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特表2024-506708特定の乳癌の治療におけるHER2を標的とする抗体薬物複合体の使用
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  • 特表-特定の乳癌の治療におけるHER2を標的とする抗体薬物複合体の使用 図1
  • 特表-特定の乳癌の治療におけるHER2を標的とする抗体薬物複合体の使用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】特定の乳癌の治療におけるHER2を標的とする抗体薬物複合体の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20240206BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240206BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20240206BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K47/65
A61K39/395 T
A61P15/00
A61P35/00
A61P35/04
A61K38/07
A61K39/395 L
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549573
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 CN2022076554
(87)【国際公開番号】W WO2022174775
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】202110189905.8
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110506596.2
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520087262
【氏名又は名称】レメゲン シーオー.,エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】REMEGEN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.58 Beijing Middle Road, Yantai Development Zone, Yantai District, China(Shandong)Pilot Free Trade Zone, Yantai, Shandong 264006 China
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ジアンミン
(72)【発明者】
【氏名】スー, シャオホン
(72)【発明者】
【氏名】グオ, シューグアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ, ルーイー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB25
4C076CC16
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084BA10
4C084BA14
4C084BA23
4C084BA41
4C084MA59
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085AA22
4C085AA23
4C085AA25
4C085AA26
4C085BB11
4C085DD53
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA50
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
(57)【要約】
提供するのは、肝転移を有する乳癌患者または肺転移を有さない乳癌患者の治療のための薬剤の調製における、Her2を標的とする抗体薬物複合体の使用である。対照薬物群(ラパチニブ+カペシタビン)と比較して、肝転移を有する乳癌患者の治療及び肺転移を有さない乳癌患者の治療に提供される抗体薬物複合体の適用は、当該患者の生存期間を有意に改善し得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝転移を有する乳癌患者の治療のための薬剤の調製における抗体薬物複合体(ADC)の使用であって、前記抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U)の構造を有し、式中、Abは、抗Her2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体を表し、Lは、リンカーを表し、Uは、コンジュゲートした細胞傷害性分子を表し、nは、1~8の整数であり、各抗体に結合した前記細胞傷害性分子の数を表し、
前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、Disitamab vedotinと同じCDR配列を有し、
前記リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合で連結され、前記連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含む、前記使用。
【請求項2】
肺転移を有さない乳癌患者の治療のための薬剤の調製における抗体薬物複合体(ADC)の使用であって、前記抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U)の構造を有し、式中、Abは、抗Her2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体を表し、Lは、リンカーを表し、Uは、コンジュゲートした細胞傷害性分子を表し、nは、1~8の整数であり、各抗体に結合した前記細胞傷害性分子の数を表し、
前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、Disitamab vedotinと同じCDR配列を有し、
前記リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合で連結され、前記連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含む、前記使用。
【請求項3】
前記乳癌患者が、HER2発現に対して陽性である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記患者の前記乳癌から得られるサンプルが、HER2陽性である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記患者の前記乳癌から得られる前記サンプルが、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイ(FISH)及び/または免疫組織化学(IHC)アッセイに基づいて、HER2陽性である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記患者の前記乳癌から得られる前記サンプル中のHER2発現が、IHC3+、IHC2+もしくはIHC3+、IHC2+もしくはFISH+、IHC3+もしくはFISH+、IHC2+及びFISH+、IHC3+及びFISH+、またはIHC3+及びFISH-もしくは不検出である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記患者の前記乳癌から得られるサンプルが、エストロゲン受容体(ER)陽性及び/もしくはプロゲステロン受容体(PR)陽性であるか、または前記患者の前記乳癌から得られるサンプルが、ER陰性及びPR陰性である、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記患者が、局所進行性または転移性乳癌を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記患者が、IV期乳癌を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記患者が、切除不能な乳癌を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記乳癌が、組織学及び/または細胞学によって確立される浸潤性局所進行性または転移性乳癌であり、切除不能である、請求項3に記載の使用。
【請求項12】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列GYTFTDYY(配列番号3)を含むHCDR1、アミノ酸配列VNPDHGDS(配列番号4)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDH(配列番号5)を含むHCDR3を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列QDVGTA(配列番号6)を含むLCDR1、アミノ酸配列WAS(配列番号7)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列DYYIH(配列番号11)を含むHCDR1、アミノ酸配列RVNPDHGDSYYNQKFKD(配列番号12)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDHW(配列番号13)を含むHCDR3を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列KASQDVGTAVA(配列番号14)を含むLCDR1、アミノ酸配列WASIRHT(配列番号15)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記抗体が、マウス、キメラ、またはヒト化抗体である、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列
EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記抗体が、ヒトIgG抗体である、請求項14または請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記抗体が、ヒトIgG1、IgG2、またはIgG4抗体である、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記抗体の前記重鎖のアミノ酸配列が、配列番号1に示され、前記抗体の前記軽鎖のアミノ酸配列が、配列番号2に示される、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記抗体薬物複合体が、Disitamab vedotinまたはそのバイオシミラーである、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記抗体薬物複合体の平均DAR(すなわち、薬物対抗体比)値が、2~7のいずれかの数である、請求項1~19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
前記平均DAR値が、4±0.5である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記患者が、以前に化学療法薬、標的療法、免疫療法、及び内分泌療法のうちの1つ以上の前治療を受けたことがある、請求項1~21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記患者が、以前にタキサン全身療法を受けたことがある、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記患者が、以前にトラスツズマブまたはそのバイオシミラーによる全身療法を少なくとも1回受けたことがある、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
前記薬剤が、鼻腔内、皮下、皮内、筋肉内、または静脈内投与される、請求項1~24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
前記抗体薬物複合体が、2週間おきに2.0mg/kgの用量で投与される、請求項1~25のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
前記抗体薬物複合体が、単剤療法として投与される、請求項1~26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
前記抗体薬物複合体を前記乳癌患者に投与することにより、カペシタビン及びラパチニブの投与と比較して、無増悪生存期間(PFS)の改善をもたらす、請求項1~27のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月18日に出願された中国出願第CN202110189905.8号及び2021年5月10日に出願された中国出願第CN202110506596.2号の優先権の利益を主張する。当該出願の各々は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出物に関する内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ可読形式(CRF)(ファイル名:761682008242SEQLIST.TXT、記録日:2022年2月4日、サイズ:9,972バイト)。
【0003】
本開示は、がんの精密な治療の分野に関し、異なる生物学的挙動、臨床指標、及び疾患分子のタイプを有する乳癌の治療におけるHER2(ヒト上皮成長因子受容体2)を標的とする抗体薬物複合体の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
早くも1986年、研究者らは、投与量の精度の問題を提起した(Coops W J.Precision of dosage[J].Tijdschr Diergeneeskd,1986,111(2):91)。2010年、アメリカの医学界は、「プレシジョン・メディシン」という概念を提案した(Shen B,Hwang J.The clinical utility of precision medicine:properly assessing the value of emerging diagnostic tests[J].Clinical Pharmacology and Therapeutics,2010,88(6):754-756)。2015年、当時のオバマ米大統領は、一般教書演説で、がん及びその他の疾患に精密で個別化された医療という目標を達成させることを望む「プレシジョン・メディシン・イニシアチブ」を提案した(Jackson D.Obama pushes‘Precision Medicine Initiative’[N].USA TODAY,2015-1-30)。これは主に、現在の医療のほとんどが、「平均的な患者」向けにデザインされており、一部の患者の治療ではこの「画一的なアプローチ」の手法が大きく成功する可能性があるが、他の患者では成功しない可能性があるためである。プレシジョン・メディシンはまた、多くの場合、パーソナライズド・メディシンとしても理解され、ここでは、広い意味での「プレシジョン」は、適切な患者に対する最適な治療を指し、すなわち、どの治療薬がある特定の集団に対して最も有効であるか、ならびにどの治療薬が無効である可能性があるか、またはより大きな毒性及び副作用を引き起こす可能性があるかを臨床的に判断することが必要である。各患者は固有であるため、「パーソナライズ情報」が必要であり、臨床的には、特定の患者の特定の疾患を正確に分類した後、正しい最適な治療薬を投与することにより、当該患者に対してより効果的で安全かつ経済的な医療を提供することが必要である。
