IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キュー−ステート バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】UBE3Aアンチセンス治療剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240206BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240206BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20240206BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20240206BHJP
【FI】
C12N15/113 130Z
C12N15/113 ZNA
A61P43/00 111
A61K48/00
A61K31/7088
A61K31/712
A61K31/7125
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/08
A61K47/64
A61K47/54
A61K47/55
A61K47/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549575
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 US2022016842
(87)【国際公開番号】W WO2022178160
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/150,188
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516056971
【氏名又は名称】キュー-ステート バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Q-State Biosciences, Inc.
【住所又は居所原語表記】179 Sidney Street, Cambridge, Massachusetts 02139 United States
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フィンク, ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ, ルイス
(72)【発明者】
【氏名】リワーク, ケイトリン
(72)【発明者】
【氏名】ガーバー, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, ダンカン
(72)【発明者】
【氏名】アグラワル, スディール
(72)【発明者】
【氏名】デンプシー, グラハム ティー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC29
4C076CC41
4C076DD69
4C076EE01
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA061
4C084ZA062
4C084ZA221
4C084ZA222
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZC201
4C084ZC202
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA22
4C086ZA94
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、UBE3Aの過剰発現をノックダウンしDup15q症候群と関連する状態を処置するために有用な組成物を提供し、アンチセンスオリゴヌクレオチド、UBE3A転写物に相補的であり、かつインビボでハイブリダイズする短いオリゴヌクレオチド(ASO)を含み得、タンパク質へのUBE3A mRNAの成功裡の翻訳を防止または阻害する。ASOは、RNAウイングが隣接した中心的DNA部分を含む抗UBE3Aギャップマー-オリゴを含み、ギャップマーがUBE3A pre-mRNAまたはmRNAにハイブリダイズし、二重鎖ハイブリッドがRNaseHを動員し、UBE3A pre-mRNAまたはmRNAを切断または消化し、UBE3Aタンパク質の発現を防止する。従って、ASOは、UBE3Aタンパク質の発現を防止し、本開示のASOを含む組成物での処置はUBE3Aの過剰発現をノックダウンするために有効であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユビキチンリガーゼタンパク質の発現を阻害する合成アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含む組成物。
【請求項2】
前記タンパク質は、ユビキチンタンパク質リガーゼE3Aである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ASOは、UBE3A遺伝子に由来する転写物中の相補的標的にハイブリダイズする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ASOにおける塩基の配列は、配列番号1~219のうちの1つと少なくとも80%同一性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ASOにおける塩基の配列は、配列番号1~219のうちの1つと少なくとも90%同一であり、前記オリゴヌクレオチドは、UBE3A pre-mRNAまたはmRNAにハイブリダイズし得、RNaseH媒介性切断を誘導し得る、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも10個のDNA塩基の中心的領域に隣接する2つのウイングを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ASOの少なくとも1つのウイングは、改変されたRNA塩基を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
各改変されたRNA塩基は、2’-O-メトキシエチルRNAおよび2’-O-メチルRNAからなる群より選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ASOは、少なくとも約15個の塩基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ASOは、約15~約25個の間の塩基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ASOは、複数のホスホロチオエート結合を含む骨格を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ASOは、スクリーニングされてヒトにおけるいずれの非標的転写物に関しても閾値マッチを満たさないように決定された塩基配列を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記ASOは、非ヒト霊長類ゲノムにおける相同なセグメントに対する0個のミスマッチおよび齧歯類ゲノムにおける相同なセグメントにおいて約5個以下のミスマッチを有する塩基配列を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、配列番号1~40、146、155、156、158、159、161、164、169、174、175、178、179、213、および214のうちの1つと少なくとも80%同一の塩基配列を各々有する複数のASOを含み、前記ASOの各々は、RNAウイングが隣接した中心的DNAセグメントを含むギャップマー構造を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記オリゴヌクレオチドは、配列番号1~219のうちの1つと少なくとも90%マッチを有し、ホスホロチオエート連結によってのみ連結される塩基を有する塩基配列を有し、前記オリゴヌクレオチドはさらに、5’ウイングおよび3’ウイングが隣接した中心的な12個のDNA塩基を含み、前記5’ウイングおよび前記3’ウイングは各々、4個連続した2’改変されたRNA塩基を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項16】
前記オリゴヌクレオチドは、配列番号1~40、146、155、156、158、159、161、164、169、174、175、178、179、213、および214のうちの1つとマッチする塩基配列を有し、少なくとも塩基間連結の大部分は、ホスホロチオエート連結を含み、前記オリゴヌクレオチドは、5’ウイングおよび3’ウイングが隣接した中心的な12個のDNA塩基をさらに含み、前記5’ウイングおよび前記3’ウイングは各々、4個連続した2’-MOE RNA塩基を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項17】
前記ASOは、炭水化物、細胞表面レセプターリガンド、薬物物質、ホルモン、親油性基質、ポリマー、タンパク質、ペプチド、毒素、ビタミン、ウイルスタンパク質、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーに結合体化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
Dup15q症候群を有する被験体に、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物を投与して、それによって、UBE3A遺伝子の発現をノックダウンする工程を包含する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、神経学的障害のための処置に関する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットにおいてEFS-Webを介して提出され、その全体において本明細書に参考として援用される配列表を含む。そのASCIIフォーマットにした配列表は、2022年2月17日に作成し、名称は「QSTA-036-01WO-Sequence-Listing」であり、サイズは44048バイトである。
【背景技術】
【0003】
背景
ユビキチンリガーゼタンパク質(例えば、E3リガーゼE6関連ンタンパク質(E6AP(UBE3Aとしても公知))は、神経学的障害および神経発達障害に関係している。例えば、E6APは、UBE3A遺伝子によってコードされ、UBE3A遺伝子の発現は、遺伝子刷り込みを介して調節される。E6AP発現の喪失は、発話および運動発達の障害、ならびに発作(seizure)によって代表的には特徴づけられる、アンジェルマン症候群の発生をもたらす。逆に、UBE3Aのコピー数のバリエーション(CNVs)は、E6APの過剰発現および結果的に自閉スペクトラム症(ASD)の発生に関連付けられ得る。
【0004】
