(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】フラッシング要素、削岩機、および方法
(51)【国際特許分類】
E21B 6/04 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
E21B6/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549027
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2022054055
(87)【国際公開番号】W WO2022175438
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515277780
【氏名又は名称】サンドヴィック マイニング アンド コンストラクション オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ケラ, ティーモ
(72)【発明者】
【氏名】ペウララ, ユッシ
(72)【発明者】
【氏名】ラーコラ, エサ
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA04
2D129DA23
2D129DC07
2D129DC13
2D129DC16
2D129DC33
2D129EB04
2D129HB02
(57)【要約】
フラッシング要素、削岩機、および、削岩機のシャンクアダプタの周りにフラッシング空間を提供する方法。フラッシング要素(19)が、フラッシング要素を通過するシャンクアダプタ(8)を囲む。フラッシング要素が、フラッシング液をフラッシング空間(21)に供給するための供給開口部(49)と、フラッシングシーリング(S、S2、S3)のための少なくとも2つのシーリングハウジング(51)と、を備え、フラッシングシーリングがフラッシング空間の軸方向の両側に存在する。さらに、フラッシング要素が分割式の構成を有し、それによってフラッシング要素が径方向において設置可能および脱着可能である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
削岩機(6)のフラッシング要素(19)であって、
前記フラッシング要素(19)が、前記フラッシング要素(19)を通過するシャンクアダプタ(8)を囲むように構成され、
前記フラッシング要素(19)が、
フラッシング液を前記シャンクアダプタ(8)を囲むフラッシング空間(21)に供給するための供給開口部(49)と、
フラッシングシーリング(S、S2、S3)を受けるための少なくとも2つのシーリングハウジング(51)であって、前記シーリングハウジング(51)が、前記フラッシング空間(21)を基準として両側において互いから一定の軸方向距離のところに位置する、少なくとも2つのシーリングハウジング(51)と、
を備える、フラッシング要素(19)において、
前記フラッシング要素(19)が分割式の構成を有し、それによって前記フラッシング要素(19)が、前記シャンクアダプタ(8)の軸方向に対して横方向において互いに設置可能である2つの半体(19a、19b)を備え、
前記半体(19a、19b)が軸方向開口部(53)を一体に画定し、前記シャンクアダプタ(8)が前記軸方向開口部(53)の内部に設置可能であることを特徴とする、フラッシング要素(19)。
【請求項2】
前記フラッシング要素(19)が、長手方向対合面(35)を備える2つの半体(19a、19b)を備える細長い分割式のブッシングであり、
前記開口部の内側表面側が前記シーリングハウジング(51)を装備することを特徴とする、請求項1に記載のフラッシング要素。
【請求項3】
前記フラッシング要素(19)が、カバー要素(39)および基本構造(40)を備える分割式のフラッシングハウジング(13)であり、それによって前記カバー要素(39)が、前記フラッシングハウジング(13)の前記基本構造(40)に対して設置可能および脱着可能であることを特徴とする、請求項1に記載のフラッシング要素。
【請求項4】
ボディ(12)と、
衝撃パルス(IP)を生成するための衝撃デバイス(9)と、
シャンクアダプタ(8)であって、前記衝撃パルス(IP)を受けて、前記衝撃パルス(IP)を応力波として前記シャンクアダプタ(8)に接続可能である掘削ツール(7)に伝達するための、シャンクアダプタ(8)と、
