
O
V=連続気泡含有率[%]
V=幾何学的体積
V
SPEC_0=0bar圧力に補間されたサンプル体積。
【0069】
使用材料
PP-UMS1は、機密性の制限を受けずにSABIC(登録商標)PPUMS 561Pで2021年2月18日にSABICから購入可能な、メルトフローレートMFR230 2.5g/10minおよび溶融強度71cNの長鎖分岐プロピレンホモポリマーである。SABIC(登録商標)PPUMS 561Pは、VDA278(2011-10)によるVOC値が、製造後7日間で10.9g/gであった。SABIC(登録商標)PPUMS 561Pは、VDA278(2011-10)によるFOG値が、製造後7日間で56.4g/gであった。
【0070】
PP-HMSは、Borealis社からDaployTM WB140HMSとして市販されている長鎖分岐プロピレンホモポリマーである。そのメルトフローレートMFR230は2.2g/10minであり、溶融強度は42cNであった。
【0071】
PP-UMS2は、メルトフローレートMFR230が0.23g/10minであり、かつ、溶融強度が62cNの実験用長鎖分岐プロピレンホモポリマーである。このPP-UMS2はWO2009/003930A1のサンプル11(ポリマーB)に記載されているように、0.05pph Genox EPを用いて製造された。
【0072】
タルクは、JM Polymersから購入可能な、70重量%(d50は9μm)のタルク含有量を持つプロピレンホモポリマーマスターバッチであるTALCOLIN PP70+である。
【0073】
発泡剤はイソブタンである。
【0074】
発泡シートの製造
発泡シートの製造は、Theysohn社製の、アスペクト比(l/d)が40である30mm2軸発泡押出機上で行う。押出機は、水冷装置を備えた9つの電気加熱ゾーン、次いで冷却部、スタティックミキサーおよびダイからなる。CE5の場合、冷却部の前の温度はPP-UMS1の実験より約5℃高くなると予想される。物理発泡剤としてイソブタンを表1の組成に基づいて2.5重量%添加し、押出機の第8のポリマー溶融物に導入した。発泡シートの製造には、厚さ調整可能なスリットダイを用いた。ダイでの圧力が50barとなるように、スリットダイの厚さを調整してダイ圧力を調整した。幅35mmのスリットダイを用いた。
【0075】
次に、ダブルベルト延伸装置を用いて、表2に示す延伸倍率で発泡シートを縦方向に延伸した。その後、得られたシートを水冷校正ユニットで冷却して、製造した発泡シートの寸法を固定した。延伸倍率は、発泡体が自由に膨張するときの出口速度にダブルベルトユニットの速度を調整することにより調整した。延伸倍率が1のとき、自由膨張時の発泡体の出口速度(v出口)は、ダブルベルトユニットの速度(v線速度)に等しい。
【0076】
表1に、高溶融強度ポリプロピレン組成物、発泡押出条件および結果を示す。
【0077】
結論
表1から、本発明による発泡シートを製造した場合、より高い曲げ弾性率平均値が得られることが分かる。曲げ弾性率平均値は、全体的な曲げ剛性のマトリックである。
【0078】
本発明の発泡シート(溶融強度が45cN(E1-E4)以上の高溶融強度ポリプロピレンを主成分とするポリマー組成物を含む)は、溶融強度が45cN(CE1-CE4)未満の高溶融強度ポリプロピレンを主成分とするポリマー組成物を含むシートよりも高い全体的な曲げ剛性を示す。
【0079】
したがって、本発明の発泡シートは、より高い全体的な曲げ剛性が要求される用途に使用することができる。同一の全体的な曲げ剛性を必要とする用途には、本発明のより薄い発泡シートおよび/またはより低い発泡密度を有するシートを使用することができる。カーボンフットプリント(材料の削減、輸送コストやエネルギーの削減)という環境の観点からも、経済(コスト)の観点からも、このようないわゆる減量は有利である。
【0080】
さらに、温度230℃、荷重2.16kgでASTM D1238(2013)に準拠して測定されるメルトフローレートが1.0以上4.0g/10min以下、好ましくは1.5以上4.0g/10min以下の高溶融強度ポリプロピレンで製造された本発明の発泡シートは、メルトフローレートが.0g/10min未満の高溶融強度ポリプロピレンで製造されたシートと比較して(メルトフローレートが0.23g/10minのCE5を参照)、シートのより良好な表面外観をもたらす(実施例E1~E4を参照)。
【0081】
メルトフローレートが0.5g/10min以上8.0g/10min以下、好ましくは0.70g/10min以上5.0g/10min以下、より好ましくは1.0g/10min以上4.0g/10min以下、最も好ましくは1.5g/10min以上4.0g/10min以下である高溶融強度ポリプロピレン組成物を使用することの別の利点は、押出機を、E1-E4およびCE1-CE4に比べて約5℃高くなることが予想されるCE5よりも低い温度で運転することができることである。商業用発泡押出機では、この温度上昇により最大処理量が制限されるため、このような温度上昇は望ましくない。
【0082】
表1.使用されるポリマー組成物、発泡状態および結果
【表1】
+:スラブ表面が平滑である。
-:スラブ表面の凹凸が予想される。
【国際調査報告】