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特表2024-506689医療又は外科遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステム及び関連するロボットシステムの拘束されないマスター装置の動作異常を検出するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】医療又は外科遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステム及び関連するロボットシステムの拘束されないマスター装置の動作異常を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20240206BHJP
【FI】
A61B34/35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548906
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 IB2022051321
(87)【国際公開番号】W WO2022175807
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】102021000003422
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518132307
【氏名又は名称】メディカル・マイクロインストゥルメンツ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL MICROINSTRUMENTS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100230640
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 望
(72)【発明者】
【氏名】シミ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】タンツィーニ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ルッファルディ,エマヌエーレ
(72)【発明者】
【氏名】バゲリ ガヴィフェクル,マッテオ
【テーマコード(参考)】
4C130
【Fターム(参考)】
4C130AA22
4C130AB02
4C130AB04
4C130AD02
4C130AD05
4C130AD09
4C130BA02
4C130BA05
4C130BA12
4C130BA14
4C130BA16
4C130CA01
4C130CA12
4C130CA14
4C130CA16
(57)【要約】
医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムを制御するために使用される手持ち式の機械的に拘束されないマスター装置を使用する際に少なくとも1つの異常状態を特定する方法が記載される。そのような方法は、1つ以上のセンサによって、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の位置ベクトルを検出するステップと、次いで、前記少なくとも1つの検出された位置ベクトルに基づいて、又は前記少なくとも1つの検出された位置ベクトルの少なくとも1つの成分に基づいて、少なくとも1つの検出可能な異常状態を特定するステップとを含む。前述の検出可能な異常は、マスター装置の所定の作業空間に対するマスター装置の少なくとも誤った位置決めを含む。そのような検出可能な異常のそれぞれは、異常が検出される場合に実行されるべき少なくとも1つのシステム状態変化と関連付けられ、そのような少なくとも1つの状態変化は、遠隔操作状態から出ることを含む。前述の方法を実行するように構成された、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムが更に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち式であって、術者によって手で保持されるようになっているとともに、機械的に拘束されず、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムを制御するために使用されるマスター装置(110;310;410,420;510;510,520;610,620;710;810;910;1010)を使用する際の少なくとも1つの異常状態を特定及び認識及び/又は区別するための方法であって、
-1つ以上のセンサ(S1,S2;585,595;785,795;885,895)によって、前記マスター装置に属する又は前記マスター装置と一体の少なくとも1つの点、又は前記マスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられる仮想点の位置ベクトルを検出するステップと、
-前記少なくとも1つの検出された位置ベクトルに基づいて、又は前記少なくとも1つの検出された位置ベクトルの少なくとも1つの成分に基づいて、少なくとも1つの検出可能な異常状態を特定及び認識及び/又は区別するステップと、
を含み、
前記検出可能な異常は、前記マスター装置の所定の作業空間(315;415;415,425;515;615;615,625;715;815;915)に対する前記マスター装置の少なくとも誤った位置決めを含み、
前記検出可能な異常のそれぞれは、前記異常が検出される場合に実行されるべき少なくとも1つのシステム状態変化と関連付けられ、前記少なくとも1つの状態変化は、遠隔操作状態からの退出を含む、方法。
【請求項2】
医療又は外科遠隔操作のための前記ロボットシステムは、
-機械的に拘束されず、外科手術中に外科医によって手で保持されるようになっているとともに、前記外科医の手動コマンドを検出してそれぞれの第1の電気コマンド信号を生成するように構成される前記マスター装置と、
-少なくとも1つのスレーブロボットアセンブリであって、前記マスター装置の移動がスレーブ装置の所望の制御されたそれぞれの移動をもたらすように、前記マスター装置によって制御される態様で、患者の解剖学的構造に作用するように構成される少なくとも1つのスレーブ外科用器具(460,470;960)を備える、少なくとも1つのスレーブロボットアセンブリと、
-前記少なくとも1つのスレーブ外科用器具を作動させるために、前記マスター装置から前記第1の電気コマンド信号を受信し、前記第1の電気コマンド信号に基づいて第2の電気コマンド信号を生成し、前記第2の電気コマンド信号を前記スレーブロボットアセンブリに供給するように構成される、コンピュータを備える制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、前記検出された位置ベクトル及び/又は関連する経時的変化を表わす少なくとも第3の電気信号を受信するために、又は前記第1の電気信号を受信するために、前記1つ以上のセンサに動作可能に接続され、
少なくとも1つの検出可能な異常を特定する前記ステップは、前記制御ユニットによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出可能な異常は、許容される所定の空間限界外での前記マスター装置の禁止された位置決めを検出することを含み、前記方法は、
-前記マスター装置に属する又は前記マスター装置と一体の前記少なくとも1つの点、又は前記マスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の検出された位置を、前記所定の空間限界を表わす所定の限界面と比較するステップと、
-前記検出された位置が前記所定の限界面の外側にある場合、前記マスター装置の前記禁止された位置決め異常を特定するステップと、
を含み、
前記マスター装置に属する又は前記マスター装置と一体の前記少なくとも1つの点、又は前記マスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の前記位置、及び前記所定の限界面は、遠隔操作外科手術のための前記ロボットシステムに関連付けられ、所定の点に所定の軸及び原点を有する基準座標系に対して規定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記許容される空間限界は、球状の作業空間又はボリュームとして画定され、前記所定の限界面は、前記球の球面である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記許容される空間限界は、ボックス形状又は平行六面体形状の作業空間又はボリュームとして画定され、前記所定の限界面は、前記ボックス又は平行六面体の表面である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
医療又は外科遠隔操作のための前記ロボットシステムが操作コンソール(455;555;655)を備え、
前記基準座標系が前記ロボットシステムコンソールと一体である、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記操作コンソールは、外科手術中に外科医が着座するための少なくとも1つの座面を備える少なくとも1つの手術用椅子(554)を備え、
前記基準座標系は、前記少なくとも1つの手術用椅子と一体であり、好ましくは前記少なくとも1つの座面と一体である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
医療又は外科遠隔操作のための前記ロボットシステムは、所定の追跡ボリューム内の前記マスター装置の入力位置及び方向を検出するのに適した少なくとも1つの追跡システムを更に備え、前記スレーブ外科用器具の作動は、前記マスター装置によって前記外科医により与えられる前記手動コマンド及び/又は前記マスター装置の位置及び方向に依存する、請求項4から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記マスター装置の作業空間は、前記追跡ボリューム(914)に含まれる、又は前記追跡ボリュームのサブセットである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
遠隔操作開始空間(516)が予め決定され、外遠隔操作開始空間が前記マスター装置作業空間に含まれる、又は前記マスター装置の作業空間のサブセットであり、前記方法は、
-前記マスター装置の検出された位置が前記遠隔操作開始空間内に位置する場合にのみ、遠隔操作の開始、又は準備チェックのステップの開始を可能にするステップ、
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記マスター装置は、共通の軸に対して相対的に回転又は並進するように拘束される2つの剛性部分(180,190;780,790;1080,1090)を備える、手持ち式で拘束されないマスター装置であり、前記検出するステップは、それぞれのセンサによって、前記マスター装置の前記剛性部分のうちの一方に属する又はそれと一体である第1の点と、前記装置の前記剛性部分のうちの他方に属する又はそれと一体である第2の点との少なくとも2つの検出可能点の前記位置ベクトル及び/又は位置ベクトルの経時的変化を検出するステップを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの位置ベクトルを検出する前記ステップは、前記少なくとも2つの検出可能点の位置ベクトル、及び/又は以下の更なる点、すなわち、
前記2つの検出点間の中間点及び/又は前記マスター装置の重心、
及び/又は前記マスター装置の回転関節(OJ;775)、及び/又は前記マスター装置の角柱関節(1075)、
のうちの少なくとも1つの位置ベクトルを検出するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マスター装置の本体は、2つの自由チップ又は端部、すなわち、前記マスター装置の前記剛性部分の一方に属する又はそれと一体の第1の自由チップ又は端部と、前記装置の前記剛性部分の他方に属する又はそれと一体の第2の自由チップ又は端部とを備え、
前記2つの検出可能点は、前記マスター装置の前記2つの自由チップ又は端部にそれぞれ対応し及び/又は前記2つの自由チップ又は端部とそれぞれ関連付けられる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記マスター装置が前記許容される空間限界外にあると決定されるときに、前記システム状態変化は、前記遠隔操作状態からの前記ロボットシステムの即時退出、又は前記遠隔操作状態の即時中断である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記マスター装置及び/又は前記スレーブ装置は、近接閾値内で、前記空間限界及び/又は方向限界に近いと決定されるときに、前記方法は、
-音響及び/又は視覚通信信号によって、前記マスター装置及び/又は前記スレーブ装置の許容される空間限界に対する近接の状態を前記術者に通信して、該術者が空間限界から出て前記遠隔操作を終了することを回避するように行動できるようにするステップ、
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記通信信号が音響信号であり、前記音響信号は、前記近接閾値と前記空間限界に対応する表面との間の間隔において、前記空間限界からの前記マスター装置又は前記スレーブ装置の距離が減少するにつれて、周波数を増大させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記通信信号が視覚信号であり、前記視覚信号の前記通信の前記周波数は、前記近接閾値と前記空間限界に対応する表面との間の間隔において、前記空間限界からの前記マスター装置又は前記スレーブ装置の距離が減少するにつれて増大する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、
-前記マスター装置が許容される空間限界に戻ったことがリアルタイムで検出されるときに前記ロボットシステムの遠隔操作の再開を許可するステップ、
又は
-前記マスター装置が許容される空間限界に戻ったことがリアルタイムで検出される場合でも前記ロボットシステムの遠隔操作の再開を阻止し、遠隔操作及び/又は予備再位置合わせ操作の準備及び開始のための手順を再開するステップ、
を更に含み、
前記許容される空間限界は、前記マスター装置の作業空間によって又は前記遠隔操作開始空間によって画定される、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記マスター装置の作業空間の周りで延在して前記マスター装置の作業空間よりも大きい中断された遠隔操作ボリューム(919)が画定され、
前記中断された遠隔操作ボリュームは、前記ロボットシステムが中断された遠隔操作をもたらすボリュームであり、
前記中断された遠隔操作は、少なくとも前記スレーブ装置の制御ポイントの並進移動を防止する、又は前記スレーブ装置の前記制御ポイントの回転移動を制限する、又は前記スレーブ装置の前記制御ポイントの全ての移動を防止する制限された遠隔操作であり、
