(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】光ファイバを分割するための方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/032 20060101AFI20240206BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20240206BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G02B6/032 Z
G02B6/02 421
G02B6/44 301
G02B6/02 451
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549903
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 GB2022050395
(87)【国際公開番号】W WO2022175647
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521140939
【氏名又は名称】ルメニシティ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ボーン,サイモン
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250AB03
2H250AB32
2H250AC24
2H250AC25
2H250AC53
2H250AF04
2H250AF23
2H250AF28
2H250AF53
2H250AF56
2H250AF58
2H250BA32
2H250BB07
2H250BB33
2H250BC01
(57)【要約】
光ファイバを分割するための方法は、長さと、微細構造を含むクラッドと、クラッドによって囲まれた中空コアと、長さの少なくとも一部にわたって延び、圧力が大気圧を下回る負圧部分とを有する中空コア光ファイバを用意するステップと、中空コア光ファイバを2つの部分に分割し部分の一方または両方の分割場所に端部ファセットを設けるために、負圧部分内の分割場所で中空コア光ファイバを開裂するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを分割するための方法であって、
ある長さを有し、微細構造を含むクラッドと、前記クラッドによって囲まれた中空コアと、前記長さの少なくとも一部にわたって延び、圧力が大気圧を下回る負圧部分とを有する中空コア光ファイバを用意するステップと、
前記負圧部分内の分割場所で前記中空コア光ファイバを開裂するステップであって、前記中空コア光ファイバを2つの部分に分割し前記部分の一方または両方の前記分割場所に端部ファセットを設けるために開裂するステップと
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、開裂する前記ステップは、前記中空コア光ファイバの前記部分が別の光学要素にスプライスされるのに適するように前記端部ファセットを設ける、方法。
【請求項3】
光ファイバを分割するための方法であって、
ある長さを有し、微細構造を含むクラッドと、前記クラッドによって囲まれた中空コアと、前記長さの少なくとも一部にわたって延び、圧力が大気圧を下回る負圧部分とを有する中空コア光ファイバを用意するステップと、
前記負圧部分内の分割場所で、前記中空コア光ファイバを分離するステップであって、前記微細構造からの破片の形成を避けるように構成された分離技法を使用して、前記中空コア光ファイバを2つの部分に分割するために分離するステップと
を含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記分離技法は、熱エネルギーを前記中空コア光ファイバに伝達するステップを含む、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法であって、前記中空コア光ファイバは、前記クラッドおよび前記中空コアの一方または両方への汚染物質の進入を阻止するための少なくとも1つの閉鎖端部を有する、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記少なくとも1つの閉鎖端部は、気密封止部によって閉鎖される、方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の方法であって、前記中空コア光ファイバを前記2つの部分に分割することが、前記中空コア光ファイバのより長い部分から前記閉鎖端部を有する部分を除去するように、前記分割場所は前記少なくとも1つの閉鎖端部の1メートル以内にある、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記分割場所は、前記少なくとも1つの閉鎖端部から300mm以下である、方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法であって、前記2つの部分の各々は、少なくとも5メートルの長さを有する、方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の方法であって、前記中空コア光ファイバは、前記クラッドのまわりに被覆を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記中空コア光ファイバを開裂するステップまたは分離するステップの前に、前記方法は、
クラッドのウインドウを露出させるために、前記負圧部分内のウインドウ場所において前記クラッドのまわりから前記被覆の一部を除去するステップ
をさらに含み、
前記分割場所は前記ウインドウ内にある、
方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、機械的光ファイバ剥離デバイスを使用して前記クラッドのまわりから前記被覆の前記一部を除去するステップを含む、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、非機械的光ファイバ剥離技法を使用して前記クラッドのまわりから前記被覆の前記一部を除去するステップを含む、方法。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか一項に記載の方法であって、前記被覆の前記一部を除去するステップの後、前記中空コアファイバを開裂するステップまたは分離するステップの前に、前記方法は、前記分割場所において洗浄するステップを含む前記ウインドウ内の前記クラッドの外面を洗浄するステップをさらに含む、方法。
【請求項15】
請求項11から14のいずれか一項に記載の方法であって、前記ウインドウは、100mm以下の前記中空コア光ファイバに沿った幅を有する、方法。
【請求項16】
請求項11から14のいずれか一項に記載の方法であって、前記ウインドウは、20mm~50mmの範囲の前記中空コア光ファイバに沿った幅を有する、方法。
【請求項17】
請求項10に記載の方法であって、前記中空コア光ファイバを開裂するステップまたは分離するステップは、前記被覆を開裂するステップまたは分離するステップを含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記中空コア光ファイバを開裂するステップまたは分離するステップの後に、前記部分の一方の端部に隣接する前記クラッドのまわりから前記被覆の一部を除去するステップをさらに含む方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の方法であって、前記中空コア光ファイバは、反共振中空コア光ファイバである、方法。
【請求項20】
請求項1から18のいずれか一項に記載の方法であって、前記中空コア光ファイバは、フォトニックバンドギャップ中空コア光ファイバである、方法。
【請求項21】
請求項2に記載の方法であって、前記中空コアファイバを開裂するステップの後に、前記中空コア光ファイバの前記端部ファセットをさらなる光ファイバの端部ファセットにスプライスするステップをさらに含む方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記さらなる光ファイバは中空コア光ファイバである、方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、前記さらなる光ファイバは、全中実光ファイバである、方法。
【請求項24】
