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特表2024-506695リソグラフィベースの積層造形デバイスを制御するための方法及び装置
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  • 特表-リソグラフィベースの積層造形デバイスを制御するための方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】リソグラフィベースの積層造形デバイスを制御するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/386 20170101AFI20240206BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20240206BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20240206BHJP
   B29C 64/135 20170101ALI20240206BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240206BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240206BHJP
【FI】
B29C64/386
B33Y50/00
B29C64/268
B29C64/135
B33Y30/00
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023549019
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 IB2022051368
(87)【国際公開番号】W WO2022175830
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】21020076.2
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512184825
【氏名又は名称】テクニシュ ウニヴァアズィテート ウィーン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グルーバー、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】オブシアニコフ、アレクサンドル
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AR07
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL43
4F213WL67
4F213WL85
4F213WL96
(57)【要約】
複数の体積要素から3次元部品を製造することができるリソグラフィベースの積層造形デバイスを制御する方法では、z方向に離間したx-y平面内の体積要素又は仮想モデルの少なくとも第1及び第2の境界点を識別することによって、体積要素が完全に3次元仮想モデル内にあるかどうかを判定するためのチェックが行われ、問題の体積要素は、それが第1及び第2の境界点に関してモデル内にある場合にのみ製造プロセスに提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の体積要素から3次元部品を製造することができるリソグラフィベースの積層造形デバイスを制御する方法であって、
a)x軸、y軸、及びz軸を含む座標系を有する仮想3次元空間内の部品の3次元仮想モデルを提供するステップと、
b)前記仮想空間を複数の仮想体積要素に分割するステップであって、各体積要素が、x-y平面内の範囲及び座標z1から座標z2まで延在するz方向の高さを有する、複数の仮想体積要素に分割するステップと、
c)体積要素が完全に前記3次元仮想モデル内にあることを検証するステップであって、
i)前記z1座標を有する前記体積要素又は前記仮想モデルの第1の境界点を識別し、前記z2座標を有する前記体積要素又は前記仮想モデルの第2の境界点を識別することと、
(ii)前記体積要素の前記第1の境界点が前記仮想モデル内に位置するかどうか、又は前記体積要素が前記z1座標を有する前記平面内の前記仮想モデルの前記第1の境界点内に完全に位置するかどうかをチェックすることと、
iii)前記体積要素の前記第2の境界点が前記仮想モデル内に位置するかどうか、又は前記体積要素が前記z2座標を有する前記平面内の前記仮想モデルの前記第2の境界点内に完全に位置するかどうかをチェックすることと、を含む、検証するステップと、
d)少なくともii)及びiii)が肯定的に試験された場合にのみ、前記体積要素を製造される体積要素としてマークするステップと、
e)複数の体積要素に対してステップ(c)及び(d)を繰り返すステップと、
