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特表2024-506681rAAV及びrBV産生のためのトランスフェクション試薬としてのヒスチジンリッチペプチドの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】rAAV及びrBV産生のためのトランスフェクション試薬としてのヒスチジンリッチペプチドの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20240206BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20240206BHJP
   C07K 2/00 20060101ALN20240206BHJP
   C07K 4/00 20060101ALN20240206BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20240206BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20240206BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20240206BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C07K14/00
C07K2/00
C07K4/00
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12N5/071
C12M1/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548883
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 US2022015903
(87)【国際公開番号】W WO2022173893
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】63/149,425
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】506136483
【氏名又は名称】バイオマリン ファーマシューティカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100141771
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 宏和
(74)【代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】ペレヴォシチコワ・イリーナ
(72)【発明者】
【氏名】アルスラン・バラン
(72)【発明者】
【氏名】ガルダン・ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】ブルボン・ポーリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】アラブシャヒ・ヘライ
(72)【発明者】
【氏名】チネク・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュロフ・シルパ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029BB13
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BD39
4B065CA60
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA18
4H045BA19
(57)【要約】
本発明は、アデノ随伴ウイルス及びバキュロウイルスを調製及び使用するための方法、組成物、及びキットを提供する。アデノ随伴ウイルス粒子及びバキュロウイルス粒子を産生するための方法は、ヒスチジンリッチペプチド及び他のカチオン性ペプチドを、トランスフェクション試薬として使用することを含む。アデノ随伴ウイルスは、特に、遺伝子療法及び/又は診断における使用のための、キャプシドでシュードタイプ化されたものである。バキュロウイルスはまた、アデノ随伴ウイルスを調製するために使用される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を調製するための方法であって、
細胞を、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、カチオン性ペプチドを使用して同時トランスフェクトするステップであって、同時トランスフェクトするステップ中に、前記カチオン性ペプチドの少なくとも一部分が、αヘリカルコンフォメーションを有し、前記αヘリカルコンフォメーションが、前記コンフォメーションの一方の側に位置する疎水性アミノ酸残基、及び前記コンフォメーションの反対の側に位置する極性アミノ酸残基を含む、ステップと、
前記トランスフェクトされた細胞を培養して、rAAVを生成するステップと、
前記rAAVを回収するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を調製するための方法であって、
細胞を、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、トランスフェクション試薬を使用して同時トランスフェクトするステップであって、前記トランスフェクション試薬が、ヒスチジンリッチペプチド(HRP)を含む、ステップと、
前記トランスフェクトされた細胞を培養して、rAAVを生成するステップと、
前記rAAVを回収するステップと、を含む、方法。
【請求項3】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を調製するための方法であって、
500リットル(L)超の培養物量で懸濁した細胞を、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、トランスフェクション試薬を使用して一過的に同時トランスフェクトするステップと、
前記トランスフェクトされた細胞を培養して、rAAVを生成するステップと、
前記rAAVを回収するステップと、を含む、方法。
【請求項4】
組換えバキュロウイルス(rBV)を調製する方法であって、
細胞を、異種ヌクレオチド配列を有する組換えバクミドで、カチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトするステップであって、前記トランスフェクトするステップ中に、前記カチオン性ペプチドの少なくとも一部分が、αヘリカルコンフォメーションを有し、前記αヘリカルコンフォメーションが、前記コンフォメーションの一方の側に位置する疎水性アミノ酸残基、及び前記コンフォメーションの反対の側に位置する極性アミノ酸残基を含む、ステップと、
前記トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、
任意選択的に、前記rBVを回収するステップと、を含む、方法。
【請求項5】
組換えバキュロウイルス(rBV)を調製する方法であって、
細胞を、バキュロウイルスゲノム及び異種ヌクレオチド配列を有する組換えバクミドで、トランスフェクション試薬を使用してトランスフェクトするステップであって、前記トランスフェクション試薬が、ヒスチジンリッチペプチド(HRP)を含む、ステップと、
前記トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、
任意選択的に、前記rBVを回収するステップと、を含む、方法。
【請求項6】
組換えバキュロウイルス(rBV)を調製する方法であって、
細胞を、異種ヌクレオチド配列で、カチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトするステップであって、前記細胞が、バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分を有し、前記トランスフェクトするステップ中に、前記カチオン性ペプチドの少なくとも一部分が、αヘリカルコンフォメーションを有し、前記αヘリカルコンフォメーションが、前記コンフォメーションの一方の側に位置する疎水性アミノ酸残基、及び前記コンフォメーションの反対の側に位置する極性アミノ酸残基を含む、ステップと、
前記トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップであって、前記異種ヌクレオチド配列及び前記バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分が、組み合わさって、rBVを生成することが可能なバキュロウイルスゲノムを形成する、ステップと、
任意選択的に、前記rBVを回収するステップと、を含む、方法。
【請求項7】
組換えバキュロウイルス(rBV)を調製する方法であって、
細胞を、異種ヌクレオチド配列で、トランスフェクション試薬を使用してトランスフェクトするステップであって、前記細胞が、バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分を有し、前記トランスフェクション試薬が、ヒスチジンリッチペプチド(HRP)を含む、ステップと、
前記トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップであって、前記異種ヌクレオチド配列及び前記バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分が、組み合わさって、rBVを生成することが可能なバキュロウイルスゲノムを形成する、ステップと、
任意選択的に、前記rBVを回収するステップと、を含む、方法。
【請求項8】
組換えバキュロウイルス(rBV)を調製する方法であって、
細胞を、AAVゲノムベクターを提供するヌクレオチド配列又はRepタンパク質若しくはCapタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する組換えバクミドで、カチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトするステップであって、前記トランスフェクトするステップ中に、前記カチオン性ペプチドの少なくとも一部分が、αヘリカルコンフォメーションを有し、前記αヘリカルコンフォメーションが、前記コンフォメーションの一方の側に位置する疎水性アミノ酸残基、及び前記コンフォメーションの反対の側に位置する極性アミノ酸残基を含む、ステップと、
前記トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、
任意選択的に、前記rBVを回収するステップと、を含む、方法。
【請求項9】
組換えバキュロウイルス(rBV)を調製する方法であって、
細胞を、AAVゲノムベクターを提供するヌクレオチド配列又はRepタンパク質若しくはCapタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する組換えバクミドで、トランスフェクション試薬を使用してトランスフェクトするステップであって、前記トランスフェクション試薬が、ヒスチジンリッチペプチド(HRP)を含む、ステップと、
前記トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、
任意選択的に、前記rBVを回収するステップと、を含む、方法。
【請求項10】
組換えバキュロウイルス(rBV)を調製する方法であって、
細胞を、AAVゲノムベクターを提供するヌクレオチド配列又はRepタンパク質若しくはCapタンパク質をコードするヌクレオチド配列で、カチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトするステップであって、前記細胞が、バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分を有し、前記トランスフェクトするステップ中に、前記カチオン性ペプチドの少なくとも一部分が、αヘリカルコンフォメーションを有し、前記αヘリカルコンフォメーションが、前記コンフォメーションの一方の側に位置する疎水性アミノ酸残基、及び前記コンフォメーションの反対の側に位置する極性アミノ酸残基を含む、ステップと、
前記トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップであって、前記ヌクレオチド配列及び前記バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分が、組み合わさって、rBVを生成することが可能なバキュロウイルスゲノムを形成する、ステップと、
任意選択的に、前記rBVを回収するステップと、を含む、方法。
【請求項11】
組換えバキュロウイルス(rBV)を調製する方法であって、
細胞を、AAVゲノムベクターを提供するヌクレオチド配列又はRepタンパク質若しくはCapタンパク質をコードするヌクレオチド配列で、トランスフェクション試薬を使用してトランスフェクトするステップであって、前記細胞が、バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分を有し、前記トランスフェクション試薬が、ヒスチジンリッチペプチド(HRP)を含む、ステップと、
前記トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップであって、前記ヌクレオチド配列及び前記バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分が、組み合わさって、rBVを生成することが可能なバキュロウイルスゲノムを形成する、ステップと、
任意選択的に、前記rBVを回収するステップと、を含む、方法。
【請求項12】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を生成するためのエレメントを発現することが可能な細胞を調製する方法であって、
細胞を、rAAVを生成するために使用されるエレメントをコードするヌクレオチド配列を有するベクターで、カチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトするステップであって、前記トランスフェクトするステップ中に、前記カチオン性ペプチドの少なくとも一部分が、αヘリカルコンフォメーションを有し、前記αヘリカルコンフォメーションが、前記コンフォメーションの一方の側に位置する疎水性アミノ酸残基、及び前記コンフォメーションの反対の側に位置する極性アミノ酸残基を含む、ステップと、
前記ヌクレオチド配列を有するゲノムを有するトランスフェクトされた細胞を単離するステップと、を含む、方法。
【請求項13】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を生成するためのエレメントを発現することが可能な細胞を調製する方法であって、
細胞を、rAAVを生成するために使用されるエレメントをコードするヌクレオチド配列を有するベクターで、トランスフェクション試薬を使用してトランスフェクトするステップであって、前記トランスフェクション試薬が、ヒスチジンリッチペプチド(HRP)を含む、ステップと、
前記ヌクレオチド配列を有するゲノムを有するトランスフェクトされた細胞を単離するステップと、を含む、方法。
【請求項14】
前記1つ以上のベクターが、前記細胞の少なくとも70%内に同時トランスフェクトされる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記rAAV産生のための1つ以上のベクター及び前記カチオン性ペプチドが、細胞に、前記細胞が培養されている量の10%未満である量で付加される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記rAAV産生のための1つ以上のベクター及び前記トランスフェクション試薬が、細胞に、前記細胞が培養されている量の10%未満である量で付加される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項17】
前記rAAV産生のための1つ以上のベクターが、AAVゲノムベクター、AAVヘルパーベクター、及び非AAVヘルパー機能ベクターを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記極性アミノ酸残基が、ヒスチジン残基を含む、請求項1、4、6、8、10、又は12に記載の方法。
【請求項19】
前記疎水性アミノ酸残基が、アラニン残基を含む、請求項1、4、6、8、10、又は12に記載の方法。
【請求項20】
前記疎水性アミノ酸残基が、ロイシン残基を含む、請求項1、4、6、8、10、又は12に記載の方法。
【請求項21】
前記カチオン性ペプチドが、正電荷をpH7.4で有するアミノ酸残基を含むN末端部分を有する、請求項1、4、6、8、10、又は12に記載の方法。
【請求項22】
前記カチオン性ペプチドが、正電荷をpH7.4で有するリジン又はアルギニン残基を含むN末端部分を有する、請求項1、4、6、8、10、又は12に記載の方法。
【請求項23】
前記カチオン性ペプチドが、正電荷をpH7.4で有するアミノ酸残基を含むC末端部分を有する、請求項1、4、6、8、10、又は12に記載の方法。
【請求項24】
前記カチオン性ペプチドが、正電荷をpH7.4で有するリジン又はアルギニン残基を含むC末端部分を有する、請求項1、4、6、8、10、又は12に記載の方法。
【請求項25】
カチオン性ペプチドが、19個以上のアミノ酸を含む、請求項1、4、6、8、10、又は12に記載の方法。
【請求項26】
前記HRPが、19個以上のアミノ酸を含む、請求項2、5、7、9、11、又は13に記載の方法。
【請求項27】
カチオン性ペプチドが、50個以上のアミノ酸を含む、請求項1、4、6、8、10、又は12に記載の方法。
【請求項28】
前記HRPが、19個以上のアミノ酸を含む、請求項2、5、7、9、11、又は13に記載の方法。
【請求項29】
カチオン性ペプチドが、適正製造基準に従って調製される、請求項1、4、6、8、10、又は12に記載の方法。
【請求項30】
カチオン性ペプチドが、生分解性である、請求項1、4、6、8、10、又は12に記載の方法。
【請求項31】
前記HRPが、適正製造基準に従って調製される、請求項2、5、7、9、11、又は13に記載の方法。
【請求項32】
前記HRPが、生分解性である、請求項2、5、7、9、11、又は13に記載の方法。
【請求項33】
前記トランスフェクション試薬が、適正製造基準に従って調製される、請求項3に記載の方法。
【請求項34】
前記トランスフェクション試薬が、生分解性である、請求項3に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞が、哺乳類細胞である、請求項1、2、3、12、又は13に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞が、HEK293、HeLa、CHO、NS0、SP2/0、PER.C6、Vero、RD、BHK、HT 1080、A549、Cos-7、ARPE-19、又はMRC-5細胞である、請求項1、2、3、12、又は13に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞が、Spodoptera frugiperda、Aedes albopictus、Bombyxmori、Trichoplusia ni、Ascalapha odorata、Drosphila、Anophele、Culex、又はAedesに由来する昆虫細胞である、請求項4~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞が、Sf9、High Five、Se301、SeIZD2109、SeUCR1、Sf900+、Sf21、BTI-TN-5B1-4、MG-1、Tn368、HzAm1、BM-N、Ha2302、Hz2E5、又はAo38細胞である、請求項4~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
バイオリアクターが、少なくとも500Lの容積を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞が、少なくとも250L容積を有するバイオリアクター内にある、請求項4~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記rAAV産生のための1つ以上のベクター及び前記カチオン性ペプチドが、前記同時トランスフェクトするステップ前に、一緒に混合される、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記rAAV産生のための1つ以上のベクター及び前記HRPが、前記同時トランスフェクトするステップ前に、一緒に混合される、請求項2に記載の方法。
【請求項43】
前記rAAV産生のための1つ以上のベクター及び前記トランスフェクション試薬が、前記同時トランスフェクトするステップ前に、一緒に混合される、請求項3に記載の方法。
【請求項44】
前記組換えバクミド及び前記カチオン性ペプチドが、前記トランスフェクトするステップ前に、一緒に混合される、請求項4又は8に記載の方法。
【請求項45】
前記組換えバクミド及び前記HRPが、前記トランスフェクトするステップ前に、一緒に混合される、請求項5又は9に記載の方法。
【請求項46】
前記回収されたrBVが、バキュロウイルスに以前に感染していない培養されている細胞に付加されて、rAAVを生成する、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記回収ステップが、バキュロウイルス感染昆虫細胞(BIIC)を回収することを含む、請求項4~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記回収ステップが、バキュロウイルス感染昆虫細胞(BIIC)を回収することを含み、前記回収されたBIICが、バキュロウイルスに以前に感染していない培養されている細胞とともに培養されて、rAAVを生成する、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を調製するための方法であって、
細胞を、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、カチオン性ペプチドを使用して同時トランスフェクトするステップであって、前記カチオン性ペプチドが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、又は124のうちのいずれか1つと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、ステップと、
前記トランスフェクトされた細胞を培養して、rAAVを生成するステップと、
前記rAAVを回収するステップと、を含む、方法。
【請求項50】
組換えバキュロウイルス(rBV)を調製する方法であって、
細胞を、異種ヌクレオチド配列を有する組換えバクミドで、カチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトするステップであって、前記カチオン性ペプチドが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、又は124のうちのいずれか1つと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、ステップと、
前記トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、
任意選択的に、前記rBVを回収するステップと、を含む、方法。
【請求項51】
組換えバキュロウイルス(rBV)を調製する方法であって、
細胞を、異種ヌクレオチド配列で、カチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトするステップであって、前記細胞が、バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分を有し、前記カチオン性ペプチドが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、又は124のうちのいずれか1つと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、ステップと、
前記トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップであって、前記異種ヌクレオチド配列及び前記バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分が、組み合わさって、rBVを生成することが可能なバキュロウイルスゲノムを形成する、ステップと、
任意選択的に、前記rBVを回収するステップと、を含む、方法。
【請求項52】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を生成するためのエレメントを発現することが可能な細胞を調製する方法であって、
細胞を、AAVゲノムベクターを提供するヌクレオチド配列又はRepタンパク質若しくはCapタンパク質をコードするヌクレオチド配列、カチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトすることであって、前記カチオン性ペプチドが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、又は124のうちのいずれか1つと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、ステップと、
前記ヌクレオチド配列を有するゲノムを有するトランスフェクトされた細胞を単離するステップと、を含む、方法。
【請求項53】
組換えバキュロウイルス(rBV)を調製する方法であって、
細胞を、AAVゲノムベクターを提供するヌクレオチド配列又はRepタンパク質若しくはCapタンパク質をコードするヌクレオチド配列で、カチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトするステップであって、前記細胞が、バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分を有し、前記カチオン性ペプチドが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、又は124のうちのいずれか1つと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、ステップと、
前記トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップであって、前記ヌクレオチド配列及び前記バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分が、組み合わさって、rBVを生成することが可能なバキュロウイルスゲノムを形成する、ステップと、
任意選択的に、前記rBVを回収するステップと、を含む、方法。
【請求項54】
配列番号93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、121、122、123、又は124のうちのいずれか1つと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、カチオン性ペプチド。
【請求項55】
請求項54に記載のカチオン性ペプチドを含む、組成物。
【請求項56】
配列番号93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、121、122、123、又は124のアミノ酸配列を含む、カチオン性ペプチド。
【請求項57】
請求項56に記載のカチオン性ペプチドを含む、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子及び組換えバキュロウイルス(rBV)粒子を、ヒスチジンリッチペプチド(HRP)をトランスフェクション試薬として使用して産生するための方法及びプロセスを対象とする。
【背景技術】
【0002】
本発明は、アデノ随伴ウイルス(AAV)産生を向上させる方法を対象とする。AAVは、20~25nm(4.7kb)の一本鎖DNAゲノムを有する非エンベロープウイルスである。AAVは、2つの145ヌクレオチド長の逆位末端反復(ITR)を末端において有する、約4.7キロ塩基(kb)の直鎖一本鎖DNA(ssDNA)ゲノムを有する。ウイルスは、ポリメラーゼをコードせず、したがって、ゲノム複製のために細胞のポリメラーゼに依存する。ITRは、2つのウイルス遺伝子(それぞれ非構造タンパク質及び構造タンパク質をコードするrep(複製)及びcap(キャプシド))に隣接している。rep遺伝子は、2つのプロモーターの使用及び選択的スプライシングを介して、Rep78、Rep68、Rep52、及びRep40と称される4つの調節タンパク質をコードする。これらのタンパク質は、AAVゲノムの複製及びパッケージングに関与している。cap遺伝子は、選択的スプライシング及び翻訳の開始を介して、VP1(ビリオンタンパク質1)、VP2、及びVP3の3つのキャプシドタンパク質を生じさせ、VP1、VP2、及びVP3は、それぞれ、87、72、及び62kDaの分子量を有する。これらのキャプシドタンパク質は、60サブユニットのほぼ球状のタンパク質シェルに組み立てられる。
【0003】
AAVは、自己で複製することができず、ヘルパーウイルス、典型的には、アデノウイルス又はヘルペスウイルスの同時感染を必要とする。ヒト細胞単独が、AAVに感染したときに、AAVの遺伝子発現プログラムは、自己抑制され、細胞の潜伏感染が発生する。しかしながら、潜伏感染細胞が、ヘルパーウイルス、そのようなアデノウイルス又は単純ヘルペスウイルスに同時感染したときに、AAV遺伝子発現が活性化されて、宿主細胞染色体からのプロウイルスDNAの切除、続いて、ウイルスゲノムの複製及びパッケージングを導く。
【0004】
哺乳類又は昆虫細胞内でのウイルスベクターの産生は、ウイルスベクター産生に関与する、目的の遺伝子及び必要なタンパク質をコードする外来核酸の送達を必要とする。細胞内への外来核酸の受動的な取り込みは、細胞を可能な感染から保護するために制限される。したがって、核酸の送達の促進が必要とされる。最も一般に、トランスフェクション試薬は、核酸を細胞内にシャトルするために使用される。ウイルスベクターの大規模製造のためのトランスフェクション試薬の選択は、トランスフェクション試薬の効率、安全性、一貫性、スケーラビリティ、及びコストによって決められる。
【0005】
好適なトランスフェクション試薬は、大規模ウイルスベクター産生のための成功した候補であるために、以下のいくつかの基準、1)好ましくは、プラスミド若しくはバクミドの形態又はいずれかの他の形態で提供される外来核酸に結合すること、2)外来DNA及びトランスフェクション試薬の複合体が、好ましくは、10分間超にわたって安定していること、3)外来DNA:トランスフェクション試薬の複合体が、細胞表面に結合し、細胞によって取り込まれること、4)トランスフェクション試薬が、好ましくは、外来DNA又は外来DNA:トランスフェクション試薬複合体のエンドソーム放出のための様式を提供すること、5)外来DNA又は外来DNA:トランスフェクション試薬複合体が、好ましくは、細胞の核に到達することができること、6)外来DNA又は外来DNA:トランスフェクション試薬複合体が、好ましくは、タンパク質の転写及び遺伝子の複製のために使用可能であること、7)トランスフェクション試薬及び外来DNA:トランスフェクション試薬複合体が、好ましくは、細胞によって十分に許容されること、8)外来DNA又は外来DNA:トランスフェクション試薬複合体が、好ましくは、選択される産生培地と適合すること、並びに9)トランスフェクション試薬が、好ましくは、産生細胞を効率的にトランスフェクトすることができることを満たすべきである。
【0006】
現在市販されているトランスフェクション試薬は、上記の基準のうちの1つ以上を欠く。例えば、ウイルスベクターの産生及びワクチンの産生のために広く使用及び選択される、線状ポリエチレンイミン(PEI)を含むトランスフェクション試薬であるPEIPRO(登録商標)(GMPグレード、PolyPlus)は、DNA:PEI複合体の安定性が乏しいことが既知である(Sang Y.et al.Salt ions and related parameters affect PEI-DNA particle size and transfection efficiency in Chinese hamster ovary cells Cytotechnology 2015,67(1):67-74、Han X.et al.,The heterogeneous nature of polyethylenimine-DNA complex formation affects transient gene expression Cytotechnology 2009,60(1-3):63)。
【0007】
異なる産生系について、トランスフェクション試薬は、生物学的材料の産生の規模拡張に直接影響を及ぼす。この目的で、トランスフェクション試薬、そのようなPEIは、産生のサイズを拡大することが不可能である。例えば、ヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞培養物産生は、500リットル(L)以下の量に制限されていることに留意されたい。
【0008】
加えて、脂質ベースのトランスフェクション試薬は、DNAとの複合体形成前に、希釈形態で不安定である。また、昆虫及び哺乳類細胞のために使用されるトランスフェクション試薬(例えば、CELLFECTIN(登録商標)、TRANSIT(登録商標)、及びFECTOVIR(登録商標))は、臨床目的で使用されるrAAV産生に望ましい適正製造基準(GMP)グレードで、依然として使用可能でない。
【0009】
したがって、GMP状況でのウイルスベクターの大規模製造に好適であるより良好なトランスフェクション試薬の必要性がある。
【発明の概要】
【0010】
様々な実施形態では、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)及び組換えバキュロウイルス(rBV)を調製するための方法が開示される。また、様々な実施形態では、rAAVを産生するためのエレメントを安定して発現する細胞を生成するための方法が開示される。方法は、トランスフェクション試薬としてのカチオン性ペプチドの使用であって、ペプチドが、正電荷を6~8の範囲(例えば、7.4)のpHで有する、使用を含む。いくつかの例示的なカチオン性ペプチドは、ヒスチジンリッチペプチド(HRP)を含むデオキシリボ核酸(DNA)と静電的に相互作用することが可能であり、DNAが細胞内に送達されるように、細胞膜に透過することが可能である。したがって、HRPは、プラスミド及びバクミドを細胞に送達するためのトランスフェクション試薬として使用され得る。
【0011】
様々な実施形態のrAAV産生方法は、細胞を、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、HRPなどのカチオン性ペプチドを使用して同時トランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rAAVを生成するステップと、任意選択的に、rAAVを回収するステップと、を含む。
【0012】
他の実施形態では、rAAV産生方法は、500リットル(L)超の培養物量で懸濁した細胞を、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、トランスフェクション試薬を使用して一過的に同時トランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rAAVを生成するステップと、任意選択的に、rAAVを回収するステップと、を含む。
【0013】
様々な実施形態のrBV産生方法は、細胞を、異種ヌクレオチド配列を有する組換えバクミドで、HRPなどのカチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、任意選択的に、rBVを回収するステップと、を含む。
【0014】
他の実施形態では、rBV産生方法は、細胞を、異種ヌクレオチド配列で、HRPなどのカチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、任意選択的に、rBVを回収するステップと、を含む。細胞は、バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分を有する。培養ステップ中に、異種ヌクレオチド配列及びバキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分は、組み合わさって、rBVを生成することが可能なバキュロウイルスゲノムを形成する。
【0015】