前記シャンクアダプタ(8)の長手方向軸を中心として前記シャンクアダプタ(8)を回転させるための回転デバイス(10)と、
前記ボディ(12)の前方端部のところにあるフラッシングヘッド(13)と、
を備え、
前記フラッシングヘッド(13)が、フラッシング液を前記シャンクアダプタ(8)を通して前記掘削ツール(7)まで供給するための環状フラッシング空間(21)を形成するように構成された、前記シャンクアダプタ(8)を囲むフラッシング要素(19)を備える、削岩機(6)において、
前記フラッシング要素(19)が、少なくとも2つの適合する構成要素(19a、19b、39、40)を備える分割式の構造であり、
前記フラッシング要素(19)が請求項1から3のいずれか一項に従うことを特徴とする、削岩機(6)。
【請求項5】
前記シーリング(S、S1~S3)が少なくとも1つの分割ライン(44)を備える分割式のシール(S)であり、それによって前記分割式のシール(S)が横方向において前記シャンクアダプタ(8)の周りに装着可能であることを特徴とする、請求項4に記載の削岩機。
【請求項6】
前記シャンクアダプタ(8)が、
前記掘削ツール(7)を接続するための連結ヘッド(25)と、
前記連結ヘッド(25)に対して反対の前記シャンクアダプタ(8)の端部分のところに位置し、トルクを伝達するための複数のスプライン(28)を装備する、回転部分(26)と、
前記連結ヘッド側の端部のところで前記シャンクアダプタ(8)の遠位端まで延在する軸方向フラッシング部分(50)に接触する横方向フラッシング開口部(23)を装備する、前記連結ヘッド(25)と前記回転部分(26)との間に位置するフラッシング部分(22)と、
を備え、
前記連結ヘッド(25)および前記回転部分(26)の外径(D1、D4)が前記フラッシング部分(22)の外径(D3)より大きいことを特徴とする、請求項4または5に記載の削岩機。
【請求項7】
前記シャンクアダプタ(8)の前記連結ヘッド(25)が、軸方向接触面(31)を装備するショルダ(27)と、連結ねじ部(30)を装備する突出軸方向部と、を備えることを特徴とする、請求項6に記載の削岩機。
【請求項8】
前記シャンクアダプタ(8)が、少なくとも1つの分割式の摺動ベアリング要素(20)により軸方向に移動可能に支持されることを特徴とする、請求項4から7のいずれか一項に記載の削岩機。
【請求項9】
削岩機(6)のシャンクアダプタ(8)の周りにフラッシング空間(21)を提供する方法であって、前記方法が、
環状形状を有するフラッシング空間(21)を形成するためにフラッシング要素(19)により細長い前記シャンクアダプタ(8)の中間部を囲むことと、
前記フラッシング要素(19)の内側表面上でシーリングハウジング(51)に対して支持された少なくとも2つのフラッシングシーリング(S、S2、S3)により前記シャンクアダプタ(8)に対して前記フラッシング要素(19)を密閉することと、
を含む、方法において、
少なくとも2つの接続可能な構成要素(19a、19b;39、40)を備える分割式のフラッシング要素(19)を使用すること、
前記シャンクアダプタ(8)の軸方向に対して横方向において前記フラッシング要素(19)の前記構成要素を接続することを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記シャンクアダプタ(8)の周りに前記フラッシング要素(19)を予め組み立てることと、前記シャンクアダプタ(8)と前記フラッシング要素(19)との組み合わせを単一部片として前記削岩機(6)の内部に設置することとを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記分割式のフラッシング要素(19)の第1の構成要素(19b、40)を設置するステップと、
前記フラッシングシーリング(S、S2、S3)を前記シャンクアダプタ(8)の上に設置するステップと、
前記シャンクアダプタ(8)を前記第1の構成要素(19b、40)の上に設置するステップと、
前記分割式のフラッシング要素(19)の第2の構成要素(19a、39)を設置するステップとを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、削岩機のフラッシング要素に関する。フラッシング要素は、削岩機のツール側端部分に設置されるためのものであり、それによってフラッシング要素が、フラッシング要素を通過するように構成されたシャンクアダプタを囲む。