【0005】
乳癌は、よく見られる女性の悪性腫瘍である。人々の生活様式の概念及び生態学的環境の変化により、乳癌の発生率も大幅に増加している。過去100年にわたり、乳癌の治療は、乳房温存手術、術後補助療法、内分泌療法、標的療法等の提案及び推進を検討した。関連する臨床診療及び臨床研究の結果により、該疾患の治療に関する多くの経験及びデータが蓄積され、該疾患の診断の全体的なレベルが改善された。しかしながら、乳癌の臨床治療は常に組織病理学に基づいているが、同じ病理タイプ及び同じ臨床病期の乳癌患者に同じレジメンを使用した場合でも、治療の感度及び患者の予後は大きく異なる。明らかに、従来の組織病理学的診断及び臨床病期分類では、腫瘍研究の開発ニーズにもはや十分に対応できない。実際、異なる乳癌患者は、異なる生物学的挙動及び臨床指標、例えば、年齢、民族、経済歴、腫瘍の家族歴、病理タイプ、病理学的グレード、腫瘍の位置、腫瘍のサイズ、リンパ節転移、臨床病期、さらには疾患分子のタイプを有する。これはまた、同じ組織型の乳癌の治療反応、生存、及び他の側面における明らかな違いの主な理由でもある。したがって、臨床診療では、精密な個別化治療の目的を達成するため(すなわち、個人差に応じて最適な治療薬を投与するため)、治療は、患者の異なる生物学的挙動、臨床指標、及び疾患分子のタイプ等に従って分類されるべきである。
中国特許公開第CN105008398A号は、HER2に特異的に結合することができ、薬物部分のMMAEを有する抗体薬物複合体(すなわち、Disitamab vedotin)を開示している。現在、該薬物は、乳癌を含めた様々なHER2発現(IHC1+以上)がんの適応症、例えば、胃癌及び尿路上皮癌、ならびにHER2低発現(IHC2+/FISH-またはIHC1+)のがんの適応症、例えば、HER2低発現乳癌の治療法として検討されている。2020年8月、NMPAは、局所進行性または転移性胃癌(胃食道接合部腺癌を含む)の患者の治療用のDisitamab vedotinの新薬申請を受理した。同年9月、米国FDAはまた、HER2発現(IHC2+またはIHC3+)局所進行性または転移性尿路上皮癌の適応症の二次治療として、Disitamab vedotinに画期的治療薬指定を与えた。さらに、該新薬は、尿路上皮癌及び胃癌の治療法として米国FDAからファストトラック指定も受けている。
特許出願、特許公開、及びUniProtKB/Swiss-Prot受託番号を含め、本明細書において引用されるすべての参考文献は、個々の参考文献が、参照により組み込まれることを具体的かつ個々に示されているものとして、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願公開第105008398号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Coops W J.Precision of dosage[J].Tijdschr Diergeneeskd,1986,111(2):91
【非特許文献2】Shen B,Hwang J.The clinical utility of precision medicine:properly assessing the value of emerging diagnostic tests[J].Clinical Pharmacology and Therapeutics,2010,88(6):754-756
【非特許文献3】Jackson D.Obama pushes‘Precision Medicine Initiative’[N].USA TODAY,2015-1-30
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、抗HER2抗体薬物複合体(ADC)での乳癌患者の治療のための方法及び使用を提供する。これらの方法及び使用は、肝転移を有する乳癌患者または肺転移を有さない乳癌患者の治療に使用された場合に、ADCが予期せぬ技術的効果を生じたという出願人の驚くべき発見を実証する本明細書に提示する臨床データの詳細な解析に少なくとも部分的に基づいている。既存の標準治療と比較して、無増悪生存期間が有意に延長された。
【0009】
例えば、肝転移を有する乳癌患者では、Disitamab vedotin投与群の無増悪生存期間は12.5か月であり、カペシタビン+ラパチニブ群の無増悪生存期間は5.6か月であった。肺転移を有さない乳癌患者では、Disitamab vedotin投与群の無増悪生存期間は10.9か月であり、カペシタビン+ラパチニブ群の無増悪生存期間は5.6か月であった。対照的に、本発明が提供する抗体薬物複合体(ADC、特にDisitamab vedotin)の有効性は、乳癌患者のサンプル全体及び骨転移のない乳癌患者の下位群または内臓転移のない乳癌患者の下位群において統計的に有意な利点を示さなかったため、肝転移を有する乳癌患者または肺転移を有さない乳癌患者において見られたこれらの優れた結果は、驚くべきものであった。
【0010】
全体として、Disitamab vedotinは、肝転移のある乳癌患者または肺転移を有さない乳癌患者の疾患の無増悪期間及び生存期間を効果的に延長し、それにより、患者により精密な治療選択肢を提供した。換言すると、本発明が提供する抗体薬物複合体(ADC、特にDisitamab vedotin)を、肝転移を有する乳癌患者の治療または肺転移を有さない乳癌患者の治療に適用することにより、該当する患者に対する「精密な治療」を達成することができる。対照投与群と比較して、肝転移を有する乳癌患者及び肺転移を有さない乳癌患者におけるDisitamab vedotin投与群の臨床応用は大きな意義を有し、疾患進行及び当該患者の生存可能期間を大幅に延長する。
【0011】
本明細書に提供するのは、肝転移を有する乳癌患者の治療のための薬剤の調製における抗体薬物複合体(ADC)の使用であり、該抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U)の構造を有し、式中、Abは、抗Her2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体を表し、Lは、リンカーを表し、Uは、コンジュゲートした細胞傷害性分子を表し、nは、1~8の整数でありかつ各抗体に結合した細胞傷害性分子の数を表し、該抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域のCDR及び/または該軽鎖可変領域のCDRは、Disitamab vedotinと同じCDR配列を有し、リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、スルフヒドリルコンジュゲーションによって該抗体に共有結合で連結され、当該連結部位は、該抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含む。さらに本明細書に提供するのは、肺転移を有さない乳癌患者の治療のための薬剤の調製における抗体薬物複合体(ADC)の使用であり、該抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U)の構造を有し、式中、Abは、抗Her2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体を表し、Lは、リンカーを表し、Uは、コンジュゲートした細胞傷害性分子を表し、nは、1~8の整数でありかつ各抗体に結合した細胞傷害性分子の数を表し、該抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域のCDR及び/または該軽鎖可変領域のCDRは、Disitamab vedotinと同じCDR配列を有し、リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、スルフヒドリルコンジュゲーションによって該抗体に共有結合で連結され、当該連結部位は、該抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、該乳癌患者は、HER2発現に対して陽性である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌から得られるサンプルは、HER2陽性である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌から得られるサンプルは、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイ(FISH)及び/または免疫組織化学(IHC)アッセイに基づいて、HER2陽性である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌から得られるサンプル中のHER2発現は、IHC3+、IHC2+もしくはIHC3+、IHC2+もしくはFISH+、IHC3+もしくはFISH+、IHC2+及びFISH+、IHC3+及びFISH+、またはIHC3+及びFISH-もしくは不検出である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌から得られるサンプルは、エストロゲン受容体(ER)陽性及び/またはプロゲステロン受容体(PR)陽性である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌から得られるサンプルは、エストロゲン受容体(ER)陽性またはプロゲステロン受容体(PR)陽性である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌から得られるサンプルは、ER陰性及びPR陰性である。いくつかの実施形態では、該患者は、局所進行性または転移性乳癌を有する。いくつかの実施形態では、該患者は、IV期乳癌を有する。いくつかの実施形態では、該患者は、切除不能な乳癌を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、該抗体は、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、該VH領域は、アミノ酸配列GYTFTDYY(配列番号3)を含むHCDR1、アミノ酸配列VNPDHGDS(配列番号4)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDH(配列番号5)を含むHCDR3を含み、該VL領域は、アミノ酸配列QDVGTA(配列番号6)を含むLCDR1、アミノ酸配列WAS(配列番号7)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、該抗体は重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、該VH領域は、アミノ酸配列DYYIH(配列番号11)を含むHCDR1、アミノ酸配列RVNPDHGDSYYNQKFKD(配列番号12)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDHW(配列番号13)を含むHCDR3を含み、該VL領域は、アミノ酸配列KASQDVGTAVA(配列番号14)を含むLCDR1、アミノ酸配列WASIRHT(配列番号15)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、該抗体は、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、該VH領域は、アミノ酸配列EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)を含み、及び/または該VL領域は、アミノ酸配列DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)を含む。いくつかの実施形態では、該抗体は、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、該VH領域は、アミノ酸配列EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)を含み、かつ該VL領域は、アミノ酸配列DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)を含む。いくつかの実施形態では、該抗体は、マウス、キメラ、またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、該抗体は、ヒトIgG抗体である。いくつかの実施形態では、該抗体は、ヒトIgG1、IgG2、またはIgG4抗体である。いくつかの実施形態では、該抗体の重鎖のアミノ酸配列は、配列番号1に示され、該抗体の軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号2に示される。いくつかの実施形態では、該抗体の重鎖のアミノ酸配列は、C末端のリジンを除いた配列番号1に示され、該抗体の軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号2に示される。
【0014】
いくつかの実施形態では、該抗体薬物複合体は、Disitamab vedotinまたはそのバイオシミラーである。いくつかの実施形態では、該抗体薬物複合体の平均DAR(すなわち、薬物対抗体比)値は、2~7の任意の数である。いくつかの実施形態では、該平均DAR値は、4±0.5である。
【0015】
いくつかの実施形態では、該患者は、以前に化学療法薬、標的療法、免疫療法、及び内分泌療法のうちの1つ以上の前治療を受けたことがある。いくつかの実施形態では、該患者は、以前にタキサン全身療法を受けたことがある。いくつかの実施形態では、該患者は、以前にトラスツズマブまたはそのバイオシミラーによる全身療法を少なくとも1回受けたことがある。いくつかの実施形態では、該薬剤は、鼻腔内、皮下、皮内、筋肉内または静脈内投与される。いくつかの実施形態では、該薬剤は、2週間おきに2.0mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、該薬剤は、単剤療法として投与される。いくつかの実施形態では、該抗体薬物複合体を該乳癌患者に投与することにより、カペシタビン及びラパチニブの投与と比較して、無増悪生存期間(PFS)が延長される。
【0016】