他の実施形態では、rBV産生方法は、細胞を、環状又は直鎖状のいずれかの完全又は部分的なバキュロウイルスゲノムで、かつバキュロウイルスゲノムに相同な1つ以上の領域を含有する(トランスファーベクター内に組み込まれ得る)異種ヌクレオチド配列で、HRPなどのカチオン性ペプチドを使用して同時トランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、任意選択的に、rBVを回収するステップと、を含む。培養ステップ中に、完全又は部分的なバキュロウイルスゲノム及び異種ヌクレオチド配列は、相同領域を介して組換えられて、rBVを生成し異種ヌクレオチド配列の少なくとも一部分を保有することが可能な組換えバキュロウイルスゲノムを形成する。
【0016】
様々な実施形態のrBV産生方法は、細胞を、rAAVゲノムベクターを提供するヌクレオチド配列又はRepタンパク質若しくはCapタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する組換えバクミドで、HRPなどのカチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、任意選択的に、rBVを回収するステップと、を含む。
【0017】
他の実施形態では、rBV産生方法は、細胞を、AAVゲノムベクターを提供するヌクレオチド配列又はRepタンパク質若しくはCapタンパク質をコードするヌクレオチド配列で、HRPなどのカチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、任意選択的に、rBVを回収するステップと、を含む。細胞は、バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分を有する。培養ステップ中に、ヌクレオチド配列及びバキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分は、組み合わさって、rBVを生成することが可能なバキュロウイルスゲノムを形成する。
【0018】
他の実施形態では、rBV産生方法は、細胞を、環状又は直鎖状のいずれかの完全又は部分的なバキュロウイルスゲノムで、かつrAAVベクターゲノム又はAAV rep及び/若しくはcap遺伝子のいずれかを含有し、また、バキュロウイルスゲノムに相同な1つ以上の領域を含有する(トランスファーベクター内に組み込まれ得る)異種ヌクレオチド配列で、HRPなどのカチオン性ペプチドを使用して同時トランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、任意選択的に、rBVを回収するステップと、を含む。培養ステップ中に、完全又は部分的なバキュロウイルスゲノム及び異種ヌクレオチド配列は、相同領域を介して組換えられて、rBVを生成して異種ヌクレオチド配列の少なくとも一部分を保有することが可能な組換えバキュロウイルスゲノムを形成する。
【0019】
様々な実施形態の細胞生成方法は、細胞を、rAAVを生成するために使用されるエレメントをコードするヌクレオチド配列を有するベクターで、HRPなどのカチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトするステップと、ヌクレオチド配列を有するゲノムを有するトランスフェクトされた細胞を単離するステップと、を含む。
【0020】
様々な実施形態では、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、又は124のうちのいずれか1つと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、いずれかの実施形態のカチオン性ペプチド。
【0021】
様々な実施形態では、配列番号93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、121、122、123、又は124のうちのいずれか1つと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するカチオン性ペプチドが開示される。他の実施形態では、配列番号93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、121、122、123、又は124のアミノ酸配列を有するカチオン性ペプチドが開示される。
【0022】
様々な実施形態では、配列番号93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、121、122、123、124のうちのいずれか1つ、又はそれらの組み合わせと少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有する1つ以上のカチオン性ペプチドを含む組成物が開示される。他の実施形態では、配列番号93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、121、122、123、124、又はそれらの組み合わせのアミノ酸配列を有する1つ以上のカチオン性ペプチドを含む組成物が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】Ambr15ミニバイオリアクター(15ミリリットル(mL)の容積)内で培養されたヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞内で産生されたBba41キャプシドの力価、並びにトランスフェクションの24及び66時間後の、異なるヒスチジンリッチペプチド(HRP)及びPEIPRO(登録商標)のトランスフェクション効率を開示する。細胞は、Bba41キャプシドを産生するための、かつ緑色蛍光タンパク質(GFP)発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドでトランスフェクトされた。トランスフェクション効率は、フローサイトメトリーを使用して測定されて、GFPタンパク質を発現する細胞が特定された。AAV力価は、デジタル液滴ポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)を使用して定量化された。
【0024】
図2】Bba41キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドをトランスフェクトしたときの、振盪フラスコ(30mLの有効容積)内でのトランスフェクションの24時間後の、HEK293細胞内でのLAH4ペプチドのトランスフェクション効率を示す。トランスフェクション効率は、フローサイトメトリーを使用して測定されて、GFPタンパク質を発現する細胞が特定された。
【0025】
図3】Bba41キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、異なるLAH4ペプチド濃度及び複合体形成量を使用してトランスフェクトされた、振盪フラスコ(30mLの有効容積)内でのトランスフェクトの24時間後の、HEK293細胞のGFP蛍光強度を示す。トランスフェクション効率は、フローサイトメトリーを使用して測定されて、GFPタンパク質を発現する細胞が特定された。
【0026】
図4】Bba41キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、異なるLAH4ペプチド濃度及び複合体形成量を使用してトランスフェクトされた、振盪フラスコ(30mLの有効容積)内でのトランスフェクションの72時間後の、HEK293細胞内で産生されたBba41キャプシドの力価を示す。AAV力価は、ddPCRを使用して定量化された。
【0027】
図5A-5C】Bba41キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、異なるLAH4ペプチド濃度及び複合体形成量を使用してトランスフェクトされた、振盪フラスコ(30mLの有効容積)内のHEK293細胞の細胞密度を示す。細胞密度は、トランスフェクションの0時間、24時間、48時間、及び72時間後に評価された。細胞密度は、自動細胞カウンタ及びトリパンブルー排除を使用して定量化された。
【0028】
図6A-6C】Bba41キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、異なるLAH4ペプチド濃度及び複合体形成量を使用してトランスフェクトされた、振盪フラスコ(30mLの有効容積)内のHEK293細胞の生存率を示す。生存率は、トランスフェクションの0時間、24時間、48時間、及び72時間後に評価された。細胞生存率は、自動細胞カウンタ及びトリパンブルー排除を使用して定量化された。
【0029】
図7】振盪フラスコ(30mLの有効容積)内で培養され、Bba41キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、異なるHRP及びPEIPRO(登録商標)を使用してトランスフェクトされたHEK293細胞内で産生されたBba41キャプシドの力価を開示する。異なるHRP及びPEIPRO(登録商標)は、トランスフェクション前に、プラスミドと混合され、異なる時間にわたってインキュベートされた。AAV力価は、ddPCRを使用して定量化された。
【0030】
図8A】Bba41キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドをトランスフェクトしたときのトランスフェクションの24時間後の、振盪フラスコ(30mLの有効容積)内で培養されたHEK293細胞内での異なるHRP及びPEIPRO(登録商標)のトランスフェクション効率を示す。異なるHRP及びPEIPRO(登録商標)は、トランスフェクション前に、プラスミドと混合され、異なる時間にわたってインキュベートされた。トランスフェクション効率は、フローサイトメトリーを使用して測定されて、GFPタンパク質を発現する細胞が特定された。
【0031】
図8B】Bba41キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドをトランスフェクトしたときのトランスフェクションの48時間後の、振盪フラスコ(30mLの有効容積)内で培養されたHEK293細胞内での異なるHRPのトランスフェクション効率を示す。異なるHRPは、トランスフェクション前に、プラスミドと混合され、異なる時間にわたってインキュベートされた。トランスフェクション効率は、フローサイトメトリーを使用して測定されて、GFPタンパク質を発現する細胞が特定された。
【0032】
図9】AAV9キャプシドを産生するための、かつ目的の遺伝子を含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、LAH4ペプチド及びPEIPRO(登録商標)を使用してトランスフェクトされた、1.6Lの振盪フラスコ(500mLの有効容積)内のHEK293細胞内で産生されたAAV9キャプシドの力価を示す。AAV力価は、ddPCRを使用して定量化された。
【0033】
図10A】AAV9キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドをトランスフェクトしたときのトランスフェクションの48時間後の、Ambr15ミニバイオリアクター(15mLの容積)内のHEK293細胞内での異なる複合体形成量のLAH4ペプチドのトランスフェクション効率を示す。トランスフェクション効率は、フローサイトメトリーを使用して測定されて、GFPタンパク質を発現する細胞が特定された。
【0034】
図10B】AAV9キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドをトランスフェクトしたときのトランスフェクションの24時間後の、Ambr15ミニバイオリアクター(15mLの容積)内のHEK293細胞内での異なる複合体形成量のLAH4ペプチドのトランスフェクション効率を示す。トランスフェクション効率は、フローサイトメトリーを使用して測定されて、GFPタンパク質を発現する細胞が特定された。
【0035】
図10C】AAV9キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、異なる複合体形成量のLAH4ペプチドを使用してトランスフェクトされた、Ambr15ミニバイオリアクター(15mLの容積)内の内のHEK293細胞内で産生されたAAV9キャプシドの力価を示す。AAV力価は、ddPCRを使用して定量化された。
【0036】
図10D】AAV9キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、異なる複合体形成量のLAH4ペプチドを使用してトランスフェクトされた、Ambr15ミニバイオリアクター(15mLの容積)内のHEK293細胞の生存率を示す。細胞生存率は、自動細胞カウンタ及びトリパンブルー排除を使用して定量化された。
【0037】
図10E】AAV9キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドをトランスフェクトしたときのトランスフェクションの48時間後の、Ambr15ミニバイオリアクター(15mLの容積)内のHEK293細胞内でのLAH4ペプチドのトランスフェクション効率であって、LAH4ペプチド及びプラスミドが、トランスフェクション前に、混合され、異なる時間にわたってインキュベートされた、トランスフェクション効率を示す。トランスフェクション効率は、フローサイトメトリーを使用して測定されて、GFPタンパク質を発現する細胞が特定された。
【0038】
図10F】AAV9キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドをトランスフェクトしたときのトランスフェクションの24時間後の、Ambr15ミニバイオリアクター(15mLの容積)内のHEK293細胞内でのLAH4ペプチドのトランスフェクション効率であって、LAH4ペプチド及びプラスミドが、トランスフェクション前に、混合され、異なる時間にわたってインキュベートされた、トランスフェクション効率を示す。トランスフェクション効率は、フローサイトメトリーを使用して測定されて、GFPタンパク質を発現する細胞が特定された。
【0039】
図10G】rAAVを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、HEK293細胞内に、LAH4ペプチドを使用してトランスフェクトしたときの、Ambr15ミニバイオリアクター(15mLの容積)内のHEK293細胞内で産生されたAAV9キャプシドの力価であって、LAH4ペプチド及びプラスミドが、トランスフェクション前に、混合され、異なる時間にわたってインキュベートされた、力価を開示する。AAV力価は、ddPCRを使用して定量化された。
【0040】
図10H】AAV9キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、LAH4ペプチドを使用してトランスフェクトされた、Ambr15ミニバイオリアクター(15mLの容積)内のHEK293細胞の生存率であって、LAH4ペプチド及びプラスミドが、トランスフェクション前に、混合され、異なる時間にわたってインキュベートされた、生存率を示す。細胞生存率は、自動細胞カウンタ及びトリパンブルー排除を使用して定量化された。
【0041】
図11】AAV9キャプシドを産生するための、かつ目的の遺伝子を含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、LAH4ペプチドを使用してトランスフェクトされた、3Lのバイオリアクター内のHEK293細胞内で産生されたAAV9キャプシドの力価を示す。AAV力価は、ddPCRを使用して定量化された。
【0042】
図12】異なる濃度の異なるHRP(His-PTD4-LAH4、PTD4-LAH4、LAH4(W)、及びAAV2 VP1-2 BR3-スペーサー-LAH4)のトランスフェクション効率を示す。96ディープウェルプレートのウェル(0.5mL)内のHEK293細胞は、rAAVを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、異なる濃度の異なるHRPを使用してトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、トランスフェクション効率は、フローサイトメトリーを使用して測定されて、GFPタンパク質を発現する細胞が特定された。
【0043】
図13】異なる濃度の異なるHRP(His-PTD4-LAH4-L1-F4、PTD4-LAH4-L1-F4、LAH4-L1-F4(W)、AAV2 VP1-2 BR3-スペーサー-LAH4-L1-F4、及びSV40-T-NLS-スペーサー-LAH4-L1-F4)のトランスフェクション効率を示す。96ディープウェルプレートのウェル(0.5mL)内のHEK293細胞は、rAAVを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、異なる濃度の異なるHRPを使用してトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後に、トランスフェクション効率は、フローサイトメトリーを使用して測定されて、GFPタンパク質を発現する細胞が特定された。
【0044】
図14】異なる濃度の異なるHRP(His-PTD4-LAH4、PTD4-LAH4、LAH4(W)、及びAAV2 VP1-2 BR3-スペーサー-LAH4)のAAV9キャプシド力価を示す。96ディープウェルプレートのウェル(0.5mL)内のHEK293細胞は、rAAVを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、異なる濃度の異なるHRPを使用してトランスフェクトされた。所定の時間後に、AAV9キャプシドは、培養物から単離され、力価は、ddPCRを使用して定量化された。
【0045】
図15】異なる濃度の異なるHRP(His-PTD4-LAH4-L1-F4、PTD4-LAH4-L1-F4、LAH4-L1-F4(W)、及びSV40-T-NLS-スペーサー-LAH4-L1-F4)のAAV9キャプシド力価を示す。96ディープウェルプレートのウェル(0.5mL)内のHEK293細胞は、rAAVを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、異なる濃度の異なるHRPを使用してトランスフェクトされた。所定の時間後に、AAV9キャプシドは、培養物から単離され、力価は、ddPCRを使用して定量化された。
【0046】
図16】LAH4ペプチドを使用する、大規模(例えば、100L)でのHEK293細胞のAAV9キャプシド力価を示す。100Lのバイオリアクター内のHEK293細胞は、rAAVを産生するための、かつAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドでトランスフェクトされた。所定の時間後に、AAV9キャプシドは、培養物から単離され、AAV力価は、ddPCRを使用して定量化された。
【0047】
図17】初期に、GFP発現カセットを有するプラスミドで、異なるHRP及び対照トランスフェクション試薬(CELLFECTIN(登録商標)、Thermo Fisher)を使用してトランスフェクトされたときのトランスフェクションの24時間後の、GFPを発現するSf9細胞の百分率を示す。トランスフェクション効率は、フローサイトメトリーを使用して測定された GFPタンパク質を発現する細胞を特定する。
【0048】
図18】rAAVを産生するためのバクミドを、異なるHRP及び対照トランスフェクション試薬を使用してトランスフェクトすることによって、Sf9細胞内で産生されたrBVの力価を示す。
【0049】
図19図13からのHRP及び対照トランスフェクション試薬を使用して生成されたrBV、並びに目的の遺伝子を有するAAVゲノムベクターを提供するrBVに感染したSf9細胞内で産生されたrAAVの力価を示す。AAV力価は、ddPCRを使用して定量化された。
【発明を実施するための形態】
【0050】
必要に応じて、本開示の詳細な実施形態が、本明細書に開示されるが、開示される実施形態は、単に例示であり、様々な形態及び代替形態で具現化され得ることを理解されたい。
【0051】
実施例を除いて、又は別途明示的に示されている場合を除いて、材料の量又は反応及び/若しくは使用の条件を示す本明細書中の全ての数値は、「約」という言葉によって修飾されるものとして理解されるべきである。例えば、「約X」を参照する説明は、「X」の説明を含む。一例では、「約」という用語は、当該技術分野における通常の許容範囲内、例えば、平均値の2標準偏差以内として理解される。異なる例では、「約」は、±0.0001%、±0.0005%、±0.001%、±0.005%、±0.01%、±0.05%、±0.1%、±0.5%、±1%、±5%、又は±10%の変動を指す。更なる例では、「約」は、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、又は±2%以内と理解することができる。
【0052】
文脈から別途明確でない限り、本明細書に提供される全ての数値は、約という用語によって修正される。全ての範囲には、範囲のエンドポイントが含まれる。頭字語又は他の略語の第1の定義は、同じ略語の本明細書におけるその後の全ての使用に適用され、最初に定義された略語の通常の文法的バリエーションに準用され、反対に明示的に示されない限り、特性の測定は、以前に又は後で同じ特性について参照されたのと同じ技術によって決定される。
【0053】
別途示されない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0054】
また、具体的な構成要素及び/又は条件は、もちろん、変動し得るため、本開示は、以下に記載される具体的な実施形態及び方法に限定されないことを理解されたい。更に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ使用され、なんら限定することは意図されていない。
【0055】
本出願全体を通して、刊行物が参照される場合、本発明が関連する技術水準をより完全に説明するために、これらの刊行物の開示全体は、参照により本出願に援用される。
【0056】
また、好ましくは、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途文脈が明白に示さない限り、複数の言及を含むことに留意されたい。例えば、単数形の構成要素への言及は、複数の構成要素を含むことが意図されている。
【0057】
「又は」及び「及び」という用語は、互換的に使用することができ、「及び/又は」を意味すると理解することができる。
【0058】
「comprising(含む)」という用語は、「including(含む)」、「having(有する)」、「containing(含有する)」、又は「characterized by(によって特徴付けられる)」と同義である。これらの用語は、包含的かつオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法のステップを排除するものではない。
【0059】
「~からなる」という語句は、特許請求の範囲で特定されていない任意の要素、ステップ、又は成分を除外するものである。この語句がプリアンブルの直後ではなく、特許請求の範囲の本文の条項に出現する場合、その条項に示されている要素のみを制限し、他の要素は全体として特許請求の範囲から除外されない
【0060】
「~から本質的になる」という語句は、特許請求の範囲を、特許請求される主題の特定の材料又はステップに加えて、本質的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。
【0061】
「含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」という用語は、代替的に使用することができる。これらの3つの用語のうちの1つが使用される場合、本開示の特許請求される主題は、他の2つの用語のいずれかの使用を含むことができる。
【0062】
本発明によれば、本発明者らは、ヒスチジンリッチペプチド(HRP)として特定されるカチオン性ペプチド及び他のカチオン性ペプチドが、細胞を有効にトランスフェクトして、より大きい力価の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を、ヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞などの異なる細胞型内で産生することが可能であることを驚くべきことに発見した。この目的で、トランスフェクション試薬としてのHRPの使用は、当該技術分野の現状によって対処されておらず産業において長い間必要性が感じられてきた、生物学的材料(例えば、組換えタンパク質、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどのヌクレオチド、低分子干渉リボ核酸(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、生物製剤、並びにrAAV及び組換えレンチウイルスなどの遺伝子療法ベクター)の産生の規模拡張についての制限を予想外に解決する。更に、昆虫細胞産生を含むいくつかの産生タイプのために、HRPは、適正製造基準(GMP)に従って調製されるが、他のトランスフェクション試薬は、GMPグレードとして生成されることが可能でない又はGMPグレードとして生成されていない。HRPはまた、生分解性であり、細胞生存率への障害/効果がない範囲にある。
【0063】
本明細書に記載の方法は、ステップとして開示及び説明され得るが、いくつかのステップは、これらの方法に従って、異なる順序で、並びに/又は本明細書に記載の及び/若しくは当該技術分野で既知の他のステップと同時に発生し得るため、本方法は必ずしもステップの順序によって制限されるものではないことを理解されたい。
【0064】
様々な実施形態のrAAV産生方法は、細胞を、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、カチオン性ペプチド/HRPを使用して同時トランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rAAVを生成するステップと、rAAVを回収するステップと、を含む。「カチオン性ペプチド/HRP」という用語は、HRP及び他の記載されるカチオン性ペプチドを指す。例えば、カチオン性ペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、又は124のうちのいずれか1つと少なくとも85%、90%、95%、99%、99%+、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。2つ以上のヌクレオチド又はペプチドアミノ酸配列の文脈における「パーセント同一性」、「パーセント同一」、又は「と%同一」という用語は、最大の一致について比較及びアライメントされたときに、同じであるヌクレオチド又はアミノ酸残基の百分率を指す。例えば、パーセント同一性は、デフォルト設定を使用するNCBI blastp(アミノ酸)を使用して決定される。
【0065】
他の例では、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、又は124のアミノ酸配列を有するカチオン性ペプチドは、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、又は55個のアミノ酸置換、例えば、保存アミノ酸交換を有することができる。保存アミノ酸交換についての例示的な例は、アミノ酸の側鎖の構造的及び/又は機能的特性を維持するアミノ酸置換であり、例えば、芳香族アミノ酸は、別の芳香族アミノ酸に対して置換し、酸性アミノ酸は、別の酸性アミノ酸に対して置換し、塩基性アミノ酸は、別の塩基性アミノ酸に対して置換し、脂肪族アミノ酸は、別の脂肪族アミノ酸に対して置換する。いくつかの実施形態では、保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基と交換される、保存的アミノ酸置換である。類似の電荷を有する側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。標準化及び許容される機能的に等価なアミノ酸置換が、表1に提示される。対照的に、非保存アミノ酸交換の例は、アミノ酸の側鎖の構造的及び/又は機能的特性を維持しないアミノ酸置換であり、例えば、芳香族アミノ酸は、塩基性、酸性、又は脂肪族アミノ酸に対して置換し、酸性アミノ酸は、芳香族、塩基性、又は脂肪族アミノ酸に対して置換し、塩基性アミノ酸は、酸性、芳香族、又は脂肪族アミノ酸に対して置換し、脂肪族アミノ酸は、芳香族、酸性、又は塩基性アミノ酸に対して置換する。
【0066】
【表1】
【0067】
他の実施形態では、rAAV産生方法は、500リットル(L)超の培養物量で懸濁した細胞を、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、トランスフェクション試薬を使用して一過的に同時トランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rAAVを生成するステップと、任意選択的に、rAAVを回収するステップと、を含む。上記のように、本発明は、当該技術分野の現状における制限を、rAAV又は他の生物学的産生の能力を500L超の規模で制限する培養物で解決する。例えば、HEK293細胞を使用するrAAV又は他の生物学的産生についての当該技術分野の現状は、500L以下に制限される。したがって、本出願に記載される本発明は、当該技術分野の現状の制限を克服する。
【0068】
様々な実施形態のrBV産生方法は、細胞を、バキュロウイルスゲノム及び異種ヌクレオチド配列を有する組換えバクミドで、カチオン性ペプチド/HRPを使用してトランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、任意選択的に、rBVを回収するステップと、を含む。
【0069】
他の実施形態では、rBV産生方法は、細胞を、異種ヌクレオチド配列で、HRPなどのカチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、任意選択的に、rBVを回収するステップと、を含む。細胞は、バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分を有する。培養ステップ中に、異種ヌクレオチド配列及びバキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分は、組み合わさって、rBVを生成することが可能なバキュロウイルスゲノムを形成する。
【0070】
他の実施形態では、rBV産生方法は、細胞を、環状又は直鎖状のいずれかの完全又は部分的なバキュロウイルスゲノムで、かつバキュロウイルスゲノムに相同な1つ以上の領域を含有する(トランスファーベクター内に組み込まれ得る)異種ヌクレオチド配列で、HRPなどのカチオン性ペプチドを使用して同時トランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、任意選択的に、rBVを回収するステップと、を含む。培養ステップ中に、完全又は部分的なバキュロウイルスゲノム及び異種ヌクレオチド配列は、相同領域を介して組換えられて、rBVを生成して異種ヌクレオチド配列の少なくとも一部分を保有することが可能な組換えバキュロウイルスゲノムを形成する。
【0071】
様々な実施形態のrBV産生方法は、細胞を、AAVゲノムベクターを提供するヌクレオチド配列又はRepタンパク質若しくはCapタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する組換えバクミドで、カチオン性ペプチド/HRPを使用してトランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、任意選択的に、rBVを回収するステップと、を含む。
【0072】
他の実施形態では、rBV産生方法は、細胞を、AAVゲノムベクターを提供するヌクレオチド配列又はRepタンパク質若しくはCapタンパク質をコードするヌクレオチド配列で、HRPなどのカチオン性ペプチドを使用してトランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、任意選択的に、rBVを回収するステップと、を含む。細胞は、バキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分を有する。培養ステップ中に、ヌクレオチド配列及びバキュロウイルスゲノムの少なくとも一部分は、組み合わさって、rBVを生成することが可能なバキュロウイルスゲノムを形成する。
【0073】
他の実施形態では、rBV産生方法は、細胞を、環状又は直鎖状のいずれかの完全又は部分的なバキュロウイルスゲノムで、かつrAAVベクターゲノム又はAAV rep及び/若しくはcap遺伝子のいずれかを含有し、また、バキュロウイルスゲノムに相同な1つ以上の領域を含有する(トランスファーベクター内に組み込まれ得る)異種ヌクレオチド配列で、HRPなどのカチオン性ペプチドを使用して同時トランスフェクトするステップと、トランスフェクトされた細胞を培養して、rBVを生成するステップと、任意選択的に、rBVを回収するステップと、を含む。培養ステップ中に、完全又は部分的なバキュロウイルスゲノム及び異種ヌクレオチド配列は、相同領域を介して組換えられて、rBVを生成して異種ヌクレオチド配列の少なくとも一部分を保有することが可能な組換えバキュロウイルスゲノムを形成する。
【0074】
様々な実施形態の細胞生成方法は、細胞を、rAAVを生成するために使用されるエレメントをコードするヌクレオチド配列を有するベクターで、カチオン性ペプチド/HRPを使用してトランスフェクトするステップと、ヌクレオチド配列を有するゲノムを有するトランスフェクトされた細胞を単離するステップと、を含む。
【0075】
rAAV産生方法の様々な実施形態では、いずれかの実施形態のrAAV産生のための1つ以上のベクターは、少なくとも1つの細胞内に同時トランスフェクトされる。様々な実施形態では、いずれかの実施形態のrAAV産生のための1つ以上のベクターは、細胞の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99%+、又は少なくとも100%内に同時トランスフェクトされる。更なる実施形態では、1つ以上のベクターでトランスフェクトされる細胞の百分率は、上記で提供されるいずれかの2つの百分率間の範囲である。
【0076】
rAAV産生方法の様々な実施形態では、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、カチオン性ペプチド/HRPを使用してトランスフェクトされる細胞の百分率は、トランスフェクション条件が、1つ以上のベクターでトランスフェクトされる細胞の百分率を最大にするために最適化される場合、又は代替として、類似のトランスフェクション条件のうちの同じトランスフェクション条件下の場合、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、ポリエチレンイミン又はその誘導体を含むトランスフェクション試薬を使用してトランスフェクトされる細胞の百分率よりも大きい。
【0077】
rAAV産生方法の様々な実施形態では、いずれかの実施形態のrAAV産生のための1つ以上のベクター、並びにいずれかの実施形態のカチオン性ペプチド/HRP及びトランスフェクション試薬のうちの1つは、細胞に、細胞が培養されている量の10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満である量で付加される。様々な実施形態では、いずれかの実施形態のrAAV産生のための1つ以上のベクター、並びにいずれかの実施形態のカチオン性ペプチド/HRP及びトランスフェクション試薬のうちの1つは、細胞に、細胞が培養されている量の0%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、又は10%である量で付加される。更なる実施形態では、1つ以上のベクターと、カチオン性ペプチド/HRP及びトランスフェクション試薬のうちの少なくとも1つとの混合物の量は、細胞が培養されている量の割合であり、割合は、上記で提供されるいずれかの2つの百分率間の範囲である。
【0078】
