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特表2024-506677生産ライン上で進行するプラスチック含有物体のXRS検査および選別
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】生産ライン上で進行するプラスチック含有物体のXRS検査および選別
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20240206BHJP
   G01N 23/207 20180101ALN20240206BHJP
【FI】
G01N23/223
G01N23/207
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548858
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 IL2021051482
(87)【国際公開番号】W WO2022130376
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】279615
(32)【優先日】2020-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(31)【優先権主張番号】63/141,099
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518274043
【氏名又は名称】セキュリティ マターズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SECURITY MATTERS LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】アロン,ハッガイ
(72)【発明者】
【氏名】ナホム,テヒラ
(72)【発明者】
【氏名】タル,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】カプリンスキー,モル
(72)【発明者】
【氏名】ナヒミアス,チェン
(72)【発明者】
【氏名】ダフニ,ロン
(72)【発明者】
【氏名】ヨラン,ナダフ
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA02
2G001AA10
2G001BA04
2G001BA18
2G001CA01
2G001CA02
2G001DA06
2G001JA09
2G001KA20
2G001LA05
2G001PA03
2G001PA11
(57)【要約】
生産ライン上を進行する物体を検査するためのX線分光法(XRS)検査ステーションが提供される。XRSステーションは以下を含む:それぞれXRS検査領域を画定し、生産ライン上を進む間に検査領域を通過する物体に対して1つまたは複数のXRS検査セッションを実行し、前記物体に対してXRS検査データピースを生成する、少なくとも1つのXRS検査システム。XRS検査システムは、物体の少なくとも一部を励起するためにX線またはガンマ線励起放射線をそれぞれ生成する少なくとも1つのエミッタと、励起放射線に対する物体の前記少なくとも一部の応答を検出し、物体のプラスチック材料組成物に埋め込まれたマーキングのXRSシグネチャを示すデータを含む対応するXRS検査データピースを生成する少なくとも1つの検出ユニットとを備え、XRSシグネチャを示す前記データは、物体内のプラスチック材料組成の1つまたは複数の条件に関する情報を提供する。検査システムはまた、XRS検査データ要素に基づいて、それぞれの物体の識別データと関連付けられた物体の状態を生成するよう適用される分析器ユーティリティを含む。また、検査ステーションにおいて、物体状態データに基づいて、生産ラインの選別ステーションにおいて使用される前記物体に対して選別データを生成するように提供される制御ユニットである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産ライン上で進行する物体を検査するためのX線分光法(XRS)検査ステーションであって、該XRSステーションは、以下:
少なくとも1つのXRS検査システムであって、XRS検査領域を画定し、前記生産ライン上を進行中に前記検査領域を通過する物体に対して1つまたは複数のXRS検査セッションを実行し、前記物体に対するXRS検査データピースを生成するように構成され動作可能である、XRS検査システム;
前記XRS検査データピースに基づいて、それぞれの物体の識別データと関連付けられた物体状態を生成するように構成され動作可能である、分析器ユーティリティ;および
前記物体状態データに基づいて、前記生産ラインの選別ステーションで使用するための、前記物体に関する選別データを生成するように構成され動作可能である、制御ユニット
を含み、
前記XRS検査システムは、前記物体の少なくとも一部を励起するためにX線またはガンマ線励起放射をそれぞれ生成する少なくとも1つのエミッタと、前記励起放射に対する前記物体の少なくとも一部の応答を検出し、前記物体のプラスチック材料組成に埋め込まれたマーキングのXRSシグネチャを示すデータを含む対応するXRS検査データピースを生成するように構成された少なくとも1つの検出ユニットとを備え、前記XRSシグネチャを示す前記データは、前記物体内のプラスチック材料組成の1つまたは複数の条件の情報を与える
ことを特徴とする、検査ステーション。
【請求項2】
前記分析器が、前記XRS検査データピースを分析し、それぞれの物体におけるそれぞれのプラスチック材料組成の基準マーキングを特徴付ける基準データからの前記XRSシグネチャを示すデータの偏差を決定し;かつ、所定の基準に従って前記偏差を分析し、前記物体状態データを決定するように構成され動作可能であることを特徴とする、請求項1に記載の検査ステーション。
【請求項3】
前記分析器が、以下:
前記XRS検査データピースを分析し、それぞれの物体におけるそれぞれのプラスチック材料組成の基準マーキングを特徴付ける基準データからの前記XRSシグネチャを示すデータの偏差を決定する;
前記偏差を示すデータを、中央制御システムに通信して、要求として対応する物体状態を示すデータを示すデータを前記中央制御システムか受信する;および
前記中央制御システムからの前記物体状態を示すデータの受信に応答して、制御ユニットを動作させて選別データを生成する
ことを実行するように構成され動作可能であることを特徴とする、請求項1に記載の検査ステーション。
【請求項4】
前記分析器が、前記識別されたXRSシグネチャの偏差を示すデータの機械学習ベースの分析を実行するように構成され動作可能であることを特徴とする、請求項2または3に記載の検査ステーション。
【請求項5】
前記物体内のプラスチック材料組成の前記1つまたは複数の条件が、プラスチックリサイクル条件を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の検査ステーション。
【請求項6】
前記プラスチックリサイクル条件が、以下のパラメータのうちの1つまたは複数:
前記検査セッションの前に前記プラスチック材料が受けたリサイクルサイクルの回数;リサイクル内容物の量;分子鎖の変化;分子の濃度の変化;および、製品の先行するリサイクルまたは使用の結果として製品材料に導入される異物の濃度
を含むことを特徴とする、請求項5に記載の検査ステーション。
【請求項7】
前記選別データが、プラスチック材料をさらに使用することができるかどうか、およびどのように使用することができるかを示すことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の検査ステーション。
【請求項8】
前記XRS検査ステーションに到着する物体に関する入力物体関連データを分析し、前記1つまたは複数のXRS検査セッションを最適化するための動作データを生成するように構成され動作可能な動作コントローラをさらに含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の検査ステーション。
【請求項9】
前記入力物体関連データが、前記物体に関する幾何学的データを含み、前記動作データが、前記XRSステーションを通過する物体の進行面に対する検査領域の位置データを含むことを特徴とする、請求項8に記載の検査ステーション。
【請求項10】
前記入力物体関連データが、前記物体の材料組成を示す物体タイプに関するデータを含み、前記動作データが、前記物体内のプラスチック材料組成に埋め込まれた予想マーキングに従って最適化された励起放射のスペクトルパラメータを含むことを特徴とする、請求項8または9に記載の検査ステーション。
【請求項11】
前記入力物体関連データが、特定のタイプの物体に関する幾何学的データを含み、それによって、XRS検査ステーションにおけるXRS検査システムの1つまたは複数の要素の位置データを、XRSステーションを通って進行する物体に対して調整し、それによって励起放射線の1つまたは複数のパラメータを最適化することを可能にすることを特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載の検査ステーション。
【請求項12】
前記最適化される励起放射線の前記1つまたは複数のパラメータが、前記物体内の所定の位置に印加される電力および励起スポットサイズの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項11に記載の検査ステーション。
【請求項13】
前記入力幾何学的データが、前記マーキングのXRSシグネチャを識別するために検査されるプラスチック層の厚さを示すことを特徴とする、請求項11または12に記載の検査ステーション。
【請求項14】
前記動作データが、前記XRSシステムの発光ユニットおよび検出ユニットの最適な構成を示すデータを含み、前記検査セッションに関与するエミッタの数および検出器の数、ならびに、それらの間のかつ検査される物体に対する相対調節によって特徴づけられることを特徴とする、請求項8~13のいずれか一項に記載の検査ステーション。
【請求項15】
前記動作データが、前記XRS検査ステーションを通る物体の進行中に、前記物体と前記XRS検査システムとの間の相対変位の最適な速度を示すデータを含むことを特徴とする、請求項8~14のいずれか一項に記載の検査ステーション。
【請求項16】
前記入力物体関連データが、前記XRS検査システムの上流の光学検査ステーションで生成された光学データを含むことを特徴とする、請求項8~15のいずれか一項に記載の検査ステーション。
【請求項17】
前記入力物体関連データが、予め記憶されたユーザエントリデータを含むことを特徴とする、請求項8~16のいずれか一項に記載の検査ステーション。
【請求項18】
前記XRS検査セッションが、X線またはガンマ線励起放射線によって前記物体の少なくとも一部を励起することと、前記励起放射線に対する前記物体の少なくとも一部の応答を検出することとを含み、前記応答は、前記物体との前記励起放射線相互作用によって誘導される蛍光X線(XRF)またはX線回折(XRD)を示すことを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の検査ステーション。
【請求項19】
前記物体を前記少なくとも1つの検査領域に向かってそれを通って移動させながら前記検査される物体を搬送する表面を有するコンベヤをさらに含むことを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項に記載の検査ステーション。
【請求項20】
前記少なくとも1つのXRS検査システムの前記検出ユニットが、1つまたは複数の検出器を備え、前記1つまたは複数の検出器の少なくとも1つは、前記少なくとも1つの検査領域と位置合わせされた前記コンベヤの表面のセグメントの下に配置され、それによって、前記少なくとも1つの検出器と前記コンベヤによって検査領域を通って移動される物体との間の固定された所望の距離を最小限に抑えるかまたは維持することを可能にすることを特徴とする、請求項19に記載の検査ステーション。
【請求項21】
以下の構成:
前記少なくとも1つのエミッタが、前記コンベヤの表面の前記セグメントの下に配置され、前記検査領域に向かって励起放射線を放射するように構成され、それによって、前記エミッタと前記コンベヤによって前記検査領域を通って移動される物体との間の固定された所望の距離を最小限に抑えるかまたは維持することを可能にする;および
前記少なくとも1つのエミッタが、前記コンベヤの表面の前記セグメントの上方または側方に配置され、前記検査領域に向かって励起放射線を放射するように構成される
の1つを有することを特徴とする、請求項20に記載の検査ステーション。
【請求項22】
前記コンベヤが、前記励起放射線に対して実質的なXRS応答を有する材料を含み、前記コンベヤが、該コンベヤのXRF放射率がないまたは比較的低い対応する1つまたは複数の領域を画定する1つまたは複数のXRS透過窓を画定するように構成されることを特徴とする、請求項19~21のいずれか一項に記載の検査ステーション。
【請求項23】
前記コンベヤが、前記XRF透過窓を画定する前記1つまたは複数のベルトまたはローラセットの中または間に1つまたは複数の間隔を有する1つまたは複数のベルトまたはローラセットを備える1つまたは複数のコンベヤトラックを含むことを特徴とする、請求項22に記載の検査ステーション。
【請求項24】
前記1つまたは複数のXRS透過窓の2次元サイズが、前記励起放射線のビームの断面の2次元サイズとそれぞれ等しいかまたはそれよりも大きく、その結果、前記ビームは、前記コンベヤのトラック、ベルトおよび/またはローラセットと相互作用することなくXRS透過窓を通過することができ、したがって前記コンベヤの前記トラック、ベルトおよび/またはローラからのXRS応答を回避することができることを特徴とする、請求項23に記載の検査ステーション。
【請求項25】
前記コンベヤが、前記トラックの少なくとも1つに沿って移動可能であり、前記ベルト内に前記XRS透過窓を画定する1つまたは複数の開口を有する少なくとも1つのベルトを備え;それにより、前記1つまたは複数の開口は、前記少なくとも1つの検査領域を横切るように前記コンベヤのベルトと共に移動可能であることを特徴とする、請求項24に記載の検査ステーション。
【請求項26】
前記1つまたは複数の開口の前記2次元サイズが、前記トラックに沿った前記ベルトの移動方向を画定する軸に沿って伸長され、前記軸に沿った前記開口の長さは、前記軸に沿った前記ビームの断面サイズよりも少なくとも数倍大きく、それにより、前記検査領域を通って前記ベルトの表面上で搬送された物体の時間積分XRF測定を行うことを可能にすることを特徴とする、請求項25に記載の検査ステーション。
【請求項27】
検査時間コントローラおよび信号インテグレータをさらに含み、該検査時間コントローラおよび信号インテグレータは、前記検査システムに接続可能であり、以下:
検査時間コントローラによって、前記少なくとも1つの検査領域に対する前記コンベヤの移動軸に沿った前記コンベヤの位置を示すデータを取得および分析し、被検査物体を搬送するコンベヤのセグメントの位置が前記検査領域を横切る期間と同期して前記検査セッションを実行するために前記XRS検査システムに対する動作データを生成する;および
前記信号積分器によって、前記物体を載せたコンベヤの前記セグメントが前記検査領域を横切る積分期間中に、前記物体が前記検査領域を横切る間に前記検出ユニットによって検出される前記XRS応答のスペクトルプロファイルを積分し;これにより、最適化された信号対ノイズ比または信号対クラッタ比を有する物体から得られる積分XRS応答を取得する
を実行することにより前記少なくとも1つの検査領域を通って前記コンベヤにより搬送される前記物体の時間積分XRS測定を実行するように構成され動作可能であることを特徴とする、請求項19~26のいずれか一項に記載の検査ステーション。
【請求項28】