f)制御データを製造される前記体積要素の製造を成し遂げるのに適する前記製造デバイスに送信するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記ステップc)が、
iv)前記z1座標とz2座標との間にあるz3座標を有する前記体積要素又は仮想モデルの第3の境界点を識別するステップと、
v)前記体積要素の前記第3の境界点が前記仮想モデル内にあるかどうか、又は前記体積要素が前記z3座標を含む前記平面内の前記仮想モデルの前記第3の境界点内に完全にあるかどうかをチェックするステップと、をさらに含むこと、及び
ステップd)における前記体積要素が、少なくともii)及びiii)及びv)が肯定的に試験された場合にのみ、製造される体積要素としてマークされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記z3座標が、前記z1座標と前記z2座標との間の中間に位置することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の境界点が、前記体積要素の前記z1座標を有するx-y平面内の前記仮想モデルの第1の断面を作成することによって識別されることを特徴とする、請求項1、2、又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の境界点が、前記体積要素の前記z2座標を有するx-y平面内の前記仮想モデルの第2の断面を作成することによって識別されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第3の境界点が、前記体積要素の前記z3座標を有するx-y平面内の前記仮想モデルの第3の断面を作成することによって識別されることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記体積要素が、直方体又は楕円体、特に回転楕円体の形状を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
複数の体積要素から3次元部品を製造することができるリソグラフィベースの積層造形デバイスを制御するための制御装置であって、
x軸、y軸、及びz軸を含む座標系を有する仮想3次元空間内の前記部品の3次元仮想モデルを格納するための電子メモリと、
前記部品の前記仮想モデルが供給され、前記仮想モデルの前記仮想空間が複数の仮想体積要素に分割され、各体積要素が、x-y平面における延長部と、座標z1から座標z2まで延在するz方向の高さとを有する、モデル処理手段であって、
前記モデル処理手段が、
i)z1座標を有する前記体積要素又は前記仮想モデルの第3の境界点を識別し、z2座標を有する前記体積要素又は前記仮想モデルの第3の境界点を特定し、
ii)前記体積要素の前記第1の境界点が前記仮想モデルの前記第1の断面内に位置するかどうか、又は前記体積要素が前記z1座標を有する前記平面内の前記仮想モデルの前記第1の境界点内に完全に位置するかどうかをチェックし、
iii)前記体積要素の前記第2の境界点が前記仮想モデルの前記第2の断面内に位置するかどうか、又は前記体積要素が前記z2座標を有する前記平面内の前記仮想モデルの前記第2の境界点内に完全に位置するかどうかをチェックするように適合され、
前記モデル処理手段が、少なくともii)及びiii)の肯定的試験時にのみ前記体積要素を製造される体積要素として事前選択するように構成された論理モジュールを含む、モデル処理手段と、
製造される前記体積要素の積層造形のための制御命令を含む制御データを生成するための符号化手段と、
前記制御データを前記製造デバイスに送信するデータ送信手段と、を備えるコンピューティングデバイスを備える、制御装置。
【請求項9】
前記モデル処理手段が、
iv)前記z1座標と前記z2座標との間にあるz3座標を有する前記体積要素又は仮想モデルの第3の境界点を識別し、
v)前記体積要素の前記第3の境界点が前記仮想モデルの前記第3の断面内に位置するかどうか、又は前記体積要素が前記z3座標を有する前記平面内の前記仮想モデルの前記第3の境界点内に完全に位置するかどうかをチェックするように適合されること、及び
前記論理モジュールが、少なくともii)及びiii)及びv)が肯定的に試験された場合にのみ、前記体積要素を製造される体積要素としてマークするように設計されることを特徴とする、請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記z3座標が、前記z1座標と前記z2座標との間の中間に位置することを特徴とする、請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
