(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】二重湾曲ソーラーパネル用箔
(51)【国際特許分類】
H02S 30/00 20140101AFI20240206BHJP
H01L 31/05 20140101ALI20240206BHJP
H02S 10/40 20140101ALI20240206BHJP
【FI】
H02S30/00
H01L31/04 570
H02S10/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549655
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 EP2022053695
(87)【国際公開番号】W WO2022175276
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523310789
【氏名又は名称】ライトイヤー・レイヤー・イーペーセーオー・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デュランドゥス・コルネリウス・ダイケン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリク・ニコラス・スリンゲルランド
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA05
5F251AA09
5F251AA10
5F251BA03
5F251BA05
5F251DA10
5F251EA19
5F251JA02
5F251JA12
(57)【要約】
本発明は、二重湾曲ソーラーパネル用の箔(100)に関し、箔は、2つの閉じた端部を有し、箔を機械的に相互接続された領域に分割する複数の切り込みを示し、ここで、箔は、第1の配向を有する第1の切り込み群(102)およびは第2の配向を有する第2の切り込み群(104)を含み、切り込みの第1の閉じた端部は第1のセル(120)と第2のセル(122)との間の機械的相互接続部(110)に位置し、第2の閉じた端部は第3のセル(124)と第4のセル(126)との間の機械的相互接続部(112)に位置し、切り込みは第1のセル(120)と第3のセル(124)との間の機械的相互接続部(114)に接し、第2のセル(122)と第4のセル(126)との間の機械的相互接続部(116)に接し、切り込みは部分的に第1の配向を有し、部分的に第2の、異なる配向を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重湾曲ソーラーパネルとともに使用するための箔(100)であって、
前記箔は2つの閉じた端部を有する多数の切り込みを示し、
前記切り込みは前記箔を多数の機械的に相互接続された領域に分割する、箔であり、
前記箔が、第1の配向を有する第1の切り込み群(102)と、第2の配向を有する第2の切り込み群(104)とを少なくとも含み、
前記切り込みのそれぞれが2つの閉じた端部を有し、
第1の閉じた端部は、第1のセル(120)と第2のセル(122)との間の機械的相互接続部(110)に位置し、
第2の閉じた端部は、第3のセル(124)と第4のセル(126)との間の機械的相互接続部(112)に位置し、
前記切り込みは、前記第1のセル(120)と前記第3のセル(124)との間の機械的相互接続部(114)に接し、かつ、前記第2のセル(122)と前記第4のセル(126)との間の機械的相互接続部(116)に接し、
前記切り込みは、部分的に第1の配向を有し、部分的に第2の配向を有し、前記第1の配向は前記第2の配向とは異なることを特徴とする、箔。
【請求項2】
機械的相互接続部で終わる閉じた端部を1つのみ有する1つ以上の切り込み(106)をさらに含み、前記切り込みが前記箔の境界と交差する、請求項1に記載の箔。
【請求項3】
前記切り込みが直線状の切り込みであり、前記第1の配向と前記第2の配向とが互いに直交している、請求項1または2に記載の箔。
【請求項4】
全ての機械的に相互接続された領域(120、122、124、126)が同一のサイズおよび外形を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の箔。
【請求項5】
前記箔はバックコンタクト箔であるか、またはバックコンタクト箔を含み、前記切り込みは前記バックコンタクト箔に作製される、請求項1~4のいずれか一項に記載の箔。
【請求項6】
バックコンタクト箔の少なくとも一部が電気伝導層を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の箔。