さらに本明細書に提供するのは、乳癌の治療を必要とする患者に対して、治療有効量の抗体薬物複合体(ADC)を投与することを含む乳癌の治療方法であり、該抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U)の構造を有し、式中、Abは、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)に特異的に結合する抗体を表し、Lは、リンカーを表し、Uは、細胞傷害性分子を表し、nは、1~8の整数であり、各抗体にコンジュゲートした細胞傷害性分子(複数可)の数を表し、該抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域のCDR及び/または該軽鎖可変領域のCDRは、Disitamab vedotinと同じCDR配列を有し、リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、スルフヒドリルコンジュゲーションによって該抗体に共有結合で連結され、当該連結部位は、該抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含む。いくつかの実施形態では、該患者は、肝転移を有する。いくつかの実施形態では、該患者は、肺転移を有さない。いくつかの実施形態では、該患者は、肝転移を有し、肺転移を有さない。
【0017】
いくつかの実施形態では、該患者の乳癌から得られるサンプルは、HER2陽性である。いくつかの実施形態では、該乳癌は、HER2を発現し、例えば、HER2を過剰発現する。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌から得られるサンプルは、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイ(FISH)及び/または免疫組織化学(IHC)アッセイに基づいて、HER2陽性である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌から得られるサンプル中のHER2発現は、IHC3+、IHC2+もしくはIHC3+、IHC2+もしくはFISH+、IHC3+もしくはFISH+、IHC2+及びFISH+、IHC3+及びFISH+、またはIHC3+及びFISH-もしくは不検出である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌から得られるサンプルは、エストロゲン受容体(ER)陽性及び/またはプロゲステロン受容体(PR)陽性である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌から得られるサンプルは、エストロゲン受容体(ER)陽性及びプロゲステロン受容体(PR)陽性である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌から得られるサンプルは、ER陰性及びPR陰性である。
【0018】
いくつかの実施形態では、該患者は、局所進行性または転移性乳癌を有する。いくつかの実施形態では、該患者は、IV期乳癌を有する。いくつかの実施形態では、該患者は、切除不能な乳癌を有する。いくつかの実施形態では、該乳癌は、組織学及び/または細胞学によって確立される浸潤性局所進行性または転移性乳癌であり、切除不能である。
【0019】
いくつかの実施形態では、該抗体は、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、該VH領域は、アミノ酸配列GYTFTDYY(配列番号3)を含むHCDR1、アミノ酸配列VNPDHGDS(配列番号4)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDH(配列番号5)を含むHCDR3を含み、及び/または該VL領域は、アミノ酸配列QDVGTA(配列番号6)を含むLCDR1、アミノ酸配列WAS(配列番号7)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、該抗体は、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、該VH領域は、アミノ酸配列GYTFTDYY(配列番号3)を含むHCDR1、アミノ酸配列VNPDHGDS(配列番号4)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDH(配列番号5)を含むHCDR3を含み、該VL領域は、アミノ酸配列QDVGTA(配列番号6)を含むLCDR1、アミノ酸配列WAS(配列番号7)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、該抗体は、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、該VH領域は、アミノ酸配列DYYIH(配列番号11)を含むHCDR1、アミノ酸配列RVNPDHGDSYYNQKFKD(配列番号12)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDHW(配列番号13)を含むHCDR3を含み、及び/または該VL領域は、アミノ酸配列KASQDVGTAVA(配列番号14)を含むLCDR1、アミノ酸配列WASIRHT(配列番号15)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、該抗体は重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、該VH領域は、アミノ酸配列DYYIH(配列番号11)を含むHCDR1、アミノ酸配列RVNPDHGDSYYNQKFKD(配列番号12)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDHW(配列番号13)を含むHCDR3を含み、該VL領域は、アミノ酸配列KASQDVGTAVA(配列番号14)を含むLCDR1、アミノ酸配列WASIRHT(配列番号15)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、該抗体は、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、該VH領域は、アミノ酸配列EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)を含み、及び/または該VL領域は、アミノ酸配列DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)を含む。いくつかの実施形態では、該抗体は、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、該VH領域は、アミノ酸配列EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)を含み、かつ該VL領域は、アミノ酸配列DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)を含む。いくつかの実施形態では、該抗体は、ヒトIgG抗体、例えば、ヒトIgG1、IgG2、またはIgG4抗体である。いくつかの実施形態では、該抗体は、ヒトFc領域、例えば、ヒトIgG1、IgG2、またはIgG4のFc領域を含む。いくつかの実施形態では、該抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、該抗体は、C末端のリジンを除いた配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、該抗体薬物複合体は、Disitamab vedotinまたはそのバイオシミラーである。いくつかの実施形態では、該抗体薬物複合体の平均薬物対抗体比(DAR)は、2~7の任意の数であり、例えば、該平均DAR値は、4±0.5である。
【0021】
いくつかの実施形態では、該ADCの投与の前に、該患者は、すでに化学療法薬、標的療法、免疫療法、または内分泌療法を含む1つ以上の前治療を受けている。いくつかの実施形態では、該ADCの投与の前に、該患者は、タキサン全身療法を受けたことがある。いくつかの実施形態では、該ADCの投与の前に、該患者は、トラスツズマブまたはそのバイオシミラーによる全身療法を少なくとも1回受けたことがある。いくつかの実施形態では、該ADCの投与の前に、該患者は、抗HER2抗体による全身療法を少なくとも1回受けたことがある。いくつかの実施形態では、該ADCは、鼻腔内、皮下、皮内、筋肉内、または静脈内投与される。いくつかの実施形態では、該ADCは、2週間おきに2.0mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、該ADCは、単剤療法として投与される。いくつかの実施形態では、該ADCを投与することにより、カペシタビン及びラパチニブの投与と比較して、当該患者の無増悪生存期間(PFS)が延長される。いくつかの実施形態では、該ADCは、該ADC及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物で投与される。
【0022】
本明細書に記載の様々な実施形態の特性のうちの1つ、一部、またはすべてを組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成してもよいことを理解されたい。本発明のこれら及び他の態様が、当業者には明らかになるであろう。本発明のこれら及び他の実施形態は、後続の発明を実施するための形態によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】モノメチルオーリスタチンE(MMAE)の構造の概略図である。
図2】可能なコンジュゲーション条件のうちの1つにおける本開示の構造一般式Ab-(L-U)の抗体薬物複合体の例示的な構造の概略図であり(Lは、抗体の鎖間ジスルフィド結合部位の1つ以上に、スルフヒドリルコンジュゲーションを介して連結される)、式中、nは、それぞれ、1、2、3、4、5、6、7、及び8であり、Lは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)であり、Uは、MMAEであり、「-L-U」の構造は、以下の通りである:
【化1】
【発明を実施するための形態】
【0024】
I.定義
別途定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって理解されるものと同じ意味を有する。当該分野の定義及び用語については、専門業者は、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel)を参照することができる。
【0025】
本発明で使用されるアミノ酸に関する3文字及び1文字コードは、J.biol.chem,243,p3558(1968)に記載の通りである。
【0026】
本発明では、抗体の可変ドメインの相補性決定領域(CDR)の特定及び付番方法は、IMGT、Kabat、Chothia、AbM、及びContactの方法を含み、これらは、当技術分野では周知である。
【0027】
本発明で使用される、「抗体」は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗原結合断片が挙げられるがこれらに限定されない様々な抗体構造を包含する。本発明で使用される、「抗原結合断片」とは、抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含み、そのもととなる抗体と同じ結合特異性及び十分な親和性を保持するのに十分な抗体断片を指す。特に、該抗原結合断片は、Fab、F(ab’)、及びF(ab’)2を含み、これらは、ポリペプチドに対して特定の抗原を結合させるために十分な少なくとも1つの免疫グロブリン断片を含む。上記の断片は、合成によって、または酵素法によって、または無傷の免疫グロブリンの化学的切断によって調製される場合もあれば、組み換えDNA技術を使用することによって遺伝子操作される場合もある。上記断片の生成方法は、当技術分野では周知である。
【0028】
本発明で使用される、「マウス抗体」という用語は、当技術分野の知識及び技能に従って調製されるモノクローナル抗体である。調製の過程で、対応する抗原を試験対象に注射した後、所望の配列または機能特性を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離した。本発明の好ましい実施形態では、マウス抗体またはその抗原結合断片は、マウスのκもしくはλ鎖またはそのバリアントの軽鎖定常領域をさらに含むことができるか、あるいは、マウスIgG1、IgG2、IgG3、またはそのバリアントの重鎖定常領域をさらに含む。
【0029】
本発明で使用される、「キメラ抗体」という用語は、マウス抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域との融合であり、該マウス抗体によって誘導される免疫応答を低減することができる抗体である。キメラ抗体を確立する場合、マウスの特異的モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを最初に確立する。次に、マウスのハイブリドーマ細胞から可変領域の遺伝子をクローニングし、必要に応じて、定常領域の遺伝子をヒト抗体からクローニングする。該マウス可変領域遺伝子と該ヒト定常領域遺伝子を連結してキメラ遺伝子を形成し、ヒトベクターに挿入する。最後に、キメラ抗体分子を、真核生物の工業系または原核生物の工業系で発現させる。本発明の好ましい実施形態では、該キメラ抗体の抗体軽鎖は、さらに、ヒトκ鎖もしくはλ鎖またはそのバリアントの軽鎖定常領域を含む。該キメラ抗体の抗体重鎖は、さらに、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、またはそのバリアントの重鎖定常領域を含む。該ヒト抗体の定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4、またはそのバリアントの重鎖定常領域から選択することができ、好ましくは、ヒトIgG2またはIgG4の重鎖定常領域を含む。代替的に、アミノ酸の変異が生じた後にADCC毒性(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性)を有さないIgG4が使用される。
【0030】
本発明で使用される、「ヒト化抗体」という用語は、CDRグラフト抗体としても知られ、マウスCDR配列をヒト抗体可変領域フレームワーク(すなわち、異なるタイプのヒト生殖系列抗体フレームワーク配列)にグラフトすることによって生成される抗体を指す。それは、非ヒト抗体に由来するCDR領域を含み、該抗体分子の残りは、1つのヒト抗体(または複数のヒト抗体)に由来する。さらに、結合親和性を維持するために、フレームワーク領域(FRと呼ばれる)セグメントのいくつかの残基を修飾することができる(Jones et al.,Nature,321:522-525,1986、Verhoeyen et al.,Science,239:1534-1536,1988、及びRiechmann et al.,Nature,332:323-327,1988)。本発明によるヒト化抗体またはその断片は、当業者に既知の技術に従って調製され得る(例えば、Singer et al.,J.Immun.150:2844-2857,1992、Mountain et al.,Biotechnol.Genet.Eng.Rev.,10:1-142,1992、またはBebbington et al.,Bio/Technology,10:169-175,1992)。