請求項1から23のいずれかに記載の方法であって、前記中空コア光ファイバを用意するステップは、ジャケットを含む光ファイバケーブルを用意するステップであって、前記ジャケットは、前記中空コア光ファイバを含む複数の光ファイバを包む、ステップを含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、前記方法は、前記中空コア光ファイバを開裂するステップまたは分離するステップの前に、前記分割場所で前記中空コア光ファイバにアクセスするために前記光ファイバケーブルから前記ジャケットを切り開くステップまたは前記ジャケットの一部を除去するステップをさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを分割するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、様々な使用法および用途を有し、その多くは、ファイバの長さの一方または両方の端部を端正に準備して、クリーンで、非常に平滑で、欠陥のない端部ファセットを提供することを必要とする。端正なファセットは、ファイバへの光結合およびファイバからの光結合の光損失を低減し、ファイバ端部が別のファイバまたは他の光学要素の端部に連結またはスプライスされるときに、より低い損失を可能にする。ファイバ端部の準備は、平坦であり、破片および汚染物質がなく、さらに、ファイバ材料および構造に対する損傷がない端部ファセットを提供するために開裂することによって達成され得る。
【0003】
開裂は、全中実光ファイバでは比較的簡単であり得、ファイバのクラッドとコアの両方は、異なる屈折率を有するシリカなどの固体材料によって規定されて、光がコア-クラッド境界での全反射によってファイバに沿って伝搬することを可能にする光導波機構を提供する。対照的に、中空コア光ファイバは、開裂すること、より一般的には、切り離すことがより困難であり得る。これらのファイバは、中央長手方向空所の形態のコアと、事前定義された構造でコアを囲む複数の長手方向キャピラリを含む微細構造クラッドとを有する。微細構造の設計は、中空コアファイバで動作する導波機構の性質を決定する。中空コアファイバの内部構造は、脆く繊細であり、ファイバの処理中に損傷を受けやすい。これは、不良の端部ファセットを生み出す可能性があり、その結果として、ファイバと他の要素との間のスプライスにおけるファイバの光損失をもたらす。中空コアファイバは、特に低損失を有することができ、それにより、中空コアファイバは、光学パワーの維持が重要である用途、例えば長距離電気通信などにとって魅力的となる。それゆえ、損失を増加させる状況、例えば低品質の端部ファセットなどは望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、中空コア光ファイバを分割するための技法は関心事である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
態様および実施形態が、添付の特許請求の範囲に記載される。
本明細書に記載の特定の実施形態の第1の態様によれば、光ファイバを分割するための方法が提供され、この方法は、長さと、微細構造を含むクラッドと、クラッドによって囲まれた中空コアと、長さの少なくとも一部にわたって延び、圧力が大気圧を下回る負圧部分とを有する中空コア光ファイバを用意する(providing a hollow core optical fibre)ステップと、中空コア光ファイバを2つの部分に分割し部分の一方または両方の分割場所に端部ファセットを設ける(provide an end facet)ために、負圧部分内の分割場所で中空コア光ファイバを開裂するステップとを含む。
【0006】
本明細書に記載の特定の実施形態の第2の態様によれば、光ファイバを分割するための方法が提供され、この方法は、長さと、微細構造を含むクラッドと、クラッドによって囲まれた中空コアと、長さの少なくとも一部にわたって延び、圧力が大気圧を下回る負圧部分とを有する中空コア光ファイバを用意するステップと、微細構造からの破片の形成を避けるように構成された分離技法を使用して、中空コア光ファイバを2つの部分に分割するために負圧部分内の分割場所で中空コア光ファイバを分離するステップとを含む。
【0007】
特定の実施形態のこれらおよびさらなる態様は、添付の独立請求項および従属請求項に記載される。従属請求項の特徴は、特許請求の範囲に明示的に記載されたもの以外の組合せで、互いに組み合わされてもよく、独立請求項の特徴と組み合わされてもよいことが理解されるであろう。さらに、本明細書に記載の手法は、以下に記載されるものなどの特定の実施形態に限定されるのではなく、本明細書に提示される特徴の任意の適切な組合せを含み、意図している。例えば、方法は、以下に記載される様々な特徴のうちの1つまたは複数を適宜含む本明細書に記載の手法に従って提供され得る。
【0008】
本発明をよりよく理解するために、および本発明がどのように実施され得るかをより明確に示すために、次に、例として、添付図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】フォトニックバンドギャップ中空コア微細構造光ファイバ(HCPBF)の一例の横断面図である。
【
図2】第1の例示の反共振中空コア微細構造光ファイバの横断面図である。
【
図3】第2の例示の反共振中空コア微細構造光ファイバの横断面図である。
【
図4】閉鎖または封止端部を有する中空コア光ファイバの概略長手方向断面図である。
【
図5A】
図5Aは、閉鎖中空コア光ファイバを開裂するための従来の方法のステップを概略長手方向断面図として示す図である。
【
図5B】
図5Bは、閉鎖中空コア光ファイバを開裂するための従来の方法のステップを概略長手方向断面図として示す図である。
【
図5C】
図5Cは、閉鎖中空コア光ファイバを開裂するための従来の方法のステップを概略長手方向断面図として示す図である。
【
図5D】
図5Dは、閉鎖中空コア光ファイバを開裂するための従来の方法のステップを概略長手方向断面図として示す図である。
【
図6A】
図6Aは、本開示の一例に従って開裂することによって閉鎖中空コア光ファイバを分割するための方法のステップを概略長手方向断面図として示す図である。
【
図6B】
図6Bは、本開示の一例に従って開裂することによって閉鎖中空コア光ファイバを分割するための方法のステップを概略長手方向断面図として示す図である。
【
図6C】
図6Cは、本開示の一例に従って開裂することによって閉鎖中空コア光ファイバを分割するための方法のステップを概略長手方向断面図として示す図である。
【
図6D】
図6Dは、本開示の例示の方法に従って分割場所で分割される中空コア光ファイバの概略図である。
【
図7】本開示に従って開裂することによって閉鎖中空コア光ファイバを分割するための第1の例示の方法のステップの流れ図である。
【
図8】本開示に従って開裂することによって閉鎖中空コア光ファイバを分割するための第2の例示の方法のステップの流れ図である。
【
図9】本開示に従って開裂することによって閉鎖中空コア光ファイバを分割するための第3の例示の方法のステップの流れ図である。
【
図10】負圧部分を有する中空コア光ファイバを分割するための第4の例示の方法のステップの流れ図である。
【
図11】負圧部分を有する中空コア光ファイバを分割するための第5の例示の方法のステップの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特定の例および実施形態の態様および特徴が、本明細書において論じられる/説明される。特定の例および実施形態のいくつかの態様および特徴は、従来通りに実現され得、これらは、簡潔にするために詳細には論じられない/説明されない。したがって、詳細には説明されていない本明細書で論じられる方法および光ファイバの態様および特徴は、そのような態様および特徴を実現するための任意の従来の技法に従って実現され得ることを理解されるであろう。
【0011】
中空コアファイバまたは微細構造ファイバと呼ばれ得る一種の光ファイバは、長手方向軸と平行にファイバの長さに沿って延び、ガラスなどの材料内に画定される、ファイバ材料内の孔、キャピラリ、または管腔のアレイまたは配列を含む構造を有する。孔の配列は、微細構造と呼ばれ得、一般に、微細構造は、ファイバのクラッドの少なくとも一部を形成し、コアを提供する中央中空空所または領域を囲み、中央中空空間または領域は、空気もしくは別のガス、または真空で満たされ得る。微細構造のキャピラリは、一般に、ガラスから製作されたより大きい外側クラッド管の中に支持される。実用目的のために、外側クラッド管は、高分子材料から形成された保護被覆層で覆われてもよい。いくつかの用途では、各々が被覆を有することができる複数のファイバが、ケーブルを形成するために外部ジャケット層内に平行に一緒に束ねられ得る。例えば、ケーブルは、何キロメートルも離れることがある第1の場所と第2の場所との間で多数の信号チャネルを搬送することができる光電気通信リンクとして配備され得る。ケーブルの各端部において、個々のファイバは、ジャケットから開放されており、光信号の受信および伝達を行うために、場合によっては、中実コア光ファイバの長さを介して、光入出力装置にスプライスされることになる。スプライスの形成は、一般に、研究室環境の外および現場において中空コアファイバの開裂を必要とし、そのため、大幅な光損失が引き起こされないように中空コアファイバの脆弱な構造への損傷をそれでも最小限にすることができる堅固な技法が必要とされる。
