(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】ケージに収容された動物の行動及び身体活動を分析するためのラック及び方法
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20240206BHJP
A01K 11/00 20060101ALI20240206BHJP
A01K 1/01 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A01K29/00 C
A01K11/00 D
A01K11/00 E
A01K1/01 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549577
(86)(22)【出願日】2022-02-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 EP2022054082
(87)【国際公開番号】W WO2022175456
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】510139564
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・トゥールーズ・トロワ-ポール・サバティエ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE TOULOUSE III-PAUL SABATIER
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】パリーニ,アンジェロ
(72)【発明者】
【氏名】サンタン,ヨアン
【テーマコード(参考)】
2B101
【Fターム(参考)】
2B101AA11
2B101FA01
2B101FA02
2B101FA04
(57)【要約】
このラックは、それぞれのセル(8、8k)内に分配されたケージ(14)に収容された動物(M1~M4)の集団の行動と身体活動を分析するように構成されており、ケージの少なくともいくつかには運動用ホイール(20)を備えている。少なくとも第一のセル(82、83)は、第一のセル内に設けられた第一のケージの運動用ホイール(20)内に位置する動物によって運ばれたタグ(Ti)を検出するように構成された近接センサー(30)を備えており、このケージには近接センサーを備えていない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれのセル(8、8
k)内に配置されたケージ(10)内に収容された動物(M1からM4)の集団の行動及び身体活動を分析するように構成されたラック(2)であって、前記ケージの少なくともいくつかは運動用ホイール(20)を備え、少なくとも第一のセル(8
2、8
3)には、前記第一のセル内に設けられた第一のケージの運動用ホイール(20)内に位置する動物が保持するタグ(Ti)を検出するように構成された近接センサー(30)が設けられ、このケージには近接センサーが設けられない、前記ラック(2)。
【請求項2】
前記近接センサー(30)は、前記第一のセル(8
2,8
3)内の前記第一のケージ(10)を収容するための容積と、隣接する第二のセル(8
3,8
4)内の第二のケージを収容するための容積と、の間に配置される、請求項1に記載のラック。
【請求項3】
前記ラック(2)は、複数の列及び複数の行のセル(8、8
k)を含み、それぞれのセルは、それぞれのケージ(10)を収容するように設けられ、前記近接センサー(30)は、セルの同じ行及びセルの隣接する二つの列に属する、隣接する二つのセル内に設けられた二つのケージの間、又は、セルの同じ列及びセルの重なる二つの行に属する、重なる二つのセル内に設けられた二つのケージの間、に配置される、請求項2に記載のラック。
【請求項4】
電磁シールド(36)が、前記近接センサー(30)の近傍に配置され、前記近接センサーによって発生する電磁界(F)の、前記近接センサーと前記隣接する第二のセル(8
3,8
4)内に設けられた前記第二のケージ(10)との間の伝播を防止する、請求項2又は3に記載のラック。
【請求項5】
それぞれのセル(8)の両側に配置され、このセル内に設けられたケージ(10)を支持するための支持部材(18)を含み、それぞれの近接センサー(30)は、少なくとも一つの支持部材の上方又は下方に配置される、請求項4に記載のラック。
【請求項6】
前記近接センサー(30)は、RFIDセンサーであり、前記第一のセル(8
2,8
3)内に設けられた前記第一のケージ(10)内に電磁界(F)を発生させるように構成された少なくとも一つのアンテナ(32)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のラック。
【請求項7】
前記アンテナ(32)は、前記第一のケージ(8
2,8
3)の前記運動用ホイール(20)の容積を完全にカバーする電磁界(F)を発生するように構成され、及び、通電される、請求項6に記載のラック。