前記検査時間コントローラに接続可能であり、前記コンベヤの前記セグメントの位置を示す前記データを感知および提供するように構成され動作可能な位置センサをさらに含むことを特徴とする、請求項27に記載の検査ステーション。
【請求項29】
前記コンベヤから予想される所定のXRSクラッタを受信するように基準データプロバイダに接続可能であり、前記検出ユニットから、前記少なくとも1つの検査領域から検出された前記検出されたXRS応答を受信し、前記物体が前記検査領域に位置するときに、前記検出されたXRS応答から前記所定のXRSクラッタを減算して、前記物体からの前記XRS応答を示すデータを取得するように構成され動作可能である、コントローラをさらに含むことを特徴とする、請求項19~28のいずれか一項に記載の検査ステーション。
【請求項30】
前記検出ユニットから、前記検査領域から検出された前記検出されたXRS応答を受信するように構成され動作可能なコントローラをさらに含み、前記検出されたXRS応答は、前記物体が前記検査領域に位置するときに前記物体から生じたXRS放射を示し;前記物体が前記検査領域を横切る期間の少なくとも一部にわたって、前記物体で生じたXRS放射を積分する、ことを特徴とする、請求項19~29のいずれか一項に記載の検査ステーション。
【請求項31】
物体のX線分光法(XRS)検査を制御するための制御システムであって、該制御システムは、コンピュータネットワークに接続され、前記ネットワークを介して、複数の生産ラインにおける複数のXRS検査ステーションと通信し、中央データベースマネージャとデータ通信する、コンピュータシステムであり、前記制御システムは、以下:
前記物体の識別データと関連付けられた前記物体のXRS検査データピースを示す入力データに応答して、前記物体に埋め込まれたマーキングに関して特定のXRS検査システムによって識別されたXRSシグネチャを示すデータを含むXRS検査データを分析するために中央データベースに予め記憶されたデータを利用し、前記XRSシグネチャを示す前記データから導出された前記物体内のプラスチック材料組成の1つまたは複数の条件に基づいて、前記物体に関する物体状態データを決定する;
前記物体状態データをそれぞれのXRSステーションに通信する;および
複数のXRS検査ステーションから提供される関連する物体のXRS検査データピースの分析に基づいて、データベース内のデータを最適化する
を実行するように構成され動作可能であることを特徴とする、制御システム。
【請求項32】
生産ライン上で進行する物体を検査するためのX線分光法(XRS)検査方法であって、
前記生産ラインのXRS検査ステーションによって画定される検査領域を通過する物体に1つまたは複数のXRS検査セッションを適用し、前記物体のXRS検査データピースを生成する工程であって、前記XRS検査セッションは、X線またはガンマ線放射によって物体の少なくとも一部を励起する工程、および、物体のプラスチック材料組成に埋め込まれたマーキングのXRSシグネチャを示すデータを含む励起放射に対する物体の前記少なくとも部分の応答を検出する工程を含み、前記XRSシグネチャを示す前記データは、物体内のプラスチック材料組成の1つまたは複数の条件の情報を与える、工程;
前記XRS検査データピースに基づいて、物体状態データを決定し、前記物体状態データをそれぞれの物体の識別データと関連付けて記録する工程;および
前記記録された物体状態データに基づいて、前記生産ラインの選別ステーションで使用するための選別データを生成する工程
を含む、方法。
【請求項33】
前記物体状態の決定は、以下:
前記XRS検査データピースを分析し、それぞれの物体におけるそれぞれのプラスチック材料組成の基準マーキングを特徴付ける基準データからのXRSシグネチャを示すデータの偏差を決定する工程;および
所定の基準に従って前記偏差を分析し、前記物体状態データを決定する工程
を含むことを特徴とする、請求項32に記載のXRS検査方法。
【請求項34】
前記物体状態の判定が、前記XRS検査データピースを前記中央制御システムに通信し、そこから対応する物体状態を受信する工程を含むことを特徴とする、請求項32に記載のXRS検査方法。
【請求項35】
前記物体状態の決定が、以下:
前記XRS検査データピースを分析し、それぞれの物体におけるそれぞれのプラスチック材料組成の基準マーキングを特徴付ける基準データからのXRSシグネチャを示すデータの偏差を決定する工程;
前記偏差を示すデータを中央制御システムに通信して、前記中央制御システムに、所定の基準に従って前記偏差を分析させ、対応する物体状態を示すデータを生成する工程;および
前記物体状態データを前記中央制御システムから受信する工程
を含むことを特徴とする、請求項32に記載のXRS検査方法。
【請求項36】
前記物体状態データの決定が、識別されたXRSシグネチャの偏差を示すデータに機械学習ベースの分析を適用する工程を含むことを特徴とする、請求項33~35のいずれか一項に記載のXRS検査方法。
【請求項37】
前記物体内のプラスチック材料組成の前記1つまたは複数の条件が、プラスチックリサイクル条件を含むことを特徴とする、請求項32~36のいずれか一項に記載のXRS検査方法。
【請求項38】
前記プラスチックリサイクル条件が、以下のパラメータ:検査セッションの前に前記プラスチック材料が受けたリサイクルサイクルの回数;リサイクル内容物の量;分子鎖の変化;分子の濃度の変化;および、製品の先行するリサイクルまたは使用の結果として製品材料に導入される異物の濃度
のうちの1つまたは複数を含むことを特徴とする、請求項37に記載のXRS検査方法。
【請求項39】
前記選別データが、プラスチック材料をさらに使用することができるかどうか、およびどのように使用することができるかを示すことを特徴とする、請求項32~38のいずれか一項に記載のXRS検査方法。
【請求項40】
前記XRS検査ステーションに到着する前記物体に関する入力物体関連データを分析する工程、および、前記1つまたは複数のXRS検査セッションを最適化するための動作データを生成する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項32~39のいずれか一項に記載のXRS検査方法。
【請求項41】
前記入力物体関連データが、前記物体に関する幾何学的データを含み、前記動作データは、前記XRSステーションを通過する物体の進行面に対する検査領域の位置データを含むことを特徴とする、請求項40に記載のXRS検査方法。
【請求項42】
前記入力物体関連データが、前記物体の材料組成を示す物体タイプに関するデータを含み、前記動作データは、前記物体内のプラスチック材料組成に埋め込まれた予想マーキングに従って最適化された励起放射のスペクトルパラメータを含むことを特徴とする、請求項40または41に記載のXRS検査方法。
【請求項43】
前記入力物体関連データが、特定のタイプの物体に関する幾何学的データを含み、それによって、前記XRS検査ステーションにおけるXRS検査システムの1つまたは複数の要素の位置データを、前記XRSステーションを通って進行する物体に対して調整し、それによって前記励起放射の1つまたは複数のパラメータを最適化することを可能にすることを特徴とする、請求項40~42のいずれか一項に記載のXRS検査方法。
【請求項44】
前記最適化される励起放射線の前記1つまたは複数のパラメータが、前記物体内の所定の位置に印加される電力および励起スポットサイズの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項42または43に記載のXRS検査方法。
【請求項45】
前記入力幾何学的データが、前記マーキングの前記XRSシグネチャを識別するために検査されるプラスチック層の厚さを示すことを特徴とする、請求項43または44に記載のXRS検査方法。
【請求項46】
前記動作データが、前記XRSシステムの発光ユニットおよび検出ユニットの最適な構成を示すデータを含み、前記検査セッションに関与するエミッタの数および検出器の数、ならびに、それらの間のかつ検査される物体に対する相対調節を特徴とする、請求項41~43のいずれか一項に記載のXRS検査方法。
【請求項47】
前記動作データが、前記XRS検査ステーションを通る物体の進行中に、前記物体と前記XRS検査システムとの間の相対変位の最適な速度を示すデータを含むことを特徴とする、請求項41~46のいずれか一項に記載のXRS検査方法。
【請求項48】
前記入力物体関連データが、前記XRS検査ステーションの上流の生産ラインの光学検査ステーションで生成された光学データを含むことを特徴とする、請求項41~47のいずれか一項に記載のXRS検査方法。
【請求項49】
前記入力物体関連データが、予め記憶されたユーザ入力データを含むことを特徴とする、請求項41~48のいずれか一項に記載のXRS検査方法。
【請求項50】
前記XRS検査セッションが、X線またはガンマ線励起放射線によって前記物体の少なくとも一部を励起する工程、および、励起放射線に対する前記物体の前記少なくとも一部の応答を検出する工程を含み、前記応答は、前記物体との励起放射線相互作用によって誘導される蛍光X線(XRF)またはX線回折(XRD)を示すことを特徴とする、請求項32~49のいずれか一項に記載のXRS検査方法。
【請求項51】
前記検査される物体が、前記物体を前記少なくとも1つの検査領域に向けてそれを取って移動させるコンベヤの表面上に配置されることを特徴とする、請求項32~50のいずれか一項に記載のXRS検査方法。
【請求項52】
前記応答を検出する工程が、少なくとも1つのXRS検出器を、前記少なくとも1つの検査領域と位置合わせされたコンベヤの表面のセグメントの下に配置し、それによって、前記少なくとも1つの検出器と前記コンベヤによって検査領域を通って移動される物体との間の固定された所望の距離を最小限に抑えるかまたは維持することのいずれかを可能にする工程を含むことを特徴とする、請求項51に記載のXRS検査方法。
【請求項53】
前記少なくとも1つの検査領域に対する前記コンベヤの移動軸に沿った前記コンベヤの位置を示すデータを取得および分析し、被検査物体を搬送するコンベヤのセグメントの位置が前記検査領域を横切る期間と同期して前記検査セッションを実行するために動作データを生成する工程;および
前記物体を載せたコンベヤの前記セグメントが前記検査領域を横切る積分期間中に、前記物体が前記検査領域を横切る間に前記検出ユニットによって検出される前記XRS応答のスペクトルプロファイルを積分し;これにより、最適化された信号対ノイズ比または信号対クラッタ比を有する物体から得られる積分XRS応答を取得する工程
を実行することにより前記少なくとも1つの検査領域を通って前記コンベヤにより搬送される前記物体の時間積分XRS測定を実行する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項51または52に記載のXRS検査方法。
【請求項54】
前記コンベヤの前記セグメントの位置を示すデータを感知および提供する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項53に記載のXRS検査方法。
【請求項55】
前記コンベヤから予想される所定のXRSクラッタを含む基準データを受信する工程、前記少なくとも1つの検査領域から検出された前記検出されたXRS応答を受信する工程、および、前記物体が前記検査領域に位置するときに、前記検出されたXRS応答から前記所定のXRSクラッタを減算して、前記物体からの前記XRS応答を示すデータを取得する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項51~54のいずれか一項に記載のXRS検査方法。
【請求項56】
前記検査領域から検出された前記検出されたXRS応答を受信する工程であって、前記検出されたXRS応答は、前記物体が前記検査領域に位置するときに前記物体から生じたXRS放射を示す工程;前記物体が前記検査領域を横切る期間の少なくとも一部にわたって、前記物体において生じたXRS放射を積分する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項51~55のいずれか一項に記載のXRS検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、物体に埋め込まれたXR対応マーキングを読み取ることによってX線分光法(XRS)を用いて物体を検査する分野にあり、生産ライン上で進行する物体を検査して物体を適切に選別するのに適した自動検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野では、物体の材料組成のパラメータ/条件に基づいて物体を選別するためのシステムに対する必要性が高まっている。物体に埋め込まれたまたは物体の表面に塗布されたXRFマーキングに基づいて、物体の材料を分析し、それに応じて物体を選別するために、XRFベースの技術を利用することが知られている。
【0003】
例えば、本出願の譲受人に譲渡された特許文献1は、異なる物体上の励起ビームの強度を変調/変動させ、その二次放射を測定することによって、複数の物体内のマーキング組成物の存在を同時識別するためのXRFベースの技術を記載する。XRF分析器は、以下を備える:複数の物体を同時に照射するための空間強度分布を有する少なくとも1つのX線またはガンマ線励起放射線ビームを放出するように適合された放射線エミッタアセンブリ;X線またはガンマ線による物体の照射に応答して複数の物体から到来する二次放射線X線信号を検出し、複数の物体上の検出されたデータX線信号の空間強度分布を示すデータを提供する、放射線検出器;および、検出器と通信する信号読取りプロセッサであって、検出された応答X線信号を受信および処理して、複数の物体の各物体の少なくとも1つの表面に含まれるマーキング組成物の存在を検証するように適合されている、信号読取りプロセッサ。
【0004】
特許文献2は、未知の金属合金から構成されるスクラップ片などの材料を、それらの検出された蛍光X線の関数として選別するための材料選別システムを開示している。蛍光X線は元素組成シグネチャに変換され、これは次いで、材料の各々を識別および/または分類するために参照材料の元素組成シグネチャと比較され、その後そのような識別/分類に基づいて別々の群に分類される。材料選別システムは、複数の別個のx線源を有するインラインx線管を含んでもよく、その各々は、選別される材料の別個の流れを照射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/193119号明細書
【特許文献2】米国特許第10,207,296号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
様々なタイプの物体のX線分光法(XRS)ベースの自動またはほぼ自動検査技術が、物体内の特定の材料の特性を決定して、スマートな選別および循環経済を実現することを可能にする、新規かつ効果的な技術が、当技術分野で必要とされている。特に、生産ライン上で進行しながら、プラスチックおよびプラスチック廃棄物含有物体の選別および等級分けのための認証を可能にし、プラスチック選別プロセスおよびリサイクルプロセスを適切に管理する、例えば、さらなる使用のためのプラスチックの余分なリサイクルを回避し、プラスチックを等級分けし、ループカウントし、リサイクルされた内容物の量、ポリマーの種類、および他の定量化および定性化データを測定する、物体を検査するための自動検査ステーションが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動検査および選別技術において使用するのに適したXRS技術は、以下を含むことに留意されたい:蛍光X線(XRF)分光法、ならびにミニXRFおよびマイクロXRF(μXRF);およびX線回折(XRD)分光法。これらのXRベースの技術はすべて、元素分析、化学分析において、材料の構造、組成、および物理的特性を研究するために使用することが知られている。
【0008】