3次元部品の前記リソグラフィベースの生成的製造のための装置であって、固化可能な材料のための材料支持体と、少なくとも1つのビームによる前記固化可能な材料の位置選択的照射のために制御することができる照射デバイスとを備え、前記照射デバイスが、前記少なくとも1つのビームを前記材料内の焦点に連続的に集束させるための光学偏向ユニットを備え、それにより、前記焦点に位置する前記材料のそれぞれの体積要素が、多光子吸収によって固化可能であり、前記部品の3次元仮想モデルに従って複数の固化体積要素から前記部品を構築するため前記照射デバイスを制御するため請求項8から10のいずれか一項に記載の制御装置をさらに備える、生成的製造のための装置。
【請求項12】
前記照射デバイスが、x-y平面内に延在する層を用いて層ごとに前記部品を構築するように適合されており、ある層から次の層への変化が調整手段によってもたらされるように、z方向において前記照射デバイスに対して前記材料支持体を調整するための前記調整手段が設けられていることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記照射デバイスがレーザ光源を備え、前記偏向ユニットが前記固化可能な材料のラインごとの走査のために設計されていることを特徴とする、請求項11又は12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の体積要素から3次元部品を製造することができるリソグラフィベースの積層造形デバイスを制御する方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、複数の体積要素から3次元部品を製造することができるリソグラフィベースの積層造形デバイスを制御する装置に関する。
【0003】
さらに、本発明は、固化可能な材料のための材料支持体と、少なくとも1つのビームによる固化可能な材料の位置選択的照射のために制御することができる照射デバイスであって、照射デバイスは、少なくとも1つのビームを材料内の焦点に連続的に向けるための光偏向ユニットを備え、それにより、焦点に位置する材料のそれぞれの体積要素が、多光子吸収によって固化可能である、照射デバイスと、を備え、部品の3次元仮想モデルに従って複数の固化体積要素から部品を構築するように照射デバイスを制御するための制御装置をさらに備える、3次元部品のリソグラフィベースの生成的製造のための装置に関する。
【背景技術】
【0004】
感光材料の固化が多光子吸収によって実行される部品を形成するためのプロセスは、例えば、独国特許出願公開第10111422号明細書から知られている。この目的のために、集光レーザビームが感光材料の浴槽内に照射され、それにより、固化を引き起こす多光子吸収プロセスの照射条件は、焦点のごく近傍でのみ満たされ、そのためビームの焦点は、製造される部品の幾何データに従って浴槽体積内の固化される点に誘導される。
【0005】
それぞれの焦点で、材料の体積要素が固化され、それによって隣接する体積要素が互いに接着し、隣接する体積要素の連続的な固化によって部品が構築される。部品を構築するとき、層状に進行することが可能であり、すなわち、第1の層の体積要素は、次の層の体積要素が固化する前にまず固化される。
【0006】
多光子吸収法のための照射デバイスは、レーザビームを集束するための光学系と、レーザビームを偏向するための偏向デバイスとを含む。この場合、偏向装置は、ビームが材料に入る方向に垂直な本質的に1つの同じ平面内にある材料内の焦点にビームを連続的に集束させるように設計される。x、y、z座標系では、この平面はx、y平面とも呼ばれる。x、y平面内のビーム偏向によって作成された固化体積要素が、部品の層を形成する。
【0007】
次の層を構築するために、部品に対する照射デバイスの相対位置を、材料への少なくとも1つのビームの照射方向に対応し、x、y平面に垂直なz方向に変化する。部品に対する照射デバイスの主にモータ駆動による調整により、照射デバイスの焦点は、先行するx、y平面からz方向に所望の層厚だけ離れた新しいx、y平面に偏移する。
【0008】
積層造形プロセス又は3D印刷プロセスを使用して部品を製造するための開始点は、製造される部品の3次元仮想モデルである。仮想モデルは、通常、CADソフトウェアを使用して作成される。仮想モデルから、積層造形デバイスへの特定の命令を含む制御データを続いて生成し、固化体積要素から所望の部品を製造させなければならない。制御命令は、偏向ユニットを含む露光ユニット、照射デバイスに対して材料支持体を調整するための調整手段、及び材料供給ユニットに対する命令を含む。部品の積層構造を考慮して、いわゆるスライシングソフトウェアがこの目的のために使用され、これは部品の3次元仮想モデルを平坦な層のスタックに変換する。各層は、積層造形デバイスが複数の体積要素から組み立てることになる部品のそれぞれの断面に対応する特定の幾何学的形状を有する。
【0009】