【請求項7】
前記箔が薄膜ソーラーセルを含み、前記切り込みが前記薄膜ソーラーセルに作製される、請求項1~4のいずれか一項に記載の箔。
【請求項8】
前記箔が封止材を含み、前記切り込みが前記封止材に作製される、請求項1~4のいずれか一項に記載の箔。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の箔を含む、ソーラーパネル。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の箔を含む、車両。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の箔を含む、建築物一体型太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重湾曲ソーラーパネルとともに使用するための箔に関し、箔は、2つの閉じた端部を有する多数の切り込みを示し、切り込みは箔を多数の機械的に相互接続された領域に分割する。
【0002】
謝辞
本願に至るプロジェクトは、助成契約番号848620の下で欧州連合のHorizon 2020リサーチアンドイノベーションプログラムから資金提供を受けている。
【背景技術】
【0003】
最近、ますます多くの電気自動車が電力を生成するためのソーラーパネルを有する。このようなパネルは、例えば車両のルーフ上に配置され、車両のルーフと一体化され、または車両のルーフを形成し、多くの場合少なくとも局所的に2方向に曲率を示す。また、建築物一体型太陽光発電システム(BIPV systems:Building Integrated Photovoltaic Systems)も、多くの場合3D湾曲面(すなわち、少なくとも局所的に2方向に湾曲した面)上で使用される。
【0004】
電気は、光起電力セル(photovoltaic cell)としても知られるソーラーセル(solar cell)によって生成される。典型的には、ソーラーセルは多結晶または単結晶のシリコンセルであるが、他の半導体(例えば、ドープされたGaAs)またはさらに他の材料(ペロブスカイトなど)などの他の材料からのセルが使用されることが知られている。また、例えばセレン化銅インジウムガリウム(CIGS:copper indium gallium selenide)または多結晶シリコンの薄膜を備えた箔が使用されることも知られている。化学物質または湿気により引き起こされる損傷を避けるために、セルまたは薄膜は、典型的には封止材によって封止される。
【0005】
湾曲したソーラーパネルは、典型的には、3D湾曲した透明プレート(例えば、ガラスまたはポリカーボネートを含む)、湾曲した透明プレートに接着された封止剤によって封止されたソーラーセル、およびソーラーセルを直列に(いわゆるストリングを形成して)および/または並列に電気的に相互接続する導体を含む。相互接続部は、いわゆるフィンガー電極によって、または片面もしくは両面にメタライゼーション(metallization)を備え、メタライゼーション(たとえば銅の薄層)がパターン化されているバックコンタクト箔(BCF:back-contact foil)によって、作製され得る。
【0006】
他のそのようなソーラーパネルは、薄膜ソーラーセルを含む箔、例えば、ペロブスカイトを印刷またはスプレーしたPETまたはポリイミド箔を使用する。この箔は封止材中に封止されてもよく、透明プレートに接着される。
【0007】
箔(封止されているか、または封止されていない)を3D湾曲面に接着する際に問題が発生する:シワが発生する可能性がある。
【0008】
この問題は、米国特許出願公開第2014/0130848号明細書からPanasonicに知られている。
米国特許出願公開第2014/0130848号明細書は、電気的に相互接続されたソーラーセルを含む封止材のシートに関し、その
図3および
図5ならびに添付の本文に、封止材内の多数の平行な切り込みによって分割された箔またはシートが記載されており、切り込みは封止材を多数のストリップに分割している。ソーラーセル間の電気的相互接続部は、フィンガー電極を使用して作製される。切り込みは、直列化されたソーラーセル(いわゆるストリング)の間に、ソーラーセルストリングに沿った方向で設けられる。ソーラーセルを含む封止材のシートは、三次元曲率を有する透明な湾曲面に接着される。切り込みにより、透明湾曲面基板の湾曲面に沿ってシートが接着される際にソーラーセルシートの面内に生じる応力を緩和することができ、ソーラーセルシート内に生じるねじれやシワを軽減しながら接着を行うことができる。
【0009】