【請求項8】
前記アンテナ(32)は、前記電磁界(F)を、前記第一のケージの前記運動用ホイール(20)の容積に実質的に限定して、発生させるように構成され、及び、通電される、請求項6又は7に記載のラック。
【請求項9】
前記アンテナ(22)は、水平方向の電磁界(F)を発生させる、請求項6から8のいずれか一項に記載のラック。
【請求項10】
前記アンテナ(32)は、垂直方向の電磁界(F)を発生させる、請求項6から8のいずれか一項に記載のラック。
【請求項11】
前記第一のケージ(10)の前記運動用ホイール(20)の回転速度(ω20)、角加速度(A20)、及び/又は、角度位置(P20)を測定するための回転センサー(24)を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のラック。
【請求項12】
すべてのセル(8)は、近接センサー(30)が与えられ、すべてのケージ(10)は、運動用ホイール(20)が備えられ、すべての近接センサーは、前記セルの同じ側の側面に配置される、請求項1から11のいずれか一項に記載のラック。
【請求項13】
いくつかの近接センサー(30)の出力信号(S30
k)を収集するための、そして、中央制御ユニット(26)に転送するための、少なくとも一つのデータコレクタ(40)、好ましくは、セル(8、8
k)の列又は行のすべての近接センサーのための一つのデータコレクタ、を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のラック。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のラック(2)を用いて、ケージ(10)内に収容された動物の集団の行動及び身体活動を分析するための方法であって、この方法は、少なくとも以下のステップ、
a)それぞれの動物(Mi)に、その動物に従って生成される個別タグ(Ti)を、マーキングするステップ、
b)前記近接センサー(30)が、第一のケージ(10)の運動用ホイール(20)内のタグ(Ti)を検出した場合に、動物が運動していると判定するステップ、
c)その個別タグによって運動用ホイール内の動物を識別するステップ、及び、
d)所定の期間にわたって、前記集団のそれぞれの動物に関するデータ(S’30)を収集するステップ、
を含む、方法。
【請求項15】
前記ラックは、請求項11に記載のものであり、ステップb)において運動用ホイール(20)内で運動していると判定されたそれぞれの動物(Mi)について、前記動物が運動している時間間隔にわたって、前記身体運動の強度は、前記回転センサ(24)の出力信号(S24)に基づき、ステップc)において識別された前記動物に関連付けられて、判定される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケージに収容された動物の集団の行動及び身体活動を分析するように構成されたラックに関する。本発明は、また、このような動物の集団の行動を分析するための、本発明のラックを用いて実施可能な方法に関する。
【0002】
発明の背景
科学研究の分野では、マウスのような動物の集団の行動を研究するのが一般的である。これらの動物は、一般的にケージに収容される。これらのケージは、有利には、マウスが身体運動を行うことができるように、運動用ホイールを備えている。この身体運動の実践は、それぞれのマウスの身体的及び/又は心理的状態を表す。例えば数十匹の動物を含む比較的大きな集団を研究しなければならない場合、研究者がそれぞれの動物の行動をチェックすることは不可能である。これは、マウスのように夜間に主な活動期を迎える一部の動物であればなおさらである。
【0003】
セルの行及び列を有するラックを構築することが知られており、それぞれのセルは、それぞれのケージを収容するように構成され、所定のケージに収容されたマウスの動作を検出するために、セル内に収容されたケージの床下に配置された静電容量式センサーを備える。これは、ケージ内のマウスの動作の全体像を与えことができるが、そのケージに収容された複数のマウスの中から1匹のマウスを識別することはできず、特に、このマウスが運動用ホイールで身体運動を実践している場合に、そのマウスを識別することはできない。
【0004】
ケージに近接センサーを組み込んだ場合、そのような近接センサーはケージの清掃作業中に損傷する可能性がある。このような洗浄作業は、衛生上の理由から定期的に行う必要がある。特に、ケージはオートクレーブで洗浄されることがあるが、この場合、洗浄前にケージから近接センサーを取り外し、洗浄後に近接センサーを再度取り付けない限り、ケージに取り付けられた近接センサーが破壊される可能性があり、面倒であり、資格のある人員が必要とされる。
【0005】