【0031】
本発明で使用される、平均「DAR」値、すなわち、薬物対抗体比は、該抗体薬物複合体調製物に含まれる該抗体に連結した薬物の数の平均値を指す。
【0032】
本発明で使用される、「スルフヒドリルコンジュゲーション」という用語は、リンカーが抗体上の遊離スルフヒドリル基に共有結合で連結されるコンジュゲーション方法を指す。システインは、抗体内でジスルフィド結合の形で存在しており、IgG抗体には、還元されやすい鎖間ジスルフィド結合が4対存在する。したがって、抗体薬物複合体の調製の過程で、IgG抗体に含まれる4対の鎖間ジスルフィド結合は多くの場合還元され、これによって上記の「抗体上の遊離スルフヒドリル基」が生じる。さらに、IgG抗体には4対の鎖間ジスルフィド結合が存在し、それらが還元されると最大8個の遊離スルフヒドリル基が生成されるため、IgG抗体は最大8個のスルフヒドリルコンジュゲーション部位を有する。したがって、一般式Ab-(L-U)の抗体薬物複合体のnが1の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位のうちの任意の1つの部位に共有結合で連結され得る。同様に、nが2の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位のうちの任意の2つの部位に共有結合で連結され得る。nが3の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位のうちの任意の3つの部位に連結され得る。nが4の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位のうちの任意の4つの部位に共有結合で連結され得る。nが5の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位のうちの任意の5つの部位に共有結合で連結され得る。nが6の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位のうちの任意の6つの部位に共有結合で連結され得る。nが7の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位のうちの任意の7つの部位に共有結合で連結され得る。nが8の場合、「L-U」は、8つのスルフヒドリルコンジュゲーション部位に共有結合で連結され得る。
【0033】
II.使用及び方法
本開示のある特定の態様は、HER2に結合する抗体薬物複合体(ならびにその方法及び使用)に関する。いくつかの実施形態では、関与する抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U)の構造を有し、式中、Abは、抗HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体を表し、Lは、リンカーを表し、Uは、コンジュゲートした細胞傷害性分子を表し、nは、1~8の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)であり、各抗体に結合した細胞傷害性分子の数を表す。
【0034】
いくつかの実施形態では、該細胞傷害性分子は、オーリスタチンであるか、またはそのアナログもしくは誘導体である。オーリスタチンは、天然物ドラスタチンの誘導体である。例示的なオーリスタチンとしては、ドロスタチン(dolostatin)-10、オーリスタチンE、オーリスタチンT、MMAE(N-メチルバリン-バリン-ドライソロイイン-ドラプロイン-ノルエフェドリンまたはモノメチルオーリスタチンE)及びMMAF(N-メチルバリン-バリン-ドライソロイイン-ドラプロイン-フェニルアラニンまたはドバリン(dovaline)-バリン-ドライソロイイン-ドラプロイン-フェニルアラニン)、AEB(オーリスタチンEとパラアセチル安息香酸を反応させることで生じるエステル)、AEVB(オーリスタチンEとベンゾイル吉草酸を反応させることで生じるエステル)、及びAFP(ジメチルバリン-バリン-ドライソロイイン-ドラプロイン-フェニルアラニン-p-フェニレンジアミンまたはオーリスタチンフェニルアラニンフェニレンジアミン)が挙げられる。WO2015/057699は、MMAEを含むペグ化オーリスタチンを記載している。使用が企図されるさらなるドラスタチン誘導体は、参照によりいかなる目的に対しても本明細書に組み込まれる米国特許第9,345,785号に開示されている。
【0035】
いくつかの実施形態では、該細胞傷害性分子は、MMAEである。他の実施形態では、該細胞傷害性薬剤は、MMAFである。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明が提供する抗体薬物複合体に含まれる抗HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体またはその機能的断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域のCDR及び/または該軽鎖可変領域のCDRは、Disitamab vedotinと同じCDR配列を有し、リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、リンカーLは、スルフヒドリルコンジュゲーションによって該抗体に共有結合で連結され、当該連結部位は、該抗体の鎖間ジスルフィド結合部位である。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体薬物複合体は、2~7個の細胞傷害性分子で連結された抗体薬物複合体の混合物であり、該抗体薬物複合体の平均DAR(すなわち、薬物対抗体比)値は、2~7の任意の数であり、より好ましくは、本発明の抗体薬物複合体の平均DAR値は、2、3、4、5、6、または7にほぼ等しい。本発明のいくつかの特定の例では、本発明の抗体薬物複合体の平均DAR値は、4±0.5である。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明に関与する抗HER2抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の対応するCDR1~3は、以下の通りである(IMGT付番):
【表1】
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明に関与する抗HER2抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の対応するCDR1~3は、以下の通りである:
【表2】
【0041】
いくつかの実施形態では、該抗HER2抗体は、配列番号3~8で表される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の対応するCDR1~3を含むが、配列番号3~8に対して1、2、または3個の置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含み、その配列を含む抗HER2抗体は、HER2に結合する能力を保持する。いくつかの実施形態では、該抗HER2抗体は、配列番号11~15及び8で表される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の対応するCDR1~3を含むが、配列番号11~15及び8に対して1、2、または3個の置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含み、その配列を含む抗HER2抗体は、HER2に結合する能力を保持する。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明が提供する抗体薬物複合体に含まれる抗HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体は、マウス、キメラ、ヒト化または完全ヒト、好ましくは、ヒト化モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、該抗体は、モノクローナル抗体である。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明が提供する抗体薬物複合体に含まれる抗HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含めたIgGであり、より好ましくは、IgG1、IgG2、及びIgG4である。
【0044】
いくつかの実施形態では、該抗体は、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、該VH領域は、配列EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/または該VL領域は、配列DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)に対して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、該VH配列(例えば、配列番号9に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する)は、配列番号9に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗HER2抗体は、HER2に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、合計で1~10個のアミノ酸が、配列番号9において置換され、挿入され、及び/または欠失している。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、該CDRの外側の領域で(すなわち、FRにおいて)生じる。ある特定の実施形態では、該VL配列(例えば、配列番号10に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する)は、配列番号10に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗HER2抗体は、HER2に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号10において置換され、挿入され、及び/または欠失している。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、該CDRの外側の領域で(すなわち、FRにおいて)生じる。
【0045】
いくつかの実施形態では、該抗体は、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、該VH領域は、アミノ酸配列EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)を含み、かつ該VL領域は、アミノ酸配列DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体薬物複合体は、Disitamab vedotinであり、これは、HER2標的を標的とする抗体薬物複合体であり、リンカー部分Lは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)であり、細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含み、リンカーLは、該抗体にスルフヒドリルコンジュゲーションによって共有結合で連結され、平均DAR値は、4±0.5である。
【0047】
いくつかの実施形態では、本発明に関与する抗体薬物複合体に含まれる抗体Abの重鎖のアミノ酸配列は、配列番号1に示され、その軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号2に示される。いくつかの実施形態では、該重鎖は、C末端のリジンを除いた配列番号1のアミノ酸配列を含む。
重鎖のアミノ酸配列-配列番号1
EVQLVQSGAE VKKPGATVKI SCKVSGYTFT DYYIHWVQQA PGKGLEWMGR 50
VNPDHGDSYY NQKFKDKATI TADKSTDTAY MELSSLRSED TAVYFCARNY 100
LFDHWGQGTL VTVSSASTKG PSVFPLAPSS KSTSGGTAAL GCLVKDYFPE 150
PVTVSWNSGA LTSGVHTFPA VLQSSGLYSL SSVVTVPSSS LGTQTYICNV 200
NHKPSNTKVD KKVEPKSCDK THTCPPCPAP ELLGGPSVFL FPPKPKDTLM 250
ISRTPEVTCV VVDVSHEDPE VKFNWYVDGV EVHNAKTKPR EEQYNSTYRV 300
VSVLTVLHQD WLNGKEYKCK VSNKALPAPI EKTISKAKGQ PREPQVYTLP 350
PSREEMTKNQ VSLTCLVKGF YPSDIAVEWE SNGQPENNYK TTPPVLDSDG 400
SFFLYSKLTV DKSRWQQGNV FSCSVMHEAL HNHYTQKSLS LSPGK 445
軽鎖のアミノ酸配列-配列番号2
DIQMTQSPSS VSASVGDRVT ITCKASQDVG TAVAWYQQKP GKAPKLLIYW 50
ASIRHTGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCHQ FATYTFGGGT 100
KVEIKRTVAA PSVFIFPPSD EQLKSGTASV VCLLNNFYPR EAKVQWKVDN 150
ALQSGNSQES VTEQDSKDST YSLSSTLTLS KADYEKHKVY ACEVTHQGLS 200
SPVTKSFNRG EC
【0048】
いくつかの実施形態では、本発明に関与する乳癌は、HER2発現陽性乳癌、好ましくは、組織学及び/または細胞学によって確立される浸潤性局所進行性または転移性乳癌であり、切除不能である。いくつかの実施形態では、該患者は、IV期乳癌患者である。いくつかの実施形態では、該患者は、65歳未満である。いくつかの実施形態では、該患者は、65歳以上である。
【0049】
いくつかの実施形態では、該患者の乳癌からのサンプルは、HER2陽性、例えば、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイ(FISH+)及び/または免疫組織化学(IHC)に基づいて、HER2陽性である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌からのサンプルは、IHC2+またはIHC3+である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌からのサンプルは、IHC2+またはFISH+である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌からのサンプルは、IHC3+またはFISH+である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌からのサンプルは、IHC2+及びFISH+である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌からのサンプルは、IHC3+及びFISH+である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌からのサンプルは、IHC3+及びFISH-または不検出である。