rAAV産生方法の様々な実施形態では、いずれかの実施形態のrAAV産生のための1つ以上のベクター、並びにいずれかの実施形態のカチオン性ペプチド/HRP及びトランスフェクション試薬のうちの1つは、同時トランスフェクトするステップ前に、一緒に混合される。混合物は、長期間安定しており、より大きい細胞培養物量での細胞のトランスフェクションを可能にする。様々な実施形態では、いずれかの実施形態の、1つ以上のベクターと、ペプチド/HRP及びトランスフェクション試薬との混合物は、同時トランスフェクトするステップ前に、少なくとも1分間、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも50分間、少なくとも100分間、少なくとも200分間、少なくとも500分間、少なくとも1000分間、又は少なくとも2000分間インキュベートされる。様々な実施形態では、いずれかの実施形態の、1つ以上のベクターと、ペプチド/HRP及びトランスフェクション試薬との混合物は、同時トランスフェクトするステップ前に、1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、11分間、12分間、13分間、14分間、15分間、16分間、17分間、18分間、19分間、20分間、21分間、22分間、23分間、24分間、25分間、26分間、27分間、28分間、29分間、30分間、31分間、32分間、33分間、34分間、35分間、36分間、37分間、38分間、39分間、40分間、41分間、42分間、43分間、44分間、45分間、46分間、47分間、48分間、49分間、50分間、51分間、52分間、53分間、54分間、55分間、56分間、57分間、58分間、59分間、60分間、61分間、62分間、63分間、64分間、65分間、66分間、67分間、68分間、69分間、70分間、71分間、72分間、73分間、74分間、75分間、76分間、77分間、78分間、79分間、80分間、81分間、82分間、83分間、84分間、85分間、86分間、87分間、88分間、89分間、90分間、91分間、92分間、93分間、94分間、95分間、96分間、97分間、98分間、99分間、100分間、101分間、102分間、103分間、104分間、105分間、106分間、107分間、108分間、109分間、110分間、111分間、112分間、113分間、114分間、115分間、116分間、117分間、118分間、119分間、120分間、120分間、130分間、140分間、150分間、160分間、170分間、180分間、190分間、200分間、210分間、220分間、230分間、240分間、250分間、260分間、270分間、280分間、290分間、300分間、310分間、320分間、330分間、340分間、350分間、360分間、370分間、380分間、390分間、400分間、410分間、420分間、430分間、440分間、450分間、460分間、470分間、480分間、490分間、500分間、510分間、520分間、530分間、540分間、550分間、560分間、570分間、580分間、590分間、600分間、700分間、800分間、900分間、1000分間、1500分間、又は2000分間インキュベートされる。様々な実施形態では、インキュベーション時間は、上記で提供されるいずれかの2つの時間間の範囲である。
【0079】
rAAV産生方法の様々な実施形態では、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、カチオン性ペプチド/HRPを使用してトランスフェクトされる細胞の百分率は、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、ポリエチレンイミン又はその誘導体を含むトランスフェクション試薬を使用してトランスフェクトされる細胞の百分率よりも大きく、カチオン性ペプチド/HRP、及びポリエチレンイミン又はその誘導体を含むトランスフェクション試薬は、同時トランスフェクトするステップ前に、1つ以上のベクターと混合され、同じ期間インキュベートされる。様々な実施形態では、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、カチオン性ペプチド/HRPを使用してトランスフェクトされる細胞の百分率は、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、ポリエチレンイミン又はその誘導体を含むトランスフェクション試薬を使用してトランスフェクトされる細胞の百分率よりも少なくとも1%、少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも5000%、又は少なくとも10000%大きく、カチオン性ペプチド/HRP、及びポリエチレンイミン又はその誘導体を含むトランスフェクション試薬は、同時トランスフェクトするステップ前に、1つ以上のベクターと混合され、同じ期間インキュベートされる。
【0080】
rAAV産生方法の様々な実施形態では、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、カチオン性ペプチド/HRPを使用してトランスフェクトされる細胞は、トランスフェクション条件が、1つ以上のベクターでトランスフェクトされる細胞の百分率を最大にするために最適化される場合、又は代替として、類似のトランスフェクション条件のうちの同じトランスフェクション条件下の場合、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、ポリエチレンイミン又はその誘導体を含むトランスフェクション試薬を使用してトランスフェクトされる細胞の比産生性(ベクターゲノム(vg)/細胞)よりも大きい比産生性を有する。比産生性は、デジタル液滴ポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)を使用して評価され得、最終力価(ベクターゲノム(vg)/mLの収集液)をピーク生存細胞密度(細胞の数/mL)で除算することによって計算され得る。様々な実施形態では、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、カチオン性ペプチド/HRPを使用してトランスフェクトされる細胞の比産生性は、トランスフェクション条件が、1つ以上のベクターでトランスフェクトされる細胞の百分率を最大にするために最適化される場合、又は代替として、類似のトランスフェクション条件のうちの同じトランスフェクション条件下の場合、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、ポリエチレンイミン又はその誘導体を含むトランスフェクション試薬を使用してトランスフェクトされる細胞の比産生性よりも少なくとも少なくとも1%、少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも5000%、少なくとも10000%、少なくとも3log、少なくとも4log、又は少なくとも5log大きい。
【0081】
様々な実施形態では、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、カチオン性ペプチド/HRPを使用してトランスフェクトされる細胞の比産生性は、少なくとも1×10ベクターゲノム(vg)/細胞、少なくとも1×10vg/細胞、少なくとも1×10vg/細胞、少なくとも1×10vg/細胞、少なくとも1×10vg/細胞、又は少なくとも1×10vg/細胞である。
【0082】
rAAV産生方法の様々な実施形態では、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、カチオン性ペプチド/HRPを使用してトランスフェクトされる細胞は、細胞培養物量を含むトランスフェクション条件が、1つ以上のベクターでトランスフェクトされる細胞の百分率を最大にするために最適化される場合、又は代替として、類似のトランスフェクション条件のうちの同じトランスフェクション条件下の場合、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、ポリエチレンイミン又はその誘導体を含むトランスフェクション試薬を使用してトランスフェクトされる細胞のrAAV力価よりも大きいrAAV力価をもたらす。
【0083】
rAAV産生方法の様々な実施形態では、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、カチオン性ペプチド/HRPを使用してトランスフェクトされる細胞によってもたらされるrAAV力価は、細胞培養物量を含むトランスフェクション条件が、1つ以上のベクターでトランスフェクトされる細胞の百分率を最大にするために最適化される場合、又は代替として、類似のトランスフェクション条件のうちの同じトランスフェクション条件下の場合、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、ポリエチレンイミン又はその誘導体を含むトランスフェクション試薬を使用してトランスフェクトされる細胞によってもたらされるrAAV力価よりも少なくとも1%、少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも5000%、少なくとも10000%、又は少なくとも3log大きい。
【0084】
rAAV産生方法の様々な実施形態では、rAAV産生のための1つ以上のベクターで、カチオン性ペプチド/HRPを使用してトランスフェクトされる細胞によってもたらされるrAAV力価は、少なくとも0.1×1010vg/mL、少なくとも0.5×1010vg/mL、少なくとも1×1010vg/mL、少なくとも1×1011vg/mL、少なくとも1×1012vg/mL、少なくとも1×1013vg/mL、又は少なくとも1×1014vg/mLである。
【0085】
rAAV産生方法の様々な実施形態では、いずれかの実施形態のrAAV産生のための1つ以上のベクター対いずれかの実施形態のカチオン性ペプチド/HRP及びトランスフェクション試薬のうちの1つの重量比は、50:1、49:1、48:1、47:1、46:1、45:1、44:1、43:1、42:1、41:1、40:1、39:1、38:1、37:1、36:1、35:1、34:1、33:1、32:1、31:1、30:1、29:1、28:1、27:1、26:1、25:1、24:1、23:1、22:1、21:1、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、1:20、1:21、1:22、1:23、1:24、1:25、1:26、1:27、1:28、1:29、1:30、1:31、1:32、1:33、1:34、1:35、1:36、1:37、1:38、1:39、1:40、1:41、1:42、1:43、1:44、1:45、1:46、1:47、1:48、1:49、又は1:50である。様々な実施形態では、いずれかの実施形態のrAAV産生のための1つ以上のベクター対いずれかの実施形態のカチオン性ペプチド/HRP及びトランスフェクション試薬のうちの1つの重量比は、上記で提供されるいずれかの2つの重量比間の範囲である。
【0086】
rAAV産生方法の様々な実施形態では、細胞培養物中のカチオン性ペプチド/HRPの濃度は、少なくとも0.001マイクログラム(μg)/mL、少なくとも0.01μg/mL、少なくとも0.1μg/mL、少なくとも0.5μg/mL、少なくとも1μg/mL、少なくとも10μg/mL、少なくとも50μg/mL、少なくとも100μg/mL、1~200μg/mL、5~50μg/mL、10~150μg/mL、又は100~200μg/mLである。様々な実施形態では、細胞培養物中のカチオン性ペプチド又はHRPの濃度は、1μg/mL、1.5μg/mL、2μg/mL、2.5μg/mL、3μg/mL、3.5μg/mL、4μg/mL、4.5μg/mL、5μg/mL、5.5μg/mL、6,μg/mL、6.5μg/mL、7μg/mL、7.5μg/mL、8μg/mL、8.5μg/mL、9μg/mL、9.5μg/mL、10μg/mL、10.5μg/mL、11μg/mL、11.5μg/mL、12μg/mL、12.5μg/mL、13μg/mL、13.5μg/mL、14μg/mL、14.5μg/mL、15μg/mL、15.5μg/mL、16μg/mL、16.5μg/mL、17μg/mL、17.5μg/mL、18μg/mL、18.5μg/mL、19μg/mL、19.5μg/mL、20μg/mL、20.5μg/mL、21μg/mL、21.5μg/mL、22μg/mL、22.5μg/mL、23μg/mL、23.5μg/mL、24μg/mL、24.5μg/mL、25μg/mL、26μg/mL、27μg/mL、28μg/mL、29μg/mL、30μg/mL、31μg/mL、32μg/mL、33μg/mL、34μg/mL、35μg/mL、36μg/mL、37μg/mL、38μg/mL、39μg/mL、40μg/mL、41μg/mL、42μg/mL、43μg/mL、44μg/mL、45μg/mL、46μg/mL、47μg/mL、48μg/mL、49μg/mL、50μg/mL、51μg/mL、52μg/mL、53μg/mL、54μg/mL、55μg/mL、56μg/mL、57μg/mL、58μg/mL、59μg/mL、60μg/mL、61μg/mL、62μg/mL、63μg/mL、64μg/mL、65μg/mL、66μg/mL、67μg/mL、68μg/mL、69μg/mL、70μg/mL、71μg/mL、72μg/mL、73μg/mL、74μg/mL、75μg/mL、76μg/mL、77μg/mL、78μg/mL、79μg/mL、80μg/mL、81μg/mL、82μg/mL、83μg/mL、84μg/mL、85μg/mL、86μg/mL、87μg/mL、88μg/mL、89μg/mL、90μg/mL、91μg/mL、92μg/mL、93μg/mL、94μg/mL、95μg/mL、96μg/mL、97μg/mL、98μg/mL、99μg/mL、100μg/mL、101μg/mL、102μg/mL、103μg/mL、104μg/mL、105μg/mL、106μg/mL、107μg/mL、108μg/mL、109μg/mL、110μg/mL、111μg/mL、112μg/mL、113μg/mL、114μg/mL、115μg/mL、116μg/mL、117μg/mL、118μg/mL、119μg/mL、120μg/mL、121μg/mL、122μg/mL、123μg/mL、124μg/mL、125μg/mL、126μg/mL、127μg/mL、128μg/mL、129μg/mL、130μg/mL、131μg/mL、132μg/mL、133μg/mL、134μg/mL、135μg/mL、136μg/mL、137μg/mL、138μg/mL、139μg/mL、140μg/mL、141μg/mL、142μg/mL、143μg/mL、144μg/mL、145μg/mL、146μg/mL、147μg/mL、148μg/mL、149μg/mL、150μg/mL、151μg/mL、152μg/mL、153μg/mL、154μg/mL、155μg/mL、156μg/mL、157μg/mL、158μg/mL、159μg/mL、160μg/mL、161μg/mL、162μg/mL、163μg/mL、164μg/mL、165μg/mL、166μg/mL、167μg/mL、168μg/mL、169μg/mL、170μg/mL、171μg/mL、172μg/mL、173μg/mL、174μg/mL、175μg/mL、176μg/mL、177μg/mL、178μg/mL、179μg/mL、180μg/mL、181μg/mL、182μg/mL、183μg/mL、184μg/mL、185μg/mL、186μg/mL、187μg/mL、188μg/mL、189μg/mL、190μg/mL、191μg/mL、192μg/mL、193μg/mL、194μg/mL、195μg/mL、196μg/mL、197μg/mL、198μg/mL、199μg/mL、又は200μg/mLである。様々な実施形態では、細胞培養物中のカチオン性ペプチド/HRPの濃度は、上記で提供されるいずれかの2つの濃度間の範囲である。
【0087】
rAAV産生方法の様々な実施形態では、細胞培養物中のrAAV産生のための1つ以上のベクターの濃度は、少なくとも0.0001μg/ml、少なくとも0.001μg/ml、少なくとも0.01μg/ml、少なくとも0.1μg/ml、少なくとも0.5μg/ml、少なくとも1,μg/ml、0.1~15μg/ml、又は0.5~200μg/mlである。様々な実施形態では、細胞培養物中のrAAV産生のための1つ以上のベクターの濃度は、0.0001μg/ml、0.001μg/ml、0.01μg/ml、0.05μg/ml、0.1μg/ml、0.5μg/ml、1μg/ml、1.5μg/ml、2μg/ml、2.5μg/ml、3μg/ml、3.5μg/ml、4μg/ml、4.5μg/ml、5μg/ml、5.5μg/ml、6,μg/ml、6.5μg/ml、7μg/ml、7.5μg/ml、8μg/ml、8.5μg/ml、9μg/ml、9.5μg/ml、10μg/ml、10.5μg/ml、11μg/ml、11.5μg/ml、12μg/ml、12.5μg/ml、13μg/ml、13.5μg/ml、14μg/ml、14.5μg/ml、15μg/ml、15.5μg/ml、16μg/ml、16.5μg/ml、17μg/ml、17.5μg/ml、18μg/ml、18.5μg/ml、19μg/ml、19.5μg/ml、20μg/ml、20.5μg/ml、21μg/ml、21.5μg/ml、22μg/ml、22.5μg/ml、23μg/ml、23.5μg/ml、24μg/ml、24.5μg/ml、25μg/ml、26μg/mL、27μg/mL、28μg/mL、29μg/mL、30μg/mL、31μg/mL、32μg/mL、33μg/mL、34μg/mL、35μg/mL、36μg/mL、37μg/mL、38μg/mL、39μg/mL、40μg/mL、41μg/mL、42μg/mL、43μg/mL、44μg/mL、45μg/mL、46μg/mL、47μg/mL、48μg/mL、49μg/mL、50μg/mL、51μg/mL、52μg/mL、53μg/mL、54μg/mL、55μg/mL、56μg/mL、57μg/mL、58μg/mL、59μg/mL、60μg/mL、61μg/mL、62μg/mL、63μg/mL、64μg/mL、65μg/mL、66μg/mL、67μg/mL、68μg/mL、69μg/mL、70μg/mL、71μg/mL、72μg/mL、73μg/mL、74μg/mL、75μg/mL、76μg/mL、77μg/mL、78μg/mL、79μg/mL、80μg/mL、81μg/mL、82μg/mL、83μg/mL、84μg/mL、85μg/mL、86μg/mL、87μg/mL、88μg/mL、89μg/mL、90μg/mL、91μg/mL、92μg/mL、93μg/mL、94μg/mL、95μg/mL、96μg/mL、97μg/mL、98μg/mL、99μg/mL、100μg/mL、101μg/mL、102μg/mL、103μg/mL、104μg/mL、105μg/mL、106μg/mL、107μg/mL、108μg/mL、109μg/mL、110μg/mL、111μg/mL、112μg/mL、113μg/mL、114μg/mL、115μg/mL、116μg/mL、117μg/mL、118μg/mL、119μg/mL、120μg/mL、121μg/mL、122μg/mL、123μg/mL、124μg/mL、125μg/mL、126μg/mL、127μg/mL、128μg/mL、129μg/mL、130μg/mL、131μg/mL、132μg/mL、133μg/mL、134μg/mL、135μg/mL、136μg/mL、137μg/mL、138μg/mL、139μg/mL、140μg/mL、141μg/mL、142μg/mL、143μg/mL、144μg/mL、145μg/mL、146μg/mL、147μg/mL、148μg/mL、149μg/mL、150μg/mL、151μg/mL、152μg/mL、153μg/mL、154μg/mL、155μg/mL、156μg/mL、157μg/mL、158μg/mL、159μg/mL、160μg/mL、161μg/mL、162μg/mL、163μg/mL、164μg/mL、165μg/mL、166μg/mL、167μg/mL、168μg/mL、169μg/mL、170μg/mL、171μg/mL、172μg/mL、173μg/mL、174μg/mL、175μg/mL、176μg/mL、177μg/mL、178μg/mL、179μg/mL、180μg/mL、181μg/mL、182μg/mL、183μg/mL、184μg/mL、185μg/mL、186μg/mL、187μg/mL、188μg/mL、189μg/mL、190μg/mL、191μg/mL、192μg/mL、193μg/mL、194μg/mL、195μg/mL、196μg/mL、197μg/mL、198μg/mL、199μg/mL、又は200μg/mLである。様々な実施形態では、細胞培養物中のrAAV産生のための1つ以上のベクターの濃度は、上記で提供されるいずれかの2つの濃度間の範囲である。
【0088】
rAAV産生方法の様々な実施形態では、いずれかの実施形態のrAAV産生のための1つ以上のベクターは、AAVゲノムベクター、AAVヘルパーベクター、及び非AAVヘルパー機能を提供するヌクレオチドを有するベクターを含む。rAAV産生のための1つ以上のベクターの例としては、プラスミド又はコスミドの形態のヌクレオチド配列であって、細胞内にトランスフェクトされたときに、Rep及びCapタンパク質を発現し、AAVゲノムベクターの生成を提供し、rAAVを生成するためのウイルスヘルパー機能(例えば、転写因子など)を提供する、ヌクレオチド配列が挙げられる。
【0089】
rAAV産生方法及び細胞生成方法の様々な実施形態では、細胞は、哺乳類細胞などの真核細胞である。哺乳類細胞の例としては、ヒト細胞が挙げられる。哺乳類細胞の他の例としては、HEK293、HeLa、CHO、NS0、SP2/0、PER.C6、Vero、RD、BHK、HT 1080、A549、Cos-7、ARPE-19、又はMRC-5細胞が挙げられる。
【0090】
rBV産生方法の様々な実施形態では、いずれかの実施形態の組換えバクミド及びいずれかの実施形態のカチオン性ペプチド/HRPは、トランスフェクトするステップ前に、一緒に混合される。
【0091】
rBV産生方法の様々な実施形態では、回収ステップは、バキュロウイルス感染昆虫細胞(BIIC)を回収することを含む。rBV産生方法の様々な実施形態では、回収ステップは、BIICを回収することを含み、回収されたBIICは、バキュロウイルスに以前に感染していない培養されている細胞とともに培養されて、rAAVを生成する。
【0092】
rBV産生方法及び細胞生成方法の様々な実施形態では、細胞は、Spodoptera frugiperda、Aedes albopictus、Bombyxmori、Trichoplusia ni、Ascalapha odorata、Drosphila、Anophele、Culex、又はAedesに由来する昆虫細胞である。昆虫細胞の例としては、Sf9、High Five、Se301、SeIZD2109、SeUCR1、Sf900+、Sf21、BTI-TN-5B1-4、MG-1、Tn368、HzAm1、BM-N、Ha2302、Hz2E5、又はAo38細胞が挙げられる。
【0093】
rAAV又はrBV産生方法の様々な実施形態では、細胞培養物は、振盪フラスコ又はバイオリアクター内で、少なくとも1mL、少なくとも10mL、少なくとも20mL、少なくとも50mL、少なくとも100mL、少なくとも500mL、少なくとも1リットル(L)、少なくとも10L、少なくとも50L、少なくとも100L、少なくとも250L、少なくとも500L、少なくとも1000L、少なくとも1500L、少なくとも2000L、又は少なくとも2500Lの量で産生される。様々な実施形態では、細胞培養物量は、1mL、10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、200mL、300mL、400mL、500mL、600mL、700mL、800mL、900mL、1L、2L、3L、4L、5L、6L、7L、8L、9L、10L、11L、12L、13L、14L、15L、16L、17L、18L、19L、20L、21L、22L、23L、24L、25L、26L、27L、28L、29L、30L、31L、32L、33L、34L、35L、36L、37L、38L、39L、40L、41L、42L、43L、44L、45L、46L、47L、48L、49L、50L、51L、52L、53L、54L、55L、56L、57L、58L、59L、60L、61L、62L、63L、64L、65L、66L、67L、68L、69L、70L、71L、72L、73L、74L、75L、76L、77L、78L、79L、80L、81L、82L、83L、84L、85L、86L、87L、88L、89L、90L、91L、92L、93L、94L、95L、96L、97L、98L、99L、100L、110L、120L、130L、140L、150L、160L、170L、180L、190L、200L、210L、220L、230L、240L、250L、260L、270L、280L、290L、300L、310L、320L、330L、340L、350L、360L、370L、380L、390L、400L、410L、420L、430L、440L、450L、460L、470L、480L、490L、500L、510L、520L、530L、540L、550L、560L、570L、580L、590L、600L、610L、620L、630L、640L、650L、660L、670L、680L、690L、700L、710L、720L、730L、740L、750L、760L、770L、780L、790L、800L、810L、820L、830L、840L、850L、860L、870L、880L、890L、900L、910L、920L、930L、940L、950L、960L、970L、980L、990L、1000L、1010L、1020L、1030L、1040L、1050L、1060L、1070L、1080L、1090L、1100L、1110L、1120L、1130L、1140L、1150L、1160L、1170L、1180L、1190L、1200L、1210L、1220L、1230L、1240L、1250L、1260L、1270L、1280L、1290L、1300L、1310L、1320L、1330L、1340L、1350L、1360L、1370L、1380L、1390L、1400L、1410L、1420L、1430L、1440L、1450L、1460L、1470L、1480L、1490L、1500L、1510L、1520L、1530L、1540L、1550L、1560L、1570L、1580L、1590L、1600L、1610L、1620L、1630L、1640L、1650L、1660L、1670L、1680L、1690L、1700L、1710L、1720L、1730L、1740L、1750L、1760L、1770L、1780L、1790L、1800L、1810L、1820L、1830L、1840L、1850L、1860L、1870L、1880L、1890L、1900L、1910L、1920L、1930L、1940L、1950L、1960L、1970L、1980L、1990L、2000L、2010L、2020L、2030L、2040L、2050L、2060L、2070L、2080L、2090L、2100L、2110L、2120L、2130L、2140L、2150L、2160L、2170L、2180L、2190L、2200L、2210L、2220L、2230L、2240L、2250L、2260L、2270L、2280L、2290L、2300L、2310L、2320L、2330L、2340L、2350L、2360L、2370L、2380L、2390L、2400L、2410L、2420L、2430L、2440L、2450L、2460L、2470L、2480L、2490L、2500L、2510L、2520L、2530L、2540L、2550L、2560L、2570L、2580L、2590L、2600L、2610L、2620L、2630L、2640L、2650L、2660L、2670L、2680L、2690L、2700L、2710L、2720L、2730L、2740L、2750L、2760L、2770L、2780L、2790L、2800L、2810L、2820L、2830L、2840L、2850L、2860L、2870L、2880L、2890L、2900L、2910L、2920L、2930L、2940L、2950L、2960L、2970L、2980L、2990L、又は3000Lである。更なる実施形態では、培養物量は、上記で提供されるいずれかの2つの量間の範囲である。
【0094】
様々な実施形態では、完全又は部分的なバキュロウイルスゲノムは、環状又は直鎖状バキュロウイルスゲノムであり、環状又は直鎖状バキュロウイルスゲノムは、異種配列との組換えの際に、rBVを生成することが可能である。一実施形態では、方法は、1つ以上の相同領域を保有する異種配列との組換えの頻度が低いため、環状バキュロウイルスゲノムを使用する。別の実施形態では、方法は、直鎖状バキュロウイルスゲノムを使用し、直鎖状バキュロウイルスゲノムは、非組換えバキュロウイルスの生成を減少させ、当該異種配列との組換えの頻度を増加させ、それによって、組換えバキュロウイルスを生成する確率を向上させる。更なる実施形態では、方法は、1つ以上の必須バキュロウイルス遺伝子又はそれらの部分を欠く直鎖状バキュロウイルスゲノムを使用し、それによって、非組換えバキュロウイルスの生成を防止する。必須遺伝子の相補性は、当該異種配列との組換え及びバキュロウイルスゲノムの環状化の際に発生して、高い頻度での組換えバキュロウイルスの生成を確実にする。
【0095】
様々な実施形態では、rAAVゲノムベクターを提供する又はRepタンパク質若しくはCapタンパク質をコードする異種ヌクレオチド配列又はヌクレオチド配列であって、バキュロウイルスゲノムに相同な1つ以上の領域を保有する、異種ヌクレオチド配列又はヌクレオチド配列は、直鎖又は環状形態で存在するか、又はトランスファーベクター内に組み込まれる。
【0096】
様々な実施形態では、細胞内への、完全又は部分的なバキュロウイルスゲノム、及びrAAVゲノムベクターを提供する又はRepタンパク質若しくはCapタンパク質をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列又はヌクレオチド配列であって、バキュロウイルスゲノムに相同な1つ以上の領域を保有する、少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列又はヌクレオチド配列の同時トランスフェクションは、完全又は部分的なバキュロウイルスゲノムへの、AAVゲノムベクターを提供する又はRepタンパク質若しくはCapタンパク質をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド又はヌクレオチド配列の相同組換えをもたらす。
【0097】
様々な実施形態では、細胞内への、完全又は部分的なバキュロウイルスゲノム、及びrAAVゲノムベクターを提供する又はRepタンパク質若しくはCapタンパク質をコードする少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列又はヌクレオチド配列であって、バキュロウイルスゲノムに相同な1つ以上の領域を保有する、少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列又はヌクレオチド配列の同時トランスフェクションは、環状化組換えバキュロウイルスゲノムが形成されるような、完全又は部分的な直鎖状バキュロウイルスゲノムの末端と、AAVゲノムベクターを提供する又はRepタンパク質若しくはCapタンパク質をコードする少なくとも1つの当該異種ヌクレオチド又はヌクレオチド配列との相同組換えをもたらす。
【0098】
細胞生成方法の様々な実施形態では、ベクターは、発現制御エレメントを含み、発現制御エレメントは、rAAVを産生するためのエレメントの発現を制御するように、ヌクレオチドに作動可能に連結されている。
【0099】
細胞生成方法の様々な実施形態では、ベクターは、選択エレメントをコードするヌクレオチドを含む。方法は、単離ステップ前に、選択エレメント(例えば、抗生物質耐性タンパク質)に特異的な選択圧力(例えば、抗生物質)を適用するステップを含む。代替として、方法は、単離ステップ前に、選択エレメント(例えば、蛍光タンパク質)を特定する(例えば、蛍光波長を細胞にフローサイトメトリーを介して放射する)ステップを含む。
【0100】
細胞生成方法の様々な実施形態では、rAAVを産生するためのエレメントは、AAVヘルパー機能を提供するエレメント又はAAV非ヘルパー機能を提供するエレメントである。
【0101】
様々な実施形態では、いずれかの実施形態のカチオン性ペプチド/HRPの少なくとも一部分は、トランスフェクション中に、αヘリカルコンフォメーションを有し、αヘリカルコンフォメーションは、コンフォメーションの一方の側に位置する疎水性アミノ酸残基、及びコンフォメーションの反対の側に位置する極性アミノ酸残基を含む。例えば、直鎖カチオン性ペプチド/HRPは、細胞膜の存在下のときに、αヘリカルコンフォメーションを形成することができる。
【0102】
様々な実施形態では、極性アミノ酸残基は、ヒスチジン残基(His又はH)を含む。極性アミノ酸残基の他の例としては、グルタミン(Gln又はQ)、アスパラギン(Asn又はN)、セリン(Ser又はS)、スレオニン(Thr又はT)、チロシン(Tyr又はY)、及びシステイン(Cys又はC)が挙げられる。
【0103】
様々な実施形態では、疎水性アミノ酸残基は、アラニン残基(Ala又はA)又はロイシン残基(Leu又はL)を含む。疎水性アミノ酸残基の他の例としては、メチオニン(Met又はM)、フェニルアラニン(Phe又はF)、バリン(Val又はV)、プロリン(Pro又はP)、又はグリシン(Gly又はG)が挙げられる。
【0104】
様々な実施形態では、いずれかの実施形態のカチオン性ペプチド/HRPは、正電荷を中性pH(例えば、pH7.4)で有するアミノ酸残基、例えば、リジン又はアルギニン残基を有するN末端又はC末端部分を有する。例えば、正電荷を有するアミノ酸は、カチオン性ペプチド/HRPのN末端又はC末端において位置することができる。
【0105】
様々な実施形態では、いずれかの実施形態のカチオン性ペプチド/HRPは、チロシン(Tyr又はY)又はトリプトファン(Trp又はW)を含む。
【0106】
様々な実施形態では、いずれかの実施形態のカチオン性ペプチド/HRPは、少なくとも5つのアミノ酸残基、少なくとも10個のアミノ酸残基、少なくとも15個のアミノ酸残基、少なくとも19個のアミノ酸残基、少なくとも20個のアミノ酸残基、少なくとも21個のアミノ酸残基、少なくとも25個のアミノ酸残基、少なくとも30個のアミノ酸残基、少なくとも35個のアミノ酸残基、少なくとも40個のアミノ酸残基、少なくとも45個のアミノ酸残基、又は少なくとも50個のアミノ酸残基を含む。様々な実施形態では、カチオン性ペプチド/HRPの長さは、10個のアミノ酸残基、11個のアミノ酸残基、12個のアミノ酸残基、13個のアミノ酸残基、14個のアミノ酸残基、15個のアミノ酸残基、16個のアミノ酸残基、17個のアミノ酸残基、18個のアミノ酸残基、19個のアミノ酸残基、20個のアミノ酸残基、21個のアミノ酸残基、22個のアミノ酸残基、23個のアミノ酸残基、24個のアミノ酸残基、25個のアミノ酸残基、26個のアミノ酸残基、27個のアミノ酸残基、28個のアミノ酸残基、29個のアミノ酸残基、30個のアミノ酸残基、31個のアミノ酸残基、32個のアミノ酸残基、33個のアミノ酸残基、34個のアミノ酸残基、35個のアミノ酸残基、36個のアミノ酸残基、37個のアミノ酸残基、38個のアミノ酸残基、39個のアミノ酸残基、40個のアミノ酸残基、41個のアミノ酸残基、42個のアミノ酸残基、43個のアミノ酸残基、44個のアミノ酸残基、45個のアミノ酸残基、46個のアミノ酸残基、47個のアミノ酸残基、48個のアミノ酸残基、49個のアミノ酸残基、50個のアミノ酸残基、51個のアミノ酸残基、52個のアミノ酸残基、53個のアミノ酸残基、54個のアミノ酸残基、55個のアミノ酸残基、56個のアミノ酸残基、57個のアミノ酸残基、58個のアミノ酸残基、59個のアミノ酸残基、60個のアミノ酸残基、61個のアミノ酸残基、62個のアミノ酸残基、63個のアミノ酸残基、64個のアミノ酸残基、65個のアミノ酸残基、66個のアミノ酸残基、67個のアミノ酸残基、68個のアミノ酸残基、69個のアミノ酸残基、70個のアミノ酸残基、71個のアミノ酸残基、72個のアミノ酸残基、73個のアミノ酸残基、74個のアミノ酸残基、75個のアミノ酸残基、76個のアミノ酸残基、77個のアミノ酸残基、78個のアミノ酸残基、79個のアミノ酸残基、80個のアミノ酸残基、81個のアミノ酸残基、82個のアミノ酸残基、83個のアミノ酸残基、84個のアミノ酸残基、85個のアミノ酸残基、86個のアミノ酸残基、87個のアミノ酸残基、88個のアミノ酸残基、89個のアミノ酸残基、90個のアミノ酸残基、91個のアミノ酸残基、92個のアミノ酸残基、93個のアミノ酸残基、94個のアミノ酸残基、95個のアミノ酸残基、96個のアミノ酸残基、97個のアミノ酸残基、98個のアミノ酸残基、99個のアミノ酸残基、又は100個のアミノ酸残基である。様々な実施形態では、カチオン性ペプチド/HRPの長さは、上記で提供されるいずれかの2つの長さ間の範囲である。
【0107】
様々な実施形態では、いずれかの実施形態のカチオン性ペプチド/HRP/トランスフェクション試薬は、適正製造基準に従って調製される。
【0108】