以下の説明では、そのようなXRベースの分光技術のすべてを「XRF」と呼ぶが、この用語は、すべての既知の適切なX線ベースの技術を包含するように広く解釈されるべきであることを理解されたい。
【0009】
本発明は、生産ライン上を流れる(典型的にはコンベヤ上に置かれる)物体を検査するためのXRSに基づく検査技術を提供し、これにより、物体のプラスチック材料組成の条件に基づいて、物体を選別することが可能になる。より具体的には、本発明は、プラスチック材料に埋め込まれたXRFシグネチャの元のシグネチャ(製造段階で物体のプラスチック材料に作成される)からの変化および/または前記シグネチャの検出可能性の変化に基づいて、プラスチック条件を決定することを提供する。
【0010】
したがって、本発明の1つの広範な態様によれば、生産ライン上で進行する物体を検査するためのX線分光法(XRS)検査ステーションが提供される。XRSステーションは、少なくとも1つのXRS検査システム、分析器、および制御ユニットを含む。XRS検査システムは、XRS検査領域を画定し、生産ライン上で進行中に検査領域を通過する物体に対して1つまたは複数のXRS検査セッションを実行し、前記物体に対するXRS検査データピースを生成するように、構成され動作可能である。XRS検査システムは、物体の少なくとも一部を励起するためにX線またはガンマ線励起放射をそれぞれ生成する少なくとも1つのエミッタと、励起放射に対する物体の前記少なくとも一部の応答を検出し、物体のプラスチック材料組成に埋め込まれたマーキングのXRSシグネチャを示すデータを含む対応するXRS検査データピースを生成するように構成された少なくとも1つのXRS検出ユニットとを備え、XRSシグネチャを示す前記データは、物体内のプラスチック材料組成の1つまたは複数の条件の情報を与える。分析器ユーティリティは、XRS検査データピースに基づいて、それぞれの物体の識別データと関連付けられた物体状態を生成するように構成され、動作可能である。制御ユニットは、物体状態データに基づいて、生産ラインの選別ステーションで使用するための、前記物体に関する選別データを生成するように構成され、動作可能である。
【0011】
本発明の別の広範な態様によれば、本発明は、生産ライン上で進行する物体を検査するためのX線分光法(XRS)方法を提供し、この方法は以下を含む:
生産ラインのXRS検査ステーションによって画定される検査領域を通過する物体に1つまたは複数のXRS検査セッションを適用し、前記物体のXRS検査データピースを生成する工程であって、XRS検査セッションは、X線またはガンマ線放射によって物体の少なくとも一部を励起する工程、および、物体のプラスチック材料組成に埋め込まれたマーキングのXRSシグネチャを示すデータを含む励起放射に対する物体の前記少なくとも部分の応答を検出する工程を含み、前記XRSシグネチャを示す前記データは、物体内のプラスチック材料組成の1つまたは複数の条件の情報を与える;
XRS検査データピースに基づいて、物体状態データを決定し、前記物体状態データをそれぞれの物体の識別データと関連付けて記録する工程;および
記録された物体状態データに基づいて、生産ラインの選別ステーションで使用するための選別データを生成する工程。
【0012】
いくつかの実施形態では、XRS検査セッションは、X線またはガンマ線励起放射線によって物体の少なくとも一部を励起する工程、および、励起放射線に対する物体の前記少なくとも一部の応答を検出する工程を含み、応答は、物体との励起放射線相互作用によって誘導される蛍光X線(XRF)またはX線回折(XRD)を示す。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、物体状態の決定は、以下を含んでもよい:
XRS検査データピースを分析し、それぞれの物体におけるそれぞれのプラスチック材料組成の基準マーキングを特徴付ける基準データからのXRSシグネチャを示すデータの偏差を決定する工程;および
所定の基準に従って前記偏差を分析し、物体状態データを決定する工程。
【0014】
あるいは、物体状態の決定は、XRS検査データピースを中央制御システムに通信し、そこから対応する物体状態を受信する工程を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、物体状態の決定は、以下を含む:
XRS検査データピースを分析し、それぞれの物体におけるそれぞれのプラスチック材料組成の基準マーキングを特徴付ける基準データからのXRSシグネチャを示すデータの偏差を決定する工程;
前記偏差を示すデータを中央制御システムに通信して、前記中央制御システムに、所定の基準に従って前記偏差を分析させ、対応する物体状態を示すデータを生成する工程;および
物体状態データを中央制御システムから受信する工程。
【0016】
いくつかの実施形態では、物体状態データの決定は、識別されたXRSシグネチャの偏差を示すデータに機械学習ベースの分析を適用する工程を含む。
【0017】
分析物体におけるプラスチック材料組成の条件は、プラスチックリサイクル条件を含んでもよい。1つまたは複数のプラスチックリサイクル条件は、以下の1つまたは複数を含む:検査セッションの前に前記プラスチック材料が受けたリサイクルサイクルの回数;リサイクル内容物の量;分子鎖の変化;分子の濃度の変化;および、製品の先行するリサイクルまたは使用の結果として製品材料に導入される異物の濃度。
【0018】
選別データは、典型的には、以下を示す:プラスチック材料をさらに使用することができるかどうか、およびどのように使用することができるか、すなわち、使用することができるか全く使用することができないか;許容されるリサイクルサイクルの数;リサイクルした後のそのようなプラスチック材料を使用することができる物体のタイプ。
【0019】
いくつかの実施形態では、XRS検査ステーションに到着する物体に関する入力物体関連データが提供され、分析されて、前記1つまたは複数のXRS検査セッションを最適化するための動作データが生成される。例えば、入力物体関連データは、物体または特定のタイプの物体に関する幾何学的データを含み得る。幾何学的データは、XRSステーションを通過する物体の進行面に対する検査領域の位置データを決定/最適化するために使用され得る。これは、XRS検査ステーションにおけるXRS検査システムの1つまたは複数の要素の位置データを、XRSステーションを通って進行する物体に対して調整し、それによって励起放射の1つまたは複数のパラメータを最適化することによって達成することができる。入力された幾何学的データは、マーキングのXRSシグネチャを識別するために検査されるべきプラスチック層の厚さを示し得る。
【0020】
代替的にまたは追加的に、入力物体関連データは、物体の材料組成を示す物体タイプに関するデータを含んでもよい。これは、物体内のプラスチック材料組成に埋め込まれた予想されるマーキングに従って最適化された励起放射線のスペクトルパラメータを画定するために使用することができる。
【0021】
最適化される励起放射線のパラメータは、物体内の所定の位置に印加される電力および励起スポットサイズの少なくとも1つを含んでもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、入力物体関連データは、XRS検査ステーションの上流の生産ラインの光学検査ステーションで生成された光学データを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、入力物体関連データは、予め記憶されたユーザエントリデータを含む。
【0024】
動作データは、XRSシステムの発光ユニットおよび検出ユニットの最適な構成を示すデータを含むことができ、検査セッションに関与するエミッタの数および検出器の数、ならびに、それらの間のかつ検査される物体に対する相対調節によって特徴付けられる。
【0025】
代替的にまたは追加的に、動作データは、XRS検査ステーションを通る物体の進行中に、物体とXRS検査システムとの間の相対変位の最適な速度を示すデータを含むことができる。
【0026】
本発明のさらなる広範な態様において、本発明は、物体のX線分光法(XRS)検査を制御するための制御システムを提供する。制御システムは、コンピュータシステムであり、コンピュータネットワークに接続され、前記ネットワークを介して、複数の生産ラインにおける複数のXRS検査ステーションと通信し、中央データベースマネージャとデータ通信する。制御システムは、以下を実行するように構成され、動作可能である:
物体の識別データと関連付けられた物体のXRS検査データピースを示す入力データに応答して、前記物体に埋め込まれたマーキングに関して特定のXRS検査システムによって識別されたXRSシグネチャを示すデータを含むXRS検査データを分析するために中央データベースに予め記憶されたデータを利用し、XRSシグネチャを示す前記データから導出された物体内のプラスチック材料組成の1つまたは複数の条件に基づいて、前記物体に関する物体状態データを決定する;
物体状態データをそれぞれのXRSステーションに通信する;および
複数のXRS検査ステーションから提供される関連する物体のXRS検査データピースの分析に基づいて、データベース内のデータを最適化する。
【0027】
生産ライン上を進行する間に上述の自動検査を受ける物体は、典型的には、1つまたは複数の検査ステーションによって画定される1つまたは複数の検査領域に向かって、それを通って、およびそれから外へ移動させるコンベヤ上に、間隔を空けて配置される。
【0028】
本発明者らは、予め選択された距離(すなわち、物体から1つまたは複数のXRベースのエミッタおよび/または1つまたは複数の検出器までの予め選択された距離)からの物体/サンプルの測定および検査が、サンプル/物体が進む並進システムのコンベヤトラック/ベルト/ローラの下に検査ユニットを配置することによって達成され得ることを見出した。これは、以下に関連する。
【0029】
コンベヤベースのXRS選別/識別システムは、しばしば、物体/材料からのXRS応答の不正確な/ノイズの多い測定値をもたらす。これは、検査システムが正確かつ迅速な選別プロセスを実行する能力に影響を及ぼす。そのような欠陥は、選別される物体/材料が、比較的低い原子番号の原子元素マーカーを含むXRSマーカー組成物でマーキングされる場合、または選別される材料/物体自体の材料組成が、高いX線もしくはガンマ線吸光度または高いXRF放射の原子元素/組成物を含む場合に特に強調され、これは、物体のXRSマーキング組成物からのXRS応答を妨げ、したがって、ノイズの多い測定および非効率的または不正確な識別または選別プロセスをもたらし得る。サンプル(具体的には、検査スポットが位置するサンプルの表面)からエミッタおよび検出器までの距離がサンプルごとに著しく異なり得るので、物体を上方からまたは側方から検査する(すなわち、物体の上方または側方から照射し、物体の上方または側方に位置する検出器によって応答信号を検出する)ことは、異なるサイズおよび形状の物体を検査するには効果的でないようである。これらの差は、システムによって得られる結果の正確な分析を妨げ、サンプル中に存在する材料および元素を正確に同定および定量化する可能性に悪影響を及ぼし得る。
【0030】
上記の欠点は、検査ユニットを、サンプル/物体が進む並進システムのコンベヤトラック/ベルト/ローラの下に配置することによって回避することができる。
【0031】
検査システムが被検査サンプルの下に位置する構成の別の利点は、物体/サンプルと検査ユニットとを、例えば、被検査物体/サンプル/材料から数センチメートル、さらには1mm以下の距離まで互いに近接して配置できることである。これは、検査システムが、その応答信号が空気中を移動するときに著しく減衰され得るサンプル内の光要素を検出するように構成される場合に重要であり得る。
【0032】
本発明の技術は、XRSマーカーによってマーキング/識別可能な様々な物体の選別/識別に適しており、XRSマーカーは、物体の固有の一部である、または物体内にオーバーレイもしくは埋め込まれた追加のマーカー/マーキング組成物であり得る。有利なことに、本発明の技術は、物体が不規則な形状(例えば、おそらくは物体または異なるサイズおよび形状または非定形形状)を有する場合であっても、そのようなマーキングされた物体の信頼できる識別/選別を容易にする。
【0033】
異なるタイプ、形状およびサイズの物体が検査される状況は、例えば、様々な製品のリサイクルプロセス、特にプラスチック製品、パッケージおよび材料のリサイクルプロセス中に生じ得る。プラスチックのリサイクルプロセスは、一般に、それらを構成する特定の材料またはポリマーまたはポリマーの組合せに従って製品を選別および分離することを必要とする。
【0034】
上述したように、有利なことに、検査ユーティリティを被検査物体/サンプルに近接して配置することにより(物体の形状が不規則であっても)、物体/材料のXRS識別可能なマーカー/マーキング組成物が、XRSマーキング組成物のマーキングの一部として機能する比較的軽い原子要素マーカーを含む場合にも、そのようなマーキングされた物体/材料の確実な識別/選別が容易になる。
【0035】
本開示の範囲内で、原子元素マーカー、またはXRSマーキング組成物の一部である原子元素への言及は、マーキング組成物のそれらの原子元素への言及として理解されるべきであり、そのXRS放射がXRSマーキング組成物の識別可能なXRSシグネチャの本質的な部分である(これは、マーキング組成物中に存在し得るが、そのXRS放射が存在する場合でも、マーキング組成物の識別可能なシグネチャの一部を形成しないと考えられる他の元素から、これらの原子を区別するためである)。この目的のために、本発明は、原子番号が25を超えない(例えば、XRS電子エネルギーが6keVを超えない)、1つまたは複数のそのような軽原子元素マーカーを含むマーキング組成物の使用を容易にする。
【0036】
マーカーの一部として軽原子元素を組み込むXRS識別可能なマーキング組成物に基づいて、不規則なサイズ/形状の物体を識別し、場合によっては定量化する複合能力は、XRSマーキング組成物の一部としてより重い原子元素マーカーを組み込むことが、規制(例えば、生物学的/人間的消費に使用される物体、例えば食品/飲料容器として使用される物体へのそのようなより重い原子元素の組み込みを禁止するFDA規制)に起因して不可能であり得る様々なタイプの物体/材料の選別に有利である。例えば、不規則なサイズ/形状の物体に組み込まれた、軽原子元素を含むXRSマーキング組成物を識別するこの複合能力は、XRSマーキング組成物によってマーキングされ、サイズ/形状が無定形であるプラスチック物体(リサイクル可能なプラスチックなど)の識別および/または選別および/または定量化に有利である。
【0037】
この例を明確にするために、選別/識別されるリサイクル可能なプラスチック物体は、以下のうちの1つまたは複数によって特徴付けられ得る:
a.典型的には、選別されるリサイクル可能なプラスチック物体は、様々な異なる形状およびサイズを有する固体物体である;
b.XRSマーカー/マーキング組成物は、リサイクル可能なプラスチック物体のプラスチック材料に実質的に均質な態様で埋め込むことができる;
c.埋め込まれたXRSマーカー/マーキング組成物は、典型的には、X線/ガンマ線検査放射スポットによって照射される各領域に相対的に弱いXRS信号をもたらす低濃度のXRS応答性原子元素を有し得る。濃度は元素に依存する。軽元素の場合、典型的には、重原子よりも高い濃度を使用する必要がある。例えば、(原子番号25を超える)重原子については最大100ppm、軽原子については最大500ppm、および(原子番号20以下の)非常に軽い原子についてはそれ以上である;
d.プラスチック材料、特に食品/飲料包装に使用されるものに埋め込まれたXRSマーカーの原子元素は、典型的には、比較的軽い元素(例えば、原子番号25以下)であり、したがって、弱いXRS信号しか生じず、これは、空気中を移動する間に著しく減衰される。
【0038】