【0002】
本発明はさらに、削岩機と、削岩機のシャンクアダプタ周りにフラッシング空間を形成する方法とに関する。
【0003】
本発明の分野は、より詳細には、独立請求項のプリアンブルで定義される。
【0004】
採掘現場または他の作業現場で多様な種類の削岩リグが使用される。削岩リグは1つまたは複数のブームを装備し、削岩機がブームの遠位端のところに配置構成される。削岩機は、シャンクアダプタを介して掘削ツールに衝撃パルスを提供するように構成された衝撃ピストンを装備する衝撃デバイスを備える。フラッシング流体がシャンクアダプタおよび掘削ツールを通してドリルビットの方に供給される。シャンクアダプタの周りに、フラッシング流体を供給するのを可能にするためのフラッシングハウジングが存在する。既知の構成では、特にシャンクアダプタの設置に関して、いくつかの欠点が認められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、新規性のある改善された、フラッシング要素、このような要素を備え付けられた削岩機、および削岩機のシャンクアダプタの周りにフラッシング空間を形成するための方法を提供することである。
【0006】
本発明によるフラッシング要素は、第1の独立の装置クレームの特性を示す特徴によって特徴付けられる。
【0007】
本発明による削岩機は、第2の独立の装置クレームの特性を示す特徴によって特徴付けられる。
【0008】
本発明による方法は、独立方法クレームの特性を示す特徴によって特徴付けられる。
【0009】
開示される解決策の概念は、フラッシング要素が削岩機のシャンクアダプタの周りにフラッシング空間を形成することを意図されることである。フラッシング要素が、フラッシング要素を通過するように配置構成されたシャンクアダプタを囲む。フラッシング要素は、フラッシング液をフラッシング空間に供給するための供給開口部と、フラッシングシーリング(flushing sealing)のための少なくとも2つのシーリングハウジング(sealing housing)と、を備える。フラッシング要素は分割式の構成であり、それによってフラッシング要素が径方向に設置可能および脱着可能である。
【0010】
言い換えると、分割式のフラッシング要素は、シャンクアダプタの周りに環状フラッシング空間を形成するように、ならびに、フラッシングシーリングを軸方向および径方向において支持するのを実現するように、構成される。本構造は、複数の分割式のシールハウジング(seal housing)、および、分割式の環状形状のフラッシング空間を備える。
【0011】
開示される解決策の利点は、フラッシング要素の開示される構造が多様なシャンクアダプタの使用を制限しないことである。フラッシング要素が径方向または横方向においてシャンクアダプタの周りに組み立てられ得る場合、シャンクアダプタの多様な軸方向部分の外径がより自由に寸法決めされ得る。フラッシング構造を通るようにシャンクアダプタを軸方向に押すことによる従来の手法でシャンクアダプタが設置されない。分割式の構造により、および、フラッシングハウジングの横方向の設置方向により、シャンクアダプタの回転部、フラッシング部、および接続部の外径が互いに独立して寸法決めされ得る。より汎用的な設計選択が適用され得る。
【0012】
本文献では、「分割」および「分割式の構成」という用語は不均一のリムまたは円周を有する構造を意味する。構造は、径方向において、2つ、3つ、またはそれ以上の部またはリング状セグメントに分割または分解され得る。
【0013】
一実施形態によれば、シーリング空間の両側に少なくとも2つのフラッシングシーリングおよびシーリングハウスが存在する。加えて、フラッシング要素の一方のまたは両方の端部分は、フラッシング要素の内部に不純物が入るのを防止するめの、端部シールおよび端部シールハウジングを装備することができる。
【0014】
一実施形態によれば、フラッシング要素は、長手方向対合面を有する2つの半体を備える細長い分割式のブッシングである。半体は軸方向開口部を一体に画定し、シャンクアダプタは軸方向開口部の内部に設置可能である。開口部の内側表面側はシーリングハウジングを装備する。
【0015】
一実施形態によれば、半体は複数の固定ねじにより互いに固定される。言い換えると、半体は一体にボルト留めされる。
【0016】
一実施形態によれば、半体は分割式のブッシングの内側表面に複数の密閉溝を一体に形成する。
【0017】