【0012】
上記のように、中空コア光ファイバは、ファイバ長に沿って延びる長手方向キャピラリの構造化配列、すなわち、微細構造を含むクラッド領域によって囲まれた中央空所を含む導光コアを有する。中実ガラスコアがないことによって可能になる空気中の光の伝搬は、中実コアファイバと比較して、ガラス中を伝搬する導光波の割合を低減し、それは、伝搬速度の増加、吸収と散乱の両方からの損失の低減、および非線形相互作用の低減などの利点を提供する。したがって、中空コアファイバは、電気通信用途にとって非常に魅力的であり、中空コアファイバは、ほぼ真空中の光速で、より高い光パワーで、およびより広い光帯域幅にわたってデータ伝送を可能にし、中実ファイバ中を進む光に影響を与えることがある非線形および熱光学効果などの問題から比較的自由である。
【0013】
中空コアファイバは、光導波の機構に従って2つの主要な種類またはタイプ、すなわち、中空コアフォトニックバンドギャップファイバ(HCPBFまたは中空コアフォトニック結晶ファイバHCPCFと呼ばれる)[1]と、反共振中空コアファイバ(AR-HCFまたはARF)[2]とに分類され得る。カゴメファイバ[3]、入れ子反共振無ノードファイバ(NANF)[4]、および管状ファイバ[5]を含む、幾何学的構造によって特徴づけられるARFの様々なサブカテゴリがある。本開示は、これらの2つの主要な種類およびそれらの関連するサブタイプと、他の中空コア設計とを含むすべてのタイプの中空コアファイバに適用可能である。当技術分野では、様々な種類のファイバの用語についていくつかの重複する使用があることに留意されたい。本開示の目的のために、「中空コアファイバ」および「中空コア微細構造ファイバ」という用語は、上述のように中空コアを有するすべてのタイプのファイバを包含することが意図される。「HCPBF」および「HCPCF」という用語は、フォトニックバンドギャップ効果による導波を提供する構造を有する中空コアファイバ(以下でより詳細に説明される)に言及するために使用される。「ARF」および「反共振中空コアファイバ」という用語は、反共振効果による導波を提供する構造を有する中空コアファイバ(やはり以下でさらに詳細に説明される)に言及するために使用される。
【0014】
図1は、例示のHCPBF10の断面図を示す。このファイバタイプでは、構造化内側クラッド1は、多くの小さいガラスキャピラリの規則的稠密アレイを含み、そこから中央グループが排除されて、実質的に円形の中空コア2が画定される。クラッド構造の周期性は、実質的に周期的に構造化された屈折率を提供し、したがって、伝搬する光波をコアの方に閉じ込めるフォトニックバンドギャップ効果を提供する。これらのファイバは、コア2を製作するために排除されるクラッドキャピラリまたは「セル」の数の観点から説明され得る。
図1の例では、アレイからの中央の19個のセルが、コア領域に存在せず、これが19セルコアHCPBFとなる。構造化クラッド1は、コア2を囲む6つのリングのセルと、構造化クラッド1の外面の真円度を改善するための第7のリングにおけるいくつかのセルとから形成される。外側クラッド3は、構造化クラッド1を囲み、これは、構造化クラッド1のキャピラリを支持する管である。
【0015】
HCPBFとは対照的に、反共振中空コアファイバは、反共振光導波効果によって光を導波する。ARFの構造化クラッドは、フォトニックバンドギャップ効果が有効でないように高度の周期性を欠いている構造を与えるためにHCPBFよりもはるかに少ない数のより大きいガラスキャピラリまたは管を含むが、管が均等に間隔を空けられるので、より大きいスケールでいくらかの周期性を有するより簡単な構成を有する。この構造は、反共振が、クラッドキャピラリの壁厚と共振しない伝搬波長に対して、言い換えれば、クラッドキャピラリ壁厚によって定義される反共振窓内の波長に対して規定されることを意味する。クラッドキャピラリは、中央空所または空洞を囲み、中央空間または空洞は、ファイバの中空コアを提供し、反共振導波光モードをサポートすることができる。構造化クラッドはまた、主としてキャピラリの内部で、キャピラリ壁のガラス内で、またはクラッドキャピラリとファイバの外側クラッドとの間の空間もしくは隙間で伝搬することができるクラッドモードをサポートすることができる。これらの追加の非コア導波モードの損失は、一般に、コア導波モードの損失よりもはるかに大きい。基本コア導波モードは、一般に、コア導波モードの中で格段に低い損失を有する。伝搬光の波長で反共振であるキャピラリ壁厚によって提供される反共振は、基本コアモードと任意のクラッドモードとの間の結合を阻止するように作用し、その結果、光は、コアに閉じ込められ、非常に低い損失で伝搬することができる。
【0016】
図2は、例示の単純な反共振中空コアファイバの横断面図を示す。ファイバ10は、外側管状クラッド3を有する。構造化内側クラッド1は、複数の管状クラッドキャピラリ4、この例では、同じ断面サイズおよび形状の7つのキャピラリを含み、それらは、各クラッドキャピラリ4および外側クラッド3の長手方向軸が実質的に平行であるように外側クラッド3の内側にリング状に配列される。各クラッドキャピラリ4は、クラッドキャピラリ4が外側クラッド3の内周のまわりに均等に間隔を置かれ、さらに、隣接するキャピラリ間で接触しないように互いに離間されるように、場所5において外側クラッド3の内面に接触する(接合される)。ARFのいくつかの設計では、クラッド管4は、互いに接触して位置づけられ得る(言い換えれば、
図2におけるように離間されていない)が、この接触を排除するように間隔を置くと、ファイバの光学性能を改善することができる。間隔を置くことにより、隣接する管の間の接触点で生じ、高い損失をもたらす望ましくない共振を引き起こす傾向があるノードが除かれる。したがって、離間したクラッドキャピラリを有するファイバは、「無ノード反共振中空コアファイバ」と呼ぶことができる。
【0017】
クラッドキャピラリ4を管状外側クラッド3の内側のまわりにリング状に配列することにより、その長手方向軸が外側クラッド3およびキャピラリ4の長手方向軸と平行であり、ファイバの中空コア2である、ファイバ10内の中央空間、空洞、または空所が創り出される。コア2は、クラッドキャピラリ4の外面の内側に面する部分によって境界をつけられる。これは、コア境界であり、この境界を構成するキャピラリ壁の材料(例えば、ガラスまたはポリマー)は、必要とされる反共振光導波効果または機構を提供する。キャピラリ4は、コア境界において、反共振光導波がARFで生じる波長を規定する厚さを有する。
【0018】
図3は、第2の例示のARFの横断面図を示す。ARF10は、構造化内側クラッド1を有し、それは、管状外側クラッド3の内面のまわりに均等に離間され、中空コア2を囲む6つのクラッドキャピラリ4を含む。各クラッドキャピラリ4は、二次的なより小さいキャピラリ6を有し、二次的なより小さいキャピラリ6は、クラッドキャピラリ4の内部に入れ子にされ、この例では、主キャピラリ4と外側クラッド3との間の接合点と同じ方位角場所5でクラッドキャピラリ4の内面に接合される。これらの追加のより小さいキャピラリ6は、光損失を低減することができる。追加のさらに小さい三次的なキャピラリが、二次的なキャピラリ6の内部に入れ子にされてもよい。二次的なおよびオプションとしてのより小さいさらなるキャピラリを有するこのタイプのARF設計は、「入れ子反共振無ノードファイバ」またはNANFと呼ぶことができる。他のNANF設計では、1つまたは複数の追加のキャピラリが、主キャピラリと外側クラッドとの間の接合点と異なる方位角の場所で入れ子にされてもよい。追加のキャピラリの対が、例えば、接合点から均等にまたは不均等に変位されてもよい。
【0019】
ARFの構造化クラッドのための他の多くのキャピラリ構成が可能であり、本開示は上述の例に限定されない。例えば、キャピラリは、円形断面である必要はなく、ならびに/またはすべてが同じサイズおよび/もしくは形状であってもなくてもよい。コアを囲むキャピラリの数は、例えば、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個以上とすることができる。
【0020】
中空コア光ファイバは、中空コアファイバの製造で知られているガラスベース材料のうちのいずれか、特にシリカから製作され得る。ガラスのタイプは、化合物シリカ(二酸化ケイ素または石英)に基づく「ケイ酸塩ガラス」または「シリカ系ガラス」を含み、多くの例がある。光ファイバに適する他のガラスは、限定ではないが、ドープシリカガラスを含む。材料は、吸収または透過を変更するなどのファイバの光学的特性を調整する目的で、またはファイバの生産を容易にする、信頼性を改善する、もしくは特に最終用途を可能もしくは強化するなどのために材料の特性を調整する目的で1つまたは複数のドーパントを含むことができる。ファイバはまた、ポリマー材料から製作されてもよい。