いくつかの用途では、典型的にはコンベヤシステム自体が有意なXRS応答と関連付けられ得るため、XRS検査モジュール(例えば、放射線源およびXRSスペクトル検出器/分光計)を、物体を搬送するコンベヤシステムの側面または上方に配置することが必要とされ、したがって、XRS検査モジュールをコンベヤから離すことが好ましいことに留意されたい。さらに、XRSによってマーキングされた従来の固体物体を選別するためにこの技術を使用することが実行可能である。これは、以下の理由による:そのような固体物体内のXRFマーカーは、典型的には、マーキングされた物体の比較的小さい体積(例えば、マーキングされたコインの場合、物体全体の体積が小さい;または、XRSマーカーが位置するマーキングされた物体上の特定の位置である)に閉じ込められる比較的高濃度のXRS応答性原子元素で構成される。したがって、マーキングされた物体からの著しく強いXRS応答信号の放射は、物体を照射するときに予想され得、これにより、瞬時(非統合的)XRS検出スキームを使用する(例えば、X線/ガンマ線照射スポットおよび/またはXRS応答の瞬時検出を使用する)場合でも、十分なSNRを有するXRS応答信号を得ることができる。
【0039】
しかしながら、これは、均質に埋め込まれたXRFマーカーが典型的に低い濃度を有する(プラスチック物体は、弱いXRS応答信号のみを提供する軽いXRF応答原子でマーキングされる)、リサイクル可能なプラスチック要素または流体材料などの物体を選別する場合には当てはまらない。したがって、埋め込まれたXRSマーカーの濃度が低いそのような物体/材料からXRS信号の十分なSNRを得るために、XRS検査は、好ましくは、照明スポットの領域を通過する間に、選別される材料/物体が一定期間にわたって連続的または断続的に照射される積分可能なスキームに従い、長時間の間に検出されたXRS応答信号を積分して、十分なSNRの総XRS信号を得る。
【0040】
したがって、本発明のいくつかの態様によれば、XRS検査システムまたは少なくともXRS検出器は、コンベヤの下に配置され、XRS検査システムと選別されるリサイクル可能なプラスチック物体の少なくとも底部との間の距離が、、物体のサイズの変動にもかかわらず実質的に一定のままであり非常に小さくなり得る一方で、場合によっては、XRS測定がコンベヤによって妨げられないようにXRS検出器の上方に、XRS透過性の窓をコンベヤシステム内に実質的に画定する。
【0041】
本発明は、リサイクルされたまたはリサイクルされていない、プラスチック、ガラス、金属、任意のマトリックスに埋め込まれた難燃性材料および/または他の材料を含む、様々な材料で作られたマーキングされた物体を識別および/または選別および/または定量化するために使用され、有利であり得ることを理解されたい。物体という用語は、本明細書では、識別可能な、固有の、または付加されたXRSマーキング/組成を有する、固体アイテム/凝集体、ならびに流体/液体を包含すると理解されるべきである。本発明は、例えば難燃剤/阻害剤を含む物体/材料を選別するためにも有利であり得、ここで、選別される物体自体の材料組成は、臭素などの固有の材料要素/組成を高濃度(例えば、1,000ppm超、またはさらに10,000ppm超)で含み得るので、XRS検査に使用されるX線またはガンマ線放射に対して高度に吸収性である。
【0042】
さらに、本発明のいくつかの実装形態では、積分可能な検出スキーム(本明細書ではゲーティングとも呼ばれる)を利用する。上述のように、エネルギー分散型XRF(EDXRF)システムなどのXRS検査システムは、サンプル/物体に向かってX線放射を放出し(サンプル内の原子を励起する)、その結果、サンプルが応答X線信号を放出する1つまたは複数のエミッタと、応答信号を検出するための1つまたは複数の検出器とを含む。エミッタは、例えば、マーキングされた物体のXRSマーキング組成物中の複数の異なる要素を同時にまたは連続的に識別することを可能にする、異なる電圧/フィルタ/コリメーションパラメータなどの異なるパラメータ/特性を有する/それらで動作する、異なるエミッタであってもよい。1つまたは複数のエミッタから入射放射線を受け取り、応答信号が1つまたは複数の検出器に到達することができるサンプル/物体の領域/エリアは、本明細書では、検査スポット(スポット)または検査領域と交換可能に呼ばれる。XRS検査システムによって収集されたデータ、例えば、各スペクトルチャネル(エネルギーバンドに対応する各チャネル)におけるカウント数またはカウント率は、検査されたサンプル/物体内の様々な材料/原子元素の濃度および/または相対濃度の存在および/または測定を(典型的には分析後に)示す。しかしながら、コンベヤ上の物体を検査する本発明によるXRSシステムの場合、特にXRS検出器がコンベヤの下方にある場合、コンベヤ自体が励起XRS放射線に応答してXRF応答を発し、したがって検査された物体/サンプルのXRF測定にノイズが導入され、したがって測定の感度および精度が低下する可能性がある。
【0043】
したがって、そのようなシステムでは(特に検出器がコンベヤの下方にある場合)、コンベヤ材料の励起に起因して測定されるノイズ/バックグラウンドXRSを低減する必要がある。
【0044】
この目的のために、検査ステーションは、1つまたは複数のセンサを含むセンサユニットと、動作コントローラとをさらに含み、動作コントローラは、前進する物体が検査領域に到達する時間および物体が検査領域を通過する時間(例えば、物体の前方エッジが検査領域スポットに到達する時間と物体の後方エッジが検査領域を離れる時間との間の時間)に関する表示をXRS検査システムに提供する。したがって、XRS検査システムは、センサユニットによって提供されたデータに従って動作して、検査セッションを実施し、検査される物体が検査領域内にある期間にのみXRS検出器から測定データを収集し、これにより、XRS検査システムによって収集されたデータをより正確で、信頼性が高く、効率的に分析することが可能になる。
【0045】
一例では、センサユニットは、物体がセンサユニットの近傍の予め選択された領域に存在し、検査スポットに向かって(コンベヤベルトなどの連続トラック上で)移動するときはいつでも検出することができる、1つまたは複数の赤外線センサを含む。センサユニットは、撮像センサであってもよく、コンベヤ上の物体を検出し、コンベヤ上/上方を占めるサイズ/範囲を識別するための画像/パターン認識ユーティリティと関連付けられてもよい。したがって、センサユニットは、物体がいつ検査スポットに到達するかの表示を提供することができる。センサはまた、サンプルのサイズおよびサンプルがいつ検査スポットから離れるかを示すデータを提供することができる。異なる実施例では、センサユニットは、X線等の1つまたは複数の視覚的または他の波長カメラを含んでもよく、これは、サンプルのサイズおよび形状に関するデータだけでなく類似データを提供してもよい。別の実施例では、センサユニットは、有利には、物体の材料を示すデータ、より具体的には、物体が金属物体(X線吸収性)であるか、またはプラスチックなどの非金属物体であるかを示すデータも提供することができる、X線撮像センサを含むことができる。
【0046】
センサユニットからのデータは、入ってくるサンプル/物体の検査のためのスキームを選択および決定するために利用され得る。一例では、検査セッションは、2つ以上の段階を含むことができる。すなわち、第1段階では、検査システムのためのパラメータの1つのセット(X線管電圧、電流、およびエミッタおよび/または検出器のいずれかにおけるフィルタ/ビームコリメータを含む)が選択され、第2段階では、パラメータの別のセットが選択される。測定の第1段階または第2段階において検査されるサンプルの部分は、検査されるサンプルのサイズおよび/または形状に従って設定され得る。
【0047】
別の実施例では、XRS測定のSNRを改善し、それによって検査システムによって搬送される物体/材料のマーキング組成物の比較的弱いXRRシグネチャの検出を可能にするために、ゲート/積分可能な測定スキームが使用され得る。
【0048】
このスキームの第1の実装形態では、1つまたは複数のセンサ(例えば、IRまたは視覚またはX線撮像センサ/カメラ、近接センサ、コンベヤ位置センサ、または任意の他の好適なセンサ)を使用して、検査される特定の物体が検査領域を通過する期間を検出し、XRS検査システムを動作させて、検査領域を通過する期間中にのみその特定のリサイクル可能なプラスチック物体を連続的または断続的に検査する。各物体から収集されたデータは、検査領域を通過する物体/サンプル内を検査領域が横断する面積/体積、および、検査領域/スポットを通って移動するときの物体速度に依存する検査の持続時間に対応する。測定は、1つまたは複数の検査領域を通る物体の移動中に、かつそれと協調して、タイムスロット/ビンで行うことができる。測定されたデータ(例えば、各スペクトルチャネル当たりのカウント)は、前記時間ビン/スロットについて収集され、その後、合計/平均されて、物体の総XRS測定データを取得してもよい。
【0049】
ゲートスキームに対する第2の実装形態では、1つまたは複数のセンサ(例えば、IRセンサ/カメラ/近接センサ、コンベヤ位置センサ、または任意の他の好適なセンサ)を使用して、コンベヤのXRS透過窓が検査領域を横切る期間を検出し、XRS検査システムを動作させて、XRS透過窓が好ましくは物体と共に検査領域を横切る期間中に、その特定の物体を連続的または断続的に検査する。このスキームによって、システムは、コンベヤ材料からのXRS応答に関連するXRS測定からのノイズ/クラッタを低減する。また、ここでは、同様に、システムは、コンベヤシステムの速度を動的に制御して、例えば、XRS透過窓(例えば、物体を伴う)が検査領域を横断し、検査される期間を延長するように適合されてもよい。これにより、システムは、コンベヤからのバックグラウンドクラッタ/ノイズを伴わずに、またはより少ないバックグラウンドクラッタ/ノイズを伴って、物体が検査される時間を実際に延長し、したがって、測定の信号対ノイズおよび/または信号対クラッタをさらに改善する。さらに、逆もまた同様であり、システムは、XRS透過窓が検査領域内にないときにコンベヤの速度を加速し、したがって、システムによる検査物体の収率を改善するように適合されてもよい。
【0050】
このスキームの第1および第2の実装形態のいずれにおいても、連続的または断続的な検査の前記期間中に得られたスペクトル応答は、その後、十分なSNRを有する正確なXRS応答信号を得るために積分される。このスキームの第1および第2の実装形態はいずれも、XRS測定からのノイズの低減およびSNRの改善を提供する。上述の第1および第2の実装形態は、物体およびXRF透過窓の両方が検査領域内にあるときにのみ物体の測定が行われるように組み合わせることもできる。
【0051】
したがって、本発明のいくつかの実施形態では、本発明の技術は、検査領域を通ってコンベヤによって搬送される物体の時間積分XRS測定を行うことを含む。時間積分XRS測定は、例えば、以下を実行することによって行うことができる:コンベヤの移動軸に沿ったコンベヤの位置、またはコンベヤ内のXRS透過窓を画定する少なくとも1つの開口の位置を示すデータを取得する工程、および、少なくとも1つのXRS透過窓の位置が検査領域を横切る期間に同期して、XRS検査セッションを動作させるための動作データを生成する工程。XRS検査システムは、例えば、その期間と同期して排他的に、すなわち、その期間中に検査をアクティブ化し、その期間の前または後の他の時間には検査を非アクティブ化することによって、動作させることができる。次いで、積分期間中の蛍光X線応答のスペクトルプロファイルは、少なくとも1つのXRS透過窓が検査領域を横切る期間内で積分される。
【0052】
いくつかの実装形態では、時間積分XRS測定を行うことは、以下をさらに含む:積分期間が、コンベヤの少なくとも1つのXRS透過窓と物体の両方が検査領域を横切る期間の少なくとも一部であるように、前記物体の位置を感知し、前記物体が検査領域を横切る時間と同期して(例えば排他的に同期して)XRS検査システムを動作させる。
【0053】
代替的にまたは追加的に、本発明のいくつかの実施形態によれば、方法は、検査領域を通って、コンベヤによって運ばれる物体の時間積分XRS測定を実行する工程を含み、これは、以下を実行することによる:前記物体の位置を感知する工程;および、XRS検査ユーティリティを、前記物体が検査領域を横切る期間と同期して(例えば排他的に同期して)動作させる工程;および、前記物体が前記検査領域を横切る前記期間中に、前記検査領域を横切る前記物体から到来する蛍光X線応答のスペクトルプロファイルを積分する工程。
【0054】
放射線エミッタ配置は、物体が検査されている間に位置する検査領域と位置合わせされたコンベヤのセグメントの上方、下方、または側方に配置され、検査領域に向かって放射を放射する1つまたは複数のエミッタを含むことができる。
【0055】
いくつかの場合において、コンベヤ自体は、実質的なXRF応答を有する材料を含み得る。そのような場合、コンベヤは、少なくとも前記1つまたは複数の検査領域において、コンベヤのXRS放射率がないまたは低下した領域を画定する1つまたは複数のXRS透過窓を画定するように構成され得る。例えば、コンベヤは、1つまたは複数のベルトまたはローラセットを含む1つまたは複数のコンベヤトラックを含むことができ、1つまたは複数のベルトまたはローラセットの中または間に1つまたは複数の間隔を有する。XRS透過窓は、そのような間隔によって/そのような間隔で、画定され得る。代替的にまたは追加的に、コンベヤは、1つまたは複数のベルトまたはローラセットの中または間に配置/画定される、1つまたは複数のスペーシングXRS透過窓を有する2つ以上のコンベヤトラックを含んでもよい。さらに、代替的にまたは追加的に、少なくとも1つのベルトまたはローラセットは、XRS透過窓を画定する1つまたは複数の開口部を有するように構成されてもよい。
【0056】
いくつかの実装形態では、XRS透過窓を画定する1つまたは複数の間隔/開口の2次元サイズは、励起(放出)ビームの断面の2次元サイズとそれぞれ等しいか、またはそれよりも大きくてもよいことに留意されたい。これにより、出射する放射線ビームが、コンベヤのトラック、ベルト、および/またはローラセットと相互作用することなく、XRS透過窓を通過することができ、したがって、コンベヤのトラック、ベルト、および/またはローラからのXRS応答が回避される。
【0057】
例えば、コンベヤは、トラックのうちの少なくとも1つに沿って移動可能であり、ベルト内に1つまたは複数の開口部(例えば、穿孔または窓)を有する、少なくとも1つのベルトを含んでもよい;開口部は、これによって、検査領域を横切るようにコンベヤのベルトと共に移動可能である。いくつかの実装形態では、少なくとも1つのベルトの開口部の二次元サイズは、トラックに沿ったベルトの移動方向を画定する軸に沿って細長い。したがって、軸に沿った開口部の長さは、その軸に沿ったビームの断面サイズよりも少なくとも数倍大きい。これにより、検査領域を通してベルトによよって/ベルト上を搬送される物体の時間積分XRS測定を行うことができる。この目的のために、いくつかの実装形態では、システムはまた、検査システムに接続可能であり、検査領域を通して前記コンベヤ(ベルト)によって/ベルト上に搬送される物体の時間積分XRF測定を行うように構成および動作可能な、検査時間コントローラおよび信号インテグレータを含む。検査時間コントローラは、以下のように動作することができる:コンベヤの移動軸に沿ったコンベヤの位置(または、XRS透過窓を画定する少なくとも1つの開口部の位置)を示すデータを取得および処理し、コンベヤの関連するセグメントの位置(XRS透過窓を画定する開口部の位置)が検査領域を横切る期間と同期して、検査セッションを動作させるための動作データを生成する;および、物体を載せた前記関連セグメントが検査領域を横切る期間内の積分期間中に、検査領域を横切る物体から到来するXRS応答のスペクトルプロファイルを積分する。
【0058】
したがって、コンベヤセグメントがX線またはガンマ線放射ビームと相互作用しない期間中の物体からの積分XRS応答が得られる。このようにして得られた積分XRS応答は、典型的には、比較的高い信号対ノイズ比または信号対クラッタ比を有する。