前記方法は、
前記マスター装置が前記作業空間限界を出て前記中断された遠隔操作ボリュームに入るときに前記遠隔操作状態から前記中断された遠隔操作状態に切り替える更なるステップ、
を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記マスター装置が前記中断された遠隔操作ボリュームの限界を出ると、前記ロボットシステムが前記遠隔操作ステップを直ちに終了する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記中断された遠隔操作ボリュームへの/からの進入又は退出は、それぞれの音響及び/又は視覚及び/又は触覚信号によって前記術者に示される、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
-前記マスター装置が前記中断された遠隔操作ボリュームから作業空間限界まで戻ったことが検出されるときに、遠隔操作の再開と共に前記ロボットシステムが遠隔操作状態に戻ることができるようにするステップ、を更に含む、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記中断された遠隔操作ステップの終わりに、及び遠隔操作を開始する前に、前記方法は、動きを伴う位置合わせのステップを含み、該ステップにおいて、前記スレーブ装置は、前記マスター装置の実際の現在の位置及び方向に対応する位置及び方向に到達するように移動する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
動きを伴う位置合わせの前記ステップ中、前記スレーブ装置は、前記制御ポイントの方向を変えることのみが許可され、又は前記スレーブ装置は、方向及び把持の自由度に従って移動することが許可される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
動きを伴う位置合わせの前記ステップへの進入は、幾つかの検証チェックに合格した場合にのみ許可され、前記検証チェックは、少なくとも以下のチェック、すなわち、特定の閾値を下回るマスター-スレーブ方向の位置ずれ、及び/又は前記マスターがスレーブ作業空間内で到達可能な方向姿勢を含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記マスター装置及び前記スレーブ装置の移動がスケールファクタによってスケーリングされる場合、前記マスター装置の作業空間及び/又は遠隔操作開始空間及び/又は中断された遠隔操作ボリュームは、前記スケールファクタと共に増大する、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ロボットシステムが2つのマスター装置を備え、前記方法は、前記マスター装置のうちの1つだけでも前記許容される空間限界を出る場合に、両方のマスター装置の前記遠隔操作を終了する、及び/又は前記遠隔操作を中断するステップを含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
-前記スレーブ装置が許容されたスレーブ装置作業空間内にあることを検証するステップと、
-前記スレーブ装置が許容されたスレーブ装置作業空間外にあることが検証される場合に、前記スレーブ装置位置決め異常が発生したことをユーザに通知し、前記ロボットシステムによる遠隔操作を直ちに停止させるステップと、
を更に含み、
前記スレーブ装置の作業空間は、前記スレーブ装置の前記関節式外科用器具の可能な姿勢及び/又は方向の結果として前記スレーブ装置の制御ポイントから到達可能な全ての位置の空間セットを含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記マスター装置に属する又は前記マスター装置と一体である前記少なくとも1つの点、又は前記マスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられる仮想点の線速度及び/又は角速度及び/又は直線加速度及び/又は角加速度を、検出されたそれぞれの位置ベクトルの経時的変化に基づいて計算する更なるステップ、を含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
計算された前記線速度及び/又は角速度及び/又は直線加速度及び/又は角加速度に基づいて、1つ以上の更なる異常を検出するステップを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
外科又は医療遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステムのマスター装置で特定される異常を管理するための方法であって、
請求項1から30のいずれか一項に記載の少なくとも1つの異常状態を検出するための方法を実行するステップと、
前記異常のうちの少なくともいずれか1つが決定される場合に、遠隔操作及び前記スレーブ装置の前記外科用器具の移動を直ちに停止又は中断するステップと、
を含む方法。
【請求項32】
医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステム(400)であって、
-機械的に接地されず、外科手術中に外科医によって手で保持されるようになっているとともに、外科医の手動コマンドを検出してそれぞれの第1の電気コマンド信号を生成するように構成されるマスター装置(110;310;410,420;510;510,520;610,620;710;810;910;1010)と、
-前記マスター装置によって制御される態様で、患者の解剖学的構造に作用するように構成される少なくとも1つのスレーブ外科用器具(460,470;960)を備える、少なくとも1つのスレーブ装置(440)又はスレーブロボットアセンブリと、
-前記少なくとも1つのスレーブ外科用器具を作動させるために、前記マスター装置から前記第1の電気コマンド信号を受信し、前記第1の電気コマンド信号に基づいて第2の電気コマンド信号を生成し、前記第2の電気コマンド信号を前記スレーブロボットアセンブリに供給するように構成される、コンピュータを備える制御ユニットと、
を備え、
前記制御ユニットは、
-前記制御ユニットが動作可能に接続される1つ以上のセンサ(S1,S2;585,595;785,795;885,895)によって、前記マスター装置に属する又は前記マスター装置と一体の少なくとも1つの点、又は前記マスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられる仮想点の前記位置ベクトルを検出し、
-前記少なくとも1つの検出された位置ベクトルに基づいて、又は前記少なくとも1つの検出された位置ベクトルの少なくとも1つの成分に基づいて、少なくとも1つの検出可能な異常状態を特定及び認識及び/又は区別する、
ように構成され、
前記検出可能な異常は、前記マスター装置の所定の作業空間(315;415;415,425;515;615;615,625;715;815;915)に対する前記マスター装置の少なくとも誤った位置決めを含み、
前記検出可能な異常のそれぞれは、前記異常が検出される場合に実行されるべき少なくとも1つのシステム状態変化と関連付けられ、前記少なくとも1つの状態変化は、遠隔操作状態からの退出を含む、ロボットシステム(400)。
【請求項33】
前記検出可能な異常は、許容される所定の空間限界外での前記マスター装置の禁止された位置決めを検出することを含み、前記ロボットシステムの制御ユニットは、
-前記マスター装置に属する又は前記マスター装置と一体の前記少なくとも1つの点、又は前記マスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の検出された位置を、前記所定の空間限界を表わす所定の限界面と比較し、
-前記検出された位置が前記所定の限界面の外側にある場合、前記マスター装置の前記禁止された位置決め異常を特定する、
ように構成され、
前記マスター装置に属する又は前記マスター装置と一体の前記少なくとも1つの点、又は前記マスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の前記位置、及び前記所定の限界面は、遠隔操作外科手術のための前記ロボットシステムと関連付けられ、所定の点に所定の軸及び原点を有する基準座標系に対して規定される、請求項32に記載のロボットシステム。
【請求項34】
操作コンソール(455;555;655)を備え、前記基準座標系が前記ロボットシステムコンソールと一体であり、
及び/又は、前記操作コンソールは、外科手術中に外科医が座るための少なくとも1つの座面を備える少なくとも1つの手術用椅子(554)を備え、前記基準座標系は、前記少なくとも1つの手術用椅子、好ましくは前記少なくとも1つの座面と一体である、請求項33に記載のロボットシステム。
【請求項35】
前記スレーブ外科用器具の作動が、前記マスター装置によって外科医により与えられる前記手動コマンド及び/又は前記マスター装置の位置及び方向に依存するように、所定の追跡ボリューム内の前記マスター装置の前記入力位置及び方向を検出するのに適した少なくとも1つの追跡システムを更に備え、前記マスター装置の作業空間は、前記追跡ボリューム(914)に含まれ、すなわち、前記追跡ボリュームのサブセットである、請求項33又は34に記載のロボットシステム。
【請求項36】
前記マスター装置は、共通の軸に対して相対的に回転又は並進するように拘束された2つの剛性部分(180,190;780,790;1080,1090)を備える手持ち式の拘束されないマスター装置であり、
前記検出するステップは、それぞれのセンサによって、少なくとも2つの検出可能点、すなわち、前記マスター装置の前記剛性部分の一方に属する又はそれと一体の第1の点、及び前記装置の前記剛性部分の他方に属する又はそれと一体の第2の点の位置ベクトル及び/又は位置ベクトルの経時的変化を検出するステップを含み、
及び/又は、少なくとも1つの位置ベクトルを検出する前記ステップは、前記少なくとも2つの検出可能点の位置ベクトル、及び/又は以下の更なる点、すなわち、
前記2つの検出点間の中間点及び/又は前記マスター装置の重心、
及び/又は前記マスター装置の回転関節(OJ;775)、及び/又は前記マスター装置の角柱関節(1075)、
のうちの少なくとも1つの位置ベクトルを検出するステップを含む、請求項32から35のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項37】
前記マスター装置の本体は、2つの自由端又はチップ、すなわち、前記マスター装置の前記剛性部分の一方に属する又はそれと一体の第1の自由端又はチップと、前記装置の前記剛性部分の他方に属する又はそれと一体の第2の自由端又はチップとを備え、前記2つの検出可能点は、前記マスター装置の前記2つの自由端又はチップのそれぞれに対応する及び/又は関連付けられる、請求項36に記載のロボットシステム。
【請求項38】
前記マスター装置の作業空間の周りで延在して前記マスター装置の作業空間よりも大きい中断された遠隔操作ボリューム(919)が画定され、前記中断された遠隔操作ボリュームは、前記ロボットシステムが中断された遠隔操作をもたらすボリュームであり、
前記中断された遠隔操作は、少なくとも前記スレーブ装置の制御ポイントの並進移動を防止する、又は前記スレーブ装置の前記制御ポイントの回転移動を制限する、又は前記スレーブ装置の前記制御ポイントの全ての移動を防止する制限された遠隔操作であり、
前記ロボットシステムの前記制御ユニットは、前記マスター装置が前記作業空間限界を出て前記中断された遠隔操作ボリュームに入るときに前記遠隔操作状態から前記中断された遠隔操作状態への切り替えを引き起こすように更に構成される、請求項32から37のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項39】
前記マスター装置が前記中断された遠隔操作ボリュームの前記限界を出るとき、前記制御ユニットは、前記遠隔操作ステップからの前記ロボットシステムの即時退出を引き起こすように構成される、請求項38に記載のロボットシステム。
【請求項40】
それぞれの音響及び/又は視覚及び/又は触覚信号によって示される前記中断された遠隔操作ボリュームへの進入又は前記中断された遠隔操作ボリュームからの退出を前記術者に示すように構成される、請求項38又は39に記載のロボットシステム。
【請求項41】
前記制御ユニットは、前記マスター装置が前記中断された遠隔操作ボリュームから前記作業空間限界まで戻ったことが検出されるときに、前記遠隔操作の前記再開と共に、前記ロボットシステムが前記遠隔操作状態に戻ることができるように更に構成される、請求項38から40のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項42】
中断された遠隔操作ステップの終わりに、及び遠隔操作を開始する前に、前記制御ユニットは、前記スレーブ装置が前記マスター装置の実際の現在の位置及び方向に対応する位置及び方向に到達するように移動する、動きを伴う位置合わせのステップを決定するように構成される、請求項41に記載のロボットシステム。
【請求項43】
動きを伴う位置合わせの前記ステップ中、前記スレーブ装置は、前記制御ポイントの方向を変えることのみが許可され、又は前記スレーブ装置は、方向及び把持の自由度に従って移動することが許可される、請求項42に記載のロボットシステム。
【請求項44】
動きを伴う位置合わせの前記ステップへの進入は、幾つかの検証チェックに合格した場合にのみ許可され、前記検証チェックは、少なくとも以下のチェック、すなわち、特定の閾値を下回るマスター-スレーブ方向の位置ずれ、及び/又は前記マスターがスレーブ作業空間内で到達可能な方向姿勢を含む、請求項42又は43に記載のロボットシステム。
【請求項45】
前記マスター装置及び前記スレーブ装置の移動がスケールファクタによってスケーリングされる場合、前記マスター装置の作業空間及び/又は遠隔操作開始空間及び/又は中断された遠隔操作ボリュームは、前記スケールファクタに伴い増大する、請求項32から44のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項46】
2つのマスター装置を備え、前記制御ユニットは、前記マスター装置のうちの1つでも許容される空間限界を出る場合に、両方のマスター装置の遠隔操作からの退出及び/又は前記遠隔操作の中断を引き起こすように構成される、請求項32から45のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項47】
前記制御ユニットは、請求項1から30のいずれか一項に記載の少なくとも1つの異常状態を特定するための方法を実行するように構成され、