様々な実施形態では、いずれかの実施形態の、カチオン性ペプチド/HRP及びトランスフェクション試薬は、生分解性である。「生分解性」という用語は、細胞培養物に付加され、細胞培養物の生理学的環境に曝露されると、化学プロセス(pH、加水分解、酵素作用)及び/又は物理プロセスによって分解又は侵食され得る材料を指す。このプロセスの動態は、数分から数日かかり得る。
【0109】
アデノ随伴ウイルス
【0110】
様々な実施形態では、いずれかの実施形態の方法によって産生されるrAAVキャプシドが開示される。rAAVキャプシドは、同じ条件下で産生されるrAAVキャプシドのVP1、VP2、又はVP3タンパク質の濃度よりも大きい、VP1、VP2、又はVP3タンパク質の濃度を有する。
【0111】
様々な実施形態では、いずれかの実施形態の方法によって産生されるrAAVキャプシドが開示される。
【0112】
rAAV及びrAAVキャプシドは、例えば、US9,504,762、WO2018/022608、WO2019/222136、及びUS2019/0376081に教示されているように(これらの開示は、それらの全体が参照により本明細書に援用される)、既知の方法に開示されているrAAV粒子を含むか、又はそれに従って作製され得る。
【0113】
「AAV」は、アデノ随伴ウイルスの標準的な略語である。アデノ随伴ウイルスは、一本鎖DNAパルボウイルスであり、キャプシドによって封入されたゲノムを有する。現在、特徴付けられているAAVの血清型には13種類がある。AAVの一般的な情報及び概説は、例えば、Carter,1989,Handbook of Parvoviruses,Vol.1,pp.169-228、及びBerns,1990,Virology,pp.1743-1764,Raven Press,(New York)で見出され得る。しかしながら、様々な血清型が、遺伝子レベルにおいても、構造的及び機能的の両方で非常に密接に関連していることが周知であるため、これらの同じ原理が、追加のAAV血清型に適用可能であることが十分予想される。(例えば、Blacklowe,1988,pp.165-174 of Parvoviruses and Human Disease,J.R.Pattison,ed.、及びRose,Comprehensive Virology 3:1-61 (1974)を参照されたい)。例えば、全てのAAV血清型が、相同rep遺伝子によって媒介される非常に類似した複製特性を明白に示し、全てが、3つの関連するキャプシドタンパク質を有する。関連性の程度は、ゲノムの長さに沿った遺伝子型間の広範な交差ハイブリダイゼーション、及び「逆位末端反復」(ITR)に対応する末端における類似の自己アニーリングセグメントの存在を明らかにするヘテロ二本鎖分析によって更に示唆される。類似の感染性パターンは、各血清型における複製機能が類似の調節制御下にあることも示唆する。
【0114】
本明細書で使用される「AAVウイルス粒子」は、少なくとも1つのAAVキャプシドタンパク質及びキャプシド化AAVゲノムからなる感染性ウイルス粒子を指す。「組換えAAV」、又は「rAAV」、「rAAVビリオン」、又は「rAAVウイルス粒子」、又は「rAAVベクター粒子」は、本明細書に記載される少なくとも1つのキャプシド又はCapタンパク質及びキャプシド化AAVベクターゲノムから構成されるウイルス粒子を指す。粒子が異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳類細胞に送達される導入遺伝子等の野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、それは、典型的には、「rAAVベクター粒子」又は単に「rAAVベクター」と称される。したがって、かかるベクターがrAAVベクター粒子内に含有されるため、AAVベクター粒子の産生には、必然的にrAAVベクターの産生が含まれる。
【0115】
本明細書中で使用される場合、「異種遺伝子」、「異種配列」、「異種」、「異種調節配列」、「異種導入遺伝子」、又は「導入遺伝子」という用語は、参照される遺伝子又は調節配列が、天然にはAAVベクター又は粒子中に存在せず、その中に人工的に導入されていることを意味する。例えば、これらの用語は、異種遺伝子と、宿主細胞でその遺伝子の発現を制御する異種遺伝子に作動可能に連結された異種調節配列との両方を含む核酸を指す。本明細書における導入遺伝子は、タンパク質(例えば、酵素)、ポリペプチド、ペプチド、RNA(例えば、tRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒RNA、siRNA、miRNA、プレmiRNA、lncRNA、snoRNA、低分子ヘアピンRNA、トランススプライシングRNA、及びアンチセンスRNA)、遺伝子又は塩基編集システム(例えば、CRISPR遺伝子編集システム)のうちの1つ以上のコンポーネント、アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)、アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)媒介性エクソンスキッピング、ナンセンス媒介性分解(NMD)を誘発する毒エクソン、又はドミナントネガティブ変異体などの生体分子(例えば、治療用生体分子)をコードできることが企図される。
【0116】
「組換え」という用語は、組換えDNA技術を使用することによって形成される核酸分子又はタンパク質を指す。例えば、組換え核酸分子は、核酸配列及び配列エレメントを組み合わせることによって形成することができる。組換えタンパク質は、組換え核酸分子を受容した細胞によって産生されるタンパク質であり得る。
【0117】
「コードする(encodes)」、「コードされた(encoded)」、及び「コードする(encoding)」という用語は、遺伝子、相補DNA(cDNA)、又はメッセンジャーRNA(mRNA)などの核酸分子におけるヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指し、生物学的プロセスにおける他のポリマー及び巨大分子の合成のための鋳型として機能する。したがって、遺伝子は、その遺伝子によって産生されるmRNAの転写及び翻訳が、細胞又は他の生物学的システムにおいてタンパク質を産生する場合、タンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に提供されるコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖との両方は、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコードしていると呼ぶことができる。
【0118】
「キャプシド」は、rAAVベクターゲノムがパッケージングされている構造を指す。キャプシドは、VP1タンパク質又はVP3タンパク質を含むが、より典型的には、天然AAVに見られるように、VP1、VP2、及びVP3タンパク質の3つ全てを含む。キャプシドタンパク質の配列によって、rAAVビリオンの血清型が決まる。rAAVビリオンには、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-rh.10(AAVrh10)、AAV-DJ(AAVDJ)、AAV-DJ8(AAVDJ8)、AAV-1、AAV-2、AAV-2G9、AAV-3、AAV3a、AAV3b、AAV3-3、AAV4、AAV4-4、AAV-5、AAV-6、AAV6.1、AAV6.2、AAV6.1.2、AAV-7、AAV7.2、AAV8、AAV9、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、AAV9.68、AAV9.84、AAV9.9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV16.3、AAV24.1、AAV27.3、AAV42.12、AAV42-1b、AAV42-2、AAV42-3a、AAV42-3b、AAV42-4、AAV42-5a、AAV42-5b、AAV42-6b、AAV42-8、AAV42-10、AAV42-11、AAV42-12、AAV42-13、AAV42-15、AAV42-aa、AAV43-1、AAV43-12、AAV43-20、AAV43-21、AAV43-23、AAV43-25、AAV43-5、AAV44.1、AAV44.2、AAV44.5、AAV223.1、AAV223.2、AAV223.4、AAV223.5、AAV223.6、AAV223.7、AAV1-7/rh.48、AAV1-8/rh.49、AAV2-15/rh.62、AAV2-3/rh.61、AAV2-4/rh.50、AAV2-5/rh.51、AAV3.1/hu.6、AAV3.1/hu.9、AAV3-9/rh.52、AAV3-11/rh.53、AAV4-8/r11.64、AAV4-9/rh.54、AAV4-19/rh.55、AAV5-3/rh.57、AAV5-22/rh.58、AAV7.3/hu.7、AAV16.8/hu.10、AAV16.12/hu.11、AAV29.3/bb.1、AAV29.5/bb.2、AAV106.1/hu.37、AAV114.3/hu.40、AAV127.2/hu.41、AAV127.5/hu.42、AAV128.3/hu.44、AAV130.4/hu.48、AAV145.1/hu.53、AAV145.5/hu.54、AAV145.6/hu.55、AAV161.10/hu.60、AAV161.6/hu.61、AAV33.12/hu.17、AAV33.4/hu.15、AAV33.8/hu.16、AAV52/hu.19、AAV52.1/hu.20、AAV58.2/hu.25、AAVA3.3、AAVA3.4、AAVA3.5、AAVA3.7、AAVC1、AAVC2、AAVC5、AAVF3、AAVF5、AAVH2、AAVrh.72、AAVhu.8、AAVrh.68、AAVrh.70、AAVpi.1、AAVpi.3、AAVpi.2、AAVrh.60、AAVrh.44、AAVrh.65、AAVrh.55、AAVrh.47、AAVrh.69、AAVrh.45、AAVrh.59、AAVhu.12、AAVH6、AAVLK03、AAVH-1/hu.1、AAVH-5/hu.3、AAVLG-10/rh.40、AAVLG-4/rh.38、AAVLG-9/hu.39、AAVN721-8/rh.43、AAVCh.5、AAVCh.5R1、AAVcy.2、AAVcy.3、AAVcy.4、AAVcy.5、AAVCy.5R1、AAVCy.5R2、AAVCy.5R3、AAVCy.5R4、AAVcy.6、AAVhu.1、AAVhu.2、AAVhu.3、AAVhu.4、AAVhu.5、AAVhu.6、AAVhu.7、AAVhu.9、AAVhu.10、AAVhu.11、AAVhu.13、AAVhu.15、AAVhu.16、AAVhu.17、AAVhu.18、AAVhu.20、AAVhu.21、AAVhu.22、AAVhu.23.2、AAVhu.24、AAVhu.25、AAVhu.27、AAVhu.28、AAVhu.29、AAVhu.29R、AAVhu.31、AAVhu.32、AAVhu.34、AAVhu.35、AAVhu.37、AAVhu.39、AAVhu.40、AAVhu.41、AAVhu.42、AAVhu.43、AAVhu.44、AAVhu.44R1、AAVhu.44R2、AAVhu.44R3、AAVhu.45、AAVhu.46、AAVhu.47、AAVhu.48、AAVhu.48R1、AAVhu.48R2、AAVhu.48R3、AAVhu.49、AAVhu.51、AAVhu.52、AAVhu.54、AAVhu.55、AAVhu.56、AAVhu.57、AAVhu.58、AAVhu.60、AAVhu.61、AAVhu.63、AAVhu.64、AAVhu.66、AAVhu.67、AAVhu.14/9、AAVhu.t19、AAVrh.2、AAVrh.2R、AAVrh.8、AAVrh.8R、AAVrh.12、AAVrh.13、AAVrh.13R、AAVrh.14、AAVrh.17、AAVrh.18、AAVrh.19、AAVrh.20、AAVrh.21、AAVrh.22、AAVrh.23、AAVrh.24、AAVrh.25、AAVrh.31、AAVrh.32、AAVrh.33、AAVrh.34、AAVrh.35、AAVrh.36、AAVrh.37、AAVrh.37R2、AAVrh.38、AAVrh.39、AAVrh.40、AAVrh.46、AAVrh.48、AAVrh.48.1、AAVrh.48.1.2、AAVrh.48.2、AAVrh.49、AAVrh.51、AAVrh.52、AAVrh.53、AAVrh.54、AAVrh.56、AAVrh.57、AAVrh.58、AAVrh.61、AAVrh.64、AAVrh.64R1、AAVrh.64R2、AAVrh.67、AAVrh.73、AAVrh.74、AAVrh8R、AAVrh8R A586R変異体、AAVrh8R R533A変異体、AAAV、BAAV、ヤギAAV、ウシAAV、AAVhE1.1、AAVhEr1.5、AAVhER1.14、AAVhEr1.8、AAVhEr1.16、AAVhEr1.18、AAVhEr1.35、AAVhEr1.7、AAVhEr1.36、AAVhEr2.29、AAVhEr2.4、AAVhEr2.16、AAVhEr2.30、AAVhEr2.31、AAVhEr2.36、AAVhER1.23、AAVhEr3.1、AAV2.5T、AAV-PAEC、AAV-LK01、AAV-LK02、AAV-LK03、AAV-LK04、AAV-LK05、AAV-LK06、AAV-LK07、AAV-LK08、AAV-LK09、AAV-LK10、AAV-LK11、AAV-LK12、AAV-LK13、AAV-LK14、AAV-LK15、AAV-LK16、AAV-LK17、AAV-LK18、AAV-LK19、AAV-PAEC2、AAV-PAEC4、AAV-PAEC6、AAV-PAEC7、AAV-PAEC8、AAV-PAEC11、AAV-PAEC12、AAV-2-プレmiRNA-101、AAV-8h、AAV-8b、AAV-h、AAV-b、AAV SM10-2、AAVシャフル100-1、AAVシャフル100-3、AAVシャフル100-7、AAVシャフル10-2、AAVシャフル10-6、AAVシャフル10-8、AAVシャフル100-2、AAV SM10-1、AAV SM10-8、AAV SM100-3、AAV SM100-10、BNP61AAV、BNP62AAV、BNP63AAV、AAVrh.50、AAVrh.43、AAVrh.62、AAVrh.48、AAVhu.19、AAVhu.11、AAVhu.53、AAV4-8/rh.64、AAVLG-9/hu.39、AAV54.5/hu.23、AAV54.2/hu.22、AAV54.7/hu.24、AAV54.1/hu.21、AAV54.4R/hu.27、AAV46.2/hu.28、AAV46.6/hu.29、AAV128.1/hu.43、トゥルータイプAAV(ttAAV)、UPENN AAV10、若しくは日本AAV10血清型、AAV_po.6、AAV_po.、AAV_po.5、AAV_LK03、AAV_ra.1、AAV_bat_YNM、AAV_bat_Brazil、AAV_mo.1、AAV_トリ_DA-1、若しくはAAV_マウス_NY1、Bba21、Bba26、Bba27、Bba29、Bba30、Bba31、Bba32、Bba33、Bba34、Bba35、Bba36、Bba37、Bba38、Bba41、Bba42、Bba43、Bba44、Bce14、Bce15、Bce16、Bce17、Bce18、Bce20、Bce35、Bce36、Bce39、Bce40、Bce41、Bce42、Bce43、Bce44、Bce45、Bce46、Bey20、Bey22、Bey23、Bma42、Bma43、Bpo1、Bpo2、Bpo3、Bpo4、Bpo6、Bpo8、Bpo13、Bpo18、Bpo20、Bpo23、Bpo24、Bpo27、Bpo28、Bpo29、Bpo33、Bpo35、Bpo36、Bpo37、Brh26、Brh27、Brh28、Brh29、Brh30、Brh31、Brh32、Brh33、Bfm17、Bfm18、Bfm20、Bfm21、Bfm24、Bfm25、Bfm27、Bfm32、Bfm33、Bfm34、Bfm35、AAV-rh10、AAV-rh39、AAV-rh43、AAVanc80L65、又はそれらの任意のバリアントを含むいくつかのAAV血清型に由来するものが含まれる(例えば、非天然混合血清型の開示については米国特許第8,318,480号を参照されたい)。例示的なキャプシドは、国際出願公開第2018/022608号及び同第2019/222136号(その全体が本明細書に援用される)にも提供されている。キャプシドタンパク質はまた、変異タンパク質、キメラタンパク質、又はシャフルタンパク質を含む、天然のVP1、VP2、及びVP3のバリアントであり得る。キャプシドタンパク質は、AAVの様々なクレード内のrh.10又は他のサブタイプのものであり得る。様々なクレード及びサブタイプは、例えば、米国特許第7,906,111号に開示されている。様々な実施形態では、AAVウイルス粒子のキャプシドは、AAV-1(Genbank受入番号AAD27757.1)、AAV-2(NCBI参照配列番号YP_680426.1)、AAV-3(NCBI参照配列番号NP_043941.1)、AAV-3B(Genbank受入番号AAB95452.1)、AAV-4(NCBI参照配列番号NP_044927.1)、AAV-5(NCBI参照配列番号YP_068409.1)、AAV-6(Genbank受入番号AAB95450.1)、AAV-7(NCBI参照配列番号YP_077178.1)、AAV-8(NCBI参照配列番号YP_077179.1)、AAV-9(Genbank受入番号AAS99264.1)、AAV-10(Genbank受入番号AAT46337.1)、AAV-11(Genbank受入番号AAT46339.1)、AAV-12(Genbank受入番号ABI16639.1)、AAV-13(Genbank受入番号ABZ10812.1)、又はWO2018/022608及びWO2019/222136に開示されている任意のアミノ酸配列からのアミノ酸配列の一部と、少なくとも約50%、
55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有するVP1、VP2、又はVP3タンパク質を有する。異なる血清型のAAVタンパク質の構築及び使用は、Chao et al.,Mol.Ther.2:619-623,2000、Davidson et al.,PNAS 97:3428-3432,2000、Xiao et al.,J.Virol.72:2224-2232,1998、Halbert et al.,J.Virol.74:1524-1532,2000、Halbert et al.,J.Virol.75:6615-6624,2001、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075-3081,2001で考察されている。
【0119】
一実施形態では、rAAV粒子は、AAVキャプシドでシュードタイプ化され、VP1タンパク質は、配列番号2~76のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、又は配列番号2~76のうちのいずれか1つの全長にわたって少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、又は少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0120】
AAVウイルス粒子は、「シュードタイプ」又は「ハイブリッド」AAVウイルス粒子であり得る。AAVウイルス粒子に関連する「ハイブリッド」及び「シュードタイプ」という用語は、本明細書で互換的に使用され、Repタンパク質、逆位末端反復配列(ITR)、及び/又はキャプシドタンパク質が異なる血清型であることを示すことを意図している。例えば、米国特許第9,737,618号、及びGao,G. et al.,Clades of Adeno-associated viruses are widely disseminated in human tissues,J.Virol.,78(12):6381-8 (2004)(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に援用される)に開示されているように、多数の代替キャプシドバリアントが、例えば、ヒト、ヒヒ、ブタ、マーモセット、チンパンジー、及びアカゲザル、ブタオザル、及び/又はカニクイザルなどから特定されている。シュードタイプAAVウイルス粒子の産生は、例えば、WO2018/022608及びWO2001/83692に開示されている(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に援用される)。他のタイプのAAVウイルス粒子バリアント、例えば、キャプシド変異を有するAAVウイルス粒子も企図される。例えば、全体が参照により本明細書に援用されるMarsic et al.,Molecular Therapy,22(11):1900-1909(2014)を参照されたい。例えば、限定されないが、ITR及び/又はRepタンパク質は、例えば、キャプシドタンパク質は、哺乳類に見出されるAAVの配列に由来するもの、例えば、Bba21、Bba26、Bba27、Bba29、Bba30、Bba31、Bba32、Bba33、Bba34、Bba35、Bba36、Bba37、Bba38、Bba41、Bba42、Bba43、Bba44、Bce14、Bce15、Bce16、Bce17、Bce18、Bce20、Bce35、Bce36、Bce39、Bce40、Bce41、Bce42、Bce43、Bce44、Bce45、Bce46、Bey20、Bey22、Bey23、Bma42、Bma43、Bpo1、Bpo2、Bpo3、Bpo4、Bpo6、Bpo8、Bpo13、Bpo18、Bpo20、Bpo23、Bpo24、Bpo27、Bpo28、Bpo29、Bpo33、Bpo35、Bpo36、Bpo37、Brh26、Brh27、Brh28、Brh29、Brh30、Brh31、Brh32、Brh33、Bfm17、Bfm18、Bfm20、Bfm21、Bfm24、Bfm25、Bfm27、Bfm32、Bfm33、Bfm34、若しくはBfm35、又はそのバリアントとして本明細書に開示及び指定されているキャプシド配列であり得る。
【0121】
本明細書で使用される場合、「AAVベクターゲノム」、「ベクターゲノム」、又は「rAAVベクターゲノム」は、一本鎖核酸を指す。rAAVウイルス粒子は、キャプシド内にキャプシド化されたrAAVベクターゲノムを有する。rAAVベクターゲノムは、AAVウイルスゲノムに対して異種である転写調節エレメント(例えば、1つ以上のプロモーター及び/又はエンハンサー、並びに任意選択的に、ポリアデニル化配列、及び/又は調節エレメント内、若しくは調節エレメントとタンパク質コード配列との間、若しくはタンパク質コード配列のエクソン間に挿入された1つ以上のイントロン)に作動可能に連結されたタンパク質コード配列(好ましくは、機能的な治療用タンパク質コード配列;例えば、FVIII、FIX、及びPAH)に隣接するAAV5’逆位末端反復(ITR)配列及びAAV 3’ITRを有する。rAAVベクターゲノムは、rAAVウイルス粒子中に存在する核酸を指し、本明細書に開示される核酸配列のセンス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかであり得る。そのような一本鎖核酸のサイズは、塩基で提供される。「逆位末端反復」及び「ITR」という用語は、本明細書で使用される場合、ウイルスDNA複製の開始点として、及びウイルスゲノムのパッケージングシグナルとしてシスで機能する、rAAVゲノムの5’末端及び3’末端に見出される、当該技術分野で認識されている領域を指す。AAV ITRは、Repタンパク質とともに、宿主細胞ゲノムからの効率的な除去及びレスキュー、並びに宿主細胞ゲノムへの2つの隣接するITR間に挿入されたヌクレオチド配列の組み込みを提供する。あるAAV関連ITRの配列は、Yan et al.,J.Virol.79(1):364-379(2005)によって開示されている。ITRはまた、「フリップ」又は「フロップ」構成において見出され、「フリップ」又は「フロップ」構成において、(ヘアピンのアームを形成する)AA’逆位反復間の配列が、逆補体内に存在する(Wilmott,Patrick,et al.Human gene therapy methods 30.6(2019):206-213)。異なる血清型のAAVベクターゲノムの構築及び使用は、Chao et al.,Mol.Ther.2:619-623,2000、Davidson et al.,PNAS 97:3428-3432,2000、Xiao et al.,J.Virol.72:2224-2232,1998、Halbert et al.,J.Virol.74:1524-1532,2000、Halbert et al.,J.Virol.75:6615-6624,2001、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075-3081,2001で考察されている。広範な構築物の利用可能性及び広範な特性評価のために、以下に開示される例示的なAAVベクターゲノムは、血清型2に由来する。
【0122】
「治療上有効なAAV」、「治療上有効なAAV粒子」、「治療用AAV」、「治療上有効なrAAV」、「治療上有効なrAAV粒子」、「治療用rAAV」、及び「治療上有効なrAAV」という用語は、感染した細胞が目的のエレメント(例えば、ヌクレオチド配列、タンパク質など)を(例えば、転写及び/又は翻訳によって)発現するように、細胞に感染することができる組換えAAVを指す。この程度まで、治療上有効なrAAV粒子は、異なる特性を有するキャプシド又はベクターゲノム(vg)を有するAAV粒子を含むことができる。例えば、治療上有効なrAAV粒子は、異なる翻訳後修飾を有するキャプシドを有することができる。他の例では、治療上有効なAAV粒子は、異なるサイズ/長さ、プラス又はマイナス鎖配列、異なるフリップ/フロップITR構成(フリップ/フロップ、フロップ/フリップ、フリップ/フリップ、フロップ/フロップなど)、異なる数(1、2、3など)のITR又は切断を有するvgを含有し得る。例えば、大きいタンパク質をコードする「完全」な核酸が生成され、それによって、機能的で完全長の遺伝子が再構築されるように、5’末端切断及び3’末端切断を有する核酸間で、rAAV感染細胞において重複する相同組換えが生じる。他の例では、第2鎖合成中に「完全」な核酸が形成されるように、5’末端切断及び3’末端切断を有する相補核酸配列は、各々と相互作用する。「完全」な核酸は、大きいタンパク質をコードし、それによって、機能的で完全長の遺伝子を再構築する。治療上有効なrAAV粒子は、重いキャプシド、完全なキャプシド、又は部分的に完全なキャプシドとも呼ばれる。
【0123】
「形質導入」及び「形質導入する」という用語は、rAAVからレシピエント細胞への遺伝物質(例えば、ベクターゲノム)の伝達、及びレシピエント細胞におけるrAAV遺伝物質からの導入遺伝子の発現を指す。遺伝物質の伝達は、レシピエント細胞に感染するrAAV粒子を介して媒介される。この目的のために、「効力」という用語は、rAAV粒子に感染したレシピエント細胞又はレシピエント細胞における導入遺伝子の発現のレベルを指す。したがって、より大きな効力を有するrAAVは、rAAVに感染したレシピエント細胞がより大きな導入遺伝子発現を有することを強調する。
【0124】
「治療有効量」という用語は、疾患、障害、又は状態に罹患している又は罹患しやすい対象に投与された場合、疾患、障害、又は状態を、治療、診断、予防、又はその症状の発症を遅延させるのに十分な量の治療剤を意味する。治療上有効な量が、典型的には、少なくとも1つの単位用量を含む投薬レジメンを介して投与されることが当業者には理解されるであろう。「治療的に有効な」という用語は、治療有効量の治療剤が、疾患、障害、及び/又は状態に罹患している又は罹患しやすい対象に投与された場合、疾患、障害、及び/又は状態を治療、診断、予防、及び/又はその症状の発症を遅延させるのに十分であるように十分に作用する治療剤の任意のエレメント又は組成物を指す。例えば、前述のように、治療上有効なrAAVは、感染した細胞が(例えば、転写及び/又は翻訳によって)目的のエレメント(例えば、ヌクレオチド配列、タンパク質など)を発現するように、細胞に感染することができる。治療上有効なrAAVは、治療上有効なrAAVによって感染された細胞によって使用されるベクターゲノムを有し、複製、転写、又は翻訳などの様々な方法によって目的のエレメント(例えば、ヌクレオチド配列、タンパク質など)を生成するために感染された細胞によって使用される治療上有効なヌクレオチド配列を生成する。「治療剤」には、治療上有効なrAAV又は治療用rAAVウイルスが含まれることにも留意されたい。
【0125】
一例として、治療用タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含むrAAVビリオン、rAAVウイルス粒子、rAAVベクター粒子、又はrAAVウイルスを指す「治療用rAAVウイルス」を使用して、インビボでタンパク質を置換又は補完することができる。「治療用タンパク質」は、対応する内因性タンパク質を置換するか、又はその活性の喪失若しくは低減を補完する生物活性を有するポリペプチドを指す。例えば、機能的フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)は、フェニルケトン尿症(PKU)のための治療用タンパク質である。したがって、例えば、組換えrAAV PAHウイルスを、PKUに罹患した対象の治療のための薬剤に使用することができる。薬剤は、静脈内(IV)投与によって投与され得、薬剤の投与は、対象における神経伝達物質の代謝産物又は神経伝達物質のレベルを変更するのに十分な、対象の血流中のPAHタンパク質の発現をもたらす。任意選択的に、薬剤はまた、rAAV PAHウイルスの投与に関連する任意の肝毒性の予防及び/又は治療のための、予防的又は治療的コルチコステロイドも含み得る。予防的又は治療的コルチコステロイドの処置は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60mg/日、又はそれ以上のコルチコステロイドを含み得る。特定の実施形態では、薬剤は、少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10週間、又はそれ以上の連続的な期間にわたって投与され得る。PKU療法は、任意選択的に、チロシンサプリメントを含んでもよい。
【0126】
AAVキャプシドに取り込まれた導入遺伝子は、限定されないが、治療目的の任意の異種遺伝子であり得る。導入遺伝子は、目的のポリペプチド、タンパク質、又は他の産物をコードする導入遺伝子に隣接するベクター配列に対して異種の核酸配列である。核酸コード配列は、宿主細胞中で導入遺伝子の転写、翻訳、及び/又は発現を可能にする様式で調節エレメントに作動可能に連結される。
【0127】
導入遺伝子配列の組成は、得られたベクターの使用に依存する。例えば、あるタイプの導入遺伝子配列は、発現時に検出可能なシグナルを生成するレポーター配列を含む。そのようなレポーター配列には、限定するものではないが、b-ラクタマーゼ、b-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、膜結合タンパク質、例えば、CD2、CD4、CD8を含む、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質、及び当該技術分野で周知の他のものであって、それらに対する高親和性抗体が存在するか又は従来の手段によって産生することができるもの、並びに特にヘマグルチニン又はMyc由来の抗原タグドメインに適切に融合した膜結合タンパク質を含む融合タンパク質をコードするDNA配列が含まれる。
【0128】
これらのコード配列は、それらの発現を駆動する調節エレメントと会合したときに、酵素アッセイ、放射線撮影アッセイ、比色アッセイ、蛍光アッセイ、又は他のスペクトログラフィーアッセイ、蛍光活性化細胞選別アッセイ、並びに酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び免疫組織化学を含む免疫学的アッセイを含む従来の手段によって検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを有するベクターの存在は、β-ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイによって検出される。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質又はルシフェラーゼである場合、シグナルを有するベクターは、ルミノメーターで色又は光生成によって視覚的に測定することができる。
【0129】
しかしながら、導入遺伝子は、タンパク質、ペプチド、RNA、酵素、ドミナントネガティブ変異体、又は触媒RNAなどの、生物学及び医学において有用な産物をコードする非マーカー配列であることが望ましい。望ましいRNA分子は、tRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒RNA、siRNA、低分子ヘアピンRNA、トランススプライシングRNA、及びアンチセンスRNAを含む。有用なRNA配列の一例は、処置される動物において標的の核酸配列の発現を阻害するか又は消失させる配列である。典型的には、好適な標的配列には、腫瘍学的標的及びウイルス性疾患が含まれる。そのような標的の例については、免疫原に関連するセクションで後述する腫瘍標的及びウイルスを参照されたい。
【0130】
導入遺伝子は、遺伝子欠損を修正又は改善するために使用され得、遺伝子欠損は、正常な遺伝子が正常レベル未満で発現される欠損、又は機能遺伝子産物が発現されない欠損を含み得る。好ましいタイプの導入遺伝子配列は、宿主細胞で発現される治療用タンパク質又はポリペプチドをコードする。ベクターは、例えば、マルチサブユニットタンパク質によって引き起こされる遺伝子欠損を修正又は改善するために、複数の導入遺伝子を更に含み得る。特定の状況では、異なる導入遺伝子は、タンパク質の各サブユニットをコードするために、又は異なるペプチド若しくはタンパク質をコードするために使用することができる。これは、タンパク質サブユニットをコードするDNAのサイズが大きい場合(例えば、免疫グロブリン、血小板由来成長因子、又はジストロフィンタンパク質)に望ましい。細胞がマルチサブユニットタンパク質を産生するために、異なるサブユニットの各々を含有する組換えウイルスを細胞に感染させる。あるいは、タンパク質の異なるサブユニットは、同じ導入遺伝子によってコードされていてもよい。この場合、単一の導入遺伝子は、各サブユニットのDNAが内部リボザイム進入部位(IRES)によって分離された、サブユニットの各々をコードするDNAを含む。これは、サブユニットの各々をコードするDNAのサイズが小さい場合(例えば、サブユニットをコードするDNA及びIRESの総サイズが5キロ塩基未満)に望ましい。また、より長いゲノム(すなわち、>5(Kb))は、標的細胞における部分的なゲノムの組換えのために、実行可能であり得ることに留意されたい。IRESの代替物として、翻訳後事象において自己切断する2Aペプチドをコードする配列によってDNAを分離することができる。例えば、Donnelly et al,J.Gen.Virol.,78(Pt 1):13-21(January 1997)、Furler,et al,Gene Ther.,8(1 1):864-873(June 2001)、Klump et al,Gene Ther.,8(lO):8 11-817(May 2001)を参照されたい。この2Aペプチドは、IRESよりも著しく小さく、これは、2Aペプチドを、スペースが制限要因であるときの使用に十分に好適にする。より多くの場合、導入遺伝子が大きい場合、マルチサブユニットからなる場合、又は2つの導入遺伝子が同時送達される場合、所望の導入遺伝子又はサブユニットを保有するrAAVを同時投与することで、インビボでそれらをコンカテマー化して、単一のベクターゲノムを形成することが可能になる。そのような実施形態では、宿主細胞での同時発現のために、第1のAAVは、単一の導入遺伝子を発現する発現カセットを保有し得、第2のAAVは、異なる導入遺伝子を発現する発現カセットを保有し得る。しかし、選択される導入遺伝子は、任意の生物学的に活性な産物又は他の産物(例えば、研究に望ましい産物)をコードすることができる。
【0131】