体積要素は、例えば、幾何学的形状内に位置する体積要素のみが固化してそれぞれの所望の幾何学的形状を達成することができるように、格子状に配置され得る。どの体積要素が所望の幾何学的形状の内側又は外側にあるかを判定するために、従来の方法は、通常、グリッドから生じる体積要素の中心点(数学的点)の位置のみを使用する。これは、体積要素が固化のために設けられ、その中心が所望の幾何学的形状内に位置することを意味する。体積要素は、数学的中心点を超える空間的な広がりを有するため、これは、所望の幾何学的形状の境界を超えて突出するエッジ領域における体積要素の生成をもたらす。したがって、製造された部品は、仮想モデルの寸法よりも大きい寸法を有することができる。チャネルなどの内部空洞を有する部品の場合、これはまた、それらが小さすぎる寸法で製造されるか、又はまったく大きすぎる結果になる可能性がある。
【0010】
固化させる体積要素を選択するときに体積要素の完全な空間的範囲を考慮しようとする以前の試みは、例えば、体積要素が変位しなければならない距離を計算するために、三角形のメッシュによって近似される仮想モデルの表面のすべての三角形が「カスプ高さ」に基づいて反復されなければならないため、非常に計算集約的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第10111422号明細書
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明は、可能であれば、その体積要素が仮想モデルによって指定された構成要素の境界面を超えて突出しない、過度の計算労力なしに部品を製造することができる方法及びデバイスを提供することを目的とする。
【0013】
この問題を解決するために、本発明は、複数の体積要素から3次元部品を製造することができるリソグラフィベースの積層造形デバイスを制御するための方法であって、
a)x軸、y軸、及びz軸を含む座標系を有する仮想3次元空間内の部品の3次元仮想モデルを提供するステップと、
b)仮想空間を複数の仮想体積要素に分割するステップであって、各体積要素は、x-y平面内の範囲及び座標z1から座標z2まで延在するz方向の高さを有する、複数の仮想体積要素に分割するステップと、
c)体積要素が完全に3次元仮想モデル内にあることを検証するステップであって、
i)z1座標を有する体積要素又は仮想モデルの第1の境界点を識別し、z2座標を有する体積要素又は仮想モデルの第2の境界点を識別することと、
(ii)体積要素の第1の境界点が仮想モデル内にあること、又は体積要素が仮想モデルの第1の境界点内に完全にあることをチェックすることと、
iii)体積要素の第2の境界点が仮想モデルの内側にあるかどうか、又は体積要素が仮想モデルの第2の境界点の完全に内側にあるかどうかをチェックすることと、を含む、検証するステップと、
d)少なくともii)及びiii)が肯定的に試験された場合にのみ、体積要素を製造される体積要素としてマークするステップと、
e)複数の体積要素に対してステップ(c)及び(d)を繰り返すステップと、
f)製造される体積要素の製造を実行するのに適した制御データを製造デバイスに送信するステップと、を含む方法を提供する。
【0014】
したがって、特定の体積要素を製造又は印刷するか否かの判定は、体積要素の高さ方向に、体積要素の底部(z1座標)及び体積要素の上部(z2座標)において離間した少なくとも2つの平面を考慮することに基づく。各平面について、体積要素の境界点が仮想モデルの境界面の外側又は内側にあるかどうかがチェックされ、両方の断面において境界点がモデルの内側にある場合にのみ体積要素が印刷される。代替で、各平面について、検討中の平面内の体積要素が完全に体積要素の境界点内にあるかどうかを見るためにチェックが行われ、体積要素は、体積要素が検討中のすべての平面内のモデル内にある場合にのみ印刷される。
【0015】
上述の2つの平面においてモデルの上方に突出していない体積要素は、その間の平面においてモデルの境界面の上方に突出していないと仮定する。この仮定は、モデル形状の大部分について正当化される。
【0016】
しかしながら、内側に湾曲した外部輪郭又は内部空洞などの特別な場合には、少なくとも1つの追加の平面を含み、3つ以上の平面すべてにおける体積要素の境界点がモデルのそれぞれの断面を超えて突出しない場合にのみ、体積要素を印刷することが好ましい。
【0017】
これに関して、本発明による方法の好ましい実施形態は、ステップc)が、
iv)z1座標とz2座標との間にあるz3座標を有する体積要素又は仮想モデルの第3の境界点を識別するステップと、
v)体積要素の第3の境界点が仮想モデル内にあるかどうか、又は体積要素が仮想モデルの第3の境界点内に完全にあるかどうかをチェックするステップと、をさらに含み、ステップd)における体積要素は、少なくともii)及びiii)及びv)が肯定的に試験された場合にのみ、製造される体積要素としてマークされる。
【0018】
第3の平面が使用される場合、それを上面と底面との間の中間に配置することが有利である。z3座標は、最も低い平面(z1座標)と最も高い平面(z2座標)との中間にある。
【0019】