又は前記制御ユニットは、請求項31に記載のマスター-スレーブロボットシステムのマスター装置で特定された異常を管理するための方法を実行するように構成される、請求項32から46のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療又は外科遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステムの拘束されないマスター装置の動作異常を検出するための方法、及び前述の方法を実行するように装備された医療又は外科遠隔操作のための対応するマスター-スレーブロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット遠隔操作外科手術との関連で、医療又は外科遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステムに関して、マスター装置が良好に機能して効果的な動作及び患者の安全性を確保するようになっている期待される状態で動作しているかどうかをリアルタイムで評価することが非常に重要であり、また、マスター装置が異常な状態又は状況で動作していないことをリアルタイムで検証することも重要である。
【0003】
この必要性は、拘束されない磁気的又は光学的に検出されたインタフェースを有するマスター装置との関連でも、機械的に拘束されたインタフェースを有するマスター装置との関連でも感じられる。
【0004】
機械的に拘束されない又は「接地されない」マスター装置(例えば、同じ出願人の文献国際公開第2019-220407号、国際公開第2019-220408号及び国際公開第2019-220409号に示されるように、効果的で有利な解決策として最近現れた)との関連では、前述の要件は、複雑な技術的課題を提起する。
【0005】
特に、マスターが機械的に拘束されない又はモータ駆動されないマスター-スレーブロボットシステムでは、マスター装置の制御されない動作状況から生じる、外科手術(又は超微細手術)装置への意図しないコマンドの送信は、患者のリスクを回避するために防止されなければならない。
【0006】
機械的に拘束されない(又は「接地されない」又は「地面に置かれない(groundless)」)マスター装置を伴う医療又は外科遠隔操作のための既知のロボットマスタースレーブシステムは、特にマスター装置の動作又は状態の任意の異常が、想定し得る結果を伴って、患者に作用するようになっているスレーブ装置及びそれに関連する外科用器具の動作の結果として生じる異常を特定することができるという事実から導き出される非常に厳しい安全要件を考慮して、前述の必要性に対して十分に満足のいく解決策を提供しない。拘束されないマスターを有するロボット外科手術のための解決策の例は、マスターが外科医によって着用される米国特許出願公開第2011-118748号明細書、及びマスター本体が実質的に楕円形状を有する国際公開第2020-0092170号の文献によって示される。
【0007】
例えば、米国特許出願公開第2019-380791号明細書は、互いに検出エラーを補償し、したがって検出信号の品質測定値を推定することにより、品質測定値のそのような推定値が所与の閾値よりも低い値を与える場合に、システムが拘束されないマスターの移動にもかかわらず遠隔操作を一時停止することを可能にするように、追跡センサ及び1つ以上のカメラに加えて慣性測定ユニット(IMU)を拘束されないマスター装置に提供することを提案する。
【0008】
したがって、これに関連して、そのような用途によって要求される厳しい安全要件を満たすべく、効率的で信頼性があるように、医療又は外科遠隔操作のためのロボット制御システムによって自動的に実行されるマスター装置の任意の異常動作状態をリアルタイムで検証するための手順を適用する必要性が強く感じられる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、医療又は外科遠隔操作のためのロボットマスタースレーブシステムのマスター装置の動作異常を検出するための方法であって、従来技術に関連して前述した欠点を少なくとも部分的に克服し、考慮される技術分野において特に感じられる前述の必要性に応答することを可能にする方法を提供することである。そのような目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0010】
そのような方法の更なる実施形態は、請求項2~30によって規定される。
【0011】
本発明の他の目的は、マスター装置の異常を検出するための前述の方法を実行することを含むマスター装置で検出された異常を管理するための方法を提供することである。そのような方法は、請求項31によって規定される。
【0012】
また、本発明の目的は、前述の異常検出方法を実行するように装備された医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムを提供することである。そのような目的は、請求項32に係るシステムによって達成される。
【0013】
システムの更なる実施形態は、請求項33~47によって規定される。
【0014】
本発明に係るシステム及び方法の更なる特徴及び利点は、添付図面に関連して例示的で非限定的な例として与えられる好ましい実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】「グリッパ」構造を有するマスター装置の一実施形態に適用される、本発明の方法で使用される幾何学的パラメータ及び基準座標系を示す。
図2】「グリッパ」構造を有するマスター装置の一実施形態に適用される、本発明の方法で使用される幾何学的パラメータ及び基準座標系を示す。
図3】方法の実施形態において提供されるマスター装置の作業空間からの入力(a)及び出力(b)の移行を概略的に示す。
図4】少なくとも1つのマスター装置の作業空間が関連付けられる、本発明に係る遠隔操作システムの一実施形態を概略的に示す。
図4bis】マスター装置の作業空間を有する遠隔操作システムの別の実施形態を概略的に示す。
図5】前述のマスター装置の作業空間の幾つかの実施形態を概略的に示す。
図5bis】前述のマスター装置の作業空間の幾つかの実施形態を概略的に示す。
図5ter】前述のマスター装置の作業空間の幾つかの実施形態を概略的に示す。
図6】前述のマスター装置の作業空間の幾つかの実施形態を概略的に示す。
図6bis】前述のマスター装置の作業空間の幾つかの実施形態を概略的に示す。
図6ter】前述のマスター装置の作業空間の幾つかの実施形態を概略的に示す。
図7】本方法の幾つかの実施形態に係る、マスター装置の速度に基づいて検出可能な幾つかの異常を概略的に示す。
図8】本方法の幾つかの実施形態に係る、マスター装置の速度に基づいて検出可能な幾つかの異常を概略的に示す。
図9】前述のマスター装置の作業空間の幾つかの実施形態を概略的に示す。
図9bis】前述のマスター装置の作業空間の幾つかの実施形態を概略的に示す。
図10】マスター装置の一実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図10を参照すると、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムを制御するために使用される、術者により手で保持(又は支持)されるようになっている、機械的に拘束されない(すなわち、機械的に接地されない)手持ち式マスター装置の使用おいて少なくとも1つの異常/障害状態を特定及び認識及び/又は区別するための方法が記載される。
【0017】
そのような方法は、1つ以上のセンサによって、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の位置ベクトルを検出するステップと、次いで、前述の少なくとも1つの検出された位置ベクトルに基づいて、又は少なくとも1つの検出された位置ベクトルの少なくとも1つの成分に基づいて、少なくとも1つの検出可能な異常/障害状態を特定及び認識及び/又は区別するステップとを含む。
【0018】
前述の検出可能な異常/障害は、マスター装置の所定の作業空間に対するマスター装置の少なくとも誤った位置決めを含む。
【0019】
そのような検出可能な異常/障害のそれぞれは、異常/障害が検出された場合に実行されるべき少なくとも1つのシステム状態変化と関連付けられ、そのような少なくとも1つの状態変化は、遠隔操作状態から出ることを含む。
【0020】
実装オプションによれば、特定するステップは、前述の検出された位置ベクトルの少なくとも1つの成分に基づいて少なくとも1つの検出可能な異常/障害状態を特定するステップを含む。
【0021】
一実施形態によれば、本方法は、前記1つ以上のセンサによって、前記位置ベクトルの経時的変化を検出する更なるステップを含む。
【0022】
一実施形態によれば、本方法は、前述のマスター装置及びスレーブ装置を備えるとともに制御ユニットを更に備える、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムとの関連で実行される。
【0023】
マスター装置は、機械的に接地されず、外科手術中に外科医によって手で保持されるようになっているとともに、外科医の手動コマンドを検出してそれぞれの第1の電気コマンド信号を生成するように構成される。
【0024】
少なくとも1つのスレーブロボットアセンブリは、マスター装置によって制御される態様で、患者の解剖学的構造に作用するように構成された少なくとも1つのスレーブ外科用器具を備え、それにより、マスター装置の移動は、スレーブ装置の所望の及び制御されたそれぞれの移動をもたらす。
【0025】
コンピュータを備えた制御ユニットは、マスター装置から前述の第1の電気コマンド信号を受信し、第1の電気コマンド信号に基づいて第2の電気コマンド信号を生成し、第2の電気コマンド信号をスレーブロボットアセンブリに供給して、少なくとも1つのスレーブ外科用器具を作動させるように構成される。
【0026】
更に、制御ユニットは、少なくとも第3の電気信号を受信するために、又は検出された位置ベクトル及び/又は関連する経時的変化を表わす前記第1の電気信号を受信するために、前述の1つ以上のセンサに動作可能に接続され、少なくとも1つの検出可能な異常を特定する前述のステップを実行するように構成される。
【0027】
検出可能な異常/障害が許容される所定の空間限界外のマスター装置の禁止された位置決めを少なくとも検出することを含む方法実施形態によれば、本方法は、以下のステップ、すなわち、
-前述の所定の空間限界を表わす所定の限界面に対して、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも1つの点、又は前記マスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の検出された位置を比較するステップと、
-検出された位置が前述の所定の限界面の外側にある場合に、マスター装置の前記禁止された位置決め異常/障害を特定するステップと、
を含む。
【0028】
マスター装置に属する又はマスター装置と一体である少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の前述の位置、及び前述の所定の限界面は、遠隔操作のためのロボットシステムに関連付けられ、予め設定された点に所定の軸(X、Y、Z)及び原点Oを有する基準座標系(x、y、z)に対して規定されることに留意すべきである。それにより、マスター装置の作業空間は、特定の座標によって、且つ基準座標系/系に対して規定された幾何学的形状を有するボリュームである。
【0029】
前述の方法実施形態の実装オプションによれば、前述の許容される空間限界は、球状の作業空間又はボリュームとして規定され、前述の所定の限界面は、そのような球の球面である。
【0030】
前述の方法実施形態の別の実装オプションによれば、前述の許容される空間限界は、ボックスもしくは平行六面体の形態の、又は一般にはポリトープ(すなわち、半空間の凸状交差部)の形態の作業空間又はボリュームとして規定され、前述の所定の限界面は、そのようなボックスもしくは平行六面体、又はポリトープの表面である。
【0031】
医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムが操作コンソールを備える方法の実施形態によれば、前述の基準座標系は、ロボットシステムコンソール及び/又は前述の少なくとも1つの外科用椅子と一体である。
【0032】
一実施形態によれば、マスター装置の作業空間は、操作コンソールと一体であり、操作コンソールに拘束される。
【0033】
一実施形態によれば、マスター装置の作業空間は、術者の手及び拘束されない手持ち式マスター装置の動きを、術者の正しい姿勢、手足の可動性及び快適さを保証するボリューム内に含むように、操作コンソールに対して配置される。
【0034】
一実施形態によれば、作業空間のサイズ及び形状は、安全かつ快適な遠隔操作のために拘束されないマスター装置を用いて動作している間の外科医の姿勢、可動性及び動きに基づく。
【0035】
例えば操作コンソールと一体化された基準座標系などの基準座標系に対して規定された幾何学的形状を有する作業空間を提供することにより、拘束されないマスターで操作している間に外科医の姿勢及び可動性を最適化して、安全で快適な遠隔操作を確保することが可能であり、マスター装置がコンソールと一体化された作業空間の特定の限界面を超えて外科医によってもたらされる場合、システムは遠隔操作を制限又は中断する。
【0036】
一実施形態によれば、前記操作コンソールは、外科医が外科手術中に座るための少なくとも1つの座面を備える少なくとも1つの手術用椅子を備え、前記基準座標系は、前記少なくとも1つの手術用椅子と一体である。
【0037】
一実施形態によれば、方法は、所定の追跡ボリューム内のマスター装置の入力位置及び方向を検出するのに適した少なくとも1つの追跡システムを更に備える外科又は医療遠隔操作のための前記ロボットシステムに適用され、それにより、スレーブ外科用器具の作動は、マスター装置によって外科医によって与えられる手動コマンド及び/又はマスター装置の位置及び方向に依存する。
【0038】
そのような実施形態の実装オプションでは、前述のマスター装置作業空間は、前述の追跡ボリュームに含まれるか、又は追跡ボリュームのサブセットである。
【0039】
追跡ボリュームのそのようなサブセットを提供することにより、安全で快適な遠隔操作のために拘束されないマスター装置で作業しながら、外科医の姿勢、可動性、及び動きを最適化することが可能である。
【0040】
方法の実施形態によれば、位置を検出する前記ステップは、1つ以上の磁気センサによって実行される。
【0041】
磁気センサのそれぞれは、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも1つの点のそれぞれに配置され、遠隔操作外科手術のためのロボットシステムの一部に拘束された磁場発生器によって生成された磁場の局所値を検出するように構成される。
【0042】
そのような場合、基準座標系は、前述の磁気エミッタに由来し、3つの直交軸x、y、zを有する。
【0043】
ロボットシステムが追跡システムを備える上記で既に開示されている場合、前述の磁場発生器はそのような追跡システムに属する。
【0044】
他の方法実施形態によれば、測定及び/又は検出する前述のステップは、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムと関連付けられた及び/又はロボットシステムに拘束された少なくとも1つの光学センサ又はカメラによって実行される。