【0050】
いくつかの実施形態では、該患者の乳癌からのサンプルは、エストロゲン受容体(ER)陽性である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌からのサンプルは、エストロゲン受容体(ER)陰性である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌からのサンプルは、プロゲステロン受容体(PR)陽性である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌からのサンプルは、プロゲステロン受容体(PR)陰性である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌からのサンプルは、ER+及び/またはPR+である。いくつかの実施形態では、該患者の乳癌からのサンプルは、ER-及びPR-である。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明による治療を受ける患者は、以前に化学療法薬、標的療法、免疫療法、及び内分泌療法のうちの1つ以上の前治療を受けたことがあり、好ましくは、該患者は、以前にタキサン全身療法を受けたことがあるか、または該患者は、以前にトラスツズマブまたはそのバイオシミラーによる全身療法を少なくとも1回受けている必要がある。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体薬物複合体または薬剤は、鼻腔内、皮下、皮内、筋肉内または静脈内投与され得る。それは、2週間おきに2.0mg/kgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、該薬剤は、該抗体薬物複合体及び医薬的に許容される担体を含む。いくつかの実施形態では、該抗体薬物複合体を該乳癌患者に投与することにより、カペシタビン及びラパチニブの投与と比較して、無増悪生存期間(PFS)が延長される。いくつかの実施形態では、該抗体薬物複合体は、単剤療法として投与される。
【0053】
本開示の例示的かつ非限定的な実施形態を以下に提供する。
実施形態1.肝転移を有する乳癌患者の治療のための薬剤の調製における抗体薬物複合体(ADC)の使用であって、前記抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U)の構造を有し、式中、Abは、抗Her2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体を表し、Lは、リンカーを表し、Uは、コンジュゲートした細胞傷害性分子を表し、nは、1~8の整数であり、各抗体に結合した前記細胞傷害性分子の数を表し、
前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、Disitamab vedotinと同じCDR配列を有し、
前記リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合で連結され、前記連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含む、前記使用。
【0054】
実施形態2.肺転移を有さない乳癌患者の治療のための薬剤の調製における抗体薬物複合体(ADC)の使用であって、前記抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U)の構造を有し、式中、Abは、抗Her2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体を表し、Lは、リンカーを表し、Uは、コンジュゲートした細胞傷害性分子を表し、nは、1~8の整数であり、各抗体に結合した前記細胞傷害性分子の数を表し、
前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、Disitamab vedotinと同じCDR配列を有し、
前記リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合で連結され、前記連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含む、前記使用。
【0055】
実施形態3.前記乳癌患者が、HER2発現に対して陽性である、実施形態1または2に記載の使用。
【0056】
実施形態4.前記患者の乳癌から得られるサンプルが、HER2陽性である、実施形態3に記載の使用。
【0057】
実施形態5.前記患者の乳癌から得られるサンプルが、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイ(FISH)及び/または免疫組織化学(IHC)アッセイに基づいて、HER2陽性である、実施形態4に記載の使用。
【0058】
実施形態6.前記患者の乳癌から得られるサンプル中のHER2発現が、IHC3+、IHC2+もしくはIHC3+、IHC2+もしくはFISH+、IHC3+もしくはFISH+、IHC2+及びFISH+、IHC3+及びFISH+、またはIHC3+及びFISH-もしくは不検出である、実施形態5に記載の使用。
【0059】
実施形態7.前記患者の乳癌から得られるサンプルが、エストロゲン受容体(ER)陽性及び/またはプロゲステロン受容体(PR)陽性であるか、または前記患者の乳癌から得られるサンプルが、ER陰性及びPR陰性である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の使用。
【0060】
実施形態8.前記患者が、局所進行性または転移性乳癌を有する、実施形態1~7のいずれか1つに記載の使用。
【0061】
実施形態9.前記患者が、IV期乳癌を有する、実施形態1~7のいずれか1つに記載の使用。
【0062】
実施形態10.前記患者が、切除不能な乳癌を有する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の使用。
【0063】
実施形態11.前記乳癌が、組織学及び/または細胞学によって確立される浸潤性局所進行性または転移性乳癌であり、切除不能である、実施形態3に記載の使用。
【0064】
実施形態12.前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列GYTFTDYY(配列番号3)を含むHCDR1、アミノ酸配列VNPDHGDS(配列番号4)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDH(配列番号5)を含むHCDR3を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列QDVGTA(配列番号6)を含むLCDR1、アミノ酸配列WAS(配列番号7)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の使用。
【0065】
実施形態13.前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列DYYIH(配列番号11)を含むHCDR1、アミノ酸配列RVNPDHGDSYYNQKFKD(配列番号12)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDHW(配列番号13)を含むHCDR3を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列KASQDVGTAVA(配列番号14)を含むLCDR1、アミノ酸配列WASIRHT(配列番号15)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の使用。
【0066】
実施形態14.前記抗体が、マウス、キメラ、またはヒト化抗体である、実施形態1~13のいずれか1つに記載の使用。
【0067】
実施形態15.前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)を含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の使用。
【0068】
実施形態16.前記抗体が、ヒトIgG抗体である、実施形態14または実施形態15に記載の使用。
【0069】
実施形態17.前記抗体が、ヒトIgG1、IgG2、またはIgG4抗体である、実施形態16に記載の使用。
【0070】
実施形態18.前記抗体の重鎖のアミノ酸配列が、配列番号1に示され、前記抗体の軽鎖のアミノ酸配列が、配列番号2に示される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の使用。
【0071】
実施形態19.前記抗体薬物複合体が、Disitamab vedotinまたはそのバイオシミラーである、実施形態1~11のいずれか1つに記載の使用。
【0072】
実施形態20.前記抗体薬物複合体の平均DAR(すなわち、薬物対抗体比)値が、2~7の任意の数である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の使用。
【0073】
実施形態21.前記平均DAR値が、4±0.5である、実施形態20に記載の使用。
【0074】
実施形態22.前記患者が、以前に化学療法薬、標的療法、免疫療法、及び内分泌療法のうちの1つ以上の前治療を受けたことがある、実施形態1~21のいずれか1つに記載の使用。
【0075】
実施形態23.前記患者が、以前にタキサン全身療法を受けたことがある、実施形態22に記載の使用。
【0076】
実施形態24.前記患者が、以前にトラスツズマブまたはそのバイオシミラーによる全身療法を少なくとも1回受けたことがある、実施形態22に記載の使用。
【0077】
実施形態25.前記薬剤が、鼻腔内、皮下、皮内、筋肉内、または静脈内投与される、実施形態1~24のいずれか1つに記載の使用。
【0078】
実施形態26.前記抗体薬物複合体が、2週間おきに2.0mg/kgの用量で投与される、実施形態1~25のいずれか1つに記載の使用。
【0079】
実施形態27.前記抗体薬物複合体が、単剤療法として投与される、実施形態1~26のいずれか1つに記載の使用。
【0080】
実施形態28.前記抗体薬物複合体を前記乳癌患者に投与することにより、カペシタビン及びラパチニブの投与と比較して、無増悪生存期間(PFS)が延長される、実施形態1~27のいずれか1つに記載の使用。
【0081】
実施形態29.治療有効量の抗体薬物複合体(ADC)を、乳癌の治療を必要とする患者に投与することを含む、乳癌の治療方法であって、前記抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U)の構造を有し、式中、Abは、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)に特異的に結合する抗体を表し、Lは、リンカーを表し、Uは、細胞傷害性分子を表し、nは、1~8の整数であり、各抗体にコンジュゲートした前記細胞傷害性分子(複数可)の数を表し、
前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、Disitamab vedotinと同じCDR配列を有し、
前記リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合で連結され、前記連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含み、前記患者は、肝転移を有する、及び/または肺転移を有さない、前記方法。
【0082】
実施形態30.前記乳癌患者が、HER2発現に対して陽性である、実施形態29に記載の方法。
【0083】
実施形態31.前記患者の乳癌から得られるサンプルが、HER2陽性である、実施形態30に記載の方法。
【0084】
実施形態32.前記患者の乳癌から得られるサンプルが、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイ(FISH)及び/または免疫組織化学(IHC)アッセイに基づいて、HER2陽性である、実施形態31に記載の方法。
【0085】
実施形態33.前記患者の乳癌から得られるサンプル中のHER2発現が、IHC3+、IHC2+もしくはIHC3+、IHC2+もしくはFISH+、IHC3+もしくはFISH+、IHC2+及びFISH+、IHC3+及びFISH+、またはIHC3+及びFISH-もしくは不検出である、実施形態32に記載の方法。
【0086】
実施形態34.前記患者の乳癌から得られるサンプルが、エストロゲン受容体(ER)陽性及び/またはプロゲステロン受容体(PR)陽性であるか、または前記患者の乳癌から得られるサンプルが、ER陰性及びPR陰性である、実施形態29~33のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施形態35.前記患者が、局所進行性または転移性乳癌を有する、実施形態29~34のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
実施形態36.前記患者が、IV期乳癌を有する、実施形態29~34のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
実施形態37.前記患者が、切除不能な乳癌を有する、実施形態29~36のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
実施形態38.前記乳癌が、組織学及び/または細胞学によって確立される浸潤性局所進行性または転移性乳癌であり、切除不能である、実施形態29~36のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施形態39.前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列GYTFTDYY(配列番号3)を含むHCDR1、アミノ酸配列VNPDHGDS(配列番号4)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDH(配列番号5)を含むHCDR3を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列QDVGTA(配列番号6)を含むLCDR1、アミノ酸配列WAS(配列番号7)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む、実施形態29~38のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