第1、第2、及び第3の境界点は、それぞれいくつかの方法で識別することができる。境界点は、それぞれ、体積要素又は仮想モデルの周囲上の分離された離散点とすることができる。代替で、点は一緒に、それぞれの平面内にある体積要素又は仮想モデルの全周囲をそれぞれ形成することができ、すなわち、境界点は、境界線を形成するように併合することができる。境界線は、z1、z2又はz3座標内にある平面内のあるセクションのエッジに対応する。
【0020】
スライスの作成のために、スライシングソフトウェアの平面を有する本体の断面を使用することができ、その結果、別々の操作及び関連する計算労力を省略することができる。
【0021】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、体積要素の第1の境界点は、体積要素のz1座標を有するx-y平面内に仮想モデルの第1の断面を作成することによって識別され、体積要素の第2の境界点は、体積要素のz2座標を有するx-y平面内に仮想モデルの第2の断面を作成することによって識別され、体積要素の第3の境界点は、体積要素のz3座標を有するx-y平面内に仮想モデルの第3の断面を作成することによって識別されることを提供する。この場合、体積要素が完全に3次元仮想モデル内にあるかどうかをチェックすることは、好ましくは、体積要素のそれぞれのセクションが完全に仮想モデルの対応する断面内にあるかどうかをチェックするステップを含む。
【0022】
本発明の代替の実施形態は、仮想モデルの第1の境界点が、体積要素のz1座標を有するx-y平面内に仮想モデルの第1の断面を作成することによって識別され、仮想モデルの第2の境界点が、体積要素のz2座標を有するx-y平面内に仮想モデルの第2の断面を作成することによって識別され、仮想モデルの第3の境界点が、体積要素のz3座標を有するx-y平面内に仮想モデルの第3の断面を作成することによって識別されることを提供する。この場合、体積要素が3次元仮想モデルの完全に内側にあるかどうかをチェックすることは、体積要素がそれぞれの平面内の仮想モデルの上述のセクションの完全に内側にあるかどうかをチェックするステップを含むことが好ましい。
【0023】
z1平面、z2平面、及び場合によってはその間の他の平面内の体積要素が完全に3次元仮想モデル内にあるかどうかのチェックは、z1平面、z2平面、及び場合によってはその間の平面内の仮想モデルのセクションが作成され、セクションの平均(ブールAND演算)がz投影方向に決定され、体積要素が完全に平均内にあるかどうかがチェックされるように実行することもできる。ここで、体積要素は、そのz延長部にわたって一定の断面を有すると推測される。これが当てはまらない場合、例えば楕円体の形状の体積要素の場合、セクションの平均の境界線は、体積要素の断面がz延長部にわたって変化する量だけ内側に移動され、こうして調整された平均面積は、体積要素が完全に平均内にあるかどうかをチェックするために使用される。
【0024】
z1平面、z2平面、及び場合によってはその間の他の平面内の体積要素が完全に3次元仮想モデル内にあるかどうかのチェックは、代替的に、仮想モデルのセクションがz1平面内に作成され、次いで、この平面内の体積要素が完全に仮想モデルのセクション内に位置するかどうかがチェックされ、次いで、z1平面内で決定された体積要素の境界点の、z方向に延びる投影が、体積要素のz1-z2延長部内に位置する仮想モデルの輪郭との少なくとも1つの交点を有するかどうかがチェックされるように実行することができる。少なくとも1つの交点がある場合、これは、体積要素がそのz延長部全体にわたって仮想モデル内に完全にはないことを意味し、その結果、この体積要素は、製造又は印刷される体積要素としてマークされない。
【0025】
本発明の文脈において、x軸、y軸、及びz軸を含む座標系を参照する場合、これは様々なタイプの座標系を含み得る。特に、これは直線座標系であってもよい。しかしながら、直線座標系は、直交座標系である必要はなく、x-y平面及びz軸が90°に等しくない角度を囲む設計も含む。しかしながら、好ましくは、直交座標系である。
【0026】
z軸の方向は、好ましくは、照射デバイスの照射方向、すなわち、光ビームが材料内の焦点に向けられる方向に対応する。
【0027】
本方法のステップb)は、仮想モデルが位置する仮想空間を複数の仮想体積要素に分割することを提供し、ステップc)及びd)は、その後、これらの体積要素の少なくともいくつかについて、それらが仮想モデル内に位置するかどうかをチェックすることを提供する。仮想空間内に分布する体積要素は、異なる空間配置にあってよい。例えば、体積要素は、長方形の空間座標系のx、y、及びz方向に延在する複数のそれぞれの平行線に沿って体積要素が配置される3次元グリッドなどの所定のグリッドに配置されてもよい。
【0028】
さらに、体積要素は、互いに重なるように、又は互いに重ならないように配置されてもよい。例えば、体積要素は、モデルの一部分において互いに重なり、別の部分において重ならないように設けられてもよい。代替で、体積要素は、モデル全体にわたって重なるように配置することができる。
【0029】