【0045】
そのような場合、前述の基準座標系は、光学センサ又はカメラの内部基準座標系である。
【0046】
上記で開示された実施形態の異なる可能な実装オプションによれば、前述の少なくとも1つの光学センサ又はカメラは、手術用椅子に拘束され、及び/又は一体化され、及び/又は外科医と一体になるように、外科医によって着用可能な支持体に取り付けられる。
【0047】
方法の実施形態によれば、遠隔操作開始空間が予め決定され、この遠隔操作開始空間は、マスター装置の作業空間に含まれ、すなわち、マスター装置の作業空間のサブセットである。
【0048】
そのような場合、本方法は、マスター装置の検出された位置が前述の遠隔操作開始空間内に位置する場合にのみ、遠隔操作の開始、又は準備チェックのステップの開始を可能にするステップを含む。
【0049】
マスター装置が共通の軸に対して相対的に回転又は並進するように拘束された2つの剛性部分を備える手持ち式の拘束されないマスター装置である方法の実施形態によれば、位置を検出する前述のステップは、それぞれのセンサによって、少なくとも2つの検出可能点、すなわち、マスター装置の前述の剛性部分のうちの一方に属する又はそれと一体の第1の点、及び装置の前述の剛性部分のうちの他方に属する又はそれと一体の第2の点の位置ベクトル及び/又は位置ベクトルの経時的変化を検出するステップを含む。
【0050】
実際、本方法は、例えば、マスター装置の前述の剛性部分のうちの少なくとも一方(又は両方)の長手方向延在部に直交する共通の横軸に対して回転するように弾性的に拘束された2つの剛性部分を有する「グリッパ」構造を有するマスター装置(例えば、図1及び図2に示す)に適用することができる。
【0051】
本方法は、例えば、2つの剛性部分を有する「ペン」構造を有するマスター装置(図10)であって、2つの剛性部分がマスター装置の前述の部分の少なくとも一方(又は両方)の長手方向延在部と一致する長手方向軸に沿って並進するように弾性的に拘束されたマスター装置に適用することもできる。
【0052】
本方法の様々な想定し得る実施形態によれば、前記計算するステップは、前記少なくとも2つの検出可能点の位置ベクトルを計算する、又は前述の少なくとも2つの検出点のうちの1つの位置ベクトルを計算するステップを含む。
【0053】
更なる実装オプションによれば、前述の計算ステップは、以下の更なる点、すなわち、前記2つの検出点の間の中間点及び/又は前記マスター装置の重心、及び/又はマスター装置回転関節、及び/又はマスター装置角柱関節の少なくとも1つの位置ベクトルを検出するステップを更に含む。
【0054】
マスター装置本体が2つのチップ又は自由端を備え、第1のチップ又は自由端がマスター装置の剛性部分の一方に属する又はそれと一体であり、第2のチップ又は自由端が装置の剛性部分の他方に属する又はそれと一体である方法実施形態によれば、前述の2つの検出可能点は、マスター装置の前述の2つのチップ又は自由端のそれぞれに対応する、及び/又はそれらと関連付けられる。
【0055】
一実施形態によれば、マスター装置が許容される空間限界外にあると決定される場合、本方法は、ロボットシステムによる遠隔操作を直ちに中断する更なるステップを含む。そのような場合、異常の検出によって引き起こされるシステム状態変化は、遠隔操作状態からのロボットシステムの即時退出、又は遠隔操作状態の即時停止である。
【0056】
好ましくは、許容される空間限界は、マスター装置の位置の物理的測定空間に対応しない、遠隔操作のために特別に構築された作業空間を画定する。
【0057】
一実施形態によれば、マスター装置が近接閾値e内で前述の空間限界及び/又は方向限界に近接していると決定されるとき、本方法は、音響及び/又は視覚的通信信号によって、許容される空間限界に対する装置の近接条件を術者に通信し、術者が空間限界から出て、したがって遠隔操作を終了することを回避するように行動できるようにする更なるステップを含む。
【0058】
実装オプションによれば、前述の通信信号は、近接閾値eと空間限界に対応する表面との間の間隔において、マスター装置又はスレーブ装置の空間限界からの距離が減少するにつれてその周波数を増大させる音響信号である。
【0059】
実装オプションによれば、前述の通信信号は視覚信号であり、近接閾値eと空間限界に対応する表面との間の間隔において、空間限界からのマスター装置又はスレーブ装置の距離が減少するにつれて、視覚信号の通信の周波数が増大する。
【0060】
そのような実施形態の様々な想定し得る実装オプションによれば、本方法は、マスター装置が許容される空間限界に戻ったことがリアルタイムで検出されるときにロボットシステムの遠隔操作の再開を可能にするステップ、或いは、マスター装置が許容される空間限界に戻ったことがリアルタイムで検出された場合でもロボットシステムの遠隔操作の再開を阻止し、遠隔操作及び/又は予備再位置合わせ操作を準備及び開始するための手順を再開するステップを含む。前述の許容される空間限界は、マスター装置の作業空間又は遠隔操作開始空間によって規定される。
【0061】
一実施形態によれば、マスター装置作業空間は、遠隔操作においてスレーブ装置を移動させることができる遠隔操作ボリュームとして規定される。
【0062】
一実施形態によれば、前述の遠隔操作ボリュームの周りに、機械が制限された遠隔操作を提供する中断された遠隔操作ボリュームが画定される。
【0063】
より詳細には、中断された遠隔操作ボリュームは、マスター装置作業空間の周りに延在し、マスター装置作業空間よりも大きく、そのような中断された遠隔操作ボリュームは、ロボットシステムが制限された遠隔操作に対応する中断された遠隔操作をもたらすボリュームである。
【0064】
好ましくは、そのような制限された遠隔操作は、制御ポイントの並進移動を防止する。別の実装オプションによれば、制限された遠隔操作は、スレーブ装置のいかなる移動も防止する。
【0065】
中断された遠隔操作を提供する前述の実施形態において、本方法は、マスター装置が作業空間限界を出て中断された遠隔操作ボリュームに入るときに、遠隔操作状態から中断された遠隔操作状態に切り替える更なるステップを含む。
【0066】
実装オプションでは、中断された遠隔操作ボリュームからの進入又は退出は、音響及び/又は視覚及び/又は触覚信号でユーザに示される。
【0067】
一実施形態によれば、遠隔操作ボリュームの閾値を超えると、及び/又は中断された遠隔操作ボリュームの外部閾値を超えると、遠隔操作が終了する。
【0068】
一実施形態では、本方法は、マスター装置が作業空間限界内で中断された遠隔操作ボリュームから戻ったことが検出されるときに、遠隔操作の再開と共にロボットシステムが遠隔操作状態に戻ることを可能にするステップを含む。
【0069】
一実施形態では、マスターを中断された遠隔操作ボリュームから遠隔操作ボリュームに切り替えると、システムは動きを伴う位置合わせのステップに入り、スレーブ装置はマスター装置の新しい姿勢(位置、方向)に達するように動くことが可能になる。
【0070】
実装オプションでは、動きを伴う位置合わせのステップは、スレーブ装置の外科用器具の制御ポイントの方向のみが動くことを可能にする。
【0071】
実装オプションによれば、スレーブ装置の外科用器具の開閉自由度(「把持」)の方向及び自由度を移動させることが可能である。
【0072】
一実施形態では、動きを伴う位置合わせのステップへの進入は、幾つかの検証チェックに合格した場合にのみ許可され、前記検証チェックは、少なくとも以下のチェック、すなわち、特定の閾値を下回るマスター-スレーブ方向の位置ずれ、及び/又はスレーブ作業空間内で到達可能なマスターの方向姿勢を含む。
【0073】
マスター装置及びスレーブ装置の動きがスケールファクタによってスケーリングされる方法の実施形態によれば、スレーブ装置の前述の作業空間及び/又は遠隔操作開始空間及び/又は中断された遠隔操作ボリュームは、スケールファクタに伴って増大する。
【0074】
方法の実施形態によれば、ロボットシステムが2つのマスター装置を備え、方法は、マスター装置のうちの1つだけでも許容される空間限界を出る場合、両方のマスター装置の遠隔操作を終了する、及び/又は遠隔操作を中断するステップを含む。
【0075】
別の実施形態によれば、本方法は、スレーブ装置が許可されたスレーブ装置の作業空間内にあることを検証する更なるステップを含む。
【0076】
そのような場合、スレーブ装置が許容されるスレーブ装置作業空間の外側にあると検証される場合、方法は、スレーブ装置位置決め異常が発生したことをユーザに通知するステップと、ロボットシステムによる遠隔操作を直ちに停止するステップとを含む。
【0077】
そのような実施形態の様々な想定し得る実装オプションによれば、本方法は、マスター装置の更なる移動に続いて、スレーブ装置がスレーブ装置の許容される空間限界に戻ったことがリアルタイムで検出されるときに、ロボットシステムの遠隔操作の再開を可能にするステップを更に含み、或いは、本方法は、スレーブ装置がスレーブ装置の許容される空間限界に戻ったことがリアルタイムで検出される場合でも、ロボットシステムの遠隔操作の再開を阻止するステップと、遠隔操作及び/又は予備再位置合わせ操作を準備及び開始するための手順を再開するステップとを含む。
【0078】
本方法の実装オプションによれば、スレーブ装置の作業空間は、スレーブ装置の関節式外科用器具(又は「エンドエフェクタ」)の可能な姿勢及び/又は方向の結果として、スレーブ装置の制御ポイントによって到達可能な全ての位置の空間セットを含む。
【0079】
一実施形態によれば、本方法は、検出されたそれぞれの位置ベクトルの経時的変化に基づいて、マスター装置に属する又はマスター装置と一体のる前記少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の線速度及び/又は角速度及び/又は直線加速度及び/又は角加速度を計算する更なるステップを含む。
【0080】
別の実施形態によれば、本方法は、検出されたそれぞれの位置ベクトルの時間的変化に基づいて、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の前述の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の線速度又は角速度を計算する更なるステップを含む。
【0081】
ここで、本発明の更なる態様を再び図1図10を参照して説明し、これは、先と同様に、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムを制御するために使用される、術者によって保持される(又は支持される)のに適した、機械的に拘束されない(すなわち、接地されない)手持ち式マスター装置の使用において少なくとも1つの異常/障害状態を特定及び認識及び/又は区別するための方法に関する。
【0082】
そのような方法は、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の速度ベクトルを検出又は計算するステップと、前述の少なくとも1つの検出された速度ベクトルに基づいて、又は少なくとも1つの検出された位置ベクトルの少なくとも1つの成分に基づいて、少なくとも1つの検出可能な異常/障害状態を特定及び認識及び/又は区別するステップとを含む。
【0083】
前述の検出可能な異常/障害は、以下の異常/障害、すなわち、マスター装置の過度な線速度、マスター装置の過度な角速度、スレーブ装置が追従できないこと、マスター装置の過度な振動、マスター装置の不随意又は異常な開放のうちの少なくとも1つを含む。
【0084】
前述の検出可能な異常/障害のそれぞれは、異常/障害が検出された場合に実行されるべき少なくとも1つのシステム状態変化に関連付けられる。そのような状態変化は、遠隔操作状態からの終了又は遠隔操作状態の中断を含む。
【0085】
方法の実施形態によれば、速度ベクトルを検出又は計算するステップは、
-マスター装置に属する又はマスター装置と一体の前述の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた前述の少なくとも1つの仮想点の位置ベクトル、及び位置ベクトルの経時的変化を検出するステップと、
-検出された位置ベクトル及びそれぞれの経時的変化に基づいて、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の前述の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた前述の少なくとも1つの仮想点の速度ベクトルを計算するステップと、
を含む。
【0086】
別の方法実施形態によれば、速度ベクトルを検出又は計算するステップは、1つ以上の速度センサによって速度ベクトルを検出するステップを含む。
【0087】
方法の実施形態によれば、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた少なくとも1つの仮想点の線速度が、検出又は計算される。
【0088】
別の方法実施形態によれば、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた少なくとも1つの仮想点の角速度が検出又は計算される。
【0089】
一実施形態によれば、本方法は、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムに適用され、本ロボットシステムは、
-機械的に接地されず、外科手術中に外科医によって手で保持されるようになっているとともに、外科医の手動コマンドを検出してそれぞれの第1の電気コマンド信号を生成するように構成される前述のマスター装置と、
-少なくとも1つのスレーブロボットアセンブリであって、マスター装置の移動がスレーブ装置の所望の及び制御されたそれぞれの移動をもたらすように、マスター装置によって制御される態様で、患者の解剖学的構造に作用するように構成される少なくとも1つのスレーブ外科用器具を備える、少なくとも1つのスレーブロボットアセンブリと、
-少なくとも1つのスレーブ外科用器具を作動させるために、マスター装置から前述の第1の電気コマンド信号を受信し、第1の電気コマンド信号に基づいて第2の電気コマンド信号を生成し、第2の電気コマンド信号をスレーブロボットアセンブリに供給するように構成される、コンピュータを備える制御ユニットと、
を備える。
【0090】
制御ユニットは、前記検出又は計算された速度ベクトルを表わす少なくとも第3の電気信号を受信するために、前記1つ以上のセンサに動作可能に接続される。
【0091】
少なくとも1つの検出可能な異常/障害を特定及び認識及び/又は区別する前述のステップは、そのような制御ユニットによって実行される。
【0092】
一実施形態によれば、速度ベクトルは基準座標系と呼ばれる。
【0093】
実装オプションによれば、医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムは、操作コンソールを備え、前述の基準座標系は、前述のロボットシステムコンソールと一体である。
【0094】