【0021】
本明細書において、中空コア光ファイバ、中空コアファイバ、中空コア導波路、中空コア光導波路、中空コア微細構造ファイバ、中空コア微細構造導波路、および同様の用語を含む用語は、上述の例および同様の構造のいずれかに従って構成された光導波構造を包含するように意図されており、光は、いくつかの導波機構(フォトニックバンドギャップ導波、反共振導波、および/または抑制結合導波)のいずれかによって、複数の長手方向キャピラリを含む構造化(微細構造化)クラッドによって囲まれた中空の細長い空所またはコア内を導波される。これらの様々な用語は、本開示において交換可能に使用され得る。
【0022】
通常の光ファイバ製造方法でプリフォームまたはケーンからファイバを線引きすることによって中空コアファイバを製造した後に、ファイバの開放端は閉鎖され得る。これは、ファイバの光学性能を劣化させることがある粒状物質または水分などの汚染物質の進入を阻止または防止するためである。閉鎖は、ファイバの孔の各々の開放端の部分的なまたは完全な閉鎖であり、ファイバの端部に少なくとも部分的な封止部を設ける(providing at least a partial seal)。場合によっては、封止部は、大気圧に対してファイバを封止し、気密封止部を設けるために完全なものにすることができる。非気密封止部または部分的閉鎖部の場合でさえ、中空コアおよびクラッドキャピラリの非常に小さいサイズは、空気流を大幅に阻止し、そのため、ファイバ内部との空気交換はほとんどない。閉鎖または封止は、キャピラリを崩壊させるためにファイバを十分な熱にさらしてファイバ端部でまたはその近くでガラスを軟化または溶融ことによって達成され得る。完全な崩壊により、気密封止部を設けることができる。熱は、例えば、ファイバ端部に適用され得る電気アークまたはレーザビームを提供する融着スプライスデバイスを使用して供給され得る。他の閉鎖技法は、ファイバの端部にわたってホットメルト接着剤などの接着剤を塗布すること、または孔を塞ぎ、乾燥し、大気中でまたは紫外線への暴露などの硬化の下で堅くなる適切な液体をファイバ端部に塗布することを含む。他の方法も使用され得る。本開示では、ファイバ端部は、閉鎖または封止されていると見なされ得、それは、汚染物質がファイバに入るのを阻止するために、ファイバ端部がこれらのやり方(または別のやり方)のうちの1つで処理されていることを意味しており、閉鎖または封止端部は、気密封止部を含んでも含まなくてもよい。方法にかかわらず、封止端部は、次いで、ファイバのパッケージング、保管、出荷、および配備中に封止部を保護するために、保護ケーシング内にパッケージされるか、またはさもなければカプセル化され得る。例えば、ファイバ端部の上を滑り、それを包むステンレス鋼強化プラスチックチューブを含むスプライス保護具が使用されてもよく、チューブは、接着剤または類似のものを用いて所定の位置に固定される。
【0023】
図4は、気密にすることができ、ファイバに閉鎖端部を設ける(provide the fibre with a closed end)ように作用するパッケージ化封止部を有する中空コアファイバ端部の概略長手方向断面図を示す。ファイバ10は、上述のように、微細構造クラッド1の内側に中空コア2を有し、外層として保護被覆7を有する。光ファイバ被覆は、多くの場合、多官能性紫外線硬化アクリレート材料から形成されるが、任意の適切な材料が使用されてもよく、本開示は、この点に関して限定されない。被覆7は、ファイバ10の端部8の封止部81の方に延びる。この例では、封止部81は、ファイバ10のまさに端部または先端にあるように示されているが、実際の場所は、封止部を創り出すために使用される方法により便利である場合には、ファイバ先端からやや内側とすることができる。例えば、キャピラリを崩壊させるために加熱することによって封止することは、より実用的には、2つの場所でファイバを保持し、これらの場所の間でファイバに熱を加えることによって、ファイバ先端から離れたところで実施される。同様に、被覆は、図示のようにファイバ先端まで延びてもよく、または封止を可能にするためにファイバの端部部分から除去されてもよい。例えば、被覆は、被覆を焼かないように加熱することによって封止することを可能にするために取り外されてもよい。取り外された被覆は、元に戻されてもよい。オプションとして、保護チューブ9が、気密封止部をパッケージおよび保護するためにファイバ端部8の上に固定される。
【0024】
ファイバを使用するために、閉鎖端部(および封止部のために設けられた任意の保護部)は、ファイバ内部への光アクセスを可能にするために中空コアファイバの端部から除去される必要がある。これは、一般に、はさみまたはナイフを用いてファイバを単純に切断動作することによって、または、さらに、破断するまでファイバを曲げることによって行われ、別の状況では、使用のためにファイバ端部を準備する際の第1のステップであり得る。例えば、ファイバの封止端部を切り取ることは、スプライシングのための端部ファセットを得るために中空コアファイバを開裂するための従来の技法における第1のステップである。
【0025】
図5A~
図5Dは、スプライシングなどで使用するためのファイバ端部の準備のステップを概略長手方向断面図として示す。これは、中実コア光ファイバの端部を剥がし開裂するための従来の技法であり、それは、中空コアファイバで使用するために変更されずに採用されている。
図5Aは、
図4に関して説明されたように封止端部8を有するファイバ10を示す。
図4に示されたような封止端部のパッケージングは、明瞭にするために省略されているが、通常、存在する。ファイバ10は、封止端部まで沿って延びる外部被覆7を有する。封止部を除去するために、ファイバ10は、封止部(閉鎖端部)を含むファイバ10の端部8aを除去するように、封止端部から内側に離間した位置で、はさみ(例えば、Kevlar(RTM)を切断するのに適切なはさみ)またはナイフ12を用いて切り離されるかまたは切断される。切断は、一般に、被覆7およびファイバ10のガラスを通過する単一の切断動作である。
【0026】
図5Bは、端部部分8aが除去された後のファイバ10を示す。ファイバ10の新しい端部8は、端部部分8aを切断することによって作り出された比較的粗い端面82を有する。使用のためにファイバ端部8を準備することは、切断動作から得られた粗い端面82とは対照的に、端部を端部ファセットの形態に改善するための開裂を含む。開裂は、裸ファイバで実行される場合に最も効果的であり得、そのため、準備における次のステップは、端面82から内側に離間した位置bと、端面82との間を延びる被覆7の端部部分7aの除去である。被覆は、クラッド1に進入またはさもなければ損傷することなしに、必要とされる位置bで被覆7を切断するかまたはそれに食い込む剥離ツールまたは他のブレードを使用して除去され得る。被覆の端部部分7aは、それによって、被覆7の本体から分離され、図中に矢印で示されたファイバ10の長さと平行な方向に沿ってファイバ端部8から引き離され得る。これは、ワイヤと電気的接続を行う準備として、被覆された電気ワイヤを剥離することと類似している。前のステップにおいて封止端部を除去することにより、このやり方で被覆を除去することが可能になる。ファイバ端部に存在する嵩高いパッケージ化封止部は、被覆除去を妨げることがある。
【0027】
図5Cは、被覆7の端部部分7aを除去した後のファイバ10を示す。ファイバ10の端部8は、ここでは、裸であり、被覆が剥離されている。外面は、開裂プロセスにおいて端部ファセットに移送されることがある汚染物質を除去するために洗浄される。端面82と、被覆が除去された位置bとの間のファイバの裸の部分に沿って位置づけられた、開裂のための場所cが識別される。開裂位置cから端面82まで延びるファイバ端部8の部分8bは、開裂された端部ファセットを作り出すために除去されることになる。開裂ツール14は、場所cでファイバ10を開裂するために使用される。
【0028】
図5Dは、開裂して部分8bを除去した後のファイバ10を示す。別のファイバ端部または他の光学要素にスプライスするために正に適し得る平坦で、垂直で、清浄な端部ファセット83が、ファイバ端部8に作り出されている。
【0029】
本開示の中空コアファイバの開裂は、光ファイバのクリーンで、平滑で、損傷を受けていないまたは概して損傷のない端面を作り出すことを目的とするプロセスを説明することが意図されている。それは、功を奏する結果のための技能に不可欠な洗練された手順であり、潜在的に、損傷または表面粗さ、特に中空コアファイバの微細構造への損傷による光学品質の低いファイバ端部を作り出す、はさみ、剪断機、もしくはナイフを用いた切断、または破壊などのファイバを切り離す粗雑な方法とは異なる。対照的に、開裂によって達成されるファイバ端面は、その優れた品質を示すために、端部ファセットと呼ばれ得る。開裂は、他の光ファイバ(中空コアまたは中実コア)および他の光学要素にスプライスするのに正に適する光学品質の端部ファセットを作り出すことができる。それほど完全でない端部ファセットがまた、開裂によって達成され得るが、依然として、開裂技法が微細構造への損傷を引き起こすのを回避または概して回避したクリーンで端正なファイバ端部と見なされ得る。