重なりの程度は均一である必要はないが、モデルの局所的な形状に応じて選択することができる。例えば、モデルの内側よりもモデルのエッジでより高い重なりの程度が選択されてもよい。これにより、エッジ領域における印刷プロセスの分解能、並びに幾何学的忠実度を向上させ、又は表面粗さを低減することができる。
【0030】
仮想体積要素はすべて同じ体積を有することができ、又は仮想体積要素は、互いに異なる体積を有する同じ仮想モデル内で使用することができる。
【0031】
ステップe)によれば、体積要素が完全に3次元仮想モデル内にあるかどうかの検証が、複数の体積要素について繰り返される。このチェックが仮想モデルのすべての体積要素、例えば最初からモデルの完全に外側にないすべてのボリューム要素に対して実行されるように進めることが可能である。代替で、チェックは、体積要素のサブセットのみに対して、好ましくは境界領域内に、すなわちモデルの境界面に沿って位置する体積要素に対して実行することができる。
【0032】
本発明の根底にある問題はまた、
x軸、y軸、及びz軸を含む座標系を有する仮想3次元空間内の部品の3次元仮想モデルを格納するための電子メモリと、
部品の仮想モデルが供給され、仮想モデルの仮想空間が複数の仮想体積要素に分割され、各体積要素が、x-y平面における延長部と、座標z1から座標z2まで延在するz方向の高さとを有する、モデル処理手段であって、
モデル処理手段は、
i)z1座標を有する体積要素又は仮想モデルの第3の境界点を識別し、z2座標を有する体積要素又は仮想モデルの第3の境界点を識別し、
ii)体積要素の第1の境界点が仮想モデル内にあるかどうか、又は体積要素が完全に仮想モデルの第1の境界点内にあるかどうかをチェックし、
iii)体積要素の第2の境界点が仮想モデルの内側にあるかどうか、又は体積要素が仮想モデルの第2の境界点の内側に完全にあるかどうかをチェックするように適合され、
モデル処理手段は、少なくともii)及びiii)の肯定的試験時にのみ体積要素を製造される体積要素として事前選択するように構成された論理モジュールを備える、モデル処理手段と、
製造される体積要素の積層造形のための制御命令を含む制御データを生成するための符号化手段と、
制御データを製造デバイスに送信するデータ送信手段と、を備えるコンピューティングデバイスを備える制御装置によって解決される。
【0033】
好ましくは、モデル処理手段は、
iv)z1座標とz2座標との間にあるz3座標を有する体積要素又は仮想モデルの第3の境界点を識別し、
v)体積要素の第3の境界点が仮想モデル内にあるかどうか、又は体積要素が仮想モデルの第3の境界点内に完全にあるかどうかをチェックするように設計され、
論理モジュールは、少なくともii)及びiii)及びv)が肯定的に試験された場合にのみ、体積要素を製造される体積要素としてマークするように設計されることが提供される。
【0034】
本発明の別の態様は、3次元部品のリソグラフィベースの生成的製造のための装置であって、固化可能な材料のための材料支持体と、少なくとも1つのビームによる固化可能な材料の位置選択的照射のために制御することができる照射デバイスとを備え、照射デバイスは、少なくとも1つのビームを材料内の焦点に連続的に集束させるための光学偏向ユニットを備え、それにより、焦点に位置する材料のそれぞれの体積要素は、多光子吸収によって固化可能であり、部品の3次元仮想モデルに従って複数の固化体積要素から部品を構築するため照射デバイスを制御するための制御装置をさらに備える、生成的製造のための装置に関する。
【0035】
好ましくは、照射デバイスは、x-y平面内に延在する層を有する部品を層ごとに構築するように設計され、調整手段によって1つの層から次の層への変化がもたらされるように、z方向において照射デバイスに対して材料支持体を調整するための調整手段が設けられる。
【0036】
好ましくは、照射デバイスは、レーザ光源を備え、偏向ユニットは、書き込み領域内の固化可能な材料を走査するように設計される。光ビームは、x方向若しくはy方向又は両方向に偏向される。偏向ユニットは、例えば、ガルバノメータスキャナとして設計することができる。2次元ビーム偏向の場合、1つのミラーを2方向に偏向させるか、又は単一の枢動点スキャナとして3つ以上のミラーによって偏向させることができる。代替で、2つの直交方向に回転可能な直立ミラーが互いに近接して配置されるか、又はビームが反射される中継光学系によって接続される。2つのミラーはそれぞれ、ガルバノメータ駆動又は電気モータによって駆動することができる。
【0037】
デバイスの好ましい設計は、材料がトラフ内などの材料支持体上に存在し、材料の照射が、少なくとも特定の領域において放射線に対して透過性である材料支持体を通って下方から行われることを提供する。この場合、構築プラットフォームは、材料支持体から離れて位置付けることができ、部品は、構築プラットフォームと材料支持体との間に位置する材料を固化させることによって構築プラットフォーム上に構築することができる。代替で、材料を上方から照射することも可能である。