【0059】
いくつかの実装形態では、検査時間コントローラは、コンベヤセグメント(XRS透過窓を画定する開口部)の位置が検査領域を横切る期間と同期してXRS検査システムを動作させ、XRF透過性ではないコンベヤの他の部分が検査領域を横切る時間に検査モジュールの動作を無効化/停止/中断するように適合される。代替的にまたは追加的に、コントローラは、物体の位置が検査領域を横切る時間と同期して検査システムを動作させ、他の時間には検査モジュールの動作を無効化/停止/中断するように適合され得る。検査モジュールの動作を無効化/停止/中断することは、少なくとも検出器の動作を無効にすること、および/または少なくともエミッタの動作を無効にすることを含み得ることを理解されたい。
【0060】
代替的にまたは追加的に、本発明のいくつかの実装形態において上記に示されるように、コンベヤは、XRS透過窓をそのローラ間の間隔として画定するように配置される、少なくとも1つのローラセットを含んでもよい。
【0061】
さらに代替的にまたは追加的に、本発明のいくつかの実装形態では、コンベヤは、物体を運ぶための可動ベルトを含み、ベルトは、放射線ビームの断面サイズよりもいくらか小さいサイズの1つまたは複数の開口/穿孔を有するグリッドまたはメッシュとして構成され、ビームとベルトのメッシュ/グリッドの材料との相互作用に応じてXRSクラッタが低減される。いくつかの実装形態では、ベルトのメッシュ/グリッドを画定する主軸(例えば、ワイヤ/ロッドの方向)は、検査領域を横切るベルトの移動中に、低減されたXRSクラッタが実質的に一定の強度およびスペクトルプロファイルを有するように、ベルトの移動方向に対して対角線方向に位置合わせされる。例えば、スペクトルプロファイルの強度の変動は、+/-15%の範囲を超えてはならない。
【0062】
コントローラは、コンベヤから予期される予め画定されたXRSクラッタを示す基準データを受信するために、データ記憶装置(ローカルまたはリモート)に接続可能であってもよい。したがって、コントローラは、物体が検査領域に位置するとき、検査領域から検出されたXRS応答を示すデータを受信し、検出された応答から所定のXRSクラッタを減算し、それによって物体からのXRS応答を示すデータを取得するように構成および動作可能であり得る。いくつかの実装形態では、コントローラは、物体が検査領域を横切る期間の少なくとも一部にわたって、物体からの応答に関連する二次放射を積分するようにさらに適合され得る。
【0063】
本発明の他の実施形態および実装形態は、図面によって例示され、以下の実施形態の詳細な説明においてより詳細に説明される。当業者は、特許請求される本発明が、本明細書に提供される実施例によって限定されるものでなく、特許請求される本発明から逸脱することなく、本発明を実施するための様々な変更を容易に理解するであろう。
【0064】
本明細書に開示される主題をよりよく理解し、実際にどのように実行され得るかを例示するために、非限定的な例としてのみ、添付の図面を参照して実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】生産ライン上で進行する物体の自動検査のための本発明の例示的なXRF検査ステーションのブロック図
図2】本発明の一実施形態によるXRF検査方法のフロー図
図3A】本発明のいくつかの実施形態によるコンベヤベースのXRF検査ステーションを概略的に示すブロック図
図3B】システムの検査領域に対して静的または可動のXRF透過窓がローラーベースのコンベヤおよびベルトベースのコンベヤを用いて実施されている、本発明の実施形態によるコンベヤベースの検査ステーションの可能な様々な構成の概略図
図3C】システムの検査領域に対して静的または可動のXRF透過窓がローラーベースのコンベヤおよびベルトベースのコンベヤを用いて実施されている、本発明の実施形態によるコンベヤベースの検査ステーションの可能な様々な構成の概略図
図3D】システムの検査領域に対して静的または可動のXRF透過窓がローラーベースのコンベヤおよびベルトベースのコンベヤを用いて実施されている、本発明の実施形態によるコンベヤベースの検査ステーションの可能な様々な構成の概略図
図3E】それぞれコンベヤの移動方向に沿ってそれを横断して配置される複数の検査領域を利用する、本発明によるコンベヤベースの検査ステーションの実施形態の概略図
図3F】それぞれコンベヤの移動方向に沿ってそれを横断して配置される複数の検査領域を利用する、本発明によるコンベヤベースの検査ステーションの実施形態の概略図
図4A】検査ユーティリティの検査領域に向かって前進するサンプル/物体の存在および/またはサイズに対応する表示およびデータを提供するように構成されたセンサユニットを含む、本発明の一実施形態による検査ステーションの斜視図を示す概略図
図4B】検査ユーティリティの検査領域に向かって前進するサンプル/物体の存在および/またはサイズに対応する表示およびデータを提供するように構成されたセンサユニットを含む、本発明の一実施形態による検査ステーションの側面図を示す概略図である
図5A】本発明のさらに別の実施形態による検査ステーションの側面図を示す概略図
図5B】本発明のさらに別の実施形態による検査ステーションの上面図を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1を参照すると、生産ライン10上で進行する物体を検査するための本発明のXRF検査ステーション12の構成および動作が、ブロック図によって概略的に示されている。概して11である物体は、任意の好適な既知の構成のコンベヤ15上に間隔を空けて配置することができ、コンベヤは、物体11の流れを、生産ライン10に沿って連続するステーションを通して搬送方向Dに搬送する。XRF検査ステーション12は、検査ステーション12によって画定される検査領域IRを通過する間、物体11を連続的に検査する。
【0067】
検査ステーション12は、1つまたは複数のXRF検査システムを含み、1つのそのようなシステム14が図に概略的に示されている。XRF検査システム14は、検査領域IRを画定し、製造ラインPL上を進みながら検査領域IRを通過する物体11に対して1つまたは複数のXRF検査セッションを実行するように構成され、動作可能である。
【0068】
検査は、1つまたは複数の所定の基準に従って、物体内のプラスチック材料組成物の状態を識別し、決定することを目的とする。検査は、物体のプラスチック材料組成物に埋め込まれたXRFマーキングのXRFシグネチャを示すデータの識別に基づく。
【0069】
XRF検査システム14は、X線またはガンマ線励起放射ERを生成して物体11の少なくとも一部を励起する1つまたは複数のエミッタ16を含む放射源デバイスと、検出器およびスペクトル分析器を含む1つまたは複数のXRF検出ユニット18を含む検出デバイスとを含む。検出ユニットは、励起放射線ERに対する物体11のXRF応答を検出し、そのスペクトルプロファイルを決定し、物体のプラスチック材料組成物に埋め込まれた識別可能なXRFマーキングのXRFシグネチャを示すデータを含むXRF検査データピース(測定データ)を生成するように構成される。
【0070】
XRF検査システムの要素は、典型的にはコンベヤによって画定される物体進行平面に対して適切に配置され得る。例えば、いくつかの実施形態では、好ましくは、少なくとも1つのX線検出器は、それぞれの検査領域に関連付けられたコンベヤのセクションの下に配置され、コンベヤの前記セクションの下/下方のそれぞれの検査領域からのXRF応答を検出するように構成され、動作可能である。これにより、検出器と、コンベヤによって検査領域を通って移動される物体との間の距離が最小限に抑えられる、および/または、必要に応じて、物体のサイズにかかわらず、距離が実質的に固定されたまま維持される。この技術は、以下でさらに詳細に説明される。
【0071】
XRFシグネチャを示すそのように決定されたデータは、所定の基準に従って、物体内のプラスチック材料組成物の状態を知らせるものであり、例えば、システム14による検査に先行するプラスチックリサイクルの履歴を知らせるものである。本出願の目的のために、基準は、プラスチック材料のリサイクル条件を決定するために選択される。そのような条件は、以下のうちの1つまたは複数を含んでもよい:前記プラスチック材料が受けたリサイクルサイクルの数;リサイクル内容物の量(分子鎖の変化;分子の濃度の変化;および先行するリサイクルプロセスまたは通常の使用中に材料/製品に導入され得る異物/不純物の濃縮))。所与のプラスチック材料について、および場合によっては所与の物体へのその混合についても、物体内のプラスチック材料条件は、この材料をさらに使用することができるかどうか、およびどのように使用することができるか、例えば、この材料をさらにリサイクルすることができるかどうか、およびそうである場合、可能なリサイクルサイクルの数;異なる物体でさらに使用することができるかどうか、などを決定する。
【0072】
所与のプラスチック材料組成について、各基準は、それぞれの特性(例えば、閾値法)によって、または異なる特性(および場合によってはそれぞれの重み係数)の組合せによって画定することができ、選別目的でプラスチック材料条件、したがって物体の条件を適切に分類することを可能にする。プラスチック材料条件は、基準XRFシグネチャからの、システム14によって読み取られ/測定されたXRFシグネチャを示すデータの決定された偏差から導出される。基準XRFシグネチャは、プラスチック材料組成物の識別/認証の目的で所与のプラスチック材料に最初に作成/埋め込まれた元のXRFマーキングに対応する元のXRFシグネチャであり得る。特定の条件によって特徴付けられるプラスチック材料組成物を含む物体の状態は、予め記憶された偏差関連データベースを使用してXRFシグネチャ偏差のデータ処理および分析によって決定される。元のXRFシグネチャ偏差からのXRFシグネチャ偏差を決定する目的のためのデータ分析は、XRF読み取り/検査システム12、ならびにXRFマーキングの作成に使用されるXRFマーキングシステムに関する、予め記憶されたデータを考慮し得ることに留意されたい。
【0073】
したがって、XRF検査システムは、XRF検査データピースに基づいて、それぞれの物体の識別データIDに関連付けられた物体状態データOSDを生成するように構成され動作可能である、XRFシグネチャ分析器20をさらに含む。物体のIDは、任意の既知の適切な技術、例えば、XRF検査ステーションの上流の光学検査ステーション30における光学システムによって、物体上で読み取り可能であり得る;または、制御可能な方法で、外部データプロバイダ32によって供給され得る。分析器20の動作は、以下でさらに詳細に説明される。
【0074】
さらに、XRFステーション12には、分析器20からの物体状態データOSDに応答して、それぞれの物体11に関する対応する選別データを生成するように構成され動作可能な、制御ユニット22が設けられている。物体に関連付けられたこの選別データ(例えば、物体状態データおよび/または識別されたXRFシグネチャデータとともに)は、さらなる使用/分析のためにメモリ25に記録することができる。
【0075】
選別データは、それぞれの物体分類動作を実行するために選別ステーション50によって使用され得る。例えば、そのような選別ステーション50は、XRF検査ステーション12の下流の生産ライン10上に位置してもよく、場合によっては、XRFステーション制御ユニット22またはメモリ25、または選別データが記憶されている外部記憶装置とデータ通信する選別コントローラ52を含んでもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、分析器20は、検出ユニット18から受信したXRF検査データピースを分析し、物体状態データOSDを決定するように予めプログラムされている。上述のように、これは、シグネチャ関連基準データ(元のXRFシグネチャ)に対する測定されたXRFシグネチャの分析、および、測定されたシグネチャの基準シグネチャからの変化または偏差の程度を決定すること;および、予め記憶された偏差関連基準データに基づいて、そのように決定された偏差の程度を分析すること、を含む。
【0077】
分析器20は、そのような2段階分析手順を実行するように構成され、動作可能であり得る。この目的のために、分析器20は、中央データベース26内の検索のための検索エンジンを管理するとともに、中央データベース26内のデータを更新/最適化するデータベースマネージャ24とデータ通信するように構成される。データベースおよびそのマネージャは、遠隔コンピュータシステムと関連付けられてもよい。したがって、分析器は、任意の既知の適切な通信プロトコルを使用してコンピュータネットワークを介して遠隔コンピュータシステムと通信するために、任意の既知の適切なタイプの通信ユーティリティ(図示せず)を適切に備える。
【0078】
データベースは、クラウドベースのシステムであってもよい。一例では、クラウドベースのシステムは、分散型ブロックチェーンシステムであってもよく、多くの当事者(例えば、製造業者、リサイクル業者、小売業者)は、分散型台帳にアクセスすることができる。
【0079】
図にさらに示されるように、いくつかの実施形態では、XRF検査データの分析は、遠隔中央制御システム40によって行われてもよい。より具体的には、制御システム40は、コンピュータネットワークを介して、複数の生産ラインにおける複数のXRF検査ステーションと通信するコンピュータシステムである。制御システム40は、物体のIDに関連付けられた物体のXRF検査データピースを示すデータ、およびXRFステーション識別データを含む入力データに応答する。システム40は、上述のようにXRFデータを分析し、物体状態ジェネレータ44を動作させて物体状態データOSDを生成し対応するXRFステーションに通信する、XRFデータ分析器42を含む。
【0080】
あるいは、内部分析器20によって提供される分析結果は、中央制御システム40によって検証されてもよい。
【0081】
代替的にまたは追加的に、データ分析手順は、内部分析器20と中央制御システム40との間で分散されてもよい。この場合、例えば、XRF検査データは、まず、分析器20によってXRFシグネチャ基準データに対して分析され、このようにして得られたシグネチャ偏差データは、中央ステーション40において処理され、分析される。中央制御システム40は、データベースシステム(マネージャ)24と通信し、予め記憶された基準データを利用して、人工知能(AI)および機械学習ベースのデータ処理を適用するように構成される。
【0082】
データ分析(内部分析器20および/または中央制御システム40によって実行される)は、AIおよび機械学習データ分析を利用することができる。AIおよび機械学習技術の原理は、一般に知られており、より詳細に説明される必要があるが、そのような技術は、典型的には、様々なXRF検査システムによって提供されるXRF検査データと同様の対応する測定データに対して機械学習モデルをトレーニングするためのトレーニング段階と、トレーニングされたモデルを特定のXRF検査システムによる実際の測定で得られた測定データに適用するための推論段階とを利用することに留意されたい。
【0083】
したがって、物体状態データ(その中のプラスチック材料状態を示す)は、内部分析器20および/または外部中央制御システム40によって提供され得る。複数のXRF検査ステーションから提供される関連物体のデータ分析の結果は、データベースマネージャに通信されて、データベース内の基準データを更新/最適化することができる。
【0084】
好ましくは、XRF検査システム14は、検査される特定の物体に対するその自動動作の最適化を可能にするように構成される。この目的のために、システム14は、物体11の材料関連および/または幾何学的パラメータを示す入力物体関連データORDを利用する。
【0085】