いくつかの臨床症状において、第15染色体の一部は、重複している。このDup15q症候群は、2つの形態のうちの一方、余分な二動原体同腕第15染色体または第15染色体における中間部重複において最も一般的に起こる。Dup15q症候群は、筋緊張低下、ならびに粗大運動および微細運動の遅れ、知的障害、自閉スペクトラム症(ASD)、ならびにてんかん(点頭てんかんを含む)によって特徴づけられる。メチル化された母系15q重複のコピー数の増大がタンパク質発現の増大をもたらし、UBE3Aの過剰発現がDup15qにおける重篤度に関連付けられると考えられる。ここで母系アレルの数の増大は、Dup15q病理の主要駆動因子であると考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本発明は、UBE3A遺伝子のCNVと関連する障害を処置するための組成物を提供する。具体的には、本開示は、Dup15q症候群に罹患した被験体において生じる発作、筋緊張低下、運動の遅れ、知的障害、発作を示す障害、および自閉スペクトラム症(ASD)を処置するためにUBE3Aの過剰発現をノックダウンするために有用であるアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。本発明の組成物は、UBE3A転写物に相補的であり、かつインビボでハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。上記ASOは、タンパク質へのUBE3A mRNAの翻訳を防止する。具体的には、好ましい実施形態は、RNAウイングが隣接した中心的DNA部分を含む抗UBE3Aギャップマー-オリゴを含む。上記ギャップマーがUBE3A pre-mRNAまたはmRNAにハイブリダイズする場合、そのハイブリッド二重鎖は、RNaseHを動員し、これは、上記UBE3A pre-mRNAまたはmRNAを切断または消化し、UBE3Aタンパク質の発現を防止する。上記ASOは、UBE3Aタンパク質の発現を防止することから、本開示のASOを含む組成物での処置は、UBE3Aの過剰発現をノックダウンするために有効であり得る。よって、本開示の組成物は、Dup15q症候群およびその症状を書治すために有用である。
【0006】
本開示のオリゴヌクレオチドは、ユビキチンリガーゼタンパク質の合成で使用されるRNA中のある特定の標的に結合するように設計される。そのオリゴヌクレオチドの結合は、タンパク質合成を防止し、ユビキチンリガーゼの発現をダウンレギュレートする。具体的には、本発明のオリゴヌクレオチドは、ユビキチンタンパク質リガーゼE3A pre-mRNAまたはmRNA上で特定された標的のうちの1つに実質的にまたは完全に相補的な配列を有する。すなわち、上記オリゴヌクレオチドは、その特定された標的に対するアンチセンスである。上記アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が、その標的RNAにハイブリダイズする場合、それは、2本鎖のASO:RNA二重鎖を形成し、この二重鎖は、その2本鎖二重鎖の一部を分解する酵素(RNase H)を動員する。そのASO:RNA二重鎖を分解すると、E6AP mRNAの細胞が枯渇し、これは、その細胞によって合成されるE6APの量を減少させる。
【0007】
従って、E6AP pre-mRNAまたはmRNA中の特定された標的に対するアンチセンスであるオリゴヌクレオチドを含む組成物が患者に投与される場合、その組成物は、そうでなければ、UBE3Aのコピー数バリエーションまたはDup15q症候群として公知の第15染色体q11.2-q13.1重複症候群から生じ得るE6APの発現を減少させる。
【0008】
ある特定の局面において、本開示は、Dup15qを処置するための組成物を提供する。このような組成物は、ユビキチンリガーゼタンパク質の発現を阻害する合成アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含む。好ましくは、上記タンパク質は、ユビキチンタンパク質リガーゼE3Aである。上記ASOは、UBE3A遺伝子の転写物中の相補的な領域にハイブリダイズする。上記ASOにおける塩基の配列は、配列番号1~219のうちの1つ、好ましくは配列番号1~40のうちの1つ、ならびにより好ましくは配列番号146、155、156、158、159、161、164 169、174、175、178、179、213、および214のうちの1つと少なくとも80%同一性を有し得る。いくつかの実施形態において、上記ASOにおける塩基の配列は、配列番号1~219、1~40、または146、155、156、158、159、161、164 169、174、175、178、179、213、および214のうちの1つと少なくとも90%、95%、または100%同一であり、上記オリゴヌクレオチドは、UBE3A pre-mRNAまたはmRNAにハイブリダイズし得、かつそのRNase切断を誘導し得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、少なくとも10個のDNA塩基、好ましくは約12個の塩基の中心的領域に隣接する2つのRNAウイングを含む。上記ASOの2つのウイングのうちの少なくとも一方は、改変されたRNA塩基を含む。各改変されたRNA塩基は、2’-O-メトキシエチルRNAおよび2’-O-メチルRNAからなる群より選択され得る。上記ASOは、少なくとも約20個の塩基、好ましくは約15~約25個の間の塩基を含み得る。ある特定の実施形態において、上記ASOは、複数のホスホロチオエート結合を含む骨格を有する。本明細書で提供されるASOは、10~12個の塩基の中心的領域および4~5個の塩基の隣接する領域を含む。
【0010】
好ましいASOは、スクリーニングされてヒトにおいていかなる非標的転写物に関しても閾値マッチを満たさないように決定された塩基配列を有する。必要に応じて、上記ASOは、非ヒト霊長類ゲノムにおける相同なセグメントと0個のミスマッチおよび齧歯類ゲノムにおける相同なセグメント中で約5個以下のミスマッチを有する塩基配列を有する。
【0011】
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、複数のASOを含み、各々は、配列番号1~219のうちの1つと少なくとも約80%同一の塩基配列を有し、ここで上記ASOの各々は、RNAウイングが隣接した中心的DNAセグメントを含むギャップマー構造を有する。ある特定の好ましい実施形態において、上記組成物は、複数のASOを含み、各々は、配列番号1~40のうちの1つ、ならびにより好ましくは配列番号146、155、156、158、159、161、164、169、174、175、178、179、213、および214のうちの1つと少なくとも約80%同一の塩基配列を有し、ここで上記ASOの各々は、RNAウイングが隣接した中心的DNAセグメントを含むギャップマー構造を有する。各オリゴヌクレオチドは、配列番号1~219(好ましくは1~40ならびにより好ましくは146、155、156、158、159、161、164、169、174、175、178、179、213、および214)のうちの1つと少なくとも約90%(または95%、もしくは100%)マッチを有し、ホスホロチオエート連結によってのみ連結された塩基を有する塩基配列を有し得、上記オリゴヌクレオチドはさらに、5’ウイングおよび3’ウイングが隣接した中心的な10個のDNA塩基を含み、上記5’ウイングおよび上記3’ウイングは各々、5個連続した2’改変されたRNA塩基を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、各オリゴヌクレオチドは、配列番号1~219のうちの1つとマッチする塩基配列を有し、少なくとも塩基間連結の大部分は、ホスホロチオエート連結を含み、上記オリゴヌクレオチドはさらに、5’ウイングおよび3’ウイングが隣接した中心的な10個のDNA塩基を含み、上記5’ウイングおよび上記3’ウイングは各々、5個連続した2’-O-メトキシエチル(2’-MOE) 2’-MOE RNA塩基を含む。好ましい実施形態において、各オリゴヌクレオチドは、配列番号1~40のうちの1つとマッチする塩基配列を有し、少なくとも塩基間連結の大部分は、ホスホロチオエート連結を含み、上記オリゴヌクレオチドはさらに、5’ウイングおよび3’ウイングが隣接した中心的な10個のDNA塩基を含み、上記5’ウイングおよび上記3’ウイングは各々、5個連続した2’ MOE RNA塩基を含む。より好ましい実施形態において、各オリゴヌクレオチドは、配列番号146、155、156、158、159、161、164、169、174、175、178、179、213、および214のうちの1つとマッチする塩基配列を有し、少なくとも塩基間連結の大部分は、ホスホロチオエート連結を含み、上記オリゴヌクレオチドはさらに、5’ウイングおよび3’ウイングが隣接した中心的な10個のDNA塩基を含み、上記5’ウイングおよび上記3’ウイングは各々、5個連続した2’ MOE RNA塩基を含む。
【0013】
関連する局面において、本発明は、Dup15q症候群を処置するための方法であって、上記方法は、本開示の組成物のうちの1つをそれを必要とする被験体に、例えば、UBE3Aの過剰発現をダウンレギュレートするために送達する工程を包含する方法を提供する。本開示の治療用オリゴヌクレオチドは、改変されたRNAウイングが隣接した中心的DNAセグメントを含むギャップマー構造を有し得る。このような治療用オリゴヌクレオチドは、DNA塩基の中心的領域(例えば、約10~14個のDNA塩基の、例えば、約12個のDNA塩基の中心的領域)に隣接する2つのウイングを含み得る。好ましくは上記オリゴヌクレオチドの少なくとも一方の末端は、改変されたRNA塩基、例えば、2’-O-メトキシエチルRNA(「2’-MOE」)および/もしくは2’-O-メチルRNA(「2’ O-Me」)の任意の数または任意の組み合わせを含む。さらに、本発明の組成物は、エキソン-エキソン接合部を標的化し、核pre-mRNAに対して細胞質mRNAを区別して標的とするように設計され得る。従って、本発明のASOは、スプライシング、上記組成物への特異性および多機能性の付加前、またはその後に、RNAと相互作用するように設計され得る。
【0014】
種々の実施形態において、治療用オリゴヌクレオチドは、任意の適切な経路(例えば、静脈内または髄腔内を含む)を介する送達のために製剤化された溶液またはキャリア中に提供され得る。上記オリゴヌクレオチドは、任意の適切な長さ(例えば、少なくとも約18個の塩基、および好ましくは約15~約25個の間の塩基)のものであり得る。上記オリゴヌクレオチドは、その骨格中にホスホロチオエート結合を有し得る。好ましい実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、ヒトにおいて、スクリーニングされて任意の長さに関して閾値マッチを満たさないように決定された塩基配列、非コードRNAまたは他のオフターゲット配列もしくは転写物を有する。上記オリゴヌクレオチドは、非ヒト霊長類ゲノムにおける相同なセグメントに対する0個のミスマッチおよび齧歯類ゲノムにおける相同なセグメントにおいて約5個以下のミスマッチを有する塩基配列を有し得る。
【0015】
上記組成物がインビトロで細胞へと送達される場合、上記細胞は、UBE3Aの用量依存性ノックダウンを示す。上記オリゴヌクレオチドは、配列番号1~219のうちの1つと少なくとも約90%マッチを有し、少なくともいくつかのホスホロチオエート連結を有する塩基配列を有するギャップマーであり得る。上記連結は、全てホスホロチオエートまたはホスホロチオエートおよびホスホジエステル結合の混合であり得る。上記オリゴヌクレオチドはさらに、5’ウイングおよび3’ウイングが隣接した中心的な12個のDNA塩基を有し得、上記5’ウイングおよび上記3’ウイングは各々、4個連続した2’改変されたRNA塩基を含む。好ましくは、上記オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート連結によって連結された塩基、ならびに5’ウイングおよび3’ウイングが隣接した中心的DNA塩基を有する構造を有する、配列番号1~219のうちの1つとマッチする塩基配列を有する。上記ウイングにおけるRNA塩基および中心的セグメントにおけるDNA塩基の数は、5-10-5もしくは4-12-4、または類似の適切なパターンであり得る。上記5’ウイングおよび上記3’ウイングは各々、いくつかの2’-MOE RNA塩基を含み得る。例えば、上記オリゴヌクレオチドは、各ウイングにおいて4個連続した2’-MOE RNA塩基と、中心的な12個のDNA塩基とを有し得(「4-12-4」構造)、中心的DNAセグメント全体にわたってホスホロチオエート連結を、ならびに上記ウイングにおいてホスホロチオエート結合およびホスホジエステル結合の混合を有する。あるいは、上記オリゴヌクレオチドは、各ウイングにおいて5個連続した2’-MOE RNA塩基と、中心的な10個のDNA塩基とを有し得(「5-10-5」構造)、上記中心的DNAセグメント全体にわたってホスホロチオエート連結を、ならびに上記ウイングにおいてホスホロチオエート結合およびホスホジエステル結合の混合を有する。上記5’および3’ウイングはまた、同じASOにおいて異なる長さのものである場合もある(例えば、「4-11-5」または「5-11-4」構造)。