一実施形態によれば、半体の対合面は円錐面を有する。
【0018】
一実施形態によれば、フラッシング要素は、フラッシングハウジングの基本構造に対して設置可能および脱着可能であるカバー要素を備える分割式のフラッシングハウジングである。言い換えると、分割式のフラッシングハウジングは、削岩機の前方部を形成するように構成される。前方部はフラッシングヘッドとしても知られている。フラッシングヘッドは回転デバイスのボディの前方端部に設置される。この実施形態では、分割式の構造は、基本フレーム部および取り外し可能であるカバー部片を備える。
【0019】
一実施形態によれば、言及される脱着可能であるカバー要素の外側表面は削岩機の外側表面の一部を形成し、カバー要素の反対側の内側表面はシーリングハウスの半体を備える。
【0020】
一実施形態によれば、カバー要素およびフラッシングヘッドは、フラッシングヘッドの長手方向において、固定面を備える。
【0021】
一実施形態によれば、カバー要素の軸方向長さは、フラッシングヘッド全体の軸方向長さに一致する。
【0022】
一実施形態によれば、フラッシングヘッドまたはハウジングは均一の非分割フレーム構造を装備する。したがって、分割式の構造を備える細長いスリーブ状のフラッシング要素が実装される。シャンクアダプタのベアリングは同様に分割式の構造を与えられる。削岩機の前方端部は、分割されて予め組み立てられたフラッシングハウジングおよびベアリング要素を備えるシャンクモジュールを軸方向において受けるように設計され得る。予め組み立てられたモジュールは、フラッシングヘッドの構造に応じて、衝撃側の端部からまたはフラッシングヘッドのツール側の端部から設置され得る。
【0023】
一実施形態によれば、開示される解決策は削岩機に関連する。削岩機は、ボディ、および、衝撃パルスを生成するための衝撃デバイスを備える。衝撃パルスを受けて、衝撃波を応力波としてシャンクアダプタに接続可能である掘削ツールに伝達するための、シャンクアダプタが存在する。回転デバイスは掘削中にシャンクアダプタの長手方向軸を中心としてシャンクアダプタを回転させるように配置構成され、フラッシング液がボディの前方端部のところに位置するフラッシングヘッドまたはハウジングに供給される。フラッシングヘッドはシャンクアダプタを囲むフラッシング要素を備え、それによってフラッシング要素は、フラッシング液をシャンクアダプタを通して掘削ツールまで供給するための環状フラッシング空間を形成する。フラッシング要素は分割式の構造であり、2つ以上の適合する構成要素を備える。フラッシング要素は本文献で開示される特徴に従う。
【0024】
一実施形態によれば、シーリングは、少なくとも1つの分割ラインを備える分割式のシールであり、それによって分割式のシールは横方向においてシャンクアダプタの周りに装着可能である。言い換えると、分割式のシールは従来のシールのように軸方向には装着されず、それによって分割式のシールの内径はシャンクアダプタの両端部分においてシャンクアダプタの外径より小さい場合でも、分割式のシールはシャンクアダプタの中間部分に装着され得る。
【0025】
一実施形態によれば、分割式のシールはポリマー材料で作られた単一の分割式の回転シールである。
【0026】
一実施形態によれば、分割式のシールは切断部のところで一体にシールの端部を係止して密閉することができる、直線切断部とは異なる成形切断部を有する。
【0027】
一実施形態によれば、切断部はV形であるか、または別法として、切断部は例えばアローフックデザインまたはボール・ソケットデザインを有することができる。
【0028】
一実施形態によれば、分割式のシールは二重分割デザインを有し、それによって分割式のシールは2つの半体を有する。こうすることで、回転シールはセグメント化されたシーリングリングとなることができる。
【0029】
一実施形態によれば、シャンクアダプタは、掘削ツールを接続するための連結ヘッドを備え、反対側の端部分のところに、トルクを伝達するための回転部分がある。回転部分は複数のスプラインを装備する。連結ヘッドと回転部分との間にフラッシング部分があり、フラッシング部分は、連結ヘッド側の端部のところでシャンクアダプタの遠位端まで延在する軸方向フラッシング部分に接触する横方向フラッシング開口部を装備する。連結ヘッドおよび回転部分の外径はフラッシング部分の外径より大きい。言い換えると、シャンクアダプタはより厚い端部の間にスリムな中間セクションを有する。
【0030】