そのような物体関連データORDは、最初に、ユーザインターフェース34を介して、任意の好適なユーザプロバイダ32によって提供されてもよく、例えば、CADデータは、予め準備され、コンベヤ上での物体の流れの進行速度/パターン(コンベヤの速度はまた、それぞれのコントローラによって適切に制御されてもよい)を考慮して、制御可能な態様で検査システム14に周期的に供給される。代替的にまたは追加的に、物体関連データORDは、XRF検査ステーションの上流の光学検査ステーション30において取得されてもよい。
【0086】
XRF検査ステーション12は、物体関連データORDを受信して分析し、XRF検査システム14に対する動作データを生成するコントローラ28をさらに含む。そのような動作データは、検査セッションの動作モードを調整するためにシステム14(例えば、その内部制御回路)によって使用される。動作モードは、物体の材料関連に従ってエミッタの動作パラメータ(例えば、スペクトルデータ);および/または、検査セッションに関与するエミッタおよび検出器の数、および、物体の材料関連および幾何学的データに基づく検査される物体に対するそれらの間の相対調節によって画定される。この目的のために、XRF検査システムは、その機能要素(エミッタおよび/または検出器)の互いおよび検査平面(物体進行平面)に対する移動を可能にするように構成され、複数の異なるスペクトルフィルタを利用して検査セッションにおいて選択されたものを使用することを可能にする。
【0087】
例えば、物体関連データORDは、物体の形状および高さ、ならびにエミッタおよび/または検出器の位置を含んでもよく、したがって、可読XRF応答を最適化するように調整される必要がある。上記で説明し、以下でさらに具体的に例示するように、XRF検査システムの少なくとも検出器は、コンベヤ平面の下、すなわち、検査領域を通って搬送/移動される間に物体が位置するコンベヤの表面によって画定される検査平面の下に位置してもよい。物体関連データは、物体内のXRFマーキング含有領域の位置およびサイズ(例えば、プラスチック層の厚さ)を示すデータを含んでもよく、したがって、サンプルおよび読み取られる特定のマーカーを励起する際、およびサンプルから到来する二次放射線を検出する際に、高い効率を達成するように、XRFシステムの動作パラメータの調整を必要とする。
【0088】
これに関して、以下のことに留意すべきである。サンプルに到達し、サンプルによって吸収される選択されたスペクトルの一次励起X線放射の量は、最適化/最大化され、特に、測定される要素/マーカーによって吸収される放射の部分/画分は、最適化/最大化される。また、被測定要素から放出される二次放射線(励起放射線に応答して放出される放射線)のうち検出器に到達する部分は、最適化/最大化される。サンプルに到達し、サンプルによって吸収される励起放射線の量を最大化することは、一次放射線がサンプル上の表面領域の所望の体積(すなわち、マーカーが存在するまたは存在すると予想される体積)にできるだけ限定されるようなものであるべきである。これにより、サンプルの表面上の前記体積によって一次放射線を吸収する確率が高まり、表面領域の前記体積を通ってサンプルのバルク内に一次放射線が透過する確率が低減される。
【0089】
したがって、エミッタ-サンプル-検出器の幾何学形状は、上記の要因を最適化するように、動作データに基づいて調整される必要があり得る。物体に対するエミッタおよび検出器の最適化された幾何学的設定を伴うXRFシステムは、励起および検出プロセスの効率を高め、したがって、XRFシグネチャ識別の精度を向上させる。
【0090】
励起および検出を最適化するようにXRFシステム幾何学形状を調整する一般原理、ならびにそれを実装するいくつかの例は、本出願の譲受人に譲渡された国際公開第2018/05135号に説明され、本刊行物は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0091】
XRFシステム自体の構成および動作は、例えば、いずれも本出願の譲受人に譲渡され、参照によって本明細書に組み込まれる、国際公開第2016/157185号、国際公開第2018/051353号に記載されるものであってよい。
【0092】
ここで、上述のXRF検査ステーション12によって実施することができる本発明のXRF検査方法を、概して60で示される検査方法のフロー図を例示する図2を参照してより詳細に説明する。
【0093】
物体が生産ライン上を進む間、物体は連続的に到着し、XRF検査ステーションを通過し、そこで各物体(または場合によっては選択的物体)は1つまたは複数の自動検査セッションを受ける(工程62)。実際には、物体は、生産ラインスループットの要件を満たすために比較的高速で搬送されることを理解されたい。本発明のXRF検査技術は、高速かつ効果的な自動検査モードを提供し、これは、様々なタイプの物体および様々なタイプのプラスチック材料組成物に調整可能であり得る。
【0094】
上述したように、XRF検査セッションは、X線またはガンマ線放射(例えば、物体関連データに基づいて決定された選択され最適化されたスペクトルの)による物体の少なくとも一部の励起と、励起部分のXRF応答のスペクトルプロファイルの検出とを含む。好ましくは、検査セッションは、適切に提供された動作データに基づいて最適化された検査モードで実施される(工程66)。
【0095】
上述のように、動作データは、例えば、先行するステーション(例えば光学検査ステーション)で取得された物体関連データに従って決定されてもよい(工程64)。
【0096】
また上述したように、エミッタおよび検出器の配置の幾何学的形状および/またはエミッタの動作パラメータ(パワーおよびスペクトルプロファイル)は、物体関連データに基づいて最適化されることが好ましい。また上述したように、エミッタおよび検出器の配置の幾何学的形状は、物体関連データに基づいて最適化されることが好ましい。配置データは、検査セッションに関与するエミッタの数および検出器の数と、それらの相対調節とを含む。XRFシグネチャの読取りを適切に最適化するために、例えば、単一の検出ユニットと関連させて、励起において2つのエミッタを同時に使用することができる(物体内の特定の位置に到達し、そこで吸収される一次放射線の量を増加させるために)。また、エミッタは、物体に近づけるおよび遠ざけるように適切に移動させ、所望の場所に所望のサイズの励起スポットを生成してもよい。
【0097】
XRF応答データは、検出可能なXRFマーキングのXRFシグネチャを識別するために分析され、対応するXRF検査データピース(測定データ)が生成される(工程68)。識別されたXRFシグネチャは、適切に提供/アクセスされた基準データ(工程71)と、好ましくは測定されたXRF応答に関連して適切に提供された物体のIDデータ(工程73)とを使用して分析される(工程70)。基準データは、それぞれのプラスチック材料内に作成され、それを特徴付ける元のXRFマーキングに対応するデータを含むことができる。データ分析は、識別されたXRFシグネチャと対応する基準データとの間の差異、すなわち、基準データからのXRFシグネチャの変化/偏差の程度の決定を含み、偏差関連データが再コード化される(工程72)。
【0098】
この変化/偏差は、所定の基準に従って、(中央データベースに予め記憶された)偏差関連基準データに基づいて(例えば、AIおよび機械学習技術を使用して)さらに分析され(工程74)、対応する物体状態データが生成され(工程78)、好ましくは適切に記録される(工程80)。分析結果は、データベースを更新するために使用され得る(工程76)。物体状態データは、前記物体に関する分類データを生成するために使用される(工程82)。
【0099】
例えば、データベース内のデータは、所与の物体タイプにおける所与のプラスチック材料組成について、ならびに所与のXRF検査システムおよび検査モードについて、前記XRFシステム/検査モードを使用して前記物体上で測定されたXRFシグネチャ偏差を記述するデータと、プラスチック材料組成の対応する条件およびそのさらなる使用の規則との間の関連付けを含み得る。複数のXRS検査結果の分析により、データベースおよびその管理の更新および最適化が提供される。
【0100】
上述のように、必要に応じて、いくつかの実施形態では好ましくは、XRF検査システムの要素は、典型的にはコンベヤによって画定される物体進行平面に対して適切に配置することができる。例えば、少なくとも1つのX線検出器は、それぞれの検査領域に関連付けられたコンベヤのセクション/領域の下に配置されてもよく、コンベヤの前記セクションの下/下方のそれぞれの検査領域からのXRF応答を検出するように構成され、動作可能である。
【0101】
ここで、図3A~3Fを参照すると、図3Aは、コンベヤのセクションの下に少なくとも1つのX線検出器が配置される、本発明の実施形態によるコンベヤベースのXRF検査ステーション100の様々な構成を概略的に示すブロック図である;図3B~3Fは、本発明の実施形態によるコンベヤベースの検査システムの様々な構成の概略斜視図であり、システムの検査領域に対して静的または可動XRF透過窓を有する、および/または、複数の検査領域が、システムのコンベヤによる物体/材料の移動/並進方向に沿っておよび/またはそれを横断して配置される。
【0102】
XRF検査ステーション100は、図1の上述の検査ステーション12と概ね同様に構成され、すなわち、少なくとも1つの検査領域(図1のIR)を画定する少なくとも1つのXRF検査システム120(図1のシステム12に概ね類似する)と、XRFシグネチャ分析器20(図1のものに類似する)とを含み、コンベヤシステム110も含む。検査システム120は、放射装置122(図1の16)および対応する検出器装置124(図1の18)を含む。また、検査ステーション100には、コントローラ28(図1のコントローラと概ね同様)が設けられている。
【0103】
図3Aの非限定的な例では、検査ステーション100は、対応する検査領域のアレイを画定する離間した検査システムのアレイを含み、4つのそのようなシステム/領域R1、R2、R3、R4が図に示されている。したがって、エミッタおよび検出器の配置は、対応するエミッタ-検出器の対を含んでもよく、または、図3Aに分かりやすく図示されるように、2つ以上の検査システムは共通のエミッタを使用してもよく、要素122A、122B、および122Cがエミッタを示し、要素124A、124B、124C、および124Dが検出器を示す。
【0104】
検査ステーション100は、検査領域を通して物体Ob1~Ob3(図1では概して11と指定される)を移動させるように構成され動作可能な少なくとも1つのコンベヤ111を含むコンベヤシステム110に関連付けられる。図3Aの例では、物体は、検査領域R1~R4に向かって、かつそれを通って連続的に搬送される。
【0105】
図3Aにも示されるように、検出器配置(この非限定的な例では、複数の検出器124A、124B、124C、および124D)は、検査システムによって画定されるそれぞれの検査領域の下に配置される。いくつかの実施形態では、エミッタもまた、エミッタ122Aに関して図3Aに例示されるように、検査領域の下に位置してもよい。
【0106】
図に例示されるように、コンベヤ111は、当業者によって容易に理解されるように、1つまたは複数のベルト112またはローラセット113を含む1つまたは複数のコンベヤトラック114、または物体/材料(連続した/集まったまたは別個の固体または流体材料)を搬送するための他の機構を含んでもよい。
【0107】
検査ステーション100が複数の検査領域、例えば、R1およびR2を含む場合、検査領域R1およびR2は、コンベヤ111の並進/移動方向Dに沿って図3Eに示すように配置することができ、それによって、搬送される物体/材料の連続検査が数回可能になる。複数の検査領域R1およびR2に関連付けられた発光配置122のエミッタは、例えば、異なる電圧/フィルタ/コリメーションパラメータならびにスペクトル特性などの異なるパラメータ/特性を有する/動作する異なるエミッタであってもよく、マーキングされた物体のXRFマーキング組成における複数の異なる要素を連続的に識別することを可能にする。
【0108】
代替的にまたは追加的に、システム100が複数の検査領域、例えばR1およびR2を含む場合、検査領域R1およびR2は、図3Fに示すように、コンベヤ111の並進/移動方向Dを横切るように配置することができ、それによって、コンベヤによって搬送される複数の物体の同時/並列検査を可能にする。また、この場合、複数の検査領域R1およびR2のトラバースエミッタ122は、例えば、異なる電圧/フィルタ/コリメーションパラメータならびにスペクトル特性などの異なるパラメータ/特性を有する/動作する異なるエミッタであってもよく、マーキングされた物体のXRFマーキング組成物における複数の異なる要素を同時に識別することを可能にする。
【0109】
XRF検査システム/ユニット120は、少なくとも1つのX線またはガンマ線放射線エミッタ122と、少なくとも1つのX線検出器124とを含む。この図の非限定的な例では、いくつかの任意選択的な放射線エミッタ122A~122Cおよびいくつかの任意選択的なX線検出器124A~124Dが、コンベヤ111およびその上の検査領域R1~R4に対して様々な構成を有するように示されている。上述のように、本発明の様々な実施形態では、1つまたは複数の前記エミッタおよび1つまたは複数の前記検出器のみが実際に実装され得る。少なくとも1つのX線またはガンマ線放射線エミッタ122(例えば、122A~122Cのいずれか)は、少なくとも1つの検査領域、例えば、R1に向けてX線またはガンマ線放射ERを放出し、前記検査領域R1に位置する少なくとも1つの物体Ob1から二次蛍光X線応答XRFを励起するように構成され、動作可能である。1つまたは複数のX線検出器124(例えば、124A~124Dのいずれか)は、X線またはガンマ線放射ERに応答して、1つまたは複数の検査領域、例えば、R1から到来する蛍光X線応答XRFのスペクトルプロファイルを検出し、対応する1つまたは複数の検査領域から到来するXRF応答を示すデータを含むXRF検査データピース(測定データ)を生成するように構成され、動作可能である。この目的のために、検査領域R1~R4は、エミッタ122(概して、122は、任意選択の複数のエミッタの任意の1つまたは複数、例えば122A~122Cを指定する)によって放出された放射線ERに曝露される領域と、二次放射線応答XRFがXRF検出器124(概して、124は、任意選択の複数の検出器の任意の1つまたは複数、例えば124A~124Dを指定する)によって検出され得る領域との間に重なりがあるコンベヤ111に近い/その上方の領域を指定することが理解される。XRF検査システム120は、例えば、エネルギー分散型XRF(EDXRF)システムとして構成され、動作可能であってもよい。
【0110】
有利には、本発明の実施形態では、XRF検査システム120の検出器124は、コンベヤ111の下に、より具体的には、それぞれの検査領域、例えばR1~R4に位置するセクションの下に配置される。この構成は、XRF応答XRFが予測される被検査物体Ob1~Ob2までの予め既知かつ実質的に固定されたまたは制御可能に調整可能であり得る、距離d(例えば、物体の少なくとも底部までの固定/制御可能な距離d)を維持しながら、様々な形状およびサイズを有する物体、例えば、Ob1~Ob2を検査することを容易にする。
【0111】
有利には、被検査物体Ob1~Ob2またはその底面に対する固定または制御可能に調整可能な距離dの事前情報は、物体Ob1~Ob2の他の材料または検査領域、例えばR1~R4の近傍の他の材料によって放出され得るXRF信号を軽減することを可能にしながら、物体Ob1~Ob2のXRFマーキング組成物のXRF応答XRFの正確な分析を容易にする。これは、例えば、距離dのデータが物体Ob1~Ob2のXRFマーキング組成物のXRF応答のスペクトルシグネチャの予想される推定強度範囲を示す(例えば、XRFマーキング組成物のXRF応答におけるスペクトルピークの予想される強度またはその範囲を示す)という事実を利用することによって行うことができ、したがって、これらの予想される推定強度範囲を超えるスペクトルピークをフィルタリングし、それによって、XRFマーキング組成物によってもたらされないが、場合によっては検査領域内の他の材料(例えば、検査される物体の他の材料)によってもたらされるXRFノイズ/クラッタの少なくとも一部を除去することを可能にする。