【0016】
組み合わせ実施形態において、本発明は、複数の別個の治療用ギャップマーの複数のコピー(各々、上記の説明に従う)を適切な製剤またはキャリア中に含む組成物を提供する。
【0017】
本開示の局面は、Dup15q症候群を処置するための医薬の製造のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の使用に関する。このような実施形態において、上記ASOは、配列番号1~219のうちの1つと少なくとも約75%同一性を、およびより好ましくは少なくとも約90%同一性を、例えば、95%もしくは100%同一性を有する。好ましい実施形態は、約15~25個の間の塩基の長さである、好ましくは約18~22個の間、または約19~21個の間(両端を含む)であるASOを使用する。一般に、「ASO」への言及は、実質的に同一な分子の多くのコピーを含む。よって、「ASO」は、任意の数、例えば、その示されたASOの数十万の、または数百万のコピーであり得る。好ましい実施形態において、上記ASOは、20個の塩基の長さであり、配列番号1~219のうちの1つの配列を有し、Dup15q症候群の処置のための医薬の製造において使用される。上記ASOは、任意の適切な形式(例えば、チューブ中で凍結乾燥されるか、またはチューブ(例えば、微量遠心チューブもしくは試験管)中で溶液の状態)において提供され得る。上記使用の好ましい実施形態は、UBE3A遺伝子の転写物を標的とする。1またはこれより多くの(例えば、2、3、4、もしくは5、またはこれより多い)ASOは、医薬の製造において使用され得る。上記1またはこれより多くのASOは、UBE3A pre-mRNAまたはmRNAにおける標的にハイブリダイズし得る。ある特定の実施形態において、上記ASOにおける塩基の配列は、配列番号1~219のうちの1つと少なくとも約90%同一である。他の実施形態において、上記ASOは、RNAウイングが隣接した中心的DNAセグメントを有するギャップマー構造(例えば、12個のDNA塩基の中心的領域であって、その中心的な領域の両側に4個の改変されたRNA塩基を有するもの)を有し得る。各改変されたRNA塩基は、2’-MOEであり得る。好ましくは、上記ASOの骨格は、複数のホスホロチオエート結合を有する。よって、上記ASOは、最初は、注射またはポンプによる導入に適した製剤へと混合するために適した形態にあり得る。例えば、上記ASO(1つのASOの数千または数百万またはより多くのコピー)は、チューブ中で凍結乾燥されていてもよいし、既知の量、重量モル濃度、または濃度において溶液中にあってもよい。上記ASOは、キャリア(例えば、溶媒および/または賦形剤)が上記ASOを含む薬学的に受容可能な組成物へと溶解または希釈され得、IVバッグ、シリンジ、またはポンプ中に装填され得る。上記医薬は、1より多くのASO、例えば、2、3、4、もしくは5、またはこれより多くの任意の組み合わせを使用して作製され得る。本発明の組成物における塩基は、改変された塩基または揺らぎ塩基であり得、これは、本発明の組成物の範囲および有効性を増大させるために使用され得る。1つの例において、本発明における使用のためのASOは、メチル化塩基(例えば、5-メチルシトシン、5-メチルウラシル(チミン)など)を含み得る。
【0018】
本発明の組成物は、連続的な投与に適応させるために製剤化され得る。例えば、製剤は、2回またはこれより多くの別個の時に、および必要に応じて、2またはこれより多くの異なるASOで、最適な治療濃度域(therapeutic window)を利用し、ASO間の潜在的な競合を回避するために投与されるための投与量を提供し得る。さらに、本発明の組成物は、連続的に投与されようがそうでなかろうが、関わる上記ASOの組成物に応じて、1またはこれより多くの標的と相互作用し得る。例えば、ASOは、多数の標的(mRNA種およびpre-mRNA種の中およびこれらにまたがるものの両方)との相互作用を可能にし、従って、その関連付けられた処置が1より多くの遺伝子コピーからの転写物に影響を与えることを可能にする標的化されたミスマッチを含み得る。本発明の組成物はまた、時間放出フォーマットにおいて送達され得る、および/または血清半減期を増大させるためにアジュバントを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図面の簡単な説明
図1図1は、Dup15q症候群を処置するための組成物を示す。
【0020】
図2図2は、ギャップマー構造を有するオリゴヌクレオチド(ASO)を示す。
【0021】
図3図3は、40のUBE3Aエキソン性ASOのスクリーニングからの結果を示す。
【0022】
図4図4は、10のASO候補の用量応答を示す結果を示す。
【0023】
図5図5は、マウス相同性を有するヒトエキソン性ASOのスクリーニングからの結果を示す。
【0024】
図6図6は、ある特定のスクリーニングされた本発明のASOに関するUBE3AノックダウンのqPCR読み出し(UBE3Aノックダウンのパーセントとして表される)をまとめる表を示す。
【0025】
図7図7は、ある特定のスクリーニングされた本発明のASOに関するUBE3AノックダウンのqPCR読み出し(UBE3Aノックダウンのパーセントとして表される)をまとめる表を示す。
【0026】
図8図8は、ある特定のスクリーニングされた本発明のASOに関するUBE3AノックダウンのqPCR読み出し(UBE3Aノックダウンのパーセントとして表される)をまとめる表を示す。
【0027】
図9図9は、ある特定のスクリーニングされた本発明のASOに関するUBE3AノックダウンのqPCR読み出し(UBE3Aノックダウンのパーセントとして表される)をまとめる表を示す。
【0028】
図10図10は、Dup15q患者線維芽細胞(上)またはマウス胚性線維芽細胞(下)における2つのリード候補例ASOおよびそれらのPO改変娘分子に関する標的発現のUBE3A ASO用量応答調節を示す。
【0029】
図11図11は、用量応答のプロットを示し、図10からの同じ2例のリード候補ASOに関するEC50を示す。
【0030】
図12図12は、UBE3Aエキソンを標的とする本発明のリード全PS骨格ASO候補の用量応答データを示す。
【0031】
図13図13は、UBE3Aイントロンを標的とする本発明のリード全PS骨格ASO候補の用量応答データを示す。
【0032】
図14図14は、齧歯類のインビボ有効性試験のための100%マウス相同性を有する本発明のリード全PS骨格ASO候補の用量応答データを示す。
【0033】
図15図15は、齧歯類のインビボ有効性試験のための100%マウス相同性を有するPO改変娘リードASO候補の用量応答データを示す。
【0034】
図16図16は、ヒト臨床候補試験のための本発明のPO改変娘リードASO候補の用量応答データを示す。
【0035】
図17図17は、ある特定の候補リードUBE3A ASOおよび同一のASO配列を有する3つのPO改変娘分子のウェスタンブロットを示す。
【0036】
図18図18は、図17のASOに関するUBE3Aタンパク質ノックダウンの定量を示す。
【0037】
図19図19は、UBE3Aを標的とするリード全PS骨格ASO候補のUBE3Aタンパク質ノックダウン結果をまとめる表を提供する。
【0038】
図20図20は、齧歯類のインビボ有効性試験のための100%マウス相同性を有するリード全PS骨格ASO候補のUBE3Aタンパク質ノックダウン結果をまとめる表を提供する。
【0039】
図21図21は、齧歯類のインビボ有効性試験のための100%マウス相同性を有するPO改変娘リードASO候補のUBE3Aタンパク質ノックダウン結果をまとめる表を提供する。
【0040】
図22図22は、ヒト臨床候補のためのPO改変娘リードASO候補のUBE3Aタンパク質ノックダウン結果をまとめる表を提供する。
【0041】
図23図23は、本発明のUBE3Aリード候補ASOを使用するヒトNGN2幹細胞由来ニューロンにおけるUBE3A転写物のノックダウンを示すデータを提供する。
【0042】
図24図24は、本発明のUBE3Aリード候補ASOを使用するヒト初代ニューロンにおけるUBE3A転写物のノックダウンを示すデータを提供する。
【0043】
図25図25は、本発明のUBE3AリードASO候補を使用する非ヒト霊長類初代線維芽細胞培養物におけるUBE3A転写物のノックダウンを示すデータを提供する。
【0044】
図26図26は、本発明のUBE3Aリード候補ASOを使用するマウス初代皮質ニューロンにおけるUBE3A転写物のノックダウンを示すデータを提供する。
【0045】
図27図27は、本発明のUBE3AリードASO候補を使用するラット初代皮質ニューロン(ここで細胞を4日後にqPCRのために採取した)を使用するUBE3A転写物のノックダウンを示すデータを提供する。
【0046】
図28図28は、本発明のUBE3AリードASO候補を使用するラット初代皮質ニューロン(ここで細胞を8日後にqPCRのために採取した)におけるUBE3A転写物のノックダウンを示すデータを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0047】
詳細な説明
図1は、Dup15q症候群を処置するための組成物101を示す。組成物101は、mRNA 117またはpre-mRNAにおける標的セグメント115にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチド107を含む。RNA 117は、ユビキチンリガーゼタンパク質(例えば、ユビキチンタンパク質リガーゼESA)をコードする。上記標的を含むRNA 117のセグメント115は、配列番号1~219のうちの1つと少なくとも約75%相補的である。RNA 117のセグメント115へのASO 107のハイブリダイゼーションは、上記mRNAをUBE3Aタンパク質へと翻訳することを防止する。好ましくは、上記オリゴヌクレオチドにおける塩基の配列は、配列番号1~219のうちの1つと少なくとも80%同一性、より好ましくは少なくとも約90%同一性を有する。ある特定の実施形態において、上記オリゴヌクレオチドにおける塩基の配列は、配列番号1~219のうちの1つと少なくとも約90%同一であり、ここで上記オリゴヌクレオチドは、UBE3A pre-mRNAまたはmRNAにハイブリダイズして、そのRNase H切断を誘導する。
【0048】
オリゴヌクレオチド107は、mRNA 117におけるセグメント115にハイブリダイズする。なぜならオリゴヌクレオチド107は、mRNA 117の標的セグメント115に対して実質的にまたは完全にアンチセンスだからである。その局面において、上記組成物は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を含む。組成物101は、塩基対相補性を有するRNAを標的とするために結合し、上記ASOの化学構造および設計に基づいて、種々の効果を発揮するASOを含む。神経学的疾患の前臨床モデルおよびヒト臨床試験開発において一般に使用される種々の機序が、使用され得る。それらの機序は、RNase H酵素の動員;エキソンを含むかまたは排除するための選択的スプライシング改変、およびその標的へのmiRNA結合を阻害するmiRNA阻害を介するRNA標的分解を含む。
【0049】