【0030】
この従来の開裂手法は、中実コアファイバで達成可能な結果に基づき、使用可能な低損失端部ファセットを作り出すと予想される。しかしながら、高い光学品質の端部ファセットが達成された場合でさえ、予期しない損失が、開裂後に観察されている。追加の光損失の広範囲の値、すなわち、0dB~約20dBが、ファイバ端部から封止部を除去された直後に製作された最初の開裂端部ファセットを有する中空コア光ファイバを伝搬する光に対して測定された。記録された損失値は、ランダムで非常に変わりやすく、ファイバのためのプリフォームを製作するために使用されたキャピラリスタック、ファイバが線引きされたプリフォーム、ファイバが線引きされた任意の中間ケーン、線引きプロセス、およびファイバの長さの他方の端部の状態などの要因と無関係である。この追加の損失は望ましくなく、例えば、ファイバが電気通信リンクに使用される場合、伝送されるデータが、信号パワーの損失によって劣化される可能性がある。使用のためのファイバを設置する際にも問題が生じる。スプライシングのためのファイバ端部のアライメントは、より困難になり、伝送パワーを測定するためにファイバの他方の端部へのアクセスが必要とされるパワーアライメント技法を必要とすることがあり、これは、非常に長いファイバ長では実用的ではない。それによって、ファイバの設置は、より高価で、より多くの時間を要するようになる。
【0031】
興味深いことには、追加の損失は、ファイバの端部を漸進的にさらに続けて切り戻す追加の開裂によって低減され得る。一般に、損失が、安定し、より多くの開裂によりさらには減少しない点が達せられるまで、損失は、各新しい開裂により、予測できない仕方で、低下することが観測された。これを達成するために除去される必要があり得るファイバの量も予測できない。さらに、ほどほどの割合のファイバは、最初の開裂で損失の増加を示さない。安定した損失値が達成された後、ファイバ端部が、再封止され、次いで、後で再び切断および開裂される場合、追加の損失が再び発生することがある。
【0032】
これについて可能性のある説明は、開裂されたファイバの端部ファセットに塩化アンモニウムの結晶が形成されることである。これは、塩素を含むガラスから製作された中空コアファイバに関する既知の問題である[6]。結晶は、開裂面で生じ、経時的に蓄積する。しかしながら、開裂ファセット上への塩化アンモニウム結晶形成が存在しない低塩素ガラスから製作された中空コアファイバに対して、同様のランダムな追加の損失が確認されている。その結果、結晶成長は、ランダムな追加の損失の原因としては退けられた。
【0033】
代わりに、他の研究が、異なる説明を示した。
中空コアファイバの製造は、多くの場合、加圧の使用を含む。孔およびコアの所望の相対的なサイズを維持および達成するために、ファイバに線引きされるときに、プリフォームまたはケーン内の様々な空所内に圧力が加えられる[7]。加圧は、ファイバが線引きされるときの表面力の影響下で微細構造が崩壊するのを防止するために必要である。この目的のために使用される圧力は、比較的小さい(約1000mの高度変化または極端な天候条件に等しい)が、外部雰囲気に対して常に正である。(真空が、時には、ファイバ線引き時に使用されるが、常に、ケーンとジャケットチューブとの間などの空所の崩壊を促進するために使用される)。けれども、驚くべきことに、線引きされたままのファイバの内部の圧力は、線引き中に印加された正圧に対応するのではなく、大気圧(ファイバの周囲環境の圧力である)を下回るか、または大きく下回る負圧である[8]。
【0034】
これには2つの理由がある。第1に、正圧は、加圧ガスで空所を満たすことによって得られ、正圧は、約2000℃であり得る線引き炉内の高い温度でのものである。線引きされたファイバが炉から出るにつれて、それは、冷え、それとともに内部ガスが冷える。内部ガスが冷えるにつれて、圧力が低下し(微細構造のすべての部分において)、これは、依然として炉内のファイバの加熱された部分から依然として高温のガスを引き込む傾向があるが、微細構造のキャピラリの小さいサイズによって引き起こされるガス流への抵抗が、流れることができるガスの量を制限し、そのため、圧力の大気圧への回復を制限する。第2に、プリフォームとして炉に入るガラスの体積がファイバとして炉を出て行く体積と等しいことが必要であるが、空所の体積への対応する制約がない。多くの中空コアファイバ設計では、ファイバ内の合計の空所体積(空気充填率としても知られる)は、元のプリフォームにおける空所体積を超える。
【0035】
ファイバの端部は、一般に、線引きの後すぐに閉鎖または封止され、そのため、ファイバ内の圧力状態は、維持されるようになる。短いファイバ長では、ファイバ内の圧力は、閉鎖または封止が行われる前に大気と平衡するための時間を有することができる。電気通信リンクのために必要とされる何キロメートルなどの長いファイバでは、相当量のファイバ長と、様々な空所の非常に小さい幅によって提示されるガス流量への抵抗とが組み合わされることにより、ファイバ端部が封止される前に平衡することが妨げられる。そのために、ファイバ内部は、負圧のままである。実際、長いファイバでは、一方または両方の端部が開放されたままである場合でさえ、圧力均等化プロセスがファイバの小さいフィーチャサイズによって非常に妨げられるので、負圧は、製造後長らく中空コアファイバの終端部分から離れたところで存在する場合がある。それに応じて、閉鎖端部の有無にかかわらず中空コアファイバの長さには、圧力が大気圧を下回る負圧部分であるその長さの少なくとも一部が含まれると予想され得る。閉鎖端部では、負圧部分は、一般に、封止部がどれくらい速く形成されたかに応じて、封止部まで、または封止部のごく近くまで延びることになる。したがって、両端部で閉鎖されたファイバでは、負圧部分は、ファイバの長さの大部分またはすべてに該当することになる。製造後封止されなかったか、または封止部が除去された開放端部では、負圧部分は、圧力を均一にするためにファイバ端部がどれくらいの時間大気に露出されていたかに応じて、ファイバ端部から内側に離間したある位置で始まることになる。電気通信用途で使用される何キロメートルの長さなどの長いファイバでは、ファイバの大部分は、一般に、両端部が開放している場合でさえ、単に、ファイバの大部分が端部から遠方にあり、均一化プロセスが非常に遅いので、負圧のままであることになる。
【0036】
この負圧は、従来の技法を使用して中空コアファイバを開裂した後に観察された追加の損失の根本的な原因であると考えられる。中空コアファイバの端部から封止部を除去するために使用される初期の粗野または粗雑な切断動作は、巧妙さを欠き、クラッド微細構造の破砕、亀裂、分裂、さもなければ損傷によってごく小さいガラス破片(断片、砕片、粒子、細片、または類似のもの)をもたらす。同時に、封止部の除去は、ファイバの低圧の内部を大気圧に露出し、空気が、ファイバの空所に内向きに流れ込む。この空気の流入は、それとともにガラス破片を短い距離ファイバ内に運び、その結果、ガラス破片は、ファイバの内部に堆積し、光を散乱させ、微細構造の意図された構成を壊すことによる光損失の原因として作用する。
【0037】
これは、観測された追加の損失のランダムな性質を説明している。各ファイバは、異なる数および場所の破片にさらされることになる。すべての破片が、第1の開裂によって除去され、そのため、損失が最初から安定する場合があり、一方、他の場合には、破片が、ファイバの中にさらに遠くに運ばれ、そのため、すべての汚染を除去し、損失を安定化させるには、多数の開裂が必要とされる。この問題は、中空コアファイバタイプにかかわらず生じることになり、そのため、塩素含有ガラスと低塩素ガラスの両方から製作されたファイバにおける追加の損失の発生を説明している。それはまた、再封止され、次いで、再度、切断および開裂されるファイバにおいて、どのように追加の損失が再び発生するかを説明している。長いファイバ長は、短時間での圧力均一化を阻止し、そこで、再封止は、依然として、ファイバ内に低圧を維持し、それにより、新しい封止部が切断されるときに、空気およびガラス破片の流入がもたらされる。
【0038】
図6A~
図6Cは、従来のファイバ端部準備技法から生じる追加の損失の上述の問題に対処するために、本明細書で提案される方法の一例に従って使用するためのファイバ端部の準備のステップを概略長手方向断面図として示す。
【0039】
図6Aは、前述同様に、微細構造クラッド1によって囲まれた中空コア2を含む中空コアファイバ10の長さの端部部分を示す。再び前述同様に、ファイバ10は、保護外側被覆7を有し、ファイバ端部8は、その端面でまたはその近くで封止部81を用いて多分気密に封鎖または封止される。封止端部は、チューブ(図示せず)などのケーシング内にパッケージされることによって保護され得る。したがって、中空コアファイバは、従来のファイバ端部準備技法が適用された中空コアファイバのタイプと同じ特徴を有する。したがって、第1のステップはファイバ10を用意することである。