【0112】
コンベヤ111の下にX線検出器124を配列/配置することのさらなる利点は、そのような配置が、物体の形状/サイズにかかわらず距離dを維持/調整しながら、様々な形状およびサイズの物体の検査を容易にすることである。
【0113】
さらに、X線検出器124をコンベヤ111の下に配列/配置することにより、XRF検出器124を物体Ob1~Ob3の少なくとも底部に非常に近い比較的小さい距離d、例えば数センチメートル以下の距離dに配置することが容易になる。これは今度は、XRF応答がXRFマーキング組成物のXRFスペクトルシグネチャの一部であるマーキング要素として軽原子元素を含むXRFマーキング組成物からのスペクトル応答の検出および分析を可能にする。例えば、これは、比較的低い原子番号、例えば25を超えない原子番号のマーキング原子元素を含むXRFマーキング組成物の利用を容易にする。
【0114】
上述の構成により、コンベヤベースのXRF検査ステーション100は、有利には、例えば物体Ob1~Ob3のプラスチック材料に埋め込まれたXRFマーキング組成物のXRFスペクトルシグネチャを検出するために使用され、構成され、動作可能であり得る。例えば、物体Ob1~Ob3のプラスチック材料は、各々がプラスチックに埋め込まれた1つまたは複数の原子元素マーカー(これらの原子元素マーカーはまた、本明細書では、XRF原子元素と互換的に呼ばれる)の所定の相対濃度からなるそれぞれのXRFマーキング組成物を含むことができる。一般に知られているように、各XRFマーキング組成物のXRFスペクトルシグネチャは、その中の1つまたは複数のXRF原子元素の所定の相対濃度と関連付けられる(例えば、XRF検出器124は、典型的には、照射/検査された物体からのXRF応答のスペクトルプロファイルを検出することが可能な分光計として構成され、動作可能である)。この目的のために、検出器124と物体Ob1~Ob1の底部との間の、事前に知られており、場合によっては小さい距離dを利用することにより、コンベヤベースのXRF検査ステーション100は、プラスチック材料に埋め込まれているXRFマーキング組成物のスペクトルプロファイルを検出することを容易にし、XRFマーキング組成物は、少なくとも1つの光XRF原子要素を含むことができ、放射線XRに応答して弱いまたは空気吸収可能なXRF応答信号のみを放出し、XRF光子のエネルギーが6kevを超えず、物体Ob1から数センチメートルを超えない距離dから前記XRF信号を検出する;コンベヤの下の検出器の最小距離dは、数センチメートルの距離を超えず、それによって、XRFマーキング組成物の各々のXRFスペクトルシグネチャの正確な検出を可能にする。
【0115】
したがって、XRF検査システム120のXRF検出器124は、それぞれの検査領域、例えばR1~R4において、コンベヤ111のそれぞれのセクション/領域の下に配置される。XRF検出器124は、コンベヤの前記セクションの上方の前記それぞれの検査領域(例えば、R1またはR2)からの前記蛍光X線応答XRFを検出するように構成され動作可能であり得、その結果、それらと、物体、例えば前記コンベヤ111によって検査領域を通って移動されるOb1との間の最小距離dは、物体のサイズにかかわらず、実質的に固定されたままであるか、または実質的に固定されるように調整することができる。概して、X線またはガンマ線放射線エミッタ122は、検査領域の周囲の任意の場所、例えば、検査領域およびコンベヤ111によってそこを通って搬送される物体の上/下または側面に位置してもよい。例えば、図3Aの非限定的な例では、任意選択の放射線エミッタ122Bおよび122Cは、コンベヤ111の上方(および場合によっては検査領域R2~R4の上方または側方)に位置するように示される。任意選択の放射線エミッタ122Bおよび122Cは、それらの放射が検査領域R2~R4に向けられるように配向される。
【0116】
そうは言っても、コンベヤベースのXRF検査ステーション100のいくつかの実施形態では、1つまたは複数のX線またはガンマ線放射線エミッタがコンベヤ111の下に位置するコンベヤベースのXRF検査システム100の構成によって、特定の利点が得られる。これは、図中の任意選択の放射線エミッタ122Aの構成によって例示される。示されるように、放射線エミッタ122Aは、その放射線ERが検査領域R1に向けられるように配向される。このような構成において、放射線エミッタ122AおよびXRF検出器124Aはいずれも、コンベヤ111および検査領域R1を通過する際の被検査物OB1の同じ側から、コンベヤ111の下方に位置する。これは、材料組成が、XRFマーキング組成とは別に、比較的有意なX線またはガンマ線吸光度を有する材料を含む様々な物体の検査に特定の利点を提供し、これは、特に放射線エミッタ122およびXRF検出器124が検査される物体の対向する側から配置される場合に、XRF検査を妨げ得る。物体中に存在すると物体のXRFマーキング組成物のXRF検査を妨げ得る比較的有意なX線またはガンマ線吸光度を有する材料/原子元素は、例えば、比較的高濃度、例えば1,000ppm超、またはさらに10,000ppm超の原子番号25超の材料を含み得る。例えば、難燃性材料で作製されたOb1などの物体は、X線/ガンマ線放射XRの比較的高い吸光度によって特徴付けられる臭素(Br)がかなりの濃度で含まれ得る。また、例えば、P(リン)および/またはAlおよび/またはMgおよび/またはZnを高濃度で含有する非臭素化難燃剤材料で作製された物体Ob1も、本発明のシステムによって検査/識別/選別することができる。このような場合、放射線エミッタ122をコンベヤ111の上または側方に配置し、対応するXRF検出器124をコンベヤ111の下に配置することにより、エミッタ122からの放射(一次/励起)放射線ERの実質的な吸収がもたらされ、そうでなければXRFマーキング組成物に対するXRF応答が引き起こされ、また、物体Ob1のXRFマーキング組成物からのXRF応答XRFの実質的な吸収がもたらされる。このような場合、XRF検査の信号対ノイズまたは信号対クロッターが劣化する。
【0117】
したがって、本発明のいくつかの実施形態は、SNRのそのような劣化を回避/低減し、比較的有意なX線またはガンマ線吸光度を有する材料/原子要素を含むか、またはそれによって形成される物体に組み込まれるXRFマーキング組成物の正確かつ信頼できる検査を可能にするように構成され、動作可能である。これは、放射線エミッタ122AおよびXRF検出器124Aの両方が、検査領域R1を通過するときに検査物体OB1の同じ側からになるように、コンベヤ111の同じ側からコンベヤ111の下に位置するように構成することによって達成される。したがって、エミッタ122Aから、物体Ob1のマーキング組成物からXRF応答XRFを励起/誘導する点までの、放出放射線ERの累積移動距離に、検出器までのXRF応答XRFの移動距離を加えたものは、短くてもよい(例えば、合計で数センチメートル、または図では約2×Dである)。結果として、物体を通る累積移動距離は、物体Ob1のサイズ/直径よりも著しく小さくなり得、したがって、エミッタ122AからのX線またはガンマ線放射XRの吸光度およびXRFマーキング組成物以外の物体自体の材料によるXRF応答XRFを低減する。さらに、X線またはガンマ線放射線エミッタ122Aをコンベヤ111の下に配列/配置することにより、X線またはガンマ線放射線エミッタ122Aを、検査領域R1を通ってコンベヤ111によって移動される物体の底面に近接して配置することができ、それによって、エミッタ122Aと物体との間の最小/小さい距離d(例えば、数センチメートル以下の距離)を得ることができ、この距離dはまた、物体のサイズに関係なく、エミッタの移動を伴わずに、実質的に固定されたままであり得る。
【0118】
XRF検出器124、および場合によってはX線またはガンマ線放射線エミッタ122Aをコンベヤ111の下方(その上方の検査領域に向けられる)に配置する際の難しさは、従来のコンベヤが、多くの場合、実質的なXRF応答を有し得る材料、または、エミッタからのX線またはガンマ線放射XRに対して高度に吸収性であるかまたは物体Ob1からのXRF応答XRFを吸収する材料で作製されるという事実に起因して生じ得る。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態では、この困難は、エミッタ122の一次X線またはガンマ線放射ERに対して高度に吸収性でない(実質的に透過性)、および/または二次XRF応答XRFに対して実質的に透過性である、材料/原子要素から形成されるコンベヤ111を利用することによって解決される。いくつかの実施形態では、コンベヤ111は、XRFの自己放射が弱い、アルミニウム合金メッシュまたは他の軽金属もしくは炭素系材料などの材料で形成されるか、または、XRFの自己放射が検査される物体をマーキングするために使用されるXRFマーキング組成物のスペクトル領域とは異なるスペクトル領域にある材料で形成される。
【0120】
代替的にまたは追加的に、本発明のいくつかの実施形態では、この困難は、XRF放射率がないまたは低く、場合によってはX線またはガンマ線一次放射ERの吸光度が低い、領域を画定する1つまたは複数のXRF透過窓W1~W4を有するコンベヤ111の構成によって解決される。したがって、これらの窓W1~W4が検査領域、例えばR1~R4に位置する場合、実質的にXRF検査を妨害または干渉することはない。XRF透過窓W1~W4は、例えば、コンベヤ111内の空隙(例えば、そのベルトまたはローラの中/間)によって画定される間隔/開口として、またはそのような間隔/開口に配置されたXRF放射率のないまたは低い画定された材料によって実装され得る。これに関して、間隔または開口という用語は、X線またはガンマ線励起放射ERの波長範囲および/または検査システム120によって搬送および識別されるように指定された物体のXRFマーキング組成物からのXRF応答XRFの予想される波長に対して、実質的に透過性である光学窓と考えられるべきである。
【0121】
この目的のために、上記に示し、自明な図3B~3Dに示すように、コンベヤ111は、1つまたは複数のベルト112またはローラセット113を有する1つまたは複数のコンベヤトラック114を含んでもよく、1つまたは複数のベルト112の間または内部(それぞれ、図3Bおよび3Cに示されるように)またはローラセットの間または内部(図3Dに示されるように)に、1つまたは複数の間隔(空隙またはXRF透明材料)によって位置決め/画定されるXRF透過窓W1を有してもよい。
【0122】
例えば、コンベヤ111は、コンベヤ111のベルトまたはローラセットを搬送する2つ以上のコンベヤトラック114を含んでもよく、XRF透過窓W1~W4のうちの1つまたは複数を画定する間隔は、トラックのベルトまたはローラセットの間に位置してもよい。この場合、図3Bおよび図3Dに例示されるように、このように画定されたXRF透過窓W1の位置は、検査領域R1に対して固定される一方で、物体、例えばOb1はその上を通過/搬送される。代替的にまたは追加的に、例えば、コンベヤの少なくとも1つのベルトまたはローラセットは、1つまたは複数のXRF透過窓W1~W4を画定する1つまたは複数のXRF透明開口を備えて構成され得る。この場合、図3Cに例示されるように、そのような開口が可動ベルト内に画定される場合、開口によって画定されるXRF透過窓W1の位置は、検査領域R1に対して可動となるであろう。
【0123】
したがって、上述のように、XRF透過窓は、ローラ間またはコンベヤトラックのベルト内の間隔/開口/空隙として、または隣接するコンベヤトラックに対するベルト/ローラセット間の間隔/空隙/開口によって、画定されてもよい。いくつかの実装形態では、XRF透過窓が画定される間隔/空隙/開口は、XRF励起放射ビームERの2D断面(幅/長さ)または検査物体からのXRF応答XRFの有効断面よりも幾分小さい2Dサイズ(幅/長さ)で構成されるため、1つまたは複数のXRF透過窓は、部分的にのみXRF透過性であることを理解されたい。しかしながら、窓を画定する間隔/開口/空隙は、コンベヤのローラ/ベルト間の規則的な間隔よりも大きく、それによって、ERまたはXRFビームと間隔の近傍のローラ/ベルトの材料との相互作用の応答として、実質的に固定された強度およびスペクトルプロファイルのXRFクラッタが低減される。
【0124】
いくつかの実施形態では、XRF検査ステーション10、100の分析器20はまた、検査領域によって/検査領域を通って搬送される物体の時間積分XRF測定を行うように構成され動作可能な信号積分器を含むことに留意されたい。また、いくつかの実施形態では、検査ステーション10、100のコントローラ20は、以下に説明するように、検査セッションの様々なパラメータ/条件を管理する検査コントローラユーティリティを含む。これは、検出器がコンベヤセグメントの下に位置するコンベヤベースのXRFステーション100に関してより具体的に例示されるが、本発明のこの態様は、この特定の例に限定されない。
【0125】
したがって、図3Aの非限定的な実施例に例示されるように、分析器20は信号積分器126を含み、動作コントローラ28は検査時間コントローラ128を含み、それぞれが検査システム120に接続可能であるか、または検査システム120の一部である。検査時間コントローラ128および信号積分器126は、検査領域、例えばR1~R4を通って/その上で運ばれる物体Ob1~Ob3の時間積分XRF測定を行うように構成され動作可能である。
【0126】
これに関連して、「時間積分XRF測定」なる用語は、本明細書では、被検査物体を1つまたは複数の検査領域(例えば領域R1~R4)に通過させ、励起X線またはガンマ線放射ERを照射して、そこからのXRF応答XRFを1つまたは複数の検出器124によって検出する間の、所定の総持続時間(連続期間または間欠期間)にわたって実行される、Ob1等の物体の測定を指すために用いられる。この測定スキームは、測定セッションの総持続時間の異なるタイムスロットで得られるXRF応答XRFを合計/積分して、異なるタイムスロットの個々のXRF応答よりも概して高い信号対ノイズ比または信号対クラッタ比を有する総測定XRF応答を得ることができるという意味で積分型である。これは、例えば、1つのタイムスロットにおけるXRF測定から得られるXRF応答XRFのスペクトルプロファイルが、物体Ob1のXRFマーキング組成物の実際の応答に関連する「信号」部分と、例えば放射線XRに応答してXRFを放出する他の材料のXRF応答から得られる「ノイズ/クラッタ」部分とを有し得るからである。XRF応答XRFのノイズ部分は、異なるタイムスロットの間で変化し得る(例えば、物体Ob1の移動またはコンベヤ111の移動による、または異なるバックグラウンドXRF応答を有する異なる検査領域における物体の検査による)。したがって、物体が1つまたは複数の検査領域を通って位置する/移動するときに、異なるタイムスロットで得られるXRF応答XRFの積分または合計は、各タイムスロットのXRF測定のSNR/SCRよりも概して高い、総信号対ノイズまたは信号対クラッタをもたらす。
【0127】
したがって、いくつかの実施形態では、検査時間コントローラ128および信号積分器126は、上述の「時間積分XRF測定」スキームを実施するように構成され、動作可能である。この目的のために、コントローラ128は、物体Ob1が1つまたは複数の検査領域R1~R4を横切るタイムスロットにおいてのみ、(物体Ob1を検査するための)XRF検査セッションを実行するようにXRF検査システム120を動作させる制御信号を生成する。これを達成するために、コントローラ128は、センサS1などのデータソースおよび/またはOb1などの被検査物体が1つまたは複数の検査領域R1~R4を横切る時間/タイムスロットを示すデータを提供することができる別のデータソースに、接続可能であり得る。センサS1は、カメラ、近接センサ、または1つまたは複数の検査領域における物体の位置を感知するように構成され動作可能な任意の他の物体位置センサであってよく、物体がX線またはガンマ線放射ビームERによって少なくとも部分的に覆われるタイムスロット/期間を決定する。このようなセンサS1は、図1を参照して上述した検査システム30の一部であってもよい。