本開示の好ましい実施形態は、UBE3A pre-mRNAまたはmRNAにハイブリダイズし、RNase H酵素を動員するASOを含む。上記RNase H酵素は、上記RNAを切断し、これは、UBE3Aタンパク質の発現をダウンレギュレートする。従って、本開示のオリゴヌクレオチド107は、Dup15q症候群の標的としてUBE3A CNVに対処する。本開示は、自閉スペクトラム症(ASD)と関連する最も一般的な遺伝的改変体のうちの1つが、第15染色体q11.2-q13.1の重複(Dup15q症候群)であるということをデータが示唆する洞察を元にする。第15染色体q11.2-q13.1領域は、刷り込みされるプラダー-ウィリ/アンジェルマン症候群決定領域(critical region)(PWACR)、ならびに脳発達およびシナプス機能に極めて重要ないくつかの遺伝子(例えば、ユビキチンタンパク質リガーゼE3A(UBE3A)、small nuclear ribonucleoprotein polypeptide N(SNRPN)、および3種のGABAAレセプター遺伝子(GABRB3、GABRA5、およびGABRG3)を含む。Dup15q症候群は、15q11.2-13.1の重複の2つの主なタイプ: (1)15p、および15q11の近位領域を含む過剰染色体上に2つのさらなる母系に由来するコピーを生じる(最も一般には、その領域の4つのコピーをもたらす)同腕二動原体第15染色体(idic(15))、または(2)15q11.2-q13.1領域の1つ余分のコピーが、同じ染色体アーム上で起こり、代表的には、その領域の3つのコピーを生じ、全体により軽度の表現型を有する中間部15q重複、を含む。Hogart, 2010, The comorbidity of autism with the genomic disorders of chromosome 15q11.2-13, Neurobiol Dis 38:181-91(参考として援用される)を参照のこと。メチル化された母系15q重複の増大したコピー数は、遺伝子およびタンパク質発現において変化をもたらし、UBE3Aの過剰発現は、Dup15qにおける重篤度に関連付けられ、ここで母系アレルの増大した数は、Dup15q病理の主な駆動因子であると考えられる。Scoles, 2011, Increased copy number for methylated maternal 15q duplications leads to changes in gene and protein expression in human cortical samples, Mol Autism 2:19およびBaker, 2020、 Relationships between UBE3A and SNORD116 expression and features of autism in chromosome 15 imprinting disorders, Translational Psychiatry 10:362(ともに参考として援用される)を参照のこと。そこで、UBE3A ASOを含む組成物は、Dup15q症候群を処置するために被験体に投与される。
【0050】
従って、本開示は、患者においてDup15q症候群を処置するための医薬の製造のためのアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の使用を提供する。この使用において、上記ASOは、配列番号1~219のうちの1つと少なくとも約75%同一性、およびより好ましくは少なくとも90%同一性、例えば、95%またはこれより高い同一性を有する。好ましい実施形態は、約15~25個の間の塩基の長さ、好ましくは約18~22個の間(両端を含む)であるASOを使用する。一般に、「ASO」への言及は、実質的に同一の分子の多くのコピーを含む。よって、「ASO」は、規定されたASOの数十万または数百万ものコピーより多い可能性がある。好ましい実施形態において、上記ASOは、20個の塩基の長さであり、配列番号1~219のうちの1つの配列を有し、Dup15q症候群の処置のための医薬の製造において使用される。上記ASOは、任意の適切な形式(例えば、チューブ中で凍結乾燥されるか、またはチューブ(例えば、微量遠心チューブもしくは試験管)中で溶液の状態のような)において提供され得る。上記使用の好ましい実施形態は、UBE3Aを標的とする。1またはこれより多くの(例えば、2、3、4、もしくは5、またはこれより多い)ASOは、医薬の製造において使用され得る。上記1またはこれより多くのASOは、UBE3A mRNAにおける標的にハイブリダイズし得る。上記使用のある特定の実施形態において、上記ASOにおける塩基の配列は、配列番号1~219のうちの1つと少なくとも約90%同一である。上記使用の実施形態において、ASOは、RNAウイングが隣接した中心的DNAセグメントを有するギャップマー構造(例えば、10~12個のDNA塩基の中心的領域であって、その中心的な領域の両側に4~5個の改変されたRNA塩基を有するもの)を有し得る。各改変されたRNA塩基は、2’-MOE RNA、2’-O-メチルRNA、または他の適切な糖であり得る。好ましくは、ASOの骨格は、複数のホスホロチオエート結合(専ら、またはホスホジエステル連結をも含むかのいずれか)を有し、例えば、その糖連結のうちの大部分または全てが、上記使用の実施形態においてホスホロチオエートであり得る。上記ASOは、最初は、注射による導入に適した製剤へと混合するために適した形態にあり得る。例えば、上記ASO(1つのASOの数千または数百万またはこれより多くのコピー)は、チューブ中に凍結乾燥されていてもよいし、既知の量、重量モル濃度、または濃度において溶液中にあってもよい。上記ASOは、キャリア(例えば、溶媒および/または賦形剤)が上記ASOを含み、IVバッグ、シリンジ、またはバイアル中に装填され得る薬学的に受容可能な組成物へと溶解または希釈され得る。上記医薬は、1より多くのASO、例えば、2、3、4、もしくは5、またはこれより多くのものの任意の組み合わせを使用して作製され得る。
【0051】
上記使用の実施形態において記載される任意のASOは、本開示の組成物中に含まれ得る。本開示の組成物の好ましい実施形態は、1または複数の治療用オリゴヌクレオチドを含み、各々、配列番号1~219のうちの1つと少なくとも80%同一の塩基配列を有し、ここで上記治療用オリゴヌクレオチドの各々は、改変されたRNAウイングが隣接した中心的DNAセグメントを含むギャップマー構造を有し、ここで上記複数の治療用オリゴヌクレオチドは、注射のために製剤化された溶液またはキャリア中に提供される。
【0052】
図2は、ギャップマー構造を有するオリゴヌクレオチド207を示す。オリゴヌクレオチド207は、約10~12個のDNA塩基の中心的領域221に隣接する2つのウイング(第1のウイング215および第2のウイング216)を含む。好ましい実施形態において、ウイング215、216は、全てまたは主にRNA塩基であるのに対して、中心的領域221は、全てまたは主にDNA塩基である。好ましくは、上記ウイングは、全てRNA塩基であり(改変されているかまたは改変されていない)、上記中心的領域は全てDNA塩基である。いくつかの実施形態において、各ウイングは、5個のRNA塩基からなり、そのうちの全てまたは大部分は、改変されたRNA塩基である(例えば、ここで各改変されたRNA塩基は、2’-O-メトキシエチルRNAおよび2’-O-メチルRNAからなる群より選択される)。改変されたRNA塩基は、リボース糖の2’ヒドロキシル基上に置換を含み得る。2’-O-メトキシエチル(「2’-MOE」)改変糖は、RNA塩基中に含まれ得る。オリゴヌクレオチド207は、好ましくは、少なくとも約15個の塩基を含み、約15~約25個の間の塩基を含み得る。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド207は、複数のホスホロチオエート結合を含む骨格を有する。1または任意の数のホスホロチオエート結合が、DNAのセグメント(例えば、オリゴヌクレオチド207の中心的領域221)の骨格中に含まれ得る。オリゴヌクレオチド207は、1または任意の数のホスホロチオエート結合を含み得る。例えば、オリゴヌクレオチド207内のあらゆる骨格の連結は、ホスホロチオエートであり得るか、または大部分、もしくは約半数が、ホスホロチオエートであり得る。さらに、ホスホジエステル骨格に対する他の改変が存在し得る。
【0053】
組成物101は、送達のために製剤化され得る。よって、オリゴヌクレオチド107は、最初は、シリンジ、バッグ、または注射ポンプへの導入に適した製剤へと混合するために適切な形態にあり得る。例えば、オリゴヌクレオチド107(1つのオリゴヌクレオチド107の数千または数百万またはこれより多くのコピー)は、チューブ中で凍結乾燥されてもよいし、既知の重量モル濃度または濃度において溶液中にあってもよい。オリゴヌクレオチド107は、キャリア(例えば、溶媒または賦形剤)がオリゴヌクレオチド107を含む薬学的に受容可能な組成物へと溶解または希釈され得、IVバッグ、シリンジ、またはバイアル中に装填され得る。記載されるように、組成物101は、配列番号1~219のうちの1つとの比較によって規定される配列を有する少なくとも1つのオリゴヌクレオチド107を含む。従って、本開示の組成物は、特定された標的によって規定され、例証される。
【0054】
具体的には、オリゴヌクレオチド107は、配列番号1~219のうちの1つと少なくとも約75%相補的であるmRNAのセグメントに沿ってUBE3Aタンパク質をコードするmRNAにハイブリダイズして、それによって、UBE3Aタンパク質への上記mRNAの翻訳を防止する。これは、上記オリゴヌクレオチドが配列番号1~219のうちの1つと少なくとも約75%同一性、好ましくは少なくとも約90%または95%または100%同一性を有する場合に達成される。ある特定の実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、配列番号1~219のうちの1つの配列を有するが、当業者は、相補的な標的と90%または好ましくは95%同一性を有するオリゴヌクレオチドが、上記標的に配列特異的様式においてなおもハイブリダイズする傾向があることを理解する。2本鎖構造の形成は、エネルギー的に、Watson-Crick塩基対合およびその2本鎖構造が10個ごと程度に約1個のミスマッチ塩基対を許容し得る塩基スタッキングを通じて十分に有利である。よって、細胞における中程度にストリンジェントな生理学的条件下では、95%同一性は、特に、オリゴヌクレオチドが、上記オリゴヌクレオチドを酵素による分解から保護するために少なくとも数個の改変されたRNA塩基またはホスホロチオエート骨格連結を有するギャップマー構造を有する場合、効果的であるはずである。
【0055】
実際に、本開示の組成物の特徴および利益は、(配列番号1~219の)標的が、相補体がUBE3A転写物以外の分子中に存在する配列を除外するために実質的にスクリーニングされていることである。例えば、上記配列は、長い非コードRNA(IncRNA)を含むRNA転写物のデータベースに対してスクリーニングされており、非標的配列とマッチする最初の配列は、除外された。従って、患者に投与される場合に、配列番号1~219の配列を有するASOは、非標的配列とハイブリダイズしてしまう機会は最小限のはずである。よって、好ましい実施形態において、オリゴヌクレオチド107は、スクリーニングされて、ヒトにおける任意のオフターゲットコードRNA、または長い非コードRNAに関する閾値マッチを満たさないように決定されている塩基配列を有する。上記で述べた基準を満たす組成物または使用は、オフターゲット物質(例えば、IncRNA)または他のオフターゲットRNA転写物にインビボで結合しないはずである。なぜならその含まれる配列は、IncRNAおよび他のRNA転写物のデータベースに対してスクリーニングされているからである。本開示の配列は、標的特異性に関してスクリーニングされている。好ましくは、オリゴヌクレオチド107は、ヒトまたは非ヒト霊長類ゲノムにおける相同なセグメントに対する0個のミスマッチおよび齧歯類ゲノムにおける相同なセグメントにおいて約5個以下のミスマッチを有する塩基配列を有する。
【0056】
上記組成物が細胞に送達される場合、その細胞は、UBE3Aの用量依存性ノックダウンを示す。
【0057】
図3は、40のUBE3Aエキソン性ASOのスクリーニングからの結果を示す(1つのコントロール線維芽細胞株とともに; 結果は処理後48時間で得られる)。その示される結果は、配列番号1~40に相当する。図において、濃度応答(CR)において試験したASOのバーに、丸で印を付ける。
【0058】