一実装オプションによれば、方法は、所定の追跡ボリューム内のマスター装置の入力位置及び方向及び/又は速度を検出するのに適した少なくとも1つの追跡システムを更に備える外科又は医療遠隔操作のためのロボットシステムに適用され、それにより、スレーブ外科用器具の作動は、マスター装置によって外科医により与えられる手動コマンド及び/又はマスター装置の位置及び方向に依存する。
【0095】
そのような場合、前述の基準座標系は、前記追跡システムによって規定される。
【0096】
マスター装置が、共通の軸に対して相対的に回転又は並進するように拘束された2つの剛性部分を備える、拘束されない手持ち式マスター装置である、方法の実装オプションによれば、速度を検出及び/又は計算する前述のステップは、マスター装置の剛性部分のうちの一方に属する又はそれと一体である第1の点と、装置の剛性部分のうちの他方に属する又はそれと一体である第2の点との少なくとも2つの検出可能点の線速度又は角速度を検出及び/又は計算することを含む。
【0097】
本方法の別の実装オプションによれば、マスター装置の同じ構成を更に参照すると、速度を検出及び/又は計算する前述のステップは、少なくとも2つの検出可能点の線速度又は角速度、及び/又は以下の更なる点、すなわち、2つの検出点間の中間点及び/又はマスター装置の重心、及び/又はマスター装置の回転関節、及び/又はマスター装置の角柱関節のうちの少なくとも1つの線速度又は角速度を検出及び/又は計算するステップを含む。
【0098】
一実装オプションによれば、マスター装置本体は、2つの自由端又はチップ、すなわち、マスター装置の剛性部分のうちの一方に属する又はそれと一体の第1の自由端又はチップ、及び装置の剛性部分のうちの他方に属する又はそれと一体の第2の自由端又はチップを備える。そのような場合、前述の2つの検出可能点は、マスター装置の前述の2つの自由端又はチップにそれぞれ対応及び/又は関連付けられる。
【0099】
方法の実施形態によれば、前述の異常/障害のうちの1つのみが決定される場合でも、システムに課される状態の変化は、遠隔操作状態からのロボットシステムの即時退出、又は遠隔操作状態の即時停止である。
【0100】
前述の実施形態の実装オプションによれば、方法は、既に検出された異常/障害の終了がリアルタイムで検出されるときにロボットシステムの遠隔操作の再開を可能にするステップを更に含む。
【0101】
前述の実施形態の実装オプションによれば、方法は、代わりに、既に検出された異常の停止がリアルタイムで検出される場合でもロボットシステムの遠隔操作の再開を阻止するステップと、遠隔操作及び/又は予備再位置合わせ操作の準備及び開始のための手順を再開するステップとを提供する。
【0102】
検出可能な異常/障害がマスター装置の過度な線速度又は角速度に関連する異常/障害である実施形態によれば、本方法は、マスター装置の検出された線速度又は角速度を線速度又は角速度閾値と比較するステップと、マスター装置の検出された線速度又は角速度が前記線速度閾値又は角速度閾値を超える場合に、マスター装置の過度な速度に関連する前述の異常を特定するステップとを含む。
【0103】
そのような実施形態の実装オプションによれば、マスター装置の過度な線速度又は角速度に関連する前記異常が検出されると、ロボットシステムは遠隔操作を終了する。
【0104】
そのような実施形態の実装オプションによれば、マスター装置の過度な線速度又は角速度に関連する前述の異常/障害が検出されると、ロボットシステムは異なる機械状態に入る。
【0105】
実装オプションによれば、そのような異なる機械状態は、中断された遠隔操作状態、すなわち、少なくともスレーブ装置の制御ポイントの並進移動を防止する、又はスレーブ装置の制御ポイントの回転移動を制限する、又はスレーブ装置の制御ポイントの全ての移動を防止する制限された遠隔操作である。
【0106】
別の実装オプションによれば、前述の制限された遠隔操作ステップにおいて、本方法は、スレーブ装置の並進が阻止されている間に、スレーブ装置が方向を変えて移動する動きを伴う位置合わせのステップを実行し、マスター装置の前記方向でスレーブ自体を位置合わせするステップを含む。
【0107】
検出可能な異常/障害が、スレーブ装置が追従できないことに関連する異常/障害である実施形態によれば、方法は、マスター装置の正確な追従の条件下に留まるために、マスター装置の検出された線速度又は角速度を、スレーブ装置により許容できる最大線速度又は角速度に関連する速度閾値と比較するステップと、マスター装置の検出された線速度又は角速度が最大許容線速度又は角速度に関連する前述の速度閾値を超える場合に、スレーブ装置が追従できないことに関連する前述の異常を特定するステップとを含む。
【0108】
検出可能な異常/障害がマスター装置の過度な振動に関連する異常/障害である実施形態によれば、本方法は、マスター装置の検出又は計算された速度ベクトルの方向変化の数又は頻度を検出又はカウントするステップと、次いで、前記方向変化の数又は頻度をそれぞれの閾値と比較するステップと、最後に、カウンド又は検出された方向変化の数又は頻度が前述のそれぞれの閾値を超える場合に、マスター装置の過度な振動に関連する前述の異常/障害を特定するステップとを含む。
【0109】
先と同様に、検出可能な異常/障害がマスター装置の過度な振動に関連する異常/障害である実施形態によれば、方法は、速度ベクトルモジュラスの移動及び/又は変化を検出するステップと、次いで、速度ベクトルモジュラスの移動及び/又は変化がそれぞれの閾値を超える場合に、マスター装置の過度な振動に関連する前述の異常/障害を検出するステップとを含む。
【0110】
マスター装置本体がマスター装置本体の開閉の自由度を規定する共通の軸を中心に少なくとも回転するように関節、好ましくは弾性関節で拘束された2つの剛性部分を備える実施形態によれば、検出可能な異常/障害は、マスター装置の不随意又は異常な開放である。
【0111】
そのような実施形態の実装オプションによれば、本方法は、以下のステップ、すなわち、
-検出及び/又は計算された速度ベクトルに基づいて、マスター装置本体の2つの剛性部分の開放線速度を計算するステップと、
-計算された開放線速度を、弾性関節の弾性剛性に依存し得る閾値線速度v_thrと比較するステップと、
-前述の計算された開放速度が前述の閾値線速度v_thrよりも大きい場合に、マスター装置の不随意の開放に関連する異常/障害状態を特定するステップと、
を含む。
【0112】
そのような実施形態の別の実装オプションによれば、本方法は、以下のステップ、すなわち、
-検出及び/又は計算された速度ベクトルに基づいて、マスター装置本体の2つの剛性部分の開放角速度を計算するステップと、
-計算された開放角速度を、弾性関節の弾性剛性に依存し得る閾値角速度ω_thrと比較するステップと、
-前述の計算された開放角速度が前述の閾値角速度ω_thrよりも大きい場合に、マスター装置の不随意の開放に関連する異常/障害状態を特定するステップと、
を含む。
【0113】
検出可能な異常/障害が追跡基準座標系の原点の変位に関連する異常/障害である実施形態によれば、方法は、以下のステップ、すなわち、
-マスター装置の位置測定に使用されるそれぞれの実センサ又は仮想センサの線速度を計算するステップと、
-所与の時間窓内で各速度ベクトルを一次定成分で表わすことができるかどうかを計算するステップと、
-結果として得られた全ての速度ベクトルが互いに平行でコヒーレントであるかどうか、又はそれらの速度ベクトルが適切な速度ベクトル領域に属するかどうかを計算するステップと、
-互いに平行でコヒーレントな速度ベクトルの前述の状態、又は適切な速度ベクトル領域に属する前述の状態が発生しない場合に、基準追跡座標系の原点の変位に関連する異常/障害を特定するステップと、
を含む。
【0114】
一実施形態によれば、本方法は、以下に述べる検出可能な全ての異常/障害、すなわち、マスター装置の過度な線速度、マスター装置の過度な角速度、スレーブ装置が追従できないこと、マスター装置の過度な振動、マスター装置の不随意又は異常な開放を検出するステップを含む。
【0115】
ロボットシステムが2つのマスター装置を備える実施形態によれば、本方法は、マスター装置のうちの1つだけでも前述の検出可能な異常/障害のいずれか1つの影響を受ける場合、両方のマスター装置の遠隔操作を終了すること及び/又は遠隔操作を中断するステップを含む。
【0116】
外科又は医療遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステムのマスター装置で特定された異常/障害を管理するための方法がここで説明される。
【0117】
そのような方法は、前述の実施形態のいずれかに係る少なくとも1つの異常/障害状態を特定するための方法を実行するステップを含み、異常/障害の少なくともいずれかが決定される場合、方法は、スレーブ装置の外科用器具の遠隔操作及び移動を直ちに停止又は中断するステップを含む。
【0118】
一実施形態によれば、本方法は、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の直線加速度又は角加速度を加速度センサによって検出する更なるステップを含む。
【0119】
既に前述し、本明細書で更に詳述した別の実施形態によれば、本方法は、前述の検出された位置ベクトル又は前述の検出又は計算された速度ベクトル、又はそれぞれの経時的変化に基づいて、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の直線加速度又は角加速度を計算するステップを含む。
【0120】
そのような実施形態の実装オプションによれば、加速度ベクトルを検出及び計算する前述のステップは、位置ベクトルの経時的変化を表わすベクトルのN個のサンプルのフローティングウィンドウによって、及び把持に関連する自由度に関しては2次多項式で、マスター装置の並進及び方向に関連する自由度に関しては3次多項式で補間することによって加速度ベクトルを計算するステップを含む。
【0121】
実装オプションによれば、加速度は、速度ベクトルの検出及びその時間変化に基づいて計算される。
【0122】
実装オプションによれば、加速度は1つ以上のセンサによって直接検出され、そのような1つ以上のセンサは加速度計である。
【0123】
本方法の様々な想定し得る実施形態によれば、異常を検出するための基礎として、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の前述の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点のそれぞれに関して、直線加速度及び/又は角加速度及び/又は線速度及び/又は角速度及び/又はデカルト座標の位置及び/又は極座標もしくは角度座標の位置が計算又は検出される。
【0124】
方法の実施形態によれば、加速度ベクトルを検出及び/又は計算する前述のステップは、少なくとも2つのセンサによって、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも2つの点のそれぞれの加速度ベクトルを検出及び/又は計算するステップと、次いで、センサが位置される点間の中間点に対応する、マスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の加速度ベクトルを計算するステップとを含む。
【0125】
例えば、「グリッパ」マスター装置では、そのような中間点は、「グリッパ」マスター装置の1つ以上のセンサによって記述される開放外周円弧上に位置され得る。
【0126】
制御点が1つしかない場合、6自由度、すなわち、位置の3自由度及び方向の3自由度を検出することができる。
【0127】
2つの制御点が設けられる場合、マスター装置本体の開閉角度を表わす把持に関連する第7の自由度を検出することも可能である。
【0128】
一実施形態によれば、本方法は、前述の加速度ベクトルに基づいて、以下に言及されるもののうちの1つ以上の更なる異常/障害、すなわち、マスター装置の不随意の落下及び/又はマスター装置の過度の加速及び/又はマスター装置の突然の不随意の開放を検出する更なるステップを含む。
【0129】
検出可能な異常/障害がマスター装置の不随意の落下である方法実施形態によれば、本方法は、以下のステップ、すなわち、
-2つの検出点のうちの少なくとも1つの、重力軸と平行な垂直加速度成分ayを検出及び/又は計算するステップと、
-検出又は計算された垂直加速度成分ayを垂直加速度閾値ay_thrと比較するステップと、
-ay>ay_thrの関係に従って、前述の垂直加速度成分ayが前述の垂直加速度閾値(ay_thr)よりも大きい場合、前記マスター装置の不随意の落下に関連する異常/障害を特定するステップと、
を含む。
【0130】
実装オプションによれば、垂直加速度閾値ay_thrは、重力加速度gに等しい、又はg付近の値である。
【0131】
一実装オプションによれば、マスター装置の前述の少なくとも2つの検出点のそれぞれの加速度ベクトルは、冗長性及び/又は更なる検証を与えるために計算される。
【0132】
実際、前述の少なくとも2つの点の計算された加速度測定値の一貫性は、異常決定の推定を改善することを可能にし、推定プロセスに必要な時間窓を更に削減する。
【0133】
2つの点の加速度の計算された測定値の不一致は、マスター装置の回転による落下、又は2つのセンサ間の剛性拘束の破損と関連付けられ得る。
【0134】
マスター装置の同じ機械的部分に2つのセンサを装着する特定のケースでは、測定の挙動が純粋な冗長性である。
【0135】
検出可能な異常/障害がマスター装置の過度の加速度(例えば、ユーザによる取り扱いにおいて付与される)である方法実施形態によれば、本方法は、以下のステップ、すなわち、
-前述の少なくとも2つの検出点のうちの少なくとも1つの加速度ベクトルモジュラスatotを検出及び/又は計算するステップと、
-検出及び/又は計算された加速度ベクトルモジュラスatotを総加速度閾値atot_thrと比較するステップと、
-atot>atot_thrの関係に従って、前述の加速度ベクトルモジュラスatotが前述の総加速度閾値atot_thrよりも大きい場合には、マスター装置の過度の加速度に関連する異常/障害を検出するステップと、
を含む。
【0136】
一実装オプションによれば、前記垂直加速度閾値ay_thrは、前記総加速度閾値atot_thrよりも低い。
【0137】
例えば、atot=3ayの関係を使用することができる。
【0138】
一実装オプションによれば、総加速度閾値atot_thr(モジュラス)は、2g~4gの範囲に属する。
【0139】
一実施形態によれば、マスター装置の両方の検出点の加速度が計算される。
【0140】
そのような実施形態の異なる想定し得る実装オプションによれば、前述の検出点のうちの少なくとも1つが閾値加速度を超える場合、又は仮想中間点が閾値加速度を超える場合、又は前述の2点間の相対加速度が閾値を超える場合、警報トリガ条件が発せられる。
【0141】
実装オプションによれば、前述の総加速度閾値atot_thrは、マスター装置とスレーブ装置との間の動きのスケールファクタの減少に伴って、及び/又はユーザによって選択されて遠隔操作されたマスター-スレーブ移動に適用されるスケールファクタの減少に伴って増大するように規定される。
【0142】