好適な導入遺伝子は、当業者によって容易に選択することができる。導入遺伝子の選択は、本発明を限定するとみなすものではない。導入遺伝子は異種タンパク質であってもよく、この異種タンパク質が、治療用タンパク質であってもよい。典型的な治療用タンパク質には、限定されないが、血液因子、例えば、b-グロビン、ヘモグロビン、組織プラスミノーゲン活性化因子、及び凝固因子;コロニー刺激因子(CSF);インターロイキン、例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9など;増殖因子、例えば、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、幹細胞因子(SCF)、線維芽細胞増殖因子(FGF、例えば塩基性FGF及び酸性FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、骨形成タンパク質(BMP)、上皮増殖因子(EGF)、増殖分化因子9(GDF-9)、肝がん由来増殖因子(HDGF)、ミオスタチン(GDF-8)、神経成長因子(NGF)、神経栄養因子、血小板由来成長因子(PDGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング増殖因子α(TGF-a)、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-b)など;可溶性受容体、例えば、可溶性TNF-a受容体、可溶性VEGF受容体、可溶性インターロイキン受容体(例えば、可溶性IL-1受容体及び可溶性II型IL-1受容体)、可溶性g/dT細胞受容体、可溶性受容体のリガンド結合断片など;酵素、例えば、a-グルコシダーゼ、イミグルカラーゼ、b-グルコセレブロシダーゼ、及びアルグルセラーゼ;酵素活性化剤、例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子;ケモカイン、例えば、1P-10、インターフェロン-γによって誘導されるモノカイン(Mig)、Groa/IL-8、RANTES、MIP-1a、MIP-1b、MCP-1、PF-4など;血管新生剤、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF、例えばVEGF121、VEGF165、VEGF-C、VEGF-2)、神経膠腫由来増殖因子、アンギオゲニン、アンギオゲニン-2など;抗血管新生剤、例えば可溶性VEGF受容体;タンパク質ワクチン;神経活性ペプチド、例えば、神経成長因子(NGF)、ブラジキニン、コレシストキニン、ガスチン、セクレチン、オキシトシン、ゴナドトロピン放出ホルモン、ベータエンドルフィン、エンケファリン、サブスタンスP、ソマトスタチン、プロラクチン、ガラニン、成長ホルモン放出ホルモン、ボンベシン、ダイノルフィン、ワーファリン,ニューロテンシン、モチリン、甲状腺刺激ホルモン、ニューロペプチドY、黄体形成ホルモン、カルシトニン、インスリン、グルカゴン、バソプレシン、アンジオテンシンII、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、血管作動性腸管ペプチド、睡眠ペプチドなど;血栓溶解剤;心房性ナトリウム利尿ペプチド;リラキシン;グリア線維性酸性タンパク質;卵胞刺激ホルモン(FSH);ヒトα-1アンチトリプシン;白血病抑制因子(LIF);組織因子、黄体形成ホルモン;マクロファージ活性化因子;腫瘍壊死因子(TNF);好中球走化性因子(NCF);メタロプロテイナーゼの組織阻害剤;血管作動性腸管ペプチド;アンギオゲニン;アンギオトロピン;フィブリン;ヒルディン;IF-1受容体アンタゴニストなどが含まれる。いくつかの他の非限定的な目的のタンパク質の例には、毛様体神経栄養因子(CNTF);脳由来神経栄養因子(BDNF);ニューロトロフィン3及び4/5(NT-3及び4/5);グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF);芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC);血友病関連凝固タンパク質、例えば、第VIII因子、第IX因子、第X因子;遺伝性血管浮腫関連タンパク質、例えば、C1阻害剤;ジストロフィン、ミニジストロフィン、又はマイクロジストロフィン;リソソーム酸性リパーゼ;フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH);グリコーゲン蓄積疾患関連酵素、例えば、グルコース-6-ホスファターゼ、酸性マルターゼ、グリコーゲン脱分枝酵素、筋グリコーゲンホスホリラーゼ、肝グリコーゲンホスホリラーゼ、筋ホスホフルクトキナーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ(例えばPHKA2)、グルコーストランスポーター(例えばGFUT2)、アルドラーゼA、b-エノラーゼ、及びグリコーゲンシンターゼ;及び(例えば、β-N-アセチルヘキソサミニダーゼA);並びにそれらの任意のバリアントが含まれるが、これらに限定されない。他の導入遺伝子としては、心筋ミオシン結合タンパク質C、β-ミオシン重鎖、心筋トロポニンT、心筋トロポニンI、ミオシン心室必須軽鎖1、ミオシン心室調節軽鎖2、心筋αアクチン(ACTC)、α-トロポミオシン、タイチン、4.5LIMタンパク質1、及び国際出願公開第2014/170470号に開示されている他の導入遺伝子が挙げられる。AAVベクターはまた、プラスミドベクターでトランスフェクトされた細胞で又はウイルスに感染した細胞でその転写、翻訳、及び/又は発現を可能にするような様式で導入遺伝子に作動可能に連結された従来の制御エレメント又は配列を含む。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」配列には、目的の遺伝子(GOI)と連続する発現制御配列、及び目的の遺伝子を制御するためにトランスで、又は離れて作用する発現制御配列の両方が含まれる。好適な遺伝子は、Anguela et al.“Entering the Modern Era of Gene Therapy”,Annual Rev.of Med.70巻,272~288頁(2019)、及びDunbar et al.,“Gene Comes of Age”,Science,359巻,6372号,eaan4672(2018)で考察されている遺伝子を含む。
【0132】
発現制御配列は、適切な転写開始、終結、プロモーター、及びエンハンサーの配列、スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)のシグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル、細胞質mRNAを安定化させる配列、翻訳効率を高める配列(例えば、コザックコンセンサス配列)、タンパク質の安定性を増強させる配列、及び必要に応じて、コードされた産物の分泌を増強させる配列を含み得る。天然の、構成的、誘導性、及び/又は組織特異的プロモーターを含む多くの発現制御配列が当該技術分野で既知であり、利用することができる。
【0133】
構成的プロモーターの例としては、限定されないが、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意選択的にRSVエンハンサーを有する)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意選択的にCMVエンハンサーを有する)(例えば、Boshart el al,Cell,41:521-530(1985)を参照)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、b-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、及びEF1プロモーター[Invitrogen]が挙げられる。誘導性プロモーターは、遺伝子発現の調節を可能にし、外来的に供給される化合物、温度などの環境因子、又は特定の生理学的状態(例えば、急性期、細胞の特定の分化状態、若しくは複製細胞中のみ)の存在によって調節することができる。誘導性プロモーター及び誘導系は、Invitrogen、Clontech、及びAriadを含むが限定するものではない、様々な商業的供給者から入手可能である。多くの他の系が記載されており、当業者によって容易に選択することができる。外来的に供給される化合物によって調節される誘導性プロモーターの例としては、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系[WO98/10088]、エクジソン昆虫プロモーター[No et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:3346-3351(1996)]、テトラサイクリン抑制系[Gossen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5547-5551(1992)],テトラサイクリン誘導系[Gossen et al.,Science,268:1766-1769(1995)、Harvey et al.,Curr.Opin.Chem.Biol.,2:512-518(1998)]、RU486誘導系[Wang et al.、Nat.Biotech.、15:239-243(1997)及びWang et al.,Gene Ther.,4:432-441(1997)]、及びラパマイシン誘導系[Magari et al.,J.Clin.Invest.,100:2865-2872(1997)]が挙げられる。この文脈において有用であり得る他のタイプの誘導性プロモーターは、特定の生理学的状態、例えば温度、急性期、細胞の特定の分化状態、又は複製細胞中のみにより調節されるものである。
【0134】
任意選択的に、導入遺伝子の天然のプロモーターを使用してもよい。導入遺伝子の発現が天然の発現を模倣すべきである場合、天然のプロモーターが好ましいものであり得る。天然プロモーターは、導入遺伝子の発現が、好ましくは、一時的に若しくは発達的に、又は組織特異的な様式で、又は特定の転写刺激に応答して調節されるときに使用され得る。更なる実施形態では、エンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位、又はコザックコンセンサス配列などの他の天然発現制御エレメントはまた、天然の発現を模倣するために使用することができる。
【0135】
導入遺伝子はまた、組織特異的プロモーターに作動可能に連結された遺伝子を含み得る。例えば、骨格筋での発現が所望される場合、筋肉で活性なプロモーターが使用される必要がある。これらには、骨格bアクチン、ミオシン軽鎖2A、ジストロフィン、筋クレアチンキナーゼをコードする遺伝子由来のプロモーター、及び天然に存在するプロモーターよりも高い活性を有する合成筋肉プロモーターが含まれる(Li et al.,Nat.Biotech.,17:241-245(1999)を参照されたい)。組織特異的であるプロモーターの例は、とりわけ、肝臓(アルブミン、Miyatake et al.,J.Virol.,71:5124-32(1997)、B型肝炎ウイルスコアプロモーター(Sandig et al.,Gene Ther.,3:1002-9(1996)、アルファ-フェトプロテイン(AFP,Arbuthnot et al.,Hum.Gene Ther.,7:1503-14(1996))、骨オステオカルシン(Stein et al.,Mol.Biol.Rep.,24:185-96(1997))、骨シアロタンパク質(Chen et al.,J.Bone Miner.Res.,11:654-64(1996))、リンパ球(CD2、Hansal et al.,J.Immunol.,161:1063-8(1998)、免疫グロブリン重鎖、T細胞受容体鎖)、神経特異的エノラーゼ(NSE)プロモーターなどのニューロンプロモーター(Andersen et al.,Cell.Mol.Neurobiol.,13:503-15(1993))、神経フィラメント軽鎖遺伝子(Piccioli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:5611-5(1991))、及びニューロン特異的vgf遺伝子(Piccioli et al.,Neuron,15:373-84(1995))について知られている。
【0136】
組換えAAVを使用して、例えば、細胞培養で目的のタンパク質をインビトロで産生することができる。例えば、AAVは、インビトロで目的のタンパク質を産生するための方法において使用することができ、本方法は、異種タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む組換えAAVを提供することと、組換えAAVを細胞培養中の細胞と接触させることと、を含み、それによって、組換えAAVが細胞において目的のタンパク質を発現する。目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列のサイズは変動し得る。例えば、ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.1キロ塩基(kb)長、少なくとも約0.2kb長、少なくとも約0.3kb長、少なくとも約0.4kb長、少なくとも約0.5kb長、少なくとも約0.6kb長、少なくとも約0.7kb長、少なくとも約0.8kb長、少なくとも約0.9kb長、少なくとも約1kb長、少なくとも約1.1kb長、少なくとも約1.2kb長、少なくとも約1.3kb長、少なくとも約1.4kb長、少なくとも約1.5kb長、少なくとも約1.6kb長、少なくとも約1.7kb長、少なくとも約1.8kb長、少なくとも約2.0kb長、少なくとも約2.2kb長、少なくとも約2.4kb長、少なくとも約2.6kb長、少なくとも約2.8kb長、少なくとも約3.0kb長、少なくとも約3.2kb長、少なくとも約3.4kb長、少なくとも約3.5kb長、少なくとも約4.0kb長、少なくとも約5.0kb長、少なくとも約6.0kb長、少なくとも約7.0kb長、少なくとも約8.0kb長、少なくとも約9.0kb長、又は少なくとも約10.0kb長であり得る。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは少なくとも約1.4kbの長さである。
【0137】
組換えAAVを使用して、動物(例えば、哺乳類)において目的のタンパク質をインビボで産生することができる。いくつかの実施形態は、目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む組換えAAVを提供することと、組換えAAVを対象に投与し、それにより組換えAAVは対象において目的のタンパク質を発現することとを含む、目的のタンパク質をインビボで産生する方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象は、非ヒト哺乳類、例えば、サル、イヌ、ネコ、マウス、又はウシであることができる。目的のタンパク質をコードするヌクレオチド配列のサイズは変動し得る。例えば、ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.1kb長、少なくとも約0.2kb長、少なくとも約0.3kb長、少なくとも約0.4kb長、少なくとも約0.5kb長、少なくとも約0.6kb長、少なくとも約0.7kb長、少なくとも約0.8kb長、少なくとも約0.9kb長、少なくとも約1kb長、少なくとも約1.1kb長、少なくとも約1.2kb長、少なくとも約1.3kb長、少なくとも約1.4kb長、少なくとも約1.5kb長、少なくとも約1.6kb長、少なくとも約1.7kb長、少なくとも約1.8kb長、少なくとも約2.0kb長、少なくとも約2.2kb長、少なくとも約2.4kb長、少なくとも約2.6kb長、少なくとも約2.8kb長、少なくとも約3.0kb長、少なくとも約3.2kb長、少なくとも約3.4kb長、少なくとも約3.5kb長、少なくとも約4.0kb長、少なくとも約5.0kb長、少なくとも約6.0kb長、少なくとも約7.0kb長、少なくとも約8.0kb長、少なくとも約9.0kb長、又は少なくとも約10.0kb長であり得る。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは少なくとも約1.4kbの長さである。
【0138】
特に興味深いのは、様々な疾患又は障害を治療するための1つ以上の治療用タンパク質を発現するための組換えAAVの使用である。疾患の非限定的な例には、がん腫、肉腫、白血病、リンパ腫などのがん;並びに多発性硬化症などの自己免疫疾患が含まれる。がん腫の非限定的な例には、食道がん;肝細胞がん;基底細胞がん、扁平上皮がん(種々の組織);移行上皮がんを含む膀胱がん;気管支原性がん;結腸がん;大腸がん;胃がん;肺の小細胞がん及び非小細胞がんを含む肺がん;副腎皮質がん;甲状腺がん;膵臓がん;乳がん;卵巣がん;前立腺がん;腺がん;汗腺がん;脂腺がん;乳頭がん;乳頭腺がん;嚢胞腺がん;髄様がん;腎細胞がん;非浸潤性乳管がん又は胆管がん;絨毛がん;セミノーマ;胎児性がん;ウィルムス腫瘍;子宮頸がん;子宮がん;精巣がん;骨形成がん;上皮がん;並びに鼻咽頭がんが含まれる。肉腫の非限定的な例としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、骨原性肉腫、骨肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫(synovioma)、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、及び他の軟部組織肉腫が挙げられる。固形腫瘍の非限定的な例には、神経膠腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫が含まれる。白血病の非限定的な例には、慢性骨髄増殖性症候群;急性骨髄性白血病;B細胞CLL、T細胞CLL前リンパ球性白血病及び有毛細胞白血病を含む、慢性リンパ球性白血病;並びに急性リンパ芽球性白血病が含まれる。リンパ腫の例には、B細胞リンパ腫、例えば、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫等が含まれるが、これらに限定されない。
【0139】
本明細書に開示されるrAAV及び方法を使用して治療することができる疾患の他の非限定的な例としては、鎌状赤血球症、嚢胞性線維症、リソソーム酸性リパーゼ(LAL)欠損1、テイ=サックス病、フェニルケトン尿症、ムコ多糖症、糖原病(GSD、例えば、GSD I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、及びXIV型)、ガラクトース血症、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ筋ジストロフィー)、心筋症(例えば、肥大型心筋症、拡張型心筋症、不整脈原性右室心筋症など)、及び血友病(例えば、血友病A(古典的血友病)及び血友病B(クリスマス病))、ウィルソン病、ファブリー病、ゴーシェ病、遺伝性血管浮腫(HAE)、並びにα1アンチトリプシン欠損症が挙げられる。加えて、本明細書に開示されるrAAV及び方法は、肝臓における導入遺伝子の局所発現によって、又は肝臓若しくは肝細胞からの分泌タンパク質の発現によって治療され得る他の障害を治療するために使用することができる。
【0140】
対象(例えば、対象の血清)において発現される異種タンパク質の量は変動し得る。例えば、いくつかの実施形態では、タンパク質は、対象の血清中に、少なくとも約9ミリグラム(mg)/mL、少なくとも約10mg/mL、少なくとも約11mg/mL、少なくとも約12mg/mL、少なくとも約13mg/mL、少なくとも約14mg/mL、少なくとも約15mg/mL、少なくとも約16mg/mL、少なくとも約17mg/mL、少なくとも約18mg/mL、少なくとも約19mg/mL、少なくとも約20mg/mL、少なくとも約21mg/mL、少なくとも約22mg/mL、少なくとも約23mg/mL、少なくとも約24mg/mL、少なくとも約25mg/mL、少なくとも約26mg/mL、少なくとも約27mg/mL、少なくとも約28mg/mL、少なくとも約29mg/mL、少なくとも約30mg/mL、少なくとも約31mg/mL、少なくとも約32mg/mL、少なくとも約33mg/mL、少なくとも約34mg/mL、少なくとも約35mg/mL、少なくとも約36mg/mL、少なくとも約37mg/mL、少なくとも約38mg/mL、少なくとも約39mg/mL、少なくとも約40mg/mL、少なくとも約41mg/mL、少なくとも約42mg/mL、少なくとも約43mg/mL、少なくとも約44mg/mL、少なくとも約45mg/mL、少なくとも約46mg/mL、少なくとも約47mg/mL、少なくとも約48mg/mL、少なくとも約49mg/mL、又は少なくとも約50mg/mLの量で発現され得る。目的のタンパク質は、対象の血清中に、約9pg/mL、約10pg/mL、約50pg/mL、約100pg/mL、約200pg/mL、約300pg/mL、約400pg/mL、約500pg/mL、約600pg/mL、約700pg/mL、約800pg/mL、約900pg/mL、約1000pg/mL、約1500pg/mL、約2000pg/mL、約2500pg/mL、又はこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲の量で発現され得る。当業者は、目的のタンパク質が治療有効性に必要な発現レベルは、目的の特定のタンパク質及び治療を受けている対象などの非限定的な因子によって変動し得るものであり、有効量のタンパク質は、過度の実験をすることなく当該技術分野で既知の従来の方法を使用して当業者によって容易に決定され得ることを理解するであろう。
【0141】
他の実施形態では、本発明は、対象への投与に有用な、本発明のAAVウイルス粒子の薬学的製剤を対象とする。
【0142】
一実施形態では、本発明の薬学的製剤は、本明細書に開示されるAAVウイルス粒子を含む液体製剤であり、製剤中のAAVウイルス粒子の濃度は、大きく変化し得る。AAVウイルス粒子及び組成物は、投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、単位剤形で製剤化され得る。「単位剤形(dosage unit form)」という用語は、治療される対象のための単位投薬量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要とされる薬学的担体と会合して所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性化合物を含む。単位剤形は、所望の効果を生じるのに必要なAAVウイルス粒子の量に依存する。必要な量は、単一の用量で製剤化することができ、又は複数の投薬単位で製剤化することができる。用量は、好適なAAVウイルス粒子濃度に調整され、任意選択的に、1つ以上の他の薬剤と組み合わせられ、使用のためにパッケージングされ得る。
【0143】
別の実施形態では、薬学的組成物は、予防的又は治療的に有効な量、すなわち、問題の疾患状態の症状を予防、軽減、又は改善するのに十分な量、又は所望の利益を付与するのに十分な量を提供するのに十分な遺伝物質を含む。
【0144】
他の実施形態では、本発明の薬学的製剤を含有するAAVウイルス粒子は、保存及び/又は対象への投与のための有利な特性を有する製剤を提供するために、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。特定の実施形態では、本明細書に提供される薬学的製剤は、少なくとも2週間、好ましくは少なくとも4週間、より好ましくは少なくとも6週間、及び更により好ましくは少なくとも約8週間、安定性の検出可能な変化なしに、65℃未満で保存することができる。これに関して、用語「安定した」は、製剤中に存在するAAVウイルス粒子が、保存中にその物理的安定性、化学的安定性、及び/又は生物活性を本質的に保持することを意味する。本発明の他の実施形態では、薬学的製剤中に存在するAAVウイルス粒子は、-65℃で決められた期間にわたる保存中、対象におけるその生物活性の少なくとも約80%、より好ましくは、対象におけるその生物活性の少なくとも約85%、90%、95%、98%、又は99%を保持する。
【0145】
いくつかの実施形態では、約0.1mg/ml~約3mg/ml、約0.5mg/ml~約2.5mg/ml、約1mg/ml~約2mg/ml、又は約1.4mg/ml~約1.6mg/mlの濃度のリン酸二ナトリウム。特に好ましい実施形態では、本発明のAAVウイルス粒子製剤は、約1.42mg/mlのリン酸二ナトリウム(乾燥)を含む。
【0146】
他の実施形態では、本発明のAAVウイルス粒子製剤に使用することができる別の緩衝剤は、一塩基性リン酸ナトリウム一水和物であり、これは、いくつかの実施形態では、約0.1mg/ml~約3mg/ml、約0.5mg/ml~約2.5mg/ml、約1mg/ml~約2mg/ml、又は約1.3mg/ml~約1.5mg/mlの濃度で使用することができる。一実施形態では、本発明のAAVウイルス粒子製剤は、約1.38mg/mlの一塩基性リン酸ナトリウム一水和物を含む。別の実施形態では、本発明のAAVウイルス粒子製剤は、約1.42mg/mlの二塩基性リン酸ナトリウム、及び約1.38mg/mlの一塩基性リン酸ナトリウム一水和物を含む。
【0147】
一実施形態では、本発明のAAVウイルス粒子製剤は、好ましくは、約1mg/ml~約20mg/ml、例えば、約1mg/ml~約10mg/ml、約5mg/ml~約15mg/ml、又は約8mg/ml~約20mg/mlの濃度の塩化ナトリウムなどの1つ以上の等張剤を含んでもよい。別の実施形態では、本発明の製剤は、約8.18mg/mlの塩化ナトリウムを含む。当技術分野で知られている他の緩衝剤及び等張剤が適切であり、本開示の製剤で使用するために日常的に使用することができる。
【0148】
別の実施形態では、本発明のAAVウイルス粒子製剤は、1つ以上の充填剤を含んでもよい。例示的な充填剤としては、マンニトール、スクロース、デキストラン、ラクトース、トレハロース、及びポビドン(PVP K24)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の好ましい実施形態では、本発明の製剤は、マンニトールを含み、これは、約5mg/ml~約40mg/ml、又は約10mg/ml~約30mg/ml、又は約15mg/ml~約25mg/mlの量で存在し得る。特に好ましい実施形態では、マンニトールは、約20mg/mlの濃度で存在する。
【0149】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVウイルス粒子製剤は、非イオン性界面活性剤であり得る1つ以上の界面活性剤を含んでもよい。
【0150】
例示的な界面活性剤としては、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、界面活性剤は、TWEEN 80(ポリソルベート80、又はその化学名モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンとしても知られる)、ドデシル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、TRITON AG 98(Rhone-Poulenc)、ポロキサマー407、ポロキサマー188など、及びそれらの組み合わせであり得るが、これらに限定されない。
【0151】
いくつかの実施形態では、本発明の製剤は、ポロキサマー188を含み、これは、約0.1mg/ml~約4mg/ml、又は約0.5mg/ml~約3mg/ml、約1mg/ml~約3mg/ml、約1.5mg/ml~約2.5mg/ml、又は約1.8mg/ml~約2.2mg/mlの濃度で存在し得る。特に好ましい実施形態では、ポロキサマー188は、約2.0mg/mlの濃度で存在する。
【0152】
他の実施形態では、本発明の薬学的製剤は、約1.42mg/mlの二塩基性リン酸ナトリウム、約1.38mg/mlの一塩基性リン酸ナトリウム、約8.18mg/mlの塩化ナトリウム、約20mg/mlのマンニトール、及び約2mg/mlのポロキサマー188を含む液体溶液中に製剤化されたAAVウイルス粒子を含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、本開示のAAVウイルス含有製剤は安定しており、品質、効力、又は純度の許容できない変化なしに長期間保存することができる。
【0154】
一実施形態では、製剤は、約5℃(例えば、2℃~8℃)の温度で、少なくとも1か月間、例えば、少なくとも1か月間、少なくとも3か月間、少なくとも6か月間、少なくとも12か月間、少なくとも18か月間、少なくとも24か月間、又はそれ以上安定している。
【0155】
別の実施形態では、製剤は、約-20℃以下の温度で、少なくとも6か月間、例えば、少なくとも6か月間、少なくとも12か月間、少なくとも18か月間、少なくとも24か月間、少なくとも36か月間、又はそれ以上安定している。
【0156】
いくつかの実施形態では、製剤は、約-40℃以下の温度で、少なくとも6か月間、例えば、少なくとも6か月間、少なくとも12か月間、少なくとも18か月間、少なくとも24か月間、少なくとも36か月間、又はそれ以上安定している。
【0157】
他の実施形態では、製剤は、約-60℃以下の温度で、少なくとも6か月間、例えば、少なくとも6か月間、少なくとも12か月間、少なくとも18か月間、少なくとも24か月間、少なくとも36か月間、又はそれ以上安定している。
【0158】
一実施形態では、本発明は、細胞、組織、及び/若しくは目的の臓器の効率的な形質導入のための、並びに/又は遺伝子療法における使用のための、本発明のAAVウイルス粒子の使用を提供する。
【0159】
一実施形態では、本発明は、細胞に、有効量の本発明のAAVウイルス粒子を含む組成物を導入することを含む、細胞、組織、及び/又は目的の臓器の形質導入のための方法を提供する。
【0160】
いくつかの実施形態では、本発明のAAVウイルス粒子は、対象の細胞、組織、及び/又は目的の臓器の形質導入のために使用される。
【0161】
他の実施形態では、細胞、組織、及び/又は目的の臓器の形質導入のための方法が提供され、この方法は、有効量の本発明のAAVウイルス粒子を含む組成物を含む。
【0162】
一実施形態では、対象の予防的又は治療的処置のための方法が提供される。
【0163】
別の実施形態では、対象は、その予防的又は治療的処置を必要とする。
【0164】
いくつかの実施形態では、対象は、状態又は疾患を含み、対象は、当該状態又は疾患の治療を必要とする。
【0165】
他の実施形態では、対象は、哺乳類である。
【0166】
他の実施形態では、対象は、非げっ歯哺乳類、霊長類、ヒト、家畜、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、又はネコである。
【0167】
別の実施形態では、本発明のAAVウイルス粒子は、様々な既知の投与技術を介して対象に投与され得る。
【0168】
いくつかの実施形態では、AAVウイルス粒子は、単回ボーラス投与として、又は長期間にわたってのいずれかで静脈内注射によって投与され、この長期間は、少なくとも約1、5、10、15、30、45、60、75、90、120、150、180、210、又は240分間以上であってもよい。
【0169】
一実施形態では、対象の脳脊髄液(CSF)を含む細胞(例えば、上皮細胞)は、当該AAVウイルス粒子によって形質導入される。いくつかの実施形態では、AAVウイルス粒子で形質導入された細胞(例えば、上皮細胞)は、形質導入遺伝子を発現し、当該哺乳類のCSF中に分泌する。
【0170】
別の実施形態では、AAVウイルス粒子の投与は、対象の大槽、脳室内腔、脳室、くも膜下腔、髄腔内腔、及び/又は上衣への投与を含む。
【0171】
他の実施形態では、AAVウイルス粒子の投与は、当該対象の脳脊髄液(CSF)への投与を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、AAVウイルス粒子の投与は、当該対象の上皮細胞をAAVウイルス粒子と接触させることを含む。
【0173】
一実施形態では、AAVウイルス粒子の投与は、当該対象の軟膜細胞、内皮細胞、又は髄膜細胞を当該AAVウイルス粒子と接触させることを含む。
【0174】
別の実施形態では、AAVウイルス粒子の投与は、AAVウイルス粒子を、当該対象の脳又は脊髄の組織又は流体に注射することを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、AAVウイルス粒子の投与は、AAVウイルス粒子を当該対象の脳脊髄液に注射することを含む。
【0176】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載される方法及び組成物とともに使用するためのキットを提供する。組成物及びウイルス製剤は、キットに提供され得る。キットはまた、好適な容器及び任意選択的に1つ以上の追加の薬剤を含み得る。いくつかの実施形態では、容器は、バイアル、試験管、フラスコ、ボトル、注射器、及び/又は他の容器である。他の実施形態では、キットは、例えば、AAVウイルス粒子の投与を指示するための、AAVウイルス粒子、薬学的に許容される担体、及びその使用のための説明書を含む。
【0177】
アデノ随伴ウイルスの産生方法
【0178】
本開示は、rAAVビリオンを、哺乳類及び昆虫細胞などの細胞内で産生するための材料及び方法を提供する。
【0179】
様々な実施形態では、いずれかの実施形態の方法は、rAAV産生のための1つ以上のベクターを有する宿主細胞を培養するステップを含む。他の実施形態では、rAAV産生のための1つ以上のベクターは、AAVヘルパー機能を提供する少なくとも1つの核酸分子、又は非AAVヘルパー機能を提供する少なくとも1つの核酸分子、又はAAVゲノムベクターを生成する少なくとも1つの核酸分子、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いずれかの実施形態の方法は、細胞を、rAAVの産生を可能にする条件下で培養することを更に含む。本方法は、任意選択的に、rAAVを回収することを含む。例えば、AAVウイルス粒子は、同時トランスフェクションの約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、約96時間、約120時間、約144時間、約168時間、約192時間、約216時間、約240時間、又はこれらの2つの時点のうちのいずれかの間の時間後に採取され得る。
【0180】
いくつかの実施形態では、AAVウイルス粒子の産生のための培養物は、以下のうちの1つ以上を含む:宿主細胞、野生型若しくは変異型アデノウイルス(温度感受性アデノウイルスなど)によって提供される好適なヘルパーウイルス機能、ヘルペスウイルス、バキュロウイルス、又はヘルパー機能を提供するプラスミド構築物、AAV rep及びcap遺伝子及び遺伝子産物、AAV ITR配列に隣接する導入遺伝子(例えば、診断用及び/又は治療用導入遺伝子など)、並びにAAVウイルス粒子の産生をサポートする好適な培地及び培地成分。
【0181】
いくつかの実施形態では、昆虫細胞又は哺乳類細胞を、ヘルパープラスミド又はヘルパーウイルス、AAV cap遺伝子をコードするウイルス構築物、及びプラスミドでトランスフェクトすることができ、同時トランスフェクション後の様々な時点で、rAAV粒子を採取することができる。
【0182】
いくつかの実施形態では、新規のrAAVウイルス粒子は、昆虫細胞(例えば、Sf9)で産生される。いくつかの実施形態では、AAVウイルス粒子は、Rep及びCap遺伝子とともに導入遺伝子を含むAAVゲノムベクターを宿主細胞に提供することによって調製される。いくつかの実施形態では、AAVゲノムベクターは、導入遺伝子、AAV Rep遺伝子、及びAAV Cap遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、rAAVウイルス粒子は、2つ以上のベクターを宿主細胞に提供することによって調製される。例えば、いくつかの実施形態では、導入遺伝子を含むAAVゲノムベクターを、AAV Rep遺伝子及びAAV Cap遺伝子を含むベクター(例えば、プラスミド又はバキュロウイルス)とともに、細胞に導入(例えば、トランスフェクト又は形質導入)する。いくつかの実施形態では、細胞は、導入遺伝子を含むAAVゲノムベクター、AAV Rep遺伝子を含むベクター(例えば、プラスミド又はバキュロウイルス)、及びAAV Cap遺伝子を含むベクター(例えば、プラスミド又はバキュロウイルス)で、トランスフェクト又は形質導入される。
【0183】
様々な実施形態では、いずれかの実施形態の方法は、宿主細胞をrBVに感染させるステップを含む。rBVは、Repタンパク質をコードする1つ以上の核酸分子、キャプシドタンパク質をコードする1つ以上の核酸分子、及びAAVゲノムベクターを生成する少なくとも1つの核酸分子を含む。いずれかの実施形態の方法は、細胞を、rAAVの産生を可能にする条件下で培養することを更に含む。本方法は、任意選択的に、rAAVを回収することを含む。
【0184】