一方、施設の棚内のケージの存在を、ケージのフィルターに埋め込まれたRFIDタグを検出できるRFIDリーダーを使用して自動的に検出することがWO-A-2014/118727により知られている。このアプローチでは、施設のセル内のケージの有無を検出することはできるが、ケージ内のマウス、特に運動用ホイールに関するマウスを検出することはできない。さらに、そのRFIDタグは、ケージのフィルターに取り付けられており、このフィルターは通常ケージの清掃時に交換される。このフィルターは、ケージの清掃作業中に、特別に取り扱わなければならない。ここでもまた、これは面倒であり、資格のある人員が必要である。
【0006】
他方、PhenoSys GmbHが販売するColonyRackの製品では、ケージとケージをチューブで連結してケージ間の動物の行き来を可能にし、RFIDトランスポンダーリーダーで検知することで、大きな集団のマウスの自動追跡を可能にしている。このアプローチでは、マウス間の相互作用を検出することはできるが、ケージ内の個別マウスの身体活動を追跡することはできない。さらに、ケージの清掃が必要な場合は、このケージの開口部からチューブを適切に取り外す必要がある。これには時間がかかり、資格のある人材も必要である。
【0007】
別のアプローチによれば、一つのケージごとに1匹のマウスを収容し、運動用ホイールの回転を検出することで、それをこの1匹のマウスと論理的に結びつけることができる。しかし、実際には、長期間、特に成体になってからの通常の寿命である約18カ月から2又は3年の間にわたってマウスから社会的接触を奪うことはできない。実際、マウスの社会的接触を奪うことは、その経験を歪め、それぞれのマウスの肉体的及び精神的状態に悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、これは、一定数の動物を含む集団を追跡調査するのに必要な量を増加させ、ラックの価格を大幅に上昇させることになる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、これらの問題を、同じケージに収容された動物間の社会的接触を維持しながら、長期間、典型的には数日から数ヶ月間、比較的多数の動物、特にマウス、の行動及び身体活動を、個別化された事項について、自動化されて、分析することを可能にする最適化されたラックを提供することによって解決することを目的とする。
【0009】
この点に関して、本発明は、ケージに収容された動物の集団の行動及び身体活動を分析するように構成されたラックに関するものであり、このラックは、それぞれのセルに分配された複数のケージを備え、ケージの少なくともいくつかには運動用ホイールを備え、少なくとも一つのセルには、第一のセル内に設けられた第一のケージの運動用ホイール内に位置する動物によって運ばれたタグを検出するように構成された近接センサーが設けられるが、このケージには近接センサーが備わっていない。
【0010】
本発明により、ラックの構造に対して固定された近接センサーは、運動用ホイール内で運動している動物を検出し、識別するのに効率的である。一方、近接センサーがケージ上ではなくセル内に設けられているため、ケージの清掃作業中にこの近接センサーが損傷する危険性はない。
【0011】
本発明のさらに有利な態様によれば、本発明のラックは、技術的に適合する任意の構成において、以下の特徴の一つ又はいくつかを組み込むことができる。
- 近接センサーは、第一のセル内の第一のケージが収容される容積と、第二の隣接セル内の第二のケージが収容される容積と、の間に配置される、
- ラックは、複数の列及び複数の行のセルを含み、それぞれのセルは、それぞれのケージを収容するために設けられており、近接センサーは、同じ行に属するセルであって隣接する二つの列のセルとなって、隣接する二つのセルに設けられた二つのケージの間、又は、同じ列に属するセルであって隣接する二つの行のセルとなって重なった二つのセルに設けられた二つのケージの間、に配置される、
- 電磁シールドは、近接センサーの近傍に配置され、近接センサーが発生する電磁界が、近接センサーと第二の隣接セルに設けられた第二のケージとの間に伝播するのを防止する、
- ラックは、それぞれのセルの両側に配置され、このセル内に設けられたケージを支持するための支持部材を含み、それぞれの近接センサーは、少なくとも一つの支持部材の上方又は下方に配置される、
- 近接センサーはRFIDセンサーであり、第一のセル内に設けられた第一のケージ内に電磁界を発生させるように構成された少なくとも一つのアンテナを含む、
- アンテナは、第一のケージの運動用ホイールの容積を完全にカバーする電磁界を発生するように構成され、通電される、
- アンテナは、実質的に第一のケージの運動用ホイールの容積に制限された電磁界を発生するように構成され、通電される、
- アンテナは、水平方向に電磁界を発生させる、
- アンテナは、垂直方向に電磁界を発生させる、
- ラックは、第一のケージの運動用ホイールの回転速度、角加速度、及び/又は、角度位置を測定するための回転センサーを含む、
- すべてのセルには近接センサーが装備され、すべてのケージには運動用ホイールが装備され、すべての近接センサーはセルの同じ側面に配置されている、
- ラックは、いくつかの近接センサーの出力信号を収集するための、そして、それを中央制御ユニットに転送するための少なくとも一つのデータコレクタ、好ましくは、列又は行のセルのすべての近接センサーのための一つのデータコレクタ、を含む。