実施形態40.前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列DYYIH(配列番号11)を含むHCDR1、アミノ酸配列RVNPDHGDSYYNQKFKD(配列番号12)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDHW(配列番号13)を含むHCDR3を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列KASQDVGTAVA(配列番号14)を含むLCDR1、アミノ酸配列WASIRHT(配列番号15)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む、実施形態29~38のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
実施形態41.前記抗体が、マウス、キメラ、またはヒト化抗体である、実施形態29~40のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
実施形態42.前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)を含む、実施形態29~40のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
実施形態43.前記抗体が、ヒトIgG抗体である、実施形態41または実施形態42に記載の方法。
【0096】
実施形態44.前記抗体が、ヒトIgG1、IgG2、またはIgG4抗体である、実施形態43に記載の使用。
【0097】
実施形態45.前記抗体の重鎖のアミノ酸配列が、配列番号1に示され、前記抗体の軽鎖のアミノ酸配列が、配列番号2に示される、実施形態29~38のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
実施形態46.前記抗体薬物複合体が、Disitamab vedotinまたはそのバイオシミラーである、実施形態29~38のいずれか1つに記載の方法。
【0099】
実施形態47.前記抗体薬物複合体の平均DAR(すなわち、薬物対抗体比)値が、2~7の任意の数である、実施形態29~46のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
実施形態48.前記平均DAR値が4±0.5である、実施形態47に記載の方法。
【0101】
実施形態49.前記ADCの投与の前に、前記患者は、すでに化学療法薬、標的療法、免疫療法、または内分泌療法を含む1つ以上の前治療を受けている、実施形態29~48のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
実施形態50.前記ADCの投与の前に、前記患者は、タキサン全身療法を受けたことがある、実施形態49に記載の方法。
【0103】
実施形態51.前記ADCの投与の前に、前記患者は、トラスツズマブまたはそのバイオシミラーによる全身療法を少なくとも1回受けたことがある、実施形態49に記載の方法。
【0104】
実施形態52.前記ADCが、鼻腔内、皮下、皮内、筋肉内、または静脈内投与される、実施形態29~51のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
実施形態53.前記ADCが、2週間おきに2.0mg/kgの用量で投与される、実施形態29~52のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
実施形態54.前記ADCが、単剤療法として投与される、実施形態29~53のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
実施形態55.前記ADCを投与することにより、カペシタビン及びラパチニブの投与と比較して、前記患者の無増悪生存期間(PFS)が延長される、実施形態29~54のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
実施形態56.前記ADCが、前記ADC及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物で投与される、実施形態29~55のいずれか1つに記載の方法。
【実施例
【0109】
以下の実施例を通じて本発明をさらに説明するが、本発明の範囲を、本記載の実施例の範囲内に限定することを意図するものではない。以下の実施例において、特定の条件について特定されていない実験方法は、従来の方法及び条件に従って、または製品の説明書に従って選択される。
【0110】
実施例1:乳癌患者の治療の全体的なデータ解析
この試験は、HER2陽性(IHC3+またはFISH+として定義される陽性)局所進行性または転移性乳癌を有する患者におけるラパチニブ及びカペシタビンの投与と比較した、Disitamab vedotinの有効性及び安全性を評価するための並行群間ランダム化非盲検臨床試験であった。被験者を、1:1にランダム化した。
【0111】
この試験の主要エンドポイント指標は、PFS(無増悪生存期間)であり、これを6週間(±7日間)評価した。
【0112】
この試験は、投与用に200人の患者の登録を完了した。
【0113】
治験薬
Disitamab vedotin、すなわち、RC48-ADC(平均DAR値:4±0.5)を、2週間に1回、2.0mg/kgの用量で点滴を介して、1投与サイクルとして42日間投与した。
【0114】
対照投与群
ラパチニブを、1250mgで1日1回、1サイクルとして21日間投与し、カペシタビンを、1サイクル21日として、1日の総用量で2000mg/mを連続14日間投与し、7日間休薬した。
【0115】
登録された200人の患者のITT(治療意図に基づく)解析を表1に示す。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
a 生存関数の推定値、及び生存期間の推定値は、カプラン・マイヤー法を使用して得、生存関数の誤差は、グリーンウッド式を使用して推定し、異なる分位時間に対する95%CIを得た。
b 実際の層別因子の考慮:進行疾患に対して受けた以前の化学療法ラインの数(1以下対2)、及び内臓転移の有無(あり対なし)。
c コックス比例ハザードモデルは、投与群と実際の層別因子(進行疾患に対して受けた以前の化学療法ラインの数(1以下対2)、及び内臓転移の有無(あり対なし)を独立変数として使用し、カペシタビン+ラパチニブに対するRC48-ADCのハザード比、95%CI、及びP値を計算した。
d コックス比例ハザードモデルは、投与群を独立変数として使用し、カペシタビン+ラパチニブに対するRC48-ADCのハザード比、95%CI、及びP値を計算した。
注:以下の表2~6の上付き文字a、b、c、dは、上で定義したものと同じ意味を有する。
【表4】
【0116】
全体的なデータ解析により、Disitamab vedotin実験群と対照群(ラパチニブ+カペシタビン)を比較した場合、無増悪生存期間データは、それぞれ、9.3か月及び7.1か月であることが示された。対照群と比較して、実験群は、乳癌患者のサンプル全体において統計的に有意な利点を示さなかった。
【0117】
実施例2:肝転移下位群における無増悪生存期間(PFS)の解析
この実施例は、肝転移下位群における無増悪生存期間(PFS)に対するDisitamab vedotin投与群及び対照投与群(ラパチニブ+カペシタビン)の効果を比較することを目的とする。Disitamab vedotin投与群は、99人の被験者であり、肝転移が生じている38症例及び肝転移が生じていない61症例を含み、対照投与群は、101人の研究被験者であり、肝転移が生じている43症例及び肝転移が生じていない58症例を含んでいた。投与アウトカムのデータ解析(表3参照)により、Disitamab vedotin投与群における肝転移を有さない患者の無増悪生存期間(中央値)は7.0か月であり、対照投与群における肝転移を有さない患者の無増悪生存期間(中央値)は9.0か月であった。Disitamab vedotin投与群における肝転移を有さない患者の無増悪生存期間(中央値)は、対照投与群よりも2.0か月短かった。しかしながら、驚くべきことに、本発明者らは、Disitamab vedotin投与群における肝転移を有する患者の無増悪生存期間(中央値)が、12.5か月であり、対照投与群における肝転移を有する患者の無増悪生存期間(中央値)が、わずか5.6か月であることを見出した。Disitamab vedotin投与群における肝転移を有する患者の無増悪生存期間(中央値)は、対照投与群における肝転移を有する患者の無増悪生存期間(中央値)より有意に6.9か月長かった。対照投与群と比較して、Disitamab vedotin投与群は、肝転移を有する患者の疾患の無増悪期間及び生存期間を有意に延長することができ、これは臨床的価値が極めて高い。
【表5-1】
【表5-2】
【0118】
実施例3:肺転移下位群における無増悪生存期間(PFS)の解析
この実施例は、肺転移下位群における無増悪生存期間(PFS)に対するDisitamab vedotin投与群及び対照投与群(ラパチニブ+カペシタビン)の効果を比較することを目的とする。Disitamab vedotin投与群は、99人の研究被験者であり、肺転移を有する44症例及び肺転移を有さない55症例を含み、対照投与群は、101人の研究被験者であり、肺転移を有する52症例及び肺転移を有さない49症例を含んでいた。投与アウトカムのデータ解析(表4参照)により、Disitamab vedotin投与群における肺転移を有する患者の無増悪生存期間の中央値は8.2か月であり、また、対照投与群における肺転移を有する患者の無増悪生存期間(中央値)は8.3か月であり、2つの間に有意差はなかった。しかしながら、驚くべきことに、本発明者らは、Disitamab vedotin投与群における肺転移を有さない患者の無増悪生存期間(中央値)が10.9か月であり、対照投与群における肺転移を有さない患者の無増悪生存期間(中央値)が、わずか5.6か月であることもまた見出した。Disitamab vedotin投与群における肺転移を有さない患者の無増悪生存期間(中央値)は、対照投与群における肺転移を有さない患者の無増悪生存期間(中央値)より有意に5.3か月長かった。対照投与群と比較して、Disitamab vedotin投与群は、これらの患者の疾患の無増悪期間及び生存期間を有意に延長することができ、これは臨床的価値が極めて高い。
【表6-1】
【表6-2】
【0119】
実施例4:骨転移下位群における無増悪生存期間(PFS)の解析
この実施例は、骨転移下位群における無増悪生存期間(PFS)に対するDisitamab vedotin投与群及び対照投与群(ラパチニブ+カペシタビン)の効果を比較することを目的とする。Disitamab vedotin投与群は、99人の研究被験者であり、骨転移を有する36症例及び骨転移を有さない63症例を含み、対照投与群は、101人の研究被験者であり、骨転移を有する33症例及び骨転移を有さない68症例を含んでいた。投与アウトカムのデータ解析(表5参照)により、Disitamab vedotin投与群における骨転移を有する患者の無増悪生存期間(中央値)は7.8か月であり、対照投与群における骨転移を有する患者の無増悪生存期間(中央値)は6.0か月であった。Disitamab vedotin投与群における骨転移を有する患者の無増悪生存期間(中央値)は、対照投与群よりわずかに長かったが、2つの間には大した差はなかった。Disitamab vedotin投与群における骨転移を有さない患者の無増悪生存期間(中央値)は9.6か月であり、対照投与群における骨転移を有さない患者の無増悪生存期間(中央値)は8.0か月であった。Disitamab vedotin投与群における骨転移を有さない患者の無増悪生存期間(中央値)は、対照投与群よりわずかに長かった(1.6か月)が、2つの間に大した差はなく、患者の利益は限られていた。
【表7-1】
【表7-2】
【0120】
実施例5:内臓転移下位群における無増悪生存期間(PFS)の解析
この実施例は、内臓転移下位群(以下同様)における無増悪生存期間(PFS)に対するDisitamab vedotin投与群及び対照投与群(ラパチニブ+カペシタビン)の効果を比較することを目的とする。Disitamab vedotin投与群は、99人の被験者であり、内臓転移を有する77症例及び内臓転移を有さない22症例を含み、対照投与群は、101人の研究被験者であり、内臓転移を有する78症例及び内臓転移を有さない23症例を含んでいた。投与アウトカムのデータ解析(表6参照)により、Disitamab vedotin投与群における内臓転移を有する患者の無増悪生存期間(中央値)は9.3か月であり、対照投与群における内臓転移を有する患者の無増悪生存期間(中央値)は6.9か月であった。Disitamab vedotin投与群における内臓転移を有する患者の無増悪生存期間(中央値)は、対照投与群よりも2.4か月長かったが、ハザード比検定では、これら2つの間に統計的な差は示されなかった。Disitamab vedotin投与群における内臓転移を有さない患者の無増悪生存期間(中央値)は9.6か月であり、対照投与群における内臓転移を有さない患者の無増悪生存期間(中央値)は8.1か月であった。Disitamab vedotin投与群における内臓転移を有さない患者の無増悪生存期間(中央値)は、対照投与群よりわずかに長かった(1.5か月)が、これら2つの間にもまた統計的な差はなかった。
【表8-1】
【表8-2】
【0121】
表7は、Disitamab vedotin投与群及び対照投与群(ラパチニブ+カペシタビン)の異なる転移部位下位群における無増悪生存期間の概要を示す。この表から、以下のことが認められた。
【0122】
肝転移を有さない乳癌患者では、Disitamab vedotin投与群の無増悪生存期間は7.0か月であり、カペシタビン+ラパチニブ群の無増悪生存期間は9.0か月であった。カペシタビン+ラパチニブと比較して、Disitamab vedotin投与群における肝転移を有さない乳癌患者の無増悪生存期間は、2.0か月短かった。肝転移を有する乳癌患者では、Disitamab vedotin投与群の無増悪生存期間は12.5か月であり、カペシタビン+ラパチニブ群の無増悪生存期間は5.6か月であった。カペシタビン+ラパチニブと比較して、Disitamab vedotin投与群は、無増悪生存期間を有意に6.9か月延長し、すなわち、カペシタビン+ラパチニブと比較して、Disitamab vedotin投与群は、肝転移を有する乳癌患者において、疾患進行または死亡の相対リスクを低下させる可能性が58%であった(ハザード比HR=0.42)。これは臨床応用において大きな意義を有し、患者の疾患の無増悪期間及び生存期間を大きく延長した。
【0123】