図4は、本開示の実施形態(約20個の塩基、ASOを通じて2’-O改変されたRNAおよびホスホロチオエート連結を有するRNAウイングが連結した約12個の塩基のDNA中心的領域)に従って設計された配列番号14、17、4、7、8、18、21、26、34、および35の10のASO候補の用量応答を(各々6つの濃度で)示す結果を示す。全10個のASOは、用量依存性様式においてコントロール(ビヒクルのみで処理した細胞および処理しない「細胞のみ」の条件)と比較してUBE3A発現を減少させた。
【0059】
核酸ハイブリダイゼーションは、ミスマッチに関してある程度許容性を有することから、配列番号1~219のうちの1つと少なくとも90%マッチである塩基配列を有し、ホスホロチオエート連結によってのみ連結された塩基を有し、オリゴヌクレオチド107が、5’ウイングおよび3’ウイングが隣接したDNA塩基の中心的セグメント(例えば、上記5’ウイングおよび上記3’ウイングは各々、12個のDNA塩基に隣接する4個連続した2’改変されたRNA塩基を含む4-12-4構造、または5-10-5構造、または類似のもの)を有するオリゴヌクレオチド107は、チャートに示されるパターンに従って用量依存性ノックダウンを示すことが見出され得る。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド107は、具体的には、配列番号1~219のうちの1つ(より好ましくは配列番号1~40のうちの1つ、またはより好ましくは配列番号146、155、156、158、159、161、164、169、174、175、178、179、213、もしくは214)とマッチし、ホスホロチオエート連結によって(必要に応じていくつかのホスホジエステル連結とともに)連結された塩基を有し、上記オリゴヌクレオチド107は5’ウイングおよび3’ウイングが隣接した中心的な12個のDNA塩基を有し、上記5’ウイングおよび上記3’ウイングは各々、4個連続した2’-MOE RNA塩基を含む塩基配列を有する。
【0060】
図5は、マウス線維芽細胞におけるマウス相同性を有するマウスエキソン性Ube3a ASOおよびヒトエキソン性ASOのスクリーニングからの結果を示す。そのスクリーニングしたヒトASOは、配列番号1、4、5、9、15、16、21、25、28、および29のものを含んだ。その結果は、齧歯類モデルにおいて相同な標的が存在するヒト標的に対するASOを設計することが可能であることを示す傾向にある。
【0061】
これらの組成物はUBE3Aの発現をノックダウンするにあたって効果的であることから、本開示の組成物は、患者においてDup15q症候群を処置するために使用され得る。本開示の方法は、本開示の任意の組成物を、それを必要とする患者に投与して、それによって、Dup15q症候群を処置または緩和する工程を包含する。
【0062】
本開示の組成物は、生きているニューロンのインビトロサンプルで試験され得る。例えば、インビトロでのニューロンは、光刺激下でのニューロン活性化(例えば、光に応じてニューロンを発火させる改変された藻類チャネルロドプシン)およびニューロン活性の光学的レポーター(ニューロン膜電位に比例して光を発し、ニューロン活性のシグナルを生じる改変された古細菌ロドプシン)を提供する光遺伝学的構築物(optogenetic construct)を含み得る。インビトロのニューロンは、蛍光顕微鏡検査機器においてアッセイされ得、必要に応じて、推定可能な様式でニューロンを発火させる神経刺激組成物で処理され得る。任意の適切な光遺伝学的構築物、光遺伝学顕微鏡(optogenetic microscope)、または神経刺激性組成物が使用され得る。例えば、適切な光遺伝学的構築物としては、米国特許第9,594,075号(参考として援用される)に記載されるものが挙げられる。適切な光遺伝学顕微鏡としては、米国特許第10,288,863号(参考として援用される)に記載されるものが挙げられる。
【0063】
本開示の方法および組成物は、有益なことには、Dup15q症候群を有する被験体においてインビボでニューロンへと本明細書で記載される治療用オリゴヌクレオチド107を送達するために使用され得る。任意の適切な送達アプローチが、使用され得る(例えば、全身送達(例えば、注射による)または局所送達(例えば、皮下、髄腔内、または遅延放出デバイスの移植によるもの)が挙げられる)。本開示の方法は、本開示の組成物を、1回、数日間または数週間にわたって数回、数ヶ月ごと(例えば、1年に約3回または4回)送達することを含み得る。
【0064】
本開示のオリゴヌクレオチド(例えば、組成物101中のギャップマー、ASO、または治療用オリゴヌクレオチド107)は、表1に示される配列のうちの1つを参照して定義される配列を有し得る。例えば、本開示のオリゴヌクレオチドは、表1に示されるとおりの配列番号1~219のうちの1つと少なくとも約75%、80%、90%、95%、または完全に同一である配列を有し得る。UBE3Aに対するある特定の好ましい実施形態は、配列番号1~40として表示される表1中のものを含む。
【0065】
さらに、以下で示される実施例に記載されるように、本発明者らは、本発明のASOをスクリーニングした。得られたデータに基づくと、配列番号146、155、156、158、159、161、164、169、174、175、178、179、213、および214に相当するASOを、単一用量および用量応答有効性、配列モチーフ責任(sequence motif liabilities)、およびオフターゲットアラインメント分析に基づいてリード候補ASOとして特定した。それらのASOは、最大のインビトロ有効性、最低のオフターゲットアラインメント、および制限された配列モチーフの懸念を示した。よって、ある特定の局面において、本発明に従うUBE3Aに対する好ましいASOは、配列番号146、155、156、158、159、161、164 169、174、175、178、179、213および214に相当する配列と少なくとも約75%、80%、90%、95%、または完全に同一である配列を有するASOを含む。
【0066】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【0067】
本開示の好ましい組み合わせの実施形態は、Dup15q症候群を処置するための組成物を含む。上記組成物は、以下を含む: 配列番号1~40のうちの1つと少なくとも約90%相補的であるmRNAのセグメントに沿ってUBE3Aタンパク質をコードするmRNAにハイブリダイズする第1のオリゴヌクレオチド;および必要に応じて、配列番号1~40のうちの異なる1つと少なくとも約90%相補的であるmRNAのセグメントに沿ってUBE3Aタンパク質をコードするmRNAにハイブリダイズする第2のオリゴヌクレオチド。好ましい組み合わせの実施形態において、上記治療用オリゴヌクレオチドの各々は、改変されたRNAウイングが隣接した中心的DNAセグメントを含むギャップマー構造を有し得る。
【0068】
本開示のより好ましい組み合わせの実施形態は、配列番号146、155、156、158、159、161、164、169、174、175、178、179、213、および214のうちの1つと少なくとも約90%相補的であるmRNAのセグメントに沿ってUBE3Aタンパク質をコードするmRNA;ならびに必要に応じて、配列番号146、155、156、158、159、161、164、169、174、175、178、179、213、および214のうちの1つと少なくとも約90%相補的であるmRNAのセグメントに沿ってUBE3Aタンパク質をコードするmRNAにハイブリダイズする第2のオリゴヌクレオチドを含む、Dup15q症候群を処置するための組成物を含む。
【0069】
いずれかまたは両方のウイングは、改変されたRNA塩基を含み得る。例えば、両方のウイングは、2’-O-メトキシエチルリボース改変を有する4個連続したRNA塩基を含み得る。各オリゴヌクレオチドの全体は、当業者に明らかであるように、ホスホジエステルもしくはホスホロチオエート連結または他のものを介して接続され得る。最も好ましくは、少なくとも末端の連結は、標準的でない(すなわち、ホスホジエステルでない(例えば、ホスホロチオエート))。より好ましくは、上記RNAウイング内の連結のうちの大部分または全てが、標準的ではない(例えば、ホスホロチオエート)。好ましくは複数の治療用オリゴヌクレオチドは、送達のためにクリニックで希釈または再構成するために、凍結乾燥または溶液の状態で提供される。すなわち、上記第1のオリゴヌクレオチドの少なくとも1000から数百万のコピー、および必要に応じて、上記第2のオリヌーの少なくとも1000から数百万のコピーが、1またはこれより多くのチューブ中に、凍結乾燥または溶液でパッケージされる。上記組成物のこの好ましい組み合わせの実施形態は、Dup15q症候群の処置のためのアンチセンス治療剤として予測外の利益を有することを証明し得る。本開示の実施形態は、UBE3Aの過剰発現をダウンレギュレートし得るUBE3Aを標的とするロック核酸(LNA)アンチセンスオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを含む。本発明は、10~30ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを提供する。これは、UBE3A標的核酸と少なくとも90%相補性(例えば、100%相補性)を有し、インビボでのUBE3Aの過剰発現を阻害し得る10~30ヌクレオチドの長さの連続したヌクレオチド配列を含む。オリゴヌクレオチド107は、配列番号1~219のうちの1つ、または好ましくは配列番号1~40のうちの1つ、または配列番号146、155、156、158、159、161、164、169、174、175、178、179、213、および214のうちの1つと100%同一であり得る。ある特定の局面において、オリゴヌクレオチド107は、配列番号1~219のうちの1つ、または好ましくは配列番号1~40のうちの1つ、または配列番号146、155、156、158、159、161、164、169、174、175、178、179、213、および214のうちの1つと少なくとも90%、95%、98%、または99%同一であり得る。
【0070】
実施形態は、本発明に従うアンチセンスオリゴヌクレオチドの薬学的に受容可能な塩、または本発明に従う結合体を含む。
【0071】
本発明は、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは本発明の結合体、ならびに薬学的に受容可能な希釈剤、溶媒、キャリア、塩および/またはアジュバントを含む薬学的組成物を提供する。
【0072】
本発明は、医療における使用のための本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは本発明の結合体または本発明の薬学的塩もしくは組成物を提供する。
【0073】
本発明は、Dup15q症候群の処置または防止または緩和における使用のための本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは本発明の結合体または本発明の薬学的塩もしくは組成物を提供する。本発明は、Dup15q症候群の処置または防止または緩和のための医薬の調製のための、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは本発明の結合体または本発明の薬学的塩もしくは組成物の使用を提供する。
【0074】
オリゴヌクレオチドは、固相化学合成、続いて、精製および単離によって、実験室で一般には作製される。上記オリゴヌクレオチドの配列に言及する場合、共有結合により連結されたヌクレオチドまたはヌクレオシドの核塩基部分の配列もしくは順序、またはその改変に言及が行われる。本発明のオリゴヌクレオチドは、人工物、すなわち、化学合成されたものであり得、代表的には、精製または単離される。本発明のオリゴヌクレオチドは、1またはこれより多くの改変されたヌクレオシドまたはヌクレオチド(例えば、2’糖改変ヌクレオシド)を含み得る。
【0075】