【0040】
第2のステップは、ファイバ10から被覆7の部分7bを除去することである。これは、クラッド1の外面が露出され、開裂が行われ得るファイバ10の裸部分を用意する(provide a bare part of the fibre 10)ことである。
図6Aに示されるように、除去されるべき被覆7の部分7bが識別される。部分7bは、ファイバ10の封止部81から距離d1だけ離間された(内向きに、すなわち、ファイバの他方の端部に向かう方向に離間された)第1の位置X1から始まる。部分7bは、第1の位置X1から長さLにわたって延び、封止部81からさらに離間し、ファイバの他方の端部により近い第2の位置X2で終了する。
【0041】
次いで、被覆7の部分7bが、ファイバ10から除去または剥離される。被覆は、ファイバ10の全周からすべて除去される。部分7bは、ファイバ10の端部の封止部81から離間され、被覆7の残りの領域をどちらの側にも残すという点で中間であるので、その除去は、「ウインドウ剥離」と記載され得る。被覆7の除去または剥離は、任意の都合のよいやり方で実施され得る。例えば、市販の3つの孔(3つ孔)の光ファイバ剥離器などの特に作られた剥離器、もしくは他の機械的ベース剥離ツール(Fujikuraによって製作されたPCS-100ポリイミド被覆剥離器など)、またはカミソリの刃などの他の刃付きツールもしくはデバイス、または加熱機械的(「ホットジャケット」)剥離器(Jonard Toolsによって製作されたTSAB-40など)などの機械的剥離デバイスおよびツールが使用されてもよい。非機械的剥離技法は、被覆を蒸発させるための高温窒素または高温空気(Nyforsによって製作されたAutostripper 3(商標)で使用された)の使用、および適切な酸を使用する化学的除去を含む。剥離技法は、被覆の材料、剥離されるべきウインドウの長さL、およびファイバ端部が準備されている環境を含む要因を考慮して選ばれ得る。
【0042】
図6Bは、被覆7の部分7bを除去するためのウインドウ剥離の後のファイバ10を示す。ファイバ10は、今では、クラッド1の外面が露出されている幅Lの裸ファイバの長さまたは「ウインドウ」10aを含む。これは、ファイバ10に好結果の開裂を行うための良好な配置を提供する。開裂品質をさらに向上させるために、ファイバの裸面は、光学および光ファイバ産業において使用される任意の従来のまたは適切な洗浄溶媒、洗浄溶液、または洗浄流体を使用して洗浄されてもよい。この洗浄プロセスは、必須ではないが、被覆の剥離の後にファイバ表面に残された表面砕片および汚染物質を除去するのに役立ち、それらは、そうでなければ、開裂プロセス中に端部ファセットに移送されることがある。封止部81は、依然として無傷であり、ファイバ10の端部8を閉鎖している。
【0043】
ファイバ10を開裂する準備が整うと、開裂のための場所Yが、被覆7が除去されているウインドウ剥離の領域内に指定される。したがって、開裂場所Yは、ファイバ10の端部8の封止部81から距離d2にあり、距離d2は、封止部からのウインドウの第1の縁部の間隔d1よりも大きく、封止部からのウインドウの第2の縁部の間隔d1+Lよりも小さい。言い換えれば、d1<d2<(d1+L)である。開裂の目的は、ファイバを2つの部分に分割することであるので、開裂場所Yは、より一般的には、ファイバが分割の一方の側の部分と分割の他方の側の部分とに分離されるべきである分割場所であると考えられ得る。
【0044】
けれども、重要なことには、開裂場所はファイバの負圧部分内に位置づけられることに留意されたい。この例では、ファイバは、ファイバ製造直後に封止された閉鎖端部を有し、そのため、負圧状態が、封止部81までまたはその近くに維持されている。
図5A~
図5Dに関連して説明された従来の開裂技法の初期ステップに従ってはさみまたは類似のものを用いてこの場所でファイバを切断すると、損失生成破片がファイバの内部構造に引き込まれることになる。
【0045】
次いで、開裂は、ファイバ開裂ツールまたは開裂器14を使用して、場所Yで行われる。適切な技法およびツールまたは装置が、開裂された端部ファセットを設けるために、ファイバタイプ、状況、ユーザの選好、および他の要因に従って使用され得る。様々なファイバ開裂器が、市販されており、アンビルベース開裂(Fujikuraによって製作されたCT-08など)および張力ベース開裂(やはり、Fujikuraによって製作されたCT-101/CT-102など)を含む技法を利用している。例えばセラミックタイルを用いた刻み目-屈曲(score-and-bend)手法を使用する手作業開裂が利用されてもよい。レーザ開裂も知られており、所望であれは使用されてもよい。
【0046】
図6Cは、開裂ツール14で開裂した後のファイバ10を示す。清浄な端部ファセット83が、分割場所において作り出されており、開裂により封止部81を除去することによって創り出されたファイバ8の新しい端部が与えられる。端部ファセットは、直角(ファイバの長さに対して直角)として示されているが、開裂は、必要に応じて他の角度で実施され得る。ファイバ10は、2つの部分に分割されており、一方は、閉鎖端部8を含む分割場所Y(図示のような)の右側にあり、他方は、ファイバ10の長さの大半または大部分を含む分割場所Yの左側にある。開裂によるファイバ10の分離は、ファイバ全体から閉鎖端部部分を除去した。
【0047】
したがって、開裂された端部ファセットが形成され、閉鎖端部が、単一のステップ、すなわち、この例ではやはり剥離されたウインドウ内にあるファイバの負圧部分内での開裂のステップで除去される。開裂の動作は、クリーンで端正な端部ファセットを創り出すために、ファイバ内の微細構造の亀裂または破砕を最小化するかまたは避けるように構成される。それゆえに、この手順は、はさみまたはナイフによる単純な切断動作によってもたらされるガラス破片の形成を避けることができる。したがって、ファイバの負圧部分で実行される開裂は、中空コアファイバの以前に封止された低圧内部を解放し、その結果、周囲環境からファイバの内部への空気の流入はあるが、空気によるファイバ内への引き込みに応じるガラス破片は存在しない。したがって、従来のファイバ端部準備で観察された追加の損失は低減または避けられる。
【0048】
上記のように、この方法は、より一般的には、中空コアファイバを、ファイバの負圧部分内に位置づけられた開裂場所などの分割場所で分離することによって2つの部分に分割することと考えられ得る。各部分は、以下でさらに論じられるように、任意の長さを有することができ、他の部分に対して任意の長さを有することができる。それゆえに、この方法は、ファイバから短い端部部分を除去するか、2つのほぼ等しい部分を形成するためにファイバを半分に分割するか、またはこれらの末端間の任意の点での分割を行うために使用され得る。
【0049】
図6Dは、相当量の長さの中空コア光ファイバ10の概略側面図を示す。本明細書に開示されるような方法は、2つの部分10aおよび10bを形成するように分割場所Yにおいてファイバ10を分離または分割するために使用され得る。分割場所は、各部分が、ほぼ同様で、依然として相当量の長さを有するように、ファイバ10の中点にまたはその近くにある。分割場所Yは、負圧の部分内にあるファイバに沿ってどこにでも配置され得る。
【0050】
実験では、損失測定が、
図6A~
図6Cの例示の方法に従って実施された63個の開裂を有するファイバになされた。これらのうち、61個のファイバは、追加の損失を示さず、それは、安定した損失値が測定されたことによって直ちに示されており、その結果、さらなる追加の開裂は、いかなる損失の低減も与えない。測定された追加の損失は、残りの2つのファイバにおいて低く、他の要因、例えば、開裂が不正確な開裂角度を有していたことに起因した可能性がある。
【0051】
提案される方法は、中空コアファイバの端部を準備するときに損失を低減するだけでなく、さらに、開裂された端部ファセットの形成および封止端部の除去が以前のように別個のステージであるのではなく単一のステップに組み合わされているので、従来の技法と比較してより速い。さらに、安定した損失位置に達するために必要とされる追加の開裂が避けられる。さらに、中空コアファイバを別のファイバに結合することが簡単になるが、その理由は、光損失が存在する状態で良好なスプライスを達成するために必要とされるパワー位置合せ技法が避けられ得るからである。これらの技法は、伝送されたパワーの測定のために、ファイバの他方の端部へのアクセスを必要とし、それゆえに、非常に長いファイバ長では実用的ではなく、ファイバの設置をよりコストのかかるおよび時間のかかるものにする。
【0052】