肺転移を有する乳癌患者では、Disitamab vedotin投与群の無増悪生存期間は8.2か月であり、カペシタビン+ラパチニブ群の無増悪生存期間は8.3か月であった。カペシタビン+ラパチニブと比較して、Disitamab vedotin投与群における肺転移が生じている乳癌患者の無増悪生存期間は、0.1か月短かった。肺転移を有さない乳癌患者では、Disitamab vedotin投与群の無増悪生存期間は10.9か月であり、カペシタビン+ラパチニブ群の無増悪生存期間は5.6か月であった。カペシタビン+ラパチニブと比較して、Disitamab vedotin投与群は、無増悪生存期間を有意に5.3か月延長し、すなわち、カペシタビン+ラパチニブと比較して、Disitamab vedotin投与群は、肺転移を有さない乳癌患者において、疾患進行または死亡の相対リスクを低下させる可能性が39%であった(ハザード比HR=0.61)。これは臨床応用において大きな意義を有し、患者の疾患の無増悪期間及び生存期間を大きく延長した。
【0124】
骨転移を有さない乳癌患者では、Disitamab vedotin投与群の無増悪生存期間は9.6か月であり、カペシタビン+ラパチニブ群の無増悪生存期間は8.0か月であり、骨転移を有する乳癌患者では、Disitamab vedotin投与群の無増悪生存期間は7.8か月であり、カペシタビン+ラパチニブ群の無増悪生存期間は6.0か月であった。これらの2群では、Disitamab vedotin投与群の無増悪生存期間は、カペシタビン+ラパチニブ群より長かったが、延長された期間には、統計的な有意差はなかった。
【0125】
同様に、内臓群では、Disitamab vedotin投与群における内臓転移を有する乳癌患者の無増悪生存期間は9.3か月であり、カペシタビン+ラパチニブ群におけるその無増悪生存期間は6.9か月であり、内臓転移を有さない乳癌患者では、Disitamab vedotin投与群の無増悪生存期間は9.6か月であり、カペシタビン+ラパチニブ群の無増悪生存期間は8.1か月であった。これらの2群では、Disitamab vedotin投与群の無増悪生存期間は、カペシタビン+ラパチニブ群より長かったが、延長された期間には、統計的な有意差はなかった。
【0126】
換言すると、Disitamab vedotinは、肝転移を有する乳癌患者または肺転移を有さない乳癌患者の疾患の無増悪期間及び生存期間を効果的に延長することができ、その効果は自明ではない。すなわち、肝転移を有する乳癌患者及び肺転移を有さない乳癌患者の下位群におけるDisitamab vedotinの適用は、際立った実質的な特徴及び重要な進歩を有しており、臨床的に多大な社会的利益をもたらすこと及びより精密な治療選択肢を患者に提供することができ、社会全体の医療負担を効果的に軽減する。
【表9-1】
【表9-2】
【0127】
本発明は、特定の実施例によって例示されている。しかしながら、当業者には、本発明が特定の実施形態に限定されないことが理解されよう。本発明の範囲内で様々な修正または変更を行うことができ、本明細書全体で言及される様々な技術的特徴は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、互いに組み合わせることができる。かかる修正及び変更は、すべて本発明の範囲内である。
図1
図2
【配列表】
2024506708000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝転移を有する乳癌患者の治療のための薬剤の調製における抗体薬物複合体(ADC)の使用であって、前記抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U)の構造を有し、式中、Abは、抗Her2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体を表し、Lは、リンカーを表し、Uは、コンジュゲートした細胞傷害性分子を表し、nは、1~8の整数であり、各抗体に結合した前記細胞傷害性分子の数を表し、
前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、Disitamab vedotinと同じCDR配列を有し、
前記リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合で連結され、前記連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含む、前記使用。
【請求項2】
肺転移を有さない乳癌患者の治療のための薬剤の調製における抗体薬物複合体(ADC)の使用であって、前記抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U)の構造を有し、式中、Abは、抗Her2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体を表し、Lは、リンカーを表し、Uは、コンジュゲートした細胞傷害性分子を表し、nは、1~8の整数であり、各抗体に結合した前記細胞傷害性分子の数を表し、
前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、Disitamab vedotinと同じCDR配列を有し、
前記リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合で連結され、前記連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含む、前記使用。
【請求項3】
前記乳癌患者が、HER2発現に対して陽性である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記患者の前記乳癌から得られるサンプルが、HER2陽性である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記患者の前記乳癌から得られる前記サンプルが、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイ(FISH)及び/または免疫組織化学(IHC)アッセイに基づいて、HER2陽性である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記患者の前記乳癌から得られる前記サンプル中のHER2発現が、IHC3+、IHC2+もしくはIHC3+、IHC2+もしくはFISH+、IHC3+もしくはFISH+、IHC2+及びFISH+、IHC3+及びFISH+、またはIHC3+及びFISH-もしくは不検出である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記患者の前記乳癌から得られるサンプルが、エストロゲン受容体(ER)陽性及び/もしくはプロゲステロン受容体(PR)陽性であるか、または前記患者の前記乳癌から得られるサンプルが、ER陰性及びPR陰性である、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記患者が、局所進行性または転移性乳癌を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記患者が、IV期乳癌を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記患者が、切除不能な乳癌を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記乳癌が、組織学及び/または細胞学によって確立される浸潤性局所進行性または転移性乳癌であり、切除不能である、請求項3に記載の使用。
【請求項12】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列GYTFTDYY(配列番号3)を含むHCDR1、アミノ酸配列VNPDHGDS(配列番号4)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDH(配列番号5)を含むHCDR3を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列QDVGTA(配列番号6)を含むLCDR1、アミノ酸配列WAS(配列番号7)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列DYYIH(配列番号11)を含むHCDR1、アミノ酸配列RVNPDHGDSYYNQKFKD(配列番号12)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDHW(配列番号13)を含むHCDR3を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列KASQDVGTAVA(配列番号14)を含むLCDR1、アミノ酸配列WASIRHT(配列番号15)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記抗体が、マウス、キメラ、またはヒト化抗体である、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列
EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記抗体が、ヒトIgG抗体である、請求項14または請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記抗体が、ヒトIgG1、IgG2、またはIgG4抗体である、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記抗体の前記重鎖のアミノ酸配列が、配列番号1に示され、前記抗体の前記軽鎖のアミノ酸配列が、配列番号2に示される、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記抗体薬物複合体が、Disitamab vedotinまたはそのバイオシミラーである、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記抗体薬物複合体の平均DAR(すなわち、薬物対抗体比)値が、2~7のいずれかの数である、請求項1~19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
前記平均DAR値が、4±0.5である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記患者が、以前に化学療法薬、標的療法、免疫療法、及び内分泌療法のうちの1つ以上の前治療を受けたことがある、請求項1~21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記患者が、以前にタキサン全身療法を受けたことがある、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記患者が、以前にトラスツズマブまたはそのバイオシミラーによる全身療法を少なくとも1回受けたことがある、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
前記薬剤が、鼻腔内、皮下、皮内、筋肉内、または静脈内投与される、請求項1~24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
前記抗体薬物複合体が、2週間おきに2.0mg/kgの用量で投与される、請求項1~25のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
前記抗体薬物複合体が、単剤療法として投与される、請求項1~26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
前記抗体薬物複合体を前記乳癌患者に投与することにより、カペシタビン及びラパチニブの投与と比較して、無増悪生存期間(PFS)の改善をもたらす、請求項1~27のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
肝転移を有する乳癌患者の治療のための、抗体薬物複合体(ADC)を含む組成物であって、前記抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U) の構造を有し、式中、Abは、抗Her2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体を表し、Lは、リンカーを表し、Uは、コンジュゲートした細胞傷害性分子を表し、nは、1~8の整数であり、各抗体に結合した前記細胞傷害性分子の数を表し、
前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、Disitamab vedotinと同じCDR配列を有し、
前記リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合で連結され、前記連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含む、前記組成物。
【請求項30】
肺転移を有さない乳癌患者の治療のための、抗体薬物複合体(ADC)を含む組成物であって、前記抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U) の構造を有し、式中、Abは、抗Her2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体を表し、Lは、リンカーを表し、Uは、コンジュゲートした細胞傷害性分子を表し、nは、1~8の整数であり、各抗体に結合した前記細胞傷害性分子の数を表し、
前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、Disitamab vedotinと同じCDR配列を有し、
前記リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合で連結され、前記連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含む、前記組成物。
【請求項31】
前記乳癌患者が、HER2発現に対して陽性である、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項32】
前記患者の前記乳癌から得られるサンプルが、HER2陽性である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記患者の前記乳癌から得られる前記サンプルが、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイ(FISH)及び/または免疫組織化学(IHC)アッセイに基づいて、HER2陽性である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記患者の前記乳癌から得られる前記サンプル中のHER2発現が、IHC3+、IHC2+もしくはIHC3+、IHC2+もしくはFISH+、IHC3+もしくはFISH+、IHC2+及びFISH+、IHC3+及びFISH+、またはIHC3+及びFISH-もしくは不検出である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記患者の前記乳癌から得られるサンプルが、エストロゲン受容体(ER)陽性及び/もしくはプロゲステロン受容体(PR)陽性であるか、または前記患者の前記乳癌から得られるサンプルが、ER陰性及びPR陰性である、請求項29~34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