上記改変されたヌクレオチドは、独立して、デオキシ-ヌクレオチド、3’末端デオキシ-チミン(dT)ヌクレオチド、2’-O-メチル改変ヌクレオチド、2’-フルオロ改変ヌクレオチド、2’-デオキシ改変ヌクレオチド、ロックヌクレオチド、ロックされていないヌクレオチド、コンホメーションが制限されたヌクレオチド、制約されたエチルヌクレオチド、無塩基ヌクレオチド、2’-アミノ改変ヌクレオチド、2’-O-アリル改変ヌクレオチド、2’-C-アルキル改変ヌクレオチド、2’-ヒドロキシ(hydroxl)改変ヌクレオチド、2’-メトキシエチル改変ヌクレオチド、2’-O-アルキル改変ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホルアミデート、非天然の塩基を含むヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトール改変ヌクレオチド、シクロヘキセニル改変ヌクレオチド、ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、メチルホスホネート基を含むヌクレオチド、5’-ホスフェートを含むヌクレオチド、5’-ホスフェート摸倣物を含むヌクレオチド、グリコール改変ヌクレオチド、および2’-O-(N-メチルアセトアミド)改変ヌクレオチド、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0076】
上記ASOの窒素性塩基は、天然に存在する核塩基(例えば、アデニン、グアニン、シトシン、チミジン、ウラシル、キサンチンおよびヒポキサンチン)ならびに天然に存在しない改変体(例えば、置換されたプリンまたは置換されたピリミジン(例えば、イソシトシン、プソイドイソシトシン、5-メチルシトシン、5-チアゾロ-シトシン、5-プロピニル-シトシン、5-プロピニル-ウラシル、5-ブロモウラシル 5-チアゾロ-ウラシル、2-チオ-ウラシル、2’-チオ-チミン、イノシン、ジアミノプリン、6-アミノプリン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリンおよび2-クロロ-6-アミノプリンから選択される核塩基)であり得る。
【0077】
上記核塩基部分は、各相当する核塩基の文字コード(例えば、A、T、G、CまたはU)によって示され得、ここで各文字は、必要に応じて、等しい機能の改変された核塩基を含み得る。例えば、例示されるオリゴヌクレオチドにおいて、上記核塩基部分は、A、T、G、C、および5-メチルシトシンから選択される。必要に応じて、LNAギャップマーに関しては、5-メチルシトシンLNAヌクレオシドが使用され得る。
【0078】
本開示のオリゴヌクレオチド107は、UBE3Aの発現をダウンレギュレートする(阻害する)能力がある。いくつかの実施形態において、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的を阻害またはダウンレギュレートすることによって、その標的の発現を調節する能力がある。好ましくは、このような調節は、上記標的の正常な発現レベルと比較して少なくとも20%の発現の阻害、より好ましくは上記標的の正常な発現レベルと比較して少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%阻害を生じる。
【0079】
本開示のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、標的核酸のレベルを(例えば、RNase H切断を介して)減少させ得るか、または例えば、pre-mRNAのスプライシングの調節を介して、標的核酸の機能性を減少させ得る(もしくは機能性を変化させ得る)。
【0080】
本開示のオリゴヌクレオチド107は、改変された糖部分(すなわち、DNAおよびRNAにおいて見出されるリボース糖部分と比較した場合のその糖部分の改変)を有する1またはこれより多くのヌクレオチドを含み得る。リボース糖部分の改変を有する多くのヌクレオシドは、オリゴヌクレオチドのある特定の特性(例えば、親和性および/またはヌクレアーゼ耐性)の改善を主に目的として作製されている。このような改変は、リボース環構造が、例えば、ヘキソース環(HNA)、または二環式環(これは、代表的には、リボース環(LNA)上のC2炭素とC4炭素との間の架橋を有する)、またはC2炭素とC3炭素との間の結合を代表的には欠いている連結されていないリボース環(例えば、UNA)での置換によって改変されているものを含む。改変されたヌクレオシドはまた、糖部分が非糖部分で置換されているヌクレオシド(例えば、ペプチド核酸(PNA)の場合)、またはモルホリノ核酸を含む。
【0081】
糖改変はまた、リボース環上の置換基を、水素以外の基へ、またはDNAおよびRNAヌクレオシドにおいて天然に見出される2’-OH基へと変更することを介して作製された改変を含む。置換基は、例えば、2’、3’、4’または5’位置において導入され得る。
【0082】
上記オリゴヌクレオチドは、1またはこれより多くのロック核酸(LNA)塩基を含み得る。LNAは、リボース環のコンホメーションを制限またはロックする、上記ヌクレオシドのリボース糖環のC2’およびC4’のビラジカル連結(「2’-4’架橋」ともいわれる)を含む2’-改変されたヌクレオシドを含み得る。これらのヌクレオシドはまた、文献中で架橋核酸または二環式核酸(BNA)といわれる。リボースのコンホメーションのロックは、LNAが、相補的なRNAまたはDNA分子に関してオリゴヌクレオチドへと組み込まれる場合、ハイブリダイゼーションの増強された親和性(二重鎖安定化)と関連する。これは、上記オリゴヌクレオチド/相補体二重鎖の融解温度を測定することによって慣用的に決定され得る。限定ではないが、例示的なLNAヌクレオシドは、以下に開示される:WO 99/014226、WO 00/66604、WO 98/039352、WO 2004/046160、WO 00/047599、WO 2007/134181、WO 2010/077578、WO 2010/036698、WO 2007/090071、WO 2009/006478、WO 2011/156202、WO 2008/154401、WO 2009/067647、およびWO 2008/150729(全て参考として援用される)。
【0083】
本開示のオリゴヌクレオチドの薬学的に受容可能な塩は、生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない、遊離塩基または遊離酸の生物学的有効性および特性を保持するそれらの塩を含む。上記塩は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、特に塩酸)、および有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、スルホン酸、またはサリチル酸)で形成される。さらに、それらの塩は、無機塩基または有機塩基を上記遊離酸に添加することから調製され得る。無機塩基から得られる塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。有機塩基から得られる塩としては、一級、二級、および三級アミン、置換されたアミン(天然に存在する置換されたアミンを含む)、環式アミンおよび塩基性イオン交換樹脂(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、リジン、アルギニン、N-エチルピペリジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂)の塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
オリゴヌクレオチド107は、UBE3A pre-mRNAまたはmRNA転写物のヌクレアーゼ媒介性分解を媒介または促進し得る。ヌクレアーゼ媒介性分解とは、相補的なヌクレオチド配列と二重鎖を形成する場合に、このような相補的なヌクレオチド配列の分解を媒介し得るオリゴヌクレオチドに言及する。いくつかの実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、本発明のオリゴヌクレオチドが、ヌクレアーゼ、特にエンドヌクレアーゼ、好ましくはエンドリボヌクレアーゼ(RNase)(例えば、RNase H)を動員し得る場合、標的核酸のヌクレアーゼ媒介性分解を介して機能し得る。ヌクレアーゼ媒介性機序を介して機能するオリゴヌクレオチド設計の例は、少なくとも5個または6個連続したDNAヌクレオシドの領域を代表的には含み、親和性増強ヌクレオシドによって一方の側または両側に隣接されるオリゴヌクレオチド(例えば、ギャップマー)である。アンチセンスオリゴヌクレオチド107のRNase H活性は、相補的RNA分子との二重鎖にある場合に、RNase Hを動員するその能力に言及する。
【0085】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド107、またはその連続したヌクレオチド配列は、ギャップマー(ギャップマーオリゴヌクレオチドまたはギャップマー設計ともいわれる)であり得る。アンチセンスギャップマーは、一般に、RNase H媒介性分解を介して標的核酸を阻害するために使用される。ギャップマーオリゴヌクレオチドは、少なくとも3個の別個の構造的領域、5’→3’配向において5’-隣接、ギャップ、および3’-隣接、F-G-F’を含む。「ギャップ」領域(G)は、上記オリゴヌクレオチドがRNase Hを動員し得る連続したDNAヌクレオチドのストレッチを含む。上記ギャップ領域は、1またはこれより多くの糖改変されたヌクレオシド(有利なことには、高親和性糖改変ヌクレオシド)を含む5’隣接領域(F)および1またはこれより多くの糖改変されたヌクレオシド(有利なことには、高親和性糖改変ヌクレオシド)を含む3’隣接領域(F’)によって隣接されている。領域FおよびF’における上記1またはこれより多くの糖改変されたヌクレオシドは、上記標的核酸に対するオリゴヌクレオチドの親和性を増強する(すなわち、親和性増強糖改変ヌクレオシドである)。いくつかの実施形態において、領域FおよびF’における上記1またはこれより多くの糖改変されたヌクレオシドは、2’糖改変されたヌクレオシド(例えば、高親和性2’糖改変)である(例えば、LNAおよび2’-MOEから独立して選択される)。
【0086】
混合ウイングギャップマーは、領域FおよびF’のうちの一方または両方が、2’置換されたヌクレオシド(例えば、 2’-O-アルキル-RNAユニット、2’-O-メチル-RNA、2’-アミノ-DNAユニット、2’-フルオロ-DNA ユニット、2’-アルコキシ-RNA、2’-MOEユニット、アラビノ核酸(ANA)ユニット、2’-フルオロ-ANAユニット、またはこれらの組み合わせからなる群より独立して選択される2’置換されたヌクレオシド)を含むLNA ギャップマーである。領域FおよびF’のうちの少なくとも一方、または領域FおよびF’の両方が少なくとも1個のLNAヌクレオシドを含むいくつかの実施形態において、領域FおよびF’の残りのヌクレオシドは、2’-MOEおよびLNAからなる群より独立して選択される。領域FおよびF’のうちの少なくとも一方、または領域FおよびF’の両方が少なくとも2個のLNAヌクレオシドを含むいくつかの実施形態において、領域FおよびF’の残りのヌクレオシドは、2’-MOEおよびLNAからなる群より独立して選択される。いくつかの混合ウイングの実施形態において、領域FおよびF’のうちの一方または両方は、1またはこれより多くのDNAヌクレオシドをさらに含み得る。ギャップマー設計は、WO 2008/049085およびWO 2012/109395(ともに参考として援用される)において考察されている。
【0087】
表2は、本明細書で開示されるとおりの改変された塩基および他の改変を組み込む本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの例を示す。説明されるように、多くの非標準的核酸モノマーが、注文オリゴヌクレオチド製造供給元から市販されており、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドへと容易に組み込まれる.これらのモノマーユニットは、例えば、Integrated DNA Technologies(Iowa, US)によって示されるように、非標準的モノマーユニットを示す周知のオリゴヌクレオチド合成命名法を使用して記載される。例えば、表2に提供される配列において、非標準的モノマーユニットは、前方のスラッシュ「/」において囲まれ、ユニット間のアスタリスク「*」は、PS連結を示す一方で、アスタリスクがないものは、PO連結を示す。表2はまた、上記ASOの配列番号を提供する。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【0088】