開裂は、中空コアファイバを別のファイバまたは光学構成要素に直接スプライスする準備ができている光学品質に作り出され得ることに留意されたい。しかしながら、この方法は、このやり方に限定されず、単に清浄な端部ファセットを作り出すための開裂は、光学品質にかかわらず依然として非常に有用である。開裂は、破片の形成を避けるかまたは最小限にする、中空コア光ファイバを2つの部分に分離するための技法であり、そのため、中空コアファイバの負圧部分に開裂を直接適用することにより、損傷された微細構造の断片によるファイバ内部の汚染なしに、ファイバが分割されることが可能になる。したがって、ファイバは、光損失を増加させることなく、より短い部分または長さに都合よく分割することができる。
【0053】
ウインドウの幅と考えられ得るウインドウ剥離において除去される被覆の長さL(
図6Aを参照)は、ファイバに適用されるべき後のプロセスに応じて便宜的に選択され得る。例えば、ウインドウ幅は、意図された開裂技法が使用されることになるように考慮して選ばれ得る。多くの開裂機械およびツールでは、最大100mm、例えば、20mm~50mmの範囲、または30mm~50mmの範囲のウインドウ幅が適切であることになる。例えば、10mm~20mm、10mm~30mm、10mm~40mm、10mm~50mm、10mm~60mm、10mm~70mm、10mm~80mm、10mm~90mm、もしくは10mm~100mm、または30mm~40mm、30mm~60mm、30mm~70mm、30mm~80mm、30mm~90mm、もしくは30mm~100mm、または50mm~70mm、もしくは50mm~80mm、もしくは50mm~90mm、もしくは50mm~100mm、もしくは50mm~120mm、もしくは50mm~150mmの範囲の幅を有する若干小さいまたは大きいウインドウが好ましい場合がある。より小さいウィンドサイズは、排除されず、場合によっては、例えば、1mm未満、または2mm未満、または3mm未満、または4mm未満、または5mm未満、または6mm未満、または7mm未満、または8mm未満、または9mm未満、または10mm未満のウインドウ幅が実用的である場合がある。非常に大きいウインドウ、例えば、100mmより大きい、または150mmより大きい、または200mmより大きいウインドウ幅が、有用である場合もある。ウインドウの幅にはかなりの融通性があり、選ばれた開裂技法に適合する被覆の十分な最小の幅が必要とされ得るが、より大きいウインドウは、付加的に、他のファイバプロセス段階において適合し得る。
【0054】
ウインドウ剥離、したがって、開裂は、ファイバの長さに沿った任意の点で実行され得る。多くの場合、ファイバの端部の近くの開裂が望ましく、その目的は、別のファイバまたは他の構成要素にファイバをスプライシングなどによって結合させることである。この場合、ウインドウの第1の縁部がファイバの端部またはその近くの封止部から分離される距離d1は、比較的短く、例えば、100mm以下、150mm以下、200mm以下、300mm以下、90mm以下、80mm以下、70mm以下、60mm以下、50mm以下、40mm以下、30mm以下、20mm以下、または10mm以下などとすることができる。より一般的には、この方法は、封止部または閉鎖端部を取り去ること、または破損部分を除去すること、などのために、端部をファイバから除去するのに有用であると考えられ得る。それゆえに、ファイバは、必要とされない端部を含む小さいまたは短い部分(この部分は廃棄され得る)と、ある用途のために使用され得るファイバに相当する一般に非常に大きいまたは長い部分とに分割される。このやり方での端部部分の除去は、ファイバの端部まで1メートル以下になるように分割場所を選択することとして規定され得、その端部は、一般に、閉鎖されているはずであるが、そうである必要はない。しかしながら、端部除去のための他の距離を排除しない。
【0055】
他の状況では、この方法は、両方とも比較的長く、廃棄されるのではなく使用することが意図される2つの部分にファイバを分割する目的で実施され得る。それゆえに、開裂は、ファイバを、対象の2つの別個の部分に分割するために、ファイバの端部からはるかに遠く離れた分割場所にあり得る。これは、リールまたはスプールから使用可能なファイバの長さを取り出すときなどに、非常に長いファイバを2つ以上の短い長さに分離するために使用され得る。一例として、部分の各々は少なくとも5メートルの長さを有することができるが、1m、2m、3m、または4mなどの他の最小長は排除されない。そのため、ウインドウ剥離は、開裂が、ファイバの中点の近くでまたはより近くで、例えば、ファイバ中点の5%以内、またはファイバ中点の10%以内、20%以内、25%以内、30%以内、40%以内、もしくは50%以内などでファイバを分離するように位置づけられ得る。同様の範囲が、ファイバの端部の封止部からの開裂の分離の距離d2に当てはまる。
【0056】
ファイバの端部部分の除去は、特に非常に短い端部部分の場合、分割場所が負圧領域内に位置づけられ得るようにファイバが閉鎖端部を有することを必要とし得るが、端部から離間した場所でのファイバの分割は、一方または両方の端部が開放されたファイバで実施され得ることに留意されたい。上述で論じたように、中空コアファイバは、端部が長期間開放されていた場合でさえ、少なくとも中央部分にわたって負の内圧を保持する。したがって、この方法は、開放端部の中空コア光ファイバと、閉鎖端部の中空コア光ファイバの両方に適用可能である。
【0057】
当然のことながら、ウインドウ幅(除去された被覆の長さ)L、ウインドウ位置または場所d1、および開裂位置または場所d2は、融通性があり、要件に従って選択され得る。
【0058】
ファイバが開裂された後、さらに必要とされるステップが、開裂された端部を使用して実施され得る。しばしば、これは、開裂されたファイバを別のファイバに、または光学構成要素もしくは要素に通常のやり方で連結するためのファイバスプライスの形成となるであろう。開裂された中空コアファイバは、同じタイプもしくは異なるタイプの別の中空コアファイバにスプライスされる場合があり、または例えば、すべて中実ファイバを用いて使用するように構成され得る光電気通信装置への接続に適合するように中実ファイバにスプライスされる場合がある。
【0059】
この方法が適用される中空コアファイバは、任意の様式、任意の設計(ARFまたはHCPBF)、および任意の長さとすることができる。例えば、ファイバは、個々のファイバであってもよい。あるいは、ファイバは、ファイバケーブル内に他のファイバと束ねられてもよく、束は、外側ジャケット内に一緒に保持される。この場合、ファイバの十分な長さが、既に、開裂を行うことができるようにジャケットから突き出ていてもよい。他の場合には、予備ステップが、開裂方法を実行するためにファイバの一部をジャケットから解放してもよい。これは、ケーブルの端部からのジャケットの一部の除去、またはファイバからの被覆のウインドウ剥離と同様にケーブルの中間もしくは中点からのジャケットの一部の除去によるものであり得る。この後者のオプションは、例えば、ケーブルを2つの部分に分割することを可能にし、またはファイバ端部から離間した中間場所でファイバに光アクセスすることを可能にする。他の場合には、ファイバは、ファイバを露呈させるためにジャケットを切り開くことによって、例えば、ケーブルの端部のジャケットに、またはファイバにアクセスするために端部から内側に離間したジャケットにスリットの切込みを入れることなどによって、解放され得る。
【0060】
これまで、この方法は、ファイバを開裂する前にファイバから被覆をウインドウ剥離するステップを含んでいた。上記のように、被覆を事前に除去すると、より良好な品質の端部ファセットを提供することができる。しかしながら、いくつかの開裂技法は、開裂場所において被覆材料の分離ならびにファイバ材料の分離を行うことができ、状況によっては、被覆の事前除去なしに、このやり方でこの開裂を実行することが適切である場合がある。それゆえに、別の例では、この方法は、中空コアファイバの封止端部から離間された(距離d2だけ)分割場所で被覆された中空コアファイバを開裂することを含む。次いで、スプライシングなどのさらなる処理のために必要とされる場合、被覆は、開裂された端部ファセットに隣接するファイバの端部から剥離されてもよい。この手法は、より速い可能性があり、それゆえに、状況によっては魅力的である可能性がある。例えば、品質要件が高くない一時的スプライスが行われる必要があり、そのため、被覆を通して開裂することによって被覆材料で端部ファセットを汚染することのリスクは許容される場合がある。この例はまた、端部部分を除去するのではなく、ファイバを2つの重要な部分に分割するために使用されてもよい。前述のように、どちらの場合も、ファイバの1つまたは複数の端部は、閉鎖されていても開放されていてもよい。
【0061】