【0038】
多光子吸収を使用して適切な材料を構造化することは、達成可能な最小構造サイズが最大50nm×50nm×50nmの体積要素を有する、非常に高い構造分解能の利点を提供する。しかしながら、焦点体積が小さいために、例えば、1μmのボクセル体積を有する1mmの体積では、合計10点を超える点が露出されなければならないため、そのような方法のスループットは非常に低い。これにより構築時間が非常に長くなり、これは多光子リソグラフィプロセスの工業的使用が低い主な理由となっている。
【0039】
高い構造分解能の可能性を失うことなく部品スループットを高めるために、本発明の好ましいさらなる発展形態は、焦点の体積が部品の構築中に少なくとも1回変化し、その結果、部品が異なる体積の固化体積要素から構築されることを提供する。
【0040】
焦点の体積が可変であるため、(小さな焦点体積で)高い分解能が可能である。同時に、(大きな焦点体積で)高い書き込み速度(mm/hで測定)が達成可能である。したがって、焦点体積を変化させることによって、高分解能を高スループットと組み合わせることができる。焦点体積の変化は、例えば、スループットを高めるために、構築される部品の内部で大きな焦点体積が使用され、部品表面を高分解能で形成するために、部品の表面でより小さな焦点体積が使用されるように使用することができる。焦点体積を増加させると、1回の露光で固化する材料の体積を増加させることによって、より高い構造的スループットが可能になる。高スループットで高分解能を維持するために、小さな焦点体積をより微細な構造及び表面に使用することができ、より大きな焦点体積を粗い構造に使用することができ、及び/又は内部空間を満たすために使用することができる。焦点体積を変更するための方法及び装置は、国際公開第2018/006108号に記載されている。
【0041】
したがって、モデルの仮想空間に配置された仮想体積要素は、異なる体積を有することができる。例えば、部品の仮想モデル内の仮想体積要素は、仮想モデルの表面上に位置する仮想体積要素よりも大きい体積を有することができる。
【0042】
多光子吸収の原理は、感光材料浴中で光化学プロセスを開始するために本発明の文脈で使用される。多光子吸収法としては、例えば、2光子吸収法が挙げられる。光化学反応の結果として、少なくとも1つの他の状態への材料の変化があり、典型的には固化又は光重合をもたらす。多光子吸収の原理は、前述の光化学プロセスが、多光子吸収のために十分な光子密度があるビーム経路の領域でのみ起こるという事実に基づいている。光学撮像システムの焦点で最も高い光子密度が発生するため、多光子吸収は焦点でのみ発生する可能性が十分にある。焦点の外側では、光子密度が低いため、焦点の外側の多光子吸収の確率は、光化学反応によって材料に不可逆的な変化を引き起こすには低すぎる。電磁放射線は、使用される波長においてほとんど妨げられることなく材料を通過することができ、焦点においてのみ感光材料と電磁放射線との間で相互作用が生じる。多光子吸収の原理は、例えば、Zipfelらの「Nonlinear magic:multiphoton microscopy in the biosciences」、NATURE BIOTECHNOLOGY、第21巻、第11号、2003年11月に記載されている。
【0043】
電磁放射線は、好ましくはコリメートされたレーザビームであってもよい。レーザは、1つ又は複数の固定波長又は可変波長を放射することができる。具体的には、それは、ナノ秒、ピコ秒又はフェムト秒の範囲のパルス長を有する連続又はパルスレーザである。パルスフェムト秒レーザは、より低い平均出力が多光子吸収に必要とされるという利点を提供する。
【0044】
感光材料は、構築条件下で流動性があるか又は固体である、及び焦点体積内の多光子吸収によって、例えば重合によって第2の状態に変化する任意の材料として定義される。材料の変化は、焦点体積及びその直近の周囲に限定されなければならない。物質特性の変化は永続的であり得、例えば、液体から固体状態への変化にあり得るが、一時的であってもよい。なお、永続的な変化は可逆的又は非可逆的であってもよい。材料特性の変化は、必ずしも一方の状態から他方の状態に完全に移行する必要はなく、両方の状態の混合形態とすることもできる。
【0045】
本発明は、図面に概略的に示される例示的な実施形態を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明によるデバイスの概略図を示す。
図2】体積要素を有する部品の仮想モデルの概略図を示す。
図3】体積要素を有する部品の仮想モデルの概略図を示す。