一実施形態によれば、シャンクアダプタの連結ヘッドは、軸方向接触面を装備するショルダと、連結ねじ部を装備する突出軸方向部と、を備える。この実施形態では、ショルダは、衝撃デバイスとシャンクアダプタとの間で伝播応力波を軸方向に伝達するように構成される。通常、ショルダを装備するシャンクアダプタすなわちショルダ接触アダプタは、いわゆる底部接触シャンクアダプタと比較してより長い使用寿命を有する。これは、連結ねじ部のショルダ接触アダプタの温度が底部接触アダプタの連結ねじ部と比較してより低いレベルを維持することができることが理由である。本解決策は、より大きい寸法のベアリングおよびシャンクアダプタを囲むシーリングを使用するのを必要とすることなく、ショルダアダプタを使用するのを可能にする。さらに、開示される解決策は、シャンクアダプタを設置したり外したりするための、ならびに、シャンクアダプタを囲む摩耗または損傷した機械構成要素を交換するための、容易かつ迅速な便宜的手法を提供する。
【0031】
一実施形態によれば、シャンクアダプタの連結ヘッドは、スプラインと連結ねじ部との間のフラッシング部分の外径より大きい外径を有する連結ねじ部を備える。この解決策では、底部接触シャンクが開示される。しかし、底部接触アダプタの連結ねじ部の外形寸法はシャンクアダプタの設置を制限することなく自由に寸法決めされ得、それによって現行の底部接触アダプタと比較して、連結ねじ部は通常よりも大きくなることができ、したがってより高い耐久性を有することができる。
【0032】
一実施形態によれば、シャンクアダプタは、少なくとも1つの分割式の摺動ベアリングにより軸方向に移動可能に支持される。言い換えると、シャンクアダプタのベアリングは、シャンクアダプタの軸方向に対して横方向において設置されたり取り外されたりされ得る。
【0033】
一実施形態によれば、分割式のフラッシング要素は、分割式の摺動ベアリング半体のためのベアリングシートまたはハウジングを備える。シーリングのためのシートおよびベアリング構成要素のためのシートを装備する分割式のフラッシングブッシングも存在し得る。構造が横に設置可能および取り外し可能であるカバー要素を備える場合、シーリングシートおよびベアリングシートが部分的にカバー要素の内側表面側に形成され得る。別法として、分割式のベアリング要素のためのベアリングシートを装備する分割式のベアリングブッシングなどの別個の分割式のベアリング要素が存在してもよい。
【0034】
一実施形態によれば、削岩機は、削岩機の前方端部分のところに位置する、1つまたは複数のセンサ、センサモジュール、または測定デバイスを備える。ここでは、センサは、開示されるシーリングハウジングおよびベアリングと同様に径方向においてシャンクアダプタの周りに設置され得るようになるような、分割式の構成を有する。
【0035】
一実施形態によれば、センサまたはセンサの構成要素は、分割式の構成を有するシーリングハウジングの構造の一部となるように一体化される。
【0036】
一実施形態によれば、センサは、シャンクアダプタ内を伝播する応力波を検出するように構成される。センサは非接触センサであり、誘導センサ、容量センサ、または磁界の変化を検出するセンサであってよい。このようなセンサでは、通常、この事例ではシャンクアダプタである感知対象物を囲むように感知構成要素を配置構成する必要がある。センサまたは感知デバイスの構造が、2つ、3つ、またはそれ以上の部片に分割され得る場合、これがセンサの設置を容易にする。
【0037】
一実施形態によれば、開示される解決策は、削岩機のシャンクアダプタの周りにフラッシング空間を提供する方法に関連する。本方法は、環状形状を有するフラッシング空間を形成するためにフラッシング要素により細長いシャンクアダプタの中間部を囲むことと、フラッシング要素の内側表面上でシーリングハウジングに対して支持された少なくとも2つのフラッシングシーリングによりシャンクアダプタに対してフラッシング要素を密閉することと、少なくとも2つの接続可能な構成要素を備える分割式のフラッシング要素を使用することと、シャンクアダプタに対して横方向においてフラッシング要素の構成要素を接続することと、を含む。
【0038】
一実施形態によれば、本方法は、シャンクアダプタの周りにフラッシング要素を予め組み立てることと、シャンクアダプタとフラッシング要素との組み合わせを単一部片として削岩機の内部に設置することと、を含む。言い換えると、予め組み立てられるシャンクモジュールが形成される。
【0039】