【0012】
第二の態様によれば、本発明は、上述したラックを用いて、ケージに収容された動物の集団の行動及び身体活動を分析するための方法に関し、この方法は、少なくとも以下のステップを含む。
a) それぞれの動物に、その動物に結びつけられた個別のタグを付け、その動物にマーキングするステップ、
b) 近接センサーが第一のケージの運動用ホイールのタグを検出したときに、動物が運動していると判定するステップ、
c) 個別タグによって、運動用ホイール内の動物を識別するステップ、及び、
d) 所定の期間にわたり、集団内の各動物に関するデータを収集するステップ。
【0013】
有利には、ラックが回転センサーを含む場合、ステップb)において運動用ホイールで運動していると判定されたそれぞれの動物について、その動物が運動する時間間隔にわたって、回転センサーの出力信号に基づき、ステップc)において識別された動物に関連付けられて、身体運動の強度が判定される。
【0014】
本明細書は、非限定的な例として与えられ、以下の図を参照して行われる以下の説明に基づいて、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明によるラックを第一の方向に沿って見た正面斜視図である。
【
図2】
図1のラックの、
図1上の左下隅のレベルで、第二の方向に沿って見た、より大きな縮尺の下での、背面部分斜視図である。
【
図3】
図1の詳細IIIの斜視図であり、二つのケージが取り外され、カバーの一部が引き出されて、近接センサーのいくつかの部品が示されている。
【
図4】
図1の細部IIIを別の角度から見た斜視図である。
【
図6】本発明の第二の実施形態に係るラックについての、
図3と同様の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
いくつかの実施形態の詳細な説明
図1から
図5に示されるラック2は、水平方向に延伸される一連の横梁4と、垂直方向に延伸される一連の支柱6とを含む。それぞれの横梁4とそれぞれの支柱6は、10行8列のセル8を画定し、それぞれのセル8は、ケージ10が収容されるように構成されている。最上部の横梁4は、板状であり、ラック2の屋根を規定する。
【0017】
X2は、ラック2の長手方向軸を示し、ラック2が平坦な水平面Sに設けられている場合には水平である。セル8の異なる各列は、この長手方向軸X2に沿って並置される。Y2は、ラック2の横軸を示し、軸X2に垂直であり、軸X2と同様に水平である。Z2は、ラック2の縦軸又は高さ軸を示し、セル8の異なるそれぞれの行は軸X2に平行に延伸され、この縦軸Z2に沿って並置される。セル8の異なるそれぞれの列は、軸Z2に平行に延伸される。軸X2、Y2、及び、Z2は、共に、ラック2に関連付けられた直交フレームを定義する。
【0018】
それぞれのケージ10は、
図5に示すように、数匹の動物、例えば4匹のマウスM1からM4を収容するのに十分な大きさを有する。
【0019】
図の例では、ラック2は、4匹のマウス×8列×10行、つまり320匹のマウスの集団の進化を追跡することができる。これは、多くの実験で代表的な母集団の統計データを得るのに十分である。
【0020】
ラック2の行と列の数は、必要に応じて、特に調査する集団のサイズに応じて、調整することができる。
【0021】
ケージは、
図1の矢印A1で示されるように、軸Y2に平行な並進運動を介して、対応するセル8に導入することができる。ケージは、
図1の矢印A1’で示されるように、導入動作とは反対の方向に、軸Y2に平行な並進運動を介して、対応するセル8から取り出すことができる。
【0022】
それぞれのケージ10は、主区画12と、主区画を閉じるためのカバー14とを含む。それぞれの部品12又は14は、好ましくは、例えばオートクレーブで容易に洗浄することができる、ポリカーボネート又はポリスルホンなどの透明プラスチック材料で構成される。
【0023】
それぞれの主区画12は、ケージがセル8内へ又はセル8から並進的に導入又は取り出される移動中には、セル8の両側に配置された二つの支持部材18の上面182上を摺動し、ケージがこのセル内に収容されたときには、これらの表面上に静止するように構成された、二つの横方向延長部122をそれぞれの側面に有する。
【0024】
変形例では、主区画12のそれぞれの側面に、単一の横方向延長部122を設けることができる。別の変形例では、主区画のそれぞれの側面に、三つ以上の延長部を設けることができる。
【0025】
それぞれの支持部材18は、2本の支柱6上に固定され、これら2本の支柱間のスペーサーとして機能し、これにより、これら2本の支柱間の距離を軸Y2に沿って保つことができる。実際には、一対の支持部材18は、軸Y2に沿って隣接する2本の支柱6の両側に固定される。一対の支持部材におけるそれぞれの支持部材は、軸X2に平行な方向に隣接する二つのセルのうちのそれぞれのセル8に属する。
【0026】