前記患者が、局所進行性または転移性乳癌を有する、請求項29~35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
前記患者が、IV期乳癌を有する、請求項29~35のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
前記患者が、切除不能な乳癌を有する、請求項29~37のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
前記乳癌が、組織学及び/または細胞学によって確立される浸潤性局所進行性または転移性乳癌であり、切除不能である、請求項31に記載の組成物。
【請求項40】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列GYTFTDYY(配列番号3)を含むHCDR1、アミノ酸配列VNPDHGDS(配列番号4)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDH(配列番号5)を含むHCDR3を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列QDVGTA(配列番号6)を含むLCDR1、アミノ酸配列WAS(配列番号7)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む、請求項29~39のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項41】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列DYYIH(配列番号11)を含むHCDR1、アミノ酸配列RVNPDHGDSYYNQKFKD(配列番号12)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDHW(配列番号13)を含むHCDR3を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列KASQDVGTAVA(配列番号14)を含むLCDR1、アミノ酸配列WASIRHT(配列番号15)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む、請求項29~39のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項42】
前記抗体が、マウス、キメラ、またはヒト化抗体である、請求項29~41のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項43】
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列
EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)を含む、請求項29~41のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項44】
前記抗体が、ヒトIgG抗体である、請求項42または請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記抗体が、ヒトIgG1、IgG2、またはIgG4抗体である、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記抗体の前記重鎖のアミノ酸配列が、配列番号1に示され、前記抗体の前記軽鎖のアミノ酸配列が、配列番号2に示される、請求項29~39のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項47】
前記抗体薬物複合体が、Disitamab vedotinまたはそのバイオシミラーである、請求項29~39のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項48】
前記抗体薬物複合体の平均DAR(すなわち、薬物対抗体比)値が、2~7のいずれかの数である、請求項29~47のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項49】
前記平均DAR値が、4±0.5である、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記患者が、以前に化学療法薬、標的療法、免疫療法、及び内分泌療法のうちの1つ以上の前治療を受けたことがある、請求項29~49のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項51】
前記患者が、以前にタキサン全身療法を受けたことがある、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記患者が、以前にトラスツズマブまたはそのバイオシミラーによる全身療法を少なくとも1回受けたことがある、請求項50に記載の組成物。
【請求項53】
鼻腔内、皮下、皮内、筋肉内、または静脈内投与されるものである、請求項29~52のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項54】
前記抗体薬物複合体が、2週間おきに2.0mg/kgの用量で投与されるものである、請求項29~53のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項55】
単剤療法として投与されるものである、請求項29~54のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項56】
前記組成物を前記乳癌患者に投与することにより、カペシタビン及びラパチニブの投与と比較して、無増悪生存期間(PFS)の改善をもたらす、請求項29~55のいずれか1項に記載の組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0127
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0127】
本発明は、特定の実施例によって例示されている。しかしながら、当業者には、本発明が特定の実施形態に限定されないことが理解されよう。本発明の範囲内で様々な修正または変更を行うことができ、本明細書全体で言及される様々な技術的特徴は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、互いに組み合わせることができる。かかる修正及び変更は、すべて本発明の範囲内である。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
肝転移を有する乳癌患者の治療のための薬剤の調製における抗体薬物複合体(ADC)の使用であって、前記抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U) の構造を有し、式中、Abは、抗Her2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体を表し、Lは、リンカーを表し、Uは、コンジュゲートした細胞傷害性分子を表し、nは、1~8の整数であり、各抗体に結合した前記細胞傷害性分子の数を表し、
前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、Disitamab vedotinと同じCDR配列を有し、
前記リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合で連結され、前記連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含む、前記使用。
(項目2)
肺転移を有さない乳癌患者の治療のための薬剤の調製における抗体薬物複合体(ADC)の使用であって、前記抗体薬物複合体は、一般式Ab-(L-U) の構造を有し、式中、Abは、抗Her2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗体を表し、Lは、リンカーを表し、Uは、コンジュゲートした細胞傷害性分子を表し、nは、1~8の整数であり、各抗体に結合した前記細胞傷害性分子の数を表し、
前記抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域のCDR及び/または前記軽鎖可変領域のCDRは、Disitamab vedotinと同じCDR配列を有し、
前記リンカーLは、マレイミド-カプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシ(mc-vc-pAB)を含み、スルフヒドリルコンジュゲーションによって前記抗体に共有結合で連結され、前記連結部位は、前記抗体の鎖間ジスルフィド結合部位であり、
前記細胞傷害性分子Uは、MMAE(モノメチルオーリスタチンE)を含む、前記使用。
(項目3)
前記乳癌患者が、HER2発現に対して陽性である、項目1または2に記載の使用。
(項目4)
前記患者の前記乳癌から得られるサンプルが、HER2陽性である、項目3に記載の使用。
(項目5)
前記患者の前記乳癌から得られる前記サンプルが、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)アッセイ(FISH)及び/または免疫組織化学(IHC)アッセイに基づいて、HER2陽性である、項目4に記載の使用。
(項目6)
前記患者の前記乳癌から得られる前記サンプル中のHER2発現が、IHC3+、IHC2+もしくはIHC3+、IHC2+もしくはFISH+、IHC3+もしくはFISH+、IHC2+及びFISH+、IHC3+及びFISH+、またはIHC3+及びFISH-もしくは不検出である、項目5に記載の使用。
(項目7)
前記患者の前記乳癌から得られるサンプルが、エストロゲン受容体(ER)陽性及び/もしくはプロゲステロン受容体(PR)陽性であるか、または前記患者の前記乳癌から得られるサンプルが、ER陰性及びPR陰性である、項目1~6のいずれか1項に記載の使用。
(項目8)
前記患者が、局所進行性または転移性乳癌を有する、項目1~7のいずれか1項に記載の使用。
(項目9)
前記患者が、IV期乳癌を有する、項目1~7のいずれか1項に記載の使用。
(項目10)
前記患者が、切除不能な乳癌を有する、項目1~9のいずれか1項に記載の使用。
(項目11)
前記乳癌が、組織学及び/または細胞学によって確立される浸潤性局所進行性または転移性乳癌であり、切除不能である、項目3に記載の使用。
(項目12)
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列GYTFTDYY(配列番号3)を含むHCDR1、アミノ酸配列VNPDHGDS(配列番号4)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDH(配列番号5)を含むHCDR3を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列QDVGTA(配列番号6)を含むLCDR1、アミノ酸配列WAS(配列番号7)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む、項目1~11のいずれか1項に記載の使用。
(項目13)
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列DYYIH(配列番号11)を含むHCDR1、アミノ酸配列RVNPDHGDSYYNQKFKD(配列番号12)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ARNYLFDHW(配列番号13)を含むHCDR3を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列KASQDVGTAVA(配列番号14)を含むLCDR1、アミノ酸配列WASIRHT(配列番号15)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列HQFATYT(配列番号8)を含むLCDR3を含む、項目1~11のいずれか1項に記載の使用。
(項目14)
前記抗体が、マウス、キメラ、またはヒト化抗体である、項目1~13のいずれか1項に記載の使用。
(項目15)
前記抗体が、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含み、前記VH領域は、アミノ酸配列
EVQLVQSGAEVKKPGATVKISCKVSGYTFTDYYIHWVQQAPGKGLEWMGRVNPDHGDSYYNQKFKDKATITADKSTDTAYMELSSLRSEDTAVYFCARNYLFDHWGQGTLVTVSS(配列番号9)を含み、前記VL領域は、アミノ酸配列
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCKASQDVGTAVAWYQQKPGKAPKLLIYWASIRHTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQFATYTFGGGTKVEIK(配列番号10)を含む、項目1~13のいずれか1項に記載の使用。
(項目16)
前記抗体が、ヒトIgG抗体である、項目14または項目15に記載の使用。
(項目17)
前記抗体が、ヒトIgG1、IgG2、またはIgG4抗体である、項目16に記載の使用。
(項目18)
前記抗体の前記重鎖のアミノ酸配列が、配列番号1に示され、前記抗体の前記軽鎖のアミノ酸配列が、配列番号2に示される、項目1~11のいずれか1項に記載の使用。
(項目19)
前記抗体薬物複合体が、Disitamab vedotinまたはそのバイオシミラーである、項目1~11のいずれか1項に記載の使用。
(項目20)
前記抗体薬物複合体の平均DAR(すなわち、薬物対抗体比)値が、2~7のいずれかの数である、項目1~19のいずれか1項に記載の使用。
(項目21)
前記平均DAR値が、4±0.5である、項目20に記載の使用。
(項目22)
前記患者が、以前に化学療法薬、標的療法、免疫療法、及び内分泌療法のうちの1つ以上の前治療を受けたことがある、項目1~21のいずれか1項に記載の使用。
(項目23)
前記患者が、以前にタキサン全身療法を受けたことがある、項目22に記載の使用。
(項目24)
前記患者が、以前にトラスツズマブまたはそのバイオシミラーによる全身療法を少なくとも1回受けたことがある、項目22に記載の使用。
(項目25)
前記薬剤が、鼻腔内、皮下、皮内、筋肉内、または静脈内投与される、項目1~24のいずれか1項に記載の使用。
(項目26)
前記抗体薬物複合体が、2週間おきに2.0mg/kgの用量で投与される、項目1~25のいずれか1項に記載の使用。
(項目27)
前記抗体薬物複合体が、単剤療法として投与される、項目1~26のいずれか1項に記載の使用。
(項目28)
前記抗体薬物複合体を前記乳癌患者に投与することにより、カペシタビン及びラパチニブの投与と比較して、無増悪生存期間(PFS)の改善をもたらす、項目1~27のいずれか1項に記載の使用。
【国際調査報告】