1またはこれより多くの非ヌクレオチド部分へのオリゴヌクレオチド107の結合体化は、上記オリゴヌクレオチドの薬理学を、例えば、上記オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、細胞取り込みまたは安定性に影響を及ぼすことによって改善し得る。いくつかの実施形態において、上記結合体部分は、上記オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を、上記オリゴヌクレオチドの細胞分布、バイオアベイラビリティー、代謝、排出、透過性、および/または細胞取り込みを改善することによって改変または増強し得る。特に、上記結合体は、上記オリゴヌクレオチドを特異的器官、組織または細胞タイプを標的にし得、それによって、その器官、組織または細胞タイプにおける上記オリゴヌクレオチドの有効性を増強し得る。上記結合体はまた、非標的細胞タイプ、組織もしくは器官における上記オリゴヌクレオチドの活性、例えば、オフターゲット活性または非標的細胞タイプ、組織もしくは器官における活性を低減するように働き得る。
【0089】
一実施形態において、上記非ヌクレオチド部分(結合体部分)は、炭水化物、細胞表面レセプターリガンド、薬物物質、ホルモン、親油性物質、ポリマー、タンパク質、ペプチド、毒素(例えば、細菌毒素)、ビタミン、ウイルスタンパク質(例えば、キャプシド)またはこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0090】
本開示のオリゴヌクレオチド107は、前述のオリゴヌクレオチドおよび/またはそのオリゴヌクレオチド結合体もしくは塩のうちのいずれか、ならびに薬学的に受容可能な希釈剤、キャリア、塩および/またはアジュバントを含む薬学的組成物において提供され得る。薬学的に受容可能な希釈剤としては、ACSF(人工脳脊髄液)が挙げられ、薬学的に受容可能な塩としては、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記薬学的に受容可能な希釈剤は、滅菌リン酸緩衝化生理食塩水または滅菌炭酸ナトリウム緩衝液である。いくつかの好ましい実施形態において、臨床適用のための希釈剤としては、Elliotts B溶液および/またはACSF(人工脳脊髄液)が挙げられる。
【0091】
いくつかの実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチドは、薬学的に受容可能な希釈剤中の溶液の形態にある(例えば、PBSまたは炭酸ナトリウム緩衝液中に溶解される)。上記オリゴヌクレオチドは、上記溶液中にあらかじめ製剤化されていてもよいし、いくつかの実施形態においては、投与前に薬学的に受容可能な希釈剤中に溶解され得る乾燥粉末(例えば、凍結乾燥粉末)の形態にあってもよい。適切には、例えば、上記オリゴヌクレオチドは、0.1~100mg/mLの濃度(例えば、1~10mg/mL)において溶解され得る。
【実施例
【0092】
実施例
以下の実施例は、本発明のASOをスクリーニングするための例示的方法を提供する。実施例において、一連のASOをスクリーニングした。得られたデータに基づいて、配列番号146、155、156、158、159、161、164、169、174、175、178、179、213、および214に相当するASOを、用量応答有効性、配列モチーフ責任、およびオフターゲットアラインメント分析に基づいてリード候補ASOとして特定した。それらのASOは、最大のインビトロ有効性、最低のオフターゲットアラインメント、および制限された配列モチーフの懸念を示した。しかし、本明細書で記載されるとおりの他のASOはまた、種々の条件の処置に対してUBE3Aをノックダウンするために記載されるように機能する。
【0093】
実施例1 UBE3A ASOの単一用量スクリーニング
40のUBE3A標的化ASO(配列番号1~40)を、初代線維芽細胞(96ウェルプレートのウェルあたり10kをプレート)を200nMのASOで処理することによってインビトロでスクリーニングした。ASOを、96ウェルプレートのウェルあたり0.5μLでRNAi Maxを使用するトランスフェクションによって送達した。
【0094】
図3に示されるデータは、ビヒクルに対してASO処理線維芽細胞の正規化した相対的UBE3A転写物発現のqPCRデータである。全てのサンプルを、第2のビヒクル条件に対して正規化した。細胞のみの条件(白)は、UBE3A発現の変化を示さない。UBE3A siRNAを陽性コントロールとして使用したところ、UBE3A転写物の-80%ノックダウンを示す。非標的化siRNAを陰性コントロールとして使用したところ、UBE3Aのノックダウンを示さない。上のグラフは、UBE3A ASOs 001-020(配列番号1~20)のデータを示す。下のグラフは、UBE3A ASOs 021-040(配列番号21~40)のデータを示す。
【0095】
全ての細胞を、プレートして48時間後にASOでトランスフェクトした。細胞を、ASOトランスフェクションのさらに48時間後に、qPCRのために採取した。アクチンを、UBE3Aに対する正規化遺伝子として使用した。各バーは、3つの技術的複製および1つの生物学的複製を表す。ある特定のバーの上にあるドットは、40のASOのこのセット内で特定された好ましいASOを示し、配列番号4、7、8、14、17、18、21、26、34、および35に相当する。
【0096】
図4は、各々6つの濃度において、本開示の実施形態(上記ASO全体を通じて2’-O改変されたRNAおよびホスホロチオエート連結を有するRNAウイングが連結した約10~12個の塩基DNAの中心的領域を有する約20個の塩基の長さ)に従って設計された10のASO候補(配列番号14、17、4、7、8、18、21、26、34、および35)の用量応答を示す結果を提供する。全10個のASOは、用量依存性様式においてコントロールと比較してUBE3A発現を減少させた(ビヒクルのみで処理した細胞および処理していない「細胞のみ」条件)。
【0097】
実施例2 全UBE3A ASOの単一用量スクリーニング
実施例1の方法を使用して、UBE3A標的化ASO(配列番号1~80、101~139、および184~203)を、初代線維芽細胞(96ウェルプレートのウェルあたり10kをプレート)を200nMのASOで処理することによってインビトロでスクリーニングした。ASOを、96ウェルプレートのウェルあたり0.5μLでRNAi Maxを使用するトランスフェクションによって送達した。
【0098】
全てのスクリーニングしたASOを、本開示の実施形態(すなわち、上記ASO全体を通じて2’-O改変されたRNAおよびホスホロチオエート連結を有するRNAウイングが隣接した約10~12個の塩基のDNA中心的領域を有する約20個の塩基の長さ)に従って設計した。
【0099】
図6~9に示されるデータは、スクリーニングされた全139のASOに関するUBE3Aノックダウン(UBE3Aノックダウンのパーセントとして表される)のqPCR読み出しのまとめの表として表される。全てのサンプルを、ビヒクル条件または細胞のみの条件のいずれかに対して正規化した。ASOの表は、下流の齧歯類概念立証インビボ試験のために、UBE3Aエキソン標的化ASO(図6~7)、UBE3Aイントロン標的化ASO(図8)、ならびにヒトおよびマウス両方のUBE3A転写物と100%相同性を有するUBE3A ASO(図9)に分類される。
【0100】
全ての細胞を、プレートして48時間後にASOでトランスフェクトした。細胞を、qPCRのために、ASOトランスフェクションのさらに48時間後に採取した。アクチンを、UBE3Aに対する正規化遺伝子として使用した。適切な場合、ASOを、コントロール線維芽細胞およびDup15q患者に由来する線維芽細胞の両方においてスクリーニングした(図6~8)。図9において、マウスUBE3A相同性を有するASOに関しては、データは2回に対して示される。
【0101】
実施例3 UBE3AリードASO候補の用量応答スクリーニング
実施例1および2のデータに基づいて、候補リードUBE3A標的化ASOを、一次単一用量スクリーニングにおいて80~85%より大きい転写物ノックダウンに基づいて選択した。各候補リードに関して、同一の配列を有する新たなASOを、1~3個のホスホジエステル(PO)骨格改変(各々、3’および5’において、ASOあたり合計4~5個のPO改変(すなわち、PO連結で置き換えられたPS連結)を有する2’-MOE RNA様ウイング)で合成した。これらの改変は、元々のリードASO中のその相当するPS連結に置き換わる。PO改変ASOを、娘ASOとして図10中で言及する。
【0102】
次いで、これらの候補リードを、UBE3A転写物発現の用量応答調節に関して試験した。これらの実験のために、初代線維芽細胞(96ウェルプレートのウェルあたり10kをプレート)またはマウス胚性線維芽細胞(ウェルあたり15kでプレート)のいずれかを、96ウェルプレートにプレートした。ASOを、6つの用量: 6.25nM、12.5nM、25nM、50nM、100nM、および200nMでスクリーニングした。ASOを、96ウェルプレートのウェルあたり0.5μLでRNAi Maxを使用するトランスフェクションによって送達した。
【0103】
図10は、Dup15q患者線維芽細胞(上)またはマウス胚性線維芽細胞(下)における2つのリード候補例およびそれらのPO改変娘分子に関する標的発現のUBE3A ASO用量応答の例示的データを示す。全サンプルを、ビヒクルコントロールに対して正規化した。
【0104】
図11は、用量応答をプロットし、図10からの同じ2例のリード候補に関するEC50を示す。全細胞を、プレートして48時間後にASOでトランスフェクトした。細胞を、qPCRのために、ASOトランスフェクションのさらに48時間後に採取した。アクチンを、UBE3Aに対する正規化遺伝子として使用した。各データ点は、2つの技術的複製および1つの生物学的複製を表す。
【0105】
実施例4 UBE3AリードASO候補の用量応答スクリーニング
候補リードUBE3A標的化ASOを、実施例1および2からの一次単一用量スクリーニングにおいて80~85%より大きい転写物ノックダウンに基づいて選択した。各候補リードに関して、同一の配列を有する新たなASOを、実施例3に記載されるように、1~3個のPO骨格改変(各々、3’および5’において、2’-MOE RNA様ウイング(ASOあたり合計4~5個のPO改変))で合成した。次いで、全候補リードを、UBE3A転写物発現の用量応答調節に関して試験した。
【0106】
これらの実験のために、初代線維芽細胞(96ウェルプレートのウェルあたり10kをプレート)またはマウス胚性線維芽細胞(ウェルあたり15kでプレート)のいずれかを、96ウェルプレートにプレートした。ASOを、別段示されなければ、6つの用量: 6.25nM、12.5nM、25nM、50nM、100nM、および200nMでスクリーニングした。ASOを、96ウェルプレートのウェルあたり0.5μLでRNAi Maxを使用するトランスフェクションによって送達した。
【0107】
全サンプルを、各実験内で、ビヒクルまたはコントロール条件のいずれかに対して正規化した。全細胞を、プレートして48時間後にASOでトランスフェクトした。細胞を、qPCRのために、ASOトランスフェクションのさらに48時間後に採取した。アクチンを、UBE3Aに対する正規化遺伝子として使用した。
【0108】
図12は、UBE3Aエキソンを標的とするリード全PS骨格候補の得られた用量応答データを示す。
【0109】
図13は、UBE3Aイントロンを標的とするリード全PS骨格候補の得られた用量応答データを示す。
【0110】