既知の出願では、封止材の(硬化した)箔を3D平面内で接着する際の効果が説明されている。より硬い箔の接着は、より多くのシワが生じる結果となる可能性がある。
【0010】
ソーラーセルは感光面と裏面を有する。典型的に、第1世代のソーラーセルは、一方の面に位置する1つ以上のアノード、および他方の面に位置する1つ以上のカソードを示す。セルは典型的に、いわゆるフィンガー電極によって(並列もしくは直列に、またはそれらの組み合わせで)相互接続される。これらの相互接続部を作製した後、ソーラーセルは封止材内に封じ込められる。セルおよび封止材を含む、平坦な平面内で製造されたスラブは、次いで湾曲した透明プレートに接着される。
【0011】
ソーラーセル間の相互接続は、典型的には、ソーラーセルが1つの平面内にある間(湾曲していない状態)に行われる。パネルが平坦であれば、封止材内のセルは典型的に、厳密に長方形のアレイに配置される。パネルが2方向に湾曲していると(したがって、三次元または短い3D曲率を持っていることを示す)、曲率に起因してアレイが長方形になることはもはやできない。
【0012】
平坦な箔を湾曲した透明な面に接着する際に問題が発生する:箔内でシワが発生し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0130848号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記の制限に対する代替の解決策を提供することを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した制限を解決するために、本発明は以下のことを特徴とする。箔は、第1の配向を有する第1の切り込み群と、第2の配向を有する第2の切り込み群とを少なくとも含み、各切り込みは2つの閉じた端部を有し、第1の閉じた端部は、第1のセルと第2のセルとの間の機械的相互接続部に位置し、第2の閉じた端部は、第3のセルと第4のセルとの間の機械的相互接続部に位置し、切り込みは、第1のセルと第3のセルとの間の機械的相互接続部に接し、かつ、第2のセルと第4のセルとの間の機械的相互接続部に接し、切り込みは、部分的に第1の配向を有し、部分的に第2の配向を有し、第1の配向は第2の配向とは異なる。
【0016】
少なくとも2つの異なる配向の切り込みを有し、切り込みがセルの機械的相互接続部で終わり、また機械的相互接続部に接することにより、各切り込みは、さらに硬い領域のわずかな回転によって広がることができる。このように、箔はオーゼティック(auxetic)材料に似ており、一方向(配向)で伸張すると、結果として別の方向(配向)にも同様に伸張する。このようにして、例えば長方形の形状/境界を有する箔は、その外側の境界を変えることなく、箔の中央領域で湾曲することができる。
【0017】
1つの閉じた端部のみを示し、他方の端部が箔の境界と交差する別の切り込み群が存在する可能性があることに留意されたい。これらの切り込みは、箔の境界も変形(湾曲)することを可能にする。
【0018】
ある実施形態において、切り込みは直線状の切り込みであり、第1の配向と第2の配向とは互いに直交する。
【0019】
この実施形態において、切り込みは箔を長方形または正方形の領域に分割する。このことは、これらに限定されないが、SiまたはGaAs結晶ソーラーセルなどの単結晶ソーラーセルを備えたソーラーパネルで使用される箔のために特に魅力的である。なぜなら、多くの場合これらは正方形または長方形のタイルとして形成されるからである。好ましくは、そのようなタイルは、次いで、タイル自体と同一またはほぼ同一の領域を有する箔上または箔内に配置され、各タイルは1つの領域に対応する。
好ましくは、全ての機械的に相互接続された領域は、同一のサイズおよび外形を有する。
【0020】
切り込みは直線状である必要はなく、うねり(undulation)または曲率を示してもよいことに留意されたい。また、直線状の切り込みを使用して、領域について他の形状が実現されてもよく、好ましくは四辺形の領域である。
【0021】
別の実施形態において、箔はバックコンタクト箔であるか、バックコンタクト箔を含み、切り込みはバックコンタクト箔に作製される。
【0022】
現在では、フィンガー電極の影が発生しないため、一方の面にアノードとカソードとを備えたソーラーセルの使用が一般的である。そうすると、バックコンタクト箔はソーラーセルを電気的および機械的に相互接続するために使用される。バックコンタクト箔は、典型的には、例えば200μmの厚さを有するPETまたはポリイミド箔などの薄い合成箔であり、好ましくは電気的接続のために片面または両面にメタライゼーションを有する。メタライゼーション、好ましくはパターン化された銅クラッディングは、ソーラーセル間の電気的相互接続部を形成するために使用される。メタライゼーションはバックコンタクト箔の片面に存在することができ、または両面に存在することができる。メタライゼーションを一方の面から他方の面に接続するためにビアを使用することができる。これらの技術は、プリント回路基板(PCB:Printed Circuit Board)やフレキシブル回路基板(FCB:Flexible Circuit Board)でよく知られている。