軸X2に平行な方向に沿って、セルは、2対の支柱6に固定された二つの支持部材18の間に画定され、これら2対の支柱は軸X2に沿って隣接している。
図1、
図3から
図5の向きにより、セルの支持部材18は、セル8の左側と右側にそれぞれ配置された左支持部材と右支持部材として識別することができる。
【0027】
さらに、いくつかのスペーサー19は、セルのそれぞれの行の最初と最後のセル8を規定する外側支柱6の外側に配置されている。これらのスペーサー19は、支持部材18の形状に類似した形状を有するが、これらのスペーサー上にケージが存在しないと想定されているため、上面182に類似した上面を規定しない。
【0028】
それぞれのケージ10は、運動用ホイール20を備えており、この運動用ホイール20は、その主区画12の側壁142に回転可能に取り付けられ、ホイール20の回転軸X20をケージ10の残りの部分に対して規定する軸受22によって支持されている。ケージ10がラック2のセル8に収容されている場合、その運動用ホイール20の回転軸X20は軸X2と平行である。
【0029】
それぞれのケージは、セル8内に設けられ、その運動用ホイールが、そのセルの右側、すなわちこのセルの右側の支持部材18に近接して配置されるように構成される。
【0030】
それぞれのセル8の右側の支持部材18には、エンコーダ24が組み込まれている。このエンコーダは、このセルを収容するケージのホイール20の回転軸X20を中心とする角度位置を検出し、この角度位置を示す信号S24を、この例ではパーソナルコンピュータ27の一部である電子制御ユニット又はECU26に送出するように構成されている。
【0031】
限定されない例として、運動用ホイールは、永久磁石を備えることができ、エンコーダは、永久磁石によって発生される可変磁界を検出できる一つ又は複数のホール効果センサーを含むことができる。エンコーダ24の設計には、他の技術を使用することもできる。
【0032】
ECU26は、エンコーダ24からの出力信号S24に基づいて、軸X20を中心とする運動用ホイール20の回転速度ω20、及び/又は、運動用ホイールの角加速度A20、及び/又は、この軸X20を中心とする運動用ホイールの角度位置P20、を算出することができる。
【0033】
このように、エンコーダ24とECU26は、
図5に示されるケージ内に存在する4匹のマウスM1からM4のうちの1匹が、運動用ホイール内で運動を行うタイミング、及び、この運動の強度を、パラメータω20及び/又はA20に基づいて検出することができる。さらに、マウスがホイール20に入った時刻と、同じマウスが出た時刻を検出することにより、運動の継続時間が提供される。
【0034】
どのマウスMiが、所定の時間に、運動用ホイール20内で実際に運動を行っているかを識別するために、それぞれのマウスは、タグTiを担持しており、iは1からNまでの整数であり、Nはケージ10内に収容されているマウスの数である。図の例では、Nは4に等しい。実際には、タグは、それぞれのマウスMiの背中の皮膚の下に挿入することができる。
【0035】
有利には、それぞれのタグTiは、無線周波数識別(RFID:Radio Frequency IDentification)技術に基づいており、電子チップに連係するアンテナを含む。これにより、それぞれのタグは、トランシーバーから発信される無線リクエストを受信して、応答することができる。
【0036】
ラック2は、セル8ごとに一つの近接センサー30を含み、そのカバー領域内に位置する1匹のマウスによって運ばれるタグTiを検出するように構成されており、このカバー領域は、このセル8内に収容されたケージ8の運動用ホイール20に対応するように設定されている。近接センサー30は、セル8に属し、そこでタグTiを検出する。
【0037】
この例では、RFIDタグTiを使用する場合、近接センサー30は、それぞれのタグTiに対応しているRFIDトランシーバーである。
【0038】
それぞれの近接センサー30は、二つのトランシーバー30A及び30Bを含む。それぞれのトランシーバーは、アンテナ32及び励磁コイル34を含み、そのカバー領域内に位置する任意のRFIDタグを活性化する電磁界Fを発生するように構成される。本発明の図示しない代替実施形態では、近接センサー30は、一つのアンテナ32と二つのコイル34を有する単一のトランシーバーを組み込むことができる。それぞれのトランシーバーは、また、そのようなRFIDタグの応答を検出するようにも構成される。それぞれの近接センサー30は、また、矢印A1及びA1’の方向への導入/取り出しの動作の間、部品32及び34を、それらの環境から、特に埃から、及び、移動するケージ10による潜在的な衝撃から、保護するカバー36を含む。
図3では、部品32と部品34を示すために、第二のセル8
2の近接センサー30のカバー36が部分的に取り外されている。
【0039】
コイル34によってアンテナ32が励磁されると、電磁界Fが、近接センサー30の近傍、特にケージ10内の運動用ホイール20が占める容積内、に発生される。
【0040】
それぞれの近接センサーは、ECU26に送られる信号S30を出力し、この信号S30には、隣接するセル8に収容されたケージの運動用ホイール20で検出されたタグTiの情報が含まれる。