図14は、齧歯類のインビボ有効性試験のために100%マウス相同性を有するリード全PS骨格候補の得られた用量応答データを示す。
【0111】
図15は、齧歯類のインビボ有効性試験のために100%マウス相同性を有するPO改変娘リードの得られた用量応答データを示す。
【0112】
図16は、ヒト臨床候補試験のためにPO改変娘リードの得られた用量応答データを示す。
【0113】
実施例5 UBE3A ASOを使用するUBE3Aのタンパク質ノックダウン
ASO処理したDup15q患者線維芽細胞を、有効性を決定し、下流の実験のためにASOをランク付けする助けにするために、UBE3Aタンパク質ノックダウンに関してスクリーニングした。
【0114】
線維芽細胞を、96ウェルプレートのウェルあたり10kでプレートした。ASO処理は、プレートして48時間後に生じた。タンパク質ノックダウンの蓄積を許容するために、線維芽細胞を、ASO処理の約4.5日後に、ウェスタンブロット分析のために採取した。
【0115】
図17は、ある特定の候補リードUBE3A ASOおよび同一のASO配列を有する3個のPO改変娘分子のウェスタンブロットを示す。GFP標的化ASOを、陰性コントロールとして使用した。UBE3A発現を、ハウスキーピング遺伝子ACTINに対して正規化し、次いで、ビヒクル条件に対して正規化した。
【0116】
図18は、前述のサンプルに関するUBE3Aタンパク質ノックダウンの定量を示す。UBE3Aブロットに関しては、曝露は600sであった。GAPDHに関しては、曝露は15sであった。レーンあたり5μgのタンパク質を載せ、高分子量転写を使用した。UBE3A抗体: Rb-E6AP Antibody(Bethyl)-A300-351A(1:1000)。Actin Antibody: Ms β-Actin-(Cell Signaling)-8H10D10(1:2000)。
【0117】
実施例6 UBE3A標的化ASOを使用するUBE3Aのタンパク質ノックダウン
ASO処理したDup15q患者線維芽細胞を、有効性を決定し、下流の実験のためにASOをランク付けする助けにするために、UBE3Aタンパク質ノックダウンに関してスクリーニングした。
【0118】
図19~22は、候補リードのUBE3Aタンパク質ノックダウンに関するまとめの表を提供する。
【0119】
ASO処理したDup15q患者線維芽細胞を、有効性を決定し、下流の実験のためにASOをランク付けする助けにするために、UBE3Aタンパク質ノックダウンに関してスクリーニングした。線維芽細胞を、96ウェルプレートのウェルあたり10kでプレートした。ASO処理は、プレートして48時間後に生じた。タンパク質ノックダウンの蓄積を許容するために、線維芽細胞を、ASO処理の約4.5日後に、ウェスタンブロット分析のために採取した。全ての実験において、GFP標的化ASOを、陰性コントロールとして使用した。UBE3A発現を、ハウスキーピング遺伝子ACTINに対して正規化し、次いで、ビヒクル条件に対して正規化した。UBE3Aブロットに関しては、曝露は600sであった。GAPDHに関しては、曝露は15sであった。レーンあたり5μgのタンパク質を載せ、高分子量転写を使用した。UBE3A抗体: Rb-E6AP Antibody(Bethyl)-A300-351A(1:1000)。Actin Antibody: Ms β-Actin-(Cell Signaling)-8H10D10(1:2000)。
【0120】
図19は、UBE3Aを標的とするリード全PS骨格候補のUBE3Aタンパク質ノックダウン結果をまとめる表を提供する。
【0121】
図20は、齧歯類のインビボ有効性試験のために100%マウス相同性を有するリード全PS骨格候補のUBE3Aタンパク質ノックダウン結果をまとめる表を提供する。(C)
【0122】
図21は、齧歯類のインビボ有効性試験のために100%マウス相同性を有するPO改変娘リードのUBE3Aタンパク質ノックダウン結果をまとめる表を提供する。
【0123】
図22は、ヒト臨床候補のためにPO改変娘リードのUBE3Aタンパク質ノックダウン結果をまとめる表を提供する。
【0124】
実施例7 - UBE3Aリード候補を使用するヒトNGN2幹細胞由来ニューロンにおけるUBE3A転写物のノックダウン
UBE3Aは、ニューロンにおいて刷り込みされ、この細胞タイプは、Dup15qの病因にとって極めて重要である。本発明のASOが疾患関連ヒト細胞タイプにおいて有効であることを示すために、この実施例において、ヒト人工多能性幹細胞由来ニューロン(転写因子NGN2の過剰発現およびSMADシグナル伝達の低分子阻害を介して分化)を、本発明のUBE3A標的化ASOで処理した。
【0125】
ニューロンを、80,000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートにプレートし、100nMのUBE3A標的化ASOで処理した。ASOを、DIV(インビトロ日数(day in vitro))21においてEndoporter試薬で培養したニューロンへと送達した。細胞を、DIV 31において処理の10日後にqPCRのために採取した。UBE3Aリード候補ASOおよび最適化したリード候補ASOをスクリーニングした。
【0126】
図23は、このスクリーニングをまとめるデータを提供する。示されるように、多くのASOは、ヒトニューロンにおいてUBE3A転写物の>80%ノックダウンを示した。UBE3A発現レベルを、βチューブリン転写物レベル(参照として使用されるハウスキーピング遺伝子)に対して正規化した。次いで、全ての正規化した発現を、第1のビヒクル条件に対して定量した。各バーは、3つの技術的複製および1つの生物学的複製を表す。
【0127】
実施例8 - UBE3Aリード候補ASOを使用するヒト初代ニューロンにおけるUBE3A転写物のノックダウン
UBE3Aは、ニューロンにおいて刷り込みされ、その細胞タイプは、Dup15qの病因にとって極めて重要である。本発明のASOが関連ヒト細胞タイプにおいて有効であることを示すために、ヒト初代ニューロン(19週齢の男性胎児に由来;Sciencellから獲得)を、UBE3A標的化ASOで処理した。ニューロンを、30,000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートにプレートし、500nMのUBE3A標的化ASOで処理した。ASOを、裸で(gymnotically)(トランスフェクション試薬なし)でDIV 1に送達した。細胞を、ASO処理の6日後にqPCRのために採取した。UBE3Aリード候補ASOおよび最適化したリード候補ASOの部分セットをスクリーニングした。
【0128】
図24は、このスクリーンをまとめる結果を提供する。示されるように、多くのASOは、裸の送達でヒト初代ニューロンにおいてUBE3A転写物の>60%ノックダウンを示す。UBE3A発現レベルを、βチューブリン転写物レベル(参照として使用されるハウスキーピング遺伝子)に対して正規化した。次いで、全ての正規化した発現を、第1のビヒクル条件に対して定量した。各バーは、3つの技術的複製および1つの生物学的複製を表す。
【0129】
実施例9 - UBE3Aリード候補ASOを使用する非ヒト霊長類初代線維芽細胞培養物におけるUBE3A転写物のノックダウン
カニクイザル非ヒト霊長類(NHP)における相当する配列と100%相同性を有するUBE3A ASOを、このアッセイのために選択した。リードASO候補を、インビボ寛容性、毒物学、PKおよびPDに関して試験するために、NHPにおいてインビボでスクリーニングした。
【0130】
本発明のASOが、関連のNHP細胞タイプにおいて有効であることを示すために、NHP初代線維芽細胞(Coriell)を、UBE3A標的化ASOで形質導入した。線維芽細胞を、10,000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートにプレートし、200nM UBE3A ASOで処理した。ASOを、DIV 2にRNAi Maxを使用してNHP線維芽細胞へとトランスフェクトした。細胞を、ASO処理の48時間後にqPCRのために採取した。UBE3Aリード候補ASOおよび最適化したリード候補をスクリーニングした。
【0131】
図25は、このスクリーニングをまとめる結果を提供する。示されるように、多くのASOは、show UBE3A転写物の80~90%ノックダウンを示す。UBE3A発現レベルを、GAPDH(参照として使用されるハウスキーピング遺伝子)に対して正規化した。次いで、全ての正規化した発現を、第1の細胞のみの条件に対して定量した。各バーは、2つの技術的複製および1つの生物学的複製を表す。
【0132】
実施例10 - UBE3Aリード候補を使用するマウス初代皮質ニューロンにおけるUBE3A転写物のノックダウン
UBE3Aは、ニューロンにおいて刷り込みされ、この細胞タイプは、Dup15qの病因にとって極めて重要である。リードASOを、インビボ寛容性、毒物学、PKおよびPDに関して試験するために、マウスにおいてインビボでスクリーニングする。
【0133】
Dup15qのマウスモデルは、疾患モデルシステムにおいてインビボで概念立証および有効性を示すために有用である。本発明のASOが関連マウス細胞タイプにおいて有効であることを示すために、マウス初代皮質ニューロン(Brainbits)を、UBE3A ASOで処理した。ニューロンを、ウェルあたり9kで96ウェルプレートにプレートし、1μM UBE3A ASOで処理した。ASOを、DIV 3に裸で送達した。細胞を、ASO処理の8日後(DIV 11)にqPCRのために採取した。UBE3Aリード候補および最適化したリード候補をスクリーニングした。これらのスクリーンから得られた結果を、図26に示す。示されるように、多くのASOは、裸の送達、特に、100%ラット相同性を有するASOでUBE3A転写物の>60%ノックダウンを示す。UBE3A発現レベルを、βチューブリン(参照として使用されるハウスキーピング遺伝子)に対して正規化した。次いで、全ての正規化した発現を、第2の細胞のみの条件に対して定量した。各バーは、2つの技術的複製および1つの生物学的複製を表す。
【0134】
実施例11 - UBE3Aリード候補を使用するラット初代皮質ニューロンにおけるUBE3A転写物のノックダウン
UBE3Aは、ニューロンにおいて刷り込みされ、この細胞タイプは、Dup15qの病因にとって極めて重要である。リードASOを、インビボ寛容性、毒物学、PKおよびPDに関して試験するために、ラットにおいてインビボでスクリーニングする。
【0135】
本発明のASOが、関連ラット細胞タイプにおいて有効であることを示すために、ラット初代皮質ニューロン(Brainbits)を、本明細書で記載されるとおりのUBE3A ASOで処理した。ニューロンを、ウェルあたり9kで96ウェルプレートにプレートし、3μM UBE3A ASOで処理した。ASOを、DIV 3に裸で送達した。
【0136】
細胞を、ASO処理の4日後および8日後(それぞれ、DIV 7およびDIV 11)にqPCRのために採取した。UBE3Aリード候補および最適化したリード候補をスクリーニングした。
【0137】
図27は、細胞を4日後にqPCRのために採取した後のスクリーニングをまとめる結果を提供する。
【0138】
図28は、細胞を8日後にqPCRのために採取した後のスクリーニングをまとめる結果を提供する。
【0139】
図27~28に示されるように、多くのASOは、裸の送達、特に、100%ラット相同性を有するASOでUBE3A転写物の>60%ノックダウンを示す。UBE3A発現レベルを、βチューブリン(参照として使用されるハウスキーピング遺伝子)に対して正規化した。次いで、全ての正規化した発現を、第2の細胞のみの条件に対して定量した。各バーは、2つの技術的複製および1つの生物学的複製を表す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【手続補正書】
【提出日】2023-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024506709000001.app
【国際調査報告】