AAVウイルス粒子を生成するにはいくつかの方法がある:例えば、ベクター及びAAVヘルパー配列を使用したトランスフェクションと併せて、AAVヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、又はワクシニアウイルス)のうちの1つによる同時感染、又は組換えAAVベクター、AAVヘルパーベクター、及びアクセサリー機能ベクターによるトランスフェクションがあるが、これらに限定されない。AAVウイルス粒子を作製する方法は、例えば、米国特許第US6204059号、同第US5756283号、同第US6258595号、同第US6261551号、同第US6270996号、同第US6281010号、同第US6365394号、同第US6475769号、同第US6482634号、同第US6485966号、同第US6943019号、同第US6953690号、同第US7022519号、同第US7238526号、同第US7291498号、及び同第US7491508号、同第US5064764号、同第US6194191号、同第US6566118号、同第US8137948、又は国際公開第1996/039530号、同第1998/010088号、同第1999/014354号、同第1999/015685号、同第1999/047691号、同第2000/055342号、同第2000/075353号、同第2001/023597号、同第2015/191508号、同第2019/217513号、同第2018/022608号、同第2019/222136号、同第2020/232044号、同第2019/222132号、Methods In Molecular Biology,ed. Richard,Humana Press,NJ (1995)、O’Reilly et al.,Baculovirus Expression Vectors,A Laboratory Manual,Oxford Univ.Press (1994)、Samulski et al.,J.Vir.63:3822-8 (1989)、Kajigaya et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 88:4646-50(1991)、Ruffing et al.,J.Vir.66:6922-30(1992)、Kimbauer et al.,Vir.,219:37-44(1996)、Zhao et al.,Vir.272:382-93(2000)に記載されており、それらの各々の内容は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。AAVウイルス粒子を生成するための方法の詳細な説明については、例えば、米国特許第6,001,650号、同第6,004,797号、及び同第9,504,762号を参照されたい(各々は、その全体が参照により本明細書に援用される)。一実施形態では、三重トランスフェクション法(例えば、米国特許第6,001,650号を参照(参照によりその全体が本明細書に援用される))を使用して、AAVウイルス粒子を産生する。この方法は、感染性ヘルパーウイルスの使用を必要とせず、検出可能なヘルパーウイルスが存在することなく、AAVウイルス粒子を産生することを可能にする。これは、AAVウイルス粒子産生のための3つのベクター(すなわち、AAVヘルパー機能ベクター、アクセサリー機能ベクター、及びAAVウイルス粒子発現ベクター)の使用によって達成される。しかしながら、当業者は、これらのベクターによってコードされる核酸配列が様々な組み合わせで2つ以上のベクター上に提供され得ることを理解するであろう。他の実施形態では、宿主細胞を、ヘルパープラスミド又はヘルパーウイルス、AAV cap遺伝子をコードするウイルス構築物及びプラスミドでトランスフェクトし得、同時トランスフェクション後にAAVウイルス粒子が様々な時点において採取され得る。
【0185】
例えば、野生型AAV及びヘルパーウイルスを使用して、AAVウイルス粒子を産生するために必要な複製機能を提供することができる(例えば、米国特許第5,139,941号(その全体が参照により本明細書に援用される))を参照されたい。あるいは、ヘルパー機能遺伝子を含有するプラスミドを、周知のヘルパーウイルスのうちの1つによる感染と組み合わせて、複製機能の供給源として使用することができる(例えば、米国特許第5,622,856号及び同第5,139,941号を参照されたい)。同様に、アクセサリー機能遺伝子を含有するプラスミドを、野生型AAVによる感染と組み合わせて使用して、必要な複製機能を提供することができる。本明細書に記載の及び/又は当該技術分野で周知の他のアプローチはまた、AAVウイルス粒子を産生するために当業者によって用いられ得る。
【0186】
様々な実施形態では、いずれかの実施形態の培養ステップは、少なくとも20ミリリットル(mL)、少なくとも50mL、少なくとも100mL、少なくとも500mL、少なくとも1リットル(L)、少なくとも10L、少なくとも50L、少なくとも100L、少なくとも250L、少なくとも500L、少なくとも1000L、少なくとも1500L、少なくとも2000L、又は少なくとも2500Lの量で発生する。
【0187】
実施例では、培養ステップは、1つ又は複数のシェイクフラスコで発生し得る。様々な実施形態では、いずれかの実施形態の培養ステップは、20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL、200mL、300mL、400mL、500mL、600mL、700mL、800mL、900mL、1L、2L、3L、4L、又は5Lの量で発生する。他の実施形態では、培養ステップの量は、上記で提供されるいずれかの2つの量間の範囲である。
【0188】
他の例では、培養ステップは、1つ又は複数のバイオリアクターで発生し得る。様々な実施形態では、いずれかの実施形態の培養ステップは、1L、2L、3L、4L、5L、6L、7L、8L、9L、10L、11L、12L、13L、14L、15L、16L、17L、18L、19L、20L、21L、22L、23L、24L、25L、26L、27L、28L、29L、30L、31L、32L、33L、34L、35L、36L、37L、38L、39L、40L、41L、42L、43L、44L、45L、46L、47L、48L、49L、50L、51L、52L、53L、54L、55L、56L、57L、58L、59L、60L、61L、62L、63L、64L、65L、66L、67L、68L、69L、70L、71L、72L、73L、74L、75L、76L、77L、78L、79L、80L、81L、82L、83L、84L、85L、86L、87L、88L、89L、90L、91L、92L、93L、94L、95L、96L、97L、98L、99L、100L、110L、120L、130L、140L、150L、160L、170L、180L、190L、200L、210L、220L、230L、240L、250L、260L、270L、280L、290L、300L、310L、320L、330L、340L、350L、360L、370L、380L、390L、400L、410L、420L、430L、440L、450L、460L、470L、480L、490L、500L、510L、520L、530L、540L、550L、560L、570L、580L、590L、600L、610L、620L、630L、640L、650L、660L、670L、680L、690L、700L、710L、720L、730L、740L、750L、760L、770L、780L、790L、800L、810L、820L、830L、840L、850L、860L、870L、880L、890L、900L、910L、920L、930L、940L、950L、960L、970L、980L、990L、1000L、1010L、1020L、1030L、1040L、1050L、1060L、1070L、1080L、1090L、1100L、1110L、1120L、1130L、1140L、1150L、1160L、1170L、1180L、1190L、1200L、1210L、1220L、1230L、1240L、1250L、1260L、1270L、1280L、1290L、1300L、1310L、1320L、1330L、1340L、1350L、1360L、1370L、1380L、1390L、1400L、1410L、1420L、1430L、1440L、1450L、1460L、1470L、1480L、1490L、1500L、1510L、1520L、1530L、1540L、1550L、1560L、1570L、1580L、1590L、1600L、1610L、1620L、1630L、1640L、1650L、1660L、1670L、1680L、1690L、1700L、1710L、1720L、1730L、1740L、1750L、1760L、1770L、1780L、1790L、1800L、1810L、1820L、1830L、1840L、1850L、1860L、1870L、1880L、1890L、1900L、1910L、1920L、1930L、1940L、1950L、1960L、1970L、1980L、1990L、2000L、2010L、2020L、2030L、2040L、2050L、2060L、2070L、2080L、2090L、2100L、2110L、2120L、2130L、2140L、2150L、2160L、2170L、2180L、2190L、2200L、2210L、2220L、2230L、2240L、2250L、2260L、2270L、2280L、2290L、2300L、2310L、2320L、2330L、2340L、2350L、2360L、2370L、2380L、2390L、2400L、2410L、2420L、2430L、2440L、2450L、2460L、2470L、2480L、2490L、2500L、2510L、2520L、2530L、2540L、2550L、2560L、2570L、2580L、2590L、2600L、2610L、2620L、2630L、2640L、2650L、2660L、2670L、2680L、2690L、2700L、2710L、2720L、2730L、2740L、2750L、2760L、2770L、2780L、2790L、2800L、2810L、2820L、2830L、2840L、2850L、2860L、2870L、2880L、2890L、2900L、2910L、2920L、2930L、2940L、2950L、2960L、2970L、2980L、2990L、又は3000Lの量で発生する。他の実施形態では、培養ステップの量は、上記で提供されるいずれかの2つの量間の範囲である。
【0189】
「ベクター」という用語は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、バクミド、ミニプラスミド(例えば、細菌エレメントを含まないプラスミド)、ドギーボーンDNA(例えば、最小の閉じた線形構築物)、染色体、ウイルス、ビリオン(例えば、バキュロウイルス)などの、適切な制御エレメントを伴う場合に複製することができ、かつ細胞間で遺伝子配列を伝達することができる、任意の遺伝子エレメントを指すと理解される。本明細書で使用される場合、「哺乳類細胞適合性ベクター」又は「ベクター」とは、哺乳類又は哺乳類細胞の産生的形質転換又はトランスフェクションが可能な核酸分子を指す。本明細書で使用される場合、「昆虫細胞適合性ベクター」又は「ベクター」は、昆虫又は昆虫細胞の産生的形質転換又はトランスフェクションが可能な核酸分子を指す。例示的な生物学的ベクターとしては、プラスミド、直鎖核酸分子、及び組換えウイルスが挙げられる。任意のベクターが、昆虫細胞適合性である限り用いられ得る。ベクターは、昆虫細胞ゲノムに組み込まれ得るが、昆虫細胞中のベクターの存在は、永久的である必要はなく、一過性のエピソームベクターも含まれる。ベクターは、既知の任意の手段、例えば、細胞の化学処理、エレクトロポレーション、又は感染によって導入され得る。ベクター及びそれらの使用方法は、細胞の分子工学に関する上記の引用参照文献に記載されている。
【0190】
細胞がrAAVベクターゲノムを生成するベクターは、プロモーターと、1つ以上の目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの挿入を可能にするためのプロモーターの下流の制限部位と、を含み得、プロモーター及び制限部位は、5’AAV ITRの下流及び3’AAV ITRの上流に位置する。ベクターはまた、制限部位の下流及び3’AAV ITRの上流の転写後調節エレメントを含み得る。ウイルス構築物は、制限部位に挿入され、プロモーターと作動可能に連結されたポリヌクレオチドを更に含み得、ポリヌクレオチドが、対象となるタンパク質のコード領域を含む。いくつかの実施形態では、ウイルス構築物は、目的の1つ以上のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの挿入を可能にするために、プロモーター及びプロモーターの制限部位下流を更に含み、プロモーター及び制限部位は、5’AAV ITRの下流及び3’AAV ITRの上流に位置している。いくつかの実施形態では、ウイルス構築物は、制限部位の転写後の調節エレメント下流及び3’AAV ITRの上流を更に含む。いくつかの実施形態では、ウイルス構築物は、制限部位で挿入され、プロモーターで動作に連結されたポリヌクレオチドを更に含み、ポリヌクレオチドは、目的のタンパク質のコード領域を含む。当業者が認識するように、本出願に開示されているAAVベクターのうちの任意の1つは、rAAVビリオンを産生するためのウイルス構築物として、本方法において使用することができる。
【0191】
「AAVヘルパー」という用語は、増殖性AAV複製のために今度はトランスで機能するAAV遺伝子産物を提供するために発現され得るAAV由来コード配列を指す。したがって、AAVヘルパー機能には、主要なAAVオープンリーディングフレーム(ORF)であるrep及びcapの両方が含まれる。Rep発現産物は、特に以下のものを含む、多くの機能を有することが示されている:DNA複製のAAV起点の認識、結合、及びニッキング;DNAヘリカーゼ活性;並びにAAV(又は他の異種)プロモーターからの転写の調節を含む。キャプシド(Cap)発現産物は、必要なパッケージング機能を供給する。AAVヘルパー機能は、本明細書では、AAVベクターゲノムから失われたAAV機能をトランスで補完するために使用される。
【0192】
生産のために、AAVヘルパー機能を有する細胞は、キャプシドを形成するのに十分な組換えキャプシドタンパク質を産生する。これには、少なくともVP1及びVP3タンパク質が含まれるが、より典型的には、天然AAVに見出されるVP1、VP2、及びVP3タンパク質の3つ全てが含まれる。キャプシドタンパク質の配列は、宿主細胞によって産生されるAAVビリオンの血清型を決定する。本発明において有用なキャプシドは、1、2、3、3B、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は混合血清型を含むいくつかのAAV血清型に由来するものを含む(例えば、米国特許第8,318,480号を、非天然混合血清型のその開示について参照されたい)。キャプシドタンパク質はまた、変異タンパク質、キメラタンパク質、又はシャフルタンパク質を含む、天然のVP1、VP2、及びVP3のバリアントであり得る。キャプシドタンパク質は、AAVの様々なクレード内のrh.10又は他のサブタイプのものであり得る。様々なクレード及びサブタイプは、例えば、米国特許第7,906,111号に開示されている。広範な構築物の利用可能性及び広範な特徴付けのために、以下に開示される例示的なAAVベクターは、血清型2に由来する。異なる血清型のAAVベクター及びAAVタンパク質の構築及び使用は、Chao et al.,Mol.Ther.2:619-623,2000、Davidson et al.,PNAS 97:3428-3432,2000、Xiao et al.,J.Virol.72:2224-2232,1998、Halbert et al.,J.Virol.74:1524-1532,2000、Halbert et al.,J.Virol.75:6615-6624,2001、及びAuricchio et al.,Hum.Molec.Genet.10:3075-3081,2001で考察されている。
【0193】
様々な実施形態では、VPタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、好適な発現制御配列に作動可能に連結され得る。様々な実施形態では、Repタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、真核生物プロモーターなどの好適な発現制御配列に作動可能に連結され得る。例えば、ヌクレオチド配列は、SV40プロモーター、CMVプロモーター、RSVプロモーター、UBCプロモーター、EF1Aプロモーター、PGKプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、b-アクチンプロモーター、TRE(Tet、Tet-On、Tet-Off)プロモーター、クメート制御系(CuR/CuO)(US2004/0205834を参照されたい)、温度誘導性HSP70プロモーター、p5プロモーター、p10プロモーター、p19プロモーター、及びp40プロモーターなどの真核生物プロモーターに作動可能に連結され得る。別の例では、ヌクレオチド配列は、ポリヘドリン(Polh)プロモーター、ΔIE1プロモーター、p5プロモーター、p10プロモーター、p19プロモーター、p40プロモーター、メタロチオネインプロモーター、39Kプロモーター、p6.9プロモーター、及びorf46プロモーターなどのバキュロウイルスプロモーターに作動可能に連結され得る。
【0194】
生産のために、AAVヘルパー機能を有する細胞は、rAAVの生産を促進するためのRepタンパク質を産生する。感染性粒子は、少なくとも1つの大きなRepタンパク質(Rep78又はRep68)及び少なくとも1つの小さなRepタンパク質(Rep52及びRep40)が細胞で発現される場合に産生され得ることが見出されている。特定の実施形態では、Rep78、Rep68、Rep52、及びRep40の4つ全てが発現される。あるいは、Rep78及びRep52、Rep78及びRep40、Rep68及びRep52、又はRep68及びRep40が発現される。以下の例は、Rep78/Rep52の組み合わせの使用を示す。Repタンパク質は、AAV-2又は他の血清型に由来し得る。様々な実施形態では、Repタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、好適な発現制御配列に作動可能に連結され得る。様々な実施形態では、Repタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、真核生物プロモーターなどの好適な発現制御配列に作動可能に連結され得る。例えば、ヌクレオチド配列は、SV40プロモーター、CMVプロモーター、RSVプロモーター、UBCプロモーター、EF1Aプロモーター、PGKプロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、b-アクチンプロモーター、TRE(Tet、Tet-On、Tet-Off)プロモーター、クメート制御系(CuR/CuO)(US2004/0205834を参照されたい)、温度誘導性HSP70プロモーター、p5プロモーター、p10プロモーター、p19プロモーター、及びp40プロモーターなどの真核生物プロモーターに作動可能に連結され得る。別の例では、ヌクレオチド配列は、ポリヘドリン(Polh)プロモーター、ΔIE1プロモーター、p5プロモーター、p10プロモーター、p19プロモーター、p40プロモーター、メタロチオネインプロモーター、39Kプロモーター、p6.9プロモーター、及びorf46プロモーターなどのバキュロウイルスプロモーターに作動可能に連結され得る。
【0195】
いくつかの実施形態では、AAV cap遺伝子は、プラスミド又はバクミドに存在する。プラスミドは、AAV rep遺伝子を更に含み得、これは、cap遺伝子と同一の血清型に対応してもよく、又は対応していなくてもよい。任意のAAV血清型由来のcap遺伝子及び/又はrep遺伝子。
【0196】
AAVヘルパー機能を有する細胞はまた、キャプシドのアセンブリを助けるアセンブリ活性化タンパク質(AAP)を産生することができる。様々な実施形態では、AAPをコードするヌクレオチド配列は、好適な発現制御配列に作動可能に連結され得る。例えば、ヌクレオチド配列は、真核生物プロモーターに作動可能に連結され得る。別の例では、ヌクレオチド配列は、ポリヘドリン(Polh)プロモーター、ΔIE1プロモーター、p5プロモーター、p10プロモーター、p19プロモーター、p40プロモーター、メタロチオネインプロモーター、39Kプロモーター、p6.9プロモーター、及びorf46プロモーターなどのバキュロウイルスプロモーターに作動可能に連結され得る。
【0197】
「非AAVヘルパー機能」という用語は、AAVがその複製に依存する非AAV由来のウイルス機能及び/又は細胞機能を指す。したがって、この用語は、AAV遺伝子転写の活性化、ステージ特異的AAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、Cap発現産物の合成、及びAAVキャプシドアセンブリに関与する部分を含む、AAVの複製に必要なタンパク質及びRNAを捕捉する。ウイルスベースのアクセサリー機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型を除く)、及びワクシニアウイルスなどの既知のヘルパーウイルスのいずれかに由来し得る。
【0198】
「非AAVヘルパー機能ベクター」という用語は、一般に、アクセサリー機能を提供するヌクレオチド配列を含む核酸分子を指す。アクセサリー機能ベクターを、好適な宿主細胞にトランスフェクトすることができ、ベクターは、次いで、宿主細胞におけるAAVビリオンの産生をサポートすることができる。アデノウイルス、ヘルペスウイルス、又はワクシニアウイルス粒子など、自然界に存在する感染性ウイルス粒子は、この用語から明示的に除外される。したがって、アクセサリー機能ベクターは、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、又はコスミドの形態であってもよい。特に、アデノウイルス遺伝子の完全相補体は、アクセサリーヘルパー機能に必要ではないことが実証されている。例えば、DNA複製及び後期遺伝子合成が不可能なアデノウイルス変異体は、AAV複製を許容することが示されている。Ito et al.,(1970) J.Gen.Virol.9:243、Ishibashi et al,(1971)Virology 45:317。同様に、E2B及びE3領域内の変異体は、AAV複製をサポートすることが示されており、E2B及びE3領域がアクセサリー機能の提供におそらく関与していないことが示されている。Carter et al.,(1983) Virology 126:505。しかしながら、E1領域に欠陥がある、又はE4領域が欠失しているアデノウイルスは、AAV複製をサポートすることができない。したがって、E1A及びE4領域は、直接的に又は間接的にいずれかで、AAV複製に必要とされる可能性が高い。Laughlin et al.,(1982).J.Virol.41:868、Janik et al.,(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1925、Carter et al.,(1983)Virology 126:505。その他の特徴付けられたAd変異体には、以下のものが含まれる:E1B(Laughlin et al.(1982),上記、Janik et al.(1981),上記、Ostrove et al.、(1980)Virology104:502)、E2A(Handa et al.、(1975)J.Gen.Virol.29:239、Strauss et al.,(1976)J.Virol.17:140、Myers et al.,(1980)J.Virol.35:665、Jay et al.,(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2927、Myers et al.,(1981)J.Biol.Chem.256:567)、E2B(Carter,I CRC Handbook of Parvoviruses(P.Tijssen ed.,1990)におけるAdeno-Associated Virus Helper Functions)、E3(Carter et al.(1983),上記)、及びE4(Carter et al.(1983),上記、Carter(1995))。変異をE1Bコード領域内に有するアデノウイルスによって提供されるアクセサリー機能の研究は、矛盾する結果をもたらしたが、Samulski et al.,(1988)J.Virol.62:206-210は、最近、E1B55kが、AAVビリオン産生のために必要とされるが、E1B19kはそうでないことを報告した。加えて、国際公開第97/17458号及びMatshushita et al.,(1998) Gene Therapy 5:938-945には、様々なAd遺伝子をコードするアクセサリー機能ベクターが記載されている。特に好ましいアクセサリー機能ベクターは、アデノウイルスVA RNAコード領域、アデノウイルスE4 ORF6コード領域、アデノウイルスE2A 72kDコード領域、アデノウイルスE1Aコード領域、及びインタクトのE1B55kコード領域を欠くアデノウイルスE1B領域を含む。かかるベクターは、国際公開第01/83797号に記載されている。
【0199】
異種タンパク質の発現のための昆虫細胞の使用は、文書により十分に裏付けられており、核酸、例えばベクター、例えば昆虫細胞適合性ベクターをそのような細胞に導入する方法、及びそのような細胞を培養液中で維持する方法等である。(例えば、METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,ed. Richard,Humana Press,N J (1995)、O’Reilly et al.,BACULOVIRUS EXPRESSION VECTORS,A LABORATORY MANUAL,Oxford Univ.Press(1994)、Samulski et al.,J.Vir.(1989)vol.63,pp.3822-3828、Kajigaya et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA(1991)vol.88,pp.4646-4650、Ruffing et al.,J.Vir.(1992)vol.66,pp.6922-6930、Kirnbauer et al.,Vir.(1996)vol.219,pp.37-44、Zhao et al.,Vir.(2000)vol.272,pp.382-393、及び米国特許第6,204,059号を参照されたい)。いくつかの実施形態では、昆虫細胞においてAAVをコードする核酸構築物は、昆虫細胞適合性ベクターである。「発現ベクター」は、発現されるヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用エレメントを含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞又はインビトロ発現系によって供給され得る。発現ベクターには、コスミド、プラスミド(例えば、ネイキッドであるか又はリポソームに含まれる)、人工染色体、及び組換えポリヌクレオチドを取り込むウイルスなど、当該技術分野で既知の全てのベクターが含まれる。本明細書で使用される場合、「昆虫細胞適合性ベクター」又は「ベクター」は、昆虫又は昆虫細胞の産生的形質転換又はトランスフェクションが可能な核酸分子を指す。例示的な生物学的ベクターとしては、プラスミド、直鎖核酸分子、及び組換えウイルスが挙げられる。任意のベクターが、昆虫細胞適合性である限り用いられ得る。ベクターは、昆虫細胞ゲノムに組み込まれ得るが、昆虫細胞中のベクターの存在は、永久的である必要はなく、一過性のエピソームベクターも含まれる。ベクターは、既知の任意の手段、例えば、細胞の化学処理、エレクトロポレーション、又は感染によって導入され得る。いくつかの実施形態では、ベクターは、バキュロウイルス、ウイルスベクター、又はプラスミドである。より好ましい実施形態では、ベクターはバキュロウイルスであり、すなわち構築物はバキュロウイルスベクターである。バキュロウイルスベクター及びその使用方法は、昆虫細胞の分子工学に関する上記引用文献に記載されている。
【0200】
バキュロウイルスシャトルベクター又はバクミドは、バキュロウイルスを生成するために使用される。バクミドは、Escherichia coli(大腸菌)などの細菌で大きなプラスミドとして増殖する。バクミドは、昆虫細胞にトランスフェクトされた場合、バキュロウイルスを生成する。
【0201】
いくつかの実施形態では、培地は、感染又はトランスフェクション培地(例えば、AAVウイルス粒子を産生する宿主細胞が遺伝子(感染又はトランスフェクション培地)で感染又はトランスフェクトされる培地)である。
【0202】
別の実施形態では、培地は、産生培地(producer medium)(例えば、宿主細胞がAAVウイルス粒子を産生する培地)である。これらの培地には、改変イーグル培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を含むLife Technologiesによって製造された培地、米国特許第6,566,118号に記載されているようなカスタム組成、及び米国特許第6,723,551号に記載されているようなSf-900II SFM培地が含まれるが、これらに限定されない(これらの各々は、特に、AAVウイルス粒子の産生に使用するためのカスタム培地組成に関して、その全体が参照により本明細書に援用される)。
【0203】
rAAV粒子はまた、様々な実施形態で開示される方法を使用して産生され得る。場合によっては、rAAV粒子の産生に必要な成分の一部を安定的に発現する昆虫又は哺乳類細胞を使用することによって、rAAVが産生され得る。例えば、AAV rep及びcap遺伝子と、ネオマイシン耐性遺伝子などの選択可能マーカーと、を含むプラスミド(又は複数のプラスミド)は、細胞のゲノム内に組み込まれ得る。別の例では、ネオマイシン耐性遺伝子などの選択可能マーカーを含むプラスミド(又は複数のプラスミド)が、細胞のゲノムに組み込まれ得る。次いで、昆虫、真菌、又は哺乳類細胞を、ヘルパーウイルス(例えば、ヘルパー機能を提供するアデノウイルス又はバキュロウイルス)及び5’及び3’AAV ITR(及び所望する場合、異種タンパク質をコードするヌクレオチド配列)を含むウイルスベクターに共感染させることができる。この方法の利点は、細胞が選択可能であること、及びrAAVの大量生産に適していることである。別の非限定的な例として、プラスミドではなくアデノウイルス又はバキュロウイルスを使用して、rep遺伝子及びcap遺伝子をパッケージング細胞に導入することができる。
【0204】
宿主細胞
【0205】
宿主細胞は、AAVウイルス粒子の産生を可能にし、培養で維持することができる、任意の無脊椎動物又は脊椎動物の細胞型であり得る。
【0206】
一実施形態では、宿主細胞は、昆虫細胞又は哺乳類細胞である。
【0207】
別の実施形態では、宿主細胞は、昆虫細胞である。
【0208】
別の実施形態では、哺乳類細胞は、ヒト細胞である。
【0209】
別の実施形態では、哺乳類細胞は、HEK293、HeLa、CHO、NSO、SP2/0、PER.C6、Vera、RD、BHK、HT1080、A549、Cos-7、ARPE-19、又はMRC-5細胞である。
【0210】
いくつかの実施形態では、昆虫細胞は、Spodoptera frugiperda、例えば、Sf9、Sf21、Sf900+、drosophila細胞株、蚊細胞株、例えば、Aedes albopictus由来細胞株、飼育カイコ細胞株、例えば、Bombyxmori細胞株、Trichoplusia ni細胞株、例えば、High Five細胞株、又は鱗翅類細胞株、例えば、Ascalapha odorata細胞株からのものである。好ましい昆虫細胞は、バキュロウイルス感染に感受性の昆虫種由来の細胞であり、High Five、Sf9、Se301、SeIZD2109、SeUCR1、Sf900+、Sf21、BTI-TN-5B 1-4,MG-1、Tn368、HzAm1、BM-N、Ha2302、Hz2E5、及びAo38が含まれる。
【0211】
AAV血清型
【0212】
表2に示されるように、特徴付けられている少なくとも13のAAV血清型がある。本発明は、これらの特定のAAV血清型を包含するが、これに限定されない。
【表2】
【0213】
AAVの一般的な情報及び概説は、例えば、Carter,1989,Handbook of Parvoviruses,Vol.1,pp.169-228、及びBerns,1990,Virology,pp.1743-1764,Raven Press,(New York)で見出され得る。しかしながら、様々な血清型が、遺伝子レベルにおいても、構造的及び機能的の両方で非常に密接に関連していることが周知であるため、これらの同じ原理が、追加のAAV血清型に適用可能であることが十分予想される。(例えば、Blacklowe,1988,Parvoviruses and Human Disease,J.R.Pattison,ed.の165~174頁、及びRose,Comprehensive Virology 3:1-61 (1974)を参照されたい)。例えば、全てのAAV血清型は、相同rep遺伝子によって媒介される非常に類似した複製特性を明らかに呈し、これらは全て、AAV-6で発現されたもの等の3つの関連キャプシドタンパク質を有する。関連性の程度は、ゲノムの長さに沿った遺伝子型間の広範な交差ハイブリダイゼーション、及びITRに対応する末端における類似の自己アニーリングセグメントの存在を明らかにするヘテロ二本鎖分析によって更に示唆される。類似の感染性パターンは、各血清型における複製機能が類似の調節制御下にあることも示唆する。
【0214】
AAVの「rep」及び「cap」遺伝子は、それぞれ複製タンパク質及びキャプシド形成タンパク質をコードする遺伝子である。AAV rep及びcap遺伝子は、調査された全てのAAV血清型で見出されており、本明細書及び引用文献に記載されている。野生型AAVでは、rep及びcap遺伝子は概して、ウイルスゲノム内で互いに隣接して見られ(すなわち、それらは、隣接又は重複した転写単位として一緒に「結合され」ている)、それらは概して、AAV血清型間で保存される。AAV rep及びcap遺伝子はまた、個別に及び集合的に「AAVパッケージング遺伝子」と称される。本発明によるAAV cap遺伝子は、rep及びアデノヘルパー機能の存在下でAAVベクターをパッケージングすることができ、及び標的細胞受容体に結合することができるCapタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、AAV cap遺伝子は、特定のAAV血清型、例えば、表2に示される血清型に由来するか、又は哺乳類(例えば、ヒト、ヒヒ、ブタ、マーモセット、チンパンジー、若しくはマカク(例えば、アカゲザル(rhesus)(Macaca mulatta)、カニクイザル(cynomolgus)(「カニクイザル(long-tailed)」)(M.fascicularis)、若しくはブタオザル(pigtailed)(M.nemestrina))に見出されるAAVの代替キャプシドバリアント配列に由来する、アミノ酸配列を有するキャプシドタンパク質をコードする。
【0215】
AAVの産生に使用されるAAV配列は、任意のAAV血清型のゲノムに由来され得る。AAV血清型は、アミノ酸及び核酸レベルで有意な相同性のゲノム配列を有し得、類似の遺伝機能のセットを提供し、本質的に物理的及び機能的に同等であるビリオンを産生し、実質的に同一の機構によって複製及び集合する。例えば、AAV血清型のゲノム配列及び/又はゲノム類似性の考察について、参照により本明細書に援用される、GenBank受入番号U89790、GenBank受入番号J01901、GenBank受入番号AF043303、GenBank受入番号AF085716、Chlorini et al.,J.Vir.71:6823-33(1997)、Srivastava et al.,J.Vir.45:555-64(1983)、Chlorini et al.,J.Vir.73:1309-1319(1999)、Rutledge et al.,J.Vir.72:309-319(1998)、及びWu et al.,J.Vir.74:8635-47(2000)を参照されたい。
【0216】
多くの既知のAAV血清型のゲノム機構は非常に類似している。AAVのゲノムは、約5,000ヌクレオチド(nt)長未満である直鎖一本鎖DNA分子である。逆位末端反復(ITR)は、非構造複製(Rep)タンパク質及び構造(VP)タンパク質に対する固有のコードヌクレオチド配列に隣接している。VPタンパク質は、キャプシドを形成する。末端の145ntは、自己相補的であり、T字形のヘアピンを形成するエネルギー的に安定した分子内二本鎖が形成され得るように組織化される。これらのヘアピン構造は、ウイルスDNA複製の起源として機能し、細胞DNAポリメラーゼ複合体のプライマーとしての役割を果たす。Rep遺伝子は、Repタンパク質であるRep78、Rep68、Rep52、及びRep40をコードする。Rep78及びRep68は、p5プロモーターから転写され、Rep 52及びRep40は、p19プロモーターから転写される。cap遺伝子は、VPタンパク質であるVP1、VP2、及びVP3をコードする。cap遺伝子は、p40プロモーターから転写される。