【0041】
このように、近接センサー30により、マウスMiが運動用ホイール20で運動を行っていることを検出し、さらにこのマウスMiをタグTiによって識別することが可能であり、この情報は、近接センサー30の出力信号S30の一部としてECU26に転送される。
【0042】
これにより、ラック2に収容されたマウス集団のそれぞれのマウスMiの個別行動及び身体活動を追跡することができる。
【0043】
実際には、信号S24及びS30は、セル毎に個別化される。ラック2のセル8のうちのセル8kの順序番号をkと指定した場合、このセル8kに対応する信号は、それぞれS24k及びS30kとして識別することができる。図の例では、kは1から320の間である。
【0044】
図3と
図4は、
図1の左から見て、セル8の上段の行の最初の二つのセルに相当する二つの空のセル8
1及び8
2を示している。
図3と
図4は、また、セル8
2に隣接し、同じ上段の行のケージ10が入る最初のセル8
3も示している。
図5は、セル8
2及び8
3の全体を示し、そしてセル8
1、及び、セル8
3に隣接してこのセルのセル8
2に対する反対側に位置するセル8
4、を部分的に示している。
【0045】
しかし、行の右側の最後のセルに関連するものについては、セルのそれぞれの近接センサー30は、一方の側における、このセル内のケージの収容容積と、他方の側における、隣接するセルのケージの収容容積と、の間に位置している。例えば、
図5に示すように、セル8
2の近接センサー30は、このセルの空の容積と、ケージ10が占めるセル8
3の容積と、の間に位置し、一方、セル8
3の近接センサー30は、ケージ10が占めるこのセルの容積と、別のケージ10が占めるセル8
4の容積と、の間に位置する。
【0046】
しかし、行の右側の最後のセルに関連するものについては、それぞれの近接センサー30は、セルの同じ行、及び、セルの二つの隣接する列、に属する二つの隣接するセル8に設けられた二つのケージ10の間に配置される。
【0047】
所定のセル、例えば、
図5のセル8
3、内に位置するケージ10の運動用ホイール20内のマウスMiの検出の妨害を回避するためには、隣接するケージ、例えば、
図5のセル8
4内、に存在するマウスを検出しないことが重要である。この問題は、セル8
3内に位置する近接センサー30の隣にシールド36を設けることにより、アンテナ32により発生する電磁界Fが、この第二のセル8
4に収容されるケージ10に向かって伝播するのを防ぐことにより、対処される。
【0048】
実際には、シールド36は、それぞれの近接センサー30に関連付けられ、この近接センサーの隣であって、この近接センサーがマウスMiを検出すると想定されるセル8の中心側とは反対側に、配置される。
【0049】
シールド36は、アルミニウム、スチール、その他の適切な材料で作ることができる。
【0050】
それぞれのシールド36は、支柱6の前面に固定されたタブ362と、
図5の例ではセル8
4である隣接するセルの左側の支持部材182に沿ってタブ362から延伸される主部分364と、を含む。
【0051】
工業化のために、すべてのシールド36は同一である。
【0052】
シールドの形状は、軸Y2に沿って隣接する二つの支柱6の両側に取り付けられた二つで一対の支持部材182の下に、近接センサー30を配置することを可能にする。換言すれば、近接センサー30は、セルの行の隣接する二つのセル8の間に規定された空間内にあるか、又は、ラック2の一方の横方向端部、行の右端部、にある。したがって、近接センサー30によって、ラック2の全長を増大させることはない。
【0053】
近接センサーが十分に薄い場合、それは一対の支持部材のうちの一方の支持部材18の上又は下に配置することができる。
【0054】
この近接センサー30が運動用ホイール20内のマウスMiを検出することが想定されるセル8内に収容されたケージ10に対するそれぞれの近接センサー30の位置は、セル8内の運動用ホイール20によって通常占有される容積を、効率的にカバーするために最適化される。軸X2、Y2、及び、Z2に沿った近接センサー30の位置は、軸X20の位置、及び、軸X20に沿って、軸受22が固定されている主区画12の壁と、この壁に対する運動用ホイール20の最も離れた部分と、の間の距離を考慮して決定される。
【0055】
特に、セル8内に収容されたケージ10の運動用ホイール20と、このセルの近接センサー30と、の間の軸X2に平行に測定された距離は、50mm未満、好ましくは30mm未満である。さらに、セル8内に収容されたケージ10の軸X20と、軸Y2に平行に測定されたこのセルの近接センサーの幾何学的中心との間の水平距離は、80mm未満、好ましくは50mm未満である。最後に、セル8内に収容されたケージ10の軸X20と、軸Z2に平行に測定されたこのセルの近接センサーの幾何学的中心との間の垂直距離は、30mm未満、好ましくは15mm未満である。
【0056】