一実施形態によれば、上で言及したプリアセンブリは、フラッシング要素に加えて、予め組み立てられたベアリング要素を備えることができる。
【0040】
一実施形態によれば、削岩機は、摺動ベアリング要素を支持するように構成された別個の分割式のベアリングハウジングまたはモジュールを備える。
【0041】
一実施形態によれば、言及されるベアリング要素は、分割式のフラッシング要素の一体部である。したがって、フラッシング要素は、分割式のベアリング要素を受けるためにベアリングハウジングを装備する。
【0042】
一実施形態によれば、言及される分割式のベアリング要素は摺動ベアリング材で作られる。摺動ベアリング材は、例えば、適切な金属ベアリング材で作られ得る。
【0043】
一実施形態によれば、上で言及した摺動ベアリング材として青銅合金材料が使用される。青銅合金材料は、例えば、錫青銅、鉛錫青銅、アルミニウム青銅、またはマンガン青銅であってよい。
【0044】
一実施形態によれば、開示される方法は以下の設置ステップを含む:分割式のフラッシング要素の第1の構成要素を設置するステップ、シャンクアダプタを第1の構成要素の上に設置するステップ、フラッシングシーリングを設置するステップ、および分割式のフラッシング要素の第2の構成要素を設置するステップ。
【0045】
一実施形態によれば、開示されるフラッシング要素および関連の分割式の構成要素は、いわゆるトップハンマー原理を利用する任意の種類の液圧削岩機で利用され得る。本文献では単に使用の1つの例として表面掘削が開示されるが、これは、本解決策は、地中掘削機械、ボルト締めデバイス、探査デバイス、および、トップハンマリングを実施する任意の種類のデバイスでも使用され得ることを意味する。
【0046】
上で開示される実施形態は、上記の特徴のうちの必要とされる特徴を有する適切な解決策を形成するために組み合わされ得る。
【0047】
添付図面でいくつかの実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】表面掘削のための削岩リグを示す概略側面図である。
【
図4】掘削ツールとのショルダ接触を実施する連結ヘッドを装備するシャンクアダプタを示す概略側面図である。
【
図5】大きい寸法のねじ表面を備える連結ヘッドを装備するシャンクアダプタを示す概略側面図である。
【
図6】2つの半体を備えるスリーブ状のボディを備えるフラッシング要素を示す概略図である。
【
図7】
図6に示されるフラッシング要素を示す概略側断面図である。
【
図8】分割式の構造を有するフラッシングヘッドを示す概略部分側断面図である。
【
図9】成形切断部を備える、軸方向で見た分割式のシーリングリングを示す概略図である。
【
図10】複数の切断部を備える、軸方向で見た分割式のシーリングリングを示す概略図である。
【
図11】成形切断部を備える、横方向で見た分割式のシーリングリングを示す概略図である。
【
図12】2つの半体を備える分割式のベアリング要素を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
分かり易いように、これらの図は開示される解決策のいくつかの実施形態を単純な手法で示す。図では、同様の参照符号は同様の要素を示す。
【0050】
図1は、表面掘削を意図された削岩リグ1を示す。削岩リグ1は、可動台2と、可動台2に接続された少なくとも1つの掘削ブーム3と、を備える。掘削ブーム3の遠位端部分のところに、フィードビーム5およびフィードビーム5の上で支持された岩石機械6を装備する掘削ユニット4が存在する。掘削ツール7は掘削機械6に接続可能である。削岩機6は、ツール7を接続するための、削岩機6の前方端部FEのところにあるシャンクアダプタ8を備える。削岩機6は、衝撃デバイス9および回転デバイス10をさらに備える。削岩機6は、フィードデバイス11によりフィードビーム5上で掘削方向Aの方に移動させられ得る。掘削中、回転シャンクアダプタ8に対する衝撃パルスが衝撃デバイスによって生成され、回転シャンクアダプタ8が衝撃パルスおよびトルクを掘削ツール7に伝達する。フラッシング液流れが中空構造を通してシャンクアダプタ8まで運ばれ、さらに、掘削穴から掘削破片を流し出すために、掘削ツール7の全体を通して掘削穴の底部まで運ばれる。
【0051】