応用例によれば、ロボット超微細手術の分野では、スケーリングファクタは、7倍~20倍の範囲内で規定することができる。明らかに、このようなスケーリングファクタ(例えば、スレーブ動作は20倍にスケーリングされる)が大きいほど、トリガ閾値は大きくなる。
【0143】
典型的な実装オプションでは、スケーリングファクタは、特定の状況に応じてユーザによって設定され得ることに留意すべきである。
【0144】
マスター装置がユーザの手でしっかりと押圧又は保持されないときに少なくとも角度的にそのような部分を開く傾向がある弾性関節で互いに接続された2つの剛性部分から成る方法の実施形態によれば、検出可能な異常/障害は、マスター装置の不随意の開放である。このような状況は、特に、例えばマスター装置が手から離れてしまったために外科医が制御を失った場合に起こる可能性があり、落下するマスター装置は、関節のばねに起因してスナップ留めによって開く。
【0145】
そのような場合、本方法は、以下のステップ、すなわち、
-(前述のように)前記2つの検出可能点のそれぞれの加速度ベクトル及び/又はそれぞれの経時的変化を検出及び/又は計算するステップと、
-前述の検出及び/又は計算された加速度ベクトルに基づいて、マスター装置の2つの剛性部分の開放角加速度ωを計算するステップと、
-計算された開放角加速度ωを、弾性関節の弾性剛性に依存する閾値角速度ω_thrと比較するステップと、
-前述の計算された開放角速度ωが前述の閾値角速度(ω_thr)よりも大きい場合に、マスター装置の不随意の開放に関連する異常/障害状態を特定するステップと、
を含む。
【0146】
同様の実装オプションによれば、計算、比較、及び特定の前述のステップは、角速度ではなく、角加速度又は直線加速度に対して実行される。
【0147】
別の実装オプションによれば、マスター装置が2つの剛性部分から成り、該剛性部分がユーザの手でしっかりと押圧又は保持されないときに少なくとも角度的にそのような部分を開く傾向がある弾性関節で互いに接続され、検出可能な異常/障害がマスター装置の不随意の開放である場合に再び注意を向けると、方法は、以下のステップ、すなわち、
-2つの検出可能点のそれぞれの位置ベクトル及びそれぞれの経時的変化を検出するステップと、
-検出された位置ベクトルの経時的変化に基づいて、前述の2つの検出可能点間の距離の経時的変化を計算するステップと、
-前述の距離の経時的変化に基づいて、マスター装置の開放線速度vを計算するステップと、
-計算された開放線速度vを閾値線速度v_thrと比較するステップと、
-v>v_thrである場合に前述の異常状態を特定するステップと、
を含む。
【0148】
方法の実施形態によれば、所定の空間限界外でのマスター装置の禁止された位置決めを検出する、所定の空間限界外でのスレーブ装置の禁止された位置決めを検出する、マスター装置の過度の速度、スレーブ装置が追従できないこと、マスター装置の過度の振動、及びマスター装置の更なる不随意の落下、マスター装置の過度の加速、並びにマスター装置の突然の不随意の開放の前述の異常/障害が全て同時に検出される。
【0149】
好適には、そのような実施形態は、最大限の可能な安全性を目的として、広範囲の制御を得ることを可能にする。
【0150】
外科又は医療遠隔操作のためのマスター-スレーブロボットシステムのマスター装置に見られる異常を管理するための方法が、本発明に更に含まれる。
【0151】
そのような方法は、前述の実施形態のいずれか1つに係る少なくとも1つの異常状態を特定するための方法を実行するステップを含む。
【0152】
そのような方法は、前述の異常/障害の少なくともいずれか1つが決定される場合、患者の安全を保護するために、遠隔操作及びスレーブ装置の外科用器具(又は「エンドエフェクタ」の移動を直ちに遮断又は中断するステップを更に含む。
【0153】
再び図1図10を参照すると、本発明に含まれる医療又は外科遠隔操作のためのロボットシステムが本明細書に記載される。
【0154】
そのようなロボットシステムは、少なくとも1つのマスター装置と、少なくとも1つのスレーブ装置と、制御ユニットとを備える。
【0155】
少なくとも1つのマスター装置は、機械的に接地されず、外科手術中に外科医によって手で保持されるようになっているとともに、外科医の手動コマンドを検出してそれぞれの第1の電気コマンド信号を生成するように構成される。
【0156】
少なくとも1つのスレーブ装置又はスレーブロボットアセンブリは、それぞれの少なくとも1つのマスター装置によって制御される態様で、患者の解剖学的構造に作用するように構成された少なくとも1つのスレーブ外科用器具を備える。
【0157】
コンピュータを備えた制御ユニットは、マスター装置から前述の第1の電気コマンド信号を受信し、第1の電気コマンド信号に基づいて第2の電気コマンド信号を生成し、第2の電気コマンド信号をスレーブロボットアセンブリに供給して、少なくとも1つのスレーブ外科用器具を作動させるように構成される。
【0158】
ロボットシステムの制御ユニットは、以下の動作、すなわち、
-前記制御ユニットが動作可能に接続される1つ以上のセンサ(S1,S2;585,595;785,795;885,895)によって、マスター装置に属する又はマスター装置と一体の少なくとも1つの点、又はマスター装置と一意的に且つ強固に関連付けられた仮想点の位置ベクトルを検出する動作と、
-前述の少なくとも1つの検出位置ベクトルに基づいて、又は少なくとも1つの検出位置ベクトルの少なくとも1つの成分に基づいて、少なくとも1つの検出可能な異常/障害状態を特定及び認識及び/又は区別する動作と、
を実行するように構成される。
【0159】
前述の検出可能な異常/障害は、マスター装置の所定の作業空間(315;415;415,425;515;615;615,625;715;815;915)に対するマスター装置の少なくとも誤った位置決めを含む。
【0160】
前述の検出可能な異常/障害のそれぞれは、異常/障害が検出された場合に実行されるべき少なくとも1つのシステム状態変化に関連付けられ、そのような少なくとも1つの状態変化は、遠隔操作状態から出ることを含む。
【0161】
ロボットシステムの異なる実施形態によれば、ロボットシステムの制御ユニットは、本明細書に示される実施形態のいずれか1つに係る少なくとも1つの異常/障害状態を特定するための方法を実行するように更に構成される。
【0162】
ロボットシステムの一実施形態によれば、ロボットシステムの制御ユニットは、本明細書に示される実施形態のいずれか1つに係るマスター-スレーブロボットシステムのマスター装置で特定された異常/障害を管理するための方法を実行するように更に構成される。
【0163】
ロボットシステムの一実施形態によれば、マスター装置作業空間の周りで延在し、マスター装置作業空間よりも大きい、中断された遠隔操作ボリューム919が画定される。そのような中断された遠隔操作ボリュームは、ロボットシステムが中断された遠隔操作、すなわち、少なくともスレーブ装置の制御ポイントの並進移動を防止する、又はスレーブ装置の制御ポイントの回転移動を制限する、又はスレーブ装置の制御ポイントの全ての移動を防止する制限された遠隔操作をもたらすボリュームである。
【0164】
そのような場合、ロボットシステムの制御ユニットは、マスター装置が作業空間限界を出て、中断された遠隔操作ボリュームに入ると、遠隔操作状態から中断された遠隔操作状態に切り替えるように更に構成される。
【0165】
システムの実装オプションでは、マスター装置本体は、それぞれの所定の位置に1つ以上のセンサを受け入れるための座部を備える。
【0166】
システム実施形態によれば、マスター装置本体は使い捨てであり、したがって一般にはプラスチックで作られる。
【0167】
システムの別の実施形態によれば、マスター装置本体は、金属(例えば、チタン)で作られ、滅菌可能である。
【0168】
以下、図1図10を参照して、既により一般的な用語で規定された方法の幾つかの実施形態を、非限定的な例として更に詳述する。
【0169】
マスター装置の異常チェックは、実際の動きに対して最小の待ち時間で介入するために、遠隔操作のためのロボットシステムに導入される。
【0170】
一実施形態において、実行される一連の動作行動は、例えば加速に関して、マスター装置の全ての移動自由度に関する情報の取得、次いで、取得された信号のフィルタリング、マスターの1つ以上の異常チェックの評価、実行されるチェックに基づくマスター装置の任意の障害又は異常の検出、ロボットシステムの機械状態の制御ユニットと、ユーザインタフェースUlと、スレーブ装置の端点との通信を含む。
【0171】
本方法の幾つかの実施形態(既に述べた)で実行される異常/障害チェックの更なる詳細は、非限定的な例として以下に提供される。
【0172】
マスター装置の落下(「マスター落下」)
このチェックの目的は、外科医の手からのマスター装置の不随意の落下を特定することである。そのようなチェックは、(感圧面などの他の量を検出するための更なるセンサを必要とせずに)マスター装置の加速度(又は位置)の検出に基づく。
【0173】
この原理は、加速度を検出すること、又は位置情報から加速度を(ノイズの影響さえも)導出すること、及び重力ベクトルの(下向きの)方向に沿った加速度の瞬時値を計算することにある。
【0174】
そのような加速度が重力加速度に匹敵する閾値に達すると、このチェックに関して異常警告が発せられる。
【0175】
以下では、グローバル基準系において、重力場が-Y軸に沿って方向されると仮定する。
【0176】
例えば、加速度推定は、Y軸の多項式フィッティングの使用、次いでその係数を操作することによる多項式の二重導出に基づく。
【0177】
様々な使用可能なフィッティング技術の中でも、例えば、Solezky-Golayフィルタに基づく解決策を挙げることができる。この解決策は、FIR(有限インパルス応答)フィルタのように導出された多項式を表すことを特徴とし、これは、2W+1サンプルの窓を取得し、それに行列を乗算することから動作可能に成る。そのような行列は、2つのパラメータ、すなわち窓のサイズ(半値幅Wを有する)及び多項式の次数に依存する。
【0178】
窓のサイズは、サンプリング時間、計算における所望の待ち時間、及び信号雑音に依存する。
【0179】
多項式の次数は、位置信号の性質に依存する。
【0180】
フィルタは、例えば、文献で知られている関係に従って表わすことができるカットオフ周波数を有するローパスフィルタである。
Cutoff(Hz)=Dt*(Order+1)/(3.2*Window-4.6)
【0181】
実装オプションによれば、マスター装置は2つの検出位置(すなわち、2つのセンサ)を有する。このような場合、いずれか1つでも閾値を超えると、異常警告が発せられる。
【0182】
前述のアルゴリズムでは、推定に使用される窓が広いほど、推定自体が良好になることに留意すべきである。一方、窓が狭いほど、反応時間は速くなる。
【0183】
前述のニーズ間の適切な妥協点を選択するための基準は、マスター装置の直感的でない望ましくない移動(例えば、マスターの落下動作)中に制御対象スレーブ装置が移動する空間の量である。非直感的な移動中に制御されたスレーブ装置によって経路に許容される最大距離をDと規定し、この状況でのマスターの最大速度をMと規定すると、最大窓幅Wは以下の関係によって表される。
W=2D/M/T+1
ここで、Tはサンプリング時間である。
【0184】
最大加速度の超過
別のタイプの異常チェックは、任意の方向に沿ったマスター装置の過剰な加速度である、非直感的な動きに関連する。この事象は、「マスター落下」の場合について前述したのと同じ技術を使用して、成分ごとの加速度成分の検出又は推定に基づいて特定することができる。
【0185】
この場合、3つの成分のベクトルモジュラスを閾値と比較して、異常警告を発する。
【0186】
マスター装置の突然の開放
把持に関する自由度を有するマスター装置の場合、マスター装置の把持の開き方が速すぎる可能性について更なるチェックを行うことができ、これは、例えば、術者がマスター装置を制御できなくなる異常状況、又はマスター装置の把持を示すと考えられる。
【0187】
開放速度の推定は、例えば、「マスター落下」の場合について前述したのと同じ多項式フィッティングを使用して行われるが、この特定の条件に関連する異なるパラメータを用いて行われる。
【0188】
フィッティングから得られた開角(又は「把持角度」の推定速度は、この異常の評価に使用される。
【0189】
空間限界外にあるマスター装置
別の異常チェックは、術者の動きに対して規定された空間限界に関連する。これらの限界は、特定の手術標的の有用性の考慮事項、及びマスター装置の位置を計算するために使用されるセンサシステムの制限に基づいて規定される。
【0190】
そのような限界に関連して、2つの主要なシナリオ、すなわち、作業空間の中心に中心付けられる球、又は平行六面体又は箱形の表面を特定することができる。
【0191】
そのようなボリュームの限界にマスター装置が達すると、異常通知がユーザに提供される。
【0192】
拘束された機械的インタフェースを有するマスター装置との関連で、これらの限界は、機械的インタフェースの限界に依存する。
【0193】
拘束されない(接地されていない)機械的インタフェースを有するマスター装置との関連で、光学的検出が考慮される場合、作業空間は、追跡される特徴を特定するのに必要な最小分解能を考慮に入れて構築された、各カメラの円錐体の交点である。磁気追跡システムを考慮すると、作業空間には磁場の減衰に依存する限界がある。
【0194】
好ましくは、「作業空間」は、遠隔操作のために特別に構築された作業空間である。したがって、「作業空間」は、それを超えると測定情報を検出することができない物理的空間を示すことを意図するものではなく、外科的遠隔操作の活動のために具体的に画定され許容されるより狭い空間を示すことを意図する。例えば、「作業空間」は、拘束されないマスター装置を用いて動作している間の外科医の姿勢、可動性、及び動きが安全で快適な遠隔操作のために最適化される空間領域である。拘束されないマスターの作業空間ボリュームの規定、評価、及び管理は、それらが、術者の姿勢が快適性の低下及び腕-手構造の可動性の低下につながる作業領域に到達したことを術者に警告することを可能にするので、外科医の使いやすさに有益であり、例えば、座部に対して非常に前方の姿勢、又は逆に手及び腕が胴体に近すぎる状態であり、更に、規定された作業空間からの退出は、外科医による誤った動作を知らせることができる。
【0195】
例えば、「作業空間」は、信号品質基準(ノイズ)が許容可能な閾値内にある空間の領域であり、及び/又は「作業空間」は、術者の占有位置に対する周囲位置などのユーザビリティに関して選択された作業領域である。
【0196】
一実施形態によれば、マスター装置に関連する3つの作業空間が規定され、前述の3つの作業空間は、好ましくは少なくとも部分的に相互侵入される。
【0197】
1.「マスター測定可能な作業空間」:遠隔操作には許容できないエラー値の影響を受けても、マスター装置の有効な位置又は回転情報を取得できる作業ボリュームである。このような作業ボリュームは、測定系の原点を基準として任意の幾何学的形状を有する。形状は、測定の種類、例えば、光学測定システムの場合は円錐、磁気測定システムの場合は半球を切断することに依存し得る。
【0198】