アンテナ32の電磁気的特性、特にそのインダクタンス、及び、近接センサー30のコイル34の励磁電流の特性、特にその周波数は、磁界Fが所定の近接センサー30に関連するセル8内に位置するケージ10の運動用ホイール20を完全にカバーするように選択される。これらの特性は、また、運動用ホイールの外側にいるマウスの、寄生的なマウスの検出を避けるために、磁界が運動用ホイール20の容積に実質的に制限されるように選択される。
【0057】
それぞれの近接センサー30は、この主区画が挿入されるセル8の二つの支持部材18との間の適切な協働を妨げることがないように、図に示されているような主区画12の少なくとも二つの延長部122及び支持部材18の下方に、あるいは代替的に、このような支持部材の上方に、配置することができる。
【0058】
本発明の任意の態様によれば、棚38が、それぞれのセル8に設けられ、そのようなセル内に収容されたケージ10の下に配置される。換言すれば、棚38は、セル8の列内で、一方が他方の上に位置する二つのセル8を分離する。それぞれの棚38は、ケージ内に収容されたマウス/複数のマウスが、ケージのどの領域に位置しているのかを検出するための容量センサーを備えることができる。このような容量センサーは、所定のケージ内に収容されたマウスを、識別又は区別することはできない。
【0059】
セル8内に収容されたケージ10の底部は、ケージがこのセルの二つの支持部材18によって支持されているため、このセルの棚38上には載置されない。
【0060】
ラック2は、8個のRFID信号集中ボックス40を含み、それぞれのボックス40は、1列の10個の近接センサー30の出力信号S30を受信するように構成されている。それぞれのボックス40には、それぞれの信号S30のための10個の入力ポート42が設けられている。
図2には三つの集中ボックス40のみが示されており、
図1には一つが示されている。実際には、集中ボックス40は、ラック2の長さ方向に沿ったラック2の背面側の、ラック2の下部に、配置される。
【0061】
それぞれのセル8
kについて、kは、1から、図の例では80に等しいラック2内のセル数まで、の間の整数であり、このセルの出力信号S30
kは、このセルの順序番号kに対応する標識によって識別される。これにより、
図2に示すように、それぞれの出力信号S30
k又はS30
k’は、入力ポート42への入力時に、それぞれのケージk又はk’に対応するものとして認識される。それぞれの集中ボックスは、その対応する列の10個の近接センサー30から受信する10個の個別出力信号S30
kに基づいて、結合された信号を発生する。
【0062】
また、ラック2には、8つの集中ボックス40から出力される8つが結合された出力信号を、パーソナルコンピュータ27を介して、イーサネットインターフェースを有するRS-485電気通信バス上で、情報を転送するのに適した所定の通信プロトコルに従って、ECU26に送信される共通信号S’30に変換する変換ボックス44も含まれる。変換ボックス44とECU26との間の伝送は、RS-485データバス46に沿って行われ、このデータバス46は、有線又は無線の任意の既知のタイプのものにすることができる。
【0063】
図の例では、信号S’30は320匹のマウスに関するデータを含むことができる。
【0064】
ボックス40及び44は、エンコーダ24の出力信号S24を収集し、同じデータバス46を介して、ECU26に転送するためにも使用することができる。あるいは、エンコーダ24の出力信号は、別の通信経路をたどる。
【0065】
また、それぞれのエンコーダ24の出力信号S24kは、それらが属するセル8kの順序番号kに対応する標識によって個別化することができる。
【0066】
一つの集中ボックス40が故障しても、他の集中ボックス40及び変換ボックス44は正常に動作し続け、RS-485データバス46を介して、ECU26に情報を転送する。この場合、故障した集中ボックス40に関連する列に関する情報のみが欠落する。
【0067】
変換ボックス44には、分かりやすくするために、
図2のみに示された電圧源50に接続された供給ライン48を介して、電流が供給される。
【0068】
近接センサー30は、ラック2の構造内に固定されているため、ケージ10が対応するセル8から取り出された場合でも、特にケージ10の洗浄作業中であっても、ラック2内の位置に留まる。
【0069】
それぞれのケージ10には、近接センサー又は、近接センサーによって検出可能なタグが存在しないため、オートクレーブ内で洗浄作業が行われる場合であっても、ケージの洗浄作業中に、近接センサー又はタグが損傷する危険性がない。
【0070】
さらに、ケージ10の運動用ホイール20内で運動を行っているマウスの識別は、ケージに取り付けられた電子部品に依存しないので、例えば、マウスの集団の老化に応じて、マウスが一つのケージから別のケージに移動された場合であっても、この検出を行うことができる。
【0071】