図2は、ボディ12と、衝撃デバイス9と、回転デバイス10と、ギアハウジングと、を備える削岩機6を開示する。ボディ12の前方端部FEのところに、フラッシングハウジング13およびシャンクアダプタ8が設置される。水などのフラッシング液が、フラッシングチャネル14により、フラッシングハウジング13またはフラッシングヘッドまで運ばれる。
【0052】
衝撃デバイス9は、シャンクアダプタ8に対する衝撃方向の衝撃パルスIPを生成するための衝撃ピストン48(
図4に示される)を備えることができる。回転デバイス10、および、ギアハウジング内部にある伝達手段は、
図4に示されるように、シャンクアダプタ8の長手方向軸を中心としてシャンクアダプタ8を回転させる(R)。
【0053】
図3は、削岩機の前方端部FEを非常に単純に開示する。フラッシングハウジング13は、シャンクアダプタ8およびシャンクアダプタ8の周りに組み立てられたフラッシング要素16を備える予め組み立てられたシャンクモジュール15を装備する。フラッシングハウジング13は空間を備えることができ、この空間の内部で、モジュール15は装着軸方向IDに押され得、例えばフランジ17により定位置で係止され得る。見られ得るように、シャンクアダプタ8の両端部は、間の直径D2およびD3より大きい直径D1およびD4を有する。したがって、シャンクアダプタ8は、軸方向においてフラッシング要素19のフレーム18の内部に設置され得ない。代わりに、フレーム18は分割式の構造を有し、フレーム18は、横方向において互いに設置可能である2つの半体を備える。フレーム18に加えて、シーリングS1、S2、およびS3さらには前方ベアリング要素20は同様に分割式の構成を有する。したがって、示される構造では、フラッシング要素19は、分割式のフレーム、分割式のシーリング、および分割式のベアリングを備える。フレーム18およびシールS2、S3は、シャンクアダプタ8のフラッシング部分22の周りにフラッシング空間21を一体に画定する。フラッシング液が、供給開口部49を介して、シャンクアダプタ8を囲むフラッシング空間21まで供給され、さらに、シャンクアダプタ8のフラッシング開口部23を通して、シャンクアダプタ8の内部の軸方向通路50まで供給され、軸方向通路50でフラッシング液50が掘削ツールの方に向かって流れる。
【0054】
フラッシング要素19の内側表面に、フラッシングシーリングS2、S3を受けるための少なくとも2つのシーリングハウジング51が存在する。シーリングハウジング51は、フラッシング空間21を基準として両側において、互いから一定の軸方向距離のところに位置する。さらに、前方シーリングS1を受けるためのシーリングハウジング52が存在する。シーリングハウジング51、52は密閉溝または他の適切な空間であってよい。
【0055】
開示される解決策では、ベアリング部分24の直径D2はシャンクアダプタ8の連結ヘッド25の直径D1より小さくてよく、さらに、回転部分26の直径D4より小さくてよい。これは、衝撃デバイスの衝撃パルスによって生じる応力波の伝播のためには有利である。連結ヘッド25または連結部分のところで、ショルダ27は最大の直径D1を形成することができる。回転部分26のところに、ギアリングハウジングの回転ギアに接触するように設計された複数のスプライン28が存在することができる。連結ヘッド25のところのより大きい寸法D1は連結部の耐久性に関して有利となり得、回転部分26のところのより大きい寸法D4はトルクの伝達に関して有利となり得る。
【0056】
図3に開示される予め組み立てられたシャンクモジュール15は複数の代替的手法でもフラッシングハウジング13に対して支持され得る。例えば、開示される装着方向IDの反対の方向においてモジュール15を設置することも可能である。別の可能性として、開封可能カバーまたは分割式の構造を備えるフラッシングハウジングを設計することがあり、それによってモジュールが横方向において単一部片で装着され得る。
【0057】
図3はさらに、シャンクアダプタ8が、掘削の完了時に掘削ユニットのフィードデバイスにより、シャンクアダプタ8および接続された掘削ツールを後方に後退させることを意図された表面29を備えることができることを開示する。
【0058】
図4はシャンクアダプタ8を開示しており、ここでは、連結ヘッド25がショルダ27および接続ねじ部30を備える。ショルダ27は衝撃波を伝達するための軸方向表面31を備える。シャンクアダプタ8の遠位端32と掘削ツール7との間にクリアランスが存在する。直径D1およびD4は、間の直径D2およびD3より大きい。ピストン33の直径DPおよび直径D3は実質的に等しくてよい。シャンクアダプタ8の後方端部のところに、衝撃面34を装備する、衝撃パルスを受けるための部分が存在することができる。衝撃部分の直径D5は同様に打撃ピストン33の直径DPに等しくてよいかまたは実質的に等しくてよい。したがって、これの利点は、シャンクアダプタ8を通って応力波が良好に伝播することである。