【0217】
様々な実施形態では、AAVヘルパー機能を提供するベクターは、キャプシドタンパク質、Repタンパク質、又はAAPタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。任意のAAV血清型由来のcap遺伝子、rep遺伝子、及び/又はAAP遺伝子(AAV1(NCBI参照配列番号/Genbank受入番号NC_002077.1)、AAV2(NCBI参照配列番号/Genbank受入番号NC_001401.2)、AAV3(NCBI参照配列番号/Genbank受入番号NC_001729.1、AAV3B(NCBI参照配列番号/Genbank受入番号AF028705.1)、AAV4(NCBI参照配列番号/Genbank受入番号NC_001829.1)、AAV5(NCBI参照配列番号/Genbank受入番号NC_006152.1)、AAV6(NCBI参照配列番号/Genbank受入番号AF028704.1))、AAV7(NCBI参照配列番号/Genbank受入番号NC_006260.1)、AAV8(NCBI参照配列番号/Genbank受入番号NC_006261.1)、AAV9(NCBI参照配列番号/Genbank受入番号AX753250.1)、AAV10(NCBI参照配列番号/Genbank受入番号AY631965.1)、AAV11(NCBI参照配列番号/Genbank受入番号AY631966.1)、AAV12(NCBI参照配列番号/Genbank受入番号DQ813647.1)、AAV13(NCBI参照配列番号/Genbank受入番号EU285562.1を含むが、これらに限定されない)は、AAV-rh.10(AAVrh10)、AAV-DJ(AAVDJ)、AAV-DJ8(AAVDJ8)、AAV-1、AAV-2、AAV-2G9、AAV-3、AAV3a、AAV3b、AAV3-3、AAV4、AAV4-4、AAV-5、AAV-6、AAV6.1、AAV6.2、AAV6.1.2、AAV-7、AAV7.2、AAV8、AAV9、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、AAV9.68、AAV9.84、AAV9.9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV16.3、AAV24.1、AAV27.3、AAV42.12、AAV42-1b、AAV42-2、AAV42-3a、AAV42-3b、AAV42-4、AAV42-5a、AAV42-5b、AAV42-6b、AAV42-8、AAV42-10、AAV42-11、AAV42-12、AAV42-13、AAV42-15、AAV42-aa、AAV43-1、AAV43-12、AAV43-20、AAV43-21、AAV43-23、AAV43-25、AAV43-5、AAV44.1、AAV44.2、AAV44.5、AAV223.1、AAV223.2、AAV223.4、AAV223.5、AAV223.6、AAV223.7、AAV1-7/rh.48、AAV1-8/rh.49、AAV2-15/rh.62、AAV2-3/rh.61、AAV2-4/rh.50、AAV2-5/rh.51、AAV3.1/hu.6、AAV3.1/hu.9、AAV3-9/rh.52、AAV3-11/rh.53、AAV4-8/r11.64、AAV4-9/rh.54、AAV4-19/rh.55、AAV5-3/rh.57、AAV5-22/rh.58、AAV7.3/hu.7、AAV16.8/hu.10、AAV16.12/hu.11、AAV29.3/bb.1、AAV29.5/bb.2、AAV106.1/hu.37、AAV114.3/hu.40、AAV127.2/hu.41、AAV127.5/hu.42、AAV128.3/hu.44、AAV130.4/hu.48、AAV145.1/hu.53、AAV145.5/hu.54、AAV145.6/hu.55、AAV161.10/hu.60、AAV161.6/hu.61、AAV33.12/hu.17、AAV33.4/hu.15、AAV33.8/hu.16、AAV52/hu.19、AAV52.1/hu.20、AAV58.2/hu.25、AAVA3.3、AAVA3.4、AAVA3.5、AAVA3.7、AAVC1、AAVC2、AAVC5、AAVF3、AAVF5、AAVH2、AAVrh.72、AAVhu.8、AAVrh.68、AAVrh.70、AAVpi.1、AAVpi.3、AAVpi.2、AAVrh.60、AAVrh.44、AAVrh.65、AAVrh.55、AAVrh.47、AAVrh.69、AAVrh.45、AAVrh.59、AAVhu.12、AAVH6、AAVLK03、AAVH-1/hu.1、AAVH-5/hu.3、AAVLG-10/rh.40、AAVLG-4/rh.38、AAVLG-9/hu.39、AAVN721-8/rh.43、AAVCh.5、AAVCh.5R1、AAVcy.2、AAVcy.3、AAVcy.4、AAVcy.5、AAVCy.5R1、AAVCy.5R2、AAVCy.5R3、AAVCy.5R4、AAVcy.6、AAVhu.1、AAVhu.2、AAVhu.3、AAVhu.4、AAVhu.5、AAVhu.6、AAVhu.7、AAVhu.9、AAVhu.10、AAVhu.11、AAVhu.13、AAVhu.15、AAVhu.16、AAVhu.17、AAVhu.18、AAVhu.20、AAVhu.21、AAVhu.22、AAVhu.23.2、AAVhu.24、AAVhu.25、AAVhu.27、AAVhu.28、AAVhu.29、AAVhu.29R、AAVhu.31、AAVhu.32、AAVhu.34、AAVhu.35、AAVhu.37、AAVhu.39、AAVhu.40、AAVhu.41、AAVhu.42、AAVhu.43、AAVhu.44、AAVhu.44R1、AAVhu.44R2、AAVhu.44R3、AAVhu.45、AAVhu.46、AAVhu.47、AAVhu.48、AAVhu.48R1、AAVhu.48R2、AAVhu.48R3、AAVhu.49、AAVhu.51、AAVhu.52、AAVhu.54、AAVhu.55、AAVhu.56、AAVhu.57、AAVhu.58、AAVhu.60、AAVhu.61、AAVhu.63、AAVhu.64、AAVhu.66、AAVhu.67、AAVhu.14/9、AAVhu.t19、AAVrh.2、AAVrh.2R、AAVrh.8、AAVrh.8R、AAVrh.12、AAVrh.13、AAVrh.13R、AAVrh.14、AAVrh.17、AAVrh.18、AAVrh.19、AAVrh.20、AAVrh.21、AAVrh.22、AAVrh.23、AAVrh.24、AAVrh.25、AAVrh.31、AAVrh.32、AAVrh.33、AAVrh.34、AAVrh.35、AAVrh.36、AAVrh.37、AAVrh.37R2、AAVrh.38、AAVrh.39、AAVrh.40、AAVrh.46、AAVrh.48、AAVrh.48.1、AAVrh.48.1.2、AAVrh.48.2、AAVrh.49、AAVrh.51、AAVrh.52、AAVrh.53、AAVrh.54、AAVrh.56、AAVrh.57、AAVrh.58、AAVrh.61、AAVrh.64、AAVrh.64R1、AAVrh.64R2、AAVrh.67、AAVrh.73、AAVrh.74、AAVrh8R、AAVrh8R A586R変異体、AAVrh8R R533A変異体、AAAV、BAAV、ヤギAAV、ウシAAV、AAVhE1.1、AAVhEr1.5、AAVhER1.14、AAVhEr1.8、AAVhEr1.16、AAVhEr1.18、AAVhEr1.35、AAVhEr1.7、AAVhEr1.36、AAVhEr2.29、AAVhEr2.4、AAVhEr2.16、AAVhEr2.30、AAVhEr2.31、AAVhEr2.36、AAVhER1.23、AAVhEr3.1、AAV2.5T、AAV-PAEC、AAV-LK01、AAV-LK02、AAV-LK03、AAV-LK04、AAV-LK05、AAV-LK06、AAV-LK07、AAV-LK08、AAV-LK09、AAV-LK10、AAV-LK11、AAV-LK12、AAV-LK13、AAV-LK14、AAV-LK15、AAV-LK16、AAV-LK17、AAV-LK18、AAV-LK19、AAV-PAEC2、AAV-PAEC4、AAV-PAEC6、AAV-PAEC7、AAV-PAEC8、AAV-PAEC11、AAV-PAEC12、AAV-2-プレmiRNA-101、AAV-8h、AAV-8b、AAV-h、AAV-b、AAV SM10-2、AAVシャフル100-1、AAVシャフル100-3、AAVシャフル100-7、AAVシャフル10-2、AAVシャフル10-6、AAVシャフル10-8、AAVシャフル100-2、AAV SM10-1、AAV SM10-8、AAV SM100-3、AAV SM100-10、BNP61AAV、BNP62AAV、BNP63AAV、AAVrh.50、AAVrh.43、AAVrh.62、AAVrh.48、AAVhu.19、AAVhu.11、AAVhu.53、AAV4-8/rh.64、AAVLG-9/hu.39、AAV54.5/hu.23、AAV54.2/hu.22、AAV54.7/hu.24、AAV54.1/hu.21、AAV54.4R/hu.27、AAV46.2/hu.28、AAV46.6/hu.29、AAV128.1/hu.43、トゥルータイプAAV(ttAAV)、UPENN AAV10、若しくは日本AAV10血清型、AAV_po.6、AAV_po.、AAV_po.5、AAV_LK03、AAV_ra.1、AAV_bat_YNM、AAV_bat_Brazil、AAV_mo.1、AAV_トリ_DA-1、若しくはAAV_マウス_NY1、Bba21、Bba26、Bba27、Bba29、Bba30、Bba31、Bba32、Bba33、Bba34、Bba35、Bba36、Bba37、Bba38、Bba41、Bba42、Bba43、Bba44、Bce14、Bce15、Bce16、Bce17、Bce18、Bce20、Bce35、Bce36、Bce39、Bce40、Bce41、Bce42、Bce43、Bce44、Bce45、Bce46、Bey20、Bey22、Bey23、Bma42、Bma43、Bpo1、Bpo2、Bpo3、Bpo4、Bpo6、Bpo8、Bpo13、Bpo18、Bpo20、Bpo23、Bpo24、Bpo27、Bpo28、Bpo29、Bpo33、Bpo35、Bpo36、Bpo37、Brh26、Brh27、Brh28、Brh29、Brh30、Brh31、Brh32、Brh33、Bfm17、Bfm18、Bfm20、Bfm21、Bfm24、Bfm25、Bfm27、Bfm32、Bfm33、Bfm34、Bfm35、AAV-rh10、AAV-rh39、AAV-rh43、AAVanc80L65、又はそれらの任意のバリアントは、組換えAAVを産生するために本明細書で使用することができる。例示的なキャプシドは、国際出願第2018/022608号及び同第2019/222136号にも提供されている(これらは、その全体が本明細書に援用される)。上で提供された各NCBI参照配列番号又はGenbank受入番号も、参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態では、AAV cap遺伝子は、血清型1、血清型2、血清型3,血清型3B、血清型4、血清型5、血清型6、血清型7、血清型8、血清型9、血清型10、血清型11、血清型12、血清型13、又はこれらのバリアントからのキャプシドをコードする。
【0218】
キャプシド、Rep、及びAAP遺伝子に加えて、実施形態は、ヘルパータンパク質を発現する外因性ポリヌクレオチドを含む。限定されないが、様々な組み合わせで宿主細胞で発現され得るヘルパー遺伝子産物としては、Spodoptera frugiperda FKBP46、ヒトFKBP52、アデノウイルスE1A、E1B、E2A、E4、及びVA、単純ヘルペスウイルスUL29、UL30、UL42、UL5、UL8、UL52、及びUL9が挙げられる。一実施形態では、細胞は、少なくとも1つのイムノフィリン類似体(すなわち、イムノフィリン又は類似のタンパク質)及び少なくとも1つのヘルパーウイルス遺伝子産物を発現する。
【0219】
いくつかの実施形態では、3つのAAVキャプシドタンパク質(すなわち、VP1、VP2、及びVP3)は、転写産物の選択的mRNAスプライシング及び選択的翻訳開始コドン使用頻度を使用して、capオープンリーディングフレーム(ORF)から重複した様式で産生される。例えば、VP1は、mRNA上のATG開始コドン(アミノ酸M1)から翻訳され得るが、VP2及びVP3は、より短いmRNAから生じ得、例えば、VP2の産生については異なる開始コドンを使用して、VP3の産生については次の利用可能な開始コドンまでリードスルー翻訳を使用することができる。
【0220】
Capタンパク質は、VP1及びVP3、又はVP1、VP2、及びVP3であり得る。VP1、VP2、又はVP3遺伝子は、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV-rh.10(AAVrh10)、AAV-DJ(AAVDJ)、AAV-DJ8(AAVDJ8)、AAV-1、AAV-2、AAV-2G9、AAV-3、AAV3a、AAV3b、AAV3-3、AAV4、AAV4-4、AAV-5、AAV-6、AAV6.1、AAV6.2、AAV6.1.2、AAV-7、AAV7.2、AAV8、AAV9、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、AAV9.68、AAV9.84、AAV9.9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV16.3、AAV24.1、AAV27.3、AAV42.12、AAV42-1b、AAV42-2、AAV42-3a、AAV42-3b、AAV42-4、AAV42-5a、AAV42-5b、AAV42-6b、AAV42-8、AAV42-10、AAV42-11、AAV42-12、AAV42-13、AAV42-15、AAV42-aa、AAV43-1、AAV43-12、AAV43-20、AAV43-21、AAV43-23、AAV43-25、AAV43-5、AAV44.1、AAV44.2、AAV44.5、AAV223.1、AAV223.2、AAV223.4、AAV223.5、AAV223.6、AAV223.7、AAV1-7/rh.48、AAV1-8/rh.49、AAV2-15/rh.62、AAV2-3/rh.61、AAV2-4/rh.50、AAV2-5/rh.51、AAV3.1/hu.6、AAV3.1/hu.9、AAV3-9/rh.52、AAV3-11/rh.53、AAV4-8/r11.64、AAV4-9/rh.54、AAV4-19/rh.55、AAV5-3/rh.57、AAV5-22/rh.58、AAV7.3/hu.7、AAV16.8/hu.10、AAV16.12/hu.11、AAV29.3/bb.1、AAV29.5/bb.2、AAV106.1/hu.37、AAV114.3/hu.40、AAV127.2/hu.41、AAV127.5/hu.42、AAV128.3/hu.44、AAV130.4/hu.48、AAV145.1/hu.53、AAV145.5/hu.54、AAV145.6/hu.55、AAV161.10/hu.60、AAV161.6/hu.61、AAV33.12/hu.17、AAV33.4/hu.15、AAV33.8/hu.16、AAV52/hu.19、AAV52.1/hu.20、AAV58.2/hu.25、AAVA3.3、AAVA3.4、AAVA3.5、AAVA3.7、AAVC1、AAVC2、AAVC5、AAVF3、AAVF5、AAVH2、AAVrh.72、AAVhu.8、AAVrh.68、AAVrh.70、AAVpi.1、AAVpi.3、AAVpi.2、AAVrh.60、AAVrh.44、AAVrh.65、AAVrh.55、AAVrh.47、AAVrh.69、AAVrh.45、AAVrh.59、AAVhu.12、AAVH6、AAVLK03、AAVH-1/hu.1、AAVH-5/hu.3、AAVLG-10/rh.40、AAVLG-4/rh.38、AAVLG-9/hu.39、AAVN721-8/rh.43、AAVCh.5、AAVCh.5R1、AAVcy.2、AAVcy.3、AAVcy.4、AAVcy.5、AAVCy.5R1、AAVCy.5R2、AAVCy.5R3、AAVCy.5R4、AAVcy.6、AAVhu.1、AAVhu.2、AAVhu.3、AAVhu.4、AAVhu.5、AAVhu.6、AAVhu.7、AAVhu.9、AAVhu.10、AAVhu.11、AAVhu.13、AAVhu.15、AAVhu.16、AAVhu.17、AAVhu.18、AAVhu.20、AAVhu.21、AAVhu.22、AAVhu.23.2、AAVhu.24、AAVhu.25、AAVhu.27、AAVhu.28、AAVhu.29、AAVhu.29R、AAVhu.31、AAVhu.32、AAVhu.34、AAVhu.35、AAVhu.37、AAVhu.39、AAVhu.40、AAVhu.41、AAVhu.42、AAVhu.43、AAVhu.44、AAVhu.44R1、AAVhu.44R2、AAVhu.44R3、AAVhu.45、AAVhu.46、AAVhu.47、AAVhu.48、AAVhu.48R1、AAVhu.48R2、AAVhu.48R3、AAVhu.49、AAVhu.51、AAVhu.52、AAVhu.54、AAVhu.55、AAVhu.56、AAVhu.57、AAVhu.58、AAVhu.60、AAVhu.61、AAVhu.63、AAVhu.64、AAVhu.66、AAVhu.67、AAVhu.14/9、AAVhu.t19、AAVrh.2、AAVrh.2R、AAVrh.8、AAVrh.8R、AAVrh.12、AAVrh.13、AAVrh.13R、AAVrh.14、AAVrh.17、AAVrh.18、AAVrh.19、AAVrh.20、AAVrh.21、AAVrh.22、AAVrh.23、AAVrh.24、AAVrh.25、AAVrh.31、AAVrh.32、AAVrh.33、AAVrh.34、AAVrh.35、AAVrh.36、AAVrh.37、AAVrh.37R2、AAVrh.38、AAVrh.39、AAVrh.40、AAVrh.46、AAVrh.48、AAVrh.48.1、AAVrh.48.1.2、AAVrh.48.2、AAVrh.49、AAVrh.51、AAVrh.52、AAVrh.53、AAVrh.54、AAVrh.56、AAVrh.57、AAVrh.58、AAVrh.61、AAVrh.64、AAVrh.64R1、AAVrh.64R2、AAVrh.67、AAVrh.73、AAVrh.74、AAVrh8R、AAVrh8R A586R変異体、AAVrh8R R533A変異体、AAAV、BAAV、ヤギAAV、ウシAAV、AAVhE1.1、AAVhEr1.5、AAVhER1.14、AAVhEr1.8、AAVhEr1.16、AAVhEr1.18、AAVhEr1.35、AAVhEr1.7、AAVhEr1.36、AAVhEr2.29、AAVhEr2.4、AAVhEr2.16、AAVhEr2.30、AAVhEr2.31、AAVhEr2.36、AAVhER1.23、AAVhEr3.1、AAV2.5T、AAV-PAEC、AAV-LK01、AAV-LK02、AAV-LK03、AAV-LK04、AAV-LK05、AAV-LK06、AAV-LK07、AAV-LK08、AAV-LK09、AAV-LK10、AAV-LK11、AAV-LK12、AAV-LK13、AAV-LK14、AAV-LK15、AAV-LK16、AAV-LK17、AAV-LK18、AAV-LK19、AAV-PAEC2、AAV-PAEC4、AAV-PAEC6、AAV-PAEC7、AAV-PAEC8、AAV-PAEC11、AAV-PAEC12、AAV-2-プレmiRNA-101、AAV-8h、AAV-8b、AAV-h、AAV-b、AAV SM10-2、AAVシャフル100-1、AAVシャフル100-3、AAVシャフル100-7、AAVシャフル10-2、AAVシャフル10-6、AAVシャフル10-8、AAVシャフル100-2、AAV SM10-1、AAV SM10-8、AAV SM100-3、AAV SM100-10、BNP61AAV、BNP62AAV、BNP63AAV、AAVrh.50、AAVrh.43、AAVrh.62、AAVrh.48、AAVhu.19、AAVhu.11、AAVhu.53、AAV4-8/rh.64、AAVLG-9/hu.39、AAV54.5/hu.23、AAV54.2/hu.22、AAV54.7/hu.24、AAV54.1/hu.21、AAV54.4R/hu.27、AAV46.2/hu.28、AAV46.6/hu.29、AAV128.1/hu.43、トゥルータイプAAV(ttAAV)、UPENN AAV10、若しくは日本AAV10血清型、AAV_po.6、AAV_po.、AAV_po.5、AAV_LK03、AAV_ra.1、AAV_bat_YNM、AAV_bat_Brazil、AAV_mo.1、AAV_トリ_DA-1、若しくはAAV_マウス_NY1、Bba21、Bba26、Bba27、Bba29、Bba30、Bba31、Bba32、Bba33、Bba34、Bba35、Bba36、Bba37、Bba38、Bba41、Bba42、Bba43、Bba44、Bce14、Bce15、Bce16、Bce17、Bce18、Bce20、Bce35、Bce36、Bce39、Bce40、Bce41、Bce42、Bce43、Bce44、Bce45、Bce46、Bey20、Bey22、Bey23、Bma42、Bma43、Bpo1、Bpo2、Bpo3、Bpo4、Bpo6、Bpo8、Bpo13、Bpo18、Bpo20、Bpo23、Bpo24、Bpo27、Bpo28、Bpo29、Bpo33、Bpo35、Bpo36、Bpo37、Brh26、Brh27、Brh28、Brh29、Brh30、Brh31、Brh32、Brh33、Bfm17、Bfm18、Bfm20、Bfm21、Bfm24、Bfm25、Bfm27、Bfm32、Bfm33、Bfm34、Bfm35、AAV-rh10、AAV-rh39、AAV-rh43、又はAAVanc80L65のキャプシドタンパク質を発現することができる。別の実施形態では、VP1、VP2、又はVP3遺伝子は、混合血清型のキャプシドを発現するが、VP1、VP2、及びVP3遺伝子が全て同じ血清型に由来するわけではない。例示的なキャプシドは、国際出願第2018/022608号(その全体が本明細書に援用される)に提供される。
【0221】
バキュロウイルスビリオン
【0222】
いくつかの実施形態では、バキュロウイルス系が用いられる。
【0223】
バキュロウイルスは、節足動物のエンベロープDNAウイルスであり、そのうち2つのメンバーは、細胞培養で組換えタンパク質を産生するための周知の発現ベクターである。バキュロウイルスは、環状二本鎖ゲノム(80~200kbp)を有し、これを操作して、特定の細胞に大量のゲノム内容物の送達を可能にすることができる。ベクターとして使用されるウイルスは、一般に、Autographa californicaマルチキャプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)又はBombyx mori(Bm)NPV)である。
【0224】
バキュロウイルスは、一般に、組換えタンパク質の発現のための昆虫細胞の感染に使用される。特に、昆虫における異種遺伝子の発現は、例えば、米国特許第4,745,051号、Friesen et al(1986)、EP127,839、及びEP155,476に記載されているように達成することができる。多数のバキュロウイルス株及びバリアント、並びにタンパク質の産生に使用することができる対応する許容昆虫宿主細胞は、当該技術分野で既知である。
【0225】
例えば、市販のBac-to-Bac(登録商標)システム(Thermo Fisher Scientific,Rockford,IL)(カタログ番号10359016)は、組換えタンパク質発現のための発現ベクターを含む。pFastBac(商標)1ベクター(Thermo Fisher Scientific,Rockford,IL)は、高レベルのタンパク質発現のための強力なポリヘドリンプロモーター及び簡略化クローニングのための大きなマルチクローニング部位を有する。pFastBac(商標)デュアル(Thermo Fisher Scientific,Rockford,IL)は、昆虫細胞における2つのタンパク質の同時発現のための単一のベクターにおける2つの強力なプロモーターであるポリヘドリンプロモーター及びp10プロモーターを特徴とする単一のベクターである。
【0226】
簡潔には、例示として、Bac-to-Bac(登録商標)などのバキュロウイルス系は、昆虫細胞における相同組換えではなく、大腸菌(E.coli)における部位特異的転位による組換えバキュロウイルスの生成に依存する。例えば、目的の遺伝子をpFastBac(商標)ベクターにクローニングし、DH10Bac(商標)コンピテントE.coli(Thermo Fisher Scientific,Rockford,IL)に形質転換することができる。DH10Bac(商標)には、lacZ-mini-attTn7融合物を含む親バクミドが含まれる。ヘルパープラスミドによって提供される転位タンパク質の存在下で、pFastBac(商標)ベクターのエレメントと親バクミドとの間に転位が生じる。転位が成功すると、発現カセットはlacZ遺伝子を破壊し、新しい発現bacmidは白色細菌コロニーとして視覚化され得る。新しい発現バクミドは、単離され得、例えば、Sf9又はSf21細胞を、いずれかの実施形態のトランスフェクション試薬を使用してトランスフェクトするために使用され得る。適切な時間の培養後、組換えバキュロウイルスを単離することができる。組換えバキュロウイルスを使用して、細胞を感染させて、AAVウイルス粒子を産生し、かつ/又は目的の遺伝子を発現させることができる。
【0227】
AAVウイルス粒子の精製
【0228】
他の実施形態では、AAVウイルス粒子は、カラムクロマトグラフィー、CsCl勾配などの様々な従来の精製方法を使用して、宿主細胞から精製することができる。例えば、アニオン交換カラム、親和性カラム、及び/又は陽イオン交換カラムを介した精製など、複数のカラム精製ステップが使用され得る。例えば、国際公開第02/12455号を参照されたい。更に、感染を用いて、アクセサリー機能を発現する場合、既知の方法を使用して、残留ヘルパーウイルスを不活性化することができる。例えば、アデノウイルスは、約60℃の温度まで、例えば、20分間以上加熱することによって不活性化され得る。この処理は、ヘルパーアデノウイルスが熱に不安定である一方、AAVが非常に熱安定であるため、ヘルパーウイルスのみが効果的に不活性化される。
【0229】
一実施形態では、次いで、AAVウイルス粒子ストックは、例えば、カラムクロマトグラフィー技術を使用して、空のキャプシドを除去するように処理される。
【0230】
別の実施形態では、AAVウイルス粒子調製物は、トランスフェクトした細胞を溶解させて粗細胞溶解物を得ることによって得られる。次いで、濾過、遠心分離などの当該技術分野で周知の技術によって細胞デブリを除去するために、粗細胞溶解物を清澄化して、清澄化された細胞溶解物を得ることができる。次いで、AAVウイルス粒子及びAAV空キャプシドの両方を含んでいる可能性がある粗細胞溶解物又は清澄化された細胞溶解物を、非分離条件下で第1の陽イオン交換マトリックスに適用することができ、第1の陽イオン交換カラムは、AAVウイルス粒子及びAAV空キャプシドを細胞及び細胞溶解物調製物に存在する他の成分から更に分離するように機能する。細胞溶解物の初期精製を行うための方法は既知である。1つの代表的な方法は、米国特許第6,593,123号に記載されている(その全体が参照により本明細書に援用される)。
【0231】
分析技法
【0232】
概して、vg及びキャプシド(cp)力価は、それぞれのvg及びキャプシドを測定するのに好適であるいずれかの様式で評価され得る。例えば、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)が、vg力価を測定するために使用され得、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が、Cp力価を測定するために使用され得る。代替として、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)-HPLCが、vg及びcp力価を測定するために使用され得る。加えて、RP(逆相)-HPLC又はキャピラリー電気泳動アッセイが、VP比へのプロセスパラメータの潜在的な影響を評価するために使用され得る。
【0233】
qPCRが、Applied Biosystems 7500 FastリアルタイムPCRシステムなどの標準的なqPCRシステムを使用する、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によるvg定量化のために使用され得る。代替として、デジタル液滴PCR(ddPCR)が、Vg定量化のために使用され得る。プライマー及びプローブは、AAVのDNAを標的とするように設計され得、PCR中に、DNAが蓄積されたときに、DNAの定量化を可能にする。ddPCRの例は、Pasi,K.John,et al.“Multiyear Follow-Up of AAV5-hFVIII-SQ Gene Therapy for Hemophilia A.”New England Journal of Medicine 382.1(2020):29-40、Regan,John F.,et al.“A Rapid Molecular Approach for Chromosomal Phasing.”PloS one 10.3 (2015): e0118270、及びFuruta-Hanawa,Birei,Teruhide Yamaguchi,and Eriko Uchida.“Two-Dimensional Droplet Digital PCR as a Tool for Titration and Integrity Evaluation of Recombinant Adeno-Associated Viral Vectors”Human gene therapy methods 30.4(2019):127-136に記載されている。vg定量化のための他のシステムは、SEC、SEC-HPLC、及びサイズ交換クロマトグラフィー多角度光散乱を含み、これらの全ては、全体が参照により援用されるWO2021/062164に記載されている。
【0234】
キャプシドELISA(cp-ELISA)アッセイは、インタクトなキャプシドを、例えば、AAV5又はAAV9キャプシドELISA方法を使用して測定し、市販のキット(例えば、Progen PRAAV5)を使用し得る。このキットELISAは、アセンブルされたAAV5又は他のキャプシド上のコンフォメーションエピトープに特異的なモノクローナル抗体を使用する。キャプシドは、プレート結合モノクローナル抗体上で捕捉され得、続いて、検出抗体の後続の結合が行われる。アッセイシグナルは、コンジュゲートストレプトアビジンペルオキシダーゼを付加し、続いて、比色TMB基質溶液及び硫酸を付加して、反応を終了することによって生成され得る。試験試料の力価は、標的キャプシド標準物の4パラメータ較正曲線から補間される。キャプシド力価を定量化するための別のシステムは、WO2021/062164に記載されているSEC-MALSである。
【0235】
rBVの力価は、フォーカス/ウイルスプラークアッセイを使用して決定され得る。このアッセイは、細胞を、rBVを含有する溶液の段階希釈液で感染させるステップを、最初に含む。感染が所定の時間にわたって発生した後に、rBVは、培養物から除去され、細胞が、所定の時間にわたってインキュベートされる。所定の時間が経過した後に、(例えば、アガロースを含有する)プラーク培地が、培養物に付加され、硬化させる。細胞は、所定の時間にわたって更にインキュベートされ、プラークの数が、所定の時間後にカウントされる。力価は、以下の式を使用して計算される。力価(プラーク形成単位/mL)=プラークの数×希釈係数×(1/(mLの接種物/ウェル)
【0236】
カチオン性ペプチド及びヒスチジンリッチペプチド
【0237】
方法は、トランスフェクション試薬としてのカチオン性ペプチドの使用であって、ペプチドが、正電荷を6~8の範囲(例えば、7.4)のpHで有する、使用を含む。好適なトランスフェクション試薬は、大規模ウイルスベクター産生のための成功した候補であるために、以下のいくつかの基準、1)好ましくは、プラスミド若しくはバクミドの形態又はいずれかの他の形態で提供される外来核酸に結合すること、2)外来DNA及びトランスフェクション試薬の複合体が、好ましくは、10分間超にわたって安定していること、3)外来DNA:トランスフェクション試薬の複合体が、細胞表面に結合し、細胞によって取り込まれること、4)トランスフェクション試薬が、好ましくは、外来DNA又は外来DNA:トランスフェクション試薬複合体のエンドソーム放出のための様式を提供すること、5)外来DNA又は外来DNA:トランスフェクション試薬複合体が、好ましくは、細胞の核に到達することができること、6)外来DNA又は外来DNA:トランスフェクション試薬複合体が、好ましくは、タンパク質の転写及び遺伝子の複製のために使用可能であること、7)トランスフェクション試薬及び外来DNA:トランスフェクション試薬複合体が、好ましくは、細胞によって十分に許容されること、8)外来DNA又は外来DNA:トランスフェクション試薬複合体が、好ましくは、選択される産生培地と適合すること、並びに9)トランスフェクション試薬が、好ましくは、産生細胞を、規模拡張可能な様式でトランスフェクトすることができることを満たすべきである。
【0238】
カチオン性ペプチドの例としては、ヒスチジンリッチペプチド(HRP)が挙げられる。HRPは、異なるタイプのカーゴを細胞内に送達するために使用されている(Moulay G.et al.,Histidine-rich designer peptides of the LAH4 family promote cell delivery of a multitude of cargo.Journal of Peptide Science,2017,23(4):320-328)。
【0239】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書で互換的に使用されて、ペプチド結合又は修飾ペプチド結合によって互いに連結された2つ以上のアミノ酸を含むポリマー、すなわち、ペプチドアイソスターを意味する。ポリペプチドとは、ペプチド、グリコペプチド、又はオリゴマーと一般に称される短い鎖、及びタンパク質と一般的に称されるより長い鎖の両方を指す。ポリペプチドは、遺伝子にコードされた20個のアミノ酸以外のアミノ酸を含有し得る。ポリペプチドは、翻訳後プロセシングなどの自然プロセス、又は当該技術分野で周知の化学修飾技法のいずれかによって修飾されたアミノ酸配列を含む。
【0240】
しかしながら、HRPは、哺乳類又は昆虫細胞内でのウイルスベクター産生のためのトランスフェクション試薬として、以前に使用されていない。
【0241】
HRPは、約20アミノ酸長であり、細胞膜へのHRPの結合を促進する疎水性アミノ酸残基と、水中でのHRPの溶解性を促進する親水性残基と、いくつかのヒスチジン残基(ファミリーLAH4の十分に特徴付けられたメンバーについての4つのヒスチジン残基)と、を含有する。中性pHでのヒスチジンは、正電荷を有し、負電荷を有するカーゴと結合することができる。これは、カーゴ:ペプチド複合体の全体的な電荷を正にする。(+/-)3.6の正電荷比が、LAH4及び所与のプラスミドについて見られた[4]。カーゴ:ペプチド複合体のこの正電荷は、負電荷を有すると一般的に考えられる細胞形質膜への結合を促進する。また、受容体依存性エンドサイトーシスは、細胞の表面上の糖タンパク質を介して発生し得ることが報告された(Kichler A.et al.,Cationic amphipathic histidine-rich peptides for gene delivery,Biochimica et biophysica acta 2006,1758(3):301-307)。エンドサイトーシスDNA:ペプチド複合体は、初期エンドソームから後期エンドソームへのエンドサイトーシス経路に沿って移動する。経路に沿って、pHは、より酸性になり、ヒスチジンは、よりプロトン化されて、ヒスチジンの正味電荷が、(LAH4ペプチドについて)+5から+9に変化する。これは、ペプチドの約半分が、DNA:ペプチド複合体から解離することを引き起こす。放出された遊離ペプチドは、エンドソーム膜を不安定化し、複合体を含有するDNAが、サイトゾル内に脱出することを可能にする。
【0242】