本発明は、複数匹のマウス、図の例では4匹のマウス、のグループ内で1匹のマウスを識別することができ、ケージ内に収容された複数匹のマウスで実験を行うことができる。これは、それぞれのマウスが個別にケージ内に収容される場合よりも、マウスの心理的及び身体的状態にとってより好ましい。このアプローチは、また、より多くのマウスの集団を監視することもできる。
【0072】
本発明により、特に近接センサー30、ボックス40及び44、及び、ECU26が自律的に動作するため、マウスの集団の追跡を自動化することができる。これにより、所定の期間、例えばマウスの通常の成体寿命に相当する数ヶ月間、例えば、18ヶ月間、この集団のそれぞれの個体によって実践された運動に関するデータを収集することができる。この点は、大規模な動物の群(cohorts)の長期的な追跡調査に関する技術移転の研究が増加していることから、特に重要である。数日から数週間の短い期間でも可能である。
【0073】
マウスMiが運動用ホイールで運動を実践する時間間隔を決定することができ、この時間間隔は、関連する近接センサー30がそのタグTiを検出する時間間隔である。
【0074】
エンコーダ24、及び、所定のセル8kの近接センサー30から受信したそれぞれのデータを組み合わせた場合、対応する信号S24kに含まれるパラメータω20及び/又はA20に基づいて、信号S30kで特定されるマウスMiによって、時間間隔にわたって実践された身体運動の強度を決定することができる。
【0075】
図の例では、ケージ10の運動用ホイール20は、セル8内に収容されている場合で、及び、ラックをその正面側から見た場合に、その右側に位置している。あるいは、運動用ホイールは、ケージの左側に配置することもできる。好ましくは、ラック2内の近接センサー30の同様な配置を可能にし、二つの隣接する近接センサーによって動作される検出の妨害を避けるために、すべてのケージの運動用ホイールは、右側又は左側の同じ側に配置される。
【0076】
図1から
図5の実施形態では、それぞれのアンテナ32は、その主方向が軸Z2に平行に延伸される4本のバーで構成されている。このアンテナから発生される磁界Fは、
図3及び
図5に磁力線によって示されように、垂直方向である。あるいは、単一のバーで構成されたアンテナを使用することもできる。
【0077】
図6に磁力線によって示されたように、そして本発明の第二の実施形態に示されたような、水平方向の電磁界Fを発生させる水平な横の軸Y2に平行な方向、その主方向として有するアンテナ32を含んでいる単一のトランシーバーを備えた、近接センサー30を使用することができる。
図6の例では、アンテナは単一のバーで構成されている。変形例では、複数のバーで構成することもできる。
【0078】
また、水平方向のアンテナを備えた2台のトランシーバーは、図示されていない変形例でも使用することができる。
【0079】
本発明の図示されていない代替の実施形態によれば、ケージ10の運動用ホイール20が矢印A1及びA1’の方向に垂直なその区画12の背面壁に取り付けられている場合、近接センサーは、対応するセル8の背面側に配置することができ、そのアンテナは、軸X2に平行な長さを有することができる。
【0080】
本発明の図示されていないまた別の代替の実施形態によれば、近接センサー30は、セル8内に収容されたケージ10の運動用ホイール20の上方又は下方に配置することができる。このような場合、近接センサーは、セルの同じ列に属して、及び、セルの二つの重なる行に属する、二つの重なるセル中に設けられる、二つのケージ10の間に配置される。
【0081】
近接センサー30におけるトランシーバーの数は、二つに限定されない。ラック2の隣接する二つのセル8の間に、それらを収容するのに十分なスペースがある場合、一つ又は三つ以上とすることができる。
【0082】
実施形態に係わらず、アンテナ32は、フェライト等の強磁性材料で構成される。
【0083】
本発明は、実験中に追跡される動物がマウスである場合について、ここに上述したように説明されたものである。あるいは、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ等のような他の動物についても追跡調査することができる。
【0084】
本発明は、それぞれのセル8に近接センサー30が装備され、それぞれのケージ10に運動用ホイール20が装備されている場合について、ここに上述し、図に表したものである。これは、集団全体の観察の一貫性を保つために重要である。しかし、追跡される動物の集団によっては、一つ又はいくつかのケージにのみ運動用ホイールが装備され、一つ又はいくつかのセルにのみ近接センサーが備えられることも可能である。
【0085】
本発明の図示されていない変形例では、それぞれの集中ボックス40は、所定のセル列8kの近接センサーの出力信号S30kが受信される。
【0086】
ラック2内のセル8の行及び列の数は、必要に応じて、特に追跡される集団のサイズに応じて、変更することができる。
【0087】
ここで上述したように検討された実施形態及び変形例は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の新たな実施形態を生成するために、組み合わせることができる。
【国際調査報告】