2.「術者が使用可能な作業空間」:これは、術者が遠隔操作することができる「マスター測定可能な作業空間」内の作業ボリュームである。そのようなボリュームは、遠隔操作活動のための適切な精度値を有すると同時に、術者の人間工学と一致しなければならない。好ましくは、ボリュームはまた、ディスプレイシステム又は物理的ガイドによって区切られ得ない場合に術者が理解できる形状を有する。実際、使いやすさの基準のために、作業空間は、術者がその限界を知覚するように成形されることが重要である。
【0199】
換言すれば、前述の「術者が使用可能な作業空間」は、好ましくは、
(i)術者に理解可能であり、したがってコンソールを参照し、測定システムを参照しない、
(ii)人間工学に有用ではない「マスター測定可能な作業空間」の領域を回避するためにサイズが縮小される(これは、光学追跡システムとは異なり、物体も透過する磁気システムの場合に特に重要である);
(iii)遠隔操作品質基準の関数としてのサイズに縮小される;
(iv)操作野の無菌性の理由でマスター装置を配置してはならない領域に関して低減される、
ように選択される。
【0200】
好ましくは、本特許の目的のために、「マスター装置作業空間」という用語は、この術者が使用可能な作業空間を示すことを意図している。
【0201】
3.「開始作業空間」:遠隔操作に入ったときにマスター装置が位置する「術者が使用可能な作業空間」内の作業ボリュームである。「術者が使用可能な作業空間」に関するこのような制限の理由は、エッジの近くから開始すると、術者が作業空間をすぐに出ることができるという事実にある。実装オプションによれば、「開始作業空間」は、「開始作業空間」を用いてマスタースレーブスケールファクタに基づいて動的に構築することができる。
【0202】
以下に示される空間閾値に関する考慮事項は、術者が使用可能な作業空間からの退出及び開始作業空間への進入に適用可能である。
【0203】
したがって、1つの実装オプションによれば、システムは、遠隔操作に入る際に、マスター装置が「開始作業空間」の内側にあることを検証し、遠隔操作の間に、マスター装置が「術者が使用可能な作業空間」から出ないことを検証する。
【0204】
作業空間の境界は、条件及び特定の条件に応じて可変とすることができ、例えば、作業空間は、術者の位置の近くにあっても、マスター装置を格納するために特に含まれるポケットを除外しなければならない。
【0205】
一実装オプションによれば、遠隔操作への最初の進入において、各マスター装置の位置は独立して固定され、これにより、スレーブ装置の適切にスケーリングされた並進がもたらされ、作業空間の端部付近で遠隔操作が開始されることが回避される。
【0206】
例えば図3に示す例示的な実施形態によれば、閾値Tによって区切られた作業空間領域315に出入りする安全性評価に使用される空間基準閾値Tが規定されている場合、閾値を正しく評価し、振動を最小限に抑えるために、測定エラーを考慮に入れなければならない。
【0207】
したがって、最大ノイズEの影響を受ける位置Xの測定値をZとすると、Z=X+-Eである。
【0208】
X<Tを閾値内で規定し、X>Tを閾値外で規定する。
【0209】
測定値Zの関数としてのエラーのマージンを考慮して、作業空間領域315(X≫T)の外側の状況及び安定した進入条件が推定されるべきである場合に、術者、すなわちマスター装置310が推定されるべきであるとする。
【0210】
したがって、Z<T-Eに設定することにより、2つのケースを置き換えることによって、術者が確実に作業空間領域315内にあるという安定した基準が得られることが観察される。Zの他のより大きな値は、X<Tの基準を満たさない。
X+E<T-E又はX<T-2E
X-E<T-E又はX<T
【0211】
先と同様にこの例によれば、術者、すなわちマスター装置310が作業空間領域315(X≪T)内にあると仮定すると、Z>T+Eは、X>Tを置き換えるために求められる基準である。T及びEに関してZの条件に作用することによって、使用性又は安全基準に従って進入又は退出を遅延させるように選択することができる。
【0212】
内縁(T-E)が常に選択される場合、安全性が出口に有利であり、使い勝手が進入に有利である。図3は、作業空間315からエッジ領域317に出入りするマスター装置310を示し、エッジ領域317は、ノイズEを考慮に入れて閾値Tによって規定される。
【0213】
マスター装置の過度の振動
マスター装置の過度な振動に関連する更なる異常/障害が検出される実施形態によれば、本方法は、以下のステップ、すなわち、
-特定の閾値を超える速度ベクトルの動きを検出するステップと、
-マスター装置の検出又は計算された速度ベクトルの方向変化の数又は頻度を検出又はカウントするステップと、
-方向変化の数又は頻度をそれぞれの閾値と比較するステップと、
-カウント又は検出された方向変化の前述の数又は頻度が前述のそれぞれの閾値を超える場合に、マスター装置の過度な振動に関連する前述の異常/障害を特定するステップと、
を含む。
【0214】
速度ベクトルの方向の変化の数又は頻度のカウントは、例えば、所与の期間、例えば0.2秒で行われる。これにより、外科医ロボットシステムの帯域は通常5Hzであるため、システムは、マスター装置を介して、10Hzの動きコマンドが入力として提供されるかどうかを認識する。この特徴は、段階的なフィルタの適用によって生じるような異常を除去するのではなく、異常を示すような状況を特定しようとするものである。
【0215】
マスター装置速度の監視は、所定の時間間隔で十分に多数の振動を認識すること、例えば、速度が方向を反転するときを特定すること、及び所定の閾値を超える所与の振幅を超える振動の数を(浮動又は固定)時間窓内でカウントすることを可能にする。
【0216】
この機能は、特に磁気追跡システムの場合に、マスター装置の検出された位置信号の振動の形態で検出された外部磁場に起因する磁場外乱を検出するためにも有用であり得る。
【0217】
ここで、単方向の場合について詳細に説明する。連続信号の速度反転は、その導関数の最小点又は最大点として経時的に得ることができる。固定サンプリングdT(秒)を有する単軸位置信号が与えられると、この点を様々なモード、すなわち、(i)多項式フィルタリング及びフィッティングを使用するモード、(ii)長さ2W+1のフローティングウィンドウに関して採決を行うモードで評価することができる。
【0218】
「(i)フィッティング」の場合:少なくとも2次多項式で位置のフィッティングを行い、加速度が0かどうかを計算し、その後、速度が与えられた窓内でそれらが推定される。「(ii)フローティングウィンドウ」の場合:瞬間変換速度の局所サンプルは、[-V0,V0]に含まれる閾値V0より大きく-V0未満の相対速度値に対応する3つのシンボル(PZN)に挿入される。アルゴリズムは、負でない値の均一なシーケンスが先行し、続いて正でない値、又はその逆数が先行するゼロ速度(最大でも0)でLZサンプルを有する第1の点を反転点と見なす。
【0219】
第1の実施は、[NZ]{L1,}[PZ]{L1,}又は[PZ]{L1,}[NZ]{L1,}などの正規表現を用いたパターン認識に基づく。反転点は、第1のケースでは最後のシンボルNと最初のシンボルPとの中間点であり、第2のケースではP、Nである。なお、速度が0となる点を有する必要はない。
【0220】
第2の実施では、P Nのシーケンスは、各P及びNの連続した出現の数をカウントするフローティングウィンドウに格納される。長さWのフローティングウィンドウは、PとNとの交互がある場合は最大W個の要素全て1を意味し、全てP又はNである場合は1つの要素を意味する。そのような出現のシーケンスC1...CKに対して最大スクロールアルゴリズムを使用して、最大点を取得し、それをCiとする。そして、Ci>=L1であり、かつ、C(i-1)>=L1又はC(i+1)>=L1であれば、反転点が求められる。
【0221】
好ましくは、測定システムが何らかの理由でサンプルを提供しない場合、システムはリセットし、フローティングウィンドウを満たし始める。
【0222】
この時点で、システムは反転点を経時的に累積する。最後の2つの反転点が所定の閾値よりも大きい時間距離を有する場合、反転カウントがリセットされる。次いで、2つの反転点間の距離が評価され、これが所与の閾値より大きい場合、反転の数が増大する。
【0223】
上記を3次元の場合に拡張すると、可能な解決策は、独立した軸によって機能し、3つの異なる速度方向変化特定子(軸ごとに1つ)を有することである。
【0224】
三次元の場合に関する別の実施形態は、一次元の場合について既に説明したものを参照して以下に説明するように、組み合わされた方法で動作することであり、反転点は三次元位置に基づいて推定され、ベクトル間の距離は振動の振幅を推定するために使用される。
【0225】
「(i)フィッティング」による点の推定の場合、上記の多項式フィッティングの同じ手法が適用されるが、3次元の場合に拡張される。その考え方は、位置を多項式又は一連の多項式(スプライン)で表し、次いで接線相対速度を計算し、最後にそれを値Vrとして使用することである。1つの可能な技術は、B-スプラインフィッティングである。問題は、最小2乗最適化によって解くことができ、主に所望の制御ポイントの数によって制御される。好ましい仮説は、フィルタリングに基づくフィッティングの連続推定である。そうでなければ、反転の推定は、以下に説明するように、接線方向及び法線方向の動き成分を有する前のベクトルに対して各新しい速度ベクトルを分解しようとする3次元軌跡の曲線表現に基づいており、すなわち、時間P1、P2の2つの点が与えられると、速度ベクトルをV2=P2-P1として規定する。第3の点P3が与えられると、新しい速度ベクトルV3=P3-P2が前の成分V3=v3tV3+V3Nに対してどのような役割を有するかを評価することが可能である。成分v3tは相対速度であるため、一軸解におけるVrとして利用可能である。
【0226】
例えば、0.1mmの精度で100Hzでサンプリングされた、5Hzまでの自然振動を有する信号を有すると仮定する。
【0227】
マスター装置の不随意の開放
一実施態様によれば、マスター装置本体は、マスター装置本体の開閉の自由度を規定する共通の軸を中心に少なくとも回転するように関節、好ましくは弾性関節に拘束された2つの剛性部分を備え、方法は、検出及び/又は計算された速度ベクトルに基づいて、マスター装置本体の2つの剛性部分の開放角速度ωを計算するステップを含む。
【0228】
したがって、この実装オプションによれば、本方法は、
計算された開放角速度wを、弾性関節の弾性剛性に依存し得る閾値角速度ω_thrと比較するステップと、
-関係ω>ω_thrに従って前述の計算された開放角速度ωが前述の閾値角速度(ω_thr)よりも大きい場合に、マスター装置の不随意の開放に関連する異常/障害状態を特定するステップと、
を含む。
【0229】
一実装オプションによれば、閾値角速度値ω_thrは、0.15~0.50rad/sの範囲に属する。
【0230】
同様の実装オプションによれば、計算、比較、及び特定の前述のステップは、角速度ではなく、角加速度、又は直線加速度で実行され、これは、例えば、速度ベクトル及び/又は位置ベクトルの経時的変化を監視することによって取得することができる。
【0231】
別の実装オプションによれば、マスター装置が2つの剛性部分から成り、該剛性部分がユーザの手でしっかりと押圧又は保持されないときに少なくとも角度的にそのような部分を開く傾向がある弾性関節で互いに接続され、検出可能な異常がマスター装置の不随意の開放である場合に再び注意を向けると、方法は、以下のステップ、すなわち、
-2つの検出可能点のそれぞれの位置ベクトル及びそれぞれの経時的変化を検出するステップと、
-検出された位置ベクトルの経時的変化に基づいて、前述の2つの検出可能点間の距離の経時的変化を計算するステップと、
-前述の距離の経時的変化に基づいて、マスター装置の開放線速度vを計算するステップと、
-計算された開放線速度vを閾値線速度v_thrと比較するステップと、
-v>v_thrである場合、前述の異常/障害状態を特定するステップと、
を含む。
【0232】
閾値速度は、2つの剛性部分間の接近速度閾値及び/又は離間速度閾値とすることができる。
【0233】
例えば、動作状態にあるときに、マスター装置本体がスレーブ化されたスレーブの開閉自由度を制御するようになっている並進の直線自由度を有することを提供する実施形態によれば、外科用器具に把持作用(開閉)を与える、マスター装置本体の径方向の圧力作用が2つの剛性部分の距離を決定する。
【0234】
好ましくは、並進移動において互いに拘束されたマスター装置の2つの剛性部分の並進移動の相対直線加速度を計算することを提供するこの実装オプションは、2つの剛性部分の間に回転関節を有するマスター装置の不随意の開放に関して前述した実施のように、マスター装置の制御されていない挙動の指標となる異常状態を特定することを可能にする。
【0235】
したがって、要約すると、方法実施形態によれば、ベクトル加速度、すなわちマスター装置のモジュラス及び線形又は角度方向を測定又は計算することによって、少なくとも以下の情報が取得される。
-マスター装置の落下:加速度がgに等しく、下方に向けられている場合、スレーブが下方に、したがっておそらく患者に向かって進むのを防ぐために、ロボットシステムは直ちに停止する。
-マスター装置は、任意の方向に過度の加速度(例えば、3g以上)を有し、この場合も、ロボットシステムは直ちに停止する;
-マスター装置の意図しない開放:マスター装置の2点の相対加速度が前述の2点間の弾性戻り加速度よりも大きい場合(その間に、関節と、関節を開くようになっているばねとがある)。
【0236】
マスター装置のベクトル加速度は、1つ以上の加速度計によって直接検出されるか、又は位置ベクトルの変化の監視から導出され、次に検出される。
【0237】
前述したように、本方法は、位置及び方向の測定によって特徴付けられる、外科遠隔操作のロボットシステムのためのマスター装置インタフェースの広範なクラスに関する。
【0238】
特に、例えば、ヒンジ又はヒンジ関節で閉じることができる2つの部分又はチップを有するマスター装置が考えられる。各部分は、直接測定又は差し引かれる位置測定値に関連付けられる。
【0239】
スレーブ装置、特にそれに関連する超微細手術器具(又は「エンドエフェクタ」の制御のために、マスター基準座標系(又は「マスターフレーム」)及びそれぞれの原点(又は「マスターフレーム原点」MFO)を規定することができる。
【0240】
したがって、マスター装置の1つ以上の基準点の位置は、いつでも、そのような座標系の原点(MFO)に対して、前述のマスター基準座標系の座標に対して規定される。
【0241】
既に述べたように、幾つかの実施形態では、マスター基準座標系、及びマスター装置の関連位置は、例えばマスター装置に配置された光学マーカを使用して、適切に選択された点で直接測定される。この場合、「グリッパ」マスター装置の把持角は、別の技術、例えば磁気エンコーダで測定される。
【0242】
マスター装置が常に「把持され」ており、2つの部分が関節にヒンジ止めされている他の実施形態では、本方法は、マスター装置の前述の2つの部分(又はそれぞれのチップ)のそれぞれの位置を測定するステップを含む。そのような場合、マスター装置の2つの部分のそれぞれは、前述の一般的マスターフレーム(MFO)の原点に関して表される、その基準座標系(ここではそれぞれMF#1及びMF#2として示される)に関連付けられる。