【0023】
PETまたはポリイミド箔などの合成箔である箔は、典型的には200μm以上の厚さを有することに留意されたい。このような箔を3D曲率で変形すると、シワが発生し得るが、はるかに小さい機械的相互接続部のみを変形すると、シワが大幅に軽減される。
【0024】
さらに別の実施形態において、箔は薄膜ソーラーセルを含み、切り込みは薄膜ソーラーセル内に作製される。
【0025】
薄膜ソーラーセルは、典型的に、光起電力材料が、例えばスプレーによってその上に適用された箔を含む。光起電力材料は、例えば、テルル化カドミウム(CdTe)、二セレン化銅インジウムガリウム(CIGS)、アモルファス薄膜シリコン(a-Si、TF-Si)またはペロブスカイトであってもよい。この箔に切り込みを作製することによって、薄膜ソーラー箔が作製され、箔を作製した後、3D湾曲した形状に形成できる。
【0026】
さらに別の実施形態において、箔は封止材を含み、切り込みは封止材内に作製される。
【0027】
この実施形態では、箔は封止材である。特に、封止材が硬化すると、封止材は硬くなり、より低い柔軟性を示すため、それに切り込みを作製することによって、それを再び、より柔軟にすることが必要になる可能性がある。
【0028】
さらに他の実施形態では、ソーラーパネル、車両または建築物一体型太陽光発電システムは、本発明による箔を含む。
【0029】
次に、図面を使用して本発明を説明するが、同一の参照符号は対応する特徴を示す。その目的のため:
図1は、本発明による切り込みを有する箔を概略的に示す。
図2は、伸張されたときの
図1の箔を概略的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明による切り込みを有する箔を概略的に示す図である。
【
図2】伸張されたときの
図1の箔を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明による切り込みを有する箔を概略的に示す。
【0032】
箔100は多数の切り込みを示す。切り込み102は、セル120と122との間の機械的相互接続部110で終わる第1の閉じた端部110と、セル124とセル126との間の機械的相互接続部112で終わる第2の閉じた端部112と、を有する。切り込みは、セル120と124との間の機械的相互接続部に接し、セル122と126との間の機械的相互接続部にも接する。切り込み102に垂直な切り込み104は、切り込み102に接する機械的相互接続部116にある第1の端部で終わっている。
【0033】
箔は、切り込み106などの、閉じた端部を1つのみ有する切り込みも含むことに留意されたい。これらの切り込みは、箔の境界で終わる。しかし、箔の境界部分がこのような単一端の切り込みを示さない場合でも、境界は平坦なままで箔の中心部分が球面状に湾曲できる、3D変形できる箔を作製することができる。
【0034】
【0035】
箔100はx方向に伸張される。発生する応力により、領域がわずかに回転し、切り込みが形状をスリット(ゼロに近い面を有する)からダイヤモンド型(菱形)の面に変化させ、結果としてy方向の伸びも生じる。x方向の伸びはy方向の伸びを必要とするので、箔はオーゼティック箔、すなわち:負のポアソン比を有する箔として分類されることができる。
【0036】
x伸びとy伸びとの比は、x方向とy方向の領域の寸法に依存することに留意されたい。正方形領域の場合、比率は1であり、長方形領域の場合、x伸びはy伸びと等しくない。
【0037】
さらに、切り込みは互いに垂直である必要はなく、ダイヤモンド型(菱形)形状などの他の四辺形の形状も可能であることに留意されたい。
【0038】
切り込みを作製するために、切断、スタンピング、レーザー切断またはアブレーション、ウォータージェットを使用した切断など、いくつかのよく知られた技術を利用できる。切断の結果切り込みの鋭利な端部が生じないことが好ましい。なぜならば、これは機械的相互接続部における切り込みの制御されない伝播につながる可能性があるためである。これは、丸みを帯びた端部を結果として生じる切断方法によって、または小さなループもしくは湾曲した部分で終わる切り込みを作製することによって、最もよく達成される。
【国際調査報告】