図4】体積要素を有する部品の仮想モデルの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1では、基板又はキャリアは1で示され、その上に部品が構築される。基板は、光重合性材料で充填された材料バット(図示せず)内に配置される。放射線源2から放出されたレーザビームは、光重合性材料内の焦点で照射デバイス3によって材料内に連続的に集束され、それによって多光子吸収によって各焦点に位置する材料の体積要素を固化させる。この目的のために、照射デバイスは、書き込み領域内の材料にレーザビームを導入するレンズ4を備える撮像ユニットを含む。
【0048】
レーザビームは、最初に放射線源2からパルス圧縮器5に入り、次いでレーザ出力の変調器(例えば音響光変調器)14、リレーレンズ8、及び偏向ミラー15を介して偏向ユニット9に誘導され、ビームは2つのミラー10で連続的に反射される。ミラー10は、ビームがx軸及びy軸の両方で偏向され得るように、好ましくは互いに対して直交方向に、回転軸を中心に枢動するように駆動される。2つのミラー10はそれぞれ、ガルバノメータ駆動又は電気モータによって駆動することができる。偏向ユニット9を出るビームは、好ましくは、上述のようにビームを光重合性材料に集束させるリレーレンズ系(図示せず)を介して対物レンズに入る。
【0049】
部品を層ごとに構築するために、1つの層の体積要素が次々に材料内で固化される。第1の層を構築するために、レーザビームは、材料内の対物レンズ4の焦点面に位置する焦点に連続的に集束される。x、y平面におけるビームの偏向は、偏向ユニット9の助けを借りてここで行われ、それによって、描画領域は対物レンズ4によって制限される。次の平面への変更のために、キャリア11に取り付けられた対物レンズ4は、層厚に対応する層距離だけ基板1に対してz方向に変位される。代替で、基板1を固定対物レンズ4に対して変位させることができる。
【0050】
製造される部品が対物レンズ4の描画領域よりもx及び/又はy方向に大きい場合、部品の部分構造は互いに隣接して構築される(いわゆるステッチ)。この目的のために、基板1は、照射デバイス3に対してx及び/又はy方向に移動することができるクロステーブル12上に配置される。
【0051】
さらに、放射線源、偏向デバイス9、支持体11、及びクロステーブル12を制御する制御装置13が設けられている。
【0052】
図2は、x軸、y軸及びz軸を含む座標系を概略的に示す。製造される部品の仮想モデル15のセクションは、座標系に配置され、仮想モデル15は、線16によってx-z平面内で境界付けられている。チャネル24は、固化した材料がないままであるように仮想モデル15の内側に設けられる。複数の仮想体積要素17、21、22、23などが仮想空間に配置され、仮想体積要素17から、それらがz方向に座標z1から座標z2まで延在する高さ(z2-z1)を有することが示されている。したがって、体積要素17は、z1座標にあるx-y平面18とz2座標にあるx-y平面19との間で高さ方向に延在する。体積要素17の中心面は、符号20で示されている。ここに示す例では、体積要素は、z方向に離間した複数の平面に配置されている。体積要素17の上下にはさらなるレベルの体積要素21、22、23などがあり、それによって隣接する平面の体積要素は重なることができる。多数の体積要素が個々の平面内に配置されており、そのうちのエッジ側体積要素のみが図2の各場合に明確に示されており、回転楕円体の形状を見ることができる。
【0053】
図2は、仮想モデル15の境界領域内で、仮想体積要素のうちのどれが製造される体積要素として、続いて積層造形デバイス、すなわち3Dプリンタを使用して実際に印刷される体積要素としてマークされているかを判定するための従来技術の方法を示す。図2による方法では、中心面20又は体積要素の中心のみが考慮され、中心面内の体積要素が仮想モデル15の内側にあるか又は外側にあるか、又は体積要素の中心が仮想モデル15の内側にあるか又は外側にあるかがチェックされる。体積要素の実際の空間的範囲は中心面を超えて延在するため、これにより、図2に示すように、仮想モデルの輪郭を超えて延在する体積要素が印刷用にマークされる。さらに、これは、チャネル24を過成長させる体積要素の印刷につながる。
【0054】
一方、図3に示す本発明による方法では、中心面20ではなく、最上面19(座標z2)と最下面18(座標z1)の両方で、体積要素17が仮想モデル15の境界16内にあるかどうかがチェックされる。体積要素は、仮想モデル15内の上層19及び底層18の両方に位置する場合にのみ、印刷用にマークされる。結果として、図3に示す仮想モデル15の幾何学的形状では、体積要素のいずれもモデル15の輪郭を超えて突出せず、チャネルは完全に自由のままである。
【0055】
左境界16が内向きの曲がりを有する図4に示す仮想モデル15の幾何学的形状では、上面19及び底面18に加えて中心面20を考慮する必要がある。したがって、仮想モデル15内の上面19並びに底面18及び中間面20に位置する体積要素のみが印刷用にマークされる。結果として、体積要素のいずれも、キンクの領域においてモデル15の輪郭を超えて突出しない。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】