HRPは、約10個~50個のアミノ酸の長さを有するヒスチジンペプチドである。好適なHRPは、pH7.4での名目電荷が、5、6、7、8、9、又は10であり、pH5での名目電荷が、6、7、8、9、又は10である。HRPは更に、pH7での疎水性モーメントが、0.02~0.4であり、例えば、pH7での疎水性モーメントは、0.03、0.04、0.05。0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13。0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.40、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.,49、0.50であり得、極角は、20~160、例えば、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160であり得る。好ましいHRPは、4つのヒスチジンが散在した、アラニン及びロイシンから作製されたコアを有する。
【0243】
様々な例では、HRPの少なくとも一部分は、細胞膜の存在下でのときに、かつシファーエドモンソンホイール表現(Schiffer M,Edmundson AB.Biophys J.1967 Mar;7(2):121-35)に従って表されたときに、αヘリカルコンフォメーションを形成する。αヘリックスは、両親媒性ヘリックスであることができ、両親媒性ヘリックスは、疎水性アミノ酸残基のクラスターを、ヘリックスの一方の側に有し、2つ~4つのヒスチジン残基を、ヘリックスの反対の側に有して、親水性角を定め、親水性角は、シファーエドモンソンホイール表現において、60°~180°に含まれる。αヘリックスはまた、無極性ヘリックスであることができ、無極性ヘリックスは、疎水性アミノ酸残基のクラスターを、ヘリックスの一方の側に有し、連続したアラニン残基を、ヘリックスの反対の側に有し、当該連続したアラニン残基は、シファーエドモンソンホイール表現において、60~180°の角度を定める。他の例では、HRPの部分N末端及びC末端は、正電荷をpH7.4で有する1つ以上のアミノ酸残基を含む。例えば、LAH4ペプチド(配列番号1)は、リジン又はアルギニン残基を、N末端及びC末端において有する。参照により全体が参照により援用される国際公開第2013/001041号を参照されたい。
【0244】
DNAをトランスフェクトする目的で、例示的なHRPの特徴は、比較的短いペプチドであって、DNAとの静電相互作用を可能にするが、制限された正電荷密度を有するカチオン性残基を提示し、水溶液中で可溶性であり、膜と相互作用することができ、膜を不安定化することができる、ペプチドを含む。国際公開第2002/096928号、Kichler,Antoine,A.James Mason,and Burkhard Bechinger.Biochimica et Biophysica Acta(BBA)-Biomembranes 1758.3(2006):301-307、Kichler,Antoine,et al.Journal of Molecular Medicine 85.2(2007):191-201を参照されたい。これらの参照文献は全て、それらの全体が参照により援用される。
【0245】
様々な実施形態では、カチオン性ペプチド又はHRPは、共有結合修飾を含む。共有結合修飾の例としては、アシル化、アセチル化、非ペプチド高分子キャリア基への(例えば、N末端への)連結、アミド化、非ペプチド高分子キャリア基への(例えば、C末端への)連結、(例えば、アミノ酸側鎖の)グリコシル化、細胞内へのペプチドの取り込みを増進することができるアダプタータンパク質への連結、又は脂質、脂肪酸、ダンシル、カルボベンゾキシル、若しくはt-ブチルオキシカルボニル基などの疎水基への連結、酸化、硫酸化、エステル化、ラクトン形成、及び/あるいはリン酸化が挙げられる。他の実施形態では、カチオン性ペプチドは、カチオン性ペプチドの定量化を可能にするマーカーを含む。例えば、カチオン性ペプチドは、チロシン(Tyr又はY)又はトリプトファン(Trp又はW)を含むことができる。
【0246】
様々な実施形態に記載されるカチオン性ペプチドは、HRPに限定されず、様々な実施形態にまた記載される他のカチオン性ペプチドも含むことに留意されたい。例えば、様々なカチオン性ペプチド又はHRPが、表3に開示される。
【表3】
【0247】
トランスフェクション試薬として使用され得るカチオン性ペプチド及びHRPの他の例は、国際公開第2017/175072号、米国特許第8,652,483号、及びMello,Lucas R.,et al.“Self-assembly and intracellular delivery of DNA by a truncated fragment derived from the Trojan peptide Penetratin.”Soft matter 16.20(2020):4746-4755に開示されている。これらの参照文献の全ては、それらの全体が参照により援用される。
【0248】
トランスフェクションプロセスの効率は、多くの様式で表され得、例えば、タンパク質を、外来DNAが送達された遺伝子から産生する細胞の%、細胞内でトランスフェクション後に検出される外来DNAのコピーの数、送達された遺伝子から産生されるタンパク質の酵素活性、及び他の様式によって表され得る。例えば、トランスフェクション効率は、%緑色蛍光タンパク質陽性(GFP)細胞のとして、GFPについての遺伝子を保有するプラスミドのトランスフェクション後の所与の時点で決定され得る。
【0249】
HRPは、sf9細胞などの昆虫細胞内へのAAVの産物でのトランスフェクションを向上させるために使用され得る。これに関して、目的の遺伝子を含有するバクミドが産生された後に、バクミドからのプラスミドは、バキュロウイルス感染昆虫細胞(BIIC)を作製するために、HRPトランスフェクション剤と一緒に使用され得る。増殖が必要とされるときに、以前に凍結保存されたBIICは、昆虫細胞、及び産生された治療遺伝子を含有するAAVキャプシドで増殖させてもよい。したがって、昆虫細胞の場合で、トランスフェクション剤は、BIICを作製する上流段階で使用され得る。
【0250】
HRPはまた、哺乳類細胞でのトランスフェクションを向上させるために使用され得る。この場合、HRPは、HEK293細胞などの哺乳類細胞をトランスフェクトするためのプラスミドと一緒である。
【0251】
HRPは、長い安定時間を有し、低いトランスフェクション量で好適であるという利点を有する。この点において、HRPは、1%のトランスフェクション量で使用され得、少なくとも60分間安定している。また、PEI及びFECTOVIR(登録商標)などの他の多くの他のトランスフェクション試薬と異なり、GMPグレードのHRPが、市販されている。加えて、細胞内に残ると推定されるPEI及びFECTOVIR(登録商標)と異なり、HRPは、細胞内で分解され、低い細胞毒性を有する。HRPはまた、高細胞密度培養物、例えば、2~8×10細胞/mlでの、少なくとも70%及び最大90%以上の高いトランスフェクション効率を有するトランスフェクションのために使用され得る。したがって、トランスフェクション効率は、約70%、75%、80%、85%、又は90%である。10分間超、又は15分間超、20分間超、25分間超にわたって安定しているHRPトランスフェクション試薬ベクター/トランスフェクション試薬複合体を使用する、本発明のトランスフェクション方法で。HRPトランスフェクション試薬によって提供される1つの利点は、低い量が使用され得ることである。これに関して、rAAV産生のためのベクター及びトランスフェクション試薬は、培養物量の15%以下、培養物量の10%以下、培養物量の5%以下である量で一緒に混合される。したがって、rAAV産生のためのベクター及びトランスフェクション試薬は、培養物量の15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、又は5%以下である量で一緒に混合される。
【0252】
カチオン性ペプチド又はHRPは、細胞培養物に、少なくとも0.001μg/mL、少なくとも0.01μg/mL、少なくとも0.1μg/mL、少なくとも0.5μg/mL、少なくとも1μg/mL、少なくとも10μg/mL、少なくとも50μg/mL、少なくとも100μg/mL、1~200μg/mL、5~50μg/mL、10~150μg/mL、又は100~200μg/mLのである濃度まで付加され得る。
【0253】
上記のように、HRPはまた、GMPグレードで製造される。「適正製造基準」又は「GMP」という語句は、米国Food and Drug Administration(FDA)によって確立されている、ヒト使用に意図された製品を製造する方法、プロトコル、及び手順のセットを指す。「cGMP」という略語は、FDA(例えば、21 Code of Federal Regulations、パート211下)によって現在承認されているこれらのプロトコル及び手順を具体的に明示する。いずれかの実施形態のカチオン性ペプチド/HRP及びトランスフェクション試薬はまた、生分解性であり、細胞生存率への効果がない範囲にある。
【0254】
本発明者らは、初めて、HRPがまた、哺乳類細胞内でのrAAV産生及び昆虫細胞内でのrBV産生のためのトランスフェクション剤として有用であることができることを見出した。本発明は、以下の実施例で更に説明され、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない。
【実施例
【0255】
実施例1:Bba41キャプシドの生成
Bba41キャプシドを、Ambr15ミニバイオリアクター(15mLの容積)内で培養されたヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞内で産生した。トランスフェクション試薬、カチオン性ペプチド、及びHRPの全てを、GMP条件下で行われ得る固相ペプチド合成を使用して合成的に生成した。HEK293細胞を、Bba41キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、PEIPRO(登録商標)、並びにLAH4、LAH4-L1、LAH4-L1-F4、及びLAH4-L1-F2Dを含む異なるHRPを使用してトランスフェクトした。PEIPRO(登録商標)は、カチオン性ポリマーである線状ポリエチレンイミン(PEI)ベースのトランスフェクション試薬である。PEIPRO(登録商標)は、ベクター産生のために最適化されており、信頼できるウイルスベクター産生及び高い感染力価収率をもたらすためのゴールドスタンダードのトランスフェクション試薬であると産業において考えられている。力価を、ddPCRを使用して決定した。図1に示されるように、異なるHRPでトランスフェクトされたHEK293細胞は、PEIPRO(登録商標)でトランスフェクトされたHEK293細胞(約0.6×10e11ベクターゲノム(vg)/ミリリットル(mL))と比較して、実質的により大きい力価のBba41キャプシド(2.3×10e11vg/mL以上)を産生した。GFP強度を、attune flow cytometerによって測定した。図1はまた、HEK293細胞のより大きい百分率が、異なるHRPでトランスフェクトされたときに(約58%~約74%)、PEIPRO(登録商標)でトランスフェクトされたHEK293細胞(約44%)と比較して、トランスフェクションの24時間後にGFP発現を示したことを示す。トランスフェクションの66時間後に、GFP発現を示す、HRPでトランスフェクトされたHEK293細胞の百分率は、増加し(約83%~98%)、PEIPRO(登録商標)でトランスフェクトされたHEK293細胞(約77%)よりも依然として大きかった。
【0256】
振盪フラスコ(30mLの有効容積)内で、Bba41キャプシドを、Bba41キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、異なる濃度及び異なる複合体形成量のLAH4ペプチドを使用してトランスフェクトされたHEK293細胞内で産生した。トランスフェクション前に、プラスミドを、5、6、7、8、9、10、11、12、及び13マイクログラム(μg)/mLの濃度のLAH4ペプチドと混合した。LAH4/プラスミド混合物は、HEK293細胞培養物量の0%、1%、及び10%である量を有した。例えば、0%の複合体形成量をHEK293細胞培養物内に付加することは、LAH4ペプチド及びプラスミドが、互いに独立して、培養物に直接付加されたことを示す。力価を、ddPCRを使用して決定し、GFP強度を、attune flow cytometerによって測定した。
【0257】
図2に示されるように、5~13μg/mlの濃度のLAH4ペプチドは、HEK293細胞を、高い効率で、0%、1%、及び10%の複合体形成量でトランスフェクトすることができた。図3はまた、トランスフェクトされたHEK293細胞が、異なるLAH4ペプチド濃度及び複合体形成量でトランスフェクトされたときに、高いGFP蛍光を示したことを示す。
【0258】
図4に示されるように、0%、1%、及び10%の複合体形成量での5~13μg/mlの濃度のLAH4ペプチドでのトランスフェクションは、約1.25×10e11~約2.8×10e11vg/mLの範囲の高いrAAV力価をもたらした。
【0259】
図5A図5B、及び図5Cに示されるように、0%、1%、及び10%の複合体形成量での5~13μg/mlの濃度のLAH4ペプチドでのトランスフェクションは、類似の細胞密度を、異なる時点で有した。図6A図6B、及び図6Cはまた、0%、1%、及び10%の複合体形成量での5~13μg/mlの濃度のLAH4ペプチドでのトランスフェクションが、類似の生存率を、異なる時点で有したことを示す。図5A図5B、及び図5Cに示される生存率は、トランスフェクションのために使用された濃度のHRPが、細胞毒性を誘導しないことを強調する。
【0260】
振盪フラスコ(30mLの有効容積)内で、Bba41キャプシドを、HEK293細胞内で、様々なHRPを使用して産生した。HEK293細胞を、Bba41キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、LAH4、LAH4-L1、LAH4-L1-F4、及びLAH4-L1-F2Dを含む異なるHRPを使用してトランスフェクトした。トランスフェクション前に、異なるHRP及びプラスミドを、一緒に混合し、10及び60分間インキュベートした。力価を、ddPCRを使用して決定し、GFP強度を、attune flow cytometerによって測定した。図7は、HEK293細胞内で産生されたBba41キャプシドの力価を示すトランスフェクション前に、PEIPRO(登録商標)及びプラスミドを、一緒に混合し、10、20、及び30分間インキュベートした。異なるHRPを使用して産生されたBba41キャプシドの力価(6×10e11vg/mL超)は、PEIPRO(登録商標)を使用して産生されたBba41キャプシドの力価(1.25×10e11vg/mL未満)よりも実質的に大きかった。Bba41キャプシド力価はまた、異なるHRPを使用したときに、10及び60分間の複合体形成時間で依然として高かった。
【0261】
図8A及び図8Bについて、トランスフェクション効率を、GFPを発現する細胞の百分率によって決定した。図8Aに示されるように、トランスフェクションの24時間後の異なるHRPのトランスフェクション効率は、PEIPRO(登録商標)のトランスフェクション効率よりも実質的に高かった。トランスフェクションの24時間後の異なるHRPのトランスフェクション効率はまた、10及び60分間の複合体形成時間で依然として高かった。更に、図8Bは、トランスフェクションの48時間後の異なるHRPのトランスフェクション効率が、10及び60分間の複合体形成時間で依然として高かった(85%超)ことを示す。
【0262】
図1図2図3図4図5A図5C図6A図6C図7図8A、及び図8Bは、HRPが、一過的にトランスフェクトされた細胞、例えば、HEK293細胞内で、ウイルスベクターを生成するためのゴールドスタンダードのトランスフェクション試薬であると考えられるPEIと比較してより良好なトランスフェクション効率を示すことを強調する。HRPはまた、PEIと比較してより高い力価のBba41キャプシドを生成し、プラスミドと混合され長期間インキュベートされたときに、強化された安定性を示した。プラスミドと混合されたときのPEIは、長期間にわたって安定していなかった。この程度まで、HRPは、より多くの量の細胞のトランスフェクションを可能にする。例えば、ウイルスベクターの現在のHEK293細胞産生の主な制限は、産生を500リットル(L)超に規模拡張することができないことである。
【0263】
500L超のHEK293細胞培養物量をトランスフェクトするHRPの能力を試験するために、Bba41キャプシドを、異なる量で培養されたHEK293細胞内で、バイオリアクターを使用して産生する。バイオリアクターは、100L、500L、750L、1000L、及び2000Lの量を有する培養物を含む。トランスフェクション前に、異なる濃度の異なるHRPを、プラスミドと混合して、Bba41キャプシドを、異なる重量比で産生する。HRP/プラスミドを、異なる期間インキュベートし、その後、細胞培養物に付加する。異なる量のバイオリアクター培養物の各々について、Bba41キャプシドを生成する。
【0264】
実施例2:AAV9キャプシドの生成
1.6Lの振盪フラスコ(500mLの有効容積)内で、AAV9キャプシドを、AAV9キャプシドを産生するための、かつ目的の遺伝子を有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、LAH4ペプチド及びPEIPRO(登録商標)を使用してトランスフェクトされたHEK293細胞内で産生した。力価を、ddPCRを使用して決定した。図9は、AAV9キャプシド力価を示す。TRM1、TRM2、及びTRM3は、細胞培養培地が、LAH4ペプチドでのトランスフェクション前に交換された、3重の培養物である。CCM1、CCM2、及びCCM3は、細胞培養培地が、LAH4ペプチドでのトランスフェクション前に交換されなかった、3重の培養物である。CTL1、CTL2、及びCTL3は、HEK293細胞が、PEIPRO(登録商標)でトランスフェクトされた、3重の培養物である。図9に示されるように、LAH4ペプチドでトランスフェクトされた培養物(例えば、TRM1~3及びCCM1~3)は、AAV9キャプシド力価(6×10e10vg/mL~約1.2×10e11vg/mL)をもたらし、これは、PEIPRO(登録商標)でトランスフェクトされた培養物(例えば、CTL1~3)内でもたらされたAAV9キャプシド力価(2.2×10e10vg/mL未満)よりも実質的に大きかった。
【0265】
Ambr15ミニバイオリアクター(15mLの容積)内で、AAV9キャプシドを、AAV9キャプシドを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、異なる複合体形成量のLAH4ペプチドを使用してトランスフェクトされたHEK293細胞内で産生した。トランスフェクション前に、プラスミドを、ある濃度のLAH4ペプチドと混合し、10分間及び60分間インキュベートした。LAH4/プラスミド混合物は、HEK293細胞培養物量の1%及び10%である量を有した。力価を、ddPCRを使用して決定し、GFP強度を、attune flow cytometerによって測定した。
【0266】
図10A図10B図10E、及び図10Fについて、トランスフェクション効率を、GFPを発現する細胞の百分率によって決定した。図10Aに示されるように、1%及び10%の複合体形成量のLAHペプチド及びプラスミドでトランスフェクトされたHEK293細胞は、87.5%超及び95%の高い平均トランスフェクション効率を、48時間でもたらした。図10Bに示されるように、1%及び10%の複合体形成量のLAH4ペプチド及びプラスミドでトランスフェクトされたHEK293細胞は、約67.5%超及び70%超の高い平均トランスフェクション効率を、24時間でもたらした。10及び60分間の複合体形成時間について、図10Eは、LAH4ペプチド/プラスミド混合物でトランスフェクトされたHEK293細胞が、約90%の高い平均トランスフェクション効率を48時間でもたらしたことを示し、図10Fは、LAH4ペプチド/プラスミド混合物でトランスフェクトされたHEK293細胞が、約70%及び約67.5%の高い平均トランスフェクション効率を24時間でもたらしたことを示す。
【0267】
図10Cに示されるように、1%及び10%の複合体形成量のLAH4ペプチド及びプラスミドでトランスフェクトされたHEK293細胞は、約5×10e11~約2×10e12vg/mLの範囲の高い力価のAAV9キャプシドを産生した。10分及び60分間の複合体形成時間について、図10Gは、LAH4ペプチド/プラスミド混合物でトランスフェクトされたHEK293細胞が、高いAAV9キャプシド力価をもたらし、平均力価が、両方の複合体形成時間について、約1×10e12vg/mLの範囲であったことを示す。
【0268】
図10Dに示されるように、1%及び10%の複合体形成量のLAH4ペプチド及びプラスミドでトランスフェクトされたHEK293細胞の平均生存率は高く、75%超及び約72.5%の細胞生存率であった。10及び60分間の複合体形成時間について、図10Hはまた、LAH4ペプチド及びプラスミド混合物でトランスフェクトされたHEK293細胞の平均生存率が高く、約72.5%及び75%超の細胞生存率であったことを示す。図10D及び図10Hに示される生存率は、トランスフェクションのために使用された濃度のHRPが、細胞毒性を誘導しないことを強調する。
【0269】
3LのバイオリアクターでのAAV9キャプシドの追加の産生を、LAH4ペプチドをトランスフェクション試薬として使用して調製した。HEK293細胞を、AAV9キャプシドを産生するための、かつ目的の遺伝子を有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、LAH4ペプチドを使用してトランスフェクトした。力価を、ddPCRを使用して決定した。図11に示されるように、追加の産生の力価は、1×10e12vg/mL超~約2.2×10e12vg/mLの範囲の高いAAV9キャプシド力価をもたらした。
【0270】
図9図10A図10H、及び図11は、HRPが、高いトランスフェクション効率を示し、高い力価のAAV9キャプシドを生成したことを強調する。HRPはまた、より高い力価のAAV9キャプシドを生成し、プラスミドと混合され長期間インキュベートされたときに、強化された安定性を示した。プラスミドと混合されたときのPEIは、長期間にわたって安定していなかった。この程度まで、HRPは、より多くの量の細胞のトランスフェクションを可能にする。例えば、ウイルスベクターの現在のHEK293産生の主な制限は、産生を500L超に規模拡張することができないことである。
【0271】
追加のHRPを構築した。異なるエレメントを、LAH4及びLAH4-L1-L4ペプチドに付加した。
【0272】
例えば、細胞結合及び透過を強化するためのタンパク質形質導入ドメイン4(PDT4)を、LAH4及びLAH4-L1-L4ペプチド(His-PTD4-LAH4及び配列番号93、PTD4-LAH4及び配列番号94、His-PTD4-LAH4-L1-F4及び配列番号97、PTD4-LAH4-L1-F4及び配列番号98)に付加した。
【0273】
エンドソーム脱出の強化のためのヒスチジン残基を、LAH4及びLAH4-L1-L4ペプチド(His-PTD4-LAH4及び配列番号93、His-ペネトラチン-LAH4及び配列番号95、His-PTD4-LAH4-L1-F4及び配列番号97、His-ペネトラチン-LAH4-L1-F4及び配列番号99、His-ペネトラチン-LAH4-2及び配列番号121、His-ペネトラチン-LAH4-L1-F4-2及び配列番号123)に付加した。
【0274】
保存溶液定量化のための、N末端におけるトリプトファン残基を、LAH4及びLAH4-L1-L4ペプチド(LAH4(W)及び配列番号101、LAH4-L1-F4(W)及び配列番号102)に付加した。
【0275】
細胞及びDNA結合並びに細胞透過の強化のためのペネトラチンを、LAH4及びLAH4-L1-L4ペプチド(His-ペネトラチン-LAH4及び配列番号95、ペネトラチン-LAH4及び配列番号96、His-ペネトラチン-LAH4-L1-F4及び配列番号99、ペネトラチン-LAH4-L1-F4及び配列番号100、His-ペネトラチン-LAH4-2及び配列番号121、ペネトラチン-LAH4-2及び配列番号122、His-ペネトラチン-LAH4-L1-F4-2及び配列番号123、ペネトラチン-LAH4-L1-F4-2及び配列番号124)に付加した。
【0276】
プラスミドの核送達の強化のためのサルウイルス40(SV40)核局在化シグナル(NLS)を、LAH4及びLAH4-L1-L4ペプチド(SV40 T NLS-スペーサー-LAH4及び配列番号103、SV40 T NLS-スペーサー-LAH4-L1-F4及び配列番号104)に付加した。
【0277】
プラスミドの核送達の強化のためのヌクレオプラスミンNLSを、LAH4及びLAH4-L1-L4ペプチド(ヌクレオプラスミンNLS-スペーサー-LAH4及び配列番号105、ヌクレオプラスミンNLS-スペーサー-LAH4-L1-F4及び配列番号106)に付加した。
【0278】
プラスミドの送達の強化のためのAAV2 VP1-2 BR3を、LAH4及びLAH4-L1-L4ペプチド(AAV2 VP1-2 BR3-スペーサー-LAH4及び配列番号107、AAV2 VP1-2 BR3-スペーサー-LAH4-L1-F4及び配列番号108)に付加した。
【0279】
これらのペプチドを、化学合成し、HEK293細胞を、様々な濃度のこれらのペプチドによって、GFP及び様々な治療用導入遺伝子を含有するプラスミドでトランスフェクトした。特に、His-PTD4-LAH4、PTD4-LAH4、LAH4(W)、AAV2 VP1-2 BR3-スペーサー-LAH4、His-PTD4-LAH4-L1-F4、PTD4-LAH4-L1-F4、LAH4-L1-F4(W)、SV40 T NLS-スペーサー-LAH4-L1-F4、及びAAV2 VP1-2 BR3-スペーサー-LAH4-L1-F4を使用して、96ディープウェルプレートのウェル(0.5mL)内のHEK293細胞を、rAAVを産生するための、かつGFP発現カセットを含有するAAVゲノムベクターを提供するためのプラスミドで、異なる濃度の異なるHRPを使用してトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に、トランスフェクション効率を、GFPタンパク質を発現する細胞を特定することによって測定した。4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)染色を使用して、修飾ペプチドの細胞毒性を反映するための、細胞集団内のインタクトな形質膜(DAPI陰性)を有する細胞の百分率を監視した。フローサイトメトリーを使用して、GFPタンパク質を発現する細胞をゲーティングし、トランスフェクション効率を、インタクトな形質膜を有する細胞集団内のGFPを発現する陽性細胞の百分率として表した。図12及び図13に示されるように、異なるHRPは、であったHEK293細胞の最大約80%をトランスフェクトする。細胞生存率測定値は、異なるHRPが、毒性効果がない範囲にあったことを示した。したがって、異なるペプチドは、LAH4及びLAH4-L1-F4ペプチドに近い又はこれと等価のトランスフェクション効率を示した。
【0280】
所定の時間に、AAVキャプシドを、培養物から単離した。AAV9キャプシド力価を、ddPCR及びプライマーを使用して、ベクターゲノムについて定量化した。図14及び図15に示されるように、異なるHRPでトランスフェクトされたHEK293細胞は、力価を、10e11vg/mLの規模でもたらした。
【0281】
実施例3:ヒスチジンリッチペプチドのトランスフェクション効率
序文
【0282】
研究の目標は、LAH4ペプチドの2つの特性が、バイオテクノロジー産業における大規模一過的トランスフェクションのためのトランスフェクション試薬としてのその使用を可能にすることについての知識における現在のギャップを解消することである。2つの特性は、1)トランスフェクション前のDNA:LAH4複合体の安定性、2)哺乳類細胞による、トランスフェクション後のLAH4ペプチドの自然クリアランスである。
【0283】
LAH4ペプチドを、プラスミドとともに、1時間超にわたって、大規模(100L以上)一過的トランスフェクションのためにインキュベートすることが可能であったが、これは、このインキュベーション時間が、トランスフェクション複合体の安定性の向上を可能にし、これにより、プロセスが、堅牢かつ再現可能であったためである。LAH4:DNA複合体は、少なくとも1時間安定していることを発見した。フォローアップ研究において、LAH:DNA複合体の安定性を、2~8℃及び/又は室温で、かつ周囲光への曝露あり又はなしで貯蔵されたときに、最大1週間評価する。
【0284】
結果
【0285】
バイオプロセシング中のトランスフェクション試薬などの補助材料のクリアランスが強調される。本発明者らは、LAH4の大部分が、トランスフェクションプロセスが完了した後に、細胞プロテアーゼによって分解されると仮定した。LAH4の生分解性を実証するために、本発明者らは、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)方法を展開して、細胞溶解物の複合体マトリックス内のLAH4ペプチドを検出した。異なる濃度のLAH4ペプチドを、3L及び100Lの細胞培養物量(すなわち、バイオリアクター)に付加した。トランスフェクションの4時間後に、LAH4ペプチド濃度は、初期LAH4ペプチド濃度に対して、約45%~約85%低減された。トランスフェクションの24時間後に、LAH4ペプチド濃度は、初期LAH4ペプチド濃度に対して、約83%~約97%低減された。トランスフェクションの48時間後に、LAH4ペプチド濃度は、初期LAH4ペプチド濃度に対して、約93%~約99%低減された。トランスフェクションの72時間後に、LAH4ペプチド濃度は、初期LAH4ペプチド濃度に対して、約96%~約99%低減された。データは、初期LAH4ペプチド濃度に対して、LAH4ペプチドの95%超のクリアランスを、トランスフェクションの72時間後までに示す。
【0286】
材料及び方法
【0287】
細胞培養:懸濁液HEK293細胞を、製造元の使用説明書に従って、提供された細胞培養培地中で培養する。小規模トランスフェクション研究について、HEK293細胞を、所定の細胞密度の範囲で、125mlのエルレンマイヤー振盪フラスコ内に、トランスフェクションの日に播種する。
【0288】
トランスフェクション:同じバッチからのLAH4溶液を、-20℃で、単回使用アリコートで保持する。LAH4を、室温で解凍し、GFPレポーター遺伝子を含有するプラスミドDNAと混合する。DNA:LAH4複合体を、蒸発を防止するために閉じられたキャップチューブ内で、室温又は2~8℃のいずれかで、示される期間、トランスフェクション前に保持する。
【0289】
LAH4:DNA複合体の安定性:LAH4:DNA複合体の生物物理学的特徴付けを実行する。方法は、サイズ及び電荷測定を含むことができる。
【0290】
トランスフェクション効率:トランスフェクション効率を、トランスフェクションの24及び48時間後に、フローサイトメーターを使用して測定し、インタクトな形質膜を有する単細胞の集団内の%GFP+細胞として表す。
【0291】
細胞内のLAH4検出:試料を、トランスフェクション後に、異なる時点で採取し、LC/MSアッセイを使用して分析する。
【0292】
実施例4:大規模でのHEK293細胞内でのAAV9キャプシドの生成
500L超のHEK293細胞培養物量をトランスフェクトするHRPの能力を試験するために、AAV9キャプシドを、異なる量で培養されたHEK293細胞内で、バイオリアクターを使用して産生する。バイオリアクターは、100L、500L、750L、1000L、及び2000Lの量を有する培養物を含む。トランスフェクション前に、異なる濃度の異なるHRPを、プラスミドと混合して、AAV9キャプシドを、異なる重量比で産生する。HRP/プラスミドを、異なる期間インキュベートし、その後、細胞培養物に付加する。異なる量のバイオリアクター培養物の各々について、AAV9キャプシドを生成する。異なる実施例では、LAH4ペプチドを使用して、2つの別個の100Lのバイオリアクター産生での懸濁液中のHEK293細胞をトランスフェクトした。特に、図16に示されるように、2つの100Lの産生は、1.4×10e12vg/mL超及び1×10e12vg/mL超の力価をもたらした。したがって、本発明は、プラスミド/HEK293系を使用するrAAVの大規模産生を可能にする。したがって、もたらされる力価は、堅牢であり、経済的に実行可能であり、これにより、プラスミド/HEK293系は、今や、実行可能な大規模rAAV産生系である。
【0293】
実施例5:Sf9細胞内でのrBV及びAAV5キャプシドの生成
上記で強調されるように、rAAVを、昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)内で、細胞を、キャプシド及びRepタンパク質をコードするヌクレオチド配列及び/又は発現カセットを有するAAVゲノムベクターを提供するヌクレオチド配列を有する組換えバキュロウイルス(rBV)に感染させることによって産生することができる。rBVを生成するために、Sf9細胞などの昆虫細胞を、キャプシド及びRepタンパク質をコードするヌクレオチド配列及び/又は発現カセットを有するAAVゲノムベクターを提供するヌクレオチド配列を有する組換えバキュロウイルスゲノムでトランスフェクトする。組換えバキュロウイルスゲノム(すなわち、バクミド)を生成するために、異種ヌクレオチド配列をバキュロウイルスゲノム内に挿入することが可能である異なるベクター系(例えば、Bac-to-Bac(商標)Baculovirus Expression System、ThermoFisher Scientific)が存在する。
【0294】
LAH4、LAH4-L1、LAH5、LAH4-L1-F2Dなどの異なるHRP、及び対照トランスフェクション試薬(CELLFECTIN(登録商標)、Thermo Fisher)を使用して、GFP発現カセットを有するプラスミドを、Sf9細胞内にトランスフェクトした。図17に示されるように、異なるHRPでトランスフェクトされたSf9細胞の15%~50%超が、GFPを発現した。異なるHRPのトランスフェクション効率は、対照トランスフェクション試薬のトランスフェクション効率と同等であった。
【0295】
また、AAV5キャプシドを、Sf9細胞内で産生した。AAV5キャプシドを産生するために、Sf9細胞を、AAV5キャプシドを生成するためのヌクレオチド配列又はAAVゲノムベクターを提供するためのヌクレオチド配列を有するバクミドで、対照トランスフェクション試薬及び異なるHRPを使用してトランスフェクトした。図18は、トランスフェクションからもたらされたrBV力価を示す。培養中に、その後、初期バクミドトランスフェクションから生成されたrBVに、他のSf9細胞を感染させ、次いで、このSf9細胞が、更なるrBVを生成した。図18に示されるように、LAH4、LAH5、及びLAH4-L1-F4でトランスフェクトされたSf9細胞からのrBV力価は、対照試薬でトランスフェクトされたSf9細胞からのrBV力価と同等であった。
【0296】
異なるrBVが、AAV5キャプシドを生成するためのヌクレオチド配列を有する場合、これらのrBVを採取し、これらを使用して、ナイーブSf9細胞を更に感染させて、AAV5キャプシドを生成した。力価を、ddPCRを使用して決定した。図19に示されるように、及びLAH4-L1-F4でトランスフェクトされたSf9細胞から産生されたrBVは、対照試薬でトランスフェクトされたSf9細胞内で産生されたrBVと同等のAAV5キャプシド力価をもたらした。LAH4-L1-F4を使用して産生されたAAV5キャプシドは、VP1キャプシドタンパク質の濃度及びキャプシド対ベクターゲノムの比が、対照トランスフェクション試薬を使用して産生されたAAV5キャプシドと同じであった。
【0297】
AAV5キャプシドの大規模産生をもたらすために、異なる量のSf9細胞を、AAV5キャプシドを生成するための異なるHRP及びバクミドでトランスフェクトする。トランスフェクションから生成されたrBVに、100L、500L、750L、1000L、及び2000Lの量を有する培養物を感染させて、AAV5キャプシドを生成する。
【0298】
例示的な実施形態は上に説明されているが、これらの実施形態が本発明の全ての可能な形態を説明することは意図されていない。むしろ、本明細書で使用される単語は、限定ではなく説明の単語であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更がなされ得ることが理解される。更に、様々な実施形態の特徴を組み合わせて、本発明の更なる実施形態を形成し得る。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9
図10A-10H】
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【配列表】
2024506681000001.app
【国際調査報告】