【0128】
検査時間コントローラ128は、物体の位置が少なくとも1つの検査領域R1~R4、例えば検査領域R1を横切る時間(タイムスロット)に同期して検査システム/ユニット120を動作させ、物体Ob1がそれぞれの領域R1を横切るタイムスロットに対するXRF測定値を得るために、それぞれの領域R1に関連付けられたそれぞれの放射線エミッタ122AおよびそれぞれのXRF検出器124Aの両方を起動させるかまたは起動を確保するように適合され得る。これは、コンベヤによって移動されるときに物体が横断し得る1つまたは複数の検査領域R1~R4に対して実行され得る。いくつかの実装形態では、コントローラ128は、被検査物体Ob1がそれぞれの領域R1を出る時間にそれぞれのXRF検出器124Aの動作を無効化/停止/中断して、それぞれの領域R1を横切るタイムスロットのXRF測定値を取得するように適合され得る。追加的にまたは代替的に、いくつかの実装形態では、検査時間コントローラ128は、被検査物体Ob1がそれぞれの領域R1を出る時間に、それぞれのX線またはガンマ線エミッタ122Aの動作を無効化/停止/中断するように適合され得る。
【0129】
したがって、異なるタイムスロットにおける物体についての複数のXRF測定値が、XRF検出器124Aによって取得され得、これらは、信号積分器126によって積分/合計されて、個々の測定値と比較して改善されたSNR/SCRを有する合計/積分XRF測定値をもたらすことができる。信号積分器128は、XRF検査システム120に接続可能である、またはその一部であり、異なるタイムスロットで物体Ob1に対して行われた複数のXRF測定から得られたXRF応答(例えば、XRFスペクトルプロファイル)を受信し(例えば、XRF検出器124から)、これらの測定値を積分または合計してSNR/SCRが改善された合計/積分XRF測定値を得るように構成され動作可能である。
【0130】
上述のように、いくつかの実施形態では、XRF検査ステーション10、100は、外部XRFプロセッサによる処理のために物体Ob1に対して行われたXRF測定値を出力するように構成され、動作可能である。
【0131】
代替的にまたは追加的に、コンベヤが、検査領域、例えばR1に対して移動可能なXRF透過窓、例えばW1(例えば、コンベヤ111のベルト内に画定されたXRF透過窓)を含む実施形態では、検査時間コントローラ128は、可動XRF透過窓、例えばW1が特定の検査領域R1を横切るか、または完全にその中にあるタイムスロットにおいてのみ、特定の検査領域においてXRF検査を実行するためにXRF検査システム120を動作させることによって、上述の「時間積分XRF測定」スキームを実施するように構成され、動作可能であり得る。これにより、コンベヤまたはベルトの材料から得られるノイズ/クラッタXRFを低減する手段が提供される。それを達成するために、コントローラ128は、コンベヤシステム110の一部であり得るセンサS2、カメラ、または、ベルトの位置、またはコンベヤ/ベルトのコントローラ128への移動軸に沿って少なくとも1つのXRF透過窓、例えば内部に画定されるW1の位置を示す感知データを、コントローラ128に提供するように構成され動作可能な、任意の他のデータソースまたはベルト位置センサに、接続可能であってもよい。
【0132】
次に、動作コントローラ28は、以下を実行するように構成され動作可能であり得る:
コンベヤ/ベルト111の位置、または、ベルト/コンベヤの移動軸に沿った検査領域、例えばR1に対する少なくともXRF透過窓W1の位置を示すデータを取得する;
XRF検査システム120、より具体的には、異なる検査領域、例えばR1~R4のエミッタ122および検出器124を、XRF透過窓W1の位置がそれぞれの検査領域を横切る期間(タイムスロット)で、またはそれと同期して動作させる。例えば、いくつかの実施形態では、コントローラ128は、XRF透過窓の位置が検査領域を横切る期間と同期して検査モジュールを動作させ、XRF透過性ではないベルトの他の部分が検査領域を横切る時間に検査モジュールの動作を無効化/停止/中断するように適合される;
それによって、XRF透過窓、例えばW1が検査領域R1~R4のうちの1つまたは複数にあり、したがって、XRF測定におけるノイズ/クラッタのレベルが低減される(窓W1ではなくコンベヤベルト自体が検査領域内にある場合と比較して)、異なるタイムスロットで行われた複数のXRF測定から得られたXRF応答(例えば、XRFスペクトルプロファイル)を取得する(例えば、XRF検出器124から)。
【0133】
XRF透過窓、例えばW1の位置がそれぞれの検査領域にあるタイムスロットにおける1つである任意の検査領域、例えばR1において行われた複数のXRF測定から得られたこれらのXRF応答(例えば、XRFスペクトルプロファイル)は、その後、積分/合計/平均して(内部または外部信号積分器126によって上述されたように)、ノイズ/クラッタが低減され、したがってSNR/SCRが改善された合計/積分XRF測定値を得ることができる。
【0134】
これに関連して、本発明に従って、SNR/SCRの改善のための「時間積分XRF測定」スキームを実施するための上記の2つの異なる技術の各々は、他の技術の実施とは無関係に実施され得ることを理解されたい。すなわち、各検査領域による測定のタイムスロットは、それぞれの領域におけるXRF透過窓W1の位置と同期させることができる(例えば、被検査物体Ob1の場所にかかわらず);または、各検査領域による測定のタイムスロットは、それぞれの領域における物体Ob1の位置と同期されてもよい(例えば、XRF透過窓W1が存在する位置にかかわらず)。しかしながら、XRF透過窓が検査領域に対して移動可能である場合、ノイズ/クラッタの低減およびSNR/SCRの改善における特定の利点は、これらの2つの技術を組み合わせ、検査領域R1における物体Ob1の位置(または少なくともその一部/重要部分)および検査領域R1におけるXRF透過窓W1(またはその少なくとも一部/重要部分)の位置の両方に同期されたタイムスロットにおいてのみ、R1などの検査領域においてXRF検査を行うように検査システム120を動作させる、本発明のシステム100の実装形態において得ることができる。この組合せスキームによって、物体を載せたXRF透過窓が検査領域R1を横切る積分期間中に、検査領域R1を横切る物体Ob1から到来する蛍光X線応答のスペクトルプロファイルを積分することが可能になるので、SNR/SCRがさらに改善され得る;これは、これらのタイムスロットの間、物体が、動作される検査領域、例えばR1内にある間に、コンベヤまたは/ベルト111の材料とXRF励起放射XRとの相互作用が低減され(サイズ/寸法XRF透過窓W1が検査領域R1よりも小さい場合)、または完全に回避され(サイズ/寸法XRF透過窓W1が検査領域R1以上である場合)、したがって、物体Ob1からのXRF応答が改善され、コンベヤ111からのバックグラウンドノイズが低減されるためである。
【0135】
いくつかの実装形態では、積分期間のタイムスロットは、前記タイムスロット中に前記X線またはガンマ線放射ビームを動作させるとき、X線またはガンマ線放射ビームがコンベヤ内に画定されたXRF透過窓W1の完全に中にあり、これにより、コンベヤまたはそのベルトと相互作用せず、コンベヤまたはベルトからのXRF放出を引き起こさないことを特徴とする。
【0136】
いくつかの実装形態では、積分期間のタイムスロットはさらに、各タイムスロットにおいて検査される検査領域において、X線またはガンマ線放射ビームによって少なくとも部分的に覆われるように物体が配置されることを特徴とする。したがって、タイムスロットは、物体が全積分期間の間に蛍光X線応答XRFを放出するように設定され得る。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態では、検査時間コントローラ128は、コンベヤシステム110に接続可能であり、1つまたは複数の物体の測定の結果/同時に従ってコンベヤシステム110の速度を動的に調整するように構成され動作可能である。例えば、信号積分器126は、物体が検査領域を通過する間に連続的または断続的に、ある物体に対して行われる測定値の上述の合計/積分を実行してもよい。したがって、例えば、物体の測定のSNR/SCRが増加する速度を示すデータは、測定がXRF透過窓を見て行われるか否かに依存して決定することができる。したがって、物体がシステムによって搬送され検査される間、信号積分器126は、物体のXRF測定値を十分な精度/SNRで取得するのに必要な総期間を推定することができる。例えば、信号積分器126は、過去のタイムスロット/ビンについて収集された全XRF測定データを連続的に計算/監視することができる。信号積分器126が、取得された信号(総カウント数)が弱すぎる、または信号取得の速度が遅すぎると判断する場合、検査時間コントローラ126は、コンベヤ111の速度を遅くするように構成され動作可能であってもよく、したがって、物体は、より長い期間にわたって検査される(すなわち、測定タイムスロット/ビンの数を増加させる)、および/またはX線またはガンマ線エミッタ122の電圧/電流、またはそのフィルタ特性またはビームコリメーションサイズ/パラメータを変更する。逆に、信号積分器126が、取得された信号(総カウント数)が物体の正確な検査に十分である、または信号取得の速度が適切であり、物体の正確な検査をもたらすのに必要とされるものを上回ると判定する場合、検査時間コントローラ128は、システム100による検査された物体の歩留まりを改善するためにコンベヤ111を加速するように構成され動作可能であり得る。さらに、上述のように、物体からの信号取得の速度は、物体がXRF透過窓を介して検査されるか否かに依存し得る。したがって、検査時間コントローラ128は、コンベヤ111の速度を動的に制御して、XRF透過窓(例えば、物体と共に)が検査領域R1を横断し、コンベヤからのバックグラウンドクラッタ/ノイズが低減された検査される期間を延長する、および/またはXRF透過窓が検査領域内にない時間にコンベヤの速度を加速するように構成され動作可能であり得る。
【0138】
XRF透過窓、例えばW1~W4のサイズ/形状および/または相対配置に関しては、本発明のいくつかの実施形態では、XRF透過窓を画定する1つまたは複数の間隔/開口の2次元サイズは、それぞれ、1つまたは複数のエミッタ122によって放出されるX線またはガンマ線放射のビームXRの断面の2次元サイズと等しいかまたはそれより大きいことに留意されたい。このような実施形態では、一次放射ビームERは、コンベヤ111のトラック、ベルトおよび/またはローラセットと相互作用することなくXRF透過窓W1を通過することができ、それによってコンベヤのトラック、ベルトおよび/またはローラからのXRF応答を回避する。
【0139】
XRF透過窓、例えばW1~W4の形状および/または相対配置に関しては、本発明のいくつかの実施形態では、コンベヤは、その中に画定され、それによって、1つまたは複数の検査領域R1~R4を横切るようにコンベヤ111のベルトとともに移動可能である、1つまたは複数のXRF透過窓W1~W4(例えば、透明開口または穿孔)が形成されたベルトを含む。そのような場合、本発明のいくつかの実施形態によれば、ベルト内の1つまたは複数のXRF透過窓W1~W4の2次元サイズは、コンベヤ111の軌道に沿ったベルトの移動方向を画定する軸Dに沿って伸長される。好ましくは、窓W1~W4の2次元サイズは、軸に沿った窓の長さが、この軸Vに沿ったX線またはガンマ線放射ビームXRの断面サイズよりも少なくとも数倍大きくなるように伸長され、それによって、放射線とベルト(例えば、図3Bのマッシュベルトの構成を参照)との相互作用を低減しながら、物体の上記の時間積分XRF測定を行うことを可能にする。
【0140】
コンベヤ111がトラックに沿って移動可能なベルトを含むいくつかの実施形態では、ベルトは、グリッドまたはメッシュとして構成されてもよく、1つまたは複数のXRF透過窓W1からW4は、ベルト内の1つまたは複数の開口(光学的)または物理的穿孔によって画定されてもよいことに留意されたい。そのような画定された窓W1~W4(光学的開口または物理的穿孔)のサイズは、場合によっては、XRF励起放射ビームXRの断面サイズよりも小さくてもよく、またはXRF応答XRFの予想される断面よりも小さくてもよい。これにより、ビームとベルトのメッシュ/グリッドの材料との相互作用の応答として、XRFクラッタが低減される。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態では、ベルトの前記メッシュ/グリッドを画定する主軸(例えば、ワイヤ/ロッドの方向)は、ベルト112の移動方向Dに対して対角線方向に位置合わせされる。これは、ベルトのメッシュ/グリッドのそのような配向により、ベルトから測定されたXRFクラッタが、検査領域を横断するときに、実質的に一定の強度およびスペクトルプロファイルを有し得るためである(例えば、常に、ベルトが検査領域において類似面積を占有するため)。したがって、ベルトからのノイズ強度(バックグラウンドクラッタのスペクトルプロファイルである)の変動は、例えば、検査領域を横切る前記ベルトの移動中に+/-15%の範囲を超えないように固定されるなど、低減され得る。
【0142】
いくつかの実装形態では、動作コントローラ28(例えば、検査時間コントローラ128)または分析器20は、コンベヤ(ベルトまたはローラ)から予想される所定のXRFクラッタを示すデータを受信するための基準データ記憶装置(例えば、図1のデータベース25)等の基準データプロバイダユーティリティに接続可能である。動作コントローラ28または分析器20は、検出器によって検出されたXRF応答を受信し、蛍光X線応答から所定のXRFクラッタを減算して、信号対ノイズ/クラッタが改善された物体からの蛍光X線応答を示すデータを取得するように構成され動作可能であり得る。
【0143】
ここで、図4Aおよび4Bを参照すると、エミッタおよび検出器を含む検査システムの一部がコンベヤシステムの2つのコンベヤの間に位置し、検査ユーティリティの検査領域(すなわち、スポット)に向かって進むサンプルの存在および/またはサイズに対応する指示データを提供するように構成されたセンサユニットが提供される、検査ステーションの関連要素が(斜視図および側面図を介して)概略的に例示される。センサユニットはまた、XRF検査分析器/ユーティリティによるマーキングのチェックの前に、マーキングされた物体の予備検査するための光学検査モジュール、例えば、視覚的、IRまたはX線撮像(図には具体的に示されていない)を含んでもよい。光学検査モジュールは、マーキングされた物体の視覚的外観を検査することができる(例えば、マーキングが見えないことを検証する)。光学検査システムは、マーキングされた物体の画像を、データベースに記憶された物体の予め選択された画像と比較することによって、マーキングを検査することができる。図3A図3Fを参照して上述した本発明の様々な特徴は、図4Aおよび図4Bに示す実施形態でも実装することができる。
【0144】
図5Aおよび図5Bは、本発明の一実施形態によるコンベヤベースのXRF検査システムの側面図および上面図を概略的に示し、エミッタおよび検出器を含む検査ユーティリティは、コンベヤの下に、より具体的にはマッシュ状のコンベヤベルトの下に配置される。この例では、センサユニットは、上述のように検査領域に向かって進むサンプルの存在および/またはサイズに対応する表示およびデータを提供するように構成される。図3A図3Fを参照して上述した本発明の様々な特徴は、図5Aおよび図5Bに示す実施形態でも実装することができる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図5A
図5B
【国際調査報告】