【0059】
図4はいわゆるショルダ接触シャンクアダプタ8を開示しており、対して
図5がいわゆる底部接触シャンクアダプタ8を開示する。
図5では、シャンクアダプタ8の遠位端32はねじ部30によりドリルツール7に対して締め付けられる。ねじ部30の直径D1は一般的なシャンクアダプタより大きくなるように寸法決めされ得る。その理由は、分割式のフラッシング要素がシャンクアダプタとの接続のために使用されることを意図されるからである。
【0060】
図4および5では、シャンクアダプタ8が、直径D1~D4より小さい直径D5を有する細い部分を備えることができることがさらに開示される。
【0061】
図6および7は、一体にボルト留めされ得る第1の半体19aおよび第2の半体19bを備えるフラッシング要素19のスリーブ状のフレーム18を開示する。半体19a、19bの間に接合面または対合面35が存在する。半体19a、19bは軸方向開口部53を一体に画定し、シャンクアダプタは軸方向開口部53の内部に設置可能である。フレーム18の内側表面に、シャンクアダプタの方を向くシーリングを受けるための密閉溝36が存在する。フレーム18の外側表面に、フラッシングハウジングのボディの方を向くシーリングを受けるための複数の密閉溝37が存在する。シーリングおよび密閉溝36、37の数は要求に従って選定され得る。さらに、2つの連続するシーリング要素の間にリークチャネル38が存在することができる。
【0062】
図8は、開封可能カバー要素39を装備するフラッシングハウジング13を備える削岩機の前方端部FEを開示する。この解決策では、フラッシングハウジング13の基本構造40またはフレームに対して設置可能および脱着可能であるカバー要素39を備える分割式のフラッシングハウジング19であるフラッシング要素19が存在する。カバー要素39を取り外すことにより構造が開けられるときに、横方向において、シャンクアダプタ8、シールS、およびベアリング要素20を外したり設置したりすることが容易となる。カバー要素39は基本構造40にボルト留めされ得る。シールSおよびベアリング要素20は、シールSおよびベアリング要素20を設置するのを容易にするための分割式の構造を有する。さらに、後退補助具(retracting aid)として機能するために支持要素41が分割式の構造を有する。フラッシング液が、カバー要素39上に位置することができるフラッシング空間21まで、供給ポート42を通して供給され得る。さらに、潤滑チャネル43はベアリング要素20の適切な潤滑を実現することができる。
【0063】
図9は、1つの成形切断部44を備えるシーリングリングSを開示する。切断部44または分割ラインにより、シーリングリングSは分割式の構造を有する。分割式のシーリングリングSは2つの端部を有し、それによって分割式のシーリングリングSはシャンクアダプタの周りで頭から密閉溝の方に押され得る。
【0064】
図10は、複数の切断部44を備えるシーリングリングSを開示する。この事例では、シーリングリングSは複数の部片Sa~Sdから構成され、現場でシャンクアダプタの周りに組み立てられ得る。部片の数は2つでよいが、いくつかの事例では、3つまたさらには4つであってもよい。
図9および10では、切断部44はV形である。
【0065】
図11はシーリングリングSを開示しており、ここでは、切断部44の方向は
図9および10に示される切断部とは異なる。
図9および10では軸方向に方向付けられた切断部または分割ライン44が示されるが、対して
図11では切断部または分割ライン44は径方向である。
【0066】
図12は、2つのベアリング構成要素20a、20bおよび2つのベアリング構成要素20a、20bの間にある対合面45を備える、分割式の構成を有するベアリング要素20を開示する。ベアリング要素20は摺動ベアリング材で作られた細長いベアリング部分46を備えることができ、さらに、一方の端部のところに横方向フランジ47を備えることができる。
【0067】
図面および関連の記述は本発明の概念を説明することのみを意図する。本発明は、細部において、特許請求の範囲内で変化することができる。
【国際調査報告】