【0243】
一般的マスターフレーム(原点MFOを有する)と、マスター装置の部分MF#1及びMF#2のマスターフレームとの間の座標変換は、既知の座標変換技術によって、例えば、位置及び方向を平均することによって、2つのマスターフレームMF#1とMF#2との間の平均として表すことができる。
【0244】
そのような場合、マスター装置の2つの部分に対して実行された測定は、検出された最大12自由度、すなわち、第1のマスター装置部分に関する3つの位置座標及び3つの方向値、第2のマスター装置部分に関する3つの位置座標及び3つの方向値を与えることができる。
【0245】
そのような検出は、マスター装置の機械的構造の7自由度を常に検出することを可能にする(また、冗長性も有する)。
【0246】
図に示されて方法で使用される座標系に関して、MFOとして示される基準座標系は、マスター装置の(例えば、マスター装置の作業空間に関連付けられている)一般的基準座標系(又は「マスターフレーム」又は「マスターフレーム原点」)であり、MF#1及びMF#2(図1)として示される基準座標系は、マスター装置の2つの部分と一体である局所基準座標系(又は「マスターフレーム」)であり、基準座標系MFM(図1)、MF1、及びMF2(図4図4bis、及び図6ter)は、マスター装置と一体の(例えば、マスター装置と一体化されている2つのセンサが配置されている点の間の仮想中間点に関連付けられる)局所基準座標系であり、基準座標系SFO(図4bisにおける)は、スレーブ装置のための(例えば、スレーブ装置の作業空間に関連付けられている)一般的な基準座標系(又は「スレーブフレーム原点」)であることに留意すべきである。
【0247】
図1図2、及び図7に示す例は、「グリッパ」タイプのマスター装置を指し、これは、ヒンジ関節とグリッパの2つのアーム(数回言及したマスター装置の「2つの部分」に対応する)のチップとの間の中央付近で把持ハンドの指の力の印加を伴う。このタイプのマスター装置は、3つの方向自由度、3つの位置自由度、及びグリッパアーム間の開放の合計7つの自由度を特徴とする。既に示したように、グリッパアームの位置を検出するために、光学及び/又は磁気技術を使用することができる。
【0248】
図1及び図2は、マスター装置110によって形成されたグリッパのアーム180,190のチップ付近に配置された2つのセンサS1、S2を有するマスター装置110を示す。
【0249】
図1において、ヒンジ関節OJは、左側にあり、2つのアームの2つの軸z1及びz2に平行な軸を有するアームの回転を可能にする。軸x1及びx2はアームの方向であり、関節から離れる方向である。
【0250】
2つのセンサのそれぞれの位置及び回転測定値は、位置の3次元ベクトル(したがって、p1及びp2として示す2つの位置ベクトルを得る)及び各アームの回転行列(したがって、R1及びR2として示す2つの回転行列を得る)によって表わすことができる。次いで、各センサは、それぞれの位置及び回転情報、(p1、R1)及び(p2、R2)に関連付けられる。
【0251】
回転は3次元直交サブグループSO(3)に関連付けることができ、したがって自由度の数は常に3であることに留意すべきである(表現のタイプにかかわらず、本明細書に例示されるように9つの数を有する回転行列に基づくか、3つのオイラー角(3)に基づくか、四元数に基づくかにかかわらず)。
【0252】
アームの基準点(又はチップ)の配置(すなわち、位置及び回転)は、例えば、2つの位置p1及びp2の平均pMとして計算された位置と、回転の平均としての回転(すなわち、R1及びR2のそれぞれの要素の平均を要素として有する行列RMである)とを用いて、マスター装置全体の配置(すなわち、位置及び回転)を計算することを可能にする。グリッパの開角aは、チップとマスター装置アームの既知の長さとの間の距離、すなわち、関節とセンサが設けられた各基準点との間の既知の距離を使用して計算することができる(センサS1、S2が関節OJから等距離の点に配置されていると仮定すると、前述の2つの距離は等しくなる)。
【0253】
図3(a)に示す例では、拘束されないマスター装置310が、マスター作業空間315に入る移行中に概略的に示されており、エッジバンド317が作業空間315の限界Tの周りに画定され、例えば、エッジバンド317は、追跡システムによるマスター装置310の検出品質から導出されるエラー又はノイズEによって決定することができ、したがって、エッジバンド317は、位置T+E及びT-Eによって区切られる。
【0254】
図3(b)に示す例では、拘束されないマスター装置310は、マスター作業空間315を出る移行中に概略的に示されており、エッジバンド317が作業空間315の限界Tの周りに画定され、例えば、エッジバンド317は、追跡システムによるマスター装置310の検出品質から導出されるエラー又はノイズEによって決定することができ、したがって、エッジバンド317は、位置T-E及びT+Eによって区切られる。
【0255】
図4に示す実施形態によれば、ロボット遠隔操作外科手術システム400は、割り当てられた作業空間415,425を有する少なくとも1つの拘束されないマスター装置410,420(図示の例では、2つの概略的に示された拘束されないマスター装置410,420が、外科医450によって手に保持されて概略的に示される)と、コンソール455と一体である制御ユニットと、スレーブ装置440(図示の例では、2つのスレーブ外科用器具460,470が示される)とを備える。
【0256】
図4bisに示される実施形態によれば、ロボット遠隔操作外科手術システム400は、割り当てられた作業空間415を有する少なくとも1つの拘束されないマスター装置(図示の例では、2つの概略的に示された拘束されないマスター装置410,420が、外科医450によって手に保持されて概略的に示されている)と、基準座標系MFOと一体であり、好ましくは制御ユニットを備えるコンソール455と、スレーブ装置440(図示の例では、2つのスレーブ外科用器具460,470が示されている)とを備える。
【0257】
図5は、割り当てられた作業空間515内の拘束されないマスター装置510を概略的に示しており、遠隔操作開始空間領域516は、本明細書では作業空間515に完全に含まれて示されており、この図示の例では、マスター装置510には、一対の特定センサ又はマーカ585,595が設けられ、例えば、マスター装置510が遠隔操作開始空間領域516内にあるときにのみ、システムは遠隔操作の開始を可能にするように構成されている。
【0258】
例えば図5bisに示される実施形態によれば、基準座標系MFOは、椅子554を備えるコンソールと一体である(図示の例では、基準座標系MFOは、椅子554の一部と一体である)。例えば、追跡源は、作業ボリューム515を画定する椅子554の一部と一体になるように配置され、遠隔操作開始空間領域516は、作業空間515に完全に含まれて本明細書に示され、例えば、マスター装置510が遠隔操作開始空間領域516内にあるときにのみ、システムは遠隔操作の開始を可能にするように構成されている。
【0259】
例えば図5terに示される実施形態によれば、基準座標系MFOは、マスターコンソール555と一体である作業ボリューム515を画定するマスターコンソール555と一体であり、図示の例では、外科医550によって手に保持され、データリンク511,512によってコンソール555に配線された2つの拘束されないマスター装置510,520が概略的に示され、示されている例では、コンソール555は、術野及び/又はシステム及び/又は術野状態パラメータを表示するための画面557を備える。
【0260】
例えば図6に示される実施形態によれば、作業ボリューム615と収納又は休止ボリューム618とを備えるコンソール655と一体である2つのボリューム615,618が存在し、マスター装置615,625が収納ボリューム618内にあるとき、システムは遠隔操作状態への進入を可能にしない。例えば、収納ボリューム618は、使用されていないときにコンソール655及び/又はマスター装置610,620を格納するように意図された要素に若しくはその近傍に、及び/又は要素に若しくは要素内に配置されることができる。
【0261】
例えば図6bisに示される実施形態によれば、コンソール655と一体である2つの作業ボリューム615,625が画定され、該作業ボリュームは左作業ボリューム615及び右作業ボリューム625を含み、好ましくは、システムは、左マスター装置610が左作業ボリューム615内にあり、右マスター装置620が右作業ボリューム625内にある場合に遠隔操作状態への進入を可能にする。
【0262】
例えば図6terに示される実施形態によれば、システムは、左マスター装置610及び右マスター装置620の両方が作業ボリューム615内にある場合、及び左マスター装置610が右マスター装置625の左にある場合に、遠隔操作状態に入ることを可能にする。
【0263】
図7及び図8は、割り当てられた作業空間715,815内の拘束されないマスター装置710,810の少なくとも一点の速度情報に基づいて特定することができる幾つかの異常/障害を示す。
【0264】
図7に示す例では、マスター装置710の2つの点、すなわち、それぞれが共通の軸を中心に回転するように関節775内に拘束された剛性部分780,790の特定子である2つの点の角速度wを監視することにより、マスター装置の不随意の開放を検出することができる(ここに示す例では、マスター装置710は、2つの剛性部分780,790のそれぞれに特定センサ又はマーカ785,795を備えている)。
【0265】
これに代えて、又はこれに加えて、速度監視は、マスター装置の2点の線速度の監視とすることができる。
【0266】
図8に示す例では、速度監視は、例えば、速度vの方向を監視すること、及び/又は作業ボリューム815内で検出された速度ベクトルvの方向変化をカウントすることに基づいて、マスター装置の過度な振動を検出することを可能にする(本明細書に示す例では、マスター装置810には、一対の特定センサ又はマーカ885,895が設けられている)。
【0267】
例えば図9に示される実施形態によれば、コンソールと一体化された3つのボリューム915,919,914が存在し、これらのボリュームは、マスター装置910がその中に配置されると、システムが遠隔操作を可能にする(例えば、スレーブ外科用器具960に命令する)作業ボリューム915と、マスター装置910がその中に配置されると同時に作業ボリューム915の外側に配置されると、システムが遠隔操作を中断する中断された遠隔操作ボリューム919と、マスター装置910がその中に配置されると同時に中断された遠隔操作ボリューム919の外側に配置されると、システムが遠隔操作を除外する(すなわち、マスター装置910は、遠隔操作から外れている)検出限界を表す追跡ボリューム914とを備える。
【0268】
例えば図9bisに示される実施形態によれば、コンソールと一体である3つのボリューム915,919,914が存在し、それらのボリュームは、マスター装置910がその中に配置されるときに、システムが遠隔操作を可能にする(例えば、スレーブ外科用器具960に命令する)限界閾値又は表面Tによって区切られた作業ボリューム915と、マスター装置910がその中に配置されると同時に作業ボリューム915の外側に配置されるときに、システムが遠隔操作を中断する限界閾値又は表面T’によって区切られた中断された遠隔操作ボリューム919と、マスター装置910がその中に配置されると同時に中断された遠隔操作ボリューム919の外側に配置されるときに、システムが遠隔操作を除外する(すなわち、マスター装置910は、遠隔操作から外れている)検出限界を表す限界閾値又は表面T’’によって区切られた追跡ボリューム914とを備える。限界閾値又は面T、T’及びT’’は、図3(a)~(b)を参照して前述した測定又はノイズエラーEの影響を受ける可能性がある。
【0269】
図10に概略的に示す実施形態は、共通軸X-Xに沿って相対的に並進するように関節1075内に拘束された2つの部分1080、1090を含む拘束されないマスター装置1010を示し、例えば、2つの部分1080、1090は互いに同一直線上に拘束され、センサS1、S2は、2つの部分1080、1090のそれぞれと一体になるように配置される。実装オプションによれば、各センサS1、S2の線速度又は角速度を監視することにより、異常/障害状態を検出することが可能になる。例えば、好ましくは弾性関節である関節1075を押すことによって、2つの部分1080、1090は離れ、外科医によるマスター装置1010の制御が失われた場合、2つの部分1080、1090は相対的に接近し、相対的接近速度の監視は、例えば相対的接近速度が速度閾値よりも大きい場合に、異常/障害状態を検出することを可能にする。実装オプションによれば、システムは、少なくとも1つのセンサS1、S2の角速度を監視して、過度の振動などの異常/障害状態を検出及び認識する。
【0270】
図から分かるように、先に示した本発明の目的は、詳細に上記に開示した特徴により、上記の方法によって完全に達成される。
【0271】
実際、記載された方法及びシステムは、マスター装置の幾つかの可能性のある動作異常/障害、又はマスター装置の可能性のある異常状況を検出し、異常のタイプを認識する効果的且つリアルタイムの検証を可能にする。
【0272】
したがって、医療又は外科遠隔操作のためのロボット制御システムによって自動的に実行されるマスター装置の任意の異常動作状態をリアルタイムで検証するための手順を適用する必要性を満たすことが可能であり、そのような手順は、そのような用途によって要求される厳しい安全要件を満たすために、効率的で信頼性があるようなものである。
【0273】
これは、マスターと関連付け可能な少なくとも1つの点の少なくとも1つの位置ベクトルを検出し、1つ以上の検出された量を1つ以上のそれぞれの所定の閾値と比較することによって得られる。
【0274】
マスター装置の構造的又は機能的異常が特定されると、遠隔操作を直ちに迅速に中断することができ、したがって、そのような異常/障害が、患者に作用するようになっているスレーブ装置及びそれに関連する外科用器具の動作の結果として生じる異常/障害に反映され、患者自体に重大な結果をもたらす可能性を伴うことを回避できる。
【0275】
それにより、患者の安全性を改善するという目的が達成され、考慮される動作環境において順守されなければならない非常に厳しい安全要件を満たす。
【0276】
偶発的なニーズを満たすために、当業者は、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、前述の方法の実施形態に変更及び適合を行うことができ、又は機能的に等価な他の要素と要素を置き換えることができる。可能な実施形態に属するものとして前述された全ての特徴は、説明された他の実施形態に関係なく実装されてもよい。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図4bis
図5
図5bis
図5ter
図6
図6bis
図6ter
図7
図8
図9
図9bis
図10
【国際調査報告】