他方、この方法は、被覆されていない中空コアファイバにも有用である。外側被覆は、多くの場合、ファイバを保護するために必要とされるが、他の場合には、必要とされないことがある。しかしながら、本開示による負圧部分における開裂は、依然として、微細構造からの破片によるファイバ内部の汚染を避けることによって、追加の損失の低減と同じ効果を提供する。したがって、別の例では、この方法は、中空コアファイバの封止端部から離間された(距離d2だけ)分割場所で被覆されていない中空コアファイバを開裂することを含む。再び、この例はまた、ファイバの1つまたは複数の端部が閉鎖または開放された状態で、端部部分を除去するのではなく、ファイバを2つの重要な部分に分割するために使用されてもよい。
【0062】
図7は、光ファイバを開裂するための第1の例示の方法のステップの流れ図を示す。第1のステップS1において、中空コア光ファイバが用意される。光ファイバは、(オプションとして気密に)封止された端部(他方の端部は封止されていてもいなくてもよい)を有し、外側被覆を有していてもいなくてもよい。第2のステップS2において、ファイバは、端部ファセットをファイバに設けるために、封止端部から離間された場所で開裂される。
【0063】
図8は、光ファイバを開裂するための第2の例示の方法のステップの流れ図を示す。第1のステップS10において、中空コア光ファイバが用意される。光ファイバは、(オプションとして気密に)封止された端部(他方の端部は封止されていてもいなくてもよい)と、外側被覆とを有する。第2のステップS11において、被覆の一部が、封止端部から離間された場所で除去され、それによって、露出された被覆のないファイバのウインドウが設けられる(providing a window of exposed uncoated fibre)。第3のステップS12において、端部ファセットをファイバに設けるために、ファイバは、ウインドウ内の、それゆえにまた、封止端部から離間された場所で開裂される。
【0064】
図9は、光ファイバを開裂するための第3の例示の方法のステップの流れ図を示す。第1のステップS10において、中空コア光ファイバが用意される。第2の例におけるように、光ファイバは、(オプションとして気密に)封止された端部(他方の端部は封止されていてもいなくてもよい)と、外側被覆とを有する。第2のステップS13において、ウインドウを形成するために被覆の一部を除去するのではなく、ファイバは、端部ファセットを設けるために、封止端部から離間された場所で被覆を通して直接開裂される。オプションの第3のステップS14において、被覆の一部が、端部ファセットに隣接するファイバから除去される。
【0065】
図10は、中空コア光ファイバを開裂によって分割するためのより一般的な例示の方法のステップの流れ図を示す。第1のステップS20において、内圧が大気圧を下回る負圧部分を含む中空コア光ファイバが用意される。ファイバは、複数の閉鎖端部もしくは複数の開放端部を有することができ、または1つの閉鎖端部および1つの開放端部を有することができる。第2のステップS21において、ファイバは、ファイバを2つの部分に分割するために、負圧部分内に位置づけられた分割場所で開裂される。これは、部分のうちの少なくとも1つについて、分割場所において端部ファセットを設ける。
【0066】
しかしながら、微細構造からの材料の破片による汚染を避けるかまたは低減するやり方で、負の内圧を有する中空コアファイバを2つの部分に分割または分離することの利点は、開裂技法に限定されない。開裂は、ファイバ部分のうちの少なくとも1つに光学品質の端部ファセットを設けることもできるという点で有用であり得るが、開裂自体は、必要に応じてファイバを分割するが、光学品質の端部ファセットが開裂から直接作り出されることがないようなやり方で実施されてもよい。さらに、材料の破片または他の断片を作り出すやり方で微細構造を損傷することなく実施され得る、ファイバを部分に分離または分割することができる他の技法が、開裂の代わりに使用されてもよい。
【0067】
微細構造からの破片の形成または生成を、排除する、避ける、低減する、防止する、阻止するか、または排除するように構成されるかまたは構成され得る任意の分離技法が、ファイバの負圧部分内の場所で中空コア光ファイバを分割するために使用されてもよい。一例として、中空コアファイバに熱エネルギーを伝達してファイバのガラスを軟化または溶融させる熱プロセスまたは技法が使用されてもよい。ガラスの軟化または溶融領域は、ファイバの2つの部分が、引き離すことなどによって互いに分離されることを可能にする。熱エネルギーは、例えば、火炎またはレーザビームに由来してもよい。ファイバの分離された端部は、使用可能な端部ファセットを欠くことになるが、必要に応じて、開裂が後に実行されてもよい。あるいは、レーザビームが十分な熱エネルギーを伝達して、ガラスを気化させるかまたはアブレーションさせ、それによって、非接触のやり方でファイバを切り開くことができる。これは、レーザ開裂と呼ぶことができる。すべての場合、ファイバとの接触がなく、したがって、印加される力がないことにより、微細構造の亀裂、破砕、または分裂が避けられ、その結果、破片は形成されない。
【0068】
図11は、中空コア光ファイバを分割するためのさらなる例示の方法のステップの流れ図を示す。第1のステップS30において、内圧が大気圧を下回る負圧部分を含む中空コア光ファイバが用意される。ファイバは、複数の閉鎖端部もしくは複数の開放端部を有することができ、または1つの閉鎖端部および1つの開放端部を有することができる。第2のステップS31において、微細構造から破片を形成することなく分離するように構成された分離技法がファイバに適用され、破片形成は、避けられるかまたは排除されるように意図される。第3のステップS32において、分離技法は、ファイバを2つの部分に分割するために負圧部分の場所でファイバを分離する。
【0069】
この例示の方法は、開裂に関して論じられた様々な特徴、例えば、ファイバが開放端部または閉鎖端部を有すること、および部分が短い端部部分と長い端部部分であるかまたは2つの長い部分であることなどのうちのいずれかと併せて使用され得る。
【0070】
本明細書に記載の様々な実施形態は、特許請求される特徴の理解および教示を支援するためにのみ提示されている。これらの実施形態は、実施形態の代表的な例としてのみ提供されており、網羅的および/または排他的ではない。本明細書に記載の利点、実施形態、例、機能、特徴、構造、および/または他の態様は、特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲への限定、または特許請求の範囲の均等物への限定と考えられるべきではないことと、特許請求される発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用されてもよく、変更が行われてもよいこととを理解されたい。本発明の様々な実施形態は、本明細書に具体的に記載されたもの以外の開示された要素、構成要素、特徴、部品、ステップ、手段、などの適切な組合せを適切に含む、それらからなる、またはそれらから本質的になることができる。加えて、本開示は、現在特許請求されていないが、将来特許請求される可能性がある他の発明を含むことができる。
【0071】
参考文献
[1]米国特許第9,904,008号
[2]WO2015/185761
[3]J Broengら、「Analysis of air-guiding photonic bandgap fibers(空気導波フォトニックバンドギャップファイバの解析)」、Optics Letters 25(2)巻、96~98ページ、2000年
[4]Francesco Poletti、「Nested antiresonant nodeless hollow core fiber(入れ子反共振無ノード中空コアファイバ)」、Opt. Express、22巻、23807~23828ページ、2014年
[5]JR Hayesら、「Antiresonant hollow core fiber with an octave spanning bandwidth for short haul data communications(短距離データ通信のためのオクターブスパン帯域幅を有する反共振中空コアファイバ)」、Journal of Lightwave Technology 35(3)巻、437~442ページ、2017年
[6]S Rikimiら、「Growth of ammonium chloride on cleaved end-facets of hollow core fibers(中空コアファイバの端部ファセットへの塩化アンモニウムの成長)」、2020 Conference on Lasers and Electro-Optics (CLEO)、IEEE、2020年
[7]米国特許第6,888,992号
[8]S Rikimiら、「Pressure in as-drawn hollow core fibers(線引きしたままの中空コアファイバ内の圧力)」、Advanced Photonics Congress、Optical Society of America、2020年
【国際調査報告】